(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】発光材料、その使用及びこの発光材料を含む有機エレクトロルミネッセンスデバイス
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20230816BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230816BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20230816BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20230816BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20230816BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20230816BHJP
H10K 50/81 20230101ALI20230816BHJP
H10K 50/82 20230101ALI20230816BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20230816BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20230816BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20230816BHJP
H10K 101/20 20230101ALN20230816BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
C09K11/06 660
H10K50/11
H10K50/12
H10K59/00
H10K85/60
H10K50/81
H10K50/82
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/17
H10K101:20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506564
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2021116592
(87)【国際公開番号】W WO2022068528
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】202011059309.X
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513322718
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】1 Qinghuayuan, Haidian District, Beijing 100084, China
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】段 錬
(72)【発明者】
【氏名】張 躍威
(72)【発明者】
【氏名】張 東東
【テーマコード(参考)】
3K107
4H048
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC21
3K107DD21
3K107DD26
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD66
3K107DD69
3K107DD71
3K107DD74
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VA22
4H048VA32
4H048VA42
(57)【要約】
有機エレクトロルミネッセンスの技術分野に関し、特に有機化合物、その使用及び該化合物を含む有機エレクトロルミネッセンスデバイスに関する。本発明での化合物は以下の式:
【化1】
(環A、環B、環C、環Dは、それぞれ独立に、C5~C20単環芳香環又は縮合芳香環、C4~C20単環複素環又は縮合複素環のうちのいずれか1つを表し、環EはC5~C20芳香環を表し、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、N又はBであり、X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立にNR
1、BR
2、O又はSである)で示され、OLEDデバイスの発光材料として使用される場合、優れたデバイス性能及び安定性を示す。本発明はまた、上記の化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンスデバイスを保護する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
(式(1)中、
環A、環B、環C、環Dは、それぞれ独立に、C5~C20単環芳香環又は縮合芳香環、C4~C20単環複素環又は縮合複素環のうちのいずれか1つを表し、環EはC5~C20芳香環を表し、
前記環Aと環Bは単結合を介して連結されてもよく、前記環Cと環Dは単結合を介して連結されてもよく、
前記Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、N又はBであり、
前記X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、NR
1、BR
2、O又はSであり、
前記R
1、R
2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の、C1~C36鎖状アルキル、C3~C36シクロアルキル、C6~C30アリールアミノ、C3~C30ヘテロアリールアミノ、C6~C60単環アリール、C6~C60縮合環アリール、C6~C60アリールオキシ、C5~C60単環ヘテロアリール又はC5~C60縮合環ヘテロアリールから選択される1つであり、
前記R
1は単結合を介して隣接する環A、環B、環C又は環Dに連結されるか、又は隣接する環A、環B、環C又は環Dと縮合して互いに結合されて環を形成してもよく、前記R
2は単結合を介して隣接する環A、環B、環C又は環Dに連結されるか、又は隣接する環A、環B、環C又は環Dと縮合して互いに結合されて環を形成してもよく、
前記X
1とX
3は単結合を介して連結されるか、又は縮合して互いに結合されて環を形成してもよく、前記X
2とX
4は単結合を介して連結されるか、又は縮合して互いに結合されて環を形成してもよく、
前記R
a、R
b、R
c及びR
dは、それぞれ独立に、単置換基から最大許容置換基を表し、かつ、それぞれ独立に、水素、重水素、又は置換若しくは無置換の、ハロゲン、C1~C36鎖状アルキル、C3~C36シクロアルキル、C1~C10アルコキシ、C1~C10チオアルコキシ、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、シアノ、アミノ、C6~C30アリールアミノ、C3~C30ヘテロアリールアミノ、C6~C60単環アリール、C6~C60縮合環アリール、C6~C60アリールオキシ、C5~C60単環ヘテロアリール、C5~C60縮合環ヘテロアリールから選ばれる1つであり、前記R
a、R
b、R
c及びR
dのうちの隣接する2つは任意により単結合を介して連結されるか、又は縮合して互いに結合されて環を形成してもよく、
前記の基に置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン、C1~C30鎖状アルキル、C3~C30シクロアルキル、C1~C10アルコキシ、C1~C10チオアルコキシ、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、シアノ、アミノ、C6~C30アリールアミノ、C3~C30ヘテロアリールアミノ、C6~C60単環アリール、C6~C60縮合環アリール、C6~C60アリールオキシ、C5~C60単環ヘテロアリール、C5~C60縮合環ヘテロアリールから選ばれるいずれか1つである)
で示される構造を有する
ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
式(1)中、前記環A、環B、環C及び環Dは、それぞれ独立に、C5~C10単環芳香環又は縮合芳香環、C4~C10単環複素環又は縮合複素環のうちのいずれか1つを表し、前記環EはC5~C10単環芳香環又は縮合芳香環を表し、
好ましくは、前記環A、環B、環C及び環Dは、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環又はフルオレン環から選ばれるいずれか1つ、前記環Eはベンゼン環、ナフタレン環又はフルオレン環から選ばれる
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記式(2)~式(7):
【化2】
(式(2)~式(7)中、X
1、X
2、X
3、X
4、R
a、R
b、R
c及びR
dは全て式(1)と同義である)
のいずれかで示される構造を有する
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(2)中、
X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、残りの2つはNR
