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特表2023-536141ガスクロマトグラフィのキャリアガス識別のための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ガスクロマトグラフィのキャリアガス識別のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20230816BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G01N30/26 E
G01N30/86 V
G01N30/26 M
G01N30/26 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506114
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 US2021040515
(87)【国際公開番号】W WO2022026131
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】63/056,832
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,ロバート・シー.
(57)【要約】
【課題】ガスクロマトグラフィにおけるキャリアガス識別のための方法及びシステムが本明細書に記載されている。
【解決手段】一態様では、ガスクロマトグラフィシステムは、第1の出力流路及び第2の出力流路と流体連通する入力流路を含む空気圧システムと、ガスの第1の特性に対応する流量測定信号を生成するように構成された第1の流量センサと、第1のガス特性とは異なるガスの第2の特性に対応する第2の流量測定信号を生成するように構成された第2の流量センサと、空気圧システムを通るガスの流量についての第1の流量測定信号を測定し、空気圧システムを通るガスの流量についての第2の流量測定信号を測定し、第1及び第2の流量測定信号から空気圧システムを通るガスの流量のガスの種類を識別するようにプログラムされたコントローラとを含むことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の出力流路及び第2の出力流路と流体連通する少なくとも1つの入力流路を備える空気圧システムと、
ガスの第1の特性に対応する流量測定信号を生成するように構成され、前記入力流路上に配置された第1の流量センサと、
前記第1のガス特性とは異なる前記ガスの第2の特性に対応する第2の流量測定信号を生成するように構成され、前記第1の出力流路上に配置された第2の流量センサと、
前記空気圧システムを通してガスを流し、前記第1の流量センサから前記空気圧システムを通るガスの前記流量の前記第1の流量測定信号を測定し、前記第2の流量センサから前記空気圧システムを通るガスの前記流量の前記第2の流量測定信号を測定し、前記第1及び前記第2の流量測定信号から前記空気圧システムを通るガスの前記流量のガスの種類を識別するようにプログラムされたコントローラと
を備えるガスクロマトグラフィシステム。
【請求項2】
前記マイクロコントローラが、較正手順を実行するようにさらに構成され、
前記較正手順は、
前記空気圧システムを通して既知の種類のガスを流すことと、
外部流量コントローラを介して前記既知の種類のガスの流量を制御することと、
前記第1及び/又は前記第2の流量センサ、又はその両方の出力を前記制御された流量に相関させることと
を含む、請求項1に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項3】
前記入力流路、前記第1の出力流路、及び/又は前記第2の出力流路に沿って配置された少なくとも1つの弁をさらに備え、マイクロコントローラは、前記少なくとも1つの弁に前記空気圧システムを通る前記流量を変更させるようにさらに構成される、請求項1に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの弁が前記第1の出力流路及び/又は前記第2の出力流路に沿って配置され、前記少なくとも1つの弁が実質的に閉じている、請求項3に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項5】
前記ガスの前記特性が、粘度と、熱分散、熱伝導率、及び熱容量のうちの1つ又は複数とを備える、請求項1に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項6】
前記マイクロコントローラは、
前記識別された種類のガスを設定済みの種類のガスと比較し、
前記識別されたガスの種類が前記設定済みのガスの種類と一致しない場合にアラートを生成するようにさらに構成される、請求項1に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項7】
前記マイクロコントローラが、前記識別されたガスの種類に基づいて前記ガスクロマトグラフィシステムの1つ又は複数の設定を調整するようにさらに構成される、請求項1に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項8】
前記第2の出力流路上に配置された第3の流量センサをさらに備え、前記マイクロコントローラは、
前記第3の流量センサから第3の流量測定信号を生成し、
前記第1、前記第2、及び前記第3の流量測定信号から、前記空気圧システムを通るガスの前記流量のガスの前記種類を識別するようにさらに構成される、
請求項1に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項9】
前記流量測定信号は、設定済みのガスの流量である、請求項1に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項10】
前記第2の出力流路上に配置された第3の流量センサをさらに備え、前記マイクロコントローラは、
前記想定された設定済みのガスの種類に対して前記第3の流量センサから第3の流量を生成し、
前記第2の流量と前記第3の流量を合計し、
前記合計された流量を前記第1の流量と比較し、前記想定された設定済みのガスの種類が、前記比較に従って前記空気圧システムを流れるガスの前記種類に対応するかどうかを決定するようにさらに構成される、
請求項9に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項11】
前記マイクロコントローラは、
前記合計された流量と閾値未満である前記第1の流量との差に基づいて、前記想定された設定済みのガスの種類が前記空気圧システムを通って流れるガスの前記種類に対応することを判定するようにさらに構成される、
請求項10に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項12】
前記マイクロコントローラは、
前記合計された流量と前記第1の流量との前記差に基づいて、及び前記差を1つ又は複数の予想されるガスの種類の予想される差と比較することに基づいて、前記空気圧システムを通るガスの前記流量のガスの前記種類を識別するようにさらに構成される、
請求項10に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項13】
前記ガスと流体連通する電気ヒータをさらに備え、前記コントローラは、
前記電気ヒータを所定の電圧、電流、又は温度に制御して前記ガスの一部を加熱し、
所定のヒータ温度に対するヒータエネルギー、又は所定のヒータ電圧又は電流に対する結果としてのヒータ温度を決定するようにさらに構成され、
ガスの前記種類を識別することは、前記ヒータエネルギー又は前記結果としてのヒータ温度のいずれかにさらに基づく、
請求項1に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項14】
前記ガスと流体連通する電気ヒータをさらに備え、前記コントローラは、
前記電気ヒータを所定の温度、電圧、又は電流に制御し、
所定のヒータ温度に対するヒータエネルギー、又は所定のヒータ電圧又は電流に対する結果としてのヒータ温度を決定し、
物理的特性に基づいて、前記考えられるガスの種類を少なくとも2つのグループに分割し、
前記ヒータエネルギー又は前記結果としてのヒータ温度から、前記空気圧システムを流れる前記ガスがこれらの少なくとも2つのグループのどちらに属するかを判定するようにさらに構成される、
請求項1に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項15】
前記第1の流量センサがキャリアガス供給流量センサを備え、前記第2の流量センサがカラム流量センサ又は隔壁パージ流量センサのいずれかを備える、請求項1に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項16】
少なくとも第1の出力流路及び第2の出力流路と流体連通する少なくとも1つの入力流路を備える空気圧システムと、
ガスの第1の特性を利用して流量測定信号を生成するように構成され、前記入力流路上に配置された第1の流量センサと、
前前記第1のガス特性とは異なる前記ガスの第2の特性を利用して流量測定信号を生成するように構成され、記第1の出力流路上に配置された第2の流量センサと、
ガスを前記空気圧システムを通して流して、前記第1の流量センサから第1の流量測定信号を生成し、前記第2の流量センサから第2の流量測定信号を生成することと、前記第2の出力流路を通る前記ガスの前記流量を実質的に一定に保ちながら、前記入力流路と第1の出力流路を通るガスの前記流量を変更し、前記第1の流量センサから第3の流量測定信号を生成し、前記第2の流量センサから第4の流量測定信号を生成することと、前記第1の流量測定信号と前記第3の流量測定信号との間の前記差を取ることによって、流量測定信号の第1の変化を計算することと、前記第2の流量測定信号と前記第4の流量測定信号との間の前記差を取ることによって、流量測定信号の第2の変化を計算することと、流量測定信号の前記第1の変化を流量測定信号の前記第2の変化と比較することにより、ガスの種類を識別することとを実行するようにプログラムされたマイクロコントローラと
を備えるガスクロマトグラフィシステム。
【請求項17】
前記マイクロコントローラは、較正手順を実行するようにさらに構成され、
前記較正手順は、
前記空気圧システムを通して既知の種類のガスを流すことと、
外部流量コントローラを介して前記既知の種類のガスの流量を制御することと、
前記第1及び/又は前記第2の流量センサの出力を前記制御された流量に相関させることと
を含む、請求項16に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項18】
前記入力流路、前記第1の出力流路、前記第2の出力流路、又は任意の組み合わせに沿って配置された少なくとも1つの弁をさらに備え、前記マイクロコントローラは、前記弁を利用して前記空気圧システムを通る前記流量を変更するようにさらに構成される、請求項16に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの弁が前記第1の出力流路及び/又は前記第2の出力流路に沿って配置され、前記少なくとも1つの弁が実質的に閉じている、請求項18に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項20】
前記マイクロコントローラは、
前記識別された種類のガスを設定済みの種類のガスと比較し、
前記識別されたガスの種類が前記設定済みのガスの種類と一致しない場合にアラートを生成するように構成される、
請求項16に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項21】
前記ガスと流体連通する電気ヒータをさらに備え、
前記マイクロコントローラは、
