(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-22
(54)【発明の名称】微細加工機械部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B81C 1/00 20060101AFI20230815BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20230815BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20230815BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20230815BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20230815BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B81C1/00
G01R1/073 D
G01R31/26 J
B81B1/00
H01L21/66 B
G01R1/067 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501272
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 EP2021068503
(87)【国際公開番号】W WO2022008436
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】301008419
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー コート オブ ザ ユニバーシティー オブ グラスゴー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マクマレン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ベイツ
【テーマコード(参考)】
2G003
2G011
3C081
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AA10
2G003AG04
2G011AA09
2G011AA15
2G011AE03
3C081AA17
3C081BA21
3C081CA02
3C081CA14
3C081CA20
3C081CA23
3C081CA31
3C081CA32
3C081DA06
3C081DA27
3C081DA43
3C081EA45
4M106BA01
4M106DD03
4M106DD10
4M106DD30
(57)【要約】
本発明は、1つまたは複数の自立した微細加工部品の製造方法に係る。当該製造方法は、フォトレジストとキャリア基板上に支持されたタングステンベース層に反応性イオンエッチングを行うことで1つまたは複数の微細加工部品を定義し、キャリア基板から1つまたは複数の微細加工部品を分離し、当該部品を自立させる。本発明は、また、当該製造方法で得られるタングステンベースのマイクロプローブに係り、当該マイクロプローブは、マイクロプローブの縦軸に垂直な方向に、実質的に正方形または長方形の断面を有する。本発明は、また、当該マイクロプローブを複数備えたプローブカードに係る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア基板上に支持されたタングステンベース層を設けるステップ、
フォトレジストを塗布し、所定の形状を有するマスクを介して前記フォトレジストを露光し、前記フォトレジストの一部を除去して、前記タングステンベース層の表面または上方にフォトレジストマスクを設けるステップ、
前記フォトレジストと前記タングステンベース層の反応性イオンエッチングを行い、1つまたは複数の微細加工部品を定義するステップ、及び、
前記キャリア基板から1つまたは複数の前記微細加工部品を分離するステップ
を含む、1つまたは複数の自立した微細加工部品の製造方法。
【請求項2】
前記タングステンベース層は50at%以上の原子パーセントでタングステンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タングステンベース層はW-Re合金である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記タングステンベース層は箔層として設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記タングステンベース層を研磨するステップを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記タングステンベース層の一方の表面または両方の表面は、平均表面粗さRaが5nm以下、および/または、Rtが50nm以下になるまで研磨される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記タングステンベース層は、前記フォトレジストおよび前記タングステンベース層の反応性イオンエッチングを行うステップの前に、10μm以上の厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリア基板は、前記タングステンベース層の熱膨張係数CTEの±10%の範囲内である熱膨張係数CTEを有する材料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記タングステンベース層は、前記タングステンベース層の熱膨張係数CTEの±10%の範囲内である熱膨張係数CTEを有する接着剤を使用してキャリア基板に結合されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(i)前記フォトレジストはポジ型フォトレジストであり、前記マスクの所定の形状は、1つまたは複数の自立した微細加工部品の意図された形状に実質的に対応する、または、
(ii)前記フォトレジストはネガ型フォトレジストであり、前記マスクの所定の形状は、1つまたは複数の自立した微細加工部品の意図された形状のネガ像に実質的に対応する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応性イオンエッチングは、六フッ化硫黄SF
6プラズマを使用して行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応性イオンエッチングは、それぞれ3.5秒と0.01秒のエッチングとパッシベーションのステップを交互に行うボッシュプロセスを使用する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応性イオンエッチングは17.1℃を超える温度で行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記キャリア基板から1つまたは複数の微細加工部品を分離するステップは、以下のサブステップを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法:
