(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】口腔内電気刺激に関連するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/26 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
A61N1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023505717
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 US2021043503
(87)【国際公開番号】W WO2022026579
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520274459
【氏名又は名称】バイオレクトリクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ライムキューラー, ウィリアム ジェイ. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】コーネリアス, スティーブン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】コーン, デイビッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マンデル, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ガンチターノ, ポール
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB23
4C053FF04
(57)【要約】
いくつかの療法、予防、美容、および/または再生の利益を達成するために、口の歯肉組織に、それを通して、またはそれを横断して電流を送達するための装置および方法が、使用される。これらの利益は、口腔微生物を死滅させる、または減らす、口腔血管拡張を増加させる、口腔生物膜を低減させる、口腔血液循環を改善する、口腔骨吸収を回復させる、口腔骨形成を助長する、歯肉退縮を治療する、および歯肉再生を発達させることを含む。他の利益は、歯肉炎、歯周炎、および口臭、ならびに口腔病原と相関される他の全身性疾患の治療を含む。本発明によるシステムおよび方法の使用は、(例えば、接合上皮または溝上皮による)1つまたはそれを上回る歯との上皮接触を効果的に締付し、および/または口腔上皮の締付を引き起こし、それによって、ヒトの笑顔の外観を改善し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
可変直流電流電力供給源を含有する筐体を有するコントローラであって、前記電力供給源は、約1~500マイクロアンペアを送達することが可能である、コントローラと、
ヒトの口内に受容されるように構成されるマウスピースであって、前記マウスピースは、少なくとも1つのU形チャネルを備える、マウスピースと、
前記マウスピースによって支持され、直流電流電源に結合される複数の暴露電極と、
前記直流電流電力供給源を前記マウスピースに電気的に結合し、前記筐体を前記マウスピースに物理的に結合する縮径部部分と
を備え、
前記縮径部部分における前記電気結合は、導電性シリコーンのトレースの中に挿入され、それによって実質的に囲繞される複数の導電性ピンによって達成される、システム。
【請求項2】
前記複数の暴露電極のうちの第1のものは、前記少なくとも1つのU形チャネルのうちの第1のものの第1の側上に配置されるカソード電極であり、前記複数の暴露電極のうちの第2のものは、前記第1のチャネルの第2の側上に配置されるアノード電極である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記マウスピースは、2つのU形チャネルを備え、一方のチャネルは、ヒトの1つまたはそれを上回る上顎歯を受容するように構成され、他方のチャネルは、前記ヒトの1つまたはそれを上回る下顎歯を受容するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記筐体内に配置される電子回路網を備え、前記回路網は、前記電源によって各電極に提供される電流の持続時間および強度のうちの少なくとも1つの操作および監視のうちの少なくとも1つを行うように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラはさらに、ユーザ入力インターフェースと、ユーザフィードバックインターフェースとを備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、不揮発性メモリ内に1つまたはそれを上回るカウンタ値およびイベントログを記憶するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記イベントログは、それぞれと関連付けられるタイムスタンプを含む最低2,000個のイベント発生を記憶することができる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記可変直流電流電力供給源は、再充電可能リチウムイオンバッテリを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムはさらに、前記コントローラ筐体を物理的に支持し、前記再充電可能リチウムイオンバッテリを誘導的に再充電することが可能な充電ステーションを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記充電ステーションは、前記コントローラおよびマウスピースを含有し得るヒンジ付きカバーを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムはさらに、前記コントローラとの物理層通信が可能なモバイル無線通信デバイスを備え、前記無線デバイスはさらに、前記コントローラとのソフトウェア層通信が可能なソフトウェアアプリケーションを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記カウンタ値およびイベントログを前記無線デバイスの前記アプリケーションに伝送することが可能である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、所定のイベントの発生、所定の期間の終了、および1日の所定の時間のうちの少なくとも1つに応じて、前記カウンタ値およびイベントログを伝送する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記アプリケーションは、少なくとも1つの伝送されたカウンタ値およびイベントログを同時に表示するように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記アプリケーションは、前記無線デバイス内の不揮発性メモリへの前記伝送されたカウンタ値およびイベントログの記憶を可能にするように構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記アプリケーションは、ファームウェア更新を前記コントローラに提供するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記マウスピースは、
前記伝導性シリコーン材料を使用し、前記トレースおよび前記電極を形成し、伝導性骨格を形成する第1の射出成型手順と、
絶縁性シリコーン材料を使用し、各トレースの少なくとも一部をカプセル化する第2の射出成型手順と
のステップを含むプロセスによって形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記第2の射出成型手順は、前記第1の射出成型手順の後に実施される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
方法であって、
直流電流電源に結合される複数の電極を支持するマウスピースを提供するステップと、
ヒトの頬と外側歯肉線との間に、歯肉組織と物理的に接触して、前記複数の電極の第1の電極を位置付けるステップと、
前記第1の電極の内側に、歯肉組織と物理的に接触して、前記複数の電極の第2の電極を位置付けるステップと、
電流を前記電源から前記歯肉組織に送達するステップと、
コントローラを介して前記歯肉組織への前記電流送達の強度を約1~500マイクロアンペアに調整するステップと、
前記コントローラを介して前記電流送達の持続時間を30分以下に調整するステップと
を含む、方法。
【請求項20】
前記コントローラ内の不揮発性メモリ内にデータメトリックおよびイベントログを記憶するステップと、
前記コントローラと通信することが可能な電子無線デバイス上にソフトウェアアプリケーションを提供するステップと、
前記無線デバイスをペアリングし、前記コントローラとの通信を可能にするステップと、
前記データメトリックおよびイベントログを前記コントローラから前記無線デバイスに転送するステップと、
前記データメトリックおよびイベントログを前記電子デバイスの不揮発性メモリの中に保存するステップと、
前記ソフトウェアアプリケーションを使用して、前記保存されたデータメトリックおよびイベントログのうちの少なくともいくつかを精査するステップと
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の表面への直流電流電気の非侵襲性印加を通して、一般的口腔衛生または美容を助長する、歯肉炎および歯周炎等の歯周病を治療する、虫歯の原因になる細菌を含む、口腔微生物を死滅させる、または減らす、口腔生物膜を低減させる、口腔組織内の血流を増加させる、唾液分泌を増加させる、歯肉組織再生を助長する、歯、口、および関連面積の骨質構造の骨形成を発達させる、口腔細菌と関連付けられた全身性疾患を治療する、ならびに/もしくは他の歯周および口腔疾患を治療することに関連するシステムおよび方法に関し、これはまた、これらの療法、予防、美容、および再生効果のための直流電流電気を提供するために好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、歯科医および医師の両方によって、種々の全身性疾患に関するリスク要因として識別されている。これらの疾患には、心血管疾患、有害な妊娠転帰、および糖尿病が含まれ、新しく見出された証拠が、膵臓疾患および関節炎とのその関連付けを支持している。研究の多くが、歯周病の存在とこれらの全身性病状との間の相関を確立しているが、これらの病状の大部分との因果関係は、依然として、継続研究の対象である。生物学的機構のうちのいくつかが、以下のように、歯周病に由来する口腔細菌が全身性疾患を引き起こし得る方法に関して提案されている。
1. 口腔感染症の直接効果:口腔微生物およびその副産物は、口腔内の損なわれた組織および炎症を起こした歯根膜を通した進行を通して、循環系を介して、全身性アクセスを得ることができる。全身性アクセスを得ることで、口腔微生物は、直接、種々の全身性疾患の亜臨床的媒介物に影響を及ぼす潜在性を有する。
2. 炎症:歯周病を患う人々は、口腔細菌の増加レベルの負担に起因して、全身性炎症性マーカの上昇レベルを有する。歯周病のための治療は、全身性炎症レベルを減少させることが報告されている。
3. 交差反応性:全身性疾患の進行は、損傷された組織の細胞上に発現される先天性熱ショックタンパク質と交差反応する抗体を生成する細菌性熱ショックタンパク質への免疫応答によって加速され得る。
心血管疾患
【0003】
歯周病と、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心臓病、および脳卒中を含む、心血管疾患との間の潜在的関連付けを調査する研究は、不良な口腔健康と心血管疾患の有病率との間の有意な正の相関を見出している。両疾患は、いくつかの共通リスク要因を共有するが、最近の研究は、歯周炎が、先行し、したがって、アテローム硬化性合併症に寄与し得ることを示唆する。実際、メタ分析は、歯周炎を患っている対象が心血管疾患を発症する増加リスクを被ることを示す。
【0004】
