(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-22
(54)【発明の名称】一体に形成された空洞またはチャンバを有するプレスブレーキ用クランプシステム、およびそのようなクランプシステムを備えるプレスブレーキ
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20230815BHJP
B21D 37/04 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B21D5/02 F
B21D37/04 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504782
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 NL2021050449
(87)【国際公開番号】W WO2022019754
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500530960
【氏名又は名称】ウィラ・ビー・ブイ
【氏名又は名称原語表記】Wila B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン, トーマス ヤン ヘルバート
(72)【発明者】
【氏名】ルーホフ, デニス ヘルマヌス ヨハネス
【テーマコード(参考)】
4E050
4E063
【Fターム(参考)】
4E050CB02
4E050CD01
4E050CD04
4E063DA18
(57)【要約】
本発明は、プレスブレーキのためのクランプシステムに関し、このクランプシステムは、
曲げ工具の一部を受容するための受容空間を含む細長い梁と、クランプ要素であって、このクランプ要素は、第1の位置(この受容空間にクランプするために曲げ工具に係合することができる位置)と、曲げ工具を解放するための第2の位置との間で移動可能である、クランプ要素と、を備える。クランプシステムは、流体を充填可能な圧力室と、圧力室内の流体の圧力に応じて係合要素を駆動するための作動部材とを更に備える。圧力室または圧力室を収納する空洞は、細長い梁内に一体的に形成される。本発明はまた、そのようなクランプシステムを備えたプレスブレーキに関する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスブレーキのためのクランプシステムにおいて、
曲げ工具の一部を受容するための受容空間を含む細長い梁と、
クランプ要素であって、第1の位置(前記受容空間にクランプするために前記曲げ工具に係合することができる位置)と、前記曲げ工具を解放するための第2の位置との間で移動可能である、クランプ要素と、
流体を充填可能な圧力室と、
前記圧力室内の前記流体の圧力に応じて係合要素を駆動する作動部材と、
を備え、
前記圧力室または前記圧力室を収納する空洞が、前記細長い梁内に一体的に形成されていることを特徴とする、クランプシステム。
【請求項2】
前記作動部材は、前記圧力室または前記空洞内で移動可能である、請求項1に記載のクランプシステム。
【請求項3】
前記空洞または圧力室は、前記細長い梁の外部に進出している、請求項1~2のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項4】
前記空洞または圧力室の少なくとも進出部を覆うカバーを更に備える、請求項3に記載のクランプシステム。
【請求項5】
複数の相互接続された圧力室または空洞を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項6】
前記圧力室または空洞は内部で相互接続されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項7】
前記圧力室または空洞に流体を送り、さらに/または、戻すために、前記圧力室または空洞に接続された前記細長い梁内にチャネルを更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項8】
前記圧力室は、前記細長い梁と一体に形成され、前記作動部材は、前記圧力室内で移動可能なピストンを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項9】
前記細長い梁内に一体的に形成された空洞を有し、前記クランプシステムは、前記空洞内に収納され、前記圧力室を画定するシリンダを更に備え、前記作動部材は、前記シリンダ内で移動可能なピストンを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項10】
前記圧力室は、前記空洞内に配置された変形可能な壁によって画定される、請求項1~7のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項11】
前記圧力室は、液圧流体を受容するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項12】
