(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】化学反応を実行する反応器及び方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/06 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
B01J8/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507490
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2021071951
(87)【国際公開番号】W WO2022029270
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329305
【氏名又は名称】リンデ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523112002
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ポッセルト,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ホフシュテッター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ツェルフーバー,マティウ
(72)【発明者】
【氏名】デルホム-ノイデッカー,クララ
(72)【発明者】
【氏名】イェンネ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】コッヘンデルファー,キアラ・エンネ
(72)【発明者】
【氏名】シュストフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ライプ,ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】キューン,ハインツ-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ,ライナー
【テーマコード(参考)】
4G070
【Fターム(参考)】
4G070AB05
4G070BB02
4G070CA25
4G070CB17
(57)【要約】
本発明は、化学反応を実行する反応器(100、200)に関し、反応器(100、200)は、反応器容器(10)と、1つ又は複数の反応管(20)とを有し、1つ又は複数の反応管(20)のいくつかの管区分(21、22)は、反応器容器の内側に延び、管区分(21、22)はそれぞれ、管区分を電気的に加熱する電流供給領域(11)内の1つ又は複数の電流接続部に電気的に接続される又は接続可能である。電流供給構成(40)は、電流供給領域(11)内に配置され、電流供給構成(40)に、各場合における管区分(21、22)の1つ、又は各場合における管区分(21、22)の1つの群は、電気的に接続され、各場合における電流供給構成(40)は、第1の区分(41)と、第2の区分(42)とを有し、第1の区分(41)は、長手方向軸(A)に沿って、それぞれの管区分(21、22)若しくは管区分(21、22)のそれぞれの群、又は管区分(21、22)に接続された要素から開始する状態で延在し、各場合における電流供給構成(40)の領域内で、第1の区分(41)は第2の区分(42)を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞するか又は第2の区分(42)は第1の区分(41)を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞し、第1の区分(41)及び第2の区分(42)は、互いに接触するように長手方向軸(A)に斜めに配置された接触面(41a、42a)を有し、電流供給構成(40)はそれぞれ、壁通路(15)において反応器容器(10)の壁(14)を通じて延在することが提供される。対応する方法も、本発明の目的である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学反応を実行する反応器(100、200)であって、前記反応器(100、200)は、反応器容器(10)と、1つ又は複数の反応管(20)とを有し、前記1つ又は複数の反応管(20)のいくつかの管区分(21、22)は、前記反応器容器の内側に延び、前記管区分(21、22)はそれぞれ、前記管区分を電気的に加熱する電流供給領域(11)内の1つ又は複数の電流接続部に電気的に接続される又は接続可能であり、電流供給構成(40)は、前記電流供給領域(11)内に配置され、前記電流供給構成(40)に、各場合における前記管区分(21、22)の1つ、又は各場合における前記管区分(21、22)の1つの群は、電気的に接続され、各場合における前記電流供給構成(40)は、第1の区分(41)と、第2の区分(42)とを有し、前記第1の区分(41)は、長手方向軸(A)に沿って、それぞれの前記管区分(21、22)若しくは前記管区分(21、22)のそれぞれの群、又は前記管区分(21、22)に接続された要素から延在し、各場合における前記電流供給構成(40)の領域内で、前記第1の区分(41)は前記第2の区分(42)を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞するか又は前記第2の区分(42)は前記第1の区分(41)を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞し、前記第1の区分(41)及び前記第2の区分(42)は、互いに接触するように前記長手方向軸(A)に斜めに配置された接触面(41a、42a)を有し、前記電流供給構成(40)はそれぞれ、壁通路(15)において、前記反応器容器(10)の壁(14)を通じて延在することを特徴とする、反応器(100、200)。
【請求項2】
材料接続は、前記電力供給組立体(40)の前記第1の部分(41)とそれぞれの前記管区分(21、22)若しくは前記管区分(21、22)のそれぞれの群との間にもたらされる、又は前記電力供給組立体(40)の前記第1の部分(41)及びそれぞれの前記管区分(21、22)若しくは前記管区分(21、22)のそれぞれの群は、一体に形成される、請求項1に記載の反応器(100、200)。
【請求項3】
前記電流供給組立体(40)の前記第1の部分(41)及び前記第2の部分(42)の先細の前記接触面(41a、42a)は、先細内面及び先細外面として形成され、前記先細内面及び前記先細外面は、前記電力供給組立体(40)の前記第1の部分(41)及び前記第2の区分(42)を中に又は一緒に押圧することによって、互いに接触し得る、請求項1又は2に記載の反応器(100、200)。
【請求項4】
円錐の前記接触面(41a、42a)は、円錐シェルの内面及び外面として形成されるか、又は円錐台の円錐シェルの内面及び外面としてとして形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の反応器(100、200)。
【請求項5】
前記円錐接触面は、40から120°の円錐角度を含む、請求項4に記載の反応器(100、200)。
【請求項6】
弾性変形可能付勢部材(44)が設けられ、前記弾性変形可能付勢部材(44)は、前記長手方向軸(A)に沿って前記第1の部分(41)の方に前記電力供給組立体(40)の前記第2の部分(42)を付勢する、請求項4又は5に記載の反応器(100、200)。
【請求項7】
前記接触面(41a、42a)は、ねじの表面として形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の反応器(100、200)。
【請求項8】
前記電流供給構成(40)の前記第2の部分(42)は、表面拡大要素(45)を備える及び/又は前記表面拡大要素(45)に接続される、請求項1から7のいずれか一項に記載の反応器(100、200)。
【請求項9】
前記電流供給組立体(40)はそれぞれ、それぞれの前記壁通路(15)内で、前記反応器容器(10)の前記壁(14)を通じて長手方向に移動可能である、請求項1から8のいずれか一項に記載の反応器(100、200)。
【請求項10】
前記反応器容器(10)の外側の前記電流供給構成(40)は、可撓性接続要素により、電源(50)の電力端子に電気的に接続される又は接続可能である、請求項1から9のいずれか一項に記載の反応器(100、200)。
【請求項11】
