(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】ワクチン組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/12 20060101AFI20230817BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20230817BHJP
A61K 39/235 20060101ALI20230817BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230817BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230817BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230817BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230817BHJP
A61K 47/52 20170101ALI20230817BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230817BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230817BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230817BHJP
A61K 39/155 20060101ALI20230817BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230817BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230817BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20230817BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20230817BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
A61K39/12
A61K39/215
A61K39/235
A61P31/14
A61P31/12
A61K9/14
A61K47/69
A61K47/52
A61K9/51
A61K48/00
A61K39/39
A61K39/155
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/40
C12N15/50
C07K14/165
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506247
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 US2021044052
(87)【国際公開番号】W WO2022026917
(87)【国際公開日】2022-02-03
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マスード,タリーク・エフ
(72)【発明者】
【氏名】ポールムルガン,ラマサミー
(72)【発明者】
【氏名】シュクマル,ウダイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC06
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4C076DD21
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4C076EE39
4C076FF02
4C076FF27
4C076FF68
4C084AA13
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084NA13
4C084ZB331
4C084ZB332
4C085AA03
4C085AA04
4C085BA51
4C085BA57
4C085BA71
4C085BA77
4C085FF24
4C085GG10
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書で、とりわけ、ウイルスタンパク質又は前記ウイルスタンパク質をコードする核酸に結合しているナノ粒子を含む複合体が提供される。前記複合体を作製して使用する方法が提供される。複合体を含む組成物は、ウイルス感染症を処置及び/又は予防するために有益であることが企図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金のコアを含むナノ粒子;及び
(b)肺ウイルスタンパク質若しくはその断片、又は肺ウイルスタンパク質若しくはその断片をコードする核酸であって、肺ウイルスタンパク質若しくは核酸は前記ナノ粒子に結合している、肺ウイルスタンパク質若しくはその断片、又は肺ウイルスタンパク質若しくはその断片をコードする核酸
を含む複合体。
【請求項2】
複数の肺ウイルスタンパク質又はその断片を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
複数の肺ウイルスタンパク質が異なる肺ウイルスタンパク質を含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
肺ウイルスタンパク質又はその断片をコードする複数の核酸を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
複数の核酸が異なる肺ウイルスタンパク質又はその断片をコードする、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
肺ウイルスがヒトRSウイルス(HRSV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPV)、ヒトライノウイルス(HRV)、アデノウイルス(ADV)、ヒトコロナウイルス(HCoV)、SARSと関連したコロナウイルス(SARS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)又はヒトボカウイルス(HBoV)である、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
肺ウイルスがSARS-CoV-2である、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
肺ウイルスタンパク質又はその断片がSタンパク質、Nタンパク質、Mタンパク質又はEタンパク質である、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
金のコアが金-酸化鉄コアである、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
ナノ粒子が外層を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
外層が金のコアに共有結合している、請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
外層が金のコアに非共有結合している、請求項10に記載の複合体。
【請求項13】
外層がポリマーを含む、請求項10に記載の複合体。
【請求項14】
外層がカチオン性多糖を含む、請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
カチオン性多糖がキトサンを含む、請求項14に記載の複合体。
【請求項16】
カチオン性多糖がキトサン-シクロデキストリンを含む、請求項14に記載の複合体。
【請求項17】
肺ウイルスタンパク質又は核酸が前記ナノ粒子に共有結合している、請求項1に記載の複合体。
【請求項18】
肺ウイルスタンパク質又は核酸が前記ナノ粒子の外層に共有結合している、請求項10に記載の複合体。
【請求項19】
肺ウイルスタンパク質又は核酸が前記ナノ粒子に非共有結合している、請求項1に記載の複合体。
【請求項20】
肺ウイルスタンパク質又は核酸が前記ナノ粒子の外層に非共有結合している、請求項10に記載の複合体。
【請求項21】
核酸がデオキシリボ核酸である、請求項1に記載の複合体。
【請求項22】
核酸がリボ核酸である、請求項1に記載の複合体。
【請求項23】
直径が約20nm~約80nmである、請求項1に記載の複合体。
【請求項24】
直径が約40nmである、請求項1に記載の複合体。
【請求項25】
請求項1に記載の複合体及び薬学的に許容される賦形剤を含むワクチン組成物。
【請求項26】
安定剤、アジュバント及び保存剤の1つ以上をさらに含む、請求項25に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
経鼻投与のために製剤化されている、請求項25に記載のワクチン組成物。
【請求項28】
肺ウイルス疾患の処置又は予防を必要とする対象で肺ウイルス疾患を処置又は予防する方法であって、請求項1に記載の複合体の治療的又は予防的に有効な量を対象に投与することを含む方法。
【請求項29】
複合体が鼻腔内経路によって投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
複合体が口腔鼻経路によって投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
複合体が肺に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
肺ウイルス疾患の処置又は予防を必要とする対象で肺ウイルス疾患を処置又は予防する方法であって、請求項25に記載のワクチン組成物の治療的又は予防的に有効な量を対象に投与することを含む方法。
【請求項33】
組成物が鼻腔内経路を通して投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
組成物が口腔鼻経路を通して投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
組成物が肺に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
肺ウイルス疾患に感受性である対象を免疫化する方法であって、肺ウイルスタンパク質又はその断片に結合する抗体が生成されるような条件下で請求項1に記載の複合体を対象に投与することを含む方法。
【請求項37】
抗体がIgG、IgA又はIgM抗体である、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ここに完全に及び全ての目的のために参照により組み込まれている、2020年7月31日に出願された米国仮出願第63/059,845号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機構は2020年3月11日に、COVID-19がSARS-CoV-2と呼ばれるコロナウイルスの新規系統によって引き起こされる世界的流行病であると発表した。このウイルスは、細胞内侵入を果たすためにウイルスが使用するアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体のより高いレベルを発現する細胞に感染することによって、ヒトで主に気道疾患及び肺炎を引き起こす。1~2
【0003】
簡潔には、体の適応免疫系は新規の侵入病原体を認識することを学習することができる。SARS-CoV-2は、ヒト細胞表面のACE2受容体の上にロックオンするためにその表面スパイク糖タンパク質(S)を使用する。2~3一旦中に入ると、ウイルスはその周囲の小胞と融合してそのリボ核酸(RNA)を放出し、ウイルスRNAはタンパク質に翻訳され、ウイルスアセンブリが起こり、より多くのウイルスが放出されて他の宿主細胞に感染する。4感染した患者は、免疫応答を次に開始することができ、それによって専門化した「抗原提示細胞」はウイルスを呑食し、その一部を提示してヘルパーT細胞を活性化する。ヘルパーT細胞は他の免疫応答を次に可能にする:B細胞はウイルスが細胞に感染することをブロックすることができる抗体を作り、さらに破壊のためのウイルスをマークし;細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞を同定して破壊する。ウイルスを認識する長生きの「記憶」B及びT細胞は、以後数カ月又は数年の間体をパトロールすることができ、免疫を提供する。5
【0004】
COVID-19に対する処置及び予防は、直近の優先事項である:現在の世界的流行のSARS-CoV-2系統は新規であり、COVID-19患者を処置及び保護することができる薬物又はワクチンの開発を助けるために、限定された臨床及び免疫学的情報しか利用できない。SARS-CoV-2からの防御を提供する安全で有効なワクチンを開発することが不可欠であり、差し迫った重要性がある。
【0005】
全てのワクチンは、疾患を引き起こさないが、個人が感染するならばウイルスをブロックする又は死滅させることができる免疫応答を引き起こす抗原に体を曝露させることを目指す。2020年4月30日現在、世界中で8つの広範囲タイプの90を超えるワクチンがSARS-CoV-2に対して開発されていた:(1)ウイルスワクチン(弱体化又は不活性化ウイルス)。(2)核酸ワクチン(DNA又はRNAをベースにした)。(3)ウイルスベクターワクチン(複製する及び複製しないウイルスベクター)。(4)タンパク質をベースにしたワクチン(タンパク質サブユニット及びウイルス様粒子)。これらの戦略に多くの相対的長所及び短所がある。6従来のワクチンアプローチ、例えば病原体の生弱毒化ワクチン、不活性化ワクチン、及びサブユニットワクチンは、疾患を引き起こすことなく天然の病原体を直接的に模倣することによって、様々な危険な疾患に対して永続的な防御を提供する。しかし、SARS-CoV-2は非常に速やかに及び地球規模で拡散している新規のウイルス系統であるので、伝統的なワクチン開発パイプラインは即時の解決方法を提供することができない。迅速な開発及び大規模な展開戦略が、それらの従来のアプローチのために必要とされる。
【0006】
SARS-CoV-2は、それらの生物学的プロファイル及び臨床症状に関してSARS-CoV及びMERS-CoVウイルスに類似している。7全てのこれらのウイルスで、Sタンパク質は中和抗体の主要な誘導因子である。8~11MERS-CoVのSタンパク質を発現する組換えアデノウイルスをベースとしたワクチンは、BALB/cマウスに鼻腔内に投与されるとき、全身性IgG、分泌性IgA及び肺常在記憶T細胞応答を誘導し、持続性中和免疫を提供して偽型化MERSウイルスを急上昇させ、それによって、このINワクチンがMERS-CoVに対する防御を付与することができることを示唆する。12他の研究で、コロナウイルスの間での交差反応性の可能性を示唆するSARS-CoV及びMERS-CoVのT細胞エピトープ類似性に基づいて、ユニバーサルCoVワクチンを開発する可能性が評価された。13SARS-CoV-2は高い遺伝子類似性をSARS-CoVと共有するので、SARS-CoVのために開発されるワクチンはSARS-CoV-2へ交差反応性を示すことができる。13~14MERS-Covのヌクレオカプシド(N)タンパク質、膜(M)タンパク質並びにEタンパク質の潜在的B細胞エピトープは、T細胞及び中和抗体応答の両方を誘導する可能性のある免疫防御的エピトープとして示唆されてもいる。15~16SARS-CoV及びMERS-CoVに対するワクチンを使用する試みは、限定的な奏効しか達成していない。それらは有意な遺伝子相同性を保有するものの、いくつかの変異がSARS-CoV-2表面抗原のアミノ酸配列にある。したがって、SARS-CoV-2並びに他の肺ウイルスに対するワクチンを開発する必要性が当技術分野にある。当技術分野のこの及び他の必要性の解決方法が、本明細書で提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(簡単な要約)
一態様では、以下を含む複合体が提供される:(a)金のコアを含むナノ粒子;及び(b)肺ウイルスタンパク質若しくはその断片、又は肺ウイルスタンパク質若しくはその断片をコードする核酸であって、肺ウイルスタンパク質又は核酸はナノ粒子に結合している核酸。
【0008】
一態様では、その実施形態を含む本明細書で提供される複合体、及び薬学的に許容される賦形剤を含むワクチン組成物が提供される。
【0009】
一態様では、肺ウイルス疾患の処置又は予防を必要とする対象で肺ウイルス疾患を処置又は予防する方法であって、その実施形態を含む本明細書で提供される複合体の治療的又は予防的に有効な量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0010】
別の態様では、肺ウイルス疾患の処置又は予防を必要とする対象で肺ウイルス疾患を処置又は予防する方法であって、その実施形態を含む本明細書で提供されるワクチン組成物の治療的又は予防的に有効な量を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0011】
一態様では、肺ウイルス疾患に感受性である対象を免疫化する方法であって、その実施形態を含む本明細書で提供される複合体を、肺ウイルスタンパク質又はその断片に結合する抗体が生成されるような条件下で対象に投与することを含む方法が提供される。
【0012】
一態様では、それに結合している複数の核酸及びそれに結合している複数のタンパク質を含むナノ粒子が提供され、ここで、複数の核酸の各々は異なるSARS-CoV-2ウイルスタンパク質をコードし、複数のタンパク質の各々は異なるSARS-CoV-2ウイルスタンパク質である。
【0013】
一態様では、その実施形態を含む本明細書で提供されるナノ粒子、及び薬学的に許容される賦形剤を含むワクチン組成物が提供される。
【0014】
一態様では、それを必要とする対象でCOVID-19を予防又は処置する方法であって、対象にその実施形態を含む本明細書で提供されるワクチンの有効量を含む組成物を投与すること、又はそれを必要とする対象にその実施形態を含む本明細書で提供されるナノ粒子を投与することを含む方法が提供される。
【0015】
実施形態では、それを必要とする対象でSARS-COV-2ウイルス感染症を予防又は処置する方法であって、それを必要とする対象にその実施形態を含む本明細書で提供されるワクチン、又はその実施形態を含む本明細書で提供されるナノ粒子の有効量を含む組成物を投与することを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】肺免疫応答の活性化のための、PolyGION-CD-CSナノ粒子(NP)を使用したSARS-CoV-2 mRNAワクチン送達の模式図である。
【
図2A】機能発現分析による、細胞でFLuc-mRNAを送達する際のPolyGION-CD-CSナノ粒子及びそれらの効率の例示的インビトロ評価における、PolyGIONの透過電子顕微鏡法(TEM)画像を示す図である。
【
図2B】機能発現分析による、細胞でFLuc-mRNAを送達する際のPolyGION-CD-CSナノ粒子及びそれらの効率の例示的インビトロ評価における、PolyGIONのエネルギー分散型X線(EDX)分析法を示す図である。
【
図2C】機能発現分析による、細胞でFLuc-mRNAを送達する際のPolyGION-CD-CSナノ粒子及びそれらの効率の例示的インビトロ評価における、PolyGION-CD-CSのRNAローディング効率を示す図である。
【
図2D】機能発現分析による、細胞でFLuc-mRNAを送達する際のPolyGION-CD-CSナノ粒子及びそれらの効率の例示的インビトロ評価における、PolyGION-CD-CSナノ粒子のサイズについてのDLS分析を示す図である。
【
図2E】機能発現分析による、細胞でFLuc-mRNAを送達する際のPolyGION-CD-CSナノ粒子及びそれらの効率の例示的インビトロ評価における、PolyGION-CD-CSナノ粒子のゼータ電位についてのDLS分析を示す図である。
【
図2F】機能発現分析による、細胞でFLuc-mRNAを送達する際のPolyGION-CD-CSナノ粒子及びそれらの効率の例示的インビトロ評価における、プルシアンブルー染色によるA549細胞におけるPolyGION-CD-CS-mRNAの細胞内送達を示す図である。
【
図3】PolyGION-CD-CS NPを使用したFLuc-mRNAの送達を受けた動物の光学生物発光イメージングを示す図である。マウスを毎日用量2μgのFLuc-mRNAで処置し、処置の24h後に画像を得た。
【
図4A】5用量のPolyGION-CD-CS-FLuc-mRNA後の組織の例示的インビボマイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)及び光学イメージング並びにエクスビボ生物発光イメージング(BLI)における、対照及びPolyGION-CD-CS-FLuc-mRNAを使用して処置した動物のマイクロCT画像を示す図である。
【
図4B】5用量のPolyGION-CD-CS-FLuc-mRNA後の組織の例示的インビボマイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)及び光学イメージング並びにエクスビボ生物発光イメージング(BLI)における、マイクロCTと同じ日に画像化された動物のBLIを示す図である。
【
図4C】5用量のPolyGION-CD-CS-FLuc-mRNA後の組織の例示的インビボマイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)及び光学イメージング並びにエクスビボ生物発光イメージング(BLI)における、処置群の動物から抽出された組織のエクスビボBLIを示す図である。
【
図5】トランスフェクション、免疫応答、及び病原性を評価するのに提案されているアッセイを併記した、インビトロ及びインビボ実験作業フローの模式図である。
【
図6】様々な形及びサイズのAu-キトサンナノ粒子のDNAローディング効率を示す図である。左及び中央のパネルは、直径0.015~0.5nmのAu-Nanostarナノ粒子のデータを示し、右パネルは、直径0.015~0.5nmのAu-ナノスフェアナノ粒子のデータを示す。
【
図7A】様々なサイズ及び形のAu-CHナノ粒子の、細胞内へのトランスフェクション効率に関する、ルシフェラーゼレポータータンパク質をコードするDNAをローディングしたAu-CHナノ粒子でトランスフェクトされた細胞の代表的な画像を示す図である。蛍光の強度はトランスフェクション効率を示している。
【
図7B】様々なサイズ及び形のAu-CHナノ粒子の、細胞内へのトランスフェクション効率に関する、トランスフェクトされた細胞の蛍光強度を示す棒グラフである。
【
図8A】哺乳動物細胞におけるAu-NSナノ粒子によるDNA用量依存性トランスフェクションにおける、様々な量のルシフェラーゼレポータータンパク質をコードするDNAをローディングしたAu-CHナノ粒子でトランスフェクトされた細胞の代表的な画像を示す図である。
【
図8B】哺乳動物細胞におけるAu-NSナノ粒子によるDNA用量依存性トランスフェクションにおける、ナノ粒子上にローディングしたDNAの量に依存した染色細胞のシフトを示す、Fluc-EGFP-蛍光強度ヒストグラムに対するイベント数のグラフである。
【
図8C】哺乳動物細胞におけるAu-NSナノ粒子によるDNA用量依存性トランスフェクションにおける、蛍光強度によって測定される、DNAをローディングしたナノ粒子のトランスフェクション効率及びローディングされたDNAの用量依存性発現を示す棒グラフである。
【
図9A】AuNS-CS NP上にローディングしたSC2DNAワクチンのインビトロ特性分析における、AuNS-キトサン及びSC2 DNAの均一な形態を示すFE-SEM顕微鏡写真である。
【
図9B】AuNS-CS NP上にローディングしたSC2DNAワクチンのインビトロ特性分析における、AuNS-キトサン及びSC2 DNAの均一な形態を示すFE-SEM顕微鏡写真である。
【
図9C】AuNS-CS NP上にローディングしたSC2DNAワクチンのインビトロ特性分析における、AuNS-キトサン及びSC2 DNAの均一な形態を示すFE-SEM顕微鏡写真である。
【
図9D】AuNS-CS NP上にローディングしたSC2DNAワクチンのインビトロ特性分析における、ゲル遅延度アッセイによるAuNS-キトサンのDNAローディング効率の評価を示す図である。
【
図9E】AuNS-CS NP上にローディングしたSC2DNAワクチンのインビトロ特性分析における、様々な比率でSC2ワクチンをローディングしたAuNSのゼータ電位について測定したDLS結果を示す図である。
【
図9F】AuNS-CS NP上にローディングしたSC2DNAワクチンのインビトロ特性分析における、様々な比率でSC2ワクチンをローディングしたAuNSの粒径(nm)について測定したDLS結果を示す図である。
【
図9G】AuNS-CS NP上にローディングしたSC2DNAワクチンのインビトロ特性分析における、生物発光イメージングによってpcDNA-FLuc-eGFPプラスミドの送達により評価されるAuNS-キトサンのトランスフェクション効率を示す図である。
【
図9H】AuNS-CS NP上にローディングしたSC2DNAワクチンのインビトロ特性分析における、AuNS-キトサによりHEK293T細胞内にトランスフェクトされたSC2 Sタンパク質の発現についてのイムノブロット分析を示す図である。データは、平均±SEMで表されている。比較の有意性の判定には、示されているようにBonferroni事後検定を伴う一元配置ANOVAを使用した。p値<0.05の場合に、調整済みp値は統計的に有意であるとされ、統計的有意性を示すシンボルは以下の通りであった。nsは有意差が無いことを表し、*はp<0.05を表し、**はP<0.01を表し、***はp<0.001を表し、****はp<0.0001の有意性を表す。
【
図10A】実験設計の模式図である。IN経路で投与した、対照DNA又はSC2-S DNAワクチンをローディングしたAuNS-キトサンで、5週齢のBALB/cマウス及びC57BL/6Jマウスを免疫処置し、血清を毎週収集し、CoV-1及びCoV-2の精製タンパク質に対する抗SC2抗体について評価した。
【
図10B】マウスから収集した血清中の抗SC2抗体レベルについてスクリーニングするための化学発光ベースのドットブロットイムノアッセイを示す図である。
【
図10C】それらのそれぞれの定量的プロットを有する処置の様々な時点でBALB/cから収集した血清を用いた
図10Bのアッセイを示す図である。データは、平均±SEMで表されている。多重比較には、二元配置ANOVAを行い、Tukeyのt検定で信頼区間を決定した。結果は、以下によって示されている。nsは、有意差が無いこと、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を表す。
【
図10D】それらのそれぞれの定量的プロットを有する処置の様々な時点でC57BL/6Jマウスから収集した血清を用いた
図10Bのアッセイを示す図である。データは、平均±SEMで表されている。多重比較には、二元配置ANOVAを行い、Tukeyのt検定で信頼区間を決定した。結果は、以下によって示されている。nsは、有意差が無いこと、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を表す。
【
図11A】処置の様々な時点におけるBALB/cマウスにおける抗SC2抗体レベルについてスクリーニングするためのドットブロットイムノアッセイを示す図である。SC2の様々なバリアントに対する免疫応答を開始する際のワクチン投与ストラテジーの有効性を決定するために、SC2-SA突然変異体及びSC2-WuhanバリアントのSタンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトされたHEK-293T細胞の細胞溶解物に対して血清をプロービングした。
【
図11B】処置の様々な時点におけるC57BL/6Jマウスにおける抗SC2抗体レベルについてスクリーニングするためのドットブロットイムノアッセイを示す図である。SC2の様々なバリアントに対する免疫応答を開始する際のワクチン投与ストラテジーの有効性を決定するために、SC2-SA突然変異体及びSC2-WuhanバリアントのSタンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトされたHEK-293T細胞の細胞溶解物に対して血清をプロービングした。
【
図11C】一貫した抗体応答を示す、2つの異なった処置バッチ(各n=5)の血清中の抗SC2抗体レベルの応答を示す図である。
【
図11D】pDNA/pDNA-SC2DNAワクチンをローディングしたAuNS-キトサンを投与されたBALB/cマウスで生成された抗SC2抗体レベルと、SC2-W及びSC2-SA Sタンパク質で操作された偽ウイルスに曝露された際の野生型及びACE-2操作されたC57BL/6Jで生成された抗SC2抗体レベルの比較(*P<0.05、**P<0.01、**P<0.001、**P<0.0001、ns:有意で無い);AuNS-キトサンを使用したSC2 Sタンパク質DNAワクチンのIN免疫処置の後の抗体媒介性免疫応答を示す図である。
【
図11E】ELISAを使用した、処置の様々な時点における免疫処置マウスの血清の抗体応答の評価における、SC2 Sタンパク質特異的IgAレベルに対するELISAアッセイの測定を示す図である。データは、3~5頭のBALB/cマウス及び3~5頭のC57BL/6Jマウスのプールした血清から生成された。粘膜及び細胞性免疫応答を評価するために、14週目に全てのマウスにブースター用量を投与した。データは、平均±SEMで表されている。多重比較には、二元配置ANOVAを行い、Tukeyのt検定で信頼区間を決定し、結果は、以下によって示されている。nsは、有意差が無いこと、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を表す。
【
図11F】ELISAを使用した、処置の様々な時点における免疫処置マウスの血清の抗体応答の評価における、SC2 Sタンパク質特異的IgGレベルに対するELISAアッセイの測定を示す図である。データは、3~5頭のBALB/cマウス及び3~5頭のC57BL/6Jマウスのプールした血清から生成された。粘膜及び細胞性免疫応答を評価するために、14週目に全てのマウスにブースター用量を投与した。データは、平均±SEMで表されている。多重比較には、二元配置ANOVAを行い、Tukeyのt検定で信頼区間を決定し、結果は、以下によって示されている。nsは、有意差が無いこと、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を表す。
【
図11G】ELISAを使用した、処置の様々な時点における免疫処置マウスの血清の抗体応答の評価における、SC2 Sタンパク質特異的IgMレベルに対するELISAアッセイの測定を示す図である。データは、3~5頭のBALB/cマウス及び3~5頭のC57BL/6Jマウスのプールした血清から生成された。粘膜及び細胞性免疫応答を評価するために、14週目に全てのマウスにブースター用量を投与した。データは、平均±SEMで表されている。多重比較には、二元配置ANOVAを行い、Tukeyのt検定で信頼区間を決定し、結果は、以下によって示されている。nsは、有意差が無いこと、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、****はp<0.0001を表す。
【
図12A】mRNAワクチンによって誘導される抗Sタンパク質IgA応答を示す図である。
【
図12B】mRNAワクチンによって誘導される抗Sタンパク質IgG応答を示す図である。
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図13A】SC2 Sタンパク質を偽ウイルスとして発現するレンチウイルスの、ACE2受容体を発現する細胞に対する特異性の評価における、細胞におけるSC2形質導入の作用機序を示す図である。SC2 Sタンパク質及びFluc-ZsGreenレポーター遺伝子を発現するレンチウイルスを操作し、これらの偽ウイルスを対照及びACE2受容体発現細胞に形質導入し、それに続く感染力を生物発光イメージングを使用して定量化した。
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図13B】SC2 Sタンパク質を偽ウイルスとして発現するレンチウイルスの、ACE2受容体を発現する細胞に対する特異性の評価における、操作された偽ウイルスを使用してその中和効果について評価した抗SC2-Sタンパク質特異抗体のDNAワクチン媒介誘導を示す図である。中和効果は、DNAワクチンで処置したマウスの血清に由来する中和抗体の存在下で、感染細胞内で偽ウイルス媒介ZsGreen発現を定量化することによってアセスメントした。
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図13C】SC2 Sタンパク質を偽ウイルスとして発現するレンチウイルスの、ACE2受容体を発現する細胞に対する特異性の評価における、操作された偽ウイルスを使用してその中和効果について評価した抗SC2-Sタンパク質特異抗体のDNAワクチン媒介誘導を示す図である。中和効果は、DNAワクチンで処置したマウスの血清に由来する中和抗体の存在下で、感染細胞内で偽ウイルス媒介ZsGreen発現を定量化することによってアセスメントした。
【
図13D】SC2 Sタンパク質を偽ウイルスとして発現するレンチウイルスの、ACE2受容体を発現する細胞に対する特異性の評価における、ワクチン接種後の様々な時点に収集された血清の中和効果を示す図である。市販の抗体を陽性(+)対照として使用した。T1、T2、T3は、血清収集の時点、すなわち、それぞれ1週間後、2週間後、及び3週間後を示す。SC2-DNAワクチンのIN投与によって誘導された中和抗体は、様々なバリアントのSC2 Sタンパク質を提示するように操作されたレンチ偽ウイルス粒子を使用し、ACE2受容体を発現するように操作されたHEK-293T細胞でFLuc-ZsGreenレポーター遺伝子を発現して、ウイルス感染性阻害について測定した。18週目にSC2-DNAワクチン接種されたC57BL/6Jマウスの血清試料(n=3動物からのプール血清)を中和活性について、市販のSC2スパイク抗体を比較してアッセイした。
【
図13E】SC2 Sタンパク質を偽ウイルスとして発現するレンチウイルスの、ACE2受容体を発現する細胞に対する特異性の評価における、Sタンパク質SC2-Wuhanバリアントで操作されたレンチウイルス粒子に対して行った感染力の相対的阻害を示す図である。各点は、3頭のマウスから収集された、3つの技術的複製を伴う血清の平均を表す。データは、平均±SEMで表されている。示されるように、Bonferroni事後検定を伴う一元配置ANOVAを使用して、比較の有意性を判定した。調整済みp値は、p値<0.05の場合に、統計的に有意であるとされ、統計的な有意性を示すシンボルは、以下の通りであった。nsは有意差が無いことを表し、*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表し、****はp<0.0001の有意性を表す。
【
図13F】SC2 Sタンパク質を偽ウイルスとして発現するレンチウイルスの、ACE2受容体を発現する細胞に対する特異性の評価における、Sタンパク質SC2-SA突然変異バリアントで操作されたレンチウイルス粒子に対して行った感染力の相対的阻害を示す図である。各点は、3頭のマウスから収集された、3つの技術的複製を伴う血清の平均を表す。データは、平均±SEMで表されている。示されるように、Bonferroni事後検定を伴う一元配置ANOVAを使用して、比較の有意性を判定した。調整済みp値は、p値<0.05の場合に、統計的に有意であるとされ、統計的な有意性を示すシンボルは、以下の通りであった。nsは有意差が無いことを表し、*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表し、****はp<0.0001の有意性を表す。
【
図13G】SC2 Sタンパク質を偽ウイルスとして発現するレンチウイルスの、ACE2受容体を発現する細胞に対する特異性の評価における、Sタンパク質SC2-D614G突然変異バリアントで操作されたレンチウイルス粒子に対して行った感染力の相対的阻害を示す図である。各点は、3頭のマウスから収集された、3つの技術的複製を伴う血清の平均を表す。データは、平均±SEMで表されている。示されるように、Bonferroni事後検定を伴う一元配置ANOVAを使用して、比較の有意性を判定した。調整済みp値は、p値<0.05の場合に、統計的に有意であるとされ、統計的な有意性を示すシンボルは、以下の通りであった。nsは有意差が無いことを表し、*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表し、****はp<0.0001の有意性を表す。
【
図14A】HEK293におけるAuNS-キトサン及び光学生物発光(BLI)によって画像化された細胞を使用したFluc mRNAのインビトロ送達を示す図である。
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図14B】A549におけるAuNS-キトサン及び光学生物発光(BLI)によって画像化された細胞を使用したFluc mRNAのインビトロ送達を示す図である。
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図14C】2用量のAuNS-キトサン-FLuc-mRNA送達後の組織のインビボBLIを示す図である。
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図14D】2用量のAuNS-キトサン-FLuc-mRNA送達後の組織のエクスビボBLIを示す図である。ホタルルシフェラーゼの有意な発現が肺にあり、これは、エクスビボ組織イメージング発見によって支持される。
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図15】SARS-CoV-2ゲノム構造及びmRNAワクチンの標的タンパク質がコードされている位置を示す図である。
【
図16A】SC2のSタンパク質を発現するDNAワクチンでIN処置したマウスの肺における免疫細胞の動員を示す図である。メモリー及び組織常在性のマーカーを発現するCD4+T細胞を誘導するDNAワクチンをアセスメントに使用した。肺常在性CD4+T細胞の数は、対照DNAで処置したマウスと比較して、免疫処置したマウスの肺で増加した。T細胞サブタイプについて評価するために、処置の14週間後に、肺、脾臓、胸腺、及びリンパ節を解剖した(T細胞サブタイプ:CD3/CD4、CD3/CD8;マクロファージ:CD45/CD11b;樹状細胞:CD45/CD11c;B細胞:CD19とCD22)。
【
図16B】SC2のSタンパク質を発現するDNAワクチンでIN処置したマウスの脾臓における常在性T細胞分布を示す図である。メモリー及び組織常在性のマーカーを発現するCD4+T細胞を誘導するDNAワクチンをアセスメントに使用した。肺常在性CD4+T細胞の数は、対照DNAで処置したマウスと比較して、免疫処置したマウスの肺で増加した。T細胞サブタイプについて評価するために、処置の14週間後に、肺、脾臓、胸腺、及びリンパ節を解剖した(T細胞サブタイプ:CD3/CD4、CD3/CD8;マクロファージ:CD45/CD11b;樹状細胞:CD45/CD11c;B細胞:CD19とCD22)。
【
図16C】SC2のSタンパク質を発現するDNAワクチンでIN処置したマウスの肺における常在性T細胞分布を示す図である。メモリー及び組織常在性のマーカーを発現するCD4+T細胞を誘導するDNAワクチンをアセスメントに使用した。肺常在性CD4+T細胞の数は、対照DNAで処置したマウスと比較して、免疫処置したマウスの肺で増加した。T細胞サブタイプについて評価するために、処置の14週間後に、肺、脾臓、胸腺、及びリンパ節を解剖した(T細胞サブタイプ:CD3/CD4、CD3/CD8;マクロファージ:CD45/CD11b;樹状細胞:CD45/CD11c;B細胞:CD19とCD22)。
【
図16D】SC2のSタンパク質を発現するDNAワクチンでIN処置したマウスの胸腺における常在性T細胞分布を示す図である。メモリー及び組織常在性のマーカーを発現するCD4+T細胞を誘導するDNAワクチンをアセスメントに使用した。肺常在性CD4+T細胞の数は、対照DNAで処置したマウスと比較して、免疫処置したマウスの肺で増加した。T細胞サブタイプについて評価するために、処置の14週間後に、肺、脾臓、胸腺、及びリンパ節を解剖した(T細胞サブタイプ:CD3/CD4、CD3/CD8;マクロファージ:CD45/CD11b;樹状細胞:CD45/CD11c;B細胞:CD19とCD22)。