前記圧力室は、空気圧流体を受容するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項13】
前記作動部材は、前記クランプ要素を第1の位置に向かって付勢する作動位置と、前記クランプ要素を第2の位置に移動させる非作動位置との間で移動可能であり、前記クランプシステムは、前記作動部材をその非作動位置に向かって付勢するために前記作動部材に作用する第1の付勢部材を更に備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項14】
前記作動部材は、前記押圧方向と略平行な方向に移動可能である、請求項13に記載のクランプシステム。
【請求項15】
前記クランプ要素および前記作動部材の少なくとも一方は、前記クランプ要素および前記作動部材の他方と係合するための係合面を備え、前記係合面の少なくとも一部は、各要素の移動方向に対して傾斜している、請求項1~14のいずれか一項に記載のクランプシステム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のクランプシステムを少なくとも1つ備えるプレスブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキ用クランプシステムに関し、このクランプシステムは、曲げ工具の一部を受容するための受容空間を含む細長い梁と、クランプ要素と、流体を充填可能な圧力室と、圧力室の流体の圧力に応じて係合要素を駆動する為の作動部材と、を備え、このクランプ要素は、第1の位置(この受容空間にクランプするために曲げ工具に係合することができる位置)と、曲げ工具を解放するための第2の位置との間で移動可能である。
【0002】
プレスブレーキは、金属シートのようなシート材料を曲げたり折ったりするために使用される機械である。この目的のために、プレスブレーキは、互いに対して移動可能な底部梁と頂部梁とを含む。頂部梁と底部梁の両方が工具を保持し、その間にワークピースが曲げのために提供される。一般に、プレスブレーキの曲げ工具は交換可能であり、異なるタイプの曲げまたは折り目を作ることができ、また工具を点検することができる。従って、プレスブレーキは、工具を解放可能にクランプすることができるクランプシステムを備えている。クランプシステムは、プレスブレーキの頂部梁、底部梁、またはその両方に設けることができる。
【0003】
プレスブレーキには、二つのタイプがある。第1のタイプは、頂部梁または底部梁のいずれかの一体部分であるクランプシステムを有する。頂部梁または底部梁の他方に対して、さらなるクランプシステムを設けてもよいし、設けなくてもよい。一体化されたクランプシステムは、その頂部または底部梁から取り外すことができず、したがってそれ自体は別のクランプシステムと交換することができないが、クランプシステムが保持することができる工具は交換可能である。第2のタイプは、頂部梁または底部梁のいずれかに接続されて固定きる交換可能なクランプシステムを有する。頂部梁または底部梁の他方に対して、さらなるクランプシステムを設けてもよいし、設けなくてもよい。交換可能なクランプシステムは、工具を交換することを可能にするが、例えば、保守のため、または他のクランプシステムと交換するために、頂部または底部梁から取り外すこともできる。これは、異なるクランプシステムを必要とする可能性がある異なる工具タイプに適した1つのプレスブレーキを作るために、および/または、クランプシステムを点検するために使用される技術である。
【0004】
工具であるかのように他のクランプシステムによってクランプすることができる更なるクランプシステムが存在する。そのようなクランプシステムは、例えば、第1のタイプの工具用システムによってクランプすることができるが、第2のタイプの工具自体をクランプすることができるので、そのようなクランプシステムは、そうでなければ互換性がないであろうクランプシステムと工具との間のアダプタとして作用する。
【0005】
本発明は、底部梁または頂部梁のプレスブレーキと一体化されたクランプシステム、交換可能なクランプシステム、およびアダプタとして作用するクランプシステムに関する。
【0006】
プレスブレーキ及びそのクランプシステムは、例えば、工具をクランプするためのクランプ装置を記載した出願人の先の出願WO 2010/056110 A1から知られている。クランプ装置は、作動部材と係合部材とを含む。作動部材は、例えば液圧式又は空気圧式で駆動される。
【0007】
WO 2010/056110 A1に開示されたクランプ装置は十分に機能し、今日でもなお機能するが、クランプ装置を更に改良する必要性が存在する。特に、より少ない点検および/または検査を必要とするか、またはより信頼性の高いクランプシステムを提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、より少ない点検および/または検査を必要とするか、またはより信頼性の高いクランプシステムを提供することを目的とする。