これらの細菌が、アテローム性動脈硬化症を引き起こす、もっと正確に言えば、すでに損なわれている動脈に侵襲するかどうかは、決定的に示されていないが、Fuseobacterium nucleatumおよびStreptococcus oralisを含む、歯周細菌に対する抗体が、血液血清中に見出されており、冠動脈心臓病の増加リスクと関連付けられる。マウス研究が、Porphyromonas gingivalisの静脈内接種がアテローム硬化性発症を加速したことを見出した。さらに、口腔接種に続いて、P. gingivalis DNAが、それらの感染したマウスの大動脈組織内に見出され、加速された早期アテローム性動脈硬化症の観察可能な兆候を示した。別の研究は、F. nucleatumをP. gingivalisとの相乗的作用物質として列挙している。F. nucleatumは、2つの生物間の共凝集する効果に起因して、宿主細胞に侵襲するP. gingivalisの能力を向上させる。これは、アテローム内の細菌が、アテローム硬化性プラークの発症につながり得るため、有意である。これまでの証拠は、歯周炎が、全身性炎症性媒介物、すなわち、それらが血流の中に進入すると、アテローム性動脈硬化症および冠動脈心臓病を引き起こす、または悪化させることが可能である、感染した歯周組織内に生産されるサイトカインの潜在的源としての役割を果たす、口腔細菌への全身性暴露につながるという考えを支持する。歯周病に関する臨床研究はまた、冠動脈疾患との正の関連付けを明らかにしており、歯周病とアテローム性動脈硬化症との間の厳密な関係の理解に主眼が置かれている。
早産
【0005】
早産を引き起こす、羊水および胎盤感染症に見出される細菌の最も広く認められている種のうちの1つである、Fusobaceterium nucleatumもまた、多くの場合、無傷胎膜を伴う早期分娩における単独感染性作用物質として列挙される。F. nucleatumもまた、種々のタイプの歯周病と強く関連付けられる。歯周感染症の間、口腔粘膜が、傷害され、炎症を起こし、歯周病原数が、劇的に増加すると、過渡レベルの細菌が、血液中に現れ、望ましくない部位の選択的コロニー形成につながり得る。1つの研究が、羊水感染症または口腔源のいずれかから摘出されたF. nucleatumを血行性に注入された妊娠マウスが、胎児死亡をもたらすことを実証した。
【0006】
最近、ヒト死産症例が、分析され、F. nucleatumが、実際、母親の口腔に由来することが見出され、これは、まだ証明されていない事実であった。F. nucleatumが、母親の口から血流を介して転移し、そこで、これが、次いで、内皮を交差し、胎膜、羊水、および胎児内で増殖およびコロニー形成することが可能となり、それに応じて、その存在が、胎児死去につながった可能性が高い。マウスモデルでは、妊娠マウスの中へのF. nucleatumの血行性注射は、胎盤内の特異的細菌コロニー形成をもたらし、局在化された炎症を引き起こした。F. nucleatumは、注射から24時間後、母体循環から完全に一掃された。しかしながら、いったん免疫学的特権胎盤内でコロニー形成されると、細菌は、迅速に増殖し、胎児死亡を3日以内に引き起こした。慢性歯周病は、胎児胎盤系への歯周細菌/炎症性マーカの転移を通して、感染症を媒介し得る。
糖尿病
【0007】
糖尿病は、遺伝子、環境、および挙動リスク要因に由来する、内分泌疾患である。過去数十年にわたって、糖尿病は、歯周病に関する変異因子であると見なされており、近年、その2つの間の双方向関係が示唆されている。さらに、歯周病の存在は、糖尿病合併症、すなわち、不良な糖血症制御に関するリスクとして関係があるとされている。最近の縦断的かつ系統的研究は、歯周病が、軽度歯周病を患う患者または歯周病がない患者と比較して、虚血性心臓病、糖尿病腎障害、末期腎疾患、および増加インスリン抵抗性からの死亡のより高いリスクと相関されることを認めている。2型糖尿病では、インスリン抵抗性は、炎症誘発性サイトカインの作用と結び付けられる。歯周病は、炎症の有意により高い量のこれらの血清マーカにつながり、したがって、インスリン抵抗性を与えると考えられる。2型糖尿病の有無別の成人の細菌含有量を検査する、ヒト研究は、糖尿病患者が、有意により深刻な歯周炎と、Streptococcus oralisを含む、多くの口腔細菌のより高いレベルとを有していたことを見出した。
化膿性肝膿瘍
【0008】
F. nucleatumは、最近、化膿性肝膿瘍(PLA)に関係があるとされている。通常、胆管病変、憩室性疾患および腸悪性腫瘍、萎縮性胃炎、および特発性肝疾患によって引き起こされるが、F. nucleatumによって引き起こされるPLAは、非常に稀であって、Escherichia coli、Klebsiella、およびEnterobacterは、排出される膿瘍中で最も一般に特定される微生物である。F. nucleatumが、肝臓膿瘍に見出されたが、他の感染性源は、歯科抽出物を除き、見出されなかった。F. nucleatumの共凝集性質に起因して、搬送され、結腸の粘膜を破壊し、菌血症につながることが可能になり、これは、肝膿瘍をもたらすと仮定される。
骨髄炎
【0009】
骨髄炎は、細菌、菌類、または他の病原菌によって引き起こされる、骨感染症である。一般に、細菌は、感染した皮膚、筋肉、または腱から骨に拡散し、多くの場合、皮膚びらん下で生じる。感染症はまた、身体の別の部分でも引き起こされ、血行性に拡散し得る。低頻度であるが、Fusobacterium種が、頭頸部面積における骨/関節感染症から特定されており、慢性歯周炎と関連付けられている。最近の研究は、筋膿瘍を合併した、F. nucleatumによって引き起こされた骨髄炎の症例を報告している。患者は、既知の素因を有しておらず、歯周病の既往歴を除き、他の感染症源も、認められなかった。患者の不良な口腔衛生に起因して、F. nucleatum菌血症が、発症し、下腿の血行性骨髄炎につながった可能性があると考えられる。
関節炎
【0010】
多数の臨床研究が、P. ginvalisおよびPrevotella intermedia等のいくつかの口腔細菌種が患者の滑液から特定されたため、リウマチ性関節炎(RA)と歯周病との間の潜在的関連付けを示唆している。歯周病は、細菌が、口腔内の浸透性ポケット上皮を通して穿通し、下層歯肉結合組織に到達することを可能にすると考えられる。そこから、これは、身体内のいずれかの場所にコロニー形成する能力を伴って、血流中に搬送され得る。RAを患っている患者の滑液中に見出される口腔細菌は、口腔細菌DNAを優先的に捉える滑膜炎に起因しており、これは、歯周病が関節疾患に永続効果を及ぼし得ることを示唆する。したがって、歯周炎は、実際、RAの自己免疫炎症性応答特性につながる要因であり得る。RAを患っている患者はまた、歯周病を発症するより高いリスクに曝されており、したがって、2つの病状間の双方向関係を示唆し得る。1つの特定の研究が、関節炎を患っている患者の天然および機能不全人工関節の滑液中の細菌DNAの存在を検査した。細菌DNAが見出された5名の患者のうち、F. nucleatumが、これらの5名の患者のうち4名において検出された。これは、F. nucleatumがまた、患者のプラークサンプルに見出されたため、本細菌が口腔から滑液に転移し得ることを示唆する。
口腔生物膜
【0011】
歯周炎、歯肉炎、および齲蝕は、口腔生物膜および細菌が原因となる役割を果たす、口腔の感染性疾患である。生物膜形成はまた、インプラント周囲炎等の歯科用インプラント不具合、義歯性口内炎、およびカンジダ症等の口腔酵母菌感染症の病因に関与する。口腔生物膜は、歯上での歯周囲菌膜形成から始まる。本菌膜は、歯、主に、歯肉縁上の暴露表面をコーティングする、唾液タンパク質から成り、それに対してプランクトン状細菌が、付着し始める。S. oralis等のグラム陽性菌を含む、好気性細菌は、主に、付着細菌の細胞分割を通して、初期生物膜コロニーを形成し始める、早期生着菌である。
【0012】
いったん初期コロニーが確立されると、F. nucleatum、P. ginvalis、および他のグラム陰性嫌気性細菌等の他の共凝集細菌種が、以前に形成されたコロニーに付着する。これらのコロニーが成熟するにつれて、それらは、成長し、歯の歯肉下表面を被覆し、炎症を歯根膜内に誘発し始める。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、全体的口腔健康および/または美容的外観を補助するための方法および装置に関し、より具体的には、口腔内の表面への弱電気の非侵襲性印加を通して、歯肉炎、歯周炎、およびインプラント周囲炎等の歯周病を治療する、虫歯の原因になる細菌を含む、口腔微生物を死滅させる、口腔生物膜を低減させる、口腔組織内の血流を増加させる、唾液分泌を増加させる、歯肉組織再生を助長する、歯、口、および関連面積の骨質構造内の骨形成を発達させる、口腔細菌と関連付けられた全身性疾患を治療する、ならびに他の歯周および口腔疾患を治療することに関する。代替として、または加えて、本発明によるシステムおよび方法の実施形態の使用は、歯周ポケット深さの低減、歯肉出血の低減、歯肉炎症の低減、および/または臨床付着喪失の低減につながることができる。本発明によるシステムおよび方法の使用はまた、(例えば、接合上皮および/または溝上皮による)1つまたはそれを上回る歯との上皮接触を効果的に締付し、および/または口腔上皮の締付を引き起こし、それによって、人物の笑顔の外観を改善することが見出されている。
【0014】
これらの効果は、歯肉組織表面(例えば、舌側、頬側、口蓋側、および/または前庭側歯肉組織)と直接物理(または少なくとも電気)接触する複数の電極を通した、歯肉への電流(好ましくは、直流)の送達によって遂行される。電極は、限定ではないが、銀、ステンレス鋼、銅、金、白金、パラジウム、アルミニウム、その合金等の金属、導電性ナノチューブ、炭化ゴム、導電性シリコーン、または導電性ポリマーを含む、任意の導電性材料から作られてもよい。各電極は、他の電極のうちの1つまたはそれを上回るものと同一の材料から成ってもよい、またはこれは、他の電極のうちの1つまたはそれを上回るものと異なる材料から成ってもよい。これらの電極は、歯肉の舌側および頬側に対してぴったりと、またはそれに近接して嵌合し、歯肉の各側(すなわち、舌側および頬側)または同一側(すなわち、舌側または頬側)と電気接触(例えば、物理接触、または離間されるが電気接触)し、電気を歯および近隣歯肉組織を横断して、またはそれに沿って通過させる。
【0015】
1つまたはそれを上回る歯に沿った歯肉の各側(舌側または頬側)上の電極は、同一極性であってもよい。歯肉の反対側上の電極は、反対極性であってもよい、または歯肉の同一側上の隣接する電極は、反対極性であってもよい。これは、電流が、歯および歯茎を横断して、および/またはそれに沿って、横断する歯肉上に位置付けられる電極に流動し、電気回路を完成させることを可能にする。換言すると、歯肉の舌側上の全ての電極は、完全にアノードまたは完全にカソードであってもよい。歯肉の舌側表面を横断する歯肉の頬側表面上の全ての電極は、次いで、舌側電極の反対極性を有してもよい。これらの電極の極性化は、電気刺激セッションの間またはセッションの合間に逆転されてもよい。電極は、好ましくは、アノード機能性、カソード機能性、またはさらには接続解除もしくは高インピーダンス状態に個々にプログラム可能である。代替として、電極の群(例えば、全ての舌側電極)は、アノードまたはカソードとして固定された機能性を有してもよい。
【0016】
下顎および上顎歯肉はそれぞれ、複数の電極を受容してもよい。これは、同時に、または単独でのいずれかにおいて、上顎および下顎歯根膜の両方の刺激を可能にする。電極の上顎および下顎セットは、2つの異なる調節可能電力供給源によって、または同一の調節可能電力供給源によって、給電されてもよい。
【0017】
電気導体(有線またはより好ましくは伝導性シリコーンであり得る)が、電極を調節可能電力供給源に接続する。電流調整器を通して、有効にされたアノード電極は全て、電力供給源の負極に接続し、有効にされたカソード電極は全て、電力供給源の正極に接続するであろう。調節可能電力供給源は、1~500マイクロアンペアの近似範囲内の安定した直流電流を送達することが可能である。大部分の刺激セッションのための好ましい電流設定は、50~250マイクロアンペアの近似範囲内である。より好ましくは、電流設定は、±10%に制御される、約125~150マイクロアンペアである。
【0018】
本発明によるシステムの実施形態のある側面によると、本システムは、コントローラと、マウスピースとを含む。コントローラは、可変直流電流電力供給源を含有する、筐体を有し、電力供給源は、約1~500マイクロアンペアを送達することが可能である。マウスピースは、ヒトの口内に受容されるように構成され、マウスピースは、少なくとも1つのU形チャネルを備える。複数の暴露電極が、マウスピースによって支持され、直流電流電源に結合されてもよい。縮径部部分が、好ましくは、直流電流電力供給源をマウスピースに電気的に結合し、筐体をマウスピースに物理的に結合する。縮径部部分における電気結合は、導電性シリコーンのトレースの中に挿入され、それによって実質的に囲繞される、複数の導電性ピンによって達成されてもよい。
