(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】風力タービンブレードの前縁保護
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20230816BHJP
F03D 13/10 20160101ALI20230816BHJP
【FI】
F03D1/06 A
F03D13/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507402
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2021071845
(87)【国際公開番号】W WO2022029214
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521178493
【氏名又は名称】ブレード ダイナミクス リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521176558
【氏名又は名称】エルエム・ウインド・パワー・アクスイェ・セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー,マニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,マイケル・ドラッチマン
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178BB35
3H178BB75
3H178BB77
3H178CC04
(57)【要約】
【課題】風力タービンブレードの前縁を保護する方法であって、空力効率への影響を低減するとともに材料の使用を最適化しながら、風力タービンブレードの堅牢性、例えばエロージョンに対する堅牢性を向上させる方法を提供する。
【解決手段】根元端から先端まで延在する風力タービンブレードであって、根元領域と、先端、正圧側、負圧側及び前縁と後縁の間に延在する翼弦を含む翼形領域とを備える風力タービンブレードの前縁に、前縁保護エレメントを設ける。前縁保護エレメントは、長手方向に外周側端部と内周側端部との間に延在しているとともに、外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションであって、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる第1のセクションと、第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションであって、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる第2のセクションとを備えており、第1の耐エロージョン性は、第2の耐エロージョン性よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
根元端から先端まで延在する風力タービンブレードであって、当該風力タービンブレードが、根元領域と、先端、正圧側、負圧側及び前縁と後縁の間に延在する翼弦を備える翼形領域とを備えており、
当該風力タービンブレードが、ポリマー材料中に包埋された繊維強化材料を含む複合材料からなるブレードシェルを備えており、
当該風力タービンブレードが、当該風力タービンブレードの前縁に前縁保護エレメントをさらに備えていて、前記前縁保護エレメントが、長手方向に外周側端部と内周側端部との間に延在しているとともに、
外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションであって、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる第1のセクションと、
第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションであって、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる第2のセクションと
を備えており、第1の耐エロージョン性が第2の耐エロージョン性よりも大きく、かつ
前記前縁保護エレメントが、前記ブレードシェルの複合材料とは別個のものである、風力タービンブレード。
【請求項2】
第1のエロージョン保護材料が、ニッケル基合金、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、形状記憶合金、オーステナイト系ニッケル-クロム基合金の1種以上のような、金属材料を含む、請求項1に記載の風力タービンブレード。
【請求項3】
第2のエロージョン保護材料が、ポリウレタン熱硬化性ゴム、熱可塑性ポリウレタン、UHMWPE、PEEK、ポリカーボネート、ABS、又はゴム、例えばニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はポリブタジエンの1種以上のような、ポリマー材料を含む、請求項1又は請求項2に記載の風力タービンブレード。
【請求項4】
前記前縁保護エレメントが、当該風力タービンブレードの前縁のブレードシェルに埋め込まれている、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項5】
前記前縁保護エレメントが、当該風力タービンブレードの前縁のブレードシェルの外表面に取り付けられている、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項6】
前記前縁保護エレメントが、第2のセクション位置から内周側端部まで延在する第3のセクションを備えており、第3のセクションが、第3の耐エロージョン性を有する第3のエロージョン保護材料からなり、第1の耐エロージョン性及び/又は第2の耐エロージョン性が、第3の耐エロージョン性よりも大きい、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項7】
第3のエロージョン保護材料が、
従来の2液型脂肪族ポリウレタン又は2液型エポキシのような、塗料系材料、及び/又は
エポキシ、ポリエステル又はポリウレタンのような、ゲルコート材料、及び/又は
PMMA又はPETのような、熱可塑性材料
の1種以上を含む、請求項6に記載の風力タービンブレード。
【請求項8】
第1のエロージョン保護材料が、ニッケル基合金、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、形状記憶合金、オーステナイト系ニッケル-クロム基合金の1種以上のような、金属材料を含んでおり、かつ
第2のエロージョン保護材料が、ポリウレタン熱硬化性ゴム、熱可塑性ポリウレタン、UHMWPE、PEEK、ポリカーボネート、ABS、又はゴム、例えばニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はポリブタジエンの1種以上のような、ポリマー材料を含んでおり、かつ
第3のエロージョン保護材料が、従来の2液型脂肪族ポリウレタン又は2液型エポキシのような、塗料系材料、及び/又はエポキシ、ポリエステル又はポリウレタンのような、ゲルコート材料、及び/又はPMMA又はPETのような、熱可塑性材料の1種以上を含んでいる、請求項6又は請求項7に記載の風力タービンブレード。
【請求項9】
外周側端部と内周側端部との間で測定される前縁保護エレメントの長さが、当該風力タービンブレードの長手方向長さの30%以上である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項10】
外周側端部と第1のセクション位置との間で測定される第1のセクションの長さが、当該風力タービンブレードのブレード長の1~15%、例えば5~10%、例えば約10%である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項11】