前記1つ又は複数の反応管(20)は、前記反応器容器(10)内に1つ又は複数の反転屈曲部(23)を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の反応器(100)。
【請求項12】
前記複数の反応管(22)は、前記反転屈曲部(23)を伴わずに反応器容器(10)内に延在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の反応器(200)。
【請求項13】
水蒸気分解のための反応器(100)として設計される、請求項11に記載の反応器(100)、又は水蒸気改質、乾式改質、若しくはアルカン類の触媒脱水素化のための反応器(200)として設計される、請求項12に記載の反応器(200)。
【請求項14】
前記第2の部分(42)は、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ及びクロムの群から選択される材料から少なくとも部分的に形成される、又はモリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、ニッケル及びクロムからなる群から選択される金属の少なくとも50質量%を含む合金から形成される、請求項1から13のいずれか一項に記載の反応器(100、200)。
【請求項15】
反応器容器(10)と1つ又は複数の反応管(20)とを有する反応器(100、200)を使用して化学反応を実行する方法であって、前記1つ又は複数の反応管(20)のいくつかの管区分(21、22)は、前記反応器容器内に延在し、前記管区分(21、22)はそれぞれ、前記管区分を電気的に加熱する電流供給領域(11)内の1つ又は複数の電流接続部(U、V、W)に電気的に接続される、方法において、電流供給構成(40)を前記電流供給領域(11)内に配置し、各場合における前記管区分(21、22)の1つ、又は各場合における前記管区分(21、22)の1つの群を電気的に接続する前記反応器(100、200)を使用し、前記電流供給構成(40)はそれぞれ、第1の区分(41)と第2の区分(42)とを有し、前記第1の区分(41)は、長手方向軸(A)に沿って、それぞれの前記管区分(21、22)若しくは前記管区分(21、22)のそれぞれの群、又は前記管区分(21、22)に接続された要素から延在し、各場合における前記電流供給構成(40)の領域内で、前記第1の区分(41)は前記第2の区分(42)を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞するか又は前記第2の区分(42)は前記第1の区分(41)を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞し、前記第1の区分(41)及び前記第2の区分(42)は、互いに接触するように前記長手方向軸(A)に斜めに配置された接触面(41a、42a)を有し、前記電流供給構成(40)はそれぞれ、壁通路(15)において前記反応器容器(10)の壁(14)を通じて延びることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前文による化学反応を実行する反応器及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学産業のいくつかのプロセスにおいて、反応器が使用され、反応器内に、加熱された反応管を通じて1つ又は複数の反応物質が供給され、1つ又は複数の反応物質を反応器内で触媒作用的に又は非触媒作用的に反応させる。加熱は、特に、化学反応を起こすのに必要な活性化エネルギーを克服する役割を果たす。反応は、全体として吸熱反応であっても、活性化エネルギーを克服した後、発熱反応であってもよい。本発明は、特に、強力な吸熱反応に関する。
【0003】
そのようなプロセスの例は、水蒸気分解、様々な改質プロセス、特に、水蒸気改質、乾式改質(二酸化炭素改質)、混合改質プロセス、アルカン類の脱水素化プロセス等である。水蒸気分解の場合、少なくとも1つの反転屈曲部を反応器内に有する反応管が、コイルの形態の反応器を通じて案内される一方で、スチーム改質の場合、典型的には、反転屈曲部を伴わずに反応器を通じて延びる管が使用される。
【0004】
本発明は、全てのそのようなプロセス及び反応管の実施形態に適している。本明細書では、単なる説明として、ウルマン工業化学百科事典、例えば、2009年4月15日、DOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日、DOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、及び2000年6月15日、DOI:10.1002/14356007.a22_211の刊行物の項目「エチレン」、「ガス生産」及び「プロペン」を参照する。
【0005】
対応する反応器の反応管は、従来、燃焼器を使用して加熱される。反応管は、燃焼器も中に配置される燃焼室を通じて案内される。
【0006】
しかし、例えば、DE102015004121A1(EP3075704A1でもある)に記載されるように、現在、例えば、局所的な二酸化炭素排出量を低減させずに生産するか、これらを低減させて生産するかにかかわらず、合成ガス及び水素に対する需要は増大しつつある。しかし、この需要は、典型的には化石エネルギー源を燃焼させるために、燃焼反応器が使用されるプロセスでは満たすことができない。他のプロセスは、例えば、高額な費用のために除外される。同じことは、水蒸気分解又はアルカン類の脱水素化によるオレフィン及び/又は他の炭化水素の提供にも当てはまる。そのような場合も、プロセスに対して、少なくとも現場での二酸化炭素排出量をより少なくすることが望まれている。
【0007】
この背景に対し、燃焼に加えて水蒸気改質のための反応器を電気的に加熱することが上述のDE102015004121A1で提案されている。ここでは、1つ又は複数の電圧源が使用され、1つ又は複数の電圧源は、3相交流電圧を3つの外部導体上に提供する。各外部導体は、反応管に接続される。スター・ポイントが集電器によって実現されるスター結線が形成され、スター・ポイントに、管ラインが開口し、反応管が導電的に接続される。このようにして、集電器は、理想的には無電位のままである。集電器は、垂直に対して燃焼室の下及び外側に配置され、好ましくは、反応器管に横断的に又は水平に沿って延在する。WO2015/197181A1も、反応管がスター・ポイント結線内に配置される反応器を開示している。
【0008】
原則的に、直流電流又は単相交流電流を使用して、反応器を電気的に加熱することも考えられる。この場合、無電位スター・ポイントを伴うスター結線は実現できないが、電流供給は、基本的に同様に実現し得る。本発明は、電気加熱の両方の変形形態に適している。
【0009】
特に、そのような電気加熱反応器の場合、高電流及び温度のために、電流供給が困難であることがわかっている。したがって、本発明は、化学反応を実行するための、対応する電気加熱反応器を改善する任務に取り組むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE102015004121A1(EP3075704A1)
【特許文献2】WO2015/197181A1
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ウルマン工業化学百科事典、2009年4月15日、DOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日、DOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、及び2000年6月15日、DOI:10.1002/14356007.a22_211の刊行物の項目「エチレン」、「ガス生産」及び「プロペン」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この背景に対して、本発明は、独立請求項の前文による化学反応を実行する反応器及び方法を提案する。実施形態は、従属請求項及び以下の説明の主題である。
【0013】
ほとんどの場合、本発明の基礎をなす一部電化炉の概念において(用語「炉」は、通常、対応する反応器又は少なくともその断熱反応室を示すために使用される)、反応管又はその対応する管区分(以下、略して「管」とも呼ぶ)の少なくとも1つは、それ自体、熱を発生させる電気抵抗器として使用される。この方策は、外部電気放熱器による間接的な加熱と比較して効率がより高く、達成可能な熱束密度がより高いという利点を有する。本発明の範囲において、化学エネルギー源の燃焼によって、炉内で印加される合計加熱電力の一部を提供する可能性も含まれる。