【0019】
本発明によるシステムの実施形態の別の側面によると、複数の暴露電極のうちの第1のものは、少なくとも1つのU形チャネルのうちの第1のものの第1の側上に配置される、カソード電極であり、複数の暴露電極のうちの第2のものは、第1のチャネルの第2の側上に配置される、アノード電極である。
【0020】
本発明によるシステムの実施形態のなおも別の側面によると、マウスピースは、2つのU形チャネルを備え、一方のチャネルは、ヒトの1つまたはそれを上回る上顎歯を受容するように構成され、他方のチャネルは、ヒトの1つまたはそれを上回る下顎歯を受容するように構成される。
【0021】
本発明によるシステムの実施形態のまた別の側面によると、コントローラは、筐体内に配置される、電子回路網を備え、回路網は、電源によって各電極に提供される電流の持続時間および強度のうちの少なくとも1つの操作および監視のうちの少なくとも1つを行うように構成される。コントローラはさらに、ユーザ入力インターフェースと、ユーザフィードバックインターフェースとを含んでもよい。コントローラはまた、不揮発性メモリ内に1つまたはそれを上回るカウンタ値およびイベントログを記憶するように構成され、イベントログは、好ましくは、それぞれと関連付けられるタイムスタンプを含む、2,000個のイベント発生を記憶することが可能であってもよい。
【0022】
本発明によるシステムの実施形態のさらなる側面によると、可変直流電流電力供給源は、再充電可能リチウムイオンバッテリを備える。本システムは、コントローラ筐体を物理的に支持し、再充電可能リチウムイオンバッテリを誘導的に再充電することが可能な充電ステーションを含んでもよい。充電ステーションはさらに、保管および/または移動のため等、コントローラおよびマウスピースを含有し得る、ヒンジ付きカバーを含んでもよい。
【0023】
本発明によるシステムの実施形態のなおもさらなる側面によると、本システムはさらに、コントローラとの物理層通信が可能なモバイル無線通信デバイスを備え、無線デバイスはさらに、コントローラとのソフトウェア層通信が可能なソフトウェアアプリケーションを含む。コントローラは、好ましくは、カウンタ値およびイベントログを無線デバイスのアプリケーションに伝送することが可能であり、そのような伝送は、所定のイベントの発生、所定の期間の終了、および1日の所定の時間のうちの少なくとも1つに応じて行われる。アプリケーションは、好ましくは、少なくとも1つの伝送されたカウンタ値およびイベントログを同時に表示するように構成され、また、無線デバイス内の不揮発性メモリへの伝送されたカウンタ値およびイベントログの記憶を可能にするように構成される。アプリケーションはまた、好ましくは、ファームウェア更新をコントローラに周期的に、または要求に応じて提供するように構成される。
【0024】
本発明によるシステムの実施形態のまたさらなる側面によると、マウスピースは、
伝導性シリコーン材料を使用し、トレースおよび電極を形成し、伝導性骨格を形成する、第1の射出成型手順と、
絶縁性シリコーン材料を使用し、各トレースの少なくとも一部をカプセル化する、第2の射出成型手順と、
のステップを含む、プロセスによって形成されてもよい。
第2の射出成型手順は、好ましくは、第1の射出成型手順の後に実施される。
【0025】
本発明による方法の実施形態のある側面によると、本方法は、
直流電流電源に結合される複数の電極を支持する、マウスピースを提供するステップと、
ヒトの頬と外側歯肉線との間に、歯肉組織と物理的に接触して、複数の電極の第1の電極を位置付けるステップと、
第1の電極の内側に、歯肉組織と物理的に接触して、複数の電極の第2の電極を位置付けるステップと、
電流を電源から歯肉組織に送達するステップと、
コントローラを介して歯肉組織への電流送達の強度を約1~500マイクロアンペアに調整するステップと、
コントローラを介して電流送達の持続時間を30分以下に調整するステップと、
を含む。
【0026】
本発明による方法の実施形態の別の側面によると、本方法はさらに、
コントローラ内の不揮発性メモリ内にデータメトリックおよびイベントログを記憶するステップと、
コントローラと通信することが可能な電子無線デバイス上にソフトウェアアプリケーションを提供するステップと、
無線デバイスをペアリングし、コントローラとの通信を可能にするステップと、
データメトリックおよびイベントログをコントローラから無線デバイスに転送するステップと、
データメトリックおよびイベントログを電子デバイスの不揮発性メモリの中に保存するステップと、
ソフトウェアアプリケーションを使用して、保存されたデータメトリックおよびイベントログのうちの少なくともいくつかを精査するステップと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明による、口腔内電気刺激装置および関連付けられる保管ならびに/もしくは充電スタンドの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明による、マウスピースおよびコントローラの上面平面図である。
【
図3】
図3は、本発明による、マウスピースおよびコントローラの底面平面図である。
【
図4】
図4は、本発明による、マウスピースおよびコントローラの左側面立面図である。
【
図5】
図5は、本発明による、マウスピースおよびコントローラの後面立面図である。
【
図6】
図6は、本発明による、コントローラの電気回路の図式的表現である。
【
図7】
図7は、
図3の線7-7に沿って得られる、本発明による、コントローラのある実施形態の部分的断面図である。
【
図8A】
図8は、本発明による、コントローラのある実施形態における電気回路の部分の概略図を含む。
【
図8B】
図8は、本発明による、コントローラのある実施形態における電気回路の部分の概略図を含む。
【
図8C】
図8は、本発明による、コントローラのある実施形態における電気回路の部分の概略図を含む。
【
図8D】
図8は、本発明による、コントローラのある実施形態における電気回路の部分の概略図を含む。
【
図9】
図9は、スタンドによって支持されるマウスピース/コントローラを示す、
図1の実施形態の正面斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明による、マウスピース/コントローラを受容する、本発明による、充電スタンド/ケースの正面斜視図である。
【
図11】
図11は、所定のデバイスまたはソフトウェア状態において所定の時間に行われる、ユーザインターフェースフィードバックの表を提供する。
【
図12A】
図12A-Bは、本発明による、コントローラ内のメモリ内に記憶される、プログラム可能なパラメータの表を提供する。
【
図12B】
図12A-Bは、本発明による、コントローラ内のメモリ内に記憶される、プログラム可能なパラメータの表を提供する。
【
図13A】
図13A-Bは、本発明による、コントローラの動作の間の個別の発生に応じてログ付けされるべきカウンタまたはメトリックの表を提供する。
【
図13B】
図13A-Bは、本発明による、コントローラの動作の間の個別の発生に応じてログ付けされるべきカウンタまたはメトリックの表を提供する。
【
図14】
図14は、ソフトウェアによって記録される、イベントおよび関連付けられるイベントデータの表を提供する。
【
図15A】
図15A-Cは、本発明による、コントローラの動作機能、関連付けられる動作ユーザタスク、および応答の表を提供する。
【
図15B】
図15A-Cは、本発明による、コントローラの動作機能、関連付けられる動作ユーザタスク、および応答の表を提供する。
【
図15C】
図15A-Cは、本発明による、コントローラの動作機能、関連付けられる動作ユーザタスク、および応答の表を提供する。
【
図16】
図16は、本発明による、コントローラの動作または非動作の状態を描写する、フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本明細書の開示は、当業者が本発明を実践することを可能にするように、詳細かつ厳密であるが、本明細書に開示される物理的実施形態は、単に、本発明を例示するものであり、これは、他の具体的構造において具現化されてもよい。好ましい実施形態が、説明されているが、詳細は、本発明から逸脱することなく、変更されてもよい。
【0029】
口腔細菌は、低マイクロアンペア直流電流電気に暴露されると、生存することができないことが、当技術分野において公知である。口腔細菌を死滅させ、歯肉炎等の細菌が原因となる病状を治療する方法が、Nachmanの米国特許第4,244,373号(1981年1月13日)およびDetschの米国特許第4,509,519号(1985年4月9日)に実証されている。口腔細菌を死滅させることは、齲歯および齲蝕または虫歯を防止する追加の利益を有する。概して、齲歯は、好気性酸生産細菌に起因し、その酸が、歯の非代償性鉱物質除去を引き起こす。しかしながら、Nachmanは、種毎レベルでの、好気性および嫌気性細菌を含む、口腔細菌を低減させるための最適アプローチを指示しておらず、代わりに、汎用の非標的化治療を教示している。
【0030】
口への直流電流電気の効果を研究した際、本出願人は、電流レベルを50~250マイクロアンペア(μA)の近似範囲まで増加させることによって、直流電流電気刺激が、これまで当技術分野において未知の新しくかつ予期しない療法、予防、美容、および再生利益をもたらすことが可能であることを発見した。
【0031】
具体的には、前述の範囲内の直流電流を利用することによって、そのような刺激が、細菌を死滅させるだけではなく、同様に、ウイルスおよび真菌を死滅または無力化させることも見出された。足病学分野からの研究が、既存の口腔電気刺激において使用されるものより高い電流レベルが、真菌感染症を効果的に治療するために必要であることを示している(「Low-Voltage Direct Current as a Fungicidal Agent for Treating Onychomycosis」, Kalinowski, et al., Journal of the American Podiatric Medical Association Vol. 94 No.6: 565-572,2004)。当該技術分野外の研究からの増加電流レベルの本知識を適用することによって、本出願人は、殺真菌性および殺ウイルス性利点を殺菌性であることがすでに公知の方法に追加することが可能となった。本出願人の研究は、これらの殺微生物性質が、刺激から約5~15分以内に効力を発し始め、歯肉上および下両方の微生物を低減させることを示している。
【0032】
加えて、本出願人の臨床研究は、予想外にも、50~250マイクロアンペアの近似範囲内の直流電流が、歯肉組織を再生させ、縮退された歯茎を患う人々のための非外科手術代替を提供することが可能であることを実証した。電気の骨形成性質は、当技術分野において公知であったが、非骨性組織再生と電気との間の繋がりは、これらの実験に先立って、当技術分野において周知ではなかった。本発明の方法および装置と関連付けられた一意の電流範囲は、効果的歯肉組織再生を非外科手術様式において遂行するための歯科分野におけるいくつかの効果的方法のうちの1つである。
【0033】
さらなる研究では、本出願人は、生理食塩水および唾液溶液の両方中の3つの異なる口腔細菌(F. nucleatum、S. oralis、P. ginvalis)への直流電流刺激の効果を検査した、臨床前試験を行った。本試験は、電流レベル、細菌の種菌サイズ、溶液媒体、および刺激時間を変動させ、歯周病および全身性疾患の両方と関連付けられたこれらの3つの細菌種の最適な低減を開発した。
【0034】
本試験の結果は、予期しない結果をもたらし、各異なる細菌が、DC刺激に対して異なる用量応答を有することを示した。本試験を通して、本出願人は、30分またはそれ未満続く単一刺激セッションにおいて、最大100%のS. oralis、99.1%のF. nucleatum、および52.3%のP. ginvalisを死滅させることが可能であった、刺激パラメータを識別した。本研究は、これまで当技術分野において未知であった、標的化された病原のDCベースの刺激のための仕様をもたらした。本研究において発見され、本方法に説明される、最適な刺激パラメータは、歯肉上および下両方の環境において、これらの3つの種の細菌を低減させ、したがって、これらの口腔病原と相関される歯周病、生物膜形成、ならびに全身性疾患を含む、その関連付けられた合併症を防止および/または治療するための革新的方法を提供することができる。
