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▶ メガ プラスト インダストリアル-エクスポーティング ソシエダ.アノニマの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-22
(54)【発明の名称】最適化された繊維強化フィルム
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/68 20060101AFI20230815BHJP
   B29C 70/50 20060101ALI20230815BHJP
   B29C 48/15 20190101ALI20230815BHJP
   B29C 48/05 20190101ALI20230815BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20230815BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
B29C70/68
B29C70/50
B29C48/15
B29C48/05
B29L7:00
B29K105:08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501621
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2021070180
(87)【国際公開番号】W WO2022018044
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】2011214.0
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523009735
【氏名又は名称】メガ プラスト インダストリアル-エクスポーティング ソシエダ.アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アルギロパイダス,イオアニス
(72)【発明者】
【氏名】カランディノス,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ツクレリ,ジョージア
【テーマコード(参考)】
4F205
4F207
【Fターム(参考)】
4F205AA03
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG01
4F205HA13
4F205HA27
4F205HA34
4F205HA37
4F205HB02
4F205HB11
4F205HC12
4F205HF05
4F205HM13
4F205HT13
4F205HT26
4F207AA03
4F207AB25
4F207AD16
4F207AG01
4F207AG03
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB11
(57)【要約】
本発明は、ベースフィルムと、複数の押出成形された強化繊維素子と、を有する強化熱可塑性フィルムに関する。ベースフィルムは、1つ以上の層を含む伸縮性ポリオレフィン材料を有する。押出強化繊維素子は、ベースフィルムの少なくとも1つの表面上に配置され、ベースフィルムの表面平面に対して繊維突起を形成する。各強化繊維素子がベースフィルムに設けられた位置において、ベースフィルムドメインと突起ドメインとの間に、直接的な相互作用を含む界面が形成される。ベースフィルムドメインは、純粋なベースフィルム材料のドメインであり、突起ドメインは、純粋な強化繊維素子材料のドメインである。ベースフィルムドメインと突起ドメインとの間の界面は、1つ以上の別個の相互混合ドメインにより中断され、相互混合ドメインは、ベースフィルム材料および強化繊維素子材料を含む材料混合物を有する。1つ以上の相互混合ドメインは、ベースフィルムドメインと突起ドメインとの間の界面における直接的な相互作用を部分的に中断する。さらに、1つ以上の相互混合ドメインは、ベースフィルムドメインおよび突起ドメインの界面および直接相互作用を有する。ベースフィルムの平均厚さは、繊維突起の平均厚さよりも小さい。本発明のフィルムは、引張強度、破断伸び、引き裂き抵抗、摩擦係数および密着性のような、制御可能な物理的機械的特性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化熱可塑性フィルムであって、
1つ以上の層を有する伸縮性ポリオレフィン材料を有するベースフィルムと、
複数の押出強化繊維素子と、
を有し、
前記押出強化繊維素子は、前記ベースフィルムの少なくとも1つの表面上に配置され、
前記押出強化繊維素子は、前記ベースフィルムの表面平面に対して繊維突起を形成し、
前記ベースフィルム上の各強化繊維素子が配置された位置において、ベースフィルムドメインと突起ドメインとの間に直接相互作用を有する界面が形成され、
前記ベースフィルムドメインは、純粋なベースフィルム材料のドメインであり、前記突起ドメインは、純粋な強化繊維素子材料のドメインであり、
前記ベースフィルムドメインと前記突起ドメインとの間の前記界面は、1つ以上の別個の相互混合ドメインにより中断され、前記相互混合ドメインは、前記ベースフィルム材料と前記強化繊維素子材料とを含む材料混合物を有し、
前記1つ以上の相互混合ドメインは、前記ベースフィルムドメインと前記突起ドメインとの間の前記界面における前記直接相互作用を部分的に中断し、
前記1つ以上の相互混合ドメインは、前記ベースフィルムと突起ドメインとの界面、および直接相互作用を有し、
前記ベースフィルムの平均厚さは、前記繊維突起の平均厚さよりも小さい、強化熱可塑性フィルム。
【請求項2】
前記ベースフィルム上に少なくとも3つの強化繊維素子が押し出され、好ましくは少なくとも8つの強化繊維素子が押し出されている、請求項1に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項3】
前記繊維突起の最大幅に対する前記最大高さの比は、0.1を超え、好ましくは0.2または0.33を超え、さらに好ましくは0.4または0.5を超え、さらに好ましくは0.6または0.8を超え、または1.0を超える、請求項1または2に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項4】
前記ベースフィルムの平均厚さは、4μmから50μmの範囲、より好ましくは5μmから30μm、最も好ましくは6μmから25μmの範囲であり、または前記厚さは、好ましくは15μmから45μmの範囲である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項5】
前記繊維突起は、60μm超、好ましくは100μm超、さらに好ましくは140μm超、最も好ましくは200μm超の最大高さを有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項6】
前記繊維突起は、1000μm未満、より好ましくは600μm未満、最も好ましくは350μm未満の最大幅を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項7】
前記繊維突起のコンタクト幅は、1100μm未満、好ましくは700μm未満、より好ましくは400μm未満である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項8】
前記複数の強化繊維素子の平均直径は、30μmから1000μm、より好ましくは50μmから500μm、より好ましくは100μmから350μmの間である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項9】
4.0g/m2から100.0g/m2、より好ましくは6.0g/m2から60.0g/m2、最も好ましくは8.0g/m2から20.0g/m2の重量を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項10】
前記突起角度PA1およびPA2は、10゜から170゜、好ましくは40゜から140゜、より好ましくは60゜から120゜、最も好ましくは約90゜である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項11】
前記2つの突起角度PA1とPA2の差は、90゜未満、好ましくは60゜未満、より好ましくは30゜未満、最も好ましくは10゜未満である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項12】
前記純粋なベースフィルム材料のドメインと前記純粋な繊維素子材料のドメインとの間の前記界面は、2つ以上の別個の相互混合ドメインにより中断される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項13】
前記純粋なベースフィルム材料のドメインと前記純粋な繊維素子材料のドメインとの間の前記界面は、前記繊維突起の内部に向かって、材料混合物の1つ以上のドメインにより部分的に遮断される、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項14】
前記1つ以上の相互混合ドメインは、前記繊維突起の外周には配置されない、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項15】
前記繊維突起の平均最大長さに対する平均最大高さの比は、1:500から1:10000000の範囲である、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項16】
前記繊維突起は、当該フィルムの表面積の51%未満を被覆する、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項17】
