(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-22
(54)【発明の名称】格納式切断ガイド
(51)【国際特許分類】
A61B 17/14 20060101AFI20230815BHJP
A61B 17/15 20060101ALI20230815BHJP
A61B 17/32 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A61B17/14
A61B17/15
A61B17/32 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506178
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2021071495
(87)【国際公開番号】W WO2022023568
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521466507
【氏名又は名称】ガニュメート ロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クラウス,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】エル ゲジ,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ブルンヴェン,ブレイズ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL01
4C160LL12
4C160LL28
(57)【要約】
本発明は、ケーシング(12)、切断刃(16)、ケーシング(12)に接続されている摺動機構(20)、摺動機構(20)によってケーシング(12)に結合されている摺動ユニット(22)であって、さらに摺動機構(20)と共に摺動することにより協働する摺動ユニット(22)、摺動ユニット(22)によって保持されている刃維持要素(24)であって、刃(16)を摺動軸(X’)と位置合わせされた状態に維持するために切断刃(16)と協働するように設計されている刃維持要素(24)、摺動ユニット(22)によって保持されている当接要素(26)であって、当接する体の一部に当接させることを目的とする当接要素(26)を備えた外科用切断器具(10)に接続することを目的とする切断ガイド(18)に関する。摺動機構(20)および摺動ユニット(22)は使用構成において切断刃(16)の下に位置決めされるように構成されており、摺動ユニット、刃維持要素および当接要素は、切断ガイドが作動されるときに解剖学的要素に関して静的なままである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動鋸などの外科用切断器具(10)であって、
・切断面(P)に従って患者の解剖学的要素(A)を切断することを目的とする切断刃(16)、
・前記切断刃(16)に接続されているモータを囲むケーシング(12)、および
・切断ガイド(18)であって、
・前記ケーシング(12)に接続されている摺動機構(20)、
・前記摺動機構(20)によって前記ケーシング(12)に結合されている摺動ユニット(22)であって、前記切断面(P)に感覚的に平行な摺動軸(X’)を画定しており、前記摺動機構(20)と共に摺動することにより協働し、かつ前記ケーシング(12)に沿って摺動することを目的とする摺動ユニット(22)、
・前記摺動ユニット(22)によって保持されている刃維持要素(24)であって、前記切断刃(16)を前記摺動軸(X’)と位置合わせされた状態に維持するために前記切断刃(16)と協働するように構成されている刃維持要素(24)、
・前記摺動ユニット(22)によって保持されている当接要素(26)であって、前記患者の当接する体の一部に当接することを目的とする当接要素(26)
を備える、切断ガイド(18)
を備える、外科用切断器具(10)であり、
前記摺動機構(20)および前記摺動ユニット(22)は使用構成において前記切断刃(16)の下に位置決めされるように構成されており、かつ
前記摺動ユニット(22)、前記刃維持要素(24)および前記当接要素(26)は、前記切断ガイド(18)が前記患者の解剖学的要素(A)に向かって押される外科用切断器具(10)から生じる圧力によって作動されるときに前記患者の解剖学的要素(A)に関して静的なままである、外科用切断器具(10)。