前記電気ヒータを所定の電圧、電流、又は温度に制御して前記ガスの一部を加熱し、
所定のヒータ温度に対するヒータエネルギー、又は所定のヒータ電圧又は電流に対する結果としてのヒータ温度を測定するようにさらに構成され、
ガスの前記種類の識別は、前記ヒータエネルギー又は前記結果としてのヒータ温度のいずれかにさらに基づく、
請求項16に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項22】
前記ガスと流体連通する電気ヒータをさらに備え、
前記マイクロコントローラは、
前記電気ヒータを所定の温度、電圧、又は電流に制御し、
所定のヒータ温度に対するヒータエネルギー、又は所定のヒータ電圧又は電流に対する結果としてのヒータ温度を決定し、
物理的特性に基づいて、前記考えられるガスの種類を少なくとも2つのグループに分割し、
前記ヒータエネルギー又は前記結果としてのヒータ温度から、前記空気圧システムを通って流れる前記ガスがこれらの少なくとも2つのグループのどちらに属するかを判定するようにさらに構成される、
請求項16に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項23】
前記流量測定信号は、設定済みのガスの流量であり、前記マイクロコントローラは、
流量測定信号の前記第1の変化と流量測定信号の前記第2の変化との間の前記差が閾値内で実質的に同じであることにより、前記設定済みのガスの種類が前記空気圧システムを通って流れる前記ガスの種類であることを識別するようにさらに構成される、請求項16に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項24】
前記流量測定信号は、設定済みのガスの流量であり、前記マイクロコントローラは、
流量測定信号の前記第1の変化と流量測定信号の前記第2の変化の前記差を使用して、前記差を各較正済みガスの種類で予想される前記差と比較することにより、前記ガスの種類を識別するようにさらに構成される、
請求項16に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項25】
前記第2の出力流路上に配置された第3の流量センサ又は圧力センサをさらに備える、請求項16に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項26】
前記ガスの前記特性が、粘度と、熱分散、熱伝導率、及び熱容量のうちの1つ又は複数とを備える、請求項16に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【請求項27】
前記第1の流量センサがキャリアガス供給流量センサを備え、前記第2の流量センサがカラム流量センサ又は隔壁パージ流量センサのいずれかを備える、請求項16に記載のガスクロマトグラフィシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年7月27日に出願された米国仮特許出願第63/056,832号の優先権及び利益を主張し、その内容は引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィ(gas chromatography)では、試料の組成は、ガスクロマトグラフィカラム(gas chromatography column)を通過する試料によって判定される。キャリアガスが試料成分をカラムの一方の端から他方の端まで輸送するため、試料の異なる分子成分間で時間変動が発生しうる。ガスクロマトグラフィシステムは、この時間変動に基づいて、試料に含まれる様々な成分を識別できる。
【0003】
しかし、様々な試料成分がカラムを通過するのにかかる時間は、試料をカラムを通して輸送するために使用されるキャリアガスの組成に依存しうる。キャリアガスの識別が正しくないと、性能の問題が発生しうる。例えば、キャリアガスが正しく識別されない場合、キャリアガスの流量が正しく制御されない可能性がある。これは、カラムの末端にある検出器に到達する試料の様々な成分の誤認、不十分なピーク形状、試料成分の分離不良などの問題につながりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスクロマトグラフィにおけるキャリアガス識別のための方法及びシステムが本明細書に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、ガスクロマトグラフィシステムは、少なくとも第1の出力流路及び第2の出力流路と流体連通する少なくとも1つの入力流路を含む空気圧システムと、入力流路上に配置された第1の流量センサであって、ガスの第1の特性に対応する流量測定信号を生成するように構成された第1の流量センサと、第1の出力流路上に配置された第2の流量センサであって、第1のガス特性とは異なるガスの第2の特性に対応する第2の流量測定信号を生成するように構成された第2の流量センサと、空気圧システム(pneumatic system)を通してガスを流し、第1の流量センサから空気圧システムを通るガスの流量の第1の流量測定信号を測定し、第2の流量センサから空気圧システムを通るガスの流量の第2の流量測定信号を測定し、第1及び第2の流量測定信号から、空気圧システムを通るガスの流量のガスの種類(type)を識別するようにプログラムされたコントローラとを含むことができる。
【0006】
この態様は、様々な実施形態を含むことができる。一実施形態では、マイクロコントローラは、較正手順(calibration procedure)を実行するようにさらに構成することができ、較正手順は、空気圧システムを通して既知の種類のガスを流すことと、外部流量コントローラを介して既知の種類のガスの流量を制御することと、第1の流量センサ及び/又は第2の流量センサ、又はそれらの両方の出力を制御された流量に相関させることとを含む。場合によっては、ガスクロマトグラフィシステムは、入力流路、第1の出力流路、及び/又は第2の出力流路(つまり、第1の出力流路、又は第2の出力流路、あるいはそれらの両方)に沿って配置された少なくとも1つの弁をさらに含むことができ、マイクロコントローラは、少なくとも1つの弁が空気圧システムを通る流量を変更するようにさらに構成することができる。
【0007】
別の実施形態では、ガスの特性は、粘性と、熱分散、熱伝導率、及び熱容量のうちの1つ又は複数とを含むことができる。
【0008】
別の実施形態では、マイクロコントローラは、識別されたガスの種類をユーザが入力したガスの種類と比較し、識別されたガスの種類がユーザが入力したガスの種類と一致しない場合にアラートを生成するようにさらに構成することができる。
【0009】
別の実施形態では、マイクロコントローラは、識別されたガスの種類に基づいてガスクロマトグラフィシステムの1つ又は複数の設定を調整するようにさらに構成することができる。
【0010】
別の実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、第2の出力流路上に配置された第3の流量センサを含むことができ、マイクロコントローラは、第3の流量センサから第3の流量測定信号を生成し、第1、第2、及び第3の流量測定信号から空気圧システムを通るガスの流量のガスの種類を識別するようにさらに構成することができる。
【0011】
別の実施形態では、流量測定信号は、想定される設定済みのガスの流量である。場合によっては、ガスクロマトグラフィシステムは、第2の出力流路上に配置された第3の流量センサをさらに含むことができ、マイクロコントローラは、想定された設定済みのガス(configured gas)の種類について、第3の流量センサから第3の流量とを生成し、第2の流量と第3の流量を合計し、合計された流量を第1の流量と比較し、想定された設定済みのガスの種類が、比較に従って空気圧システムを流れるガスの種類に対応するかどうかを判定するようにさらに構成することができる。
【0012】
場合によっては、マイクロコントローラを合計された流量と閾値未満である第1の流量との差に基づいて、想定された設定済みのガス種類が空気圧システムを通って流れるガスの種類に対応することを判定するようにさらに構成することができる。
【0013】
場合によっては、マイクロコントローラを、合計された流量と第1の流量との差に基づいて、その差を1つ又は複数の予想されるガスの種類の予想される差と比較することによって、空気圧システムを通じて流れるガスについての種類を識別するようにさらに構成することができる。
【0014】
別の実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、ガスと流体連通する電気ヒータをさらに含むことができ、コントローラは、電気ヒータにガスの一部を所定の温度まで加熱させ、ガスの一部を所定の温度まで加熱するのに必要なヒータエネルギーを決定し、第1及び第2の流量測定信号と、ガスの一部を所定の温度に加熱するのに必要なヒータ電力とから、空気圧システムを通じて流れるガスについての種類を識別するようにさらに構成することができる。
【0015】
別の実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、ガスと流体連通する電気ヒータをさらに含むことができ、コントローラは、ガスを所定の温度に加熱するようにヒータを制御し、ガスを所定の温度に加熱するのに必要なヒータエネルギーを測定し、物理的特性に基づいて、考えられるガスの種類を少なくとも2つのグループに分割し、必要なヒータ電力から、空気圧システムを流れるガスがこれらの少なくとも2つのグループのどちらに属するかを判定するようにさらに構成される。
【0016】
別の態様では、ガスクロマトグラフィシステムは、少なくとも第1の出力流路及び第2の出力流路と流体連通する少なくとも1つの入力流路を含む空気圧システムと、入力流路上に配置された第1の流量センサであって、ガスの第1の特性を利用して流量測定信号を生成するように構成された第1の流量センサと、第1の出力流路上に配置された第2の流量センサであって、第1のガス特性とは異なるガスの第2の特性を利用して流量測定信号を生成するように構成された第2の流量センサと、ガスを空気圧システムを通して流して、第1の流量センサから第1の流量測定信号を生成し、第2の流量センサから第2の流量測定信号を生成し、第2の出力流路を通るガスの流量を実質的に一定に保ちながら、入力流路と第1の出力流路を通るガスの流量を変更し、第1の流量センサから第3の流量測定信号を生成し、第2の流量センサから第4の流量測定信号を生成し、第1と第3の流量測定信号の差を取ることによって、流量測定信号の第1の変化を計算し、第2の流量測定信号と第4の流量測定信号との間の差を取ることによって、流量測定信号の第2の変化を計算し、流量測定信号の第1の変化を流量測定信号の第2の変化と比較することにより、ガスの種類を識別するようにプログラムされているマイクロコントローラとを含むことができる。
【0017】
この態様は、様々な実施形態を含むことができる。一実施形態では、マイクロコントローラは、較正手順を実行するようにさらに構成することができる。較正手順は、空気圧システムを通して既知の種類のガスを流すことと、外部流量コントローラを介して既知の種類のガスの流量を制御することと、第1の流量センサ及び/又は第2の流量センサ(つまり、第1の流量センサ又は第2の流量センサあるいはそれらの両方)の出力を制御された流量に相関させることとを含む。
【0018】
別の実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、入力流路、第1の出力流路、第2の出力流路、又はそれらの任意の組み合わせに沿って配置された少なくとも1つの弁を含むことができ、マイクロコントローラは、弁を利用して空気圧システムを通る流量を変更するようにさらに構成することができる。
【0019】