【
図16E】SC2のSタンパク質を発現するDNAワクチンでIN処置したマウスのリンパ節における常在性T細胞分布を示す図である。メモリー及び組織常在性のマーカーを発現するCD4+T細胞を誘導するDNAワクチンをアセスメントに使用した。肺常在性CD4+T細胞の数は、対照DNAで処置したマウスと比較して、免疫処置したマウスの肺で増加した。T細胞サブタイプについて評価するために、処置の14週間後に、肺、脾臓、胸腺、及びリンパ節を解剖した(T細胞サブタイプ:CD3/CD4、CD3/CD8;マクロファージ:CD45/CD11b;樹状細胞:CD45/CD11c;B細胞:CD19とCD22)。
【
図17A】pDNA及びSC2スパイクDNAで処置したBALB/cマウスの脾臓から単離されたCD45+T細胞におけるIFNγ発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【
図17B】pDNA及びSC2スパイクDNAで処置したBALB/cマウスの肺から単離されたCD45+T細胞におけるIFNγ発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【
図17C】pDNA及びSC2スパイクDNAで処置したBALB/cマウスの胸腺から単離されたCD45+T細胞におけるIFNγ発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【
図17D】pDNA及びSC2スパイクDNAで処置したBALB/cマウスのリンパ節から単離されたCD45+T細胞におけるIFNγ発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【
図17E】pDNA及びSC2スパイクDNAで処置したBALB/cマウスの血液から単離されたCD45+T細胞におけるIFNγ発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【
図18】SARS-CoV-2 Sタンパク質をコードするDNAによるワクチン接種が流入領域リンパ節におけるT細胞及びB細胞の活性化をもたらすことを示す図である。
【
図19A】ナノ粒子の外層を形成しうるポリマーの構造に関して、キトサン及びキトサン-シクロデキストリンの構造並びにシクロデキシトリン結合キトサン(CD-CS)を合成するための反応を示す図である。
【
図19B】ナノ粒子の外層を形成しうるポリマーの構造に関して、ポリエチレンイミン(PEI)(上パネル)及びポリアミドアミン(PAMAM)(下パネル)デンドリマーの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の様々な実施形態及び態様が本明細書で示され、記載されているが、そのような実施形態及び態様は例としてだけ提供されていることは当業者に明らかになる。本発明を逸脱しない範囲で、当業者は多くの変形形態、変更及び代替を今では思いつく。本明細書に記載される本発明の実施形態への様々な代替物を本発明の実施で用いることができることを理解すべきである。
【0018】
本明細書で使用されるセクション見出しは構成上の目的だけのためであり、記載される対象発明を限定するものと解釈されるべきでない。特許、特許出願、論文、書籍、マニュアル及び専門書を限定されずに含む本出願で引用される全ての文書又は文書の一部は、ここにあらゆる目的のために参照により完全に明示的に組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用される略記号は、化学及び生物学の分野の範囲内のそれらの従来の意味を有する。本明細書で示される化学構造及び式は、化学技術分野で公知である化学原子価の標準規則により構築される。
【0020】
特に定義されない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語は、当分野の技術者が通常理解するのと同じ意味を有する。例えば、Singleton等、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY第2版、J.Wiley & Sons(New York、NY 1994);Sambrook等、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor、NY 1989)を参照する。本明細書に記載されるものに類似している又は同等の任意の方法、装置及び材料を、本発明の実施で使用することができる。以下の定義は本明細書でしばしば使用されるある特定の用語の理解を促進するために提供され、本開示の範囲を限定するものでない。
【0021】
「核酸」は、一本鎖、二本鎖又は複数の鎖の形のヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)及びそのポリマー、又はその相補体;又はヌクレオシド(例えば、デオキシリボヌクレオシド又はリボヌクレオシド)を指す。実施形態では、「核酸」はヌクレオシドを含まない。用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「オリゴ」などは、通常の及び慣例的な意味でヌクレオチドの線形配列を指す。用語「ヌクレオシド」は、通常の及び慣例的な意味で、核酸塩基及び五炭糖(リボース又はデオキシリボース)を含むグリコシルアミンを指す。ヌクレオシドの非限定的な例には、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン、チミジン及びイノシンが含まれる。用語「ヌクレオチド」は、通常の及び慣例的な意味で、ポリヌクレオチドの単一の単位、すなわち単量体を指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又はその改変されたバージョンであってよい。本明細書で企図されるポリヌクレオチドの例には、一本鎖及び二本鎖のDNA、一本鎖及び二本鎖のRNA並びに一本鎖及び二本鎖のDNA及びRNAの混合物を有するハイブリッド分子が含まれる。核酸、例えば本明細書で企図されるポリヌクレオチドの例には、任意のタイプのRNA、例えば、mRNA、siRNA、miRNA及びガイドRNA、並びに任意のタイプのDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA及びミニサークルDNA、並びにそれらの任意の断片が含まれる。ポリヌクレオチドとの関連で用語「二重鎖」は、通常の及び慣例的な意味で二本鎖を指す。核酸は直鎖状又は分枝状であってよい。例えば、核酸はヌクレオチドの直鎖であってよいか、又は核酸は、例えば核酸がヌクレオチドの1つ以上の腕又は枝を含むように分枝状であってよい。任意選択で、分枝状核酸は繰り返して分枝状であり、デンドリマーなどのより高次の構造を形成する。
【0022】
例えばホスホチオエート主鎖を有する核酸を含む核酸は、1つ以上の反応性部分を含むことができる。本明細書で使用される場合、用語反応性部分は、共有結合、非共有結合又は他の相互作用を通して別の分子、例えば核酸又はポリペプチドと反応することが可能な任意の基を含む。例として、核酸は、共有結合、非共有結合又は他の相互作用を通してナノ粒子の外層と反応する反応性部分を含むことができる。
【0023】
本用語は、参照核酸に類似した結合特性を有し、参照ヌクレオチドに類似した方法で代謝される、合成された、天然に存在する及び天然に存在しない公知のヌクレオチド類似体又は改変された主鎖残基若しくは結合を含む核酸を包含する。そのような類似体の例には、限定されずに、ホスホジエステル誘導体、例えばホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、ホスホロチオエート(リン酸基の酸素を置換する二重結合した硫黄を有するホスホチオエートとしても知られる)、ホスホロジチオエート、ホスホノカルボン酸、ホスホノカルボキシレート、ホスホノ酢酸、ホスホノギ酸、ホスホン酸メチル、ホスホン酸ホウ素又はO-メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein、OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH、Oxford University Pressを参照する)並びに5-メチルシチジン又はプソイドウリジン;並びにペプチド核酸主鎖及び結合などにおけるヌクレオチド塩基への改変が含まれる。他の類似体核酸には、正の主鎖;非イオン性主鎖、改変された糖及び非リボース主鎖を有するもの(例えば当技術分野で公知であるホスホロジアミデートモルホリノオリゴ又はロック核酸(LNA))、例えば、米国特許第5,235,033号及び第5,034,506号、並びに第6章及び第7章、ASC Symposium Series 580、CARBOHYDRATE MODIFICATIONS IN ANTISENSE RESEARCH、Sanghui & Cook編に記載されているものが含まれる。1つ以上の炭素環式の糖を含有する核酸も、核酸の1つの定義の中に含まれる。様々な理由、例えば、生理的環境で、又はバイオチップのプローブとしてそのような分子の安定性及び半減期を増加させるために、リボース-リン酸主鎖の改変を実行することができる。天然に存在する核酸及び類似体の混合物を作製することができる;代わりに、異なる核酸類似体の混合物並びに天然に存在する核酸及び類似体の混合物を作製することができる。実施形態では、DNA中でのヌクレオチド間結合は、ホスホジエステル、ホスホジエステル誘導体又は両方の組合せである。
【0024】
核酸は、非特異的配列を含むことができる。本明細書で使用される場合、用語「非特異的配列」は、任意の他の核酸配列に相補的である又は部分的に相補的であるだけであるように設計されていない、一連の残基を含有する核酸配列を指す。例として、非特異的核酸配列は、細胞又は生物体と接触させたときに阻害性核酸として機能しない核酸残基の配列である。
【0025】
ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基の特異的配列で一般的に構成される:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);及びチミン(T)(ポリヌクレオチドがRNAである場合はチミン(T)の代わりにウラシル(U))。したがって、用語「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である;代わりに、本用語はポリヌクレオチド分子自体に適用することができる。このアルファベット表示は中央処理ユニットを有するコンピュータのデータベースにインプットすることができ、機能的ゲノム研究及び相同性検索などのバイオインフォマティクスアプリケーションのために使用することができる。ポリヌクレオチドは、1つ以上の非標準ヌクレオチド(複数可)、ヌクレオチド類似体(複数可)及び/又は改変されたヌクレオチドを任意選択的に含むことができる。
【0026】
本明細書で使用される用語「相補体」は、相補的ヌクレオチド又はヌクレオチドの配列と塩基対形成が可能なヌクレオチド(例えば、RNA又はDNA)又はヌクレオチドの配列を指す。本明細書に記載されている通り、及び当技術分野で一般的に公知であるように、アデノシンの相補的(マッチする)ヌクレオチドはチミジンであり、グアノシンの相補的(マッチする)ヌクレオチドはシトシンである。したがって、相補体は、第2の核酸配列の対応する相補的ヌクレオチドと塩基対を形成するヌクレオチドの配列を含むことができる。相補体のヌクレオチドは、第2の核酸配列のヌクレオチドに部分的又は完全にマッチすることができる。相補体のヌクレオチドが第2の核酸配列の各ヌクレオチドに完全にマッチする場合、相補体は第2の核酸配列の各ヌクレオチドと塩基対を形成する。相補体のヌクレオチドが第2の核酸配列のヌクレオチドに部分的にマッチする場合、相補体のヌクレオチドの一部だけが第2の核酸配列のヌクレオチドと塩基対を形成する。相補配列の例にはコード及び非コード配列が含まれ、ここで、非コード配列はコード配列に相補的なヌクレオチドを含有し、したがってコード配列の相補体を形成する。相補配列のさらなる例はセンス及びアンチセンス配列であり、ここで、センス配列はアンチセンス配列に相補的なヌクレオチドを含有し、したがってアンチセンス配列の相補体を形成する。
【0027】
本明細書に記載されるように、配列の相補性は部分的であってよく、この場合核酸の一部だけが塩基対形成によりマッチし、又は完全であってよく、この場合全ての核酸が塩基対形成によりマッチする。したがって、互いに相補的である2つの配列は、特定のパーセンテージの同じヌクレオチドを有することができる(すなわち、特定の領域にわたって約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性)。
【0028】
用語「アミノ酸」は、天然に存在する及び合成のアミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸に類似した方法で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるもの、並びに後に改変されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合しているα炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は改変されたR基(例えば、ノルロイシン)又は改変されたペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般化学構造と異なるが、天然に存在するアミノ酸に類似した方法で機能する構造を有する化合物を指す。用語「天然に存在しないアミノ酸」及び「非天然アミノ酸」は、天然に見出されないアミノ酸類似体、合成アミノ酸及びアミノ酸模倣体を指す。
【0029】
本明細書で、アミノ酸は、それらの一般に公知である3文字記号によって、又はIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する1文字記号によって呼ぶことができる。同様に、ヌクレオチドは、それらの公認の1文字コードによって呼ぶことができる。
【0030】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すものとして本明細書で互換的に使用され、ここで、ポリマーは、実施形態ではアミノ酸からならない部分にコンジュゲートしていてもよい。本用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。「融合タンパク質」は、単一の部分として組換えで発現される2つ以上の別個のタンパク質配列をコードするキメラタンパク質を指す。
【0031】
アミノ酸又はヌクレオチド塩基の「位置」は、N末端(又は、5’末端)に対するその位置に基づいて参照配列中の各アミノ酸(又は、ヌクレオチド塩基)を順番に特定する番号によって表される。最適なアラインメントを決定するときに考慮しなければならない欠失、挿入、トランケーション、融合などのために、一般に、単にN末端から数えることによって決定される試験配列中のアミノ酸残基番号は、参照配列中のその対応する位置の番号と必ずしも同じであるとは限らない。例えば、整列させた参照配列に対してバリアントが欠失を有する場合、バリアントには欠失部位に参照配列中の位置に対応するアミノ酸はない。整列させた参照配列中に挿入がある場合、その挿入は参照配列中の番号付けされたアミノ酸位置に対応しない。トランケーション又は融合の場合、参照の又は整列させた配列中に、対応する配列中のいかなるアミノ酸にも対応しないひと続きのアミノ酸が存在する可能性がある。
【0032】
所与のアミノ酸又はポリヌクレオチド配列の番号付けとの関連で使用されるとき、用語「に関して番号付けされた」又は「に対応する」は、所与のアミノ酸又はポリヌクレオチド配列を参照配列と比較したときの特定の参照配列の残基の番号付けを指す。タンパク質中のアミノ酸残基は、それがタンパク質の中の所与の残基と同じ必須の構造上の位置を占めるとき、所与の残基に「対応する」。当業者は、異なる番号付け体系による他のタンパク質の中で、タンパク質(例えば、スパイクタンパク質)中の特定の位置に対応する残基の同一性及び位置を直ちに認める。例えば、タンパク質(例えば、スパイクタンパク質)で単純な配列アラインメントを実行することによって、タンパク質の特定の位置に対応する残基の同一性及び位置は、タンパク質に整列している他のタンパク質配列の中で同定される。例えば、選択されたタンパク質中の選択された残基は、選択された残基が138位のグルタミン酸と同じ必須の空間的又は他の構造的な関係を占めるとき、138位のグルタミン酸に対応する。一部の実施形態では、選択されたタンパク質をあるタンパク質と最大相同性のために整列させる場合、グルタミン酸138で整列している整列させた選択されたタンパク質中の位置は、グルタミン酸138に対応する。例えば、選択されたタンパク質の構造を138位のグルタミン酸と最大対応のために整列させ、全体の構造を比較する場合、一次配列アラインメントの代わりに、三次元構造アラインメントを使用することもできる。この場合、構造モデルでグルタミン酸138と同じ必須の位置を占めるアミノ酸は、グルタミン酸138残基に対応する。
【0033】
「保存的改変バリアント」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的改変バリアント」は、同一であるか本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指す。遺伝子コードの変性のため、いくつかの核酸配列は任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは、全てアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変更することなく記載される対応するコドンのいずれかにコドンを変更することができる。そのような核酸変異は「サイレント変異」であり、それらは保存的に改変された変異の1種である。ポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる核酸配列は、核酸のあらゆる可能なサイレント変異も記載する。当業者は、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG及び通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGG以外)は、機能的に同一の分子を産するように改変することができることを認める。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載される各配列に内在する。
【0034】
アミノ酸配列に関して、コード配列の中で単一のアミノ酸又は小さなパーセンテージのアミノ酸を改変、付加又は削除する、核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質配列への個々の置換、欠失又は付加は、変更が化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす「保存的改変バリアント」であることを当業者は認識する。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野で周知である。そのような保存的改変バリアントは、本開示の多形性バリアント、種間同族体及び対立遺伝子に加えるものであって、それらを排除しない。
【0035】
以下の8群の各々は、お互いの保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);及び
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton、Proteins(1984))を参照する)。
【0036】
用語「同一の」又はパーセント「同一性」は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列との関連で、BLAST若しくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを下記のデフォルトパラメータで使用して、又は手動アラインメント及び目視検査によって(例えば、NCBIウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などを参照する)測定したときに、同じであるか又は同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの指定されたパーセンテージを有する2つ以上の配列又は部分配列を指す(すなわち、比較ウインドウ又は指定領域にわたる最大対応のために比較し、整列させたときに、特定の領域にわたる約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性)。そのような配列は、それゆえ「実質的に同一である」と言われる。この定義は、試験配列の相補体も指し、又はそれに適用することもできる。この定義には、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有するものも含まれる。下記のように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを説明することができる。好ましくは、長さが少なくとも約25個のアミノ酸又はヌクレオチドの領域、より好ましくは長さが50~100個のアミノ酸又はヌクレオチドの領域にわたって同一性が存在する。
【0037】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウインドウにわたる2つの最適に整列させた配列を比較することによって決定され、ここで、比較ウインドウの中のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適整列のために参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含むことができる。パーセンテージは、両方の配列で同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が存在する位置の数を決定してマッチした位置の数を与え、マッチした位置の数を比較ウインドウの中の位置の総数によって割り、その結果に100を掛け算して配列同一性のパーセンテージを与えることによって計算される。
【0038】
本明細書で使用されるように、「比較ウインドウ」は、例えば、2つの配列を最適に整列させた後に連続した位置が同じ数の参照配列と配列を比較することができる、完全長配列又は20~600、約50~約200若しくは約100~約150のアミノ酸若しくはヌクレオチドからなる群から選択される連続した位置の数のいずれか1つのセグメントへの言及を含む。比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith及びWaterman(1970)Adv.Appl.Math.2:482cのローカルホモロジーアルゴリズムによって、Needleman及びWunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443のホモロジーアラインメントアルゴリズムによって、Pearson及びLipman(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA85:2444の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIの中のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)のコンピュータによる実行によって、手動アラインメント及び目視検査によって(例えば、Ausubel等、Current Protocols in Molecular Biology(1995年の補遺)を参照する)実行することができる。
【0039】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに好適であるアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschul等(1977)Nuc.Acids Res.25:3389~3402頁及びAltschul等(1990)J.Mol.Biol.215:403~410頁にそれぞれ記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公開されている。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合にいくつかの正の値の閾値スコアTにマッチするか又はそれを満たす、長さWの短いワードをクエリー配列中で同定することによって、ハイスコアの配列対(HSP)を最初に同定することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値(Altschul等、前掲)と呼ばれる。これらの初期近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとして機能する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿って両方向に延長させられる。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメータM(マッチした残基の対のためのリワードスコア;常に>0)及びN(ミスマッチ残基のためのペナルティスコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列の場合、累積スコアを計算するためにスコアリングマトリックスが使用される。各方向へのワードヒットの延長は、次の場合に停止される:累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xが落ちる;1つ以上の負のスコアの残基アラインメントの蓄積のために、累積スコアがゼロ以下になる;又は、いずれかの配列の末端に到達する。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとして11のワードレンス(W)、10の予想(E)、M=5、N=-4及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワードレンス(W)、10の予想(E)及びBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff及びHenikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915頁を参照する)50のアラインメント(B)、10の予想(E)、M=5、N=-4及び両方の鎖の比較を使用する。
【0040】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析も実行する(例えば、Karlin及びAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873~5787頁を参照する)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は、最小和確率(P(N))であり、それは2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列の間のマッチが偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸の参照核酸との比較における最小和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は参照配列に類似しているとみなされる。
【0041】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの指標は、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、下記のように第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対する抗体と免疫学的に交差反応性であることである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的置換だけが異なる場合、ポリペプチドは一般的に第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、下記のようにストリンジェントな条件下で2つの分子又はそれらの相補体が互いとハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、配列を増幅させるために同じプライマーを使用することができることである。
【0042】
抗体は、入り組んだ内部構造を有する大きく複雑な分子(約150,000の分子量又は約1320アミノ酸)である。天然の抗体分子はポリペプチド鎖の2つの同一の対を含有し、各対は1つの軽鎖及び1つの重鎖を有する。各軽鎖及び重鎖は次に2つの領域からなる:標的抗原への結合に関与する可変(「V」)領域、及び免疫系の他の成分と相互作用する定常(「C」)領域。軽鎖及び重鎖可変領域(本明細書でそれぞれ軽鎖可変(VL)ドメイン及び重鎖可変(VH)ドメインとも呼ばれる)は3次元空間で一緒になって、抗原(例えば、細胞表面の受容体)に結合する可変領域を形成する。各軽鎖又は重鎖可変領域の中に、相補性決定領域(「CDR」)と呼ばれる3つの短いセグメント(長さが平均で10アミノ酸)がある。抗体可変ドメイン中の6つのCDR(軽鎖から3つ及び重鎖から3つ)は、3次元空間で一緒にたたまれて標的抗原の上へドッキングする実際の抗体結合部位を形成する。CDRの位置及び長さは、Kabat、E.等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S.Department of Health and Human Services、1983、1987年、によって正確に規定されている。CDRに含有されていない可変領域の部分はフレームワーク(「FR」)と呼ばれ、それはCDRのための環境を形成する。抗体をコードする認知された免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー定常領域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパ又はラムダとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロンと分類され、それらは次に免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEをそれぞれ定義する。
【0043】
用語「抗原」及び「エピトープ」は、免疫系の成分、例えば、抗体、T細胞受容体又は他の免疫受容体、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞の上の受容体によって特異的に認識される分子(例えば、ポリペプチド)の部分を互換的に指す。本明細書で使用されるように、用語「抗原」は、抗原性エピトープ及びその抗原性断片を包含する。
【0044】
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を有することができる。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成され、各対は1つの「軽」(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担う約100~110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。用語「可変重鎖」、「VH」又は「VH」は、Fv、scFv、dsFv又はFabを含む免疫グロブリン重鎖の可変領域を指し;用語「可変軽鎖」、「VL」又は「VL」は、Fv、scFv、dsFv又はFabを含む免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0045】
抗体の機能的断片の例には、完全抗体分子、抗体断片、例えばFv、単鎖Fv(scFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、Fab、F(ab)2’及びそれらの任意の組合せ、又は標的抗原への結合が可能な免疫グロブリンペプチドの他の任意の機能的部分が含まれるが、これらに限定されない(例えば、FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY(Paul編、第4版、2001を参照する)。当業者によって理解されるように、様々な方法、例えばペプシンなどの酵素によるインタクトな抗体の消化;又は新規合成によって、様々な抗体断片を得ることができる。しばしば抗体断片は、化学的に又は組換えDNA方法を使用して新規に合成される。したがって、用語抗体には、本明細書で使用されるように、完全体抗体の改変によって生成される抗体断片、又は組換えDNA方法を使用して新規に合成されるもの(例えば、単鎖Fv)、又はファージディスプレイライブラリーを使用して同定されるものが含まれる(例えば、McCafferty等、(1990)Nature 348:552頁を参照する)。用語「抗体」には、二価又は二重特異性の分子、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディも含まれる。二価及び二重特異性の分子は、例えば、Kostelny等(1992)J.Immunol.148:1547頁、Pack及びPluckthun(1992)Biochemistry 31:1579頁、Hollinger等(1993)、PNAS.USA 90:6444頁、Gruber等(1994)J Immunol.152:5368頁、Zhu等(1997)Protein Sci.6:781頁、Hu等(1996)Cancer Res.56:3055頁、Adams等(1993)Cancer Res.53:4026頁及びMcCartney等(1995)Protein Eng.8:301頁に記載されている。
【0046】
抗体に「特異的に(又は選択的に)結合する」又は「と特異的に(又は選択的に)免疫反応性である」という語句は、タンパク質又はペプチドに言及する場合、しばしばタンパク質及び他の生物物質の不均一集団中のタンパク質の存在の決定因子である結合反応を指す。したがって、指定されたイムノアッセイ条件の下で、特定された抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10~100倍を超えて特定のタンパク質に結合する。そのような条件下での抗体への特異的結合は、特定のタンパク質へのその特異性について選択される抗体を必要とする。例えば、選択される抗原と特異的に免疫反応性であり、他のタンパク質とはそうでない抗体のサブセットだけを得るように、ポリクローナル抗体を選択することができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を取り去ることによって達成することができる。特定のタンパク質に対して特異的に免疫反応性である抗体を選択するために、様々なイムノアッセイフォーマットを使用することができる。例えば、タンパク質に対して特異的に免疫反応性である抗体を選択するために、固相ELISAイムノアッセイが通常使用される(特異的免疫反応性を決定するために使用することができるイムノアッセイフォーマット及び条件の記載については、例えば、HarlowとLane、Using Antibodies、A Laboratory Manual(1998)を参照する)。
【0047】
本明細書で使用される用語「スパイクタンパク質」又は「Sタンパク質」は、S糖タンパク質、E2、ペプロマータンパク質としても知られるスパイク糖タンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又はスパイクタンパク質の活性を維持する(例えばスパイクタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するスパイクタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、スパイクタンパク質は、UniProt参照番号P0DTC2によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0048】
本明細書で使用される用語「エンベロープタンパク質」又は「Eタンパク質」は、sMタンパク質としても知られるエンベロープ低分子膜タンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又はエンベロープタンパク質の活性を維持する(例えばエンベロープタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するエンベロープタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、エンベロープタンパク質は、UniProt参照番号P0DTC4によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0049】
本明細書で使用される用語「膜タンパク質」又は「Mタンパク質」は、膜タンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又は膜タンパク質の活性を維持する(例えば膜タンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する膜タンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、膜タンパク質は、UniProt参照番号P0DTC5によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0050】
本明細書で使用される用語「ヌクレオカプシドタンパク質」又は「Nタンパク質」は、ヌクレオプロテインタンパク質、NCタンパク質としても知られるヌクレオカプシドタンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又はヌクレオカプシドタンパク質の活性を維持する(例えばヌクレオカプシドタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するヌクレオカプシドタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、ヌクレオカプシドタンパク質は、UniProt参照番号P0DTC9によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0051】
本明細書で使用される用語「糖タンパク質Gタンパク質」又は「Gタンパク質」は、膜結合糖タンパク質、mGタンパク質としても知られる主要表面糖タンパク質Gタンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又は糖タンパク質Gタンパク質の活性を維持する(例えば糖タンパク質Gタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する糖タンパク質Gタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、糖タンパク質Gタンパク質は、UniProt参照番号P03423によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0052】
本明細書で使用される用語「糖タンパク質Fタンパク質」又は「Fタンパク質」は、融合糖タンパク質F0、融合糖タンパク質F2、介在セグメント、Pep27、ペプチド27、融合糖タンパク質F1としても知られる融合糖タンパク質タンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又は糖タンパク質Fタンパク質の活性を維持する(例えば糖タンパク質Fタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する糖タンパク質Fタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、糖タンパク質Fタンパク質は、UniProt参照番号P03420によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0053】
