(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】SARNAとMRNA調節剤によるSMAの併用治療
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20230814BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230814BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230814BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230814BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20230814BHJP
A61K 31/499 20060101ALI20230814BHJP
A61K 31/501 20060101ALI20230814BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230814BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230814BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230814BHJP
C12N 15/88 20060101ALN20230814BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P43/00 121
A61K31/7105
A61K31/7088
A61K31/7125
A61K31/499
A61K31/501
A61P25/00
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506316
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-07
(86)【国際出願番号】 CN2021109146
(87)【国際公開番号】W WO2022022617
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/106200
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521339315
【氏名又は名称】ラクティゲン セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ, ロンチョン
(72)【発明者】
【氏名】カン, ムーリン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, チエンチョン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZB212
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC41
4C086CB09
4C086EA16
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZB21
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書は、(a)SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する試薬と、(b)機能的SMN2 mRNAとSMNタンパク質の産生を増加するSMN2 mRNAスプライシングまたは安定性調節剤の組み合わせに関連する方法と組成物、およびSMAに関連する疾患または病気の治療におけるそれらの使用を提供する。ある実施の形態において、当該方法は、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤を使用することで、SMAの症状を軽減することに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の組み合わせを含む薬物組成物:
(a)SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する一つまたは複数の試薬、と
(b)機能的SMN2タンパク質の産生を増加する一つまたは複数のSMN2 mRNAスプライシングまたは安定性調節剤(SMN2 mRNA調節剤)。
【請求項2】
上記のSMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する一つまたは複数の試薬中の少なくとも一つは、saRNA、saRNAをコードする組換えベクターと小分子化合物から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記のSMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する一つまたは複数の試薬中の少なくとも一つはsaRNAであり、かつ上記のsaRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖を含み、または一本鎖を含み、またはその混合物を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
上記の一つまたは複数のSMN2 mRNA調節剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)または小分子化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
上記の一つまたは複数のSMN2 mRNA調節剤中の少なくとも一つは、ヌシネルセン、リスジプラムとブラナプラムから選ばれることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一つのsaRNAは、下記のフラグメントと配列が少なくとも90%同一である第1の鎖を含むことを特徴とする請求項2-3のいずれか一つに記載の組成物:
(a)SMN2遺伝子プロモーターの-1639から-1481までの領域(SEQ ID NO:472)、
(b)SMN2遺伝子プロモーターの-1090から-1008までの領域(SEQ ID NO:473)、
(c)SMN2遺伝子プロモーターの-994から-180までの領域(SEQ ID NO:474)、または
(d)SMN2遺伝子プロモーターの-144から-37までの領域(SEQ ID NO:475)。
【請求項7】
saRNAの第1の鎖は、長さ16-35個ヌクレオチドのSMN2遺伝子プロモーター領域のフラグメントと配列が、少なくとも75%同一または相補であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
第1の鎖は長さが16~35ヌクレオチドであり、最適にアラインされた場合、その配列が(a)、(b)、(c)、または(d)のいずれかと少なくとも75%同一であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
上記のsaRNAの第1の鎖は、SEQ ID NO:315-471から選ばれるヌクレオチド配列と、少なくとも75%の配列同一性または相補性を有することを特徴とする請求項6-7のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項10】
上記のsaRNAのセンス鎖は、SEQ ID NO:1-157から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と、少なくとも75%の配列同一性を有し、且つ上記のsaRNAのアンチセンス鎖は、SEQ ID NO:158-314から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と、少なくとも75%の配列同一性を有することを特徴とする請求項6-7のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項11】
上記のsaRNAのセンス鎖は、SEQ ID NO:1-157から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列を含み、且つ上記のsaRNAのアンチセンス鎖は、SEQ ID NO:158-314から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列を含むことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
上記のsaRNAの少なくとも一つのヌクレオチドは、化学修飾されたヌクレオチドであることを特徴とする請求項6-11のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項13】
上記の組成物は、少なくとも一つの薬学的に許容されるキャリアを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
上記の少なくとも一つの薬学的に許容されるキャリアは、水性キャリア、リポソーム、重合ポリマーとポリペプチドから選ばれることを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
上記の組成物は、下記の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1又は13に記載の組成物:
a)1-150nMのsaRNA、と
b)1-50nMのSMN2 mRNA調節剤。
【請求項16】
個体に有効量の請求項1に記載の薬物組成物を投与することを特徴とする個体におけるSMN不全に関連する疾患を治療またはその発症もしくは進行を遅延する方法。
【請求項17】
上記の薬物組成物は以下を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法:
(a)SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する一つまたは複数の試薬、と
(b)SMN2 mRNAスプライシングまたは安定性を調節することで機能的SMN2タンパク質の産生を増加する一つまたは複数の試薬(SMN2 mRNA調節剤);
ただし、上記のSMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する一つまたは複数の試薬中の少なくとも一つは、saRNAであり、且つ、上記の一つまたは複数のSMN2 mRNA調節剤中の少なくとも一つは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。
【請求項18】
上記の一つまたは複数のSMN2 mRNA調節剤中の少なくとも一つは、ヌシネルセン、リスジプラムとブラナプラムから選ばれることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記の個体は、SMA疾患を有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
上記のSMAを有する個体のSMN全長タンパク質の発現は、低下しまたは異常であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも一つのsaRNAは、下記のフラグメントと配列が少なくとも90%同一である第1の鎖を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法:
(a)SMN2遺伝子プロモーターの-1639から-1481までの領域(SEQ ID NO:472)、
(b)SMN2遺伝子プロモーターの-1090から-1008までの領域(SEQ ID NO:473)、
(c)SMN2遺伝子プロモーターの-994から-180までの領域(SEQ ID NO:474)、または
(d)SMN2遺伝子プロモーターの-144から-37までの領域(SEQ ID NO:475)。
【請求項22】
上記のsaRNAの第1の鎖は、SEQ ID NO:315-471から選ばれるヌクレオチド配列と、少なくとも75%の配列同一性または相補性を有することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記のsaRNAのセンス鎖は、SEQ ID NO:1-157から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と、少なくとも75%の配列同一性を有し、且つ上記のsaRNAのアンチセンス鎖は、SEQ ID NO:158-314から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と、少なくとも75%の配列同一性を有することを特徴とする請求項21-22のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
上記のsaRNAのセンス鎖は、SEQ ID NO:1-157から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列を含み、且つ上記のsaRNAのアンチセンス鎖は、SEQ ID NO:158-314から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記のsaRNAの少なくとも一つのヌクレオチドは、化学修飾されたヌクレオチドであることを特徴とする請求項21-24のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
脊髄性筋萎縮症(SMA)は常染色体劣性遺伝性疾患で、出生6,000~8,000人に約1人の割合で発生し、乳児死亡の主な遺伝的原因となっている。SMAは、染色体5q13.4上の運動神経細胞生存遺伝子(SMN1)のテロメアコピーのホモ欠失または突然変異による運動神経細胞生存(SMN)タンパク質レベルの低下によって引き起こされる。
【0002】
SMNタンパク質は、二つのSMN遺伝子(SMN1とSMN2)にコードされ、それらの実質的な区別は、それにコードされる配列のエクソン7のうちの一つのヌクレオチドにあり、ただし、SMN2遺伝子におけるシトシン(C)は、チミン(T)になった(非特許文献1)。この重大な区別により、潜在的なスプライシングサイトが産生され、SMN2遺伝子から転写された成熟なSMN mRNAの約90%でエクソン7のスキッピングが発生した。エクソン7欠失のSMN2 mRNA(SMN2Δ7)が、切断されたSMNタンパク質を産生し、当該タンパク質は不安定で、かつ急速に分解される。SMA患者には、SMN1遺伝子が、SMNタンパク質を産生せず、かつSMN2に産生された全長SMNタンパク質の量は、失ったSMN1を補うには不十分であり、これにより、骨髄前角の運動ニューロンのアポトーシス死、骨格筋の萎縮、およびその結果としての衰弱が引き起こされる(非特許文献2)。SMA患者の症状の重症度は、患者細胞におけるSMN2遺伝子のコピー数に依存し、コピーが多いほど症状が軽くなる(非特許文献3)。
【0003】
SMAの治療方法を開発するために、策略の一つは、スプライシング調節剤(SM)の使用で、スプライシング過程にエクソン7の包含を刺激することである。これに対して、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)薬物とするSpinraza(登録商標)は、既に米国食品医薬品局(FDA)に承認された(非特許文献4と非特許文献5)。もう一つの薬物とするRisdiplam (RG7916)は、研究中の経口低分子薬であり、新薬申請(NDA)をFDAに提出されている(非特許文献6)。これら二つの薬物は、患者の生存期間を大幅に延長し、運動を改善することにより、SMAの治療に革命をもたらした。これらの改善にもかかわらず、治療を受けた患者、特に子供たちは、まだ正常な生活を送るにはほど遠い。いくつかのもっともらしい理由が、SMの能力不足を説明する可能性がある。1つは天井効果であり、それが、治療によって回復される全長SMN タンパク質の達成可能な最大レベルを制限した。SMはSMN2転写に影響を与えないため、利用可能なSMN2 pre-mRNAの量は増加しない。SMNタンパク質を正常な生理学的レベルに戻すために、SMがSMN2Δ7 mRNAを全長mRNAに変換するin vivo効率は、100%に達することが最適であるが、これは現実には起こりそうにない理想的な効果である。したがって、SMが患者に提供できる最大の効果は、SMN2 pre-mRNAの利用可能性によって制限される。
【0004】
SMAを治療するもう一つの治療方法は、SMN2の転写を刺激することによって、全長SMNタンパク質のレベルを増加することである。以前は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例えば、酪酸ナトリウム、バルプロ酸)や非HDAC阻害剤(例えば、ヒドロキシ尿素、セレコキシブ、アルブテロール)などのさまざまなエピジェネティック修飾剤が、in vitroおよびマウスSMAモデルでテストされたが、これらは顕著な臨床効果を示すことができなかった(非特許文献7)。それらの失敗の1つの解釈は、エピジェネティック修飾剤の標的特異性の欠如である。脊髄性筋萎縮症などのSMN不全に関連する疾患を治療するための改善された方法および組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Coovert,D.D.ら、脊髄性筋萎縮症における生存運動ニューロンタンパク質(The survival motor neuron protein in spinal muscular atrophy).Human Mol Genet(1997)
【非特許文献2】Monani,U.R.ら,ヒトセントロメア生存運動ニューロン遺伝子(SMN2)は、Smn(-/-)マウスの胚性致死を救い、マウスの脊髄性筋萎縮症を引き起こす Human Mol Genet (2000)
【非特許文献3】Harada,Y.ら,SMN2コピー数と脊髄性筋萎縮症の臨床表現型との相関:3つのSMN2コピーは一部の患者を重症度から救わない(Correlation between SMN2 copy number and clinical phenotype of spinal muscular atrophy:three SMN2 copies fail to rescue some patients from the disease severity).J Neurol(2002)
【非特許文献4】Hua,Y.とA.R.Krainer.アンチセンスに媒介されるエクソンの包含.Methods Mol Biol(2012)
【非特許文献5】Stein,C.A.とD.Castanotto.2017年にFDAによって承認されたオリゴヌクレオチド療法(FDA-Approved Oligonucleotide Therapies in2017).Mol Thera(2017)
【非特許文献6】Ramdas,S.とL.Servais.脊髄性筋萎縮症の新しい治療法:現在入手可能なデータのレビュー(New treatments in spinal muscular atrophy:an overview of currently available data).Expert Opin Pharmaco(2020)
【非特許文献7】Lunke,S.とA.El-Osta.脊髄性筋萎縮症におけるエピジェネティック修飾とクロマチンリモデリングの新たな役割(The emerging role of epigenetic modifications and chromatin remodeling in spinal muscular atrophy).J Neurochem(2009)
【発明の概要】
【0006】
