(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】結晶化時間が短いブテン-1ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/20 20060101AFI20230814BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20230814BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
C08L23/20
C08K3/34
C08L23/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505375
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2021071127
(87)【国際公開番号】W WO2022023408
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】グエッラ、シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】マルキーニ、ロベルタ
(72)【発明者】
【氏名】スパタロ、ステファーノ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB032
4J002BB171
4J002DJ046
4J002GM00
(57)【要約】
本開示は、特に管材の製造に適しているブテン-1ポリマー組成物に関し、該ブテン-1ポリマー組成物は、A)A)とB)の全重量に対して、97.5重量%~99.85重量%のブテン-1ポリマー又はポリマー組成物と、B)A)とB)の全重量に対して、0.15重量%~2.5重量%の粒子形態のタルクであって、45μm以下の体積基準粒径分布Dv(0.95)を有するタルクと、任意により、C)0.01重量%~2重量%のエチレンポリマーと、を含み、C)の量とはA)+B)+C)の全重量を意味し、合計100%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)A)とB)の全重量に対して、97.5重量%~99.85重量%、好ましくは98重量%~99.8重量%、より好ましくは98重量%~99.5重量%のブテン-1ポリマー、又は結晶性ブテン-1ホモポリマー、コポリマー又はこれらの組み合わせから選択されるポリマー組成物と、
B)A)とB)の前記全重量に対して、0.15重量%~2.5重量%、好ましくは0.2重量%~2重量%、より好ましくは0.5重量%~2重量%の粒子形態のタルクであって、レーザ回折により決定された45μm以下、好ましくは35μm以下、より好ましくは25μm以下、特に20μm以下の体積基準粒径分布Dv(0.95)を有し、いずれの場合にも、下限が好ましくは5μmであるタルクと、任意により、
C)0.01重量%~2重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%、より好ましくは0.01重量%~0.5重量%のエチレンポリマーと、を含み、
C)の量とは、A)+B)+C)の全重量を意味し、合計100%であるブテン-1ポリマー組成物。
【請求項2】
前記タルクB)は、以下の体積基準粒径分布の付加的な特徴のうちの少なくとも1つを有する請求項1に記載のブテン-1ポリマー組成物。
-100μm以下、50μm以下、又は30μm以下のDv(0.99)であって、いずれの場合にも、下限が好ましくは10μmであること、
-20μm以下、又は15μm以下のDv(0.90)であって、いずれの場合にも、下限が好ましくは3μmであること、
-10μm以下、又は8μm以下のDv(0.50)であって、下限が好ましくは2μmであること、
-5μm以下、又は4μm以下のDv(0.10)であって、下限が好ましくは1μmでること
【請求項3】
80℃以上の結晶化温度T
cを有し、
前記結晶化温度T
cは、1回の溶融サイクル後にDSC方法により10℃/分の走査速度で測定される請求項1又は2に記載のブテン-1ポリマー組成物。
【請求項4】
90℃~125℃、好ましくは100℃~125℃の溶融温度を有し、
前記溶融温度は、1回目の溶融及び冷却後、2回目の加熱運転中にDSC方法により10℃/分の走査速度で測定される請求項1又は2に記載のブテン-1ポリマー組成物。
【請求項5】
100~0.01g/10minのMIEを有し、
前記MIEはISO 1133-2:2011に準拠して190℃/2.16 kgで測定されたメルトフロー指数である請求項1又は2に記載のブテン-1ポリマー組成物。
【請求項6】
以下の付加的な特徴のうちの少なくとも1つを有する請求項1又は2に記載のブテン-1ポリマー組成物。
-90℃での90~160秒、特に100~150秒の半結晶化時間 -成形10日間後にISO 178:2019に準拠して測定された450~650 MPa、より好ましくは500~600 MPaの曲げ弾性率;
-ISO 6721-4:2019に準拠して23℃でDMTA分析によって1mm厚の圧縮形成板上で測定された、500~800 MPa、より好ましくは560~750 MPaの引っ張り弾性率;
-ISO 8986-2:2009に準拠して圧縮プラーク上でIS0180:2000に準拠して測定された3~15 kJ/m2、特に3~10 kJ/m
2の23℃でのアイゾッド(Izod)抗衝撃値;
-ISO 8986-2:2009に準拠して圧縮プラーク上でIS0180:2000に準拠して測定された、2~10 kJ/m
2、特に2~8 kJ/m
2の0℃でのアイゾッド抗衝撃値。
【請求項7】