【請求項2】
前記切断刃(16)は前端(16A)および後端(16B)を示し、前記前端(16A)は切断端であり、前記後端(16B)は前記ケーシングに接続されている端部(12)であり、前記切断ガイド(18)は2つの構成、すなわち
・前記刃維持要素(24)が前記切断刃(16)の前端(16A)の近くで前記刃(16)と協働する静止構成、
・前記刃維持要素(24)が前記切断刃(16)の後端(16B)の近くで前記刃(16)と協働する動作構成
を示し、
前記切断ガイド(18)は、前記切断ガイド(18)が作動されるときに前記静止構成から前記動作構成に変化する、請求項1に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項3】
前記摺動機構(20)は受動機構である、請求項1または2のどちらか1項に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項4】
前記摺動機構(20)は、前記切断ガイド(18)が作動するのを停止するときに前記切断ガイド(18)が前記動作構成から前記静止構成に変化するのを可能にするために、前記摺動ユニット(22)と協働するように構成されている少なくとも1つのバネ要素(34)を備える、先行する請求項に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項5】
前記刃維持要素(24)は、磁化により前記切断刃(16)と協働することを目的とする磁石(28)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項6】
前記刃維持要素(24)は、前記切断刃(16)を受け入れることを目的とするスロット(29)を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項7】
前記当接要素(24)は前記摺動軸(X’)に感覚的に垂直な軸(Y)に沿って前記切断ガイド(18)を阻止するように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項8】
前記当接要素(24)は、前記切断ガイド(18)を前記患者の当接する体の一部に可逆的に固定することを目的とする少なくとも1つのスパイクを示す、先行する請求項のいずれか1項に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項9】
前記当接要素(24)は、前記切断ガイド(18)を前記摺動軸(X’)に感覚的に垂直な前記軸(Y)の方向に沿って前記患者の当接する体の一部に可逆的に固定することを目的とする少なくとも1つの横方向隆起部を示す、先行する請求項のいずれか1項に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項10】
前記当接要素(24)は、前記患者の当接する体の一部の自然な曲線に適合させることを目的とする丸い形状を示す、先行する請求項のいずれか1項に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項11】
前記当接要素(24)は、その操作者の手の快適かつ安全な位置決めを可能にするように構成された人間工学的形状を示す、先行する請求項のいずれか1項に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項12】
前記切断ガイド(18)は前記ケーシング(12)と一体形成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の外科用切断器具(10)。
【請求項13】
前記摺動ユニット(22)は前記切断刃(16)の下に位置決めされるように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の外科用切断器具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外科用切断器具の分野に関し、より詳細には外科用切断ガイドの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の骨を切断するときに、特に例えば人工膝関節全置換術などの関節置換術の骨準備段階中に、外科医は周知の外科用切断器具、通常は矢状鋸を使用する。そのような器具は、切断面Pとして知られている面P内で振動する振動刃を備える。切断手術中に、外科医は特定の力/圧力を当該器具に加える場合がある。この圧力下で、当該刃はその薄さにより骨に接触するときに曲がる傾向があり、それにより当該刃を元の切断面から逸脱させる。本発明の目的は、当該刃を切断面Pに可能な限り近くに維持するために、この屈曲作用を減らすことにある。
