(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(54)【発明の名称】抗GITRモノクローナル抗体及びその医薬的使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230814BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230814BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230814BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230814BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230814BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523317
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 CN2021080981
(87)【国際公開番号】W WO2022001189
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202010597133.7
(32)【優先日】2020-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523052085
【氏名又は名称】英諾湖医薬(杭州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】邱均専
(72)【発明者】
【氏名】王振生
(72)【発明者】
【氏名】孫▲カイ▼
(72)【発明者】
【氏名】周漫
(72)【発明者】
【氏名】陳均勇
(72)【発明者】
【氏名】孫鍵
(72)【発明者】
【氏名】区日山
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB36
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
免疫反応を活性化するための薬物、特に癌を治療するための関連薬物の製造に有用である抗GITRモノクローナル抗体及びそのヒト化抗体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖と軽鎖を含む抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、
前記重鎖のCDR1のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:2、10、18、26、34、42、50、58、66、74、82、90、98及び106から選択される1つであり、
前記重鎖のCDR2のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:3、11、19、27、35、43、51、59、67、75、83、91、99及び107から選択される1つであり、
前記重鎖のCDR3のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:4、12、20、28、36、44、52、60、68、76、84、92、100及び108から選択される1つであり、
前記軽鎖のCDR1のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:6、14、22、30、38、46、54、62、70、78、86、94、102及び110から選択される1つであり、
前記軽鎖のCDR2のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:7、15、23、31、39、47、55、63、71、79、87、95、103及び111から選択される1つであり、
前記軽鎖のCDR3のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:8、16、24、32、40、48、56、64、72、80、88、96、104、及び112から選択される1つであり、
前記抗原結合断片の重鎖及び軽鎖は、それぞれ前記抗体の重鎖及び軽鎖に跨るCDR1~CDR3のアミノ酸配列を含むことを特徴とする抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:1、9、17、25、33、41、49、57、65、73、81、89、97及び105から選択される1つであり、
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:5、13、21、29、37、45、53、61、69、77、85、93、101、及び109から選択される1つであることを特徴とする請求項1に記載の抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記重鎖及び軽鎖はヒト化されており、
前記ヒト化後の重鎖可変領域のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:113、115、117及び119から選択される1つであり、
前記ヒト化後の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:114、116、118及び120から選択される1つであることを特徴とする請求項1に記載の抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記ヒト化後の重鎖の全長アミノ酸が、SEQ ID NO:121、123、125、127、128、129及び130から選択される1つであり、
前記ヒト化後の軽鎖の全長アミノ酸が、SEQ ID NO:122、124、126及び131から選択される1つであることを特徴とする請求項3に記載の抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列。
【請求項6】
GITR-LとGITRとの結合を遮断する薬物、Tリンパ球を活性化する薬物、又はTリンパ球におけるIL-2及びIFN-γの発現を上昇させる薬物を含むが、これらに限定されない薬物の製造における、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片の使用。
【請求項7】
モノクローナル抗体と結合部位とを含むモノクローナル抗体コンジュゲートであって、
前記モノクローナル抗体は、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であり、前記結合部位は、放射性核種、薬物、毒素、サイトカイン、サイトカイン受容体断片、酵素、ルシフェリン、及びビオチンから選択される1種又は複数種であることを特徴とするモノクローナル抗体コンジュゲート。
【請求項8】
GITR-LとGITRとの結合を遮断する薬物、Tリンパ球を活性化する薬物、又はTリンパ球におけるIL-2及びIFN-γの発現を上昇させる薬物を含むが、これらに限定されない薬物の製造における、請求項7に記載のモノクローナル抗体コンジュゲートの使用。
【請求項9】
