(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】電極統合マイクロシーブアセンブリ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/42 20060101AFI20230816BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20230816BHJP
G01N 27/02 20060101ALI20230816BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
C12M1/42
G01N33/483 E
G01N27/02 D
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505905
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2021071030
(87)【国際公開番号】W WO2022023357
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501276430
【氏名又は名称】テクニーシェ・ユニバーシタイト・アイントホーベン
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】リュットゲ、 レジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤルシン、ヤグマー デミルカン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G060
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045FA34
2G060AA15
2G060AD06
2G060AF03
2G060AF06
2G060AG03
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4B029AA07
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4B029GB10
4B063QA01
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4B063QQ08
4B063QS39
4B063QX04
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるデバイスに関する。このデバイスは、少なくとも1つの電極統合されたマイクロシーブアセンブリを備える。マイクロシーブアセンブリは、a)細胞を保持するための1つ以上の微小孔を備えた、マイクロシーブアレイのようなマイクロシーブ配列と、b)第1電極と第2電極とが対向して配置された1つ以上の電極対を備えた基板と、を備える。マイクロシーブ配列は、電極対の各々が微小孔内に電場を形成するように基板に接続される。第1電極は、第2電極に平行に配置される。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるデバイスであって、少なくとも1つの電極統合されたマイクロシーブアセンブリを備え、
前記マイクロシーブアセンブリは、
a.細胞を保持するための1つ以上の微小孔を備えた、マイクロシーブアレイのようなマイクロシーブ配列と、
b.第1電極と第2電極とが対向して配置された1つ以上の電極対を備えた基板と、
を備え、
前記マイクロシーブ配列は、前記電極対の各々が前記微小孔内に電場を形成するように前記基板に接続され、
前記第1電極は、前記第2電極に平行に配置されることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記マイクロシーブ配列は、前記基板に取り外し可能に接続されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記マイクロシーブ配列は、第1スロットと第2スロットとからなる1つ以上のスロットの対を備え、
前記第1電極および前記第2電極の各々は、前記スロットの対の内部に受け取られるように配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1スロットは、前記第2スロットから、最大75μm離して、好ましくは最大50μm離して、より好ましくは約20μm離して配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1スロットおよび前記第2スロットは、前記第1電極および前記第2電極の各々を受け取れるよう深さ、幅および高さを持ち、
および/または、前記第1スロットおよび前記第2スロットは、最大70μm、好ましくは最大50μm、より好ましくは約20μmの深さを持ち、
および/または、前記第1スロットおよび前記第2スロットは、最大70μm、好ましくは最大50μm、より好ましくは約20μmの幅を持ち、
および/または、前記第1スロットおよび前記第2スロットは、最大200μm、好ましくは約100μmの高さを持つことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるデバイスに使われる基板であって、
第1電極と第2電極とが対向して配置された1つ以上の電極対を備え、
前記第1電極は、前記第2電極に平行に配置されることを特徴とする基板。
【請求項7】
前記第1電極は、前記第2電極から、最大75μm離して、好ましくは最大50μm離して、より好ましくは約20μm離して配置されることを特徴とする請求項6に記載の基板。
【請求項8】
前記第1電極および前記第2電極は、
最大200μm、好ましくは100μmの高さを持ち、
および/または、最大70μm、好ましくは最大50μm、より好ましくは約20μmの深さを持ち、
および/または、最大70μm、好ましくは最大50μm、より好ましくは約20μmの幅を持つことを特徴とする請求項6または7に記載の基板。
【請求項9】
前記第1電極および前記第2電極は、導電性材料から、好ましくは金属から生成され、
好ましくは前記金属は、銅、亜鉛、ニッケル、鉛、水銀、銀、アルミニウム、金、鉄、または前記金属を含んだ合金を含むことを特徴とする請求項6から7のいずれかに記載の基板。
【請求項10】
孔を備え、
前記孔の直径は、最大10μm、好ましくは約3μmであり、
前記孔は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられることを特徴とする請求項6から7のいずれかに記載の基板。
【請求項11】
マイクロシーブアレイのようなマイクロシーブ配列であって、
細胞を保持するための1つ以上の微小孔を備え、