前記強化繊維素子の最大平均直径は、前記繊維素子の最小平均直径から、75%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下、より好ましくは10%以下だけ変化する、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項18】
前記純粋なベースフィルム材料のドメインと前記純粋な繊維素子材料のドメインの間の前記界面は、湾曲している、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項19】
前記ベースフィルムおよび前記複数の強化繊維素子は、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも200%だけ、予備伸張される、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項20】
前記ベースフィルムには、孔があいている、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項21】
当該フィルムの横方向端部は、機械方向に沿って縁取りされている、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項22】
強化熱可塑性フィルムを製造する方法であって、
(i)1つ以上の層を含む伸縮性ポリオレフィン材料を有するベースフィルムを押し出すステップと、
(ii)複数の強化繊維素子を押し出すステップと、
(iii)前記複数の強化繊維素子を前記ベースフィルムの少なくとも1つの側に設置するステップと、
(iv)前記強化繊維素子を前記ベースフィルムに結合するステップと、
を有し、
前記押出された強化繊維素子は、前記ベースフィルムの表面平面に対して繊維突起を形成し、
前記ベースフィルム上の各強化繊維素子が設けられた位置において、ベースフィルムドメインと突起ドメインの間に直接相互作用を有する界面が形成され、
前記ベースフィルムドメインは、純粋なベースフィルム材料のドメインであり、前記突起ドメインは、純粋な強化繊維素子材料のドメインであり、
前記ベースフィルムドメインと前記突起ドメインの間の前記界面は、1つ以上の別個の相互混合ドメインにより中断され、前記相互混合ドメインは、前記ベースフィルム材料および前記強化繊維素子材料を含む材料混合物を有し、
前記1つ以上の相互混合ドメインは、前記ベースフィルムドメインと前記突起ドメインの間の前記界面における前記直接相互作用を部分的に中断し、
前記1つ以上の相互混合ドメインは、前記ベースフィルムと突起ドメインとの界面、および直接相互作用を有し、
前記ベースフィルムの平均厚さは、前記繊維突起の平均厚さよりも小さい、方法。
【請求項23】
前記強化繊維素子は、熱融解により前記ベースフィルムに結合され、および/または前記結合ステップは、前記繊維素子に圧力を印加するステップを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記熱可塑性フィルムは、ロール上に提供される、請求項1乃至21のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム、または請求項22乃至23のいずれか一項に記載の製品。
【請求項25】
請求項1乃至21、または24のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム、または請求項22乃至23のいずれか一項に記載の製品の梱包のための使用。
【請求項26】
請求項1乃至21または24のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム、または請求項22乃至23のいずれか一項に記載の製品のサイレージ(silage)用途での使用。
【請求項27】
請求項1乃至21または24のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム、または請求項22乃至23のいずれか一項に記載の製品の手動梱包用途での使用。
【請求項28】
請求項1乃至21または24のいずれか一項に記載の強化熱可塑性フィルム、または請求項22乃至23のいずれか一項に記載の製品のマルチ(mulch)用途での使用。
【請求項29】
強化熱可塑性フィルムであって、
(i)1つ以上の層を含む伸縮性ポリオレフィン材料を含むベースフィルムを押し出すステップと、
(ii)複数の強化繊維素子を押し出すステップと、
(iii)前記複数の強化繊維素子を前記ベースフィルムの少なくとも1つの側に設置するステップと、
(iv)前記強化繊維素子を前記ベースフィルムに結合するステップと、
によって得られ、
前記押出された強化繊維素子は、前記ベースフィルムの表面平面に対して繊維突起を形成し、
前記ベースフィルム上の各強化繊維素子が提供された位置において、ベースフィルムドメインと突起ドメインとの間に直接相互作用を含む界面が形成され、
前記ベースフィルムドメインは、純粋なベースフィルム材料のドメインであり、前記突起ドメインは、純粋な強化繊維素子材料のドメインであり、
前記ベースフィルムドメインと前記突起ドメインの間の前記界面は、1つ以上の別個の相互混合ドメインにより中断され、前記相互混合ドメインは、前記ベースフィルム材料および前記強化繊維素子材料を含む材料混合物を有し、
前記1つ以上の相互混合ドメインは、前記ベースフィルムドメインと前記突起ドメインの間の前記界面における前記直接相互作用を部分的に中断し、
前記1つ以上の相互混合ドメインは、前記ベースフィルムと突起ドメインとの界面、および直接相互作用を有し、
前記ベースフィルムの平均厚さは、前記繊維突起の平均厚さよりも小さい、強化熱可塑性フィルム。
【請求項30】
さらに、請求項2乃至21のいずれか一項に記載の特徴を有する、請求項29に記載の強化熱可塑性フィルム。
【請求項31】
請求項22乃至23のいずれか一項に記載の方法ステップのいずれかによって得られる、請求項29または30に記載の強化熱可塑性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き裂き耐性強化伸縮性フィルムに関する。特に、本発明は、引っ張り強度、破断伸び、引き裂き抵抗、摩擦係数および密着性のような、制御可能な物理的機械的特性を有する強化フィルムに関する。本発明による製品は、サイレージ、ストレッチフィルム、予備伸張-伸縮性フィルム、フード状(hood)フィルム、またはマルチ(mulch)フィルムであってもよく、これらは、成形、ブローのような、既知の押出(成形)法または共押出(成形)法により製造することができる。本フィルムは、同様のおよび/または改善された物理的機械的特性を有する既知のフィルムに比べて、その重量が有意に低いことが特徴である。
【背景技術】
【0002】
強化伸張性フィルムは、多くの用途に使用されている。国際公開第2006/076917A1に記載されているように、伸縮性フードの例では、該フードは、シームを有する二軸配向管状フィルムから形成される。この用途では、シームはフードのサイズを調節する可撓性を提供するが、要求の厳しい包装用途に使用される上で必要な構造的補強が失われる。EP0923866A1には、エージ(age)または干し草の梱包の場合の、害虫抑制剤が染みこんだ伸縮性フィルムが開示されている。これは、製品のコストおよび重量をかなり増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
補強相が特定の層内に配置され、従ってフィルム内に積層構造が形成されるいくつかの態様が知られている。米国特許出願第2005/0175805 A1では、ブロープロセスの間に形成された2層の熱可塑性層の間に、複数の繊維が分散される。本繊維強化フィルムは、主としてバッグに形成され、ランダムに分散されたた繊維の内層で構成される。従って、フィルムの単位長さ当たりの繊維体積分率の不連続性が生じ、フィルムにわたって不均一な強化が生じる。
【0004】
ここ数年、包装用の共押出強化フィルムが注目を集めている。米国特許第4,536,362号には、特別に設計されたダイヘッドを介した押出成形により形成された、長手方向に沿ってリブ化されたプラスチックフィルムが開示されている。同様に、国際公開第WO2005/021240A1では、長手方向に共押出されたより厚い領域が、フィルムを強化するように設計される。これらの文書は、安価な強化包装用フィルムを製造することを目的とするが、制御不能な厚さの変動の問題があり、これは、1つの材料内での物理的特性の変化につながる。また、強化は、材料の固有の特性を根本的に向上させることではなく、対象区画の断面を増大させる(厚くする)ことにより、達成される。
【0005】
国際公開第WO2011/026954には、伸張可能な層状ベースフィルムと、ベースフィルム上に配置され、該ベースフィルムの平面から遠ざかる突起を形成する複数の押出素子と、を有する熱可塑性フィルムが示されている。フィルムと繊維強化素子との間の領域の材料挙動は、フィルムと素子材料の対向する層の間に、繊維素子およびベースフィルムを有する混合層が存在するようなものである。本フィルムは、引張強度および引き裂き抵抗のような、有益な物理的特性の範囲を示すが、これは、従来から知られる他のフィルムの重量の割合においてである。
【0006】
長手方向におけるフィルムの機械的強度を高めるためにフィルムに固定された、長手方向の強化ストリップを有する強化伸張性システムは、低重量のものについても、既に利用可能である。そのような強化システムでは、ベースフィルムと、該ベースフィルムの上に設けられた強化ストリップの間の確実な結合が必要となる。これは、生産の間、追加の処理ステップを付加し、従って、追加のコストが生じる。強化熱可塑性フィルムの重要な特徴は、ベースフィルムと任意の強化素子の間のリンクの強度である。このリンク/結合の強化は、最終製品の品質を向上させるように設計された、結合剤または処理ステップにより達成され得る。
【0007】
特定の実施形態では、機械方向における引張強度が向上された薄い可撓性の包装が必要とされる場合、既存のシステムでは、単一の幅広の強化ストリップ、または折り畳まれ/オーバーラップされた強化素子のいずれかが提案されてきた。しかしながら、これらは、重量を大きく増加させ、フィルムからの素子の剥離が助長される。
