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特表2023-535821エンドカンナビノイドシステムを調節することで炎症性または機能性腸障害を治療するための、チモールおよびアミノ酸を含む組成物
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  • 特表-エンドカンナビノイドシステムを調節することで炎症性または機能性腸障害を治療するための、チモールおよびアミノ酸を含む組成物 図1
  • 特表-エンドカンナビノイドシステムを調節することで炎症性または機能性腸障害を治療するための、チモールおよびアミノ酸を含む組成物 図2
  • 特表-エンドカンナビノイドシステムを調節することで炎症性または機能性腸障害を治療するための、チモールおよびアミノ酸を含む組成物 図3
  • 特表-エンドカンナビノイドシステムを調節することで炎症性または機能性腸障害を治療するための、チモールおよびアミノ酸を含む組成物 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】エンドカンナビノイドシステムを調節することで炎症性または機能性腸障害を治療するための、チモールおよびアミノ酸を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20230814BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20230814BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20230814BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230814BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230814BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230814BHJP
   A23K 20/105 20160101ALI20230814BHJP
   A23K 20/142 20160101ALI20230814BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20230814BHJP
   A23K 50/30 20160101ALI20230814BHJP
   A23K 50/75 20160101ALI20230814BHJP
   A23K 50/80 20160101ALI20230814BHJP
   A23L 33/175 20160101ALN20230814BHJP
【FI】
A61K31/05 ZNA
A61K31/198
A61P1/04
A61P29/00
A61P1/10
A61P1/12
A61P1/14
A61P1/00 171
A61P1/12 171
A61P43/00 171
A61P9/10
A61P1/08
A61K31/405
A61K9/14
A61K47/06
A61K47/14
A23K20/105
A23K20/142
A23K20/158
A23K50/30
A23K50/75
A23K50/80
A23L33/175
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506259
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 IB2021056723
(87)【国際公開番号】W WO2022023932
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】102020000018913
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522431966
【氏名又は名称】ヴェタグロ・インターナショナル・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】VETAGRO INTERNATIONAL S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】ピーヴァ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】グリッリ,エステル
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4B018
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
2B005DA01
2B005EA01
2B005LA06
2B005LB07
2B005MA01
2B150AA03
2B150AA05
2B150AA08
2B150AB09
2B150DA01
2B150DA43
2B150DA44
2B150DA54
4B018MD09
4B018MD10
4B018MD19
4C076AA31
4C076BB01
4C076BB36
4C076BB38
4C076BB39
4C076BB40
4C076CC04
4C076CC11
4C076CC16
4C076DD34
4C076DD45
4C076DD46
4C076EE53
4C076FF31
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4C086AA02
4C086BC14
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4C086ZA66
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4C086ZA69
4C086ZA71
4C086ZA72
4C086ZA73
4C086ZB11
4C086ZC54
4C086ZC61
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4C206AA02
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4C206HA32
4C206JA27
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA61
4C206MA72
4C206NA10
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA66
4C206ZA68
4C206ZA69
4C206ZA71
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4C206ZA73
4C206ZB11
4C206ZC54
4C206ZC61
(57)【要約】
本発明は、単胃の哺乳動物または非哺乳動物の対象、例えばヒト対象、ブタ、家禽動物、魚類または甲殻類など、におけるエンドカンナビノイドシステムの受容体および/または酵素を調節することによる、腸管の炎症性または機能性の疾患または症状の予防的および/または根治的治療のための、チモールおよび少なくとも一つのアミノ酸を含む組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単胃の哺乳動物または非哺乳動物の対象における、炎症性の腸疾患または腸症状の予防的および/または根治的治療のための組成物であって、
前記単胃の哺乳動物の対象が、ヒト対象またはブタであり、
前記単胃の非哺乳動物の対象が、家禽動物または魚類または甲殻類であり、
前記組成物が、
(i)以下:
チモール、および
少なくとも一つのアミノ酸またはその許容される医薬品もしくは食品グレードの塩であって、前記アミノ酸が、リシン、メチオニン、トリプトファン、スレオニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、アルギニン、フェニルアラニンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、アミノ酸
を含むか、またはこれらからなる活性成分の混合物を含み、
適宜、前記組成物が、(iii)少なくとも一つの許容される医薬品または食品グレードの添加物および/または添加剤をさらに含んでもよく;
前記チモールが、エンドカンナビノイドシステムの受容体および/または酵素を調節し、
前記組成物が、前記(i)活性成分の混合物を組み込む(ii)脂質マトリックスをさらに含み、
前記脂質マトリックスが、以下:
炭素原子の数がC10~C30の範囲内である、少なくとも一つの飽和または不飽和の、遊離またはエステル型脂肪酸、および/または
炭素の数がC6~C30の範囲内である飽和または不飽和脂肪酸鎖を有する、少なくとも一つのトリグリセリドおよび/または
炭素原子の数がC16~C36の範囲内である、少なくとも一つのワックス
を含むか、またはこれらからなり、
前記組成物が、100個の顆粒に対して以下の粒度分布割合:
前記対象が、ヒト対象またはブタである場合、顆粒の5%から10%が50μmから500μmの粒子径を有し、顆粒の25%から35%が500μmから1000μmの粒子径を有し、顆粒の45%から55%が1000μmから1500μmの粒子径を有し、顆粒の20%から30%が1500μmから2000μmの粒子径を有し、顆粒の0.1%から1%が2000μmから2500μmの粒子径を有する;または
前記動物が、魚類または甲殻類である場合、顆粒の10%から20%が50μmから250μmの粒子径を有し、顆粒の45%から55%が250μmから400μmの粒子径を有し、顆粒の20%から30%が400μmから500μmの粒子径を有し、顆粒の5%から15%が500μmから2500μmの粒子径を有する;または
前記動物が、家禽動物である場合、顆粒の1%から10%が50μmから500μmの平均粒子径を有し、顆粒の45%から55%が500μmから1000μmの粒子径を有し、顆粒の35%から45%が1000μmから1500μmの粒子径を有し、顆粒の1%から9%が1500μmから2000μmの粒子径を有し、顆粒の0.1%から1%が2000μmから2500μmの粒子径を有する
を有する顆粒状の固体組成物であり;
前記組成物が、前記対象に経口経路で投与され、
前記(ii)脂質マトリックスが、前記チモールおよび前記少なくとも一つのアミノ酸の胃保護を提供することができ、
前記(ii)脂質マトリックスが、腸管において、30分から8時間の時間範囲内で前記チモールおよび前記少なくとも一つのアミノ酸の放出を制御することができる、
組成物。
【請求項2】
前記少なくとも一つの脂肪酸および/または前記少なくとも一つのトリグリセリドを含む前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油、パーム油、ダイズ油およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記対象が家禽動物、魚類または甲殻類である場合、好ましくはナタネ油またはその混合物であり、前記対象がヒト対象またはブタである場合、好ましくはダイズ油またはその混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(i)活性成分の混合物が、リシンおよびチモールを含むか、またはこれらからなり、
前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなる、
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(i)活性成分の混合物が、メチオニンおよびチモールを含むか、またはこれらからなり、
前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなる、
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記(i)活性成分の混合物が、トリプトファンおよびチモールを含むか、またはこれらからなり、
前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなる、
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記(i)活性成分の混合物が、スレオニンおよびチモールを含むか、またはこれらからなり、
