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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】消費財包装用バイオベース材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20230816BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L101/16 ZBP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506165
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 US2021043136
(87)【国際公開番号】W WO2022026362
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】63/058,563
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521514831
【氏名又は名称】メレディアン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,アダム
(72)【発明者】
【氏名】サマンタ,サチャブラタ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AB02X
4J002AB04X
4J002CF03X
4J002CF18W
4J002CF19X
4J002FD018
4J002FD027
4J002FD206
4J002GG02
4J200AA04
4J200BA12
4J200DA17
4J200EA11
(57)【要約】
【課題】
食品接触用途の生分解性ポリマー組成物を開示する。このポリマー組成物は、少なくとも(1)ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を約5重量%~約95重量%と、(2)ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、セルロースエステル(セルロースアセテート等)熱可塑性デンプン、およびこれらの混合物、からなる群から選択される少なくとも1つの生分解性ポリマーを約5重量%~約95重量%と、(3)成核剤を約0.1重量%~約5重量%と、を含む、生分解性ポリマー組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を約5重量%~約95重量%と、
(2)ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、セルロースエステル、熱可塑性デンプン、およびこれらの混合物、からなる群から選択される少なくとも1つの生分解性ポリマーの約5重量%から約95重量%と、
(3)成核剤を約0.1重量%~約5重量%と、
を含む、生分解性ポリマー組成物。
【請求項2】
約35重量%~約90重量%のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
約30重量%~約90重量%のポリ(ブチレンサクシネート)を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
約30重量%~約90重量%のポリ(ブチレンサクシネート-co-アジペート)を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
約10重量%~約70重量%のポリ(乳酸)を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
約30重量%~約90重量%のセルロースエステルを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
成核剤が、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、人工甘味料、ステアレート、多糖類、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ポリエステルワックス、ナノクレイ、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ポリ(ヒドロキシブチレート)、チミン、シアヌル酸、シトシン、アデニン、ウラシル、グアニン、窒化ホウ素、およびこれらの混合物、からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
さらに、セバシン酸塩;クエン酸塩;アジピン酸、コハク酸およびグルカル酸の脂肪エステル;乳酸塩;アルキルジエステル;クエン酸塩;アルキルメチルエステル;ジベンゾエート;プロピレンカーボネート;200~10000g/molの数平均分子量を有するカプロラクトンジオール;400~10000g/molの数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール);植物油のエステル;長鎖アルキル酸;アジペート;グリセロール;イソソルビド誘導体またはそれらの混合物;ポリマー可塑剤;ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を少なくとも18mol%含むポリ(ヒドロキシアルカノエート)共重合体、およびこれらの混合物、からなる群から選択される、可塑剤を約15重量%まで含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のポリマー組成物において、該組成物は、該可塑剤を約5重量%~約15重量%含む。
【請求項10】
さらに、炭酸カルシウム、タルク、ナノクレイ、ナノセルロース、麻繊維、カオリン、カーボンブラック、珪灰石、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、マイカ、シリカ、ドロマイト、硫酸バリウム、磁鉄鉱、ハロイサイト、酸化亜鉛、二酸化チタン、モンモリロナイト、長石、アスベスト、ホウ素、鋼鉄、カーボンナノチューブ、セルロース繊維、亜麻、綿、デンプン、多糖類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、変性デンプ