【0014】
したがって、本明細書で電気加熱に対して言及する場合、このことは、更なる非電気加熱の存在を除外するものではない。特に、電気加熱及び非電気加熱の寄与を経時的に、例えば、電気の供給及び価格、又は天然ガス等の非電気エネルギー源の供給及び価格に応じて変更することも可能である。
【0015】
多相交流電流による加熱の場合、電流は、M個の個別に接続された相を介して加熱反応管に直接供給される。M個の相に接続された電流を通す反応管は、有利には、スター・ポイントにも電気的に接続される。相の数Mは、特に、3であり、通常は3相電流源又は3相電流網の相の数に対応する。しかし、原則的に、本発明は、3相の使用に限定されないが、より多数の相、例えば4、5、6、7又は8の相の数で使用することもできる。位相のずれは、この場合、特に360°/Mであり、即ち、3相電流ごとに120°である。
【0016】
スター・ポイントにおけるスター結線のために、多相交流電流による電気加熱時、相間の電位均等化が達成され、これにより、接続管ラインの絶縁を不必要にする。このことは、そのような炉の概念に対する特段の利点を表す。というのは、いくつかの区分の絶縁のために金属反応管が中断されると、特に、高温の使用及び高い材料並びに建造努力が必要であるため、望ましくないためである。
【0017】
しかし、以下で説明し、本発明に従って提案する対策は、直流電流の使用に等しく適しており、本発明は、交流電流及び直流電流の加熱反応器の両方で使用し得るか、又は対応する混合形態で使用し得る。直流電流構成において、交流電流構成との唯一の差は、電流源の種類、及び反応管の領域、又は電流供給部の反対側の、対応する電流を印加される区分である。直流電流構成の場合、異なる管区分の電気接続は、任意で実行されるにすぎない。無電位中性点が直流電流構成内にないので、電流を安全に案内して外部に戻すには、適切な電流抽出要素を設けなければならない。同じことは、原則的に、同様に使用し得る単相交流電流に当てはまる。
【0018】
特許請求の範囲の言い回しにおいて、本発明は、化学反応(又は加熱)を実行する反応器に関し、この反応器は、以下で詳細に説明するように、反応器容器(即ち、断熱領域又は少なくとも部分的な断熱領域)と、1つ又は複数の反応管とを備え、1つ又は複数の反応管のいくつかの管区分は、反応器容器内に延在し、管区分はそれぞれ、管区分を電気的に加熱する電流供給領域において、1つ又は複数の電流端子に電気的に接続される又は接続可能であり、直流電流構成の場合、1つ又は複数の直流電流端子に接続される又は接続可能であり、交流電流構成の場合、交流電流源の相端子(複数可)(「外部導体」)に接続される又は接続可能である。
【0019】
本明細書においてこの意味で理解される電流供給は、電流の流れを生じさせる電圧を印加することによって行われる。したがって、電圧の提供及び電流の供給は、同義であり、同じことは、電流源及び電圧源、電流接続及び電圧接続、並びに同等の用語といった用語にも当てはまる。
【0020】
前述のように、多相交流電流により動作される構成において、交流電圧は、上記で説明したように位相がずれる相接続部を介して提供される。そのような構成において、供給網又は適切な発電器及び/又は変圧器は、多相AC源として働き得る。そのような構成において、スター回路は、それ自体公知の様式で形成し得る。スター回路のスター・ポイントは、理想的には、無電位である。
【0021】
しかし、直流電流により動作される構成の場合、同じ又は異なる静電気電位は、直流電流接続部を介して供給される。スター・ポイント接続は、ここでは可能ではないので、電流抽出又は接地要素を設けなければならない。単相AC源は、同等に使用し得る。ここでも、中性点接続は、可能ではない。用語「供給」及び「抽出」は、物理的又は技術的な電流方向を指すことができる。
【0022】
反応器容器において、管区分は、特に少なくともいくつかの区分において、自由に、即ち、機械的な支持を伴わずに、電気的な接触を伴わずに、及び/又は互いに対する流体的若しくは単なる機械的な相互接続を伴わずに、延ばすことができる。特に、管区分は、本質的に完全にまっすぐな区分であり、「本質的にまっすぐ」とは、10°又は5°未満の角度のずれがあることを意味すると理解されたい。
【0023】
特に、水蒸気分解における分解反応は、強力な吸熱反応である。したがって、直接加熱(オーム抵抗)により反応に必要なエネルギーを提供するには、高い電流が必要である。上述の反応器の概念において、この高い電流は、反応器外側の1つ又は複数の変圧器によって提供される。
【0024】
電流は、外部から断熱反応器の内部に、プロセス領域まで可能な限り低い損失(低電気抵抗)で伝導しなければならない。プロセス領域において、管内部をかなり高速で流れるプロセス媒体による吸熱反応(高い熱伝達)により、反応器管にかなり効果的な冷却、又は管内部にかなり高い熱束密度をもたらす。したがって、少なくとも部分的に電気的に加熱された管材料からプロセス・ガスへの所望の直接的な熱伝達は、プロセス管内で達成される。
【0025】
特別な問題は、上述した高電圧電流をプロセス管に低損失で供給することに関係する。電流を反応器内の管内に供給すべきである場合、以下でも説明するように、この供給は、必然的に、より冷たいプロセス・ガスへの直接対流熱伝達によっては冷却できない管を介して行われる。このことにより、冷却効率がより劣る領域内に容認できない温度上昇をもたらしてはならない。更に、最大900Kの急な温度上昇(環境と反応器との間の最大温度差)は、この供給を介して(場合によっては1メートル未満の)短い経路長内で克服しなければならない。
【0026】
熱損失を低減する、したがって、高いシステム効率を達成するため、電気的に直接加熱される反応器管を断熱筐体(ここでは、反応器容器と呼ぶ)内に配置することは、必須である。電流導体は、反応器容器の断熱壁を貫通する際、許容されない局所的な高温を準断熱区域内に生じさせずに、この準断熱区域を克服しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明によれば、この目標を達成するため、電流供給領域内に電流供給構成が設けられ、電流供給構成のそれぞれに、管区分又は管区分の群が電気的に接続される。管区分は、各場合におけるいくつかの管区分の1つ又は各場合におけるいくつかの管区分の1つの群が、各場合における電流供給構成の1つに接続できるように設けられ、その逆も同様である。電流供給構成の数は、交流電流構成の場合、多相交流電流源の相接続の数に依存するか、又は直流電流接続の数に対応する。電流供給構成の数は、AC構成の場合、相接続部の数と等しいか、又はその整数倍とし得る。AC構成の整数倍の場合、例えば、電流供給構成のうち2つを、それぞれ、交流電流源の相接続部の1つに接続し得る、等である。
【0028】
本発明によれば、電流供給構成はそれぞれ、第1の区分と第2の区分とを備え、第1の区分は、長手方向軸に沿って、それぞれの管区分若しくは管区分のそれぞれの群又はこれら(即ち、それぞれの管区分若しくは管区分のそれぞれの群)に接続された要素から開始する状態で延在し、電流供給構成の領域において、第1の区分は第2の区分を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞するか、又は第2の区分は第1の区分を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞し、第1の区分及び第2の区分は、互いに接触するように、長手方向軸に斜めに位置合わせされた接触面を有する。長手方向軸は、それぞれの管区分の長手方向軸に平行とし得るが、平行でなくてもよい。表示「少なくとも部分的」は、例えば、それぞれの囲繞区分が、例えば、囲繞区分から突出する冷却フィンを受け入れるために設けられた側方の切欠きを有する場合を含むことを意図する。
【0029】
本発明によれば、電流供給構成はそれぞれ、壁通路において、反応器容器の壁を通じて更に延在し、特に、各場合における第1の区分が第2の区分を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞するか又は第2の区分が第1の区分を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞する電流供給構成の領域は、壁通路内に配置される。反応器容器の「壁」は、特に、電流供給構成が、例えば可撓性撚線又はケーブルにより接続される更なる空間のための中間壁とすることもできる。この中間壁は、少なくとも1つの更なる壁により外部に境界を定められる。壁は、特に、断熱設計される。
