(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体
(51)【国際特許分類】
A61F 2/06 20130101AFI20230816BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
A61F2/06
A61M25/00 610
A61M25/00 600
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505882
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 KR2021010543
(87)【国際公開番号】W WO2022045642
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0108913
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506355291
【氏名又は名称】メディンテル コー リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】ペク、インス
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC11
4C097CC18
4C097DD01
4C097FF05
4C267AA01
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB08
4C267BB11
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4C267BB20
4C267BB22
4C267BB39
4C267BB40
4C267CC08
4C267HH01
4C267HH08
(57)【要約】
管状構造体が開示される。管状構造体は複数のレイヤーが積層されて形成され、それぞれのレイヤーには複数のポア(pore)が形成され、少なくとも一つのレイヤー内のポアは生理活性物質を含有することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレイヤーが積層された管状構造体を含み、それぞれのレイヤーには複数のポア(pore)が形成され、少なくとも一つのレイヤー内のポアは生理活性物質を含有していることを特徴とする、気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項2】
少なくとも一つのレイヤーに含有された生理活性物質の量は他のレイヤーに含有された生理活性物質の量と異なることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項3】
ポアの形状、ポアのサイズ、ポアの配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポアの個数において少なくとも一つのレイヤーが他のレイヤーと異なるように形成されることにより、それぞれのレイヤーのポアが含有した生理活性物質の含量がレイヤー別に異なるように設定されることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項4】
前記生理活性物質は細胞増殖や細胞移動を阻害する物質からなることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項5】
前記生理活性物質は、パクリタキセル、ラパマイシン及びエベロリムスからなる群から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項6】
前記管状構造体の最内側に位置するレイヤーから最外側に位置するレイヤーの方向に行くほどそれぞれのレイヤーが含有した生理活性物質の含量が減少することを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項7】
前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーは生理活性物質を含有しないことを特徴とする、請求項6に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項8】
前記生理活性物質がパクリタキセル(paclitaxel)の場合、前記管状構造体の最内側に位置するレイヤーに含有された生理活性物質の面積当たりの含量は0.25~1.5μg/mm
2であることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項9】
前記生理活性物質がパクリタキセルの場合、前記管状構造体の最内側から二番目に位置するレイヤーは0.25~0.75μg/mm
2の面積当たりの含量の生理活性物質を含有することを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項10】
前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーは生理活性物質を含有しないか、または生理活性物質がパクリタキセルの場合には、生理活性物質の面積当たりの含量が0.25μg/mm
2以下であることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項11】
前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーは、国際標準化機構ISO7198:1998規定に従って測定されたポロシティ(porosity)が他のレイヤーに比べて相対的に小さいか、またはポアの個数が他のレイヤーに比べて相対的に少ないことを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項12】
前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーは、国際標準化機構ISO7198:1998規定に従って測定されたポロシティ(porosity)が25μm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項13】
それぞれのレイヤーの材質は、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項14】
前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーから最内側に位置するレイヤーの方向に行くほどそれぞれのレイヤーが含有した生理活性物質の含量が減少することを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項15】
前記管状構造体が3個以上のレイヤーから形成された場合には、前記管状構造体の最外側から二番目に位置するレイヤーのポロシティが他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さく、前記ポロシティは国際標準化機構ISO7198:1998規定に従って測定されることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項16】
