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特表2023-536151心筋画像化において[18F]-F-AraGを使用するための方法および材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】心筋画像化において[18F]-F-AraGを使用するための方法および材料
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/04 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
A61K51/04 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506163
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 US2021043431
(87)【国際公開番号】W WO2022026533
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】63/057,643
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523030762
【氏名又は名称】セルサイト テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ, イェレナ
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB91
4C085LL07
(57)【要約】
本開示の実施形態は、陽電子放出断層撮影(PET)を行うための組成物および方法、ならびにより詳細には、選択された画像化技術(例えば、心筋生理機能の研究)における使用のための18FベースのPETトレーサーの開発および使用のための組成物および方法を提供する。特に、本明細書で開示される場合、トレーサーレベルで、[18F]F-AraGは、心臓および/またはミトコンドリア活性画像化のために設計されたものを含む多くの新たなPET方法論において使用される能力を有する。PETトレーサーとしての[18F]F-AraGの使用は、選択された生理学的現象(例えば、心筋灌流、心筋生存能、および心臓炎症)の観察を含む多くの別個の適用において、従来の18F標識トレーサーを超える顕著な利点を提供する。本発明の方法は、[18F]F-AraGを使用して患者を観察するために設計されたものを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において心臓の細胞を画像化する方法であって、前記方法は、
(a)以下の式:
【化18】
を有する化合物を前記被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、前記化合物が前記被験体の心臓の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される、工程;ならびに
(b)前記被験体を画像化する工程であって、ここで前記化合物の存在の検出は、心臓の細胞の存在に対応する、工程、
を包含する方法。
【請求項2】
前記被験体は、治療剤または放射線療法を投与されたことがある患者であるように選択され、前記工程(b)において得られた心臓の1またはこれより多くの画像は、前記被験体の心臓に対する前記薬剤または前記放射線療法の効果に関する情報を得るために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療剤は、アントラサイクリンまたは免疫チェックポイントインヒビターであり、前記工程(b)において得られた心臓の1またはこれより多くの画像は、前記アントラサイクリンまたは前記免疫チェックポイントインヒビターの投与から生じる心毒性に関する情報を得るために使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)において得られた心臓の1またはこれより多くの画像を使用して、
前記被験体の心臓における心筋灌流の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程;
前記被験体の心臓における心筋生存能の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程;および/または
前記被験体の心臓における炎症の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程、
をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記治療剤は、心臓の細胞におけるミトコンドリアに対して作用することが観察されているものが選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体は、心血管疾患と診断された患者であるように選択される;
前記被験体は、がんと診断された患者であるように選択される;
前記被験体は、心血管疾患またはがんの処置を受けている患者であるように選択される、
請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、1回目の日付に前記心臓の1またはこれより多くの画像を観察する工程;2回目の日付に前記心臓の1またはこれより多くの画像を観察する工程;および前記心臓の変化を経時的に観察するために、前記1回目の日付に得られた画像と、前記2回目の日付に得られた画像とを比較する工程をさらに包含する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記1回目の日付から前記2回目の日付までの時間量は、少なくとも1週間または少なくとも1ヶ月を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記治療剤は、CTLA-4またはPD-1/PD-L1遮断に影響を及ぼすように選択される少なくとも1種の免疫チェックポイントインヒビターを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
治療剤の投与に応答している被験体において細胞を画像化する方法であって、前記方法は、
(a)前記治療剤を投与する工程;
(b)以下の式:
【化19】
を有する化合物を前記被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、前記化合物が前記被験体の心臓の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される、工程;ならびに
(c)前記被験体を画像化する工程であって、ここで前記化合物の存在の検出は、前記細胞の存在に対応する、工程;ならびに
(d)前記被験体の細胞における前記化合物の観察される存在と、前記治療剤に対する前記被験体の応答とを相関させる工程、
を包含する方法。
【請求項11】
前記被験体は、心血管疾患と診断された患者であるように選択される;
前記被験体は、がんと診断された患者であるように選択される;
前記被験体は、心血管疾患またはがんの処置を受けている患者であるように選択される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記相関させる工程は、がん細胞および/またはリンパ節における前記化合物の存在の観察を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記治療剤は、CTLA-4またはPD-1/PD-L1遮断に影響を及ぼすように選択される少なくとも1種の免疫チェックポイントインヒビターを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記がん細胞は、結腸がん細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、1回目の日付に1またはこれより多くの画像を観察する工程;2回目の日付に1またはこれより多くの画像を観察する工程;および前記治療剤の投与に対する前記被験体の応答を観察するために、前記1回目の日付に得られた画像と、前記2回目の日付に得られた画像とを比較する工程をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記1回目の日付から前記2回目の日付までの時間量は、少なくとも1週間または少なくとも1ヶ月を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
被験体の細胞におけるミトコンドリア活性を画像化する方法であって、前記方法は、
(a)以下の式:
【化20】

を有する化合物を前記被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、前記化合物が前記被験体の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される、工程;ならびに
(b)前記被験体を画像化する工程であって、ここで前記化合物の存在の検出は、ミトコンドリア活性の存在に対応する、工程;ならびに
(c)ミトコンドリア活性を画像化する工程、
を包含する方法。
【請求項18】
前記被験体は、ミトコンドリア欠損症に罹患しているとして選択されるものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、ミトコンドリア機能不全に関して前記被験体をスクリーニングする方法であり;前記ミトコンドリア機能不全は、心血管疾患、神経精神疾患、または神経変性疾患である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ミトコンドリア機能不全は、心筋灌流、双極性障害、うつ病、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、早老、心筋症、呼吸鎖障害、mtDNA枯渇症、ミオクローヌス癲癇、赤色ぼろ線維症候群、脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作、および視神経萎縮からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、同時係属中の譲受人に譲渡された、2020年7月28日出願、発明の名称「METHODS AND MATERIALS FOR USING [18F]-F-AraG IN CARDIAC IMAGING」の米国仮特許出願第63/057,643号(この出願は、本明細書に参考として)の利益を主張する。本出願は、2021年2月25日出願の出願番号17/185,502を有する同時係属中の発明の名称が「Compounds and Methods of Making Compounds」という米国出願(その内容は、本明細書に参考として援用される)に関連する。
【背景技術】
【0002】
背景
心血管疾患(CVD)は、数十年間にわたって、米国の死亡原因第1位であり続けた。さらに、CVDは、米国の最も犠牲の大きい慢性疾患になっている。2018年には、脳卒中および心不全は、メディケア出来高払い式プログラム(Medicare fee-for-service program)において最も費用のかかる慢性状態であった。
【0003】
本開示は、一般に、陽電子放出断層撮影(PET)に、およびより詳細には、心臓画像化技術(例えば、心筋灌流研究)における使用のための18FベースのPETトレーサーの開発および使用に関する組成物および方法に関する。18Fベースのトレーサーの長い物理的半減期(109分)は、現場でのサイクロトロンの必要性なしに、臨床研究を可能にする。さらに、現代のPETカメラ技術があれば、心筋放射能濃度の定量的測定が、高度な時間的なサンプリングおよび良好な統計精度で行われ得る。
【0004】
心臓画像化技術は、CVDの非侵襲的診断およびリスク評価、ならびに異なる個体においてCVDを最適に管理する方法に関して医師によって行われる関連する決定において中心的役割を果たす。心臓画像化の陽電子放出断層撮影法において有用な新たな18F標識トレーサーの開発は、当業者に、CVDを管理し、臨床研究の範囲をさらに拡げるさらなる機会を提供し得る。心血管疾患の莫大な公衆衛生負担に鑑みて、心臓画像化技術において18FベースのPETトレーサーを使用するように設計されたさらなる組成物および方法が当分野で必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本明細書で開示される方法において使用される化合物、[18F]-F-アラビノフラノシルグアニンは、当初は、活性化T細胞に関するPET画像化剤として開発された。この化合物は、アラビノフラノシルグアニン(AraG)の18F標識アナログであり、2つのキナーゼ:細胞質デオキシシチジンキナーゼ(dCK)およびデオキシグアノシンキナーゼ(dGK)によってリン酸化され得、細胞内で捕捉され得る化合物である。以下で考察されるように、本発明者らは、トレーサーレベルで、[18F]F-AraGが、多くの新たなPET方法論(心臓および/またはミトコンドリア活性画像化に関して設計されるものを含む)において使用される能力を有することを発見した。心臓は、高いエネルギーが必要であり、ミトコンドリアが特に豊富な器官である。過去10年間で、ミトコンドリア機能不全は、心血管病理の重要な局面として認識されている。その結果として、心臓のミトコンドリア活性を観察しこれを改善することに集中する処置が、生物医学研究の焦点である。
【0006】
本明細書で提供される開示は、[18F]F-AraGが、ある特定の生理学的現象(例えば、心臓の細胞におけるミトコンドリア活性を含む)を観察するために十分に適した薬剤であるという発見に一部基づく。これに鑑みて、本発明の実施形態は、心臓画像化において[18F]F-AraGを使用するための方法を提供する。本発明の例示的実施形態において、PETトレーサーとしての[18F]F-AraGの使用は、健常ボランティアおよび免疫療法を受けているがん患者において評価された。これらの研究において、心臓における顕著なトレーサーの取り込みが、両群において観察された。しかし興味深いことには、健常ボランティアの心臓壁において観察されたシグナルは、がん患者ならびに免疫調節および他の治療を受けている患者におけるものとは異なっていた。治療剤で処置された患者に対する健常者の異なる[18F]F-AraGシグナルプロフィールのこの発見は、本明細書で開示される方法(例えば、薬物または傷害によって引き起こされる心臓の細胞に対する変化をモニターするために、[18F]F-AraGが心臓を画像化する能力を使用するように設計された方法を含む)において利用される。
【0007】
本明細書で開示される方法におけるPETトレーサーとしての[18F]F-AraGの使用は、選択された生理学的現象(例えば、心筋灌流、心筋生存能、および心臓炎症)の観察を含む多くの別個の適用において従来の18F標識トレーサーを超える顕著な利点を提供する。さらに、以下で考察されるように、本発明の方法は、[18F]F-AraGを使用して、種々の治療剤に対する患者の生理学的応答を観察するために設計されたもの、および薬物開発研究においてPETトレーサーとして[18F]F-AraGを使用することを含む。
【0008】
本明細書で開示される発明は、多くの実施形態を有する。これらの実施形態は、被験体において心臓の細胞を画像化する方法であって、上記方法は、以下の式:
【化1】
を有する化合物を被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、上記化合物が上記被験体の心臓の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される工程;ならびに次いで、上記被験体を画像化する工程であって、ここで上記化合物の存在の検出は、心臓の細胞の存在を示す工程による方法を包含する。いくつかの実施形態において、これらの方法は、上記心臓の1またはこれより多くの画像を使用して、上記被験体の心臓における心筋灌流の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、これらの方法は、上記心臓の1またはこれより多くの画像を使用して、上記被験体の心臓における心筋生存能の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程をさらに包含する。いくつかの実施形態において、これらの方法は、上記心臓の1またはこれより多くの画像を使用して、上記被験体の心臓における炎症の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程をさらに包含する。本発明のある特定の実施形態において、上記被験体は、治療剤に投与され、上記心臓の1またはこれより多くの画像は、上記被験体の心臓に対する上記薬剤の効果に関する情報を得るために使用される。必要に応じて、これらの方法において使用される上記治療剤は、心臓の細胞のミトコンドリアに対して作用するものである。
