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特表2023-536217開気孔率を有するセラミックビーズから作製されたセラミック物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】開気孔率を有するセラミックビーズから作製されたセラミック物品
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20230817BHJP
   C04B 38/08 20060101ALI20230817BHJP
   C04B 35/195 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
C04B38/08 D
C04B35/195
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580072
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 US2021043639
(87)【国際公開番号】W WO2022026664
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】63/059,631
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/071,717
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】バックハウス-リクー,モニカ
(72)【発明者】
【氏名】ボハート,リンダ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】コンウェイ,ブレント ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フュークス,ザカリー アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ワーク,キンバリー ルイーズ
【テーマコード(参考)】
4G019
【Fターム(参考)】
4G019FA12
4G019FA13
4G019LB01
4G019LD02
(57)【要約】
セラミック物品および製造する方法。セラミック物品は、多孔質球状セラミックビーズの相互接続したネットワークを有する微細構造を有する多孔質セラミック材料を有する。微細構造は、ビーズのビーズ内開気孔率と、相互接続したネットワーク内のビーズ間の隙間により定義されるビーズ間気孔率との合計として定義される全開気孔率を有する。微細構造は、ビーズ内開気孔率に対応するビーズ内ピークと、ビーズ間気孔率に対応するビーズ間ピークとを有する双峰性気孔サイズ分布を有する。ビーズ内気孔率のビーズ内中位気孔サイズは、ビーズ間気孔率のビーズ間中位気孔サイズよりも小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック物品であって、
多孔質球状セラミックビーズの相互接続したネットワークを有する微細構造を有する多孔質セラミック材料を有し、前記微細構造は、前記ビーズのビーズ内開気孔率と、前記相互接続したネットワーク内の前記ビーズ間の隙間により定義されるビーズ間気孔率との合計として定義される全開気孔率を有し、
前記微細構造は、前記ビーズ内開気孔率に対応するビーズ内ピークと、前記ビーズ間気孔率に対応するビーズ間ピークとを有する双峰性気孔サイズ分布を有し、前記ビーズ内気孔率のビーズ内中位気孔サイズは、前記ビーズ間気孔率のビーズ間中位気孔サイズよりも小さい、
セラミック物品。
【請求項2】
前記ビーズ内開気孔率は、前記相互接続したネットワークにより定義される全体積に対して少なくとも10%であり、前記ビーズ間気孔率は、前記相互接続したネットワークの前記全体積に対して少なくとも40%である、請求項1記載のセラミック物品。
【請求項3】
前記セラミックビーズは、コーディエライトを少なくとも80質量%有する、請求項1または2記載のセラミック物品。
【請求項4】
前記多孔質セラミックビーズは、5%未満のビーズ閉気孔率を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のセラミック物品。
【請求項5】
ビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で6μmである、請求項1から4までのいずれか1項記載のセラミック物品。
【請求項6】
ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で2μmである、請求項1から5までのいずれか1項記載のセラミック物品。
【請求項7】
前記全気孔率は、少なくとも55%であり、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、前記双峰性気孔サイズ分布は、最大で3μmのD10値、5μm~18μmのD50値、および最大で2μmのD75-D50値を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のセラミック物品。
【請求項8】
前記多孔質セラミックビーズの前記ビーズ内開気孔率は、前記ビーズの体積に対して平均で少なくとも20%である、請求項1から7までのいずれか1項記載のセラミック物品。
【請求項9】
1つ以上の前記ビーズ間気孔率は、6μm~20μmの範囲内の中位気孔サイズを有し、前記ビーズ内中位気孔サイズは、1μm~5μmの範囲内にある、請求項1から8までのいずれか1項記載のセラミック物品。
【請求項10】
セラミック物品を製造する方法であって、
多孔質セラミック材料をそれぞれ有する複数の多孔質セラミックビーズを有するバッチ混合物を相互に混合するステップであって、前記多孔質セラミックビーズの前記多孔質セラミック材料は、ビーズ内開気孔率を有し、前記多孔質セラミックビーズは、25~40μmの中位ビーズサイズを有する、混合するステップと、
前記バッチ混合物を未焼成セラミック物品に成形するステップと、
前記多孔質セラミックビーズを一緒に焼結させて該多孔質セラミックビーズの相互接続したネットワークにすることにより前記セラミック物品を形成するために、前記未焼成セラミック物品を焼成するステップと
を有し、
前記相互接続したネットワーク内の前記ビーズ間の隙間は、前記セラミック物品のビーズ間気孔率を定義し、
前記ビーズ内気孔率と前記ビーズ間気孔率との合計として定義される前記セラミック物品の全気孔率は、前記セラミック物品の全体積に対して少なくとも50%であり、
前記セラミック物品は、前記ビーズ内気孔率のビーズ内中位気孔サイズが、前記ビーズ間気孔率のビーズ間中位気孔サイズよりも小さい双峰性気孔サイズ分布を有する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2020年8月28日に出願された米国仮特許出願第63/071,717号明細書および2020年7月31日に出願された米国仮特許出願第63/059,631号明細書の優先権の権利を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、セラミック物品、より詳細には、高い開気孔率を有するセラミックビーズの相互接続したネットワークを有するセラミックハニカム体を含むセラミック物品に関する。
【背景技術】
【0003】
ハニカム体は、例えば内燃機関の排気中の汚染物質を処理するパティキュレートフィルタおよび触媒コンバータのような多様な用途に使用される。セラミックハニカム体を製造するプロセスは、バッチ材料をハニカム押出ダイを通して押し出すことと、得られた未焼成ハニカム体を焼成することとを含むことができる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書には、セラミック物品であって、多孔質球状セラミックビーズの相互接続したネットワークを有する微細構造を有する多孔質セラミック材料を有し、微細構造は、ビーズのビーズ内開気孔率と、相互接続したネットワーク内のビーズ間の隙間により定義されるビーズ間気孔率との合計として定義される全開気孔率を有し、微細構造は、ビーズ内開気孔率に対応するビーズ内ピークと、ビーズ間気孔率に対応するビーズ間ピークとを有する双峰性気孔サイズ分布を有し、ビーズ内気孔率のビーズ内中位気孔サイズは、ビーズ間気孔率のビーズ間中位気孔サイズよりも小さい、セラミック物品が開示されている。
【0005】
幾つかの実施形態では、ビーズ内開気孔率は、相互接続したネットワークにより定義される全体積に対して少なくとも10%であり、ビーズ間気孔率は、相互接続したネットワークの全体積に対して少なくとも40%である。
【0006】
幾つかの実施形態では、ビーズ内開気孔率は、ビーズの体積に対して少なくとも9%であり、全気孔率は、少なくとも50%である。
【0007】
幾つかの実施形態では、セラミックビーズは、コーディエライトを少なくとも80質量%有する。
【0008】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミックビーズは、コーディエライトを少なくとも85質量%有する。
【0009】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミック材料の結晶質相は、コーディエライトを少なくとも90質量%有する。
【0010】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミック材料の結晶質相は、コーディエライトを少なくとも95質量%有する。
【0011】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミックビーズは、5%未満のビーズ閉気孔率を有する。
【0012】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミックビーズは、2.5%未満のビーズ閉気孔率を有する。
【0013】
幾つかの実施形態では、ビーズ内開気孔率は、全体積に対して少なくとも12%である。
【0014】
幾つかの実施形態では、ビーズ内開気孔率は、全体積に対して少なくとも15%である。
【0015】
幾つかの実施形態では、ビーズ間気孔率は、少なくとも45%である。
【0016】
幾つかの実施形態では、ビーズ間気孔率は、少なくとも50%である。
【0017】
幾つかの実施形態では、全気孔率は、少なくとも50%である。
【0018】
幾つかの実施形態では、全気孔率は、少なくとも55%である。
【0019】
幾つかの実施形態では、全気孔率は、少なくとも60%である。
【0020】
幾つかの実施形態では、ビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で6μmである。
【0021】
幾つかの実施形態では、ビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で5.5μmである。
【0022】
幾つかの実施形態では、ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で2μmである。
【0023】
幾つかの実施形態では、ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で1.5μmである。
【0024】
幾つかの実施形態では、双峰性気孔サイズ分布は、水銀圧入ポロシメトリーによって決定する場合、ビーズ内中位気孔サイズとビーズ間中位気孔サイズとの間にある気孔サイズで局所極小差分圧入値を有し、局所極小差分圧入値は、ビーズ間ピークの極大差分圧入値の20%未満である。
【0025】
幾つかの実施形態では、双峰性気孔サイズ分布は、水銀圧入ポロシメトリーによって決定する場合、ビーズ内中位気孔サイズとビーズ間中位気孔サイズとの間にある気孔サイズで局所極小差分圧入値を有し、局所極小差分圧入値は、ビーズ間ピークの極大差分圧入値の15%未満である。
【0026】
幾つかの実施形態では、双峰性気孔サイズ分布は、水銀圧入ポロシメトリーによって決定する場合、ビーズ内中位気孔サイズとビーズ間中位気孔サイズとの間にある気孔サイズで局所極小差分圧入値を有し、局所極小差分圧入値は、ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅の値よりも小さい。
【0027】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の双峰性気孔サイズ分布のD10値は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で3μmである。
【0028】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の双峰性気孔サイズ分布のD10値は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で2.5μmである。
【0029】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の双峰性気孔サイズ分布のD10値は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で2μmである。
【0030】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の双峰性気孔サイズ分布のD75-D50値は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で2μmである。
【0031】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の双峰性気孔サイズ分布のD75-D50値は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で1.5μmである。
【0032】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の双峰性気孔サイズ分布のD50/D10比は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、少なくとも3である。
【0033】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の双峰性気孔サイズ分布のD50/D10比は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、少なくとも4である。
【0034】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の双峰性気孔サイズ分布のD50/D10比は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、少なくとも5である。
【0035】
幾つかの実施形態では、全気孔率は、少なくとも55%であり、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、ビーズ間中位気孔サイズは、6μm~20μmであり、ビーズ内中位気孔サイズは、1.5μm~4μmであり、双峰性気孔サイズ分布のビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅は、最大で5.5μmであり、双峰性気孔サイズ分布のビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅は、最大で2μmであり、ビーズ内中位気孔サイズとビーズ間中位気孔サイズとの間にある気孔サイズに位置する気孔サイズ分布の局所極小差分圧入値は、ビーズ間ピークの極大差分圧入値の15%未満である。
【0036】
幾つかの実施形態では、全気孔率は、少なくとも55%であり、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、双峰性気孔サイズ分布は、最大で3μmのD10値、5μm~18μmのD50値、および最大で2μmのD75-D50値を有する。
【0037】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミックビーズのビーズ内開気孔率は、ビーズの体積に対して平均で少なくとも20%である。
【0038】
幾つかの実施形態では、ビーズの材料のビーズ内開気孔率は、ビーズの体積に対して平均で少なくとも25%である。
【0039】
幾つかの実施形態では、ビーズの材料のビーズ内開気孔率は、ビーズの体積に対して平均で少なくとも30%である。
【0040】
幾つかの実施形態では、ビーズ間気孔率は、6μm~20μmの範囲内の中位気孔サイズを有する。
【0041】
幾つかの実施形態では、ビーズ間中位気孔サイズは、8μm~18μmの範囲内にある。
【0042】
幾つかの実施形態では、ビーズ間中位気孔サイズは、9μm~17μmの範囲内にある。
【0043】
幾つかの実施形態では、ビーズ内中位気孔サイズは、1μm~5μmの範囲内にある。
【0044】
幾つかの実施形態では、ビーズ内中位気孔サイズは、1.5μm~4μmの範囲内にある。
【0045】
幾つかの実施形態では、ビーズ内中位気孔サイズは、1.5μm~3μmの範囲内にある。
【0046】
幾つかの実施形態では、ビーズ内中位気孔サイズは、1.5μm~2μmの範囲内にある。
【0047】
幾つかの実施形態では、ビーズ内中位気孔サイズは、1μm~2μmの範囲内にある。
【0048】
幾つかの実施形態では、ビーズは、20μm~50μmの範囲内の中位粒子サイズを有する。
【0049】
幾つかの実施形態では、ビーズは、25μm~40μmの範囲内の中位粒子サイズを有する。
【0050】
本明細書には、上記段落のいずれか1つ記載のセラミック物品を有するセラミックハニカム体であって、セラミック物品は、多孔質セラミック材料を有する複数の交差する壁を有し、交差する壁は、セラミックハニカム体を第1の端面から第2の端面まで通って長手方向に延びる複数の通路を形成する、セラミックハニカム体も開示されている。
【0051】
幾つかの実施形態では、交差する壁の多孔質セラミック材料は、コーディエライトを少なくとも90質量%有し、多孔質セラミックビーズは、5%未満のビーズ内閉気孔率を有し、全気孔率は、少なくとも50%であり、ビーズのビーズ内開気孔率は、ビーズの体積に対して少なくとも20%であり、ビーズは、20μm~50μmの範囲内の中位粒子サイズを有する。
【0052】
本明細書には、上記段落のいずれか記載のセラミックハニカム体を有するパティキュレートフィルタも開示されている。
【0053】
幾つかの実施形態では、ハニカム体の通路は、第1の端面と第2の端面とでチェッカーボードパターンに交互に目封止されている。
【0054】
本明細書には、セラミック物品を製造する方法であって、多孔質セラミック材料をそれぞれ有する複数の多孔質セラミックビーズを有するバッチ混合物を相互に混合するステップであって、多孔質セラミックビーズの多孔質セラミック材料は、ビーズ内開気孔率を有し、多孔質セラミックビーズは、25~40μmの中位ビーズサイズを有する、混合するステップと、バッチ混合物を未焼成セラミック物品に成形するステップと、多孔質セラミックビーズを一緒に焼結させて多孔質セラミックビーズの相互接続したネットワークにすることによりセラミック物品を形成するために、未焼成セラミック物品を焼成するステップとを有し、相互接続したネットワーク内のビーズ間の隙間は、セラミック物品のビーズ間気孔率を定義し、ビーズ内気孔率とビーズ間気孔率との合計として定義されるセラミック物品の全気孔率は、セラミック物品の全体積に対して少なくとも50%であり、セラミック物品は、ビーズ内気孔率のビーズ内中位気孔サイズが、ビーズ間気孔率のビーズ間中位気孔サイズよりも小さい双峰性気孔サイズ分布を有する、方法が開示されている。
【0055】
幾つかの実施形態では、バッチ混合物を形成する前に、方法は、セラミック前駆材料の混合物を有するスラリー混合物を形成するステップと、スラリー混合物を球状未焼成凝集体に球状化するステップと、セラミック前駆材料を多孔質セラミック材料に変換することにより多孔質セラミックビーズを形成するために、未焼成凝集体を焼成するステップとをさらに有する。
【0056】
幾つかの実施形態では、セラミックビーズは、コーディエライトを少なくとも80質量%有する。
【0057】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミック材料の結晶質相は、少なくとも90質量%のコーディエライトである。
【0058】
幾つかの実施形態では、方法は、バッチ混合物を相互に混合するステップの前に、多孔質セラミックビーズの中位粒子サイズに影響を与えるために、未焼成凝集体を篩別するか、または多孔質セラミックビーズを篩別するステップをさらに有する。
【0059】
幾つかの実施形態では、スラリー混合物を球状化するステップは、噴霧乾燥プロセスを有する。
【0060】
幾つかの実施形態では、スラリー混合物を球状化するステップは、回転蒸発プロセスを有する。
【0061】
幾つかの実施形態では、セラミック前駆材料は、シリカ源と、アルミナ源と、マグネシア源とを有し、多孔質セラミックビーズの多孔質セラミック材料は、コーディエライトを有する。
【0062】
幾つかの実施形態では、バッチ混合物は、有機結合剤と無機結合剤とをさらに有する。
【0063】
幾つかの実施形態では、バッチ混合物は、無機結合剤と多孔質セラミックビーズとの全質量に対して、60質量%~95質量%の範囲の量で多孔質セラミックビーズを有する。
【0064】
幾つかの実施形態では、無機結合剤は、複数の剪断結合剤凝集体を有し、剪断結合剤凝集体は、1つ以上の無機セラミック前駆材料と結合剤との未焼成混合物を有する。
【0065】
幾つかの実施形態では、ビーズ内開気孔率は、セラミック物品の全体積に対して少なくとも10%である。
【0066】
幾つかの実施形態では、ビーズ間気孔率は、セラミック物品の全体積に対して少なくとも40%である。
【0067】
幾つかの実施形態では、ビーズ内気孔率は、ビーズの体積に対して少なくとも9%である。
【0068】
幾つかの実施形態では、ビーズ内気孔率は、ビーズの体積に対して少なくとも15%である。
【0069】
幾つかの実施形態では、ビーズ内気孔率は、ビーズの体積に対して少なくとも20%である。
【0070】
幾つかの実施形態では、セラミック物品は、セラミックハニカム体であり、バッチ混合物を成形するステップは、バッチ混合物をハニカム押出ダイに通して押し出すステップを有し、セラミックハニカム体は、多孔質セラミック材料を有する複数の交差する壁を有し、交差する壁は、第1の端面から第2の端面までハニカム体を通って長手方向に延びる複数の通路を形成する。
【0071】
幾つかの実施形態では、ハニカム体からフィルタを作製するために、通路を第1の端面と第2の端面とでチェッカーボードパターンに交互に目封止するステップをさらに有する。
【0072】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方は、例示的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載された主題の性質および特徴を理解するための概要または骨格を提供することを意図していることを理解されたい。添付の図面は、更なる理解を提供するために含まれており、本明細書の一部分に組み込まれかつ本明細書の一部分を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示し、説明と共に、多様な実施形態の原理および作用を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本明細書に開示される一実施形態によるハニカム体を概略的に示す。