第1のセクション位置と第2のセクション位置との間で測定される第2のセクションの長さが、当該風力タービンブレードのグレード長の15~25%、例えば約20%である、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項12】
第2のセクション位置と内周側端部との間で測定される第3のセクションの長さが、当該風力タービンブレードのブレード長の55~85%、例えば約70%である、請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項13】
第1のセクション又は第2のセクション又は第3のセクションの長手方向長さが、5~24m、例えば約12mである、請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
【請求項14】
風力タービンブレード用の前縁保護エレメントキットであって、当該前縁保護エレメントが、風力タービンブレードに取り付けたときに、長手方向に外周側端部と内周側端部との間に延在し、
当該前縁保護エレメントが、
外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションであって、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる第1のセクションと、
第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションであって、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる第2のセクションと
を備えており、第1の耐エロージョン性が第2の耐エロージョン性よりも大きく、かつ
前記前縁保護エレメントが、ポリマー材料中に包埋された繊維強化材料を含む複合材料とは別個のものである、前縁保護エレメント。
【請求項15】
第1のエロージョン保護材料が、ニッケル基合金、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、形状記憶合金、オーステナイト系ニッケル-クロム基合金の1種以上のような、金属材料を含む、請求項14に記載の前縁保護エレメント。
【請求項16】
第2のエロージョン保護材料が、ポリウレタン熱硬化性ゴム、熱可塑性ポリウレタン、UHMWPE、PEEK、ポリカーボネート、ABS、又はゴム、例えばニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はポリブタジエンの1種以上のような、ポリマー材料を含む、請求項14又は請求項15に記載の前縁保護エレメント。
【請求項17】
風力タービン用ブレードの前縁のブレードシェルに埋め込まれるように構成されている、請求項14乃至請求項16のいずれか1項に記載の前縁保護エレメント。
【請求項18】
風力タービンブレードの前縁のブレードシェルの外表面に取り付けられるように構成されている、請求項14乃至請求項17のいずれか1項に記載の前縁保護エレメント。
【請求項19】
第2のセクション位置から内周側端部まで延在する第3のセクションを備えており、第3のセクションが、第3の耐エロージョン性を有する第3のエロージョン保護材料からなり、第1の耐エロージョン性及び/又は第2の耐エロージョン性が第3の耐耐エロージョン性よりも大きい、請求項14乃至請求項18のいずれか1項に記載の前縁保護エレメント。
【請求項20】
第3のエロージョン保護材料が、
従来の2液型脂肪族ポリウレタン又は2液型エポキシのような、塗料系材料、及び/又は
エポキシ、ポリエステル又はポリウレタンのような、ゲルコート材料、及び/又は
PMMA又はPETのような、熱可塑性材料
の1種以上を含む、請求項19に記載の前縁保護エレメント。
【請求項21】
第1のセクション又は第2のセクション又は第3のセクションの長手方向長さが、8~16m、例えば約12mである、請求項14乃至請求項20のいずれか1項に記載の前縁保護エレメント。
【請求項22】
風力タービンブレードの前縁を保護するための方法であって、
風力タービンブレードを準備するステップであって、前記風力タービンブレードが、根元端から先端まで延在しているとともに、根元領域と、先端、正圧側、負圧側及び前縁と後縁の間に延在する翼弦を備える翼形領域とを備えており、前記風力タービンブレードが、ポリマー材料中に包埋された繊維強化材料を含む複合材料からなるブレードシェルを備える、ステップと、
前記風力タービンブレードの前縁に前縁保護エレメントを準備するステップであって、前記前縁保護エレメントが、長手方向に外周側端部と内周側端部との間に延在しているとともに、
外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションであって、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる第1のセクションと、
第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションであって、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる第2のセクションと
を備えており、第1の耐エロージョン性が第2の耐耐エロージョン性よりも大きく、かつ
前記前縁保護エレメントが、ブレードシェルの複合材料とは別個のものである、ステップと、
前記風力タービンブレードの前縁の少なくとも一部に前記前縁保護エレメントを取り付けるステップと
を含む、方法。
【請求項23】
前記前縁保護エレメントを取り付けるステップが、第1のセクションが前記風力タービンブレードの先端の近傍に配置され、かつ第2のセクションが前記風力タービンブレードの根元の近傍に配置されるように、前記前縁保護エレメントを配置することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記前縁保護エレメントを取り付けるステップが、前記風力タービンブレードの前縁の一部に接着剤、例えば感圧接着剤又は2液性接着剤を塗工することを含む、請求項22又は請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願で開示する技術は、風力タービンブレード及び風力タービンブレードの製造に関する。さらに具体的には、本願で開示する技術は、風力タービンブレードの前縁の保護のように環境影響からの風力タービンブレードの保護の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは、例えば20年以上など幾年にもわたって運転されるように設計する必要がある。年間発電電力量(AEP)を最大限にするには、風力タービンのダウンタイムを最小限に抑え、使用時の所期AEPを最大化することが重要である。運転中、臨界エロージョン挿入速度を超えるブレードの外周側領域の翼形部は、空気中の粒子の衝撃に起因する増大した摩耗に付される。前縁の摩耗及びエロージョンを低減するには、風力タービンブレードに、特に運転中のブレード軌跡のため空気中の粒子が高速でブレードに衝撃を与える前縁で、堅牢な材料が必要とされる。
【0003】
風力タービンブレードは、寿命を延ばすため及び/又は前縁領域のエロージョン損傷を軽減するために修理することができる。しかし、これはダウンタイムを最小限に抑えるという要件に反する。さらに、風力タービン、特に洋上風力タービンの修理は困難で費用がかかる。代替又は補充策として、保護エレメントを風力タービンブレードの前縁、例えばエロージョン感受性領域に取り付けてもよい。しかし、保護エレメントの形状及び位置は、ブレードの抗力、揚力及び騒音に多大な影響を与え、ひいてはAEPにも影響を与えかねない。
【0004】
風力タービンブレードの先端は最も高速で移動するので、先端近くの前縁が最も摩耗を受け易い。そのため、前縁保護エレメントを風力タービンブレードの先端に向かう前縁の一部だけに適用すれば足りることがある。先端は大きな摩耗に付されるので、先端は、内周側の領域よりも耐エロージョン性の大きい材料で保護されることがある。
【0005】