【0003】
そうするために、本出願は格納式切断ガイドに関するものである。
【0004】
本切断ガイドは必要な切断を行う間に鋸刃を適所に保持するように構成されているため、鋸刃のための切断ガイドを用いて座屈を減らすことができる。切断ガイドの使用はより長い刃の使用を必要とする場合が多く、それによりさらにスカイビング作用がもたらされる可能性がある。さらに現在使用されている切断ガイドの大部分は、最初に切断ガイドを所望の位置で骨に固定することを必要とし、従って外科手術時間が延びる。さらに、実際に入手可能な切断ガイドは嵩高く、外科医の視野を塞ぎ、かつ切断手術中に外科医を煩わす。
【0005】
最後に、いくつかの切断器具は、ロボット切断システムの一部である能動制御システムを用いて監視される切断ガイドを使用する。
【0006】
この能動制御システムは、外科医から彼らの動きの自由を奪い、制御システムの繰り返しの補正は若干の遅滞を引き起こし、このようにして操作能力および切断手術の正確さの両方を低下させる場合がある。さらに能動制御システムは、切断刃をガイドする機能に関して高価な自動化機器を必要とする。また部分的に記載されているこのシステムは当該刃を隠し、それにより操作者の視野を小さくする。
【0007】
ロボット手術における目標の1つは切断の正確性を高め、かつ切断時間を減らすことであるが、これは鋸刃が最初に所望の位置で切断することができない場合ならびに外科医が鋸および骨を同時にはっきりと見ることができない場合には難しくなり得る。
【0008】
本出願はそれらの欠点を克服することを目的とする。
【発明の概要】
【0009】
従って、それらの欠点を克服するために本発明は、
振動鋸などの外科用切断器具であって、
・切断面に従って患者の解剖学的要素を切断することを目的とする切断刃、
・前記切断刃に接続されているモータを囲むケーシング、および
・切断ガイド
を備え、切断ガイドは、
・ケーシングに接続されている摺動機構、
・摺動機構によってケーシングに結合されている摺動ユニットであって、切断面に感覚的に平行な摺動軸を画定しており、摺動機構と共に摺動することにより協働し、かつケーシングに沿って摺動することを目的とする摺動ユニット、
・摺動ユニットによって保持されている刃維持要素であって、切断刃を摺動軸と位置合わせされた状態に維持するために切断刃と協働するように構成されている刃維持要素、
・摺動ユニットによって保持されている当接要素であって、患者の当接する体の一部に当接することを目的とする当接要素
を備え、
摺動機構および摺動ユニットは使用構成において切断刃の下に位置決めされるように構成されており、かつ
摺動ユニット、刃維持要素および当接要素は、本切断ガイドが前記患者の解剖学的要素に向かって押される外科用切断器具から生じる圧力によって作動されるときに患者の解剖学的要素に関して静的なままである、外科用切断器具に関する。
【0010】
切断を行うために外科用切断器具が外科医によって保持されているときには(すなわち使用構成)、摺動機構および摺動ユニットは有利には、切断手術中に刃全体が外科医に見えるように切断刃の下に位置決めされている。従って本発明では、本切断ガイドの摺動機構および摺動ユニットのスマートな位置決めにより、切断プロセス中に生じる望ましくないスカイビング(例えば、意図された切断面からの逸脱および/または意図された進入点からの逸脱)を回避すると共に、切断刃全体を外科医の完全な視野に集めるのを可能にする。
【0011】
一実施形態によれば、当接要素は使用構成において切断刃の下に位置決めされるように構成されている。
【0012】
一実施形態によれば、刃維持要素も使用構成において切断刃の完全に下に位置決めされるように構成されている。この構成では、本切断ガイドの全ての要素は使用構成において切断刃の完全に下に位置決めされており、これは外科医にさらにより自由な視野を与え、全てが望ましくないスカイビングにより正確さを失うことはない。実際にこの構成であっても、当該刃は有利には刃維持要素によって支持されている。
【0013】