【0035】
加えて、走査電子顕微鏡検査(SEM)が、本発明による方法が細菌レベルを低減させることが可能である機構をより深く理解するために、本発明の方法に従って、刺激30分前後のF. nucleatumコロニーに行われた。SEM画像は、本発明による方法が、細菌細胞分裂に干渉し、外包膜(細胞膜)を弱化させ、容易に破損し得る脆弱性細胞構造をもたらし得ることを示唆した。本現象が、電気穿孔の実施例であり、細胞膜の浸透性が、一時的または恒久的のいずれかにおいて、電気刺激によって影響され得ると想定される。さらに、本発明による方法によって引き起こされる電気穿孔が、本細胞浸透性を利用し、限定ではないが、DNA、RNA、sRNA、siRNA、プラスミド等の遺伝子材料(遺伝子移入)を含む、機構を通して、口腔病原または口腔組織の細胞の中に新しい材料を導入するであろう、分子生物学における新しい療法を開発する際にある役割を果たし得ると想定される。これらの効果は、口腔用途のための標的化された遺伝子療法における新しいツールを証明するであろう。
【0036】
具体的には、本発明による方法は、種々の口腔細菌内の生存コロニー形成単位(CFU)を低減させることが示されている。
【0037】
下記の表1は、生理食塩水溶液中のStreptococcus oralisの10
4~10
7コロニー形成単位(CFU)に及ぶ細菌培養物に関する、5、10、20、および30分の持続時間にわたる、50μAまたは500μAの電流レベルにおける、本発明による刺激の有効性を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0038】
下記の表2は、唾液溶液中のStreptococcus oralisの10
4~10
7CFUに及ぶ細菌培養物に関する、5、10、20、および30分の持続時間にわたる、50μAまたは500μAの電流レベルにおける、本発明による刺激の有効性を示す。
【表2】
【0039】
下記の表3は、生理食塩水溶液中のFusobactrium nucleatumの10
4~10
6CFUに及ぶ細菌培養物に関する、5、10、20、および30分の持続時間にわたる、50μAまたは500μAの電流レベルにおける、本発明による刺激の有効性を示す。
【表3】
【0040】
下記の表4は、唾液中のFusobactrium nucleatumの10
4~10
6CFUに及ぶ細菌培養物に関する、5、10、20、および30分の持続時間にわたる、50μAまたは500μAの電流レベルにおける、本発明による刺激の有効性を示す。
【表4】
【0041】
下記の表5は、生理食塩水溶液中のPorphyromonas ginvalisの10
5CFUに及ぶ細菌培養物に関する、5、10、20、および30分の持続時間にわたる、50μAまたは500μAの電流レベルにおける、本発明による刺激の有効性を示す。
【表5-1】
【表5-2】
【0042】
したがって、本方法および対応する装置は、複数の予防、療法、美容、および再生効果を達成することが可能であり、その組み合わせは、当技術分野においてこれまで公知または利用可能ではなかった。すなわち、これらの効果は、口腔骨形成の助長、口腔微生物の破壊または無力化、歯肉組織再生、口腔生物膜の形成の低減および防止、齲蝕防止、増加される口腔血管拡張および口腔血流、歯肉炎および歯周炎等の一般的口腔病状の治療、口腔病原と相関される全身性疾患および病状の治療、ならびに概して改善された口腔衛生である。
【0043】
ここで図に目を向けると、
図1は、本発明による、刺激装置10の一実施形態を示す。刺激装置10は、好ましくは、充電ステーションまたはスタンド400によって物理的に支持され、動作的に充電され得る、マウスピース100と、コントローラ300とを備える、スタンドアロンデバイスである。概して、マウスピース100は、口内の所望の場所に1つまたはそれを上回る電極を位置付けながら、ヒトの口内に受容されるように定寸および構成される。また、
図2-5を参照すると、マウスピース100は、ヒトの任意の上顎または下顎歯を受容するように構成される、少なくとも1つの略U形チャネル110を含み、好ましくは、上部U形チャネル110Tと、対向する底部U形チャネル110Bとを含み、チャネル110は、好ましくは、同一のヒトの任意の上顎歯および任意の下顎歯を同時に受容するように構成される。2つのU形チャネル110は、好ましくは、チャネル基部114によってそれらの長さ112の少なくとも大部分に沿って相互から分離される。チャネル基部114に関連してチャネル110を形成するものは、好ましくは、チャネル基部114から略垂直に延在する、対向する舌側側壁120および頬側側壁130である。舌側側壁120は、舌側自由縁122において終端し、その大部分に沿って(好ましくは、舌側自由縁122全体に沿って)、1つまたはそれを上回る舌側電極124が、提供される。舌側電極124は、好ましくは、導電性シリコーンから形成され、舌側壁空隙または切欠126等の1つまたはそれを上回る絶縁性間隙もしくは他の電気絶縁性材料によって分離されてもよい。頬側側壁130は、頬側自由縁132において終端し、その大部分に沿って(好ましくは、頬側自由縁132全体に沿って)、1つまたはそれを上回る頬側電極134が、提供される。頬側電極134は、好ましくは、導電性シリコーンから形成され、頬側壁空隙または切欠136等の1つまたはそれを上回る絶縁性間隙もしくは電気絶縁性シリコーン等の他の電気絶縁性材料によって分離されてもよい。マウスピース100は、好ましくは、80を下回る、またはそれに等しいショアA硬度を有する材料等、比較的に快適である組織対向材料から形成(例えば、成型)される。
【0044】
電極124、134とコントローラ300内の回路網との間に作製される接続は、縮径部部分200を通して作製される。電極124、134から縮径部部分200への接続は、銅被覆ポリイミド等の可撓性回路技術を使用して達成されてもよいが、電気トレース140を形成するために第1の電気絶縁性材料および第2の導電性材料を含む、マルチショット射出金型が、より好ましくあり得る。すなわち、第1の金型が、導電性シリコーンを、第1のコネクタ端部から1つまたはそれを上回る電極124、134に延在し、それを含む、所望のパターンに形成し、導電性骨格を作製するために使用されてもよい。導電性骨格は、次いで、マウスピース100の大部分を形成し、相互から骨格を形成する導電性トレース140を絶縁するように、電気絶縁性シリコーンを用いてオーバーモールドされてもよい。絶縁後、暴露された導電性面積は、電極124、134および縮径部部分200内の端子面である。
【0045】
マウスピース100内の電気トレース140は、次いで、下記にさらに説明される、コントローラ筐体310内に搭載される、または搭載されるべきヘッダコネクタ210に電気的に結合される。具体的には、ヘッダコネクタは、ピン212を含み、各ピンは、好ましくは、電極124または134への導電性シリコーン経路(
図7の140)と関連付けられ、その中に物理的に挿入される。縮径部部分200内のトレース140の端子面142から任意の個別の電極124、134の任意の部分までの任意の伝導性経路の最大抵抗は、好ましくは、25kΩ未満である。
【0046】
また、
図7を参照すると、コントローラ300は、好ましくは、マウスピース100に固着されるように構成される、筐体310を備える。筐体310は、バッテリ302と、概して、電極124、134の接続(すなわち、切替)のタイミングを制御し、バッテリ302から電荷を送達するための電子回路とを含有する。バッテリ302は、好ましくは、少なくとも7回の連続する刺激セッションを実施することが可能な完全充電された容量を伴う再充電可能リチウムイオンバッテリであり、そのようなセッション持続時間は、長さが20分である。バッテリ302は、好ましくは、12時間未満で完全に枯渇した状態から再充電可能である。バッテリ302は、好ましくは、少なくとも200回(200)の充電/放電サイクルに関して定格される。回路網は、1つまたはそれを上回る印刷回路基板304に動作的に搭載されてもよいが、2つの回路基板(下側基板304Lおよび上側基板304U)が、改良された包装占有面積を提供するために好ましい。筐体310は、好ましくは、生体適合性である、成型ポリカーボネートプラスチック、ポリカーボネート/ABS合金(PC/ABS)等の単一またはいくつかの筐体部分(例えば、筐体上部、底部、側部等)を備えてもよい。マウスピース100およびコントローラ300を構築するために使用される材料にかかわらず、装置10は、好ましくは、約2mメートル(2m)の距離から比較的に硬い表面(例えば、石またはセラミックタイル、木材基板上に上置されるビニール、もしくはコンクリート)上への重力落下(約9.81m/秒
2)に耐えることが可能である。
【0047】
図6は、概して、プログラマブルマイクロプロセッサ(好ましくは、通信アンテナと併せて)、バッテリ302に関する無線誘導充電を受け取るための誘導充電回路網、ハードウェア過電流保護、送達パラメータおよび開回路条件を監視するための電流および電圧フィードバック、ならびにユーザインターフェースコンポーネントを含む、筐体310内に含有される回路網の機能ブロックの略図を提供する。
【0048】
コントローラ300は、好ましくは、単一のプッシュボタン306(好ましくは、ハードウェアまたはソフトウェアにおいてデバウンスされる)の形態におけるユーザ入力インターフェースと、好ましくは、バッテリインジケータライト312、ステータス(または刺激もしくは治療インジケータ)ライト314、および可聴ブザーまたはスピーカ316のうちの1つまたはそれを上回るものを含む、ユーザ出力またはフィードバックとを提供する。プッシュボタン306状態(アクティブ化/非アクティブ化)は、機能性を制御するために監視される。バッテリインジケータライト312は、好ましくは、提供されるべきフィードバックに応じて、一貫して点灯される条件、点滅条件(異なる率であり得る)、または交互する色のいずれかにおいて、好ましくは、複数の色(例えば、白色および琥珀色)を表示することが可能である。治療インジケータ314は、好ましくは、提供されるべきフィードバックに応じて、一貫して点灯される条件または点滅条件(異なる率であり得る)、もしくは交互する色のいずれかにおいて、好ましくは、複数の色(例えば、赤色、白色、および青色)を表示することが可能である。ユーザフィードバックは、加えて、または代替として、振動モータ等の触覚フィードバック発生器の使用を通して、タッチによって提供されてもよい。好ましいフィードバックは、
図11に提供される表に示されるようなものである。
図11に関連する注記(表の上付き文字によって示される)は、以下の通りである。
1. 本デバイスが、COMPLETE状態からLOW BATTERYに遷移した場合、治療LED314は、白色点滅を継続し、可聴フィードバックは、オフになるであろう。
2. バッテリが充電されているときに白色点滅し、充電が完了したときに白色オンである。
3. 本デバイスが、FAULT状態である間に充電スタンド上に設置される場合、本デバイスは、赤色点滅する治療インジケータライト314を表示し続けるであろう。本デバイスは、現在のバッテリ充電に従ってバッテリインジケータライト312を表示する(白色点滅/白色オン)が、これが障害の解消として誤解されることを回避するために、充電器上に設置されるときに可聴フィードバックを提供しないであろう。
4. バッテリインジケータライト312は、デバイス10が、充電が完了した後に10分を上回って充電器400上に放置される場合、オフになるであろう。充電器400は、バッテリ電圧が、充電閾値を下回って低下する場合、本期間の間に充電し続けるが、バッテリインジケータ312は、オフのままであろう。
【0049】
概して、電気回路網は、マイクロプロセッサによって制御および監視される複数のチャネルを有するものとして説明されることができ、各チャネルは、1つまたはそれを上回る電極124、134の動作と関連付けられる。チャネルは、他のチャネルから独立して有効または無効にされてもよいが、各チャネルは、複数の電極を制御してもよい。加えて、または代替として、1つまたはそれを上回る電極は、戻り電極としてのみ恒久的に指定および動作されてもよい。好ましい実施形態は、それぞれ最大50kΩの抵抗を横断して125μAの直流電流を駆動することが可能な8つのチャネルを含む。
【0050】