前記微小孔は、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるために使われることを特徴とするマイクロシーブ配列。
【請求項12】
前記1つ以上の微小孔は、プリズム形状であることを特徴とする請求項11に記載のマイクロシーブ配列。
【請求項13】
前記1つ以上の微小孔は、形状を持ち、
前記1つ以上の微小孔の頂部開口は、1つ以上の微小孔の底部開口より大きいことを特徴とする請求項11または12に記載のマイクロシーブ配列。
【請求項14】
前記微小孔の各々は、1つ以上の細胞を保持できるような幅、深さおよび高さを持ち、
および/または、前記微小孔の各々の直径は、少なくとも0μm以上100μm以下、好ましくは2μm以上20μm以下であり、前記微小孔の各々の高さは、少なくとも0μm以上200μm以下、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載のマイクロシーブ配列。
【請求項15】
前記1つ以上の微小孔は、ポリマーを含む材料から作られることを特徴とする請求項11から14のいずれかに記載のマイクロシーブ配列。
【請求項16】
前記1つ以上の微小孔の材料は、1以上5以下、好ましくは約2.75の比誘電率を持ち、
および/または、前記1つ以上の微小孔の材料は、ポリマーを含み、好ましくはシリコンベースのポリマーであり、より好ましくはポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項15に記載のマイクロシーブ配列。
【請求項17】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける電極統合マイクロシーブアセンブリであって、
a.請求項11から16のいずれかに記載のマイクロシーブ配列と、
b.請求項6から10のいずれかに記載の基板と、
を備えることを特徴とする電極統合マイクロシーブアセンブリ。
【請求項18】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける部品のキットであって、
a.請求項11から16のいずれかに記載のマイクロシーブ配列と、
b.請求項6から10のいずれかに記載の基板と、
を備えることを特徴とする部品のキット。
【請求項19】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける方法であって、
a.請求項1から10のいずれかに記載のデバイスを与えるステップと、
b.1つ以上の細胞、好ましくは媒体内の1つ以上の細胞を与えるステップと、
c.ステップbで与えられた細胞を、ステップa.で与えられたデバイスに供給するステップと、
d.前記1つ以上の細胞による電界の変化を決定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける方法における、請求項1から10のいずれかに記載のデバイスまたは請求項11から16のいずれかに記載のマイクロシーブ配列の使用および請求項6から10のいずれかに記載の基板の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるデバイスに関する。さらに本発明は、1つ以上の微小孔を備えたマイクロシーブ配列に関する。本発明はまた、第1電極および第2電極の1つ以上の対を備えた基板に関する。本発明はまた、細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける方法、ならびに細胞の偏りを決定するための配列の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロシーブ配列(例えば、マイクロシーブアレイ)は、通常、様々なバイオテクノロジーのためのアプリケーション、例えば、体内診断、細胞分離アッセイ、細胞培養アッセイ、擬体内培養アッセイ(例えば、チップ上器官)などで開発されてきた。マイクロシーブベースのアッセイでは、1つ以上の細胞(例えば、細胞集団)がマイクロシーブ配列(例えばマイクロシーブアレイ、すなわち1つ以上の微小孔を備えた人工デバイス)に接触する。マイクロシーブベースのアッセイによって、細胞内および細胞外のメカニズムならびに特定の組織構成内の細胞間相互作用が、単一細胞レベルで理解可能となることが知られている。マイクロシーブ配列では、細胞または細胞集団を、微小孔内に単一細胞レベルでトラップ(または保持)するのに、流体力学的フローを使うことができる。一旦細胞が微小孔内に保持されると、流体力学的抵抗力によって、他の細胞が同じ微小孔内に保持されるのを防ぐことができる。体内アッセイの完全な概要については、以下の文献を参照されたい。Tietz textbook of clinical chemistry and molecular diagnostics (Connell, 2012, 5th edition)。
【0003】
一般にマイクロシーブベースのアッセイは、光学顕微鏡と一緒に使われる。しかし、例えば薬剤スクリーニングのアプリケーションでは、マイクロシーブ微小孔内で培養された細胞の歩留まりを調べるのに、あるいは、それらの幹細胞分化中の位置および振る舞いをモニターするのに、培養サンプルごとに光学顕微鏡を使うと、扱いが難しく高価となる。さらに、モニタリングを容易にするための染料の使用は、生体細胞にとっては有毒となる(Pan, Y., Hu, N., Wei, X., Gong, L., Zhang, B., Wan, H., Wang, P., 2019. 3D cell-based biosensor for cell viability and drug assessment by 3D electric cell/matrigel-substrate impedance sensing. Biosens. Bioelectron. 130, 344-351)。従って、この分析を行うと細胞が死ぬ可能性があり、アッセイを停止しなければならない。光学顕微鏡使用に対する代替技術の一例に、セル活動を検出するおよび/または特徴づけるために、マイクロシーブ配列の微小孔の側壁上に薄膜電極を統合し、これらを平面マイクロ電極アレイ(MEA)配列と同じ方法で接触線に接続するものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした微小電気機械システム(MEMS)ベースのデバイスは、マイクロシーブ配列を微小電極アレイ(MEAs)と組み合わせることにより、単一細胞のレベルで細胞集団の信号読み出しを可能とする。従来、電極統合と細胞培養配列とを組み合わせる方法として、シリコンマイクロシーブ基板が使われてきた。潜在的に、こうしたシリコンベースの統合構造から非常に情報量の多い大規模なデータを収集することができる。しかし、こうした従来の基板(すなわち、微小孔の側壁上に統合された薄膜電極を有するシリコンマイクロシーブ)を薬剤スクリーニングのアプリケーションに使うと、非常に高いコストが掛かるので、基礎研究や新薬開発の発展の妨げとなる。さらに、微小孔の側壁上に統合され対向配置された薄膜電極を有するシリコンマイクロシーブを作成するのは難しく、歩留まりも悪い。さらに、微小孔の側壁上に統合された薄膜電極を有するマイクロシーブは、再利用が難しい。薄膜側壁電極は細胞または細胞集団に接触するので、再利用の前に徹底的に清浄する必要があるからである。こうした再利用性の低さもまた、基礎研究や新薬開発の発展の妨げとなる。
