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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ペプチドベースのリンカー
(51)【国際特許分類】
   C07K 4/00 20060101AFI20230816BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20230816BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230816BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230816BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230816BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C07K4/00
A61K47/65
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61P35/00
A61K47/68
A61K47/64
A61K38/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507407
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 GB2021052001
(87)【国際公開番号】W WO2022029420
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】63/060,344
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジェマ マッド
(72)【発明者】
【氏名】ケビン マクドネル
(72)【発明者】
【氏名】ポール ベスウィック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF70
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA23
4C084BA31
4C084NA13
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB01
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA12
4H045BA72
4H045EA60
4H045FA33
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は、2つ又は3つの塩基性、酸性、又は疎水性天然又は非天然アミノ酸を含む新規リンカーに関する。本発明はまた、該リンカーを含む薬物コンジュゲート、該薬物コンジュゲートを含む医薬組成物、及び癌を予防、抑制、又は治療する際の該薬物コンジュゲートの使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-P1-P2-P3-部分を含むリンカーであって:
P1が塩基性非天然アミノ酸又はその誘導体を表し;
P2が疎水性アミノ酸又は疎水性非天然アミノ酸を表し;かつ
P3が存在しないか、又はP1がCitを表し、かつP2がValを表す場合、P3が酸性非天然アミノ酸を表さなければならないように、酸性アミノ酸もしくは酸性非天然アミノ酸を表すかのいずれかである、
前記リンカー。
【請求項2】
P1が、2-アミノ-4-グアニジノブタン酸(Agb); 2-アミノ-4-(3-メチルグアニジノ)ブタン酸(Agb(Me)); 2,4-ジアミノ酪酸(Dab); 2,3-ジアミノプロパン酸(Dap); 2-アミノ-3-グアニジノプロパン酸(Dap(CNNH2));及びシトルリン(Cit):から選択される塩基性非天然アミノ酸、例えば、シトルリン(Cit)を表す、請求項1記載のリンカー。
【請求項3】
P2が、Ala、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、及びValから選択される疎水性アミノ酸、又はシクロブチル、ジフェニルアラニン(Dpa)、1-ナフチルアラニン(1Nal)、2-ナフチルアラニン(2Nal)、及びメチルトリプトファン(Trp(Me))から選択される疎水性非天然アミノ酸、例えば、Valから選択される疎水性アミノ酸、又はシクロブチル、Dpa、1Nal、及び2Nalから選択される非天然アミノ酸、例えば、1-ナフチルアラニン(1Nal)を表す、請求項1又は請求項2記載のリンカー。
【請求項4】
P3が、Asp及びGluから選択される酸性アミノ酸、例えば、Gluから選択される酸性アミノ酸を表す、請求項1~3のいずれか一項記載のリンカー。
【請求項5】
前記-P1-P2-P3-部分が以下のものを表す、請求項1~4のいずれか一項記載のリンカー:
【表1】
【請求項6】
標的に結合する結合剤と細胞毒性剤とを含み、ここで、該結合剤が、請求項1~5のいずれか一項記載のリンカーを介して、該細胞毒性剤に接続されている、薬物コンジュゲート。
【請求項7】
前記結合剤が、ペプチド、例えば、抗体又は二環式ペプチド、特に、二環式ペプチドである、請求項6記載の薬物コンジュゲート。
【請求項8】
前記細胞毒性剤がDM1又はMMAE、例えば、MMAEである、請求項6又は請求項7記載の薬物コンジュゲート。
【請求項9】
前記リンカーの非存在下のコンジュゲートと比較したとき、プロテアーゼ抵抗性である、例えば、カテプシンB切断に抵抗性である、請求項6~8のいずれか一項記載の薬物コンジュゲート。
【請求項10】
前記リンカーの非存在下のコンジュゲートと比較したとき、血漿安定性である、請求項6~9のいずれか一項記載の薬物コンジュゲート。
【請求項11】
BCY10989、BCY10980、BCY10982、BCY10983、BCY10984、BCY10981、BCY10985、BCY10986、BCY10987、及びBCY10988、例えば、BCY10984:から選択される、請求項6~10のいずれか一項記載の薬物コンジュゲート。
【請求項12】
請求項6~11のいずれか一項記載の薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物。
【請求項13】
癌を予防、抑制、又は治療する際に使用するための、請求項6~11のいずれか一項記載の薬物コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、2つ又は3つの塩基性、酸性、又は疎水性天然又は非天然アミノ酸を含む新規リンカーに関する。本発明はまた、該リンカーを含む薬物コンジュゲート、該薬物コンジュゲートを含む医薬組成物、及び癌を予防、抑制、又は治療する際の該薬物コンジュゲートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
結合剤(すなわち、ペプチド、抗体など)と細胞毒性剤のコンジュゲートを含有する癌治療複合体が何年にもわたって評価されている。この概念は、結合剤が、標的、通常、癌細胞上のエピトープに結合するように構成されているということを含み、細胞毒性剤の存在は、癌細胞を殺傷するためのペイロードとして作用することが意図されている。しかしながら、これらの薬物コンジュゲートの合成は、通常、結合剤と細胞毒性剤の間のリンカーの組み込みを伴い、対象への投与後、このリンカーは、すなわち、リンカー配列を認識する他のプロテアーゼによる早過ぎる切断を受けることが多い。そのような切断は、癌標的に結合する前に細胞毒性剤の遊離をもたらし、望ましくない副作用のリスクを増大させる。
【0003】
この問題は、いくつかの研究グループによって対処されるように試みられている。例えば、WO 98/19705号では、酵素切断部位を提供する2以上のアミノ酸部分を含有する分岐状ペプチドリンカーの存在が記載されている。US 2017/360952号では、細胞結合剤と細胞毒性剤の間にアジド含有非天然アミノ酸を有するリンカーが記載されている。US 2016/046721号では、Val-Citリンカーを含む抗体-薬物コンジュゲートが記載されている。US 2015/087810号では、1~20個のアミノ酸を含有するリンカーを有する抗体と毒素のコンジュゲートが記載されている。
【0004】
したがって、標的に結合する部位又はその付近での細胞毒性剤の選択的切断を可能にし、結果として得られるコンジュゲートの安定性の増大をもたらす別のリンカーを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
(発明の概要)
本発明の第一の態様によれば、-P1-P2-P3-部分を含むリンカーであって:
P1が塩基性非天然アミノ酸又はその誘導体を表し;
P2が疎水性アミノ酸又は疎水性非天然アミノ酸を表し;かつ
P3が存在しないか、又はP1がCitを表し、かつP2がValを表す場合、P3が酸性非天然アミノ酸を表さなければならないように、酸性アミノ酸もしくは酸性非天然アミノ酸を表すかのいずれかである、
リンカーが提供される。
【0006】
本発明のさらなる態様によれば、標的に結合する結合剤と細胞毒性剤とを含み、ここで、該結合剤が、本明細書に記載されるリンカーを介して、該細胞毒性剤に接続されている、薬物コンジュゲートが提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載される薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、癌を予防、抑制、又は治療する際に使用するための、本明細書に記載される薬物コンジュゲートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
(図面の簡単な説明)
図1図1:マウス血漿中のBCY7761の薬物動態解析。
図2図2:マウス血漿中のBCY10980の薬物動態解析。
図3図3:マウス血漿中のBCY10981の薬物動態解析。
図4図4:マウス血漿中のBCY10989の薬物動態解析。
図5図5:マウス血漿中のBCY10984の薬物動態解析。
図6図6:マウス血漿中のBCY10985の薬物動態解析。
図7図7:ラット血漿中のBCY10984の薬物動態解析。
図8図8:ラット血漿中のBCY7761の薬物動態解析。
図9図9:BCY10984の腫瘍低下効力。
図10図10:BCY7761の腫瘍低下効力。
図11図11:BCY10984及びBCY7761の毒素レベル解析。
図12図12:BCY10984及びBCY7761の毒素レベル解析。
図13図13:BCY10984及びBCY7761の毒素レベル解析。
図14図14:BCY10984及びBCY7761の毒素レベル解析。
図15図15:BCY10984及びBCY7761の毒素レベル解析。
図16図16: HT1080腫瘍を担持する雌のBALB/cヌードマウスにBCY10984及びBCY12951を投与した後の腫瘍体積のトレース。エラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表す。
図17図17:(45μMのBCY10984が投与された)グループ5及び6由来のマウスを示す実施例6の結果は、腫瘍成長の強力な阻害を示した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
(リンカー)
本発明の第一の態様によれば、-P1-P2-P3-部分を含むリンカーであって:
P1が塩基性非天然アミノ酸又はその誘導体を表し;
P2が疎水性アミノ酸又は疎水性非天然アミノ酸を表し;かつ
P3が存在しないか、又はP1がCitを表し、かつP2がValを表す場合、P3が酸性非天然アミノ酸を表さなければならないように、酸性アミノ酸もしくは酸性非天然アミノ酸を表すかのいずれかである、
リンカーが提供される。
【0011】
したがって、本発明は、少なくとも1つの非天然アミノ酸及び-塩基性-疎水性-モチーフ又は-塩基性-疎水性-酸性-モチーフのいずれかの存在を必要とする2つ又は3つのアミノ酸を含有するリンカー分子に関する。
【0012】
本発明のリンカー分子は、Cit-Val対照リンカーと比較したとき、実施例1で示されている半減期の延長によって明らかにされているような血漿安定性の増大という利点を提供する。さらに、本発明のリンカー分子は、CatB切断率を要件に応じて必要とされるレベルに合わせる能力を提供する(実施例2を参照)。さらに、本発明のリンカー分子は、実施例3で明らかにされているような二環式ペプチド毒素コンジュゲートの血漿タンパク質結合能力を調節する能力を提供する。さらに、本発明のリンカー分子は、実施例4で示されているマウス及びラットでの薬物動態試験によって明らかにされているような血漿中での半減期の延長及び遊離毒素の相対レベルの低下を示した。さらに、本発明の1つの例となるリンカー分子(BCY10984)は、Cit-Val参照二環式ペプチド毒素コンジュゲート(BTC)と比較して、より高い腫瘍体積低下の効力を示した(図9及び10並びに実施例5を参照)。さらに、Cit-Val参照二環式ペプチド毒素コンジュゲート(BTC)と比較して、本発明の1つの例となるリンカー分子(BCY10984)を用いて、より高いレベルの毒素が腫瘍内で観察される(図11~15及び5を参照)。
【0013】
「塩基性非天然アミノ酸又はその誘導体」への本明細書における言及は、塩基性の性質を有する標準的な20種の天然アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。「塩基性」という用語の範囲内にあるのは、中性pHで塩基性側鎖を含有する非天然アミノ酸である。そのような塩基性非天然アミノ酸は、通常、そのpKa未満のpH値で極性があって、正電荷を有し、かつ極めて親水性である。
【0014】
一実施態様において、P1は、2-アミノ-4-グアニジノブタン酸(Agb); 2-アミノ-4-(3-メチルグアニジノ)ブタン酸(Agb(Me)); 2,4-ジアミノ酪酸(Dab); 2,3-ジアミノプロパン酸(Dap); 2-アミノ-3-グアニジノプロパン酸(Dap(CNNH2));及びシトルリン(Cit):から選択される塩基性非天然アミノ酸を表す。さらなる実施態様において、P1は、シトルリン(Cit)を表す。
【0015】
「疎水性アミノ酸又は疎水性非天然アミノ酸」という用語への本明細書における言及は、疎水性の性質を有する標準的な20種の天然アミノ酸と任意の非天然アミノ酸の両方を含む、任意のアミノ酸を含む。「疎水性」という用語の範囲内にあるのは、疎水性側鎖、すなわち、水性(すなわち、水)環境中に存在することを好まない側鎖を含有する天然アミノ酸と非天然アミノ酸の両方である。
【0016】