ブテン-1ポリマーの成分A)は75℃以上の結晶化温度T
cを有し、
前記結晶化温度T
cは、1回の溶融サイクル後にDSC方法により10℃/分の走査速度で測定される請求項1又は2に記載のブテン-1ポリマー組成物。
【請求項8】
ブテン-1ホモポリマー及びコポリマーA)は90%~99%、より好ましくは95%~99%のアイソタクチック度を有し、
前記アイソタクチック度はNMR分析を用いてmmmmペンタッド/総ペンタッドで測定される請求項1又は2に記載のブテン-1ポリマー組成物。
【請求項9】
エチレンポリマーの成分C)はHDPE、LLDPE、LDPE及びこれらの混合物から選択される請求項1又は2に記載のブテン-1ポリマー組成物。
【請求項10】
請求項1又は2のポリオレフィン組成物を含む物品。
【請求項11】
管材又は管材ジョイントの形態である請求項10に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は短縮された結晶化時間を有するブテン-1ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブテン-1ポリマーは本分野で知られており、かつ広範な適用性を有する。特に、高結晶度を有するブテン-1ホモポリマー及びコポリマーは、通常、耐圧性、耐クリープ性、衝撃強度の点で優れた性能を有し、また、金属管材を代替し得る管材の製造に有用であることを特徴とする。
【0003】
管材業界におけるこれらの適用の重要な要件の1つとして、柔軟性と引っ張り強度との優れた組み合わせが考えられる。
【0004】
さらに、押し出すときに高速が図られるために、通常、押し出すことにより行われる管材成形プロセスにおいて、結晶化時間が十分に短くしなければならない。
【0005】
より一般的には、短結晶化時間は多くのポリマー成形プロセスにおいて有益なことであり、加工速度を高くするのに有利である。
【0006】
本分野では、造核剤を添加することにより前記性能に影響を与えることが知られている。これらの造核剤は通常ポリマーの溶融物からの結晶化を促進する異物(非均質核形成)である。
【0007】
結晶性ポリマーにおいて前記効果を示す造核剤が多く見つけられているが、オレフィンの造核分野では、1種のポリマーに対して有効な造核剤は密接に関連しているポリマーに対しても無効である可能性があり、このため、特定のポリマー、特に少なくとも2種の異なる結晶形を結晶化させたブテン-1ポリマーに最も適している造核剤の認識が困難である。
【0008】
さらに、用途によって必要な性能が異なることも考えられる。
【0009】
例えば、管材の使用中、高すぎる曲げ剛性(高曲げ弾性率)が
欠点になり、前記のように、所定の柔軟性が必要であるためである。
【0010】
しかしながら、曲げ弾性率の値が低すぎると、長期間耐圧性が低下する。
【0011】
また、低すぎる結晶化時間も欠点になり、所望の形状及び性能を有する管材を一貫性よく生産することが困難になるためである。
【0012】
このため、本分野では、使用されるポリマーの種類や必要な用途に応じて機械的性能と加工性能が最もバランスを取る造核剤を開発するために工夫している。
【0013】
例えば、JP2007186563によれば、ブテン-1ポリマーにエチレンビスステアリン酸アミドやタルクを添加することによって、管材を適用するときの性能のバランスを取ることが図られる。
【0014】
結晶化時間、曲げ弾性率および引っ張り強度の特に価値あるバランスを有するブテン-1ポリマー組成物が、特定の粒度を有するタルクを比較的低い量で添加することによって得られることが明らかになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このため、本開示は、
A)とB)の全重量に対して、97.5重量%~99.85重量%、好ましくは98重量%~99.8重量%、より好ましくは98重量%~99.5重量%のブテン-1ポリマー、又は結晶性ブテン-1ホモポリマー、コポリマー又はこれらの組み合わせから選択されるポリマー組成物と、
A)とB)の全重量に対して、0.15重量%~2.5重量%、好ましくは0.2重量%~2重量%、より好ましくは0.5重量%~2重量%の粒子形態のタルクであって、レーザ回折により決定された45μm以下、好ましくは35μm以下、より好ましくは25μm以下、特に20μm以下の、体積基準(ボリュメトリック)粒径分布Dv(0.95)を有し、いずれの場合にも下限が好ましくは5μmであるタルクと、任意により
0.01重量%~2重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%、より好ましくは0.01重量%~0.5重量%、特に0.01重量%~0.2重量%のエチレンポリマーと、を含み、
C)の量とはA)+B)+C)の全重量を意味し、合計100%であるブテン-1ポリマー組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「結晶性ブテン-1ホモポリマー及びコポリマー」とは、示差走査熱量測定(DSC)で測定したときに、前記ホモポリマー及びコポリマーA)が結晶化温度Tcに対応する少なくとも1つの結晶化ピークを示すことを意味する。
【0017】
したがって、DSC測定を行ったときに、成分A)、B)及び任意のC)を含む本発明のブテン-1ポリマー組成物も少なくとも1つの結晶化ピークを示し、したがって、結晶化温度Tcを示す。
【0018】
好ましくは、ブテン-1ポリマー成分A)のTc値は75℃以上、特に75℃~85℃の範囲である。
【0019】
本発明のブテン-1ポリマー組成物のTc値は好ましくは80℃以上、特に80℃~90℃の範囲である。
【0020】