【0005】
シリコンマイクロシーブ基板の使用に加えて、細胞培養実験に関してよりコスト対効果の高いポリマーマイクロシーブ基板が開発されてきた(E. Moonen, R. Luttge, and J.P. Frimat, Microelectron. Eng. 197, 1 (2018))。こうしたポリマー(例えば、プラスティック、Norland光学接着剤81(「NOA81(登録商標)」))を用いて作成されたマイクロシーブ基板は、シリコンに比べて剛性が低いので、正確でコスト対効果の高い測定ができる。しかしこのようなポリマーベースのマイクロシーブ配列の場合、従来の微小孔の側壁上に対向配置された薄膜電極を統合するといった方法は、シリコンマイクロシーブの場合ほど簡単ではない。従って、微小孔を備えたポリマーベースのマイクロシーブを用いて細胞活動を検出するおよび/または特徴づけるのに好適な、新たな電極統合方法が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[定義]
本開示の一部は、著作権保護対象の素材(例えば、限定されないが、図、デバイスの写真、その他の態様であって、これらを開示すると法的に著作権に抵触するもの)を含む。著作権者は、それが特許庁の特許文献に現れる限り、いかなる者による複製に対しても権利主張しない。しかしそれ以外の場合、著作権者は、すべての著作権を保有する。
【0007】
本明細書および請求項の全体を通して、本発明に係る方法、構成、使用その他の態様に関する様々な用語が使われる。特段の断りのない限り、これらの用語は、当該技術分野における通常の意味として与えられる。その他に特別に定義される用語は、以下に与える定義と整合するように理解される。本発明の試験実施のために、本明細書で定義されるのと同様または同等の方法、あるいは材料が使われることがある。しかし本明細書では、好ましい材料または方法に焦点を当てて説明する。
【0008】
「2D」。2D(2次元とも呼ばれる)という用語は、対象の幾何学的配置のことをいう。ここでは、対象が、長さおよび幅を含む2つパラメータで表される2つの次元を持つものとして定義される。通常、2次元の対象は、平らな面、すなわち、円、正方形、長方形などの平面物体である。
【0009】
「3D」。3D(3次元とも呼ばれる)という用語は、対象の幾何学的配置のことをいう。ここでは、対象が、幅、高さ、深さおよび長さを含む3つパラメータで表される3つの次元を持つものとして定義される。本明細書で使われる3Dは、対象の直径(すなわち、幅および長さ)および高さで表現されてもよいし、対象のこうした基本的な形状や高さの変化によって表現されてもよい。例えば3Dの孔は100μmの直径と100μmの高さを有してもよく、この場合この孔は円柱状の3D構造を与えられる。3次元物体の例は、立方体、円柱、円錐、直方体、ピラミッドなどである。
【0010】
「a」「an」および「the」。特段の断りのない限り、これらが付けられた対象は、複数の対象を含む。従って、例えば「a cell」といったときは、2つ以上の細胞を含む。
【0011】
「約」および「略」。これらの用語が測定可能な値(例えば、量や時間の長さなど)に使われた場合、±20%、±10%、±5%、±1%、ときには±0.1%といった特定の値からの偏差を表す。こうした偏差は、本開示の方法を実行するのに適した値である。
【0012】
「および/または」。「および/または」という用語は、1つ以上の概念があったとき、これらの概念が単独で、または組み合わされて対象とされるときに使われる。より具体的には、最も狭くはこれらのうちの1つの概念のみが対象とされ、最も広くはこれらの概念のすべてが対象とされる。
【0013】
「アレイ」。「アレイ」という用語は、似た対象のシステマティックな配列のことをいい、通常は行または列を形成する。本明細書では、この用語は「配列」「基板」と交換可能である。通常バイオテクノロジーの分野では、「アレイ」という用語は、複数のラブオンチップ(すなわち、複数の実験的測定をほぼ同時に実行するのに適した物体)の意味で使われる。本明細書で使われるアレイは、マイクロアレイ、すなわち小型化され多重されたラブオンチップを含む。
【0014】
「アセンブリ」。一般にこの用語は、完成品に組み立てられる複数の要素の組み合わせのことをいう。本明細書で使われる「アセンブリ」という用語は、「配列」(例えば、基板に差し込まれるように構成されるアレイ)の組み合わせのことをいう。
【0015】
「含む」「備える」。この用語は、包括的でオープンエンドであり、排他的でないように解釈される。特にこの用語およびその変形は、特定の特徴、ステップまたは部品が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップまたは部品を排除することを意図しない。
【0016】
「電極」。本明細書全体を通して、この用語は、「電気伝導体」と交換可能に使われ、電流が1つ以上の方向に流れるのに適した材料を含む物体を意味する。特に本明細書において、この用語およびその変形は、微小電気機械システム(MEMS)、例えばマイクロ電極アレイ(MEAs)に使うのに適した電極および/または電気伝導体を意味する。
【0017】
「微小孔」。本明細書で使われる「微小孔」という用語は、1つ以上の細胞を媒体内に保持するのに適した寸法(例えば、直径)を持つ開孔または開口を意味する。
【0018】
「マイクロシーブ」。本明細書で使われる「マイクロシーブ」という用語は、1つ以上の微小孔を備えた配列、例えばマイクロシーブアレイを意味する。マイクロシーブは、均等に分布したほぼ同じ大きさを持つ複数の微小孔を備えてもよい。
【0019】
「基板」。本明細書で使われる「基板」という用語は、物質または材料の平坦な層であって、他の材料の下に位置するもの(例えば、デバイスの一部として、配列の下に位置するもの)を意味する。本明細書で使われる基板は、アセンブリまたはデバイスの一部である。本明細書で使われる基板は、似た物質(例えば、電極)のシステマティックな配列を、通常は行または列の形で備える。従って本明細書で使われる「基板」は、「アレイ」と交換可能である。
【0020】