本明細書で使用される用語「糖タンパク質SHタンパク質」又は「SHタンパク質」は、低分子量タンパク質1Aとしても知られる低分子量疎水性タンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又は糖タンパク質SHタンパク質の活性を維持する(例えば糖タンパク質SHタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する糖タンパク質SHタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、糖タンパク質SHタンパク質は、UniProt参照番号P0DOE5によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0054】
本明細書で使用される用語「血球凝集素-ノイラミニダーゼタンパク質」又は「HNタンパク質」は、血球凝集素-ノイラミニダーゼの組換えか又は天然に存在する形、又は血球凝集素-ノイラミニダーゼタンパク質の活性を維持する(例えば血球凝集素-ノイラミニダーゼタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する血球凝集素-ノイラミニダーゼタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、血球凝集素-ノイラミニダーゼタンパク質は、UniProt参照番号P21526によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0055】
本明細書で使用される用語「融合糖タンパク質タンパク質」又は「Fタンパク質」は、融合糖タンパク質0の組換えか又は天然に存在する形、又は融合糖タンパク質の活性を維持する(例えば融合糖タンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する融合糖タンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、融合糖タンパク質は、UniProt参照番号P06828によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0056】
本明細書で使用される用語「マトリックスタンパク質」又は「Mタンパク質」は、マトリックスタンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又はマトリックスタンパク質の活性を維持する(例えばマトリックスタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するマトリックスタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、マトリックスタンパク質は、UniProt参照番号P07873によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0057】
本明細書で使用される用語「カプシド糖タンパク質VP1」又は「VP1タンパク質」は、カプシドタンパク質VP1の組換えか又は天然に存在する形、又はカプシド糖タンパク質VP1の活性を維持する(例えばカプシド糖タンパク質VP1と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するカプシド糖タンパク質VP1と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、カプシド糖タンパク質VP1は、UniProt参照番号U6BK95によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0058】
本明細書で使用される用語「カプシド糖タンパク質VP0」又は「VP0タンパク質」は、カプシドタンパク質VP0の組換えか又は天然に存在する形、又はカプシド糖タンパク質VP0の活性を維持する(例えばカプシド糖タンパク質VP0と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するカプシド糖タンパク質VP0と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、カプシド糖タンパク質VP0は、UniProt参照番号D4NYJ3によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0059】
本明細書で使用される用語「ヘキソンタンパク質」又は「ヘキソン」は、ヘキソンタンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又はヘキソンタンパク質の活性を維持する(例えばヘキソンタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するヘキソンタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、ヘキソンタンパク質は、UniProt参照番号Q9DKL1によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0060】
本明細書で使用される用語「ペントンタンパク質」又は「ペントン」は、ペントンタンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又はペントンタンパク質の活性を維持する(例えばペントンタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するペントンタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、ペントンタンパク質は、UniProt参照番号Q2Y0H9によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0061】
本明細書で使用される用語「線維タンパク質」又は「線維」は、線維タンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又は線維タンパク質の活性を維持する(例えば線維タンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する線維タンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、線維タンパク質は、UniProt参照番号P04501によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0062】
本明細書で使用される用語「プレヘキソン連結タンパク質IIIa」は、カプシド頂点特異的成分IIIa、CVSC、タンパク質IIIa又はpIIIaとしても知られるプレヘキソン連結タンパク質IIIaの組換えか又は天然に存在する形、又はプレヘキソン連結タンパク質IIIaの活性を維持する(例えばプレヘキソン連結タンパク質IIIaと比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するプレヘキソン連結タンパク質IIIaと比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、プレヘキソン連結タンパク質IIIaは、UniProt参照番号Q2Y010によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0063】
本明細書で使用される用語「プレヘキソン連結タンパク質VIII」は、プレタンパクVIII、pVIII又はタンパク質VIII-Nとしても知られるプレヘキソン連結タンパク質VIIIの組換えか又は天然に存在する形、又はプレヘキソン連結タンパク質VIIIの活性を維持する(例えばプレヘキソン連結タンパク質VIIIと比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するプレヘキソン連結タンパク質VIIIと比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、プレヘキソン連結タンパク質VIIIは、UniProt参照番号Q71BW3によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0064】
本明細書で使用される用語「ヘキソンインターレーシングタンパク質」は、タンパク質IXとしても知られるヘキソンインターレーシングタンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又はヘキソンインターレーシングタンパク質の活性を維持する(例えばヘキソンインターレーシングタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するヘキソンインターレーシングタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、ヘキソンインターレーシングタンパク質は、UniProt参照番号Q71BW3によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0065】
本明細書で使用される用語「主要表面糖タンパク質G」は、付着糖タンパク質G、膜結合糖タンパク質、mGとしても知られる主要表面糖タンパク質Gの組換えか又は天然に存在する形、又は主要表面糖タンパク質Gの活性を維持する(例えば主要表面糖タンパク質Gと比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する主要表面糖タンパク質Gと比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、主要表面糖タンパク質Gタンパク質は、UniProt参照番号Q6WB94によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0066】
本明細書で使用される用語「融合糖タンパク質F0」は、タンパク質Fとしても知られる融合糖タンパク質F0の組換えか又は天然に存在する形、又は融合糖タンパク質F0の活性を維持する(例えば融合糖タンパク質F0と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する融合糖タンパク質F0と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、融合糖タンパク質F0は、UniProt参照番号Q6WB98によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0067】
本明細書で使用される用語「核タンパク質」又は「タンパク質N」は、ヌクレオカプシドタンパク質としても知られる核タンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又は核タンパク質の活性を維持する(例えば核タンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する核タンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、核タンパク質は、UniProt参照番号Q6WBA1によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0068】
本明細書で使用される用語「低分子量疎水性タンパク質」又は「SHタンパク質」は、低分子量疎水性タンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又は低分子量疎水性タンパク質の活性を維持する(例えば低分子量疎水性タンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在する低分子量疎水性タンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、低分子量疎水性タンパク質は、UniProt参照番号Q6WB95によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0069】
本明細書で使用される用語「マトリックスタンパク質」又は「Mタンパク質」は、マトリックスタンパク質の組換えか又は天然に存在する形、又はマトリックスタンパク質の活性を維持する(例えばマトリックスタンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するマトリックスタンパク質と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、マトリックスタンパク質は、UniProt参照番号Q6WB99によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0070】
本明細書で使用される用語「カプシドタンパク質VP1」は、カプシドタンパク質VP1の組換えか又は天然に存在する形、又はカプシドタンパク質VP1の活性を維持する(例えばカプシドタンパク質VP1と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するカプシドタンパク質VP1と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、カプシドタンパク質VP1は、UniProt参照番号I0B934によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0071】
本明細書で使用される用語「カプシドタンパク質VP2」は、カプシドタンパク質VP2の組換えか又は天然に存在する形、又はカプシドタンパク質VP2の活性を維持する(例えばカプシドタンパク質VP2と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の範囲内の活性)そのバリアント若しくはホモログのいずれも含む。一部の態様では、バリアント又はホモログは、天然に存在するカプシドタンパク質VP2と比較して、全配列又は配列の一部(例えば50、100、150又は200の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態では、カプシドタンパク質VP2は、UniProt参照番号Q27XI9によって識別されるタンパク質と実質的に同一である。
【0072】
用語「疾患」又は「状態」は、本明細書で提供される化合物、医薬組成物又は方法で処置することが可能な、対象の生存状態又は健康状態を指す。疾患は、自己免疫性、炎症性、がん、感染性、代謝性、発達上の、心血管、肝臓、腸管、内分泌、神経学的又は他の疾患であってよい。一部の例では、疾患は感染性の疾患(例えばコロナウイルス感染症)である。
【0073】
用語「感染症」又は「感染性疾患」は、細菌、ウイルス、真菌類又は任意の他の病原性微生物因子などの生物体が引き起こすことができる疾患又は状態を指す。実施形態では、感染性疾患は病原性ウイルスによって引き起こされる。病原性ウイルスは、細胞(例えばヒト細胞)に感染してその中で複製することができ、疾患を引き起こすウイルスである。実施形態では、感染性疾患はウイルス関連の疾患である。非限定的なウイルス関連の疾患には、肝ウイルス疾患(例えば、A、B、C、D、E型肝炎)、ヘルペスウイルス感染症(例えば、HSV-1、HSV-2、帯状疱疹)、フラビウイルス感染症、ジカウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症、呼吸器ウイルス感染症(「肺ウイルス疾患」を引き起こす)(例えば、アデノウイルス感染症、インフルエンザ、重度の急性呼吸器症候群、コロナウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、MERS-CoV、COVID-19、MERS))、胃腸ウイルス感染症(例えば、ノロウイルス感染症、ロタウイルス感染症、アストロウイルス感染症)、発疹性ウイルス感染症(例えば、麻疹、帯状ヘルペス、天然痘、風疹)、ウイルス出血性疾患(例えば、エボラ、ラッサ熱、デング熱、黄熱)、神経性ウイルス感染症(例えば、ウエストナイルウイルス感染症、ポリオ、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性脳炎、日本脳炎、狂犬病)及びヒトパピローマウイルス感染症が含まれる。実施形態では、ウイルス関連疾患は肺ウイルスによって引き起こされる。
【0074】
用語「肺ウイルス感染症」又は「肺ウイルス疾患」は、細胞に感染してその中で複製することができ、呼吸器系(例えば下部呼吸器系、上部呼吸器系及び肺)を侵す疾患又は症状を引き起こすことができるウイルスによって引き起こされる状態を指す。実施形態では、肺ウイルス感染症を引き起こすウイルスは、侵入口として鼻及び/又は口を用いて対象に侵入することができる。肺ウイルス感染症は、ヒトRSウイルス(HRSV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPV)、ヒトライノウイルス(HRV)、アデノウイルス(ADV)、ヒトコロナウイルス(HCoV)、SARSと関連したコロナウイルス(SARS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)又はヒトボカウイルス(HBoV)を限定されずに含むウイルスが引き起こすことができる。肺ウイルス感染症は、表2に掲載される1つ以上の症状をもたらすことができる。
【0075】
用語「ウイルス」又は「ウイルス粒子」は、生物学分野におけるそれらのプレーンな通常の意味によって使用され、ウイルスゲノム(例えば、DNA、RNA、一本鎖、二本鎖)、タンパク質(例えばカプシド)及び関連するタンパク質の保護コート、並びにエンベロープ型ウイルス(例えばヘルペスウイルス)の場合は、脂質及び任意選択的に宿主細胞膜の成分を含むエンベロープ、及び/又はウイルスタンパク質を含む粒子を指す。
【0076】
「ヒトコロナウイルス」又は「HCoV」は、ヒトの細胞に入って複製することができ、疾患(例えば気道感染症)を引き起こすことができる一群のRNAウイルスを指す。実施形態では、コロナウイルスは正のセンスの一本鎖RNA及びヌクレオカプシドを有するエンベロープ型のウイルスである。コロナウイルスはサイズが変動し、例えば直径が50~200nmであってよい。実施形態では、コロナウイルスのウイルスエンベロープは脂質二重層で構成され、膜、エンベロープ及びスパイクタンパク質を含む。例えば、HcoVはスパイクタンパク質が宿主細胞受容体に結合するときに宿主細胞に入る。HCoVには、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、重度の急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群関連のコロナウイルス(MERS-CoV)及び重度の急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が含まれる。例えば、細胞へのHcoVの侵入は、SARS、MERS又はCOVID-19を引き起こすことができる。
【0077】
用語「重度の急性呼吸器症候群コロナウイルス2」又は「SARS-CoV-2」は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こすコロナウイルスの系統を指す。実施形態では、SARS-CoV-2は正のセンスの一本鎖RNAウイルスである。SARS-CoV-2はベータコロナウイルス科に属し、そのメンバーには新千年紀に重度疾患の大発生を引き起こしている2つの他の人畜共通ウイルスが含まれる:重度の急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)及び中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)。SARS-CoV-2は、2002~2003年に重度の急性呼吸器症候群(SARS)の流行を誘発したSARS-CoVにほぼ80パーセントの遺伝子類似性を示す。SARS-CoV-2は、2012年に開始してなお持続している中東呼吸器症候群(MERS)の流行の原因であるMERS-CoVとの関係がより離れている。例えば、Yuki等、2020、Clin.Immun.215、108427頁;Chen等2020、J.Med.Virol.92、418~423頁。用語「SARS-CoV」は、SARSコロナウイルスを指す。用語「SARS-CoV」には任意のコロナウイルス、例えばSARS-CoV-2、SARS-CoV-1及びMERS-CoVが含まれる。
【0078】
「COVID-19」は、SARS-CoV-2によって引き起こされる疾患を指す。COVID-19は2~14日間の潜伏期間を有し、症状には、例えば発熱、疲労、咳及び息切れ(例えば、呼吸困難)が含まれる。
【0079】
用語「重度の急性呼吸器症候群コロナウイルス」又は「SARS-CoV-1」は、重度の急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こすコロナウイルスの系統を指す。実施形態では、SARS-CoV-1は、肺の中の上皮細胞に感染する、エンベロープ型の正のセンスの一本鎖RNAウイルスである。実施形態では、ウイルスはアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に結合することによって宿主細胞に入る。
【0080】
「MERS-CoV」は、中東呼吸器症候群関連のコロナウイルスを指す。例えば、Chung等、Genetic Characterization of Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus、South Korea、2018。Emerging Infectious Diseases、25(5):958~962頁(2019)を参照する。
【0081】
「中東呼吸器症候群」又は「MERS」は、MERS-コロナウイルスによって引き起こされる疾患を指す。
【0082】
ヒトオルトニューモウイルスとしても知られる「ヒトRSウイルス」又は「RSV」は、ヒト細胞に感染し、呼吸器管を侵す症状を有する感染症を引き起こすことができるウイルスを指す。実施形態では、RSVは負のセンスの一本鎖RNAウイルスである。RSVは鼻又は目を通して伝播することができ、例えば上下気道の円柱状の上皮細胞に影響を及ぼすことができる。RSVの表面のFタンパク質は、ウイルス及び宿主細胞膜を融合させるために使用することができ、このように宿主細胞の感染をもたらす。例えば、F及びG糖タンパク質は、ウイルス付着及び宿主細胞の感染のために使用される。RSV感染が引き起こすことができる症状及び症候群には、肺炎、呼吸器不全、無呼吸、呼吸窮迫及び遠隔炎症が含まれる。
【0083】
「ヒトパラインフルエンザウイルス」又は「HPIV」は、細胞に感染してヒトパラインフルエンザを引き起こすことができるウイルスを指す。実施形態では、HPIVは一本鎖のRNAウイルスである。HPIVには、ヒトパラインフルエンザウイルス1型、ヒトパラインフルエンザウイルス2型、ヒトパラインフルエンザウイルス3型及びヒトパラインフルエンザウイルス4型が含まれる。例えば、HPIVはウイルスと宿主細胞脂質膜の間の付着及び融合によって宿主細胞に感染する。例えば、HPIVは、細胞侵入のためにエンベロープタンパク質及び融合タンパク質を用いて宿主細胞に付着し、融合することによって細胞に入ることができる。HPIV感染によって引き起こされる症状及び症候群には、下気道感染症、上気道感染症、細気管支炎、肺炎、神経疾患及び気道炎症が含まれる。
【0084】
「ヒトライノウイルス」又は「HRV」は、ヒトに感染して感冒を引き起こすことができるウイルスを指す。HRVには、ライノウイルスA、ライノウイルスB及びライノウイルスCが含まれる。実施形態では、HRVは一本鎖の正センスRNAウイルスである。実施形態では、HRVは呼吸器液滴又は媒介物のエアゾールによって伝播される。HRV感染によって引き起こされる症候群及び症状には、感冒、咽喉炎、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、咳、筋肉痛、疲労及び頭痛が含まれる。
【0085】
「アデノウイルス」又は「ADV」は、細胞に感染することができ、広範囲の呼吸器症状を引き起こすことができるウイルスを指す。実施形態では、ADVは二本鎖DNAゲノムを有する非エンベロープ型のウイルスである。実施形態では、ヒトADV(HAdV)には、アデノウイルスA、アデノウイルスB、アデノウイルスC、アデノウイルスD、アデノウイルスE、アデノウイルスF及びアデノウイルスGが含まれる。例えば、ADVの細胞侵入は、線維タンパク質のノブドメインの宿主細胞受容体への結合によって開始される。例えば、ペントンタンパク質はインテグリン分子と相互作用し、それによってアデノウイルスの侵入を刺激する。アデノウイルス感染によって引き起こされる症状及び症候群には、扁桃炎、細気管支炎及び肺炎が含まれる。
【0086】
本明細書で定義されるように、分子(例えばポリヌクレオチド又はタンパク質)の活性及び/又は機能に関する用語「阻害」、「阻害する」、「阻害すること」などは、阻害がない場合のタンパク質の活性又は機能と比較して、分子の活性又は機能に負の影響を及ぼすこと(例えば、減少又は低減すること)を意味する。したがって、阻害には、シグナル伝達又は酵素活性又はタンパク質若しくはポリヌクレオチドの量の刺激を少なくとも一部、部分的に若しくは完全にブロックすること、減少、阻止するか、又は活性化を遅らせるか不活性化すること、除感作又は下方制御することが含まれる。同様に、「阻害剤」は、例えば、標的生体分子に結合すること、その活性を部分的又は完全にブロックすること、減少すること、阻止すること、遅らせること、不活性化すること、除感作すること又は下方制御することによって、標的生体分子(すなわち自然から見出すことができる核酸、ペプチド、炭水化物、脂質又は任意の他の分子)を阻害する化合物である。疾患予防処置との関連で、阻害は疾患(例えばCovid-19)又は疾患の症状の低減を指す。
【0087】
本明細書で使用されるように(及び当技術分野で良く理解されているように)、「処置すること」又は「処置」は、臨床結果を含む対象の状態の有益であるか又は所望の結果を得るための任意のアプローチも広く含む。有益であるか所望の臨床結果には、限定されずに、1つ以上の症状若しくは状態の軽減又は改善、疾患の程度の減少、疾患の状態を安定させること(すなわち、悪化させないこと)、疾患の伝播又は拡散の予防、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、疾患再発の減少、及び検出可能であるか検出不能である、部分的又は完全な寛解を含めることができる。言い換えると、本明細書で使用される「処置」には、疾患の任意の治癒、改善又は予防が含まれる。処置は、疾患の発生を阻止すること;疾患の拡散を阻害すること;疾患の症状を軽減すること、疾患の根本原因を完全若しくは部分的に取り除くこと、疾患の持続時間を短くすること、又はこれらの事物の組合せを実行することができる。
【0088】
本明細書で使用される「処置すること」及び「処置」には、予防的処置が含まれる。処置方法には、活性薬剤の治療的有効量を対象に投与することが含まれる。投与ステップは単回投与からなることができるか、一連の投与を含むことができる。処置期間の長さは、様々な因子、例えば状態の重症度、患者の年齢、活性薬剤の濃度、処置で使用する組成物の活性、又はそれらの組合せに依存する。処置又は予防のために使用される薬剤の有効投薬量は、特定の処置又は処置レジメンの過程で増減することができることも理解される。投薬量の変化は、当技術分野で公知である標準の診断アッセイがもたらし、明らかにすることができる。一部の場合には、長期投与が必要とされることがある。例えば、組成物は患者を処置するのに十分な量及び期間で対象に投与される。実施形態では、処置すること又は処置は、予防的処置でない。
【0089】
用語「予防する」は、患者における疾患又は疾患症状の発生の減少を指す。上記のように、予防は完全である(検出可能な症状がない)か、又は処置なしでおそらく起こるだろうより少ない症状が観察されるように部分的であってよい。
【0090】
本明細書で使用されるように、疾患の「症状」には、疾患と関連するあらゆる臨床又は検査で発現される徴候を含み、対象が感じるか観察することができるものに限定されない。
【0091】
物質又は疾患に関連した物質の活性若しくは機能との関連で、用語「関連した」又は「と関連した」は、その疾患は(全部又は一部が)、又はその疾患の症状は(全部又は一部が)物質又は物質の活性若しくは機能が引き起こすことができることを意味する。症状、例えば疾患又は状態と関連している症状との関連でこの用語が使用されるとき、それは、症状がその症状を示す対象に存在する疾患又は状態の指標となることができることを意味する。
【0092】
「患者」又は「それを必要とする対象」は、本明細書で提供される医薬組成物の投与によって処置することができる疾患又は状態を患っているかそれを起こしやすい生物を指す。非限定的な例には、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ及び他の非哺乳動物が含まれる。一部の実施形態では、患者はヒトである。
【0093】
「有効量」は、化合物が化合物の不在と比較して明記された目的を達成する(例えば、それが投与される効果を達成するか、疾患を処置するか、酵素活性を低減するか、酵素活性を増加させるか、シグナル伝達経路を低減するか、又は疾患若しくは状態の1つ以上の症状を軽減する)のに十分な量である。「有効量」の例は、疾患の1つ又は複数の症状の処置、予防又は低減に寄与するのに十分な量であり、それは「治療的有効量」と呼ぶこともできる。1つ又は複数の症状の「低減」(及び、この語句の文法的同等物)は、症状(複数可)の重症度若しくは頻度の減少又は症状(複数可)の排除を意味する。薬物の「予防的有効量」は、対象に投与されるときに意図された予防効果を有する、例えば、損傷、疾患、病状若しくは状態の開始(又は、再発)を阻止するか遅らせる、又は損傷、疾患、病状若しくは状態、若しくはそれらの症状の開始(又は、再発)の可能性を低減する薬物の量である。完全な予防効果は1用量の投与によって必ずしも発生するとは限らず、一連の投与の後にだけ発生する可能性がある。したがって、予防的有効量は、1回以上の投与で投与することができる。本明細書で使用されるように、「活性低下量」は、アンタゴニストの不在と比較して酵素の活性を低下させるのに必要なアンタゴニストの量を指す。本明細書で使用されるように、「機能破壊量」は、アンタゴニストの不在と比較して酵素又はタンパク質の機能を破壊するのに必要なアンタゴニストの量を指す。正確な量は処置の目的に依存し、公知の技術を使用して当業技術者が確定することができる(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(第1~3巻、1992);Lloyd、The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar、Dosage Calculations(1999);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2003、Gennaro編、Lippincott、WilliamsとWilkinsを参照する)。
【0094】
本明細書に記載される任意の化合物について、治療的有効量は結合アッセイ又は細胞培養アッセイから最初に決定することができる。目標の濃度は、本明細書に記載されるか当分野で公知である方法を使用して測定したときに、本明細書に記載される方法を達成することが可能な活性化合物(複数可)の濃度である。
【0095】
当技術分野で周知であるように、ヒトで使用される治療的有効量は、動物モデルから決定することもできる。例えば、ヒトのための用量は、動物において有効であると見出された濃度を達成するように処方することができる。ヒトでの投薬量は、前記のように化合物の有効性をモニタリングし、投薬量を上下に調整することによって調整することができる。上記の方法及び他の方法に基づいてヒトで最大効能を達成するように用量を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0096】
本明細書で使用される用語「治療的有効量」は、前記のように障害を改善するのに十分な治療剤の量を指す。例えば、所与のパラメータのために、治療的有効量は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%又は少なくとも100%の増加又は低下を示す。治療的有効性は、「倍」の増加又は低下と表すこともできる。例えば、治療的有効量は対照に対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍又はそれ以上の効果を有することができる。
【0097】
投薬量は、患者の必要量及び用いられる化合物によって変えることができる。患者に投与される用量は、本開示との関連で、患者で有益な治療的応答を経時的に達成するのに十分であるべきである。用量のサイズは、任意の有害副作用の存在、性質及び程度によっても決定される。特定の状況のための適切な投薬量の決定は、治療医師の技能の範囲内である。一般的に、処置は、化合物の最適用量未満であるより小さい投薬量で開始される。その後、状況下の最適効果に到達するまで、投薬量は少量ずつ増加される。処置される特定の臨床適応に有効な投与化合物のレベルを提供するように、投薬の量及び間隔を個々に調整することができる。これは、個体の疾患状態の重症度に相応する治療レジメンを提供する。
【0098】
本明細書で使用されるように、用語「投与する」は、対象への経口投与、エアゾール、乾燥粉末、経鼻噴霧、坐薬、局所接触としての投与、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、病巣内、クモ膜下、鼻腔内又は皮下投与、又は徐放性装置、例えばミニ浸透圧ポンプの植え込みを意味する。投与は、非経口及び経粘膜(例えば、口内、舌下、口蓋、歯肉、経鼻、経腟、直腸又は経皮)を含む、任意の経路による。非経口投与には、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内、心室内及び頭蓋内が含まれる。送達の他の様式には、リポソーム製剤、静脈内注入、経皮パッチなどの使用が含まれるが、これらに限定されない。実施形態では、投与は列挙される活性剤以外のいかなる活性剤の投与も含まない。
【0099】
「同時投与」は、本明細書に記載される組成物が1つ以上の追加の療法の投与と同時に、直前に又は直後に投与されることを意味する。本明細書で提供される化合物は、患者に単独で投与することができるか、又は同時投与することができる。同時投与は、個々の化合物又は組合せた化合物(複数の化合物)の同時又は逐次的投与を含むものである。したがって、調製物は、必要に応じて他の活性物質と(例えば、代謝分解を低減させるために)組み合わせることもできる。本開示の組成物は局所経路により経皮的に送達することができ、又はアプリケータースティック、溶液、懸濁液、乳剤、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、塗布剤、粉末及びエアゾールとして製剤化することができる。調製物は、吸入粘液溶解薬(例えば、当技術分野で公知のrhDNase)と、又は吸入気管支拡張剤(短時間又は長時間作用ベータアゴニスト、短時間又は長時間作用抗コリン作働薬)、吸入コルチコステロイド又は吸入抗生物質と組み合わせ、相加効果又は相乗効果を提供することによってこれらの薬物の有効性を向上させることもできる。本発明の組成物は、局所経路により経皮的に送達すること、アプリケータースティック、溶液、懸濁液、乳剤、ゲル、クリーム、軟膏、ナノ粒子、ペースト、ゼリー、塗布剤、粉末及びエアゾールとして製剤化することができる。経口調製物には、患者による摂取に好適である錠剤、丸剤、粉末、糖衣剤、カプセル、液体、ロゼンジ、カシェ剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等が含まれる。固形調製物には、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、カシェ剤、坐薬及び分散顆粒が含まれる。液状調製物には、溶液、懸濁液及び乳剤、例えば水又は水/プロピレングリコール溶液が含まれる。本発明の組成物は、持続的放出及び/又は快適さを提供するための成分を追加的に含むことができる。そのような成分には、高分子量、アニオン性擬粘膜ポリマー、ゲル化多糖及び微細薬物担体基質が含まれる。これらの成分は、米国特許第4,911,920号;5,403,841号;5,212,162号;及び4,861,760号でより詳細に議論される。これらの特許の全内容は、全ての目的のために参照により完全に本明細書に組み込まれる。本発明の組成物は、体内での徐放性のためにマイクロスフェアとして送達することもできる。例えば、マイクロスフェアは皮下に徐々に放出する薬物含有マイクロスフェアの皮内注射を通して(Rao,J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623~645頁、1995を参照する);生分解性及び注射用ゲル製剤として(例えば、GaoPharm.Res.12:857~863頁、1995を参照する);又は経口投与のためのマイクロスフェアとして(例えば、Eyles、J.Pharm.Pharmacol.49:669~674頁、1997を参照する)投与することができる。別の実施形態では、本発明の組成物の製剤は、細胞膜と融合するか又は飲食運動で取り込まれるリポソームを用いて、すなわち細胞の表面膜タンパク質受容体に結合してエンドサイトーシスをもたらすリポソームに付着している受容体リガンドを用いることによって送達することができる。リポソームを使用することによって、特にリポソーム表面が標的細胞に特異的な受容体リガンドを有するか、さもなければ特異臓器に優先的に向けられる場合、本発明の組成物の送達の焦点をインビボで標的細胞に合わせることができる。(例えば、Al-Muhammed、J.Microencapsul.13:293~306頁、1996;Chonn、Curr.Opin.Biotechnol.6:698~708頁、1995;Ostro、Am.J.Hosp.Pharm.46:1576~1587頁、1989を参照する)。
【0100】
用語「ワクチン」は、特定の疾患又は病原体への活性後天性免疫及び/又はそれの治療効果(例えば処置)を提供することができる組成物を指す。ワクチンは、病原体又は疾患、すなわち標的病原体又は疾患に対して対象で免疫応答を誘導することができる1つ以上の薬剤を一般的に含有する。免疫原性因子は、その因子を標的病原体又は疾患の存在の脅威又は指標として認識するように体の免疫系を刺激し、それによって、免疫系が以降の曝露の後に病原体のいずれもより容易に認識し、破壊することができるように免疫学的記憶を誘導する。ワクチンは予防的(例えば任意の天然の病原体による将来の感染症の、又は素因のある対象におけるがんの予想される発生の影響を阻止又は改善すること)、又は治療的(例えば、がんと診断された対象でがんを処置すること)であってよい。ワクチンの投与は、ワクチン接種と呼ばれる。一部の例では、ワクチン組成物は対象に核酸を、例えば抗原性分子(例えばペプチド)をコードするmRNAを提供することができる。対象においてワクチン組成物を通して送達される核酸は抗原性分子に発現されて、対象が抗原性分子に対して免疫を獲得することを可能にする。感染性疾患に対するワクチン接種との関連で、ワクチン組成物は、ある特定の病原体と関連している抗原性分子、例えば、病原体(例えば病原性の細菌又はウイルス)で発現されることが知られている1つ以上のペプチドをコードするmRNAを提供することができる。ウイルスワクチンとの関連で、ワクチン組成物は、免疫が求められるウイルスに特有のある特定のウイルスペプチド、例えば、ウイルス表面(例えば、カプシド)の上で実質的に排他的に又は高度に発現されるペプチドをコードするmRNAを提供することができる。対象は、ウイルスワクチン組成物によるワクチン接種の後、それを発現する細胞を特異的に死滅させるウイルスペプチドに対する免疫を有することができる。
【0101】
用語「アジュバント」は、免疫学の分野のそのプレーンな通常の意味に従って使用されて、ワクチンの成分として一般的に使用される物質を指す。アジュバントは、ワクチンの一部として1つ以上の特異抗原と一緒に対象に投与されるとき、対象で抗原特異的免疫応答を増加させることができる。実施形態では、アジュバントは抗原への免疫応答を加速させる。実施形態では、アジュバントは抗原への免疫応答を延長する。実施形態では、アジュバントは抗原への免疫応答を増強する。
【0102】