【0009】
本発明の実施形態はまた、1またはこれより多くの治療剤で処置されている病的な状態に罹患している患者において選択された細胞集団(例えば、心臓の細胞および白血球)を画像化する方法を包含する。このような方法は、このような治療剤の投与から生じるインビボでの生理学的変化(例えば、心毒性)を観察するために使用され得る。代表的には、このような方法は、上記治療剤での処置を受けている被験体に、以下の式:
【化2】
を有するPETプローブ化合物を投与する工程であって、ここで投与経路は、上記化合物が、上記被験体の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される工程を包含する。これらの方法は、上記被験体をPET画像化する工程であって、ここで上記PETプローブ化合物の存在の検出は、細胞の存在を示す工程;最後に、上記被験体の細胞における上記化合物の観察された存在と、上記被験体の上記治療剤への応答とを相関させる工程をさらに包含する。これらの方法のある特定の実施形態において、上記被験体は、心血管疾患と診断された患者であるように選択される;および/または上記被験体は、がんと診断された患者であるように選択される;および/または上記被験体は、心血管疾患またはがんの処置を受けている患者であるように選択される。本明細書で開示される発明の例証的な実施形態において、上記治療剤は、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンなど)、または免疫チェックポイントインヒビター(例えば、CTLA-4またはPD-1/PD-L1遮断に影響を及ぼすように選択される免疫チェックポイントインヒビター)であり、上記心臓の1またはこれより多くの画像は、上記アントラサイクリンまたは上記免疫チェックポイントインヒビターの投与から生じる生理学的現象(例えば、心毒性)に関する情報を得るために使用される。例証的な作業実施形態において、上記方法は、心臓の細胞、免疫細胞におけるおよび/またはリンパ節(例えば、腫瘍流入領域リンパ節)における上記PETプローブ化合物の存在の観察を含む。
【0010】
本発明のある特定の実施形態において、治療剤の投与に応答している被験体の細胞を画像化するPET法は、1回目の日付に得られた1またはこれより多くの画像を観察する工程;2回目の日付に得られた1またはこれより多くの画像を観察する工程;および次いで、上記治療剤の投与から生じる患者の生理状態における変化を経時的に観察するために(例えば、上記治療剤に対する応答者と非応答者との間を区別するために)、上記1回目の画像化の日付に得られた画像と、上記2回目の画像化の日付に得られた画像とを比較する工程をさらに包含する。本発明のある特定の実施形態において、上記1回目の日付から上記2回目の日付までの時間量は、1週間未満を含む。あるいは、上記1回目の日付から上記2回目の日付までの時間量は、少なくとも1週間、2週間もしくは3週間、または少なくとも1ヶ月、2ヶ月もしくは3ヶ月を含む。
【0011】
本発明の他の実施形態は、被験体の細胞におけるミトコンドリア活性を画像化する方法であって、上記方法は、以下の式:
【化3】
を有する化合物を上記被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、上記化合物が、上記被験体の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される工程;ならびに次いで、上記被験体を画像化する工程であって、ここで上記化合物の存在の検出は、ミトコンドリア活性の存在を示す工程による方法を包含する。ある特定の実施形態において、上記被験体は、ミトコンドリア欠損症に罹患していると特定された被験体である。本発明の他の実施形態において、上記方法は、ミトコンドリア機能不全;例えば、心血管疾患、神経精神疾患、または神経変性疾患と関連するミトコンドリア機能不全に関して上記被験体をスクリーニングするように設計されたプロトコールの一部である。必要に応じて、上記ミトコンドリア機能不全は、心筋灌流、双極性障害、うつ病、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、早老、心筋症、呼吸鎖障害、mtDNA枯渇症、ミオクローヌス癲癇、赤色ぼろ線維症候群、脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作、および視神経萎縮からなる群より選択される。
【0012】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになる。しかし、詳細な説明および具体例は、本発明のいくつかの実施形態を示すが、例証によって示され、限定によって示されるのではないことが理解されるべきである。本発明の範囲内の多くの変更および改変は、その趣旨から逸脱することなく行われ得、本発明は、全てのこのような改変を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示のさらなる局面は、添付の図面とともに理解される場合、以下に記載されるその種々の実施形態の詳細な説明を検討すれば、より容易に理解される。
【0014】
図1-1A】図1.1Aは、本開示の化合物を作製するための多くの合成スキームを図示する。
図1-1B】図1.1Bは、本開示の化合物を作製するための多くの合成スキームを図示する。
図1-2】図1.2は、RおよびR’の実施形態を図示する。
図2-1-1】図2.1は、[18F]F-AraG前駆体および[18F]F-AraGの合成の模式図を図示する。
図2-1-2】図2.1は、[18F]F-AraG前駆体および[18F]F-AraGの合成の模式図を図示する。
図2-2】図2.2は、示された時間および用量の18F-AraG(0.6mCi/ml)で標識した5×10 CCRF-CEM細胞のグラフを図示する。取り込みを、γカウンターで測定した。バーは、三連の決定の平均±SEMを表す。
図2-3】図2.3Aは、1μCi 8H-AraG(1mCi/ml)および漸増量のコールド2F-AraGまたはDMSOで60分間または120分間のいずれかで三連においてインキュベートした5×10CCRF-CEM細胞のグラフを図示する。コントロール取り込みのパーセントを、サンプルの測定されたcpm/蓄積された1μCi 8[H]-AraGコントロールのcpm×100として計算した。図2.3Bは、1μM コールド2F-AraG、DMSOまたは培地の存在下で120分間、1μCi 8-H-AraG(1mCi/ml)で標識した5×10 CCRF-CEM、MOLT-4またはRAJI細胞(三連)のグラフを図示する。コントロール取り込みのパーセントを、図2.3aにあるように計算した。
図2-4】図2.4は、Tリンパ芽球による2’-デオキシグアノシン(dGuo)の代謝の模式図を図示する。2’-dGuoとは対照的に、AraGは、DNAへの組み込みにリボヌクレオチドレダクターゼ活性を必要とせず、低い細胞内濃度においてミトコンドリアdGKによって直接リン酸化される。より高濃度では、それは、デオキシシチジンキナーゼによってもリン酸化され得、核DNAへと組み込まれ得る(図は、J Biol Chem. 2008;283:16437-16445から)。
図3-1】図3.1は、[18F]F-AraGとコールドF-AraG標準との同時注入の分析用HPLCプロフィールを図示する(5% アセトニトリル:95% 水; 1mL/分、254nm、Phenomenex Gemini C18、5μ、4.6×250 mm)。
図3-2】図3.2は、3μCiまたは10μCiの[18F]F-AraGのいずれかに60分間または120分間曝した5×10 CCRF-CEM細胞(三連)を示すグラフを図示する。細胞は、10μCiに曝した場合、3μCiと比較して、60分(p=0.008)および120分(p=0.001)において約2倍多く[18F]F-AraGを取り込んだ。エラーバーは、S.E.Mを表す。
図3-3】図3.3は、100U/mL IL2、50nM PMAおよび1μg/mL イオノマイシンで刺激したか、または刺激していない1×10 精製初代T細胞を、1μCiの[18F]F-AraGとともに60分間インキュベートしたことを示すグラフを図示する。エラーバーは、三連の決定の平均±SEMを表す(それぞれ、両側の対応のあるスチューデントT検定によってn=4、p=0.14および0.003)。
図3-4】図3.4は、2-N-アセチル-6-O-((4-ニトロフェニル)エチル)-9-(3,5-ジ-O-トリチル-2-トリフィル-β-D-リボフラノシル)グアニン(2)、[18F]F-AraG前駆体の合成を記載するスキーム1の模式図である。
図3-5】図3.5は、2’-デオキシ-2’-フルオロ-9-β-D-アラビノフラノシルグアニン 5(F-AraG)の合成を記載するスキーム2の模式図である。
図3-6】図3.6は、2’-デオキシ-2’-[18F]フルオロ-9-β-D-アラビノフラノシルグアニン 7([18F]F-AraG)の合成を記載するスキーム3の模式図である。
図4図4は、[18F]F-AraGで心臓の細胞を画像化する機序のイラストを示す。[18F]F-AraGは、ヌクレオシド輸送体を介して細胞へと輸送され、続いて、ミトコンドリアデオキシグアノシンキナーゼ(dGK)によって、より低い程度には、細胞ゾルデオキシシチジンキナーゼ(dCK)によって[18F]リン酸化される。リン酸化は、[18F]F-AraGの捕捉をもたらし、PET画像化を介してこれらの細胞の可視化を可能にする。
図5図5は、[H]F-AraGに関するdCKおよびdGKの反応速度論特性を示すデータを提供する。(a)[H]F-AraGに関するdGKまたはdCKの酵素反応速度論、(b)dGK活性に関するdGuo陽性コントロール、(c)dCK活性に関するdCyd陽性コントロール。線は、ベストフィットを示す。[H]F-AraGに関するdGKのKmは、23.44nmol/分/mgのVmaxで、7.27μMであることが見出された一方で、dCKは、[H]F-AraGに対してより低い親和性を有した(Km=50.89μM、Vmax=262.5)。本発明者らは、dCydに対するdCKの高い親和性(Km=1.997、Vmax=9.454)およびdGK活性に関するdGuo陽性コントロールにおいて同様により高い親和性(Km=5.083、Vmax=123.2)を観察した。
図6図6は、がん患者の心臓におけるF-AraGシグナルの画像を示す。心臓における高いミトコンドリア活性は、トレーサーの注射後1時間で高いF-AraGシグナルを生じる。
図7図7は、健常ボランティアおよび免疫療法を受けている患者の心臓壁におけるF-AraGシグナルの強度を示すデータを提供する(前とは、処置前画像に言及し、後とは、抗PD-1抗体の1回の注射の2~3週間後に撮った画像に言及する)。
図8図8は、[18F]F-AraGでの画像化の機序を示すイラストを提供する。[18F]F-AraGは、ヌクレオシド輸送体を介して細胞へと輸送され、続いて、ミトコンドリアデオキシグアノシンキナーゼ(dGK)による律速リン酸化を受ける。dGKによるリン酸化は、mtDNAへの捕捉および潜在的な下流蓄積をもたらし、PET画像化を介する可視化を可能にする。
図9図9は、心毒性の機序および[18F]F-AraGでの画像化に対するその関連性を示すイラストを提供する。A.免疫チェックポイントインヒビター治療(ICI)誘導性炎症。簡潔には、免疫チェックポイントインヒビター(ICI)と称されるがん治療は、患者自身の免疫系を活性化して、彼らのがんと戦わせることによって機能する。PD-1およびCTLA-4シグナル伝達を混乱させるICI薬物は、心臓保護的免疫抑制機序に干渉し、免疫細胞の誇張された増殖および活性化をもたらす。過度の炎症活性は、活性化T細胞における[18F]F-AraGの蓄積によって可視化され得る。B.ドキソルビシン誘導性ミトコンドリア損傷。ドキソルビシンは、ミトコンドリアに容易に入り、mtDNA合成に干渉する。dGKによるリン酸化の後に、[18F]F-AraGは、mtDNAへと組み込まれ得、従って、その合成の状態を報告し得る。
図10図10は、健常被験体(左)および頭頚部がん患者の最大値投影処理(maximum intensity projection)(MIP) [18F]F-AraG画像を提供する。いくらかの患者において、心筋取り込みは、健常被験体におけるより有意に高く、これは、異常なミトコンドリア/炎症活性を示す。
図11図11A~11Bは、ヒト免疫細胞における[3H]F-AraGの評価からのデータを示す。図11A。最高のトレーサー取り込みは、活性化T細胞において観察された。マクロファージ(M1およびM2)および樹状細胞(DC)はまた、蓄積を示した。B細胞、好酸球、および好中球において有意な蓄積は見出されなかった。図11B。T細胞の全てのサブタイプの活性化は、トレーサー取り込みにおいて増大をもたらしたが、活性化CD8+細胞は、最高の増大を示した。
図12図12A~12Cは、本発明の実施形態からのデータを示す。図12A。腫瘍浸潤リンパ球は、腫瘍活性化[18F]F-AraGのうちの80%超を取り込み、CD8+およびCD4+細胞は、トレーサーの最大の割合(72%)を獲得した。単離されたリンパ球のFACS分析は、CD8+細胞(79.9±11.5)およびCD4+細胞(88.3±11.7)の大部分における活性化表現型(CD44+ CD62L-)を示した。図12B。1回の抗PD-1処置の前および48時間後のマウスの腫瘍(白丸)および腫瘍流入領域リンパ節(赤)における[18F]F-AraGシグナル。応答しているマウス(R)は、応答していないマウス(NR)と比較して、腫瘍および腫瘍流入領域リンパ節の両方においてより高い[18F]F-AraGシグナルを示した。図12C。応答者において組み合わせ、腫瘍内および節内の[18F]F-AraGシグナルは、非応答者(2.604±1.083, n=4)より有意に高かった(6.587±0.6874, n=4)。
図13図13A~13Dは、本発明の実施形態からのデータを示す。図13A。パクリタキセル/カルボプラチン処置(免疫学的にサイレントな死(immunologically silent death)を引き起こすと報告される)は、[18F]F-AraGシグナル強度の目立つほどの変化をもたらさなかった。図13Bは、シグナル強度の劇的な増大は、免疫原性細胞死を誘導することが示されるオキサリプラチン/シクロホスファミド処置の後に検出された。白丸は、腫瘍流入領域リンパ節を示し、黄色の矢印は、腫瘍を指す。図13C。オキサリプラチン/シクロホスファミド処置後に検出される[18F]F-AraGシグナルは、治療前のシグナルおよびパクリタキセル-カルボプラチン処置後のシグナルとは有意に異なった。図13D。オキサリプラチン/シクロホスファミド群におけるCD8+(エフェクター) 対 CD4+FOXP3+(調節性)細胞の比は、パクリタキセル/カルボプラチン処置マウスにおけるより27倍高かった。これは、免疫活性腫瘍微小環境を示す(各群につきn=4)。
図14図14A~14Dは、心臓免疫浸潤を呈するCtla4+/- Pdcd1-/-マウスの試験からのデータを示す。図14A。Ctla4+/- Pdcd1-/-マウス(左)およびヒト(右;ICI処置後の完全心ブロックおよび心室頻拍を有した患者の心筋の剖検サンプル)のH&E画像。図14B。H&E染色した心臓組織からのリンパ浸潤スコアおよび全有核細胞の画分としてのCD3、CD4、およびCD8+細胞の頻度の定量。図14C。雌性Ctla4+/- Pdcd1-/-マウスのCD3、CD4、およびCD8免疫組織化学(右)染色した心臓組織切片の代表的画像。左パネル:IHC; 中央パネル:赤=陽性および青=陰性の細胞を有するセグメント; 右パネル:陽性細胞密度(青=低、緑=中間、黄=高い)。ヒートマップ値は、任意の密度単位を表す。図14D。Ctla4+/- Pdcd1-/-マウスのさらなる免疫組織化学(CD3、F4/80+ マクロファージおよびFoxp3+ Tregs)染色した心臓組織の代表的画像。