別の実施形態では、マイクロコントローラは、識別されたガスの種類をユーザが入力したガスの種類と比較し、識別されたガスの種類がユーザが入力したガスの種類と一致しない場合にアラート(alert:警告)を生成するようにさらに構成することができる。
【0020】
別の実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、ガスと流体連通する電気ヒータをさらに含むことができ、マイクロコントローラは、ガスをある温度まで加熱するようにヒータを制御し、ガスをある温度まで加熱するのに必要なヒータ電力を測定し、必要なヒータ電力を使用してガスの種類を識別するようにさらに構成される。
【0021】
別の実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、ガスと流体連通する電気ヒータをさらに含むことができ、マイクロコントローラは、ガスをある温度まで加熱するようにヒータを制御し、ガスをある温度まで加熱するのに必要なヒータ電力を測定し、物理的特性に基づいて、考えられるガスの種類を少なくとも2つのグループに分割し、必要なヒータ電力を使用して、空気圧システムを流れるガスがこれらの少なくとも2つのグループのどちらに属しているかを判定するようにさらに構成される。
【0022】
別の実施形態では、流量測定信号は、設定済みのガスの流量であり、マイクロコントローラは、流量測定信号の第1の変化と流量測定信号の第2の変化との間の差が閾値内で実質的に同じであることにより、設定済みのガスの種類が空気圧システムを通って流れるガスの種類であることを識別するようにさらに構成される。
【0023】
別の実施形態では、流量測定信号は、設定済みのガスの流量であり、マイクロコントローラは、流量測定信号の第1の変化と流量測定信号の第2の変化との差を使用して、その差を考えられるガスの種類ごとに予想される差と比較することにより、ガスの種類を識別するようにさらに構成される。
【0024】
本発明の性質及び所望の目的をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照されたい。ここで、同様の参照文字は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】請求項に係る発明の一実施形態によるガスクロマトグラフィシステムを示す。
図2】請求項に係る発明の一実施形態による空気圧システムを示す。
図3】請求項に係る発明の実施形態によるガスクロマトグラフィシステム内のガスを識別するための空気圧システム構成を示す。
図4】請求項に係る発明の実施形態によるガスクロマトグラフィシステム内のガスを識別するための空気圧システム構成を示す。
図5】請求項に係る発明の実施形態によるガスクロマトグラフィシステム内のガスを識別するための空気圧システム構成を示す。
図6】請求項に係る発明の実施形態によるガスクロマトグラフィシステム内のガスを識別するための空気圧システム構成を示す。
図7】請求項に係る発明の実施形態によるガスクロマトグラフィシステム内のガスを識別するための空気圧システム構成を示す。
図8】請求項に係る発明の実施形態によるガスクロマトグラフィシステム内のガスを識別するための空気圧システム構成を示す。
図9】請求項に係る発明の実施形態によるガスクロマトグラフィシステム内のガスを識別するための空気圧システム構成を示す。
図10】請求項に係る発明の実施形態によるガスクロマトグラフィシステム内のガスを識別するための空気圧システム構成を示す。
図11】請求項に係る発明の実施形態によるガスクロマトグラフィシステム内のガスを識別するための空気圧システム構成を示す。
図12】請求項に係る発明の一実施形態によるガスクロマトグラフィシステムの制御システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[定義]
本発明は、以下の定義を参照して最も明確に理解される。
【0027】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別の指示をしない限り、複数の参照を含む。
【0028】
「設定済みのガス(configured gas)」は、ガスクロマトグラフィシステム又は空気圧システムに流れるように設定済みのガスを指すことができる。例えば、システムは、設定済みのガスの異なるパラメータ又は特性に依存して、ガスの流量を見越してシステムの構成要素(例えば、弁、流量(flow amount)、流量又は流速(flow rate)など)を較正する(calibrate:キャリブレーションする)ことができる。設定済みのガスは、例えば、グラフィカルユーザインターフェース、スイッチなどのユーザインターフェースによって、ガスについてのシステム推定などによって指定することができる。
【0029】
「実際のガス(actual gas)」は、ガスクロマトグラフィシステム又は空気圧システムを通って流れるガスを指すことができる。場合によっては、システムを流れる実際のガスは、特に設定済みのガスがユーザ又はシステムによって誤って選択された場合、設定済みのガスとは異なる可能性がある。
【0030】
特に述べない限り、又は文脈から明白でない限り、本明細書で使用する「約(about)」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均値の2標準偏差内であると理解される。「約」は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%の範囲内として理解できる。文脈からその他の点で明らかでない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、約という用語によって修飾される。
【0031】
明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」などは、米国特許法でそれらに属するものとみなされる意味を持つことができ、「含む(include)」、「含んでいる(including)」などを意味する場合がある。
【0032】
特に述べられていないか、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「又は(or)」という用語は、包含的であると理解される。
【0033】
本明細書で提供される範囲は、範囲内のすべての値の略記であると理解される。例えば、範囲は、任意の数、数の組み合わせなどを含むと理解される(文脈上明らかに別段の指示がない限り、それらの小数(fractions)も含む)。
【0034】
[ガスクロマトグラフィシステム]
本明細書に記載の方法は、ガスクロマトグラフィシステムによって実施することができ、本明細書に記載のシステムはガスクロマトグラフィシステムの一部とすることができる。例示的なガスクロマトグラフィシステムが図1に示されている。ガスクロマトグラフィシステムは、試料の成分を蒸発させ、分離し、検出することができる。これは、試料をガスクロマトグラフィ(「GC:gas chromatography」)システムに注入し、試料をGCカラムを通して流すことによって達成でき、試料の成分又は分析物が分離され、分析物が検出器を通過する際に、分析物の相対量及び/又は同一性(つまり、相対量又は同一性あるいはそれらの両方)を表す信号が生成される。図1に示されるように、システムを通る流体の流量は、矢印185のような単線の矢印として示され、システム内の電子通信は、矢印175のような二重線の矢印として示される。
【0035】
[試料源]
試料源105は、ガスクロマトグラフィシステムによって気相に転移する能力を有する任意の試料、例えば、約450℃までの温度で相転移を有する任意の固体、液体、又は気体の物質を含むことができる。したがって、試料源105として、かなりの数の化学物質及び生物製剤が利用可能である。場合によっては、試料源105は、バイアル(vial)又は容器(container:コンテナ)などに、源抽出(source extraction:ソース抽出)前に保管することができる。
【0036】
[GC入口]
ガスクロマトグラフィシステム100はまた、GC入口(inlet:インレット)120、例えば、図2に示されるGC入口を含むことができる。GC入口120は、カラム135及びガスクロマトグラフィシステム100の他の流量構成要素への試料及びキャリアガス輸送をさらに調節することができる。GC入口はまた、空気圧システム180などの空気圧システムの一部であってもよい。
【0037】
空気圧システムの実施形態が図2に示されている。空気圧システム200は、図1の空気圧システム180の例とすることができる。分析する試料は、空気圧システムのGC入口に注入できる。これは通常、オートサンプラー(autosampler)(液体オートサンプラー、ヘッドスペースサンプラー、パージ及びトラップ、弁など)を使用して、又は空気圧システムの隔壁275に穴を開け、試料を入口溶接部215の内部容積に流し込むことを可能にする針、注射器、又は他の試料プローブ又は管を手動で使用して試料の量を測定することによって生じする。あるいは、サンプリングデバイス(弁など)を他の手段(例えば、管、溶接など)でGC入口に接続して、隔壁を使用せずに試料を入口に流入させることもできる。まだガス状態でない場合、GC入口に注入された試料は、GC入口に流体結合されたGCカラムに流入する前に、GC入口内で気化されうる。入口は、試料の気化を促進するため、又は試料をガス状態に維持するために、約450℃までの温度に加熱することができる。
【0038】
空気圧システム200は、GC入口溶接部215に流体結合された複数の流路を含むことができる。一部の流路は、ガスが外部ソースからGC入口に流れる入力流路であり、一部の流路は、ガスが空気圧システムから周囲環境又はGCシステムの他の構成要素(例えば、GCカラム、検出器など)などの外部シンクに流れる出力流路である。
【0039】
空気圧システム200は、キャリアガス供給流路205を含むことができる。キャリアガス供給流路205は入力流路であり、キャリア供給ポート210をGC入口溶接部215に接続することができる。例えば、空気圧システム200は、キャリア供給ポート210を介して、ガスの加圧容器又は実験室ガス供給マニホルドなどのガス源110からキャリアガスを受け取ることができる。キャリアガスは、GC入口、GCカラム、及び検出器などのGCシステムの様々な構成要素を通して試料を流すために使用される不活性ガスとすることができる。キャリアガスの例には、ヘリウム、窒素、水素、アルゴン-メタンの混合物などが含まれる。
【0040】
空気圧システムはまた、隔壁パージ流路(septum purge flowpath)225を含むことができる。隔壁パージ流路225は、出力流路であり、空気圧システム200内の圧力、試料量などの調節を容易にすることができる。キャリアガス供給流路を通ってGC入口に入るキャリアガスは、GC入口隔壁を通過した後、隔壁パージ流路を通って流れてもよい。これにより、入口隔壁から発生したガスをシステムからパージして、GCカラム及び/又は検出器(つまり、GCカラム又は検出器あるいはそれらの両方)などの試料流路の汚染を防ぐことができる。隔壁パージ流路225は、パージベント(purge vent)に接続することができる。パージベントは、開くと、内容物、圧力などを隔壁パージ流路から周囲環境に放出することができる。
【0041】
場合によっては、空気圧システムはまた、出力流路である分割流路220を含むことができる。分割流路は、開いている場合、内容物、圧力などを分割流路220から周囲環境に放出することもできる。さらに、分割流路220は、試料と混合されたキャリアガスの一部が、GCカラムを通過するのではなく、分割流路220を介してGC入口を出て廃棄できるようにすることにより、カラム(column)(例えば、カラム280)に輸送される入口に入力される試料の体積及び/又は割合(つまり、体積又は割合あるいはそれらの両方)を調節することができる。これにより、カラムに入る試料の量を減らすことができ、カラムのオーバーロードを回避できる。これにより、ピーク形状が低下しうる。分割流路220は、周囲環境に導くことができる分割ベントに接続することができる。