一実施態様において、P2は、Ala、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、及びValから選択される疎水性アミノ酸又はシクロブチル、ジフェニルアラニン(Dpa)、1-ナフチルアラニン(1Nal)、2-ナフチルアラニン(2Nal)、及びメチルトリプトファン(Trp(Me))から選択される疎水性非天然アミノ酸、例えば、Valから選択される疎水性アミノ酸又はシクロブチル、Dpa、1Nal、及び2Nalから選択される非天然アミノ酸を表す。さらなる実施態様において、P2は、1-ナフチルアラニン(1Nal)を表す。
【0017】
「酸性アミノ酸又は酸性非天然アミノ酸」という用語への本明細書における言及は、酸性の性質を有する標準的な20種の天然アミノ酸と任意の非天然アミノ酸の両方を含む、任意のアミノ酸を含む。「酸性」という用語の範囲内にあるのは、酸性pHで酸性側鎖を含有する天然アミノ酸と非天然アミノ酸の両方である。通常、その側鎖は、そのpKaがプロトンを失うほど十分に低く、その過程で負電荷を有するようになるカルボン酸基を有する。
【0018】
一実施態様において、P3は、存在しない。代わりの実施態様において、P3は、Asp及びGluから選択される酸性アミノ酸を表す。さらなる実施態様において、P3は、Gluを表す。
【0019】
一実施態様において、-P1-P2-P3-部分は、以下のものを表す:
【表1】
【0020】
さらなる実施態様において、-P1-P2-P3-部分は: Cit-1Nal-Glu(BCY10984)を表す。
【0021】
(薬物コンジュゲート)
本発明のさらなる態様によれば、標的に結合する結合剤と細胞毒性剤とを含む薬物コンジュゲートであって、該結合剤が本明細書で定義されるリンカーを介して該細胞毒性剤に接続されている薬物コンジュゲートが提供される。
【0022】
一実施態様において、該結合剤は、ペプチド、例えば、抗体又は二環式ペプチド、特に、二環式ペプチドである。
【0023】
(二環式ペプチド)
ペプチド及び抗体は、当技術分野で認められている用語であるが、二環式ペプチド(又は二環)への本明細書における言及は、3つの反応性アミノ酸基(すなわち、システイン残基)における環化を介して2つのループを有するペプチド配列を指すことが意図されることが当業者に明白であろう。これらの二環式ペプチドは、対象となる標的に対する二環式ペプチドの巨大なライブラリーを作製及びスクリーニングするためのファージディスプレイに基づくコンビナトリアル手法により、2009年に同定された(Heinisらの文献(2009)、Nat Chem Biol 5(7), 502-7及びWO 2009/098450号)。望ましくは、二環式ペプチドは、抗癌標的に結合するように構成される。癌細胞結合性二環式ペプチドの好適な例としては、WO 2016/067035号(MT1-MMP結合性二環式ペプチド)、WO 2017/191460号(MT1-MMP結合性二環式ペプチド)、WO 2019/025811号(CD137結合性二環式ペプチド)、PCT/GB2018/053675号(EphA2結合性二環式ペプチド)、PCT/GB2018/053676号(EphA2結合性二環式ペプチド)、PCT/GB2018/053678号(EphA2結合性二環式ペプチド)、PCT/GB2019/050485号(CD137結合性二環式ペプチド)、PCT/GB2019/051740号(ネクチン-4結合性二環式ペプチド)、及びPCT/GB2019/051741号(ネクチン-4結合性二環式ペプチド)号に記載されているものが挙げられ、該文書に開示されている二環式ペプチドは、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0024】
本明細書で言及される二環式ペプチドは、分子スキャフォールドに共有結合したペプチドを指す。通常、そのようなペプチドは、スキャフォールドとの共有結合を形成することができる2以上の反応基(すなわち、システイン残基)と、ペプチドがスキャフォールドに結合するときにループを形成するのでループ配列と呼ばれる、該反応基間に内在する配列とを含む。この場合、ペプチドは、少なくとも3つのシステイン残基を含み、かつスキャフォールド上に少なくとも2つのループを形成する。
【0025】
(分子スキャフォールド)
一実施態様において、二環式ペプチドは、非芳香族分子スキャフォールドに共有結合している。「非芳香族分子スキャフォールド」という用語への本明細書における言及は、芳香族(すなわち、不飽和)炭素環式又はヘテロ環式環系を含有しない本明細書で定義される任意の分子スキャフォールドを指す。
【0026】
非芳香族分子スキャフォールドの好適な例は、Heinisらの文献(2014) Angewandte Chemie, International Edition 53(6) 1602-1606に記載されている。
【0027】
前述の文書に記載されているように、分子スキャフォールドは、低有機分子などの低分子であってもよい。
【0028】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、高分子であってもよい。一実施態様において、分子スキャフォールドは、アミノ酸、ヌクレオチド、又は炭水化物から構成される高分子である。
【0029】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、ポリペプチドの官能基と反応して、共有結合を形成することができる反応基を含む。
【0030】
分子スキャフォールドは、ペプチドとの結合を形成する化学基、例えば、アミン、チオール、アルコール、ケトン、アルデヒド、ニトリル、カルボン酸、エステル、アルケン、アルキン、アジド、無水物、スクシンイミド、マレイミド、ハロゲン化アルキル、及びハロゲン化アシルを含み得る。
【0031】
αβ不飽和カルボニル含有化合物の例は、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)である(Angewandte Chemie, International Edition(2014), 53(6), 1602-1606)。
【0032】
代わりの実施態様において、二環式ペプチドは、芳香族分子スキャフォールドに共有結合している。「芳香族分子スキャフォールド」という用語への本明細書における言及は、芳香族炭素環式又はヘテロ環式環系を含有する本明細書で定義される任意の分子スキャフォールドを指す。
【0033】
芳香族分子スキャフォールドは、芳香族部分を含み得るということが理解されるであろう。芳香族スキャフォールド内の好適な芳香族部分の例としては、ビフェニレン、テルフェニレン、ナフタレン、又はアントラセンが挙げられる。
【0034】
芳香族分子スキャフォールドは、ヘテロ芳香族部分を含み得るということも理解されるであろう。芳香族スキャフォールド内の好適なヘテロ芳香族部分の例としては、ピリジン、ピリミジン、ピロール、フラン、及びチオフェンが挙げられる。
【0035】
芳香族分子スキャフォールドは、ハロメチルアレーン部分、例えば、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、トリス(ブロモメチル)ベンゼン、テトラ(ブロモメチル)ベンゼン、又はこれらの誘導体を含み得るということも理解されるであろう。
【0036】
芳香族分子スキャフォールドの非限定的な例としては:ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)ベンゼン;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)ピリジン;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)ピリダジン;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)ピリミジン;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)ピラジン;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)-1,2,3-トリアジン;ビス-、トリス-、又はテトラ-ハロメチル)-1,2,4-トリアジン;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)ピロール、-フラン、-チオフェン;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)イミダゾール、-オキサゾール、-チアゾール;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)-3H-ピラゾール、-イソオキサゾール、-イソチアゾール;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)ビフェニレン;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)テルフェニレン;1,8-ビス(ハロメチル)ナフタレン;ビス-、トリス-、又はテトラ(ハロメチル)アントラセン;及びビス-、トリス-、又はテトラ(2-ハロメチルフェニル)メタンが挙げられる。
【0037】
芳香族分子スキャフォールドのより具体的な例としては: 1,2-ビス(ハロメチル)ベンゼン; 3,4-ビス(ハロメチル)ピリジン; 3,4-ビス(ハロメチル)ピリダジン; 4,5-ビス(ハロメチル)ピリミジン; 4,5-ビス(ハロメチル)ピラジン; 4,5-ビス(ハロメチル)-1,2,3-トリアジン; 5,6-ビス(ハロメチル)-1,2,4-トリアジン; 3,4-ビス(ハロメチル)ピロール、-フラン、-チオフェン、及び他の位置異性体; 4,5-ビス(ハロメチル)イミダゾール、-オキサゾール、-チアゾール; 4,5-ビス(ハロメチル)-3H-ピラゾール、-イソオキサゾール、-イソチアゾール; 2,2'-ビス(ハロメチル)ビフェニレン; 2,2''-ビス(ハロメチル)テルフェニレン; 1,8-ビス(ハロメチル)ナフタレン; 1,10-ビス(ハロメチル)アントラセン;ビス(2-ハロメチルフェニル)メタン; 1,2,3-トリス(ハロメチル)ベンゼン; 2,3,4-トリス(ハロメチル)ピリジン; 2,3,4-トリス(ハロメチル)ピリダジン; 3,4,5-トリス(ハロメチル)ピリミジン; 4,5,6-トリス(ハロメチル)-1,2,3-トリアジン; 2,3,4-トリス(ハロメチル)ピロール、-フラン、-チオフェン; 2,4,5-ビス(ハロメチル)イミダゾール、-オキサゾール、-チアゾール; 3,4,5-ビス(ハロメチル)-1H-ピラゾール、-イソオキサゾール、-イソチアゾール; 2,4,2'-トリス(ハロメチル)ビフェニレン; 2,3',2''-トリス(ハロメチル)テルフェニレン; 1,3,8-トリス(ハロメチル)ナフタレン; 1,3,10-トリス(ハロメチル)アントラセン; ビス(2-ハロメチルフェニル)メタン; 1,2,4,5-テトラ(ハロメチル)ベンゼン; 1,2,4,5-テトラ(ハロメチル)ピリジン; 2,4,5,6-テトラ(ハロメチル)ピリミジン; 2,3,4,5-テトラ(ハロメチル)ピロール、-フラン、-チオフェン; 2,2',6,6'-テトラ(ハロメチル)ビフェニレン; 2,2'',6,6''-テトラ(ハロメチル)テルフェニレン; 2,3,5,6-テトラ(ハロメチル)ナフタレン及び2,3,7,8-テトラ(ハロメチル)アントラセン;並びにビス(2,4-ビス(ハロメチル)フェニル)メタンが挙げられる。
【0038】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、トリス(ブロモメチル)ベンゼン、とりわけ、1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼン(「TBMB」)、もしくはその誘導体を含み得るか又はこれらからなり得る。
【0039】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、2,4,6-トリス(ブロモメチル)メシチレンである。この分子は、1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼンと類似しているが、ベンゼン環に付着した3つの追加のメチル基を含有する。これは、この追加のメチル基がポリペプチドとのさらなる接触を形成し、したがって、追加の構造上の制約を付加し得るという利点を有する。
【0040】
本発明の分子スキャフォールドは、本発明のコードされたライブラリーのポリペプチドの官能基が分子スキャフォールドとの共有結合を形成することを可能にする化学基を含有する。該化学基は、アミン、チオール、アルコール、ケトン、アルデヒド、ニトリル、カルボン酸、エステル、アルケン、アルキン、無水物、スクシンイミド、マレイミド、アジド、ハロゲン化アルキル、及びハロゲン化アシルを含む幅広い官能基から選択される。
【0041】
システインのチオール基と反応するように分子スキャフォールド上で使用することができるスキャフォールド反応基は、ハロゲン化アルキル(又はハロゲノアルカンもしくはハロアルカンとも呼ばれる)である。
【0042】
例としては、ブロモメチルベンゼン(TBMBによって例示されるスキャフォールド反応基)又はヨードアセトアミドが挙げられる。化合物をタンパク質中のシステインと選択的にカップリングさせるために使用される他のスキャフォールド反応基は、マレイミド、αβ-不飽和カルボニル含有化合物、及びα-ハロメチルカルボニル含有化合物である。本発明中の分子スキャフォールドとして使用し得るマレイミドの例としては:トリス-(2-マレイミドエチル)アミン、トリス-(2-マレイミドエチル)ベンゼン、トリス-(マレイミド)ベンゼンが挙げられる。α-ハロメチルカルボニル含有化合物の例は、N,N',N''-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリス(2-ブロモアセトアミド)である。セレノシステインも、システインに対する同様の反応性を有し、かつ同じ反応に使用することができる天然アミノ酸である。したがって、システインが言及されるときはいつでも、文脈によって他のことが示唆されない限り、通常、セレノシステインを代用することが許容される。
【0043】
(合成)
二環式ペプチドは、標準的な技法によって合成的に製造した後、インビトロで分子スキャフォールドと反応させることができる。これを実施する場合、標準的な化学を使用することができる。これにより、さらなる下流での実験又は検証のための可溶性材料の迅速な大規模調製が可能になる。そのような方法は、従来の化学、例えば、Timmermanらの文献(上記)に開示されているものを用いて達成することができる。
【0044】
したがって、本発明はまた、本明細書に記載されているように選択されるポリペプチドの製造に関するものであり、ここで、該製造は、以下で説明されているような任意のさらなる工程を含む。一実施態様において、これらの工程は、化学合成によって作られた最終生成物のポリペプチドに対して実施される。