本明細書で使用される用語「免疫応答」は、限定されずに、免疫応答の標的である特異病原体又は特異的な種類の細胞への初期応答の後に適応免疫が免疫学的記憶を導き出し、以降の遭遇の後にその標的への増強された応答につながる「獲得免疫反応」としても知られる「適応免疫応答」を包含する。免疫学的記憶の誘導は、ワクチン接種の根拠を提供することができる。
【0103】
用語「免疫原性」又は「抗原性」は、免疫適格対象に投与されるとき、免疫応答、例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答、B細胞応答(例えば、エピトープに特異的に結合する抗体の産生)、NK細胞応答又はその任意の組合せを誘導する化合物又は組成物を指す。したがって、免疫原性又は抗原性の組成物は、免疫適格対象で免疫応答を導き出すことが可能な組成物である。例えば、免疫原性又は抗原性の組成物は、免疫応答の標的である病原体又は特異的な種類の細胞と関連している1つ以上の免疫原性エピトープを含むことができる。さらに、免疫原性組成物は、エピトープ(複数可)を発現させるために使用することができる(したがって、標的の病原体又は細胞の種類と関連しているポリペプチド又は関連したポリペプチドに対して免疫応答を導き出すために使用することができる)抗原性ポリペプチドの、1つ以上の免疫原性エピトープをコードする単離された核酸構築物(DNA又はRNAなど)を含むことができる。
【0104】
本明細書で提供される方法により、その全ては本明細書で互換的に使用される、本明細書で提供される薬剤、組成物又は複合体(例えば、複合体又はそれを含むワクチン組成物)の1つ以上の有効量を対象に投与することができる。用語「有効量」及び「有効投薬量」は、互換的に使用される。用語「有効量」は、所望の効果(例えば、核酸によって発現される免疫原性ペプチドを発現し、その免疫原性ペプチドの意図された結果を示すこと)をもたらすのに必要な任意の量と規定される。薬剤を投与するための有効量及びスケジュールは、当業者が経験的に決定することができる。投与のための投薬量範囲は、所望の効果、例えば、核酸のトランスフェクション、遺伝子発現のモジュレーション、遺伝子編集、幹細胞の誘導、免疫応答の誘導、その他をもたらすのに十分大きなものである。投薬量は、実質的な有害副作用、例えば望ましくない交差反応、過敏症反応などを引き起こすほどの大きさであるべきでない。一般的に、投薬量は年齢、状態、性別、疾患の種類、疾患若しくは障害の程度、投与経路、又は他の薬物がレジメンに含まれているかどうかによって異なることができ、当業者が決定することができる。いずれかの禁忌症が生じた場合、投薬量は個々の医師が調整することができる。投薬量は異なることができ、1日又は数日の間、毎日1回以上の投与で投与することができる。所与のクラスの医薬品のための適当な投薬量のための指針は、文献中に見出すことができる。例えば、所与のパラメータのために、有効量は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%又は少なくとも100%の増加又は低下を示すことができる。有効性は、「倍」の増加又は低下と表すこともできる。例えば、治療的有効量は対照に対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍又はそれ以上の効果を有することができる。正確な用量及び処方は処置の目的に依存することができ、公知の技術を使用して当業技術者が確定することができる(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(第1~3巻、1992);Lloyd、The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Gennaro、編集者(2003)、及びPickar、Dosage Calculations(1999)を参照する)。
【0105】
本明細書で使用される「細胞」は、そのゲノムDNAを保存又は複製するのに十分な代謝又は他の機能を実行する細胞を指す。細胞は、例えば、インタクトな膜の存在、特定の色素による染色、子孫を残す能力、又は、生殖体の場合、第2の生殖体と合体して生存能力のある子孫を残す能力を含む当技術分野で周知の方法によって同定することができる。細胞は、原核生物及び真核生物の細胞を含むことができる。原核細胞には、限定されずに細菌が含まれる。真核細胞には、限定されずに、酵母細胞並びに植物及び動物に由来する細胞、例えば哺乳動物、昆虫(例えば、spodoptera)及びヒト細胞が含まれる。細胞は、それらが天然に非接着性であるか、又は例えばトリプシン処理によって表面に接着しないように処理されたとき、有益である可能性がある。
【0106】
「対照」又は「対照実験」は、そのプレーンな通常の意味により使用され、実験の対象又は試薬が、実験の手順、試薬又は変数の省略を除いて並行実験におけるように処理される実験を指す。一部の場合には、対照は、実験効果の評価において比較標準として使用される。一部の実施形態では、対照は、本明細書(実施形態及び実施例を含む)に記載される化合物がない場合のタンパク質の活性の測定である。
【0107】
本明細書で使用される用語「結合する」及び「結合している」は、そのプレーンな通常の意味により使用され、原子又は分子の間の結合を指す。結合は、共有結合(例えば、共有結合又はリンカーによる)又は非共有結合(例えば、静電相互作用(例えば、イオン結合、水素結合又はハロゲン結合)、ファンデルワールス相互作用(例えば、双極子間、双極子誘導双極子又はロンドン分散)、環スタッキング(パイ効果)、疎水性相互作用など)であってよい。
【0108】
「接触させる」はそのプレーンな通常の意味により使用され、少なくとも2つの異なる種(例えば生体分子を含む化合物又は細胞)が反応、相互作用又は物理的に接触するのに十分に近接することを可能にするプロセスを指す。しかし、生じる反応生成物は、加えた試薬の間の反応から、又は反応混合物中で生成することができる、加えた試薬の1つ以上からの中間体から直接的に生成することができることを理解すべきである。
【0109】
用語「接触させる」は、2つの種が反応、相互作用又は物理的に接触することを可能にすることを含むことができ、ここで、2つの種は本明細書に記載される化合物及びタンパク質又は酵素であってよい。一部の実施形態では、接触させることは、本明細書に記載される化合物がシグナル伝達経路に関与するタンパク質又は酵素と相互作用することを可能にすることを含む。
【0110】
本明細書で使用されるように、2つの部分に言及するときの用語「コンジュゲートした」は、2つの部分(例えばナノ粒子外層及び核酸)が結合していることを意味し、ここで、2つの部分を連結する1つ又は複数の結合は、共有結合又は非共有結合であってよい。実施形態では、2つの部分は互いと共有結合している(例えば、直接的に、又は共有結合した中間物を通して)。実施形態では、2つの部分は非共有結合している(例えば、イオン結合(複数可)、ファンデルワールス結合(複数可)/相互作用、水素結合(複数可)、極性結合(複数可)又はそれらの組合せ若しくは混合を通して)。
【0111】
本明細書で使用されるように、用語「バイオコンジュゲート」及び「バイオコンジュゲートリンカー」は、「バイオコンジュゲート反応基」又は「バイオコンジュゲート反応性部分」の原子又は分子の間で生じる結合を指す。結合は直接的であっても間接的であってもよい。例えば、本明細書で提供される第1のバイオコンジュゲート反応基(例えば、-NH2、-C(O)OH、-N-ヒドロキシスクシンイミド又は-マレイミド)及び第2のバイオコンジュゲート反応基(例えば、スルフヒドリル、含硫アミノ酸、アミン、アミノ酸を含有するアミン側鎖又はカルボキシレート)の間のコンジュゲートは、直接的、例えば共有結合若しくはリンカー(例えば第2のリンカーの第1のリンカー)によるものであってよいか、又は間接的、例えば非共有結合(例えば、静電相互作用(例えば、イオン結合、水素結合、ハロゲン結合)、ファンデルワールス相互作用(例えば、双極子間、双極子誘導双極子、ロンドン分散)、環スタッキング(パイ効果)、疎水性相互作用など)によるものであってもよい。実施形態では、バイオコンジュゲート又はバイオコンジュゲートリンカーは、求核置換(例えば、アミン及びアルコールのハロゲン化アシル、活性エステルとの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)、並びに炭素間及び炭素-ヘテロ原子の間の多重結合への付加(例えば、マイケル反応、ディールス-アルダー付加)を限定されずに含む、バイオコンジュゲート化学(すなわち、2つのバイオコンジュゲート反応基の結合)を使用して形成される。これら及び他の有益な反応は、例えば、March、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY、第3版、John Wiley & Sons、New York、1985;Hermanson、BIOCONJUGATE TECHNIQUES、Academic Press、San Diego、1996;及びFeeney等、MODIFICATION OF PROTEINS;Advances in Chemistry Series、第198巻、American Chemical Society、Washington、D.C.、1982で議論される。実施形態では、第1のバイオコンジュゲート反応基(例えば、マレイミド部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応基(例えばスルフヒドリル)に共有結合する。実施形態では、第1のバイオコンジュゲート反応基(例えば、ハロアセチル部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応基(例えばスルフヒドリル)に共有結合する。実施形態では、第1のバイオコンジュゲート反応基(例えば、ピリジル部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応基(例えばスルフヒドリル)に共有結合する。実施形態では、第1のバイオコンジュゲート反応基(例えば、-N-ヒドロキシスクシンイミド部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応基(例えばアミン)に共有結合する。実施形態では、第1のバイオコンジュゲート反応基(例えば、マレイミド部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応基(例えばスルフヒドリル)に共有結合する。実施形態では、第1のバイオコンジュゲート反応基(例えば、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド部分)は、第2のバイオコンジュゲート反応基(例えばアミン)に共有結合する。
【0112】
本明細書でバイオコンジュゲート化学のために使用される有益なバイオコンジュゲート反応性部分には、例えば、以下のものが含まれる:
(a)N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、酸ハライド、アシルイミダゾール、チオエステル、p-ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニル及び芳香族エステルを限定されずに含むカルボキシル基及びその様々な誘導体;
(b)エステル、エーテル、アルデヒド等に変換することができるヒドロキシル基
(c)ハライドを後に求核基、例えば、アミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カルバニオン又はアルコキシドイオンで置換し、それによってハロゲン原子の部位で新規の基の共有結合をもたらすことができるハロアルキル基;
(d)ディールス-アルダー反応に関与することが可能である求ジエン体基、例えばマレイミド又はマレイミド基;
(e)以降の誘導体化がカルボニル誘導体、例えばイミン、ヒドラゾン、セミカルバゾン若しくはオキシムの形成を通して、又はグリニヤール付加若しくはアルキルリチウム付加のような機構を通して可能であるようなアルデヒド又はケトン基;
(f)例えばスルホンアミドを形成するためのアミンとの後の反応のためのスルホニルハライド基;
(g)ジスルフィドに変換し、ハロゲン化アシルと反応させるか又は金などの金属に結合するか、又はマレイミドと反応させることができるチオール基;
(h)例えば、アシル化、アルキル化又は酸化することができるアミン又はスルフヒドリル基(例えば、システインに存在する);
(i)例えば環化付加、アシル化、マイケル付加等を受けることができるアルケン;
(j)例えばアミン及びヒドロキシル化合物と反応することができるエポキシド;
(k)核酸合成で有益なホスホラミダイト及び他の標準の官能基;
(l)金属酸化ケイ素結合;及び
(m)例えばホスフェートジエステル結合を形成するための反応性リン酸基(例えばホスフィン)への金属結合。
【0113】
(n)銅触媒環化付加クリック化学を使用してアルキンに結合したアジド。
【0114】
(o)ビオチンコンジュゲートはアビジン又はストレプトアビジンと反応してアビジン-ビオチン複合体又はストレプトアビジン-ビオチン複合体を形成することができる。
【0115】
バイオコンジュゲート反応基は、それらが本明細書に記載されるコンジュゲートの化学的安定性に関与しないように、又はそれに干渉しないように選択することができる。或いは、反応性官能基は、保護基の存在によって架橋反応への関与から保護することができる。実施形態では、バイオコンジュゲートは、不飽和結合の反応に由来する分子実体、例えばマレイミド及びスルフヒドリル基を含む。
【0116】
「検出可能な薬剤」又は「検出可能な部分」は、適当な手段、例えば分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、磁気共鳴画像化又は他の物理的手段によって検出可能な組成物、物質、エレメント又は化合物;又はその部分である。例えば、有益な検出可能な薬剤には、18F、32P、33P、45Ti、47Sc、52Fe、59Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、77As、86Y、90Y、89Sr、89Zr、94Tc、94Tc、99mTc、99Mo、105Pd、105Rh、111Ag、111In、123I、124I、125I、131I、142Pr、143Pr、149Pm、153Sm、154~15811Gd、161Tb、166Dy、166Ho、169Er、175Lu、177Lu、186Re、188Re、189Re、194Ir、198Au、199Au、211At、211Pb、212Bi、212Pb、213Bi、223Ra、225Ac、Cr、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、32P、蛍光体(例えば蛍光性色素)、電子高密度試薬、酵素(例えば、ELISAで一般的に使用されるような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、常磁性分子、常磁性ナノ粒子、極小超常磁性酸化鉄(「USPIO」)ナノ粒子、USPIOナノ粒子凝集体、超常磁性酸化鉄(「SPIO」)ナノ粒子、SPIOナノ粒子凝集体、単結晶酸化鉄ナノ粒子、単結晶酸化鉄、ナノ粒子造影剤、リポソーム又はガドリニウムキレート(「Gd-キレート」)分子を含有する他の送達ビヒクル、ガドリニウム、放射性同位体、放射性核種(例えば炭素-11、窒素-13、酸素-15、フッ素-18、ルビジウム-82)、フッ化デオキシグルコース(例えば、フッ素-18標識)、任意のガンマ線放射性核種、陽電子放射性核種、放射標識グルコース、放射標識水、放射標識アンモニア、生体コロイド、マイクロバブル(例えばアルブミン、ガラクトース、脂質及び/又はポリマーを含むマイクロバブルシェルを含む;空気、重い気体(複数可)、パーフルオロカーボン、窒素、オクタフルオロプロパン、ペルフレキサン脂質マイクロスフェア、ペルフルトレン等を含むマイクロバブル気体コア)、ヨウ素化造影剤(例えばイオヘキソール、イオジキサノール、イオベルソール、イオパミドール、イオキシラン、イオプロミド、ジアトリゾエート、メトリゾ酸、イオキサグラート)、硫酸バリウム、二酸化トリウム、金、金ナノ粒子、金ナノ粒子凝集体、蛍光体、2光子蛍光体又はハプテン及びタンパク質、又は例えば放射性標識を標的ペプチドと特異的に反応するペプチド又は抗体に組み込むことによって検出可能にすることができる他の実体が含まれる。検出可能な部分は、一価の検出可能な薬剤又は別の組成物と結合を形成することが可能である検出可能な薬剤である。
【0117】
本開示の実施形態によって画像化及び/又は標識剤として使用することができる放射性物質(例えば、放射性同位体)には、限定されずに、18F、32P、33P、45Ti、47Sc、52Fe、59Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、77As、86Y、90Y、89Sr、89Zr、94Tc、94Tc、99mTc、99Mo、105Pd、105Rh、111Ag、111In、123I、124I、125I、131I、142Pr、143Pr、149Pm、153Sm、154~1581Gd、161Tb、166Dy、166Ho、169Er、175Lu、177Lu、186Re、188Re、189Re、194Ir、198Au、199Au、211At、211Pb、212Bi、212Pb、213Bi、223Ra及び225Acが含まれる。本開示の実施形態によって追加の画像化剤として使用することができる常磁性イオンには、限定されずに、遷移及びランタニド金属(例えば21~29、42、43、44又は57~71の原子番号を有する金属)のイオンが含まれる。これらの金属には、Cr、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのイオンが含まれる。
【0118】
本明細書で使用されるように、用語「オリゴマー」及び「ポリマー」は、複数の反復サブユニット(例えば、重合した単量体)を有する化合物を指す。用語「コオリゴマー」又は「コポリマー」は、2つ以上の異なる残基(本明細書で互換的に使用される単量体単位又は単量体)を含むオリゴマー又はポリマーを指す。オリゴマー中の単量体の数は、一般的にポリマー中の単量体の数未満である。したがって、一部の例では、オリゴマーは、1~約10単量体、1~約20単量体、1~約30単量体、1~約40単量体、1~約50単量体、1~約100単量体、1~約150単量体、1~約200単量体、1~約250単量体、1~約300単量体、1~約350単量体、1~約400単量体、1~約450単量体又は1~約500単量体の長さを有することができる。一部の例では、オリゴマーは、約500未満の単量体、約450未満の単量体、約400未満の単量体、約350未満の単量体、約300未満の単量体、約250未満の単量体、約200未満の単量体、約150未満の単量体、約100未満の単量体、約50未満の単量体、約40未満の単量体、約30未満の単量体、約20未満の単量体又は約10未満の単量体の長さを有することができる。ポリマーとの関連で、ポリマー中の単量体の数は、一般的にオリゴマー中の単量体の数より多い。したがって、一部の例では、ポリマーは、約500~約1000単量体、約500~約2000単量体、約500~約3000単量体、約500~約4000単量体、約500~約5000単量体、約500~約6000単量体、約500~約7000単量体、約500~約8000単量体、約500~約9000単量体、約500~約10000単量体、又は10000より多い単量体の長さを有することができる。実施形態では、ポリマーはバイオポリマーである。本明細書で使用されるように、「バイオポリマー」は生体の細胞で生成されるポリマーを指す。実施形態では、ポリマーは多糖である。実施形態では、ポリマーはカチオン性多糖である。実施形態では、多糖は有機単量体(例えば単糖)の反復単位又は複数の異なる有機単量体の反復単位である。実施形態では、多糖は単糖(例えばグルコサミン、グルコース、メチルグルコシド等)の反復単位又は複数の異なる単糖の反復単位である。実施形態では、多糖はグリカンである。
【0119】
用語「重合性単量体」は、ポリマー化学の分野でのその意味によって使用され、他の単量体分子(同じであるか異なる他の重合性単量体など)に化学的に共有結合してポリマーを形成することができる化合物を指す。
【0120】
用語「ブロックコポリマー」はその通常の意味によって使用され、共有結合によって連結される重合単量体の2つ以上の部分(例えば、ブロック)を指す。実施形態では、ブロックコポリマーはポリマーの反復パターンである。実施形態では、ブロックコポリマーは周期的(例えば、反復パターン)配列に2つ以上の単量体を含む。例えば、ジブロックコポリマーは式:-B-B-B-B-B-B-A-A-A-A-A-を有し、式中、「B」は第1のサブユニットであり、「A」は一緒に共有結合している第2のサブユニットである。したがって、トリブロックコポリマーは3つの異なるブロックを有するコポリマーであり、その2つは同じである(例えば、-A-A-A-A-A-B-B-B-B-B-B-A-A-A-A-A-)か、又は全3つは異なってもよく(例えば、-A-A-A-A-A-B-B-B-B-B-B-C-C-C-C-C-)、式中、「A」は第1のサブユニットであり、「B」は第2のサブユニットであり、「C」は一緒に共有結合している第3のサブユニットである。
【0121】
「平均分子量」という語句は、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、ポリスチレン標準を使用した分子量較正曲線を使用したゲル浸透クロマトグラフィー(別名、GPC又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC))によって決定されたポリマーの重量平均分子量を指す。
【0122】
本明細書で使用される「ナノ粒子」は、最長直径が1000ナノメートル以下である粒子である。ナノ粒子の最長寸法は、本明細書でナノ粒子の長さと呼ぶことができる。ナノ粒子の最短寸法は、本明細書でナノ粒子の幅と呼ぶことができる。ナノ粒子は、任意の適当な物質で構成されてもよい。例えば、ナノ粒子コアは、適当な金属及びその金属酸化物(例えば、金属ナノ粒子コア)、炭素(例えば、有機ナノ粒子コア)、ケイ素及びその酸化物(例えば、ケイ素ナノ粒子コア)又はホウ素及びその酸化物(例えば、ホウ素ナノ粒子コア)、又はそれらの混合物を含むことができる。実施形態では、ナノ粒子は球体、桿状体、星状体、立方体、三角形、六角形、円柱、球円柱又は楕円体の形状を有する。ナノ粒子は、ナノ粒子コアのほとんど(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%)又は全てをカバーする外層をさらに含むことができる。ナノ粒子の外層は、1つ以上の生体分子(例えば肺ウイルスタンパク質、前記肺ウイルスタンパク質をコードする核酸)に結合する部分を含むことができる。
【0123】
「無機ナノ粒子」は、炭素なしのナノ粒子を指す。例えば、無機ナノ粒子は、金属若しくはその金属酸化物(例えば、金ナノ粒子、鉄ナノ粒子)、ケイ素及びその酸化物(例えば、シリカナノ粒子)、又はチタン及びその酸化物(例えば、二酸化チタンナノ粒子)を指すことができる。実施形態では、無機ナノ粒子は金ナノ粒子である。無機ナノ粒子は、金属ナノ粒子であってよい。ナノ粒子が金属である場合、金属はチタン、ジルコニウム、金、銀、プラチナ、セリウム、ヒ素、鉄、アルミニウム又はケイ素であってよい。金属ナノ粒子は、チタン、ジルコニウム、金、銀又はプラチナ及びその適当な金属酸化物であってよい。実施形態では、ナノ粒子は酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ヒ素、酸化鉄、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素である。金属酸化物ナノ粒子は、酸化チタン又は酸化ジルコニウムであってよい。ナノ粒子は、チタンであってよい。ナノ粒子は、金であってよい。実施形態では、金属ナノ粒子は金ナノ粒子である。実施形態では、無機ナノ粒子は、炭素を含有する部分をさらに含むことができる。
【0124】
用語「アジュバント」は、免疫学の分野のそのプレーンな通常の意味に従って使用され、ワクチンの成分として一般的に使用される物質を指す。アジュバントは、ワクチンの一部として1つ以上の特異抗原と一緒に対象に投与されるとき、対象で抗原特異的免疫応答を増加させることができる。実施形態では、アジュバントは抗原への免疫応答を加速させる。実施形態では、アジュバントは抗原への免疫応答を延長する。実施形態では、アジュバントは抗原への免疫応答を増強する。
【0125】
用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書に記載される化合物で見出される特定の置換基によって、比較的無毒の酸又は塩基で調製される活性化合物の塩を含むものである。本開示の化合物が比較的酸性の官能性を有する場合は、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形を十分な量の所望の塩基と正味で、又は好適な不活性溶媒中で接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ又はマグネシウム塩、又は類似の塩が含まれる。本開示の化合物が比較的塩基性の官能性を有する場合は、酸付加塩は、そのような化合物の中性形を十分な量の所望の酸と正味で、又は好適な不活性溶媒中で接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素、リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、硫酸、硫酸一水素、ヨウ化水素酸又は亜リン酸などの無機酸に由来するもの、並びに、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、メタンスルホン酸などの比較的無毒の有機酸に由来する塩が含まれる。アルギン酸などのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge等、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science、1977、66、1~19頁を参照する)。本開示のある特定の具体的な化合物は、化合物を塩基又は酸付加塩に変換させる、塩基性及び酸性の官能性を有する。
【0126】
「薬学的に許容される賦形剤」及び「薬学的に許容される担体」は、活性剤の対象への投与及び吸収を助ける物質を指し、患者に有意な有害毒性作用を引き起こすことなく、本開示の組成物に含ませることができる。薬学的に許容される賦形剤の非限定例には、水、NaCl、正常な食塩水、乳酸加リンガー液、正常なスクロース、正常なグルコース、結合剤、フィラー、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味料、香料、塩溶液(リンガー液など)、アルコール、オイル、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース、アミロース又はデンプン、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、及び着色剤などが含まれる。そのような調製物は滅菌されてもよく、所望により、補助剤、例えば滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響するための塩、緩衝液、着色剤、及び/又は本開示の化合物と有害反応を起こさない芳香族物質などと混合されてもよい。当業者は、他の医薬用賦形剤が本開示で有益であることを認める。
【0127】
用語「調製物」は、他の担体の有無にかかわらずに活性成分が担体によって囲まれ、したがってそれと合体しているカプセルを提供する担体としてのカプセル化材による、活性化合物の製剤化を含むものである。同様に、カシェ剤及びロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸剤、カシェ剤及びロゼンジは、経口投与のために好適な固体剤形として使用することができる。
【0128】
本明細書で使用される「相乗効果量」は、相乗効果(すなわち、相加効果より大きい効果)をもたらす、第1の量(例えば、本明細書で提供される化合物の量)及び第2の量(例えば、治療剤)の合計を指す。したがって、本明細書で互換的に使用される用語「相乗効果」、「相乗作用」、「相乗的」、「複合的相乗効果量」及び「相乗的治療効果」は、組合せで投与される化合物の測定される効果を指し、ここで、測定される効果は、単剤として単独で投与される本明細書で提供される化合物の各々の個々の効果の合計より大きい。
【0129】
実施形態では、相乗効果量は、治療剤と別々に使用されるときの本明細書で提供される化合物の量の約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%であってよい。実施形態では、相乗効果量は、本明細書で提供される化合物と別々に使用されるときの治療剤の量の約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%であってよい。
【0130】
複合体
本明細書では、とりわけ、1つ以上の肺ウイルスタンパク質又は肺ウイルスタンパク質をコードする1つ以上の核酸に結合しているナノ粒子を含む複合体が提供される。本明細書で使用される場合、「肺ウイルス」という用語は、細胞(例えば、ヒト細胞)内に侵入して複製し、肺及び/又は気道に影響を与える感染症(単数又は複数)を引き起こすウイルスを指す。例えば、肺ウイルス感染症は、息切れ(呼吸困難)、息苦しさ、疲労、咳、及び胸痛が挙げられるが、これらに限定されない症状を引き起こし得る。肺ウイルスによって引き起こされる臨床症候群としては、風邪、急性及び慢性気管支炎、細気管支炎、クループ、肺炎、喘息、気管支拡張症、肺炎、肺塞栓症、肺高血圧症、サルコイドーシス、睡眠時無呼吸、及び遠隔炎症作用を挙げることができる。複数の実施形態では、肺ウイルスは、表2に列挙されるような1つ以上の症候群を引き起こす。したがって、「肺ウイルスタンパク質」は、肺ウイルス(例えば、ヒトコロナウイルス、アデノウイルスなど)のゲノム内にコードされるタンパク質(例えば、スパイクタンパク質など)を指す。
【0131】
本明細書(その実施形態を含む)で提供される複合体はナノ粒子を含み、ナノ粒子は金のコアを含む。金のコアは、ウイルスタンパク質又はウイルスタンパク質をコードする核酸をナノ粒子に(例えば、間接的又は直接的な結合によって)結合しやすい。場合によっては、ウイルスタンパク質又は核酸は、例えば、共有結合リンカー(例えば、ペプチドリンカー、化学リンカー、バイオコンジュゲートリンカーなど)を介して、若しくはナノ粒子外層との結合を介して、ナノ粒子金のコアに間接的に結合してもよい。したがって、ある態様では、(a)金のコアを含むナノ粒子;及び(b)肺ウイルスタンパク質若しくはその断片、又は肺ウイルスタンパク質若しくはその断片をコードする核酸であって、肺ウイルスタンパク質又は核酸がナノ粒子に結合している核酸を含む複合体が提供される。複数の実施形態では、複合体は、少なくとも1つの肺ウイルスタンパク質若しくはその断片、及び肺ウイルスタンパク質若しくはその断片をコードする少なくとも1つの核酸を含む。
【0132】
複数の実施形態では、複合体は、複数の肺ウイルスタンパク質又はその断片を含む。複数の実施形態では、複数の肺ウイルスタンパク質は、異なる肺ウイルスタンパク質を含む。複数の実施形態では、複合体は、肺ウイルスタンパク質又はその断片をコードする複数の核酸を含む。複数の実施形態では、複数の核酸は、異なる肺ウイルスタンパク質若しくはその断片をコードする。複数の実施形態では、複合体は、複数の肺ウイルスタンパク質又はその断片、及び肺ウイルスタンパク質又はその断片をコードする複数の核酸を含む。
【0133】
複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質は、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(HRSV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPV)、ヒトライノウイルス(HRV)、アデノウイルス(ADV)、ヒトコロナウイルス(HCoV)、SARSと関連したコロナウイルス(SARS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)、又はヒトボカウイルス(HBoV)由来のタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質は、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(HRSV)由来のタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質は、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPV)由来のタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質は、ヒトライノウイルス(HRV)由来のタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質は、アデノウイルス(ADV)由来のタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質は、ヒトコロナウイルス(HCoV)由来のタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質は、SARSに関連するコロナウイルス(SARS-CoV)由来のタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質は、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)由来のタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質は、ヒトボカウイルス(HBoV)由来のタンパク質である。
【0134】
複数の実施形態では、HRSV由来の肺ウイルスタンパク質は、糖タンパク質G(受容体結合)、糖タンパク質F(膜融合)、又は糖タンパク質SHである。複数の実施形態では、HRSV由来の肺ウイルスタンパク質は、糖タンパク質Gである。複数の実施形態では、HRSV由来の肺ウイルスタンパク質は、糖タンパク質Fである。複数の実施形態では、HRSV由来の肺ウイルスタンパク質は、糖タンパク質SHである。複数の実施形態では、HPV由来の肺ウイルスタンパク質は、HN四量体、Fタンパク質三量体、又はマトリックスタンパク質(M)である。複数の実施形態では、HPV由来の肺ウイルスタンパク質はHN-四量体である。複数の実施形態では、HPV由来の肺ウイルスタンパク質は、Fタンパク質三量体である。複数の実施形態では、HPV由来の肺ウイルスタンパク質は、マトリックスタンパク質(M)である。複数の実施形態では、HRV由来の肺ウイルスタンパク質は、ウイルスキャプシド糖タンパク質VP1、ウイルスキャプシド糖タンパク質VP2、ウイルスキャプシド糖タンパク質VP3、又はウイルスキャプシド糖タンパク質VP4である。複数の実施形態では、HRV由来の肺ウイルスタンパク質は、ウイルスキャプシド糖タンパク質VP1である。複数の実施形態では、HRV由来の肺ウイルスタンパク質は、ウイルスキャプシド糖タンパク質VP2である。複数の実施形態では、HRV由来の肺ウイルスタンパク質は、ウイルスキャプシド糖タンパク質VP3である。複数の実施形態では、HRV由来の肺ウイルスタンパク質は、ウイルスキャプシド糖タンパク質VP4である。複数の実施形態では、ADV由来の肺ウイルスタンパク質は、ヘキソン(Hexon)、ペントン(Penton)、ファイバー(Fiber)、IIIa、VIII、又はIXである。複数の実施形態では、ADV由来の肺ウイルスタンパク質はヘキソンである。複数の実施形態では、ADV由来の肺ウイルスタンパク質は、ペントンである。複数の実施形態では、ADV由来の肺ウイルスタンパク質は、ファイバーである。複数の実施形態では、ADV由来の肺ウイルスタンパク質は、IIIaである。複数の実施形態では、ADV由来の肺ウイルスタンパク質は、VIIIである。複数の実施形態では、ADV由来の肺ウイルスタンパク質は、IXである。複数の実施形態では、HCoV由来の肺ウイルスタンパク質は、エンベロープ、膜、スパイクタンパク質、又はヌクレオキャプシドタンパク質である。複数の実施形態では、HCoV由来の肺ウイルスタンパク質は、エンベロープタンパク質である。複数の実施形態では、HCoV由来の肺ウイルスタンパク質は、膜タンパク質である。複数の実施形態では、HCoV由来の肺ウイルスタンパク質は、スパイクタンパク質である。複数の実施形態では、HCoV由来の肺ウイルスタンパク質は、ヌクレオキャプシドタンパク質である。複数の実施形態では、SARS-CoV由来の肺ウイルスタンパク質は、エンベロープ、膜、スパイクタンパク質、又はヌクレオキャプシドタンパク質である。複数の実施形態では、SARS-CoV由来の肺ウイルスタンパク質は、エンベロープタンパク質である。複数の実施形態では、SARS-CoV由来の肺ウイルスタンパク質は、膜タンパク質である。複数の実施形態では、SARS-CoV由来の肺ウイルスタンパク質は、スパイクタンパク質である。複数の実施形態では、SARS-CoV由来の肺ウイルスタンパク質は、ヌクレオキャプシドタンパク質である。複数の実施形態では、HMPV由来の肺ウイルスタンパク質は、糖タンパク質-G、融合タンパク質-F、核タンパク質-N、SH-タンパク質、又はマトリックスタンパク質である。複数の実施形態では、HMPV由来の肺ウイルスタンパク質は、糖タンパク質-Gである。複数の実施形態では、HMPV由来の肺ウイルスタンパク質は、融合タンパク質-Fである。複数の実施形態では、HMPV由来の肺ウイルスタンパク質は、ヌクレオプロテイン-Nである。複数の実施形態では、HMPV由来の肺ウイルスタンパク質は、SHタンパク質である。複数の実施形態では、HMPV由来の肺ウイルスタンパク質は、マトリックスタンパク質である。複数の実施形態では、HBoV由来の肺ウイルスタンパク質は、ウイルスキャプシドタンパク質1(VP2)又はウイルスキャプシドタンパク質2(VP2)である。複数の実施形態では、HBoV由来の肺ウイルスタンパク質は、ウイルスキャプシドタンパク質1(VP2)である。複数の実施形態では、HBoV由来の肺ウイルスタンパク質は、ウイルスキャプシドタンパク質2(VP2)である。
【0135】
複数の実施形態では、肺ウイルスはSARS-CoV-2である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質又はその断片は、Sタンパク質、Nタンパク質、Mタンパク質、又はEタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質又はその断片は、Sタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質又はその断片は、Nタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質又はその断片は、Mタンパク質である。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質又はその断片は、Eタンパク質である。したがって、複数の実施形態では、核酸は、Sタンパク質、Nタンパク質、Mタンパク質、又はEタンパク質をコードする。複数の実施形態では、核酸はSタンパク質をコードする。複数の実施形態では、核酸はNタンパク質をコードする。複数の実施形態では、核酸はMタンパク質をコードする。複数の実施形態では、核酸はEタンパク質をコードする。
【0136】
本明細書で提供される複合体について、複数の実施形態では、金のコアは、金-酸化鉄コアである。場合によっては、酸化鉄成分は、イメージング又は診断法(例えば、MRI)のために使用されてもよい。
【0137】
本明細書で提供される複合体について、複数の実施形態では、ナノ粒子は、外層を金のコアに結合させることによって修飾される。したがって、複数の実施形態では、ナノ粒子は外層を含む。ナノ粒子の外層は、ウイルスタンパク質又はウイルスタンパク質をコードする核酸が(例えば、共有結合化学による静電相互作用(例えば、イオン結合、水素結合、ハロゲン結合)又は疎水性相互作用によって)ナノ粒子に結合され得る官能基を有する化合物(例えば、ポリマー、カチオン性多糖類)を含み得る。ウイルスタンパク質又は核酸を外層に共有結合させるために、当技術分野で周知であり、本明細書に記載されている共有結合法が使用され得る。
【0138】