ン、キチンおよびキトサン、アルギン酸塩、グルテン、ゼイン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、多糖類、グアーガム、キサンタンガム、サクシノグリカン、天然ゴム、ロジン酸、リグニン、天然繊維、ジュート、ケナフ、麻、粉砕したナッツの殻、木粉、およびこれらの混合物、からなる群から選択される、充填剤を約50重量%まで含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
該可塑剤充填剤を約5重量%~約40重量%含む、請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
さらに、アクリル系樹脂および乳化物、イソソルビド誘導体、天然ゴム、脂肪族ポリエステル、またはそれらの混合物、からなる群から選択される耐衝撃性改良剤を約20重量%まで含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
該耐衝撃性改良剤を約5重量%~約15重量%含む、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
さらに、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ラウリン酸ビニル)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(グリコール酸)、フランジカルボン酸系ポリエステル、セルロース、ナノセルロース、グルカン、およびこれらの混合物、からなる群から選択される1以上の添加剤を50重量%まで含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
該ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を約75mol%~約99.9mol%と、炭素数5~12の第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約25mol%とから構成される共重合体を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
該ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を約75mol%~約99.9mol%と、3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約25mol%と、炭素数5~12の第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約25mol%とからなる三元共重合体を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
該ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、第1の共重合体と第2の共重合体との混合物を含み、
第1の共重合体は、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を約90mol%~約99.9mol%と、炭素数5~12の第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約10mol%と含み、
第2の共重合体は、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を少なくとも70mol%と、第1の重合体中の第2の3-ヒドロキシアルカノエートの量より少なくとも6mol%少ない、炭素数5~12の第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
該ポリ(ヒドロキシアルカノエート)が、約50.000ダルトン~約750万ダルトンの重量平均分子量を有し、より好ましくは約300.000ダルトン~約300万ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
該ポリ(ヒドロキシアルカノエート)および該少なくとも1つの生分解性ポリマーが、互いにエステル交換する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
該ポリ(ヒドロキシアルカノエート)および該少なくとも1つの生分解性ポリマーが、
互いに反応性押出する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
請求項1に記載のポリマー組成物を含む生分解性包装材部分を少なくとも1つ含む、消費財製品の製品包装材。
【請求項22】
該少なくとも1つの生分解性包装材部分は、射出成形、圧縮成形、熱成形、注入成形およびブローフィルム成形、押出コーティング、押出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、および押出プロファイル、からなる群から選択される方法により形成される、請求項21に記載の製品包装材。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年7月30日に出願された米国仮出願63/058,563の先の出願日の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、生分解性ポリマー組成物に関する。より詳細には、本開示は、生分解性および/または堆肥化可能な、より具体的には家庭で堆肥化可能な、消費財の包装用ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
消費財の消費、保管、包装に使われる使い捨て材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの石油系ポリマーが一般的である。これらのポリマーは、強度、バリア性、印刷特性に優れているが、廃棄後(埋立地や家庭での堆肥化技術により)容易に分解されるものではない。そのため、このようなポリマーから作られたフィルムや袋や他の材料は、廃棄後、何世紀にもわたって埋め立て地に存在する可能性がある。
【0004】
消費財包装に適した生分解性ポリマー組成物を提供することが望ましい。特に、主に家庭で堆肥化可能な製品包装用ポリマー組成物を提供することが望ましい。ポリマー組成物は家庭で完全に堆肥化可能であることが最も好ましい。
【0005】
