IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サウザーン リサーチ インスチチュートの特許一覧 ▶ ピノットバイオ インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-5357245-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの多形
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの多形
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/12 20060101AFI20230814BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20230814BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
C07H19/12 CSP
A61K31/706
A61K45/00
A61P7/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504527
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 US2021043021
(87)【国際公開番号】W WO2022020747
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】63/055,754
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504164240
【氏名又は名称】サウザーン リサーチ インスチチュート
(71)【出願人】
【識別番号】523024369
【氏名又は名称】ピノットバイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】スト マーク ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ドゥ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒョニョン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA14
4C057BB02
4C057CC03
4C057CC05
4C057DD01
4C057LL25
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC412
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの結晶多形を提供する。結晶多形は、任意選択で、追加の化学療法剤と組み合わせて、医薬組成物中に製剤化され得る。結晶多形は、骨髄異形成症候群及び白血病などの血液がんを含む様々な疾患を治療するのに有用である。5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの結晶多形を調製するためのプロセスもまた開示される。この要約は、特定の技術分野での検索を目的としたスキャンツールとして意図され、本発明を限定することを意図するものではない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの結晶多形であって、前記結晶多形が、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する、結晶多形。
【請求項2】
前記結晶多形が、図11に示されるX線粉末回折パターンと実質的に類似するか、又はそれと同じX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶多形。
【請求項3】
5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの結晶多形であって、前記結晶多形が、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する、結晶多形。
【請求項4】
図16に示されるX線粉末回折パターンと実質的に類似するか、又はそれと同じX線粉末回折パターンを示す、請求項3に記載の結晶多形。
【請求項5】
有効量の、
請求項1に記載の結晶多形、又は
請求項3に記載の結晶多形と、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物が、請求項1に記載の結晶多形を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物が、請求項1に記載の結晶多形からなる活性成分を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物が、請求項1に記載の結晶多形を含むが、5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの他の結晶多形を含まない、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物が、請求項3に記載の結晶多形を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、請求項3に記載の結晶多形からなる活性成分を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、請求項3に記載の結晶多形を含むが、5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの他の結晶多形を含まない、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記有効量が、約35mg/m2~約70mg/m2のものである、請求項5~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、化学療法剤を更に含む、請求項5~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗物質剤、抗腫瘍性抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、及びmTOR阻害剤からなる群から選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗腫瘍性抗生物質剤が、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ペントスタチン、及びバルルビシン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記代謝拮抗物質剤が、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、カペクチアビン(capectiabine)、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、ペメトレキセド、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、プララトレキサート、フロクスウリジン、メトトレキサート、及びチオグアニン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記アルキル化剤薬剤が、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、テモゾロミド、チオテパ、ベンダムスチン、及びストレプトゾシン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記有糸分裂阻害剤が、イリノテカン、トポテカン、ルビテカン、カバジタキセルドセタキセル、パクリタキセル、エトプシド(etopside)、ビンクリスチン、エキサベピロン(exabepilone)、ビノレルビン、ビンブラスチン、及びテニポシド、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記mTOR阻害剤が、エベロリムス、シロリムス、及びテムシロリムス、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の結晶多形からなる5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジン化合物。
【請求項21】
請求項3に記載の結晶多形からなる5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジン化合物。
【請求項22】
がんを治療することを必要とする対象におけるそれを治療する方法であって、前記対象に、有効量の請求項1に記載の結晶多形又は請求項3に記載の結晶多形を投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記がんが、血液がんである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記血液がんが、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記がんが、固形がんである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記固形がんが、胃がん、腎臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、乳がん、黒色腫、及び膵臓がんからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記有効量が、治療有効量である、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記有効量が、約35mg/m2~約70mg/m2のものである、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記結晶多形が、医薬組成物中に存在する、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、前記対象に化学療法剤を投与することを更に含む、請求項22~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記有効量が、単回用量で投与される、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記有効量が、複数の用量を介して投与される、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
血液がんの治療を必要とする対象を特定することを更に含む、請求項22~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、前記投与ステップの前に、がんの治療が必要であると診断されている、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
投与が、反復投与である、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
投与が、約4日~約6日の期間である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
投与が、治療サイクルを介して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項38】
各治療サイクルが、前記有効量の前記化合物を約4日~約6日の期間投与することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
投与が、複数の治療サイクル及び複数の休止期間を含む治療過程を介して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項40】
各治療サイクルが、前記有効量の前記化合物を約4日~約6日の期間投与することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
各治療サイクルが、前記有効量の前記化合物を約5日の期間投与することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
各休止期間が、約1日~約10日の期間、前記化合物の投与を控えることを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記投与が、
前記有効量の前記結晶多形を約4日~約6日の期間投与することを含む第1の治療サイクルと、
約1日~約3日の期間、前記結晶多形の投与を控えることを含む第1の休止期間と、
前記有効量の前記結晶多形を約4日~約6日の期間投与することを含む第2の治療サイクルと、
少なくとも約8日の期間、前記結晶多形の投与を控えることを含む第2の休止期間と、を含む、治療過程を介して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項44】
前記有効量が、単回用量で投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記有効量が、複数の用量を介して投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記有効量が、いくつかの日に単回用量を介して、他の日に複数回用量を介して投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記投与が、
前記有効量の前記結晶多形を約5日の期間投与することを含む第1の治療サイクルと、
約2日の期間、前記結晶多形の投与を控えることを含む第1の休止期間と、
前記有効量の前記結晶多形を約5日の期間投与することを含む第2の治療サイクルと、
少なくとも約9日の期間、前記結晶多形の投与を控えることを含む第2の休止期間と、を含む、治療過程を介して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項48】
請求項1又は請求項3に記載の結晶多形を作製するための方法であって、アザ-T-dCydを、溶媒平衡化、蒸発結晶化、抗溶媒添加、熱サイクル結晶化、超音波処理、及び溶液中への蒸気拡散のうちの1つ以上に供することを含む、方法。
【請求項49】
請求項1に記載の結晶多形又は請求項3に記載の結晶多形と、
(a)少なくとも1つの化学療法剤、
(b)がんの治療に関連して組成物を投与するための説明書、及び
(c)がんを治療するための説明書のうちの1つ以上と、を含む、キット。
【請求項50】
前記化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗物質剤、抗腫瘍性抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、及びmTor阻害剤から選択される、請求項49に記載のキット。
【請求項51】
前記抗腫瘍性抗生物質剤が、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン(dactinomycin)、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ペントスタチン、及びバルルビシン、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
前記代謝拮抗物質剤が、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、ペメトレキセド、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、プララトレキサート、フロクスウリジン、メトトレキサート、及びチオグアニン、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項50に記載のキット。
【請求項53】
前記アルキル化剤が、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、テモゾロミド、チオテパ、ベンダムスチン、及びストレプトゾシン、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項50に記載のキット。