遺伝子調節配列(プロモーターをを含む)を標的とする二本鎖RNA(dsRNA)は、RNA活性化(RNAa)として知られるメカニズムを通じて、転写レベルで、配列特異的に標的遺伝子をアップレギュレートすることが示されている(Li,L.C.,ら、小さなdsRNAは、ヒト細胞の転写活性化を誘導する(Small dsRNAs induce transcriptional activation in human cells).PNAS(2006))。このようなdsRNAは、小さな活性化RNA(saRNA)と呼ばれる。参照により、その全体が本明細書に組み込まれる以前の特許公開(PCT/CN2019/129025)は、SMN2プロモーターを標的とする機能的saRNAの同定を記載し、かつ正常なヒト細胞およびSMA患者に由来する初代細胞におけるSMN2 mRNA発現を誘導する活性を記載している。
【0007】
本開示の実施形態は、以下の驚くべき発見に部分的に基づいている:(a)細胞におけるSMN2遺伝子の発現を活性化またはアップレギュレートする一つまたは複数の小さな活性化リボ核酸(saRNA)(本明細書には、「SMN2 saRNA」ともいう)と(b)機能的SMN2 mRNAの産生を増加する一つまたは複数のSMN2 mRNAスプライシングまたは安定性調節剤(本明細書には、「SMN2 mRNA調節剤」ともいう)の組み合わせが、全長SMN2 mRNAと全長SMNタンパク質のレベルの有意義な増加を達成することができる。この併用治療策略は、単剤療法と比較して治療効果を高めることができるため、SMA患者などの治療結果を最大化することができる。
【0008】
一部の態様では、個体におけるSMAなどのSMN不全に関連する疾患を治療するまたはその発症もしくは進行を遅延する薬物組成物を提供し、当該組成物は、以下の組み合わせを含む:(a)SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する一つまたは複数の試薬、および(b)機能的SMN2 mRNAの産生を増加する一つまたは複数のSMN2 mRNAスプライシングまたは安定性調節剤。
【0009】
ある実施の形態において、SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する試薬は、高分子および小分子を含む、そのような活性を有する任意の適切な試薬を含んでも良い。高分子の例としては、タンパク質、タンパク質複合体と糖タンパク質、核酸(例えばDNA、RNAとPNA(ペプチド核酸))がある。小分子の例としては、ペプチド、ペプチド模倣体(例えばペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、有機または無機化合物(例えば、ヘテロ有機または有機金属化合物)がある。これらの薬剤のいずれも、本明細書に記載の方法によって連続または同時に組み合わせて使用することができる
【0010】
ある実施の形態において、SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する試薬は、少なくとも一つのsaRNA(本明細書には、「SMN2 saRNA」ともいう)またはその組換えベクター、または少なくとも一つの小分子化合物である。特定な実施の形態において、SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する試薬は、少なくとも一つのSMN2 saRNAである。ある実施の形態において、SMN2 saRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖を含み、または一本鎖を含み、またはそれらの混合物を含む。
【0011】
本開示のある実施の形態において、SMN2 mRNA調節剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)または小分子、例えばピリダジン誘導体である。本開示のある実施の形態において、SMN2 mRNA調節剤は、ヌシネルセン(Nusinersen) (Spinraza(登録商標)、本明細書には、ASO-10-27ともいう)、リスジプラム(Risdiplam)、リゴセルチブ(Rigosertib)とブラナプラム(Branaplam)から選ばれる。
【0012】
本開示のある実施の形態において、SMN2 saRNAは、第1の鎖を含み、それは、(a)SMN2遺伝子プロモーターの-1639から-1481までの領域(SEQ ID NO:472)、(b)SMN2遺伝子プロモーターの-1090から-1008までの領域(SEQ ID NO:473)、(c)SMN2遺伝子プロモーターの-994から-180までの領域(SEQ ID NO:474)、または(d)SMN2遺伝子プロモーターの-144から-37まで領域(SEQ ID NO:475)と少なくとも90%同一である。
【0013】
本開示のある実施の形態において、SMN2 saRNAの第1の鎖は、長さ16-35個ヌクレオチドのSMN2遺伝子プロモーター領域のフラグメントと、少なくとも75%同一または相補である。
【0014】
本開示のある実施の形態において、SMN2 saRNA分子の第1の鎖は、SEQ ID NO:315-471から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも75%同一または相補である。
【0015】
本開示のある実施の形態において、センス鎖は、SEQ ID NO:1-157から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と、少なくとも75%同一であり、アンチセンス鎖は、SEQ ID NO:158-314から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも75%同一である。
【0016】
本開示のある実施の形態において、センス鎖は、SEQ ID NO:1-157から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列を含み、かつただし、アンチセンス鎖は、SEQ ID NO:158-314から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列を含む。
【0017】
本開示のある実施の形態において、少なくとも一つのヌクレオチドは、化学的に修飾されるヌクレオチドである。
【0018】
ある実施の形態において、本明細書に提供される組成物は、一つまたは複数の薬学的に許容されるキャリア(例えば水性キャリア、リポソーム、重合ポリマーまたはポリペプチド)を含む。
【0019】
本開示のある実施の形態において、組成物は、1-150nMのSMN2 saRNAと1-50nMのASO SMN2 mRNA調節剤を含む。
【0020】
本開示のある実施の形態において、組成物は、1-150nMのSMN2 saRNAと1-3000nMの小分子ピリダジン誘導体SMN2 mRNA調節剤(例えばリスジプラム)を含む。ある実施の形態において、組成物は、300-2000nMリスジプラムを含む;処理前に得られたベースライン測定値若しくは未処理の細胞の集団と比較して、当該組成物は、処理された細胞中の全長SMNタンパク質の量を少なくとも10%増加させる。さらなる実施の形態において、処理前に得られたベースライン測定値と比較して、本開示の組成物が、処理された細胞におけるSMN2Δ7の量を減少する。
【0021】
本開示のある実施の形態において、SMN2 saRNAは、DS06-0004(RAG6-281ともいう)、DS06-0031(RAG6-1266ともいう)またはDS06-0067(RAG6-293ともいう)である。
【0022】
本開示のある実施の形態は、個体におけるSMN不全に関連する疾患を治療するまたはその発症もしくは進行を遅延する方法に関し、当該方法は、個体に有効量の薬物組成物を投与することを含み、上記薬物組成物は、(a)SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する一つまたは複数の試薬、と(b)機能的SMN2 mRNAの産生を増加する一つまたは複数のSMN2 mRNAスプライシングまたは安定性調節剤を含む。本明細書に提供される方法のある実施の形態において、SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する試薬はsaRNA(本明細書には、「SMN2 saRNA」ともいう)またはその組換えベクター、または小分子化合物である。本明細書に提供される方法のある実施の形態において、SMN2 mRNA調節剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)または小分子化合物、例えばピリダジン誘導体である。本開示のある実施の形態において、SMN2 mRNA調節剤は、ノシナゲンナトリウム(Nusinersen) (Spinraza(登録商標)、本明細書には、ASO-10-27ともいう)、リスジプラム(Risdiplam)、リゴセルチブ(Rigosertib)とブラナプラム(Branaplam)から選ばれる。
【0023】
本明細書に提供される方法のある実施の形態において、SMN2 saRNAは、第1の鎖を含み、それは、SMN2遺伝子プロモーターの-1639から-1481までの領域(SEQ ID NO:472)、SMN2遺伝子プロモーターの-1090から-1008まで領域(SEQ ID NO:473)、SMN2遺伝子プロモーター-994から-180までの領域(SEQ ID NO:474)またはSMN2遺伝子プロモーター-144から-37までの領域(SEQ ID NO:475)と少なくとも90%同一である。
【0024】
本明細書に提供される方法のある実施の形態において、SMN2 saRNAの一つの鎖は、長さ16-35個ヌクレオチドのSMN2遺伝子プロモーター領域のフラグメントと、少なくとも75%同一または相補である。
【0025】
本明細書に記載のいずれか実施の形態において、個体は、SMA疾患を有する。さらなる実施の形態において、SMAを有する個体のSMN全長タンパク質の発現は、低下または異常である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、SMN2遺伝子構造、saRNA標的位置とPCRプライマー位置を示す。
図1Aは、SMN2遺伝子構造およびその2kbプロモーター領域を示す。saRNA DS06-0004、DS06-0067とDS06-0031の標的サイトは、それぞれに、SMN2 転写開始部位(TSS)に対して-281、-293と-1266の位置に示される。
図1Bは、RT-qPCR(SMN2FL F+SMN2FL R,SMNΔ7 F+SMNΔ7R)と半定量RT-PCR(SMN-exon6-F+SMN-exon8-R)のPCRプライマーの位置を示す。
【
図2】
図2は、SMN1とSMN2遺伝子の間の差異と半定量RT-PCR/DdeI消化アッセイの概略図を示す。SMN2エクソン8のG→Aバリアントは、DdeI制限酵素(A)の認識サイトを作成する。PCRプライマーペアであるSMN-エクソン6-FとSMN-エクソン8-Rが、507bp産物(SMN2FL)と453bp産物(SMN2Δ7)を増幅する。SMN1とSMN2産物を区別するために、DdeI消化により、SMN2FL産物は、392bpと115bpのフラグメントに切断され(B)、かつSMN2Δ7産物は、338bpと115bpのフラグメントに切断された(C)。
【
図3】
図3A~3Gは、GM03813細胞における全長(SMN2FL)およびエクソン7 スキップ(SMN2Δ7)SMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0004)、ASO-10-27とリスジプラムの効果を示す。指定濃度のASO-10-27、saRNA(DS06-0004)とリスジプラムによって、GM03813細胞を72時間処理した。対照処理としてのモックサンプルを、オリゴヌクレオチドの非存在下でトランスフェクトした。個別のPCR反応で、2対のプライマーを使用し、RT-qPCRによってSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを確定した。
図3A-3Cは、RT-qPCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。
図3Dは、半定量PCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。SMN2のPCR産物は、DdeI酵素によって消化され、かつ2%アガロースゲルにて分離された。さらに、RNAローディングの対照として、TBP遺伝子を増幅した。
図3E-3Gは、
図3DのPCR産物バンド強度定量に由来するSMN2FLとSMN2Δ7レベルを示す。値(y軸)は、TBPのバンド強度に対して正規化したモック処理に対するSMN2 バンド強度である。SMN2FL、消化後SMN2全長PCR産物(392bp);SMNΔ7、消化後SMNエクソン7スキップPCR産物(338bp);ラダー:100bp DNAマーカー。
【
図4】
図4A~4Eは、GM00232細胞におけるSMN2FLおよびSMN2Δ7 SMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0004)およびASO-10-27の組み合わせ効果を示す。ASO-10-27およびDS06-0004を個別にまたは組み合わせて、GM00232細胞に指示濃度で72時間トランスフェクトした。対照処理としてのモックサンプルを、オリゴヌクレオチドの非存在下でトランスフェクトした。Qiagen RNeasyキットによって、処理された細胞から全細胞RNAを抽出し、逆転写し、cDNAを得た後、SMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルをRT-qPCRで確定した。
図4Aと4Dは、RT-qPCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。
図4Bは、半定量PCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。SMN2のPCR産物は、DdeI酵素によって消化され、かつ2%アガロースゲルにて分離された。さらに、RNAローディングの対照として、TBP遺伝子を増幅した。
図4Cと4Eは、
図4BのPCR産物バンド強度定量に由来するSMN2FLとSMN2Δ7レベルを示す。値(y軸)は、TBPのバンド強度に対して正規化したモック処理に対するSMN2FLとSMN2Δ7バンド強度である。SMN2FL、消化後SMN2全長PCR産物(392bp);SMNΔ7、消化後SMNエクソン7スキップPCR産物(338bp)、ASO、ASO-10-27。
【
図5】
図5A~5Cは、I型SMA細胞GM00232における全長SMNタンパク質の発現に対するsaRNA(DS06-0004)およびASO-10-27の組み合わせ効果を示す。ASO-10-27およびDS06-0004を個別にまたは組み合わせて、GM00232細胞に指示濃度で72時間トランスフェクトした。対照処理としてのモックサンプルを、オリゴヌクレオチドの非存在下でトランスフェクトした。処理された細胞からタンパク質を収穫し、ヒトSMNタンパク質に対する抗体を用いたWesternロッティングアッセイにより免疫ブロットを行った。α/β-チューブリンに対する抗体もブロットして、タンパク質ローディングの対照として使用した。
図5Aは、モック処理およびASO-10-27単独またはDS06-0004との組み合わせで処理した細胞からのSMNタンパク質発現を示す。
図5Bは、モック処理およびDS06-0004単独またはASO-10-27との組み合わせで処理した細胞からのSMNタンパク質発現を示す。
図5Cは、
図5Aと5Bのバンド強度定量に由来するSMNタンパク質レベルの相対的倍率変化を示す。値(y軸)は、α/β-チューブリンのバンド強度に対して正規化したSMN タンパク質の相対バンド強度である。ASO、ASO-10-27。
【
図6】
図6A~6Eは、GM03813細胞におけるSMN2FLおよびSMN2Δ7 SMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0004)およびASO-10-27の組み合わせ効果を示す。ASO-10-27およびDS06-0004を個別にまたは組み合わせて、GM03813細胞に指示濃度で72時間トランスフェクトした。対照処理としてのモックサンプルを、オリゴヌクレオチドの非存在下でトランスフェクトした。Qiagen RNeasyキットによって、処理された細胞から全細胞RNAを抽出し、逆転写し、cDNAを得た後、SMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルをRT-qPCRで確定した。
図6Aと6Dは、RT-qPCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。
図6Bは、半定量PCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。SMN2のPCR産物は、DdeI酵素によって消化され、かつ2%アガロースゲルにて分離された。さらに、RNAローディングの対照として、TBP遺伝子を増幅した。
図6Cと6Eは、
図6BのPCR産物バンド強度定量に由来するSMN2FLとSMN2Δ7レベルを示す。値(y軸)は、TBPのバンド強度に対して正規化したモック処理に対するSMN2FLとSMN2Δ7バンド強度である。SMN2FL、消化後SMN2全長PCR産物(392bp);SMNΔ7、消化後SMNエクソン7スキップPCR産物(338bp)、ASO、ASO-10-27。
【
図7】
図7A~7Cは、II型SMA細胞GM03813における全長SMNタンパク質の発現に対するsaRNA(DS06-0004)およびASO-10-27の組み合わせ効果を示す。ASO-10-27およびDS06-0004を個別にまたは組み合わせて、GM00232細胞に指示濃度で72時間トランスフェクトした。対照処理としてのモックサンプルを、オリゴヌクレオチドの非存在下でトランスフェクトした。処理された細胞からタンパク質を収穫し、ヒトSMNタンパク質に対する抗体を用いたWesternロッティングアッセイにより免疫ブロットを行った。α/β-チューブリンに対する抗体もブロットして、タンパク質ローディングの対照として使用した。
図7Aは、モック処理およびASO-10-27単独またはDS06-0004との組み合わせで処理した細胞からのSMNタンパク質発現を示す。
図7Bは、モック処理およびDS06-0004単独またはASO-10-27との組み合わせで処理した細胞からのSMNタンパク質発現を示す。
図7Cは、
図7Aと7Bのバンド強度定量に由来するSMNタンパク質レベルの相対的倍率変化を示す。値(y軸)は、α/β-チューブリンのバンド強度に対して正規化したSMN タンパク質の相対バンド強度である。ASO,ASO-10-27。
【
図8】
図8A~8Fは、GM00232細胞におけるSMN2FLおよびSMN2Δ7 SMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0004)およびリスジプラムの組み合わせ効果を示す。リスジプラムとDS06-0004を個別にまたは組み合わせて、GM00232細胞に指示濃度で72時間トランスフェクトした。DMSOサンプルを、リスジプラムの担体対照として使用し、オリゴヌクレオチドの非存在下で、saRNAトランスフェクションの対照としてモック処理がトランスフェクトされた。Qiagen RNeasyキットによって、処理された細胞から全細胞RNAを抽出し、逆転写し、cDNAを得た後、SMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルをRT-qPCRで確定した。
図8Aは、RT-qPCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。