前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなる、
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記(i)活性成分の混合物が、アルギニンおよびチモールを含むか、またはこれらからなり、
前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなる、
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
前記疾患または症状が、慢性過敏性腸疾患(IBD)、クローン症候群もしくはクローン病、潰瘍性大腸炎、分類不能大腸炎、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎、回腸嚢炎、セリアック病、過敏性腸症候群(IBS)、下痢型IBS、便秘型IBS、便秘および下痢交代型IBS、分類不能型IBS、消化不良、悪心、嘔吐、便秘、下痢、腹部膨満、および鼓腸を含む群またはこれらからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
飼料または飼料添加物を調製するための、請求項1から8のいずれか1項に記載の組成物の非治療的使用であって、前記飼料が、単胃の哺乳動物または非哺乳動物の対象のための飼料であり、前記単胃の哺乳動物の対象が、ブタである、および/または前記単胃の非哺乳動物の対象が、家禽動物、魚類または甲殻類である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドカンナビノイドシステムの受容体および/または酵素を調節することによる、ヒト対象、または単胃動物(哺乳動物および/または非哺乳動物)、または家禽または魚類における腸管の炎症性または機能性の疾患および関連症状の予防的および/または根治的治療のための、チモールを含む組成物に関する。
【0002】
さらに、本発明は、エンドカンナビノイドシステムの受容体および/または酵素を調節することによる、ヒト対象、または単胃の哺乳動物(例えばブタ)または単胃の非哺乳動物動物(例えば、家禽動物、魚類または甲殻類など)における腸管の炎症性または機能性の疾患または症状の予防的および/または根治的治療のための、チモールおよび少なくとも一つのアミノ酸を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
腸管の炎症性または機能性の疾患または症状は、ヒトおよび単胃動物(哺乳動物または非哺乳動物)の両方において非常に一般的であり、(特に成長期のヒトまたは動物対象における)それらの発育、それらのクオリティ・オブ・ライフに悪影響を及ぼし、それらを免疫系の弱体化によるさらなる発病のリスクにさらす。
【0004】
これらの中でも、感染性の病因がなく(すなわち細菌、ウイルスまたは真菌が原因でない)、慢性炎症が存在することを特徴とする一群の疾病分類学的な疾患単位である慢性炎症性腸疾患(IBD)は、特に重要である。その群の2つの最も重要な疾患は、クローン病および潰瘍性直腸結腸炎である。IBDは、上皮バリア機能の不全を引き起こす腸内細菌叢レベルの過剰免疫応答が一因となる、多因子疾患である。特に、腸上皮の完全性の損失は、IBDの重要な病因となる。
【0005】
IBDを有する大半の動物は、再発性または慢性の嘔吐および/または下痢の既往歴がある。しばしば、有意な体重減少がIBDを患う動物で観察されることがあり、それによりあらゆる結果を伴う。
【0006】
ヒトおよび単胃動物集団においてさえも非常に一般的な別の胃腸疾患は、過敏性腸症候群(略称IBS)である。過敏性腸症候群は、症状の発現のみに基づいて定義できる、明らかな病因が存在しない(すなわち細菌、ウイルスまたは真菌が存在しない)ことを特徴とする診断カテゴリーである、機能性胃腸障害(FGID)のグループに属し、それにおける腹部不快感または腹痛は、腸内細菌叢の修飾に関連する。糞便の特徴に応じて、疾患の4つのグループ(便秘型IBS(便秘の腸)、下痢型IBS(下痢の腸)、便秘および下痢交代型IBS、分類不能型IBS)が鑑別される。
【0007】
さらに、腸上皮は栄養分の吸収を担う腸管上皮細胞が存在する領域であることを考えると、損傷を受けたか、または炎症を起こした腸上皮を有する動物において、栄養分(例えば、アミノ酸)の吸収のための腸の活動は障害される。
【0008】
腸上皮の炎症は、ストレス(例えば、動物に関しては、大量飼育によるストレス)および様々な種類の炎症性の傷害(例えば、食餌中に存在する有害な成分、病原性感染、熱ストレスなどの環境ストレスなど)が原因となり得る。
【0009】
ヒトまたは単胃動物における腸管の炎症性または機能性の疾患または症状の治療のための、今日までに入手可能な薬物または化合物は、しばしばその疾患および症状を完全におよび/または持続的に消散させることができない。さらに、市場で利用できる薬物および治療は、ときどき結果としてその使用を制限する望ましくない副作用もある。
【0010】
したがって、当業界の経営者側の興味は、既知の治療に今もなお存在する制限および欠点を克服することができる、かつ、ヒトおよび単胃動物(例えばブタ、鳥類、ニワトリ、魚類および甲殻類など)における腸管の炎症性または機能性の疾患または症状に対して、急速、有効および持続的な反応を提供することができる治療を受けることができることにある。
【発明の概要】
【0011】
本発明により対処および解決される技術的問題は、特に腸の健康状態および健全性の維持および/または離乳(または初期成長)期の支援もしくは促進にも関する、ヒト対象、単胃動物、好ましくは単胃の哺乳動物(例えばブタまたは家畜など)、家禽(単胃の非哺乳動物)、好ましくは鳥類およびニワトリ、および魚類または甲殻類(単胃の非哺乳動物)における、主に細菌、ウイルスまたは真菌が病因でない、炎症性および機能性の両方の腸障害(疾患または症状)の治療のための組成物および有効な治療を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明により対処および解決される技術的問題は、無傷で、栄養分(例えばアミノ酸など)の消化および吸収の効率がよい腸上皮を対象に保証するために、炎症性および/または機能性の腸疾患または腸症状を治療することにある。
【0013】
単胃の対象に投与されるアミノ酸を効率よく吸収する腸上皮は、前記対象におけるアミノ酸の欠乏症の治療を可能にする。アミノ酸の欠乏症を効果的に治療するために、アミノ酸を単独で投与することは、腸が炎症を起こしている場合、対象の生物は前記投与されるアミノ酸を(完全にまたは部分的に)吸収することができないということを考えると、十分でない。
【0014】
ヒト対象または単胃動物にアミノ酸をバランスよく供給すること(対象、対象の年齢およびその他の因子によって異なる)は、その成長を支援すること、並びに筋肉量および/または筋力の減少状態および栄養失調状態(例えばセリアック病またはサルコペニアなど)を予防的または根治的に治療することを意味する。ヒト対象または単胃動物にアミノ酸をバランスよく供給することは、前記対象の腸内に存在する過剰なタンパク質を減少させること、および結果として細菌感染の可能性を減少させることを意味する。単胃動物にアミノ酸をバランスよく供給することは、前記動物の窒素排出を減少させること、および結果として動物農場の環境影響を減少させることを意味する。ヒト対象または単胃動物にアミノ酸をバランスよく供給することは、対象の食餌におけるタンパク質の割合を減少させることを意味し、特に動物およびその大量飼育の場合に経済的利点をもたらす。
【0015】
さらに、本発明により対処および解決される技術的問題は、その血中バイオアベイラビリティが2時間から24時間の間にわたって一定となるように前記アミノ酸を提供することにある(食事と食事の間の前記バイオアベイラビリティの変動を回避するため)。
【0016】
精力的な研究および開発活動の後、出願人は、本明細書および添付の特許請求の範囲で定義される特徴を有する革新的な混合物、組成物(要するに、本発明の混合物および組成物)および治療を提供することで、上述の技術的問題を対処および解決する。
【0017】
本発明もまた、以下の図を用いてより良く開示されるが、それらは例として提供されるのみで、したがってその保護範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、ブタにおける14日目(d14)の、十二指腸および回腸の粘膜におけるカンナビノイド受容体についての遺伝子発現データを記載する。
図2図2は、ブタにおける14日目(d14)の、十二指腸および回腸の粘膜におけるECS酵素についての遺伝子発現データを記載する。
図3図3は、ブタにおける14日目(d14)の、十二指腸および回腸の粘膜における腸の化学感覚についての遺伝子発現データを記載する。
図4図4は、Diplodus sargus(真骨下綱(Teleostei)の科に属する)の子供における24時間周期中の胃内pH(平均値±DS)を記載する。同じ文字はいかなる有意差も示さない(P>0.05)。濃い灰色の領域(10.00時頃)は給餌時間を、薄い灰色の領域(21.00~8.00時頃)は暗期を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の態様は、第1の実施形態(略してFR-I)による組成物であって、前記組成物が、(i)活性成分の混合物Mおよび(iii)少なくとも一つの許容される医薬品または食品グレードの添加物および/または添加剤を含み、前記(i)活性成分の混合物が、チモールを含むか、またはこれからなる、組成物に関する。好ましくは、前記FR-Iによる組成物は、(ii)放出制御脂質マトリックスをさらに含む。
【0020】
本発明の第2の態様は、第2の実施形態(略してFR-II)による組成物であって、前記組成物が、(i)活性成分の混合物Mおよび(iii)少なくとも一つの許容される医薬品または食品グレードの添加物および/または添加剤を含み、前記(i)活性成分の混合物が、チモールおよび少なくとも一つのアミノ酸を含むか、またはこれらからなる、組成物に関する。好ましくは、前記FR-Iによる組成物は、(ii)放出制御脂質マトリックスをさらに含む。
【0021】
本発明の第3の態様は、ヒト、または単胃動物(哺乳動物または非哺乳動物、例えばブタ、または鳥類、またはニワトリ、または魚類、または甲殻類)における、エンドカンナビノイドシステムおよび/または腸の化学感覚システムの、受容体および/または酵素を調節する(または遺伝子発現を増加させる)ことによる、炎症性および/または機能性の腸疾患または関連症状の予防的および/または根治的治療のための、組成物(FR-IまたはFR-IIによる組成物)(要するに、本発明の組成物)であって、前記組成物が、チモール(FR-1による)またはチモールおよび少なくとも一つのアミノ酸(FR-IIによる)を含むか、またはこれまたはこれらからなる、混合物M(要するに、本発明の混合物M)を含み、適宜前記組成物は、少なくとも一つの許容される医薬品または食品グレードの添加物および/または添加剤をさらに含んでもよい、組成物に関する。
【0022】
前記炎症性および/または機能性の腸疾患、または関連症状は、主に微生物(細菌、ウイルスまたは真菌)が病因でない腸疾患から選択される。有利には、前記本発明の組成物は、前記疾患の治療で効果的に使用される。
【0023】
有利には、本発明の組成物対象(FR-1およびFR-II)は、エンドカンナビノイドシステム(ECS)の受容体(例えば、カンナビノイド-1(CB1)およびカンナビノイド-2(CB2)など)および/またはエンドカンナビノイドシステム(ECS)の酵素(例えば、エンドカンナビノイド分子であるアナンドアミド(AEA)の分解に関与する脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)など)の腸の遺伝子発現を調節するチモールの力、さらに腸の化学感覚システム(例えば、一過性受容体電位型バニロイド-1(TRPV1)および/または嗅覚受容体1G1(OR1G1)など)の一つ以上のマーカーを調節するチモールの力のおかげで、腸管の炎症性または機能性の疾患の予防的および/または根治的治療について、興味深い治療特性を示す。
【0024】