「システム」。本明細書で使われる「システム」は、アセンブリまたは1つ以上のアセンブリを備えたデバイス(例えば、電極統合マイクロシーブアセンブリを備えたデバイス)を意味する。
【0021】
先行技術で開示された電極統合マイクロシーブアセンブリが与えられたとして、本発明者らは、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける新たなデバイスを開発した。本発明は、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるデバイスを与える。このデバイスは、少なくとも1つの電極統合されたマイクロシーブアセンブリを備える。マイクロシーブアセンブリは、a)細胞を保持するための1つ以上の微小孔を備えた、マイクロシーブアレイのようなマイクロシーブ配列と、b)第1電極と第2電極とが対向して配置された1つ以上の電極対を備えた基板と、を備える。マイクロシーブ配列は、電極対の各々が微小孔内に電場を形成するように基板に接続される。第1電極は、第2電極に平行に配置される
【0022】
本明細書で「平行に」という用語は、電極対の第1電極と第2電極とが対向し、両電極間の距離が、両電極のほぼ長さ全体にわたって等しいことを意味する。基板の成形および/または再生の技術的影響を考慮すると、表面領域全体で見れば、距離の若干の違いは許容されることが理解されるだろう。従って「平行に」という用語は、表面領域全体では、距離の若干の違いは許容し、「第1電極と第2電極とがほぼ平行に」または「第1電極と第2電極とが概ね平行に」という意味を含んでもよい。好ましくは、第1電極と第2電極とが対向して配置された1つ以上の電極対は、実質的に基板と垂直に延びる。
【0023】
特に本発明は、マイクロシーブ配列が基板に取り外し可能に接続されたデバイスを与える。
【0024】
本発明のデバイスを使って、受動的に調整されたクリックオンハイブリッドアセンブリステップを実行することにより、マイクロシーブ配列を、使い捨て可能なアドオン型のまたは再利用な可能の電極内蔵基板として利用できることが分かった。言い換えれば、マイクロシーブ配列は、電極内蔵基板に接続可能に構成される。
【0025】
このデバイスにより、電気的効果を持つマイクロシーブ(すなわち、微小孔の側壁上に統合された薄膜電極を有するシリコンマイクロシーブ)を製造するのに、高価な統合シリコン微細加工や薄膜技術を使うのが非常に無駄であることが分かった。
【0026】
さらに驚くべきことに、マイクロシーブのポリマー材料が比較的厚くかつ比較的先細の誘電体層を持つにも関わらず、本発明に係るデバイスにより、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけることができることが分かった。ある好ましい実施の形態では、このデバイスは、インピーダンス測定を用いて、電極間に存在する細胞を検出することができた。このとき、マイクロシーブのポリマー材料が比較的厚くかつ比較的先細の誘電体層を持つにも関わらず、細胞の存在に起因するインピーダンス量の変化を、検出効率に妥協することなく測定するとができる。
【0027】
本発明のマイクロシーブ配列は、第1スロットと第2スロットとからなる1つ以上のスロットの対を備えてもよい。対向して配置された第1電極および第2電極の各々は、スロットの対の内部に受け取られることができる。ある実施の形態では、第1スロットは、第2スロットから、最大75μm離して、好ましくは最大50μm離して、より好ましくは約20μm離して配置される。
【0028】
さらに、マイクロシーブ配列のスロットは、第1電極および第2電極の各々を受け取るための、好適な長さ、好適な幅および好適な高さを持ってもよい。好ましくは、本発明のスロットは、長方形である。このような長方形のスロットは、最大70μm、好ましくは最大50μm、より好ましくは約20μmの深さを持ってもよく、および/または、最大70μm、好ましくは最大50μm、より好ましくは約20μmの幅を持ってもよい(本明細書では、第1スロットの「幅」は、第2スロットの幅に平行である)。しかしこの幅は、上記の好ましい幅より広くてもよく、例えばスロットの幅は各微小孔の幅に適合されてもよい。スロットの高さは、マイクロシーブ配列の厚さとほぼ同じであってもよい。例えばスロットは、最大200μm、約最大100μmの高さを持ってもよい。
【0029】
本発明の基板は、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるデバイスに使われる基板である。この基板は、第1電極と第2電極とが対向して配置された1つ以上の電極対を備える。本発明では、第1電極は、第2電極に平行に配置される。第1電極は、第2電極から所定の距離離して配置されてもよい。第1電極は、第2電極から最大75μm離して、好ましくは最大50μm離して、より好ましくは約20μm離して配置されてもよい。電極の高さは、マイクロシーブ配列の厚さとほぼ同じであってもよい。例えば、前記第1電極および前記第2電極は、最大200μm、好ましくは約100μmの高さを持ってもよい。第1電極および第2電極は、最大70μm、好ましくは最大50μm、より好ましくは約20μmの深さを持ってもよく、および/または、最大70μm、好ましくは最大50μm、より好ましくは約20μmの幅を持ってもよい(本明細書では、第1電極の「幅」は、第2電極の幅に平行である)。第1電極および第2電極は、導電性材料から生成されてもよい。好ましくは、この材料は良好な電気伝導体を形成するのに適したものである。好ましくは、この材料は金属である。好ましくは、この金属は、銅、亜鉛、ニッケル、鉛、水銀、銀、アルミニウム、金、鉄、またはこれらの金属を含んだ合金を含む。
【0030】
好ましくは、本発明の基板は、孔を備える。この孔の直径は、最大10μm、好ましくは約3μmである。この孔は、第1電極と第2電極との間に設けられる。
【0031】
さらに本発明は、マイクロシーブ配列に関する。このマイクロシーブ配列は、細胞を保持するための1つ以上の微小孔を備える。この微小孔は、微小孔は、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるために使われる。微小孔は、プリズム形状(または、その他の好適な形状)であることが望ましい。本発明のある実施の形態では、微小孔は、頂部開口と、底部開口と、を備えるように構成されてもよい。このような構成の場合、頂部開口は、底部開口より大きくてもよい。特に微小孔の各々は、1つ以上の細胞を保持するのに適した幅、深さおよび高さを持ってもよい。好ましい実施の形態では、頂部開口および/または底部開口は、円形であり、その直径は少なくとも0μm以上100μm以下であり、好ましくは2μm以上20μm以下である。さらなる実施の形態では、本発明の微小孔の各々の高さは、少なくとも0μm以上200μm以下、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下(例えば、神経細胞体のサイズ)である。
