(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】リヨセル繊維の使用
(51)【国際特許分類】
H01M 50/429 20210101AFI20230816BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20230816BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230816BHJP
【FI】
H01M50/429
H01M50/44
H01M50/414
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505912
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 EP2021071091
(87)【国際公開番号】W WO2022023394
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】バーグフェルド,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スレーター,ピーター アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウッドロウ,オリバー
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC02
5H021EE02
5H021EE11
5H021HH00
(57)【要約】
本発明は、不織繊維フリース(10、100)の製造のためのリヨセル繊維(1)の使用に関する。十分な機械的特性を備えた薄い不織繊維フリースを製造するために、リヨセル繊維の使用が提案され、この繊維(1)は、少なくとも1.8の断面アスペクト比を有する。本発明は、不織繊維フリース(10、100)にさらに関する。電池セパレーターとしての使用に好適な薄い不織繊維フリース(10、100)を製造するために、繊維フリースが、フィブリル化リヨセル繊維(13)の少なくとも2つの層(11、12)を含み、フィブリル化リヨセル繊維(13)が、中実コア(14、110)および前記コア(14)から突出しているフィブリル(15)を有し、繊維およびフィブリル(15)が交絡して繊維フリース(10)を形成し、その中に中実コア(14)を埋め込み、それによってフィブリル化リヨセル繊維(13)の中実コア(14、110)が、少なくとも1.5の平均断面アスペクト比kを有することが提案される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織繊維フリース(10、100)の製造のためのリヨセル繊維の使用であって、繊維(1)が、少なくとも1.8、好ましくは2から10までの断面アスペクト比を有することを特徴とする、使用。
【請求項2】
繊維(1)が、扁平な断面の繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
繊維(1)が、非円形断面を有する断面異形繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
繊維(1)が、0.5dtexから10dtexまで、好ましくは少なくとも1dtexの繊度を示すことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
不織繊維フリース(10、100)が、紙であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
フィブリル化リヨセル繊維(13)の少なくとも2つの層(11、12)を含む不織繊維フリースであって、フィブリル化リヨセル繊維(13)が、中実コア(14、110)および前記コア(14)から突出しているフィブリル(15)を有し、繊維およびフィブリル(15)が交絡して繊維フリース(10)を形成し、その中に中実コア(14)を埋め込み、それによってフィブリル化リヨセル繊維(13)の中実コア(14、110)が、少なくとも1.5の平均断面アスペクト比kを有する、不織繊維フリース。
【請求項7】
フィブリル化リヨセル繊維(13)の中実コア(14、110)が、少なくとも1.8、より好ましくは少なくとも2.0の平均断面アスペクト比kを有することを特徴とする、請求項6に記載の不織繊維フリース。
【請求項8】
不織繊維フリース(10、100)が、紙であることを特徴とする、請求項6または7に記載の不織繊維フリース。
【請求項9】
不織繊維フリース(10、100)が、20μm以下、好ましくは10μm以下の厚さdを示すことを特徴とする、請求項6から8のいずれかに記載の不織繊維フリース。
【請求項10】
不織繊維フリース(10、100)が、乾燥質量中に少なくとも20重量%のリヨセル繊維(13)を含むことを特徴とする、請求項6から9のいずれかに記載の不織繊維フリース。
【請求項11】
不織繊維フリース(10、100)が、本質的にリヨセル繊維(13)からなることを特徴とする、請求項6から10のいずれかに記載の不織繊維フリース。
【請求項12】
不織繊維フリース(10、100)が、リヨセル繊維(13)および他の繊維を含む繊維ブレンドからなり、他の繊維が、天然セルロース繊維、合成ポリマー繊維、および無機繊維からなる群から選択されることを特徴とする、請求項6から10のいずれかに記載の不織繊維フリース。
【請求項13】
