IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エグザクト サイエンシーズ デベロップメント カンパニー,エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】スルホン化DNAの精製
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230816BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20230816BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230816BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C12N15/10 114Z
C12N15/10 112Z
C12N15/10 110Z
C12Q1/6806 Z
C12M1/00 A
C12M1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505706
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 US2021043769
(87)【国際公開番号】W WO2022039904
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/058,179
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518065773
【氏名又は名称】エグザクト サイエンシーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ラグランド,エヴァン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ギャグラット,ズービン
(72)【発明者】
【氏名】ドマニコ,マイケル ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA23
4B029BB20
4B029CC02
4B029CC04
4B029CC10
4B029CC13
4B029HA01
4B029HA10
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QS15
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、化学修飾された、具体的には、スルホン化されたDNAの精製のための方法及びシステムを提供する。加えて、本開示は、シリカビーズなどのシリカ支持体を使用した、スルホン化DNAの精製、及び、シリカ表面にスルホン化DNAを結合するための酸性条件を改善した、バイサルファイト変換のための方法及びシステムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性結合溶液中でスルホン化DNAとシリカ支持体とを組み合わせることを含み、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAの等電点(pH(I))以下のpHを有し、前記スルホン化DNAが、前記シリカ支持体に結合される、方法。
【請求項2】
前記シリカ支持体が、粒子、ビーズ、及び繊維のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリカ支持体が、磁性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性結合溶液の前記pHが、5未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性結合溶液の前記pHが、2.0~4である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性結合溶液が、カオトロピック塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カオトロピック塩が、塩酸グアニジン(GuHCl)及びグアニジンイソチオシアネート(GITC)のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、一本鎖非スルホン化DNAまたは部分的スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートして、前記スルホン化DNAを生成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記スルホン化試薬が、亜硫酸水素アンモニウム及び亜硫酸水素ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
i)スルホン化DNAに結合されたシリカ支持体を洗浄することと、
ii)前記スルホン化DNAを脱スルホン化して、脱スルホン化DNAを形成することと、
iii)前記シリカ支持体から前記脱スルホン化DNAを溶出することと、のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
非スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートすることが、前記スルホン化DNAの前記pH(I)以上のpHを有するスルホン化反応溶液中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記酸性結合溶液中で前記スルホン化DNAと前記シリカ支持体とを組み合わせる前に、前記スルホン化反応溶液の少なくとも一部が、前記スルホン化DNAから除去される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記酸性結合溶液中で前記スルホン化DNAと前記シリカ支持体とを組み合わせる前に、前記スルホン化反応溶液の実質的に全てが、前記スルホン化DNAから除去される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スルホン化反応溶液の少なくとも一部が、サイズ排除濾過によって前記スルホン化DNAから除去される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記酸性結合溶液が、前記スルホン化反応溶液中の前記スルホン化DNAに酸性成分を添加することによって形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記酸性成分が、酸性溶液である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酸性成分が、酸性の酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン溶液のうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記酸性成分が、カオトロピック塩を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記カオトロピック塩が、GuHCl GITCのうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
脱スルホン化DNAを調製する方法であって、
i)一本鎖非スルホン化DNAまたは部分的スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートして、スルホン化反応混合物中でスルホン化DNAを生成することと、
ii)前記スルホン化反応混合物を、
a)酸性成分、
b)カオトロピック塩、及び
c)シリカ支持体と組み合わせて、
酸性結合溶液を形成することであって、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAの等電点(pH(I))以下のpHを有し、前記スルホン化DNAが、前記シリカ支持体に結合される、前記形成することと、
iii)前記シリカ支持体に結合されたスルホン化DNAを前記酸性結合溶液から分離することと、
iv)前記スルホン化DNAが脱スルホン化されている条件下で、分離されたスルホン化DNAを処理することと、を含む、前記方法。
【請求項21】
前記非スルホン化DNAが、1つ以上の非メチル化シトシンヌクレオチドを含み、前記脱スルホン化DNAが、1つ以上のデオキシウラシルヌクレオチドを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記スルホン化DNAが脱スルホン化されている条件下で、分離されたスルホン化DNAを処理することが、スルホン化DNAを脱スルホン化溶液と組み合わせることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記脱スルホン化溶液が、前記シリカ支持体に結合されたスルホン化DNAと組み合わされる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
カオトロピック塩を含む酸性結合溶液中にスルホン化DNA及びシリカ支持体を含む組成物であって、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAのpH(I)以下のpHを有し、前記スルホン化DNAが、前記シリカ支持体に結合される、前記組成物。
【請求項25】
前記カオトロピック塩が、GuHCl及びGITCのうちの少なくとも1つを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記酸性結合溶液が、酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸緩衝液のうちの少なくとも1つを含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記酸性結合溶液が、クエン酸緩衝液を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記酸性結合溶液が、亜硫酸水素塩を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項29】
前記亜硫酸水素塩が、亜硫酸水素アンモニウムである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記酸性結合溶液の前記pHが、5未満である、請求項24に記載の組成物。
【請求項31】
前記酸性結合溶液の前記pHが、2.0~4である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
i)バイサルファイト試薬溶液またはバイサルファイト試薬溶液を調製するための成分と、
ii)シリカ支持体と、
iii)スルホン化DNAのpH(I)以下のpHを有する酸性成分と、を含む、キット。
【請求項33】
前記バイサルファイト試薬溶液が、スルホン化DNAの前記pH(I)を超えるpHを有する、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記酸性成分が、酸性溶液である、請求項32に記載のキット。
【請求項35】
前記酸性成分が、酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸緩衝液のうちの少なくとも1つを含む、請求項33に記載のキット。
【請求項36】
カオトロピック塩を更に含む、請求項32に記載のキット。
【請求項37】
前記酸性成分が、カオトロピック塩を含む、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記カオトロピック塩が、GuHCl及びGITCのうちの少なくとも1つを含む、請求項36に記載のキット。
【請求項39】
前記シリカ支持体が、粒子、ビーズ、及び繊維のうちの少なくとも1つを含む、請求項32に記載のキット。
【請求項40】
前記シリカ支持体が、磁性である、請求項32に記載のキット。
【請求項41】
前記酸性成分の前記pHが、5未満である、請求項32に記載のキット。
【請求項42】
前記酸性成分の前記pHが、2.0~4である、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
酸性結合溶液中でスルホン化DNAとシリカ支持体とを組み合わせることを含む方法であって、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAの等電点(pH(I))以下のpHを有し、スルホン化DNAが、前記シリカ支持体に結合され、前記シリカ支持体が、好ましくは、粒子、ビーズ、及び繊維のうちの少なくとも1つを含み、前記シリカ支持体が、好ましくは磁性である、前記方法。
【請求項44】
前記酸性結合溶液の前記pHが、5未満、好ましくは4未満、好ましくは約2.0~4である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記酸性結合溶液が、カオトロピック塩を含み、前記カオトロピック塩が、好ましくは塩酸グアニジン(GuHCl)及びグアニジンイソチオシアネート(GITC)のうちの少なくとも1つを含む、請求項43または請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記方法が、一本鎖非スルホン化DNAまたは部分的スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートして、前記スルホン化DNAを生成することを更に含む、請求項43~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記スルホン化試薬が、亜硫酸水素アンモニウム及び亜硫酸水素ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
i)スルホン化DNAに結合されたシリカ支持体を洗浄することと、
ii)前記スルホン化DNAを脱スルホン化して、脱スルホン化DNAを形成することと、
iii)前記シリカ支持体から前記脱スルホン化DNAを溶出することと、のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項43~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
非スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートすることが、前記スルホン化DNAの前記pH(I)以上のpHを有するスルホン化反応溶液中で行われる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記酸性結合溶液中で前記スルホン化DNAと前記シリカ支持体とを組み合わせる前に、前記スルホン化反応溶液の少なくとも一部が、前記スルホン化DNAから除去される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記酸性結合溶液中で前記スルホン化DNAと前記シリカ支持体とを組み合わせる前に、前記スルホン化反応溶液の実質的に全てが、前記スルホン化DNAから除去される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記スルホン化反応溶液の前記少なくとも一部が、サイズ排除濾過によって前記スルホン化DNAから除去される、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