本発明のブテン-1ポリマー組成物のTc値は好ましくはブテン-1ポリマー成分A)のTc値よりも少なくとも2℃、特に2℃~5℃よりも高い。
【0021】
前記結晶化温度は、1回の溶融サイクル後に測定され、走査速度は10℃/分である。
【0022】
したがって、溶融ポリマーサンプルを最初に溶融した後の冷却運転で、結晶化温度(例えば前のDSC使用)で測定され、このような結晶化温度はブテン-1ポリマーの結晶形IIに起因すると考えられる。
【0023】
結晶化ピークが1つ以上検出された場合、最も強いピークの温度をブテン-1ポリマー成分A)及び本発明のブテン-1ポリマー組成物の両方のTc値とする。
【0024】
前記したように、本発明のブテン-1ポリマー組成物は結晶化時間が短い。
【0025】
好ましくは、半結晶化時間が90℃では90~160秒、特に100~150秒である。
【0026】
この決定は、まず、サンプルを溶融し、次に所望の温度(この場合は90℃)まで急冷し、結晶化放熱によるヒートフローを測定するDSCによって行われる。熱伝達の積分は結晶化が完了するまで、すなわち、熱伝達が停止するまでの時間の関数として記録される。
【0027】
半結晶化時間は熱伝達積分がその最終値の半分に達する時間である。
【0028】
さらに、本発明のブテン-1ポリマー組成物は好ましく以下の付加的な特徴などのうちの少なくとも1つを有する。
成形10日間後に標準ISO 178:2019に準拠して測定された450~650 MPa、より好ましくは500~600 MPaの曲げ弾性率;
ISO 6721-4:2019に準拠して23℃でDMTA分析によって1 mm厚の圧縮成形板上で測定された、500~800 MPa、より好ましくは560~750 MPaの引っ張り弾性率;
ISO 8986-2:2009に準拠して圧縮プラーク上でIS0180:2000に準拠して測定された3~15 kJ/m2、特に3~10 kJ/m2の23℃でのアイゾッド(Izod)抗衝撃値;
ISO 8986-2:2009に準拠して圧縮プラーク上でIS0180:2000に準拠して測定された、2~10 kJ/m2、特に2~8 kJ/m2の0℃でのアイゾッド抗衝撃値。
【0029】
ブテン-1ホモポリマー及びコポリマーA)は、好ましくは、NMR分析を用いてmmmmペンタッド/総ペンタッドで測定したとき、又は0℃でキシレンに可溶な物質の重量の量で測定したときに、特に90%~99%、より好ましくは95%~99%のアイソタクチック度を有する高度アイソタクチックの線状ポリマーである。
【0030】
さらに、ブテン-1ホモポリマー及びコポリマーA)は、好ましくは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
50%~60%のX線結晶化度;
0.90~0.94 g/cm3の密度。
【0031】
好ましくは、ブテン-1ホモポリマー及びコポリマーA)、並びに成分A)、B)及び任意のC)を含む本発明のブテン-1ポリマー組成物は90~125℃、より好ましくは100~125℃の溶融温度(溶融ピーク)を有し、該溶融温度は、1回目の溶融及び冷却後、2回目の加熱運転中に前述DSC方法により10℃/分の走査速度で測定される。
【0032】
前記溶融温度はブテン-1ポリマーの結晶形IIに起因する。
【0033】
この場合も、溶融物ピークが1つ以上検出されると、最も追よいピークの温度を溶融温度とする。
【0034】
好適なブテン-1コポリマーは、好ましくは、5モル%以下、特に0.1モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~3モル%のオレフィン性コモノマーを含むようなコポリマーである。前記コモノマーは通常エチレン、プロピレン又はR-CH=CH2オレフィンから選択され、ここで、RはC3~C8アルキル又はシクロアルキル(特にエチレン、プロピレン又は炭素数5~8のα-オレフィン、例えばペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1及びオクテン-1)である。
【0035】
前記ホモポリマー及びコポリマーは、TiCl3又は塩化マグネシウム上に担持されたチタンのハロゲン化化合物(特にTiCl4)に基づく触媒と助触媒(特にアルミニウムのアルキル化合物)を用いてブテン-1(任意のコモノマーと)重合する、ブテン-1の低圧ツィーグラー-ナッタ重合により得られ得る。電子供与性化合物を前記触媒成分に添加してポリマーの性能、例えば分子量やアイソタクチック度を調整することができる。前記電子供与性化合物の例としては、カルボン酸のエステル及びアルキルアルコキシシランエステルが挙げられる。
【0036】
特に、前記ブテン-1ホモポリマー及びコポリマーA)は、立体特異的触媒の存在下でモノマーを重合することにより製造することができ、該立体特異的触媒は、(i)MgCl2上に担持されたTi化合物と内部電子供与性化合物とを含む固体成分と、(ii)アルキルアルミニウム化合物と、任意の(iii)外部電子供与性化合物と、を含む。
【0037】
活性形態の二塩化マグネシウムは好ましくは担体として使用される。特許文献から周知のように、活性形態の二塩化マグネシウムは、ツィーグラー-ナッタ触媒の担体として特に適している。特に、USP 4,298,718及びUSP 4,495,338は、これらの化合物のツィーグラー-ナッタ触媒における使用を始めて記載した。これらの特許から分かるように、オレフィンを重合するための触媒成分中の担体又は共担体として使用される活性形態のマグネシウムジハライドはX線スペクトルを特徴とし、ここでは、不活性ハロゲン化物のスペクトルに現れる最も強い回折線は強度が弱められ、最大強度がより強い線の最大強度に対してより低い角度にシフトしているハローで置換される。
【0038】