【0032】
1つ以上の微小孔は、ポリマーを含む材料から作られてもよい。この材料は誘電体であり、1以上5以下、好ましくは約2.75の比誘電率を持ち、および/または、この材料はポリマーを含み、好ましくはシリコンベースのポリマーであり、より好ましくはポリジメチルシロキサンである。
【0033】
選択的に、1つ以上の微小孔の材料は、少なくとも1×10-25S/m、好ましくは1×10-21S/m、より好ましくは1×10-16S/mの電気伝導性を持つ。
【0034】
さらに本発明は、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける電極統合マイクロシーブアセンブリに関する。この電極統合マイクロシーブアセンブリは、a)本発明に係るマイクロシーブ配列と、b)本発明に係る基板と、を備える。
【0035】
本発明のさらなる態様では、本発明は、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける部品のキットに関する。この部品のキットは、a)本発明に係るマイクロシーブ配列と、b)本発明に係る基板と、を備える。
【0036】
本発明のある態様では、細胞または細胞集団、好ましくは哺乳類の細胞または細胞集団が与えられる。さらなる態様では、1つ以上の細胞は、均一なまたは不均一な細胞集団を含む。好ましい実施の形態では、1つ以上の細胞は、神経細胞またはその前駆細胞を含む。本発明のさらなる態様では、異なる相の幹細胞系統が与えられてもよい。好ましくは、1つ以上の細胞は、関心対象の多孔性アッセイに適した細胞である。
【0037】
さらに本発明は、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける方法に関する。この方法は、
a.本発明に係るデバイスを与えるステップと、
b.1つ以上の細胞、好ましくは媒体内の1つ以上の細胞を与えるステップと、
c.ステップbで与えられた細胞を、ステップa.で与えられたデバイスに供給するステップと、
d.前記1つ以上の細胞による電界の変化を決定するステップと、
を含む。ステップb.の媒体は、細胞を保持および/または培養するのに適した媒体または溶液を含んでもよい。この媒体は、例えば、PBS、細胞培養媒体(例えば、DMEM、IMDM等)その他の好適な媒体を含んでもよい。
【0038】
本発明の最後の態様は、使用に関する。すなわち、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける方法における、本発明に係るデバイスまたは本発明に係るマイクロシーブ配列の使用および本発明に係る基板の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明に係る電極統合マイクロシーブアセンブリを示す図である。
【
図2A】使い捨て可能なマイクロシーブ配列と再利用可能な3D電極基板とを備えた、本発明に係る電極統合マイクロシーブアセンブリの模式図である。
【
図2B】本発明に係る電極統合マイクロシーブアセンブリのマイクロシーブ微小孔を示す図である。
【
図3A】2D薄膜側壁電極に関する電界強度を示す図である。細胞の運動方向およびマイクロシーブ内に統合された電極の模式図(
図3A(ii))、細胞が薄膜側壁内を動くときのインピーダンス強度の変化(
図3A(iii))である。
【
図3B】3D電極に関する電界強度を示す図である。細胞の運動方向およびマイクロシーブ内に統合された電極の模式図(
図3B(v))、細胞が3D電極統合マイクロシーブアセンブリ内を動くときのインピーダンス強度の変化(
図3B(vi))である。
【
図4A】薄膜側壁の3D電界およびインピーダンス強度を示す図である(
図4A(iおよびii))。
【
図4B】3D電極の3D電界およびインピーダンス強度を示す図である(
図4B(iiiおよびiv))。
【
図5】側壁(A)の模式図および3D電極統合マイクロシーブアセンブリ(B)の模式図である。
【
図6A】マイクロシーブに統合された側壁(A)構造の電界を示す図である。
【
図6B】マイクロシーブに統合された3D電極(B)構造の電界を示す図である。
【
図7】異なる伝導性を持つ3D電極のインピーダンス特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
神経細胞では、ニューロンの空間分布は、当該ニューロン内で確立されたネットワーク接続のデザインに影響を与えるだろう。培養中のニューロン配列は、主にマイクロシーブアレイを用いて制御することができる。しかし、神経分離プロセスによって培養されたニューロン内で、神経突起が生成され、接続が確立されるまでには、3-7DIV(インビトロ日数)を要する。このような神経細胞培養の規則正しいレイアウトが薬剤スクリーニングで使われる場合、最も重要なのは、ニューロンがどの孔に位置するかを知ることである。また、ニューロンは、最初は孔の内部で培養されるが、その後数日かけて孔の外に移動する。このような場合、細胞が孔の内部にあることを検知するのに、3D電極統合マイクロシーブを適用することができる(本明細書の例2で説明する)。
【0041】
本発明では、マイクロシーブ内の細胞の配置分布を電気的にモニターするために、3D電極を備えた再利用可能なプラットフォームが与えられる。
【0042】
このシステム(3D接続可能システムとも呼ぶ)は、マイクロシーブに統合された3D電極を有する。この3D電極が、3D実験プラットフォーム内で、薄膜側壁電極(これは、細胞に接触する)と比較された。3D接続可能システムでは、比較的薄く先細の絶縁層が細胞と電極との間に存在するにも関わらず、観測ベースのインピーダンス値~59キロオームにおいて、3.4%のインピーダンス変化率が得られた。
【0043】
本発明のプラットフォームでは、再利用可能な3D電極アレイに、接続可能な新しいポリマーベースのデザインが与えられる。これは、コスト対効果の高いアプローチとなる。このことは、細胞培養微小環境における、高スループットかつロバストなインピーダンス測定に適した再利用可能な3D電極装置を、マイクロシーブによって実現できることを意味する。再利用可能な3D電極アレイは、多数のマイクロシーブ培養(一般にこれは、細胞-電極の接触インタフェース除去による厳格な清浄ステップが不要な生物学研究で求められる)に再利用可能なインピーダンスセンサアレイとして使うためにデザインされる。
【0044】
本発明のある実施の形態では、デバイスは以下の2つの接続可能な部品を備える。
(i)使い捨て可能なポリマーベースのマイクロシーブ
(ii)再生可能な3D電極
【0045】