前記管状構造体が3個以上のレイヤーから形成された場合には、前記管状構造体の最外側から二番目に位置するレイヤーのポロシティが25μm未満であり、前記ポロシティは国際標準化機構ISO7198:1998規定に従って測定されることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項17】
前記複数のレイヤーはいずれも同じ材質からなることを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項18】
前記管状構造体が3個のレイヤーから形成された場合、前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーと最内側に位置するレイヤーとの間に位置するレイヤーのポロシティは他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さいことを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【請求項19】
前記管状構造体が4個以上のレイヤーから形成された場合、前記管状構造体の最外側に位置するレイヤー及び最内側に位置するレイヤーを除いた残りのレイヤーのうちのいずれか一つのレイヤーのポロシティは他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さいことを特徴とする、請求項1に記載の気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は管状構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体内に治療または予防の目的で内腔(lumen)を有する管状構造体を挿入する場合がある。代表的な例としては、血管導管(vascular conduit)または透析のための血管アクセス(vascular access、hemodialysis access)が挙げられる。
【0003】
一般的に、血管導管は、手術や薬理的治療で治癒しにくい血管疾患がある場合、生体血管を代替することができる人工的な血管である。ところが、血管導管は人体の自然的な構造物ではないので、色々の問題点が発生し得る。代表的な問題点は、血管導管と人体の血管との間の連結部位及び周辺部位の狭窄と、狭窄に伴った血栓症及び血管導管部位の炎症反応である。このような問題点を解消するために、血管導管に生理活性物質層(layer)または薬物層を形成することで、血管の狭窄及び炎症を防止しようとする研究がずっと行われてきた。
【0004】
しかし、この薬物層の種類によって血管導管の内側または外側に及ぶ薬物の効果が異なることがあるので、これを好ましい方法で制御する必要がある。また、薬物層の生成方法によって血管導管の性状が変わることがあるので、これを考慮した新技術の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開始の技術的思想は上述した問題点を解決するためのものであり、薬物の種類によって血管導管の内側及び外側でそれぞれ異なる効果を示すように適切に制御することができる管状構造体に対する技術を提供することにその目的がある。
【0006】
そして、本開始の技術的思想は、薬物が放出される速度を適切に調節することができる管状構造体に対する技術を提供することに他の目的がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は前述した課題に限定されず、言及しなかった他の技術的課題は後述する内容から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかに理解可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の一実施形態として、気孔内に生理活性物質を含有する気孔性多層管状構造体は、複数のレイヤーが積層された管状構造体を含み、それぞれのレイヤーには複数のポア(pore)が形成され、少なくとも一つのレイヤー内のポアは生理活性物質を含有する。
【0009】
また、少なくとも一つのレイヤーに含有された生理活性物質の量は他のレイヤーに含有された生理活性物質の量と異なってもよい。
【0010】
また、ポアの形状、ポアのサイズ、ポアの配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポアの個数において少なくとも一つのレイヤーが他のレイヤーと異なるように形成されることにより、それぞれのレイヤーのポアが含有した生理活性物質の含量がレイヤー別に異なるように設定されることができる。
【0011】
また、前記生理活性物質は細胞増殖や細胞移動を阻害する物質からなることができる。
【0012】
また、前記生理活性物質は、パクリタキセル、ラパマイシン及びエベロリムスからなる群から選択される少なくとも1種からなることができる。
【0013】
また、前記管状構造体の最内側に位置するレイヤーから最外側に位置するレイヤーの方向に行くほどそれぞれのレイヤーが含有した生理活性物質の含量が減少することができる。
【0014】
また、前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーは生理活性物質を含有しなくてもよい。
【0015】
また、前記生理活性物質がパクリタキセル(paclitaxel)の場合、前記管状構造体の最内側に位置するレイヤーに含有された生理活性物質の面積当たりの含量は0.25~1.5μg/mm2であることができる。
【0016】
また、前記生理活性物質がパクリタキセルの場合、前記管状構造体の最内側から二番目に位置するレイヤーは0.25~0.75μg/mm2の面積当たりの含量の生理活性物質を含有することができる。
【0017】
また、前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーは生理活性物質を含有しないか、または生理活性物質がパクリタキセルの場合には、生理活性物質の面積当たりの含量が0.25μg/mm2以下であることができる。
【0018】
また、前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーは、国際標準化機構ISO7198:1998規定に従って測定されたポロシティ(porosity)が他のレイヤーに比べて相対的に小さいか、またはポアの個数が他のレイヤーに比べて相対的に少なくてもよい。
【0019】
また、前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーは、国際標準化機構ISO7198:1998規定に従って測定されたポロシティ(porosity)が25μm未満であってもよい。
【0020】
また、それぞれのレイヤーの材質は、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0021】
また、前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーから最内側に位置するレイヤーの方向に行くほどそれぞれのレイヤーが含有した生理活性物質の含量が減少することができる。
