(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】コーティングされた建築ボード
(51)【国際特許分類】
C09D 133/06 20060101AFI20230817BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230817BHJP
C09D 129/04 20060101ALI20230817BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230817BHJP
C09D 131/04 20060101ALI20230817BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20230817BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D5/02
C09D129/04
C09D175/04
C09D131/04
C09D11/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507487
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021069639
(87)【国際公開番号】W WO2022028836
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523036041
【氏名又は名称】ホイバッハ・ホールディング・スウィッツァーランド・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】リュー・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ニュー・リン
(72)【発明者】
【氏名】リュー・シャオチー
(72)【発明者】
【氏名】シャオ・チンボー
【テーマコード(参考)】
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4J038CE021
4J038CF021
4J038CG021
4J038CG131
4J038CG211
4J038DG001
4J038JA26
4J038JA57
4J038KA06
4J038KA08
4J038NA01
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4J038PA18
4J038PB05
4J038PC04
4J039AD06
4J039AD08
4J039AD10
4J039AE04
4J039BA26
4J039BC13
4J039BC24
4J039BE12
4J039CA06
4J039DA02
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA07
4J039GA24
(57)【要約】
【要約書】
本発明は、水系インキ用のカラーイメージング層を含むコーティングされた建築ボード、及び当該コーティングされた建築ボードの製造方法に関する。詳しくは、本発明は、カラーイメージング層が分子篩、特にミクロ孔性ゼオライトを含む、コーティングされた建築ボードに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーイメージング層を含むコーティングされた建築ボードの製造方法であって、少なくとも
a)水性コーティング組成物を、建築ボードの表面の少なくとも一部に施与するステップであって、前記水性コーティング組成物が、次の成分:
i)コーティング組成物の20重量%~80重量%のアクリル系ポリマーエマルション、及び
ii)コーティング組成物の0.2重量%~20重量%の分子篩、
を含むステップ、及び
b)前記コーティング組成物を硬化するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項2】
分子篩が、ミクロ孔性分子篩、好ましくはゼオライトからなる群から選択されるミクロ孔性分子篩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分子篩の孔の少なくとも90%が、0.1nmと2nmとの間の孔径を有し、好ましくは分子篩が3Å、4Åまたは5Åゼオライトである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アクリル系ポリマーエマルションが、アクリル系モノマー組成物のフリーラジカル重合によって得ることができるアクリル系ポリマーを含み、ここで、前記アクリル系モノマーは、アクリレート、メタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、エポキシアルキルアクリレート、エポキシアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸及びこれらの混合物、任意選択的に及びエチレン性不飽和コモノマーからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
該アクリル系モノマー組成物が、少なくとも50重量%のアクリル系モノマー、及び50重量%未満のエチレン性不飽和コモノマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アクリル系ポリマーエマルションの含水率が、25重量%と75重量%との間である、請求項1~5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
水性コーティング組成物が、グリコールエーテルまたはグリコールエステルまたはこれらの組み合わせからなる群から選択される成膜剤を含む、請求項1~6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