図2】本明細書に開示された一実施形態による目封止ハニカム体を示す。
図3】本明細書に開示された一実施形態による目封止ハニカム体における壁貫通ガス流を概略的に示す。
図4】本明細書に開示された一実施形態による未焼成ハニカム体を形成するための押出システムを概略的に示す。
図5A】本明細書に開示された一実施形態による球状セラミックビーズのネットワークを有するセラミックハニカム体の壁の一部を概略的に示す。
図5B】本明細書に開示された一実施形態によるセラミックハニカム体の交差する壁の一部の断面走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図6】本明細書に開示された一実施形態による球状セラミックビーズのネットワークの拡大図を示す。
図7】本明細書に開示された一実施形態による球状セラミックビーズのネットワークの一部の断面SEM画像を示す。
図8】本明細書に開示された一実施形態による球状セラミックビーズを示す。
図9A】相互接続した狭い気孔通路により形成された高い開気孔率を有する第1のセラミックビーズを概略的に示す。
図9B】比較的広い気孔ボイドの間で接続した細い気孔通路により形成された高い開気孔率を有する第2のセラミックビーズを概略的に示す。
図9C】比較的広い相互接続した気孔通路と比較的広い気孔ボイドとにより形成された高い開気孔率を有する第3のセラミックビーズを概略的に示す。
図10】本明細書に開示される一実施形態による球状セラミックビーズを作製するための多様な段階を示す。
図11】球状セラミックビーズを作製する方法の、および球状セラミックビーズを有するバッチ混合物からセラミックハニカム体を製造する方法のフローチャートを示す。
図12A】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体の表面図および断面図を示すSEM画像を示す。
図12B】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体の表面図および断面図を示すSEM画像を示す。
図12C】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体の表面図および断面図を示すSEM画像を示す。
図12D】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体の表面図および断面図を示すSEM画像を示す。
図12E】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体の表面図および断面図を示すSEM画像を示す。
図12F】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体の表面図および断面図を示すSEM画像を示す。
図12G】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体の表面図および断面図を示すSEM画像を示す。
図12H】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体の表面図および断面図を示すSEM画像を示す。
図13A】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体および多様な最高温度での焼成により形成されて得られたセラミックビーズの断面SEM画像を示す。
図13B】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体および多様な最高温度での焼成により形成されて得られたセラミックビーズの断面SEM画像を示す。
図13C】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体および多様な最高温度での焼成により形成されて得られたセラミックビーズの断面SEM画像を示す。
図13D】本明細書に開示された多様な実施形態による未焼成凝集体および多様な最高温度での焼成により形成されて得られたセラミックビーズの断面SEM画像を示す。
図14】噴霧乾燥した未焼成凝集体の焼成により得られた焼成され凝集した粉末の、および回転蒸発器中での凝集プロセスにより作製された第1のタイプおよび第2のタイプの未焼成凝集体の焼成により得られた焼成され凝集した粉末のSEM画像を示す。
図15A】本明細書に開示された一実施形態による一緒に焼結された球状セラミックビーズのネットワークを有する、セラミックハニカム体の交差する壁の破断面の多様な倍率でのSEM画像を示す。
図15B】本明細書に開示された一実施形態による一緒に焼結された球状セラミックビーズのネットワークを有する、セラミックハニカム体の交差する壁の破断面の多様な倍率でのSEM画像を示す。
図15C】本明細書に開示された一実施形態による一緒に焼結された球状セラミックビーズのネットワークを有する、セラミックハニカム体の交差する壁の断面図のSEM画像を示す。
図15D】本明細書に開示された一実施形態による一緒に焼結された球状セラミックビーズのネットワークを有する、セラミックハニカム体の交差する壁の表面図のSEM画像を示す。
図16A】MIPにより測定された、反応性バッチから作製されたハニカム体の単峰性気孔サイズ分布と比較した、表15Aの多様なハニカム体の実施例の多孔質セラミック材料の双峰性気孔サイズ分布を示す。
図16B】MIPにより測定された、多孔質コーディエライトビーズから作製されたハニカム体の多孔質セラミック材料の双峰性気孔サイズ分布を示す。
図17】本明細書に記載されたような予備反応させたコーディエライトビーズから作製されたフィルタと比較した、従来の反応性バッチから作製されたフィルタについての累積スート堆積量の関数としての質量基準の濾過効率を示すグラフを示す。
図18】本明細書に記載されたハニカム体の実施例から作製された多様なフィルタと比較した、従来の反応性バッチから作製された参照フィルタについての流量の関数としての清浄圧力損失を示すグラフを示す。
図19】従来の反応性バッチから作製された参照フィルタと比較した、本明細書に記載された2つのタイプの予備反応させたコーディエライトビーズから作製されたフィルタについての体積に対する表面積の比を示すグラフを示す。
図20】本明細書に開示された実施形態による多孔質セラミックスビーズを有するセラミックハニカム体のビーズ内気孔率の関数としてのBET比表面積を示すグラフを示す。
図21A】本明細書に開示された実施形態による、ハニカム体のウォッシュコーティング後のコーディエライトビーズの相互接続したネットワークを有するハニカム体の壁のそれぞれの部分の研磨されたSEM断面画像を示す。
図21B】本明細書に開示された実施形態による、ハニカム体のウォッシュコーティング後のコーディエライトビーズの相互接続したネットワークを有するハニカム体の壁のそれぞれの部分の研磨されたSEM断面画像を示す。
図22A】本明細書に開示された一実施形態によるウォッシュコート粒子をホストするコーディエライトビーズの相互接続したネットワークを有するウォッシュコートされたハニカム体の壁の破断面の異なる拡大図を示す。
図22B】本明細書に開示された一実施形態によるウォッシュコート粒子をホストするコーディエライトビーズの相互接続したネットワークを有するウォッシュコートされたハニカム体の壁の破断面の異なる拡大図を示す。
図23A】本明細書に開示された一実施形態によるウォッシュコート粒子をホストするコーディエライトビーズの相互接続したネットワークを有するウォッシュコートされたハニカム体の壁の一部の研磨されたSEM断面画像を示す。
図23B】ビーズ内気孔構造内でかつビーズの外側表面に外部に堆積したウォッシュコート粒子を有する多孔質セラミックビーズを示す、図23Aの円で囲まれた領域の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
ここで、添付図面において示される例示的な実施形態を詳細に参照する。可能な限り、同一または類似の部分を参照するために、図面全体を通じて同一の参照符号を使用する。図面内の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに、例示的な実施形態の原理を示すことに重点が置かれている。範囲の端点を含む数値は、本明細書では「約」、「ほぼ」等の用語が先行する近似値として表すことができる。このような場合には、他の実施形態は、特別な数値を含む。
【0075】
多様な実施形態では、多孔質セラミック球状粒子、このような多孔質セラミック粒子を有するセラミック物品、このような多孔質セラミック粒子を作製する方法およびこのようなセラミック物品を作製する方法が開示される。幾つかの実施形態では、セラミック物品は、多孔質セラミックハニカム体を有する。幾つかの実施形態では、ハニカム体をパティキュレートフィルタまたはウォールフローフィルタとして準備するために、ハニカム体の選択された通路が目封止される。論述の便宜上、多孔質セラミック球状粒子は、本明細書で「多孔質セラミックビーズ」、「セラミックビーズ」または単に「ビーズ」と言われてよい。よって、本明細書で言及されるセラミックビーズは、1つ以上のセラミック相、例えばコーディエライト、チタン酸アルミニウム、ムライト、炭化ケイ素またはそれらの組合せを有する多孔質セラミック材料を有する球状セラミック粒子である。
【0076】
本明細書に記載される場合、セラミック物品、例えばセラミックハニカム体は、多孔質セラミックビーズを有するバッチ混合物を成形して焼成することにより形成される。結果として、セラミック物品の材料、例えばハニカム体の多孔質セラミック壁は、多孔質セラミックビーズの相互接続したネットワークとして形成される。このように、セラミック材料の微細構造は、ビーズ自体の第1の気孔率(「ビーズ内気孔率」)と、ビーズにより形成された相互接続したネットワーク内の隙間の第2の気孔率(「ビーズ間気孔率」)とにより設定される独自の双峰性気孔率を示す。すなわち、本明細書に記載されるような多孔質セラミック材料の微細構造は、各々の個別のビーズの材料の開気孔構造により定義される「ビーズ内」気孔率と、ビーズの相互接続したネットワーク内のビーズ間の隙間により定義される「ビーズ間」気孔率とを有する。相応して、ビーズ自体の材料内に形成されるビーズ内気孔率は必然的に、ビーズの中位粒子サイズよりも小さいビーズ内中位気孔サイズを有し、ビーズ間の隙間内に形成されるビーズ間気孔率は、ビーズの中位粒子サイズに近づくことができる比較的大きな(例えば、ビーズ内中位気孔サイズよりも数倍大きい)ビーズ間中位気孔サイズを有する。すなわち、ビーズ間気孔率は、相互接続したネットワーク内でビーズの充填に少なくとも部分的に依存し、この充填は、同様にビーズのサイズにより少なくとも部分的に決定される。
【0077】
有利には、ビーズ間気孔率の比較的大きな気孔サイズと組み合わせた開気孔率としてのビーズ内気孔率を提供することにより、本明細書に記載されたセラミック物品の微細構造の結果として得られる双峰性気孔率は、独自の性能特性を示し、例えば、パティキュレートフィルタまたは触媒基材のハニカム体として準備される場合、流体流(例えば、エンジン排気)からの1つ以上の物質(例えば、汚染物)の処理、低減または減少のために有用である。例えば、幾つかの実施形態では、双峰性気孔率は、ハニカム体を、清浄(灰/スートの堆積前)であっても、灰/スート堆積のあらゆるレベルで低い圧力損失を維持する高い濾過効率(FE)を有するパティキュレートフィルタとして準備することを可能にする。すなわち、ビーズ内開気孔率は、灰、スートまたは他のパティキュレートに対してアンカーサイトを提供する高い表面積を提供し、ビーズ内気孔サイズ分布の比較的小さな気孔サイズは、毛管作用を促進し、アンカーサイトでの灰、スートまたは他のパティキュレートの捕捉を補助し、ビーズ間気孔サイズ分布の比較的大きい気孔サイズは、高いパティキュレート堆積量であっても低い圧力損失を維持する比較的大きな流路を提供する。
【0078】
幾つかの実施形態では、前述の双峰性気孔率によって、特に触媒担持パティキュレートフィルタに対して、圧力損失における重大なトレードオフなしで、高い触媒材料担持を使用することが可能となる。すなわち、ビーズ間気孔率とビーズ内気孔率との組合せにより提供される高い開気孔率は、ビーズ間気孔通路の高い相互接続性を維持しつつ、触媒材料を担持することができる高い気孔容積および/または触媒を結合できる大きな気孔表面積を提供する。さらに、ビーズ間気孔サイズ分布に対してビーズ内気孔サイズ分布の比較的小さな気孔サイズは、毛管作用を促進し、ビーズ上および/またはビーズ内への触媒材料の引き込みを支援し、ビーズ間気孔サイズ分布の比較的大きな気孔サイズは、低い圧力損失を維持する比較的大きな流路を提供する。
【0079】
ここで図1を参照すると、セラミック物品が、複数の通路104を形成する交差する壁102を有するハニカム体100の形で示されている。本明細書で説明する場合、壁102は、多孔質セラミック材料を有する。壁102および通路104は、このように、スキンまたは外周面105により取り囲まれるハニカム構造を形成する。通路104は、ハニカム体100を通る軸の方向に、例えば互いに平行に、第1の端面106から第2の端面108まで延びる。本明細書に記載された場合、ハニカム体100は、多様な用途で、例えば、触媒コンバータ(例えば、触媒材料用の基材として機能する壁102)の形でおよび/またはパティキュレートフィルタ(例えば、通路104の幾つかは、ハニカム壁108内でパティキュレートを捕捉するために目封止されている)として使用するために役立つことができる。したがって、このようなハニカム体100は、流体流から汚染物を処理または軽減することを、例えば、車両の内燃機関の排気流から不所望な成分を除去することを支援することができる。例えば、壁102の多孔質材料には、触媒材料、例えばハニカム体100の通路104を通過する流体流(例えばエンジン排気)中の1つ以上の化合物を処理する三元触媒を担持することができる。
【0080】
図2~3に示すように、ハニカム体100の通路104の幾つかは、目封止ハニカム体101を形成するために、プラグ109で目封止することができる。目封止した結果、これらの通路は、入口面(例えば、第1の端面106)が開口する「入口通路」と、反対側の出口面(例えば、第2の端面108)が開口する「出口通路」とに分けられる。本明細書での論述を容易にするため、入口通路は、参照符号104aで表され、出口通路は、参照符号104bで表され、「通路104」についての一般的参照は、入口通路であるか出口通路であるかにかかわらず、全ての通路を含む。
【0081】
目封止ハニカム体101は、パティキュレートフィルタまたはウォールフローフィルタ(これらの用語は、一般に交換可能である)の部分を形成することができるか、あるいはパティキュレートフィルタまたはウォールフローフィルタを言うことができるか、またはパティキュレートフィルタまたはウォールフローフィルタと見なすことができる。プラグ109を用いた目封止は、任意の適切な目封止プロセス(例えば、パテ目封止、スラリー目封止など)および目封止材料(例えば、常温凝結目封止セメント)を用いて実施することができる。幾つかの実施形態では、通路104の幾つかは、第1の端面106で目封止され、第1の端面106では目封止されない通路104の幾つかは、第2の端面108で目封止される。任意の適切な目封止パターンを使用することができる。例えば、通路104の交互のものは、反対側の端部106,108で目封止することができる。
【0082】
図3に示すように、通路104を反対側の端部で交互に目封止することは、流体流F(例えばエンジン排気)が、入口側(例えば、図3では端面106)で開口している、目封止されたハニカム体101の入口通路104a内へ進入することを可能にし、次いで、壁102の多孔質材料を通って、出口端部(例えば、図3では端面108)で開口している隣接する出口通路104bに向かう。流体流F内の少なくとも幾つかのパティキュレートマターは、壁102の多孔質材料を通って流れることが妨げられ(例えば、このような粒子は、壁102の気孔構造内に捕捉されることになり)、それにより、流体流Fは、目封止ハニカム体101を出る際には処理されている。
【0083】
ハニカム体100は、任意の適切な方法で形成することができる。例えば、ハニカム体100を少なくとも部分的に形成することができる押出システム(または押出機)10が、図4に示されている。押出機10は、方向14(例えば、押出方向)に延びるバレル12を有する。バレル12の上流側に、例えば、ホッパまたは他の材料供給構造を有することができる材料供給ポート16を、押出機10内へセラミック成形混合物110(あるいは、バッチ混合物とも言う)を供給するために提供することができる。
【0084】
押出ダイ18は、バレル12の下流側に連結されていて、押出機10から押出物112として押し出されるバッチ混合物110を所望の形状に成形する。例えば、押出ダイ18は、未焼成ハニカム押出物として押出物112を製造するためのハニカム押出ダイとすることができる。この押出ダイ18は、ボルト締結、クランピングなどの任意の適切な手段によりバレル12に連結することができる。押出ダイ18は、適切な流動特性、例えばバッチ混合物110が押出ダイ18に到達するときに安定した栓流フロントの形成を容易にするために、押出アッセンブリ20内に、他の押出構造、例えば粒子スクリーン、スクリーン基材、ホモジナイザーなどを前置することができる。
【0085】
押出機10は、とりわけ、二軸スクリュー押出機または液圧ラム押出機のような任意のタイプとすることができる。図4では、押出機10は、バレル12内に取り付けられた一対の押出スクリュー22を有する二軸スクリュー押出機として示されている。例えば、バレル12の外側に位置する駆動機構24が、押出要素、例えば図4の実施形態ではラム押出機のラムまたはスクリュー22を作動させるために含められていてよい。押出機10の押出要素、例えば一対の押出スクリュー22、ラムなどは、押出方向に対応する長手方向14でのポンピングおよび混合動作でバレル12を通してバッチ混合物110を移動させるように作用することができる。
【0086】
押出機10は、切断装置26をさらに有する。例えば、切断装置26は、押出物112から未焼成ハニカム体100Gを切断するように構成されている。未焼成ハニカム体100Gは、最終的なセラミックハニカム体100が、未焼成体100Gの更なる加工により作製されるため、ハニカム体100と概ね類似していて、すなわち、交差する壁と通路とのハニカム構造を有する。すなわち、押出および切断後に、最終的なセラミックハニカム体を製造するための他の製造ステップの中で、未焼成体100Gを、さらに所望の軸方向長さに切断または研削し、乾燥し、焼成することができる。未焼成体100Gは、スキンと共に押し出すことができるか(すなわち、スキン105の形成)またはスキンは後続の製造ステップで付加することができる。
【0087】
セラミック形成混合物110は、押出機10に、連続的または断続的に導入することができる。セラミック形成混合物110は、本明細書に開示された多様な実施形態による多孔質セラミックビーズを有する。セラミック形成混合物は、1つ以上の付加的な無機材料(例えば、アルミナ、シリカ、タルク、粘土または他のセラミック材料、セラミック前駆材料または未焼成の凝集したセラミック前駆粉末)、結合剤(例えば、有機結合剤、例えばメチルセルロース)、造孔剤(例えば、デンプン、黒鉛、樹脂)、液状付形剤(例えば、水)、焼結助剤、滑剤、または押出物112、未焼成ハニカム体100G、および/またはセラミックハニカム体100の製作、成形、加工、および/または特性において役立つ任意の他の添加物をさらに有することができる。
【0088】
本明細書に記載された実施形態によると、セラミック形成混合物110は、ハニカム体100の壁102の多孔質セラミック材料を最終的に形成する複数の多孔質セラミックビーズを有する。例えば、図5Aに概略的に示すように、および図5Bにおける研磨された走査電子顕微鏡(SEM)断面図のように、壁102は、多孔質セラミックビーズ122の相互接続したネットワーク120を有する微細構造を有する。すなわち、複数のビーズ122は、例えば未焼成体100Gの焼成の間のセラミックおよび/またはセラミック形成材料の焼結および/または反応により、一緒に結合して、連続的なネットワークになる。例えば、ビーズ122は、一緒に直接焼結することおよび/または一緒に間接的に(例えば、混合物110内の1つ以上の他の無機材料の焼結および/または反応を介して)結合することができる。押出ダイ18または他の成形機構は、ビーズ122の相互接続したネットワーク120を準備するため、ハニカム体100の形状および/または寸法、例えば図5A~5Bに示す壁102の壁厚tを定義するために利用することができる。よって、壁102および/または相互接続したネットワーク120の全体積は、ビーズ122の外側境界線により概ね線引きされる壁102および/またはネットワーク120の他の基本寸法を乗算した壁厚tによって定義することができる。
【0089】
本明細書でさらに詳細に説明するように、多孔質セラミックビーズ122は、バッチ混合物110中に組み込まれる際に既に1つ以上の選択されたセラミック相を有する(すなわち、かつしたがって、このようなセラミック相は、ハニカム体100の焼成前に、既に未焼成体100G内に存在する)ため、「予備反応させた」ビーズと言われるかまたは「予備反応させた」ビーズと見なされてよい。ビーズ122は、継続する焼成がより多くの量のセラミック相を生じることがないように完全に反応させることも、または1つ以上のセラミック相が存在するが、ビーズ122を更なる焼成に供する際には反応を続けるように少なくとも部分的に反応させることもできる。いずれの場合においても、ビーズ122の「予備反応させた」性質は、多様な製造ステップ(例えば、バッチペースト混合、押出、切断、乾燥、および焼成)の間にビーズの球状形状を維持するために使用することができる。例えば、部分的または完全に反応したセラミックは、未反応の凝集体よりも高い強度を有するので、押出のようなプロセスの間にビーズ122の破砕は防がれる。別の例として、既に1つ以上の反応相を有するセラミックビーズ122は、他のビーズ中の未反応のセラミック前駆材料との反応とは対照的に、より容易にそれぞれの個別のビーズ内の反応または焼結の継続を受ける。例えば、互いに接触させられていないビーズ間では材料拡散経路がなく、ビーズにとって二点間接触の形でだけ限られた拡散経路があるだけであるため、異なるビーズからの成分の反応は制限されてよい。対照的に、例えば、高温で大量のガラスまたは液体が存在するために反応成分間でかなりの程度の物質移動が可能になった場合、材料は、この閉じ込めがなくなり、球状ビーズ形状を維持する代わりに、大きな不統一な凝集体の成長または大きく細長い結晶の成長が促進されることになる。ビーズ122の球状形状を維持することにより、セラミックハニカム体100に対して、ビーズ122の前述の相互接続したネットワーク120を作製することができる。
【0090】
図6および7はそれぞれ、幾つかの実施形態によるビーズ122の相互接続したネットワーク120の部分の写真および研磨されたSEM断面図を示す。図5A~7を参照すると、多孔質セラミックビーズ122は、ビーズ122のそれぞれにわたって延在する相互接続した開気孔構造124を有することを見ることができる。開気孔構造124は、比較的細長い気孔構造、例えば通路と、比較的広い気孔構造、例えば気孔ボイドまたは気孔ボディとを有することができ、この通路は、ボイドまたはボディ内への気孔ネックまたはスロートとして機能する。気孔構造124は、ビーズ122内の気孔がビーズ122の外部と流体連通しているため、「開放」と見なされる。例えば、図6および7に示すように、気孔構造124は、ビーズ122の外側表面に、ビーズ122の内部と外部との間で流体連通を提供する開口126を有する。気孔構造124は、ビーズ122全体の気孔が、互いに(例えば、ビーズ122の外部へ直接におよび/または相互の開口を介して)流体連通するネットワークを形成するので、「相互接続した」と見なされてもよい。よって、本明細書に記載された開気孔構造124は、ビーズ122内への流入、ビーズ122の通過、およびビーズ122からの流出を促進する。幾つかの実施形態によると、(ビーズ122の全体積に対して)ビーズ122の気孔率の少なくとも80%、またはさらには少なくとも90%が、(ビーズの外部と流体連通しない閉気孔とは対照的に)開気孔である。
