(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】プロセストレースからの装置故障モードの予測
(51)【国際特許分類】
G06F 11/07 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
G06F11/07 190
G06F11/07 193
G06F11/07 140H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504511
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021042842
(87)【国際公開番号】W WO2022020642
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520266557
【氏名又は名称】ピーディーエフ ソリューションズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バーチ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】国俊 一樹
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042JJ30
5B042KK15
5B042KK17
5B042MA08
5B042MA14
5B042MC08
(57)【要約】
装置故障モードのための予測モデル。異常がトレースデータの集合内で検出され、次いで重要な特徴が計算される。過去のトレースデータのデータベース内で同じ重要な特徴を有する同一または類似の異常を探して検索が実施される。同じ異常が以前に生じて、データベース内にある場合、異常のタイプ、その根本原因、および是正するための措置ステップがデータベースから取得できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体プロセスにおける複数のステップ中に、複数の半導体装置センサーから複数のトレースを受信することと、
前記複数のトレース内で検出された第1の異常なパターンに対応する複数の特徴を、それらと関連付けられて、過去のトレースデータのデータベース内に格納された特徴を有する複数の以前の異常なパターンと比較することと、
前記第1の異常なパターンの前記特徴が前記複数の以前の異常なパターンの少なくとも1つの特徴と一致すると判断することと、
前記一致した以前の異常なパターンに対する根本原因を前記データベースから取得することと、
前記根本原因を是正するために措置を取ることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記根本原因に対する是正措置を前記データベースから取得すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記判断ステップは、
前記第1の異常なパターンの前記特徴が前記複数の以前の異常なパターンの少なくとも1つと一致する尤度を判断することと、
前記尤度が閾値を超えている場合、前記根本原因を取得することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
根本原因を取得する前記ステップは、
前記根本原因に対する是正措置を前記データベースから取得すること
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記比較ステップは、
前記第1の異常なパターンを含む前記複数の現在のトレースの一部を含む窓を定義することと、
前記窓内の前記現在のトレースデータの一部に関する統計量を計算することと、
前記計算された統計量に基づき、前記複数の以前の異常なパターンの少なくとも第1の1つ内で前記第1の異常なパターンを識別することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記判断ステップは、
前記第1の異常なパターンを有する前記第1のトレースに対する位置情報を取得することと、
前記計算された統計量および前記位置情報を、前記第1の異常なパターンに対応する重要な特徴として保存することと、
前記重要な特徴を、前記第1の異常なパターンを前記複数の以前の異常なパターンと比較するように構成された予測モデルに対する入力として提供することと
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
半導体プロセスにおける複数のステップ中に、複数の半導体装置センサーからトレースデータを受信することと、
前記トレースデータ内で第1の異常を検出することであって、前記第1の異常は前記トレースデータ内の関連位置を有することと、
前記第1の異常を含む前記トレースデータの期間を含む窓を定義することと、
前記窓内の前記トレースデータの前記期間に関して統計量を計算することと、
前記第1の異常の前記統計量および前記関連位置を前記第1の異常と関連付けられた重要な特徴として保存することと、
