IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2023-535745光放射線を測定するための分光計装置及び方法
<>
  • 特表-光放射線を測定するための分光計装置及び方法 図1
  • 特表-光放射線を測定するための分光計装置及び方法 図2
  • 特表-光放射線を測定するための分光計装置及び方法 図3
  • 特表-光放射線を測定するための分光計装置及び方法 図4
  • 特表-光放射線を測定するための分光計装置及び方法 図5
  • 特表-光放射線を測定するための分光計装置及び方法 図6
  • 特表-光放射線を測定するための分光計装置及び方法 図7
  • 特表-光放射線を測定するための分光計装置及び方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】光放射線を測定するための分光計装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/36 20060101AFI20230814BHJP
   G01J 3/26 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
G01J3/36
G01J3/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504820
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021070644
(87)【国際公開番号】W WO2022018252
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】20187757.8
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517267802
【氏名又は名称】トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】エギュン,セラル モハン
(72)【発明者】
【氏名】ホース,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】グスト,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ファローフ,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シンドラー,パトリク
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020CB23
2G020CB24
2G020CC26
2G020CC27
2G020CC63
2G020CD04
2G020CD14
2G020CD24
2G020CD35
2G020CD37
(57)【要約】
本発明は、分光計装置(112)及び光放射線(114)を測定するための方法(160)、ならびに分光計装置(112)を備える分光計システム(110)に関する。
光放射線(114)を測定するための分光計装置(112)は:
- 少なくとも1つの放射線放出要素(116)であって、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)は光放射線(114)を放出するように設計され、前記放出された光放射線(114)のスペクトルは前記放射線放出要素(116)の温度に依存する、少なくとも1つの放射線放出要素(116)と;
- 少なくとも1つの感光検出器(120)であって、前記少なくとも1つの感光検出器(120)は前記放出された光放射線(114)を受けるように指定された少なくとも1つの感光領域(122、122’、122’’、122’’’)を有し、前記少なくとも1つの感光検出器(120)によって生成された少なくとも1つの検出器信号(128)は、前記少なくとも1つの感光領域(122、122’、122’’、122’’’)の照射及び前記少なくとも1つの感光検出器(120)の温度に依存する、少なくとも1つの感光検出器(120)と;
- 少なくとも1つの制御回路(130)であって、前記少なくとも1つの制御回路(130)は、
〇 既知の温度でプランクの法則を使用することによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)による前記放出された光放射線(114)のスペクトルを決定するように、及び
〇 少なくとも1つの制御信号(132,134)を前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)又は前記少なくとも1つの感光検出器(120)の少なくとも1つに適用することにより、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)又は前記少なくとも1つの感光検出器(120)の少なくとも1つの温度を調整するように、
構成された少なくとも1つの制御回路(130)と;
- 少なくとも1つの読み出し回路(136)であって、前記少なくとも1つの読み出し回路(136)は前記少なくとも1つの感光検出器(120)によって生成された前記少なくとも1つの検出器信号(128)を測定するように構成されている、少なくとも1つの読み出し回路(130)と、
を備える。
分光計システム(110)は、走査分光計及び分散分光計の利点を使用する混合型分光計であり、それによってそれぞれの欠点を回避する。両方と比較して、混合型分光計は、必要な構成要素の数を減らし、小型化された機械的構成を示すことによって、単純化された分光計システムを構成する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光放射線(114)を測定するための分光計装置(112)であって:
- 少なくとも1つの放射線放出要素(116)であって、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)は光放射線(114)を放出するように設計され、前記放出された光放射線(114)のスペクトルは前記放射線放出要素(116)の温度に依存する、少なくとも1つの放射線放出要素(116)と;
- 少なくとも1つの感光検出器(120)であって、前記少なくとも1つの感光検出器(120)は前記放出された光放射線(114)を受けるように指定された少なくとも1つの感光領域(122、122’、122’’、122’’’)を有し、前記少なくとも1つの感光検出器(120)によって生成された少なくとも1つの検出器信号(128)は、前記少なくとも1つの感光領域(122、122’、122’’、122’’’)の照射及び前記少なくとも1つの感光検出器(120)の温度に依存する、少なくとも1つの感光検出器(120)と;
- 少なくとも1つの制御回路(130)であって、前記少なくとも1つの制御回路(130)は、
〇 既知の温度でプランクの法則を使用することによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)によって放出された前記光放射線(114)のスペクトルを決定するように、及び
〇 少なくとも1つの制御信号(132,134)を前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)又は前記少なくとも1つの感光検出器(120)の少なくとも1つに適用することにより、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)又は前記少なくとも1つの感光検出器(120)の少なくとも1つの温度を調整するように、
構成された少なくとも1つの制御回路(130)と;
- 少なくとも1つの読み出し回路(136)であって、前記少なくとも1つの読み出し回路(136)は前記少なくとも1つの感光検出器(120)によって生成された前記少なくとも1つの検出器信号(128)を測定するように構成されている、少なくとも1つの読み出し回路(130)と、
を備える、分光計装置(112)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの制御回路(130)は、前記少なくとも1つの制御信号(132、134)を、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)又は前記少なくとも1つの感光検出器(120)にそれぞれ提供することにより、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)又は前記少なくとも1つの感光検出器(120)の温度を調整するように構成される、請求項1に記載の分光計装置(112)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)は、少なくとも1つの熱放射体(118)に含まれる、請求項1又は2に記載の分光計装置(112)。
【請求項4】
前記放出された光放射線(114)のピーク波長は、ウィーンの変位則による温度の関数である、請求項3に記載の分光計装置(112)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)の温度は、前記少なくとも1つの制御信号(132)の関数である、請求項1~4のいずれか一項に記載の分光計装置(112)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの感光検出器(120)は、少なくとも1つの光導電性材料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の分光計装置(112)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの光導電性材料は、PbS、PbSe、Ge、InGaAs、InSb、又はHgCdTeのうちの少なくとも1つから選択される、請求項6に記載の分光計装置(112)。
【請求項8】
少なくとも1つの光パスフィルタ(125、125'、125''、125''')は、前記少なくとも1つの感光領域(122、122'、122''、122''')の前の放射線経路に配置される、請求項1~7のいずれか一項に記載の分光計装置(112)。
【請求項9】
2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、もしくは8つの感光検出器(120)及び/又は感光領域(122、122'、122''、122''')を含む、請求項8に記載の分光計装置(112)。
【請求項10】
- 請求項1~9のいずれか一項に記載の光放射線(114)を測定するための少なくとも1つの分光計装置(112)と;
- 前記分光計装置(112)よって提供される少なくとも1つの検出器信号(128)を評価することにより、物体(124)のスペクトルに関する情報を決定するように指定された評価ユニット(138)と、
を備える分光計システム(110)。
【請求項11】
光放射線(114)を測定するための方法(160)であって、以下のステップ:
a) 少なくとも1つの放射線放出要素(116)を用いて光放射線を放出するステップであって、前記放出された光放射線(114)のスペクトルが、前記放射線放出要素(116)の温度に依存する、ステップと;
b) 少なくとも1つの感光検出器(120)を用いて少なくとも1つの検出器信号(128)を生成するステップであって、前記少なくとも1つの感光検出器(120)が、前記放出された光放射線(114)を受けるように指定された少なくとも1つの感光領域(122、122'、122''、122''')を有し、前記少なくとも1つの検出器信号(128)が、前記少なくとも1つの感光領域(122、122'、122''、122''')の照射及び前記少なくとも1つの感光検出器(120)の温度に依存する、ステップと;
c) 既知の温度でプランクの法則を使用することによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)によって放出された前記光放射線(114)のスペクトルを決定し、少なくとも1つの制御信号(132、134)を前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)又は前記少なくとも1つの感光検出器(120)の少なくとも1つに適用することにより、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)又は前記少なくとも1つの感光検出器(120)の少なくとも1つの温度を調整するステップと;
d) 前記少なくとも1つの感光検出器(120)によって生成された前記少なくとも1つの検出器信号(128)を測定するステップと、
を含む、方法(160)。
【請求項12】
ステップc)は、前記少なくとも1つの制御信号(132、134)を前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)又は前記少なくとも1つの感光検出器(120)に適用することにより、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)又は前記少なくとも1つの感光検出器(120)の温度を調整することを含む、請求項11に記載の方法(160)。
