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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-22
(54)【発明の名称】硬化性2液型接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/04 20060101AFI20230815BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20230815BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230815BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230815BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20230815BHJP
   C08F 4/40 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J4/02
C09J11/04
C09J11/06
C09J5/00
C08F4/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504464
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2021070278
(87)【国際公開番号】W WO2022018087
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】20305840.9
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガーラ, パッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ブル, マルタ
(72)【発明者】
【氏名】ソレラ センドラ, ホルディ
(72)【発明者】
【氏名】エスクリバ プラ, マルク
【テーマコード(参考)】
4J015
4J040
【Fターム(参考)】
4J015CA02
4J015CA04
4J015CA15
4J040FA121
4J040HA316
4J040HB23
4J040JA13
4J040JB05
4J040KA11
4J040KA14
4J040KA31
4J040MA10
4J040MB05
4J040MB09
4J040MB11
4J040NA05
4J040PB03
(57)【要約】
本発明は、第1の部分であって、1つ以上のシアノアクリレートモノマー、1つ以上の(メタ)アクリレートモノマー、過化合物、ならびに場合により粘度およびレオロジーを制御するための添加剤を含む、第1の部分と、第2の部分であって、非反応性希釈剤および遷移金属触媒、ならびに場合によりシアノアクリレートのための電子豊富な開始剤を含む、第2の部分とを含む、硬化性2液型接着剤組成物に関する。本発明はまた、前記2液型硬化性組成物を含むシリンジまたはカートリッジ、基材を結合するための該組成物の使用、基材内または基材間のくぼみ、亀裂、または穴を埋めるための該組成物の使用、前記組成物を使用して基材を結合するための方法、および前記組成物を使用して基材内または基材間のくぼみ、亀裂、または穴を埋めるための修復方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2液型硬化性組成物であって、
a)第1の部分(部分A)であって、
i.少なくとも50重量%の1つ以上のシアノアクリレートモノマー、
ii.少なくとも1重量%の1つ以上の(メタ)アクリル系モノマー、および
iii.少なくとも1重量%の過化合物
を含み、ここで、重量%は、組成物の第1の部分の総重量に基づく、第1の部分と、
b)第2の部分(部分B)であって、
i.少なくとも50重量%の非反応性希釈剤、および
ii.遷移金属の含有量で表して0.001重量%~2重量%の遷移金属触媒
を含み、ここで、重量%は、組成物の第2の部分の総重量に基づく、第2の部分と
を含むことを特徴とし、
第1の部分と第2の部分との体積比が4:1~10:1の範囲であり、
ただし、第2の部分がビニル系モノマーを含まない、2液型硬化性組成物。
【請求項2】
2液型硬化性組成物の部分Aの(メタ)アクリル系モノマーが、
i.一般式(III)の化合物
i.CH=CR(CO) (III)
(式中、RはメチルまたはH(好ましくはH)を表し、Rは水素原子、C~C直鎖もしくは分岐アルキル、C~C直鎖もしくは分岐アルコキシアルキル、フルフリル、またはイソボルニル基である)、
ii.多官能(メタ)アクリル酸エステル、および
iii.それらの混合物
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項3】
組成物の第1の部分が、安定化剤、接着増進剤、促進剤、チキソトロープ剤、増粘剤、強化剤、可塑剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、およびそれらの混合物から選択される1つ以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項4】
組成物の第1の部分が、ラジカル安定化剤、酸安定化剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の安定化剤を含むことを特徴とする、請求項3に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項5】
非反応性希釈剤が可塑剤であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項6】
遷移金属触媒が遷移金属塩であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項7】
遷移金属塩が、Cu(ACN)BF、Cu(ACN)PF、Cu(BF、酢酸Cu(II)、オクタン酸CU(II)、安息香酸Cu(II)、塩素酸Cu(II)、炭酸Cu(II)、アセチルアセトネートCu(II)、トリフルオロメタンスルホン酸Cu(I)、硫酸Cu(II)、トリフレートFe(II)、フェロセン、テトラフルオロホウ酸(tetrafluorobotare)Fe(II)、MnCl0、ナフテン酸Co、テトラフルオロホウ酸Coから選択されることを特徴とする、請求項6に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項8】
組成物の第2の部分が、シアノアクリレートのための電子豊富な開始種を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項9】
2液型硬化性組成物の部分Aの(メタ)アクリル系モノマーが、
・一般式(III)の化合物
CH=CR(CO) (III)
(式中、RはメチルまたはH(好ましくはH)を表し、Rは水素原子、C~C直鎖もしくは分岐アルキル、C~C直鎖もしくは分岐アルコキシアルキル、フルフリル、またはイソボルニル基である)、
・ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレンオキシドジメタクリレート、トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(PETMA)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-ジアクリレート、ビスフェノールA-ジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールA-ジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA-ジアクリレート、およびそれらの混合物;(メタ)アクリル官能化オリゴマーおよび(メタ)アクリル官能化樹脂、例えば(メタ)アクリル酸エステル末端ポリマー、例えば(メタ)アクリル末端ウレタンポリマーもしくは共重合体、またはいわゆる(メタ)アクリル酸エステル官能化テレケリック、デンドリマー、もしくは超分岐材料からなる群から選択される多官能(メタ)アクリル酸エステル、ならびに
・それらの混合物
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項10】
2液型硬化性組成物の部分Aの(メタ)アクリル系モノマーが、
・一般式(III)の化合物
CH=CR(CO) (III)
(式中、RはメチルまたはH(好ましくはH)を表し、Rは水素原子、C~C直鎖もしくは分岐アルキル、C~C直鎖もしくは分岐アルコキシアルキル、フルフリル、またはイソボルニル基である)、
・ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレンオキシドジメタクリレート、トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(PETMA)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-ジアクリレート、ビスフェノールA-ジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールA-ジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA-ジアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される多官能(メタ)アクリル酸エステル、ならびに
・それらの混合物
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項11】
a)第1の部分(部分A)であって、
i.50重量%~99重量%、好ましくは70重量%~97重量%、より好ましくは85重量%~95重量%の1つ以上のシアノアクリレートモノマー、
ii.少なくとも1重量%の1つ以上の(メタ)アクリル系モノマー、および
iii.少なくとも1重量%の過化合物
を含み、ここで、重量%は、組成物の第1の部分の総重量に基づく、第1の部分と、
b)第2の部分(部分B)であって、
i.50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の非反応性希釈剤、および
ii.遷移金属の含有量で表して0.001重量%~2重量%、好ましくは0.005重量%~0.5重量%、より好ましくは0.01重量%~0.03重量%の遷移金属触媒
を含み、ここで、重量%は、組成物の第2の部分の総重量に基づく、第2の部分と
を含むことを特徴とし、
第1の部分と第2の部分との体積比が4:1~10:1の範囲、好ましくは10:1であり、
ただし、第2の部分がビニル系モノマーを含まない、請求項1に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項12】
a)第1の部分(部分A)であって、
i.少なくとも50重量%、好ましくは50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の1つ以上のシアノアクリレートモノマー、
ii.1重量%~10重量%の1つまたは複数の(メタ)アクリレートモノマー、
iii.1重量%~10重量%の過化合物、
iv.0.001重量%~0.2重量%の1つ以上の安定化剤、