前記第1の異常の前記重要な特徴および関連位置を、前記重要な特徴関連位置を有する類似の過去のトレースデータを見つけるように構成されたモデルに対する入力として提供することにより、過去のトレースデータのデータベースを検索することと、
前記データベース内の前記過去のトレースデータのインスタンスが前記第1の異常の前記重要な特徴および関連位置を有すると判断することと、
前記第1の異常の前記重要な特徴および関連位置を有する前記データベース内で前記過去のトレースデータの前記インスタンスに対する根本原因を識別することと、
前記根本原因を是正するための措置を取ることと
を含む、方法。
【請求項8】
前記根本原因および前記根本原因に対する是正措置を前記データベースから取得すること
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記判断ステップは、
前記データベース内の前記過去のトレースデータの前記インスタンスが前記第1の異常の前記重要な特徴および関連位置を有する尤度を判断することと、
前記尤度が閾値を超えている場合、前記根本原因を取得することと
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
根本原因を取得する前記ステップは、
前記根本原因に対する是正措置を前記データベースから取得すること
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、半導体装置故障の検出および分類のためのプロセストレース分析の使用に関し、より詳細には、装置故障モードを予測するための機械ベースの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造用途のための効果的なプロセス制御は、信頼性の向上および現場故障の削減のために重要である。プロセス制御に対する1つのアプローチは、故障検出および分類(「FDC」)であり、その場合、プロセス不安定性を素早く識別して是正するための手段としてプロセス装置に設置された数千もの装置センサーの監視に焦点を置いている。しかし、装置問題に対する素早い応答を駆動するFDC技術の使用における主要課題の1つは、検出されたプロセストレース異常に対する根本原因の識別である。
【0003】
装置センサーの時系列トレースを監視することによる装置故障の検出は、長く認識されているが、半導体製造においては非常に困難な問題である。典型的には、FDC方法は、複雑なトレースを論理「窓」に分割し、次いで窓内のトレースデータに関して統計量(指標またはキー番号と呼ばれることが多い)を計算することから始まる。指標は、主に工学知識に基づき異常を識別するために統計的プロセス管理(「SPC」)技術を使用して監視でき、指標は予測モデルおよび根本原因分析のための入力として利用できる。指標の品質は全ての後続の分析の値を決定する。高品質指標は高品質窓を必要とする。しかし、異常検出のための指標の分析は依然として、異常が特徴ごとに考慮される、主として本質的に一変量であり、検出された異常に関連した装置故障モードを識別するために一般に不十分である。
【0004】
従って、装置故障モードを、例えば、トレースデータの多変量解析を通して、識別するために異常検出システムの能力を改善することは望ましいであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1のセットの窓が第1のタイプの異常なトレースに対して定義された、装置センサートレースのグラフィック集合を例示するプロセス表示インタフェースである。
【
図2】第2のセットの窓がセンサートレースの異なる領域内の第2のタイプの異常なトレースに対して定義された、
図1のプロセス表示インタフェースである。
【
図3】
図1および
図2に示されているトレースに対する要約結果の表である。
【
図4】装置故障モードを予測するためのプロセスの一実施形態を例示する流れ図である。
【
図5】装置故障モードを予測するためのプロセスの別の実施形態を例示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書では、用語「センサートレース」は、半導体処理装置の動作中に定期的に重要な物理量、例えば、各時点における物理センサーのサンプル値、を測定する時系列データを指す。サンプリングレートは変動し得、サンプル間の期間は必ずしも同じではない。用語「トレース」または「装置トレース」は、特定の処理インスタンスに対して識別された全ての重要なセンサーに対するセンサートレースの集合を指す。用語「ステップ」は、別個の装置処理期間、例えば、プロセスレシピ内のステップの1つを指す。
【0007】