【0009】
本発明によれば、この目的は、前文によるプレスブレーキのクランプシステムによって達成され、圧力室または圧力室を収納する空洞が細長い梁内に一体的に形成されることを特徴とする。
【0010】
出願人の知る限りでは、プレスブレーキはこれまで、細長い梁に固定された別個の本体内に配置されたシリンダ用の空洞を有していた。これは、別個の本体を細長い梁に確実に固定する必要性を生じるだけでなく、多くの場合、別個の本体を細長い梁に適切に密封することも必要とする。適切な固定および密封技術が存在する場合であっても、固定および密封の両方が、起こり得る故障箇所のままであり、したがって、クランプシステムの故障または損傷を回避するために、定期的に点検および/または検査されなければならない。圧力室または圧力室を収納する空洞を細長い梁内に一体的に形成することによって、別個の本体は必要とされない。従って、故障を構成し得るこのような本体の固定および/または密封は存在しない。従って、クランプシステムは、より確実に動作することができ、および/またはより少ない点検および/または検査を必要とする。
【0011】
さらに、細長い梁に固定された別個の本体とは対照的に、細長い梁内に前記圧力室または前記空洞を一体的に形成することは、公差の問題を回避するのに役立つ。実際、独立した本体を導入すると、独自の公差を持つ追加の界面が導入される。したがって、前記圧力室または前記空洞の理想的な位置からの偏差は、別個の本体の界面に導入される更なる公差に加算され、それによって前記圧力室または空洞の位置決めにおける誤差を増大させる可能性がある。したがって、別個の界面を回避することによって、圧力室または空洞をより正確に位置決めすることができる。
【0012】
追加的または代替的に、細長い梁内に圧力室または空洞を一体的に形成することにより、クランプシステムを比較的費用効果的に生産することが可能になる。
【0013】
流体は、液体または気体でもよいことに留意されたい。
【0014】
圧力室は、流体を圧力室内に導入し、流体をそれぞれ外部に排出するための入口および/または出口、または入口および出口の組合せを含むことができる。圧力室は、任意の入口および/または出口から離して密閉してもよい。従って、圧力室は、流体を圧力下に保持するように構成することができる。
【0015】
一体的に形成されたものは、本明細書では、同一の単一部品の一部であると理解することができる。したがって、圧力室または圧力室を収納する空洞を提供するために、別個の一片または構成要素を細長い梁に取り付ける必要はない。
【0016】
特に、圧力室または空洞は、その全体が細長い梁内に一体的に形成されてもよい。したがって、圧力室または空洞は、圧力室を形成および/または密閉するために細長い梁に固定された追加片を必要としない。
【0017】
クランプシステムの一実施形態において、作動部材は、前記圧力室または空洞内で移動可能である。
【0018】
この実施形態において、作動部材は、圧力室または空洞内を移動することができるので、作動部材が圧力室または空洞の外側で占める空間が少なくなる。従って、本実施形態によれば、特にコンパクトな構成が可能となる。
【0019】
コンパクトな構造を提供することは、ワークピースがプレスブレーキに衝突する危険性を低減するのに役立つ。たとえば、ワークピースが複数回、例えば異なる位置で曲げられる場合、ワークピースは、細長い梁に向かって折り返されてもよい。細長い梁は、その場合、細長い梁が曲げている間にワークピースを遮断する前に、ワークピースの大きさおよび/またはワークピース内に作ることができる曲げの量を制限することができる。したがって、プレスブレーキをコンパクトに構成することは、できるだけ多くの工作物のための空間を可能にするために重要であり、その結果、プレスブレーキを使用して、多くの折り目を有する複雑な形状および/または比較的大きな工作物を曲げることができる。クランプシステムの別の実施形態において、前記空洞または圧力室は、細長い梁の外部に進出(debouches)している。
【0020】
作動部材は、圧力室または、空洞内で移動可能であることにより、作動部材が空気圧または液圧のピストンを構成または備えることができる。有利なことに、これは必要とされる部品の数を減らす。作動部材は、クランプ要素を第1の位置に向かって付勢する作動位置と、クランプ要素を第2の位置に移動させる非作動位置との間で移動可能である。
【0021】
作動位置では、空気圧または液圧は比較的高くてもよいが、非作動位置では、空気圧または液圧は比較的低くてもよい。したがって、圧力を用いて、作動部材をその作動位置に移動させることができる。
【0022】
作動部材は、クランプシステムによって規定される押圧方向と平行な方向、例えばプレスブレーキの押圧方向に対応する方向に移動可能であってもよい。押圧方向は、細長い梁における受容空間の深さ方向の深さ方向に対応してもよい。
【0023】
特に、作動部材は、クランプ要素に直接作用することができる。したがって、クランプ要素を駆動するために更なる構成要素は必要とされず、これは正確な構造を達成するのを助け、それによって上述した公差の問題を回避することから利益を得る。