【0008】
物の包装または統合のために、ポリエチレンの伸縮性フィルムを使用することが知られている。より重い用途の場合、物品の重量およびサイズによって、異なる特性(強度、厚さ、粘着性、滑り)を有するフィルムが使用される。
【0009】
フィルムメーカーにとって、主要なコストは、ポリエチレンを原料として使用することによるものである。従って、包装を製造するコストは、製造されるフィルムの厚さに比例して増加することが理解される。従って、製造コストを低減するため、包装に使用されるフィルムの厚さを減らすことが有意である。
【0010】
また、商品の包装または統合の間に生じる廃棄材料の体積および重量も、フィルムの厚さに依存する。従って、フィルムを薄くすることにより、廃棄材料の体積および重量が低減される。
【0011】
本発明の目的は、前述の問題を克服し、最適化された強化伸縮性フィルムの形態の解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様では、
強化熱可塑性フィルムであって、
1つ以上の層を有する伸縮性ポリオレフィン材料を有するベースフィルムと、
複数の押出強化繊維素子と、
を有し、
前記押出強化繊維素子は、前記ベースフィルムの少なくとも1つの表面上に配置され、
前記押出強化繊維素子は、前記ベースフィルムの表面平面に対して繊維突起を形成し、
前記ベースフィルム上の各強化繊維素子が配置された位置において、ベースフィルムドメインと突起ドメインとの間に直接相互作用を有する界面が形成され、
前記ベースフィルムドメインは、純粋なベースフィルム材料のドメインであり、前記突起ドメインは、純粋な強化繊維素子材料のドメインであり、
前記ベースフィルムドメインと前記突起ドメインとの間の前記界面は、1つ以上の別個の相互混合ドメインにより中断され、前記相互混合ドメインは、前記ベースフィルム材料と前記強化繊維素子材料とを含む材料混合物を有し、
前記1つ以上の相互混合ドメインは、前記ベースフィルムドメインと前記突起ドメインとの間の前記界面における前記直接相互作用を部分的に中断し、
前記1つ以上の相互混合ドメインは、前記ベースフィルムと突起ドメインとの界面、および直接相互作用を有し、
前記ベースフィルムの平均厚さは、前記繊維突起の平均厚さよりも小さい、強化熱可塑性フィルムが提供される。
【0013】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様による熱可塑性フィルムを製造する方法が提供される。
【0014】
本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様による熱可塑性フィルムの使用、または本発明の第2の態様の製品の包装、サイレージ(silage)用途、手動包装用途およびマルチ(mulch)用途の使用が提供される。
【0015】
本発明の第4の態様では、熱可塑性フィルムを製造する方法から得られる熱可塑性フィルムが提供される。
【0016】
本発明の強化伸縮性フィルムは、商品の統合化、例えば、包装、梱包、サイレージ、または鋭い端部を有する植物のユニット化に特に適する。また、これは、マルチング、例えば、耕地での雑草の抑制、作物の生産および景観における水の節約にも適する。本発明の強化伸縮性フィルムは、サイレージフィルムとしての使用、または、例えばラッピング梱包のような、サイレージ用途におけるネット代替としての使用に、特に適する。
【0017】
強化伸縮性フィルムは、包装の間、またはフィルムがプラスチックマルチとして使用された後に土壌から集められる際、引き裂きまたは破壊的な破損に耐える点で有意である。本発明において定められるような、強化繊維素子の繊維突起の形状的な特徴、並びに材料混合物のドメインの形状および分布は、延伸中のまたは延伸状態条件下でのフィルムの引き裂き抵抗を改善する。引き裂き抵抗の度合いは、意図される用途に応じて変化する、エンドフィルムの異なる要求を満たすように調整できる。フィルムにわたる亀裂の伝播は、強化繊維素子により抑制され、遅延され、これにより包装プロセスが維持される。従って、強化伸縮性フィルムの完全性およびその包装能力は、包装手順が中断されずに維持される。
手による包装のため、エンドユーザは、商品の統合化が完了した後に、手で前記強化伸縮性フィルムを切断する。自動包装ラインの場合も同様に、フィルムは、好適なナイフにより、その端部で切断される。従って、強化伸縮性フィルム、および具体的には、その上に配置された強化繊維素子は、強すぎず、フィルムの自動的なまたは手動での切断は、妨げられない。
【0018】
プラスチックフィルムマルチの商業的用途に対する主な限界は、その廃棄である。フィールドからフィルムを除去するには時間がかかり、1ヘクタール当たり約16時間が必要となり、これは、フィルムが除去中に破片状に分離される場合、大きく上昇する。プラスチックマルチフィルムの破片がフィールドに残され、マルチの除去中にメインシートから離れてしまった場合、これは、次の作物の根の発達を妨げる可能性がある。通常、プラスチックマルチの耐用年数は、作物サイクルの期間を超えるため、プラスチックフィルムマルチは、シーズンの終わりに廃棄する必要がある。そのようなプラスチックマルチの製造および廃棄には、多大な環境コストが伴う。本発明の強化伸縮性フィルムは、引裂きに耐え、プラスチックフィルムマルチの除去を著しく容易にするように設計され、これにより土壌汚染が軽減される。
【0019】
本発明では、全体的な材料の使用およびコストを最小限に抑えたまま、前述の特徴が提供される。強化繊維伸縮性フィルムは、薄くすることができ、1つ以上の強化繊維素子は、可能な限り全体重量が抑制される。これらの態様は、環境およびリサイクルの問題の点で、大きな追加の利点をもたらす。
【0020】
本発明による強化伸縮性フィルムの別の特徴および利点は、添付図面と併せて、一例の実施形態の一例の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明によるベースフィルム上の強化繊維素子により形成された繊維突起の形状を示した図である。
図2】本発明に関連する物理的パラメータおよび界面に存在するドメイン種が強調された、強化繊維素子、繊維突起、およびベースフィルムの間の関係を概略的に示した図である。
図3A】異なる処理条件下で製造された強化伸縮性フィルムの3つの繊維突起を示した図である。
図3B】本発明に関する物理的パラメータおよび界面に存在するドメイン種が強調された、異なる処理条件下で製造された強化伸縮性フィルムの3つの繊維突起を概略的に示した図である。
図4】繊維突起ドメインとベースフィルムドメインの間に形成された界面に沿ったおよび界面の周囲に存在する、材料のドメインの分析を示した図である」。
図5A】最大繊維突起高さHprot.maxの関数としての、強化繊維フィルムの物理的機械的特性を示した図である。
図5B】最大繊維突起高さHprot.maxの関数としての、強化繊維フィルムの物理的機械的特性を示した図である。
図5C】最大繊維突起高さHprot.maxの関数としての、強化繊維フィルムの物理的機械的特性を示した図である。
図6A】最大繊維突起幅Wprot.maxの関数としての、強化繊維フィルムの物理的機械的特性を示した図である。
図6B】最大繊維突起幅Wprot.maxの関数としての、強化繊維フィルムの物理的機械的特性を示した図である。
図6C】最大繊維突起幅Wprot.maxの関数としての、強化繊維フィルムの物理的機械的特性を示した図である。 図面にはスケールは示されておらず、システムの概略のみが表されていることが留意される。これらは、本発明による物体の割合を表すものではない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による全ての好適な実施形態および特徴は、本発明の他の好適な実施形態および特徴と組み合わせて開示されたものとみなされる必要がある。
【0023】
以下の好適な特徴および値は、全般に、各個々の繊維素子に関して提供される。しかしながら、これらの値は、複数の繊維素子にわたって等しく適用可能であり、これらは、参照される特徴の平均値を表してもよい。
【0024】
本発明では、複数の押出成形された強化繊維素子が、ベースフィルムの少なくとも1つの表面に配置される。押出成形強化繊維素子は、ベースフィルムの表面平面に対する繊維突起を形成する。各繊維突起は、純粋な繊維素子材料の突起ドメイン(PD)を有する。各強化繊維素子がベースフィルム上の配置される位置において、すなわち繊維突起の下側において、ベースフィルムは、純粋なベースフィルム材料のベースフィルムドメイン(BD)を有する。
【0025】
ベースフィルムドメインは、一般に、繊維突起ドメインの下側にある。
【0026】
純粋なベースフィルム材料のドメインと、各強化繊維素子がベースフィルム上に配置された位置にある、純粋な強化繊維素子材料のドメインの間に、界面が形成される。該界面は、ベースフィルムと繊維突起ドメインの間の直接的な相互作用を含む。この直接的な相互作用は、ベースフィルム材料および繊維素子材料を含む材料混合物の1つ以上のドメインにより中断される。これらのドメインは、相互混合ドメインと称され得る。相互混合ドメイン(ID)は、ベースフィルム材料および強化繊維素子材料を含む材料混合物を有する。このような相互混合ドメインは、純粋な繊維素子材料の突起ドメインおよび純粋なベースフィルム材料のベースフィルムドメインから材料を移動させた後に形成される。PDドメインとBDドメインの間の相互作用は、純粋なベースフィルム材料のドメインと純粋な強化繊維素子材料のドメインとの間に形成される界面にわたって、界面混合が連続的ではなく、完全ではないことを意味する。換言すれば、界面混合は不連続である。従って、純粋なベースフィルム材料のドメインと純粋な強化繊維素子材料のドメインとの間の界面は、「不連続」と称されてもよい。
【0027】
相互混合ドメインは、これらが個々のドメインを形成し、純粋なベースフィルム材料のドメインと純粋な強化繊維素子材料のドメインとの間に形成された界面の全長に沿って延在しないという意味で、離散的である。1つ以上の相互混合ドメインは、それら自身の界面を有し、ベースフィルムおよび繊維突起ドメインの両方と直接相互作用する。