複数の実施形態では、ナノ粒子の外層は、ナノ粒子コアに共有結合的に結合される(例えば、外層上のチオール基(-SH)の金のコアの表面への結合による)。複数の実施形態では、ナノ粒子の外層は、ナノ粒子コアに非共有結合的に結合する(例えば、金のコアとのイオン静電相互作用)。例えば、金のコアの負に帯電した表面は、イオン相互作用を介して正に帯電した外面(例えば、キトサン、キトサン-シクロデキストリン)に結合することができる。
【0139】
複数の実施形態では、外層はポリマーを含む。複数の実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)又はポリアミドアミン(PAMAM)である。複数の実施形態では、ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である。複数の実施形態では、ポリマーはポリエチレンイミン(PEI)である。複数の実施形態では、ポリマーはポリアミドアミン(PAMAM)である。複数の実施形態では、外層はカチオン性多糖類を含む。複数の実施形態では、カチオン性多糖類にはキトサンが含まれる。複数の実施形態では、カチオン性多糖類には、キトサン-シクロデキストリンが含まれる。したがって、一複数の実施形態では、外層は、非共有結合相互作用によってナノ粒子金のコアに結合しているキトサン多糖である。別の実施形態では、外層は、非共有相互作用によってナノ粒子金のコアに結合しているキトサン-シクロデキストリン多糖類である。
【0140】
複数の実施形態では、外層は、第一級アミン基を含むアミノ酸を含む。複数の実施形態では、外層は、チオール(-SH)基を含む。例えば、外層上のチオール基は、外層をナノ粒子コアに結合するために使用され得る。ナノ粒子の製造方法は、Sukumar,U.K.;Bose,R.J.C.;Malhotra,M.;Babikir,H.A.;Afjei,R.;Robinson,E.;Zeng,Y.;Chang,E.;Habte,F.;Sinclair, R.;Gambhir,S.S.;Massoud,T.F.;Paulmurugan,R.,Intranasal delivery of targeted polyfunctional gold-iron oxide nanoparticles loaded with therapeutic microRNAs for combined theranostic multimodality imaging and presensitization of glioblastoma to temozolomide.Biomaterials 2019,218,119342.にさらに記載されており、これは、全ての目的のために、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0141】
複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質又はタンパク質をコードする核酸は、ナノ粒子に共有結合される。例えば、チオールで官能化された肺ウイルスタンパク質又は核酸は、ナノ粒子金のコアに吸着してもよい。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質又は核酸は、ナノ粒子の外層に共有結合される。例えば、ナノ粒子外層は、ウイルスタンパク質又は該ウイルスタンパク質をコードする核酸上の第2の反応部分と共有結合を形成できる第1の反応部分を含んでもよい。例えば、ナノ粒子外層上のチオール基は、ウイルスタンパク質又は核酸上のチオール基と反応して、共有ジスルフィド結合を形成してもよい。例えば、共有結合反応部分で修飾された核酸又はタンパク質は、本明細書に記載され、当技術分野で既知の様々な結合方法を使用して、ナノ粒子外層に共有結合してもよい。
【0142】
複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質又は核酸は、ナノ粒子に非共有結合している。例えば、肺ウイルスタンパク質又は核酸は、非共有結合(例えば、静電相互作用(例えば、イオン結合、水素結合、ハロゲン結合)、疎水性相互作用)によってナノ粒子に結合し得る。例えば、官能化又は非官能化タンパク質は、疎水性相互作用を介してナノ粒子金のコアに結合してもよい。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質又は核酸は、ナノ粒子の外層に非共有結合で結合している。例えば、負に帯電した核酸は、非共有結合(例えば、イオン静電相互作用)によって正に帯電した外層(例えば、キトサン)に結合してもよい。
【0143】
複数の実施形態では、核酸はデオキシリボ核酸である。複数の実施形態では、核酸はリボ核酸である。核酸は、安定性及び/又は細胞透過性を高めるなどのために、化学的に修飾され得る。本明細書で提供される核酸は、1つ以上の反応性部分、例えば共有結合反応性部分を含み得る。反応性部分は、当技術分野において既知のポリマーリンカー(例えば、ポリエチレングリコールリンカー又は同等物)などの任意の適切なリンカーを使用して核酸に結合され得る。本明細書で使用される場合、「共有結合反応性部分」という用語は、第2の共有結合反応性部分(例えば、ポリマー(例えば、ポリマー外層)上の官能基)と化学反応して共有結合を形成することができる化学部分を指す。同様に、本明細書(その実施形態を含む)で提供される肺ウイルスタンパク質は、(例えば、安定性及び/又は細胞浸透性を高めるために)修飾され得る。複数の実施形態では、肺ウイルスタンパク質は、ナノ粒子(例えば、ナノ粒子コア、ナノ粒子外層)に結合する手段として、反応性部分(例えば、チオール基など)を含むように修飾され得る。
【0144】
複数の実施形態では、本明細書で提供される複合体は、検出可能な部分を含む。検出可能な部分は、当技術分野において既知であり、本明細書に記載されるいずれかのものとすることができる。複数の実施形態では、検出可能な部分は、酵素、ビオチン、ジゴキシゲニン、常磁性分子、造影剤、ガドリニウム、放射性同位体、放射性核種、フルオロデオキシグルコース、硫酸バリウム、二酸化トリウム、金、フルオロフォア、ハプテン、タンパク質、蛍光部分、又はそれらの2つ以上の組合せである。複数の実施形態では、造影剤は、磁気共鳴画像造影剤、X線造影剤、又はヨウ化造影剤である。複数の実施形態では、検出可能な薬剤はフルオロフォア(例えば、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、シアニン、又はそれらの類似体)である。複数の実施形態では、検出可能な薬剤は化学発光剤である。複数の実施形態では、検出可能な薬剤は放射性核種である。複数の実施形態では、検出可能な薬剤は放射性同位体である。複数の実施形態では、検出可能な薬剤は、常磁性分子又は常磁性ナノ粒子である。検出可能な部分は、ナノ粒子コア、ナノ粒子の外層、肺ウイルスタンパク質、又は核酸に結合することができる。複数の実施形態では、検出可能な部分は酵素(例えば検出可能なタンパク質(例えばルシフェラーゼ))である。複数の実施形態では、複合体は検出可能なタンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)を含み、このタンパク質はナノ粒子に結合している。複数の実施形態では、複合体は、検出可能なタンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)をコードする核酸(例えば、DNA、mRNA)を含み、核酸はナノ粒子に結合している。
【0145】
本明細書(その実施形態を含む)で提供される複合体は、サイズによってさらに特徴付けされ得る。本明細書で言及される場合、複合体(例えば、ナノ粒子(例えば、コア、コア及び外層)及び肺ウイルスタンパク質又は核酸)のサイズは、複合体の平均直径である。したがって、複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約25nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約35nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約40nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約45nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約50nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約55nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約60nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約65nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約70nm~約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約75nm~約80nmである。
【0146】
複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約75nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約70nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約65nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約60nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約55nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約45nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約40nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約35nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約30nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm~約25nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75又は80nmである。
【0147】
複数の実施形態では、複合体のサイズは約20nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは20nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約25nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは25nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約30nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは30nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約35nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは35nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約40nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは40nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約45nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは45nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約55nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは55nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約60nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは60nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約65nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは65nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約70nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは70nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約75である。複数の実施形態では、複合体のサイズは75である。複数の実施形態では、複合体のサイズは約80nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは80nmである。
【0148】
複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約32nm~約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約34nm~約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約36nm~約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約38nm~約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約40nm~約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約42nm~約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約44nm~約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約46nm~約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約48nm~約50nmである。
【0149】
複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約48nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約46nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約44nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約42nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約40nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約38nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約36nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約34nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm~約32nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは、約30nm、32nm、34nm、38nm、40nm、42nm、44nm、48nm、又は50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約30nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは30nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約32nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは32nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約34nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは34nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約36nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは36nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約38nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは38nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約40nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは40nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約42nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは42nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約44nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは44nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約46nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは46nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約48nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは48nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは約50nmである。複数の実施形態では、複合体のサイズは50nmである。
【0150】
複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズ(例えば、平均直径)は、約4nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約6nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約8nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約10nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約12nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約14nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約16nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約18nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約20nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約22nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約24nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約26nm~約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約28nm~約30nmである。
【0151】
複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約28nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約26nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約24nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約22nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約18nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約16nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約14nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約12nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約10nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約8nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm~約6nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは、約4nm、6nm、8nm、10nm、12nm、14nm、16nm、18nm、20nm、22nm、24nm、26nm、28nm、又は30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約4nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは4nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約6nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは6nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約8nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは8nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約10nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは10nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約12nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは12nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約14nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは14nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約16nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは16nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約18nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは18nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約20nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは20nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約22nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは22nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約24nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは26nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約28nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは28nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは約30nmである。複数の実施形態では、ナノ粒子コアのサイズは30nmである。
【0152】
ワクチン及び医薬組成物
本明細書で提供される複合体は、肺ウイルス感染症を予防するためのワクチン組成物において特に有効であると考えられる。本出願人は、本明細書に記載の複合体が核酸カーゴを肺に効果的に送達することを見出した。肺への複合体の送達は、核酸によってコードされるタンパク質に対する効果的な免疫応答をもたらす。したがって、ある態様では、本明細書(その実施形態を含む)で提供される複合体及び薬学的に許容される賦形剤を含むワクチン組成物が提供される。
【0153】
複数の実施形態では、ワクチン組成物は、安定剤、アジュバント、及び保存剤のうちの1つ以上をさらに含む。複数の実施形態では、ワクチン組成物は安定剤を含む。複数の実施形態では、ワクチン組成物はアジュバントを含む。複数の実施形態では、ワクチン組成物は保存剤を含む。
【0154】
複数の実施形態では、前記組成物は、経鼻投与のために製剤化されている。
【0155】
ある態様では、治療有効量の本明細書に記載の複合体(その実施形態を含む)と、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物が提供される。複数の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、治療目的で使用される。一部の実施形態では、治療目的は、予防的な目的(疾患又は状態の発生を防止する目的)及び処置目的(既存の疾患又は状態を処置する目的)を包含する。医薬組成物は、肺ウイルス感染症(例えば、Covid-19)又はウイルス感染症に関連する状態を処置するために有効であると考えられる。複数の実施形態では、複合体は、対象に投与されると、免疫応答を誘導することができる、すなわち、免疫原性である。この免疫原性は、肺ウイルス由来の1つ以上の抗原ペプチド、又はカーゴ核酸によってコードされる1つ以上の抗原ペプチドが対象において発現されるときに、少なくとも部分的に誘導される場合がある。
【0156】
ウイルス感染症の予防及び処置の方法
本明細書(その実施形態を含む)で提供される複合体は、肺ウイルス感染症の処置又は予防するために特に有用である。本出願人は、この複合体が、肺ウイルスの侵入口(例えば、上気道及び下気道)及び影響を受ける領域(例えば、肺)で抗原特異的免疫応答を誘導することを見出した。したがって、ある態様では、肺ウイルス性疾患の処置又は予防を必要とする対象で肺ウイルス性疾患を処置又は予防する方法が提供され、本方法は、本明細書(その実施形態を含む)で提供される複合体の治療的又は予防的有効量を対象に投与することを含む。
【0157】
複数の実施形態では、複合体は鼻腔内経路によって投与される。複数の実施形態では、複合体は、口腔鼻経路によって投与される。複数の実施形態では、複合体は肺に投与される。
【0158】
ある態様では、肺ウイルス性疾患の処置又は予防を必要とする対象で肺ウイルス性疾患を処置又は予防する方法が提供され、本方法は、本明細書(その実施形態を含む)で提供されるワクチン組成物の治療的又は予防的有効量を対象に投与することを含む。
【0159】
複数の実施形態では、ワクチン組成物は鼻腔内経路によって投与される。複数の実施形態では、ワクチン組成物は、口腔鼻経路によって投与される。複数の実施形態では、ワクチン組成物は肺に投与される。
【0160】
複数の実施形態では、本明細書(その実施形態を含む)で提供される複合体を含む組成物は、ワクチンが対象における疾患(例えば、COVID-19)又は状態の発生の可能性を予防又は低減できるように、予防活性を有する。組成物が予防目的で使用される複数の実施形態では、対象は、疾患又は状態を有していない動物、例えば、疾患又は状態と診断されていないヒト、若しくは疾患又は状態に関連する顕著な症状を有していないヒトである場合がある。
【0161】
複数の実施形態では、本明細書に記載される複合体を含む組成物は、予防的な目的で、特に感染の素因があると考えられているが現在ウイルス性疾患を患っていない対象において使用される。予防ワクチンは、素因のある対象に投与され、対象におけるウイルス性疾患の発生の可能性を予防又は低減することができる。
【0162】
複数の実施形態では、組成物は、疾患(例えば、肺バイアル(vial)疾患)又は状態を処置するために組成物を使用できるような治療効果を有する。組成物は、1つ以上の抗ウイルス活性、例えば、ウイルス粒子数の減少、ウイルス複製及び感染力の減少及び/又は阻害を示すことができる。
【0163】
複数の実施形態では、本明細書で提供される複合体を含む組成物は、2つの別個の肺ウイルスタンパク質又は前記タンパク質をコードする核酸配列を単一の組成物で送達することにより、治療効果及び予防効果の両方を提供することができる。したがって、複数の実施形態では、組成物は、(1)第1の免疫原性ウイルスタンパク質又はその断片を用いて、既存の肺ウイルス感染症又は状態に対してより即時の処置効果を誘導すること、及び(2)別の肺ウイルス疾患又は状態の将来の発生のために、第2の免疫原性ウイルスタンパク質又はその断片を用いて、対象に適応免疫を誘導することができる。したがって、複数の実施形態では、組成物は、各タンパク質が、それぞれ、独立して治療効果又は予防効果を示す、2つ以上の異なる肺ウイルスタンパク質又はそれをコードする核酸を含む複合体を含む。
【0164】
免疫応答を誘導する方法
ある態様では、肺ウイルス疾患に感受性である対象を免疫化する方法が提供され、本方法は、肺ウイルスタンパク質又はその断片に結合する抗体が産生されるような条件下で、本明細書(その実施形態を含む)で提供される複合体を対象に投与することを含む。
【0165】
ある態様では、肺ウイルス性疾患に感受性である対象を免疫化する方法が提供され、本方法は、肺ウイルスタンパク質又はその断片に結合する抗体が産生されるような条件下で、本明細書(その実施形態を含む)で提供されるワクチン組成物を対象に投与することを含む。
【0166】
複数の実施形態では、抗体はIgG、IgA又はIgM抗体である。複数の実施形態では、抗体はIgG抗体である。複数の実施形態では、抗体はIgA抗体である。複数の実施形態では、抗体はIgM抗体である。
【0167】
複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患はCOVID-19である。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患はMERSである。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患は重症急性呼吸器症候群(SARS)である。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患はHRSV感染症である。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患はHPV感染である。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患はHRV感染である。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患はHCoV感染である。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患はHBoV感染である。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患はHMPV感染である。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患はADV感染である。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患は、表2に列挙されるような1つ以上の症候群を引き起こす。複数の実施形態では、肺ウイルス性疾患は、遠隔炎症作用を引き起こす。
【0168】
免疫応答の誘導をモニタリングするための方法は、抗体力価を測定することによるものなど、当技術分野において周知である。
【0169】
投与方法
ある態様では、対象における肺ウイルス感染症を処置又は予防するために、本明細書(その実施形態を含む)で提供される組成物を対象に送達するための方法が提供される。複数の実施形態では、組成物は、(a)金のコアを含むナノ粒子と、(b)肺ウイルスタンパク質若しくはその断片、又は肺ウイルスタンパク質若しくはその断片をコードする核酸と、を含む複合体を含み、肺ウイルスタンパク質又は核酸はナノ粒子に結合している。複数の実施形態では、組成物は、対象において意図された効果の少なくとも一部を達成するのに十分な有効量で対象に投与することができる。
【0170】
組成物に関連して使用されるとき、「投与」、「投与すること」などは、両方とも直接投与を指し、これはインビトロでの細胞への投与、インビボでの細胞への投与、医療専門家による、又は対象による自己投与による対象への投与、及び/又は間接的投与であってもよく、本開示の組成物を処方する行為であり得る。典型的には、有効量が投与され、その量は当業者によって決定され得る。組成物(例えば、複合体)は、例えば、細胞培養培地への組成物の添加又はインビボでの注射によって、細胞に投与され得る。対象への投与は、例えば、吸入(例えば、鼻腔内経路、口腔鼻経路)を通して達成することができる。
【0171】
複数の実施形態では、本明細書(その実施形態を含む)で提供される組成物は、肺医薬賦形剤を含む肺用医薬組成物として提供される。「肺医薬組成物」などの用語は、肺投与(例えば、鼻腔内経路、口腔鼻経路)を意図した医薬組成物を指す。「肺投与」などの用語は、通常の慣習的な意味で、吸入療法を達成するための投与(例えば、鼻腔内経路、口腔鼻経路)を指す。「吸入療法」などの用語は、吸入による肺への薬物の直接送達を指す。複数の実施形態では、本明細書(その実施形態を含む)で提供される複合体は、吸入薬物送達システムによって肺に直接送達されるときに有効である。「肺液体製剤(pulmonary pharmaceutical liquid)」という用語は、液体である肺医薬組成物を指す。「肺固形製剤(pulmonary pharmaceutical solid)」、「肺固形製剤(pulmonary pharmaceutical solid)」などの用語は、固形物(例えば、粉末)である肺医薬組成物を指す。
【0172】
複数の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、吸入薬物送達システムで提供される。複数の実施形態では、吸入薬物送達システムは、(i)ネブライザー;(ii)加圧式定量噴霧吸入器(pMDI);又は(iii)ドライパウダー吸入器(DPI)である。ネブライザーは、活性剤が極性液体、例えば水に溶解又は懸濁しているという点で、pMDI及びDPIの両方とは明らかに異なる。対照的に、pMDI及びDPIは、非極性の揮発性噴射剤又は患者が吸入すると流動化するドライパウダーミックスに懸濁又は溶解した活性剤(ナノ粒子複合体など)を含むボーラス薬物送達デバイスである。pMDI及びDPIは、ネブライザーと比較して処置時間を大幅に短縮した。「肺薬剤送達デバイス」などの用語は、医薬組成物の送達(例えば、鼻腔内、口腔鼻送達など)に適した吸入薬物送達システムを指す。
【0173】
対象に投与される用量及び頻度(単回又は複数回)は、例えば、対象が別の病気にかかっているかどうか、その投与経路;レシピエントの体格(size)、年齢、性別、健康状態、体重、体格指数、及び食事;処置中の疾患の症状の性質及び程度、同時処置の種類、処置中の疾患による合併症、又はその他の健康関連の問題などの、様々な要因によって変更する場合がある。他の治療レジメン又は薬剤を、その実施形態を含む本明細書に記載される方法及び組成物と併せて使用することができる。確立された投薬量(例えば、頻度及び期間)の調整及び操作は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0174】
複数の実施形態では、本明細書(その実施形態を含む)で提供される組成物は、約2ug~約50ugの核酸(例えば、肺ウイルスタンパク質をコードするDNA又はRNA)が対象に送達される用量(又は量)で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約4ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約8ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約10ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約12ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約14ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約16ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約18ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約20ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約22ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約24ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約26ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約28ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約30ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約32ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。実施形態において、組成物は、約34ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約36ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約38ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約40ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約42ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約44ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約46ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約48ug~約50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。
【0175】