【0045】
ペプチドを伸長させて、例えば、別のループを組み込み、それゆえ、複数の特異性を導入することもできる。
【0046】
ペプチドを伸長させるために、それは、単純に、標準的な固相又は液相化学を用いて、直交保護されたリジン(及び類似体)を用いて、そのN-末端もしくはC-末端で又はループ内で化学的に伸長されてもよい。標準的な(バイオ)コンジュゲーション技法を用いて、活性化された又は活性化可能なN-又はC-末端を導入してもよい。或いは、付加は、例えば、(Dawsonらの文献、1994、ネイティブケミカルライゲーションによるタンパク質の合成(Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation). Science 266:776-779)に記載されている断片縮合もしくはネイティブケミカルライゲーションによるか、又は酵素によって、例えば、(Changらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Dec 20; 91(26):12544-8もしくはHikariらの文献、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第18巻、第22号、2008年11月15日、6000~6003頁)に記載されているサブチリガーゼを用いて行われてもよい。
【0047】
或いは、ペプチドは、ジスルフィド結合を介するさらなるコンジュゲーションによって伸長又は修飾されてもよい。これは、第一及び第二のペプチドが細胞の還元環境内で互いに解離することを可能にするという追加の利点を有する。この場合、分子スキャフォールド(例えば、TATA)は、3つのシステイン基と反応するように第一のペプチドの化学合成の間に付加されることができ;その後、さらなるシステイン又はチオールが第一のペプチドのN又はC-末端に付加されることができ、その結果、このシステイン又はチオールが第二のペプチドの遊離のシステイン又はチオールとのみ反応して、ジスルフィド結合した二環式ペプチド-ペプチドコンジュゲートを形成した。
【0048】
同様の技法は、四重特異性分子を潜在的に生じさせる、2つの二環式二重特異性大環状分子の合成/カップリングに等しく適用される。
【0049】
さらに、他の官能基又はエフェクター基の付加は、適切な化学を用いて、N-もしくはC-末端で、又は側鎖を介してカップリングさせて、同じ方法で達成されてもよい。一実施態様において、カップリングは、いずれかの実体の活性を遮断しないような方法で実行される。
【0050】
(細胞毒性剤)
好適な「細胞毒性剤」の例としては:シスプラチン及びカルボプラチン、並びにオキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イホスファミドなどのアルキル化剤;プリン類似体のアザチオプリン及びメルカプトプリン又はピリミジン類似体を含む代謝拮抗剤;ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、及びビンデシンなどのビンカアルカロイドを含む植物アルカロイド及びテルペノイド;ポドフィロトキシン並びにその誘導体エトポシド及びテニポシド;当初はタキソールとして知られた、パクリタキセルを含む、タキサン;カンプトテシンを含むトポイソメラーゼ阻害剤;イリノテカン及びトポトテカン、並びにアムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、及びテニポシドを含むII型阻害剤が挙げられる。さらなる薬剤としては、免疫抑制物質ダクチノマイシン(これは、腎移植に使用される)、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、カリケアマイシンなどを含む抗腫瘍性抗生物質を挙げることができる。
【0051】
一実施態様において、該細胞毒性剤は、メイタンシノイド(例えば、DM1)又はモノメチルオーリスタチン(例えば、MMAE)から選択される。
【0052】
DM1は、メイタンシンのチオール含有誘導体であり、かつ以下の構造:
【化1】
を有する細胞毒性剤である。
【0053】
モノメチルオーリスタチンE(MMAE)は、合成抗新生物剤であり、かつ以下の構造:
【化2】
を有する。
【0054】
さらなる実施態様において、該細胞毒性剤は、MMAEである。
【0055】
(医薬組成物)
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載される薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0056】
通常、薬物コンジュゲートは、薬理学的に適切な賦形剤又は担体と一緒に精製された形態で利用される。典型的には、これらの賦形剤又は担体は、生理食塩水及び/又は緩衝化媒体を含む、水性もしくはアルコール/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース、及び塩化ナトリウム、並びに乳酸加リンガーが挙げられる。生理的に許容し得る好適なアジュバントは、ポリペプチド複合体を懸濁状態に保つために必要な場合、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、及びアルギネートなどの増粘剤から選択されてもよい。
【0057】
静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補充液及び電解質補充液、例えば、リンガーデキストロースに基づくものが挙げられる。また、防腐剤並びに他の添加物、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスが存在してもよい(Mackの文献(1982)、レミントンの医薬品化学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版)。
【0058】
本発明の薬物コンジュゲートは、別々に投与される組成物として、又は他の薬剤と併せて使用されてもよい。これらとしては、抗体、抗体断片、並びに様々な免疫療法薬、例えば、シルコスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシン、又はシスプラチン、及び免疫毒素を挙げることができる。医薬組成物は、本発明の薬物コンジュゲートと併せた様々な細胞毒性剤もしくは他の薬剤の「カクテル」、又は投与前にプールされているか、プールされていないかを問わず、異なる標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドなどの、異なる特異性を有する本発明による選択された薬物コンジュゲートの組合せさえも含むことができる。
【0059】
本発明による医薬組成物の投与の経路は、当業者に一般的に公知の任意のものであってもよい。療法のために、本発明の薬物コンジュゲートは、標準的な技法に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、肺経路を介するもの、又は同じく適切に、カテーテルを用いる直接注入によるものを含め、任意の適切な様式によるものであることができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は、吸入によって投与される。投薬量及び投与の頻度は、患者の年齢、性別、及び状態、他の薬物の同時的な投与、禁忌、並びに臨床医によって考慮される他のパラメータによって決まる。
【0060】
本発明の薬物コンジュゲートは、保存前に凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成することができる。この技法は、効果的であることが示されており、当技術分野で公知の凍結乾燥及び再構成技法を利用することができる。凍結乾燥及び再構成は様々な程度の活性損失をもたらし得ること、及び補償するために、レベルを上方に調整する必要があり得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0061】
本薬物コンジュゲート又はそのカクテルを含有する組成物は、予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。特定の治療用途において、選択される細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅化、又は何らかの他の測定可能なパラメータを達成するために十分な量は、「治療有効用量」として定義される。この投薬量を達成するために必要とされる量は、疾患の重症度及び患者自身の免疫系の全般的な状態によって決まるが、概ね、体重1キログラム当たり0.005~5.0mgの選択された薬物コンジュゲートの範囲であり、0.05~2.0mg/kg/用量の用量がより一般的に使用される。予防用途のために、本薬物コンジュゲート又はそのカクテルを含有する組成物はまた、同様の又はわずかに少ない投薬量で投与されてもよい。
【0062】
本発明による薬物コンジュゲートを含有する組成物を予防的及び治療的な設定で利用して、哺乳動物における選択標的細胞集団の変化、不活性化、死滅化、又は除去を助けることができる。さらに、本明細書に記載される薬物コンジュゲートを体外で又はインビトロで選択的に用いて、細胞の異成分集合体から標的細胞集団を選択的に死滅させるか、枯渇させるか、又は他の形で効果的に除去することができる。哺乳動物由来の血液を選択された薬物コンジュゲートと体外で組み合わせることができ、それにより、標準的な技法に従って哺乳動物に戻すために、望ましくない細胞を死滅させるか、又は別の形で血液から除去する。
【0063】
(治療的使用)
本発明のさらなる態様によれば、癌を予防、抑制、又は治療する際に使用するための、本明細書に記載される薬物コンジュゲートが提供される。
【0064】
治療(又は阻害)され得る癌(及びその良性対応物)の例としては、上皮起源の腫瘍(腺癌、扁平上皮癌、移行細胞癌、及び他の癌腫を含む、様々なタイプの腺腫及び癌腫)、例えば、膀胱及び尿路、乳房、消化管(食道、胃(stomach)(胃(gastric))、小腸、結腸、直腸、並びに肛門を含む)、肝臓(肝細胞癌)、胆嚢及び胆管系、外分泌膵臓、腎臓、肺(例えば、腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、気管支肺胞上皮癌、及び中皮腫)、頭頸部(例えば、舌、口腔、喉頭、咽頭、上咽頭、扁桃、唾液腺、鼻腔、及び副鼻腔の癌)、卵巣、卵管、腹膜、膣、外陰部、陰茎、子宮頸部、子宮筋層、子宮内膜、甲状腺(例えば、甲状腺濾胞癌)、副腎、前立腺、皮膚、及び付属器の癌(黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、角化棘細胞腫、異形成母斑);血液悪性腫瘍(すなわち、白血病、リンパ腫)並びに前悪性血液障害及びリンパ系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患を含む境界領域悪性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病[ALL]、慢性リンパ性白血病[CLL]、B細胞リンパ腫、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫及び白血病、ナチュラルキラー[NK]細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、形質細胞腫、多発性骨髄腫、及び移植後リンパ増殖性障害)、並びに骨髄系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患(例えば、急性骨髄性白血病[AML]、慢性骨髄性白血病[CML]、慢性骨髄単球性白血病[CMML]、好酸球増多症候群、骨髄増殖性障害、例えば、真性多血症、本態性血小板血症、及び原発性骨髄線維症、骨髄増殖性症候群、骨髄異形成症候群、並びに前骨髄細胞性白血病);間葉起源の腫瘍、例えば、軟部組織、骨、もしくは軟骨の肉腫、例えば、骨肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、類上皮性肉腫、消化管間質性腫瘍、良性及び悪性の組織球腫、並びに隆起性皮膚線維肉腫;中枢もしくは末梢神経系の腫瘍(例えば、星細胞腫、神経膠腫、及び膠芽細胞腫、髄膜腫、上衣腫、松果体腫瘍、及びシュワン細胞腫);内分泌腫瘍(例えば、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、膵島細胞腫瘍、副甲状腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、及び甲状腺の髄様癌);眼球及び付属器腫瘍(例えば、網膜芽腫);生殖細胞及び栄養膜腫瘍(例えば、奇形腫、精上皮腫、未分化胚細胞腫、胞状奇胎、及び絨毛癌);並びに小児性及び胎児性腫瘍(例えば、髄芽腫、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、および未分化神経外胚葉性腫瘍);又は患者を悪性腫瘍に罹りやすい状態にしておく先天性もしくはその他の症候群(例えば、色素性乾皮症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
さらなる実施態様において、癌は、例えば:非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、B及びT急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、有毛細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、並びに慢性骨髄性白血病(CML)から選択される造血器悪性腫瘍から選択される。
【0066】
「予防」という用語への本明細書における言及は、疾患の誘導前の防御的な組成物の投与を含む。「抑制」は、誘導性事象の後であるが、疾患の臨床的出現の前の組成物の投与を指す。「治療」は、疾患症状が顕在化した後の防御的な組成物の投与を含む。
【0067】
疾患からの防御又は疾患の治療における薬物コンジュゲートの有効性をスクリーニングするために使用することができる動物モデル系が利用可能である。動物モデル系の使用は、ヒト及び動物の標的と交差反応することができる薬物コンジュゲートの開発を可能にする本発明によって促進される。
【0068】
本発明を、以下の実施例を参照して、以下でさらに説明する。
【実施例
【0069】
(実施例)
(材料及び方法)
(ペプチド合成)