水性コーティング組成物が、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール及びポリウレタンの群から選択される、50重量%までの追加のポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
水性コーティング組成物が、分散剤、増粘剤、フィラー、消泡剤、中和剤、殺生物剤、艶消し剤及び/または顔料を含む、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一つに記載の硬化されたコーティング組成物のカラーイメージング層を、建築ボードの表面の少なくとも一部上に含む、コーティングされた建築ボード。
【請求項11】
カラーイメージング層を表面の少なくとも一部上に含むコーティングされた建築ボードであって、カラーイメージング層が、30重量%~95重量%のアクリル系ポリマーの層及び0.5重量%~50重量%の分子篩の層を含む、前記コーティングされた建築ボード。
【請求項12】
カラーイメージング層における分子篩とアクリル系ポリマーとの重量比が、1:1~1:20である、請求項11に記載のコーティングされた建築ボード。
【請求項13】
分子篩が、ミクロ孔性篩、好ましくはゼオライト、最も好ましくは3Å、4Å、5Åゼオライトまたはこれらの混合物である、請求項11または12に記載のコーティングされた建築ボード。
【請求項14】
建築ボードが、セメントプレート、石膏プレート、セラミックプレート、メタルプレート、ウッドプレートまたはポリマー樹脂プレートである、請求項10~13のいずれか一つに記載のコーティングされた建築ボード。
【請求項15】
水系インキを用いたインキジェット印刷のためのベース材料としての、請求項10~14のいずれか一つに記載の建築ボードの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系インキ用のカラーイメージング層を含むコーティングされた建築ボード、及び当該コーティングされた建築ボードの製造方法に関する。詳しくは、本発明は、カラーイメージング層が分子篩を含む、コーティングされた建築ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの化粧建築ボードには、例えばインキジェット印刷によってカラーパターンを付与することができ、これは効率的な製造及び個別のデザインを可能にする。溶剤系インキ及びUVインキと比べると、水系インキは、外壁での用途に適したより高い耐候性を持つ顔料を施用できるために、より大きな関心をひいている。更に重要な利点の一つは、水系インキは、より環境適合性である。
【0003】
他方で、水系インキジェット印刷の実施には課題がある、なぜならば、水系インキは、溶剤系インキまたはUVインキと比べると硬化が困難であるからである。それ故、水系インキは、特に基材が多孔性である場合には基材中に浸透する傾向があるか、または基材が非多孔性である場合には表面上に広がってしまう傾向がある。これは、低品質の画像を招く。
【0004】
化粧建築ボード上に水系インキで印刷された画像の色強度を向上するために、JP2007154433(特許文献1)は、建築ボードの表面上に定着されたインキ受理層を提案している。インキ受理層は、体質顔料及び吸湿性樹脂を含む水系塗料である。JP2007167826(特許文献2)は、インキジェット印刷においてインキ消費量を減少させるためのこのようなコーティング組成物の使用を開示している。インキ受理層中へのインキの浸透を抑制しかつインキを安定に定着するために、ポリシロキサンを含むインキ受理層がJP2015051549(特許文献3)に提案されている。
【0005】
JP2008273055(特許文献4)は、コーティング層の耐性を増強するために、コーティング組成物の固形含有分の20~80重量%の割合で雲母フィラーを含む、インキ受理層のためのコーティング組成物を開示している。
【0006】
JP2008063832(特許文献5)は、インキ受理層へのインキ定着性を増強しかつこの層の強度の劣化を防止する、化粧建築ボードを提供している。所望の効果を達成するために、インキ受理層は、層の表面上で微細に分割できる3~70の高いアスペクト比を有するフィラーを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】JP2007154433
【特許文献2】JP2007167826
【特許文献3】JP2015051549
【特許文献4】JP2008273055
【特許文献5】JP2008063832
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Atlas of Zeolite Framework Types”(Baerlocher et al.,Elsevier,Sixth Revised Edition,2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によって解決すべき課題は、水系インキで印刷された高品質画像のためのベース材料として使用できる建築ボードを提供することである。詳しくは、印刷された画像の解像度、色強度及び画像の安定性が改善される。本発明の目的を解決するために、建築ボード中への水系インキの浸透は、低い色強度を避けるために減少され、そしてカラーブリードは、印刷パターンの改善された解像度を達成するために回避される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、分子篩を含むカラーイメージング層(インキ受理層)によって解決される。
【0011】
分子篩は、比較的均一な大きさの細孔を有する多孔性材料である。分子篩の孔径は、小分子と大きさが類似しており、それ故、小分子と異なり、例えば水などの大きな分子は吸着できない。分子篩の直径は、オングストローム(Å)またはナノメータ(nm)で測定される。分子篩は、2nm(20Å)未満の孔径を有するミクロ孔性材料、2nmと50nmとの間(20~500Å)の孔径を有するメソ孔性材料、及び50nm(500Å)超の孔径を有するマクロ孔性材料に分類される。200nm(2000Å)超の孔サイズを有するマクロ孔性材料は、本発明の意味での分子篩とは見なされない。
