(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】標的細胞又は細胞のスクリーニング方法、及び生物学的培養チップ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20230817BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12M3/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507492
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2021102799
(87)【国際公開番号】W WO2022028150
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】202010771818.9
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010771819.3
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010771453.X
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523036281
【氏名又は名称】南京▲リョウ▼芯生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING LIVINGCHIP BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高 曉航
(72)【発明者】
【氏名】魏 雨
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC08
4B029GA03
4B063QA05
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4B063QR48
4B063QR77
4B063QS33
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
標的細胞のスクリーニング方法、対応する検査キット及びその使用、細胞のスクリーニング方法、並びに生物学的培養チップ及びその作製方法及びその使用。
標的細胞をスクリーニングする方法は、シグナルスクリーニング層を備えた培養チャンバー内で前記候補単細胞を培養すること、該シグナルスクリーニング層は標的分子を特異的に認識するためのシグナル伝達分子を含む;該シグナル伝達分子のシグナルに基づいて、該標的分子を分泌するのに適した標的細胞を選択することを含む。
細胞のスクリーニング方法は、候補細胞を培養チャンバー内に配置して、標的抗体抗原シグナル伝達抗体化合物を形成すること;該シグナル伝達抗体に結合したシグナル伝達分子のシグナルに基づいて、該候補細胞が標的細胞であるか否かを決定することを含む。
生物学的培養チップはマトリックス(100)、及び該マトリックス(100)の表面上に配置され、生物学的細胞を培養するために使用される生物学的培養空間を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞のスクリーニング方法であって、
該標的細胞は標的分子を分泌するのに適しており、
該方法は、
該標的分子を分泌するのに適した条件下、培養チャンバーで候補単細胞を培養すること、ここで、該培養チャンバーは該候補単細胞を覆うためのシグナルスクリーニング層を含み、該シグナルスクリーニング層は該標的分子を特異的に認識するためのシグナル伝達分子を含む;及び
該シグナルスクリーニング層のシグナル伝達分子のシグナルに基づいて該標的分子を分泌するのに適した標的細胞を選択すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記シグナルスクリーニング層は前記培養チャンバーのマトリックス材料に配置される;
前記シグナルスクリーニング層は培地に配置される;
前記シグナルスクリーニング層は少なくとも1種の抗体又はプローブを含む;
前記シグナルスクリーニング層はヒドロゲルから形成される;又は
前記シグナルスクリーニング層の機械的強度はマトリックス材料の機械的強度よりも低い、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養チャンバーは
マトリックス材料から形成されたマトリックス;及び
該培養チャンバーを画定するためにマトリックスの表面上に形成された培養チャンバーを含む生物学的培養チップ上に配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記培養チャンバーはマトリックス上に所定の配列パターンを形成する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記マトリックスのマトリックス材料の平衡膨潤比が約1.25乃至1.75である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記培養チャンバーはマトリックス表面上に開口部を有し、該開口部は直径8乃至25μm、深さ15乃至35μmである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