ペプチド合成は、Peptide Instrumentsにより製造されたSymphonyペプチド合成装置及びMultiSynTech製のSyro II合成装置を用いるFmoc化学に基づいた。標準的なFmoc-アミノ酸(Sigma, Merck)を適切な側鎖保護基とともに利用し:適用可能な場合、標準的なカップリング条件を各々の場合に使用し、その後、標準的な方法論を用いて、脱保護を行った。HPLCを用いてペプチドを精製し、単離後、これを1,3,5-トリス(ブロモメチル)ベンゼン(TBMB、Sigma)で修飾した。このために、直鎖状ペプチドをH2Oで約35mLまで希釈し、アセトニトリル中の約500μLの100mM TBMBを添加し、H2O中の5mLの1M NH4HCO3で反応を開始させた。反応をRTで約30分から60分間進行させておき、(MALDIにより判断して)反応が終了したら、凍結乾燥させた。凍結乾燥後、修飾されたペプチドを上記のように精製し、一方、Luna C8をGemini C18カラム(Phenomenex)と交換し、酸を0.1%トリフルオロ酢酸に変更した。正しいTMB修飾材料を含有する純粋な画分をプールし、凍結乾燥させ、保存のために-20℃で保持した。
【0070】
別途特記しない限り、アミノ酸は全て、L-立体配置で使用した。
【0071】
場合によっては、ペプチドを活性化ジスルフィドに変換した後、以下の方法を用いて、毒素の遊離チオール基とカップリングさせる; 4-メチル(スクシンイミジル 4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート)(100mM)の無水DMSO(1.25mol当量)溶液をペプチド(20mM)の無水DMSO(1mol当量)溶液に添加した。反応液をよく混合し、DIPEA(20mol当量)を添加した。反応を終了するまでLC/MSによりモニタリングした。
【0072】
(二環コンジュゲート合成)
(一般的な方法)
【化3】
(工程(a):ペプチドリンカー化合物の固相合成)
【化4】
ペプチドを、標準的なFmoc化学を用いて、クロロトリチル樹脂(2mmol)上で合成した。最初のアミノ酸を、DMF中のFmoc-AA-OH(1当量)とDIEA(4当量)の混合物と2時間インキュベートすることにより、該樹脂にローディングした。該樹脂から排水し、洗浄し、その後、MeOHで30分間処理した。残りの配列を、Fmoc-AA-OH(又は酸性キャッピング基、例えば、アジド酢酸)(3当量)、HBTU(2.85当量)、及びDIEA(6当量)を用いる標準的なSPPS法を用いて構築した。カップリング反応を1時間実施した。Fmoc脱保護を、20%ピペリジン/DMFを用いて、30分間実施した。HFIP/DCM(20:80)を用いて30分間インキュベートすることにより、ペプチドを樹脂から切断した。粗ペプチドを乾燥させ、精製することなく、次の工程でそのまま使用した。
【0073】
(工程(b):ペプチドリンカー化合物への(4-アミノフェニル)メタノールの付加)
【化5】
化合物2(1.0当量)のMeOH(100mg/mL)溶液に、EEDQ(2.0当量)及び(4-アミノフェニル)メタノール(2.0当量)のDCM溶液を添加した。混合物を35℃で16時間撹拌した。終了したら、反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を分取HPLCにより精製した。
【0074】
(工程(c):ビス(2,4-ジニトロフェニル)カルボネートとペプチドリンカー-(4-アミノフェニル)メタノールとの反応)
【化6】
化合物3(1.0当量)のDMF(50mg/mL)溶液に、DIEA(5.0当量)及びビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(4.0当量)を添加し、混合物を25℃で1時間(又は化合物3が消費されるまで)撹拌した。反応混合物を、分取HPLCにより、そのまま精製した。
【0075】
(工程(d):ペプチドリンカー化合物とのMMAEコンジュゲーション)
【化7】
化合物4(1.5当量)のDMF(10mg/mL)溶液に、HOBt(1.5当量)、DIEA(5.0当量)、及びMMAE(1.0当量)を添加した。化合物4が完全に消費されるまで、混合物を40℃で16時間撹拌した。反応混合物を、分取HPLCにより、そのまま精製した。
【0076】
(工程(e): Boc保護基の除去)
【化8】
(Boc保護側鎖を有するアミノ酸を用いて合成されたリンカーの場合)
Boc保護アミン含有リンカー(1.0当量)を10%TFA/DCM(30mg/mL)の混合物に添加した。混合物を0℃で1時間撹拌し、その後、減圧下で濃縮して、DCMを除去した。粗生成物を、精製することなく、次の工程でそのまま使用した。
【0077】
(工程(f):アルキン官能化二環へのアジド官能化毒素-リンカーの銅触媒付加環化)
【化9】
化合物5(1.0当量)のt-BuOH/H2O(1:1、6.5mg/mL)溶液に、CuSO4(0.4M、2.0当量)、THPTA(1.0当量)、BCY3900(0.9当量)、VcNa(2.0当量)を添加した。混合物をpH~7に調整し、その後、40℃で2時間(又は化合物5の消費まで)撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、t-BuOHを除去した。DMAB又はメチルエステル保護基が化合物中に存在する場合、脱保護を粗材料に対して実施した(一般的な方法F又はG)。そうでない場合、粗残渣を分取HPLCを用いて精製すると、最終的なコンジュゲートが得られた。
【0078】
(工程(g): DMAB保護基の除去)
【化10】
(DMAB保護側鎖を有するアミノ酸を用いて合成されたリンカーの場合)
DMAB保護リンカー化合物(1.0当量)のDMF(36mg/mL)溶液に、N2H4-H2O(75当量)を添加した。混合物を25℃で0.5時間撹拌し、その後、反応混合物を分取HPLCによりそのまま精製すると、最終的なコンジュゲートが得られた。
【0079】
(工程(h):メチルエステル保護基の除去)
【化11】
(メチルエステル保護側鎖を有するアミノ酸を用いて合成されたリンカーの場合)
メチルエステル保護リンカー化合物(1.0当量)のH2O(100mg/mL)溶液に、NaOH(20.0当量)を添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。反応混合物を分取HPLCによりそのまま精製すると、最終的なコンジュゲートが得られた。
【0080】
上述の一般的な方法を用いて、以下の二環コンジュゲートを調製した:
【表2】
【0081】
(BCY10989-(Dab-Val))
【化12】
一般的な方法に従って、BCY10989が得られた。予想MW=3882.4、観測m/z: 1294[M+3H]3+、971[M+4H]4+
【0082】
(BCY10988-(Dab-cBu-Glu))
【化13】
一般的な方法に従って、BCY10988が得られた。予想MW=4009.5、観測m/z: 1337[M+3H]3+、1003[M+4H]4+
【0083】
(BCY10986(Dab-2Nal-Glu))
【化14】
一般的な方法に従って、BCY10986が得られた。予想MW=4109.6、観測m/z: 1370[M+3H]3+、1028[M+4H]4+
【0084】
(BCY10987-(Dab-DPA-Glu))
【化15】
一般的な方法に従って、BCY10987が得られた。予想MW=4135.7、観測m/z: 1379[M+3H]3+、1034[M+4H]4+
【0085】
(BCY10983-(Agp-Val-Glu))
【化16】
MMAE-PAB-Dap-Val-Glu(OMe)-AcAz中間体を、BCY10982の合成に記載されている通りに調製した。その後、Dapの側鎖アミンを対応するグアニジンに変換した。MMAE-PAB-Dap-Val-Glu(OMe)-AcAz(1当量)をDMF中で撹拌し、これにDIEA(9当量)及び1H-ピラゾール-1-カルボキシアミジン塩酸塩(24当量)を添加した。混合物を45℃で24時間撹拌し、その後、該混合物を希釈し、分取HPLCにより精製した。残りの合成工程を、一般的な方法を用いて実施すると、BCY10983が得られた。予想MW=4039.5、観測m/z: 1346[M+3H]3+、1010[M+4H]4+
【0086】
(BCY10980-(Cit-Val-Glu))
【化17】
一般的な方法に従って、BCY10980が得られた。予想MW=4068.6、観測m/z: 1356[M+3H]3+、1017[M+4H]4+
【0087】
(BCY10981-(Dab-Val-Glu))
【化18】
一般的な方法に従って、BCY10981が得られた。予想MW=4011.5、観測m/z: 1338[M+3H]3+、1003[M+4H]4+
【0088】
(BCY10982-(Dap-Val-Glu))
【化19】
一般的な方法に従って、BCY10982が得られた。予想MW=3997.5、観測m/z: 1333[M+3H]3+、1000[M+4H]4+
【0089】
(BCY10984-(Cit-1Nal-Glu))
【化20】
一般的な方法に従って、BCY10984が得られた。予想MW=4166.7、観測m/z: 1388[M+3H]3+、1042[M+4H]4+
【0090】
(BCY10985-(Dab-1Nal-Glu))
【化21】
一般的な方法に従って、BCY10985が得られた。予想MW=4109.6、観測m/z: 1370[M+3H]3+、1028[M+4H]4+
【0091】
(BCY10298-(Dap-Val))
(化合物1の調製)
【化22】
DCMを、CTC樹脂(5mmol、4.50g、1.10mmol/g)を含有する容器に添加し、その後、N2バブリングしながら、Fmoc-Dap(Boc)-OH(2.13g、5mmol、1.0当量)を添加した。DIEA(4.0当量)を滴加し、樹脂を2時間混合した。MeOH(4.5mL)を添加し、樹脂を、30分間、再混合した。その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0092】
20%ピペリジン/DMFを添加し、30分間反応させておくことにより、Fmoc基を除去し、その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0093】
次のアミノ酸をカップリングさせるために、Fmoc-アミノ酸のDMF溶液を樹脂に添加し、30秒間混合し、その後、活性化剤及び塩基を添加した。連続的にN2バブリングしながら、カップリングを1時間反応させておいた。以下のアミノ酸を用いて、カップリング及びFmoc脱保護のラウンドを繰り返した。
【表3】
【0094】
最後のカップリングの後、樹脂をMeOHで3回洗浄し、その後、真空下で乾燥させた。側鎖保護ペプチドを含有するフラスコに20%HFIP/80%DCMを室温で添加することにより、樹脂からの切断を行った。その後、連続的にN2バブリングしながら、切断を繰り返した(各々1時間)。樹脂を濾過し、濾液を回収し、その後、濃縮して、溶媒を除去した。粗ペプチドを凍結乾燥させると、化合物1(1.64g、94.1%純度、73.7%収率)が得られた。予想MW=444.53、観測m/z: 445.12[M+H]+
【0095】
(化合物2の調製)
【化23】
DCM(16.0mL)及びMeOH(8.00mL)中の化合物1(800mg、1.80mmol、1.0当量)の溶液に、(4-アミノフェニル)メタノール(266mg、2.16mmol、1.2当量)及びEEDQ(890mg、3.60mmol、2.0当量)を暗所で添加した。混合物を25℃で16時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=10:1、Rf=0.46)により、化合物1が完全に消費されていることが示された。LC-MSにより、化合物1が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標); 40g SepaFlash(登録商標)シリカフラッシュカラム、0~20%MeOH/DCMの溶出剤@60mL/分)により精製すると、化合物2(550mg、1.00mmol、55.6%収率)が淡茶色の固体として得られた。予想MW=549.66、観測m/z: 450.04[(M-Boc)+H]+及び550.08[M+H]+
【0096】
(化合物3の調製)
【化24】
化合物2(550mg、1.00mmol、1.0当量)のDMF(7.00mL)溶液に、ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(913mg、3.00mmol、3.0当量)及びDIEA(517mg、4.00mmol、697μL、4.0当量)をN2雰囲気下で添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物2が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物3(560mg、783μmol、78.30%収率)が淡黄色の固体として得られた。予想MW=714.76、観測m/z: 614.96[(M-Boc)+H]+及び715.01[M+H]+
【0097】
(化合物4の調製)
【化25】
化合物3(550mg、769μmol、1.0当量)のDMF(6.00mL)溶液に、DIEA(398mg、3.08mmol、536μL、4.0当量)を添加し、N2雰囲気下で10分間撹拌した。その後、1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-7-ピペラジン-1-イル-キノリン-3-カルボン酸(491mg、1.54mmol、2.0当量)及びHOBt(208mg、1.54mmol、2.0当量)を混合物に添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を25℃でのH2O(250mL)の添加により洗浄し、濾過し、減圧下で濃縮すると、粗生成化合物4(580mg、粗製物)が黄色の固体として得られ、これを、それ以上精製することなく、次の工程に使用した。予想MW=894.98、観測m/z: 398.04[(M-Boc)/2+H]+、895.06[M+H]+
【0098】
(BCY10298の調製)
【化26】
化合物4(250mg、279μmol、1.0当量)のDCM(2.40mL)溶液に、TFA(924mg、8.10mmol、0.60mL、29.0当量)を添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物4が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣を分取HPLC(A: H2O中の0.075%TFA、B: ACN)により精製すると、BCY10298(160mg、194μmol、69.6%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=794.87、観測m/z: 398.06[M/2+H]+、795.02[M+H]+
【0099】