【0022】
また、前記管状構造体が3個以上のレイヤーから形成された場合には、前記管状構造体の最外側から二番目に位置するレイヤーのポロシティが他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さく、前記ポロシティは国際標準化機構ISO7198:1998規定に従って測定されることができる。
【0023】
また、前記管状構造体が3個以上のレイヤーから形成された場合には、前記管状構造体の最外側から二番目に位置するレイヤーのポロシティが25μm未満であり、前記ポロシティは国際標準化機構ISO7198:1998規定に従って測定されることができる。
【0024】
また、前記複数のレイヤーはいずれも同じ材質からなることができる。
【0025】
また、前記管状構造体が3個のレイヤーから形成された場合、前記管状構造体の最外側に位置するレイヤーと最内側に位置するレイヤーとの間に位置するレイヤーのポロシティは他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さくてもよい。
【0026】
また、前記管状構造体が4個以上のレイヤーから形成された場合、前記管状構造体の最外側に位置するレイヤー及び最内側に位置するレイヤーを除いた残りのレイヤーのうちのいずれか一つのレイヤーのポロシティは他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さくてもよい。
【0027】
上述した課題の解決手段はただ例示的なものであり、本発明を制限しようとする意図に解釈されてはいけない。上述した例示的な実施例の他にも、図面及び発明の詳細な説明に記載した追加の実施例が存在することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上で説明したように、本発明の多様な実施例によれば、レイヤー別に生理活性物質の含有量を異に設定することができるので、体内で生理活性物質が放出される速度を適切に調節することができる。
【0029】
また、本発明の多様な実施例によれば、管状構造体の最内側に位置するレイヤーから最外側に位置するレイヤーの方向に行くほど、それぞれのレイヤーが含有した生理活性物質の含量が減少し、最外殻に位置するレイヤーは生理活性物質を含有しないことにより、血管導管の外部で筋肉繊維母細胞が増殖することを生理活性物質が抑制しないように調節することができる。
【0030】
そして、本発明の多様な実施例によれば、レイヤー別にポアのサイズ、個数、形状、配置形態などが異なるように形成されることにより、ポアに含有される生理活性物質の含量をレイヤー別に異に調節することができる。これにより、細胞増殖や細胞移動を阻害する生理活性物質が管状構造体の内周面から外周面の方向に染み込んで外周面まで到逹することを防止することができる。
【0031】
また、実施例によっては、管状構造体の最外側に位置するレイヤーから最内側に位置するレイヤーの方向に行くほどそれぞれのレイヤーが含有した生理活性物質の含量が減少し、最内側に位置するレイヤーは生理活性物質を含有しないように含有量を調節することができる。よって、生理活性物質の効能及び種類を考慮して管状構造体の外部にのみ選別的に生理活性物質が適用されるように制御することが可能である。
【0032】
本発明の多様な実施例による効果は以上で言及した効果に制限されず、言及しなかった他の効果は請求範囲の記載から通常の技術者に明らかに理解可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の第2実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の第3実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
【
図4】本発明の第4実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
【
図5】本発明の第5実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
【
図6】本発明の第6実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
【
図7】本発明の第7実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の好適な実施例について添付図面を参照してより具体的に説明する。ここで、既に周知となった技術的部分は説明の簡潔性のために省略するか簡略に説明する。
【0035】
本明細書で、本発明の“一”又は“一つの”実施例についての言及は必ずしも同じ実施例についてのものではなく、これらは少なくとも一つを意味するということに留意しなければならない。
【0036】
以下の実施例で、第1、第2などの用語は限定的な意味ではなく、一構成要素を他の構成要素と区別する目的で使う。
【0037】
以下の実施例で、単数の表現は文脈上で明白に他の意味を指示しない限り、複数の表現を含む。
【0038】
以下の実施例で、含む又は有するなどの用語は明細書上に記載された特徴又は構成要素が存在することを意味するものであり、一つ以上の他の特徴又は構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0039】
以下の実施例で、膜、領域、構成要素などの部分が他の部分上にあると言うとき、これはすぐ上に場合だけでなく、その中間に他の膜、領域、構成要素などが介在されている場合も含む。
【0040】
本開示の実施例を説明するために参照する図面は説明の便宜及び理解の容易性のために意図的にサイズ、高さ、厚さなどが誇張して表現されており、一定の比率によって拡大又は縮小して示されたものではない。また、図面に示したある構成要素は意図的に縮小して表現され、ある構成要素は意図的に拡大して表現されることができる。
【0041】
図1は本発明の第1実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
図1を参照すると、第1実施例による管状構造体10はルーメン(lumen)を有する構造体であり、3個のレイヤーを積層して形成することができる。すなわち、第1レイヤー110は管状構造体10の最内側に位置するレイヤーであり、第2レイヤー120は第1レイヤー110の外周面に付着される。そして、第3レイヤー130は第2レイヤー120の外周面に付着され、管状構造体10の最外側に位置するレイヤーである。
【0042】
第1実施例で、管状構造体10を構成するそれぞれのレイヤーには複数のポアが形成されることができる。第1実施例によれば、第1レイヤー110、第2レイヤー120及び第3レイヤー130には複数のポアが形成されることができる。また、少なくとも一つのレイヤー内の少なくとも一つのポアは生理活性物質を含有することができる。
【0043】
第1実施例で、生理活性物質(bioactive material)は細胞増殖や細胞移動を阻害する物質を意味する。例えば、生理活性物質は、パクリタキセル、ラパマイシン及びエベロリムスからなる群から選択される少なくとも1種からなることができる。