触媒成分(i)に使用される好ましいチタン化合物はTiCl4及びTiCl3であり、さらに、式Ti(OR)n-y XyのTi-チタンハロアルコキシドも使用可能であり、ここでは、nはチタンの価数であり、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、yは1~nの数である。
【0039】
内部電子供与性化合物は、好ましくはエステルから選択され、より好ましくは、モノカルボン酸(例えば安息香酸)又はポリカルボン酸(例えばフタル酸、コハク酸又はグルタル酸)のアルキル、シクロアルキル又はアリールエステルから選択され、前記アルキル、シクロアルキル又はアリールは炭素数1~18である。前記電子供与性化合物の例として、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジヘキシル、3,3-ジメチルグルタル酸ジエチル又はジイソブチルが挙げられる。通常、内部電子供与性化合物はMgCl2に対するモル比が0.01~1、好ましくは0.05~0.5である。
【0040】
アルキル-Al化合物(ii)は、好ましくは、トリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリn-ヘキシルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウムから選択される。トリアルキルアルミニウム化合物と、アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライド又はアルキルアルミニウムセスキクロライド例えばAlEt2Cl及びAl2Et3Cl3との混合物が使用されてもよい。
【0041】
外部供与体(iii)は、好ましくは式Ra1Rb
2Si(OR3)cのケイ素化合物から選択され、ここでは、a及びbは0~2の整数であり、cは1~3の整数であり、(a+b+c)の和は4であり、R1、R2及びR3はヘテロ原子を含有してもよい炭素数1~18のアルキル、シクロアルキル又はアリールである。特に好ましいケイ素化合物群としては、aは0であり、cは3であり、bは1であり、R2はヘテロ原子を含有してもよい分岐アルキル又はシクロアルキルであり、R3はメチルである。このような好ましいケイ素化合物の例としては、シクロヘキシルトリメトキシシラン、tert-ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルトリメトキシシラン及びヘキシルトリメトキシシランが挙げられる。特に好ましくは、ヘキシルトリメトキシシランを使用する。
【0042】
電子供与性化合物(iii)の使用量は、有機アルミニウム化合物と前記電子供与性化合物(iii)とのモル比が0.1~500、好ましくは1~300、より好ましくは3~100となるようにする。
【0043】
触媒が重合ステップに特に適するように、予備重合ステップで前記触媒を予備重合してもよい。前記予備重合は、液体(スラリー又は溶液)又は気相中で、通常100℃未満、好ましくは20~70℃の温度で行われてもよい。予備重合ステップは、少量のモノマーを用いて行われ、持続時間はポリマーを得るのに必要な時間であり、ポリマーの量は0.5~2000 g/g固体触媒成分、好ましくは5~500 g/g固体触媒成分、より好ましくは10~100 g/g固体触媒成分である。
【0044】
例えばWO 03/042258で開示されるように、ブテン-1ポリマーは触媒の存在下で重合することにより製造することもでき、触媒はメタロセン化合物とアルミノキサンとを接触させることにより得られる。
【0045】
重合プロセスは、液体不活性炭化水素を希釈剤として用いたスラリー重合や例えば液体ブテン-1を反応媒体として用いた溶液重合などの公知技術に従って行うことができる。さらに、重合プロセスは気相にて行われてもよく、1つ又は複数の流動層又は機械的撹拌層反応器で操作を行う。重合は反応媒体としての液体ブテン-1中で行うことが非常に好ましい。
【0046】
分子量を制御するために、分子量調整剤、特に水素ガスを重合環境に供給する。
【0047】
重合触媒及びプロセスの例はWO99/45043及びWO2004048424に開示されている。
【0048】
ブテン-1ホモポリマー及びコポリマーA)、並びに本発明のブテン-1ポリマー組成物は、特に分子量に制限はないが、好ましくは、こられ(両方)は100~0.01、より好ましくは10~0.1 g/10 minのMIEを有し、MIEとは、ISO 1133-2:2011に準拠して190℃/2.16 kgで測定されたメルトフロー指数である。特に、管材を製造する押し出し装置に用いた場合、MIEは1~0.1 g/10 minの範囲が好ましい。高いMIE値は、重合時に直接得ることができ、又はポリマー成分のその後の化学的処理(化学的粘度低減)により得ることができる。
【0049】
ポリマーの化学的減粘破壊は例えば過酸化物などのラジカル開始剤の存在下で行う。この目的に有用なラジカル開始剤の例としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシtert-ブチル)-ヘキサン及びジペンチルペルオキシドが挙げられる。
【0050】
ブテン-1ホモポリマー及びコポリマーA)の、デカリン中135℃で測定された固有粘度値は1.5~4 dl/gが好ましい。
【0051】
ブテン-1ホモポリマー及びコポリマーA)の分子量分布(MWD)は特に重要ではなく、通常広い範囲に含まれ得る。ただし、管材用途では、Mw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)で表される場合、GPC分析によって測定されたMWD値は4以上、特に5以上が好ましい。