【0012】
本発明のコーティングされた建築ボードは、アクリル系エマルション及び分子篩を含む水性コーティング組成物によって得られ、この組成物は、建築ボードの表面で硬化することができる。
【0013】
それ故、本発明の一つの態様は、カラーイメージング層を含むコーティングされた建築ボードの製造方法であって、
a)次の成分:
i)コーティング組成物の20重量%~80重量%のアクリル系ポリマーエマルション、及び
ii)コーティング組成物の0.2重量%~20重量%の分子篩、
を含む水性コーティング組成物を、
建築ボードの表面の少なくとも一部に施用し、及び
b)コーティング組成物を硬化する、
ことを含む、前記方法である。
【0014】
本発明の所望の効果を達成するためには、ミクロ孔性分子篩の使用が好ましい。好ましい分子篩は、狭い孔径分布を有し、ここで、分子篩の孔の少なくとも90%が、0.1nm~2nmとの間、より好ましくは0.2nmと0.8nmとの間の孔径を有する。
【0015】
ミクロ孔性分子篩は、例えば、アルミノシリケート無機材料(ゼオライト)、リン変性小孔径ゼオライト、多孔性ガラス、活性炭、及び小孔径クレー、例えばモンモリロナイトの群から選択することができる。
【0016】
好ましい分子篩は、0.5nm以下の有効径を有する分子、例えば水を吸着することができる。有用な篩は、分子篩の重量と比較して、20℃で水の少なくとも5重量%、より好ましくは水の10重量%超を吸着することができる。
【0017】
好ましいミクロ孔性分子篩は、ゼオライトの群から選択される。特に好ましいものは、3Å、4Åまたは5Åゼオライトである。
【0018】
適当なゼオライトは、一般式(I)を有する:
Mn+
x/n・[(AlO2)-
x・(SiO2)y]・zH2O (I)
[式中、
nは、1、2、3または4であり、好ましくはnは1または2であり;
Mは、一価、二価、三価または四価の金属またはこれらの混合物の群から選択され、好ましくはMは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びこれらの混合物の群から選択され、カリウム、ナトリウム、マグネシウム及びカルシウムの群の金属が最も好ましく;
xは、1と10との間、好ましくは1と3との間であり、そして
式(I)のゼオライトのx/y比は1と5との間、より好ましくは1と3との間であり、最もこの好ましくは前記比はおおよそ2であり、これは1.8と2.2との間を意味する]
該ゼオライトの含水率は広い範囲で変わり得る。例えば、ゼオライトの構造を破壊することなく、加熱することによって水をゼオライトから除去することができる。逆に、ゼオライトは、化合物のキャパシティが使用し尽くされるまで水を吸着することができる。好ましいゼオライトタイプの乾燥ゼオライト(x及びx/yが1~3の範囲)は、例えば、ゼオライトの重量と比較して、30重量%までの水を吸着することができる。式(I)のゼオライトの含水率zは、典型的には、0~50の範囲、好ましくは1と30との間である。xが1~3の範囲であり、x/y比が1~3の範囲である好ましいゼオライトでは、zは典型的には10未満である。
【0019】
該ゼオライト種の最も好ましい分子篩は3Å、4Åまたは5Åゼオライト篩である。
【0020】
典型的な3Å篩は、次の化学式を有する:
x’K2O・x’’Na2O・Al2O3・ySiO2・zH2O
[式中、
x’及びx’’は、0.3~0.7の範囲であり、そしてx’及びx’’は1であり;
yは、1.8~2.2の範囲であり、好ましくはyは2であり、そして
zは、8未満であり、zは、好ましくは3~6の範囲であり、典型的には4.5である]
典型的な4Å篩は、次の化学式を有する:
Na2O・Al2O3・ySiO2・zH2O
[式中、
yは、1.8~2.2の範囲であり、好ましくはyは2であり、そして
zは、8未満であり、zは、好ましくは3~6の範囲であり、典型的には4.5である]
典型的な5Å篩は、次の化学式を有する:
x’CaO・x’’Na2O・Al2O3・ySiO2・zH2O
[式中、
x’は、0.6~0.8の範囲であり、
x’’は、0.2~0.4の範囲であり、そして
x’+x’’は1であり;
yは、1.8~2.2の範囲であり、好ましくはyは2であり、そして
zは、8未満であり、zは、好ましくは3~6の範囲であり、典型的には4.5である]
3Å、4Å及び5Åゼオライトを包含する幅広い様々なミクロ孔性分子篩が商業的に利用可能である。しかし、4Å篩は、ケイ酸ナトリウム及びアルミン酸ナトリウムの各水溶液を80℃で混合することによって製造することができる。次いで、この篩は、400℃でベークして活性化される。3Å及び5Å篩は、4Å篩から出発して、ナトリウムからカチオンへのカチオン交換(3Å篩の場合)またはナトリウムからカルシウムへのカチオン交換(5Å篩の場合)を介して製造することができる。
【0021】
メソ孔性分子篩は、例えば二酸化ケイ素である。マクロ孔性分子篩の例は、200~1000Åの孔径を有する多孔性シリカ化合物である。
【0022】
分子篩の孔サイズは、材料自体の格子のサイズに依存し、そしてこれは、主に、カチオンイオンのサイズによって決定される。チャネル(孔)のサイズも含めて幅広い様々なゼオライトの構造は、“Atlas of Zeolite Framework Types”(Baerlocher et al.,Elsevier,Sixth Revised Edition,2007)(非特許文献1)に纏められている。
【0023】
好ましい分子篩は、0.5nm以下の有効径を有する分子、例えば水を吸着することができる。有用な篩は、分子篩の重量と比較して水の少なくとも5重量%、より好ましくは水の10重量%超を吸着することができる。
【0024】
分子篩は、好ましくは、粉末の形態で、当該水性コーティング組成物に施与される。好ましい粉末は、0.1μm~250μmの範囲の平均粒径を有し、好ましくは平均径は1μmと50μmとの間である。粒子の少なくとも80%、特に少なくとも90%の平均径がこの範囲に入っているのがよい。