【0024】
押圧方向に移動する作動部材は、クランプ要素に直接作用する作動部材と組み合わされて、特にコンパクトな構造を可能にする一方で、そうでなければ必要とされる追加の構成要素によって生じる公差の問題を回避することに留意されたい。
【0025】
作動部材とクランプ部材との間の直接的な相互作用は、例えば、クランプ部材及び作動部材の少なくとも一方が、クランプ部材及び作動部材の他方と係合するための係合面を備え、係合面の少なくとも一部が、それぞれの部材の移動方向に対して傾斜している場合に達成することができる。
【0026】
このような傾斜した係合面は、クランプ要素と作動部材との間の伝達を提供するので、クランプ要素と作動部材とが互いに対してある角度をなして配置可能であり、これにより、クランプシステムの比較的コンパクトな構造が可能になる。
【0027】
係合面が傾斜する角度は、作動部材の移動とクランプ要素との間の適切な伝達比を選択するように選択することができる。この角度は、係合面の異なる位置で異なる伝達率を提供するように、係合面上で滑らかにまたは急激に変化させてもよい。特に、係合面は、湾曲していてもよいし、異なる傾斜角を有する2つの部分からなっていてもよい。
【0028】
空洞または圧力室が外部に突出している場合、進出部(debouchment)を使用して、構成要素を空洞または圧力室内に導くことができる。例えば、ピストンを圧力室に挿入してもよいし、シリンダを空洞に挿入してもよい。
【0029】
クランプシステムの更に別の実施形態において、クランプシステムは、前記空洞または圧力室の少なくとも一部を覆うカバーを更に備える。
【0030】
このようなカバーは、圧力室及び/又は空洞を保護することができ、また、クランプシステムの可動部品を例えば汚れから保護することができ、及び/又は可動部品を作業者がアクセスできないようにすることによってクランプシステムの安全性を高めることができる。
【0031】
クランプシステムの更に別の実施形態において、クランプシステムは、複数の相互接続された圧力室または空洞を含む。
【0032】
複数の圧力室または空洞を使用して、複数のクランプ要素を移動させるために複数の作動部材を駆動することができ、その結果、様々な長さの工具をクランプすることができ、および/または複数の工具を同時にクランプすることができる。圧力室の場合には、これらを連通することにより、各圧力室の圧力を均一化することができ、単一の圧力室に流体を出し入れして複数の圧力室を駆動することができる。空洞の場合、それらを相互接続することにより、例えば空洞に設置されたシリンダのための例えば導管および制御ラインを提供することが可能になる。
【0033】
複数の圧力室又は空洞は、細長い梁の長手方向に整列されてもよい。
【0034】
クランプシステムの更に別の実施形態において、圧力室または空洞は内部で相互接続される。
【0035】
圧力室または空洞を内部に接続することによって、さらなる故障の可能性のある箇所が回避され、空洞が細長い梁の外部の導管を介して相互接続される従来技術と比較して、より少ない密封が必要とされる。このような導管は、細長い梁に対して密封することを必要とし、この密封は、故障箇所の可能性をもたらす。さらに、外部に設けられた導管は、損傷を受けやすい。
【0036】
特に、導管が液圧流体または空気流体を運ぶ場合、流体が導管を通って移動するのに比較的長い時間を要し、導管は流体上を流れるために比較的高い抵抗を課す。したがって、前記内部接続を提供することによって、液圧または空気圧流体を移動させるのに必要な時間および/または圧力が少なくなり、これにより、クランプ要素をより速く移動させることができる。これにより、工具をより迅速に解放および/または交換することができる。
【0037】
クランプシステムの更に別の実施形態において、クランプシステムは、圧力室または空洞に流体を送り、さらに/または戻すために圧力室または空洞に接続された細長い梁内のチャネルを更に含む。
【0038】
流体をチャネルを介して空洞または圧力室に送り、さらに/または戻すことによって、空洞内に収納された圧力室またはシリンダを、作動部材のための空気圧または液圧駆動手段の一部として使用することができる。
【0039】
圧力室が細長い梁と一体的に形成されるクランプシステムの更に別の実施形態において、作動部材は、圧力室内で移動可能なピストンを含む。
【0040】
この実施形態において、圧力室は細長い梁内に一体的に形成され、ピストンは圧力室内で移動可能である。従って、ピストンは圧力室内で直接移動可能である。従って、圧力室は、例えば作動部材を駆動するための空気圧または液圧駆動手段のシリンダを形成することができる。これ以上別個のシリンダを設ける必要がないので、必要とされる構成部品の量が減少し、それによって起こり得る故障箇所の量も減少する。
【0041】
クランプシステムの更に別の実施形態において、空洞が細長い梁内に一体的に形成され、クランプシステムが、前記空洞内に収納されたシリンダを更に備え、シリンダが圧力室を画定し、作動部材がシリンダ内で移動可能なピストンを備える。