1であり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、残りの2つはOであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、残りの2つはSであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち3つはBR
2であり、残りの1つはNR
1であり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち1つはBR
2であり、残りの3つはNR
1であり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、1つはNR
1であり、残りの1つはOであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち1つはBR
2であり、2つはNR
1であり、残りの1つはOであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4はいずれもSであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち1つはOであり、残りの3つはSであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4はいずれもNR
1である
請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
式(3)中、
X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、残りの2つはNR
1であり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、残りの2つはOであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、残りの2つはSであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち3つはBR
2であり、残りの1つはNR
1であり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち1つはBR
2であり、残りの3つはNR
1であり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、1つはNR
1であり、残りの1つはOであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち1つはBR
2であり、2つはNR
1であり、残りの1つはOであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4はいずれもSであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち1つはOであり、残りの3つはSであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4はいずれもNR
1である
請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
式(4)中、
X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、残りの2つはNR
1であり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、残りの2つはOであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、残りの2つはSであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち3つはBR
2であり、残りの1つはNR
1であり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち1つはBR
2であり、残りの3つはNR
1であり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち2つはBR
2であり、1つはNR
1であり、残りの1つはOであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち1つはBR
2であり、2つはNR
1であり、残りの1つはOであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4はいずれもSであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4のうち1つはOであり、残りの3つはSであり、
又は、X
1、X
2、X
3、X
4はいずれもNR
1である
請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
式(1)中、前記R
a、R
b、R
c及びR
dは、それぞれ独立に、水素、重水素、又は置換基として置換若しくは無置換の、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ネオヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、フェニル、ナフチル、アントラニル、ベンゾアントラニル、フェナントレニル、ベンゾフェナントレニル、ピレニル、クリセン基、ペリレン基、フルオランテニル、テトラセニル、ペンタセニル、ベンゾピレニル、ビフェニル、ジフェニル、ターフェニル、三量体化フェニル、クォーターフェニル、フルオレニル、スピロビフルオレニル、ジヒドロフェナントレニル、ジヒドロピレニル、テトラヒドロピレニル、トランス又はシスインデノフルオレニル、三量体化インデニル、イソ三量体化インデニル、スピロ三量体化インデニル、スピロイソ三量体化インデニル、フリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ジベンゾフリル、チエニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、ピロリル、イソインドリル、カルバゾリル、インデノカルバゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンゾ-5,6-キノリニル、ベンゾ-6,7-キノリニル、ベンゾ-7,8-キノリニル、ピラゾリル、インダゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ナフトイミダゾリル、フェナントロイミダゾリル、ピリジノイミダゾリル、ピラジノイミダゾリル、キノキサリノイミダゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ナフトオキサゾリル、アントラオキサゾリル、フェナントロオキサゾリル、1,2-チアゾリル、1,3-チアゾリル、ベンゾチアゾリル、ピリダジニル、ベンゾピリダジニル、ピリミジニル、ベンゾピリミジニル、キノキサリル、1,5-ジアザアントラニル、2,7-ジアザピレニル、2,3-ジアザピレニル、1,6-ジアザピレニル、1,8-ジアザピレニル、4,5-ジアザピレニル、4,5,9,10-テトラアザペリレン基、ピラジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、ナフチリジニル、アザカルバゾリル、ベンゾカルボニル、フェナントロリニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,3,5-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、1,2,3-トリアジニル、テトラゾリル、1,2,4,5-テトラアジニル、1,2,3,4-テトラアジニル、1,2,3,5-テトラアジニル、プリニル、プテリジル、インドリジニル、ベンゾチアジアゾリル、9,9-ジメチルアクリジニル、トリアリールアミン基、アダマンタン、フルオロフェニル、メチルフェニル、トリメチルフェニル、シアノフェニル、テトラヒドロピロール、ピペリジン、メトキシ、シリル、又は以上から選ばれる2種の置換基の組み合わせから選択されるいずれか1つであり、
上記の基に置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立に、ハロゲン、C1~C12鎖状アルキル、C3~C12シクロアルキル、C1~C6アルコキシ又はチオアルコキシ、C6~C30アリールアミノ、C3~C30ヘテロアリールアミノ、C6~C30単環芳香族炭化水素又は縮合環芳香族炭化水素基、C3~C30単環ヘテロ芳香族炭化水素又は縮合環ヘテロ芳香族炭化水素基から選ばれるいずれか1つである
請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
下記化合物:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
のいずれかである
請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の化合物の使用であって、
前記化合物は有機エレクトロルミネッセンスデバイスに用いられ、
好ましくは、前記化合物は有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて発光層材料、好ましくは発光染料として使用される