v.2重量%~10重量%の1つ以上のチキソトロープ剤、
vi.2重量%~10重量%の1つ以上の増粘剤
を含み、ここで、重量%は、組成物の第1の部分の総重量に基づく、第1の部分と、
b)第2の部分(部分B)であって、
i.少なくとも50重量%、好ましくは50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の少なくとも1つの非反応性希釈剤、
ii.遷移金属の含有量で表して0.001重量%~2重量%、好ましくは0.005重量%~0.5重量%、より好ましくは0.01重量%~0.03重量%の遷移金属触媒、および
iii.0.1重量%~2重量%の電子豊富な開始剤化合物、
iv.2重量%~15重量%の1つ以上の増粘剤、
v.2重量%~8重量%の1つ以上のチキソトロープ剤
を含み、ここで、重量%は、組成物の第2の部分の総重量に基づく、第2の部分と
を含むことを特徴とし、
第1の部分と第2の部分との体積比が4:1~10:1の範囲、好ましくは10:1であり、
ただし、第2の部分がビニル系モノマーを含まない、請求項1に記載の2液型硬化性組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の2液型硬化性シアノアクリレート組成物を含む、シリンジまたはカートリッジ。
【請求項14】
基材を結合するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の2液型硬化性組成物の使用。
【請求項15】
基材内または基材間のくぼみ、亀裂、または穴を埋めるための、請求項1から12のいずれか一項に記載の2液型硬化性組成物の使用。
【請求項16】
基材を結合するための方法であって、
1)請求項1から12のいずれか一項に記載の2液型硬化性組成物を混合する工程と、
2)工程1)の混合物を基材のうち少なくとも1つに塗布する工程と、
3)重ね合わせた基材の間に接着結合が形成されるのに十分な時間にわたって基材を互いに重ね合わせる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
基材内または基材間のくぼみ、亀裂、または穴を埋めるための修復方法であって、
1)請求項1から12のいずれか一項に記載の2液型硬化性組成物を混合する工程と、
2)工程1)の混合物を基材のくぼみ、亀裂、もしくは穴に、または基材の上部に塗布する工程と、場合により
3)第1の基材の上に第2の基材を組み立てる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアノアクリレートをベースとする2液型硬化性組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
シアノアクリレート(CA)エステルをベースとする接着剤組成物は、例えば瞬間接着剤またはいわゆる「スーパー接着剤」として周知である。これらの組成物は、多くの適用分野で普及しており、消費者、専門の職人、および工業組立業者によって使用されている。これらの組成物は、溶媒を含まず100%反応性材料であり、接着硬化を引き起こすために電磁放射線または熱などのエネルギー刺激を必要とせずに、多くの様々な基材上に強力な接着結合を迅速に形成する能力で知られている。これらの属性は、持続性およびエンドユーザーの利便性の観点から非常に魅力的である。
【0003】
従来の単一成分(1K)CAが硬化または重合する能力は、ほとんどの基材タイプの組み立て過程において、重合過程の開始が、通常の状況下でほとんどの表面上で見られる求核性またはイオン性種、例えば吸収された水、塩、微量の塩基性材料などから生じるという事実に部分的に関連する。金属、合金、セラミック、ゴム、紙、生体組織、皮革、およびプラスチックなどの基材から組み立てられる部品が、間にはさまれる液体シアノアクリレート接着剤の薄層と接触して配置されると、接着剤が固体へと硬化するときに非常に強い接合が生じる。
【0004】
CAが室温で迅速に結合することができる基材タイプの幅広さは、他のいかなる部類の接着剤よりもはるかに優れているが、ある種の基材、例えばいわゆる「低表面エネルギー」基材、例えばポリオレフィンおよび「非粘着性」フッ素化ポリマーは、難題を提起している。この制限を解決するために取り組まれている技術的解決策は、最新技術、例えば米国特許第3,260,637号、米国特許第3,836,377号、米国特許第4,460,758号、米国特許第5,818,325号、米国特許第5,110,392号、米国特許第5,066,743号、米国特許第6,001,213号、米国特許出願公開第2003/0191248号、または米国特許出願公開第2005/0000646号に開示されており、これらの文献において、CA組成物を後で塗布する前に活性化剤を使用することが提案されている。
【0005】
しかしながら、1K接着剤に関連する1つの障害は、いわゆる「硬化貫通容積」(CTV)の欠如に関する。最も効率的な硬化は、表面上に見られる開始種の供給源に最も近いところで起こるため、より厚いボンドラインにおいて、バルク接着剤全体にわたるこの限られた硬化が生じる。
【0006】
CA接着剤を使用する場合、組み立てられる基材間にCTVを得るための代替的でより効率的な手法は、有効な開始剤の供給源として基材表面のみへの依存を回避する手法である。このような手法は、代替的に、液体またはゲル状担体に含まれる特定の活性化剤をバルク反応性CA組成物に直接混合することに依存し、これらの2つの別個の組成物の混合物は、次いで、1つ以上の基材に塗布される。この手法は、活性化剤が適合する担体中で適切な濃度である場合、各基材界面からのみ活性化する場合と比較して、接着剤本体への活性化剤の優れた分布をもたらすことができる。これに関連して、バルク接着剤への成分の混合は、「2液」、「2成分」、または「2K」手法と呼ばれ、CA組成物に関連するこのような手法は、先行技術において周知である。
【0007】
CA接着剤についてのさらなる障害は、これらの接着剤が、一般的な市販の形態では硬化して直鎖ポリマー鎖になる単一の単官能モノマーで主に構成されているため、耐久性が限られていることである。
【0008】
2K手法を説明する場合、接着剤および/またはそのパッケージの別個の成分または部分を、例えば「部分A」および「部分B」と呼ぶことが一般的である。したがって、部分Aが1つの区画またはリザーバーにCA組成物を含む場合、部分Bは、何らかの手段によって2つの部分を混合することから生じる接着剤の物理的特性を、活性化、反応、および/または改変(可塑化、着色、強化など)するように選択された組成物を含み得る。
【0009】
活性化成分をCA組成物に直接均一に混合して、接着剤のバルク全体にわたって同時開始を達成し、それによってCTVの問題に対処するという明らかな利点がある一方で、硬化した接着剤の基本特性は、例えば米国特許出願公開第2011/0196091号に開示されているような改善されたCTV、または例えば米国特許出願公開第2017/0335151号に開示されているようなCTVおよび靭性を除いて、1KのCA接着剤と同様に、直鎖重合単官能CAホモポリマーの特性のみに依然として依存している。このようなポリマーは、多くの目的には十分であるが、対処されているいくつかの欠点により、耐久性に関して依然として制限がある接着剤を生じる。この状況を改善するための試みは、2Kの実施形態において、(メタ)アクリル系モノマーまたはエポキシモノマーとCAとの混合物のいずれかが明確な好ましい優先的な重合機構を有する場合であっても、両方のタイプの使用を組み合わせる。CAは、好ましくは、室温(RT)で電子豊富な開始剤、例えば求核剤、塩基性材料、特に第二級または第三級アミン、ホスフィン、およびハードアニオンまたは双性イオンによって重合するが、アクリル系モノマーは、好ましくはRTでのレドックス・フリーラジカル開始によって重合し、特定のエポキシは、優先的にRTでカチオン重合する。それにもかかわらず、2K手法は、独立して重合されたモノマーの混合物の相互貫入ネットワーク(IPN)から、またはアクリル系の場合には若干の共重合からすら、若干の性能向上を引き出すと解釈することができる。なぜなら、CAも、好ましい機構ではないにしてもラジカル重合に関与することができるからである。このような手法は、例えば国際公開第2013/111036号、国際公開第2020/081750号、国際公開第2020/082060号にアクリル2K混合物について、そして例えば米国特許第8,981,027号にエポキシ2K混合物について先行技術に記載されている。
【0010】
しかしながら、性能の向上は、これらすべての場合において親CAの迅速な結合速度という魅力的な特徴を損なうため、耐久性の向上には結合速度の犠牲を伴う。
【0011】
したがって、特に屋内および屋外の家庭環境で使用するために著しく向上した耐久性をさらに示しながら、CA自体の速度および多基材結合特性を保持し、さらにCTVも保持する接着剤を提供する必要が依然としてある。
【発明の概要】
【0012】
発明の主題
本発明の主題は、2液型硬化性組成物である。
【0013】
本発明の別の態様は、前記2液型硬化性組成物を含むシリンジまたはカートリッジに関する。
【0014】
本発明の別の態様は、基材を結合するための該組成物の使用に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、基材内または基材間のくぼみ、亀裂、または穴を埋めるための該組成物の使用に関する。
【0016】
本発明の別の態様は、前記組成物を使用して基材を結合するための方法である。
【0017】
本発明の別の態様は、前記組成物を使用して、基材内または基材間のくぼみ、亀裂、または穴を埋めるための修復方法である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の目的は、2液型硬化性組成物であって、
a)第1の部分(部分A)であって、
i.少なくとも50重量%の1つ以上のシアノアクリレートモノマー、
ii.少なくとも1重量%の1つ以上の(メタ)アクリル系モノマー、および
iii.少なくとも1重量%の過化合物
を含み、ここで、重量%は、組成物の第1の部分の総重量に基づく、第1の部分と、
b)第2の部分(部分B)であって、
i.少なくとも50重量%の非反応性希釈剤、および
ii.遷移金属の含有量で表して0.001重量%~2重量%の遷移金属触媒
を含み、ここで、重量%は、組成物の第2の部分の総重量に基づく、第2の部分とを含み、
第1の部分と第2の部分との体積比が4:1~10:1の範囲であり、
ただし、第2の部分がビニル系モノマーを含まない、2液型硬化性組成物である。
【0019】
本発明の発明者らは、特に屋内および屋外の家庭環境で使用するために著しく向上した耐久性をさらに示しながら、驚くべきことに速度および多基材結合、硬化貫通容積(CTV)を兼ね備えた2液型硬化性組成物を開発した。
【0020】
本明細書および特許請求の範囲を通して、冠詞「a」または「the」を付した単数形の表現は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、広い意味で複数形への言及も含むと理解される。
【0021】
本発明の文脈において、決定された値に付された「約」という用語は、前記値に対して一般に+/-5%である、ある程度の変動が許容されることを示すものと理解される。
【0022】
本明細書に開示される範囲は、その下限および上限の両方を含む。
【0023】
