(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】システム制御および診断を改善するために中間データを使用するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G05B 13/04 20060101AFI20230814BHJP
G05B 11/36 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
G05B13/04
G05B11/36 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505361
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 US2021070972
(87)【国際公開番号】W WO2022027003
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501162454
【氏名又は名称】ワットロー・エレクトリック・マニュファクチャリング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンドレイ、ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ピツェラ、ミランダ
(72)【発明者】
【氏名】クアント、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】バーゲン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、ハンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ガンダー、ダニエル
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA07
5H004GA14
5H004GB01
5H004GB15
5H004HA01
5H004HA02
5H004HA03
5H004HA07
5H004HA12
5H004HB01
5H004HB02
5H004HB03
5H004HB07
5H004HB12
5H004JA11
5H004JB07
5H004KB02
5H004KB04
5H004KB06
5H004KB39
5H004KC33
5H004KC35
(57)【要約】
工業プロセスの熱システムを制御する方法は、中間データを監視することと、中間データを相関データに関連付けることとを含み、相関データは、内部プロセス制御入力、外部ヒータ制御入力、出力制御、またはそれらの組み合わせを含む。この方法は更に、中間データと相関データとの間の関係を定義するモデルを生成することと、モデルに基づいてヒータシステムの状態を識別することと、ヒータシステムの識別された状態に基づいて選択的に是正措置を行うこととを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業プロセスの熱システムを制御する方法であって、前記熱システムは、ヒータシステムと、プロセス制御システムによって生成される中間データに基づいて前記ヒータシステムの出力制御を生成するように構成された前記プロセス制御システムとを含み、
前記中間データを監視することと、
前記中間データを相関データに関連付けることであって、前記相関データは、内部プロセス制御入力、外部ヒータ制御入力、前記出力制御、またはそれらの組み合わせを含むことと、
前記中間データと前記相関データとの間の関係を定義するモデルを生成することと、
前記モデルに基づいて前記ヒータシステムの状態を識別することと、
前記ヒータシステムの前記識別された状態に基づいて選択的に是正措置を行うことと
を備える方法。
【請求項2】
前記中間データは、比例ゲインデータ、積分ゲインデータ、微分ゲインデータ、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出力制御は、前記比例ゲインデータと、前記積分ゲインデータと、前記微分ゲインデータとの和に基づく、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセス制御システムは、一次コントローラおよび二次コントローラを有するカスケード制御システムを含み、前記中間データは、前記カスケード制御システムのループデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記出力制御は、前記二次コントローラの比例ゲインデータと、前記二次コントローラの積分ゲインデータと、前記二次コントローラの微分ゲインデータとの和に基づく、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記中間データは、前記プロセス制御システムのコントローラゲインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記モデルは、数学モデル、機械学習モデル、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記機械学習モデルは、前記中間データおよび前記相関データに基づいて前記ヒータシステムの前記状態を予測するように構成された教師あり学習モデルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記モデルと、前記中間データと前記相関データとの間の公称関係を定義する公称モデルとを比較することと、
前記公称モデルと前記モデルとの間の偏差を決定することであって、前記ヒータシステムの前記識別された状態は、前記偏差に更に基づくことと
を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記偏差は、比例ゲイン偏差、積分ゲイン偏差、微分ゲイン偏差、またはそれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記内部プロセス制御入力は、前記ヒータシステムの性能特性の所望の設定値、前記ヒータシステムを制御するための設定値、プロセス変数、前記プロセス変数の測定値、前記熱システムに関連するアラート、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記是正措置は、前記ヒータシステムの前記識別された状態に基づいて前記ヒータシステムの電力を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記是正措置は、前記ヒータシステムの前記識別された状態に基づいてアラートを放送することを含み、前記アラートは、前記プロセス制御システムに通信可能に結合された導管内の材料蓄積、前記プロセス制御システムに通信可能に結合された抵抗加熱素子の公称熱偏差、またはそれらの組み合わせを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記外部ヒータ制御入力は、前記プロセス制御システムの外部デバイスによって生成される出力である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記内部プロセス制御入力は、圧力データ、質量流量データ、振動データ、歪みデータ、温度データ、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ヒータシステムを制御するためのプロセス制御システムであって、前記プロセス制御システムによって生成される中間データに基づいて前記ヒータシステムの出力制御を生成するように構成され、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行可能な命令を備える非一時的コンピュータ可読媒体と