図8Bおよび8Cは、異なる濃度のDS06-0004およびリスジプラムでコンボ処理した細胞における相対SMN2FL mRNAレベルを示す。
図8Dは、半定量PCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。SMN2のPCR産物は、DdeI酵素によって消化され、かつ2%アガロースゲルにて分離された。さらに、RNAローディングの対照として、TBP遺伝子を増幅した。
図8Eと8Fは、
図8DのPCR産物バンド強度定量に由来するSMN2FLレベルを示す。値(y軸)は、TBPのバンド強度に対して正規化したモックまたはDMSO処理に対するSMN2FLとSMN2Δ7のバンド強度である。SMN2FL、消化後SMN2全長PCR産物(392bp);SMNΔ7、消化後SMNエクソン7スキップPCR産物(338bp)。
【
図9】
図9A~9Bは、I型SMA細胞GM00232における全長SMNタンパク質の発現に対するsaRNA(DS06-0004)およびリスジプラムの組み合わせ効果を示す。リスジプラムとDS06-0004を個別にまたは組み合わせて、GM00232細胞に指示濃度で72時間トランスフェクトした。DMSOサンプルを、リスジプラムの担体対照として使用し、オリゴヌクレオチドの非存在下で、saRNAトランスフェクションの対照としてモック処理がトランスフェクトされた。処理された細胞からタンパク質を収穫し、ヒトSMNタンパク質に対する抗体を用いたWesternロッティングアッセイにより免疫ブロットを行った。α/β-チューブリンに対する抗体もブロットして、タンパク質ローディングの対照として使用した。
図9Aは、DMSO処理およびリスジプラム単独またはDS06-0004との組み合わせで処理した細胞からのSMNタンパク質発現を示す。
図9Bは、
図9Aのバンド強度定量に由来するSMNタンパク質レベルの相対的倍率変化を示す。値(y軸)は、α/β-チューブリンのバンド強度に対して正規化したSMN タンパク質の相対バンド強度である。
【
図10】
図10A~10Fは、GM03813細胞におけるSMN2FLおよびSMN2Δ7 SMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0004)およびリスジプラムの組み合わせ効果を示す。リスジプラムとDS06-0004を個別にまたは組み合わせて、GM03813細胞に指示濃度で72時間トランスフェクトした。DMSOサンプルを、リスジプラムの担体対照として使用し、オリゴヌクレオチドの非存在下で、saRNAトランスフェクションの対照としてモック処理がトランスフェクトされた。Qiagen RNeasyキットによって、処理された細胞から全細胞RNAを抽出し、逆転写し、cDNAを得た後、SMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルをRT-qPCRで確定した。
図10Aは、RT-qPCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。
図10Bおよび6Cは、異なる濃度のDS06-0004およびリスジプラムでコンボ処理した細胞における相対SMN2FL mRNAレベルを示す。
図10Dは、半定量PCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。SMN2のPCR産物は、DdeI酵素によって消化され、かつ2%アガロースゲルにて分離された。さらに、RNAローディングの対照として、TBP遺伝子を増幅した。
図10Eと10Fは、
図10DのPCR産物バンド強度定量に由来するSMN2FLレベルを示す。値(y軸)は、TBPのバンド強度に対して正規化したモックまたはDMSO処理に対するSMN2FLとSMN2Δ7のバンド強度である。SMN2FL、消化後SMN2全長PCR産物(392bp);SMNΔ7、消化後SMNエクソン7スキップPCR産物(338bp)。
【
図11】
図11A~11Bは、II型SMA細胞GM03813における全長SMNタンパク質の発現に対するsaRNA(DS06-0004)およびリスジプラムの組み合わせ効果を示す。リスジプラムとDS06-0004を個別にまたは組み合わせて、GM03813細胞に指示濃度で72時間トランスフェクトした。DMSOサンプルを、リスジプラムの担体対照として使用し、オリゴヌクレオチドの非存在下で、saRNAトランスフェクションの対照としてモック処理がトランスフェクトされた。処理された細胞からタンパク質を収穫し、ヒトSMNタンパク質に対する抗体を用いたWesternロッティングアッセイにより免疫ブロットを行った。α/β-チューブリンに対する抗体もブロットして、タンパク質ローディングの対照として使用した。
図11Aは、モック処理およびリスジプラム単独またはDS06-0004との組み合わせで処理した細胞からのSMNタンパク質発現を示す。
図11Bは、
図11Aの定量バンド強度に由来するSMNタンパク質レベルの相対的倍率変化を示す。値(y軸)は、α/β-チューブリンのバンド強度に対して正規化したSMN タンパク質の相対バンド強度である。
【
図12】
図12A~12Eは、GM03813細胞におけるSMN2FLおよびSMN2Δ7 SMN2 mRNAとmRNAタンパク質の発現に対するsaRNA(DS06-0031とDS06-0067)およびASO-10-27の組み合わせ効果を示す。DS06-0031またはDS06-0067を、個別にまたはASO-10-27と組み合わせて、GM03813細胞に10nMで72時間トランスフェクトした。対照処理としてのモックサンプルを、オリゴヌクレオチドの非存在下でトランスフェクトした。dsCon2は、無関係なオリゴヌクレオチド対照としてトランスフェクトされた。DS06-332iは、SMN2のsiRNAであり、対照処理としてトランスフェクトされた。Qiagen RNeasyキットによって、処理された細胞から全細胞RNAを抽出し、逆転写し、cDNAを得た後、SMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルをRT-qPCRと半定量RT-PCRで確定した。処理された細胞からタンパク質を収穫し、ヒトSMNタンパク質に対する抗体を用いたWesternブロッティングアッセイにより免疫ブロットを行った。α/β-チューブリンに対する抗体もブロットして、タンパク質ローディングの対照として使用した。
図12Aは、RT-qPCRによって確定されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。
図12Bは、半定量PCRによって確定された、かつ2%アガロースゲルにて分離されたSMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルを示す。さらに、RNAローディングの対照として、TBP遺伝子を増幅した。
図12Cは、
図12BのPCR産物バンド強度定量に由来するSMN2FLとSMN2Δ7 mRNAレベルを示す。値(y軸)は、TBPのバンド強度に対して正規化したモック処理に対するSMN2FLとSMN2Δ7バンド強度である。SMN2FL、SMN2全長PCR産物(507bp);SMNΔ7、SMNエクソン7スキップPCR産物(453bp)。
図12Dは、SMNタンパク質発現のwesternブロットを示す。
図12Eは、
図12Dの定量バンド強度に由来するSMNタンパク質レベルの相対的倍率変化を示す。値(y軸)は、α/β-チューブリンのバンド強度に対して正規化したSMN タンパク質の相対バンド強度である。
【
図13】
図13A~13Cは、SMAタイプIIIマウス(PND7)における全長(SMN2FL)およびエクソン7 スキップ(SMN2Δ7)SMN2 mRNAの発現に対するsaRNAおよびLNP-ASO-10-27またはリスジプラムの組み合わせ効果を示す。SMAタイプIIIマウスの3つの群を次のように処理した:治療群1(n=3)-生後1日目(P1、10μg)および生後3日目(P3、10μg)にLNP-R6-04M1を単独で投与する;治療群2(n=3)-LNP-R6-04M1をLNP-ASO-10-27と組み合わせて投与する(P1、10μgおよびP3、10μg);および治療群3(n=3)-LNP-R6-04M1およびリスジプラム(0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kg)を指定濃度の側脳室注射(ICV)で投与する。生理食塩水で処理されたマウスは、非処理対照とする。治療後、Qiagen RNeasyキットを逆転写に使用して、2つの組織(脳と肝臓)からRNAを分離し、cDNAを得、SMN2FLとSMNΔ7のmRNAレベルをRT-qPCRで確定した。
図13Aは、SMAタイプIIIマウスの脳においてRT-qPCRによって確定されたSMN2FLおよびSMNΔ7のmRNAレベルを示す。
図13Bは、SMA型IIIマウスの肝臓においてRT-qPCRによって確定されたSMN2FLおよびSMNΔ7のSMN2FL mRNAレベルを示す。
図13Cは、SMA型IIIマウスの脊髄においてRT-qPCRによって確定されたSMN2FLおよびSMNΔ7のSMN2FL mRNAレベルを示す。SMN2FLおよびSMN2Δ7 mRNAレベルは、Tbp参照レベルに対して正規化した生理食塩水処理に対する3匹の動物/群(n=3~7)の平均値として示された。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<発明の詳細な説明>
本発明は、SMN2遺伝子発現を活性化/アップレギュレートし、完全長SMN2の発現量を増加させることによって、SMN不全に関連する疾患の治療効果を改善する方法に関する研究に基づく。
【0028】
本開示において、本発明者らはさらに、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤(例えばヌシネルセンのようなASO)または小さなピリダジン誘導体(リスジプラムとブラナプラムを含むがこれらに限定されない)を併用し、SMA患者細胞を治療することは、いずれかの化合物単独で達成できる量よりも有意に高いレベルの全長SMN2 mRNAおよびSMNタンパク質を達成することができることを示す。単剤療法と比較して、この併用療法策略は、強化された治療効果、例えば、SMN不全に関連する疾患と診断された患者の臨床症状の改善、または単剤療法に関連する望ましくない副作用の軽減、ないしSMA 患者などの患者の治療結果の最大化を提供できる。
【0029】
特に定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明を対象とする当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0030】
本願において、「一つ/一個」および「当該」などの単数形は、文脈において特に明確に指定されない限り、複数の指示対象を含む。
【0031】
<定義>
本明細書に使用されるように、用語「SMN不全に関連する疾患」とは、何らかの原因によるSMN全長タンパク質の欠損に起因する疾患をいう。「SMN不全に関連する疾患」は、脊髄性筋萎縮症(SMA)、神経原性多発性先天性関節拘縮症(先天性AMC)と筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含むが、これらに限定されない。SMN1(ヒト)の場合、GenBank遺伝子リファレンスはGeneID:6606である。
【0032】
「脊髄性筋萎縮症」または「SMA」という用語は、脊髄性筋萎縮症(SMA)1~4型;近位脊髄筋萎縮;小児期発症SMAI型(ウェルドニッヒ-ホフマン病(Werdnig-Hoffmann disease));II型(中間型、慢性型)、III型(クーゲルベルク・ヴェランダー病(Kugelberg-Welander disease)、または若年性脊髄性筋萎縮症)、および最近分類された成人発症型IV型を含むが、これらに限定されない。会議報告:国際SMAコンソーシアム会議(International SMA Consortium meeting).Neuromuscul Disord.;2:423-428。用語SMAは、さらに遅発性SMA(SMA3型および4型、軽度SMA、成人発症型SMA、およびクーゲルベルク-ウェランダー病ともいう)も含む。用語SMAは、さらに、X関連疾患、呼吸窮迫を伴う脊髄性筋萎縮症(SMARD)、脊髄および延髄筋萎縮症(ケネディ病、または球脊髄性筋萎縮症)、および遠位脊髄性筋萎縮症を含む他の形式のSMAも含む。用語SMAは、Arnold,W.D.、Kassar,D.&Kissel,J.T.の「脊髄性筋萎縮症:新しい治療時代の診断と管理(Spinal muscular atrophy: Diagnosis and management in a new therapeutic era)」Muscle and Nerve(2015);Butchbach,M.E.R.の「生存運動ニューロン遺伝子におけるコピー数の変動:脊髄性筋萎縮症およびその他の神経変性疾患への影響(Copy Number Variations in the Survival Motor Neuron Genes:Implications for Spinal Muscular Atrophy and Other Neurodegenerative Diseases)」Front.Mol.Biosci.(2016)に記載されているSMAのすべての形態を含む。
【0033】
出生時または生後6か月までにSMAの症状が見られる場合、その疾患はSMA1型(乳児発症またはウェルドニッヒ・ホフマン病(Werdnig-Hoffmann病)ともいう)と呼ばれる。乳児は通常、全身の筋力低下、弱い泣き声、呼吸困難を抱えている。飲み込みや吸啜が困難なことが多く、自力で座れるという発育段階には達していない。これらの乳児は、誤嚥や発育不良のリスクが高くなる。通常、これらの乳児は、SMN2遺伝子のコピーを2つまたは3つ持つ(Butchbach,M.E.R.の「生存運動ニューロン遺伝子におけるコピー数の変動:脊髄性筋萎縮症およびその他の神経変性疾患への影響(Copy Number Variations in the Survival Motor Neuron Genes:Implications for Spinal Muscular Atrophy and Other Neurodegenerative Diseases)」Front.Mol.Biosci.(2016)その全体が本明細書に組み込まれる)。
【0034】
SMAが生後3か月から15か月の間に、子供が独立して立ったり歩いたりできるようになる前に発症し、SMA2型、または中間SMAまたはデュボウィッツ病(Dubowitz disease)と呼ばれる。SMA2型の子供は、一般にSMN2遺伝子のコピーを3つ持つ(Arnold,W.D.、Kassar,D.&Kissel,J.T.の「脊髄性筋萎縮症:新しい治療時代の診断と管理(Spinal muscular atrophy:Diagnosis and management in a new therapeutic era)」Muscle and Nerve(2015)、その全体が本明細書に組み込まれる)。筋力低下は主に近位(体の中心に近い方)で起こり、上肢よりも下肢に多く係る。通常、顔と目の筋肉は影響を受けない。(Butchbach,M.E.R.生存運動ニューロン遺伝子におけるコピー数の変動:脊髄性筋萎縮症およびその他の神経変性疾患への影響(Copy Number Variations in the Survival Motor Neuron Genes:Implications for Spinal Muscular Atrophy and Other Neurodegenerative Diseases).Front.Mol.Biosci.(2016)、その全体が本明細書に組み込まれる)。
【0035】
遅発性SMA(SMA3型および4型、軽度SMA、成人発症型SMA、およびクーゲルベルク-ウェランダー病ともいう)はさまざまなレベルの筋力低下をもたらす。3型SMAの患者は、SMN2遺伝子のコピーを3~4つ持つ。SMA3型(若年発症)は、SMA全体の30%を占める(Arnold,W.D.,Kassar,D.&Kissel,J.T.脊髄性筋萎縮症:新しい治療時代の診断と管理(Spinal muscular atrophy:Diagnosis and management in a new therapeutic era).Muscle and Nerve(2015))。症状は通常、生後18か月から成人期の間に現れる。影響を受けた個体は、独立した行動を達成する。ただし、これらの患者の近位筋力低下は、転倒や階段の上り下りの困難を引き起こす可能性がある。時間が経つにつれて、多くの人が立ったり歩いたりする能力を失うため、代わりに車椅子を使用して移動する。これらの患者のほとんどは、足の変形、脊柱側弯症、および呼吸筋の衰弱を発症する。
【0036】
4型SMAは遅発性であり、SMA症例全体の5%未満を占める。これらの患者は、SMN2遺伝子のコピーを4~8つ持つ(Butchbach,M.E.R.生存運動ニューロン遺伝子におけるコピー数の変動:脊髄性筋萎縮症およびその他の神経変性疾患への影響(Copy Number Variations in the Survival Motor Neuron Genes:Implications for Spinal Muscular Atrophy and Other Neurodegenerative Diseases).Front.Mol.Biosci.(2016))。発症年齢は明確ではないが、通常30歳以降である。4型は軽度のSMAであるため、寿命は通常のままである。患者は運動のマイルストーンを達成し、生涯を通じて可動性を維持できる。
【0037】
本明細書で使用される「対象」および「個体」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、本開示の化合物で治療することができる任意の生物を意味する。用語「患者」は、幼児、子供、および成人を含む、人間の対象または個体を意味する。
【0038】
組成物の「治療有効量」は、所望の治療効果を達成するのに十分な量であり、したがって治癒または完全寛解を必要としない。本開示の実施の形態において、治療効果は、疾患指標のいずれかの改善であり、治療有効量は、治療を受けた個人の臨床的に重要な状態/症状の改善を引き起こすのに十分である。本明細書に使用される語句「治療有効量」と「有効量」とは、治療される個体の活動、機能および応答における臨床的に有意な欠損を少なくとも約15%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%低減し、最も好ましくは予防するのに十分な量を意味するために使用される。
【0039】
有効量は、対象のサイズおよび体重、疾患の種類、または本発明の特定の化合物などの要因に応じて変化しても良い。例えば、本発明の化合物の選択は、「有効量」を構成するものに影響を与える可能性がある。当業者は、過度の実験を行うことなく、本明細書に含まれる因子を研究し、本発明の化合物の有効量に関して決定することができる。
【0040】
投与レジメンは、有効量を構成するものに影響を与える可能性がある。本発明の化合物は、SMN不全に関連する疾患の発症前または発症後のいずれかに対象に投与することができる。さらに、数回に分けた用量を毎日または連続して投与してもよいし、用量をずらして投与してもよいし、用量を連続的に注入してもよいし、またはボーラス注射してもよい。さらに、本発明の化合物の投与量は、治療または予防状況の緊急性によって、比例的に増加または減少させることができる。本願の組成物を投与することができる投与量は、広い範囲内で変えることができ、もちろん、それぞれの場合の個体の需要に適合する。
【0041】
