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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】流導コンポーネント用ハウジング
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20230814BHJP
   F04D 29/02 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
F04D29/42 F
F04D29/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506310
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2021070857
(87)【国際公開番号】W WO2022023266
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】102020119914.7
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591040649
【氏名又は名称】カーエスベー ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディート ゲゼルシャフト アウフ アクチェン
【氏名又は名称原語表記】KSB SE & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】ノベル,タムズ
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC01
3H130BA91A
3H130BA95A
3H130BA97A
3H130BA98A
3H130CA21
3H130EC04A
3H130EC05A
3H130EC12A
3H130EC17A
3H130ED01A
(57)【要約】
本発明は、流導コンポーネント用ハウジング(1、5)に関する。ハウジング(1、5)は、少なくとも2つの機能領域(8、9、10)を有する。ハウジング(1、5)の各機能領域(8、9、10)は、異なる構成材料から生成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの機能領域(8、9、10)を有する流導コンポーネント用ハウジング(1、5)であって、
各機能領域(8、9、10)は、異なる構築材料から生成されることを特徴とする、流導コンポーネント用ハウジング。
【請求項2】
前記構築材料は、金属粉末粒子、および/または可融性ポリマー、および/または金属ポリマーハイブリッド材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載のハウジング。
【請求項3】
少なくとも1つの機能領域(8、9、10)は、層ごとに固体化したポリマーから形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のハウジング。
【請求項4】
少なくとも1つの機能領域(8、9、10)は、格子構造を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項5】
少なくとも1つの機能領域(8、9、10)は、ハニカム構造を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項6】
少なくとも1つの機能領域(8、9、10)は、堆積金属粉末粒子から形成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項7】
少なくとも1つの機能領域(8、9、10)は、照射による層の連続固体化によって構築材料から作製されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項8】
少なくとも1つの機能領域(8、9、10)は、照射による金属粉末粒子の層の連続固体化によって作製されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項9】
機能領域(8、9、10)の異なる特性は、前記照射の変動によって生成されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項10】
前記異なる構築材料は、結合的および/または形態適合的に接合されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載のハウジング。
【請求項11】
一体型製造ユニットによって、請求項1から10に記載の、流導コンポーネント用のハウジング(1、5)を作製する方法であって、