一実施形態によれば、摺動機構は受動機構である。この実施形態は有利には遅滞のリスクおよび電子的故障のリスクを防ぐのを可能にする。あらゆる種類の複雑な電子装置が存在しないため、本発明に係る外科用切断器具は軽量であり、取り扱いが容易であり、かつ切断手術の滑らかさを低下させない。
【0014】
本発明に係る外科用切断器具は、互いに別々に、あるいは互いに組み合わせて解釈される以下の実施形態に示されている以下の特徴のうちの1つまたはいくつかを含んでいてもよい。
【0015】
一実施形態によれば、切断刃は前端および後端を示し、前端は切断端であり、後端はケーシングに接続されている端部である。
【0016】
一実施形態によれば、本切断ガイドは2つの構成、すなわち
・刃維持要素が切断刃の前端の近くで当該刃と協働する静止構成、
・刃維持要素が切断刃の後端の近くで当該刃と協働する動作構成
を示し、
本切断ガイドは、本切断ガイドが作動されるときに静止構成から動作構成に変化する。
【0017】
一実施形態によれば、摺動機構が受動機構であるときには、それは本切断ガイドが作動するのを停止するときに本切断ガイドが動作構成から静止構成に変化するのを可能にするために、摺動ユニットと協働するように構成されている少なくとも1つのバネ要素を備える。
【0018】
一実施形態によれば、刃維持要素は、磁化により切断刃と協働することを目的とする磁石を備える。
【0019】
一実施形態によれば、刃維持要素は切断刃を受け入れることを目的とするスロットを備える。
【0020】
一実施形態によれば、刃維持要素は切断刃の下に位置決めされている。
【0021】
一実施形態によれば、当接要素は、摺動軸に感覚的に垂直な軸に沿って本切断ガイドを阻止するように構成されている。
【0022】
一実施形態によれば、当接要素は、本切断ガイドを患者の当接する体の一部に可逆的に固定することを目的とする少なくとも1つのスパイクを示す。
【0023】
一実施形態によれば、当接要素は、摺動軸に感覚的に垂直な軸の方向に沿って本切断ガイドを患者の当接する体の一部に可逆的に固定することを目的とする少なくとも1つの横方向隆起部を示す。
【0024】
一実施形態によれば、当接要素は、患者の当接する体の一部の自然な曲線に適合させることを目的とする丸い形状を示す。
【0025】
一実施形態によれば、当接要素は、操作者の手の快適かつ安全な位置決めを可能にするように構成された人間工学的形状を示す。
【0026】
一実施形態によれば、本切断ガイドはケーシングと一体形成されている。
【0027】
一実施形態によれば、本発明は、振動鋸などの外科用切断器具に接続されるのを目的とする切断ガイドであって、前記器具はモータを囲むケーシングを備え、前記モータは切断刃に接続されており、切断刃は切断面に従って患者の解剖学的要素を切断することを目的としている切断ガイドに関する。本切断ガイドは、
・ケーシングに接続されている摺動機構、
・摺動機構によってケーシングに結合されている摺動ユニットであって、ケーシングに沿って摺動することを目的としており、切断面に感覚的に平行な摺動軸を画定しており、さらに摺動機構と共に摺動することにより協働する摺動ユニット、
・摺動ユニットによって保持されている刃維持要素であって、切断刃を摺動軸と位置合わせされた状態に維持するために当該刃と協働するように設計されている刃維持要素、
・摺動ユニットによって保持されている当接要素であって、患者の当接する体の一部に当接することを目的とする当接要素
を備える。
【0028】
摺動機構は受動機構であり、摺動ユニット、刃維持要素および当接要素は、前記患者の解剖学的要素に向かって押される切断器具から生じる圧力によって本切断ガイドが作動されるときに患者の解剖学的要素に関して静的なままである。
【0029】
本発明に係る切断ガイドは受動機構に依存しているため、遅滞のリスクおよびどんな電子的故障のリスクも存在しない。あらゆる種類の複雑な電子装置が存在しないため、本発明に係る切断ガイドは軽量であり、取り扱いが容易であり、かつ切断手術の滑らかさを低下させない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る第1の実施形態の切断ガイドを装着された外科用切断器具の斜視図である。
【
図2】本発明に係る同じ実施形態の切断ガイドを装着された外科用切断器具の下面である。
【
図3】本発明に係る第2の実施形態の切断ガイドを装着された外科用切断器具の下面である。
【
図4】本発明に係る第2の実施形態の切断ガイドを装着された手術器具の上面図である。