これらのポリマーは、射出成形、圧縮成形、熱成形、注入成型およびブローフィルム成形、押出コーティング、押出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、押出プロファイルなど、現在の製品包装材の製造に用いられているいくつかの用途に使用することができる。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本開示は、生分解性ポリマー組成物を提供する。一実施形態において、該ポリマー組成物は、少なくとも(1)ポリ(ヒドロキシアルカノエート)約5重量%~約95重量%と、(2)ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、セルロースエステル(セルロースアセテート等)熱可塑性デンプン、およびこれらの混合物、からなる群から選択される少なくとも1つの生分解性ポリマー約5重量%~約95重量%と、(3)成核剤約0.1重量%~約5重量%と、を含む。
【0007】
特定の実施形態において、該ポリマー組成物は、好ましくは、約35重量%~約90重量%のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む。該ポリマー組成物は、より好ましくは、約40重量%~約70重量%のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、該ポリマー組成物は、好ましくは、約5重量%~約50重量%のポリ(ブチレンサクシネート)を含む。該ポリマー組成物は、より好ましくは、約10重量%~約30重量%のポリ(ブチレンサクシネート)を含む。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、該ポリマー組成物は、好ましくは、約5重量%~約50重量%のポリ(ブチレンサクシネート-co-アジペート)を含む。該ポリマー組成物は、より好ましくは、約10重量%~約30重量%のポリ(ブチレンサクシネート-co-アジペート)を含む。
【0010】
例えば、該ポリマー組成物は、好ましくは、約10重量%~約70重量%のポリ(乳酸)を含む。該ポリマー組成物は、より好ましくは、約20重量%~約60重量%のポリ(乳酸)を含む。
【0011】
特定の実施形態において、該ポリマー組成物は、好ましくは、約5重量%~約50重量%のセルロースエステル、例えば、セルロースアセテートを含む。該ポリマー組成物は、より好ましくは、約10重量%~約30重量%のセルロースエステルを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、該組成物中のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、第1の共重合体と第2の共重合体との混合物からなることが好ましい。第1の共重合体は、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を約90mol%~約99.9mol%と、炭素数5~12の第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約10mol%含む。第2の共重合体は、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を少なくとも70mol%と、第1の重合体中の第2の3-ヒドロキシアルカノエートの量より少なくとも6mol%少ない、炭素数5~12の第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基とを含む。
【0013】
特定の実施形態によれば、成核剤は、好ましくは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、人工甘味料、ステアレート、多糖類、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ポリエステルワックス、ナノクレイ、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ポリヒドロキシブチレート、チミン、シアヌル酸、シトシン、アデニン、ウラシル、グアニン、窒化ホウ素、およびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0014】
いくつかの実施形態において、ポリマー組成物は、約15重量%までの可塑剤も含むことが好ましい。この可塑剤は、セバシン酸塩;クエン酸塩;アジピン酸、コハク酸、およびグルカル酸の脂肪エステル;乳酸塩;アルキルジエステル;クエン酸塩;アルキルメチルエステル;ジベンゾエート;プロピレンカーボネート;200g/mol~10000g/molの数平均分子量を有するカプロラクトンジオール;400g/mol~10000g/molの数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール);植物油のエステル;長鎖アルキル酸;アジペート;グリセロール;イソソルビド誘導体またはそれらの混合物;ポリマー可塑剤;ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を少なくとも18mol%含むポリ(ヒドロキシアルカノエート)共重合体、およびこれらの混合物、からなる群から選択することができる。より好ましくは、ポリマー組成物は、約5重量%~約15重量%の可塑剤を含む。
【0015】
特定の実施態様において、該ポリマー組成物は、好ましくは、約50重量%までの充填剤も含む。この充填剤は、炭酸カルシウム、タルク、ナノクレイ、ナノセルロース、麻繊維、カオリン、カーボンブラック、珪灰石、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、マイカ、シリカ、ドロマイト、硫酸バリウム、磁鉄鉱、ハロイサイト、酸化亜鉛、二酸化チタン、モンモリロナイト、長石、アスベスト、ホウ素、鋼鉄、カーボンナノチューブ、セルロース繊維、亜麻、綿、デンプン、多糖類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、変性デンプン、キチンおよびキトサン、アルギン酸塩、グルテン、ゼイン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、多糖類、グアーガム、キサンタンガム、サクシノグリカン、天然ゴム、ロジン酸、リグニン、天然繊維、ジュート、ケナフ、麻、粉砕したナッツの殻、木粉、およびこれらの混合物、からなる群から選択することができる。該ポリマー組成物は、より好ましくは、約5重量%~約40重量%の充填剤を含む。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、該ポリマー組成物は、好ましくは、約20重量%までの