【0030】
本発明の背景において、電流供給構成の第1の区分は、それぞれの管区分又は管区分のそれぞれの群にあらゆる様式で接続し得る。例えば、第1の区分は、例えば遠心鋳造によって、1つ又は複数の反転屈曲部又はまっすぐな管区分に溶接、鋳造、又は一体形成し得る。第1の区分は、流体通路も有することができ、流体通路に、それぞれの管区分又は管区分の群が実質的に接続、例えば溶接される。より一般的には、したがって、本発明の背景において、特に、溶接接続の形態で、電流供給構成の第1の区分と、それぞれの管区分若しくは管区分のそれぞれの群との間に材料接続があるか、又は電流供給構成の第1の区分及びそれぞれの管区分若しくは管区分のそれぞれの群は、一体に形成される。
【0031】
例えば、以下でより詳細に説明するように、湾曲管区分はそれぞれ、まっすぐに延在しても、電流供給構成を通る反転屈曲部の形態で延在しても、これらのように延在しなくてもよい。このように、壁が補強された屈曲部は、特に、電流供給構成の第1の区分の一部を通じて形成し得る。反転屈曲部を有さない反応管は、特に、壁が補強されたスリーブとし得る。
【0032】
特定の実施形態に応じて、例えば、電力供給領域と、反応器容器内の接地接続部又はスター・ブリッジとの間に延びる管区分はそれぞれ、1つ又は複数の流体通路が中に延びる電力供給区分の第1の区分の形態の予め製造された構成要素に溶接し得るか、又は第1の区分は、管区分上に鋳造し得る。管区分上に鋳造する場合、連続管をもたらし、電力供給組立体の第1の区分は、鋳造若しくは遠心鋳造又は溶接によって製造し得る。
【0033】
電流供給構成の第1の区分は、それぞれの管区分内の流体の流れを遮断しないため、管区分を通じてプロセス流体を誘導する連続経路が常に形成されることを理解されたい。特に、それぞれの管区分の管内部も、特に、目に見えるほどの先細化又は拡張化を伴わずに、電流供給構成の領域内で継続する。「目に見えるほどの」先細化又は拡張化とは、断面積の10%を超える先細化又は拡張化を示すことを意図する。
【0034】
用語「電流供給構成」は、本明細書では、対応する構成が、金属構成要素を介して電流接続部に対する導電性接続がある構成であることを表すために使用されるが、本発明のいくつかの実施形態では、「電流供給構成」の少なくとも第1の区分は、管区分の連続的な延長部である。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態では、電流供給構成の第1の区分及び第2の区分の斜めの接触面は、円錐内面及び円錐外面として形成し得る。円錐内面は、特に、それぞれの区分内に、もう一方の区分を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞する状態で、特に、少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞される区分を受け入れるように形成された凹部の内側端部に形成される。円錐外面は、特に、それぞれの区分内に、もう一方の区分によって少なくとも部分的に囲繞される状態で、特に、それぞれのもう一方の区分によって少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞される対応する区分の棒形状領域の端部に形成される。
【0036】
球状若しくは半球状又は部分的に球状若しくは湾曲する接触面も、本明細書で理解される意味で「斜め」とみなされる。更に、ねじ山、ねじ接続、又はスプラインの入ったハブ若しくはスプラインの入ったシャフトの形態で形成された形状を提供し得る。
【0037】
以下において、「電力供給構成の第1の区分」又は「電力供給構成の第2の区分」に繰り返し言及する。これらは、言葉の単純化にすぎず、全ての電力供給システムの第1の区分及び第2の区分に言及し得るか、又はこれらの一部のみに言及し得る。
【0038】
円錐内面及び円錐外面は、円錐内面及び円錐外面が、電流供給構成の第1の区分及び第2の区分を一緒に差し込む又は押圧することによって互いに接触するように配置される。このように、電気接触面及び熱接触面をこれらの要素の間に効果的に確立でき、これらの要素の間に、製造が複雑又は不可能である可能性のある材料の接続を確立する必要はない。言い換えれば、効果的な電流供給は、電流供給構成全体を同じ材料から製造する必要なしに行い得る。そうではなく、第1の区分及び第2の区分はそれぞれ、それぞれの必要な機能に特に適合し得る。例えば、第1の区分の材料は、温度抵抗、及び対応する温度での十分な電気伝導率に対して明示的に選択し、第2の区分の材料は、第2の区分に行き渡っている温度に関してより重要性が劣る範囲内で、もう一方の材料に対する良好な電気伝導率及び接続性に関して設計し得る。したがって、対応する電流注入構成を通じた電流注入に対する有利な効果は、より少ない材料技術及び製造努力で達成でき、構造を必要な機能に適合し得る。
【0039】
円錐接触面を使用する特定の利点は、既に述べた利点に加えて、電流供給構成の第1の区分及び第2の区分が互いに対して自然に中心に配置されることであり、特に、対応する押合い力を加える際、要素及び組立体の機能的に正確な配置が簡略化される。
【0040】
本発明の実施形態では、円錐接触面は、円錐シェルの内面及び外面として形成されるか、又は円錐台の円錐シェルの内面及び外面として形成される。全ての場合において、もう一方の区分によって少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞されるそれぞれの区分の末端部は、少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞する区分の対応する相補形構造に完全に嵌合でき、円錐の覆いを使用することにより、最大伝達面をもたらし、円錐台を使用することにより、特に、製造上の利点をもたらし得る。というのは、この場合、円錐先端部を完全に形成する必要がないためである。損傷を受けやすい先端部は、円錐台の場合には存在しない。
【0041】
本発明の対応する実施形態では、円錐接触面は、40から120°、特に、例えば、約45°又は60°の円錐角度を含み得る。「円錐角度」とは、円錐接触面を画定する対称軸に対する、円錐又は円錐台の対向する表面線によって含まれる角度であると理解されたい。本明細書で使用される定義によれば、円錐角度は、対称軸と各円錐母線との間の角度の2倍に相当する。対応する円錐又は円錐台が形成される円錐角度が小さいほど、即ち、「より先がとがっている」ほど、熱及び電気遷移のための接触面はより大きい。円錐角度が大きいほど、即ち、円錐又は円錐台があまり「とがっていない」ほど、より頑強な設計がもたらされる。
【0042】
本発明の特に好ましい実施形態では、弾性変形可能付勢要素を設けることができ、この弾性変形可能付勢要素は、第1の区分の方向で上述の長手方向軸に沿って電流供給構成の第2の区分を押圧する。特に、前述の円錐設計の接触面に関して、永続的で安全な接触をこうして確立し得る。というのは、円錐又は円錐台は、これにより、対応する相補形構造に永続的に押圧し得るためである。このように、第1の区分及び第2の区分の熱膨張が異なる場合でさえ、接触面を互いから分離させない。
【0043】
弾性変形可能付勢要素は、特に、(巻き)ばねとして設計し得る。例えば、電流供給構成の第1の区分が第2の区分を少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞する場合、支承リング又は支承シェルを設けることができ、支承リング又は支承シェルは、第1の区分に螺入され、対応するばねを支持する。ばねは、第1の区分によって少なくとも部分的にスリーブ状に囲繞される第2の区分、又は対応する対の構造に直接作用し得る。コイルばねの場合、ばねは、特に、第2の区分の周囲に配置し得る。巻きばねの代わりに、例えば、波形リング等を設けることもできる。本発明は、特定の実施形態によって限定されない。
【0044】
円錐設計の接触面に対する一代替形態では、接触面は、ねじ山の表面として設計することもできる。言い換えれば、本発明のこの実施形態では、電流供給構成の第1の区分が、第2の区分に螺入されることを提供でき、その逆も同様である。相応に螺入することによって、異なる熱膨張の場合でさえ、それぞれの螺入要素の膨張を実現でき、これにより、要素の更なる固定構成、したがって、互いに対する接触面の固定構成を保証し得る。
【0045】