【0042】
この実施形態において、空洞はシリンダを収納するために使用され、シリンダは、例えば作動部材を駆動するための空気圧または油圧駆動手段の一部として使用することができる。細長い梁から分離されたシリンダを使用することは、シリンダおよびピストンのみが比較的小さな公差で一緒に嵌合および密封される必要があるので、空洞の寸法を決定する際の公差制約を低減する。従って、細長い梁内に空洞を比較的容易に且つ/又は迅速に且つ/又は費用効果的に生成することができる。さらに、空洞内に別個のシリンダを設けることにより、空洞に対する密封要件が低減および/または除去される。
【0043】
クランプシステムの更に別の実施形態において、圧力室は、前記空洞内に配置された変形可能な壁によって画定される。
【0044】
圧力室を変形可能な壁から形成することによって、圧力室は、そこからの流体の供給および除去に際して膨張および収縮変形を行うことができる。このように、変形可能な壁は、例えば、作動部材を、例えば、延ばすときに作動位置に向かって押すことによって、運動させるために使用することができる。
【0045】
変形可能な壁を形成するために、可撓性ホースが設けられてもよい。可撓性ホースは、複数の空洞内に変形可能な壁を有する相互接続された圧力室を提供するために、複数の空洞を貫通して延びてもよい。
【0046】
クランプシステムの更に別の実施形態において、圧力室は液圧流体を受容するように構成される。
【0047】
従って、圧力室は液圧駆動手段の一部として使用することができる。圧力室は、液圧シリンダまたは液圧室を形成してもよい。
【0048】
クランプシステムの更に別の実施形態にいて、圧力室は、空気圧流体を受けるように構成される。
【0049】
従って、圧力室は、空気圧駆動手段の一部として使用することができる。圧力室は、空気圧シリンダまたは空気圧室を形成することができる。
【0050】
クランプシステムの更に別の実施形態において、作動部材は、それがクランプ要素を第1の位置に向かって付勢する作動位置と、それがクランプ要素を第2の位置に移動させることを可能にする非作動位置との間で移動可能であり、クランプシステムは、作動部材をその非作動位置に向かって付勢するために作動部材に作用する第1の付勢部材を更に備える。
【0051】
出願人は、工具を解放するために、クランプ要素をその第2の位置に向かって変位させることによって、工具を交換するのに必要な時間の比較的大きな部分が占められることを発見した。クランプ要素をその第2の位置に向かって移動させるためには、例えば、作動部材が空気圧または液圧で駆動されている場合には、作動部材に対する空気圧または液圧を停止させる必要があり、空気圧または液圧流体を逆流させて、作動部材をその非作動位置に戻すことができるようにする必要がある。ただし、空気圧式または液圧流体が工具を解除するのに十分に後退するには、10秒以上かかることがある。空気または液圧流体の後退を容易にするために、作動部材に作用する第1の付勢部材が設けられる。付勢部材は、作動部材をその非作動位置に付勢し、それによって、空気圧または液圧が十分に解放されると、空気圧または液圧流体を強制的に排出する。その結果、作動部材をその非作動位置に戻し、したがって工具の解放を可能にするのに必要な時間を、例えば、約1-2秒の時間に短縮することができる。
【0052】
もちろん、第1の付勢部材は、空気圧または液圧駆動手段以外の駆動手段が使用される場合に同様の機能を果たすために使用されてもよい。
【0053】
例えば、クランプ要素ではなく、作動部材に作用する第1の付勢部材は、第1の付勢部材に対して比較的大きな空間を提供することができることに留意されたい。特に、作動部材に作用する第1の付勢部材は、比較的長く且つ/又は比較的広くてもよい。従って、第1の付勢部材は比較的大きくてもよく、例えば圧縮バネの場合には比較的高いバネ定数を可能にするので、圧縮バネは比較的大きな付勢力を提供することができ、これは作動部材を移動させるのに必要な時間を短縮するのに役立つ。バネの長さはまた、または代替的に、バネによって付勢されながら、作動部材の比較的広い範囲の運動を可能にすることができる。
【0054】
作動部材の比較的広い可動範囲は、クランプ要素の比較的大きな行程が必要とされる場合に特に重要である。受容空間の内側にハンガーまたはフックとして作用する突起を含むクランプシステムが存在し、その上に工具を支持および/または吊り下げることができる。工具は、工具を挿入または取外すために突起の周りでそれを操作するのに十分な空間を受容空間の内部に必要とするので、受容空間は、工具に比べて比較的広い。このようなクランプシステムは、クランプ要素が少なくとも部分的に比較的広い受容空間を横断しなければならないので、クランプ要素の比較的大きな行程を必要とする。
【0055】
第1の付勢部材によって与えられる力は、作動部材をその作動位置に移動させるために克服される必要があることに留意されたい。従って、工具をクランプするのに必要な全体の力は、第1の付勢部材によって増大される。これは、作動部材を駆動するために、液圧または空気圧駆動手段のような適切に強力な駆動手段を選択することによって達成することができる。
