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特表2023-535842普遍的な細胞療法のための武装NK細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】普遍的な細胞療法のための武装NK細胞
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230814BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230814BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230814BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230814BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230814BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230814BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230814BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230814BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N5/0783
A61K35/15
A61K35/17
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/02
A61K39/395 N
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507231
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2021071586
(87)【国際公開番号】W WO2022023581
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】2008211
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516344465
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】509000747
【氏名又は名称】アンスティトゥー ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ レシェルシュ メディカル(イエヌエスエエールエム)
(71)【出願人】
【識別番号】523032412
【氏名又は名称】サントル オスピタリエ ユニヴェルシテ ドゥ モンペリエ (セアッシュユエム)
(71)【出願人】
【識別番号】523032423
【氏名又は名称】イセエム(アンスティトゥー ドゥ キャンサロロジー ドゥ モンペリエ)
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヤルバ マルタン
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲンセン クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ロベール ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】マルティノー ピエール
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス フランシスコ ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】プレズミー ジェシー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD50
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF67
4C076FF70
4C085AA14
4C085BB36
4C085DD62
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA06
4C087NA13
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB32
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、治療法、特にCD16細胞及びNK(ナチュラルキラー)細胞をベースにした細胞療法の分野に関する。特に、本発明は、改変Fc領域、特に改変C2ドメインを含む組換えポリペプチドと組み合わせた、CD16細胞、NK細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物に関する。特に、本発明は、FcγRIII(CD16)表面タンパク質に結合することができる組換えポリペプチドと組み合わせたCD16細胞及び/又はNK細胞を含む組成物であって、組換えポリペプチドは、CD16細胞によって発現されるFcγRIII(CD16)表面タンパク質に非共有結合しており、上記組換えポリペプチドは、(i)任意にリンカーを介して(ii)に結合した野生型ヒトIgG1の改変C2ドメインと、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、リガンド結合ドメインは、標的リガンドに結合することができる配列を含み、改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して突然変異S239D及びI332Eを含むことにより特徴付けられ、野生型ヒトIgG1の上記C2ドメインは、配列番号1で表され、EU番号付けによる配列位置231~340を含む、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FcγRIII(CD16)表面タンパク質に結合することができる組換えポリペプチドと組み合わせたCD16細胞を含む組成物であって、前記組換えポリペプチドが、前記CD16細胞によって発現される前記FcγRIII(CD16)表面タンパク質に非共有結合しており、前記組換えポリペプチドが、
(i)任意にリンカーを介して(ii)に結合した、野生型ヒトIgG1の改変C2ドメインと、
(ii)リガンド結合ドメインと、
を含み、
前記リガンド結合ドメインが、標的リガンドに結合することができる配列を含み、
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して突然変異S239D及びI332Eを含むことにより特徴付けられ、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインが、配列番号1で表されるか、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性のパーセンテージを有する配列で表され、EU番号付けによる配列位置231~340を含む、組成物。
【請求項2】
前記改変C2ドメインが、配列番号1で表される前記野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して改変されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記FcγRIII(CD16)表面タンパク質が、FcγRIIIa/CD16a表面タンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、H268F、S324T、G236A及びA330Lからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、H268F、S324T及びA330Lからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、H268F及びS324Tからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びS324Tを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びH268Fを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びA330Lを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E、H268F及びS324Tを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関する前記C2ドメインの前記改変が、突然変異S239D及びI332Eのみからなる、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項12】
前記CD16細胞が、CD16細胞を必要とする個体に関して同種異系である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組換えポリペプチドが抗体であり、前記C2ドメインにおける前記改変が、前記抗体を構成する前記C2ドメインの対(又は重鎖の対)に関して対称的、又は非対称的である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組換えポリペプチドが、前記改変C2ドメインを含むヒトIgG1 Fc(フラグメント結晶化可能)領域を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組換えポリペプチドが、請求項1~6のいずれか一項に記載の改変C2ドメイン、又は請求項14に記載のFc領域と、以下の抗体:アバゴボマブ、アバタセプト、アブシキシマブ、アビツズマブ、アブリルマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アデュカヌマブ、アフリベルセプト、アフツジマブ、アラシズマブ、アレファセプト、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アネツマブ、アニフロムマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アスクリンバクマブ、アセリズマブ、アテゾリズマブ、アチヌマブ、アルチズマブ、アトロリムマブ、バピネウズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベゲロマブ、ベラタセプト、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビメキズマブ、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ボコシズマブ、ブレンツキシマブ、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、ブロンチシズマブ、カナキヌマブ、カンツズマブ、カプラシズマブ、カプロマブ、カルルマブ、カツマキソマブ、セデリズマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、シタツズマブ、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブ、コドリツズマブ、コルツキシマブ、コナツムマブ、コンシズマブ、クレネズマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダピロリズマブ、ダラツムマブ、デクトレクマブ、デムシズマブ、デニンツズマブ、デノスマブ、デルロチクスマブ、デツモマブ、ジヌツキシマブ、ジリダブマブ、ドリノマブ、ドロジツマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、デュシギツマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エファングマブ、エルデルマブ、エルゲムツマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エマクツズマブ、エミベツズマブ、エナバツズマブ、エンホルツマブ、エンリモマブ、エノブリツズマブ、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタネルセプト、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フィリブマブ、フランボツマブ、フレチクマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブ、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレンバツムマブ、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブ、イクルクマブ、イダルシズマブ、イゴボマブ、イマルマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブ、インデュサツマブ、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、イサツキシマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ランブロリズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レンジルマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リファスツズマブ、リゲリズマブ、リロトマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロキベトマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、ルリズマブ、ルミリキシマブ、ルムレツズマブ、マパツズマブ、マルゲツキシマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミネツモマブ、ミルベツキシマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブ、ムロモナブ-CD3、ナコロマブ、ナミルマブ、ナプツモマブ、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネモリズマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オピシヌマブ、オポルツズマブ、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オルテルツズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パンコマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パソツキシズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムブロリズマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、パキセリズマブ、ピディリズマブ、ピナツズマブ、ピンツモマブ、ポラツズマブ、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラルパンシズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レファネズマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロナセプト、リロツムマブ、リヌクマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サシツズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブ、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セヴィルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソフィツズマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブ、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブ、タレクスツマブ、テフィバズマブ、テリモマブ・アリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テシドルマブ、TGN1412、チシリムマブ、チルドラキズマブ、ティガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トサトクスマブ、トシツモマブ、トベツマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、トレボグルマブ、ツコツズマブ、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウロクプルマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バンドルツズマブ、バンチクツマブ、バヌシズマブ、バパリキシマブ、バルリルマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、ジブ-アフリベルセプト、及びゾリモマブのいずれかのリガンド結合ドメインから選択されるリガンド結合ドメインとを含む抗体又はそのフラグメントである、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
医薬として使用される、好ましくは医薬を必要とする個体における癌、自己免疫疾患、又は感染性疾患を治療又は予防する方法において使用される、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を含み、任意に賦形剤又は薬理学的に許容されるビヒクルを更に含む、薬学的組成物。
【請求項18】
前記CD16細胞が、CD16細胞を必要とする個体に関して同種異系であり、医薬として使用される、好ましくは医薬を必要とする個体における癌、自己免疫疾患、又は感染性疾患を治療又は予防する方法において使用される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
FcγRIII(CD16)表面タンパク質に結合することができる組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞を含む組成物であって、前記組換えポリペプチドが、前記NK(ナチュラルキラー)細胞によって発現される前記FcγRIII(CD16)表面タンパク質に非共有結合しており、前記組換えポリペプチドが、
(i)任意にリンカーを介して(ii)に結合した、野生型ヒトIgG1の改変C2ドメインと、
(ii)リガンド結合ドメインと、
を含み、
前記リガンド結合ドメインが、標的リガンドに結合することができる配列を含み、
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して突然変異S239D及びI332Eを含むことにより特徴付けられ、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインが、配列番号1で表されるか、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性のパーセンテージを有する配列で表され、EU番号付けによる配列位置231~340を含む、組成物。
【請求項20】
前記改変C2ドメインが、配列番号1で表される前記野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して改変されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、H268F、S324T、G236A及びA330Lからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、H268F、S324T及びA330Lからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、H268F及びS324Tからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びS324Tを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びH268Fを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びA330Lを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E、H268F及びS324Tを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関する前記C2ドメインの前記改変が、突然変異S239D及びI332Eのみからなる、請求項20に記載の組成物。
【請求項29】
前記CD16細胞が、CD16細胞を必要とする個体に関して同種異系である、請求項19~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組換えポリペプチドが抗体であり、前記C2ドメインにおける前記改変が、前記抗体を構成する前記C2ドメインの対(又は重鎖の対)に関して対称的、又は非対称的である、請求項19~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記組換えポリペプチドが、前記改変C2ドメインを含むヒトIgG1 Fc(フラグメント結晶化可能)領域を含む、請求項19~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記組換えポリペプチドが、請求項19~31のいずれか一項に記載のC2ドメインと、以下の抗体:アバゴボマブ、アバタセプト、アブシキシマブ、アビツズマブ、アブリルマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アデュカヌマブ、アフリベルセプト、アフツジマブ、アラシズマブ、アレファセプト、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アネツマブ、アニフロムマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アスクリンバクマブ、アセリズマブ、アテゾリズマブ、アチヌマブ、アルチズマブ、アトロリムマブ、バピネウズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベゲロマブ、ベラタセプト、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビメキズマブ、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ボコシズマブ、ブレンツキシマブ、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、ブロンチシズマブ、カナキヌマブ、カンツズマブ、カプラシズマブ、カプロマブ、カルルマブ、カツマキソマブ、セデリズマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、シタツズマブ、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブ、コドリツズマブ、コルツキシマブ、コナツムマブ、コンシズマブ、クレネズマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダピロリズマブ、ダラツムマブ、デクトレクマブ、デムシズマブ、デニンツズマブ、デノスマブ、デルロチクスマブ、デツモマブ、ジヌツキシマブ、ジリダブマブ、ドリノマブ、ドロジツマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、デュシギツマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エファングマブ、エルデルマブ、エルゲムツマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エマクツズマブ、エミベツズマブ、エナバツズマブ、エンホルツマブ、エンリモマブ、エノブリツズマブ、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタネルセプト、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フィリブマブ、フランボツマブ、フレチクマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブ、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレンバツムマブ、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブ、イクルクマブ、イダルシズマブ、イゴボマブ、イマルマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブ、インデュサツマブ、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、イサツキシマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ランブロリズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レンジルマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リファスツズマブ、リゲリズマブ、リロトマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロキベトマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、ルリズマブ、ルミリキシマブ、ルムレツズマブ、マパツズマブ、マルゲツキシマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミネツモマブ、ミルベツキシマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブ、ムロモナブ-CD3、ナコロマブ、ナミルマブ、ナプツモマブ、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネモリズマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オピシヌマブ、オポルツズマブ、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オルテルツズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パンコマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パソツキシズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムブロリズマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、パキセリズマブ、ピディリズマブ、ピナツズマブ、ピンツモマブ、ポラツズマブ、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラルパンシズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レファネズマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロナセプト、リロツムマブ、リヌクマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サシツズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブ、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セヴィルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソフィツズマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブ、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブ、タレクスツマブ、テフィバズマブ、テリモマブ・アリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テシドルマブ、TGN1412、チシリムマブ、チルドラキズマブ、ティガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トサトクスマブ、トシツモマブ、トベツマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、トレボグルマブ、ツコツズマブ、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウロクプルマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バンドルツズマブ、バンチクツマブ、バヌシズマブ、バパリキシマブ、バルリルマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、ジブ-アフリベルセプト、及びゾリモマブのいずれかのリガンド結合ドメインから選択されるリガンド結合ドメインとを含む抗体又はそのフラグメントである、請求項19~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
医薬として使用される、好ましくは医薬を必要とする個体における癌、自己免疫疾患、又は感染性疾患を治療又は予防する方法において使用される、請求項19~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
請求項19~32のいずれか一項に記載の組成物を含み、任意に賦形剤又は薬理学的に許容されるビヒクルを更に含む、薬学的組成物。
【請求項35】
前記CD16細胞が、CD16細胞を必要とする個体に関して同種異系であり、医薬として使用される、好ましくは医薬を必要とする個体における癌、自己免疫疾患、又は感染性疾患を治療又は予防する方法において使用される、請求項19~32のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞を含む薬学的組成物であって、前記組換えポリペプチドが、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、前記Fc領域が、前記NK細胞に結合することができ、野生型ヒトIgG1の少なくとも1つの改変C2ドメインを含み、前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して突然変異S239D及びI332Eを含むことにより特徴付けられ、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインが、配列番号1で表されるか、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性のパーセンテージを有する配列で表され、EU番号付けによる配列位置231~340を含む、薬学的組成物。
【請求項37】
前記改変C2ドメインが、配列番号1で表される前記野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して改変されている、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、H268F、S324T、G236A及びA330Lからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、H268F、S324T及びA330Lからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、H268F及びS324Tからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項41】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びS324Tを含む、請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項42】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びH268Fを含む、請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びA330Lを含む、請求項39に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記改変C2ドメインが、野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E、H268F及びS324Tを含む、請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
野生型ヒトIgG1の前記C2ドメインに関する前記C2ドメインの前記改変が、突然変異S239D及びI332Eのみからなる、請求項37に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
賦形剤又は薬理学的に許容されるビヒクルを更に含む、請求項36~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項47】
医薬として使用される、請求項36~46のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項48】
組換えポリペプチドに付着した、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系のNK細胞であって、前記組換えポリペプチドが、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)結合ドメインとを含み、前記Fc領域が、前記NK細胞に結合することができ、請求項36~45のいずれか一項に記載の野生型ヒトIgG1の少なくとも1つの改変C2ドメインを含む、医薬として使用される、NK細胞。
【請求項49】
CD16細胞、好ましくはCD16細胞を必要とする個体に関して同種異系のCD16細胞を含む第1の部分と、