【0091】
図5A~7を再び参照すると、ビーズ122の相互接続したネットワーク120の形成は、ビーズ122の隣接するものの間に形成される隙間128(これとは別に、空間またはギャップと言われてよい)を生じさせる。よって、三次元空間では、隙間128は、ビーズ122の相互接続したネットワーク120と、その間でおよび/またはその周囲で絡み合う開気孔構造および相互接続した気孔構造を形成する。有利に、かつ本明細書でさらに詳細に論述されるように、ビーズ122の開気孔構造124およびビーズ間の隙間128の開放性および相互接続性は、ハニカム体100に対して多様な特徴および/または利点、例えば、独自の双峰性開気孔率を有する壁102の材料のための微細構造を提供するために使用することができる。
【0092】
壁102の材料の(多孔質セラミックビーズ122の相互接続したネットワーク120により形成される)微細構造は、全気孔率(すなわち、微細構造/壁の全体積に対する)を有し、この全気孔率は、ビーズ122の気孔構造124の気孔率によって定義されるビーズ内気孔率と、ビーズ122の間の相互接続したネットワーク120内の隙間128により定義されるビーズ間気孔率とを有する。相応して、ビーズの材料内に形成されるビーズ内気孔率は、ビーズの中位粒子サイズの数分の1であるビーズ内中位気孔サイズを有し、ビーズ間の空間内に形成されるビーズ間気孔率は、ビーズの中位粒子サイズに近くてよい比較的大きなビーズ間中位気孔サイズ(例えば、ビーズ内中位気孔サイズよりも数倍大きい)を有する。よって、前述の双峰性気孔率は、ビーズ内気孔サイズ分布とビーズ間気孔サイズ分布との両方を有し、これらは、ビーズ内気孔率の気孔サイズがビーズ間気孔サイズの気孔サイズよりも平均して小さいという点で互いに異なる。換言すると、ビーズ内気孔サイズ分布のビーズ内中位気孔サイズは、ビーズ間気孔サイズ分布のビーズ間中位気孔サイズよりも小さい。
【0093】
球状セラミック粒子として形成されるビーズ122は、1つ以上の形状、例えば球体、楕円体、扁球体、長球体、または環状体を有することができる。ビーズは、セラミック形成混合物から1つ以上のセラミック相への反応および/またはセラミック粒同士の焼結を引き起こすために適切な条件下(例えば、時間および温度)で、セラミック形成原材料の未焼成凝集体を焼成することによりセラミック粒子として形成することができる。例えば、コーディエライトは、約1200℃~約1420℃の焼成温度で形成されてよい。幾つかの実施形態では、未焼成凝集体の焼成は、より長い持続時間およびより高い温度でより高い程度の反応(したがって、形成されるセラミック相のより高いパーセンテージ)で、選択された焼成温度で約30分~約6-8時間の範囲にあることができる。
【0094】
幾つかの実施形態では、ビーズの中位粒子サイズまたは直径(あるいは、中位ビーズサイズまたは直径)は、少なくとも25μm、例えば少なくとも30μmである。幾つかの実施形態では、ビーズの中位粒子サイズは、最大で55μm、例えば50μm、または45μmである。幾つかの実施形態では、ビーズの中位粒子サイズは、約25μm~55μm、例えば30μm~55μm、30μm~50μm、30μm~45μm、または30μm~40μmの範囲にある。幾つかの実施形態では、25μmの中位粒子サイズを有するビーズは、25μm以上の中位粒子サイズを有するビーズと組み合わせて使用され、例えば15μm~20μmの範囲内の中位粒子サイズを有する第1のタイプのビーズは、30μm~50μmの範囲内の中位粒子サイズを有する第2のタイプのビーズと組み合わせて使用される。
【0095】
ビーズ122の代表的な1つの例のSEM画像を図8に示す。ビーズ122についての多様な実施形態は、図9A~9Cに概略的に示されていて、それぞれビーズ122A~122Cとして識別され、これらの図中でビーズ122は、各ビーズの外側部分および内側部分の両方を示すために部分的に切断されて示されている。特に、ビーズ122Aは、ビーズ122A全体を通過して延びる相互接続した複数の比較的狭い気孔通路を有する開気孔構造を有する。ビーズ122Bは、比較的大きな直径の気孔ボイドまたはボディで隙間の空いた相互接続した複数の比較的狭い気孔通路を有する開気孔構造を有する。ビーズ122Cは、比較的大きな直径の気孔ボイドまたはボディで隙間の空いたまたはその間で接続した相互接続した複数の比較的広い気孔通路を有する開気孔構造を有する。例えば、比較的狭い気孔(例えばビーズ122Aおよび/または122Bの通路)を含むことは、任意の所与の気孔率値のための気孔表面積を増大させるために有用であり得、比較的広い気孔(例えば、ビーズ122Bおよび/122C中のボイド)は、ビーズ122のためのますます大きな気孔率を達成するために有用であり得る。本明細書に記載される場合、比較的広い(比較的大きい)気孔は、触媒粒子をホストするためおよび/または灰を貯蔵するために特に有利であり得、増大する気孔表面積は、灰または触媒粒子のためのアンカーサイトを提供するために有利であり得る。
【0096】
ビーズ122は、セラミック形成材料(例えばセラミック材料および/またはセラミック前駆材料)のバッチ混合物を調製し、バッチ混合物を球状化して未焼成凝集体にして、次いで未焼成凝集体を焼成して、セラミック成形材料を1つ以上の選択されたセラミック相、例えばコーディエライトに焼結および/または反応させることにより形成することができる。本明細書での論述の便宜上(例えば、ハニカム体100を形成するために利用されるバッチ混合物110と混同しないように)、焼成してビーズ122にされる未焼成凝集体を形成するために利用されるバッチ混合物は、前駆体スラリー混合物または単にスラリー混合物と言われてよい。
【0097】
図10は、幾つかの実施形態による未焼成凝集体からのビーズ122の製造の間に起こり得る代表的段階(A)~(E)を示す。例えば凝集したスラリー混合成分の球状粒子の粉末として準備される未焼成凝集体は、焼成の結果のセラミックビーズ122に対して未焼成凝集体の球状形状を保持するために、部分な反応または完全な反応にまで焼成することができる。焼成は、結合剤、分散剤、および他の有機材料の焼尽、無機材料の水分損失、およびCOの放出下での任意の炭酸塩の分解から始まる幾つかの反応を受ける未焼成凝集体を生じてよい。最終的に、存在する特別なセラミック前駆体に依存して、固相反応の開始は、約1000℃~1200℃の温度で始まってよい。
【0098】
図10の段階(A)では、未焼成凝集体130を、セラミック形成材料を有する球状粒子として形成する。未焼成凝集体130は、焼成の間にセラミックビーズ122の1つ以上のセラミック相を形成する無機セラミック形成材料(例えば、セラミック材料および/またはセラミック前駆材料)、例えばタルク、粘土、アルミナ、ベーマイト、シリカ、マグネシア(例えば、Mg(OH)またはMgO)、スピネルなど、焼成の前に未焼成凝集体130の形状を一時的に保持するための1つ以上の結合剤(例えば、スチレンアクリルポリマーまたは他のポリマー)、所望の場合にビーズ122に付加的な気孔を付与する造孔剤(例えば、樹脂、デンプン、黒鉛)、ルーズな粒子充填を維持するための分散剤、および凝集体形成またはセラミック焼成および/または反応を促進するための任意の他の添加物(例えば、界面活性剤または消泡剤)、および液状付形剤(例えば、水)を有する凝集体スラリー混合物から形成することができる。本明細書でさらに詳細に説明するように、焼成して同じサイズのセラミックビーズを形成することができる15~50μmのサイズの未焼成凝集体を作製するために使用される無機原材料は、約3~5μm以下の範囲内の原材料中位粒子サイズを有することができ、この原材料成分のd90値は、典型的に7μm未満であり、この粒子サイズは、高い開気孔率および本明細書に開示された他の特性を達成することを支援する。
【0099】
未焼成凝集体130は、噴霧乾燥または回転蒸発のような球状化プロセスにより作製することができる。例えば、湿った液滴を、噴霧乾燥機内でかつ/または混合の間に乾燥し、水損失下で未焼成凝集体130に転換(例えば、収縮および/または凝縮)させる。よって、噴霧乾燥および回転蒸発は、乾燥した未焼成凝集体130の粉末を効率的に製造するために使用することができる。乾燥は、高めた温度で高い空気流下で急速に行うことができる。未焼成凝集体130の球状形状(例えば、この凝集体は、噴霧乾燥ノズルを出る、かつ/または回転蒸発器により形成される)は、高い固体担持率および原材料粒子充填の、特にタルクのような板状の原材料粒子の低い密度を示すことができる。幾つかの実施形態では、固体担持率は、約10体積%~30体積%である。凝集体スラリー混合物中の結合剤は、未焼成凝集体130を一緒に保持することを支援するため、ルーズな粒子充填を維持することができる。
【0100】
次いで、球状化された未焼成凝集体130を、焼成し、すなわち、セラミック形成混合物の多孔質球状セラミックビーズ122への転換を引き起こすために十分な時間に対する温度に曝す。このため、図10の段階(B)~(E)は、時間の増加量に対する焼成後の未焼成凝集体130を示す。段階(B)は、結合剤材料が燃え尽き、全ての残留水(含水材料からのものを含める)が除去されるが、セラミック形成前駆材料の間の化学反応はまだ起こっていない初期の焼成段階を示す。
【0101】
本明細書でさらに詳細に説明するように、液状付形剤の除去は、液状付形剤が外側表面に向かって吸い上げられて蒸発するため、凝集体の外側表面に向かって微細な(例えば、2μm未満の)固体粒子の移行を引き起こすことができる。これが、凝集体の外側表面での粒子の未焼成シェル132の形成を引き起こし得る。未焼成シェル132の厚さは、凝集体スラリー中の原材料に基づき変更することができる。例えば、シリカスート、コロイド状シリカ、および他の微細な酸化物粒子(例えば、1μm未満の中位粒子サイズ)が、未焼成シェル132の形成および未焼成シェル132の厚さの増加に、特に寄与し得る。
【0102】
図10の段階(C)では、幾つかの固相反応が、異なるセラミック形成前駆材料の間で行われる。この段階では、1つ以上のセラミック相の形成が始まってよく、したがって、未焼成凝集体130は、セラミックビーズ122への転換が始まっている。この段階では、反応は、隣接する前駆体粒子間の接触点に限られるので、セラミック前駆体は、対応するセラミック相に完全には反応していない。より大量の選択されたセラミック相に到達するセラミック前駆体の更なる反応は、幾つかの実施形態では、セラミックビーズ122の相応する物理特性(例えば強度)をより完全に確立するために望ましい。しかしながら、以下により詳細に論述するように、この段階で、未焼成シェル132を形成する粒子は、ビーズ122の安定化および強化を支援するセラミックシェル133への反応が始まる。
【0103】
段階(D)では、セラミック前駆材料の反応が、初期の接触点からセラミック前駆体粒子の全体に広がる。したがって、段階(D)では、1つ以上のセラミック相が完全に形成されるかまたはほとんど形成され、ビーズ122の物理特性が十分に確立され、例えばそれにより、引き続く混合および押出プロセスの間にビーズ122が潰されることを防ぐ強度および靭性が提供される。段階(D)では、セラミックビーズ122はまた、開気孔構造124を示す。
【0104】
理論に拘束されることは望まないが、セラミック前駆体の反応によるビーズ122の収縮は、この段階で制限されると考えられる、というのも、セラミックシェル133は、未焼成凝集体130が焼成の間にセラミックビーズ122へ移行する際に球状形状の安定化および維持を支援するためである。しかしながら、未焼成シェル132が厚すぎる場合、得られるセラミックシェル133は、開口126がほとんどないかまたは全くないほど一緒に焼結されることがあり、それにより、外側表面への開気孔通路の形成が阻害され、中空のセラミック球状粒子が生じる。したがって、凝集体スラリー混合物の成分は、未焼成シェル132および生じるセラミックシェル133を作製するために十分な量であるが、しかしながら焼成の間にシェル133内での開口126の形成を許容する厚さで、微細粒子を提供するように選択することができる。それに加えてまたはその代わりに、結合剤パッケージおよび未焼成凝集体130の形成条件(例えば、噴霧乾燥機の設定)の選択は、未焼成シェル132の形成を促進するために微細な原材料粒子が凝集体表面へ移行することを支援する(その結果、球状形状およびサイズは焼成の間に維持される)が、後の焼成および反応段階の間に微細なセラミック前駆材料の固相反応の間に、開口126がシェル133内に依然として形成されることを許容する厚さとなるように選択することができる。
【0105】
図10の段階(E)に示すように、例えば、より高い温度、長い持続時間、および/または焼結助剤(および/またはガラス形成剤または液体形成剤)の存在での更なる焼成は、低い開気孔率を有するかまたは開気孔を有しない密な粒子となる焼結または収縮を引き起こす(例えば、図10の段階(E)の画像に示される単に閉気孔)。これらの進んだ焼成段階(例えば「過剰焼成」)では、球状形状はもはや維持できず、高い表面積および高い開気孔率の有益な特性は失われることがある。
【0106】
表1~4は、未焼成凝集体130を形成することができるスラリー混合物の多様な例を提供する。例えば、本明細書に記載されるように、スラリー混合物は、噴霧乾燥または蒸発混合のような球状化プロセスによって未焼成凝集体130に形成することができる。特に、表1~4のスラリー混合物は、コーディエライト含有ビーズとしての多孔質セラミックビーズ122を形成するために焼成することができる未焼成凝集体に適している。表1~4中の全ての値は、質量パーセントとして、または示されるように超加成性質量パーセント(質量%SA)として与えられている。表1~3では、無機成分は、100質量%に合算されるが、表4では、デンプン造孔剤と無機物との合計が100質量%に標準化される。列挙された成分の幾つかについての見出し中の括弧内のマイクロメートル(μm)で示される値は、対応する成分の近似的な中位粒子サイズを示す。スラリー混合物は、安定化を支援するためのセラミック粉末分散剤および/または結合剤を含む水性ベース(液状付形剤としての水)であってよいが、球状の未焼成凝集体を形成するために適した添加物と共に、油、アルコール、または他の液状付形剤を使用することもできる。例えば、幾つかの実施形態では、スチレンアクリルコポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyから市場で入手可能な材料のDuramax B1002)2~3%およびアクリルポリマーのアンモニウム塩(例えば、The Dow Chemical Companyから市場で入手可能な材料のDuramax D-3005)0.2%~1%は、他の結合剤および分散剤を同じ量で添加することができるとしても、他の成分の全質量に対するパーセントで、超加成性質量パーセント(質量%SA)として添加される。ステアリン酸ナトリウムまたは他の材料(例えば、ナトリウムの他の供給源)は、未焼成凝集体の焼成の間にセラミックビーズの形成を支援する焼結助剤として添加することもできる。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
表1~4に概説されているように、無機前駆材料の多様な組合せは、焼成の際にコーディエライトビーズを作製するために有用である未焼成凝集体内のコーディエライト前駆体として使用することができる。一般に、コーディエライト形成スラリー混合物は、シリカ源、アルミナ源、およびマグネシア源を有する。例えば、シリカ源は、粘土(例えば、カオリン粘土、カイヤナイト粘土、および/または含水粘土)、シリカ、シリカスート、タルク、粘土、または他のもしくはシリコン含有化合物とすることができる。アルミナ源は、例えば、粘土(例えば、カオリン粘土、カイヤナイト粘土、または含水粘土)、アルミナ、含水アルミナ、スピネル、または他のアルミニウム含有化合物とすることができる。マグネシア源は、例えば、タルク、スピネル、水酸化マグネシウム、または他のマグネシウム含有化合物とすることができる。セラミック前駆体、例えば、シリカ源、アルミナ源、およびマグネシア源は、所望のセラミック相、または化学量論、組成、および置換において僅かな差異で安定した相を提供する量で含む、MgAlSi18の一般式を有するコーディエライトのような相を作製する化学量論比に従う量で組み合わせることができる。例えば、幾つかの実施形態では、アルミナ、シリカおよびマグネシアの供給源は、所望の一次セラミック相、例えば、セラミック物品の少なくとも80質量%の量のコーディエライト(および/または結晶質相の少なくとも90質量%の量のコーディエライト)を形成する比率で提供され提供される。幾つかの実施形態では、シリカ源、アルミナ源、およびマグネシア源は、実質的にSiO約49~約53質量%、Al約33~約38質量%、およびMgO約12~約16質量%からなるコーディエライト組成を提供するコーディエライト前駆体として選択される。
【0112】
図11は、多孔質球状セラミックビーズ(例えば、ビーズ122)を形成する方法200および多孔質球状セラミックビーズの焼結したネットワーク(例えば、ネットワーク120)を有するハニカム体(例えば、ハニカム体100)を製造する方法300のフローチャートを示す。ステップ202では、セラミック形成原材料成分のスラリー混合物を(例えば、実施例S1~S20のいずれかによる)形成する。ステップ204では、スラリー混合物を未焼成凝集体(例えば、未焼成凝集体130)に球状化する。幾つかの実施形態では、球状化を噴霧乾燥により実施する。幾つかの実施形態では、球状化を回転蒸発プロセスにより実施する。他のプロセス、例えば乾式粉末化、凍結乾燥、レーザー溶融、溶融紡糸、または液体噴射を使用することができる。未焼成凝集体は、少なくとも部分的に、球状化プロセスの一部としてまたは球状化プロセスに続いて乾燥することができる。ステップ206では、未焼成凝集体を、この未焼成凝集体を多孔質セラミックビーズ(例えば、ビーズ122)に変換するために十分な条件(時間および温度)で焼成する。
【0113】
ステップ302では、例えば方法200から得られる多孔質セラミックビーズを、バッチ混合物(例えば、バッチ混合物110)中の一次無機材料として使用することができる。多孔質球状セラミックビーズに加えて、バッチ混合物は、他の成分、例えば有機結合剤、無機結合剤材料(例えば、反応性コーディエライト形成材料)、造孔剤(例えば、デンプン、黒鉛など)、油または他の潤滑剤、および液状担体、例えば水を有することができる。ステップ304では、バッチ混合物を、未焼成ハニカム体(例えば、未焼成ハニカム体100G)に成形する(例えば、ハニカム押出ダイ18を介して押し出す)。未焼成ハニカム体を、多孔質セラミックビーズが、一緒に焼結するためかつ/または反応するためかつ/またはバッチ混合物中の任意の付加的な反応性無機結合剤材料と焼結するために十分な条件(時間および温度)下で焼成することによりセラミックハニカム体(例えば、ハニカム体100)に変換する。
【0114】
乾燥および切断のような付加的なステップを、焼成の前に実施してよい。セラミックビーズは、既にコーディエライトおよび/または任意の他の選択されたセラミック相を形成するために反応しているので、ステップ306での焼成温度および/または焼成時間は、反応性前駆材料から形成されるハニカム体と比較して明らかに低減することができる。本明細書に記載されるように、セラミックビーズは既に反応しているので、ビーズは、ハニカム体製造プロセス、例えば、押出機内での混合およびハニカム押出ダイを通した押出に、球状形状を失うことなく耐えるために十分な強度を有する。同様に、ビーズは既に反応しているので、ビーズは、ステップ306でのハニカム体の焼成の間にそのサイズおよび形状を十分に維持し、それにより、一緒に焼結した多孔質セラミックビーズの相互接続したネットワーク(例えば相互接続したネットワーク120)を有するハニカム体のための微細構造が作製される。
【0115】
場合により、ステップ308では、セラミックハニカム体の通路(例えば、通路104)は、目封止ハニカム体(例えば目封止ハニカム体101)を形成するために目封止することができる。例えば、目封止ハニカム体は、パティキュレートフィルタまたはウォールフローフィルタとして使用することができる。場合により、ステップ310では、例えばウォッシュコーティングまたは他のプロセスにより、セラミックハニカム体の多孔質壁(例えば、壁102)内へおよび/または多孔質壁上に触媒材料を堆積させることができる。幾つかの実施形態では、ハニカム体は、両方目封止され、触媒材料を担持する。
【実施例
【0116】
ここで、表1~4のスラリー混合物から作製された未焼成凝集体130、未焼成凝集体130から作製された多孔質セラミックビーズ122、多孔質セラミックビーズ122を有するバッチ混合物110、およびバッチ混合物110から作製されたハニカム体100を作製する多様な実施例を記載する。本明細書で論述された実施例におけるビーズは、主にコーディエライトから作製されていたが、ビーズ122のために他の材料またはセラミック相を使用することができることを繰り返し述べる。例えば、コーディエライトは、一般に良好な強度、耐久性、および耐環境性を示すため、コーディエライトは、エンジン排気の後処理におけるハニカム体として使用するために都合のよい材料である。しかしながら、チタン酸アルミニウム、ムライト、炭化ケイ素、および他のセラミック材料(およびこれらの組合せ)も、排気後処理または他の流体処理系において好結果で使用される。したがって、本明細書に記載されかつ本発明者らによるかまたはその代理により実行されるモデリングにより証明されるように、本明細書に記載されたビーズサイズ分布ならびにビーズ間およびビーズ内の特徴の組合せは、独自の特性および性能を提供し、これらの特性および性能は、ビーズがコーディエライトとは別の材料(および/またはコーディエライトと組み合わせた他のセラミック相)から作製されていたとしても、同じビーズサイズ分布を有しかつビーズ間およびビーズ内の特徴を有するビーズから形成されるハニカム体により示される。
【0117】
未焼成凝集体
低レベルの有機結合剤および分散剤により安定化されたコーディエライト前駆材料を有する水性ベースの凝集体スラリー混合物を、噴霧乾燥プロセスにおいて原料として使用した。特に、表5は、表1~4のスラリー混合物を使用して異なる固体担持率で製造された未焼成凝集体の多様な実施例を示す。高出力ターボミキサ(rotostator)を用いて、原材料を混合しながらゆっくりと水に添加した。スラリー内で原材料粒子がクラスター化するのを避けるために、原材料を水位下でスラリータンク内に直接吸引した。次いで、結合剤および分散剤を添加した。
【0118】
【表5】
【0119】
実施例A1-10、A1-15、およびA1-21は、異なる固体担持率(それぞれ10体積%、15体積%および21体積%)で、同じスラリー混合物(S1)から作製した。実施例A1-10、A1-15、およびA1-21は、本明細書ではまとめて「実施例A1」と言われてよい。実施例A1についての異なる固体担持率と同様に、任意の他のスラリー混合物、例えばスラリー混合物A2~A20から形成される未焼成凝集体についての固体担持率は、表5に与えられたものとは異なってよい。さらに、表5に示される固体担持率は、例えばスラリー混合物が実際に作製される場合、0.5体積%まで変化し得る概算として意図されている。幾つかの実施形態では、噴霧乾燥したスラリー混合物中の固体担持率は、約8体積%~約35体積%、例えば10体積%~30体積%である。
【0120】