本発明の特に好ましい実施形態では、電流供給構成の第2の区分は、特に、表面拡大要素を備える及び/又は接続し得る。表面拡大要素は、例えば、冷却フィンの形態とし得る。このように、第2の区分からの目標とする熱放散を行い得る。
【0046】
電流供給構成の第1の区分及び管区分の一体構成が始めからもたらされない場合、本発明の対応する実施形態では、前記構成要素は、高温で材料を固定する様式で接続される。用語「耐高温材料接合」は、2つ以上の金属部品の材料が互いに接合され、この接続が、500℃から1,500℃、特に、600℃から1,200℃、又は800℃から1,000℃で永続的である、即ち、通常動作の間、そのような温度で分離しない、接続の種類を示すことを意図する。耐高温材料係止接続は、特に、金属-金属の接続として設計でき、非金属材料が接続される部品の間に留まらないように実行される。そのような接続は、特に、溶接、鋳造、遠心鋳造によって行い得る。接合部品の変り目に構造差が発見されない継ぎ目、特に、更なる金属がその継ぎ目のために使用されない継ぎ目があってもよい。
【0047】
電流供給構成の第1の区分及び第2の区分は、例えば、特に一体に固定して形成される撚線等とは対照的なものである(即ち、特に、平行な又は編み合わされたワイヤの形態ではない)。特に、第1の区分及び第2の区分は、中実構造であるが、少なくとも部分的にスリーブ状にもう一方の区分を囲繞する区分は、特に、中空棒又は管状として形成されることを理解されたい。
【0048】
第1の区分及び第2の区分は、特に、上述の長手方向軸に沿って、反応器容器の壁に直交する長手方向延在部を有し、長手方向延在部は、反応器容器の壁に平行な最大横断延在部の少なくとも2倍、特に、少なくとも3、4又は5倍、例えば、最大の10倍の大きさである。もう一方の区分によって少なくとも部分的に囲繞される区分は、例えば、断面が円形、楕円形若しくは三角形若しくは多角形とするか、又はあらゆる他の形状を有し得る。各場合におけるもう一方の区分を少なくとも部分的に囲繞する電流供給構成の区分は、もう一方の区分によって少なくとも部分的に囲繞される区分の凹形状に対応する内側形状を有する。
【0049】
本発明によれば、電流は、電流供給構成を介して加熱すべき反応管又は反応管の区分に導入され、電流供給構成は、例えば、局所プロセス・ガス流に直交する方向でプロセス誘導反応管に取り付けられ、この方向で、上述の長手方向軸に沿って、即ち、特に、反転屈曲部の頂点に延在するか、又は非湾曲反応管の場合、管の進路に直交して延在する。非湾曲反応管の場合、上述の長手方向軸は、管の進路にも平行とし得る。
【0050】
特に、第1の区分及び第2の区分によって形成される、包括的に低減する自由固有導体断面aは、外部から反応区域に向かって存在し得る。このことは、第1の区分が第2の区分を少なくとも部分的に囲繞するか、又は第2の区分が第1の区分を少なくとも部分的に囲繞する領域、及び供給構成から遠い反応管と比較すると、壁厚さが好ましく増大する反応管への移行領域の両方に当てはまる。
【0051】
自由固有導体断面a(単位:m/Ω)は、平均固有電気抵抗率ρ1(単位:Ω×m)を有する第1の区分内で面積A1(単位:平方メートル)及び平均固有電気抵抗率ρ2を有する第2の区分内で面積A2(単位:平方メートル)を有するあらゆる断面積Sに対して次のように定義される:
a=A1/ρ1+A2/ρ2
【0052】
本発明の特に有利な実施形態は、電流供給構成を通るあらゆる2つの断面積S1、S2に対して、等値面を表すことを含み(そのような断面積は、第1の区分単独、第2の区分単独、又は第1の区分が第2の区分を少なくとも部分的に囲繞するか若しくは第2の区分が第1の区分を少なくとも部分的に囲繞する領域を通じて延び得る)、等値面にわたって、電位の二乗平均値(rms値)Vrms,iは、各場合において一定であり、等値面は、AC電圧源、即ち、特に変圧器から異なる距離で配置され、変圧器に近い断面積S1の二乗平均電位Vrms,1は、常に、変圧器からより遠い断面積S2の二乗平均電位Vrms,2より高く、このため、Vrms,1>Vrms,2が適用される。用語「より近い」及び「より遠い」は、電流源からそれぞれの断面積までの電流のより短い距離及びより長い電流距離を指す。電位に対するrms値の使用は、交流電流を用いる反応器の動作に言及する。直流電流動作の場合、説明した関係は、電位の演算平均値に適用される。
【0053】
電流供給構成全体(即ち、全体としての電流供給構成)は、更に有利には、電流源から異なる距離にあり、Vrms,1>Vrms,2である説明した2つの任意の断面積S1及びS2に関して、電流源から更に遠くにある断面積S2の自由固有導体断面a2と、電流源により近くにある断面積S1の自由固有導体断面a1との商a2/a1が、最大0.5、特に最大0.9、最大1、最大1.1、又は最大2であるように、設計される。特に好ましい実施形態では、あらゆるそのような表面対の自由固有導体断面の商a2/a1は、最大1である。
【0054】
例えば、製造上の理由のために、この好ましい設計からの偏差が生じる場合があり、このため、わずかな断面の増大は、局所的に容認し得る。しかし、2つの断面積S1*及びS2*が、それぞれの自由固有導体断面積a1*=amax及びa2*=aminという包括的極値を有する場合、関係Vrms,1*>Vrms,2*が有利に常に適用される。即ち、最大自由固有導体断面を有する領域は、最小自由固有導体断面を有する領域より電源に近い。
【0055】
このように、最適に連続する材料温度の増大を保証でき、好ましくは、反応区域内でのみ最大に達する。温度分布に対する初期設定は、本発明の特に有利な実施形態による自由固有導体断面分布と類似して決定でき、電流源から異なる距離にあり、Vrms,1>Vrms,2である説明した2つの任意の断面積S1及びS2の場合、電源により近くにある断面S1の温度T1と、電源からより離れている断面S2の温度T2との温度差T1-T2は、最大-100K、特に、最大-10K、最大-1K、最大0K、最大1K、最大10K、又は最大100Kである。特に好ましい実施形態では、断面の全てのそのような対の温度差T1-T2は、0K未満である。
【0056】
この規格は、とりわけ、隣接する管区分内で最大に生じる材料温度と比較して、-100K、-10K、-1K、0K、1K、10K又は100Kの最大局所温度の上昇が、電流供給領域全体で生じるという条件を含む。
【0057】
電流供給構成内に自由固有導体断面の包括的極値a1*=amax及びa2*=aminを有する断面積S1*及びS2*の温度T1*及びT2*の温度差T1*-T2*は、更に有利には、最大-500K、最大-200K、最大-100K、最大0K又は最大100Kである。即ち、本発明のこの実施形態による最高断面を有する表面は、変圧器により近く、好ましくは、より低温であるか、多くとも、最小断面を有する表面よりわずかに高温である。
【0058】
本発明の一実施形態では、電流供給構成内の自由固有導体断面は、有利には、電流供給方向から反応管に向かって、主に連続的又は単調に低減する。この実施形態でもたらされる材料の組合せの場合、長さ固有電気抵抗率は、利用可能な自由固有導体領域のみに依存するので、解放されるエネルギー固有量も、このように絶えずに増大する。このように、プロセス・ガスによって吸収される熱量のみを反応管内で効果的に利用し得るため、供給エネルギーの最高に可能な利用が達成される。
【0059】
本発明の特に有利な実施形態によれば、電流供給構成の自由固有導体断面の厳密な進路は、局所温度及び熱伝達条件に更に適合される。例えば、反応器容器の壁を通る半断熱壁貫流領域(断熱反応器壁を通じた著しい熱放散は、可能ではない)において、大きな自由固有導体断面が好ましく使用され、これにより、こうした領域における局所的な熱放散を最小に低減させ、局所温度の上昇を上方に制限し得る。言い換えれば、電流供給構成は、有利には、少なくとも1つの他の領域より、壁貫流領域内に大きな自由固有導体断面を有する。
【0060】
以下で説明するように、接触抵抗を回避するため、電流供給区分の少なくとも第1の区分及び管区分に接触する領域は、好ましくは、例えば置注鋳造の形態で一体構成要素から作製される。一代替形態として可能でもある複数の部品設計の場合、適切な接合方法(例えば摩擦溶接)は、自由固有導体断面及び最大局所温度増大に対して説明した規格が、接合領域に対しても準拠することを保証するために、有利に使用される。
【0061】
特に有利には、電流供給構成はそれぞれ、電流供給区分のそれぞれの壁通路と、管区分が電気的に接触する領域との間に、どの点においても500m/Ω未満ではない、有利には、どの点においても1500m/Ω未満ではない、特に、どの点においても2500m/Ω未満ではない自由固有導体断面を有する。対応して高い自由固有導体断面を使用することによって、抵抗損失を伴わない特に良好な電流伝達を保証し得る。