【0028】
純粋なベースフィルム材料のドメインと純粋な強化繊維素子材料のドメインとの間に形成される不連続界面にわたって、2つ以上の相互混合材料のドメインが存在してもよい。例えば、突起ドメインとベースフィルムドメインとの間の界面には、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の離散的な相互混合ドメインが存在してもよい。
【0029】
本発明では、従来の問題に対処できる。強化繊維素子が新たに押出され、ベースフィルム上に堆積されると、強化用繊維素子からベースフィルムに多量の熱が伝達される。印加圧力と組み合わされた熱により、繊維素子の表面およびベースフィルムの表面の良好な湿潤性が確保されるため、熱の使用は必要である。しかしながら、熱伝達が広範囲に及ぶと、熱は(印加圧力と共に)、エッジの欠陥を形成し得る。これらは、強化繊維フィルムを局所的に弱める可能性がある。この時点で亀裂伝播が開始され、その後、製品の破局的な不具合につながるおそれがある。一方、十分な熱または圧力がなければ、繊維突起とベースフィルムの間で剥離が生じ得る。その後、亀裂は、繊維突起の下側に伝播しこれにより、再び、フィルムの破壊的な不具合が生じ得る。従って、ベースフィルムに対する繊維突起の効果的な溶接では、熱および圧力の制御された使用が必要となる。その結果、不連続な界面混合および前述の界面の形成が生じる。
【0030】
より詳細には、繊維突起ドメインとベースフィルムドメインの間に、界面が形成され、この界面は、ベースフィルムドメインと繊維突起ドメインの間の直接的な相互作用を有する。界面は、一方の側に純粋な繊維突出材料を有し、他方の側に純粋なベースフィルム材料を有する。純粋な強化繊維素子材料と純粋なベースフィルム材料の間の界面は、相互混合ドメインと称される、1つ以上の別個のドメインにより断続的に中断される。これらのドメインは、これらの位置における繊維突起ドメインとベースフィルムドメインの直接的な相互作用を妨げる。相互混合ドメインは、界面を通るBDドメインおよびPDドメインからの材料移動の結果として、強化繊維素子材料およびベースフィルム材料の両方を有する。
【0031】
好ましくは、相互混合ドメインは、繊維突起の周囲から遠ざかるように、すなわち、外側端部コンタクト点C1およびC2から離れて配置される。相互混合材料ドメインは、各繊維突起の内部に向かって配置されることが好ましい。
【0032】
相互混合ドメイン境界は、純粋な強化繊維素子材料および純粋なベースフィルム材料により取り囲まれる。換言すれば、相互混合ドメインは、突起ドメインおよびベースフィルムドメインの両方との界面を形成する。
【0033】
各相互混合ドメインのサイズ、数、および形状は、強化用繊維素子材料およびベースフィルム材料の親和性、適用温度、印加圧力、強化繊維素子質量、ベースフィルム厚さ、押出速度などに依存する。これらの因子は、全て相互混合ドメイン内の所望の相互混合度に達するように変化され得る。
【0034】
本発明の強化熱可塑性フィルムは、繊維突起ドメインとベースフィルムドメインの間の界面に配置されない、相互混合材料の別のドメインを含んでもよい。従って、これらの相互混合ドメインの境界は、純粋なベースフィルム材料または純粋な強化繊維素子材料により、完全に取り囲まれてもよい。
【0035】
各種ドメインの配置は、例えば、図2に示されている。繊維突起の下側には接触面が特定され、これは、繊維突起に対して横方向に延在する外側端部コンタクト点C1とC2の間に形成される平面として定められる。断面平面は、点C1および点C2を通り、ベースフィルムと直交するコンタクト平面に垂直な平面である。
【0036】
押出成形ベースフィルムは、押出成形強化繊維素子が配置されるベースとして使用されるフィルムである。
【0037】
相互混合ドメインは、純粋な強化繊維素子材料および純粋なベースフィルム材料が、不連続界面にわたる特定の位置で接触することを防止するように配置される。
【0038】
好ましくは、外側端部コンタクト点(C1およびC2)の近傍では、純粋なベースフィルム材料と純粋な強化繊維素子材料との直接接触が存在する。
【0039】
従って、本発明の典型的なフィルムでは、通常、ベースフィルム材料の底部層、強化繊維素子材料の上部層、および上部層と底部層との間の不連続界面が存在する。界面混合のエリアまたは領域は、界面にわたる特定の位置、例えば、強化繊維素子とベースフィルムの間のコンタクトの境界から離れた、繊維突起の内側または中央部分が対象とされてもよい。
【0040】
各強化繊維または強化繊維状素子材料の一部は、ベースフィルム材料と界面混合物を形成する。好ましくは、各強化繊維または強化繊維状素子材料の平均、50重量%未満、より好ましくは20重量%未満、最も好ましくは10重量%未満が、ベースフィルム材料と界面混合物を形成する。これにより、ポリマー材料の良好な混合が確保され、従って、ベースフィルムに対する強化繊維素子の良好な結合強度が得られる。これにより、例えば、接着剤により表面に強化素子が取り付けられまたは接着されたベースフィルムと比べて、高い引き裂き抵抗が得られる。
【0041】
好ましくは、強化繊維素子の最大高さの30%超(素子がベースフィルムに適用される前に測定される)、より好ましくは最大高さの50%超、最も好ましくは80%超が、保持/残留される。
【0042】
強化熱可塑性フィルムは、好ましくは4.0g/m2から100.0g/m2の間、より好ましくは6.0g/m2から60.0g/m2の間、最も好ましくは10.0g/m2から20.0g/m2の間の重量を有する。
【0043】
好ましくは、本発明の強化熱可塑性フィルムの強化繊維素子は、前記ベースフィルムの重量の50%未満、より好ましくは前記ベースフィルムの重量の30%未満、最も好ましくは前記ベースフィルムの重量の20%未満の重量を有する。前記強化繊維素子は、好ましくは1g/cm2未満、より好ましくは0.1g/cm2未満、最も好ましくは0.01g/cm2未満の坪量を有する。
【0044】
コンタクト平面は、外側端部コンタクト点C1およびC2と接触する面として定められてもよい。これらの点は、強化繊維素子とベースフィルムの間のコンタクトの境界上に存在する。相互混合材料の1つ以上のドメインは、コンタクト平面の上方、下方、またはこれと交差して、形成されてもよい。
【0045】
相互混合ドメインの数およびサイズ(すなわち、界面混合の量)は、ベースフィルムに強化繊維素子が設置される温度および/または圧力を変化させることにより、制御できる。変更可能な他の要因には、強化繊維素子の質量、ベースフィルムの厚さ、および押出速度などが含まれ得る。
【0046】
例えば、突起ドメインとベースフィルムドメインの間の界面にわたる界面混合の特定の度合いに到達させるため、ベースフィルムに対する強化繊維素子の圧縮の大きさおよび圧縮の時間の両方が制御できる。また、これらの変数は、繊維突起の高さおよび/または幅を制御するためにも使用できる。
【0047】
あるいは、ベースフィルムに対する強化繊維素子の圧縮の大きさが低く、圧力が低い場合、それぞれ、より大きな繊維突起の最大高さ(Hprot.max)が生じ、ベースフィルムからの材料と強化繊維素子の界面混合の不連続ドメインが存在する結果となる。
【0048】
フィルムの強度を最適化するため、界面混合の量は、繊維突起の最大高さおよび/または最大幅を用いて、界面に沿って制御できる。この制御により、引き裂きエネルギーおよび引張特性の予期せぬ改善が生じ得る。
【0049】
複数の強化繊維素子は、ベースフィルムを強化するように構成された、少なくとも3つの強化繊維素子を有する。各素子は、ベースフィルムと共に、それ自身の個々の突起ドメインを形成する。
【0050】
通常の場合、ベースフィルムと各繊維突起の界面は、湾曲している。換言すれば、フィルムがその断面(あるいは垂直寸法zと称される)を介して視認される場合、繊維突起とベースフィルムの間に湾曲界面が形成される。
【0051】
繊維突起の下側のベースフィルムは、上部(界面)および底面表面を有する。
これらは、界面の曲率に従って、垂直寸法zにおいて偏向され(または曲げられ)てもよい。
【0052】
局部的な曲げは、1つ以上の強化繊維素子とベースフィルムの接触および結合、ならびにドメインの形成によるものであってもよい。1つ以上の強化繊維素子がベースフィルムと相互作用する方法、および相互混合されたドメインの分布方法が重要である。曲率の程度、ベースフィルム強化繊維素子材料の混合のレベル、相互混合の程度、最大高さ、最大幅、および繊維突起の角度が制御され、伸縮性フィルムに最適な強度が提供され得る。
【0053】
複数の強化素子がベースフィルムと相互作用する手段、およびベースフィルム上に形成された繊維突起の外側端部コンタクトC1とC2の間に形成された界面の形状が重要である。最適化された強化熱可塑性フィルムの物理的機械的特性(例えば、強度、引き裂き耐性)を向上させるため、曲率の程度、繊維突起とベースフィルム材料との相互混合の程度、および繊維突起の高さが制御され、精密化される。
【0054】
本発明では、押出成形強化繊維素子は、繊維であり、これらは、ベースフィルムの表面の上部に押出され配置され、引裂き伝播に対する耐性が提供される。強化部材は、繊維または繊維状素子である。「強化繊維」または「強化繊維状」とは、素子の断面が、素子の高さと比べて、同じオーダーの幅を有する、細長い素子を意味する。
【0055】
「強化繊維」および「強化繊維状」という用語は、本願で使用される場合、相互交換可能である。
【0056】
強化繊維素子材料の複数の強化繊維素子は、ベースフィルムを補強するように構成され、強化繊維素子は、ベースフィルムの少なくとも1つの表面上に設けられ、ベースフィルムの少なくとも1つの表面上に材料の隆起領域を形成し、これは、「繊維突起」を形成する。繊維突起の最大高さと最大幅、および最大幅に対する最大高さの比は、全て重要である。
【0057】
寸法が参照される場合、それらは、個々の強化繊維素子または繊維突起、全体としての強化繊維素子または繊維突起の各々に適用されてもよく、あるいは、フィルムにわたる全ての強化素子または繊維突起の平均寸法であってもよい。