【請求項13】
前記放出された光放射線(114)のピーク波長は、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)の温度を調整することによってシフトされる、請求項11又は12に記載の方法(160)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)の温度の関数としての前記ピーク波長は、分析的に知られているか、又は較正プロセスを適用することによって決定される、請求項13に記載の方法(160)。
【請求項15】
前記放出された光放射線(114)は、物体(124)によって反射されること、又は前記物体(124)を透過することの少なくとも1つによって、前記少なくとも1つの感光検出器(120)に到達する、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法(160)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光放射線を測定するための分光計装置及び方法、ならびに分光計装置を備える分光計システムに関する。このような装置、方法及びシステムは、一般に、特に赤外線(IR)スペクトル領域、特に近赤外線(NIR)スペクトル領域において、調査又は監視目的のために使用されることができ、同様に、熱、炎、火又は煙の検出のために使用されることができる。しかし、さらなる種類の用途が可能である。
【背景技術】
【0002】
分光法は、物質に含まれる原子及び分子が、その構造に特徴的な少なくとも1つの特定の波長を吸収するという事実を利用する。このように、吸収分光法は物質分析のための重要なツールである。ここで、吸収は、物体からの反射放射線を記録すること、又は物体を介する透過放射線を記録することによって測定されることができ、ここで物体は調査対象の材料を含む。最も一般的には、液体及び気体には透過分光法が使用され、一方、固体には反射分光法が用いられる。
【0003】
反射型又は透過型のどちらを使用するかに関わらず、分光情報は2つの異なるアプローチのうちの1つを使用することによって、分光計装置で解くことができる:
- 第1に、いわゆる「走査分光計」では、光源から検出器に提供される波長範囲を、特に、可動分散要素、調整可能フィルタ、又は回転回折格子のうちの少なくとも1つから選択され得る少なくとも1つの転送要素を使用することによって、走査することができる。その結果、検出器は、各波長を連続的に記録することができる。ここでは、単一の検出器でほとんどの場合十分である。あるいは、異なる波長の干渉を利用した走査分光計が使用されることができる。記録後、スペクトルはフーリエ変換を使用することにより再構築されることができる。例えば、マイケルソン干渉計が走査分光計として使用されることができる。
【0004】
- 第2に、いわゆる「分散分光計」では、マルチピクセル検出器、例えば検出器マトリックスなどの検出器アレイを使用することによって、すべての離散波長を同時に記録することができる。ここでは、プリズム、回折格子、又は線形可変フィルタ(LVF)の少なくとも1つから好ましくは選択される少なくとも1つの分散要素が使用される。このタイプの分光計は、例えば、US2014/131578A1、WO2019/115594A1、WO2019/115595A1、又はWO2019/115596A1に開示されている。
【0005】
典型的には、走査分光計は単一の検出器を備え、それにより、一方では、読み出し電子装置が簡素化されることができ、したがって、走査分光計のコストを削減することができる。しかし一方で、走査分光計の光学部品は、特に上記のような少なくとも1つの転送要素を使用することにより、一般的にはより複雑である。その結果、走査分光計の光学部品のための光学コンポ―ネントの総コストが増加する可能性がある。
【0006】
対照的に、分散分光計は、走査要素を備えていない。そのため、分散分光計の光学部品は簡素化されることができる。しかし一方で、分散分光計に含まれる検出器アレイは、より複雑な読み出し電子装置を必要とする。さらに、検出器アレイは、典型的には、単一の検出器よりもはるかに高価である。その結果、分散分光計に必要な検出器アレイ及び複雑な読み出し電子装置の総コストが増加する可能性がある。さらに、一般に、分散分光計の光学部品、及び、該当する場合には、光電子部品を小型化することは、はるかに困難である。
【0007】
さらに、IRスペクトル領域に感度を有する光検出器、特に少なくとも1つの光導電性材料を含む光検出器は、ノイズに支配される検出器システムを構成することが知られている。したがって、光検出器に含まれる感光領域への入射放射出力の増加は、光検出器の信号対ノイズ比を改善する結果となる。しかしながら、少なくとも1つの分散要素は、不利なことに、分光計システムに用いられるアプローチとは無関係に、光検出器の感光領域への入射放射出力を減少させ得る。さらに、少なくとも1つの分散要素は、少なくとも1つの入口スリットを有し、及び少なくとも1つの出口スリットを有してよく、これは、少なくとも1つの分散要素を通過し得る放射線の量を制限し得る。
【0008】
EP3318854A1は、スマートフォン又はタブレットに接続可能なフィットネスリストバンドなどの生体情報測定装置に含まれる分光計を開示している。分光計は、近赤外線を放射する光源を含んでいる。さらに、該分光計は、温度調整部材として構成された、温度を調整することによりピーク波長を制御する波長コントローラを備えている。コントローラは、光源ごとに個別のピーク波長を設定し、電流強度又はパルス幅を調整することにより光源を制御し、これにより、ティホノフ正則化法を用いて光信号に基づくスペクトルと参照スペクトルを再構成する。
【0009】
WO2016/191307A1は、試料組織の高速スペクトル掃引分析を行うように構成された光生理学センサを開示している。該センサは、データ収集システムに含まれ、可視光及び/又は赤外光をサンプル組織に照射し、その後、それを検出するように構成され得る。該センサは、エミッタと、温度センサ及び熱電冷却器(エミッタの温度を上昇させるために反転されることができる)を含む熱コントローラとを備える。熱コントローラは、プロセッサ及び保存装置に接続されている高速データ収集ボード/フロントエンドインタフェースと通信する。データ収集システムは、組織を通る光強度を測定する組織光検出器をさらに含む。熱コントローラは、さらに、検出器の温度を調整することができる。さらなる実施形態では、センサは、活性物質としてヒ化ガリウムインジウムを含む。
【0010】
WO2009/030812A1は、放射源と、サンプルに時間変調された放射照度を生成するための変調装置と、レンズ又はミラーなどの光学装置と、光ライトガイドと、ウィンドウ、可変フィルタ、線形検出器アレイ、PIコントローラを有するセンサモジュールとを備えた赤外線分光計を開示している。センサモジュールの裏側には、検出器アレイと線形可変フィルタの冷却と温度安定化のための手段がある。線形検出器アレイは、信号対ノイズ性能を最適化するための冷却装置と一体化されたものが広く利用可能であり、線形可変フィルタは、温度制御されたボリュームに一体化することが可能である。一実施形態では、光導電性HgCdTeアレイが線形検出器アレイとして使用され、最適な性能を得るために動作温度に冷却される。冷却装置は、検出器アレイに取り付けられた温度センサからのフィードバックを使用して調整される。このフィードバックは温度コントローラに提供され、温度安定化装置の冷却又は加熱機能を調整するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US2014/131578A1
【特許文献2】WO2019/115594A1
【特許文献3】WO2019/115595A1
【特許文献4】WO2019/115596A1
【特許文献5】EP3318854A1
【特許文献6】WO2016/191307A1
【特許文献7】WO2009/030812A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明によって対処される問題は、特に、赤外線(IR)スペクトル領域、特に近赤外線(NIR)スペクトル領域における調査に適しており、既知のこのタイプの既知の装置及びシステムの欠点を少なくとも実質的に回避する、光放射線を測定するための分光計装置及び方法、ならびに分光計システムを提供することである。
【0013】
特に、必要な部品の数を減らし、さらに機械的及び光学的構成を小型化できる、改良された単純で、コスト効率が良く、なおかつ信頼できる分光計装置を有することが望まれるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この問題は、独立特許請求項の特徴を備えた本発明によって解決される。個別に又は組み合わせて実現されることができる本発明の有利な展開は、従属請求項及び/又は以下の明細書及び詳細な実施形態に示されている。
【0015】
本明細書で使用される場合、「有する」、「備える」、及び「含む」という用語、ならびにそれらの文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、「AはBを有する」という表現、ならびに「AはBを備える」、又は「AはBを含む」という表現は、B以外に、Aは1つ以上のさらなる成分及び/又は構成要素を含むという事実、及びB以外に、他の成分及び/又は構成要素がAに存在しない場合の両方を指し得る。
【0016】
本発明の第1の態様では、光放射線を測定するための分光計装置が開示されている。したがって、分光計装置は:
- 少なくとも1つの放射線放出要素であって、前記少なくとも1つの放射線放出要素は光放射線を放出するように設計され、前記放出された光放射線のスペクトルは前記放射線放出要素の温度に依存する、少なくとも1つの放射線放出要素と;
- 少なくとも1つの感光検出器であって、前記少なくとも1つの感光検出器は前記放出された光放射線を受けるように指定された少なくとも1つの感光領域を有し、前記少なくとも1つの感光検出器によって生成された少なくとも1つの検出器信号は、前記少なくとも1つの感光領域の照射及び前記少なくとも1つの感光検出器の温度に依存する、少なくとも1つの感光検出器と;
- 少なくとも1つの制御回路であって、前記少なくとも1つの制御回路は、
〇 既知の温度でプランクの法則を使用することによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素によって放出された光放射線のスペクトルを決定するように、及び
〇 少なくとも1つの制御信号を前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器の少なくとも1つに適用することにより、前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器の少なくとも1つの温度を調整するように、
構成された少なくとも1つの制御回路と;
- 少なくとも1つの読み出し回路であって、前記少なくとも1つの読み出し回路は前記少なくとも1つの感光検出器によって生成された前記少なくとも1つの検出器信号を測定するように構成されている、少なくとも1つの読み出し回路と、
を備える。
【0017】
本明細書で使用される場合、「放射線」という用語は、一般に、通常「光学スペクトル範囲」と呼ばれ、可視スペクトル範囲、紫外線スペクトル範囲、及び赤外線スペクトル範囲の1つ以上を含む電磁放射の区画を指す。「紫外線スペクトル範囲」という用語は、一般に、1nm~380nm、好ましくは100nm~380nmの波長を有する電磁放射を指す。さらに、「可視スペクトル範囲」という用語は、通常、380nm~760nmのスペクトル範囲を指す。さらに、「赤外線スペクトル範囲」(IR)という用語は、一般に760nm~1000μmの電磁放射を指し、該760nm~3μmのスペクトル範囲は通常「近赤外線スペクトル範囲」(NIR)と呼ばれる。好ましくは、本発明の典型的な目的のために使用される放射線は、赤外線(IR)スペクトル範囲、より好ましくは、近赤外線(NIR)であり、特に760nm~3μm、好ましくは1μm~3μmの波長を有する。
【0018】
一般に、物体から出る放射線は、物体自体に由来する可能性があるが、異なる起源を有し、この起源から物体に伝播し、その後、分光計装置に向かって伝播することができる。本発明によれば、後者の場合は、放射線を放出するように設計された少なくとも1つの放射線放出要素によって影響を受ける。したがって、物体から分光計装置に伝播する放射線は、物体及び/又は物体に接続された反射装置によって反射され得る放射線であり得る。代替的に又は追加的に、放射線は、少なくとも部分的に物体を透過することができる。「物体」は、一般的に、分光計装置による調査対象の材料を含む生物及び非生物から選ばれる任意の物体であってよい。したがって、一例として、少なくとも1つの物体は、1つ以上の物品及び/又は物品の1つ以上の部分を含むことができ、該少なくとも1つの物品又はその少なくとも1つの部分は、調査に適し得ることができるスペクトルを提供し得る少なくとも1つの構成要素を含み得る。追加的又は代替的に、物体は、1つ以上の生物及び/又はその1つ以上の部分、特に、人間、例えばユーザ、及び/又は動物の1つ以上の身体部分であってもよいし、それらを含んでいてもよい。