複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約48ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約46ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約44ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約42ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約40ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約38ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約36ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約34ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約32ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約30ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約28ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約26ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約24ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約22ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約20ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約18ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約16ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約14ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約12ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約10ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約8ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約6ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug~約4ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約2ug、4ug、6ug、8ug、10ug、12ug、14ug、16ug、18ug、20ug、22ug、24ug、26ug、28ug、30ug、32ug、34ug、36ug、38ug、40ug、42ug、44ug、46ug、48ug、又は50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、2ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、4ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、6ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、8ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、10ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、12ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、14ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、16ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、18ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、20ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、22ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、24ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、26ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、28ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、30ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、32ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、34ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、36ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、38ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、40ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、42ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、44ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、46ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、48ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、50ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。
【0176】
複数の実施形態では、組成物は、約10ug~約20ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約12ug~約20ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約14ug~約20ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約16ug~約20ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約18ug~約20ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。
【0177】
複数の実施形態では、組成物は、約10ug~約18ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約10ug~約16ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約10ug~約14ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約10ug~約12ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約10ug、12ug、14ug、16ug、18ug、又は20ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約10ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、10ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約12ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、12ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約14ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、14ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約16ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、16ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約18ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、18ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、約20ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。複数の実施形態では、組成物は、20ugの核酸が対象に送達される用量で投与される。
【0178】
ナノ粒子組成物
ある態様では、それに結合している複数の核酸及びそれに結合している複数のタンパク質を含むナノ粒子が提供され、複数の核酸の各々が、異なるSARS-CoV-2ウイルスタンパク質をコードし、前記複数のタンパク質の各々が、異なるSARS-CoV-2ウイルスタンパク質である。複数の実施形態では、ナノ粒子は生体適合性である。複数の実施形態では、ナノ粒子はコアを含み、前記コアは金を含む。複数の実施形態では、ナノ粒子のコアは金-酸化鉄コアである。
【0179】
複数の実施形態では、ナノ粒子はコア及び外層を含み、前記外層はキトサン-シクロデキストリンポリマーを含む。複数の実施形態では、複数の核酸及び複数のタンパク質は、ナノ粒子の外層に結合している。複数の実施形態では、1つ以上の核酸は、SARS-CoV-2ウイルスタンパク質をコードするRNA配列を含む。複数の実施形態では、RNA配列はmRNA配列である。複数の実施形態では、SARS-CoV-2ウイルスタンパク質は、Sタンパク質、Nタンパク質、Mタンパク質、及びEタンパク質からなる群から選択される。
【0180】
ある態様では、本明細書(その実施形態を含む)で提供されるナノ粒子と、薬学的に許容される賦形剤と、を含むワクチン製剤が提供される。複数の実施形態では、ワクチン製剤は、ワクチン賦形剤をさらに含む。複数の実施形態では、ワクチン賦形剤は、安定剤、アジュバント又は保存剤である。複数の実施形態では、ワクチン製剤は、複数のナノ粒子を含む。
【0181】
ある態様では、COVID-19を予防又は処置する方法が、それを必要とする対象において提供され、本方法は、有効量の、本明細書(その実施形態を含む)で提供されるワクチン、又は本明細書(その実施形態を含む)で提供されるナノ粒子を含む組成物を、それを必要とする前記対象に投与することを含む。複数の実施形態では、組成物は鼻腔内経路を介して投与される。複数の実施形態では、組成物は、口腔鼻経路を介して投与される。
【0182】
複数の実施形態では、組成物は気道に投与される。複数の実施形態では、組成物は、気道に投与される(リンパ組織のワルダイエル輪への曝露が含まれる)。複数の実施形態では、組成物は肺に投与される。複数の実施形態では、組成物は気道(リンパ組織のワルダイエル輪への曝露を含む)及び肺に投与される。
【0183】
複数の実施形態では、組成物は複数のナノ粒子を含む。
【0184】
ある態様では、対象におけるCOVID-19を予防又は処置する方法が提供され、本方法は、有効量の、本明細書(その実施形態を含む)に提供されるワクチン、又は本明細書(その実施形態を含む)で提供されるナノ粒子を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。複数の実施形態では、送達は、鼻腔内送達又は口腔鼻送達によるものであり得る。複数の実施形態では、1回の抗SARS-CoV-2ワクチンにおいて複数のmRNAの気道標的化が実施される。複数の実施形態では、COVID-19に対するワクチン開発のためのナノバイオテクノロジーとセラノスティック戦略を組み合わせたものが、本明細書で提供される。複数の実施形態では、IN又は口鼻経路を介して気道に直接送達されるSARS-CoV-2に対するRNAワクチンが、本明細書に提供される。複数の実施形態では、複数のSARS-CoV-2表面抗原(例えば、S、N、M及びEタンパク質)又はその断片及び複数の表面抗原(例えば、S、N、M、及びEタンパク質)又はその断片をコードするmRNAの強力な発現によって産生されるRNA多価ワクチンが、本明細書で提供される。複数の実施形態では、「ウイルス」抗原の合成mRNA配列、並びに複数のS、N、M、及びEタンパク質を送達するために、IN又は口腔鼻投与及びその後のACE2受容体を発現する呼吸気道の円柱状繊毛細胞(及びそれらの前駆細胞)の標的化のために特別に調整された複数の構成要素を有する操作された多機能NPが本明細書に提供される。複数の実施形態では、PolyGION-CD-CSハイブリッドポリマーNPを使用して哺乳動物肺細胞におけるトランスフェクション後のSARS-CoV-2抗原の発現、細胞表面提示、及び抗体認識を測定することによる、SARS-CoV-2抗原の取り込み及び機能的効果のインビトロでの評価が、本明細書に提供される。複数の実施形態では、PolyGION-CD-CSハイブリッドポリマーNPを、マウスモデルにおけるそれらのインビボ免疫応答を評価するためにIN又は口腔鼻経路を介して使用する、SARS-CoV-2の4つ全ての表面抗原、並びにS、N、M、及びEタンパク質を組み込むmRNA多価ワクチンのマウスにおける評価が、本明細書に提供される。
【0185】
実施形態
P実施形態1:それに結合している複数の核酸及びそれに結合している複数のタンパク質を含むナノ粒子であって、複数の核酸の各々は異なるSARS-CoV-2ウイルスタンパク質をコードし、前記複数のタンパク質の各々は異なるSARS-CoV-2ウイルスタンパク質であるナノ粒子。
【0186】
P実施形態2:ナノ粒子がコアを含み、前記コアが金を含む、P実施形態1のナノ粒子。
【0187】
P実施形態3:ナノ粒子のコアが金-酸化鉄コアである、P実施形態2のナノ粒子。
【0188】
P実施形態4:前記ナノ粒子がコア及び外層を含み、前記外層がキトサン-シクロデキストリンポリマーを含む、P実施形態1のナノ粒子。
【0189】
P実施形態5:前記複数の核酸及び前記複数のタンパク質が前記外層に結合している、P実施形態4のナノ粒子。
【0190】
P実施形態6:1つ以上の核酸が前記SARS-CoV-2ウイルスタンパク質をコードするRNA配列を含む、P実施形態5のナノ粒子。
【0191】
P実施形態7:SARS-CoV-2ウイルスタンパク質がSタンパク質、Nタンパク質、Mタンパク質及びEタンパク質からなる群から選択される、P実施形態5のナノ粒子。
【0192】
P実施形態8:P実施形態1~7の1つのナノ粒子及び薬学的に許容される賦形剤を含むワクチン製剤。
【0193】
P実施形態9:ワクチン賦形剤をさらに含むP実施形態8のワクチン製剤。
P実施形態10:ワクチン賦形剤が安定剤、アジュバント又は保存剤である、P実施形態9のワクチン製剤。
【0194】
P実施形態11:それを必要とする対象でCOVID-19を予防又は処置する方法であって、前記対象にP実施形態8~10の1つのワクチン又はP実施形態1~7の1つのナノ粒子の有効量を含む組成物を投与することを含む方法。
【0195】
P実施形態12:組成物が鼻腔内経路を通して投与される、P実施形態11の方法。
【0196】
P実施形態13:組成物が口腔鼻経路を通して投与される、P実施形態11の方法。
【0197】
P実施形態14:組成物が肺に投与される、P実施形態11の方法。
【0198】
P実施形態15:それを必要とする対象でSARS-COV-2ウイルス感染症を予防又は処置する方法であって、それを必要とする対象にP実施形態8~10の1つのワクチン又はP実施形態1~7の1つのナノ粒子の有効量を含む組成物を投与することを含む方法。
【0199】
実施形態
実施形態1:(a)金のコアを含むナノ粒子;及び(b)肺ウイルスタンパク質若しくはその断片、又は前記肺ウイルスタンパク質若しくはその断片をコードする核酸を含む複合体であって、前記肺ウイルスタンパク質又は核酸は前記ナノ粒子に結合している複合体。
【0200】
実施形態2:複数の肺ウイルスタンパク質又はその断片を含む、実施形態1の複合体。
【0201】
実施形態3:前記複数の肺ウイルスタンパク質が異なる肺ウイルスタンパク質を含む、実施形態2の複合体。
【0202】
実施形態4:前記肺ウイルスタンパク質又はその断片をコードする複数の核酸を含む、実施形態1の複合体。
【0203】
実施形態5:前記複数の核酸が異なる肺ウイルスタンパク質又はその断片をコードする、実施形態4の複合体。
【0204】
実施形態6:前記肺ウイルスがヒトRSウイルス(HRSV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPV)、ヒトライノウイルス(HRV)、アデノウイルス(ADV)、ヒトコロナウイルス(HCoV)、SARSと関連したコロナウイルス(SARS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)又はヒトボカウイルス(HBoV)である、実施形態1~5のいずれか1つの複合体。
【0205】
実施形態7:前記肺ウイルスがSARS-CoV-2である、実施形態6の複合体。
【0206】
実施形態8:前記肺ウイルスタンパク質又はその断片がSタンパク質、Nタンパク質、Mタンパク質又はEタンパク質である、実施形態7の複合体。
【0207】
実施形態9:前記金のコアが金-酸化鉄コアである、実施形態1~8のいずれか1つの複合体。
【0208】
実施形態10:前記ナノ粒子が外層を含む、実施形態1~9のいずれか1つの複合体。
【0209】
実施形態11:前記外層が前記金のコアに共有結合している、実施形態10の複合体。
【0210】
実施形態12:前記外層が前記金のコアに非共有結合している、実施形態10の複合体。
【0211】
実施形態13:前記外層がポリマーを含む、実施形態10~12のいずれか1つの複合体。
【0212】
実施形態14:前記外層がカチオン性多糖を含む、実施形態10~13のいずれか1つの複合体。
【0213】
実施形態15:前記カチオン性多糖がキトサンを含む、実施形態14の複合体。
【0214】
実施形態16:前記カチオン性多糖がキトサン-シクロデキストリンを含む、実施形態14の複合体。
【0215】
実施形態17:前記肺ウイルスタンパク質又は核酸が前記ナノ粒子に共有結合している、実施形態1~16のいずれか1つの複合体。
【0216】
実施形態18:前記肺ウイルスタンパク質又は核酸が前記ナノ粒子の前記外層に共有結合している、実施形態17の複合体。
【0217】
実施形態19:前記肺ウイルスタンパク質又は核酸が前記ナノ粒子に非共有結合している、実施形態1~16のいずれか1つの複合体。
【0218】
実施形態20:前記肺ウイルスタンパク質又は核酸が前記ナノ粒子の前記外層に非共有結合している、実施形態19の複合体。
【0219】
実施形態21:前記核酸がデオキシリボ核酸である、実施形態1~20のいずれか1つの複合体。
【0220】
実施形態22:前記核酸がリボ核酸である、実施形態1~20のいずれか1つの複合体。
【0221】
実施形態23:直径が約20nm~約80nmである、実施形態1~22のいずれか1つの複合体。
【0222】
実施形態24:直径が約40nmである、実施形態1~23のいずれか1つの複合体。
実 施形態25:実施形態1~24のいずれか1つの複合体及び薬学的に許容される賦形剤を含むワクチン組成物。
【0223】
実施形態26:安定剤、アジュバント及び保存剤の1つ以上をさらに含む、実施形態25のワクチン組成物。
【0224】
実施形態27:経鼻投与のために製剤化される、実施形態25又は26のワクチン組成物。
【0225】
実施形態28:肺ウイルス性疾患の処置又は予防を必要とする対象で肺ウイルス疾患を処置又は予防する方法であって、実施形態1~24のいずれか1つの複合体の治療的又は予防的に有効な量を前記対象に投与することを含む方法。
【0226】
実施形態29:複合体が鼻腔内経路によって投与される、実施形態28の方法。
【0227】
実施形態30:複合体が口腔鼻経路によって投与される、実施形態28の方法。
【0228】
実施形態31:複合体が肺に投与される、実施形態28の方法。
【0229】
実施形態32:肺ウイルス性疾患の処置又は予防を必要とする対象で肺ウイルス疾患を処置又は予防する方法であって、実施形態25~27のいずれか1つのワクチン組成物の治療的又は予防的に有効な量を前記対象に投与することを含む方法。
【0230】
実施形態33:組成物が鼻腔内経路を通して投与される、実施形態32の方法。
【0231】
実施形態34:組成物が口腔鼻経路を通して投与される、実施形態32の方法。
【0232】
実施形態35:組成物が肺に投与される、実施形態32の方法。
【0233】
実施形態36:肺ウイルス疾患に感受性である対象を免疫化する方法であって、前記肺ウイルスタンパク質又はその断片に結合する抗体が生成されるような条件下で実施形態1~24のいずれか1つの複合体を前記対象に投与することを含む方法。
【0234】
実施形態37:前記抗体がIgG、IgA又はIgM抗体である、実施形態36の方法。
【実施例】
【0235】
[実施例1] 例示的実験への導入
核酸ワクチンは、ウイルス自体ではなく、遺伝物質の作製のみがそれらの生成に必要なので、安全であり、開発が容易である。抗COVID-19核酸ワクチンは、ヒト細胞への、個々のタンパク質又はタンパク質断片をコードする特定の部分のウイルスRNAの送達を引き起こし、これが、その後、送達されたRNAに対するウイルスタンパク質のコピーを生成する。mRNAワクチンは、抗原特異的なT細胞及びB細胞応答を誘導することができる17~18。2020年4月30日までに、少なくとも20チームが、免疫応答を促すためのSARS-CoV-2DNA又はRNAの使用を研究していた。伝統的なワクチン及びDNAワクチンと対比させた場合、RNAワクチンには、以下のようないくつかの重要な利点がある。(1)RNAワクチンは、病原体粒子無しで作製され、それ故、それらは非感染性であり、さらに、メッセンジャーRNA(mRNA)鎖は、いったんタンパク質が作製されれば、迅速に分解される。(2)転写され、さらにタンパク質に翻訳されるために核に達するのに細胞及び核膜穿孔に依存するpDNAとは異なり、RNA鎖の場合、翻訳されるためには、サイトゾルへのアクセスを得るだけで十分である。(3)DNA発現カセットは、ゲノム組込み、挿入突然変異誘発、長期発現、及び抗DNA抗体の誘導の理論上のリスクを保持する。(4)初期の臨床試験結果のいくつかは、RNAワクチンが、信頼できる免疫応答を生み出すことができ、無視できる副作用はあるが、健常個体によって十分に耐用されることを示している。(5)RNAワクチンは、より迅速に生成することができ、より容易に標準化され、これにより、新興感染爆発に対する応答性が改善される。
【0236】
とりわけ、ほとんどの核酸ワクチンがSタンパク質のみをコードする。代わりに、本明細書では、とりわけ、SARS-CoV-2の2種以上の表面抗原(例えば、S、N、M、及びEタンパク質)をコードするmRNAをロバストに発現するための多価(多抗原)ワクチンストラテジーを提供する。SARS-CoV-2は、他のコロナウイルスとの有意な相同性を有しはするが、いくつかの抗原における実質的なバリエーションも有する。これらのバリエーションは、感染の様式、疾患の病原性、伝播、及び重症度における相違にSARS-CoV-2に明確に反映されている。したがって、エピトープワクチンを設計するための可能性のあるウイルスタンパク質の予測ベースのアプローチは、それらの成功率が低いため、有望ではない可能性がある。2種以上の表面抗原を発現する多価mRNAワクチンは、より良好な成功を提供する。
【0237】
本明細書では、とりわけ、感染個体の治療となりうるワクチン(例えば、ACE2受容体を遮断することによってさらなる感染を防止しながら、免疫抗体を誘導することによって)及び/又は未感染個体の予防を提供する。mRNA配列の操作は、これまでになく合成mRNAの翻訳可能性を向上させており、様々な塩基修飾及び送達方法の使用を介して、mRNAのインビボ半減期を調節することができる。したがって、担体媒体中又は表面にmRNAを配合することによって、効率的なインビボ送達が実現し、それにより、宿主細胞細胞質中への迅速な取り込み及び発現が可能となる。諸態様において、COVID-19に対する多価mRNAワクチンストラテジーのための新規ナノ担体と鼻腔内(IN)送達を臨床セッティングで併用する。
【0238】
本明細書では、とりわけ、RNAワクチンをIN経路で送達して、SARS-CoV-2に対する抗原を発現するための効率的なナノ担体を提供する。IN送達のための効率的な送達システムの使用は、従来のアジュバントの追加無しに、強力な免疫応答を生み出すのに必要な用量を劇的に減少させることができる。したがって、独立した転写産物としてSARS-CoV-2 S、N、M、及びEタンパク質若しくはその断片のうちの2つ以上をコードする合成mRNA又はS、N、M、及びEタンパク質若しくはその断片のうちの2つ以上を保持するナノ製剤が本明細書に記載される。生体適合性ナノ粒子(NP)上にmRNA及びタンパク質をローディングすること、並びに臨床的に実用的な送達方法をこれと併用することによって、COVID-19に対する免疫処置のための多価SARS-CoV-2ワクチンの良好な発現のための、容易であり、安全であり、最小限に侵襲的、かつ組織特異的な方法が提供される。
【0239】
本発明者らは、脳腫瘍であるグリア芽腫(GBM)に対する、分子標的化セラノスティックナノ製剤を以前に開発した。このナノ製剤には、IN送達を介して治療用マイクロRNAをマウスGBMに送達するのに使用される50nm多官能性金-酸化鉄NP(polyGIONと呼ばれる)が含まれる21。シクロデキシトリン-キトサン(CD-CS)ハイブリッドポリマーで官能基化されたPolyGIONの表面は、静電的相互作用による、負荷電のRNAの表面ローディングのための効率的なプラットホームを提供する21。また、治療剤として価値があるためには、polyGIONの標的化送達及びそれらの輸送の可視化は、少なくとも前臨床研究では必須であり得る。したがって、本発明者らは、GBM細胞を標的とするT7ペプチドでコーティングされ、結合型CD-CSハイブリッドポリマーで官能基化され、GBMに対する有効なセラノスティックシステムとして治療用miRNAでプレロードされたGIONコア殻(CT及びMRイメージングを可能にする)のIN送達を開発し、実験的に検証した21。本発明者らは、同所性移植されたGBMを有するマウスにおけるIN送達後に、このナノ製剤を前臨床的に評価し、GBM増殖の顕著な抑制及び動物生存率の同時改良を見出した21。さらに、polyGIONの存在は、頭蓋内腫瘍へのIN送達及び輸送の同時マルチモダリティイメージングを可能にした21。
【0240】
本発明者らは、本発明者らのマウス研究において、IN投与されたpolyGION-CD-CS NPの輸送が、処置時点のマウスの呼吸数によって決定されることを見出した。本発明者らが、深い麻酔下にあるマウスにpolyGION-CD-CS NPを投与したとき、送達されたNPの大部分は鼻粘膜に固着し、経時的に脳内の病的領域に輸送された。対照的に、本発明者らが、覚醒したマウスでNPを投与したとき、本発明者らは、主要な量のNPが鼻腔を超えて気道に移動し、その後、遠位の肺に定着したことを見出した。この観察を利用して、本発明者らのpolyGION-CD-CSナノ製剤を使用した、各抗原に特異的なウイルスRNAの非侵襲的な呼吸粘膜標的化送達は、COVID-19疾患のための正確な主要初期標的器管である気道及び肺を直接的に標的にして、肺の免疫応答を活性化する新しい抗SARS-CoV-2多価ワクチンを提供する。MERS-CoVのSタンパク質を発現する組換えアデノウイルスベースのワクチンを使用する類似のアプローチが、BALB/cマウスにIN投与したときに有意な免疫応答を誘導することが見出されている21。本発明者らは、金のNPが無毒であることを以前に実証した22~24。諸態様において、polyGION-CD-CSナノ製剤に由来する酸化鉄成分を除去することができる。
【0241】
IN及び呼吸気道経路(例えば、鼻噴霧/点滴、経口鼻ネブライザー又はインヘラーによるもの)の利点には、循環血の回避、軽減された全身性副作用及び肝/腎クリアランスが含まれ、これにより、気道及び肺常在性メモリーT細胞応答並びに実際的な反復的又は慢性的ワクチン投与の可能性が生じる。また、コンプライアンスが高く、作用開始が早い鼻噴霧又は吸入剤としての、個体への非侵襲的、無痛及び好都合な投与は、抗SARS-CoV-2ワクチンに新規な特徴をもたらす。
【0242】
[実施例2] mRNAをロードしたナノ粒子のIN送達の結果
PolyGION-CD-CS NPは、治療薬をIN送達するための生体適合性の無毒なプラットホームとして働く。
【0243】
本発明者らは、SARS-CoV-2抗原をコードするmRNAをワクチンとしてマウスの肺に送達して、呼吸粘膜及び肺免疫応答を誘導する実行可能性を、FLuc-mRNAをレポーターとして使用して試験した。FLuc-mRNA送達は、肺における、送達されるRNAの送達、安定性、及び発現をモニタリングするのを、生物発光イメージング(BLI)を使用することによって容易にする。本発明者らは、PolyGION-CD-CSにおけるFLuc-mRNAのローディング効率を、N/P比(
図2C)及び細胞(HEK293細胞及びA549細胞)におけるトランスフェクション効率を光学BLIを使用して測定することによって試験した。本発明者らの結果は、ルシフェラーゼの強い、mRNA用量依存的な発現を両細胞型で示した。本発明者らは、プルシアンブルー染色を使用することによって、細胞内PolyGIONの存在を確認した(
図2F)。
【0244】
FLuc-mRNA発現のPolyGION-CD-CS NP媒介IN送達及び肺常在性GIONの、BLIを使用したモニタリング
マウスへのIN送達について、PolyGION CD-CS FLuc mRNA複合体を調査した。5μlのNP複合体を各鼻孔内に4回投与した(1用量あたり合計20μl:2μgのmRNA等価物)。覚醒マウスでNP複合体を送達した。BLIは、送達後の24時間の時点で取得し、投薬は毎日続けた。6日後に、マウスをインビボ及び屠殺後のエクスビボでBLIイメージングした。マウスは、最初の用量の後に気管で強いBLIシグナルを示し、48時間後に肺で強いシグナルを示した。肺におけるシグナルは、5用量後に顕著に強かった(
図3)。屠殺前BLIは、肺における局在シグナルを示した(
図4B)。エクスビボ分析(肺、脾臓、肝臓、気管、及び腎臓)は、肺と気管気管支の接合部で強いBLIシグナルを示した。脾臓を含めて、他の器官にはシグナルが無かった。(
図4C)。
【0245】
[実施例3] 研究設計及び方法
IN適合性PolyGION-CD-CSハイブリッドポリマーNPを使用した、哺乳動物肺細胞でのトランスフェクション後におけるSARS-CoV-2mRNAの発現を評価することによるSARS-CoV-2mRNAの最適比率、細胞表面提示、及び抗体認識の特定
宿主組織内のどこでも、mRNAでウイルス抗原を発現することによって、抗体応答をウイルスタンパク質に送達し、感染に対して患者を保護することができる。しかし、肺の免疫応答も、気道に感染する病原体に対して重要であり、特に迅速な回復を可能にするため、又は疾患の発症を防止するために重要である。呼吸粘膜免疫応答も、ウイルスに対する持続的な中和免疫をもたらす肺常在性メモリーB細胞及びT細胞を保持し得る25。中和抗体を産生しながら、宿主液性及び細胞性免疫応答を誘導するのに有効である可能性のあるSARS-CoV-2抗原のエピトープを本発明者らが同定するのに役立つ臨床免疫学データが無かったので、本発明者らは、抗COVID-19ワクチンを迅速に開発する戦術として、抗体応答を誘導する抗原としてウイルスの全表面タンパク質を送達した。理論に拘泥するものではないが、SARS-CoV-2の少なくとも2種の抗原(S、N、E、及びMタンパク質)の発現は、メモリーB細胞及びT細胞応答を含めた多価免疫応答を生成し得る。これは、抗原が呼吸粘膜及び肺で発現されるなら、より有効でありうる。
【0246】
この目標の達成に向けた第一歩として、本発明者らは、抗原のmRNA媒介発現をそれらのロバストネス、タンパク質安定性、及び全ての抗原について同等に近いレベルを実現するのに必要な様々なmRNAの比率について、それらをインビボ研究に拡張する前に、細胞培養研究で評価する。ヒトPDGF受容体(PDGFR)に由来するC末端シグナルペプチドを有するmRNAの使用によって、トランスフェクトされた細胞の表面で抗原提示し、それにより、より効果的に免疫応答をインビボで誘導することが可能となる26~27。これは、それより細胞内に残留する可能性が高く、それゆえ免疫細胞認識の有効性が低いただの抗原と比較して、それらを後でヒトに適用するのを容易にする可能性がある。
【0247】
PolyGION-CD-CSハイブリッドポリマーNPを使用したトランスフェクション後の肺細胞において、C末端PDGFRシグナルペプチドをコードする配列でタグ付けしたSARS-CoV-2抗原をインビトロで使用した、細胞におけるmRNAの安定性、抗原発現、及び表面提示の評価
臨床適用において本発明者らはヒトPDGFRのC末端ペプチド配列を使用して、細胞表面に抗原を提示するので、標的細胞に対する抗原表面提示の影響を評価することが重要である。ここで、本発明者らは、肺細胞のインビトロトランスフェクションによって、抗原の発現、安定性、及び表面提示を最適化する。本発明者らは、トランスフェクション効率及びBLIを使用することによる正規化を評価するために、同時トランスフェクション実験用のホタルルシフェラーゼ(FLuc)レポーターmRNAも使用する。
【0248】
実験方法
本発明者らは、mRNA転写物を設計する抗原として、完全長スパイクタンパク質(1273aa)、核タンパク質(479aa)、エンベロープタンパク質(75aa)、及び膜タンパク質(222aa)を使用する。本発明者らは、4種の抗原全てのコード配列として、ヒトPDGFR受容体由来のC末端シグナルペプチドを有するハイブリッドmRNAをインビトロ転写によって生成する。本発明者らは、A549肺がん細胞を使用してインビトロ発現を評価する。12ウェル培養プレート内で各抗原について0.5μg/ウェルのmRNAを使用して、PolyGION-CD-CSハイブリッドポリマーNPを使用して独立してトランスフェクトされた細胞を、細胞表面上のウイルス抗原提示について、免疫染色及び4種の抗原全ての完全長タンパク質に対して産生させたマウスモノクローナル抗体を使用して分析する。本発明者らは、ウエスタンブロットを使用して、細胞溶解物も分析する。さらに、本発明者らは、FLucレポーター遺伝子に対して合成した100ngのmRNAを同時トランスフェクション実験で使用して、トランスフェクション効率をBLIによって評価する。細胞は、トランスフェクション後の3回の継代について長期的にモニターして、発現の長さについて検査する。これは、宿主免疫応答を誘導するのに十分なレベルで抗原を発現するためにトランスフェクションが反復される後続のインビボ実験のための情報を提供する。
【0249】
この新しいmRNAワクチンによって発現されるSARS-CoV-2抗原がそれぞれの抗体に結合する際の機能的な効率のELISAアッセイを使用した評価
細胞表面提示並びにタンパク質発現の安定性及び量を評価するのと共に、本発明者らは、4種のSARS-CoV-2抗原全てについて、これらの特性の程度を評価する。ELISAアッセイを使用して、本発明者らは、これらの特性について抗原を特徴付ける。
【0250】
実験方法
本発明者らは、A549肺がん細胞内におけるmRNAの抗原発現及び表面提示の評価に用いられるものと類似したトランスフェクションプロトコールを使用する。本発明者らは、トランスフェクション48時間後に単離された細胞溶解物を総タンパク質濃度について定量化し、等量の全細胞溶解物をELISAアッセイに使用する。本発明者らは、10μg/ml抗体濃度を使用して、抗体を100mM重炭酸ナトリウム緩衝溶液中に希釈することにより、37℃で4~6時間インキュベートすることによってMaxisorb ELISAプレートをコーティングする。SARS-CoV-2抗原を含有する細胞溶解物を捕獲する前に、Miltenyiブロッキングバッファーを使用して、プレートを1時間ブロッキングする。本発明者らは、第2の検出用抗体として、C末端タグに対して産生させた抗PDGFR抗体を、HRP付きのサンドイッチ二次抗体として使用する。本発明者らは、ELISAアッセイ用の標準プロトコールに従う。
【0251】
考察
肺細胞でmRNAワクチンを使用してトランスフェクトした4種の抗原を免疫組織化学及びウエスタンブロット分析で評価する。本発明者らは、ウイルス抗原それぞれとのC末端融合としてヒトPDGFR膜貫通シグナルペプチドを使用するので、これらの抗原がトランスフェクトされた細胞の膜上に提示されることが予測される。単一トランスフェクション後の細胞の連続評価は、細胞発現の寿命を検証することが予測される。さらに、トランスフェクションのためのPolyGION-CD-CSの使用は、IN送達されたmRNAワクチンによる免疫処置の評価にそれをインビボ適用することにおける信頼性を提供する。BLIに基づくFLuc mRNAの同時トランスフェクションの使用は、トランスフェクション効率に関する追加の定量的情報を提供することが予測される。これらの実験を完遂することによって、本発明者らは、本明細書で提案しているインビボ研究用の様々な表面抗原の同等に近いレベルの発現を実現するのに必要である、4種のmRNAそれぞれの至適濃度を特定する。
【0252】
[実施例4] PolyGION-CD-CSハイブリッドポリマーNPを使用したSARS-CoV-2の表面抗原(S、N、E、及びM)のmRNAワクチンのIN送達及びBALB/c免疫適格マウスにおけるインビボ免疫応答の評価
CD-CSハイブリッドポリマーでコーティングされたPolyGIONは、核酸の効果的なローディングを示した。本発明者らは、このストラテジーがマウスモデルでGBMに治療用miRNAを効果的にIN送達することを以前に示した21。送達時に動物の呼吸数を調節することによって、IN経路を介した治療用核酸の送達を制御することができる。正常に(麻酔無しで)呼吸する動物に送達されるNPは、NPの主要な部分が気管に入り、肺に達する結果となる。PolyGION-CD-CSは、トランスフェクト細胞に向かう強い性向を有するので、コーティングされたmRNAは、肺細胞に入ると予測され得る。肺細胞上にSARS-CoV-2抗原を提示する際に、免疫細胞の動員が起こり、肺免疫応答の活性化並びに自然免疫及び細胞性免疫の産生をもたらし得る。また、長期記憶細胞は、ウイルスに対する防御免疫を維持し得る。
【0253】
本発明者らは、BALB/c親系統及びヒトACE2受容体を発現するように操作されたトランスジェニックBALB/cマウスにおける、SARS-CoV-2の4種の表面抗原全てのIN送達されたmRNAワクチンに対する免疫処置を評価する。この受容体が、感染中の細胞へのウイルス進入、疾患の発症及び進行にとって重要なためである。
【0254】
PolyGION-CD-CSハイブリッドポリマーNPを使用したSARS-CoV-2のmRNAワクチンのIN送達及び免疫適格BALB/cマウスにおけるインビボの免疫応答の評価
インビボのIN送達には、本発明者らは、同等に近いレベルの発現に特定されている4種のmRNA全ての至適濃度を使用する。本発明者らは、麻酔無しの活発なマウスにPolyGION CD-CS-SARS-CoV-2mRNAを送達する。本発明者らは、IN適用を容易にするために角度70°の仰臥位にマウスを保持することによって、各鼻孔内で5μlのNP-mRNA複合体を適用する。本発明者らは、各適用時に容積20μlのNP-mRNA複合体を投与する。各20μlの複合体は、500ngの各mRNA+58.9μgのCD-CS及び2.0×109のGION NPを含有するPolyGION-CD-CSを含有する。本発明者らは、インビボトランスフェクションの効率及びトランスフェクションの位置を評価するため、BLIを容易にするために500ngのFLuc-mRNAも補足する。PolyGIONの分布を追跡するために、本発明者らは、全身マイクロCT及びMRイメージングを実施する。本発明者らは、脳へのNPのいかなる可能な輸送も検出する。本発明者らは、意図されているmRNA送達を観察するために、肺に注目するためである。
【0255】