本明細書で使用される「治療」、「処理」、「治療方法」、または「療法」という用語は、医学分野で一般的に理解される意味を有し、したがって、治癒または完全な寛解を必要とせず、有益なまたは望ましい臨床結果を含む。そのような有益なまたは望ましい臨床結果の非限定的な例は、治療なしで期待される生存期間と比較して生存期間の延長、次の一つまたは複数を含む症状の軽減である:近位骨格筋の衰弱および萎縮、独立して座るまたは歩くことができない、嚥下困難、呼吸困難など。
【0042】
本明細書に使用されるように、病気を「予防する」または「遅延する」とは、病気の完全発症を阻止することを指す。
【0043】
用語「生物サンプル」とは、生物(例えば、ヒト対象)に由来する任意の組織、細胞、体液、または他の物質を指す。ある実施の形態において、生物サンプルは、血清または血液である。
【0044】
本明細書に使用されるように、用語「配列同一/配列同一性」または「配列相同/配列相同性」とは、saRNAの一つのオリゴヌクレオチド鎖(センスまたはアンチセンス)が、標的遺伝子プロモーター配列のテンプレート鎖またはコード鎖における領域と少なくとも80%の類似性を有することを意味する。
【0045】
本開示の実施形態において、標的遺伝子はSMN2である。「標的配列」とは、標的遺伝子のプロモーター配列において、SMN2 saRNAのセンスオリゴヌクレオチド鎖またはアンチセンスオリゴヌクレオチドと相同または相補的である配列フラグメントを意味する。「標的遺伝子プロモーター配列」とは、標的遺伝子の非コード配列を指し、本発明の文脈において、「標的遺伝子プロモーター配列と相補的である」とは、当該配列のコード鎖(テンプレート鎖ともいう)、すなわち、遺伝子のコード配列と同じ配列である核酸配列を指す。
【0046】
本明細書に使用されるように、用語「センス鎖」および「センスオリゴヌクレオチド鎖」は、交換可能であり、且つ小さな活性化リボ核酸(saRNA)分子のセンスオリゴヌクレオチド鎖は、saRNAの二重鎖中の標的遺伝子のプロモーター配列のコード鎖を含む第1の核酸鎖を指す。
【0047】
本明細書に使用されるように、用語「アンチセンス鎖」と「アンチセンスオリゴヌクレオチド鎖」は、交換可能であり、且つsaRNA分子のアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖は、センスオリゴヌクレオチド鎖と相補的なsaRNAの二重鎖中の第2の核酸鎖を指す。
【0048】
本明細書に使用されるように、用語「第1のオリゴヌクレオチド鎖」は、センス鎖またはアンチセンス鎖であっても良い。saRNAのセンス鎖とは、saRNA二本鎖中の標的遺伝子のプロモーターDNA配列のコード鎖と相同性を有するオリゴヌクレオチド鎖を指す。アンチセンス鎖は、saRNA二本鎖中のセンス鎖と相補的なオリゴヌクレオチド鎖を指す。
【0049】
本明細書に使用されるように、用語「第2のオリゴヌクレオチド鎖」という用語はまた、センス鎖またはアンチセンス鎖であっても良い。第1のオリゴヌクレオチド鎖がセンス鎖である場合、第2のオリゴヌクレオチド鎖はアンチセンス鎖である;第1のオリゴヌクレオチド鎖がアンチセンス鎖である場合、第2のオリゴヌクレオチド鎖はセンス鎖である。
【0050】
本明細書に使用される用語「プロモーター」は、タンパク質をコードせず、タンパク質をコードする核酸配列またはRNAをコードする核酸配列と空間的に関連することにより、それらの転写を調節する役割を果たす核酸配列を指す。通常、真核プロモーターは、100から5,000塩基対を含むが、この長さの範囲は、本明細書で使用される「プロモーター」の用語を限定することを意図しない。プロモーター配列は一般に、タンパク質コード配列またはRNAコード配列の5’末端に位置するが、エクソンおよびイントロン配列にも存在する。
【0051】
本明細書に使用されるように、用語「コード鎖」は、標的遺伝子内の転写できないDNA鎖を指し、そのヌクレオチド配列は、転写によって生成されるRNAの配列と同一である(RNAでは、DNAのTはUに置き換えられる)。本開示に記載の標的遺伝子プロモーターの二本鎖DNA配列のコード鎖は、標的遺伝子のDNAコード鎖と同じDNA鎖上のプロモーター配列を指す。
【0052】
本明細書に使用されるように、用語「テンプレート鎖」は、標的遺伝子の二本鎖DNA鎖のもう一方の鎖を指し、それが、コード鎖に相補であり、且つそれをテンプレートとして、転写されたRNA塩基(A-U、G-C)に相補するRNAに転写することができる。転写過程には、RNA ポリメラーゼは、テンプレート鎖に結合し、テンプレート鎖の3’→5’方向に沿って移動し、5’→3’方向のRNA 合成を触媒する。本開示に記載の標的遺伝子プロモーターの二本鎖DNA配列のテンプレート鎖とは、標的遺伝子DNAテンプレート鎖と同一DNA鎖に位置するプロモーター配列を指す。
【0053】
本明細書に使用されるように、用語「転写開始部位」またはTSSは、遺伝子テンプレート鎖に転写の開始をマークするヌクレオチドを指す。転写開始部位は、プロモーター領域のテンプレート鎖に位置しても良い。遺伝子は、複数の転写開始部位を有しても良い。
【0054】
本明細書に使用されるように、用語「オーバーハング」は、二本鎖オリゴヌクレオチド内のいずれかの鎖を越えて伸びる他方の鎖から生じる1つまたは複数の非塩基対ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチド鎖の末端(5’または3’)を指す。二本鎖の3’および/または5’末端を越えて伸びる一本鎖領域は、オーバーハングと呼ばれる。ある実施の形態において、オーバーハングの長さは0-6個ヌクレオチドである。0個ヌクレオチドのオーバーハングは、オーバーハングがないことを意味すると理解される。
【0055】
本明細書に使用されるように、用語「遺伝子活性化」、「遺伝子発現の活性化」、「遺伝子アップレギュレート」および「遺伝子発現のアップレギュレート」は互換的に使用でき、それは、遺伝子の転写レベル、mRNAレベル、タンパク質レベル、酵素活性、メチル化状態、クロマチン状態または構成、翻訳レベル、または細胞または生物系における活性または状態を測定することによって確定されるように、特定の核酸配列の転写、翻訳、発現または活性の増加またはアップレギュレーションを意味する。これらの活性または状態は、直接的または間接的に確定できる。さらに、「遺伝子活性化」または「遺伝子発現の活性化」は、そのような活性化のメカニズムに関係なく、核酸配列に関連する活性の増加を指す。例えば、遺伝子活性化は転写レベルで起こり、RNAへの転写を増加させ、RNAはタンパク質に翻訳され、それによってタンパク質の発現が増加する。
【0056】
本明細書に使用されるように、用語「小さな活性化RNA」、「saRNA」と「小さな活性化リボ核酸」は互換的に使用でき、標的遺伝子の発現をアップレギュレートすることができるリボ核酸分子を指す。それは、標的遺伝子の非コード核酸配列(プロモーター、エンハンサーなど)と配列相同性を有するリボヌクレオチド配列を含む第1の核酸鎖と、第1の鎖と相補的なヌクレオチド配列を含む第2の核酸鎖から構成される二本鎖核酸分子であってもよい。saRNAはまた、分子内の2つの相補的領域によってヘアピン構造を形成することができ、合成されたまたはベクター発現された一本鎖RNA分子から構成され得る;ただし、第1の領域は、遺伝子のプロモーターの標的配列と配列相同性を有するリボヌクレオチド配列を含み、かつ、第2の領域に含まれるリボヌクレオチド配列は第1の領域と相補的である。saRNA分子の二重鎖領域の長さは、通常に約10~約50、約12~約48、約14~約46、約16~約44、約18~約42、約20~約40、約22~約38、約24~約36、約26~約34と約28~約32個塩基対であり、且つ通常に、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45または約50個塩基対である。また、用語「小さな活性化RNA」、「saRNA」と「小さな活性化リボ核酸」は、リボヌクレオチド以外の核酸も含み、これには修飾ヌクレオチドまたは類似体が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書に使用されるように、用語「合成」は、化学合成、インビトロ転写、ベクター発現など、RNAを合成または化学修飾できる任意の手段を含む、オリゴヌクレオチドが合成される方法を指す。
【0058】
<saRNAとmRNA調節剤の組み合わせの組成物>
本開示のある実施の形態は、組成物を提供し、当該組成物は、(a)SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する一つまたは複数の試薬、と(b)機能的SMN2 mRNAの産生を増加する一つまたは複数のSMN2 mRNAスプライシングまたは安定性調節剤を含む。
【0059】
患者へのこの組み合わせの投与は、SMN不全に関連する疾患(例えば脊髄性筋萎縮症)を治療する、またはその発症を遅延する。ある実施の形態において、上記の組み合わせは、例えばSMN2の転写を活性化/アップレギュレートしつつ、エクソン7の包含のためのスプライシングを調節することで、全長SMN2 mRNAの量を増加し、そして全長SMNタンパク質の量を増加する。ある実施の形態において、全長SMN タンパク質は、SMN不全に関連する疾患に関連する症状を軽減するのに十分な量まで増加する。ある実施の形態において、全長SMNタンパク質は、少なくとも10%増加する。
【0060】
<SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する試薬>
ある実施の形態において、SMN2遺伝子またはタンパク質の発現を増加する一つまたは複数の試薬の少なくとも一つは、saRNAである。SMN2 saRNAは、SMN2遺伝子が正常に発現される細胞において、SMN2遺伝子の発現を活性化またはアップレギュレートする。
【0061】
典型的な実施の形態において、SMN2 saRNAの第1の鎖は、SMN2遺伝子プロモーター領域の16-35個ヌクレオチドフラグメントに対して少なくとも75%の配列同一性または配列相補性を有するセグメントを含むことで、遺伝子の発現を活性化またはアップレギュレートすることを達成する。
【0062】
具体的に、SMN2 saRNAの第1の鎖は、SMN2遺伝子プロモーターの-1639から-1481までの領域(SEQ ID NO:472)、SMN2遺伝子プロモーターの-1090から-1008までの領域(SEQ ID NO:473)、SMN2遺伝子プロモーターの-994から-180までの領域(SEQ ID NO:474)またはSMN2遺伝子プロモーターの-144から-37までの領域(SEQ ID NO:475)と同一または相補性を有し、且つ少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%または約99%の同一または相補性を有する。より具体的に、SMN2 saRNAの1つの鎖は、SEQ ID NO:315-471から選択される任意のヌクレオチド配列と少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、または約99%の同一性または相補性を有する。
【0063】
本開示において、SMN2 saRNAは、センス核酸フラグメントおよびアンチセンス核酸フラグメントを含む。センス核酸フラグメントとアンチセンス核酸フラグメントは、RNA活性化メカニズムによって細胞内でSMN2遺伝子の発現を促進する二本鎖核酸構造を形成することができる相補的領域を含む。saRNAのセンス核酸フラグメントとアンチセンス核酸フラグメントは、2つの異なる核酸鎖上に存在してもよく、または同じ核酸鎖上に存在してもよい。センスとアンチセンス核酸フラグメントが、2つの鎖上に存在する場合、saRNAの少なくとも1つの鎖は、長さ0~6個ヌクレオチドの3’オーバーハングを有し、好ましくは、両方の鎖が長さ2または3個ヌクレオチドの3’オーバーハングを有し、かつ好ましくは、オーバーハングのヌクレオチドはデオキシチミン(dT)である。saRNAのセンス核酸フラグメントとアンチセンス核酸フラグメントは、同じ核酸鎖上に存在する場合、好ましくは、saRNAは一本鎖ヘアピン構造の核酸分子であり、ただし、センス核酸フラグメントとアンチセンス核酸フラグメントの相補的領域は、二本鎖核酸構造を形成する。このようなsaRNAには、センス核酸フラグメントとアンチセンス核酸フラグメントの長さは、16-35個ヌクレオチドであり、且つ、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35個ヌクレオチドであっても良い。
【0064】
一つの実施の形態において、本開示のSMN2 saRNAのセンス鎖は、SEQ ID NO:1-157から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%の同一性、または、約99%の同一性を有し、且つそのアンチセンス鎖は、SEQ ID NO:158-314から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも75%または約99%の同一性を有する。具体的に、本開示のSMN2 saRNAのセンス鎖は、SEQ ID NO:1-157から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列を含み、またはSEQ ID NO:1-157から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列からなり、またはSEQ ID NO:1-157から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列である;本開示のSMN2 saRNAのアンチセンス鎖は、SEQ ID NO:158-314から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列を含み、またはSEQ ID NO:158-314から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列からなり、またはSEQ ID NO:158-314から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列である。
【0065】
本開示のある実施の形態において、SMN2 saRNAは、センス核酸鎖とアンチセンス核酸鎖を含み、上記のセンス核酸鎖は、アンチセンス核酸の少なくとも一つの領域と相補する少なくとも一つの領域を含むことで、細胞内でSMN2遺伝子の発現を活性化できる二本鎖核酸構造を形成する。
【0066】
本開示のある実施の形態において、センス核酸鎖とアンチセンス核酸鎖は、二つの異なる核酸鎖にある。
【0067】
本開示のある実施の形態において、センス核酸フラグメントとアンチセンス核酸フラグメントは、同一な核酸鎖に位置し、ヘアピン一本鎖核酸分子を形成し、ただし、アンチセンス核酸フラグメントとセンス核酸の相補領域フラグメントが、二本鎖核酸構造を形成する。
【0068】
本開示のある実施の形態において、少なくとも一本の核酸鎖は、長さ0~6個ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する。
【0069】
本開示のある実施の形態において、二本の核酸鎖の両方は、長さ2-3個ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する。
【0070】
本開示のある実施の形態において、センスとアンチセンス核酸鎖の長さは、それぞれに、16~35個ヌクレオチドである。
【0071】
本明細書に記載のSMN2 saRNAのすべてのヌクレオチドは、天然の、すなわち、化学的に修飾されていないヌクレオチドであってもよく、または少なくとも1つのヌクレオチドが化学的に修飾されたヌクレオチドであってもよく、化学修飾は、以下の修飾の1つまたは組み合わせである:
(1)SMN2 saRNAのヌクレオチド配列におけるヌクレオチドのホスホジエステル結合に対する修飾;
(2)SMN2 saRNAのヌクレオチド配列におけるリボースの2’-OHの修飾;
(3)SMN2 saRNA のヌクレオチド配列の塩基に対する修飾。
【0072】
本開示のヌクレオチドまたはsaRNAの化学修飾は、当業者に周知であり、ホスホジエステル結合の修飾は、ホスホロチオエート修飾およびボロン化ホスフェート修飾を含む、ホスホジエステル結合における酸素の修飾を指す。どちらの修飾もSMN2 saRNA構造を安定化させ、塩基対に対する高い特異性と高い親和性を維持する。
【0073】
リボース修飾とは、ヌクレオチド ペントースの2’-OHの修飾、すなわち、リボースのヒドロキシル位置への特定の置換基の導入を指し、例えば、2’-フルオロ修飾、2’-オキソメチル修飾、2’-オキシエチレンメトキシ修飾、2,4’-ジニトロフェノール修飾、ロックド核酸(LNA)、2’-アミノ修飾、2’-デオキシ修飾。
【0074】
塩基修飾とは、ヌクレオチドの塩基の修飾、例えば、5’-ブロモウラシル修飾、5’-ヨードウラシル修飾、N-メチルウラシル修飾、2,6-ジアミノプリン修飾を意味する。
【0075】
これらの修飾は、SMN2SMN2 saRNAのバイオアベイラビリティを高め、標的配列に対する親和性を高め、細胞内のヌクレアーゼ加水分解に対する耐性を高める可能性がある。
【0076】
さらに、SMN2 saRNAの細胞への侵入を容易にするために、核膜および核内の脂質二重層および遺伝子プロモーター領域から構成される細胞膜を介した作用を促進するように、上記の修飾に基づいて、SMN2 saRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の末端にコレステロールなどの親油性基を導入することができる。
【0077】
本開示のSMN2 saRNAは、細胞と接触すると、細胞内のSMN2遺伝子の発現を好ましくは少なくとも10%で有効的に活性化またはアップレギュレートする。
【0078】
本開示の一態様は、本開示のSMN2 saRNAまたは本開示のSMN2 saRNAをコードする核酸を含む細胞を提供する。一つの実施の形態において、細胞は哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。そのような細胞は、細胞株または細胞株などのエクスビボであってもよいし、乳児、子供または成人を含むヒトなどの哺乳動物の体に存在していてもよい。
【0079】
本開示のもう一つの態様は、薬物組成物を提供し、それが、上記のSMN2 saRNAまたは本発明の関わるSMN2 saRNAをコードする核酸、SMN2 mRNA調節剤と、一つまたは複数の薬学的に許容されるキャリアを含む。一つの実施の形態において、薬学的に許容されるキャリアは、水性キャリア、リポソーム、高分子ポリマー、およびポリペプチドのうちの1つまたは複数を含む。一つの実施の形態において、薬学的に許容されるキャリアは、水性キャリア、リポソーム、高分子ポリマー、およびポリペプチドのうちの1つまたは複数を含む。一つの実施の形態において、水性キャリアは、例えばRNaseフリーの水、またはRNaseフリーのバッファーである。当該組成物は、1-150nM、例えば1-100nM、例えば1-50nM、例えば1-20nM、例えば10-100nM、10-50nM、20-50nM、20-100nM、例えば50nMの前記のSMN2 saRNAまたは本発明に関わるSMN2 saRNAをコードする核酸を含んでもよい。
【0080】
本開示のもう一つの態様は、SMN2 mRNA調節剤と組み合わせた、本明細書に記載のSMN2 saRNA、本明細書に記載のSMN2 saRNAをコードする核酸、またはこんなSMN2 saRNAまたは本明細書に記載のSMN2 saRNAをコードする核酸を含む組成物が、細胞に発現された全長SMNタンパク質の量を増加する一つまたは複数の組成物の調製における使用を提供する。
【0081】
もう一つの態様において、本発明は、分離されたSMN2遺伝子 saRNA標的サイトを提供し、それが、SMN2遺伝子プロモーター領域に、任意の連続する16-35個ヌクレオチド配列、好ましくは、SEQ ID NO:472-475から選ばれるいずれか一つの配列に任意の連続する16-35個ヌクレオチド配列を有する。特に、作用サイトは、SEQ ID NO:315-471のいずれかのヌクレオチド配列に示された配列を含み、またはSEQ ID NO:315-471のいずれかのヌクレオチド配列から選ばれる。