有利には、出願人により開発される組成物は、治療される種に応じて漸進的で標的化された腸内への放出ができるように、製剤化および調製され得る。チモールおよびさらなる植物化合物誘導体が消化管の様々な部位で時間をかけて漸進的に放出されるならば、それらの抗酸化活性、抗炎症活性および免疫刺激活性の有効性を高め、結果としてホメオスタシスおよび腸粘膜の細菌叢の健康を維持または回復するその有効性を高める。さらに、本発明に記載されるチモールおよび前記さらなる植物化合物誘導体は、腸の健康に寄与する抗菌活性を示す。表Aは、ニワトリについて、消化管の様々な区分におけるpHの変化に伴う餌の通過時間の例を記載する。小エビおよび甲殻類に関しては、腸管における餌の通過時間は、代わりに30分から120分、好ましくは40分から90分の間に含まれる。
【表1】
【0025】
前記本発明の組成物の好ましい態様によれば、チモール(FR-Iによる)またはチモールおよび少なくとも一つのアミノ酸(FR-IIによる)に加えて、前記組成物は、チモールおよび本発明の組成物中に存在し得るその他の活性成分(例えば、その他の植物化合物誘導体、有機酸および/またはアミノ酸)を組み込む、放出制御脂質マトリックスを含む。前記放出制御脂質マトリックスは、胃保護(胃の酸性pHからの保護)並びに腸内で時間をかけて(30分から8時間、好ましくは1時間から6時間)の、チモールおよび本発明の組成物中に存在する可能性のあるその他の活性成分(例えば、その他の植物化合物誘導体、有機酸および/またはアミノ酸)の制御放出を可能にする。
【0026】
本発明の脂質マトリックスは、消化段階によって異なる、胃(または鳥類の場合は砂嚢)の優勢な酸性pH:pH2~6(図4、魚類のpH)で安定である。結果として、脂質マトリックスは、チモール、および存在するのであればその他の活性成分(例えば、アミノ酸およびさらなる植物化合物誘導体)を組み込むおよび/または組み入れることにより、それらが分解されることなく胃を通過することを可能にする。本発明の組成物が、pHの値が胃と比較して高く(pH4~7)、脂質物質を消化することができる酵素(すなわちリパーゼ)が存在する腸および/または肝膵臓に到達すると、脂質マトリックスがゆっくりと溶解し、活性成分(例えばアミノ酸および植物化合物誘導体など)の制御放出を可能にする。
【0027】
さらに、本発明の組成物が、少なくとも一つのアミノ酸(FR-IIによる)を含む場合、前記脂質マトリックスの存在は、本発明の組成物の経口投与後に、2時間から24時間の間にわたって、一定のパーセンテージの前記少なくとも一つのアミノ酸の血中(または血漿)バイオアベイラビリティを提供する。
【0028】
エンドカンナビノイドシステム(ECS)(受容体、シグナル伝達分子およびリガンド生合成および分解に関与する酵素)の活性化は、消化器系の炎症および機能の、調節および制御において有効なアプローチであると考えられる。
【0029】
カンナビノイド受容体(その主な代表例はCB1およびCB2である)は、腸および消化器系にいる細胞も含め、生物のほとんどに存在する。したがって、ECSが重要な生理的過程(免疫応答、代謝、消化運動および食欲)を制御すること、およびそれがホメオスタシス(生物の敏感な内部均衡)の維持に寄与することが示唆されている。結果として、エンドカンナビノイドシステムの機能、特に受容体(CB1およびCB2)および酵素の遺伝子発現の調節の異常は、炎症性および機能性の腸疾患に決定的な役割を果たす。
【0030】
さらに、様々な受容体(例えば、TRPV1(一過性受容体電位型バニロイド1)およびOR1G1(嗅覚受容体1G1)など)が腸に存在することから、「腸の化学感覚システム」は、炎症性または機能性の腸疾患の治療に応用できるかもしれないということが示唆されている。
【0031】
本発明の組成物または混合物は、大きな副作用がなく、成人のヒト対象および動物の両方、成長期のヒト対象および動物、ならびに妊娠中のメス動物に投与することができる。
【0032】
最後に、本発明の組成物または混合物は、調製が簡単であり、費用対効果が高い。
【0033】
本発明の組成物が、添加物および/または添加剤を含まない場合、本発明の組成物は、本発明の混合物Mと同一である。
【0034】
前記本発明の治療方法は、ヒト対象、単胃動物、家禽または魚類に、治療有効量の、本発明の組成物または混合物Mを投与することを提供する。
【0035】
本発明の文脈において、「単胃動物」という表現は、単胃の哺乳動物および非哺乳動物の両方を含めるよう意図される。
【0036】
さらに、チモール(および好ましくはその他の活性化合物(例えば、FR-IまたはFR-IIによる植物化合物誘導体、有機酸および/またはアミノ酸など))を含む本発明の組成物または混合物Mは、腸の健康の維持または向上に使用される、および/または前記ヒト対象または単胃動物(哺乳動物および非哺乳動物)、好ましくは単胃の哺乳動物または家禽または魚類の離乳(または初期成長)期を支援する。
【0037】
「支援する」または「離乳または初期成長期に支援する」という表現は、本発明の文脈において、化合物(例えば、植物化合物誘導体、有機酸および/またはアミノ酸など)の欠乏を治療するために、または対象におけるかかる不足から生じる疾患、症状または障害を治療するために前記化合物を供給することを表すために使用される。
【0038】
好ましくは、前記単胃動物は、単胃の哺乳動物、特に離乳期の単胃動物または単胃の哺乳動物である。さらに、本発明の文脈において、単胃の非哺乳動物(例えば、家禽動物(例えば鳥類およびニワトリなど)、魚類および甲殻類など)もまた、含まれる。
【0039】
本発明の組成物または混合物Mを用いて治療することができる、前記成人のまたは離乳期の単胃の哺乳動物は、イヌ、ネコ、サル、ブタ、ウマ科(例えばウマおよびロバなど)、離乳前のウサギ、齧歯類(例えば、ハムスター、ケイビー、マウス、アレチネズミ、チンチラ、デグー、リス、モルモットおよびラットなど)、イタチ、フェレットおよびオコジョ、好ましくはブタから選択される場合がある。
【0040】
本発明の組成物または混合物Mを用いて治療することができる、前記成人のまたは初期成長期の単胃の非哺乳動物は、家禽種の動物(鳥綱、好ましくはキジ目)(例えば、ニワトリまたはその他の家禽、シチメンチョウ、ホロホロチョウ、キジ、クジャク、ヤマウズラ、ウズラ、ハト、キジバト、ガチョウ、一般的なアヒルおよびバリケンなど、好ましくは、ニワトリ、産卵鶏、シチメンチョウ)または水生動物種に属する動物(例えば、魚類(淡水で繁殖することができるか、または海水で繁殖することができる魚類、例えばサケ、マス、シーバス、ヨーロッパヘダイ(gilthead bream)、ティラピア、コイ、ナマズおよび同類のもの)および甲殻類(養殖の甲殻類、例えば小エビ)など)、好ましくはニワトリ、産卵鶏、シチメンチョウおよび魚類から選択され得る。
【0041】
記載される実施形態のいずれか一つによる本発明の組成物または混合物Mを用いて、予防的および/または根治的に治療することができる疾患または症状は、有利には、慢性過敏性腸疾患(IBD)、クローン症候群もしくはクローン病、潰瘍性大腸炎、分類不能大腸炎、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎、回腸嚢炎、セリアック病、過敏性腸症候群(IBS)、下痢型IBS、便秘型IBS、便秘および下痢交代型IBS、分類不能型IBS、消化不良、悪心、嘔吐、便秘、下痢、腹部膨満、鼓腸および肉体的疲労から選択される。
【0042】
記載される実施形態のいずれか一つによる本発明の組成物または混合物Mは、本発明で示される疾患の治療におけるさらなる治療アプローチ(例えば薬物)のアジュバントとして使用されることがある。
【0043】
チモール(FR-Iによる)に加えて、またはチモールおよび少なくとも一つのアミノ酸(FR-IIによる)に加えて、本発明の組成物中に含まれる混合物Mは、((ii)脂質マトリックスの有無にかかわらず)カルバクロール、オイゲノール、カプサイシン、ターメリック、バニリン、桂皮アルデヒド、ジアリルジスルフィド、カンフル、リモネン、ロスマリン酸、p-シメン、γ-テルピネン、α-ピネン、α-ツジョン、1,8-シネオール、ベルバスコシド、タンニン、サポニンおよびそれらの混合物を含むグループ(I)またはこれらからなるグループ(I)から選択される、植物化合物(ボタニカル)に由来するさらなる第1の活性成分をさらに含むことがある。好ましくは前記植物化合物(ボタニカル)に由来するさらなる第1の活性成分は、(b)カルバクロール、(c)オイゲノール、(d)カプサイシン、(e)タンニン、(f)ベルバスコシド、(g)サポニンおよびそれらの混合物を含む(I.i)またはこれらからなるグループ(I.i)から選択される。
【0044】
例えば、FR-Iによれば、本発明の組成物は、チモールおよびカルバクロール、またはチモールおよびバニリン、またはチモール、カルバクロールおよびカプサイシン、またはチモール、カルバクロールおよび桂皮アルデヒド、またはチモール、オイゲノールおよびベルバスコシドを含むことがある。
【0045】
チモール(FR-Iによる)に加えて、またはチモールおよびグループ(IV)から選択される少なくとも一つのアミノ酸(FR-IIによる)、および適宜前記グループ(I)から選択されるさらなる第1の活性成分(ボタニカル)に加えて、本発明の組成物中に含まれる混合物Mは、有機酸またはそのアルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンとの塩をさらに含むことがあり、ここで前記有機酸は、乳酸、リンゴ酸、安息香酸、フマル酸、ソルビン酸、クエン酸、オクタン酸、ヘプタン酸、酪酸、ドデカン酸およびそれらの混合物を含むグループ(II)またはこれらからなるグループ(II)から選択される。例えば、本発明の組成物は、チモールおよびソルビン酸;チモール、ソルビン酸およびクエン酸;チモールおよび安息香酸;チモール、ソルビン酸、クエン酸および安息香酸;チモール、カルバクロールおよびソルビン酸;チモール、カルバクロール、ソルビン酸およびクエン酸;チモール、カルバクロール、桂皮アルデヒドおよびソルビン酸、またはチモール、カルバクロール、桂皮アルデヒド、ソルビン酸およびクエン酸、チモールおよび酪酸、チモール、クエン酸およびドデカン酸を含むことがある。
【0046】
本発明の組成物中に含まれる混合物Mにおいて、AとBのモル比(Aはチモール、および適宜前記グループ(I)から選択されるさらなる第1の活性成分(ボタニカル)のうちの少なくとも一つ以上であり、一方でBはグループ(II)から選択される少なくとも一つ以上の有機酸またはその塩である)は、1:500から500:1まで、好ましくは1:300から300:1まで、より好ましくは1:100から100:1まで、または1:50から50:1まで、または1:10から10:1までの間に含まれる。
【0047】
チモール(FR-Iによる)に加えて、またはチモールおよびグループ(IV)から選択される少なくとも一つのアミノ酸(FR-IIによる)、および適宜前記グループ(I)から選択されるさらなる第1の活性成分および/または前記グループ(II)から選択される有機酸またはその塩(記載される実施形態のいずれか一つによる)に加えて、本発明の組成物中に含まれる混合物Mは、((ii)脂質マトリックスの有無にかかわらず)以下:
・ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属、ビフィドバクテリウム属、ペディオコッカス属、エンテロコッカス属、サッカロミセス属に属する細菌株またはプロバイオティクス細菌株;
・プレバイオティクス(例えば、イヌリン、ラクツロース、ラクチトール、マンナンオリゴ糖、フラクトオリゴ糖(fructigosaccharides)およびガラクトオリゴ糖、トリブチリンなど);
・金属(例えば、亜鉛および銅など)の塩;およびそれらの混合物
からなるグループ(III)から選択される少なくとも一つのさらなる第2の活性成分をさらに含むことがある。
【0048】