腫瘍の予防及び/又は治療及び/又は補助的な治療のための薬物の製造における請求項7に記載のモノクローナル抗体コンジュゲートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍及び免疫薬の分野に属し、具体的には、抗GITRモノクローナル抗体及びその医薬的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
GITRはグルココルチコイドによって誘導されるTNFR関連タンパク質であり、TNFRSF18又はCD357とも呼ばれ、I型膜貫通タンパク質であり、Treg細胞には高いレベルで発現しているが、ナイーブT細胞とメモリーT細胞には低いレベルで発現している[Shimizuら,(2002),Nat. Immunol. 3:135-42;Nocentiniら,(2009),Adv. Exp. Med. Biol. 647:156-73;McHughetら,(2002),Immunity 16:311-23;Nocentiniら,(2005),Eur J Immunol 35:1016-1022]。活性化後、ナイーブT細胞とTregT細胞はGITRの発現を迅速に向上させた(Shimizuら,(2002),Nat. Immunol. 3:135-42;Krauszら,(2007,Scientific World Journal 7:533-66)。活性化された先天性免疫細胞(例えば天然キラー細胞、マクロファージや樹状細胞(DC)にも低レベルから中レベルのGITR発現がある[Clouthierら,(2014),Growth Factor Rev. 25:91-106]。GITRのリガンド(GITRL)はTNFスーパーファミリーに属するII型膜貫通タンパク質であり、B細胞、マクロファージや樹状細胞(DC)を含む内皮細胞及び活性化抗原提示細胞(APC)の細胞表面に所定量の発現が観察された[Yuら,(2003),Biochem. Biophys. Res. Commun.310:433-438;Toneetら,(2003),Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:15059-15064]。
【0003】
GITRL又はGITRアゴニスト抗体とGITRとの相互作用により、GITRは刺激され、TCRにより誘導されるT細胞増殖とサイトカイン産生の作用を増強し[Ronchettiら,(2004),Eur. J. Immunol. 34:613-622;Toneら,(2003),Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:15059-15064;Stephensら,(2004),J. Immunol. 173:5008-5020]、また、エフェクターT細胞のTreg細胞媒介免疫抑制作用に対する感受性を低下させることができる[Ronchettiら,(2007),Eur. J. Immunol. 37:1165-1169;Stephensら,(2004),J. Immunol. 173:5008-5020]。GITRの活性化はTNFRに関連する因子2(TRAF2)と5(TRAF5)を動員し、そして転写因子NF-κBとMAPキナーゼで誘導されるシグナル伝達経路を誘導して活性化し[Snelletら,(2011),Immunol. Rev. 244:197-217;Snellら,(2010),J. Immunol. 185:7223-34]、また、抗アポトーシスのBcl-XLタンパク質の転写を誘導し、細胞活性化作用によるT細胞の死を減少させることができる[Ronchettiら,(2004),Eur. J. Immunol. 34:613-622;Esparzaら,(2006),J. Biol. Chem. 281:8555-64]。GITRの活性化はさらにNFκBに依存するTRAF6の活性化及びIL-9の産生を招くことができ、それによって、DC細胞の機能を増強し、Tリンパ細胞の細胞毒性反応を活性化することができる[Kimら,(2015),Nat. Med. 21:1010-7]。GITR信号伝達もFoxP3の分解[Cohenetら,(2010),PLoS ONE 5:10436;Schaerら,(2013),Cancer Immunology Research 1:320-331]、及びc-Jun N末端キナーゼ(JNK)のリン酸化[Joethamら,(2012),J Biol. Chem. 287:17100-17108]を促進することができ、これにより、Treg細胞による免疫抑制機能がさらに抑制される。また、抗GITR抗体がTreg細胞のB細胞媒介抗体産生作用に対する抑制効果を逆転することも報告されている[Cavaら,(2004),J. Immunol. 173:3542-3548]。
【0004】
前臨床研究により、GITRシグナル伝達経路の活性化は腫瘍の除去作用を顕著に増強できることが明らかになった。その効果は免疫エフェクター細胞の活性化に依存し[Ramirezら,(2006),J Immunol 176:6434-6442;Boczkowskiら,(2009),Cancer Gene Ther. 16:900-911;Mitsuiら,(2010),Clin. Cancer Res. 16:2781-91]、Treg細胞の免疫抑制活性の除去又は抑制にも依存する[Cohenら,(2010),PLoS ONE 5: e10436;Coeら,(2010),Cancer Immunol. Immunother. 59:1367-77;Xiaoら,(2015),Nat. Commun. 6:8266]。GITR活性化抗体を単独で使用すると、腫瘍組織へのTreg細胞の進入を減少させ、腫瘍内のTreg細胞にfoxp3の発現を失わせ、これにより、腫瘍内のTreg細胞の免疫抑制作用を局所的に除去することができる。最終的に、腫瘍微小環境では、Teff/Treg細胞比率が向上し、Teff細胞の活性と機能が増強される(Cohenら,(2010),PLoS ONE 5:e10436)。卵巣癌モデルでは、抗GITR抗体と抗PD-1抗体の併用療法は全体的に患者の生存率を向上させることができ、治療後90日で腫瘍のないマウスは20%に達した。マウス腫瘍内に進入した白血球(TIL)を解析した結果、CD4+とCD8+エフェクターメモリーT細胞の数は顕著に増加し、また、Treg免疫調節細胞の数は顕著に減少した[Luら,(2014),J. Transl. Med. 12:36-47]。単剤治療の効果はこのGITR抗体に対してあまり顕著ではないが、それと抗CTLA4抗体の併用投与はMethAとCT26の腫瘍モデルにおいて顕著に増強された相乗的な抗腫瘍作用が現れた[Koら,(2005),J. Exp. Med. 202:885-91;Mitsuiら,(2010),Clin. Cancer Res. 16:2781-91]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに基づいて、本発明は、ハイブリドーマ技術により、GITR及び免疫細胞活性を活性化し、かつGITR-LとGITRとの相互作用を遮断することができる優れた効果を有する抗GITRモノクローナル抗体を得て、そして、関連抗体に対してヒト化改変を行うことに成功した。前記抗体は、免疫反応を刺激、増強するための薬物の製造、並びに癌関連薬物の治療において応用の将来性が期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、重鎖と軽鎖を含む抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、