請求項1~15のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを含む第2の部分と、
を含む、医薬として使用される、キット。
【請求項50】
NK細胞、好ましくはNK細胞を必要とする個体に関して同種異系のNK細胞を含む第1の部分と、
請求項19~32のいずれか一項に記載の組換えポリペプチドを含む第2の部分と、
を含む、医薬として使用される、キット。
【請求項51】
NK細胞、好ましくはNK細胞を必要とする個体に関して同種異系のNK細胞を含む第1の部分と、
(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む組換えポリペプチドを含む第2の部分であって、前記Fc領域が、前記NK細胞に結合することができ、請求項36~45のいずれか一項に記載の野生型ヒトIgG1の少なくとも1つの改変C2ドメインを含む、第2の部分と、
を含む、医薬として使用される、キット。
【請求項52】
組換えポリペプチドと組み合わせたCD16細胞を含む薬学的組成物であって、前記組換えポリペプチドが、(i)Fc領域のアミノ酸配列上の改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、前記Fc領域が、前記CD16細胞に結合することができ、賦形剤又は薬理学的に許容されるビヒクルを更に含む、薬学的組成物。
【請求項53】
前記組換えポリペプチドが、前記CD16細胞に非共有結合している、請求項52に記載の薬学的組成物。
【請求項54】
組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物であって、前記組換えポリペプチドが、(i)Fc領域のアミノ酸配列上の改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、前記Fc領域が、前記NK細胞又はその前駆体に結合することができ、賦形剤又は薬理学的に許容されるビヒクルを更に含む、薬学的組成物。
【請求項55】
前記組換えポリペプチドが、前記NK細胞に非共有結合している、請求項54に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療法、特にCD16細胞及び/又はNK(ナチュラルキラー)細胞及び/又はNK細胞前駆体をベースにした細胞療法の分野に関する。特に、本発明は、改変Fc領域、特に改変C2ドメインを含む組換えポリペプチドと組み合わせた、CD16細胞、NK細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞療法の開発は、癌、重篤な感染症、又は臓器移植若しくは幹細胞移植後の移植片拒絶反応等の進行性疾患の治療に全面的に拡張されつつある。ほとんどの科学的及び臨床的なブレークスルーは、主に癌に対して得られている。細胞療法は、特にB細胞リンパ増殖性障害の治療において、CAR(キメラ抗原受容体)と呼ばれるキメラ受容体を用いて遺伝子改変されたT細胞(CAR-T細胞)により得られた臨床的成功から、癌に対する非常に有望な治療選択肢として浮上した。
【0003】
現在、FDA(食品医薬品局)によって承認されているCAR-T細胞は、患者への放出及び再注入の前に、認証されたリファレンスセンターで遺伝子改変された自己T細胞(患者由来)に基づいている。それにもかかわらず、かなりの数の患者において、CAR-T細胞を用いた治療は、その後の副作用、更には致死的な影響と関連している(非特許文献1)。さらに、このタイプの治療のロジスティクス及びコストによって、それらの広範な使用が妨げられている。したがって、より多くの患者がこれらのタイプの細胞療法から恩恵を得ることができるように、CAR-T細胞の欠点を克服し、新しい治療選択肢を利用できることを可能にする代替手段を考案することが不可欠である。
【0004】
研究されている代替手段の1つは、NK(ナチュラルキラー)細胞の使用である。NK細胞は、事前の抗原刺激なしに標的細胞を破壊できる細胞傷害性リンパ球である。それにもかかわらず、多くの基本的な前臨床及び臨床結果は、NK細胞単独では、種々の血液学的及び非血液学的な悪性病変の治療に有効ではないことを示している。具体的には、これらのNK細胞は、それらの標的を認識するのに十分に有効ではなく、及び/又は所望の治療効果を生じさせるのに十分な細胞傷害性がない。NK細胞の有効性を高める目的で、これらのNK細胞は、標的細胞特異的抗原を認識するために「武装(armed)」させることができる(非特許文献2)。
【0005】
しかしながら、副作用を誘発しないか、又は副作用をほとんど誘発せず、より安価で、経時的に非常に安定で、大多数の患者及び大多数の病変に適した、細胞療法における新しい組成物を有することが依然として求められている。
【0006】
また、関連する標的に確実に対処でき、副作用を軽減する、治療用抗体及び他の治療用化合物等の治療用化合物の新しい投与手段を提供する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、これらの要求の全て又は一部を満たすことである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Santomasso B, Bachier C, Westin J, Rezvani K, Shpall EJ. The Other Side of CAR T-Cell Therapy: Cytokine Release Syndrome, Neurologic Toxicity, and Financial Burden. Am Soc Clin Oncol Educ Book. 2019; 39: 433-444. doi: 10.1200/EDBK_238691
【非特許文献2】Sanchez-Martinez et al., Theranostics 8(14):3856-3869, June 2018
【発明の概要】
【0009】
本発明は、組換えポリペプチドと組み合わせたCD16細胞、NK細胞又はNK細胞前駆体に関し、上記組換えポリペプチドは、(i)改変Fc領域、好ましくはC2ドメインに少なくとも1つの改変を有する改変Fc領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記改変Fc領域は、上記細胞又はそれらの前駆体に結合することができる。
【0010】
以下の実施例に示すように、本発明者らは、1つ又は複数のリガンドに結合することができる組換えポリペプチドと組み合わせたCD16細胞、特にNK細胞が、in vitro及びin vivoで数日間安定したままであることに注目した。さらに、これらの武装したCD16細胞、特にNK細胞が、この結果として、適切なリガンド(複数の場合もある)の認識を介して標的細胞を特異的に標的化することができたことに注目した。
【0011】
CD16細胞表面マーカーは、本明細書ではFcγRIII表面受容体とも呼ばれる。
【0012】
目的の1つによれば、本発明は、組換えポリペプチドと組み合わせたCD16細胞を含む薬学的組成物であって、上記組換えポリペプチドは、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記CD16細胞に結合することができる、薬学的組成物に関する。
【0013】
目的の1つによれば、本発明はまた、組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物であって、上記組換えポリペプチドは、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞又はNK細胞前駆体に結合することができる、薬学的組成物に関する。
【0014】
本発明者らは、予想外なことであったが、個体から採取され、本発明に記載の組換えポリペプチドでin vitroで武装したCD16細胞であるNK細胞が、標的細胞に対するNK細胞の細胞傷害性を増加させることを可能にすることに注目した。驚くべきことに、Moore et al. 2010の教示に反して、NK細胞のFc受容体と本発明による組換えポリペプチドとの間の結合は、数日間、特に少なくとも7日間、in vitro及びin vivoで安定及び特異的なままである。したがって、NK細胞と本明細書に記載の組換えポリペプチドとのこの組み合わせは、「武装NK細胞」と呼ばれ、治療が対象標的細胞の破壊を意味する任意の疾患に対する有効な治療解決策であることを証明する。この治療解決策は、Wang et al.(Luyao Wang, Mei Dou, Qingxia Ma, Ruixue Yao, Jia Liu; Chimeric antigen receptor (CAR)-modified NK cells against cancer: Opportunities and challenges; International Immunopharmacology 74 (2019) 105695)のレビューで具体的に記載されているNK-CAR細胞とは異なり、NK細胞の遺伝子改変を必要としないため、この組み合わせは、NK-CAR細胞よりも使用がはるかに簡単になる。実際、例えば臍帯血から採取されたNK細胞の単一試料は、適切なリガンドを特定できるありとあらゆる標的化特異性について、任意の個体を治療するのに十分である。
【0015】
したがって、本発明者らは、特にナチュラルキラー細胞系統に相当し得るCD16細胞を、改変Fc領域を含む組換えポリペプチドと効率的に、かつ安定した方法で組み合わせることができるという実験的証拠を提供する。
【0016】
さらに、本明細書に開示される組換えポリペプチドは、長期間にわたってCD16受容体、特にCD16a受容体に対する高い親和性を有することが、本発明において実証されている。
【0017】
本発明者らはまた、組換えポリペプチドが非共有結合的に結合している場合、列挙された細胞への付着も安定であり、更には治療においても適しているという実験的証拠を提供する。したがって、列挙された組換えポリペプチドのCD16細胞及び/又はNK細胞又はNK前駆体への「結合」又は「付着」は、好ましくは「非共有結合」と見なされる。
【0018】
本発明者らはまた、対応する戦略が、用量を減らす及び/又は副作用を軽減する治療用化合物を投与するのに適していることを提案する。
【0019】
本発明者らはまた、本発明の意味において、対応する戦略が、そのようなCD16細胞及び/又はNK細胞及び/又はそれらの前駆体と、改変Fc領域を有する複数の組換えポリペプチドとの結合、特に非共有結合に適していることを提案する。
【0020】
これらの目的の1つによれば、本発明は、FcγRIII(CD16)表面タンパク質、好ましくはFcγRIIIa/CD16a表面タンパク質に結合することができる組換えポリペプチドと組み合わせたCD16細胞を含む組成物であって、組換えポリペプチドは、CD16細胞によって発現される、FcγRIII(CD16)表面タンパク質、好ましくはFcγRIIIa/CD16a表面タンパク質に非共有結合しており、上記組換えポリペプチドは、
(i)任意にリンカーを介して(ii)に結合した、野生型ヒトIgG1の改変C2ドメインと、
(ii)リガンド結合ドメインと、
を含み、
リガンド結合ドメインは、標的リガンドに結合することができる配列を含み、
改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して突然変異S239D及びI332Eを含むことにより特徴付けられ、野生型ヒトIgG1の上記C2ドメインは、配列番号1で表されるか、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性のパーセンテージを有する配列で表され、EU番号付けによる配列位置231~340を含む、組成物に関する。
【0021】
いくつかの実施の形態によれば、野生型ヒトIgG1のC2ドメインは、配列番号1で表される。したがって、いくつかの実施の形態によれば、改変C2ドメインは、配列番号1で表される野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して改変されている。
【0022】
いくつかの実施の形態によれば、FcγRIII(CD16)表面タンパク質は、FcγRIIIa/CD16a表面タンパク質である。
【0023】
いくつかの実施の形態によれば、改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して、H268F、S324T、G236A及びA330Lからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む。
【0024】
いくつかの実施の形態によれば、改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して、H268F、S324T及びA330Lからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む。
【0025】
いくつかの実施の形態によれば、改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して、H268F及びS324Tからなる群より選択される少なくとも1種の更なる突然変異を含む。
【0026】
いくつかの実施の形態によれば、改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びS324Tを含む。
【0027】
いくつかの実施の形態によれば、改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びH268Fを含む。
【0028】
いくつかの実施の形態によれば、改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びA330Lを含む。
【0029】
いくつかの実施の形態によれば、改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E、H268F及びS324Tを含む。
【0030】
いくつかの実施の形態によれば、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関するC2ドメインの改変は、突然変異S239D及びI332Eのみからなる。
【0031】
いくつかの実施の形態によれば、CD16細胞は、CD16細胞を必要とする個体に関して同種異系である。
【0032】
いくつかの実施の形態によれば、組換えポリペプチドは抗体であり、C2ドメインにおける改変は、抗体を構成するC2ドメインの対(又は重鎖の対)に関して対称的、又は非対称的である。
【0033】
いくつかの実施の形態によれば、組換えポリペプチドは、改変C2ドメインを含むヒトIgG1 Fc(フラグメント結晶化可能)領域を含む。
【0034】
いくつかの実施の形態によれば、組換えポリペプチドは、本明細書に記載の改変C2ドメイン、又は本明細書に記載のFc領域と、以下の抗体:アバゴボマブ(Abagovomab)、アバタセプト(Abatacept)、アブシキシマブ(Abciximab)、アビツズマブ(Abituzumab)、アブリルマブ(Abrilumab)、アクトクスマブ(Actoxumab)、アダリムマブ(Adalimumab)、アデカツムマブ(Adecatumab)、アデュカヌマブ(Aducanumab)、アフリベルセプト(Aflibercept)、アフツジマブ(Afutuzymab)、アラシズマブ(Alacizumab)、アレファセプト(Alefacept)、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、アリロクマブ(Alirocumab)、アルツモマブ(Altumomab)、アマツキシマブ(Amatixumab)、アナツモマブ(Anatumomab)、アネツマブ(Anetumab)、アニフロムマブ(Anifromumab)、アンルキンズマブ(Anrukinzumab)、アポリズマブ(Apolizumab)、アルシツモマブ(Arcitumomab)、アスクリンバクマブ(Ascrinvacumab)、アセリズマブ(Aselizumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、アチヌマブ(Atinumab)、アルチズマブ(Altizumab)、アトロリムマブ(Atorolimumab)、バピネウズマブ(Bapineuzumab)、バシリキシマブ(Basiliximab)、バビツキシマブ(Bavituximab)、ベクツモマブ(Bectumomab)、ベゲロマブ(Begelomab)、ベラタセプト(Belatacept)、ベリムマブ(Belimumab)、ベンラリズマブ(Benralizumab)、ベルチリムマブ(Bertilimumab)、ベシレソマブ(Besilesomab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ベズロトクスマブ(Bezlotoxumab)、ビシロマブ(Biciromab)、ビマグルマブ(Bimagrumab)、ビメキズマブ(Bimekizumab)、ビバツズマブ(Bivatuzumab)、ブリナツモマブ(Blinatumomab)、ブロソズマブ(Blosozumab)、ボコシズマブ(Bococizumab)、ブレンツキシマブ(Brentuximab)、ブリアキヌマブ(Briakimumab)、ブロダルマブ(Brodalumab)、ブロルシズマブ(Brolucizumab)、ブロンチシズマブ(Bronticizumab)、カナキヌマブ(Canakinumab)、カンツズマブ(Cantuzumab)、カプラシズマブ(Caplacizumab)、カプロマブ(Capromab)、カルルマブ(Carlumab)、カツマキソマブ(Catumaxomab)、セデリズマブ(Cedelizumab)、セルトリズマブ(Certolizumab)、セツキシマブ(Cetixumab)、シタツズマブ(Citatuzumab)、シクスツムマブ(Cixutumumab)、クラザキズマブ(Clazakizumab)、クレノリキシマブ(Clenoliximab)、クリバツズマブ(Clivatuzumab)、コドリツズマブ(Codrituzumab)、コルツキシマブ(Coltuximab)、コナツムマブ(Conatumumab)、コンシズマブ(Concizumab)、クレネズマブ(Crenezumab)、ダセツズマブ(Dacetuzumab)、ダクリズマブ(Daclizumab)、ダロツズマブ(Dalotuzumab)、ダピロリズマブ(Dapirolizumab)、ダラツムマブ(Daratumumab)、デクトレクマブ(Dectrekumab)、デムシズマブ(Demcizumab)、デニンツズマブ(Denintuzumab)、デノスマブ(Denosumab)、デルロチクスマブ(Derlotixumab)、デツモマブ(Detumomab)、ジヌツキシマブ(Dinutuximab)、ジリダブマブ(Diridavumab)、ドリノマブ(Dorlinomab)、ドロジツマブ(Drozitumab)、デュピルマブ(Dupilumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、デュシギツマブ(Dusigitumab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ(Eculizumab)、エドバコマブ(Edobacomab)、エドレコロマブ(Edrecolomab)、エファリズマブ(Efalizumab)、エファングマブ(Efungumab)、エルデルマブ(Eldelumab)、エルゲムツマブ(Elgemtumab)、エロツズマブ(Elotuzumab)、エルシリモマブ(Elsilimomab)、エマクツズマブ(Emactuzumab)、エミベツズマブ(Emibetuzumab)、エナバツズマブ(Enavatuzumab)、エンホルツマブ(Enfortumab)、エンリモマブ(Enlimomab)、エノブリツズマブ(Enoblituzumab)、エノキズマブ(Enokizumab)、エノチクマブ(Enoticumab)、エンシツキシマブ(Ensituximab)、エピツモマブ(Epitumomab)、エプラツズマブ(Epratuzomab)、エルリズマブ(Erlizumab)、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタネルセプト(Etanercept)、エタラシズマブ(Etaracizumab)、エトロリズマブ(Etrolizumab)、エビナクマブ(Evinacumab)、エボロクマブ(Evolocumab)、エクスビビルマブ(Exbivirumab)、ファノレソマブ(Fanolesomab)、ファラリモマブ(Faralimomab)、ファルレツズマブ(Farletuzomab)、ファシヌマブ(Fasimumab)、フェルビズマブ(Felvizumab)、フェザキヌマブ(Fezkimumab)、フィクラツズマブ(Ficlatuzumab)、フィギツムマブ(Figitumumab)、フィリブマブ(Firivumab)、フランボツマブ(Flanvotumab)、フレチクマブ(Fletikumab)、フォントリズマブ(Fontolizumab)、フォラルマブ(Foralumab)、フォラビルマブ(Foravirumab)、フレソリムマブ(Fresolimumab)、フルラヌマブ(Fulramumab)、フツキシマブ(Futuximab)、ガリキシマブ(Galiximab)、ガニツマブ(Ganitumab)、ガンテネルマブ(Gantenerumab)、ガビリモマブ(Gavilimomab)、ゲムツズマブ(Gemtuzumab)、ゲボキズマブ(Gevokizumab)、ギレンツキシマブ(Girentuximab)、グレンバツムマブ(Glembatumumab)、ゴリムマブ(Golimumab)、ゴミリキシマブ(Gomiliximab)、グセルクマブ(Guselkumab)、イバリズマブ(Ibalizumab)、イブリツモマブ(Ibritumomab)、イクルクマブ(Icrucumab)、イダルシズマブ(Idarucizumab)、イゴボマブ(Igovomab)、イマルマブ(Imalumab)、イムシロマブ(Imciromab)、イムガツズマブ(Imgatuzumab)、インクラクマブ(Inclacumab)、インダツキシマブ(Indatuximab)、インデュサツマブ(Indusatumab)、インフリキシマブ(Infliximab)、インテツムマブ(Intetumumab)、イノリモマブ(Inolimomab)、イノツズマブ(Inotuzumab)、イピリムマブ(Ipilimumab)、イラツムマブ(Iratumumab)、イサツキシマブ(Isatuximab)、イトリズマブ(Itolizumab)、イキセキズマブ(Ixekizumab)、ケリキシマブ(Keliximab)、ラベツズマブ(Labetuzumab)、ランブロリズマブ(Lambrolizumab)、ランパリズマブ(Lampalizumab)、レブリキズマブ(Lebrikizumab)、レマレソマブ(Lemalesomab)、レンジルマブ(Lenzilumab)、レルデリムマブ(Lerdelimumab)、レキサツムマブ(Lexatumumab)、リビビルマブ(Libivirumab)、リファスツズマブ(Lifastuzumab)、リゲリズマブ(Ligelizumab)、リロトマブ(Lilotomab)、リンツズマブ(Lintuzumab)、リリルマブ(Lirilumab)、ロデルシズマブ(Lodelcizumab)、ロキベトマブ(Lokivetmab)、ロルボツズマブ(Lorvotuzumab)、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ルリズマブ(Lulizumab)、ルミリキシマブ(Lumiliximab)、ルムレツズマブ(Lumretuzumab)、マパツズマブ(Mapatumumab)、マルゲツキシマブ(Margetuximab)、マスリモマブ(Maslimomab)、マブリリムマブ(Mavrilimumab)、マツズマブ(Matuzumab)、メポリズマブ(Mepolizumab)、メテリムマブ(Metelimumab)、ミラツズマブ(Milatuzumab)、ミネツモマブ(Minetumomab)、ミルベツキシマブ(Mirvetuximab)、ミツモマブ(Mitumomab)、モガムリズマブ(Mogamulizumab)、モロリムマブ(Morolimumab)、モタビズマブ(Motavizumab)、モキセツモマブ(Moxetumomab)、ムロモナブ-CD3(Muromonab-CD3)、ナコロマブ(Nacolomab)、ナミルマブ(Namilumab)、ナプツモマブ(Naptumomab)、ナルナツマブ(Narnatumab)、ナタリズマブ(Natalizumab)、ネバクマブ(Nebacumab)、ネシツムマブ(Necitumumab)、ネモリズマブ(Nemolizumab)、ネレリモマブ(Nerelimomab)、ネスバクマブ(Nesvacumab)、ニモツズマブ(Nimotuzumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、ノフェツモマブ(Nofetumomab)、オビルトキサキシマブ(Obiltoxaximab)、オビヌツズマブ(Obinutuzumab)、オカラツズマブ(Ocaratuzumab)、オクレリズマブ(Ocrelizumab)、オデュリモマブ(Odulimomab)、オファツムマブ(Ofatumumab)、オララツマブ(Olaratumab)、オロキズマブ(Olokizumab)、オマリズマブ(Omalizumab)、オナルツズマブ(Onartuzumab)、オンツキシズマブ(Ontuxizumab)、オピシヌマブ(Opicinumab)、オポルツズマブ(Oportuzumab)、オレゴボマブ(Oregovomab)、オルチクマブ(Orticumab)、オテリキシズマブ(Otelixizumab)、オルテルツズマブ(Oltertuzumab)、オキセルマブ(Oxelumab)、オザネズマブ(Ozanezumab)、オゾラリズマブ(Ozoralizumab)、パギバキシマブ(Pagibaximab)、パリビズマブ(Palivizumab)、パニツムマブ(Panitumumab)、パンコマブ(Pankomab)、パノバクマブ(Panobacumab)、パルサツズマブ(Parsatuzumab)、パスコリズマブ(Pascolizumab)、パソツキシズマブ(Pasotuxizumab)、パテクリズマブ(Pateclizumab)、パトリツマブ(Patritumab)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)、ペムツモマブ(Pemtumomab)、ペラキズマブ(Perakizumab)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、パキセリズマブ(Pexelizumab)、ピディリズマブ(Pidilizumab)、ピナツズマブ(Pinatuzumab)、ピンツモマブ(Pintumomab)、ポラツズマブ(Polatuzumab)、ポネズマブ(Ponezumab)、プリリキシマブ(Priliximab)、プリツムマブ(Pritumumab)、キリズマブ(Quilizumab)、ラコツモマブ(Racotumomab)、ラドレツマブ(Radretumab)、ラフィビルマブ(Rafivirumab)、ラルパンシズマブ(Ralpancizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、ラキシバクマブ(Raxibacumab)、レファネズマブ(Refanezumab)、レガビルマブ(Regavirumab)、レスリズマブ(Reslizumab)、リロナセプト(Rilonacept)、リロツムマブ(Rilotumumab)、リヌクマブ(Rinucumab)、リツキシマブ(Rituximab)、ロバツムマブ(Robatumumab)、ロレデュマブ(Roledumab)、ロモソズマブ(Romosozumab)、ロンタリズマブ(Rontalizumab)、ロベリズマブ(Rovelizumab)、ルプリズマブ(Ruplizumab)、サシツズマブ(Sacituzumab)、サマリズマブ(Samalizumab)、サリルマブ(Sarilumab)、サツモマブ(Satumomab)、セクキヌマブ(Secukimumab)、セリバンツマブ(Seribantumab)、セトキサキシマブ(Setoxaximab)、セヴィルマブ(Sevirumab)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、シファリムマブ(Sifalimumab)、シルツキシマブ(Siltuximab)、シプリズマブ(Siplizumab)、シルクマブ(Sirukumab)、ソフィツズマブ(Sofituzumab)、ソラネズマブ(Solanezumab)、ソリトマブ(Solitomab)、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、ソンツズマブ(Sontuzumab)、スタムルマブ(Stamulumab)、スレソマブ(Sulesomab)、スビズマブ(Suvizumab)、タバルマブ(Tabalumab)、タカツズマブ(Tacatuzumab)、タドシズマブ(Tadocizumab)、タリズマブ(Talizumab)、タネズマブ(Tanezumab)、タプリツモマブ(Taplitumomab)、タレクスツマブ(Tarextumab)、テフィバズマブ(Tefibazumab)、テリモマブ・アリトクス(Telimomab aritox)、テナツモマブ(Tenatumomab)、テネリキシマブ(Teneliximab)、テプリズマブ(Teplizumab)、テシドルマブ(Tesidolumab)、TGN1412、チシリムマブ(Ticlimumab)、チルドラキズマブ(Tildrakizumab)、ティガツズマブ(Tigatuzumab)、TNX-650、トシリズマブ(Tocilizumab)、トラリズマブ(Toralizumab)、トサトクスマブ(Tosatoxumab)、トシツモマブ(Tositumomab)、トベツマブ(Tovetumab)、トラロキヌマブ(Tralokimumab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、TRBS07、トレガリズマブ(Tregalizumab)、トレメリムマブ(Tremelimumab)、トレボグルマブ(Trevogrumab)、ツコツズマブ(Tucotuzumab)、ツビルマブ(Tuvirumab)、ウブリツキシマブ(Ublituximab)、ウロクプルマブ(Ulocuplumab)、ウレルマブ(Urelumab)、ウルトキサズマブ(Urtoxazumab)、ウステキヌマブ(Ustekimumab)、バンドルツズマブ(Vandortuzumab)、バンチクツマブ(Vantictumab)、バヌシズマブ(Vanucizumab)、バパリキシマブ(Vapaliximab)、バルリルマブ(Varlimumab)、バテリ






ズマブ(Vatelizumab)、ベドリズマブ(Vedolizumab)、ベルツズマブ(Veltuzumab)、ベパリモマブ(Vepalimomab)、ベセンクマブ(Vesencumab)、ビジリズマブ(Visilizumab)、ボロシキシマブ(Volocixumab)、ボルセツズマブ(Vorsetuzumab)、ボツムマブ(Votumumab)、ザルツムマブ(Zalutumimab)、ザノリムマブ(Zanolimumab)、ザツキシマブ(Zatuximab)、ジラリムマブ(Ziralimumab)、ジブ-アフリベルセプト(Ziv-Aflibercept)、及びゾリモマブ(Zolimomab)のいずれかのリガンド結合ドメインから選択されるリガンド結合ドメインとを含む抗体又はそのフラグメントである。
【0035】
いくつかの実施の形態によれば、本明細書に記載の組成物は、医薬として使用することができる。
【0036】
いくつかの好ましい実施の形態によれば、本明細書に記載の組成物は、医薬を必要とする個体における癌、自己免疫疾患、又は感染性疾患を治療又は予防する方法において使用することができる。
【0037】
これらの目的の別のものによれば、本発明はまた、本明細書に記載の組成物を含み、任意に賦形剤又は薬理学的に許容されるビヒクルを更に含む、薬学的組成物に関する。
【0038】
いくつかの実施の形態によれば、CD16細胞は、CD16細胞を必要とする個体に関して同種異系であり、医薬として使用することができる。
【0039】
いくつかの好ましい実施の形態によれば、本明細書に記載の薬学的組成物は、医薬を必要とする個体における癌、自己免疫疾患、又は感染性疾患を治療又は予防する方法において使用することができる。
【0040】
これらの目的の別のものによれば、本発明はまた、FcγRIII(CD16)表面タンパク質に結合することができる組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞を含む組成物であって、組換えポリペプチドは、NK(ナチュラルキラー)細胞によって発現されるFcγRIII(CD16)表面タンパク質に非共有結合しており、上記組換えポリペプチドは、
(i)任意にリンカーを介して(ii)に結合した、野生型ヒトIgG1の改変C2ドメインと、
(ii)リガンド結合ドメインと、
を含み、
リガンド結合ドメインは、標的リガンドに結合することができる配列を含み、
改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して突然変異S239D及びI332Eを含むことにより特徴付けられ、野生型ヒトIgG1の上記C2ドメインは、配列番号1で表されるか、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性のパーセンテージを有する配列で表され、EU番号付けによる配列位置231~340を含む、組成物に関する。
【0041】
いくつかの実施の形態によれば、CD16細胞は、CD16細胞を必要とする個体に関して同種異系である。
【0042】
いくつかの実施の形態によれば、組換えポリペプチドは抗体であり、C2ドメインにおける改変は、抗体を構成するC2ドメインの対(又は重鎖の対)に関して対称的、又は非対称的である。
【0043】
いくつかの実施の形態によれば、組換えポリペプチドは、改変C2ドメインを含むヒトIgG1 Fc(フラグメント結晶化可能)領域を含む。
【0044】
いくつかの実施の形態によれば、組換えポリペプチドは、本明細書に記載のC2ドメインと、本明細書に記載の抗体のいずれかのリガンド結合ドメインから選択されるリガンド結合ドメインとを含む抗体又はそのフラグメントである。
【0045】