ことを特徴とする使用。
【請求項10】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に介在された1層又は多層の有機層を含む有機エレクトロルミネッセンスデバイスであって、
前記有機層は、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1種を含み、
好ましくは、前記有機層は正孔注入層と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、を含み、前記正孔注入層は陽極層上に形成され、前記正孔輸送層は前記正孔注入層上に形成され、陰極層は前記電子輸送層上に形成され、前記正孔輸送層と前記電子輸送層との間は発光層であり、
前記発光層には、請求項1ないし8のいずれかに記載の化合物が含有されている
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンスの技術分野、特に有機化合物、その使用及び該化合物を含む有機エレクトロルミネッセンスデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emission Diodes)はサンドイッチ構造を有するデバイスの1つであり、正負の電極膜層と電極膜層の間に介在された有機機能材料層とを含む。OLEDデバイスは輝度が高く、応答が速く、視野角が広く、プロセスが簡単で、可撓性化ができるなどの利点があるため、新型ディスプレイの技術分野と新型照明の技術分野で注目されている。現在、この技術は新型照明灯具、スマートフォン及びタブレットPCなどの製品の表示パネルに広く応用されており、さらにテレビ等の大型表示製品への応用分野も拡大されており、発展が速く、高い技術要求が要求される新型表示技術である。
【0003】
OLEDは照明と表示の2つの分野で普及するに伴い、その核心材料に対する研究も更に注目されている。なぜなら、効率が良く、寿命が長いOLEDデバイスは通常、デバイスの構造及び各種有機材料を好適に組み合わせた結果であるからである。駆動電圧がより低く、発光効率がより良く、デバイスの使用寿命がより長いOLED発光デバイスを作製し、OLEDデバイスの性能向上を実現するためには、OLEDデバイスの構造と製造プロセスに対して革新を行うだけでなく、OLEDデバイスの光電機能材料に対して更なる研究や革新を行くて、より高性能な機能材料を作製するようにする。これに基づいて、OLED材料業界は、低い起動電圧、高い発光効率、より優れた寿命を実現するために、新しい有機エレクトロルミネッセンス材料の開発に取り組んできた。
【0004】
OLED材料の選択の上で、一重項発光の蛍光材料は寿命が長く、価格が安いが、効率が低く、三重項発光の燐光材料は効率が高いが、高価であり、青色光材料の寿命の問題は解決されていない。日本九州大学のAdachiは新しい有機発光材料、すなわち熱活性化遅延蛍光(TADF)材料を提案した。このような材料の一重項-三重項エネルギーギャップ(ΔEST)は非常に小さく(<0.3eV)、三重項励起子は逆項間交差(RISC)により一重項励起子に変換されて発光できるため、デバイスの内部量子効率は100%に達することができる。
【0005】
MR-TADF材料は高い色純度と高い発光効率の長所を持ち、科学研究界と産業界から広く注目を集めている。しかし、周辺置換基はS1エネルギー準位に与える影響が小さいため、材料の発光色を調整することが難しく、その光色もずっと青色-濃い青色の領域に限られており、MR-TADF材料の高分解能表示、フルカラー表示や白色照明の分野などへの更なる応用を大きく制限している。
【発明の概要】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は有機化合物を提供し、本発明の化合物の一般式は具体的には下記式(1)で示される。
【0007】
【0008】
式(1)中、環A、環B、環C、環Dは、それぞれ独立に、C5~C20単環芳香環又は縮合芳香環、C4~C20単環複素環又は縮合複素環のうちのいずれか1つを表し、環EはC5~C20芳香環を表し、
前記環Aと環Bは単結合を介して連結されてもよく、前記環Cと環Dは単結合を介して連結されてもよく、
前記Y1及びY2は、それぞれ独立に、N又はBであり、
前記X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立に、NR1、BR2、O又はSであり、
当Y1とY2が全てBである場合、X1、X2、X3及びX4は同時にNR1ではなく、
前記R1、R2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の、C1~C36鎖状アルキル、C3~C36シクロアルキル、C6~C30アリールアミノ、C3~C30ヘテロアリールアミノ、C6~C60単環アリール、C6~C60縮合環アリール、C6~C60アリールオキシ、C5~C60単環ヘテロアリール又はC5~C60縮合環ヘテロアリールから選択される1つであり、
【0009】
前記R1は単結合を介して隣接する環A、環B、環C又は環Dに連結されるか、又は隣接する環A、環B、環C又は環Dと縮合して互いに結合されて環を形成してもよく、前記R2は単結合を介して隣接する環A、環B、環C又は環Dに連結されるか、又は隣接する環A、環B、環C又は環Dと縮合して互いに結合されて環を形成してもよく、
【0010】
前記X1とX3は単結合を介して連結されるか、又は縮合して互いに結合されて環を形成してもよく、前記X2とX4は単結合を介して連結されるか、又は縮合して互いに結合されて環を形成してもよく、
【0011】
前記Ra、Rb、Rc及びRdは、それぞれ独立に、単置換基から最大許容置換基を表し、かつ、それぞれ独立に、水素、重水素、又は置換若しくは無置換の、ハロゲン、C1~C36鎖状アルキル、C3~C36シクロアルキル、C1~C10アルコキシ、C1~C10チオアルコキシ、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、シアノ、アミノ、C6~C30アリールアミノ、C3~C30ヘテロアリールアミノ、C6~C60単環アリール、C6~C60縮合環アリール、C6~C60アリールオキシ、C5~C60単環ヘテロアリール、C5~C60縮合環ヘテロアリールから選ばれる1つであり、前記Ra、Rb、Rc及びRdのうち隣接する2つは任意により単結合を介して連結されるか、又は縮合して互いに結合されて環を形成してもよく、
【0012】
上記の基に置換基が存在する場合、前記置換基は、それぞれ独立に、重水素、ハロゲン、C1~C30鎖状アルキル、C3~C30シクロアルキル、C1~C10アルコキシ、C1~C10チオアルコキシ、カルボニル、カルボキシル、ニトロ、シアノ、アミノ、C6~C30アリールアミノ、C3~C30ヘテロアリールアミノ、C6~C60単環アリール、C6~C60縮合環アリール、C6~C60アリールオキシ、C5~C60単環ヘテロアリール、C5~C60縮合環ヘテロアリールから選ばれるいずれか1つである。
【0013】
好ましくは、式(1)中、前記環A、環B、環C及び環Dは、それぞれ独立に、C5~C10単環芳香環又は縮合芳香環、C4~C10単環複素環又は縮合複素環のうちのいずれか1つを表し、前記環EはC5~C10単環芳香環又は縮合芳香環を表す。
【0014】
より好ましくは、式(1)中、前記環A、環B、環C及び環Dは、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環又はフルオレン環から選ばれるいずれか1つ、前記環Eはベンゼン環、ナフタレン環又はフルオレン環から選ばれるいずれか1つである。
好ましくは、本発明の化合物の一般式は具体的には下記式(2)~式(7)のいずれかで示される。
【0015】
【0016】
式(2)~式(7)中、X1、X2、X3、X4、Ra、Rb、Rc及びRdは全て式(1)と同義である。
さらに、本発明の式(2)、式(3)及び式(4)中、それぞれ独立したX1、X2、X3、X4は以下のような好ましい形態がある。
X1、X2、X3、X4のうち2つはBR2であり、残りの2つはNR1であり、
又は、X1、X2、X3、X4のうち2つはBR2であり、残りの2つはOであり、
又は、X1、X2、X3、X4のうち2つはBR2であり、残りの2つはSであり、
又は、X1、X2、X3、X4のうち3つはBR2であり、残りの1つはNR1であり、
又は、X1、X2、X3、X4のうち1つはBR2であり、残りの3つはNR1であり、
又は、X1、X2、X3、X4のうち2つはBR2であり、1つはNR1であり、残りの1つはOであり、
又は、X1、X2、X3、X4のうち1つはBR2であり、2つはNR1であり、残りの1つはOであり、
又は、X1、X2、X3、X4はいずれもSであり、
又は、X1、X2、X3、X4のうち1つはOであり、残りの3つはSであり、
又は、X1、X2、X3、X4のうち1つはNR1であり、残りの3つはNR1である。
【0017】