【請求項54】
前記有糸分裂阻害剤が、イリノテカン、トポテカン、ルビテカン、カバジタキセル、ドセタキセル、パクリタキセル、エトプシド(etopside)、ビンクリスチン、イキサベピロン、ビノレルビン、ビンブラスチン、及びテニポシド、又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項50に記載のキット。
【請求項55】
前記mTor阻害剤が、エベロリムス、シロリウムス(siroliumus)、及びテムシロリムス、又はそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形から選択される、請求項50に記載のキット。
【請求項56】
前記結晶多形が、前記化学療法剤と共包装される、請求項49に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月23日に出願された米国特許出願第63/055,754号の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
デシタビン(Dacogen(登録商標)又は5-アザ-2’-デオキシシチジンとしても知られる)は、DNAメチルトランスフェラーゼを阻害することによってDNA低メチル化を誘導するシチジンのピリミジンヌクレオシド類似体である。具体的には、デシタビンは、複製時にDNA鎖に組み込むことによって機能し、次いで、DNMT1などのDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)が、DNAに結合し、かつ娘鎖へのメチル化を複製するように係合されるとき、DNMTは、デシタビンに不可逆的に結合し、解放することができない。したがって、デシタビン作用は分裂依存性であり、細胞は薬剤が作用するために分裂しなければならない。したがって、体内の他のほとんどの細胞よりもはるかに速く分裂する細胞(例えば、がん細胞)は、デシタビンによってより深刻な影響を受ける。DNAの高メチル化がそれらの発症に重要である、骨髄異形成症候群(MDS)及び急性骨髄性白血病(AML)を含む白血病などのがんの治療に使用される。
【0003】
5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジン(「アザ-T-dCyd」)は、National Cancer Institute(NCI)による初期臨床評価に供されたデシタビンのチオ置換誘導体である。このDNMT1阻害剤は、最近、5-アザシチジン骨格を有する従来の化合物と比較して、細胞における高いDNMT除去及び阻害活性、シチジンデアミナーゼによる分解速度の減少、及び毒性副産物の比較的低い生成により注目を集めている。デシタビンと同様に、アザ-T-dCydは様々な形態及び結晶構造で調製され得る。
【0004】
米国特許第5,591,722号は、ウイルス性疾患を治療するのに有用な2’-デオキシ-4’-チオリボヌクレオシド及び中間体に関するものであり、5-アザシチジン化合物を包含する一般式を記載している。米国特許公開第2006/0014949号は、デシタビンの多形を報告している。Thottasseryら(Cancer Chemother Pharmacol,2014)は、アザ-T-dCydを報告している。臨床試験NCT04167917では、MDS及びAMLにおけるアザ-T-dCydの第I相試験が報告されており、これは2025年に完了する予定である。これらの進歩にもかかわらず、アザ-T-dCydの多形は、今までのところ、掴みどころのないままであった。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的に従い、本明細書に具体化され、広範に記載されるように、本発明は、一実施形態では、例えばMDS及び白血病などの、例えば、がんの治療に有用であり得る、アザ-T-dCydの結晶多形に関する。
【0006】
したがって、5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの結晶多形であって、結晶多形が、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する、結晶多形が開示される。
【0007】
また、5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの結晶多形であって、結晶多形が、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する、結晶多形も開示される。
【0008】
また、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形からなるアザ-T-dCyd化合物も開示される。
【0009】
また、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形からなるアザ-T-dCyd化合物も開示される。
【0010】
また、結晶多形が、形態A又は形態Fである、アザ-T-dCydの結晶多形も開示される。
【0011】
また、治療有効量の開示される結晶多形と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物も開示される。
【0012】
また、がんを治療することを必要とする対象におけるそれを治療する方法であって、対象に、有効量の開示される結晶多形を投与することを含み、それによって対象におけるがんを治療することを含む、方法も開示される。がんの例としては、骨髄異形成症候群及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
また、開示される結晶多形又は開示された組成物を作製する方法も開示される。
【0014】
また、開示される結晶多形を作製するための方法であって、アザ-T-dCydを、溶媒平衡化、蒸発結晶化、抗溶媒添加、熱サイクル結晶化、超音波処理、及び溶液中への蒸気拡散のうちの1つ以上に供することを含む、方法も開示される。
【0015】
また、開示された結晶多形と、(a)少なくとも1つの化学療法剤、(b)がんの治療に関連して組成物を投与するための説明書、及び(c)がんを治療するための説明書のうちの1つ以上と、を含む、キットも開示される。
【0016】
本発明の実施形態は、システムの法定クラスなどの特定の法定クラスで説明及び特許請求することができるが、これは単に便宜上のものであり、当業者は、本発明の各実施形態が任意の法定クラスで説明及び特許請求することができることを理解するであろう。別途明記されていない限り、本明細書に記載の任意の方法又は実施形態が、そのステップが特定の順序で実施されることを要求するものとして解釈されることは決して意図されない。したがって、方法の特許請求の範囲が、特許請求の範囲又は明細書において、ステップが特定の順序に限定されるべきであると特に記載されていない場合、いかなる点においても、順序が推論されることを意図するものではない。これは、ステップ又は操作フローの配置、文法的構成又は句読点に由来する明白な意味、又は本明細書に記載の実施形態の数若しくは種類に関する論理事項を含む、解釈のための任意の可能な非表現的根拠にも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書に記載の図面は、選択された実施形態の単なる例示的な目的のためのものであり、可能な実装態様全てではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0018】
図1】アザ-T-dCyd出発物質(SM:まだ特定の結晶化条件に供されていないアザ-T-dCyd)の代表的なHT-XRPD及びHR-XRPDパターンを示す。
図2】アザ-T-dCydの形態Aの代表的なシミュレーションされたXRPD及びHR-XRPDを示す。
図3】アザ-T-dCyd出発物質(SM)の代表的なTGMS分析を示す。
図4】アザ-T-dCyd出発物質(SM)の代表的なDSCトレースを示す。
図5】第2のサイクルDSCの後のアザ-T-dCydの形態Aの代表的なシミュレーションされたXRPD及びHT-XRPDを示す。
図6】アザ-T-dCyd出発物質(SM)のサイクルDSCを報告する。
図7A図7A及び図7Bは、アザ-T-dCyd出発物質(SM)のLCMSの代表的な結果を示す。具体的には、図7Aは、アザ-T-dCyd出発物質(SM)の代表的なLCクロマトグラムを示す。
図7B】液体クロマトグラフィーからのアザ-T-dCydの代表的なMSスペクトルを示す。
図8A図8A~Cは、水中で溶液を形成した後のアザ-T-dCyd出発物質(SM)のLCMSの代表的な結果を示す。具体的には、図8Aは、水中で製剤化されたアザ-T-dCydのLCクロマトグラムを示す。
図8B】3.8分で溶出した不純物のMSスペクトルを示す。
図8C】4.4分で溶出したアザ-T-dCydのMSスペクトルを示す。
図9】様々な溶液中のアザ-T-dCydの化学的安定性を示す代表的なデータを示す。
図10】様々な溶液中の経時的なアザ-T-dCydの化学的安定性を示す代表的なデータを示す。
図11】アザ-T-dCydの形態Aの代表的なXRPDパターンを示す。
図12】アザ-T-dCyd、及びアザ-T-dCyd出発物質(SM)の形態A、B、A+C1、A+C2、A+D1、及びA+D2の代表的なXRPDパターンを示す。
図13A図13A~Cは、形態Aの代表的な化学分析を示す。具体的には、図13Aは、形態AのTGMS分析を示す。
図13B】形態AのDSC分析を示す。
図13C】形態AのLCMS分析を示す。
図14】アザ-T-dCyd、及びアザ-T-dCyd出発物質(SM)の形態E、F、G1、G2、H、I、J、F+K、及びLの代表的なXRPDパターンを示す。
図15A図15A~Cは、形態Fの代表的な化学分析を示す。具体的には、図15Aは、形態FのTGMS分析を示す。
図15B】形態FのDSC分析を示す。
図15C】形態FのLCMS分析を示す。
図16】アザ-T-dCydの形態Fの代表的なXRPDパターンを示す。
図17】アザ-T-dCyd出発物質(SM)を雌のNOD-SCIDマウスに投与した場合の腫瘍サイズを表すインビボルシフェラーゼ活性データを示す。
図18】アザ-T-dCyd出発物質(SM)を雌のNOD-SCIDマウスに投与した場合の腫瘍サイズを表すインビボルシフェラーゼ活性データを示す。
図19】血液がん細胞(Mv4-11)をアザ-T-dCyd出発物質(SM)で処理した場合の半最大阻害濃度(IC50)を示す。
図20】pH1.2での形態A及び形態Bの溶解速度プロファイルを示す。
図21】pH5.0での形態A及び形態Bの溶解速度プロファイルを示す。
図22】pH6.5での形態A及び形態Bの溶解速度プロファイルを示す。
図23】K562細胞株を形態A又はSMで処理した場合のIC50値を示す。
図24】HL-60細胞株を形態A又はSMで処理した場合のIC50値を示す。
【0019】
本発明の更なる利点は、以下の説明に部分的に記載され、部分的には説明から明らかであるか、又は本発明の実施によって学ぶことができる。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘される要素及び組み合わせにより実現され、達せられるであろう。前述の概要及び以下の発明を実施するための形態の両方は、単に例示的及び説明的であり、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、以下の本発明の詳細な説明及びその中に含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解することができる。以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、適用、又は使用を限定することを意図するものではない。
【0021】
本発明の実施形態は、システムの法定クラスなどの特定の法定クラスで説明及び特許請求することができるが、これは単に便宜上のものであり、当業者は、本発明の各実施形態が任意の法定クラスで説明及び特許請求することができることを理解するであろう。別途明記されていない限り、本明細書に記載の任意の方法又は実施形態が、そのステップが特定の順序で実施されることを要求するものとして解釈されることは決して意図されない。したがって、方法の特許請求の範囲が、特許請求の範囲又は明細書において、ステップが特定の順序に限定されるべきであると特に記載されていない場合、いかなる点においても、順序が推論されることを意図するものではない。これは、ステップ又は操作フローの配置、文法的構成又は句読点に由来する明白な意味、又は本明細書に記載の実施形態の数若しくは種類に関する論理事項を含む、解釈のための任意の可能な非表現的根拠にも当てはまる。
【0022】
本出願全体をとおして、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、その全体が、本出願に関係する技術水準をより完全に説明するために参照により本出願に援用される。開示される参考文献はまた、参考文献に依る文章で論じられ、それらに含まれる材料について、個別にかつ具体的に参照により本明細書に援用される。本明細書におけるいかなるものも、本発明が先行発明によってそのような公開に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、本明細書で提供される公開日は実際の公開日とは異なる場合があり、これは独立して確認を必要とし得る。
【0023】
A.定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「官能基」、「アルキル」、又は「残基」への言及は、2つ以上のかかる官能基、アルキル、又は残基などの混合物を含む。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「含む」という用語は、「~からなる」及び「~から本質的になる」実施形態を含み得る。
【0025】
本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値まで、のように表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、そのある特定の値から、及び/又はその他の特定の値まで、を含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行詞の「約」を使用することによって、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されよう。更に、範囲の各終点は、他の終点と関連して、及び他の終点とは独立して、両方とも重要であることが理解されよう。本明細書においてはいくつかの値が開示され、各値は、その値自体に加えて、「約」その特定値として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されることも理解されたい。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14も開示される。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「約」及び「で、又は、約」という用語は、問題の量又は値が、およそ又はほぼ同じいくつかの他の値を示す値であり得ることを意味する。本明細書で使用される場合、概して、別途示されない限り又は推測されない限り、それは±10%の変動を示す名目上の値であると理解される。この用語は、類似の値が、特許請求の範囲に記載されている同等の結果又は効果を促進することを伝えることを意図している。すなわち、量、サイズ、処方、パラメータ、及び他の量及び特徴は、正確ではなく、正確である必要はないが、所望により、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、及び当業者に既知の他の要因を反映して、おおよそ及び/又はより大きく若しくはより小さくすることができることを理解されたい。概して、量、サイズ、処方、パラメータ又は他の量若しくは特性は、そのようであるべきと明示的に記載されているか否かにかかわらず、「約」又は「近似」である。定量的値の前に「約」が使用される場合、パラメータは、別途特に記載されていない限り、特定の定量的値自体も含むことを理解されたい。
【0027】