これらの目的の別のものによれば、本発明はまた、組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞を含む薬学的組成物であって、上記組換えポリペプチドは、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞に結合することができ、野生型ヒトIgG1の少なくとも1つの改変C2ドメインを含み、改変C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して突然変異S239D及びI332Eを含むことにより特徴付けられ、野生型ヒトIgG1の上記C2ドメインは、配列番号1で表されるか、又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性のパーセンテージを有する配列で表され、EU番号付けによる配列位置231~340を含む、薬学的組成物に関する。
【0046】
これらの目的の別のものによれば、本発明はまた、組換えポリペプチドに付着した、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系のNK細胞であって、上記組換えポリペプチドは、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞に結合することができ、本明細書に記載の野生型ヒトIgG1の少なくとも1つの改変C2ドメインを含む、医薬として使用される、NK細胞に関する。
【0047】
これらの目的の別のものによれば、本発明はまた、
CD16細胞、好ましくはCD16細胞を必要とする個体に関して同種異系のCD16細胞を含む第1の部分と、
本明細書に記載の組換えポリペプチドを含む第2の部分と、
を含む、医薬として使用されるキットに関する。
【0048】
これらの目的の別のものによれば、本発明はまた、
NK細胞、好ましくはNK細胞を必要とする個体に関して同種異系のNK細胞を含む第1の部分と、
本明細書に記載の組換えポリペプチドを含む第2の部分と、
を含む、医薬として使用されるキットに関する。
【0049】
これらの目的の別のものによれば、本発明はまた、
NK細胞、好ましくはNK細胞を必要とする個体に関して同種異系のNK細胞を含む第1の部分と、
(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む組換えポリペプチドを含む第2の部分であって、上記Fc領域は、上記NK細胞に結合することができ、本明細書に記載の野生型ヒトIgG1の少なくとも1つの改変C2ドメインを含む、第2の部分と、
を含む、医薬として使用されるキットに関する。
【0050】
これらの目的の別のものによれば、本発明はまた、組換えポリペプチドと組み合わせたCD16細胞を含む薬学的組成物であって、上記組換えポリペプチドは、(i)Fc領域のアミノ酸配列上の改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記CD16細胞に結合することができ、賦形剤又は薬理学的に許容されるビヒクルを更に含む、薬学的組成物に関する。
【0051】
これらの目的の別のものによれば、本発明はまた、組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物であって、上記組換えポリペプチドは、(i)Fc領域のアミノ酸配列上の改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞又はその前駆体に結合することができ、賦形剤又は薬理学的に許容されるビヒクルを更に含む、薬学的組成物に関する。
【0052】
これらの目的の別の1つによれば、本発明はまた、組換えポリペプチドに付着した、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体であって、上記組換えポリペプチドは、(i)上記NK細胞又はその前駆体に結合することができる改変Fc領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む、医薬として使用される、NK細胞、又はNK細胞前駆体に関する。
【0053】
これらの目的の別の1つによれば、本発明は、
NK細胞、好ましくはNK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体を含む第1の部分と、
(i)改変Fc領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む組換えポリペプチドを含む第2の部分であって、上記Fc領域は、上記NK細胞又はNK細胞前駆体に結合することができる、第2の部分と、
を含む、医薬として使用されるキットに関する。
【0054】
これらの目的の別の1つによれば、本発明はまた、医薬として使用される本発明による薬学的組成物の使用に関する。
【0055】
これらの目的の別の1つによれば、本発明はまた、本発明による薬学的組成物、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体、又はキットを、上記同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体を標的細胞に近づけることが上記標的細胞を破壊するために有益である、疾患を治療又は予防する方法において使用することに関する。
【0056】
これらの目的の別の1つによれば、本発明はまた、本発明による薬学的組成物、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体、又はキットを、それらを必要とする個体における癌、自己免疫疾患及びその派生的なもの、又は感染性疾患を治療又は予防する方法において使用することに関する。
【0057】
これらの目的の別の1つによれば、本発明は、NK細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物を調製するin vitro又はex vivoの方法であって、a)NK細胞、好ましくはNK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体を提供する工程と、b)上記NK細胞又は上記NK細胞前駆体を、組換えポリペプチドと接触させる工程であって、上記組換えポリペプチドは、(i)改変Fc領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞又はNK細胞前駆体に結合することができる、工程とを含む方法に関する。
【0058】
1つの実施の形態によれば、組換えポリペプチドと組み合わせたNK細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物であって、上記組換えポリペプチドは、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞又はその前駆体に結合することができ、賦形剤又は薬理学的に許容されるビヒクルを更に含むことができる、薬学的組成物である。
【0059】
1つの実施の形態によれば、改変Fc領域は、配列番号2~配列番号13の任意の1つのアミノ酸配列を含むことができる。
【0060】
1つの実施の形態によれば、改変Fc領域は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、特に配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、特に配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができ、好ましくは、改変Fc領域は、配列番号2と100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0061】
1つの実施の形態によれば、組換えポリペプチドの改変Fc領域は、少なくとも1つの改変C2ドメイン含むことができる。
【0062】
特定の実施の形態によれば、組換えポリペプチドのFc領域の改変C2ドメインは、配列番号2~配列番号13の任意の1つのアミノ酸配列、又は配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、特に配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性、特に配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができ、好ましくは、改変C2ドメインは、配列番号2と100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0063】
1つの実施の形態によれば、CD16細胞及び/又はNK細胞は、それらを必要とする個体に関して同種異系であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】CD45/CD56/CD3 eNK細胞(臍帯血由来のin vitro NK細胞)と組み合わせたFc SDH、Fc LALA及びFc WTポリペプチド並びに抗体の結合特異性を表す図である。
図2】Fc SDH、Fc LALA及びFc WTポリペプチドと、CD16/CD56/CD45/CD3 eNK細胞のFc受容体(CD16A)との間の結合安定性を表す図である。
図3】Fc SDH及びFc WTポリペプチドによるCD45/CD56/CD3 eNK細胞上のFc受容体の飽和状態を表す図である。
図4】乳癌細胞(BT20細胞株)の生残に対するFc SDH又はFc WT抗体で武装したeNK細胞の細胞傷害性及び脱顆粒レベルを表す図である。
図5】武装eNK細胞の膜表面におけるFc SDH及びFc WT抗体(トラスツズマブ)の存在を表す図である。
図6】(i)Fcなし、(ii)Fc LALA A647抗体、(iii)Fc WT A647抗体又は(iv)Fc SDH A647抗体で武装したeNK細胞の表面でのCD16受容体の発現を表す図である。
図7A】成体スイスヌードマウスから採取した腹水試料中のeNK細胞-Fc SDHのin vivoでの結合安定性を表す図である。
図7B】成体スイスヌードマウスから採取した腹水試料中のeNK細胞-Fc SDHのin vivoでの結合安定性を表す図である。
図7C】成体スイスヌードマウスの血液、骨髄及び脾臓試料中のeNK細胞-Fc SDHのin vivoでの結合安定性を表す図である。
図7D】成体スイスヌードマウスの血液、骨髄及び脾臓試料中のeNK細胞-Fc SDHのin vivoでの結合安定性を表す図である。
図8】本発明による組換えポリペプチドを示す2つの実施形態を表す図である。
図9A】CD16a及びCD16b受容体に対する、Fc WT(野生型)と比較した組換えFcポリペプチドのin vitroでの結合親和性を表す図である。
図9B】武装後1時間~72時間の種々の組換えFcポリペプチドのCD16細胞に対する結合の動態を表す図である。
図10】CD16細胞上に含有する2つの組換えFc SDH抗体による同時武装を表す図である。
図11】CD20陽性癌細胞に対する組換えFc SDHリツキシマブを用いたex vivo武装CD16細胞の有効性を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1において、CD45/CD56/CD3 eNK細胞(臍帯血由来のin vitro NK細胞)と組み合わせたFc SDH、Fc LALA及びFc WTポリペプチド並びに抗体の結合特異性を表す。1Aの上のグラフは、eNK細胞上のFc A647マーカーの結果を表すヒストグラムである。Y軸:(上から下へ)(i)Fcなし(細胞のみ)、(ii)Fc LALA A647、(iii)Fc WT A647、(iv)Fc SDH A647に付着したeNK細胞の数。X軸:A647の平均蛍光強度(MFI)。1Aの下のグラフ。Y軸:Fc WT A647に対して正規化した改変Fc A647の平均蛍光強度(MFI)。X軸:(左から右へ)ポリペプチド(i)Fc LALA A647、(ii)Fc WT A647及び(iii)Fc SDH A647で武装したeNK細胞。4人のドナー由来のeNK細胞を使用した3つの独立した実験の結果を表す。=p<0.05。一方向ANOVA。1Bの上のグラフは、抗Fc IgG FITCマーカーの結果を表すヒストグラムである。Y軸:(上から下へ)(i)抗体なし(細胞のみ)、(ii)Fc WTトラスツズマブ抗体及び(iiii)Fc SDHトラスツズマブ抗体に付着したeNK細胞の数。X軸:FITCの平均蛍光強度。1Bの下のグラフ。Y軸:FITCの平均蛍光強度。X軸:(i)Fc WTトラスツズマブ抗体及び(ii)Fc SDHトラスツズマブ抗体に付着したeNK細胞。3人のドナー由来のeNKを使用した2つの独立した実験の結果を表す。1Cの中央のグラフ。Y軸:eNK細胞上のA647マーカーの平均蛍光強度。X軸:ポリペプチド(左から右へ)(i)Fc LALA A647、(ii)Fc WT A647又は(iii)Fc SDH A647に付着したeNK細胞。1Cの右グラフ。Y軸:CD16 eNK細胞試料及びCD16細胞試料におけるFc eNK細胞のパーセンテージ。X軸:ポリペプチド(左から右へ)(i)Fc LALA A647、(ii)Fc WT A647又は(iii)Fc SDH A647に付着したeNK細胞。4人のドナー由来のeNKを使用した3つの独立した実験の結果を表す。=p<0.05;***=p<0.001;****=p<0.0001;双方向ANOVA。
【0066】
図2において、Fc SDH、Fc LALA及びFc WTポリペプチドと、CD16/CD56/CD45/CD3 eNK細胞のFc受容体(CD16A)との間の結合安定性を表す。結果は、2日目及び3日目に4人のドナー、7日目に3人のドナー由来のNK細胞を使用した3つの独立した実験を表している。グラフ2Aは、A647マーカーの結果を表すヒストグラムである。Y軸:ポリペプチド(上から下へ)(i)Fcなし(細胞のみ)、(ii)Fc LALA A647、(iii)Fc WT A647、(iv)Fc SDH A647に付着したeNK細胞の数。X軸:A647の平均蛍光強度。グラフ2B。Y軸:2日間のインキュベーション後(明灰色)、3日間のインキュベーション後(中灰色)、及び7日間のインキュベーション後(暗灰色)のFc(CD16)eNK細胞のパーセンテージ。X軸:ポリペプチド(左から右へ)(i)Fc LALA A647、(ii)Fc WT A647及び(iii)Fc SDH A647に付着したeNK細胞。グラフ2C。Y軸:37℃でのインキュベーション2日間のインキュベーション後(明灰色)、3日間のインキュベーション後(中灰色)、及び7日間のインキュベーション後(暗灰色)のA647の平均蛍光強度。X軸:ポリペプチド(左から右へ)(i)Fc LALA A647、(ii)Fc WT A647及び(iii)Fc SDH A647に付着したeNK細胞。
【0067】
図3において、Fc SDH及びFc WTポリペプチドによるCD45/CD56/CD3 eNK細胞上のFc受容体の飽和状態を表す。グラフ3Aは、0μg/ml、1μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml又は40μg/mlでのFc WT A647又はFc SDH A647ポリペプチドによるeNK細胞のFc受容体の飽和状態を表すヒストグラムである。Y軸:(上から下へ)(i)Fcなし(細胞のみ)、(ii)1μg/ml、(iii)10μg/ml、(iv)20μg/ml、(v)30μg/ml又は(vi)40μg/mlのFc WT A647又はFc SDH A647ポリペプチドに付着したeNK細胞の数。X軸:A647の平均蛍光強度。グラフ3Bは、0μg/ml、1μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml又は40μg/mlでのFc SDH A488ポリペプチドによるeNK細胞のFc受容体の飽和状態を表すヒストグラムである。Y軸:(上から下へ)(i)Fcなし(細胞のみ)、(ii)1μg/ml、(iii)10μg/ml、(iv)20μg/ml、(v)30μg/ml又は(vi)40μg/mlのFc SDH A488に付着したeNK細胞の数。X軸:A488の平均蛍光強度。結果は、1人のドナー由来のeNKを使用した1つの実験を表している(2回の疑似繰り返し)。グラフ3Cは、20μg/mlでのFc WT、Fc SDH、Fcブロック非標識競合ポリペプチド及び抗CD16抗体による、Fc SDH A488ポリペプチドで武装したeNK細胞上のFc受容体の競合状態を表すヒストグラムである。Y軸:(上から下へ)20μg/mlでの(i)Fcなし(細胞のみ)、(ii)競合体なし、(iii)Fcブロック、(iv)Fc WT、(v)Fc SDH及び(vi)抗CD16抗体と共に、37℃で1時間インキュベートした、Fc SDH A488ポリペプチドで武装したeNK細胞の数。X軸:A488の平均蛍光強度(MFI)。グラフ3Dは、20μg/mlでのFc SDH、Fcブロック非標識競合ポリペプチド及び抗CD16抗体による、Fc SDH A647ポリペプチドで武装したeNK細胞のFc受容体の競合状態を表すヒストグラムである。Y軸:(上から下へ)20μg/mlでの(i)Fcなし(細胞のみ)、(ii)競合体なし、(iii)Fcブロック、(iv)Fc SDH及び(v)抗CD16抗体と共にインキュベートした、Fc SDH A647ポリペプチドで武装したeNK細胞の数。X軸:A647の平均蛍光強度(MFI)。結果は、2回の繰り返しで1人のドナー由来のeNKを使用した1つの実験を表している。
【0068】
図4において、乳癌BT20細胞株由来の細胞の細胞生残に対するFc SDH又はFc WT抗体で武装したeNK細胞の細胞傷害性及び脱顆粒レベルを表す。グラフ4A。Y軸:武装eNK細胞のみを観察するために、1時間武装させ、1回の洗浄サイクルを経たeNK細胞と共に1時間インキュベートした後のBT20標的細胞の細胞生残率(パーセンテージで表す)。X軸:(左から右へ)(i)武装eNK細胞なし、(ii)非武装eNK細胞、洗浄していない(すなわち、遊離抗体が存在する)(iii)10μg/mlのWT抗体で武装したeNK細胞、(iv)10μg/mlのSDH抗体で武装したeNK細胞、(v)1μg/mlのWT抗体で武装したeNK細胞、及び(vi)1μg/mlのSDH抗体で武装したeNK細胞と共にインキュベートしたBT20標的細胞。グラフ4B。Y軸:1時間武装させ、洗浄していないeNK細胞と共に1時間インキュベートした後のBT20細胞の細胞生残率(武装eNK細胞だけでなく、遊離Fcの効果も観察できる)。X軸:(左から右へ)(i)武装eNK細胞なし、(ii)非武装eNK細胞、(iii)10μg/mlのWT抗体で武装したeNK細胞、(iv)10μg/mlのSDH抗体で武装したeNK細胞、(v)1μg/mlのWT抗体で武装したeNK細胞、(vi)1μg/mlのSDH抗体で武装したeNK細胞と共にインキュベートしたBT20標的細胞。グラフは、4人のドナー由来のeNKを使用した3つの独立した実験を表している。グラフ4C。Y軸:24時間武装させたeNK細胞と共に1時間インキュベートした後のBT20標的細胞の細胞生残率(パーセンテージで表す)。X軸:(左から右へ)(i)武装eNK細胞なし、(ii)非武装eNK細胞、(iii)10μg/mlのWT抗体で武装したeNK細胞、(iv)10μg/mlのSDH抗体で武装したeNK細胞、(v)1μg/mlのWT抗体で武装したeNK細胞、及び(vi)1μg/mlのSDH抗体で武装したeNK細胞と共にインキュベートしたBT20標的細胞。グラフ4D。標的細胞の存在下に置いた(下のグラフ)又は標的細胞なしでの(4Dの上のグラフ)武装eNK細胞。Y軸:武装eNK細胞の表面におけるCD107aの発現率(パーセンテージで表す)。X軸(左から右へ):(i)抗体なし、(ii)10μg/mlのFc WT抗体、(iii)10μg/mlのFc SDH抗体、(iv)1μg/mlのFc WT抗体、(v)1μg/mlのFc SDH抗体で武装したeNK細胞。結果は、3人のドナー由来のeNKを使用した2つの独立した実験を表している。
【0069】
図5において、武装eNK細胞の膜表面におけるFc SDH及びFc WT抗体(トラスツズマブ)の存在を表す。グラフ5A。Y軸:(上から下へ)(i)膜表面に存在する抗体と組み合わせた、及び(ii)細胞内ドメインに存在する抗体と組み合わせた、eNK細胞の数。X軸:(左から右へ)(i)抗体なし、(ii)Fc WT抗体、(iii)Fc SDH抗体に付着した抗Fc IgG FITCマーカーの平均蛍光強度(MFI)。グラフ5B及びグラフ5Cは、(i)Fcブロックポリペプチド;(ii)抗CD32抗体;(iii)抗CD16抗体クローンB73.1;(iv)抗CD16抗体に対する、A488(グラフ5B)又はA647(グラフ5C)Fc SDH標識抗体で武装したeNK細胞のFc受容体(CD16A)の競合状態を表すヒストグラムである。Y軸:(上から下へ)(i)Fcなし、(ii)競合体なし、(iii)Fcブロックポリペプチド、(iv)抗CD32抗体、(v)抗CD16抗体クローンB73.1、及び(vi)抗CD16抗体と共にインキュベートした、Fc SDHポリペプチドで武装したeNK細胞の数。X軸:Fc A488(グラフ5B)及びFc A647(グラフ5C)の平均蛍光強度(MFI)。結果は、1人のドナー由来のeNK細胞を使用した1つの実験を表している(ドナー当たり2回の疑似繰り返し)。
【0070】
図6において、(i)Fcなし、(ii)Fc LALA A647抗体、(iii)Fc WT A647抗体又は(iv)Fc SDH A647抗体で武装したeNK細胞の表面でのCD16受容体の発現を表す。結果は、1人のドナー由来のeNK細胞を使用した3つの実験を表している。グラフ6Aは、武装CD56/CD45/CD3 NK細胞上のCD16表面マーカーの結果を表すヒストグラムである。Y軸:(上から下へ)(i)Fcなし、(ii)Fc LALA A647抗体、(iii)Fc WT A647抗体、(iv)Fc SDH A647抗体で武装したeNK細胞の数。X軸:CD16の平均蛍光強度。グラフ6Bは、武装CD56/CD45/CD3 eNK細胞上のCD16表面マーカーの発現を表すグラフである。Y軸:武装eNK細胞上のCD16マーカーのパーセンテージでの発現。X軸:各条件について2日目、3日目及び7日目の(左から右へ)(i)抗体Fcなし、(ii)Fc LALA A647抗体、(iii)Fc WT A647抗体、(iv)Fc SDH A647抗体で武装したeNK細胞。
【0071】
図7Aにおいて、成体スイスヌードマウスから採取した腹水試料中のeNK細胞-Fc SDHのin vivoでの結合安定性を表す。Y軸:CD45(左)、CD56(中央)、CD16-/low又はCD16(右)武装eNK細胞の数。X軸:(i)SSC-A(左)、CD16(中央)、Fc A647(右)細胞の粒度測定。
【0072】
図7Bにおいて、成体スイスヌードマウスから採取した腹水試料中のeNK細胞-Fc SDHのin vivoでの結合安定性を表す。in vivo注射前後の全CD45/CD56 eNK細胞内の細胞Fc A647の比較。Y軸:(上から下へ)(i)Fcポリペプチドなし、(ii)注射前のFc SDH A647ポリペプチド、(iii)注射の24時間後のFc SDH A647ポリペプチドに付着したeNK細胞の数。X軸:A647の平均蛍光強度。
【0073】
図7Cにおいて、成体スイスヌードマウスの血液、骨髄(グラフ7C)及び脾臓(グラフ7D)試料中のeNK細胞-Fc SDHのin vivoでの結合安定性を表す。Y軸:血液(左)又は骨髄(右)試料中のCD45細胞の数。X軸:SSC-Aの平均蛍光強度。
【0074】
図7Dにおいて、成体スイスヌードマウスの血液、骨髄(グラフ7C)及び脾臓(グラフ7D)試料中のeNK細胞-Fc SDHのin vivoでの結合安定性を表す。Y軸:脾臓試料中のCD45(左)、及びCCD16-/low又はCD16 A647標識(数、右)細胞の数。X軸:SSC-A(左)、Fc A647(右)の平均蛍光強度。
【0075】
図8は、本発明による組換えポリペプチドの2つの例証的な実施形態を表す。
【0076】
図9Aにおいて、CD16a及びCD16bに対する、Fc WT抗体形態と比較した組換えFc SD(A)、Fc IE(B)、Fc SDIE(C)、Fc AL(D)、Fc ALIE(E)、Fc GASD(F)、Fc GASDALIE(G)、Fc GASDIE(H)、Fc SDALIE(I)、Fc SDHFIE(J)、Fc SDSTIE(K)及びFc SDH(L)抗体のin vitroでの結合親和性を表す。グラフは、参照値である組換えFc WT抗体(RTX-WT)と比較した、CD16a(明灰色)及びCD16b(暗灰色)に対する親和性を表す。Y軸:Fc WT(RTX-WT)と比較した親和性の改善の倍率。X軸:(左から右へ)Fc WT抗体(RTX-WT)、Fc SD抗体(RTX A)、Fc IE抗体(RTX-B)、Fc SDIE抗体(RTX-C)、Fc AL抗体(RTX-D)、Fc ALIE抗体(RTX-E)、Fc GASD抗体(RTX-F)、Fc GASDALIE抗体(RTX-G)、Fc GASDIE抗体(RTX-H)、Fc SDALIE抗体(RTX-I)、Fc SDHFIE抗体(RTX-J)、Fc SDSTIE抗体(RTX-K)及びFc SDH抗体(RTX-L)。
【0077】
図9Bにおいて、CD16細胞との抗体武装後、1時間~72時間の種々の組換えFc抗体のCD16細胞、すなわち、eNK細胞に対する結合の動態を表す。グラフは、武装後1時間、24時間、48時間又は72時間での、表面をFc WT抗体(RTX-WT)又は各組換えFc抗体でコーティングさせたCD56/CD45/CD16/CD3 eNK細胞のパーセントを表す。Y軸:各組換えFc抗体で武装したeNK細胞の頻度のパーセンテージ。X軸:1時間、24時間、48時間(未測定のRTX-L-Tを除く)及び72時間での、(左から右へ)Fc WT抗体(RTX-WT)、Fc SD抗体(RTX-A)、Fc IE抗体(RTX-B)、Fc SDIE抗体(RTX-C)、Fc AL抗体(RTX-D)、Fc ALIE抗体(RTX-E)、Fc GASD抗体(RTX-F)、Fc GASDALIE抗体(RTX-G)、Fc GASDIE抗体(RTX-H)、Fc SDALIE抗体(RTX-I)、Fc SDHFIE抗体(RTX-J)、Fc SDSTIE抗体(RTX-K)、G1m17,1アロタイプのFc SDH抗体(RTX-L-R)及びnG1m1アロタイプのFc SDH抗体(RTX-L-T)で武装したeNK細胞。グラフは、4人のドナー由来のNK細胞を使用した3つの独立した実験を表している。
【0078】
図10において、C2ドメインにFc SDH突然変異を含有する2つの異なる抗体によるCD16細胞、すなわち、eNK細胞の共武装を表す。CD56/CD45/CD16/CD3 eNK細胞を、抗トラスツズマブ抗体(Y軸:トラスツズマブ-Fc SDHで武装したCD56/CD45/CD16/CD3 eNK細胞の数)で、又は抗リツキシマブ抗体(X軸:リツキシマブ-Fc SDHで武装したCD56/CD45/CD16/CD3 eNK細胞の数)で分析した。左パネル:武装していないeNK細胞;中央パネル:RTX-SDHのみで又はTRAST-SDHのみで武装したeNK細胞;右パネル:RTX-SDH及びTRAST-SDHの両方で武装したeNK細胞。RTX-SDHは組換えFc SDHリツキシマブに対応し、TRAST-SDHは組換えFc SDHトラスツズマブに対応する。
【0079】
図11において、CD20癌細胞に対する組換えFc SDHリツキシマブによるex vivo武装CD16細胞、すなわち、eNK細胞の有効性を表す。Y軸:16時間インキュベーション後のBリンパ腫原発癌細胞に対するRTX-SDHで武装したNK細胞が誘導した特異的抗体媒介細胞傷害性のパーセンテージ。X軸:患者試料1~7。グラフは、4人のドナー由来のNK細胞を使用した4つの独立した実験を表している。
【0080】
詳細な説明
以下の実施例において詳細に説明するように、本発明者らは、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む組換えポリペプチドで武装したNK細胞が、in vitroの生理学的条件下で経時的に安定であったが、マウスにおけるin vivoでも経時的に安定であったことに注目した。具体的には、組換えポリペプチドをNK細胞上に武装させたときに、生理学的条件下で組換えポリペプチドを移動又は置換させることができないことが示された。より具体的には、本発明者らは、本発明による組換えポリペプチドで武装したこれらのNK細胞が、乳癌BT20標的細胞に対する強力な細胞傷害性を誘導する能力を示した。
【0081】
本発明の文脈において、(ナチュラルキラー)NK細胞は、本明細書に開示されるCD16細胞の一例である。
【0082】
有利には、本発明によれば、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系又は自系のNK細胞を、体内の細胞障害に関連する任意の疾患の治療又は予防に使用することができる。
【0083】
本明細書において使用される用語は、対象としている技術分野における共通の意味で使用され、用語が使用される明細書の文脈に関して使用される。或る特定の用語は、本発明及びそれらの使用に関して追加の指示を提供するために、以下か、又は本明細書の他の箇所で更に議論される。以下の定義は、本明細書及び特許請求の範囲に対して提供される。
【0084】
本発明の種々の実施形態の説明は、「含む」、「有する」、「のみからなる」及び「のみから本質的になる」を含む実施形態を含む。「有する(to have)」及び「含む(to comprise)」という用語、又は「有する(has)」、「有する(have)」、「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変化形は、記載された1つ又は複数の要素(組成物の要素であるもの又は方法の工程であるもの等)を含むが、他の要素を除外しないものを意味するものとして理解されるべきである。「のみからなる」という用語は、任意の追加の要素を除く、記載された1つ又は複数の要素を含むことを意味する。「のみから本質的になる」という表現は、記載された要素、及び他の要素が発明の新規及び基本的な特性に実質的に影響しない場合、潜在的に他の要素を含むことを意味する。文脈によれば、「含む」という用語は、記載された特性、整数、工程又は構成要素を厳密に含むこともでき、したがって、この場合、「のみからなる」に置き換えることができる。
【0085】
数値に関して本明細書で使用される「約(about)」又は「およそ(approximately)」という用語は、通常、対象としている技術分野における当業者によって特定される、対象としている値の一般的な誤差間隔を指す。特定の値又はパラメータに関する「約」という用語の使用には、この値又はこのパラメータが含まれ、そのように説明される。「約」という用語は、所与の値の±10%を指す。しかしながら、問題になっている値が、更に分割するとその同一性が失われる分割不可能な対象を指す場合は常に、「約」は分割不可能な対象の±1を指す。
【0086】
本明細書で使用される「個体」又は「患者」という用語は、特に哺乳類を指す。対象となる哺乳類としては、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類)、ウサギ及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態によれば、個体、又は患者はヒトである。
【0087】
本発明の文脈において、生理学的障害又は疾患に関して、「予防する」、「予防」という用語(及びこれらの表現の変化形)は、例えば、この疾患若しくは障害を有することが疑われる、又はこの疾患若しくは障害を発症するリスクがある個体における、疾患又は障害の予防的治療を指す。予防には、疾患の発症を予防すること又は遅らせること、及び/又は疾患の1つ又は複数の症状を所望のレベル又はより低いレベルに維持することが含まれるが、これらに限定されない。「予防する」という用語は、疾患又は障害の発生の可能性又は確率を100%排除することを必要としない。むしろ、この用語は、所与の現象が発生するリスク又は確率の程度をより低く抑えることを指す。示されるように、予防は完全であることができ、すなわち、検出可能な症状若しくは疾患がないか、又は症状が少ないか、若しくは症状が軽度であるような部分的なものであることができる。
【0088】
本発明の文脈において、「治療的有効量」及び「予防的有効量」という用語は、対象としている病的状態の治療、予防又は管理において治療的利点を提供する量を指す。治療的に有効である特定の量は、医師が容易に決定することができ、対象としている病的状態の種類及び段階、患者の治療歴、性別、体重及び年齢、患者の食事、並びに他の治療剤の投与等の要因に応じて変えることができる。
【0089】
本発明の意味において、変化の文脈で使用される「著しく(significantly)」という用語又は任意の派生用語は、観察された変化が顕著であるか、又は統計的有意性を有することを意味する。
【0090】
本発明の文脈において、「治療すること」、「治療」、「療法」又は「治療的」という用語は、有効成分、すなわち本発明による武装NK細胞、又はそのような有効成分を含む薬学的組成物を、疾患若しくは病理学的障害、又は1つ若しくは複数の関連症状を治癒、緩和、軽減若しくは減弱、又は改善する目的で、又はこの1つ若しくは複数の症状又はこの疾患の進行を予防又は遅らせるために、又はこの1つ若しくは複数の症状、又はこの疾患又はこの病理学的障害の発症を停止するために、統計的に有意な方法で投与又は消費することを指す。より具体的には、「治療すること」又は「治療」には、個体における疾患に関して有益な効果又は所望の結果を得るための任意のアプローチが含まれる。有益な又は所望の臨床結果としては、疾患又はそのような疾患の1つ若しくは複数の症状の減弱又は改善;疾患の程度の減少又は軽減、安定化、すなわち、疾患、又はそのような疾患の1つ若しくは複数の症状の悪化がないこと;疾患、又はそのような疾患の1つ若しくは複数の症状の予防;疾患、又はそのような疾患の1つ若しくは複数の症状の伝播の予防;疾患、又はそのような疾患の1つ若しくは複数の症状、又はそのような疾患の1つ以上の症状の進行を遅らせること;関連する疾患、又はそのような疾患の1つ若しくは複数の症状の再発の減少;及び疾患、又はそのような疾患の1つ若しくは複数の症状の中断を挙げることができるが、これらに限定されない。換言すれば、本明細書で使用される「治療」は、疾患、又はそのような疾患の1つ若しくは複数の症状のあらゆる回復、改善、軽減又は中断を含む。症状又は疾患の「軽減」とは、疾患若しくは症状の重症度若しくは頻度の減少、又は疾患若しくは症状の排除を意味する。
【0091】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈において特に明示的に示されない限り、複数形を含む。
【0092】
「薬学的に許容される」又は「生理学的に許容される」とは、ビヒクル(担体、希釈剤、又は賦形剤)が製剤の他の成分と適合性があり、それを含む組成物が投与される個体に対して無害でなければならないことを意味する。薬学的に許容されるビヒクルは、具体的には、薬学分野で使用するのに必要とされる安全性、適合性、及び不活性の基準に従って、申し分のないものとして知られているビヒクルである。薬学的に許容されるビヒクルの例として、滅菌水、スクロース若しくはサッカロース等の糖類、デンプン、ソルビトール等の糖アルコール、PVP若しくはPEG等のポリマー、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、防腐剤、染色剤又は香料を挙げることができる。
