(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】耐炎性および耐加水分解性のポリエステル組成物およびそれから作製されるコネクタ
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20230817BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20230817BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20230817BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K7/14
C08L79/00
C08K5/5313
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506222
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 US2021043950
(87)【国際公開番号】W WO2022026860
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジア,カマー
(72)【発明者】
【氏名】ツィーラー,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】マルクグラフ,キルステン
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ,パトリック
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB032
4J002BB052
4J002BB151
4J002CF041
4J002CF051
4J002CF061
4J002CF071
4J002CM053
4J002DL006
4J002EC078
4J002EH049
4J002EU197
4J002EW067
4J002EW137
4J002FA046
4J002FB096
4J002FD016
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD136
4J002FD179
4J002FD208
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
ハロゲンを含まない、耐炎性および耐加水分解性のポリマー組成物を開示する。ポリマー組成物は、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリマーを含む。熱可塑性ポリマーは、ホスフィネート、ホスファイトおよび窒素含有相乗剤を含んでもよい難燃剤と組み合わされる。さらに、組成物は様々な耐加水分解性の成分を含むことができる。例えば、組成物に組み込まれたポリエステルポリマーは、比較的少ない量のカルボキシ末端基を有することができる。さらに、組成物は、耐加水分解剤でコーティングされた強化繊維を含むことができる。組成物はさらに有機金属相溶化剤を含むことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
約20mmol/kg未満の量のカルボキシ末端基を有し、約40重量%超の量でポリマー組成物中に存在する、ポリエステルポリマーと;
ポリマー組成物内に含有されている難燃剤組成物であり、非ハロゲン難燃剤を含む難燃剤組成物と;
前記ポリエステルポリマーから形成されたポリマーマトリクス全体に分散している強化繊維であり、耐加水分解剤と組み合わせたサイジング剤を含むサイジング組成物でコーティングされている強化繊維と;
を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリマーがポリブチレンテレフタレートポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
ポリカルボジイミドをさらに含む、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリカルボジイミドが10,000g/mol以上の重量平均分子量を有する、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記強化繊維がガラス繊維を含み、サイジング剤がシランを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
サイジング組成物が、前記強化繊維の約0.1重量%~約4重量%の量で前記強化繊維上に存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記強化繊維が、約1mm~約5mmの平均繊維長を有し、約8ミクロン~約12ミクロンの平均繊維直径を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
難燃剤組成物が、ホスフィン酸金属塩、亜リン酸金属塩および窒素含有相乗剤を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
亜リン酸金属塩が亜リン酸アルミニウムを含み、ホスフィン酸金属塩がジエチルホスフィン酸アルミニウムを含み、窒素含有相乗剤がメラミンシアヌレートを含む、請求項8に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項10】
前記ポリマー組成物がさらに有機金属相溶化剤を含有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項11】
有機金属相溶化剤がチタネートを含む、請求項10に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項12】
有機金属相溶化剤がチタン(IV)2-プロパノラト,トリス(ジオクチル)ホスファト-Oを含む、請求項10に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項13】
有機金属相溶化剤が約0.05重量%~約2.5重量%の量でポリマー組成物中に存在する、請求項10から12のいずれか一項に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項14】
さらにカルボン酸のエステルを含有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項15】
カルボン酸のエステルが、モンタン酸と多官能性アルコールとの反応生成物を含む、請求項14に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項16】
250℃の温度において2.16kgの荷重で試験した場合に、少なくとも4cm
3/10分のメルトフローレートを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項17】
アンダーライターズ・ラボラトリーズ試験94に従って垂直燃焼試験により試験した場合に、1.5mmの厚さでの試験でV-0の評価を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載の耐炎性ポリマー組成物。
【請求項18】
前記強化繊維がガラス繊維を含み、ガラス繊維が、約10重量%~約40重量%の量で、例えば約20重量%~約30重量%の量で、ポリマー組成物中に存在する、請求項1から17のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記ポリマー組成物が121℃で加水分解試験に付された場合に、前記ポリマー組成物の引張弾性率が、168時間後に約50%以下の減少となる、請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記ポリマー組成物が121℃で加水分解試験に付された場合に、前記ポリマー組成物の23℃でのシャルピーノッチ付き強度が、168時間後に約50%以下の減少となる、請求項1から19のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
少なくとも2つの対向する壁を備え、それらの間に、接触素子を受け入れるための通路が画定され、壁が、請求項1から20のいずれか一項に記載のポリマー組成物から形成されている、電気コネクタ。
【請求項22】
接触素子が、雄型レセプタクルまたは雌型レセプタクルを含む、請求項21に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2020年7月30出願の米国仮特許出願第63/058,527号に基づき、その優先権を主張するものであり、該仮特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]エンジニアリング熱可塑性プラスチックは、成形部品および製品を製造するために多数の多様な用途においてしばしば使用される。例えば、ポリエステルポリマーとポリエステルエラストマーは、射出成形物、ブロー成形物などのあらゆる種々のタイプの成形物を製造するために使用される。例えば、ポリエステルポリマーは、化学的耐性があるようにするため、優れた強度特性を持つように配合することができ、またポリエステルエラストマーを含有する組成物を配合する場合には、柔軟性を持つように配合することができる。特に有利なことに、ポリエステルポリマーはその熱可塑性の性質により溶融加工することができる。さらに、ポリエステルポリマーは再利用し再処理することができる。
【0003】
[0003]熱可塑性ポリマーから成形部品および製品を製造する際に、当業者が直面する1つの問題は、物品を耐炎性にする能力である。種類がほぼ無限にある種々の難燃剤が商業的に市場に出され販売されているが、特定の熱可塑性ポリマー組成物に適する難燃剤を選択することは困難であり、予測不可能である。さらに、多くの入手可能な難燃剤が、臭素化合物などのハロゲン化合物を含有し、製造中に刺激の強い化学ガスを生じる可能性がある。
【0004】
[0004]ポリエステルポリマーから成形部品および製品を製造する際に、当業者が直面するもう1つの問題は、物品を耐加水分解性にする能力である。多くのポリエステルポリマーが、例えば、特に高温で、水または高湿度環境との繰り返し接触に付された場合に劣化することが知られている。