1つまたは複数の前記微細加工部品の自由表面を剥離可能なテープに接着するステップ、
前記微細加工部品をキャリア基板から分離するステップ、及び、
前記微細加工部品を前記剥離可能なテープから剥離して、自立した微細加工部品を得るステップ。
【請求項15】
前記剥離可能なテープはUV剥離ダイシングテープであり、前記微細加工部品を前記剥離可能なテープから剥離するステップには、前記テープをUV光にさらすステップが含まれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つまたは複数の自立した前記微細加工部品は、集積回路(IC)試験での使用に適したマイクロプローブである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって得られるタングステンベースのマイクロプローブであって、
前記マイクロプローブは、前記マイクロプローブの縦軸に垂直な方向に、実質的に正方形または長方形の断面を有する、タングステンベースのマイクロプローブ。
【請求項18】
前記マイクロプローブの少なくとも1つの表面は、5nm以下の表面算術平均粗さRaを有する、請求項17に記載のタングステンベースのマイクロプローブ。
【請求項19】
前記マイクロプローブの幅が5μm~25μmである、請求項17または18に記載のタングステンベースのマイクロプローブ。
【請求項20】
複数の請求項17~19のいずれか一項に記載のタングステンベースのマイクロプローブであって、
前記複数のマイクロプローブのそれぞれの厚さの変動は、複数のマイクロプローブのうちの他のいずれかと比べて1μm以内である、タングステンベースのマイクロプローブ。
【請求項21】
複数の請求項17~20のいずれか一項に記載のタングステンベースのマイクロプローブを備えたプローブカードであって、
複数の前記マイクロプローブのピッチは45μm以下であり、前記ピッチは、前記マイクロプローブの縦軸に垂直な方向における2つの隣接する前記マイクロプローブの中心間の距離として定義される、プローブカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微細加工機械部品及びその製造方法に関する。特に、限定的ではないが、集積回路(IC)テストなどのアプリケーションでの使用に適した自立型微細加工プローブも含まれる。
【背景技術】
【0002】
微細機械部品(一般に、1μmから100μmの範囲の少なくとも1つの直線寸法を持つ部品として定義される)は広範囲の用途がある。しかしながら、そのような部品の1つの重要な用途は、集積回路(IC)テストなどのアプリケーションでの使用に適したマイクロプローブである。ICのテストのために、プローブは電子テストシステムと半導体ウェハとの間のインターフェースとして作動するプローブカードに取り付けられる。プローブカードの目的は、ウェハ上の回路をテストシステムに電気的に接続することである。これにより、ウェハレベルでの回路のテストと検証が可能となる。
【0003】
プローブピッチの微細化と製造精度が向上したプローブカードの需要が高まっている。これにより、コストを削減しながら、ウェハあたりのテスト可能なデバイスの数を増やすことができ、さらに、1つのデバイスでI/Oテストパッドを増やすことができ、より詳細なテストが可能となるためである。さらに、新しいIC技術では、無線周波数(RF)帯域でのプローブ性能の向上と、高い電流容量(CCC)が必要となる。
【0004】
これらの問題のいくつかを解決しようとして、小規模なプローブを作製するためにいくつかの作業が行われている。例えば、国際公開第2005/043594号には、写真定義のマイクロ電気接点を形成するための2つの異なる方法が開示されている。第1の方法としては、薄いベリリウム銅の平らなストックからプローブを形成することを含む方法が開示されている。フォトレジストのそれぞれの層は、平面CuBe合金シートの反対側の表面に直接堆積される。次に、フォトレジスト層を(マスクを使用して)露光して現像し、複数のプローブのポジ画像が合金の各表面に残っているフォトレジストによって提供される。次いで、CuBe合金内に複数のプローブを形成するために、各表面を化学的(ウェット)エッチングする。この技術は、
図10に示す断面プロファイルを生成するために、ウェットエッチングプロセスに起因する「アンダーカット」を利用する。第2の方法も開示され、複数のプローブのネガ画像が、フォトレジストとマスクを使用してステンレス鋼のマンドレル上に形成される。次に、Ni、またはNiCo合金が、電鋳技術を使用してスチールマンドレルの露出領域にメッキされ、これによりマンドレルの露出面に複数のNiまたはNiCoプローブが形成される。これらの方法はいずれも、タングステンをマイクロプローブに形成するのには適していない。さらに、第1の方法では、平面CuBeシートの反対側の面にマスクを慎重に配置する必要がある。したがって、2組のマスクを正確に位置合わせすることが難しいため、得られるマイクロプローブの形状公差は大きくなければならない。
【0005】
しかしながら、微細加工部品の材料は、多くの用途で重要である。マイクロプローブの用途としては、タングステンには多くのユニークな特性がある。例えば、タングステンは電気伝導率が高く、マイクロプローブとして使用すると抵抗損失が減少するため、プローブの自己発熱(ジュール熱)が減少する。これにより、特定のプローブ設計でより高い電流を流すことができる。さらに、タングステンは融点が高いため、プローブをより高い温度で動作させることができる。最後に、タングステンは硬く、プローブ針の摩耗が少なくなるため、他の材料よりも寿命が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Shenglin et al.(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、克服すべき重要な問題は、従来の先行技術の方法を使用して、タングステンから微細ピッチのマイクロプローブ(または他の同様のサイズの微細加工部品)を確実に製造することがこれまで不可能であったことである。そのような製品を作るために3つの主要な技術が存在する:
a.伸線-タングステン系部品は伸線加工が可能であるが、部品形状の再現性が悪く、製造コストが高い;
b.スタンピング-作製できる部品の最小サイズは限られており、部品幅は100μmのオーダーである。このサイズは、多くのマイクロメカニカルアプリケーションには適していない(また、マイクロプローブの場合、ファインピッチアプリケーションには適していない);
c.電気メッキ-電気メッキは幾何学的サイズを適切に制御できるが、タングステンは電気メッキできない。したがって、このプロセスはニッケルまたはパラジウム合金などのより容易に電気メッキ可能な材料にのみ適している(上記の国際公開第2005/043594号のように)。これらの材料は、タングステンに比べて特性が劣る。