【0025】
分子篩粒子のサイズ分布は、レーザー回折分析によって決定できる。平均径は、例えば、“Mie Scattering Theory”評価法を用いて、Horiba LA940またはMalvern社製のMastersizerを使用して、レーザー光散乱によって決定できる。楕円形または円盤の形を有する粒子など、異なる長さの軸を有する粒子の場合、最長軸が平均径を決定する。本発明の粒子は、好ましくは、ガウシアン形状の狭い粒度分布を有する。好ましくは、粒度分布の標準偏差は、平均径の10%と120%との間である。より好ましくは、標準偏差は20%と90%との間である。
【0026】
該コーティング組成物は、更にアクリル系エマルションを含む。該アクリル系エマルションは、アクリル系モノマー組成物のフリーラジカル重合によって得ることができるアクリル系ポリマーを含み、ここで、前記アクリル系モノマーは、アクリレート、メタクリレート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、エポキシアルキルアクリレート、エポキシアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸及びこれらの混合物、任意選択的に及びエチレン性不飽和コモノマーからなる群から選択される。
【0027】
好ましいアクリル系ポリマーは、アクリレート、メタクリレート、(C1~C4)アルキルアクリレート、(C1~C4)アルキルメタクリレート、アクリル酸及びこれらの混合物、任意選択的に及びエチレン性不飽和コモノマーからなる群のモノマーから誘導される。
【0028】
好ましいコモノマーは、(C1~C6)アルキレン、特にエチレン、プロピレン及びブチレン、並びにスチレンの群から選択される。
【0029】
該アクリル系ポリマーエマルションは、アクリル系シリコーン樹脂のエマルションも包含する。
【0030】
該アクリル系モノマー組成物は、好ましくは、少なくとも50重量%のアクリル系モノマー、及び50重量%未満のエチレン性不飽和コモノマーを含む。
【0031】
該アクリル系エマルション中のアクリル系ポリマーの含有率は、5~75重量%、好ましくは10重量%と70重量%との間、特に好ましくは20重量%と60重量%との間である。
【0032】
該アクリル系ポリマーエマルションの含水率は、25重量%と75重量%との間、好ましくは30重量%と60重量%との間である。
【0033】
前記アクリル系ポリマーエマルションと分子篩とを含む該水性コーティング組成物は、特に、1重量%~10重量%の分子篩を含む。アクリル系ポリマーエマルションの量は、該水性コーティング組成物の全重量を基準にして、好ましくは25重量%~60重量%の範囲、特に30重量%~55重量%の範囲である。
【0034】
該水性コーティング組成物中でのミクロ孔性篩とアクリル系ポリマーとの重量比は、好ましくは1:1~1:100である。より好ましくは、1:1.5~1:20の比率であり、最も好ましい比率は、1:2~1:10の範囲である。
【0035】
該水性コーティング組成物は、任意選択の添加剤を含んでいてもよい。有用な添加剤の例は、分散剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、フィラー、成膜剤、艶消し剤、中和剤または殺生物剤である。添加剤は、アクリル系ポリマーエマルションに、またはこのエマルションを含む水性コーティング組成物に施与することができる。
【0036】
慣用の添加剤には、湿潤剤または分散剤、例えばポリリン酸ナトリウム、-カリウムもしくは-アンモニウム;ポリアクリル酸もしくはポリマレイン酸のアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩; スチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリホスホネート、アミノアルコール、例えば2-アミノ-2-メチルプロパノールなどが挙げられる。分散剤または湿潤剤は、該水性コーティング組成物の全重量を基準にして、好ましくは、2重量%までの量で使用される。
【0037】
通常は、該アクリル系ポリマーエマルションのアクリル系ポリマーは、自己乳化性である。それ故、追加の分散剤の量は少量であることができる。該水性コーティング組成物中の分散剤の含有率は、該水性コーティング組成物の全重量を基準にして、5重量%未満、好ましくは0~1重量%の範囲である。
【0038】
消泡性添加剤は、例えば、脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート、シリコーンオイル、有機ポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、シラン化シリカ、パラフィン(パラフィン油含む)、ワックス、ポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはEO/POコポリマー、及びこれらの混合物である。
【0039】
消泡剤は、該水性コーティング組成物の全量を基準にして、典型的には5重量%未満の量、特に0~2重量%の範囲の量で使用される。
【0040】
艶消し剤は、該コーティング組成物の全重量を基準にして、0~15重量%の量で該水性コーティング組成物中に存在し得る。1~10重量%の艶消し剤の含有率が好ましい。適当な艶消し剤は、二酸化シリカ及びワックスである。
【0041】
該水性コーティング組成物中に使用し得る増粘剤は、例えば、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース、更には、カゼイン、アラビアガム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレン/無水マレイン酸ポリマー、親水性に変性し得るポリエーテルウレタン、疎水性に変性されたアクリル酸コポリマー(HASE)、ポリアクリル酸ナトリウム、有機シリコーン、及びポリエーテルポリオールである。