【0058】
繊維突起は、2つの外側コンタクト点C1とC2の間に形成されるコンタクト平面の上方に延在し、60μm超、好ましくは100μm超、より好ましくは140μm超、最も好ましくは200μm超である。あるいは、この寸法は、繊維突起の最大高さ(Hprot.max)とも称され、繊維突起の最遠位点からコンタクト平面まで延在する最大直線距離である。直線は、コンタクトの平面に対して垂直である。コンタクト平面は、繊維突起とベースフィルムの間のコンタクトの2つの外側端部点を直線で接続する。Hprot.maxは、好ましくは60μm~200μmの範囲であり、最も好ましくは100μm~180μmの範囲である。
【0059】
繊維突起の幅は、通常、1000μm未満、より好ましくは600μm未満、最も好ましくは350μm未満である。繊維突起の最大幅(Wprot.max)は、繊維突起の一方の側から他方の側までの最大幅であり、前記測定値は、コンタクト平面に平行に測定される。Wprot.maxは、好ましくは200~260μmの範囲であり、最も好ましくは200~240μmの範囲である。
【0060】
コンタクト幅は、コンタクト平面に沿って、外側端部コンタクト点C1から、外側コンタクト端部コンタクト点C2までとして測定された距離、すなわち突起の断面において突起の高さに対して垂直に伸びる距離である。
【0061】
繊維突起は、好ましくは1100μm未満、好ましくは700μm未満、より好ましくは400μm未満のコンタクト幅を有する。
【0062】
ベースフィルムに設置する前の強化繊維素子の幅に対する高さの比は、3:1から1:3の範囲の範囲、より好ましくは2:1から1:2の範囲、より好ましくは1.5:1から1:1.5の範囲、例えば約1:1の範囲であってもよい。この比は、ベースフィルムに強化繊維素子が設置された後に変化してもよい。強化繊維素子の断面の最小軸に対する最大軸の比は、3:1未満、2:1未満、より好ましくは1.5:1未満であり、約1:1であってもよい。本願で表される比率は、x:yの形式であり、これは、x対yを表す。すなわち、x項目に対するy項目が存在する。例えば、高さ対幅の比が1:4とは、高さの各1単位が幅の4単位に対応することを表し、従って、高さの値は、幅の値の25%である。また、この百分率は、1:4=25%=0.25のように、10進数または分数で表すことができる。この形状は、例えば、強化素子としてのストリップ、バンド、リボンまたはテープから、ストリップの高さに比べてより大きな幅を有する、強化繊維または強化繊維状素子を区別する。そのような強化繊維または強化繊維状形状の利点は、所与の高さに対する材料消費量が少なく、得られる材料の調整可能な特性が多いことである。前記強化繊維または強化繊維状素子は、ドットまたはスポットから区別される。
【0063】
好ましくは、ベースフィルムへの設置後、繊維突起の高さは、その幅と実質的に同じサイズとなるが、通常、高さは、幅よりもわずかに小さい。ある実施態様では、強化繊維素子が堆積されベースフィルムに接合される際、繊維突起は、最大幅に対するコンタクト平面からの最大高さの比が、0.1を超え、好ましくは0.2を超え、より好ましくは0.33を超え、さらに好ましくは、0.4または0.5を超え、さらに好ましくは、0.6を超え、最も好ましくは、0.80を超え、または1.0を超える。
【0064】
特定の素子について、比Hprot.max/Wprot.maxは、好ましくは0.60から1.00の範囲、好ましくは0.65から0.90の範囲、最も好ましくは0.70から0.80の範囲である。これにより、過去に報告されたものよりも背が高く、幅が狭い繊維突起が得られる。
【0065】
繊維突起は、フィルムの全体を被覆せず、代わりに、被覆されたフィルムの表面積の百分率は、通常、51%未満、または45%未満、より好ましくは40%未満、最も好ましくは35%未満である。
【0066】
強化繊維素子の直径は、好ましくは30μmから1000μm、より好ましくは50μmから500μm、最も好ましくは100μmから350μmである。強化繊維素子の最大平均直径は、強化繊維素子の最小平均直径から、75%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下、最も好ましくは10%以下だけ、変化してもよい。
【0067】
本発明の前記強化繊維素子の平均長さに対する平均高さの比は、1:500からから1:10000000の範囲、好ましくは1:1000から1:1000000の範囲、最も好ましくは1:10000から1:100000の範囲である。
【0068】
好ましくは、押出プロセスを用いて強化繊維または強化繊維状素子を形成する場合、強化繊維または強化繊維状素子は、実質的に円形の断面を有する。この断面は、強化繊維素子がベースフィルムに設置されるとともに、断面がより楕円形になってもよい。従って、好ましくは、強化繊維素子は、ベースフィルムへの設置の前に、実質的に円形の断面を有する。一方、いったん強化繊維素子がベースフィルムに設置されると、特に、圧力がベースフィルムに印加されると、繊維突起は、より長円形または楕円形の断面を有することが好ましい。そのような繊維突起は、目の形状の断面を有してもよい。典型的な繊維突起形状を図1に示す。
【0069】
突起角度は、繊維突起に対する接線と、外側端部コンタクト点でのコンタクト平面の間に形成される角度の補助角度である。外側端部コンタクト点は、強化繊維素子がベースフィルムの上側表面または下側表面と接触する2点である。接線は、一点で繊維突起のアウトラインに接し、外側端部コンタクト点でコンタクト平面を横断する。コンタクト平面は、外側端部コンタクト点C1とC2を接続する面として定められ、繊維突起の下側に配置される。C1とC2は、直線で接続される。
【0070】
次に、突起角度は、180゜から補助角度を差し引くことにより計算される。実際、この測定は、標準的な光学的技術を使用して測定することができるため、突起角度を測定する際にしばしば採用される。
【0071】
2つの突起角度、PA1およびPA2(図2に示す)があり、これらは、繊維突起の断面視、繊維突起の両側に形成された角度の補助角度を表す。素子の両側の2つの突起角度は、必ずしも同じではない。またこれは、素子の各側での異なる度合いの界面混合に対応してもよい。角度は、ベースフィルム材料中への強化繊維素子材料の浸透の度合い、すなわち、界面混合の度合いに関連してもよい。小さな角度は、相互混合が少ないことを示すが、繊維の突起は、亀裂の伝播に対する大きな障壁を提供し得る。大きな角度は、より浅い繊維突起を表し、この場合、その下側において、より十分な界面混合を有し得る。
【0072】
各突起角度は、好ましくは、10゜から170゜の範囲、より好ましくは40゜から140゜の範囲、より好ましくは60゜から120゜の範囲、最も好ましくは約90゜の値から、独立して選択される。好適実施形態では、突起角度PA1およびPA2は、実質的に等しく、すなわち、繊維突起の側面は、対称であることが好ましい。
【0073】
好適実施形態では、各繊維突起の2つの突起角度PA1およびPA2の間の差は、90゜未満であり、好ましくは60゜未満、より好ましくは30゜未満、最も好ましくは10゜未満である。
【0074】
強化繊維素子の断面形状は重要である。ベースフィルム上に強化繊維素子を堆積させた後、繊維突起ドメインとベースフィルムドメインの間に形成される界面は、通常、湾曲しており、好ましくは、凸状または凹状である。
【0075】
強化繊維素子は、直線状、曲線状、波形、ジグザグ状、螺旋状、円形に配置されてもよく、または任意の他の形状または輪郭を有してもよい。
【0076】
また、強化繊維素子の断面形状の混合が使用されてもよい。強化繊維素子の関連する断面形状は、実際には、鈍い、トリミングされた、および丸い端部を有する。断面積は、繊維突起に沿って変化してもよく、例えば、連続堆積プロセスの間、強化繊維素子の引き延ばし比を変化させることにより、堆積された繊維質量が変化する。円形または楕円形の断面が望ましい。強化繊維素子の断面形状は、ベースフィルムへのそれらの配置の前後で変化してもよい。他の実施形態では、繊維突起の断面形状は、円形、正方形、楕円形、長方形、またはレンズ状である。
【0077】
断面形状は、繊維突起の全長にわたって変化してもよい。強化繊維素子の処理は、最終製品に追加の特性を提供できる。
【0078】
本発明の強化伸縮性フィルムは、ベースフィルムを有し、これは、押出成形された単層または多層の伸張性フィルム、あるいは予備伸張性フィルムであることが好ましい。本発明の熱可塑性フィルムは、繊維素子で強化され、これは、フィルムに設置され、一旦設置されると、繊維突起を形成する。その結果、繊維突起の調整可能な特性を介して、引張強度、破断伸び、引き裂き抵抗、摩擦係数、および1平方メートル当たりの重量のような、制御可能な特性が得られる。そのような強化熱可塑性フィルムは、パレットおよび食品包装、製品統合、干し草の梱包およびバリアフィルム、ならびにマルチング(mulching)のような農業用途に理想的に適する。前記熱可塑性フィルムは、いかなる衣料品または使い捨て衣料品用途にも適用されないことが好ましい。
【0079】
ベースフィルムおよび強化繊維素子は、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、最も好ましくは少なくとも200%だけ、予備伸張されてもよい。
【0080】
ベースフィルムは、穴あきフィルムであっても、非穴あきフィルムであってもよい。ベースフィルムの外側縁は、縁取りされても、されていなくてもよい。
【0081】
ベースフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブチル-1-エン、ポリ-4-メチルペント-1-エン、ポリイソプレン、ポリブタジエンおよび/またはそれらの混合物および共重合体を有してもよい。ベースフィルムは、エチレン系のポリマーを有することが好ましい。
【0082】
前記ベースフィルムは、弾性不織布またはスパン結合タイプではないことが好ましい。
【0083】