【0062】
たった今説明した自由固有導体領域の設計、又は少なくとも部分的にこの設計と同義である設計に対する代替として、長さ固有電気抵抗率に基づく、対応する設計を本発明の範囲内で提供することもでき、この電気抵抗率は、変圧器から到来して反応区域に向かって絶え間なく、特に連続的に増大する。長さ固有電気抵抗率R/L(単位:Ω/m)は、電気抵抗率R、単位長さL、固有電気抵抗率ρ及び自由導体断面積Aから決定され、
R=L×ρ/Aであるため、R/L=ρ/Aである。
【0063】
この手法は、形状の変化(例えば、電流供給アレイの可変直径)及び(適用可能な場合、異なる電気抵抗率を有する)別の材料との組合せの両方を含む。
【0064】
有利には、電流供給構成はそれぞれ、壁通路において反応器容器の壁を通じて長手方向に移動可能に案内される。このような自由移動の保証、とりわけ、反応器の動作中、管の数デシメートルの熱膨張によって支配される反応管の機械的挙動に対して、特に有利である。自由移動は、固定組付けの場合に生じる反応管上の屈曲負荷を低減する。一方、反応管は、以下でも説明される固定スター・ブリッジを備え得るため、このように、電流供給構成の対応する長手方向の移動に対しても安定した懸架がもたらされる。十分に高い合計断面を有する有利な寸法決定のために、電流供給構成は、反応管に対する安全な側方への案内を保証する。
【0065】
本発明による反応器内で実行される反応は、高温を必要とするため、電力供給領域における電気接続は、例えば、水蒸気分解の場合、約900℃の高温範囲で実現しなければならない。このことは、適切な材料を選択し、材料を十分に寸法決定することによって、本発明により提案される方策により可能である。接続は、同時に、高温での高い電気伝導率及び高い機械的安定性及び信頼性を有するべきである。電気接続が不良であると、スター・ポイントに非対称電位が生じ、結果として、設備構成要素への望ましくない電流伝導のために、設備に対する即時の安全に関連する遮断が生じる。そのような状況を回避することによって、本発明は、従来技術より有利になる。
【0066】
本発明で提供される反応器容器内部での管区分の接触は、反応管を反応器容器の外側に誘導する必要がある、理論的には可能な反応器容器の外部での接触と比較して、電気熱入力の経路が明確に画定されるという利点を有する。というのは、この場合、電気的に加熱される管区分を、より暖かい内部空間からより冷たい外部空間に誘導する必要がないためである。本発明による接触のために、電気的に加熱される管区分に対して空間的にかなり均質な外部熱境界条件を達成し得る。というのは、管区分は、反応器容器の内部に完全に配置されるためである。このことにより、プロセスの技術的な利点がもたらされる。例えば、加熱通路及び外側断熱通路内で予期される、過剰な局所的すすの形成を回避し得る。
【0067】
反応器容器の外側、又は接続室、特に、実際の反応器容器の外側に配置される冷却接続室において、電流供給構成は、例えば、母線及び接続条片等の接続要素により、変圧器システムに電気的に接続し得る。接続条片及び母線は、電流供給構成の第1の区分又は第2の区分とは異なる材料から作製し得る。これらの接続要素は、より低温が反応器容器の外部に存在するため、特に可撓性であるように設計し得る。切替えデバイスは、より高い電圧及びより低い電流が変圧器システムの1次側に存在するため、特に、変圧器システムの1次側に据え付けることができる。
【0068】
本発明の背景において、電流供給構成の第1の区分及び管区分は、同じ材料から形成しても、(当技術分野で慣例である材料定数の意味において)電気伝導率が互いから50%以下、30%以下、10%以下異なるか又は有利には同じである材料から形成してもよい。例えば、前記構成要素は、同じ鋼種の鉄鋼からも形成し得る。同じ又は密接に関連する材料を使用すると、鋳造又は溶接を促進し得る。
【0069】
一方、本発明の使用により、第2の区分に対して他の材料を選択でき、例えば、より容易な機械加工性を保証する、例えば、電流注入のために膨張する要素に、より単純に接続し得る。第2の区分に対する材料選択の決定的な基準は、低い固有電気抵抗率、及び可能な限り高い温度適合性である。概して、モリブデン(Mo)、タングステン(Wo)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)の群からの単一金属、又はMo、Wo、Ta、Nb及びCrの群からの少なくとも1つの材料の少なくとも50質量%を含有する金属合金から構成される材料を使用し得る。ジルコニウム(Zr)、炭化物の形態の炭素(C)及び/又はハフニウム(Hf)、ランタン(La)等の希土類等の成分も含め得る。
【0070】
第2の区分で使用可能な対応する組成物に対する市販材料の概要は、対応する製造業者等から得ることができる。以下は、完全性を一切請求しない、材料選択である。
【0071】
モリブデンベースの材料は、例えば、純粋な又は実質的に純粋なモリブデン、又は材料記号TZM、MHC、ML、MLR、MLS、MoILQ、MY、MoRe5、MoRe41、MW20、MW30、MW50、MoCu30、MoCu15、MZ17、MoNb10又はMT11との公知の合金を含み得る。タングステンベースの材料は、例えば、純粋又は実質的に純粋なタングステン、及び材料記号WK65、WVM、WVMW、S-WVMW、WC、WL、WL-S、WLZ、WRe、WCuとの公知の合金、及び高密度タングステン重金属合金を含む。例えば、焼結又は鋳造品質の純粋又は実質的に純粋なタンタル、特にTaS、TaK、TaKS、Ta2.5W又はTa10W等の公知の材料をタンタル材料として使用し得る。純粋又は本質的に純粋なクロムに加えて、例えば、合金CFYも使用し得る。
【0072】
好ましい実施形態では、電流供給構成の第1の区分及び管区分はそれぞれ、高酸化又はスケール耐性及び高浸炭耐性を有する耐熱クロム-ニッケル鋼合金を有するか、又はこれらから形成される。
【0073】
例えば、第1の区分及び管区分は、0.1から0.5wt%炭素、20から50wt%のクロム、20から80wt%のニッケル、0から2wt%のニオブ、0から3wt%のケイ素、0から5%のタングステン、及び各場合で含有量を合わせると非鉄含有量となる0から1wt%の他の成分を含有する鉄材料とし得る。
【0074】
例えば、DIN EN10027、第1部、「材料」による規格の記号GX40CrNiSi25-20、GX40NiCrSiNb35-25、GX45NiCrSiNbTi35-25、GX35CrNiSiNb24-24、GX45NiCrSi35-25、GX43NiCrWSi35-25-4、GX10NiCrNb32-20、GX50CrNiSi30-30、G-NiCr28W、G-NiCrCoW、GX45NiCrSiNb45-35、GX13NiCrNb45-35、GX13NiCrNb37-25,又はGX55NiCrWZr33-30-04を使用し得る。これらは、高温使用に特に適していることがわかっている。
【0075】
上記で説明した全ての場合において、電流供給構成の第1の区分及び管区分は、同じ材料から形成しても、(当技術分野で慣例である材料定数の意味において)電気伝導率が互いから50%以下、30%以下、10%以下異なるか又は有利には同じである材料から形成してもよい。例えば、接続要素及び管区分も、同じ鋼種の鉄鋼から形成し得る。同じ又は密接に関連する材料を使用すると、例えば、鋳造又は溶接による第1の区分及び管区分の一体形成を促進し得る。
【0076】
前述のように、反応器容器内の全ての管区分は、多相交流電流により加熱される際、固定接続要素(「スター・ブリッジ」)により互いに導電的に接続し得る、又はこの接続は、いくつかの固定接続要素により、群で行い得る。
【0077】
長手方向に案内される電流供給構成を介する、説明した電流供給と組み合わせた、スター回路の対応する実現を通じて、効率的な電流供給を可能にする構造が全体的に生成され、同時に、とりわけ、高い熱膨張率から生じる応力に耐える安定した締結がもたらされる。
【0078】
このことは、同様に本発明により可能である直流電流又は単相交流電流による加熱にも当てはまり、この場合、前述のように、反応器内にスター・ポイントはない。とはいえ、ここでも、固定構成を電流供給部の反対端部に設けることができる。というのは、反応管は、本質的に、本発明により提供される電流供給構成のために、電圧を発生させずに自由に膨張し得るためである。したがって、固定構成は、電流供給部とは反対の反応管の端部に設けることができるが、必要な場合、ここでも、本発明による電流供給構成に対応する要素を設け得る。しかし、いずれの場合も、可動構成は、省くことができる。