本明細書及び結論の特許請求の範囲における組成物中の特定の要素又は構成要素の重量部への言及は、要素又は構成要素と、重量部が表される組成物又は物品中の任意の他の要素又は構成要素との間の重量関係を示す。したがって、構成要素Xの2重量部及び構成要素Yの5重量部を含有する化合物において、X及びYは、2:5の重量比で存在し、追加の構成要素が化合物中に含有されるかどうかにかかわらず、かかる比率で存在する。
【0028】
構成要素の重量パーセント(重量%)は、別途特に記載されていない限り、その構成要素が含まれる製剤又は組成物の総重量に基づく。
【0029】
本明細書で使用される場合、「EC50」は、タンパク質、サブユニット、オルガネラ、リボ核タンパク質などを含む生物学的プロセス又はプロセスの構成要素の50%阻害に必要である物質(例えば、化合物又は薬物)の有効濃度を指すことが意図される。一実施形態では、EC50は、本明細書の他の場所で更に定義されるように、インビボでの50%阻害に必要な物質の濃度を指し得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」又は「任意選択で」という用語は、その後に記載される事象又は状況が生じ得るか、又は生じ得ないことを意味し、その説明は、当該事象又は状況が生じる場合及び生じない場合を含む。
【0031】
5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジン(NTX-301としても知られる)は、ヌクレオシドの糖部分上の環酸素が硫黄で置換されている修飾シチジンヌクレオシドを指す。アザ-T-dCydは、以下の構造を有する。
【化1】
【0032】
別途注記されていない限り、「アザ-T-dCyd」という用語は、化合物自体及びその薬学的に許容される塩も含む。
【0033】
アザ-T-dCydの結晶多形は、ヌクレオシドの様々な結晶構造を指す。いくつかの実施形態では、アザ-T-dCydの結晶多形は、実施例を含む本明細書に更に記載の形態A、形態B、形態C1、形態C2、形態D1、形態D2、形態E、形態F、形態G1、形態G2、形態H、形態1、又は形態Jを指す。特定の実施形態では、結晶多形は、形態A又は形態Fである。
【0034】
本明細書で使用される「に実質的に類似する」という用語は、本明細書に示されるものと同一ではないが、実験誤差の制限内にある主要なピークの大部分を共有する粉末X線回折パターンを指す。例えば、様々な態様では、実質的に類似する粉末X線回折パターンは、本明細書に開示される粉末X線回折パターンと、少なくとも3個のピーク、少なくとも4個のピーク、少なくとも5個のピーク、少なくとも6個のピーク、少なくとも7個、少なくとも8個のピーク、少なくとも9個のピーク、少なくとも10個のピーク、又は10個を超えるピークを共有し得る。
【0035】
「多形形態A」又は「形態A」という用語は、図11に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。一実施形態では、形態Aは、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを有するXRPDパターンを有する。別の実施形態では、形態Aは、7.7°±0.3°、13.02°±0.3°、15.34°±0.3°、16.78°±0.3°、18.62°±0.3°、19.42°±0.3°、21.94°±0.3°、22.90°±0.3°、25.70°±0.3°、26.64°±0.3°、27.86°±0.3°、28.63°±0.3°、29.45°±0.3°、31.42°±0.3°、32.70°±0.3°、34.72°±0.3°、35.97°±0.3°、及び37.46°±0.3°2θにピークを有するXRPDパターンを有する。特定の実施形態では、形態Aは、7.7°、13.02°、15.34°、16.78°、18.62°、19.42°、21.94°、22.90°、25.70°、27.86°、28.70°、31.42°、32.70°、及び37.46°2θにピークを有するXRPDパターンを有する。
【0036】
「多形形態B」又は「形態B」という用語は、図12に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0037】
「多形形態C1」又は「形態C1」という用語は、形態Aとの混合物中に現れ、図12に示すものと実質的に同じのX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0038】
「多形形態C2」又は「形態C2」という用語は、形態Aとの混合物中に現れ、図12に示すものと実質的に同じのX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0039】
「多形形態D1」又は「形態D1」という用語は、形態Aとの混合物中に現れ、図12に示すものと実質的に同じのX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0040】
「多形形態D2」又は「形態D2」という用語は、図12に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0041】
「多形形態E」又は「形態E」という用語は、図14に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0042】
「多形形態F」又は「形態F」という用語は、図16に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。一実施形態では、形態Fは、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを有するXRPDパターンを有する。一実施形態では、形態Fは、6.06°±0.3°、12.10°±0.3°、13.02°±0.3°、14.38°±0.3°、15.94°±0.3°、17.50°±0.3°、19.62°±0.3°、21.18°±0.3°、22.34°±0.3°、26.18°±0.3°、27.42°±0.3°、28.50°±0.3°、29.90°±0.3°、32.66°±0.3°、35.02°±0.3°、36.30°±0.3°、38.94°±0.3°、及び41.06°±0.3°2θにピークを有するXRPDパターンを有する。特定の実施形態では、形態Fは、6.06°、12.10°、13.02°、14.38°、15.94°、17.50°、19.62°、21.18°、22.34°、26.18°、27.42°、28.50°、29.90°、32.66°、35.02°、36.30°、38.94°、及び41.06°2θにピークを有するXRPDパターンを有する。
【0043】
「多形形態G1」又は「形態G1」という用語は、図14に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0044】
「多形形態G2」又は「形態G2」という用語は、図14に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0045】
「多形形態H」又は「形態H」という用語は、図14に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0046】
「多形形態I」又は「形態I」という用語は、図14に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0047】
「多形形態J」又は「形態J」という用語は、図14に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0048】
「多形形態K」又は「形態K」という用語は、図14に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0049】
「多形形態L」又は「形態L」という用語は、図14に示されるものと実質的に同じX線粉末回折パターンを示す、アザ-T-dCydの結晶形態を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類、又は両生類などの脊椎動物であり得る。したがって、本明細書に開示される方法の主題は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット、又はげっ歯類であり得る。この用語は、特定の年齢又は性別を示すものではない。したがって、成人及び新生児の対象、並びに雌雄を問わない胎児が包含されることが意図される。一実施形態では、対象は、哺乳動物である。更なる実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。一実施形態では、対象は、血液がんに罹患している。一実施形態では、対象は、アザ-T-dCyd組成物の投与を受けることができる動物である。
【0051】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、疾患、病態、又は障害を治癒、改善、安定化、又は予防することを意図した患者の医学的管理を指す。この用語は、積極的治療、すなわち、具体的に疾患、病態、又は障害の改善に向けた治療を含み、また、原因治療、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の原因の除去に向けた治療も含む。加えて、この用語は、緩和的治療、すなわち、疾患、病的な状態、又は障害の治癒ではなく、症状の緩和のために設計された治療、予防的治療、すなわち、関連する疾患、病的な状態、又は障害の発症を最小限に抑えるか、又は部分的若しくは完全に阻害することに向けられた治療、及び補助的治療、すなわち、関連する疾患、病的な状態、又は障害の改善に向けられた別の特定の療法を補充するために使用される治療を含む。様々な実施形態では、この用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)を含む対象の任意の治療を包含し、(i)疾患の素因があり得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患が発生するのを予防すること、(ii)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること、又は(iii)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退縮を引き起こすことを含む。一実施形態では、対象は、霊長類などの哺乳動物であり、更なる実施形態では、対象は、ヒトである。「対象」という用語はまた、飼育動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ミバエなど)を含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」又は「予防すること(preventing)」という用語は、特に事前の行為によって、何かが起こるのを妨げる、回避する、排除する、未然に防ぐ、阻止する、又は妨害することを指す。減少させる、阻害する、又は予防するが本明細書で使用される場合、具体的に別段の指示がない限り、他の2つの語の使用も明示的に開示されることを理解されたい。
【0053】
本明細書で使用される場合、「診断された」という用語は、当業者、例えば、医師による身体検査を受け、本明細書に開示される化合物、組成物、又は方法によって診断又は治療することができる状態を有することが見出されたことを意味する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「投与すること」及び「投与」という用語は、対象に医薬調製物を提供する任意の方法を指す。かかる方法は、当業者に周知であり、方法としては、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼科投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、頬側投与、並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、及び皮下投与などの注射剤を含む非経口投与が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、連続的又は間欠的であり得る。様々な実施形態では、調製物は、治療的に投与され得、すなわち、既存の疾患又は状態を治療するために投与され得る。更なる様々な実施形態では、調製物は、予防的に投与され得、すなわち、疾患又は状態の予防のために投与され得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「有効量」及び「有効な量」という用語は、所望の結果を達成するのに十分であるか、又は望ましくない状態に影響を及ぼすのに十分な量を指す。例えば、「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、治療効果を達成するのに十分なアザ-T-dCydの結晶多形の量を指す。任意の特定の患者への具体的な治療有効用量レベルは、治療される障害及び障害の重症度、使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全身の健康、性別及び食事;投与時間;投与経路;使用される特定の化合物の排泄率;治療期間;使用される特定の化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物、及び医学分野において周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投薬量を増加させることは、十分に当該技術分野の技術の範囲内である。所望であれば、有効な1日用量は、投与のために複数の用量に分割することができる。結果的に、単回用量組成物は、1日用量を構成するためにそのような量又はその約数を含有することができる。任意の禁忌が発生した場合、個々の医師によって投薬量が調整され得る。投薬量は、変動し得、1日又は数日間、毎日、1回以上の用量投与で投与され得る。所与のクラスの医薬品に対する適切な投薬量についての指針は、文献に見出すことができる。特定の実施形態では、治療有効量は、約30mg/m2~約70mg/m2である。別の実施形態では、治療有効量は、約35mg/m2~約45mg/m2、約45mg/m2~約55mg/m2、又は約55mg/m2~約66mg/m2である。更なる様々な実施形態では、製剤は、「予防的有効量」、すなわち、疾患又は状態の予防に有効な量で投与され得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「剤形」は、対象への投与に好適な媒体、担体、ビヒクル、又はデバイス中の薬理学的に活性な材料を意味する。剤形は、本発明の開示される化合物、開示される作製方法の生成物、又はその塩、溶媒和物、若しくは多形を、防腐剤、緩衝剤、生理食塩水、又はリン酸緩衝食塩水などの薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含み得る。剤形は、従来の医薬品製造及び配合技法を使用して作製され得る。剤形は、無機又は有機緩衝剤(例えば、リン酸、炭酸、酢酸、又はクエン酸のナトリウム又はカリウム塩)、並びにpH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウム又はカリウム、クエン酸又は酢酸の塩、アミノ酸及びそれらの塩)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、アルファ-トコフェロール)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9-10ノニルフェノール、デソキシコール酸ナトリウム)、溶液及び/又は低温/融解安定剤(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調整剤(例えば、塩又は糖)、抗菌剤(例えば、安息香酸、フェノール酸、ゲンタマイシン)、消泡剤(例えば、ポリジメチルシロゾン)、防腐剤(例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、EDTA)、高分子安定剤及び粘度調整剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)並びに共溶媒(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含み得る。