記マトリックス材料はコラーゲンヒドロゲル、メチルセルロース、アガロースゲル及びポリアクリルアミドゲルからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つの隣接する培養チャンバー間の距離が10乃至50μmである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記シグナル伝達分子は蛍光分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記蛍光分子はFITC又はAF488の少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は蛍光顕微鏡によって陽性細胞を位置決めすることをさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項12】
ヒドロゲル;
シグナル伝達分子;及び
生物学的培養チップ
を含む、キット。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の方法によって標的細胞をスクリーニングすること;及び
該標的細胞を増殖して抗体を発現させること
を含む、抗体の作製方法。
【請求項14】
請求項3に記載の生物学的培養チップ上に複数のハイブリドーマ細胞を分注すること、ここで、該生物学的培養チップの各培養チャンバーは多くても1つのハイブリドーマ細胞を含む;
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の方法によって陽性ハイブリドーマ細胞を選択すること;
該陽性ハイブリドーマ細胞を単離すること;及び
該陽性ハイブリドーマ細胞を培養して抗体を発現させて、モノクローナル抗体を得ること
を含む、モノクローナル抗体のスクリーニング方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法により得られる、モノクローナル抗体。
【請求項16】
抗体が請求項15に記載のモノクローナル抗体であり、該モノクローナル抗体はシグナル伝達分子と結合している、抗体抗原複合体。
【請求項17】
培養チャンバー内に候補細胞を配置し、候補細胞が抗体を発現するのに適した条件下、所定の時間培養すること;
シグナル伝達抗体抗原複合体を該培養チャンバーに添加すること、ここで、該シグナル伝達抗体はシグナル伝達分子と結合しており、該シグナル伝達抗体は請求項15に記載のモノクローナル抗体である;及び
該シグナル伝達分子のシグナルに基づいて該候補細胞が標的細胞であるか否かを決定すること、ここで、該標的細胞は該モノクローナル抗体とは異なる抗原決定基を有する抗体を分泌する、
を含む、抗体のスクリーニング方法。
【請求項18】
候補細胞が抗体を発現するのに適した条件下、所定の時間、候補細胞を培養チャンバーに入れること;
該培養チャンバーで標的抗体抗原シグナル伝達抗体複合体を形成すること、ここで、該シグナル伝達抗体はシグナル伝達分子と結合している;及び
該シグナル伝達分子のシグナルに基づいて該候補細胞が標的細胞であるか否かを決定すること
を含む、細胞のスクリーニング方法。
【請求項19】
前記所定の時間は1乃至10時間、好ましくは2乃至5時間、より好ましくは3時間である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記培養チャンバーは
マトリックス材料から形成されたマトリックス;及び
該培養チャンバーを画定するためにマトリックスの表面上に形成された培養チャンバー
を含む生物学的培養チップ上に構成され、
前記標的抗体抗原シグナル伝達抗体複合体は、該培養チャンバーに、抗原シグナル伝達抗体複合体を添加するか又は遊離抗原と遊離シグナル伝達抗体とを順次添加することにより形成される、請求項18又は請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記培養チャンバーはマトリックス上に所定の配列パターンを形成する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記マトリックスのマトリックス材料の平衡膨潤比が約1.25乃至1.75である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記培養チャンバーはマトリックス表面上に開口部を有し、該開口部は直径8乃至25μm、深さ15乃至35μmである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記マトリックス材料はコラーゲンヒドロゲル、メチルセルロース、アガロースゲル及びポリアクリルアミドゲルからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも2つの隣接する培養チャンバー間の距離が10乃至50μmである、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記シグナル伝達分子は蛍光分子であり、好ましくは、該蛍光分子はFITC又はAF488の少なくとも1つを含む、請求項18又は請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は蛍光顕微鏡によってシグナル伝達分子のシグナルに基づいて陽性細胞を位置決めすることをさらに含む、請求項18又は請求項19に記載の方法。