本明細書を通して使用される「作業寿命」または「作業時間(「WT」)」という用語は、シアノアクリレート組成物に活性化剤を最初に混合した後に活性化組成物を部品に塗布するまでの期間、すなわち活性化生成物が静的混合要素(接着剤成分を一体化するために、また分配ノズルとして使用される)自体に存在するかまたは留まる時間、すなわち分配作業間の時間を指す。活性化剤が混合されると、硬化過程が開始し、接着剤が静的混合要素から分配される間継続する。
【0024】
「オープンタイム」(「OT」)という用語は、すでに活性化され、その後に分配された接着剤が、1つの基材上に液滴、ビーズ、または塊として塗布された場合、第2の基材を一体化するために使用されたときに有効な接着結合を形成することができない程度まで作業可能なままである、すなわち実質的に硬化していない時間を指す。したがって、オープンタイムは、接着剤が活性化されたままであるが、実質的に未硬化であり、部品を有用に結合する準備ができている期間を表す。長いOTを有する接着剤とは、個別の部品上に比較的長時間存在した後であっても、部品が組み立てられる前に早期に硬化しない接着剤を指す。
【0025】
本明細書で使用される「固定時間」(「FT」)という用語は、結合組立体の一端に垂直な向きで重りが吊り下げられている場合に、結合組立体が、対をなす2つの基材上の最小量の接着剤(「小」液滴)を使用して3kgの重りを10秒より長く吊り下げる能力を有するまでにかかる時間として定義される結合速度の尺度である。
【0026】
組成物の第1の部分-部分A
シアノアクリレートモノマー
組成物の第1の部分は、少なくとも50重量%の1つ以上のシアノアクリレートモノマーを含む。
【0027】
本発明の文脈において、シアノアクリレートという用語は、好ましい実施形態では、一般式(I):
で表され得るシアノアクリレートモノマーを含み、式中、Rは、C~C18直鎖または分岐アルキル鎖、C~C20アルコキシアルキル、トリメチルシリル化C~Cアルキル鎖、フルフリル、アリル、シクロヘキシル、および以下の式を有する基:-R-O-C(O)-C(R)=CH(式中、Rは有機部分(好ましくはアルキレン基)であり、RはHまたはCHである)からなる群から選択される。
【0028】
一実施形態において、シアノアクリレートモノマーは、一般式(I)で定義されるアルコキシアルキルシアノアクリレートであり、式中、Rは一般式(II):
(式中、R=CHまたはHであり、R=C~C直鎖または分岐アルキルであり、mは1~3の範囲である)で定義される。
【0029】
シアノアクリレートモノマーは、2-メトキシエチルシアノアクリレート、2-エトキシエチルシアノアクリレート、2-(1-メトキシ)プロピルシアノアクリレート、n-プロピルシアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート、イソプロピルシアノアクリレート、n-ブチルシアノアクリレート、sec-ブチルシアノアクリレート、イソブチルシアノアクリレート、tert-ブチルシアノアクリレート、n-ペンチルシアノアクリレート、1-メチルブチルシアノアクリレート、1-エチルプロピルシアノアクリレート、ネオペンチルシアノアクリレート、n-ヘキシルシアノアクリレート、1-メチルペンチルシアノアクリレート、n-ヘプチルシアノアクリレート、n-オクチルシアノアクリレート、n-ノニルシアノアクリレート、n-デシルシアノアクリレート、n-ウンデシルシアノアクリレート、n-ドデシルシアノアクリレート、シクロヘキシルシアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-プロピルオキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ブトキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ペンチルオキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ヘキシルオキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-プロピルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ブチルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ペンチルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ヘキシルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-ブチルオキシブチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-ブチルオキシブチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ブチルオキシ)-ブチルオキシブチル-2’’-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-プロピルオキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-ブチルオキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-ブチルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシブチル-2’’-シアノアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0030】
好ましくは、シアノアクリレートモノマーは、エチル-2-シアノアクリレート、2-メトキシエチルシアノアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
1つ以上のこのようなシアノアクリレートの組み合わせを使用してもよい。
【0032】
このような構造(I)のモノマーは、例えば米国特許第2,467,927号に記載されている方法などの当業者に公知の方法によって調製することができる。それらのいくつか、例えばエチルシアノアクリレート(ECA)および2-メトキシエチルシアノアクリレート(MECA)は市販されている。
【0033】
本発明の組成物の第1の部分において、シアノアクリレートモノマーの総含有量は、第1の部分の総重量に基づいて、50重量%超、好ましくは70重量%以上、より具体的には80重量%以上であり得る。
【0034】
一実施形態において、本発明の組成物の第1の部分において、シアノアクリレートモノマーの総含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、50重量%~99重量%、好ましくは70重量%~97重量%、より好ましくは85重量%~95重量%の範囲である。
【0035】
(メタ)アクリル系モノマー
組成物の第1の部分は、少なくとも1重量%の1つ以上の(メタ)アクリル系モノマーを含む。
【0036】
本発明の文脈において、2液型硬化性組成物の部分Aの(メタ)アクリル系モノマーは、
・一般式(III)の化合物
CH=CR(CO) (III)
(式中、RはメチルまたはH(好ましくはH)を表し、Rは水素原子、C~C直鎖もしくは分岐アルキル、C~C直鎖もしくは分岐アルコキシアルキル、フルフリル、またはイソボルニル基である)、
・多官能(メタ)アクリル酸エステル、例えばブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレンオキシドジメタクリレート、トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(PETMA)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-ジアクリレート、ビスフェノールA-ジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールA-ジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA-ジアクリレート、およびそれらの混合物、ならびに
・それらの混合物
からなる群から選択され得る。
【0037】
好ましい実施形態では、式(III)の(メタ)アクリル系モノマーは、メトキシエチル(メタ)アクリレートおよびエトキシエチル(メタ)アクリレートの群から選択される。
【0038】
式(III)の(メタ)アクリル系モノマーは、例えば、Sartomer、Arkema、またはBASFなどの周知の供給業者から市販されている。
【0039】
多官能(メタ)アクリル酸エステルは、1つを超える官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えばさらなる(メタ)アクリル酸エステルである。前記多官能(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸およびジオールまたはポリオール、例えばブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、またはそれらのアルコキシ化誘導体に由来するエステルであり得る。
【0040】
前記多官能(メタ)アクリル酸エステルはまた、比較的低分子量のもの、例えば市販のトリエチレンオキシドジメタクリレートもしくはブタンジオールジメタクリレートであり得、またはより高分子量の以下のものであり得る:(メタ)アクリル官能化オリゴマーおよび(メタ)アクリル官能化樹脂、例えば(メタ)アクリル酸エステル末端ポリマー、例えば(メタ)アクリル末端ウレタンポリマーもしくは共重合体、もしくはいわゆる(メタ)アクリル酸エステル官能化テレケリック、デンドリマー、もしくは超分岐材料。これらの例は、例えば、Sartomer社からCN1993CG、CN2608、CN9210、CN2300、およびCN2301の商品名で入手可能である。
【0041】
好ましい多官能(メタ)アクリル酸エステルは、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Sartomer SR833Sとして市販されている)、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer SR454として市販されている);1,4-ブタンジオールジメタクリレート、およびトリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートである。
【0042】
(メタ)アクリル系モノマーの例は、例えば、Sartomer、Arkema、およびBASFなどの周知の供給業者から容易に入手可能である。
【0043】
2液型硬化性組成物の部分Aの(メタ)アクリル系モノマーは、
・一般式(III)の化合物
CH=CR(CO) (III)
(式中、RはメチルまたはH(好ましくはH)を表し、Rは水素原子、C~C直鎖もしくは分岐アルキル、C~C直鎖もしくは分岐アルコキシアルキル、フルフリル、またはイソボルニル基である)、