【0093】
本発明の文脈において、「生理学的に許容されるビヒクル」という表現は、本発明の有効成分が投与される個体の生物と適合性がある任意の物質又は組成物を指すことを目的とする。特に、生理学的に許容されるビヒクルは、個体への投与が著しい有害作用をもたらさない物質又は組成物である。例えば、水又は生理食塩水等の毒性のない溶媒であり得る。特に、そのようなビヒクルは、経口又は直腸投与と適合性があり、経口投与に適合することが好ましい。
【0094】
以下に示される原料、成分及び構成要素のリストは、本発明の文脈において、それらの任意の組み合わせ及び混合物も検討されるように記載されていると理解される。
【0095】
本明細書に示されている任意の最大数値限定は、任意のより低い数値限定を含み、これらのより低い数値限定が明示的に記載されているものとして理解される。本明細書に示されている任意の最小数値限定は、任意のより高い数値限定を含み、これらのより高い数値限定が明示的に記載されていると考える。本明細書の全体を通して示されている任意の数値間隔は、そのようなより広い数値間隔に含まれる任意のより狭い数値間隔を含み、これらのより狭い数値間隔が全て明示的に記載されていると考える。
【0096】
例えば、成分のリスト等の本明細書に示される任意のリストは、マーカッシュ群として意図されており、そのように解釈されるべきである。したがって、任意のリストは、要素のリスト「からなる群より選択される」要素「並びにそれらの組み合わせ及び混合物」として読み取られ、解釈することができる。
【0097】
以下、本明細書において使用されるいくつかの成分を含む構成要素の商標名を参照することができる。本発明者らは、特定の商標名を有する材料に限定することを意図していない。商標名を用いて本明細書に示したものと同等の材料(例えば、異なる名称又は参照番号を有する異なる供給元から入手したもの)は、以下の説明で置換及び使用することができる。
【0098】
「非経口投与」という用語は、経腸及び局所投与以外の、一般的には注射による、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内経路による投与経路を指し、注射及び灌流を含むが、これらに限定されない。
【0099】
本発明の文脈において、本発明の意味における2つの核酸又はアミノ酸配列間の「同一性パーセンテージ」とは、比較される2つの配列間で同一であるヌクレオチド又はアミノ酸残基のパーセンテージを指すことを意味し、最良のアラインメント(最適なアラインメント)の後に得られ、このパーセンテージは単に統計的なものであり、2つの配列間の差異はそれらの長さ全体を通してランダムに分布する。2つの核酸又はアミノ酸配列間の配列比較は、従来より、最適に位置合わせされた後にこれらの配列を比較して実施され、上記比較は、セグメント又は「比較域(comparison window)」によって実施することができる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手動以外に、BLAST等の比較ソフトウェアを用いて実施することができる。したがって、「少なくとも約70%の配列同一性パーセンテージ」には、具体的には、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性パーセンテージが含まれる。
【0100】
本明細書で使用される場合、「+」は、特定の細胞マーカーの存在を示すために使用される場合、細胞マーカーが、アイソタイプ対照に対して蛍光活性化セルソーティングによって検出可能であるか、又は定量若しくは半定量RT-PCRにおいて、又はマーカー検出を可能にする任意の他のよく知られた技術を使用してバックグラウンドを超えて検出可能であることを意味する。
【0101】
本発明の文脈において、「CD16細胞」とは、FcγRIII/CD16について「+」/「陽性」である細胞又は細胞の集団を意味し、FcγRIII/CD16の細胞上又は細胞内の検出可能な存在を指す。任意の起源、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト由来のCD16細胞。「CD16細胞」はまた、FcγRIII/CD16を自然に発現する非改変細胞、又はFcγRIII/CD16の発現若しくは過剰発現を可能にするように一時的に改変された細胞、又はFcγRIII/CD16を発現若しくは過剰発現するように安定に形質転換された細胞を指す。一時的又は安定な改変は、細胞を化学的若しくは生物学的試薬(複数の場合もある)に、又はヌクレオチド剤をトランスフェクトすることによる遺伝子改変細胞に曝露する等の科学的知識からよく知られた改変を指すが、これらに限定されない)。例えば、「CD16細胞」という用語は、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、単球、樹状細胞及びマクロファージを包含する。
【0102】
本発明の文脈において、「武装CD16細胞」とは、組換えポリペプチドと組み合わせた、CD16細胞、好ましくはCD16細胞を必要とする個体に関して同種異系又は自系のCD16細胞、より好ましくはCD16細胞を必要とする個体に関して同種異系のCD16細胞を意味し、(i)改変Fc領域又はその変異体、好ましくは改変C2ドメインを含むものと、(ii)リガンド結合ドメインとを含む。
【0103】
「武装CD16細胞」とは、[CD16細胞]-[式(I)の組換えポリペプチド]等のコンストラクト(C)の化合物を意味する。したがって、「武装CD16細胞」は、コンストラクト(D):[CD16細胞]-[[改変Fc領域]-[リンカー]-[リガンド結合ドメイン]]の化合物を包含する。
【0104】
コンストラクトC又はDのそれぞれにおいて、式(I)の組換えポリペプチドは、共有結合によってCD16細胞に付着していない。これに対して、コンストラクト(C)又は(D)のそれぞれにおいて、式(I)のペプチドは、特に受容体/受容体リガンド型の会合によって、非共有結合様式でCD16細胞に付着している。
【0105】
本発明の文脈において、「抗体」又は「抗原結合ポリペプチド」は、1つ以上の抗原を特異的に認識し、結合するポリペプチド又はポリペプチド複合体を指す。抗体は、抗体全体又は任意の抗原結合フラグメント又はそれらの単鎖であり得る。したがって、「抗体」という用語には、抗原に結合する生物活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む任意のタンパク質又はペプチドが含まれる。例としては、重鎖/軽鎖の相補性決定領域(CDR)若しくはそのリガンド結合部分、重鎖若しくは軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域若しくはその任意の一部、又は結合タンパク質の少なくとも一部が挙げられるが、これらに限定されない。抗体という用語はまた、活性化時に抗原結合能力を有するポリペプチド又はポリペプチド複合体を包含する。本明細書で使用される「抗体フラグメント」又は「抗原結合フラグメント」という用語は、例えばF(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、単鎖可変フラグメント(scFv)等の抗体、例えば、二重特異性抗体の一部である。構造に関係なく、抗体フラグメントは、インタクトな抗体によって認識される同じ抗原に結合する。
【0106】
他のリガンド結合ドメイン、及び抗体フラグメント」の代替物には、アプタマー及びシュピーゲルマー(spiegelmers)等の核酸ベースのリガンドが含まれる場合がある。
【0107】
「抗体フラグメント」という用語にはまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する、任意の合成又は遺伝子操作されたタンパク質、又はポリペプチドが含まれる。本発明による抗体、抗原結合ポリペプチド、又はそれらの変異体若しくは誘導体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体(primatized antibody)又はキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv))、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(scFv)、VK又はVHドメインを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーから生成されたフラグメント、及び抗Id抗体(例えば、本明細書に開示される抗Id抗体及びLIGHT抗体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の免疫グロブリン又は抗体分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、種(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)又はサブタイプの免疫グロブリン分子であってもよい。
【0108】
本発明の文脈において、「抗体由来のリガンド結合ドメイン」は、標的物質、標的化合物、標的分子、又は更に標的細胞等の標的リガンドに結合することができる配列を指し、(i)例えば、標的細胞の特異的抗原に結合することができるリガンド結合ドメイン、若しくは上記標的に結合することができる抗体の抗原結合ドメイン等の、天然若しくは腫瘍抗原に結合することができる配列、又は(ii)例えば、細胞受容体に結合することができるリガンド結合ドメイン、若しくは抗体の抗原結合ドメインに結合することができるリガンド結合ドメインであり、その場合には、リガンド結合ドメインは、上記抗体の抗原結合ドメインによって認識される抗原を含むか、又はそれのみからなる。
【0109】
本明細書で使用される「抗原結合フラグメント」又は「抗原結合ドメイン」又は「抗体由来のリガンド結合ドメイン」という用語は、特に、所与の抗原/リガンドに特異的に結合する能力を保持するインタクトな抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、インタクトな抗体のフラグメントによって行うことができる。抗体の抗原結合フラグメントという用語内に包含される結合フラグメントの例としては、VL、VH、CL及びCH1ドメインのみからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;VL、VH、CL、CH1ドメイン及びヒンジ領域のみからなる一価フラグメントであるFab’フラグメント;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab’フラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)フラグメント;抗体の単一アーム(single arm)のVHドメインのみからなるFdフラグメント;VHドメイン又はVLドメインのみからなる単一ドメイン抗体(sdAb)フラグメント(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);及び単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVL及びVHは別個の遺伝子によってコードされているが、それらを、VL領域及びVH領域を対にして一価の分子(単鎖Fv(ScFv)として知られている;例えば、Bird et al., 1989 Science 242:423-426、及びHuston et al., 1988 proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883を参照のこと)を形成する単一のタンパク質鎖として作製することができる人工ペプチドリンカーにより、組換え法を使用することで、それらを結合することができる。「dsFv」は、ジスルフィド結合によって安定化されたVH::VLヘテロ二量体である。二価及び多価抗体フラグメントは、一価scFvの会合によって自発的に形成されるか、又は二価sc(Fv)2等、ペプチドリンカーによって一価scFvをカップリングすることによって生成することができる。そのような単鎖抗体には、抗体の1つ以上の抗原結合部分又はフラグメントが含まれる。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られている従来技術を使用して得られ、フラグメントはインタクトな抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。ユニボディは、IgG4抗体のヒンジ領域を欠く別のタイプの抗体フラグメントである。ヒンジ領域の欠失により、分子は基本的に従来のIgG4抗体のサイズの半分になり、IgG4抗体の二価結合領域ではなく一価結合領域を有するようになる。抗原結合フラグメントは、単一ドメイン抗体、SMIP、マキシボディ(maxibodies)、ミニボディ(minibodies)、細胞内抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体(triabodies)及び四重特異性抗体(tetrabodies)中へ組み込むことができる(例えば、Hollinger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 9, 1126-1136を参照のこと)。「二重特異性抗体」、「三重特異性抗体」又は「四重特異性抗体」という用語は、多価抗原結合部位(2つ、3つ又は4つ)を有する小さな抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH-VL)における軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間でペアリングを可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的なドメインと強制的にペアリングされ、2つの抗原結合部位を生成する。抗原結合フラグメントは、一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む単鎖分子中へ組み込むことができ、これは、相補的軽鎖ポリペプチドと共に、一対の抗原結合領域を形成する(Zapata et al., 1995 Protein Eng. 8(10); 1057-1062及び米国特許第5,641,870号)。
【0110】
本発明のFabは、標的抗原/リガンドと特異的に反応する抗体をプロテアーゼであるパパインで処理することによって得ることができる。また、抗体のFabをコードするDNAを原核生物発現系用ベクター、又は真核生物発現系用ベクターに挿入し、ベクターを原核生物又は真核生物に(必要に応じて)に導入して、Fabを発現させることにより、Fabを製造することができる。
【0111】
本発明のF(ab’)2は、標的抗原と特異的に反応する抗体をプロテアーゼであるペプシンで処理することによって得ることができる。また、F(ab’)2は、以下で説明するFab’をチオエーテル結合又はジスルフィド結合を介して結合させることにより製造することができる。
【0112】
本発明のFab’は、標的抗原と特異的に反応するF(ab’)2を還元剤であるジチオスレイトールで処理することによって得ることができる。
【0113】
本発明の文脈において、「FcγRIIIa/CD16a表面タンパク質」は、主に免疫細胞の細胞表面に発現する、FcγRIIIAとしても知られている活性化受容体CD16aを指す。CD16aは、免疫細胞の抗体依存性細胞傷害活性を引き起こす活性化受容体である。例えば、FcγRIIIa/CD16a表面タンパク質細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球のサブセット、樹状細胞、及び希少T細胞を包含する。
【0114】
本発明の文脈において、「FcγRIIIb/CD16b表面タンパク質」は、主に白血球の細胞表面に発現する、FcγRIIIBとしても知られている活性化受容体CD16Bを指す。例えば、FcγRIIIb/CD16b表面タンパク質細胞は、NK細胞及び好中球を包含する。
【0115】
本発明の文脈において、「武装NK細胞」とは、組換えポリペプチドと組み合わせた、NK細胞、好ましくはNK細胞を必要とする個体に関して同種異系又は自系のNK細胞を意味し、(i)改変Fc領域又はその変異体、好ましくは改変C2ドメインを含むものと、(ii)リガンド結合ドメインとを含む。
【0116】
「武装NK細胞」とは、[NK細胞]-[式(I)の組換えポリペプチド]等のコンストラクト(A)の化合物を意味する。したがって、「武装NK細胞」は、コンストラクト(B):[NK細胞]-[[改変Fc領域]-[リンカー]-[リガンド結合ドメイン]]の化合物を包含する。
【0117】
コンストラクトA又はBのそれぞれにおいて、式(I)の組換えポリペプチドは、共有結合によってNK細胞に付着していない。これに対して、コンストラクト(A)又は(B)のそれぞれにおいて、式(I)のペプチドは、特に受容体/受容体リガンド型の会合によって、非共有結合様式でNK細胞に付着している。
【0118】
「リガンド結合ドメイン」単位を含む式(I)のポリペプチドにおいて、上記「リガンド」は、(i)式(I)の組換えポリペプチドに含まれる上記リガンド結合ドメインが上記リガンドを結合することができる限り、任意のタイプであることができる。
【0119】
式(I)のポリペプチドの或る特定の実施形態において、リガンド結合ドメインは、受容体によって認識される分子、例えば、標的細胞によって発現される受容体によって認識される分子、又は更に抗体の抗原結合ドメインによって認識される分子からなり得る。最後の場合において、抗体の抗原結合ドメインによって認識される式(I)の組換えポリペプチドに含まれるリガンド結合ドメインは、「抗原」と呼ばれることもある。
【0120】
式(I)のポリペプチドの他の実施形態において、リガンド結合ドメインは、抗体の抗原結合ドメインを含む。これらの他の実施形態において、リガンドは、標的細胞によって発現される分子、例えば、標的腫瘍抗原、標的細胞マーカータンパク質、又は更に標的細胞受容体等の、上記抗体結合ドメインによって認識される分子である。
【0121】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、少なくとも1種類の動物抗体の重鎖又は軽鎖抗体の可変ドメインのうちの少なくとも1つと実質的な相同性を含有するか、又は保存するドメインに結合する少なくとも1つのリガンドを含むFcドメインを含むポリペプチドの特定の形態である。野生型ヒトIgGサブクラスの定常配列は、P01857(IgG1)、P01859(IgG2)、P01860(IgG3)及びP01861(IgG4)の名称にてオンラインで利用可能なUniProtデータベースにおいて分類されている。本明細書において、「野生型ヒトIgG1のFc領域」という表現は、配列番号15のアミノ酸配列又はこの配列番号15のフラグメントによって示すことができるヒトIgG1のFc領域を指す。
【0122】
本明細書において、「野生型ヒトIgG1のFc領域」という表現は、配列番号16のアミノ酸配列又はこの配列番号16のフラグメントによって示すことができるヒトIgG1のFc領域を指す場合もある。
【0123】
本明細書において、「野生型ヒトIgG1のC2ドメイン」という表現は、配列番号1のアミノ酸配列又はこの配列番号1のフラグメントによって示すことができるヒトIgG1のFc領域の一部に関する。
【0124】
具体的には、配列番号15又は配列番号16は、配列番号1を含む。
【0125】
配列番号16は、配列番号17を含む。
【0126】
「IgGのFc領域のリガンド」とは、IgG型、特にIgG1型抗体のFc領域を結合して非共有結合複合体を形成するのに適した分子、好ましくはポリペプチドを意味する。非限定的な方法において、そのようなFcリガンドには、ポリペプチドFcγR、FcRn、C1q、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌プロテインA、連鎖球菌プロテインG、及びウイルス起源FcγRが含まれる。Fcリガンドには、特に、Fc受容体ホモログ(FcRH)(Davis et al., 2002, Immunological Reviews 190:123-136)が含まれる。
【0127】
「Fcγ受容体」又は「Fc受容体」又は「FcγR」、又は「FcガンマR」とは、FcγR遺伝子によってコードされ、IgG型、より具体的にはIgG1型抗体のFc領域の結合に適したタンパク質ファミリーの任意のメンバーを意味する。ヒトにおいて、このファミリーには、FcγRIa、FcγRIb、及びFcγRIcのアイソフォームを含むFcγRI(CD64);FcγRIIa(H131及びR131のアロタイプを含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1及びFcγRIIb-2を含む)、及びFcγRIIcのアイソフォームを含むFcγRII(CD32);並びにFcγRIIIa(V158及びF158のアロタイプを含む)及びFcγRIIIb(FcγRIIb-NA1及びFcγRIIb-NA2のアロタイプを含む)のアイソフォームを含むFcγRIII(CD16)が含まれるが、これらに限定されない。FcγRは、具体的にはヒト、マウス、ラット及びサルを含む、任意の種類の生物に由来することができる。
【0128】
本発明による改変Fc領域を認識するのに適した最も具体的なFcγR受容体は、FcγRIII(CD16)受容体及びそのアイソフォームである。
【0129】
「Fc領域」とは、抗体Fcフラグメントの全部若しくは一部、又は「フラグメント結晶化可能領域(Fc領域)」を意味し、一般に、ヒンジ部分を越えた重鎖定常部分からなり、C2及びC3ドメイン、すなわち、それぞれ「重鎖定常ドメイン2」及び「重鎖定常ドメイン3」を含む。また、この用語は、IgA、IgD及びIgE型免疫グロブリンの最後の2つの定常領域、IgM及びIgE型免疫グロブリンの最後の3つの定常領域、並びに上記領域のN末端ヒンジ部分を包含する。
【0130】
具体的には、ヒトIgG型抗体、最も具体的にはIgG1型抗体のFcフラグメントの全部又は一部を意味する。
【0131】
或る特定の具体的な実施形態によれば、上記Fc領域は、C2-C3領域、C2領域、又はC3領域の全部又は一部を含むことができる。
【0132】
「改変Fc領域」又は「変異Fc領域」とは、ヒトIgG1の参照Fc領域等の参照Fc領域の改変型に対応するポリペプチド配列を意味する。したがって、本発明の意味における改変Fc領域は、抗体Fcフラグメント、特にヒトIgG1 Fcフラグメントの参照配列とは、1つ又は複数のアミノ酸改変により異なる。そのような改変領域は、組換えポリペプチド、上記組換えポリペプチドを含む組成物(例えば、薬学的組成物)に無差別に関連することができる。
【0133】
或る特定の実施形態によれば、上記改変Fc領域は、上記参照配列(特に、ヒトIgG1の上記参照配列)に関して少なくとも1つのアミノ酸改変を有し、これは、上記参照配列に関して少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上の改変を包含する。或る特定の実施形態によれば、上記改変Fc領域は、上記参照(特に、ヒトIgG1の上記参照配列)に関して少なくとも70%の配列同一性を含む。
【0134】
好ましい実施形態によれば、上記改変Fc領域は、CD16細胞によって発現されるFcγRIII(CD16)表面タンパク質に関して調節された親和性を有する。
【0135】
好ましい実施形態によれば、上記改変Fc領域は、CD16細胞によって発現されるFcγRIII(CD16)表面タンパク質に関して、増加又は減少した親和性を有する。
【0136】
或る特定の好ましい代表的実施形態によれば、上記改変Fc領域は、NK細胞、又は必要に応じて、任意のその前駆体によって発現されるFcγRIII(CD16)表面タンパク質に関して調節された親和性を有する。
【0137】
特に、これらの実施形態のいくつかによれば、上記改変Fc領域は、NK細胞、又は必要に応じて、任意のその前駆体によって発現されるFcγRIII(CD16)表面タンパク質に関して増加した親和性を有する。
【0138】
或る特定の代替的実施形態によれば、上記改変Fc領域は、NK細胞、又は必要に応じて、任意のその前駆体によって発現されるFcγRIII(CD16)表面タンパク質に関して減少した親和性を有する。
【0139】
先の発明の文脈において議論された、及び配列番号1に関して配列番号2~配列番号14の配列で定義されるもの等のFc領域内の改変に関連する全ての位置について、特に明示のない限り、Edelman(Edelman et al., 1969, Proc Natl Acad Sci USA 63:78-85、引用することにより本明細書の一部をなす)を参照することによりEU番号付けが参照される。特に、上記改変は、付加、欠失又は置換であることができる。置換には、特に任意の天然又は非天然アミノ酸を含めることができる。
【0140】
「1~100アミノ酸」を含むポリペプチド配列には、具体的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100アミノ酸のアミノ酸配列が含まれる。
【0141】
本発明の文脈において、「アミノ酸の改変」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入及び/又は欠失を意味する。「アミノ酸置換」又は「置換」とは、野生型ポリペプチド配列における特定の位置にあるアミノ酸を別のアミノ酸で置換することを意味する。例えば、S239D置換は、239位のセリンがアスパラギン酸で置換された変異ポリペプチド、この場合はFc変異体を指す。本明細書の意味における「アミノ酸の挿入」又は「挿入」は、親ポリペプチド配列における特定の位置へのアミノ酸の付加である。例えば、G>235~236の挿入は、235位と236位との間のグリシンの挿入を指す。本明細書における「アミノ酸の欠失」又は「欠失」とは、親ポリペプチド配列におけるレベルでのアミノ酸の除去を意味する。例えば、G236は、236位におけるグリシンの欠失を指す。
【0142】
本明細書における「位置」とは、タンパク質又はポリペプチド配列における位置を意味する。位置には、順番に番号を付けることも、例えば、カバットにおけるようなEUインデックスのように、確立された形式に従って番号を付けることもできる。本発明においてアプローチされる任意の位置について、番号付けは、EU抗体の番号付けに関するEU番号付けに従う(Edelman et al., 1969, Proc Natl Acad Sci USA 63:78-85、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)。カバット番号付けとの対応関係は、対応表によって確立することができる。IMGT unique numbering for C-DOMAIN(http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.html)。
【0143】
本明細書における「IgG」とは、認識されたガンマ免疫グロブリン遺伝子によって本質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。ヒトにおいて、このIgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラス又はアイソタイプを含む。マウスにおいて、IgGは、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3を含む。本明細書における「アイソタイプ」とは、その定常領域の化学的及び抗原的特性によって定義される任意の免疫グロブリンサブクラスを意味する。ヒト免疫グロブリンの既知のアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD及びIgEである。
【0144】
「抗体依存性細胞傷害」又は「ADCC」は、分泌されたIgが或る特定の細胞傷害性(例えば、ナチュラルキラー(NK))細胞上に存在するFc受容体(FcγR)に付着し、上記細胞傷害性細胞が抗原に特異的に結合することを可能にし、次いで、標的細胞を細胞毒で破壊するための細胞傷害性の形態を指す。標的細胞表面を標的とするリガンドに特異的なIgG抗体は、細胞傷害性細胞を刺激し、その死滅に必要である。標的溶解は細胞外で行われ、細胞間の直接接触を必要とし、いかなる補体を意味するものではない。ADCCによる標的細胞溶解を媒介する任意の抗体又はポリペプチドの能力を試験することができる。ADCCを評価するために、対象抗体を、標的リガンドを提示する標的細胞に添加し、抗原-抗体複合体によって活性化することができるエフェクター細胞(例えば、NK細胞)と組み合わせて、標的細胞の細胞溶解を引き起こす。細胞溶解は一般に、溶解した細胞のマーカー(例えば、放射性基質、蛍光色素(A647又はA688)又は天然の細胞内タンパク質)の放出により検出される。これらの分析に有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びNK細胞を含む。in vitro ADCC試験の具体例は、Wisecarver et al., 1985, 19: 211、Bruggemann et al., 1987, J Exp Med 166:1351、Wilkinson et al., 2001, J Immunol Methods 258:183、Patel et al., 1995 J Immunol Methods 184:29に記載されている。代替的に、又はさらに、対象抗体のADCC活性は、例えば、Clynes et al., 1998, PNAS USA 95:652に開示されているもの等の動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。
【0145】
本明細書における「標的細胞」とは、本発明による武装NK細胞によって認識することができる標的抗原を発現する細胞、又は本発明による武装NK細胞によって提示される抗原を認識することができる抗体を発現する細胞を意味する。例えば、標的細胞は、癌細胞、病原体に感染した細胞、自己反応性B細胞、自己反応性T細胞であり得る。
【0146】
「野生型又はWT」とは、本明細書において、対立遺伝子変異を含む、自然界に見られるアミノ酸配列を意味する。WTタンパク質、ポリペプチド、抗体、免疫グロブリン、IgG等、意図的に改変されていないアミノ酸配列又はヌクレオチド配列。
【0147】
組換えポリペプチド
本発明は、NK細胞又はNK細胞前駆体に付着するのに適した組換えポリペプチドを使用する。
【0148】
この組換えポリペプチドは、(i)野生型の同じポリペプチドに関して組換えポリペプチドの結合特性を改善する改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む。例えば、そのような改変Fc領域を含むポリペプチドは、Fc受容体に関して、より具体的にはFcγRIII受容体(CD16)に関して、増加した安定性及び結合特異性を有する。さらに、そのような改変Fc領域を含む組換えポリペプチドは、細胞膜で上記ポリペプチドを安定化させ、ポリペプチドの内部移行を阻害することを可能にする。したがって、本発明の組換えポリペプチドは、親の非改変ポリペプチド、すなわち、野生型ポリペプチドの最適化バージョンである。より正確には、組換えポリペプチドは、(i)Fc受容体への付着を可能にする、2つのC2及びC3ドメイン(C2ドメイン及び/又はC3ドメイン)を含むヒンジ部分を越えた定常重鎖部分のみからなるFc領域と、(ii)標的細胞の認識を可能にする、リガンドに結合することができる領域とを含む。
【0149】
IgG抗体の文脈において、IgGアイソタイプのそれぞれは、3つのCH領域を有する。したがって、IgGの文脈における「CH」ドメインは以下の通りである。「C1」は、EU番号付けによる118位~215位を指す。「C2」は、EU番号付けによる231位~340位を指し、「C3」は、EU番号付けによる341位~446位を指す。
【0150】
或る特定の実施形態によれば、本発明による組換えポリペプチドは、式(I):
[改変Fc領域]-[リンカー]-[リガンド結合ドメイン]
を有し、
式中、
[改変Fc領域]は、本明細書に記載の、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域の改変C2ドメインの種々の実施形態から選択され、
Xは、0又は1に相当する整数であり、
[リンカー]は、1~100アミノ酸を有するポリペプチド配列を含み、
[リガンド結合ドメイン]は、標的物質、標的化合物、標的分子、又は更に標的細胞等の標的リガンドに結合することができる配列を含み、(i)例えば、標的細胞の特異的抗原に結合することができるリガンド結合ドメイン、若しくは上記標的に結合することができる抗体の抗原結合ドメイン等の、天然若しくは腫瘍抗原に結合することができる配列、又は(ii)例えば、細胞受容体に結合することができるリガンド結合ドメイン、若しくは抗体の抗原結合ドメインに結合することができるリガンド結合ドメインであり、その場合には、リガンド結合ドメインは、上記抗体の抗原結合ドメインによって認識される抗原を含むか、又はそれのみからなる。
【0151】
改変Fc領域は、例えば、ヒンジ領域又はC2又はC3において、野生型アミノ酸配列に関して1つ又は複数の(例えば、1~10以上)のアミノ酸置換又は欠失を有する野生型アミノ酸配列であり得る。したがって、Fc領域のアミノ酸配列は、野生型ポリペプチドのFc領域のアミノ酸配列(例えば、ヒトIgG1のC2ドメインに関して、「Fc WT」と呼ばれ、配列番号1を含む)と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%以上(すなわち、96%、97%、98%、99%又は100%)のアミノ酸配列同一性を有する。
【0152】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域は、野生型ポリペプチドのFc領域のアミノ酸配列(例えば、配列番号15又は代替的に配列番号16)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。アミノ酸配列は、例えば、ジスルフィド結合の形成を減少させる、他の改変を更に含むことができる。或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、野生型ヒトIgGのFc領域に関して1つ又は複数のアミノ酸の置換を含む。
【0153】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域は、ヒトIgGのC2ドメイン、例えば、野生型ヒトIgG1のC2ドメインと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。C2ドメインは、他の改変(例えば、エフェクター機能の軽減又は除去)を含有することができる。