2流体噴射ノズルまたはロータリーアトマイザを備える中規模工業用噴霧乾燥機を、未焼成凝集体を形成するために表5のスラリー混合物および固体担持率の異なる組合せを噴霧乾燥するために使用した。6kg/h~20kg/hの速度を使用した。未焼成凝集体を形成するための噴霧乾燥機設定は、200℃の入口温度、98℃のサイクロン温度、330~360インチHO(8382mmHO~9144mmHO)の速度ヘッドロスに対応する入口空気速度、および約5インチHO(127mmHO)のヘッドロスに対応するサイクロン空気速度を含む。
【0121】
比較的小さい粒子サイズ(サイクロン内で捕捉)を比較的大きな粒子(メインチャンバ内に捕捉)から分離するために、二点捕集を、中規模噴霧乾燥機のチャンバおよびサイクロンに使用した。異なるサイズおよび形状の噴霧乾燥機、ならびに異なるノズル構成および噴霧乾燥パラメータは、異なるサイズ分布を提供する。例えば、より高い噴霧乾燥塔は、より洗練されたものを提供することを可能にしてよく、かつ同じ粒子サイズ分布を達成するために二点捕集を必要としなくてよい。
【0122】
表6は、使用した噴霧乾燥装置のためのチャンバおよびサイクロンの両方の中で捕集された粒子について記録するように、表5の未焼成凝集体について捕集された粒子サイズ分布値をまとめている。特に、表6は、d10、d50、およびd90の値を、(d90-10)/d50(すなわち、これは対応する粒子サイズ分布の「dbreadth」または「幅」とも言われてよい)およびd50-d10/d50(すなわち、これは本明細書では「d」または「dfactor」と言われてよい)について計算された値と共に含む。本明細書で使用される場合、d10は、分布において粒子の10%が比較的小さい(90%が比較的大きい)粒子サイズを言い、d50は、(粒子の50%が比較的大きく、50%が比較的小さい)中位粒子サイズを言い、d90は、分布において粒子の90%が比較的小さい(10%が比較的大きい)粒子サイズを言う。
【0123】
【表6】
【0124】
噴霧乾燥機のチャンバおよびサイクロン出口の両方で粒子を捕捉することは、所望のように、凝集体および/または凝集体から作製されるビーズの粒子サイズ分布を選択または操作する能力を促進にする。例えば、サイクロン捕集点は、粒子のより小さなサイズの画分を捕捉し、チャンバは、粒子のより大きなサイズの画分を捕捉する。粒子サイズ分布の更なる操作は、粒子サイズ分布の粗大(大きな)および/または微細(小さな)テールを除去することにより、粒子(例えば、未焼成凝集体または焼成したビーズ)を選別または篩別することにより達成することができる。このように、未焼成凝集体(および焼成後に得られるセラミックビーズ)について狭い粒子サイズ分布を得ることができる。幾つかの実施形態では、粉末内の未焼成凝集体の中位粒子サイズ(d50)が、約10μm~80μm、約15μm~60μm、またはさらには約20μm~50μmの範囲であるように、未焼成凝集体の粉末を(例えば、選別および/または篩別により)形成する。幾つかの実施形態では、未焼成凝集体130の粒子サイズ分布の幅((d90-d10)/d50により与えられる)が、1.5未満、1.0未満、0.9未満、またはさらには0.8未満である。幾つかの実施形態では、未焼成凝集体の粒子サイズ分布のdfactor((d50-d10)/d50により与えられる)が、0.5未満、0.4未満、またはさらには0.3未満である。これに加えてまたはこれに代えて、粒子サイズ分布を調整するために、得られた粒子サイズ分布から1つ以上の粒子サイズ範囲を除去するために、空気分級、篩別または他のプロセスを使用することができる。
【0125】
図12A~12Hは、噴霧乾燥のチャンバ(サイクロンではない)から採取された際の表6の噴霧乾燥した未焼成凝集体A1、A2、A8、A9、A10、A11、A12、およびA13の代表的な実施例を示す。より具体的には、図12A~12Hは、これらの未焼成凝集体の実施例の各々についての表面SEM画像および研磨された断面SEM画像を示す。研磨断面を観察するため、粉末にエポキシ樹脂を含浸させ、スライスし、研磨した。
【0126】
図12A~12Hからは、(表1~4による)多様な異なる原材料混合物にもかかわらず、球状粒子が一貫して得られたことを見ることができる。しかしながら、使用した異なる原材料の組合せが、粒子充填密度および微細な粒子からの未焼成シェルの形成(例えば、未焼成シェル132に関して上述のように)に影響を及ぼした。注目すべきは、未焼成凝集体の実施例A2が、同等の多量の極めて微細な成分(例えば、表2につき、ほぼ0.5μmの中位粒子サイズを有するシリカスートとほぼ0.1μmの中位粒子サイズを有する含水アルミナ)を使用し、最も厚くかつ最も顕著な未焼成シェルを生じたことから、未焼成凝集体の実施例A2は、極めて微細な原料成分の多い量と未焼成シェル構造132の厚さとの間の関係を証明している。
【0127】
コーディエライトビーズ
次に、未焼成凝集体粉末を、焼成プロセスでコーディエライトビーズ粉末に変換した。未焼成凝集体粉末を、アルミナトレイまたはセッタ上、バッチ式炉、および/または回転か焼炉内を含む多様な方式で焼成した。特別な焼成装備が、得られるコーディエライトビーズに明らかな影響を及ぼすことは明らかでないが、回転か焼は、幾つかの実施例の粘着(焼結)を妨げることを支援した。例えば、未焼成凝集体の実施例A1、A2、A3、A4、A17、およびA20は全て、トレイ上で焼成することにより変換することができ、未焼成凝集体の相互のまたはトレイへの明らかな粘着を示さなかった。他の未焼成凝集体の実施例の粉末は、炉器具への粘着を避けるために回転か焼が役立った。
【0128】
バッチ式回転か焼のために、電気加熱式管状炉を、バッチモードで1~3rpmの回転速度で使用した。約5インチ(約12.7cm)の直径および1メートルの長さのアルミナ管を使用した。典型的な炉の装入量は、1.5kg~2kgであった。炉に装入し、炉をその装入物と共に、炉管を閉じることなく、100~150℃/hの速度で約600~700℃の間の温度に加熱し(それにより、空気循環が可能になり、有機結合剤の焼尽生成物が除去され)、次いで、管の端部を閉じて同じ速度で1350℃~1410℃の最高温度に加熱して所望の時間保持(または「ソーク」)し、次いで100℃/h~150℃/hの速度で室温に冷却した。最高温度での典型的な保持時間は、約4h~16hの範囲内であった。
【0129】
連続式回転か焼のために、未焼成凝集体を、炉の加熱区域内へ供給し、焼成した粉末を管出口で捕集した。
【0130】
任意のサイズのセッタボックスまたはトレイを使用することができるが、11.5インチ×19インチ×5インチ(約29.21cm×約48.26cm×約12.7cm)の緻密なアルミナセッタボックス内へ未焼成凝集体粉末を装入した。試験された実施例のために装入する典型的なセッタボックスは、4kg~7kgであった。球状粒子の相互のまたはトレイへの粘着(焼結)の回避を支援するために、温度と焼成時間との一方または両方を低減して、それにより、生じるコーディエライトビーズを個別の球状粒子として維持することができる。
【0131】
上述のように、未焼成凝集体は、高温焼成の間に、幾つかの分解、固相反応、および焼結ステップによって、部分的ないし完全に反応したコーディエライト球状粒子(コーディエライトビーズ)に変換することができる。凝集体スラリー混合物原材料の性質に応じて、前駆球体の完全な変換は、異なる温度およびか焼時間を必要とした。
【0132】
微細構造の進展を、未焼成凝集体粉末の実施例および得られたコーディエライトビーズについて、焼成温度の関数として追跡し、得られた気孔サイズおよび気孔率値を、表7A~7Dに示した。ビーズ内の気孔率および気孔サイズを、水銀圧入ポロシメトリー(MIP)によって体系的に評価し、選択された粉末については、SEMおよびトモグラフィーによっても評価した。例えば、トモグラフィーは、スラリー混合物S1およびS6から作製されたビーズが1%未満の閉気孔率を有することを確認するために使用した。気孔率および気孔サイズの統計的値を推測するために多数のビーズ断面を有する画像に関してSEMを実施した。
【0133】
気孔率値は、Autopore IV 9500ポロシメータを用いて焼成されたコーディエライトビーズのMIP測定によって生成された。特に、焼成されたコーディエライトビーズの粉末を、試験容器内に充填し、密閉し、次いで水銀圧を高め、浸入を測定した。MIP技術に従って、圧力を増大させる場合、ビーズ間のボイドは、最初に相対的に低い圧力で急速に充填され、次いで徐々に小さくなるビーズ内気孔が次に浸入される。圧力が増すと、いよいよ小さくなる気孔ボトルネックが克服され、ボトルネックを超えて気孔が浸入される。こうして、水銀圧と気孔ボトルネックサイズとの依存性が得られた(ボトルネックサイズは、表7A~7Dにおいて「ビーズ内気孔サイズ」として報告した)。したがって、MIP技術により浸入および測定することができるのは開気孔率だけであるため、表7A~7D内の気孔率値は、全て開気孔率に関する。
【0134】
比較的小さな中位気孔サイズで第1のピークを有し、比較的大きな中位気孔サイズで第2のピークを有する双峰性気孔サイズ分布が、各々測定された粉末について得られた。中位気孔サイズは、本明細書では、D50(小文字の「d」で示される中位粒子サイズd50とは対照的に大文字の「D」で示す)と言われてよい。大きな「気孔サイズ」に対応する第2のピークは、密閉容器内に充填される粉末床内のビーズ間のボイドまたは開口に対応し(例えば、これは、ビーズ122が互いにネットワーク120に焼結している場合、ビーズ間気孔率を定義する隙間128に似ていてかつその隙間に該当する)、気孔サイズの小さな第1のピークは、ビーズ内のビーズ内気孔率に対応する。ビーズ122がネットワーク120に焼結することから生じるビーズ間気孔率およびビーズ内気孔率を有する同様に双峰性気孔サイズ分布の実施例は、図17に関連して下記により詳細に説明する。全体の気孔率を、粉末/ビーズ床充填(第1の、大きなピーク)とビーズ内気孔率(第2の、より小さなピーク)との寄与の単純な分離を用いて、ビーズ内でのビーズ内気孔率とビーズ内気孔サイズとを単離することが可能になり、相応する値を表7A~7Dにまとめた。「時間」の単位は、本明細書内の表のいずれにおいても、「hr」または単に「h」と略されていてよい。
【0135】
【表7A】
【0136】
【表7B】
【0137】
【表7C】
【0138】
【表7D】
【0139】
焼成した粉末内では、各ビーズは、ある程度逸脱することが予想されるため、報告されたビーズ内材料気孔率は、本明細書ではビーズについての平均値と見なすことができる(例えば、セラミックビーズを使用して製造したサンプル内のまたはハニカム体内の幾つかのビーズは、示されたビーズ内材料気孔率よりも小さいかまたは大きいビーズ内気孔率を有することができる)。
【0140】
上述のように、水銀浸入が利用されたため、表7A~7Dの気孔率および気孔サイズ値は、気孔内の開放したアクセス可能な通路を指す。このデータは、一般に、顕微鏡観察と一致していた(例えば、SEM画像の分析による)。幾つかの実施形態では、ビーズの材料の気孔率(各ビーズの体積に対する各ビーズのビーズ内気孔率)は、完全に反応した場合、少なくとも15%、少なくとも20%またはさらには少なくとも25%であり、例えば約15%~60%、15%~50%、15%~40%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、25%~60%、25%~50%、または25%~40%である。
【0141】
ビーズが完全に反応したかどうかを評価するために、焼成されたビーズの詳細な組成分析を行う代わりに、未焼成凝集体内の前駆体が十分にコーディエライトビーズに反応したかどうかを示すために、焼成の最高温度および保持時間を代用として使用することができる。幾つかの実施形態では、未焼成凝集体を少なくとも1300℃の温度で少なくとも8時間焼成することから得られるコーディエライトビーズは、十分に完全に反応したと見なされる。したがって、幾つかの実施形態では、コーディエライトビーズは、少なくとも1300℃の温度で少なくとも8時間焼成した後に、少なくとも15%、少なくとも20%またはさらには少なくとも25%の、例えば約15%~60%、15%~50%、15%~40%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、25%~60%、25%~50%、または25%~40%のビーズ内開気孔率(各ビーズの体積に対して)を有する。したがって、未焼成凝集体の実施例A1、A2、A3、A4、A6、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A15、およびA16の全ては、これらの実施形態において十分高い反応レベルで高い開気孔率を示した。
【0142】
コーディエライトビーズは、緻密化に対する安定性に基づいて評価することもできる。例えば、幾つかの実施形態では、コーディエライトビーズは、未焼成凝集体から作製され、実施例A1、A3、A4、A6、A8、A10、A11、A13、A15およびA16のように、1350℃の最高温度で8時間焼成した場合に少なくとも20%のビーズ内開気孔率を有するセラミックビーズを生じ、この全てが、より高い焼成温度で相対的に緻密化の低い傾向を示した。幾つかの実施形態では、コーディエライトビーズは、未焼成凝集体から作製され、実施例A1、A3、A6、A8、A11、A15、およびA16のように、少なくとも1400℃の最高温度で焼成した場合に少なくとも20%のビーズ内開気孔率を有するセラミックビーズを生じ、この全てが、使用可能な焼成温度の最も高い範囲でさえ緻密化に対して特に良好な耐性を示した。
【0143】
実施例A1と同様のスラリーを使用した未焼成凝集体粉末の実施例(例えば、実施例A6、A15、およびA16は、デンプンを有するが、それ以外はスラリー混合物A1に類似したスラリー混合物から作製した)が示す気孔率データは、試験した全ての温度範囲にわたり一貫して高い気孔率を維持することを示した。すなわち、この気孔率は、他の実施例で観察されたものよりも温度の上昇と共によりゆっくりと低下(僅かに緻密化)した(すなわち、実施例A1、A6、A15、およびA16は、より高い温度の焼成に対して感応性が低かった)。このように、実施例A1、A6、A15、およびA16は、コーディエライトビーズの完全な反応(例えば、より高い最高温度および/またはより長い保持時間)が望ましい実施形態に特によく適していてよい。
【0144】
中位開気孔サイズは、実施例A1、A6、およびA15から作製されたビーズ122について、ほぼ2μm~3μmであったため、実施例A6およびA15内の米デンプンは、(デンプンなしの同様のスラリー混合物から作製された実施例A1と比較して)開気孔通路サイズまたは開気孔率に有意な影響を及ぼすように見えなかった。実施例A16における、米デンプンよりは大きな中位粒子サイズを有するコーンスターチの添加は、全体的に開気孔率に影響を及ぼすように見えないが、中位開気孔サイズを、例えば5マイクロメートルを超えるまで実質的に広げた。よって、コーンスターチ、または比較的大きな粒子サイズを有する他のデンプンの添加は、比較的大きなビーズ内気孔サイズが望ましい実施形態において有利であり得る。実施例A16から作製されたビーズ122は、約2μm~10μmのサイズ範囲をカバーする気孔通路を有する特に広い気孔サイズ分布を示した。小さなタルクベース(例えば、実施例A2およびA4)と比較してより大きなタルク粒子(例えば、実施例A7の場合)の添加も、焼成されたセラミックビーズ122内の開気孔率の早期でかつ急速な喪失を引き起こすように見え、よって、1300℃付近で少量の開気孔率を形成するだけであった(例えば、未焼成シェルは、緻密なセラミックシェルに転換した)。これらの実施例は、前駆体スラリー中の水酸化マグネシウムが、焼成したビーズ中で比較的高い開気孔率と一般に相関していたことを示す。したがって、水酸化マグネシウムは、特により高いビーズ内気孔率が望ましい幾つかの実施形態において、マグネシア源として含まれる。対照的に、純粋な酸化物前駆体混合物、例えばMgO、SiO、Al、または複合酸化物、例えばMgAlは、ビーズ間の接触点で、僅かな任意のガラス形成もしくは液体形成で、または任意のガラス形成もしくは液体形成なしで、主に固相拡散および反応を介して相互作用するように見え、したがって、他の例と比較して、極めて高い温度でのみ反応し、これらのビーズは、ビーズ内気孔率の発生が比較的少ないかまたは発生がなく、収縮下ですぐに焼結することになる。
【0145】
図13A~13Dは、焼成温度の関数としての、未焼成凝集体および得られたセラミックビーズの代表的な実施例の微細構造の進展を示す。より具体的には、図13A~13Dは、未焼成凝集体粒子(「GRN」)および1200℃、1250℃、1300℃、1350℃、1380℃および1410℃の温度で4h焼成して得られたビーズの研磨されたSEM断面図を示す。水酸化物、水和酸化物などの形の結合水を含む未焼成粒子について、全ての水は、図13A~13Dに示す1200℃の温度より下で放出された。デンプン添加物を有する未焼成凝集体粉末について、デンプンの焼尽も1200℃未満で起こり、図13A~13Dの対応する実施例で見られるデンプン焼尽の位置で識別可能な気孔(例えば、比較的大きな中位気孔サイズを有する)が残る。一般に、分析された未焼成凝集体の実施例の全てについて、約1200℃以上の温度まで、未焼成凝集体と比較して、他の有意な微細構造の変化はなかった。
【0146】
コーディエライトの形成に向けた反応は、一般に、比較的大きな気孔および相互接続された気孔通路の形成下で1200℃超で開始される。本明細書に述べたように、セラミックシェルの形成(例えば、乾燥の間に未焼成凝集体の外側表面に向かって微細な未焼成粒子が移行するため)は、焼成の間のビーズの収縮を防止することを支援する。結果として、緻密化を受ける代わりに、ビーズ内の気孔率は、温度が約1200℃から約1300℃または1400℃に上昇するにつれて、一般に粗大化(拡大)し、その結果、比較的大きな相互接続した気孔通路が、最初に、図13A~13Dの実施例の多くに示された温度範囲にわたり発生した。しかしながら、本明細書でさらに説明するように、温度が上昇すると、ガラスまたは液体の拡散輸送および粘性流動が、幾つかの実施例について、焼成のために使用される時間枠内(例えば、8時間以下)で生じることがあり、多孔性球体が収縮下で緻密な球体にまで緻密化することを引き起こす。
【0147】
デンプンを有する未焼成凝集体から作製された焼成したコーディエライトビーズ(例えば、実施例A6、A15、およびA16からのビーズ)は、最初に、1200℃~1250℃の範囲内で比較的大きな気孔の存在を示した。この比較的大きな気孔の割合は、デンプンの割合と共に増加した(例えば、実施例A6およびA15から作製されたビーズを参照)。気孔のサイズは、デンプンのタイプによって影響を受けてもよい。例えば、米デンプン(実施例A6およびA15)は、コーンスターチ(実施例A16)よりも小さい粒子を有するため、デンプンが燃え尽きる間に、一般により小さな気孔を有するビーズが製造される。
【0148】
約1300℃の温度では、気孔率は、幾つかのタイプの粒子において減少し始めるが、他のタイプでは、約1400℃まで維持される。例えば、未焼成凝集体粉末の実施例A1から作製されたコーディエライトビーズは、僅かな緻密化だけで、1410℃まで高い開気孔率を有意に維持した。対照的に、上述の未焼成シェル132を形成する微細な粒子の厚い外層を示す未焼成凝集体粉末の実施例A2から形成されたコーディエライトビーズは、焼成の間に硬質なセラミックシェル133が発生し、極めて低レベルの開気孔率しか生じなかった。1300℃で、未焼成凝集体の実施例A2から形成されたビーズは、有意に収縮し、緻密化し、かつ一緒に焼結し始めた。未焼成凝集体粉末の実施例A6(デンプンを含む)から形成されたビーズは、デンプンを含まない実施例(例えば、実施例A1)よりも高い気孔率を有するが、1350℃以上でますます大きな気孔の形成を引き起こす早期の焼結の開始も示した。未焼成凝集体の実施例A15から作製されたビーズの気孔率および気孔サイズは、図13A~13Bの示された温度範囲にわたって、実施例A1およびA6から作製されたものと有意に一致するように見えた。未焼成凝集体粉末の実施例A16から作製されたビーズは、コーンスターチの存在により、大きな気孔で高い開気孔率を示し、この気孔率および気孔通路は、1410℃まで有意に安定したままであった。未焼成凝集体粉末の実施例A7から作製されたビーズは、最初に、未焼成凝集体粉末の実施例A2(実施例A7と同様のスラリー混合物を有する)から作製されたものに匹敵する微細構造を有していたが、約1300℃で始まり、実施例A7から得られるビーズは、ますます緻密化してきた。このように、未焼成凝集体の実施例A7から得られるビーズは、比較的高い温度(例えば、約1300℃)で焼成した後の球状の緻密な粒子の例を提供する。
【0149】
焼成した粉末内に存在するセラミック相は、X線回折(XRD)により同定された。マルチストリップLynxEye高速検出器を装備したBruker D4回折システムを利用した。使用した未焼成凝集体の実施例にかかわらず、非晶質(ガラス質)の含有率は、950℃と1150℃との間での焼成の間に急速に低下し、次いで1250℃以上で焼成し引き続いて冷却した際に約10質量%のガラスで安定化することが一般的に見出された。インサイトゥXRDは、非晶質/ガラス相が、幾つかの組成物について中間か焼段階で最大で50%に達することができることを示した。か焼した粉末中のガラスの測定量は、しばしば粉末の冷却速度に依存する。急冷した粉末については、<1350℃の焼成で、最大で30%の非晶質/ガラスが観察され、ゆっくりと冷却された粉末については、ガラス量は7%未満であった。コーディエライト(多形インディアライトを含む)形成開始温度は、約1200℃~1250℃であった。二次相およびその正確な量は、各未焼成凝集体粉末から作製されたビーズ122について変化してよく、原材料不純物および/または化学量論の結果であってよい。二次相は、サファイア、ムライト、スピネル、シュードブルッカイトなどを含む。
【0150】
表8は、表7A~7Dの2つの最高焼成温度(1380℃および1410℃)で製造されたビーズについて得られるセラミック相組成の実施例を提供する。表8中のブランクは、データが不完全かまたは無効であることを示す。コーディエライト(その多形インディアライトを含む)、サファーリンおよびスピネルの相だけが、表8に示されている。インディアライトは、コーディエライトの多形であるため、本明細書の「コーディエライト」の量に対するあらゆる一般的な言及は、コーディエライト相とインディアライト相との両方の合計を含む。リートベルト精密化は、典型的には結晶相を含むだけ(ガラスを含まない)の相の寄与の定量化のために使用された。ガラス相の推定値は、非晶質バックグラウンドの適合に基づき提供され、よって、ガラスレベルの推定値は、結晶相よりも高いエラーバーを有してよいと理解される。
【0151】
【表8】
【0152】
実施例A18およびA19は、表7A~7Dおよび8に示された焼成条件後に極めて反応不十分であり、焼成の際に任意の有意な気孔率の発生は失敗し、高レベルのクリストバライト、石英、アルミナ、スピネル、およびサファイアが生じた。結果として、幾つかの組成(例えば、実施例A18およびA19)は、コーディエライトを形成するために極めて高い温度および/または著しく長い保持時間を必要とする場合がある。例えば、A18およびA19のような実施例における反応性セラミック前駆体の反応を完了するためには、例えば15hまでまたはさらには20hまでの著しく長い焼成時間が必要となることがある。ほとんどの粘土、タルクまたは粘土-タルク由来の混合物は、表7A~7Dおよび8の条件下で容易にコーディエライトに転換され、それにより多孔質コーディエライトビーズに転換される。実施例A2を参照する少数の実施例だけが、開気孔率ではない(すなわち、MIPデータに基づき可視ではないが、SEMとトモグラフィーデータ分析との組合せから同定された閉気孔率の)多孔質構造を発生させた。