・多官能(メタ)アクリル酸エステル、例えばブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレンオキシドジメタクリレート、トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(PETMA)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-ジアクリレート、ビスフェノールA-ジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールA-ジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA-ジアクリレート、およびそれらの混合物;(メタ)アクリル官能化オリゴマーおよび(メタ)アクリル官能化樹脂、例えば(メタ)アクリル酸エステル末端ポリマー、例えば(メタ)アクリル末端ウレタンポリマーもしくは共重合体、またはいわゆる(メタ)アクリル酸エステル官能化テレケリック、デンドリマー、もしくは超分岐材料、ならびに
・それらの混合物
からなる群から選択され得る。
【0044】
本発明の組成物の第1の部分において、(メタ)アクリレートモノマーの総含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも3重量%である。好ましい実施形態では、(メタ)アクリレートモノマーの総含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~6重量%に含まれる。
【0045】
過化合物
組成物の第1の部分は、過化合物を含む。
【0046】
過化合物は、構造中にO-O基を含む化合物である。本発明の文脈において、過化合物は、過エステル、過ボレート、過サルフェート、過アセタール、または過酸化物を含む群から選択される。
【0047】
適切な過化合物は、例えば、過安息香酸tert-ブチル(TBPB)または過酸化tert-ブチル(TBP)である。
【0048】
過化合物は、例えばAcros OrganicsまたはSigma-Aldrichなどの会社から市販されている。
【0049】
過化合物の総含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、少なくとも1重量%であり、好ましくは1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、より好ましくは3重量%~7重量%に含まれる。
【0050】
添加剤
組成物の第1の部分は、1つ以上の添加剤をさらに含み得る。添加剤は、例えば、安定化剤、接着増進剤、促進剤、チキソトロープ剤、増粘剤、強化剤、可塑剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、およびそれらの混合物から選択される。
【0051】
好ましい実施形態では、組成物の第1の部分は、安定化剤、チキソトロープ剤、および増粘剤の組み合わせをさらに含む。
【0052】
安定化剤
シアノアクリレートモノマーを含む本発明の組成物の第1の部分は、好ましくは、ラジカル安定化剤、酸安定化剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の安定化剤を含む。好ましい実施形態では、組成物の第1の部分は、1つ以上の安定化剤を含み、より好ましい実施形態では、組成物の第1の部分は、ラジカル安定化剤と酸安定化剤との組み合わせを含む。
【0053】
ラジカル安定化剤は、ラジカル重合阻害剤であり、好ましくは、4-メトキシフェノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキシトルエンブチルエーテル、ヒドロキシアニソールブチルエーテル、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
酸安定化剤はアニオン重合の阻害剤であり、ブレンステッド酸、ルイス酸、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。酸安定化剤は、好ましくは、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フッ化水素酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテレート錯体、フルオロホウ酸、二酸化硫黄、およびそれらの混合物の群から選択される。
【0055】
好ましい実施形態では、組成物の第1の部分は、安定化剤として、メタンスルホン酸、二酸化硫黄、三フッ化ホウ素エーテレート錯体、ヒドロキノンおよびヒドロキノンモノメチルエーテル、ならびに4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)の組み合わせを含む。
【0056】
組成物の第1の部分におけるラジカル安定化剤の含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、0.001重量%~0.2重量%、好ましくは0.01重量%~0.1重量%、より好ましくは0.02重量%~0.06重量%の範囲であり得る。
【0057】
本発明の組成物の第1の部分において、酸安定化剤の含有量は、一般に、0.0003重量%~0.1重量%、好ましくは0.001重量%~0.05重量%、より好ましくは0.0015重量%~0.02重量%の範囲である。
【0058】
接着増進剤
典型的には、接着増進剤は、芳香族カルボン酸または無水物の群から、好ましくはトリメリット酸、無水トリメリット酸、無水シス-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸の二無水物、イタコン酸、無水イタコン酸、3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0059】
組成物の第1の部分における接着増進剤の総含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、0.02重量%~0.1重量%、より好ましくは0.03重量%~0.08重量%の範囲であり得る。
【0060】
促進剤
組成物の第1の部分に適切な促進剤または促進物質は、クラウンエーテル(例えば、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、Alfa Aesar Co)、シクロデキストリン、カリックスアレーン、およびそれらの混合物である。好ましい促進剤は、ジベンゾ-18-クラウン-6である。
【0061】
典型的には、組成物の第1の部分における促進剤の含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、0.01重量%~0.8重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%~0.3重量%の範囲である。
【0062】
チキソトロープ剤
組成物の第1の部分に適切なチキソトロープ剤は、水添ヒマシ油、アミンとの反応によって変性した水添ヒマシ油、ポリアミド、シリカ、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0063】
好ましくは、チキソトロープ剤はシリカであり、ヒュームドシリカ、疎水性ヒュームドシリカ、親水性ヒュームドシリカ、および沈降シリカからなる群から選択され得る。より好ましい実施形態では、チキソトロープ剤は、疎水化ヒュームドシリカ(例えば、Aerosil(登録商標)R202、Evonik)である。
【0064】
典型的には、組成物の第1の部分におけるチキソトロープ剤の総含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、2重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~7重量%の範囲であり得る。
【0065】
増粘剤
組成物の第1の部分に適切な増粘化剤または増粘剤は、その中に含まれるホストモノマーと相溶するものから選択され得る。このような増粘化剤の例としては、ポリ(メタ)アクリレート、アシル化セルロースポリマー、例えば酢酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、部分加水分解ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシレート、ポリカプロラクトン、ポリシアノアクリレート、酢酸ビニル共重合体、例えば塩化ビニルとの共重合体、(メタ)アクリレートとブタジエンおよびスチレンとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリ[ブチレンテレフタレート-コ-ポリエチレングリコールテレフタレート、乳酸とカプロラクトンとの共重合体、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0066】
これらの増粘剤は当業者に周知であり、先行技術に記載されている。
【0067】
好ましくは、本発明の組成物において、増粘化剤は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、部分加水分解ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、およびアシル化セルロースポリマーからなる群から選択される。組成物の第1の部分に適切な増粘化剤は、例えば、ポリメチルメタクリレート(例えば、Degacryl(登録商標)M 449、Evonik)、酢酸ビニルとビニルアルコールとの共重合体(例えば、Levamelt(登録商標)900、Lanxess)、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体(例えば、Vinnol(登録商標)H 40-60、Wacker)、エチレン、酢酸ビニル、およびマレイン酸のエステルまたは部分エステルの共重合体(例えば、Vamac(登録商標)G、DuPont)、ならびにそれらの混合物であり得る。
【0068】
典型的には、組成物の第1の部分における増粘化剤の含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、2重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~7重量%の範囲である。
【0069】
強化剤
組成物の第1の部分に適切な強靭化剤または強化剤は、ブロック共重合体、例えば、Kurarity LA2140として市販されているポリメチルメタクリレート-コ-ポリブチルアクリレート-コ-ポリメチルメタクリレート;エラストマーゴム;エラストマーポリマー;液状エラストマー;ポリエステル;アクリル系ゴム;ブタジエン/アクリロニトリルゴム;ブナゴム;ポリイソブチレン;ポリイソプレン;天然ゴム;スチレン・ブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム;ポリウレタンポリマー;エチレン-酢酸ビニルポリマー;フッ素ゴム;イソプレン-アクリロニトリルポリマー;クロロスルホン化ポリエチレン;ポリ酢酸ビニルのホモポリマー;ブロック共重合体;コアシェルゴム粒子、およびこれらの混合物である。
【0070】
典型的には、組成物の第1の部分における強化剤の含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、2重量%~15重量%、好ましくは3重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~7重量%の範囲である。
【0071】
可塑剤