注射用用途のために製剤化された剤形は、防腐剤とともに注射用滅菌生理食塩水中に懸濁させた、開示された化合物、開示された作製方法の生成物、又はその塩、溶媒和物、若しくは多形を有し得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、「キット」は、キットを構成する少なくとも2つの構成要素の集合を意味する。一緒に、構成要素は、所定の目的のための機能ユニットを構成する。個々のメンバー構成要素は、物理的に一緒に、又は別々に包装され得る。例えば、キットを使用するための説明書を含むキットは、他の個々のメンバー構成要素とともに説明書を物理的に含んでも、含まなくてもよい。代わりに、説明書は、紙形式、又はコンピュータ可読メモリデバイス上で供給され得るか、若しくはインターネットウェブサイトからダウンロードされ得る電子形式のいずれかで、又は記録されたプレゼンテーションとして、別個のメンバー構成要素として供給され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「説明書」は、キットに関する関連資料又は方法論を説明する文書を意味する。これらの資料には、以下、背景情報、構成要素のリスト及びその入手可能性の情報(購入情報など)、キットを使用するための簡単又は詳細なプロトコル、トラブルシューティング、参照、テクニカルサポート、及びその他の関連文書の任意の組み合わせが含まれ得る。説明書は、紙形式、又はコンピュータ可読メモリデバイス上で供給され得るか、若しくはインターネットウェブサイトからダウンロードされ得る電子形式のいずれかとして、又は記録されたプレゼンテーションとして、キットとともに、又は別個のメンバー構成要素として、供給され得る。説明書は、1つ又は複数の文書を含み得、将来の更新を含むことを意図する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、新生物及び異形成を含む。がんは、血液がん又は固形がんであり得る。「血液がん」という用語は、血液細胞の新生物及び異形成を含む。いくつかの実施形態では、血液がんは、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫からなる群から選択される。「固形がん」という用語は、組織又は器官の新生物及び異形成を含む。いくつかの実施形態では、がんは、胃がん、腎臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、乳がん、黒色腫、及び膵臓がんのうちの1つ以上であり得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「治療剤」という用語は、生物(ヒト又は非ヒト動物)に投与される場合、局所及び/又は全身作用によって所望の薬理学的、免疫原性、及び/又は生理学的効果を誘導する、任意の合成又は天然に生じる生物学的に活性な化合物又は物質の組成物を含む。したがって、この用語は、タンパク質、ペプチド、ホルモン、核酸、遺伝子構築物などの分子を含む、薬物、ワクチン、及びバイオ医薬品と伝統的にみなされる化合物又は化学物質を包含する。治療薬の例は、Merck Index(第14版)、Physicians’ Desk Reference(第64版)、及びThe Pharmacological Basis of Therapeutics(第12版)などの周知の参考文献に記載されており、これらには、薬剤;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患若しくは病気の治療、予防、診断、治癒若しくは緩和に使用される物質;身体の構造若しくは機能に影響を与える物質、又は生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性になるか、若しくはより活性になるプロドラッグが含まれるが、これらに限定されない。例えば、「治療剤」という用語には、アジュバント;抗生物質及び抗ウイルス剤などの抗感染剤;鎮痛剤及び鎮痛剤の組み合わせ、食欲不振薬、抗炎症剤、抗てんかん薬、局所及び全身麻酔薬、催眠薬、鎮静薬、抗精神病剤、神経弛緩剤、抗うつ薬、抗不安薬、拮抗薬、ニューロン遮断剤、抗コリン剤及び抗コリン作動性剤、抗ムスカリン剤及びムスカリン剤、抗アドレナリン薬、抗不整脈薬、降圧剤、ホルモン、及び栄養素、抗関節炎薬、抗喘息剤、抗けいれん薬(anticonvulsants)、抗ヒスタミン薬、抗嘔吐薬、抗悪性腫瘍薬、鎮痒薬、解熱薬;鎮痙薬(antispasmodics)、心臓血管製剤(カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬、ベータ作動薬、及び抗不整脈薬を含む)、降圧薬、利尿薬、血管拡張薬;中枢神経系刺激薬;咳及び風邪の製剤;充血除去薬;診断薬;ホルモン;骨成長刺激薬及び骨吸収阻害剤;免疫抑制薬;筋弛緩薬;精神刺激薬;鎮静剤;精神安定剤;タンパク質、ペプチド、及びその断片(天然に生じるもの、化学合成されたもの、又は組換え産生されたもののいずれか);並びに核酸分子(2つより多くのヌクレオチドのポリマー形態、二本鎖及び一本鎖分子の両方を含むリボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれか、遺伝子構築物、発現ベクター、アンチセンス分子など)、小分子(例えば、ドキソルビシン)、及び、例えば、タンパク質及び酵素などの他の生物学的に活性な巨大分子を含むがこれらに限定されない、主要な治療分野の全てにおける使用のための化合物又は組成物を含む。薬剤は、獣医学を含む医療、用途、及び植物などの農業、並びに他の領域において使用される生物学的に活性な薬剤であり得る。「治療剤」という用語にはまた、薬剤;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患又は病気の治療、予防、診断、治癒若しくは緩和のために使用される物質;又は身体の構造若しくは機能に影響を与える物質;又は所定の生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性になるか、又はより活性になるプロドラッグも含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」という用語は、抗がん特性を有する化合物及び組成物を指す。一実施形態では、化学療法剤は、アザ-T-dCydの結晶多形と組み合わされる。一実施形態では、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗物質剤、抗腫瘍性抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、及びmTOR阻害剤からなる群から選択される。特定の実施形態では、抗腫瘍性抗生物質剤は、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ペントスタチン、及びバルルビシン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。特定の実施形態では、代謝拮抗物質剤は、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、カペクチアビン(capectiabine)、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、ペメトレキセド、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、プララトレキサート、フロクスウリジン、メトトレキサート、及びチオグアニン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。特定の実施形態では、アルキル化剤は、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、テモゾロミド、チオテパ、ベンダムスチン、及びストレプトゾシン、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。特定の実施形態では、有糸分裂阻害剤は、イリノテカン、トポテカン、ルビテカン、カバジタキセルドセタキセル、パクリタキセル、エトプシド(etopside)、ビンクリスチン、エキサベピロン(exabepilone)、ビノレルビン、ビンブラスチン、及びテニポシド、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。特定の実施形態では、mTOR阻害剤は、エベロリムス、シロリムス、及びテムシロリムス、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0062】
「薬学的に許容される」という用語は、生物学的に又はその他で望ましくないものではない、すなわち、許容されないレベルの望ましくない生物学的影響を引き起こさないか、又は有害な様式で相互作用しない、物質を説明する。
【0063】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、親化合物(例えば、本明細書に開示される化合物)の構造に由来する構造を有し、その構造が本明細書に開示されるものと十分に類似しており、その類似性に基づいて、特許請求の範囲の化合物と同じ若しくは類似の活性及び有用性を示すか、又は前駆体として、特許請求の範囲の化合物と同じ若しくは類似の活性及び有用性を誘導することが当業者によって予想される化合物を指す。例示的な誘導体としては、塩、エステル、及びアミド、エステル又はアミドの塩、並びに親化合物のN-オキシドが挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「活性成分」という用語は、治療剤を指し、疾患又は障害の予防、診断、緩和、治療、又は治癒において使用される食品以外の任意の物質を含む。Stedman’s Medical Dictionary,25th Edition(1990)。物質を、口で摂取するか、筋肉、皮膚、血管、又は身体の空洞に注射するか、又は局所的に塗布することができる。Mosby’s Medical,Nursing & Allied Health Dictionary,5th Edition(1998)。薬剤は、以下のうちの少なくとも1つにおいて開示された任意の物質を含み得る。The Merck Index,14th Edition(2006)、Pei-Show Juo,Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,(1996)、U.S.Pharmacopeia Dictionary,2000 Edition、Physician’s Desk Reference,2010 Edition、Orange Book: Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations(April 2013)、及びApproved Animal & Veterinary Drug Products(Green Book)(January 2013)。「活性成分」という用語には、例えば、処方箋及び店頭での活性医薬成分(例えば、小分子、大員環、ペプチドなど)、ビタミン、栄養補助食品、サプリメント(例えば、食事、栄養、及びハーブ)、化粧品、及び生物学的製剤が含まれる。
【0065】
「薬学的に許容される担体」という用語は、滅菌水溶液又は非水溶液、分散液、懸濁液又はエマルション、及び使用直前での滅菌注射液又は分散液への再構成用の滅菌粉末を指す。好適な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられるが、これらに限定されない。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって維持され得る。これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤等のアジュバントも含有することができる。微生物の作用の予防は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の様々な抗菌剤及び抗真菌剤の包含によって保証することができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることも望ましい場合がある。注射可能な医薬品形態の長期吸収は、吸収を遅延させるモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の薬剤の包含によってもたらされ得る。注射用デポー形態は、ポリアクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)などの生分解性ポリマー中で薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比率及び用いられる特定の性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。デポー注射用製剤はまた、身体組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロエマルション中に薬物を封入することによっても調製される。注射用製剤は、例えば、使用直前に滅菌水又は他の滅菌注射用媒体に溶解又は分散され得る滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって、その細菌保持フィルターを介して濾過することによって滅菌することができる。好適な不活性担体としては、ラクトース等の糖を挙げることができる。特定の実施形態では、活性成分の粒子の少なくとも95重量%は、0.01~10マイクロメートルの範囲の有効粒径を有する。
【0066】
別途明記されていない限り、本明細書に記載の任意の方法が、そのステップが特定の順序で実施されることを要求するものとして解釈されることは決して意図されない。したがって、方法の特許請求の範囲が、特許請求の範囲又は明細書において、実際にそのステップに従うべき命令を列挙していないか、又はステップが特定の順序に限定されるべきであると別途特に記載されていない場合、いかなる点においても、順序が推論されることを意図するものではない。これは、ステップ又は操作フローの配置、文法的構成又は句読点に由来する明白な意味、及び本明細書に記載の実施形態の数又は種類に関する論理事項を含む、解釈のための任意の可能な非表現的根拠にも当てはまる。
【0067】
本発明の組成物を調製するために使用される構成要素、及び本明細書に開示される方法内で使用される組成物自体が開示される。これら及び他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、基などが開示される場合、これらの化合物の各様々な個々の及び集合的な組み合わせ及び並べ替えの具体的な参照は明示的に開示することはできないが、各々が本明細書で具体的に企図され、説明されることを理解されたい。例えば、特定の化合物が開示され、論じられ、化合物を含むいくつかの分子に対して行われ得るいくつかの修飾が論じられる場合、具体的にそうではないと指示されない限り、化合物のあらゆる組み合わせ及び順列、並びに可能な修飾が明確に企図される。したがって、分子A、B、及びCのクラスだけでなく、分子D、E、及びFのクラス、並びに組み合わせ分子の一例として、A-Dが開示される場合、各々が個別に列挙されていない場合でも、各々が個別にかつ集合的に企図され、すなわち、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、及びC-Fが開示されているとみなされる。同様に、これらの任意のサブセット又は組み合わせも開示される。よって、例えば、A-E、B-F、及びC-Eのサブグループは、開示されるとみなされるであろう。本概念は、本発明の組成物の作製及び使用方法におけるステップを含むがこれらに限定されない、本出願の全ての実施形態に適用される。したがって、実施され得る様々な追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップの各々は、本発明の方法の任意の特定の実施形態又は実施形態の組み合わせによって実施され得ることを理解されたい。
【0068】
本明細書に開示される組成物は、特定の機能を有することを理解されたい。本明細書では、開示された機能を実施するための特定の構造要件が開示され、開示された構造に関連する同じ機能を実施し得る様々な構造があり、これらの構造が典型的に同じ結果を達成するであろうことを理解されたい。