【0154】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域は、IgGのC3ドメイン、例えば、野生型ヒトIgG1のC3ドメインと少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。C3ドメインは、特定のアロタイプを付与するための他の改変を更に含むことができる。一方、C3ドメインは、野生型ヒトIgG1の異なるアロタイプに関して改変を含むことができる。或る特定の場合において、C3ドメインは、野生型ヒトIgG1のC3ドメインのアミノ酸配列に対応する。
【0155】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域は、230、233、234、235、236、239、240、243、264、266、268、272、274、275、276、278、302、318、324、325、326、327、328、329、330、331、332及び335からなる群より選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、Fc領域におけるアミノ酸番号付けはEU番号付けに従う。或る特定の好ましい実施形態において、上記改変Fc領域は、P230E、P230Y、P230G、E233N、E233Q、E233K、E233R、E233S、E233T、E233H、E233A、E233V、E233L、E233I、E233F、E233M、E233Y、E233W、E233G、L234K、L234R、L234S、L234A、L234M、L234W、L234P、L234G、L234A、L235E、L235K、L235R、L235A、L235A、L235M、L235W、L235P、L235G、G236D、G236E、G236A、G236N、G236Q、G236K、G236R、G236S、G236T、G236H、G236A、G236V、G236L、G236I、G236F、G236M、G236Y、G236W、G236P、S239Q、S239K、S239R、S239V、S239L、S239I、S239M、S239D、S239W、S239P、S239G、F243E、V264D、V264E、V264N、V264Q、V264K、V264R、V264S、V264H、V264W、V264P、V264G、H268D、H268E、H268Q、H268K、H268R、H268T、H268V、H268L、H268I、H268F、H268M、H268W、H268P、H268G、E272D、E272R、E272T、E272H、E272V、E272L、E272F、E272M、E272W、E272P、E272G、K274D、K274N、K274S、K274H、K274V、K274I、K274F、K274M、K274W、K274P、K274G、F275L、N276D、N276T、N276H、N276V、N276I、N276F、N276M、N276W、N276P、N276G、278D、Y278N、Y278Q、Y278R、Y278S、Y278H、Y278V、Y278L、Y278I、Y278M、Y278P、Y278G、E318Q、E318H、E318L、E318Y、S324H、S324F、S324M、S324W、S324P、S324G、S324T、N325K、N325R、N325S、N325F、N325M、N325Y、N325W、N325P、N325G、K326P、A327E、A327K、A327R、A327H、A327V、A327I、A327F、A327M、A327Y、A327W、A327P、L328D、L328Q、L328K、L328R、L328S、L328T、L328V、L328I、L328Y、L328W、L328P、L328G、P329D、P329E、P329N、P329Q、P329K、P329G、P329R、P329S、P329T、P329H、P329V、P329L、P329I、P329M、P329Y、P329W、P329G、A330E、A330L、A330N、A330T、A330P、A330G、P331D、P331Q、P331R、P331T、P331L、P331I、P331F、P331M、P331Y、P331W、I332K、I332R、I332S、I332E、I332V、I332L、I332F、I332M、I332W、I332P、I332G、E333L、E333F、E333M、E333P、K334P、T335N、T335S、T335H、T335V、T335L、T335I、T335F、T335M、T335W、T335P、及びT335Gからなる群より選択されるアミノ酸置換を含み、Fc領域におけるアミノ酸番号付けはEU番号付けに従う。
【0156】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239Dを含む。
【0157】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332Eを含む。
【0158】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S324Tを含む。
【0159】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換H268Fを含む。
【0160】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換A330Lを含む。
【0161】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換G236Aを含む。
【0162】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D及びI332Eを含む。
【0163】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D及びS324Tを含む。
【0164】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D及びH268Fを含む。
【0165】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D及びA330Lを含む。
【0166】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D及びG236Aを含む。
【0167】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332E及びS324Tを含む。
【0168】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332E及びH268Fを含む。
【0169】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332E及びA330Lを含む。
【0170】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332E及びG236Aを含む。
【0171】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S324T及びH268Fを含む。
【0172】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S324T及びA330Lを含む。
【0173】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S324T及びG236Aを含む。
【0174】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換H268FL及びA330Lを含む。
【0175】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換H268F及びG236Aを含む。
【0176】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換A330L及びG236Aを含む。
【0177】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びS324Tを含む。
【0178】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びH268Fを含む。
【0179】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びA330Lを含む。
【0180】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E及びG236Aを含む。
【0181】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、S324T及びH268Fを含む。
【0182】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、S324T及びA330Lを含む。
【0183】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、S324T及びG236Aを含む。
【0184】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、H268F及びA330Lを含む。
【0185】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、H268F及びG236Aを含む。
【0186】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、A330L及びG236Aを含む。
【0187】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332E、S324T及びH268Fを含む。
【0188】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332E、S324T及びA330Lを含む。
【0189】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332E、S324T及びG236Aを含む。
【0190】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S324T、H268F及びS239Dを含む。
【0191】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S324T、H268F及びA330Lを含む。
【0192】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S324T、H268F及びG236Aを含む。
【0193】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換H268F、A330L及びS239Dを含む。
【0194】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換H268F、A330L及びI332Eを含む。
【0195】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換H268F、A330L及びG236Aを含む。
【0196】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換A330L、G236A及びS239Dを含む。
【0197】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換A330L、G236A及びI332Eを含む。
【0198】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換A330L、G236A及びS324Tを含む。
【0199】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換A330L、G236A及びH268Fを含む。
【0200】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E、S324T及びH268Fを含む。
【0201】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E、S324T及びA330Lを含む。
【0202】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E、S324T及びG236Aを含む。
【0203】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E、H268F及びA330Lを含む。
【0204】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E、H268F及びG236Aを含む。
【0205】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S239D、I332E、A330L及びG236Aを含む。
【0206】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332E、S324T、H268F及びA330Lを含む。
【0207】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332E、S324T、H268F及びG236Aを含む。
【0208】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換S324T、H268F、A330L及びG236Aを含む。
【0209】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインは、Fc WT領域、すなわち、野生型ヒトIgG1のC2ドメイン(例えば、配列番号1)に関して、EU番号付けによるアミノ酸置換I332E、S324T、H268F及びA330Lを含む。
【0210】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域の変異体は、S239D/H268F/S324T/I332E、S239D、I332E、S239D/I332E、S239D/S324T/I332E、S239D/H268F/I332E、A330L、A330L/I332E、G236A/S239D、G236A/S239D/A330L/I332E、G236A/S239D/I332E、L234A/L235A/P329Gからなる群より選択され、Fc領域における残基の番号付けはEU番号付けに従う。
【0211】
或る特定の実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインのアミノ酸配列は、配列番号2~配列番号13の任意の1つに示されるアミノ酸配列に対応する。
【0212】
或る特定の代替的実施形態において、改変Fc領域の変異体には、A330L等のA330改変が含まれず、Fc領域における残基の番号付けはEU番号付けに従う。
【0213】
好ましくは、式(I)のポリペプチドの[改変Fc領域]は、配列番号2~配列番号13の任意の1つに示されるアミノ酸配列から選択される。
【0214】
好ましい実施形態において、改変Fc領域及び/又は改変Fc領域のC2ドメインのアミノ酸配列は、Fc SDH領域と呼ばれる配列番号2に示されるアミノ酸配列に対応する。
【0215】
或る特定の実施形態において、本発明による組換えポリペプチドは、改変Fc領域を含み、C2ドメインは他の改変を含有するか、又は含有しない。
【0216】
或る特定の実施形態において、本発明による組換えポリペプチドは、改変Fc領域を含み、C3ドメインは改変を含むか、又は含まない。
【0217】
或る特定の実施形態において、本発明による組換えポリペプチドは、改変Fc領域を含み、ヒンジ領域は、置換の有無にかかわりなく野生型IgG1のヒンジ領域であることができる。
【0218】
或る特定の実施形態において、本発明による組換えポリペプチドは、改変Fc領域を含み、(a)C2ドメインは、野生型ヒトIgG1のC2ドメインに関して1つ若しくは複数の改変を含むか、又は(b)C3ドメインは、野生型ヒトIgG1のC3ドメインに関して1つ若しくは複数の改変を含むか、又は(c)2つのC2及びC3ドメインは、それぞれ野生型ヒトIgG1のC2及びC3ドメインに関して1つ若しくは複数の改変を含む。
【0219】
本発明による組換えポリペプチドの或る特定の実施形態において、その中に含まれるリガンド結合ドメインは、以下の標的リスト:17-IA、4-1BB、4Dc、6-ケト-PGF1a、8-イソ-PGF2a、8-オキソ-dG、A1アデノシン受容体、A33、ACE、ACE-2、アクチビン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンRIA、アクチビンRIA ALK-2、アクチビンRIB ALK-4、アクチビンRIIA、アクチビンRIIB、ADAM、ADAM10、ADAM12、ADAM15、ADAM17/TACE、ADAM8、ADAM9、ADAMTS、ADAMTS4、ADAMTS5、アドレシン、aFGF、ALCAM、ALK、ALK-1、ALK-7、アルファ-1-アンチトリプシン、アルファ-V/ベータ-1アンタゴニスト、ANG、Ang、APAF-1、APE、APJ、APP、APRIL、AR、ARC、ART、アルテミン、抗Id、ASPARTIC、心房性ナトリウム利尿因子、av/b3インテグリン、Axl、b2M、B7-1、B7-2、B7-H、Bリンパ球刺激因子(BlyS)、BACE、BACE-1、Bad、BAFF、BAFF-R、Bag-1、BAK、Bax、BCA-1、BCAM、Bcl、BCMA、BDNF、b-ECGF、bFGF、BID、Bik、BIM、BLC、BL-CAM、BLK、BMP、BMP-2、BMP-2a、BMP-3オステオゲニン、BMP-4、BMP-2b、BMP-5、BMP-6、Vgr-1、BMP-7(OP-1)、BMP-8(BMP-8a、OP-2)、BMPR、BMPR-IA(ALK-3)、BMPR-IB(ALK-6)、BRK-2、RPK-1、BMPR-II(BRK-3)、BMP、b-NGF、BOK、ボンベシン、骨由来神経栄養因子、BPDE、BPDE-ADN、BTC、補体因子3(C3)、C3a、C4、C5、C5a、C10、CA125、CAD-8、カルシトニン、cAMP、癌胎児性抗原(CEA)、癌関連抗原、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC/DPPI、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンV、カテプシンX/Z/P、CBL、CCI、CCK2、CCL、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9/10、CCR、CCR1、CCR10、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD1、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD27L、CD28、CD29、CD30、CD30L、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD49a、CD52、CD54、CD55、CD56、CD61、CD64、CD66e、CD74、CD80(B7-1)、CD89、CD95、CD123、CD137、CD138、CD140a、CD146、CD147、CD148、CD152、CD164、CEACAM5、CFTR、cGMP、CINC、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)毒素、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)毒素、CKb8-1、CLC、CMV、CMVUL、CNTF、CNTN-1、COX、C-Ret、CRG-2、CT-1、CTACK、CTGF、CTLA-4、CX3CL1、CX3CR1、CXCL、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCR、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、サイトケラチン腫瘍関連抗原、DAN、DCC、DcR3、DC-SIGN、崩壊促進因子、des(1-3)-IGF-I(脳IGF-1)、Dhh、ジゴキシン、DNAM-1、DNase、Dpp、DPPIV/CD26、Dtk、ECAD、EDA、EDA-A1、EDA-A2、EDAR、EGF、EGFR(ErbB-1)、EMA、EMMPRIN、ENA、エンドセリン受容体、エンケファリナーゼ、eNOS、Eot、エオタキシン1、EpCAM、エフリンB2/EphB4、EPO、ERCC、E-セレクチン、AND-1、第IIa因子、第VII因子、第VIIIc因子、第IX因子、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fas、FcR1、FEN-1、フェリチン、FGF、FGF-19、FGF-2、FGF3、FGF-8、FGFR、FGFR-3、フィブリン、FL、FLIP、FIt-3、FIt-4、卵胞刺激ホルモン、フラクタルカイン、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、G250、Gas6、GCP-2、GCSF、GD2、GD3、GDF、GDF-1、GDF-3(Vgr-2)、GDF-5(BMP-14、CDMP-1)、GDF-6(BMP-13、CDMP-2)、GDF-7(BMP-12、CDMP-3)、GDF-8(ミオスタチン)、GDF-9、GDF-15(MIC-1)、GDNF、GDNF、GFAP、GFRa-1、GFR-アルファ1、GFR-アルファ2、GFR-アルファ3、GITR、グルカゴン、Glut4、糖タンパク質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)、GM-CSF、gp130、gp72、GRO、成長ホルモン放出因子、ハプテン(NP-cap又はNIP-cap)、HB-EGF、HCC、HCMV gBエンベロープ糖タンパク質、HCMV gHエンベロープ糖タンパク質、HCMV UL、造血成長因子(HGF)、Hep B gp120、ヘパラナーゼ、Her2、Her2/neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)、Her4(ErbB-4)、単純ヘルペスウイルス(HSV)gB糖タンパク質、HSV gD糖タンパク質、HGFA、高分子量メラノーマ関連抗原(HMWMAA)、HIV gp120、HIV IIIB gp 120 V3ループ、HLA、HLA-DR、HM1.24、HMFG PEM、HRG、Hrk、ヒト心筋ミオシン、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ヒト成長ホルモン(HGH)、HVEM、I-309、IAP、ICAM、ICAM-1、ICAM-3、ICE、ICOS、IFNg、Ig、IgA受容体、IgE、IGF、IGF結合タンパク質、IGF-1R、IGFBP、IGF-I、IGF-II、IL、IL-1、IL-1R、IL-2、IL-2R、IL-4、IL-4R、IL-5、IL-5R、IL-6、IL-6R、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-18R、IL-23、インターフェロン(INF)-アルファ、INFベータ、INF-ガンマ、インヒビン、iNOS、インスリンA鎖、インスリンB鎖、インスリン様成長因子1、インテグリンアルファ2、インテグリンアルファ3、インテグリンアルファ4、インテグリンアルファ4/ベータ1、インテグリンアルファ4/ベータ7、インテグリンアルファ5(アルファV)、インテグリンアルファ5/ベータ1、インテグリンアルファ5/ベータ3、インテグリンアルファ6、インテグリンベータ1、インテグリンベータ2、インターフェロンガンマ、IP-10、I-TAC、JE、カリクレイン2、カリクレイン5、カリクレイン6、カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン14、カリクレイン15、カリクレインL1、カリクレインL2、カリクレインL3、カリクレインL4、KC、KDR、ケラチノサイト成長因子(KGF)、ラミニン5、LAMP、LAP、LAP(TGF-1)、潜在型TGF-1、潜在型TGF-1 bp1、LBP、LDGF、LECT2、レフティー、ルイス-Y抗原、ルイス-Y関連抗原、LFA-1、LFA-3、Lfo、LIF、LIGHT、リポタンパク質、LIX、LKN、Lptn、L-セレクチン、LT-a、LT-b、LTB4、LTBP-1、肺サーファクタント、黄体形成ホルモン、リンホトキシンベータ受容体、Mac-1、MAdCAM、MAG、MAP2、MARC、MCAM、MCAM、MCK-2、MCP、M-CSF、MDC、Mer、METALLOPROTEASES、MGDF受容体、MGMT、MHC(HLA-DR)、MIF、MIG、MIP、MIP-1-アルファ、MK、MMAC1、MMP、MMP-1、MMP-10、MMP-11、MMP-12、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-2、MMP-24、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MPIF、Mpo、MSK、MSP、ムチン(Muc1)、MUC18、ミュラー管抑制物質(Muellerian-inhibitin substance)、Mug、MuSK、NAIP、NAP、NCAD、N-カドヘリン、NCA90、NCAM、NCAM、ネプリライシン、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、又はニューロトロフィン-6、ニュールツリン、神経成長因子(NGF)、NGFR、NGFベータ、nNOS、NO、NOS、Npn、NRG-3、NT、NTN、OB、OGG1、OPG、OPN、OSM、OX40L、OX40R、p150、p95、PADPr、副甲状腺ホルモン、PARC、PARP、PBR、PBSF、PCAD、P-カドヘリン、PCNA、PDGF、PDGF、PDK-1、PECAM、PEM、PF4、PGE、PGF、PGI2、PGJ2、PIN、PLA2、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、PIGF、PLP、PP14、プロインスリン、プロレラキシン、プロテインC、PS、PSA、PSCA、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTEN、PTHrp、Ptk、PTN、R51、RANK、RANKL、RANTES、RANTES、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、レニン、呼吸器(リガンド TRANCE/RANK ODF、OPGリガンド)、TNFSF12(TWEAK Apo-3リガンド、DR3リガンド)、TNFSF13(APRIL TALL2)、TNFSF13B(BAFF BLYS、TALL1、THANK、TNFSF20)、TNFSF14(LIGAND HVEM LIGHT、LTg)、TNFSF15(TL1A/VEGI)、TNFSF18(GITRリガンド AITRリガンド、TL6)、TNFSF1A(TNF-aコネクチン、DIF、TNFSF2)、TNFSF1B(TNF-b LTa、TNFSF1)、TNFSF3(LTb TNFC、p33)、TNFSF4(OX40リガンド gp34、TXGP1)、TNFSF5(CD40リガンド CD154、gp39、HIGM1、IMD3、TRAP)、TNFSF6(Fasリガンド Apo-1リガンド、APT1リガンド)、TNFSF7(CD27リガンド CD70)、TNFSF8(CD30リガンド CD153)、TNFSF9(4-1BBリガンド CD137リガンド)、TP-1、t-PA、Tpo、TRAIL、TRAIL R、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRANCE、トランスフェート受容体(transfert receptor)、TRF、Trk、TROP-2、TSG、TSLP、CA125腫瘍関連抗原、ルイスY関連糖質を発現する腫瘍関連抗原、TWEAK、TXB2、Ung、uPAR、uPAR-1、ウロキナーゼ、VCAM、VCAM-1、VECAD、VE-カドヘリン、VEカドヘリン-2、VEFGR-1(flt-1)、VEGF、VEGFR、VEGFR-3(flt-4)、VEG






I、VIM、ウイルス抗原、VLA、VLA-1、VLA-4、VNRインテグリン、フォン・ヴィレブランド因子、WIF-1、WNT1、WNT2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16、XCL1、XCL2、XCR1、XCR1、XEDAR、XIAP、XPD、並びにホルモン及び成長因子受容体等に属するタンパク質、サブユニット、ドメイン、モチーフ及び/又はエピトープを含有するが、これらに限定されない。
【0220】
本発明による組換えポリペプチドの或る特定の実施形態において、その中に含まれるリガンド結合ドメインは、以下の標的リスト:17-IA、4-1BB、4Dc、6-ケト-PGF1a、8-イソ-PGF2a、8-オキソ-dG、A1アデノシン受容体、A33、ACE、ACE-2、アクチビン、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンRIA、アクチビンRIA ALK-2、アクチビンRIB ALK-4、アクチビンRIIA、アクチビンRIIB、ADAM、ADAM10、ADAM12、ADAM15、ADAM17/TACE、ADAM8、ADAM9、ADAMTS、ADAMTS4、ADAMTS5、アドレシン、aFGF、ALCAM、ALK、ALK-1、ALK-7、アルファ-1-アンチトリプシン、アルファ-V/ベータ-1アンタゴニスト、ANG、Ang、APAF-1、APE、APJ、APP、APRIL、AR、ARC、ART、アルテミン、抗Id、ASPARTIC、心房性ナトリウム利尿因子、av/b3インテグリン、Axl、b2M、B7-1、B7-2、B7-H、Bリンパ球刺激因子(BlyS)、BACE、BACE-1、Bad、BAFF、BAFF-R、Bag-1、BAK、Bax、BCA-1、BCAM、Bcl、BCMA、BDNF、b-ECGF、bFGF、BID、Bik、BIM、BLC、BL-CAM、BLK、BMP、BMP-2、BMP-2a、BMP-3オステオゲニン、BMP-4、BMP-2b、BMP-5、BMP-6、Vgr-1、BMP-7(OP-1)、BMP-8(BMP-8a、OP-2)、BMPR、BMPR-IA(ALK-3)、BMPR-IB(ALK-6)、BRK-2、RPK-1、BMPR-II(BRK-3)、BMP、b-NGF、BOK、ボンベシン、骨由来神経栄養因子、BPDE、BPDE-ADN、BTC、補体因子3(C3)、C3a、C4、C5、C5a、C10、CA125、CAD-8、カルシトニン、cAMP、癌胎児性抗原(CEA)、癌関連抗原、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC/DPPI、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンV、カテプシンX/Z/P、CBL、CCI、CCK2、CCL、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9/10、CCR、CCR1、CCR10、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CD1、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD27L、CD28、CD29、CD30、CD30L、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD49a、CD52、CD54、CD55、CD56、CD61、CD64、CD66e、CD74、CD80(B7-1)、CD89、CD95、CD123、CD137、CD138、CD140a、CD146、CD147、CD148、CD152、CD164、CEACAM5、CFTR、cGMP、CINC、ボツリヌス菌毒素、ウェルシュ菌毒素、CKb8-1、CLC、CMV、CMVUL、CNTF、CNTN-1、COX、C-Ret、CRG-2、CT-1、CTACK、CTGF、CTLA-4、CX3CL1、CX3CR1、CXCL、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCR、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、サイトケラチン腫瘍関連抗原、DAN、DCC、DcR3、DC-SIGN、崩壊促進因子、des(1-3)-IGF-I(脳IGF-1)、Dhh、ジゴキシン、DNAM-1、DNase、Dpp、DPPIV/CD26、Dtk、ECAD、EDA、EDA-A1、EDA-A2、EDAR、EGF、EGFR(ErbB-1)、EMA、EMMPRIN、ENA、エンドセリン受容体、エンケファリナーゼ、eNOS、Eot、エオタキシン1、EpCAM、エフリンB2/EphB4、EPO、ERCC、E-セレクチン、AND-1、第IIa因子、第VII因子、第VIIIc因子、第IX因子、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、Fas、FcR1、FEN-1、フェリチン、FGF、FGF-19、FGF-2、FGF3、FGF-8、FGFR、FGFR-3、フィブリン、FL、FLIP、FIt-3、FIt-4、卵胞刺激ホルモン、フラクタルカイン、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、G250、Gas6、GCP-2、GCSF、GD2、GD3、GDF、GDF-1、GDF-3(Vgr-2)、GDF-5(BMP-14、CDMP-1)、GDF-6(BMP-13、CDMP-2)、GDF-7(BMP-12、CDMP-3)、GDF-8(ミオスタチン)、GDF-9、GDF-15(MIC-1)、GDNF、GDNF、GFAP、GFRa-1、GFR-アルファ1、GFR-アルファ2、GFR-アルファ3、GITR、グルカゴン、Glut4、糖タンパク質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)、GM-CSF、gp130、gp72、GRO、成長ホルモン放出因子、ハプテン(NP-cap又はNIP-cap)、HB-EGF、HCC、HCMV gBエンベロープ糖タンパク質、HCMV gHエンベロープ糖タンパク質、HCMV UL、造血成長因子(HGF)、Hep B gp120、ヘパラナーゼ、Her2、Her2/neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)、Her4(ErbB-4)、単純ヘルペスウイルス(HSV)gB糖タンパク質、HSV