【0044】
第1実施例によれば、複数のレイヤーのうちの第1レイヤー110に形成されたポア111、112のポロシティ(porosity)は第2レイヤー120に形成されたポア121のポロシティと異なるように形成されることができる。すなわち、ポロシティをレイヤー別に異なるように形成することで、第1レイヤー110のポア111、112に含有された生理活性物質の含量と第2レイヤー120のポア121に含有された生理活性物質の含量とを互いに異なるように調節することが可能である。本明細書で使用する用語である「ポロシティ(porosity)」は国際標準化機構ISO7198:1998規定に従って測定された微小ポロシティ(microscopic porosity)値を意味する。
【0045】
具体的な例として、第1実施例では、3個のレイヤーのうちの第1レイヤー110に形成されたポア111、112のポロシティは第2レイヤー120に形成されたポア121のポロシティより大きく、第3レイヤー130に形成されたポア131、132のポロシティは第2レイヤー120に形成されたポア121のポロシティより小さく形成されることができる。よって、第1レイヤー110から第3レイヤー130の方向に行くほどそれぞれのポアが含有した生理活性物質の含量が減少する。また、第1レイヤー110や第2レイヤー120とは違い、第3レイヤー130のポア131、132は生理活性物質を含有しないようにそれぞれのレイヤーのポロシティを調節することができる。
【0046】
第1実施例によれば、管状構造体10を成す複数のレイヤーのうちの第1レイヤー110に形成されたポア111、112の形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポア111、112の個数が第2レイヤー120に形成されたポア121の形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポア121の個数と異なるように形成することができる。すなわち、ポアの形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポアの個数をレイヤー別に異なるように形成すれば、第1レイヤー110のポア111、112に含有された生理活性物質の含量と第2レイヤー120のポア121に含有された生理活性物質の含量とが互いに異なるように設定することができる。
【0047】
具体的な例として、第1レイヤー110には30個のポアが形成され、第2レイヤー120には20個のポア121が形成され、第3レイヤー130には10個のポアが形成されれば、それぞれのレイヤーのポアに含有される生理活性物質の含量が異なる。また、第3レイヤー130のポア131、132は生理活性物質を含有しないようにポアの個数、形状及び配置形態のうちの少なくとも一つを調節することができる。
【0048】
第1実施例によれば、管状構造体10の最内側に位置するレイヤーである第1レイヤー110に含有された生理活性物質の面積当たりの含量は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25~1.5μg/mm2を適用することができる。具体的な例として、第1レイヤー110に含有された生理活性物質の面積当たりの含量は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25μg/mm2、0.35μg/mm2、0.45μg/mm2、0.55μg/mm2、0.65μg/mm2、0.75μg/mm2、0.85μg/mm2、0.95μg/mm2、1.05μg/mm2、1.15μg/mm2、1.25μg/mm2、1.35μg/mm2、1.45μg/mm2または1.5μg/mm2を適用することができる。また、第1レイヤー110に含有された生理活性物質の面積当たりの含量は前記数値のうちの一つ以上及び前記数値のうちの一つ以下の範囲になることができる。
【0049】
例えば、第1レイヤー110に含有された生理活性物質の面積当たりの含量の範囲は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25μg/mm2~1.5μg/mm2、0.35μg/mm2~1.45μg/mm2、0.55μg/mm2~1.35μg/mm2、0.65μg/mm2~1.25μg/mm2、0.75μg/mm2~1.15μg/mm2または0.85μg/mm2~1.05μg/mm2の範囲を適用することができる。
【0050】
第1実施例によれば、第1レイヤー110の外周面に積層された第2レイヤー120は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25~0.75μg/mm2の面積当たりの含量の生理活性物質を含有することができる。具体的な例として、第2レイヤー120に含有された生理活性物質の面積当たりの含量は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25μg/mm2、0.35μg/mm2、0.45μg/mm2、0.55μg/mm2、0.65μg/mm2または0.75μg/mm2を適用することができる。また、第2レイヤー120に含有された生理活性物質の面積当たりの含量は、前記数値のうちの一つ以上及び前記数値のうちの一つ以下の範囲になることができる。
【0051】
例えば、第2レイヤー120に含有された生理活性物質の面積当たりの含量の範囲は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25μg/mm2~0.75μg/mm2、0.35μg/mm2~0.65μg/mm2または0.45μg/mm2~0.55μg/mm2の範囲を適用することができる。
【0052】
一方、実施例によっては、管状構造体10の最外側に位置する第3レイヤー130は、第1レイヤー110や第2レイヤー120に含有された含量に比べて相対的に少ない含量(例えば、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.01~0.25μg/mm2)の生理活性物質を含有することもできる。
【0053】
第1実施例によれば、管状構造体10の最外側に位置する第3レイヤー130は、ポア131、132のポロシティが他のレイヤーに比べて相対的に小さく形成されることができる。また、第3レイヤー130は、ポア131、132の個数が他のレイヤーに比べて相対的に少なく形成されることができる。これにより、第3レイヤー130は生理活性物質を全然含有しないか、または他のレイヤーに比べて相対的に少ない含量の生理活性物質を含有するように調節することができる。
【0054】
第1実施例による管状構造体10は複数のレイヤーを有し、それぞれのレイヤーに形成されたポアの平均ポロシティは、国際標準化機構7198規定に従って測定された測定値として0.1μm以上25μm未満を適用することができる。
【0055】