(BCY10300-(Dap(CNNH2)-Val))
【化27】
BCY10298(85.0mg、107μmol、1.0当量)のDMF(1.00mL)溶液に、クロロ(ピラゾール-1-カルボキシイミドイル)アンモニウム(15.6mg、107μmol、1.0当量)及びDIEA(41.5mg、321μmol、60.0μL、3.0当量)をN2雰囲気下で添加した。混合物を25℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(A: H2O中の0.075%TFA、B: ACN)により精製すると、BCY10300(39.3mg、46.2μmol、43.1%収率、98.3%純度)が白色の固体として得られた。予想MW=836.91、観測m/z: 419.11[M/2+H]+及び836.95[M+H]+
【0100】
(BCY9474-(Dab-Val))
(化合物2の調製)
【化28】
DCMを、CTC樹脂(10mmol、9.10g、1.10mmol/g)を含有する容器に添加し、その後、N2バブリングしながら、Fmoc-Dab(Boc)-OH(4.40g、10mmol、1.0当量)を添加した。DIEA(4.0当量)を滴加し、樹脂を2時間混合した。MeOH(9.1mL)を添加し、樹脂を、30分間、再混合した。その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0101】
20%ピペリジン/DMFを添加し、30分間反応させておくことにより、Fmoc基を除去し、その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0102】
次のアミノ酸をカップリングさせるために、Fmoc-アミノ酸のDMF溶液を樹脂に添加し、30秒間混合し、その後、活性化剤及び塩基を添加した。連続的にN2バブリングしながら、カップリングを1時間反応させておいた。以下のアミノ酸を用いて、カップリング及びFmoc脱保護のラウンドを繰り返した。
【表4】
【0103】
最後のカップリングの後、樹脂をMeOHで3回洗浄し、その後、真空下で乾燥させた。側鎖保護ペプチドを含有するフラスコに20%HFIP/80%DCMを室温で添加することにより、樹脂からの切断を行った。その後、連続的にN2バブリングしながら、切断を繰り返した(各々1時間)。樹脂を濾過し、濾液を回収し、その後、濃縮して、溶媒を除去した。粗ペプチドを凍結乾燥させると、化合物2(2.50g、96.6%純度、54.40%収率)が得られた。予想MW=458.56、観測m/z: 459.4[M+H]+
【0104】
(化合物3の調製)
【化29】
DCM(50.0mL)及びMeOH(25.0mL)中の化合物2(2.50g、5.45mmol、1.0当量)の溶液に、(4-アミノフェニル)メタノール(806mg、6.54mmol、1.2当量)及びEEDQ(2.70g、10.9mmol、2.0当量)を暗所で添加した。混合物を暗所25℃で16時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=10:1、Rf=0.35)により、化合物2が完全に消費されていることが示された。LC-MSにより、化合物2の大部分が消費され、化合物3についての所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標); 80g SepaFlash(登録商標)シリカフラッシュカラム、0~20%MeOH/DCMの溶出剤@60mL/分)により精製すると、化合物3(1.65g、2.93mmol、53.7%収率)が淡黄色の固体として得られた。予想MW=563.69、観測m/z: 464.3[(M-Boc)+H]+及び564.3[M+H]+
【0105】
(化合物4の調製)
【化30】
化合物3(1.65g、2.93mmol、1.0当量)のDMF(10.0mL)溶液に、ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(2.67g、8.78mmol、3.0当量)及びDIEA(1.51g、11.7mmol、2.04mL、4.0当量)をN2雰囲気下で添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物4についての所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物4(1.56g、1.33mmol、45.3%収率、62.0%純度)が淡黄色の固体として得られた。予想MW=728.79、観測m/z: 729.3[M+H]+
【0106】
(化合物5の調製)
【化31】
化合物4(1.56g、2.14mmol、1.0当量)のDMF(10.0mL)溶液に、DIEA(1.38g、10.7mmol、1.86mL、5.0当量)を添加し、10分間撹拌した。その後、1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-7-ピペラジン-1-イル-キノリン-3-カルボン酸(1.37g、4.28mmol、2.0当量)及びHOBt(578mg、4.28mmol、2.0当量)をN2雰囲気下で混合物に添加した。混合物を35℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5についての所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物5(1.45g、1.60mmol、74.5%収率)が淡黄色の固体として得られた。予想MW=909.01、観測m/z: 909.3[M+H]+
【0107】
(BCY9474の調製)
【化32】
化合物5(1.45g、1.60mmol、1.0当量)のDCM(9.00mL)溶液に、TFA(1.54g、13.5mmol、1.00mL、8.47当量)を添加した。混合物を25℃で1時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣を分取HPLC(中性条件)により精製すると、BCY9474(850mg、1.05mmol、65.9%収率、98.74%純度)が淡黄色の固体として得られた。予想MW=808.90、観測m/z: 405.3[M/2+H]+及び809.3[M+H]+
【0108】
(BCY9423-(Agb-Val))
【化33】
BCY9474(150mg、185μmol、1.0当量)のDMF(2.00mL)溶液に、tert-ブチル(NZ)-N-[(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-ピラゾール-1-イルメチレン]カルバメート(86.3mg、278μmol、1.5当量)及びDIEA(47.9mg、371μmol、64.6μL、2.0当量)を添加した。混合物を25℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、BCY9474の大部分が消費され、化合物2についての所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物2(110mg、105μmol、56.4%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=1050.52、観測m/z: 525.70[M/2+H]+及び1050.82[M+H]+
【0109】
【化34】
化合物2(110mg、105μmol、1.0当量)のDCM(2.00mL)溶液に、TFA(770mg、6.75mmol、500μL、64.5当量)を添加した。混合物を25℃で0.5時間撹拌した。LC-MSにより、化合物2が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY9423(20.8mg、24.2μmol、23.1%収率、98.8%純度)が白色の固体として得られた。予想MW=850.94、観測m/z: 425.72[M/2+H]+、850.67[M+H]+
【0110】
(BCY9477-(Agb(Me)-Val))
【化35】
BCY9474(100mg、124μmol、1.0当量)のDMF(3mL)溶液に、N-メチルピラゾール-1-カルボキシアミジン(59.6mg、371μmol、3.0当量、HCl塩形態)及びDIEA(95.9mg、742μmol、129μL、6.0当量)をN2雰囲気下で添加した。混合物を60℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY9477(40.9mg、46.9μmol、37.9%収率、99.2%純度)が白色の固体として得られた。予想MW=864.96、観測m/z: 432.68[M/2+H]+及び864.62[M+H]+
【0111】
(BCY9696-(Cit-Val-Glu))
(化合物2の調製)
【化36】
DCMを、CTC樹脂(5mmol、4.50g、1.10mmol/g)を含有する容器に添加し、その後、N2バブリングしながら、Fmoc-Cit-OH(1.98g、5mmol、1.0当量)を添加した。DIEA(4.0当量)を滴加し、樹脂を2時間混合した。MeOH(4.5mL)を添加し、樹脂を、30分間、再混合した。その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0112】
20%ピペリジン/DMFを添加し、30分間反応させておくことにより、Fmoc基を除去し、その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0113】
次のアミノ酸をカップリングさせるために、Fmoc-アミノ酸のDMF溶液を樹脂に添加し、30秒間混合し、その後、活性化剤及び塩基を添加した。連続的にN2バブリングしながら、カップリングを1時間反応させておいた。以下のアミノ酸を用いて、カップリング及びFmoc脱保護のラウンドを繰り返した。
【表5】
【0114】
最後のカップリングの後、樹脂をMeOHで3回洗浄し、その後、真空下で乾燥させた。側鎖保護ペプチドを含有するフラスコに20%HFIP/80%DCMを室温で添加することにより、樹脂からの切断を行った。その後、連続的にN2バブリングしながら、切断を繰り返した(各々1時間)。樹脂を濾過し、濾液を回収し、その後、濃縮して、溶媒を除去した。粗ペプチドを凍結乾燥させると、化合物2(1.9g、100%純度、63.3%収率)が得られた。予想MW=600.71、観測m/z: 601.3[M+H]+
【0115】
(化合物3の調製)
【化37】
DCM(10mL)及びMeOH(5mL)中の化合物2(500mg、832μmol、1.0当量)の溶液に、(4-アミノフェニル)メタノール(123mg、999μmol、1.2当量)及びEEDQ(412mg、1.66mmol、2.0当量)を暗所で添加した。混合物を25℃で12時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=10:1、Rf=0.23)により、化合物2が完全に消費されており、多くの新しいスポットが形成されることが示された。LC-MSにより、化合物2が完全に消費されており、化合物3について所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標); 40g SepaFlash(登録商標)シリカフラッシュカラム、0~20%MeOH/DCMの溶出剤@40mL/分)により精製すると、化合物3(350mg、496μmol、59.6%収率)が淡黄色の固体として得られた。予想MW=705.84、観測m/z: 706.3[M+H]+
【0116】
(化合物4の調製)
【化38】
化合物3(350mg、496μmol、1.0当量)のDMF(4mL)溶液に、ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(453mg、1.49mmol、3.0当量)及びDIEA(256mg、1.98mmol、345μL、4.0当量)をN2雰囲気下で添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物4(370mg、425μmol、85.7%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=870.41、観測m/z: 870.66[M+H]+
【0117】
(化合物5の調製)
【化39】
化合物4(360mg、413μmol、1.0当量)のDMF(4mL)溶液に、DIEA(267mg、2.07mmol、360μL、5.0当量)を添加し、N2雰囲気下で10分間撹拌した。その後、1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-7-ピペラジン-1-イル-キノリン-3-カルボン酸(264mg、827μmol、2.0当量)及びHOBt(112mg、827μmol、2.0当量)を混合物に添加した。混合物を35℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物4が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物5(390mg、371μmol、89.8%収率)が白色の固体として得られた。
【0118】
(BCY9696の調製)
【化40】
化合物5(150mg、143μmol、1.0当量)のDCM(5mL)溶液に、TFA(1.93g、16.9mmol、1.25mL、118.0当量)を添加した。混合物を25℃で0.5時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣を分取HPLC(A: H2O中の0.075%TFA、B: ACN)により精製すると、化合物BCY9696(66.5mg、65.8μmol、46.1%収率、98.4%純度)が白色の固体として得られた。予想MW=994.46、観測m/z: 497.68[M/2+H]+及び994.64[M+H]+
【0119】
(BCY10299-(Dap(CNNH2)-Val-Glu))
(化合物5の調製)
【化41】
化合物4(これは、BCY10297において記載されているように調製することができる; 150mg、139μmol、1.0当量)のDCM(1.9mL)溶液に、TFA(150mg、1.32mmol、0.10mL、9.5当量)を0℃で添加し、1時間撹拌した。LC-MS(ES10336-123-P1A3)により、化合物4が完全に消費されており、2つの主ピーク(この場合、1つはBCY10297(完全に脱保護された物質)であり、もう1つは所望の化合物5である)が形成されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物5(50.0mg、51.0μmol、36.7%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=980.09、観測m/z: 490.67[M/2+H]+及び980.07[M+H]+