【0082】
もう一つの実施の形態は、本発明の化合物と治療性不活性キャリア、希釈剤または薬学的に許容される賦形剤を含む薬物組成物または薬物、および本発明の化合物を使用することでこんな組成物と薬物を調製する方法を提供する。ある実施の形態において、本発明のSMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤は、分けた薬物組成物にある。他の実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤は、同一な薬物組成物にある。
【0083】
本開示の組成物は、良好な医療行為に合致するように処方され、投薬され、投与される。これに関連して考慮すべき要因は、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、患者の個体的な臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医療従事者に知られているその他の要因を含む。
【0084】
本明細書に記載の小分子化合物のいずれか、例えば、リスジプラムまたはブラナプラムを含む組成物は、SMN2 saRNA組成物とは別に、経口、局所(頬および舌下を含む)、直腸、膣、経皮、非経口、皮下、腹腔内、肺内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外および鼻腔内、ならびに局所治療が望まれる場合には病巣内投与を含む任意の適切な手段によって投与することができる。SMN2 saRNA組成物の場合、送達は、髄腔内、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む非経口注入によるものであっても良い。一部の実施の形態において、本開示の組成物の投与は、任意的に、非経口注入(髄腔内、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、膀胱内、脳室内、硝子体内または皮下投与を含む)、または経口投与、鼻腔内投与、吸入投与、膣投与、または直腸投与によって行って良い。
【0085】
本明細書に記載の小分子化合物、例えば、リスジプラムとブラナプラムは、例えば、錠剤、粉末、カプセル、溶液、分散液、懸濁液、シロップ、スプレー、坐剤、ゲル、エマルジョン、パッチなどの任意の便利な投与形態で投与することができる。そのような組成物は、医薬製剤において慣用的な成分、例えば、希釈剤、キャリア、pH調整剤、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香味料、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、マスキング剤、酸化防止剤、およびさらなる活性剤を含んでもよい。こんな組成物はまた、さらに他の治療上価値のある物質を含むことができる。
【0086】
典型的な製剤は、本発明の化合物とキャリアまたは賦形剤とを混合することによって調製される。適切なキャリアおよび賦形剤は、当業者に周知であり、Ansel H.C.ら,《Anselの医薬品剤形および薬物送達システム》(Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)(2004)Lippincott,Williams&Wilkins,Philadelphia;Gennaro A.R.ら,《レミントン:薬学の科学と実践》(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)(2000)Lippincott,Williams&Wilkins,Philadelphia;およびRowe R.C,《医薬品添加剤のハンドブック》(Handbook of Pharmaceutical Excipients)(2005)Pharmaceutical Press,Chicagoに詳細に記載されている。製剤は、また、薬物(すなわち、本発明の化合物またはその薬物組成物)の洗練された提示を提供するため、または薬物製品(すなわち薬物)の調製を補助するために、1つまたは複数の緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、懸濁剤、防腐剤、酸化防止剤、不透明剤、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味料、香料、香料、希釈剤および他の既知の添加剤を含んでもよい。
【0087】
もう一つの態様において、本発明は、本明細書に記載のいずれか一つの実施の形態の組み合わせ、または本明細書に記載のいずれか一つの実施の形態の組成物が、個体におけるSMN不全に関連する疾患を治療する薬物の調製における使用を提供する。ある実施の形態の使用によって、SMN不全に関連する疾患は、遺伝性神経筋疾患、好ましくは脊髄性筋萎縮症を含む。さらに、ある実施の形態の使用を提供し、ただし、個体は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0088】
<SMN2 mRNA調節剤>
本明細書に使用されるように、用語「SMN2 mRNA調節剤」とは、機能的SMN2 mRNAと機能的SMNタンパク質の産生を増加させる、SMN2 mRNAスプライシングまたは安定性の調節剤を指す。用語「SMN2 mRNA調節剤」は、例えば、SMN2遺伝子のイントロン7のイントロン抑制スプライシング領域の効果を遮断することにより、機能的全長SMNタンパク質を作成するために必要なすべての情報が含まれるように、SMN2 pre-mRNAのスプライシング方式を変える試薬を含む。SMN2 mRNA調節剤は、スプライソソームとSMN2 pre-mRNAの間の相互作用を安定化することによって所望のスプライシングおよびその後のタンパク質産生を増加させる試薬(J Med Chem,2018年12月27日;61(24):11021-11036)と、SMN2 pre-mRNAとU1小型核内リボ核タンパク質(snRNP)複合体によって形成される一過性二本鎖RNA構造の安定化を促進する試薬(Nat Chem Biol,2015 Jul;11(7):511-7)を含む。ある例には、SMN2 mRNA調節剤は、SMN2 pre-mRNA のスプライシングを調節し、処理された転写産物にエクソン7を含ませる。また、本開示のSMN2 mRNA調節剤は、スプライシング過程においてエキソン7が成熟SMN mRNAからスプライシングされるのを防止することによって、機能的SMNタンパク質レベルを増加させる能力を有する試薬を含む。本開示によるSMN2 mRNA調節剤は、また、米国特許第10,436,802号および米国特許第10,420,753号に記載されているものも含み、これらの全体はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
本開示によるSMN2 mRNA調節剤の例は、ピリダジン誘導体、例えばWO2014028459A1に記載されているものが含まれ、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。SMN2 mRNA調節剤の具体的な例は、ブラナプラム(LMI070ともいう)とリスジプラム(RG7916またはRO7034067ともいう)を含む。
【0090】
【0091】
本開示によるSMN2 mRNA調節剤の他の例は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含み、例えばSMN2遺伝子中のイントロン配列をアンチセンス標的、置換および/または破壊することができ、スプライシング過程においてSMN2全長(SMN2FL)転写物(エクソン7を含む転写物)の産生を増強するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。ある実施の形態において、ヌシネルセン(Spinraza(登録商標)として販売される)は、開示された組み合わせに従って使用するのに適している。
【0092】
<SMAに関連する疾患を治療する方法>
本発明のもう一つの態様は、個体のSMN不全に関連する疾患を治療するまたはその発症を遅延する方法に関し、当該方法は、個体へ治療有効量の本明細書に記載のSMN2 saRNA、本明細書に記載のSMN2 saRNAをコードする核酸、または本発明のSMN2 saRNAまたは本明細書に記載のSMN2 saRNAをコードする核酸を含む組成物を投与することを含む。対象は、ヒトなどの哺乳動物であってもよい。対象は、幼児、子供、または成人であってもよい。一つの実施の形態において、不十分なSMN全長タンパク質発現またはSMN1遺伝子変異によって引き起こされる疾患は、例えば、SMAを含んでも良い。一つの実施の形態において、不十分なSMN全長タンパク質発現またはSMN1遺伝子変異によって引き起こされる疾患は、SMAである。一つの実施の形態において、本発明のSMAは、I型SMA、II型SMA、III型SMAとIV型SMA含む。
【0093】
本発明の別の態様は、SMN不全に関連する疾患を治療するまたはその発症を遅延するための薬物の調製における、本開示のSMN2 mRNA調節剤と組み合わせた、本開示のSMN2 saRNA、本開示のSMN2 saRNAをコードする核酸、または本開示のSMN2 saRNAまたは本開示のSMN2 saRNAをコードする核酸を含む組成物の使用に関する。対象は、ヒトなどの哺乳動物であってもよい。対象は、幼児、子供、または大人であってもよい。一つの実施の形態において、SMN不全に関連する疾患は、例えばSMAを含む。一つの実施の形態において、本発明のSMAは、I型SMA、II型SMA、III型SMAとIV型SMA含む。
【0094】
細胞中の全長SMNタンパク質の量を増加する製剤の調製における、本明細書に記載のSMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤のいずれか一つの組み合わせ、または本明細書に記載のSMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤いずれか一つの組み合わせの組成物の使用も提供する。ある実施の形態において、細胞は哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。ある実施の形態において、細胞はヒトに存在する。ある実施の形態において、ヒトは、SMN不全に関連する疾患に引かれる症状を有する患者である。ある実施の形態において、組み合わせまたはその組成物は、SMN不全に関連する疾患を効果的に治療する量で投与される。ある実施の形態において、SMN不全に関連する疾患に引かれる症状は、遺伝性神経筋疾患、好ましくは脊髄性筋萎縮症に関連するものである。
【0095】
ある実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤の組み合わせは、全長SMNタンパク質の増加を達成し、それは、毒性または望ましくない副作用が減少した状態で、個別に使用されるいずれかの物質の同量の投与によって達成される量よりも多い。ある実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤の組み合わせは、全長SMNタンパク質の増加を達成し、それは、個別に使用されるいずれかの物質の同量による治療の相加効果よりも大きい。ある実施の形態において、本明細書に記載の組み合わせの実施の形態に使用される場合、SMN2 saRNAまたはSMN2 mRNA調節剤は、従来の治療で使用される量よりも少ない量で投与される。
【0096】
ある実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤の組み合わせの効果は、同量のいずれかの物質を個別に使用した場合の効果と比較して、より大きな臨床的改善を達成した。ある実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤の組み合わせの効果は、同量のいずれかの物質を個別に使用した場合の効果と比較して、相加的な臨床的改善よりも大きな効果を達成した。
【0097】
本開示は、さらに細胞中の全長SMNタンパク質の量を増加する方法に関し、細胞へ、1)SMN2 mRNA調節剤と2)本明細書に記載のSMN2 saRNA、本明細書に記載のSMN2 saRNAをコードする核酸、または本明細書に記載のSMN2 saRNAまたはSMN2 saRNAをコードする核酸を含む組成物の少なくとも一つを組み合わせて投与することを含む。
【0098】
本明細書に提供される任意の実施の形態において、こんなSMN2 saRNA、本開示のSMN2 saRNAをコードする核酸、またはこんなSMN2 saRNAまたは本開示のSMN2 saRNAをコードする核酸を含む組成物を、直接に細胞に導入しても良く、またはSMN2 saRNAをコードするヌクレオチド配列を細胞に導入した後に細胞内でそれらを産生しても良く、上記細胞は、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくはヒト細胞である。そのような細胞は、細胞株などのエクスビボであってもよいし、ヒトなどの哺乳動物の体内に存在していてもよい。一部の実施の形態において、ヒトは、SMN不全に関連する疾患を有する患者または個体である。ある実施の形態において、本発明のSMN2 saRNAをコードする核酸、または上記のsaRNAまたはSMN2 saRNAをコードする核酸を含む組成物は、少なくとも一つのSMN2 mRNA調節剤を含む組成物と、単独にもSMN不全に関連する疾患の治療に影響することに十分な量で組み合わせて投与される。一つの実施の形態において、SMN不全に関連する疾患は、SMAである。一つの実施の形態において、本開示のSMAは、I型SMA、II型SMA、III型SMAとIV型SMA含む。
【0099】
ある実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤の組み合わせは、全長SMNタンパク質の増加を達成し、それは、個別に使用されるいずれかの物質の同量の投与によって達成される量よりも多い。ある実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤の組み合わせは、単剤療法による治療と比較して、毒性が軽減され、および/または望ましくない副作用が軽減される。ある実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤の組み合わせは、全長SMNタンパク質の増加を達成し、それは、個別に使用されるいずれかの物質の同量による治療の相加効果よりも大きい。ある実施の形態において、SMN2 saRNAまたはSMN2 mRNA調節剤のいずれか、または両方が、従来の単剤療法治療に使用される量よりも少ない量で投与される。
【0100】
ある実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤の組み合わせは、同量のいずれかの物質を個別に使用した場合の効果と比較して、より大きな臨床的改善を達成する。ある実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤の組み合わせは、同量のいずれかの物質を個別に使用した場合の効果と比較して、より大きな追加的な臨床的改善を達成する。
【0101】
ある実施の形態において、ベースライン測定値は、本明細書に記載の治療を施す前に個体から得られた、本明細書に定義されている生物サンプルから得られる。ある実施の形態において、生物サンプルは、末梢血単核細胞、血漿、血清、皮膚組織、脳脊髄液(CSF)である。ある実施の形態において、末梢血単核細胞と皮膚のSMNタンパク質レベルの増加は、中枢神経系(CNS)のニューロンのレベルの増加と相関しており、血中または皮膚中のこれらのレベルの変化は、CNSのSMNタンパク質レベルの変化を確定するための非侵襲的な代用として使用できることを示している。他の実施の形態において、ベースライン測定値と比較して、本明細書に提供される組み合わせは、全長SMNタンパク質の量を、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも155%、少なくとも160%、少なくとも165%、少なくとも170%、少なくとも175%、少なくとも180%、少なくとも185%、少なくとも190%、少なくとも195%、少なくとも200%、少なくとも210%、少なくとも215%、少なくとも220%、少なくとも225%、少なくとも230%、少なくとも235%、少なくとも240%、少なくとも245%、少なくとも250%、少なくとも255%、少なくとも260%、少なくとも265%、少なくとも270%、少なくとも275%、少なくとも280%、少なくとも285%、少なくとも290%、少なくとも295%、少なくとも300%、少なくとも310%、少なくとも315%、少なくとも320%、少なくとも325%、少なくとも330%、少なくとも335%、少なくとも340%、少なくとも345%、少なくとも350%、少なくとも355%、少なくとも360%、少なくとも365%、少なくとも370%、少なくとも375%、少なくとも380%、少なくとも385%、少なくとも390%、少なくとも395%、少なくとも400%増加させる。
【0102】
本開示の文脈において、一つまたは複数のSMN2 saRNAと一つまたは複数のSMN2 mRNA調節剤の「組み合わせ投与」は、同時(すなわち、15分以内、30分以内、または1時間以内)、ほぼ同時(すなわち、2時間以内、4時間以内、6時間以内、8時間以内、10時間以内、または12時間以内、24時間以内)、或いは数日または数週間、例えば最大4週間または5週間遅延することができる。
【0103】
本開示の文脈において、一つまたは複数のSMN2 saRNAを含む組成物と、一つまたは複数のSMN2 mRNA調節剤を含む組成物の「組み合わせ投与」は、同時または相同時間に(すなわち、15分以内、30分以内、1時間以内)、ほぼ同時またはほぼ相同時間に(すなわち、2時間以内、4時間以内、6時間以内、8時間以内、10時間以内、12時間以内、24時間以内)、または数日または数週間、例えば最大4週間または5週間遅れて投与することができる。
【0104】
本開示の組成物を投与することができる投与量は、広い範囲内で変えることができ、もちろん、それぞれの場合の個々の要件に適合する。
【0105】
特定な実施の形態において、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤の組み合わせは、SMN1遺伝子の不活化突然変異または欠失によって引き起こされる、および/またはSMN1遺伝子機能の喪失または欠陥に関連する疾患の治療、予防、進行の遅延および/または改善において、相加効果よりも大きい効果または相乗効果を示し、さらに疾患の病態生理学に関与する細胞の保護、特に脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療、予防、進行の遅延および/または改善を示す。
【0106】
ある実施の形態において、本開示による医薬組成物の初回用量は、対象が生後1週間未満、生後1ヶ月未満、生後3ヶ月未満、生後6ヶ月未満、1歳未満、2歳未満、15歳未満、または15歳以上のときに投与される。
【0107】