第1実施例で、管状構造体10を構成するそれぞれのレイヤーは、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種からなることができる。一方、実施例によっては、複数のレイヤーはいずれも同じ材質からなることもできる。一具現例で、多層管状構造体を構成するそれぞれのレイヤーがすべて同じ材質の場合には、それぞれのレイヤーの弾性及び軟性を同等な水準に付与することができ、外力によって管状構造体が曲がるとき、互いに隣接したレイヤーが脱落するか亀裂が発生する現象を防止することができる。
【0056】
第1実施例による管状構造体10は、第1レイヤー110、第2レイヤー120及び第3レイヤー130が事前に積層された状態で、第1レイヤー110の内周面に向けて極性溶媒、無極性溶媒及び生理活性物質が混合された溶液を噴射することで製造することができる。すなわち、管状構造体10の内部に噴射装備を位置させ、第1レイヤー110の内周面の方向に溶液を噴射することができる。
【0057】
図2は本発明の第2実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
図2を参照すると、第2実施例による管状構造体20は、4個のレイヤーを積層して形成することができる。すなわち、第1レイヤー210は管状構造体20の最内側に位置するレイヤーである。第2レイヤー220は第1レイヤー210の外周面に付着され、第3レイヤー230は第2レイヤー220の外周面に付着される。第4レイヤー240は第3レイヤー230の外周面に付着され、管状構造体20の最外側に位置するレイヤーである。
【0058】
第2実施例で、管状構造体20を構成するそれぞれのレイヤーには複数のポアが形成されることができる。第2実施例によれば、第1レイヤー210、第2レイヤー220、第3レイヤー230及び第4レイヤー240には複数のポアが形成されることができる。また、少なくとも一つのレイヤー内の少なくとも一つのポアは生理活性物質を含有することができる。
【0059】
第2実施例で、生理活性物質は第1実施例と同様に適用することができる。第2実施例によれば、複数のレイヤーのうちの第1レイヤー210に形成されたポア211、212、213のポロシティは第2レイヤー220に形成されたポア221のポロシティと異なるように形成されることができる。すなわち、ポアのポロシティをレイヤー別に異なるように形成することで、第1レイヤー210のポア211、212、213に含有された生理活性物質の含量と第2レイヤー220のポア221に含有された生理活性物質の含量とを異なるように調節することが可能である。
【0060】
具体的な例として、第2実施例では、4個のレイヤーのうちの第1レイヤー210に形成されたポア211、212、213のポロシティは第2レイヤー220に形成されたポア221のポロシティより大きく、第2レイヤー220に形成されたポア221のポロシティは第3レイヤー230に形成されたポア231、232のポロシティより大きく、第3レイヤー230に形成されたポア231、232のポロシティは第4レイヤー240に形成されたポア241のポロシティより大きく形成されることができる。よって、第1レイヤー210から第4レイヤー240の方向に行くほどそれぞれのポアが含有した生理活性物質の含量が減少する。また、第1レイヤー210、第2レイヤー220及び第3レイヤー230とは違い、第4レイヤー240のポア241は生理活性物質を含有しないようにポアのポロシティを調節することができる。
【0061】
第2実施例によれば、管状構造体20を成す複数のレイヤーのうちの第1レイヤー210に形成されたポア211、212、213の形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポア211、212、213の個数が第2レイヤー220に形成されたポア221の形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポア221の個数と異なるように形成することができる。すなわち、ポアの形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポアの個数をレイヤー別に異なるように形成すれば、第1レイヤー210のポア211、212、213に含有された生理活性物質の含量と第2レイヤー220のポア221に含有された生理活性物質の含量とが異なるように設定することができる。
【0062】
具体的な例として、第1レイヤー210には30個のポアが形成され、第2レイヤー220には20個のポアが形成され、第3レイヤー230には10個のポアが形成され、第4レイヤー240には5個のポアが形成されれば、それぞれのレイヤーのポアに含有される生理活性物質の含量が異なるようになる。また、第4レイヤー240のポア241は生理活性物質を含有しないようにポアの個数、形状及び配置形態のうちの少なくとも一つを調節することができる。
【0063】
第2実施例によれば、管状構造体20の最内側に位置するレイヤーである第1レイヤー210に含有された生理活性物質の面積当たりの含量は、0.25~1.5μg/mm2を適用することができる。具体的な例として、第1レイヤー210に含有された生理活性物質の面積当たりの含量は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25μg/mm2、0.35μg/mm2、0.45μg/mm2、0.55μg/mm2、0.65μg/mm2、0.75μg/mm2、0.85μg/mm2、0.95μg/mm2、1.05μg/mm2、1.15μg/mm2、1.25μg/mm2、1.35μg/mm2、1.45μg/mm2または1.5μg/mm2を適用することができる。また、第1レイヤー210に含有された生理活性物質の面積当たりの含量は前記数値のうちの一つ以上及び前記数値のうちの一つ以下の範囲になることができる。
【0064】
例えば、第1レイヤー210に含有された生理活性物質の面積当たりの含量の範囲は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25μg/mm2~1.5μg/mm2、0.35μg/mm2~1.45μg/mm2、0.55μg/mm2~1.35μg/mm2、0.65μg/mm2~1.25μg/mm2、0.75μg/mm2~1.15μg/mm2または0.85μg/mm2~1.05μg/mm2の範囲を適用することができる。
【0065】
第2実施例によれば、第1レイヤー210の外周面に付着された第2レイヤー220は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25~0.75μg/mm2の面積当たりの含量の生理活性物質を含有することができる。具体的な例として、第2レイヤー220に含有された生理活性物質の面積当たりの含量は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25μg/mm2、0.35μg/mm2、0.45μg/mm2、0.55μg/mm2、0.65μg/mm2または0.75μg/mm2を適用することができる。また、第2レイヤー220に含有された生理活性物質の面積当たりの含量は前記数値のうちの一つ以上及び前記数値のうちの一つ以下の範囲になることができる。
【0066】