【0019】
本発明による分光計装置は、様々な方法で具現化されることができる少なくとも1つの放射線放出要素を備える。少なくとも1つの放射線放出要素は、ハウジング内の分光計装置の一部とすることができる。代替的又は追加的に、少なくとも1つの放射線放出要素は、ハウジングの外側に、例えば、別個の放射線放出要素として構成されることもできる。少なくとも1つの放射線放出要素は、物体から離れて配置され、物体を遠方から照射することができる。代替的に又は追加的に、少なくとも1つの放射線放出要素は、物体から放出される放射線が少なくとも1つの放射線放出要素によって直接生成され得るような方式で、物体に接続され、又は物体の一部とされることができる。例として、少なくとも1つの放射線放出要素は、物体上及び/又は物体内に配置され、放射線を直接発生させることができる。
【0020】
少なくとも1つの放射線放出要素は、赤外線(IR)スペクトル範囲で、好ましくは近赤外線(NIR)スペクトル範囲で、特に760nm~3μm、好ましくは1μm~3μmの波長で、十分な放射を提供するように構成され得る。少なくとも1つの放射線放出要素は、特に、熱放射体、具体的には白熱ランプ又は熱赤外線エミッタに含まれてよい。一般に使用される場合、「白熱ランプ」、「白熱電球」又は「白熱ライトグローブ」という用語は、特にガラス又は溶融石英の電球によって閉じ込められたボリュームを有する装置に関し、そこでは、ワイヤフィラメント(具体的にはタングステンを含み得る)が、好ましくは不活性ガスで充填された、又は真空を含む、該ボリューム内に放射線放出要素として配置され、そこで監視される光放射線を放出する。本明細書でさらに使用される場合、「熱赤外線エミッタ」という用語は、監視される光放射線を放出する放射線放出要素としての放射線放出表面含むマイクロ機械加工された熱放射装置を指す。具体的には、熱赤外線エミッタは、Axetris AG,Schwarzen-bergstrasse 10,CH-6056Kaegiswil,Switzerlandから、「emirs 50」という名称で、又はLASER COMPONENTS GmbH,Werner-von-Siemens-Str.15 82140 Olching,ドイツから「thermal infrared emitters」として、又はHawkeye Technologies,181 Research Drive #8,Milford CT 06460,米国から「infra-red emitters」として入手することができる。さらなる種類の熱赤外エミッタも可能である。
【0021】
放射線放出要素、すなわち白熱ランプのワイヤフィラメント又は熱赤外線エミッタの放射線放出表面は、その加熱がかなりの量の放射線を放出するような方式で電流によって衝突されるように指定される。少なくとも1つの放射線放出要素によって放出される放射線が、少なくとも1つの感光検出器のスペクトル感度に密接に関連し得るスペクトル範囲を示し得る場合、特に、少なくとも1つの放射線放出要素によって照射され得る少なくとも1つの感光検出器が高強度の検出器信号を提供することができ、十分な信号対ノイズ比と同時に高解像度で検出器信号の評価を可能にすることを確実にする様式で関連し得る場合が、好ましくあり得る。
【0022】
少なくとも1つの放射線放出要素は、連続光源であってよく、又は代替的に、パルス光源であってよく、該パルス光源は、少なくとも1Hz、少なくとも5Hz、少なくとも10Hz、少なくとも50Hz、少なくとも100Hz、少なくとも500Hz、少なくとも1kHz、又はそれ以上の変調周波数を有し得る。パルス光源を駆動するために、変調装置が使用されることができ、これは、好ましくは周期的変調を生成することによって、照射を変調するように指定され得る。一般的に使用される場合、「変調」という用語は、照射の総出力が変化され、好ましくは周期的に、特に少なくとも1つの変調周波数で変化されるプロセスを指す。特に、周期的な変調は、照射の総出力の最大値と最小値との間で行われることが可能である。最小値は、0であることができるが、>0であることもでき、したがって、例えば、完全な変調が行われる必要はない。変調は、好ましくは、所望の変調された照射を生成するように指定された光源内で、好ましくは、それ自体変調された強度及び/又は総出力、例えば周期的に変調された総出力を有する少なくとも1つの放射線放出要素により、及び/又は、パルス照射源、例えばパルスレーザーとして具現化された少なくとも1つの放射線放出要素により、行われることが可能である。さらなる例として、欧州特許出願19213277.7(2019年12月3日出願)は、電流によって加熱されると放射線を生成するように指定された少なくとも1つの放射線放出要素と;マウントであって、少なくとも1つの放射線放出要素を担持し、該マウント又はその一部が可動である、マウントと;ヒートシンクであって、マウントが接触すると、マウントとマウントによって担持される少なくとも1つの放射線放出要素とを冷却するように指定されたヒートシンクと、を開示している。代替的に又は追加的に、異なるタイプの変調装置、例えば電気光学効果及び/又は音響光学効果に基づく変調装置も使用されることが可能である。さらに、周期的ビーム遮断装置、特に、好ましくは一定速度で回転して照射を周期的に遮断できる、ビームチョッパー、遮断ブレード、又は、遮断ホイールも使用されることができる。特定の実施形態では、異なる変調周波数ごとに少なくとも1つの検出器信号を生成するように指定された、以下でより詳細に説明される少なくとも1つの感光検出器を使用することができる。この実施形態では、以下でより詳細に説明される評価ユニットが、異なる変調周波数ごとに少なくとも1つの検出器信号からスペクトル情報を生成するように指定されることができる。
【0023】
本明細書でさらに使用される場合、「スペクトル」という用語は、光学スペクトル範囲、特に赤外線(IR)スペクトル範囲、好ましくは近赤外線(NIR)スペクトル範囲、特に760nm~3μm、好ましくは1μm~3μmの光学スペクトル範囲を指す。スペクトルの各部分は、信号波長と対応する信号強度とによって定義される光信号によって構成される。さらに、「分光計装置」という用語は、スペクトルの対応する波長又はその区画、特に波長間隔に関する信号強度を記録することができる装置に関し、該信号強度は、好ましくは、さらなる評価に使用されることができる少なくとも1つの検出器信号として提供され得る。本明細書でさらに使用される場合、「分光計システム」は、分光計装置に加えて、本明細書に開示される分光計装置によって提供される少なくとも1つの検出器信号を評価することによって物体のスペクトルに関する情報を決定するように指定される評価ユニットを備える装置を指す。
【0024】
さらに本発明によれば、分光計装置は、少なくとも1つの感光検出器を備えている。一般に使用されるように、「感光検出器」という用語は、少なくとも1つの感光領域を含む光検出器を指し、該少なくとも1つの感光領域は、その少なくとも1つの感光領域の照射に応じて少なくとも1つの検出器信号を生成するように指定され、該少なくとも1つの検出器信号は、特に、測定のために少なくとも1つの読み出し回路に提供され、及び/又は、評価のために外部の評価ユニットに提供されてよい。少なくとも1つの感光検出器に含まれる少なくとも1つの感光領域は、均一な感光エリアであり得、該均一な感光エリアは、感光エリアに入射する放出された光放射線を受けるように構成される。少なくとも1つの感光検出器は、検出器信号、好ましくは光学信号又は電子信号を生成するように指定され、これらは少なくとも1つの感光検出器に衝突する放出された光放射線の強度に関連する。検出器信号は、アナログ信号及び/又はデジタル信号であってよい。特定の実施形態では、少なくとも1つの感光検出器は、例えば外部評価ユニットに提供する前に電子信号を増幅するように適合されたアクティブセンサであってよく、又はそれを含んでいてよい。この目的のために、少なくとも1つの感光検出器は、1つ以上の信号処理装置、特に電子信号を処理及び/又は前処理するための1つ以上のフィルタ及び/又はアナログ-デジタル-変換器を備えることができる。
【0025】
少なくとも1つの感光検出器は、任意の既知の光センサから、特に無機カメラ要素から、好ましくは無機カメラチップから、より好ましくは、今日、一般的に、様々なカメラで使用されているCCDチップ又はCMOSチップから選択されることができる。代替として、少なくとも1つの感光検出器、特に少なくとも1つの感光領域は、光導電性材料、特に硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、ゲルマニウム(Ge)、インジウムガリウムヒ素(拡張InGaAsを含むが、これらに限定されない、InGaAs)、アンチモン化インジウム(InSb)又はテルル化水銀カドミウム(HgCdTe又はMCT)から選択される無機光導電性材料を含むことができる。一般に使用されるように、「拡張InGaAs」という用語は、最大2.6μmのスペクトル応答を示す特定のタイプのInGaAsを指す。しかし、さらなる種類の光導電性材料も可能である。
【0026】
さらなる代替として、少なくとも1つの感光検出器は、焦電検出器素子、ボロメトリック検出器素子、又はサーモパイル検出器素子であってよく、又はそれらを備えてよい。さらなる代替として、少なくとも1つの感光検出器は、例えば、WO2012/110924A1、WO2014/097181A1、又はWO2016/120392A1に開示されているFIPセンサ要素であってよく、又はそれを備えてよい。「FIPセンサ」という用語は、照射の総出力が同じであるとして、センサ信号が、少なくとも1つの感光領域の照射の幾何学的寸法に、特に少なくとも1つの感光領域上の照射のビーム断面に依存するセンサを指す。好ましくは、FIPセンサの感光領域は、特に上記に開示されたような光導電性材料から選択される光導電性材料、又は固体色素増感太陽電池(sDSC)を含むことができる。
【0027】
さらに本発明によれば、分光計装置は、少なくとも1つの読み出し回路を備え、該少なくとも1つの読み出し回路は、少なくとも1つの感光検出器により生成される少なくとも1つの検出器信号を測定するように構成される。一般に使用されるように、「測定する」という用語は、少なくとも1つの検出器信号に関する少なくとも1つの特性、特に少なくとも1つの検出器信号の強度、電流、電圧、抵抗、熱、周波数、電力又は偏光の少なくとも1つ、又は少なくとも1つの検出器信号が記録される時間を記録することを指す。しかし、少なくとも1つの検出器信号に関連するかどうかにかかわらず、さらなる特性の記録も可能である。例として、検出器の色、機械的膨張、又は温度を測定することができる。さらなる例として、光空気圧検出器を使用して、圧力又はガス流量を測定することができる。分光計装置に含まれる少なくとも1つの読み出し回路によって測定される少なくとも1つの検出器信号は、その後、外部の評価ユニット、特に、以下でより詳細に説明される対応する分光計システムに含まれ得る評価ユニットに転送されることができる。
【0028】
さらに本発明によれば、分光計装置は、少なくとも1つの放射線放出要素又は少なくとも1つの感光検出器のうちの少なくとも1つの温度を調整するように構成される少なくとも1つの制御回路を備える。一般に、少なくとも1つの放射線放出要素及び/又は少なくとも1つの感光検出器は、それらのそれぞれの出力、すなわち少なくとも1つの放射線放出要素の場合には放出された光放射線のスペクトル、又は少なくとも1つの感光検出器の場合には少なくとも1つの検出器信号が、それぞれ放射線放出要素又は少なくとも1つの感光検出器の温度に依存するように、動作する。少なくとも1つの放射線放出要素は、所定のスペクトル帯域で放射線を放射することができるが、スペクトルの波長間隔及び形状、特にピーク波長は、少なくとも1つの放射線放出要素の少なくとも1つのパラメータに依存し得る。
【0029】
特に好ましい実施形態では、熱放射体、特に白熱ランプに含まれる放射線放出要素は、広帯域スペクトルを放射することができるが、発光スペクトルのピーク波長は、ウィーンの変位則に従って、熱放射体の温度に反比例し得る。白熱ランプに印加される電力を増加させることにより、白熱ランプの温度が上昇し、それによって、ウィーンの変位則に従って、放射スペクトルのピーク波長が減少する。別の例は、プラズマ放射体、特に高圧プラズマランプを参照することができ、その広帯域連続放射のピーク波長は、プラズマ放射体に印加されるプラズマ電流を変化させることによって調整されることができる。少なくとも1つの制御回路を使用することにより、少なくとも1つの放射線放出要素の温度は連続的に調整されることができ、一方、少なくとも1つの感光検出器の温度は、好ましくは、一定に維持され、それによって、少なくとも1つの放射線放出要素のスペクトル応答の変化が得られ、これは、調査対象の材料のスペクトルの特定の波長領域を走査するために使用されることができる。
【0030】
