(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】多孔性の電解槽ガス拡散層およびそれを作製する方法
(51)【国際特許分類】
C25B 11/032 20210101AFI20230814BHJP
C25B 11/046 20210101ALI20230814BHJP
【FI】
C25B11/032
C25B11/046
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505401
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 US2021043047
(87)【国際公開番号】W WO2022026332
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522203075
【氏名又は名称】オーミアム インターナショナル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バランタイン, アルネ
(72)【発明者】
【氏名】カルッパイア, チョカリンガム
(72)【発明者】
【氏名】グエン, ディエン
(72)【発明者】
【氏名】グエン, ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4K011
【Fターム(参考)】
4K011AA21
4K011AA30
4K011BA07
4K011DA01
(57)【要約】
陽子交換膜(PEM)電解槽のアノード側ガス拡散層として機能するように構成される、多孔性チタンシートが、テープ成形または粉末冶金等の粉末技法によって形成される。多孔性チタンシートの第1の主側面は、多孔性チタンシートの反対の第2の主側面より高い多孔性を有する。多孔性チタンシートの第1の主側面は、アノード側流動プレートに面するように構成され、多孔性チタンシートの第2の主側面は、アノード電極に面するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽子交換膜(PEM)電解槽のアノード側ガス拡散層として機能するように構成される、多孔性チタンシートであって、前記多孔性チタンシートは、粉末技法によって形成される、多孔性チタンシート。
【請求項2】
前記多孔性チタンシートの第1の主側面は、前記多孔性チタンシートの反対の第2の主側面より高い多孔性を有する、請求項1に記載の多孔性チタンシート。
【請求項3】
前記多孔性チタンシートの第1の主側面は、アノード側流動プレートに面するように構成され、前記多孔性チタンシートの第2の主側面は、アノード電極に面するように構成される、請求項2に記載の多孔性チタンシート。
【請求項4】
前記多孔性チタンシートの第1の主側面は、前記多孔性チタンシートの前記反対の第2の主側面より少なくとも10パーセント高い、前記多孔性を有する、請求項2に記載の多孔性チタンシート。
【請求項5】
前記多孔性チタンシートの第1の主側面は、溝を含み、前記多孔性チタンシートの反対の第2の主側面は、溝がない、略平面状の表面を有する、請求項1に記載の多孔性チタンシート。
【請求項6】
前記多孔性チタンシートは、その少なくとも一方の表面上に窒化チタンコーティングを含有し、
前記多孔性チタンシートは、純粋なチタン、または50原子パーセント超のチタンと、50原子パーセント未満のモリブデン、バナジウム、ニオブ、タンタル、またはジルコニウムのうちの少なくとも1つとを含有する、チタン合金を備える、請求項1に記載の多孔性チタンシート。
【請求項7】
前記多孔性チタンシートは、1~5ミクロンの範囲内の平均細孔径を有する、ミクロ細孔と、30~40ミクロンの範囲内の平均細孔径を有する、マクロ細孔とを備える、二峰性の細孔径分布を含む、請求項1に記載の多孔性チタンシート。
【請求項8】
前記多孔性チタンシートの厚さ方向において前記多孔性チタンシートを通して延在する、伝導性ビアをさらに備える、請求項1に記載の多孔性チタンシート。
【請求項9】
PEM電解槽であって、
アノード側流動プレートと、
カソード側流動プレートと、
前記アノード側流動プレートと前記カソード側流動プレートとの間に位置する、PEMポリマー電解質と、
前記電解質と前記アノード側流動プレートとの間に位置する、請求項1に記載の多孔性チタンシートを備える、アノード側ガス拡散層と、
前記アノード側ガス拡散層と前記電解質との間に位置する、アノード電極と、
前記電解質と前記カソード側流動プレートとの間に位置する、カソード側ガス拡散層と、
前記カソード側ガス拡散層と前記電解質との間に位置する、カソード電極と
を備える、PEM電解槽。
【請求項10】
前記多孔性チタンシートの第1の主側面は、前記多孔性チタンシートの反対の第2の主側面より高い多孔性を有し、または
前記多孔性チタンシートの第1の主側面は、前記アノード側流動プレートに面し、前記多孔性チタンシートの第2の主側面は、前記アノード電極に面し、または
前記多孔性チタンシートの第1の主側面は、前記多孔性チタンシートの前記反対の第2の主側面より少なくとも10パーセント高い、前記多孔性を有し、または
前記アノード側ガス拡散層に面する前記アノード側流動プレートの第1の主表面は、水流チャネル溝を含有し、前記アノード側流動プレートの第1の主表面に面する前記多孔性チタンシートの第1の主側面は、前記水流チャネル溝の実質的な鏡像である、溝を含み、前記多孔性チタンシートの反対の第2の主側面は、溝がない、略平面状の表面を有する、請求項9に記載のPEM電解槽。