gD糖タンパク質、HGFA、高分子量メラノーマ関連抗原(HMWMAA)、HIV gp120、HIV IIIB gp 120 V3ループ、HLA、HLA-DR、HM1.24、HMFG PEM、HRG、Hrk、ヒト心筋ミオシン、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ヒト成長ホルモン(HGH)、HVEM、I-309、IAP、ICAM、ICAM-1、ICAM-3、ICE、ICOS、IFNg、Ig、IgA受容体、IgE、IGF、IGF結合タンパク質、IGF-1R、IGFBP、IGF-I、IGF-II、IL、IL-1、IL-1R、IL-2、IL-2R、IL-4、IL-4R、IL-5、IL-5R、IL-6、IL-6R、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-18R、IL-23、インターフェロン(INF)-アルファ、INFベータ、INF-ガンマ、インヒビン、iNOS、インスリンA鎖、インスリンB鎖、インスリン様成長因子1、インテグリンアルファ2、インテグリンアルファ3、インテグリンアルファ4、インテグリンアルファ4/ベータ1、インテグリンアルファ4/ベータ7、インテグリンアルファ5(アルファV)、インテグリンアルファ5/ベータ1、インテグリンアルファ5/ベータ3、インテグリンアルファ6、インテグリンベータ1、インテグリンベータ2、インターフェロンガンマ、IP-10、I-TAC、JE、カリクレイン2、カリクレイン5、カリクレイン6、カリクレイン11、カリクレイン12、カリクレイン14、カリクレイン15、カリクレインL1、カリクレインL2、カリクレインL3、カリクレインL4、KC、KDR、ケラチノサイト成長因子(KGF)、ラミニン5、LAMP、LAP、LAP(TGF-1)、潜在型TGF-1、潜在型TGF-1 bp1、LBP、LDGF、LECT2、レフティー、ルイス-Y抗原、ルイス-Y関連抗原、LFA-1、LFA-3、Lfo、LIF、LIGHT、リポタンパク質、LIX、LKN、Lptn、L-セレクチン、LT-a、LT-b、LTB4、LTBP-1、肺サーファクタント、黄体形成ホルモン、リンホトキシンベータ受容体、Mac-1、MAdCAM、MAG、MAP2、MARC、MCAM、MCAM、MCK-2、MCP、M-CSF、MDC、Mer、METALLOPROTEASES、MGDF受容体、MGMT、MHC(HLA-DR)、MIF、MIG、MIP、MIP-1-アルファ、MK、MMAC1、MMP、MMP-1、MMP-10、MMP-11、MMP-12、MMP-13、MMP-14、MMP-15、MMP-2、MMP-24、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MPIF、Mpo、MSK、MSP、ムチン(Muc1)、MUC18、ミュラー管抑制物質、Mug、MuSK、NAIP、NAP、NCAD、N-カドヘリン、NCA90、NCAM、NCAM、ネプリライシン、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、又はニューロトロフィン-6、ニュールツリン、神経成長因子(NGF)、NGFR、NGFベータ、nNOS、NO、NOS、Npn、NRG-3、NT、NTN、OB、OGG1、OPG、OPN、OSM、OX40L、OX40R、p150、p95、PADPr、副甲状腺ホルモン、PARC、PARP、PBR、PBSF、PCAD、P-カドヘリン、PCNA、PDGF、PDGF、PDK-1、PECAM、PEM、PF4、PGE、PGF、PGI2、PGJ2、PIN、PLA2、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、PIGF、PLP、PP14、プロインスリン、プロレラキシン、プロテインC、PS、PSA、PSCA、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTEN、PTHrp、Ptk、PTN、R51、RANK、RANKL、RANTES、RANTES、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、レニン、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)F、RSV Fgp、Ret、リウマチ因子、RLIP76、RPA2、RSK、S100、SCF/KL、SDF-1、SERINE、血清アルブミン、sFRP-3、Shh、SIGIRR、SK-1、SLAM、SLPI、SMAC、SMDF、SMOH、SOD、SPARC、Stat、STEAP、STEAP-II、TACE、TACI、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質-72)、TARC、TCA-3、T細胞受容体(例えば、T細胞受容体アルファ/ベータ)、TdT、TECK、TEM1、TEM5、TEM7、TEM8、TERT、精巣PLAP様アルカリホスファターゼ、TfR、TGF、TGF-アルファ、TGF-ベータ、TGF-ベータPan特異的、TGF-ベータRI(ALK-5)、TGF-ベータRII、TGF-ベータRIIb、TGF-ベータRIII、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、TGF-ベータ4、TGF-ベータ5、トロンビン、胸腺Ck-1、甲状腺刺激ホルモン、Tie、TIMP、TIQ、組織因子、TMEFF2、Tmpo、TMPRSS2、TNF、TNF-アルファ、TNF-アルファベータ、TNF-ベータ2、TNFc、TNF-RI、TNF-RII、TNFRSF10A(TRAIL R1 Apo-2、DR4)、TNFRSF10B(TRAIL R2 DR5、KILLER、TRICK-2A、TRICK-B)、TNFRSF10C(TRAIL R3 DcR1、LIT、TRID)、TNFRSF10D(TRAIL R4 DcR2、TRUNDD)、TNFRSF11A(RANK ODF R、TRANCE R)、TNFRSF11B(OPG OCIF、TR1)、TNFRSF12(TWEAK R FN14






)、TNFRSF13B(TACI)、TNFRSF13C(BAFF R)、TNFRSF14(HVEM ATAR、HveA、LIGHT R、TR2)、TNFRSF16(NGFR p75NTR)、TNFRSF17(BCMA)、TNFRSF18(GITR AITR)、TNFRSF19(TROY TAJ、TRADE)、TNFRSF19L(RELT)、TNFRSF1A(TNF RI CD120a、p55-60)、TNFRSF1B(TNF RII CD120b、p75-80)、TNFRSF26(TNFRH3)、TNFRSF3(LTbR TNF RIII、TNFC R)、TNFRSF4(OX40 ACT35、TXGP1 R)、TNFRSF5(CD40 p50)、TNFRSF6(Fas Apo-1、APT1、CD95)、TNFRSF6B(DcR3 M68、TR6)、TNFRSF7(CD27)、TNFRSF8(CD30)、TNFRSF9(4-1 BB CD137、ILA)、TNFRSF21(DR6)、TNFRSF22(DcTRAIL R2 TNFRH2)、TNFRST23(DcTRAIL R1 TNFRH1)、TNFRSF25(DR3 Ap-3、LARD、TR-3、TRAMP、WSL-1)、TNFSF10(リガンド Apo-2 TRAIL、TL2)、TNFSF11(リガンド TRANCE/RANK ODF、OPGリガンド)、TNFSF12(TWEAK Apo-3リガンド、DR3リガンド)、TNFSF13(APRIL TALL2)、TNFSF13B(BAFF BLYS、TALL1、THANK、TNFSF20)、TNFSF14(LIGAND HVEM LIGHT、LTg)、TNFSF15(TL1A/VEGI)、TNFSF18(GITRリガンド AITRリガンド、TL6)、TNFSF1A(TNF-aコネクチン、DIF、TNFSF2)、TNFSF1B(TNF-b LTa、TNFSF1)、TNFSF3(LTb TNFC、p33)、TNFSF4(OX40リガンド gp34、TXGP1)、TNFSF5(CD40リガンド CD154、gp39、HIGM1、IMD3、TRAP)、TNFSF6(Fasリガンド Apo-1リガンド、APT1リガンド)、TNFSF7(CD27リガンド CD70)、TNFSF8(CD30リガンド CD153)、TNFSF9(4-1BBリガンド CD137リガンド)、TP-1、t-PA、Tpo、TRAIL、TRAIL R、TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRANCE、トランスフェート受容体、TRF、Trk、TROP-2、TSG、TSLP、CA125腫瘍関連抗原、ルイスY関連糖質を発現する腫瘍関連抗原、TWEAK、TXB2、Ung、uPAR、uPAR-1、ウロキナーゼ、VCAM、VCAM-1、VECAD、VE-カドヘリン、VEカドヘリン-2、VEFGR-1(flt-1)、VEGF、VEGFR、VEGFR-3(flt-4)、VEGI、VIM、ウイルス抗原、VLA、VLA-1、VLA-4、VNRインテグリン、フォン・ヴィレブランド因子、WIF-1、WNT1、WNT2、WNT2B/13、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、WNT9A、WNT9B、WNT10A、WNT10B、WNT11、WNT16、XCL1、XCL2、XCR1、XCR1、XEDAR、XIAP、XPD、並びにホルモン及び成長因子受容体等に属するタンパク質、サブユニット、ドメイン、モチーフ及び/又はエピトープによって定義されるが、これらに限定されないリガンドに結合することができる。
【0221】
組換えポリペプチドの好ましい実施形態によれば、リガンド結合ドメインは、抗体等の標的分子に結合することができる。この実施形態によれば、リガンド結合ドメインは、抗体、最も具体的には抗体の可変領域への結合に適している。
【0222】
1つの実施形態によれば、本発明の組換えポリペプチドは、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンドに結合することができるリガンド結合ドメインとを有するポリペプチドであり、抗体ではない。
【0223】
特に、1つの実施形態によれば、本発明の組換えポリペプチドは、(i)改変Fc領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを有するポリペプチドであり、抗体の可変領域又は超可変領域を有しない。
【0224】
1つの実施形態によれば、本発明の組換えポリペプチドは、(i)改変Fc領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを有するポリペプチドであり、上記Fc領域は、上記NK細胞又はその前駆体に結合することができ、抗体であり得る。
【0225】
1つの実施形態において、本発明の組換えポリペプチドは、完全ヒト抗体又はヒト化抗体であり得ることに加えて、改変Fc領域を有しない同じ抗体と比較して、1つ又は複数の改善された、又は改変された特性を有することができる。これらの特性は、NK細胞又はFcγRIII受容体を発現する任意の細胞のFcγRIII受容体に対する結合特異性、又は抗体依存性細胞傷害の改善を含む。
【0226】
或る特定の実施形態において、本発明による組換えポリペプチドが抗体、又はそのフラグメントである場合、既知の構造を有し、そのFc部分が本明細書に記載の通り改変された出発抗体であり得る。既知の構造を有する出発抗体は、アバゴボマブ、アバタセプト、アブシキシマブ、アビツズマブ、アブリルマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アデュカヌマブ、アフリベルセプト、アフツジマブ、アラシズマブ、アレファセプト、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アネツマブ、アニフロムマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アスクリンバクマブ、アセリズマブ、アテゾリズマブ、アチヌマブ、アルチズマブ、アトロリムマブ、バピネウズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベゲロマブ、ベラタセプト、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビメキズマブ、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ボコシズマブ、ブレンツキシマブ、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、ブロンチシズマブ、カナキヌマブ、カンツズマブ、カプラシズマブ、カプロマブ、カルルマブ、カツマキソマブ、セデリズマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、シタツズマブ、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブ、コドリツズマブ、コルツキシマブ、コナツムマブ、コンシズマブ、クレネズマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダピロリズマブ、ダラツムマブ、デクトレクマブ、デムシズマブ、デニンツズマブ、デノスマブ、デルロチクスマブ、デツモマブ、ジヌツキシマブ、ジリダブマブ、ドリノマブ、ドロジツマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、デュシギツマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エファングマブ、エルデルマブ、エルゲムツマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エマクツズマブ、エミベツズマブ、エナバツズマブ、エンホルツマブ、エンリモマブ、エノブリツズマブ、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタネルセプト、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フィリブマブ、フランボツマブ、フレチクマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブ、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレンバツムマブ、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブ、イクルクマブ、イダルシズマブ、イゴボマブ、イマルマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブ、インデュサツマブ、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、イサツキシマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ランブロリズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レンジルマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リファスツズマブ、リゲリズマブ、リロトマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロキベトマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、ルリズマブ、ルミリキシマブ、ルムレツズマブ、マパツズマブ、マルゲツキシマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミネツモマブ、ミルベツキシマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブ、ムロモナブ-CD3、ナコロマブ、ナミルマブ、ナプツモマブ、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネモリズマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オピシヌマブ、オポルツズマブ、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オルテルツズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パンコマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パソツキシズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムブロリズマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、パキセリズマブ、ピディリズマブ、ピナツズマブ、ピンツモマブ、ポラツズマブ、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラルパンシズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レファネズマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロナセプト、リロツムマブ、リヌクマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サシツズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブ、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セヴィルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソフィツズマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブ、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブ、タレクスツマブ、テフィバズマブ、テリモマブ・アリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テシドルマブ、TGN1412、チシリムマブ、チルドラキズマブ、ティガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トサトクスマブ、トシツモマブ、トベツマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、トレボグルマブ、ツコツズマブ、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウロクプルマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バンドルツズマブ、バンチクツマブ、バヌシズマブ、バパリキシマブ、バルリルマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、ジブ-アフリベルセプト、及びゾリモマブから選択することができる。
【0227】
NK(ナチュラルキラー)細胞
これらの目的の1つにおいて、本発明は、NK(ナチュラルキラー)細胞、好ましくはNK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体を使用する。
【0228】
NK細胞は、MHCクラス1分子を含む標的細胞を自発的に破壊することができるリンパ球である。これらのNK細胞の特異性は、事前の活性化を必要とせず、病原体と接触することなく、罹患細胞を溶解できることである。
【0229】
本発明のNK細胞は、そのような細胞を含む任意の供給源に由来することができる。NK細胞は多くの組織に見られ、例えば、リンパ節、脾臓、肝臓、肺、腸、脱落膜から得ることができ、iPS細胞又は胚性幹細胞(ESC)からも得ることができる。一般に、研究及び臨床使用のための多数のNK細胞を提供するために、異種リンパ球細胞集団を含有する臍帯血、末梢血、動員末梢血及び骨髄が使用される。
【0230】
したがって、本発明の或る特定の実施形態によれば、方法は、以下の要素:臍帯血、末梢血又は骨髄の1つ、好ましくは臍帯血に由来する、NK細胞集団、好ましくはNK細胞集団を必要とする個体に関して同種異系又は自系のNK細胞集団を培養することを含む。或る特定の実施形態において、NK細胞は、NK細胞、CD3細胞及びCD3細胞を含む異種細胞集団から培養される。別の変形において、NK細胞集団は、NK細胞に関してスクリーニング又は濃縮される。或る特定の場合において、NK細胞は、新鮮な細胞集団から増殖させることができるが、別の場合には、ストックされた細胞集団(例えば凍結保存及び解凍された細胞)から、又は以前に培養された細胞集団からNK細胞を増殖させる。
【0231】
NK細胞は、臍帯血又は末梢血又は骨髄由来の単核球の画分と関連している。1つの実施形態において、上記NK細胞を含む細胞集団は、CD3細胞又はCD3/CD19細胞が枯渇した単核球集団又は全核細胞集団である。
【0232】
別の実施形態において、NK細胞を含む細胞集団は、非スクリーニングNK細胞集団である。別の実施形態において、細胞はスクリーニングされ、NK細胞は、CD45/CD56/CD3及び/又はCD45/CD56/CD3/CD16細胞を含む。表現型に基づいてNK細胞をスクリーニングする方法(例えば、フローサイトメトリーによる免疫検出及び分析)は、当業者によく知られている。
【0233】
最も頻繁には、臍帯血又は骨髄試料を処理して、細胞集団を得てから、NK細胞を培養培地(又はバッファー)に入れる。例えば、臍帯血試料を処理して、特定の定義された細胞集団を濃縮又は精製又は分離することができる。「精製する」及び「分離する」という用語は、絶対的な純度を必要とせず、むしろ、それらは相対的な用語である。したがって、例えば、精製されたNK細胞集団は、特定の細胞がそれらの元の組織において見られるものよりも濃縮されている集団である。実質的に純粋なNK細胞調製物は、所望の細胞が調製物中に存在する全細胞の少なくとも50%を占めるように濃縮することができる。或る特定の調製物の種類において、実質的に純粋なNK細胞集団は、調製物中に存在する全細胞の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%又は95%以上を占める。
【0234】
リンパ球(CD45細胞)を濃縮及び分離する方法は、当該分野においてよく知られている。例えば、1つの実施形態によれば、リンパ球のみを保持するために、生物学的試料から赤血球を除去する。最も単純な形態において、赤血球の除去は、凝固していない全血又は骨髄の遠心分離を意味する場合がある。密度に基づいて、赤血球は、リンパ球及び他の細胞から分離される。その後、リンパ球が豊富な画分を選択的に回収することができる。リンパ球及びそれらの前駆細胞は、いくつかの商業的供給源から入手可能な標準的なリンパ球分離培地(LSM)等の分離培地を使用する遠心分離によって濃縮することもできる。リンパ球及びそれらの前駆細胞は、親和性に基づくいくつかの手順を使用して濃縮することもできる。抗体にコンジュゲートした電磁ビーズ等、抗体に基づく多くのアフィニティー分離法が当該技術分野において知られている。FICOLL-HYPAQUE(商標)及びNK細胞の濃縮のために配合された他の密度勾配培地等の、好ましくない細胞のネガティブセレクション用に市販されている調製物によってリンパ球を濃縮することもできる。
【0235】
血液、骨髄又は組織試料からNK細胞を選択する方法は、当該分野においてよく知られている(例えば、Litwin et al.による米国特許第5770387号を参照のこと)。最も一般的に使用されるプロトコルは、一般に単核球を分画した後のCD56細胞の分離及び精製、並びに例えばCD3、CD34、CD133等の非NK細胞の枯渇に基づいている。2つ以上のプロトコルの組み合わせを使用して、非NK夾雑物に関してより高い純度を有するNK細胞集団を提供することができる。NK細胞を分離するための市販されているキットは、1工程の手順(例えば、Miltenyi Biotec(カリフォルニア州オーバーン)のCD56マイクロビーズ及びCD56、CD56/CD16を分離するためのキット)と、CD3の枯渇、若しくは部分的な枯渇、又はT細胞(例えば、OKT-3)、B細胞、幹細胞、樹状細胞、単球、顆粒球及び赤血球細胞を認識及び除去する非NK細胞抗体による枯渇を含むいくつかの工程における手順とを含む。したがって、或る特定の実施において、NK細胞は、CD45/CD56CD3、CD45/CD56/CD3/CD16、CD45/CD56/CD3/CD16、好ましくはCD45/CD56/CD3/CD16についてスクリーニングされる。
【0236】
次に、NK細胞を当業者に既知の任意の方法によって培養及び維持した後、本発明の組換えポリペプチドとインキュベートして、武装NK細胞を得る。NK細胞は、「武装」する前に最大7日間、又は最大3週間維持することができる。したがって、或る特定の実施形態において、NK細胞集団は、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、潜在的に10日間、潜在的に12日間、潜在的に14日間、潜在的に16日間、潜在的に18日間、潜在的に20日間及び潜在的に21日間、又は1週間、2週間又は3週間、4週間、5週間、6週間、又はそれ以上培養される。
【0237】
NK細胞集団は、いくつかの方法及びデバイスを用いて培養することができる。培養装置の選択は、一般に、培養の規模及び目的に基づく。細胞培養のスケーリングは、好ましくは専用の装置の使用を意味する。NK細胞の大規模及び臨床的な品質の生産のための装置は、例えば、Spanholtz et al. (PLoS ONE 2010; 5: e9221)及びSutlu et al. (Cytotherapy 2010, Early Online 1-12)に詳細に記載されている。
【0238】
或る特定の実施形態において、本発明で使用されるNK細胞は、同種異系と呼ばれる、治療される個体以外のヒト由来の細胞である。
【0239】
或る特定の実施形態において、本発明で使用されるNK細胞は、自系と呼ばれる、治療される個体自身由来の細胞である。
【0240】
組換えポリペプチドと組み合わせたNK細胞
これらの目的の1つによれば、本出願は、組換えポリペプチドに付着した、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体であって、上記組換えポリペプチドは、(i)上記NK細胞又はその前駆体に結合することができる改変Fc領域と、(ii)抗原に結合することができるドメインとを含む、医薬として使用される、NK細胞、又はNK細胞前駆体に関する。
【0241】
本発明による組換えポリペプチドの2つの実施形態を図8に示す。本発明による組換えポリペプチドは、図8の左側に表され、(i)改変Fc領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、リガンド結合ドメインは、抗原を含むか、又は抗原のみからなる。本発明による組換えポリペプチドは、図8の右側に表され、(i)改変Fc領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、リガンド結合ドメインは、抗体の抗原結合ドメインを含むか、又は抗体の抗原結合ドメインのみからなる。したがって、本発明者らは、NK細胞をベースにした普遍的な細胞療法製品を実現した。CAR-T細胞と対照的に、標的細胞を破壊する特異性は、NK細胞自体によってではなく、これらの標的細胞を認識する特定のペプチドによって得られる。したがって、本組み合わせであるNK細胞-組換えポリペプチドは、特定のポリペプチドを設計し、特定の抗原を本発明の組換えポリペプチドに特異的に組み合わせることによって、あらゆる種類の病変に拡張することができる。
【0242】
本発明は、
[NK細胞]-[式(I)の組換えポリペプチド]
等のコンストラクト(A)の化合物を提供する。
【0243】
本発明は、コンストラクト(B):
[NK細胞]-[[改変Fc領域]-[リンカー]-[リガンド結合ドメイン]]
の化合物を包含し、
式中、[NK細胞]は、本出願において先に記載されたNK細胞であり、[式(I)の組換えポリペプチド]は、本出願において先に記載されたポリペプチド又は抗体である。
【0244】
1つの実施形態において、リガンド結合ドメインは、抗原型リガンドに結合することができ、抗原は、ウイルス抗原、腫瘍抗原、感染性疾患抗原、自己免疫抗原、毒素又はそれらの組み合わせから選択することができる。
【0245】
或る特定の実施形態において、リガンド結合ドメインは、ペプチドコンカテマーであるリガンドに結合することができる。或る特定の実施形態において、リガンド結合ドメインは、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、天然DNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体成分、サイログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体及びシトルリン化ペプチドから選択されるリガンドに結合することができる。或る特定の他の実施形態において、リガンド結合ドメインは、抗原型リガンドに結合することができ、抗原は、癌抗原、細菌、ウイルス、寄生生物及び真菌抗原から選択される感染性疾患抗原、自己免疫疾患抗原及びそれらの誘導体から選択される。
【0246】
1つの実施形態によれば、本発明による組換えポリペプチドのリガンド結合ドメインが結合することができる癌抗原は、黒色腫、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮癌、直腸癌、肛門癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、腟癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性又は急性白血病、小児固形腫瘍、リンパ性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿道癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、CNS原発性リンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、Tリンパ球リンパ腫、環境によって誘発される癌、及び上記癌の組み合わせから選択される癌の抗原であり得る。
【0247】
或る特定の実施形態によれば、本発明による組換えポリペプチドのリガンド結合ドメインが結合することができる感染性疾患抗原は、(a)インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア症、マラリア及びリーシュマニア症から選択される疾患;(b)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コルノウイルス(cornovirus)、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス(molluscum virus)、ポリオウイルス(poliomyelitis virus)、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルス脳炎ウイルスから選択されるウイルスによる病原体感染症;(c)クラミジア属、リケッチア細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌及び淋菌、クレブシエラ属、プロテウス属、セラチア属、シュードモナス属、レジオネラ属、ジフテリア属(Diphtheria)、サルモネラ属、バチルス属、コレラ、破傷風、ボツリヌス症、炭素病(carbon disease)、ペスト、レプトスピラ症及びライム病細菌から選択される細菌による病原体感染症;(d)カンジダ属、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス属、ケカビ目の属(Genus Mucorales)、スポロトリックス・シェンキー(Sporothrix schenkue)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシキス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)及びヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)から選択される真菌による病原体感染症;又は(e)エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、バランチジウム・コリ(Balantidium coli)、ネグレリア・フォーレリ(Naegleria fowleri)、アカンソアメーバ属の種(Acanthamoeba sp.)、ジアルジア・ランビア(Giardia lamblia)、クリプトスポリジウム属の種(Cryptosporidium sp.)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinue)、プラスモディウム・ビラックス(Plasmodium virax)、バベシア・ミクロチ(Babesia microti)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、リーシュマニア・ドノバン(Leishmania donovani)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondue)及びニッポストロンギルス・ブラシリエンシス(Nippostrongylus brasiliensis)から選択される寄生生物による病原体感染症から選択される感染性疾患抗原であり得る。
【0248】
或る特定の実施形態によれば、本発明による組換えポリペプチドのリガンド結合ドメインが結合することができる自己免疫疾患抗原又はそれらの誘導体は、以下の疾患:臓器移植片拒絶反応、移植片対宿主病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、原始シェーグレン症候群(primitive Sjogren's syndrome)(又はグージェロー・シェーグレン症候群)、多発性硬化症等の自己免疫性多発ニューロパチー、I型糖尿病、自己免疫性肝炎、強直性脊椎炎、ライター症候群、痛風性関節炎、セリアック病、クローン病、橋本甲状腺炎、アジソン病、自己免疫性肝炎、バセドウ病、潰瘍性大腸炎、ANCA(抗好中球細胞質抗体)関連全身性血管炎等の血管炎、成人及び小児における自己免疫性血球減少症及び他の血液系の合併症、例えば急性又は慢性の自己免疫性血小板減少症、自己免疫性溶血性貧血、新生児溶血性疾患(HDN)、寒冷凝集素症、血栓性血小板減少性紫斑病及び自己免疫性後天性血友病、グッドパスチャー症候群、膜外腎症(extramembranous nephropathy)、自己免疫性脂性肌疾患(autoimmune oily skin conditions)、難治性筋無力症、混合型クリオグロブリン血症、乾癬、若年性特発性関節炎、炎症性筋炎、皮膚筋炎、及び抗リン脂質症候群を含む小児における全身性自己免疫疾患から選択される抗原又は誘導体であり得る。