本発明のデバイスの構造は、プリズム形状(選択的に、円錐状、それらの変形および/または組み合わせ)の微小孔(頂部および底部にそれぞれ20μmおよび3μmの開口を持つ)を備えたポリマーマイクロシーブを有することが望ましい。さらに100μmの厚さのポリマーマイクロシーブは、背面側に20μm×20μmの正方形開口を備える。これは、組立時に3D電極を接続するのに使われる。しかしながら、別の形状および寸法もまた、本発明のデバイスに使うのに適する。
【0046】
この新しい(再利用可能な)プラットフォームの構造設計は、細胞検出が生物学的細胞の誘電体粒子としての振る舞いを基に行われる、という原理に基づく。すなわち細胞は、自分が浸っている溶液のインピーダンスを変える。低周波数では、細胞の直径だけが、インピーダンス信号の変化量を決める。一方高周波数では、細胞の電気的特性もインピーダンス応答に影響する。本発明のデバイスでは、本発明のデバイスに係る構成を用いて、マイクロシーブアレイ上で細胞の動きを追跡して細胞位置を検出するために、このインピーダンスフローサイトメトリー(IFC)と呼ばれる技術が使われる。
【0047】
細胞がマイクロシーブ微小孔に入る(から出る)と、インピーダンスに変化が生じる。インピーダンス変化の傾向は、運動の方向によって異なるだろう。従って、もし細胞がマイクロシーブ微小孔の内側に向かった後外側に向かった場合、インピーダンスの変化は、リアルタイム測定を用いて決定可能な特徴を残すだろう。
【0048】
細胞がマイクロシーブ微小孔に入る(から出る)と、3D読み出し電極を備えた再利用可能なプラットフォーム内部のハイブリッド(接続可能)アセンブリの微小孔内で、電気力学が変化するだろう。従ってこの細胞の運動を、細胞ラベリングすることなく、インピーダンス分光を用いて検知することができる。インピーダンス分光装置を用いてインピーダンスベースの測定を行うことにより、細胞の動きに比べて無視できる程度の遅延で、細胞を追跡することができる。従ってこの新しいプラットフォームを用いて、以下の実験的ステップを実行することにより、細胞の動きをリアルタイムに検知することができる。
1)測定の設定をプラットフォームに接続するステップ
2)受動的なポンピングにより、細胞をシステム内に導入するステップ
ここで、細胞のプラットフォームへの導入中または導入後、電子データが、アッセイの動作時間を通して保存され、解釈される。
【0049】
上記の実験ステップに、さらに以下の追加的ステップが続いてもよい。
3)適切な時間、細胞を培養するステップ
4)セルが導入されたマイクロシーブを測定プラットフォームに組み付けるステップ
5)適切な時間、読み出すステップ
6)マイクロシーブを培養環境に戻すステップ
7)ステップ3)~6)を繰り返す
代替的に、細胞の導入は、マイクロシーブ配列を基板に組み付けた後に実行されてもよい。これは、細胞導入中に細胞を位置づけるステップに続くことができる。
【0050】
細胞培養プレートとしての安価で使い捨て可能なポリマーマイクロシーブアセンブリによって、電気プラットフォーム内の3D電極部分と細胞との接触を避けつつ、マイクロシーブの微小孔内で幹細胞分化中の細胞の位置および潜在的にその成長方向を検知することができる。これは、3D微小孔に位置合わせされた3D電極の構成によって実現される。定量的分析のため、薄膜側壁(既存技術)と3D電極(本発明)とで、電界およびインピーダンスが比較された。その結果、薄膜と統合された微小孔や光学顕微鏡と比べ、本発明の新しい構成は高速かつ高コスト対効果であることが分かった。
【0051】
本明細書では、このように、コスト対効果が高く、高速で、使い捨て可能な細胞培養プラットフォームを実現するための、再利用可能な3D電極アレイ構造のハイブリッドアセンブリであって、ポリマーマイクロシーブ基板(補完的だが使い捨て可能な部分)とともに動作するものを説明する。
【0052】
[ポリマーマイクロシーブ配列の作成]
細胞培養および神経細胞ネットワーク培養に適した微細構造ポリマー基板(頂部および背面はポリマー基板の特性を持つ)を製造する目的で、細胞培養基板を作成するのに微細製造プロセスが適用される。例えばマイクロ成形の組み合わせを用いて、逆ピラミッド形状のキャビティ(閉じた微小管)を準備することができる。使い捨て可能なマイクロシーブベースの細胞培養基板を作成するために、ポリマー基板の頂面と、対向するプリズム形状のキャビティ(これは、例えば適切なモールド挿入を用いて、ポリマープリカーサーの背面の頂部キャビティに隣接するまたは位置合わせされる)と、が先ず準備される。このキャビティは、幹細胞分化中に神経伝達を刺激およびガイドするガイディング特性(例えば、コーナー、折り曲げ、ナノ構造など)に似た構造を含んでもよい。その後、キャビティ内の最深部に配置される貫通孔開口を生成するために、頂部キャビティが微細加工(例えば、レーザーアブレーションまたはドライエッチング)によって処理される。代替的に、希望する微小孔形状に応じた微細加工技術を用いて、背面および平坦な帰還頂面で唯一キャビティを複製するマスターモールドが、微小孔を備えてもよい。
【0053】
[3D電極の作成]
3D電極は、いくつかのリソグラフィ技術および金属蒸着を用いて準備することができる。電極が例えば電気めっきされた銅またはニッケルから作られる場合、これらを、ポリマーマイクロシーブの背面で開口を形成するときのマスターとして使うことができる。その後、これらの開口を位置調整することにより、開口をマイクロシーブの正確に一致させることができる。こうして接続可能アセンブリが形成される。言い換えれば、開口により、2つの部品のはめ込みおよび取り外しが容易となる。
【0054】
リソグラフィによって整合された電極を背面開口のマスターモールドとして使うことにより、電極壁とポリマー(これは、マイクロシーブ内で3D微小孔を取り囲む)との間の潜在的なエアギャップを最小化することができる。
【0055】
Demircanらは、この方法により30μmの高さの銅めっきを実現した(Electrophoresis 36, 1149, 2015)。従来作成可能な電極の間隔は15μmだったが、これは、本明細書の接続可能プラットフォーム(26μm)に必要な間隔に比べてかなり小さい。本明細書は、26μmの電極間隔が達成可能であることを示す。より厚いフォトレジストを使うことにより、100μの高さと、より大きなアスペクト比を得ることができる。電極の寸法は、少なくともマイクロシーブ3D微小孔の頂部における辺の長さに等しい(例えば、20μm×20μm)。従って5:1のアスペクト比が必要である。これは、例えばSU8を使うことで実現できる。なぜなら、そのアスペクト比は5:1より大きいからである(MicroChem, Prod. Datasheet 20, 4 (2000))。さらに、3D電極の底部層における直径3μmの孔、または、少なくともマイクロシーブの完全動作(例えば、組み立てられた後、細胞が導入されるときの)に必要な大きさのエアギャップが必要だろう。