例えば、第2レイヤー220に含有された生理活性物質の面積当たりの含量の範囲は、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.25μg/mm2~0.75μg/mm2、0.35μg/mm2~0.65μg/mm2または0.45μg/mm2~0.55μg/mm2の範囲を適用することができる。
【0067】
一方、実施例によっては、管状構造体20の最外側に位置する第4レイヤー240は、他のレイヤーに含有された含量に比べて相対的に少ない含量(例えば、生理活性物質がパクリタキセルの場合、レイヤーの厚さにかかわらず、0.01~0.25μg/mm2)の生理活性物質を含有することもできる。
【0068】
第2実施例によれば、管状構造体20の最外側に位置する第4レイヤー240はポア241のポロシティが他のレイヤーに比べて相対的に小さく形成されることができる。また、第4レイヤー240はポア241の個数が他のレイヤーに比べて相対的に少なく形成されることができる。これにより、第4レイヤー240は生理活性物質を全然含有しないか、または他のレイヤーに比べて相対的に少ない含量の生理活性物質を含有するように調節することができる。
【0069】
第2実施例による管状構造体20は複数のレイヤーを有し、それぞれのレイヤーに形成されたポアのポロシティは国際標準化機構7198規定に従って測定された測定値として0.1μm以上~25μm未満を適用することができる。
【0070】
第2実施例で、管状構造体20を構成するそれぞれのレイヤーの材質は第1実施例と同様に適用することができる。
【0071】
第2実施例による管状構造体20は、第1レイヤー210、第2レイヤー220、第3レイヤー230及び第4レイヤー240が事前に積層された状態で、第1レイヤー210の内周面に向けて極性溶媒、無極性溶媒及び生理活性物質が混合された溶液を噴射することで製造することができる。すなわち、管状構造体20の内部に噴射装備を位置させ、第1レイヤー210の内周面の方向に溶液を噴射することができる。
【0072】
図3は本発明の第3実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
図3を参照すると、第3実施例による管状構造体30は、3個のレイヤーを積層して形成することができる。すなわち、第1レイヤー310は管状構造体30の最内側に位置するレイヤーである。第2レイヤー320は第1レイヤー310の外周面に付着され、第3レイヤー330は第2レイヤー320の外周面に付着される。第3レイヤー330は管状構造体30の最外側に位置するレイヤーである。
【0073】
第3実施例で、管状構造体30を構成するそれぞれのレイヤーには複数のポアが形成されることができる。第3実施例によれば、第1レイヤー310、第2レイヤー320及び第3レイヤー330には複数のポアが形成されることができる。また、少なくとも一つのレイヤー内の少なくとも一つのポアは生理活性物質を含有することができる。
【0074】
第3実施例で、生理活性物質は第1実施例と異なる種類を適用することができる。例えば、第3実施例による生理活性物質は消炎剤であり得る。生理活性物質の効能面で、管状構造体30の内側に位置するレイヤーに含有されるよりは外側に位置するレイヤーに含有されることが好ましい生理活性物質の場合には、管状構造体30の内側レイヤーに生理活性物質が存在せず、外側レイヤーにのみ選別的に適用されるように調節することができる。
【0075】
第3実施例によれば、複数のレイヤーのうちの第1レイヤー310に形成されたポア311、312のポロシティは第2レイヤー320に形成されたポア321のポロシティと異なるように形成されることができる。すなわち、ポアのポロシティをレイヤー別に異なるように形成することで、第1レイヤー310のポア311、312に含有された生理活性物質の含量と第2レイヤー320のポア321に含有された生理活性物質の含量とを異なるように調節することが可能である。
【0076】
具体的な例として、第3実施例では、3個のレイヤーのうちの第3レイヤー330に形成されたポア331、332のポロシティは第2レイヤー320に形成されたポア321のポロシティより大きく、第2レイヤー320に形成されたポア321のポロシティは第1レイヤー310に形成されたポア311、312のポロシティより大きく形成されることができる。よって、管状構造体30の最外側に位置する第3レイヤー330から最内側に位置する第1レイヤー310の方向に行くほどそれぞれのレイヤーのポアが含有した生理活性物質の含量が減少する。また、第2レイヤー320及び第3レイヤー330とは違い、第1レイヤー310のポア311、312は生理活性物質を含有しないようにポアのポロシティを調節することができる。
【0077】
第3実施例によれば、管状構造体30を成す複数のレイヤーのうちの第1レイヤー310に形成されたポア311、312の形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポア311、312の個数が第2レイヤー320に形成されたポア321の形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポア321の個数と異なるように形成することができる。すなわち、形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポアの個数をレイヤー別に異なるように形成すれば、第1レイヤー310のポア311、312に含有された生理活性物質の含量と第2レイヤー320のポア321に含有された生理活性物質の含量とが異なるように設定することができる。
【0078】
第3実施例によれば、管状構造体30の最内側に位置する第1レイヤー310は、ポア311、312のポロシティが他のレイヤーに比べて相対的に小さく形成されることができる。また、第1レイヤー310はポア311、312の個数が他のレイヤーに比べて相対的に少なく形成されることができる。これにより、第1レイヤー310は生理活性物質を全然含有しないか、または他のレイヤーに比べて相対的に少ない含量の生理活性物質を含有するように調節することができる。
【0079】
第3実施例で、管状構造体30を構成するそれぞれのレイヤーの材質は第1実施例と同様に適用することができる。
【0080】
第3実施例による管状構造体30は、第1レイヤー310、第2レイヤー320及び第3レイヤー330が事前に積層された状態で、第3レイヤー330の外周面に向けて極性溶媒、無極性溶媒及び生理活性物質が混合された溶液を噴射することで製造することができる。すなわち、管状構造体30の外部に噴射装備を位置させ、第3レイヤーの外周面の方向に溶液を噴射することができる。
【0081】
図4は本発明の第4実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
図4を参照すると、第4実施例による管状構造体40は、4個のレイヤーを積層して形成することができる。すなわち、第1レイヤー410は管状構造体40の最内側に位置するレイヤーである。第2レイヤー420は第1レイヤー410の外周面に付着され、第3レイヤー430は第2レイヤー420の外周面に付着され、第4レイヤー440は第3レイヤー430の外周面に付着される。第4レイヤー440は管状構造体40の最外側に位置するレイヤーである。