【0005】
[0005]例えば、耐炎性と耐加水分解性が必要とされる分野の1つは、ポリエステルポリマーを使用してコネクタ、特に高電圧コネクタを設計および製造する場合である。高電圧コネクタは、自動車の電気駆動システムを構成する部品など、高電圧部品との取り外し可能な電気接続を行うように設計されている。高電圧コネクタは、例えば、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車の進化により、特に需要が高くなっている。
【0006】
[0006]例えば、電気自動車の最新の電気駆動システムには、高電圧装置が300Vを超える電圧で作動する多数の高電圧部品またはアセンブリが含まれている。これらには、特にインバータ、電流コンバータおよび/もしくは電力コンバータ、制御ユニット、ならびに/または電子制御ユニットなどの、電力制御素子が含まれている。
【0007】
[0007]高電圧コネクタは、感電に対する保護を行いながら、高電圧環境で作動するように設計されている。これらのコネクタは、高温および高湿度の環境で作動することが必要な場合もある。したがって、コネクタハウジングには難燃性と耐加水分解性が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]上記を考慮して、本開示は、難燃性と耐加水分解性の改善された組合せを有するポリエステル組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]通常、本開示は、ポリエステルポリマーなどの熱可塑性ポリマーを、防火剤組成物および少なくとも1つの耐加水分解性添加剤と組み合わせて含有する、ポリマー組成物に関する。防火剤組成物の成分は、改善された耐火性を有するポリマー組成物を製造するために慎重に選択される。例えば、このポリマー組成物は、アンダーライターズ・ラボラトリーズ試験94(Underwriters Laboratories Test94)に従って試験した場合に、厚さ1.5mmまたは0.8mmでV-0の評価を示すことができる。さらに、このポリマー組成物は、121℃での加水分解試験に付された場合に、耐加水分解性の引張機械特性および衝撃特性を示すことができる。例えば、引張弾性率などの組成物の引張特性が、168時間試験した場合に約50%を超えて低下しないように、ポリマー組成物を配合することができる。さらに、23℃でのポリマー組成物のシャルピーノッチ付き強度は、加水分解試験(後述)に従って168時間試験した場合に、約50%以下の減少とすることができる。
【0010】
[0010]一実施形態では、例えば、本開示は、ポリエステルポリマーを含有する耐炎性および耐加水分解性のポリマー組成物を対象とする。ポリエステルポリマーは、例えば約45重量%超の量、例えば約50重量%超の量など、通常、約40重量%超の量でポリマー組成物中に存在することができる。ポリエステル熱可塑性ポリマーは、ポリブチレンテレフタレートポリマーであってもよい。一実施形態では、耐加水分解性ポリブチレンテレフタレートポリマーなどの耐加水分解性ポリエステルポリマーを使用することができる。ポリエステルポリマー(例えば、ポリブチレンテレフタレートポリマー)は、限られた量のカルボキシ末端基を含むことができる。ポリエステルポリマーは、約20ミリモル/kg未満の量のカルボキシ末端基を含むことができる。
【0011】
[0011]本開示によれば、熱可塑性ポリマーは、ホスフィン酸金属塩(金属ホスフィネート)、亜リン酸金属塩(金属ホスファイト)および窒素含有相乗剤の組合せを含む、非ハロゲン難燃剤組成物と組み合わされる。亜リン酸金属塩は、例えば、式:Al2(HPO3)3を有する亜リン酸アルミニウムを含んでもよい。他方で、ホスフィン酸金属塩は、ジエチルホスフィン酸アルミニウムなどのジアルキルホスフィン酸塩であってもよい。窒素含有相乗剤は、メラミンシアヌレートなどのメラミンを含んでもよい。一態様では、ホスフィン酸金属塩は、ポリマー組成物中に、例えば約7重量%~約25重量%、例えば約7重量%~約19重量%など、約5重量%~約30重量%の量で存在する。亜リン酸金属塩は、例えば約0.1重量%~約2重量%、例えば約0.2重量%~約1.1重量%など、通常、約0.01重量%~約4重量%の量でポリマー組成物中に存在することができる。他方、窒素含有相乗剤は、ポリマー組成物中に、例えば約2重量%~約9重量%、例えば約3重量%~約8.5重量%など、通常、約0.01重量%~約12重量%の量で存在することができる。
【0012】
[0012]ポリマー組成物は、ガラス繊維などの強化繊維も含むことができる。強化繊維を、耐加水分解剤と組み合わせたサイジング剤を含むサイジング組成物でコーティングすることができる。サイジング剤は、例えばシランとすることができ、その一方で、耐加水分解剤はグリシジルエステル型エポキシ樹脂とすることができる。一態様では、サイジング組成物は第2のエポキシ樹脂を含むことができる。耐加水分解剤として使用することができるグリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステルまたはこれらの混合物を挙げることができる。サイジング組成物は、繊維の約0.1重量%~約4重量%の量で強化繊維上に存在することができる。強化繊維は、一般に、約1mm~約5mmの平均繊維長を有することができ、約8ミクロン~約12ミクロンの平均繊維直径を有することができる。
【0013】
[0013]ポリマー組成は、さらに有機金属相溶化剤を含むことができる。有機金属相溶化剤は、例えばチタネートであってもよい。使用することができるチタネートの一例は、チタン(IV)2-プロパノラト,トリス(ジオクチル)ホスファト-Oである。有機金属相溶化剤は、通常、約0.05重量%~約2.5重量%の量でポリマー組成物中に存在することができる。耐炎性ポリマー組成物は、さらにカルボン酸のエステルを含有することができる。例えば、エステルは、モンタン酸を多官能性アルコールと反応させることによって形成されてもよい。多官能性アルコールは、エチレングリコールまたはグリセリンであってもよい。カルボン酸のエステルは、通常、約0.05重量%~約8重量%の量でポリマー組成物中に存在することができる。
【0014】
[0014]250℃において2.16kgの荷重で試験した場合に、本開示のポリマー組成物は、例えば約4cm3/10分超など、少なくとも3cm3/10分のメルトフローレートを有することができる。
【0015】
[0015]一実施形態では、本開示は、接触素子を受け入れるための通路がそれらの間に画定されている少なくとも2つの対向する壁を備える、高電圧コネクタなどの電気コネクタを対象とする。接触素子は、例えば、雄型導電素子または雌型導電素子とすることができる。本開示に従って、少なくとも2つの対向する壁は、上述のポリマー組成物から形成される。
【0016】
[0016]本開示の他の特徴および態様を、以下により詳細に議論する。
【0017】
定義
[0017]本明細書で使用される、ポリマーの耐炎特性は、アンダーライターズ・ラボラトリーズ試験94に従って垂直燃焼試験により測定される。試験プラークは、耐炎性の測定のために異なる厚さで作ることができる。V-0の評価は、最良の評価であることを示す。
【0018】
[0018]本明細書で使用される、「加水分解試験」は、96時間または168時間などの特定の長さの時間の間、圧力鍋に試験プラークを置くことにより、121℃で実施される。圧力鍋は、加圧下の飽和水蒸気の形で、湿熱を使用する。圧力鍋の作動範囲は1.05~1.48kgf/cm2(15~21psi)(Geared Steam Gaugeを使用)である。暴露期間は、圧力蒸気計の針が上記の作動範囲(1.05~1.48kgf/cm2(15~21psi))内に記録されたときに始まる。試験中に、温度は121℃から127℃まで変化する可能性がある。決められた時間の後、試験プラークの物理的特性が測定され、初期特性と比較される。
【0019】
[0019]ポリマーまたはポリマー組成物のメルトフローレートは、ISO試験1133に従って、250℃で、2.16kgの荷重または5kgの荷重などの適切な温度および荷重で測定される。
【0020】
[0020]ポリマーの密度は、ISO試験1183に従ってg/cm3の単位で測定される。
[0021]平均粒径(d50)は、適切なHoriba光散乱装置などの光散乱を使用して測定される。
【0021】
[0022]ポリマーの平均分子量は、マーゴリーズの方程式を用いて測定される。
[0023]引張弾性率、降伏点の引張応力、降伏点の引張歪み、破断率50%の引張応力、破断点の引張応力および破断点における引張公称歪みはすべて、ISO試験5272/1Bに従って測定される。
【0022】
[0024]23℃でのシャルピー衝撃強度は、ISO試験179/1eUに従って測定される。
[0025]比誘電率または誘電率は、1MHzで測定され、散逸率は1MHzで、IEC試験60250に従って、測定される。
【0023】
[0026]体積抵抗と表面抵抗率は、IEC試験60093に従って測定される。
[0027]本開示の完全かつ実施可能な開示は、添付の図面の参照を含む本明細書の残りの部分に、より詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】[0028]上部カバーが取り外された状態を示す、電気自動車用のバッテリーパックの斜視図であり、バッテリーパックは、車両の他の部品に接続するための1つまたは複数の実施形態における高電圧ハーネス接続構造を採用する。
【
図2】[0029]本開示による高電圧コネクタの一実施形態の透視図である。
【
図3】[0030]本開示による高電圧コネクタの別の実施形態を示す図である。
【
図4】[0031]
図1のバッテリーパックを組み込んだ電気自動車の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0032]本明細書および図面において参照文字を繰り返し使用することは、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すことを意図している。
[0033]本考察は、単なる例示的な実施形態の説明であり、本開示のより広い態様を限定することを意図するものではないことを当業者は理解されたい。