【0056】
他の実施の形態、さらなる教示および/または本発明に関する実施例は、本明細書の例1および例2で説明される。
【0057】
[例]
[例1]
[方法論]
有限要素法(FEM)により、複雑な構造の複雑な方程式を数値的に解くことができる。誘電体層が存在するため、構造内での電極間の電界は一様ではない。従って、我々のシステム内で電界を評価するのに最も正確な方法は、数値解である。微小孔内の電界の強さを調べるために、電流保存、電気的絶縁、電流タイプの終端およびグランド境界条件の下で、周波数領域におけるCOMSOL Multiphysics5.5(登録商標)のAC/DCモジュールの電流インタフェースが使われた。COMSOLのこのインタフェースは、誘起効果を無視した上でのオームの法則に基づいて、電流保存方程式を解く。領域方程式は、以下の通りである。
-∇((σ+Jωεrε0)∇V))=0 (1)
E=-∇V (2)
D=εrε0E (3)
ここで、ε0、εr、σは、それぞれ、自由空間の誘電率、比誘電率および電気伝導度である。Jは√-1であり、ωは与えられた信号の各周波数である。V、E、Dは、それぞれ、電気ポテンシャル、電界および電気変位である。∇は勾配演算子である。
【0058】
メモリおよび計算時間を削減する目的で、電極は、マイクロシーブの微小孔の境界に位置する完全導体として定義し、厚さが無限であるとした。マイクロシーブの微小孔の内側境界および外側境界は、それぞれ、薄膜側壁および3D電極を選んだ。解領域の電気的特性は、伝導率1.4S/mおよび誘電定数80を持つリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と同様とした。マイクロシーブ材料は、材料ライブラリから、誘電定数2.75および伝導率10-16S/mを持つポリジメチルシロキサンを選んだ。1Aの電流を与え、周波数領域における10kHzでのシステム応答を分析することにより、側壁および3D電極が統合されたマイクロシーブの2D解および3D解が解かれる。システムは、このように比較的低周波数でテストされた。なぜなら、細胞が存在することが分かれば十分だからである。細胞の座標(
図3aの(ii)で与えられる)は、x方向およびz方向では一定に保たれた。一方、y方向では、2D実験でも3D実験でも、2μmのサイズのステップで30μmから120μmまで走査された。収束プロットを観察することにより、2D実験では、最大要素サイズ1.26μm、最小要素サイズ2.52nm、要素成長率1.1の自由三角形メッシュが選ばれた。3D実験では、最大要素サイズ4.41μm、最小要素サイズ189nm、要素成長率1.35の自由四面体メッシュが選ばれた。ソフトウェアによって、システムの電気ポテンシャルの空間分布が解かれた。前処理中に、インタフェースの結果を用いて電界およびインピーダンスの定量化がなされた。
【0059】
[結果]
薄膜側壁および3D電極統合マイクロシーブの2Dおよび3D実験を行った。表1に、本実験のメッシュ特性、自由度の数および解決時間を示す。インピーダンスの結果から、インピーダンスの変化に対しては、2D実験と3D実験との間に差異がないことが分かる(各図)。しかし、インピーダンスの値は、実際の構造のインピーダンス強度をモデル化しなかった(
図3Aの(iii)および
図3Bの(vi))。従って、薄膜側壁と3D電極構造との比較は3D実験によって行われ、解決時間は非常に長くなった。
【0060】
表1:薄膜側壁および3D電極が埋め込まれたマイクロシーブの2Dおよび3D実験のメッシュ特性、自由度の数、解決時間
【表1】
【0061】
図4は、直径5μmの細胞が、マイクロシーブ微小孔の内側から外側に動くときの、細胞が存在しない中心線を通る電界分布(A(i)およびB(iii))、薄膜側壁に関するインピーダンス変化(A(ii))、3D電極に関するインピーダンス変化(B(v)を示す。3Dでは、電界はより強く(~3.4倍)、増加する傾向を示す。一方、側壁では、電界は減少傾向を示す。なぜなら、側壁電極では電極間の距離が増すが、3D電極では、誘電体の厚さが減り、電極間の距離が一定だからである。
【0062】
細胞検出効率の指標となる細胞の存在に起因するインピーダンス変化の量を決定するため、以下の公式が用いられた。
Δ|z|=(|z|with cell-|z|without cell)/|z|without cell×100
【0063】
|z|はこの式のインピーダンスの強度を示す。薄膜側壁電極(
図4A(iii))のインピーダンス強度変化は3.5%と計算された(基準インピーダンスは2.7kΩ)。一方、3D電極では、インピーダンス強度変化は3.4%と計算され、基準インピーダンス(58.9kΩ)は測定可能な範囲にあった(
図4B(iv))。これらの結果から、検出効率に妥協することなく、この接続可能かつ高速かつリアルタイムかつラベルフリーなプラットフォーム内で、3D電極とマイクロシーブとを統合できることが示された。
【0064】
[実験2]
この実験は、生体外神経生理学分析のための3D電極統合マイクロシーブの電気的モデルを示す。電界が十分強いことが示されれば、再利用可能な細胞培養モニターのデザイン選定が可能となる。結果として、3D電極の電界強度と薄膜統合側壁電極の電界強度との違いは、わずか5倍であることが示された。
【0065】
統合されたシリコン微細加工および薄膜技術を用いて、電気的な機能を持つ逆ピラミッド型の微小孔(
図5A)作成するのは、現在のデバイス作成のスケールでは大変難しく、非常に高価となる。これは基礎研究の妨げとなる。また薄膜側壁電極は、ニューロンと接触するので、マイクロシーブは、再利用の前に厳格に清浄される必要がある。このような神経細胞ネットワークのマイクロシーブ実験を容易にするために、ポリマーマイクロシーブの光学技術を用いて分析が始まったが、これも高価であることが分かった。しかしシーブの微小孔全体にわたる細胞の分布を知ることにより、こうした生物学的実験の統計的精度が向上する。従って、3D電極(
図5B)を用いて細胞配置分布をモニターするためには、コスト対効果が高く、高速かつ再利用可能な電気的プラットフォームが有用だろう。電界の強さを示すために、電流保存、電気的絶縁、電気ポテンシャルおよびグランド境界条件の下で、周波数領域におけるCOMSOL Multiphysics5.5のAC/DCモジュールの電流インタフェースが使われた。300Hzで10V
pの電圧を印加することにより、側壁(
図6A)およびマイクロシーブに統合された3D電極構成(
図6B)に関し、(x、yおよびz成分を考慮して)電界の大きさが得られた。
【0066】
高さ95μmまでは、3D電極は、側壁型電極に比べて非常に低い電界を持つことが分かった。しかし高さ95μm-100μmの範囲では、側壁型電極の電界は3D電極の電界の5分の1だった。