前記酸性結合溶液が、前記スルホン化反応溶液中の前記スルホン化DNAに酸性成分を添加することによって形成される、請求項49~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記酸性成分が、酸性溶液である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記酸性成分が、酸性の酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸溶液のうちの少なくとも1つを含む、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記酸性成分が、カオトロピック塩を含み、前記カオトロピック塩が、好ましくは、GuHCl GITCのうちの少なくとも1つを含む、請求項53~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
脱スルホン化DNAを調製する方法であって、
i)一本鎖非スルホン化DNAまたは部分的スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートして、スルホン化反応混合物中でスルホン化DNAを生成することと、
ii)前記スルホン化反応混合物を、
a)酸性成分、
b)カオトロピック塩、及び
c)シリカ支持体と組み合わせて、
酸性結合溶液を形成することであって、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAの等電点(pH(I))以下のpHを有し、前記スルホン化DNAが、前記シリカ支持体に結合される、前記形成することと、
iii)前記シリカ支持体に結合されたスルホン化DNAを前記酸性結合溶液から分離することと、
iv)前記スルホン化DNAが脱スルホン化される条件下で、分離されたスルホン化DNAを処理することと、含み、
好ましくは、前記非スルホン化DNAが、1つ以上の非メチル化シトシンヌクレオチドを含み、前記脱スルホン化DNAが、1つ以上のデオキシウラシルヌクレオチドを含む、前記方法。
【請求項58】
前記スルホン化DNAが脱スルホン化される条件下で分離されたスルホン化DNAを処理することが、スルホン化DNAを脱スルホン化溶液と組み合わせることを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記脱スルホン化溶液が、前記シリカ支持体に結合されたスルホン化DNAと組み合わされる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
カオトロピック塩を含む酸性結合溶液中にスルホン化DNA及びシリカ支持体を含む組成物であって、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAのpH(I)以下のpHを有し、前記スルホン化DNAが前記シリカ支持体に結合され、
前記カオトロピック塩が、好ましくは、GuHCl及びGITCのうちの少なくとも1つを含み、前記酸性結合溶液が、好ましくは、酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸緩衝液、好ましくはクエン酸緩衝液のうちの少なくとも1つを含む、前記組成物。
【請求項61】
前記酸性結合溶液が、亜硫酸水素塩、好ましくは亜硫酸水素アンモニウムを含む、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記酸性結合溶液のpHが5未満、好ましくは2.0~4である、請求項60または請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
i)バイサルファイト試薬溶液が好ましくは、スルホン化DNAのpH(I)を超えるpHを有する、前記バイサルファイト試薬溶液または前記バイサルファイト試薬溶液を調製するための成分と、
ii)シリカ支持体と、
iii)前記スルホン化DNAのpH(I)以下のpHを有する、酸性成分、好ましくは酸性溶液と、を含み、前記酸性成分が、好ましくは酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸緩衝液、のうちの少なくとも1つ、好ましくはクエン酸緩衝液含む、キット。
【請求項64】
カオトロピック塩を更に含み、好ましくは、前記酸性成分がカオトロピック塩を含み、好ましくは、前記カオトロピック塩がGuHCl及びGITCのうちの少なくとも1つを含む、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
前記シリカ支持体が、粒子、ビーズ、及び繊維のうちの少なくとも1つを含む、請求項63または64に記載のキット。
【請求項66】
前記シリカ支持体が、磁性である、請求項63~65のいずれか1項に記載のキット。
【請求項67】
前記酸性成分のpHが、5未満であり、好ましくは、前記酸性成分のpHが、2.0~4である、請求項63~66のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2020年7月29日に出願された米国仮出願第63/058,179号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、スルホン化DNAの精製に関する。加えて、本開示は、DNAのバイサルファイト変換、ならびに支持体(例えば、シリカ支持体)を有するスルホン化DNAの改善された精製、ならびにスルホン化DNAを支持体に結合するための酸性条件の使用のための方法及びシステムに関する。
【0003】
〔背景技術〕
DNAメチル化は、DNA、具体的にはDNAのシトシン環にメチル基を添加し、それによって遺伝子の機能を修飾することによって生じるエピジェネティック機構である。DNAメチル化部位の検出及びマッピングは、エピジェネティック遺伝子調節を理解し、がん及び他の疾患状態の発生及び進行に関与する異常なDNAメチル化を検出するために不可欠である。
【0004】
メチル化部位のマッピングは、現在、DNA中の5-メチルシトシンの検出のためのFrommmerらにより記述されるバイサルファイト法(参照により、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:1827-31(1992))、またはその変形により達成される。5-メチルシトシンをマッピングするバイサルファイト法は、5-メチルシトシンではなくシトシンが亜硫酸水素塩と反応するという観察に基づいている。通常、この反応は、シトシンを亜硫酸水素と反応させてスルホン化シトシンを形成するステップと、スルホン化ウラシルをもたらすスルホン化反応中間体の自発的な脱アミノ化と、ウラシルをアルカリ条件下で脱スルホン化してウラシルを形成するステップと、を含む、一連のステップを含む。ウラシルと5-メチルシトシンとの塩基対の差異は、アデニンとのウラシル塩基対及びグアニンとの5-メチルシトシン塩基の検出を容易にする。したがって、様々な方法で、例えば、バイサルファイトゲノム配列決定(Grigg G,& Clark S,Bioessays(1994)16:431-36、Grigg G,DNA Seq.(1996)6:189-98)、または例えば、米国特許第5,786,146号に開示されているようなメチル化特異的PCR(MSP)により、メチル化されたシトシンを非メチル化シトシンと区別することができる。反応条件、試薬の濃度等における多数の変形は、バイサルファイト変換について当該技術分野で既知であり、各変形は、DNA回収率及び脱アミノ化レベルの差異をもたらし得る。
【0005】
一般に、バイサルファイト処理方法は、塩基対分析のための、精製され変換されたDNA試料を生成するための、洗浄ステップ及び緩衝液交換を含む。様々なアプローチは、例えば、スピンカラム、エタノール精製、及び固体支持体などのステップを促進する。しかしながら、シリカスピンカラムまたはエタノール精製を使用する方法は、多くの場合、シトシンメチル化の手段としてのバイサルファイト法の有用性を損なう試料の損失をもたらす。固体支持体を使用したいくつかの改善が開発されているが、これらの方法は、入力として大量のDNAを必要とし、試料の損失及び再現性の問題にも悩まされる。加えて、従来の方法は、多くの場合、完了するために数日の時間を要し、変換されたDNAの効率的な変換及び回収をもたらさない。したがって、従来の方法は、DNAメチル化の定性的尺度のみを提供する。
【0006】
DNAのバイサルファイト変換を最適化しようとする場合、一般に、バイサルファイト修飾反応自体、すなわち、DNA中のメチル化されていないシトシンをスルホン化するステップに注目してきた。得られたスルホン化DNAの回収を改善するいくつかの方法は、カオトロピック塩濃度を増加させることに注目し、それによって水とDNAとの水素結合を破壊し、シリカ-DNA相互作用を促進する。他の方法は、結合緩衝液を単純化することによって、(例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,315,853号にあるように)シトシンが豊富なDNAの回復率の低下に対処し、アルコール及びトリスなどの添加剤が除去される。
【0007】
〔発明の概要〕
本明細書に開示されるシステム及び方法は、特にシトシンが豊富な標的のために、亜硫酸水素塩で変換されたDNA回収を増加させ、バイサルファイト処理プロセスにおける変動に対する堅牢性を改善し、幅広い試料タイプのDNA回収を増加させる。本方法は、水素結合の破壊に加えて、シリカ-DNA相互作用を促進するようにDNA電荷を中和することを含む。
【0008】
酸性溶液中のシリカ支持体にスルホン化DNAを結合することを含む方法が本明細書に開示され、酸性溶液は、スルホン化DNAの等電点pH(I)以下のpHを有する。いくつかの実施形態において、pHは5未満である。いくつかの実施形態において、pHは、2.5~4である。酸性溶液は、カオトロピック塩または薬剤を更に含み得る。いくつかの実施形態において、カオトロピック塩は、塩酸グアニジン(GuHCl)である。
【0009】
本方法は、変性された非スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートして、スルホン化DNAを生成することを更に含み得る。本明細書で使用される場合、「スルホン化試薬」という用語は、好ましくは、非メチル化シトシンヌクレオチドをウラシルスルホネートヌクレオチドに選択的に変換する試薬を指す。いくつかの実施形態において、スルホン化試薬は、亜硫酸水素アンモニウムである。
【0010】
本方法は、スルホン化DNAに結合されたシリカ支持体を洗浄すること、スルホン化DNAを脱スルホン化して脱スルホン化DNAを形成すること、及びシリカ支持体から脱スルホン化DNAを溶出することのうちの少なくとも1つまたは全てを更に含み得る。いくつかの実施形態において、洗浄は、アルコール、例えば、エタノールで行われる。いくつかの実施形態において、脱スルホン化は、アルカリ条件下でのスルホン化DNAのインキュベーションを含み、いくつかの実施形態において、スルホン化DNAが検出アッセイ、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応に直接添加され、その結果、スルホン化DNAが検出アッセイを実施する条件下で脱スルホン化される。いくつかの実施形態において、溶出は、高熱による処理を含む。
【0011】
この技術は、以下の実施形態を更に包含し、以下の実施形態によって例証される。
【0012】
1.酸性結合溶液中でスルホン化DNAとシリカ支持体とを組み合わせることを含み、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAの等電点(pH(I))以下のpHを有し、前記スルホン化DNAが前記シリカ支持体に結合される、方法。
【0013】
2.前記シリカ支持体が、粒子、ビーズ、及び繊維のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の方法。
【0014】
3.前記シリカ支持体が、磁性である、実施形態1に記載の方法。
【0015】
4.前記酸性結合溶液のpHが、5未満である、実施形態1に記載の方法。
【0016】
5.前記酸性結合溶液のpHが2.0~4である、実施形態4に記載の方法。
【0017】
6.前記酸性結合溶液が、カオトロピック塩を含む、実施形態1に記載の方法。
【0018】
7.前記カオトロピック塩が、塩酸グアニジン(GuHCl)及びグアニジンイソチオシアネート(GITC)の少なくとも1つを含む、実施形態6に記載の方法。
【0019】
8.前記方法が、一本鎖非スルホン化DNAまたは部分的スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートして、前記スルホン化DNAを生成することを更に含む、実施形態1に記載の方法。
【0020】
9.前記スルホン化試薬が、亜硫酸水素アンモニウム及び亜硫酸水素ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、実施形態8に記載の方法。
【0021】
10.i)スルホン化DNAに結合されたシリカ支持体を洗浄することと、
ii)前記スルホン化DNAを脱スルホン化して脱スルホン化DNAを形成することと、
iii)前記シリカ支持体から前記脱スルホン化DNAを溶出することと、のうちの少なくとも1つを更に含む、実施形態1に記載の方法。
【0022】
11.非スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートすることが、前記スルホン化DNAの前記pH(I)以上のpHを有するスルホン化反応溶液中で行われる、実施形態8に記載の方法。
【0023】
12.酸性結合溶液中で前記スルホン化DNAと前記シリカ支持体とを組み合わせる前に、前記スルホン化反応溶液の少なくとも一部が前記スルホン化DNAから除去される、実施形態11に記載の方法。
【0024】
13.前記酸性結合溶液中で前記スルホン化DNAと前記シリカ支持体とを組み合わせる前に、前記スルホン化反応溶液の実質的に全てが、前記スルホン化DNAから除去される、実施形態12に記載の方法。
【0025】
14.前記スルホン化反応溶液の少なくとも一部が、サイズ排除濾過によって前記スルホン化DNAから除去される、実施形態12に記載の方法。
【0026】
15.前記酸性結合溶液が、前記スルホン化反応溶液中の前記スルホン化DNAに酸性成分を添加することによって形成される、実施形態11に記載の方法。
【0027】
16.前記酸性成分が、酸性溶液である、実施形態15に記載の方法。
【0028】
17.前記酸性成分が、酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸緩衝液のうちの少なくとも1つを含む、実施形態16に記載の方法。
【0029】
18.前記酸性成分が、カオトロピック塩を含む、実施形態15に記載の方法。
【0030】
19.前記カオトロピック塩が、GuHCl GITCのうちの少なくとも1つを含む、実施形態18に記載の方法。
【0031】
20.脱スルホン化DNAを調製する方法であって、
i)一本鎖非スルホン化DNAまたは部分的スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートして、スルホン化反応混合物中でスルホン化DNAを生成することと、
ii)前記スルホン化反応混合物を
a)酸性成分、
b)カオトロピック塩、及び
c)シリカ支持体と組み合わせて
酸性結合溶液を形成することであって、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAの等電点(pH(I))以下のpHを有し、前記スルホン化DNAが前記シリカ支持体に結合される、前記形成することと、
iii)前記シリカ支持体に結合されたスルホン化DNAを前記酸性結合溶液から分離することと、
iv)前記スルホン化DNAが脱スルホン化されている条件下で、分離されたスルホン化DNAを処理することと、を含む、前記方法。
【0032】
21.前記非スルホン化DNAが、1つ以上の非メチル化シトシンヌクレオチドを含み、前記脱スルホン化DNAが、1つ以上のデオキシウラシルヌクレオチドを含む、実施形態20に記載の方法。
【0033】
22.前記スルホン化DNAが脱スルホン化される条件下で分離されたスルホン化DNAを処理することが、スルホン化DNAを脱スルホン化溶液と組み合わせることを含む、実施形態20に記載の方法。