【0120】
(化合物6の調製)
【化42】
化合物5(92.0mg、93.9μmol、1.0当量)のDMF(2mL)溶液に、DIEA(48.5mg、375μmol、65.4μL、4.0当量)及びピラゾール-1-カルボキシアミジン(13.8mg、93.9μmol、1.0当量)をN2雰囲気下で添加した。混合物を25℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5の大部分が消費されてしまい、化合物6についての所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物6(72.0mg、70.4μmol、75.0%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=1222.36、観測m/z: 512.1[(M-2*Boc)/2+H]+、1022.7[(M-2*Boc)+H]+
【0121】
(BCY10299の調製)
【化43】
化合物6(72.0mg、70.4μmol、1.0当量)のDCM(2.4mL)溶液に、TFA(900mg、8.00mmol、0.60mL、114.0当量)を添加し、25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物6が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮して、溶媒を除去した。残渣を分取HPLC(A: H2O中の0.075%TFA、B: ACN)により精製すると、BCY10299(15.2mg、14.0μmol、96.0%純度及び1.1mg、1.09μmol、97.1%純度;全体として21.4%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=966.02、観測m/z: 483.65[M/2+H]+及び966.12[M+H]+
【0122】
(BCY10297-(Dap-Val-Glu))
(化合物1の調製)
【化44】
DCMを、CTC樹脂(5mmol、4.50g、1.10mmol/g)を含有する容器に添加し、その後、N2バブリングしながら、Fmoc-Dap(Boc)-OH(2.13g、5mmol、1.0当量)を添加した。DIEA(4.0当量)を滴加し、樹脂を2時間混合した。MeOH(4.5mL)を添加し、樹脂を、30分間、再混合した。その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0123】
20%ピペリジン/DMFを添加し、30分間反応させておくことにより、Fmoc基を除去し、その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0124】
次のアミノ酸をカップリングさせるために、Fmoc-アミノ酸のDMF溶液を樹脂に添加し、30秒間混合し、その後、活性化剤及び塩基を添加した。連続的にN2バブリングしながら、カップリングを1時間反応させておいた。以下のアミノ酸を用いて、カップリング及びFmoc脱保護のラウンドを繰り返した。
【表6】
【0125】
最後のカップリングの後、樹脂をMeOHで3回洗浄し、その後、真空下で乾燥させた。側鎖保護ペプチドを含有するフラスコに20%HFIP/80%DCMを室温で添加することにより、樹脂からの切断を行った。その後、連続的にN2バブリングしながら、切断を繰り返した(各々1時間)。樹脂を濾過し、濾液を回収し、その後、濃縮して、溶媒を除去した。粗ペプチドを凍結乾燥させると、化合物2(2.27g、93.4%純度、69.1%収率)が得られた。予想MW=629.75、観測m/z: 630.10[(M-Boc)+H]+, 630.10[M+H]+
【0126】
(化合物2の調製)
【化45】
DCM(16.0mL)及びMeOH(8.00mL)中の化合物1(800mg、1.27mmol、1.0当量)の溶液に、(4-アミノフェニル)メタノール(188mg、1.52mmol、1.2当量)及びEEDQ(628mg、2.54mmol、2.0当量)を暗所で添加した。混合物を25℃で16時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=10:1、Rf=0.46)により、化合物1が完全に消費されていることが示された。LC-MSにより、化合物1が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。その後、該残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標); 40g SepaFlash(登録商標)シリカフラッシュカラム、0~20%MeOH/DCMの溶出剤@60mL/分)により精製すると、化合物2(600mg、816μmol、64.3%収率)が淡茶色の固体として得られた。予想MW=734.88、観測m/z: 635.09[(M-Boc)+H]+及び735.10[M+H]+
【0127】
(化合物3の調製)
【化46】
化合物2(600mg、816μmol、1.0当量)のDMF(8.00mL)溶液に、ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(745mg、2.45mmol、3.0当量)及びDIEA(422mg、3.27mmol、569μL、4.0当量)をN2雰囲気下で添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物2が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物3(630mg、700μmol、85.7%収率)が淡黄色の固体として得られた。予想MW=899.98、観測m/z: 799.99[(M-Boc)+H]+及び900.02[M+H]+
【0128】
(化合物4の調製)
【化47】
化合物3(630mg、700μmol、1.0当量)のDMF(8.00mL)溶液に、DIEA(362mg、2.80mmol、488μL、4.0当量)を添加し、N2雰囲気下で10分間撹拌した。その後、1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-7-ピペラジン-1-イル-キノリン-3-カルボン酸(447mg、1.40mmol、2.0当量)及びHOBt(189mg、1.40mmol、2.0当量)を混合物に添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を25℃での250mLのH2Oの添加により洗浄し、濾過し、減圧下で濃縮すると、粗化合物4(630mg、粗製物)が黄色の固体として得られ、これを、それ以上精製することなく、次の工程に使用した。予想MW=1080.20、観測m/z: 490.63[(M-Boc)/2+H]+及び1080.09[M+H]+
【0129】
(BCY10297の調製)
【化48】
化合物4(130mg、120μmol、1.0当量)のDCM(1.60mL)溶液に、TFA(596mg、5.23mmol、400μL、43.6当量)を添加した。混合物を25℃で0.5時間撹拌した。LC-MSにより、化合物4が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣を分取HPLC(A: H2O中の0.075%TFA、B: ACN)により精製すると、BCY10297(45.3mg、46.6μmol、38.7%収率、95.0%純度)が白色の固体として得られた。予想MW=923.68、観測m/z: 462.58[M/2+H]+及び924.07[M+H]+
【0130】
(BCY9695-(Agb-Val-Glu))
(化合物2の調製)
【化49】
DCMを、CTC樹脂(5mmol、4.50g、1.10mmol/g)容器を含有するに添加し、その後、N2バブリングしながら、Fmoc-Dab(Boc)-OH(2.20g、5mmol、1.0当量)を添加した。DIEA(4.0当量)を滴加し、樹脂を2時間混合した。MeOH(4.5mL)を添加し、樹脂を、30分間、再混合した。その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0131】
20%ピペリジン/DMFを添加し、30分間反応させておくことにより、Fmoc基を除去し、その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0132】
次のアミノ酸をカップリングさせるために、Fmoc-アミノ酸のDMF溶液を樹脂に添加し、30秒間混合し、その後、活性化剤及び塩基を添加した。連続的にN2バブリングしながら、カップリングを1時間反応させておいた。以下のアミノ酸を用いて、カップリング及びFmoc脱保護のラウンドを繰り返した。
【表7】
【0133】
最後のカップリングの後、樹脂をMeOHで3回洗浄し、その後、真空下で乾燥させた。側鎖保護ペプチドを含有するフラスコに20%HFIP/80%DCMを室温で添加することにより、樹脂からの切断を行った。その後、連続的にN2バブリングしながら、切断を繰り返した(各々1時間)。樹脂を濾過し、濾液を回収し、その後、濃縮して、溶媒を除去した。粗ペプチドを凍結乾燥させると、化合物2(2.60g、90.0%純度、72.6%収率)が得られた。予想MW=643.78、観測m/z: 644.4[M+H]+
【0134】
(化合物3の調製)
【化50】
DCM(10mL)及びMeOH(5mL)中の化合物2(500mg、777μmol、1.0当量)の溶液に、(4-アミノフェニル)メタノール(115mg、932μmol、1.2当量)及びEEDQ(384mg、1.55mmol、2.0当量)を暗所で添加した。混合物を25℃で12時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=10:1、Rf=0.38)により、化合物2が完全に消費されており、いくつかの新しいスポットが形成されることが示された。LC-MSにより、化合物2が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。その後、該残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標); 40g SepaFlash(登録商標)シリカフラッシュカラム、0~20%MeOH/DCMの溶出剤@40mL/分)により精製すると、化合物3(390mg、521μmol、67.1%収率)が淡黄色の固体として得られた。予想MW=748.44、観測m/z: 749.4[M+H]+
【0135】
(化合物4の調製)
【化51】
化合物3(390mg、521μmol、1.0当量)のDMF(4mL)溶液に、ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(475mg、1.56mmol、3.0当量)及びDIEA(269mg、2.08mmol、363μL、4.0当量)をN2雰囲気下で添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費されており、化合物4についての所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。残渣を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物4(400mg、438μmol、84.0%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=913.44、観測m/z: 913.60[M+H]+
【0136】
(化合物5の調製)
【化52】
化合物4(400mg、438μmol、1.0当量)のDMF(5mL)溶液に、DIEA(283mg、2.19mmol、381μL、5.0当量)を添加し、10分間撹拌した。その後、1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-7-ピペラジン-1-イル-キノリン-3-カルボン酸(280mg、875μmol、2.0当量)及びHOBt(118mg、875μmol、2.0当量)をN2雰囲気下で混合物に添加した。混合物を35℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物4が完全に消費されており、化合物5についての所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。残渣を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物5(310mg、283μmol、64.7%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=1093.55、観測m/z: 1093.77[M+H]+及び547.18[M/2+H]+
【0137】
(化合物6の調製)
【化53】
化合物5(305mg、279μmol、1.0当量)のDCM(5.70mL)溶液に、TFA(462mg、4.05mmol、0.30mL、14.5当量)を添加した。混合物を0℃で1時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5が完全に消費されており、2つの主ピーク(この場合、1つは所望の化合物6であり、もう1つは完全に保護された物質に対応する)が形成されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物6(205mg、206μmol、74.0%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=993.50、観測m/z: 993.72[M+H]+及び497.26[M/2+H]+
【0138】
(化合物7の調製)
【化54】
化合物6(205mg、206μmol、1.0当量)のDMF(3mL)溶液に、tert-ブチル(NZ)-N-[(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-ピラゾール-1-イル-メチレン]カルバメート(96.0mg、309μmol、1.5当量)及びDIEA(53.3mg、412μmol、71.8μL、2.0当量)をN2雰囲気下で添加した。混合物を25℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、化合物6が完全に消費されており、化合物7についての所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。残渣を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物7(70.0mg、56.6μmol、27.5%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=1235.62、観測m/z: 1257.66[M+Na]+及び618.21[M/2+H]+