さらに、本発明の組成物は、チモール(FR-Iによる)およびグループ(IV)から選択される少なくとも一つのアミノ酸(FR-IIによる)を含み、グループ(I)および/または(II)および/または(III)から選択されるさらなる成分(記載される実施形態のいずれか一つによる)を適宜含んでもよい前記混合物Mを組み込むかまたはそれを組み入れる、(ii)放出制御脂質マトリックスを含むことがある。前記放出制御脂質マトリックスは、炭素原子の数がC10~C30、好ましくはC14~C24またはC16~C22の範囲内である、少なくとも一つの飽和または不飽和の、遊離またはエステル型脂肪酸、および/または炭素原子の数がC6~C30、好ましくはC14~C24またはC17~C21の範囲内である飽和または不飽和脂肪酸鎖を有する、少なくとも一つのトリグリセリド、および/または炭素原子の数がC16~C36、好ましくはC24~C36またはC26~C32の範囲内である、少なくとも一つのワックスを含むか、またはこれらからなり、ここで前記脂質マトリックスは、胃の酸性pHからの胃保護を可能にし、治療されるべき種および使用される脂質マトリックスの種類に応じた放出時間を伴う、チモールおよび混合物M中に存在する可能性のあるさらなる成分の腸での制御放出を確実にする。
【0049】
混合物Mおよびそれを含む組成物は、当業者に既知の技術および機器を用いて調製される。特に、混合物Mおよび脂質マトリックスを含むその組成物を調製する方法は、全ての化合物および成分が全体としてマトリックス中に一緒に組み込まれるように、撹拌(または混合)および加熱手段が備わっているミキサーまたはコンテナで、チモール、および適宜、グループ(I)および/または(II)および/または(III)から選択されるさらなる成分(記載される実施形態のいずれか一つによる)のうちの一つ以上を、脂質マトリックスと一緒に混合することを提供する。好ましくは、本発明の混合物Mまたは組成物(FR-IおよびFR-IIの両方による)は、特許出願番号EP 1 391 155 A1の段落[0048]~[0049]および[0077]に記載の調製方法を通じて得られ、前記段落は、参照のために本明細書に組み込まれる。
【0050】
「トリグリセリド」(またはトリアシルグリセロール)は、3つの長鎖脂肪酸の鎖がヒドロキシル基の水素原子の代わりに存在するグリセロールの中性エステルである。一般的なトリグリセリド構造における脂肪酸鎖の長さは、5から28の炭素原子であるが、17および19がより一般的である。
【0051】
「脂肪酸」(略してFA)という用語は、主に、偶数個の炭素原子を有し、分岐せず、非環式である(すなわち、環状に閉じた鎖を持たない分子からなる)長鎖脂肪族モノカルボン酸(炭素原子の数がC10~C30の範囲内である)を指すのに使われるが、排他的に使われない。脂肪酸は、飽和(その分子がC-C単結合のみを有する)でも不飽和(それがC=C二重結合を有する)でもよい。
【0052】
「ワックス」という用語は、高分子量の1価アルコールを有する長鎖脂肪酸エステルを指すのに使われる。ワックスは、植物由来でも動物由来(蜜蝋)でもよい。蜜蝋は、様々な化合物:炭化水素 14%、モノエステル 35%、ジエステル 14%、トリエステル 3%、ヒドロキシモノエステル 4%、ヒドロキシポリエステル 8%、酸エステル 1%、酸性ポリエステル 2%、遊離酸 12%、遊離アルコール 1%、不明 6%からなる。蜜蝋の主成分は、パルミテート、パルミチン酸、ヒドロキシパルミテートおよび長鎖(30~32の炭素原子)の脂肪族アルコールにより形成されるオレイン酸エステルであり、2つの主成分であるパルミチン酸トリアコンタニル(パルミチン酸ミリシル)CH(CH29O-CO-(CH)14 CHおよびセロチン酸CH(CH24COOHの比は6:1である。蜜蝋は、62℃から64℃の融点を有する。15℃での密度は、0.958g/cmから0.970g/cmの間である。蜜蝋はヨーロッパ型(European type)と東洋型(Eastern type)の2種類に大別することができる。鹸化数は、ヨーロッパ型では3~5、東洋型では8~9である。
【0053】
前記放出制御脂質マトリックス中に含まれる前記トリグリセリドは、植物または動物由来の水素化または非水素化トリグリセリド、好ましくは植物および/または動物由来の水素化トリグリセリド、より好ましくは植物由来の水素化トリグリセリドである場合がある。
【0054】
放出制御脂質マトリックス中に含まれる前記脂肪酸は、植物および/または動物由来の水素化または非水素化脂肪酸、またはそのエステル、好ましくは植物および/または動物由来の水素化脂肪酸、より好ましくは植物由来の水素化脂肪酸である場合がある。
【0055】
放出制御脂質マトリックス中に含まれる前記ワックスは、植物および/または動物由来、好ましくは蜜蝋である場合がある。
【0056】
前記植物由来の脂肪酸、トリグリセリドまたはワックスの例は、水素化された形であっても、パーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ピーナツ油、ダイズ油、オリーブ油、蜜蝋、およびそれらの混合物;好ましくはナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物である。
【0057】
動物由来のトリグリセリドの例は、水素化された形も同様に、チキンファット、水素化チキンファット、牛脂および豚ラードから選択される。
【0058】
前記本発明の第2の実施形態(FR- II)の好ましい態様によると、本発明の組成物は、(i)前記チモールおよびリシン(Lys)、メチオニン(Met)、トリプトファン(Trp)、スレオニン(Tre)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Iso-Leu)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、フェニルアラニン(Phe)を含むグループ(IV)またはこれらからなるグループ(IV)から選択される少なくとも一つのアミノ酸を含む本発明の混合物Mを含み、本発明の組成物は、(ii)前記(ii.1)トリグリセリド、(ii.2)有機酸、(ii.3)ワックスまたはそれらの混合物(本発明の文脈中で定義される)を含むか、またはこれらからなる放出制御脂質マトリックスをさらに含む。
【0059】
例えば、本発明の組成物は、(i)、(ii)、および適宜(iii)を含み、ここで前記(i)本発明の混合物Mは、チモールおよびグループ(IV)から選択される少なくとも一つのアミノ酸を含み、適宜グループ(I.i)の植物化合物誘導体および/またはグループ(II)の有機酸を含んでもよく、(ii)前記脂質マトリックスは、ナタネ油、パーム油、ダイズ油またはそれらの混合物からなる群から選択される植物油;前記単胃動物が家禽、魚類または甲殻類ならば好ましくはナタネ油;前記単胃動物がブタまたはヒト対象ならば好ましくはダイズ油を含むか、またはこれからなる。
【0060】
本発明の組成物は、チモール、および適宜、グループ(I)もしくは(I.i)、(II)および/または(III)および/または(IV)から選択される少なくとも一つのさらなる成分(記載される実施形態のいずれか一つによる)(例えばチモールおよびグループIVから選択される少なくとも一つのアミノ酸)を含む混合物Mを1%から80%(例えば、5%、20%、25%、30%、40%)、好ましくは5%または10%から50%、より好ましくは15%から45%の重量%で、および前記放出制御脂質マトリックス(記載される実施形態のいずれか一つによる)を10%から80%(例えば、20%、30%、40%または50%);好ましくは40%から60%または30%から70%、より好ましくは45%から55%の重量%で、さらに含むことがあり、ここで前記%は、組成物の総重量に対するものである。
【0061】
前記本発明の第2の実施形態(FR-II、例えばFR-II-1からFR-II-22)の態様によると、本発明の組成物は、前記少なくとも一つのアミノ酸を1%から80%(例えば5%、10%、15%、20%、25%または30%)、好ましくは5%から40%、より好ましくは5%から35%;チモール、および適宜グループ(I)から選択されるさらなる植物化合物誘導体を5%から15%(例えば5%、10%、15%、20%、25%または30%)、好ましくは1%から10%、より好ましくは1%から5%、前記(ii)脂質マトリックスを10%から80%(例えば15%、20%、25%、35%、50%または65%);好ましくは30%から70%、より好ましくは45%から55%、および適宜前記(iii)添加物および/または添加剤を0.1%から30%(例えば0.5%、2%、4%、6%、8%、15%または25%)、好ましくは1%から20%、より好ましくは5%から10%含み、ここで前記パーセンテージは、組成物の総重量に対する重量パーセントである。
【0062】
本発明の組成物(記載される実施形態のいずれか一つによる)は、餌または飼料添加物である場合がある。
【0063】
本発明の組成物(記載される実施形態または態様のいずれか一つによる)および栄養分(当業者による)を含む餌であって、前記栄養分が、前記餌が対象とする単胃動物(哺乳動物または非哺乳動物)の種類、好ましくはブタ、ニワトリ、産卵鶏、シチメンチョウ、魚類および甲殻類に適する、餌は、本発明の対象を形成する。
【0064】
あるいは、前記本発明の組成物(記載される実施形態のいずれか一つによる)は、ヒト対象および動物(動物用製品)の両方のための、医薬組成物、医療機器構成物(EU Regulation 2017/745(MDR))、健康補助食品、食品(もしくは新規食品)(EC Regulation 258 of 1997)もしくは特別医療目的用食品、健康補助食品もしくは栄養補助食品用の組成物であってよい。
【0065】
有利には、本発明の混合物または組成物(記載される実施形態のいずれか一つによる)は、経口用に製剤化される。
【0066】
本発明の組成物は、固形体で、例えば、顆粒、フレーク、散剤、可溶性散剤もしくは顆粒、錠剤、カプセルで;または液体で(例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン、スプレーの形で分注される液体、シロップから選択される);または半液体で(例えば、ソフトゲル、ゲルから選択される)、経口用に製剤化されることがある。
【0067】
好ましくは本発明の組成物は、経口用の固形体、例えば、顆粒、散剤、またはフレークである。
【0068】
前記本発明の第1の実施形態(FR-I)および前記本発明の第2の実施形態(FR-II)の両方の態様によると、(i)、(ii)、および適宜(iii)を含む本発明の組成物は、50μmから2500μm、例えば250μm、400μm、500μm、1500μm、または2000μmの平均粒子径(または粒子径)を有する、比較的球形の粒子(例えば顆粒またはマイクロカプセルなど)の形をしている。
【0069】
顆粒状の、一群の本発明の組成物(FR-IまたはFR-II、好ましくはFR-1からFR-22による)の範囲内において、顆粒は、上で指示される粒子径の範囲内の粒度分布割合で異なる粒子径を有する。前記粒度分布割合は、組成物がヒト対象、ブタ、家禽動物、魚類または甲殻類におけるアミノ酸の欠乏症の治療に使用されるかどうかによって異なる場合がある。
【0070】
ブタまたはヒト対象について、組成物の100個の顆粒1組は、以下の粒度分布割合:顆粒の25%から35%が500μmから1000μm、45%から55%が1000μm~1500μm、20%から30%が1500μm~2000μm、0.1%から1%が2000μm~2500μmの粒子径を有する(ここで前記パーセンテージは、100個の顆粒に対する顆粒の割合である);を有することがある。
【0071】
水生動物種の動物(魚類および甲殻類)について、組成物の100個の顆粒1組は、以下の粒度分布割合:顆粒の10%から20%が50μmから250μm、45%から55%が250μm~400μm、20%から30%が400μm~500μm、5%から15%が500μm~2500μmの粒子径を有する(ここで前記パーセンテージは、100個の顆粒に対する顆粒の割合である);を有することがある。
【0072】
家禽種の対象(例えばニワトリ、産卵鶏、シチメンチョウ)について、組成物の100個の顆粒1組は、以下の粒度分布割合:顆粒の1%から10%が50μmから500μm、45%から55%が500μm~1000μmの粒子径、35%から45%が1000μm~1500μmの粒子径、1%から9%が1500μm~2000μmの粒子径、0.1%から1%が2000μm~2500μmの粒子径を有する(ここで前記パーセンテージは、100個の顆粒に対する顆粒の割合である);を有することがある。
【0073】