【0042】
空気圧システム200はまた、GCカラム280を含むことができるカラム流路を含むことができる。カラム流路は、キャリアガス及び試料を、GC入口溶接部の空気圧システムの内部から、分析されるカラム(例えば、カラム280)に流すことができる。ほとんどの場合、カラム流路は出力流路である。例えば、試料をGCカラムを通して流す場合、又はスタンバイモードでGCカラムを通してキャリアガスを流す場合などである。しかしながら、場合によっては、分割流路を介してカラムから試料又は汚染物質の成分をバックフラッシュする場合など、カラム流路が入力流路になりうる。本出願全体で説明されているキャリアガス識別の例では、カラム流路は出力流路として機能することができる。
【0043】
空気圧システム200は、空気圧システム内のパラメータ(例えば、流量、圧力など)を監視及び制御するための様々な感知デバイス及び弁を含むことができる。例えば、空気圧システムのいくつかの流路(例えば、キャリアガス流路205、隔壁パージ流路225、分割流路220など)は、少なくとも1つの弁(例えば、弁230、弁235、弁240など)を含むことができる。各弁は、それぞれの流路が空気圧システム200の他の構成要素又はキャリアガス源又は周囲環境に接続されるか(例えば、開く)、又は切断されるか(例えば、閉じられる)を制御することができる。各弁は、切換弁、比例弁などとすることができる。場合によっては、空気圧システムのカラム流路は弁を含まない。
【0044】
さらに、空気圧システム200内の流路に様々なセンサを結合することができる。流量センサは、当業者に知られている様々な種類でありうる。空気圧システムの流路に使用される典型的な流量センサでは、ガスの流量を正確に決定するために、センサを流れるガスの種類を知る必要がある。例えば、流量センサは、熱分散流量センサであってもよく、これは、ガスの熱伝導率を使用して、流れるガスを加熱するための熱源を提供することによって流量を測定し、ヒータの上流と下流の温度差を測定する。2つのセンサ間の温度差は、ガスの流量とガスの熱伝導率に比例する。別の例では、流量センサは、フリット(frit)、管、マニホルド内のチャネル、オリフィス(orifice)などの流量制限の上流及び/又は下流(つまり、上流又は下流あるいはそれらの両方)の少なくとも1つの圧力センサでありうる。あるいは、制限はGCカラムであってもよい。一実施形態では、流量センサは、制限の上流に1つの圧力センサを含むことができ、制限の下流で周囲圧力に対して開けることができる。この種類の流量センサは、ガスの粘性と、制限の内部寸法及び/又は形状(つまり、寸法又は形状あるいはそれらの両方)を使用して、制限での圧力降下をガスの流量に関連付けることにより、流量を測定する。温度センサは、圧力降下から流量を計算する際に使用するガスの粘度を見つけるために、ガスの温度を示すことができる。
【0045】
利用できる他の種類の流量センサには、コリオリ、超音波、及び渦放出センサ(vortex shedding sensor)などが含まれうる。
【0046】
流量センサは、ガスの流量を示す流量測定信号を出力することができる。これは、生の電圧又は電流の形式である場合もあれば、代わりに、較正データ(calibration data)を介してガスの流量に単独又は共同で関連付けることができる信号のデジタル表現とすることもできる。これは、流量測定信号(生の電気出力(raw electrical output))と呼ばれる。
【0047】
流量測定信号は、較正情報を使用して流量センサの生の電気出力を流量に変換した後のガスの流量(例えば、mL/分など)も含むことができる。これを流量測定信号(流量)と呼ぶ。単独で使用する場合、流量測定信号は生の電気出力又は流量のいずれかを指すことができる。
【0048】
ここに示す2つの例では、流量測定は、熱伝導率や粘度などのガスの特性に依存している。したがって、ガスの流量を測定するには、ガスの種類を知る必要がある。システムは、様々なガスの種類に合わせて較正することができる。例えば、システムを通して較正ガス(calibration gas)を流すことができる。較正ガスは、GCシステムで使用される典型的なガスであるヘリウム、水素、窒素、又はアルゴン-メタンなどの既知の組成のものにすることができる。システムは、独立した流量センサによって測定された既知の流量で流量センサを介して各ガスを流し、各流量の流量測定信号を取得することができる。システムは、較正ガスに対応するこれらの測定値を記憶できる。
【0049】
一例として、流量センサ(例えば、流量センサ245)は、キャリアガス流路205に結合することができ、キャリアガス流路205及び/又は空気圧システム200(つまり、キャリアガス流路205又は空気圧システム200あるいはそれらの両方)の他の構成要素を通る流量についての流量測定信号を生成することができる。流量センサ(例えば、フリット270と結合された圧力センサ250)は、隔壁パージ流路225に結合されうる。隔壁パージ流路が周囲圧力に開いているか、又は追加の圧力センサ(図示せず)をフリット270の下流に配置できると想定することができる。流量センサ(例えば、カラム280に結合された圧力センサ255)は、カラム流路290に結合することができる。多くの場合、カラム280は、どの検出器285がカラム280の出口(outlet:アウトレット)に流体接続されているか、又は追加の圧力センサ(図示せず)がカラム280の下流に配置されうるかに応じて、大気圧又は真空に開くと想定することができる。カラム温度制御デバイスはカラムの温度を示すことができ、これは流れるガスの粘度を決定するためにさらに利用することができる。他の場合では、圧力センサ255から測定された圧力でのカラム流量は、カラムの遠位端(出口)での未知又は変化する条件のために、又は、カラムがキャピラリーカラムではなく充填カラムである場合に、計算が困難又は不可能である可能性がある。本出願に記載されているいくつかの実施形態の利点は、カラムの流量の正確なモデルを必要とせずにガスの種類を判定することができることである。さらに、本明細書に示される流量センサは単なる例であり、流量センサの他の種類又は組み合わせを使用することができる。
【0050】
空気圧システムの流路はまた、マイクロチャネル、流量制限器、管などを含むことができる。マイクロチャネル及び流量制限器は、対応する流路を通るガスの流量、ならびに下流及び/又は上流(つまり、下流又は上流あるいはそれらの両方)の他の成分の圧力及び流量を制限することができる。例えば、キャリア供給流路205はフリット265を含むことができ、隔壁パージ流路225はフリット270を含むことができる。場合によっては、弁230、235、240などは、例えば弁が比例弁である場合、流量制限器として機能することもできる。さらに、カラム及び/又はカラム流路(つまり、カラム又はカラム流路あるいはそれらの両方)に結合された他の流体成分は、カラム流路を通る流量に影響を与える制限として機能しうる。
【0051】
センサ、比例弁、及び空気圧制限で構成される空気圧システムを(電子閉ループコントローラと共に)使用して、入口に出入りするガスを制御することができる。例えば、流量センサ245及び比例弁235を使用して、結果として生じるカラム圧力を測定する圧力センサ255で入口への流量を制御することができる。あるいは、圧力センサ255は、カラム280のヘッドでの圧力を制御するために、同じ弁235と共に閉ループ方式で使用されてもよい。この場合、空気圧システムは、制限(カラム)全体にわたる圧力を制御することにより、入口からの流出(カラムの流量)を効果的に制御しており、205で得られる流量は、流量センサ245によって測定される。同様の方法(制限器全体にわたる圧力)で、隔壁パージ経路(240、250、270)は、入口から出る追加の経路のための流量コントローラを形成する。理想気体の法則(Ideal Gas Law)に基づいて、空気圧システム内の圧力が静的である場合、入口への実際の流量の合計は、入口からの実際の流量の合計と等しくなければならないことに注意することが重要である。いくつかの場合において、分割経路220は、カラムへの分割経路220を(例えば、弁230を介して)開閉することによって、出口流量決定に含まれてもよいし、含まれなくてもよい。さらに、場合によっては、分岐経路220が出口流量決定に使用されるかどうかは、流量センサが分岐経路220に結合されているかどうかに基づくことができる。
【0052】
図2に示す空気圧システムは、空気圧システムの一実施形態であり、分割/分割なし(「SSL」(split/splitless))入口として知られているものを表す。分割モードでは、入口は弁230を開いて、空気圧システムから出る試料を分割流路とカラム流路との間で分割することができる。分割なしモードでは、弁230を閉じることができ、入口に注入されたすべての試料がカラムの流路を通って排出される。本発明の好ましい実施形態は、未知の分割経路220の流量がゼロであるように分割なしモードの入口を有するが、ガス種類は、合計式「流入量=流出量の合計」の誤差が最小になるように、より低い分割流量で分割モードで任意に決定できることが理解できる。マルチモード入口(MMI:multi-mode inlet)、クールオンカラム(COC:cool-on-column)入口、及び揮発性物質入口(VI:volatiles inlet)など、複数の種類の入口が存在する。これらの入口は、異なる入力流路及び出力流路、及び/又は流路上の弁と流量センサ(つまり、入力流路及び出力流路、又は流路上の弁と流量センサ、あるいはそれらの全て)の異なる組み合わせを有することができる。例えば、COC入口には分割流量経路がない場合があるが、すべて入口から出る複数の流量経路(カラム流量、隔壁パージ流量)と流入流量の流量センサ245があり、全入口の流量と全出口の流量の比較を評価できるようにする。
【0053】
[カラム]
試料成分の分離は、図1のカラム135のようなガスクロマトグラフィシステムのカラムで起こりうる。カラム135は、気化されず、異なる試料成分と異なる方法で相互作用する物質(例えば、固定相)を含むことができる。相互作用は、化学的ではなく、本質的に物理的(例えば、吸着、「溶媒和(solvation)」、ふるい分け(sierving)など)とすることができる。例示的なカラムは、その壁に適切なポリマーフィルムのコーティングを有するキャピラリー管(例えば、長さ5~100m、直径0.1~0.5mm)でありうる。カラムには、直接又は粒子のコーティングにより、試料と相互作用できる粒子を含めることもできる。いずれの場合も、試料成分がカラムを通過する際、一部の成分は他の成分よりも強く固定相と相互作用し、長時間保持される。したがって、試料成分は、固定相との相互作用の違いに応じて異なる出口時間(exit time)で、キャリアガスによってカラム135の検出器端に運ばれる。さらに、GCシステムは、直列又は並列に接続された1つ又は複数のカラムを有することができる。カラムはまた、カラムの長さに沿った1つ又は複数の点で他のガス流源に接続されて、カラムを通る流量を変更することができる。
【0054】
[カラム温度制御]
カラムとの相互作用は物理的相互作用であるため、カラム135の温度を制御することによって(例えば、カラム温度制御デバイス140を介して)相互作用を調節することができる。一部の試料では、一部の成分は所定の温度でカラム135と最小限に相互作用することができ、一方、他の成分はその同じ温度で無期限に保持することができる。したがって、カラム温度制御デバイス140は、試料成分がカラム135を通って移動している間、制御された(かつ反復可能な)方法でカラム温度を制御することができる。物理的相互作用の性質を考えると、この温度制御には、試料溶出中のカラム135の温度の上昇が含まれうる。最後の成分がカラムから溶出したら、次の試料を導入する前に温度を開始温度に戻すことができる。一部の試料では、望ましい開始温度は室温より低くてもよく、一部の試料では、望ましい開始温度は室温又はそれに近い温度でもよく、他の試料では、望ましい開始カラム温度は室温より高くてもよい。場合によっては、カラム温度制御デバイスは対流式オーブンであってもよい。他の場合では、カラム温度制御デバイスは伝導加熱装置であってもよい。