【0153】
高いパーセンテージのコーディエライト相を有する形成されたセラミックビーズは、全ての試験温度で一貫して高い開気孔率を示した。換言すると、高いパーセンテージのコーディエライト組成ビーズは、一般に、焼成温度にあまり感応性ではない(すなわち、一般に、比較的高い温度でも緻密化に対して高い耐性を示す)が、より低いコーディエライトビーズは、比較的高い温度での緻密化に対してより高い感応性であった。このように、比較的高いパーセンテージのコーディエライト相が生じる未焼成凝集体粉末は、ビーズが完全に反応できることを保証するために、幾つかの実施形態では有利である。完全に反応したビーズは、最終的なハニカム体の焼成の間にビーズの緻密化なしに、最終的なセラミックハニカム体100の比較的高い温度での焼成を可能にするために特に有利であってよい。幾つかの実施形態では、ビーズ122は、コーディエライト(ここでも、インディアライトの質量%を含む)を少なくとも75質量%、少なくとも80質量%、またはさらには少なくとも85質量%有する。
【0154】
焼成はまた、未焼成凝集体粉末の実施例にとって、極めて遅い加熱速度(10℃/h~20℃/h)で実施され、得られた示差走査熱量測定(DSC)結果を分析した。比較的低い温度(例えば約250℃~450℃)で、結合剤/分散剤の焼尽が観察された。大抵の未焼成凝集体粉末についての主要な質量放出は、約400℃で観察された。約400℃~約1000℃の温度範囲では、水および/またはCOが放出されるため、水酸化物および炭酸塩の分解反応が観察された。含水原材料は、含水アルミナ、水酸化マグネシウム、粘土およびタルクを含む。スラリー調製および噴霧乾燥の間では、結合水は、有意にまたはさらには完全に保存されるので、噴霧乾燥された未焼成凝集体粉末は、含水化合物を含む。これらの化合物の分解は、吸熱反応として観察される。含水アルミナの分解は、約300℃で、水酸化マグネシウムの分解は、約400℃で、粘土の脱水は、約520℃で、タルクの脱水は、約920℃で観察されるが、水損失温度は、バッチの相互作用によりずれることがある。
【0155】
多様なメカニズムが、焼成の間に高い開気孔率を確立および維持するこの効果について調査された。第1の調査では、噴霧乾燥した凝集体内での水およびCO放出現象を同定するために、DSCを使用した。次いで、含水種および炭酸塩の分解の間の水、COおよび/またはCOの放出の影響を、複数の焼成した凝集体の気孔率データと相関させ、水またはCO損失と相関するビーズ内での気孔率の進展の段階的変化を確認し、例えば水蒸気または他のガス気泡の形成が高いビーズ内気孔率の形成を引き起こすかを確認した。比較的高い、中程度または低い最高焼成温度での高い水損失は、未焼成凝集体の実施例の焼成の間のビーズ内気孔率の形成を引き起こすものではないことが見出された。同様の結果は、使用した未焼成凝集体粉末中の炭酸塩レベルとも無関係に見出された。最終的に、未焼成凝集体粉末およびビーズ内気孔率の発生において、水または他のガス放出する原材料(例えば、炭酸塩)の間で相関関係は見出されなかった。
【0156】
第2の調査では、中間のガラスまたは液体が、焼成の間のビーズ内気孔率の発生に寄与するかまたは阻害するかどうかを評価した。インサイトゥX線回折(XRD)およびDSCを、表内に示すように、幾つかの未焼成凝集体粉末の実施例中のガラス形成開始温度を同定するために使用した。これらの凝集体粉末を作製するために使用したスラリー混合物は、ナトリウム(Na)添加の有無で、多様な原材料の組合せおよび組成を含む。DSCおよびインサイトゥXRDは、1265℃~1300℃の温度範囲内での部分的な溶融が、最終的なビーズ内気孔率と必ずしも関連していないことを示した。ナトリウム不含のA1およびA4と比較して実施例A2およびA3におけるナトリウム添加、およびガラス形成の比較的早期の開始から、影響は限定的に見出されたかまたは見出されなかった。有意な相関は、ガラス/液体の形成とビーズ内気孔率との間には見出されなかった。多様な未焼成凝集体粉末についてのガラス形成閾値付近での焼成サイクルの変更も、ビーズ内気孔率の発生への影響は見出されなかった。
【0157】
第3の調査では、明らかな相関が、板状の原材料(例えば、タルク)の乏しい(低密度の)粒子充填と焼成の間のビーズ内気孔率の発生との間に発見された。しかしながら、単に大きな板状の原材料を有するだけでは不十分であることが見出された。過度に大きな板状の原材料の使用は、幾つかの場合では、もはや球状でない焼成されたビーズおよび/または断片に砕けた焼成されたビーズを生じさせた(例えば、大きなタルクを15%含む粘土-シリカ-アルミナ-タルク混合物から形成された凝集体の実施例A7から作製されたビーズ、および大きなタルク粒子も有する粘土およびMg(OH)の混合物から形成された凝集体の実施例A12から作製されたビーズ)。幾つかの実施形態では、板状の原材料の最大寸法は、焼成されたビーズの中位粒子サイズの最大で40%、最大で35%、最大で30%、またはさらには最大で25%内にある。例えば、最大で約10μmの中位粒子サイズを有する板状の原材料は、中位粒子サイズが約30μm~40μmの範囲内のビーズにとって適しているが、より小さな中位ビーズ(粒子)サイズのビーズにとって適していないことが見出された。さらに、高タルクスラリー混合物を含む未焼成凝集体から焼成した幾つかのビーズ(例えば、未焼成凝集体の実施例A17およびA18から作製されたビーズ)は、塊状の形状を維持し、ビーズ内気孔率を発生させなかったので、高レベルの板状の原材料は、焼成の間のビーズ内気孔率の形成を必ずしも促進しなかった。本明細書で先に記載したように、一般に、水酸化マグネシウム、および特に高レベル水酸化マグネシウム(例えば、唯一のマグネシア供給源として)の使用は、高いビーズ内開気孔の形成を促進した。
【0158】
焼結および/または固相反応による焼成の間の噴霧乾燥した未焼成粒子の収縮も、未焼成凝集体を作製するスラリーに十分な割合の微細粒子を添加することにより回避された。図10との関係で記載したように、未焼成凝集体の形成の間の乾燥の結果としての微細粒子の外側への移行は、焼成の間にセラミックシェル133に変換される未焼成シェル132の形成を引き起こす。微細粒子のシェルは、球状粒子の剛性のために十分な厚さにすることができ、それにより、焼結および固相反応の間の収縮から球状粒子を保護し、高い温度の焼成の間にビーズのサイズおよび気孔率を維持することを支援する。しかしながら、未焼成凝集体粉末の実施例A2から作製されたビーズに関して示されるように、微細粒子の過度に厚いシェルは、焼結、緻密化および/または高い閉気孔率を促進することがある。
【0159】
表9は、多様な未焼成凝集体粉末の完全な反応のために有用であった幾つかの代表的な焼成条件を示すが、本明細書に記載されているように、他の条件も可能である。
【0160】
【表9】
【0161】
表9により証明されているように、約150℃/hの加熱速度で、約1350℃~1415℃の最高温度で、かつ/または(しかし)6~8時間の保持時間での焼成サイクルを用いて、未焼成凝集体粉末の多くの粉末をコーディエライトビーズに変換することが可能であった。幾つかの実施形態では、加熱速度は100℃/h~200℃/hの範囲にあるが、他の適切な速度も可能である。スピネルおよびシリカの両方を有する未焼成凝集体は、完全な反応を達成するために、一般に比較的高温および/または比較的長い保持時間から利益を受けることが示された。タルク、粘土および含水アルミナ成分を有する粉末は、一般に比較的低い最高温度および/または比較的短い保持時間、例えば1350℃~1380℃で4~6時間で変換された。連続式回転か焼炉も、未焼成凝集体をうまく反応させることが可能であり、これらの温度で、20分~1時間の短いソーク時間で高いパーセンテージのコーディエライトを作製することが可能であった。
【0162】
一般に、最高温度まで200℃/h未満の加熱速度(例えば、少なくとも1250℃の温度)は、ビーズの気孔構造を維持しながら、完全に反応したセラミックビーズの形成を可能にすることが見出された。例えば、最高温度(例えば、少なくとも1250℃の温度)まで300℃/hの比較的高い加熱速度は、ビーズ内の気孔率の増大された損失を引き起こすことが見出された。理論に拘束されることは望まないが、比較的高い加熱速度での緻密化は、顕著なガラス形成ならびに促進された焼結および反応によるものであってよいと考えられる。幾つかの実施形態では、少なくとも1100℃、少なくとも1200℃、少なくとも1250℃、または少なくとも1300℃の最高温度が適している。幾つかの実施形態では、約4~12時間の保持時間が適している。
【0163】
表10は、表9の条件により焼成された表5の多様な未焼成凝集体粉末から形成されたコーディエライトビーズについて得られたd10、d50、d90、d90-d10および(d90-d10)/d50の値を示す。同じまたは類似の焼成条件で同じまたは類似の未焼成凝集体粉末から作製されたコーディエライトビーズの特性において幾つかの変動があることを説明するために、実施例の幾つかについて複数回の実行が行われた。
【0164】
【表10】
【0165】
未焼成凝集体粉末の実施例A1、A2、A3、A4、A6、およびA17は、高い開気孔率を有する多孔質コーディエライトビーズとしてそれぞれ、実施例のコーディエライトビーズB1、B2、B3、B4、B6、およびB17をうまく製造した。しかしながら、未焼成凝集体粉末の実施例A18、A19、およびA20からそれぞれ製造された実施例のコーディエライトビーズB18、B19、およびB20は、全て、低い開気孔率を有する高密度コーディエライトビーズであった。
【0166】
焼成の間の未焼成凝集体粉末の実施例の幾つかから作製されたコーディエライトビーズの進展は、表A7~7Dおよび図13A~13Dとの関係で先に説明した。関連して、コーディエライトビーズB1、B2、B6、およびB17は、表7A~7Dおよび図13A~13Dの進展における対応する温度で同じ未焼成凝集体の実施例から作製されたものと対応する微細構造を有していた。例えばビーズB1(これは、表7A~7Dから、1380℃の最高温度で未焼成凝集体の実施例A1を焼成することにより形成された)は、図13Bでの最高温度1380℃で焼成した未焼成凝集体の実施例A1と同じ進展段階に対応する微細構造を有していた。よって、図13A~13Dの先の記載に従って、コーディエライトビーズの実施例B1は、大きな開気孔率および狭い相互接続した開気孔通路(例えば、図9Aおよび/または9Bの代表的なビーズ122Aおよび/または122Bに類似)を示し、コーディエライトビーズB6、B15、およびB16は、大きな相互接続した開気孔率および大きな相互接続した開気孔通路(例えば、図9Cの代表的なビーズ122Cに類似)を示した。図13Bの1350℃~1380℃の未焼成凝集体粉末の実施例A2の進展段階に対応するコーディエライトビーズの実施例B2は、高いビーズ内気孔率であるが、低い相互接続性および低いビーズ内気孔アクセスを有する(例えば、開口126がほとんどないか全くない)厚い外側セラミックシェルを示した。
【0167】
未焼成凝集体粉末の実施例A1~A20から作製された焼成されたコーディエライトビーズの粉末は、SEMおよび画像分析により真球度について特性決定した。噴霧乾燥したビーズについてのビーズ真球度は、最小ビーズ寸法と最大ビーズ寸法との間のアスペクト比としてSEM画像分析により得られる、0(無限に長いロッドまたはプレート)から1(完全な球)までの範囲のスケールで、0.9より大きいと決定された。さらに、表11は、示されているように、未焼成凝集体の実施例A1、A8、A10、A11、およびA12から作製されたコーディエライトビーズの代表的なサンプリングについて計算された円形度および平均真円度値を示す。
【0168】
【表11】
【0169】
表11中の円形度は、(ビーズと同じ面積を有する円の円周)/(充填されたビーズの断面の周の長さ)として計算し、真円度は、(ビーズと同じ面積を有する円の直径)/(ビーズの最も長い断面寸法(直径))として計算した。円形度について、2つの変数は、代表的な粉末サンプルのSEM画像の分析において全てのビーズの平均として決定した。真円度について、この値は、最初に、各ビーズの真円度を個別に計算するために、各ビーズの最大寸法を測定し、次いで、個別に記録された真円度値を平均して、表11の平均真円度値を生成することにより計算した。
【0170】
高い開気孔率に加えて、本明細書に開示されたセラミックビーズ122は、高い内部表面積を有することができる。高い内部表面積は、ハニカム体100についての幾つかの用途において、例えば、ハニカム体がパティキュレートフィルタまたは触媒担体として準備される場合に特別な利点を提供する。本明細書に記載されたように、この高い表面積は、ビーズ122がネットワーク120に焼結される際に、高い内部表面積および高いビーズ内開気孔率を有するビーズ122が、隙間128により作製されたビーズ間気孔率と組み合わされる場合、特に有利となり得る。
【0171】
ビーズの材料のトモグラムを作成しかつ分析して、ビーズ122の特性、例えばビーズ内表面積(すなわち、各ビーズ122の内部の気孔構造124の表面積)をさらに評価した。ビーズ内中位気孔サイズおよびビーズ内閉気孔率も推定した。ビーズの代表的なサンプルの内部気孔構造および外側表面を分析して、ビーズの外側表面の外部または外側の表面積、およびビーズ内の内部またはビーズ内表面積を推定した。表12Aおよび12Bは、分析された代表的な粉末サンプル中のビーズを作製するために使用されたスラリー混合物の実施例および焼成条件、ならびに各々の分析された粉末サンプルに対応する未焼成凝集体の中位サイズを提供する。表12B中の表面積は、示されているように、シングルポイント法またはブルナウアー・エメット・テラー(BET)法から導き出された。内部表面積は、それが開気孔構造により寄与されたかまたは閉気孔構造により寄与されたかどうかについて、表12Aでも評価された。表12Aは、全内部ビーズ表面積の外部ビーズ表面積に対する比率および開放した内部表面積の外部ビーズ表面積に対する比率も列挙する。表12Bで計算された推定された余分な表面積は、多孔質ビーズのBET表面積(外部表面積と開気孔率に起因する内部表面積の両方を有する)から、推定された外部表面積(よって、緻密なビーズの近似的な全表面積に対応する)を減算することにより決定された。例えば、ビーズの外部表面積は、ビーズを球として近似することにより推定することができる。より小さいビーズは、表面積を形成するためにより少ない体積を有するので、推定された余分な表面積も、表12Bにおいて各ビーズについての中位凝集体サイズにより余分な表面積を除算することにより、ビーズのサイズに標準化した。
【0172】
【表12A】
【0173】
【表12B】
【0174】
トモグラフィーデータは、傾向を同定するために有用であるが、使用したトモグラフィー解像度(0.3μm/ボクセル)は、約0.6μmより小さい気孔および通路を説明できないため、正確な値ではない。表13Bは、多様なセラミックビーズについてのBETマルチポイントおよびシングルポイント表面積測定の両方を列挙する。BET測定は、最小の気孔通路も含み、それにより良好な精度を有するという利点を有するが、この測定は、ビーズ内表面積とビーズの外側の表面積との全体の全表面積を提供するにすぎない。しかしながら、両方の測定の傾向は良好に一致し(かつ、以下に説明する表13の単純モデルとも一致し)、例えば、凝集体A1およびA8から作製されたビーズは、凝集体A2、A12、およびA13から作製されたビーズと比較して、ビーズ内表面積の有意な寄与を有することを示す。凝集体の実施例A1から作製された比較的小さなビーズ(例えば、約18μmの中位粒子サイズ)は、同じ凝集体の実施例A1から作製された比較的大きな(例えば、30~35μm)の中位粒子サイズのビーズよりも、実質的に小さい表面積を有することも証明された。
【0175】
幾つかの実施形態では、多孔質セラミックビーズの開放したビーズ内表面積の外部表面積に対する比は、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、またはさらには少なくとも9.5:1であり、これらの比率を端点として含む任意の範囲を含み、例えば5:1~10:1、5:1~9.5:1、5:1~9:1、6:1~10:1、6:1~9.5:1、6:1~9:1、7:1~10:1、7:1~9.5:1、7:1~9:1、8:1~10:1、8:1~9.5:1、8:1~9:1、9:1~10:1、9:1~9.5:1、またはさらには9.5:1~10:1である。幾つかの実施形態では、多孔質セラミックビーズの閉気孔率は、最大で5%、最大で4%、最大で3%、またはさらには最大で2.5%であり、これらの値を端点として有する範囲を含み、例えば0%~5%、0%~4%、0%~3%、または0%~2.5%である。
【0176】
スラリー混合物の実施例S1およびS8から作製されたビーズは、相対的に小さな中位気孔サイズおよび高い開気孔率に起因して、外部表面積に対して極めて高い相対内部表面積を有することを見ることができる。スラリー混合物の実施例S1およびS8から作製されたビーズ内の僅かな量の閉気孔率のため、計算された表面積比は、閉気孔率についての表面積を除外した場合、未焼成凝集体の実施例A1およびA8から作製されたような高い開気孔率のビーズに対して有意に変化しない。比較において、未焼成凝集体の実施例A2(スラリー混合物S2)から作製されたビーズは、比較的高い閉気孔率(例えば、本明細書に記載されたようにセラミックシェル133の形成のため)および大きな中位気孔サイズを有する。結果として、スラリー混合物S2から作製された分析されたサンプルは、外部ビーズ表面積の6倍の内部表面だけを示し、この内部表面は、閉気孔率を除外した場合、さらに4倍の比率に低下する。一般に、気孔の数が減少し、気孔のサイズが増大するにつれ、内部表面積は減少するが、開放した内部表面積は、閉気孔率の増大との関連で減少する。
【0177】
先に記載されるように、トモグラフィー由来の表面積値とBET表面積値のいずれかを考慮する場合、トレードオフがある。傾向をさらに同定しかつ評価するために、他の技術からの観察を実験に基づき検証するための単純モデルも開発された。このように、表13に示された単純モデルの値は、任意の所与のシナリオにとって正確な予測を生成することは期待されていないが、その代わりに、多様なシナリオの中の傾向を検討する場合に洞察を提供することが期待される。
【0178】
単純モデルによると、単純な近似は、ビーズの表面積(SB=4πr)、ビーズの体積(VB=4/3πr)、ビーズ内の気孔/通路の容積(VP=%P*VB)、ビーズ内の気孔/通路の容積(Vch=πL(D50/2))、ビーズ内の各気孔/通路の平均表面積(Sch=2πL(D50/2))、ビーズ内の気孔/通路の数(Nch=VP/Vch)、および全ての気孔/通路の全表面積(SNch=Nch*Sch)から計算して、ビーズの近似的全表面積(S=SNch+SB)を得ることができ、ここで、rは、ビーズの中位粒子サイズ(d50)の1/2であり、%Pは、ビーズの気孔率であり、Lは、ビーズ全体を通る気孔/通路の平均長さであり、D50は、気孔/通路の中位直径である。さらに、BETは、(SNch+SB)/(ρ*VB*(1-%P))によるモデルから推定することができ、ここで、ρは、セラミック材料の密度である。表13は、モデル計算を要約し、内部/外部表面積比および推定されたBET値に対するr、%Pおよび中位気孔サイズ(D50)の入力値の変更の効果を示す。表13について、ρは2.52g/cmであり、気孔/通路は、ビーズ全体にわたり延在すると仮定して、Lは、平均して、rに等しいと仮定される。
【0179】
【表13】
【0180】
球状セラミックビーズを形成する別の方法(噴霧乾燥とは別)も調査した。一実施形態では、噴霧乾燥(すなわち、実施例S1~S20)で使用したものと同じスラリー混合物を、炉内、加熱プレート上および/またはマイクロ波内で乾燥し、得られたケークを粉砕/篩別により破砕して粉末にした。次いで、この粉末を焼成して、コーディエライト粒子を作製した。しかしながら、粉砕および/または篩別の結果として、コーディエライト粒子は、大きな割合の大きな不規則の形状の凝集物と小さな断片化された破片または粒子を含んでいた。これらの粒子は球状ではなく、本明細書に記載された有利なビーズ内気孔率およびビーズ間気孔率を示すことがなかった。
【0181】
他の実験では、スラリー混合物(例えば、実施例S1~S20)を、回転蒸発により急速に乾燥した。ややさらに不規則(例えば、長円形、扁円形、涙形など)ではあるが、噴霧乾燥した凝集体の実施例A1~A20に概ね類似した球状形状の未焼成凝集体粒子が、スラリー混合物から溶媒を回転蒸発し、乾燥した粉末を標的粒子サイズに篩別し、篩別された粉末を1300℃超の最高温度で焼成して、前駆体原材料をコーディエライトに反応させることにより得られた。この別のプロセスもまた、本明細書に記載されたように有利に高い開気孔率および気孔サイズ分布を有する噴霧乾燥された粉末の実施例に類似の微細構造を提供した。
【0182】
図14は、(i)先に記載された噴霧乾燥プロセスを用いてスラリー混合物S8から作製された実施例A8、(ii)回転蒸発プロセスを用いてスラリー混合物S8から作製された実施例RV1、および(iii)回転蒸発プロセスを用いてスラリー混合物S8から作製されたが、コーンスターチ20体積%の造孔剤添加物をさらに含む実施例RV2の焼成により作製された3つのコーディエライトビーズの微細構造を示す。示されるように、同様の気孔構造を有する未焼成凝集体を、回転蒸発技術によって作製することができる。さらに、RV2は、コーンスターチのような造孔剤の添加が、例えばコーンスターチについて5~10μmの範囲で、比較的大きな気孔を作製することができることを示した。他の実施形態では、より小さいおよびより大きいデンプン粒子が、それぞれより小さいおよびより大きい気孔を形成するために使用することができる。
【0183】
図14のコーディエライトビーズの気孔率および気孔サイズを、水銀圧入ポロシメトリーにより決定した。表14に示されるように、噴霧乾燥に由来する未焼成凝集体の実施例A8と、別の回転蒸発プロセスに由来する実施例RV1とについての気孔率および気孔サイズ値において有意な類似性があり、それにより、回転蒸発は、噴霧乾燥に対する適切な代替プロセスであることが示された。
【0184】
【表14】
【0185】
ハニカム体
未焼成凝集体(例えば、未焼成凝集体130)の粉末からコーディエライトビーズ(例えば、セラミックビーズ122)の粉末を作製した後に、バッチ混合物(例えば、バッチ混合物110)中の成分として多様なコーディエライトビーズが含まれていて、このバッチ混合物を押し出して、未焼成ハニカム体(例えば未焼成ハニカム体100G)を形成した。未焼成ハニカム体を定尺切断し、乾燥し、次いで焼成してセラミックハニカム体(例えば、ハニカム体100)を形成した。ハニカム体は、コーディエライトビーズを焼成するために使用される温度より低いかまたは同様の温度で、例えば約1350℃~1410℃の範囲内で焼成することができる。幾つかの実施形態では、バッチ混合物を、液状担体の添加の前で、かつバッチ中の無機成分の全質量に対して、多孔質セラミックビーズを少なくとも50質量%、少なくとも55質量%、少なくとも60質量%、少なくとも70質量%、少なくとも75質量%、少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、またはさらには少なくとも90質量%有し、これらの値を端点として含む範囲を含み、例えば55質量%~95質量%、55質量%~90質量%、55質量%~85質量%、55質量%~80質量%、60質量%~95質量%、60質量%~90質量%、60質量%~85質量%、60質量%~80質量%、70質量%~95質量%、70質量%~90質量%、70質量%~85質量%、70質量%~80質量%、75質量%~95質量%、80質量%~95質量%、または80質量%~90質量%有する。無機結合剤、例えば本明細書に記載されたような1つ以上のセラミック前駆材料または剪断結合剤凝集体は、多孔質セラミックビーズに対して、これらの成分の合計が100質量%となる量で、例えば少なくとも5質量%、少なくとも10質量%、少なくとも15質量%、少なくとも20質量%、または少なくとも25質量%の量で、例えば5質量%~25質量%、5質量%~20質量%、5質量%~15質量%、5質量%~10質量%、10質量%~25質量%、10質量%~20質量%、10質量%~15質量%、15質量%~25質量%、または20質量%~25質量%の量で添加することができる。造孔剤は、超加成性として任意の適切な量で、例えば少なくとも10質量%、少なくとも20質量%、少なくとも30質量%、または少なくとも40質量%の超加成性で、これらの値を端点として含む任意の範囲を含んで、添加することができる。押出助剤、例えば油は、超加成性として、任意の適切な量で、例えば少なくとも0.5質量%、少なくとも0.75質量%、または少なくとも1質量%の超加成性で、これらの値を端点として含む任意の範囲を含んで、添加することができる。有機結合剤、例えばメチルセルロースは、超加成性として、任意の適切な量で、例えば6質量%~10質量%の超加成性で、またはそれより多く添加することができる。