【請求項11】
粉末技法によって、陽子交換膜(PEM)電解槽のアノード側ガス拡散層として機能するように構成される、多孔性チタンシートを作製することを含む、方法。
【請求項12】
前記粉末技法は、ダイ空洞の中にチタン粉末および潤滑剤の混合物を提供することと、前記ダイ空洞内の前記チタン粉末および潤滑剤の混合物を圧縮し、グリーンシートを形成することと、前記グリーンシートを脱バインダすることと、前記グリーンシートを焼結し、前記多孔性チタンシートを形成することとを含む、粉末冶金技法を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記粉末技法は、テープ成形を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記テープ成形は、
チタン含有粉末と結合剤、溶媒、および塑性剤を混合し、滑動材料を形成することと、
前記滑動材料をテープ担体ウェブ上に分注することと、
ドクターブレードを使用して、前記テープ担体ウェブ上で移動する前記滑動材料をグリーンチタン含有テープに平坦化することと、
前記グリーンチタン含有テープを乾燥させることと、
前記グリーンチタン含有テープを、第1の多孔性を有する第1のチタングリーンシートに切断することと、
第1のグリーンシートを焼結し、前記多孔性チタンシートを形成することと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記チタン含有粉末は、元素チタンおよび水素化チタン粉末の混合物を備え、
前記水素化チタンは、発熱反応において元素チタンに熱転換される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記滑動材料に細孔形成剤材料を添加し、前記焼結することの間に前記細孔形成剤材料を除去し、前記多孔性チタンシート内に細孔を形成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記平坦化、乾燥、切断、および焼結するステップは、同一の可動テープ担体ウェブ上で持続的に生じる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記焼結することに先立って、前記第1のチタングリーンシート上の前記第1の多孔性と異なる第2の多孔性を有する、第2のチタングリーンシートを設置することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記第1および第2のチタングリーンシートは、前記多孔性チタンシートの第1の主側面が前記多孔性チタンシートの反対の第2の主側面より高い多孔性を有するように、相互と接触して焼結され、
前記多孔性チタンシートの第1の主側面は、アノード側流動プレートに面するように構成され、前記多孔性チタンシートの第2の主側面は、アノード電極に面するように構成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記チタン含有粉末は、前記多孔性チタンシートの厚さの50%未満の平均直径を有し、
前記チタン含有粉末はさらに、前記多孔性チタンシートの厚さの20%以内である、平均直径を有する、付加的なチタン含有粒子、または前記多孔性チタンシートの厚さの20%以内である、平均長を有する、チタン含有ワイヤのうちの少なくとも一方と混合され、
前記付加的なチタン含有粒子または前記チタン含有ワイヤのうちの少なくとも一方は、前記多孔性チタンシートの厚さ全体を通して延在し、前記伝導性ビアとして機能する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
窒素含有雰囲気中で前記多孔性チタンシートを反応焼結し、前記多孔性チタンシートの少なくとも一方の表面上に窒化チタンコーティングを形成することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記多孔性チタンシートを前記PEM電解槽の中に設置することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その全内容が参照することによって本明細書に組み込まれる、2020年7月27日に出願された、米国仮特許出願第63/056,820号の利益を主張する。
【0002】
(分野)
本開示は、概して、電解槽を対象とし、具体的には、電解槽のためのガス拡散層およびその作製方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
陽子交換膜(PEM)電解槽は、水を別個の水素流および酸素流に転換するために使用され得る。そのようなPEM電解槽は、アノード電極とカソード電極との間に位置する、ポリマー電解質を含む。アノード側およびカソード側の多孔性ガス拡散層が、個別のアノード電極およびカソード電極に隣接して位置する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要約)
一実施形態では、陽子交換膜(PEM)電解槽のアノード側ガス拡散層として機能するように構成される、多孔性チタンシートが、粉末技法によって形成される。
【0005】
一実施形態では、方法は、粉末技法によって、陽子交換膜(PEM)電解槽のアノード側ガス拡散層として機能するように構成される、多孔性チタンシートを作製することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、PEM電解槽の斜視切取内部図である。