【0055】
[検出器]
試料の分離された成分は、検出器145によって受け取り又は識別することができる。検出器145は、試料成分の一部又は全部がカラム135から溶出するときに、電気信号の変化を提供することができる。一部の検出器は、分子の物理的特性を使用して、異なる分子を区別することができる。検出器の典型的な種類は、熱伝導率検出器である。熱伝導率検出器は、検出器を通過するガスの熱伝導率を監視する。試料成分の熱伝導率がキャリアガスの熱伝導率と異なる場合、信号を生成することができる。他の検出器は、化学反応に依存して、電気信号を提供できる新しい種を生成することができる。一部の検出器は、キャリアガスがイオン化されず、試料分子がイオン化されるイオン化プロセスに依存しうる。イオン化は、場合によっては、イオンを収集してイオン電流を監視することにより、電気信号として測定できる。また、試料分子を励起形式に変換し得て光子を放出する検出器もいくつか存在する。光子は、光子が電気信号に変換される光電子増倍管などのデバイスを使用して検出することができる。検出器には、反応物質又はスイープ流量として追加のガスを含めることもできる。これらのガスの制御は、電気機械システムによって行うことができる。いくつかの実施形態では、GCシステムは、1つ以上の検出器を含みうる。
【0056】
[信号プロセッサとデータ分析器]
信号プロセッサ150は、検出器145によって生成された電気信号を受け取り、信号を処理することができる。データ分析器155は、信号プロセッサ150から受け取ったガスクロマトグラフィ信号を、化合物識別及び較正量(calibrated amount)に変換することができる。データ分析器は、GCシステムに搭載されている場合もあれば、コンピュータの外部にある場合もある。
【0057】
[入力/出力デバイス]
入力/出力デバイス165は、ガスクロマトグラフィシステムへの入力を受け取り、及び/又はガスクロマトグラフィシステムから出力を表示することができる(つまり、入力の受け取り、又は出力の表示、あるいはそれらの両方をすることができる)。入力/出力デバイス165は、アナログスイッチ又はキーボード及びディスプレイ又はタッチスクリーンとすることができる。あるいは、適切なソフトウェアを備えた外部コンピュータを介して、設定値の入力とシステム監視を行うこともできる。
【0058】
[制御システム]
制御システム160は、ガスクロマトグラフィシステムの動作を制御して所望の結果を達成するようにプログラムされた電子デバイスとすることができる。制御システム160は、(フィードバックデバイス又はユーザからの)入力を必要とせずにガスクロマトグラフィレジメンを自動的に実行するようにプログラムすることができ、又はそのような入力を組み込むことができる。構成要素の動作を調整するためにフィードバック(温度センサなどから)を使用する方法の原則は、例えば、Karl Johan Astrom & Richard M.Murray著、Feedback Systems:An Introduction for Scientists & Engineers、(2008)に記載されている。
【0059】
制御システム160は、マイクロコントローラ(例えば、ARDUINO(登録商標)OR IOIO(登録商標)の下で入手可能)、汎用コンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ又はPC)、ワークステーション、メインフレームコンピュータシステムなどのコンピューティングデバイスとすることができる。例示的な制御システムが図12に示されている。制御システム(「制御ユニット」)1200は、プロセッサデバイス(例えば、中央処理装置すなわち「CPU」)1202、メモリデバイス1204、記憶デバイス1206、システムバス1210、及び通信インターフェース1212を含むことができる。
【0060】
プロセッサ1202は、命令を実行し、データを処理するための任意の種類の処理デバイスなどとすることができる。
【0061】
メモリデバイス1204は、任意の1つ又は複数のランダムアクセスメモリ(「RAM」(random access memory))、読み取り専用メモリ(「ROM」(read-only memory))、フラッシュメモリ、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(「EEPROM」(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory))などを含む任意の種類のメモリデバイスとすることができる。
【0062】
記憶デバイス1206は、任意のリムーバブル及び/又は統合された光、磁気、及び/又は光磁気記憶媒体などから/任意のリムーバブル及び/又は統合された光、磁気、及び/又は光磁気記憶媒体などへ読み書きするための任意のデータ記憶デバイスであることができる(例えば、ハードディスク、コンパクトディスク読み取り専用メモリ「CD-ROM」(compact disc-read-only memory)、「CDRW」(CD-ReWritable)、「DVD-ROM」(Digital Versatile Disc-ROM)、DVD-RWなど)。記憶デバイス1206は、システムバス1210に接続するためのコントローラ/インターフェースも含むことができる。したがって、メモリデバイス1204及び記憶デバイス1206は、プロセッサ1202上で実行するためのプログラムされたプロセスのデータ及び命令を記憶するのに適している。
【0063】
通信インターフェース1212は、任意の種類の外部デバイス又はガスクロマトグラフィシステムの他の構成要素と通信するように適合及び構成することができる。例えば、矢印175などの二重線矢印は、図1の制御システム160とガスクロマトグラフィシステムの別の構成要素との間の電子通信を示している。通信インターフェース1212はさらに、ローカルエリアネットワーク(「LAN」(local area network))、広域ネットワーク(「WAN」(wide area network))、インターネットなど上の1つ又は複数のコンピューティングデバイスなど、任意のシステム又はネットワークと通信するように適合及び構成することができる。通信インターフェース1212は、システムバス1210に直接接続することができ、又は適切なインターフェースを介して接続することができる。
【0064】
したがって、制御システム1200は、それ自体で、及び/又は1つ又は複数の追加のデバイスと協働して(つまり、それ自体で、又は1つ又は複数の追加のデバイスと協働して、あるいはそれらの両方により)、請求項に係る発明によるガスクロマトグラフィシステムの構成要素を制御するためのアルゴリズムを含むことができるプロセスを実行することができる。制御システム1200は、任意のプラットフォーム上の任意の通信プロトコル及び/又はプログラミング言語(つまり、通信プロトコル又はプログラミング言語あるいはそれらの両方)に従ってこれらのプロセスを実行するようにプログラム又は命令することができる。したがって、プロセスは、メモリデバイス1204及び/又は記憶デバイス1206(つまり、メモリデバイス1204又は記憶デバイス1206あるいはそれらの両方)に記憶された、又はプロセッサ1202上で実行するために通信インターフェース1212で受け取られた命令と同様に、データで具現化することができる。
【0065】
[キャリアガスの識別]
GCシステムに入るキャリアガスを適切に識別することは、試料中の分析物の同一性及び/又はや相対量(つまり、同一性又は相対量あるいはそれらの両方)を正確に識別するために重要である。前述のように、空気圧システムの流量センサは、システムを通るガスの流量を適切に制御するために、使用されているキャリアガスの種類に関する知識を必要とする場合がある。キャリアガスが異なれば、粘度や熱伝導率又は他の特性も異なるため、同じ実際の流量に対して異なる流量測定信号(生の電気出力)を生成したり、及び/又は異なる流量センサ較正データを必要とする場合がある。GCシステムを通るガスの流量を適切に制御するには、使用するガスの種類を知る必要がある。
【0066】
GCシステムを通る適切な流量を維持することの重要性の例として、カラムを通る流量は、分析物の保持時間、ピーク形状、及び/又はカラムの分離能力(つまり、保持時間、ピーク形状、又はカラムの分離能力、あるいはそれらの全て)に影響を与える。したがって、流量が正しくないと、分析物が不適切に識別又は定量化される可能性がある。さらに、SSL入口の動作の分割モードで使用すると、カラムと分割ベントを通る相対的な流量が、分析のためにカラムに入る試料の割合に影響を与える可能性がある。分割比が正しくないと、カラムに入る試料が多すぎたり少なすぎたりして、分析物の定量精度に影響を与える可能性がある。
【0067】
既存のGCシステムでは、ユーザは、例えば図1の入力/出力デバイス165を使用して、GCシステムによって使用されているキャリアガスの種類を入力することが期待される。これは、ユーザ誤差が発生しやすくなる。ユーザは、分析に使用する予定のガスを入力/出力デバイス165に入力することができるが、キャリア供給ポート210には誤ったガスを接続する場合がある。あるいは、ユーザは、分析に使用する予定のガスをキャリア供給ポート210に接続することができるが、誤ったガスを入力/出力デバイス165に入力する場合がある。GCシステムに、空気圧システムに流し込むキャリアガスを識別させることで、これらの問題を解消できる。
【0068】
[入力/出力流量測定信号の比較]
本明細書に記載の方法は、空気圧システム内の異なるガス特性を利用する複数の流量センサからの流量測定信号を比較することによって、キャリアガスの種類を識別することができる。特に、本明細書に記載の方法は、場合によっては、従来のガスクロマトグラフィシステム(例えば、図1のガスクロマトグラフィシステム100)によってすでに依存しているハードウェアによって実施することができるため、このハードウェアは、本明細書に記載の方法を実行するために再利用又は再構成される。
【0069】
前述のように、理想気体の法則などのガスの法則は、静圧でシステムに適用されると、システム内の任意のポイントに入る実際の(真の)質量流量が、そのポイントから出る実際の(真の)質量流量と同じになるように制約される。そうでないと、そのポイントでの圧力が増加又は減少する。
【0070】
GC空気圧システムの入口部分に見られるように、少なくとも1つの入力流路と2つ以上の出力流路の空気圧システムに適用される場合、すべての入力流量の合計は、すべての出力流量の合計と等しくなければならない。これは、ノードに出入りするすべての電流の合計が等しくなければならないという電子回路のKirchoffの法則に類似している。図2に示すような1つの入力流路と3つの出力流路を備えた分割あり/分割なし入口の場合、これは、キャリアガス供給流量=カラム流量+隔壁パージ流量+分割流量、を意味する。
【0071】
様々な種類の流量センサ(熱拡散率、制限にわたる圧力などを利用して流量を測定)は、実際のガスが設定済みのガスと異なる場合、どちらも流量測定信号(流量)に誤差があるが、さらに重要なことに、誤差は流量センサの種類によって異なる。この不一致は、現在のガスが設定済みのガスではないかどうかを判定するために使用でき、場合によっては、ガスの種類を(様々な較正済みガス(calibrated gas)の中から)判定するために使用できる。
【0072】
あるいは、同じ原理を使用して、流量測定信号(生の電気出力)の誤差を使用して、現在のガスが較正済みのガスではないことを判定するために使用でき、場合によっては、ガスの種類を(様々な較正済みのガスの中から)判定するために使用できる。