【請求項28】
請求項18乃至請求項27のいずれか1項に記載の方法によって標的細胞をスクリーニングすること;及び
該標的細胞を増殖して抗体を発現させて、シグナル伝達抗体とは異なる抗原決定基を有する抗体を得ること
を含む、抗体の作製方法。
【請求項29】
請求項20に記載の生物学的培養チップ上に複数のハイブリドーマ細胞を分注すること、ここで、該生物学的培養チップの各培養チャンバーは多くても1つのハイブリドーマ細胞を含む;
請求項18乃至請求項27のいずれか1項に記載の方法によって陽性ハイブリドーマ細胞を選択すること;
該陽性ハイブリドーマ細胞を単離すること;及び
該陽性ハイブリドーマ細胞を培養して抗体を発現させて、シグナル伝達抗体とは異なる抗原決定基を有するモノクローナル抗体を得ること
を含む、モノクローナル抗体のスクリーニング方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法により得られる、モノクローナル抗体。
【請求項31】
マトリックス材料から形成されたマトリックス;及び
培養チャンバーを画定するためにマトリックスの表面上に形成された培養チャンバー
を含む、生物学的培養チップ。
【請求項32】
前記マトリックスのマトリックス材料の平衡膨潤比が約1.25乃至1.75であり;
前記培養チャンバーは該マトリックスの表面上に構成された開口部上に形成されて該培
養チャンバーを画定する、
請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項33】
前記マトリックス材料の固液相転移温度が40乃至45℃である、請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項34】
前記マトリックス材料は37℃で液体になることができる、請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項35】
細胞増殖中に、前記マトリックスと細胞との接触域に凹が形成される、請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項36】
前記凹の深さは細胞の直径の5%以上である、請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項37】
前記マトリックス材料はコラーゲンヒドロゲル、メチルセルロース、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル及びそれらの少なくとも2つの異なる割合の混合物からなる群から選択される、請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項38】
前記マトリックスは生体適合性材料に対応するサイトカインをさらに含む、請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項39】
前記マトリックスはウシ胎児血清、プロテインA/G、コラーゲン、ゼラチン、ウシ血清アルブミン及びそれらの少なくとも2つの混合物からなる群からさらに選択される、請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項40】
前記培養チャンバーの開口部の直径が該培養チャンバーの底部の直径よりも小さい、請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項41】
マイクロウェルの開口部の直径は該マイクロウェルの底部の直径の80%以下、好ましくは50%である、請求項40に記載の生物学的培養チップ。
【請求項42】
前記マイクロウェルの開口部の直径が8乃至25μmであり、深さが15乃至35μmである、請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項43】
前記生体適合性材料はB細胞であり、開口部の直径は8乃至12μmである;又は
前記生体適合性材料はハイブリドーマ細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞又は腫瘍細胞であり、開口部の直径は15乃至25μmである、
請求項31に記載の生物学的培養チップ。
【請求項44】
前記培養チャンバーは複数のマイクロウェルで構成され、該マイクロウェルは所定のパターンを形成し、隣接する2つのマイクロウェル間の距離は10乃至100μm、好ましくは10乃至50μmである、請求項31乃至請求項43のいずれか1項に記載の生物学的培養チップ。
【請求項45】
前記マトリックス上に形成された位置決めマーカーをさらに含む、請求項44に記載の生物学的培養チップ。
【請求項46】
前記生体適合性材料はハイブリドーマ細胞であり、該ハイブリドーマ細胞の培養因子は前記マイクロウェルの内面に配置される;
前記生体適合性材料はMCF10A細胞であり、インスリンが前記マイクロウェルの内面に配置される;又は
前記生体適合材料はB細胞であり、CD40L、IL2、又はIL10の少なくとも1つ若しくは全てが前記マイクロウェルの内面に配置される、
請求項44に記載の生物学的培養チップ。
【請求項47】
基板;及び