【0009】
深反応性イオンエッチングを使用してタングステンマイクロニードルを生成する研究(Shenglin et al.(2016)-非特許文献1)がいくつか行われているが、このプロセスには多くの問題がある。まず、このプロセスでは、深反応性イオンエッチングを使用してバルクタングステンをディープエッチングし、直立部材(マイクロニードル)のアレイを形成する。各マイクロニードルの長さは、エッチングの深さによって決まる。このように、マイクロニードルは必然的にバルク材料の延長として取り付けられる。得られたマイクロニードルをバルクタングステンベースから分離して、スタンドアロンの単一マイクロニードルを提供することはできない。したがって、この方法を使用して、自立した微細加工部品を製造することは不可能である。さらに、このプロセスでは硬質アルミニウムマスクを使用してマイクロニードルアレイの形状を定義するため、DRIEプロセス中にAlが再堆積するという問題が生じる可能性がある。そのため、部品の大量生産には適していない。最後に、得られたマイクロニードルは、約14°の側壁傾斜角を持つと説明されている。したがって、微細加工部品の一部の用途で必要とされる(または有利な)垂直または垂直に近い側壁を有する部品を製造することはできない。本発明は、上記の考察に照らして考案された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、微細加工部品の製造においてタングステン層の反応性イオンエッチングを使用することによって、上記の問題の一部またはすべてを軽減または排除できることを見出した。したがって、本願発明の第1の態様は、キャリア基板上に支持されたタングステンベース層を設けるステップ、フォトレジストを塗布し、所定の形状を有するマスクを介して前記フォトレジストを露光し、前記フォトレジストの一部を除去して、前記タングステンベース層の表面または上方にフォトレジストマスクを設けるステップ、前記フォトレジストと前記タングステンベース層の反応性イオンエッチングを行い、1つまたは複数の微細加工部品を定義するステップ、及び、前記キャリア基板から1つまたは複数の前記微細加工部品を分離するステップを含む、1つまたは複数の自立した微細加工部品の製造方法である。
【0011】
本明細書で「タングステンベース層」とは、タングステン(W)を含む、本質的にタングステン(W)からなる、または、タングステン(W)からなる層と定義される。好ましくは、タングステンは、50at%以上の原子パーセントで当該層中に存在する。言い換えれば、タングステンは、タングステンベース層の主成分であることが好ましい。タングステンは、60at%以上、70at%以上、80at%以上、90at%以上、95at%以上、または99at%以上の原子パーセントで当該層中に存在してもよい。必要に応じて、1つまたは複数の他の要素が存在する場合がある。例えば、タングステンベース層は、タングステン-レニウム合金(W-Re合金)などのタングステンベースの合金であってもよい。W-Re合金層の使用は、本発明の方法のある用途、特にマイクロプローブの製造において特に有利であり得る。W-Reマイクロプローブは、純粋なWマイクロプローブと比較して、バルクの電気伝導率がわずかに低下する場合があるが、先端の酸化が少ないため、純粋なWマイクロプローブと比較して、経時的に接触抵抗が減少する。タングステンベース層がW-Re合金であると、Reが約1at%~10at%、より好ましくは約3at%~約5at%の範囲で存在する場合がある。このような原子百分率では、ReはWに固溶体として存在する。
【0012】
反応性イオンエッチング(RIE)はドライエッチング技術であり、化学反応性プラズマを使用してエッチング対象の層から材料を除去する。この化学的に活性なプラズマは、電磁界によって低圧(真空)下で生成され、プラズマからの高エネルギーイオンが材料表面を攻撃して反応する。ドライエッチング技術であるRIEは、ウェットエッチング技術とは異なる特徴がある。特に、反応性イオンのほぼ垂直方向の送達により、反応性イオンエッチングは、湿式化学エッチング技術の結果として通常生成される等方性プロファイルとは対照的に、非常に異方性のエッチングプロファイルを生成できる。
【0013】
本発明者らは、RIEでタングステンをエッチングすることにより、自立した微細加工部品を比較的大規模に製造し、部品あたりのコストを比較的低く抑えることができることを見出した。さらに、RIEの使用により、タングステンの微細加工に使用される既存の技術と比較して、リソグラフィーの精度を備えた微細加工部品の製造、およびサブマイクロメートルの精度での微細な部品の詳細を可能にすることができる(例えば、微細加工部品がマイクロプローブ、ファインプローブピッチ、および垂直に近いプローブ側壁である場合)。本発明は、既存の技術(上記の「背景技術」で説明したワイヤー押し出しやシートスタンピングプロセスなど)を使用しても不可能なレベルの精度でタングステンベースの部品の製造を可能にする。本願明細書において、「自立した」という用語は、一般に、実用に際しても、他の構造に貼り付けられるまたは支持されることを必要としない部分であると定義される。当該部分は他の構造に貼り付けられていても、または支持されていてもよい。これは、製造方法または自重を支える能力がないために、常に別の構造に接続またはサポートする必要がある非自立型パーツと比較したものである。本発明による微細加工部品は、最初は自立部品として製造されるが、その後の使用において、1つまたは複数の他の部品に取り付けられるかまたは支持され得ることが理解される。
【0014】
タングステンベース層は、箔層として設けられていてもよい。本願明細書において、「箔層」は、薄くて自立する金属板で、通常はハンマーで叩いたり、丸めたりして製造される(他の製造方法も可能である)層を意味する。当該箔層の厚みは、例えば、1μm~100μm、より好ましくは5μm~50μmの範囲である。当該箔層は、最初は自立した層であり、キャリア基板上に支持されるようにキャリア基板に転写される層として提供されてもよい。言い換えれば、当該箔層は、キャリア基板に直接堆積されない。代わりに、タングステンベース層は、堆積層として提供されてもよく、場合によっては化学気相堆積(CVD)などのプロセスによってキャリア基板上に直接堆積されてもよい。
【0015】
タングステンベース層を箔層として提供することは、タングステンベース層を堆積層として提供することよりも好ましい場合がある。タングステンベース層を箔層として提供することは、処理時間と複雑さの低減による製造効率の向上、および処理コストの削減を含む、堆積されたタングステンベース層の使用に勝る多くの利点を有する。さらに、箔層であるタングステンベース層を使用すると、層の厚さをより細かく制御することができ、その結果、部品の厚さの再現性を高めることができる。それにより、部品のそれぞれの厚さが実質的に変化しない、または、微々たる変化(それらは、複数の微細加工された部品の他のいずれかに対して1μmを超えて変化することはない)である、複数の微細加工部品の製造が可能となる。