図8A-8Dに見られ得るように、電極チャネルごとに、イネーブル信号802が、チャネル駆動回路810によって受信される。アクティブ化されると、イネーブル信号802は、スイッチ(本実施例ではMOSFET)を反転させ、電圧を電流源調整器に提供し、これは、次いで、電流をチャネル出力812に提供する。感知抵抗器814が、電流が流動しているかどうか、好ましくは、流動している電流の量を判定するために使用される。CS_HIGHおよびCS_LOW信号が、比較回路を通して流され、CH_CURRENT信号をアクティブ化し、電流が流動していることを示す。CH_VOLTAGEが、個別のチャネルに送達される電圧および電流レベルを判定するために監視されてもよい。
【0051】
ユーザ(図示せず)によるコントローラ300の動作は、好ましくは、プッシュボタン306の押下を通して実施される。例えば、ユーザは、プッシュボタン306を押下することによって、マウスピース100への電流の送達を開始または一時停止することができる。非意図的動作を防止するために、プッシュボタン306の押下の持続時間が、感知およびデバウンスされる。
【0052】
コントローラ300は、好ましくは、ユーザが刺激装置10とインターフェースをとることに先立って、臨床医または他の訓練されたスタッフメンバによって構成される。加えて、または代替として、患者が、コントローラ300を構成してもよい。好ましくは、コントローラ300の構成は、コントローラ300に接続されるハードウェア(図示せず)の付加的部品の取付を通して実施されるが、また、無線接続(例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、近距離無線通信(NFC)、赤外線、磁気)を通して行われてもよい。最後に、コントローラ300は、デフォルト刺激処方計画を具備し、臨床医または患者による初期構成労力を低減または排除してもよい。
【0053】
構成パラメータは、好ましくは、刺激のための直流電流を提供するための電極構成の選択と、直流電流出力値、例えば、6μA、12μA、18μA、25μA、50μA、62μA、75μA、100μA、125μA、150μA、および200μA(好ましくは、任意のある時間において、全ての送達電極を横断して1,000μAの合計電流を超えない)の選択と、刺激セッション持続時間(好ましくは、1分の増分において選択可能な1分~30分)の選択とを含む。例示的な好ましい構成パラメータが、
図12Aおよび12Bに提供される表に見られることができる。
【0054】
コントローラ300は、好ましくは、刺激装置10によって実施されるプロトコルおよび刺激セッションのコンプライアンスを監視し、所定の監視されるイベントおよび/またはそのようなイベントと関連付けられるデータのカウント等のいくつかの性能メトリックを不揮発性メモリ(例えば、FLASH(登録商標)メモリ)内に記録することが可能である。記録は、臨床医(図示せず)によって、刺激応答および有効性を評価ならびに議論するために利用されてもよい。コントローラ300はまた、電気特性(すなわち、抵抗、電圧、電流)を動的に監視し、臨床医またはユーザ介入を伴わずに刺激パラメータまたは設定を調節するように構成されてもよい。リアルタイムクロックが、好ましくは、メトリックおよびデータが収集される時間ならびに日付を記録するために使用および参照される。リアルタイムクロック(無線通信デバイスまたはネットワークによってシードされ得る)とは別に、リアルタイムカウンタが、自動的状態変化のタイミングを追跡し、ランタイム(アップタイム)を追跡するために維持される。
【0055】
例えば、カウンタは、特定のイベントが生じた回数を追跡するために確立されてもよい。
図13Aおよび
図13Bの表に示されるそれらの好ましいカウンタ等のカウンタが、不揮発性メモリ内に維持されてもよい。いくつかの収集されたメトリックおよびデータは、以下(そのような発生の日付および時間とともに)、すなわち、開始された刺激セッション(例えば、治療)の回数、正常に完了された刺激セッション(例えば、治療)の回数、開回路障害の回数、開回路を用いた刺激セッション(例えば、治療)の回数、依然として正常に完了された開回路を用いた刺激セッション(例えば、治療)の回数、過電流障害の回数、低バッテリ障害の回数、本デバイスが一時停止された回数、一時停止されたが、依然として正常に完了された刺激セッション(例えば、治療)の回数、ユーザが本デバイスをオンにした回数、本デバイスがユーザによって電源オフにされた回数、本デバイスがソフトウェアによって電源オフにされた回数、および本デバイスがメモリリセット以降に起動した合計分数を含んでもよい。記録されたメトリックおよびデータは、コントローラ300内の不揮発性メモリ内にのみ記憶され、物理的接続(例えば、筐体310が除去される場合、シリアルUART接続、または筐体310を通して提供されるシリアルコネクタを通して)を通してアクセスされてもよい。加えて、または代替として、記録されたメトリックおよびデータは、無線接続を経由して(例えば、BLE対応無線通信デバイス上のソフトウェアアプリケーションを通して)アクセスされる、またはさらには無線ネットワークを経由して無線通信デバイスに自動的にプッシュされ、次いで、無線通信デバイス上、または無線通信デバイスとネットワーク化される遠隔データ記憶デバイス(装置10の製造業者および/または販売業者、処置提供者(例えば、歯医者、衛生士、管理スタッフ)、保険会社、またはユーザ(もしくはユーザの保護者)と関連付けられ得る、クラウド記憶装置または遠隔サーバ)上等、そこから遠隔で記憶されてもよい。
【0056】
自動的データプッシュはまた、時間間隔またはOFFからREADYへの遷移、CHARGING状態に入ること、OFF状態に入ること等のイベント発生に基づき得る。プッシュされたデータは、ユーザ刺激セッションデータ(例えば、患者コンプライアンスメトリック)、ファームウェアバージョン、デバイスエラー、および/または装置10ならびに/もしくは充電器400の物理的場所(GPSまたはネットワーク場所機能性が提供される場合)を含んでもよい。
【0057】
そのようなデータプッシュのために利用される特定の技術は、これまで任意の口腔器具と併せて使用されることが公知ではなかった、概して公知のハードウェア技術から組み立てられてもよい。コントローラ300からのデータプッシュは、WiFi/LoRa/LoRaWAN/Heliumまたはさらには低電力広域ネットワークもしくはメッシュネットワーク等の無線通信ネットワーク(例えば、WAN、LAN等)を経由して転送するための仲介物として充電器400に直接的であってもよい。
【0058】
特定のイベントのカウントが、維持されてもよいだけではなく、特定のイベント発生と関連付けられるデータもまた、ログ付けされてもよい。
図14の表に示されるものを含む、コントローラに関するイベントログにおいて記録されるべきイベントのタイプもまた、不揮発性メモリ内に記憶されてもよい。好ましくは、イベントログは、最低2,000個のイベントを記憶することができる。イベントログに配分される不揮発性メモリを超える場合、最も古いイベントは、新しいデータを記憶するために上書きされるであろう。
【0059】
不揮発性メモリは、好ましくは、少なくとも以下の発生および関連する情報、すなわち、ユーザが完了した刺激の分数(最大30分)、起動(例えば、OPEN状態発生)の間にマウスピースが接続解除されたかどうか、過電流障害が生じたかどうか、クローム(C)またはマイクロクローム(μC)の単位における特定の刺激持続時間(例えば、治療)にわたってチャネル毎に送達された合計電荷、および低バッテリ障害が生じたかどうかを記憶するであろう。
【0060】
コントローラ300はまた、
図8に関連して議論されるように、マウスピース100が刺激セッションの間にユーザの口内に位置していないときを検出するように構成されてもよい。そのために、コントローラ300は、電流の送達および電流が複数のカソード電極のうちののいずれかの上に検出されるかどうかを監視する。いかなる電流も、検出されない場合、コントローラ300は、刺激を一時停止し、障害条件を示してもよい。例えば、コントローラ300は、アノードおよびカソード電極を含む、刺激回路を監視する。コントローラ300は、マウスピース100に送達されるべき電流の量(送達電流)を測定または予測するための回路網を含み、また、マウスピース100から受電される帰還電流の量(帰還電流)を測定してもよい。回路網は、次いで、帰還電流を送達電流と比較し、差異が、所定の値(例えば、10%~約50%等の送達電流のパーセンテージ)を上回る場合、刺激は、好ましくは、全ての電極上で一時停止され、障害メッセージが、コントローラ上に表示される。いったん送達電流と帰還電流との間の差異が、所定の量未満となると、刺激プログラムまたは処方計画は、これが中断した場所から再開し、好ましくは、したがって、刺激時間は、全くまたは殆ど喪失されない。
【0061】
下記のグラフ1は、送達電極に送達される電流を監視するためのパラメータを提供する。上記に説明されるように、起動電流設定点およびまた持続時間「T」が、患者が刺激装置10を使用することに先立って、構成の間、判定および設定され、持続時間「T」のための推奨される設定は、2秒である。開回路は、好ましくは、起動電流設定点の約80%であり、過電流障害限界は、好ましくは、起動電流設定点の120%である。ハードウェア限界は、好ましくは、刺激チャネルあたり(例えば、アノード電極あたり)約200~300μAである。
【化1】
【0062】
電流は、好ましくは、コントローラ300が電流を任意の送達電極に送達しているとき、1秒あたり8回ポーリングされる。
【0063】
検出された電流が、事前設定持続時間を上回って、開回路限界を下回る場合、刺激は、一時停止し、通知が、示されるであろう。検出された電流が、事前設定持続時間を上回って、過電流障害限界を上回る場合、刺激は、停止され、障害通知が、示されるであろう。
【0064】
さらに、刺激装置10は、Bluetooth(登録商標)技術、近距離無線通信、およびwi-fi等の無線技術と完全に互換性があり、携帯電話、タブレット、またはパーソナルコンピュータ等のユーザの電子デバイス(図示せず)と通信することが想定される。好ましくは、ユーザは、使用履歴、事前に処方された刺激計画、および/または使用履歴対刺激計画の比較を精査してもよい。刺激装置10はまた、スケジューリングされた刺激セッションに関する通知をユーザの電子デバイスのうちのいずれかに提供してもよい。本機能性は、ユーザの電子デバイスにダウンロードすることが可能なアプリケーション(図示せず)を通して動作するように想定される。アプリケーションはまた、記憶、処方臨床医による遠隔監視のために、本データを中央サーバと共有し、患者と臨床医との間の一方向または双方向通信を提供し、および/または臨床医が刺激パラメータを遠隔で調節することを可能にするように構成されてもよい。加えて、ファームウェアアップグレードは、コントローラ300に無線で供給されてもよい。
【0065】
コントローラ300は、好ましくは、マイクロプロセッサパッケージングに組み込まれ得る、Bluetooth Low Energy(BLE)モジュール等の無線通信技術を含む。コントローラ300が、電源オンにされる(すなわち、OFF状態ではない)とき、コントローラは、好ましくは、米国FDA等の規制当局によって割り当てられ得るような一意のデバイス識別子(UDI)等のデバイス識別子を含む、BLEアドバタイズメントパケットを好ましくは周期的に伝送する。BLE通信チャネルは、好ましくは、ソフトウェアバージョン、プログラム可能なパラメータ、イベントログデータ、カウンタデータ、および/またはソフトウェア状態(例えば、READY、RUN、OPEN等)、ならびに/もしくは前述のうちのいずれかの変化(最後の伝送以降)等のコントローラ300についての、またはその中に含有される情報を伝送するために使用される。BLEインターフェースはまた、好ましくは、また、リアルタイムクロックを含む、タブレットコンピュータ、モバイル電話、または他のBLE対応デバイス等の遠隔無線通信デバイス上のソフトウェアアプリケーション(ユーザまたは医師サービスアプリケーション等)と情報を交換するために使用されてもよい。リアルタイムクロックデータは、コントローラ300によってアプリケーションから受信され、その独自のリアルタイムクロックを開始、維持、および/または更新するために記憶ならびに参照されてもよい。
【0066】