図15図15A~15Cは、心毒性の長期的な[18F]F AraGモニタリングの提唱される研究の概略を示す。図15A。ドキソルビシン毒性。動物を、1週間に1回のドキソルビシン処置の前および48時間後に画像化する。図15B。ICI毒性。動物を、6週目に開始して1週間に1回画像化する。予備試験は、6~8週目が心筋免疫浸潤のピークであることを示した。動物を、10週目まで追跡する。図15C。Dox/免疫療法毒性。マウスを、2週間にわたって1週間に2回処置する。[18F]F AraG画像化を、2回目および4回目の処置の48時間後に行う。エキソビボ分析を、最終のスキャンの1日後に行う。
図16図16は、頭頚部患者における18FDGおよび[18F]F-AraG 心筋取り込みの最大値投影処理(MIP) [18F]F-AraG画像を提供する。絶食後に得た診断用18FDGの心筋取り込みは、低かった。同じ患者における[18F]F-AraG心臓取り込みは、健常ボランティアにおけるより高い取り込みを示した(図7を参照のこと)。
図17図17は、ラット心筋における18FDGおよび[18F]F-AraG取り込みの比較からの画像を示す。上記ラットを、連続日で、トレーサーで画像化した。[18F]F-AraGは、再現性のある心筋取り込みを示したが、18FDGは、心筋画像化においてその臨床上の有用性に干渉し得る変動を示した。
図18図18は、トレーサーの注射後の示された時点で撮った健常女性ボランティアの心筋[18F]F-AraG取り込みの画像を示す。心臓のシグナルは、120分の画像化時間枠の中で持続し、本質的に均一であった。
図19図19は、抗CTLA-4および抗PD-1抗体で処置した腫瘍を有するマウスの[18F]F-AraG画像から抽出したラジオミクス特徴に関するデータを示す。エネルギー、エントロピーおよび均一性は、処置動物と非処置動物との間で有意に異なることが見出された。
図20図20A~20Cは、図20Aにおいて健常ボランティアのおよび図20Bにおいて頭頚部がん患者の横断[18F]F AraG PET画像を示す。がん患者におけるシグナルは、限局的増大(赤の矢印)の面積にともなって有意に高かった。図20Cは、がん患者の心臓壁における[18F]F AraGシグナルが、免疫療法の前後両方で、健常被験体におけるより有意に高かったことを示すデータを提供する。免疫療法前の増大したシグナルは、以前の抗がん処置の心毒性を示し得る。
図21図21は、3名の頭頚部患者の心電図および[18F]F AraG画像からのデータを示す。上の患者は、比較的低くかつ均一な[18F]F AraG心筋取り込みおよび正常なECGを示す。他の2名の患者は、異常なECGおよびより高い(中央)および不均一な[18F]F AraG取り込みを示す。図中のデータは、トレーサー取り込みと心電図において示されるとおりの心音異常(hear abnormalities)との間で相関関係を示すことから、本発明の実施形態の重要な局面を例証する。
図22図22は、免疫療法注入の前および後の再発性黒色腫を有する患者における心筋シグナルの変化を示す最大値投影処理(MIP)画像を提供する。処置前スキャンにおける正常より高い心筋取り込みは、以前の抗がん処置の心毒性を示し得る。わずか1回の免疫療法注入が、劇的に増大した心筋取り込みをもたらした。増大された[18F]F-AraGシグナルは、甲状腺および脾臓においても観察された。この図中のデータは、[18F]F AraGが、PET方法論において心臓に対するICIの効果を画像化するためにどのように使用され得るかを例証することから、本発明の実施形態の重要な局面を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本開示をより詳細に記載する前に、本開示が記載される特定の実施形態および本発明の実施形態に限定されず、よって、当然のことながら変動し得ることは、理解されるべきである。本明細書で使用される用語法が、特定の実施形態を記載する目的のために過ぎず、限定であることを意図しないことはまた、理解されるべきである。別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で引用される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、参考として援用されることが具体的にかつ個々に示されるかのように本明細書に参考として援用され、方法および/または材料を開示および記載するために本明細書に参考として援用され、それに伴って上記刊行物が引用される。本開示を読んで理解すれば当業者に明らかであるように、本明細書で記載されかつ例証される個々の実施形態の各々は、別の構成要素および特徴を有し、これら構成要素および特徴は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特徴から容易に分離され得るか、またはそれら特徴と組み合わせられ得る。任意の記載される方法は、記載される事象の順で、または論理的に可能である任意の他の順で行われ得る。
【0016】
本開示の実施形態を詳細に記載する前に、別段示されなければ、本開示が、特定の材料、試薬、反応物質、製造プロセスなどに限定されず、よって変動し得ることは、理解されるべきである。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載する目的のために過ぎず、限定であることを意図しないことはまた、理解されるべきである。論理的に可能である場合には、異なる順序で工程が実行され得ることは、本開示において可能であり得る。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」および「上記、この、その(the)」は、文脈が別段明確に規定しなければ、複数形を含むことは、注記されなければならない。従って、例えば、「1つの化合物(a compound)」への言及は、複数の化合物を包含する。本明細書および以下に続く特許請求の範囲において、多くの用語に言及され、これらの用語は、逆の意図が明らかでなければ、以下の意味を有するように定義されるものとする。
【0018】
この文脈において引用される出願および特許(各発行された特許の手続きの間に; 「出願引用文献(application cited documents)」を含む)の各々、ならびにその出願および特許の各々において引用される各文書および参考文献の各々、ならびにこれら出願および特許のうちのいずれかに対応するおよび/またはこれらからの優先権を主張するPCT出願および外国出願の各々、ならびに出願引用文献の各々において引用または言及される文書の各々は、本明細書に明示的に参考として援用される。さらに、本文の中で引用される文書もしくは参考文献(例えば、米国特許出願公開第20150230762号、同第20150297760号および同第20190054198号)、特許請求の範囲の前の参考文献リストの中で、または本文自体の中で引用される文書もしくは参考文献;およびこれら文書または参考文献の各々(「本明細書で引用される参考文献(herein cited references)」)、ならびに本明細書で引用される参考文献の各々において引用される各文書もしくは参考文献(任意の製造業者の仕様書、説明書などを含む)は、本明細書に明示的に参考として援用される。
【0019】
本開示によれば、本開示の実施形態の「検出可能に有効な量(detectably effective amount)」は、臨床用途に利用可能な装置を使用して許容可能な画像を生じるために十分な量として定義される。本開示の実施形態の検出可能に有効な量は、1回またはこれより多くの投与において与えられ得る。本開示の実施形態の検出可能に有効な量は、個体の感受性の程度、個体の年齢、性別、および体重、個体に特有な応答、線量測定法などのような要因に応じて変動し得る。本開示の実施形態の検出可能に有効な量はまた、機器およびフィルム関連要因に応じて変動し得る。このような要因の最適化は、当業者のレベルの範囲内であり得る。
【0020】
用語「検出可能な(detectable)」とは、バックグラウンドシグナルを超える本開示の実施形態のシグナルまたは存在を検出する能力に言及する。用語「検出可能なシグナル(detectable signal)」または語句「標識された化合物の検出(detection of a labeled compound)」もしくは「検出可能な標識された化合物(detectable labeled compound)」とは、宿主またはサンプル中での標識された化合物の検出(直接的または間接的)をいう。標識された化合物の検出は、宿主またはサンプル中での標識された化合物の存在を検出し、上記宿主またはサンプルに由来する他のバックグラウンドシグナルから区別する能力に言及する。言い換えると、測定可能なかつ統計的な有意差(例えば、統計的な有意差は、上記検出可能なシグナルと上記バックグラウンドとの間を区別するために十分な差異(例えば、上記検出可能なシグナルと上記バックグラウンドの間の約0.1%、1%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、もしくは40%またはより大きな差異)である)が存在する。標準および/または較正曲線は、上記検出可能なシグナルおよび/または上記バックグラウンドの相対的強度を決定するために使用され得る。上記検出可能なシグナルは、低濃度から高濃度の標識された化合物から生成され得る。一実施形態において、上記検出可能なシグナルは、その個々の標識された化合物シグナルの各々の合計である必要があり得る。一実施形態において、上記検出可能なシグナルは、和、積分、または他の数学的プロセス、式もしくはアルゴリズムから生成され得る。一実施形態において、上記和、積分、または他の数学的プロセス、式もしくはアルゴリズムは、上記検出可能なシグナルがバックグラウンドノイズなどから区別され得るように、上記検出可能なシグナルを処理するために使用され得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「薬剤(agent)」、「活性薬剤(active agent)」などは、本開示の化合物(例えば、標識された化合物)を含み得る。上記薬剤は、組成物または薬学的組成物の中に配置され得る。本明細書で使用される場合、「薬学的組成物(pharmaceutical composition)」とは、活性薬剤と薬学的に受容可能な担体との組み合わせに言及する。本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」とは、被験体(例えば、哺乳動物、特に、ヒト)への投与に適した組成物をいう。概して、「薬学的組成物」は、無菌であり、好ましくは、被験体内で望ましくない応答を誘発し得る夾雑物を含まない(例えば、上記薬学的組成物中の化合物は、製薬グレードである)。薬学的組成物は、多くの異なる投与経路(経口、静脈内、口内、直腸、非経口、腹腔内、皮内、器官内、筋内、皮下、吸入などを含む)を介して、その必要性のある被験体または患者への投与のために設計され得る。
【0022】
「薬学的に受容可能な賦形剤(pharmaceutically acceptable excipient)」、「薬学的に受容可能な希釈剤(pharmaceutically acceptable diluent)」、「薬学的に受容可能な担体(pharmaceutically acceptable carrier)」、または「薬学的に受容可能なアジュバント(pharmaceutically acceptable adjuvant)」とは、概して安全で、非毒性のかつ生物学的にも別の点でも所望されないものでもない、薬学的組成物を調製するにあたって有用な賦形剤、希釈剤、担体および/またはアジュバントを意味し、獣医学的使用および/またはヒトの薬学的使用に受容可能な賦形剤、希釈剤、担体およびアジュバントを含む。ヒトへの投与に適した組成物に関しては、用語「賦形剤(excipient)」は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins, 第21版(2006)(その内容は、本明細書に参考として援用される)に記載されるそれら成分が挙げられるが、これらに限定されないことが意味される。
【0023】
用語「単位投与形態(unit dosage form)」とは、本明細書で使用される場合、ヒトおよび/または動物被験体のための単位投与用として適切な物理的に不連続な単位(各単位は、薬学的に受容可能な希釈剤、担体またはビヒクルと会合した状態で所望の効果を生じるために十分な量(例えば、宿主の体重、疾患、疾患の重篤度など)において計算される化合物の所定の量を含む)に言及する。単位投与形態に関する仕様は、使用される特定の化合物、投与の経路および頻度、ならびに達成されるべき効果、ならびに宿主における各化合物と関連する薬力学に依存する。
【0024】
用語「有効量(effective amount)」とは、本明細書で使用される場合、細胞(例えば、心臓の細胞を画像化するために使用され得る、ヒトに投与される本開示の実施形態(これは標識された化合物とわれ得る)の量に言及する。「投与(administration)」は、本開示の実施形態を被験体へ導入することを意味する。投与は、静脈内、経口、局所、皮下、腹腔内、動脈内、吸入、膣、直腸、鼻のような経路を含むが、これらに限定されず、脳脊髄液への導入または身体区画への点滴が使用され得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「宿主(host)」または「被験体(subject)」は、ヒト、哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマなど)、および他の生きている動物を含む。特に、上記宿主は、ヒト被験体である。本開示の実施形態が投与され得る代表的な宿主は、哺乳動物、特に、霊長類、特にヒトである。獣医学的適用に関しては、広く種々の被験体が、適している(例えば、家畜(例えば、畜牛(cattle)、ヒツジ、ヤギ、乳牛(cow)、ブタなど);家禽(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウなど);および飼い慣らされた動物、特に、ペット(例えば、イヌおよびネコ))。診断および研究適用に関しては、広く種々の哺乳動物が、適した被験体である(齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、およびブタ(例えば、近親交配のブタなど)を含む)。さらに、インビトロ適用(インビトロ診断および研究適用)に関しては、上記の被験体の体液および細胞サンプルが、「サンプル(sample)」としての使用に適しており、サンプルは、例えば、哺乳動物の(特に、ヒトのような霊長類)の血液、尿、もしくは組織サンプル、または獣医学適用に関して言及された動物の血液、尿もしくは組織サンプルである。
【0026】
本明細書で開示される発明は、多くの実施形態を有する。例えば、本発明の実施形態は、被験体/患者において心臓の細胞を画像化する方法を包含する。このような方法は、上記被験体に、以下の式:
【化4】
を有する化合物を糖とする工程であって、ここで投与経路は、上記化合物が上記被験体の心臓の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される工程;ならびに次いで、上記被験体を画像化する工程であって、ここで上記化合物の存在の検出は、心臓の細胞の存在を示す工程を包含する。本発明のある特定の実施形態において、上記被験体は、治療剤または放射線療法を投与されたことがある患者であるように選択され、得られた心臓の上記1またはこれより多くの画像は、上記被験体の心臓に対する上記薬剤または上記放射線療法の効果に関する情報を得るために使用される。本明細書で開示される発明の例証的な実施形態において、上記治療剤は、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)または免疫チェックポイントインヒビターであり、上記心臓の1またはこれより多くの画像は、ドキソルビシンまたは上記免疫チェックポイントインヒビターの投与から生じる心毒性に関する情報を得るために使用される。本発明のある特定の実施形態において、上記治療剤は、心臓の細胞におけるミトコンドリアに対して作用することを観察されるものであるように選択される。
【0027】