該基板の表面上に構成されたマイクロカラムであって、該マイクロカラムは型枠に適合させる方法で前記培養チャンバーに適合される、マイクロカラム
を含む、請求項31乃至請求項46のいずれか1項に記載の生物学的培養チップを作製するためのテンプレート。
【請求項48】
前記マイクロカラムは疎水性表面を含む、請求項47に記載のテンプレート。
【請求項49】
前記マイクロカラムの表面は疎水性効果により生物学的因子を結合するのに適している、請求項47に記載のテンプレート。
【請求項50】
請求項47乃至請求項49のいずれか1項に記載のテンプレートに、マトリックス材料として液状の生体適合性材料を塗布し、該マトリックス材料を固化すること;及び
固化した生体適合性材料をテンプレートから分離して、生物学的培養チップを得ることを含む、請求項31乃至請求項46のいずれか1項に記載の生物学的培養チップの作製方法。
【請求項51】
前記テンプレートの表面上に生物学的因子又は試薬が予め吸着されている、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記培養チャンバー内に細胞を配置すること;及び
前記生物学的培養チップを、所定の条件の環境にさらすことを含む、
請求項31乃至請求項46のいずれか1項に記載の生物学的培養チップを用いた細胞培養方法。
【請求項53】
各培養チャンバー内に多くても1つの細胞を配置する、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はバイオテクノロジーの分野に関し、より詳細には、本開示の第1の態様による、標的細胞のスクリーニング方法、キット及びその使用、本開示の第2の態様による、標的細胞のスクリーニング方法、キット、抗体の作製方法、モノクローナル抗体のスクリーニング方法、モノクローナル抗体、抗体抗原複合体、及び抗体のスクリーニング方法、並びに本開示の第3の態様による、生物学的培養チップ、その作製方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
限界希釈法は一般的に使用されるクローニング法であり、培養ウェルから再クローニングする細胞株をピペッティングし、1mLの細胞を測定することにより達成される。この方法は、融合動物細胞のスクリーニングに一般的に使用される。モノクローナル抗体は、単一のB細胞をクローニングして産生される、特定のエピトープのみを標的とする、高度に均質な抗体である。モノクローナル抗体は通常ハイブリドーマ技術によって産生される。ハイブリドーマ技術は細胞融合に基づくものである。特異抗体を分泌する能力を持つ感作されたB細胞と、無制限に増殖する能力を持つ骨髄腫細胞とが融合して、B細胞ハイブリドーマになる。
【0003】
しかし、標的分子を発現できる細胞、特にモノクローナル抗体の融合細胞をスクリーニングする既存の方法は、まだ改良が必要とされる。
【0004】
抗体ペアはタンパク質定量に広く用いられる。サンドイッチELISA、化学発光、及び免疫クロマトグラフィーは、高品質の抗体ペアがなければ実施できない。抗体ペアは、1つの抗原分子と同時に結合することができる2つの抗体のセットである。抗体ペアは通常、二重抗体サンドイッチELISA実験に使用される。一般に、抗体ペアのスクリーニングは、二重抗体サンドイッチELISA法によって行われる。このスクリーニングは以下の記述に基づく。モノクローナル抗体を取得した後、そこから捕捉抗体と標識抗体(HRP酵素標識)の2種類のモノクローナル抗体を分離する。捕捉抗体を抗原捕捉プレート上に被覆する。まず、抗原を添加して培養し、非結合抗原を洗い流す。次に、標識抗体を添加して培養し、非結合標識抗体を洗い流す。最後に、発色液を加えて発色させる。発色できる条件下では、標識抗体は抗原と特異的に結合し、捕捉抗体と標識抗体とが抗体ペアを形成することを示す。発色できない条件下では、標識抗体は抗原と特異的に結合できず、洗い流されて、捕捉抗体と標識抗体とは抗体ペアを形成できないことを示す。2種類の選択されたモノクローナル抗体をペアにできない条件下では、抗体ペアが見つかるまで、再試験のために2種類のモノクローナル抗体を再選択する必要がある。
【0005】
しかし、現在の抗体ペアのスクリーニング効率は非常に低効率であり、スクリーニング費用の大幅な上昇を招いている。
【0006】
現在の生物学的及び医学的研究において、ほとんどの場合、従来の2次元(2D)接着細胞培養により、検出のために薬物の細胞学的検査を実施することが好ましい。これは、生体内での実際の組織細胞の存在状態(ECM環境下での3次元状態)とは本質的に異なる。生体内の細胞は3D微小環境で成長するが、2D培養で成長する細胞は細胞成長の自然な状態ではない。培養微小環境は、細胞の遺伝子発現やシグナル伝達に影響を与える、生体内の微小環境とは大きく異なり、培養細胞は生体内での生物学的特性や生物学的機能を徐々に失い、研究や応用の価値が失われていく。また、2D細胞培養には、細胞の不均一などの多くの重大な欠点があり、細胞分化研究や関連研究に寄与しない。さらに、2D
培養で得られた細胞は多数存在するが、これらの細胞の中から有用な細胞を選別することは難しく、試薬の無駄が生じる。
【0007】