同様の方式で、少なくとも1つの感光検出器のスペクトル応答の温度依存性を適用することができる。既知の光導電性材料、特にPbS、PbSe、Ge、InGaAs、InSb、又はHgCdTeは、負の温度係数を示すエネルギーギャップを有する。光導電性材料を冷却することにより、そのスペクトル応答、特に対応するピーク波長が長波長側にシフトする。少なくとも1つの制御回路を使用して、少なくとも1つの感光検出器の温度を調整することができ、その結果、少なくとも1つの感光検出器のスペクトル応答が変更される。したがって、少なくとも1つの放射線放出要素の温度を一定に維持しながら、少なくとも1つの感光検出器の温度を制御することによって、特定の波長領域を走査することが可能である。
【0031】
特定の実施形態では、放射線放出要素のスペクトルは、その温度の関数として分析的な方式で記述されることができる。一般に知られているように、少なくとも1つの放射線放出要素、特に熱放射体、具体的には白熱ランプのスペクトルは、既知の温度でプランクの法則を適用することによって決定されることができる。例として、少なくとも1つの放射線放出要素、特に熱放射体、特に白熱ランプの温度は:
- 少なくとも1つの放射線放出要素によって吸収される出力を測定すること;
- 前記少なくとも1つの放射線放出要素を通って流れる電圧及び/又は電流を測定すること;
- 前記少なくとも1つの放射線放出要素の内部電気抵抗を測定すること;
- 前記少なくとも1つの放射線放出要素が動作している時間を測定すること;
- 非接触温度センサ、好ましくはパイロメータ、ボロメータ、又はサーモパイルのうち少なくとも1つを使用すること、
のうちの少なくとも1つによって監視され得る。
【0032】
少なくとも1つの放射線放出要素、特に熱放射体、具体的には白熱ランプにおいて、少なくとも1つの放射線放出要素の温度は、少なくとも1つのパラメータ、特に少なくとも1つの電気パラメータ、好ましくは電圧及び/又は電流を、少なくとも1つの放射線放出要素に適用することによって調整され得る。ウィーンの変位則によれば、少なくとも1つの放射線放出要素の発光スペクトルのピーク波長がシフトする。このようにして、広帯域熱放射体、具体的には白熱ランプ、又はそれを含む少なくとも1つの放射線放出要素が、波長可変スキャナとして使用されることができる。
【0033】
さらなる実施形態では、特に、スペクトルをその温度の関数として分析的に記述することができない放射線放出要素に対して、代替的に又は追加的に、較正ステップを実行することができる。較正ステップを実行するために、放射線放出要素のスペクトルが、放射線放出要素に関連する少なくとも1つのパラメータ、特に少なくとも1つの電気パラメータの関数の形で、参照として測定及び保存されることができる。ルックアップテーブルが、放射線放出要素の温度と、少なくとも1つの放射線放出要素に適用される少なくとも1つのパラメータ、特に少なくとも1つの電気パラメータとの間の関係を保存するために使用されることができる。例として、分光計装置がプラズマ放射体の発光スペクトルを測定しながら、プラズマ放射体、特に高圧プラズマランプを通るプラズマ電流を変化させることができ、その後、選択されたパラメータは、さらなる参照のために、プラズマ放射体の較正ファイルとして、好ましくはルックアップテーブルの形態で保存され得る。
【0034】
上記に示したように、少なくとも1つの制御回路は、少なくとも1つの放射線放出要素及び/又は少なくとも1つの感光検出器の温度を調整するように構成され、そこでは、少なくとも1つの感光検出器の温度を維持しながら少なくとも1つの放射線放出要素の温度を調整することが、特に好ましい。
【0035】
この目的のために、少なくとも1つの制御回路は、それぞれ、少なくとも1つの放射線放出要素に、及び/又は所望により少なくとも1つの感光検出器に適用される、電流、電圧、又は調整可能な消費電力を生成するように指定された、電流源、電圧源、電源又はパルス源の少なくとも1つを含むことができる。さらに、少なくとも1つの制御回路は、電流増幅器、電流デリミタ、電圧増幅器、又は電圧デリミタのうちの少なくとも1つをさらに備えることができる。他の部品又はさらなる部品が可能である。
【0036】
少なくとも1つの放射線放出要素によって生成される放射は、好ましくは、拡散反射が起こり得るような方式で物体に向けられることが可能である。物体の反射放射線によって生成される拡散反射スペクトルは、物体又は少なくともその表面部分に含まれる材料のスペクトル指紋(spectral fingerprint)を担持する。反射された放射線は、その後、少なくとも1つの感光検出器によって収集される。分光計装置も感光検出器も分散要素を含まないため、感光検出器によって生成される少なくとも1つの検出器信号は、
- 少なくとも1つの放射線放出要素の発光スペクトルと;
- 全拡散反射スペクトルのスペクトル積分と;
- 少なくとも1つの感光検出器のスペクトル感度スペクトルと、
に依存する。
【0037】
特に、少なくとも1つの感光検出器のスペクトル感度は、好ましくは、少なくとも1つの放射線放出要素のスペクトル範囲によってカバーされ得る。
【0038】
白熱ランプに印加される電流及び/又は電圧対応し得る、又はプラズマ放射体のプラズマ電流に対応し得る、スペクトルのピーク波長に対応する少なくとも1つの放射線放出要素の各温度について、検出器信号が少なくとも1つの感光検出器により測定される。理論に拘束されることを望まないが、この種の手順は、式(1)により次のように分析的に記述されることができる:
【数1】
式中、
【数2】
は、m番目の温度Tにおける発光スペクトルのn番目の波長成分である。さらに
【数3】
は、反射スペクトルのn番目の波長成分であり、一方
【数4】
は、m番目の温度Tにおける検出器信号である。
【0039】
少なくとも1つの放射線放出要素の温度が既知である場合、この温度での発光スペクトルはプランクの法則を使用して計算されることができる。さらに、少なくとも1つの検出器信号が測定される。その結果、一次式(2)

E・R=S (2)

は、式(3)により次のように解かれ得る:

R=E-1・S. (3)
【0040】
その結果、物体の吸収スペクトルRは、さらなる光学部品を用いることなく、少なくとも1つの放射線放出要素として単一の白熱ランプと、単一の感光検出器のみを使用することによって、決定されることができる。
【0041】
透過測定についても同様のアプローチを適用することができる。物体の吸収スペクトルRを使用する代わりに、少なくとも1つの放射線放出要素から物体を通って感光検出器への透過放射線を測定することによって、物体の吸収スペクトルAを決定することができる。
【0042】
熱放射体は広帯域の発光スペクトルを有するため、この方式で決定される吸収スペクトルの分解能は、特に分散分光計と比較した場合、比較的低い。特定の実施形態では、少なくとも2つの感光領域、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの感光領域を有する感光検出器を用いることによって、又は代替的に若しくは追加的に、少なくとも2つの個別の感光検出器、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの感光検出器を用いることによって、吸収スペクトルの分解能を向上させることができる。一般に、感光検出器及び/又は感光領域の数は、所望の分解能に達するまで増加させることができるが、特定の分光計装置の複雑さ及び経費の増加が代償となるため、最大4、6又は8個の感光検出器又は感光領域が特に好ましいかもしれない。少なくとも2つの感光検出器又は少なくとも2つの感光領域は、異なっていてよいが、好ましくは、同一で、したがって、少なくとも1つの感光検出器の提供及び読み取りを容易にするものであってよい。
【0043】
少なくとも1つの感光領域を備える少なくとも1つの感光検出器は、具体的には、光ショートパスフィルタ、光ロングパスフィルタ、又は光バンドパスフィルタのうちの少なくとも1つから選択される少なくとも1つの光パスフィルタを備えることができる。少なくとも2つの感光検出器及び/又は少なくとも2つの感光領域を備える特に好ましい実施形態では、各感光検出器及び/又は各感光領域は、異なる光パスフィルタを備え、したがって、吸収スペクトルの異なる部分をサンプリングするように構成されることができる。例として、第1光パスフィルタは第1感光領域の前に配置されることができ、第2光パスフィルタは第2感光領域の前に配置されることができ、ここで、第1光パスフィルタは第1波長範囲の波長を有する放射線を透過するように指定される一方、第2光パスフィルタは、第2波長範囲の波長を有する放射線を透過するように指定され、それによって第1感光領域は吸収スペクトルの第1部分をサンプリングするように構成される一方、第2感光領域は吸収スペクトルの第2部分をサンプルするように構成され、ここで、第1波長範囲及び第2波長範囲は互いに異なるが、好ましくは、隣接する波長範囲を含むことができ、それによって単一の結合された吸収スペクトルがサンプリングされることができる。さらなる例を以下に示すが、特に、好ましくは同一である4つの異なる光パスフィルタが4つの感光領域の前に配置される例を以下に示す。各感光領域によって記録された吸収スペクトルの異なる部分は、より広い波長範囲にわたる物体の所望の吸収スペクトルを得るために、組み合わされることが可能である。
【0044】
本発明のさらなる態様では、分光計システムが開示される。したがって、分光計システムは、
- 上述した及び/又は下記により詳細に説明される分光計装置と;
- 前記分光計装置よって提供される少なくとも1つの検出器信号を評価することにより、物体のスペクトルに関する情報を決定するように指定された評価ユニットと、
を備える。
【0045】
上記のような分光計システムの構成要素は、個別の構成要素であってよい。あるいは、分光計システムの構成要素の2つ以上が単一の一体化された構成要素に統合されてよい。さらに、評価ユニットは、分光計装置から独立した個別のユニットとして形成されてよいが、好ましくは、特に、分光計装置に含まれる少なくとも1つの読み出し回路によって測定された少なくとも1つの検出器信号を受信するように、少なくとも1つの読み出し回路に接続されてよい。あるいは、少なくとも1つの評価ユニットは、少なくとも1つの分光計装置に完全に又は部分的に一体化されてよい。
【0046】
本発明によれば、分光計システムは、分光計装置と評価ユニットとを備える。分光計装置に関しては、本明細書中の他の箇所の説明を参照することができる。「評価ユニット」という用語は、スペクトル情報、すなわち、スペクトルが記録された物体のスペクトルに関連する情報を、特に、本明細書に記載の分光計装置を使用することにより決定するように指定された装置を指し、該情報は、少なくとも1つの感光検出器によって生成される少なくとも1つの検出器信号を測定するように構成された少なくとも1つの読み出し回路によって提供される少なくとも1つの検出器信号を評価することによって取得される。評価ユニットは、1つ以上の集積回路、特に特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又は、データ処理装置、特にデジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、又はコンピュータの少なくとも1つ、のうちの少なくとも1つであってよく、又はそれらを備えることができる。代替的に又は追加的に、評価ユニットは、特に、少なくとも1つの電子通信ユニット、具体的にはスマートフォン又はタブレットであってよく、又はそれらに含まれることができる。追加の構成要素、特に1つ以上の前処理装置及び/又はデータ取得装置、特に検出器信号の受信及び/又は前処理のための1つ以上の装置、特に1つ以上のADコンバータ及び/又は1つ以上のフィルタが可能であり得る。さらに、評価ユニットは、特に少なくとも1つの電子テーブル、特に少なくとも1つのルックアップテーブルを保存するための1つ以上のデータ保存装置を備えることができる。さらに、評価ユニットは、1つ以上のインタフェース、特に1つ以上の無線インタフェース及び/又は1つ以上の有線インタフェースを備えることができる。
【0047】
評価ユニットは、好ましくは、少なくとも1つのコンピュータプログラム、特に、スペクトル情報の少なくとも1つの項目を生成するステップを実行又はサポートする少なくとも1つのコンピュータプログラムを実行するように構成されてよい。例として、少なくとも1つの検出器信号を少なくとも1つの入力変数として使用することによって、スペクトル情報への変換を実行することができる1つ以上のアルゴリズムが実装され得る。この目的のために、評価ユニットは、特に、少なくとも1つの検出器信号を評価することによって少なくとも1つの情報項目を生成するように設計され得る少なくとも1つのデータ処理装置、特に電子データ処理装置を備えることができる。したがって、評価ユニットは、少なくとも1つの検出器信号を少なくとも1つの入力変数として使用し、少なくとも1つの入力変数を処理することによってスペクトル情報を生成するように設計される。処理は、並行して、続くように、又は組み合わされた形で行われてよい。評価ユニットは、特に計算によって、及び/又は少なくとも1つの保存された及び/又は既知の関係を用いて、少なくとも1つの項目のスペクトル情報を生成するための任意のプロセスを使用することができる。
【0048】