を備え、前記命令は、
前記中間データを監視することと、
前記中間データを、内部プロセス制御入力、外部ヒータ制御入力、前記出力制御、またはそれらの組み合わせを含む相関データに関連付けることと、
前記中間データと前記相関データとの間の関係を定義するモデルを生成することと、
前記モデルに基づいて前記ヒータシステムの状態を識別することと、
前記ヒータシステムの前記識別された状態に基づいて選択的に是正措置を行うことと
を備える、プロセス制御システム。
【請求項17】
前記中間データは、比例ゲインデータ、積分ゲインデータ、微分ゲインデータ、前記プロセス制御システムのコントローラゲイン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載のプロセス制御システム。
【請求項18】
前記プロセス制御システムは、一次コントローラおよび二次コントローラを有するカスケード制御システムを含み、前記中間データは、前記カスケード制御システムのループデータを含む、請求項16に記載のプロセス制御システム。
【請求項19】
前記モデルは、前記中間データおよび前記相関データに基づいて前記ヒータシステムの前記状態を予測するように構成され、
前記命令は更に、
前記モデルと、前記中間データと前記相関データとの間の公称関係を定義する公称モデルとを比較することと、
前記公称モデルと前記モデルとの間の偏差を決定することであって、前記ヒータシステムの前記識別された状態は、前記偏差に更に基づくことと
を備える、請求項16に記載のプロセス制御システム。
【請求項20】
前記内部プロセス制御入力は、前記ヒータシステムの性能特性の所望の設定値、前記ヒータシステムを制御するための設定値、プロセス変数、前記プロセス変数の測定値、前記熱システムに関連するアラート、またはそれらの組み合わせを備える、請求項16に記載のプロセス制御システム。
【請求項21】
工業プロセスの熱システムを制御する方法であって、前記熱システムは、ヒータシステムと、プロセス制御システムによって生成される中間データに基づいて前記ヒータシステムの出力制御を生成するように構成された前記プロセス制御システムとを含み、
前記中間データを相関データに関連付けることであって、前記相関データは、内部プロセス制御入力、外部ヒータ制御入力、前記出力制御、またはそれらの組み合わせを含むことと、
前記中間データと前記相関データとの間の関係を定義するモデルを生成することと、
前記モデルと、前記中間データと前記相関データとの間の公称関係を定義する公称モデルとを比較することと、
前記公称モデルと前記モデルとの前記比較に基づいて前記ヒータシステムの状態を識別することと、
前記ヒータシステムの前記識別された状態に基づいて選択的に是正措置を行うことと
を備える方法。
【請求項22】
前記中間データは、比例ゲインデータ、積分ゲインデータ、微分ゲインデータ、前記プロセス制御システムのコントローラゲイン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記プロセス制御システムは、一次コントローラおよび二次コントローラを有するカスケード制御システムを含み、前記中間データは、前記カスケード制御システムのループデータを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒータシステムの前記識別された状態は、前記公称モデルと前記モデルとの間の偏差に更に基づき、前記偏差は、比例ゲイン偏差、積分ゲイン偏差、微分ゲイン偏差、またはそれらの組み合わせを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記内部プロセス制御入力は、前記ヒータシステムの性能特性の所望の設定値、前記ヒータシステムを制御するための設定値、プロセス変数、前記プロセス変数の測定値、前記熱システムに関連するアラート、またはそれらの組み合わせを備える、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記外部ヒータ制御入力は、前記プロセス制御システムの外部デバイスによって生成される出力である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記内部プロセス制御入力は、圧力データ、質量流量データ、振動データ、歪みデータ、温度データ、またはそれらの組み合わせを備える、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロセス制御システムおよびヒータシステムを有する熱システムを動作させるための方法に関する。
【0002】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年7月27日に出願された米国仮特許出願63/056,810号の優先権および利益を主張するものである。上記出願の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本項における記載は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、先行技術を構成するものではない場合がある。
【0004】
工業プロセスのための熱システムは、一般に、ヒータシステムと、ヒータシステムの動作を監視および制御するためのプロセス制御システムとを含む。プロセス制御システムは、たとえば温度などのヒータシステムのプロセス変数を設定値に制御するように構成された比例積分微分(PID)型であってよい。プロセス変数は、熱システム内の様々な要因による影響を受けるだけでなく、熱システムの制御外であるが工業プロセスの範囲内にある外部要因による影響も受ける。これらの外部要因は、たとえば加熱されるウェハの種類、プロセスチャンバに注入されるガス、および/または台座ヒータにウェハを固定するためのチャンバ内の圧力差など、熱システムによって制御不可能な要因であり得る。プロセス変数に影響を及ぼすいくつかの要因を監視するためにセンサおよび/またはアルゴリズム計算が用いられ得るが、正確かつ信頼できるデータ、特に外部要因を示すデータを得ることは、特定の工業プロセスに関して困難な場合がある。