適切な可塑剤としては、フタレート、アゼレート、アジペート、アルキルセバケート、アセテート(例えば、トリアセチン)、および非反応性エステル(例えば、プロパン-1,2,3-トリイルトリスヘプタノエート)が挙げられる。好ましい可塑剤は、トリアセチン、アセチルトリエチルシトレート、およびプロパン-1,2,3-トリイルトリスヘプタノエートである。好ましくは、可塑剤は、組成物の第1の部分に含まれない。
【0072】
酸化防止剤
組成物の第1の部分に適切な酸化防止剤は、とりわけ、メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)や、ヒドロキシアニソールブチルエーテル、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、tert-ブチルヒドロキノン、およびそれらの混合物であり得る。
【0073】
典型的には、組成物の第1の部分における酸化防止剤の含有量は、0.01重量%~0.8重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%~0.3重量%を含む。
【0074】
組成物の第2の部分-部分B
組成物の第2の部分は、ビニル系モノマーを含まない。
【0075】
非反応性希釈剤
組成物の第2の部分は、非反応性希釈剤を含む。非反応性希釈剤は、例えば可塑剤であり得る。本発明の文脈において、非反応性希釈剤は、フタレート、シトレート、アゼレート、アジペート、セバケート、アセテート(例えば、トリアセチン)、および非反応性エステル(例えば、プロパン-1,2,3-トリイルトリスヘプタノエート)から選択される可塑剤である。
【0076】
好ましい可塑剤は、トリアセチン、アセチルトリエチルシトレート、およびプロパン-1,2,3-トリイルトリスヘプタノエートである。
【0077】
典型的には、組成物の第2の部分における非反応性希釈剤の総含有量は、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、少なくとも50重量%である。非反応性希釈剤の総含有量は、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の範囲であり得る。
【0078】
遷移金属触媒
組成物の第2の部分は、遷移金属の含有量で表して0.001重量%~2重量%の遷移金属触媒を含む。
【0079】
遷移金属触媒は、組成物の第1の部分に含まれる過化合物と混合され、フリーラジカルを生成する。
【0080】
遷移金属の多くの塩、例えば、Cu(II)、Cu(I)、Fe(III)、Fe(II)、Mn(II)、Mn(III)、Mn(IV)、Ag(I)、Rh(I)、Rh(II)、Co(II)、V(III)、V(IV)、V(V)、Cr(VI)、Ti(III)、Pt、およびPdに由来する塩は、Garraら、Prog.Pol.Sci.、2019、94、33に記載されているように、いわゆるレドックス・フリーラジカル開始システムに関与することが知られている。
【0081】
本発明における遷移金属触媒は、好ましくは遷移金属塩である。本発明の文脈における「遷移金属塩」という用語は、遷移金属のカチオンとアニオンとの集合体からなる化合物であり、遷移金属塩とアニオンとの間の結合は、イオン性から共有結合性までの特性を有し得、この用語は、その水和物および溶媒和物も含む。好ましい実施形態では、遷移金属塩は、Cu(ACN)BF、Cu(ACN)PF、Cu(BF、酢酸Cu(II)、オクタン酸CU(II)、安息香酸Cu(II)、塩素酸Cu(II)、炭酸Cu(II)、アセチルアセトネートCu(II)、トリフルオロメタンスルホン酸Cu(I)、硫酸Cu(II)、トリフレートFe(II)、フェロセン、テトラフルオロホウ酸Fe(II)、MnCl0、ナフテン酸Co、テトラフルオロホウ酸Coから選択される。最も好ましい遷移金属塩は、Cu(BF、ならびにその水和物および溶媒和物である。
【0082】
遷移金属塩は、非反応性希釈剤に可溶性であるか、または安定に懸濁し得る。増粘化剤、チキソトロープ剤、または無機充填剤を含めることは、非反応性希釈剤中の遷移金属塩の安定な懸濁液を得るのに役立ち得る。
【0083】
組成物の第2の部分における遷移金属触媒の含有量は、遷移金属の含有量で表して、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、好ましくは0.005重量%~0.5重量%、より好ましくは0.01重量%~0.03重量%の範囲である。
【0084】
特定の遷移金属塩を使用する場合、当業者であれば、特定の量の遷移金属触媒を得るために、対応する塩の量を計算することができる。例えば、遷移金属触媒としての0.02重量%のCu(I)は、0.10重量%の遷移金属塩Cu(ACN)4BF4、または0.117重量%のCu(ACN)PFに相当する。
【0085】
最終的な2液混合物中の遷移金属触媒の典型的な濃度は、最終的な2液混合物の総重量に基づいて、0.0001重量%~0.2重量%、好ましくは0.0005重量%~0.1重量%、より好ましくは0.0007重量%~0.08重量%、より好ましくは0.001重量%~0.05重量%の範囲である。
【0086】
電子豊富な開始種
組成物の第2の部分は、シアノアクリレートのための電子豊富な開始種を場合により含む。
【0087】
一実施形態において、組成物の第2の部分は、シアノアクリレートのための電子豊富な開始種を含む。
【0088】
電子豊富な開始剤は、ビニル部分を含まないことを条件として有機塩基、ハードアニオンとの塩、反応性無機充填剤、有機対アニオンとのカルシウム塩、亜鉛塩、およびマグネシウム塩、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0089】
適切な有機塩基は、例えば、カフェイン、テオブロミン、5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾール、およびテトラヒドロキノリンである。
【0090】
ハードアニオンとの適切な塩は、例えば、コリンクロリドおよびベンザルコニウムクロライドである。
【0091】
適切な反応性無機充填剤は、例えば、Promaxon(登録商標)Dとして公知の水和ケイ酸カルシウムである。
【0092】
有機対アニオンとの適切なカルシウム塩、亜鉛塩、およびマグネシウム塩は、ビニル部分を含まないことを条件として、例えば、ステアリン酸カルシウムである。
【0093】
好ましい反応性無機充填剤は、Promaxon(登録商標)Dである。この化合物は、ゾノトライト(CaSi17(OH))の化学構造を有する水和ケイ酸カルシウムであり、その粒子は実質的に球形であり、微孔性である。この製品は、85g/l~130g/lの範囲に含まれる見かけ密度を有し、平均粒径は35ミクロン~65ミクロンの範囲に含まれ、CAS登録番号1344-95-2を有する。
【0094】
好ましい実施形態では、組成物の第2の部分における電子豊富な開始剤の含有量は、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、0.05重量%~3重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、より好ましくは0.5重量%~1.2重量%に含まれる。
【0095】
添加剤
組成物の第2の部分は、1つ以上の添加剤をさらに含み得る。添加剤は、例えば、チキソトロープ剤、増粘剤、強化剤、促進剤、接着増進剤、顔料、着色剤、およびそれらの混合物から選択される。
【0096】
チキソトロープ剤
組成物の第2の部分に適切な好ましいチキソトロープ剤は、組成物の第1の部分のチキソトロープ剤についてすでに開示された群から選択され得る。
【0097】
典型的には、組成物の第2の部分におけるチキソトロープ剤の総含有量は、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、2重量%~10重量%、好ましくは3重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~7重量%の範囲であり得る。好ましい実施形態では、含有量は、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、2重量%~8重量%の範囲である。
【0098】
増粘剤
組成物の第2の部分に適切な好ましい増粘化剤または増粘剤は、組成物の第1の部分の増粘剤についてすでに開示された群から選択され得る。
【0099】
典型的には、組成物の第2の部分における増粘化剤の含有量は、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、2重量%~20重量%、好ましくは3重量%~15重量%、より好ましくは4重量%~13重量%の範囲である。好ましい実施形態では、含有量は、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、2重量%~15重量%の範囲である。
【0100】
強化剤
組成物の第2の部分に適切な強化剤は、組成物の第1の部分の強化剤についてすでに開示された群から選択され得る。
【0101】
典型的には、組成物の第2の部分における強化剤の含有量は、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、2重量%~15重量%、好ましくは3重量%~8重量%、より好ましくは4重量%~7重量%の範囲である。
【0102】
促進剤
組成物の第2の部分に適切な促進剤は、組成物の第1の部分の促進剤についてすでに開示された群から選択され得る。好ましい促進剤は、ジベンゾ-18-クラウン-6である。
【0103】
典型的には、組成物の第1の部分における促進剤の含有量は、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、0.01重量%~0.8重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%~0.3重量%の範囲である。
【0104】
接着増進剤
組成物の第2の部分に適切な接着増進剤は、組成物の第1の部分の接着増進剤についてすでに開示された群から選択され得る。
【0105】
組成物の第2の部分における接着増進剤の総含有量は、存在する場合、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、0.01重量%~0.1重量%、より好ましくは0.01重量%~0.08重量%の範囲であり得る。
【0106】
硬化性組成物
2液型硬化性組成物は、パッケージ(2液シリンジなど)またはリザーバーポットから分配され得る。前者は、一般に手動塗布に好都合である。第1の部分:第2の部分の体積比は、4:1~10:1の範囲であり、より好ましくは10:1である。
【0107】
好ましい実施形態では、2液型硬化性組成物は、
a)第1の部分(部分A)であって、
i.50重量%~99重量%、好ましくは70重量%~97重量%、より好ましくは85重量%~95重量%の1つ以上のシアノアクリレートモノマー、
ii.少なくとも1重量%の1つ以上の(メタ)アクリル系モノマー、および
iii.少なくとも1重量%の過化合物
を含み、ここで、重量%は、組成物の第1の部分の総重量に基づく、第1の部分と、
b)第2の部分(部分B)であって、
i.50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の非反応性希釈剤、および
ii.遷移金属の含有量で表して0.001重量%~2重量%、好ましくは0.005重量%~0.5重量%、より好ましくは0.01重量%~0.03重量%の遷移金属触媒