顆粒状の、一群の本発明の組成物(FR-IまたはFR-IIによる)の例は、表Bに記載される。前記粒度分布割合は、一群の本発明の組成物の調製において、一定であり、再現性がある。腸に到達する際に、前記顆粒は、その粒度分布によって異なる時間および異なる腸の部分で崩壊する。それゆえ、前記粒度分布割合の影響は、腸の全部分に沿う、脂質マトリックスに組み込まれる混合物Mに含まれる活性化合物の緩徐で漸進的な放出にある。特に、小さい顆粒は、腸の上部で短時間に消化される(活性成分を放出する)が、一方で大きい顆粒は、リパーゼによりゆっくりと消化され、活性成分の放出は、小さい顆粒および腸管に沿ったより遠位な位置に関して、より長い時間をかけて起こる。
【表2】
【0074】
前記脂質マトリックスを含み、顆粒の固形体で製剤化される本発明の組成物は、腸の様々な部分で、時間をかけて、組成物に含まれる活性成分(チモール、植物化合物誘導体および/またはアミノ酸)を最適に徐放する。前記利点は、本発明の組成物の粒子径(または粒度分布割合)、およびその粒子径に応じて異なる時間および異なる腸の部分で崩壊する本発明の組成物の顆粒の特徴に部分的に起因する。
【0075】
一群の本発明の組成物の粒度分布割合を定義するために、当業者に既知の機器および方法が粒径分析に使用され得る。例えば、本発明の範囲内において、以下の2つの方法のうちの1つが、前記粒度分布割合を定義するのに使用され得る:認証ふるいを用いる粒径分析またはレーザー回折を用いる粒径分析。
【0076】
認証ふるい(すなわち、ステンレス鋼でできた多孔板)を用いる分析は、例えば、振動台(例えば、約3000周期/分の振動数)の上に配置されたふるいホルダー容器にN個のふるいを互いに重ねて組み立てた振動台を用いて実施される。ふるいホルダー容器の各ふるいは、異なるサイズ(例えば250μmから2500μmのふるい)を有し、前記ふるいは、大きいふるいほど容器の上部に、小さいふるいほど容器の下部になるように互いに重ねて配置される。容器は振動し、特定の量の粉末または顆粒が上部のふるいに注がれる。上部のふるいを通過する粒子は、下のふるいまたはその向こう側に到達する。操作は、明らかな分離がこれ以上起きないときに終了する。特定のサイズのふるいの上で粉末が止まることで、その粒子径が決定される。ふるいは品質が保証されている。適合証明書は、メッシュ、使用物質、寸法および生産工程が基準に適合することを証明する。
【0077】
固体粒子の大きさの分析(レーザー回折技術を用いる)は、レーザー光によって照射された粒子はその大きさに関連する角度で光を拡散する(粒子径が小さくなるほど角度は大きくなる)という原理に基づく。平均直径は、パラメータD(De Brouckere平均直径の式)を用いて、表面積/体積の比に基づいて決定される。次元分布は、全ての粒子の10%、50%および90%の累積分布径を表す以下のパラメータ:D(0.1)、D(0.5)、D(0.9)により特定される。
【0078】
さらに、前記脂質マトリックス中にアミノ酸を組み込んだことに、および粒子径のばらつきに部分的に起因して、顆粒状の本発明の組成物が時間をかけて腸管でアミノ酸を徐放することは、2時間から24時間の間にわたって一定の割合で、アミノ酸を血漿中で生物学的に利用可能にする。前記長時間一定の血中バイオアベイラビリティは、食事と食事の間の前記バイオアベイラビリティの変動の回避を可能にする。
【0079】
本発明の文脈において、「バイオアベイラビリティ」という用語は、「相対的バイオアベイラビリティ」、例えばその経口投与後の体循環における比較化合物(例えば本発明によらない餌または組成物)のフラクションと比較した、その経口投与後の体循環における分析対象化合物(例えば本発明による化合物)のフラクションなど、を指すのに使用される。前記分析対象化合物の相対的バイオアベイラビリティは、血中に吸収された比較化合物のフラクションを100%とするパーセンテージとして表すことができる。このとき、分析対象化合物の相対的バイオアベイラビリティを表すパーセンテージは、100%未満(比較化合物よりもバイオアベイラビリティが低い)か、または100%より高い(比較化合物よりもバイオアベイラビリティが高い)場合がある。あるいは、前記分析対象化合物の相対的バイオアベイラビリティは、比較化合物の血液吸収フラクションの1(または100)値に対するパーセンテージ差として表すことができる。例えば、以下の方法が、リシンおよび植物化合物誘導体および脂質マトリックス(例えばナタネ油)を含む、本発明による組成物のバイオアベイラビリティを決定するために用いられることがある。2つの動物実験群を準備し、グループ1に、40%のタンパク質を含有する1kgの餌であって、前記タンパク質が10%のリシンを含有する、餌(1kgの餌=40gのリシン)を投与し、グループ2に、40gのリシンを含有する量の本発明の組成物を投与する。所定の時間に、グループ1およびグループ2の動物から血液を回収し、血液中に存在するリシンの平均値(略してリシンの量)を各群について割り出した(例えばHPLC-MSにより)。グループ1について割り出されたリシンの量は、値1または100%の値として設定され、グループ2について割り出されたリシンの量は、前記値1または100%に対するパーセンテージまたはパーセンテージ差として表される。それゆえ、仮にグループ2の動物の血中リシンの量が、例えば、1.2μg/mlであり、グループ1の動物の血中リシンの量が1.0μg/mlであるとすると、本発明の組成物のリシンのバイオアベイラビリティ(相対的バイオアベイラビリティ)は、餌を通じて投与されたリシンのバイオアベイラビリティに対して、120%であるか、または20%高い。
【0080】
有利には、本発明に記載される治療方法において有効であるために、本発明の組成物は、必要とする動物に、5mg/kgから5000mg/kg、好ましくは10mg/kgから2000mg/kg、より好ましくは15mg/Kgから1000mg/Kgの間の量(mg/餌1kg)でチモールを含む1日用量で投与される。
【0081】
前述の1日用量は、必要とする対象に、単回投与(1回の投与)または反復投与(例えば1日2、3または4回の投与)で投与されることがある。
【0082】
最後に、離乳のために、または単胃動物(哺乳動物または非哺乳動物);好ましくは単胃の哺乳動物、より好ましくはブタ、または、好ましくは単胃の非哺乳動物、例えば家禽動物、魚類または甲殻類など、の初期成長を支援するために、本発明の組成物または混合物M(記載される実施形態のいずれか一つによる)を含む、前記餌または飼料添加物を使用することは、本発明の対象を形成する。
【0083】
本発明の目的を達成するために、本発明の混合物Mの成分(または活性成分)、例えばチモール、グループ(I)、(II)および/または(III)の成分など、は、必要とする動物に、別々に、および連続的に、および任意の順番で、例えば、短い時間を空けて(約0分から30分)または短くない時間を空けて(1時間から約4または6または8または12時間)、および同じまたは異なる頻度で投与されることもある。前記本発明の混合物Mの活性成分が、単一の組成物で投与される場合、前記単一の組成物は、本発明の組成物に対応する。
【0084】
別段の定めがない限り、「xからyの間(comprised in a range from x to y)」の量で成分を含む組成物または混合物またはその他という表現は、前記成分が前記範囲内の全ての量で組成物またはその他中に存在し得ることを指すのに使用され、たとえ明示されていなくても、範囲の端が含まれる。
【0085】
別段の定めがない限り、組成物が一つ以上の成分または物質を「含む」という表示は、明確に示される一つ以上の成分または物質に加えて、その他の成分または物質が存在し得ることを意味する。
【0086】
本発明の文脈において、「治療方法」という表現は、疾患または病気およびその症状または障害の除去、減少/減退または予防を目的とする、細菌株または本発明の組成物の投与を特徴とする必要とする対象への介入を指すのに使用される。
【0087】
「治療有効量」という表現は、当業者(例えば、研究者、獣医、または医師)により求められ、定義される、組織、系、動物、またはヒトにおける生物学的または医薬的応答を誘導する、活性化合物、または活性成分の混合物の量を指す。
【0088】
前記第2の実施形態(FR-II)による本発明の組成物の好ましい例において、前記組成物は、前記(i)活性成分の混合物、トリグリセリドまたは脂肪酸またはワックスおよびそれらの混合物(本発明の文脈において定義される)(好ましくはナタネ油、パーム油およびダイズ油)を含むかこれらからなる前記(ii)脂質マトリックス、および適宜前記(iii)少なくとも一つの添加物および/または添加剤を含み、ここで、前記(i)活性成分の混合物は、以下を含む群または以下からなる群から選択される:
FR-II-1:リシンおよびチモール、メチオニンおよびチモール、トリプトファンおよびチモール、スレオニンおよびチモール、ロイシンおよびチモール、バリンおよびチモール、イソロイシンおよびチモール、アルギニンおよびチモール、ヒスチジンおよびチモール、フェニルアラニンおよびチモール;
FR-II-2:リシンおよびメチオニンおよびチモール、リシンおよびトリプトファンおよびチモール、リシンおよびスレオニンおよびチモール、リシンおよびロイシンおよびチモール、リシンおよびバリンおよびチモール、リシンおよびイソロイシンおよびチモール、リシンおよびアルギニンおよびチモール、リシンおよびヒスチジンおよびチモール、リシンおよびフェニルアラニンおよびチモール;
FR-II-3:メチオニンおよびトリプトファンおよびチモール、メチオニンおよびスレオニンおよびチモール、メチオニンおよびロイシンおよびチモール、メチオニンおよびバリンおよびチモール、メチオニンおよびイソロイシンおよびチモール、メチオニンおよびアルギニンおよびチモール、メチオニンおよびヒスチジンおよびチモール、メチオニンおよびフェニルアラニンおよびチモール;
FR-II-4:トリプトファンおよびスレオニンおよびチモール、トリプトファンおよびロイシンおよびチモール、トリプトファンおよびバリンおよびチモール、トリプトファンおよびイソロイシンおよびチモール、トリプトファンおよびアルギニンおよびチモール、トリプトファンおよびヒスチジンおよびチモール、トリプトファンおよびフェニルアラニンおよびチモール;
FR-II-5:スレオニンおよびロイシンおよびチモール、スレオニンおよびバリンおよびチモール、スレオニンおよびイソロイシンおよびチモール、スレオニンおよびアルギニンおよびチモール、スレオニンおよびヒスチジンおよびチモール、スレオニンおよびフェニルアラニンおよびチモール;
FR-II-6:ロイシンおよびバリンおよびチモール、ロイシンおよびイソロイシンおよびチモール、ロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモール、バリンおよびイソロイシンおよびチモール、ロイシンおよびアルギニンおよびチモール、ロイシンおよびヒスチジンおよびチモール、ロイシンおよびフェニルアラニンおよびチモール;
FR-II-7:アルギニンおよびバリンおよびチモール、アルギニンおよびイソロイシンおよびチモール、アルギニンおよびヒスチジンおよびチモール、アルギニンおよびフェニルアラニンおよびチモール;
FR-II-8:リシンおよびメチオニンおよびトリプトファンおよびチモール、リシンおよびメチオニンおよびスレオニンおよびチモール、リシンおよびメチオニンおよびロイシンおよびチモール、リシンおよびメチオニンおよびバリンおよびチモール、リシンおよびメチオニンおよびイソロイシンおよびチモール、リシンおよびメチオニンおよびアルギニンおよびチモール、リシンおよびメチオニンおよびヒスチジンおよびチモール、リシンおよびメチオニンおよびフェニルアラニンおよびチモール;リシンおよびメチオニンおよびロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモール;リシンおよびメチオニンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモール;