【
図5】本発明に係る異なる実施形態の当接要素の詳細な斜視図である。
【
図6】本発明に係る異なる実施形態の当接要素の詳細な斜視図である。
【
図7】本発明に係る異なる実施形態の当接要素の詳細な斜視図である。
【
図8】本発明に係る異なる実施形態の当接要素の詳細な斜視図である。
【
図9】本発明に係る他の実施形態の維持要素の詳細な斜視図である。
【
図10】本発明に係る第3の実施形態の切断ガイドを装着された外科用切断器具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1および
図10に示すように、外科用切断器具10は、切断方向を画定する伸長軸Xに沿って延在する一般的な細長い形状を示す。外科用切断器具10は、前記伸長軸Xに沿って延在するケーシング12を備える。ケーシング12は手術器具10を作動させることを目的とするモータ(表されていない)を囲んでいる。ケーシング12は、互いに結合されている前面12A、後面12B、伸長軸Xに感覚的に垂直な軸Yに従って上面12C、下面12D、横軸Zに従って2つの側面12Eを示す。
図1、
図2、
図3および
図10に示されている例では、ケーシング12は、約150mmの長さおよび40mmの幅の円筒状の形状を示す。外科用切断器具10はケーシング12に接続されているハンドル14を用いて操作者、特に外科医によって取り扱われることを目的としている。
図1、
図2、
図3および
図10に示されている例では、ハンドル14は下面12Dから延在している。この場合、外科用切断器具10が操作者によって使用されるときに(すなわち使用構成において)、下面12Dは彼らの視野外にある。
【0032】
本出願では、「感覚的に」という用語は測定誤差限界を指す。
【0033】
本出願では、各種要素に関する「前」および「後」という用語は切断方向に関して定められており、「前」は切断方向に沿って正の向きであり、「後」は切断方向に沿って負の向きである。
【0034】
手術器具10は切断刃16をさらに備える。この切断刃16は患者の解剖学的要素A、例えば骨を切断することを目的としている。この切断は、導入の箇所で既に述べたように、切断面Pの中で行われる。切断刃16は2つの端部、すなわち前端16Aおよび後端16Bを示す。前端16Aは解剖学的要素Aを切断することを目的とする端部であり、すなわちそれは切断端である。後端16Bはケーシング12内部でモータに接続されている端部であり、従ってケーシング12に接続されている。周知の方法で、切断刃16はケーシング12の前面12Aの近くに位置するY軸に感覚的に平行な回転軸の周りにおいて面P内で振動する。切断刃16の角回転は約4度である。
図1、
図2、
図3および
図10の例では、切断刃は生体適合性ステンレス鋼製であり、約110mmの長さである。
【0035】
本発明によれば、切断手術中に切断刃16が曲がるのを防ぐために、手術器具10は切断ガイド18を示す。この切断ガイド18はケーシング12に取り付けるかまたは取り外すことができる別個の部品であってもよい。
図10に示されている実施形態では、切断ガイド18は締付けシステム17を用いて手術器具10に取り付けられている。また切断ガイド18は
図1、
図2および
図3に示すようにケーシング12と一体形成されていてもよく、あるいはケーシング12内に一体化されていてもよい。
【0036】
本発明によれば、切断ガイド18は、
・ケーシング12に接続されている摺動機構20、
・摺動機構20によってケーシング12に結合されている摺動ユニット22、
・摺動ユニット22によって保持されている刃維持要素24、
・摺動ユニット22によって保持されている当接要素26
を備える。
【0037】
摺動ユニット22はケーシング12に沿って摺動させることを目的としている。従って摺動ユニット22は摺動軸X’を画定しており、これは
図1、
図2および
図3に示されている実施形態では手術器具10の伸長軸Xと感覚的に位置合わせされている。摺動軸X’はさらに、切断面Pと感覚的に平行である。摺動ユニット22は前端22Aおよび後端22Bを示す。摺動ユニット22の後端22Bは摺動機構20と協働する。より詳細には、
図1、
図2および
図3に示すように、摺動ユニット22は摺動機構20を通って移動する。
【0038】
図1および
図2に示されている実施形態では、摺動ユニット22は少なくとも1つの摺動ロッド、特に2つの摺動ロッドを備える。各摺動ロッドは摺動軸X’に平行であって、ケーシング12の1つの側面12Eに沿って延在している。2つの摺動ロッドの存在により手術中に安定性およびバランスが高まる。