中実コア(14、110)が、10μm以下、より具体的には7μm以下、好ましくは4.5μm以下の平均高さを有することを特徴とする、請求項6から12のいずれかに記載の不織繊維フリース。
【請求項14】
請求項1から5のいずれかに記載のリヨセル繊維を使用した繊維フリースを製造する過程により得られる、不織繊維フリース。
【請求項15】
不織繊維フリース(10、100)が、請求項6から13のいずれかによって特徴付けられる、請求項14に記載の不織繊維フリース。
【請求項16】
請求項6から15のいずれかに記載の不織繊維フリース(10)を含む、電池セパレーター紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織繊維フリースにおけるリヨセル繊維の使用に関する。特に、本発明は、ろ紙、または特に電池セパレーターに使用する紙などの目的のための紙の製造における、ある特定のリヨセル繊維の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ電池(一次および二次)ならびにリチウムイオン電池などの電池は、ポリマー繊維を含み得る多孔質層を含むセパレーターを含む。ポリマーフィルムセパレーターが最も一般的に使用されているが、非ポリマー無機繊維から作製されたセパレーターも採用されている。このようなセパレーターは、電池のアノードとカソードとの間の電気的接続、または短絡を防止するのに役立つ。
【0003】
セルロース繊維は、電解質を吸収して保持する能力があるため、電池セパレーター紙に広く採用されている。しかし、これらのセルロース繊維の一部(レーヨンまたはマーセル化パルプなど)は、フィブリル化能力が低く、したがって、密度、多孔性、および寸法安定性の点で所望の特性を備えた電池セパレーターを得ることができない。
【0004】
リヨセル類のセルロース繊維は、そのフィブリル化能力で周知であり、電池セパレーターに採用されている。リヨセル繊維は、セルロースの第三級アミンオキシド溶液から紡糸される。
【0005】
微細で長いフィブリルによって、このようなフィブリル化リヨセル繊維で作製されたセパレーターは、好適な多孔性を有し、電池内部のイオン移動度は非常に良好で、電池の効率が高い。フィブリルは製紙中に非常に良好に絡み合い、収縮が少なく、寸法安定性が高い緻密な構造を形成する。さらに、細孔の平均サイズは小さく、これがデンドライトの障壁となる。
【0006】
電池セパレーターにおけるリヨセル繊維の使用は、EP0572921A1、US2007/0014080A1、US2010/0310921およびUS2009/0017385A1に開示されている。WO97/37392は、セルロースのアミンオキシド溶液から形成されたセルロースフィルムから作製された電池セパレーターを開示している。さらなる最新技術は、US5,700,700およびDE19855644によって提示されている。
【0007】
WO2013/159948およびWO2014/127828A1は、電池セパレーターにおける特定の特性を有するリヨセル繊維の使用を開示している。
【0008】
US3,318,990は、光沢のある透明な紙におけるビスコース中空扁平繊維の使用を開示している。ビスコース繊維は、この目的に好適なものにするために、水膨潤性ポリマーで変性させる必要がある。
【0009】
最も好ましい性能を達成するために、紙、特にろ過目的の紙および電池セパレーター紙に使用されるセルロース繊維は、シート製造過程の前にフィブリル化する必要がある。このいわゆるリファイニング過程(refining process)は、非常に時間およびエネルギーを消費する過程である。フィブリル化に加えて、セルロース繊維を高度なろ水度までリファイニングすると、リファイニングされる繊維の平均長さが短くなるという有害な影響がある。その結果は、得られるセパレーターシートの機械的特性の低下である。
【0010】
リヨセル繊維のフィブリル化は、繊維の表面領域で生じる。これは、リヨセル繊維が高いろ水度レベルにフィブリル化された場合でも、繊維の中央領域はフィブリル化されないままであり、個々の繊維のそれぞれから残存コアが形成されることを意味する。
【0011】
フィブリル化繊維の少なくとも2つの層が重なり合った場合に、シートが形成される。これは、シートの最小厚さが、それを構成するフィブリル化繊維の厚さに比例することを意味する。
【0012】
標準的なリヨセル繊維は、本質的に円形断面を有し、それによって1.7dtexの繊度を持つ円形断面リヨセル繊維は、乾燥状態で約12μmの直径を有する。広範なフィブリル化の後、残存コア径は、平均10μmである。繊維の紡糸条件を好適に調整することにより、直径が減少したリヨセル繊維を生成することができる。リヨセル繊維はまた、高度なろ水度、例えば、80°SR(Schopper Riegler度)にリファイニングすることによってフィブリル化することができる。リファイニング後の繊維の残存コア径は、最初のリヨセル繊維の元の直径よりも約2μm小さくなる。小規模な紡糸試行で達成された従前の最小繊維直径は、約8μmであり、これらの直径8μmの繊維をリファイニングした後に達成された、結果として得られた残存コア径は、約6μmであった。より小さな繊度(したがって、より小さな残存コア径)を生成することは、技術的および経済的に困難である。
【発明の概要】
【0013】
非常に薄い厚さでも十分な強度を有する不織フリース、特に紙が依然として望まれている。
【0014】
本発明は、そのような改善された不織フリースを提供することを、本発明の課題として設定する。
【0015】