【0082】
第4実施例で、管状構造体40を構成するそれぞれのレイヤーには複数のポアが形成されることができる。第4実施例によれば、第1レイヤー410、第2レイヤー420、第3レイヤー430及び第4レイヤー440には複数のポアが形成されることができる。また、少なくとも一つのレイヤー内の少なくとも一つのポアは生理活性物質を含有することができる。
【0083】
第4実施例で、生理活性物質は第1実施例と異なる種類を適用することができる。例えば、第4実施例による生理活性物質は消炎剤であり得る。生理活性物質の効能面で、管状構造体40の内側に位置するレイヤーに含有されるよりは外側に位置するレイヤーに含有されることが好ましい生理活性物質の場合には、管状構造体40の内側レイヤーに生理活性物質が存在せず、外側レイヤーにのみ選別的に適用されるように調節することができる。
【0084】
第4実施例によれば、複数のレイヤーのうちの第1レイヤー410に形成されたポア411のポロシティは第2レイヤー420に形成されたポア421のポロシティと異なるように形成されることができる。すなわち、ポアのポロシティをレイヤー別に異なるように形成することで、第1レイヤー410のポア411に含有された生理活性物質の含量と第2レイヤー420のポア421に含有された生理活性物質の含量とを異なるように調節することが可能である。
【0085】
具体的な例として、第4実施例では、4個のレイヤーのうちの第4レイヤー440に形成されたポア441、443のポロシティが第3レイヤー430に形成されたポア431、432のポロシティより大きく、第3レイヤー430に形成されたポア431、432のポロシティは第2レイヤー420に形成されたポア421のポロシティより大きく、第2レイヤー420に形成されたポア421のポロシティは第1レイヤー410に形成されたポア411のポロシティより大きく形成されることができる。よって、管状構造体40の最外側に位置する第4レイヤー440から最内側に位置する第1レイヤー410の方向に行くほどそれぞれのレイヤーのポアが含有した生理活性物質の含量が減少する。また、第2レイヤー420、第3レイヤー430及び第4レイヤー440とは違い、第1レイヤー410のポア411は生理活性物質を含有しないようにポアのポロシティを調節することができる。
【0086】
第4実施例によれば、管状構造体40を成す複数のレイヤーのうちの第1レイヤー410に形成されたポア411の形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポア411の個数が第2レイヤー420に形成されたポア421の形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポア421の個数と異なるように形成することができる。すなわち、ポアの形状、サイズ、配置形態またはレイヤーの単位面積当たりのポアの個数をレイヤー別に異なるように形成すれば、第1レイヤー410のポア411に含有された生理活性物質の含量と第2レイヤー420のポア421に含有された生理活性物質の含量とが異なるように設定することができる。
【0087】
一方、実施例によっては、管状構造体40の最内側に位置する第1レイヤー410は、他のレイヤーが含有する含量に比べて相対的に少ない含量の生理活性物質を含有することもできる。
【0088】
第4実施例によれば、管状構造体40の最内側に位置する第1レイヤー410は、ポア411のポロシティが他のレイヤーに比べて相対的に小さく形成されることができる。また、第1レイヤー410は、ポア411の個数が他のレイヤーに比べて相対的に少なく形成されることができる。これにより、第1レイヤー410は生理活性物質を全然含有しないか、または他のレイヤーに比べて相対的に少ない含量の生理活性物質を含有するように調節することができる。
【0089】
第4実施例で、管状構造体40を構成するそれぞれのレイヤーの材質は第1実施例と同様に適用することができる。
【0090】
他の具現例で、管状構造体が3個以上のレイヤーから形成された場合には、管状構造体の最外側から二番目に位置するレイヤーのポロシティが他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さく形成されることができる。さらに他の具現例で、管状構造体が3個以上のレイヤーから形成された場合には、管状構造体の最外側から二番目に位置するレイヤーのポロシティが0.1μm以上25μm未満になるように形成されることができる。これにより、管状構造体の最内側のレイヤーまたは最外側のレイヤーが生理活性物質を全然含有しないかまたは微量で含有するように調節することができる。
【0091】
図5は本発明の第5実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
図5を参照すると、第5実施例による管状構造体50は3個のレイヤーを積層して形成することができる。
【0092】
すなわち、第1レイヤー510は管状構造体50の最内側に位置するレイヤーである。第2レイヤー520は第1レイヤー510の外周面に付着され、第3レイヤー530は第2レイヤー520の外周面に付着される。第3レイヤー530は管状構造体50の最外側に位置するレイヤーである。
【0093】
第5実施例で、管状構造体50を構成するそれぞれのレイヤーには複数のポアが形成されることができる。第5実施例によれば、第1レイヤー510、第2レイヤー520及び第3レイヤー530には複数のポアが形成されることができる。また、少なくとも一つのレイヤー内の少なくとも一つのポアは生理活性物質を含有することができる。第5実施例で、生理活性物質は第1実施例と同様に適用するかまたは異種の物質を適用することができる。
【0094】
第5実施例によれば、管状構造体50が3個のレイヤーから形成された場合、管状構造体50の最外側に位置するレイヤーである第3レイヤー530と最内側に位置するレイヤーである第1レイヤー510との間に位置する第2レイヤー520のポロシティは他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さい値を有することができる。
【0095】
第5実施例で、管状構造体50を構成するそれぞれのレイヤーの材質は第1実施例と同様に適用することができる。
【0096】
図6は本発明の第6実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
図6を参照すると、第6実施例による管状構造体60は4個のレイヤーを積層して形成することができる。
【0097】
すなわち、第1レイヤー610は管状構造体60の最内側に位置するレイヤーである。第2レイヤー620は第1レイヤー610の外周面に付着され、第3レイヤー630は第2レイヤー620の外周面に付着され、第4レイヤー640は第3レイヤー630の外周面に付着される。第4レイヤー640は管状構造体60の最外側に位置するレイヤーである。
【0098】