【発明の概要】
【0005】
本項は、本開示の一般的な概要を提供するものであり、本開示の全範囲または全ての特徴を包括的に開示するものではない。
【0006】
本開示は、工業プロセスの熱システムを制御する方法を提供する。熱システムは、ヒータシステムと、プロセス制御システムによって生成される中間データに基づいてヒータシステムの出力制御を生成するように構成されたプロセス制御システムとを含む。この方法は、中間データを監視することと、中間データを相関データに関連付けることとを含み、相関データは、内部プロセス制御入力、外部ヒータ制御入力、出力制御、またはそれらの組み合わせを含む。方法は、中間データと相関データとの間の関係を定義するモデルを生成することと、モデルに基づいてヒータシステムの状態を識別することと、ヒータシステムの識別された状態に基づいて選択的に是正措置を行うこととを含む。
【0007】
いくつかの形態において、中間データは、比例ゲインデータ、積分ゲインデータ、微分ゲインデータ、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの形態において、出力制御は、比例ゲインデータと、積分ゲインデータと、微分ゲインデータとの和に基づく。いくつかの形態において、プロセス制御システムは、一次コントローラおよび二次コントローラを有するカスケード制御システムを含み、中間データは、カスケード制御システムのループデータを含む。いくつかの形態において、出力制御は、二次コントローラの比例ゲインデータと、二次コントローラの積分ゲインデータと、二次コントローラの微分ゲインデータとの和に基づく。いくつかの形態において、中間データは、プロセス制御システムのコントローラゲインを含む。いくつかの形態において、モデルは、数学モデル、機械学習モデル、またはそれらの組み合わせである。いくつかの形態において、機械学習モデルは、中間データおよび相関データに基づいてヒータシステムの状態を予測するように構成された教師あり学習モデルである。いくつかの形態において、方法は、モデルと、中間データと相関データとの間の公称関係を定義する公称モデルとを比較することと、公称モデルとモデルとの間の偏差を決定することとを含み、ヒータシステムの識別された状態は、偏差に更に基づく。いくつかの形態において、偏差は、比例ゲイン偏差、積分ゲイン偏差、微分ゲイン偏差、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの形態において、内部プロセス制御入力は、ヒータシステムの性能特性の所望の設定値、ヒータシステムを制御するための設定値、プロセス変数、プロセス変数の測定値、熱システムに関連するアラート、またはそれらの組み合わせを備える。いくつかの形態において、是正措置は、ヒータシステムの識別された状態に基づいてヒータシステムの電力を制御することを含む。いくつかの形態において、是正措置は、ヒータシステムの識別された状態に基づいてアラートを放送することを含み、アラートは、プロセス制御システムに通信可能に結合された導管内の材料蓄積、プロセス制御システムに通信可能に結合された抵抗加熱素子の公称熱偏差、またはそれらの組み合わせを示す。いくつかの形態において、外部ヒータ制御入力は、プロセス制御システムの外部入力コントローラによって生成される出力である。いくつかの形態において、内部プロセス制御入力は、圧力データ、質量流量データ、振動データ、歪みデータ、温度データ、またはそれらの組み合わせを備える。
【0008】
本開示は、ヒータシステムを制御するためのプロセス制御システムを提供し、プロセス制御システムは、プロセス制御システムによって生成される中間データに基づいてヒータシステムの出力制御を生成するように構成される。プロセス制御システムは、プロセッサと、プロセッサによって実行可能な命令を備える非一時的コンピュータ可読媒体とを含む。命令は、中間データを監視することと、中間データを相関データに関連付けることとを含み、相関データは、内部プロセス制御入力、外部ヒータ制御入力、出力制御、またはそれらの組み合わせを含む。命令は、中間データと相関データとの間の関係を定義するモデルを生成することと、モデルに基づいてヒータシステムの状態を識別することと、ヒータシステムの識別された状態に基づいて選択的に是正措置を行うこととを含む。
【0009】
いくつかの形態において、モデルは、中間データおよび相関データに基づいてヒータシステムの状態を予測するように構成される。いくつかの形態において、命令は更に、モデルと、中間データと相関データとの間の公称関係を定義する公称モデルとを比較することと、公称モデルとモデルとの間の偏差を決定することとを含み、ヒータシステムの識別された状態は、偏差に更に基づく。
【0010】
本開示は、工業プロセスの熱システムを制御する方法を提供する。熱システムは、ヒータシステムと、プロセス制御システムによって生成される中間データに基づいてヒータシステムの出力制御を生成するように構成されたプロセス制御システムとを含む。この方法は、中間データを相関データに関連付けることを含み、相関データは、内部プロセス制御入力、外部ヒータ制御入力、出力制御、またはそれらの組み合わせを含む。方法は、中間データと相関データとの間の関係を定義するモデルを生成することと、モデルと、中間データと相関データとの間の公称関係を定義する公称モデルとを比較することと、公称モデルとモデルとの比較に基づいてヒータシステムの状態を識別することと、ヒータシステムの識別された状態に基づいて選択的に是正措置を行うこととを含む。
【0011】
更なる適用領域は、本明細書に提供される説明から明らかになる。理解すべき点として、本説明および具体例は、例示のみを目的とすることが意図されており、本開示の範囲を限定することは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示が適切に理解されるように、以下、添付図面を参照しながら、例として与えられる本開示の様々な形態が説明される。
【0013】
【
図1】本開示に係るプロセス制御システム、ヒータシステム、および中間制御システムを有する熱システムのブロック図である。
【
図2】本開示に係るプロセス制御システムの例である。
【
図3】本開示に係るプロセス制御システムの他の例である。
【
図4】本開示に係るプロセス制御システムの他の例である。
【
図5】本開示に係る中間制御システムを有する熱システムを動作させるためのフローチャートである。
【0014】
本明細書で説明される図面は、単に例示を目的としており、いかなるようにも本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明は、本質的に単なる典型例であり、本開示、応用、または用途を限定することは意図されていない。理解すべき点として、図面全体を通して、対応する参照番号は、同様または対応する部品および特徴を示す。