【0056】
作動部材に作用する第1の付勢部材は、ここでは、第1の付勢部材が最初に作動部材に作用するものとして理解することができる。もちろん、作動部材は、その場合、例えばクランプ要素、または、例えば駆動手段に作用することができる。クランプ要素が作動部材に作用する一方で、例えばクランプ要素に最初に作用する付勢手段は、本明細書では作動部材に作用するとは理解されないことを理解されたい。従って、第1の付勢部材は、作動部材に直接作用してもよい。
【0057】
第1の付勢手段は、作動部材と同じ方向に同じ速度で移動する任意の要素、例えば、作動部材に接続されて固定される任意の要素に作用することができる。
【0058】
本発明はまた、上述のような少なくとも1つのクランプシステムを備えるプレスブレーキに関する。クランプシステムは、上述の特徴のいずれかを単独でまたは任意の適切な組み合わせで有することができる。
【0059】
クランプシステムは、プレスブレーキの頂部梁内、プレスブレーキの底部梁内、またはその両方に配置することができる。クランプシステムは、当技術分野ではクランプ梁と呼ばれることが多い別個の交換可能なクランプシステムであってもよいし、プレスブレーキの一体部分であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
以下、添付の図面を参照して本発明を更に説明する。
【
図1A】
図1Aは、交換可能なクランプシステムを備えたプレスブレーキの横断面側面図を概略的に示す。
【
図1B】
図1Bは、交換可能なクランプシステムを備えたプレスブレーキの正面図を概略的に示す。
【
図2A】
図2Aは、一体型クランプシステムを備えたプレスブレーキの横断面側面図を概略的に示す。
【
図2B】
図2Bは、一体型クランプシステムを備えたプレスブレーキの正面図を概略的に示す。
【
図3A】
図3Aは、クランプシステムおよび工具を概略的に斜視断面図で示す。
【
図3B】
図3Bは、クランプシステムおよび工具を概略的に横断面図で示す。
【
図3C】
図3Cは、クランプシステムおよび工具を概略的に横断面図で示す。
【
図7A】
図7Aは、別のクランプシステムおよび工具を斜視図で概略的に示す。
【
図7B】
図7Bは、別のクランプシステムおよび工具を側面図で概略的に示す。
【
図7C】
図7Cは、別のクランプシステムおよび工具を側面図で概略的に示す。
【
図9】
図9は、さらに別のクランプシステムの横断面図を概略的に示す。
【
図11A】
図11Aは、細長い梁内の空洞を相互接続する方法における概略的なステップを示す。
【
図11B】
図11Bは、細長い梁内の空洞を相互接続する方法における概略的なステップを示す。
【
図11C】
図11Cは、細長い梁内の空洞を相互接続する方法における概略的なステップを示す。
【
図11D】
図11Dは、細長い梁内の空洞を相互接続する方法における概略的なステップを示す。
【詳細な説明】
【0061】
【0062】
図において、同様の要素には同様の参照番号が付されている。異なる実施形態の対応する要素には、百(100)の倍数だけ増加された参照番号で参照される。
【0063】
図1Aおよび
図1Bは、接地面G上に設置されたプレスブレーキ1を示す。プレスブレーキ1は、頂部梁2と底部梁3を含む。頂部梁2には頂部クランプシステム4が設けられている。クランプシステムは、頂部工具5を取り外し可能に保持する。底部梁3は、底部工具7を取り外せるように保持する底部クランプシステム6を備えている。頂部梁2および底部梁3は、液圧システム8によって互いに近づく方向および離れる方向に移動可能である。したがって、頂部工具5および底部工具7もまた、互いに近づく方向および離れる方向に移動可能である。シートメタルを曲げるには、シートを工具5と7の間に挿入し、次にこれらを互いに向かって移動させる。次に、頂部工具5は、シートメタルを曲げて変形させるために、シートメタルを底部工具7内に押し込む。曲げた後、工具5,7は、液圧システム8を介して頂部梁2を移動させることによって互いから離れるように移動される。クランプシステム4,6は、適切なロックシステムを介してそれぞれ頂部梁2および底部梁3に取り外せるように取り付けられている。従って、クランプシステム4,6を他の工具に適したクランプシステムと交換したり、クランプシステム4,6を取り出して点検することができる。
【0064】
図2Aおよび
図2Bは、同様のプレスブレーキ101を示しており、ここでは、
図1Aおよび
図1Bのプレスブレーキ1と異なる点についてのみ説明する。
図2Aおよび
図2Bのプレスブレーキのクランプシステム104、106は、それぞれ頂部梁102および底部梁103と一体化されている。したがって、クランプシステム104、106は交換可能ではない。クランプシステム104、106によって保持される工具105、107は交換可能である。
【0065】
図3A-
図3Cは、例えば、
図1A-