ある実施の形態において、SMN2 saRNAを含む少なくとも一つの薬物組成物と、SMN2 mRNA調節剤を含む少なくとも一つの薬物組成物は、同時に、ほぼ同時にまたは異なる時間に組み合わせて投与される。ある実施の形態において、SMN2 mRNA調節剤を含む薬物組成物と、SMN2 saRNAを含む薬物組成物は、互いに1時間以内、互いに2時間以内、互いに3時間以内、互いに4時間以内、互いに5時間以内、互いに6時間以内、互いに7時間以内、互いに7時間以内、互いに8時間以内、互いに9時間以内、互いに10時間以内、互いに11時間以内、互いに12時間以内、互いに1日以内、互いに2日以内、互いに3日以内、互いに4日以内、互いに5日以内、互いに6日以内、互いに1週間以内、互いに2週間以内、互いに3週間以内、互いに4週間以内、または互いに5週間以内に同時投与される。単回用量はSMN2 saRNAのものであっても良く、かつ、単回0.1~15ミリグラム用量、単回1ミリグラム用量、単回2ミリグラム用量、単回3ミリグラム用量、単回4ミリグラム用量、単回5ミリグラム用量、単回6ミリグラム用量、single7ミリグラム用量、単回8ミリグラム用量、単回9ミリグラム用量、単回10ミリグラム用量、単回11ミリグラム用量、単回12ミリグラム用量、単回13ミリグラム用量、単回14ミリグラム用量、または単回15ミリグラム用量であってもよい。単回用量はSMN2 saRNA調節剤のものであっても良く、かつ、単回0.1~15ミリグラム用量、単回1ミリグラム用量、単回2ミリグラム用量、単回3ミリグラム用量、単回4ミリグラム用量、単回5ミリグラム用量、単回6ミリグラム用量、single7ミリグラム用量、単回8ミリグラム用量、単回9ミリグラム用量、単回10ミリグラム用量、単回11ミリグラム用量、単回12ミリグラム用量、単回13ミリグラム用量、単回14ミリグラム用量、または単回15ミリグラム用量であってもよい。
【0108】
ある実施の形態において、単回4.8ミリグラム用量のSMN2 mRNA調節剤は、ASOであり、かつ腰椎穿刺による髄腔内注射として投与される。ある実施の形態において、SMN2 mRNA調節剤は、ヌシネルセンである。ある実施の形態において、単回5.16ミリグラム用量、単回5.40ミリグラム用量、単回7.2ミリグラム用量、単回7.74ミリグラム用量、単回8.10ミリグラム用量、単回9.6ミリグラム用量、単回10.32ミリグラム用量、単回10.80ミリグラム用量、単回11.30ミリグラム用量、単回12ミリグラム用量、単回12.88ミリグラム用量、単回13.5ミリグラム用量、単回14.13ミリグラム用量、単回10ミリグラム用量、単回11ミリグラム用量、単回12ミリグラム用量、単回13ミリグラム用量、単回14ミリグラム用量、単回15ミリグラム用量、単回16ミリグラム用量、単回17ミリグラム用量、単回18ミリグラム用量、単回19ミリグラム用量または単回20ミリグラム用量であっても良い。
【0109】
ある実施の形態において、SMN2 saRNAおよび/またはSMN2 mRNAの用量が腰椎穿刺による髄腔内注射として投与される場合、より小さなゲージの針を使用し、腰椎穿刺に関連する一つまたは複数の症状を軽減または改善できる。ある実施の形態において、腰椎穿刺に関連する症状は、腰椎穿刺後症候群、頭痛、背中の痛み、発熱、便秘、吐き気、嘔吐、および穿刺部位の痛みを含むが、これらに限定されない。ある実施の形態において、腰椎穿刺に24または25ゲージの針を使用すると、一つまたは複数の腰椎穿刺後の症状が軽減または改善される。ある実施の形態において、腰椎穿刺に21、22、23、24または25ゲージの針を使用すると、腰椎穿刺後症候群、頭痛、背中の痛み、発熱、便秘、吐き気、嘔吐、および/または穿刺部位の痛みが軽減または改善される。
【0110】
提案された投与頻度は概算であり、例えば、ある実施の形態において、提案された投与頻度が1日目の投与と29日目の2回目の投与である場合、SMA患者は、最初の投与を受けてから25、26、27、28、29、30、31、32、33、または34日後に2回目の投与を受けることができる。ある実施の形態において、提案された投与頻度が1日目の投与と15日目の2回目の投与である場合、SMA患者は、最初の投与を受けてから10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日後に2回目の投与を受けることができる。ある実施の形態において、提案された投与頻度が1日目の投与と85日目の2回目の投与である場合、SMA患者は、最初の投与を受けてから80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、または90日後に2回目の投与を受けることができる。
【0111】
ある実施の形態において、注射の用量および/または量は、患者の年齢、患者のCSF量、または患者の年齢および/または推定CSF量に基づいて調整される。(例えば、Matsuzawa J,Matsui M,Konishi T,Noguchi K,Gur R C,Bilker W,Miyawaki T.健康な乳児および小児における脳の灰白質および白質の加齢に伴う体積変化(Age-related volumetric changes of brain gray and white matter in healthy infants and children).Cereb Cortex 2001年4月;11(4):335-342を参照、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【実施例】
【0112】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。これらの実施例は、単に説明の目的で提供されており、本発明の範囲または内容を決して限定するものと解釈されるべきではない。
【0113】
<実施例1:GM03813細胞における全長およびエクソン7スキップ SMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0004)、ASO(ヌシネルセン)、およびリスジプラムの効果>
細胞処理に使用するsaRNA(DS06-0004)、ヌシネルセン(ASO-10-27)およびリスジプラムの最適濃度を確定するために、saRNAおよびASOを異なる濃度でGM03813細胞に個別にトランスフェクトした。リスジプラムをDMSOに溶解し、異なる濃度で培養GM03813細胞に添加した。
【0114】
「GM03813細胞」とは、Coriell Institute for Medical Researchから提供された線維芽細胞を指す。この細胞株は、脊髄性筋萎縮症、II型;運動ニューロン1にはSMA2生存、テロメリック;SMN1と記載される。関連する遺伝子はSMN1である;染色体の位置は5q12.2-q13.3であり、対立遺伝子バリアントは1つのエクソン7および8が欠失した、脊髄性筋萎縮症、タイプIと記載される;特定された変異は、EX7-8DELである。以下の対象の皮膚(腕)の線維芽細胞から得られた表現型データは、次のように特徴付けられる:臨床的に影響を受ける;満期の合併症のない妊娠後に生まれた;生後6ヶ月で寝返った;生後9ヶ月で話すことを学び始めた;生後12か月までに、顕著な筋萎縮と筋力低下が見られた;深部腱反射の欠如;便秘;ドナー対象はSMN2遺伝子のコピーを3つ持っている;PCR分析は、このドナー対象がSMN1遺伝子のエクソン7と8の欠失についてホモ接合体であることを示した;同様に影響を受けた兄弟(リポジトリにはない);母親はGM03814(線維芽細胞)/GM24474(iPSC)である;父親はGM03815(線維芽細胞)である;GM23240(iPSC-レンチウイルス)およびGM24468(iPSC-エピソーム)を参照する;以前はSMA Iに分類されたが、発端者の発症特徴やSMN2投与量などのデータにより、SMA IIへの再分類が支持された。
【0115】
72時間後、全細胞RNAを処理細胞から単離し、cDNAに逆転写した。SMN2 mRNA発現は、SMN2FLまたはSMN2Δ7に特異的なプライマーペアを使用したRT-qPCRで評価された。SMN2 mRNA発現は、SMN2FLとSMN2Δ7の両方を増幅するプライマーペアを使用した半定量的RT-PCRとそれに続くDdeI消化(PCR/消化)によっても評価された。PCRの結果、507bp(SMN2FL)と453bp(SMN2Δ7)の2つの産物バンドが得られた。消化後、両方のバンドが115bp減少し、
図3Dのゲルに示されるように、392bp(SMN2FL)および338bp(SMN2Δ7)の2つの産物が得られた。
図3A~3Dは、それぞれRT-qPCRおよびPCR/消化によって評価された、SMN2FLおよびSMNΔ7 mRNAにおける用量依存的変化を示す。
図3E~3Gは、
図3Dのバンドの強度を定量化したデータのグラフプロットである。
【0116】
図3Aに示すように、1nMでのASO-10-27処理は、SMN2FLを1.5倍増加させ、5nMで2.0倍のピーク増加を引き起こし、同時にSMN2Δ7を減少させたが、より高い用量では、SMN2FLのさらなる誘導またはSMN2Δ7のさらなる減少は引き起こされなかった。同様に、PCR/消化分析は、細胞が10nMのASOで処理されたときにSMN2FLの発現がそのピークに達し、SMNΔ7の発現が5nMでほぼ最低値に近づいたことを示している(
図3E)。100nMおよび1000nMでのリスジプラム処理は、SMN2FLのmRNAレベルを1.2倍および1.8倍増加させ、SMN2Δ7をそれぞれ36%および98%減少させた(
図3Cおよび3G)。ASO-10-27やリスジプラムなどのSMN2 mRNA調節剤は、SMN2スプライシングを調節してより多くのエクソン7を含めることでSMN2FL mRNAを増加させるため、それらが誘導できるSMN2FLの最大量は、SMN2 mRNA調節剤によって変更されないSMN2 pre-mRNAの利用可能な量に依存する。この見解と一致して、データは、ASO-10-27およびリスジプラムによるスプライシング調節剤によるSMN2FLの増加(最大2倍の増加)に対する上限効果を示している。
【0117】
対照的に、saRNA(DS06-0004)は、SMN2FLとSMN2Δ7の両方の発現をSMN2 mRNAモジュレーターよりも高いレベルに誘導し、かつ1nMから50nMの範囲の濃度で用量依存的に変化し、最大の倍率変化はそれぞれ2.9倍および2.7倍であった。100nMのDS06-0004は、SMN2 mRNA発現をさらに増加させなかった(
図3Bおよび3F)。PCR/消化分析によって一貫した結果が得られた(
図3Dおよび
図3F)。
【0118】
SMN2Δ7レベルを変換(減少)することによってSMN2FLのレベルを増加させたSMN2 mRNAモジュレーター(ASO-10-27およびRisdiplam)とは異なり、本開示のSMN2 saRNAは、SMN2転写に作用することによってSMN2 mRNAレベルを増加させ、その結果、SMN2FLおよびSMN2Δ7の両方が同時に増加する。
図3に示されたデータは、SMN2 mRNA調節剤とSMN2 saRNAとの間の機構上の相違を明確に示している。
【0119】
<実施例2:GM00232細胞における全長およびエクソン7スキップSMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0004)とASO-10-27の組み合わせ効果>
saRNA(DS06-0004)とASO-10-27の組み合わせが、I型SMA 細胞のSMN2FL誘導に及ぼす効果を高めるかどうかを確定するには、GM00232細胞に、DS06-0004とASO-10-27を単独でまたは組み合わせて、異なる濃度で72時間トランスフェクトした。SMN2発現は、RT-qPCR(
図4Aおよび4D)およびPCR/消化(
図4B、4Cおよび4E)によって処理細胞において評価された。
【0120】
「GM00232細胞」とは、Coriell Institute for Medical Researchから提供された線維芽細胞を指す。この細胞株は、脊髄性筋萎縮症I;SMA1として記載される。ドナー対象は、SMN2遺伝子のコピーを2つ持ち(Stableyら2015、PMID26247043を含むいくつかの情報源からのデータ)、SMN1遺伝子のエクソン7および8の欠失についてホモ接合性である。関連する遺伝子はSMN1である;染色体位置は5q12.2-q13.3であり、対立遺伝子バリアントはエクソン7および8の欠失として記載される;脊髄性筋萎縮症、I型;特定された変異は、EX7-8DELである。以下の対象の皮膚(腕)の線維芽細胞から得られた表現型データは、次のように特徴付けられる:進行性筋萎縮;深部腱反射の欠如;異常なEMG;ドナー対象はSMN2遺伝子のコピーを2つ持ち(Stableyら2015、PMID26247043を含むいくつかの情報源からのデータ)、SMN1 遺伝子のエクソン7および8の欠失についてホモ接合性である。
【0121】
図4Aに示されるように、1nM、5nMおよび25nMのASO-10-27は、SMN2Δ7の減少と同時に、SMN2FLのそれぞれ1.3、1.8および1.9倍の増加を引き起こした。1nM、5nM、および25nMのDS06-0004は、SMN2FLをそれぞれ1.7、2.4、および2.4倍増加させ、SMN2Δ7をそれぞれ1.5、1.9、および2.1倍増加させた。
【0122】
細胞トランスフェクションで1nMのASO-10-27を漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)と組み合わせると、SMN2FLはそれぞれ2.2、2.6、2.9倍誘導され、SMN2Δ7はそれぞれ1.1、0.7、0.4倍変化した。さらに、細胞を5nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ2.8、3.4、3.7倍誘導され、SMN2Δ7はそれぞれ0.09、0.05、0.04倍変化した。さらに、細胞を25nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ3.1、4.0、4.0倍誘導され、SMN2Δ7の発現が完全に排除された。SMN2FLを1.9倍誘導した25nM ASO-10-27単独治療と比較して、ASO-10-27とDS06-0004の組み合わせ治療は、SMN2FLを4倍増加させ、単独で使用した場合のASO-10-27の効果を2倍にした。
【0123】
図4Aに示されるRT-qPCRの結果は、PCR/DdeI消化をさらに検証したものである。RT-qPCRの結果と一致して、ASO-10-27単独では、25nMでSMN2FL mRNAが2.3倍増加し、ASO-10-27(25nM)とDS06-0004(25nM)の組み合わせは、SMN2FLの最大の誘導(4.1倍)と同時に、SMN2Δ7の減少(0.14倍)を引き起こした(
図4B、4C、および4E)。
【0124】
まとめると、
図4に示されるデータは、saRNA DS06-0004単独が、SMN2 mRNA発現、特にSMN2遺伝子のコピーを2つ有するI型SMA細胞におけるSMN2FLの発現の誘導において強力な活性を有することを示している。SMN2 saRNAをASO-10-27と組み合わせた場合、SMN2FLの最大の誘導を達成できる。
【0125】
<実施例3:GM00232細胞のSMNタンパク質レベルに対するsaRNA(DS06-0004)とASO-10-27の組み合わせ効果>
SMN2遺伝子発現に対するASO-10-27およびDS06-0004単独または組み合わせの効果をさらに検証するために、ASO-10-27およびDS06-0004で個別にまたは組み合わせてトランスフェクトされたGM00232細胞でウェスタンブロッティングアッセイを実施した。
図5Aおよび5Cに示されるように、1nM、5nMおよび25nMのASO-10-27は、SMNタンパク質のそれぞれ1.4倍、2.3倍および2.9倍の増加を引き起こした。1nM、5nMおよび25nMのDS06-0004は、SMN2FLをそれぞれ1.2倍、1.3倍および1.7倍増加させた(
図5Bおよび5C)。35kDaの予想サイズを有するタンパク質バンドは完全長のSMNタンパク質である(
図5Aおよび5B)が、SMNΔ7タンパク質は急速に分解されるため、ウエスタンブロットには現れない(Le,T.T.ら SMNΔ7、セントロメア生存運動ニューロン(SMN2)遺伝子の主要産物は、脊髄筋萎縮症のマウスの生存を延長し、完全長SMNと関連する(SMNDelta7,the major product of the centromeric survival motor neuron (SMN2)gene,extends survival in mice with spinal muscular atrophy and associates with full-length SMN)Human Mol Genet(2005)。
【0126】
さらに、1nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、25nM)との組み合わせで細胞を処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ2.4、2.6、2.9倍誘導された(
図5A~5C、5Aおよび5Bは、併用治療の2回の重複を含む)。
【0127】
さらに、5nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、25nM)との組み合わせで細胞を処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ3.1、3.0、3.3倍に誘導された(
図5A~5C、5Aおよび5Bは、併用治療の2回の重複を含む)。
【0128】
さらに、25nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、25nM)との組み合わせで細胞を処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ3.1、3.3、2.6倍に誘導された(
図5A~5C、5Aおよび5Bは、併用治療の2回の重複を含む)。
【0129】
まとめると、これらのデータは、ASO-10-27とDS06-0004を組み合わせることで、どちらかを個別に使用した場合よりも高いレベルのSMNタンパク質を誘導できることを証明した。
【0130】
<実施例4:GM03813細胞における全長およびエクソン7スキップSMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0004)とASO-10-27の組み合わせ効果>
saRNA(DS06-0004)とASO-10-27の組み合わせが、II型SMA細胞のSMN2FL誘導に及ぼす効果を高めるかどうかを確定するために、GM03813細胞に、DS06-0004およびASO-10-27を単独でまたは組み合わせて、異なる濃度で72時間トランスフェクトし、処理細胞におけるSMN2発現をRT-qPCR(
図6Aおよび6D)およびPCR/消化(
図6B、6Cおよび6E)によって評価した。
図6Aと6Dに示されるように、1nM、5nMおよび25nMのASO-10-27は、SMN2Δ7の減少と同時に、SMN2FLのそれぞれ1.2、2.1および2.1倍の増加を引き起こした。1nM、5nM、および25nMのDS06-0004は、SMN2FLをそれぞれ2.1、2.6、および2.2倍増加させ、SMN2Δ7をそれぞれ2.5、2.5、および2.1倍増加させた。
【0131】
図6Aおよび6Dに示すように、細胞を1nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ2.6、2.8、3.0倍誘導され、SMN2Δ7がそれぞれ1.7、1.4、0.8倍誘導された。さらに、細胞を5nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ3.3、4.2、4.8倍誘導され、SMN2Δ7がそれぞれ0.2、0.2、0.1倍誘導された。さらに、細胞を25nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ3.8、4.7、4.0倍誘導され、SMN2Δ7の発現が完全に排除された。SMN2FLを2.1倍誘導した25nM ASO-10-27単独治療と比較して、ASO-10-27とDS06-0004の組み合わせ治療は、SMN2FLを4.7倍増加させ、単独で使用した場合のASO-10-27の効果を2倍以上にした。