【0042】
アクリル酸及び(メタ)アクリル酸、例えばアクリル酸/アクリルアミド、及び(メタ)アクリル酸/アクリル酸エステルコポリマーをベースとする水溶性コポリマーも、増粘性を有する。
【0043】
無機増粘剤、例えばベントナイトも使用し得る。
【0044】
アクリル系ポリマー及びポリウレタンの群の増粘剤の使用が特に好ましい。
【0045】
該コーティング組成物の全重量を基準にした増粘剤の量は、10重量%未満、好ましくは5重量%未満である。
【0046】
適当な成膜剤は、例えば、ポリビニルピロリドン、グリコールエーテルまたはグリコールエステル、またはこれらの組み合わせである。グリコールエーテルの例は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノへキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、プロピレングルコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノへキシルエーテル、ポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、及びエチレングリコールジブチルエーテルである。グリコールエーテルは、例えば、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートである。
【0047】
成膜性添加剤の含有率は、通常は、該水性コーティング組成物の全量を基準にして通常は10重量%未満である。0.5~5重量%の範囲の量が好ましい。
【0048】
使用し得るフィラーは、当業者には既知である。好ましいフィラーは、シリケート、例えばカオリン、タルク、雲母、マグネサイト、アルカリ土類金属炭酸塩、例えばカルサイト、チョーク、ドロマイト、アルカリ土類金属硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、及びシリカである。これらのフィラーは、個々の成分としてまたはフィラー混合物として使用することができる。一般的に、微細に分割されたフィラーが好ましい。
【0049】
該水性コーティング組成物は、任意選択的に、一種以上の共溶剤を含む。共溶剤は、添加剤組成物の一部であってよい。少量の共溶剤を、該水性コーティング組成物の成分の可溶性を改善するために使用することができる。共溶剤の量は、該コーティング組成物の全量を基準にして10重量%未満であるのがよい。好ましくは、共溶剤の含有率は5重量%未満である。
【0050】
適したものは、水混和性共溶剤、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びエチレングリコールまたはプロピレングリコールのモノメチルエーテルまたはジメチルエーテルである。
【0051】
一部の用途では、該水性コーティング組成物のpH値の調節が望まれる。pH値を調節するためには、通常の中和剤を使用できる。中和剤の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアミン誘導体である。殆どの用途では、7~11の範囲のpH値が望ましい。中和剤は、所望のpH値が達成されるまで、コーティング組成物に加えられる。
【0052】
該水性コーティング組成物は、更に顔料を含むことができる。顔料は、無機顔料または有機顔料から選択することができる。使用し得る顔料は、エマルションペイントに関して当業者に既知の全ての顔料である。好ましい顔料は、例えば、二酸化チタン、好ましくはルチル型の二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛、三酸化アンチモン、及びリトポン(硫化亜鉛及び硫酸バリウム)である。しかし、該水性調合物は、有色顔料、例えば酸化鉄類、カーボンブラック、グラファイト、発光顔料、亜鉛黄、亜鉛緑、ウルトラマリン、マンガン黒、アンチモン黒またはマンガン紫を含むこともできる。有機顔料は、例えば、アゾ系染料、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリノン、セピア、ガンボージ、インディゴ、アントラキノイド及びインジゴイド染料及びジオキサジン、及び金属錯体顔料である。
【0053】
最も好ましい顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム及びリトポンである。
【0054】
顔料は、該水性コーティング組成物の全重量を基準にして、30重量%までの量で水性コーティング組成物に加えることができる。淡色系の顔料は典型的には多量に添加でき、他方で、暗色系の顔料は典型的には15重量%までの比較的少量で加えられる。
【0055】
好ましくは、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム及びリトポンなどの淡色系顔料は、5~25重量%の量で該コーティング組成物に加えられる。
【0056】
これらの顔料は、体質顔料とブレントすることができる。体質顔料は、例えば、シリカ、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪藻土などである。
【0057】
該コーティング組成物は、任意選択的に、前記アクリル系ポリマーの他に、更に別のポリマーを含んでもよい。適当な任意選択的なポリマーは、吸湿性ポリマーの群から選択することができる。例えば、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、及びポリウレタンを任意選択的に加えることができる。
【0058】
これらの任意選択のポリマーは、該水性コーティング組成物の全重量を基準にして50重量%までの量で加えることができる。該コーティング組成物中の任意選択のポリマーの含有率は、好ましくは0重量%と30重量%との間、特に5重量%と25重量%との間である。特に好ましいものは、任意選択のポリマーを含まないかまたは任意選択のポリマーの含有率が5重量%未満であるコーティング組成物である。