【0052】
いずれの場合にも、Mw/Mn値の上限は9であるのことが好ましい。
【0053】
通常、5よりも大きいMw/Mn値は広いMWDに相当すると考えられる。
【0054】
広いMWDを有するブテン-1ポリマーはいくつかの方法で得ることができる。1つの方法は、ブテン-1を(共)重合する際に、実質的に広いMWDポリマーを製造できる触媒を用いることである。他の可能な方法は、十分に異なる分子量を有するブテン-1ポリマーを、従来の混合装置を用いて機械的にブレンドすることである。
【0055】
分子量の異なるブテン-1ポリマーを、反応条件の異なる2以上の反応器、例えば各反応器に供給される分子量調整剤の濃度で順次調製する多段重合法によっても操作することができる。
【0056】
本発明では、成分B)は、前述の体積基準粒径分布値を特徴とするタルクである。
【0057】
本発明の成分B)は、前記Dv(0.95)値に加えて、好ましくは以下の体積基準粒径分布特徴のうちの少なくとも1つを有する。
100 μm以下、又は50 μm以下、又は30 μm以下のDv(0.99)であって、いずれの場合も下限は好ましくは10μmである。
20 μm以下、又は15 μm以下のDv(0.90)であって、いずれの場合も下限は好ましくは3 μmである。
10 μm以下、又は8 μm以下のDv(0.50)であって、下限は好ましくは2 μmである。
5 μm以下、又は4 μm以下のDv(0.10)であって、下限は好ましくは1 μmである。
【0058】
体積基準粒径とは、対象粒子と同じ体積を有する等価球の直径をいう。
【0059】
したがって、前記体積基準粒径分布の値は、体積分率を指定された粒子(例えば于Dv(0.95)に対して95体積%)が所定値よりも小さい等価直径を有することを意味する。
【0060】
このような測定はレーザ回折により行われる。
使用される分析装置は、好ましくはマルバーン(Malvern)Mastersizer器具である。
【0061】
タルクがケイ酸マグネシウム水和物であることが知られている。
【0062】
通常、その式Mg3Si4O10(OH)2であることが報告されている。
【0063】
実際には、タルクは主に又は実質的に前記ケイ酸マグネシウム水和物からなる鉱物であり、場合によっては例えば緑泥石(ケイ酸マグネシウム水和物アルミニウム)やドロマイトなどの他の鉱物材料に随伴する。
【0064】
前記粒径分布値を得るために、タルクは、研磨、例えば空気分級粉砕機、圧縮空気、蒸気や衝撃ミルなどの公知の技術で粉砕してもよい。
【0065】
好ましくは、成分B)は化学添加剤を含まず、特にステアリン酸塩、特に金属ステアリン酸塩例えばステアリン酸亜鉛のような酸受容体を含まない。
【0066】
エチレンポリマーC)の好ましい例としては、好ましくは0.940~0.965 g/cm3の密度を有する高密度ポリエチレンHDPE、好ましくは0.900~0.939 g/cm3の密度を有する線状低密度ポリエチレンLLDPE(両方は通常低圧重合により得られる)、及び好ましくは0.917~0.935 g/cm3の密度を有する低密度ポリエチレンLDPE(通常高圧重合により得られる)が挙げられる。通常、前記低圧重合は前述と同じ種類のツィーグラー-ナッタ触媒の存在下で行われ、高圧重合は例えば過酸化物等ラジカル開始剤の存在下で行われる。
【0067】
前記HDPEはエチレンホモポリマー又は1種又は複数のオレフィンコモノマーを含有するエチレンコポリマーであってもよい。
【0068】
前記LLDPEは1種又は複数種のオレフィンコモノマーを含有するエチレンコポリマーであってもよい。
【0069】
前記HDPE及びLLDPEに存在する1種又は複数種のコモノマーは、通常、式CH2=CHRを有するオレフィンから選択され、ここでは、Rは炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキルである。
【0070】
具体例としては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1及びデセン-1が挙げられる。
【0071】
前記HDPE中の好ましいコモノマー含有量(存在する場合)はHDPEポリマーの全重量に対して0.1重量%~15重量%、特に0.5重量%~10重量%である。
【0072】
前記LLDPE中の好ましいコモノマー含有量はLLDPEポリマーの全重量に対して5重量%~20重量%、特に8重量%~15重量%である。
【0073】
前記LDPEはエチレンホモポリマー又は少量のコモノマー例えばプロピレン酸ブチルを含有するエチレンコポリマーであってもよい。
【0074】
前記エチレンポリマーC)中、HDPEは特に好ましい。
【0075】
好ましくは、エチレンポリマーC) は1~50 g/10 min、又は5~50 g/10 min、特に10~40 g/10 minのMIFを有し、MIFはISO 1133-2:2011に準拠して190℃/21.6 kgで測定されたメルトフロー指数である。
【0076】
本発明のポリブテン-1組成物には、本分野でよく使用されている他の添加剤、例えば安定化剤、酸化防止剤、防腐剤、加工助剤、顔料及び有機フィラーや無機フィラーも添加できることが明らかになった。
【0077】
本発明のポリブテン-1組成物は、本分野で周知のブレンド技術や装置を用いて成分A)、B)及び任意のC)をブレンドすることにより得られ得る。
【0078】
したがって、単軸押出機(従来の単軸押出機及びCoKneader(例えばBuss))、二回転スクリュー押出機、混合機(連続及び断続)を含む本分野に周知の押出機を使用することができる。このような装置は成分A)、B)及びC)にそれぞれ使用される個別の供給システムを備えてもよい。成分B)及び任意の成分C)は、ブレンド装置、特に押出機内のポリマー塊に、同じ供給口、又はA)がブレンド装置に供給される点の下流で添加することができ、両方の間にA)が溶融した均一な塊の形態となることを許容する距離がある。