【0007】
【
図2】
図2A-2Fは、PEM電解槽のためのガス拡散層を作製する粉末冶金方法のステップの側面断面図である。
【0008】
【
図3】
図3は、本開示のある実施形態による、ガス拡散層の斜視図である。
【0009】
【
図4】
図4および5は、本開示の実施形態による、ガス拡散層の別の斜視図である。
【
図5】
図4および5は、本開示の実施形態による、ガス拡散層の別の斜視図である。
【0010】
【
図6】
図6は、本開示の実施形態による、ガス拡散層を形成するために使用され得る、テープ成形装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
図1は、Greig Chisholm et al.による論説「3D printed flow plates for The electrolysis of water: An economic and adaptable approach to device manufacture」Energy Environ. Sci., 2014, 7, 3026-3032に説明される、PEM電解槽の斜視切取内部図を図示する。PEM電解槽1は、流体流チャネル6および個別の開口部8、9、10を伴う、アノード側流動プレート2およびカソード側流動プレート4と、流動プレート2、4間に位置する、PEMポリマー電解質12と、電解質12とアノード側流動プレート2との間に位置する、アノード側ガス拡散層14と、アノード側ガス拡散層14と電解質12との間に位置する、アノード電極16と、電解質12とカソード側流動プレート4との間に位置する、カソード側ガス拡散層18と、カソード側ガス拡散層18と電解質12との間に位置する、カソード電極20とを含む。
【0012】
アノード側流動プレート2は、水入口開口部8と、酸素出口開口部9と、アノード側ガス拡散層14に面する流動プレート2の側面において水入口開口部8および酸素出口開口部9を接続する、水流チャネル(例えば、蛇行性の経路溝)6とを含んでもよい。アノード側ガス拡散層14は、多孔性のチタン層を含んでもよい。カソード側ガス拡散層18は、多孔性の炭素層を含んでもよい。アノード電極16は、イリジウム層等の任意の好適なアノード触媒を備えてもよい。カソード電極20は、白金層等の任意の好適なカソード触媒を備えてもよい。他の貴金属触媒層もまた、アノードおよび/またはカソード電極のために使用され得る。電解質12は、化学式C7HF13O5S・C2F4を有する、スルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマー共重合体から構成される、Nafion(登録商標)膜等の任意の好適な陽子交換(例えば、水素イオン輸送)ポリマー膜から成ってもよい。
【0013】
動作時、水が、水入口開口部8を通して流動チャネル6の中に提供される。水は、水流チャネル6を通して、アノード側ガス拡散層14を通してアノード電極16まで流動する。水は、アノード電極16とカソード電極20との間への外部電流または電圧の印加に応じて、アノード電極16において酸素および水素に電気化学的に分離される。酸素は、アノード側ガス拡散層14を通してアノード側流動プレート2まで戻るように拡散し、酸素出口開口部9を通して電解槽1から退出する。水素イオンが、電解質12を通してカソード電極20まで拡散し、次いで、カソード側ガス拡散層18およびカソード側流動プレート4内の水素出口開口部10を通して電解槽1から退出する。
【0014】
多孔性のチタン層(例えば、シート)が、アノード側ガス拡散層(すなわち、輸送層)14として使用されてもよい。一実施形態では、アノード側ガス拡散層14として使用される多孔性のチタン層(例えば、シート)が、粉末プロセスによって形成される。
【0015】
一実施形態では、粉末プロセスは、テープ成形を含む。多孔性チタンシートが、焼結された後、これは、両面において(例えば、アノード電極側および流動プレート側において)、良好な伝導性および耐腐食性を提供するための、白金および/または金コーティング等の伝導性増強ならびに/もしくは耐腐食性コーティングでコーティングされてもよい。コーティングは、蒸発等の物理蒸着によって形成されてもよい。
【0016】
別の実施形態では、アノード側ガス拡散層14として使用される、多孔性のチタン層(例えば、シート)が、チタン粉末が、圧密化プロセスを使用して多孔性チタンシートにプレス加工される、粉末冶金技法によって形成される。圧密化されたシートが、次いで、焼結され、確立された冶金接合を伴うガス拡散層(例えば、シート)をもたらす。多孔性チタンシートは、40~60パーセントの多孔性を有し得る。
【0017】
図2A-2Fは、多孔性のアノード側チタンガス拡散層を形成するために使用され得る、粉末冶金技法(例えば、azom.com(https://www.azom.com/article.aspx?ArticleID=155)に図示される技法)の例示的ステップを示す。粉末冶金プレス装置100は、ダイ108の中に位置するダイ空洞106に対して軸方向に移動する、上側打抜機102と、下側打抜機104とを含有する、チャンバ101を含む。
【0018】
粉末冶金圧密化サイクルのステップは、