CN108102913Aは、ソフトリソグラフィーに基づく3D細胞培養チップ、その作製方法及びその使用を開示する。ソフトリソグラフィーに基づく3D細胞培養チップの作製方法は、ソフトリソグラフィーにより規定のパターン構造を有するマスクを作製すること;液状の高分子化合物又は高分子化合物溶液で該マスクを均一に被覆して規定の厚さの液体層を形成すること;該液体層を固化し、該マスクを除去して、規定の3D構造を有するスタンプ表面を有するスタンプを得ること;該スタンプの該スタンプ表面を修飾剤と接触させて、修飾剤をスタンプ表面に離脱可能に付着させること;及び該スタンプ表面を選択基材の表面に接触させて、該選択基材から該スタンプを除去し、修飾剤の少なくとも一部を該スタンプ表面から分離して該選択基材の表面に付着させ、少なくとも単細胞を吸着できる複数のパターンからなる配列を含むパターン構造を形成して、3D細胞培養チップを得ることを含む。
【0008】
しかし、生体適合性材料の培養用の既存のチップは、単細胞の2次元配列及び3次元培養に適しているだけではなく、抗体分泌、成長因子分泌などの細胞生物学的機能の複雑な検出にも適している必要があり、まださらなる改良が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第108102913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、従来技術に存在する技術的課題の少なくとも1つを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本開示の一態様によれば、標的細胞のスクリーニング方法が提供され、該標的細胞は標的分子を分泌するのに適しており、該方法は、該標的分子を分泌するのに適した条件下、培養チャンバーで候補単細胞を培養すること、ここで、該培養チャンバーは該候補単細胞を覆うためのシグナルスクリーニング層を含み、該シグナルスクリーニング層は該標的分子を特異的に認識するためのシグナル伝達分子を含む;及び該シグナルスクリーニング層のシグナル伝達分子のシグナルに基づいて該標的分子を分泌するのに適した標的細胞を選択することを含む。この方法により、培養チャンバーには単細胞しか存在しないので、培養中に単細胞が標的分子を分泌できる条件で、標的分子をシグナル伝達分子によって特異的に捕捉することができる。これに基づいて、シグナル伝達分子を特定の範囲に凝集させて、シグナル伝達分子のシグナルを増幅することができる。そのため、シグナル伝達分子のシグナルの差に基づいて、単細胞が標的分子を発現できるかどうかを決定することができる。従来技術の限界希釈法と比較して、この方法は、迅速で、費用対効果が高く、効率的であり、ハイスループットなスクリーニングを実現することができる。
【0012】
本開示の第2の態様によれば、本開示はヒドロゲル;シグナル伝達分子;及び生物学的培養チップを含む、キットを提供する。本キットを用いることにより、上記方法を効果的に実施することができ、これにより、上記効果を得ることができる。なお、本方法について上述した特徴はキットにも適しており、詳細は本明細書では説明しない。
【0013】
本開示の別の態様によれば、上記方法によって標的細胞をスクリーニングすること;及び該標的細胞を増殖して抗体を発現させることを含む、抗体の作製方法がさらに提供され
る。したがって、モノクローナル抗体を発現できる融合細胞を効率よく得ることができる。
【0014】
本開示の別の態様によれば、生物学的培養チップ上に複数のハイブリドーマ細胞を分注すること、ここで、各培養チャンバーは多くても1つのハイブリドーマ細胞を含む;上記方法によって陽性ハイブリドーマ細胞を選択すること;該陽性ハイブリドーマ細胞を単離すること;及び該陽性ハイブリドーマ細胞を培養して抗体を発現させて、モノクローナル抗体を得ることを含む、モノクローナル抗体のスクリーニング方法がさらに提供される。上記のように、本開示の方法により、モノクローナル抗体を発現する融合細胞を効率よく得ることができ、モノクローナル抗体をさらに得ることができる。
【0015】
本開示の別の態様によれば、上記方法により得られる、モノクローナル抗体がさらに提供される。
【0016】
本開示の別の態様によれば、抗体抗原複合体がさらに提供される。抗体は上記モノクローナル抗体であり、モノクローナル抗体はシグナル伝達分子と結合している。抗原抗体複合体を用いることにより、ペア抗体を効率よく得ることができ、その内の1つは既知のモノクローナル抗体とは異なる抗原決定基を有する抗体である。
【0017】
本開示の別の態様によれば、(1)培養チャンバー内に候補細胞を配置し、候補細胞が抗体を発現するのに適した条件下、所定時間培養すること;(2)シグナル伝達抗体抗原複合体を該培養チャンバーに添加すること、ここで、該シグナル伝達抗体はシグナル伝達分子と結合しており、該シグナル伝達抗体は上記モノクローナル抗体である;及び(3)該シグナル伝達分子のシグナルに基づいて該候補細胞が標的細胞であるか否かを決定すること、ここで、該標的細胞は該モノクローナル抗体とは異なる抗原決定基を有する抗体を分泌する、を含む、抗体のスクリーニング方法がさらに提供される。
【0018】
本開示の別の態様によれば、(1)候補細胞が抗体を発現するのに適した条件下、所定の時間、候補細胞を培養チャンバーに入れ、培養チャンバー内の該候補細胞を所定時間培養すること;(2)該培養チャンバーで標的抗体抗原シグナル伝達抗体複合体を形成すること、ここで、該シグナル伝達抗体はシグナル伝達分子と結合している;及び(3)該シグナル伝達分子のシグナルに基づいて該候補細胞が標的細胞であるか否かを決定することを含む、細胞のスクリーニング方法が提供される。この方法により、スクリーニングにより抗体ペアを効率よく得ることができる。