FR-II-9:リシンおよびチモールおよびカルバクロール、リシンおよびチモールおよびオイゲノール、リシンおよびチモールおよびカプサイシン、リシンおよびチモールおよびタンニン、リシンおよびチモールおよびベルバスコシド、リシンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-10:メチオニンおよびチモールおよびカルバクロール、メチオニンおよびチモールおよびオイゲノール、メチオニンおよびチモールおよびカプサイシン、メチオニンおよびチモールおよびタンニン、メチオニンおよびチモールおよびベルバスコシド、メチオニンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-11:トリプトファンおよびチモールおよびカルバクロール、トリプトファンおよびチモールおよびオイゲノール、トリプトファンおよびチモールおよびカプサイシン、トリプトファンおよびチモールおよびタンニン、トリプトファンおよびチモールおよびベルバスコシド、トリプトファンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-12:スレオニンおよびチモールおよびカルバクロール、スレオニンおよびチモールおよびオイゲノール、スレオニンおよびチモールおよびカプサイシン、スレオニンおよびチモールおよびタンニン、スレオニンおよびチモールおよびベルバスコシド、スレオニンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-13:アルギニンおよびチモールおよびカルバクロール、アルギニンおよびチモールおよびオイゲノール、アルギニンおよびチモールおよびカプサイシン、アルギニンおよびチモールおよびタンニン、アルギニンおよびチモールおよびベルバスコシド、アルギニンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-14:ロイシンおよびチモールおよびカルバクロール、ロイシンおよびチモールおよびオイゲノール、ロイシンおよびチモールおよびカプサイシン、ロイシンおよびチモールおよびタンニン、ロイシンおよびチモールおよびベルバスコシド、ロイシンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-15:リシンおよびメチオニンおよびチモールおよびカルバクロール、リシンおよびメチオニンおよびチモールおよびオイゲノール、リシンおよびメチオニンおよびチモールおよびカプサイシン、リシンおよびメチオニンおよびチモールおよびタンニン、リシンおよびメチオニンおよびチモールおよびベルバスコシド、リシンおよびメチオニンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-16:リシンおよびメチオニンおよびトリプトファンおよびチモールおよびカルバクロール、リシンおよびメチオニンおよびトリプトファンおよびチモールおよびオイゲノール、リシンおよびメチオニンおよびトリプトファンおよびチモールおよびカプサイシン、リシンおよびメチオニンおよびトリプトファンおよびチモールおよびタンニン、リシンおよびメチオニンおよびトリプトファンおよびチモールおよびベルバスコシド、リシンおよびメチオニンおよびトリプトファンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-17:リシンおよびメチオニンおよびロイシンおよびチモールおよびカルバクロール、リシンおよびメチオニンおよびロイシンおよびチモールおよびオイゲノール、リシンおよびメチオニンおよびロイシンおよびチモールおよびカプサイシン、リシンおよびメチオニンおよびロイシンおよびチモールおよびタンニン、リシンおよびメチオニンおよびロイシンおよびチモールおよびベルバスコシド、リシンおよびメチオニンおよびロイシンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-18:リシンおよびメチオニンおよびスレオニンおよびチモールおよびカルバクロール、リシンおよびメチオニンおよびスレオニンおよびチモールおよびオイゲノール、リシンおよびメチオニンおよびスレオニンおよびチモールおよびカプサイシン、リシンおよびメチオニンおよびスレオニンおよびチモールおよびタンニン、リシンおよびメチオニンおよびスレオニンおよびチモールおよびベルバスコシド、リシンおよびメチオニンおよびスレオニンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-19:リシンおよびメチオニンおよびアルギニンおよびチモールおよびカルバクロール、リシンおよびメチオニンおよびアルギニンおよびチモールおよびオイゲノール、リシンおよびメチオニンおよびアルギニンおよびチモールおよびカプサイシン、リシンおよびメチオニンおよびアルギニンおよびチモールおよびタンニン、リシンおよびメチオニンおよびアルギニンおよびチモールおよびベルバスコシド、リシンおよびメチオニンおよびアルギニンおよびチモールおよびサポニン;
FR-II-20:リシンおよびトリプトファンおよびチモールおよびカルバクロール;
FR-II-21:メチオニンおよびトリプトファンおよびチモールおよびカルバクロール;
リシンおよびロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;メチオニンおよびロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;トリプトファンおよびロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;
FR-II-22:リシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモール、リシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;メチオニンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモール、メチオニンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;トリプトファンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモール、トリプトファンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;ロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;リシンおよびメチオニンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;リシンおよびロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモール、リシンおよびロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;メチオニンおよびロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモール、メチオニンおよびロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;トリプトファンおよびロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモール、トリプトファンおよびロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;ロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモールおよびカルバクロール;リシンおよびメチオニンおよびロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモール、リシンおよびメチオニンおよびロイシンおよびバリンおよびイソロイシンおよびチモールおよびカルバクロール。
【0089】
FR-IIによる本発明の組成物の好ましい例において、前記組成物は、前記(i)活性成分の混合物、ナタネ油を含むかまたはこれからなる前記(ii)脂質マトリックス、および適宜前記(iii)少なくとも一つの添加物および/または添加剤(好ましくはコーティング添加物)を含み、ここで、前記(i)活性成分の混合物は、FR-II-1、FR-II-2、FR-II-3、FR-II-4、FR-II-5、FR-II-6、FR-II-7、FR-II-8、FR-II-9、FR-II-10、FR-II-11、FR-II-12、FR-II-13、FR-II-14、FR-II-15、FR-II-16、FR-II-17、FR-II-18、FR-II-19、FR-II-20、FR-II-21およびFR-II-22に記載されるもの;好ましくはFR-II-1に記載されるものを含む群またはこれらからなる群から選択される。
【0090】
FR-IIによる本発明の組成物の好ましい例において、前記組成物は、前記(i)活性成分の混合物、パーム油を含むかまたはこれからなる前記(ii)脂質マトリックス、および適宜前記(iii)少なくとも一つの添加物および/または添加剤(好ましくはコーティング添加物)を含み、ここで、前記(i)活性成分の混合物は、FR-II-1、FR-II-2、FR-II-3、FR-II-4、FR-II-5、FR-II-6、FR-II-7、FR-II-8、FR-II-9、FR-II-10、FR-II-11、FR-II-12、FR-II-13、FR-II-14、FR-II-15、FR-II-16、FR-II-17、FR-II-18、FR-II-19、FR-II-20、FR-II-21およびFR-II-22に記載されるもの;好ましくはFR-II-1に記載されるものを含む群またはこれらからなる群から選択される。
【0091】
FR-IIによる本発明の組成物の好ましい例において、前記組成物は、前記(i)活性成分の混合物、ダイズ油を含むかまたはこれからなる前記(ii)脂質マトリックス、および適宜前記(iii)少なくとも一つの添加物および/または添加剤(好ましくはコーティング添加物)を含み、ここで、前記(i)活性成分の混合物は、FR-II-1、FR-II-2、FR-II-3、FR-II-4、FR-II-5、FR-II-6、FR-II-7、FR-II-8、FR-II-9、FR-II-10、FR-II-11、FR-II-12、FR-II-13、FR-II-14、FR-II-15、FR-II-16、FR-II-17、FR-II-18、FR-II-19、FR-II-20、FR-II-21およびFR-II-22に記載されるもの;好ましくはFR-II-1に記載されるものを含む群またはこれらからなる群から選択される。
【0092】
好ましくは、前記FR-II-1からFR-II-22を含む本発明の実施形態において、前記単胃の非哺乳動物が家禽動物である場合、前記(i)混合物はサポニンを含む。
【0093】
好ましくは、前記FR-II-1からFR-II-22を含む本発明の実施形態において、前記単胃の非哺乳動物が魚類または甲殻類である場合、前記(i)混合物はアルギニンまたはヒスチジンを含む。
【0094】
前記本発明の組成物の第2の実施形態(FR-II)において、好ましくは、前記(i)活性成分の混合物中で、重量比[(i.1)少なくとも一つのアミノ酸:(i.2)少なくとも一つの植物化合物誘導体]は、1:10から10:1、好ましくは10:1から10:5、より好ましくは10:1から10:3の間である。
【0095】
前記本発明の第1の実施形態(FR-I)の好ましい態様(FR-I-n°)は、以下に記載される:
FR-I-1.
ヒト、または単胃動物、または鳥類または魚類におけるエンドカンナビノイドシステムの受容体および/または酵素を調節することによる、炎症性および/または機能性の腸疾患、または関連症状の予防的および/または根治的治療のための組成物であって、前記組成物が、チモールを含むかまたはこれからなる混合物M、および適宜少なくとも一つの許容される医薬品または食品グレードの添加物および/または添加剤を含む、組成物。
FR-I-2.
単胃の哺乳動物(例えばブタなど);好ましくは離乳ブタのような、離乳期の単胃動物または単胃の哺乳動物において使用される、FR-I-1に記載の組成物。
FR-I-3.
前記疾患または症状が、慢性過敏性腸疾患(IBD)、クローン症候群もしくはクローン病、潰瘍性大腸炎、分類不能大腸炎、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎、回腸嚢炎、過敏性腸症候群(IBS)、下痢型IBS、便秘型IBS、便秘および下痢交代型IBS、分類不能型IBS、消化不良、悪心、嘔吐、便秘、下痢、腹部膨満、鼓腸および肉体的疲労から選択される、FR-I 1または2に記載の組成物。
FR-I-4.