【0034】
23.前記脱スルホン化溶液が、前記シリカ支持体に結合されたスルホン化DNAと組み合わされる、実施形態22に記載の方法。
【0035】
24.カオトロピック塩を含む酸性結合溶液中にスルホン化DNA及びシリカ支持体を含む組成物であって、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAのpH(I)以下のpHを有し、前記スルホン化DNAが前記シリカ支持体に結合される、前記組成物。
【0036】
25.前記カオトロピック塩が、GuHCl及びGITCのうちの少なくとも1つを含む、実施形態24に記載の組成物。
【0037】
26.前記酸性結合溶液が、酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸緩衝液のうちの少なくとも1つを含む、実施形態24に記載の組成物。
【0038】
27.前記酸性結合溶液が、クエン酸緩衝液を含む、実施形態26に記載の組成物。
【0039】
28.前記酸性結合溶液が、亜硫酸水素塩を含む、実施形態24に記載の組成物。
【0040】
29.前記亜硫酸水素塩が、亜硫酸水素アンモニウムである、実施形態28に記載の組成物。
【0041】
30.前記酸性結合溶液の前記pHが5未満である、実施形態24に記載の組成物。
【0042】
31.前記酸性結合溶液の前記pHが、2.0~4である、実施形態30に記載の組成物。
【0043】
32.i)バイサルファイト試薬溶液またはバイサルファイト試薬溶液を調製するための成分と、
ii)シリカ支持体と、
iii)スルホン化DNAのpH(I)以下のpHを有する酸性成分と、を含む、キット。
【0044】
33.前記バイサルファイト試薬溶液が、スルホン化DNAの前記pH(I)を超えるpHを有する、実施形態32に記載のキット。
【0045】
34.前記酸性成分が、酸性溶液である、実施形態32に記載のキット。
【0046】
35.前記酸性成分が、酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸緩衝液のうちの少なくとも1つを含む、実施形態33に記載のキット。
【0047】
36.カオトロピック塩を更に含む、実施形態32に記載のキット。
【0048】
37.前記酸性成分が、カオトロピック塩を含む、実施形態36に記載のキット。
【0049】
38.前記カオトロピック塩が、GuHCl及びGITCのうちの少なくとも1つを含む、実施形態36に記載のキット。
【0050】
39.前記シリカ支持体が、粒子、ビーズ、及び繊維のうちの少なくとも1つを含む、実施形態32に記載のキット。
【0051】
40.前記シリカ支持体が磁性である、実施形態32に記載のキット。
【0052】
41.前記酸性成分の前記pHが5未満である、実施形態32に記載のキット。
【0053】
42.前記酸性成分の前記pHが、2.0~4である、実施形態41に記載のキット。
【0054】
43.酸性結合溶液中でスルホン化DNAとシリカ支持体を組み合わせることを含む方法であって、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAの等電点(pH(I))以下のpHを有し、スルホン化DNAが前記シリカ支持体に結合され、前記シリカ支持体が、好ましくは、粒子、ビーズ、及び繊維のうちの少なくとも1つを含み、前記シリカ支持体が、好ましくは磁性である、前記方法。
【0055】
44.前記酸性結合溶液の前記pHが5未満、好ましくは4未満、好ましくは約2.0~4である、実施形態43に記載の方法。
【0056】
45.前記酸性結合溶液がカオトロピック塩を含み、前記カオトロピック塩が好ましくは塩酸グアニジン(GuHCl)及びグアニジンイソチオシアネート(GITC)の少なくとも1つを含む、実施形態43または実施形態44に記載の方法。
【0057】
46.前記方法が、一本鎖非スルホン化DNAまたは部分的スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートして前記スルホン化DNAを生成することを更に含む、実施形態43~45のいずれかに記載の方法。
【0058】
47.前記スルホン化試薬が、亜硫酸水素アンモニウム及び亜硫酸水素ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、実施形態46に記載の方法。
【0059】
48.i)スルホン化DNAに結合されたシリカ支持体を洗浄することと、
ii)前記スルホン化DNAを脱スルホン化して脱スルホン化DNAを形成することと、
iii)前記シリカ支持体から前記脱スルホン化DNAを溶出することと、のうちの少なくとも1つを更に含む、実施形態43~47のいずれかに記載の方法。
【0060】
49.非スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートすることが、前記スルホン化DNAの前記pH(I)以上のpHを有するスルホン化反応溶液中で行われる、実施形態48に記載の方法。
【0061】
50.前記酸性結合溶液中で前記スルホン化DNAと前記シリカ支持体とを組み合わせる前に、前記スルホン化反応溶液の少なくとも一部が前記スルホン化DNAから除去される、実施形態49に記載の方法。
【0062】
51.前記酸性結合溶液中で前記スルホン化DNAと前記シリカ支持体とを組み合わせる前に、前記スルホン化反応溶液の実質的に全てが、前記スルホン化DNAからを除去される、実施形態50に記載の方法。
【0063】
52.前記スルホン化反応溶液の前記少なくとも一部が、サイズ排除濾過によって前記スルホン化DNAから除去される、実施形態50または51に記載の方法。
【0064】
53.前記酸性結合溶液が、前記スルホン化反応溶液中の前記スルホン化DNAに酸性成分を添加することによって形成される、実施形態49~52のいずれかに記載の方法。
【0065】
54.前記酸性成分が、酸性溶液である、実施形態53に記載の方法。
【0066】
55.前記酸性成分が、酸性の酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸溶液のうちの少なくとも1つを含む、実施形態53または54に記載の方法。
【0067】
56.前記酸性成分が、カオトロピック塩を含み、前記カオトロピック塩が、好ましくは、GuHCl GITCのうちの少なくとも1つを含む、実施形態53~55のいずれかに記載の方法。
【0068】
57.脱スルホン化DNAを調製する方法であって、
i)一本鎖非スルホン化DNAまたは部分的スルホン化DNAをスルホン化試薬と共にインキュベートして、スルホン化反応混合物中でスルホン化DNAを生成することと、
ii)前記スルホン化反応混合物を:
a)酸性成分、
b)カオトロピック塩、及び
c)シリカ支持体、と組み合わせて
酸性結合溶液を形成することであって、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAの等電点(pH(I))以下のpHを有し、前記スルホン化DNAが前記シリカ支持体に結合される、前記形成することと、
iii)前記シリカ支持体に結合されたスルホン化DNAを前記酸性結合溶液から分離することと、
iv)前記スルホン化DNAが脱スルホン化される条件下で分離されたスルホン化DNAを処理すること、含み、
好ましくは、前記非スルホン化DNAは1つ以上の非メチル化シトシンヌクレオチドを含み、前記脱スルホン化DNAは1つ以上のデオキシウラシルヌクレオチドを含む、前記方法。
【0069】
58.前記スルホン化DNAが脱スルホン化される条件下で分離されたスルホン化DNAを処理することが、スルホン化DNAを脱スルホン化溶液と組み合わせることを含む、実施形態57に記載の方法。
【0070】
59.前記脱スルホン化溶液が、前記シリカ支持体に結合されたスルホン化DNAと組み合わされる、実施形態58に記載の方法。
【0071】
60.カオトロピック塩を含む酸性結合溶液中にスルホン化DNA及びシリカ支持体を含む組成物であって、前記酸性結合溶液が、前記スルホン化DNAのpH(I)以下のpHを有し、前記スルホン化DNAが前記シリカ支持体に結合され、
前記カオトロピック塩が、好ましくは、GuHCl及びGITCのうちの少なくとも1つを含み、前記酸性結合溶液が、好ましくは、酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸緩衝液、好ましくはクエン酸緩衝液のうちの少なくとも1つを含む、前記組成物。
【0072】
61.前記酸性結合溶液が、亜硫酸水素塩、好ましくは亜硫酸水素アンモニウムを含む、実施形態60に記載の組成物。
【0073】
62.前記酸性結合溶液の前記pHが5未満、好ましくは2.0~4である、実施形態60または実施形態61に記載の組成物。
【0074】
63.i)バイサルファイト試薬溶液が好ましくは、スルホン化DNAのpH(I)を超えるpHを有する、前記バイサルファイト試薬溶液またはバイサルファイト試薬溶液を調製するための成分と、
ii)シリカ支持体と、
iii)スルホン化DNAのpH(I)以下のpHを有する、酸性成分、好ましくは酸性溶液と、を含み、前記酸性成分が、好ましくは酢酸、グリシン、リンゴ酸、ギ酸、またはクエン酸緩衝液、のうちの少なくとも1つ、好ましくはクエン酸緩衝液含む、キット。
【0075】
64.カオトロピック塩を更に含み、好ましくは、前記酸性成分がカオトロピック塩を含み、好ましくは、前記カオトロピック塩がGuHCl及びGITCのうちの少なくとも1つを含む、実施形態63に記載のキット。
【0076】
65.前記シリカ支持体が、粒子、ビーズ、及び繊維のうちの少なくとも1つを含む、実施形態63または64に記載のキット。
【0077】
66.前記シリカ支持体が、磁性である、実施形態63~65のいずれか1項に記載のキット。
【0078】
67.前記酸性成分の前記pHが、5未満であり、好ましくは、前記酸性成分のpHが、2.0~4である、実施形態63~66のいずれか1項に記載のキット。
【0079】
本明細書に記載の実施形態のうちのいずれかの特定の好ましい実施形態において、一本鎖DNAは、試料、例えば、生体試料から単離される。例えば、いくつかの好ましい実施形態において、一本鎖DNAは、がんを有するか、またはがんを有する疑いのある対象などのヒト対象からの試料から、例えば、血漿試料、便試料、または対象からの他の試料から単離される。他の実施形態において、一本鎖DNAは、合成物である。好ましい実施形態において、一本鎖DNAは、塩基対DNA鎖が分離して一本鎖を形成する変性条件(例えば、アルカリ条件、高温など)に二本鎖DNAを曝露することによって形成される。いくつかの実施形態において、脱スルホン化DNAは、例えば、DNA中の1つ以上のメチル化DNAマーカー(MDM)を測定するために測定される。例えば、本明細書(例えば、表1~7、図3、7~13、15A、及び15B、16、及び18に開示されているMDMを含む、実験セクションまたは図面中)で名付けられたDNAのうちのいずれかは、任意のタイプの試料(例えば、血漿、便、組織等)から、単独で、または組み合わせて、または2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16等の任意の部分的組み合わせで、検出または測定され得る。
【0080】
本開示の他の態様及び実施形態は、以下の詳細な説明及び添付の図面に照らして明らかになるであろう。
【0081】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕本明細書に開示される方法を含むバイサルファイト処理方法の一実施形態の概要である。
【0082】
図2〕提案されている結合機構の概略図である。
【0083】
図3〕6つの異なるマーカーDNAについて回収された結合pH対Log鎖のグラフを提供する。
【0084】
図4〕変換されたシトシンのパーセント対最大結合pHのグラフである。各DNA鎖の変換されたシトシンのパーセント(ウラシルスルホン酸塩ヌクレオチド/全ヌクレオチド)を、最大鎖回収に必要とされる最高推定結合pHに対してプロットした。これらの点の線形フィッティングを示す。
【0085】
図5〕同じプライマー/プローブの組み合わせを使用するDNA鎖の、変換されたシトシンのパーセント対最大結合pHのグラフである。DNAのうちの3つ(BMP3、β-アクチン(「BTACT」)、及びNDRG4鎖)を修飾して、特定のDNAの各バリアントについて同じプライマー及びプローブ結合配列を保持するが、そのDNA鎖の他の領域に異なる数の非メチル化Cを含有するDNAのセットを作製した。この相関の強度を更に例示するために、線を配列の各セットにフィッティングさせた。
【0086】
図6〕非調整結合pH(A)または低結合pH(B)を使用した、全DNA後転換及びクリーンアップのグラフを示す。
【0087】
図7〕4つの異なるDNA配列(LASS4、PPP2R5C、LRRC4、及びZDHHC1)についての非調整結合pH(上段)または低結合pH(下段)に対して回収されたについて便試料体積(mL)対回収された鎖のグラフである。ZDHHC1DNAを2回試験した。
【0088】
図8A〕低pH及び非調整pHで実施した結合反応からの、異なるロットの亜硫酸水素アンモニウムからの鎖回収を示す表を提供する。
【0089】
図8B〕低pH及び非調整pHで実施した結合反応からの、異なる濃度の亜硫酸水素アンモニウムからの鎖回収を示す表を提供する。
【0090】
図9〕低pH及び非調整pHで行われた結合反応に存在する汚染物質の効果を示す表を提供する。
【0091】
図10〕非調整のpH結合反応を使用して様々なシリカビーズを使用した、回収した鎖のログを示す表を提供する。
【0092】
図11〕実施例1に記載される低pH結合反応を使用して種々のシリカビーズを使用して回収された鎖のログを示す表を提供する。
【0093】
図12〕4.85~2.13の範囲の酸性pH(「BNDpH」)に調整された結合反応を使用して回収された鎖を示す表を提供する。
【0094】
図13〕非調整または低pH結合反応を使用して、異なるサイズのDNA分子、及び異なる濃度のDNA分子について回収された鎖を示す表を提供する。
【0095】
図14〕プロトコル1、プロトコル2、及びプロトコル3により提供される反応条件を比較した表を示す。
【0096】
図15A〕プロトコル1、プロトコル2、及びプロトコル3を使用した、鎖回収を比較する表を示す。
【0097】
図15B〕プロトコル1、プロトコル2、及びプロトコル3を使用した、鎖回収を比較する表を示す。
【0098】
図16〕プロトコル1、プロトコル2、及びプロトコル3を使用した異なるメチル化マーカーDNAについて、図15A~15Bに示される鎖回収のペアワイズの対比を有する表を示す。
【0099】
図17〕プロトコル2の回収対プロトコル1またはプロトコル3を使用した回収の比として示される、異なるメチル化マーカーDNAについて、図16に示される鎖回収を比較するグラフを示す。各データポイントの「プロトコルX」は、そのデータポイントのプロトコル1または3のいずれかを表す。
【0100】
図18〕結合ステップ中に未調整のpHを使用する、またはグリシン、クエン酸、リンゴ酸、もしくはギ酸緩衝液を使用して、示されるスルホン化DNAのシリカビーズへの結合中にpHを低減する、異なるDNAの回収を比較する表を示す。
【0101】
定義
本セクション及び本明細書の開示全体で使用されるセクションの見出しは、単に組織的な目的のためだけであり、限定することを意図するものではない。
【0102】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語及び語句が以下に定義される。追加の定義は、詳細な説明の全体にわたって記載される。
【0103】