少なくとも1つの検出器信号とは別に、1つ又は複数のさらなるパラメータ及び/又は情報項目が、例えば、物体、少なくとも1つの放射線放出要素、及び分光計装置に含まれる少なくとも1つの感光検出器に関する情報の少なくとも1つの情報項目などの前記関係に影響を及ぼし得る。この関係は、経験的、分析的、又は半経験的に決定されることができる。好ましくは、関係は、少なくとも1つの較正曲線、少なくとも1組の較正曲線、少なくとも1つの関数、又は言及した可能性の組み合わせを含み得る。1つ又は複数の較正曲線は、例えば、値のセットとそれに関連する関数値の形式で、例えば、データ保存装置及び/又はテーブル内に保存されることができる。しかし、代替的又は追加的に、少なくとも1つの較正曲線は、例えばパラメータ化された形式及び/又は関数式として保存されることもできる。検出器信号を少なくとも1つの情報項目に処理するための別個の関係を使用してよい。あるいは、少なくとも1つの検出器信号を処理するための少なくとも1つの組み合わされた関係が可能である。様々な可能性が考えられ、また、組み合わせることも可能である。
【0049】
評価ユニットはまた、特に、少なくとも1つの放射線放出要素、少なくとも1つの感光検出器、少なくとも1つの制御回路、又は少なくとも1つの読み出し回路の少なくとも1つを制御するように設計された評価ユニットによって、分光計装置又はその一部を、完全に又は部分的に、制御又は駆動するように設計されることができる。評価ユニットは、複数の検出器信号、特に、少なくとも1つの制御回路を駆動することによって、少なくとも1つの放射線放出要素又は少なくとも1つの感光検出器の、連続的に調整された少なくとも1つの温度の検出器信号がピックアップされる少なくとも1つの測定サイクルを実施するように設計されることができる。ここで、検出器信号の取得は、特に、時間的な走査を用いることによって、シーケンシャルに行われることができる。
【0050】
評価ユニットによって決定された情報は、特に、電子的な、視覚的な、又は音響的な方式のうちの少なくとも1つで、さらなる装置又はユーザのうちの少なくとも1つに提供され得る。さらに、情報は、少なくとも1つのデータ保存装置に保存され得、該少なくとも1つのデータ保存装置は、分光計システムに、特に少なくとも1つの評価ユニットに含まれてよく、又は該少なくとも1つのデータ保存装置は、別個の保存装置であってよく、情報は、少なくとも1つのインタフェース、特に無線インタフェース及び/又は有線インタフェースを介して送信されてよい。
【0051】
本発明のさらなる態様では、光放射線を測定するための方法が開示される。本明細書に開示される方法は、以下のステップa)~d)を含み、これらは、好ましくは、ステップa)から始まり、ステップc)を続け、次に、ステップb)を行い、ステップd)で終了するという順序で行われることができ、ステップのいくつかは、少なくとも部分的に、同時に行われ得る。さらに、本明細書に記載されていない追加のステップを実行することができる。本発明による光放射線の測定方法は、以下のステップ:
a)少なくとも1つの放射線放出要素を用いて光放射線を放出するステップであって、前記放出された光放射線のスペクトルが、前記放射線放出要素の温度に依存する、ステップと;
b)少なくとも1つの感光検出器を用いて少なくとも1つの検出器信号を生成するステップであって、前記少なくとも1つの感光検出器が、前記放出された光放射線を受けるように指定された少なくとも1つの感光領域を有し、前記少なくとも1つの検出器信号が、前記少なくとも1つの感光領域の照射及び前記少なくとも1つの感光検出器の温度に依存する、ステップと;
c)既知の温度でプランクの法則を使用することによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素によって放出された前記光放射線のスペクトルを決定し、前記少なくとも1つの制御信号を、前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器の少なくとも1つに適用することにより、前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器の少なくとも1つの温度を調整するステップと;
d)前記少なくとも1つの感光検出器によって生成された前記少なくとも1つの検出器信号を測定するステップと、
を含む。
【0052】
ステップa)によれば、少なくとも1つの放射線放出要素、特に、上述した又は以下でより詳細に説明する放射線放出要素を使用することによって光放射線が放出され、放出された光放射線のスペクトルは、放射線放出要素の温度に依存する。
【0053】
ステップb)によれば、少なくとも1つの検出器信号は、少なくとも1つの感光検出器、特に、上述した又は以下でより詳細に説明する感光検出器を使用することによって生成され、少なくとも1つの感光検出器は、放出された光放射線を受けるように指定された少なくとも1つの感光領域を有し、少なくとも1つの検出器信号は少なくとも1つの感光領域の照射及び少なくとも1つの感光検出器の温度に依存する。
【0054】
ステップc)によれば、少なくとも1つの放射線放出要素によって放出された光放射線のスペクトルは、既知の温度でプランクの法則を使用することによって決定され、
- 少なくとも1つの放射線放出要素、及び/又は
- 少なくとも1つの感光検出器
の少なくとも1つの温度は、少なくとも1つの制御信号を、少なくとも1つの放射線放出要素又は少なくとも1つの感光検出器の少なくとも1つに適用することによって調整される。好ましくは、少なくとも1つの制御信号は、上述した又は以下でより詳細に説明する少なくとも1つの制御回路によって提供されてよい。好ましくは、ステップc)は、少なくとも1つの制御信号を、少なくとも1つの放射線放出要素又は少なくとも1つの感光検出器に提供することによって、少なくとも1つの放射線放出要素又は少なくとも1つの感光検出器の温度を調整することを含む。
【0055】
ステップd)によれば、少なくとも1つの感光検出器によって生成された少なくとも1つの検出器信号が、特に、上述した又は以下でより詳細に説明する少なくとも1つの読み出し回路を使用することによって測定される。
【0056】
任意の評価ステップでは、物体のスペクトルに関連する所望のスペクトル情報は、上述した又は以下でより詳細に説明する評価ユニットを用いて決定されることができ、該評価は、特に、少なくとも1つの読み出し回路によって測定され、続いて評価ユニットに提供された、少なくとも1つの検出器信号に基づくことができる。
【0057】
さらなる態様では、本発明は、コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって実行されるときに、コンピュータに本明細書の他の箇所に記載された光放射線を測定するための方法のステップを実行させる実行可能な命令を含む、コンピュータプログラム製品を指す。実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品は、好ましくは、評価ユニット、特に電子通信ユニット、具体的にはスマートフォン又はタブレット、又は分光計装置、特に少なくとも1つの制御回路に、完全に又は部分的に一体化されていてよい。コンピュータプログラム製品は、分光計装置又は評価ユニット、特に電子通信ユニット、具体的にスマートフォン又はタブレットに既に含まれる少なくとも1つのデータ処理装置を使用することによって、本方法を実行することが可能であり得る。例として、方法は、「アプリ」という用語によっても示されるアプリケーションとして、電子通信ユニット上で実行されてよい。あるいは、コンピュータプログラム製品は、分光計システムに既に含まれる少なくとも1つの制御回路を使用することによって、本方法を実行することが可能であり得る。さらに、さらなる種類の電子装置も考えられる。
【0058】
本発明のさらなる態様では、本発明による分光計装置及び分光計システムの使用が開示されている。そこでは、物体のスペクトルに関する情報を決定する目的の分光計装置及び分光計システムの使用が提案されている。ここで、分光計装置及び分光計システムは、好ましくは、以下の:赤外線検出用途;分光法用途;排ガス監視用途;燃焼プロセス監視用途;汚染監視用途;工業プロセス監視用途;混合又はブレンドプロセス監視;化学プロセス監視用途;食品処理プロセス監視用途;食品調製プロセス監視;水質監視用途;大気品質監視用途;品質管理用途;温度制御用途;動作制御用途;排気制御用途;ガス検知用途;ガス分析用途;動作感知用途;化学感知用途;モバイル用途;医療用途;モバイル分光法用途;食品分析用途;特に、土壌、サイレージ、飼料、作物又は農産物の特性評価、植物の健康状態の監視などの農業用途;プラスチックの識別及び/又はリサイクル用途、からなる群から選択される使用目的のために使用される。さらなる用途が可能である。
【0059】
本発明による分光計システム、光放射線の測定方法、コンピュータプログラム製品、及び分光計システムの分光計装置のそれぞれの使用に関するさらなる詳細については、本明細書中の他の箇所で提供される光放射線を測定するための分光計装置の説明を参照することができる。
【0060】
光放射線を測定するための上述した分光計装置及び方法、ならびに分光計装置を含む分光計システムは、従来技術に対してかなりの利点を有する。本発明による分光計装置は、両方のアプローチ、すなわち、いわゆる「走査分光計」及びいわゆる「分散分光計」の両方とも上記のとおりの利点を使用し、それによってそれぞれの欠点を回避する「混合型分光計」として考えることができる。走査システムと分散分光計の両方と比較して、混合型分光計は、必要な構成要素の数を減らし、小型化された機械的構成を示すことによって、単純化された分光計システムを構成する。
【0061】
要約すると、本発明の文脈では、以下の実施形態が特に好ましいと考えられる:
実施形態1:
- 少なくとも1つの放射線放出要素であって、前記少なくとも1つの放射線放出要素は光放射線を放出するように設計され、前記放出された光放射線のスペクトルは前記放射線放出要素の温度に依存する、少なくとも1つの放射線放出要素と;
- 少なくとも1つの感光検出器であって、前記少なくとも1つの感光検出器は前記放出された光放射線を受けるように指定された少なくとも1つの感光領域を有し、前記少なくとも1つの感光検出器によって生成された少なくとも1つの検出器信号は、前記少なくとも1つの感光領域の照射及び前記少なくとも1つの感光検出器の温度に依存する、少なくとも1つの感光検出器と;
- 少なくとも1つの制御回路であって、少なくとも1つの制御回路は、少なくとも1つの制御信号を前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器の少なくとも1つに適用することにより、前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器の少なくとも1つの温度を調整するように構成された少なくとも1つの制御回路と;
- 少なくとも1つの読み出し回路であって、前記少なくとも1つの読み出し回路は前記少なくとも1つの感光検出器によって生成された前記少なくとも1つの検出器信号を測定するように構成されている、少なくとも1つの読み出し回路と、
を備える、光放射線を測定するための分光計装置。
【0062】
実施形態2:前記少なくとも1つの制御回路は、前記少なくとも1つの制御信号を、前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器にそれぞれ提供することにより、前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器の温度を調整するように構成される、先行する実施形態による分光計装置。
【0063】
実施形態3:前記放出された光放射線のピーク波長は温度の関数である、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0064】
実施形態4:前記放出された光放射線のピーク波長は、ウィーンの変位則による温度の関数である、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0065】
実施形態5:前記少なくとも1つの放射線放出要素の温度は、前記少なくとも1つの放射線放出要素に適用される前記少なくとも1つの制御信号の関数である、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0066】
実施形態6:前記放射線放出要素のスペクトルは、その温度の関数として分析的な方式で記述される、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0067】
実施形態7:前記少なくとも1つの制御回路は、既知の温度でプランクの法則を使用することによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素によって放出された光放射線のスペクトルを決定するように構成される、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0068】
実施形態8:前記少なくとも1つの制御回路は:
- 前記少なくとも1つの放射線放出要素によって吸収される出力を測定すること;
- 前記少なくとも1つの放射線放出要素を通って流れる電圧及び/又は電流を測定すること;
- 前記少なくとも1つの放射線放出要素の内部電気抵抗を測定すること;