【0073】
ガスクロマトグラフィシステムは、入口の出力流路上の少なくとも1つの出力流量測定信号と同様に、入力流路上の空気圧システムに入力されたガスの流量測定信号又は複数の流量測定信号を感知することができ、空気圧システムには、少なくとも2つの出力流路がある。流量センサを備えた、又は備えていない出力流路は、それらを通過する流量が実質的にない状態で閉じることができる(例えば、合計式におけるそれらの値はゼロである)。入口の流路の入力及び出力流量測定信号を監視することにより、ガスクロマトグラフィシステムは、空気圧システムを流れるガスの種類を判定したり、及び/又はシステムが実際のガスに対して適切に構成されるかどうかを判定したり(つまり、ガスの種類を判定したり、又はガスに対して適切に構成されるかどうかを判定したり、あるいはそれらの両方をすることが)できる。場合によっては、システムは入力及び出力流量測定信号から実際のガスの種類をさらに識別することができる。
【0074】
空気圧システムは、入力流路と出力流路を介してガスを流し、流量センサで流量測定信号を記録する。入力流路上の少なくとも1つの流量センサは、出力流路上の少なくとも1つの流量測定センサとは異なる種類のものとすることができる。別の言い方をすれば、入力流路上の流量測定センサは、出力流路上の少なくとも1つの流量センサとは異なる特性を利用して、流量測定信号を生成することができる。例えば、入力流路の流量センサは、熱伝導率を利用して流量を測定する熱分散流量センサとすることができ、一方、出力流路の流量センサは、粘度を利用して流量を測定する制限を超えた圧力とすることができる。熱分散流量センサの場合、熱伝導率が異なるガスは、同じ流量に対して流量センサから異なる応答を生成する。さらに、制限を超えた圧力降下で構成される流量センサの場合、異なる粘度のガスは、同じ流量に対して流量センサから異なる応答を生成する。流量を測定するために異なる特性を使用する他の種類の流量センサも考えられる。
【0075】
次いで、システムは、入力流路上の流量センサからの流量測定信号を、出力流路上の流量センサからの流量測定信号と比較することができ、空気圧システムを流れるガスを識別する。流量測定又は計算の場合、システムは、入力流路上の流量センサからの流量測定信号(流量)を、出力流路上の流量センサからの流量測定信号(流量)と比較することができ、空気圧システムを流れるガスを識別する。入力流路上の流量センサの少なくとも1つが、出力流路上の流量センサの1つとは異なる特性を利用して流量を測定するため、GCシステムは、入力流路と出力流路の流量センサからの流量測定信号が一致するかどうかに基づいて、異なる特性を持つガスに対する流量センサの応答の違いに基づいてガスを識別することができる。一致とは、入力流路と出力流路の流量測定信号が、流量測定信号を持たない出力流路に関する知識と相まって、システム内を流れるガスと同じ量のガスがシステムから流出していることを示していることを意味する。
【0076】
例として、一般的に使用される2つのキャリアガスである窒素とヘリウムの粘度は類似しており、したがって、センサの分解能によっては、粘度ベースの流量センサ(例えば、制限を超えた圧力センサ)の応答は、同じ実際のガスの流量に対してこれら2つのガスを区別できない場合がある。しかしながら、窒素とヘリウムは熱伝導率が異なる。窒素とヘリウムに対する熱拡散流量センサの応答は異なる。これに関して、ヘリウムが空気圧システムを流れていた場合、入力流路の熱分散流量センサと出力流路の粘度ベースの流量センサの流量測定信号は、設定済みのガスとしてのヘリウムでは一致(例えば、システムから出るのと同じ量のシステムへの流入を示す)するが、設定済みのガスとしての窒素では一致しない。この比較に基づいて、ヘリウムが空気圧システムを流れるガスであると判定できる。
【0077】
入力流量測定信号と出力流量測定信号との間の一致を決定する際に、空気圧システムをガス用に構成することができる。つまり、ある種類のキャリアガスが空気圧システムを通って流れていると想定することができる(つまり、設定済みのガス)。キャリアガスは較正済みのガス(calibrated gas)の1つである。流量測定信号は、ルックアップテーブル、式、又は設定済みのキャリアガスの較正データ(calibration data)に依存する他の方法を使用して比較することができる。流量測定信号が一致する場合(例えば、入力流路の流量測定信号は、空気圧システムに入る流量は、出力流路の流量測定信号で示されるように、入口から出る流量と同じであることを示す)、設定済みのガスは正しい。より具体的には、入力流路上の流量測定信号(流量)の合計を、設定済みのガスの出力流路上の流量測定信号(流量)の合計と比較することができる。それらが一致する場合(例えば、典型的な測定誤差内で実質的に同じである場合)、設定済みのガスは、空気圧システムを流れるガスの種類である。
【0078】
流量測定信号が一致しない場合は、次いで、空気圧システムを別のガス用に構成することができ、流量測定信号を比較するプロセスを繰り返すことができる。あるいは、正しく設定済みではないガスの入力流路と出力流路の流量測定信号の差を使用して、空気圧システムを流れるガスを識別することができる。
【0079】
別の例として、空気圧システムがガス用に構成されていない場合がある。この場合、入力流路の流量測定信号を出力流路の流量測定信号と比較することができる。ルックアップテーブル又は、流量測定値を較正済みのキャリアガスに一致させる式は、空気圧システムを流れるキャリアガスの種類を示すことができる。
【0080】
[隔壁パージ流量をオフにした入力/出力流量測定]
一実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、ガス入力流路335及びカラム流路340の両方のセンサからの流量測定信号を監視することができる。図3は、請求項に係る発明の一実施形態によるキャリアガスを識別するように構成された空気圧システム300を示す。空気圧システム300は、ガス供給ポート305を通して入口にガスを流すように構成することができる。ガスクロマトグラフィシステムは、入力流路上の弁310を開く(例えば、比例して開く)ように構成することができる。ガスは、弁310及びキャリアガス供給流量センサ315を通って流れることができる。キャリアガス供給流量センサ315は、入口に流入するガスの特性(例えば、熱伝導率、粘度など)に対応する流量測定信号を生成することができる。
【0081】
システムはさらに、隔壁パージ流路と分割流路の両方を閉じるように構成することができる。例えば、システムは、弁320及び325を閉じるように構成することができる。したがって、システムは、カラム流路を通過する空気圧システムの流量出力を制限することができる。カラム流量センサ345は、流れるガスの特性(例えば、粘度、熱伝導率など)に対応し、入口から(例えば、カラム流路を介して)流出するガスを表す流量測定信号を生成することができる。キャリアガス供給流量センサ315及びカラム流量センサ345は、異なる特性を利用して流量測定信号を生成することができる(例えば、キャリアガス供給流量センサ315は、熱分散流量センサであってもよく、カラム流量センサ345は、カラム制限350を超えた圧力を測定するカラム圧力センサ330であってもよく、例えば粘度ベースの流量センサである)。GCシステムは、前述のようにキャリアガス供給センサとカラム流量センサからの流量測定信号を比較することにより、入口を流れるキャリアガスの種類を識別することができる。場合によっては、閉じた流路(例えば、隔壁パージ流路や分割流路)内のガス流の欠如に関する知識も、キャリアガスの種類を識別する際に考慮に入れることができる。
【0082】
図4は、請求項に係る発明の一実施形態による、キャリアガスを識別するように構成された空気圧システムを示す。空気圧システム400は、図3に示し、上で説明した空気圧システム300と同様に機能することができる。しかしながら、空気圧システム300では、弁310は、第2の流量センサ330から受け取った測定値に基づいて制御及び構成することができる一方、空気圧システム400の弁410は、キャリアガス供給流量センサ415から受け取った測定値に基づいて制御及び構成することができる。これらの閉ループフィードバックシステムについては、以下で詳しく説明する。
【0083】
[カラムと隔壁のパージをオンにした場合の入力/出力流量の比較]
別の実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、ガス入力流路、カラム流路、及び隔壁パージ流路からの流量測定信号を監視することができる。図5は、請求項に係る発明の一実施形態による、キャリアガスを識別するように構成された空気圧システム500を示す。空気圧システム500は、ガス供給ポート505を通して入口にガスを流すように構成することができる。ガスクロマトグラフィシステムは、入力流路565上の弁510が開く(例えば、比例して開く)ように構成することができる。ガスは、弁510及びキャリアガス供給流量センサ515を通って流れることができる。キャリアガス供給流量センサ515は、空気圧システム500に流入するガスの特性に対応する流量測定信号を生成することができる。
【0084】
システムはさらに、出力分岐流路545を閉じるように構成することができる。例えば、システムは、分割流路545上の弁525を閉じるように構成することができ、それによって、カラム流路及び隔壁パージ流路を通るガスの流量出力を制限することができる(例えば、開いた弁520を介して隔壁パージ流路へ)。隔壁パージ流量センサ550(例えば、圧力センサ535及び制限555)とカラム流量センサ540(例えば、圧力センサ530及びカラム制限560)との組み合わせは、ガスの他の特性に対応する、入口から(例えば、カラム流路及び隔壁パージ流路を介して)流出するガスの流量測定信号を生成することができる。隔壁パージ流量センサ550及びカラム流量センサ540の少なくとも1つは、流れるガスの異なる特性を利用して、空気圧システム内の他の流量センサと比較して流量測定信号を生成することができる。例えば、キャリアガス供給流量センサ515は、熱分散流量センサであってもよく、一方、隔壁パージ流量センサ550及び/又はカラム流量センサ540のうちの少なくとも1つは、粘度ベースの流量センサであってもよい。
【0085】
システムは、入力及び出力流路の流量センサからの流量測定信号を感知することができる。例えば、システムのマイクロコントローラは、キャリアガス供給流量センサ515、隔壁パージ流量センサ550、及びカラム流量センサ540から感知信号を受け取ることができる。場合によっては、マイクロコントローラは、図1の制御システム160の一部とすることができる。次いで、システムは、キャリアガス供給流量センサ515から生成された流量測定信号を、隔壁パージ流量センサ550及びカラム流量センサ540から生じる流量測定信号と比較することができる(例えば、隔壁パージ及びカラム流量センサの流量測定信号(流量)の合計を、キャリアガス供給流量センサの流量測定信号(流量)と比較する)。この比較から、システムは流れるガスに対して入口が正しく構成されているかどうかを判定することができる(例えば、隔壁パージ及びカラム流量センサの流量測定信号(流量)の合計が、キャリアガス供給流量センサの流量測定信号(流量)と実質的に等しい場合、設定済みのガスはガス空気圧システムを流れる)。さらに、又は代わりに、システムは、比較から、流れるガスのガスの種類を識別することができる。
【0086】
図6は、請求項に係る発明の一実施形態による、キャリアガスを識別するように構成された空気圧システム600を示す。空気圧システム600は、図5に示され、上で説明された空気圧システム500と同様に機能することができる。しかしながら、空気圧システム500では、弁510は、カラム流量センサ540から受け取った測定値に基づいて制御及び構成することができるのに対し、空気圧システム600の弁610は、キャリアガス供給流量センサ615から受け取った測定値に基づいて制御及び構成することができる。これらの閉ループフィードバックシステムについては、以下で詳しく説明する。