ベースフィルムが多層フィルムである場合、これは、多層の対称な、例えば、ABCBA構造、または非対称な、例えば、ABCDE構造であってもよく、これらは、国際公開第WO2011/026954号にさらに記載されている。
【0084】
本発明では、ベースフィルムは、ABC、ABA、ABCBAまたはABCDE構造を有してもよく、ここで、ABCDEは、異なる組成および/または厚さを有する層であってもよいが、層Dは、層Bと同じであってもよい。
【0085】
上記ABC層構造において、層Aはスリップ層であることが好ましく、層Bはコア層であることが好ましく、層Cは粘着層であることが好ましい。上記ABCDE層構造において、層Aはスリップ層であることが好ましく、層Bは中間層であることが好ましく、層Cはコア層であることが好ましく、層Dは中間層であり、層Eは粘着層であることが好ましい。
【0086】
ベースフィルムのコア層は、ポリプロピレンおよび他のポリマーを含んでもよい。
【0087】
本願で使用される「異なる種類の層」とは、厚さ、密度、溶融指数、化学組成、ポリマー種、主要溶融ピーク、結晶化温度などを含む群から選択される層の、1つ以上の異なる化学的または物理的特徴を示すために使用される。
【0088】
好ましくは、本発明の強化熱可塑性フィルムは、押出成形された多層伸縮性フィルムまたは予備伸張性フィルムであるベースフィルムを含む。ベースフィルムは、3+2nの層を有してもよく、ここでnは、0、1、2、3、4などのような自然数である。ベースフィルムは、3、5、7、9、11、15、17、19、21、23、25または27の層数、より好ましくは3、5または7層、より好ましくは3または5層、最も好ましくは5層を有することが好ましい。
【0089】
好ましくは、ベースフィルムは、対称(3層フィルムの場合、ABA、5層フィルムの場合、ABCBA)構造を有し、ここでA、BおよびCの各々は、多層フィルム中の異なる種類の層を表す。多層のスタックは、中央層に対して対称であることが好ましい。
【0090】
さらに好ましいベースフィルムは、3層の非対称構造(例えば、ABC)を有するものであり、ここでA、BおよびCの各々は、フィルム中の異なる種類の層を表す。
【0091】
さらに好ましいベースフィルムは、5層の非対称構造(例えば、ABCDE)を有するものであり、ここでA、B、C、DおよびEの各々は、フィルム中の異なる種類の層を表す。ABCDE構造では、層BおよびDは、同じ組成および/または同じ厚さで構成されてもよい。
【0092】
上記のABCDE層構造において、B、CおよびDは、ナノ層を含むことができる。ナノ層を製造する技術は、米国特許出願第US2009/0104424号に詳細に記載されている。
【0093】
好ましくは、本発明の繊維(本願に開示された任意の実施形態または態様において使用
され得る)は、共押出繊維を有し、またはこれから構成される。本発明の繊維は、シェル/コア構造を有する二成分繊維であることが好ましく、これはさらに国際公開第WO2011/026954号に記載されている。
【0094】
堆積された繊維素子は、ベースフィルムの粘着特性を補償するため、滑り特性を有してもよい。一実施形態では、粘着特性は、材料がそれ自身と接触する際の材料のつなぎ止め性を示す。繊維素子の滑り特性は、ロールからのフィルムの巻き解きをより容易にする。
【0095】
好ましくは、前記ベースフィルムの幅は1500mm以下、好ましくは1000mm以下、より好ましくは750mm以下、最も好ましくは500mm以下である。
【0096】
好ましくは、本発明の強化熱可塑性フィルムは、押出成形された多層伸縮性フィルムまたは予備伸張性フィルムであるベースフィルムを有する。これらは、我々の以前の国際公開第WO2011/026954号にさらに記載されている。強化繊維素子およびベースフィルム材料は、ポリマーまたはコポリマー、好ましくは合成ポリマーを含んでもよい。好ましくは、ポリマーは、ポリオレフィンまたは非ポリオレフィンであり、例えば、ポリアミドまたはポリエステルである。異なるポリオレフィンの混合物、またはポリオレフィンと非ポリオレフィンの混合物も使用できる。一実施形態では、ベースフィルムおよび/または繊維素子は、ポリプロピレンを含む。
【0097】
ベースフィルムおよび繊維素子が同じ化学材料で構成される場合、ベースフィルムと繊維素子の物理的特性は、異なってもよい。
【0098】
本発明のフィルムは、キャストおよびブロー押出法により製造されてもよく、これは、国際公開第WO2011/026954号にさらに記載されている。
【0099】
強化繊維素子は、熱融合を介してベースフィルム上に接合されることが好ましい。通常、堆積の間、強化繊維素子は、室温よりも高く、それらの結晶化範囲に近い温度にされ、すなわち、好ましくは、それらの結晶化点より1から100℃高く、より好ましくは、1から80℃高く、より好ましくは、10から60℃高く、より好ましくは、20から50℃高くされる。結晶化点は、10℃/分の加熱速度での示差走査熱量測定により、決定することができる。
【0100】
本プロセスの間、ベースフィルム材料および強化繊維素子材料は、分子レベルで接続を形成し、純粋なベースフィルム材料と純粋な強化繊維素子材料の間の界面で相互浸透される。従って、ベースフィルム上の強化繊維素子が設けられた位置では、純粋な強化繊維素子材料と純粋なベースフィルム材料の間に、不連続な界面が形成される。この界面に沿って、純粋なベースフィルム材料のドメインと純粋な強化繊維素子材料のドメインの間に、ベースフィルム材料および繊維素子材料を有する材料混合物の1つ以上のドメインが存在し、純粋な強化繊維素子材料のドメインおよび純粋なベースフィルム材料のドメインが部分的に分離される。前記強化繊維素子がベースフィルムに導入され、ベースフィルムの表面が部分的にウェットとなり、前記ベースフィルム材料とインターロックまたは相互浸透され、純粋な強化繊維素子材料が純粋なベースフィルム材料に移動される。従って、強化素子とベースフィルムの間の界面は、純粋な繊維素子材料と純粋なベースフィルム材料の間の直接接触を有し、相互混合されたベースフィルム材料と繊維素子材料の1つ以上のドメインにより、中断される。このように、より高い引き裂き抵抗および強度を有するフィルムを得ることができる。さらに、本発明による最適化された繊維フィルムでは、従来のフィルムと比較して、突起がベースフィルムから剥離するリスクが抑制される。
【0101】
ベースフィルムと強化繊維素子が同じ材料で構成される場合、異なる材料の混合物は形成されないことが理解される。ただし、ポリマー鎖の相互浸透は生じる。「純粋なベースフィルム材料」という用語は、ベースフィルムドメイン内の繊維素子材料の重量比が、ドメイン内の強化繊維素子材料の重量比の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満であることを意味する。
【0102】
「純粋な繊維素子材料」という用語は、ベースフィルムドメイン内のベースフィルム材料の重量比が、ドメイン内のベースフィルム材料の重量比の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満であることを意味する。
【0103】
ベースフィルムへの強化素子(例えばストリップ)の接合の間、熱の単純な印加では、例えば温度が不十分な場合、または熱に対する暴露時間が不十分である場合、引き裂き伝播に耐える上で十分な相互混合ドメインは、自動的に形成されない。それ自体が熱源として作用する強化用繊維または強化用繊維状素子を、ベースフィルム上に堆積することにより、前記強化繊維素子材料は、それらが前記ベースフィルム上に配置された際に、溶融物から結晶化し、これにより、十分に強力な相互混合ドメインを得るために必要な熱が確実に得られる。好ましくは、強化繊維素子は、ベースフィルム上に直接押出される。「直接押出される」という用語は、繊維が、それらの押出から30分以内、好ましくは20分以内、より好ましくは2分以内、より好ましくは1分以内、より好ましくは10秒以内、より好ましくは5秒以内、より好ましくは1秒以内に、ベースフィルム上に配置されることを意味する。本プロセスは、連続的であることが好ましい。
【0104】
一実施形態では、繊維突起は、ベースフィルム上でアニールされる。
【0105】
本発明の強化熱可塑性フィルムを製造する方法は、好ましくは、約1:1から1.5:1(高さに対する幅の比)の強化繊維素子を薄いベースフィルム上に直接押出する工程を有し、ここで、前記ベースフィルムは、押出または直接押出されてもよい。前記強化繊維素子は、好ましくは、ベースフィルム上で結晶化され、好ましくは、それらの高さに対する幅の比が維持される。前記薄いベースフィルムの平均厚さ寸法は、好ましくは、前記繊維素子の平均高さ寸法よりも小さい。堆積の際に熱可塑性フィルム中間体が製造され、これがさらに冷却され、本発明の熱可塑性フィルムが供給される。この場合、前記熱可塑性フィルムは、前記熱可塑性フィルム中間体と同様の外形寸法を有する。強化繊維素子の高さに対する幅の比が変化するように、強化繊維素子は、好ましくはベースフィルムとの接触直後に、または最も好ましくは、ベースフィルムとの接触時に、プレスされる。その場合、製造された熱可塑性フィルム中間体は、本発明の前記熱可塑性フィルムとは外形寸法が異なる。
【0106】
本発明では、繊維がその結晶化点より理想的には1から100℃高い温度、より好ましくは1から80℃高い温度、より好ましくは10から60℃高い温度、より好ましくは20から50℃高い温度で、強化繊維素子の配置が実施される。強化繊維自体が熱素子であり、これは、ベースフィルムの表面に熱を直接供給し、その結果、迅速、効率的で、ポイント的で制御可能な、時間接触に制限されない、熱送達が可能となる。従って、繊維素子素子とベースフィルムの界面で、相互混合が起こり、その結果、強化繊維素子材料およびベースフィルム材料を有する、界面の全長に沿っては延在しない、混合材料の1つ以上のドメインが生じる。
【0107】
ベースフィルムと強化繊維素子のこの接合機構は、強化繊維素子とベースフィルムの間に十分な接続を提供し、素子とフィルムの間に、ストリップ、バンドまたはテープのような広い強化素子に対して通常必要とされる、大きな接触領域を必要としない。繊維突起は、ストリップのような内部応力を有しないため、ストリップに比べて、繊維突起では、別の局所的な剥離は生じ難くなる。ストリップが収縮すると、これらはベースフィルムから剥離するが、これは繊維突起では生じない。