前記組成物が、チモールを含むかまたはこれからなる前記混合物Mを組み込むかまたはこれを組み入れる放出制御脂質マトリックスをさらに含み、前記放出制御脂質マトリックスが、炭素原子の数がC10~C30の範囲内である、少なくとも一つの飽和または不飽和の、遊離またはエステル型脂肪酸、および/または炭素原子の数がC6~C30の範囲内である飽和または不飽和脂肪酸鎖を有する、少なくとも一つのトリグリセリドおよび/または炭素原子の数がC16~C36の範囲内である、少なくとも一つのワックスを含むか、またはこれらからなり、
前記脂質マトリックスが、胃保護および/または混合物M、好ましくはそこに含まれるチモールの制御腸内放出を可能にする、FR-I 1~3のいずれか一つに記載の組成物。
FR-I-5.
前記放出制御脂質マトリックスが、炭素原子の数がC14~C24の範囲内である、少なくとも一つの植物由来の水素化脂肪酸および/または炭素原子の数がC14~C24の範囲内である、少なくとも一つの植物由来の水素化トリグリセリドおよび/または炭素原子の数がC24~C36の範囲内である、少なくとも一つの動物由来のワックスを含むか、またはこれらからなり、好ましくは、前記脂肪酸、トリグリセリドまたはワックスが、パーム油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ピーナツ油、ダイズ油、オリーブ油、蜜蝋、およびそれらの混合物から選択される、FR-I 1~4のいずれか一つに記載の組成物。
FR-I-6.
前記混合物Mが、カルバクロール、オイゲノール、カプサイシン、ターメリック、バニリン、桂皮アルデヒド、ジアリルジスルフィド、カンフル、リモネン、ロスマリン酸、p-シメン、γ-テルピネン、α-ピネン、α-ツジョン、1,8-シネオール、ベルバスコシド、タンニンおよびそれらの混合物を含むグループ(I)またはこれらからなるグループ(I)から選択される、好ましくは植物化合物(ボタニカル)に由来する、少なくとも一つのさらなる第1の活性成分をさらに含む、FR-I 1~5のいずれか一つに記載の組成物。
FR-I-7.
チモールおよびカルバクロール、またはチモールおよびバニリン、またはチモール、カルバクロールおよびカプサイシン、またはチモール、カルバクロールおよび桂皮アルデヒド、またはチモール、オイゲノールおよびベルバスコシドを含む、FR-I 1~6のいずれか一つに記載の組成物。
FR-I-8.
前記組成物中に含まれる混合物Mが、チモール、および適宜前記グループ(I)から選択されるさらなる第1の活性成分(ボタニカル)に加えて、有機酸またはそのアルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンとの塩をさらに含み、前記有機酸が、乳酸、リンゴ酸、安息香酸、フマル酸、ソルビン酸、クエン酸、オクタン酸、ヘプタン酸、酪酸、ドデカン酸およびそれらの混合物を含むグループ(II)またはこれらからなるグループ(II)から選択され、好ましくはそれが、チモールおよびソルビン酸、またはチモール、ソルビン酸およびクエン酸、またはチモールおよび安息香酸、またはチモール、ソルビン酸、クエン酸および安息香酸、またはチモール、カルバクロールおよびソルビン酸、またはチモール、カルバクロール、ソルビン酸およびクエン酸、またはチモール、カルバクロール、桂皮アルデヒドおよびソルビン酸、またはチモール、カルバクロール、桂皮アルデヒド、ソルビン酸およびクエン酸、またはチモールおよび酪酸、またはチモール、クエン酸およびドデカン酸を含むことがある、FR-I 1~7のいずれか一つに記載の組成物。
FR-I-9.
前記混合物Mが、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、エンテロコッカス属、サッカロミセス属に属する細菌株またはプロバイオティクス細菌株;および/またはプレバイオティクス(例えば、イヌリン、ラクツロース、ラクチトール、マンナンオリゴ糖、フラクトオリゴ糖(fructigosaccharides)およびガラクトオリゴ糖、トリブチリンなど);および/または金属(例えば、亜鉛および銅など)の塩;およびそれらの混合物からなるグループ(III)から選択される、少なくとも一つのさらなる第2の活性成分をさらに含む、FR-I 1~8のいずれか一つに記載の組成物。
FR-I-10.
単胃動物および/または離乳期もしくは初期成長期の単胃動物;好ましくは単胃の哺乳動物、より好ましくはブタのための、餌または飼料添加物である、FR-I 1~9のいずれか一つに記載の組成物。
【実施例
【0096】
実験パートI
本研究の目的は、エンドカンナビノイドシステムおよびブタの腸の化学感覚システムのマーカーの存在を調査すること、および次に、いかにしてチモールがこれらのマーカーを調節するかを解明することであった。
【0097】
方法
倫理声明
研究は、Good Laboratory Practices認定で、Procedure of Animal Protection and Welfare(指令No 86/609/EEC)に従って活動するResearch Centre for Animal Production and Environmentの施設(CER-O)で行われた。研究で使用される動物は、欧州連合指令2010/63/EUに従って飼育および治療された。研究は、イタリア政令第26/2014号の第31条に従って、Italian Ministry of Healthにより承認され、実験およびその他の科学的目的で使用される動物の住居および管理に適用されるCommission recommendation 2007/526/ECに基づいた(承認番号341/2017-PR、2017年5月3日発行)。動物は、イタリア、ベルガモ、Cascina Mandellinaにある飼育場から入手した。
【0098】
動物および食餌
生後28日で離乳した、体重(BW)7.71±1.00kgの150頭の子ブタ(Duroc-Large White)を40の囲いに分け(囲い1つにつき子ブタ4頭、去勢オスおよびメスは別々の囲いに入れられた)、以下の実験群(n=32)のうちの1つに無作為に割り当てた:基礎食を与える対照群(T1)、25.5mgのチモール/餌1kgを添加した基礎食を与える群(T2)、51mgのチモール/餌1kgを添加した基礎食を与える群(T3)、153mgのチモール/餌1kgを添加した基礎食を与える群(T4)および510mgのチモール/餌1kgを添加した基礎食を与える群(T5)。チモールは、脂質マトリックス(イタリア、レッジョ・エミリア、Vetagro SpA)中に組み込まれた(マイクロカプセル化された)形で提供された。チモールの濃度は、餌について、European Agency for the Evaluation of Medicinal Productsによって規定される、食品および餌に含まれる量の上限に合うか、またはそれを上回るように選択された。National Research Councilによるブタの栄養要求量に合うか、またはそれを上回るように基礎餌を処方し、餌および水を自由に与えた(基礎食の組成物は表1に記載される)。研究の間、動物の健康状態を監視した。研究の初め(0日目)および終わり(14日目)に子ブタの体重をそれぞれ測定した。成長パラメータ、例えばFI、ADFI、ADG及びF:G(FI-摂餌量;ADFI-平均1日摂餌量;ADG-平均1日増体量;F:G-摂餌量対増体量の比)など、を実験の14日目(d14)にそれぞれの囲いに収容される動物において測定した。
【表3】
【0099】
研究の終わりに、各治療群から8頭の動物を屠殺し、サンプルを回収および分析した。十二指腸および回腸の粘膜の掻爬を回収した。十二指腸および回腸を長軸方向に切って粘膜を露出させ、リン酸緩衝食塩水で洗浄して粘液および消化物を除去し、次に優しく掻爬し、包装し、液体窒素で直ちに凍らせ、遺伝子およびタンパク質発現の分析まで-80℃で保存した。
【0100】
遺伝子発現分析
Herfelらによって報告された方法を用いて遺伝子発現を分析した[The Journal of Nutrition. 2011; 141:2139-45]。研究の14日目に入手した十二指腸および回腸の掻爬サンプルを液体窒素中で、乳棒および乳鉢ですりつぶすことで破壊し、次にTissueLyser(ドイツ、ヒルデン、Qiagen)を用いてホモジナイズした。製造業者の説明書に従って、NucleoSpin(登録商標) RNA Kit(ドイツ、デューレン、Macherey-Nagel)を用いてトータルRNAを分離した。抽出キットのデオキシリボヌクレアーゼ(rDNase,RNase-free;Macherey-Nagel)でサンプルを処理することで、ゲノムDNAの混入物を除去した。260および280nmでの吸光度(それぞれ、A260およびA280nm)を測定することで、RNA収量および質を分光光度的に決定した(Microvolume Mode with SmartPath(登録商標) Technology,Denovix)。製造業者の説明書に従って、iScript cDNA Synthesis Kit(Bio-Rad Laboratories Inc. アメリカ、カリフォルニア州、ハーキュリーズ)を用いて1マイクログラムのRNAを逆転写した。iCycler Thermal CyclerシステムおよびSybrGreen Supermix(Bio-Rad Laboratories Inc.)を用いてリアルタイムPCRを行った。サーモサイクリングプロトコルは、95℃で1分30秒間の初回変性ステップ、続いて95℃で15秒間の変性、ならびに60℃で30秒間のアニーリングおよび伸長を40サイクルであった。増幅後、0.5℃/sの速度で55℃から95℃までゆっくり加熱して融解曲線分析を全てのサンプルについて行い、非特異的産物がないことを検証した。遺伝子発現を、ブタリボソームサブユニット60S、特にリボソームタンパク質L35(RPL35)の一部をコードするハウスキーピング遺伝子(HK)に正規化した。興味の対象となるそれぞれの遺伝子について平均増幅回数(CT)を割り出し、CTが一定の任意の基準値に到達するのに必要なサイクルの数だと仮定することで、HKについて幾何平均を算出した。デルタCTを算出し、次に2-ΔΔCT法[Livak KJ, et al., Methods 2001; 25:402-8]の修正を用いて、対照群と比較して算出される相対的な発現(倍率変化)を分析した。ブタプライマーについての配列、EMBLデータベース/GenBankの受入番号、予想される産物長および参照は、表2に記載される。Primer-BLASTツール(NCBI National Center for Biotechnology Information,www.ncbi.nlm.nih.gov)を用いて、CB1、DGL-βおよびOR1G1のプライマーオリゴヌクレオチドを設計した。プライマーは、Life Technologies(Life Technologies Italia)から入手した。
【表4】
【0101】
統計解析
完全無作為化法で動物をブロック化し、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェア(GraphPad Software,Inc. アメリカ、カリフォルニア州、ラホヤ)を用いてデータを解析した。一元配置分散分析に続くTukey事後検定によってデータを解析し、治療間の差を検出した。囲いは成長能力の実験単位であったが、一方でブタは遺伝子発現の実験単位であった。差はP<0.05で有意と見なされ、傾向は0,05≦P<0.1で定義された。