【0249】
或る特定の実施形態によれば、本発明による組換えポリペプチドのリガンド結合ドメインが結合することができる抗原は、以下の疾患:血小板血症、骨髄異形成症候群、良性腫瘍、及び老化細胞の除去から選択される抗原又は誘導体であり得る。
【0250】
或る特定の実施形態において、本発明の武装NK細胞は、本発明の組換えポリペプチドによって認識することができる抗原を担持する標的細胞、例えば、癌細胞を溶解するために使用される。
【0251】
或る特定の実施形態において、本発明の武装NK細胞は、本発明の組換えポリペプチドに付着した抗原を認識する標的細胞、例えば、自己反応性B細胞を溶解するために使用される。
【0252】
或る特定の実施形態によれば、武装NK細胞は、武装NK細胞を必要とする個体に注入される前に、最大7日間、又は最大3週間維持することができる。したがって、或る特定の実施形態において、武装NK細胞集団は、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、潜在的に10日間、潜在的に12日間、潜在的に14日間、潜在的に16日間、潜在的に18日間、潜在的に20日間及び潜在的に21日間、又は1週間、2週間又は3週間、4週間、5週間、6週間、又はそれ以上培養される。本出願の実施例に詳細に記載されているように、例示的及び非限定的な培養期間は、少なくとも3日間及び少なくとも7日間である。
【0253】
薬学的組成物
組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞又はNK細胞前駆体を含む組成物、特に薬学的組成物も提供され、上記組換えポリペプチドは、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞又はその前駆体に結合することができ、薬理学的又は薬学的に許容される賦形剤又はビヒクルで配合される。これらの組成物は、本発明による組換えポリペプチドで武装したNK細胞の1つ又は複数の組み合わせ(例えば、2つ以上の異なるもの)を含むことができる。例えば、本明細書に記載の薬学的組成物は、標的抗原上の異なるエピトープ又は補完的な活性を有する抗体(又はイムノコンジュゲート若しくは二重特異性化合物)に結合する武装NK細胞の組み合わせを含むことができる。
【0254】
或る特定の場合において、組成物は、少なくとも1mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、50mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/ml、1mg/ml~300mg/ml又は100mg/ml~300mg/mlの武装NK細胞を含む。
【0255】
本明細書に記載の薬学的組成物は、併用療法において、すなわち、他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。例えば、併用療法は、少なくとも別の抗病原体剤及び/又はNK細胞に対する刺激剤(例えば、活性化因子)と組み合わせた本明細書に記載の武装NK細胞を含むことができる。組み合わせて使用することができる治療剤の例は、本出願に記載の武装NK細胞の使用に関する項において、以下により詳細に記載されている。
【0256】
或る特定の場合において、本明細書に記載の薬学的組成物は、癌、自己免疫疾患及びその派生的なもの又は感染性疾患等の病変を治療するために使用される他の化合物、薬剤及び/又は医薬を含むことができる。これらの化合物、薬剤及び/又は医薬としては、例えば、化学療法剤、低分子薬剤又は所与の癌に対する免疫応答を刺激する抗体を挙げることができる。
【0257】
本明細書に記載の薬学的組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される塩を含むことができる。「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保存し、望ましくない毒性作用を伝達しない塩を意味する。酸付加塩及び塩基付加塩は塩の例である。酸付加塩は、無毒の無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸及びモノカルボン脂肪族酸及びジカルボン脂肪族酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカンを含む。酸、芳香族酸、芳香族及び脂肪族スルホン酸等の無毒の有機酸に由来する塩が含まれる。塩基付加塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウム等のアルカリ土類金属、並びにN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等を含む。有毒な有機アミンに由来する塩が含まれる。
【0258】
本明細書に記載の薬学的組成物は、薬学的に許容される抗酸化剤も含むことができる。薬学的に許容される抗酸化剤の例は、(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等、(2)油溶性抗酸化剤、酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール等を含み、(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等が含まれる。
【0259】
本明細書に記載の薬学的組成物に使用することができる好適な水性又は非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びそれらの好適な混合物、オリーブ油等の植物油、及びオレイン酸エチル等の注入可能な有機エステルを含む。好適な流動性は、例えば、分散液の場合に必要な粒径を保つこと、及び界面活性剤を使用することで維持することができる。これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤等のアジュバントも含有することができる。微生物の存在の予防は、後述の滅菌方法と、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等のいくつかの抗細菌剤及び抗真菌剤を含めることとの両方により確実にすることができる。組成物中に、糖、塩化ナトリウム等の等張剤を含めることも望ましい場合がある。さらに、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収遅延剤を含めると、注射用薬学的形態の吸収を遅らせることができる。
【0260】
薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。薬学的活性物質へのそのような担体及び薬剤の使用は、当該分野においてよく知られている。従来の培地又は薬剤が有効成分と適合しない場合を除き、本明細書に記載の薬学的組成物におけるそれらの使用が検討される。補完的な活性物質も組成物に組み込むことができる。
【0261】
薬学的組成物は、一般に、製造及び保管条件下で無菌及び安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い医薬濃度に適した他の秩序構造の形態で配合することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、液体グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール等)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。好適な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合に必要な粒径を保つことよって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール及びソルビトール等のポリアルコール、又は塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の遅延吸収は、組成物中に、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0262】
滅菌注射用溶液は、活性化合物、すなわち、武装NK細胞を、必要量で好適な溶媒中に含めて、場合により以下に列挙される成分の1つ又はそれらの組み合わせと共に調整し、次いで精密濾過を用いて滅菌することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒と、以下に列挙されるものからの他の必要な成分とを含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことで調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空下で乾燥させる方法であり、有効成分の粉末と任意の他の所望の成分は、あらかじめ滅菌及び濾過された溶液から調製され、凍結乾燥される。
【0263】
単位剤形を調製するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される対象及び特定の投与様式に従って変えることができる。単位剤形を調製するために担体材料と組み合わせることができる有効成分、すなわち、武装NK細胞の量は、一般に、治療効果を引き起こす組成物の量である。或る特定の実施形態によれば、有効成分、すなわち、武装NK細胞の量は、大抵の場合、薬学的に許容される担体と組み合わせて、最終組成物量に対して約0.01%~約99%、好ましくは最終組成物量に対して約0.1%~約70%である。
【0264】
投与計画は、所望の最適な反応(例えば、治療反応)を得るために調整される。或る特定の実施形態によれば、単回のボーラス投与が可能であり、複数の分割用量を長期間にわたって投与することができ、又は差し迫った治療の状況で示されるように用量を比例的に減少又は増加させることができる。好ましくは、非経口組成物の配合物は、特に投与及び投与量の均一性を容易にするために、単位用量の形態である。
【0265】
或る特定の実施形態によれば、単位剤形は、治療される個体の単位用量として便利な物理単位を指し、必要とされる薬学的担体に関連する各単位は、所望の治療効果を引き起こす。
【0266】
或る特定の実施形態によれば、抗原と組み合わせて、又は抗原なしで武装NK細胞を投与する場合、投与量は、宿主の体重1kg当たり約0.0001mg~100mg、より一般的には0.01mg~5mgの範囲である。例えば、投与量は、0.3mg/体重1kg、1mg/体重1kg、3mg/体重1kg、5mg/体重1kg、若しくは10mg/体重1kg、又は1mg/kg~10mg/kgの間である。
【0267】
或る特定の実施形態によれば、治療レジメンは、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回、又は3ヶ月~6ヶ月に1回の1回の投与であり得る。
【0268】
或る特定の実施形態によれば、本発明による薬学的組成物の投与のための好ましい投与計画は、静脈内投与当たり、1mg/体重1kg又は3mg/体重1kgを含む。具体的には、組成物は、(i)4週間に1回、続いて(ii)3ヶ月に1回投与される。
【0269】
或る特定の実施形態において、異なる結合特異性を有する2つ以上の武装NK細胞が同時に投与され、その場合、投与される各武装NK細胞の用量は、示された範囲内である。武装NK細胞は、通常、数回投与される。単位用量の間隔は、例えば、1週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月毎、又は1年に1回であり得る。さらに、間隔は不規則であり得る。或る特定の実施形態において、投与量は、約1μg/ml~1000μg/mlの武装NK細胞血漿濃度、或る特定の実施形態において、約25μg/ml~300μg/mlの武装NK細胞血漿濃度を得るために調整される。
【0270】
武装NK細胞は、徐放性配合物の形態で投与することができ、その場合、頻繁な投与を必要とすることは少なくなる。投与量及び頻度は、患者における武装NK細胞の半減期に応じて異なる。本発明の武装NK細胞は、in vivoでせいぜい約3日、最大約7日の半減期を有する。
【0271】
或る特定の実施形態によれば、薬学的組成物は、予防的又は治療的処置に使用される。投与量及び投与頻度は、治療が予防的か治療的かに基づいて変えることができる。予防的用途において、比較的低い用量が、比較的低頻度間隔にて長期間にわたって投与される。或る特定の患者は、生涯にわたって治療を受け続ける。治療的用途において、疾患の進行が軽減又は停止するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的又は完全な改善を示すまで、比較的短い間隔にて比較的高い用量が必要とされる可能性がある。その後、患者に予防的レジメンを投与することができる。
【0272】
本発明による薬学的組成物の有効成分の実際の投与量レベルは、個体、特に組成物及び投与様式について所望の治療反応を得るために、患者にとって有毒ではない。有効量の有効成分を得るために、同一に変えることが可能である。選択される投与量レベルは、使用される特定の組成物、又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与経路、投与時期、使用される特定の化合物の消失速度、治療期間、特定の組成物と組み合わせて使用される他の医薬、化合物及び/又は物質、治療される個体の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態及び病歴、並びに医療分野においてよく知られている同様の要因に依存する。投与量レベルは、いくつかの薬物動態学的要因に応じて変えることもできる。
【0273】
或る特定の実施形態によれば、治療的有効用量は、病変の発生を予防又は遅らせることができる。例えば、疾患の診断に使用される臨床検査は、化学的、血液学的、血清学的及び放射線学的なものを含む。したがって、上記の要素の1つをモニターする臨床分析又は生化学分析は、特定の治療が疾患を治療するための治療的有効用量であるかどうかを決定するために使用することができる。当業者は、個体の大きさ、個体の症状の重症度、及び選択された特定の組成物又は投与経路等の要因に応じて、そのような量を決定することができる。
【0274】
本発明による薬学的組成物は、1つ又は複数の投与経路により、当該技術分野において既知の1つ又は複数の方法に従って投与することができる。当業者によって理解されるように、投与経路及び/又は投与様式は、所望の結果に応じて異なる。
【0275】
或る特定の好ましい実施形態によれば、本発明による武装NK細胞の投与経路は、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄経路、又は注射若しくは灌流等の任意の他の非経口投与経路による投与を含む。
【0276】
本発明による武装NK細胞は、局所、上皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下又は局所等の非経口経路により投与することもできる。
【0277】
活性化合物は、インプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセル化送達システムを含む放出制御配合物等の、速い放出から化合物を保護する担体で調製することができる。エチレン-酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸等の生分解性及び生体適合性ポリマーを使用することができる。これらの配合物の調製方法の多くは、特許取得されているか、又は当業者に一般的に知られている(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc, New York, 1978を参照のこと)。
【0278】
治療用組成物は、当該分野において既知の医療機器によって投与することができる。本発明の或る特定の具体的な実施形態によれば、本発明による治療用組成物は、米国特許第5,399,163号、米国特許第5,383,851号、米国特許第5,312,335号、米国特許第064,413号、米国特許第4,941,880号、米国特許第4,790,824号に記載の装置、又は米国特許第4,596,556号に記載の装置等の針のない皮下注射装置を含む。
【0279】
本発明による武装NK細胞と共に使用されることがよく知られているインプラント及びモジュールの例のうち、以下のもの:制御された流速で医薬を投与するための埋め込み型微小灌流ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;皮膚を介して医薬を投与するための治療用装置を開示する米国特許第4,486,194号;正確な灌流速度で医薬を投与するための灌流ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;医薬の連続投与のための可変流速埋め込み型灌流装置を開示する米国特許第4,447,224号;マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧薬物送達システムを開示する米国特許第4,439,196号;及び浸透圧薬物送達システムを開示する米国特許第4,475,196号を挙げることができる。これらの特許文献は、引用することにより本明細書の一部をなす。このタイプの他の多くのインプラント、送達システム及びモジュールは、当業者に知られている。
【0280】
或る特定の場合において、本発明による武装NK細胞は、良好なin vivo分布を確保するために配合することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高親水性の化合物を排除する。本発明による治療用化合物がBBBを通過することを確保するために(所望であれば)、例えば、リポソームに配合することができる(例えば、リポソームの調製方法については、米国特許第4,522,811号、米国特許第5,374,548号及び米国特許第5,399,331号を参照のこと)。リポソームは、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送される1つ又は複数の物質を含有することができるため、医薬の標的投与を改善することができる(例えば、VV Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29: 685を参照のこと)。
【0281】
治療方法
前述したように、本発明による組換えポリペプチドに結合することができる、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体と、上記組換えポリペプチドとの上記組み合わせは、医薬として使用することができる有効成分である。
【0282】
1つの実施形態によれば、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系の上記NK細胞、又はNK細胞前駆体、及び上記組換えポリペプチドは、同時投与することができる。
【0283】
1つの実施形態によれば、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系の上記NK細胞、又はNK細胞前駆体、及び上記組換えポリペプチドは、順次投与することができる。
【0284】
1つの実施形態によれば、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系の上記NK細胞、又はNK細胞前駆体、及び上記組換えポリペプチドは、非共有結合複合体内で投与することができる。したがって、1つの主要な実施形態によれば、本発明は、組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物であって、上記組換えポリペプチドは、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞又はその前駆体に結合することができる、医薬として使用される、薬学的組成物に関する。
【0285】
特定の実施形態によれば、本発明は、組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物であって、上記組換えポリペプチドは、(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞又はその前駆体に結合している、医薬として使用される、薬学的組成物に関する。
【0286】
特定の実施形態によれば、本発明は、組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物であって、上記組換えポリペプチドは、(i)改変C2ドメインを含む改変Fc領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞又はその前駆体に結合することができる、医薬として使用される、薬学的組成物に関する。
【0287】
特定の実施形態によれば、本発明は、組換えポリペプチドと組み合わせたNK(ナチュラルキラー)細胞又はNK細胞前駆体を含む薬学的組成物であって、上記組換えポリペプチドは、(i)改変C2ドメインを含む改変Fc領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含み、上記Fc領域は、上記NK細胞又はその前駆体に結合している、医薬として使用される、薬学的組成物に関する。
【0288】
別の主要な実施形態によれば、本発明は、組換えポリペプチドに付着した、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体であって、上記組換えポリペプチドは、(i)上記NK細胞又はその前駆体に結合することができる改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む、医薬として使用される、NK細胞、又はNK細胞前駆体に関する。
【0289】
特定の実施形態によれば、本発明は、組換えポリペプチドに付着した、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体であって、上記組換えポリペプチドは、(i)上記NK細胞又はその前駆体に結合した改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む、医薬として使用される、NK細胞、又はNK細胞前駆体に関する。
【0290】
特定の実施形態によれば、本発明は、組換えポリペプチドに付着した、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体であって、上記組換えポリペプチドは、(i)上記NK細胞又はその前駆体に結合することができる、改変C2ドメインを含む改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む、医薬として使用される、NK細胞、又はNK細胞前駆体に関する。
【0291】
特定の実施形態によれば、本発明は、組換えポリペプチドに付着した、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体であって、上記組換えポリペプチドは、(i)上記NK細胞又はその前駆体に結合した、改変C2ドメインを含む改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む、医薬として使用される、NK細胞、又はNK細胞前駆体に関する。
【0292】
別の主要な実施形態によれば、本発明は、
NK細胞又はNK細胞前駆体を含む第1の部分と、
(i)改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む組換えポリペプチドを含む第2の部分であって、上記Fc領域は、上記NK細胞又はNK細胞前駆体に結合することができる、第2の部分と、
を含む、医薬として使用されるキットに関する。
【0293】
特定の実施形態によれば、本発明は、
NK細胞又はNK細胞前駆体を含む第1の部分と、
(i)改変C2ドメインを含む改変Fc(フラグメント結晶化可能)領域と、(ii)リガンド結合ドメインとを含む組換えポリペプチドを含む第2の部分であって、上記Fc領域は、上記NK細胞又はNK細胞前駆体に結合することができる、第2の部分と、
を含む、医薬として使用されるキットに関する。
【0294】
本発明の別の目的によれば、本発明による薬学的組成物、本発明による同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体、又は本発明によるキットは、具体的には、それらを必要とする個体における癌、自己免疫疾患及びその派生的なもの、又は感染性疾患を治療又は予防する治療方法において使用される。
【0295】
本発明に従って検討される個体又は患者は、哺乳類であり得る。本発明が意図する哺乳類は、例えば、家畜(ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ等)、具体的には、ネコ及びイヌ、霊長類、例えばヒト及び非ヒト霊長類、ウサギ、及び齧歯類、例えばマウス及びラットから選択することができる。1つの実施形態によれば、本発明が意図する個体又は患者は、ヒトであり得る。
【0296】
本発明による組換えポリペプチドと組み合わせたNK細胞、好ましくはNK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体は、癌を治療又は予防する方法、具体的にはそれらを必要とする個体における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法で使用するのに特に適切であり得る。
【0297】
1つの実施形態によれば、癌又は癌に関連する腫瘍細胞は、黒色腫、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮癌、直腸癌、肛門癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、腟癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性又は急性白血病、小児固形腫瘍、リンパ性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿道癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、CNS原発性リンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、Tリンパ球リンパ腫、環境によって誘発される癌、及び上記癌の組み合わせの一部であり得る。
【0298】
本発明による組換えポリペプチドに付着した、NK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体は、感染性疾患を治療又は予防する方法、具体的には感染性病原体に感染した細胞を阻害又は破壊する方法で使用するのに特に適切であり得る。
【0299】
1つの実施形態によれば、感染性疾患は、(a)インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア症、マラリア及びリーシュマニア症から選択される疾患;(b)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コルノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルス脳炎ウイルスから選択されるウイルスによる病原体感染症;(c)クラミジア属、リケッチア細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌及び淋菌、クレブシエラ属、プロテウス属、セラチア属、シュードモナス属、レジオネラ属、ジフテリア属、サルモネラ属、バチルス属、コレラ、破傷風、ボツリヌス症、炭素病、ペスト、レプトスピラ症及びライム病細菌から選択される細菌による病原体感染症;(d)カンジダ属、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、アスペルギルス属、ケカビ目の属、スポロトリックス・シェンキー、ブラストミセス・デルマチチジス、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシキス、コクシジオイデス・イミチス及びヒストプラズマ・カプスラーツムから選択される真菌による病原体感染症;又は(e)エントアメーバ・ヒストリチカ、バランチジウム・コリ、ネグレリア・フォーレリ、アカンソアメーバ属の種、ジアルジア・ランビア、クリプトスポリジウム属の種、ニューモシスチス・カリニ、プラスモディウム・ビラックス、バベシア・ミクロチ、トリパノソーマ・ブルセイ、トリパノソーマ・クルージ、リーシュマニア・ドノバン、トキソプラズマ・ゴンディ及びニッポストロンギルス・ブラシリエンシスから選択される寄生生物による病原体感染症であり得る。
【0300】
具体的には、肝炎ウイルスは、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス又はC型肝炎ウイルスであり、ヘルペスウイルスは、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II及びCMV又はエプスタイン・バーウイルスであり、真菌のカンジダ属は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)又はカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)であり、真菌のアスペルギルス属は、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)又はアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)であり、真菌のケカビ目は、ケカビ属(mucor)、アブシディア属(absidia)又はクモノスカビ属(rhizophus)である。
【0301】
本発明による組換えポリペプチドに付着したNK細胞、好ましくはNK細胞を必要とする個体に関して同種異系若しくは自系のNK細胞、又はNK細胞前駆体はまた、自己免疫疾患又はその派生的なもの、具体的には、臓器又は全身に特異的で、病原性自己抗体に関連又は関連しない原始又は二次自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患を治療又は予防する方法で使用するのに特に便利であり得る。
【0302】
例として、臓器移植片拒絶反応、移植片対宿主病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、原始シェーグレン症候群(又はグージェロー・シェーグレン症候群)、多発性硬化症等の自己免疫性多発ニューロパチー、I型糖尿病、自己免疫性肝炎、強直性脊椎炎、ライター症候群、痛風性関節炎、セリアック病、クローン病、橋本甲状腺炎、アジソン病、自己免疫性肝炎、バセドウ病、潰瘍性大腸炎、ANCA(抗好中球細胞質抗体)関連全身性血管炎等の血管炎、成人及び小児における自己免疫性血球減少症及び他の血液系の合併症、例えば急性又は慢性の自己免疫性血小板減少症、自己免疫性溶血性貧血、新生児溶血性疾患(HDN)、寒冷凝集素症、血栓性血小板減少性紫斑病及び自己免疫性後天性血友病、グッドパスチャー症候群、膜外腎症、自己免疫性脂性肌疾患、難治性筋無力症、混合型クリオグロブリン血症、乾癬、若年性特発性関節炎、炎症性筋炎、皮膚筋炎、及び抗リン脂質症候群を含む小児における全身性自己免疫疾患を挙げることができる。
【0303】
治療及び/又は予防を必要とする個体における癌、自己免疫疾患及びその派生的なもの、又は感染性疾患を治療及び/又は予防する方法も提供され、該方法は、個体において治癒される癌、自己免疫疾患及びその派生的なもの、又は感染性疾患について特異的な抗原と組み合わせて、又は抗原なしで、本発明による武装NK細胞を個体に投与することを含む。
【0304】
本発明による治療法以外に、本発明による武装NK細胞は、別の治療法と組み合わせて使用することもできる。例えば、癌の治療のために、本発明による武装NK細胞は、化学療法、放射線療法、手術又は遺伝子治療等の癌に対する別の治療も受けている個体に投与することができる。
【実施例
【0305】
以下の実施例は、eNK細胞と改変Fcポリペプチド、特にFc SDHポリペプチド(Fc-SDHTSFTIE)との間の結合特異性、及び疾患に関与する細胞を標的とするその能力を示す。
【0306】
実施例1:材料及び方法
PBMC細胞の調製
PBMC細胞(T細胞、B細胞、NK細胞及び単球)は、モンペリエのCHUの健常ドナーから得られた。細胞は、末梢血試料(B細胞、T細胞及び単球)及び臍帯血(NK細胞)から採取された(Sanchez-Martinez et al. 2016、非特許文献2)。
【0307】
PBMC細胞マーカー
CD45は、リンパ球の一般的なマーカーである。CD56は、NK細胞の特異的マーカーである。CD3は、Tリンパ球を識別するマーカーである。CD16は、NK細胞の特異的マーカーであり、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を可能にする。
【0308】
NK細胞の単離及び活性化
まず、モンペリエのCHUの健常ドナーからリンパ球を得た。PBMC及びUCB(UCBMC)は、それぞれHistopaque-1077(Sigma)を使用して末梢血試料及びUCBユニットにおいて採取された。本質的に、13mlのHistopaqueを50mlの遠心管に加え、RPMI(Invitrogen)で1/2に希釈した30mlの血液を上からゆっくりと加えた。遠心管を、途切れることなく、20℃で30分間、1600回転/分にて遠心分離した。
【0309】
遠心分離後、単核細胞を白色の中間層(interlayer ring)から取り出し、RPMIで洗浄し、10%のFBS(Invitrogen)を追加したRPMI培地に懸濁した。次に、リンパ球を液体窒素で凍結した。次に、ポジティブセレクションキットCD3 EasySep(商標)(STEMCELL technologies)を使用して、凍結リンパ球からT細胞を除去した。細胞を、IL-2(100U/ml)及びIL-15(5ng/ml)の存在下で、又はIL-2のみ(1000U/ml)で、NK細胞/照射PLH細胞比1:1にて、γ照射PLH細胞と共に10日~20日間培養した。PLH細胞は4日毎に、新鮮なサイトカインは2日毎に加えた。処理終了時、NK細胞(CD56/CD3)の純度は常に90%超であった。
【0310】
改変Fc領域を含むIgG1抗体