また、さらに、式(1)、式(2)~式(7)中、前記Ra、Rb、Rc及びRdは、それぞれ独立に、水素、重水素、又は置換基として置換若しくは無置換の、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ネオヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、フェニル、ナフチル、アントラニル、ベンゾアントラニル、フェナントレニル、ベンゾフェナントレニル、ピレニル、クリセン基、ペリレン基、フルオランテニル、テトラセニル、ペンタセニル、ベンゾピレニル、ビフェニル、ジフェニル、ターフェニル、三量体化フェニル、クォーターフェニル、フルオレニル、スピロビフルオレニル、ジヒドロフェナントレニル、ジヒドロピレニル、テトラヒドロピレニル、トランス又はシスインデノフルオレニル、三量体化インデニル、イソ三量体化インデニル、スピロ三量体化インデニル、スピロイソ三量体化インデニル、フリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ジベンゾフリル、チエニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、ピロリル、イソインドリル、カルバゾリル、インデノカルバゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンゾ-5,6-キノリニル、ベンゾ-6,7-キノリニル、ベンゾ-7,8-キノリニル、ピラゾリル、インダゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ナフトイミダゾリル、フェナントロイミダゾリル、ピリジノイミダゾリル、ピラジノイミダゾリル、キノキサリノイミダゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ナフトオキサゾリル、アントラオキサゾリル、フェナントロオキサゾリル、1,2-チアゾリル、1,3-チアゾリル、ベンゾチアゾリル、ピリダジニル、ベンゾピリダジニル、ピリミジニル、ベンゾピリミジニル、キノキサリル、1,5-ジアザアントラニル、2,7-ジアザピレニル、2,3-ジアザピレニル、1,6-ジアザピレニル、1,8-ジアザピレニル、4,5-ジアザピレニル、4,5,9,10-テトラアザペリレン基、ピラジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、ナフチリジニル、アザカルバゾリル、ベンゾカルボニル、フェナントロリニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5_オキサジアゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,3,5-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、1,2,3-トリアジニル、テトラゾリル、1,2,4,5-テトラアジニル、1,2,3,4-テトラアジニル、1,2,3,5-テトラアジニル、プリニル、プテリジル、インドリジニル、ベンゾチアジアゾリル、9,9-ジメチルアクリジニル、トリアリールアミン基、アダマンタン、フルオロフェニル、メチルフェニル、トリメチルフェニル、シアノフェニル、テトラヒドロピロール、ピペリジン、メトキシ、シリル、又は以上の2つの置換基の組み合わせから選択される1つである。
【0018】
本発明では、「置換された基」とは、「置換若しくは無置換」の基が置換されたときの置換基の範囲であり、その個数は特に限定されず、化合物の結合の要件を満たすものであればよく、例示的には、1個、2個、3個、4個又は5個であってもよく、置換基の個数が2個以上である場合、この2個以上の置換基は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0019】
本発明では、ハロゲンは塩素原子、フッ素原子、臭素原子などを表す。
【0020】
本発明では、Ca~Cbの表記は、当該該基が有する炭素原子数がa~bであることを意味し、特に断らない限り、一般的には、この炭素原子数は置換基の炭素原子数を含まない。
【0021】
本発明では、「-」が付いた環構造の表記は、連結部位が該環構造上の結合を形成し得る任意の位置であることを意味する。
【0022】
本発明では、前記ヘテロ原子は、通常、N、O、S、P、Si及びSeから選ばれる原子又は原子団であり、好ましくはN、O、Sから選ばれる。本発明では、前記原子の名称は、これらに対応する各種の同位体を含み、例えば、水素(H)は1H(プロチウム、又はH)、2H(重水素又はD)などを含み、炭素(C)は12C、13Cなどを含む。
【0023】
また、さらに、本発明の一般式(1)の前記化合物は、下記の具体的な構造の化合物1~化合物180が好ましいが、これらの化合物は代表例に過ぎない。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
本発明の第2の目的は、第1の目的である前記化合物の使用を提供することであり、前記化合物は有機エレクトロルミネッセンスデバイスに用いられる。好ましくは、前記化合物は前記有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて発光層材料、好ましくは発光染料として使用される。
【0034】
本発明の第3の目的は有機エレクトロルミネッセンスデバイスを提供することである。具体的には、本発明の実施形態は、基板と、前記基板上に順次形成された陽極層、複数の発光機能層及び陰極層と、を含み、前記発光機能層は正孔注入層と、正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、を含み、前記正孔注入層は前記陽極層上に形成され、前記正孔輸送層は前記正孔注入層上に形成され、前記陰極層は前記電子輸送層上に形成され、前記正孔輸送層と前記電子輸送層との間は発光層であり、好ましくは、前記発光層中に上記の一般式(1)~式(7)の何れかで示される本発明の一般式化合物、又は前記発光層中に上記の具体的な化合物1~化合物180のうちの少なくともいずれか1つが含有されている有機エレクトロルミネッセンスデバイスを提供する。
【0035】
上記の本発明の化合物は有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおける電子輸送層材料として使用される場合に性能に優れる理由としては、まだ不明であるが、以下のように推定される。
【0036】
本発明の一般式化合物(下記式参照)では、直線状供与体-Π-供与体が導入されており、直線状供与体-Π-受容体又は直線状受容体-Π-受容体の特殊な構造により、多重共鳴を保持しつつ、フロンティア軌道のエネルギー分裂を通じて有効なレッドシフトを発生させ、これによって、目的の分子に高い発光効率と高い色純度を持たせる。このシリーズの材料は現在のMR-TADF材料よりも光色の大きなレッドシフトができ、橙赤色光、赤色光から近赤外光が得られる。
【0037】
【0038】
本発明の化合物を用いて製造されたOLEDデバイスのエレクトロルミネッセンススペクトルは、より狭い半値幅を有し、明らかな多重共鳴効果を示し、それによって、多重共鳴-熱活性化遅延蛍光の材料系と発光色範囲を極めて豊富にし、また、低い起動電圧、高い発光効率、より優れた使用寿命を持ち、現在のパネル製造企業の高性能材料に対する要件を満たすことができ、応用の将来性が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の上記新規化合物の具体的な製造方法について、複数の合成実施例によって詳細に説明するが、本発明の製造方法はこれらの合成実施例に限定されるものではない。
【0041】
本発明で使用する各種化学薬品、例えば石油エーテル、t-ブチルベンゼン、酢酸エチル、硫酸ナトリウム、トルエン、ジクロロメタン、炭酸カリウム、三臭化ホウ素、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、反応中間体などの基礎化学原料はすべて上海泰坦科技股▲分▼有限公司と西隴化工股▲分▼有限公司から購入した。下記化合物の決定に用いた質量分析計はZAB-HS型質量分析計(英国Micromass社製)を用いた。
【0042】
以下、本発明の化合物の合成方法を簡単に説明し、まず、X1、X2、X3、X4間/上の水素原子、Cl原子をn-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムなどを用いてオルトで金属化する。次に、三臭化ホウ素を添加してリチウム-ホウ素の金属交換を行った後、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなどのブレンステッド塩基(Bronsted base)を添加することにより、タンデムボラフリーデルクラフツ反応(Tandem Bora-Friedel-Crafts Reaction)を行い、目的物を得る。
【0043】
【0044】
より具体的には、以下、本発明の具体的な化合物の代表例の合成方法を示す。
合成実施例
合成実施例1
【0045】
【0046】
化合物1の合成
【0047】
【0048】
t-ブチルリチウムのペンタン溶液(7.9mL、1.70M、13.38mmol)を0℃の1-1(1.79g、2.20mmol)のt-ブチルベンゼン(60mL)溶液にゆっくりと加えた後、60℃に順次昇温して、それぞれ3時間反応させた。反応終了後、-30℃に降温し、三臭化ホウ素(2.5mL、26.80mmol)をゆっくりと加え、室温でさらに0.5時間撹拌した。室温でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(7.00mL、40.20mmol)を加え、145℃でさらに5時間反応させた後、反応を停止した。溶媒を真空回転蒸発させて、シリカゲルカラム(展開剤:酢酸エチル:石油エーテル=50:1)に通して、目標化合物1(0.64g、38%収率、HPLC分析によれば純度99.43%)を黄色固体として得た。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:762.53 元素分析結果:理論値: C, 85.06; H, 4.76; B, 2.84; N, 7.35(%);実験値:C, 85.16; H, 4.66; B, 2.64; N, 7.55(%)。