図2Aおよび2Bに示されるように、高い位置から下側打抜機104を降下させ、ダイ空洞106を暴露することを含む。チタン粉末112が、潤滑剤と混合され、次いで、粉末シュー110の中に提供される。潤滑剤と混合されたチタン粉末112を含有する、粉末シュー110は、ダイ空洞にわたって移動し、チタン粉末112および潤滑剤の混合物でダイ空洞を充填する。シュー110が、引き出された後、上部および/または底部打抜機102、104が、
図2Cおよび2Dに示されるように、ダイ108に対して移動し、チタン粉末112を圧縮する。圧密化の後、
図2Eに示されるように、上部打抜機102が、上向きに後退され、底部打抜機104が、ダイ108に対して移動し、圧密化されたグリーンチタンシート114をダイ空洞106から射出する。シュー110は、
図2Fに示されるように、次いで、再び、ダイ108の上部表面を横断して移動し、これは、ダイ空洞を付加的なチタン粉末112および潤滑剤の混合物で補充し、グリーンチタンシート114をダイ108から外に押し出す。
【0019】
グリーンチタンシート114は、1つ以上のベルト炉を通してグリーンチタンシートを移動させる、可動ベルト上に提供されてもよい。シートは、最初に、脱バインダプロセスにおいてより低温で焼鈍され、有機潤滑剤(すなわち、結合剤)を全て焼成し、続いて、高温で焼鈍し、脱潤滑されたチタンシートを焼結してもよい。焼結された多孔性チタンシート14が、次いで、電解槽(例えば、
図1の電解槽1)の中に、アノード側流動プレート2と膜/電極アセンブリ(すなわち、アノード電極16およびカソード電極20がその両側に位置する、電解質12)との間に提供され、アノード側ガス拡散層14として機能する。
【0020】
図3に示される一実施形態では、多孔性チタンシート14の第1の主側面14Aは、多孔性チタンシート14の反対の第2の主側面14Bより高い多孔性を有する。多孔性チタンシート14の第1の主側面14Aは、アノード側流動プレート2に面し、多孔性チタンシート14の反対の第2の主側面14Bは、アノード電極16に面する。例えば、多孔性のチタンシート14の第1の主側面14Aは、多孔性チタンシート14の反対の第2の主側面14Bより少なくとも10パーセント高い、多孔性を有してもよい。多孔性チタンシートの第1の主側面14Aは、40~50%の多孔性を有し得る一方、多孔性チタンシートの反対の第2の主側面14Bは、50~60%の多孔性を有し得る。一実施形態では、多孔性チタンシート14の流動プレート2側14Aのより高い多孔性は、より多くの水が細孔に進入することを可能にする一方、チタンシート14のアノード電極16側14Bのより低い多孔性は、アノード電極16との改良された電気接触を提供する。
【0021】
多孔性の差異は、多孔性が第1の主側面14Aから第2の主側面14Bまで(すなわち、対向する主表面間で)連続的に増加する、連続的な多孔性勾配であり得る。代替として、多孔性は、多孔性チタンシート14が、相互と異なる個別の多孔性を有する、少なくとも第1および第2の部分(14A、14B)を有するように、段階的な方式で変化し得る。異なる多孔性領域を形成するために、異なる量の潤滑剤が、継続的な勾配において、または段階的様式において、ダイ空洞106内のチタン粉末112の上部区分および底部区分に添加される。多孔性チタンシート14は、より低い潤滑剤濃度を含有する粉末区分から作製される、部分14Bにおけるものより高い潤滑剤濃度を含有する、粉末区分から作製される部分14Aにおいて、より高い多孔性を有する。ダイ空洞106内の異なる潤滑剤濃度が、その中でチタン粉末112対潤滑剤比が異なる通過において異なる(例えば、より高いまたはより低い)シュー110の2つ以上の異なる通過によって形成されてもよい。ダイ空洞106は、第1のシュー110の通過の間に、第1のチタン粉末対潤滑剤比を有する、チタン粉末112および潤滑剤の混合物の第1の部分で部分的に充填され、ダイ空洞106は、加えて、第2のシュー110の通過の間、第1の比率と異なる、第2のチタン粉末対潤滑剤比を有する、チタン粉末112および潤滑剤の混合物の第2の部分で充填される。より低いチタン粉末112対潤滑剤比は、脱バインダ焼鈍ステップの間により高い多孔性をもたらす。
【0022】
別の実施形態では、
図1に示されるように、アノード側ガス拡散層14に面する、アノード側流動プレートの第1の主表面が、水流チャネル溝6を含有する。アノード側流動プレート2に面する、多孔性チタンシート14の第1の主側面14Aは、
図3に示されるように、水流チャネル溝6の実質的な鏡像である、溝26を含む。本明細書で使用されるように、水流チャネル溝26の実質的な鏡像は、水流チャネル溝6の一般的な鏡像であるが、20%未満異なる寸法を有し得る、形状を意味する。対照的に、アノード電極16に面する、多孔性チタンシート14の反対の第2の主側面14Bは、溝26がない、略平面状の表面を有する。そのような設計は、ガス拡散層14の流動プレート2側14Aにおける水流を促進しながら、ガス拡散層14とアノード電極16との間の良好な電気接触を維持する。多孔性チタンシート14内の溝26は、溝26の鏡像である、突出部を含有する、
図2Aの装置内の上側打抜機102または下側打抜機104を使用することによって形成されてもよい。
【0023】
図4に示される別の実施形態では、多孔性チタンシート14は、多孔性ネットワークの一部として、細孔径の二峰性の分布を有する。細孔径の2つのモードは、広義には、ミクロ細孔15B、およびミクロ細孔15Bより大きい、マクロ細孔15Aとして分類される。ミクロ細孔15Bは、毛細管として作用し、溝6からアノード電極(例えば、アノード触媒層)16まで水を輸送することに役立つ一方、マクロ細孔15Aは、発生されたガスが、電気触媒から溝6まで退出し、流動する水によって輸送されるための低流量の抵抗性経路を提供する。細孔径は、ヤングラプラス方程式を使用して計算されてもよい。一実施形態では、ミクロ細孔15B平均細孔径は、1~5ミクロンの範囲内であり、マクロ細孔15A平均細孔径は、30~40ミクロンの範囲内である。