本発明のある特定の方法において、上記被験体は、心血管疾患と診断された患者であるように選択される;および/または上記被験体は、がんと診断された患者であるように選択される;および/または上記被験体は、心血管疾患またはがんの処置を受けている患者であるように選択される。必要に応じて、上記被験体は、CTLA-4またはPD-1/PD-L1遮断に影響を及ぼすように選択される免疫チェックポイントインヒビター(例えば、ペムブロリズマブ;ニボルマブ;アテゾリズマブ;アベルマブ;ベバシズマブ;およびデュルバルマブのような抗体)を含む少なくとも1種の治療剤で処置される患者である。本発明のある特定の実施形態において、上記方法は、1回目の日付に上記心臓の1またはこれより多くの画像を観察する工程;2回目の日付に上記心臓の1またはこれより多くの画像を観察する工程;および次いで、上記心臓の変化を経時的に観察するために、上記1回目の日付に得られた画像と、上記2回目の日付に得られた画像とを比較する工程をさらに包含する。本発明のいくつかの実施形態において、上記1回目の日付から上記2回目の日付までの時間量は、1週間未満を含む。あるいは本発明の他の実施形態において、上記1回目の日付から上記2回目の日付までの時間量は、少なくとも1週間、2週間もしくは3週間、または少なくとも1ヶ月、2ヶ月もしくは3ヶ月を含む。本発明のいくつかの実施形態は、上記心臓の1またはこれより多くの画像を使用して:上記被験体の心臓における心筋灌流の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程;および/または上記被験体の心臓における心筋生存能の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程;および/または上記被験体の心臓における炎症の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程を包含する。
【0028】
本発明の実施形態はまた、治療剤の投与に応答する被験体において細胞を画像化する方法を包含する。このような方法は、治療用化合物の投与から生じるインビボでの生理学的変化(例えば、心毒性、薬物応答性など)を観察するために使用され得る。代表的には、このような方法は、上記治療剤を上記被験体に投与する工程、および(代表的には、少なくとも48時間、少なくとも1週間または少なくとも1ヶ月のような期間の後に)次いで、上記被験体に、以下の式:
【化5】
を有するPETプローブ化合物を投与する工程であって、ここで投与経路は、上記化合物が上記被験体の細胞(例えば、心臓の細胞、がん細胞または白血球)に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される工程を包含する。これらの方法は、上記被験体をPET画像化する工程であって、ここで上記PETプローブ化合物の存在の検出は、細胞の存在を示す工程;および上記被験体の細胞における上記化合物の観察された存在と、上記治療剤に対する上記被験体の応答とを最終的に相関させる工程をさらに包含する。本発明のいくつかの実施形態において、このような相関工程は、コントロール(例えば、健常ヒトにおける代表的な[18F]F-AraG PET画像プロフィール)、上記薬剤などを投与する前の患者から得られた[18F]F-AraG PET画像に対する比較を包含する。本明細書で開示されるこのような方法のある特定の作業実施形態において、上記相関させる工程は、心臓の細胞、免疫細胞および/またはリンパ節(例えば、腫瘍流入領域リンパ節)におけるPETプローブ化合物の存在の観察を包含する。これらの方法のある特定の実施形態において、上記被験体は、心血管疾患と診断された患者であるように選択される;および/または上記被験体は、がんと診断された患者であるように選択される;および/または上記被験体は、心血管疾患またはがんの処置を受けている患者であるように選択される。本明細書で開示される発明の例証的な実施形態において、上記治療剤は、ミトコンドリアの生理機能を調節することが観察される薬剤、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)または免疫チェックポイントインヒビター(例えば、CTLA-4またはPD-1/PD-L1遮断に影響を及ぼすように選択される免疫チェックポイントインヒビター)であり、上記心臓の1またはこれより多くの画像は、ドキソルビシンまたは上記免疫チェックポイントインヒビターの投与から生じる心毒性に関する情報を得るために使用される。
【0029】
本発明のある特定の実施形態において、治療剤の投与に応答する被験体において細胞を画像化する上記方法は、1回目の日付/時間に得られた1またはこれより多くの画像を観察する工程;2回目の日付/時間に得られた1またはこれより多くの画像を経時的に観察する工程;および次いで、上記治療剤の投与から生じる患者の生理機能における変化を観察するために(例えば、上記治療剤に対する応答者と非応答者との間を区別するために)、上記1回目の日付に得られた画像と、上記2回目の日付に得られた画像とを比較する工程をさらに包含する。本発明のある特定の実施形態において、上記1回目の日付から上記2回目の日付までの時間量は、1週間未満を含む。あるいは、上記1回目の日付から上記2回目の日付までの時間量は、少なくとも1週間、2週間もしくは3週間、または少なくとも1ヶ月、2ヶ月もしくは3ヶ月を含む。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態は、被験体の細胞におけるミトコンドリア活性を画像化する方法である。代表的には、これらの方法は、以下の式:
【化6】
を有する化合物を上記被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、上記化合物が、上記被験体の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される工程;ならびに次いで、上記被験体を画像化する工程であって、ここで上記化合物の存在の検出は、ミトコンドリア活性の存在を示す、その結果、被験体の細胞におけるミトコンドリア活性が観察される工程を包含する。代表的には、これらの方法において、上記被験体は、ミトコンドリア欠損症に罹患しているとして選択された患者である。ある特定の実施形態において、上記方法は、ミトコンドリア機能不全に関して上記被験体をスクリーニングするために使用される;上記ミトコンドリア機能不全は、心血管疾患、神経精神疾患、または神経変性疾患である。いくつかの実施形態において、上記方法は、心筋灌流、双極性障害、うつ病、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、早老、心筋症、呼吸鎖障害、mtDNA枯渇症、ミオクローヌス癲癇、赤色ぼろ線維症候群、脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作、および視神経萎縮からなる群より選択されるミトコンドリア機能不全に関して上記被験体をスクリーニングするために使用される。
【0031】
簡潔には、インビボでAraGは、デオキシグアノシンキナーゼによって特有の様式で代謝され、ミトコンドリアDNAへと組み込まれる(図2.4)。これらの観察は、Tリンパ芽球性疾患の処置における潜在的な臨床適用のために、より水溶性のAraGプロドラッグ、2-アミノ-6-メトキシプリンアラビノシド(506U、ネララビン)の合成をもたらした。この化合物は、Glaxoによって数年間かけて開発され、いまや再発性のT細胞ALLおよびT細胞リンパ芽球性リンパ腫の処置に関してFDAが承認している。
【0032】
本開示の実施形態は、[18F]-F-アラビノフラノシルグアニン化合物(2021年5月7日に出願され、発明の名称「METHODS AND MATERIALS FOR MAKING PET RADIOTRACERS」である米国特許出願第17/314,366号(その内容は、本明細書に参考として援用される))に開示されるもののような多くのプロセスによって形成され得る化合物を使用する方法を包含する。本発明のこのような実施形態は、例えば、以下の一般式:
【化7】
を有する化合物を含む物質の組成から形成される[18F]-F-アラビノフラノシルグアニン化合物を含み;ここで:PGは、保護基を含み;LGは、脱離基を含む。代表的には、本発明のこのような実施形態において、保護基に連結される窒素原子は、「N(PG)」によって表されるとおりの2個の保護基に連結される。あるいは、この窒素原子は、水素原子および「NHPG」によって表されるとおりの1個の保護基に連結される。本発明の例証的実施形態において、上記組成物は、前駆体1または前駆体3:
【化8】
のうちの少なくとも一方を含み、ここで:Buは、tert-ブチルオキシカルボニルアルコール保護基を含み;Bocは、tert-ブチルオキシカルボニルアミン保護基を含み;THPは、テトラヒドロピラニルアルコール保護基を含み;EOEは、エトキシエチルアルコール保護基を含み;Tfは、トリフレート脱離基を含む。
【0033】
本開示の実施形態は、2021年2月25日出願の出願番号第17/185,502号を有する発明の名称「Compounds and Methods of Making Compounds」である米国出願(その内容は、本明細書に参考として援用される)に開示されるもののような他のプロセスによって形成される[18F]-F-アラビノフラノシルグアニン化合物を使用する方法を包含する。このような方法は、式2、3、4、5、11、および12ならびに、2’、3’、4’、5’、および11’を有する図1.1Aおよび1.1Bに示されるもののような化合物、ならびに画像化のための上記化合物の使用等を含む。
【0034】
標識された化合物を作製する例証的実施形態は、とりわけ、同位体(Ist)を含む化合物と、式1’:
【化9】
を有する化合物とを反応させて、式2’:
【化10】
を有する化合物を形成する工程;ならびに
上記式2’を有する化合物に対して脱保護を行って、式3:
【化11】
を有する化合物を形成する工程であって、ここでPGは、保護基であり、LGは、脱離基であり、ここでRは、R1、R2、R3、R4、R5、およびR6:
【化12】
からなる群より選択される式を有する化合物であり、ここでR’は、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5:
【化13】
からなる群より選択される式を有する化合物であり、ここでAcはアセチル基であり、Bzはベンゾイル基であり、ここでAcおよびBzの各々は、本明細書で記載されるように置き換えられ得る工程を包含する。標識された化合物の例証的実施形態は、とりわけ、標識された化合物であって、
上記化合物は、式3:
【化14】
を有する化合物を含み、ここでIstは同位体であり、ここでR’は、R’1、R’2、R’3、R’4、およびR’5:
【化15】
からなる群より選択される式を有する化合物である。標識された化合物の例証的な実施形態は、とりわけ、式2’:
【化16】
を有する化合物を含み、ここでPGは、保護基であり、ここでRは、R1,R2,R3,R4,R5、およびR6:
【化17】
からなる群より選択される式を有する基であり、ここでAcはアセチル基であり、Bzはベンゾイル基であり、ここでAcおよびBzの各々は、本明細書で記載されるとおりに置き換えられ得る。
【0035】
心臓の細胞を画像化する方法の例証的実施形態は、とりわけ、上記被験体に本開示の化合物を投与する工程;および上記被験体を画像化する工程であって、ここで上記化合物の存在の検出は、上記心臓の細胞の存在を示す工程を包含する。細胞におけるミトコンドリア活性の存在または程度を画像化する方法の別の例証的実施形態は、とりわけ、上記被験体に本開示の化合物を投与する工程;および上記被験体を画像化する工程であって、ここで上記化合物の存在の検出は、上記被験体の細胞におけるミトコンドリア活性の存在または程度を示す工程を包含する。
【0036】
本発明の1つの作業実施形態の実証において、PETトレーサーとしての[18F]F-AraGの使用を、健常ボランティアにおいて、および免疫療法を受けているがん患者において表した。これらの試験において、心臓における顕著なトレーサー取り込みを両群において観察した。しかし驚くべきことに、この特異的PETトレーサーを使用する場合、健常ボランティアの心臓壁において観察されるシグナルは、免疫療法を受けている患者において異なることが観察された。この予測外の発見は、[18F]F-AraGが、免疫調節剤、化学療法剤などのような薬物によって引き起こされる心臓の細胞に対する変化、ならびに放射線への曝露から生じる傷害のような心臓への他の損傷を画像化する能力を例証する。この文脈において、それがミトコンドリア活性を評価するために使用され得ることから、[18F]F-AraGは、ミトコンドリア機能を改善し得るおよび/またはこれらのタイプの薬剤がミトコンドリア機能を改善する能力の有効性を評価し得る新たな薬剤を試験するための方法において使用され得る。この発見に鑑みると、PETトレーサーとしての[18F]F-AraGの使用は、心筋灌流、心筋生存能および心臓炎症の観察を含むいくつかの別個の適用において、既存の18F標識トレーサーを超える顕著な利点を提供することによって、この技術におけるニーズに対処する。さらに、PETトレーサーとしての[18F]F-AraGの使用はまた、心臓薬物開発研究において、および生理学的(例えば、ミトコンドリア)活性を調節する薬剤に対する処置応答を観察するために使用され得る(例えば、Zinovkinら, Curr Mol Pharmacol. 2019;12(3):202-214を参照のこと)。
【0037】
上で注記されるように、本開示の実施形態は、式2、3、4、5、11、および12ならびに式2’、4’、および11’を有する図1.1Aおよび1.1Bに示されるもののような化合物、ならびに例えば、画像化するための上記化合物の使用を含む。本開示の実施形態は、上記化合物が、以下に詳細におよび実施例1~3に記載されるように、少しの単純な工程において作製され得ることから有利である。特に、本開示の実施形態は、グアノシンヌクレオシドの前駆体の直接的フッ素化、続いて、保護基の除去を提供する。上記方法の実施形態は、2つの工程を包含し、これら2つの工程が短期間にわたって起こり、その2つの工程はともに、他の可能な代替の商業的生産スキームに対して有利である。
【0038】
上記方法の実施形態は、図1.1Aおよび1.1BのスキームA~DおよびスキームA’~D’においてに示される。スキームAは、一般的であるが、具体的な保護基(PG)および脱離基(LG)を使用し、スキームB~Dは、さらなる詳細を提供する。スキームA’~D’は、それらが具体的な保護基および脱離基を使用しないという点において一般的である。試薬が以下で記載されるものに類似の様式で変更され得ることは、注記されるべきである。本開示の実施形態のより詳細なスキームは、実施例1および実施例2のスキーム1および2に記載される。一般に、上記方法の実施形態は、式3、5、および12において具現化されるもののような標識された化合物を作製する工程を包含する。一実施形態において、上記方法は、同位体(Ist)を含む化合物と図1.1A中の式1を有する化合物とを反応させて、図1.1A中の式2を有する化合物を形成する工程を包含し得る。図1.1Aよび1.1Bに記載される合成は、非常に類似しており、主な差異は、図1.1A中の具体的なPGおよびLGの使用である。よって、図1.1Aにおける合成についての以下の考察は、図1.1Bにおける合成にあてはまり得る。本明細書に記載される保護基、脱離基、反応などに関する種々の置換は、図1.1Bに記載される合成において使用され得る。
【0039】
図2.1は、スキーム1および2を記載し、これらは、本開示の具体的実施形態に関するものであり、実施例1に詳細に記載される。特に、上記18F(FAraG前駆体(化合物8)が生成され、次いで、18F(FAraG前駆体(化合物12)を形成するために反応させられる。反応工程に関する詳細は、図2.1に示され、これは、一般的合成に関して上に記載されるものに類似である。図3.4~3.6はまた、本開示の実施形態の合成に関する具体的詳細を提供し、実施例2に詳細に記載される。
【0040】
本開示の実施形態はまた、心臓組織および細胞を画像化する方法を包含する。一般に、標識された化合物の実施形態は、被験体(例えば、生きているヒト)の心臓の細胞の局在および/または量を画像化するために使用され得る。上記標識された化合物は、上記被験体に投与され得、次いで、上記被験体または上記被験体の一部は、上記被験体内での存在および位置、ならびに/または存在する上記標識された化合物の量を検出するために、陽電子放出断層撮影(PET)のようなデバイスを使用して画像化され得る。上記存在および/または量は、上記被験体における心臓の細胞、がん細胞および/または白血球の存在、位置、および/または数/サイズを検出するために使用され得る。
【0041】
本開示はまた、標識された化合物に対する前駆化合物または中間体(例えば、式1、1’、2、または2’)を含むパッケージされた組成物、ならびに上記標識された化合物を作製するための説明書および使用方法(例えば、それらの使用に関する書面による説明書)を提供し得る。上記キットは、本開示の実施形態を被験体に投与するための当該分野で公知の適切な緩衝液および試薬をさらに含み得る。