【0079】
まず、水蒸気分解で使用される反応管及び反応器に関連して、本発明を以下で説明する。しかし、以下で説明するように、本発明は、以下で説明する他の種類の反応器でも使用し得る。概して、前述のように、本発明により提案される反応器は、全ての吸熱化学反応を実行するために使用し得る。
【0080】
水蒸気分解で典型的に使用される反応管は、典型的には、少なくとも1つの反転屈曲部を有する。したがって、本発明により使用される反応器は、特に反応管の対応温度に耐性のある材料及び形状設計を選択することによって、特に水蒸気分解のための反応器として設計し得る。
【0081】
例えば、この背景において使用される反応管は、いわゆる2通路コイルとし得る。これらの反応管は、反応器容器内に、(厳密に)1つの反転屈曲部を介して互いに合流する2つの管区分を有し、したがって、基本的に、(拡張した)U字形状を有する。そのような構成において、反応器容器に入り、反応器容器を離れる区分は、特に継ぎ目なく、流れに関連する移行部を一切伴わずに、加熱管区分に合流する。
【0082】
したがって、本実施形態では、反応器は、管区分がそれぞれ、反応器容器内で互いに隣接して少なくとも部分的に配置される複数の反応管の2つの管区分を備え、各場合における複数の反応管の2つの管区分は、それぞれの反転屈曲部を介して電流供給領域において互いに合流するように設計し得る。
【0083】
この場合、電流供給構成は、反転屈曲部に接続し得る。反転屈曲部を有するいくつかの管区分があるため、十分な数の反転屈曲部がある場合、いくつかの反転屈曲部をそれぞれの電流供給構成内に設け、そのように電流接続し得る。このように、機械的な締結を改善し、構成要素の数を低減し得る。代替的に、1つの電流接続部を介して電流がいくつかの反転屈曲部に供給される場合でも、反転屈曲部ごとに1つの電流供給構成を設けることも可能であり、例えば、管区分に対して異なる熱膨張の可能性がある場合、電流供給構成の個々の長手方向の可動性を保証する。
【0084】
たった今説明した本発明の設計は、分岐反応管を使用する場合、即ち、1つの管区分から供給される流体が2つ以上の管区分に分配される場合、又は2つ以上の管区分からの流体が1つの管区分内に組み合わされる場合に転換し得る。この場合も、反応器容器内に互いに隣接して少なくとも部分的に配置されるいくつかの反応管の2つの管区分に、説明した様式で本発明による電流供給構成を介して電流を供給し得る。
【0085】
しかし、2通路コイルに関して上記した設計に加えて、いわゆる4通路コイルを伴う使用に適した設計も使用し得る。これらは、4つの本質的にまっすぐな管区分を有する。しかし、より高い、偶数のまっすぐな管区分を有する構成も可能である。
【0086】
しかし、反応器容器内に互いに隣接して少なくとも部分的に配置されるいくつかの反応管の2つの管区分にも、説明した様式で本発明による電流供給構成を介して電流が供給される。
【0087】
「反転屈曲部」とは、本明細書では、特に、一部円形又は一部楕円形、特に半円形又は半楕円形の管屈曲部を備える管区分又は管構成要素を意味すると理解されたい。開始部及び終了部は、平面内に互いに隣接する切断面を有する。
【0088】
反転屈曲部のそれぞれは、反転屈曲部が反応器容器内の電流供給領域内に配置され、適切に通電されることを条件として、本発明による電流供給構成の第1の区分内の通路、又は通路の一部の形態とし得る。
【0089】
水蒸気改質で典型的に使用されるもの等の反応管は、典型的には、反応器容器内に反転屈曲部を有さない。しかし、この場合、管区分はそれぞれ、いくつかの反応管の管区分を備え、管区分は、反応器容器内で流体接続されず、少なくとも部分的に隣接して配置される。反応管は、特に、水蒸気改質のための適切な触媒を備えることもできる。
【0090】
本実施形態では、本発明による電流供給構成内の接触通路は、まっすぐな管区分又は経路である。電流供給組立体は、反応管に付けられるか又は反応管と一体の領域を有し得る。
【0091】
全ての場合において、金属-金属の接続(例えば、溶接又ははんだ接続)の数は、可能な限り少ない個々の部品から電流供給構成及び任意で更に管区分を形成することによって、低減又は更に完全になくし得る。このことにより、機械的な安定性及び信頼性を増大し得る。特に有利な実施形態では、電流供給構成及び管区分はそれぞれ、単一鋳造物として実装し得るか、又は上述のように、プロセス誘導管ライン部品を再度鋳造し得る、及び/又はプロセス誘導管ライン部品を、対応する鋳造物の一体部品として形成し得る。
【0092】
本発明の範囲内で低減し得る金属-金属の接続又は金属接合部は、電気抵抗、したがってホット・スポットの局所的な変化をもたらし得る。ホット・スポットは、局所的な温度の増大による寿命の低減、又は局所的な高い温度勾配による機械応力のピークをもたらす。このことは、本発明において回避される。
【0093】
可能な限り多くの構成要素を一体設計することにより、機械的な安定性、信頼性及び個々の構成要素の低減がもたらされる。上述のように、故障は安全に重大な状況をもたらし得るので、高度の機械的安定性は、望ましい。本発明の意味において説明した設計によって、多相交流電流による加熱に耐性のある反応管の原理を、高温範囲内で、特に、500℃超、600℃超、700℃超、又は800℃超で技術的に実現し得る。
【0094】
様々な実施形態で既に説明したように反応器を使用する本発明により提案されるプロセスに関しては、対応する独立特許請求項を明示的に参照されたい。
【0095】
図面を参照しながら本発明を以下で更に説明する。本発明の例示的な実施形態は、従来技術を参照し、従来技術と比較する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】本発明によるものではない、一実施形態による化学反応を実行する反応器の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による化学反応を実行する反応器の概略図である。
【
図3】本発明の更なる実施形態による化学反応を実行する反応器の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、電流供給構成を有する反応器の概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、反応器の電流供給領域の図である。
【
図6A】本発明の一実施形態による、反応器内で使用する反応管及び対応する構成の図である。
【
図6B】本発明の一実施形態による、反応器内で使用する反応管及び対応する構成の図である。
【
図7A】本発明の一実施形態による、反応器内で使用する管構成の図である。
【
図7B】本発明の一実施形態による、反応器内で使用する管構成の図である。
【
図7C】本発明の一実施形態による、反応器内で使用する管構成の図である。
【
図8A】本発明の一実施形態による、反応器内で使用する管構成の図である。
【
図8B】本発明の一実施形態による、反応器内で使用する管構成の図である。
【
図9A】本発明の一実施形態による、反応器内で使用する更なる管構成の図である。
【
図9B】本発明の一実施形態による、反応器内で使用する更なる管構成の図である。
【
図9C】本発明の一実施形態による、反応器内で使用する更なる管構成の図である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
図面において、構造的又は機能的に対応する要素は、同一の参照符号により示され、明快にするために繰り返し説明しない。デバイスの構成要素を以下で説明する場合、対応する説明は、デバイスの構成要素により実行されるプロセスも指し、その逆も同様である。図面の説明は、繰り返し、交流電流の加熱に言及する。しかし、前述のように、本発明は、加熱用直流電流の使用に等しく適している。上記の説明を参照されたい。
【0098】
図1は、本発明によるものではない、一実施形態による化学反応を実行する反応器を概略的に示す。
【0099】
ここでは300と示される反応器は、化学反応の実行のために設定される。この目的で、反応器は、反応器容器10、特に、断熱反応器容器と、反応管20とを有し、ここでは2つの実例のみで21で示される反応管20のいくつかの管区分はそれぞれ、反応器容器10内の第1の区域11’と第2の区域12’との間に延びる。
図2を参照しながら以下でより詳細に説明する反応管20は、適切な懸架装置13により、反応器容器の天井又は支持構造体に取り付けられる。下側領域において、反応器容器は、特に、図示しない炉を有し得る。いくつかの反応管は、この