- 前記少なくとも1つの放射線放出要素が動作している時間を測定すること;
- 非接触温度センサ、好ましくはパイロメータ、ボロメータ、又はサーモパイルのうち少なくとも1つを使用すること、
のうちの少なくとも1つによって白熱ランプの温度を監視するように構成される、先行する実施形態うちのいずれか1つによる分光計装置。
【0069】
実施形態9:前記少なくとも1つの制御回路は、少なくとも1つのパラメータを前記少なくとも1つの放射線放出要素に適用することによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素の温度を調整するように構成される、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0070】
実施形態10:前記少なくとも1つのパラメータは、少なくとも1つの電気パラメータである、先行する実施形態による分光計装置。
【0071】
実施形態11:前記少なくとも1つの電気パラメータは、電圧又は電流の少なくとも1つから選択される、先行する実施形態による分光計装置。
【0072】
実施形態12:前記少なくとも1つの放射線放出要素は、少なくとも1つの熱放射体であるか、又はそれを含む、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0073】
実施形態13:前記少なくとも1つの熱放射体は、白熱ランプ又は熱赤外線エミッタであるか、又はそれを含む、先行する実施形態による分光計装置。
【0074】
実施形態14:前記少なくとも1つの制御回路は、較正ステップを実行するように構成される、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0075】
実施形態15:前記少なくとも1つの制御回路は、スペクトルをその温度の関数として分析的な方式で記述することができない放射線放出要素に対して、較正ステップを実行するように構成される、先行する実施形態による分光計装置。
【0076】
実施形態16:前記少なくとも1つの制御回路は、前記放射線放出要素のスペクトルを測定し、前記放射線放出要素に関連する少なくとも1つのパラメータ、特に少なくとも1つの電気パラメータの関数の形で参照として保存することによって較正ステップを実行するように構成される、先行する2つの実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0077】
実施形態17:前記少なくとも1つの制御回路は、前記放射線放出要素の温度と、前記少なくとも1つの放射線放出要素に適用された少なくとも1つのパラメータ、特に少なくとも1つの電気パラメータとの間の関係を保存するためにルックアップテーブルを使用することにより、較正ステップを実行するように構成される、先行する3つの実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0078】
実施形態18:前記少なくとも1つの制御回路は、前記分光計装置が前記プラズマ放射体の発光スペクトルを測定する間に、プラズマ放射体、特に高圧プラズマランプを通るプラズマ電流を変化させることにより、較正ステップを実行するように構成される、先行する4つの実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0079】
実施形態19:前記少なくとも1つの制御回路は、さらなる参照のために、好ましくはルックアップテーブルの形態で、選択されたパラメータを較正ファイルとして保存するように構成される、先行する実施形態による分光計装置。
【0080】
実施形態20:前記少なくとも1つの感光検出器は、既知の光センサから、特に無機カメラ要素から、好ましくは無機カメラチップから、より好ましくはCCDチップ又はCMOSチップから選択される、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0081】
実施形態21:前記少なくとも1つの感光検出器、特に、前記少なくとも1つの感光領域は、少なくとも1つの光導電性材料を含む、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0082】
実施形態22:前記少なくとも1つの光導電性材料は、PbS、PbSe、Ge、InGaAs、InSb、又はHgCdTeのうちの少なくとも1つから選択される、先行する実施形態による分光計装置。
【0083】
実施形態23:前記少なくとも1つの感光検出器は、焦電検出器素子、ボロメトリック検出器素子、又はサーモパイル検出器素子であるか、又はそれらを含む、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0084】
実施形態24:前記少なくとも1つの感光検出器は、FIPセンサ要素であるか、又はそれを含む、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0085】
実施形態25:前記FIPセンサ要素は、PbS、PbSe、Ge、InGaAs、InSb、又はHgCdTeのうちの少なくとも1つから選択される少なくとも1つの光導電性材料を含む、先行する実施形態による分光計装置。
【0086】
実施形態26:少なくとも1つの光パスフィルタが、前記少なくとも1つの感光検出器の前の放射線経路に配置される、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0087】
実施形態27:前記少なくとも1つの光パスフィルタは、光ショートパスフィルタ、光ロングパスフィルタ、又は光バンドパスフィルタのうちの少なくとも1つから選択される、先行する実施形態による分光計装置。
【0088】
実施形態28:前記分光計装置は、少なくとも2つから8つまでの感光検出器を有する、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0089】
実施形態29:2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの感光検出器を有する、先行する実施形態による分光計装置。
【0090】
実施形態30:異なる光パスフィルタが、各感光検出器の前の放射線経路に配置される、先行する実施形態による分光計装置。
【0091】
実施形態31:前記少なくとも1つの感光検出器は、少なくとも2つから8つまでの感光領域を有する、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0092】
実施形態32:2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの感光領域を有する、先行する実施形態による分光計装置。
【0093】
実施形態33:異なる光パスフィルタが、各感光領域の前の放射線経路に配置される、先行する実施形態による分光計装置。
【0094】
実施形態34:前記異なる光パスフィルタは、通過する光放射線の波長範囲が異なる、先行する4つの実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0095】
実施形態35:前記少なくとも1つの検出器信号は、
- 前記少なくとも1つの放射線放出要素の発光スペクトルと;
- 全拡散反射スペクトルのスペクトル積分と;
- 前記少なくとも1つの感光検出器のスペクトル感度スペクトルと、
に依存する、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0096】
実施形態36:前記少なくとも1つの感光検出器のスペクトル感度は、前記少なくとも1つの放射線放出要素のスペクトル範囲によってカバーされる、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0097】
実施形態37:前記放出された光放射線は、760nm~1000μm(赤外線スペクトル範囲)の波長を含む、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0098】
実施形態38:前記放出された光放射線は、760nm~3μm(近赤外線スペクトル範囲)の波長を含む、先行する実施形態による分光計装置。
【0099】
実施形態39:前記放出された光放射線は、1μm~3μmの波長を含む、先行する実施形態による分光計装置。
【0100】
実施形態40:前記少なくとも1つの読み出し回路は、電流測定又は電圧測定のうちの少なくとも1つを実行するように構成される、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置。
【0101】
実施形態41:
- 先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計装置と;
- 前記分光計装置よって提供される少なくとも1つの検出器信号を評価することにより、物体のスペクトルに関する情報を決定するように指定された評価ユニットと、
を備える分光計システム。
【0102】
実施形態42:前記評価ユニットは、少なくとも1つの電子通信ユニットであるか、又はそれに含まれる、先行する実施形態による分光計システム。
【0103】
実施形態43:前記少なくとも1つの電子通信ユニットは、スマートフォン又はタブレットから選択される、先行する実施形態による分光計システム。
【0104】
実施形態44:前記評価ユニットは、分光計装置又はその一部を、完全に又は部分的に、制御又は駆動するようにさらに設計されている、分光計システムを参照する先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計システム。
【0105】
実施形態45:前記評価ユニットは、少なくとも1つの放射線放出要素、少なくとも1つの感光検出器、少なくとも1つの制御回路、又は少なくとも1つの読み出し回路のうちの少なくとも1つを制御するようにさらに構成されている、分光計システムを参照する先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計システム。
【0106】
実施形態46:前記評価ユニットによって決定された情報は、電子的な、視覚的な、又は音響的な方式のうちの少なくとも1つで、さらなる装置又はユーザのうちの少なくとも1つに提供される、分光計システムを参照する先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計システム。
【0107】
実施形態47:前記評価ユニットによって決定された情報は、少なくとも1つのデータ保存装置に保存される、分光計システムを参照する先行する実施形態のうちのいずれか1つによる分光計システム。
【0108】
実施形態48:前記少なくとも1つのデータ保存装置は、前記分光計システムによって、特に前記少なくとも1つの評価ユニットに含まれる、先行する実施形態による分光計システム。
【0109】
実施形態49:前記少なくとも1つのデータ保存装置は、別個の保存装置である、先行する2つの実施形態のいずれかによる分光計システム。
【0110】
実施形態50:前記別個の保存装置は、前記少なくとも1つの電子通信ユニットに含まれる、先行する実施形態による分光計システム。
【0111】
実施形態51:前記情報は、少なくとも1つのインタフェース、特に無線インタフェース及び/又は有線インタフェースを介して前記別個の保存装置に送信される、先行する2つの実施形態の1つによる分光計システム。
【0112】
実施形態52:光放射線を測定するための方法であって、次のステップ:
a)少なくとも1つの放射線放出要素を用いて光放射線を放出するステップであって、前記放出された光放射線のスペクトルが、前記放射線放出要素の温度に依存する、ステップと;
b)少なくとも1つの感光検出器を用いて少なくとも1つの検出器信号を生成するステップであって、前記少なくとも1つの感光検出器が、前記放出された光放射線を受けるように指定された少なくとも1つの感光領域を有し、前記少なくとも1つの検出器信号が、前記少なくとも1つの感光領域の照射及び前記少なくとも1つの感光検出器の温度に依存する、ステップと;
c)少なくとも1つの制御信号を前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器の少なくとも1つに適用することにより、前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器の少なくとも1つの温度を調整するステップと;
d)前記少なくとも1つの感光検出器によって生成された前記少なくとも1つの検出器信号を測定するステップと、
を含む、光放射線を測定するための方法。
【0113】
実施形態53:前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器の温度は、前記少なくとも1つの制御信号を前記少なくとも1つの放射線放出要素又は前記少なくとも1つの感光検出器にそれぞれ提供することにより、調整される、先行する実施形態による方法。
【0114】
実施形態54:前記放出された光放射線のピーク波長は、前記少なくとも1つの放射線放出要素の温度を調整することによってシフトされる、方法を参照する先行する実施形態のうちのいずれか1つによる方法。