第6実施例で、管状構造体60を構成するそれぞれのレイヤーには複数のポアが形成されることができる。第6実施例によれば、第1レイヤー610、第2レイヤー620、第3レイヤー630及び第4レイヤー640には複数のポアが形成されることができる。また、少なくとも一つのレイヤー内の少なくとも一つのポアは生理活性物質を含有することができる。第6実施例で、生理活性物質は第1実施例と同様に適用するかまたは異種の物質を適用することができる。
【0099】
一具体例で、管状構造体が4個以上のレイヤーから形成された場合、管状構造体の最外側に位置するレイヤー及び最内側に位置するレイヤーを除いた残りのレイヤーのうちのいずれか一レイヤーのポロシティは他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さい値を有することができる。
【0100】
第6実施例によれば、管状構造体60が4個のレイヤーから形成された場合、管状構造体60の最外側に位置するレイヤーである第4レイヤー640と最内側に位置するレイヤーである第1レイヤー610との間に位置する第2レイヤー620のポロシティは他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さい値を有することができる。
【0101】
第6実施例で、管状構造体60を構成するそれぞれのレイヤーの材質は第1実施例と同様に適用することができる。
【0102】
図7は本発明の第7実施例による管状構造体を概略的に示す図である。
図7を参照すると、第7実施例による管状構造体70は4個のレイヤーを積層して形成することができる。
【0103】
すなわち、第1レイヤー710は管状構造体70の最内側に位置するレイヤーである。第2レイヤー720は第1レイヤー710の外周面に付着され、第3レイヤー730は第2レイヤー720の外周面に付着され、第4レイヤー740は第3レイヤー730の外周面に付着される。第4レイヤー740は管状構造体70の最外側に位置するレイヤーである。
【0104】
第7実施例で、管状構造体70を構成するそれぞれのレイヤーには複数のポアが形成されることができる。第7実施例によれば、第1レイヤー710、第2レイヤー720、第3レイヤー730及び第4レイヤー740には複数のポアが形成されることができる。また、少なくとも一つのレイヤー内の少なくとも一つのポアは生理活性物質を含有することができる。第7実施例で、生理活性物質は第1実施例と同様に適用するかまたは異種の物質を適用することができる。
【0105】
第7実施例によれば、管状構造体70が4個のレイヤーから形成された場合、管状構造体70の最外側に位置するレイヤーである第4レイヤー740と最内側に位置するレイヤーである第1レイヤー710との間に位置する第3レイヤー730のポロシティは他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さい値を有することができる。
【0106】
第7実施で、例管状構造体70を構成するそれぞれのレイヤーの材質は第1実施例と同様に適用することができる。
【0107】
一実施例によれば、管状構造体の最外側に位置するレイヤーと最内側に位置するレイヤーとの間に位置するいずれか一レイヤーのポロシティが他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さい値を有する場合には、注射針で管状構造体の表面を貫いてから針を除去するとき、他のレイヤーのポロシティに比べて一番小さい値を有するレイヤーの穿孔地点が容易に収縮することで、漏液の発生を防止することができる。
【0108】
他の実施例によれば、管状構造体の最外側に位置するレイヤーのポロシティが管状構造体の最外側に位置するレイヤー及び最内側に位置するレイヤーを除いた残りのレイヤーのうちのいずれか一レイヤーのポロシティより大きく形成されることができる。すなわち、管状構造体の最外側に位置するレイヤーは一定レベルのポロシティを維持することができ、よって皮膚と直接的に触れ合う面である最外側レイヤーのポアの内部に皮膚組職が容易に進入して管状構造体と皮膚とが緊密に結合することで、管状構造体が体内の最初設置位置を離脱せず、安定的に維持されることができる。
【0109】
上述したように、本発明の多様な実施例によれば、レイヤー別に生理活性物質の含有量を異なるように設定することができるので、体内で生理活性物質が放出される速度を適切に調節することができる。
【0110】
また、本発明の多様な実施例によれば、管状構造体の最内側に位置するレイヤーから最外側に位置するレイヤーの方向に行くほどそれぞれのレイヤーが含有した生理活性物質の含量が減少し、最外殻に位置するレイヤーは生理活性物質を含有しないことにより、血管導管の外部で筋肉繊維母細胞が容易に増殖することができる。
【0111】
そして、本発明の多様な実施例によれば、レイヤー別にポアのサイズ、個数、形状、配置形態などが異なるように形成されることにより、ポアに含有される生理活性物質の含量及びその放出速度をレイヤー別に異なるように調節することができる。これにより、細胞増殖や細胞移動を阻害する生理活性物質(例えば、パクリタキセル、ラパマイシン、エベロリムスなど)が管状構造体の内周面から外周面の方向に染み込んで外周面まで到逹することを防止することができる。また、生理活性物質と有機溶剤とを混合した液体を管状構造体内に塗布することによっても、有機溶剤が管状構造体の外周面まで到逹して管状構造体の外周面を変形させるか損傷させることを防止し、体内で予期せぬ副作用が起きることを防止することができる。
【0112】
さらに、実施例によっては、管状構造体の最外側に位置するレイヤーから最内側に位置するレイヤーの方向に行くほどそれぞれのレイヤーが含有した生理活性物質の含量が減少し、最内側に位置するレイヤーは生理活性物質を含有しないように含有量を調節することができる。よって、生理活性物質の効能及び種類を考慮して、管状構造体の外部にのみ選別的に生理活性物質(一例として、消炎剤)を適用するように制御することが可能である。
【0113】
以上で説明したように、本発明についての具体的な説明は添付図面を参照する実施例に基づいて開示したが、上述した実施例は本発明の好適な例を説明したものであるだけであるから、本発明が前記実施例のみに限定されるものに理解されられてはいけなく、本発明の権利範囲は後述する請求範囲及びそれと均等な概念によって理解されなければならない。
【符号の説明】
【0114】
10、20、30、40、50、60、70 管状構造体
110、210、310、410、510、610、710 第1レイヤー
111、112、211、212、213、311、312、411、511、611、711 ポア
113、114、214、215、216 生理活性物質
120、220、320、420、520、620、720 第2レイヤー
121、221、321、421、521、621、721 ポア
122、222、322、422 生理活性物質
130、230、330、430、530、630、730 第3レイヤー
131、132、231、232、331、332、431、432、531、631、731 ポア
233、234、333、334、433、434 生理活性物質
240、440、640、740 第4レイヤー
241、441、443、641、741 ポア
442、444 生理活性物質
【国際調査報告】