【0059】
分子篩を、アクリル系ポリマーエマルションに加えて、当該水性コーティング組成物を得ることができる。分子篩は、篩が完全に分散するまで攪拌することによって、アクリル系ポリマーエマルションに簡単に組み入れることができる。添加剤及び顔料は、通常は少しずつ、攪拌しながら加えることができる。
【0060】
当該アクリル系ポリマーエマルション中に既に存在する水の他に、適当であれば、追加の水を当該水性コーティング組成物に加えることができる。しかし、コーティング組成物中の水の全体的な含有率は80重量%未満であるのがよい。好ましくは、全体的な水含有率は、25重量%から65重量%までの範囲である。
【0061】
該水性コーティング組成物は、例えば、スプレーガンなどのスプレーデバイスによって建築ボードの表面に施用することができる。代替的に、該コーティング組成物は、表面上に刷毛塗りできるか、またはドクターブレードを用いて塗布することができる。
【0062】
典型的には、該水性コーティング組成物は、10g/m2から300g/m2までの量で、好ましくは20g/m2から200g/m2までの範囲の量で施用される。
【0063】
建築ボードに施用された該水性コーティング組成物は次いで硬化して、建築ボードの表面上にカラーイメージング層を得る。硬化は、80℃と300℃との間の温度で1分間から1時間、コーティングを乾燥することによって達成することができる。得られるカラーイメージング層が水系インキを捕らえることができれば、コーティングは十分に乾燥している。コーティングされた建築ボードは、オーブン中で乾燥してもよい。2から150分間の150℃と250℃との間の温度での乾燥が好ましい。
【0064】
建築ボード上のカラーイメージング層の厚さは、通常は5μmと500μmとの間、好ましくは10μmと200μmとの間である。
【0065】
カラーイメージング層を表面上に十分に定着できるのであれば、広い範囲の建築資材を建築ボードとして使用することができる。例えば、セメントプレート、石膏プレート、セラミックプレート、メタルプレート、ウッドプレートまたはポリマー樹脂プレートが、適当な建築ボードである。好ましくは、セメントまたは石膏製の建築ボードが使用される。該カラーイメージング層の接着性は、これらのボード上で優れている。また、繊維強化した建築ボード、特にガラス繊維またはポリマー繊維を含むセメントボードも適している。
【0066】
コーティングされた建築ボードは、好ましくは、シーリング層または下塗り層を含む。シーリング層または下塗り層を、建築ボードの表面上に施用することができる。それ故、当該水性コーティング組成物が施用される建築ボードの表面は、このような層によって形成される。より好ましくは、顔料を含まないカラーイメージング層が後で施用される場合には特に、背景色を供するために下塗り層が施用される。例えば、シーリング層及び白色下塗り層を含む建築ボードが特に有用である。特にセメントまたは石膏プレート用のシーリング組成物及び下塗り組成物は、従来技術において既知である。
【0067】
慣用の下塗り組成物は、例えば、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートとエチレンとのコポリマー、アクリル酸エステルとスチレンとのコポリマーなどの水性エマルション、並びにポリビニルアルコールの水溶液を含む。典型的なシーラーは、水系もしくは溶剤系アクリル樹脂、エポキシ/ウレタン系、シラン、シリケート、シリコネート、シロキサンなどである。
【0068】
本発明の更に別の態様の一つは、先に記載した硬化されたコーティング組成物のカラーイメージング層を含むコーティングされた建築ボードである。
【0069】
本発明のコーティングされた建築ボードの表面の少なくとも一部に施用されたカラーイメージング層は、好ましくは、硬化後に、30重量%~95重量%のアクリル系ポリマー、及び0.5~50重量%の分子篩の層を含む。
【0070】
カラーイメージング層の含水率は、水系コーティング組成物の含水率と比べて大きく減少される。該カラーイメージング層の含水率は、通常は、分子篩の重量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは3重量%未満である。典型的には、含水率は、0.1重量%から2重量%までの範囲である。
【0071】
コーティングされた建築ボードのカラーイメージング層における分子篩とアクリル系ポリマーとの重量比は、好ましくは1:1から1:100までの範囲である。より好ましくは、1:1.5~1:20の比率であり、最も好ましくは、該比率は、1:2~1:10の範囲である。
【0072】
本発明の好ましいコーティングされた建築ボードは、
a)30~80重量%の前記アクリル系ポリマー、
b)5~40重量%の前記分子篩、
c)任意に、0.2~2重量%の消泡剤、
d)任意に、0.2~4重量%の分散剤、
e)任意に、0~15重量%の艶消し剤、
f)任意に、3~10重量%の成膜剤、
g)任意に、0.5~8重量%の増粘剤、
h)任意に、0.5重量%までの殺生物剤、及び
i)任意に、0.5重量%までの中和剤、
を含むカラーイメージング層を含む。
【0073】
該コーティングされた建築ボードの他の好ましい態様の一つは、
a)30~75重量%の前記アクリル系ポリマー、
b)5~35重量%の前記分子篩、
c)任意に、0.2~2重量%の消泡剤、
d)任意に、0.2~4重量%の分散剤、
e)任意に、0~15重量%の艶消し剤、
f)任意に、3~10重量%の成膜剤、
g)任意に、0.5~8重量%の増粘剤、
h)任意に、0.5重量%までの殺生物剤、
i)任意に、0.5重量%までの中和剤、及び
j)任意に、5~30重量%の顔料、
を含むカラーイメージング層を含む。
【0074】
好ましい消泡剤、分散剤、艶消し剤、成膜剤、増粘剤及び中和剤は先に記載した通りである。
【0075】