送達の初期のイメージング評価を完遂した後に、本発明者らは、以下の3つのマウス群で免疫応答を研究する。G1:いかなる処置も無いコントロール、G2:PolyGION-CD-CS-スクランブルRNA、及びG3:PolyGION-CD-CS-SARS-CoV-2-mRNA。本発明者らは、免疫評価用の血液試料を採集する前に、4つのIN用量(予備結果に基づくもの)で動物を毎日処置する。本発明者らは、顎下血液採取法を使用して、毎週200μlの血液を収集する。本発明者らは、血液から血清を分離し、免疫処置に使用されるウイルス抗原のそれぞれに対する抗体価決定のためのELISAアッセイを使用する。本発明者らは、本明細書に上述したのと同じプロトコールに従う。本発明者らは、本発明者らの初期の結果に基づいて必要とされる追加のブースター用量も送達する。scRNAコーティングされたPolyGION-CD-CSで送達された動物及び処置されなかった動物がコントロールとして働く。ひとたび本発明者らが、4種の抗原全てに対する最も高い血液レベルの抗体価に達したならば(1カ月間隔で最大3回のブースター用量)、本発明者らはブースター用量を停止し、隔週のアセスメントによってマウスにおける抗体価を次の6カ月間モニターする。本発明者らは、別の群の動物を有し、それにより、本発明者らは、活性なT細胞型及びB細胞型の変化を理解するために、最終ブースターを送達した1週間後に、免疫細胞サブタイプを試験する。本発明者らは、6カ月後にマウスで類似の評価を実施する。これは、本発明者らが動物における抗体レベル及び免疫細胞分布の両方を長期の免疫防御効果について評価することを可能にする。本発明者らは、任意の抗原及びNP送達関連の病理学的影響について評価するために、様々な組織(腎臓、肺、肝臓、脾臓、膵臓、及び脳)のエクスビボ組織検査も実施する。
【0256】
PolyGION-CD-CSハイブリッドポリマーNPを使用したSARS-CoV-2のmRNAワクチンのIN送達並びにヒトACE2受容体を発現するトランスジェニックBALB/cマウスにおけるそれらのインビボ免疫応答及び病原性の評価
【0257】
実験方法
本発明者らは、ヒトACE2受容体を発現するBALB/cトランスジェニックマウスを使用すると同時に、mRNAワクチンのIN送達のために記載したものと同じストラテジーに従う。本発明者らは、Jackson Laboratoryから得た雄性及び雌性ホモ接合型TgBALB/c(K18-ACE2)2Prlmnマウスを、ホモ接合型子マウスを得るために繁殖させる。発現される抗原、特にスパイクタンパク質抗原は、ACE2受容体へのそれらの強い結合親和性のため、これらの動物で示差的応答を示すことができるので、本発明者らは、任意の病理学的な影響について慎重に動物をモニターし、マウスの健康状態に基づいて必要とされる治療スケジュールを調整する。
【0258】
考察
BALB/cの血清及びmRNAワクチンを受けるBALB/c-hACE2トランスジェニック動物におけるSARS-CoV-2中和抗体の評価は、類似の効果を示すことが予測されるが、本発明者らは、類似の状態にあるBALB/c動物と比較して、BALB/c-hACE2における低い生存率を伴う重度の病理学的な影響を観察すると予期する。本発明者らは、親BALB/c株と比較して、トランスジェニック動物におけるはるかに高いB細胞及びT細胞応答と共に、持続的な循環抗体を予測する。
【0259】
[実施例5] 呼吸粘膜免疫処置のためのSARS-CoV-2DNAワクチンの金-Nanostar-キトサン媒介送達
COVID-19パンデミックは、コロナウイルスSARS-CoV-2(SC2)によって引き起こされている。メッセンジャーRNA(mRNA)、SC2スパイク(S)タンパク質を発現するアデノウイルス、及び不活化ウイルスを使用するものを含めた、様々な抗SC2ワクチンが、ヒト適用のために承認されている。これらの筋肉内投与されるワクチンで得られる免疫の保護期間は、現在のところ不明である。殺滅中和抗体を介して持続的な免疫を開始することができる代替の自己投与可能なワクチンは、新興突然変異体SC2バリアントと戦う際に大いに有利となり得る。これは、ワクチン接種された個体が、COVID-19の受動的キャリアとして作用する可能性も低減し得る。ここで、本発明者らは、BALB/c及びC57BL/6J免疫適格マウスモデルにおける、新規な鼻腔内(IN)送達される、SC2のSタンパク質をコードするDNAワクチンの可能性を調査する。修飾金-キトサンナノ担体上で輸送されるこのSC2-スパイクDNAワクチンのIN送達に対する免疫応答は、抗体(IgG、IgA、及びIgM)における強くて一貫したサージ及び様々なSC2バリアント(武漢、南アフリカ、及びD614G)のSタンパク質を発現する偽ウイルスの有効な中和を示す。免疫表現型検査及び組織学的分析は、完全なSC2特異的細胞性及び体液性免疫応答について流入領域リンパ節及び脾臓をプライミングする常在樹状細胞及び肺胞マクロファージによるSC2S抗原の認識に関与する経時的イベントを明らかにする。肺粘膜及び組織常在性メモリーT細胞における達成可能な高レベルの抗SC2 IgAは、SC2及びそのバリアントを進入部位で効率的に阻害することができ、持続的な免疫も提供する。
【0260】
序論
2019新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、世界中で何十億人もの人々を罹患させている。原因となっている病原体である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2、又はSC2)は、ベータコロナウイルス科に属する1。コロナウイルスは、ヒト及び哺乳動物に感染するプラス鎖一本鎖RNAエンベロープウイルスである。このウイルスはアグレッシブであり、制御不能に蔓延するので、迅速で高優先度のアプローチが、ワクチン開発中に採用され、緊急使用許可下に承認されている2。mRNA、DNA、不活化ウイルス、SC2スパイク(S)タンパク質を発現するアデノウイルス、及びペプチドワクチン品種を含めて、現在SC2ワクチン開発に考慮されているいくつかのストラテジーがある3。ModernaによるmRNA-1273又はPfizerによるmRNA-BNT162b2など、ほとんどのワクチンは、現在、初回抗原としてSC2のSタンパク質を標的としている4。不活化ウイルスワクチン(Covaxin)及びSC2のSタンパク質を発現するアデノウイルスワクチン(Covishield及びSputnik)もヒトで投与される。
【0261】
mRNAワクチンは、ウイルスタンパク質をコードする合成のインビトロ転写RNA配列から開発されるが、ワクチン間のバリエーションは、これらの合成mRNAの安定性及びそれらのナノ製剤媒体のものに基づいている5。筋肉内(IM)ワクチン接種は、感染及び病態から肺を保護する全身の液性及び細胞性免疫応答を誘導するが、それは殺滅免疫を付与しない。また、貧弱な血管分布に伴う皮下脂肪層中へのワクチンの不注意な注射は、抗原の可動化及びプロセシングの遅延をもたらし、ワクチン失敗を引き起こす可能性がある。したがって、IMワクチン接種後に適切な持続的能動免疫が生じるか否かは、まだ不明である6、7。最適なワクチン療法は、持続的な免疫をもたらす殺滅ワクチンを目指す。抗原をコードするDNA及びmRNAコンストラクト両方の利点は、それらを生成するのが、不活化ウイルスを開発すること又は組換えタンパク質を作製することより単純かつ迅速であり、生ウイルス/病原体を用いて実施するリスクが回避できることである8。
【0262】
呼吸器感染症では、IM注射とは対照的に、液性免疫応答と自然免疫応答の両方を実現し、同時に気道及び肺の殺滅免疫も生成するワクチンの鼻腔内送達(IN)が好まれる。しかし、IN送達は、ローディングされた核酸ワクチンを鼻腔を抜けて肺内まで輸送することができるナノ担体を必要とする。効率的なナノ粒子(NP)送達システムも、有効なDNA/RNAワクチン免疫応答を開始する鍵である。いかなる理想的な送達システムも、高ローディング量、安定性、及び生体適合性の組合せを示す必要がある。その点では、リポソームとは別に、キトサンなどのカチオン性多糖及び天然バイオポリマーが、ワクチン送達システムにおけるアジュバントとして使用されている9。キトサンは、ワクチン送達のために上皮細胞の粘膜表面及びそれらの細胞間タイトジャンクションを貫通することができる非毒性、生体付着性、生物分解性、生体適合性のポリマーである10、11。キトサンは、核酸の有効なローディング及び細胞膜の反対側への送達、並びに肺内への有効なトランスフェクションを提供するが、鼻腔を抜けて肺内までの可動化を提供するには、生体適合性固体ナノ担体の表面にコーティングすることが必要となる。ここで、本発明者らは、SC2のSタンパク質を発現するDNAベクター+ホタルルシフェラーゼレポータータンパク質をコードするmRNAをIN送達するための金-Nanostar-キトサン(AuNS-キトサン)ナノ製剤を開発及び評価する。
【0263】
最近の研究は、粘膜免疫の非存在下において、鼻腔がSC2のリザーバとなり、患者を再感染又は他者への疾患伝播の危険にさらす可能性があることを示している13。INワクチン接種は、感染とこのリザーバからの伝搬の両方を遮断するのに決定的に重要である鼻腔内の局所的粘膜免疫を開始することができる中和IgG、粘膜IgA、及びT細胞を介した広範な免疫応答を刺激するのに役立つことができるので、この欠点を克服することができる。肺は、他の粘膜部位と多くの特徴を共有するが、その繊細な組織形態学的完全性の保存には、外部からの侵襲に直面した際の炎症促進性応答と抗炎症性応答の間の良好な相互作用が必要である。時機を得て、適切に位置し、厳密に調節されたT細胞及びB細胞応答は、感染から保護するのに必須であるが、調節不良の炎症は、組織損傷及び疾患発症に寄与する14。IN送達には、注射の回避、並びにヒト使用による耐用性及びコンプライアンスが高い可能性が高いことを含めた他の多くの利点がある。さらに、IN経路を介した気道免疫処置は、多数の抗原提示細胞の確立を含めた免疫応答を誘導するために、大きな表面積を標的とすることができる。INワクチン接種は、上下気道の粘膜表面及び粘膜下表面で、これらの病原体の入口で高レベルに維持される保護的な液性及び細胞性病原体特異的免疫応答を誘導する。
【0264】
上気道及び気管支樹の肺胞マクロファージ(AM)、樹状細胞(DC)、上皮M細胞、上皮内リンパ球、並びにリンパ節及びリンパ組織全てが、ワクチンに対する強い免疫応答を媒介するのを補助する16。肺全体の組織常在白血球及び循環白血球の遊走がINワクチン接種における決定的な役割を果たす。この動的相互作用を追跡するために、本発明者らは、Ccr2RFPCx3cr1GFP二重レポーターを有するC57BL/6Jトランスジェニックマウス(C57BL/6J-DR)及びBALB/cマウスでこのワクチン接種アプローチを評価する。CX3CR1+受容体は、主としてCD8+、CD4+、及びγδTリンパ球、並びにナチュラルキラー(NK)細胞、DC、及び単球/マクロファージなどの白血球で発現される。一方、操作されたCCR2-RFPは、常在性の単球及びAMの追跡を可能にする17。
【0265】
NP表面/内に配合された抗原は、適切な免疫細胞による取り込みのために、気道及び肺の呼吸粘膜に達することができる18。弱毒化生ウイルスワクチンのIN投与における懸念が増大している状況において、NPベースの担体は、より安全な粘膜の免疫を引き起こす有望な代替手段である。したがって、本発明者らは、上下気道粘膜に送達されるSC2ワクチンをIN送達する、AuNS-キトサンの能力をマウスで調査する。金NPは、最近、ワクチン接種用の抗原担体及び免疫細胞活性化剤として使用されている19。これらのNPは、無毒であり、様々な適用に使用されている20。IN投与用に製剤化された金NPは、リンパ節に拡散して、ロバストな抗原特異的細胞傷害性T細胞免疫応答の引き金となることが示されている21。これを念頭におき、本発明者らは、マウスにおけるIN送達の担体としてAuNS-キトサンを使用して、DNA(SC2のSタンパク質を発現するもの)のワクチン媒介抗体産生を試験する。加えて、本発明者らは、呼吸気道を標的とするため、並びに本発明者らのストラテジーをSC2mRNAワクチンの送達に将来適応するための概念実証及びモデルプラットホームとして、ルシフェラーゼレポーターをコードするmRNAを保持するAuNS-キトサンのIN送達の実行可能性を試験する。このアプローチを最終的に臨床に橋渡しすれば、現在のmRNAワクチンのシームレスな拡張となるはずである。
【0266】
病原体粒子の使用を回避することで、現在のmRNAワクチンは、明確な利点を得ている。それらが本来的に非感染性となっているためである。いったんタンパク質が作製されれば、mRNA鎖は迅速に分解される。転写され、さらにタンパク質に翻訳されるために核に達するのに細胞及び核膜穿孔に依存するpDNAとは異なり、mRNA鎖の場合、翻訳されるのに、サイトゾルへのアクセスを得るだけで十分である。初期の臨床試験結果のいくつかは、RNAワクチンが、信頼できる免疫応答を生み出すことができ、副作用は無視できる程度で、健常個体によって十分に耐用されることを示している。一方、DNAはmRNAより安定した分子であり、DNAの使用は、世界的な配給に適した、より長い有効期間を有するロバストなワクチンをもたらすことができる。しかし、DNA発現カセットは、ゲノム組込み、挿入突然変異誘発、長期発現、及び抗DNA抗体の誘導の理論上のリスクを保持する。これらの2種の核酸ワクチンの多くのメリットとデメリットを考慮し、本発明者らは、ここで、本発明者らのAuNS-キトサン送達媒体を使用してIN投与される抗SC2DNAワクチンをまず開発し、前臨床的に評価する。概念的には、本発明者らは、このDNAワクチンを使用して、最初に安定性及び良好な器官特異的発現を検証する(同時送達されるルシフェラーゼレポーターmRNAのインビボイメージングを使用して)ことによって、本発明者らのIN送達プラットホームについて原理証明を確立すること、及び結果として生じるロバストなワクチン媒介免疫作用の存在をマウスで確立することを目指す。本発明者らは、IN投与される類似の抗SC2mRNAワクチンを作製し、評価するためにこの同じストラテジーを拡張し、臨床移行の前に、これら2種のナノ技術の比較研究を行う。しかし、提案されているワクチンの両方に適用可能な決定的に重要な前提条件は、本発明者らのAuNS-キトサンNPを使用して、十分なSC2核酸を細胞膜の反対側に移すことができるかどうかである。通常、エレクトロポレーションは、細胞膜及び核膜の反対側へのDNA取り込みを必要とするので、本発明者らは、抗SC2DNAワクチンの初期試験は、エレクトロポレーションを置き換えるこのNP媒体の能力を確立するのに有用であり得ると推論した。また、AuNS-キトサンのみで、後続のSタンパク質発現に十分なDNAをサイトゾル、次いで核にロバストに送達することができるならば、それは、Sタンパク質の翻訳のためにサイトゾルにアクセスを得ることのみを必要とする、mRNAのみを使用する将来の類似ストラテジーが成功する確率が高いことを示唆し得る。
【0267】
Sタンパク質が、アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体との相互作用と、それに続くエンドサイトーシスとを介してウイルス伝達を媒介することが十分に確立されている。したがって、Sタンパク質ベースのワクチンは、ウイルス結合、及びACE2受容体を発現する呼吸気道の円柱繊毛細胞(及びそれらの前駆細胞)との融合を遮断するか、又はウイルス感染を中和する抗体を誘導し得る22。また、SC2の全ての構造タンパク質と比較して、Sタンパク質は、ウイルス感染に対する細胞性免疫及び液性免疫の両方を誘導する主な免疫原性タンパク質であるようである。
【0268】
注射されるタンパク質抗原の短い半減期と比較して、DNAワクチンは、はるかに長い期間にわたって抗原の組織特異的発現を提供し、それによって、より良好に免疫システムをプライミングことができる23。したがって、本発明者らは、SC2 DNAワクチンをIN送達して、全身性免疫(中和IgG)及び鼻腔及び気道における局所免疫(粘膜IgA及びT細胞)を含めた広範な免疫応答を刺激するAuNS-キトサンを設計した。本発明者らは、このINワクチン接種ストラテジーが、SC2偽ウイルス及びそのバリアントを効率的に中和し、それによって持続的な免疫を提供する抗SC2 IgA及び組織常在性メモリー(TRM)T細胞の顕著なレベルを肺粘膜で実現することを見出す。
【0269】
結果及び考察
金nanostar合成、生理化学的特性、安定性、キトサンコーティング、及び様々なモル比におけるDNAローディング効率のインビトロ特徴分析。
【0270】
本発明者らは、その全体が全ての目的について参照により本明細書に組み込まれている、本発明者らが以前に概説した修飾手順を使用して、AuNS-キトサンを調製する
20。本発明者らは、ペイロードを組み込むのに十分な表面積を提供する金ナノオクトポッドを生成するための反応条件を最適化した。調製されたままのAuNSの表面を、それらの生体適合性、コロイド安定性を改善するため、及びアニオン性核酸をローディングするのに十分な表面電位を実現するためにカチオン性バイオポリマーキトサンを使用して修飾した。修飾AuNS上のキトサンの均一な単層が高分解能透過電子顕微鏡写真(TEM)で明らかであり、これは、NP表面電位測定の明らかな変化とも相関した。TEMは、NPのサイズ分布が狭く、NPコアの平均のサイズが20nmであり、突出スパイクが約20~30nmであることを明らかにした(
図9A~9C)。初期状態のAuNSは、-5.6mV(±2.89mV)の表面電位を有し、カチオン性キトサンポリマーによるキャッピングで、それが+35.8mV(±3.59mV)のカチオン性表面電位に変わった。本発明者らは、ゲル遅延度アッセイを使用して、AuNS-キトサンに対するpDNA(SC2Sタンパク質のコード配列)のローディング効率を推定した。本発明者らは、漸増量のAuNS-キトサンとSC2プラスミド(2μg)を複合体にし、その結果得られたポリプレックスは、封入されたpDNAの一貫した増大を示した。2.5μlポリプレックス量のAuNS-キトサンは、NP内に2μgのpDNA-SC2プラスミドを封入し、その結果、pDNAは、ゲル遅延度アッセイにおいて、電気泳働中、ウェル内に完全に保持された(
図9D)。本発明者らは、動的光散乱法(DLS)及び表面ゼータ電位測定を使用して、ポリプレックスを流体力学的サイズについて評価した。それは、ゲル電気泳動による発見とも一致した。ポリプレックス内でAuNS-キトサンと共にあるSC2プラスミドの量を増やすと、静電的相互作用によってNPの表面に捕捉されるpDNAが増加し、その結果、1μgのSC2プラスミドと1μlのNPのポリプレックス比で、ゼータ電位は、+2.12(±3.4mV)というほぼ中性の正味の表面電位まで低下した。これは、AuNS-キトサンの最大ローディング効率を示している。同様に、1μg超のpDNAを有するポリプレックス比では、表面ゼータ電位がさらに負の表面電位まで低下した。これは、NPの表面に緩く結合しているpDNAが過剰であることを示しており、そのことは、ゲル遅延度アッセイでも明確に明らかだった。ポリプレックスの各比率は様々な表面電位を示したが、pDNAがローディングされたAuNS-キトサンのサイズは、常に35~48nmの範囲内にあった(
図9E~9F)。プラスミド送達のための最適なポリプレックス比を決定するために、本発明者らは、AuNS-キトサンにpcDNA-FLuc-eGFPプラスミドをローディングし、生物発光イメージング(BLI)を使用して、A549(非小細胞肺癌)細胞におけるトランスフェクション効率についてそれを評価した。ゲル遅延度アッセイ及びゼータ電位測定と一致して、本発明者らは、1μgのプラスミド及び1μlのAuNSの組合せで最大のトランスフェクション効率を観察した。pcDNA-SC2プラスミド(DNAワクチン)を使用してSタンパク質発現を評価するために、本発明者らは、最適な比率のAuNSを使用して、HEK293T細胞をSC2プラスミドの様々なバリアント(Wuhan、SA、及びD614G)でトランスフェクトし、抗ウサギSC2スパイク抗体を使用して、Sタンパク質の発現について細胞溶解物をプロービングした。本発明者らは、後続のドットブロット及びELISAイムノアッセイにおけるCoV-2及びCoV-1タンパク質の関与を検証にするために、CoV-2及びCoV-1タンパク質も、抗SC2抗体を使用してアッセイした(
図9H)。全体的に、提案のDNAワクチン製剤は、AuNS、キトサンポリマー、及びプラスミドDNAという3種の成分を含んでいた。
【0271】
SC2DNAワクチンをローディングしたAuNS-キトサンの鼻腔内投与はトランスジェニックC57BL/6J-DRマウス及びBALB/cマウスにおけるS抗原特異的な免疫応答を顕現させる。
【0272】
本明細書には、IN mRNAワクチンの土台として、IN DNAワクチンプラットホームの開発及び原理証明が記載されている。リポソームSTINGアゴニストをアジュバントとして共に用いるSC2 Sタンパク質のサブユニットワクチンは、マウスモデルでのIN送達において強い粘膜免疫を誘導できることが示されている
13。しかし、サブユニットワクチンは、現在、世界中に蔓延している広範囲のバリアントに対する防御をカバーするのに十分な中和抗体を誘発しない可能性がある。したがって、本発明者らは、SC2 Sタンパク質に対する本発明者らのIN-DNAワクチンを評価した。このストラテジーは、全てのウイルスタンパク質の様々なバリアント全てから保護することができる免疫を誘発するための、様々なSC2構造タンパク質(S、N、E、及びM)をコードするmRNAワクチンに拡張することができる。本発明者らは、BALB/cマウス及びC57BL/6J-DRトランスジェニックマウスを使用して、IN送達されたワクチンの広範な免疫処置能力を検証し、一方、C57BL/6J-DRトランスジェニックマウスは、操作された蛍光タンパク質を使用して、より特異的に、T細胞活性化及び輸送の評価を可能にする。SC2 DNAワクチンのIN送達の効率を評価するために、本発明者らは、BALB/cマウス及びC57BL/6J-DRマウス(各N=10)のIN送達を介して、AuNS-キトサンにロードされたSタンパク質を発現するpDNAを送達した。
図10A~10Bに示す間隔で10μgのDNAをマウスに投与した。
【0273】
Sタンパク質ベースのドットブロットアッセイを使用して決定された、SC2ワクチン接種したマウスからの血清の、SARS-CoV-1及びSC2のSタンパク質との反応性
ワクチン接種の際にマウスで生成された抗SC2特異的免疫グロブリンの確立した証拠を基に、本発明者らは、2003年のSARSアウトブレークに由来するSARS-CoV-1(SC1)のS1サブユニットとの血清交差反応性をさらに調査した
26。本発明者らは、対照及びSC2でワクチン接種されたBALB/cマウス及びC57BL/6J-DRマウスの両方から様々な時点で収集された血清を、SC1及びSC2からの精製Sタンパク質に対する抗Sタンパク質抗体について、化学発光ドットブロットアッセイを使用して試験した。本発明者らは、送達されたDNAワクチンに対する抗体がワクチン接種後に2週間という早さで産生されたことを明らかに観察した。(
図10C)。SC1のSタンパク質はSC2のものと有意な相同性を示しはするが、SC2ワクチンを使用して誘導されたマウスの血清は、SC1 Sタンパク質に対する、SC2と比較して低い感受性を示した。BALB/cマウス及びC57BL/6J-DRマウスの両方から、全ての時点で収集された血清の評価は、SC2タンパク質検出の感受性が、SC1と比較して、はるかに高く、また、両方のマウスモデルで一貫していたことを示している(
図10C)。SC1検出シグナルは、有意な交差反応性を示すSC2のものより40~60%近く有効性が低かった。これは、ここに概説したワクチン接種アプローチが、サルベコウイルス亜属の関連ウイルスに対する防御を潜在的に、SC2と比較して同様の効率で提供することができるという以前の発見と一致している
27。C57BL/6J-DRマウスは、研究した全ての時点で、BALB/cマウスと比較してわずかに高い力価の抗体を有した。これは、それらの遺伝的背景及び免疫背景のバリエーションに関連している可能性がある。全体的に、血清検出レベルの傾向は、ELISAアッセイで観察されたのと同じパターンに従い、最高血清レベルの抗SC2 Sタンパク質抗体がC57BL/6J-DRマウス及びBALB/cマウスでそれぞれ処置4週目及び5週目にピークを有した。これは、DNAワクチン接種で誘発されるB細胞媒介の液性免疫応答に関する証拠を提供した(
図10D)。この傾向は両方のマウスモデルで一貫していたが、C57BL/6J-DRの血清中ピーク抗体レベルは、BALB/cマウスより約25%高かった。血清抗体レベル及びそれらがピーク値に達するまでの時間の観察された相違が、これら2株の近交系マウス株の免疫学的相違によるものであった可能性がある
28、29。しかし、液性免疫応答におけるワクチン接種の有効性及びパターンは、両方のモデルで顕著であった。
【0274】
鼻腔内ワクチン接種は、SC2の突然変異バリアントにするクロスバリアント液性免疫応答をブーストする。
【0275】
SC2感染症の世界的なサージの下、突然変異を起こすウイルス感受性も蔓延及び時間と共に増大し、その結果、新しい突然変異バリアントの出現をもたらす
30。先行の感染又はワクチン接種によって誘発された中和抗体に対する耐性のため、新興SC2バリアントの懸念が高まっている。新興Sタンパク質バリアントに見出される突然変異は、モノクローナル抗体、回復期血漿、及びワクチン接種された個体からの血清による中和に対する感受性を低減する
31。そのような懸念増大の結果として、本発明者らは、IN SC2(Wuhan)ワクチン接種されたマウス血清がSC2の他の新興バリアントとの交差反応性を示すことができるかどうかさらに評価した。本発明者らは、SC2-Wuhan Sタンパク質及びSC2-South Africa(SA)突然変異体Sタンパク質をコードするプラスミドでトランスフェクトされたHEK-293T細胞の全細胞可溶化物を用いた免疫ブロットアッセイを使用して、BALB/cマウス及びC57BL/6J-DRマウスから収集された血清を、SC2-SA-突然変異体に対するクロスバリアント中和抗体についてプロービングした。本発明者らは、収集された血清によって、SC2-WuhanとSC2-SA突然変異体Sタンパク質の両方が全ての時点で等しく検出されたことを見出した(
図11A~11B)。これらの発見は、両方のマウスモデルで一貫していた。これは、それらがSC2の新しい株に対する本発明者らのワクチン接種アプローチの有効性を強く示している。一方、これらの結果は、本発明者らの提案したストラテジーを使用する場合、クロスバリアント中和抗体を誘発するための、未感染対象と先行感染済みの対象の両方における将来のワクチン接種の重要性及び必要性を指摘している
32。本発明者らは、様々なアッセイを使用することによって、SC2 S抗原特異的な免疫応答の血清レベルの傾向を検証した。また、このワクチン接種アプローチの一貫性を確証するために、本発明者らは、各群につき5頭のC57BL/6J-DRマウスのバッチを有する2つの独立研究から得られた中和抗体の血清レベルを比較した(
図11C)。免疫処置の4週間後に収集された血清の比較イムノブロット分析を、精製されたSC2タンパク質及びSC1タンパク質に対して評価した。結果は、両バッチにおける中和抗体について類似の血清レベルを示した。これは、このIN免疫処置アプローチの再現性を支持している。
【0276】
DNAワクチン媒介免疫と実感染媒介免疫の間の比較を行うために、本発明者らは、IN経路を介して送達されたSC2偽ウイルスに対する、ヒトACE2受容体を発現するトランスジェニックマウスの免疫応答をそれぞれの対照株(C57BL/6J及びC57BL/6J-ACE2)と共に調査した。本発明者らは、SC2-Wuhan及びSC2-SA突然変異体に対応する偽ウイルスの2種の異なったバリアントを野生型及びACE2操作されたC57BL/6Jマウスで試験した。偽ウイルス感染の5日後にマウスから収集した血清の評価は、野生型及びACE2トランスジェニックマウスの両方で、有意(p<0.01)なレベルの抗SC2抗体を示した(
図11D)。比較として、結果は、AuNS-キトサンNPにローディングされた本発明者らのSC2 DNAワクチンのIN投与によって生じた液性免疫応答の程度が、研究の類似の時点(3用量のSC2 DNAワクチン又はSC2-Wuhan及びSC2-SA偽ウイルスの処置の5日後)に偽ウイルスで媒介された伝達によって実現されたものより約30%近く高かったことを示す。
【0277】
AuNS-キトサンNPを使用した、SC2 Sタンパク質を発現するDNAワクチンの鼻腔内送達は液性肺免疫の効果的な活性化を示した。
【0278】
細胞内へのSC2の進入は、ウイルスの受容体として標的細胞表面に作用するACE2と、ウイルスS糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)の相互作用によって開始される33。Sタンパク質ベースのELISAを使用して、SC2 S抗原に対して生成された抗体をスクリーニングすることができる。IN経路を介して粘膜免疫は、呼吸器病原の初期進入部位又はその近傍で保護を与える分泌IgA抗体を含めた、局所免疫応答を誘発することができる34。SC2 S DNAワクチンをローディングしたAuNS-キトサンの免疫原性及び保護効率を評価するために、本発明者らは、BALB/c及びC57BL/6J-DRという2株の異なるマウス株を使用した。
【0279】
本発明者らは、最適化された比率でAuNS-キトサン上にカプセル化した後に、10μgのSC2-DNAワクチンをIN投与した。マウスに最初の週に3用量のDNAワクチンを投与し、その後、連続3週間、1用量を投与した。本発明者らは、
図10Aの概略図に示す通り、第1の用量の後に8週間血液収集を続けた。本発明者らは、様々な時点の血清中のSタンパク質抗体応答を分析して、ワクチン接種されたマウスにおけるSC2 Sタンパク質特異的IgA、IgG、及びIgM力価を、対照マウスと比較して決定した。ELISA結果に示されているように、AuNS-キトサン-SC2-スパイクのIN免疫処置は、血清中で高レベルのSタンパク質特異的IgG、IgA、及びIgM抗体を誘導したが、対照DNAをローディングしたAuNS-キトサンはしなかった(
図11A~11G)。本発明者らは、ワクチンで誘導された血清中IgG、IgA、及びIgMを順次に最大8週間、BALB/cマウス及びC57BL/6J-DRマウスの両方で、ELISAアッセイを使用して測定した。S抗原特異的なIgGレベルは、第1の週(3用量の後)と同じくらい早く、両方のマウス株で指数関数的に上昇し、ワクチン接種のさらなる用量に関わらず、8週間、ピークレベルに維持した(
図11E)。動物は、いかなるさらなる用量もなしに14週間維持した。14週間目に、本発明者らは、血液試料を収集し、追加ブースター用量を投与した。14週目にブースター用量を投与すると、IgGレベルがさらに上昇し、15週目に最大値に達し、その後、数週間にわたって高い値を維持した(
図11E)。同様に、AuNS-キトサン-SC2-スパイクDNAワクチン接種は、類似の誘導動態及びピークレベルまでの時間で、S抗原特異的IgAも誘発した(
図11F)。このワクチン接種は、2~8週間にわたる持続的な血清中ピークプラトーも示した。これは、特に、その短い半減期及びセロコンバージョンパターンのため、IMワクチン接種後には通常は観察されない。
【0280】
処置の過程で生成される一貫して高IgAレベルのこの明確なパターンは、特に、粘膜表面におけるIgAの空間分布及びこの研究で使用されるIN投与経路のために、決定的に重要な利点とみなすことができる。インフルエンザに対するIgG及びSC2に対するIgGと比較した場合に、IgAが優れた抗ウイルス特性を有することを複数の研究が見出している。Sterlinらは、最近、IgAがSC2に対する早期の中和応答で支配的であることを示唆し、彼らは、血清IgAが、ウイルス中和に、血清IgGより7倍強力であると推論した35。これらの利点は、本発明者らの研究で採用されたワクチン投与ストラテジーにより効果的に利用し得る。IgAを介した粘膜免疫増強についての本発明者らの発見は、ウイルスが2型肺胞細胞表面のACE2タンパク質にドッキングすることによって呼吸上皮細胞を攻撃する36、37ということを考慮すると、SC2感染を防止する上での重要な利点を与え得る。
【0281】
一方、既存の証拠は、血清と、唾液IgM及びIgG抗体レベルの間には良好な相関関係を示しているが、血清と唾液IgA抗体の間の相関関係ははるかに弱い。唾液IgM及びIgGは、主に循環に由来するが、唾液IgAは、ほとんど、唾液腺で局所的に生成される
38ので、これは予想外のことではない。したがって、ワクチン接種されたマウスの気管支肺胞洗浄液及び唾液中のS抗原特異的IgAのレベルは、血清から決定される値よりはるかに高いということを自信をもって推論することができる。早期の抗体応答としてSC2特異的IgM及びIgAが生成され、その後、SC2特異的なIgG抗体が生成された
35。IgGレベルがSC2に対する防御抗体として生涯続くと想定される。しかし、セロコンバージョンの開始は、IgG及びIgMの同時セロコンバージョン、すなわちIgGより早いIgMセロコンバージョン及びIgGより遅いIgMセロコンバージョンを含めた免疫グロブリンのそれぞれのレベルも決定する
39。IgG及びIgAは、それらのレベルを14週目まで維持し、単一のブースター用量でさらに高く上昇した(
図11E~11G)。14週目のブースター用量の後のIgG、IgA、及びIgMレベルの急速なサージは、急速なリコール応答を誘発することができる持続性のメモリーB細胞及びT細胞の明らかな証拠にもなっている。液性免疫応答は、典型的には、一次IgM抗体応答と、その後のIgG、IgA、及びIgEで構成され、免疫メモリーに関連する二次抗体応答とを特徴とする。ここで、本発明者らは、血液プール中のSC2特異的中和抗体の形態のSC2に対する液性応答を観察した。全体的に、本発明者らの発見は、AuNS-キトサン-SC2-スパイクDNAワクチンが免疫適格マウスにおけるS抗原特異的IgG、IgA、及びIgM応答を効果的に誘導し、それらの血清中持続性が著しい相違していることを実証する。
【0282】
AuNS-キトサンを使用した、SC2が中和抗体による肺免疫の効率的な活性化を示した場合のSタンパク質を発現するDNAワクチンの鼻腔内送達
送達されたDNAワクチンによる抗体誘導の良好な評価の後に、本発明者らは、中和アッセイ(BEI resources、NIAID)のための偽ウイルスとして、SC2のSタンパク質を提示し、ホタルルシフェラーゼ(FLuc)-ZsGreenがレポーター遺伝子を発現しているレンチ偽ウイルスを使用して、抗体の中和効果を試験した。本発明者らは、最初にスパイク-レンチ偽ウイルスの特異性を、ヒトACE2受容体を発現する細胞へのそれらの感染力について試験した。本発明者らは、同じ力価のウイルスを対照細胞及びACE2発現HEK293T(HEK293T-ACE2)細胞に感染させ、伝達72時間後にBLIを使用して感染力を評価した。本発明者らは、HEK293T-ACE2細胞内への偽ウイルスの選択的な伝達を観察し、それらを、様々な条件にある中和抗体の存在下で、SC2の感染力を模倣するのに適したモデルとして確立した(
図13A)。偽ウイルスをその選択性について確認した後、本発明者らは、ウイルスを、DNAワクチン送達後の様々な時点に収集したマウス(BALB/c及びC57BL/6J-DR)由来の血清と共に使用して、中和抗体効果を評価した。本発明者らは、商業的供給源から得た検証済み中和抗体(SARS-CoV/SARS-CoV-2スパイク抗体、キメラMab[SinoBiological])を陽性対照として使用し、一方、対照DNAで処置したマウスから収集された血清を陰性対照として使用した。様々な希釈率の血清/Abを偽ウイルス(5×10
6個のウイルス粒子)と共に50μLの無血清培地中で1時間インキュベートし、50μLの2×培地と混合することによって細胞(96ウェルプレート中で0.5×10
4細胞/ウェル)に添加した。細胞をさらに60時間インキュベートし、100μg/mLのD-ルシフェリン(D-Luc)を添加した後に、IVIS Luminaイメージングシステムを使用して、BLIに使用した。Wuhan株のAuNS-キトサン-SC2-スパイクタンパク質で免疫処置されたマウス由来の抗体は、同じ株のSタンパク質をコードするルシフェラーゼ発現SC2偽ウイルスを中和し、これは、FLucシグナルの減衰に反映された。ZsGreenベースのFACS分析を使用して、抗体価の時間依存的な変動も測定したところ、この変動は、BLIで観察された傾向と良好に相関した(
図13B~13D)。3週目にワクチン接種されたマウスから収集された血清の存在下にあるHEK293T-ACE2細胞における偽ウイルスで伝達されたZsGreen発現のヒストグラムが、低い方の端に向かって完全に移動し、偽ウイルス伝達を受けなかった対照細胞のものとオーバーラップした。本発明者らの発見は、ワクチン接種されたマウスで生成した高力価の抗SC2 S抗原特異的中和抗体の存在を示した。これは、HEK293T-ACE2細胞におけるSC2偽ウイルスの感染を完全に防止し得る。
【0283】
AuNS-キトサンを使用した、SC2のSタンパク質を発現するDNAワクチンの鼻腔内送達は、SC2の様々なバリアントに対して有効な中和抗体の効率的産生を誘導した。
【0284】
SC2の新興突然変異バリアントに対してワクチン接種されたマウスで生成された中和抗体の有効性を調査するために、本発明者らは、Wuhan株のSタンパク質、D614G突然変異体、及び南アフリカバリアント(SC2-SA突然変異体)
40を有するSC2偽ウイルスに対してワクチン接種されたマウスの血清の感染力阻害を評価した。本発明者らは、DNAワクチンで処置されたマウスから収集された血清による、用量依存性の中和効果を観察し、感染力の相対阻害として結果を表した(
図13E~13G)。対照DNAで処置したマウスから収集された血清の存在下で偽ウイルスで形質導入されたHEK293T-ACE2細胞は、100%の感染力を有し、対照として働いた。対照DNAで処置されたマウス血清におけるSC2 S抗原特異的抗体の非存在下で、偽ウイルス感染力のレベルは、血清の非存在下で偽ウイルスを使用して形質導入された細胞のものと類似していた。本発明者らは、ブースター用量投与の後に達成した抗SC2抗体のピーク力価を有する、ワクチン接種されたC57BL/6Jマウスの血清を、中和アッセイを評価するために使用した。この血清は、研究の18週目に収集した血清に対応した。本発明者らは、様々な希釈率の血清を使用して、血清中の抗体価と、偽ウイルスの感染力の相関関係を研究し、商業的抗SC2抗体のものと比較した。本発明者らは、用量依存性(血清希釈率)の感染力減衰を観察し、1:50の血清希釈では、本発明者らは、感染力のほぼ完全な阻害を見出した。これは、濃度4μg/mlの商業的抗体(SARS-CoV/SARS-CoV-2スパイク抗体、キメラMAb)で達成されるものとほとんど同様であった。これらの傾向は、高い方の血清希釈率での阻害についてわずかな相違があった、SC2 Sタンパク質の様々なバリアント(すなわち、SC2-Wuhan、SC2-SA突然変異体、及びSC2-D614G突然変異体)について操作された3株の偽ウイルス全てで一貫していた。1:50の血清希釈率では、SC2-Wuhan偽ウイルス及びSC2 D614G突然変異バリアントの両方の感染力がそれぞれ38%±22%及び38%±5%に減衰し、一方、SC2-SA突然変異バリアントについては、感染力が若干67%±7%まで低下した。高い方の血清希釈率におけるこれらの多様性にもかかわらず、本発明者らがアッセイに1:10の血清希釈率を使用したときには、3つのバリアント全ての感染力が完全に阻害された。これは、新興突然変異体バリアントに対するこのDNAワクチン接種アプローチの有効性を示している(
図13E~13G)。
【0285】
AuNS-キトサンを使用したSC2 Sタンパク質を発現するDNAワクチンの鼻腔内送達は、C57BL/6J-DRマウスの細胞性免疫を効果的に誘導した。
【0286】
細胞性免疫応答は、ウイルス感染と戦う上で重要な役割を果たしている
41。それは、それが感染制御をもたらすという点で抗体(液性)応答と基本的に異なるT細胞応答を含む。細胞性免疫は、抗原送達に応答して、成熟T細胞、マクロファージ、DC、NK細胞、及び放出されたサイトカインによって主として駆動される
42。IN DNAワクチン接種後の細胞性免疫の役割を推論するために、本発明者らは、対照DNA及びSC2のSタンパク質をコードするDNAを使用して、AuNS-キトサンNPを使用した送達を受けたマウスの肺、脾臓、胸腺、及びリンパ節から収集された白血球の免疫表現型検査を実施した。肺免疫システムに防御を与える主要免疫細胞サブセットには、AM、DC、Tヘルパー(TH)リンパ球、細胞傷害性Tリンパ球(CTL又はTC)、メモリーリンパ球、NK細胞、及びB細胞が含まれる
43、44。本発明者らは、4つの全ての試料源で90%超の純度を有するCD45+陽性集団を単離するのに成功した(
図16B~16E)。
【0287】
肺及び脾臓におけるSC2スパイクDNAワクチン媒介の抗原プロセシング及び免疫細胞活性化