【0016】
図1を参照すると、プロセス制御システム100と、中間制御システム200と、ヒータ302を有するヒータシステム300とを含む熱システム10が示される。一形態において、プロセス制御システム100は、ヒータシステム300、具体的にはヒータ302の動作を制御するように構成される。本明細書で更に説明するように、本開示の中間制御システム200は、リアルタイム中間データ入力を用いてヒータシステム300の状態を予測するために、中間データに基づいてモデル(たとえば数学モデル、機械学習モデル、またはそれらの組み合わせ)を定義するように構成される。
【0017】
熱システム10は、加熱される負荷の熱特性を制御するための様々な種類の工業プロセスの一部であってよい。たとえば、熱システム10は、ヒータシステム300がウェハ(たとえば負荷)を加熱するための台座ヒータを含む半導体プロセスの一部であってよい。この例では、プロセス制御システム100は、外部熱制御および内部熱制御に基づいて変化し得る台座ヒータの熱プロファイルを制御するように構成され得る。たとえば、内部熱制御は、熱システム10によって制御可能な様々なパラメータの中でも特に、台座ヒータに供給される電力、熱システム10の動作モード(たとえば、ヒータシステム300を制御するために定義された様々な動作モードの中でも特に、ユーザからの入力に基づいてヒータ302への電力を制御する手動モード、台座ヒータの温度を段階的に高くするコールドスタートモード、台座ヒータを温度設定値に維持する定常モード)、および/または、台座ヒータがマルチゾーンヒータである場合、台座ヒータの異なるゾーンの動作状態を含み得るが、これらに限定されない。外部熱制御の例は、熱システム10によって制御不可能な様々な要因の中でも特に、加熱されるウェハの種類、台座ヒータを有するプロセスチャンバに注入されるガス、および/または台座ヒータにウェハを固定するためのチャンバ内の圧力差を含むが、これらに限定されない。
【0018】
他の例では、熱システム10は、導管のネットワークを通って流れる流体を加熱するために、半導体プロセスの除害システムにおいて用いられ得る。一形態において、ヒータシステム300は、内部の流体を加熱するための導管に巻き付けられる複数の可撓性ヒータを含んでよい。また別の例では、熱システム10は、導管を通って流れる、または容器内に供給された流体(たとえば気体および/または液体)を直接加熱するために、加熱システム300の一部としてカートリッジヒータを利用してよい。
【0019】
加熱システム300を制御するために、様々なプロセス制御システム100が用いられ得る。プロセス制御システム100の例は、本出願と共同所有され、参照によってその内容の全体が本明細書に組み込まれる、2018年8月10日に出願された、“SYSTEM AND METHOD FOR CONTROLLING POWER TO A HEATER”と題された米国特許第10,908,195号に開示される。このプロセス制御システム例において、コントローラは、ヒータの1または複数の動作設定を定義する状態モデル制御(たとえばパワーアップ制御、ソフトスタート制御、セットレート制御、および定常制御)を選択し、状態モデル制御およびヒータの電気特性(たとえば電流、電圧、またはそれらの組み合わせ)に基づいて、ヒータに供給される電力を制御するように構成される。
【0020】
プロセス制御システム100の他の例は、本出願と共同所有され、参照によってその内容の全体が本明細書に組み込まれる、2019年3月6日に出願された、“CONTROL SYSTEM FOR CONTROLLING A HEATER”と題された同時係属中の出願である米国出願番号16/294,201号に開示される。このプロセス制御システム例では、2つ以上の補助コントローラが、加熱システム300の性能特性に基づいて加熱システム300の複数のゾーンへの電力を制御し、一次コントローラは、性能特性に基づいて各ヒータゾーンに関する動作設定値を提供する。
【0021】
追加のプロセス制御システム100の例は、本出願と共同所有され、参照によってその内容の全体が本明細書に組み込まれる、2019年9月12日に出願された、“SYSTEM AND METHOD FOR A CLOSED-LOOP BAKE-OUT CONTROL”と題された同時係属中の出願である米国出願番号16/568,757号に開示される。このプロセス制御システム例において、コントローラは、ヒータの測定された性能特性、電力設定値、および電力制御アルゴリズムに基づいて動作電力レベルを決定するように構成され、ベイクアウト電力レベルを決定するように構成される。コントローラは、動作電力レベルとベイクアウト電力レベルとのうちの低い方のレベルに基づいて、加熱システム300に適用される電力レベルを選択する。
【0022】
プロセス制御システム100の他の例は、本出願と共同所有され、参照によってその内容の全体が本明細書に組み込まれる、2020年11月4日に出願された、“CONTROL AND MONITORING SYSTEM FOR GAS DELIVERY SYSTEM”と題された同時係属中の出願である米国出願番号17/089,447号に開示される。この例では、プロセス制御システムは、仮想マッピングルーティン、測定されたシステムデータ、および/または統計分析に基づいて、流体フローラインを通って流れるガスおよびそれらの熱システム10への影響を視覚化する仮想画像を生成する。
【0023】
熱システム10の特定の用途が本明細書に提供されるが、本開示は、負荷を加熱するための熱システムを有する他の工業プロセスに適用可能であり得る。これらの用途は、例として、射出成形プロセス、熱交換器、排ガス後処理システム、およびエネルギプロセスなどを含んでよい。また、加熱システム300のヒータ302は、本明細書に提供される例に限定されるべきではなく、例として層状ヒータ、カートリッジヒータ、管状ヒータ、高分子ヒータ、可撓性ヒータなどを含んでよい。各用途において、本明細書で説明するように、中間制御システム200によって外部制御および内部制御が識別および利用され得る。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「中間データ」という用語は、出力制御を決定するためにプロセス制御システム100によって生成されるデータを指す。たとえば、中間データは、比例ゲインデータ、積分ゲインデータ、および/または微分ゲインデータ、(プロセス制御システム100としての)カスケード制御システムのループデータ、および/またはプロセス制御システム100のコントローラゲインなどを含んでよい。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「プロセス変数」という用語は、ヒータシステム300の測定可能な性能特性を指す。