【0132】
FIG6Aに示されるRT-qPCRの結果は、半定量的RT-PCRとそれに続くDdeI消化によってさらに検証された。RT-qPCRの結果と一致して、ASO-10-27単独では、25nMでSMN2FL mRNAが2.1倍増加し、ASO-10-27(25nM)とDS06-0004(5nM)の組み合わせは、SMN2FLの最大の誘導(2.7倍)と同時に、SMN2Δ7の減少(0.18倍)を引き起こした(
図6B、6C、および6E)。
【0133】
まとめると、
図6に示されるデータは、saRNA DS06-0004単独が、SMN3 mRNA発現、特にSMN2遺伝子のコピーを3つ有するII型SMA細胞におけるSMN2FLの発現の誘導において強力な活性を有することを示している。SMN2 saRNAをASO-10-27と組み合わせた場合、SMN2FLの最大の誘導を達成した。このデータは、いずれかの薬剤による個別の処理によって誘導された同じII型SMA細胞(GM03813細胞)におけるSMNタンパク質のレベルと比較して、ASO-10-27とDS06-0004の組み合わせは、II型SMA細胞(GM03813細胞)でより高いレベルのSMNタンパク質を誘導することを証明した。このデータはまた、未処理のGM03813細胞の集団と比較して、本開示による組み合わせで処理された細胞において誘導されたSMNタンパク質のレベルを確立する。本明細書に記載されるように、GM03813細胞は、SMN2のコピーを2つ有し、SMAのモデルとして利用される。
【0134】
<実施例5:GM03813細胞のSMNタンパク質レベルに対するsaRNA(DS06-0004)とASO-10-27の組み合わせ効果>
SMN2遺伝子発現に対するASO-10-27およびDS06-0004単独または組み合わせの効果をさらに検証するために、ASO-10-27およびDS06-0004で個別にまたは組み合わせてトランスフェクトされたGM03813細胞でウェスタンブロッティングアッセイを実施した。
図7Aおよび7Cに示されるように、1nM、5nMおよび25nMのASO-10-27は、SMNタンパク質のそれぞれ1.2、1.5および1.9倍の増加を引き起こした。1nM、5nMおよび25nMのDS06-0004は、SMN2FLをそれぞれ1.5、1.5および1.6倍増加させた(
図7Bおよび7C)。
【0135】
さらに、1nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、25nM)との組み合わせで細胞を処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ1.4、1.6、1.8倍誘導された(
図7A~7C、7Aおよび7Bは、併用治療の2回の重複を含む)。
【0136】
さらに、5nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、25nM)との組み合わせで細胞を処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ2.0、2.2、2.4倍増加させた(
図7A~7C、7Aおよび7Bは、併用治療の2回の重複を含む)。
【0137】
さらに、25nMのASO-10-27と漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nMと25nM)との組み合わせで細胞を処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ2.2、2.9、2.8倍増加させた(
図7A~7C、7Aおよび7Bは、併用治療の2回の重複を含む)。
【0138】
まとめると、このデータは、ASO-10-27とDS06-0004を組み合わせると、II型SMA細胞でより高いレベルのSMNタンパク質が誘導されることを証明した。このデータは、いずれかの薬剤による個別の処理によって誘導された同じII型SMA細胞(GM03813細胞)におけるSMNタンパク質のレベルと比較して、ASO-10-27とDS06-0004の組み合わせは、II型SMA細胞(GM03813細胞)でより高いレベルのSMNタンパク質を誘導することを証明した。このデータはまた、未処理のGM03813細胞の集団と比較して、本開示による組み合わせで処理された細胞において誘導されたSMNタンパク質のレベルを確立する。本明細書に記載されるように、GM03813細胞は、SMN2のコピーを2つ有し、SMAのモデルとして利用される。
【0139】
<実施例6:I型SMA M00232細胞における全長およびエクソン7スキップSMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0004)とリスジプラムの組み合わせ効果>
SMN2 saRNAと小分子SMN2 mRNA調節剤であるリスジプラムの組み合わせが、I型SMA細胞におけるSMN2FL誘導に対する効果を高めるかどうかを確定するために、GM00232細胞をDS06-0004とリスジプラムで個別にまたは組み合わせて、異なる濃度で72時間処理した。SMN2 mRNA発現は、RT-qPCR(
図8A-8C)およびPCR/消化(
図8D-8F)によって処理細胞において評価された。
図8A-8Cに示されるように、50nM、250nMおよび1250nMのリスジプラムは、SMN2Δ7の減少と同時に、SMN2FLのそれぞれ1.2、1.8および1.9倍の増加を引き起こした。1nM、5nM、および25nMのDS06-0004は、SMN2FLをそれぞれ1.8、2.1、および2.0倍増加させ、SMN2Δ7をそれぞれ1.6、1.6、および1.7倍増加させた。
【0140】
細胞を50nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ2.2、2.6、2.5倍増加し、SMN2Δ7がそれぞれ1.3、1.3、1.2倍増加した。さらに、細胞を250nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ3.0、3.4、3.4倍増加し、SMN2Δ7がそれぞれ0.3、0.3、0.3倍増加した。さらに、細胞を1250nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ3.6、3.9、4.0倍増加し、SMN2Δ7の発現が完全に排除された。SMN2FLを1.9倍誘導した1250nMリスジプラム単独治療と比較して、リスジプラムとDS06-0004の組み合わせ治療は、SMN2FLを4倍増加させ、単独で使用した場合のリスジプラムの効果を2倍以上にした。
【0141】
図8Aに示されるRT-qPCRの結果は、PCR/DdeI消化をさらに検証したものである。RT-qPCRの結果と一致して、1250nMのリスジプラム単独では、SMN2FL mRNAが2.3倍増加し、リスジプラム(1250nM)とDS06-0004(1nM)の組み合わせは、観察された最大のSMN2FL誘導(3.2倍)を引き起こした(
図8D-8F)。
【0142】
まとめると、
図8に示されるデータは、saRNA DS06-0004単独が、I型SMA細胞におけるSMN2 mRNA発現、特にSMN2FL発現の誘導において強力な活性を有することを示している。SMN2 saRNAをリスジプラムと組み合わせた場合、SMN2FLの最大の誘導を達成した。
【0143】
<実施例7:GM00232細胞のSMNタンパク質レベルに対するsaRNA(DS06-0004)とリスジプラムの組み合わせ効果>
I型SMA細胞GM00232におけるSMN2遺伝子発現に対するリスジプラムおよびDS06-0004の単独または組み合わせの効果をさらに検証するために、リスジプラム単独およびsaRNA DS06-0004との組み合わせでトランスフェクトされたGM00232細胞でウェスタンブロッティングアッセイを実施した。
図9Aおよび9Bに示されるように、50nM、250nMおよび1250nMのリスジプラムは、SMNタンパク質のそれぞれ1.7、1.9および2.6倍増加させた。
【0144】
50nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで細胞を処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ2.3、2.9、3.3倍に誘導された(
図9Aと9B)。
【0145】
さらに、250nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで細胞を処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ2.6、2.9、2.7倍に誘導された(
図9Aと9B)。
【0146】
さらに、1250nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで細胞を処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ 2.4、2.7、2.7倍に誘導された(
図9Aと9B)。
【0147】
まとめると、これらのデータは、SMN2発現の増加におけるsaRNAとリスジプラムの組み合わせ効果がタンパク質レベルで検証できることを証明した。
【0148】
<実施例8:II型SMA GM03813細胞における全長およびエクソン7スキップSMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0004)とリスジプラムの組み合わせ効果>
saRNAとリスジプラムの組み合わせが、II型SMA細胞のSMN2FL誘導に及ぼす効果を高めるかどうかを確定するために、GM03813細胞に、DS06-0004およびリスジプラムを単独でまたは組み合わせて、異なる濃度で72時間トランスフェクトし、処理細胞におけるSMN2 mRNA発現をRT-qPCR(
図10A-10C)およびPCR/消化(
図10D-10F)によって評価した。
図10A-10Cに示されるように、50nM、250nMおよび1250nMのリスジプラムは、SMN2Δ7の減少と同時に、SMN2FLのそれぞれ1.0、1.4および2.1倍の増加を引き起こした。1nM、5nM、および25nMのDS06-0004は、SMN2FLをそれぞれ1.7、2.2、および2.3倍増加させ、SMN2Δ7をそれぞれ1.8、2.3、および2.3倍増加させた。
【0149】
細胞を50nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ1.9、2.5、2.3倍誘導され、SMN2Δ7がそれぞれ1.2、1.7、1.4倍誘導された。さらに、細胞を250nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ2.5、3.1、3.4倍誘導され、SMN2Δ7がそれぞれ0.4、0.6、0.6倍誘導された。さらに、細胞を1250nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMN2FLがそれぞれ3.2、3.6、3.3倍誘導され、SMN2Δ7の発現が完全に排除された。SMN2FLを2.1倍誘導した1250nM リスジプラム単独治療と比較して、リスジプラムとDS06-0004の組み合わせ治療は、SMN2FLを3.6倍増加させ、単独で使用した場合のリスジプラムの効果をほぼ2倍にした。
【0150】
図10Aに示されるRT-qPCRの結果は、PCR/DdeI消化をさらに検証したものである。RT-qPCRの結果と一致して、1250nMのリスジプラム単独では、SMN2FL mRNAが2.1倍増加し、リスジプラム(1250nM)とDS06-0004(25nM)の組み合わせでは最大のSMN2FL誘導(3.8倍)を引き起こした(
図10D-10F)。
【0151】
まとめると、
図10に示されるデータは、saRNA DS06-0004単独が、II型SMA細胞におけるSMN2 mRNA発現、特にSMN2FLの誘導において強力な活性を有することを示している。SMN2 saRNAをリスジプラムと組み合わせると、SMN2FLの最大の増加は観察された。
【0152】
<実施例9:II型SMA GM03813細胞のSMNタンパク質レベルに対するsaRNA(DS06-0004)とリスジプラムの組み合わせ効果>
II型SMA細胞GM03813におけるSMN2遺伝子発現に対するリスジプラムおよびDS06-0004の単独または組み合わせの効果をさらに検証するために、リスジプラムとDS06-0004で単独または組み合わせて処理したGM03813細胞でウェスタンブロッティングアッセイを実施した。
図11Aおよび11Bに示されるように、50nMと250nMのリスジプラムは、SMNタンパク質をそれぞれ1.1、1.7倍増加させた。
【0153】
細胞を50nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ1.3、1.4、1.8倍誘導された(
図11Aと11B)。
【0154】
さらに、細胞を250nMのリスジプラムと漸増濃度のDS06-0004(1nM、5nM、および25nM)との組み合わせで処理すると、SMNタンパク質がそれぞれ2.1、2.3、2.0倍誘導された(
図11Aと11B)。
【0155】
まとめると、このデータは、SMN2発現の誘導におけるsaRNAとリスジプラムの組み合わせ効果がタンパク質レベルで検証できることを証明した。
【0156】
<実施例10:GM03813細胞における全長およびエクソン7スキップSMN2 mRNAの発現に対するsaRNA(DS06-0031とDS06-0067)とASO-10-27の組み合わせ効果>
ASO-10-27と2つのsaRNA(DS06-0031とDS06-0067で、これらの両方が、転写共役スプライシング調節メカニズムにより、II型SMA細胞で SMN2FL mRNA発現よりも多くのSMN2Δ7を誘導したことを推定する)の組み合わせ効果を確定するために(
図12Aおよび12B)、GM03813細胞に、DS06-0031またはDS06-0067およびASO-10-27を単独でまたは組み合わせて、10nMで72時間トランスフェクトした。SMN2発現は、RT-qPCR(
図12A)および半定量的RT-PCR(
図12Bおよび12C)によって処理細胞において評価された。
図12Aに示すように、DS06-0031とDS06-0067は、10nMでSMN2FLをそれぞれ0.9と1.3倍、SMN2Δ7をそれぞれ1.9と2.4倍変化させたのに対し、ASO-10-27は、SMN2FLとSMN2Δ7をそれぞれ1.4と0.3倍変化させた。
【0157】
細胞トランスフェクションでDS06-0031またはDS06-0067を10nMでASO-10-27と組み合わせると、SMN2FLは2.0倍および3.2倍誘導され、SMN2Δ7はそれぞれ0.3倍および0.05倍減少した。
【0158】
図12Aに示されるRT-qPCRの結果は、半定量的RT-PCRによってさらに検証された。RT-qPCRの結果と一致して、10nMのASO-10-27は単独で、SMN2FL mRNAを1.4倍増加させ、DS06-0031およびDS06-0067と組み合わせると、SMN2FLが1.8倍および2.3倍増加し、同時にSMN2Δ7が0.3倍および0.02倍減少した。
【0159】
さらに、SMNタンパク質レベルはウェスタンブロッティングアッセイによって評価された。SMN2FL発現と一致して、単独で使用した場合の2.3倍の増加と比較して、DS06-0031およびDS06-0067の存在下で、ASO-10-27は、SMNタンパク質レベルの3.6倍および3.3倍の増加を引き起こした(
図12Dおよび12E)。
【0160】
まとめると、
図12に示されるデータは、saRNA(DS06-0031およびDS06-0067)単独が、SMN2発現、特にSMNΔ7の誘導において強力な活性を有することを示している。ASO-10-27と組み合わせると、最大のSMN2FL誘導とSMN2Δ7減少を達成した。このデータは、特定のsaRNAによって誘導される転写活性化とその後のpre-mRNAの増加は、主にSMN2Δ7の増加によって反映されるが、pre-mRNAの増加は、SMN2 mRNA調節剤(ASOなど)にエクソン7包含のための追加の基質を提供し、その結果、SMN2FL mRNAおよびタンパク質の発現が大幅に強化されることをさらに示唆した。
【0161】
<実施例11:SMAタイプIIIマウスにおけるSMN2FLおよびSMN2Δ7の発現に対する、saRNA(LNP-R6-04M1)とLNP-ASO-10-27またはリスジプラムの組み合わせ効果>
LNP-R6-04M1とLNP-ASO-10-27またはリスジプラムとの組み合わせ効果は、SMAタイプIIIマウスでin vivoで評価された。新生児マウスは10つの治療群に分けられた:
【0162】
治療群1:ICV注射によるLNP-R6-04M1投与(それぞれ10μgのLNP-R6-04M1をP1およびP3に2回注射);
【0163】
治療群2:ICV注射によるLNP-ASO-10-27投与(それぞれ10μgのLNP-ASO-10-27をP1およびP3に2回注射);
【0164】
治療群3:0.3mg/kgの濃度でP1にIP注射によるリスジプラム投与;
【0165】
治療群4:1mg/kgの濃度でP1にIP注射によるリスジプラム投与;
【0166】
治療群5:3mg/kgの濃度でP1にIP注射によるリスジプラム投与;
【0167】
治療群6:LNP-R6-04M1とLNP-ASO-10-27の投与による組み合わせ療法。LNP-R6-04M1はP1にICV注射で投与され(10μg)、LNP-ASO-10-27はP3にICV注射で投与された(10μg);
【0168】
治療群7:LNP-ASO-10-27とLNP-R6-04M1の投与による組み合わせ療法。LNP-ASO-10-27はP1にICV注射で投与され(10μg)、LNP-R6-04M1はP3にICV注射で投与された(10μg);
【0169】
治療群8:LNP-R6-04M1とリスジプラムの組み合わせ療法。LNP-R6-04M1はP1(10μg)にICV注射で注射し、リスジプラムはIP注射でP3に0.3mg/kgの濃度で注射した。
【0170】
治療群9:LNP-R6-04M1とリスジプラムの組み合わせ療法。LNP-R6-04M1はP1(10μg)にICV注射で注射し、リスジプラムはIP注射でP3に1mg/kgの濃度で注射した。
【0171】
SMAタイプIIIマウスは、皮下(SC)注射を介して、P1(5μL)およびP3(5μL)に生理食塩水で2回治療された。P1とP3は、生後1日目と3日目を意味する;
【0172】
治療群10:生理食塩水によるマウスの治療;SMN2FLおよびSMN2Δ7 mRNAレベルは、脳、肝臓、および脊髄の組織でRT-qPCRによって定量化された。
P1とP3は、生後1日目と3日目を意味する。
【0173】
<結果>
図13Aに示すように、LNP-R6-04M1(治療群1)は、対照(治療群10)と比較して脳内のSMN2Δ7 mRNA発現の増加を1.2倍誘導し、脳内のSMN2FL mRNAの発現をアップレギュレートしなかった。LNP-ASO-10-27(治療群2)は、対照(治療群10)と比較して脳内のSMN2FL mRNA発現の1.6倍の増加を誘導し、脳内のSMN2Δ7 mRNA発現の0.7倍の減少を誘導した。濃度0.3mg/kg(治療群3)、1mg/kg(治療群4)、および3mg/kg(治療群5)のリスジパームはすべて、対照群と比較して脳内のSMN2FL mRNA発現のそれぞれ1.1、1.3および1.0倍の増加を誘導し、対照群(治療群10)と比較して脳内のSMN2Δ7 mRNA発現のそれぞれ1.0倍の増加を誘導した。
【0174】
P1(10μg)でのLNP-R6-04M1およびP3(10μg)でのLNP-ASO-10-27の組み合わせ治療(治療群6)は、対照群(治療群10)と比較して脳内のSMN2FL mRNA発現の1.8倍の増加、および対照群(治療群10)と比較して脳内のSMN2Δ7 mRNA発現の0.8倍の減少を誘導した。