【0024】
別の実施形態では、
図2A-2Fの粉末プレス装置100内での多孔性チタンシート14形成が、チタンが二酸化チタンに酸化されず、抵抗損失を低減し、チタンの酸化に起因する焼成を回避するように、チャンバ101内の不活性の低酸素分圧雰囲気中で実行される。不活性雰囲気は、アルゴン等、希ガス等の任意の好適な不活性ガスを含んでもよい。大気は、0.0001~0.01気圧等の0.1気圧未満の酸素分圧を含んでもよい。不活性ガスは、ダイ108と、打抜機102、104とを含有する、チャンバ101の中に提供されてもよい。代替として、不活性ガスは、ダイ空洞をチタン粉末で充填した後、不活性ガス導管からダイ空洞の中にガスブランケットとして提供されてもよい。
【0025】
別の実施形態では、
図2A-2Fの粉末プレス装置100内での多孔性チタンシート14形成が、チタン合金粉末を用いて実行される。チタンは、モリブデン、バナジウム、ニオブ、タンタル、および/またはジルコニウムのうちのいずれか1つ以上と合金化されてもよい。したがって、50原子パーセント超のチタン(例えば、60~99原子パーセントのTiおよび1~40原子パーセント等、50原子パーセント未満のモリブデン、バナジウム、ニオブ、タンタル、ならびに/もしくはジルコニウム)を含有するチタン合金粉末が、粉末プレス装置内で使用されてもよい。粉末粒子は、チタン合金粒子を含む。代替として、2つの粉末の組み合わせ(例えば、混合物)、すなわち、純粋なチタン粉末、およびモリブデン、バナジウム、ニオブ、タンタル、ならびに/もしくはジルコニウムを含有する、合金元素粉末等のチタン含有粉末が、粉末プレス装置内で使用されてもよい。粉末の組み合わせは、50原子パーセント超のチタン粉末粒子(例えば、60~99原子パーセントのTi)および1~40原子パーセント等の50原子パーセント未満の合金元素粉末粒子を含有する。多孔性のチタン合金シートは、粉末プレス装置内での圧密化の間に形成される。化学的安定性要件および処理能力要件の組み合わせが、チタン合金の等級を選択するために使用されてもよい。合金等級は、等級1、2、3、6、7、9、11、16、17、18、21、24、26、27、29、32、36、および/または37であることができる。
【0026】
別の実施形態では、貴金属コーティング(例えば、金または白金基金属コーティング)が、粉末冶金プロセスの間に多孔性チタンシート14上に形成されてもよく、これは、コーティングプロセス速度を増大させ、コーティングプロセスコストを低減させる。本実施形態では、貴金属粉末が、
図2A-2Fに示されるように、チタン粉末112の下方および上方のダイ空洞106の中に提供され、続いて、打抜機102、104を使用して、全ての粉末をともに圧縮することが続く。異なる粉末層が、その中で粉末組成が異なる通過において変動する、シュー110の3回以上の異なる通過によって形成されてもよい。ダイ空洞106は、第1のシューの通過の間に貴金属粉末および潤滑剤の混合物で部分的に充填され、次いで、ダイ空洞は、加えて、第2のシューの通過の間にチタン粉末112および潤滑剤の混合物で充填され、最後に、ダイ空洞は、第3のシューの通過の間に貴金属粉末および潤滑剤の混合物で充填される。一実施形態では、異なる粉末で充填された、2つの異なるシュー110が、使用されてもよい。貴金属粉末および潤滑剤の混合物で充填された、第1のシューが、第1および第3のシューの通過の間に使用される。チタン粉末および潤滑剤の混合物で充填された、異なる第2のシューが、第2のシューの通過の間に使用される。これは、ダイ空洞内に、貴金属/チタン/貴金属粉末の三重層を形成する。三重層は、次いで、圧縮され、貴金属によって両方の主表面上にコーティングされた、多孔性のチタンプレートを形成する。
【0027】
図5に示される別の実施形態では、多孔性チタンシートは、1つ以上の貴金属粉末で充填され、非常に伝導性のビア22を生成する、固有のビアを有する。言い換えると、多孔性のチタンまたはチタン合金シート14は、シート14の厚さ方向を通して延在する、貴金属ビア22を含む。貴金属ビア22は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、および/または金等の任意の好適な貴金属を含んでもよい。ビアは、良好な導電性を提供し、したがって、化学的に安定した多孔性のシート14によって提供された水/ガス輸送機能から導電性の機能を分離する。
【0028】
別の実施形態では、脱バインダ焼結プロトコルが、多孔性チタンシートの多孔性を向上させながら、多孔性のチタン層14の反対の主表面上に連続的な貴金属コーティングを取得するように選択される。これは、より高い脱バインダ温度漸増率および/またはより低い焼結温度を使用することによって遂行され得る。一実施形態では、比較的に高い脱バインダ温度漸増率は、1℃/分~5℃/分、例えば、2℃/分~4℃/分であってもよい。一実施形態では、比較的に低い焼結温度は、1,150℃~1,250℃等、1,100℃~1,300℃であってもよい。
【0029】