たとえば、後述するようにヒータシステム300が2線式ヒータシステムである場合、性能特性は、ヒータ302の温度、抵抗、電圧、および/または電流を含んでよい。他の形態において、性能特性は、ヒータシステム300と共に配置された個別センサを用いて測定され得る。他の例として、プロセス変数は、ヒータ302に印加される電力を含んでよい。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「出力制御」という用語は、ヒータシステム300のプロセス変数を制御するための出力を指し、中間データに基づいている。たとえば、出力制御は、PID制御の出力、ヒータシステム300に供給される電力量、および/またはヒータシステム300への電力を制御するための他の適切なパラメータを含んでよいが、これらに限定されず、中間データに基づいている。他の例として、出力制御は、(プロセス制御システム100としての)カスケード制御システムの二次コントローラの比例データ、積分ゲインデータ、および微分ゲインデータの合計を含んでよい。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「内部プロセス制御入力」という用語は、熱システム10内のシステム/センサからの測定データ(たとえば圧力データ、質量流量データ、振動データ、歪みデータ、温度データなど)を指し、プロセス変数、プロセス変数の測定値、ヒータシステム300を制御するための設定値、および/またはヒータシステム300の性能特性を含んでよい。内部プロセス制御入力は、ユーザによって提供され得る、またはプロセス制御システム100によって定義され得る様々な測定可能な設定値の中でも特に、たとえばプロセス変数の目標値、温度設定値、電力設定値などの設定値も含んでよい。内部プロセス制御入力は、ヒータシステム300の異常動作に応答して熱システム10によって発行されるアラートを示すデータも含んでよい。
【0028】
本明細書で用いられる場合、「外部ヒータ制御入力」という用語は、熱システム10の外側にある外部コントローラおよび/またはシステムを含み得る外部入力デバイス320からの入力を指す。外部入力コントローラ320の例は、様々な外部デバイス/システムの中でも特に、フィードフォワードコントローラ、熱システム10の外側に配置されたセンサ、工業プロセスにおける異なるサブシステムを動作させる制御システム(複数も可)、工業プロセスの動作状態に関する情報を提供するために技術者によって操作可能な人間機械インタフェースを含むが、これらに限定されない。一形態において、外部ヒータ制御入力は、熱システム10によって制御および/または生成されない様々な外部ヒータ制御入力の中でも特に、技術者からの入力/情報、熱システム10の性能に影響を及ぼし得る工業プロセスにおける外乱(たとえば、過温度警報、過電流警報、過電圧警報、漏洩限界警報、シャットダウン警報、是正処置警報など、識別された異常動作を示す診断コードまたはアラート)、熱システム10の外側に配置されたセンサからのデータ、外部サブシステムの動作状態を含んでよいが、これらに限定されない。
【0029】
一形態において、ヒータシステム300は2線式ヒータシステムであってよく、この場合、ヒータ302は、熱を生成し、ヒータ302の性能特性を測定するためのセンサとして動作するように動作可能である。たとえば、ヒータ302は、抵抗加熱素子の抵抗に基づいて抵抗加熱素子の平均温度を測定するためのセンサとして動作する1または複数の抵抗加熱素子を含む。具体的には、そのような2線式ヒータシステムの例は、本出願と共同所有され、その内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,196,295号に開示される。2線式システムにおいて、熱システムは、カスタマイズ可能なフィードバック制御システムに電力、抵抗、電圧、および電流を組み込む制御にヒータ設計を融合する熱システムであり、カスタマイズ可能なフィードバック制御システムは、1または複数のこれらのパラメータ(すなわち電力、抵抗、電圧、および電流)を制限しながら他を制御する。一形態において、プロセス制御システム100は、抵抗を決定することによって抵抗加熱素子の温度を決定するために、抵抗加熱素子に供給される電流、電圧、および電力の少なくとも1つを監視するように構成される。
【0030】
他の応用例において、2線式ヒータとして、ヒータ302は、ヒータ302の温度を測定するための温度感知電力ピンを含むように構成される。抵抗加熱素子の温度を測定するための熱電対として電力ピンを用いることは、本出願と共同所有され、その内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2015年5月29日に出願された、“RESISTIVE HEATER WITH TEMPERATURE SENSING POWER PINS”と題された、出願人の同時係属中の出願である米国出願番号14/725,537号に開示される。一般に、ヒータ302の抵抗加熱素子およびプロセス制御システム100は、それぞれ第1の接合部および第2の接合部を画定する第1の電力ピンおよび第2の電力ピンを介して接続される。第1および第2の電力ピンは、ヒータ302の抵抗加熱素子の温度を測定するための熱電対感知ピンとして機能する。第1および第2の電力ピンと通信しているプロセス制御システムは、第1および第2の接合部における電圧の変化を測定するように構成される。具体的には、プロセス制御システムは、接合部におけるミリボルト(mV)変化を測定し、その後、これらの電圧変化を用いて、抵抗加熱素子の平均温度を計算する。
【0031】
2ヒータシステムへの代替または追加として、ヒータシステム300は、ヒータ302の性能特性を測定するための1または複数の離散センサを含んでよい。たとえば、温度センサはヒータ302に設けられてよく、プロセス変数として温度測定値を提供するためにプロセス制御システム100に通信可能に結合される。一形態において、圧力センサ、流量センサ、電圧センサ、および/または電流センサなどの少なくとも1つが、対応する性能特性を取得するためにヒータ302に設けられる。
【0032】
プロセス制御システム100は、ヒータシステム300を制御するための出力制御を決定するために中間データを生成する1または複数の制御プロセスに基づいてヒータシステム300を制御するように構成される。一形態において、プロセス制御システム100は、制御ループモジュール102および電力制御モジュール104を含む。制御ループモジュール102は、設定値(ヒータシステムを制御するための様々な測定可能なパラメータのうち、温度、電力、抵抗など)の少なくとも1つ、およびヒータシステム300の測定可能な性能特性を示すプロセス変数に基づいて出力制御を決定するために制御プロセス(複数も可)を行うように構成される。
【0033】
一形態において、