さらに、年間発電電力量(AEP)を増大させるために、風力タービンブレードの運転速度を100m/s以上に増大させることがある。比較のために、従来の風力タービンブレードは通常、先端で90m/s未満の速度で動作する。ただし、風力タービンブレードの速度が速いほど、ブレードは摩耗を受け易くなる。そこで、ブレード速度を増大させる場合には、耐エロージョン性に関する要件も高める必要がある。
【0006】
エロージョン試験では、エロージョンの進展は、一般に、潜伏段階、質量減損段階、及び下地の基材への破過段階として説明される。潜伏期間は、最初の質量減損又は損傷を視覚的に検知できるまでの曝露時間を表す。潜伏期間は、流入粒子の衝撃速度に依存する。破過の時間は、エロージョンが進行して保護層を突き破って下地の基板に達する時点である。
【発明の概要】
【0007】
本願で開示する技術の目的は、従来技術の短所の少なくとも幾つかを解消又は改善する風力タービンブレードの前縁保護エレメント及び前縁部分を提供することである。
【0008】
特に、本発明の目的は、風力タービンブレードの前縁を保護する方法であって、空力効率への影響を低減するとともに材料の使用を最適化しながら、風力タービンブレードの堅牢性、例えばエロージョンに対する堅牢性を向上させる方法を提供することである。前縁を保護するために用いられる材料の最適化は、コストの削減及び/又は製造時間の短縮のために必要とされることがある。風力タービンブレードの堅牢性の向上は、個々の風力タービンブレードの寿命をさらに延長し得る。風力タービンブレードの寿命の延長に加えて、本発明は、先端速度を増加させることができるように前縁保護エレメントの配置を最適化することによって、年間発電電力量を高める。高い年間発電電力量は、前縁のエロージョンをなくすことによって維持し得る。
【0009】
そこで、本発明は、根元端から先端まで延在する風力タービン用ブレードに関する。風力タービンブレードは、根元領域と、先端、正圧側、負圧側及び前縁と後縁の間に延在する翼弦を備える翼形領域とを備える。風力タービンブレードは、風力タービンブレードの前縁に前縁保護エレメント(例えば、セクション化された前縁保護エレメントなど)を備える。前縁保護エレメントは、長手方向に、例えば風力タービンブレードの長手方向に平行な方向に、外周側(インボード)端部と内周側(アウトボード)端部との間に延在する。前縁保護エレメントは、外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションを備える。第1のセクションは、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる。前縁保護エレメントは、第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションを備える。第2のセクションは、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる。第1の耐エロージョン性は、第2の耐エロージョン性よりも大きい。
【0010】
好ましい実施形態では、本願で開示する技術は、根元端から先端まで延在する風力タービンブレードに関する。風力タービンブレードは、根元領域と、先端、正圧側、負圧側及び前縁と後縁の間に延在する翼弦を含む翼形領域とを含む。風力タービンブレードは、ポリマー材料中に包埋された繊維強化材料を含む複合材料からなるブレードシェル(例えば第1のブレードシェル部分及び第2のブレードシェル部分など)を備える。風力タービンブレードは、風力タービンブレードの前縁に前縁保護エレメント(例えば、セクション化された前縁保護エレメントなど)を備える。前縁保護エレメントは、長手方向、例えば風力タービンブレードの長手方向に平行な方向に、外周側端部と内周側端部との間に延在する。前縁保護エレメントは、外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションを備える。第1のセクションは、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる。前縁保護エレメントは、第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションを備える。第2のセクションは、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる。第1の耐エロージョン性は、第2の耐エロージョン性よりも大きい。前縁保護エレメントは、ブレードシェルの複合材料とは別個のものである。
【0011】
別の好ましい実施形態では、本願で開示する技術は、根元端から先端まで延在する風力タービンブレードに関する。風力タービンブレードは、根元領域と、先端、正圧側、負圧側及び前縁と後縁の間に延在する翼弦を含む翼形領域とを含む。風力タービンブレードは、風力タービンブレードの前縁に前縁保護エレメント(例えば、セクション化された前縁保護エレメントなど)を備える。前縁保護エレメントは、長手方向、例えば風力タービンブレードの長手方向に平行な方向に、外周側端部と内周側端部との間に延在する。前縁保護エレメントは、外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションを備える。第1のセクションは、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる。前縁保護エレメントは、第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションを備える。第2のセクションは、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる。第1の耐エロージョン性は、第2の耐エロージョン性よりも大きい。前縁保護エレメントは、第2のセクション位置から内周側端部まで延在する第3のセクションを備える。第3のセクションは、第3の耐エロージョン性を有する第3のエロージョン保護材料からなる。第1の耐エロージョン性及び/又は第2の耐エロージョン性は、第3の耐エロージョン性よりも大きい。
【0012】
堅牢な前縁保護エレメントのため風力タービンブレードの優れた保護がもたらされることが本願で開示する技術の利点である。本願で開示する技術のさらなる利点は、耐エロージョン性の高い材料が、エロージョンの最も顕著なところで使用されることである。エロージョンの少ない領域では、耐エロージョン性の低い材料を使用し得る。したがって、風力タービンブレードの保護に用いられる材料を最適化する途がもたらされる。こうして材料を最適化すると、優れたコスト上の利点をもたらすこともできる。さらに、風力タービンブレードの保護の改善によって、年間発電電力量(AEP)を増大させるために風力タービンブレードの運転速度を高めることができる。
【0013】
本願で開示する技術のさらなる利点は、前縁保護エレメントを複数のセクションに分けて用意することができ、前縁エレメントの輸送が簡単になり、コストが低減されることである。さらに、前縁保護エレメントは、ブレードに導入して改造するのが容易であり、既存の前縁保護エレメントとの交換も容易である。
【0014】
また、風力タービンブレードの前縁を保護する方法も開示されている。本方法は、風力タービンブレードを準備することを含む。風力タービンブレードは、根元端から先端まで延在しており、根元領域と、先端、正圧側、負圧側及び前縁と後縁の間に延在する翼弦を備える翼形領域とを備える。
【0015】
本方法は、風力タービンブレードの前縁に前縁保護エレメントを準備することを含む。前縁保護エレメントは、長手方向に外周側端部と内周側端部との間に延在する。前縁保護エレメントは、外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションを備える。第1のセクションは、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる。
【0016】