【実施例
【0042】
以下の実施例は、本開示を作製および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するように示され、本発明者らがそれらの開示としてみなすものの範囲を限定することも意図されず、以下の実験が行われる全ての実験または唯一の実験を表すことも意図されない。
【0043】
実施例1:PETプローブを作製するための例証的方法
AraGは、T細胞リンパ芽球性疾患の処置において有効性が判明しているヌクレオシドアナログである。それは、デオキシグアノシンキナーゼによって特有の様式において代謝され、ミトコンドリアDNAへと組み込まれる。本発明者らは、18F誘導体を合成して、分子プローブとして使用した。当業者は、細胞株において取り込みおよび代謝を試験し得、マウスモデルのTリンパ芽球および急性移植片対宿主病のマウスモデルの活性化T細胞を画像化することにおけるこの化合物の有効性を決定し得る。
【0044】
以前に、本発明者らは、2-デオキシグアノシンアナログの新規な18F誘導体、9-β-D-アラビノフラノシルグアニン(「18F-AraG」または「[18F]F-AraG」)を成功裡に合成して、分子プローブとして使用した(図2.1)。[18F]AraG細胞取り込みを、白血病細胞株CCRF-CEMにおいて評価し、[H]AraG細胞取り込みと比較した。図2.2は、CCRF-CEM細胞株による[18F]AraGの取り込みを示し、上記取り込みが用量依存性であることを示す。コールド誘導体2F-AraGが、8-[H]-AraGの取り込みと競合するか否かを決定するために、本発明者らは、CCRF-CEM、MOLT-4(白血病細胞株)およびRaji(ヒトバーキットリンパ腫細胞株)による[H]-Arag取り込み、ならびにコールド2F-AraGとの競合を試験した(図2.3Aおよび2.3B)。図2.3Aは、2F-AraG (1-100μM)の量を増大させると、[H]-AraG取り込みの減少が引き起こされることを示す。同様の結果が、MOLT4細胞株およびRaji細胞株についても観察された(図2.3B)。競合アッセイは、コールド誘導体2F-Aragが類似の取り込み経路を示す8-[H]-AraGの取り込みと競合することを示す。
【0045】
正常ヌードマウスにおける初期のマイクロPETスキャンは、18F-AraGが、リンパ節内で取り込まれることを示す。図2.1は、本開示の化合物を作製する方法の実施形態を記載する。上記2’-デオキシ-2’-フルオロ-アラビノヌクレオシドは、抗ウイルス剤として報告されている(Proc Natl Acad Sci USA, 1992; 89: 2970-2974; Pharmacol 1999; 43: 233-240; J Pharm Chem 1996; 85: 339-344(これらの各々は、本明細書に参考として援用される))。本発明者らは、放射性標識された8-[18F]フルオログアニン誘導体を、陽電子放出断層撮影(PET)で遺伝子発現を画像化するための潜在的なインビボプローブとして調査していた。本発明者らは、直接的放射性フッ素化反応に基づく8-[18F]フルオログアニン誘導体の調製方法を開発し、8-[18F]フルオログアノシンをグアノシンから合成できた(Nuclear Medicine and Biology. 2000; 27(2): 157-162(これは、本明細書に参考として援用される))。近年になって、2’-デオキシ-2’-[18F]フルオロ-9-β-D-アラビノフラノシルアデニン([18]FAA]の合成が報告されている(J Label Comp Radiopharm 2003; 46: 805-814(これは本明細書に参考として援用される))。
【0046】
実施例2: 白血球に関するPET画像化剤としての[18F]F-ARAG
9-(β-D-アラビノフラノシル)グアニン(AraG)は、T細胞リンパ芽球性疾患の処置において有効性が判明しているグアノシンアナログである。画像化剤として放射性フッ素化されたAraGを使用するという可能性を試験するために、本発明者らは、2’-デオキシ-2’-[18F]フルオロ-9-β-D-アラビノフラノシルグアニン([18F]F-AraG)を合成し、T細胞におけるその取り込みを調査した。
【0047】
この目的のために、本発明者らは、85℃において45分間、2-N-アセチル-6-O-((4-ニトロフェニル)エチル)-9-(3’,5’-ジ-O-トリチル-2’-O-トリフィル-β-D-リボフラノシル)グアニンをDMSO中の[18F]KF/K.2.2.2で直接的フッ素化することを介して[18F]F-AraGを合成した。CCRF-CEM白血病細胞株(非活性化)および活性化された初代胸腺細胞の両方での[18F]F-AraG取り込みを、評価した。本発明者らは、0.8~1.3Ci/μmolの比活性を有する7~10% 放射化学収率(減衰補正した)において[18F]F-AraGを成功裡に調製した。予備的な細胞取り込み実験は、CCRF-CEM白血病細胞株および活性化初代胸腺細胞がともに、[18F]F-AraGを取り込むことを示した。[18F]F-AraGを、グアノシンヌクレオシドの適切な前駆体の直接的フッ素化によって成功裡に合成した。このアプローチは、現在は多数の工程によって合成され、時間のかかる精製を要する他の重要なPETプローブ(例えば、[18F]FEAU、[18F]FMAUおよび[18F]FBAU)の合成のために使用され得る。細胞取り込み試験は、T細胞のPET画像化剤としての[18F]F-AraGの使用を調査するためのさらなる研究をサポートする。
【0048】
スキーム1は、図3.4に示されるように、2-N-アセチル-6-O-((4-ニトロフェニル)エチル)-9-(3,5-ジ-O-トリチル-2-トリフィル-β-D-リボフラノシル)グアニン(2)、[18F]F-AraG前駆体の合成を示す。CFSOCl/DMAPでの2’,5’-ジ-O-トリチルグアノシン誘導体1の処理は、2-N-アセチル-6-O-((4-ニトロフェニル)エチル)-9-(3’,5’-ジ-O-トリチル-2’-O-トリフィル-β-D-リボフラノシル)グアニン(2)を65%収率で得た。スキーム2は、図3.5に示されるように、文献の手順(J. Org. Chem. 1992, 57, 7315-7321(これは、本明細書に参考として援用される))に従って調製したコールドF-AraG標準の合成を示す。3’,5’-ジ-O-トリチルグアノシン誘導体1を、DAST試薬で6-O-((4-ニトロフェニル)エチル)-9-(3’,5’-ジ-O-トリチル-2’-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)グアニン3に変換した。DBUで3を脱保護して、9-(3’,5’-ジ-O-トリチル-2’-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)グアニン(4)を得た。最終的に、TFAによって4を脱保護して、2’-デオキシ-2’-フルオロ-9-β-D-アラビノフラノシルグアニン5(F-AraG)を得た。
【0049】
放射化学:
18F]標識されたグアノシン誘導体6(図3.6に示されるとおりのスキーム3)を、85℃において45分間、DMSO中の[18F]フッ化物イオンによって2の中のトリフレートを求核置換することによって調製した。HPLCを介する[18F]6の精製は、脱プロトン化出発物質2(AraG)での最終生成物[18F]F-AraG 7の汚染を回避するために必要とされた。[18F]6を、先ず塩基(0.5M NaOCH)によって、次いで、酸(1N HCl)によって円滑に加水分解して、[18F]F-AraG 7を得た。放射化学収率は、7~10%であった(補正された較正, n=10)。その比活性は、0.8~1.3Ci/μmolであった。7とコールドF-AraG標準との同時注入の分析HPLCプロフィールは、図3.1に示される。
【0050】
細胞が[18F]F-AraGを取り込む能力を評価するために、CCRF-CEM細胞株(急性リンパ芽球性T白血病細胞、非活性化)および初代T細胞を、[18F]F-AraGに曝した。図3.2は、非活性化CCRF-CEM細胞による[18F]F-AraGの取り込みを示し、[18F]F-AraG取り込みが3μCiに曝した細胞と比較して、10μCiに曝した細胞による[18F]F-AraG取り込みの2倍(P<XX)増大を伴って用量依存性であることを示す。次いで、本発明者らは、正常マウス組織に由来する活性化初代胸腺細胞がまた、[18F]F-AraGを蓄積させるか否かを調べた。図3.3は、100U/mLのインターロイキン2で刺激した初代T細胞が、刺激されていない初代T細胞より1.4倍多く(p=0.14)[18F] F-AraGを取り込み、50nM PMAおよび1μg/mL イオノマイシンで刺激した初代T細胞が4.7倍多く(p=0.003)[18F]F-AraGを取り込むというデータを示す。
【0051】
フッ素がC-2におけるアラビノ位置に先ず導入され、次いで、フッ素化された糖がプリン塩基と反応する2’-デオキシ-2’-フルオロ-9-β-D-アラビノフラノシルグアニン(F-AraG)の間接的合成に関する多くの報告が存在する(Carbohydr. Res. 1975, 42, 233-240, J. Org. Chem. 1985, 50, 3644-3647、およびChem. Pharm. Bull. 1989, 37, 336-339(これらの各々は、本明細書に参考として援用される))。しかし、フッ素が、DASTで適切に保護されたグアノシン誘導体の直接的フッ素化によって糖のC-2におけるアラビノ位置へと組み込まれるコールドF-AraGの直接的合成に関する報告はわずか1件である(J. Org. Chem. 1992, 57, 7315-7321(これは、本明細書に参考として援用される))。[18F]標識されたF-AraGの合成は、現在まで報告されていない。[18F]標識されたDASTの困難な合成およびDAST媒介性フッ素化の長い反応時間に起因して、[18F]DAST法を介して[18F]F-AraGを合成することは、現実的ではない。化合物2、[18F]F-AraG前駆体を調製し(図3.4に示されるとおりのスキーム1)、Hおよび19F NMR分光法ならびに高分解能質量分析法によって特徴づけた。H2’の化学シフトは、C2’位置におけるトリフィル基の電気陰性度に起因して、1において4.73ppmから2において6.03ppmへと変化した。19F NMRは、-75.00ppmにおいて一重項を示し、これは、糖トリフレートの化学シフトと一致する。同様の化学シフト傾向が、アデノシントリフレートの合成に関して観察された[19]。本発明者らが知る限り、前駆体2は新しく、本発明者らの研究室において初めて合成された(仮特許出願を出願済み)。また、初めて、本発明者らは、2をDMSO中の[18F]KF/K.2.2.2で直接的にフッ素化することで、7~10% 放射化学収率(減衰補正した)において、0.8~1.3Ci/μmolの比活性で、[18F]F-AraG(7、図3.6に示されるとおりのスキーム3)を合成した。7の特定および純度は、分析HPLCカラムに正規の標準化合物5を同時注入することによって確認した(図3.1)。
【0052】
細胞培養において[18F]F-AraG 7の性能を評価するために、本発明者らは、いくつかのアッセイを行った。細胞が[18F]F-AraGを取り込む能力を確認するために、本発明者らは、CCRF-CEM細胞株(急性リンパ芽球T白血病細胞、非活性化)および初代T細胞を[18F]F-AraGに曝した。図3.2は、CCRF-CEM細胞による[18F]F-AraGの取り込みを示し、[18F]F-AraG取り込みが用量依存性であることを示す。これらのデータはまた、[18F]F-AraGの大部分が、曝露の最初の1時間以内に細胞によって取り込まれることを裏付ける。[18F]F-AraG(110分の同位体半減期を有する)が、PETトレーサーとして有効であることを最終的に証明しようとするのであれば、急速な取り込みは必要である。リンパ芽球性T細胞株が、[18F]F-AraGを取り込むことが確認されたので、本発明者らは、次いで、初代T細胞(正常マウス組織から得られる非腫瘍性T細胞)がまた[18F]F-AraGを取り込むか否かを調査した。図3.3は、2回の独立した実験のデータを示し、これは、非腫瘍性であるが活性化された初代T細胞が、認識可能なレベルまで[18F]F-AraGを取り込むことを示す。活性化T細胞による[18F]F-AraGの増大した取り込みは、移植片対宿主病(GVHD)の検出においてPETトレーサーとして[18F]F-AraGを利用することを可能にし得る。GVHDは、主にT細胞が引き起こす疾患であり、PETによって異常に活性化されたT細胞を検出できると、侵襲的な手順なしに患者においてGVHDを早期診断することを容易にし得る。AraGは、治療的血清レベル(約150μM)においていくらかの患者において神経毒性副作用を誘導することが報告されている[24]ことから、本発明者らは、PET患者において潜在的な神経毒性を回避しながらPETのためのトレーサーとして[18F]F-AraGを最適化するために、本発明者らのアッセイにおいてAraGの報告された治療的レベルより低い用量(約0.5μM)を利用するように選択した。
【0053】
この実施例において考察されるように、[18F]F-AraGは、直接的フッ素化法によって合成され得る。このアプローチは、現在は多数の工程によって合成され、時間のかかる精製プロセスを要する他の重要なPETトレーサー(例えば、[18F]FEAU、[18F]FMAUおよび[18F]FBAU)の合成のために使用され得る(J. Label. Radiopharm. 2003, 46, 285-289(これは、本明細書に参考として援用される))。CCRF-CEM細胞(非活性化)および活性化初代T細胞において行われた予備的な細胞取り込み試験は、T細胞起源の疾患の検出のための新たなPET画像化剤としての[18F]F-AraGの適用を示唆する。
【0054】
実施例3: 心臓画像化における18F-F-ARAGの使用
図5は、[H]F-AraGに関するdCKおよびdGKの反応速度論的特性を示す。(a)[H]F-AraGに関するdGKまたはdCKの酵素反応速度論。(b)dGK活性に関するdGuo陽性コントロール。(c)dCK活性に関するdCyd陽性コントロール。線は、ベストフィットを示す。[[H]F-AraGに関するdGKのKmは、23.44nmol/分/mgのVmaxで、7.27μMであることが見出された一方で、dCKは、[H]F-AraGに対してより低い親和性を有した(Km=50.89μM、Vmax=262.5)。本発明者らは、dCydに対するdCKの高い親和性(Km=1.997、Vmax=9.454)およびdGK活性に関するdGuo陽性コントロールにおいて同様により高い親和性(Km=5.083、Vmax=123.2)を観察した。
【0055】
dGKは、[18F]F-AraGに対してより高い親和性を有することから、本発明者らは、トレーサーレベルにおいて、[18F]F-AraGがミトコンドリアキナーゼによって優先的にリン酸化され得るという可能性を考慮した。ミトコンドリアは、ATPを精製することによって細胞にエネルギーを供給することを担うオルガネラである。心臓は、高いエネルギーが必要であるために、ミトコンドリアが特に豊富な器官である。過去10年間で、ミトコンドリア機能不全は、心血管病理の重要な局面として認識されている。その結果として、心臓のミトコンドリア機能に集中する処置が、急速に浮かび上がりつつある。ミトコンドリアdGKの基質として、[18F]F-AraGは、心臓のミトコンドリア活性に関して報告するために有用な薬剤であることが発見された。
【0056】
本発明の例証的な実施形態において、PET方法論におけるトレーサーとしての[18F]F-AraGの使用を、健常ボランティアおよび免疫療法を受けているがん患者において評価した。心臓における顕著な取り込みが、両群において観察された(図6)。図6は、心臓においてトレーサーとして[18F]F-AraGを使用するPET法を示す。本発明者らの開示は、心臓の高いミトコンドリア活性が、トレーサーの注射の1時間後に高い[18F]F-AraGシグナルを明らかに生じるという証拠を提供する。
【0057】