前記重鎖のCDR1のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:2、10、18、26、34、42、50、58、66、74、82、90、98及び106から選択される1つであり、
前記重鎖のCDR2のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:3、11、19、27、35、43、51、59、67、75、83、91、99及び107から選択される1つであり、
前記重鎖のCDR3のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:4、12、20、28、36、44、52、60、68、76、84、92、100及び108から選択される1つであり、
前記軽鎖のCDR1のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:6、14、22、30、38、46、54、62、70、78、86、94、102及び110から選択される1つであり、
前記軽鎖のCDR2のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:7、15、23、31、39、47、55、63、71、79、87、95、103及び111から選択される1つであり、
前記軽鎖のCDR3のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:8、16、24、32、40、48、56、64、72、80、88、96、104、及び112から選択される1つであり、
前記抗原結合断片の重鎖及び軽鎖は、それぞれ前記抗体の重鎖及び軽鎖に跨るCDR1~CDR3のアミノ酸配列を含むことを特徴とする抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:1、9、17、25、33、41、49、57、65、73、81、89、97及び105から選択される1つであり、
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:5、13、21、29、37、45、53、61、69、77、85、93、101、及び109から選択される1つであることを特徴とする上記の抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、
上記の抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片の重鎖及び軽鎖のヒト化改変であって、前記ヒト化改変された重鎖可変領域のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:113、115、117及び119から選択される1つであり、
前記ヒト化改変された軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、SEQ ID NO:114、116、118及び120から選択される1つであるヒト化改変を開示する。
さらに、本発明は、前記ヒト化改変された重鎖の全長アミノ酸が、SEQ ID NO:121、123、125、127、128、129及び130から選択される1つであり、
前記ヒト化改変された軽鎖の全長アミノ酸が、SEQ ID NO:122、124、126及び131から選択される1つである上記のヒト化改変された抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を開示する。
【0009】
さらに、本発明は、上記の抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を開示する。
【0010】
さらに、本発明は、Tリンパ球を活性化する薬物、GITR-LとGITRとの結合を遮断する薬物、又はTリンパ球におけるIL-2及びIFN-γの発現を上昇させる薬物の製造における上記の抗GITR断片の使用を開示する。
【0011】
さらに、本発明は、モノクローナル抗体と結合部とを含み、前記モノクローナル抗体は請求項1~4のいずれか1項に記載の抗GITRモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であり、前記結合部は、放射性核種、薬物、毒素、サイトカイン、サイトカイン受容体断片、酵素、ルシフェリン、及びビオチンから選択される1種又は複数種であるモノクローナル抗体コンジュゲートを開示する。
【0012】
さらに、本発明は、Tリンパ球を活性化する薬物、GITR-LとGITRとの結合を遮断する薬物、又はTリンパ球におけるIL-2及びIFN-γの発現を上昇させる薬物の製造における上記のモノクローナル抗体コンジュゲートの使用を開示する。
【0013】
さらに、本発明は、腫瘍の予防及び/又は治療及び/又は補助的な治療のための薬物の製造における上記のモノクローナル抗体コンジュゲートの使用を開示する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の進歩性は以下のとおりである。本発明では、哺乳動物細胞発現系を用いて組み換えGITRを作製し、これを抗原としてマウスを免疫し、マウスの脾臓細胞と骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマ細胞を得る。大量のハイブリドーマ細胞の数回のクローニングとスクリーニングにより、いくつかのモノクローナルハイブリドーマ細胞株を得る。これらのハイブリドーマ細胞株はGITRと特異的かつ高親和性で結合するモノクローナル抗体を産生でき、混合リンパ細胞反応中のIL-2、INF-γの分泌を促進でき、また、GITR-LとGITRとの結合を有効に遮断でき、しかも、RT-PCRにより抗体の軽鎖と重鎖の可変領域をコードする遺伝子をクローニングし、相補性決定領域グラフト法を採用してヒト化抗体を構築する。インビトロ機能試験により、これらのヒト化GITR抗体は特異的かつ高親和性でGITRタンパク質と結合でき、T細胞からのサイトカインIL-2とINF-γの分泌を著しく促進でき、しかも、GITR-LとGITRとの結合を遮断できることを明らかにした。以上の実験結果は、本発明の前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片、又は、本発明の前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含むモノクローナル抗体コンジュゲートは、Tリンパ球を活性化する薬物、Tリンパ球のIL-2及びINF-γの発現を上昇させる薬物、GITR-LとGITRとの結合を遮断する薬物、及び腫瘍の予防及び治療又は補助的な治療のための薬物の製造において応用の将来性が期待できることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ヒト化抗GITR抗体がGITR-mFcタンパク質に結合するときのEC50をELISA方法で検出するものである。
【
図2】ヒト化GITR抗体が細胞膜上のGITRに結合するときのFACSアッセイの結果を示している。
【
図3】GITR-LとJurkat-GITR細胞との結合に対するヒト化GITR抗体の遮断作用を示している。
【
図4】293T-GITR-NFkb-luc細胞レポーター遺伝子アッセイに基づくヒト化抗GITR抗体のGITR活性化活性を示している。
【