【0115】
実施形態55:前記少なくとも1つの放射線放出要素の温度の関数としての前記ピーク波長は、分析的に知られるか、又は較正プロセスを適用することによって決定される、先行する実施形態による方法。
【0116】
実施形態56:前記放出された光放射線は、物体によって反射されること、又は物体を透過することの少なくとも1つによって、前記少なくとも1つの感光検出器に到達する、方法を参照する先行する実施形態のうちのいずれか1つによる方法。
【0117】
実施形態57:物体のスペクトルに関連するスペクトル情報は、評価ユニットを使用することによって決定される、方法を参照する先行する実施形態のうちのいずれか1つによる方法。
【0118】
実施形態58:前記評価は、少なくとも1つの読み出し回路によって測定され、続いて前記評価ユニットに提供される、前記少なくとも1つの検出器信号に基づく、先行する実施形態による方法。
【0119】
実施形態59:プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに光放射線を測定するための方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【0120】
実施形態60::赤外線検出用途;分光法用途;排ガス監視用途;燃焼プロセス監視用途;汚染監視用途;工業プロセス監視用途;混合又はブレンドプロセス監視;化学プロセス監視用途;食品処理プロセス監視用途;食品調製プロセス監視;水質監視用途;大気品質監視用途;品質管理用途;温度制御用途;動作制御用途;排気制御用途;ガス感知用途;ガス分析用途;動作感知用途;化学感知用途;モバイル用途;医療用途;モバイル分光法用途;食品分析用途;特に、土壌、サイレージ、飼料、作物又は農産物の特性評価、植物の健康状態の監視の農業用途;プラスチックの識別及び/又はリサイクル用途、からなる群から選択される使用目的のための、分光計装置又は分光計システムを参照する先行する実施形態のいずれか1つによる分光計装置の使用。
【図面の簡単な説明】
【0121】
本発明のさらなる任意の詳細及び特徴は、従属請求項と関連して続く好ましい例示的な実施形態の説明から明らかである。この文脈では、特定の特徴は、単独に実施されても、又は他の特徴と組み合わせて実施されてもよい。本発明は、例示的な実施形態に限定されない。例示的な実施形態は、図に概略的に示されている。個々の図における同一の符号は、同一の要素又は同一の機能を有する要素、又はそれら機能に関して互いに対応する要素を指している。
【0122】
具体的には、以下の図の中で:
図1】本発明による分光計装置を含む分光計システムの例示的な実施形態の概略図を示し、ここで、単一の感光検出器はそれぞれ、単一の感光領域(図1A)、2つの個別の感光領域(図1B)、及び4つの個別の感光領域(図1C)を含む。
図2】本発明による光放射線を測定するための方法の例示的な実施形態の概略図を示す。
図3】キャノーラ種子の例示的な反射スペクトルを示す(先行技術)。
図4】変化する温度に対する白熱ランプの発光スペクトルを示す(先行技術)。
図5】白熱ランプの温度を変化させるための感光検出器によって生成される検出器信号の経過を示す。
図6】単一の感光検出器を使用して得られたキャノーラ種子の計算された反射スペクトルと測定された反射スペクトルの比較を示す。
図7】2つの個別の感光検出器を使用して得られたキャノーラ種子の計算された反射スペクトルと測定された反射スペクトルのさらなる比較を示す。
図8】4つの個別の感光検出器を使用して得られたキャノーラ種子の計算された反射スペクトルと測定された反射スペクトルのさらなる比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0123】
例示的な実施形態
図1は、本発明による分光計装置112を備える分光計システム110の例示的な実施形態を非常に概略的に示している。一般的に使用されるように、分光計装置112は、スペクトルとして示される波長範囲にわたる放出された光放射線114の対応する波長又は波長間隔に関して放出された光放射線114の信号強度を記録することが可能な装置である。本発明によれば、分光計装置112は、特に、赤外線(IR)スペクトル領域、好ましくは、近赤外線(NIR)スペクトル領域におけるスペクトルを記録するために適合され、特にここで、入射は、760nm~3μm、好ましくは1μm~3μmの波長を有することができ、したがって、特に赤外線(IR)スペクトル領域、特に近赤外線(NIR)スペクトル領域において、調査又は監視目的のために使用されることができ、同様に、熱、炎、火又は煙の検出のために使用されることができる。しかし、さらなる用途も可能であり得る。
【0124】
図1に概略的に示される例示的な分光計装置112は、放出される光放射線114のために設計された放射線放出要素116を備えている。特に、放射線放出要素116は、熱放射体118、具体的には白熱ランプ又は熱赤外線エミッタに含まれ得る。ここで、白熱ランプは、特にガラス又は溶融石英の電球によって閉じ込められたボリュームを有し、そこでは、タングステンを含むワイヤフィラメントが、放射線放出要素116として、好ましくは不活性ガスで満たされるか又は真空を含むボリューム内に、配置されている。あるいは、熱赤外線エミッタは、放射線放出要素116として放射線放出表面を備えるマイクロ機械加工された熱放射装置である。そのさらなる詳細については、上記の説明を参照することができる。さらなるタイプの熱赤外線エミッタも可能である。
【0125】
放射線放出要素116は、連続的に放出するか、又は代替的に、変調された光パルスを発生させることができる。変調は、好ましくは、それ自体変調された強度及び/又は総出力、例えば周期的に変調された総出力を有する放射線放出要素116内で行われ、及び/又は、パルス照射源、例えばパルスレーザーとして具現化された放射線放出要素116によって行われることができる。さらなる例として、欧州特許出願19213277.7(2019年12月3日出願)が参照され、これは、放射線放出要素116を担持するマウント(マウント又はその一部が可動である)と、ヒートシンク(ヒートシンクはマウントに接触すると、マウントと放射線放出要素116を冷却するように指定されている)とを開示している。さらなるタイプの変調装置、例えば電気光学効果及び/又は音響光学効果に基づく変調装置も使用されることが可能である。さらに、周期的ビーム遮断装置、特に、好ましくは一定速度で回転して照射を周期的に遮断できる、ビームチョッパー、遮断ブレード、又は、遮断ホイールも変調を生成するために可能であり得る。
【0126】
放出された光放射線114のスペクトルは、放射線放出要素116の温度に依存する。特に好ましい実施形態では、放射線放出要素116は、広帯域スペクトルを放射することができるが、発光スペクトルのピーク波長は、ウィーンの変位則に従って、放射線放出要素116を含む熱放射体118の温度に反比例し得る。白熱ランプに印加される電力を増加させることにより、白熱ランプの温度が上昇し、それによって、ウィーンの変位則に従って、放射スペクトルのピーク波長が減少する。、代替として、プラズマ放射体、特に高圧プラズマランプも使用されることができ、その広帯域連続放射のピーク波長は、プラズマ放射体に印加されるプラズマ電流を変化させることによって調整されることができる。特定の例として、変化する温度に対する白熱ランプの発光スペクトルを示す図4を参照することができる。
【0127】
さらに、図1に概略的に示される例示的な分光計装置112は、感光検出器120を備えている。図1Aに概略的に示されているように、感光検出器120は単一の感光領域122を有し、単一の感光領域122は、放出された光放射線114が、放出された光放射線114の一部を吸収することができる物体124によって修正された後に、放出された光放射線114を受けるように指定され、ここで、物体124は、典型的には、分光計システム110によって調査対象の材料を含み得る。ここで、物体124による放出された光放射線114の吸収は、物体124からの放出された光放射線114の反射部分を記録することによって、又は、物体124を通る放出された光放射線114の透過部分を記録することによって、測定され得る。最も一般的には、液体及び気体については、放出された光放射線114の透過部分を測定することができ、一方、固体については、放出された光放射線114の反射部分を使用することができる。
【0128】
しかしながら、感光検出器120は、2つ以上の感光領域122、特に2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの感光領域122、特に図1Bに概略的に示される2つの感光領域122、122’、又は図1Cに模式的に示されるような4つの感光領域122、122’、122’’、122’’’を備えてよい。代替的に又は追加的に、分光計装置112は、2つ以上の感光検出器120(ここでは図示せず)、特に2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの感光検出器120を備えてよい。以下でより詳細に説明するように、図6に示された結果は、単一の感光領域122を使用することによって取得されており、一方、図7及び8に示された結果は、それぞれ、2つの個別の感光領域122、122’、又は4つの個別の感光領域122、122’、122’’、122’’’を使用することによって取得されたものである。以下の図6図7及び図8に示された結果を比較することにより、このようにして、吸収スペクトルの分解能を向上させることができることが明らかである。一般に、感光検出器120の数及び/又は感光領域122の数は、所望の分解能に達するまで増やすことができるが、分光計装置112の複雑さと経費の増加が代償となる。
【0129】
2つ以上の感光検出器120又は2つ以上の感光領域122、122’、122’’、122’’’が使用され得る特定の実施形態では、具体的には、光ショートパスフィルタ、光ロングパスフィルタ及び/又は光バンドパスフィルタから選択され得る異なる光パスフィルタ125、125’、125’’、125’’’が、好ましくは、各感光検出器120及び/又は各感光領域122、122’、122’’、122’’’が、上述した又は以下でより詳細に説明するように異なる光パスフィルタ125、125’、125’’、125’’’を備え得る方式で、各感光検出器120の前に配置されることができる。
【0130】
図1に概略的に示される特定の実施形態では、分光計装置112は、ハウジング126を備えることができ、ハウジング126は、物体124からの放出された光放射線114の反射部分を記録できるように構成され得る。しかしながら、ハウジング126のさらなる実施形態も可能であり、具体的には、ハウジング126がさらなる部品、特に以下でより詳細に説明する分光計システム110に含まれる評価ユニットを備え得る、実施形態も可能である。
【0131】
感光領域122の照射及び感光検出器120の温度に依存して、少なくとも1つの検出器信号128が感光検出器120によって生成される。感光領域122は、好ましくは、感光エリアに衝突する放出された光放射線114を受けるように構成された単一で均一な感光エリアであってよく、又はそれを備えていてよい。少なくとも1つの検出器信号128は、アナログ信号及び/又はデジタル信号であってよい。特に、感光検出器120は、少なくとも1つの検出器信号128を例えば外部評価ユニットに提供する前に、それを増幅するように適合されたアクティブセンサであってよく、又はそれを備えてよい。この目的のために、感光検出器120は、1つ以上の信号処理装置、特に、電子信号を処理及び/又は前処理するための1つ以上のフィルタ及び/又はアナログ-デジタル変換器を備えてよい。
【0132】
感光検出器120は、任意の既知の光センサから、特に無機カメラ要素から、好ましくは無機カメラチップから、より好ましくは、今日、一般的に様々なカメラで使用されているCCDチップ又はCMOSチップから選択されることができる。代替として、感光検出器120、具体的には少なくとも1つの感光領域122は、光導電性材料、特に硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、ゲルマニウム(Ge)、インジウムガリウムヒ素(拡張InGaAsを含むが、これらに限定されない、InGaAs)、アンチモン化インジウム(InSb)又はテルル化水銀カドミウム(HgCdTe又はMCT)から選択される無機光導電性材料を含むことができる。一般に使用されるように、「拡張InGaAs」という用語は、最大2.6μmのスペクトル応答を示す特定のタイプのInGaAsを指す。さらなる代替として、感光検出器120は、焦電検出器素子、ボロメトリック検出器素子、又はサーモパイル検出器素子であってよく、又はそれらを備えてよい。さらなる代替として、少なくとも1つの感光検出器は、より詳細に上述したように、FIPセンサ要素であってよく、又はそれを備えてよい。
【0133】