を含み、ここで、重量%は、組成物の第2の部分の総重量に基づく、第2の部分とを含み、
第1の部分と第2の部分との体積比は4:1~10:1の範囲、好ましくは10:1であり、
ただし、第2の部分はビニル系モノマーを含まない。
【0108】
好ましい実施形態では、2液型硬化性組成物は、
a)第1の部分(部分A)であって、
i.少なくとも50重量%、好ましくは50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の1つ以上のシアノアクリレートモノマー、
ii.1重量%~10重量%の1つまたは複数の(メタ)アクリレートモノマー、
iii.1重量%~10重量%の過化合物、
iv.0.001重量%~0.2重量%の1つ以上の安定化剤、
v.2重量%~10重量%の1つ以上のチキソトロープ剤、
vi.2重量%~10重量%の1つ以上の増粘剤
を含み、ここで、重量%は、組成物の第1の部分の総重量に基づく、第1の部分と、
b)第2の部分(部分B)であって、
i.少なくとも50重量%、好ましくは50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の少なくとも1つの非反応性希釈剤、
ii.遷移金属の含有量で表して0.001重量%~2重量%、好ましくは0.005重量%~0.5重量%、より好ましくは0.01重量%~0.03重量%の遷移金属触媒、および
iii.0.1重量%~2重量%の電子豊富な開始剤化合物、
iv.2重量%~15重量%の1つ以上の増粘剤、
v.2重量%~8重量%の1つ以上のチキソトロープ剤
を含み、ここで、重量%は、組成物の第2の部分の総重量に基づく、第2の部分とを含み、
第1の部分と第2の部分との体積比は4:1~10:1の範囲、好ましくは10:1であり、
ただし、第2の部分はビニル系モノマーを含まない。
【0109】
シリンジまたはカートリッジ
また、本発明の目的の一部は、2液型硬化性シアノアクリレート組成物を含むシリンジまたはカートリッジである。
【0110】
好ましくは、シリンジまたはカートリッジは、それぞれ容積が異なる2つのチャンバを有するシリンジまたはカートリッジであり、チャンバのうち1つは組成物の第1の部分用であり、もう1つは組成物の第2の部分用である。
【0111】
好ましくは、シリンジ(またはカートリッジ)は、それぞれ容積が異なる2つのチャンバを有するシリンジ(それぞれカートリッジ)であり、先に定義したとおり、チャンバのうち1つは組成物の第1の部分用であり、もう1つは組成物の第2の部分用である。
【0112】
組成物の第1の部分は、好ましくは容積が大きい方のチャンバ内に配置される。
【0113】
接着剤の調製は、好ましくは、シリンジまたはカートリッジのプランジャ上で、手の圧力によって、またはガンによる補助により、組成物の2つの部分の混合によって行われ、これによりチャンバの内容物はスタティックミキサーに入れられ、その結果、ミキサーの出口で本発明の接着剤が得られる。接着剤において、2つの成分は、有利にはしっかりと混合される。
【0114】
好ましい部分A:部分Bの混合比の範囲は10:1~4:1であり、好ましいスタティックミキサーは、選択された混合比と適合しなければならない。最も好ましくは、混合比は10:1である。
【0115】
組成物の使用
基材を結合するための本発明の2液型硬化性組成物の使用もまた、本発明の主題の一部をなす。
【0116】
基材を結合するための方法も、本発明の主題の一部をなす。基材を結合する前記方法は、
1)本発明の2液型硬化性組成物を混合する工程と、
2)工程1)の混合物を基材のうち少なくとも1つに塗布する工程と、
3)重ね合わせた基材の間に接着結合が形成されるのに十分な時間、基材を互いに重ね合わせる工程と
を含む。
【0117】
基材内または基材間のくぼみ、亀裂、または穴を埋めるための本発明の2液型硬化性組成物の使用もまた、本発明の主題の一部をなす。
【0118】
基材内または基材間のくぼみ、亀裂、または穴を埋めるための修復方法もまた、本発明の主題の一部をなす。前記修復方法は、
1)本発明の2液型硬化性組成物を混合する工程と、
2)工程1)の混合物を基材のくぼみ、亀裂、もしくは穴に、または基材の上部に塗布する工程と、場合により
3)第1の基材の上に第2の基材を組み立てる工程と
を含む。
【0119】
本発明の2液型接着剤組成物は、有利には以下の特性のうち少なくとも1つを示す。
A.複数の基材タイプ上での、好ましくは1分未満、より好ましくは35秒未満の速い固定。
B.間隙なしで引張剪断応力法を使用して組み立ての24時間後に測定された、清浄な金属基材上での10~25MPaを意味する、間隙なし設定の高い結合強度。
C.国際公開第2015/059644号(15ページ、5~13行目)に開示されているように、2mm間隙での引張剪断応力法を使用して組み立ての24時間後に測定された、2mm間隙設定の清浄な軟鋼基材上での好ましくは3~18MPaを意味する、高度のCTV。
D.60℃の中性水への浸漬および3日間の連続曝露の後で、清浄なABS基材上での結合強度によって測定された、熱水への浸漬に対する耐性:3~10MPa。
E.国際公開第2015/059644号(15ページ、26~27行目、および23ページ、15~16行目)に開示されている方法を用いて、破壊引張試験下で、2mmの間隙設定で結合された軟鋼基材の応力-歪み曲線下の積分面積を意味する、エネルギー吸収:1J以上。
F.アセトン中室温で24時間で、35~100%の高度の不溶性で示される、有機溶媒に対する耐性。
G.消費者市場に適合する優れた貯蔵寿命安定性(12~24カ月)
【0120】
少なくとも、本発明の2液型接着剤組成物は、有利には以下の特性:A、C、F、およびGを示す。
【0121】
先行技術ではあるが、いずれの接着剤組成物も上記の4つの特徴を示さなかった。驚くべきことに、本発明の2液型接着剤組成物は、これらの特徴のすべてを確かに満たし、最終組成物の優れた耐久性をもたらした。
【0122】
本発明は、以下の実施形態を含む。
1.2液型硬化性組成物であって、
a)第1の部分(部分A)であって、
i.少なくとも50重量%の1つ以上のシアノアクリレートモノマー、
ii.少なくとも1重量%の1つ以上の(メタ)アクリル系モノマー、および
iii.少なくとも1重量%の過化合物
を含み、ここで、重量%は、組成物の第1の部分の総重量に基づく、第1の部分と、
b)第2の部分(部分B)であって、
i.少なくとも50重量%の非反応性希釈剤、および
ii.遷移金属の含有量で表して0.001重量%~2重量%の遷移金属触媒
を含み、ここで、重量%は、組成物の第2の部分の総重量に基づく、第2の部分と
を含むことを特徴とし、
第1の部分と第2の部分との体積比が4:1~10:1の範囲であり、
ただし、第2の部分がビニル系モノマーを含まない、2液型硬化性組成物。
【0123】
2.シアノアクリレートモノマーが、一般式(I):
で表されることを特徴とし、式中、Rは、C~C18直鎖または分岐アルキル鎖、C~C20アルコキシアルキル、トリメチルシリル化C~Cアルキル鎖、フルフリル、アリル、シクロヘキシル、および以下の式を有する基:-R-O-C(O)-C(R)=CH(式中、Rは有機部分(好ましくはアルキレン基)であり、RはHまたはCHである)からなる群から選択される、実施形態1に記載の2液型硬化性組成物。
【0124】
3.シアノアクリレートモノマーが、一般式(I)で定義されるアルコキシアルキルシアノアクリレートであることを特徴とし、式中、Rは一般式(II):
(式中、R=CHまたはHであり、R=C~C直鎖または分岐アルキルであり、mは1~3の範囲である)で定義される、実施形態2に記載の2液型硬化性組成物。
【0125】
4.シアノアクリレートモノマーが、2-メトキシエチルシアノアクリレート、2-エトキシエチルシアノアクリレート、2-(1-メトキシ)プロピルシアノアクリレート、n-プロピルシアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート、イソプロピルシアノアクリレート、n-ブチルシアノアクリレート、sec-ブチルシアノアクリレート、イソブチルシアノアクリレート、tert-ブチルシアノアクリレート、n-ペンチルシアノアクリレート、1-メチルブチルシアノアクリレート、1-エチルプロピルシアノアクリレート、ネオペンチルシアノアクリレート、n-ヘキシルシアノアクリレート、1-メチルペンチルシアノアクリレート、n-ヘプチルシアノアクリレート、n-オクチルシアノアクリレート、n-ノニルシアノアクリレート、n-デシルシアノアクリレート、n-ウンデシルシアノアクリレート、n-ドデシルシアノアクリレート、シクロヘキシルシアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-プロピルオキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ブトキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ペンチルオキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ヘキシルオキシ)-エトキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-プロピルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ブチルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ペンチルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ヘキシルオキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-ブチルオキシブチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-エトキシ)-ブチルオキシブチル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-ブチルオキシ)-ブチルオキシブチル-2’’-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-プロピルオキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-ブチルオキシエチル-2’’-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-プロピルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(3’-メトキシ)-ブチルオキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシプロピル-2’’-シアノアクリレート、2-(2’-メトキシ)-エトキシブチル-2’’-シアノアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態2に記載の2液型硬化性組成物。
【0126】
5.シアノアクリレートモノマーが、エチル-2-シアノアクリレート、2-メトキシエチルシアノアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態4に記載の2液型硬化性組成物。
【0127】