図2を参照すると、制御ループモジュール102は、総和モジュール103、比例制御モジュール105、積分制御モジュール106、微分制御モジュール108、および総和モジュール110を含むPIDコントローラである制御ループモジュール102-1として提供され得る。制御ループモジュール102-1は、比例制御モジュール105、積分制御モジュール106、および微分制御モジュール108を有するものとして示されるが、理解すべき点として、制御ループモジュール102-1は、他の変形例においてこれらのモジュールの全てを含まなくてもよい。たとえば、制御ループモジュールは、比例制御モジュールおよび積分制御モジュールを有するPIモジュールであってよい。
【0034】
動作中、設定値およびプロセス変数に基づいて、総和モジュール103は、設定値とプロセス変数との間の差に基づいて誤差値を決定し、誤差値をモジュール105、106、および108に提供する。比例制御モジュール105は、誤差値と比例ゲイン値との積に基づく比例ゲインデータを決定する。積分制御モジュール106は、誤差値の積分と積分ゲイン値との積に基づく積分ゲインデータを決定する。微分制御モジュール108は、誤差値の微分と微分ゲイン値との積に基づく微分ゲインデータを決定する。いくつかの形態では、比例ゲイン値、積分ゲイン値、および微分ゲイン値は、たとえば特定の立ち上がり時間、オーバシュートの大きさ、整定時間、定常誤差など、ヒータシステム300の特定の応答特性を実現するために、選択的に選択され得る。その後、総和モジュール110は、比例ゲインデータ、積分ゲインデータ、および微分ゲインデータの和を出力制御として電力制御モジュール104に提供する。
【0035】
具体例として、制御ループモジュール102-1は、ヒータ302に印加される電力が電力設定値と概ね等しくなるように、ヒータシステム300のヒータ302に適用される動作電力レベルを計算するように構成される。たとえば一形態において、制御ループモジュール102-1は、測定された動作電流およびヒータ302に印加される入力電圧(すなわちプロセス変数)に基づいて、ヒータ302に供給される電力を計算する。総和モジュール103は、印加される測定電力と設定値との間の差を決定し、比例制御モジュール105、積分制御モジュール106、および微分制御モジュール108は、出力制御として、ヒータ302の測定電力と電力設定値との間の差を低減するために必要な電力レベル(すなわち動作電力レベル)を決定する。
【0036】
他の例として、
図3に示すように、制御ループモジュール102-2は、制御ループモジュール102として、たとえばPID選択モジュール116を介してヒータシステム300を選択的に監視および制御する電力PID制御モジュール112および温度PID制御モジュール114などの複数のPID制御モジュールを含んでよい。電力PID制御モジュール112は、
図2を参照して上述した制御ループモジュール102-1の機能を行うように構成され得る。温度PID制御モジュール114は、ヒータ302の温度が温度設定値と概ね等しくなるように、ヒータ302の動作温度を計算するように構成される。たとえば一形態において、温度PID制御モジュール114は、ヒータ302の抵抗/インピーダンスおよび/またはヒータシステム内に配置された1または複数の温度センサからのデータ(すなわちプロセス変数)に基づいてヒータ302の温度を計算する。温度PID制御モジュール114は、測定温度と温度設定値との間の差を決定し、出力制御として、ヒータ302の測定温度と温度設定値との間の差を低減するために必要な電力レベルを決定する。
【0037】
追加の例として、
図4に示すように、制御ループモジュール102-3は、制御ループモジュール102として、集合的にカスケード制御システムを形成する一次コントローラ118および二次コントローラ120を含む。一次コントローラ118(たとえば電力PID制御モジュール112)および二次コントローラ120(たとえば温度PID制御モジュール114)は、
図2を参照して上述した制御ループモジュール102-1の機能を行うように構成され得る。ただし、この形態では、一次コントローラ118の出力制御は、設定値変数として二次コントローラ120に提供され、二次コントローラ120は、一次コントローラ118から得られた設定値変数とプロセス変数との間の差を決定して出力制御を生成する。すなわち、二次コントローラ120は、二次コントローラ120の比例ゲインデータと、二次コントローラ120の積分ゲインデータと、二次コントローラ120の微分ゲインデータとの和に基づいて出力制御を生成してよい。
【0038】
図1を参照すると、一形態において、制御ループモジュール102は、中間制御システムからの状態制御信号に基づいて、出力制御を決定し、具体的にはヒータシステム300への電力を制御する。本明細書で更に説明するように、状態制御信号は、ヒータシステム300の状態を識別し、状態に基づいてヒータシステム300の電力を制御するための命令を含んでよい。例として、ヒータシステム300の状態は、たとえばヒータ302の故障、ヒータ302の隣接したゾーン間の不所望の熱結合、ヒータ302の不所望の熱抵抗、熱システム10の流体ラインの閉塞などの異常動作であるがこれらに限定されない熱システム10および/または工業プロセスの異常動作を示してよい。ヒータシステム300の状態が異常動作として提供される場合、状態制御信号は、異常動作を示す情報を提供し、場合によっては、たとえばヒータシステムをオフにし、またはプロセス制御システム100のゲインパラメータを再較正してヒータシステム300の損傷を抑えるなど、異常動作に対処するための命令を更に提供する。したがって、制御ループモジュール102は、ヒータ302への電力をオフにするために電力制御モジュール104への出力制御を変更してよく、異常動作を示すアラート(たとえばメッセージおよび/またはオーディオ音)を発行してよい。
【0039】
制御ループモジュール102からの出力制御に基づいて、電力制御モジュール104は、ヒータシステム300への電力を制御する。一形態において、電力制御モジュール104は、電源(不図示)に電気的に結合され、電源からの電力を選択された電力レベルに調整し、調整された電力をヒータ302に印加するための電力調整器回路(不図示)を含んでよい。予め定義されたアルゴリズムおよび/またはテーブルを用いて、電力制御モジュール104は、出力制御に基づいてヒータシステム300の電力レベルを選択するように構成される。
【0040】
プロセス制御システム100は、
図1~4においてPID制御モジュールとして示され説明されるが、理解すべき点として、プロセス制御システム100は、様々な他の制御ループシステムであってよい。また、プロセス制御システム100は、是正措置(たとえばヒータシステム300への電力出力の調整、アラートの発行)を行うべきかを決定するために中間制御システム200からの状態制御信号を分析するための個別のモジュールを含むように構成され得る。なお、プロセス制御システム100を形成するものとして特定のモジュールが提供されるが、プロセス制御システム100は、たとえばヒータシステム300の異常動作を検出するための診断モジュールなど、ヒータシステム300の動作を制御するための他のモジュールを含んでよい。