具体的には、アプリケーション(無線通信デバイス上で起動する)は、コントローラ300によって伝送されるBLEアドバタイズメントパケットを(要求に応じて、または周期的に)走査してもよい。本デバイス上のユーザインターフェースを操作することによって、ユーザは、次いで、近傍のアドバタイズするBLE対応デバイスのリストから選択することによって、本デバイスを刺激装置10にペアリングしてもよい。加えて、または代替として、アプリケーションは、好ましくは、RSSI(受信信号強度インジケータ)を介して無線デバイスを刺激装置10にペアリングすることが可能であり、無線デバイスは、ペアリングするために装置10の所定の近接にもたらされるだけでよい。ユーザは、RSSI機能を有効または無効にするために、アプリケーションのユーザインターフェースを操作してもよい。
【0067】
いったんモバイルデバイスが装置10にペアリングされると、現在の日付および時間(モバイルデバイス上に記憶されるローカル時間から、またはwifiもしくはセルラー等のネットワークから)が、好ましくは、イベントログ内に記憶するために装置10に伝送される。アプリケーションは、ユーザが見るためにイベントログの内容を表示することによって、本接続および伝送を確認してもよい。さらに、アプリケーションは、ペアリングされた装置10のパラメータ値およびカウンタを表示してもよい。好ましくは、アプリケーションは、それらが装置10上で生じる際(またはその直後)、リアルタイム更新を提供するために、イベントログ、パラメータ値、またはカウンタ値の変化をハイライトし、ユーザに通知するオプションをもたらす。
【0068】
アプリケーションはまた、好ましくは、装置10の現在のソフトウェア状態およびその情報に関連する情報を表示してもよい。例えば、装置10が、RUNまたはOPEN状態にあるとき(すなわち、刺激が、それぞれ、進行中である、または一時停止されるとき)、アプリケーションは、刺激サイクルの残り時間をカウントダウンするタイマならびに装置10上のチャネル毎の電流および電圧測定値を表示してもよい。これらの状態にある間、アプリケーションはまた、好ましくは、装置10から、イベントログ、パラメータ値およびカウンタ、装置10のUDI、ペアリングされた装置10のBluetooth(登録商標) MACアドレス、ならびに無線デバイスアプリケーション内での将来の表示のための、またはアプリケーションの使用を伴わずに読出可能であり得る、無線通信デバイスのメモリの中に保存されるログファイル(例えば、ASCIIテキストファイルまたはカンマ区切り変数(*.csv)ファイル等のフォーマットされたファイル等の読出可能または移動可能な電子ファイル)としての他の情報を保存するオプションを提供する。
【0069】
アプリケーションはまた、好ましくは、ソフトウェア状態の間で装置10を遷移させるためのユーザインターフェースを提供し、ボタン306との物理的相互作用を要求する代わりに、装置10の遠隔制御を(例えば、仮想ボタンの使用を通して)可能にする。例えば、装置10は、READY、CHARGING、またはFAULT状態からSERVICE状態に遷移してもよい(または逆もまた同様である)。SERVICE状態にある間、アプリケーションは、好ましくは、ユーザが、イベントログの内容を消去する、カウンタをリセットする、パラメータ値を更新する、または装置10上でファームウェア更新を実施することを可能にする。状態は、下記により詳細に議論される。
【0070】
本発明による充電ステーション400は、好ましくは、少なくとも
図1および10に見られ得るように、基部402と、シェル410とを備える。基部402は、好ましくは、USB-Cレセプタクル等の電力入力(図示せず)を備える。電力入力は、電力入力源(図示せず)(例えば、交流電流を提供する標準的電気コンセントに差し込まれた直流電流変圧器)から入力電力を受電するように構成される。入力電力は、Qi無線充電規格によって定義されるもの等の無線充電コイル(図示せず)に動作的に結合される。
【0071】
基部402は、架台表面422aを画定する架台隆起422を含む、コントローラ支持界面420を含む。架台隆起422は、コントローラ支持隆起322と噛合し、コントローラ300を支持することに役立ち、無線充電回路網コンポーネントの相対的位置付けを位置合わせすることに役立つように構成される。基部402に対するコントローラ300の位置付けおよび位置合わせは、好ましくは、さらに、コントローラ筐体310および基部402内に固着される1つまたはそれを上回る磁石(図示せず)によって支援される。このように、コントローラ300が、コントローラ支持界面420によって支持されるとき、誘導充電コイル(基部402内)は、シェル410を通して磁場を発生させ、これは、バッテリ302を充電するために受容コイル(コントローラ300内)によって使用される。
【0072】
シェル410は、好ましくは、中空であり、保管または移動のため等、コントローラ300/マウスピース100の組み合わせ全体を受容するように構成される、シェルキャビティ412を画定する。シェルキャビティ412は、シェル410を除去することによって(例えば、基部402との円周スナップ嵌合協同が使用される場合)、またはピン付きヒンジもしくはリビングヒンジ等のヒンジ付き枢動点414を中心としてシェル410を枢動させることによってのいずれかで、シェル410の位置を変化させることによってアクセスされることができる。シェルキャビティ内にあるもの、好ましくは、基部402の一部と一体的に形成されるものは、U形マウスピース100を受容するように構成される、弓形サドル面416である。
【0073】
電極に隣接する口腔組織内、それを横断する、またはそれへ導電性を増加させるために、イオンまたはコロイド状液体もしくはゲルが、伝導性媒体として使用され、口内の電気抵抗を減少させてもよい。本媒体は、歯、歯茎、または周辺口腔組織等の所望の電気接触の任意の所望の面積に沿って設置されてもよい。そのような媒体の実施例は、限定ではないが、コロイド状銀ゲル、液体コロイド状銀、コロイド状銅ゲル、液体コロイド状銅、コロイド状金ゲル、液体コロイド状金、生理食塩水ゲル、液体生理食塩水、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0074】
コロイド状銀は、全体的に、または組み合わせて、電流流動を増加させるだけではなく、また、付加的殺菌性利益をもたらす、優れた有望性を有する。コロイド状銀は、5百分率程度の低濃度において、細菌のアデノシン三リン酸の生産を阻止することによって、殺菌性となることが公知である。
【0075】
本伝導性媒体はまた、限定ではないが、オレガノ油を含む、栄養補助食品を含有してもよい。オレガノ油は、多くの健康利益を有すると考えられ、また、殺微生物性でもあり得る。そのような殺微生物性性質は、一般的口腔感染症および疾患を治療し、ならびに予防的口腔処置を補助する際に効果的であろう。
【0076】
本伝導性媒体はまた、歯のホワイトニング作用物質を含有してもよい。これは、本発明の実施形態によってもたらされる美容利益のリストへの歯のホワイトニングの追加を可能にするであろう。直流電流電気によって触媒されるホワイトニング作用物質が、含まれ得、さらには、非電気触媒ホワイトニング作用物質と比較して、短縮された歯のホワイトニング刺激時間をもたらし得る。
【0077】
人工または天然香味料もまた、着香された歯科用フッ化物治療の方法と同様に、ユーザにより魅力的味をもたらすために、本伝導性媒体に追加されてもよい。本香味料は、伝導性媒体の原料からのいずれかの嫌な味ならびにマウスピースまたは電極自体のいずれかの味を紛らわせるであろう。
【0078】
したがって、少なくとも一実施形態は、より効果的、低侵襲性、かつより安価な様式において、口腔衛生および歯科分野における所望の必要性に対処し、並行して、一般的口腔疾患および病状を治療する。これらの実施形態は、口腔内の表面への弱直流電流電気の非侵襲性印加を通して、一般的口腔衛生を助長し、口腔生物膜を低減させ、歯肉炎および歯周炎等の歯周病を治療し、細菌を含む、口腔微生物を死滅させ、したがって、虫歯および齲歯を防止し、口腔組織内の血管拡張および血流を増加させ、歯肉組織再生を助長し、歯、口、および関連面積の骨質構造内の骨形成を発達させ、口腔病原に関連する全身性疾患を治療し、他の歯周および口腔疾患を治療する。
【0079】
ある場合には、歯科手技は、生物膜に見出される口腔細菌コロニーを破壊し、細菌を血流の中に導入し、菌血症および他の感染症を引き起こし得る。さらに、歯科手技を実施する直前に、本発明によるマウスピースを利用することが望ましくあり得ることが想定される。本発明による刺激装置10は、自宅または歯科医院のいずれかにおいて、患者によって使用されてもよい。このように、歯肉上および下両方の患者の口内の生細菌は、手技に先立って低減されることができ、菌血症および他の感染症のリスクは、低減されるであろう。例えば、限定ではないが、刺激装置10は、歯科医院における歯科予防処置またはスケーリングおよびルートプレーニング手技に先立って利用され、細菌を患者の血流の中に導入するリスクを低減させてもよい。
【0080】
刺激装置10はまた、限定ではないが、抜歯後または埋込後感染症防止を含むシナリオのために、感染症のための防止策として、臨床手技に続いて利用されてもよい。
【0081】
動作時、アノード電極の数が、カソード電極の数と等しいことが好ましくあり得るが、異なる数のアノードおよびカソード電極を伴う代替配列も、想定される。所定の歯肉面積を治療することが望ましくある場合のように、標的化された刺激が、選択的に提供され得ることを理解されたい。標的化された刺激を提供するために、口の他の部分への電流の送達は、好ましくは、機械的または電気的に防止もしくは低減される。実施例として、機械的防止または低減は、少なくとも部分的に、(a)除去され、インプラントと置換されるべき歯、または(b)それから歯が意図的または偶発的にすでに除去されている、空の歯槽、または(c)以前に設置された歯科用インプラントの一部を囲繞する、歯肉組織の第1の場所において、マウスピース上にアノードまたはカソード電極を提供すること等、電極の特定化された配列によって達成されてもよい。機械的防止または低減は、少なくとも部分的に、(a)除去され、インプラントと置換されるべき歯、または(b)それから歯が意図的または偶発的にすでに除去されている、空の歯槽、または(c)以前に設置された歯科用インプラントの一部を囲繞する、歯肉組織の第2の場所(好ましくは、歯の第1の場所と反対側)において、マウスピース上にカソードまたはアノード電極を提供することによって、さらに向上されてもよい。2つの電極が、説明されるように、提供され、いかなる他の電極も、マウスピース上に配置されない場合、電流刺激の機械的低減が、達成される。このように、マウスピースは、電極をマウスピース上に機械的に配列し、電気刺激を歯科用インプラント部位に向かって標的化することによって、特定のユーザのためにカスタマイズされてもよい。
【0082】
非標的化電流の電気的防止または低減の実施例は、コントローラによる選択的電極制御である。すなわち、本明細書に示され、説明されるように、マウスピース上に、マウスピースを中心として離間された複数の電極が、機械的に提供されてもよい。しかしながら、そのような電極の電気制御を通して、各電極は、刺激を提供するための選択可能状態を有し得る。選択可能電極状態は、アノード、カソード、またはオフ(例えば、トライステート)であってもよい。したがって、標的化された電流が、所望される場合、マウスピース上の第1の電極が、アノードまたはカソード電極であるように選択されてもよい。マウスピース上の第1の電極位置は、少なくとも部分的に、(a)除去され、インプラントと置換されるべき歯、または(b)それから歯が意図的または偶発的にすでに除去されている、空の歯槽、または(c)以前に設置された歯科用インプラントの一部を囲繞する、歯肉組織の第1の場所に対応してもよい。非標的化電気刺激の電気的防止または低減は、(第1の電極と反対の)カソードまたはアノード電極であるように選択される、マウスピース上の第2の電極によってさらに向上されてもよい。マウスピース上の第2の電極位置は、少なくとも部分的に、(a)除去され、インプラントと置換されるべき歯、または(b)それから歯が意図的または偶発的にすでに除去されている、空の歯槽、または(c)以前に設置された歯科用インプラントの一部を囲繞する、歯肉組織の第2の場所(歯の第1の場所と反対の側)に対応してもよい。2つの電極が、説明されるように、選択され、いかなる他の電極も、マウスピース上でアクティブ化されない場合(例えば、全ての他の電極が、オフにされる、または高インピーダンス状態にされる、もしくはトライステートモード)、電流刺激の電気的低減が、達成される。このように、マウスピースは、複数のユーザのために機械的に標準化されるが、電気刺激を歯科用インプラント部位に向かって標的化するように電気的にカスタマイズされ得る。