構築材料から格子構造またはハニカム構造の少なくとも1つの機能領域(8、9、10)を形成するステップと、
機能領域(8、9、10)の作成のために構築材料の層を適用するステップと、
少なくとも1つの機能領域(8、9、10)の構成のために照射、熱および圧力の形でエネルギーを選択的に適用するステップと、
所定の特性を有する少なくとも1つの機能領域(8、9、10)の作成のためにエネルギー入力を制御して変動させるステップと、
所定の層厚を有する少なくとも1つの機能領域(8、9、10)の作成のためにプロセスガスジェットによる材料適用を制御して変動させるステップと
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの機能領域を有する、流導コンポーネント用ハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジングは、液密で、外部から内部を耐圧密閉するのに役立つ。例えば、遠心ポンプの場合、ハウジングはポンプインペラを囲み、回転シャフト上のホイールによってポンプインペラが送達媒体にエネルギーを供給する。搬送流の供給および除去は、入口および出口によって実行され、供給口または吸引口、および圧力口とも呼ばれることが多い。それらはパイプ接続によってパイプラインに接続されている。
【0003】
ポンプハウジングは主に鋳造されているが、鍛造、溶接、プレス、または絞り加工されてもよい。機械の安全性はポンプハウジングの耐用年数に大きく依存し、非常に多くの業界固有の規則フレームワークでは、ハウジング材料と、ある程度、肉厚のサイズも規定されている。ここで頻繁に使用される金属鋳造材料は、鋳鉄、球状鋳鉄および鋳鋼、フェライトまたはオーステナイト系クロム鋼、オーステナイト系鋳鉄だが、海水淡水化などの高耐食性用途向けの二相鋼もある。
【0004】
流導コンポーネント用ハウジングの機能領域に対しては、まったく異なる要求がなされている。耐荷重特性を有する機能領域は、高い強度かつ低い脆弱性を持つべきである。対照的に、流動媒体と接触する機能領域は、比較的研磨応力を受けやすく、硬くて耐摩耗性のある材料で作られるべきである。
【0005】
これらの要求を満たすために、コーティング、補強材などによって必要な特性を全て達成するために、ハウジングの機能領域には、多くの追加ステップにおいて、包括的かつ集中的な作業が、しばしば必要となる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、製造方法において異なる機能領域を有する流導コンポーネントのハウジング、さらには大型ハウジングを作成することである。ハウジングは、材料の組み合わせ、特性、および材料の厚さに関して、個別に構成できる必要がある。ハウジングは、最小限の数の個々の部品で構成され、同時に可能な限り軽量である必要がある。ハウジングの構成によって、交換部品の取り換えが有利になるべきである。簡単で安価な方式でハウジングを実装することが可能でなければならない。
【0007】
この目的は、本発明に係る流導コンポーネント用ハウジングによって達成される。好ましい変形例は、従属請求項、説明および図面から推測できる。
【0008】
本発明によれば、流導コンポーネント用ハウジングは、複数の機能領域を有する。このような機能領域は異なる機能を果たす。例えば、流動媒体と接触する機能領域は、流動媒体からの研磨力に耐えられるように、特に耐摩耗性がある。耐荷重特性を有する機能領域は、最適化された支持構造において、高強度材料で作られている。密閉特性を有する機能領域は、内部機能領域と内部コンポーネントを備えたハウジングを、外部の影響から保護し、特徴的な認識効果を生み出す。この場合、耐荷重特性を有する機能領域は、流動媒体と接触する内側機能領域と密閉性を有する外側機能領域との間に配置されるのが有利である。本発明によれば、各機能領域は、機能領域の理想的特性を達成するために、異なる構築材料から生成される。有利には、全ての必要な機能領域を有するハウジングは、単一の積層造形法で形成される。
【0009】
ハウジングは、影響を受けやすい内容物を囲んで保護する、および/または、危険な内容物から環境を保護する、固定シェルである。産業界では、コンポーネント、アセンブリ、および機器要素用のハウジングがある。流導コンポーネント用ハウジングは、例として、ポンプ、特に遠心ポンプ用のハウジング、およびバルブ用のハウジングであり得る。
【0010】
少なくとも2つの機能領域を有する本発明のハウジングは、異なる構築材料から形成される。構築材料は、好ましくは、金属粉末粒子、特に低合金および/または高合金鋼粉末粒子、ならびに/あるいは、可融性ポリマーおよび/または金属ポリマーハイブリッド材料を含む。