【0016】
本発明に係る方法は、タングステンベース層を研磨するステップを含むことができる。研磨は、タングステンベース層の片方の表面または両方の表面で行うことができる。タングステンベース層が最初に自立層として(例えば、箔層として)提供される場合、タングステンベース層の片方の表面または両方の表面(ここでは層の主面として定義される面)を研磨するステップは、タングステンベース層がキャリア基板上に支持される前に行ってもよい。代わりに、タングステンベース層の一方の面(自由面)の研磨は、タングステンベース層がキャリア基板上に支持されている間に「その場」で行うことができる。
【0017】
研磨ステップは、製造プロセスに起因する箔層の粗さが大きくなる傾向があるため、タングステンベース層の形態に関係なく有利な場合もあるが、タングステンベース層が箔層として提供される場合に特に有利となり得る。例えば、圧延されたタングステン箔は、100nmオーダーの初期算術平均粗さRaと、1μmを超える最大山から谷までの粗さRtを有してもよい。この粗さは、さらなるプロセスステップで問題を引き起こす可能性があり、追加または代替として、結果として得られる微細加工部品の機械的および電気的性能に影響を与える可能性がある。タングステンベース層を研磨すると、このような問題を軽減または回避できる。
【0018】
研磨ステップは、研削ステップおよび/または化学機械研磨(CMP)ステップの一方または両方を含む1つまたは複数の異なる研磨サブステップを含んでもよい。好ましい方法において、化学機械研磨(CMP)ステップを使用して研磨される前に、タングステンベース層は、粗さの大部分を除去するために最初に研削ステップが実施されてもよい。タングステンベース層の一方または両方の主表面は、5nm以下のRaおよび/または50nm以下のRtの表面粗さまで研磨され得る。いくつかの場合において、タングステンベース層の主表面は、0.1nm以下のRaおよび/または1nm以下のRtという低い表面粗さまで研磨され得る。表面粗さは、例えば、原子間力顕微鏡法(AFM)、非接触光学プロフィロメトリー、または接触プロフィロメトリーを使用して、当技術分野で知られている任意の従来の技術を使用して測定することができる。ここで、表面粗さは、当該層の研磨された表面に関して定義される。通常、研磨面は、層の主面の一方または両方となる。上記範囲の表面粗さを有する層を提供することにより、さらなる処理中の製造欠陥のリスクを低減することができる。
【0019】
この方法に従って製造された微細加工部品の最終的な厚さは、研磨後のタングステンベース層の厚さによって部分的に決定することができる。したがって、この方法は、タングステンベース層を研磨して所定の厚さを達成することを含むことができる。
【0020】
微細加工部品の最終的な厚さは、フォトレジストおよびタングステンベース層の反応性イオンエッチングを行うステップの前に(研磨を行った場合は研磨後)、タングステンベース層の厚さによって決定される。この層の厚さは特に限定されないが、フォトレジストおよびタングステンベース層の反応性イオンエッチングを行うステップの前の厚さは、多くの微小電気機械システム(MEMS)での使用に適した自立型部品を提供するために5μm以上であってもよい。
【0021】
キャリア基板の材料は特に限定されないが、好ましくは、キャリア基板は、タングステンベース層の熱膨張係数CTEの±10%の範囲内である熱膨張係数CTEを有する材料を含む。キャリア基板に適した材料の1つはガラスである。代替素材はシリコンである。キャリア基板は、透明または半透明であることが好ましい。これにより、キャリア基板を通る光透過を必要とする製造ステップを使用できるため、製造がより容易になる。
【0022】
タングステンベース層は、例えば適切な接着剤によってキャリア基板上に支持されるだけでなく、キャリア基板に結合されてもよい。タングステンベース層をキャリア基板に接合することにより、タングステンベース層の取り扱いが容易になり、より広い範囲の処理技術を使用した処理が可能になる。接着剤を使用してタングステンベース層をキャリア基板に接合する場合、接着剤は、タングステンベース層の熱膨張係数CTEの±10%の範囲内の熱膨張係数CTEを有することが好ましい。適切な接着剤の例には、BrewerBOND(登録商標)220およびWaferBOND(登録商標)HT-10.11が含まれるが、任意の適切な結合材料を使用することができる。使用する場合、接着剤は一時的な接着剤で、その後のキャリア基板からの微細加工部品の分離を可能にする必要がある。必要に応じて、接着剤層は例えばUV剥離層などの剥離層からなるか、または剥離層を含むことができる。
【0023】
タングステンベース層の熱膨張係数CTEの±10%の範囲内である熱膨張係数CTEを有するキャリア基板および/または接着剤を提供することによって、反応性イオンエッチング工程中の加熱によって生じるタングステンベース層の応力を低減または回避することが可能となる。キャリア基板および/または接着剤の熱伝導率も高く、エッチング中にタングステンベース層から接着剤および/またはキャリア基板への熱移動を可能にすることが好ましい。例えば、基材と接着剤の組み合わせ層は、90℃で0.8~1.4Wm-1K-1の熱伝導率を有してもよい。これは、エッチング中にタングステンベース層に到達する最高温度を下げるのに役立つ。温度が高すぎると、タングステンベース層の微細構造に望ましくない影響が生じる可能性があるためである。キャリア基板および/または接着剤は、高温処理工程中のこれらの材料の劣化を防ぐために、少なくとも130℃までの温度で熱的に安定しているのが好ましい。
【0024】
フォトレジストマスクの形成には、従来のフォトリソグラフィ技術を使用することができる。フォトレジストは、タングステンベース層の表面上または表面の上方に塗布することができる。すなわち、フォトレジストは、タングステンベース層上に直接塗布することができる。フォトレジストがタングステンベース層上に直接形成される場合、フォトレジストの一部を除去するステップは、タングステンベース層の少なくとも一部を露出させることができる。代わりにまたは追加で、1つまたは複数の中間層をタングステンベース層上に設けることができ、フォトレジストをそのような中間層上に直接塗布することができる。この意味において、「上方」とは、層堆積の方向または順序に関するものであり、必ずしも層の方向とは関係しない。フォトレジストは、タングステンベース層の一部のみを覆うように塗布されてもよい。あるいは、フォトレジストは、タングステンベース層全体を覆うように塗布されてもよい。フォトレジストは、タングステンベース層の初期厚さおよびエッチング選択比に基づいて選択された所定の厚さで適用されてもよい。これにより、レジストマスクを介してエッチングすることなく、箔を完全にエッチングすることができる。例えば、タングステンベース層の厚さが28μmで、エッチング選択比が7:1である場合、レジストマスクを介してエッチングすることなく、箔の完全なエッチングを可能にするために、フォトレジストは4μm以上の厚さで塗布する必要がある。