【0186】
亀裂形成のような欠陥を回避するために長くかつゆっくりとした加熱サイクルを必要とする場合がある従来の反応性コーディエライトバッチとは対照的に、既に反応した(「予備反応させた」)コーディエライトビーズの使用は、最高温度までの急速な昇温で、ハニカム体の比較的迅速な焼成を可能にする。50℃/h、100℃/h、150℃/h、200℃/hおよび300℃/hの昇温速度でのフルサイズのハニカム体の焼成試験では、焼成された物品の得られる品質にはっきりとした差異は見られなかった。この焼成された物品は、電気炉およびガス炉の両方において、亀裂なく一貫して優秀な品質を示した。幾つかの実施形態では、加熱する昇温速度は、少なくとも50℃/h、少なくとも100℃/h、少なくとも150℃/h、少なくとも200℃/h、またはさらには少なくとも300℃/hである。従来の反応性コーディエライトバッチと比較して、最高温度での保持時間も、極端に短く、例えば300℃/hの昇温速度を用いる場合、1380℃で4hであった。よって、完全な焼成サイクルは、従来の反応性バッチ製品に対して50h、60h、80h、またはさらには100hの代わりに、20時間で完了することができた。
【0187】
第1の調査では、ハニカム体を、ラム押出機により1インチ(約2.54cm)または2インチ(約5.08cm)直径部材として、または二軸スクリュー押出機により2インチ(約5.08cm)直径部材として押し出し、マイクロ波乾燥機内で乾燥し、引き続いて必要に応じて熱風乾燥炉により乾燥した。ラム押出については、ペーストを、ラム押出機を通して加圧する前に、例えば、スクリーンと大きな開口ダイとを供えた二軸スクリューを通過させること、および/またはスパゲッティダイを数回通過させることにより、最初に完全に混合した。二軸スクリュー押出については、バッチ混合物ペーストを、押出機バレル用のフィーダー内に直接装填した。一般に、押出ダイを保護しかつ均一なバッチペーストフローを提供するために、スクリーンパッケージを使用した。さらに、焼成したコーディエライトビーズを、必要に応じて、例えば、自動化された篩で270または325サイズのメッシュを介して篩別し、残った大きなサイズの凝集体を除去し、それにより、押出の間の押出ダイスロットの閉塞を回避した。
【0188】
押し出された未焼成ハニカム体は、1340℃~1420℃の温度で4~6時間焼成した。これらの時間および温度で、コーディエライトビーズを、バッチ混合物に添加する前に、一般に完全に反応させて、ビーズ内で更なる固相反応による変換が必要ない(バッチ混合物に添加した任意の反応性無機結合剤材料の反応および/またはビーズ間の焼結だけが必要な)ため、ハニカム体についての焼成時間を短く維持した。焼成は、特別な酸素制御なしで空気中で行った。加熱速度は、一般に、100℃/h~300℃/hである(とはいえ、有機物の焼尽の間の約400℃~1000℃ではよりゆっくりとした加熱速度および/または保持を用いた)。
【0189】
押出の容易さは、押出ダイのスロットの幅と、バッチ混合物中に使用されたビーズについての粒子サイズ分布との比に関係することが見出された。押出は、600/4、200/8、300/8、300/13、300/14および300/15ダイ(その名称に従って、最初の数字は、ダイの平方インチ当たりの大凡のセル数(cpsi)を示し、第2の数字は、ダイの大凡のスロット幅を示す)を含む多様な異なるダイを用いて実行したが、他のダイ構成を使用することもできる。幾つかの実施形態(例えば、300/8構成のような比較的薄いスロットを有するダイについて)では、(例えば、バッチ混合物中に無機物が80質量%以上を構成することができる)バッチ混合物中のコーディエライトビーズの中位粒子サイズは、ダイの幅の15%超、または同様に20%超であり、コーディエライトビーズについてのd90値は、スロット幅の20%~40%であった。例えば、300/8ダイ中のスロットの幅は、約200μmであってよく、コーディエライトビーズについての中位ビーズサイズ(d50)値は、50μmより上であり、コーディエライトビーズのd90値は、50μm、60μmまたはさらには70μmを超える。幾つかの実施形態では、比較的大きなビーズによるスロットの閉塞を防ぐために、コーディエライトビーズのd90またはd95サイズを、スロット幅の3分の1未満(例えば、20%~33%)に維持することが特に有利であった。
【0190】
コーンスターチ、米デンプン、エンドウ豆デンプン、および黒鉛が造孔剤として使用されたが、他の造孔剤を、気孔を作り出すために使用することもできる。メチルセルロースは、押出性を可能にし、かつ未焼成ハニカム体の形状を維持するための有機結合剤としてうまく機能した。(無機物の全質量に対して)10質量%までの超加成性の量の油および(無機物の全質量に対して)2質量%までの超加成性でのステアリン酸ナトリウムの使用を調査し、幾つかの油でおよび油対ステアリン酸ナトリウムの幾つかの比率で、バッチ混合物の押出性が明らかに改善した。トール油、ステアリン酸、および酸化防止添加物を有する潤滑油(「MOX油」)の添加を調査した。MOX油は、単独で、およびステアリン酸ナトリウムの添加と一緒での両方で、一貫して良好に機能する。しかしながら、本明細書に記載されるように、多くのバッチ混合物は、ハニカム体をうまく製造するために、意外にも高い水要求量を必要とした。同等の従来の反応性成分バッチ混合物よりも高い供給速度も可能であった。
【0191】
表15A~15Eは、ハニカム体をうまく形成(押し出す)ために使用したバッチ混合物と押出条件との第1のセットを列挙する。押し出された未焼成ハニカム体を、引き続く焼成ステップによりセラミックハニカム体に変換した。ハニカム体は、示されるように、約13~15ミル(約0.3302mm~約0.381mm)(「300/13」、「300/14」および/または「300/15」構成)または8ミル(約0.2032mm)(「300/8」構成)の公称壁厚を有する交差壁を有するが、他の壁厚を使用することもできる。ハニカム体は、平方インチ当たり約300セル(300cpsi(約46.5セル/cm))を有していたが、200~1000cpsi(約31.0~155.0セル/cm)のような他のcpsi値を、代わりに使用することができる。表15A~15Eの実施例のバッチ混合物は、18μm~50μmの範囲の平均ビーズ(粒子)サイズを有する、反応したコーディエライトビーズ、例えば完全に反応したコーディエライトビーズを有していた。表15A~15Eの実施例の幾つかのバッチ混合物では、無機反応性結合剤材料(例えば、タルク、アルミナ、シリカなど)を球状コーディエライトビーズと一緒にバッチ混合物に添加した。表15A~15Eのバッチ混合物の幾つかでは、無機結合剤材料を含む剪断結合剤凝集体(以下により詳細に説明する)を、個別の無機結合剤材料に加えておよび/またはその代わりに使用した。
【0192】
【表15A】
【0193】
【表15B】
【0194】
【表15C】
【0195】
【表15D】
【0196】
【表15E】
【0197】
本明細書で使用する場合、「剪断結合剤凝集体」または単に「剪断結合剤」の用語は、本明細書に記載されたスラリー混合物から(すなわち、スラリー混合物の実施例S1~S20に従って)かつ本明細書に記載された未焼成凝集体130と明らかに同じ方法で形成された未焼成球状粒子を指すが、噴霧乾燥または他の球状化プロセスの間に、より高い固体担持率を使用することもできる。すなわち、本明細書で言及される剪断結合剤凝集体は、開示された未焼成凝集体と実質的に同じである(よって、例えば、未焼成凝集体A1~A20などを、剪断結合剤凝集体として使用することができる)。幾つかの実施形態では、剪断結合剤は、本明細書に記載された未焼成凝集体サンプルと同じスラリー混合物から作製されるが、場合により、より高い固体担持率で作製される。例えば、15~50体積%の固体担持率は、(未焼成凝集体のために使用される約10~30体積%の固体担持率と比較して)ハニカム体の製造の間の無機型の結合剤成分として有用な剪断結合剤凝集体を形成するために使用することができる。
【0198】
剪断結合剤凝集体は、ビーズとの混合の間に剪断結合剤凝集体の剪断(または変形)により、ビーズとの接触点で濃縮された、またはその接触点の間に広がった付加的な無機材料を提供することによりビーズの焼結を支援する。ビーズのための無機結合剤としての機能の目的に従って、かつ多様な有機成分が剪断結合剤凝集体中に存在してもよいという事実にかかわらず(例えば、表1~4に示されたような結合剤または分散剤)、剪断結合剤凝集体の全質量は、本明細書では、バッチ混合物中の無機物の全質量の一部と見なされる。したがって、剪断結合剤凝集体が使用される実施例の多くでは、ビーズの質量および剪断結合剤凝集体の質量は合計して、バッチ混合物中の無機物の全質量として100%になる。
【0199】
剪断結合剤凝集体のために使用する対応するスラリー混合物は、表15A~15Eにおける関連する実施例について示されている。同じまたは異なる剪断結合剤組成物は、任意の所与のハニカム押出のためのか焼されたコーディエライトビーズとして使用することができる。成果のある組合せは、Na添加なしで得られた焼成されたコーディエライトビーズから作製されたが、少量のNa(例えば、剪断結合剤凝集体中の無機物の全質量に対して2質量%未満)を含む剪断結合剤未焼成凝集体と組み合わせた。このような組合せは、比較的低いCTEを生成し、気孔接触点でのガラス形成を介するように、比較的低いハニカム焼成温度および/または比較的短い保持時間の使用を可能にする。
【0200】
必要な水要求量は、高い開気孔率を有するコーディエライトビーズを含むバッチ混合物について(例えば、従来の反応性原材料バッチまたは緻密なもしくは閉気孔率のビーズを有するバッチ混合物と比較して)はるかに高かった。例えば、幾つかの実施形態では、水要求量は、無機物の全質量に対して、超加成性として30質量%超、40質量%超、またはさらには50質量%超であった。理論に拘束されることを望まないが、この高い水量は、ビーズのビーズ内気孔率を満たすために必要であると考えられ、このビーズ内気孔率が、高い毛管力で作用して、ビーズのビーズ内気孔構造内へ水を引き込む。したがって、押出のために必要な水レベルは、一般に、コーディエライトビーズのビーズ内開気孔率の増加と共に、およびビーズの中位粒子サイズと共に増加した。一般に、バッチ内の摩擦およびダイ壁に沿った押出ペーストの壁抗力は極めて低く、多量の油または他の潤滑剤は、特に広幅のスロットを有するダイ(例えば、試験された300/13および300/14ダイ)にとって利益は限られる。
【0201】
図15A~15Dは、本明細書に記載されたビーズ間気孔率およびビーズ内気孔率を示す焼成されたハニカム体の微細構造を示す。より具体的には、図15Aおよび15Bはそれぞれ、ハニカム体の実施形態H9についての500×および2000×の倍率での壁(壁102)の表面の表面図を示す。図15Cおよび15Dはそれぞれ、実施例H10に従って製造されたハニカム体についての壁断面図および壁表面図を示す。ビーズ間気孔サイズ(ビーズ122の間の隙間128のサイズ)は、10~20μmの範囲内にあり、ビーズ内気孔サイズ(ビーズ内の気孔サイズ)は、約1~5μmの範囲内にあった。
【0202】
ハニカム体は、先に説明したように、コーディエライトビーズの形成のために使用された最も高い最高温度に相応する1330℃~1410℃の範囲の最高温度で焼成した。一般に、1350℃未満の温度は、幾つかの実施形態で、特にスラリー混合物の実施例S2から作製された剪断結合剤凝集体での剪断結合剤の無機成分内で十分なコーディエライト形成ができないほど低すぎた。ナトリウム(例えばステアリン酸ナトリウムの形の)を含めることは、Na不含のバッチ混合物よりも低い反応温度(例えば、1350℃未満の温度)を可能にするために有用であることが見出されたが、不十分なコーディエライト形成を引き起こし、ナトリウムが十分な量(例えば、少なくとも0.2%、少なくとも0.5%または少なくとも1.0%)で存在しない場合、対応して脆性の物品を引き起こすこともあった。
【0203】
セラミックハニカム体は、表15A~15Eの示されたバッチ混合物を押し出すことにより得られた未焼成体を1320℃~1415℃で4~20時間で焼成することにより形成された。表16A~16Dは、表15A~15Eの実施例の幾つかからの未焼成ハニカム体を、その材料についてのリートベルト分析を伴うXRD分析により得られるような示された焼成条件下で焼成することにより作製されたハニカム体の相組成を提供する。ガラスのレベルは、半定量的推定により幾つかの実施例について導き出した。これらの表中のセラミック相についてのブランクの項目は、その相の存在が見られなかったことを示し、ガラスについてのブランクの項目は、その代わりに、その実施例がそのガラス含有量について分析されなかったことを示す。ガラスは、全ての焼成されたハニカムの実施例において、15質量%までの量であると予想され、SEM分析は、多くの実施例が5質量%未満のガラス含有量を有することを示す。幾つかの実施形態では、結晶質相(よって、ガラスを除く)は、コーディエライトを少なくとも90質量%含むか、またはさらにはコーディエライトを少なくとも95質量%含む。
【0204】
【表16A】
【0205】
【表16B】
【0206】
【表16C】
【0207】
【表16D】
【0208】
表16A~16Dに示されるように、幾つかのハニカム体の焼成は、温度を、最初に一時的に、最高ソーク温度より高い「スパイク」温度にまで引き上げ、次いで、最大で約30分間の期間後に、最高ソーク温度にまで下げて、その最高ソーク温度で保持する「スパイク」を利用した。例えば、「1380℃/4h-1410℃スパイク」の焼成条件は、温度を、最初に1410℃に引き上げ(スパイク)、次いで引き下げて1380℃で4時間保持することを示す。
【0209】
幾つかの実施形態では、ハニカム体は、コーディエライト相(コーディエライトおよびインディアライトの両方を含める)を少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、またはさらには少なくとも90質量%有し、例えば80質量%~95質量%、85質量%~95質量%、90質量%~95質量%、80質量%~90質量%、85質量%~90質量%、または85質量%~94質量%有する。幾つかの実施形態では、ハニカム体は、ガラスを15質量%未満、例えば4質量%~11質量%有する。幾つかの実施形態では、ハニカム体は、二次セラミック相を3質量%未満、2.5質量%未満、2質量%未満、またはさらには1質量%未満有する。完全に焼成されたハニカムは、何らの有意な量のクリストバライトを示さず(例えば、0.1質量%未満)、焼成されたコーディエライトビーズ自体よりも比較的低いレベルの二次相、例えばスピネルおよびサファーリンを示した(例えば、表8に示すように)。ハニカム内のガラスレベルは、典型的に、約8~11質量%であることが見られたが、また、ガラスのレベルは、リートベルト分析においてのバックグラウンド調整から半定量的に決定されただけであり、したがってある程度の誤差が生じやすいことに留意されたい。しかしながら、SEMによる検査は、実験的に、多様なハニカム体の実施例において存在するガラスの一般的に低いレベル、例えば15質量%未満、10質量%未満、またはさらには5質量%未満を確認した。
【0210】
表17A~17Dおよび18A~18Dはそれぞれ、表15A~15Eのハニカム体の実施例の多様なものについて、示された焼成条件で得られた多様な気孔率および熱機械特性を提供する。表18A~18Dは、室温(RT)から800℃および1000℃の両方までの軸方向および接線方向(tang)のCTE値の両方、ならびに分析されたハニカム体の幾つかについての横方向および軸方向のi比値の両方を報告する。
【0211】
【表17A】
【0212】
【表17B】
【0213】
【表17C】
【0214】
【表17D】
【0215】
【表18A】
【0216】
【表18B】
【0217】
【表18C】
【0218】
【表18D】
【0219】
セラミックハニカム体材料の壁の材料の全気孔率(ビーズ間気孔率とビーズ内気孔率との両方の合計)は、50%超で、55%~65%の範囲にあった。全体の中位気孔サイズ(ビーズ間気孔サイズとビーズ内気孔サイズとの両方を含む)は、約6μm~約12μmの範囲にあった。本明細書に記載されるように、セラミックハニカム体の壁の材料の気孔率は、約45%~60%の範囲内のビーズ間気孔率と、約7μm~13.5μmの範囲内のビーズ間中位気孔サイズ(隙間128のサイズ)とを有する双峰性であった。セラミックハニカム体の壁の材料のビーズ内気孔率(ハニカム体の壁の全体積に対して)は、約1.8μm~2.6μmの範囲のビーズ内中位気孔サイズで、約10%~15%の範囲内にあった。ビーズ間気孔率の幅は、約12μm~19μmの範囲のd90-d10で極めて狭かった。
【0220】
ビーズ間気孔サイズは、バッチ混合物中に使用された球状コーディエライトビーズの中位ビーズサイズに、少なくとも部分的に依存することが見られた(ビーズが大きければそれだけ、より大きなビーズ間中位気孔サイズが生成される)。同様に、ビーズ間気孔率の幅は、球状ビーズサイズ分布の幅に少なくとも部分的に依存することが見られた(バッチ混合物で使用されたコーディエライトビーズのサイズ分布の幅が狭くなればそれだけ、ビーズ間気孔のサイズ分布の幅は狭くなる)。例えば、広い幅は、得られるセラミックハニカム体についてビーズ間気孔の広い幅が生じる、2つの異なる中位ビーズサイズのビーズの混合によるハニカム体の実施例H6において使用されるコーディエライトビーズに対して意図的に導入された。
【0221】
セラミックハニカム体の材料の熱膨張係数(CTE)は、ドメインがビーズサイズを超えて広がることがないため、使用されるコーディエライトビーズのサイズに少なくとも部分的に依存することが見出された。約0.3の、約0.05~0.55の範囲内の微小亀裂パラメータNbについての値が達成され、この値は、従来の反応性バッチハニカム体により達成可能なCTE値に匹敵するセラミックハニカム体についてのCTE値を可能にする。
【0222】
セラミックハニカム体のCTEおよび他の熱機械特性は、材料の軸方向および接線方向のCTEまたはi比の直接的な測定により示されるように、極めて等方性である。軸方向と接線方向との両方のi比は、多孔質球状コーディエライトビーズを有するバッチ混合物から作製された全てのハニカム体の材料について極めて類似していた。2つの値の比は、典型的に、約0.99~1.04の範囲にある。比較すると、従来の反応性バッチから作製されたコーディエライトハニカム体についての2つのi比値の比は、1.5以上のオーダーにあってよい。理論に拘束されることを望まないが、この異方性の欠如は、ハニカム押出ダイのスロットを通じて流動方向に整列するように押し込まれる大きなアスペクト比を有する板状、棒状または他の非球状の粒子と比較して、押出の間に整列を被らないビーズの球状形状に起因すると考えられる。
【0223】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の材料のビーズ内中位気孔サイズ(MIPにより測定)は、5μm未満、4μm未満、3.5μm未満、3μm未満、2.5μm未満、またはさらには2μm未満であり、これらの値を端点として有する範囲を含み、例えば1.5μm~5μm、好ましくは1.5μm~4μm、1.5μm~3.5μm、1.5μm~3μm、1.5μm~2.5μm、またはさらには1.5μm~2μmである。
【0224】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の材料のビーズ間中位気孔サイズ(MIPにより測定)は、少なくとも6μm、少なくとも7μm、少なくとも8μm、最大で20μm、最大で19μm、または最大で18μmであり、これらの値を端点として有する範囲を含み、例えば6μm~20μm、6μm~19μm、6μm~18μm、7μm~20μm、7μm~19μm、7μm~18μm、8μm~20μm、8μm~19μm、または8μm~18μmである。本明細書に記載されるように、ビーズ間中位気孔サイズは、セラミック物品を作製するために使用されるビーズのサイズに比例し、したがって、使用されるビーズの粒子サイズ分布を選択(例えば、篩別)することにより影響を及ぼすことができる。
【0225】
幾つかの実施形態では、セラミック物品の材料の中位気孔サイズ(MIPにより測定)は、少なくとも5μm、少なくとも6μm、少なくとも7μm、最大で18μm、最大で17μm、または最大で16μmであり、これらの値を端点として有する範囲を含み、例えば5μm~18μm、5μm~17μm、5μm~16μm、6μm~18μm、6μm~17μm、6μm~16μm、7μm~18μm、7μm~17μm、または7μm~16μmである。
【0226】
幾つかの実施形態では、相互接続したビーズネットワークの全体積に対するビーズ内気孔率(MIPにより測定)は、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、少なくとも20%、またはさらには少なくとも25%であり、これらの値を端点として有する範囲を含み、例えば10%~30%、10%~25%、10%~20%、10%~15%、12%~30%、12%~25%、12%~20%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、18%~30%、18%~25%、20%~30%、またはさらには25%~35%である。
【0227】
相互接続したビーズのネットワークにより形成される材料の全気孔率に対するビーズ内気孔率の全体の寄与の代わりに、ビーズ内気孔率は、その代わりに、ビーズ自体の個別の体積に関して考慮することができる。幾つかの実施形態では、ビーズの個別の体積に対するビーズ内気孔率(MIPにより測定)は、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも12%、好ましくは少なくとも15%、少なくとも18%、またはさらにより好ましくは少なくとも20%、少なくとも25%、またはさらには少なくとも30%であり、これらの値を端点として有する範囲を含み、例えば9%~42%、9%~35%、9%~30%、9%~25%、9%~20%、9%~15%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、10%~15%、12%~35%、12%~30%、12%~25%、12%~20%、より好ましくは15%~35%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、18%~35%、18%~30%、18%~25%、またはさらにより好ましくは20%~35%、または20%~30%である。