6.シアノアクリレートモノマーの総含有量が、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、50重量%~99重量%、好ましくは70重量%~97重量%、より好ましくは85重量%~95重量%の範囲であることを特徴とする、実施形態1から5のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0128】
7.2液型硬化性組成物の部分Aの(メタ)アクリル系モノマーが、
・一般式(III)の化合物
CH=CR(CO) (III)
(式中、RはメチルまたはH(好ましくはH)を表し、Rは水素原子、C~C直鎖もしくは分岐アルキル、C~C直鎖もしくは分岐アルコキシアルキル、フルフリル、またはイソボルニル基である)、
・多官能(メタ)アクリル酸エステル、および
・それらの混合物
からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態1から6のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0129】
8.式(III)の(メタ)アクリル系モノマーが、メトキシエチル(メタ)アクリレートおよびエトキシエチル(メタ)アクリレートの群から選択されることを特徴とする、実施形態7に記載の2液型硬化性組成物。
【0130】
9.(メタ)アクリル系モノマーが、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、およびトリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートから選択されることを特徴とする、実施形態7に記載の2液型硬化性組成物。
【0131】
10.(メタ)アクリレートモノマーの総含有量が、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、1重量%~10重量%に含まれることを特徴とする、実施形態1から9のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0132】
11.過化合物が、過エステル、過ボレート、過サルフェート、過アセタール、または過酸化物を含む群から選択されることを特徴とする、実施形態1から10のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0133】
12.過化合物が過安息香酸tert-ブチル(TBPB)または過酸化tert-ブチル(TBP)であることを特徴とする、実施形態11に記載の2液型硬化性組成物。
【0134】
13.過化合物の総含有量が、組成物の第1の部分の総重量に基づいて、1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、より好ましくは3重量%~7重量%に含まれることを特徴とする、実施形態1から12のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0135】
14.組成物の第1の部分が、安定化剤、接着増進剤、促進剤、チキソトロープ剤、増粘剤、強化剤、可塑剤、酸化防止剤、顔料、着色剤、およびそれらの混合物から選択される1つ以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする、実施形態1から13のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0136】
15.組成物の第1の部分が、安定化剤、チキソトロープ剤、および増粘剤の組み合わせをさらに含むことを特徴とする、実施形態14に記載の2液型硬化性組成物。
【0137】
16.組成物の第1の部分が、ラジカル安定化剤、酸安定化剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の安定化剤を含むことを特徴とする、実施形態14または15に記載の2液型硬化性組成物。
【0138】
17.組成物の第1の部分が、ラジカル安定化剤と酸安定化剤との組み合わせを含むことを特徴とする、実施形態16に記載の2液型硬化性組成物。
【0139】
18.組成物の第1の部分が、安定化剤として、メタンスルホン酸、二酸化硫黄、三フッ化ホウ素エーテレート錯体、ヒドロキノンおよびヒドロキノンモノメチルエーテル、ならびに4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)の組み合わせを含むことを特徴とする、実施形態17に記載の2液型硬化性組成物。
【0140】
19.非反応性希釈剤が可塑剤であることを特徴とする、実施形態1から18のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0141】
20.可塑剤が、フタレート、シトレート、アゼレート、アジペート、セバケート、アセテート、および非反応性エステルから選択されることを特徴とする、実施形態19に記載の2液型硬化性組成物。
【0142】
21.可塑剤が、トリアセチン、アセチルトリエチルシトレート、およびプロパン-1,2,3-トリイルトリスヘプタノエートから選択されることを特徴とする、実施形態20に記載の2液型硬化性組成物。
【0143】
22.組成物の第2の部分における非反応性希釈剤の総含有量が、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の範囲であることを特徴とする、実施形態1から21のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0144】
23.遷移金属触媒が遷移金属塩であることを特徴とする、実施形態1から22のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0145】
24.遷移金属塩が、Cu(ACN)BF、Cu(ACN)PF、Cu(BF、酢酸Cu(II)、オクタン酸CU(II)、安息香酸Cu(II)、塩素酸Cu(II)、炭酸Cu(II)、アセチルアセトネートCu(II)、トリフルオロメタンスルホン酸Cu(I)、硫酸Cu(II)、トリフレートFe(II)、フェロセン、テトラフルオロホウ酸(tetrafluorobotare)Fe(II)、MnCl0、ナフテン酸Co、テトラフルオロホウ酸Coから選択されることを特徴とする、実施形態23に記載の2液型硬化性組成物。
【0146】
25.遷移金属塩がCu(BF、またはその水和物もしくは溶媒和物であることを特徴とする、実施形態24に記載の2液型硬化性組成物。
【0147】
26.遷移金属触媒の含有量が、遷移金属の含有量で表して、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、0.005重量%~0.5重量%、好ましくは0.01重量%~0.03重量%の範囲であることを特徴とする、実施形態1から25のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0148】
27.組成物の第2の部分が、シアノアクリレートのための電子豊富な開始種を含むことを特徴とする、実施形態1から26のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0149】
28.シアノアクリレートのための電子豊富な開始種が、ビニル部分を含まないことを条件として有機塩基、ハードアニオンとの塩、反応性無機充填剤、有機対アニオンとのカルシウム塩、亜鉛塩、およびマグネシウム塩、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態27に記載の2液型硬化性組成物。
【0150】
29.シアノアクリレートのための電子豊富な開始種が、カフェイン、テオブロミン、5-クロロ-2-メチルベンゾチアゾール、およびテトラヒドロキノリンから選択される有機塩基であることを特徴とする、実施形態28に記載の2液型硬化性組成物。
【0151】
30.シアノアクリレートのための電子豊富な開始種が、コリンクロリドおよびベンザルコニウムクロライドから選択されるハードアニオンとの塩であることを特徴とする、実施形態28に記載の2液型硬化性組成物。
【0152】
31.シアノアクリレートのための電子豊富な開始種が、反応性無機充填剤としてのゾノトライトの化学構造を有する水和ケイ酸カルシウムであることを特徴とする、実施形態28に記載の2液型硬化性組成物。
【0153】
32.シアノアクリレートのための電子豊富な開始種が、ビニル部分を含まないことを条件として有機対アニオンとのカルシウム塩、亜鉛塩、およびマグネシウム塩であることを特徴とする、実施形態28に記載の2液型硬化性組成物。
【0154】
33.電子豊富な開始剤の含有量が、組成物の第2の部分の総重量に基づいて、0.05重量%~3重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、より好ましくは0.5重量%~1.2重量%に含まれることを特徴とする、実施形態1から32のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0155】
34.組成物の第2の部分が、チキソトロープ剤、増粘剤、強化剤、促進剤、接着増進剤、顔料、着色剤、およびそれらの混合物から選択される1つ以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする、実施形態1から33のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0156】
35.第1の部分と第2の部分との体積比が10:1であることを特徴とする、実施形態1から34のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物。
【0157】
36.a)第1の部分(部分A)であって、
i.50重量%~99重量%、好ましくは70重量%~97重量%、より好ましくは85重量%~95重量%の1つ以上のシアノアクリレートモノマー、
ii.少なくとも1重量%の1つ以上の(メタ)アクリル系モノマー、および
iii.少なくとも1重量%の過化合物
を含み、ここで、重量%は、組成物の第1の部分の総重量に基づく、第1の部分と、
b)第2の部分(部分B)であって、
i.50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の非反応性希釈剤、および
ii.遷移金属の含有量で表して0.001重量%~2重量%、好ましくは0.005重量%~0.5重量%、より好ましくは0.01重量%~0.03重量%の遷移金属触媒
を含み、ここで、重量%は、組成物の第2の部分の総重量に基づく、第2の部分と
を含むことを特徴とし、
第1の部分と第2の部分との体積比が4:1~10:1の範囲、好ましくは10:1であり、
ただし、第2の部分がビニル系モノマーを含まない、実施形態1に記載の2液型硬化性組成物。
【0158】
37.a)第1の部分(部分A)であって、
i.少なくとも50重量%、好ましくは50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の1つ以上のシアノアクリレートモノマー、
ii.1重量%~10重量%の1つまたは複数の(メタ)アクリレートモノマー、
iii.1重量%~10重量%の過化合物、
iv.0.001重量%~0.2重量%の1つ以上の安定化剤、
v.2重量%~10重量%の1つ以上のチキソトロープ剤、