この課題は、請求項1に記載の不織繊維フリースの製造のためのリヨセル繊維を使用することによって解決される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に述べられている。
【0017】
さらに、上記の目的は、請求項6に記載の不織繊維フリースによって解決される。
【0018】
やはり、好ましい実施形態は、従属請求項に述べられている。
【0019】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して以下に記載される。
図1~6は、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による断面アスペクト比を有する、不織繊維フリースの製造に使用するためのリヨセル繊維の断面を示す概略図である。
【
図2】本発明による不織繊維フリースの断面の概略図である。
【
図3a】本発明の第1の実施形態による不織繊維フリースの、上面視のSEM顕微鏡写真である。
【
図3b】輪郭線をトレースした
図3aの上面視の概略図である。
【
図4a】
図3に示される不織繊維フリースの、断面視のSEM顕微鏡写真である。
【
図4b】輪郭線をトレースした
図4aの断面視の概略図である。
【
図5a】標準的な円形リヨセル繊維由来の比較不織繊維フリースの、上面視のSEM顕微鏡写真である。
【
図5b】輪郭線をトレースした
図5aの上面視の概略図である。
【
図6a】
図5に示される不織繊維フリースの、断面視のSEM顕微鏡写真である。
【
図6b】輪郭線をトレースした
図6aの断面視の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、不織繊維フリースの製造に使用するためのリヨセル繊維に関し、それによってリヨセル繊維は、少なくとも1.8の断面アスペクト比を示す。
【0022】
繊維の断面アスペクト比は、繊維の断面を囲む最小外接矩形の幅と高さの比率として定義される。最小外接矩形は、繊維断面の周囲に外接する最小の長方形である。それによって外接矩形の幅は、繊維断面の長手方向に沿って測定される。
【0023】
さらに好ましい実施形態では、リヨセル繊維は、2から10までの断面アスペクト比を示す。
【0024】
驚くべきことに、標準的な円形リヨセル繊維と比較して、同等のプロセスパラメーターの下で、同一の繊度で生成された、異形断面を有する、したがって上記で定義した断面アスペクト比を有するこのようなリヨセル繊維は、同等のレベルにリファイニングするのに、より少ないエネルギーおよび時間しか必要としないことが見出された。これにより、時間および運用コストの両方が節減される。したがって、前記繊維を使用することによって、より効率的な製造過程を得ることができる。
【0025】
異形断面アスペクト比を有するリヨセル繊維は、リファイニング後もフィブリル化されていない中実コア(solid core)を保持し、これは本質的に楕円形の断面を示す。フィブリル化リヨセル繊維は、前記中実コアから突出している細いフィブリルをさらに含む。
【0026】
好ましい実施形態では、フィブリル化リヨセル繊維の中実コアは、以下でさらに定義される少なくとも1.5の断面アスペクト比kを示す。
【0027】
中実コアから突出しているフィブリルは、約100nmから約10μmまでの幅分布を示し得る。
【0028】
さらに、驚くべきことに、そのようなフィブリル化繊維を不織繊維フリースに転換する場合、繊維の薄手方向の軸(thinner axis)がシートの平面に垂直になるように、繊維が形成された繊維フリース内で整列することが見出された。これにより、強度などの十分な引張特性を依然として有する非常に薄い不織繊維フリースの生成が可能になる。
【0029】
「リヨセル」繊維という用語は、当業者に周知のように、誘導体化されていないセルロースの有機溶媒溶液から紡糸された人造のセルロース繊維を意味する。
【0030】
今日、最も一般的な種類のリヨセル繊維、および本発明の特に好ましい実施形態は、アミンオキシドプロセスに従って紡糸されたリヨセル繊維である。アミンオキシドプロセスが、少なくとも(1)セルロースをアミンオキシド溶媒に、好ましくは高温で溶解して、溶液を作製するステップと、(2)溶液を紡糸して(好ましくは約100℃で)、形成された溶液をエアギャップ上に引き寄せるステップと、(3)形成された溶液を紡糸浴槽に加え、セルロースを沈殿させるステップとを含むことはよく理解されている。
【0031】
アミンオキシド溶媒は、最も好ましくは水性N-メチル-モルホリン-N-オキシド(NMMO)である。
【0032】
本発明の目的のために、「不織繊維フリース」という用語は、繊維またはフィラメントを絡み合わせ、繊維レベルでの機械的、熱的、化学的または水素結合によってそれらを結合することによって形成される任意の繊維フリースを意味する。それとは対照的に、織物は糸を含む製織過程によって形成されるが、典型的には繊維レベルで結合されていない。「不織繊維フリース」という用語は、スパンレーシング(水流交絡)、ニードリングなどの技術によって生成された不織布を含む。「不織繊維フリース」という用語は、特に紙を含む。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、リヨセル繊維は扁平繊維であり、すなわち実質的に矩形の断面を有する。
【0034】