当該コーティングされた建築ボードは、水系インキを用いて、前記カラーイメージング層上にカラーパターンまたは画像を印刷するのに特に適している。水系インキは、例えばインキジェット印刷によって、該カラーイメージング層に直接印刷することができる。印刷されたパターンは、簡単に個別化できる。該コーティングされた建築ボードは、DIY(ドゥー・イット・ユアセルフ)印刷に適している。
【0076】
水系インキを該カラーイメージング層に施用する場合には、該インキは素早く定着され、カラーブリードは大きく減少する。印刷されたパターンまたは画像の解像度は改善される。更に、該カラーイメージング層中への水系インキの迅速な浸透は避けられ、これは高い色強度に貢献する。
【0077】
理論により拘束されるものではないが、目的の効果は、分子篩による水系インキからの加速された水吸着によって達成され、そして同時に、水系インキの成分として供された着色剤及び顔料が該カラーイメージング層中に浸透することが、大きく遅延される。これは、低いカラーブリード及び高い色強度をもたらす。
【0078】
該カラーイメージング層は、含水率が40~70重量%で及び顔料含有率が3~20重量%の範囲である水系インキの施用に特に有用である。典型的な水系インキは、更に、40重量%までのヒューメクタント、例えばグリセリン、プロピレングリコールなど、2重量%までの界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びpH調節剤を含む。任意に、水系インキは、10重量%までのアクリル系樹脂を含むことができる。
【0079】
それ故、本発明の更に別の態様の一つは、水系インキを用いたインキジェット印刷のためのベース材料としての、ここに記載のカラーイメージング層を含む建築ボードの使用である。
【実施例】
【0080】
例1(E1):
40重量部の脱イオン水、45重量部のアクリル系エマルション(Archroma Co.Ltd.製のMowilith DN 7070)、0.3重量部の消泡剤(BYK Additives & Instruments製のBYK-022)、0.15重量部の分散剤(BYK Additives & Instruments製のBYK-190)、3.5重量部の二酸化シリカ(W.R.Grace&Co.製のSYLOID W 300)、2.7重量部のワックス粉末(Clariant Chemicals Ltd製のCeridust 8090 TP)を、1000rpmの剪断速度で30分間、ディスパーサーによって混合し、次いで、3重量部の成膜剤(Dow Chemical製のDOWANOLTMDPnB)、0.5重量部の増粘剤(Archroma Co.Ltd製のMowiplus TK-582)、0.075重量部の殺生物剤(Thor Chemie製のActicide LA0614)をブレンドし、そして中和剤としての約0.075重量部の2-アミノ-2-メチル-1-プロピルアルコール(Dow Chemical製のAMP95)を少しずつ加えてpHを8~10に調節した。この混合物を、1500rpmのせん断速度で60分間、ディスパーサーで分散する。最後に、4.7重量部の分子篩(W.R.Grace&Co.製のSYLOSIV A3)を、これが完全に分散されて当該コーティング組成物が生成されるまで、1500rpmのせん断速度で30分間、この混合物中にブレンドした。
【0081】
このコーティング組成物を、80g/m3の量で繊維セメントボード上にスプレーし、そして200℃の温度で3分間、オーブン中で硬化して、カラーイメージング層を形成した。この繊維セメントボードは、シーリングコーティング及び白色下塗りコーティングで前処理した。
【0082】
例2(E2):
30重量部の脱イオン水、40重量部のアクリル系エマルション(DSM NeoResin製のNeocryl XK-87)、0.25重量部の消泡剤(BYK Additives & Instruments製のBYK-028)、0.13重量部の分散剤(BYK Additives & Instruments製のBYK-190)、3重量部のSYLOID W 300(W.R.Grace&Co.製)、及び2.2重量部のACEMATT TS100(Evonik製)を、1000rpmの剪断速度で30分間、ディスパーサーによって混合し、次いで、15重量部の二酸化チタン(Clariant Chemicals Ltd製のColanyl White TQ-CN)、2.5重量部の成膜剤(Dow Chemical製のDOWANOLTMDPnB)、0.4重量部の増粘剤(Archroma Co.Ltd製のMowiplus TK-582)、0.06重量部の殺生物剤(Thor Chemie製のActicide LA0614)をブレンドし、そして中和剤としての約0.06重量部の2-アミノ-2-メチル-1-プロピルアルコール(Dow Chemical製のAMP95)を少しずつ加えてpHを8~10に調節した。この混合物を、1500rpmのせん断速度で60分間、ディスパーサーで分散する。最後に、6.4重量部の分子篩(W.R.Grace&Co.製のSYLOSIV A3)を、これが完全に分散されて当該コーティング組成物が生成されるまで、1500rpmのせん断速度で30分間、この混合物中にブレンドした。
【0083】
このコーティング組成物を、140g/m3の量で繊維セメントボード上にスプレーし、そして200℃の温度で3分間、オーブン中で硬化して、カラーイメージング層を形成した。この繊維セメントボードは、シーリングコーティングで前処理した。
【0084】
例3(E3):