前縁保護エレメントは、第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションを備える。第2のセクションは、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる。第1の耐エロージョン性は、第2の耐エロージョン性よりも大きい。
【0017】
好ましい実施形態では、風力タービンブレードは、ポリマー材料中に包埋された繊維強化材料を含む複合材料からなるブレードシェルを備えており、前縁保護エレメントはブレードシェルの複合材料とは別個のものである。
【0018】
別の好ましい実施形態では、前縁保護エレメントは、第2のセクション位置から内周側端部まで延在する第3のセクションをさらに備える。第3のセクションは、第3の耐エロージョン性を有する第3のエロージョン保護材料からなる。第1の耐エロージョン性及び/又は第2の耐エロージョン性は、第3の耐エロージョン性よりも大きい。
【0019】
本方法は、風力タービンブレードの前縁の少なくとも一部に前縁保護エレメントを取り付けることを含んでいてもよい。
【0020】
前縁保護エレメントは、風力タービンブレードの前縁のブレードシェルの外表面に取り付けてもよい。前縁保護エレメントは、風力タービンブレードの前縁のブレードシェルの外表面に取り付けるように構成してもよい。
【0021】
第1のエロージョン保護材料は、ニッケル基合金、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、形状記憶合金、オーステナイト系ニッケル-クロム基合金の1種以上のような、金属材料を含んでいてもよい。形状記憶合金の例として、銅-アルミニウム-ニッケル及びニッケル-チタンが挙げられる。オーステナイト系ニッケル-クロム基合金の例として、インコネル718のようなインコネルが挙げられる。
【0022】
第2のエロージョン保護材料は、ポリウレタン熱硬化性ゴム、熱可塑性ポリウレタン、UHMWPE、PEEK、ポリカーボネート、ABS、又はゴム、例えばニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はポリブタジエンの1種以上のような、ポリマー材料を含むことができる。
【0023】
前縁保護エレメントは、第2のセクション位置から内周側端部まで延在する第3のセクションを備えていてもよい。第3のセクションは、第3の耐エロージョン性を有する第3のエロージョン保護材料から作成できる。第1の耐エロージョン性及び/又は第2の耐エロージョン性は、第3の耐エロージョン性よりも大きくすることができる。
【0024】
第3のエロージョン保護材料は、従来の2液型脂肪族ポリウレタン又は2液型エポキシのような、塗料系材料、及び/又はエポキシ、ポリエステル又はポリウレタンのような、ゲルコート材料、及び/又はPMMA又はPETのような、熱可塑性材料の1種以上を含むことができる。
【0025】
第3のセクションは、風力タービンブレードの外側ゲルコート及び/又は塗料層に対応し得る。この場合、前縁保護エレメントは第1のセクション及び第2のセクションを備えており、これらは風力タービンブレードの前縁に先端から取り付けられる。第3のセクションは、第2のセクションから風力タービンブレードの外表面への移行を滑らかにするために取り付けてもよい。ブレードは前縁保護エレメントセクションを2つしか備えていなくもよく、第3のセクションは、ブレードの主構造によって保護してもよい。ブレードの外表面は、通例、滑らかな外面を有するようにゲルコートから作られる。
【0026】
第1のセクションの材料の性状は、第2のセクションの材料よりもエロージョンからの保護性能に優れる。そこで、回転速度が大きいために大半のエロージョンが起こる風力タービンブレードの先端領域は、エロージョン耐性に優れる第1のエロージョン保護材料で保護し得る。エロージョンの発生が少ない内周側の領域は、第1のエロージョン保護材料よりもエロージョン耐性が小さいが、もっと安価な第2のエロージョン保護材料で保護し得る。
【0027】
第1の耐エロージョン性、第2の耐エロージョン性及び第3の耐エロージョン性は、それらで保護されるように構成されている風力タービンブレードのそれぞれの部分の速度に依存し得る。耐エロージョン性は、標準条件下で、雨滴などの摩耗に暴露されたときに材料に視認し得る損傷が生じるまでの時間として表すことができる。試験は、例えば、前縁保護エレメントの試料での、例えば所定期間のレインエロージョンの模擬試験などによる、いわゆるレインエロージョン試験でよい。試験は、例えばASTM G73-10又はDNVGL-RP-0171に準じて実施し得る。
【0028】
本方法は、第1のセクションが風力タービンブレードの先端の近傍に配置されるように前縁保護エレメントを配置することを含んでいてもよい。本方法は、第2のセクションが風力タービンブレードの根元の近傍に配置されるように前縁保護エレメントを配置することを含んでいてもよい。本方法は、第3のセクションが風力タービンブレードの根元の近傍に配置され、かつ第2のセクションが第1のセクションと第3のセクションとの間に配置されるように、前縁保護エレメントを配置することを含んでいてもよい。
【0029】
本方法は、接着剤(例えば感圧接着剤又は2液性接着剤)を風力タービンブレードの前縁の一部に塗工することを含んでいてもよい。
【0030】
前縁保護エレメントの材料は、テープ又はシートの形態を有し得る。前縁保護エレメントは、取付面と外表面とを備えていてもよい。前縁保護エレメントの取付面と風力タービンブレードの前縁とは、接着剤、例えば感圧接着剤又は2液型接着剤及び/又は熱硬化型接着剤を使用して接合することができる。接着剤は、前縁保護エレメントの取付面及び/又は風力タービンブレードの前縁の一部に塗工することができる。或いは、前縁保護エレメントと風力タービンブレードの前縁とを接着フィルム又はシートで取り付けてもよい。接着剤は、感圧、熱又はUV硬化型接着剤であってもよい。或いは、前縁保護エレメントを風力タービンブレードに溶接してもよい。
【0031】
或いは、前縁保護エレメントは、液体形態の前縁保護エレメントを風力タービンブレード上に例えば刷毛塗り又は塗布などによって塗工することによって取り付けることもできる。液体形態の前縁保護エレメントは塗工後に硬化してもよい。前縁保護エレメントの外表面は、液体形態の別の前縁保護エレメントで被覆してもよい。被覆した前縁保護エレメントは、風力タービンブレード上で硬化させることができる。この場合、追加の接着剤は必要とされない。
【0032】
或いは、前縁保護エレメントは、風力タービンブレードに前縁保護エレメントの粉末堆積物を例えば噴霧などによって施工することによって取り付けることもできる。
【0033】
風力タービンブレードは、ポリマー材料中に包埋された繊維強化材料を含む複合材料でできたブレードシェル(例えば第1のブレードシェル部分及び第2のブレードシェル部分を含む)を含むことができる。前縁保護エレメントは、ブレードシェルの複合材料とは別個のものでよい。
【0034】
前縁保護エレメントは、風力タービンブレードの前縁のブレードシェルに埋め込まれていてもよい。前縁保護エレメントは、風力タービンブレードの前縁のブレードシェルに埋め込まれるように構成し得る。例えば、前縁保護エレメントは、ブレードシェルの繊維強化材料のレイアップ中にブレードモールド内に敷設し得る。前縁保護エレメントを次いで繊維強化材料と共に樹脂で共含浸して硬化させればよい。含浸樹脂としては、エポキシ、ビニルエステル、ポリエステル又はポリウレタン樹脂が挙げられる。共含浸部分は、熱を用いて硬化させることができる。第1のセクションの厚さは0.2~0.5mmとし得る。第2のセクションの厚さは0.5~3.0mmとし得る。第3のセクションの厚さは0.5mm未満とし得る。厚さは、前縁保護エレメントの各セクションの最も厚い部分で測定し得る。
【0035】
或いは、前縁保護エレメントを繊維強化材料と共に樹脂で共含浸して硬化させ、予備硬化した前縁保護エレメントを風力タービンブレードの前縁に取り付けてもよい。
【0036】
前縁保護エレメントの第1のセクションは、繊維強化材料と共に樹脂で共含浸し、硬化させてもよい。前縁保護エレメントの第2のセクションは、繊維強化材料と共に樹脂で共含浸し、硬化させてもよい。前縁保護エレメントの第3のセクションは、繊維強化材料と共に樹脂で共含浸し、硬化させてもよい。