【0228】
図16Aは、MIPから得られた表15Aの示されたハニカム体の実施例の双峰性気孔率を示すプロットである。示されるように、双峰性気孔率は、参照符号134により示される、ビーズ内中位気孔率と気孔サイズとに対応する小さな気孔サイズについての第1のピーク、または局所極大と、参照符号136により示される、ビーズ間中位気孔率および気孔サイズに対応する大きな気孔サイズについての第2のピークまたは局所極大により定義される。図示された実施形態では、ビーズ内気孔率134は、5μm未満(例えば、約1μm~3μmを示す)の中位気孔サイズを有し、ビーズ間気孔率136は、5μm超(例えば、約8μm~14μmを示す)の中位気孔サイズを有する。プロットの局所極大は、公知の数学的技術により決定することができる。幾つかの実施形態では、ビーズ内中位気孔サイズに対応する第1の局所極大は、0.5μm~5μmの範囲内にある。幾つかの実施形態では、ビーズ間中位気孔サイズに対応する第2の局所極大は、5μm~20μmの範囲内にある。単峰性気孔率を有する参照フィルタの気孔サイズ分布は、破線により示される。本明細書で言及されるように、参照フィルタは、従来の反応性材料バッチ、すなわち予備反応させたビーズを含まない反応性材料バッチの押出および焼成により作製されたハニカム体を目封止することにより作製した。
【0229】
図16Bは、本明細書に記載されるようなビーズ内気孔率およびビーズ間気孔率から生じる双峰性気孔サイズ分布の別の実施例のプロットを示す。図16Bのデータは、MIPにより得られた。図16Bに示すように、双峰性気孔サイズ分布は、ビーズ内気孔率に対応する第1のピーク240と、ビーズ間気孔率に対応する第2のピーク242とにより特徴付けられる。したがって、第1のピークおよび第2のピークは、本明細書ではそれぞれ、ビーズ内気孔サイズ分布ピークおよびビーズ間気孔サイズ分布ピーク、またはより簡単に、ビーズ内ピークおよびビーズ間ピークと言われてよい。本明細書に記載するように、例えば、図16に関して、第1のピーク240および第2のピーク242はそれぞれ、中位気孔サイズにより特徴付けることができ、この値は、ピークのそれぞれの局所極大として決定することができる。したがって、図16Bの実施例において、第1のピーク240に対応するビーズ内中位気孔サイズは、0.4ml/gを僅かに上回る差分圧入で生じる約2μmであり、第2のピーク242に対応するビーズ間中位気孔サイズは、約16.5ml/gの差分圧入で生じる約13μmである。
【0230】
ピーク240,242の各々はまた、半値全幅(FWHM)の値によって特徴付けることができる。換言すると、y軸の最大値の半分に等しいy軸の値でのx軸に沿ったピークの向かい合う側の間の距離である。FWHMの値は、気孔サイズ分布のピーク240,242の幅(例えば、相対的に広いまたは狭い)を特徴付ける尺度を提供する。したがって、ピークのFWHMの値は、本明細書でそれぞれ、ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅およびビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅と言われてよい。例えば、第1のピーク240は、図16Bに示すように、第1のピーク240について対応するビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅を示す矢印244が付されていて、第2のピーク242は、対応するビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅を示す矢印246が付されている。図16Bの実施例において第1のピーク240の極大は、約0.4ml/gで生じるため、ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅は、約0.2ml/gで測定され、約2μmの値に対応する。同様に、図16Bの実施例において第2のピーク242の極大は、約1.65ml/gで生じるため、ビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅は、約0.825ml/gで測定され、約5.5μmの値に対応する。
【0231】
幾つかの実施形態では、ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅は、最大で2.5μm、最大で2μm、またはさらには最大で1.5μmであり、これらの値を端点として有する任意の範囲を含み、例えば1.5μm~2.5μm、1.5μm~2μm、2μm~2.5μm、またはさらには1μm~1.5μmである。幾つかの実施形態では、ビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅は、最大で6μm、最大で5.5μm、またはさらには最大で5μmであり、これらの値を端点として有する任意の範囲を含み、例えば5μm~6μm、5μm~5.5μm、5.5μm~6.0μm、またはさらには4.5μm~5μmである。
【0232】
図16Bにも示されているように、2つのピーク240,242の間に谷部が存在してよく、この谷部は、ビーズ内ピークの極大とビーズ間ピークの極大との間にある気孔サイズ分布内の局所極小248として定義することができる。一般に、これらのピークは、局所極小がゼロの値に近づくにつれて、より明白になりかつ幅が狭くなる。幾つかの実施形態では、局所極小248は、図16Bに示されるように、ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅より小さい値を有する。幾つかの実施形態では、局所極小248は、ビーズ間気孔サイズ分布ピーク242の極大値の20%未満、15%未満、またはさらには10%未満の値を有する。例えば、図16Bの実施例において、局所極小248は、約0.175ml/gの値を有し、この値は、約1.65ml/gのビーズ間ピーク極大値の15%未満である。
【0233】
表15A~15Eのハニカム体の実施例の幾つかを、パティキュレートフィルタを作製するために使用した。フィルタを作製するために、300/8ダイから押し出した2インチ(約5.08cm)の直径のハニカム体を、6インチ(約15.24cm)の長さに切断し、反対側の端面(例えば、図1~2における端面106および108)をマスキングし、チェッカーボードパターンに(例えば、図2中の目封止されたハニカム体101について示すように)コーディエライト目封止セメントで目封止した。参照フィルタも、反応性原料成分(多孔質コーディエライトビーズを含まない)を有するバッチ混合物から作製した。フィルタを作製するために使用した全てのハニカム体は、同じダイを通して押し出したが、反応性成分フィルタと多孔質コーディエライトビーズフィルタとは、異なるセル形状を有していたので(主として、焼成の間の反応性成分ハニカム体の増大に起因する)、セル形状は、コーディエライトビーズを含むバッチ混合物から作製されたフィルタについては285cpsi(約44.2セル/cm)であり、反応性原料成分バッチ混合物から作製されたフィルタについては315cpsi(約48.8セル/cm)であった。これらのフィルタは、そのままで、すなわち焼成後に付加的な膜、被覆、または他の材料を適用することなしに評価した。直径および被膜の厚さも、cpsiの相違に比例して異なる。結果として、同じ形状への標準化が、同じ特性についてのフィルタ性能を比較するために必要であった。
【0234】
図17は、参照フィルタおよび表15A~15Eのハニカム体の実施例から作製されたマルチプルフィルタについてのスート堆積の関数としての質量基準の濾過効率(FE)のプロットを示す。スート堆積が増加すればそれだけ、全てのフィルタの濾過効率は漸近的にほぼ100%に近づく。しかしながら、参照フィルタは、実質的に低い清浄(スート堆積なしの)濾過効率を有する(例えば、清浄の場合に約70%のFE、スート0.01g/Lで約80%に増加)ことを見ることができる。多孔質コーディエライトビーズを有する表15Aのハニカム体の実施例から作製された全てのフィルタは、実質的に高い清浄濾過効率を有していた。全ての場合に、清浄FE(スート堆積なし)は、80%超であり、幾つかの場合には、さらには90%超であった。さらに、スート0.01g/Lでの濾過効率は、多孔質ビーズを有するフィルタの全てについて90%を超え、その多くは、95%、96%、97%、またはさらには98%のFEを超えた。
【0235】
図18は、図18の多様なフィルタの圧力損失を、ガス(排気)流の関数としてのゼロスート堆積での背圧の形で示すプロットである。参照フィルタの形状を、試験された実施例の形状に標準化した後(濾過効率は、長さ、直径、cpsi等のような寸法値に依存するため、参照フィルタは、実施例のフィルタと同じ形状に修正した)、試験した全てのフィルタについて明らかに類似した圧力損失値が達成された。フィルタは、堆積量がスートゼロから5g/Lのスート堆積量まで増大するにつれて、背圧について同様の観察が行われた。
【0236】
図19は、材料の気孔率の関数としての気孔の容積に関する気孔の表面積を示すプロットである。ビーズ内開気孔率に関する開放した(アクセス可能な)ビーズ内気孔表面積の特徴は、濾過効率と相関している。より具体的には、ビーズ内気孔通路は、気孔表面積と容積との間の比が増加するにつれて、より多数になりかつより蛇行すると理解される。ハニカム体の実施例H1~H5に従って作製されたフィルタ(黒丸)についての気孔表面積は、反応性成分バッチから作製された参照フィルタ(三角)の気孔表面積よりも実質的に大きい。凝集体の実施例A2(スラリー混合物の実施例S2)から作製されたコーディエライトビーズを有するフィルタに対応するデータも提供され(白丸)、このフィルタは上述のように高い開気孔表面積を有しておらず、したがって、そのままの清浄パティキュレートフィルタで使用した場合に、濾過効率に関して好適性を示さなかった(しかし、このフィルタは、他の用途のために有益な特性または特徴を示し得る)。
【0237】
高い濾過効率についての1つの寄与因子は、ビーズ内気孔率の形態(すなわち、気孔構造124)である。すなわち、気孔構造124は、開口部126でビーズの外側表面まで延在しかつこの外側表面を通って接続する蛇行性気孔通路を備える相互接続した蛇行性通路の形で組織化される。外側ビーズ表面を貫通するこれらの気孔通路は、高い毛管現象(狭い開口部形状)を有する。高い毛管現象は、ガス(排気)流中の小さな粒子、例えばスートまたは灰を引きつける対応する高い毛管力を生成する。ビーズ内気孔構造124の高いビーズ内表面積は、パティキュレートマターが毛管力によりビーズに引き寄せられた後に、パティキュレートマターに対する豊富な捕捉部位を提供する。結果として、濾過効率は、一般に、中位気孔サイズが低下するにつれて、かつビーズ表面と交差する蛇行性のビーズ内気孔通路の数が増加するにつれて増大する。
【0238】
別の調査では、表15A~15Eの実施例に従って作製され、表19に示される条件で焼成された幾つかのセラミックハニカム体を評価して、それぞれのBET表面積値を測定した。表19はまた、表面積とビーズ内気孔率との間の比較が行えるように、分析されたセラミックハニカム体についてのビーズ内気孔率値を含む。
【0239】
【表19】
【0240】
図20は、ビーズ内気孔率寄与の関数としての比表面積のBETで得られた値を示す。図20からは、比表面積とビーズ内気孔率との間に明確な関係があることが見られる。すなわち、ビーズ122内のビーズ内気孔率が増大するのに比例してビーズの表面積は増加する。一般に、高いビーズ内開気孔率を有するビーズは、BETによる高い内部表面積を有し、より低い開気孔率を有するビーズおよび/またはより高い閉気孔率を有するビーズは、比較的小さい表面積を有する。予想によると、ビーズ内の内部の開放した表面積も、中位ビーズサイズの低下と共に減少する。
【0241】
別の調査では、いわゆる「フルサイズ」の直径を有するハニカム体を作製した(例えば、現在の自動車排気ガス後処理システムに適用可能または使用されるサイズに対応する4インチ(約10.16cm)より大きい直径)。表20は、これらの付加的なハニカム体の実施例を作製するためのバッチ混合物および押出機条件を示す。表20の実施例を形成するために使用した全てのコーディエライトビーズ粉末は、325メッシュのサイズ(約44μm)で篩別し、ラム押出機に取り付けられた「200/8」形状の押出ダイによって全て形成された。
【0242】
【表20】
【0243】
次に、実施例H27~H31に従って押し出された未焼成ハニカム体を焼成して、セラミックハニカム体を得た。示した焼成条件で焼成した、実施例H27~H33から作製されたセラミックハニカム体についての気孔率特性を測定し、表21に示す。
【0244】
【表21】
【0245】
最高温度で単に4時間までの短い保持時間でのハニカム焼成サイクルが、うまく使用された。高い昇温速度および短い最高ソーク時間を有するこのような短い焼成サイクルは、極めて高いスループット(例えば、トンネル窯を通して)を可能にするが、未焼成品を、より長いソーク時間(例えば、4時間超)および低い昇温速度(例えば50℃/時間未満)を用いてうまく焼成することもできる。しかしながら、特により高温(例えば1400℃以上)でのより長い最高温度保持時間(例えば、表21に示すように9~10時間)の使用は、一般に、ビーズの緻密化をもたらし、したがって相応してより低い気孔率をもたらす。
【0246】
特に、本明細書に記載されるように、コーディエライトビーズの無機成分は、ビーズの焼成の間に既に反応しているので、ハニカム体についてのバッチ混合物の成分は、有意な程度の更なる反応に曝される必要がない。例えば、反応は、バッチに添加された無機結合剤および/または剪断結合剤凝集体中の反応性無機成分にのみ限定されてよく、これらの反応性無機成分は、コーディエライトビーズを一緒に焼結することを支援し、ビーズ自体は、有意な程度の更なる反応に曝されない。さらに、ビーズがある程度の付加的反応に曝されたとしても、材料拡散経路は、本明細書に記載されるように、それぞれの個別のビーズ内におよび/またはビーズ間の接触点でだけに制限される。
【0247】
開示されているように、多孔質コーディエライトビーズの予備反応させた性質も、ハニカム体の押出および焼成の間に、サイズ、寸法および気孔率における安定を保つビーズを可能にする。このような気孔率および寸法安定性は、ハニカム焼成最高温度が、ビーズの形成のために使用される焼成最高温度よりも少なくとも僅かに低く(例えば、少なくとも5℃~10℃低く)なるように選択される場合に、特に達成可能である。したがって、試験された未焼成品においては、本質的に造孔剤だけが焼尽されなければならず、例えば未焼成剪断結合剤凝集体に含まれるような少量の無機結合剤成分は、コーディエライトへの反応に曝されなければならず、すなわち、コーディエライトビーズが一緒に結合してネットワーク120になることを支援しなければならない。
【0248】
製造されたセラミックハニカム体のセラミック材料は、本明細書に記載された双峰性気孔サイズ分布を示し、ビーズ間気孔率およびビーズの充填により設定される対応するビーズ間気孔サイズを有し、かつビーズ自体の材料のビーズ内気孔率を有し、対応するビーズ内中位気孔サイズを有する。全てのハニカム体の実施例は、50%超の全気孔率(ビーズ間+ビーズ内)を示し、多くの実施例は、60%超の全気孔率を有していた。中位気孔サイズは、使用したコーディエライトビーズに基づき、約9~15μmであった。より具体的には、中位ビーズサイズは、有意に、ビーズ間の充填を決定し、よって、得られるハニカム体のビーズ間気孔サイズ(ビーズ間の距離)を決定する。
【0249】
表22は、示された焼成条件で焼成する実施例H27~H31により得られるセラミックハニカム体の相集合を示す。
【0250】
【表22】
【0251】
次いで、セラミックハニカム体を、ウォールフローフィルタを形成するために目封止した。ハニカム体は、極端に高いパーセンテージ、例えば90質量%超、95質量%超、96質量%超、97質量%超、またはさらには98質量%超のコーディエライト(インディアライト多形と共に)を生じた。二次セラミック相、例えばサファーリン、スピネル、ルチル、ムライト、および/またはシュードブルッカイトは、一般に、5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、またはさらには2質量%未満の量で存在した。
【0252】
双峰性気孔率および高いビーズ間表面積を有するハニカム体も、触媒材料を担持するための基材または担体として使用するために有利な特性を示す。幾つかの実施形態では、(例えば、本明細書に記載される実施形態のいずれかに従って製造した)ハニカム体は、パティキュレートフィルタとして機能するように(先に記載されたように)両方が目封止され、触媒材料を担持する。幾つかの実施形態では、ハニカム体は、触媒材料を担持することなく目封止され、他の実施形態では、ハニカム体には、目封止されることなく触媒材料が担持される。セラミックハニカム体の多孔質壁内への触媒材料の担持は、例えば、触媒材料をウォッシュコートスラリーの液状担体により多孔質壁上および/または多孔質壁内に運び、触媒材料を堆積させるウォッシュコーティングプロセスにより達成することができる。
【0253】
本明細書に記載された多孔質球状コーディエライトビーズを有するハニカム体に触媒材料担持量を担持するための適用性を評価し、ウォッシュコートプロセスに対するこれらのハニカム体の相互作用を査定するために試験を行った。ハニカム体を、超微細(約0.5μm中位粒子サイズ)および微細(約1.5μm中位粒子サイズ)のアルミナ粒子を有するスラリー内に浸漬した。アルミナスラリーを、触媒ウォッシュコートの代わりとして機能するように選択した。図21Aおよび21Bはそれぞれ、超微細アルミナ粒子および微細アルミナ粒子を有する高固体担持率スラリー内へ浸漬した実施例H12から作製されたコーディエライトハニカムのSEM断面を示す。ウォッシュコートのアルミナ粒子は、多孔質ビーズ中のビーズ内気孔(ビーズ内気孔構造124)内に引き込まれ、ビーズ周囲のビーズ間経路(隙間128)がガス(排気)流のために開放したままにされる(それにより、フィルタに使用した場合に望ましい圧力損失を維持する)ことを見ることができた。理論に拘束されることは望まないが、先に記載されたように、毛管力が、このような触媒担持ハニカム体の使用の間に、ビーズ内気孔構造内に堆積した触媒材料と排気ガスとの間の相互作用を促進すると考えられる。
【0254】
別の調査では、多様なハニカム体を形成し、場合により目封止し、次いで、本明細書に記載されるようにウォッシュコートスラリーでウォッシュコートした。目封止後に、ここでウォールフローフィルタとして準備されたハニカム体を、次いで、約75~80g/Lのウォッシュコート濃度にウォッシュコートした。ウォッシュコートスラリーは、サブミクロン範囲内の微細粒子と約7~10μmの中位サイズ範囲のより大きな粒子との双峰性分布を有する、最大で約1μmの中位粒子サイズのアルミナ粒子の微細担体と、より大きなアルミナ、ジルコニア、およびセリア粒子とを含んでいた。7~10μmのウォッシュコート粒子は、比較的小さなビーズ内気孔に十分に浸透しなかった。しかし、より小さなウォッシュコート粒子は、多孔質セラミック壁内に浸透し、ビーズ間気孔空間内に均一に分配された。比較的小さなウォッシュコート粒子と比較的大きなウォッシュコート粒子との両方は、ビーズ間気孔サイズを著しく低下させずに、ビーズ間気孔空間内のビーズの外側の周囲のビーズネットワークに固定された。ウォッシュコート粒子は、コーディエライトビーズ表面上のビーズ表面気孔内に良好に固定され、よって、触媒活性を促進するために高い接触可能な表面積を提供するように見えた。
【0255】
図22Aおよび22Bは、約500xの倍率での、凝集体A1から作製された例示的なウォッシュコートされたハニカム体のウォッシュコートされた多孔質セラミック壁の破断面および約3000xの倍率での、例示的なウォッシュコートされたハニカム体の破断面の代表的な部分のSEM画像を示し、図23Aは、約1000xの倍率での、例示的なウォッシュコートされたハニカム体の研磨された表面を示し、図23Aの丸で囲んだ領域は、図23Bでさらに拡大される。図22A~23Bでは、コーディエライト材料は灰色で示され、気孔は黒で示され、ウォッシュコート粒子は、白で示される。本明細書に記載されたように、ビーズの開放した気孔の表面積が大きいため、図22A~23Bにおいて、ビーズの開気孔構造内に、ならびにビーズの外側表面上に、触媒材料が良好に分布していることを見ることができる。さらに、双峰性気孔サイズ分布により、ビーズ間気孔(ビーズ間の隙間)の多くは、ウォッシュコーティング後であっても実質的に遮断されずかつ開放されたままであり、それにより、ハニカム体がフィルタとして準備された場合に、低い圧力損失を可能にし、ビーズの内部表面および/または外部表面内におよび/またはビーズの内部表面および/または外部表面上に担持された触媒材料を有する高い触媒活性を提供する。
【0256】
気孔サイズ分布の双峰性の性質は、気孔サイズ分布のパーセンタイル気孔サイズ値(例えば、D10、D50およびD75値)にも反映される。本明細書で使用される場合、パーセンタイル気孔サイズ値は、D10が気孔サイズ分布中で気孔の10%より大きい気孔サイズ分布中の気孔サイズ値であり、D50が中位気孔サイズ値(気孔サイズ分布中で気孔の50%より大きい気孔サイズ分布中の気孔サイズ値)であり、D75が気孔サイズ分布中で気孔の75%より大きい気孔サイズ値であることなどを示す。
【0257】
本明細書に記載されるように、気孔サイズパーセンタイル値(例えば、D10、D50、D75、D90)は、気孔サイズ分布の双峰性の性質を特徴付けるために使用することができる。例えば、従来の反応性バッチから作製されたセラミック物品の気孔サイズ分布には見られないビーズ内ピーク(例えば、図16Bのピーク240)の存在は、小さな気孔の集中を生じ、かつ反応性バッチから作製されたセラミック物品中に生じるD10値よりも著しく小さい対応するD10値を生じる。表23は、先に記載された多様なハニカム体の実施例から作製されたセラミック体についてのD10、D50およびD75値、さらにD50/D10およびD75-D50値を示す。
【0258】
【表23】
【0259】
従来の反応性バッチから作製されたセラミック体は、例えば、図16Aおよび16Bに関して先に論述したような双峰性気孔サイズ分布を有していない。少なくとも50%の気孔率を有するセラミック物品について、D10は>6μm、D50は約8~18μm、D75は>16μm、D50/D10は<2、およびD75-D50は>3μmであると予想される。本明細書に記載される幾つかの実施態様では、少なくとも50%(例えば、50%~70%、例えば55%~65%)の気孔率について、D10は、4μm未満、またはさらにより好ましくは3μm未満、2.5μm未満、またはさらには2μm未満であり、これらの値を端点として有する範囲を含み、例えば2μm~4μm、2μm~3μm、2μm~2.5μm、2.5μm~4μm、2.5μm~3μm、またはさらには1.5μm~2μmである。
【0260】
ビーズ内ピークに対応するより小さな気孔の集中の結果として、D50/D10値も、双峰性気孔サイズ分布を有しない反応性バッチから作製されたセラミック物品と比較して極めて高い。幾つかの実施形態では、D50/D10値は、2.5超、またはより好ましくは3超、4超、またはさらには5超、および幾つかの場合では6までであり、これらの値を端点として有する範囲を含み、例えば2.5~6、3~6、4~6、またはさらには5~6である。
【0261】
双峰性気孔サイズ分布のため、ならびにビーズ内ピークおよびビーズ間ピークの狭い気孔サイズ分布ピーク幅(例えば、図16A~16Bに関して説明したように)により支援されて、D75値とD50値との間の差の値(すなわち、D75-D50)も狭い。幾つかの実施形態では、D75-D50値は、2.5μm未満、またはさらに好ましくは2μm未満、またはさらには1.5μm未満であり、これらの値を端点として有する範囲を含み、例えば1μm~2.5μm、1μm~2μm、またはさらには1μm~1.5μmである。