【0108】
強化繊維素子とベースフィルムとの接合機構は、界面混合が生じた際に、強化繊維素子がベースフィルムに埋設される必要がないという、追加の利点を有する。また、本発明では、必ずしも、素子の断面にわたって連続的な界面接触が確保される必要はない。
【0109】
熱可塑性ベースフィルムは、押出成形され、さらに、ブロープロセスまたは成形プロセスによりに処理されてもよい。堆積は、ベースフィルム上で実施されてもよい。ベースフィルムでは、溶融状態、少なくとも一部が溶融状態、または固体状態であることが好ましい。
【0110】
ベースフィルム上に堆積した後、強化繊維素子に圧力を印加して、ベースフィルムに対する繊維突起の固定をより高めてもよい。また、加圧プロセスを用いて、繊維突起の断面形状および界面混合の程度を定めてもよい。これは、対応する断面を形成するプレス手段を用いて達成されてもよい。圧力は、堆積の時点で繊維突起に圧力を加えることができるシリンダにより、印加されてもよい。前記シリンダは、前記ベースフィルムからのその固定位置を介して、繊維突起の高さを調整してもよい。
【0111】
本発明で使用されるベースフィルムは、通常、実質的に薄膜であり、その平均厚さは、好ましくは4μmから50μm、より好ましくは5μmから30μm、より好ましくは6μmから30μm、最も好ましくは6μmから25μm、さらにより好ましくは10μmから25μmの範囲である。一実施形態では、ベースフィルムの厚さは、15μmから45μmの範囲である。
【0112】
ある実施態様では、前記ベースフィルムの機械方向に沿ったフィルムの横方向の端部は、縁取りされる。
【0113】
強化繊維素子、従って繊維突起、および/またはベースフィルムは、添加剤を含有してもよい。添加剤の使用は、強化繊維素子、従って繊維突起、または完全な強化熱可塑性フィルムに、特定の特性を付与することができる。強化繊維素子および繊維突起、ならびに/またはベースフィルム中の添加剤は、強化フィラー、酸化防止剤、UV安定化剤、抗菌物質、着色化合物、粘着防止剤、粘着付与剤、腐食防止剤、湿度トラップ剤、熱履歴インジケータ、静電気防止剤、植物成長促進剤および/または除草剤、またはそれらの混合物を含んでもよい。好適な揮発性腐食防止剤は、無機窒化物、炭酸塩、モリブデン酸塩、アミン、トリアゾールまたはそれらの混合物のような化合物であってもよい。ある実施態様では、添加剤は、0-D、1-Dもしくは2-D形状の強化フィラー、またはそれらの任意の組み合わせを含む。ある実施形態では、好適な相溶化剤が添加剤に含まれる。
【0114】
ある実施形態では、添加剤は、強化繊維素子、従って繊維突起にのみ存在してもよい。
【0115】
上述の添加剤は、水分および/または酸素に対するバリアとして作用してもよい。
【0116】
前述のように、本発明の強化伸縮性フィルムは、例えば、包装、梱包、サイレージ、または鋭利な端部を有する植物のような物品の統合に特に適する。また、これは、マルチング、例えば、耕地での雑草の抑制、作物の生産や景観における水の節約にも適する。本発明の強化伸縮性フィルムは、例えばラッピング梱包のような、サイレージ用途におけるネット置換としての使用に特に適する。
【0117】
ラッピング梱包の場合、第1のステップは、通常、数層のサイレージネットを有するベーラーにより、ベールを包装するステップを有する。ただし、サイレージネットを使用する代わりに、ベールは、サイレージネット交換で包装することもできる。本発明のフィルムは、サイレージネットの置換として使用することができる。
【0118】
第2のステップでは、湿気、酸素、および紫外線に対するバリアを提供するため、ベールの周囲に多数のフィルムの重なり合った巻き付けを形成することにより、ベールは、サイレージ伸縮性フィルムで完全に覆われる。ベールの包装は、特定のサイズおよび形状の仕様を満たし、ベール内容物の範囲を収容する、各種パターンで配置することができる。これらのパターンは、当業者には明らかである。
【0119】
従って、本発明のフィルムは、サイレージネットの置換として、およびサイレージ伸縮性フィルムとして、機能することができ、例えば、梱包用途での使用に適する。
【0120】
通常、サイレージフィルムの厚さは、15μmから45μm、好ましくは約25μmの範囲である。サイレージフィルムの幅は、通常、750mmまたは500mmである。一実施形態では、本発明のフィルムがサイレージフィルムとして使用される場合、これは、15μmから45μmの範囲、好ましくは約25μmの厚さを有する。
【0121】
通常、サイレージフィルムは、ラッピングプロセスの間に延伸され、フィルムは、50%から80%、好ましくは60%から70%、予備延伸されてもよい。従って、その幅は、一実施形態では、約750mmから約620mm、または約580mmに縮小されてもよい。
【0122】
(具体的な実施形態の詳細な説明)
図1には、強化繊維素子の断面から評価される異なる繊維突起の形状の範囲を示す。ベースフィルム(6)の上部の繊維突起(8)により採用可能な一例の形状の範囲が示されており(1、3、5)、既存の材料と比べて、ベースフィルムとの接触点でのより厳しい勾配が強調されている。押出成形された強化繊維素子は、フィルムの引き裂き抵抗を改善するため、ベースフィルムの上部表面(4)に配置される繊維素子として定められる。繊維突起(8)は、コンタクト平面から突出するマス塊として定められ、これはベースフィルムの上部表面(4)の上部に、押出強化繊維素子の圧力下での配置により生じる。
【0123】
形状1は、90゜に近い突起角度を有する正方形状の繊維突起である。形状3は、突起角度が90゜未満の楕円形状の繊維突起である。形状5は、突起角度が90゜を超えるピラミッド状の繊維突起である。
【0124】
押出ベースフィルム(6)は、押出強化繊維素子が配置されるベースとして使用されるフィルムとして定められ、繊維突起(8)および純粋な繊維素子材料のドメインの支持体として作用する。ベースフィルム(6)は、上部表面(4)および底部表面(2)を有する。
【0125】
図2には、本発明によるフィルムが製造される方法を示す(A)。押出強化繊維素子(14)がベースフィルム(6)と接触され、その上部表面(4)において繊維突起に圧縮され、界面が定められる。ベースフィルム(6)を通る断面において、界面の外側端部は、外側コンタクト端部点C1(10)およびC2(12)により定められる。純粋な強化繊維素子材料(PD)および純粋なベースフィルム材料(BD)により、ドメインが形成され、それらの間に不連続な界面が存在する。界面の外側端部は、コンタクト端部点C1(10)、C2(12)により定められる。点C1、C2は、不連続界面、ならびにフィルム(6)および下側ベースフィルム表面(2)を通過する垂直断面とともに、ベースフィルムドメインを形成する。
【0126】
図2には、本発明にはよらない実施形態(B)を示す。ドメインは、純粋な繊維突起(8)と純粋なベースフィルムの間に、強化繊維素子材料とベースフィルム材料の間の混合により形成された、連続的な界面混合部(16)を有する。
【0127】
また、図2には、本発明による実施形態を示す。純粋なベースフィルム材料のドメインと純粋な強化繊維素子材料のドメインの間に形成された界面にわたって、不連続界面混合(C)が存在する。繊維突起(8)は、最大幅Wprot.max(18)および最大高さHprot.max(20)を有するコンタクト平面(22)の上部の素子材料として定められる。コンタクト平面(22)は、繊維突起(8)の下側の外側端部コンタクト点C1(10)とC2(12)の間に形成された平面である。純粋なベースフィルム材料と純粋な強化繊維素子材料との間に、一部直接的な相互作用を含む不連続な界面があり、これは、ベースフィルム材料と強化繊維素子材料が混在するいくつかのドメインによって中断される。
【0128】
図2Cには、突起角度PA1およびPA2を示す。突起角度は、0゜から180゜の範囲であり、好ましくは10゜から170゜の範囲であり、より好ましくは40゜から140゜の範囲であり、最も好ましくは60゜から120゜の範囲である。特定の好適実施形態では、繊維突起角度は、約90゜である。
【0129】
図3Aには、異なる処理条件下、すなわち、低圧下(本発明による繊維突起を製造するために使用される)、中圧下、および高圧下で製造されたベースフィルム上の3つの繊維突起を示す。
【0130】
図3Bには、異なる処理条件下、すなわち、低圧下(D)(本発明による繊維突起を製造するために使用される)、中圧下(E)および高圧下(F)で製造された、ベースフィルム上の3つの繊維突起の概略図を示す。
【0131】
繊維突起(18)の最大幅(Wprot.max)は、コンタクト平面に平行に延在する、一旦形成された繊維突起の最大幅として定められる。
【0132】
繊維突起の最大高さ(20)Hprot.maxは、繊維突起の最高点から、コンタクト平面(22)から垂直に延在する、一旦形成された繊維突起の最大高さとして定められる。
【0133】
外側端部コンタクト点C1(10)およびC2(12)は、純粋なベースフィルム材料のドメインと純粋な強化繊維素子材料のドメインの間に形成された界面の2つの最も外側の点として定められ、強化繊維素子は、ベースフィルムの表面と接触する。
【0134】
コンタクト平面(22)は、繊維突起に対して横方向に延在する、外側端部コンタクト点C1(10)とC2(12)の間に形成される平面として定められ、これを用いて、突起角度、最大高さ、および最大幅が計算され、定められる。
【0135】
界面(24)は、純粋なベースフィルム材料のドメインと、繊維突起を形成する純粋な強化繊維素子材料のドメインとの間に形成される界面として定められ、押出成形された純粋な強化繊維素子材料と押出成形された純粋なベースフィルム材料が出会い、相互作用する位置を含む。
【0136】
2つの突起角度(PA1、PA2)は、φ1、φ2の補助角として定められる(すなわち、φ1、φ2に加算される角度は、それぞれ、180°に等しくなる)。
【0137】