耐衝撃性改良剤も含む。この耐衝撃性改良剤は、アクリル系樹脂および乳化物、イソソルビド誘導体、天然ゴム、脂肪族ポリエステル、またはそれらの混合物、からなる群から選択することができる。該ポリマー組成物は、より好ましくは、約5重量%~約15重量%の耐衝撃性改良剤を含む。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、該ポリマー組成物は、さらに添加剤も含み得る。例えば、該組成物は、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ラウリン酸ビニル)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(グリコール酸)、フランジカルボン酸系ポリエステル、セルロース、ナノセルロース、グルカン、およびこれらの混合物、からなる群から選択される1以上の添加剤を50重量%まで含む。
【0018】
一般に、該ポリマー組成物が含むポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、単独重合体または三元共重合体などの共重合体のいずれであってもよい。したがって、特定の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、好ましくは、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を約75mol%~約99.9mol%と、炭素数5~12の第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約25mol%とで構成される共重合体である。他の実施形態では、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を約75mol%~約99.9mol%と、3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約25mol%と、炭素数5~12の第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約25mol%とから構成される三元共重合体が好ましい。
【0019】
特定の実施形態において、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)および少なくとも1つの生分解性ポリマーは、エステル交換で互いに反応させることが好ましい。
【0020】
他の実施形態において、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)および少なくとも1つの生分解性ポリマーは、反応性押出プロセスで互いに反応させる事が好ましい。
【0021】
さらに、特定の実施形態において、該ポリマー組成物のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、好ましくは約50000ダルトン~約750万ダルトンの重量平均分子量を有し、より好ましくは約300000ダルトン~約300万ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0022】
さらなる態様において、本開示はまた、消費財用の包装材を提供し、製品包装材は、該ポリマー組成物を含む少なくとも1つの生分解性包装材部分を含む。
【0023】
特定の実施形態において、該少なくとも1つの生分解性包装材部分は、射出成形、圧縮成形、熱成形、注入成形およびブローフィルム成形、押出コーティング、押出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、および押出プロファイル、からなる群から選択される方法により形成されることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一態様において、本開示は、特に消費財の包装材に好適なポリマー組成物を提供する。
【0025】
好ましくは、ポリマー組成物は、生分解性および/または堆肥化可能である。より詳細には、ポリマー組成物は生分解性及び堆肥化可能の両方である。
【0026】
本明細書で使用する、「生分解性」という用語は、(ASTMD5511で決定される)嫌気性および好気性環境、(ASTM5988で決定される)土壌環境、(ASTMD5271(EN29408)で決定される)淡水環境、または(ASTMD6691で決
定される)海洋環境で生物(微生物)により生分解されるプラスチックまたはポリマー材料を示す。生分解性プラスチックの生分解性は、ASTMD6868や欧州EN13432で測定することもができる。
【0027】
本開示の該ポリマー組成物は、好ましくは、工業的または家庭での堆肥化可能性についてASTMD6400によって決定された「堆肥化可能」でもあることも好ましい。
【0028】
特に、該生分解性ポリマー組成物は、第1の生分解性高分子として、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む。該組成物は、一般に、約5重量%~約95重量%のポリ(ヒドロキシアルカノエート)で構成される。該組成物は、より好ましくは、約35重量%~約90重量%のポリ(ヒドロキシアルカノエート)で構成される。ポリマー組成物は、さらに好ましくは、約40重量%~約70重量%のポリ(ヒドロキシアルカノエート)を含む。
【0029】
例えば、該組成物中のポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、第1の共重合体と第2の共重合体との混合物から構成されることが好ましい。第1の共重合体は、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を約90mol%~約99.9mol%と、炭素数5~12の第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約10mol%含む。第2の共重合体は、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を少なくとも70mol%と、第1の重合体中の第2の3-ヒドロキシアルカノエートの量より少なくとも6mol%少ない、炭素数5~12の第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を含む。第1の共重合体と第2の共重合体における第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモル分率の差が少なくとも6mol%であるとき、第1および第2の共重合体は互いに混和性を有さず、代わりに組成物内で異なる相に分離することが、意外にも発見された。これは、最終的な組成物の特性を有利に変化させるために利用できる。
【0030】