【0139】
(BCY9695の調製)
【化55】
化合物7(70.0mg、56.6μmol、1.0当量)のDCM(0.90mL)溶液に、TFA(154mg、1.35mmol、100μL、23.8当量)を添加した。混合物を25℃で0.5時間撹拌した。LC-MSにより、化合物7が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。その後、該残渣を分取HPLC(A: H2O中の0.075%TFA、B: ACN)により精製すると、化合物BCY9695(21.9mg、22.1μmol、39.0%収率、98.9%純度)が白色の固体として得られた。予想MW=979.46、観測m/z: 979.60[M+H]+及び490.18[M/2+H]+
【0140】
(BCY10122-(Dab-Val-Glu))
(BCY10122の調製)
【化56】
化合物5(305mg、279μmol、1.0当量)のDCM(5.70mL)溶液に、TFA(462mg、4.05mmol、0.30mL、14.5当量)を添加した。混合物を0℃で1時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5が完全に消費されており、所望のm/z(計算MW:、観測m/z:)を有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣を分取HPLC(中性条件)により精製すると、BCY10122(50.2mg、52.0μmol、18.6%収率、97.1%純度)が白色の固体として得られた。予想MW=937.43、観測m/z: 469.24[M/2+H]+、937.65[M+H]+
【0141】
(BCY7761-(Cit-Val)
(化合物2の調製)
【化57】
化合物1(1.50g、3.24mmol、1.0当量)のDMF(20mL)溶液に、ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(2.96g、9.73mmol、3.0当量)及びDIEA(1.68g、13.0mmol、2.26mL、4.0当量)をN2雰囲気下で添加した。混合物を15℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物1が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物2(1.20g、1.91mmol、58.9%収率)が淡黄色の固体として得られた。予想MW=627.61、観測m/z: 627.94[M+H]+
【0142】
(化合物3の調製)
【化58】
化合物2(905mg、1.44mmol、1.15当量)のDMF(10mL)溶液に、DIEA(486mg、3.76mmol、655μL、3.0当量)を添加し、10分間撹拌した。その後、HOBt(195mg、1.44mmol、1.15当量)及びMMAE(900mg、1.25mmol、1.0当量)を混合物に添加した。混合物を35℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、化合物2が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物3(1.08g、895μmol、71.6%収率)が淡黄色の固体として得られた。予想MW=1206.48、観測m/z: 1206.25[M+H]+
【0143】
(BCY7761の調製)
【化59】
t-BuOH(10mL)及びH2O(10mL)中の化合物3(971mg、805μmol、1.1当量)、BCY3900(2.00g、732μmol、1.0当量)の溶液に、CuSO4(0.4M、1.83mL、1.0当量)及びトリス(3-ヒドロキシプロピル-トリアゾリルメチル)アミン(THPTA、318mg、732μmol、1.0当量)を添加した。その後、VcNa(0.4M、3.66mL、2.0当量)を混合物にN2雰囲気下で添加した。混合物を15℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費されており、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。EDTA(0.5M、1.5mL)を反応混合物に添加して、反応をクエンチした。その後、反応混合物を分取HPLC(A: H2O中の0.075%TFA、B: ACN)により精製すると、BCY7761(2.20g、539μmol、73.4%収率、96.5%純度)が白色の固体として得られた。予想MW=3939.45、観測m/z: 985.47[M/4+H]+及び1313.56[M/3+H]+
【0144】
(BCY9422-(Cit-Val)
(化合物2の調製)
【化60】
DCMを、CTC樹脂(10mmol、9.10g、1.10mmol/g)を含有する容器に添加し、その後、N2バブリングしながら、Fmoc-Cit-OH(3.98g、10mmol、1.0当量)を添加した。DIEA(4.0当量)を滴加し、樹脂を2時間混合した。MeOH(9.1mL)を添加し、樹脂を、30分間、再混合した。その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0145】
20%ピペリジン/DMFを添加し、30分間反応させておくことにより、Fmoc基を除去し、その後、樹脂から排水し、DMFで5回洗浄した。
【0146】
次のアミノ酸をカップリングさせるために、Fmoc-アミノ酸のDMF溶液を樹脂に添加し、30秒間混合し、その後、活性化剤及び塩基を添加した。連続的にN2バブリングしながら、カップリングを1時間反応させておいた。以下のアミノ酸を用いて、カップリング及びFmoc脱保護のラウンドを繰り返した。
【表8】
【0147】
最後のアミノ酸カップリングの後、樹脂をMeOHで3回洗浄し、その後、真空下で乾燥させた。側鎖保護ペプチドを含有するフラスコに20%HFIP/80%DCMを室温で添加することにより、樹脂からの切断を行った。その後、連続的にN2バブリングしながら、切断を繰り返した(各々1時間)。樹脂を濾過し、濾液を回収し、その後、濃縮して、溶媒を除去した。粗ペプチドを凍結乾燥させると、化合物2(粗製物、1.80g、91.82%純度、39.7%収率)が得られた。予想MW=415.49、観測m/z: 416.2[M+H]+
【0148】
(化合物3の調製)
【化61】
DCM(10mL)及びMeOH(5mL)中の化合物2(500mg、1.20mmol、1.0当量)の溶液に、(4-アミノフェニル)メタノール(178mg、1.44mmol、1.2当量)及びEEDQ(595mg、2.41mmol、2.0当量)を暗所で添加した。混合物を25℃で12時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=10:1、Rf=0.53)により、化合物2が完全に消費されていることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。該残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ISCO(登録商標); 40g SepaFlash(登録商標)シリカフラッシュカラム、0~25%MeOH/DCMの溶出剤@40mL/分)により精製すると、化合物3(380mg、730μmol、60.7%収率)が淡黄色の固体として得られた。
【化62】
【0149】
(化合物4の調製)
【化63】
化合物3(380mg、730μmol、1.0当量)のDMF(8mL)溶液に、ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(666mg、2.19mmol、3.0当量)及びDIEA(377mg、2.92mmol、509μL、4.0当量)を添加した。混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費されており、化合物4についての所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(中性条件)により精製すると、化合物4(368mg、537μmol、73.5%収率)が白色の固体として得られた。予想MW=685.32、観測m/z: 686.1[M+H]+
【0150】
(BCY9422の調製)
【化64】
化合物4(150mg、219μmol、1.0当量)のDMF(3mL)溶液に、DIEA(141mg、1.09mmol、191μL、5.0当量)を添加し、25℃で10分間撹拌した。その後、1-エチル-6-フルオロ-4-オキソ-7-ピペラジン-1-イル-キノリン-3-カルボン酸(105mg、328μmol、1.5当量)及びHOBt(29.6mg、219μmol、1.0当量)を混合物に添加した。混合物を35℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主ピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(A: H2O中の0.075%TFA、B: ACN)により精製すると、BCY9422(107.8mg、119μmol、54.6%収率、95.9%純度)が白色の固体として得られた。予想MW=865.95、観測m/z: 433.7[M/2+H]+及び866.2[M+H]+
【0151】
(血漿安定性解析)
プール凍結血漿を37℃の水浴中で解凍した。血漿を4000rpmで5分間遠心分離し、もしあれば、血餅を除去した。pHは、必要があれば、7.4±0.1に調整する。1mMストック溶液をDMSOを用いて調製した。5μLのストック溶液(10mM)を495μLの超純水で希釈することによって、100μMワーキング溶液を作製することにより、プロパンテリン(陽性対照)を調製した。10μLのストック溶液(1mM)を90μL DMSOで希釈することにより、試験化合物の100μMワーキング溶液を作製した。98μLのブランク血漿に、2μLの投与溶液(100μM)をスパイクして、2μMの最終濃度を2連で達成し、試料を、水浴中、37℃でインキュベートした。各々の時点(0、1、2、4、6、及び24時間)で、100%MeOH中の400μLの200ng/mLトルブタミド及びラベタロールを添加し、徹底的に混合して、タンパク質を沈殿させた。試料プレートを4,000rpmで15分間遠心分離した。上清のアリコート(150μL)を各々のウェルから移した後、LC-MS/MS分析にかけた。
【0152】
血漿中でのインキュベーション後の%残存試験化合物を、以下の等式を用いて算出した:
%残存=100×(指定のインキュベーション時間でのPAR/T0時間でのPAR)
(ここで、PARは、分析物対内部標準(IS)のピーク面積比である)。
【0153】
指定のインキュベーション時点は、T0(0時間)、Tn(n=0、1、2、4、6、24時間)である。半減期(T1/2)は、濃度対時間の対数線形プロットから算出した。
【0154】
最大インキュベーション時間(これは、本試験では24時間である)での%残存値が75%よりも高かった場合、それは、許容し得る実験的ばらつきの範囲内であるとみなされる。それゆえ、>57.8時間の対応するt1/2を報告した。
【0155】
(カテプシンB(CatB)アッセイ)
15μLの試験化合物溶液(DMSO中、2mM)をインキュベーションプレートに2連で添加した。30μLのカテプシンBストック溶液(16μM)を、1500μLの活性化バッファーを用いて、室温で10分間、予め活性化させた。カテプシンB溶液を13.17mLの水に希釈し、その後、735μLの活性化酵素混合物をインキュベーションプレートに添加した。混合物を、水浴中、37℃でインキュベートした。様々な時点(例えば、0h、1h、2h、4h、6h、24h)で、100μLのアリコートを採取して、400μLの冷えたIS強化クエンチング溶液でクエンチすることにより、反応を終了させた。試料を混合し、4000rpmで20分間遠心分離した。50μLの上清を、150μLの超純水を含有する新しいプレート中に取り、試料を徹底的に混合した後、LC-MS/MS分析にかけた。
【0156】
(異種移植モデル)
細胞由来異種移植(CDX)モデルのために、マウス(balb/cヌード、雌、試験開始時に18~23g)に、HT1080細胞(右脇腹に、0.2ml PBS中5.0×106細胞/マウス)を接種した。平均腫瘍体積が予め指定した出発サイズに達したとき、動物を無作為に割り付けた。グループのサイズは、n=4である。全ての試験に、ビヒクル処置対照が含まれた。
【0157】
投与は、急速静注により行った。腫瘍体積を、キャリパーを用いて2次元で測定し、体積を、式:V=0.5a×b2(式中、a及びbは、それぞれ、腫瘍の長径及び短径である)を用いて、mm3で表した。異種移植試験は全て、Wuxi AppTec Co. Ltd.(Shanghai)で行われた。
【0158】
(CD-1マウスにおける二環コンジュゲート及び遊離ペイロードの血漿薬物動態)
雄CD-1マウスに、尾静脈注射を介して、25mMヒスチジンHCl、10%スクロース、pH 7中に製剤化された各々の二環コンジュゲートを投与した。連続採血(約80μL血液/時点)を、各々の時点で、下顎下静脈又は伏在静脈経由で行った。全ての血液試料を、抗凝固薬としての2μLのK2-EDTA(0.5M)を含有する予冷した微量遠心チューブにすぐに移し、濡れた氷の上に置いた。血液試料を、約4℃、3000gでの遠心分離によって、血漿用にすぐに処理した。内部標準(350μL)を含む沈殿を35μLの血漿試料中にすぐに添加し、よく混合し、3220g、4℃で15分間遠心分離した。上清を、予めラベリングしたポリプロピレン微量遠心チューブに移し、その後、ドライアイス上で瞬間凍結させた。必要な場合、分析するまで、試料を70℃以下で保存した。上清試料を50μLの水と混合し、十分にボルテックス処理し、3220g、4℃で15分間遠心分離した。Acquity UPLCをAB Sciex 6500+Triple Quad MSとともにポジティブイオンモードで用いて、上清の試料をLC-MS/MS分析用に注入し、二環コンジュゲート及び遊離ペイロードの濃度を決定した。血漿濃度対時間データを、Phoenix WinNonlin 6.3ソフトウェアプログラムを用いるノンコンパートメント手法によって解析した。C0、Cl、Vdss、T1/2、AUC(0-last)、AUC(0-inf)、MRT(0-last)、MRT(0-inf)、及び血漿濃度対時間プロファイルのグラフを報告した。
【0159】
(血漿、筋肉、及び腫瘍試料中のMMAEの測定)