【0069】
B.結晶多形
一実施形態では、5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの結晶多形であって、結晶多形が、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する、結晶多形が開示される。更なる実施形態では、結晶多形が、図11に示されるX線粉末回折パターンと実質的に類似するか、又はそれと同じX線粉末回折パターンを有する。
【0070】
一実施形態では、5-アザ-4’-チオ-2’-デオキシシチジンの結晶多形であって、結晶多形が、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する、結晶多形が開示される。更なる実施形態では、結晶多形が、図16に示されるX線粉末回折パターンと実質的に類似するか、又はそれと同じX線粉末回折パターンを有する。
【0071】
一実施形態では、本開示は、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含むX線粉末回折パターンを有する結晶多形からなるアザ-T-dCyd化合物を提供する。更なる実施形態では、結晶多形が、図11に示されるX線粉末回折パターンと実質的に類似するか、又はそれと同じX線粉末回折パターンを有する。
【0072】
一実施形態では、本開示は、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含むX線粉末回折パターンを有する結晶多形からなるアザ-T-dCyd化合物を提供する。更なる実施形態では、結晶多形が、図16に示されるX線粉末回折パターンと実質的に類似するか、又はそれと同じX線粉末回折パターンを有する。
【0073】
様々な実施形態では、結晶多形は、薬学的に許容される担体とともに、医薬組成物中に存在する。
【0074】
C.結晶多形を作製する方法
一実施形態では、開示される結晶多形を作製するための方法であって、アザ-T-dCydを、溶媒平衡化、蒸発結晶化、抗溶媒添加、熱サイクル結晶化、超音波処理、及び溶液中への蒸気拡散のうちの1つ以上に供することを含む、方法が開示される。更なる実施形態では、結晶多形は、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する。更なる実施形態では、結晶多形は、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0075】
一実施形態では、方法は、溶媒平衡化、蒸発結晶化、抗溶媒添加、熱サイクル結晶化、超音波処理、及び溶液への蒸気拡散のうちの1つのみを含む。一実施形態では、方法は、溶媒平衡化、蒸発結晶化、抗溶媒添加、熱サイクル結晶化、超音波処理、及び溶液への蒸気拡散のうちの正確に2つを含む。一実施形態では、方法は、溶媒平衡化、蒸発結晶化、抗溶媒添加、熱サイクル結晶化、超音波処理、及び溶液への蒸気拡散のうちの2つより多くを含む。
【0076】
D.医薬組成物
本開示は、アザ-T-dCydの結晶多形を含む組成物を提供する。かかる組成物としては、治療有効量のアザ-T-dCydの結晶多形と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物が挙げられる。概して、全ての既知又は承認された量の結晶アザ-T-dCydを組成物中で使用し得る。一実施形態では、結晶アザ-T-dCydは、形態A又は形態Fであり、約30mg/m2~約70mg/m2の量で存在する。特定の実施形態では、アザ-T-dCydの結晶多形は、約35mg/m2~約45mg/m2、約45mg/m2~約55mg/m2、又は約55mg/m2~約66mg/m2の量で存在する。
【0077】
一実施形態では、有効量の:(a)約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形、又は(b)約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物が開示される。更なる実施形態では、結晶多形は、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する。なお更なる実施形態では、結晶多形は、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0078】
一実施形態では、有効量は、約35mg/m2~約70mg/m2、約35mg/m2~約65mg/m2、約35mg/m2~約55mg/m2、約35mg/m2~約45mg/m2、約40mg/m2~約70mg/m2、約50mg/m2~約70mg/m2、約60mg/m2~約70mg/m2、約40mg/m2~約65mg/m2、約45mg/m2~約60mg/m2、又は約50mg/m2~約55mg/m2のものである。
【0079】
一実施形態では、組成物は、化学療法剤を更に含む。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗物質剤、抗腫瘍性抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、及びmTOR阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
一実施形態では、組成物は、アルキル化剤を更に含む。アルキル化剤の例としては、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、テモゾロミド、チオテパ、ベンダムスチン、及びストレプトゾシン、又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
一実施形態では、組成物は、代謝拮抗物質剤を更に含む。代謝拮抗物質剤の例としては、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、カペクチアビン(capectiabine)、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、ペメトレキセド、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、プララトレキサート、フロクスウリジン、メトトレキサート、及びチオグアニン、又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
一実施形態では、組成物は、抗腫瘍性抗生物質剤を更に含む。抗腫瘍性抗生物質剤の例としては、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ペントスタチン、及びバルルビシン、又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
一実施形態では、組成物は、有糸分裂阻害剤を更に含む。有糸分裂阻害剤の例としては、イリノテカン、トポテカン、ルビテカン、カバジタキセルドセタキセル、パクリタキセル、エトプシド(etopside)、ビンクリスチン、エキサベピロン(exabepilone)、ビノレルビン、ビンブラスチン、及びテニポシド、又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
一実施形態では、組成物は、mTOR阻害剤を更に含む。mTOR阻害剤の例としては、エベロリムス、シロリムス、及びテムシロリムス、又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
一実施形態では、アザ-T-dCydの結晶多形を含む組成物は、全身又は局所投与のために製剤化される。経口、局所、静脈内、又は筋肉内投与のための製剤が企図される。特定の実施形態では、アザ-T-dCydの結晶多形は、経口投与のために製剤化される。
【0086】
一実施形態では、医薬組成物は、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形からなる活性成分を含む。
【0087】
一実施形態では、医薬組成物は、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形からなる活性成分を含む。
【0088】
一実施形態では、医薬組成物は、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形を含むが、アザ-T-dCydの他の結晶多形を含まない。
【0089】
一実施形態では、医薬組成物は、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形を含むが、アザ-T-dCydの他の結晶多形を含まない。
【0090】
特定の実施形態では、組成物は、任意の便利な医薬媒体を含む。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤等は、懸濁液、エリキシル剤及び溶液等の経口液体調製物を形成するために使用することができ、一方、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等の担体は、粉末、カプセル及び錠剤等の経口固体調製物を形成するために使用することができる。投与が容易であるため、錠剤及びカプセルが好ましい経口投与単位であり、それによって固体の薬学的担体が用いられる。任意選択で、錠剤は、標準の水性又は非水性技法によってコーティングされ得る。
【0091】
E.結晶多形及びそれを含有する組成物を使用する方法
本発明の結晶多形及び医薬組成物は、血液がん(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫)及び固形腫瘍(例えば、胃がん、腎臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、乳がん、黒色腫、及び膵臓がん)などのがんの治療又は制御に有用である。
【0092】
がんを治療又は制御するために、結晶多形及び結晶多形を含む医薬組成物が、それを必要とする対象、例えば、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類、又は両生類などの脊椎動物に投与される。対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット、又はげっ歯類であり得る。この用語は、特定の年齢又は性別を示すものではない。したがって、成人及び新生児の対象、並びに雌雄を問わない胎児が包含されることが意図される。対象は、好ましくはヒトなどの哺乳動物である。結晶多形又は組成物を投与する前に、対象は、例えば、血液がん又は固形腫瘍などのがんの治療が必要であると診断され得る。
【0093】
結晶多形又は組成物は、任意の方法に従って対象に投与され得る。かかる方法は、当業者に周知であり、方法としては、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼科投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、頬側投与、並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、及び皮下投与などの注射剤を含む非経口投与が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、連続的又は間欠的であり得る。調製物は、治療的に投与され得、すなわち、既存の疾患又は状態を治療するために投与され得る。製剤はまた、予防的に投与され得、すなわち、血液がん又は固形腫瘍などのがんの予防のために投与され得る。
【0094】
結晶多形の治療有効量又は投薬量は、広い制限内で変化し得る。かかる投薬量は、投与される特定の化合物、投与経路、治療される状態、及び治療される患者を含む、各特定の場合における個々の要件に対して調整される。概して、およそ70Kg以上の体重の成人ヒトへの経口又は非経口投与の場合、上限を超えてもよいが、約10mg~約10,000mg、好ましくは約200mg~約1,000mgの1日の投薬量が適切である必要がある。1日の投薬量は、単回用量として、又は分割用量で、又は連続注入として非経口投与のために、投与され得る。結果的に、単回用量組成物は、1日の用量を構成するために化合物又は組成物のかかる量又はその約数を含有し得る。任意の禁忌が発生した場合、個々の医師によって投薬量が調整され得る。投薬量は、変動し得、1日又は数日間、毎日、1回以上の用量投与で投与され得る。
【0095】
1.治療方法
本明細書に開示される結晶多形は、血液がん(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫)及び固形腫瘍(例えば、胃がん、腎臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、乳がん、黒色腫、及び膵臓がん)などのがんの治療又は制御に有用である。したがって、治療有効量の開示される結晶多形、又は開示される結晶多形を含む組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。更なる態様では、本方法は、がんを治療するための方法であり得る。
【0096】
a.がんの治療
本開示は、がんなどの疾患の治療のためのアザ-T-dCyd組成物を使用する様々な方法を提供する。一実施形態では、アザ-T-dCydの結晶多形は、血液がんを治療するために対象に投与され、対象はかかる治療を必要とする。様々な血液がんは、組成物によって治療され得、いくつかの実施形態では、血液がんは、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫からなる群から選択される。特定の実施形態では、治療有効量のアザ-T-dCydの結晶多形は、アルキル化剤、代謝拮抗物質剤、抗腫瘍性抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、又はmTOR阻害剤などの追加の化学療法剤とともに投与される。
【0097】
したがって、一実施形態では、がんの治療を必要とする対象におけるそれの治療方法であって、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形の有効量を対象に投与することを含む、方法が開示される。
【0098】
一実施形態では、がんの治療を必要とする対象におけるそれの治療方法であって、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形の有効量を対象に投与することを含む、方法が開示される。
【0099】
一実施形態では、がんの治療を必要とする対象におけるそれの治療方法であって、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形からなるアザ-T-dCyd化合物の有効量を対象に投与することを含む、方法が開示される。
【0100】
一実施形態では、がんの治療を必要とする対象におけるそれの治療方法であって、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶多形からなるアザ-T-dCyd化合物の有効量を対象に投与することを含む、方法が開示される。
【0101】
一実施形態では、がんは、血液がんである。血液がんの例としては、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
一実施形態では、がんは、固形腫瘍である。固形腫瘍の例としては、胃がん、腎臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、乳がん、黒色腫、及び膵臓がんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
一実施形態では、有効量は、治療有効量である。更なる実施形態では、有効量は、約35mg/m2~約70mg/m2、約35mg/m2~約65mg/m2、約35mg/m2~約55mg/m2、約35mg/m2~約45mg/m2、約40mg/m2~約70mg/m2、約50mg/m2~約70mg/m2、約60mg/m2~約70mg/m2、約40mg/m2~約65mg/m2、約45mg/m2~約60mg/m2、又は約50mg/m2~約55mg/m2のものである。
【0104】
一実施形態では、結晶多形は、医薬組成物中に存在する。