図1及び以下で提供し得ることを理解されたい。
【0100】
図2は、100で示される、本発明の実施形態による化学反応を実行する反応器を概略的に示す。
【0101】
以前は11’及び12’で示された区域は、ここでは領域11及び12として示され、電流供給領域11内で管区分21を加熱する管区分21はそれぞれ、多相交流源50の相接続部U、V、Wに電気的に接続可能である。スイッチ等及び特定の種類の接続は、図示しない。
【0102】
ここで示される本発明の実施形態では、管区分21は、接続要素30により領域12内で互いに導電的に接続され、接続要素30は、1つ又は複数の反応管20に一体に接続され、反応器容器10の内側に配置される。中性線も1つ又は複数の反応管20に接続し得る。
【0103】
したがって、ここで図示される反応器100において、(いくつかのそのような反応管20を提供し得るが)1つの反応管20のいくつかの管区分21は、反応器容器10内に並んで配置される。2つの管区分21はそれぞれ、(部分的にのみ示される)反転屈曲部23を介して互いに合流し、作動流体のための供給区分24及び回収区分25に接続される。
【0104】
反転屈曲部23の第1の群(図の下)は、領域11内に並んで配置され、反転屈曲部23の第2の群(図の上)は、領域12内に並んで配置される。第2の群の反転屈曲部23は、接続要素30内に形成され、管区分21は、領域12内の接続要素30から領域11まで延在する。この特定の構成は、強制的ではない。
【0105】
接続要素30の使用は、有利であるが、本発明の範囲内では任意である。一方、以下で説明する本発明の実施形態は、特に、電流を領域11に供給する手段の設計に関し、この領域11は、したがって電流供給領域と呼ばれる。電流供給領域は、ここではかなり簡略化して示され、1つのみが示される電流供給構成40によって達成される。
【0106】
図3は、200で示される、本発明の実施形態による化学反応を実行する反応器を概略的に示す。
【0107】
反応器200において、ここでは22と異なって示される管区分はそれぞれ、複数の反応管20の管区分22を備え、管区分は、反応器容器10内で互いに隣接して流体接続されずに配置され、それぞれ、作動流体のための供給区分24及び回収区分25に接続される。他の要素に関しては、前の図面の上記の説明を明示的に参照されたい。
【0108】
同様に、本発明の背景において、接続器30の使用は、有利であるが、任意である。同様に、電流供給構成40は、かなり簡略化して示される。電流供給構成40は、領域11内で反応管20又は管区分の周囲に置かれるスリーブ状領域49を有し得る。
【0109】
図4は、例えば、
図2に示される反応器100の領域11の断面図を示し、電流供給構成40は、領域11内に配置され、反応管20は、電流供給構成40に接続され、ここでは断面で示される反応管20の管区分21は、互いに反転屈曲部23を介して合流する。
【0110】
反転屈曲部23は、ここでは、領域11内の2つの管区分21に隣接する補強壁により形成される。反転屈曲部23の1つの壁は、既に概略的に示した電流供給構成40の第1の区分41に接続されるか又は一体に形成される。
【0111】
電流供給構成40はそれぞれ、第1の区分41と第2の区分42とを有し、第1の区分41は、ここでは、長手方向軸Aに沿って、2つの管区分21又は反転屈曲部23から開始する状態で延在する。電流供給構成40の領域において、第1の区分41は、各場合において第2の区分42をスリーブ状に囲繞し、第1の区分41及び第2の区分42は、互いに接触するように長手方向軸Aに斜めに配置される接触面41a、42aを有する。
【0112】
電流供給構成40の第1の区分41及び第2の区分42の先細接触面41a、42aはそれぞれ、先細内面及び先細外面として形成され、先細内面及び先細外面は、電流供給構成40の第1の区分41及び第2の区分42を中に又は一緒に押圧することによって、互いに接触し得る。より正確には、図示の例では、円錐接触面41a、42aは、60°の円錐角を有する円錐シェルの内面及び外面として形成される。
【0113】
電流供給構成40はそれぞれ、壁通路15において、反応器容器10の壁14を通じて延在し、ここでは、長手方向に移動可能であるように収容される。壁通路15は、ここでは、誇張されて広く示され、例えば、斜線部として示される絶縁材料に沿って並べられる。
【0114】
任意で、本発明では決して必須ではないが、図示しない蛇腹構成を、反応器容器10の壁14の外側上に設け、棒形状電流供給構成40が長手方向に移動可能であるにもかかわらず、環境から反応器容器10の気密封止を保証し得る。
【0115】
母線又は撚線は、第2の区分42の一端部42bに取り付け、既に説明した相U、V、Wに接続するか、又は直流電流源若しくは単相交流電流源の対応する電流接続部に接続し得る。
【0116】
図5は、反応器200の電流供給領域11の断面図を示し、各場合における図示の要素は、
図4に対して既に説明してある。しかし、
図4とは対照的に、反応管20は、ここでは、反転屈曲部を有さず、管区分21は、共通中心軸Mに沿って配置される。湾曲しない移行領域は23aで示される。例えば、
図3による反応器200内のスリーブの代わりに、対応する設計を使用し得る。移行領域23aは、ここでも、補強壁と共に形成され、補強壁に電流供給構成11の第1の区分41が接続される。更なる説明に関しては、
図4を参照されたい。
【0117】
図6A及び
図6Bは、互いに直交する2つの断面に沿って、本発明の一実施形態による電流供給構成40を通る長手方向断面を示す。
【0118】
図6Aに示すように、ばねの形態の弾性変形可能付勢要素44が設けられ、弾性変形可能付勢要素44は、長手方向軸Aに沿って、第1の区分41の方向で電流供給構成40の第2の区分42を押圧し、シェル44a内に支持される。更に、電流供給構成40の第2の区分42は、冷却フィンの形態の表面拡大要素45を備える。
【0119】
熱分解装置の炉の場合、
図1及び
図2で既に示され、通常6通路コイルと呼ばれ、6つのまっすぐな区分の管21及び合計5つの180°の屈曲部を有する反応管20に加えて、より少ない通路を有する変形形態も使用し得る。
【0120】
例えば、いわゆる2通路コイルは、2つだけのまっすぐな管区分21、及び唯一の180°のひじ部又は反転屈曲部23を有する。このことは、
図7Aから
図7Cに示される。電流注入は、下側(又は唯一の)反転屈曲部で反応管21ごとに1つの点で行われる。各場合において、M個の反応管は、互いに電気的に結合し、360°/Mの位相ずれを有し、共通接続要素30を有し得る。第1の代替形態のこの場合では、各コイル・パッケージ又は全ての反応管20を各場合で考慮するため、特に大きな接続要素30を使用し得る。しかし、第2の代替形態では、2つのより小さな接続要素30を使用することも可能である。
【0121】
たった今説明した第1の代替形態は、管区分21を通る断面図で
図7Bに示され、たった今説明した第2の代替形態は、
図7Cに示され、対応する反応管20は、
図7A内の
図7B及び
図7Cの図に直交する図で示される。対応する要素の記号に対しては
図1を参照されたい。一方で、反転屈曲部23を有する接続要素又は要素30は、可能性として、他の反転屈曲部23上に配置され、もう一方で、電流供給構成40(ここではかなり簡略化して示される)を介して相U、V、Wに接続される接続要素又は要素30は、反応器の領域11、12に対応する異なる平面内に配置されることは理解されよう。同様に、接続要素30の存在及び配置は、本発明の背景において、単にオプション又は任意であることが強調される。
【0122】
したがって、この概念は、4つの通路を有するコイル若しくは反応管20又は管区分21(いわゆる4通路コイル)にも適用でき、この場合、1、2若しくは4つのスター・ブリッジ又は接続要素30を伴う。対応する例は、
図8A及び
図8Bに示され、4つの接続要素30は、
図8Bに示される。より良好に例示するため、反転屈曲部23は、ここでは破線(領域12の反転屈曲部)及び陰影なし(領域11内の反転屈曲部)で示される。明快にするために、要素は、参照符号により部分的にのみ示される。
【0123】
図9Aから
図9Cは、本発明の一実施形態による、反応器内で使用する更なる反応管を示す。反応管及び管区分は、ここでは、参照符号でのみ部分的に示される。供給区分及び回収区分は、流れ矢印の図示によって示される。上記で説明したように何度も存在し、設計し得る電流供給構成40は、かなり簡略化した破線で示される。
【国際調査報告】