図5】ヒト化GITR抗体が架橋せずにJurkat-GITR細胞を活性化してサイトカインIL2を放出させる結果を示している。
【
図6】ヒト化GITR抗体が架橋された状態でJurkat-GITR細胞を活性化してサイトカインIL2を放出させる結果を示している。
【
図7】CD4 T細胞によるサイトカインIL2産生に対するヒト化GITR抗体の影響を示している。
【
図8】CD4 T細胞によるサイトカインIFN-γ産生に対するヒト化GITR抗体の影響を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、具体的な実施形態を用いて、本発明の技術的解決手段をさらに説明する。当業者によって明らかなように、前記実施例が単に本発明の理解を助けるものであり、本発明を特に限定するものとは見なすべきではなく、下記の実施例で使用される実験方法は、特に断らない限り、いずれも通常の方法であり、下記の実施例で使用される材料や試薬などは、特に断らない限り、商業的に入手することができ、本発明に係る抗体のアミノ酸は表1~3に示される。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
実施例1
抗GITRハイブリドーマ抗体の産生
東大生物社製の発現精製したヒト化GITR(ECD)-mFc(Kim et al., 2007,Oncol Rep. 18: 1189)融合タンパク質を抗原として、等体積の完全フロイントアジュバント(Sigma,Cat No: F5581)と十分に乳化した後、6~8週齢のBalb/cマウス(昭衍(蘇州)新薬研究センター有限公司より購入)を50μg/匹の抗原免疫量で皮下免疫した。その後、2週間ごとに、同じ用量の抗原と不完全フロイントアジュバント(Sigma,Cat No: F5506)を十分に乳化した後、マウスを3回皮下免疫した。3回免疫した後、マウスの血清力価を測定し、融合の3日前に腹腔を通じて追加免疫を行った。PEG Hybri-Max(Sigma,Cat No: 7181)を融合剤として、マウスの脾臓細胞とSP2/0細胞を4:1の割合で混合した。1ウェルあたり0.1mLの1X HAT培地(Invitrogen,Cat No: 21060-017)を含む96ウェルプレート(1×105細胞/ウェル)に融合した細胞を加えた。3日目に、HT 0.1mL(Invitrogen,Cat No: 11067-030)培地を加え、7日目に96ウェルプレート内の培地を吸引し、新鮮なHT培地を0.2mL補充した。9日目には、上清を採取して次のELISA検出とFACS検出に用いた。
【0026】
実施例2
ELISA、FACS及びレポーター遺伝子アッセイに基づくポリクローナルハイブリドーマのスクリーニング解析
これらのアッセイの目的は、GITRに結合し、GITR-LとGITRとの相互作用を遮断し、GITR分子の活性を著しく活性化することができるポリクローナルハイブリドーマをスクリーニングし、その中から、高い結合力と高い刺激活性を有するポリクローナルハイブリドーマを選択してサブクローニングを行い、所望のモノクローナルハイブリドーマ抗体を得ることである。
【0027】
高いELISA力価を持つ免疫マウスの脾臓細胞をSP2/0細胞と融合し、7日間培養した後、ハイブリドーマ細胞に対して、まずELISAアッセイとFACSアッセイを行い、GITRに結合できる陽性ハイブリドーマを発見してスクリーニングした後、293Tルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを用いて、機能的応答反応を有するポリクローナルハイブリドーマをスクリーニングした。この操作は合計40数個のGITRとの結合が強いポリクローナルハイブリドーマ抗体を同定し、レポーター遺伝子アッセイを行った後、その中の結合力と刺激活性が顕著なポリクローナルハイブリドーマを選択して、次のサブクローンスクリーニングを行った。GITRとの結合が強いハイブリドーマ細胞を液体窒素にて凍結保存した。
【0028】
ELISA検出
GITR-ECD-hFcで96ウェルELISAプレート(Corning,Cat No: 9018)を被覆し、4℃で一晩放置し、洗浄緩衝液(PBS+0.05%Tween20)で3回洗浄した後、ブロック緩衝液(PBS+1%BSA(Sigma,Cat No: V90093))を加えて、1時間インキュベートし、96ウェルプレートを3回洗浄し、ハイブリドーマ上清を加えて1時間インキュベートし、3回洗浄した。1ウェル当たり1:10000倍希釈したヒツジ抗マウスIgG二次抗体(Thermo,Cat No: 31432)100μLを加え、室温で1時間インキュベートした後、3回洗浄した。1ウェル当たりTMB(北京百奥賽博社製、Cat No: ES-002)100μLを加えて3分間発色し、100μL/ウェルの停止液(2N H2SO4)を加えて反応を停止し、Tecan Sparkマイクロプレートリーダを用いて各サンプルのOD450×シグナルを測定した。
【0029】
抗体結合力のFACS解析
上記のELISA検出で陽性となったハイブリドーマ上清50μLを293T-GITR細胞50μLと混合し(1×105細胞/ウェル)、U字底96ウェルプレートに加えて1時間インキュベートし、FACS緩衝液(PBS+3%FCS)で2回遠心洗浄した後、1:400倍希釈したPE標識ヒツジ抗マウス二次抗体(Biolegend,Cat No: 405307)を加え、30分間インキュベートし、FACS緩衝液で洗浄した後、BD C6フローサイトメータで293T-GITR細胞のPEシグナルを検出した。
【0030】
抗体遮断作用のFACS解析
BD C6を用いたFACS解析を行い、ビオチン標識ヒト化GITRリガンドのJurkat-hGITR細胞への結合に対するハイブリドーマ抗体の遮断作用を決定した。Jurkat-hGITR細胞をFACS緩衝液(3%FBSを含むPBS)に懸濁した。希釈したハイブリドーマ抗体を細胞懸濁液に添加し、96ウェルプレートにて4℃で1時間インキュベートした。ビオチン標識ヒトGITRリガンドタンパク質を96ウェルプレートのウェルに添加し、4℃で1時間インキュベートした。インキュベート後の96ウェルプレートを3回洗浄し、マウス抗ビオチンPE抗体(Biolgend、カタログ番号:409004)を加え、4℃で0.5時間インキュベートした。96ウェルプレート中の細胞を3回洗浄し、最後にBD C6で解析した。
【0031】
Jurkat-GITR-NF-κB細胞のレポーター遺伝子アッセイに基づくハイブリドーマ抗GITR抗体の免疫活性化における作用の確認の解析
抗GITRハイブリドーマ上清に対して、Jurkat-GITR-NF-κB細胞株を用いてレポーター遺伝子のFACS解析を行った。1つの反応につき、25000 Jurkat-GITR-NF-κB細胞を用いて、これらの細胞を96ウェル培養プレートの各ウェルに加え、次に、ハイブリドーマ上清50μLを各ウェルに加え、37℃で4時間インキュベートした。Bright Glo試薬(Promega、カタログ番号:E2620)50μLで細胞を分解し、Tecan Sparkを用いて発光条件下でシグナルを読み取った。
【0032】
実施例3
ポリクローナルハイブリドーマ細胞のサブクローニング、GITRモノクローナルハイブリドーマ細胞の増幅培養及び抗体精製、並びにモノクローナルハイブリドーマ抗体のDNA配列解析