【0175】
P1(10μg)でのLNP-ASO-10-27およびP3(10μg)でのLNP-R6-04M1の組み合わせ治療(治療群7)は、対照群(治療群10)と比較して脳内のSMN2FL mRNA発現の2.0倍の増加、および脳内のSMN2Δ7 mRNA発現の0.6倍の減少を誘導した。
【0176】
P1(10μg)でのLNP-R6-04M1および0.3mg/kgの濃度のリスジプラムの組み合わせ治療(治療群8)は、対照群(治療群10)と比較して、脳内のSMN2FL mRNA発現の1.2倍および脳内のSMN2Δ7 mRNA発現の1.0倍の増加をそれぞれ誘導した。
【0177】
P1(10μg)でのLNP-R6-04M1および1mg/kgの濃度のリスジプラムの組み合わせ治療(治療群9)は、対照群(治療群10)と比較して、脳内のSMN2FL mRNA発現の1.3倍および脳内のSMN2Δ7 mRNA発現の1.0倍の増加をそれぞれ誘導した。
【0178】
図13Bに示されるように、LNP-R6-04M1(治療群1)は、肝臓におけるSMN2FL mRNA発現の増加を誘導しなかった。LNP-ASO-10-27(治療群2)は、対照(治療群10)と比較して肝臓のSMN2FL mRNA発現の1.7倍の増加を誘導し、肝臓のSMN2Δ7 mRNA発現の0.9倍の減少を誘導した。濃度0.3mg/kg(治療群3)、1mg/kg(治療群4)、および3mg/kg(治療群5)のリスジパームはすべて、対照群(治療群10)と比較して肝臓のSMN2FL mRNA発現のそれぞれ1.1、1.3および1.0倍の増加を誘導し、対照群(治療群10)と比較して肝臓のSMN2Δ7 mRNA発現のそれぞれ1.0倍の増加を誘導した。
【0179】
P1(10μg)でのLNP-R6-04M1およびP3(10μg)でのLNP-ASO-10-27の組み合わせ治療(治療群6)は、対照群(治療群10)と比較して肝臓のSMN2FL mRNA発現の1.0倍の増加と、対照群(治療群10)と比較して肝臓のSMN2Δ7 mRNA発現の0.9倍の減少を誘導した。
【0180】
P1(10μg)でのLNP-ASO-10-27およびP3(10μg)でのLNP-R6-04M1の組み合わせ治療(治療群7)は、対照群(治療群10)と比較して肝臓のSMN2FL mRNA発現の1.6倍の増加と、肝臓のSMN2Δ7 mRNA発現の1.0倍の変化を誘導した。
【0181】
P1(10μg)でのLNP-R6-04M1および0.3mg/kgの濃度のリスジプラムの組み合わせ治療(治療群8)は、肝臓のSMN2FL mRNA発現の1.6倍の増加および肝臓のSMN2Δ7 mRNA発現の1.1倍の増加をそれぞれ誘導した。
【0182】
P1(10μg)でのLNP-R6-04M1および1mg/kgの濃度のリスジプラムの組み合わせ治療(治療群9)は、肝臓のSMN2FL mRNA発現の1.5倍の増加および肝臓のSMN2Δ7 mRNA発現の1.1倍の増加をそれぞれ誘導した。
【0183】
図13Cに示されるように、LNP-R6-04M1(治療群1)は、脊髄におけるSMN2FL mRNA発現の増加を誘導しなかった。LNP-ASO-10-27(治療群2)は、対照と比較して脊髄のSMN2FL mRNA発現の1.3倍の増加を誘導し、脊髄のSMN2Δ7 mRNA発現の0.8倍の減少を誘導した。
【0184】
P1(10μg)でのLNP-R6-04M1およびP3(10μg)でのLNP-ASO-10-27の組み合わせ治療(治療群6)は、対照群と比較して脊髄のSMN2FL mRNA発現の1.8倍の増加と、対照群と比較して脊髄のSMN2Δ7 mRNA発現の1.2倍の増加を誘導した。
【0185】
P1(10μg)でのLNP-ASO-10-27 およびP3(10μg)でのLNP-R6-04M1の組み合わせ治療(治療群7)は、対照群と比較して脊髄のSMN2FL mRNA発現の2.2倍の増加と、脊髄のSMN2Δ7 mRNA発現の1.1倍の増加を誘導した。
【0186】
図13A~13Cに示すように、SMN2 saRNAとSMN2 mRNA調節剤による組み合わせ治療は、SMN2FL mRNA発現とSMN2Δ7 mRNA発現の増加をもたらす。
【0187】
<材料と方法>
(オリゴヌクレオチドの設計と合成)
DS06-0004(RAG6-281としても知られる)、DS06-0031(RAG6-1266としても知られる)、およびDS06-0067(RAG6-293としても知られる)を含むSMN2のsaRNAが、SMN2の転写開始部位に対してそれぞれ-281、-1266および-293の位置でSMN2遺伝子プロモーターを標的とするように設計された(
図1)。SMN2 saRNAは、固相技術を用いてK&A DNA合成機(K&A Laborgeraete GbR、Schaafheim、Germany)で合成した。簡単に言えば、ホスホラミダイトモノマーを固体支持体に順次添加して、所望の全長オリゴヌクレオチドを生成する。塩基付加の各サイクルには、脱トリチル化、カップリング、酸化/チオール化、キャッピングの4つの化学反応が含まれる。合成後、固体支持体をスクリューキャップ微量遠心管に移した。1μMの合成スケールでは、エタノール中の33%メチルアミンと1mlの水酸化アンモニウムの混合物を添加した。次いで、固体支持体を含有する管をオーブン内で60℃~65℃で2時間加熱し、次いで室温まで冷却させた。切断溶液を回収し、スピードバックで蒸発乾固した。まだ2’-TBDMS基を保持している粗RNAオリゴヌクレオチドを0.1mlのDMSOに溶解した。1mlのトリエチルアミン3HFを加えた後、チューブに蓋をし、混合物を激しく振って完全に溶解させた。瓶をオーブンで60℃から65℃で3時間から3.5時間加熱した。管をオーブンから取り出し、室温まで冷却した。完全に脱シリル化されたオリゴヌクレオチドを含む溶液をドライアイスで冷却した。2mlの氷冷n-ブタノール(-20℃)を0.5mlずつ注意深く加えてオリゴヌクレオチドを沈殿させた。沈殿物を濾過し、1mlの氷冷n-ブタノールで洗浄し、次いで沈殿物を1M TEAA(トリエチルアンモニウムアセテート)に溶解した。次いで、source 15Qカラムを使用する交換(IEX)HPLCによって粗オリゴヌクレオチドを精製した。また、フラクションの純度は、Column DNA Pac
TM PA100を使用したイオン交換(IEX)HPLCで分析した。脱塩精製一本鎖溶液の生成に続いて、2つの相補的な一本鎖オリゴヌクレオチドをアニーリングすることによって二重鎖を作製し、凍結乾燥して粉末にした。
【0188】
ASO-10-27:ヌシネルセン(Spinraza(登録商標))としても知られるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)ASO-10-27は、最終アニーリング工程を省略した以外は上記と同じ技術を用いて合成した。ASO-10-27は一本鎖かつ2’-O-2-メトキシエチル(MOE)修飾ASOであり、それが、SMN2遺伝子のイントロン7でイントロン スプライシング サイレンサー(ISS)を標的とすることにより、エクソン7包含を誘導する(hnRNP A1/A2イントロンスプライシングサイレンサーのアンチセンスマスキングは、トランスジェニックマウスのSMN2スプライシングを修正する(Antisense masking of an hnRNP A1/A2 intronic splicing silencer corrects SMN2 splicing in transgenic mice)).“Am J Human Genet(2008))。ASO-10-27の配列は:meU*meC*meA*meC*meU*meU*meU*meC*meA*meU*meA*meA*meU*meG*meC*meU*meG*meGであり、ここで、me、2’MOE、*、ホスホロチオエート(PS)骨格修飾、すべてのシトシン(Cs)は5’メチルシトシンである。凍結乾燥されたオリゴヌクレオチドは、細胞トランスフェクションのためにRNaseを含まない水に懸濁されるか、またはインビボ注射のために適切な濃度に生理食塩水で希釈された。
【0189】
(細胞培養と処理)
GM00232(SMN2遺伝子を2つ持つSMAI型)およびGM03813(SMN2遺伝子のコピーを3つ持つSMAII型)を含むSMA患者由来の線維芽細胞は、Coriell Institute(カムデン、ニュージャージー州、米国)から入手した。これらの細胞を、15%ウシ子牛血清(Sigma-Aldrich)、1%NEAA(Gibco)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を添加した改変MEM培地(Gibco、サーモフィッシャーサイエンティフィック、カリフォルニア州カールスバッド)で、5%CO2および37℃で培養した。saRNA、siRNA、ASOを含むオリゴヌクレオチドをトランスフェクトするために、細胞を6ウェルプレートに1×105細胞/ウェルの密度で播種し、RNAiMax(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)をメーカー提供のリバース トランスフェクション プロトコールに従って使用して、さまざまな濃度のオリゴヌクレオチドで72時間トランスフェクトした(特に指定しない限り)。saRNA、SMN2 siRNA(DS06-332i)、対照dsRNA(dsCon2)、およびASOの配列を表1に示す。細胞のリスジプラム処理では、特に明記しない限り、DMSOに溶解したリスジプラム(HY-109101、MedChem Express社、ニュージャージー州モンマスジャンクション)を所望の濃度で72時間細胞に直接添加した。
【0190】
【0191】
ノート:m、2’-O-メチル(2’-OMe);me、2’-O-メトキシエチル(2’MOE);f、2’-フルオロ;*、ホスホロチオエート(PS)骨格修飾;下線付きのC、5’メチルシトシン;Vp,5’-(E)-ビニルホスホネート
【0192】
(RNAの分離と逆転写定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR))
培養細胞からRNAを分離するために、RNeasy Plus Mini キット(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)をマニュアルに従って使用して、処理した細胞から全細胞RNAを分離した。動物組織からRNAを分離するために、組織を採取し、RNA レイター(AM7021、Thermo Fisher)で保存した。次に、auto-pure96 マシン(ALLSHENG、中国)でMagPure Total RNA Micro LQ キット(Magen、R6621、中国)を使用して、全RNA を分離した。得られたRNA(1μg)は、gDNA Eraserを含むPrimeScript RT キット(タカラ社、滋賀、日本)を使用して、cDNAに逆転写された。得られたcDNAは、SYBR Premix Ex Taq II(タカラ社、滋賀、日本)試薬および全長(SMN2FL)またはΔ7 SMN2 mRNA(SMN2Δ7)を特異的に増幅するプライマーを使用して、ABI 7500高速リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)で増幅された(
図1)。反応条件は:95℃で3秒間(1サイクル)および60℃で30秒間(40サイクル)。TBP 遺伝子の増幅は、内部対照として使用した。すべてのプライマー配列を表2に示した。RTとRT-qPCR反応を表3と表4に示す。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
(半定量RT-PCR/DdeI消化アッセイ)
1回の反応でSMN2FLとSMN2Δ7の両方を増幅するために、cDNAを、SMN2のエキソン7にわたるプライマーを使用する半定量的RT-PCRによって増幅した(表5)(
図2)。PCR反応条件:94℃で2分間(1サイクル)、98℃で10秒間、60℃で15秒間、72℃で32秒間の30サイクル、72℃で最後の5分間の伸長。PCR反応を表6に示す。SMN1 mRNAをSMN2からさらに区別するために、得られたSMNのPCR産物をDdeI制限酵素(R0175L、NEB)で消化し、2%アガロースゲルで分離した。SMN2のエクソン8のヌクレオチドバリアントにより、DdeI認識サイトがSMN2遺伝子から増幅されたPCR産物に存在するが、SMN1遺伝子からは存在しなく、DdeI消化は、SMN2FLおよびSMN2Δ7の両方から115bpフラグメントを放出し、3つのフラグメント:507(SMN1FL)、338(SMN2Δ7)、392(SMN2FL)および115bp(
図2)を生じた。RNAローディング対照としてTBP遺伝子も増幅した。DdeI消化の反応条件は、37℃60分間、65℃20分間を1サイクル。DdeI消化反応を表7に示す。
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
(Westernブロッティング)
タンパク質は、プロテアーゼ阻害剤を含む1×RIPAバッファーを使用してトランスフェクトされた細胞から回収され、BCAタンパク質アッセイキット(Beyotime、P0010、中国)によってタンパク質濃度が検出された。動物組織からタンパク質を分離するために、組織を採取し、1×RIPAバッファーを使用して溶解した。タンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイキットを使用して測定した。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)ゲルを使用してタンパク質電気泳動を実施し(10μgタンパク質/ウェル)、次いでこれをポリフッ化ビニリデン(0.45μm PVDF)膜に転写した。膜は、一次抗SMN(CST、19276、米国)または抗α/β-チューブリン(CST、2148s、米国)抗体で4℃で一晩ブロットした。TBSTバッファーで3回洗浄した後、膜を抗IgG、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合の二次抗体(CST、7074sおよび7076s、米国)とともに室温(RT)で1時間インキュベートした。次いで、膜をTBSTバッファーで3回、それぞれ10分間洗浄し、Image Lab(BIO-RAD、Chemistry Doctm MP Imaging System)によって分析した。SMNタンパク質とα/β-チューブリンのバンド密度は、ImageJソフトウェアを使用して定量化された。
【0201】
(動物の手順)
すべての動物の手順は、地方および州の規制と一致し、施設内動物管理使用委員会によって承認されたプロトコルを使用して、認定された実験室の担当者によって行われた。前述のHsieh-Liら((Hsieh-Li,H.Mら 脊髄性筋萎縮症のマウスモデル(A mouse model for spinal muscular atrophy).Nature Genet(2000))に説明されたように、マウスSmnエキソン7をヒトSMN2の導入遺伝子(Smn-/-SMN2+/-)でホモ接合ノックアウトして作成したSMA様マウスは、Jackson Laboratoriesから入手した。生後0日目(P0)に尾の切り取りを収集し、足の入れ墨によって各子マウスを識別し、3つの特異的プライマーのセットを使用したPCR分析によって遺伝子型を特定した:S1、5’-ATAACACCACCACTCTTACTC-3’、およびS2、5’-GTAGCCGTGATGCCATTGTCA-3’(野生型対立遺伝子の1,150bpバンド)およびS1およびH1、5’AGCCTGAAGAACGAGATCAGC-3’(変異型対立遺伝子の950bpバンド)。PCR産物は1%アガロースゲルで検出した。重度のSMAマウス(Smn-/-、SMN+/0)が産生された。マウスSmnのヘテロ接合体(Smn1+/-、SMN2+/-)の同腹仔を対照として使用した。
【0202】
(脂質ナノ粒子(LNP)の準備)
DLin-KC2-DMA(50mg/mL)、コレステロール(10mg/mL)、DSPC(7.5mg/mL)、とPEG2000-DMPE(20mg/mL)を100%エタノールに溶解した脂質ストックを、12mL/minの流速で、1:3の体積比で、マイクロ流体チップによってオリゴヌクレオチドストック(20mg/mL、0.05mMクエン酸バッファー、pH4.0)と急速に混合した。DLin-KC2-DMA、コレステロール、DSPC、およびPEG2000-DMPEのモル比は50:38.5:10:1.5である。次に、この予め形成されたベシクルを、透析チューブを使用して1×PBS(pH7.4)中で12時間透析した。LNPの粒子サイズは、Brookhaven NanoBrook 90Plus Zetaを使用した動的光散乱によってテストされた。RNA濃度は、NanoPhotometer N50を使用してA260によってテストされた。
【0203】
(脳室内(ICV)注射)
PCR分析によって遺伝子型を特定するために、生後0日目(P0)に尾の切り取りを収集し、I型SMAマウス(Smn-/-、SMN2+/-)、III型SMAマウス(Smn-/-、SMN2+/+)、およびヘテロ接合体(Het)対照(Smn1+/-、SMN2+/-)として分けられた。両側脳室内(ICV)注射は、P1およびP3の子犬用の29ゲージ注射器(片側2μL、5mg/ml)を使用して、2%イソフルランを介して麻酔下でそれぞれ1.5mmまたは3.6mmの深さで行った。腹腔内(IP)注射を、新生マウスの下腹部領域に行った。表1には、saRNA(LNP-R6-04M1)とLNP-ASO-10-27の配列を示す。
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
<同等物および参照による組み込み>
本明細書で引用されるすべての参考文献は、すべての目的で、個々の出版物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列またはGeneIDエントリ)、特許出願、または特許が具体的かつ個別に示され、その全体が参照により組み込まれるのと同程度に、参照により組み込まれる。この参照による組み込みの声明は、出願人が、37C.F.R.§1.57(b)(1)に従って、すべての個々の出版物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列またはGeneIDエントリ)、特許出願、または特許に関連することを意図し、それらが、それぞれに、たとえそのような引用が参照により専門の組み込みの声明に直接隣接していなくても、37C.F.R§1.57(b)(2)に従って明確に識別される。参照による組み込みの専門声明があれば、明細書内に含めることは、参照による組み込みのこの一般的なステートメントを決して弱めることはない。ここでの参考文献の引用は、参考文献が適切な先行技術であることを認めることを意図したものではなく、これらの刊行物または文書の内容または日付についての認めを構成するものでもない。
【0218】
本発明は、好ましい実施形態および様々な代替実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細に様々な変更を加えることができることは、当業者によって理解される。
【0219】
(クロスリファレンス)
本願は、2020年7月31日に提出されたPCT特許出願番号PCT/CN2020/106200の優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0220】
(テキストファイルとして提供される参照により組み込まれる配列表)
本明細書には、2021年7月30日に作成され、サイズが81Kbのテキストファイル「SMN2-Combo sequence listing_ST25 final」として、配列表が提供される。当該テキストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】