【0037】
第1のセクション及び第2のセクションは、風力タービンブレードの前縁に取り付けることができ、例えば、第1のセクションが第2のセクションよりも外周側に、例えば第2のセクションが第1のセクションに当接して又は第1のセクションの延長として取り付けてもよい。第2のセクション及び第3のセクションは、風力タービンブレードの前縁に取り付けることができ、例えば第2のセクションが第3のセクションよりも外周側に、例えば第3のセクションが第2のセクションに当接して又は第2のセクションの延長として取り付けてもよい。
【0038】
第1のセクションと第2のセクションとの間の接合部は段として形成してもよいし、面一接続としてもよい。第2のセクションと第3のセクションとの間の接合部は段として形成してもよいし、面一接続としてもよい。
【0039】
外周側端部と内周側端部との間で測定される前縁保護エレメントの長さは、風力タービンブレードの長手方向長さの30%以上とすることができる。前縁保護エレメントは、風力タービンブレードの長さの15~30%、例えば風力タービンブレードの長さの20~25%の長さを有していてもよい。長さは10~100m、例えば15~70m、例えば20~50mとし得る。前縁保護エレメントの長さは、風力タービンブレードの前縁の長さよりも小さくてもよい。或いは、前縁保護エレメントの長さは、風力タービンブレードの前縁の長さと同じであってもよい。
【0040】
第1のセクションの長さは、例えば外周側端部と第1のセクション位置との間で測定され、風力タービンブレードのブレード長の5~35%、例えばブレード長の10~30%、例えば15~25%とし得る。
【0041】
第1のセクションの長さは、例えば外周側端部と第1のセクション位置との間で測定され、ブレード長の1~15%、例えばブレード長の5~10%、例えばブレード長の約10%としてもよい。第1のセクションの外周側端部から第1のセクション位置までの長手方向の範囲は、ブレード長の1~15%、例えばブレード長の5~15%、例えばブレード長の約10%としてもよい。
【0042】
第2のセクションの長さは、例えば第1のセクション位置と第2のセクション位置との間で測定され、風力タービンブレードのブレード長の5~35%、例えばブレード長の10~30%、例えば15~25%とし得る。
【0043】
第2のセクションの長さは、例えば第1のセクション位置と第2のセクション位置との間で測定され、ブレード長の15~25%、例えばブレード長の約20%としてもよい。第2のセクションの第1のセクション位置から第2のセクション位置までの長手方向の範囲はブレード長の15~25%、例えばブレード長の約20%としてもよい。
【0044】
第3のセクションの長さは、例えば第2のセクション位置と内周側端部との間で測定され、風力タービンブレードのブレード長の20~75%、例えばブレード長の30~70%、例えば40~65%とし得る。
【0045】
第3のセクションの長さは、例えば第2のセクション位置と内周側端部との間で測定され、ブレード長の55~85%、例えばブレード長の約70%としてもよい。第3のセクションは、長手方向に第2のセクション位置から内周側端部までブレード長の55~85%、例えばブレード長の約70%延在し得る。
【0046】
第1のセクションの長さをブレード長の10%とし、第2のセクションの長さをブレードの長さの20%とし、第3のセクションの長さをブレードの長さの70%としてもよい。
【0047】
前縁保護エレメントの厚さは0.1~3.0mmとし得る。前縁保護エレメントの厚さは1.5mm未満、例えば0.2~0.5mm、例えば0.5mm未満、例えば5~1.5mmとすることができる。厚さは、前縁保護エレメントの最も厚い部分で測定することができる。
【0048】
第1のセクション又は第2のセクション又は第3のセクションの長手方向長さは、1~24m、例えば10~12m、例えば約12mとすることができる。これらのセクションは、長さが輸送コンテナの内部長さに対応するように製造してもよい。
【0049】
また、風力タービンブレード用の前縁保護エレメントキットについても開示する。前縁保護エレメントは、風力タービンブレードに取り付けたときに、長手方向に外周側端部と内周側端部との間に延在する。
【0050】
前縁保護エレメントは、外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションを備える。第1のセクションは、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる。
【0051】
前縁保護エレメントは、第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションを備える。第2のセクションは、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる。
【0052】
第1の耐エロージョン性は第2の耐エロージョン性よりも大きい。外周側端部の少なくとも一部及び/又は内周側端部の一部は、面取り又はテーパ付けしてもよい。面取り端部は、前縁保護エレメントからブレードシェル部分への移行を滑らかにする。
【0053】
好ましい実施形態では、本願で開示する技術は、風力タービンブレード用の前縁保護エレメントキットに関する。前縁保護エレメントは、風力タービンブレードに取り付けたときに、長手方向に外周側端部と内周側端部との間に延在する。
【0054】
前縁保護エレメントは、外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションを備える。第1のセクションは、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる。
【0055】
前縁保護エレメントは、第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションを備える。第2のセクションは、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる。第1の耐エロージョン性は、第2の耐エロージョン性よりも大きい。
【0056】
前縁保護エレメントは、第2のセクション位置から内周側端部まで延在する第3のセクションを備える。第3のセクションは、第3の耐エロージョン性を有する第3のエロージョン保護材料からなる。第1の耐エロージョン性及び/又は第2の耐エロージョン性が第3の耐エロージョン性よりも大きい。
【0057】
或いは、前縁保護エレメントは、第1の前縁保護エレメント及び第2の前縁保護エレメントを含めて、複数の別個の前縁保護エレメントを備えていてもよい。複数の前縁保護エレメントは、風力タービンブレードの別々の長手方向部分に沿って延在し得る。複数の前縁保護エレメントは互いに当接していてもよい。
【0058】
ある態様に関して記載した実施形態又は構成要素は、他の任意の態様又は実施形態で用いることができると想定される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照してさらに詳しく説明する。本願を通して同様の符号は同様の構成要素を表す。従って、各図面の説明において、同様の構成要素については詳細に説明しないこともある。図面は、本発明の一つの実施法を示すものであり、特許請求の範囲の技術的範囲に属する他の可能な実施形態を限定するものではない。さらに、図に示す実施形態は、記載したすべての態様又は利点を有するとは限らない。ある特定の実施形態に関して記載する態様又は利点は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、その旨図示されていなくても或いは明示されていなくても、他の実施形態で実施することができる。
【
図2】例示的な風力タービンブレードを示す概略図。
【
図3】例示的な風力タービンブレードの断面図を示す概略図。
【