別の実施形態では、アノード側ガス拡散層14を形成する方法は、ケイ素化合物形成の制御を含む。例えば、いくつかの金属合金は、焼結の間にケイ素化合物相を形成する(https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1179/pom.1998.41.2.93において入手可能である、J. D. Bolton, M. Youseffi & B. S. Becker (1998)のSilicide Phase Formation and Its Influence on Liquid Phase Sintering in 316L Stainless Steel with Elemental Silicon Additions, Powder Metallurgy 41:2, (1998) 93-101(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)参照)。具体的には、316Lステンレス鋼に添加されたシリコンが、焼結の間に液体ケイ素化合物相の形成を引き起こし、これは、焼結が完了した後、ステンレス鋼部分内に大きい細孔を残す。
【0030】
本実施形態の1つの側面では、ケイ素化合物形成の制御は、アノード側ガス拡散層を形成するために使用される粉末冶金プロセスにおいて、0.1重量パーセント未満のシリコン(例えば、0~0.01重量パーセントのシリコン)を伴うチタン粉末112を使用することを含む。チタン粉末中のシリコンの完全または実質的不在は、アノード側ガス拡散層の表面上でのチタンケイ素化合物相または複数の相の形成を回避または低減させ、これは、アノード側ガス拡散層にとって望ましくない表面性質を提供し得る。
【0031】
別の側面では、ケイ素化合物形成制御は、アノード側ガス拡散層14を形成するために使用される粉末冶金プロセス内のダイ空洞全体の至る所に分散される、少なくとも1重量パーセントのシリコン(例えば、1~10重量パーセントのシリコン)を伴うチタン粉末112を使用することを含む。本実施形態では、チタンケイ素化合物相が、焼結(例えば、液相焼結)の間にアノード側ガス拡散層の厚さ全体の至る所に形成し、細孔形成剤として作用する。したがって、アノード側ガス拡散層14の多孔性は、焼結の間に意図的にアノード側ガス拡散層内に細孔を残すケイ素化合物相細孔形成剤を発生させることによって増加される。さらに、ケイ素化合物相が、アノード側ガス拡散層14の至る所に分散されるため、ケイ素化合物相は、アノード側ガス拡散層の表面上に凝集されず、望ましくない表面効果が、回避または低減される。
【0032】
したがって、陽子交換膜(PEM)電解槽のアノード側ガス拡散層として機能するように構成される、多孔性チタンシートを作製する粉末冶金方法は、ダイ空洞の中にチタン粉末および潤滑剤の混合物を提供することと、ダイ空洞の中でチタン粉末および潤滑剤の混合物を圧縮し、グリーンシートを形成することと、グリーンシートを脱バインダすることと、グリーンシートを焼結し、多孔性チタンシートを形成することとを含む。
【0033】
一実施形態では、本方法はまた、ダイ空洞の中にチタン粉末および潤滑剤の混合物を提供することに先立って、ダイ空洞の中に貴金属粉末および潤滑剤の第1の混合物を提供することと、ダイ空洞の中にチタン粉末および潤滑剤の混合物を提供することの後、ダイ空洞の中に貴金属粉末および潤滑剤の第2の混合物を提供することとを含む。ダイ空洞内でチタン粉末および潤滑剤の混合物を圧縮することが、貴金属および潤滑剤の第1および第2の混合物を圧縮し、グリーンシートを形成することとともに生じ、グリーンシートを焼結するステップは、多孔性チタンシートの両方の主表面上に貴金属コーティングを有する多孔性チタンシートを形成する。
【0034】
別の実施形態では、アノード側ガス拡散層14として使用される多孔性チタン層(例えば、シート)は、テープ成形プロセスによって形成される。
図6は、アノード側ガス拡散層14を形成するために使用され得る、例示的テープ成形装置200を図示する。低コストかつ拡張可能なテープ成形プロセスは、アノード側ガス拡散層14を形成するために使用される、大判のフォーマットのチタン含有テープを持続的に生産することができる。
【0035】
ある実施形態では、
図6に示されるテープ成形プロセスは、チタン粉末、溶媒、結合剤、随意に、塑性剤および/または界面活性剤等の1つ以上の付加的原料の混合物(例えば、スラリ)等の滑動材料202が、流体保持タンク等の貯蔵容器から分注チャンバ204の中に提供される。チタン粉末は、元素(すなわち、金属)チタン粉末および/または水素化チタン(例えば、TiH
2)粉末から成ってもよい。水素化チタン粉末は、ほぼ摂氏600~800度のTi転換を受けるときのその発熱反応に起因する、焼結の間のより低い原材料コストおよびより少ないエネルギー使用量によって生産コストを下げるために使用され得る。したがって、一実施形態では、チタン含有粉末は、元素チタンおよび水素化チタン粉末の混合物から成り、水素化チタンは、続いて、焼結の間ならびに/もしくは別個の焼鈍ステップの間等の発熱反応において、元素チタンに熱転換される。
【0036】
一実施形態では、所望の粒子径および分布を伴うチタンおよび水素化チタン粉末が、ともに配合され、テープ成形アノード側ガス拡散層14内に細孔を形成するための低酸素または無酸素焼結プロセスの間に除去され得る、ポリマー結合剤、有機溶媒、および有機塑性剤と混合される。結合剤、溶媒、および塑性剤は、それぞれ、ポリプロピレンカーボネート(「PPC」)、メチルエチルケトン(「MEK」)、およびポリカーボネート(「PC」)から成ってもよい。他の好適な材料もまた、使用され得る。