【0026】
[0034]通常、本開示は、ハロゲンを含まない、耐炎性および耐加水分解性のポリマー組成物を対象とする。本開示によって作製したポリマー組成物は、アンダーライターズ・ラボラトリーズ試験に従って試験した場合に、優れた燃焼性評価を示し、耐加水分解性にも優れているだけでなく、ポリマー加工特性を含めた優れた機械的特性も有している。
【0027】
[0035]通常、本開示のポリマー組成物は、ポリブチレンテレフタレートポリマーなどの好適な熱可塑性ポリマーを、ホスフィン酸金属塩、亜リン酸金属塩および窒素含有相乗剤を含有してもよい難燃剤組成物と組み合わせて含有している。難燃剤組成物に加えて、ポリマー組成物はさらに、強化繊維、および少なくとも1つの耐加水分解性の添加剤または成分を含有している。例えば、一実施形態では、ポリマー組成物での使用に選択された熱可塑性ポリマーは、最小量のカルボキシ末端基を含有している、耐加水分解性のポリエステルポリマーである。さらに、強化繊維は、耐加水分解剤を含有するサイジング組成物でコーティングすることができる。ポリマー組成物は、さらに有機金属相溶化剤を含有することができる。
【0028】
[0036]本開示のポリマー組成物は、高電圧の電気コネクタなどの電気部品の製造に特によく適している。本開示に従って作製された電気コネクタは、本開示の範囲内で様々な構成を有することができる。一例として、電気コネクタは、対向する壁の間に複数の通路または空間を画定することができる。通路は、電気接続を容易にするために接触素子を収容することができる。接触素子は、例えば、相手方コネクタに接続するための雄型接触素子または雌型接触素子の形態とすることができる。
【0029】
[0037]自動車の進化と、ハイブリッド車、電気自動車および/または自律走行車の大量生産により、耐炎性および耐加水分解性の電気コネクタおよびその他の電気部品の需要が劇的に増加している。電気自動車および自律走行車には、例えば、多くの高電圧接続が必要である。これらの高電圧コネクタおよび他の装置の多くは、300Vを超える電圧で作動する。これらのコネクタは、通常、1つまたは複数のバッテリーパックから電気モーター、あるいは他の補助のシステムまでなど、車の中の様々な部品間に伸びる高電圧ハーネスの一部である。
【0030】
[0038]
図1および
図4を参照すると、例えば、電気自動車100に取り付けられたバッテリーパック10の一実施形態が図示されている。バッテリーパック10には、バッテリーパックケース12が含まれる。図示された実施形態では、バッテリーパックケース12の1つの部分だけが図示されている。バッテリーパックケース12の上部は内部の部品を示すために取り除かれている。
【0031】
[0039]バッテリーパック10は、バッテリーモジュール14、温度調節空気ユニット(temperature-adjusted air unit)16、高電圧カットオフスイッチであるサービス切断スイッチ18、ジャンクションボックス20およびリチウムイオン電池コントローラ22を含むことができる。
【0032】
[0040]バッテリーパックケース12は、車両内の任意の適切な位置に取り付けることができる。バッテリーパック10を車両内の他の部品に接続するために、バッテリーパックケース12は冷媒管コネクタ端子24、充放電コネクタ端子26、強電コネクタ端子28および弱電コネクタ端子30を支持する。
【0033】
[0041]バッテリーモジュール14は、複数のバッテリーサブモジュールを含むことができる。各バッテリーサブモジュールは、それぞれ複数のバッテリーセルが互いに積み重ねられた組立構造体である。
【0034】
[0042]1つまたは複数の高電圧電気ハーネスが、車両内に含まれる電気モーターにバッテリーパック10を接続する。例えば、
図4に示されるように、バッテリーパック10は、ワイヤハーネス102およびワイヤハーネス104によって電気モーター106に接続される。バッテリーパック10へのコネクタに加えて、車両の電気モーターは、コンバータからエンジンへのコネクタ、インバータからヒータへのコネクタ、インバータからコンプレッサへのコネクタ、充電器からコンバータへのコネクタなどを含むことができる。これらの部品には、すべてコネクタ、特に高電圧コネクタが必要である。
【0035】
[0043]
図2を参照すると、本開示に従って作製することができる高電圧コネクタ50の一実施形態が示されている。電気コネクタ50は、対向壁54によって囲まれた挿入通路52を含む。壁54は、複数の接触素子56を収容する。接触素子56は、反対側のコネクタへの電気接続を行うためのものである。
図2に示される実施形態では、接触素子56は、対向するレセプターに挿入される雄型接触子である。
【0036】
[0044]
図3を参照すると、本開示に従って作製された別のコネクタ60が示されている。コネクタ60は、
図2に示されるようなコネクタ50を受け入れ取り付けるためのものである。コネクタ60は、複数の対向壁64によって囲まれた挿入通路62を含む。コネクタ60は複数の接触素子66を含む。接触素子66は、
図2に示されるようなコネクタ50から雄型接触素子56を受け入れるための雌型コネクタである。
【0037】
[0045]本開示によれば、コネクタ50の対向壁54およびコネクタ60の対向壁64は、本開示のポリマー組成物から作製することができる。このポリマー組成物は、優れた耐炎特性を持ち、耐加水分解性も備えている。例えば、アンダーライターズ・ラボラトリーズ試験94に従って垂直燃焼試験により試験した場合に、このポリマー組成物は、1.5mmの厚さでの試験でV-0評価を有する。特定の実施形態では、0.8mmの厚さで試験した場合に、このポリマー組成物はさらにV-0の評価を有することができる。このポリマー組成物は、121℃での加水分解試験に付された場合に、耐加水分解性の引張機械特性および衝撃特性を示すことができる。例えば、ポリマー組成物は、引張弾性率などの組成物の引張特性が、168時間試験した場合に約50%を超えて低下しないように、配合することができる。さらに、23℃でのポリマー組成物のシャルピーノッチ付き強度は、加水分解試験に従って168時間試験した場合に、約50%以下の減少とすることができる。
【0038】
[0046]ポリマー組成物は、優れた機械的特性も備えている。例えば、ポリマー組成物の引張弾性率は、例えば約9,000MPa超、例えば約9,500MPa超、例えば約10,000MPa超、例えば約10,500MPa超、例えば約11,000MPa超など、約8,400MPa超であってもよい。引張弾性率は、一般に約18,000MPa未満である。ポリマー組成物は、例えば約112MPa超、例えば約114MPa超など、約110MPa超の、および通常、約130MPa未満の、破断点の引張応力を有することができる。ポリマー組成物はさらに、例えば約6.5kJ/m2超、例えば約7kJ/m2超、例えば約7.5kJ/m2超など、約6kJ/m2超の、および通常、約14kJ/m2未満の、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を有することができる。ポリマー組成物は、通常約50kJ/m2超のノッチ無しシャルピー衝撃強度を有することができる。
【0039】
[0047]上述のように、ポリマー組成物は、一般に熱可塑性ポリマー、特にポリエステルポリマーを含む。本明細書で使用するのに好適なポリエステルは、2~約10個の炭素原子を含有する脂肪族もしくは環状脂肪族ジオールまたはこれらの混合物と、芳香族ジカルボン酸とから誘導される、すなわちポリアルキレンテレフタレートである。
【0040】
[0048]環状脂肪族ジオールおよび芳香族ジカルボン酸から誘導されるポリエステルは、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノールのシスもしくはトランス異性体(またはこれらの混合物)のいずれかを芳香族ジカルボン酸と縮合させることによって調製される。
【0041】
[0049]芳香族ジカルボン酸の例としては、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルなど、およびこれらの混合物を挙げることができる。これらの酸は、すべて少なくとも1つの芳香核を含有する。1,4-または1,5-または2,6-ナフタレン-ジカルボン酸などには、縮合環もまた存在し得る。一実施形態では、ジカルボン酸は、テレフタル酸またはテレフタル酸と、イソフタル酸との混合物である。
【0042】
[0050]ポリマー組成物において使用することができるポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、これらの混合物、およびこれらのコポリマーを挙げることができる。
【0043】
[0051]一態様では、ポリブチレンテレフタレートポリマーなどのポリエステルポリマーは、比較的最小量のカルボキシ末端基を含有する。例えば、ポリエステルポリマーは、例えば約18mmol/kg未満、例えば約15mmol/kg未満など、約20mmol/kg未満、および通常、約1mmol/kg超の量のカルボキシ末端基を含有することができる。カルボキシ末端基の量は、様々な技術を使用して、ポリエステルポリマー上で最小限にすることができる。例えば、一実施形態では、カルボキシ末端基の量を減少させるために、ポリエステルポリマーを、ベンジルアルコールなどのアルコールと接触させることができる。
【0044】
[0052]ポリエステルポリマーまたはポリブチレンテレフタレートポリマーは、250℃において2.16kgの荷重で試験した場合に、例えば約30cm3/10分超、例えば約35cm3/10分超など、通常、約10cm3/10分超で、かつ、例えば約80cm3/10分未満、例えば約60cm3/10分未満、例えば約50cm3/10分未満など、通常、約100cm3/10分未満のメルトフローレートを有することができる。
【0045】
[0053]ポリブチレンテレフタレートポリマーなどの熱可塑性ポリマーは、連続相を形成するのに十分な量でポリマー組成物中に存在する。例えば、熱可塑性ポリマーは、例えば少なくとも約40重量%の量、例えば少なくとも45重量%の量、例えば少なくとも約50重量%の量、例えば少なくとも約55重量%の量など、少なくとも約35重量%の量でポリマー組成物中に存在してもよい。熱可塑性ポリマーは、通常約80重量%未満の量で存在する。