しかしながら、異形断面を有する他のリヨセル繊維、したがって本質的に円形の断面から逸脱した断面を有する他のリヨセル繊維も使用することができる。そのような繊維の例としては、「Y」もしくは「X」字型を有する繊維などの多葉形繊維(multilobal fibre)、または「8」の字型を有する繊維などの非円形断面を有する他の繊維が挙げられるが、ただし前記繊維の断面アスペクト比が、上記の条件を満たしている限りにおいてである。
【0035】
扁平繊維の場合、リヨセル扁平繊維は、矩形の開口部を有するダイを通してセルロース溶液を紡糸することによって生成され得る。WO2010/071906は、扁平繊維を生成するこの方法を開示している。
【0036】
代替として、繊維は、WO2007/143761に開示されているように、互いに隣接して配置された、いくつかの円形開口部を有する紡糸口金を通して溶液を押し出すことによって、その結果これらの開口部を通して押し出されたフィラメントが融合して、例えば、本質的に矩形の断面を形成する過程によって生成することができる。
【0037】
本発明で使用される繊維は、好ましくは、0.5dtexから10dtexまで、好ましくは1dtexを超える繊度を示す。
【0038】
特に扁平繊維の場合、円形断面を有する標準的なリヨセル繊維よりも高い繊度を有する繊維、例えば1.7dtexの繊度を有する繊維をフィブリル化して不織繊維フリースに形成することができ、得られた不織繊維フリースは、前記円形断面を有する標準的なリヨセル繊維から形成されたシートの厚さよりも、薄い厚さを有することが見出された。これは、繊維がそれ自体水平に整列している、すなわち繊維の薄手方向の軸が、シートの平面に垂直であるという驚くべき発見によるものである。
【0039】
上述のように、本発明によって使用されるリヨセル繊維は、驚くべきことに、同等のフィブリル化レベルまでリファイニングするのに、より少ないエネルギーおよび時間しか必要としない。これにより、時間および運用コストの両方が節減される。
【0040】
リファイニングの目的は、繊維長が縮む副作用を最小限に抑えながら、繊維をフィブリル化することである。より長いリファイニング時間/より高いリファイニングエネルギーは、繊維長の縮みを増加させ、結果として得られる不織繊維フリースの機械的特性の低下につながる。したがって、より少ないリファイニングエネルギーを利用して、尚且つ所望のレベルのフィブリル化を達成することが望ましい。
【0041】
本発明による断面アスペクト比を有するリヨセル繊維は、匹敵する円形の標準的なリヨセル繊維よりも良好なフィブリル化傾向を有することが見出された。したがって、明らかに、扁平繊維の残存繊維長は、同程度のろ水度にリファイニングする間、円形繊維と比較して損なわれる(減少する)ことはない。したがって、扁平繊維のみで作製された不織繊維フリースは、匹敵するフィブリル化円形繊維で作製されたシートよりもはるかに良好な機械的特性を示す。
【0042】
本発明による繊維から作製された不織繊維フリースの靭性、引裂き強さ、および破裂強さは、円形標準繊維から作製された不織繊維フリースと比較して増加している。いくつかの実施形態では、靭性を少なくとも50%増加させることができ、引裂き強さを少なくとも100%増加させることができ、破裂強さを少なくとも130%増加させることができる。
【0043】
本発明は、リヨセル繊維を含む不織繊維フリースにさらに関し、不織繊維フリースは、フィブリル化リヨセル繊維の少なくとも2つの層を含み、フィブリル化リヨセル繊維は、中実コアおよび前記コアから突出しているフィブリルを有し、繊維およびフィブリルが交絡して繊維フリースを形成し、その中に中実コアを埋め込み、それによってフィブリル化リヨセル繊維の中実コアは、少なくとも1.5の平均断面アスペクト比kを有する。
【0044】
さらに好ましい実施形態では、フィブリル化リヨセル繊維の中実コアは、少なくとも1.8、好ましくは少なくとも2.0、より好ましくは少なくとも2.2の平均断面アスペクト比kを有する。
【0045】
フィブリル化リヨセル繊維の中実コアの平均断面アスペクト比kは、次のように定義される。
k=b/h,(1)
式中、bは、繊維フリースの顕微鏡による上面視での中実コアの平均可視幅であり、hは、繊維フリースの顕微鏡による断面視での中実コアの平均可視高さである。
【0046】
繊維フリースの断面を切り取ると、繊維の中実コアがさまざまな角度で切断されるため、中実コアの幅(繊維の長手軸に垂直)を断面視から確実に決定することはできない。したがって、平均断面アスペクト比kの決定は、中実コアの平均可視幅bおよび平均可視高さhの独立した決定に分離する必要がある。
【0047】
中実コアの平均可視幅bは、繊維フリースの上面図を撮り(例えば、SEM顕微鏡写真器によって)、繊維の伸長方向に垂直な可視中実コアのいくつかの幅測定値を取得し、その平均値を計算することによって間違いなく決定できる。測定は、中実コアの幅が本質的に均一な位置で行われ、すなわちフィブリル化繊維の強くフィブリル化された領域では行われない。
【0048】
一方、中実コアの平均可視高さhは、繊維フリースの断面図を撮ることによって(例えば、SEM顕微鏡写真器によって)決定できる。繊維フリース内の中実コアの伸長方向が異なるため、中実コアはさまざまな角度で切断され、そのため、中実コアの断面が変化しているか、または「不鮮明に(smeared out)」見えることさえあり得る。したがって、中実コアの高さの確実で代表的な測定値を得るために、いくつかの特徴的で明確に識別可能な中実コアのみの高さ測定値を取得し、その平均値を計算する。繊維の強くフィブリル化された領域で測定値を取得しないように注意しなければならない。
【0049】