【0049】
合成実施例2
【0050】
【0051】
化合物5の合成
【0052】
【0053】
本例では、1-1を等物質量の5-1に変更した以外、本実施例は化合物1の合成と同様であった。目標化合物5(0.68g、38%収率、HPLC分析によれば純度99.55%)は黄色固体である。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:754.47 元素分析結果:理論値: C, 85.97; H, 3.74; B, 2.87; N, 7.43(%);実験値:C, 85.87; H, 3.84; B, 2.77; N, 7.53(%)。
【0054】
合成実施例3
【0055】
【0056】
化合物8の合成
【0057】
【0058】
本例では、1-1を等物質量の8-1に変更した以外、本実施例は化合物1の合成と同様であった。目標化合物8(0.66g、25%収率、HPLC分析によれば純度99.65%)は黄色固体である。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:1203.33 元素分析結果:理論値:C, 85.84; H, 7.71; B, 1.80; N, 4.66(%);実験値:C, 85.81; H, 7.74; B, 1.70; N, 4.766(%)。
【0059】
合成実施例4
【0060】
【0061】
化合物18の合成
【0062】
【0063】
本例では、1-1を等物質量の18-1に変更した以外、本実施例は化合物1の合成と同様であった。目標化合物18(1.00g、32%収率、HPLC分析によれば純度99.43%)は黄色固体である。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:1419.70 元素分析結果:理論値:C, 86.29; H, 8.24; B, 1.52; N, 3.95(%);実験値:C, 86.19; H, 8.34; B, 1.32; N, 4.15(%)。
【0064】
合成実施例5
【0065】
【0066】
化合物82の合成
【0067】
【0068】
本例では、1-1を等物質量の82-1に変更した以外、本実施例は化合物1の合成と同様である。目標化合物82(0.41g、30%収率、HPLC分析によれば純度99.53%)は黄色固体である。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:606.30 元素分析結果:理論値:C, 83.20; H, 3.99; B, 3.57; N, 9.24(%);実験値:C, 83.27; H, 3.92; B, 3.67; N, 9.14(%)。
【0069】
合成実施例6
【0070】
【0071】
化合物87の合成
【0072】
【0073】
本例では、1-1を等物質量の87-1に変更した以外、本実施例は化合物1の合成と同様である。目標化合物87(0.42g、32%収率、HPLC分析によれば純度99.67%)は黄色固体である。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:598.24 元素分析結果:理論値:C, 84.32; H, 2.70; B, 3.61; N, 9.37(%);実験値:C, 84.42; H, 2.60; B, 3.51; N, 9.47(%)。
【0074】
合成実施例7
【0075】
【0076】
化合物102の合成
【0077】
【0078】
t-ブチルリチウムのペンタン溶液(18.59mL、1.60M、29.75mmol)を0℃の102-1(3.61g、4.96mmol)のt-ブチルベンゼン(60mL)溶液にゆっくりと加えた後、60℃に順次昇温して、それぞれ3時間反応させた。反応終了後、-30℃に降温し、三臭化ホウ素(4.97g、19.82mmol)をゆっくりと加え、室温でさらに0.5時間撹拌した。室温でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.56g、19.82mmol)を加え、145℃でさらに12時間反応させた後、室温に冷却し、この状態で臭化フェニルマグネシウム(3.59g、19.82mmol)を加え、さらに2時間反応させた後、反応を停止した。溶媒を真空回転蒸発させて、シリカゲルカラム(展開剤:酢酸エチル:石油エーテル=50:1)に通して、目標化合物102(0.34g、10%収率、HPLC分析によれば純度99.22%)を黄色固体として得た。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:756.14 元素分析結果:理論値: C, 85.78; H, 4.80; B, 5.72; N, 3.70(%);実験値:C, 85.78; H, 4.80; B, 5.72; N, 3.70(%)。
【0079】
合成実施例8
【0080】
【0081】
化合物113の合成
【0082】
【0083】
本例では、1-1を等物質量の113-1に変更した以外、本実施例は化合物1の合成と同様であった。目標化合物113(0.55g、41%収率、HPLC分析によれば純度99.33%)は黄色固体である。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:612.22 元素分析結果:理論値:C, 82.39; H, 4.28; B, 3.53; N, 4.58; O, 5.23(%);実験値:C, 82.19; H, 4.25; B, 3.73; N, 4.57; O, 5.27(%)。
【0084】
合成実施例9
【0085】
【0086】
化合物114の合成
【0087】
【0088】
本例では、1-1を等物質量の114-1に変更した以外、本実施例は化合物1の合成と同様であった。目標化合物114(0.42g、36%収率、HPLC分析によれば純度99.54%)は黄色固体である。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:537.19 元素分析結果:理論値:C, 80.49; H, 3.94; B, 4.02; N, 2.61; O, 8.93(%);実験値:C, 80.59; H, 3.74; B, 4.12; N, 2.71; O, 8.83(%)。
【0089】
合成実施例10
【0090】
【0091】
化合物132の合成
【0092】
【0093】
本例では、1-1を等物質量の132-1に変更した以外、本実施例は化合物1の合成と同様であった。目標化合物132(0.37g、26%収率、HPLC分析によれば純度99.52%)は黄色固体である。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:644.42 元素分析結果:理論値:C, 78.28; H, 4.07; B, 3.35; N, 4.35; S, 9.95(%);実験値:C, 78.28; H, 4.07; B, 3.35; N, 4.35; S, 9.95(%)。
【0094】
合成実施例11
【0095】
【0096】
化合物149の合成
【0097】
【0098】
本例では、1-1を等物質量の149-1に変更した以外、本実施例は化合物1の合成と同様であった。目標化合物149(0.52g、36%収率、HPLC分析によれば純度99.42%)は黄色固体である。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:662.41 元素分析結果:理論値:C, 83.41; H, 4.87; B, 3.26; N, 8.46(%);実験値:C, 83.40; H, 4.88; B, 3.25; N, 8.47(%)。
【0099】
合成実施例12
【0100】
【0101】
化合物150の合成
【0102】
【0103】
合成実施例13
【0104】
【0105】
化合物180の合成
【0106】
【0107】
本例では、102-1を等物質量の180-1に変更した以外、本実施例は化合物102の合成と同様であった。目標化合物180(0.72g、19%収率、HPLC分析によれば純度99.35%)は橙赤色固体である。MALDI-TOF-MS結果:分子イオンピーク:759.33元素分析結果:理論値:C, 85.42; H, 4.78; B, 4.27; N, 5.53(%) ;実験値:C, 85.42; H, 4.78; B, 4.27; N, 5.53(%)。
【0108】
以下、本発明の化合物を有機エレクトロルミネッセンスデバイスに用いることにより、実際に使用するときの性能を測定し、本発明の技術的効果及び利点を示して、検証する。
【0109】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスは第1電極と、第2電極と、2つの電極の間にある有機材料層と、を含む。該有機材料はまた複数の領域に分けられ、例えばこの有機材料層は正孔輸送領域と、発光層と、電子輸送領域とを含んでもよい。
【0110】