サブクローニングの目的は、モノクローナルハイブリドーマ細胞を作成して、モノクローナル抗体クローンを得ることである。本発明のサブクローニング方法は、限界希釈の手順に基づいて、96ウェルプレートで1ウェルあたり単一のクローンを産生するハイブリドーマ細胞を得ることである。得られた単一のクローンに他の細胞成分がないように、複数回(3回)のサブクローニングを行った。各回のサブクローニングに対して、すべてELISA、FACS及びレポーター遺伝子活性化活性の検出を行った。3回のサブクローニング後、GITR結合能と刺激活性を高く維持するモノクローナル細胞については、一部は凍結保存に用いられ、他の一部は精製のために十分な量のモノクローナル抗体を得るために、細胞増幅培養及び更なるアッセイに用いられた。
【0033】
4E1、8H4、4E4、3F5、4C1、7D7、7E11、10E11、3G12、4B11、5F1、5F6、13G12及び9B3を含む計14種類の抗GITRモノクローナルハイブリドーマ細胞の培養及び抗体精製を行った。ハイブリドーマ細胞は、10%のウシ胎児血清、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、2%のL-グルタミン、1%の調節用NaHCO3溶液を含むDulbecco’s Modified Eagle’s培地(GIBCO;Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)で培養した。次に、選択されたハイブリドーマ細胞を無血清培地に適応させ、プロティン-Gカラム(GE Healthcare)を用いて上清から抗体を精製した。PBSで洗浄した後、結合された抗体を0.1Mグリシン(pH3.0)で溶出し、次いでpHを2.0M Trisで中和した。Ultra-15遠心濃縮器(Amicon)は緩衝液交換と抗体濃縮に用いられている。
【0034】
実施例4
精製した4E1、8H4、4E4、3F5、4C1、7D7、7E11、10E11、3G12、4B11、5F1、5F6、13G12及び9B3のハイブリドーマ抗hGITRモノクローナル抗体に対し、更なるGITR結合力、GITRリガンドに対する遮断作用、レポーター遺伝子に基づくGITR活性化活性、及びサル由来GITRとの交差結合特性のアッセイ解析を行い、実験はELISA、FACS及びJurkat-GITR-NF-κB細胞を用いたレポーター遺伝子活性化に基づく解析を行った。
【0035】
ELISA方法とFACS方法に基づくアッセイ解析
用いた方法は上記の実施例2に記載の方法と似ているが、ここでのアッセイでは、測定濃度の精製抗体を用いており、連続希釈した抗体濃度とそれに対応する結果を用いて、EC50とIC50の値を算出することができる点が異なる。表4~7に14種類の抗体のアッセイ結果を示す。また、サル由来GITRとの交差結合特性の解析では、選択された14種類の抗体がサル由来GITRと交差結合反応を示した。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
実施例5
Jurkat細胞のIL-2サイトカイン放出の活性化におけるハイブリドーマGITR抗体の活性アッセイ
ハイブリドーマ抗GITR抗体の免疫活性化活性を決定するために、Jurkat-GITR細胞のIL2サイトカイン放出はGITRシグナル伝達経路活性化の評価指標の1つとして用いられている。Jurkat-GITR細胞培養は、10%FBSを補充したRPMI 1640で行った。培養前日に、96ウェルプレートを室温でヤギ抗ヒトIgG(Jackson、カタログ番号:109-005-008)とヤギ抗マウスIgG(Jackson、カタログ番号:115-006-071)により常温で被覆して、一晩放置した。プレートのウェルを洗浄した後、ブロック緩衝液を200μL添加し、37℃で1時間ブロックしてインキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄した後、37℃で40ng/mL OKT3(ebioscience、カタログ番号:16-0037-85)をウェルに加えて、1時間インキュベートした。さらにPBSでプレートを洗浄した後、希釈したGITR抗体の有無に関わらず、Jurkat-GITR細胞100μlを96ウェルプレートの各ウェル(1ウェルあたり1×105細胞)に加えた。37℃で48又は72時間インキュベートした後、96ウェルプレートを遠心分離し、上清を採取してIL-2(R&D Systems、カタログ番号:DY202)を測定した。結果を表8に示す。
【0041】
【0042】
実施例6
CD4 T細胞の活性化及びサイトカイン産生に対するハイブリドーマ抗GITR抗体の影響のアッセイ
さらにGITRシグナル経路の活性化におけるハイブリドーマGITR抗体の活性を評価するために、本研究では、初代リンパエフェクター細胞を用いて免疫細胞からのIL2及びIFNγサイトカインの放出に対する抗体の促進作用を測定した。CD4 T細胞の陰性選択精製キット及び10%FBSを補充したRPMI 1640培養液を用いて、ヒト化PBMCを基にしてさらに精製して、ヒトCD4 T細胞を得た。T細胞を精製する前日に、96ウェルプレートを室温でヤギ抗ヒトIgG(Jackson、カタログ番号:109-005-008)とヤギ抗マウスIgG(Jackson、カタログ番号:115-006-071)により常温で被覆し、一晩放置した。プレートのウェルを洗浄した後、ブロック緩衝液200μLを添加し、37℃で1時間ブロックしてインキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄した後、37℃で40ng/mL OKT3(Ebioscience、カタログ番号:16-0037-85)をウェルに加えて、1時間インキュベートした。プレートをPBSで洗浄した後、希釈したGITR抗体の有無に関わらず、CD4 T細胞100μlを96ウェルプレートの各ウェル(1ウェル当たり1×105細胞)に加えた。37℃で48又は72時間インキュベートした後、96ウェルプレートを遠心分離し、上清を採取した後、ELISAキット(R&D Systems、Cat)を用いてIL-2(R&D Systems、カタログ番号:DY202)とIFN-γ(産生番号:DY285)を測定した。結果を表9に示す。
【0043】
【0044】
実施例7
GITRハイブリドーマモノクローナル抗体cDNAクローニング及び配列解析
4E1、8H4、4E4、3F5、4C1、7D7、7E11、10E11、3G12、4B11、5F1、5F6、13G12及び9B3という14種類の抗GITRモノクローナルハイブリドーマ抗体に対してDNA配列検出を行った。その対応するアミノ酸配列の解析結果を表1、表2、及び表3に示す。
【0045】
GITR抗体の可変領域遺伝子のクローニング解析は以下のステップを含む。TRIzon(Cwbiotech,Cat No: CW0580)を用いて、GITRモノクローナルハイブリドーマ細胞株を分解し、ハイブリドーマ細胞の総RNAを抽出した。HiFi Script cDNA合成キット(Cwbiotech,Cat No: CW2569)を用いて、ハイブリドーマ細胞のRNAをcDNAに逆転写した。cDNAをテンプレートとし、縮重プライマーを用いてPCR法(Kettleborough et al.(1993)Eur. J Immunology 23: 206-211;Strebe et al.(2010)Antibody Engineering 1:3-14)により抗体の重鎖と軽鎖の可変領域遺伝子を増幅した。反応はS1000TMサーマルサイクラー(Bio-Rad,CAT#:184-2000)で、94℃、1.5分間変性;50℃、1分間アニール;72℃で1分間合成のように30サイクル行われた。30サイクル目が終了した後、反応混合物を72℃でさらに7分間インキュベートして伸長させた。