【0087】
[カラム流量定数によるデルタ測定を使用した入力/出力流量の比較]
前述のガスの種類識別方法は、カラム流量測定信号の決定を必要とする。単純なクロマトグラフィシステムの場合はこれで十分かもしれないが、前述(例えば、カラムの出口端は、真空、切換弁、別の圧力調整器などに接続できる)のように充填カラムやより複雑なシステムの場合には、カラム流量測定信号が正確でなく、ガスクロマトグラフィシステムに認識されていない及び/又はモデル化が容易でない(つまり、認識されていない、又はモデル化が容易でない、あるいはそれらの両方)可能性がある。さらに、ドリフト、熱効果などによる流量センサのいずれかの流量測定信号の誤差は、流量測定信号の直接比較で誤差を引き起こす可能性があり、したがって、較正済みのガスの種類を識別する能力が低下する。
【0088】
上記の方法の拡張を使用して、カラム流量の元の値に依存せず、流量測定信号でドリフトした可能性のあるセンサの誤差をゼロにする方法を利用することにより、これらの欠点を排除することができる。これは、制御された入力又は出力流量の1つ又は複数を変更し、残りの経路からの流量測定信号の結果として生じる変化を監視することによって達成される。このように、元の流量測定信号(カラム流路からのものを含む)は、ガスの種類の判定が各経路の流量測定信号の変化(つまり、デルタ測定)のみに基づいているため、効果的にゼロとすることができる(zeroed-out)。
【0089】
一実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、ガス入力流路と隔壁パージ流路の両方からの流量測定信号の段階的変化を監視することができる。図7は、請求項に係る発明の一実施形態による、キャリアガスを識別するように構成された空気圧システム700を示す。空気圧システム700は、ガス供給ポート705を通して入口にガスを流すように構成することができる。システム700は、入力流路735上の弁710を開ける(例えば、比例して開く)ように構成することができ、それによって弁710及びキャリアガス供給流量センサ715を通してガスを流すことができる。ここで、キャリアガス供給流量センサは、流れるガスの特性(例えば、熱分散)を利用して流量測定信号を生成することができる。キャリアガス供給流量センサ715は、第1の流量測定信号を生成することができる。
【0090】
システム700はさらに、分割流路を閉鎖するように構成することができる。例えば、システムは弁725を閉じるように構成することができる。したがって、システム700は、カラム流路及び隔壁パージ流路を通るガスの流量出力を制限することができる。隔壁パージ流量センサ740(例えば、圧力センサ770及び制限745)は、第2の流量測定信号を生成することができ、任意選択的に、カラム流量センサ750(例えば、圧力センサ730及びカラム制限755)は、流量測定信号を生成することができる。これらの2つの流量測定信号は、入口から流出するガスを表し、少なくとも隔壁パージ流量センサはガスの特性を利用して、キャリアガス供給流量センサの流量とは異なる流量を測定する(例えば、流量を測定するための制限を超えた圧力を使用した粘度)。
【0091】
場合によっては、システムは、システムの流路のサブセットで一定のガス流を維持できる。例えば、システムはカラム流路で一定の流量を維持することができる。カラム流路の流量を一定に保つことにより、システムは可変流量を経験する流路(flowpaths experiencing variable flow rates)からの流量測定信号のみを必要とする。上記の例のカラム流路は流量センサを必要としないため、これは少なくとも部分的に有益である。むしろ、システムは、一定の流量についてカラム流路を監視することができ、これは、流路の圧力を監視することで(例えば、圧力センサを介して)示すことができる。
【0092】
システム700は、入力及び出力流路から流量測定信号を受け取ることができる。システムのマイクロコントローラは、キャリアガス供給流量センサ715及び隔壁パージ流量センサ740から感知信号を受け取ることができる。場合によっては、カラム流量センサ750は、カラム流路760を通る流量を一定に維持することができる。これらの感知信号から、マイクロコントローラは空気圧システム内を流れるガスの流量測定信号を測定することができる。
【0093】
次いで、システム700は、隔壁パージ流路765を通る流量への変更を介して、ガス供給ポート705から生じるガスの流量を変更することができる。さらに、システム700は、ガス供給ポートの流量が増加してもカラム流路が経験する流量が静的なままであるように、カラム流路を通る流量を実質的に一定に保つように構成することができる(例えば、ほぼゼロの変化)。
【0094】
次いで、システムは、入力及び隔壁パージ流路からの新しい流量測定信号を測定することができる。キャリアガス供給流量センサ715は、第3の流量測定信号を生成することができ、隔壁パージ流量センサ740は、第4の流量測定信号を生成することができる。システムのマイクロコントローラは、キャリアガス供給流量センサ715及び隔壁パージ流量センサ740から感知信号を受け取ることができる。これらの感知信号から、マイクロコントローラは、変更された隔壁パージ流量で空気圧システムを流れるガスの流量測定信号を測定することができる。
【0095】
次いで、システムは、元のガス供給ポートの流量中に生じる流量測定信号の第1のセットと、調整された隔壁パージ流路のガスの流量中に生じる流量測定信号の第2のセットとの差を計算することができる。例えば、システムは、キャリアガス供給流量センサ715から生じる第1の流量測定信号と、キャリアガス供給流量センサ715から生じる第3の流量測定信号との間の差を取ることによって、流量測定信号の第1の変化を計算することができる。同様に、システム700は、隔壁パージ流量センサ740から生じる第2の流量測定信号と、隔壁パージ流量センサ740から生じる第4の流量測定信号との間の差を取ることによって、流量測定信号の第2の変化を計算することができる。
【0096】
次いで、システムは、流量測定信号の第1の変化を流量測定信号の第2の変化と比較することができる。この比較から、システムは入口が実際のガス用に設定済みであるかどうかを判定できる。流量測定信号の変化(例えば、比較からのデルタ)が(システム較正誤差を考慮して)実質的に同じである場合、実際のガスは設定済みのガスの種類である。さらに、又は代わりに、システムは、実際のガスのガスの種類を識別することができる。場合によっては、式のセットを含むルックアップテーブルを(例えば、ガスクロマトグラフィシステム又はガスクロマトグラフィシステムがアクセスできる別のリモートシステムによって)記憶することができる。流量測定信号値をこれらの式に入力することができる。これを使用してセンサ間のデルタ値を一致させ、キャリアガスのガスの種類を識別することができる。
【0097】
次の表は、そのような比較の実験結果を示している。入口が固定10psiカラムヘッド圧力に保持されている間(つまり、カラム流量に変化がない場合)、隔壁パージの流量設定値(隔壁パージセンサを使用)が3mL/minから13mL/minに変更され(10mL/minの変更)、結果としての流量測定信号(流量)の第1の変化は、入力経路上のキャリアガス供給流量センサ(図7の715)で測定された。16のテーブルエントリのそれぞれについて、結果としての入力経路流量測定信号(流量)の変化が、絶対誤差と割合誤差条件の両方で示される。対角線に沿って、設定済みのガスが実際のガスの種類と等しく、入力経路の流量測定信号(流路)誤差はすべて10%未満の流量較正誤差範囲内にある。対角線に沿っていないすべての値は、設定済みのガスが実際のガスと同じではなく、またガスの種類が正しく設定されていないと決定するだけでなく、正しい較正済みのガスの種類を判定するために使用できるほど誤差が大きい場合である。例えば、ヘリウム用に設定されていて、第1の流量センサ測定信号の変化の誤差が100~140%の誤差であった場合、実際のガスは水素であると判定できた。
【0098】
【表1】
【0099】
[隔壁パージ流量をオフにしたデルタ測定を使用した入力/出力流量の比較]
一実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、ガス入力流路及びカラム流路からの流量測定信号の変化を監視することができる。図8は、請求項に係る発明の一実施形態による、キャリアガスを識別するように構成された空気圧システムを示す。空気圧システム800は、ガス供給ポート805を通して入力流路840にガスを流すように構成することができる。空気圧システム800は、入力流路上の弁810が開くように構成することができ、それによって弁810及びキャリアガス供給流量センサ815を通してガスを流すことができる。ここで、キャリアガス供給流量センサ815は、流れるガスの特性に対応する流量測定信号を生成することができる。
【0100】
システム800はさらに、分割流路845及び隔壁パージ流路850を閉鎖するように構成することができる。例えば、システムは、弁820及び弁825が閉じられるように構成することができる。したがって、システム800は、カラム流路855を通過するガスの流量出力を制限することができる。カラム流量センサ860(例えば、圧力センサ830及びカラム制限865)は、入口から流出し、キャリアガス供給流量センサ815の特性とは異なる流れるガスの別の特性に対応するガスの流量測定信号を生成することができる。
【0101】
システム800は、入力及び出力流路からの流量測定信号を測定することができる。キャリアガス供給流量センサ815は、第1の流量測定信号を生成することができる。カラム流量センサ860は、第2の流量測定信号を生成することができる。システムのマイクロコントローラは、キャリアガス供給流量センサ815及びカラム流量センサ860から感知信号を受け取ることができる。
【0102】
次いで、システム800は、流量センサ860によって測定されるように、カラム流量の設定済みのガスの流量設定値への変更を介して、ガス供給ポート805から生じるガスの流量を変更することができる。次に、システムは、入力及びカラム流路からの流量測定信号を決定できる。キャリアガス供給流量センサ815は、第3の流量測定信号を生成することができ、カラム流量センサ860は、第4の流量測定信号を生成することができる。システムのマイクロコントローラは、キャリアガス供給流量センサ815及びカラム流量センサ860から感知信号(例えば、センサからの生信号)を受け取ることができる。
【0103】
次いで、システムは、元のガス供給ポート流量中に生じる流量測定信号の第1のセットと、調整されたガス供給ポート流量中に生じる流量測定信号の第2のセットとの間の差を計算することができる。例えば、ガスクロマトグラフィシステムは、キャリアガス供給流量センサ815から生じる第1の流量測定信号とキャリアガス供給流量センサ815から生じる第3の流量測定信号との間の差を取ることによって、流量測定信号の第1の変化を計算することができる。同様に、システムは、カラム流量センサ860から生じる第2の流量測定信号と、カラム流量センサ860から生じる第4の流量測定信号との間の差を取ることによって、流量測定信号の第2の変化を計算することができる。
【0104】
次いで、システムは、流量測定信号の第1の変化を流量測定信号の第2の変化と比較することができる。この比較から、ガスクロマトグラフィシステムは、入口が実際のガス用に構成されているかどうかを判定できる。流量測定信号の変化(例えば、比較からのデルタ)が実質的に同じである場合(システムの較正誤差を考慮して)、実際のガスは設定済みのガスの種類である。さらに、又は代わりに、システムは、実際のガスのガスの種類を識別することができる。場合によっては、一連の式を含むルックアップテーブルを記憶(例えば、ガスクロマトグラフィシステム又はガスクロマトグラフィシステムがアクセスできる別のリモートシステムによって)することができる。流量測定信号値は、これらの式に入力できる。これらの式を使用して、センサ間のデルタ値を一致させ、実際のガスのガスの種類を識別できる。