興味深いことに、本発明のこの実施形態において、健常ボランティアの心臓壁における[18F]F-AraGシグナルは、免疫療法を受けている患者におけるものとは異なることが発見された。特に、図7は、健常ボランティアおよび免疫療法を受けている患者の心臓壁における[18F]F-AraGシグナルの強度を示す(前は、処置前画像に言及し、後は、抗PD-1抗体の1回の注射の2~3週間後に撮った画像に言及する)。
【0058】
本明細書で提供される結果は、[18F]F-AraGが心臓を画像化し、薬物または傷害によって引き起こされ得る変化に関して報告する能力を示す。このことに鑑みると、PETトレーサーとして[18F]F-AraGを使用すると、いくつかの別個の適用(心筋灌流、心筋生存能および心臓炎症、ならびに心臓薬開発研究およびミトコンドリア標的化薬物への処置応答を観察する方法を含む)において、既存の18F標識トレーサーを超える顕著な利益を提供し得る。
【0059】
実施例4: ドキソルビシンおよび免疫チェックポイントインヒビター治療に関する心毒性の早期診断およびモニタリングのための画像化生体マーカーとしての[18F]F-ARAG
この実施例(予言的な特定の局面)は、がん治療関連心毒性の早期診断のための高感度かつ特異的なPET画像化ストラテジーの開発を開示する。本発明者らは、心毒性と関連するがん治療の2つのクラス:例えば、免疫チェックポイントインヒビター(ICI)の投与(これは、T細胞の浸潤を介して心筋傷害をもたらし、心筋炎を生じる)、およびミトコンドリア機能不全および直接的な心筋細胞死を引き起こすアントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)に焦点をあてる。この実施例において、本発明者らは、以下を考察する: 1)[18F]F-AraGがどのようにして、ICIおよびドキソルビシン処置の両方に関する心毒性の早期のおよび病態生理特異的特定を可能にし得るか;2)18FDGおよび[18F]F-AraGの比較、ならびに[18F]F-AraG心筋取り込みにおける変動性の決定;ならびに3)例えば、がん患者における心筋取り込みの後ろ向き分析を行うために、健常被験体における正常な生理学的[18F]F-AraG取り込みの範囲を決定する。
【0060】
がん診断後の平均余命は、より早期の診断およびより有効ながん治療を通じて顕著に改善している。しかし、がん処置の一般毒性は、治療を妨害し得、生存に影響を及ぼし得、衰弱させる有害効果およびクオリティーオブライフの低下をもたらし得る。治療関連の心血管毒性は、がん患者およびがん生存者における疾患率および死亡率の主要な原因である(1)。多くのがん生存者にとって、がん再発ではなく心血管事象が、多くのがんタイプにおいて主要な死亡リスクの代表である(2)。心血管合併症は、旧来のがん治療(例えば、アントラサイクリン)、およびより選択的な標的化治療(例えば、キナーゼインヒビター)で生じ得、十分に証明されてきた(3,4)。免疫チェックポイントインヒビター(ICI)、免疫応答の調節(例えば、programmed death-1(PD-1)、そのリガンド(PD-L1)、またはcytotoxic T lymphocyte antigen-4(CTLA-4))を標的化するモノクローナル抗体は、進行した腫瘍を有する患者の何分の一かにおいて印象的な臨床転帰をもたらしたが、多系統の免疫関連有害効果(心血管毒性を含む)が、処置に伴って報告されている(5)。ICI関連心血管毒性は、十分に解明されておらず、大部分が過小に報告されていると考えられる。全ての免疫関連有害事象のうち、心筋炎は最も致死的であり、致命率は50%近い(6,7)。がんの処置においてICIの適用が急速に拡がっていることを考慮すれば、免疫関連心毒性の正確な評価およびよりよい理解は、成功裡の患者のケアおよび管理にとって極めて重要な、対処されていない臨床上の困難の代表である。
【0061】
非侵襲性であるという利点に起因して、心臓画像化は、がん治療中およびその後に心機能をモニターするために最も推奨される技術である(8,9)。心エコー検査による左室駆出率(LVEF)の連続測定は、現在、心毒性の検出のための標準的技術である。しかし、LVEFの低減はしばしば、心臓傷害の後期に現れ、不可逆的な損傷を示し得る。心臓MRIは、左室機能傷害の前に起こる機械的変化の検出を可能にするが、ICI関連心毒性における分子特異性および感度を欠いている(10)。
【0062】
現在使用される画像化法が不顕性の心臓病併発(cardiac involvement)を検出することができないことによって、がん患者およびサバイバーにおいて心臓合併症の防止およびよりよい管理の大きな妨げが示されている(11)。さらに、免疫療法の進行に伴って、炎症性の心臓の続発症の迅速な診断は、高感度でも特異的でもない現在の診断技術では必須である。高い特異性、解像度、および感度は、陽電子放出断層撮影(PET)を、心筋代謝および灌流の評価の至適基準の画像化モダリティーにしているが、がん治療関連心毒性の早期検出におけるその有用性の評価は、制限されている。にもかかわらず、心血管毒性の早期指標を標的化するPET画像化剤は、不顕性心毒性の検出の強力かつ高度に特異的な非侵襲性ツールを提供する。
【0063】
この実施例において、本発明者らは、[18F]F-AraG、ICIおよび化学療法と関連する心毒性の早期検出およびモニタリングのための画像化生体マーカーとして、活性化T細胞および心筋のミトコンドリア機能を評価する特有の能力を有するPET薬剤に焦点をあてる。[18F]F-AraGは、Namavariらによって、活性化T細胞を画像化するために開発された(12)。それは、アラビノシルグアノシン(arabinosylguanasine)(AraG)の18F標識されたアナログであり、T細胞において顕著に選択的な蓄積を示した化合物であり(13,14)、そのプロドラッグであるネララビンは、T細胞急性リンパ芽球性白血病およびT細胞リンパ芽球性リンパ腫の処置のために使用される。[18F]F-AraGは、ヌクレオシド輸送体を介してT細胞に入り、主に、ミトコンドリアにのみ存在し、ミトコンドリアDNA合成のためにヌクレオチドを供給するにあたって極めて重要である酵素であるデオキシグアノシンキナーゼ(dGK)によるリン酸化を介して細胞内に捕捉される(図8)(15-17)。活性化に応じて、T細胞は、代謝的再プログラミングを受け、ミトコンドリア質量およびmtDNA両方を劇的に増大させ(18,19)、これは、[18F]F-AraGによって可視化され得る。[18F]F-AraGがT細胞活性化を画像化し、従って、がん患者において免疫療法に適応した応答の早期の表示を提供する能力は、多数のフェーズII知見において現在調査されている最中である。
【0064】
心筋炎は、最も一般的かつ致命的なICI関連心血管毒性の発現であり、心筋と腫瘍細胞との間で共有される抗原に対して誇張された適応免疫応答の結果であると考えられる(図9A)(20)。浸潤T細胞は、心不全の病因に関係しており(21)、致命的なICI-心筋炎の症例において検出されている(7,22)。特定の理論にも作用機序にも拘束されないが、本発明者らは、[18F]F-AraGが、腫瘍および心臓における活性化T細胞の浸潤を同時に検出し得るので、ICI関連心毒性の早期検出のツールとして役立つと考える。
【0065】
ミトコンドリアdGK(律速様式でmtDNA合成のための前駆体の供給を担うヌクレオチドサルベージ経路における酵素)の基質として(23)、[18F]F-AraGは、活性化T細胞においてのみならず、ミトコンドリアが多い細胞(例えば、心筋)においても、ミトコンドリア状態に関する報告に特有に適している。ドキソルビシン(広く使用される化学療法剤)の心毒性は、徹底的に研究されており、非常に多くの提唱された機序が存在するが、それらは全て、心筋におけるミトコンドリア機能の調節不全に集中している(24)。ドキソルビシンは、複数の方法でミトコンドリアと相互作用し、膜電位に影響を及ぼし、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の酸化および枯渇をもたらす(図9B)(25)。本発明者らの開示は、ドキソルビシン関連心筋症における異常なミトコンドリア機能が、[18F]F-AraGによって可視化され得、ドキソルビシン-心毒性の早期検出を可能にするという証拠を提供する。
【0066】
ICIおよびドキソルビシンの両方と関連する心毒性を評価する能力は、化学療法によるおよびエフェクターT細胞による心筋傷害によって引き起こされる心臓への損傷の増強をもたらす化学療法/免疫療法の組み合わせアプローチの使用を増大させる文脈において非常に重要である(26)。[18F]F-AraGが心筋のミトコンドリア状態を評価する能力は、健常ヒトボランティアにおいて観察された心筋取り込みによって示されている。顕著なことには、健常被験体と比較して、免疫療法を受けているいくらかの患者は、心臓壁において有意により高いシグナルを示した。これは、[18F]F-AraGが異常なミトコンドリアおよび/または炎症活性を検出する能力を示す(図10)。
【0067】
この実施例において、本発明者らは、観察された臨床所見をよりよく理解するために、増大した[18F]F-AraG取り込みの根底にある機序を考慮する。免疫療法を受けている患者において検出される心筋取り込みを正確に解釈する能力は、治療応答のみならず治療の有害効果についても同時に報告する臨床で直ぐに使えるツールの評価を提供し得ることから、非常に重要である。[18F]F-AraGは、ミトコンドリア機能の非侵襲的測定に関する火急の臨床ニーズを満たし得、それは、ヒトへのミトコンドリア標的化治療の開発およびより成功裡の置き換えの一助となり得る(27)。[18F]F-AraG PETが早期の心臓の関与を検出する能力は、治療有効性および心血管の安全性のバランスを取ることに焦点を当てた急速に進歩している分野である腫瘍循環器学(cardio-oncology)に革命を起こす可能性にともなって、患者の管理に対して多大な影響を有し得る。[18F]F-AraG PETは、治療の最適化、心血管リスクならびに心血管疾患関連の疾患率および死亡率の低減、ならびにがん患者および生存者におけるクオリティーオブライフの改善を可能にし得る。患者に対するこれらの利益は、次に、心血管疾患と関連する高額なヘルスケアおよび社会的コストを低減し得る。
【0068】
現在使用される画像化法は、がん治療と関連する不顕性の心臓の関与を検出するための分子特異性を欠いている。このことが提供する例外的な利点は、予備的な臨床データ([18F]F-AraG PETが心臓における不定のミトコンドリア活性を検出する大きな可能性を示すデータ)から明らかである。この文脈において、[18F]F-AraGは、現在、種々のがん治療:化学療法、標的化された治療およびICIによって引き起こされる損傷に関して報告し得る、臨床における唯一の薬剤であり得る。さらに、標的組織における免疫応答および免疫療法のオフターゲット毒性効果に関して同時に報告する能力は、[18F]F-AraGに特有の特徴である。この実施例は、現在診断アプローチが存在しないICI-および組み合わせ化学療法/ICIアプローチと関連する心毒性の評価のための新たな方法の開発を提供する。
【0069】
実施形態1. [18F]F-AraGは、ミトコンドリア傷害薬物(例えば、ICIおよびドキソルビシン)の病態生理に関する心毒性の早期特定を可能にすることを実証する
18F]F-AraG画像化は、心臓病態生理の生体マーカーと相関し得、心毒性の早期検出を可能にし得る。
【0070】
理論的根拠および裏付けの証拠
【0071】
18F]F-AraGは、細胞培養において、ならびに全臨床的免疫細胞媒介性疾患モデル - 移植片対宿主病および関節リウマチにおいて包括的に評価されてきた(28,29)。[18F]F-AraGは、活性化CD8+細胞において優先的に蓄積するが、いくらかの蓄積は、マクロファージおよび樹状細胞においても観察される(図11)。T細胞は、腫瘍に対する免疫応答において極めて重要な役割を果たすことから、本発明者らは、がん免疫学(immuno-oncology)における[18F]F-AraGの価値を決定することに焦点をあてた(30,31)。全臨床的研究から、活性化T細胞に対する[18F]F-AraGの特異性、および免疫療法に対する応答を推定することにおける有用性が確認された(30)。横紋筋肉腫モデルを使用して、本発明者らは、検出された腫瘍内シグナルのうちの80%超が、免疫細胞(主に、活性化CD8+およびCD4+)におけるトレーサー蓄積に由来することを決定した(図12)。重要なことには、結腸がんの腫瘍においておよび腫瘍流入領域リンパ節において検出された[18F]F-AraGシグナルはまた、抗PD-1治療の応答者と非応答者との間で、処置の早期、1回の治療投与のわずか48時間後に区別することはできた(図12)。
【0072】
化学療法誘導性腫瘍細胞死(免疫原性細胞死といわれる(32))から生じる免疫応答の発見は、免疫療法剤との可能な相乗効果的組み合わせに関する化学療法の免疫調節効果を利用するにあたって興味をかき立てた(33,34)。2つのタイプの化学療法(一方は、免疫原性細胞死を誘導することが公知のもの、および他方は、免疫原性的にサイレントな腫瘍死を引き起こすことが報告されるもの)を受けている結腸がんモデルの長期的な[18F]F-AraG画像化は、上記2種の化学療法レジメンによって引き起こされる免疫調節効果において劇的な差異を明らかにし、化学療法誘導性免疫調節および免疫活性環境を評価するための[18F]F-AraGの有用性を示した(図13)(31)。
【0073】
チェックポイント(例えば、抗腫瘍免疫において免疫抑制的役割を果たすPD-1およびCTLA-4)は、心臓に対する末梢免疫寛容および自己免疫心筋炎の防止において極めて重要なプレイヤーであることも示されている。PD-1およびCTLA-4シグナル伝達を混乱させるICI薬物は、末梢免疫寛容の崩壊ならびに過剰な心筋T細胞浸潤および心筋炎を生じる活性化をもたらし得る。当業者は、抗CTLA-4および抗PD-1抗体でのマウスの処置、ならびにICI標的を遺伝的に改変することによって、ICI-心筋炎の薬理学的モデルおよび遺伝的モデルの両方を作製した。顕著なことには、PD-1欠損症(Pdcd1-/-)と組み合わされたCTLA-4遺伝子(Ctla4+/-)におけるハプロ不全は、患者におけるICI-心筋炎を表現型コピーするマウスのうちの約50%において心筋炎を生じる(図14)(35)。顕著なことには、Ctla4+/- Pdcd1-/-マウスにおける自己免疫は、ヒトにおいて観察されるように、心血管システムに制限され、心筋へのT細胞および骨髄球浸潤によって特徴づけられる。
【0074】
ドキソルビシン関連心臓傷害の正確な機序は、未だ議論されているが、多くの研究から、心筋のドキソルビシン誘導性損傷における主要な標的としてミトコンドリアが示唆されている(25,36,37)。ドキソルビシンは、ミトコンドリアに容易に入り、mtDNAおよびカルジオリピンとともに付加物を形成し得、ミトコンドリア呼吸を阻害する。ミトコンドリア機能不全は、ドキソルビシン関連心筋症の最も早期の指標のうちの1つであると思われる(38)。心臓ミトコンドリア膜電位を評価する薬剤、18F-Mitophosおよび68Ga-Galmydarでの前臨床研究は、ドキソルビシン処置動物における心臓取り込みの低減を示し、これは、化学療法誘導性心毒性においてミトコンドリア画像化の可能性を示す(38,39)。興味深いことには、ドキソルビシン処置は、心臓における18FDG取り込みの増大をもたらし、これは、代謝の変化を示唆した(40)。
【0075】
18F]F-AraGが活性化T細胞を検出し、ミトコンドリア機能を評価する示された能力(これらはともに、心毒性の機序において中心的な役割を果たす)(図9)は、それがICIおよびドキソルビシン治療と関連する心毒性の早期検出およびモニタリングのための病態生理学的に関連する画像化生体マーカーとして働く可能性を示す。化学療法剤および免疫療法剤の両方と関連する、臨床上関連する心毒性を評価する能力は、急速に増えつつある化学療法/免疫療法組み合わせアプローチの心血管損傷に対する知識の欠如を考慮すれば、非常に貴重であり得る。
【0076】
本発明の一実施形態は、[18F]F-AraGの心筋取り込みと心毒性の病態生理との間の相関を決定するために使用され得る。[18F]F-AraGが心毒性の早期および特異的画像化を可能にし得ることを示すために、本発明者らは、[18F]F-AraGを使用して、ICI、ドキソルビシン、およびドキソルビシン/ICI処置によって引き起こされる心毒性の発生をモニターし得、画像所見を、現在の標準治療であるLVEFの測定値と比較し得、心臓損傷の公知のマーカーと相関させ得る。
【0077】
実験的アプローチ