本明細書で開示されるのは、装置故障モードに対する予測モデルである。本モデルは、トレースデータ内で現在の異常を検出および識別し、現在の異常と関連付けられた重要な特徴を計算して、過去のトレースデータのデータベース内でそれらの重要な特徴を有する異常を検索する。同じか、または類似の異常が過去のトレースデータ内で見つかる場合、現在の異常がそれらの過去の異常に従って正確に分類できるかどうか、例えば、現在の異常は過去のトレースデータ内の以前の異常に最も似ているか、に関して尤度が判断できる。そうであれば、異常のタイプ、その根本原因、および是正するための措置ステップが恐らく、過去のトレースデータのデータベースから取得できる。しかし、そうでない場合、モデルはエラーを返して、その異常は以前に見られなかったことを意味する。その異常およびその特徴はそれにもかかわらず将来の参照のために格納され、根本原因および是正措置がその後決定される場合データベースが更新される。
【0008】
図1を参照すると、トレースデータの例示的なグラフ100が示されており、略200の個々のトレース、すなわち、半導体ウェハ製造のための半導体製造プロセスランの個々の個別のステップ中に取られた個々のセンサーから取得された時系列値を表している。センサー値がy軸上にプロットされ、時間が秒単位でx軸上で測定される。プロセスステップは通常特定の時点において始まるが、プロセスステップの長さは変わり得ることを認識すべきである。
【0009】
略40~90秒の期間のほとんどに対して、通常のプロセス動作は、徐々に低下し、そのため比較的安定して一貫しているトレースデータをもたらすことが予期される。しかし、この事例では、略45~60秒の間、トレースの上部グループ110内の第1のセットのトレース112およびトレースの下部セット120内の第2のセットのトレース122は両方とも、突然値が急上昇し、その後低下して、次いで戻って上昇し、その後穏やかな下落パターンに戻るセンサー測定値を示す。このトレース挙動は予想外であり、プロセスに関連する何らかの種類の問題を示す。従って、異常挙動を分析するために、予想外のタイプI異常がいくつかのウェハに対して生じるグラフ100の、それぞれ、上部グループ110および下部グループ120内で、窓115および125がこれらのタイプI異常領域の上に定義される。
【0010】
図2は、トレースデータの同じグラフ100を示しているが、タイプII異常が上部グループ110においてのみ第3のセットのトレース132に対して生じているトレースデータの異なる部分に焦点が置かれている。この事例では、トレースの一部は、予期されるとおりに公称まで下落する前に、早期に低下し、その後好転し、次いで再度低下して、その後再度好転するように見える。従って、このタイプの異常挙動を分析するために、窓135がトレースの上部グループ110内の第1の下落領域の上に定義され、窓136が上部グループ内の第2の下落領域の上に定義される。
【0011】
典型的には、技術スタッフが、単にグラフ結果の視覚レビューに基づいてトレースデータの特定の領域を分析するための窓を手動で確立して、(i)トレースデータが一貫している、および/または(ii)変化率が同じである場所に安定したプロセス動作に対する窓を手動で大まかに定義しようとする。トレースデータが値または変化率において急激に変化している領域は遷移窓であると考えられ、一般に一対の安定した窓の間に位置する。しかし、本明細書で例として説明されるタイプIおよびタイプII異常などの異常は、
図1および
図2に例示されるように、トレースデータの他の点では正常な安定した窓内に出現し得、関連領域(複数可)の窓掛けを通して処理および分析するために選択され得る。
【0012】
窓分析からのデータの使用を含む既知の方法を使用して異常を検出するために機械学習モデルが構成される。例えば、ウェハ属性およびトレース位置特徴の組合せが、トレースデータ内で異常挙動を検出するためにデータセットに関して訓練される、勾配ブースティングモデルなどの、単純多クラス機械学習モデルに対する入力として提供され得る。しかし、一旦、異常が検出されると、同じ異常が以前に生じているか、もしそうであれば、それを生じた原因、およびその問題を是正するためにどんな措置ステップが取られるべきであるかを知ることが重要である。
【0013】
異常窓115、125、135および136の定義の後、窓の各々内のトレースから指標が計算される。指標は次いで、窓と関連付けられた特徴およびそれらのウェハに関するトレースデータのインスタンスとして、選択されたウェハ属性およびトレース内の異常の位置と共に、格納される。特徴量エンジニアリングおよび選択が実行されて、特徴のセットを、検出モデルを用いて特定の異常を検出および識別するために最も重要であると判断された重要な特徴に絞ることができる。
【0014】
図1および
図2にそれぞれ例示される、タイプIおよびタイプII異常に関して、検出モデルから予測される分類(正常ウェハを含む)が
図3の表200に要約されており、表では、5つのウェハがタイプI異常として識別された異常を有し、7つのウェハがタイプII異常として識別された異常を有し、1つのウェハがタイプIおよびタイプIIの両方の異常を有する。わずかな数の検出された異常にもかかわらず、特に、欠陥ウェハとなり得るプロセス不安定性のインスタンスを最小限にするためにトレースデータを監視するように予測モデルの訓練における使用のために、異常を識別および特性化することは重要である。