【0079】
成分B)は、ポリマーキャリア中、より好ましくは、ポリオレフィンキャリア中、特にブテン-1ポリマー成分A)と同種のポリブテンキャリア中にマスターバッチの形態で供給することができ供給することができる。
【0080】
好ましくはブレンドステップの前に、成分A)、B)及び任意のC)を予備混合する。ステップを予備混合するために、本分野に使用される任意の方法及び装置、特に低速ミキサ、例えば一軸又は二軸パドルコンベア、リボンブレンダ、プラウミキサを使用することができる。
【0081】
最終組成物を得るために、成分(A)、(B)及び(C)の溶融流がその入口に供給され、ギアポンプ、二軸または単軸押出機を使用して押し通されるスルザー社(Sulzer)のSMX(登録商標)スタティックミキサのようなスタティックミキサを使用することもできる。
【0082】
ブレンドステップ中の加工温度は、成分A)を溶融状態にする(かつ維持する)、また、B)及び任意のC)を添加するときに、A)が既に溶融状態である場合、成分A)を溶融状態に維持するのに十分な温度でなければならない。このような温度は、好ましくは100℃~230℃、より好ましくは100℃~220℃、最も好ましくは120℃~210℃の範囲内である。
【0083】
前記したように、本発明のポリブテン-1組成物の好ましい用途は管材、特に水やヒートフロー体を輸送する管材、及び管材ジョイントの製造に用いられる。通常、機械的性能及び加工性能の改良を必要とする任意の用途に有利に利用できる。
【0084】
本明細書による各種の実施例、組成物及び方法の実践及び利点は以下の例で開示されている。これらの例は説明的なものに過ぎず、いかなる方式で本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0085】
粒度分布
【0086】
ISO 13320:2009に準拠してレーザ回折により粒度分布(PSD)を測定する。
【0087】
使用される装置は英国マルバーン社製のサンプル分散ユニットを備えるMastersizer (登録商標) 2000である。
【0088】
検出システムは以下の特徴がある。
赤色光:前向散乱、側方散乱、後方散乱;
青色光:広角前後散乱散乱;
光源:赤色ヘリウムネオンレーザー;青色光固体光源;
光学アライメントシステム:暗視野光学レチクルを有する自動高速アライメントシステム;
-レーザーシステム:クラス1レーザ製品。
【0089】
PSD 決定は、分散微粒子サンプルを介してレーザ単色光が散乱する光回折原理に基づいている。信号は器具にインターフェースするコンピュータによって受信され、コンピュータは受信した信号を処理して次元物理量に変換する。
【0090】
結果は106クラスの直径(仮想スクリーン)からなるPSDレポートで表され、このレポートは体積及びそのほかの導出パラメータに関する相関の累積割合を含む。
【0091】
測定データは、バックグラウンドの電気ノイズ、及び光デバイス上のダスト及び分散剤中に浮遊する汚染物質の散乱データによって汚染されている。したがって、サンプル分散ユニットが清浄であり、痕跡量の不純物や残留物がすべて除去されていることを確認する必要がある。
【0092】
したがって、純分散剤(溶媒)を用いたバックグラウンド測定及び電気バックグラウンド測定を行う。得られた総バックグラウンド値をサンプル測定から減算して、真のサンプルデータを得る。
【0093】
バックグラウンド測定の場合、帯電防止剤として2g/1 SPAN 80 Pureを含む250ccの無水n-ヘプタン溶媒をサンプル分散ユニットに導入する。各測定の前に、超音波処理(60秒)により溶媒中の残留空気を除去する。
【0094】
次に、撹拌機と循環ポンプを2205rpmの出力範囲で運転しながら、溶媒を測定セルに送る。
【0095】
測定
【0096】
撹拌により無水n-ヘプタンに懸濁液されたサンプルをサンプルユニットに直接添加する。
【0097】
凝集体(存在する場合)の分解を促進するには、サンプル懸濁液の循環に2分を要する。
【0098】
掩蔽バーはモニターに表示され、サンプルの最適な体積濃度になる。サンプルの濃度は10%~30%の範囲内の掩蔽値に対応していなければならない。この範囲は代表性と安定した結果を保証する。
【0099】
屈折率(RI)は以下のように設定される。
粒子RI:1.596;
分散剤RI:1.390。
【0100】
測定時間は4秒である。
【0101】
レーザ装置から受信した信号を処理する。次に、Mastersizer装置が提供するソフトウェアでPSDを計算する。
【0102】
結晶化及び溶融温度
【0103】
結晶化温度(Tc)及び溶融温度の値は以下の手順を用いて決定される。
【0104】
差示走査量熱(DSC)データはPerkin Elmer DSC-7装置を用いて取得される。秤量したサンプル(5~10mg)をアルミディスクに封入し、200℃で10℃/分相当の走査速度で加熱する。サンプルを200℃で5分間保持し、全ての微結晶が完全に溶融するようにして、サンプルの熱履歴を解消する。続いて、10℃/分に相当する走査速度で-20℃まで冷却し、ピーク温度を結晶化温度(Tc)とし、面積を結晶化エンタルピーとする。-20℃で5分間静置した後、10℃/分に相当する走査速度でサンプルについて200℃まで2回目の加熱を行った。この2回目の加熱運転では、ピーク温度をポリブテン-1結晶形IIの融解温度(TmII)、面積を融解エンタルピー(ΔHfII)とする。
【0105】