【0025】
「ハード」マスク(アルミニウムマスクなど)ではなく、フォトレジストマスク(「ソフト」マスクと呼ばれることもある)を使用すると、反応性イオンエッチングプロセス中のマスク材料の再堆積のリスクが軽減され、量産部品への適用性を高めるという利点がある。
【0026】
フォトレジストは、ポジ型フォトレジストでもネガ型フォトレジストでもよい。フォトレジストがポジ型フォトレジストである場合、マスクの所定の形状は、1つまたは複数の自立した微細加工部品の意図された形状に実質的に対応する。フォトレジストがネガ型フォトレジストである場合、マスクの所定の形状は、1つまたは複数の自立した微細加工部品の意図された形状のネガ像に実質的に対応する。このようにして、適切な形状の部品を形成することができる。
【0027】
反応性イオンエッチングは、例えばSF6、CF4、Cl2、HBr、O2、H2および/またはCH4などの任意の適切なプラズマを使用して行うことができる(参照文献1、2、3)。好ましくは、反応性イオンエッチングは、六フッ化硫黄SF6プラズマを使用して行われる。タングステンは、次の反応(1)によってSF6プラズマでエッチングすることができる。
(1) W+SF6 → WF6+S
【0028】
反応の副産物は、六フッ化タングステン(WF6)と硫黄である。WF6の沸点は17.1℃と低い。好ましくは、反応性イオンエッチングは17.1℃を超える温度で行う。17.1℃を超える温度でRIEを行う場合、エッチングのWF6副産物はすぐ気体になり、異なる材料または低温でエッチングを行う場合に結果として生じるエッチングチャンバーのセラミックに金属が堆積する問題を引き起こすことなく、エッチング装置から排出することができる。
【0029】
レニウムは、次の反応(2)によってSF6プラズマでエッチングすることができる。
(2) Re+SF6 → ReF6+S
【0030】
ReF4及びReF5も形成される可能性があるが、主な副産物はReF6で、沸点は33.7℃である。タングステンベース層がW-Re層である場合、好ましくは、反応性イオンエッチングは33.7℃を超える温度で行われる。これにより、WF6とReF6の両方の副産物をエッチングにより即座にガス状にしてエッチング装置から容易に排出できる。
【0031】
反応性イオンエッチングは、ボッシュプロセス(パルスまたは時分割エッチングとしても知られる)を使用することができる。すなわち、反応性イオンエッチングステップは、エッチングステップとパッシベーションステップを交互に実行するサブステップを含むことができる。上述のように、六フッ化硫黄(SF6)または任意の他の適切なガスをエッチングステップに使用することができる。パッシベーションステップは、化学的に不活性なパッシベーション層の堆積を含み、オクタフルオロシクロブタン(C4F8)などのガスを使用して実行することができる。エッチングおよびパッシベーションステップの各々は、所定のサイクル数の間、交互に、それぞれの所定の長さの時間実行される。エッチングとパッシベーションのステップの相対的な時間は、結果のエッチング形状に影響する。一般に、サイクル時間が短いほど、スカロッピングが減少した滑らかなエッチング壁が得られ、エッチング時間が長いほど、エッチング速度が高くなる。本発明者らは、1秒から5秒の範囲のエッチング持続時間と0.005秒から0.1秒の範囲のパッシベーション持続時間で交互のエッチングとパッシベーションのステップを提供することで、微細加工部品に適した急峻で滑らかな側壁を提供することができることを見出した。本発明者らは、それぞれ約3.5秒と約0.01秒のエッチングとパッシベーションのステップを交互に実行することで、エッチング速度と側壁の緩やかな窪み(スカロッピング)の減少との間の良好なバランスが得られることを見出した。
【0032】
微細加工部品を定義するためのRIEエッチングが完了すると、残留フォトレジストは、タングステンベース層から除去することができる。これは、任意の適切なプロセスによって除去することができる。タングステンベース層がキャリア基板に接着される方法では、接着剤と反応してマイクロメカニカル部品の早期剥離を引き起こさないように、レジストストリッパーを選択する必要がある。一つの好ましい方法において、キャリア基板とタングステンベース層は、脱イオン水で約5分間すすぐ前に、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのレジストストリッパーに約90℃の温度で約5分間浸漬する。
【0033】
キャリア基板から1つまたは複数の微細加工部品を分離するステップは、いくつかのサブステップを含むことができる。当該サブステップは、以下を含む:
1つまたは複数の前記微細加工部品の自由表面を剥離可能なテープに接着するステップ、
前記微細加工部品をキャリア基板から分離するステップ、及び、
前記微細加工部品を前記剥離可能なテープから剥離して、自立した微細加工部品を得るステップ。
【0034】
タングステンベース層が最初に接着剤を使用してキャリア層に接着される場合、微細加工部品をキャリア基板から分離するステップは、微細加工部品をキャリア基板から剥離することを含んでもよい。このような剥離は、任意の適切なプロセスによって行うことができる。剥離は、レーザー支援であってもよい。剥離後、残留接着剤は洗浄工程で除去することができる。
【0035】
本発明者らは、微細加工部品をキャリア基板から分離する前に剥離可能なテープに取り付けることで、微細加工部品の取り扱いがより容易になることを見出した。さらに、複数の微細加工部品のそれぞれの部品間の相対的な位置合わせを維持することが可能となる。剥離可能なテープはUV剥離ダイシングテープであってもよい。それに応じて、テープから微細加工部品を解放するステップは、剥離可能なテープをUV光にさらすことを含んでもよい。適切なダイシングテープの例には、Nitto PF-02またはLintec D-511Tが含まれる。テープは、ダイシングテープから剥がすときに最終製品に接着剤を残さないように、UV硬化性であることが好ましい。
【0036】
第1の態様の方法を使用して製造された1つまたは複数の自立した微細加工部品は、サイズ、形状、または目的において特に限定されない。本発明者らは、この方法が、集積回路(IC)試験での使用に適したマイクロプローブの製造に特に適している可能性があることを見出した。しかしながら、この方法は、限定されないが、時計やドローンなどに使用される歯車、微細加工医療ツール、シリコン加工またはX線イメージング技術における使用のためのX線マスク(コリメータ)などを含む微細加工部品の製造に適用されてもよい。
【0037】
したがって、第2の態様において、本発明は、微細加工部品が縦軸に垂直な方向に、実質的に正方形または長方形の断面を有する、第1の態様の方法によって得ることができる、または得られる微細加工部品を提供する。好ましくは、微細加工部品はマイクロプローブである。