【0105】
一実施形態では、本方法は、化学療法剤を対象に投与することを更に含む。
【0106】
一実施形態では、有効量は、単回用量で投与される。更なる実施形態では、有効量は、複数の用量を介して投与される。
【0107】
一実施形態では、本方法は、血液がんの治療を必要とする対象を特定することを更に含む。更なる実施形態では、対象は、投与ステップの前に、がんの治療が必要であると診断されている。
【0108】
一実施形態では、投与は、反復投与である。更なる実施形態では、投与は、約4日~約6日、約4日~約5日、又は約5日~約6日の期間である。なお更なる実施形態では、投与は、約5日の期間である。
【0109】
一実施形態では、投与は、治療サイクルを介して行われる。更なる実施形態では、各治療サイクルは、有効量の化合物を約4日~約6日の期間投与することを含む。
【0110】
一実施形態では、投与は、複数の治療サイクル及び複数の休止期間を含む治療過程を介して行われる。更なる実施形態では、各治療サイクルは、有効量の化合物を約4日~約6日の期間投与することを含む。なお更なる実施形態では、各治療サイクルは、有効量の化合物を約5日の期間投与することを含む。更に別の実施形態では、各休止期間は、約1日~約10日の期間、化合物の投与を控えることを含む。
【0111】
一実施形態では、投与は、有効量の結晶多形を約4日~約6日の期間投与することを含む第1の治療サイクルと、約1日~約3日の期間、結晶多形の投与を控えることを含む第1の休止期間と、有効量の結晶多形を約4日~約6日の期間投与することを含む第2の治療サイクルと、少なくとも約8日の期間、結晶多形の投与を控えることを含む第2の休止期間と、を含む治療過程を介して行われる。更なる実施形態では、有効量は、単回用量で投与される。なお更なる実施形態では、有効量は、複数の用量を介して投与される。更に別の実施形態では、有効量は、いくつかの日に単回用量を介して、他の日に複数回用量を介して投与される。
【0112】
一実施形態では、投与は、有効量の結晶多形を約5日の期間投与することを含む第1の治療サイクルと、約2日の期間、結晶多形の投与を控えることを含む第1の休止期間と、有効量の結晶多形を約5日の期間投与することを含む第2の治療サイクルと、少なくとも約9日の期間、結晶多形の投与を控えることを含む第2の休止期間と、を含む治療過程を介して行われる。
【0113】
一実施形態では、対象は、血液がんを有すると診断され、診断は、アザ-T-dCydの結晶多形の投与前に行われ得る。一実施形態では、アザ-T-dCydの結晶多形は、単回用量で、又は複数回用量にわたって投与される。特定の実施形態では、アザ-T-dCydの結晶多形は、治療サイクルなどの反復投与にわたって投与される。特定の実施形態では、アザ-T-dCydは、約4~約6日の過程にわたって投与される。特定の実施形態では、アザ-T-dCydの結晶多形は、治療有効量の結晶多形を約4~約6日の過程にわたって投与することを含む第1の治療サイクルと、結晶多形が投与されない約1~約3日の第1の休止期間と、治療有効量の結晶多形を約4~約6日の過程にわたって投与することを含む第2の治療サイクルと、及び結晶多形が投与されない少なくとも約8日間の第2の休止期間と、を含む治療過程を介して投与される。なお更なる実施形態では、アザ-T-dCydの結晶多形は、治療有効量の結晶多形を約5日の過程にわたって投与することを含む第1の治療サイクルと、結晶多形が投与されない約2日の第1の休止期間と、治療有効量の結晶多形を約5日の過程にわたって投与することを含む第2の治療サイクルと、及び結晶多形が投与されない少なくとも約9日間の第2の休止期間と、を含む治療過程を介して投与される。
【0114】
2.化合物及び組成物の使用
一実施形態では、本発明は、開示される組成物の使用に関する。更なる実施形態では、使用は、対象における血液がんの治療のための薬剤の製造に関する。
【0115】
一実施形態では、使用は、薬剤としての使用のための開示される医薬組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0116】
一実施形態では、使用は、開示される医薬組成物を調製するためのプロセスに関し、薬学的に許容される担体は、治療有効量の化合物と密接に混合される。
【0117】
様々な実施形態では、使用は、対象における血液がんの治療に関する。一実施形態では、使用は、対象がヒトであることを特徴とする。一実施形態では、使用は、血液がんが、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、又は孤立性骨髄腫であることを特徴とする。
【0118】
更なる実施形態では、使用は、対象における血液がんの治療のための薬剤の製造に関する。一実施形態では、使用は、血液がんが、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、又は孤立性骨髄腫であることを特徴とする。
【0119】
3.薬剤の製造
一実施形態では、本発明は、血液がんを有するヒト対象における血液がんを治療するための薬剤の製造のための方法であって、治療有効量の開示される化合物を薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせることを含む、方法に関する。
【0120】
これらの用途に関して、本方法は、治療有効量の組成物のヒトへの投与を含む。ヒトに投与される用量は、本発明の文脈において、合理的な時間枠にわたってヒトにおける治療応答に影響を与えるのに十分である必要がある。当業者は、投薬量が、ヒトの状態及びヒトの体重を含む様々な要因に依存するであろうことを認識するであろう。
【0121】
典型的な治療において投与される本開示の組成物の総量は、1日の用量当たり、好ましくは、マウスの場合約10mg/kg~約1000mg/kg体重、ヒトの場合、約100mg/kg~約500mg/kg体重、より好ましくは約200mg/kg~約400mg/kgである。この総量は、典型的には、必ずしもそうではないが、約24ヶ月間、1日当たり約1回~1日当たり約3回の期間にわたって、好ましくは約12ヶ月間、1日当たり2回の期間にわたって、一連の小用量として投与される。
【0122】
用量の大きさはまた、投与の経路、タイミング、及び頻度、並びに組成物の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度、並びに所望の生理学的効果によっても決定されるであろう。様々な状態又は疾患状態、特に慢性状態又は疾患状態は、複数回の投与を伴う長期間の治療を必要とする可能性があることが、当業者には理解されるであろう。
【0123】
したがって、一実施形態では、本発明は、開示される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、若しくは多形を、薬学的に許容される担体若しくは希釈剤と組み合わせることを含む薬剤の製造に関する。
【0124】
4.キット
一実施形態では、有効量の開示される結晶多形と、(a)少なくとも1つの化学療法剤、(b)がんの治療に関連して組成物を投与するための説明書、及び(c)がんを治療するための説明書のうちの1つ以上と、を含むキットが開示される。更なる実施形態では、結晶多形は、約8°、約13°、約15°、約17°、約19°、約22°、約23°、約26°、約28°、約29°、約31°、約33°、及び約37°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する。なお更なる実施形態では、結晶多形は、約6°、約12°、約13°、約14°、約16°、約18°、約20°、約21°、約22°、約26°、約27°、約29°、約30°、約33°、約35°、約36°、約39°、及び約41°2θにピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【0125】
一実施形態では、薬剤は、化学療法剤である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗物質剤、抗腫瘍性抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、及びmTor阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
一実施形態では、化学療法剤は、アルキル化剤である。アルキル化剤の例としては、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、テモゾロミド、チオテパ、ベンダムスチン、及びストレプトゾシン、又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
一実施形態では、化学療法剤は、代謝拮抗物質剤である。代謝拮抗物質剤の例としては、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、ペメトレキセド、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、プララトレキサート、フロクスウリジン、メトトレキサート、及びチオグアニン、又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
一実施形態では、化学療法剤は、抗腫瘍性抗生物質剤である。抗腫瘍性抗生物質剤の例としては、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン(dactinomycin)、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ペントスタチン、及びバルルビシン、又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
一実施形態では、化学療法剤は、有糸分裂阻害剤である。有糸分裂阻害剤の例としては、イリノテカン、トポテカン、ルビテカン、カバジタキセル、ドセタキセル、パクリタキセル、エトプシド(etopside)、ビンクリスチン、イキサベピロン、ビノレルビン、ビンブラスチン、及びテニポシド、又はそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
一実施形態では、化学療法剤は、mTor阻害剤である。mTor阻害剤の例としては、エベロリムス、シロリウムス(siroliumus)、及びテムシロリムス、又はそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
様々な実施形態では、結晶多形及び薬剤は、共包装される。様々な更なる実施形態では、結晶多形及び薬剤は、共製剤化される。
【0132】
様々な更なる実施形態では、結晶多形及び薬剤は、順次投与される。様々な更なる実施形態では、結晶多形及び薬剤は、同時に投与される。
【0133】
様々な実施形態では、制御されていない細胞増殖の障害は、がんである。様々な更なる実施形態では、がんは、血液がんである。
【0134】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法の作製方法及び評価方法の完全な開示及び説明を提供するために示されるものであり、純粋に例示的であることを意図するものであって、本開示を限定するものではない。数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを保証するように努力がなされてはいるが、いくらかの誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は、重量部であり、温度は、℃にあるか、又は周囲温度であり、圧力は、大気圧又はその付近である。
【実施例
【0135】
1.調製方法
a.抗溶媒添加
抗溶媒結晶化実験を、10個の異なる溶媒を10個の抗溶媒と組み合わせて実施した。抗溶媒結晶化実験を、逆添加することによって実施し、選択した溶媒中のアザ-T-dCydの飽和に近い溶液の少量を20mLの抗溶媒に添加して、これを激しく攪拌した。
【0136】
沈殿が生じなかった試料を5℃で3日間置いて沈殿を誘導した。沈殿した固体を母液から単離し、グローブボックス(20%相対湿度(RH))で一晩乾燥させた後、及び真空下(10mbar)で一晩乾燥させた後、HT-XRPDによって分析した。全ての固体を加速劣化条件(25℃/60%相対湿度で2日間)に曝露し、HT-XRPDによって再分析した。
【0137】
b.蒸発結晶化
溶媒混合物からの蒸発結晶化実験では、結晶出発物質から新しい溶液を調製した。溶液をバイアル(キャップなし)に移し、グローブボックス条件(20%相対湿度/室温)に置いて、溶媒を3日間ゆっくり蒸発させ、続いて、全ての溶媒が蒸発するまで室温で真空(10mbar)下に置いた。NMP(実験ID ECP43及びECP44)での試料は、真空下50℃で更に乾燥させた。得られた固体をHT-XRPDによって分析した。続いて、固体を25℃/60%相対湿度で2日間(AAC)置き、XRPDによって再分析した。
【0138】
c.溶媒平衡化
溶媒平衡化実験を29個の溶媒中で実施した。約20mgのアザ-T-dCydに、薄い懸濁液が得られるまで、溶媒を少しずつで添加した。懸濁液を5℃で5日間、25℃で1日間連続攪拌しながら平衡化させた。
【0139】
平衡化時間(室温で1日、5℃で5日)後、固体を遠心分離によって分離した。固体の一部を収集し、96ウェルプレート上に採取し、グローブボックス(室温で20%の相対湿度)で一晩乾燥させた。残りの固体を真空下(室温及び10mbar)で一晩乾燥させ、次いで、96ウェルプレート上に採取した。全ての固体をHT-XRPDによって分析した。続いて、全ての固体を加速劣化条件(AAC、25℃/60%相対湿度)に2日間曝露し、HT-XRPDによって再分析した。
【0140】
d.超音波処理
超音波処理実験は、結晶アザ-T-dCydで開始した。約20mgのAPIを1.8mLのバイアル中に計量し、ペーストが得られるまで5~10μLの溶媒を添加した。ペーストを超音波浴(Fisher Scientific、FB15051)中で10分間室温で超音波処理した。固体を採取し、HT-XRPDによって分析し、真空下(10mbar/室温一晩)で乾燥させた後、再分析した。続いて、全ての固体を加速劣化条件(25℃/60%相対湿度)に2日間曝露し、HT-XRPDによって再分析した。
【0141】
e.熱サイクル結晶化
熱サイクル結晶化実験を、20個の有機溶媒及び溶媒混合物中で実施した。室温で薄い懸濁液が得られるまで、約25mgのアザ-T-dCydの少量の溶媒(混合物)に添加した。その後、混合物をCrystal16(商標)反応器に入れて、図16に示すような温度プロファイルに供した。試料を、10℃/hの加熱及び冷却速度により50℃に加熱及び5℃に冷却し、3サイクルの後、室温で24時間劣化させた。
【0142】
温度プロファイルの後、固体を遠心分離によって溶液から分離し、一部を室温でグローブボックス(20%相対湿度)で乾燥させ、一部を深い真空下(10mbar)で乾燥させた後、採取し、HT-XRPDによって分析した。液相も蒸発させ、回収した固体をHT-XRPDによって分析した。次いで、全ての固体を加速劣化条件(25℃/60%相対湿度で2日間)に曝露し、続いてHT-XRPD再分析を行った。
【0143】
f.蒸気拡散
溶液への蒸気拡散実験を室温で実施した。アザ-T-dCydの飽和に近い溶液を、1.8mLのガラスバイアル又は40mLのバイアルの溶媒中で調製した。飽和溶液を含有する開放バイアルを、2~5mLの抗溶媒を含有する閉鎖したより大きなバイアル中に置いた。試料を、1週間後に固体形成について確認した。固体を、グローブボックス(20%相対湿度)で乾燥した後、及び真空下(10mbar)で乾燥した後、HT-XRPDによって分析した。沈殿が生じなかった場合、溶媒を真空下で蒸発させ、得られた固体をHT-XRPDによって分析した。続いて、全ての固体を加速劣化条件(25℃/60%相対湿度で2日間)に曝露し、HT-XRPDによって再分析した。
【0144】
2.分析方法
a.HT-XRPD
XRPDパターンは、Ardena SSR T2ハイスループットXRPD設定を使用して得た。プレートを、強度及び幾何学的変動を補正したVÅNTEC-500ガス領域検出器を備えたBruker General Area Detector Diffraction System(GADDS)に取り付けた。測定精度(ピーク位置)の較正は、NIST SRM1976標準物(Corundum)を使用して行った。