ポリブテン-1結晶形Iの溶融温度(TmI)を決定するために、サンプルを溶融し、200℃で5分間保持した後、10℃/minの冷却速度で20℃まで冷却する。その後、サンプルを室温で10日間保管する。10日後、サンプルをDSCにかけ、-20℃まで冷却した後、10℃/minに相当する走査速度、200℃で加熱する。この加熱運転では、サーモグラムの低温側からの最初のピーク温度を溶融温度(Tml)とする。
【0106】
90℃での半結晶化時間
【0107】
Perkin Elmer DSC-7装置を使用して、示差走査熱量(DSC)データを取得する。秤量したサンプル(5~10mg)をアルミディスクに封入し、10℃/分に相当する走査速度で室温から180℃まで加熱する。
【0108】
サンプルを180℃で5分間保持し、全ての微結晶を完全に溶融させ、サンプルの熱履歴を解消する。
【0109】
その後、60℃/分に相当する走査速度で90℃まで冷却し、90℃での結晶化発熱によるヒートフローを測定する。熱伝達の積分は、結晶化が完了するまで、すなわち伝熱が停止するまでの時間の関数として記録される。
【0110】
半結晶化時間は、伝熱積分がその最終値の半分に達する時間である。
【0111】
MIF及びMIE
【0112】
ISO 1133-2:2011に準拠して、190℃、所定荷重で決定する。
【0113】
固有粘度
【0114】
標準ASTM D 2857-16に準拠して、テトラヒドロナフタレン中、135℃下で決定する。
【0115】
引っ張り弾性率(MET-DMTA)
【0116】
ISO 6721-4:2019に準拠して、23℃で動機械的熱分析(DMTA)により1 mm厚の圧縮成形板上で決定する。
【0117】
曲げ弾性率
【0118】
成形10日後、標準ISO 178:2019に準拠して測定する。
【0119】
23℃及び0℃でのアイゾッド抗衝撃性
【0120】
ISO 8986- 2:2009に準拠して圧縮プラーク上でIS0180:2000に準拠して測定する。
【0121】
コモノマー含有量
【0122】
IR分光法又はNMRにより測定する。
【0123】
特にブテン-1コポリマーについては、コモノマーの量はコポリマーの13C-NMRスペクトルから算出することができる。
【0124】
以下、分析手順の一例を示す。
【0125】
13C NMRスペクトルは、低温プローブを備えたBruker AV-600分光器で得られる、
該分光器はフーリエ変換モードで、120℃、150.91 MHzで作動する。
【0126】
Tβδ炭素(C. J. Carman, R. A. Harrington及びC. E. Wilkes 『大分子(Macromolecules)』10,3, 536 (1977)の命名法に準拠する)のピークは37.24 ppmでの内部基準として使用される。120℃でサンプルを8% wt/v濃度となるように1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2に溶解する。各スペクトルは、1H-13C結合を除去するためにパルスとCPDとの間に15秒の遅延を有する90°パルスで収集される。9000 Hzのスペクトルウィンドウを使用して、約512個のトランジェントを32Kデータ点に記憶する。
【0127】
スペクトルの分配、トライアド分布及び組成の評価
は、以下の項を用いて、Kakugo [M. Kakugo, Y. Naito, K. MizunumaとT. Miyatake『大分子』 16, 4, 1160 (1982)]及びRandall [J. C. Randall『大分子化学及び物理(Macromol.
Chem Phys.)』C30, 211 (1989)]に準拠して行われる。
BBB= 100(Tββ)/S= I5
BBE= 100Tβδ/S= I4
EBE= 100 Pδδ/S= 114
BEB= 100 Sββ/S= 113
BEE= 100 Sαδ/S= 17
EEE= 100(0.25 Sγδ+0.5 Sδδ)/S= 0.25 19+ 0.5I10
ここでは、S= I5 + I4 + I14 +I13 + I7 + 0.25 I9+ 0.5I10
【0128】
1-ブテン及びエチレンの全量はモル百分率で以下の関係式を用いて、トライアドから算出される。
[E]= EEE+BEE+BEB
[B]= BBB+BBE+EBE
【表1-1】
【表1-2】
【0129】
アイソタクチックペンタッド含有量の決定
13C NMRスペクトルは120℃で二重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタン中のポリマー溶液(8重量%~12重量%)にて取得される。13C NMRスペクトルは低温プローブを備えたBruker AV-600分光器で取得され、該分光器はフーリエ変換モードで120℃、150.91 MHzで作動し、1H-13C結合を除去するためにパルスとCPD(WALTZ 16)との間に15秒の遅延を有する90°パルスを使用する。60 ppm(0~60 ppm)のスペクトルウィンドウを使用して約512個のトランジェントを32Kデータ点に記憶する。mmmmペンタッドピーク(27.73 ppm)を参考とする。文献(『大分子』1991, 24, 2334-2340, Asakura T.)のように分配を行う。
ブテン-1ポリマーのペンタドタクティシティーの百分率値(mmmm%)は分岐メチレンかボーンのNMR領域内の関連ペンタッド信号(ピーク面積)から算出された立体規則性ペンタッド(アイソタクチックペンタッド)の百分率であり、以下のとおりである。
mmmm%= 100 A1/(A1+A2)
ここでは、Alは28.0と27.59 ppmとの間の面積であり、