【0038】
本願明細書において、「実質的に正方形」という用語は、微細加工部品またはマイクロプローブの側壁が実質的に垂直であり、微細加工部品またはマイクロプローブの主面が実質的に水平であることを定義するために使用される。言い換えれば、微細加工部品またはマイクロプローブの側壁は、微細加工部品またはマイクロプローブの主面に対して約90°の角度で延在するのが好ましい。製造公差により多少の誤差が生じる場合があるが、微細加工部品またはマイクロプローブの側壁は、微細加工部品またはマイクロプローブの主面に関して好ましくは88°から92°の間の角度、より好ましくは89°から91°の間の角度で伸びる。
【0039】
微細加工部品がマイクロプローブである場合、マイクロプローブは、1mm未満の幅を有しても良い。正確な幅は特に限定されず、所望の商業的用途に応じて適切に選択することができる。いくつかの好ましい構成では、マイクロプローブの幅は、25μm以下、10μm以下、または5μm以下である。マイクロプローブの長さは、最初のタングステンベース層の寸法以外には制限されない。しかしながら、マイクロプローブの長さは、10μmから10mmまでの範囲であってもよい。マイクロプローブの長さは、50μm以上、100μm以上、500μm以上、1mm以上、または2mm以上であってもよい。ほとんどのアプリケーションでは、マイクロプローブの長さは2mm~10mmの範囲で選択できる。
【0040】
タングステンベースのマイクロプローブの少なくとも1つの表面は、5nm以下、より好ましくは1nm以下程度の低い表面算術平均粗さRaを有し得る。好ましくは、タングステンベースのマイクロプローブの少なくとも2つの対向する面は、5nm以下、より好ましくは1nm以下の表面算術平均粗さRaを有する。
【0041】
第3の態様では、本発明は、第2の態様による複数のタングステンベースのマイクロプローブを提供し、複数のマイクロプローブのそれぞれの厚さの変動は、複数のマイクロプローブのうちの他のいずれかと比べて1μm以内である。複数のマイクロプローブにわたる厚さのこの均一性は、使用時に(例えば、プローブカードの一部として)、電気的接触に必要なオーバードライブ/力は、すべてのマイクロプローブでほぼ同じであるという技術的な利点がある。これにより、測定の再現性が向上し、複数のマイクロプローブを組み込んだデバイスの使用寿命が長くなる。これは、使用中にどのマイクロプローブにも過度のストレスがかからないためである。複数のタングステンベースのマイクロプローブは、タングステンベース層が箔層として提供される、第1の態様による方法によって生成されてもよい。箔の厚さは、結果として得られる微細加工部品の厚さを実質的に決定するため、同じ箔層から製造された複数の部品にわたる厚さのばらつきを低減または排除することが可能である。
【0042】
第4の態様では、本発明は、第2または第3の態様による複数のタングステンベースのマイクロプローブを含むプローブカードを提供し、複数のマイクロプローブのピッチが45μm以下であり、ピッチは、マイクロプローブの縦軸に垂直な方向における2つの隣接するマイクロプローブの中心間の距離として定義される。ピッチは、典型的には、単一のマイクロプローブの全幅に隣接するマイクロプローブ間のギャップの幅を加えたものに等しい。マイクロプローブの幅は、25μm以下、例えば10μm以下から約5μmまでであってもよい。隣接するマイクロプローブ間のギャップの幅は、特に限定されないが、例えば、10μmと20μmの間であってもよい。したがって、複数のタングステンベースのマイクロプローブのピッチは、45μm以下であり、約15μm程度である。
【0043】
プローブカードは、第2または第3の態様による複数のタングステンベースのマイクロプローブを使用して、従来の方法で製造することができる。
【0044】
本発明は、記載された態様および好ましい特徴の組み合わせを含むが、そのような組み合わせが明らかに許容できないか、または明示的に回避されている場合を除く。本発明の原理を示す実施形態および実験について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明による方法における一連のプロセスステップの概略図である。
【
図2】本発明による複数のマイクロプローブの第1の例の様々な走査型電子顕微鏡画像である。
【
図3】本発明による複数のマイクロプローブの第2の例の様々な走査型電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ここで、添付の図面を参照して、本発明の態様および実施形態を説明する。さらなる態様および実施形態は、当業者には明らかである。本願明細書で言及されている全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
図1は本発明による方法の一例における一連のプロセスステップの概略図を示す。この方法は、ここに示されている正確なステップに限定されず、上記の「発明の概要」に記載されているように、この方法に変更を加えることができることを理解されたい。当該方法のステップは以下のように要約される:
a)ステップ1:所望の寸法のタングステン箔として提供される、タングステンベース層を設ける;
b)ステップ2:タングステン箔の両面を研磨する;
c)ステップ3:タングステン箔をキャリア基板(ここではガラス キャリアウェハ)に接着し、キャリア基板上に支持されたタングステンベース層を設ける;
d)ステップ4:タングステンベース層にフォトレジストを設ける;
e)ステップ5:所定の形状を有するマスクを介してフォトレジストを露光し、フォトレジストの一部を除去して、タングステンベース層の表面または上方にフォトレジストマスクを設ける;
f)ステップ6:RIEエッチングを実行して微細加工部品を定義する;
g)ステップ7:残留フォトレジストを除去する;
h)ステップ8:微細加工部品の自由表面を剥離可能なテープに一時的に接着する;
i)ステップ9:微細加工部品をキャリア基板から分離する;
j)ステップ10:微細加工部品を剥離可能なテープから剥離して、自立した微細加工部品を得る。
【0048】
本発明の方法の一例を以下でより詳細に説明する。この例示的な方法では、複数のマイクロプローブが圧延タングステン箔から製造される。結果として得られるマイクロプローブ(プローブ針とも呼ばれる)の電気的および機械的特性は、最初のタングステン箔の特性によって実質的に決定される。
【0049】
本発明者らは、圧延製造プロセスを使用して製造されたタングステン箔は、結果として得られる微細加工部品に高い導電性と機械的強度を与えることを見出した。製造の便宜上、箔は最初に後続の処理ステップに適合する、例えば100mmまたは150mmの直径の円にカットされる。箔の厚さは、プローブ針の所望の最終厚さに近いがそれよりも大きくなるように選択される(
図1(a)、ステップ1)。
【0050】