PCR混合物を0.5μg/mlの臭化エチジウムを含む1%アガロース/Tris-ボレートゲル中で電気泳動した。ゲルから所望の大きさのDNA断片(重鎖と軽鎖は約400bp)を切り出し、精製した。精製したPCR産物3μlをpMD-18Tベクター(Takara,CAT#:D101Aにクローニングし、DH5αコンピテント細胞を形質転換し、プレートに塗布して、37℃で一晩培養した。培養プレートから単一のクローンを選んで、拡大培養後、プラスミドを抽出し、抗体の遺伝子配列を測定した。抗体の遺伝子配列により、その相補性決定領域(CDR)とフレームワーク領域を解析した。
【0046】
抗体の重鎖と軽鎖のCDR領域のアミノ酸配列は表1と表2に示されている。抗体の重鎖と軽鎖の可変領域の全長アミノ酸配列は表3に示されている。対応するハイブリドーマクローンからは、4E1、8H4、4E4、3F5、4C1、7D7、7E11、10E11、3G12、4B11、5F1、5F6、13G12及び9B3という14種類の抗体の可変領域配列が増幅され(表を参照)、これらの可変領域配列は、対応する軽鎖可変配列SEQ ID NO:5、13、21、29、37、45、53、61、69、77、85、93、101及び109と、対応する重鎖可変配列SEQ ID NO:1、9、17、25、33、41、49、57、65、73、81、89、97、及び105と、を有する。これらの抗体は、GITRを刺激し、T細胞の活性化及びサイトカインの放出を増加させるなど、ある所望の機能を示す。
【0047】
実施例8
GITRモノクローナルハイブリドーマ抗体のヒト化
4E1、8H4、4E4、3F5、4C1、7D7、7E11、10E11、3G12、4B11、5F1、5F6、13G12及び9B3という14種類の抗GITRモノクローナルハイブリドーマ抗体に対して、総合的な解析と比較(GITR結合力、GITRリガンドに対する遮断作用、GITRと免疫細胞に対する活性化活性、抗体のDNA配列などを含む)を行ったところ、その中から10E11、4E4、4B11及び3F5という4つを選択し、更なるGITR抗体のヒト化改変を行った。
【0048】
GITR抗体のヒト化設計には相補性決定領域グラフト法が使用された。まず、IMGTデータベースにおいて、マウス由来の10E11、4E4、4B11及び3F5抗体の軽鎖可変領域、重鎖可変領域との相同性が最も高いヒト胚細胞系抗体(germline antibody)配列をそれぞれ検索した。10E11抗体の軽鎖可変領域のヒト化に選択された胚細胞系はIGKV3-15*01であり、重鎖可変領域のヒト化にはIGHV5-10-1*01が選択された。4E4抗体の軽鎖可変領域のヒト化に選択された胚細胞系はIGKV2-28*01であり、重鎖可変領域のヒト化にはIGHV1-2*06が選択された。4B11抗体の軽鎖のヒト化にはIGKV3-11*01が選択され、重鎖のヒト化にはIGHV1-3*01が選択された。3F5抗体の軽鎖のヒト化にはIGKV2-24*01が選択され、重鎖のヒト化にはIGHV1-2*02が選択された。マウス由来抗体のCDR領域を残し、マウス由来抗体のフレームワーク(framework)配列をヒト胚細胞系抗体のフレームワーク領域の配列に置換した。次に、マウス由来抗体の構造モデルを作成し、ヒト由来抗体と対応するマウス由来抗体の構造モデル中のそれぞれの異なるアミノ酸部位を1つずつ比較し、フレームワーク領域のある部位にヒトのアミノ酸配列を採用してもCDR領域の空間構造の破壊又は変化がない場合には、その部位にヒトのアミノ酸配列を使用し、そうでない場合には、その部位に対応するマウス由来配列を使用した(すなわち、マウス由来配列に復帰突然変異)。構造シミュレーションにより、10E11、4E4、4B11及び3F5ヒト化抗体のフレームワーク領域のアミノ酸の一部をマウス由来配列に復帰突然変異させた。
【0049】
これにより、上記のテンプレート中のヒト抗体のCDRアミノ酸配列が、マウスの4E4、10E11、4B11及び3F5抗体のCDRのアミノ酸配列に置換される。また、上記のテンプレートのヒト抗体VH及びVLのフレームワークにマウスの4E4、10E11、4B11及び3F5抗体のVH及びVLの必須アミノ酸配列を移植して、機能性ヒト化抗体を得た。また、4E4、10E11、4B11及び3F5のVH及びVLについては、上記のテンプレートのヒト抗体のフレームワークアミノ酸のいくつかの部位がマウス4E4、10E11、4B11及び3F5抗体中の対応するアミノ酸配列に逆変異している。
【0050】
10E11抗体のヒト化重鎖の24位のGlyはAlaに復帰突然変異し、28位のSerはProに復帰突然変異し、29位のPheはValに復帰突然変異し、30位のThrはSerに復帰突然変異し、48位のMetはIleに復帰突然変異し、69位のIleはPheに復帰突然変異し、73位のLysはIleに復帰突然変異し、93位のAlaはSerに復帰突然変異した。10E11抗体のヒト化軽鎖の49位のTyrはSerに復帰突然変異した。4E4抗体のヒト化重鎖の48位のMetはIleに復帰突然変異し、67位のValはAlaに復帰突然変異し、69位のMetはLeuに復帰突然変異し、71位のArgはValに復帰突然変異し、73位のThrはLysに復帰突然変異した。4E4抗体のヒト化軽鎖の2位のIleはValに復帰突然変異した。4B11抗体のヒト化重鎖の27位のTyrはPheに復帰突然変異し、48位のMetはIleに復帰突然変異し、67位のValはAlaに復帰突然変異し、69位のIleはLeuに復帰突然変異し、71位のArgはSerに復帰突然変異し、73位のThrはLysに復帰突然変異した。4B11抗体のヒト化軽鎖の49位のTyrはLysに復帰突然変異した。3F5抗体のヒト化重鎖の48位のMetはIleに復帰突然変異し、67位のValはAlaに復帰突然変異し、69位のMetはLeuに復帰突然変異し、71位のArgはValに復帰突然変異し、73位のThrはLysに復帰突然変異した。3F5抗体のヒト化軽鎖の46位のLeuはArgに復帰突然変異した。
【0051】
10E11ヒト化抗体の重鎖と軽鎖の可変領域アミノ酸の配列番号は、それぞれSEQ ID NO:119とSEQ ID NO:129である。4E4ヒト化抗体の重鎖と軽鎖の可変領域アミノ酸の配列番号は、それぞれSEQ ID NO:113とSEQ ID NO:114である。4B11ヒト化抗体の重鎖と軽鎖の可変領域アミノ酸の配列番号は、それぞれSEQ ID NO:115とSEQ ID NO:116である。3F5ヒト化抗体の重鎖と軽鎖の可変領域アミノ酸の配列番号は、それぞれSEQ ID NO:117とSEQ ID NO:118である。10E11、4E4、4B11及び3F5ヒト化抗体をIgG1サブタイプとして構築し、ヒト化4E4、10E11及び4B11のヒト由来IgG1(hIgG1)バージョン、ヒト化10E11のhIgG1(3A)バージョン及びヒト化10E11と3F5抗体のhIgG4バージョン:h10E11-hIgG1、h4E4-hIgG1、h4B11-hIgG1、h10E11-hIgG1(3A)、h10E11-hIgG4及びh3F5-hIgG4を産生した。アミノ酸配列は、上記の表3に示すように、h4E4-IgG1[SEQ ID NOs:121(全長重鎖)と122(全長軽鎖)]、h10E11-IgG1[(SEQ ID NOs:127及び128(全長重鎖)と131(全長軽鎖))、h10E11-IgG1(3A)[(SEQ ID NOs:129(全長重鎖)と131(全長軽鎖))、h10E11-IgG4[(SEQ ID NOs:130(全長重鎖)と131(全長軽鎖))、h4B11-IgG1[(SEQ ID NOs:123(全長重鎖)と124(全長軽鎖))とh3F5-IgG1[(SEQ ID NOs:125(全長重鎖)と126(全長軽鎖))を含む。