【0262】
最終的なセラミック物品のD50は、ビーズ間中位気孔サイズにより著しく影響を受け、ビーズ間中位気孔サイズは、セラミック物品の作製のために使用されるビーズの中位粒子サイズにより著しく影響を受けるため、D50は、セラミック物品を作製するために使用されるビーズの中位粒子サイズに少なくとも部分的に依存することになる。このように、ビーズの選択された中位粒子サイズは、セラミック物品の得られるD50を工作するために使用することができる。
【0263】
例えば、約25μm~50μmの範囲の中位ビーズサイズは、一般に約20μmまで(より具体的には、約8μm~18μmの範囲内)のセラミック物品のD50に対応することが見出された。例えば、比較的大きな中位ビーズサイズ(例えば、約50μmのd50)を有するビーズの選択は、得られるセラミック物品の中位気孔サイズ(D50)をより大きな値に向けて(例えば、18~20μmのD50に向けて、またはより大きなビーズが使用されるためさらに大きな値に向けて)シフトさせるために使用することができる。同様に、比較的小さな中位ビーズサイズ(例えば、25μmのd50)を有するビーズの選択は、得られるセラミック物品の中位気孔サイズ(D50)を比較的小さな値に向けて(例えば、8μmのD50に向けて、またはより小さなビーズが使用されるためさらに小さな値に向けて)シフトさせるために使用することができる。
【0264】
本明細書の開示に従って、ビーズの中位粒子サイズ(d50)は、ビーズ粉末から1つ以上のサイズ画分を除去することにより影響を与えられるか、影響を及ぼされるか、またはさらには設定することができる。幾つかの実施形態では、1つ以上のビーズ画分(例えば、粒子サイズ分布においてより大きいまたはより小さいテール)の除去は、篩別により達成される。例えば、より大きなサイズ画分を除去することは、中位ビーズサイズを小さくするために実施することができ、より小さなサイズ画分を除去することは、中位ビーズサイズを大きくするために実施することができる。
【0265】
特許請求の範囲に記載された主題の精神または範囲から逸脱することなしに、多様な修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、特許請求の範囲に記載された主題は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲に照らすことを除いて制限されるべきではない。
【0266】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0267】
実施形態1
セラミック物品であって、
多孔質球状セラミックビーズの相互接続したネットワークを有する微細構造を有する多孔質セラミック材料を有し、前記微細構造は、前記ビーズのビーズ内開気孔率と、前記相互接続したネットワーク内の前記ビーズ間の隙間により定義されるビーズ間気孔率との合計として定義される全開気孔率を有し、
前記微細構造は、前記ビーズ内開気孔率に対応するビーズ内ピークと、前記ビーズ間気孔率に対応するビーズ間ピークとを有する双峰性気孔サイズ分布を有し、前記ビーズ内気孔率のビーズ内中位気孔サイズは、前記ビーズ間気孔率のビーズ間中位気孔サイズよりも小さい、
セラミック物品。
【0268】
実施態様2
前記ビーズ内開気孔率は、前記相互接続したネットワークにより定義される全体積に対して少なくとも10%であり、前記ビーズ間気孔率は、前記相互接続したネットワークの前記全体積に対して少なくとも40%である、実施形態1記載のセラミック物品。
【0269】
実施形態3
前記ビーズ内開気孔率は、前記ビーズの体積に対して少なくとも9%であり、前記全気孔率は、少なくとも50%である、実施形態1または2記載のセラミック物品。
【0270】
実施形態4
前記セラミックビーズは、コーディエライトを少なくとも80質量%有する、実施形態1から3までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0271】
実施形態5
前記多孔質セラミックビーズは、コーディエライトを少なくとも85質量%有する、実施形態1から4までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0272】
実施形態6
前記多孔質セラミック材料の結晶質相は、コーディエライトを少なくとも90質量%有する、実施形態1から5までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0273】
実施形態7
前記多孔質セラミック材料の結晶質相は、コーディエライトを少なくとも95質量%有する、実施形態1から6までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0274】
実施形態8
前記多孔質セラミックビーズは、5%未満のビーズ閉気孔率を有する、実施形態1から7までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0275】
実施態様9
前記多孔質セラミックビーズは、2.5%未満のビーズ閉気孔率を有する、実施形態1から8までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0276】
実施形態10
前記ビーズ内開気孔率は、全体積に対して少なくとも12%である、実施形態1から9までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0277】
実施形態11
前記ビーズ内開気孔率は、全体積に対して少なくとも15%である、実施形態1から10までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0278】
実施形態12
前記ビーズ間気孔率は、少なくとも45%である、実施形態1から11までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0279】
実施形態13
前記ビーズ間気孔率は、少なくとも50%である、実施形態1から12までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0280】
実施形態14
前記全気孔率は、少なくとも50%である、実施形態1から13までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0281】
実施形態15
前記全気孔率は、少なくとも55%である、実施形態1から14までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0282】
実施形態16
前記全気孔率は、少なくとも60%である、実施形態1から14までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0283】
実施形態17
ビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で6μmである、実施形態1から16までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0284】
実施形態18
ビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で5.5μmである、実施形態1から17までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0285】
実施形態19
ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で2μmである、実施形態1から18までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0286】
実施形態20
ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で1.5μmである、実施形態1から19までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0287】
実施形態21
前記双峰性気孔サイズ分布は、水銀圧入ポロシメトリーによって決定する場合、前記ビーズ内中位気孔サイズと前記ビーズ間中位気孔サイズとの間にある気孔サイズで局所極小差分圧入値を有し、該局所極小差分圧入値は、前記ビーズ間ピークの極大差分圧入値の20%未満である、実施形態1から20までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0288】
実施形態22
前記双峰性気孔サイズ分布は、水銀圧入ポロシメトリーによって決定する場合、前記ビーズ内中位気孔サイズと前記ビーズ間中位気孔サイズとの間にある気孔サイズで局所極小差分圧入値を有し、該局所極小差分圧入値は、前記ビーズ間ピークの極大差分圧入値の15%未満である、実施形態1から21までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0289】
実施形態23
前記双峰性気孔サイズ分布は、水銀圧入ポロシメトリーによって決定する場合、前記ビーズ内中位気孔サイズと前記ビーズ間中位気孔サイズとの間にある気孔サイズで局所極小差分圧入値を有し、該局所極小差分圧入値は、ビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅の値よりも小さい、実施形態1から22までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0290】
実施形態24
前記セラミック物品の前記双峰性気孔サイズ分布のD10値は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で3μmである、実施形態1から23までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0291】
実施形態25
前記セラミック物品の前記双峰性気孔サイズ分布のD10値は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で2.5μmである、実施形態1から24までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0292】
実施形態26
前記セラミック物品の前記双峰性気孔サイズ分布のD10値は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で2μmである、実施形態1から25までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0293】
実施形態27
前記セラミック物品の前記双峰性気孔サイズ分布のD75-D50値は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で2μmである、実施形態1から26までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0294】
実施形態28
前記セラミック物品の前記双峰性気孔サイズ分布のD75-D50値は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、最大で1.5μmである、実施形態1から27までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0295】
実施形態29
前記セラミック物品の前記双峰性気孔サイズ分布のD50/D10比は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、少なくとも3である、実施形態1から28までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0296】
実施形態30
前記セラミック物品の前記双峰性気孔サイズ分布のD50/D10比は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、少なくとも4である、実施形態1から29までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0297】
実施形態31
前記セラミック物品の前記双峰性気孔サイズ分布のD50/D10比は、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、少なくとも5である、実施形態1から30までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0298】
実施形態32
前記全気孔率は、少なくとも55%であり、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、前記ビーズ間中位気孔サイズは、6μm~20μmであり、前記ビーズ内中位気孔サイズは、1.5μm~4μmであり、前記双峰性気孔サイズ分布のビーズ間半値気孔サイズ分布ピーク幅は、最大で5.5μmであり、前記双峰性気孔サイズ分布のビーズ内半値気孔サイズ分布ピーク幅は、最大で2μmであり、前記ビーズ内中位気孔サイズと前記ビーズ間中位気孔サイズとの間にある気孔サイズに位置する前記気孔サイズ分布の局所極小差分圧入値は、前記ビーズ間ピークの極大差分圧入値の15%未満である、実施形態1から31までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0299】
実施形態33
前記全気孔率は、少なくとも55%であり、水銀圧入ポロシメトリーにより決定して、前記双峰性気孔サイズ分布は、最大で3μmのD10値、5μm~18μmのD50値、および最大で2μmのD75-D50値を有する、実施形態1から31までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0300】
実施形態34
前記多孔質セラミックビーズの前記ビーズ内開気孔率は、前記ビーズの体積に対して平均で少なくとも20%である、実施形態1から33までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0301】
実施形態35
前記ビーズの材料の前記ビーズ内開気孔率は、前記ビーズの体積に対して平均で少なくとも25%である、実施形態1から34までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0302】
実施形態36
前記ビーズの材料の前記ビーズ内開気孔率は、前記ビーズの体積に対して平均で少なくとも30%である、実施形態1から35までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0303】
実施形態37
前記ビーズ間気孔率は、6μm~20μmの範囲内の中位気孔サイズを有する、実施形態1から36までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0304】
実施形態38
前記ビーズ間中位気孔サイズは、8μm~18μmの範囲内にある、実施形態1から37までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0305】
実施形態39
前記ビーズ間中位気孔サイズは、9μm~17μmの範囲内にある、実施形態1から38までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0306】
実施形態40
前記ビーズ内中位気孔サイズは、1μm~5μmの範囲内にある、実施形態1から39までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0307】
実施形態41
前記ビーズ内中位気孔サイズは、1.5μm~4μmの範囲内にある、実施形態1から40までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0308】
実施形態42
前記ビーズ内中位気孔サイズは、1.5μm~3μmの範囲内にある、実施形態1から41までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0309】
実施形態43
前記ビーズ内中位気孔サイズは、1.5μm~2μmの範囲内にある、実施形態1から42までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0310】
実施形態44
前記ビーズ内中位気孔サイズは、1μm~2μmの範囲内にある、実施形態1から43までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0311】
実施形態45
前記ビーズは、20μm~50μmの範囲内の中位粒子サイズを有する、実施形態1から44までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0312】
実施形態46
前記ビーズは、25μm~40μmの範囲内の中位粒子サイズを有する、実施形態1から45までのいずれか1つ記載のセラミック物品。
【0313】
実施形態47
実施形態1から46までのいずれか1つ記載のセラミック物品を有するセラミックハニカム体であって、前記セラミック物品は、前記多孔質セラミック材料を有する複数の交差する壁を有し、該交差する壁は、前記セラミックハニカム体を第1の端面から第2の端面まで通って長手方向に延びる複数の通路を形成する、セラミックハニカム体。
【0314】
実施形態48
前記交差する壁の前記多孔質セラミック材料は、コーディエライトを少なくとも90質量%有し、前記多孔質セラミックビーズは、5%未満のビーズ内閉気孔率を有し、前記全気孔率は、少なくとも50%であり、前記ビーズの前記ビーズ内開気孔率は、前記ビーズの体積に対して少なくとも20%であり、前記ビーズは、20μm~50μmの範囲内の中位粒子サイズを有する、実施形態47記載のセラミックハニカム体。
【0315】
実施形態49
実施形態47または48記載のセラミックハニカム体を有するパティキュレートフィルタ。
【0316】
実施形態50
前記ハニカム体の前記通路は、前記第1の端面と前記第2の端面とでチェッカーボードパターンに交互に目封止されている、実施形態49記載のパティキュレートフィルタ。
【0317】
実施形態51
セラミック物品を製造する方法であって、
多孔質セラミック材料をそれぞれ有する複数の多孔質セラミックビーズを有するバッチ混合物を相互に混合するステップであって、前記多孔質セラミックビーズの前記多孔質セラミック材料は、ビーズ内開気孔率を有し、前記多孔質セラミックビーズは、25~40μmの中位ビーズサイズを有する、混合するステップと、
前記バッチ混合物を未焼成セラミック物品に成形するステップと、
前記多孔質セラミックビーズを一緒に焼結させて該多孔質セラミックビーズの相互接続したネットワークにすることにより前記セラミック物品を形成するために、前記未焼成セラミック物品を焼成するステップと
を有し、
前記相互接続したネットワーク内の前記ビーズ間の隙間は、前記セラミック物品のビーズ間気孔率を定義し、
前記ビーズ内気孔率と前記ビーズ間気孔率との合計として定義される前記セラミック物品の全気孔率は、前記セラミック物品の全体積に対して少なくとも50%であり、
前記セラミック物品は、前記ビーズ内気孔率のビーズ内中位気孔サイズが、前記ビーズ間気孔率のビーズ間中位気孔サイズよりも小さい双峰性気孔サイズ分布を有する、
方法。
【0318】
実施形態52
前記バッチ混合物を形成する前に、前記方法は、
セラミック前駆材料の混合物を有するスラリー混合物を形成するステップと、
前記スラリー混合物を球状未焼成凝集体に球状化するステップと、
前記セラミック前駆材料を前記多孔質セラミック材料に変換することにより前記多孔質セラミックビーズを形成するために、前記未焼成凝集体を焼成するステップと
をさらに有する、実施形態51記載の方法。
【0319】
実施形態53
前記セラミックビーズは、コーディエライトを少なくとも80質量%有する、実施形態51または52記載の方法。
【0320】
実施形態54
前記多孔質セラミック材料の結晶質相は、少なくとも90質量%のコーディエライトである、実施形態51から53までのいずれか1つ記載の方法。
【0321】
実施形態55
前記バッチ混合物を相互に混合するステップの前に、前記多孔質セラミックビーズの中位粒子サイズに影響を与えるために、前記未焼成凝集体を篩別するか、または前記多孔質セラミックビーズを篩別するステップをさらに有する、実施形態52から54までのいずれか1つ記載の方法。
【0322】
実施形態56
前記スラリー混合物を球状化するステップは、噴霧乾燥プロセスを有する、実施形態52から55までのいずれか1つ記載の方法。
【0323】
実施形態57
前記スラリー混合物を球状化するステップは、回転蒸発プロセスを有する、実施形態52から56までのいずれか1つ記載の方法。
【0324】
実施形態58
前記セラミック前駆材料は、シリカ源と、アルミナ源と、マグネシア源とを有し、前記多孔質セラミックビーズの前記多孔質セラミック材料は、コーディエライトを有する、実施形態52から57までのいずれか1つ記載の方法。
【0325】
実施形態59
前記バッチ混合物は、有機結合剤と無機結合剤とをさらに有する、実施形態52から58までのいずれか1つ記載の方法。
【0326】
実施形態60
前記バッチ混合物は、前記無機結合剤と前記多孔質セラミックビーズとの全質量に対して、60質量%~95質量%の範囲の量で前記多孔質セラミックビーズを有する、実施形態52から59までのいずれか1つ記載の方法。
【0327】
実施形態61
前記無機結合剤は、複数の剪断結合剤凝集体を有し、該剪断結合剤凝集体は、1つ以上の無機セラミック前駆材料と結合剤との未焼成混合物を有する、実施形態60記載の方法。
【0328】
実施形態62
前記ビーズ内開気孔率は、前記セラミック物品の前記全体積に対して少なくとも10%である、実施形態51から61までのいずれか1つ記載の方法。
【0329】
実施形態63
前記ビーズ間気孔率は、前記セラミック物品の前記全体積に対して少なくとも40%である、実施形態51から62までのいずれか1つ記載の方法。
【0330】
実施形態64
前記ビーズ内気孔率は、前記ビーズの体積に対して少なくとも9%である、実施形態51から63までのいずれか1つ記載の方法。
【0331】
実施形態65
前記ビーズ内気孔率は、前記ビーズの体積に対して少なくとも15%である、実施形態51から64までのいずれか1つ記載の方法。
【0332】
実施形態66
前記ビーズ内気孔率は、前記ビーズの体積に対して少なくとも20%である、実施形態51から64までのいずれか1つ記載の方法。
【0333】
実施形態67
前記セラミック物品は、セラミックハニカム体であり、前記バッチ混合物を成形するステップは、前記バッチ混合物をハニカム押出ダイに通して押し出すステップを有し、前記セラミックハニカム体は、前記多孔質セラミック材料を有する複数の交差する壁を有し、該交差する壁は、第1の端面から第2の端面まで前記ハニカム体を通って長手方向に延びる複数の通路を形成する、実施形態51から66までのいずれか1つ記載の方法。
【0334】
実施形態68
前記ハニカム体からフィルタを作製するために、前記通路を前記第1の端面と前記第2の端面とでチェッカーボードパターンに交互に目封止するステップをさらに有する、実施形態67記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図12H
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
【国際調査報告】