使用されるIgG1抗体は、トラスツズマブ(ハーセプチン)又はリツキシマブ(リツキサン)である。改変Fc領域を次表に示す。
【0311】
【表1】
【0312】
配列番号17のアミノ酸配列は、配列番号16のアミノ酸配列に包含される。上記2つのアミノ酸配列の違いは、配列番号16のアミノ酸配列の最初の10個のアミノ酸が、配列番号17のアミノ酸配列から除去されていることにある。
【0313】
蛍光分子によるFcポリペプチド及びFc抗体の標識
Fcポリペプチド及びFc抗体を標識し、それらのNK細胞への結合を調べるために、ポリペプチド及び抗体を蛍光分子に結合させる。使用される蛍光分子は、AlexaFluors647(A647)及びAlexaFluors488(A488)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)である。
【0314】
フローサイトメトリー分析
表現型の分析では、生細胞及び表面マーカーに対する抗体CD25-FITC、CD45RO-FITC、CD69-PE、CD62L-PE、CD19-PE、CD3-PE、CD19-ECD、CD56-PECy7、CD56-APC、CD3-APC、CD45-APCAlexaFluor750、CD45RA-APCAlexaFluor750、CD16-PacificBlue、CD57-PacificBlue、CD45-KromeOrange、CD16-KromeOrange(Beckman)、CD158b-FITC、CD158a-PE、CD107a-HV500(BD Biosciences)、CD158e-Vioblue(Miltenyi)を特定するために、細胞を7AAD(Beckman)で染色した。1×10~3×10の細胞を、2.5%のPBSを含有するPBS中で種々の抗体と共に、4℃で20分~30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、200μl~250μlの同じ培地の懸濁液に入れた。染色を、Kaluzaソフトウェアを用いてGalliosフローサイトメトリー(Beckman)によって分析した。生リンパ球をFSC/SSC及び7AAD染色した。Bリンパ球(CD19)、Tリンパ球(CD3/CD56)及びNK細胞(CD56/CD3)は、それぞれCD19、CD3及びCD56抗体を使用して識別された。
【0315】
MTT試験
採取したての、又は凍結した(液体窒素で保存)NK細胞を、3μMのCellTracker(商標)Violet BMQC Dye(Life Technologies)で標識し、異なるE:T比にてBT20標的細胞と共に一晩インキュベートした。その後、アネキシンV-FITC(Immunostep)及び7AAD(BD Biosciences)又はヨウ化プロピジウム(PI)を使用したフローサイトメトリーによって、紫色蛍光陰性の標的細胞集団におけるホスファチジルセリン(PS)の転座及び膜損傷を分析した。アネキシン-V及び/又はPI(又は7-AAD)について陽性の全て細胞は、死細胞(又は瀕死の細胞)と見なされた。
【0316】
ADCC実験において、BT20標的細胞を5μg/mlでの抗体トラスツズマブと共に、37℃で30分間インキュベートした。NK細胞が抗体で武装されている場合、細胞を同一の抗体濃度でインキュベートしてから、それらを洗浄し、BT20標的細胞と共にインキュベートする。EGTA(エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸)を1mMで使用して、顆粒エキソサイトーシス放出経路(granular exocytose route)を遮断し、1.5mMでのMgClで浸透圧を維持した。テトラゾリウムMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)色素を使用して、細胞生存率を決定した。次に、10μLのMTT(5mg/ml)を接着細胞(PBSで2回洗浄後、100μLの培地)に加え、次に、細胞を37℃で1時間インキュベートした。1時間後、100μLの0.05M HClをイソプロパノールに加えて、結晶を溶解させ、分光光度計で550nmにて色を定量化した。全ての実験において、モノクローナル抗体の有無における基底細胞死を計算した。これらの値を、それぞれNK細胞又は特異的なADCCを生じる抗体で武装したNK細胞で処理した後に得られた値から差し引いた。
【0317】
統計分析
全ての実験は、BD FACSCANTO IIで実施し、Flowjoソフトウェアで分析した。
【0318】
実施例2 研究設計
FcポリペプチドとeNK細胞との組み合わせ(グラフ1A)
臍帯血由来のin vitro NK細胞(eNK)を、10μg/mlでのポリペプチド(i)Fc LALA A647、(ii)Fc WT A647、(iii)Fc SDH A647と共に、又はFcなしで、37℃で1時間インキュベートした。次に、eNK細胞を洗浄し、NKマーカーに対して染色した。次に、武装eNK細胞を、フローサイトメトリーによって表面マーカーCD45/CD56/CD3により特定した。A647で標識した種々のFcポリペプチド(Fc A647)の平均蛍光強度(MFI)を分析し、Fc WTポリペプチドに対して正規化した。
【0319】
Fcトラスツズマブ抗体とeNK細胞との組み合わせ(グラフ1B)
eNK細胞を、10μg/mlでのFc WTトラスツズマブ抗体、Fc SDHトラスツズマブ抗体と共に、又はFc抗体なしで、37℃で1時間インキュベートした。次に、eNK細胞を洗浄し、FITCに結合した二次抗ヒトFc IgG抗体(抗Fc IgG FITC)で標識した。次に、武装eNK細胞を、フローサイトメトリーによって表面マーカーCD45/CD56/CD3により特定した。種々の抗Fc IgG FITCのMFIを分析し、Fc WTに対して正規化した。
【0320】
FcポリペプチドとeNK細胞のFc受容体(CD16)との結合特異性(グラフ1C)
eNK細胞を、10μg/mlでのポリペプチド(i)Fc LALA A647、(ii)Fc WT A647、(iii)Fc SDH A647と共に、又はFcなしで、37℃で1時間インキュベートした。次に、eNK細胞を洗浄し、NKマーカーに対して染色した。次に、武装eNK細胞を、フローサイトメトリーによって表面マーカーCD45/CD56/CD3及びCD16又はCD16により特定した。
【0321】
Fc eNK細胞の頻度及びMFI(Fc WTに対して正規化)を、CD16 NK細胞及びCD16 NK細胞において分析した。
【0322】
実施例3 研究設計
eNK細胞を、10μg/mlでのポリペプチド(i)Fc LALA A647、(ii)Fc WT A647、(iii)Fc SDH A647と共に、又はFcなしで、37℃で1時間インキュベートした。次に、eNK細胞を洗浄し、37℃で2日、3日、又は7日間インキュベートした。示した日に、CD16/CD56/CD45/CD3 eNK細胞上のFcポリペプチドの結合を、フローサイトメトリーによって分析した(グラフ2A)。Fc eNK細胞の頻度及びFc A647のMFI(Fc WTに対して正規化)(グラフ2B)を、eNK細胞で測定した。
【0323】
実施例4 研究設計
効率的な付着のためのFc SDHの用量(グラフ3A及びグラフ3B)
全てのCD16A受容体(又はFcγRIIIa)がFc SDHポリペプチドによって飽和され得るかどうかを試験するために、eNK細胞を、漸増濃度のFc WTポリペプチド又はFc SDHポリペプチドと共にインキュベートした。
【0324】
具体的には、eNK細胞を、1μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/mlでのポリペプチド(i)Fc WT A647、(ii)Fc SDH A647若しくは(iii)Fc SDH A488と共に、又はFcなしで、37℃で1時間インキュベートした。一度Fcポリペプチドで武装したeNK細胞を洗浄し、NKマーカーに対して染色した。武装eNK細胞は、フローサイトメトリーによってCD45/CD56/CD3と特定された。Fc A647(グラフ3A)又はFc A488(グラフ3B)のMFIを分析した。
【0325】
Fc SDHポリペプチドと競合体との組み合わせ(グラフ3C及びグラフ3D)
上記の実施例は、eNK細胞上でのFc SDHポリペプチドの長期安定性を示しているが、この付着が、in vivoに注入されたときに別のFcポリペプチドによって置換され得るかどうかは、答えが出ていない。この状態を研究するために、eNK細胞を、20μg/mlでのポリペプチドFc SDH A488(グラフ3C)若しくはFc SDH A647(グラフ3D)と共に飽和状態下で、又はFcなしで、37℃で1時間インキュベートした。次に、一度Fcポリペプチドで武装したeNK細胞を洗浄し、CD16A受容体競合体のリガンドを37℃で1時間添加した。(i)Fcブロック;(ii)Fc WT;(iii)Fc SDH;抗CD16抗体。次に、eNK細胞を、NKマーカーに対して染色した。eNK細胞は、フローサイトメトリーによってCD45/CD56/CD3と定義された。Fc A488(グラフ3C)又はFc A647(グラフ3D)のMFIを分析した。
【0326】
実施例5 研究設計
Fc SDH抗体で武装したeNK細胞の存在下における癌細胞の生残(グラフ4A、グラフ4B及びグラフ4C)
eNK細胞を、10μg/ml若しくは1μg/mlでのFc WTトラスツズマブ抗体若しくはFc SDHトラスツズマブ抗体と共に、又は抗体なしで、37℃で1時間インキュベートした。次に、Fc抗体で武装したeNK細胞を洗浄し(グラフ4B及びグラフ4C)、又は洗浄せずに(グラフ4A)、37℃で1時間(グラフ4A及びグラフ4B)又は24時間(グラフ4C)インキュベートし、次に、BT20細胞の存在下に1:1の比率にて37℃で24時間置いた。生残パーセンテージで表される細胞生存率は、MTT試験によって測定された。
【0327】
武装eNK細胞による非特異的活性化(グラフ4D)
eNK細胞を、10μg/ml若しくは1μg/mlでのWTトラスツズマブ抗体若しくはSDHトラスツズマブ抗体と共に、又は抗体なしで、37℃で1時間インキュベートした。次に、抗体で武装したeNK細胞を洗浄し、37℃で1時間インキュベートし、次に、BT20細胞の存在下に1:1の比率にて、CD107aを検出するための抗体と共に37℃で置いた。1時間のインキュベーション後、CD107aの分解をブロックするために、モネンシン及びブレフェルジンA型化合物を更に5時間加えた。CD56/CD45/CD3 eNK細胞上のCD107a発現の分析を、フローサイトメトリーによって実施した。
【0328】
実施例6 研究設計
eNK細胞を、10μg/mlでのFc WT若しくはFc SDH抗体と共に、又は抗体なしで、37℃で1時間インキュベートした。次に、eNK細胞を洗浄し、2つの試料に分割した。膜表面に存在する抗体を検出するために、第1の試料の武装eNK細胞を抗Fc IgGで標識した。膜表面及び細胞内媒体(intracellular medium)に存在する抗体を検出するために、第2の試料のeNK細胞を固定及び透過処理してから抗Fc IgGで標識した。次に、武装eNK細胞を、フローサイトメトリーによって表面マーカーCD45/CD56/CD3により特定した。抗Fc IgGで標識した種々のFc抗体の平均蛍光強度(MFI)を測定した(グラフ5A)。
【0329】
eNK細胞を、20μg/mlでのポリペプチドFc SDH A488(グラフ5B)若しくはFc SDH A647(グラフ5C)と共に、又はFcなしで、37℃で1時間インキュベートした。次に、eNK細胞を洗浄し、37℃で3日間インキュベートした。その後、競合体CD16Aリガンドを37℃で1時間添加した。(i)Fcブロック;(ii)抗CD32抗体;(iii)抗CD16クローンB73.1、(iv)抗CD16抗体。細胞を、NKマーカーに対して染色した。eNK細胞は、フローサイトメトリーによってCD45/CD56/CD3と定義され、Fc A488(グラフ5B)又はFc A647(グラフ5C)のMFIが分析された。
【0330】
実施例7 研究設計
事前に凍結したeNK細胞を、Fc SDH A647ポリペプチド10μg/mlと共に、37℃で1時間インキュベートした。次に、eNK細胞を洗浄し、15×10個のeNKを成体スイスヌードマウスに腹腔内注射した。マウスを24時間後に屠殺し、分析のために腹水及びいくつかの臓器(血液、骨髄、及び脾臓)を摘出した(図7A図7B図7C、及び図7D)。細胞を染色してNKマーカーを検出した。フローサイトメトリーを使用して、eNK細胞をCD45/CD56/CD16low又はCD16と定義し、腹腔細胞におけるFc A647蛍光を分析した。in vivo注射前後の全CD56 eNK細胞内のFc A647 eNK細胞を比較(図7B)。
【0331】
実施例8 研究設計
8.1.NK細胞上のCD16a及びCD16b受容体に対する、野生型抗体と比較したFc領域に改変C2を有する試験した組換え抗体のin vitroでの結合親和性(図9A
CD16a又はCD16bに対する試験した組換え抗体の結合特性を、Fc領域、特にC2配列にアミノ酸突然変異のない野生型抗体(リツキシマブモノクローナル抗体、アロタイプG1m17,1を使用)と、SPR(表面プラズモン共鳴)によって比較した(図9A)。
【0332】
抗ポリヒスチジン抗体(R&D Systems)は、製造業者の説明書(GE Healthcare)に従って、EDC/NHS活性化を使用してCM5センサーチップ上で10μl/分の流速にてHBS-EP中で25℃にてT200装置で固定化した。それらをフローセルFc2上に6700RUレベルにて共有結合的に固定化し、同じ化学処理を使用するが抗体なしで対照参照表面(フローセルFc1)を調製した。Fc1及びFc2における全ての動態測定は、100μl/分にてHBS-EP中で25℃にてT200装置で単一サイクル滴定によって実施した。各ヒトガンマ受容体(R&D Systems)を、固定化抗ポリヒスチジン抗体上で20nMにて60秒間捕捉した。5つの漸増濃度の抗体を注入した(注入時間=120秒)。ランニングバッファー中にて600秒の解離工程の後、5μlのグリシン-HCl pH1.7を使用してセンサー表面を再生した。全てのセンサーグラムは、対照参照表面及びバッファーブランク注入から低シグナルを差し引くことによって修正した。動態パラメータは、T200評価ソフトウェアの2つの状態モデルを使用して、センサーグラムから評価した。
【0333】
結果は、受容体に対するWT抗体の親和性に関して正規化される。
【0334】
8.2.CD16武装後1時間~72時間の、試験した組換え抗体のCD16細胞に対する結合の動態(図9B
CD16細胞(すなわち、NK細胞)の細胞表面での非共有結合動態を、FACSによって評価した。eNKを、10μg/mLでのリツキシマブWTと共に、又は組換え抗体を担持させて、37℃で1時間インキュベートした。次に、NK細胞を洗浄し、37℃で1時間、24時間、48時間又は72時間インキュベートした。
【0335】
フローサイトメトリーを使用して、抗イディオタイプ抗体を使用してCD56/CD45/CD16/CD3 eNK細胞に対するmAb結合を分析した。平均武装NK細胞(%)をグラフにて報告する。全ての実験は、BD FACSCANTO IIで実施し、Flowjoソフトウェアで分析した。
【0336】
実施例9 研究設計
eNK細胞を、10μg/mLでの組換えリツキシマブSDH(RTX-Fc SDH)及び/又は組換えトラスツズマブSDH(TRAST-Fc SDH)と共に、37℃で1時間インキュベートした。
【0337】
次に、NK細胞を洗浄し、抗イディオタイプ抗体を使用してCD56/CD45/CD16/CD3 eNK細胞に対するAb結合についてフローサイトメトリーによって分析した。全ての実験は、BD FACSCANTO IIで実施し、Flowjoソフトウェアで分析した。
【0338】
実施例10 研究設計
CD16 NK細胞を、組換えRTX-SDH又は非組換えのもの(Fc WT)で武装し、次に、マントルリンパ腫患者(1、2、3)、DLBCL患者(4、5)、濾胞性リンパ腫患者(6、7)由来のBリンパ腫初代細胞と共に、E:T 3:1の比率で16時間インキュベートした。
【0339】
フローサイトメトリーを使用して、NK細胞の自然な細胞傷害性を差し引いた後の武装CD16 NK細胞のADCC(抗体依存性細胞傷害)のパーセンテージを決定した(試験したeNKドナーn=2~4、点)。バーは平均±SEMを表す。Bリンパ腫の種類及び患者にかからわず、RTX-SDHで武装したCD16細胞は、CD16細胞単独よりも多くの標的細胞を死滅させる(20%~70%超の細胞傷害性効果)。
【0340】
結果
実施例2:Fc SDHポリペプチドの付着は野生型Fc(WT)の付着よりも効率的である
Fc LALAポリペプチドのeNK細胞への弱い付着(グラフ1A)、及びFc WT抗体のeNK細胞への弱い付着(グラフ1B)を観察することができる。一方、Fc SDHポリペプチドのeNK細胞への強い付着が、陽性対照(Fc WT)と比較して、単離されたポリペプチド(グラフ1A)に関しても、IgG抗体のFc領域(グラフ1B)に関しても観察される。
【0341】
さらに、Fc SDHポリペプチドの蛍光強度は、CD16 eNK細胞集団(3)に対して、CD16 eNK細胞集団(30)において有意に高いことが注目されている(グラフ1C、左)。また、Fc eNK細胞のパーセンテージは、Fc SDHで武装したCD16 eNK細胞集団(40%)に対して、Fc SDHで武装したCD16 eNK細胞集団(100%)において有意に高い。したがって、ポリペプチドのFc SDH領域の付着は、CD16 eNK細胞集団に対して非常に特異的であり(グラフ1C)、Fc WT又はFc SDHによって使用される主なFc受容体がCD16Aであることを示唆している。
【0342】
Fc SDHポリペプチド-eNK細胞の結合特異性は、SDH突然変異の結果としてFc WTポリペプチドの付着に関して大幅に改善される(Fc SDHで武装したCD16 eNK細胞の100%に対して、Fc WTで武装したCD16 eNK細胞の40%、グラフ1C、右)。
【0343】
蛍光分子に付着したFc SDHで武装したeNK細胞は、これらの武装eNK細胞が任意の低分子、例えば、対象抗原に結合し、疾患に関与する標的細胞の認識及び除去を可能にする能力を示す。
【0344】
実施例3:Fc SDHポリペプチドの付着は経時的に安定である
フローサイトメトリー分析は、陰性対照(Fcなし)と比較して、2日間のインキュベーション後に、eNK細胞が実質的にFc LALA及びFc WTポリペプチドを欠乏していることを示す。これに対して、Fc SDHポリペプチドは、7日間のインキュベーション後もeNK細胞に強く付着したままである(グラフ2A)。
【0345】
さらに、eNK細胞の80%超が7日後もFc SDHポリペプチドを担持したままであるのに対して、Fc WTポリペプチドの付着はインキュベーション2日目には非常に弱く、約10%の細胞がFc WTポリペプチドを依然として保持していることが注目される(グラフ2B)。
【0346】
結論として、Fc SDH-eNK細胞間の付着は、少なくともインキュベーション7日目までは極めて安定したままである。
【0347】
実施例4:Fc SDH-NK細胞の組み合わせは飽和しており、通常の生理学的条件下では置換できない
NK細胞受容体を飽和させるには低用量のFc SDHポリペプチドが必要である。
【0348】
Fc SDH A647ポリペプチドは、10μg/mlでの開始によりCD16A部位を速やかに飽和させるのに対して、Fc WT A647ポリペプチドは40μg/mlでも飽和に達しない(グラフ3A)。同様に、A488以外の蛍光分子に付着したFc SDHポリペプチドは、10μg/mlでの開始によりeNK細胞を飽和させる(グラフ3B)。
【0349】
したがって、NK細胞を飽和させるには低用量のFc SDHポリペプチドが必要である。
【0350】
Fc SDHポリペプチドの付着は、生理学的条件下では除去できない。
【0351】
データは、野生型Fcポリペプチドの2つの形態(Fcブロック及びFc WT A647)が、付着したFc SDHポリペプチドのレベルを改変していないことを示している。これに対して、別のFc SDHポリペプチドは、CD16Aに対する同じ親和性のために、蛍光色素A488及びA647の2つの組み合わせに最初に付着したFc SDHのレベルを低下させた。抗CD16抗体を使用した場合に最大の置換が観察され、これは、Fc SDHの付着がCD16A受容体に依存することを意味する(グラフ3C及びグラフ3D)。
【0352】
したがって、一度CD16Aに付着したFc SDHポリペプチドは、Fc WTポリペプチドによって除去することができず、これは、Fc SDHポリペプチドで武装したeNK細胞をin vivoに注入したときに、Fc SDHポリペプチドは安定してNK細胞に付着したままであることを示唆している。
【0353】
実施例5:Fc SDH抗体で武装したeNK細胞は、より細胞傷害性が高く、高い脱顆粒レベルを示す
Fc SDH抗体で武装したeNK細胞は、eNK細胞単独又はFc WT抗体で武装したeNK細胞よりも高い細胞傷害性を示す。
【0354】
武装eNK細胞の細胞傷害性を試験するために、BT20乳癌細胞株を含む癌細胞の表面に発現するHER2タンパク質に特異的な改変トラスツズマブ抗体を使用することが選択された。これらの細胞株は武装eNKの標的となる。結果は、10μg/mlでのFc SDH抗体で武装したeNK細胞は、eNK細胞単独又は10μg/mlでのFc WT抗体で武装したeNK細胞よりも細胞傷害性が高いことを示している(グラフ4A及びグラフAB)。Fc SDH抗体で24時間武装したeNK細胞でも同じ結果が得られる(グラフ4C)。1μg/mlでの抗体の投与量は、それほど強力な効果を示さなかった。Fc WT抗体は、eNK細胞単独(抗体なし)に対して効果がないように思われる。したがって、eNK細胞の細胞傷害性レベルは、Fc SDH抗体によって改善される。
【0355】
抗体Fc SDHで武装したeNK細胞の高い脱顆粒レベル
eNK細胞の細胞傷害性は、脱顆粒によって媒介される。この機構は、CD107aの発現によって測定することができる。CD107aの膜発現は、NK細胞の細胞傷害活性のマーカーである。したがって、標的細胞(BT20細胞)の有無にて、Fc WT抗体又はFc SDH抗体で武装したeNK細胞でのフローサイトメトリーによってCD107aの発現を分析した。結果は、CD107aは標的細胞なしの武装eNK細胞では誘導されないことを示しており(グラフ4C、上)、これは、CD16Aに対する抗体の付着が、標的細胞の不存在下で武装eNK細胞の活性化を伴わないことを示唆している。次に、10μg/mlでのFc SDH抗体で武装したeNK細胞は、Fc WT抗体又は抗体の不存在下のものよりも高いCD107a発現を示す(グラフ4D、下)。
【0356】
Fc抗体で武装したeNK細胞が使用する機構の1つは脱顆粒であり、この機構はFc SDH抗体で武装したeNK細胞でより効果的である。
【0357】
実施例6:eNK細胞のFc受容体(CD16)に付着したFc SDH抗体は内部移行されない
3日間のインキュベーション後、Fc SDH A647抗体又はFc SDH A488抗体は、競合する抗CD16抗体によって除去されることが注目された。一方、抗CD32抗体は、最初にFc受容体に付着したFc SDH抗体を置換しない。そのため、Fc SDH抗体はeNK細胞の表面に存在したままであるため、内部移行されないことが注目されている(図5)。
【0358】
さらに、いくつかの研究では、NK細胞の活性化中のCD16受容体の排出又は内部移行が報告されている(Romee et al., 2013、Capuano et al., 2017)。Fc領域への付着がCD16A受容体の発現を妨害するかどうかを測定するために、エピトープがCD16分子の最初のIg型遠位膜ドメインにあるため、付着がFcのマスキングの影響を受けないと考えられる抗CD16クローンB73.1を使用した(Grier et al., 2012)。しかしながら、この抗体がFc SDH抗体を置換できることは、グラフ3C及びグラフ3Dにおいて見ることができる。したがって、図5の結果は、CD16 eNK細胞の頻度が経時的に変化せず、Fcの条件によっても変化しないことを示している。
【0359】
実施例7:eNK細胞上のFc SDH領域の付着はin vivoで安定である
in vivo条件下でのFc SDH-eNK細胞の結合安定性を確保するために、Fc SDHポリペプチドで武装したeNK細胞を、成体スイスヌードマウスに腹腔内注射した。多くのeNK細胞(全細胞の15%)が腹腔に見られることが注目されている(図7A)。これらの細胞は依然として大部分がCD16(79%)であり、CD16 eNK細胞の大部分はFc SDH A647ポリペプチドで武装されていた(87%)。注射前に、全eNK細胞の84%がFc SDH A647ポリペプチドを備え、それらの73%はin vivoで24時間後も陽性のままであった(図7B)。さらに、注射の24時間後、少数のeNK細胞が血液又は骨髄中に存在することが注目された(図7C)。しかしながら、若干のCD16 eNK細胞は脾臓に向かって移動し、脾臓においてFc SDH A647で武装したまま(88%)である(図7D)。
【0360】
したがって、これらの結果は、Fc SDHの付着がin vivoでの注射後にeNK細胞上で安定したままであることを示している。
【0361】
実施例8:
8.1.CD16A及びCD16Bに対する、野生型形態と比較した種々のC2突然変異体のin vitroでの結合親和性(図9A
図9Aは、参照値抗体RTX-Fc WTと比較した、CD16a(明灰色)及びCD16b(暗灰色)に対する試験した組換え抗体の親和性を表す。データは、組換え抗体D(Fc AL-配列番号8)を除き、他の全ての組換え抗体がCD16a及びCD16b受容体への改善されたin vitroでの結合を示すことを実証する(図9A)。
【0362】
試験した組換え抗体の全ての中で、C(Fc SDIE-配列番号5)、I(Fc SDALIE-配列番号13)、J(Fc SDHFIE-配列番号7)、K(Fc SDSTIE-配列番号6)及びL(Fc SDH-配列番号2)は、WT抗体と比較して親和性が8倍近く又は8倍を超えて増加し、CD16aに対する最も高い結合を示す。組換え抗体E(Fc ALIE-配列番号9)、G(Fc GASDALIE-配列番号11)及びH(Fc GASDIE-配列番号12)は5倍~6倍増加した結合を示し、組換え抗体A(Fc SD-配列番号3)、B(Fc IE-配列番号4)、及びFはCD16aへの結合が2倍~3倍増加したより小さな改善を示す。
【0363】
具体的には、組換え抗体J、K及びLは、同じ突然変異S239D及びI332E並びに1つ又は2つの更なる突然変異を共有し、同じ突然変異S239D及びI332Eを共有する他の組換え抗体C、G、H又はIを含む他の全ての組換え抗体と比較して、顕著な結合親和性を示す。したがって、組換え抗体J、K及びLにおけるこれらの更なる突然変異は、これらの抗体がCD16細胞及び/又はNK細胞と接触したときに利点をもたらす可能性がある。
【0364】
組換え抗体L(Fc SDH-配列番号2)には、突然変異S239D、H268F、S324T及びI332Eが含まれる。突然変異H268Fは組換え抗体Jに含まれ、これに対して、突然変異S324Tは組換え抗体Kに含まれる。したがって、突然変異H268F及びS324Tはまた、CD16a受容体に対する抗体の結合親和性を高めることを可能にする。
【0365】
CD16bに関する結果は、CD16bが突然変異体C及びLとの結合をより低い程度で改善することが観察されることを除いて、比較的類似している。
【0366】
8.2.CD16武装後1時間~72時間の、Fc領域に改変C2を有する試験した組換え抗体のCD16細胞に対する結合の動態(図9B
図9Bは、武装後1時間、24時間、48時間又は72時間での、表面をRTX-Fc WT又は各組換え抗体(RTX)でコーティングさせたCD56/CD45/CD16/CD3 eNK細胞のパーセンテージを表す。
【0367】
1時間後にRTX-FcWT及び組換え抗体DでコーティングされたCD16細胞は20%未満であり、24時間後からほとんどのNK細胞(CD16細胞)はその表面に抗体が存在しない(図9B)。
【0368】
他の全ての組換え抗体は、1時間で50%超のCD16細胞(すなわち、NK細胞)に結合することができるが、それらの結合の動態に関して食い違いが観察される。組換え抗体A、B、E及びFの結合は24時間で大幅に減少し、1時間と比較して50%超が失われる。これは、組換え抗体C、G、H、I、J、K及びLの場合には当てはまらず、72時間までの時間にわたって安定した結合が観察され、1時間と比較して50%超のCD16細胞が抗体でコーティングされたままである。CD16に対する最も高い親和性を有する組換え抗体は、CD16細胞に対して最良の武装であり、逆の武装であると予想される。しかし、突然変異体Eは、突然変異体H及び突然変異体GよりもCD16に対する高い親和性を示す一方で、CD16細胞に対して安定的な結合を示さない。
【0369】
同じ突然変異S239D、I332Eと共に1つの更なる突然変異を共有する組換え抗体I、J及びKは、組換え抗体とNK細胞(CD16細胞)との間のCD16受容体への耐久性のある安定した持続性結合を有することに注目する必要がある。
【0370】
図9BのRTX-L-R(G1m17,1アロタイプ)及びRTX-L-T(nG1m1アロタイプ)を比較することによって示されるように、アロタイプが組換え抗体の長期の安定した結合に影響を与えないことに注目することも重要である。
【0371】
このデータは、CD16細胞に対する種々の組換え抗体の予想外の長期結合(72時間超、図9B)は、それらの受容体親和性の改善では予想できないことを示している(図9A)。
【0372】
実施例9:CD16細胞のマルチ武装効率
図10に示した結果は、CD16細胞(すなわち、NK細胞)が、C2ドメインでそれぞれ突然変異した2つのmAbで共武装できることを示す。この二重武装は、単一武装と同じ結合効率を有する。
【0373】
実施例10:組換えリツキシマブFc SDHで武装したCD16細胞の細胞傷害性の増加
図11に示した結果は、Fc SDH突然変異(配列番号2で表される)を含有するモノクローナル抗体によるCD16細胞(すなわち、NK細胞)のex vivo武装が、標的癌細胞に対する強力なADCCをもたらす可能性があることを示している。
【0374】
先行技術文献
Capuano, C., C. Pighi, R. Molfetta, R. Paolini, S. Battella, G. Palmieri, G. Giannini, F. Belardinilli, A. Santoni & R. Galandrini (2017) Obinutuzumab-mediated high-affinity ligation of FcγRIIIA/CD16 primes NK cells for IFNγ production. Oncoimmunology, 6, e1290037.
Grier, J. T., L. R. Forbes, L. Monaco-Shawver, J. Oshinsky, T. P. Atkinson, C. Moody, R. Pandey, K. S. Campbell & J. S. Orange (2012) Human immunodeficiency-causing mutation defines CD16 in spontaneous NK cell cytotoxicity. J Clin Invest, 122, 3769-80.
Moore, G. L., H. Chen, S. Karki & G. A. Lazar (2010) Engineered Fc variant antibodies with enhanced ability to recruit complement and mediate effector functions. MAbs, 2, 181-9.
Romee, R., B. Foley, T. Lenvik, Y. Wang, B. Zhang, D. Ankarlo, X. Luo, S. Cooley, M. Verneris, B. Walcheck & J. Miller (2013) NK cell CD16 surface expression and function is regulated by a disintegrin and metalloprotease-17 (ADAM17). Blood, 121, 3599-608.
Sanchez-Martinez, D., N. Allende-Vega, S. Orecchioni, G. Talarico, A. Cornillon, D. N. Vo, C. Rene, Z. Y. Lu, E. Krzywinska, A. Anel, E. M. Galvez, J. Pardo, B. Robert, P. Martineau, Y. Hicheri, F. Bertolini, G. Cartron & M. Villalba (2018) Expansion of allogeneic NK cells with efficient antibody-dependent cell cytotoxicity against multiple tumors. Theranostics, 8, 3856-3869.
【0375】
[配列表]
配列番号1(=Fc WT領域(IgG1-C2))
配列番号2(=Fc SDH領域(IgG1-C2.S239D.H268F.S324T.I332E))
配列番号3(=Fc SDH領域(IgG1-C2.S239D))
配列番号4(=Fc IE領域(IgG1-C2.I332E))
配列番号5(=Fc SDIE領域(IgG1-C2.S239D.I332E))
配列番号6(=Fc SDSTIE領域(IgG1-C2.S239D.S324T.I332E))
配列番号7(=Fc SDHFIE領域(IgG1-C2.S239D.H268F.I332E))
配列番号8(=Fc AL領域(IgG1-C2.A330L))
配列番号9(=Fc ALIE領域(IgG1-C2.A330L.I332E))
配列番号10(=Fc GASD領域(IgG1-C2.G236A.S239D))
配列番号11(=Fc GASDALIE領域(IgG1-C2.G236A.S239D.A330L.I332E))
配列番号12(=Fc GASDIE領域(IgG1-C2.G236A.S239D.I332E))
配列番号13(=Fc SDALIE領域(IgG1-C2.S239D.A330L.I332E))
配列番号14(=Fc LALA領域(IgG1-C2.L234A.L235A))
配列番号15(=Fc WT領域(IgG1)アロタイプnG1m1))
配列番号16(=Fc WT領域(IgG1)アロタイプG1m17,1)
配列番号17(=配列番号16に包含されるFc WT領域(IgG1)アロタイプG1m17,1)
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図10
図11
【配列表】
2023535842000001.app
【国際調査報告】