【0041】
一形態において、中間制御システム200は、プロセス制御システム100からの中間データおよび相関データを分析して、中間データと相関データとの間の関係を定義する1または複数のモデル(たとえば機械学習モデル、数学モデルなど)を生成するように構成される。より具体的には、モデル(複数も可)を生成し、最終的にはヒータシステム300の状態にモデルの出力を関連付けるシステム状態モデル(すなわちシステム状態モジュール)を生成するために、中間データおよび相関データの履歴データセットが格納され、経時的に分析される。一度定義されると、リアルタイムデータ入力(すなわちリアルタイム中間データおよび相関データ)は、ヒータシステム300の状態を決定するためにモデル(複数も可)およびシステム状態モジュールによって分析され、中間制御システムは、ヒータ302への出力制御信号を制御するために、状態制御信号をプロセス制御システム100に提供および出力する。以下、中間データおよび相関データは、集合的に「中間相関データ」と称される場合がある。本明細書で説明する機能を行うために、本開示の中間制御システム200は、履歴中間相関データおよび/またはリアルタイム中間相関データを格納するための1または複数のデータベース、プロセス制御システム100などの外部システムとデータを交換するための通信インフラ、および中間相関データを処理するためのコンピューティングシステムを含んでよい。
【0042】
一形態において、中間制御システム200は、相関モジュール202および関係モジュール204を含む中間データモデル生成器201と、システム状態モジュール206とを含む。一形態において、相関モジュール202は、中間データ(たとえば比例ゲイン値、積分ゲイン値、微分ゲイン値)および相関データ(たとえば内部プロセス制御入力、出力制御および/または外部ヒータ制御入力)を取得し、たとえば中間相関データのタイムスタンプに基づく関連付け方式で中間データおよび相関データをデータベース(不図示)に格納するように構成される。例として、制御ループモジュール102からの比例ゲイン値、積分ゲイン値、および/または微分ゲイン値(集合的にPID値)は、熱システム10および/または工業プロセス内に配置されたセンサ(不図示)からのデータ、および工業プロセスおよび/または熱システム内で発行されたアラートと関連付けて格納される。
【0043】
一形態において、関係モジュール204は、中間相関データ間の関係、具体的にはモデル(複数も可)208を決定するように構成される。すなわち、適切なデータモデリング技術を用いて、関係モジュール204は、中間相関データ間の傾向/関係を識別する。例として、関係モジュール204は、訓練ルーティン中に中間データと相関データとの間の公称関係(たとえば経時的に予測された比例ゲイン値を示す非線形回帰)を定義する公称モデルを(モデル(複数も可)208として)生成するために、たとえば線形、非線形、またはロジスティック回帰ルーティン、ランダムフォレストルーティン、サポートベクトルルーティンなどの様々な教師あり機械学習ルーティンを行うように構成される。また、関係モジュール204は、リアルタイム中間相関データ間の関係を示す教師あり学習モデルを(モデル(複数も可)208として)生成するために教師あり機械学習ルーティンを行うように構成され得る。理解すべき点として、関係モジュール204は、モデル(複数も可)208を生成するために教師なしまたは半教師あり学習ルーティン(たとえばクラスタ化ルーティン)を行ってもよい。
【0044】
モデル(複数も可)208に基づいて、中間データモデル生成器201は、リアルタイム中間相関データを分析するために用いられるシステム状態モジュール206を定義する。一形態において、中間データモデル生成器201は、継続的に中間相関データを分析してモデルを改良し、更にシステム状態モジュール206を改良する。システム状態モジュール206は中間制御システム200の一部として提供されるが、一度定義されると、システム状態モジュール206は、リアルタイム分析の応答時間を改善するためにプロセス制御システム100と共に用いられ得る。
【0045】
一形態において、システム状態モジュール206は、モデル(複数も可)208の可能な出力をヒータシステム300の1または複数の定義された状態と関連付ける。システム状態モジュール206は、そこに格納されたモデルを用いてリアルタイム中間相関データを処理して、複数の定義された状態の中からヒータシステム300の状態を識別し、識別された状態を状態制御信号として送信する。応用例において、システム状態モジュール206は、時間の関数としての変化に基づいてヒータ302の状態を識別し、それに応じて比例ゲイン値、積分ゲイン値、および微分ゲイン値の1つを調整してよい。本明細書で説明する機能を行うために、理解すべき点として、システム状態モジュール206は、モデル(複数も可)208の出力をヒータシステム300の定義された状態に関連付けるために機械学習訓練ルーティンを反復的に行ってよい。例として、機械学習訓練ルーティンは、様々なヒータシステム状態の中でも特に、たとえば流体フローシステム内の流体蓄積量、ヒータシステム300の抵抗加熱素子の熱偏差、ヒータシステム300の非整合ツール状態などのヒータシステム300の様々な状態で訓練データをタグ付けすることを含む教師あり学習ルーティンであってよい。
【0046】
例として、モデル208は、中間データの複数の反復間の変化をタイマデータの関数として定義してよく、システム状態モジュール206は、時間の関数としての変化に基づいてヒータシステム300の状態を識別し、それに応じて比例ゲイン値、積分ゲイン値、および微分ゲイン値の1つを調整してよい。たとえば、システム状態モジュール206は、(モデル208としての)数学モデルの比例ゲイン値の2回以上の反復間の有意な変化が、ヒータシステム300の状態として、ヒータシステム300が過剰な電力を消費していることを示すことを決定してよい。したがって、システム状態モジュール206は、比例ゲイン値の変化に関連付けられた状態(たとえばヒータシステム300の不所望の熱結合)を示す状態制御信号を送信してよい。また、状態制御信号は、プロセス制御システム100に、比例ゲイン値を調整(たとえば増加/減少)するように命令してよい。
【0047】