心毒性の動物モデル。用量依存性ドキソルビシン心毒性を調査するために、マウス(n=8/群、4匹は雄性、4匹は雌性)を、低用量(4mg/kg)および高用量(20mg/kg)のドキソルビシンで処置し得る。コントロールマウス(n=8、4匹は雄性、4匹は雌性)は、ビヒクルのみの注射を受容し得る。ICI関連心筋炎の研究のために、本発明者らは、近年開発した前臨床モデルを使用し得る(35)。Ctla4+/- Pdcd1-/-マウスは、ICI心筋炎の折り紙付きの病態生理的特徴および臨床的特徴を完全に再現する。Ctla4+/+Pdcd1-/-マウスを、コントロールとして使用し得る。本発明者らは、8匹のCtla4+/- Pdcd1-/-マウス(4匹は雄性、4匹は雌性)および8匹のCtla4+/+Pdcd1-/-コントロールマウスを使用し得る。
【0078】
さらに、当業者は、マウスを特異的な遺伝的バックグラウンドにおいて抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体で処置することによって、ICI心筋炎のより軽度の形態を生成した。1週間に2回、8週間にわたって抗CTLA-4もしくは抗PD-1単剤療法、または併用療法で処置したMRL-Faslprマウスは、明らかな臨床徴候を示さなかったが、組織学的および電子顕微鏡検査から、心筋および血管系の免疫浸潤、ならびに併用療法後の内皮細胞損傷およびサルコメアの乱れの徴候が明らかになった。本発明者らは、ICI心筋炎をモデル化するための薬理学的および遺伝的マウスの組み合わせが、相補的であると考える。最終的に、ICIの使用が、患者がドキソルビシンおよびICIの組み合わせに曝され得るがんのタイプ(例えば、トリプルネガティブ乳がん)に拡大されるにつれて、これらのマウスは、併用療法の心血管効果が調査され得るプラットフォームを提供する。組み合わせドキソルビシン/ICI処置の心毒性を調べるために、本発明者らは、16匹のMRL-Faslprマウスを使用し得る。8匹のマウス(半分は雄性、半分は雌性)を、ドキソルビシン(20mg/kg)、および抗PD-1と抗CTLA-4抗体(250μg)で処置し得る。ビヒクルで処置したMRL-Faslprマウスは、コントロールとして役立ち得る。
【0079】
PETおよびLVEF画像化。[18F]F-AraGを、従来の方法によって(例えば、UCSF Radiochemistry Coreにおいて)生成し得る。PET/CTに関しては、マウスに、約0.1mlの[18F]F-AraGにおいて約200μCi(7.4MBq)を、尾静脈を介して注射し得、専用の小動物PET/CT(Siemens Inveon)を使用して画像化し得る。マウスの部分セットにおいて、本発明者らは、60分間のダイナミックPET画像化、続いて、CTを、ベースライン時および2つの治療後の時点で行い得る。心電図同期化PET(Electrocardiogram-gated PET)を、最後の画像化の時点後に行って、左室駆出率(LVEF)の情報を獲得し得る。全3種の動物モデルに関する心毒性の長期間のモニタリングのためのタイムラインを、図15に示す。簡潔には、薬理学的モデル(ドキソルビシンおよびドキソルビシン/ICI)を、処置の前および処置の間に定期的に画像化し得る。遺伝的ICI心筋炎モデルを、6週間目に開始して、1週間に1回、3回画像化し得る。60分間のリストモードPETデータを、スキャナー製造業者によって提供される3D 最大事後確率を伴うサブセット化による期待値最大化法(OSEM/MAP)アルゴリズムを使用して、ダイナミックマルチフレーム(12×5、6×10、4×30、6×60、および10×300s)に再構築し得る。定量的精度を確実にするための減衰および散乱補正は、CTベースの減衰マップおよび散乱モデルを使用して適用し得る。8個の心臓ビン(cardiac bin)を有するECG同期化データを、同じアルゴリズムおよび補正を使用して再構築し得る。ダイナミックマルチフレームデータを、2つの組織区画モデルのために使用し得、上記データの最後の20分間を、静的データ分析のために使用し得る。流入速度定数(Ki)を含む速度定数を、ダイナミックデータから導出し得、%注射用量/g(%ID/g)を、静的データから導出し得る。LVEFsを、ECG同期化データから計算し得る。これらのパラメーターの全ては、パラメーターの区域分析およびセグメント別分析のための極座標プロットにマッピングされ得る。画像処理は、PMOD/PCARD/PKIN(PMOD Technologies)で行われ得る。
【0080】
実施形態2. 18F-フルオロデオキシグルコース(18FDG)および[18F]F-AraGを比較し、[18F]F-AraG心筋蓄積における変動性を決定する
18F]F-AraGは、心機能の血中グルコース非依存的評価を可能にし得、低いシグナル変動性を示し得る。
【0081】
理論的根拠および裏付けの証拠。18FDG PETを、腫瘍患者の診断、ステージ決定および再ステージ決定において慣用的に使用する。FDGの広い用途は、心臓画像化におけるFDGの有用性を評価することを目的とした多くの研究を刺激する付随的な心筋所見をもたらした。18FDGはいまや、最も利用されており、心筋代謝および生存性の評価のための検証されたPETトレーサーである。グルコースの放射性標識されたアナログである18FDGは、組織におけるグルコースの利用に関して報告する。血中グルコースからの干渉を最小限にしかつ主なエネルギー源としてグルコースを使用する腫瘍において高い検出感度を達成するために、腫瘍患者における18FDGスキャンを、絶食条件下で行う。絶食状態では、心臓18FDG取り込みは低く、インスリンの減少によって引き起こされるグルコース代謝および心臓の主なエネルギー基質である脂肪酸の増大を反映する(図16)。心筋FDG取り込みは、血漿グルコース、脂肪酸およびインスリンレベルに依存するが、食事、活動およびある特定の薬物の使用にも依存することから、シグナルにおける広い空間的および時間的な変動性が報告されている(42,43)。良性と悪性との間での心筋取り込みのより特異的かつ正確な区別を与えるように制御され得る変数として調査した絶食の期間は、心筋グルコース代謝と相関しないようである(43)。18FDG画像の良好な品質は、糖尿病患者(心血管併存疾患率の高い集団)において達成することが特に困難である。
【0082】
18F]F-AraG取り込みの機序は、グルコースのものとは異なり(図8)、結果的にシグナル変動性は、絶食時に関連することから、より低いと予測される(図17)。ヌクレオシド-デオキシアラビノグアノシンの放射性標識されたアナログ、[18F]F-AraGの取り込みは、心筋およびリンパ器官におけるプリンヌクレオチドプールが維持される優勢なプロセスであると考えられるサルベージ経路の酵素の活性を反映する(44,45)。食事性ヌクレオチドは、サルベージ経路において[18F]F-AraGと競合し得、食事関連シグナルのバリエーションを生じ得るヌクレオシドの主な供給源である。
【0083】
本発明の一実施形態は、18FDGと[18F]F-AraGとの間のシグナル変動性における差異を決定して、[18F]F-AraG シグナル不均一性の潜在的な原因をよりよく理解し得る。本発明の局面は、異なる条件(絶食か非絶食か、麻酔をかけているか活動的か、食事性ヌクレオチドのある食事を与えられているかまたはそうでない食事を与えられているか)に曝された動物において18FDGと[18F]F-AraGの心筋シグナル間の差異を決定することによって試験され得る。
【0084】
実験的アプローチ
本発明者らは、心筋取り込みに関する3つの変数:絶食、活動および食事の効果を調査し得る。各変数に関して、本発明者らは、16匹のマウス(8匹は雄性、8匹は雌性)を使用し得、これらを2群に分け得る。絶食についての試験のために、一方の群は、飼料および水の両方に自由にアクセスできるようにし、他方の群は、水にアクセスできるようにして8時間絶食させ得る。活動についての試験のために、動物の一方の群を、麻酔下で維持し得、他方の群を、トレーサー注射後かつ画像化の前に覚醒させ得る。食事性ヌクレオチドの効果を調査するために、動物の両方の群に、ヌクレオチドなしの飼料および0.04% ヌクレオチド(免疫機能に最適であると見出されたレベル)を補充した飼料のみを供給し得る(46)。
【0085】
PET画像化。全ての動物を、2連続日で、18FDGおよび[18F]F-AraGで画像化し得る。時間的な変動性を評価するために、画像化を、最初のスキャンの3日後に反復し得る。PETデータを、10分間静止の間に獲得し得、3D OSEM/MAPを使用して再構築し得る。定量的精度を確実にするための減衰および散乱補正は、CTベースの減衰マップおよび散乱モデルを使用して適用され得る。%ID/gは、静的データから導出され得る。シグナル強度および位置における変動性を、比較される各トレーサーおよび値に関して決定し得る。シグナル強度に対する変数の効果を、各トレーサーに関して決定し得る。取り込み値を、心臓、筋、肝臓、脾臓、腎臓および脳に関して計算し得る。
【0086】
血中グルコースおよびヌクレオチド測定。グルコースレベルを、グルコースメーターを使用して、画像化直前に尾静脈血液サンプル中で決定し得る。血中のヌクレオチドの測定は、大容積の分析物を必要とするので、最終のPETスキャン後に、最後の心臓内血液採取に続いて測定され得る(47)。
【0087】
画像定量化およびサンプルサイズ計算。各変数を有する群とコントロール群との間の%ID/gを、PETデータから導出し得る。本発明者らの仮説は、本発明者らが食事性の変数による[18F]F-AraG取り込みにおいて有意性を認めることはできないというものである。8/コホートのサンプルサイズで、有意水準α=0.05および検出力(1-β)=0.85に関して、2サンプルt検定は、差異は30%超、標準偏差20%である場合に、統計的に有意であり得る。よって、差異がそれより小さければ、検出力0.85で有意差は存在せず、これは、本発明者が個の比較試験に関して予測していることである。
【0088】
本発明者らは、以下を示すことを予測する: 1)絶食動物と非絶食動物との間で[18F]F-AraGシグナルにおける差異はない/最小限である、2)麻酔をかけた群と活動的な群との間で[18F]F-AraGシグナルにおける差異はない/最小限である、3)[18F]F-AraGシグナルに対する食事性ヌクレオチドの効果の程度、4)18FDGと比較して、[18F]F-AraGシグナルにおいてより低い変動性。これは全体的に、[18F]F-AraGが18FDGを超えて提供し得る利点の評価を可能にし得、同様に、病態生理に関連しない[18F]F-AraGシグナルにおける変動性の潜在的原因を示し得る。
【0089】
実施形態3. 健常被験体における生理学的[18F]F-AraG取り込みの範囲およびがん患者における早期の心毒性の徴候としての増大した[18F]F-AraG取り込みを使用することの実行可能性を決定する。
生理学的心筋18F-FAraG取り込みは、がん患者における取り込みより有意に低い可能性があり、心毒性の評価を可能にする。がん患者における処置後の[18F]F-AraG取り込みは、心毒性(例えば、ICIまたは他の薬物)の早期評価のために使用され得る。
【0090】
理論的根拠および予備的証拠。[18F]F-AraGが、高い特異性で心毒性を示し得るツールとして役立つためには、いくつかの条件が満たされる必要がある: a)正常心臓における生理学的取り込みは、比較的低くかつ十分に規定されているべきである、b)病的状態におけるシグナルは、正常心臓閾値から有意に異なっていなければならない、c)シグナル特性(強度、パターン)は、病態生理学に相応しているべきである。本発明の一実施形態は、健常ボランティアにおいてシグナル変動性を評価し、がん患者において心臓蓄積の後ろ向き分析を行うことによって、ヒト被験体において生理学的取り込みと病理的取り込みとの間の差異をよりよく理解するために使用され得る。
【0091】
18F]F-AraGの安全性および放射線線量測定法を、UCSFでのファーストインヒューマンスタディーの間に、6名の健常被験体において試験した(3名は男性、3名は女性)。心筋取り込みを、6名全員の被験体において観察し、心臓壁における平均SUVは、2.9±0.62であった。そのシグナルは、画像化期間の間で持続した。これは、トレーサーの捕捉を示す(図18)。そのトレーサー取り込みは、限局的または局部的な増大なしに均一のようであった。健常被験体における比較的低いより込みおよび均一なシグナルは、病的な状態における異常なシグナル強度およびパターンの検出の可能性を示すが、比較的小さなサンプルサイズは、より大きな集団における生理学的蓄積の代表ではない可能性がある。ベースライン値をより包括的に評価するために、本発明者らは、例えば、さらに30名の健常被験体(15名は男性、15名は女性)を画像化して、旧来の方法およびラジオミクス方法を使用する心臓シグナルを分析し得る。ラジオミクス(画像に存在する豊富な定量的特徴(例えば、テクスチャー、不均一性、および形状)を分析および抽出するために使用される計算法)は、大部分は、がんスクリーニングおよび早期検出の改善のための腫瘍画像化において使用されている(48,49)。ラジオミクスはまた、免疫療法応答のより正確な評価のために腫瘍微小環境内で免疫構成(immune contexture)特徴を特定するために使用されてきた(50,51)。現在まで、心臓画像化におけるラジオミクスの適用は主に、分子生体マーカーの使用なしに、CTおよびMRI画像の分析に集中されてきた。ここで、本発明者らは、心毒性のより正確かつ病理特異的評価を提供し得る、強い生物学的関連性を有する画像特徴を抽出するために、[18F]F-AraG PET画像のラジオミクス分析を開示する。本発明者らの予備的前臨床試験において、抗PD-1/CTLA-4免疫療法で処置したマウスは、非処置マウスから、腫瘍内シグナルエネルギー、エントロピー、および均一性において有意差を示した(図19)。画像のテクスチャー分析は、健常ボランティアといくらかのがん患者との間で観察されたシグナルの差異のより良好な特徴付けおよび定量化を可能にし得る(図20)。[18F]F-AraGは、がん患者において免疫療法に対する応答を評価するにあたって、[18F]F-AraGの有用性を評価する複数のフェーズII臨床試験において現在試験されている最中である。現在まで、異なるタイプのがん(頭頚部、肺、膀胱、乳房の扁平上皮癌、黒色腫)を有する40名を超える患者を、[18F]F-AraGで安全に画像化した。本発明者らは、健常コホートでの所見の比較検討を可能にするために、現在までに集めた[18F]F-AraGスキャンにおける心筋取り込みの包括的後ろ向き分析を行い得る。本発明者らの予備的分析は、免疫療法の1回の注入の前および後の両方で、がん患者において、健常被験体より有意に高い心筋シグナルを示した(図20)。免疫療法前のスキャンにおけるシグナルが高いほど、以前の抗がん処置(例えば、化学療法または放射線療法)の心毒性の合併症の可能性がある。心電図(ECG)が付随している制限された患者コホート内では、不均一な、より強い心筋取り込みは、異常なECG所見と相関するようであった(図21)。重要なことには、いくらかの患者では、免疫療法のわずか1回の注入が、劇的に増大した心筋取り込みを生じた(図22)。全体的に、これらの結果は、心血管リスク階層化および早期心毒性の評価のツールとしての[18F]F-AraGの可能性を例証する。
【0092】
実験的アプローチ
臨床試験概略。試験参加者は、UCSF Nuclear Medicine Clinicにおいて[18F]F-AraGでの全身PET/CTスキャンを受け得る。試験集団は、30名の健常被験体(15名は男性、15名は女性、既知の心臓疾患はない)からなり得る。各性別群内での年齢に関連し得る差異を説明するために、3つの年齢群があり得る:a)18~40歳齢、b)40~65歳齢、およびc)65歳齢超。各年齢群は、10名の被験体(5名は男性、5名は女性)を有し得る。心疾患の家族歴ならびに薬物療法および栄養補助食品の使用に特別の強調をおいて、各被験体に関して注意深く医療歴を入手し得る。全ての心臓の薬物療法および以前のがんの治療は、各患者に対して記録および収集され得る。被験体は、食事に由来する潜在的変動性を最小限にするために、6時間絶食するように求められ得る。
【0093】