図4】例示的な風力タービンブレードの断面図を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下の図面の説明では、同じ符号が同じ構成要素を示し、すべての図面に関して説明しないこともある。
【0061】
図1は、タワー4と、ナセル6と、実質的に水平なローターシャフトを有するロータとを備えるいわゆる「デンマーク型」の従来の最新アップウィンド式風力タービン2を示す。ロータは、ハブ8と、ハブ8から半径方向に延在する3枚のブレード10とを含んでおり、各ブレードはハブに最も近いブレード根元16と、ハブ8から最も遠いブレード先端14とを有する。
【0062】
図2は、例示的な風力タービンブレード10の概略図を示す。風力タービンブレード10は、根元端17と先端15とを有する従来の風力タービンブレードの形状を有しており、ハブに最も近い根元領域30と、ハブから最も離れた輪郭又は翼形領域34と、根元領域30と翼形領域34との間の遷移領域32とを備える。ブレード10は、ブレードをハブに装着したときに、ブレード10の回転方向に面する前縁18と、前縁18と逆方向に向いた後縁20とを備える。
【0063】
翼形領域34(輪郭領域とも呼ばれる)は、特定の風速及び回転速度域について最小抗力で最大揚力を生成することに関して理想的又はほぼ理想的なブレード形状を有しているが、根元領域30は構造的な考慮により実質的に円形又は楕円形の断面を有しており、例えばハブにブレード10を取り付けるのが簡単かつ安全になる。なお、根元領域30の直径(又は翼弦)は、根元領域30全体に沿って一定であってもよい。遷移領域32は、根元領域30の円形又は楕円形から翼形領域34の翼形輪郭に徐々に変化する遷移輪郭を有する。遷移領域32の翼弦長は、通例、ハブからの距離rの増加に伴って増加する。翼形領域34は、ブレード10の前縁18と後縁20との間に延在する翼弦を有する翼形輪郭を有する。翼弦の幅は、ハブからの距離rの増加に伴って減少する。
【0064】
ブレード10のショルダ40は、ブレード10が最大の翼弦長を有する位置として定義される。ショルダ40は、通例、遷移領域32と翼形領域34との境界に設けられる。
【0065】
なお、ブレードの異なるセクションの翼弦は通常は同一平面上に存在しない。ブレードはねじれ及び/又は湾曲し(すなわち、予め曲げられ)ており、翼弦面はそれに応じたねじれ及び/又は湾曲した経路を与えるからであり、ハブからの半径に依存するブレードの局所速度を補償するために大抵当てはまる。
【0066】
風力タービンブレード10は、典型的には繊維強化ポリマーでできた第1のブレードシェル部分24と第2のブレードシェル部分26との2つのブレードシェル部分又はハーフシェルを含むブレードシェルを備える。風力タービンブレード10は、第3のシェル部分及び/又は第4のシェル部分などの追加のシェル部分を備えていてもよい。第1のブレードシェル部分24は、通例、正圧側又は風上側ブレードシェル部分である。第2のブレードシェル部分26は、通例、負圧側又は風下側ブレードシェル部分である。第1のブレードシェル部分24と第2のブレードシェル部分26は、一緒に鋳造又は溶接されるか、或いはブレード10の後縁20及び前縁18に沿って延在するボンドライン又は接着剤継手28に沿って機械的に又は接着剤などの接着剤によって化学的に固定される。通例、ブレードシェル部分24,26の根元端は、半円形又は半楕円形の断面外形を有する。
【0067】
風力タービンブレード10は、風力タービンブレード10の前縁18に前縁保護エレメント50を備える。前縁保護エレメントは、長手方向に外周側端部52と内周側端部54との間に延在し、横断方向に第1の横端部56と第2の横端部58との間に延在する。第1の横端部56及び第2の横端部58は、風力タービンブレード10の長手方向と略平行に延在し得る。前縁保護エレメント50は取付面(図示せず)及び外表面60を有する。
【0068】
前縁保護エレメント50の長手方向は、風力タービンブレード10の長手方向と略平行であってもよい。前縁保護エレメント50は、長さL1、すなわち外周側端部52と内周側端部54との間の長さを有し得る。長さL1は、図に示す風力タービンブレード10の前縁18の長さよりも小さくてもよい。長さL1は、風力タービンブレード10の前縁18の長さの100%であってもよい。前縁保護エレメントの長さL1は、風力タービンブレード10の長さの30%以上とし得る。
【0069】
前縁保護エレメント50は、外周側端部52から第1のセクション位置p1まで延在する第1のセクション70を備える。第1のセクション70は、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料で作られる。第1のエロージョン保護材料は、ニッケル基合金、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、形状記憶合金、オーステナイト系ニッケル-クロム基合金(例えばインコネル)の1種以上のような、金属材料を含む。形状記憶合金の例として、銅-アルミニウム-ニッケル及びニッケル-チタンが挙げられる。第1のセクション70は、根元端17から見て風力タービンブレード10の翼長L2の70~100%の範囲内に配置し得る。第1のセクション70の長さL3は、ブレード長さL2の5~35%であってもよい。
【0070】
前縁保護エレメント50は、第1のセクション位置p1から第2のセクション位置p2まで延在する第2のセクション72を備える。第2のセクション72は、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料で作られる。第2のエロージョン保護材料は、ポリウレタン熱硬化性ゴム、熱可塑性ポリウレタン、UHMWPE、PEEK、ポリカーボネート、ABS、又はゴム、例えばニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はポリブタジエンの1種以上のような、ポリマー材料を含む。第1の耐エロージョン性は第2の耐エロージョン性よりも大きい。これは、第1のエロージョン保護材料が第2のエロージョン保護材料よりも強く、雨滴の衝撃などの環境要因に対する耐性が大きいことを意味する。そこで、損傷が認められるまで及び損傷が下地層に達するまでに、第2のエロージョン保護材料よりも第1のエロージョン保護材料で時間がかかる場合がある。第2のセクション72は、第1のセクション70に当接してもよい。第2のセクション72の長さL4は、ブレードの長さL2の5~35%であってもよい。
【0071】
前縁保護エレメント50は、第2のセクション位置p2から内周側端部54まで延在する第3のセクション74を備える。第3のセクション74は、第3の耐エロージョン性を有する第3のエロージョン保護材料で作られる。第3のエロージョン保護材料は、ゲルコート材料、塗料系材料又は熱可塑性材料を含むことができる。或いは、第3のセクションは、風力タービンブレードの外側ゲルコート層に対応する。この場合、前縁保護エレメント50は第1のセクション70及び第2のセクション72を備えており、これらは風力タービンブレードの前縁に先端から取り付けられる。第3のセクション74の長さL5は、ブレードの長さL2の20~75%であってもよい。
【0072】
第1のセクション70、第2のセクション72及び第3のセクション74の各々は、5~24m、例えば約12mの長さを有し得る。
【0073】
前縁保護エレメント50の材料は、テープ、シート、液体又は粉末堆積物の形態を有し得る。前縁保護エレメント50の材料は、ブレードシェル部分24,26の複合材料とは別個のものである。
【0074】
図3は、例示的な風力タービンブレード、例えば
図1~
図2の風力タービンブレード10を示す概略図である。風力タービンブレード10は、前縁18、後縁20、正圧側24及び負圧側26を有する。風力タービンブレード10は、前縁18と後縁20との間の翼弦線38を有する。風力タービンブレード10は、前縁せん断ウェブ及び後縁せん断ウェブのようなせん断ウェブ42を備える。せん断ウェブ42は、代替的に、後縁スパー側面及び前縁スパー側面のようなスパー側面を有するスパーボックスであってもよい。ブレードシェル部分24,26は、繊維材料、例えばガラス繊維、炭素繊維又はそれらの組合せで強化し得る。