【0011】
ハウジングを作成するための構築材料、特に流動媒体と接触する機能領域では、好ましくは金属粉末粒子を含む。本発明の1つの変形例では、この目的のために、鉄含有および/またはコバルト含有の粉末粒子が使用される。これらには、例えばクロム、モリブデンまたはニッケルなどの添加剤が含まれていてもよい。
【0012】
本発明によれば、複数の機能領域を有する流導コンポーネント用ハウジングは、積層造形法において、異なる構築材料から形成される。ハウジングの3D形状は、データセットとしてソフトウェアに記録される。ハウジングが形成される場所では、ロボットアームが活動しており、さまざまな積層方法のツールがあり、さまざまな機能領域を、層ごとに形成する。有利には、各層について、各構築材料に対して適切な構築プロセスを連続的にまたは同時に実行することが可能であり、その結果、異なる材料からなる複雑なハウジングを生じさせ、その機能領域が後の使用要求に最適化される。
【0013】
本発明の1つの変形例では、耐荷重特性を有する機能領域は、積層造形法の溶融層ツールを用いて作製され、そこでは、表面にドットパターンを適用するために、溶融ポリマーが、使用される。ノズルによる押し出しおよびその後の所望の位置での冷却による固体化は、特に格子形態および/またはハニカム形態の耐荷重構造を与える。特に耐荷重構造を備えたキャビティ形成方式で機能領域を作成することにより、機能領域は、非常に軽量で、同時に大きな強度を有する。ハウジングは、通常、作業面をラインごとに繰り返し横断し、次いで積み重ねにより作業面を上方に移動させることによって構築され、その結果、ハウジングの機能領域が層ごとに形成される。
【0014】
本発明のさらなる変形例では、流動媒体と接触する機能性領域および/または密閉特性を有する機能領域は、積層造形法のコールドガススプレーツールによって形成される。この場合、コーティング材料は、耐荷重特性を有する機能領域に非常に高速で、粉末形態で塗布される。この目的のために、数百度に加熱されたプロセスガス、例えば窒素またはヘリウムは、ラバルノズル内で膨張することによって超音速に加速され、その後、粉末粒子がガスジェットに注入される。注入された粒子はここで非常に高速に加速され、ハウジングの一部に当たると高密度でしっかりと付着した層を形成する。
【0015】
この目的のために、金属粉末粒子、特に低合金および/または高合金鋼粉末粒子、ならびに/あるいは、クロム、モリブデンまたはニッケルなどが添加されたコバルト含有粉末粒子が使用される。機能領域の要件に応じて、粉末粒子の種類および/または適用される層の厚さを変えることが可能である。有利には、積層造形法において、個々の要求に関して構成されたハウジングを作製することができる。この目的のために、それぞれの場合について、3D形状の調整データセットが積層造形法のソフトウェアに記録される。
【0016】
本発明の特に有利な変形例では、流動媒体と接触する機能領域および/または密閉特性を有する機能領域は、照射による層の連続的な溶融および固体化によって構築材料から作製される。ハウジングの個々の機能領域の異なる特性は、ここでは照射の変動によって生成される。局所的な熱導入を制御することにより、ハウジングの構築においても、特に機能領域では、材料特性の調節が行われる。したがって、ハウジングの機能領域において、化学的に均質な材料の異なる材料状態、したがって異なる特性のゾーンおよび微細構造を生成することが可能である。
【0017】
少なくとも2つの機能領域を有するハウジングの作成には、材料の微小体積において、機械的特性の変更のために構築中に制御されたエネルギーが入力される。その後の熱処理は省略され、異なる材料状態の局所的な存在が維持される。同様に、高価で不便なコーティングも不要になる。
【0018】
金属構築材料は、薄層の粉末状でプレートに塗布される。微粉材料は、それぞれの所望の部位で照射によって局所的に完全に再溶融され、固体化後に、固体材料層を形成する。続いて、このベースプレートが、層厚の大きさ分だけ下げられ、粉末が再び塗布される。このサイクルは、全ての層が再溶融されるまで繰り返される。完成したハウジングでは、余分な粉末が取り除かれる。
【0019】
使用される照射は、例えば、個々の粉末層から流れ誘導コンポーネントを生成するレーザービームでもよい。レーザービームを誘導するためのデータは、ソフトウェアによって3D-CAD要素に基づいて作成される。選択的レーザー溶融の代替として、電子線(EBM)を用いることもできる。
【0020】