A2は27.59と26.52 ppmとの間の面積である。
【0130】
0℃でキシレンに可溶及び不溶な画分(XS-0℃)
【0131】
撹拌しながら、135℃でポリマーサンプル2.5 gをキシレン250 mlに溶解する。
30分後、溶液を100℃まで撹拌しながら冷却した後、水と氷浴に入れて0℃まで冷却する。その後、溶液を水と氷の浴中で1時間沈殿させる。ろ紙で沈殿物を濾過する。ろ過中、フラスコを水と氷の浴に入れて、フラスコ内部の温度を可能な限り0℃に近づける。濾過終了後、濾液温度を25℃に平衡させ、メスフラスコを水流浴に約30分間浸漬した後、50mlのアリコートを2分割する。溶液アリコートを窒素ガス流中で蒸発し、残留物を一定重量となるまで80℃の真空下で乾燥する。両残留物の重量差は3%未満でなければならない。それ以外の場合は、テストを繰り返す必要がある。そこで、残留物の平均重量からポリマー可溶物の重量百分率(0℃でのキシレン可溶物= XS 0℃)を算出する。0℃でのo-キシレン中の不溶画分(0℃でのキシレン不溶物=XI%0℃)は以下のとおりである。
XI%0℃=100-XS%0℃。
【0132】
X線結晶化度の決定
【0133】
X線結晶化度は、固定スリットのCu-Kal放射を用いて、回折角度2θ=5°から2θ=35°の間で、6秒ごとに0.1°のステップでスペクトルを採取するX線回折粉末回折装置を用いて測定される。
【0134】
厚さ約1.5~2.5mm、直径約2.5~4.0cmの円盤状の圧縮成形標本について測定を施す。これらの標本を200℃±5℃の温度で、特に感じられる圧力を加えることなく10分間圧縮成形プレスで得た後、約10 kg/cm2の圧力を数秒間かけ、最後の操作を3回繰り返す。
【0135】
全スペクトルに対して適切な線形基線を定義し、スペクトルプロファイルと基線との間の合計面積(Ta)を(カウント/sec・2θで表す。)計算し、回折パターンを使用して結晶度に必要なすべての成分を導出する。次に、全スペクトルに沿って、2相モデルに従ってアモルファス領域と結晶領域を分離する適切なアモルファスプロファイルを定義する。したがって、アモルファス面積(Aa)(カウント/sec・2θで表される)をアモルファスプロファイルと基線との間の面積、結晶面積(Ca)(カウント/sec・2θで表される)をCa= Ta- Aaとして計算してもよい。
【0136】
次に、下記式によりサンプルの結晶度を計算する。
%Cr=100×Ca/Ta
【0137】
GPCによるMw/Mnの決定
【0138】
Waters GPCV 2000装置を用いてMnとMw及びこれらから導出するMw/Mnを決定し、該装置には、4つのPLgel Olexis混合ゲル(ポリマーラボ(Polymer Laboratories))のカラムセット及びIR4赤外検出器(PolymerChar)が装備されている。カラムのサイズは300×7.5mm、これらの粒径は13μmである。移動相として1-2-4-トリクロロベンゼン(TCB)を用い、その流速を1.0ml/minに保持した。すべての測定は150℃で行われる。TCB中の溶液濃度を0.1g/dLとし、分解を防止するために0.1g/1の2,6-ジブチル-p-クレゾールを添加する。GPC計算では、ポリマーラボから提供された10個のポリスチレン(PS)標準サンプル(ピーク分子量範囲580~8500000)を使用して、一般的な検量線を取得する。3次多項式フィッティングを用いて実験データを補間し、関連する検量線を得る。Empower(Waters)を用いてデータ取得及び処理を行う。Mark-Houwink関係を用いて分子量分布及び関連平均分子量を決定し、PS及びPBのK値はそれぞれKps=1.21×10-4dL/g及びKpb=1.78×10-4dL/gであり、PSについてはMark-Houwink指数α=0.706が使用され、PBについてはα=0.725が使用される。
【0139】
ブテン-1/エチレンコポリマーに対して、データ評価上、組成が全分子量にわたって一定であると仮定し、下記の線形結合を用いてMark-Houwink関係のK値を算出する。
KEB=xEKPE+XPKPB
ここでは、Kebはコポリマーの定数であり、Kpe(4.06×10-4、dL/g)及びKpb(1.78×10-4dl/g)はポリエチレン及びポリブテンの定数であり、xe及びxbはエチレン及びブテン-1重量%含有量である。Mark-Houwink指数α=0.725は、組成に関わらず、全てのブテン-1/エチレンコポリマーに使用される。
【0140】
密度
【0141】
標準ISO 1183-1:2019に準拠して23℃で決定する。
【0142】
例1と例2及び比較例1
【0143】
例に使用される材料
PB-1: 表1に記載の特徴を有するブテン-1ホモポリマー
タルク1: 表2に記載の積基準粒径分布を有するタルクであって
添加剤不含、Imi Fabi社によって商標HM05で市販されているもの。
タルク2: 比較のためのステアリン酸亜鉛被覆タルクであって、
表2に記載の体積基準粒径分布を有し、イメリス(Imerys)社によって商標Mistron zscで市販されているもの。
HDPE :0.954 g/cm3の密度及び24 g/10 minのMIFを有するエチレンポリマー。
【0144】
前記材料は共回転二軸スクリュー、27mmのスクリュー径セグメント、40:1L/D比、500 rpmの最大スクリュー速度を有するLeistritz Micro 27押出機で溶融されてブレンドされる。
【0145】
主な押出パラメータ:
温度: 200℃;
スクリュー速度: 200 rpm;
出力: 15 kg/h。
【0146】
このようにして得られた最終組成物の成分量と性能は表3に記載されている。
【表2】
【表3】
【表4】
【国際調査報告】