【0046】
[0054]本開示によれば、上述の少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは本開示による非ハロゲン難燃剤組成物と組み合わされる。難燃剤組成物は、ホスフィン酸金属塩、亜リン酸金属塩および窒素含有相乗剤を含有することができる。
【0047】
[0055]ホスフィン酸金属塩は、例えば、ジアルキルホスフィン酸塩および/またはジホスフィン酸塩であってもよい。ホスフィン酸金属塩は、以下の化学構造のうちの1つを有することができる。
【0048】
【0049】
(式中、R1、R2は、同一であるかまたは異なり、それぞれ直鎖または分岐鎖のC1~C6-アルキルであり;R3は、直鎖または分岐鎖のC1~C10-アルキレン、C6~C10-アリーレン、C7~C20-アルキルアリーレン、またはC7~C20-アリールアルキレンであり;Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kおよび/またはプロトン化窒素塩基であり;mは1~4であり;nは1~4であり;xは1~4である)。
【0050】
[0056]一実施形態では、ホスフィン酸金属塩は、ジエチルホスフィン酸アルミニウムなどのジアルキルホスフィン酸金属塩である。ホスフィン酸金属塩は、例えば約7重量%超の量、例えば約9重量%超の量、例えば約11重量%超の量など、通常、約5重量%超の量で、かつ、例えば約25重量%未満の量、例えば約20重量%未満の量、例えば約17重量%未満の量、例えば約14重量%未満の量など、通常、約30重量%未満の量で、ポリマー組成物中に存在することができる。一実施形態では、ホスフィン酸金属塩は、約7重量%~約19重量%の量でポリマー組成物中に存在する。
【0051】
[0057]ポリマー組成物中に存在する亜リン酸金属塩は、上記で特定した金属(M)のいずれかから作製した任意の好適な亜リン酸金属塩であり得る。一態様では、亜リン酸金属塩は亜リン酸アルミニウムである。亜リン酸アルミニウムは、化学構造:Al(H2PO3)3を有することができる。亜リン酸アルミニウムの他の形態も、さらにポリマー組成物の中に存在してもよい。そのような他の形態としては、塩基性亜リン酸アルミニウム、亜リン酸アルミニウム四水和物などを挙げることができる。さらに別の実施形態では、亜リン酸アルミニウムは、式:Al(H2PO3)3を有することができる。
【0052】
[0058]亜リン酸金属塩は、特にポリマー組成物がポリブチレンテレフタレートを含有している場合、ポリマー組成物の耐炎特性を改善する際に、ホスフィン酸金属塩と相乗的に作用すると考えられる。ホスフィン酸金属塩と亜リン酸金属塩との重量比は、例えば約10:1~約20:1、例えば約14:1~約18:1など、通常、約10:8~約30:1であってもよい。一態様では、亜リン酸金属塩は、例えば約0.1重量%超の量、例えば約0.2重量%超の量、例えば約0.3重量%超の量など、約0.01重量%超の量で、かつ、例えば約2.5重量%未満の量、例えば約2重量%未満の量、例えば約1.1重量%未満の量など、通常、約4重量%未満の量で、ポリマー組成物中に存在することができる。
【0053】
[0059]ホスフィン酸金属塩および亜リン酸金属塩と組み合わせて存在する窒素含有相乗剤は、メラミンを含むことができる。例えば、窒素含有相乗剤は、メラミンシアヌレートを含むことができる。使用することができる他のメラミン化合物としては、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ジメラミン、ポリリン酸メレム、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メロンなどを挙げることができる。使用することができる他の窒素含有相乗剤としては、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコールウリル、グアニジン、またはこれらの混合物を挙げることができる。通常、少量の窒素含有相乗剤のみがポリマー組成物中に存在する必要がある。例えば、窒素含有相乗剤は、例えば約11重量%未満の量、例えば約10重量%未満の量、例えば約9重量%未満の量、例えば約8.5重量%未満の量など、約12重量%未満の量で、かつ、例えば約2重量%超の量、例えば約3重量%超の量、例えば約4重量%超の量など、通常、約0.1重量%超の量で、ポリマー組成物中に存在することができる。
【0054】
[0060]ポリマー組成物は、さらに熱可塑性ポリマーマトリクスの中に分散した強化繊維を含有することもできる。有利に使用されてもよい強化繊維は、ガラス繊維などの鉱物繊維、またはポリマー繊維、特にアラミド繊維などの有機高弾性率繊維である。
【0055】
[0061]これらの繊維は、プラスチックへの接着性を向上させるために、例えば、サイジング剤を付与したまたは化学的に処理した、変性または非変性の形態であってもよい。ガラス繊維が特に好ましい。
【0056】
[0062]ガラス繊維などの強化繊維は、繊維を保護し、繊維とマトリクス材料との間の接着性を向上させるために、サイジング組成物でコーティングすることができる。サイジング組成物は、通常、シラン、フィルム形成剤、滑剤、湿潤剤、接着剤、任意選択で帯電防止剤および可塑剤、乳化剤、ならびに任意選択でさらなる添加剤を含む。
【0057】
[0063]シランの具体例は、アミノシラン類、例えば、3-トリメトキシシリルプロピルアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシ-シラン、N-(3-トリメトキシシラニルプロピル)エタン-1,2-ジアミン、3-(2-アミノエチル-アミノ)プロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタン-ジアミンである。
【0058】
[0064]フィルム形成剤は、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリエステルおよびポリウレタンである。
[0065]本開示によれば、強化繊維に適用されるサイジング組成物は、シランサイジング剤だけでなく、耐加水分解剤も含有することができる。耐加水分解剤は、例えば、グリシジルエステル型エポキシ樹脂であってもよい。例えば、グリシジルエステル型エポキシ樹脂は、モノグリシジルエステルまたはジグリシジルエステルであってもよい。使用することができるグリシジルエステル型エポキシ樹脂の例としては、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、またはそれらの混合物を挙げることができる。
【0059】
[0066]一態様では、サイジング組成物は、シラン、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、第2のエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、滑剤および帯電防止剤を含む。第2のタイプのエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であってもよい。耐加水分解剤は、シランサイジング剤に対して、例えば約4:1~約2:1など、約5:1~約1:1の重量比でサイジング組成物中に存在することができる。
【0060】
[0067]強化繊維は、例えば、押し出し機または混練機の中でポリマーマトリクスに配合することができる。
[0068]繊維の直径は、使用される特定の繊維、および繊維が細断された形態か連続した形態かによって異なる可能性がある。繊維は、例えば約5μm~約50μm、例えば約5μm~約12μmなど、約5μm~約100μmの直径を有することができる。繊維の長さは、特定の用途に応じて変わる場合がある。例えば、繊維は、例えば約1mm超、例えば約1.5mm超、例えば約2.5mm超など、約0.5mm超の平均長を有することができる。繊維の長さは、例えば約7mm未満、例えば約5.5mm未満、例えば約4mm未満など、通常、約8mm未満である。
【0061】
[0069]通常、強化繊維は、組成物の引張強度を高めるのに十分な量でポリマー組成物中に存在する。強化繊維は、例えば約5重量%超の量、例えば約10重量%超の量、例えば約15重量%超の量、例えば約20重量%超の量など、約2重量%超の量で、ポリマー組成物中に存在することができる。強化繊維は、例えば約50重量%未満の量、例えば約45重量%未満の量、例えば約40重量%未満の量、例えば約35重量%未満の量、例えば約30重量%未満の量など、通常、約55重量%未満の量で、存在する。
【0062】
[0070]ポリマー組成物は、さらに有機金属相溶化剤を含むことができる。有機金属相溶化剤は、予想外に耐加水分解性を高め、ポリマー加工中のポリマー組成物の流動特性を改善することが見出された。さらに、有機金属相溶化剤は様々な他の利益および利点をもたらすことができる。例えば、有機金属相溶化剤は耐食性をもたらし、ポリマー組成物の耐酸性を高め、ポリマー組成物の長期老化特性を改善することができる。さらに、有機金属相溶化剤は、特定の用途において膨張性難燃剤として機能することができる。
【0063】
[0071]有機金属相溶化剤は、モノアルコキシチタネートを含んでよい。使用することができる他の有機金属化合物としては、ジルコネートおよびアルミネートを挙げることができる。ポリマー組成物に組み込まれてもよいチタネートの具体例としては、チタン(IV)2-プロパノラト,トリスイソオクタデカノアト-O;チタン(IV)ビス2-メチル-2-プロペノアト-O,イソオクタデカノアト-O2-プロパノラト;チタン(IV)2-プロパノラト,トリス(ドデシル)ベンゼンスルファナト-O;チタン(IV)2-プロパノラト,トリス(ジオクチル)ホスファト-O;チタン(IV),トリス(2-メチル)-2-プロペノアト-O,メトキシジグリコリラト;チタン(IV)2-プロパノラト,トリス(ジオクチル)ピロホスファト-O;チタン(IV),トリス(2-プロペノアト-O),メトキシジグリコリラト-O;チタン(IV)2-プロパノラト,トリス(3,6-ジアザ)ヘキサノラト、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