図3に示されている実施形態では、摺動ユニット22は単一の摺動ロッドを備える。この実施形態では、摺動ロッドは一般的なT字形状を示す。このT字形状により、ロッドが小型のままでありながらも向上された剛性を示し、かつさらに摺動ロッドが軸X’の周りで回転しないようにすることができる。単一のロッドはケーシング12の下面12Dに沿って延在しており、従って
図4から分かるように、手術中に操作者には見えない。
【0039】
既に述べたように、摺動ユニット22は刃維持要素24および当接要素26を保持している。より詳細には
図1、
図2および
図3に示すように、刃維持要素24および当接要素26は摺動ユニット22の前端22Aによって保持されている。
【0040】
刃維持要素24は、切断刃16を摺動軸X’と位置合わせされた状態に維持するために切断刃16と協働するように設計されている。手術中に、切断刃16と維持要素24との協働により、切断刃16は切断面P内に位置合わせされたままになる。より詳細には、刃維持要素24は、切断ガイド18および切断刃16がどちらもケーシング12に取り付けられているときに、切断刃16が維持要素24と接触するように位置決めする。従って刃維持要素24は、切断刃16を摺動ユニット22と位置合わせさせることを目的としており、従って切断手術中に切断刃16をガイドする。従って手術中に、軸Yに加えられる力は摺動ユニット22によって支持され、それにより当該刃が曲がらないようにする。
【0041】
図1、
図2および
図3に示されている実施形態では、刃維持要素24は矩形形状を示しており、磁化により切断刃16と協働することを目的とする磁石28をその上面に備える。この実施形態では、刃維持要素24の上面(軸Yに従って)は切断刃16の下面(軸Yに従って)と協働する。より詳細には、磁石28は磁化により切断刃16を保持することを目的としている。
図1に示されている実施形態の特定の事例では、磁石28は凹部内に位置しており、切断刃16が磁石28の上で擦れるのを防止し、かつその結果生じる摩耗を防止する。
図9に示されている他の実施形態では、刃維持要素24は切断刃16を受け入れることを目的とするスロット29を備える。
【0042】
1つの有利な実施形態では、外科用切断器具10の使用を容易にするために、刃維持要素24は好ましくは切断刃16の下に(Y軸に従って)位置決めされている。このようにして刃維持要素24は操作者の視野外となり、切断手術を妨害しない。
【0043】
当接要素26は、患者の当接する体の一部に当接することを目的としている。この当接する体の一部は患者の切断される解剖学的要素Aであってもよく、そうでなくてもよい。当接要素26は、前端26Aおよび後端26Bを示す。
図1、
図5、
図6、
図7および
図9に示されている実施形態では、当接要素26の後端26Bは刃維持要素24に取り付けられている。当接要素26は刃維持要素24と一体形成することができ、従って2つの要素24、26は同じ部品の一部である。患者の当接する体の一部が例えば骨のような体の硬い部分である場合、当接要素26は切断ガイド18をそこに可逆的に固定することを目的とする少なくとも1つのスパイクを示してもよい。好ましくは当接要素26の前端26Aは、
図5に示すように一連の規則的に位置決めされているスパイクを含む。
図6、
図7および
図8に示されている別の実施形態では、当接要素26は、伸長軸XおよびY軸に感覚的に垂直なZ軸に沿って延在する少なくとも1つの横方向隆起部を示す。この隆起部は、切断ガイド18をY軸の方向に沿って患者の体の硬い部分または軟らかい部分に可逆的に固定することを目的としている。当接要素26の前端26Aは、Y軸に沿った本切断ガイド(従って手術器具10)の移動を阻止するための少なくとも1つの横方向隆起部も示していてもよい。好ましくは
図6、
図7および
図8に示すように、当接要素26の前端26Aは一連の横方向隆起部を示す。それらの隆起部はY軸に沿って切断ガイド18を阻止し、かつ切断面Pと位置合わせされた平らな移動のみを可能にする。それらの隆起部は、患者の体の一部を損傷するのを回避するように成形されている。当接要素26は、
図7に示すように前記体の一部の自然な曲線に適合させることを目的とする丸い形状を有していてもよい。従って当接要素26は、切断ガイド18と患者の切断される解剖学的要素Aとの制御された接触界面を提供する。