このような場合、比較的少量の第2のPHA共重合体を含むことで、該組成物の衝撃特性または靭性が向上し、性能が改善された物品を提供することができる。
【0031】
該ポリマー組成物は、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート-co-アジペート)、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、セルロースエステル(セルロースアセテート等)熱可塑性デンプン、およびこれらの混合物、からなる群から選択される第2の生分解性ポリマーも含む。第2の生分解性ポリマーの量は、典型的には、全組成物の約5重量%~約95重量%である。
【0032】
いくつかの実施形態において、第2の生分解性ポリマーは、該ポリマー組成物の約5重量%~約50重量%のポリ(ブチレンサクシネート)を含んでもよい。より好ましくは、該ポリマー組成物は、約10重量%~約30重量%のポリ(ブチレンサクシネート)を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、第2の生分解性ポリマーは、該ポリマー組成物の約5重量%~約50重量%のポリ(ブチレンサクシネート)-co-ブチレンアジペートを含んでもよい。より好ましくは、該ポリマー組成物は、約10重量%~約30重量%のポリ(ブチレンサクシネート)-co-ブチレンアジペートを含む。
【0034】
例えば、第2の生分解性ポリマーは、該ポリマー組成物の約10重量%~約70重量%のポリ(乳酸)を含んでもよい。より好ましくは、該ポリマー組成物は、約20重量%~約60重量%のポリ(乳酸)を含む。
【0035】
特定の実施形態において、第2の生分解性ポリマーは、該ポリマー組成物の約5重量%~約50重量%のセルロースアセテートまたは別のセルロースエステルを含んでもよい。より好ましくは、該ポリマー組成物は、約10重量%~約30重量%のセルロースアセテートまたは別のセルロースエステルを含む。
【0036】
上述した各種組成物において、ポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、1種類のモノマー残基のみからなる単独重合体であってもよい。しかし、一般に、ポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、少なくとも2種類の異なるモノマー残基からなる共重合体である。例えば、ポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、少なくとも3種類の異なるモノマー残基からなる三元共重合体であってよい。
【0037】
例えば、いくつかの実施形態において、該少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、好ましくは、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基約75mol%~約99.9mol%と、炭素数5~12の第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基約0.1mol%~約25mol%とから構成される共重合体を含む。
【0038】
他の実施形態において、該少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、好ましくは、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を約75mol%~約99.9mol%と、3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約25mol%と、炭素数5~12の第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約25mol%とから構成される三元共重合体を含む。
【0039】
一般に、該少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、約50.000ダルトン~約750万ダルトンの重量平均分子量を有し、より好ましくは約300.000ダルトン~約300万ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0040】
特定の実施形態において、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)および少なくとも1つの生分解性ポリマーは、エステル交換で互いに反応させることが好ましい。そのような場合、エステル交換反応を促進するために、少量の触媒(エチルヘキサン酸スズなど)を任意に該組成物に組み込んでもよい。ポリ(ヒドロキシアルカノエート)と少なくとも1つの生分解性ポリマーをエステル交換することにより、例えば、より少ないエネルギー消費でより良い加工性を提供する分岐構造が得られる。エステル交換はまた、エステル交換ポリマーが界面剤として作用し、完全に反応しなかった組成物中の他のポリマー分子の相溶性を改善することができるため、物理的特性を改善することができる。
【0041】
最も一般的には、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)および少なくとも1つの生分解性ポリマーは、反応性押出プロセスで互いに反応させることで、前述のエステル交換は行われる。
【0042】
ポリマー組成物は、典型的には、約0.1重量%~約5重量%の成核剤も含む。特定の実施形態において、コア層の成核剤は、好ましくは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、人工甘味料、ステアレート、多糖類、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ポリエステルワックス、ナノクレイ、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ポリヒドロキシブチレート、チミン、シアヌル酸、シトシン、アデニン、ウラシル、グアニン、窒化ホウ素、およびこれらの混合物、からなる群から選択されることが好ましい。
【0043】
該ポリマー組成物は、同様に可塑剤材料も含み得る。可塑剤に適した材料は、典型的には、セバシン酸塩;クエン酸塩;アジピン酸、コハク酸、およびグルカル酸の脂肪エステル;乳酸塩;アルキルジエステル;クエン酸塩;アルキルメチルエステル;ジベンゾエー