圧延タングステンの製造工程の性質上、この例で使用される箔は粗く、算術平均粗さRaは100nmオーダーで、最大山から谷までの粗さRtは1μmを超える。この粗さは、最終的なプローブ針の機械的および電気的性能に影響を与える可能性があるため、研磨ステップが行われる(
図1(b)、ステップ2)。箔は、最初に粗さの大部分を除去するために研磨され、次に化学機械研磨(CMP)を使用して研磨される。これらのプロセスステップは、タングステン箔の両面に適用される。この例における研磨された箔の必要な表面仕上げは、50nm以下のRtで5nm以下のRaである。両面が仕上げられた最終的なプローブ針の表面は、研磨された箔で得られたものによって与えられる。研磨後の箔の厚さは、プローブ針の最終的な厚さである。
【0051】
研磨後、熱的に適合する仮接着剤(BrewerBOND(登録商標)220、WaferBOND(登録商標)HT-10.11、または別の適切な接着剤など)を使用して、タングステン箔をガラスウェハに一時的に接着する。接着剤層は、この剥離方法が選択された場合、その後の UVB レーザーによる剥離のための剥離層を含むこともできる(
図1(c)、ステップ3)[参照文献4]。
【0052】
上述のように、接着剤の熱特性を適切に選択することは、エッチング工程でガラスウェハとタングステン箔との間の熱平衡を確保するのに役立つ。キャリアと接着剤の熱特性を適切に選択することで、エッチング中の箔の最高温度を下げることができ(高い熱伝導率により)、さらに高温での箔の応力を軽減することができる。
【0053】
一時的に接着されたタングステン箔に、UVに反応するポジ型フォトレジストが塗布される(
図1(d)、ステップ4)。適切なフォトレジストの一例は、Dow Chemicals companyから入手可能なMegaposit(商標)SPR220シリーズのレジストであるが、任意の他の適切なフォトレジストを使用することができる。
【0054】
コーティング後のレジストの厚さは12μmで、その後1時間以上緩和させる。これは、応力によるレジストのクラックを軽減または回避するのに役立つ。次に、約5分間かけて室温(約20℃)から約115℃まで温度を徐々に上げることにより、レジストをソフトベークして溶剤を焼き出す。その後、高温(約115℃)で約5分間保持する。温度を徐々に上げると、箔に応力が発生するのを防ぐことができる。
【0055】
次に、UV照射によりマスクを介してレジストを露光する。一例では、次にレジストは、122mJ/cm2±10%のエネルギーでのUV照射によってマスクを通して露光される。これは、ランプの電力と露光時間の積である。使用されるエネルギーによって、解像度、接着力、露光深度が決まる。フォトレジストの露光に使用する正確なエネルギーは、使用するレジスト、その厚さとマスクの必要な解像度に基づいて適切に選択できる。
【0056】
露光後、ウェハを45分以上放置する。これにより水分が環境から再吸収され、レジスト内のポリマー架橋の完了に役立つ。次に、レジストの架橋プロセスを完了するために、露光後ベークが行われる。この焼き付けステップは、約5分間かけて温度を室温(約20℃)から約115℃まで上昇させることによって行われ、その後、温度を約115℃で90秒間保持する。次に、レジストを化学反応性溶液(Megaposit(商標) MF-26A現像液など)で現像し、フォトポリマーレジストマスクの後ろに残っている露光されたフォトレジストを除去する(
図1(e)、ステップ5)。
【0057】
その後、PlasmaTherm DSE多重誘導結合プラズママシンを使用してタングステン箔をエッチングする(ただし、他のエッチング装置を使用してもよい)。この装置は、高速ガス切り替え、高速で安定した圧力制御、およびソリッドステートRFチューニングの機能により、この例に選択される。エッチングチャンバーの周りのコイルはプラズマを生成するために使用され、プラテンコイルはウェハ電極に接続され、プラズマに対するウェハのRFバイアス電位を制御する。裏面のヘリウム加圧を使用して、仮接合材とキャリアウェハを介して電極に到達し、タングステン箔間の熱伝達を提供し、一定のウェハ温度を維持する。ウェハがマシンに配置されると、セラミックリングによって電極に固定される。3.5秒と0.01秒の交互のエッチングとパッシベーションのステップが使用される。このような高速スイッチングステップは、スカロッピングを誘発するオーバーエッチングによる側壁の損傷を回避し、エッチングプロセス中に実質的に垂直な側壁の形成を可能にする。
【0058】
エッチングプロセスに使用されるガスはSF6であり、パッシベーションに使用されるガスはC4F8である。SF6とC4F8の流量は、それぞれ毎分350標準立方センチメートル(sccm)と100sccmである。堆積(パッシベーションステージ)の場合、チャンバー内の圧力は35mTorr、プラテンの電力は100W、コイルの電力は2000Wである。エッチング段階では、チャンバー内の圧力は150mTorr、プラテンの電力は150W、コイルの電力は3000Wである。
【0059】
RIEは、タングステン箔層に対して、これらのプロセスパラメータを使用して、およそ750nm/分のエッチング速度を有する。したがって、必要なエッチング時間は、25μmのタングステン箔の厚さに対して約34分である。この例では、材料とエッチング プロセスの選択により、レジストに対するタングステンのエッチング選択比は約7:1になる(
図1(f)、ステップ6)。
【0060】
ウェハをエッチングした後、光学顕微鏡を使用してウェハ上の微細構造を検査し、プロフィロメータを使用して段差の高さを測定した。続いて、タングステン微細構造のフォトレジストマスクは、ウェハをNMPなどのレジストストリッパーに90℃の温度で浸漬し、脱イオン水でそれぞれ5分間すすいで除去した。NMPは、タングステン箔をガラスキャリアウェハに取り付けるために使用される一時的な接着剤と反応しないため、ストリッパーとして選択された(
図1(g)、ステップ7)。
【0061】
エッチングされた微細構造は、剥がす前に一連の電気試験を受けて、箔の特性を抽出する。一例では、タングステンベース層の電気抵抗率を計算するために、エッチングされた箔の4点プローブ抵抗測定が行われた。シート抵抗は約5.4μΩ・cmであることがわかった。
【0062】
最後に、マイクロプローブはキャリア基板から分離される。この分離を行うために、マイクロプローブの自由面は、ガラスキャリアウェハからマイクロプローブを分離する前に(
図1(i)、ステップ9)、UV剥離ダイシングテープに接着されている(
図1(h)、ステップ8)[参照文献5]。
【0063】
タングステンベース層をキャリア基板に結合する接着剤層が、その後のUVレーザー剥離のための剥離層を含む例では、UV光は、透明なガラスキャリア基板を通して照射され、接着剥離層に吸収される。吸収されたUVレーザーエネルギーは、実質的な熱を発生させることなく、接着剤または剥離層の化学結合を破壊し、そのため最小限の熱応力で、または熱応力を加えずに、キャリア基板から微細加工部品を取り外すことができる。UV光は、微細加工部品のUV剥離ダイシングテープへの接着に影響を与えるほど十分な強度で浸透しない。微細加工部品とキャリア基板のレーザー剥離後、微細加工部品とキャリア基板は、微細加工部品にかかる機械的力をゼロに近い状態で分離できる。