PET画像化。[18F]F-AraGを、患者ごとに、画像化前にスキャンベースごとに合成し得る。5±0.5mCiの[18F]F-AraGを、ボーラス静脈内注射として投与し得る。ダイナミック画像化を、各年齢群から2名の女性患者および2名の男性患者(合計12名)で行い得る。ダイナミックデータ収集を、トレーサー注射直後に開始し得、60分間持続し得、心臓視野に集中する。18名の患者(各年齢群から3名の男性、3名の女性)における静的画像を、トレーサー注射の60分後に獲得し得る。単純CTスキャン(non-contrast CT scan)(5mm連続体軸断面)(CTAC)を、38.5mm/秒の視野(FOV)を獲得して、120kVp、40mA、および512×512マトリクスサイズを使用するヘリカルモードで関連領域のものを得ることができる。そのCTAC画像を、PET画像に融合し、減衰補正および解剖学的位置決めのために使用することができる。CTACの直後に、エミッションPETスキャンを、同じ解剖学的領域にわたって3次元飛行時間(3-dimensional Time of Flight)(TOF)モードにおいて獲得し得る。そのPETエミッションスキャンを、CTACスキャンのセグメント化した減衰データを使用して補正して減衰補正し得る。
【0094】
画像分析。PET画像を、ダイナミック画像化データおよび静的画像化データの両方に関してスキャナー製造業者によって提供される標準的反復アルゴリズムで再構築し得る。ダイナミック画像化から、ダイナミックマルチフレーム(12×5、6×10、4×30、6×60、および10×300s)を、トレーサー動力学的モデリング(2組織区画モデル)のために生成し得る。最後の10分間の合計データを、匹敵する静的データを示すために生成し得る。流入速度定数(Ki)を含む速度定数を、心筋においてPMOD/PCARD/PKIN(PMOD Technologies)を使用して計算し得る。静的スキャンからの全身画像化は、[18F]F-AraGが、腫瘍画像化および心筋画像化の両方のためにどのように使用され得るかを意図する。この例に関して、本発明者らは、ダイナミック画像化の同じ視野に焦点を当てるさらなる再構築を追加し得、以下の標準化された取り込み値尺度: SUV最大、SUVピーク、SUV平均を、左室に関して計算し得る。米国心臓協会(AHA)17セグメントモデルは、静的画像に関するこれらの値を定量化するために使用され得る。ダイナミック画像化からの動力学的パラメーターは、静的画像からのSUVと相関させて、静的スキャンが、安定な画像定量化を提供し、実用化のためにダイナミックスキャンを必要としないか否かを確認し得る。
【0095】
ラジオミクス分析は、独自仕様でない(non-proprietary)ソフトウェアパッケージ(LifeXまたは3D-slicer)上で構築されることから、PyRadiomicsライブラリー(52)を使用して行われ得る。ラジオミクス特徴を抽出する前に、PET画像を、SUVユニットに対して正規化し得、1mmの一般的ボクセルサイズへとサンプリングしなおし得る。ラジオミクス特徴ベクトルは、各容積測定病変のために計算され得る。PyRadiomicsにおいて定義されるとおりのラジオミクス特徴の完全リストが、抽出され得る(53)。
【0096】
本発明の実施形態に伴って、当業者は、1)健常被験体において比較的低い、均一な心筋取り込み、2)健常被験体において[18F]F-AraG心筋取り込みの狭い範囲、4)がん患者において、健常集団より有意に高い心臓取り込みを示し得る。
【0097】
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53.pyradiomics.readthedocs.io/en/latest/features.html
【0098】
比、濃度、量、および他の測定されたデータが、範囲形式において本明細書で表され得ることは、注記されるべきである。このような範囲形式は、利便性および簡潔さのために使用されるので、範囲の限界として明示的に記載される数値のみならず、各数値および部分範囲が明示的に記載されるかのような範囲内に包含される個々の数値または部分範囲全てを含むことがまた、融通の利く様式で解釈されるべきであることが理解されるべきである。例証すると、「約0.1%~約5%」という濃度範囲は、約0.1重量%~約5重量%の明示的に記載される濃度を含むのみならず、個々の濃度(例えば、1%、2%、3%、および4%)およびその示された範囲内の部分範囲(例えば、0.5%、1.1%、2.2%、3.3%、および4.4%)をも含むと解釈されるべきである。一実施形態において、用語「約(about)」とは、数値の有効数字に従う旧来の丸め法を含み得る。さらに、語句「約‘x’~‘y’」とは、「約‘x’~約‘y’」を含む。
【0099】
本開示の上記の実施形態は、考えられる実行例に過ぎず、本発明開示の原理の明確な理解のために示されるに過ぎないことが強調されるべきである。多くのバリエーションおよび改変は、本発明開示の趣旨および原理から実質的に逸脱することなく、本開示の上記の実施形態に対して行われ得る。全てのこのような改変およびバリエーションは、本発明開示の範囲内で本明細書に含まれることが意図される。
図1-1A】
図1-1B】
図1-2】
図2-1-1】
図2-1-2】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2023-03-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤の投与に応答している被験体において細胞を画像化する方法における使用のための組成物であって、
前記組成物は、以下の式:
【化19】
を有する化合物を含み、
前記方法は、
(a)前記治療剤を投与する工程;
(b)前記組成物を前記被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、前記化合物が前記被験体の心臓の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される、工程;ならびに
(c)前記被験体を画像化する工程であって、ここで前記化合物の存在の検出は、前記細胞の存在に対応する、工程;ならびに
(d)前記被験体の細胞における前記化合物の観察される存在と、前記治療剤に対する前記被験体の応答とを相関させる工程、
を包含し、
前記被験体は、心血管疾患と診断された患者であるように選択される;
前記被験体は、がんと診断された患者であるように選択される;
前記被験体は、心血管疾患またはがんの処置を受けている患者であるように選択される、組成物
【請求項2】
前記相関させる工程は、がん細胞および/またはリンパ節における前記化合物の存在の観察を含む、請求項に記載の組成物
【請求項3】
前記治療剤は、CTLA-4またはPD-1/PD-L1遮断に影響を及ぼすように選択される少なくとも1種の免疫チェックポイントインヒビターを含む、請求項に記載の組成物
【請求項4】
前記がん細胞は、結腸がん細胞である、請求項に記載の組成物
【請求項5】
前記方法は、1回目の日付に1またはこれより多くの画像を観察する工程;2回目の日付に1またはこれより多くの画像を観察する工程;および前記治療剤の投与に対する前記被験体の応答を観察するために、前記1回目の日付に得られた画像と、前記2回目の日付に得られた画像とを比較する工程をさらに包含する、請求項に記載の組成物
【請求項6】
前記1回目の日付から前記2回目の日付までの時間量は、少なくとも1週間または少なくとも1ヶ月を含む、請求項に記載の組成物
【請求項7】
被験体の細胞におけるミトコンドリア活性を画像化する方法における使用のための組成物であって、前記組成物は、以下の式:
【化20】
を有する化合物を含み、前記方法は、
(a)前記組成物を前記被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、前記化合物が前記被験体の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される、工程;ならびに
(b)前記被験体を画像化する工程であって、ここで前記化合物の存在の検出は、ミトコンドリア活性の存在に対応する、工程;ならびに
(c)ミトコンドリア活性を画像化する工程、
を包含する、組成物
【請求項8】
前記被験体は、ミトコンドリア欠損症に罹患しているとして選択されるものである、請求項に記載の組成物
【請求項9】
前記方法は、ミトコンドリア機能不全に関して前記被験体をスクリーニングする方法であり;前記ミトコンドリア機能不全は、心血管疾患、神経精神疾患、または神経変性疾患である、請求項に記載の組成物
【請求項10】
前記ミトコンドリア機能不全は、心筋灌流、双極性障害、うつ病、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、早老、心筋症、呼吸鎖障害、mtDNA枯渇症、ミオクローヌス癲癇、赤色ぼろ線維症候群、脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作、および視神経萎縮からなる群より選択される、請求項に記載の組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
本開示の上記の実施形態は、考えられる実行例に過ぎず、本発明開示の原理の明確な理解のために示されるに過ぎないことが強調されるべきである。多くのバリエーションおよび改変は、本発明開示の趣旨および原理から実質的に逸脱することなく、本開示の上記の実施形態に対して行われ得る。全てのこのような改変およびバリエーションは、本発明開示の範囲内で本明細書に含まれることが意図される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
被験体において心臓の細胞を画像化する方法であって、前記方法は、
(a)以下の式:
【化18】
を有する化合物を前記被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、前記化合物が前記被験体の心臓の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される、工程;ならびに
(b)前記被験体を画像化する工程であって、ここで前記化合物の存在の検出は、心臓の細胞の存在に対応する、工程、
を包含する方法。
(項目2)
前記被験体は、治療剤または放射線療法を投与されたことがある患者であるように選択され、前記工程(b)において得られた心臓の1またはこれより多くの画像は、前記被験体の心臓に対する前記薬剤または前記放射線療法の効果に関する情報を得るために使用される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記治療剤は、アントラサイクリンまたは免疫チェックポイントインヒビターであり、前記工程(b)において得られた心臓の1またはこれより多くの画像は、前記アントラサイクリンまたは前記免疫チェックポイントインヒビターの投与から生じる心毒性に関する情報を得るために使用される、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記工程(b)において得られた心臓の1またはこれより多くの画像を使用して、
前記被験体の心臓における心筋灌流の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程;
前記被験体の心臓における心筋生存能の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程;および/または
前記被験体の心臓における炎症の1またはこれより多くのパラメーターを評価する工程、
をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記治療剤は、心臓の細胞におけるミトコンドリアに対して作用することが観察されているものが選択される、項目2に記載の方法。
(項目6)
前記被験体は、心血管疾患と診断された患者であるように選択される;
前記被験体は、がんと診断された患者であるように選択される;
前記被験体は、心血管疾患またはがんの処置を受けている患者であるように選択される、
項目2に記載の方法。
(項目7)
前記方法は、1回目の日付に前記心臓の1またはこれより多くの画像を観察する工程;2回目の日付に前記心臓の1またはこれより多くの画像を観察する工程;および前記心臓の変化を経時的に観察するために、前記1回目の日付に得られた画像と、前記2回目の日付に得られた画像とを比較する工程をさらに包含する、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記1回目の日付から前記2回目の日付までの時間量は、少なくとも1週間または少なくとも1ヶ月を含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記治療剤は、CTLA-4またはPD-1/PD-L1遮断に影響を及ぼすように選択される少なくとも1種の免疫チェックポイントインヒビターを含む、項目3に記載の方法。
(項目10)
治療剤の投与に応答している被験体において細胞を画像化する方法であって、前記方法は、
(a)前記治療剤を投与する工程;
(b)以下の式:
【化19】
を有する化合物を前記被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、前記化合物が前記被験体の心臓の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される、工程;ならびに
(c)前記被験体を画像化する工程であって、ここで前記化合物の存在の検出は、前記細胞の存在に対応する、工程;ならびに
(d)前記被験体の細胞における前記化合物の観察される存在と、前記治療剤に対する前記被験体の応答とを相関させる工程、
を包含する方法。
(項目11)
前記被験体は、心血管疾患と診断された患者であるように選択される;
前記被験体は、がんと診断された患者であるように選択される;
前記被験体は、心血管疾患またはがんの処置を受けている患者であるように選択される、
項目10に記載の方法。
(項目12)
前記相関させる工程は、がん細胞および/またはリンパ節における前記化合物の存在の観察を含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記治療剤は、CTLA-4またはPD-1/PD-L1遮断に影響を及ぼすように選択される少なくとも1種の免疫チェックポイントインヒビターを含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記がん細胞は、結腸がん細胞である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記方法は、1回目の日付に1またはこれより多くの画像を観察する工程;2回目の日付に1またはこれより多くの画像を観察する工程;および前記治療剤の投与に対する前記被験体の応答を観察するために、前記1回目の日付に得られた画像と、前記2回目の日付に得られた画像とを比較する工程をさらに包含する、項目11に記載の方法。
(項目16)
前記1回目の日付から前記2回目の日付までの時間量は、少なくとも1週間または少なくとも1ヶ月を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
被験体の細胞におけるミトコンドリア活性を画像化する方法であって、前記方法は、
(a)以下の式:
【化20】
を有する化合物を前記被験体に投与する工程であって、ここで投与経路は、前記化合物が前記被験体の細胞に存在するデオキシシトシンキナーゼおよびデオキシグアノシンキナーゼによってリン酸化されることを可能にするように選択される、工程;ならびに
(b)前記被験体を画像化する工程であって、ここで前記化合物の存在の検出は、ミトコンドリア活性の存在に対応する、工程;ならびに
(c)ミトコンドリア活性を画像化する工程、
を包含する方法。
(項目18)
前記被験体は、ミトコンドリア欠損症に罹患しているとして選択されるものである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記方法は、ミトコンドリア機能不全に関して前記被験体をスクリーニングする方法であり;前記ミトコンドリア機能不全は、心血管疾患、神経精神疾患、または神経変性疾患である、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記ミトコンドリア機能不全は、心筋灌流、双極性障害、うつ病、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、フリードライヒ運動失調症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、早老、心筋症、呼吸鎖障害、mtDNA枯渇症、ミオクローヌス癲癇、赤色ぼろ線維症候群、脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作、および視神経萎縮からなる群より選択される、項目19に記載の方法。
【国際調査報告】