【0015】
各タイプの異常に関して、重要な特徴をモデルに対する入力として、モデルは、(i)同じか、もしくは類似の異常を探して以前のトレースデータのデータベースを検索して、(ii)1つ以上の以前の異常を現在の異常に最も似ているとして識別するか、またはデータベース内には現在の異常のようなものはないことを示すようにも構成される。
【0016】
同じか、または類似の異常が過去のトレースデータのデータベース内で見つかる場合、その根本原因および異常挙動を是正するために取られる措置ステップも恐らくデータベース内に格納されて、現在の異常との比較のために取得できる。異常の特徴およびパターンを比較することにより、モデルは、現在のトレース異常が過去のトレース内で観察された1つ以上の類似または同じ異常に最も似ている尤度を判断する。尤度が閾値を超えている場合、その異常は分類されて、根本原因および是正措置に関する以前の知識がデータベースから取得される。
【0017】
本プロセスは
図4に図表を用いて要約されており、
図4は、異常に対して根本原因を識別するためのプロセス300の一実施形態を例示している。ステップ302で、トレースデータが予測モデル内に受信されて処理される。ステップ304で、受信されたトレースデータ内で少なくとも1つの異常が検出されて、トレース内でのその位置が識別される。次いでステップ306で、異常を含むトレースの部分を含むように窓が定義されて、ステップ308で、統計量を含む、異常なトレースの特徴が計算され、ステップ310で格納される。次いで、現在の異常と関連付けられた同じ特徴を有する異常に対して、ステップ312で過去のトレースデータを有するデータベース内で検索が実施される。ステップ314で同じか、または類似の異常が過去のトレースデータ内で見つかる場合、現在の異常がそれらの過去の異常に従って正確に分類できるか否かに関してステップ316で尤度が判断できる。そうであれば、ステップ318で、異常のタイプ、その根本原因、および是正のための措置ステップが同じか、または類似の過去の発生に対してデータベースから取得でき、ステップ320で適切な是正措置が取られる。しかし、尤度が低い場合、モデルはエラーを返して、その異常は以前に見られなかったことを意味する。その異常およびその特徴はそれにもかかわらず将来の参照のために格納され、根本原因および是正措置がその後決定される場合データベースが更新される。
【0018】
図5は、プロセス400でより一般化されたアプローチを提示する。ステップ402で、トレースデータが予測モデル内に受信されて処理される。ステップ404で、トレースデータ内で異常なパターンが検出される。ステップ406で、検出された異常なパターンの特徴が計算されて、ステップ408で、過去のトレースデータのデータベース内に格納された以前の異常なパターンの特徴と比較される。ステップ410で、特徴が一致するかが判断され、次いでステップ412で、過去のトレースデータからの異常なパターンに関する情報が、異常に対する1つ以上の根本原因および根本原因に対する是正措置を含む、データベースから取得される。ステップ414で、適切な是正措置が取られる。
【0019】
トレースデータの多変量解析は、並列処理アーキテクチャの出現および機械学習アルゴリズムの発展によって容易にされ、それらはユーザーが、膨大な量のデータを高速で使用して、洞察を得て予測を行うのを可能にして、かかるアプローチを適切で現実的にする。機械学習は、データから学習できるモデル化されたシステムの構成および研究を伴う人工知能の分野である。これらのタイプのMLアルゴリズムは、並列処理能力と共に、遥かに大規模なデータセットが処理されるのを可能にして、多変量解析への関与に対して遥かに良く適する。さらに、異常なトレース検出および分類に対する効果的な機械学習アプローチは、アクティブラーニングを容易にし、得られた情報を使用して故障検出および分類の両方の精度を継続的に向上させるはずである。
【0020】
トレース分析のためのプロセッサベースモデルの作成および使用は、デスクトップベース、すなわち、スタンドアロン、またはネットワークシステムの一部にできるが、何らかの対話性と共に処理および表示される大量の情報を所与として、プロセッサ能力(CPU、RAMなど)は有効性を最大限にするために現在の最先端技術にすべきである。半導体製造工場環境では、Exensio(登録商標)解析プラットフォームが、対話型GUIテンプレートを構築するための有用な選択である。一実施形態では、処理ルーチンのコーディングは、Spotfire(登録商標)解析ソフトウェアバージョン7.11以上を使用して行われ得、それは、主に機械言語モデルをコーディングするために使用される、Pythonオブジェクト指向プログラミング言語と互換性がある。
【0021】
前述の説明は、例示のみを目的として提示されており-網羅的であることも、本開示を説明される正確な形に限定することも意図していない。多くの修正および変形が前述の教示に照らせば可能である。
【国際調査報告】