本発明のさらなる変形例では、照射によって導入されるエネルギー入力は、媒体と接触する機能領域、例えば主として耐荷重特性を有する機能領域の表面において、異なってもよい。これは、例えば、照射の強度を変化させることによって達成してもよい。レーザービームが個々の粉末層上を移動するスキャン速度も、エネルギー入力に影響を与え、したがって結果として生じる微細構造に影響を与える。耐荷重特性を有する機能領域は、媒体と接触する機能領域よりも、強度が大きいことが好ましい。これに対して、媒体と接触する機能領域の硬度は、耐荷重特性を有する機能領域の硬度に比べて大きい。
【0021】
異なる機能領域の強靭性および/または破断伸びも、流導コンポーネントの異なる特性を作成するために、照射を介したエネルギー入力を介して制御することができる。
【0022】
積層造形法では、流導コンポーネント用の大型ハウジングを製造することが特に非常に有利である。積層造形用のさまざまなツールを備えた、特に移動可能なロボットアームを使用することにより、機能領域が異なる構築材料から形成される、特に複雑で大きなハウジングを製造することが可能である。
【0023】
本発明によれば、機能領域の層は、異なる構築材料から積層法で集合的に形成され、層は直接作成される。
【0024】
好ましくは、積層造形法における機能領域の直接的および集合的な作成は、流導コンポーネント用ハウジングの機能領域の結合形成および/または形態適合の組み合わせを生み出す。
【0025】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面を参照した実施例の説明および図面自体から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】遠心ポンプ配置の断面図である。
図2】バルブの断面図である。
図3】異なる構築材料を持つ機能領域の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、流導コンポーネント(stromungsfuhrende Bauteile)用ハウジング1を備えた、遠心ポンプを通る断面図を示す。ハウジング1は、3つのハウジング部2、3、4からなる。スパイラルハウジング2は、吸引口と圧力口とを有し、ポンプインペラを取り囲んでいる。ベアリングキャリアキャップ3、4は、ベアリングを収容し、流体空間を密閉する役割を果たす。
【0028】
インペラは、ラジアルインペラとして設計されており、シャフトによって駆動される。シャフトは、この図に示されていないモータによって回転するように設定される。シャフトはベアリングで支えられる。
【0029】
図2は、バルブの実施例における流導コンポーネント用ハウジング5の断面図を示す。このバルブは、バルブ蓋7を備えたハウジング6を有する。ハウジング6の内部に配置されているのは、駆動によってスピンドルを介して上下方向に移動させることができるバリア本体である。
【0030】
図3は、流導コンポーネント用ハウジングの機能領域8、9、10の概略図を示す。
【0031】
図示の発明の変形例では、流動媒体と接触する機能領域8は、積層造形法のコールドガススプレーツールによって形成されることが好ましい。この目的のために、コーティング材料は、耐荷重特性を有する機能領域9に、非常に高速で粉末形態で塗布される。この目的のために、数百度に加熱されていたプロセスガス、例えば窒素またはヘリウムは、ラバルノズル(Lavalduse)での膨張によって超音速に加速され、その後、粉末粒子がガスジェットに注入される。注入された粒子はここで非常に高速に加速され、ハウジングの一部に当たると高密度でしっかりと付着した層を形成する。
【0032】
耐荷重特性を有する機能領域9は、例として、積層造形法の溶融層ツールを用いて作成され、そこでは、表面にドットのパターンを適用するために、可融性ポリマーが使用される。ノズルを用いて溶融し押し出すことによって、またそれに続いて、所望の位置で冷却して硬化することによって、特に格子の形態で、耐荷重構造が作り出される。特に耐荷重構造を有するキャビティ形成方式で、機能領域9を作成することによって、機能領域9は、非常に軽量で、同時に大きな強度を有する。
【0033】
密閉特性を有する機能領域10は、照射(Strahlung)による層の連続的な溶融固体化によって、微粉構築材料から作製される。金属粉末、特にクロム、モリブデンまたはニッケルなどの添加物を有する低合金、ならびに/あるいは高合金の鋼粉末粒子および/またはコバルト含有粉末粒子は、薄層で板に塗布される。微粉材料は、照射によってそれぞれの所望の部位で局所的に完全に再溶融され、固体化後に固体材料層を形成する。
【0034】
異なる構築材料からなる機能領域8、9、10の層が、積層方法によって一括して形成され、層が直接作成される。これにより、流導コンポーネント用ハウジングの機能領域8、9、10の結合形成および/または形態適合の組み合わせが生成される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】