【0105】
図9は、請求項に係る発明の一実施形態による、キャリアガスを識別するために構成された空気圧システムを示す。システム900は、図8に示され、上で説明されたシステム800と同様に機能することができる。しかしながら、システム900では、弁910は、キャリアガス供給流量センサ915から受け取った測定値に基づいて制御及び構成することができるのに対し、システム800の弁は、カラム流量センサ860から受け取った測定値に基づいて制御及び構成することができる。
【0106】
[隔壁パージ流量定数を使用したデルタ測定を使用した入力/複数出力の流量比較]
図7と同様に、カラム圧力、したがって流量が一定に保たれ、隔壁パージ流量設定値が変更される。図10は、その逆を実施する実施形態を示す。カラム流量の設定値が変更されている間、隔壁パージ圧力、つまり流量は一定に保たれる。
【0107】
一実施形態では、ガスクロマトグラフィシステムは、隔壁パージ流路1050が開いている間(例えば、固定圧力及び/又は流量設定値まで)、ガス入力流路1040及びカラム流路1045からの流量測定信号の段階的変化を監視することができる。図10は、請求項に係る発明の一実施形態による、キャリアガスを識別するために構成された空気圧システムを示す。空気圧システム1000は、ガス供給ポート1005を通して入口にガスを流すように構成することができる。システム1000は、入力流路1040上の弁1010が開くように構成することができ、それによってガスを弁及びキャリアガス供給流量センサ1015を通して流すことができ、キャリアガス供給流量センサ1015は、流れるガスの特性に対応する流量測定信号を生成することができる。
【0108】
システム1000は、分割流路1055を(例えば、弁1025を介して)閉じるようにさらに構成することができる。したがって、システム1000は、カラム流路1045及び隔壁パージ流路1050を通過するようにガスの流量出力を制限することができる。任意選択的に、隔壁パージ流量センサ1060(例えば、圧力センサ1035及び制限1065)は、固定流量設定値に維持することができ、カラム流量センサ1070(例えば、圧力センサ1030及びカラム制限1075)は、入口から流出し、流れるガスの別の特性に対応する流量測定信号を生成することができる。場合によっては、圧力センサを使用して、隔壁パージ流路の圧力を一定に保つことができる。少なくともカラム流量センサ1070は、キャリアガス供給流量センサ1015とは異なる特性を利用して、流量測定信号を生成することができる(例えば、カラム流量センサ1070は、制限1075を超えた圧力センサ1030を使用する粘度ベースとすることができ、一方、キャリアガス供給流量センサ1015は、熱分散流量センサとすることができる)。
【0109】
システム1000は、入力及び出力流路から流量測定信号を測定することができる。キャリアガス供給流量センサ1015は、第1の流量測定信号を生成することができ、カラム流量センサ1070は、第2の流量測定信号を生成することができる。システムのマイクロコントローラは、第1の流量センサ1010、隔壁パージ流量センサ1060(任意選択)、及びカラム流量センサ1070から感知信号を受け取ることができる。
【0110】
次いで、システム1000は、ガス供給ポートから生じるガスの流量を変更することができる。次いで、システム1000は、入力、隔壁パージ(任意選択的に)、及びカラム流路からの流量測定信号を測定することができる。場合によっては、隔壁パージ流路内の流量を一定に保つことができるため、ガスの識別に流量測定信号は必要ない。キャリアガス供給流量センサ1015は、第3の流量測定信号を生成することができ、カラム流量センサ1070は、第4の流量測定信号を生成することができる。システムのマイクロコントローラは、キャリアガス供給流量センサ1015、隔壁パージ流量センサ1060(任意選択)、及びカラム流量センサ1070から感知信号を受け取ることができる。
【0111】
次いで、システム1000は、元のガス入力流量中に生じる流量測定信号の第1の組と、調整されたガス入力流量中に生じる流量測定信号の第2の組との間の差を計算することができる。例えば、システム1000は、キャリアガス供給流量センサ1015から生じる第1の流量測定信号と、キャリアガス供給流量センサ1015から生じる第3の流量測定信号との間の差を取ることによって、流量測定信号の第1の変化を計算することができる。同様に、システム1000は、カラム流量センサ1070から生じる第2の流量測定信号とカラム流量センサ1070から生じる第4の流量測定信号との間の差を取ることによって、流量測定信号の第2の変化を計算することができる。この比較から、システム1000は、設定済みのガスが実際のガスであるかどうかを判定することができる。付加的又は代替的に、システム1000は、流れるガスのガスの種類を識別することができる。
【0112】
図11は、請求項に係る発明の一実施形態による、キャリアガスを識別するために構成された空気圧システムを示す。システム1100は、図10に示され、上で説明されたシステム1000と同様の方法で機能することができる。しかしながら、システム1000では、弁1010は、キャリアガス供給流量センサ1015から受け取った測定値に基づいて制御及び構成することができ、一方、システム1100の弁1110は、カラム流量センサ1130から受け取った測定値に基づいて制御及び構成することができる。
【0113】
[閉ループフィードバック]
場合によっては、上述のガスクロマトグラフィシステムは、閉ループシステムを介して流路を通る流量を制御することができる。閉ループ制御は、調整対象の弁の上流又は下流で経験した流量測定信号に基づいて、システム内の弁を調整することによって実現できる。例えば、図3の弁310は、ガス流入流路を流れるガスの流量を調整することができる。さらに、弁調整は、カラム流量センサ又はキャリアガス供給流量センサのいずれかで測定された流量測定信号に基づくことができる。同様に、隔壁パージ流路上の第2の弁は、隔壁パージ流量センサによって得られた下流流量の読みに基づいて閉ループ制御することができる(例えば、図5のように)。
【0114】
これらの閉ループ制御サブシステムは、特定のガスの流量設定値を一定に保ちながら他のガスの流量設定値を変化させるのに特に価値がある。例えば、図7~11の流量測定変化比較構成では、入力流路を通るガスの流量は、システム内で流量の変化を経験できるように調整することができる。しかしながら、場合によっては、複数の出力流路ではなく、単一の出力流路全体で経験する段階的な変化を分離することが有益な場合がある。したがって、図10の例のように、システムは、ガス入力流量が調整されるときに、隔壁パージ流路を通る一定の流量を維持するために、隔壁パージ流量センサ又は単に隔壁パージ圧力センサによって得られる流量測定信号に従って弁1020を再構成することができる。したがって、カラム及び隔壁パージ流路の両方とは対照的に、カラム流路は流量変化を経験しうる。
【0115】
元の流量設定値と第2の流量設定値(例えば、デルタ測定値)の2つの重要な側面に注意することが重要である。まず、両方がシステム内のすべての流量センサの動作範囲内にある可能性があり(例えば、センサが飽和しないように)、流量設定値の変化が十分に大きくなりえ、計算された割合誤差がシステムノイズの影響をあまり受けないようにする。
【0116】
閉ループ制御は、システムに設定済みのガスがシステム内を流れる実際のガスと一致するかどうかに依存しうることに注意することも重要である。例えば、システムは設定済みのガスの流量設定値を指定できる。しかしながら、実際のガスが設定済みのガスではない場合、指定された流量設定値は、設定済みのガス用の弁調整に基づくガスの実際の流量と一致しない場合がある。
【0117】
さらに、本明細書に記載のGCシステムは分割なしモードで動作するため、GCシステムを通る流量は、全カラムの流量及び隔壁パージ流量に関連する(例えば、場合によっては、隔壁パージ流量をゼロに設定できる)。したがって、隔壁パージ流路の最大設定値制限(例えば、センサの飽和を避けるため)は、流れるすべてのガスに対して30mL/分(又はクールオンカラム(「COC」)入口に対しては40mL/分)にすることができる。カラム流量は、通常、キャピラリーカラムで10mL/min未満、充填カラムで通常最大60mL/minである。
【0118】
[熱拡散率によるガス種類の分割]
ガスクロマトグラフィ空気圧システムを利用して、ガスの熱特性を通じてシステム内のガスの種類を識別することができる。例えば、流量センサは、電気ヒータを利用してガスを加熱することができる熱分散流量センサとすることができる。このヒータは、流量とセンサ内のガスに応じて、固定電圧又は電流駆動(例えば、温度を変化させる)又は固定温度(例えば、電力を変化させる)で動作することができる。ガスが流れている場合、必要な電力(固定温度ヒータ)又は得られるヒータ温度(固定ヒータ駆動)は、ガスの種類の熱伝導率と熱容量の両方に依存するが、流量のない状態では、必要な電力又は結果としてのヒータ温度は、ガスの熱伝導率にのみ依存する(例えば、ガスは熱を運び去らないため、ガスの熱容量は要因ではない)。いずれかのヒータの方法を使用して、未知のキャリアガスを熱伝導率の高いグループ(例えば、ヘリウムと水素を含むグループ)又は熱伝導率の低いグループ(例えば、窒素とアルゴン-メタンを含むグループ)に分割することができる。例えば、ヘリウムと水素の場合、固定温度ヒータはより多くの電力を必要とし、固定電圧ヒータは窒素とアルゴン-メタンよりも低い温度で動作する。ガスの種類のこの分割は、ガス間の粘度差に基づく流量センサと一緒に使用して、使用されているキャリアガスの種類の識別に役立てたり、前の説明で識別されたガスの種類のダブルチェックとして使用したりできる。
【0119】
[修復]
場合によっては、システムは実際のガスの修復手順を実行することができる。例えば、システムは、実際のガスがシステムの現在の設定済みのガスと一致しないことを識別できる。したがって、システムは、誤った設定に対応するメッセージを生成し、(例えば、ディスプレイ画面を介して、無線で、などで)ユーザに送信することができる。場合によっては、システムはシステムの動作を終了することができ、システムを損傷から保護することができる。場合によっては、システムは別のガス設定に自動的に再構成できる。
【0120】
[設定のバリエーション]
本明細書では、本発明の例示的な実施形態について説明されている。しかしながら、当業者は、多数のガスクロマトグラフィシステム及びGC入口が記載された技術を実施できることを理解するであろう。例えば、上記の実施形態は特定の流量センサについて説明しているが、流量センサは、キャリアガス流路、隔壁パージ流路、分割流路、又はガスクロマトグラフィシステムの任意の他の流路のいずれかに結合することができる。さらに、流量センサが特定の流路に結合される場所も同様に変えることができる。
【0121】
[等価物]
本発明の好ましい実施形態を特定の用語を使用して説明したが、そのような説明は例示のみを目的としており、以下の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく変更及び変形を行うことができることを理解されたい。
【0122】
[参照による組み込み]
本明細書で引用されたすべての特許、公開された特許出願、及びその他の参考文献の全内容は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。
図1
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【国際調査報告】