【0145】
データ収集は、XRPDパターンの最も特徴的な部分である1.5°~41.5°の2Å領域で単色CuKα放射を使用して室温で行われた。各ウェルの回折パターンを、各フレームの露光時間が90秒の2つの2θ範囲(第1フレームでは1.5°≦2θ≦21.5°、第2フレームでは19.5°≦2θ≦41.5°)で収集した。XRPDパターンには、バックグラウンド減算又は曲線平滑化は適用されなかった。
【0146】
XRPD分析中に使用された担体材料は、X線に対して透明であり、バックグラウンドにわずかに寄与したに過ぎなかった。
【0147】
b.HR-XRPD
HR-XRPDデータを、室温で、ゲルマニウムモノクロメータを備えたCu Kα1放射(1.54056Å)を使用するD8アドバンス回折計で収集した。回折データを2θ範囲2~41.5°2θで収集した。固体状態LynxEye検出器での検出器スキャンを、5秒/ステップのスキャン速度でステップ当たり0.016°を使用して実施した。試料を、外径0.5mmの8mm長のガラスキャピラリー中で測定した。
【0148】
c.TGMS分析
結晶からの溶媒又は水の損失による質量損失を、TGAによって判定した。TGA/DSC3+STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH、Switzerland)での加熱中に試料重量を監視することにより、重量対温度曲線及び熱流サーモグラムが得られた。TGA/DSC3+は、インジウム及びアルミニウムで温度に対して較正した。試料(約2mg)を100μLのアルミニウムるつぼに計量し、密封した。密封にピンホールを開け、るつぼをTGA中で10℃/分の加熱速度で25~300℃に加熱した。乾燥N2ガスをパージに使用した。
【0149】
TGA試料から放出したガスを、Omnistar GSD 301 T2質量分析計(Pfeiffer Vacuum GmbH、Germany)によって分析した。このMSは、0~200amuの範囲の質量を分析する四重極質量分析計である。
【0150】
d.DSC分析
熱事象(すなわち、溶融、再結晶)は、熱流DSC3+STAReシステム(Mettler-Toledo GmbH、Switzerland)で記録されたDSCサーモグラムから得た。DSC3+は、インジウム(m.p.=156.6℃、δHf=28.45J/g)及び亜鉛(m.p.=419.6℃、δHf=107.5J/g)の小片で温度及びエンタルピーを較正した。試料(約2mg)を標準的な40μLのアルミニウムパンに密封し、ピンホールを開け、DSC中で10℃/分の加熱速度で25℃~300℃に加熱した。測定中にDSC装置をパージするために、50mL/分の流量で乾燥N2ガスを使用した。
【0151】
サイクルDSC実験を標準的な40μLのアルミニウムパン中で測定し、ピンホールを開け、DSC中で25℃から可変温度まで加熱し、次いで、25℃に冷却した。加熱及び冷却速度は10℃/分であった。測定中にDSC装置をパージするために、50mL/分の流量で乾燥N2ガスを使用した。その後、試料を回収し、HT-XRPDによって分析した。
【0152】
e.LCMS
LCMS実験を、ダイオードアレイUV検出器及びMSD XTシングルクワッド質量検出器を備えるAgilent1290シリーズ装置で行った。移動相A及びBは、それぞれ、水及びアセトニトリル中の10mMの酢酸アンモニウムである。カラムは、Waters XBridge HILIC(150x4.6mm、3.5μm、pn.186004441)であった。検出は、4nmの帯域幅、200~400nmのUVスペクトルで、244nmであった。ポジティブ走査モード100~800m/z、500ms走査時間で分光測定を行った。流量は、0.8mL/分であった。実行時間は、10分であった。注射体積は、40℃で5μLであり、オートサンプラー温度は8℃であった。
【0153】
3.実施例1:出発物質の特徴付け
およそ4.0gのアザ-T-dCydを調製し、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析/質量分析(TGMS)の分析、及び液体クロマトグラフィー/質量分析(LCMS)によって分析した。出発物質(SM)は、特定の結晶化条件にまだ供されていないアザ-T-dCydを表す。図1は、それぞれ上部パターン及び下部パターンにおける高スループットXRPD(HT-XRPD)及び高解像度XRPD(HR-XRPD)を示す。出発物質は、単結晶構造分析に好適な結晶を含有する。非中心対称性単斜晶P21空間群で結晶化され、形態Aと指定された出発物質。表1は、形態Aの関連する寸法を提供する。
【表1】

【0154】
出発物質のHR-XRPDパターンを単結晶形態AのシミュレーションされたパターンHR-XRPDパターンと比較し、図2に示す。形態Aは、7.7°、13.02°、15.34°、16.78°、18.62°、19.42°、21.94°、22.90°、25.70°、27.86°、28.70°、31.42°、32.70°、及び37.46°2θにピークを有する。この比較に基づいて、出発物質は、約70%の形態A及び約30%の他の結晶形態のアザ-T-dCydを含むと計算される。
【0155】
25~300℃(10℃/分)での出発物質のTGMS分析は、最も可能性の高い有機溶媒による100~170℃で11.7%の質量損失を示した(図3)。質量損失と同時に、熱流信号は2つの吸熱事象を示し、その間に放熱事象があった。溶融及び分解の開始による第3の吸熱事象は、195℃付近で観察された。
【0156】
25~300℃(10℃/分)での出発物質のDSC分析は、TGMS分析中に観察された熱流信号と一致し、141℃での発熱事象を伴う131℃及び162℃での2つの吸熱事象を示した。第3の吸熱事象は、非溶媒和無水相の溶融に関連する、196.4℃でのTピークで観察された(図4)。
【0157】
XRPD及び単結晶構造分析から、出発物質が結晶相の混合物からなることが見出された。熱事象の性質を更に調査するために、出発物質に対して2つのサイクルDSC実験を実施した。1つの試料を170℃に加熱し、室温に冷却した。得られた固体をXRPDによって分析し、形態Aのシミュレーションされたパターンと一致した(図5)。第2のサイクルDSC実験では、出発物質を170℃に加熱し、25℃に冷却し、次いで、300℃に加熱した(図6)。冷却中に熱事象は観察されず、第2の加熱サイクルでは194℃での吸熱融解事象のみが観察され、形態Aの融解温度が確認された。
【0158】
アザ-T-dCydの化学的純度を、LCMS分析によって評価した。分析により、99.8%の化学純度(面積%)であることが確認された(図7A及び図7B)。MSスペクトル(ポジティブ走査モード)は、種[2M+H]+に帰属し得る489.3のm/zを有するイオンと、種[M+H]+に帰属し得る245.1m/zでの低強度イオンとを示し、244.3g/molのAPIの分子量を確認した。
【0159】
アザ-T-dCydは、4.4分でカラムから溶出し、489.3のm/z[2M+H]+を有した(図8A及び図8B)。LCMS法の開発中、APIが水性媒体中に溶解した場合、経時的に不純物が現れた。形成された不純物は、クロマトグラム内で3.8分に見られ、263.2のm/z[M+18]+を有した(図8A及び図8C)。
【0160】
アザ-T-dCydの化学的安定性を判定した。アザ-T-dCydを1,4-ジオキサン、アセトニトリル(ACN)、イソプロパノール(IPA)、及びメチルエチルケトン中に調製した。各溶液を3つのバイアルに分割し、室温で24時間、50℃で1時間、又は80℃で1時間インキュベーションした。溶液を、インキュベーション時間開始時及びその後にHPLCによって分析した。
【0161】
結果を図9に図示する。T0では、APIの純度は、各溶媒中で約99%(面積%)であった。化合物は、アセトニトリル及び1,4-ジオキサン中、室温で24時間、及び高温で1時間安定したままであった(95%超の純度)。IPAでは、化合物は、80℃で加熱された溶液中で、又は24時間室温で保管された場合に顕著に分解された。メチルエチルケトンでは、50℃及び80℃で1時間後、並びに室温での24時間のインキュベーション後に顕著な分解が観察された。
【0162】
追加の安定性試験は、5℃で実施した。出発物質の懸濁液を、水、アセトニトリル、エタノール(EtOH)、及びイソプロパノール中に調製した。懸濁液及び水溶液の母液を、3日間にわたって一定間隔でHPLCによって分析した。
【0163】
結果を図10に図示する。アザ-T-dCydの純度を、時間に対して面積%でプロットする。データポイントは、同じ溶液からの単一の測定値から得た。エタノール及びIPA中のアザ-T-dCydは70時間安定したままであったが、アセトニトリル及び水中では、アザ-T-dCyd純度は、経時的にそれぞれ84%及び78%に減少した。
【0164】
懸濁液からの固相もまた、72時間後に純度について評価した。4つの溶媒から回収された固体は、約99%(面積%)の純度を有した。表2を参照されたい。したがって、アザ-T-dCydは、5℃で70時間インキュベーションした後、固相で化学的に安定しているようであった。
【表2】

【0165】
4.実施例2:非晶質材料の生成
アザ-T-dCydの凍結乾燥溶液により、多形スクリーンのための出発物質から非晶質材料を製造する試みを行った。凍結乾燥実験のための有機溶媒中のアザ-T-dCyd溶液を得るために、アザ-T-dCydを水、水/1,4-ジオキサン(50/50)、水/THF(50/50)、及び水/tert-ブチルアルコール(50/50%(v/v))に添加した。アザ-T-dCyd溶液を凍結乾燥することにより、不純物を含有する低い結晶の材料が得られた。
【0166】
5.実施例3:溶解性研究
アザ-T-dCydの熱力学的溶解度を、振盪フラスコ法に従って判定した。結晶アザ-T-dCydの懸濁液を25個の純粋な溶媒中で調製した。薄い懸濁液が得られるまで、少量の溶媒をアザ-T-dCydに添加した。続いて、試料を、24時間連続攪拌下で、室温で平衡化した。平衡化後、少量の母液を濾過し、HPLCによって分析した。溶質の濃度を、アザ-T-dCydの較正曲線に対して決定した。室温でのアザ-T-dCydの溶解度値を、米国薬局方クラス分け(USP29)に従って表3に示す。アザ-T-dCydは、DMF及びDMAなどの高沸点溶媒中で可溶性であった。概して、アザ-T-dCydは、極性溶媒中でわずかに又は非常にわずかに可溶性であり、非極性溶媒中では実質的に不溶性であった。
【表3】

【0167】
6.実施例4:多形スクリーン
6つの異なる結晶化技法を、様々な純粋な有機溶媒及び溶媒混合物と組み合わせることにより、多形スクリーンを行った。溶液中のアザ-T-dCydの熱安定性が乏しく、水及びケトン中のアザ-T-dCydの安定性が限定されていることを考慮して、スクリーニング実験の条件を以下のように選択した。(1)結晶出発物質で実験を開始し、(2)化合物を限られた時間(5日未満)溶液中にとどめ、(3)高温を避け(50℃未満)、(4)固体のアザ-T-dCydを、可能な限り水分の吸収を避けるために、乾燥条件(相対湿度約20%)下でグローブボックス内で取り扱い、(5)水を避け、ケトンの使用を制限し、かつ(6)得られた固体の物理的安定性を評価するための穏やかな応力条件。
【0168】
以下の結晶化技法を適用した。
【0169】
溶媒平衡化実験。溶媒平衡化実験を、2つの温度、すなわち室温で1日、5℃で5日間実施した。アザ-T-dCydの懸濁液を異なる溶媒中の結晶出発物質で調製し、平衡時間が完了すると、固体を母液から分離した。
【0170】
蒸発結晶化実験。室温で実施した溶媒平衡化実験及び溶媒混合物から回収した濾過された母液を使用して、蒸発結晶化実験を設定した。溶媒を周囲条件でゆっくりと蒸発させ、続いて50℃で真空下(10mbar)で更に乾燥させた。
【0171】
抗溶媒実験。抗溶媒実験は、逆添加による10個の溶媒及び抗溶媒の組み合わせを使用して実施し、20mLの抗溶媒に、少量の高濃度溶液のアザ-T-dCydを添加した(1ステップ)。
【0172】
熱サイクル実験。室温で異なる溶媒及び溶媒混合物中にアザ-T-dCyd懸濁液を調製することによって、熱サイクル実験を実施した。得られた懸濁液を5~50℃の温度プロファイルに供した。
【0173】
超音波処理実験。超音波処理実験は、少量の溶媒の存在下で結晶出発物質を超音波処理することによって実施した。
【0174】
溶液への蒸気拡散実験。溶液への蒸気拡散実験を、抗溶媒結晶化の遅い方法として実施した。飽和アザ-T-dCyd溶液を室温で1週間、抗溶媒の蒸気に曝露した。
【0175】
得られた全ての固体を、室温及び20%相対湿度でグローブボックス内で一晩乾燥した後、及び室温で真空下(10mbar)で一晩乾燥した後、HT-XRPDによって分析した。母液を回収した場合、母液(ML)を蒸発させ、回収した固形物をHT-XRPDによって分析した。続いて、全ての固体を加速老化条件(25℃/60%相対湿度)に2日間曝露し、HT-XRPDによって再分析した。
【0176】
形態Aは、スクリーニング実験から回収された最も豊富な結晶相であった。この形態は、全ての結晶化方法、及び多種多様な溶媒及び溶媒混合物中から見出された。溶媒平衡化実験から、形態Aは、アザ-T-dCydがわずかに可溶性又は非常にわずかに可溶性である溶媒から純粋な相として得られたことが観察された。
【0177】
いくつかの固体において、形態AのXRPDパターンに加えて、受け取った出発物質中で既に観察されたピークの存在が検出され、それは上述した。受け取ったアザ-T-dCydのバッチは、70%の形態A及び30%の他の結晶相を含有した。30%の他の相の存在は、16.0°、17.6°、24.8°、26.3°、及び34.1°2θのXRPDパターンに現れるピークによって最も明確に強調された。多形スクリーン実験から回収した固体の評価により、かかる不純物ピークの割り当て及びクラス分けを試みた。出発物質、形態A、形態B、形態A+C1、形態A+C2、形態A+D1、及び形態A+D2のXRPDパターンの概要を図11に示す。
【0178】
26.3°2θでのピークは、形態Bに帰属した。16.0°2θで観察されたピークは、形態C1を表し、16.0及び17.6°2θでのピークは、形態C2に帰属した。24.8°2θで観察されたピークは形態D1に帰属し、24.8及び34.1°2θでのピークは形態D2に帰属した。この割り当てに基づいて、いくつかの固体は形態A+D1/D2、A+C1/C2又はA+B+D2としてクラス分けされた。
【0179】
室温及び5℃の両方でDMA及びDMF中での溶媒平衡化により、また、DMSO/2-エチル-1-ヘキサノール(50/50)中での熱サイクル実験から、形態Bを純粋な相として得た。形態Bは物理的に不安定であり、25℃、60%相対湿度で保管した後、形態Aに変換された。
【0180】
クラスC及びDは、純粋な結晶相として観察されたことはなく、常に形態Aと混合されていた。ほとんどの場合、これらの混合物は、25℃、60%相対湿度で保管した後、形態Aに変換された。
【0181】
溶液ベースの結晶化方法から新規の形態が見出されたが、形態Aの種子は存在しなかった。これらの新規形態は、形態E、F、G1、G2、H、I、J、Kとしてクラス分けされた。形態Eは、DMA/クロロホルム中の抗溶媒添加又はDMA/TBME(80/20)からの蒸発結晶化から得た。形態Eは、25℃、60%相対湿度で保管した後、形態Aに変換する。
【0182】
形態Fは、様々な溶媒中での蒸気拡散又は蒸発結晶化から得た。F型は、物理的に安定していた。形態Fのピークは、6.06°、12.10°、13.02°、14.38°、15.94°、17.50°、19.62°、21.18°、22.34°、26.18°、27.42°、28.50°、29.90°、32.66°、35.02°、36.30°、38.94°、及び41.06°2θである。
【0183】
形態G1及びG2は、類似のXRPDパターンを有し、いくつかのピークは2つの形態間でシフトされる。形態G1は、抗溶媒添加又は超音波処理から得た。形態G2は、DMA/EtOHでの蒸発結晶化から得た。形態G1及び形態G2の両方は、25℃、60%相対湿度で保管した後、形態Aに変換される。
【0184】
形態Hは、いくつかの溶媒混合物中での蒸発結晶化から得た。この形態は、不安定である。NMPから得られた場合、形態Hは、形態Fに変換された。他の溶媒から得られた場合、形態Hは、形態Aに変換された。
【0185】