【0067】
この結果は、ニューロンが微小孔内に向けて動くとき、3D電極構成でこれを検知可能であることを示す。
【0068】
[例3]
商用のインピーダンス分光計(HF2LI-Zurich Instrument)を用いて、3D電極のインピーダンススペクトルを測定した。
【0069】
異なる伝導性溶液として、100%のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(100)、50%のPBS(50)および脱イオン化された水が使われた。
【0070】
実証実験として、3D電極のインピーダンス特性が比較された(
図7)。
【0071】
これらの結果は、このプラットフォーム(すなわち、3D電極統合マイクロシーブ)を用いて、インピーダンス測定が可能であることを示す。さらに、1MHzの周波数領域(Δf)で、異なる伝導性溶液の違いを検知することが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるデバイスであって、少なくとも1つの電極統合されたマイクロシーブアセンブリを備え、
前記マイクロシーブアセンブリは、
a.細胞を保持するための1つ以上の微小孔を備えた、マイクロシーブアレイのようなマイクロシーブ配列と、
b.第1電極と第2電極とが対向して配置された1つ以上の電極対を備えた基板と、
を備え、
前記マイクロシーブ配列は、前記電極対の各々が前記微小孔内に電場を形成するように前記基板に接続され、
前記第1電極は、前記第2電極に平行に配置されることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記マイクロシーブ配列は、前記基板に取り外し可能に接続されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記マイクロシーブ配列は、第1スロットと第2スロットとからなる1つ以上のスロットの対を備え、
前記第1電極および前記第2電極の各々は、前記スロットの対の内部に受け取られるように配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1スロットは、前記第2スロットから、
最大75μm離して配置されることを特徴とする
請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1スロットおよび前記第2スロットは、前記第1電極および前記第2電極の各々を受け取れるよう深さ、幅および高さを持ち、
および/または、前記第1スロットおよび前記第2スロットは、
最大70μmの深さを持ち、
および/または、前記第1スロットおよび前記第2スロットは、
最大70μmの幅を持ち、
および/または、前記第1スロットおよび前記第2スロットは、
最大200μmの高さを持つことを特徴とする
請求項3または4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるデバイスに使われる基板であって、
第1電極と第2電極とが対向して配置された1つ以上の電極対を備え、
前記第1電極は、前記第2電極に平行に配置されることを特徴とする基板。
【請求項7】
前記第1電極は、前記第2電極から、
最大75μm離して配置されることを特徴とする請求項6に記載の基板。
【請求項8】
前記第1電極および前記第2電極は、
最大200μmの高さを持ち、
および/または、
最大70μmの深さを持ち、
および/または、
最大70μmの幅を持つことを特徴とする請求項6または7に記載の基板。
【請求項9】
前記第1電極および前記第2電極は、
導電性材料から生成されることを特徴とする請求項6から7のいずれかに記載の基板。
【請求項10】
孔を備え、
前記孔の直径は、
最大10μmであり、
前記孔は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられることを特徴とする請求項6から7のいずれかに記載の基板。
【請求項11】
マイクロシーブアレイのようなマイクロシーブ配列であって、
細胞を保持するための1つ以上の微小孔を備え、
前記微小孔は、1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づけるために使われることを特徴とするマイクロシーブ配列。
【請求項12】
前記1つ以上の微小孔は、プリズム形状であることを特徴とする請求項11に記載のマイクロシーブ配列。
【請求項13】
前記1つ以上の微小孔は、形状を持ち、
前記1つ以上の微小孔の頂部開口は、1つ以上の微小孔の底部開口より大きいことを特徴とする請求項11または12に記載のマイクロシーブ配列。
【請求項14】
前記微小孔の各々は、1つ以上の細胞を保持できるような幅、深さおよび高さを持ち、
および/または、前記微小孔の各々の直径は、少なくとも
0μm以上100μm以下であり、前記微小孔の各々の高さは、少なくとも
0μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載のマイクロシーブ配列。
【請求項15】
前記1つ以上の微小孔は、ポリマーを含む材料から作られることを特徴とする請求項11から14のいずれかに記載のマイクロシーブ配列。
【請求項16】
前記1つ以上の微小孔の材料は、
1以上5以下の比誘電率を持ち、
および/または、前記1つ以上の微小孔の材料は、
ポリマーを含むことを特徴とする請求項15に記載のマイクロシーブ配列。
【請求項17】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける電極統合マイクロシーブアセンブリであって、
a.請求項11から16のいずれかに記載のマイクロシーブ配列と、
b.請求項6から10のいずれかに記載の基板と、
を備えることを特徴とする電極統合マイクロシーブアセンブリ。
【請求項18】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける部品のキットであって、
a.請求項11から16のいずれかに記載のマイクロシーブ配列と、
b.請求項6から10のいずれかに記載の基板と、
を備えることを特徴とする部品のキット。
【請求項19】
1つ以上の細胞を、当該細胞の電気的特性により検出するおよび/または特徴づける方法であって、
a.請求項1から10のいずれかに記載のデバイスを与えるステップと、
b.1つ以上の細胞、好ましくは媒体内の1つ以上の細胞を与えるステップと、
c.ステップbで与えられた細胞を、ステップa.で与えられたデバイスに供給するステップと、
d.前記1つ以上の細胞による電界の変化を決定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【国際調査報告】