vi.2重量%~10重量%の1つ以上の増粘剤
を含み、ここで、重量%は、組成物の第1の部分の総重量に基づく、第1の部分と、
b)第2の部分(部分B)であって、
i.少なくとも50重量%、好ましくは50重量%~99.9重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~85重量%の少なくとも1つの非反応性希釈剤、
ii.遷移金属の含有量で表して0.001重量%~2重量%、好ましくは0.005重量%~0.5重量%、より好ましくは0.01重量%~0.03重量%の遷移金属触媒、および
iii.0.1重量%~2重量%の電子豊富な開始剤化合物、
iv.2重量%~15重量%の1つ以上の増粘剤、
v.2重量%~8重量%の1つ以上のチキソトロープ剤
を含み、ここで、重量%は、組成物の第2の部分の総重量に基づく、第2の部分と
を含むことを特徴とし、
第1の部分と第2の部分との体積比が4:1~10:1の範囲、好ましくは10:1であり、
ただし、第2の部分がビニル系モノマーを含まない、実施形態1に記載の2液型硬化性組成物。
【0159】
38.実施形態1から37のいずれか1つに記載の2液型硬化性シアノアクリレート組成物を含む、シリンジまたはカートリッジ。
【0160】
39.基材を結合するための、実施形態1から37のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物の使用。
【0161】
40.基材内または基材間のくぼみ、亀裂、または穴を埋めるための、実施形態1から37のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物の使用。
【0162】
41.基材を結合するための方法であって、
1)実施形態1から37のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物を混合する工程と、
2)工程1)の混合物を基材のうち少なくとも1つに塗布する工程と、
3)重ね合わせた基材の間に接着結合が形成されるのに十分な時間、基材を互いに重ね合わせる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【0163】
42.基材内または基材間のくぼみ、亀裂、または穴を埋めるための修復方法であって、
1)実施形態1から37のいずれか1つに記載の2液型硬化性組成物を混合する工程と、
2)工程1)の混合物を基材のくぼみ、亀裂、もしくは穴に、または基材の上部に塗布する工程と、場合により
3)第1の基材の上に第2の基材を組み立てる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【実施例
【0164】
以下の方法を用いて、特許請求される組成物の性能を評価した。
【0165】
固定時間(FT)は、接着結合(250mm2)が、50%RH下、室温(23±2℃)で10秒間、3kgの荷重を支えることができるようになる時間である。
【0166】
試料をアセトン(20mL)に24時間浸漬した後、バルク硬化ポリマー(0.3g)について耐性試験を測定する。不溶性部分を濾過し、60℃で質量が一定になるまで乾燥させ、元の質量または硬化した材料と比較する。
【0167】
引張剪断試験データは、接触面積が25mmの重なり合うラップ剪断(標準試験片)部品を組み立てた後に、MPa単位で測定された結合強度を反映する。これは、ASTM D1002に従って測定され、結合されたラップ剪断片は、組み立ての後で試験前に24時間放置した。耐熱水性の試験は、熱水(60℃)に3日間浸漬した組立試料に対して行う。
【0168】
実施例では以下の材料を使用した。
Cartell Chemical Co.,Ltd.から販売されているECA(エチルシアノアクリレート)
Cartell Chemical Co.,Ltd.から販売されているMECA(メトキシエチルシアノアクリレート)
Carburos Metalicos,S.A.から販売されているSO
Arkemaから販売されているSartomer(登録商標)CN1964CG(低分子量ウレタンジメタクリレートオリゴマー)
Arkemaから販売されているSartomer(登録商標)SR214(1,4-ブタンジオールジメタクリレート)
Arkemaから販売されているSartomer(登録商標)SR368(トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート)
Arkemaから販売されているSartomer(登録商標)SR454(エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート)
Arkemaから販売されているSartomer(登録商標)SR833S(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)
Evonikから販売されているPMMA(ポリメチルメタクリレート)Degacryl(登録商標)449
Kuraray Europeから販売されているポリメチルメタクリレート-コ-ポリブチルアクリレート-コ-ポリメチルメタクリレート Kurarity(登録商標)LA2140
Lapinus Fibersから販売されているPromaxon(登録商標)D(ゾノトライト(xonolithe)構造の水和ケイ酸カルシウム無機充填剤)
Oleonから販売されているGTA(トリアセチン)
Oleonから販売されているGTH(プロパン-1,2,3-トリイルトリスヘプタノエート)
Evonikから販売されているFS(疎水性ヒュームドシリカ)Aerosil(登録商標)R202
Allnexから販売されているEBECRYL(登録商標)1259(アクリル化脂肪族ウレタンオリゴマー)
【0169】
以下の製品をSigma Aldrich Merckから得た:
メタンスルホン酸、トリフレートFe(II)、Cu(I)(ACN)BF、TBPB(ペルオキシ安息香酸tert-ブチル)、Cu(II)(BF
【0170】
実施例1.1~1.6:2液型硬化性組成物
部分Aの組成を表1に、部分Bについては表2に概説する。含有量は、部分Aおよび部分Bのそれぞれの組成物の総重量に基づく重量%で表す。
【0171】
Sulzer Mixpacシリンジおよび適切なスタティックミキサーを使用して、部分Aと部分Bとを10:1(A:B)の混合比で混合して接着剤を製造した。これらのすべての実施例において、Cu(I)塩が遷移金属触媒であり、Promaxon(登録商標)Dとして知られるケイ酸カルシウムが、シアノアクリレートのための電子豊富な開始剤であった。
表1
表2
【0172】
実施例2.1~2.3:2液型硬化性組成物
さらなる部分Aおよび部分Bの組成を、それぞれ表3および表4に概説する。含有量は、部分Aおよび部分Bのそれぞれの組成物の総重量に基づく重量%で表す。
【0173】
実施例1に記載したのと同様の方法で接着剤を製造した。これらの実施例では、様々な遷移金属塩触媒を選択し、シアノアクリレートのための例示的なケイ酸カルシウム開始剤(Promaxon(登録商標)D)と一緒に、または該開始剤なしで使用した。Sulzer Mixpacシリンジおよび適切なスタティックミキサーを使用して、部分Aと部分Bとを10:1(A:B)の混合比で混合して接着剤を製造した。
表3
表4
【0174】
比較例3:2液型シアノアクリレート組成物
比較例の2液型シアノアクリレート組成物を、それぞれ部分Aおよび部分Bとして表5および表6に概説する。含有量は、部分Aおよび部分Bのそれぞれの組成物の総重量に基づく重量%で表す。
【0175】
組成物3.3.Aおよび3.3.Bは、LOCTITE(登録商標)製品群からの市販品に対応し、組成に関する情報はMSDSデータから入手可能であった。
【0176】
組成物3.4.Aおよび3.4.Bは、表1および表2に開示される国際公開第2013/111036号の実施例に対応する。
【0177】
実施例1に記載したのと同様の方法で接着剤を製造した。これらの実施例では、過化合物が部分Aに含まれていなかった。
表5
表6
【0178】
比較例3.1の部分Aと比較例3.1の部分Bとを含む10:1のシリンジにパッケージされた2K接着剤は、室温で4カ月貯蔵した後に使用することができなかった。これは、部分Bが遷移金属触媒とビニル系成分との組み合わせであるために不安定であったためである。
【0179】
比較例3.2の部分A:部分B=10:1の比で混合して得られた2K接着剤を、実施例4に示すように試験した。
【0180】
比較例3.3および3.4の部分A:部分B=1:1の比で混合して得られた2K接着剤を、実施例4に示すように試験した。
【0181】
実施例4:2液型シアノアクリレート接着剤の試験
表7は、実施例1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、および1.6に記載の組成物に由来する接着剤が、24時間の浸漬後にアセトン中で高度の不溶性を示すことを示している。これは、低濃度の多官能(メタ)アクリレートの存在下で、過化合物と銅系遷移金属塩反応との反応により架橋が生じ、それによりフリーラジカル生成およびバルクシアノアクリレートの共重合が起こったことを示している。架橋によって望ましい溶媒耐性および耐久性をもたらすフリーラジカル反応は、接着剤が従来のスーパー接着剤の迅速な固定および硬化をもたらす能力を妨げない。
【0182】
これに対して、比較例3.2のように過化合物が存在しない場合、このような不溶性は生じず、接着剤は架橋せずに容易に溶解する。
【0183】
いくつかの異なる(メタ)アクリル系架橋剤の存在下でも、組成物の迅速な固定が観察された(<1分)。市販品としては、比較例3.3、および国際公開第2013/111036号の2K接着剤、すなわち比較例3.4は、耐久性(架橋による高い不溶性)の点では機能するが、迅速な固定を示さない(≧10分)。
【0184】
表8は、比較例3.2~3.4で得られた結果を示す。
表7
表8
【0185】
実施例5:2液型シアノアクリレート接着剤の試験
表10は、実施例2.1~2.3に記載の組成物の部分Aと部分Bとを混合して得られた接着剤が、24時間の浸漬後にアセトン中で高度の不溶性を示すことを示している(76%~89%)。これは、低濃度の多官能(メタ)アクリレートの存在下で、過化合物と遷移金属触媒との反応により架橋が生じ、それによりフリーラジカル生成およびバルクシアノアクリレートの共重合が起こったことを裏付けている。
【0186】
表10はまた、シアノアクリレートのための電子豊富な開始剤(例えば、接着剤2.2の場合は部分Bに存在し、接着剤2.3の場合は部分Bに存在しないPROMAXON(登録商標)D)を部分Bの遷移金属触媒と組み合わせることの効果を示す。両方が組成物に含まれる場合、すなわち一緒に使用される場合、接着剤は、通常のスーパー接着剤の迅速な固定(軟鋼で30秒)、比較的短期間(1時間)でのバルク硬化、および溶媒耐性によって裏付けられる耐久性を示す。これにより、シアノアクリレートと様々な濃度の多官能アクリレート、すなわちエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(SR454)との架橋および共重合に由来して、アセトンに対する高度の不溶性を生じるが、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート単独では、架橋したとしても示された不溶性を説明することはできない。
表10
【国際調査報告】