形態Iは、DMSO/IPAからの蒸発結晶化から得た。形態Iは、25℃、60%相対湿度で保管した後、形態Aに変換する。
【0186】
形態Jは、溶媒としてDMF、及び抗溶媒としてTHFを用いた溶液中への蒸気拡散から得た。形態Jは、25℃、60%相対湿度で保管した後、形態Aに変換する。
【0187】
DMFからの蒸発結晶化後、形態Fとの混合物中で形態Kを観察した。形態Kは、25℃、60%相対湿度で保管した後、形態Fに変換した。
【0188】
形態Lは、25℃及び65%相対湿度で保管した後に固体中で観察された。
【0189】
これらの新規形態の各々についてのXRPDパターンを図12に示す。
【0190】
7.実施例5:アザ-T-DCYDの新規形態の特徴付け
スクリーンで同定された各固有の形態を、TGMS及びLCMSによって更に特徴付けた。形態A及びFは無水であるようだが、他の形態は溶媒和されていた。表4は、アザ-T-dCydの記載された形態の結晶化条件を要約する(AACは、25℃、60%相対湿度での保管を示す)。表5は、様々なアザ-T-dCyd形態の特性を要約したものである(AACは、25℃、60%相対湿度での保管を示す)。
【表4】


【表5】

【0191】
TFE中のRTでの溶媒平衡化実験から得られた形態Aを分析的特徴付けに使用した。TGMS結果は、温度範囲30~190℃における残留溶媒の約0.7%の放出を示した(図12A)。溶融及び分解による吸熱事象が、DSCトレースにおいて205℃で観察された(図12B)。LCMS分析により、100%の純度(面積%)で形態Aの完全性が確認された(図12C)。
【0192】
DMF/アセトニトリル(80/20、v/v)を使用した蒸発結晶化実験から得られた形態Fを特徴付けに使用した。TGMSの結果は、30~140℃で1.1%の小さな損失を示したが、これは残留溶媒によるものである可能性が最も高い(図15A)。DSCトレースは、融解及び分解による170℃付近の1つの吸熱事象を示した(図15B)。LCMS分析により、100%の純度(面積%)でAPIの完全性が確認された(図15C)。
【0193】
形態Aは、形態Fよりも高い融解温度を有し、熱力学的により安定な形態とみなすことができる。形態A及び形態Fは両方とも無水である。
【0194】
形態B、C2、D2、E、G1、G2、H、I、J、及びKは各々溶媒和され、25℃、60%相対湿度で2日間保存された場合、形態Aに変換される。
【0195】
室温でのDMAにおける溶媒平衡化実験から得られた形態Bを更に特徴付ける。TGMSの結果は、30~170℃で25.0%の質量損失を伴う加熱時に漸進的な質量損失を示した。加熱時での漸進的な質量損失のため、どの温度で分解が開始されるかは不明である。形態Bは、異なる溶媒で形成され得る非化学量論的溶媒和物であり得る。LCMS分析は、97.3%のアザ-T-dCydの固体の純度及び2.7%の不純物の存在を示した(面積%)。
【0196】
形態C2は、他の形態との混合物中のXRPDパターンにおいて観察された2つの追加のピークを表した。TGMS分析は、30~160℃の温度範囲で0.7%の質量損失を示した。熱流シグナルは、形態Aの融解及び分解に関連する可能性がある、190℃付近の1つの吸熱事象のみを示した。形態Aとの混合物において、形態C2はトレース中にのみ存在したため、形態C2に関する調査は不確定であり、したがって、この形態の性質は不明のままである。しかしながら、固体試料全体の化学純度が100%(面積%)であったため、アザ-T-dCydの真の(疑似)多形であるように思われる。
【0197】
形態D2は、形態Aとの混合物中のXRPDパターンにおいて観察された2つの追加のピークを表した。形態A+D2のTGMS分析は、形態D2が溶媒和形態である可能性が最も高いことを示した。90~170℃で5.1%の質量損失が観察された。結果は、放出された溶媒について不確定であった。形態の混合物に対するLCMS分析により、100%の化学純度(面積%)を有するアザ-T-dCydの完全性が確認された。
【0198】
DMAでの蒸発結晶化実験から得られた形態Eを、TGMS及びLCMSによって更に分析した。TGMSの結果は、1モル当量の溶媒に相当するDMAの25.8%の質量損失を示した。溶媒を90~160℃で段階的に放出し、形態Eがモノ-DMA溶媒和物であることを示唆した。脱溶媒化後、形態Aの溶融に対応する可能性が最も高い200℃での吸熱事象を記録した。化合物の完全性は、LCMS分析によって確認された。
【0199】
クラスGは、溶媒和物の等構造クラスである。形態G1及びG2を、TGMS及びLCMSによって更に特徴付けた。LCMS分析により、化合物の完全性が確認された(100%の面積%)。NMP及びシクロヘキサンを使用した抗溶媒添加実験から得られた形態G1を特徴付けに使用した。TGMS結果は、段階的に90~160℃で27.5%の質量損失を示した。27.5%の質量損失は、アザ-T-dCyd分子当たり約1分子のNMPに対応し、したがって、形態G1は、モノ-NMP溶媒和物である可能性がある。DSCシグナルは、溶媒損失による110及び150℃付近の2つの吸熱事象、並びに形態Aの溶融に対応する可能性がある200℃での第3の吸熱事象を記録した。形態G2は、DMA/エタノール80/20(v/v)からの蒸発結晶化によって得た。TGMSによって観察された70~120℃での14.6%の質量損失は、0.5モル当量のDMAに対応した。これは、形態G2がヘミDMA溶媒和物である可能性があることを示唆した。DSCシグナルでは、溶媒損失による80℃及び90℃付近での2つの吸熱事象が観察され、溶融及び分解による195℃付近での第3の吸熱事象が観察された。
【0200】
NMP/THF(80/20、v/v)からの蒸発結晶化から得られた形態Hを、形態Hの特徴付けに使用した。TGMS分析によって観察された漸進的な質量損失は、30~180℃で15.3%であり、NMPの約0.5モル当量に対応する。同時に、130℃付近で広範の吸熱事象が観察された。形態Hは、種々の溶媒を使用する実験において観察されたため、結晶構造に種々の溶媒分子を組み込むことができる非化学量論的溶媒和物である可能性が最も高い。DSCトレースにおいて分解による約220℃で第2の広範な吸熱事象が観察された。TGMSデータからは、溶媒損失がどこで終了し、熱分解が始まったのかは不明であり、事象は部分的に重複している可能性がある。乾燥した試料を得るために、固体を50℃で24時間真空下で乾燥させる必要があった。LCMSデータは、固体が82%の純度(面積%)を有することを示したため、これは純度に影響を及ぼした可能性がある。
【0201】
形態Iは、DMSO/IPA(80/20、v/v)からの蒸発結晶化によって得た。TGMSデータは、30~170℃で14.7%の漸進的な質量損失を示した。14.7%の質量損失は、約0.5モル当量のDMSOに対応する。形態Iは、ヘミDMSO溶媒和物であり得る。DSCトレースは、質量損失による70℃及び110℃での2つの広範な吸熱事象、並びに融解及び分解プロセスによる190℃付近での第3の吸熱事象を示した。
【0202】
DMF及びTHFを使用する溶液中への蒸気拡散によって沈殿させた形態Jを更に特徴付けた。TGMSデータは、120~170℃で段階的にTHFの7.6%の質量損失を示した。質量損失は、約0.3モル当量のTHFに対応し、したがって、形態Jは、非化学量論的溶媒和物である可能性が最も高い。DSCトレースは、溶媒損失による120℃及び150℃での2つの吸熱事象を記録し、第3の吸熱事象は、形態Aの溶融/分解事象と一致する200℃で記録した。
【0203】
形態Kを形態Fとの混合物中で一度観察し、DMF溶液からの蒸発によって得た。混合物を更に特徴付けた。TGMS分析は、おそらくDMFの損失による、30~160℃で6.3%の質量損失を示した。質量損失は、110℃付近の小さな吸熱事象を伴った。180℃及び195℃で2つの大きな吸熱事象が観察された。195℃での吸熱は、形態Aの融解及び分解による可能性がある。形態Kは、形態F(非溶媒和形態)との混合物中にあったため、形態Kは、溶媒和形態である可能性が最も高い。
【0204】
形態Lは、25℃、60%相対湿度の保管後にのみ観察され、非常に低い収率の貧弱な結晶性固体であった。TGMS分析では、30~170℃で2.8%の質量損失が観察され、続いて分解が観察された。DSCトレースに熱事象がないのは、分析に使用された試料の量が少ないことによる可能性がある。質量損失が結晶構造に閉じ込められた溶媒によるものなのか、それとも残留溶媒によるものなのかは不明である。更なる特徴付けは実施できず、したがって、形態Lの性質は依然として不明である。
【0205】
アセトニトリル中のアザ-T-dCyd溶液から単結晶を成長させる試みから得られた結晶は、アセトニトリル溶媒和物であるようだった。この相は、スクリーニング実験のうちのいずれにおいても観察されなかった。溶媒和物は、セル単位寸法、a=9.2948(15)、b=7.3509(9)、c=10.2312(15)Å、β=107.661(2)°、V=666.10(17)Å3、Z=2で、単斜晶P21空間群で結晶化し、密度は1.423g/cm3である。単結晶のみが形成されたため(非常に低い収率)、この形態に対する更なる特性付けは実施されず、物理的安定性も調査されていない。
【0206】
8.実施例6:アザ-T-DCYDの薬物動態特性
アザ-T-dCyd(出発物質、SM、特定の結晶化条件をまだ供されていないアザ-T-dCyd)の薬物動態特性を以下のように研究した。
【0207】
アザ-T-dCyd出発物質(SM)を、4つの群に分割する6匹の雌NOD-SCIDマウスに投与した。群1は、ビヒクル対照群であった。第2群では、2.0mg/kgのアザ-T-dCyd出発物質(SM)を1日1回投与し、第3群では、1.0mg/kgのアザ-T-dCyd出発物質(SM)を1日2回投与した。群2及び3では、上記量のアザ-T-dCyd出発物質(SM)を5日間投与し、続いて休止期間として2日間設け、更に5日間再投与し、続いて別の休止期間として9日間設けた。このサイクルを繰り返した。第4群では、1日1回、5日間、1.0mg/kgのアザ-T-dCyd出発物質(SM)を投与し、続いて休止期間として2日間設け、このサイクルを繰り返した。マウスにおける腫瘍サイズを蛍光剤を使用して測定し、図17に示すとおりの結果を得た。
【0208】
図17に示すように、腫瘍サイズは、群1(ビヒクル対照群では増加した。また、群2で腫瘍サイズの増加が最も大きく抑制されたことが確認された。対照的に、群3ではSMのAUCは群2のAUCと同じであろうと予想されたが、投与の40日後に腫瘍サイズが急激に増加したことが観察された。上記から、アザ-T-dCydはAUC依存性ではなくCmax依存性であることが見出された。
【0209】
加えて、43日目の結果を示す図18に示すように、群2の腫瘍サイズ(2.0mg/kg、1日1回)は、群1(1.0mg/kg、1日2回)よりも有意に小さかった。
【0210】
更に、血液がん細胞(Mv4-11)をアザ-T-dCyd出発物質(SM)で処理した後、1時間、2時間、及び4時間で半最大阻害濃度(IC50)を測定した。その結果を図19に示す。1時間での測定されたIC50は約160nMであり、したがって、2時間でのIC50は80nMであると予想され、4時間でのIC50は20nMであると予想された。しかしながら、2時間での測定IC50は、約120nMであり、これは、80nMの予想された値よりもはるかに高かった。加えて、4時間での測定IC50は、約80nMであり、これは、20nMの予想された値よりもはるかに高かった。したがって、化合物の細胞への曝露時間が増加するにつれて、アザ-T-dCyd出発物質(SM)の効率が大幅に減少することが確認された。これは、短い期間でより多くの量のアザ-T-dCyd出発物質(SM)を曝露させることが、効率的な治療を提供することを示唆する。
【0211】
したがって、上記のデータは、本開示の形態A又は形態Fなどの大きな溶解プロファイルを有する結晶多形が、アザ-T-dCyd出発物質(SM)及び劣る溶解プロファイルを有する他の結晶多形よりも利点を有することを示唆している。更に、同じ理由で、上記のデータは、本開示の形態A又は形態Fなどの結晶多形が、アザ-T-dCyd出発物質(SM)又は他の結晶多形よりも改善されたPKプロファイルを示すことを示唆する。
【0212】
9.実施例7:様々なPH点での形態A及び形態Bの溶解速度プロファイル
pH1.2、pH6.5及びpH5.0における形態A及び形態Bの溶解速度を測定し、表6及び図20~22に示した。
【表6】

【0213】
表6及び図20~22に示すように、pH1.2(胃及び大腸のpH条件)では、形態A及び形態Fに同様の溶解速度が示されたが、一方で、形態Aは形態Fと比較してより一貫した溶解速度プロファイルを示した。pH6.5及びpH5(虫垂及び小腸のpH条件)では、形態Fは形態Aよりも高い溶解速度を示した。
【0214】
上記は、形態Aが、約pH1.2(例えば、胃又は大腸)で薬物の活性成分を放出することを標的とする様々な薬物形態で調製され得ることを示唆している。加えて、上記は、形態Fが、約pH5.0~6.5(例えば、小腸)で薬物の活性成分を放出することを標的とする様々な薬物形態で調製され得ることを示唆している。
【0215】
10.実施例8:アザ-T-DCYD出発物質、形態A及び形態Fの薬物動態の比較
アザ-T-dCyd(出発物質、SM、特定の結晶化条件をまだ供されていないアザ-T-dCyd)、形態A及び形態Fの薬物動態特性を以下のように研究した。
【0216】
アザ-T-dCyd出発物質(SM)、形態A、及び形態Fの各々を、各々が8:92(w/w)で微結晶セルロースと混合されたカプセルの形態で調製し、2mg/kgのSM、形態A、又は形態Fでラットに投与され得る。SMカプセル、形態Aカプセル、及び形態Fカプセルの各々を、2匹の雄SDラット(すなわち、合計6匹の雄SDラット)に2mg/kgの用量で投与した。表7~9に示すように、試験したSDラット中の各SM、形態A、及び形態Fの血漿濃度を、カプセルの投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、及び24時間で測定した。
【表7】


【表8】


【表9】

【0217】
加えて、以下の表10~12に示すように、薬物動態パラメータを得た。
【表10】


【表11】


【表12】

【0218】
上に示されるように、形態A及び形態Fの両方は、SMと比較して、おろし金Cmax値を示した。特に、形態Aは、SMよりも約1.3倍高いCmax値を示し、形態Fは、SMよりも約1.4倍高いCmax値を示した。加えて、形態A及び形態Bの両方は、SMよりも約30%高いAUC値を示した。
【0219】
11.実施例9:アザ-T-DCYD出発物質及び形態Aの半最大阻害濃度(IC50)の比較
K562及びHL-60細胞株を培養し、37℃、95%空気、及び5%CO2でRPMI(10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン)培地中で維持した。K562及びHL-60細胞株を、各々3000細胞/ウェル(90μl)の密度で96ウェルプレートに播種した。形態A及びSMを、3倍希釈を使用して10μlを処理することにより、各ウェルにおいて10μMの最終濃度で処理した。細胞を37℃、95%空気、及び5%CO2で3日間インキュベーションした。96ウェルプレートを平衡化のために30分間室温に置いた。次いで、100μlのCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay Reagentを96ウェルに添加し、室温で10分間インキュベーションした。発光をルミノメーターを使用して測定し、IC50値を、GraphPrismを使用して分析した。
【0220】
図23及び図24に示すように、形態Aは、SMよりも約5%低いIC50値を示し、したがって、より大きな効果を提供する。
【0221】
本実施形態の上記の説明は、例示及び説明を目的として提供されている。網羅的であること、又は本開示を制限することを意図するものではない。特定の実施形態の個々の要素又は特徴は、概して、その特定の実施形態に限定されないが、適用可能な場合、互換性があり、具体的に示されていないか、又は説明されていない場合でも、選択された実施形態で使用され得る。同じものも、様々な方法で変更してもよい。かかる変更は、本開示からの逸脱とみなされるべきではなく、全てのかかる修正は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】