本明細書及び特許請求の範囲全体にわたって、以下の用語は、文脈により別途明確に指示されない限り、本明細書に明示的に関連する意味を持つ。「一実施形態において」という語句は、本明細書で使用される場合、同じ実施形態を指す場合もあるが、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。更に、「別の実施形態において」という語句は、本明細書で使用される場合、異なる実施形態を指す場合もあるが、必ずしも異なる実施形態を指すとは限らない。したがって、以下で記載されるように、本技術の様々な実施形態は、本技術の範囲または趣旨から逸脱することなく、容易に組み合わされ得る。
【0104】
本明細書で使用される用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる」、「含有する」、及びそれらの変形は、追加の行為または構造の可能性を排除しないオープンエンドな経過句、用語、または単語であることが意図される。更に、本明細書で使用される場合、「または」という用語は、包括的「または」演算子であり、文脈により別途明確に指示されない限り、「及び/または」という用語と同等である。「に基づく」という用語は、文脈により別途明確に指示されない限り、排他的なものではなく、記載されていない追加の因子に基づくことを可能にする。
【0105】
単数形「1つの」、「及び」、及び「その」は、文脈で明確に別段指示されない限り、複数の参照を含む。本開示はまた、明示的に記載されるか否かにかかわらず、本明細書に提示される実施形態または要素を「含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」他の実施形態を企図する。
【0106】
「から本質的になる」という移行句は、本出願の特許請求の範囲において使用する場合、In re Herz,537F.2d 549,551-52,190 USPQ 461,463(CCPA 1976)に述べられているように、特許請求の範囲を、特許請求された発明の特定の物質またはステップ「及び基本的かつ新規の特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼすことのないもの」に限定する。例えば、「本質的にからなる」組成物は、列挙された要素が、存在するものの、汚染物質が、純粋な組成物、すなわち列挙された構成要素「からなる」組成物と比較して列挙された組成物の機能を変化させないレベルで、列挙されていない汚染物質を含有し得る。
【0107】
本明細書における数値範囲の列挙のために、それらの間に同じ程度の精度で介在する各数値が明示的に企図される。例えば、6~9の範囲については、数字7及び8は、6及び9に加えて企図され、6.0~7.0の範囲については、数字6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が明示的に企図される。
【0108】
本明細書で別途定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。例えば、本明細書に記載される分子生物学及びタンパク質ならびに核酸化学及びハイブリダイゼーションに関連して使用される任意の命名法及びそれらの技法は、当該技術分野において周知でありかつ一般的に使用されるものである。用語の意味及び範囲は明確でなければならない。しかしながら、潜在的な曖昧さがある場合、本明細書で提供される定義は、辞書または外部の定義よりも優先される。更に、文脈によって別途必要とされる場合を除き、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0109】
本明細書で使用される場合、「DNA断片」または「低分子DNA」または「短鎖DNA」は、約200塩基対またはヌクレオチド長以下からなるDNAを意味する。
【0110】
本明細書で使用される場合、例えばCpG遺伝子座におけるシトシンのメチル化状態に関して使用される「メチル化」または「メチル化された」は、一般に、シトシン塩基の5位のメチル基の存在または非存在(すなわち、特定のシトシンが5-メチルシトシンであるかどうか)を指す。メチル化は、例えば、例えば、亜硫酸水素塩による処理によるウラシルへの変換に対する特定のC残基の感受性(またはその欠如)を決定することによって、シトシンのメチル化状態の分析のための日常的な方法によって証明されるように、直接決定され得る。例えば、非メチル化(例えば、試料中の非メチル化シトシンの大部分または全てがウラシルに変換される条件下で)された場合に、その残基を変換することが予想される方法で試料を亜硫酸水素塩で処理したときに、ウラシルに変換されない試料中のシトシン残基は、一般に「メチル化される」と見なされ得る。
【0111】
本明細書で使用される場合、「メチルシトシン」、「メチルC」、「メチル化シトシン」、「メチル化C」、及び「MeC」という用語は、互換的に使用され、5-メチルシトシン(5mC)及び5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)の両方を包含する。
【0112】
「バイサルファイト試薬」という用語は、本明細書に開示されるように、メチル化CpGジヌクレオチド配列と非メチル化CpGジヌクレオチド配列とを区別するのに有用な、亜硫酸水素塩(bisulfite)、二亜硫酸塩、亜硫酸水素塩(hydrogen sulfite)、またはそれらの組み合わせを含む試薬を指す。前記処理の方法は、当該技術分野で既知である(例えば、各々が、その全体が参照により組み込まれる、PCT/EP2004/011715及びWO2013/116375)。いくつかの実施形態において、バイサルファイト処理は、限定するものではないが、n-アルキレングリコールもしくはジエチレングリコールジメチルエーテル(DME)などの変性溶媒の存在下、またはジオキサンもしくはジオキサン誘導体の存在下で行われる。いくつかの実施形態において、変性溶媒は、1%~35%(v/v)の濃度で使用される。いくつかの実施形態において、亜硫酸水素塩反応は、限定するものではないが、クロマン誘導体、例えば、6-ヒドロキシ-2,5,7,8、-テトラメチルクロマン2-カルボン酸またはトリヒドロキシベンゾン酸等のスカベンジャー、及びそれらの誘導体、例えば、ガリン酸の存在下で行われる(参照によりその全体が組み込まれる、PCT/EP2004/011715を参照されたい)。ある特定の好ましい実施形態において、バイサルファイト反応は、例えば、国際公開第WO2013/116375号に記載されるように、亜硫酸水素アンモニウム(ammonium bisulfite)とも称される亜硫酸水素アンモニウム(ammonium hydrogensulfite)による処理を含む。
【0113】
本明細書で使用される場合、「スルホン化DNA」は、スルホン化試薬、例えば、バイサルファイト試薬での処理の結果としてスルホン化されたシトシンまたはウラシルを含むDNAを指す。スルホン化DNAは、部分的にスルホン化されてもよく、これにより、DNAは、ウラシルスルホネートを形成するためにスルホン化されていない非メチル化シトシン(複数可)を含むか、またはDNAは、すべての非メチル化(または他の方法で保護されていない)シトシンがウラシルスルホネートを形成するためにスルホン化されるように、完全にスルホン化されてもよい。スルホン化DNAはまた、例えば、標準的な核酸合成化学を使用して、バイサルファイト試薬で処理されたDNAを模倣するようにDNA合成されてもよい。例えば、DNA鎖をヌクレオチドモノマーから合成して、1つ以上のウラシルスルホネートヌクレオチドを含む鎖を形成してよい。
【0114】
本明細書で使用される場合、「非スルホン化DNA」は、シトシンがウラシルスルホネートヌクレオチドに変換される条件下で、スルホン化試薬、例えば、バイサルファイト試薬で処理されていないDNAを指す。非スルホン化DNAは、1つ以上の非メチル化シトシンヌクレオチドを含んでもよい。好ましい実施形態において、非スルホン化DNAは、ウラシルスルホネートヌクレオチドを含まない。
【0115】
本明細書において、DNAを固体支持体に結合させるための溶液または条件に関して使用される場合、「低pH」という用語は、DNA、例えば、スルホン化DNAが結合される固体支持体のpH(I)以下のpHを有する結合溶液または条件を指す。いくつかの実施形態において、低pH結合条件は、酸性成分、例えば、酸性pHを有する緩衝液と組み合わせた、結合剤、例えば、塩酸グアニジン等のカオトロピック塩を含む結合溶液を使用することによってもたらされる。いくつかの実施形態において、酸性成分は、結合混合物がスルホン化DNAと組み合わされる前に結合剤と予め混合されるが、いくつかの実施形態において、酸性成分は、結合剤がスルホン化DNAと組み合わされる前または後にスルホン化DNAと組み合わされる。
【0116】
本明細書において、スルホン化DNAを固体支持体に結合させるための溶液または条件に関して使用される場合、「非調整pH」、「標準pH」、及び「高pH」という用語は、互換的に使用され、スルホン化DNA及び結合剤、例えば、GuHClのみを含む結合溶液のpHと比較して、結合溶液または条件のpHを低減させるための酸性成分を含まない結合反応溶液または条件を指す。一般に、調整されていないpH結合溶液は、固体支持体、特にシリカ支持体のpH(I)以上のpHを有する。いくつかの実施形態において、非調整pH結合溶液は、DNAの試料、スルホン化DNA、及び結合剤、例えば、GuHClをスルホン化するために使用されるスルホン化試薬の一部または全てを含む混合物である。いくつかの実施形態において、非調整結合溶液のpHは、スルホン化試薬単独のpHまたはその付近である。
【0117】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、その最も広い意味で使用される。例えば、ヒト遺伝子または染色体またはヒト染色体に関連する配列を含有すると疑われる試料は、細胞、細胞から単離された染色体(例えば、広範な中期染色体)、ゲノムDNA(溶液中にあるか、またはサザンブロット分析などのための固体支持体に結合されている)、RNA(溶液中にあるか、またはノーザンブロット分析などための固体支持体に結合されている)、cDNA(溶液中にあるか、または固体支持体に結合されている)、無細胞DNA(例えば、血漿からの循環無細胞DNA、血漿、尿、便などの体液からの断片化DNA)、エクソソームまたは他の微小胞から、例えば体液などから単離されたDNAを含み得る。いくつかの実施形態において、試料とは、標本または培養物(例えば、微生物培養物)を含むことを意味し、他の実施形態において、試料、生物学的試料及び環境試料の両方(例えば、標的配列、遺伝子またはテンプレートを含むことが疑われる)を含むことを意味する。いくつかの実施形態において、試料は、合成起源の試料を含み得る。試料は、精製されていないか、または部分的もしくは完全に精製されていても、または他の方法で処理されていてもよい。核酸を「含有する疑いがある」サンプルは、標的核酸分子を含有するか、または含有しないことある。
【0118】
本技術は、使用または分析される生体試料の種類によって制限されない。本技術は、組織(例えば、組織(例えば、心臓、肝臓、脳、肺、胃、腸、脾臓、腎臓、膵臓、及び生殖器官)、腺、皮膚、及び筋肉)、細胞(例えば、血液細胞(例えば、リンパ球または赤血球)、筋肉細胞、腫瘍細胞、及び皮膚細胞)、ガス、体液(例えば、血液またはその一部、血清、血漿、尿、精液、唾液など)、またはヒト(例えば、成人、乳児、または胚)から得られた固体(例えば、便)試料、または動物(例えば、牛、家禽、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ネコ、ウマなど)を含むが、これらに限定されない、様々な生物学的試料に有用である。いくつかの実施形態において、生体試料は、固形食品及び/または飼料製品及び/または成分、例えば、乳製品、野菜、肉及び肉副産物、ならびに廃棄物であり得る。生物学的試料は、家畜の様々なファミリーの全て、ならびに野生(feral)動物または野生(wild)動物から得られてもよく、限定するものではないが、例えば、有蹄動物、クマ、魚、ウサギ目、げっ歯類、き脚類などが含まれる。
【0119】
生体試料としては、生検及び組織切片(例えば、生検もしくは腫瘍、成長、発疹、感染の切片、もしくはパラフィン包埋切片)、医療もしくは病院試料(例えば、血液試料、唾液、口腔拭い液、脳脊髄液、胸水、乳、初乳、リンパ液、痰、嘔吐物、胆汁、精液、卵母細胞、頸部細胞、羊水、尿、便、毛髪、及び汗を含むが、これらに限定されない)、実験室試料(例えば、細胞内分画)、ならびに法医学的試料(例えば、血液もしくは組織(例えば、スパッタもしくは残留物)、核酸を含む毛髪及び皮膚細胞)、ならびに考古学的試料(例えば、化石生物、組織、もしくは細胞)も含む。
【0120】
環境試料には、表面物質、土壌、水(例えば、淡水または海水)、藻類、地衣類、地質試料、核酸を含有する空気含有材料、結晶、及び産業試料、ならびに食品及び乳製品加工器具、装置、機器、器具、使い捨て及び非使い捨てアイテムから得られた試料などの環境材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
試料は、任意の所望の方法または好適な方法によって調製され得る。いくつかの実施形態において、核酸は、各々があらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第9,000,146号、及び同第10,047,390号に記載されている方法及びシステムを使用して、体液、便、または他の試料から直接分析される。
【0122】
しかしながら、上述の例は、本技術に適用可能な試料(例えば、標的配列、遺伝子またはテンプレート(例えば、本技術の組成物及び方法を使用してそれらの存在または非存在を決定することができる)を含むと疑われる)タイプを限定するものと解釈されるものではない。
【0123】
「標的」という用語は、核酸検出または分析方法に関連して使用される場合、例えば、標的核酸を含有することが疑われる試料中で検出または分析されるヌクレオチドの特定の配列を有する核酸を指す。いくつかの実施形態において、標的は、メチル化状態を決定することが望ましい特定の配列を有する核酸である。ポリメラーゼ連鎖反応に関して使用される場合、「標的」は、概して、ポリメラーゼ連鎖反応に使用されるプライマーによって結合される核酸領域を指す。したがって、「標的」は、試料中に存在し得る他の核酸配列から選別されるように求められる。「セグメント」は、標的配列内の核酸の領域として定義される。「試料テンプレート」という用語は、標的の存在について分析される試料に由来する核酸を指す。
【0124】
「テンプレート」という用語は、フラップ構造の核酸鎖、例えば、侵襲的切断構造に関して使用される場合、上流及び下流の核酸または核酸領域がハイブリダイズして侵襲的切断構造を形成する核酸鎖を指す。テンプレート鎖は、例えば、PCRフラップエンドヌクレアーゼアッセイにおいてポリメラーゼによるプライマーの伸長のためのテンプレートとして機能し得るが、この用語の使用は、重合アッセイまたは反応に限定されない。
【0125】
本明細書で使用される場合、「核酸分子」という用語は、限定されないが、DNAまたはRNAを含む任意の核酸含有分子を指す。この用語は、限定するものではないが、4つのアセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュ-ドイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシル-メチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチル-アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュ-ドウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイリノシン、2,2-ジメチル-グアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアデニン、3-メチル-シトシン、5-メチルイソシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-カルボキシルシトシン、5-ホルミルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシ-アミノ-メチル-2-チオウラシル、ベ-タ-Dマンノイルキュ-オシン(queosine)、5‘-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン(butoxosine)、シュ-ドウラシル、キュ-オシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、シュ-ドウラシル、キュ-オシン(queosine)、2-チオシトシン、及び2,6-ジアミノプリン、を含む、任意の既知のDNA及びRNAの塩基アナログを含む配列を包含する。