したがって、平均断面アスペクト比kは、中実コアの幅および高さが実質的に均一な位置で決定される、中実コアの平均幅と中実コアの平均高さとの間の比を表す。この寸法は、リヨセル繊維断面の周囲に外接する最小外接矩形から決定される、本発明による(フィブリル化されていない)リヨセル繊維の断面アスペクト比と相関する。
【0050】
しかしながら、リファイニング過程におけるリヨセル繊維のフィブリル化により、フィブリル化リヨセル繊維の中実コアの断面アスペクト比は、リファイニング前のリヨセル繊維の断面アスペクト比に対して変更され得る。
【0051】
中実コアが、本発明による平均断面アスペクト比kを示す場合、不織繊維フリースを得ることができ、フィブリル化繊維は、中実コアの薄手方向の軸が不織繊維フリースの平面に垂直になるように整列する。したがって、その機械的強度および引張特性を損なうことなく、非常に薄い不織繊維フリースを得ることができる。
【0052】
好ましくは、不織繊維フリースは、上記で定義したリヨセル繊維を使用して繊維フリースを製造する過程から得ることができる。
【0053】
さらに別の実施形態では、不織繊維フリースは、紙である。
【0054】
不織繊維フリースの厚さは、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下であり得る。
【0055】
さらに好ましい実施形態では、不織繊維フリースは、本質的にリヨセル繊維からなる。
【0056】
別の実施形態では、不織繊維フリースは、リヨセル繊維を含むブレンドからなってもよい。それによって、当業者は、請求された効果が達成される限り、不織繊維フリースに他の好適な繊維を含めることができる。そのような他の繊維としては、例えば、木材パルプ、アサ、シサル麻、アマ、アバカ、ケナフ、アフリカハネガヤなどの天然セルロース繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、アラミドなどの合成ポリマー、またはガラス繊維などの無機繊維が挙げられる。
【0057】
さらなる実施形態では、フィブリル化リヨセル繊維の中実コアは、10μm以下、より具体的には7μm以下、好ましくは4.5μm以下の平均高さを示す。扁平繊維の中実コアの最大高さにより、非常に薄い不織繊維フリースが達成でき、これは電池セパレーターとして好適である。
【0058】
よりさらなる実施形態では、フィブリル化リヨセル繊維の中実コアは、少なくとも15μm、より具体的には20μmから40μmの間の平均幅を示す。
【0059】
例えば、約2.7dtexの繊度および約4の断面アスペクト比を有するリヨセル扁平繊維が、繊維フリースの製造に使用される場合、フィブリル化リヨセル繊維の中実コアは、5~8μmの範囲の平均高さ、および15~30μmの範囲の平均幅を示す。
【0060】
2.7dtex以外の繊度を有するリヨセル扁平繊維が使用される場合、中実コアの平均幅および高さは、それ故、本発明によるリヨセル扁平繊維の断面アスペクト比に応じて変化するであろう。
【0061】
別の態様では、本発明は、リヨセル繊維を含む不織繊維フリースを製造する方法であって、
- 少なくとも1.8、好ましくは2から10までの断面アスペクト比を有するリヨセル繊維を提供するステップと、
- フィブリル化リヨセル繊維を形成するように、リヨセル繊維をリファイニングするステップと、
- 少なくともフィブリル化リヨセル繊維を絡み合わせ、繊維レベルでそれらを結合することによって、不織繊維フリースを形成するステップと
を含む方法を提供する。
【0062】
本発明のさらなる態様では、リファイニング後のフィブリル化リヨセル繊維は、中実コアおよび前記コアから突出しているフィブリルを含む。リファイニング後、フィブリル化リヨセル繊維の中実コアは、好ましくは少なくとも1.5の平均断面アスペクト比kを有する。
【0063】
本発明のよりさらなる態様では、繊維レベルでのフィブリル化リヨセル繊維の結合は、繊維およびフィブリルが交絡して繊維フリースを形成し、その中に中実コアを埋め込むことを含む。
【0064】
不織繊維フリースを製造する方法のすべての態様について、上記および下記の好ましい実施形態の議論が等しく適用される。
【0065】
以下では、本発明の好ましい実施形態が、図面を参照して説明される。
【0066】
図1は、不織繊維フリースの製造に使用するためのリヨセル繊維1の概略図を示す。リヨセル繊維1は、本質的に非円形の形状を示し、繊維断面の周囲に外接する最小の長方形を表す最小外接矩形2によって外接され得る。
【0067】
繊維1の断面アスペクト比は、最小外接矩形2の幅3を最小外接矩形2の高さ4で割ることによって得ることができる。繊維1の幅3は、繊維断面の長手方向5に沿って測定され、繊維1の高さ4は、繊維断面の短手方向6に沿って測定される。
図1に概略的に示した繊維1の場合、断面アスペクト比は、2.26になる。
【0068】
簡潔にするために、繊維1は、y軸に沿って延在し、繊維断面の長手方向5は、x軸と一致し、繊維断面の短手方向6は、z軸と一致すると仮定する。
【0069】
異形(扁平)断面により、繊維1は、同等の(ろ水度)レベルにリファイニングするのに、標準的な円形繊維よりもはるかに少ないエネルギーおよび時間しか必要としない。したがって、不織繊維フリースをより費用効果が高く製造することができる。
【0070】
そのような不織繊維フリース10は、
図2に概略的に示されている。不織繊維フリース10は、フィブリル化リヨセル繊維13からなる層11、12を含む。それによって、フィブリル化リヨセル繊維13は、中実コア14、および前記中実コア14から突出しているフィブリル15からなる。