[0072]ポリマー組成物中に存在する場合、有機金属相溶化剤は、例えば約0.1重量%超、例えば約0.2重量%超、例えば約0.28重量%超など、通常、0.05重量%超で、かつ、例えば約2.5重量%未満、例えば約2.2重量%未満、例えば約1.8重量%未満、例えば約1.6重量%未満、例えば約0.7重量%未満など、通常、約2.8重量%未満の量で、含めることができる。
【0065】
[0073]一実施形態では、本開示のポリマー組成物はカルボジイミド化合物を含むことができる。カルボジイミド化合物は、分子にカルボジイミド基(-N=C=N-)を有することができる。カルボジイミド化合物は、特にエポキシ系化合物に関して、耐加水分解性をもたらすことができる。さらに、カルボジイミド化合物は、難燃剤添加剤と共にうまく機能する。適用可能なカルボジイミド化合物としては、脂肪族主鎖を有する脂肪族カルボジイミド化合物、脂環式主鎖を有する脂環式カルボジイミド化合物、芳香族主鎖を有する芳香族カルボジイミド化合物を挙げることができる。芳香族カルボジイミド化合物は、加水分解に対してより大きな耐性をもたらすことができる。
【0066】
[0074]脂肪族カルボジイミド化合物の例としては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミドなどを挙げることができる。脂環式のカルボジイミド化合物の例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどを挙げることができる。
【0067】
[0075]芳香族カルボジイミド化合物の例としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N-トリル-N’-フェニルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロロフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロロフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロロフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トリルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロロフェニルカルボジイミドあるいはエチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミドなどのモノまたはジカルボジイミド化合物;および、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ビフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)またはポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドを、挙げることができる。これらの化合物は、これらの中の2つ以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、特に好ましく用いられるのは、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド、ポリ(フェニレンカルボジイミド)、およびポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)である。
【0068】
[0076]一態様では、カルボジイミド化合物は、ポリカルボジイミドである。例えば、ポリカルボジイミドは、約10,000g/mol以上、一般に約100,000g/mol未満の重量平均分子量を有することができる。ポリカルボジイミドの例としては、LanxessによるStabaxol KE9193およびStabaxol P100ならびにSchaeffe Additive SystemsによるLubio AS3-SPを挙げることができる。
【0069】
[0077]カルボジイミド化合物は、例えば約0.8重量%超の量など、約0.3重量%超の量、および、例えば約3重量%未満の量、例えば約1.8重量%未満の量など、通常、約4重量%未満の量で、ポリマー組成物中に存在することができる。
【0070】
[0078]本発明の熱可塑性ポリマー組成物は、ポリマー組成物の約0.01重量%~約2重量%、いくつかの実施形態では約0.1重量%~約1重量%、いくつかの実施形態では約0.2重量%~約0.5重量%を構成する滑剤をさらに含むことができる。滑剤は、22~38個の炭素原子、いくつかの実施形態では24~36個の炭素原子の鎖長を有する脂肪酸から誘導された脂肪酸塩から形成され得る。そのような脂肪酸の例としては、モンタン酸(オクタコサン酸)、アラキジン酸(アラキン酸、イコサン酸(icosanic acid)、イコサン酸、n-イコサン酸(n-icosanoic acid))、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、メリシン酸(トリアコンタン酸)、エルカ酸、セトレイン酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、ネルボン酸などの、長鎖脂肪族脂肪酸を挙げることができる。例えば、モンタン酸は、28個の原子の脂肪族炭素鎖を有し、アラキン酸は、20個の原子の脂肪族炭素鎖を有する。脂肪酸によってもたらされる長い炭素鎖により、滑剤は高い熱安定性および低揮発性を備えている。これにより、滑剤は、所望の物品の形成中に機能を維持し、内部および外部の摩擦を減らし、それによって、機械的/化学的効果によって引き起こされる材料の劣化を低減させることができる。
【0071】
[0079]脂肪酸塩は、脂肪酸ワックスをケン化して過剰のカルボン酸を中和し、金属塩を形成することによって形成することができる。ケン化は、アルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム)またはアルカリ土類金属水酸化物(例えば水酸化カルシウム)などの金属水酸化物で起こり得る。得られる脂肪酸塩は、通常、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなど)またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウムなど)を含む。そのような脂肪酸塩は、通常、約20mgKOH/g以下、いくつかの実施形態では約18mgKOH/g以下、いくつかの実施形態では約1~約15mgKOH/gの酸価(ASTM D1386)を有する。本発明で使用するのに特に好適な脂肪酸塩は、C28~C32の範囲の鎖長を有する直鎖非分岐のモノカルボン酸を含む粗モンタンワックスから誘導される。このようなモンタン酸塩は、Licomont(登録商標)CaV102(長鎖直鎖モンタン酸のカルシウム塩)およびLicomont(登録商標)NaV101(長鎖直鎖モンタン酸のナトリウム塩)の名称でClariant GmbHから市販されている。
【0072】
[0080]所望であれば、脂肪酸エステルは滑剤として使用することができる。脂肪酸エステルは、未精製の天然ワックスの酸化的漂白とその後のアルコールによる脂肪酸のエステル化によって得ることができる。アルコールは、典型的には、1~4個のヒドロキシ基および2~20個の炭素原子を有する。アルコールが多官能性(例えば、2~4個のヒドロキシ基)である場合、2~8個の炭素原子数が特に望ましい。特に好適な多官能性アルコールとしては、二価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよび1,4-シクロヘキサンジオール)、三価アルコール(例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパン)、四価アルコール(例えば、ペンタエリスリトールおよびエリスリトール)などを挙げることができる。また、o-、m-およびp-トリルカルビノール、クロロベンジルアルコール、ブロモベンジルアルコール、2,4-ジメチルベンジルアルコール、3,5-ジメチルベンジルアルコール、2,3,5-クモベンジルアルコール、3,4,5-トリメチルベンジルアルコール、p-クミニルアルコール、1,2-フタリルアルコール、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、プソイドクメニルグリコール、メシチレングリコールおよびメシチレングリセロールなどの芳香族アルコールも適している。本発明で使用するのに特に好適な脂肪酸エステルはモンタンワックスに由来する。Licowax(登録商標)OP(Clariant)は、例えば、ブチレングリコールで部分的にエステル化されたモンタン酸、および水酸化カルシウムで部分的にケン化されたモンタン酸を含有する。したがって、Licowax(登録商標)OPは、モンタン酸エステルとモンタン酸カルシウムの混合物を含有する。利用されてもよい他のモンタン酸エステルとしては、例えば、Licowax(登録商標)E、Licowax(登録商標)OPおよびLicolub(登録商標)WE4(すべてClariant製)を挙げることができ、これらは原料モンタンワックスの酸化精製からの二次生成物として得られるモンタン酸エステルである。Licowax(登録商標)EおよびLicolub(登録商標)WE4は、エチレングリコールまたはグリセリンでエステル化されたモンタン酸を含有する。
【0073】
[0081]滑剤にその他の公知のワックスを用いてもよい。例えば、脂肪酸と2~18、特に2~8の炭素原子を有するモノアミンまたはジアミン(例えば、エチレンジアミン)との反応により形成された、アミドワックスを用いてもよい。例えば、エチレンジアミンと脂肪酸のアミノ化反応により形成された、エチレンビスアミドワックスを用いてもよい。脂肪酸は、エチレンビスステアラミドワックスを形成するためステアリン酸(C18脂肪酸)からなど、C12~C30の範囲であってもよい。エチレンビスステアラミドワックスは、Lonza,Inc.からAcrawax(登録商標)Cの商品名で市販されており、離散溶解温度は142℃である。その他のエチレンビスアミドとしては、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、オレオステアリン酸、ミリスチン酸およびウンデカリン酸から形成されたビスアミドを挙げることができる。さらなるその他の好適なアミドワックスは、N-(2-ヒドロキシエチル)12-ヒドロキシステアラミドおよびN,N’-(エチレンビス)12-ヒドロキシステアラミドで、Rutherford Chemicals LLC.の一部門である、CasChemより、それぞれParicin(登録商標)220およびParicin(登録商標)285の名称で市販されている。