【0075】
風力タービンブレード10は、
図2の前縁保護エレメント50のような前縁保護エレメント50を設けることによって保護し得る。前縁保護エレメント50は、前縁保護エレメント50の取付面62が風力タービンブレード10の前縁18に面するように前縁保護エレメント50を配置することによって、風力タービンブレード10の前縁18に取り付けることができる。前縁保護エレメント50は、接着剤、例えば感圧接着剤又は2液型接着剤及び/又は熱硬化型接着剤を塗工することによって取り付けてもよい。接着剤は、前縁保護エレメント50の取付面62又は風力タービンブレード10の前縁18に塗工し得る。或いは、前縁保護エレメント50は、風力タービンブレード10に機械的に固定及び/又は溶接してもよい。前縁保護エレメント50が液体の形態である場合には、液体を風力タービンブレード10に刷毛塗りしてもよい。前縁保護エレメントが粉末堆積物である場合、粉末を風力タービンブレード10に噴霧してもよい。
【0076】
前縁保護エレメント50は、前縁保護エレメント50を生産現場から出てくる風力タービンブレード又は現場に既設された風力タービンブレードに取り付けることによって、風力タービンブレード完成品の前縁の保護に使用することができる。さらに、前縁保護エレメント50は、既存の前縁保護エレメントの補修を要する前縁部分に取り付けてもよい。或いは、前縁保護エレメント50は、風力タービンブレード10の生産におけるレイアップ時に風力タービンブレード10の前縁18のブレードシェルに埋め込んでもよい。
【0077】
前縁保護エレメント50は、例えば最も肉厚の点で、厚さD1を有する。第1の横端部56及び第2の横端部58は、翼形への移行が最小限になるように面取り又はテーパ付けしてもよい。例えば、取付面62と外表面60との間の前縁保護エレメント50の厚さD1は、端部56,58に向かうにつれて減少する。
【0078】
厚さD1は、第1のセクション、第2のセクション及び第3のセクションで同じであってもよい。第3のセクションの厚さD1は、第1のセクション及び第2のセクションの厚さよりも小さくすることができる。
【0079】
図4は、
図1~
図3の風力タービンブレードのような、例示的な風力タービンブレード10の断面図を示す概略図である。前縁保護エレメント50は、繊維強化材料66と共に樹脂で共含浸し、硬化して、いわゆるクリップオンを形成する。クリップオンは、風力タービンブレード10の前縁18に取り付けられる。前縁保護エレメント50及び風力タービンブレード10は、風力タービンブレード10に取り付けたときに前縁保護エレメント50を固定するように構成された締結手段64を備えていてもよい。
【0080】
前縁保護エレメントの第1のセクション、第2のセクション及び/又は第3のセクションの各々は、繊維強化材料と共に樹脂で共含浸し、硬化させて、別個の前縁保護エレメント又はセクション化された前縁保護エレメントを形成することができる。そこで、
図4の前縁保護エレメント50は、前縁保護エレメントの第1のセクション、第2のセクション又は第3のセクションを表すことができる。
【0081】
図5は、風力タービンブレードを保護するための、例えば風力タービンブレードの前縁を保護するための、例示的な方法200のブロック図である。
【0082】
方法200は、
図1~
図3の風力タービンブレード10のような風力タービンブレード202を準備するステップを含む。方法200は、
図2~
図3の前縁保護エレメント50のような前縁保護エレメント204を準備するステップを含む。
【0083】
方法200は、風力タービンブレードの前縁の少なくとも一部に前縁保護エレメントを取り付けるステップを含む。前縁保護エレメントが液体の形態である場合には、風力タービンブレードに液体を刷毛塗りすることにより、前縁保護エレメントを取り付けてもよい。前縁保護エレメントが粉末堆積物である場合には、風力タービンブレードに粉末を噴霧することにより、前縁保護エレメントを取り付けてもよい。
【0084】
前縁保護エレメントを取り付けるステップ206は、第1のセクションが風力タービンブレードの先端の近傍に配置されるように前縁保護エレメントを配置すること208aを含んでいてもよい。前縁保護エレメントを取り付けるステップ206は、第2のセクションが風力タービンブレードの根元の近傍に配置されるように前縁保護エレメントを配置すること208bを含んでいてもよい。前縁保護エレメントを取り付けるステップ206は、風力タービンブレードの根元の近傍に第3のセクションが配置され、第2のセクションが第3のセクションと第1のセクションの間に配置されるように前縁保護エレメントを配置すること208cを含んでいてもよい。
【0085】
方法200は、風力タービンブレードの前縁の一部に、接着剤(例えば感圧接着剤又は2液型接着剤)を塗工するステップ210を含んでいてもよい。或いは、接着剤は、取り付け時に風力タービンブレードに面する取付面に塗工してもよい。
【0086】
本願で開示する技術の典型的な実施形態を、以下に挙げる。
[実施態様1]
根元端から先端まで延在する風力タービンブレードであって、風力タービンブレードが、根元領域と、先端、正圧側、負圧側及び前縁と後縁の間に延在する翼弦を備える翼形領域とを備えており、
風力タービンブレードが、風力タービンブレードの前縁に前縁保護エレメントを備えており、前縁保護エレメントが、長手方向に外周側端部と内周側端部との間に延在しているとともに、
外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションであって、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる第1のセクションと、
第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションであって、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる第2のセクションと
を備えており、第1の耐エロージョン性が第2の耐エロージョン性よりも大きい、風力タービンブレード。
[実施態様2]
第1のエロージョン保護材料が、ニッケル基合金、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、形状記憶合金、オーステナイト系ニッケル-クロム基合金の1種以上のような、金属材料を含む、実施態様1に記載の風力タービンブレード。
[実施態様3]
第2のエロージョン保護材料が、ポリウレタン熱硬化性ゴム、熱可塑性ポリウレタン、UHMWPE、PEEK、ポリカーボネート、ABS、又はゴム、例えばニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はポリブタジエンの1種以上のような、ポリマー材料を含む、実施態様1又は実施態様2に記載の風力タービンブレード。
[実施態様4]
ポリマー材料中に包埋された繊維強化材料を含む複合材料からなるブレードシェルを備えており、前縁保護エレメントがブレードシェルの複合材料とは別個のものである、実施態様1乃至実施態様3のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
[実施態様5]
前縁保護エレメントが、風力タービンブレードの前縁のブレードシェルに埋め込まれている、実施態様1乃至実施態様4のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
[実施態様6]
前縁保護エレメントが、風力タービンブレードの前縁のブレードシェルの外表面に取り付けられている、実施態様1乃至実施態様5のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
[実施態様7]
前縁保護エレメントが、第2のセクション位置から内周側端部まで延在する第3のセクションを備えており、第3のセクションが、第3の耐エロージョン性を有する第3のエロージョン保護材料からなり、第1の耐エロージョン性及び/又は第2の耐エロージョン性が、第3の耐エロージョン性よりも大きい、実施態様1乃至実施態様6のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