【0044】
手術中に当接要素26と刃維持要素24との協働により切断手術中に信頼性および強度の大きな獲得が可能になる。すなわち、刃維持要素24が切断器具10に相対的に切断刃16を支持およびガイドする間に、当接要素26は当接する体の一部に位置し、従って切断器具10を患者の体に相対的にガイドする。従ってこの協働は、切断手術においてより良好な安定性およびより良好な正確性を提供する。
【0045】
図8に示されているさらなる実施形態では、当接要素26の後端26Bは、人間工学的な握りやすい形状を示す。これは操作者が安全かつ快適な方法で、彼らの自由な手H(ハンドル14を保持していない手を意味する)を当接要素26の上に位置決めするのを可能にし、切断手術中により良好な触覚、特に切断されている解剖学的要素Aにおけるあらゆる変化、例えば骨の硬い皮質組織からより軟らかい髄内の内側部分への移行のより良好な感覚をもたらす。
【0046】
既に述べたように、摺動ユニット22は摺動機構20と共に摺動することにより協働する。従って、切断ガイド18と外科用切断器具10との間で許容される唯一の自由度は摺動軸X’に沿った平行移動である。
【0047】
摺動機構20は受動機構である。これは、切断ガイド18が切断手術中に当接要素26を用いて患者の解剖学的要素Aおよび/または患者の当接する体の一部に対して操作者によって印加される圧力により手動でのみ作動されることを意味する。より詳細にはそれは、切断手術中に摺動ユニット22、刃維持要素24および当接要素26は、切断ガイド18が前記患者の解剖学的要素Aに向かって押される外科用切断器具10から生じる圧力によって作動されるときに患者の解剖学的要素Aに関して静的なままであることを意味する。
【0048】
図10および
図3に示すように、摺動機構20はケーシング12に関して外部機構または内部機構であってもよい。摺動機構20は少なくとも1つの中空シャフト30を備え、各中空シャフト30はケーシング12の前端12Aで開口しており、各中空シャフト30は摺動ユニット22の摺動ロッドを受け入れるように構成されている。
図1および
図2に示されている実施形態では、摺動機構は2つの中空シャフト30を示し、各シャフト30はケーシング12の1つの側面12Eに沿って延在している。
図3および
図4に示されている実施形態では、中空シャフト30はケーシング12の下面12Dに沿って延在しており、従って切断手術中に操作者には見えない。
【0049】
摺動機構20は、切断ガイド18が2つの構成、すなわち
・刃維持要素24が切断刃16の前端16Aの近くで刃16と協働する静止構成、
・刃維持要素24が切断刃16の後端16Bの近くで刃16と協働する動作構成
を示すのを可能にする。
【0050】
切断ガイド18が作動されるときには(操作者が当接要素26を用いて患者の解剖学的要素Aおよび/または患者の当接する体の一部に接する状態で切断器具10および切断ガイド18に圧力を加えるときを意味する)、切断ガイド18はその静止構成からその動作構成に変化する。
【0051】
図1および
図2に示すように、いくつかの実施形態では、摺動機構20は少なくとも1つのバネ要素34を備える。バネ要素34は機械バネまたは代わりとしてガススプリングであってもよい。各バネ要素34は、各中空シャフト30または穴32の内部の摺動機構の後端に埋め込まれている。各バネ要素34は摺動ユニット22の後端と協働するように構成されており、より詳細には各バネ要素34は摺動ユニット22の各摺動ロッドの後端と協働するように構成されている。この協働により、切断ガイド18が作動するのを停止するときに切断ガイド18がその動作構成からその静止構成に変化することが可能になる。
【0052】
図1~
図10に示すように、摺動機構20および摺動ユニット22は、外科用切断器具が使用構成にある(すなわち、切断を行うために頭部が外科医によって保持されている)ときに切断刃16の下に位置決めされるように構成されている。この設計のおかげで、摺動機構20は、刃維持要素24が切断刃16を患者の解剖学的要素Aの近くで常に支持するのを可能にする。これは、切断ガイド18と刃16との間での応力分布の最適化を保証し、かつ刃16の座屈を回避すると共に、外科医が当該刃および手術部位の明視を維持するように視界の妨害を最小限に抑える。従って本発明は、患者の解剖学的要素Aに可能な限り近くにさらなる支持点をそれに与えることにより刃16の座屈を減らす。
【国際調査報告】