陽極の材料としては、酸化スズインジウム(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、二酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの酸化物透明導電性材料、及びこれらの任意の組み合わせを用いることができる。陰極の材料としては、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)等の金属又は合金、及びこれらの任意の組み合わせを用いることができる。
【0111】
正孔輸送領域は、陽極と発光層との間に位置する。正孔輸送領域は、1種類の化合物のみを含む単層正孔輸送層と、複数種の化合物を含む単層正孔輸送層とを含む単層構造の正孔輸送層(HTL)としてもよい。正孔輸送領域は、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子バリア層(EBL)の少なくとも1層を含む多層構造であってもよい。
【0112】
正孔輸送領域の材料は、CuPcなどのフタロシアニン誘導体、導電性高分子、ポリフェニレンエチレン、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸塩)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、ポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホン酸塩)(Pani/PSS)、芳香族アミン誘導体などの導電性ドーパント含有重合体などから選択され得るが、これらに限定されない。
【0113】
発光層は、異なる波長スペクトルを放射することができる発光染料素(すなわちドーパント、dopant)を含み、ホスト材料(Host)も含んでもよい。発光層は、赤、緑、青等の単一色を発光する単色発光層であってもよい。色の異なる複数の単色発光層は、画素パターンに沿って平面的に配列されていてもよいし、積層されて有色発光層を形成していてもよい。異なる色の発光層を積層する場合、互いに離間してもよいし、互いに連結していてもよい。発光層は、赤、緑、青等の異なる色を同時に発光することができる単一色発光層であってもよい。
【0114】
電子輸送領域は、1種の化合物のみを含む単層電子輸送層と、複数種の化合物を含む単層電子輸送層とを含む単層構造の電子輸送層(ETL)としてもよい。電子輸送領域は、電子注入層(EIL)、電子輸送層(ETL)、正孔バリア層(HBL)の少なくとも1層を含む多層構造であってもよい。
【0115】
図1を参照して、以下のように有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造過程を説明する。基板1上に陽極2、正孔輸送層3、有機発光層4、電子輸送層5、陰極6を順次堆積した後、封止する。ここでは、有機発光層4を製造する際には、ワイドバンドギャップ材料源、電子供与体型材料源、電子受容体型材料源及び共鳴型TADF材料源を一括蒸着する方法により有機発光層4を形成する。
具体的には、本発明の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法は、以下のステップを含む。
【0116】
1、陽極材料をコーティングしたガラス板を商用洗浄剤で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、アセトン:エタノール混合溶媒で超音波脱油し、清浄環境でベークして水分を完全に除去し、紫外光とオゾンで洗浄し、低エネルギー陽イオンビームで表面を衝撃する。
【0117】
2、上記陽極付きガラス板を真空キャビティに置き、1×10-5~9×10-3Paに真空引きし、上記陽極膜上に正孔注入材を蒸着速度0.1~0.5nm/sで真空蒸着し、正孔注入層を形成する。
3、正孔注入層上に正孔輸送材料を蒸着速度0.1~0.5nm/sで真空蒸着し、正孔輸送層を形成する。
4、正孔輸送層上に電子バリア層を蒸着速度0.1~0.5nm/sで真空蒸着する。
【0118】
5、電子バリア層上に真空蒸着デバイスのホスト材料とTADF染料を含む有機発光層を真空蒸着し、多源共蒸着の方法を利用して、ホスト材料の蒸着速度、増感剤材料の蒸着速度と染料の蒸着速度を調整して、染料を予め設定されたドープ比率にする。
6、有機発光層上に正孔バリア層を蒸着速度0.1~0.5nm/sで真空蒸着する。
7、正孔バリア層上にデバイスの電子輸送材料を、蒸着速度0.1~0.5nm/sで真空蒸着し、電子輸送層を形成する。
8、電子輸送層上に電子注入層としてLiFを0.1~0.5nm/sで真空蒸着し、陰極としてAl層を0.5~1nm/sで真空蒸着する。
【0119】
また、本発明の実施例は、上記したような有機エレクトロルミネッセンスデバイスを含む表示装置を提供する。この表示装置は、具体的には、OLEDディスプレイなどの表示デバイス、及びこの表示デバイスを含むテレビ、デジタルカメラ、携帯電話、タブレット等の表示機能を有するいかなる製品又は部品であってもよい。この表示装置は、上記有機エレクトロルミネッセンスデバイスと従来技術に対する優位性が同じであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0120】
以下、具体的な実施例を用いて、本発明の有機エレクトロルミネッセンスデバイスをさらに説明する。
デバイス実施例1
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスの構造は以下に示される。
【0121】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%1(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0122】
陽極はITOを材料とし、正孔注入層はHIを材料とし、一般的には全厚さが5~30nmであるが、本実施例では10nmであり、正孔輸送層はHTを材料とし、一般的には全厚さが5~500nmであるが、本実施例では40nmであり、Hostは有機発光層ワイドバンドギャップのホスト材料であり、本発明の化合物1は染料であって、ドーピング濃度が3wt%であり、有機発光層の厚さは一般的には1~200nmであるが、本実施例では30nmであり、電子輸送層はETを材料とし、一般的には厚さが5~300nmであるが、本実施例では30nmであり、電子注入層及び陰極はLiF(0.5nm)及び金属アルミ(150nm)を材料とする。
【0123】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD1に直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長605nm、半値幅42nm、CIE色座標(x,y)=(0.68,0.31)、外量子効率EQE 25.8%の赤色発光(駆動電圧2.3V)を得ることができた。
【0124】
デバイス実施例2
発光層に使用されるワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であり、デバイス構造は具体的には以下のとおりである。
【0125】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/ TD:3wt%1(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0126】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD2についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長605 nm、半値幅43nm、CIE色座標(x,y)=(0.69,0.30)、外量子効率EQE 31.4%の赤色発光(駆動電圧2.2V)を得ることができた。
【0127】
デバイス実施例3
発光層に使用される染料を1から5に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0128】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%5(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0129】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD3についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長664nm、半値幅48nm、CIE色座標(x,y)=(0.71,0.29)、外量子効率EQE 24.2%の濃赤色発光(駆動電圧2.2V)を得ることができた。
【0130】
デバイス実施例4
発光層におけるワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、染料を1から5に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0131】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/ TD:3wt%5(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0132】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD4についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長664nm、半値幅48nm、CIE色座標(x,y)=(0.71,0.29)、外量子効率EQE 29.2%の濃赤色発光(駆動電圧2.1V)を得ることができた。