【0126】
核酸配列または分子は、ゲノムまたは合成由来のいずれかのDNAまたはRNAであってもよく、一本鎖または二本鎖であってもよく、センスまたはアンチセンス鎖を表す。したがって、核酸配列は、dsDNA、ssDNA、混合ssDNA、混合dsDNA、ssDNAになったdsDNAを(例えば、溶解、変性、ヘリカーゼなどを介して)、A-、B-、またはZ-DNA、三本鎖DNA、RNA、ssRNA、dsRNA、混合ssRNA及びdsRNA、ssRNAになったdsRNA(例えば、融解、変性、ヘリカーゼなどを介して)、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、触媒RNA、SnRNA、マイクロRNA、またはタンパク質核酸(PNA)であり得る。
【0127】
本技術は、利用される核酸の種類または供給源(例えば、配列または分子(例えば、標的配列及び/またはオリゴヌクレオチド))によって限定されない。例えば、核酸配列は、増幅または作製された配列(例えば、合成(例えば、重合(プライマー伸長(例えば、RNA-DNAハイブリッドプライマー技術))及び逆転写(例えば、DNAへのRNAの転写)を介した核酸配列の増幅または作製)及び/または増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、サイクリングプローブ技術、Q-ベータレプリカーゼ、鎖置換増幅(SDA)、分岐DNAシグナル増幅(bDNA)、ハイブリッドキャプチャ、及びヘリカーゼ依存的増幅)であってもよい。
【0128】
本明細書で使用される場合、「プロセス対照」という用語は、抽出後に測定されて、プロセスの効率を評価し、成功または失敗モードを決定することができる、標的DNAの抽出前に試料に添加される外因性分子、例えば、外因性核酸を指す。使用されるプロセス対照核酸の性質は、通常、アッセイタイプ及び測定される材料に依存する。例えば、使用されるアッセイが、二本鎖DNAまたはその中の変異の検出及び/または定量化のためのものである場合、二本鎖DNAプロセス対照は、典型的には、抽出前に試料にスパイクされる。同様に、mRNAまたはマイクロRNAを監視するアッセイの場合、使用されるプロセス対照は、典型的には、RNA転写物または合成RNAのいずれかである。プロセス対照は、典型的には、プロセスの効率性の評価、及びプロセス及びプロセスステップの成功または失敗の判定を支援する。
【0129】
非標的DNAに関して本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、標的DNAを含有する供給源または試料以外の供給源から単離され、精製される非標的DNAを指す。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,212,392号に記載されているように、例えば、精製された魚DNAは、ヒト標的DNAを含む試料に関して外因性DNAである。外因性DNAは、標的DNAとは異なる生物由来である必要はない。例えば、商業的に得られる精製された魚DNAは、特定の魚由来の試料中の標的核酸を検出するように構成された反応に添加される場合、外因性である。好ましい実施形態において、外因性DNAは、外因性DNAが添加される反応において標的核酸を検出及び/または定量化するように構成されたアッセイによって検出されないように選択される。
【0130】
本明細書で使用される場合、「魚DNA」という用語は、例えば、米国特許第9,212,392号に記載されるように、魚から単離されたバルク(例えば、ゲノム)DNAを指す。バルク精製魚DNAは、市販されており、例えば、タラ及び/またはニシン精子DNA(Roche Applied Science,Mannheim,Germany)またはサケDNA(USB/Affymetrix)の形態で提供される。「魚DNA」は、例えば、別々に合成されているか、または魚ゲノムの他のDNAから分離された、単離された形態、形態の魚由来の特定の遺伝子とは異なる。
【0131】
本明細書で使用される場合、「ゼブラフィッシュDNA」という用語は、Danio rerioから単離されるか、またはインビトロで(例えば、酵素的に、合成的に)作成され、Danio rerioからのDNAに見出されるヌクレオチドの配列を有するDNAを指す。好ましい実施形態において、ゼブラフィッシュDNAは、検出可能な対照DNAとして添加されるメチル化DNA、例えば、試料プロセスステップを通じたDNA回収を検証するためのプロセス対照である。特に、ヒト試料に対するプロセス対照としてのゼブラフィッシュDNAの使用を説明する、参照により本明細書に組み込まれる、WO2018/017710A1に記載されるように、RASSF1遺伝子の少なくとも一部を含むゼブラフィッシュDNAは、例えば、ヒト試料に対するプロセス対照として使用される。本明細書で使用される場合、「ZFRASSF1」は、ゼブラフィッシュRASSF1遺伝子の少なくとも一部を含むプロセス対照を指す。
【0132】
本明細書で使用される場合、「回収」及び「回収された」という用語は、核酸鎖に関して使用される場合、プロセス(例えば、完全なバイサルファイト変換プロセス)の後、または1つ以上のプロセスステップ(例えば、核酸のマトリックス結合、それに続く結合鎖の溶出)の後、試料中で測定されたDNA鎖の量または数を指す。いくつかの実施形態において、回収された鎖は、参照値、例えば、プロセス前の試料中に添加されるかもしくは存在すると予想される鎖の量もしくは数、または参照試料中に測定されるかもしくは存在すると予想される量と比較される。
【0133】
本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、物質を送達するための任意の送達システムを指す。核酸精製システム及び反応アッセイの文脈では、そのような送達システムは、ある場所から別の場所への試薬及びデバイス(例えば、適切な容器内のカオトロピック塩、粒子、緩衝剤、変性剤、オリゴヌクレオチド、フィルターなど)及び/またはサポート用具(例えば、サンプル処理またはサンプル保管容器、手順を実行するための書面による指示など)の保管、輸送、または送達を可能にするシステムを含む。例えば、キットは、関連する反応試薬及び/またはサポート用具を含有する1つ以上の囲い(例えば、箱)を含む。本明細書で使用される場合、「分けられたキット」という用語は、各々が全キット構成要素の一部を含有する2つ以上の別々の容器を備える送達システムを指す。本容器は、一緒にまたは別々に目的のレシピエントに送達され得る。例えば、第1の容器は、試料収集のための材料及び緩衝剤を含み得、第2の容器は、捕捉オリゴヌクレオチド及び変性剤を含み得る。「分けられたキット」という用語は、連邦食品医薬品化粧品法の第520条(e)の下で規制される分析物特異的試薬(ASR)を含有するキットを包含することを意図するが、これに限定されない。実際に、各々がキット全体の構成要素の一部分を含有する2つ以上の別個の容器を備える任意の送達システムは、「分けられたキット」という用語に含まれる。対照的に、「組み合わされたキット」は、単一の容器(例えば、所望の構成要素のそれぞれを収容する単一の箱)中に反応アッセイの構成要素のすべてを含有する送達システムを指す。「キット」という用語は、断片化されたキット及び組み合わされたキットの両方を含む。
【0134】
本明細書で使用される場合、用語「システム」は、特定の目的のために使用される物品の集合体を指す。いくつかの実施形態において、物品は、例えば物品上、紙上、オンライン(例えば、ウェブサイトまたはウェブアドレスにおいて)、または記録可能な媒体(例えば、ディスケット、CD、DVD、フラッシュドライブなど)に提供される情報として、使用説明書を含む。いくつかの実施形態において、説明書は、オンラインのロケーション、例えば、説明を閲覧、聴取、及び/またはダウンロードするためのウェブサイトにユーザを導く。いくつかの実施形態において、命令または他の情報は、例えば、コンピュータのため、またはスマートフォンなどのモバイルデバイスのためのアプリケーション(「アプリ」)として提供される。
【0135】
本明細書で使用される場合、「情報」という用語は、事実またはデータの任意の集合体を指す。限定されないが、インターネットを含むコンピュータシステム(複数可)を使用して記憶または処理される情報に関して、この用語は、任意のフォーマット(例えば、アナログ、デジタル、光学など)で記憶される任意のデータを指す。本明細書で使用される場合、「対象に関する情報」という用語は、対象(例えば、ヒト、植物、または動物)に関する事実またはデータを指す。「ゲノム情報」という用語は、核酸配列、遺伝子、対立遺伝子頻度、RNA発現レベル、タンパク質発現、遺伝子型に相関する表現型などを含むが、これらに限定されない、ゲノムに関する情報を指す。「対立遺伝子頻度情報」は、対立遺伝子の同一性、対立遺伝子の存在と対象(例えば、ヒト対象)の特徴との間の統計的相関、個体または集団における対立遺伝子の存在または非存在、1つ以上の特定の特徴を有する個体に存在する対立遺伝子の可能性のパーセンテージなどを含むが、これらに限定されない、対立遺伝子頻度に関する事実またはデータを指す。
【0136】
〔発明を実施するための形態〕
好ましい方法及び材料が以下に記載されるが、本明細書に記載されるものと類似または同等の方法及び材料が本開示の実施または試験に使用され得る。本明細書において言及される全ての出版物、特許出願、特許及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、及び例は、例示にすぎず、限定することは意図されない。
【0137】
本明細書で提供される技術は、スルホン化試薬で処理されたDNAの修飾後回収を改善するための方法に関する。特に、本技術は、スルホン化DNAを荷電表面、例えば、シリカ表面または支持体、例えば、アッセイウェルまたはスライドの表面、繊維、粒子、ビーズなどに結合させる方法を提供する。本技術は、特定の材料及び形態の支持体、例えば、ビーズの形態のシリカに関して考察されるが、本技術は、他の支持材料、及び繊維、粒子、チューブなどを含む任意の形態または構成の支持体に適用可能であることが理解されるであろう。
【0138】
本方法は、スルホン化DNAのビーズへの高度に安定した結合を促進する条件を提供する。これは、当業者であれば、DNAとビーズとの相互作用を破壊することが予想される、脱スルホン化の非常に塩基性な反応条件にもかかわらず、亜硫酸水素塩で処理したDNAの効率的な回収を促進する。本明細書で提供される革新的なステップの組み合わせによって、本技術は、投入されたDNAの回収率を改善した、亜硫酸水素塩により変換されたDNAを調製するための方法を提供する。
【0139】
この技術は、以下に説明する実験結果に関連し、実験例で展開されている。これらの例は、核酸のメチル化状態の分析に使用される試薬の開発及び試験を説明する。特に、本技術は、結合緩衝液のpHが、シリカ及びウラシルスルホネートが豊富なDNAの両方の等電点pH(I)未満となるような酸性pHを有する結合溶液に関するものであり、それによって、スルホン化DNAのシリカへの結合を促進する。
【0140】
一般的なスルホン化試薬には、亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸水素アンモニウムが含まれる。以下の例では、亜硫酸水素アンモニウムが使用されるが、この技術の原理は、分子全体に電荷、例えば、非常に負の電荷を生成する方法で処理された任意のDNAに容易に適用可能である。例えば、他のスルホン化試薬(例えば、亜硫酸水素ナトリウム)で処理されたDNAは、本技術で使用できることがわかる。
【0141】
スルホン化反応のpHは、酸の添加なしで、典型的にはシリカのpH(I)を超えるpH(図2に概略的に示されるように)を有し、かつスルホン化DNAのpH(I)以上のpHを有する亜硫酸水素アンモニウムによって主に決定される。しかしながら、結合反応のpHがシリカ(または他の支持材料)及び/またはDNAのpH(I)を上回る場合、静電反発は、DNAのシリカへの完全な結合を妨げ得る。本技術は、特定の作用機序に限定されないが、例えば、スルホン化DNA-シリカビーズ混合物に酸を添加することによって酸性pHで結合反応を行うことは、シリカを中和し、DNAのウラシルスルホン酸基をプロトン化し、それによって静電反発を低減し、シリカ-スルホン化DNA相互作用を促進し得ることが観察される。
【0142】
本技術との使用に好適なDNAは、特定の方法によって単離されたDNAに限定されず、好適なDNAは、市販のキット、カラムなどの使用を含む、いくつかの方法で調製され得る。試料から、例えば対象からのDNAを単離する例示的な方法が以下に記載される。
【0143】
便DNA単離
いくつかの実施形態において、DNAは、便試料から単離されてもよい。本発明の技術と共に使用するのに好適な便からDNAを単離する例示的な実施形態は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,000,146号に見出される。簡潔に述べると、便試料を緩衝剤と共にホモジナイズし、固体を、例えば遠心分離によって除去し、標的DNA(複数可)に相補的なオリゴヌクレオチドを含む粒子またはビーズを使用して、得られた清明化された上清から特異的標的DNAを捕捉する。捕捉オリゴヌクレオチドに結合した標的DNAを、例えば、磁場を使用して磁気ビーズを収集することによって、溶液から分離し、捕捉したDNAを、任意選択で、例えば、変性条件を使用して、捕捉オリゴヌクレオチドから溶出する前に緩衝液で洗浄する。
【0144】
細胞株及び細胞培地DNA
細胞株について、無細胞ゲノムDNAは、例えば、「Maxwell(登録商標)RSC ccfDNA Plasma Kit(Promega Corp.,Madison,WI)」を使用して、細胞馴化培地から単離され得る。キットのプロトコルに従って、血漿の代わりに1mLの細胞馴化培地(CCM)を使用し、キットの手順に従って処理される。溶出体積は100μLであり、そのうち、70μLは、一般に、バイサルファイト変換に使用される。
【0145】
血液または血漿DNA
4mLの血漿試料から、例えばヒト血液試料からのDNAを単離するための例示的な手順は以下のとおりである:
・4mLの血漿試料に、300μLのプロテイナーゼK(20mg/mL)を添加し、混合する。
【0146】
・血漿-プロテイナーゼK混合物に、3μLの1μg/1μLの魚DNAを添加する。
【0147】
・2mLの血漿溶解緩衝液を血漿に添加する。
【0148】
血漿溶解緩衝液とは、以下のものである。
【0149】
-4.3Mのグアニジンチオシアネート
-10%のIGEPAL CA-630(オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、分枝)
(45mLの4.8Mグアニジンチオシアネートと組み合わせた5.3gのIGEPAL CA-630)
・混合物を55℃で1時間、500rpmで振盪しながらインキュベートする。
【0150】
・追加して混合:
o3mLの血漿溶解緩衝液
o200μL磁気シリカ結合ビーズ(16μg/μLのビーズ)
o2mLの100%イソプロパノールを添加する
(任意選択で、各添加後に混合し、及び/または任意選択で、溶解緩衝液及びイソプロパノールを予め混合してから混合物に添加する)