他の例として、プロセス制御システム100が温度制御ルーティンを実行する時、制御ループモジュール102は、(集合的にPIDゲイン値と称される)比例ゲイン値、積分ゲイン値、および/または微分ゲイン値を選択するためにヒータシステム300の応答を利用する自動調整ルーティンを実行してよい。自動調整ルーティンは、定期的に実行されてよく、自動調整ルーティンが実行される度にPIDゲイン値が記録され得る。システム状態モジュール206は、経時的にPIDゲイン値の公称モデルと比較したPIDゲイン値の少なくとも1つにおける偏差が、ヒータシステム300の状態として、熱システム10の特定の用途に関して識別される様々な熱応答の中でも特に、たとえばヒータ絶縁破壊、ヒータシステム300に結合された流体フローシステムの導管内の流体蓄積など、ヒータシステム300の熱応答における変化を示すことを決定するように構成され得る。
【0048】
他の例として、熱システム10および/または工業プロセスによって発行された出力制御およびアラートを含む相関データを用いて、関係モジュール204は、中間データを出力制御および/またはアラートデータに関連付け、今後のアラートを予測するための対応モデルを決定してよい。その後、システム状態モジュール206は、ヒータ302の状態を起こり得るアラートとして識別し、アラートに基づいて是正処置を提供してよい。たとえば、システム状態モジュール206は、教師あり機械学習モデルに基づいて、流体フローシステムの目標を特定の設定値温度まで加熱する出力制御を生成する時、ヒータシステム300が緊急シャットダウンプロトコルを高頻度で開始し、シャットダウンアラートを生成することを決定してよい。したがって、システム状態モジュール206は、ヒータシステム300の状態として、起こり得るシャットダウンを識別する状態制御信号、およびシャットダウンの可能性を抑制するためにPIDゲイン値の少なくとも1つを調整する命令を送信してよい。
【0049】
プロセス制御システム100、中間制御システム200、およびヒータシステム300は個別のシステムとして示されるが、理解すべき点として、プロセス制御システム100、中間制御システム200、およびヒータシステム300の少なくとも1つは、単一のシステムとして実装されてもよい。たとえば、中間制御システム200は、プロセス制御システム100の一部として提供され得る。一形態において、中間制御システムは、プロセス制御システム100の位置と異なる位置に配置されてよく、無線通信ネットワーク、熱システム10内に配置された1または複数のエッジコンピューティングデバイス、またはそれらの組み合わせを介してプロセス制御システム100と通信してよい。
【0050】
図5を参照すると、本開示の中間制御システムを用いてヒータシステムを制御するためのルーティン500の例を示すフローチャートが示される。504において、中間制御システムは、プロセス制御システム100によって生成された中間データを監視する。508において、中間制御システム200は、中間データを相関データに関連付ける。例として、508において、中間制御システムは、PIDゲインデータを、ヒータ303を特定の温度に設定する要求を示す出力制御または特定の電圧および/または電流値をヒータ302に供給する要求を示す出力制御に関連付ける。他の例として、508において、中間制御システム200は、PIDゲインデータを、ヒータシステム300の半導体ツール整合を示す外部入力デバイス320からの外部ヒータ制御入力に関連付ける。また別の例として、508において、中間制御システム200は、PIDゲインデータを、ヒータシステムのネットワークに含まれる別のヒータシステムに提供される外部入力デバイス320からの外部ヒータ制御入力に関連付ける。
【0051】
512において、中間制御システム200は、中間データと相関データとの間の関係を定義するモデルを決定する。516において、中間制御システム200は、モデルに基づいてヒータシステムの状態を識別する。例として、516において、中間制御システム200は、流体フローシステム内の流体蓄積量、ヒータシステムの抵抗加熱素子の熱偏差、非整合ツール状態などを検出してよい。520において、中間制御システム200は、たとえば識別された状態に基づいてヒータシステム300に提供される電力を制御するなど、ヒータシステム300の識別された状態に基づいて選択的に是正措置を行う。
【0052】
本明細書で特に明示されない限り、機械/熱特性、組成割合、寸法および/または公差、または他の特性を示す全ての数値は、本開示の範囲を説明する上で「約」または「およそ」という言葉で修飾されるものとして理解すべきである。この修飾語は、工業的慣行、材料、製造、および組立て公差、ならびに試験能力を含む様々な理由から所望される。
【0053】
要素間の空間的および機能的関係は、「接続」、「係合」、「結合」、「隣接」、「隣に」、「上に」、「上」、「下」、および「配置」を含む様々な用語を用いて説明される。「直接」であると明示的に説明されない限り、本開示において第1および第2の要素間の関係が説明される場合、その関係は、第1および第2の要素間に他の介在要素が存在しない直接関係であってよく、また、第1および第2の要素間に1または複数の介在要素が(空間的または機能的に)存在する間接関係であってもよい。本明細書で用いられる場合、A、B、およびCの少なくとも1つという表現は、非排他的論理和を用いた論理(A OR B OR C)を意味すると解釈すべきであり、「Aの少なくとも1つ、Bの少なくとも1つ、およびCの少なくとも1つ」を意味すると解釈すべきではない。
【0054】
本出願において、「モジュール」という用語は、「回路」という用語に置き換えられ得る。「モジュール」という用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル、アナログ、またはアナログ/デジタル混合ディスクリート回路、デジタル、アナログ、またはアナログ/デジタル混合集積回路、組み合わせ論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行するプロセッサ回路(共有、専用、またはグループ)、プロセッサ回路によって実行されるコードを格納するメモリ回路(共有、専用、またはグループ)、説明される機能を提供する他の適切なハードウェア構成要素、またはたとえばシステムオンチップのような上記の一部または全ての組み合わせを指し、またはその一部であり、または含んでよい。
【0055】
コードという用語は、ソフトウェア、ファームウェア、および/またはマイクロコードを含んでよく、プログラム、ルーティン、関数、クラス、データ構造、および/またはオブジェクトを指してよい。メモリ回路という用語は、コンピュータ可読媒体という用語のサブセットである。コンピュータ可読媒体という用語は、本明細書で用いられる場合、媒体を介して(たとえば搬送波上で)伝搬する一時的な電気または電磁信号を包含せず、したがって、有形かつ非一時的なものと見なされ得る。
【0056】
本開示の説明は、本質的に単なる典型例であり、したがって、本開示の要旨から逸脱しない変形例は、本開示の範囲内であることが意図される。そのような変形例は、本開示の主旨および範囲から逸脱するものと見なされてはならない。
【国際調査報告】