肺免疫の重要な細胞性媒介因子は、食細胞(AM、好中球、好酸球)及びNK細胞から構成される45。それらは、SC2スパイク抗原発現細胞を認識し、中和する能力を有する。循環ナイーブTリンパ球が細胞性免疫の主要応答者であるが、それらは、血流を離れ、末梢組織内に移動する能力が限定的である。したがって、肺におけるSC2の適応免疫の誘導に先立つ重要な要件は、流入領域リンパ節のT細胞への初期曝露部位からの抗原輸送である46。輸入リンパ管を介したそのような抗原輸送は、肺胞DCの専門機能である47。本発明者らは、SC2スパイクでワクチン接種されたマウスの肺の本発明者らの免疫組織化学分析における、これらの初期相互作用イベントを観察した。
【0288】
免疫細胞及びSタンパク質の検出のために染色された肺組織は、気管支及び肺胞を裏打ちする内皮細胞内のトランスフェクトされたSタンパク質の発現を示し、それらは、DCによって選択的に認識される。これらのスパイクDNA NPの一部も、上皮ジャンクションを通したそれらの伸展から、他の抗原提示細胞(APC)によって、DCによって直接的に捕捉され、内在化される
48。これらのS抗原によってプライミングされたDCは、抗原をプロセシングし、リンパ節に流入して(
図18)、細胞性免疫応答の他のコンポーネントをプライミングして、肺にホーミングする。DCは、近位気道におけるその高密度の存在及びそれら固有の高い食作用能力により、内皮細胞によって発現されたS抗原を捕捉するための完全なポジションを占めている。それらの戦略的分布、並びに抗原を捕捉及びプロセシングし、リンパ節でそれらをT細胞に提示するそれらの能力の全てが、DCを、肺及び他の粘膜表面における主要なAPCにしている
49。
【0289】
例えば、肺におけるスパイク発現及び免疫提示の分析は、気道上皮に存在する免疫監視DCとSPK抗原を発現する細胞の相互作用が、NK細胞に対するプロフェッショナル抗原提示細胞としてのそれらの役割を果たし、T細胞応答を刺激することを示している(データは示されていない)。貪食肺胞マクロファージは抗原提示でもDCを補完するが、それらには共刺激分子が無いので、それは比較的に低いレベルのものである。
【0290】
S処置されたマウスの肺における本発明者らのリンパ球FACS分析結果は、CD11c+DCの増加(7.5%)を明らかにした。これには、CD8+T細胞のサージ(5.5%)も伴っていた。これは、リンパ節から肺内へのCTL(MHCクラスI拘束性T細胞)の到着を説明する(
図16C)。CD11c+DCは、ウイルス排除を促進し、Tヘルパータイプ2(Th2)応答をS抗原に方向づける、CD8+T細胞への交差抗原提示のための肺内主要DCサブセットを表す
50。一方、CD4+T細胞は、主としてAPCに位置するMHC-IIに提示される抗原に応答する。
【0291】
S抗原への真実味のある曝露は、ナイーブCD4T細胞増殖及びエフェクター細胞、TH1、TH2、TH17、又はTreg表現型への分化を誘導することができ、一部は、抗原再曝露の際に迅速に再活性化する記憶細胞にさらに分化する
51。したがって、本発明者らは、エフェクター機能及び記憶機能についてだけでなく、脾臓及びリンパ節の胚中心におけるヘルパーT細胞としてのそれらの役割についても、Sワクチン接種されたマウスの肺でCD4+T細胞の増殖を評価した
52。本発明者らは、S処置したマウスにおけるCD4+ヘルパーT細胞のレベルがわずかに4.2%増加することを認めた。これは、常在エフェクター記憶細胞として肺胞に残っている生存T細胞の存在を真実味をもって説明する。ひとたび活性化されれば、ヘルパーT細胞は、リンパ節(B細胞域)でB細胞を活性化し、それらを体循環を介して肺に向け直す
53。この経路と一致して、SPK処置されたマウスは、CD19+B細胞集団における6.1%の増加を表した(
図16B~16E)。これらの肺常在性B細胞が適応免疫の主要コンポーネントを表し、SC2ワクチンに対する抗原特異的な免疫グロブリンを説明するので、肺におけるB細胞の増加が全身性SC2特異的IgM、IgA、及びIgG免疫グロブリン応答の生成と相関することを確信をもって推論することができる(
図11E~11G)。
【0292】
DC及びT細胞に加えて、常在性AMが、肺胞内腔中の細胞の>90%を構成し、肺胞壁中のDCと間接的に接触しており、これがDCによるS抗原提示の応答をうながす54。本発明者らは、Sワクチン接種されたマウスの肺におけるCD11b+マクロファージレベルの顕著な増加(10.3%)も観察した。これは、細胞性免疫応答を用意するそれらの役割を示している。内皮細胞と近接して存在するこれらの常在性AMとして、それらは、肺胞内腔に樹状シュノーケルを伸長する従来のDCとも接触する。
【0293】
例えば、未処置マウス、pcDNA処置マウス、及びSPK DNAワクチンでトランスフェクトされたマウスの肺における単球、NK細胞、及びDCの分布の分析は、肺胞及び気管支におけるDCの存在の増加を示している(データは示されていない)。これは、SPK抗原の認識及びプロセシングにおける、組織常在性肺胞DCの役割を補完する循環DCの到着を示す。単球及び肺胞マクロファージは、肺胞に動員され、Sタンパク質を発現する気管支上皮と密接に接して、肺への追加の白血球サブセットの動員を媒介する他のクラスの常在性肺貪食細胞である。さらに、SPKワクチンのIN投与の際の、肺におけるDC及びT細胞応答におけるNK細胞の役割の評価は、SPKワクチン接種された肺における抹梢の未熟な局所的DCの増加及びそれらの成熟並びに流入領域リンパ節への移動がリンパ節からのT細胞応答(CD4+及びCD8+T細胞)を駆動することを示している(データは示されていない)。このエフェクターT応答の結果として、肺でCD4+及びCD8+T細胞が増加する。一方、自然免疫システムにおける古典的エフェクター細胞すなわちNK細胞の増加は、T細胞媒介のSPK免疫原性を補完し、DC機能を調節して、T細胞応答に影響を与えることによって、炎症及び組織損傷を緩和する際の防護的役割も果たす。
【0294】
循環から、DCは、白色髄と赤色髄(RP)の境界にある辺縁帯(MZ)洞で脾臓に入り、応答を開始することができる。本発明者らは、Sワクチン接種されたマウスの脾臓組織診断で、辺縁帯からGC内へのDC移動のそのようなイベントを観察した。これは、pDNA処置されたマウスの脾臓と明らかな対比を示した。白色髄(WP)におけるDCの存在の増加は、同時膵臓腎臓(SPK)抗原に対する脾臓からの適応免疫応答を誘発する
55。したがって、IN免疫処置は、WPのT細胞域内への集団DC移動を誘導する。(
図16B~16E)。
【0295】
例えば、脾臓内免疫細胞の特性分析(データは示されていない)は、DCサブセットの差示的な脾臓内移動が適応免疫を調整することを示している。脾臓は、機能及び構造によって赤色髄(RP)と白色髄(WP)とに分けられ、これらの2つの領域の間に辺縁帯(MZ)がある。スパイクワクチン接種された肺から到着するcDCは、T細胞及びB細胞応答を調節する脾臓内の免疫細胞の動的アーキテクチャを調節する。S抗原に対する自然免疫応答による活性化の際に、cDCは脾臓の「辺縁組織」(MZ及びRP)から脾臓(WP)の「リンパ節」、すなわち脾臓T細胞域に移動する。辺縁帯から胚中心へのDC移動は、CD4+T細胞応答又はCD8+T細胞応答のいずれかの選択的誘導をもたらす。
【0296】
同様に、SC2スパイクDNAワクチン接種されたBALB/cマウス由来の脾細胞のFACS分析も、CD11c陽性樹状細胞の7.4%増加を示した。これは、B細胞集団の6.31%増加を伴った。これらの結果は、辺縁帯からGCへのcDC(循環DC)移動の組織学的証拠と良く相関している(
図16B)。
【0297】
ワクチン接種されたマウスの脾臓内のDC及びBリンパ球の同時サージは、DCが、ナイーブBリンパ球へのSC2抗原の輸送及び移動に関与し、この養子抗原移動の際に、B細胞がSC2特異的な抗体応答を誘発することを示唆した(
図11E~11G)
56、57。一方、SC2は、cDCとBリンパ球の相互作用を活性化し、後続のT細胞依存応答のプライミングも行い、この推論と一致して、ワクチン接種されたマウスは、CD4-CD8二重陽性T細胞の約7.9%の増加を表した(
図16B)。
【0298】
DCなどのプロフェッショナルAPCと並んで、他のAPC(マクロファージ)も、胚中心B細胞応答のプロモーターとして積極的に関与している58。脾臓マクロファージは、白色髄、赤色髄、及び辺縁帯に分けられ、それらのそれぞれが免疫応答で明確な役割を果たしている。SC2の到着は、辺縁帯及び白色髄の戦略的位置でマクロファージを活性化した。これは、B細胞及びT細胞の両方と相互作用するためにそれらを近接して配置して、SC2免疫応答に参加する(データは示されていない)。重要なことに、辺縁帯(MZ)B細胞は、骨髄細胞、樹状細胞、及び間質細胞と共に、辺縁帯の主要構成要素である。これらのMZ B細胞は、S抗原に対するIgM抗体の主な産生細胞である。MZ B細胞の濃縮及び可動化は、脾臓免疫応答の特徴を示す。
【0299】
同様に、本発明者らは、SC2ワクチン接種されたマウスの脾臓の白色髄及び辺縁帯におけるマクロファージ及び単球の有病率の増加を観察した。これは、SC2ワクチン接種されたBALBcマウスの脾臓における、B細胞の6.3%増加を伴う10.3%のCD11b+マクロファージの同時サージと良好に相関した(
図16B)。
【0300】
最後に、本発明者らは、DNAワクチンの反復投与で処置されたマウスの肺及び対照における任意の毒性効果の存在について評価した(N=3)。AuNS-キトサンを使用して送達されたpDNA又はpDNA-SC2スパイクで処置したマウスから収集された肺組織及び脾臓組織の組織学的切片のヘマトキシリン-エオジン染色をこれらの毒物学的な観察のために完成させた(データは示されていない)。本発明者らは、S DNAワクチンによってワクチン接種されたマウスの肺では、いかなる有意の組織損傷もないことを観察した。
【0301】
リンパ節におけるSC2スパイクDNAのワクチンで媒介された抗原プロセシング並びにB細胞及びT細胞活性化。
【0302】
リンパ節は、適応免疫を組織化するT細胞、B細胞、及びAPCを収容する、免疫応答の決定的に重要な指令センターである59。単球及びDCなどのAPCは、AuNS-キトサンを使用したDNAワクチンのIN送達の際に、肺で発現されるS抗原を内在化し、ワクチンをリンパ節に物理的に運ぶことができる。この役割に加えて、リンパ節常在性DCは、CD8+T細胞をプライミングするための交差提示など、一部の組織常在性DCには無い重要な機能を有する60。肺におけるDCとSタンパク質発現細胞の相互作用(データは示されていない)から明らかなように、これらのDCは、S抗原を捕捉し、それを短いペプチド断片にタンパク質分解し、これらのペプチドをクラスI及びクラスII MHC分子にローディングし、その後、CD8+及びCD4+T細胞の表面に物理的に提示することが予測され得る61。同時に、SC2スパイク抗原に遭遇したAPCは、ナイーブヘルパーT細胞を活性化するために最も近いリンパ節に移動することが予測され得る。ひとたび活性化されれば、ヘルパーT細胞は、DC及びマクロファージによって提示された同じS抗原に遭遇したB細胞を活性化する62。典型的なマクロファージとは異なり、被膜下洞マクロファージは、抗原をB細胞にリレーし、サイトカインシグナル伝達カスケードを生成して、DC、好中球、NK細胞の流入を引き起こすか、いくつかの状態では、T細胞に抗原を提示することによって、標的特異的免疫応答を様々なリンパ媒介病原体に方向づけ、SC2ワクチン接種したマウスは、そのような被膜下洞マクロファージ及びDCの存在を示した(データは示されていない)63。B細胞の活性化は、S抗原がB細胞受容体に結合することによって誘発されることが多く、これは、リンパ節内のAPCの細胞膜上に捕捉されたS抗原のB細胞認識を介して起こる可能性がある64。本発明者らがS特異的免疫グロブリン(IgG、IgA、及びIgM)の一貫した用量依存性サージをワクチン接種されたマウスで見ることができたので、これらのマウスにおけるB細胞が、送達されたS DNAワクチンで活性化され、抗原特異応答を組織化したことは確かである。この概念に鑑みて、本発明者らは、特にB細胞の成熟及び活性化におけるそれらの決定的な役割のため、このB細胞応答を開始する際のリンパ節の役割をさらに調査した。組織学染色の本発明者らの結果は、流入領域リンパ節が、スパイク抗原特異的な免疫応答を生成するために、スパイクで活性されたcDC、NK細胞、及びマクロファージを、B細胞成熟中心、すなわち胚中心(GC)から集めることを示している(データは示されていない)。ワクチン接種されたマウスのリンパ節は、広範なB細胞増殖を伴う多巣性胚中心を有する反応性リンパ節の特徴を表す。GC内の指状嵌入濾胞樹状細胞(FDC)の存在も、GC内のS特異的B細胞分類を確認し、ワクチン接種されたマウスにおける免疫グロブリンレベル(IgG、IgM、及びIgA)の急速なサージを説明する。濾胞間腔内への辺縁帯を通り抜けるB細胞移動のイベントは、形質芽細胞と呼ばれる短命な抗体産生細胞を表す。濾胞間域は、適切なT細胞応答及びB細胞成熟をプライミングする。
【0303】
リンパ節内のそのような特徴的なS特異的免疫応答をSC2DNAワクチンが誘発できるかどうか調査するために、本発明者らは、対照であるpDNA処置されたマウスと共に、SC2 DNAワクチンを使用して処置したBALB/cマウスから節を採取し(各状態につきN=3動物)、免疫細胞集団の分布を特定するために、FACSを使用して分析した。節は、プロフェッショナルAPC、特にDCによって提示されるS抗原で細胞傷害性T細胞が訓練される場所でもある
65。本発明者らのFACS分析結果は、pDNAワクチン接種されたマウスのものと比較して、Sワクチン接種されたマウスにおけるCD4+T細胞のこの調節を示した(
図16B~16E)。ワクチン接種されたマウスの肺の組織検査は、S抗原の良好な送達及び発現を示し、DCとこれらのS発現細胞の相互作用も捕捉した(データは示されていない)。
【0304】
肺におけるこれらの移動性DCは、抗原をリンパ節常在性DCに移すことができる66。これらのS抗原認識イベントは、自然免疫システムパターン認識受容体又はサイトカイン及びS抗原媒介免疫に応答してリンパ節で誘導されるケモカインを活性化するように免疫応答を抗原に向ける。リンパ節内のB細胞及びT細胞両方のFACS分析は、処置されたマウスにおけるそれらのS抗原特異的増強(すなわち、CD19+B細胞の18.6%増加及びCD4+T細胞の6.3%増加)を明らかにした。他の前臨床モデルにおける免疫処置研究は、CD8+T細胞応答を起こすのに大量の抗原が必要であり66、一方、本発明者らのアプローチにおいて、DCによる効率的な抗原プロセシングと及び交差提示がIN経路で実現し、これが、リンパ節からのT細胞免疫応答におけるサージももたらしたことを示唆している。より高いレベルの利用可能な抗原及び濾胞ヘルパーT細胞のより大きな産生がリンパ節GC応答を支配することができる。
【0305】
SC2-スパイクを使用してワクチン接種されたC57BL/6J-DRマウスのリンパ節の組織検査は、抗原活性化の特徴を示した。T細胞及びB細胞は、T細胞が主として節の深い方にある傍皮質にあり、B細胞が濾胞にあるという特定の位置に区画化されていた(データは示されていない)。リンパ又はリンパ移動性APCによって節に運ばれるS抗原は、流入領域リンパ節の被膜下洞に到着する。S抗原に結合することによる初期シグナル伝達を受けたB細胞は、濾胞(GC)の専門化した小領域に入る。B細胞のそのような動的な可動化は、対照マウスと比較した場合、ワクチン接種されたマウスで明白であった(データは示されていない)67。GCは、T細胞依存性抗体応答中に二次リンパ組織のB細胞濾胞で発生する68。最初にGCになるB細胞は、濾胞の外、すなわち指状突起細胞及びヘルパーT細胞を伴うT細胞リッチ域で活性化されなければならない69。明調部内の濾胞DC(FDC)は、Fc及び補体受容体を介してS抗原を捕捉し、保持し、それらを長期間にわたって局所のB細胞に提示できることが予測されている70、71。GC内で、B細胞は、プロセシングされ、クラスII MHC分子上に提示されている抗原をFDCから取得することができる。活性化B細胞は、GCを出て、形質芽細胞と呼ばれる短命な抗体産生細胞になることができる。組織学的染色(データは示されていない)から示された結果は、SC2 DNAワクチンに応答した抗体産生形質芽細胞の移動に関する証拠として、GCから明調部内へのB細胞の移動を示している。リンパ節に直接的に蓄積される抗原の量は、免疫処置されたリンパ節で発生する濾胞ヘルパーT細胞及びGC B細胞の数と相関する72。したがって、濾胞DCへのS抗原送達の効率も、免疫処置に対する応答に影響を与えることになる。FDCは、いかなる二次リンパ器官の濾胞内に、B細胞と共に位置する73。FDCは、適応免疫応答中における、高親和性形質細胞、すなわちメモリーBリンパ球の産生及び選択に関する非常に重要な機能を有する74。FDCの1つの主要な特性は、抗原を捕捉し、免疫複合体として刺激の強い方式でそれを増殖中のB細胞に提示するそれらの能力である。リンパ節内には、FDCを含む間質細胞のネットワークがある。FDCは、最初、「抗原保持細網細胞」として同定された75。続いて、FDCは、長期間にわたって抗原を保持するそれらの固有の能力により認識された。FDCのこの特性は、GC形成及び長期の免疫記憶が含まれるいくつかの免疫機能に決定的に重要である76。本発明者らのリンパ節組織検査は、B細胞濾胞(BCF)内のそのようなFDCの存在を示しており、T細胞依存性抗体応答の結果として、B細胞濾胞でGCが発生する。活性化されたT細胞及びAPCは、鼻腔リンパの経路に沿って流出し、最終的に頸部リンパ節に接近する77。したがって、本発明者らは、B細胞がGCの中心にきて、DCがこれらのGC内のB細胞の近傍に存在するような、頸部リンパ節の完全なリモデリングを観察した(データは示されていない)。全体的に、本発明者らの結果は、AuNS-キトサンを使用したDNAワクチンの送達により発現されたS抗原がリンパ節内の効果的な細胞性免疫を示すことを確認する。
【0306】
IFNγが病原体を認識し、除去する上で決定的に重要な役割を有するという事実を考慮して、それは、ワクチン応答の予後マーカーとして特定されている。I型IFNは、Sタンパク質発現から、DC活性化、T細胞分化まで及ぶSC2ワクチン接種に至る免疫応答のほとんどあらゆるステップに影響を与えることができる多面的な抗ウイルス性サイトカインである。驚くようなことではないが、I型IFNは、SC2ワクチンに対するT細胞及びB細胞応答の中心的な媒介因子であることが見出されている。本発明者らは、リンパ節内及び血液中のT細胞によるINFγ発現増加にも気付いた(
図17A~17E)
78。IFNγは、自然免疫システム及び適応免疫システム両方のシグネチャーサイトカインであり、IFNγを発現する脾臓におけるCD8+T細胞の増加は、pDNA対照ベクターで処置されたマウスではなく、SC2ワクチン接種されたマウスでのみ明白であった。
【0307】
AuNS-キトサンはIN送達の際にマウスの肺で、生物発光イメージングを使用して測定されたFLuc mRNAのロバストな送達を示した。
【0308】
DNAワクチンのIN送達が有意な発現を実現し、肺免疫応答を誘導するのに成功したので、本発明者らは、細胞内でAuNS-キトサンを使用して、BLIを使用してマウスでIN送達した際に、送達されたmRNAの安定性及び発現をさらに評価した。本発明者らは、この原理証明研究のコンポーネントのため、FLucレポーター遺伝子をコードするmRNAを使用した。様々なmRNA濃度(50、100、及び200ng)でトランスフェクトされた最適N/P比の複合体を使用したHEK-293T細胞及びA549細胞のインビトロ結果は、両細胞型における用量依存的なルシフェラーゼ発現を示した(
図14A~14B)。本発明者らは、マウスのIN送達のために最適なAuNS-キトサン-FLuc mRNA複合体を、各鼻孔に5μlのNP複合体を4回(各用量あたり合計20μl、2μgのmRNA等価物)使用した。本発明者らは、処置及び対照のためにそれぞれ3頭のマウスを使用した。本発明者らは、AuNS-キトサン-mRNAを送達し、送達後24時間毎にBLIを取得し、3日間毎日投与を続けた。最終用量の3日後に、マウスを、インビボ生物発光シグナルのために画像化し、その後、組織内のエクスビボ体内分布のために屠殺した。マウスは、肺における強いBLIシグナルを明らかにした(
図14C)。エクスビボ分析(肺、脾臓、肝臓、気管、及び腎臓)は、肺と気管気管支の接合部で強いBLIシグナルを示した。脾臓を含めた他の器官にはシグナルが無かった(
図14D)。これらの発見は、合成mRNAのインビトロ及びインビボの送達についてのAuNS-キトサンの効率を明らかに支持し、インビボ適用についてのmRNAの安定性及び機能的効率も支持した。
【0309】
結論
本発明者らは、抗原としてそのSタンパク質をコードするDNAを使用した新規なSC2ワクチンのIN送達の潜在的利点を評価した。AuNS-キトサンNPを使用したDNAワクチンの送達は、マウスの呼吸粘膜及び肺におけるこの抗原の良好な発現をもたらし、これが肺への抗原提示DCの動員及び液性抗体応答の強化をもたらす。抗体応答は、3用量のDNAワクチンのIN送達後、1週間という早さで発達する。抗体レベルは、2つの異なるマウスモデル(BALB/c及びC57BL/6J-DR)で実証されたように、有意な衰弱なしに数週間一貫して上昇した。抗体応答は、高レベルのIgG及びIgAをもたらし、SC2の様々なスパイクバリアント(Wuhan、D614G、及びSA突然変異体)を発現する偽ウイルスに対する強い中和効果を示す。免疫染色ベースのFACS及び共焦点顕微鏡法を使用した、細胞性免疫応答についての追加の評価は、肺及びリンパ節におけるT細胞及びB細胞応答の有効な活性化を示し、これは、感染症に対して通常観察される免疫応答に類似したものである。本発明者らの発見は、DNA及び合成mRNAを送達するための効率的なインビトロ及びインビボナノ製剤としてAuNS-キトサンを使用することの長所及び将来のmRNAワクチン開発及び適用のための機能的インビボトランスフェクションのために核酸を安定化することにおけるその役割にも光をあてる。この原理証明研究は、強い粘膜免疫応答をもたらし、SC2の様々な抗原(N、E、M、及びSタンパク質)をコードするmRNAワクチンを使用するためのロードマップを提供するこのIN SC2DNAワクチンの能力に光をあてる。これは、世界中に分布し、連続的に進化している多数のSC2バリアントと戦うための持続性の広範囲抗体応答をもたらす可能性がある。
【0310】
材料及び方法
材料
本発明者らは、TritonX-100、四塩化金酸、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、アスコルビン酸(AA)、硝酸銀(AgNO3)をSigma-Aldrichから、塩化金(III)三水和物(HAuCl4・3H2O)、L(+)アスコルビン酸(AA)、クエン酸三ナトリウム二水和物、1N塩酸溶液(HCl)、キトサン、及びリン酸緩衝食塩水(PBS)をSigma-Aldrich(米国ミズーリ州St Louis)から利用可能な最も高い純度で購入した。本発明者らは、全ての調製に再蒸留水を使用した。炭素コーティングされた銅のTEM格子は、VWR(米国ペンシルベニア州Radnor)から得た。本発明者らは、金NPの合成に使用するガラス器具を王水中で30分間前処理し、その後、3回の超音波処理(3分)の下、再蒸留水で洗浄及び浄化した。
【0311】
方法
AuNSの合成
本発明者らは、以前に報告されている金Nanostars合成手順の修飾されたシード支援成長20を使用して、金Nanostarオクタポッドを合成した。簡潔には、0.15M TritonX-100中、NaBH4によってAuCl4から金ナノシードを生成し、結果のコロイド金をNanostar成長のシードとして使用した。水中に0.1M TritonX-100及び250μlの0.004M AgNO3を含有する5mLの水溶液に5μlのシード金NPを添加した。その後、得られた混合物に約5mLのHAuCl4(0.001M)を補足し、70℃で30分間、撹拌した。全成分の均質溶解を完了した後に、本発明者らは、溶液温度を37℃に低下し、400μlの0.0788Mアスコルビン酸水溶液を添加した。本発明者らは、水溶液を30分間、撹拌し、0.6mLの0.001M NaBH4溶液の予め氷冷した溶液をさらに滴加した。混合物を1000rpmで絶え間無く撹拌し、均質な懸濁液を得た。この懸濁液は、その後非常に濃い緑色に変化し、この時点で、温度を約4℃まで低下させることによって反応を停止させた。結果の金Nanostarsを13,000rpmで30分間遠心分離することによって分離した。これを、蒸留水で3回洗浄し、その後、さらなるインビトロ研究及びインビボ研究に使用する。
【0312】
SC2プラスミド又はpcDNAローディングしたAuNSの製剤化。
【0313】
LV1-マイクロフルイディクスシステム(Microfluidics、米国マサチューセッツ州Westwood)を30,000psiで使用して、0.2%酢酸で溶解されたキトサンをマイクロ流動化した。本発明者らは、濃度0.5mg/mLのキトサンの懸濁液を出口で抜き出し、AuNSをコーティングするためにこれを使用した。本発明者らは、その後、可溶化したキトサンを400μl(ストック-5mg/mL)のAuNSと共に200rpmの回転インキュベーター内で、30℃で終夜インキュベートした。共インキュベーションの前に、調製されたままのAuNanostarsを短いプローブ超音波処理、すなわち、5秒の「On」振幅40%で無菌再蒸留水中に分散させて、NPの5mg/mL均一懸濁液を形成させた。終夜インキュベーションの後に、本発明者らは、反応混合物に13,000rpmで30分間の遠心処理を施し、結果のペレットを、600μlという規定容量の無菌再蒸留水中に合わせてプールした。本発明者らは、DEPC水中に200ng/μlに希釈したストックSC2プラスミド(2μg)を使用し、キトサンでキャッピングした漸増量のAuNSと複合体形成させ、その後、37℃で15分間インキュベートした。複合体を0.7のアガロースゲル上にローディングし、40Vで45分間の電気泳動を行った。泳動の後に、BioRad Gel Doc XR+ゲルドキュメンテーションシステム(Bio Rad、米国カリフォルニア州Hercules)でゲルを画像化して、DNA封入の程度をさらに定量化し、分析した。最適化したSC2プラスミド又はpcDNAローディングしたAuNS-キトサンを後続のインビトロ及びインビボ研究に適合させた。プラスミドDNAローディングした複合体を研究の各時点に20μl用量で投与した。
【0314】
ナノ粒子特性分析
本発明者らは、合成手順中のAuNS表面修飾の各ステップを、Malvern Zetasizer Nano Zシステムにおける動的光散乱法(DLS)を25℃、90°の散乱角で使用して、平均流体力学直径及びゼータ電位について特徴分析した。本発明者らは、Smoluchowski近似法を使用して、AuNSベースのNPのζ電位(表面電荷)を決定した。本発明者らは、試料をPBS中に調製し、脱イオン水で希釈して、粒子の表面電荷を正確に測定することができる低イオン強度条件下で測定が行われることを確実にした。本発明者らは、SC2プラスミドをローディングしたAuNS-キトサンの粒径及び形態を、透過電子顕微鏡(TEM、FEI-Tecnai G2 F20 X-TWIN)を使用して特徴分析した。ORIUS CCDカメラを使用し、デジタル顕微造影を介して画像を取得し、エネルギー分散X線スペクトル(EDS)をFEI-TIAインタフェースを介して記録した。試料調製には、SC2プラスミドをローディングした10μlのAuNS-キトサンを純炭素支持フィルム付きのグロー放電銅グリッド上にドロップキャストし、10~15分間インキュベートし、その後、超純水で洗浄した。
【0315】
細胞におけるAuNS-キトサン媒介DNAトランスフェクションのインビトロ評価
本発明者らは、AuNS-キトサによる細胞取り込み及びFLucプラスミド送達を、BLIを定量的に使用して推定した。AuNS-キトサン上にローディングしたFLuc EGFP(1μg)プラスミドでA549細胞を処置した。48時間に、本発明者らは、処置された細胞を、D-Luc(150μg/ml)基質の存在下でIVIS Lumina-IIIインビボイメージングシステムを使用して、生物発光シグナルについて画像化した。明らかな相関関係を得るために、全ての処置条件について、生物発光シグナルを定量化した。
【0316】
マウス株及び免疫処置
本発明者らは、6~8週齢のBALB/c雌性マウスをCharles River Laboratories(米国マサチューセッツ州Wilmington)から購入し、C57BL/6Jマウス及びCcr2RFP×3cr1GFP二重レポーターを保持するマウスをJackson Laboratory(米国メイン州Bar Harbor)から購入した。マウスは、特定病原体除去条件下で飼育した。本発明者らは、スタンフォード大学の実験動物飼育に関する管理検討会(APLAC)の指導の下に全ての動物実験を行った。本発明者らは、10μgのSC2 DNA又はpcDNAワクチン溶液でマウスをINで免疫処置した。本発明者らは、2~3分以内の動物回復を可能にするイソフルランガス麻酔を使用して軽鎮静下にあるマウスでNP製剤のIN送達を行った。本発明者らは、各マウスを誘導チャンバーに入れ、酸素流量計を0.8~1.5L/分に調整した。ひとたび定常的な呼吸数が確立されたならば、本発明者らは、20μlのナノ製剤を5μL/液滴として15~20分間にわたってIN投与した。各液滴を投与した後、本発明者らは、3~4分間停止して、動物が液滴を吸入し、定常的な速度で呼吸するのを確実にした。封鎖又は刺激の徴候があるかどうか、鼻孔を密接に観察した。総量を投与した後に、各動物をそのケージに移す前に、麻酔から回復させた。
【0317】
疑似化レンチウイルスを用いた血清中和アッセイ
抗体によるウイルス中和は、多くのウイルス疾患に重要な予後予測因子である。血清又は血漿中の中和抗体の力価を簡単かつ迅速に測定するために、本発明者らは、偽ウイルス粒子を開発した。一般に使用されているVSV-Gの代わりのエンベロープ糖タンパク質として、SC2スパイク(Genbank受託#QHD43416.1、D614G突然変異を有する)を使用して、SC2スパイクD614G疑似化レンチウイルスを生成した。これらの偽ウイルス粒子は、CMVプロモーターによって駆動されるFLuc遺伝子を含有しており、したがって、スパイク媒介性細胞進入をFLucイメージングを介して好都合に決定することができる。SC2スパイクD614G疑似化レンチウイルスを使用して、SC2に対する中和抗体の活性をバイオセイフティーレベル2施設で測定することができる。B.1.351と呼ばれるバリアントは、南アフリカ共和国で2020年の秋に最初に同定された。501Y.V2としても知られているこの南アフリカバリアントは、多くの突然変異を有し、これが、より高い伝播性及び感染力をもたらしている可能性がある。スパイク(B.1.351バリアント)(SC2)疑似化レンチウイルスは、一般に使用されているVSV-Gの代わりのエンベロープ糖タンパク質として、SC2 B.1.351バリアントスパイク(Genbank受託#QHD43416.1、B.1.351突然変異を有する)を使用して生成した。
【0318】
本発明者らは、感染の前の日に、96ウェルプレート内に1ウェルあたり5×104細胞でHEK293T-ACE2細胞を播種した。本発明者らは、感染の前の日に、96ウェルプレート(ThermoFisher、米国)内にHEK293FT細胞及びHEK293T-ACE2細胞を播種した。疑似化MLVウイルスを培養前細胞に添加した。本発明者らは、細胞を5%CO2、37℃で2日間培養した。各ウェル内の全ての細胞をD-Luc基質の存在下でルシフェラーゼ発現レベルについてアッセイした。偽ウイルスのACE2受容体特異的トランスフェクションを検証した後に、本発明者らは、動物血清の存在下で感染力を評価した。本発明者らは、10%FBS、2mMのL-グルタミン、及び200μg/mlハイグロマイシンBを含むDMEMを希釈剤として使用して、50μl容積の血清を順次希釈し、50μlの疑似化ウイルスと共に37℃で1時間プレインキュベートした。これらの感染のために、血清の非存在下でウイルスストックを希釈して使用した。その後、血清/偽ウイルス粒子混合物で細胞を感染させた。感染の48時間後に、D-Luc基質を使用してルシフェラーゼを測定した。本発明者らは、Prism 8(GraphPad、米国)を使用して中和力価をプロットした。
【0319】
末梢血中のSPK特異的IgG、IgM、及びIgA抗体の測定
本発明者らは、第1の免疫処置の2日前、第1及び第2の免疫処置の12日後、及び最後の免疫処置の15日後に、5群全ての各マウスの尾部から採血して、液性免疫応答を評価した。血液を遠心分離し、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による特異的なIgG、IgM、及びIgA検出用に血清を単離した。簡潔には、本発明者らは、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の50μlの5μg/mlSPKペプチドで、96ウェルプレート(Maxisorp、Nunc)を4℃で終夜コーティングした。プレートは、100μlの1%ウシ血清アルブミンPBS溶液で、室温で2時間ブロッキングした。本発明者らは、個々のマウスの血清を1:1600又は1:400に希釈し、ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。PBSTでそれを3回洗浄した後に、本発明者らは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(Serotec、英国Oxford)に結合させた二次抗体ウサギ抗マウスIgG、IgA、又はIgM(1:2000)でプレートを室温で1時間インキュベートした。次いで、本発明者らは、200μlの基質TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)/H2O2(BD Biosciences、米国カリフォルニア州San Jose)を添加し、室温で30分間、暗条件下にインキュベートし、50μlのH2SO4 2Nを添加することによって反応を停止させた。Tecan分光光度計を使用して、OD450nmでプレートを読み取り、抗体価を平均吸収度±標準偏差(SD)で表した。
【0320】
イムノブロット分析
トランスフェクトされた細胞におけるSPKタンパク質の発現を決定し、精製されたSPKタンパク質に関してSC2の突然変異バリアントに対するSC2抗体の特異性をスクリーニングするために、本発明者らは、抗SC2 SPK抗体を使用してイムノブロット分析を行った。本発明者らは、10cmウェルプレート内に500,000個のHEK293細胞を播種し、リポフェクタミン3000試薬(Thermo Fisher Scientific)を使用して、10μgのpDNA(pcDNA、SC2-Wuhan、SC2-SA突然変異体、及びSC2-D614G突然変異体)でトランスフェクトし、処置の48時間後に、本発明者らは、さらに抗SPK抗体を使用したイムノブロット分析のために、細胞を採取し、プロセシングした。簡潔には、本発明者らは、500μlの溶解バッファー中に細胞を溶解させ、100μgの総タンパク質をβ-メルカプトエタノール(Bio-Rad)及び10μlのNuPAGE LDS(4×)ローディングバッファーと混合し、95℃で5分間加熱し、4~12%SDS-ポリアクリルアミド電気泳動勾配ゲル(Invitrogen)中にローディングし、80Vで2時間泳動させた。その後、ゲルから得られる分離タンパク質を孔径0.2μmのニトロセルロースメンブラン(Schleicher&Schuell、米国ニューハンプシャー州Keene)にエレクトロブロッティングした。0.01%Tween-20(TBS-T、pH7.6)を含有するトリス緩衝食塩水中の5%無脂ドライミルクで膜を30分間ブロッティングし、抗ウサギSPKモノクローナル抗体と共にロッキングプラットホーム上4℃で終夜インキュベートした。その翌日、本発明者らは、PBSTを使用して一次抗体を洗い流し、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG二次抗体(1:10000希釈、Rockland Immunochemicals、米国ペンシルベニア州Gilbersville)を添加し、室温2時間これをロッキング下においた。Pierce ECLウエスタンブロッティング基質(Thermo Fisher Scientific、米国)でブロットを現像し、画像化し、IVIS Lumina IIIインビボイメージングシステムで定量化した。
【0321】
肺、脾臓、及びリンパ節の組織検査
本発明者らは、組織検査用の器官を採取するために、深麻酔下の動物の心臓潅流を行った。簡潔には、本発明者らは、麻酔下に、横隔膜の下で各マウスを解剖し、胸郭を切って、心臓を露出させた。本発明者らは、左心室切開を行い、大動脈に針を挿入し、固定し、その後、右心房を切って、流した。30mLのPBSを使用して各動物に4~5分間又は肝臓から血液が無くなるまで経心的に灌流した。次に、組織形態を保全し、標的分子の免疫原性を保持するために、本発明者らは、30mLの4%パラホルムアルデヒドで動物を4分間灌流した。アルデヒド固定の後、本発明者らは、組織(脾臓、リンパ節、及び肺)を採取し、終夜平衡のために30%ショ糖のPBS溶液に移し、その後OCT包埋用にプロセシングした。クリオスタットを使用して、OCTブロックを厚さ5μmの組織切片にし、ゼラチンでコーティングされた組織学的スライドに融解マウントした。本発明者らは、その後、37℃で30分間スライドを乾燥させ、洗浄バッファー中で10分間再水和させた。1%ウシ血清アルブミンのPBS溶液を使用して、組織を室温で30分間ブロッキングし、その後、抗原特異的抗マウス蛍光色素タグ付き抗体(CD4-FITC、CD8-Alexa-700、CD19 Alexa-700)と共にインキュベートし、2~8℃で終夜インキュベートした。インキュベーション時間の後に、本発明者らは、抗体を洗浄バッファー中で15分間3回洗浄した。本発明者らは、その後、300μLのHoechst 33342希釈溶液中でスライドをインキュベートし、室温で5分間インキュベートした。スライドは、最後にPBSで1回リンスし、抗フェード封入剤を用いてマウントし、それぞれのフィルターの下でLeica DMi8共焦点顕微鏡を使用して可視化した。
【0322】
フローサイトメトリー免疫表現型検査:本発明者らは、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、及び血液試料についてフローサイトメトリーを使用して、細胞表面マーカーベースの免疫細胞分析を行った。簡潔には、本発明者らは、機械的な解離を使用して、組織から単一細胞懸濁液を調製し、ACK溶解バッファーを使用して、赤血球を除去した。最後の洗浄の後に、本発明者らは、70μmの細胞濾過器を通して細胞を濾過し、0.1%トリパンブルーを使用して生存率を検査した。蛍光色素で標識した細胞表面マーカー特異的抗マウス抗体、すなわち、CD45-Pac-Blue、CD3/CD4/CD8PE-CY7/FITC/Alexa-700、CD45/CD11b PacBlue/APC-Cy7、CD45/CD11c PacBlue/PE-Cy7、CD45/CD86 Pac Blue/PE、CD19 Alexa-700、CD22 Alexa-700(Biolegend)で100万個の細胞を標識化した。ゲーティング及び補償のために、アイソタイプ抗体を含めた。抗体の添加の後、本発明者らは、細胞を暗条件に30分間保持した。本発明者らは、PBSを使用して細胞を洗浄し、新しいPBSに懸濁し、その後、Guava(登録商標)easyCyte(商標)フローサイトメータを使用して、20,000イベントを分析した。
【0323】
統計的分析:本発明者らは、GraphPad Prism 8(バージョン8.0a、GraphPad Software, Inc.、米国カリフォルニア州La Jolla)を使用して、全てのグラフをプロットし、統計的分析を行った。本発明者らは、独立した実験の3~5頭のマウスからデータをプールし、図のレジェンドに示した平均±標準偏差(SD)又は平均値の標準誤差(SEM)として結果を提示し、分析に第1(25パーセンタイル)と第3(75パーセンタイル)の間の四分位範囲を採用した。本発明者らは、Studentの両側t検定を使用して、グループ化されたデータを比較し、グループ化されたデータの多重比較を計算した。ELISAと中和力価の間の相関分析のために、Prism 9.0(Graphpad)を使用して有意性(p)を計算した。
【0324】
p値が0.05未満であった場合に、差が有意であるとした。p値は、対応する図のレジェンドに示されていない場合、有意水準を示す(*は0.01<p<0.05を示し、**は0.001<p<0.01を示し、***は0.0001<p<0.001を示し、****はp<0.0001を示す)。
【0325】
表
【0326】
【0327】
【0328】
実施例1~4の参考文献
【0329】
【0330】
実施例5の参考文献
【0331】
【国際調査報告】