【0133】
デバイス実施例5
発光層中の染料を1から82に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0134】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%82(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0135】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD5についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長755nm、半値幅50nm、CIE色座標(x,y)=(0.72,0.28)、外量子効率EQE 20.3%の近赤外発光(駆動電圧2.1V)を得ることができた。
【0136】
デバイス実施例6
発光層中のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、染料を1から82に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0137】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/ TD:3wt%82(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0138】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD6についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長755nm、半値幅50nm、CIE色座標(x,y)=(0.72,0.28)、外量子効率EQE 25.3%の近赤外発光(駆動電圧2.0V)を得ることができた。
【0139】
デバイス実施例7
発光層中の染料を1から87に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0140】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%87(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0141】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD7についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長875nm、半値幅52nm、CIE色座標(x,y)=(0.74,0.26)、外量子効率EQE 15.3%の近赤外発光(駆動電圧2.0V)を得ることができた。
【0142】
デバイス実施例8
発光層中のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、染料を1から87に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0143】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/TD:3wt%87(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0144】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD8についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長875nm、半値幅52nm、CIE色座標(x,y)=(0.74,0.26)、外量子効率EQE 19.3%の近赤外発光(駆動電圧1.9V)を得ることができた。
【0145】
デバイス実施例9
発光層中の染料を1から102に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0146】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%102(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0147】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD9についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長626nm、半値幅44nm、CIE色座標(x,y)=(0.69,0.31)、外量子効率EQE 24.3%の赤色発光(駆動電圧2.3V)を得ることができた。
【0148】
デバイス実施例10
発光層中のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、染料を1から102に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0149】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/ TD:3wt%102(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0150】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD10についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長626nm、半値幅44nm、CIE色座標(x,y)=(0.69,0.31)、外量子効率EQE 29.3%の赤色発光(駆動電圧2.2V)を得ることができた。
【0151】
デバイス実施例11
発光層中の染料を1から113に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0152】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%113(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0153】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD11についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長580nm、半値幅39nm、CIE色座標(x,y)=(0.58,0.42)、外量子効率EQE 26.3%の橙黄色発光(駆動電圧2.5V)を得ることができた。
デバイス実施例12
【0154】
発光層中のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、染料を1から113に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0155】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/TD:3wt%113(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0156】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD12についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長580nm、半値幅39nm、CIE色座標(x,y)=(0.58,0.42)、外量子効率EQE 34.3%の橙黄色発光(駆動電圧2.4V)を得ることができた。
【0157】
デバイス実施例13
発光層中の染料を1から114に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0158】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%114(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0159】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD13についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長565nm、半値幅38nm、CIE色座標(x,y)=(0.57,0.43)、外量子効率EQE 24.6%の橙黄色発光(駆動電圧2.5V)を得ることができた。
【0160】
デバイス実施例14
発光層中のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、染料を1から114に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0161】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/TD:3wt%114(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0162】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD14についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長565nm、半値幅38nm、CIE色座標(x,y)=(0.57,0.43)、外量子効率EQE 32.6%の橙黄色発光(駆動電圧2.4V)を得ることができた。