【0074】
[0082]ポリマー組成物は、さらに少なくとも1つの安定剤を含んでもよい。安定剤は、酸化防止剤、紫外線安定剤のような光安定剤、熱安定剤などを含むことができる。
[0083]立体障害性フェノール系酸化防止剤を、組成物に使用することができる。そのようなフェノール系酸化防止剤の例としては、例えば、カルシウムビス(エチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート)(Irganox(登録商標)1425);テレフタル酸,1,4-ジチオ-,S,S-ビス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)エステル(Cyanox(登録商標)1729);トリエチレングリコールビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルヒドロシンナメート);ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート(Irganox(登録商標)259);1,2-ビス(3,5,ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジド(Irganox(登録商標)1024);4,4’-ジ-tert-オクチルジフェナミン(Naugalube(登録商標)438R);ホスホン酸,(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-,ジオクタデシルエステル(Irganox(登録商標)1093);1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’ヒドロキシベンジル)ベンゼン(Irganox(登録商標)1330);2,4-ビス(オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン(Irganox(登録商標)565);イソオクチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox(登録商標)1135);オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオネート)(Irganox(登録商標)1076);3,7-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-10H-フェノチアジン(Irganox(登録商標)LO3);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)モノアクリレート(Irganox(登録商標)3052);2-tert-ブチル-6-[1-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)エチル]-4-メチルフェニルアクリレート(Sumilizer(登録商標)TM4039);2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(Sumilizer(登録商標)GS);1,3-ジヒドロ-2H-ベンズイミダゾール(Sumilizer(登録商標)MB);2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール(Irganox(登録商標)1520);N,N’-トリメチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド(Irganox(登録商標)1019);4-n-オクタデシロキシ-2,6-ジフェニルフェノール(Irganox(登録商標)1063);2,2’-エチリデンビス[4,6-ジ-tert-ブチルフェノール](Irganox(登録商標)129);NN’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(Irganox(登録商標)1098);ジエチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル(hydroxybenxyl))ホスホネート(Irganox(登録商標)1222);4,4’-ジ-tert-オクチルジフェニルアミン(Irganox(登録商標)5057);N-フェニル-1-ナフタレンアミン(napthalenamine)(Irganox(登録商標)L05);トリス[2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル(3-ter-butyl)-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル]ホスファイト(Hostanox(登録商標)OSP1);ジノニルジチオ(dinonyidithio)カルバミン酸亜鉛(Hostanox(登録商標)VP-ZNCS1);3,9-ビス[1,1-ジメチル(diimethyl)-2-[(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(Sumilizer(登録商標)AG80);ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox(登録商標)1010);エチレン-ビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)-プロピオネート(Irganox(登録商標)245);3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(Lowinox BHT、Chemtura)などを挙げることができる。
【0075】
[0084]本組成物での使用に好適な立体障害性フェノール系酸化防止剤のいくつかの例は、下記一般式を有するトリアジン系酸化防止剤である。
【0076】
【0077】
(式中、各Rは独立にフェノール類基であり、これはC1~C5アルキルまたはエステル置換基を介してトリアジン環に結合されていてもよい。好ましくは、各Rは、下記式(I)~(III)のうちの1種である)。
【0078】
【0079】
[0085]このようなトリアジン系酸化防止剤の市販例は、Cyanox(登録商標)1790(式中、各R基は式IIIで表される)の名称でAmerican Cyanamidから、ならびにIrganox(登録商標)3114(式中、各R基は式Iで表される)およびIrganox(登録商標)3125(式中、各R基は式IIで表される)の名称でCiba Specialty Chemicalsから入手することができる。
【0080】
[0086]立体障害性フェノール系酸化防止剤は、安定化されたポリマー組成物全体の約0.01重量%~約3重量%、いくつかの実施形態では約0.05重量%~約1重量%、いくつかの実施形態では約0.05重量%~約0.3重量%を構成してよい。一実施形態では、例えば、酸化防止剤は、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含む。
【0081】
[0087]ポリエステル組成物の分解を抑制し、したがってその耐久性を延長するために、ヒンダードアミン光安定剤(「HALS」)が組成物中で使用されてもよい。好適なHALS化合物は、アルキル置換ピペリジル、ピペリジニル、ピペラジノン、アルコキシピペリジニル化合物などの置換ピペリジンから誘導することができる。例えば、ヒンダードアミンは、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニルから誘導することができる。ヒンダードアミンは、それが由来する化合物にかかわらず、典型的には、約1,000以上、いくつかの実施形態では約1000~約20,000、いくつかの実施形態では約1500~約15,000、いくつかの実施形態では約2000~約5000の数平均分子量を有するオリゴマーまたはポリマー化合物である。このような化合物は、典型的には、ポリマー繰り返し単位あたり少なくとも1個の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニル基(例えば、1~4個)を含有する。
【0082】
[0088]理論によって制限するものではないが、高分子量のヒンダードアミンは、比較的耐熱性であり、したがって、押し出し条件に付された後でも光劣化を抑制することができると考えられる。特に好適な高分子量ヒンダードアミンの1つは、次の一般構造を有する
【0083】
【0084】
(式中、pは、4~30であり、いくつかの実施形態では4~20、いくつかの実施形態では4~10である)。このオリゴマー化合物は、ClariantからHostavin(登録商標)N30の名称で市販されており、1200の数平均分子量を有する。
【0085】
[0089]別の好適な高分子量ヒンダードアミンは、次の構造を有する
【0086】
【0087】
(式中、nは1~4であり、R30は独立に水素またはCH3である)。このようなオリゴマー化合物は、Adeka Palmarole SAS(Adeka Corp.およびPalmarole Groupの合弁会社)からADK STAB(登録商標)LA-63(R30はCH3)およびADK STAB(登録商標)LA-68(R30は水素)の名称で市販されている。
【0088】