【0037】
滑動材料202が、分注チャンバ204から可動テープ担体ウェブ206上に分注される。テープ担体ウェブ206は、ドクターブレード208を越えて移動する、金属(例えば、鋼鉄)、ガラス、ポリマー等のベルトを備えてもよい。ドクターブレード208の下のテープ担体ウェブ206上で移動する、滑動材料202は、ドクターブレード208によってグリーンチタン含有テープ210に平坦化される。粉末径、具体的含有量、および固体比の種々の配合のグリーンチタン含有テープ210が、滑動材料(すなわち、スラリ)202調合物のわずかな変動を伴って生産されることができる。
【0038】
テープ担体ウェブ206は、次いで、グリーンチタン含有テープ210を乾燥チャンバ212を通して移動させてもよい。乾燥チャンバ212は、加熱空気入口214と、飽和空気出口216とを含んでもよい。加熱された空気(または別の熱源)が、グリーンチタン含有テープ210を乾燥させ、テープ210から蒸発された溶媒が、飽和空気出口216を通して空気とともに除去される。乾燥されたグリーンチタン含有テープ210が、次いで、切断ステーション218内で、アノード側ガス拡散層の形状を有するチタングリーンシート210Sに切断されてもよい。
【0039】
チタングリーンシート210Sに切断されている乾燥されたグリーンチタン含有テープ210は、続いて、焼結チャンバ220内で所望の温度で焼結され、アノード側ガス拡散層14を形成する。好ましくは、チタングリーンシート210Sは、無酸素または低酸素雰囲気中で摂氏1,000~1,100度で焼結される。大気は、アルゴン等、希ガス等の任意の好適な不活性ガスの不活性雰囲気から成ってもよい。大気は、0.0001~0.01気圧等の0.1気圧未満の酸素分圧を含んでもよい。
【0040】
一実施形態では、乾燥されたグリーンチタン含有テープ210が、乾燥チャンバ212から切断ステーション218の中に提供されてもよく、切断されたテープ(すなわち、チタングリーンシート210S)が、次いで、同一のテープ担体ウェブ206を使用して、焼結のために切断ステーション218から焼結チャンバ220の中に提供される。随意に、乾燥温度と焼結温度との間の温度で実行される、脱バインドステップが、所望される場合、脱バインドチャンバ等の付加的なチャンバが、乾燥チャンバ212と焼結チャンバ220との間に位置してもよい。
【0041】
一実施形態では、焼結チャンバ220は、抵抗加熱またはガス加熱された連続炉(例えば、ベルト炉)を備えてもよい。本実施形態では、乾燥されたグリーンチタン含有テープ210(すなわち、チタングリーンシート210S)は、同一のテープ担体ウェブ206上の乾燥チャンバ212、切断ステーション218、および連続炉を通して移動する。別の実施形態では、焼結チャンバ220は、切断および乾燥されたグリーンチタン含有テープ210(すなわち、チタングリーンシート210S)が、閃光灯またはレーザビームによって加熱される、急速熱焼鈍(「RTA」)装置(急速熱処理(「RTP」)装置とも称される)を備えてもよい。本実施形態では、グリーンチタン含有テープ210は、同一のテープ担体ウェブ206上の乾燥チャンバ212、切断ステーション218、およびRTA装置を通して移動する。したがって、滑動材料202を平坦化するステップ、テープを乾燥させるステップ、テープを切断するステップ、および切断されたテープを焼結するステップは、同一の可動テープ担体ウェブ206上で持続的に生じ得る。
【0042】
一実施形態では、焼結チャンバ220は、上流部分220Aと、テープ担体ウェブ206の移動方向に対して上流部分220Aの下流に位置する、下流部分220Bとを備えてもよい。随意のパーティション220Pが、焼結チャンバ220の上流部分と下流部分との間に提供されてもよい。上流部分220Aは、希ガス(例えば、アルゴン)雰囲気等の無酸素または低酸素雰囲気中に維持されてもよい。下流部分220Bは、窒素ガスまたはアンモニア含有雰囲気等の窒素含有雰囲気(例えば、窒素含有ガス分圧を伴う低圧または真空雰囲気)中に維持されてもよい。チタングリーンシート210Sは、下流部分220B内で反応焼結され、その表面上に窒化チタン層を形成してもよい。したがって、チタンガス拡散層14は、一方または両方の主表面14A、14B上に窒化チタンコーティングを有してもよい。窒化チタンは、チタンガス拡散層14上に硬質の耐腐食性かつ導電性コーティングを形成する。本コーティングは、チタンガス拡散層14の性能を改良する。さらに、貴金属(例えば、AuまたはPt)耐腐食性コーティングは、窒化チタン耐腐食性コーティングが形成される場合、省略されてもよい。粉末冶金等のテープ成形以外の方法によって形成されたチタンガス拡散層14もまた、反応焼結され、その上に窒化チタンコーティングを形成し得ることに留意されたい。
【0043】
代替実施形態では、滑動材料202は、
図6に示されるように、上部からの代わりに、側面および/または底部からテープ担体ウェブ206上に提供されてもよい。滑動材料202が、側面から提供される場合、装置200は、スロットダイコータ装置と称され得る。滑動材料202が、底部から提供される場合、装置200は、辺縁コータまたはマイクログラビアコータと称され得る。
【0044】