インビボ異種移植試験からの腫瘍の試料を計量し、ホモジナイズした(プロテアーゼ阻害剤を含むホモジナイゼーションバッファーに10×希釈)。その後、腫瘍ホモジネート及び血漿を標準的な手順に従ってLC-MS/MSにより分析した。
【0160】
(被験化合物)
以下の試験に使用される化合物を、PAB自己犠牲基を介して、本発明のジ/トリペプチドリンカーにコンジュゲートされた、代用ペイロードとして使用されるノルフロキサシンを用いて上述の通りに構築した。ペプチドリンカーを、以下で模式的に示されているように、N-末端で、5-(ジメチルアミノ)-5-オキソペンタン酸でキャッピングした:
【化65】
【0161】
(二環毒素コンジュゲート(BTC))
アジド担持毒素/リンカー配列を調製することにより、本発明のジ/トリペプチドリンカーを組み込んだBTCを合成した。ここでは、MMAE細胞毒素を、PAB自己犠牲基を介して、ペプチド切断性リンカーに連結させ、これを、銅触媒アジド-アルキン付加環化を用いて、二環式ペプチドMT1-MMPバインダー(BCY3900; WO 2016/067035号に配列番号5として記載されている)にコンジュゲートした。
【化66】
【0162】
(実施例1:本発明のリンカーを用いた血漿安定性解析)
CatB感受性ジペプチドリンカーCit-Val中のシトルリン残基と塩基性非天然アミノ酸との交換は、インビトロでマウス血漿とともにインキュベートしたとき、非特異的切断に対するリンカーの安定性を増大させることが示された。これは、Cit-Valリンカー(BCY9422)と比較したときの被験化合物についての表1の半減期の延長によって示されている。
表1:ジペプチドリンカー中でのP1のCitと塩基性非天然アミノ酸との交換
【表9】
【0163】
いくつかの場合、例えば、Agb及びDabの場合、シトルリンが(Cit-Valよりも高いマウス血漿安定性を有すると報告されている)Cit-Val-Gluモチーフを含有するリンカー内で交換されるときに相加効果が見られ、この場合、塩基性残基を組み込んだ類似のリンカーは、表2に示されているように、Cit-Val-Gluを上回るマウス血漿安定性のさらなる増大を示す。
表2:トリペプチドリンカー中でのP1のCitと塩基性非天然アミノ酸との交換
【表10】
【0164】
P1位置に塩基性非天然アミノ酸を有するリンカーを組み込んだBTCは、マウス血漿に対する安定性の増大を示し、例えば、Dab-Val切断性リンカーを有するBTC(表3のBCY10989を参照)は、Cit-Val(表3のBCY7761を参照)の場合の6.8時間と比較して、マウス血漿(EDTA抗凝固薬)中で30.8時間の半減期を有する。
【0165】
GluがP3位置に組み込まれているとき、P1位置にDabを有するリンカーは、そのCit対応物と比較して、血漿中での安定性の増強を示す(ヒト血漿中でのDab-Val-Gluと比較したCit-Val-Glu、ラット及びマウス血漿EDTA抗凝固薬中でのDab-1Nal-Gluと比較したCit-1Nal-Gluを参照)。
表3: BTCの血漿安定性
【表11】
【0166】
(実施例2:本発明のリンカーを用いたCatB切断率解析)
CatB感受性ジペプチドリンカーCit-Val中のシトルリン残基と塩基性非天然アミノ酸との交換は、リンカーのカテプシンB切断率も調節する。例えば、Dab、Agb、及びAgb(Me)は、各々、Cit-Valと比較したインビトロでのカテプシンBによる切断率を増大させる(表4を参照)。Dap及びDap(CNNH2)は、切断率を減少させる(表4を参照)。
表4:ジペプチドリンカー中でのP1のCitと塩基性非天然アミノ酸との交換
【表12】
【0167】
CatB感受性トリペプチドリンカーCit-Val-Glu中のシトルリン残基と塩基性非天然アミノ酸との交換は、リンカーのカテプシンB切断率を調節する。例えば、Dab及びAgbは、Cit-Valと同様のインビトロでのカテプシンBによる切断率を示す(表5を参照)。Dap及びDap(CNNH2)との置換は、切断率を減少させる(表5を参照)。
表5:トリペプチドリンカー中でのP1のCitと塩基性非天然アミノ酸との交換
【表13】
【0168】
リンカーのカテプシンB切断率は、様々な非天然アミノ酸をP1及びP2位置に導入することにより調節することができる。BTCを用いたCatB切断解析の結果は、表6に見ることができ、ここでは、Cit-Valリンカー中でのCitとDabとの交換によって、よりゆっくりと切断されるリンカーが生じる。Gluがこれらの配列中にP3位置で導入されるとき、2つのリンカー間の切断率は同程度である。P1位置をDapと交換することにより、リンカーのCatB切断が顕著に遅延する。P2位置のValを1Nalと交換することにより、CatB切断が顕著に遅延するのに対し、その位置異性体2Nalでは、切断反応速度がわずかに低下するだけである。P2へのDpaの組み込みは、CatB切断率を劇的に低下させ、cBuは、切断を完全に阻害する。
表6: BTCのCatB切断
【表14】
【0169】
(実施例3:本発明のリンカーを用いた血漿タンパク質結合解析)
P1及びP2位置のアミノ酸を変化させることは、BTCの血漿タンパク質結合を調節することができる。表7は、P1位置のCitをDabに交換することが未結合のパーセンテージを増大させることを示している。P2位置のValと1Nalとの交換は、%未結合を減少させる。
表7: BTCの血漿タンパク質結合
【表15】
【0170】
(実施例4:本発明のリンカーを用いた薬物動態解析)
ジペプチドリンカーアミノ酸の交換は、BTCの薬物動態(PK)プロファイルを変化させることができる。
【0171】
(マウス)
図1~6及び表8に示されている結果は、P2位置に1Nalを含有するリンカーがマウスPK試験において半減期の延長を示すことを示している。増大したマウス血漿安定性を有するリンカーは、(親化合物と比べて)血漿中の遊離MMAE対Cit-Valのより低い相対レベルを示す。
表8:マウスにおける薬物動態解析のまとめ
【表16】
【0172】
(ラット)
図7及び8並びに表9に示されているラットPK実験の結果は、BCY10984が、Cit-Val類似体BCY7761と比較して、延長された半減期を有することを示している。血漿中の遊離MMAE毒素も(無傷の親と比べて)少ない。
表9:ラットにおける薬物動態解析のまとめ
【表17】
【0173】
(実施例5:腫瘍における腫瘍低下効力及び毒素レベル)
図9及び10に示されている結果は、BCY10984(Cit-1Nal-Gluリンカー)がマウスCDXモデル(HT1080細胞)でBCY7761(BT1769-Cit-Valリンカー)よりも高い効力を示し、完全な腫瘍クリアランスが、1回の投与の後に、1mg/kg及び3mg/kgで示されることを示した。動物の体重は、これらの用量で影響を受けない。
【0174】
図11~15に示されている結果は、BCY10984をHT1080腫瘍を担持するマウスに投与したとき、同じ用量のBT1769と比較して、より高いレベルのMMAE毒素が腫瘍で観察されることを示している。同様のMMAEレベルは、血漿及び筋肉組織に存在する。
【0175】
(実施例6: BALB/cヌードマウスでのHT1080異種移植モデルにおける本発明のリンカーを用いたインビボ有効性試験)
((a)試験目的)
本試験の目的は、BALB/cヌードマウスでのHT1080異種移植モデルにおけるBCY10984及びBCY12951(BCY10984と同じであるが、非結合性二環式ペプチドリガンドにコンジュゲートされたリンカーを含有する、すなわち、組成: MMAE-PAB-(Dab-Val-Glu)-非結合性二環式ペプチドを有する薬物コンジュゲート)のインビボ治療有効性を評価することであった。
【0176】
((b)実験デザイン)
【表18】
注:マウスは、2~3回の投与サイクル後、39日目までモニタリングした
グループ5及び6のマウスに、14日目及び28日目に、45μMのBCY10984を投与した。
【0177】
((c)材料)
((i)動物及び飼育条件)
(動物)
種:マウス(Mus Musculus)
系統: BALB/cヌード
齢: 6~8週
性別:雌
体重: 18~22g
動物の数: 35匹のマウス+スペア
動物の供給元: Shanghai Lingchang Biotechnology Experimental Animal Co. LTD
【0178】
(飼育条件)
マウスは、一定の温度及び湿度の個々の換気ケージ内で、各々のケージに動物を5匹にして、飼育した。
・温度: 20~26℃
・湿度40~70%
ケージ:ポリカーボネート製。サイズは、375mm×215mm×180mmである。動物に寝床を与える材料はトウモロコシの穂軸であり、これは、週に2回交換する。
食餌:全試験期間中、動物は照射滅菌されたドライグラニュールフードを自由に摂取することができた。
水:動物は、滅菌飲料水を自由に摂取することができた。
ケージ識別:各々のケージの識別表示には、以下の情報が含まれた:動物の数、性別、系統、受入日、処置、試験数、群番号、及び処置の開始日。
動物識別:動物は、耳コーディングによりマーキングした。
【0179】
((d)実験の方法及び手順)
((i)細胞培養)
HT1080細胞を、大気中5%CO2の雰囲気下、37℃で、10%熱非働化胎仔ウシ血清が補充されたEMEM培地中で維持した。腫瘍細胞を、週に2回、定期的に継代培養した。指数増殖期の細胞増殖物を回収し、腫瘍接種用に計数した。
【0180】
((ii)腫瘍接種)
腫瘍を発生させるために、各々のマウスの右脇腹に、0.2mlのPBS中のHT1080腫瘍細胞(5×106個)を皮下接種した。平均腫瘍体積が320mm3に達したとき、有効性試験のために、動物を無作為に割り付けた。試験品投与及び各々の群の動物数を実験デザインの表に示した。
【0181】
((iii)試験品製剤調製)
【表19】
【0182】
((iv)観察)
試験における動物の取扱い、管理、及び処置に関する手順は全て、実験動物管理評価認証協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)(AAALAC)のガイダンスに従って、WuXi AppTecの施設内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)によって承認されたガイドラインに準拠して行われた。定期モニタリングのときに、動物を、移動性、食物及び水の消費(観察のみによる)、体重の増加/減少、目/髪の毛のマット化などの通常の行動に対する腫瘍増殖及び処置の任意の効果、並びにプロトコルに記載されている任意の他の異常効果についてチェックした。死亡及び観察された臨床症状を各々のサブセット内の動物の数に基づいて記録した。
【0183】
((v)腫瘍測定及びエンドポイント)
主要エンドポイントは、腫瘍増殖を遅延させることができるかどうか、又はマウスを治癒させることができるかどうかを確かめることであった。腫瘍体積は、キャリパーを用いて、2次元で週に3回測定し、体積は、式: V=0.5a×b2(式中、a及びbは、それぞれ、腫瘍の長径と短径である)を用いてmm3で表した。次に、この腫瘍サイズをT/C値の算出に用いた。T/C値(%単位)は、抗腫瘍効果の指標であり; T及びCは、それぞれ、所与の日の処置群及び対照群の平均体積である。
【0184】
TGIは、式: TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100を用いて、各々の群について算出し; Tiは、所与の日の処置群の平均腫瘍体積、T0は、処置開始日の処置群の平均腫瘍体積、Viは、Tiと同じ日のビヒクル対照群の平均腫瘍体積、V0は、処置開始日のビヒクル群の平均腫瘍体積である。
【0185】
((vi)統計解析)
平均及び平均の標準誤差(SEM)を含む簡易統計を各々の時点における各々の群の腫瘍体積について提供した。
【0186】
群間の腫瘍体積の差の統計解析を最終投与後の最良の処置時点で得られたデータに対して行った。
【0187】
一元配置ANOVAを行って、群間の腫瘍体積を比較し、有意なF-統計(処置分散と誤差分散の比)が得られた場合、群間の比較をゲームス・ハウエル(Games-Howell)検定で行った。両側T検定を行って、2群間の腫瘍体積を比較した。データは全て、GraphPad 5.0を用いて解析した。P<0.05を統計的に有意であるとみなした。
【0188】
((e)結果)
((i)腫瘍増殖曲線)
腫瘍増殖曲線は、図16及び17に示されている。
【0189】
((ii)腫瘍体積トレース)
HT1080腫瘍を担持する雌BALB/cヌードマウスにおける経時的な平均腫瘍体積は、表10に示されている。
表10:経時的な腫瘍体積トレース
【表20】
【0190】
((iii)腫瘍増殖阻害解析)
HT1080異種移植モデルにおけるBCY10984及びBCY12951の腫瘍増殖阻害率を、処置の開始から11日後の腫瘍体積測定値に基づいて算出した。
表11:腫瘍増殖阻害解析
【表21】
a.平均±SEM;
b.腫瘍増殖阻害は、処置群の群平均腫瘍体積を対照群の群平均腫瘍体積で除すること(T/C)により算出される。
【0191】
((f)結果のまとめ及び考察)
本試験では、HT1080異種移植モデルにおけるBCY10984及びBCY12951の治療有効性を評価した。様々な時点での全処置群の測定された腫瘍体積は、図16及び17並びに表10及び11に示されている。
【0192】
ビヒクル処置マウスの平均腫瘍体積は、処置の開始後11日目に1731mm3に達した。5μM qw(TV=1257mm3、TGI=33.6%、p>0.05)、15μM qw(TV=288mm3、TGI=102.3%、p<0.001)、及び45μM qw(TV=15mm3、TGI=121.6%、p<0.001)のBCY10984は、用量依存的な抗腫瘍活性を示した。これらの中で、45μM qwのBCY10984は、16日目に腫瘍を完全に根絶させた。5μM qw(TV=1011mm3、TGI=51.1%、p<0.01)及び45μM qw(TV=901mm3、TGI=58.9%、p<0.001)のBCY12951は、有意な抗腫瘍活性を示した。
【0193】
2つの試験品間の抗腫瘍効力を比較したとき、5μMのBCY10984は、5μMのBCY12951(p>0.05)と同程度の抗腫瘍効力を示し、15μM及び45μMのBCY10984は、同じモル濃度投薬量(15μMのBCY10984対15μMのBCY12951、p<0.001; 45μMのBCY10984対45μMのBCY12951、p<0.001)のBCY12951よりも強力な効力を示した。
【0194】
グループ5及び6の7匹の動物を、1291mm3の平均出発腫瘍サイズで、45μMのBCY10984で処置した。1回目の投与の後に、全てのマウスが急激な腫瘍退縮を示し、2回目の投与の後に、全ての腫瘍が完全に根絶された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】