【0163】
デバイス実施例15
発光層中の染料を1から180に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0164】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/Host:3wt%180(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0165】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD15についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長635nm、半値幅46nm、CIE色座標(x,y)=(0.70,0.30)、外量子効率EQE 25.6%の赤色発光(駆動電圧2.3V)を得ることができた。
【0166】
デバイス実施例16
発光層中のワイドバンドギャップ型ホスト材料HostをTADF型ホストTDに変更し、染料を1から180に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は以下のとおりである。
【0167】
ITO/HI(10nm)/HT(30nm)/EBL(10nm)/TD:3wt%180(30nm)/HBL(10nm)ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0168】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスD16についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長635nm、半値幅46nm、CIE色座標(x,y)=(0.70,0.30)、外量子効率EQE 31.6%の赤色発光(駆動電圧2.2V)を得ることができた。
【0169】
デバイス比較例1
発光層に使用される本発明の化合物1を従来技術における化合物P1に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は具体的には以下のとおりである。
ITO/HI(10nm)/HT(40nm)/Host:3wt% P1(30nm)/ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0170】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスDD1についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長459nm、半値幅28nm、CIE色座標(x,y)=(0.13,0.09)、外量子効率EQE 13.5%の青色発光(駆動電圧3.6V)を得ることができた。
【0171】
デバイス比較例2
発光層に使用される本発明の化合物1を従来技術における化合物P1に変更した以外、デバイス実施例2の製造方法と同様であった。デバイス構造は具体的には以下のとおりである。
ITO/HI(10nm)/HT(40nm)/TD:3wt% P1(30nm)/ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0172】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスDD2についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長460nm、半値幅28nm、CIE色座標(x,y)=(0.13,0.09)、外量子効率EQE 18.4%の青色発光(駆動電圧3.3V)を得ることができた。
【0173】
デバイス比較例3
発光層に使用される本発明の化合物1を従来技術における化合物P2に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は具体的には以下のとおりである。
【0174】
ITO/HI(10nm)/HT(40nm)/Host:3wt% P2(30nm)/ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0175】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスDD1についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長519nm、半値幅38nm、CIE色座標(x,y)=(0.27,0.69)、外量子効率EQE 19.5%の緑色発光(駆動電圧2.6V)を得ることができた。
【0176】
デバイス比較例4
発光層に使用される本発明の化合物1を従来技術における化合物P2に変更した以外、デバイス実施例2の製造方法と同様であった。デバイス構造は具体的には以下のとおりである。
【0177】
ITO/HI(10nm)/HT(40nm)/TD:3wt% P2(30nm)/ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0178】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスDD2についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長519nm、半値幅38nm、CIE色座標(x,y)=(0.27,0.69)、外量子効率EQE 25.5%の緑色発光(駆動電圧2.5V)を得ることができた。
【0179】
デバイス比較例5
発光層に使用される本発明の化合物1を従来技術における化合物P3に変更した以外、デバイス実施例1の製造方法と同様であった。デバイス構造は具体的には以下のとおりである。
【0180】
ITO/HI(10nm)/HT(40nm)/Host:3wt% P3(30nm)/ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0181】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスDD1についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長459nm、半値幅29nm、CIE色座標(x,y)=(0.13,0.12)、外量子効率EQE 12.5%の青色発光(駆動電圧3.4V)を得ることができた。
【0182】
デバイス比較例6
発光層に使用される本発明の化合物1を従来技術における化合物P3に変更した以外、デバイス実施例2の製造方法と同様であった。デバイス構造は具体的には以下のとおりである。
【0183】
ITO/HI(10nm)/HT(40nm)/TD:3wt% P3(30nm)/ET(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(150nm)
【0184】
本実施例で製造された有機エレクトロルミネッセンスデバイスDD2についてデバイス性能を測定した結果は以下のとおりである。直流電圧を印加し、10cd/m2で発光するときの特性を測定した結果、波長459nm、半値幅29nm、CIE色座標(x,y)=(0.13,0.12)、外量子効率EQE 12.5%の青色発光(駆動電圧3.3V)を得ることができた。
上記の各実施例に使用される各有機材料の構造式は以下のとおりである。
【0185】
【0186】
上記の各デバイス実施例で製造される有機エレクトロルミネッセンスデバイスD1~デバイスD16及びデバイスDD1とDD6の具体的な性能データを下記の表2に示す。
【0187】
【0188】
以上の実験データから明らかなように、本発明の化合物では、直線状供与体-Π-供与体が導入されており、直線状供与体-Π-受容体又は直線状受容体-Π-受容体の特殊な構造により、多重共鳴を保持しつつ、フロンティア軌道のエネルギー分裂を通じて有効なレッドシフトを発生させ、これによって、目的の分子に高い発光効率と高い色純度を持たせる。このシリーズの材料は現在のMR-TADF材料よりも光色の大きなレッドシフトができ、橙赤色光、赤色光から近赤外光が得られ、これによって、多重共鳴-熱活性化遅延蛍光の材料系及び発光色の範囲を大幅に拡大させ、応用の将来性が期待できる。
【0189】
本発明は実施例によって説明されたが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、当業者が本発明の構想に基づいて各種の修正や改良を行うことができ、添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を含む。
【0190】
もちろん、上記の実施例は明確に説明するための例示に過ぎず、実施形態を限定するものではない。当業者であれば、上記の説明に基づいて他の形態の変化や変更を行うことができる。ここでは、全ての実施形態を網羅的に挙げることができず、また、不可能なことである。これらから導き出される明らかな変化や変動も本発明の特許範囲に属する。
【符号の説明】
【0191】
1 基板
2 陽極
3 正孔輸送層
4 有機発光層
5 電子輸送層
6 陰極
【国際調査報告】