【0083】
迷走または非標的化電流の機械的および電気的防止または低減が、単一歯科用インプラント部位の標的化に関して説明されたが、そのような標的化が、複数のインプラント部位において、同時に、または順次方式において、遂行され得る(例えば、1つの標的部位が、所定の時間にわたって刺激され、次いで、異なる標的部位が、所定の時間量にわたって刺激される)ことを理解されたい。
【0084】
動作の間、コントローラ300は、概して、ソフトウェア状態を通して、および/またはその間で循環し、そのうちのいくつかは、
図15A、
図15B、および
図15Cに提供される表に説明されて見られることができる。ここで
図16を参照すると、コントローラ300の好ましい状態が、見られることができる。OFF状態では、マイクロプロセッサに供給されるいかなる電力も、存在しないか、またはマイクロプロセッサをスリープもしくは低電力モードに置き、好ましくは、リアルタイムクロックおよびおそらく視覚的インジケータ(一定または断続的)のみの動作を維持するように提供される最小量の電力が、存在するかのいずれかである。OFF状態は、プッシュボタン306が、少なくとも3秒等の所定の時間にわたってアクティブ化される場合、コントローラの任意の他の状態から入ることができる。OFF状態はまた、所定の周期の不活動に基づいて、以下の状態、すなわち、OPEN、READY、COMPLETE、LOW BATTERY、CRITICAL_BATTERY、またはFAULTから入ることができる。所定の周期の不活動は、ユーザ活動(すなわち、プッシュボタン306の押下)またはOPEN条件の補正を監視するために使用される。それらのもののいずれかが、不活動周期内に起こる場合、OFF以外の異なる状態に、個別の状態から入るであろう。所定の周期の不活動は、好ましくは、プログラム可能なソフトウェア変数であり、好ましくは、不活動(すなわち、READY、COMPLETE、LOW BATTERY、CRITICAL_BATTERY、および/またはFAULT状態における)およびOPEN補正(すなわち、本時間の終了前に電流が再び流動し始める)に関して別個にプログラム可能である。OFF状態は、少なくとも2秒等の所定の時間にわたるプッシュボタン306のアクティブ化によって終了する。
【0085】
READY状態は、それから刺激が開始され得るコントローラの状態である。READY状態は、少なくとも2秒等の所定の時間にわたるプッシュボタン306のアクティブ化によってOFF状態から入ってもよい。コントローラ300は、プッシュボタン306がユーザによってアクティブ化されるか、またはある周期の不活動がコントローラをREADY状態から終了させ、OFF状態に戻すかのいずれかまで、READY状態のままであろう。
【0086】
RUN状態は、送達電極がアクティブ化され、電流が所定のプログラムされた時間にわたって、所定のプログラムされた電流レベルにおいてそれを通して送達される状態である。RUN状態は、断続的に、または所定の期間にわたってのいずれかで、プッシュボタン306のアクティブ化によってREADY状態から入る。ソフトウェアは、好ましくは、READY状態からのみ、ユーザがプッシュボタン306(または仮想ボタン)を押下するときにアクティブ化される(すなわち、オンにされる)電極チャネルへの電流送達を引き起こす(すなわち、コントローラソフトウェアは、RUN状態に遷移するであろう)。ソフトウェアは、電流が送達されている間に少なくとも毎秒1回増分する、刺激(例えば、治療)持続時間カウンタを監視する。ソフトウェアは、刺激持続時間カウンタをプログラムされたTREATMENT_DURATIONと比較し、電流送達が終了するべきときを判定する。代替として、RUN状態に入ることに応じて、ソフトウェアは、減分するカウンタの初期値をTREATMENT_DURATIONに設定し、次いで、そのカウンタを監視し、ゼロの値に到達するときを判定し、それによって、電流送達の中止を示し、好ましくは、それを引き起こしてもよい。
【0087】
電流が正常に送達され、刺激持続時間カウンタが終了したと仮定すると、コントローラソフトウェアは、電流送達が停止されるCOMPLETE状態に入るであろう。概して、ソフトウェアは、次いで、COMPLETE状態からの所定の期間後にOFF状態に遷移するであろう。
【0088】
いったん刺激セッションが完了すると、またはユーザが別様に本デバイスを終了すると、これは、以下のプロセスまたは同等物によって洗浄されてもよい。
1)約30秒にわたって冷水でマウスピース100を洗流する。
2)(随時、1ヵ月あたり2~4回)歯ブラシを使用し、刺激の少ない石鹸(例えば、食器洗い洗剤またはハンドソープ)を用いてマウスピース100を軽くこすり、次いで、水でマウスピース100を洗流し、石鹸を除去する。
3)空気乾燥させる(スタンド400上に支持される)。
【0089】
加えて、または代替として、マウスピースは、随時、または周期的に、最大30分の持続時間にわたって義歯洗浄剤の溶液中に設置されてもよい。
【0090】
しかしながら、RUN状態の間、ある期間にわたって(例えば、いかなる電流も、2秒の周期にわたって全てのアクティブなチャネルを横断して送達されていない場合)チャネルのうちの1つまたは組み合わせのチャネル電流および/または電圧を監視することによって判定されるように、電流送達の中断(例えば、装置10がユーザの口から除去されている場合があることを示す)が、存在する場合、ソフトウェアは、OPEN状態に入り、それによって、刺激持続時間タイマを一時停止するであろう。チャネルのうちの1つまたは組み合わせのチャネル電流および/または電圧を監視することによって判定されるように、電流送達が、所定の期間内に(例えば、プログラムされたINACTIVITY_DURATION_OPENパラメータに設定されたカウンタの終了に先立って)再開する場合、ソフトウェアは、RUN状態に戻り、アクティブ化されたチャネルへの電流送達を再開し、一時停止された刺激持続時間タイマを再開する(但し、リセットしない)。チャネルのうちの1つまたは組み合わせのチャネル電流および/または電圧を監視することによって判定されるように、電流送達が、所定の期間内に(例えば、プログラムされたINACTIVITY_DURATION_OPENパラメータに設定されたカウンタの終了に先立たない)再開することができない場合、ソフトウェアは、OFF状態に戻る。
【0091】
また、RUN状態の間、有効性(不足電流)障害および過電流障害等の動作障害が、生じ、それによって、コントローラソフトウェアをFAULT状態に遷移させ得、電流送達は、停止され、視覚的および/または聴覚的インジケーションが、コントローラ300によって提供される。有効性障害は、全てのアクティブな電極チャネルを横断して送達されている合計電流が、所定のプログラム可能な時間(MIN_CURRENT_TIME、例えば、30秒)にわたって標的値の所定のプログラム可能なパーセンテージ(MIN_CURRENT_PERCENT、例えば、75パーセント(75%))を下回る場合に生じ得る。故に、例示的パラメータ値を使用して、4つのチャネルが、アクティブであり、標的電流送達が、チャネルあたり125μAである場合、有効性障害は、全てのアクティブなチャネルのチャネル電流を監視することによって判定されるように、送達されている合計電流が、30秒を上回って375μA(125μA/チャネル×4つのチャネル×0.75)を下回る場合に生じるであろう。過電流障害は、各チャネル電流レベルを監視することによって判定されるように、任意のチャネル上に送達されている電流が、約200μA等の所定のレベルまたは所定の標的電流レベルの110%等の所定の標的電流レベルのプログラム可能なパーセンテージを超えるときに生じ得る。FAULT状態は、好ましくは、3秒等の所定の時間にわたるボタン306(または仮想ボタン)の押下を要求することによって等、終了し、OFF状態に戻るためのユーザ介入を要求する。
【0092】
CHARGING状態は、ソフトウェアがFAULT状態を除く任意の状態にあるとき、コントローラ300が給電された充電スタンド(電極チャネルへの電流送達は、好ましくは、無効にされる)と界面接触される度に入る。コントローラ300が、FAULT状態において充電スタンド400上に設置されるとき、これは、好ましくは、FAULT状態のままであるが、バッテリが充電されることを可能にするであろう。コントローラ300は、好ましくは、充電スタンド400から除去されるとき、これがその上に設置されるときにFAULT状態であった場合、FAULT状態を自動的に終了しない。むしろ、FAULT状態のままであり、それによって、好ましくは、3秒等の所定の時間にわたるボタン306(または仮想ボタン)の押下を要求することによって等、終了し、OFF状態に戻るためのユーザ介入を要求する。
【0093】
LOW BATTERY状態、CRITICAL BATTERY状態、およびSERVICE状態等の
図11に示されるもの以外の他の状態が、定義および利用されてもよい。回路網は、バッテリ302において利用可能な電圧を監視する。LOWおよびCRITICAL BATTERY状態では、電流送達は、非アクティブ化され、ユーザは、バッテリ状態の視覚的および/または聴覚的インジケータを通して知らされる。LOW BATTERY状態は、ユーザがRUN状態に入ろうと試みるとき、バッテリ302の電圧が、第1の所定のバッテリ起動値(例えば、3.5ボルト)未満である場合に入ってもよい。LOW BATTERY状態はまた、バッテリ302の電圧が、好ましくは、第1の所定のバッテリ起動値よりも高い、第2の所定のバッテリ起動値(例えば、3.6ボルト)未満である場合、RUN状態とCOMPLETE状態との間の遷移に応じて入ってもよい。CRITICAL BATTERY状態は、好ましくは、バッテリ302の電圧が、FAULT状態を除く任意の状態において低バッテリの所定の値よりも低い所定の値(例えば、3.1ボルト)未満である場合に入る。これは、マイクロプロセッサの節電に先立って不揮発性メモリにイベントをログ付けし、それによって、制御された方式で本システムをシャットダウンする能力を提供する。コントローラ300が、CRITICAL BATTERY状態にある間に(例えば、所定の時間にわたってボタン306を押下することによって)パワーダウンされる場合、これは、好ましくは、続けて、これがその間に充電器400上に設置されていない場合、その同一の状態において電源オンにされるであろう。
【0094】
SERVICE状態は、コントローラ300と通信する無線通信デバイスアプリケーションの使用を通して入り、それによって、パラメータがその上に提供されるユーザインターフェースを通してプログラムされることを可能にし得る。SERVICE状態は、READY、CHARGING、またはFAULT状態のうちのいずれかから入ってもよい。SERVICE状態は、以下の機能性を提供してもよい。
プログラム可能なパラメータ(
図12A-Bに列挙されるもの)を閲覧および変更すること。
コントローラ300によって提供されるような(例えば、
図13A-Bに列挙される1つまたはそれを上回るカウンタの)カウンタ値を閲覧すること。
コントローラ300上の1つまたはそれを上回るカウンタ値をリセットすること(および/またはペアリングの間または後にペアリングされた無線通信デバイス上のカウンタ標識および値をアーカイブすること)。
コントローラ300によって提供されるような(例えば、
図14に列挙される1つまたはそれを上回るイベントの)イベントログを閲覧すること。
コントローラ300上のイベントログから1つまたはそれを上回るイベントを消去すること(および/またはペアリングの間または後にペアリングされた無線通信デバイス上のイベントログをアーカイブすること)。
コントローラ300上のファームウェアの非破壊的、好ましくは、認証された更新。
【0095】
いったんデータがコントローラ300から取得されると、これは、無線ネットワークを経由して無線通信デバイスによって手動で、または自動的に転送され、次いで、無線通信デバイスとネットワーク化される遠隔データ記憶デバイス(装置10の製造業者および/または販売業者、処置提供者(例えば、歯医者、衛生士、管理スタッフ)、保険会社、またはユーザ(もしくはユーザの保護者)と関連付けられ得る、クラウド記憶装置または遠隔サーバ)上等、そこから遠隔で記憶されてもよい。
【0096】