【0071】
図2の簡略化された概略図によると、繊維13は主にy軸に沿って向き、すなわち延在し、不織繊維フリース10は、x/y平面に延在している。しかしながら、他の実施形態では、フィブリル化リヨセル繊維13は、x/y平面の任意の方向に沿って向くことができ、したがって、無作為に重なり合っている。
【0072】
層11、12、およびしたがって不織繊維フリース10全体は、交絡したフィブリル15を介して形成され、それによって中実コア14は、繊維フリース10を形成する交絡したフィブリル15の緻密なネットワークに埋め込まれている。
【0073】
中実コア14の平均可視幅bと平均高さhとの間の比として式(1)によって定義される、フリース10内の不織繊維の平均断面アスペクト比kは、それによって少なくとも1.5になる。中実コア14は、断面アスペクト比kを表す最小外接矩形16によって等しく外接され得る。可視幅7は、好ましくは、繊維フリース10の上面図から決定でき、測定は、さまざまな中実コア14のさまざまな位置で行い、その平均可視幅bを計算するべきである。中実コア110の可視幅120の決定は、以下の実施例の段落に記載される実施例1による繊維フリース100について、
図3aおよび3bに例示されている。
図2に概略的に示されているような断面図から幅7を決定することはあまり好ましくなく、なぜならそのような断面図では、繊維13の非垂直切断により、幅7を多く見積もりすぎる可能性があるためである。一方、中実コア14の高さ8は、繊維フリース10の断面図から決定することができ、それによって平均高さhは、いくつかの中実コア14からの測定値から計算されるべきである。断面図からの中実コア110の高さ130のそのような決定は、実施例1による繊維フリース100について、
図4aおよび4bに例示されている。
【0074】
少なくとも5つの中実コア14、より好ましくは少なくとも8つの中実コア14の幅7および高さ8の測定値をそれぞれ取ることから、平均可視幅bおよび平均高さhを決定することが好ましい。中実コア14の幅7を決定するための上面図は、好ましくは繊維フリース10の少なくとも0.2mm2、より好ましくは少なくとも0.4mm2の表面積を覆う。中実コア14の高さ8を決定するための断面図は、好ましくは、繊維フリース10の少なくとも150μm、より好ましくは少なくとも200μmの断面に沿った距離を覆う。
【0075】
好ましい実施形態では、不織繊維フリースの平均断面アスペクト比kは、少なくとも2.0になる。
【0076】
繊維13は、主にz軸6に沿ったその断面の短手方向に整列し、したがって、繊維13の大多数は、x/y平面において本質的に扁平に横たわる。したがって、不織繊維フリース10は、円形断面を有する標準的なリヨセル繊維から形成された不織繊維フリースの厚さよりも薄い厚さdを有する。それによって、はるかに薄い繊維フリース10を得ることができる。
【0077】
図示されていない本発明の他の実施形態は、特許請求の範囲内で実行することができる。上に提示した図および実施形態は、保護の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0078】
以下において、本発明による利点を、本発明例および比較例を使用して例証する。しかしながら、以下に提示される実施例は単に説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【0079】
したがって、本発明による断面アスペクト比を有するリヨセル繊維を、以下に記載する生成方法によって生成した。
【0080】
繊維生成
セルロースパルプをアミンオキシド/水溶媒と混合して、リヨセル紡糸原液を生成した。パルプの溶解が生じるまで、真空下で水を蒸発させた。溶解後、原液中のパルプ濃度は、13%であった。得られた紡糸原液をろ過し、紡糸ポンプに搬送した。
【0081】
原液は、断面異形繊維を生成するために、異形押出オリフィスを備えた紡糸口金を介して、115℃で孔あたり0.05g/分の速度で紡糸ポンプによって押し出した。繊維を、紡糸口金から高さ約30mmのエアギャップに押し出した。次いで、前記エアギャップにおいて、8.6gH2O/kgの乾燥空気および4.2m/秒の線速度を有する、約20℃のクロスドラフトで繊維を調整した。
【0082】
最終的に、25%アミンオキシド溶液を含む紡糸浴槽で繊維を凝固させ、次いでローラーを介してさらなる仕上げステップに搬送した。それによって、繊維を約30m/分の速度で生成し、2.7dtexの所望の繊度を達成した。好適な間隔で、生成した繊維索を切断し、脱塩水で洗浄して、繊維上の微量のアミンオキシドをすべて除去し、そのトウを得た。
【0083】
トウは、しかるべく2日間の試行で生成し、ラベル付けしてプラスチック袋に保管し、柔軟仕上剤の施用に引き継いだ。
【0084】
柔軟仕上剤を施用するために、トウをそのプラスチック袋から取り出し、フーラードを使用して5barで残りの水を押し出した。0.2%(繊維に対する重量)の仕上剤施用レベルが達成されるように、柔軟仕上剤を調製し、トウを水性仕上剤溶液に浸漬した。次いで、仕上がったトウを65℃の乾燥キャビネットで48時間乾燥させた後、切断に引き継いだ。
【0085】
切断するために、乾燥して仕上がったトウを、紙葉断裁機(leaf guillotine)を使用して5mmの長さに切断した。切断した断面異形繊維を、透明なプラスチック袋に保管し、リファイニングに引き継いだ。
【0086】
リファイニング