角度φ1、φ2は、繊維突起の一方の側の最大水平延伸点の間に引かれた接線と、C1(10)、C2(12)の間に形成される角度として定められ、各接線は、C1(10)、C2(12)のいずれかでコンタクト平面(22)と交差し、各接線は、繊維突起の水平表面と1回だけ接触する。
【0138】
図4には、繊維突起とそのドメインの詳細図を示す。界面(24)は、ベースフィルム(28)と繊維突起(26)ドメインとの間に形成される界面として定められる。押成形された純粋な繊維素子材料と純粋なベースフィルム材料が接触し、相互作用し、相互混合ドメイン(16)により中断断された、全ての点を含む。
【0139】
突起ドメインPD(26)は、(ベースフィルム材料のない)純粋な強化繊維素子材料を含む突起の領域である。
【0140】
ベースフィルムドメインBD (28)は、純粋なベースフィルム材料の領域にあり、これはPDの下側に認められてもよい。
【0141】
界面は、ベースフィルム材料と強化繊維素子材料の相互混合材料の領域である1つ以上のドメイン(16)により中断され、そうでなければ「ID」と称される。PDとBDの間の界面は、1つ以上のIDにより、部分的に中断される。各ID(16)の周囲は、2つの新しい界面を形成し、一つは、BDとIDの間であり、別の方は、PDとIDの間にあり、これらは、IDとBD、およびIDとPDの間に、界面相互作用を形成する(3つの部分PD-ID-BDの相互作用につながる)。
【0142】
また、BDとPDの間に形成される界面の外側には、ベースフィルム材料と強化繊維素子材料の相互混合材料の領域が存在してもよい。例えば、IDは、PD (30)および/またはBD(32)に完全に含まれてもよく、従って、その周囲は、それぞれ、PD(26)またはBD(28)により、完全に囲まれてもよい。純粋な強化繊維素子材料(30)または純粋なベースフィルム材料(32)により完全に囲まれた、相互混合ドメインのこれらの例は、純粋な繊維素子材料と純粋なベースフィルム材料の間の界面での相互作用に寄与しない。ベースフィルム(32)または元素子材料(30)のいずれかに完全に封止された混合材料のこれらの領域は、介在物とも称される。
【0143】
断面積は、C1(10)およびC2(12)を通過しベースフィルムを横断する、コンタクト平面に垂直な平面により定められる。これは、繊維突起の全長に沿って見た際に、強化繊維素子の内部を視認できる領域である。
【0144】
図5A乃至図5Cには、繊維突起の最大高さの関数としての、強化フィルムの破断時の応力、比エネルギー、および破断時の歪みを示す。グラフ上のX軸のいずれの端でも、最適な特性が得られることは明らかである。本発明のある強化熱可塑性フィルムは、x軸の右側に存在し、すなわち、従来技術と比べて、より大きな繊維突起の最大高さを有することがわかる。
【0145】
図6A乃至図6Cには、強化フィルムの破断時の応力、比エネルギー、および破断時の歪みの同様の分布を示す。繊維突起の最大幅の関数として示されているものの、実質的に図5の分布と同様である。この例では、本発明の一部の強化熱可塑性フィルムは、x軸の左側に向かって分布し、すなわち、従来技術と比べて、より小さい最大幅を有することがわかる。
【0146】
(例)
以下の非限定的な例には、本発明のいくつかの強化伸縮性フィルムを示す。強化伸縮性フィルムの各試料は、上部に1つの長手方向繊維突起を有するように提供され得る。あるいは、多くの繊維突起を有する、幅広の強化伸縮性フィルムが製造され、このフィルムから試料が切り出される。
【0147】
繊維突起の突起角度、最大高さおよび最大幅は、好適な顕微鏡を用いた測定により、定めることができる。
【0148】
(例1)
本発明の強化繊維フィルムは、幅500mm、厚さ14μmのベースフィルム上に、直径280μmの強化繊維素子を配置することにより製造される。ベースフィルムおよび繊維強化素子は、同じ密度、0.920g/cm3を有する。前記フィルムの幅15mmのサンプルは、引張応力方向に平行な1つの連続した繊維突起を有し、サンプル幅の中央部分にできるだけ近接して配置される。グリップ対グリップ面積(60mm)に等しい長さのサンプルの重量は、15mgである。繊維突起は、最大幅Wprot.max=225μmであり、最大高さHprot.max=177μmであり、Wprot.maxに対するHprot.maxの比は、0.79である。突起角度PA1、PA2は、それぞて、51゜および60゜である。
【0149】
(例2)
本発明の強化繊維フィルムは、、幅500mm、厚さ15μmのベースフィルム上に、直径311μmの強化繊維素子を配置することにより製造される。ベースフィルムおよび繊維強化素子は、同じ密度0.920g/cm3を有する。前記フィルムの幅15mmのサンプルは、機械方向において、フィルムの表面に平行な1つの連続した繊維突起を有し、サンプル幅の中央部分にできるだけ近接して配置される。グリップ対グリップ面積(60mm)に等しい長さのサンプルの重量は、17mgである。繊維突起は、最大幅Wprot.max=263μmであり、最大高さHprot.max=158μmであり、Wprot.maxに対するHprot.maxの比は、0.60である。突起角度PA1、PA2は、それぞれ82°および80°である。
【0150】
(例3)
本発明の強化繊維フィルムは、幅500mm、厚さ15μmのベースフィルム上に直径311μmの強化繊維素子を配置することにより製造される。ベースフィルムおよび繊維強化素子は、同じ密度0.920g/cm3を有する。前記フィルムの15mm幅のサンプルは、機械方向において1つの平行で連続した繊維の突起を有し、サンプル幅の中央部分にできるだけ近接して配置される。グリップ対グリップ面積に等しい全長のサンプルの重量は、(60mm)17mgである。繊維突起の最大幅Wprot.max=329μmであり、最大平均高さHprot.max=158μmであり、Wprot.maxに対するHprot.maxの比は、0.48である。突起角度PA1、PA2は、それぞれ、99゜および108゜である。
【0151】
(例4)
本発明の強化繊維フィルムは、幅500mm、厚さ16μmのベースフィルム上に、直径286μmの強化繊維素子を配置することにより製造される。ベースフィルムおよび繊維強化素子は、同じ密度0.920g/cm3を有する。前記フィルムの15mm幅のサンプルは、機械方向において1つの平行で連続した繊維の突起を有し、サンプル幅の中央部分にできるだけ近接して配置される。グリップ対グリップ面積に等しい全長のサンプルの重量は、(60mm)17mgである。繊維突起の最大幅Wprot.max=285μmであり、最大高さHprot.max=156μmであり、Wprot.maxに対するHprot.maxの比は、0.55である。突起角度PA1およびPA2は、それぞれ、73゜および72゜である。
【0152】
(例5)
本発明の強化繊維フィルムは、幅500mm、厚さ14μmのベースフィルム上に、直径250μmの強化繊維素子を配置することにより製造される。ベースフィルムおよび繊維強化素子は、同じ密度0.920g/cm3を有する。前記フィルムの15mm幅のサンプルは、機械方向において1つの平行で連続した繊維の突起を有し、サンプル幅の中央部分にできるだけ近接して配置される。グリップ対グリップ領域に等しい全長のサンプルの重量は、(60mm)14mgである。繊維突起の最大幅Wprot.max=302μmであり、最大平均高さHprot.max=119μmであり、Wprot.maxに対するHprot.maxの比は、0.39である。突起角度PA1およびPA2は、それぞれ67゜および107゜である。
【0153】
(例6)
本発明の強化繊維フィルムは、幅500mm、厚さ14μmのベースフィルム上に、直径259μmの強化繊維素子を配置することにより製造される。ベースフィルムおよび繊維強化素子は、同じ密度0.920g/cm3を有する。前記フィルムの15mm幅のサンプルは、機械方向において1つの平行で連続した繊維の突起を有し、サンプル幅の中央部分にできるだけ近接して配置される。グリップ対グリップ面積に等しい全長のサンプルの重量は、(60mm)15mgである。繊維突起の最大幅Wprot.max=281μmであり、最大高さHprot.max=112μmであり、Wprot.maxに対するHprot.maxの比は、0.40である。突起角度PA1およびPA2は、それぞれ102゜および98゜である。
【0154】
(例7)
本発明の強化繊維膜は、幅500mm、厚さ15μmのベースフィルム上に、平均直径291μmの強化繊維素子を配置することにより製造される。ベースフィルムと繊維強化素子は、同じ密度0.920g/cm3を有する。前記フィルムの15mm幅のサンプルは、機械方向において1つの平行で連続した繊維の突起を有し、サンプル幅の中央部分にできるだけ近接して配置される。グリップ対グリップ面積に等しい長さの試料の重量は、(60mm)16mgである。繊維突起の最大幅Wprot.max=483μmであり、最大高さHprot.max=101μmであり、Wprot.maxに対するHprot.maxの比は0.21である。突起角度PA1およびPA2は、それぞれ149゜および142゜である。
【0155】
表1には、本発明の前述の強化伸縮性フィルムの例を比較して示す。
【0156】
【表1】

(データ解析)
得られたデータは、相対寸法(特に、繊維突起の最大高さ)が、強化熱可塑性フィルムの得られた特性を調整する役割を有することを示す。繊維突起の最大高さを大きくすると、引き裂きに対するバリアが増大するが、同時に繊維突起の下側に1つ以上の別個の相互混合ドメインが存在することにより、構造化された支持体が提供され、引き裂き伝播が抑制される。
【0157】
一方、繊維突起の最大高さを小さくすると、これにより、繊維突起の下側、およびベースフィルムドメインと繊維突起ドメインの間に形成される界面に沿って、相互混合ドメインに占められる面積が増加し、臨界最大高さに達する。これを超えると、物理的および機械的特性(例えば、破断エネルギー、伸びおよび強度)が再度改善される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
【国際調査報告】