さらに、図1に概略的に示される例示的な分光計装置112は、少なくとも1つの制御信号132を放射線放出要素116に適用することによって放射線放出要素116の温度を調整するように構成された制御回路130を備える。制御回路130を使用することによって、放射線放出要素116の温度を、連続的に調整することができる。このようにして、放射線放出要素116のスペクトル応答の変化を得ることができ、これは、上述した又は以下でより詳細に説明するように、物体124のスペクトルの特定の波長領域を走査するために使用されることができる。
【0134】
代替的に又は追加的に、図1に示される制御回路130は、参照符号「134」を有する破線矢印によって示されるさらなる制御信号を感光検出器120に提供することによって感光検出器120の温度を調整するように構成されることが可能である。好ましい実施形態では、感光検出器120の温度は、さらなる制御信号134を使用することによって一定に維持されることができ、これは、少なくとも1つの検出器信号128の信号対ノイズ比を増加させるために有利であり得る。代替の実施形態では、さらなる制御信号134は、感光検出器120の温度を調整するために使用されることができ、その結果、感光検出器120のスペクトル応答の変化をもたらす。同時に、放射線放出要素116の温度は、好ましくは、一定に維持され得る。その結果、この代替実施形態は、感光検出器120の温度を制御することによって、特定の波長領域を走査することを可能にする。
【0135】
制御回路130は、それぞれ、放射線放出要素116に、及び/又は感光検出器120に適用される、電流、電圧、又は調整可能な消費電力を生成するように指定された、電流源、電圧源、電源又はパルス源の1つ以上を含むことができる。さらに、制御回路130は、電流増幅器、電流デリミタ、電圧増幅器、又は電圧デリミタのうちの少なくとも1つをさらに備えることができる。他の部品又はさらなる部品が可能である。
【0136】
さらに、図1に概略的に示される例示的な分光計装置112は、少なくとも1つの検出器信号128に関する少なくとも1つの特性、特に強度、電流、電圧、抵抗、熱、周波数、電力、又は少なくとも1つの検出器信号128の偏光の少なくとも1つ、又は少なくとも1つの検出器信号128が記録される時間を記録することによって、感光検出器120により生成される少なくとも1つの検出器信号128を測定するように構成された読み出し回路136を備える。しかし、少なくとも1つの検出器信号128に関連するかどうかにかかわらず、さらなる特性の記録も可能である。
【0137】
図1にさらに概略的に示されるように、本発明による分光計装置112とは別に、分光計システム110は、物体124のスペクトルに関連する情報を決定するように指定される評価ユニット138をさらに備える。この目的のために、評価ユニット138は、少なくとも1つの検出器信号128を受けるように構成され、該少なくとも1つの検出器信号128は、少なくとも1つの検出器信号128を測定する読み出し回路136によって、有線又は無線の方式で無線インタフェース140を介して、この例示的な実施形態の評価ユニット138に提供される。一般に、評価ユニット138は、データ処理装置142の一部であってよく、及び/又は、1つ以上のデータ処理装置142を備えてもよい。
【0138】
評価ユニット138は、図1に概略的に示されるように別個の装置144として完全又は部分的に具現化されてよく、及び/又は、分光計装置112(ここでは図示せず)をさらに備えるハウジング126に完全又は部分的に一体化されてもよい。評価ユニット138は、1つ以上の追加の構成要素、特に1つ以上の電子ハードウェアコンポーネント及び/又は1つ以上のソフトウェアコンポーネント、特に1つ以上の測定ユニット及び/又は1つ以上の評価ユニット及び/又は1つ以上の制御ユニットをさらに含むことができる。
【0139】
好ましい実施形態では、評価ユニット138は、分光計装置112又はその一部を完全に又は部分的に、制御又は駆動するように設計されることもできる。特に、評価ユニット138は、放射線放出要素116、感光検出器120、制御回路130、又は読み出し回路136のうちの少なくとも1つを制御するように構成されることができる。この目的のために、分光計システム110のユーザによって提供されるそれぞれのコマンドを受信するために、キーパッド146を使用することができる。特に、評価ユニットは、少なくとも1つの測定サイクルを実行するように指定されることができ、該測定サイクルでは、複数の検出器信号128、特に、放射線放出要素116及び/又は感光検出器120の温度を連続的に調整するための検出器信号128が、参照符号「148」を示す破線矢印によって図1に概略的に示されるように、少なくとも1つの制御回路130を駆動することによって、ピックアップされる。ここで、検出器信号128を取得することは、特に、時間的走査を用いることによって、連続的に実行されることができる。
【0140】
評価ユニット138によって決定された情報は、電子的な、視覚的な及び/又は音響的な方式で、1つ以上のさらなる装置又はユーザに提供され得る。例として、情報は、モニタ150を使用して表示されることができる。さらに、情報は、データ保存装置152に保存されることができ、ここで、図1に示されるように、データ保存装置152は、評価ユニット138に含まれることができる。代替として、データ保存装置152は、別個の保存装置であってよく、別個の保存装置への情報は、さらなるインタフェース(ここでは図示せず)、特に無線インタフェース及び/又は有線インタフェースを介して送信されてよい。
【0141】
代替として、評価ユニット138、処理装置142、キーパッド146、モニタ150、及びデータ保存装置152の少なくとも1つ、好ましくは全てが、具体的にはスマートフォン又はタブレットから選択される電子通信装置に一体化されてよい。
【0142】
図2は、本発明による光放射線114を測定するための方法160の例示的な実施形態を非常に概略的に示した図である。
【0143】
ステップa)による放出ステップ162では、所望の光放射線114は、放射線放出要素116を使用することによって放出され、放出された光放射線114のスペクトルは、放射線放出要素の温度に依存する。
【0144】
ステップb)による生成ステップ164では、少なくとも1つの検出器信号128は、1つ以上の感光検出器120を使用することによって生成され、少なくとも1つの感光検出器120は、放出された光放射線114を受けるように指定された感光領域122を有している。ここで、少なくとも1つの検出器信号128は、感光領域122の照射及び1つ以上の感光検出器120の温度に依存する。
【0145】
ステップc)による調整ステップ166では、放射線放出要素116及び/又は1つ以上の感光検出器120の温度は、少なくとも1つの制御信号132、134を放射線放出要素116及び/又は1つ以上の感光検出器120に提供することにより調整される。好ましくは、少なくとも1つの制御信号132、134は、制御回路130によって提供され得る。
【0146】
ステップd)による測定ステップ168では、1つ以上の感光検出器120によって生成された少なくとも1つの検出器信号128が、特に、読み出し回路136によって測定され、好ましくは、インタフェース140を介して評価ユニット138に送信される。
【0147】
任意の評価ステップ170では、物体124のスペクトルに関連する所望のスペクトル情報172は、評価ユニット138を使用することによって、特に少なくとも1つの検出器信号128に基づいて決定されることができる。
【0148】
光放射線114を測定するための方法160に関するさらなる詳細については、上記で提供された分光計装置112の説明を参照することができる。
【0149】
図3は、先行技術から既に知られているキャノーラ種子の例示的な反射スペクトル180を示している。キャノーラ種子は、アブラナ科の種子、特にアブラナ、小松菜又はカラシナを含み、そこからは、油はその脂肪酸プロファイルにおいて2%未満のエルカ酸を含み、固体成分は3-ブテニルグルコシノレート、4-ペンテニルグルコシノレート、2-ヒドロキシ-3ブテニルグルコシノレート、及び2-ヒドロキシ-4-ペンテニルグルコシノレートのいずれか1つ又は任意の混合物を、空気乾燥したオイルフリー固体1グラムあたり、30マイクロモル未満含む(https://www.canolacouncil.org/oil-and-meal/what-is-canola/#OfficialDefinition(2020年7月21日検索)を参照されたい)。図3による図中では、反射Rは、μm単位で光放射線の波長λに対する反射された光放射線の割合として表される。キャノーラ種子の先行技術の反射スペクトルは、1.2μm~2.2μmの波長についてマイケルソン干渉計を使用することによって測定された。
【0150】
図4は、先行技術から知られているように、変化する温度に対する白熱ランプの黒体発光スペクトル182を示す。μm単位で光放射線の波長λに対する10・W・s/mの発光Eとしてそこに示された黒体発光スペクトル182は、100Kのステップを適用する1000Kから2000Kの温度に対する白熱ランプの黒体放射を考慮することによって決定されている。
【0151】
図5は、検出器信号Sの経過184を任意の単位で示しており、検出器信号Sは、白熱ランプの温度変化に対して感光検出器120によって生成される。K単位の温度Tに対する検出器信号Sの経過184は、図3の反射スペクトル180の、図4の黒体発光スペクトル182の、及び感光検出器120として使用されるPbS検出器のスペクトル応答性の畳み込みによって決定されている。
【0152】
図6図7及び図8は、それぞれ、キャノーラ種子の計算された反射スペクトル186と、測定された反射スペクトル188、190、192との比較を示す。ここで、計算された反射スペクトル186は、上記で示した式(1)を使用することによって決定されている。ここで
図6の測定された反射スペクトル188は、図1Aで示されたような単一のPbS検出器を使用することによって得られた;
図7の測定された反射スペクトル190は、図1Bで示されたような感光材料としてそれぞれがPbSを含む2つの個別の感光領域122、122’を使用することによって得られ、1.2μmと1.9μmの間の第1バンドパスフィルタが第1のPbS検出器の前に配置され、1.9μmと2.2μmの間の第2バンドパスフィルタが第2のPbS検出器の前に配置された;及び
図8の測定された反射スペクトル192は、図1Cで示されたような感光材料としてそれぞれがPbSを含む4つの個別の感光領域122、122’、122’’、122’’’を使用することによって得られ、1.2μmと1.4μmの間の第1バンドパスフィルタが、第1のPbS検出器の前に配置され、1.4μmと1.7μmの間の第2バンドパスフィルタが第2のPbS検出器の前に配置され、1.7μmと1.9μmの間の第3バンドパスフィルタが第3のPbS検出器の前に配置され、1.9μmと2.2μmの間の第4バンドパスフィルタが第4のPbS検出器の前に配置された。
【0153】
図6は、白熱ランプの発光スペクトルが、任意の走査分光計と比較して非常に広いため、スペクトル分解能が強く平滑化されていることを示しており、走査要素の透過帯域幅は非常に小さく、例えば単一検出器のファブリペロー干渉計は約数ナノメートル以下の帯域幅を有している。
【0154】
しかし、適切なバンドパスフィルタを有する検出器の数を増やすことによって、分散分光計と走査分光計のアプローチの組み合わせが実現され得る。2つの個別の感光領域122、122’を使用することによって記録された図7の測定された反射スペクトル190では、スペクトル分解能の向上が観察され得る。
【0155】
個別の感光領域122、122’、122’’、122’’’の数を2つから4つにさらに増やすと、図8に示すように、分解能が大幅に改善される。128、256、1024、2096又はそれ以上のピクセルを有する検出器アレイを含む最適化された分散分光計と比較すると、図8の測定された反射スペクトル192を得るために使用される4つの個別の感光領域122、122’、122’’、122’’’の数はかなり少なく見える。このように、走査分光法と分散分光法の2つのアプローチを組み合わせることで、高価なアレイ又は走査要素を必要とせず、かつ、高速変調光源を必要とせずに、妥当なスペクトル分解能を得ることができる。
【符号の説明】
【0156】
参照番号のリスト
110 分光計システム
112 分光計装置
114 (放出された)光放射線
116 放射線放出要素
118 熱放射体
120 感光検出器
122,122’... 感光領域
124 物体
125,125’... 光バンドパスフィルタ
126 ハウジング
128 検出器信号
130 制御回路
132 制御信号
134 制御信号
136 読み出し回路
138 評価ユニット
140 インタフェース
142 処理装置
144 別個の装置
146 キーパッド
148 矢印
150 モニタ
152 データ保存装置
160 光放射線を測定するため
162 放出ステップ
164 生成ステップ
166 調整ステップ
168 測定ステップ
170 評価ステップ
172 スペクトル情報
180 反射スペクトル
182 黒体発光スペクトル
184 経過
186 計算された反射スペクトル
188 測定された反射スペクトル
190 測定された反射スペクトル
192 測定された反射スペクトル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】