ユーザが、上記のタスクのうちのいずれかを完了したとき(すなわち、ユーザが、SERVICE状態を終了することを所望するとき)、ユーザは、モバイル無線デバイス上のアプリケーションの使用を通してそのように行ってもよい。SERVICE状態から、コントローラは、装置10がアクティブな充電器400上にない場合にREADYに戻るように遷移する、アクティブな充電器400上にある場合にCHARGINGに戻るように遷移する、またはSERVICE状態がFAULT状態から入った場合にFAULTに戻るように遷移する。
全身性疾患の防止
【0097】
本発明によるマウスピースは、下記により詳細に概略されるであろうように、全身性疾患を防止または治療するために使用され得ることが想定される。本発明による方法は、口腔細菌、具体的には、F. nucleatum、P. ginvalis、およびS. oralisの量を低減させる際に効果的であることが示されている。
1.心血管疾患
【0098】
本発明によるマウスピースの使用は、限定ではないが、S. oralis、P. ginvalis、およびF. nucleatumを含む、口腔細菌の歯肉組織から身体の残りへの転移によって引き起こされる、微生物負荷を低減させ、また、口腔細菌によって生産された炎症性媒介物の量を減少させるために使用され得ることが想定される。さらに、F. nucleatumを低減させることによって、宿主細胞に侵襲するP. ginvalisの能力は、低下され、したがって、アテローム性動脈硬化症および冠動脈心臓病の引き起こし/悪化と結び付けられている、菌血症の発症を減少させるであろうことが想定される。
【0099】
本発明によるマウスピースは、所定の刺激処方計画に従って使用され、心血管疾患を防止、治療、および/または緩和させ得ることが想定される。所定の刺激処方計画では、患者は、本発明によるマウスピースを、所定の時間量にわたって、所定の電流レベルおよび所定の時間間隔において、装着するであろう。さらに、具体的刺激処方計画は、患者内に存在する細菌レベルに基づいて判定され得ることが想定される。本発明の一実施形態によると、刺激処方計画は、患者が、本発明によるマウスピースを、1日1回、20分にわたって、500μAの電流レベルにおいて、装着することから成るであろう。急性心血管病状に関して、本刺激は、病状が寛解されるまで、毎日、継続されてもよい。慢性心血管疾患に関して、本刺激は、継続的に、1週間に数回、繰り返されてもよい。
2.死産
【0100】
さらに、所定の刺激プロトコルに従った本発明によるマウスピースを用いた刺激セッションは、歯周病と関連付けられたF. nucleatumの口腔集団を低減させ、したがって、死産を防止、治療、および/または緩和するであろうことが想定される。ひいては、本低減は、F. nucleatumが口腔から血流の中に転移し、これが、次いで、胎盤の中に遊走し、コロニーを形成し得る、尤度を低下させるであろう。本発明によるマウスピースは、所定の刺激処方計画に従って使用され、死産を防止し得ることが想定される。所定の刺激処方計画では、患者は、所定の時間量にわたって、所定の電流レベルおよび所定の時間間隔において、本発明によるマウスピースを装着するであろう。さらに、具体的刺激処方計画は、患者内に存在する細菌レベルに基づいて判定され得ることが想定される。本発明の一実施形態によると、刺激処方計画は、患者が、本発明によるマウスピースを、妊娠の持続時間の間、1日に1回、20分にわたって、500μAの電流レベルにおいて、装着することから成るであろう。上記に概略された刺激パラメータは、107コロニー形成単位(CFU)の接種サイズにおけるS. oralisおよびF. nucleatumのレベルを低減させる際に非常に効率的であることが実証されている。
3.糖尿病
【0101】
所定の刺激プロトコルに従った本発明によるマウスピースは、口腔内のS. oralisの低減を引き起こし、その結果、細菌感染症によって生産された炎症の血清マーカの量を低減させることによって、糖尿病を防止、治療、および/または緩和するために使用され得ることが想定される。所定の刺激処方計画では、患者は、所定の時間量にわたって、所定の電流レベルおよび所定の時間間隔において、本発明によるマウスピースを装着するであろう。さらに、具体的刺激処方計画は、患者内に存在する細菌レベルに基づいて判定され得ることが想定される。本発明の一実施形態によると、刺激処方計画は、患者が、本発明によるマウスピースを、1日に1回、20分にわたって、500μAの電流レベルにおいて、装着することから成り、S. oralisの口腔レベルを効果的に低減させ、ひいては、全身性炎症性マーカの量を低下させるであろう。本刺激は、継続的に、1週間に複数回繰り返され、炎症性マーカを低減させることに役立ち得る。
4.化膿性肝膿瘍
【0102】
所定の刺激プロトコルに従った本発明によるマウスピースは、F. nucleatumの低減を引き起こすことによって、化膿性肝膿瘍を防止、治療、および/または緩和するために使用され得ることが想定される。具体的には、本発明によるマウスピースを用いた刺激セッションは、細菌レベルを低減させ、F. nucleatumおよび他の口腔細菌種が肝臓に進行しないように妨げ、全体的菌血症を低減させ得ることが想定される。所定の刺激処方計画では、患者は、所定の時間量にわたって、所定の電流レベルおよび所定の時間間隔において、本発明によるマウスピースを装着するであろう。さらに、具体的刺激処方計画は、患者内に存在する細菌レベルに基づいて判定され得ることが想定される。本発明の一実施形態によると、刺激処方計画は、患者が、本発明によるマウスピースを、1日に1回、20分にわたって、500μAの電流レベルにおいて、装着することから成り、F. nucleatumの口腔レベルを効果的に低減させ、これは、いずれの細菌も口腔から全身に搬送されないように防止し得る。本刺激は、膿瘍が低減されるまで、1週間に複数回、繰り返されてもよい。
5.骨髄炎
【0103】
所定の刺激プロトコルに従った本発明によるマウスピースは、F. nucleatumの低減を引き起こすことによって、骨髄炎を防止、治療、および/または緩和するために使用され得ることが想定される。所定の刺激処方計画では、患者は、所定の時間量にわたって、所定の電流レベルおよび所定の時間間隔において、本発明によるマウスピースを装着するであろう。さらに、具体的刺激処方計画は、患者内に存在する細菌レベルに基づいて判定され得ることが想定される。本発明の一実施形態によると、刺激処方計画は、患者が、本発明によるマウスピースを、刺激セッションあたり20分にわたって、500μAの電流レベルにおいて、装着することから成り、F. nucleatum細菌の口腔レベルを効果的に低減させ、いずれの細菌も口腔から全身に搬送されないように防止するであろう。本刺激は、骨髄炎のための標準的抗生物質ベースの治療と併せて、またはそれと別個に、使用されてもよい。抗生物質と併せて使用されるとき、刺激セッションは、通常、29~42日の周期内で行われるであろう。抗生物質と別個に使用されるとき、本刺激は、急性病状に関しては、数ヶ月にわたって、1日に1回、または慢性病状に関しては、継続的に、1週間に数回、使用されてもよい。
6.関節炎
【0104】
所定の刺激プロトコルに従った本発明によるマウスピースは、F. nucleatumの低減を引き起こすことによって、関節炎を防止、治療、および/または緩和するために使用され得ることが想定される。所定の刺激処方計画では、患者は、所定の時間量にわたって、所定の電流レベルおよび所定の時間間隔において、本発明によるマウスピースを装着するであろう。さらに、具体的刺激処方計画は、患者内に存在する細菌レベルに基づいて判定され得ることが想定される。本発明の一実施形態によると、刺激処方計画は、患者が、本発明によるマウスピースを、1日に1回、20分にわたって、500μAの電流レベルにおいて、装着することから成り、F. nucleatum細菌の口腔レベルを効果的に低減させ、いずれの細菌も口腔から搬送され、滑液に転移しないように防止し、関連付けられた炎症を低減させるであろう。本刺激は、本タイプの慢性病状に関して、継続的に、1週間に複数回、繰り返されてもよい。
生物膜を低減させ、生物膜形成を防止する
【0105】
所定の刺激プロトコルに従った本発明によるマウスピースは、F. nucleatum、P. ginvalis、および/またはS. oralis(その全ては、口腔生物膜形成に関与する)の低減を引き起こすことによって、口腔生物膜を防止、治療、および/または緩和するために使用され得ることが想定される。所定の刺激処方計画では、患者は、所定の時間量にわたって、所定の電流レベルおよび所定の時間間隔において、本発明によるマウスピースを装着するであろう。さらに、具体的刺激処方計画は、患者内に存在する具体的細菌種の細菌レベルに基づいて判定され得ることが想定される。本発明の一実施形態によると、刺激処方計画は、患者が、本発明によるマウスピースを、1日に1回、20分にわたって、500μAの電流レベルにおいて、装着することから成り、F. nucleatum細菌の口腔レベルを効果的に低減させ、F. nucleatumによって引き起こされるさらなる生物膜形成を防止し、F. nucleatumの既存の生物膜コロニーの生存率を低減させるであろう。
【0106】
本発明の別の実施形態によると、刺激処方計画は、患者が、本発明によるマウスピースを、1日に1回、20分にわたって、50μAの電流レベルにおいて、装着することから成り、P. ginvalis細菌の口腔レベルを効果的に低減させ、P. ginvalisによって引き起こされるさらなる生物膜形成を防止し、P. ginvalisの既存の生物膜コロニーの生存率を低減させるであろう。
【0107】
さらに、本発明の別の実施形態によると、刺激処方計画は、患者が、本発明によるマウスピースを、1日に1回、20分にわたって、500μAの電流レベルにおいて、装着することから成り、S. oralis細菌の口腔レベルを効果的に低減させ、S. oralisによって引き起こされるさらなる生物膜形成を防止し、S. oralisの既存の生物膜コロニーの生存率を低減させるであろう。
【0108】
生物膜低減および防止のためのこれらの刺激セッションは、急性生物膜ベースの問題に関しては、3~6週間にわたって、毎日繰り返されてもよい、または慢性生物膜問題に関しては、継続的に、1週間に1回もしくはそれを上回って、繰り返されてもよい。
インプラント周囲炎の治療および/または防止
【0109】
インプラント周囲炎は、概して、歯科用インプラントと物理に接触する、それを囲繞する、または別様にそれに近接し、その設置後に生じる、口腔組織の炎症である。本炎症は、本発明による方法を使用して、低減または防止され得る。本方法は、歯科用インプラント設置もしくは置換の歯科用インプラント外科手術手技前および/または後に実施されてもよい。
【0110】
インプラント周囲炎の尤度を低減させる方法は、歯科用インプラントが部分的にまたは全体として設置もしくは置換されることに先立って、電流を将来的埋込の口腔部位の近傍またはそこにおける歯肉組織に印加または指向することを伴う。電流は、口腔組織全体を通したいずれかの場所に分散され得るが、少なくとも6μA、より好ましくは、少なくとも約50μAの電流(好ましくは、300μA以下)が、将来的埋込の所定の口腔部位の近傍またはそこにおける歯肉組織に送達される。外科手術前刺激処方計画は、歯科用インプラント外科手術手技に先立って、1~14日にわたって、1日あたり約20分の電気刺激から成ってもよい。
【0111】
インプラント周囲炎の尤度を低減させる(これがまだ引き起こされていない場合)、またはインプラント周囲炎を低減させる(これがすでに引き起こされている場合)方法は、歯科用インプラントが部分的にまたは全体として設置もしくは置換された後、電流を埋込の口腔部位の近傍またはそこにおける歯肉組織に印加または指向することを伴う。電流は、口腔組織全体を通していずれかの場所に分散され得るが、少なくとも6μA、より好ましくは、少なくとも約50μAの電流(好ましくは、300μA以下)が、埋込の所定の口腔部位の近傍またはそこにおける歯肉組織に送達される。外科手術後刺激処方計画は、歯科用インプラント外科手術手技後、1~14日にわたって、または所望の炎症低減が生じるまで、1日あたり約20分の電気刺激から成ってもよい。
【0112】
外科手術前および外科手術後方法は、明確にするために、別個に説明されたが、一方または(好ましくは)両方の方法が、特定の患者、すなわち、マウスピースのユーザのために利用され得ることを理解されたい。
【0113】
前述は、本発明の原理の例証的のみと見なされる。さらに、多数の修正および変更が、当業者に容易に想起されるであろうため、本発明を示され、説明される厳密な構造および動作に限定することは、所望されない。好ましい実施形態が、説明されたが、詳細は、本発明から逸脱することなく、変更されてもよい。
【国際調査報告】