図2Bに示すプレスブレーキに使用できるクランプシステム204を示す。クランプシステム204は、主要本体として細長い梁209を有する。細長い梁209内の受容空間210は、工具205の一部を収容する。クランプシステムは、作動部材211およびクランプ要素212を更に備える。作動部材211は、上方に非作動位置まで、下方に作動位置まで移動可能である。クランプ要素212は、工具205に係合するために受容空間210内に延びる第1の位置と、工具を解放するために受容空間210から後退する第2の位置との間で移動可能である。クランプ要素212は、係合先端213を有し、この係合先端213は、工具205を受容空間210内に確実にクランプするために工具205内の係合凹部214と協働する。作動位置において、作動部材211は、クランプ要素212と係合し、それを受容空間210に向かって付勢する。
図3Bは、工具205がクランプ要素212によって受容空間210内にクランプされるように、作動位置にある作動部材211を示す。作動部材211は、クランプ要素212に係合するために、傾斜係合面215を有し、この傾斜係合面215は、同様に協働するクランプ要素212の傾斜係合面216に係合する。従って、作動部材211がその作動位置、即ち図において下方に移動するとき、作動部材211の係合面215は、クランプ要素212の係合面216と係合し、その傾斜により、クランプ要素212をその第1の位置(即ち図において左方に)押圧する。
図3Cは、クランプ要素212が受容空間210から第2の位置に後退し、それによって工具205を解放した状態で、作動部材211が非作動位置にあることを示す。
【0066】
作動部材211は、圧力室217内に移動可能に配置されている。圧力室217は、細長い梁209内に直接形成され、これもまた、受容空間210を有する。従って、圧力室217は、細長い梁209内に一体的に形成される。作動部材211には、作動部材211を圧力室217の壁すなわち細長い梁209の内側に密封するシール手段218が設けられている。このように、作動部材211は、圧力室217内で移動可能なピストンとして機能し、したがって、ピストンはシリンダとして機能する。従って、作動部材211は、圧力室217内に流体を導入することによって、その作動位置に向かって押されることができる。このクランプシステム204の圧力室217は、作動部材211を移動させるために、液圧液体を圧力流体として受容するように構成されている。
【0067】
クランプシステム204は、第1の圧縮バネ219の形態の第1の付勢部材を備えている。第1の圧縮バネは、作動部材211に作用する。第1の圧縮バネ219は、クランプ機構204によって規定される押圧方向Pと受容空間210の深さ方向とに対応して垂直に配置されている。第1の圧縮バネ219は、作動部材211を上方に、即ち、その非作動位置に向かって付勢する。従って、圧力室217内の作動液の圧力が停止されると、第1の圧縮バネ219が作動部材211を圧力室217内にさらに押し上げて、作動液を圧力室217から強制的に流出させる。第1の圧縮バネ219は、カバー221によって提供される支持体220上に支持する。カバー221は、クランプ要素212、作動部材211および圧力室217を覆う。カバー221はまた、作動部材211が作動位置を越えて移動するのを制限するために、作動部材211が当たる第1の停止部222を形成する。作動部材211は、第1の停止部222と係合するための移動リミッタ223を有する。第1の圧縮バネ219は、作動部材211内の第1の空洞224内に部分的に延びる。第2の付勢部材は、第2の圧縮バネ225の形態で提供される。第2の圧縮バネ225は、水平方向、即ち、押圧方向Pおよび細長い梁204の長手方向に対して垂直に配置されている。第2の圧縮バネ225は、クランプ要素212の突起226を介してクランプ要素104に作用し、第1の圧縮バネ225は、細長い梁内の第2の空洞227内に部分的に延びる。カバー221はまた、クランプ要素212の第2の位置を超える移動を制限するために、クランプ要素212の突起226と係合する第2の停止部228を提供する。
【0068】
図4Aおよび4Bは、より詳細に上述されたクランプシステム204の細長い梁209を示す。各例において、
図4Aおよび
図4Bの繰り返す要素には参照番号が与えられていない。図から分かるように、複数の圧力室217が、長手方向Lに細長い梁209内に整列されている。圧力室217は、隣接する圧力室217の側壁230間に延びるチャネル229からなる相互接続部を介して互いに接続、即ち、相互接続される。圧力室217は、一端部に開口231を有し、他端部232で閉じている。チャネル229は、前記他端部232に近接して設けられている。一方の圧力室217は、チャネル233を介して細長い梁209の外部に接続されている。
図4Aおよび
図4Bから明らかなように、圧力室217は、細長い梁209内に一体的に配置され、受容空間210を構成する同じ材料片内に配置される。
【0069】
圧力室217は、細長い梁209の外側に到達しないチャネル229を介して相互接続されるので、内部的に相互接続される。