【0052】
ヒト化4E4、10E11、4B11及び3F5抗体の構築と発現
ヒト化抗体の軽鎖と重鎖をコードするDNAを合成し、それを発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen,CAT:#V-790)にクローニングした。各種類のヒト化重鎖と軽鎖発現プラスミド100μgを用いてFreestyle 293細胞(200mL,106/mL)にトランスフェクションし、6日間培養した。その後、プロティン-Gカラム(GE Healthcare)を用いて上清中のヒト化抗体を精製した。
【0053】
実施例9
ELISAとFACSを用いてヒト化抗体とGITRとの結合を決定し、FACSを用いてGITRリガンドに対する遮断活性を測定し、Jurkat-GITR-NF-κB細胞レポーター遺伝子アッセイに基づいてヒト化抗体の免疫活性化反応をアッセイして解析した。
【0054】
ヒト化抗体の産生及び精製後、ELISA及びFACSに基づく結合解析及びJurkat-GITR細胞によるGITR-L遮断解析により、抗体の結合及び特異性を決定した。使用される方法は、上記の実施例2及び4に記載の方法と同様である。
【0055】
ELISAに基づく結合アッセイでは、ヒト化抗体はGITRに顕著な結合を示し、
図1に示すように、ELISA方法を用いてヒト化抗GITR抗体がGITR-mFcタンパク質に結合するときのEC50を検出した。ヒト化抗GITR抗体は、h10E11(AV)-hIgG1(3A)、h10E11(AV)-hIgG4、h4E4-hIgG1、h4B11-hIgG1及びh3F5-hIgG1を含む。図の上部には、一連のヒト化抗体又は対照hIgG1濃度の範囲における光吸収値が示されている。X軸に示すように、各抗体の試験濃度は、それぞれ、20000ng/mL、2000ng/mL、200ng/mL、20ng/mL、2ng/mL、0.2ng/mL、0.02ng/mL、0.002ng/mL、0.0002ng/mL及び0.00002ng/mLである。図の下部にある表は、試験抗体ごとに計算されたEC50を示している。図に示すように、すべてのヒト化抗体はプレートに被覆されたGITR-mFcと有意な結合を示し、h4B11-hIgG1及びh10E11(AV)-hIgG1(3A)はより強い結合力を示した。
【0056】
図2はJurkat-GITR細胞におけるFACSに基づくGITRへの結合を示している。下部のパネルには、それぞれのヒト化抗体のEC50が提供されている。4B11-hIgG1と10E11(AV)-hIgG1はFACS解析に基づく主要な結合物である。ヒト化GITR抗体はh10E11(AV)-hIgG1、h10E11(AV)-hIgG1(3A)、h10E11(AV)-hIgG4、h4E4-hIgG1、h4B11-hIgG1、h3F5-hIgG1及び陰性対照(ヒト由来IgG1)を含む。図の上部は、一連のヒト化抗体又は対照hIgG1濃度の範囲における平均蛍光指標値を示している。下部には、試験抗体ごとに計算されたEC50が表示されている。その結果、すべてのヒト化抗体はJurkat-GITR細胞との顕著な結合を示した。また、ヒト化h4E4とh10E11(AV)抗体は最も主要な接着剤である。X軸に示すように、各抗体の試験濃度は、それぞれ、20000ng/mL、2000ng/mL、200ng/mL、20ng/mL、2ng/mL、0.2ng/mL、0.02ng/mL及び0.002ng/mLである。
【0057】
図3はJurkat-GITR細胞におけるGITR-LとGITRとの結合に対するヒト化抗体の遮断を示している。使用されたGITR-Lの濃度は0.25μg/mlであり、試験されるGITR抗体はh10E11(AV)-hIgG1、h10E11(AV)-hIgG1(3A)、h10E11(AV)-hIgG4、h4E4-hIgG1、h4B11-hIgG1、h3F5-hIgG1及び陰性対照(ヒト由来IgG1)を含む。X軸に示すように、各抗体の試験濃度は、それぞれ、20000ng/mL、4000ng/mL、800ng/mL、160ng/mL、32ng/mL、6.4ng/mL、1.28ng/mL及び0.256ng/mLである。その結果、すべてのヒト化GITR抗体はGITR-LとJurkat-GITR細胞との結合に対して所定の遮断活性を示した。ヒト化h10E11(AV)とh3F5抗体はより良い遮断作用がある。
【0058】
図4は293T-GITR-NFkb-luc細胞レポーター遺伝子アッセイに基づくヒト化抗GITR抗体のGITR活性化活性を示している。試験される抗GITR抗体はh10E11(AV)-hIgG1(3A)、h10E11(AV)-hIgG1、h4E4-hIgG1、h4B11-hIgG1、h3F5-hIgG1及び陰性対照(ヒト由来IgG1)を含む。各抗体の試験濃度は、それぞれ、20000ng/mL、4000ng/mL、800ng/mL、160ng/mL、32ng/mL、6.4ng/mL、1.28ng/mL及び0.256ng/mLである。その結果、すべてのヒト化抗体は293T-GITR-NFkb-luc細胞のルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現に対して強い活性化活性を有することが明らかになった。試験されるヒト化抗体間の活性は類似していた。
【0059】
実施例10
Jurkat-GITR IL-2放出解析を用いたヒト化抗GITR抗体の活性化アッセイ
ハイブリドーマ抗GITR抗体の活性化活性をアッセイするために、まず、Jurkat-GITR細胞におけるGITRシグナル経路に対する抗体の刺激作用により抗体を評価した。Jurkat-GITR、293T-OKT3、293T-CD32A及び293T細胞を、それぞれ10%FBSを補充したRPMI 1640で培養した。Jurkat-GITR(1ウェル当たり1x105細胞)細胞50μlと293T-OKT3(1ウェル当たり2x104細胞)細胞50μlと293T-CD32A又は293T(1ウェルあたり2x104細部)細胞50μlを96ウェルプレートの単一のウェルに添加した。希釈したGITR抗体の存在の有無に関わらず、37℃で48又は72時間インキュベートした後、96ウェルプレートを遠心分離し、上清を採取してIL-2(R&D Systems、カタログ番号:DY202)を測定した。
【0060】
図5はヒト化抗-GITR抗体が架橋せずにJurkat-GITR細胞を活性化してIL2を放出させる結果を示している。Jurkat-GITR細胞は293T-OKT3細胞中のOKT3によりある程度刺激された。試験される抗GITR抗体はh10E11(AV)-hIgG1(3A)、h10E11(AV)-hIgG1、h4E4-hIgG1、h4B11-hIgG1、h3F5-hIgG1及び陰性対照(ヒト由来IgG1)を含む。各抗体の試験濃度は、それぞれ、20000ng/mL、4000ng/mL、800ng/mL、160ng/mL、32ng/mL、6.4ng/mL、1.28ng/mL及び0.256ng/mLである。周知するように、すべてのヒト化抗体は、架橋することなく、Jurkat-GITR細胞のIL2放出をある程度刺激することができる。