リファイニングでは、繊維をフィブリル化するために、切断され、仕上がって乾燥した断面異形繊維を、0.35mmのプレート間隔、および0.6%の濃度を有するシングルディスクリファイナーでリファイニングした。それによって、繊維をSR80°のろ水度にリファイニングした。リファイニングおよび脱水後の乾燥含量は、約20%になった。最終的に、リファイニングした繊維500gをプラスチック袋に保管し、不織繊維フリースを生成するまで4℃で冷蔵保存した。
【0087】
不織繊維フリースの生成
本発明による不織繊維フリースの生成のために、上記の方法に従って得た、リファイニングした断面異形繊維の100%を使用した。繊維の乾燥含量は、生成前に測定して18.74%であった。乾燥含量を決定した後、30gsmの不織繊維フリースの生成に必要な繊維の量を決定し、秤量した。秤量した繊維を、水1lを用いて3000rpmで45秒間、ミキサー内で分散させた。次いで、得られた懸濁液を分散機に移し、懸濁液を水2lでさらに希釈し、ガスで10秒間スパージした。スパージング直後に水を排出し、フィルターの上に不織繊維フリースを形成した。約1mmの厚さの箔を得られた繊維フリースに配置して、フィルター、フリース、および箔の積層を作製し、次いで92℃で10分間真空乾燥した。その後、箔を取り除き、繊維フリースをフィルターから取り出した。繊維フリースは、さらなる分析まで透明なシースに保管した。
【0088】
測定方法
SEM(走査型電子顕微鏡)顕微鏡写真を取得するために、上記の方法に従って製造された不織繊維フリースの中央から、約1cm2の大きさの試料を切り取った。切断した試料に、Auを120秒間噴霧した。測定のために、FEI Quanta 450走査型電子顕微鏡を、以下の設定:スポット3、HV、EDT、WD10で、5kVで操作した。
【0089】
試料の破断力および伸びは、2009年のDIN EN ISO1924-2に従って測定した。測定の前に、不織繊維フリースの中央から50mm×100mmの試料を打ち抜き、23℃、および湿度50%で24時間調整した。測定は、ZWICK ROELL Z2.5材料試験機で、以下の設定:ロードセル:200N、クランプギャップ:80mm、20mm/分の移動速度を使用して行った。測定値は、10個の試料の平均値として得た。
【0090】
引裂き強さを、NWSP 100.2.R1(15)に従って測定した。不織繊維フリースの中央から75mm×150mmの試料を打ち抜き、23℃、湿度50%で24時間調整した。測定は、ZWICK ROELL Z2.5材料試験機で、以下の設定:ロードセル:200N、クランプギャップ:25mm、100mm/分の移動速度を使用して再度行い、移動長が40mmに達した際に停止した。測定値は、5つの試料の平均値として得た。
【0091】
破裂強さを、WSP 110.5(05)に従って測定した。それによって、不織繊維フリースの中央から100mm×100mmの試料を打ち抜き、23℃、および湿度50%で24時間調整した。ZWICK ROELL Z2.5材料試験機の底部に試料を固定し、0.25Nの最小力が測定されるまで相対するボールを紙の表面に移動させた。次いで、0Nの力が測定されるまで、ボールをわずかに後方に移動させた。次いでボールスタンプを、試料内を300mm/分で移動させた。測定値は、5つの試料の平均値として得た。
【0092】
結果および考察
上記の生成方法に従って、扁平断面リヨセル繊維を含む不織繊維フリース(紙)シートを、小規模で製造した。SEMによる顕微鏡検査により、繊維は、その薄手方向の断面軸の方向がシートの平面に垂直になるようにシート内で整列しており、したがって
図2に概略的に示すように、z軸に沿って整列していることが示された。
【0093】
扁平断面リヨセル繊維は、リファイニング後もフィブリル化されていないコアを保持しており、これは本質的に非円形断面を示していた。フィブリル化扁平断面リヨセル繊維の残存コアの幅を測定し、薄手方向の軸(z軸)に沿ったそれらの厚さを決定した。最初に約2.7dtexの平均線密度(繊度)および約3.6の断面アスペクト比で紡糸した繊維は、約7~7.7μmのz軸の厚さを示した。80°SRにリファイニングした後、残存コアのz軸の厚さは減少し、約3μmから7μmの間の範囲になった。紙シートを形成するために使用する場合、達成可能なシートの最小厚さは、扁平断面繊維のz軸の厚さに比例する。
【0094】
したがって、その高い繊度にもかかわらず、やはりフィブリル化扁平繊維は、好適に薄いセパレーター紙を生成するために使用できるということである。採用する紡糸口金および使用するプロセスパラメーターに応じて、より小さな繊度と同様に、さまざまな形状を生成できる。これにより、残存厚さがさらに減少し、さらに薄いシートの生成が可能になる。制限要因は、生成されたシートの所望の機械的特性であると予想されるが、これは、標準的な円形繊維の代わりに扁平繊維を使用すると改善される。
【0095】
それらの改善された機械的特性により、扁平繊維を使用して、著しく安定しているが、厚さが10μm未満の薄いシートを生成できる。
【0096】
[実施例1]
本発明による例示的な不織繊維フリース100(実施例1)を、平均断面アスペクト比が3.57、平均幅が26.21μm、および平均高さが7.34μmである2.7dtexのリヨセル繊維を使用して、上記の生成方法に従って生成した。繊維の幅および高さは、いくつかの無作為に選択した試料の断面SEM顕微鏡写真によって調査した。これらの試料の中で、断面アスペクト比が3未満の個々の(フィブリル化されていない)繊維は見られなかった。
【0097】