[0090]好適な高分子量ヒンダードアミンの他の例としては、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールおよびコハク酸のオリゴマー(Ciba Specialty Chemicals製のTinuvin(登録商標)622、MW=4000);シアヌル酸およびN,N-ジ(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレンジアミンのオリゴマー;ポリ((6-モルホリン-S-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノヘキサメチレン-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノ)(Cytec製のCyasorb(登録商標)UV3346、MW=1600);ポリメチルプロピル-3-オキシ-[4(2,2,6,6-テトラメチル)-ピペリジニル(piperidinyly)シロキサン(Great Lakes Chemical製のUvasil(登録商標)299、MW=1100~2500);α-メチルスチレン-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)マレイミドおよびN-ステアリルマレイミドのコポリマー;1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸を含む2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールテトラメチル-ポリマー;などを挙げることができる。
【0089】
[0091]高分子ヒンダードアミンに加えて、低分子量ヒンダードアミンも、組成物に使用されてもよい。このようなヒンダードアミンは、通常、本質的にモノマーであり、約1000以下、いくつかの実施形態では約155~約800、いくつかの実施形態では約300~約800の分子量を有する。
【0090】
[0092]このような低分子量ヒンダードアミンの具体例としては、例えば、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Ciba Specialty Chemicals製のTinuvin(登録商標)770、MW=481);ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ブチル-プロパンジオエート;ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート;8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ-(4,5)-デカン-2,4-ジオン,ブタン二酸-ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)エステル;テトラキス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート;7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ(5.1.11.2)ヘンエイコサン-20-プロピオン酸,2,2,4,4-テトラメチル-21-オキソ,ドデシルエステル;N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-N’-アミノ-オキサミド;o-t-アミル-o-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-モノペルオキシ-カルボネート;β-アラニン,N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル),ドデシルエステル;エタンジアミド,N-(1-アセチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)-N’-ドデシル;3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン;3-ドデシル-1-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン;3-ドデシル-1-(1-アセチル,2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ピロリジン-2,5-ジオン、(Clariant製のSanduvar(登録商標)3058、MW=448.7);4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;1-[2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)エチル]-4-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルフェニルプロピオニルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン;2-メチル-2-(2”,2”,6”,6”-テトラメチル-4”-ピペリジニルアミノ)-N-(2’,2’,6’,6’-テトラメチル-4’-ピペリジニル)プロピオニルアミド;1,2-ビス-(3,3,5,5-テトラメチル-2-オキソ-ピベラジニル)エタン;4-オレオイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン;およびこれらの組合せを挙げることができる。他の好適な低分子量ヒンダードアミンは、Malikらの米国特許第5,679,733号に記載されている。
【0091】
[0093]ヒンダードアミンは、所望の特性を実現するために任意の量で単独または組合せで使用されてもよいが、典型的には、ポリマー組成物の約0.01重量%~約4重量%を構成する。
【0092】
[0094]紫外線エネルギーを吸収するために、ベンゾトリアゾール類またはベンゾフェノン類(benzopheones)などの紫外線吸収剤が組成物において使用されてもよい。好適なベンゾトリアゾール類としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Cytec製のCyasorb(登録商標)UV5411);2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール;2,2’-メチレンビス(4-tert-オクチル-6-ベンゾトリアゾリルフェノール);2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-アクリロイルオキシエチル)-5-メチルフェニル]-ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-オクチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-(2-メタクリロイルオキシエチル)-5-tert-ブチルフェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-アミル-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシメチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2-[2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール;およびこれらの組合せなどの、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類を挙げることができる。
【0093】
[0095]代表的なベンゾフェノン光安定剤としては、同様に、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン;2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート(Cytec製のCyasorb(登録商標)UV209);2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシ)ベンゾフェノン(Cytec製のCyasorb(登録商標)531);2,2’-ジヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(Cytec製のCyasorb(登録商標)UV314);ヘキサデシル-3,5-ビス-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(Cytec製のCyasorb(登録商標)UV2908);2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノラト)-n-ブチルアミンニッケル(II)(Cytec製のCyasorb(登録商標)UV1084);3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸、(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)エステル(Cytec製のCyasorb(登録商標)712);4,4’-ジメトキシ-2,2’-ジヒドロキシベンゾフェノン(Cytec製のCyasorb(登録商標)UV12);およびこれらの組合せを挙げることができる。
【0094】
[0096]紫外線吸収剤は、使用する場合、ポリマー組成物全体の約0.01重量%~約4重量%を構成してもよい。
[0097]一実施形態では、ポリマー組成物は、耐紫外線性および色安定性をもたらす安定剤のブレンドを含有してもよい。安定剤の組合せにより、明るい色および蛍光色を有する製品を製造することが可能になる。さらに、時間の経過とともに著しい退色を起こさない、明るい色の製品を製造することができる。一実施形態では、例えば、ポリマー組成物は、ベンゾトリアゾール光安定剤と、オリゴマーヒンダードアミンなどのヒンダードアミン光安定剤との組合せを含有することができる。
【0095】