[実施態様8]
第3のエロージョン保護材料が、
従来の2液型脂肪族ポリウレタン又は2液型エポキシのような、塗料系材料、及び/又は
エポキシ、ポリエステル又はポリウレタンのような、ゲルコート材料、及び/又は
PMMA又はPETのような、熱可塑性材料
の1種以上を含む、実施態様7に記載の風力タービンブレード。
[実施態様9]
外周側端部と内周側端部との間で測定される前縁保護エレメントの長さが、風力タービンブレードの長手方向長さの30%以上である、実施態様1乃至実施態様8のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
[実施態様10]
外周側端部と第1のセクション位置との間で測定される第1のセクションの長さが、風力タービンブレードのブレード長の5~35%、例えばブレード長の10~30%、例えば15~25%である、実施態様1乃至実施態様9のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
[実施態様11]
第1のセクション位置と第2のセクション位置との間で測定される第2のセクションの長さが、風力タービンブレードのブレード長の5~35%、例えばブレード長の10~30%、例えば15~25%である、実施態様1乃至実施態様10のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
[実施態様12]
第2のセクション位置と内周側端部との間で測定される第3のセクションの長さは、風力タービンブレードのブレード長の20~75%、例えばブレード長の30~70%、例えば40~65%である、実施態様7又は実施態様8に記載の風力タービンブレード。
[実施態様13]
第1のセクション又は第2のセクション又は第3のセクションの長手方向長さが、5~24m、例えば約12mである、実施態様1乃至実施態様12のいずれか1項に記載の風力タービンブレード。
[実施態様14]
風力タービンブレード用の前縁保護エレメントキットであって、前縁保護エレメントが、風力タービンブレードに取り付けたときに、長手方向に外周側端部と内周側端部との間に延在し、
前縁保護エレメントが、
外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションであって、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる第1のセクションと、
第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションであって、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる第2のセクションと
を備えており、第1の耐エロージョン性が第2の耐エロージョン性よりも大きい、前縁保護エレメント。
[実施態様15]
第1のエロージョン保護材料が、ニッケル基合金、チタン、ステンレス鋼、アルミニウム、形状記憶合金、オーステナイト系ニッケル-クロム基合金の1種以上のような、金属材料を含む、実施態様14に記載の前縁保護エレメント。
[実施態様16]
第2のエロージョン保護材料が、ポリウレタン熱硬化性ゴム、熱可塑性ポリウレタン、UHMWPE、PEEK、ポリカーボネート、ABS、又はゴム、例えばニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)又はポリブタジエンの1種以上のような、ポリマー材料を含む、実施態様14又は実施態様15に記載の前縁保護エレメント。
[実施態様17]
風力タービンブレードの前縁のブレードシェルに埋め込まれるように構成されている、実施態様14乃至実施態様16のいずれか1項に記載の前縁保護エレメント。
[実施態様18]
風力タービンブレードの前縁のブレードシェルの外表面に取り付けられるように構成されている、実施態様14乃至実施態様17のいずれか1項に記載の前縁保護エレメント。
[実施態様19]
第2のセクション位置から内周側端部まで延在する第3のセクションを備えており、第3のセクションが、第3の耐エロージョン性を有する第3のエロージョン保護材料からなり、第1の耐エロージョン性及び/又は第2の耐食性が第3の耐耐エロージョン性よりも大きい、実施態様14乃至実施態様18のいずれか1項に記載の前縁保護エレメント。
[実施態様20]
第3のエロージョン保護材料が、
従来の2液型脂肪族ポリウレタン又は2液型エポキシのような、塗料系材料、及び/又は
エポキシ、ポリエステル又はポリウレタンのような、ゲルコート材料、及び/又は
PMMA又はPETのような、熱可塑性材料
の1種以上を含む、実施態様19に記載の前縁保護エレメント。
[実施態様21]
第1のセクション又は第2のセクション又は第3のセクションの長手方向長さが8~16m、例えば約12mである、実施態様14乃至実施態様20のいずれか1項に記載の前縁保護エレメント。
[実施態様22]
風力タービンブレードの前縁を保護するための方法であって、
風力タービンブレードを準備するステップであって、風力タービンブレードが、根元端から先端まで延在しているとともに、根元領域と、先端、正圧側、負圧側及び前縁と後縁の間に延在する翼弦を含む翼形領域とを備える、ステップと、
風力タービンブレードの前縁に前縁保護エレメントを準備するステップであって、前縁保護エレメントが、長手方向に外周側端部と内周側端部との間に延在しているとともに、
外周側端部から第1のセクション位置まで延在する第1のセクションであって、第1の耐エロージョン性を有する第1のエロージョン保護材料からなる第1のセクションと、
第1のセクション位置から第2のセクション位置まで延在する第2のセクションであって、第2の耐エロージョン性を有する第2のエロージョン保護材料からなる第2のセクションと
を備えており、第1の耐エロージョン性が第2の耐耐エロージョン性よりも大きい、ステップと、
風力タービンブレードの前縁の少なくとも一部に前縁保護エレメントを取り付けるステップと
を含む、方法。
[実施態様23]
前縁保護エレメントを取り付けるステップが、第1のセクションが風力タービンブレードの先端の近傍に配置され、かつ第2のセクションが風力タービンブレードの根元の近傍に配置されるように前縁保護エレメントを配置することを含む、実施態様22に記載の方法。
[実施態様24]
前縁保護エレメントを取り付けるステップが、風力タービンブレードの前縁の一部に接着剤、例えば感圧接着剤又は2液性接着剤を塗工することを含む、実施態様22又は実施態様23に記載の方法。
【符号の説明】
【0087】
2 風力タービン
4 タワー
6 ナセル
8 ハブ
10 ブレード
12 ブレード部分
14 ブレード先端
15 先端
16 ブレード根元
17 根元端
18 前縁
20 後縁
24 第1のブレードシェル部分(正圧側)
26 第2のブレードシェル部分(負圧側)
28 ボンドライン/接着剤継手/固定継手/溶接継手/鋳型分割ライン
30 根元領域
32 移行領域
34 翼形領域
40 ショルダ
42 せん断ウェブ又はスパー側
44 エロージョン感受性領域
50 前縁保護エレメント
52 外周側端部
54 内周側端部
56 第1の横端部
58 第2の横端部
60 外表面
62 取付面
64 固定手段
66 繊維強化材料
70 第1のセクション
72 第2のセクション
74 第3のセクション
L 縦軸
L1 前縁保護エレメントの長さ
L2 ブレードの長さ
L3 第1のセクションの長さ
L4 第2のセクションの長さ
L5 第3のセクションの長さ
p1 第1のセクション位置
p2 第2のセクション位置
D1 厚さ
200 方法
202 風力タービンブレードの準備
204 前縁保護エレメントの準備
206 前縁保護エレメントの取り付け
208a 前縁保護エレメントの配置
208b 前縁保護エレメントの配置
208c 前縁保護エレメントの配置
210 接着剤の塗工
【国際調査報告】