ト;プロピレンカーボネート;200~10000g/molの数平均分子量を有するカプロラクトンジオール;400~10000g/molの数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール);植物油のエステル;長鎖アルキル酸;アジペート;グリセロール;イソソルビド誘導体またはそれらの混合物;ポリマー可塑剤;ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を少なくとも18mol%含むポリ(ヒドロキシアルカノエート)共重合体、およびこれらの混合物、からなる群から選択される。
【0044】
該ポリマー組成物中の可塑剤の量は、約15重量%までであってよい。より好ましくは、該ポリマー組成物は、約5重量%~約15重量%の可塑剤を含む。
【0045】
該ポリマー組成物は、任意に、充填剤材料も含み得る。充填剤に適した材料は、典型的には、炭酸カルシウム、タルク、ナノクレイ、ナノセルロース、麻繊維、カオリン、カーボンブラック、珪灰石、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、マイカ、シリカ、ドロマイト、硫酸バリウム、磁鉄鉱、ハロイサイト、酸化亜鉛、二酸化チタン、モンモリロナイト、長石、アスベスト、ホウ素、鋼鉄、カーボンナノチューブ、セルロース繊維、亜麻、綿、デンプン、多糖類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、変性デンプン、キチンおよびキトサン、アルギン酸塩、グルテン、ゼイン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、多糖類、グアーガム、キサンタンガム、サクシノグリカン、天然ゴム、ロジン酸、リグニン、天然繊維、ジュート、ケナフ、麻、粉砕したナッツの殻、木粉、およびこれらの混合物、からなる群から選択される。
【0046】
該ポリマー組成物中の充填剤の量は、約50重量%までであってよい。より好ましくは、コア層の該ポリマー組成物は、約5重量%~約40重量%の充填剤を含む。
【0047】
さらに、該ポリマー組成物は、約20重量%までの耐衝撃性改良剤も含み得る。より好ましくは、ポリマー組成物は、約5重量%~約15重量%の耐衝撃性改良剤を含む。ポリマー組成物に適した耐衝撃性改良剤は、アクリル系樹脂および乳化物、イソソルビド誘導体、天然ゴム、脂肪族ポリエステル、またはそれらの混合物、からなる群から選択されることが好ましい。
【0048】
さらに、例えば、該ポリマー組成物は、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ラウリン酸ビニル)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(グリコール酸)、フランジカルボン酸系ポリエステル、セルロース、ナノセルロース、グルカン、およびこれらの混合物、からなる群から選択される1以上の添加剤を50重量%まで含み得る。
【0049】
上述した各種ポリマー組成物において、ポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、1種類のモノマー残基のみからなる単独重合体であってもよい。しかし、一般に、ポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、少なくとも2種類の異なるモノマー残基からなる共重合体である。例えば、ポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、少なくとも3種類の異なるモノマー残基からなる三元共重合体であってよい。
【0050】
例えば、いくつかの実施形態において、該少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、好ましくは、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を約75mol%~約99.9mol%と、炭素数5~12の第2の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約25mol%とから構成される共重合体を含む。
【0051】
他の実施形態において、該少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、好ましくは、3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基を約75mol%~約99.9mol%と、3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基を約0.1mol%~約25mol%と、炭素数5~12の第3の3-ヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を約
0.1mol%~約25mol%とからなる三元共重合体を含む。
【0052】
一般に、該少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエートポリマーは、約50.000ダルトン~約750万ダルトンの重量平均分子量を有し、より好ましくは約300.000ダルトン~約300万ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0053】
さらなる態様において、本開示はまた、消費財製品のための製品包装材を提供し、該製品包装材には、前述のポリマー組成物を使用する。具体的には、該製品包装材は、前述のポリマー組成物を含む少なくとも1つの生分解性包装材部分を含む。該製品包装材は、衣料品、日用品、食品、健康・美容用品などの包装材に使用できる。
【0054】
特定の実施形態において、生分解性包装材部分は、射出成形、圧縮成形、熱成形、注入成形およびブローフィルム成形、押出コーティング、押出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、および押出プロファイル、からなる群から選択される方法により形成され得る。
【0055】
以上、本発明に係る好ましい実施形態について説明したが、これは図示および説明を目的としたものである。これらの実施形態は、本発明をここに開示される通りの形態に限定するものでもない。上記の教示に照らして自明の変更または変形が可能である。上記実施形態は、本発明の原理およびその実際的な応用の最良の例示を提供し、それにより、当業者が、本発明を各種実施形態で、かつ想定される特定の使用法に適した各種変更を加えて利用できるようにするために選択され、記載されるものである。そのような変更および変形はすべて、添付の特許請求の範囲が公正、合法的、かつ正当にその資格を有する範囲に従って解釈された場合の特許請求の範囲で決定する本発明の範囲内にある。
【国際調査報告】