・30℃で30分間、500rpmで振盪しながらインキュベートする。
【0151】
・磁石上にチューブを置き、ビーズを収集させる。上清を吸引して廃棄する。
【0152】
・結合ビーズを含む容器に750μLのGuHCl-EtOHを添加し、混合する。
【0153】
GuHCl-EtOH洗浄緩衝液は以下である:
-3M GuHCl(塩酸グアニジン)
-57% EtOH(エチルアルコール)
・400rpmで1分間振盪する。
【0154】
・サンプルをディープウェルプレートまたは2mLのマイクロ遠心チューブに移す。
【0155】
・磁石上にチューブを置き、10分間ビーズを収集させる。上清を吸引して廃棄する。
【0156】
・ビーズに、1000μLの洗浄緩衝液(10mMのTris HCl、80%のEtOH)を添加し、振盪しながら、30℃で3分間インキュベートする。
【0157】
・磁石上にチューブを置き、ビーズを収集させる。上清を吸引して廃棄する。
【0158】
・500μLの洗浄緩衝液をビーズに添加し、振盪しながら30℃で3分間インキュベートする。
【0159】
・磁石上にチューブを置き、ビーズを収集させる。上清を吸引して廃棄する。
【0160】
・250μLの洗浄緩衝液を添加し、振盪しながら30℃で3分間インキュベートする。
【0161】
・磁石上にチューブを置き、ビーズを収集させる。残りの緩衝液を吸引して廃棄する。
【0162】
・250μLの洗浄緩衝液を添加し、振盪しながら30℃で3分間インキュベートする。
【0163】
・磁石上にチューブを置き、ビーズを収集させる。残りの緩衝液を吸引して廃棄する。
【0164】
・ビーズを、振盪しながら70℃で15分間乾燥させる。
【0165】
・125μLの溶出緩衝液(10mMのTris HCl、pH 8.0、0.1mMのEDTA)をビーズに添加し、振盪しながら65℃で25分間インキュベートする。
【0166】
・磁石上にチューブを置き、10分間ビーズを収集させる。
【0167】
・DNAを含有する上清を吸引し、新しい容器またはチューブに移す。
【0168】
DNAスルホン化及び精製
典型的なバイサルファイト処理方法では、バイサルファイト処理ステップにおいて、非メチル化シトシン塩基は脱アミノ及びスルホン化を受け、負に帯電したウラシルスルホン酸塩となる(図1)。変換試薬を除去するために、スルホン化DNA試料は、アルコール沈殿または例えばゲル濾過によって単離され得る。スルホン化DNAはまた、カオトロピック塩、例えば、塩酸グアニジン(GuHCl)またはグアニジンイソチオシアネート(GITC)などのグアニジン塩を、例えば、約6~7Mの濃度で添加することによって、シリカなどの支持体、例えば、反応容器のシリカコーティング表面、シリカ粒子または繊維、常磁性シリカビーズなどに結合してもよい。変性DNAの固体マトリックスへの結合を促進するための他のカオトロピック結合剤としては、ヨウ化物、過塩素酸塩、及びトリクロロ酢酸塩が挙げられる。
【0169】
(本技術の低pH結合ステップを伴わない)DNAのバイサルファイト処理の典型的な方法は以下のとおりである:
I.亜硫酸水素アンモニウムを用いたDNAのスルホン化
1.各チューブに、64μLのDNA、7μLの1NのNaOH、ならびに0.2mg/mLのBSA及び0.25mg/mLの魚DNAを含有する9μLの担体溶液を組み合わせる。
【0170】
2.42℃で20分間インキュベートする。
【0171】
3.45%の亜硫酸水素アンモニウムを120μL添加し、66℃で75分間インキュベートする。
【0172】
4.4℃で10分間インキュベートする。
II.磁気ビーズを使用した脱スルホン化
材料
・磁気ビーズ(Promega MagneSil Paramagnetic Particles、Promegaカタログ番号AS1050、16μg/μL)。
【0173】
・結合緩衝液:6.5~7Mの塩酸グアニジン。
【0174】
・変換後洗浄緩衝液:10mM Tris HCl(pH8.0)を有する80%エタノール。
【0175】
・脱スルホン化緩衝液:70%のイソプロピルアルコール、0.1NのNaOHを脱スルホン化緩衝液のために選択した。
【0176】
試料は、任意の適切なデバイスまたは技術を使用して混合され、基本的に以下に記載されるような温度及び混合速度で試料を混合またはインキュベートする。例えば、Thermomixer(Eppendorf)を、試料の混合またはインキュベーションに使用することができる。例示的な脱スルホン化は以下のとおりである。
1.ビーズストックをボルテックスボトルで1分間完全に混合する。
2.50μLのビーズを、2.0mLのチューブ(例えば、USA Scientificから)に分取する。
3.結合緩衝液750μLをビーズに添加する。
4.ステップIから150μLのスルホン化DNAを添加する。
5.混合する(例えば、30℃で30分間、1000RPM)。
6.磁石スタンドにチューブを置き、5分間放置する。チューブをスタンド上に置いた状態で、上清を取り除いて廃棄する。
7.1,000uLの洗浄緩衝液を添加する。混合する(例えば、30℃で3分間、1000RPM)。
8.磁石スタンドにチューブを置き、5分間放置する。チューブをスタンド上に置いた状態で、上清を取り除いて廃棄する。
9.250uLの洗浄緩衝液を添加する。混合する(例えば、30℃で3分間、1000RPM)。
10.チューブを磁気ラックに置き、1分後に上清を取り除き、廃棄する。
11.200μLの脱スルホン化緩衝液を添加する。混合する(例えば、30℃で5分間、1000RPM)。
12.チューブを磁気ラックに置き、1分後に上清を取り除き、廃棄する。
13.250uLの洗浄緩衝液を添加する。混合する(例えば、30℃で3分間、1000RPM)。
14.チューブを磁気ラックに置き、1分後に上清を取り除き、廃棄する。
15.チューブに250uLの洗浄緩衝液を添加する。混合する(例えば、30℃で3分間、1000RPM)。
16.チューブを磁気ラックに置き、1分後に上清を取り除き、廃棄する。
17.すべてのチューブを、蓋を開けた状態で、30℃で15分間インキュベートする。
18.磁気ラックからチューブを取り外し、70μLの溶出緩衝液を直接ビーズに添加する。
19.ビーズを溶出緩衝液(例えば、40℃で45分間、1000RPM)でインキュベートする。
20.チューブを磁気ラックに約1分間置き、上清を取り出して保存する。
【0177】
次いで、以下に記載されるように、変換されたDNAを、検出アッセイ、例えば、事前増幅及び/またはフラップエンドヌクレアーゼアッセイで使用する。
【0178】
磁気シリカビーズ
本明細書で提供される技術は、DNAメチル化の定量的測定のためのバイサルファイト処理及びDNAの単離に関する。いくつかの実施形態において、磁気ビーズは、DNA、例えば、磁性コア及びシリカコーティングを含むビーズの処理及び単離のために使用される。シリカコーティングはDNAに結合し、磁性コアは、磁石を使用してビーズ(及び結合したDNA)を濃縮及び単離するための効率的な方法を提供する。いくつかの実施形態において、シリカコーティングされた磁気ビーズは、MagneSil Paramagnetic Particles(Promega,Madison,WI;カタログ番号AS1220またはAS640A,Promega.com)である。
【0179】
本技術は、特定の種類の磁気ビーズに限定されない。本明細書に記載の技術の実施形態は、核酸に対する親和性を有する任意の磁気ビーズ(例えば、常磁性ビーズ)を使用する。いくつかの実施形態において、磁性ビーズは、磁鉄鉱(例えば、Fe)コアと、二酸化ケイ素(SiO)を含むコーティングとを有する。核酸がビーズに結合される溶液のビーズ構造(例えば、サイズ、多孔度、形状)及び組成は、異なるタイプ(例えば、一本鎖、二本鎖、または他の形態もしくは立体配座におけるDNAまたはRNA、天然源に由来する核酸、化学的に合成され、酵素的に合成され(例えば、PCRによって))及び核酸のサイズ(例えば、例えば、200以下の塩基からなる、小さなオリゴマー、プライマー、ゲノム、プラスミド、断片)を選択的に結合するように変化させることができる。ビーズのこれらの特徴は、核酸のビーズへの結合及び溶出に影響する。関連技術は、例えば、米国特許第6,194,562号、同第6,270,970号、同第6,284,470号、同第6,368,800号、同第6,376,194号に記載されており、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。また、例えば、オルガノシラン(USPat.No.4,554,088に記載のように)、カルボキシル化ポリアクリレート(USPat.No.5,648,124に記載のように)、セルロース(米国特許出願第10/955,974号に記載のように)、ヒドロキシシラン(米国特許出願第11/459,541号に記載のように)、及び疎水性脂肪族リガンド(米国特許出願第12/221,750号に記載のように)、でコートされた磁気ビーズも企図される。
【0180】
この技術は、特定のサイズの磁気ビーズに限定されない。したがって、本技術の実施形態は、いくつかの異なるサイズの磁気ビーズを使用する。より小さいビーズは、吸着のために(重量単位で)より多くの表面積を提供するが、より小さいビーズは、より大きなビーズと比較して、ビーズコアに組み込むことができる磁性材料の量が制限される。いくつかの実施形態において、粒子は、ビーズが使用される技術に適した定義された平均または中央値のサイズを有するサイズの範囲にわたって分布する。いくつかの実施形態において、粒子は、比較的狭い単峰粒径分布である。
【0181】
いくつかの実施形態において、本技術で使用するビーズは、粒子の外側からアクセス可能な細孔を有する。かかる細孔は、粒子の内部に核酸、例えばDNA断片を受け入れ、細孔の内面に結合するのに十分に大きい制御されたサイズ範囲を有する。細孔は、核酸を結合することができる大きな表面積を提供するように設計されている。更に、一態様において、本技術は、特定の核酸(例えば、DNA)結合及び/または単離の方法に限定されない。したがって、いくつかの実施形態において、バイサルファイト反応に関連する技術の態様は、他の好適なDNA単離の方法(例えば、沈殿、カラムクロマトグラフィー(例えば、スピンカラム)など)と組み合わせられる。
【0182】
ビーズ(及び結合材料)は、磁場を使用して混合物から除去される。いくつかの実施形態において、磁場に加えて他の形態の外力が、本技術による生物学的標的物質を単離するために使用される。例えば、好適な追加の形態の外力には、重力濾過、真空濾過、及び遠心分離が含まれるが、これらに限定されない。
【0183】
本技術の実施形態は、外部磁場を印加して、複合体を媒体から除去する。そのような磁場は、いくつかの異なる既知の手段のうちのいずれか1つを使用して媒体内で適切に生成することができる。例えば、ビーズを含有する溶液の容器の外面上に磁石を配置することができ、粒子が溶液中を移動し、磁石に隣接する容器の内面上に集まるようにする。次いで、溶液が容器からデカントされ、廃棄される間、粒子が磁石によって生成された磁場によって容器内に保持されるように、磁石を容器の外面上の位置に保持することができる。次に、第2の溶液を容器に添加し、粒子が第2の溶液に移動するように磁石を除去することができる。あるいは、磁化可能なプローブを溶液中に挿入し、プローブを磁化させることで、粒子が溶液中に浸漬したプローブの端部に堆積することができる。次いで、プローブを、磁化されたまま、第2の溶液に浸漬したまま、溶液から取り除くことができ、磁場は、粒子が第2の溶液に入ることを可能にすることを停止した。上記で一般的に説明された磁気除去及び移動技術の両方で使用されるように設計された磁石には、商業的な供給源が存在する。例えば、Promega Corporation、Magnetight Separation Stand(Novagen,Madison,Wis.)、またはDynal Magnetic Particle Concentrator(Dynal,Oslo,Norway)から入手可能な、MagneSphere Technology Magnetic Separation StandまたはPoly A Tract Series 9600TM Multi-Magnetを参照されたい。いくつかの実施形態は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に取り込まれる、米国特許出願第13/089116号による磁気デバイスの使用を含む。更に、いくつかの実施形態は、(例えば、米国特許第5,647,994号及び第5,702,950号に記載されるように)「ジェットチャネル」またはピペット端部磁石分離の使用を企図する。いくつかの実施形態は、例えば、Thermo Scientificから市販されているKingFisherシステムによって例示されるように、浸漬プローブアプローチ(例えば、U.S.Pat.No.6,447,729及び6,448,092に記載されるように)の使用を企図する。
【0184】
DNA鎖の定量
本明細書に記載の例では、鎖回収を、フラップエンドヌクレアーゼアッセイを使用して測定した。例えば、血液から試料核酸を抽出するための、ならびにバイサルファイト変換されたDNA及び未変換DNAの鎖を定量するための例示的な方法は、例えば、米国特許第10,648,025号に記載されており、これは、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0185】
QuARTSアッセイ
本技術に従って生成されたDNA鎖を定量する例示的な方法は、QuARTSフラップアッセイ技術である。QuARTS技術は、ポリメラーゼベースの標的DNA増幅プロセスと侵襲的な切断ベースのシグナル増幅プロセスを組み合わせる。この技術は、例えば、米国特許出願第8,361,720、同8,715,937号、同8,916号,344号、同9,212,392号、及び米国特許出願第15/841,006号に記載されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。QuARTS反応によって生成された蛍光シグナルは、リアルタイムPCRと同様の方法で監視され、試料中の標的核酸の量の定量化を可能にする。
【0186】
例示的なQuARTS反応は、典型的には、約400~600nmol/L(例えば、500nmol/L)の各プライマー及び検出プローブ、約100nmol/Lの侵襲的オリゴヌクレオチド、約600~700nmol/Lの各FRETカセット(例えば、Hologic,Inc.によって市販されているFAM、例えば、BioSerch Technologiesによって市販されているHEX、及び例えば、BioSerch Technologiesによって市販されているQuasar 670)、6.675ng/μLのFEN-1エンドヌクレアーゼ(例えば、Cleavase(登録商標)2.0、Hologic,Inc.)、30μLの反応体積中の1ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(例えば、GoTaq(登録商標)DNAポリメラーゼ、Promegacorp.、Madison、WI)、10mmol/Lの3-(n-モルホルフィノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、7.5mmol/LのMgCl、及び250μmol/Lの各dTPNを含む。例示的なQuARTSサイクリング条件は、以下の表に示される通りである。いくつかの用途では、定量化サイクル(C)の分析は、試料中の標的DNA鎖の最初の数(例えば、コピー数)の尺度を提供する。
【0187】
【表1】
【0188】
大量のバイサルファイト変換DNAの多重標的化事前増幅
投入された試料からバイサルファイト処理されたDNAの大部分または全てを事前増幅するために、大量の処理されたDNAが、単一の、大量の多重増幅反応で使用され得る。例えば、DNAは、細胞株(例えば、DFCI032細胞株(腺癌)、H1755細胞株(神経内分泌))から、例えば、上記のように、Maxwell Promega血液キット#AS1400を使用して抽出される。DNAは、例えば上記のように、バイサルファイト変換される。