【0070】
図5は、その細長い梁309が2つの別個の構成要素309-1および309-2から構成されるという点で、上述のクランプシステム204とは異なるだけのクランプシステム304を示す。細長い梁の主要本体309-1は、補助本体309-2とは別個に製造され、後から取り付けられてもよい。圧力室317は、補助本体309-2内に形成される。
【0071】
図6は、圧力室417が、細長い梁409を一体的に形成した空洞435内に配置されたシリンダ434内に形成されるという点で、
図3A-
図4Bに関連して説明したクランプシステム204とのみ異なるクランプシステム404を示す。もちろん、
図5に関して説明したように、補助本体内に空洞435を設けることが可能であり、それによって
図5および6の異なる特徴を組み合わせることが可能である。
【0072】
図7A-
図7Cは、後述する特徴において
図3A-
図4Bに関連して説明されるクランプシステム204とは異なるだけのクランプシステム504を示す。第1に、細長い梁509-1、509-2は、2つの別個の構成要素509-1および509-2からなる。細長い梁の主要本体509-1は、補助本体509-2とは別個に製造され、後から取り付けられてもよい。圧力室217は、変形可能な壁を有する空気ホース536によって形成される。ホース536は、細長い梁509-1、509-2の長手方向Lに、空洞535を介して延びる。ホース536は、流体が圧力室517内で加圧されると膨張し、圧力が解放されると収縮する。ホース536が膨張すると(
図7B参照)、それは作動部材511をその作動位置に押す。第1の圧縮バネ519は、作動部材511を上方に押すことによって、圧力が低下したときに流体を圧力室517から押し出すのを助ける(
図7C参照)。また、第2の圧縮バネ525と係合するように、クランプ要素512の突起526がクランプ要素512の上側に設定されている。これにより、第2の停止部528と係合するためのクランプ要素512の端面537が解放される。さらに、クランプ要素512には、クランプ要素512が第2の位置にあるとき、即ち、図の右方に移動したときに、第1の圧縮バネ519を収容するための凹部538が設けられている。
図3A-
図4Bの実施形態の場合のように、作動部材の第1の停止部または移動リミッタは提供されない。最後に、受容空間510内側にフックを形成する突起599が設けられている。突起599は、工具505を吊り下げるために使用される。挿入または取外しのために、工具505は、突起599の周りを移動される必要がある。したがって、受容空間510は、幅dがより小さい工具505と比較して、比較的大きい幅Dを有する。従って、クランプ要素512は、工具505をクランプするための比較的大きな行程を有する。
【0073】
図8は、細長い梁709が1つの材料片から作成されるという点で、
図7A-
図7Cのクランプシステム504とは異なるクランプシステム604を示す。従って、空洞635は、細長い梁609の一片内に一体的に形成される。
【0074】
図9は、底部クランプシステム706を示すが、この底部クランプシステム706は、クランプ要素712の突起725の異なる位置から離れて、
図2A-
図3Bに関連して説明されたクランプシステム204の特徴を有する。突起726は、端面737を自由に残して第2の停止部728と協働する。
【0075】
明らかに、底部クランプシステム706は、空洞内の別個の細長い梁及び/又は別個のシリンダ及び/又は圧力室としてのホースのような上述の特徴のいずれかを適用することによって変更することができる。
【0076】
【0077】
図11A-
図11Dは、細長い梁809内の空洞817が内部的に相互接続可能な方法を示す。第1に、細長い梁809が設けられ(
図11A参照)、空洞817がその中にある。空洞はまだ相互接続されていない。次に(
図11B参照)、ミリング工具が1つの空洞817の開口831を通して挿入される。ミリング工具は、細いステム850と、より大きなヘッド851とを有する。ミリング工具が挿入方向Iに挿入される(
図11C参照)。ミリング工具が別の空洞817に向かって機械加工方向Mに移動され、それによって細長い梁809の材料が侵食され、2つの空洞間にチャネル829が作り出される。
図11Dに示すように、空洞817は、その後、相互接続される。
【0078】
図12は、
図5に関連して説明したクランプシステム304とは異なる別のクランプシステム904を示しており、これは、第1の圧縮バネ919が、作動部材911内の空洞内ではなく作動部材104の周囲に設けられている点で異なる。
図12には、第1の停止部が示されていない。本出願に示される他のクランプシステムの第1の圧縮バネもまた、それらのそれぞれの作動部材の周囲に設けることができる。
【0079】
本発明は、多数の特定の実施例および実施形態を参照して上記に説明したが、本発明はこれらに限定されない。その代わりに、本発明は、特許請求の範囲によって定義される主題事項も包含するが、これは以下に続く。
【国際調査報告】