図3aおよび4aには、実施例1の製造された不織繊維フリース100のSEM顕微鏡写真が示されている。
図3aは繊維フリース100の上面図を示し、
図4aは断面図を示す。
図3bおよび4bは、それぞれ
図3aおよび4aに示されたSEM顕微鏡写真のトレースされた輪郭線を示す。
【0098】
図3aの上面図では、繊維フリース100のいくつかの中実コア110を識別することができる。
図3bに示されるように、実質的に均一な幅を示し、繊維の強くフィブリル化された領域に位置しない、前記中実コア110のいくつかの特徴的な部分を選択し、それらの可視幅120を決定した。中実コア110の選択した部分は、
図3aにおいて十字線で印をつけている。選択した6つの部分の幅測定値を、表1に列挙する。
【0099】
また、
図4aに示される断面SEM顕微鏡写真では、フィブリルのネットワークに埋め込まれたいくつかの中実コア110を識別することができる。
図4bに概略的に示されるように、中実コアの可視高さ130を決定するために、4つの特徴的な中実コア110を選択した。それによって、90°に近接する角度で切断され、強いフィブリル化の様子を示さない、明確に識別可能な中実コア110のみを選択した。選択した中実コア110は、
図4aにおいてもやはり十字線で印をつけている。前記4つの選択した中実コア110の高さ測定値を、表2に列挙する。
【0100】
【0101】
【0102】
表1および2による求められた幅(120)および高さ(130)の平均値を計算すると、実施例1の本発明の不織繊維フリース100は、15.55μmの中実コアの平均幅bおよび6.87μmの中実コアの平均高さhを示す。したがって、中実コアの平均断面アスペクト比kは、2.26になる。
【0103】
図示していないが、上記の説明による他の本発明の実施例では、平均断面アスペクト比kを、それぞれ2.24、1.92、および2.04であると決定した。
【0104】
[比較例2]
比較例の不織繊維フリース200は、2.7dtexの繊度を有する標準的な円形リヨセル繊維から生成し、このフリースは、上記の生成方法に従って生成した。円形リヨセル繊維は、平均断面アスペクト比が1、および平均直径が15.1μmであった。
【0105】
図5および6では、前記比較例2のSEM顕微鏡写真が示されている。再び、
図5aは繊維フリース200の上面図を示し、
図6aは断面図を示す。
図5bおよび6bは、それぞれ
図5aおよび6aに示されたSEM顕微鏡写真のトレースされた輪郭線を再び示す。
【0106】
図5aの上面図から、繊維フリース200内にいくつかの中実コア210を識別することができる。前記中実コア210から、平均可視幅220を決定するために、少なくとも強いフィブリル化の様子のない実質的に均一な幅の部分を示すもののみを選択することができる。中実コアから突出しているフィブリルを考慮しないように注意しなければならない。
図5bに示されるように、前記中実コア210の4つの特徴的な部分を選択し、それらの可視幅220を決定した。この方法で得た幅測定値を、表3にまとめる。
【0107】
図6aに示される断面SEM顕微鏡写真から、再びいくつかの中実コア210を識別することができる。
図6bは、
図6aのSEM顕微鏡写真のトレースされた輪郭線を示しており、可視高さ230を決定するために選択した、5つの特徴的な中実コア210を強調している。再び、検査のために中実コア210を選択する際には、90°に近接する角度で切断され、強いフィブリル化の様子を示さない、明確に識別可能な中実コア210のみを選択することに注意すべきである。5つの選択した中実コアの高さ測定値を、表4に列挙する。
【0108】
【0109】
【0110】
表3および4による求められた幅(220)および高さ(230)の平均値を計算すると、標準的な円形リヨセル繊維を用いた比較例2の不織繊維フリース200は、10.54μmの中実コアの平均幅bおよび12.77μmの中実コアの平均高さhを示す。したがって、中実コア(210)の平均断面アスペクト比kは、0.83になる。
【0111】
図示していないが、標準的な円形リヨセル繊維を用いた他の比較例では、平均断面アスペクト比kを、それぞれ0.91、1.04、および1.31であると決定した。
【0112】
表5(下記)では、実施例1の不織繊維フリースのパラメーターおよび機械的特性、ならびに標準的な円形リヨセル繊維から作製した比較例2の不織繊維フリースと比較した前記特性の改善をまとめている。
【0113】
考察
リファイニングにより、中実コアの平均幅bおよび平均高さhは、例1および2の、扁平(本発明)および円形(比較)リヨセル繊維の両方の(リファイニングされていない)繊維寸法に対して減少した。また、扁平リヨセル繊維の中実コアの平均断面アスペクト比kは、3.57のリファイニングされていない扁平リヨセル繊維の断面アスペクト比に対して2.27に減少している。ただし、この減少は、リファイニング過程およびそのパラメーターによって異なり、単一バッチ内でも異なる場合がある。他の例(図示せず)では、断面アスペクト比は均一のままであるか、またはわずかに増加することさえ観察された。中実コアの平均断面アスペクト比kが、特許請求の範囲に規定された範囲内にある限り、断面アスペクト比のそのような変化は予想され、重要ではない。
【0114】
表5からわかるように、不織繊維フリースを製造するために断面異形扁平リヨセル繊維を使用することにより、繊維をリファイニングするためのエネルギー入力を67.5%減少させることができ、同時に引張特性は、標準的な円形リヨセル繊維に対して著しく改善されている。
【0115】
【国際調査報告】