【0102】
結果
成長能力
子ブタは実験の間、良好な健康状態を維持し、死亡は記録されなかった。実験の間、体重(BW)、摂餌量(FI)、平均1日摂餌量(ADFI)、平均1日増体量(ADG)、および摂餌量対増体量の比(F:G)の差は、治療群の間で見られなかった(T2、T3、T4 e T5;データは示さない)。
【0103】
エンドカンナビノイドシステム(ECS)
図1は、14日目(d14)の、十二指腸および回腸の粘膜におけるカンナビノイド受容体についての遺伝子発現データをまとめる。カンナビノイド受容体1および2 mRNAは、十二指腸および回腸の粘膜の両方で検出された。CB1 mRNAのレベルは、対照群と比較して、グループT5の十二指腸(P=0.0209)ならびにグループT4およびT5の回腸(P=0.0054)で有意に増加した。有意に増加したCB2 mRNAのレベルは、対照群と比較して、グループT4およびT5の十二指腸および回腸の両方で検出された(それぞれP=0.004およびP=0.0162)。ECS酵素の遺伝子発現についてのデータは、図2に記載される。試験される全ての酵素について、mRNAの存在が確認された。FAAH mRNAレベルの差は、十二指腸で見られなかったが、一方でFAAH mRNAレベルは、対照群と比較して、グループT4の回腸で有意に増加した(P=0.0028)。
【0104】
腸の化学感覚システム
腸の化学感覚についての結果は、図3に記載される。腸の化学感覚マーカーに関しては、TRPV1およびOR1G1(嗅覚受容体1G1) mRNAの両方が、十二指腸および回腸の粘膜で検出された。さらに、510mgのチモール/餌1kg(T5)を終えると、十二指腸でTRPV1 mRNAレベルが上昇し(P=0.0382)、グループT4およびT5の回腸において、対照群と比較してTRPV1 mRNAレベルの上昇が見られた(P=0.0183)。OR1G1 mRNAは、対照群と比較して、510mgのチモール/餌1kgを添加した餌を与えられた動物(T5)の十二指腸(P=0.0210)および153mgのチモール/餌1kgを与えられた動物(T4)の回腸(P=0.0235)において、より高いレベルで発現した。
【0105】
結論
結論として、本研究のデータは、子ブタの十二指腸および回腸の粘膜における、エンドカンナビノイドシステム(ECS)および腸の化学感覚のマーカーの存在を確認するだけでなく、チモールがこれらのマーカーの遺伝子発現を調節することも示す。チモールは、十二指腸および回腸の両方において、CB1およびCB2受容体をコードするmRNAの発現を上昇させる。チモールは、エンドカンナビノイド分子の生合成および分解に関与する酵素(例えばFAAH)のmRNAレベルもまた調節する。さらに、腸内でチモールによって行われるOR1G1およびTRPV1(化学感覚受容体)の上方制御は、特に離乳期および成長期の動物の腸の健康の増進における、飼料添加物としてのチモールの果たし得る役割を示す。
【0106】
実験パートII
本発明による組成物(少なくとも一つのアミノ酸、少なくとも一つの植物化合物および脂質マトリックスを含む)を投与した後に、単胃動物におけるアミノ酸の血漿バイオアベイラビリティを測定する方法は、以下からなる:
以下の食餌を調査対象の動物種(例えば、ニワトリまたは魚類)の3つの実験群に与える:
グループ1.対照食(例えば大豆ベース)
グループ2.比較組成物:脂質マトリックスがない状態でアミノ酸および植物化合物誘導体を含む組成物(活性成分が組み込まれない)を添加した食餌
グループ3.本発明による組成物:脂質マトリックス存在下でアミノ酸および植物化合物誘導体を含む組成物(活性成分が組み込まれる)を添加した食餌
調査対象の動物から血液サンプルを回収し、血漿分画を得る。食餌の投与後に異なるタイムポイント(投与後10分から360分まで)でサンプルを回収し、LC/MS-MS(液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析)血漿アミノ酸アッセイ法を用いて、得られた血漿分画中の一つ以上のアミノ酸の存在を評価する。
【0107】
実験パートIII
表3は、顆粒状の、脂質マトリックスに組み込まれた植物化合物誘導体(本発明による組成物)の放出を分析した実験研究の値を示す。データが示すように、放出は時間および顆粒径の関数であり、顆粒径が大きくなるほど、活性成分の放出はゆっくりになる。
【0108】
腸のpH条件をシミュレートする緩衝液中で1グラムの異なる大きさの顆粒をインキュベートすることにより、データを得た。各タイムポイント(1h、2h、4h)で、依然として顆粒中に存在する植物化合物誘導体を定量化し(HPLCによって)、差によって放出割合を算出した。実験はtriplicateで行った。
【表5】
【0109】
実施例
第2の実施形態(FR-II)による本発明の組成物の代表例は、表4に示される。
【表6】
【0110】
本発明の好ましい実施形態FRnは、以下に記載される。
FR1.
単胃の哺乳動物または非哺乳動物の対象における、炎症性および/または機能性の腸疾患または腸症状の予防的および/または根治的治療のための組成物であって、
前記単胃の哺乳動物の対象が、ヒト対象またはブタであり、
前記単胃の非哺乳動物の対象が、家禽動物または魚類または甲殻類であり、
前記組成物が、
(i)以下:
チモール、および
少なくとも一つのアミノ酸またはその許容される医薬品もしくは食品グレードの塩であって、前記アミノ酸が、リシン、メチオニン、トリプトファン、スレオニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、アルギニン、フェニルアラニンおよびそれらの混合物を含む群またはこれらからなる群から選択される、アミノ酸
を含むか、またはこれらからなる活性成分の混合物を含み、
適宜、前記組成物が、(iii)少なくとも一つの許容される医薬品または食品グレードの添加物および/または添加剤をさらに含んでもよく、
前記チモールが、エンドカンナビノイドシステムの受容体および/または酵素を調節する、
組成物。
FR2.
前記組成物が、前記(i)活性成分の混合物を組み込む(ii)脂質マトリックスをさらに含み、
前記脂質マトリックスが、以下:
炭素原子の数がC10~C30の範囲内である、少なくとも一つの飽和または不飽和の、遊離またはエステル型脂肪酸、および/または
炭素の数がC6~C30の範囲内である飽和または不飽和脂肪酸鎖を有する、少なくとも一つのトリグリセリドおよび/または
炭素原子の数がC16~C36の範囲内である、少なくとも一つのワックス
を含むか、またはこれらからなり、
前記組成物が、100個の顆粒に対して以下の粒度分布割合:
前記対象が、ヒト対象またはブタである場合、顆粒の5%から10%が50μmから500μmの平均粒子径を有し、顆粒の25%から35%が500μmから1000μmの粒子径を有し、顆粒の45%から55%が1000μmから1500μmの粒子径を有し、顆粒の20%から30%が1500μmから2000μmの粒子径を有し、顆粒の0.1%から1%が2000μmから2500μmの粒子径を有する;
前記動物が、魚類または甲殻類である場合、顆粒の10%から20%が50μmから250μmの粒子径を有し、顆粒の45%から55%が250μmから400μmの粒子径を有し、顆粒の20%から30%が400μmから500μmの粒子径を有し、顆粒の5%から15%が500μmから2500μmの粒子径を有する;
前記動物が、家禽動物である場合、顆粒の1%から10%が50μmから500μmの平均粒子径を有し、顆粒の45%から55%が500μmから1000μmの粒子径を有し、顆粒の35%から45%が1000μmから1500μmの粒子径を有し、顆粒の1%から9%が1500μmから2000μmの粒子径を有し、顆粒の0.1%から1%が2000μmから2500μmの粒子径を有する
を有する顆粒状の固体組成物であり;
前記組成物が、前記対象に経口経路で投与され、
前記(ii)脂質マトリックスが、前記チモールおよび前記少なくとも一つのアミノ酸の胃保護を提供することができ、
前記(ii)脂質マトリックスが、腸管において、30分から8時間の時間範囲内で前記チモールおよび前記少なくとも一つのアミノ酸の放出を制御することができる、
FR1に記載の組成物。
FR3.
前記少なくとも一つの脂肪酸および/または前記少なくとも一つのトリグリセリドを含む前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油、パーム油、ダイズ油およびそれらの混合物を含む群またはこれらからなる群から選択され、前記対象が家禽動物、魚類または甲殻類である場合、好ましくはナタネ油またはその混合物であり、前記対象がヒト対象またはブタである場合、好ましくはダイズ油またはその混合物である、FR1またはFR2に記載の組成物。
FR4.
前記(i)活性成分の混合物が、リシンおよびチモールを含むか、またはこれらからなり、
前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなる、
FR1~3のいずれか一つに記載の組成物。
FR5.
前記(i)活性成分の混合物が、メチオニンおよびチモールを含むか、またはこれらからなり、
前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなる、
FR1~3のいずれか一つに記載の組成物。
FR6.
前記(i)活性成分の混合物が、トリプトファンおよびチモールを含むか、またはこれらからなり、
前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなる、
FR1~3のいずれか一つに記載の組成物。
FR7.
前記(i)活性成分の混合物が、スレオニンおよびチモールを含むか、またはこれらからなり、
前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなる、
FR1~3のいずれか一つに記載の組成物。
FR8.
前記(i)活性成分の混合物が、アルギニンおよびチモールを含むか、またはこれらからなり、
前記(ii)脂質マトリックスが、ナタネ油またはパーム油またはダイズ油またはそれらの混合物を含むか、またはこれらからなる、
FR1~3のいずれか一つに記載の組成物。
FR9.
前記疾患または症状が、慢性過敏性腸疾患(IBD)、クローン症候群もしくはクローン病、潰瘍性大腸炎、分類不能大腸炎、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎、回腸嚢炎、セリアック病、過敏性腸症候群(IBS)、下痢型IBS、便秘型IBS、便秘および下痢交代型IBS、分類不能型IBS、消化不良、悪心、嘔吐、便秘、下痢、腹部膨満、鼓腸および肉体的疲労を含む群またはこれらからなる群から選択される、FR1~8のいずれか一つに記載の組成物。
FR10.
飼料または飼料添加物を調製するための、FR1~9のいずれか一つに記載の組成物の非治療的使用であって、前記飼料が、単胃の哺乳動物または非哺乳動物の対象のための飼料であり、前記単胃の哺乳動物の対象が、ブタである、および/または前記単胃の非哺乳動物の対象が、家禽動物、魚類または甲殻類である、使用。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023535821000001.app
【国際調査報告】