30重量部の脱イオン水、53.1重量部のアクリル系エマルション(DSM NeoResin製のNeocryl XK-87)、0.34重量部の消泡剤(BYK Additives & Instruments製のBYK-022)、0.17重量部の分散剤(Clariant Chemicals Itd製のDispersogen LFH)、3重量部のSYLOID W 300(W.R.Grace&Co.製)、1.3重量部のACEMATT TS100(Evonik製)、及び2.7重量部のCeridust 8090 TP(Clariant Chemicals Ltd製)を、1000rpmのせん断速度で30分間、ディスパーサーで混合し、次いで4重量部の成膜剤(Eastman Chemical製のTexanol)、0.6重量部の増粘剤(Dow Chemical製のAcrysol ASE-60)、0.24重量部の殺生物剤(Thor Chemie製のActicide LA0614)をブレンドし、そして中和剤としての約0.15重量部のトリエタノールアミンを少しずつ加えてpHを8~10に調節した。この混合物を、1500rpmのせん断速度で60分間、ディスパーサーで分散する。最後に、4.4重量部の分子篩(W.R.Grace&Co.製のSYLOSIV A3)を、これが完全に分散されて当該コーティング組成物が生成されるまで、1500rpmのせん断速度で30分間、この混合物中にブレンドした。
【0085】
このコーティング組成物を、100g/m3の量で石膏発泡ボード上にスプレーし、そして200℃の温度で3分間、オーブン中で硬化して、カラーイメージング層を形成した。この繊維セメントボードは、シーリングコーティング及び白色下塗りコーティングで前処理した。
【0086】
例4(E4):
35重量部の脱イオン水、47重量部のアクリル系エマルション(Archroma Co.Ltd.製のMowilith DN 7070)、0.3重量部の消泡剤(BYK Additives & Instruments製のBYK-022)、0.15重量部の分散剤(BYK Additives & Instruments製のBYK-190)、5.5重量部の二酸化シリカ(W.R.Grace&Co.製のSYLOID W 300)を、1000rpmのせん断速度で30分間、ディスパーサーによって混合し、次いで、3重量部の成膜剤(Dow Chemical製のDOWANOLTMDPnB)、0.5重量部の増粘剤(Archroma Co.Ltd製のMowiplus TK-582)、0.075重量部の殺生物剤(Thor Chemie製のActicide LA0614)をブレンドし、そして中和剤としての約0.075重量部の2-アミノ-2-メチル-1-プロピルアルコール(Dow Chemical製のAMP95)を少しずつ加えてpHを8~10に調節した。この混合物を、1500rpmのせん断速度で60分間、ディスパーサーで分散する。最後に、8.4重量部の分子篩(W.R.Grace&Co.製のSYLOSIV A3)を、これが完全に分散されて当該コーティング組成物が生成されるまで、1500rpmのせん断速度で30分間、この混合物中にブレンドした。
【0087】
このコーティング組成物を、20g/m3の量でアルミニウム複合ボード上にスプレーし、そして150℃の温度で10分間、オーブン中で硬化して、カラーイメージング層を形成した。この繊維セメントボードは、シーリングコーティング及び白色下塗りコーティングで前処理した。
【0088】
比較例1(CE1):
繊維セメントボードは、シーリングコーティング及び白色下塗りコーティングで前処理したが、カラーイメージング層は施用しなかった。
【0089】
比較例2(CE2):
例1を、分子篩の不在下に繰り返して、分子篩不含のコーティング組成物を生成した。得られたコーティング組成物を、80g/m3の量で繊維セメントボード上にスプレーし、そして200℃の温度で3分間、オーブン中で硬化して、カラーイメージング層を形成した。この繊維セメントボードは、CE1に記載のように、シーリングコーティング及び白色下塗りコーティングで前処理した。
【0090】
比較例3(CE3):
分子篩を同量のベントナイトに置き換えて、例1を繰り返した。
【0091】
比較例4(CE4):
商業的に入手可能な装飾用アクリル系ペイントを、80g/m3の量で繊維セメントボード上にスプレーし、そして200℃の温度で3分間、オーブン中で硬化して、カラーイメージング層を形成した。この繊維セメントボードは、シーリングコーティング及び白色下塗りコーティングで前処理した。
【0092】
性能評価:
得られた建築ボードを、水系インキ用の四種の色、すなわちシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックを備えたインキジェット装置の下に配置した。ノズルからの四種のインキの吐出及び休止は、コントロールユニットによって個別に制御する。インキジェット印刷を、これらの建築ボード上に予めデザインされた画像を直接印刷することによって行った。次いで、建築ボードを、200℃の温度で3分間、オーブン中で乾燥して、イメージング層を硬化した。好ましくは、保護のために、透明なトップコーティングを、硬化したイメージング層上にスプレーする。得られた画像を目視で評価する。評価規準は次の通りである:
*1(非常に低い)から5(高い)までの色強度
*1(非常に不鮮明でかつぼんやりしており、画像は認識が困難である)から5(画像は綺麗でかつ鮮明である)までの解像度
*1(指で擦ると不鮮明になりやすい)から5(画像は、擦ってもまたは引っ掻いても安定している)までの画像安定性
【0093】
【0094】
画像を60倍拡大することによって、インキドットの外観を評価できる。
【0095】
イメージング層を施用しないCE1では、得られたインキドットは、大きな間隔をもって非常に小さくかつ薄かった。インキドットが、多孔性ベース材料によって吸着され、低い色強度並びに低い解像度を招く。CE2及びCE4では、分子篩を含まない硬化されたコーティングが施用される。コーティング層中へのインキドットの浸透は避けられ、それ故、色強度は大きく改善される。しかし、水性インキは硬化し難いため、インキドットは互いに融合して不規則になり、そうして不鮮明な画像が生じる。E1~E4で得られたインキドットは、鮮明かつ高密粒状に見え、カラーブリードは観察されない。本発明によるカラーイメージング層を含む建築ボード上の画像(E1~E4)は、例CE1~CE4の建築ボード上の画像よりも、かなり鮮明である。分子篩は、インキドットの定着性、並びに擦り及び引っ掻きに対する画像の安定性を更に向上させる。
【国際調査報告】