要約すると、テープ成形方法は、チタン含有粉末と結合剤、溶媒、および塑性剤を混合し、滑動材料202を形成することと、滑動材料202をテープ担体ウェブ206上に分注することと、ドクターブレード208を使用して、テープ担体ウェブ206上で移動する滑動材料202をグリーンチタン含有テープ210に平坦化することと、乾燥チャンバ212内でグリーンチタン含有テープ210を乾燥させることと、切断ステーション218内で、グリーンチタン含有テープ210を、第1の多孔性を有する第1のチタングリーンシート210Sに切断することと、第1のグリーンシート210Sを焼結し、多孔性チタンシート14を形成することとを含んでもよい。
【0045】
一実施形態では、犠牲細孔形成剤材料粉末が、滑動材料(すなわち、スラリ)202に添加され、より高い焼結温度を可能にし、したがって、より高い曲げ強度および靭性を伴うアノード側ガス拡散層14につながってもよい。そのような細孔形成剤材料は、エンジニアリング炭素粉末、すなわち、球状のミクロンおよび/またはミクロン未満に定寸されたポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)粉末から成ってもよい。細孔形成剤材料は、焼結ステップの間に除去され、ガス拡散層14内に細孔を形成する。
【0046】
一実施形態では、ある部分14Aにおいて別の部分14Bにおけるものより高い多孔性を有する、
図3の多孔性チタンシートガス拡散層14が、テープ成形によって形成されてもよい。そのような多孔性チタンシートは、異なる多孔性を有する、2つの別個のグリーンチタンシート210Sを形成することによって形成され得る。異なる多孔性は、滑動材料202内で、異なるチタン粉末径、異なる固体比、異なる含有量のテープ材料および/または異なる体積、組成、ならびに/もしくはサイズを有する、細孔形成剤材料を使用することによって取得され得る。異なる多孔性を有する2つのグリーンチタンシート210Sが、次いで、相互と接触して設置され、次いで、焼結される。焼結は、細孔径および微小構造の機能的等級付けを伴う、
図3の多孔性チタンシートガス拡散層14を形成する。したがって、本実施形態では、テープ成形方法はまた、焼結に先立って、第1のチタングリーンシート210S上に、第1の多孔性と異なる第2の多孔性を有する、第2のチタングリーンシート210Sを設置することも含む。第1および第2のチタングリーンシート210Sは、結果として生じる焼結された多孔性チタンシート14の第1の主側面14Aが、多孔性チタンシート14Bの反対の第2の主側面14Bより高い多孔性を有するように、相互と接触して焼結される。
【0047】
別の実施形態では、
図5に示される伝導性ビア22は、テープ成形ガス拡散層14内に形成されてもよい。伝導性ビア22は、貴金属または伝導性チタン化合物ビアをグリーンならびに/もしくは焼結されたチタン含有テープ210の中に形成することによって形成されてもよい。代替として、または加えて、より大きいチタンまたは水素化チタン粒子および/またはワイヤが、滑動材料202に添加されてもよい。より大きい粒子は、多孔性チタンシート14の厚さの10%以内等、20%以内である、平均直径を有してもよい。ワイヤ(例えば、ファイバ)は、多孔性チタンシート14の厚さの10%以内等、20%以内である、平均長を有してもよい。より大きいおよび/またはワイヤが、多孔性チタンシート14の厚さの50%未満である、平均直径を有する、チタンまたは水素化チタン粉末粒子と混合される。より大きい粒子および/またはワイヤは、多孔性チタンシート14の厚さ全体を通して延在し、伝導性ビア22として機能する。本明細書で使用されるように、多孔性チタンシート14の厚さは、多孔性チタンシート14の第1の主側面14Aと第2の主側面14Aとの間の寸法である。
【0048】
別の実施形態では、グリーンチタン含有テープ210は、その表面をエンボス加工(例えば、粗面化またはパターン化)させ、隆起された表面部分および低下された表面部分を生成してもよい。パターンは、テープ表面の中に陥凹されたディンプルおよび/またはテープ表面から突出する、またはその中に陥凹される、「ワッフル」形状のグリッドを含んでもよい。テープのエンボス加工は、その表面積を増大させ、水流を改良し得る。エンボス加工(例えば、表面の粗面化またはパターン化)は、テープを乾燥することの前または後等、焼結に先立って、テクスチャ加工またはパターン化されたローラをグリーンチタン含有テープ210の表面の中に圧接することによって実施され得る。
【0049】
別の実施形態では、貴金属コーティング(例えば、金または白金基金属コーティング)または別の腐食阻害剤材料コーティングが、テープ成形の間に多孔性チタンシート14上に形成されてもよい。本実施形態では、腐食阻害剤材料の粉末が、焼結に先立って、乾燥されたグリーンチタン含有テープ210の表面上に形成され、多孔性チタンシート14の少なくとも一方の表面上に腐食阻害剤コーティングを焼結してもよい。
【0050】
別の実施形態では、チタン以外の材料のイオンが、多孔性チタンシート14または乾燥されたグリーンチタン含有テープ210の中に埋込されてもよい。例えば、シリコン原子が、イオン埋込され、上記に説明される、チタンケイ素化合物細孔形成剤領域を形成してもよい。
【0051】
前述は、特定の好ましい実施形態を参照するが、本発明が、それに限定されるものではないことを理解されたい。種々の修正が、開示される実施形態に対して成され得ること、およびそのような修正が、本発明の範囲内であることを意図していることが、当業者に想起されるであろう。本明細書において引用される公開文書、特許出願、および特許の全ては、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】