【0189】
事前増幅は、例えば、7.5mMのMgCl、10mMのMOPS、0.3mMのTris-HCl、pH8.0、0.8mMのKCl、0.1μg/μLのBSA、0.0001%のTween-20、0.0001%のIGEPALCA-630、250μMの各dNTP、オリゴヌクレオチドプライマー(例えば、12標的について、等モル量(例えば、各プライマーの200~500nMの範囲を含むが、これらに限定されない)、または異なる標的領域の増幅効率を均衡させるように調整された個々のプライマー濃度の、12プライマー対/24プライマー)、0.025単位/μLのHotStart GoTaq濃度、及び20~50体積%のバイサルファイト処理された標的DNA(例えば、10μLの標的DNAを50μLの反応混合物中に、または50μLの標的DNAを125μLの反応混合物中に)を含有する反応混合物中で行われる。熱サイクル時間及び温度は、反応物及び増幅容器の体積に適切であるように選択される。例えば、反応は以下のようにサイクルされ得る。
【0190】
【表2】
【0191】
熱サイクル後、増幅反応前のアリコート(例えば、10μL)を、魚DNAの有無にかかわらず、10mMのTris、0.1mMのEDTA中で500μLに希釈する。希釈された増幅前DNA(例えば、10μL)のアリコートが、例えば、上述のように、QuARTS PCR-フラップアッセイで使用される。各々があらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2015年10月30日に出願された米国特許出願第62/249,097号、2016年10月26日に出願された米国特許出願第15/335,096号、2016年10月26日に出願されたPCT/US16/58875号、及び米国特許第US10,648,025号も参照されたい。
【0192】
本技術は、フラップエンドヌクレアーゼアッセイの使用に限定されず、異なる実施形態において、バイサルファイト変換されたDNAを分析する任意の方法が使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、分析は、直接配列決定、パイロシーケンシング、メチル化感受性一本鎖立体構造分析(MS-SSCA)、高分解能溶解分析、メチル化感受性一本ヌクレオチドプライマー伸長(MS-SnuPE)、塩基特異的切断/質量分析(例えば、MALDI-TOFによる)、メチル化特異的PCR(MSP)、マイクロアレイ分析、制限消化(restriction digest)分析)、INVADERアッセイ、combined bisulfite restriction analysis、またはメチル化DNA免疫沈降(MeDIP)を含む。これら及び他の方法は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により組み込まれる、例えば、Fraga MF & Esteller M(2002),“DNA methylation:a profile of methods and applications”,Bio Techniques 33(3):632,634,636-49、El-MaarriO(2003),“Methods:DNA methylation”,Advances in Experimental Medicine and Biology 544:197-204、Laird PW(2003),“The power and the promise of DNA methylation markers”,Nat.Rev.Cancer 3(4):253-66、Callinan PA & Feinberg AP(2006),“The emerging science of epigenomics”,Hum Mol Genet 15(90001):R95-101を参照されたい。
【0193】
実験
実施例1
バイサルファイト変換されたDNAの回収に対する結合pHの効果
以下に記載される実施例では、一本鎖DNAテンプレートを、上記の例示的なスルホン化ステップに記載されるように、亜硫酸水素アンモニウム(ABS)でスルホン化した。DNAのスルホン化後、サイズ排除濾過によってスルホン化反応溶液を除去し、スルホン化DNAを、低(19mM K+)、中(228mM K+)及び高(474mM K+)濃度で酢酸カリウム(KOAc)と組み合わせた。対照として、スルホン化DNAテンプレートの一部を、酢酸カリウムの代わりに亜硫酸水素塩溶液に戻した。
【0194】
その後、各試料をカオトロープ及びシリカビーズと共にインキュベートし、結合を促進した。以下の表1は、亜硫酸水素塩溶液が、各テンプレートの高い塩濃度に起因して結合反応を阻害したことを例証する。結合pHは4.8~4.9であった。
【0195】
【表3】
【0196】
様々なシトシン含有量の6つのDNAテンプレート(マーカー)(以下の表2を参照)をバイサルファイト処理し、次いで、5.0~3.4の範囲のpHを有する結合溶液を使用してシリカに結合させた。
【0197】
【表4】
【0198】
結果を図3に示す。最大対数鎖回収に必要なpHは、各マーカーによって変化し、配列の変換されたシトシンのパーセント(すなわち、処理前の非メチル化シトシンヌクレオチドであり、結合ステップにおけるウラシルスルホネートヌクレオチドである鎖内の全ヌクレオチドのパーセント)と相関するように思われる。非メチル化シトシンの含有量が高く、したがって結合ステップでウラシルスルホネートに変換された塩基の含有量が高いDNAは、最大鎖回収のためにより低いpHを必要とした。
【0199】
合計17個の異なるDNA配列を、上記と同じ様式で試験した。各DNAの変換されたシトシンのパーセントを、最大鎖回収に必要とされる最高推定結合pHに対してプロットした。これらの点の線形フィッティング(図4)は、0.76のRを有し、変換されたシトシンのパーセントと結合pHとの間の関係が強いことを示唆した。
【0200】
変換されたシトシンパーセントと結合pHとの間の相関の強度を更に例示するために、図3のDNA鎖のうちの3つ(BMP3、β-アクチン(バイサルファイト処理アクチン、または「BTACT」)、及びNDRG4)を修飾して、各試験配列について同じプライマー及びプローブ結合配列を保持するが、その配列の他の領域において異なる数の非メチル化Cを有するDNAのセットを生成した。各セットの配列について、捕捉した鎖の測定値に直線をフィッティングさせた(図5)。4つ全てのフィッティング(図4及び5)の傾き及び切片は、類似していた。
【0201】
DNA試料の種類の比較
低pH(クエン酸緩衝液)及び非調整pH(標準条件)で行われた結合反応からの鎖回収を、複数の試料タイプ:合成DNAの一本鎖126量体鎖(「126」)、精製された細胞株DNA(「ECLD」)をスパイクした便試料から単離したDNA、及びメチル化DNA(「HMS」)に高いシグナルを与えると以前に特徴付けられた便試料から単離したDNAについて比較し、試料タイプ及び結合条件の各組み合わせについて6回の複製を以下の表3に示し、鎖回収結果を示した。便試料からの全てのDNAを、上記の捕捉プロセスで単離し、合成126量体DNA鎖を、キャリアとして外来性魚DNAと組み合わせた。
【0202】
【表5】
【0203】
【表6】
【0204】
表3の結果は、低pH結合反応の使用が、これらの試料タイプの各々について類似または増強された鎖回収を生成したことを示す。
【0205】
低(1×)または高(10×)ヌクレオソームマトリックスを含む代理血液試料を調製した。ヌクレオソームDNAを、Active Motif Nucleosome Kit(Active Motif、カタログ番号53504)を使用して、HCT116細胞から調製した。メチル化DNAマーカー(MDM)陽性血漿試料を模倣するために、ヌクレオソームDNAを、LBgard(登録商標)血液チューブ(Exact Sciences,Inc.)を使用して健康なドナーから採取したプールされた血漿中にスパイクした、またはSERACON陰性希釈液中にスパイクした。ヌクレオソームマトリックス調製物の使用は、MDM陽性DNAが、がん陽性患者からの試料において予想されるものと同様のサイズ分布を有することを保証する。
【0206】
試料を、上記の血漿抽出手順を使用して、またはQIASYMPHONY DSP循環DNAキット(Qiagen,Inc.)を使用して、DNAを抽出するように処理した。次いで、抽出されたDNA試料をバイサルファイト処理し、上記の標準(非調整pH)結合反応液(ABS反応に添加される7MのGuHCl結合緩衝液)、及び低pH結合反応液(133mMのクエン酸塩緩衝液を有する7MのGuHCl、pH2.2結合緩衝液)中で結合させた。
【0207】
14個のDNAの比較は、t検定と比較した場合、15/34条件についての鎖回収の増加を示した(下記の表4、5、6、及び7)。全体的に、低い結合pHは、様々な試料タイプについて鎖回収を増加させた。
【0208】
【表7】
【0209】
【表8】
【0210】
【表9】
【0211】
【表10】
【0212】
便試料からの清明化された上清から単離されたDNA
4~14mLs(標準)の範囲の試料投入体積を有する細胞株DNAスパイクされた便試料を処理して細胞株DNAを捕捉し、次いで、バイサルファイト処理し、標準pH(図6A)及び低結合pH結合(図6B)溶液を使用して単離した。図6A及び6Bの比較は、低い結合pHでの全DNA及び鎖回収の改善された直線性を示す。非調整(標準)及び低結合pHのために使用される試料は、異なる量のスパイクされたDNAテンプレートを有し、したがって、示される全鎖回収は、結合条件にわたって直接比較されるべきではない。
【0213】
非調整または低pH結合条件を使用して、便試料の各体積(mL)から回収したDNAの量を、図7の8つのパネルに示す。
【0214】
異なるロットの亜硫酸水素アンモニウムの効果
4つの亜硫酸水素アンモニウム(56%)ロットを、非調整及び低結合pH条件で対照させて試験した。ABSロットは経年によって異なり、最も古いものは9年で、pHが最も低く、亜硫酸水素アンモニウムは年間2パーセントも分解する可能性がある。鎖回収は、pH調整なしで、最も古い材料が最も高い回収率を有し、ロットにわたって変化した(図8A)。低い結合pHでは、回収アラインメントが改善された。
【0215】
亜硫酸水素アンモニウム濃度の影響
亜硫酸水素アンモニウムを57~43%の濃度で滴定した後、低結合pH(クエン酸緩衝液)で結合した合成DNAテンプレートで、またはpH調整なしで試験した。56.6%を基準値として、示されたマーカーDNAの各々について、より低いABS濃度に対する結合の%差を計算した。結果を、図8Bの表に示す。ABS濃度にわたる鎖回復アラインメントは、低い結合pHで改善された。
【0216】
製造中に導入された未知の結合溶液(7Mグアニジン-HCl)の汚染物質は、選択マーカーの回収を抑制することが見出された。低結合pH及び非調整鎖回収を、汚染物質を有するものと有しないものと比較した場合、低結合pH条件は、非調整結合条件と比較して回収の低下を減少させた。(図9)。
【0217】
異なる製造者のビーズを使用した回収
複数のベンダーからのシリカビーズを、結合時に非調整pHで、または低い結合pHでバイサルファイト変換に使用するために試験し、結果はそれぞれ、図10及び11に示される。いくつかのビーズは、非調整結合pHでは鎖回復を示さなかったが(図10)、結合pHが低下して回復が改善されたことを示した(図11)。ビーズ濃度は、図10の最初のスクリーニングに対して等しくなるように調整しなかったが、図11に示される試験についてアラインさせた。
【0218】
pH範囲にわたるDNA回収
酸性条件は、DNAテンプレートの酸加水分解による鎖回復の損失を引き起こす可能性がある。4.9~2.1の範囲で結合pHを調べた場合、鎖回収は、約pH3.9~約2.5で最も一貫していた(図12参照)。
【0219】
DNAサイズ及び濃度の影響
DNAサイズ及び濃度は、組織、血液、及び便などの試料タイプにわたって、及び試料タイプ内で変化し得る。この実験では、仔牛の胸腺DNAを200bp、3.6反応、及び20kbpのサイズで300、2700、及び5400ng/ランに滴定した。DNA試料を126bpの合成標的分子でスパイクし、スルホン化DNAの捕捉のために非調整結合pH及び低結合pHを用いて亜硫酸水素塩で処理した。結果を、図13に示す。
【0220】
DNAサイズが減少し、濃度が増加するにつれて、鎖回収は、非調整結合pH化学にて有意に減少した。低結合pH化学を有する鎖回収は、非調整結合pHよりも大幅(最大374%)に改善された。加えて、変動係数(CV)は、低結合pH化学で改善された。
【0221】
実施例2
3つの結合プロトコルの比較
以下の実施例では、スルホン化DNAをシリカに結合するための3つの異なる手順を比較する。
【0222】
プロトコル1は、スルホン化反応を7M塩酸グアニジン(GuHCl)の結合溶液と組み合わせた標準プロトコルであるが、pHを低下させるための酸は添加されない。
【0223】
プロトコル2では、スルホン化反応混合物を、7MのGuHCl、133mMクエン酸塩、pH2.2の結合溶液と組み合わせる。
【0224】
プロトコル3では、スルホン化反応混合物を、7MのGuHClの結合溶液と組み合わせるが、pHを低下させるための酸は添加されない。
【0225】
記載される各手順において、ビーズ結合スルホン化DNAは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第9,315,853号に記載されるように、固体支持体上で脱スルホン化される。
【0226】
変換プロトコルは、ハミルトンSTARlet自動ピペッティングシステムのパフォーマンスに対して以下に説明されるが、同等の機器を使用して手動で実行できる。
【0227】
プロトコル1
この手順は、標的DNAに相補的な捕捉オリゴヌクレオチドを含む配列特異的捕捉ビーズを使用した、試料、例えば、便試料から捕捉されたDNAの処理を記載する。
変性:
1.捕捉ビーズペレットを洗浄するには、90ng/μLのBSAを20μL、10mMのTris(pH8.0)、1mMのEDTA、及び100mMのNaOHを160μL添加する。
【0228】
2.43℃で、1500RPMで45秒間混合して、インキュベートする。
【0229】
3.混合せずに、43℃で更に19分15秒をインキュベートする(合計20分)。
【0230】
4.マグネット上で5分間結合する。
【0231】
5.変性した試料80μLを新しいディープウェルプレートに移す。
スルホン化:
1.変性試料に57%(重量/重量)の亜硫酸水素アンモニウム(ABS)120μLを添加する。
【0232】
2.65.5℃のヒーターシェーカー上で、1200RPMで3分間混合する。
【0233】
3.混合せずに更に72分間インキュベートする(合計75分間)。
スルホン化DNA結合:
1.試料に7MのGuHCl結合溶液750μLを添加する。
【0234】
2.ピペットを介してビーズストックを5サイクル混合し、16mg/mLの常磁性シリカビーズ50μLを各試料に添加する。
【0235】
3.30.5℃で、1200RPM混合で30分間インキュベートする。
【0236】
4.磁石上に5分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
アルコール洗浄1及び2:
1.ビーズペレットに80%のエタノール(EtOH)1mL、10mMのTris(pH8.0)の変換洗浄液を添加する。
【0237】
2.1200RPMで3分間混合する。
【0238】
3.磁石上に5分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
【0239】
4.ビーズペレットに80%のEtOH250μL、10mMのTris(pH8.0)の変換洗浄液を添加する。
【0240】
5.1200RPMで3分間混合する。
【0241】
6.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