【0064】
UV剥離ダイシングテープはUV硬化型で十分に高い接着強度を有するものを選択し、キャリア基板から分離した後、ダイシングテープに取り付けられた微細加工部品の溶剤洗浄を可能にする。適切なダイシングテープの例は、それぞれ1840mN/22mmおよび11800mN/25mmの接着強度を持つNitto PF-02またはLintec D-511Tである。
【0065】
次いで、マイクロプローブは、ダイシングテープに取り付けられている間に洗浄され、溶媒またはプラズマのいずれか、またはそれらの組み合わせで残留結合接着剤を除去する。適切な溶媒には、IPAを含むメシチレンまたはメチルエチルケトンを含むメシチレンが含まれる。
【0066】
最後に、プローブは、紫外線(UV)を使用してUV剥離ダイシングテープから剥離され、テープから取り出され、適切にパッケージ化される。このステップは、必要に応じてピックアンドプレースツールで行うことができる(
図1(j)、ステップ10)。
【0067】
図2及び
図3は、本発明に従って作製されたマイクロプローブの様々な走査型電子顕微鏡画像を示す。示されているすべてのマイクロプローブは、22μmの同じ厚さを有している。
【0068】
図2は、50μm間隔で配置された、幅25μm、長さ2mmのプローブを示す。マイクロプローブは幅40μm、長さ200μmの表面に幅広の領域を有する。
【0069】
図3は、平行部分の間に225μmのピッチで配置された、幅25μmの長さ4mmのプローブを示す。このプローブには2つの曲がりがあり、最初の曲がりは
図3(a)に示され、もう1つの曲がりのズームは3(b)に示されている。
図3(b)から、プローブの側壁が実質的に垂直であり、実質的に滑らかであることが分かる(スカロッピングは微小であるかまたは全く観察されない)。
【0070】
前述の特徴、または、特定の形式で、または開示された機能を実行する手段の観点から表現される、以下の特許請求の範囲、添付の図面、または適宜開示された結果を取得するための方法またはプロセスは、個別に、またはそのような特徴の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用できる。
【0071】
本発明は、上記の例示的な実施形態に関連して説明されてきたが、この開示が与えられれば、当業者には多くの同等の修正および変形が明らかとなる。したがって、上記の本発明の例示的な実施形態は、例えであり、限定的ではないと考えられ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対する様々な変更を行うことができる。疑義を避けるために、本明細書に記載されている理論的な説明は、読者の理解を深めることを目的として提供されている。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望んでいない。本明細書で使用されているセクションの見出しは、構成のみを目的としており、説明されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0072】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈が他の意味を必要としない限り、「含む」、「有する」、「含んでいる」、「有している」などのバリエーションの用語は、記載された「integer」または「ステップ」または「integer」または「ステップ」のグループを含めることを暗示するが、他の「integer」または「ステップ」または「integer」または「ステップ」のグループを除外するものではない。
【0073】
明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確に指示されていない限り、複数の指示対象を含む。範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、前置語「約」を使用して値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。数値に関する用語「約」は任意であり、例えば±10%を意味する。
【0074】
(参照文献)
本発明および本発明が関係する技術水準をより完全に説明および開示するために、多数の刊行物を上に引用した。これらの参考文献の完全な引用を以下に示す。これらの参考文献のそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる。
1.Ma,Shenglin&Xia,Yanming&Wang,Yaohua& en,Kuili&Luo,Rongfeng&Song,Lu&Chen,Xian&Chen,Jing&Jin,Yufeng.(2016).“Fabrication and characterization of a tungsten microneedle array based on deep reactive ion etching technology”.Journal of Vacuum Science&Technology B,Nanotechnology and Microelectronics:Materials,Processing,Measurement, and Phenomena.34.052002.10.1116/1.4960715.
2.“Study of the conditions for aniostropic plasma etching of tungsten and tungsten nitride using Sf6/Ar gas mixtures”.C.Reyes-Betanzo et al.Journal of the electrochemical society,149(3)G179-G183(2002)
3.“Microfabrication of thick tungsten films for use as absorbers of deep x-ray lithography masks”.H.Okuyama et al.Microsystems technologies7(2001)80-84
4.“High Temperature-Resistant Spin-On Adhesive for Temporary Wafer Mounting Using an Automated High-Throughput Tooling Solution”A.Smith et al.,CS MANTECH Conference,May14-17,2007,Austin,Texas,USA
5.United States Patent US9,029,238B2“Advanced Handler wafer bonding and debonding”
【国際調査報告】