[0098]過酸化物およびヒドロ過酸化物を安定な非ラジカル生成物に分解する二次酸化防止剤として機能する有機リン化合物が、組成物において使用されてもよい。三価の有機リン化合物(例えば、ホスファイト(亜リン酸)またはホスフォナイト(亜ホスフォン酸))は、本発明の安定化系に特に有用である。本発明の特定の実施形態では、モノホスファイト化合物(すなわち、1分子あたり1個のリン原子のみ)が使用されてもよい。好ましいモノホスファイトは、アリールオキシド基の少なくとも1個にC1~C10アルキル置換基を含有するアリールモノホスファイトである。これらの置換基は、直鎖(ノニル置換基の場合のように)でも、または分岐鎖(イソプロピルまたは第三級ブチル置換基のように)でもよい。好適なアリールモノホスファイト(またはモノホスフォナイト)の非限定的な例としては、亜リン酸トリフェニル;亜リン酸ジフェニルアルキル;亜リン酸フェニルジアルキル;亜リン酸トリス(ノニルフェニル)(Weston(商標)399、GE Specialty Chemicalsから入手可能);亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(Irgafos(登録商標)168、Ciba Specialty Chemicals Corp.から入手可能);亜リン酸ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチル(Irgafos(登録商標)38、Ciba Specialty Chemicals Corp.から入手可能);およびリン酸2,2’,2”-ニトリロ[トリエチルトリス(3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)(Irgafos(登録商標)12、Ciba Specialty Chemicals Corp.から入手可能)を挙げることができる。アリールジホスファイトまたはジホスフォナイト(すなわち、ホスフォナイト1分子あたり少なくとも2個のリン原子を含有)も安定化系で使用されてよく、例えば、ジ亜リン酸ジステアリルペンタエリスリトール、ジ亜リン酸ジイソデシルペンタエリスリトール、ジ亜リン酸ビス(2,4ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール(Irgafos126、Cibaから入手可能);ジ亜リン酸ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル(penyl))ペンタエリスリトール;ジ亜リン酸ビスイソデシルオキシペンタエリスリトール、ジ亜リン酸ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトール、ジ亜リン酸ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール、ジ亜ホスホン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレン(Sandostab(商標)P-EPQ、Clariantから入手可能)、およびジ亜リン酸ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール(Doverphos(登録商標)S-9228)を挙げることができる。
【0096】
[0099]有機リン化合物は、ポリマー組成物の約0.01重量%~約2重量%、いくつかの実施形態では約0.05重量%~約1重量%、いくつかの実施形態では約0.1重量%~約0.5重量%を構成してもよい。
【0097】
[00100]上述のものに加えて、第二級アミンも組成物において使用することができる。第二級アミンは、例えば、N-フェニルナフチルアミン類(例えば、Uniroyal Chemical製のNaugard(登録商標)PAN);ジフェニルアミン類、例えば、4,4’-ビス(ジメチルベンジル)-ジフェニルアミン(例えば、Uniroyal Chemical製のNaugard(登録商標)445);p-フェニレンジアミン類(例えば、Goodyear製のWingstay(登録商標)300);キノロン類など、本質的に芳香族であってもよい。特に好適な第二級アミンは、ホモまたはコポリマーのポリアミドなどの、オリゴマーまたはポリマーアミンである。このようなポリアミドの例としては、ナイロン3(ポリ-β-アラニン)、ナイロン6、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/6、ナイロン6/9、ナイロン6/10、ナイロン6/11、ナイロン6/12、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルアミドなどを挙げることができる。特定の一実施形態では、アミンは、120℃~220℃の範囲の融点を有するポリアミドターポリマーである。好適なターポリマーは、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン6/9、ナイロン6/10、およびナイロン6/12からなる群から選択されるナイロン系のものであってよく、ナイロン6-66-69、ナイロン6-66-610、およびナイロン6-66-612を挙げることができる。このようなナイロンターポリマーの一例は、ナイロン6-66-610のターポリマーであり、Du Pont de NemoursからElvamide(登録商標)8063Rの名称で市販されている。第二級アミンは、ポリマー組成物全体の約0.01重量%~約2重量%を構成してもよい。
【0098】
[00101]上記の成分に加えて、ポリマー組成物は、様々な他の成分を含んでもよい。使用することができる着色剤としては、二酸化チタン、群青、コバルトブルーなどの、任意の所望の無機顔料、および他の有機顔料、ならびにフタロシアニン、アントラキノンなどの染料を挙げることができる。他の着色剤としては、カーボンブラックまたは様々な他のポリマー可溶性染料を挙げることができる。着色剤は、通常、最大約2重量%の量で組成物中に存在することができる。
【0099】
[00102]本開示の組成物は、当技術分野で公知の任意の技術を使用して、配合され、ポリマー物品に形成され得る。例えば、それぞれの組成物が激しく混合され、実質上均質なブレンドを形成することができる。ブレンドは、ポリマー組成物において利用されるポリマーの融点よりも高いが分解温度よりも低い温度などの高温で溶融混練することができる。あるいは、それぞれの組成物は、従来の一軸または二軸押し出し機において同時に溶融および混合することができる。好ましくは、溶融混合は、例えば200~280℃、例えば220~270℃、または240~260℃などの、150~300℃の範囲の温度で行われる。しかしながら、このような処理は、いずれのポリマー分解も最小限にするために、所望の温度で各々の組成物ごとに行われるべきである。
【0100】
[00103]押し出し成形の後、組成物はペレットに形成されてもよい。ペレットは、射出成形、熱成形、ブロー成形、回転成形など、当技術分野で公知の技術によってポリマー物品に成形することができる。本開示によれば、ポリマー物品は、優れたトライボロジー挙動および機械的特性を示す。その結果、ポリマー物品は、低摩耗性および優れた滑り特性が所望されるいくつかの用途に使用することができる。
【0101】
[00104]本開示によるポリマー組成物は、物理的特性に加えて、優れた耐炎特性を有することができる。例えば、アンダーライターズ・ラボラトリーズ試験94に従って垂直燃焼試験により試験した場合に、本開示に従って作製された試験プラークは、1.5mmの厚さ、さらには0.8mmの厚さで試験した場合でさえ、V-0のUL-94評価を有することができる。
【0102】
[00105]特に有利なことに、優れた流動特性を有する耐炎性ポリマー組成物が、本開示によって配合され得る。例えば、ISO試験1133に従って250℃の温度において2.16kgの荷重で試験した場合に、ポリマー組成物全体は、例えば約4cm3/10分超、例えば約5cm3/10分超、例えば約6cm3/10分超、例えば約7cm3/10分超、例えば約8cm3/10分超、例えば約9cm3/10分超、例えば約10cm3/10分超など、約3cm3/10分超のメルトフローレートを有することができる。メルトフローレートは、通常、約50cm3/10分未満である。
【0103】
[00106]本開示は、以下の実施例を参照することでよりよく理解することが可能である。
【実施例】
【0104】
[00107]様々なポリマー組成物を本開示によって配合し、様々な特性について試験した。以下の結果が得られた。
【0105】
【0106】
[00108]HR添加剤タイプIは、ポリカルボジイミド:Schaeffe Additive Systems製のLubio AS3-SPであった。HR添加剤タイプIIは、エポキシ系化合物:Hexion製のEpon1002Fであった。HR添加剤タイプIIIは、ポリカルボジイミド:LanxessによるStabaxol P100を含有するStabaxol KE9193マスターバッチであった。すべての試験片についてのCTI試験を、450Vでのみ行った。
【0107】
[00109]チタネートカップリング剤は、チタン(IV)2-プロパノラト,トリス(ジオクチル)ホスファト-Oを使用した。
[00110]上記のように、サンプルNo.3~8は、すべて優れた防火特性を示した。サンプルNo.4およびサンプルNo.8は、0.8mmのプラーク厚さでさえ優れた防火特性を示した。
【0108】
[00111]上記の配合物を試験サンプルに成型し、加水分解試験に付した。加水分解試験中に、サンプルを、121℃で96時間および168時間の間、圧力鍋に入れた。次いで、サンプルの初期の機械的特性を、異なる時間間隔で加水分解試験に付されたサンプルと比較した。以下の結果が得られた。
【0109】
【0110】
[00112]上記のように、本開示に従って作製したポリマー組成物は、優れた耐加水分解性を示した。例えば、本開示に従って作製されたポリマー組成物の23℃でのシャルピーノッチ付き強度は、96時間後に、例えば約30%以下など、40%以下の減少となり、168時間後に、例えば約50%以下など、約55%以下の減少となった。ポリマー組成物の引張弾性率は、121℃で試験した場合に、96時間後に、例えば約8%以下など、約9%以下の減少となり、168時間後に、例えば約11%以下など、約12%以下の減少となった。
【0111】
[00113]本発明に対するこれらのおよびその他の修正および変形は、添付の特許請求の範囲においてより詳細に記載する本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって実施されることが可能である。さらに、様々な実施形態の態様が、全体または部分的に交換されてよいことを理解されたい。さらに、当業者なら、前述の説明が単なる例示であり、このような添付の特許請求の範囲でさらに説明される本発明を限定するためのものではないことを認識する。
【国際調査報告】