脱スルホン化:
1.ビーズペレットに70%のイソプロピルアルコール(IPA)200μL、105mMのNaOHを添加する。
【0242】
2.30.5℃で、1200RPMの混合で7分間インキュベートする。
【0243】
3.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
アルコール洗浄3及び4:
1.ビーズペレットに80%のEtOH250μL、10mMのTris(pH8.0)の変換洗浄液を添加する。
【0244】
2.1200RPMで3分間混合する。
【0245】
3.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
【0246】
4.ビーズペレットに80%のEtOH250μL、10mMのTris(pH8.0)の変換洗浄液を添加する。
【0247】
5.1200RPMで3分間混合する。
【0248】
6.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
乾燥ビーズ及び溶出DNA:
1.ビーズペレットを1200RPMで混合しながら71.5℃で15分間インキュベートし、乾燥させる。
【0249】
2.10mMのTris(pH8.0)70μL、0.1mMのEDTAを乾燥ビーズに添加する。
【0250】
3.66.5℃で1200RPM混合して25分間インキュベートする。
【0251】
4.磁石上に8分間置いて、ビーズを冷却し、結合する。
【0252】
5.変換されたDNAはアッセイの準備ができている。
【0253】
プロトコル2
この手順は、標的DNAに相補的な捕捉オリゴヌクレオチドを含む配列特異的捕捉ビーズを使用した、試料、例えば、便試料から捕捉されたDNAの処理を記載する。
変性:
1.捕捉ビーズペレットを洗浄するために、36ng/μLのBSAを50μL、10mMのTris(pH8.0)、1mMのEDTA及び160mMのNaOH50μLを添加する。
【0254】
2.32.5℃で、1500RPMで混合して3分間インキュベートする。
【0255】
3.磁石上で5分間結合する。
【0256】
4.変性した試料80μLを新しいディープウェルプレートに移す。
スルホン化:
1.変性試料に52重量/重量%のABS120μLを添加する。
【0257】
2.62.5℃のヒーターシェーカーに置き、1200RPMで3分間混合する。
【0258】
3.振盪せずに更に85分間インキュベートする(合計88分間)。
スルホン化DNA結合:
1.7MのGuHCl750μL、133mMのクエン酸塩、pH2.2の結合溶液を試料に添加する。
【0259】
2.ピペットを介してビーズストックを5サイクル混合し、16mg/mLの常磁性シリカビーズ50μLを各試料に添加する。
【0260】
3.32.5℃で、1200RPM混合しながら15分間インキュベートする。
【0261】
4.磁石上に5分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
アルコール洗浄1及び2:
1.ビーズペレットに75%のIPA1mL、20mMのTris(pH7.8)の変換洗浄液を添加する。
【0262】
2.1200RPMで3分間混合する。
【0263】
3.磁石上に5分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
【0264】
4.ビーズペレットに75%のIPA250μL、20mMのTris(pH7.8)の変換洗浄液を添加する。
【0265】
5.1200RPMで3分間混合する。
【0266】
6.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
脱スルホン化:
1.ビーズペレットに70%のIPA200μL、30mMのNaOHを添加する。
【0267】
2.32.5℃で、1200RPMの混合で3分間インキュベートする。
【0268】
3.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
アルコール洗浄3及び4:
1.ビーズペレットに75%のIPA250μL、20mMのTris(pH7.8)の変換洗浄液を添加する。
【0269】
2.1200RPMで3分間混合する。
【0270】
3.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
【0271】
4.ビーズペレットに75%のIPA250μL、20mMのTris(pH7.8)の変換洗浄液を添加する。
【0272】
5.1200RPMで3分間混合する。
【0273】
6.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して破棄する。
乾燥ビーズ及び溶出DNA:
1.ビーズペレットを71.5℃にて1200RPMで混合しながら15分間インキュベートし、乾燥させる。
【0274】
2.3mMのTris(pH7.8)70μL、0.1mMのEDTAを乾燥ビーズに添加する。
【0275】
3.66.5℃にて1200RPMで混合し、25分間インキュベートする。
【0276】
4.マグネット上に25分間置いて、ビーズを冷却して結合する。
【0277】
5.変換されたDNAはアッセイの準備ができている。
【0278】
プロトコル3
この手順は、カオトロープ媒介性シリカ支持体への結合を使用した、試料、例えば、血漿から抽出されたDNAの処理を説明する。以下の変性ステップの前に、DNAを支持体から溶出させる。
変性:
1.抽出した75μLのDNA試料に、90ng/μのLBSA11μL、10mMのTris(pH8.0)、1mMのEDTA、及び11μLの1.0MのNaOHを添加する。
【0279】
2.1200RPM混合しながら、室温で1分間インキュベートする。
スルホン化:
1.変性試料に52重量/重量%のABS120μLを添加する。
【0280】
2.ヒーターシェーカー上に置いて、65.5℃で、3分間1200RPMで混合する。
【0281】
3.混合せずに更に72分間インキュベートする(合計75分間)。
スルホン化DNA結合:
1.7MのGuHCl結合溶液750μLを試料に添加する。
【0282】
2.ピペットを介してビーズストックを5サイクル混合し、16mg/mLの常磁性シリカビーズ50μLを各試料に添加する。
【0283】
3.30.5℃にて1200RPMで混合し、で30分間インキュベートする。
【0284】
4.磁石上に5分間置いてビーズを結合し、上清を廃棄物に吸引する。
アルコール洗浄1及び2:
1.ビーズペレットに80%のEtOH1mL、10mMのTris(pH8.0)の変換洗浄液を添加する。
【0285】
2.1200RPMで3分間混合する。
【0286】
3.磁石上に5分間置いてビーズを結合し、上清を廃棄物に吸引する。
【0287】
4.ビーズペレットに80%のEtOH250μL、10mMのTris(pH8.0)の変換洗浄液を添加する。
【0288】
5.1200RPMで3分間混合する。
【0289】
6.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して廃棄する。
脱スルホン化:
1.ビーズペレットに、75%のIPA200μL、87.5mMのNaOHを添加する。
【0290】
2.30.5℃にて、1200RPMの混合で7分間インキュベートする。
【0291】
3.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して廃棄する。
アルコール洗浄3及び4:
1.ビーズペレットに80%のEtOH250μL、10mMのTris(pH8.0)の変換洗浄液を添加する。
【0292】
2.1200RPMで3分間混合する。
【0293】
3.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して廃棄する。
【0294】
4.ビーズペレットに250μLの80%EtOH、10mMのTris(pH8.0)の変換洗浄液を添加する。
【0295】
5.1200RPMで3分間混合する。
【0296】
6.磁石上に2分間置いてビーズを結合し、上清を吸引して廃棄する。
乾燥ビーズ及び溶出DNA:
1.ビーズペレットを71.5℃にて1200RPMで混合しながら15分間インキュベートし、乾燥させる。
【0297】
2.4mMのTris(pH8.0)80μL、0.1mMのEDTAを乾燥ビーズに添加する。
【0298】
3.66.5℃にて1200RPM混合し、25分間インキュベートする。
【0299】
4.磁石上に20分間置いてビーズを冷却して結合する
5.変換されたDNAはアッセイの準備ができている。
上述の条件をまとめ、図14の表に比較した。
【0300】
上述の治療プロトコルを比較するために、ゲノムDNAを、Maxwellシステム(PromegaCorp.、Fichburg、WI)、及びRSC Blood DNA Kit(PromegaCorp.、カタログ番号ASB1400)を使用して、いずれも製造業者の説明書に従って、細胞株OE33細胞(食道癌)から抽出した。調製したDNAを、全ての3つのプロトコルで使用し、各プロトコルの変性ステップに、介在するDNA捕捉ステップなしで直接添加した。プロトコル1、2、及び3の各々についての鎖回収を、26.7、17.8、11.87、7.91、5.27、3.52ng/μLの濃度のDNAについて試験した。各条件の4つの複製物を試験した。調製したDNAで試験した配列は、メチル化マーカー遺伝子ZNF568、BMP3、B3GALT6、NDRG4、VAV3、及びZNF682であった。詳細なデータを図15A及び15Bに示す。
【0301】
図16は、異なるメチル化マーカーDNAについて図15A~15Bに示されるデータに基づいて、プロトコル1及びプロトコル3(両方とも結合に対してpH調整なし)と比較したプロトコル2(低pH結合を使用した)からの鎖回収の対比較を有する表を示す。
【0302】
図17は、示されるDNA濃度でのプロトコル2対プロトコル1またはプロトコル3(「プロトコルX」として集合的にグループ化される)を使用したパーセンテージ変化を示すグラフを示す。破線は、100%、すなわち、プロトコル2及びプロトコルXを使用した等しい回収率を示す。プロトコル1がより高い鎖回収を与えた、試験したより低DNA濃度でのVAV3マーカーDNAを除いて、他の2つのプロトコル(いずれも標準的な、非調整pH結合条件を使用した)の両方と比較して、プロトコル2の方法(低pH結合条件を使用した)ではより高い鎖回収率が見られた。
【0303】
緩衝液比較
プロトコル2を、GuHCl結合溶液中のグリシン、クエン酸塩、リンゴ酸塩、またはギ酸塩緩衝液を使用するように改変されたスルホン化DNA結合ステップ方法と共に、上記のように使用した。
【0304】
非緩衝対照反応は、結合ステップで緩衝液を添加しないGuHClを使用した。結果を図18に示す。
【0305】
特許、特許出願、記事、書籍、論文、製造者の説明書、製品筐体、及びインターネットウェブページを含むがこれらに限定されない、本出願で引用されるすべての文献及び同様の資料は、任意の目的のためにそれらの全体が参照により明示的に組み込まれる。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本明細書に記載された様々な実施形態が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。参照により援用される際にこれらの用語の定義が本発明の教示に提供される定義と異なるようにみえるときに、本発明の教示に提供される定義は、優先されるものとする。
【0306】
記載される本科学技術の組成物、方法、及び用途の種々の修正形態及び変形形態は、記載されるような本科学技術の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者には明白である。本科学技術を特定の例示的な実施形態に関連して記載してきたが、特許請求の範囲に記載されるような本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、分子生物学、診断学、薬理学、生化学、医学、または関連分野の当業者に明らかである本発明を実施するための記載された様式の様々な修正は、以下の特許請求の範囲内にあるよう意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0307】
図1】本明細書に開示される方法を含むバイサルファイト処理方法の一実施形態の概要である。
図2】提案されている結合機構の概略図である。
図3】6つの異なるマーカーDNAについて回収された結合pH対Log鎖のグラフを提供する。
図4】変換されたシトシンのパーセント対最大結合pHのグラフである。各DNA鎖の変換されたシトシンのパーセント(ウラシルスルホン酸塩ヌクレオチド/全ヌクレオチド)を、最大鎖回収に必要とされる最高推定結合pHに対してプロットした。これらの点の線形フィッティングを示す。
図5】同じプライマー/プローブの組み合わせを使用するDNA鎖の、変換されたシトシンのパーセント対最大結合pHのグラフである。DNAのうちの3つ(BMP3、β-アクチン(「BTACT」)、及びNDRG4鎖)を修飾して、特定のDNAの各バリアントについて同じプライマー及びプローブ結合配列を保持するが、そのDNA鎖の他の領域に異なる数の非メチル化Cを含有するDNAのセットを作製した。この相関の強度を更に例示するために、線を配列の各セットにフィッティングさせた。
図6】非調整結合pH(A)または低結合pH(B)を使用した、全DNA後転換及びクリーンアップのグラフを示す。
図7】4つの異なるDNA配列(LASS4、PPP2R5C、LRRC4、及びZDHHC1)についての非調整結合pH(上段)または低結合pH(下段)に対して回収されたについて便試料体積(mL)対回収された鎖のグラフである。ZDHHC1DNAを2回試験した。
図8】Aは、低pH及び非調整pHで実施した結合反応からの、異なるロットの亜硫酸水素アンモニウムからの鎖回収を示す表を提供する。Bは、低pH及び非調整pHで実施した結合反応からの、異なる濃度の亜硫酸水素アンモニウムからの鎖回収を示す表を提供する。
図9】低pH及び非調整pHで行われた結合反応に存在する汚染物質の効果を示す表を提供する。
図10】非調整のpH結合反応を使用して様々なシリカビーズを使用した、回収した鎖のログを示す表を提供する。
図11】実施例1に記載される低pH結合反応を使用して種々のシリカビーズを使用して回収された鎖のログを示す表を提供する。
図12】4.85~2.13の範囲の酸性pH(「BNDpH」)に調整された結合反応を使用して回収された鎖を示す表を提供する。
図13】非調整または低pH結合反応を使用して、異なるサイズのDNA分子、及び異なる濃度のDNA分子について回収された鎖を示す表を提供する。
図14】プロトコル1、プロトコル2、及びプロトコル3により提供される反応条件を比較した表を示す。
図15A】プロトコル1、プロトコル2、及びプロトコル3を使用した、鎖回収を比較する表を示す。
図15B】プロトコル1、プロトコル2、及びプロトコル3を使用した、鎖回収を比較する表を示す。
図16】プロトコル1、プロトコル2、及びプロトコル3を使用した異なるメチル化マーカーDNAについて、図15A~15Bに示される鎖回収のペアワイズの対比を有する表を示す。
図17】プロトコル2の回収対プロトコル1またはプロトコル3を使用した回収の比として示される、異なるメチル化マーカーDNAについて、図16に示される鎖回収を比較するグラフを示す。各データポイントの「プロトコルX」は、そのデータポイントのプロトコル1または3のいずれかを表す。
図18】結合ステップ中に未調整のpHを使用する、またはグリシン、クエン酸、リンゴ酸、もしくはギ酸緩衝液を使用して、示されるスルホン化DNAのシリカビーズへの結合中にpHを低減する、異なるDNAの回収を比較する表を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
【国際調査報告】