【0061】
図6はヒト化抗GITR抗体が架橋された状態でJurkat-GITR細胞を活性化してIL2を放出させる結果を示している。架橋因子は、293T-CD32a細胞で発現されるCD32aである。Jurkat-GITR細胞は293T-OKT3細胞中のOKT3によりある程度刺激された。試験される抗GITR抗体はh10E11(AV)-hIgG1(3A)、h10E11(AV)-hIgG1、h4E4-hIgG1、h4B11-hIgG1、h3F5-hIgG1及び陰性対照(ヒト由来IgG1)を含む。各抗体の試験濃度は、それぞれ、20000ng/mL、4000ng/mL、800ng/mL、160ng/mL、32ng/mL、6.4ng/mL、1.28ng/mL及び0.256ng/mLである。周知するように、すべてのヒト化抗体は架橋によりJurkat-GITR細胞(特にh4E4-hIgG1)のIL2放出に対してより強い刺激活性を示した。
【0062】
実施例11
CD4+T細胞によるサイトカイン産生に対するヒト化抗GITR抗体の影響
リンパ球のエフェクター細胞におけるGITRシグナル伝達経路を刺激するGITRハイブリドーマ抗体の活性を評価した。10%FBSを補充したRPMI 1640中のCD4+陰性選択キットを使用して、PBMCからヒトCD4+T細胞を精製した。前日に、96ウェルプレートを室温でヤギ抗ヒトIgG(Jackson、カタログ番号:109-005-008)とヤギ抗マウスIgG(Jackson、カタログ番号:115-006-071)により被覆して、一晩放置した。温度。ウェルを洗浄し、ブロック緩衝液200μLを添加してブロックし、37℃で1時間インキュベートした。プレートをPBSで3回洗浄した後、37℃で40ng/mL OKT3(Ebioscience、カタログ番号:16-0037-85)をウェルに加えて1時間インキュベートした。PBSでプレートを洗浄した後、希釈したGITR抗体の有無に関わらず、CD4+T細胞100μlを96ウェルプレートの各ウェル(1ウェルあたり1×105細胞)に加えた。37℃で48又は72時間インキュベートした後、96ウェルプレートを遠心分離して上清を採取し、ELISAキット(R&D Systems、Cat)を使用してIL-2(R&D Systems、カタログ番号:DY202)とIFN-γ(発生番号:DY285)を測定した。
【0063】
図7はCD4+T細胞のIL2産生に対するヒト化抗GITR抗体の影響を示している。試験される抗GITR抗体はh10E11(AV)-hIgG1(3A)、h10E11(AV)-hIgG1、h4E4-hIgG1、h4B11-hIgG1、h3F5-hIgG1及び陰性対照(ヒトIgG1)を含む。各抗体の試験濃度は、それぞれ、20ng/mL、2ng/mL、0.2ng/mL及び0.02ng/mLである。図に示されるように、ヒト化10E11、4B11及び4E4抗体(特にh4B11-hIgG1)は、初代CD4 T細胞によるサイトカインIL2産生に対して顕著な刺激作用があり、一方、ヒト化3F5抗体はこの解析において比較的低い活性を示した。
【0064】
図8はCD4+T細胞によるIFN-γ産生に対するヒト化抗GITR抗体の影響を示している。試験される抗GITR抗体はh10E11(AV)-hIgG1(3A)、h10E11(AV)-hIgG1、h4E4-hIgG1、h4B11-hIgG1、h3F5-hIgG1及び陰性対照(ヒトIgG1)を含む。各抗体の試験濃度は、それぞれ、20ng/mL、2ng/mL、0.2ng/mL及び0.02ng/mLである。図に示されるように、ヒト化10E11、4B11及び4E4抗体(特にh4B11-hIgG1)は、初代CD4 T細胞によるサイトカインIFN-γ産生に対して顕著な刺激作用があり、一方、ヒト化3F5抗体はこの解析において低い活性を示した。その結果、
図7のIL2産生と類似したパターンが特定された。すなわち、ヒト化10E11、4B11及び4E4抗体は、IL2産生による初代CD4 T細胞の刺激に顕著な作用がある。一方、ヒト化3F5抗体は比較的低い活性化活性を示した。
【0065】
実施例12
ヒト化4E4、10E11、4B11及び3F5抗GITR抗体のBiacore動力学解析
ヒト化抗体の結合特性を特徴付けるために、GITRと抗GITR抗体との結合動力学をBiacore3000で測定し、1Hzのデータ収集レートで記録した。ポリクローナルウサギ抗マウスIgG(GE、BR-1008-38)を10mM pH5.0酢酸ナトリウムで希釈し、アミン結合キット(GE、BR10050)を用いてCM5バイオセンサチップの参照フローセルと実験フローセルに約15000RUまで固定化した。各サイクルの開始時に、希釈した試験抗体(1.5μg/mL)を実験フローセルに1分間注入して捕捉した。GITR分析物シリーズの製造方法は以下のとおりである。原液を流動緩衝液で100nMに希釈した後、同一緩衝液中で0.78nMに2倍連続希釈した。分析物を30μL/分の流速で3分間連続して参照フローセルと実験フローセルに注入した。次に、ランニング緩衝液(0.05% P20含有PBS)を30μL/分の流速で10分間流した。各サイクルの終了時に、10mM pH1.7グリシン-HCl緩衝液を10μL/minの流速で3分間注入することによりバイオセンサ表面を再生した。分析物サンプルを注入するごとに(すなわちサイクルごとに)、同時に記録された応答を参照表面から減算し、次いで、単一の参照ランニング緩衝液サンプルから応答を減算することによって、実験用バイオセンサの表面から得られた結合応答について二重参照を行った。Biaevaluation 4.0ソフトウェアを使用して、滴定シリーズ全体の二重参照センシングマップをLangmuirモデル(1:1)にフィッティングすることにより、結合速度定数と解離速度定数(kaとkd)を同時に決定することができる。解離定数KDは、決定された速度定数から関係式KD=kd/kaにより計算される。表10に示すように、ヒト化抗GITR抗体はヒトGITRに高い親和性で結合する。特にヒト化4B11と10E11である。
【0066】
【0067】
以上の実施例の結果から、本発明の前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片、又は、本発明の前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含むモノクローナル抗体コンジュゲートは、GITRシグナル伝達を活性化する薬物、Tリンパ球を活性化する薬物、Tリンパ球のIL-2及びINF-γの発現を上昇させる薬物、GITR-LとGITRとの結合を遮断する薬物、及び腫瘍の予防及び治療又は補助的な治療のための薬物の製造において応用の将来性が期待できることが明らかになった。
【0068】
なお、以上は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとって明らかなように、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改良を加えることができ、これらの改良も本発明の特許範囲とみなすことができる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】