【0019】
本開示の一実施態様によれば、
シグナル伝達抗体;
抗原;及び
生物学的培養チップ
を含む、キットが提供される。
【0020】
本開示の一実施態様によれば、
上述の方法によって標的細胞をスクリーニングすること;及び
該標的細胞を増殖して抗体を発現させて、シグナル伝達抗体とは異なる抗原決定基を有する抗体を得ること
を含む、抗体の作製方法が提供される。
【0021】
本開示の一実施態様によれば、
生物学的培養チップ上に複数のハイブリドーマ細胞を分注すること、ここで、各培養チャンバーは多くても1つのハイブリドーマ細胞を含む;
上記方法によって陽性ハイブリドーマ細胞を選択すること;
該陽性ハイブリドーマ細胞を単離すること;及び
該陽性ハイブリドーマ細胞を培養して抗体を発現させて、シグナル伝達抗体とは異なる抗原決定基を有するモノクローナル抗体を得ること
を含む、モノクローナル抗体のスクリーニング方法が提供される。
【0022】
本開示は上記方法により得られる、モノクローナル抗体をさらに提供する。モノクローナル抗体及びシグナル伝達抗体は、異なる抗原決定基に相当する。
【0023】
本開示の別の態様によれば、マトリックス材料から形成された、マトリックス、ここで、マトリックスのマトリックス材料の平衡膨潤比は約1.25乃至1.75である;及び培養チャンバーを画定するためにマトリックスの表面上に形成された培養チャンバーを含む、生物学的培養チップが提供される。
【0024】
マトリックス材料は一定の平衡膨潤比を有するので、生物学的培養チップを用いて培養された生体適合性材料の表面全体、例えば、単細胞の表面全体を、比較的均一な液体培地又はゲル培地で囲むことができる。そのため、細胞培養中に、細胞の生物学的活性をさらに向上させて、細胞生物学的機能(抗体や因子など)の実現を促進し、正確な検出を容易にすることができる。
【0025】
本開示のさらなる態様及び利点は以下の説明で提供され、その一部は以下の説明から明らかになるか又は本開示の実施から学ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の上記及び/又はさらなる態様及び利点は、以下の添付図面を参照して実施態様の以下の説明から明らかになり、理解することができる。
【
図1】
図1は本開示の一実施態様による生物学的培養チップの概略構造図である。
【
図2】
図2は本開示の別の実施態様による生物学的培養チップの概略構造図である。
【
図3】
図3は本開示の別の実施態様による生物学的培養チップの概略構造図である。
【
図4】
図4は本開示の一実施態様による生物学的培養チップを作製するためのテンプレートの概略構造図である。
【
図5】
図5は本開示の一実施態様によるモノクローナル抗体のスクリーニング方法を示す図である。
【
図6】
図6は本開示の一実施態様による抗体ペアのスクリーニング方法を示す図である。
【
図7】
図7は本開示の一実施態様による、懸濁培養とチップ培養との神経幹細胞の幹細胞性の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の実施態様を以下に詳細に説明し、実施態様の例を添付図面に示し、同一若しくは類似の要素又は同一若しくは類似の機能を有する要素は、説明全体にわたって同一又は類似の参照番号で示される。添付図面を参照して以下に説明される実施態様は例示的なものであり、本開示を説明するためにのみ使用され、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0028】
標的細胞のスクリーニング方法
本開示の一態様によれば、標的細胞のスクリーニング方法が提供され、該標的細胞は標的分子を分泌するのに適しており、該方法は、該標的分子を分泌するのに適した条件下、培養チャンバーで候補単細胞を培養すること、ここで、該培養チャンバーは該候補単細胞
を覆うためのシグナルスクリーニング層を含み、該シグナルスクリーニング層は該標的分子を特異的に認識するためのシグナル伝達分子を含む;及び該シグナルスクリーニング層のシグナル伝達分子のシグナルに基づいて該標的分子を分泌するのに適した標的細胞を選択することを含む。この方法により、培養チャンバーには単細胞しか存在しないので、培養中に単細胞が標的分子を分泌できる条件で、標的分子をシグナル伝達分子によって特異的に捕捉することができる。これに基づいて、シグナル伝達分子を特定の範囲に凝集させて、シグナル伝達分子のシグナルを増幅することができる。そのため、シグナル伝達分子のシグナルの差に基づいて、単細胞が標的分子を発現できるかどうかを決定することができる。従来技術の限界希釈法と比較して、この方法は、迅速で、費用対効果が高く、効率的であり、ハイスループットなスクリーニングを実現することができる。
【0029】
本開示の一実施態様によれば、シグナルスクリーニング層は培養チャンバーのマトリックス材料に配置される;シグナルスクリーニング層は培地に配置される;シグナルスクリーニング層は少なくとも1種の抗体又はプローブを含む;シグナルスクリーニング層はヒドロゲルから形成される;又はマトリックス材料の機械的強度はシグナルスクリーニング層の機械的強度よりも高い。そのため、単細胞から分泌された分子はシグナルスクリーニング層に入りやすくなり、それによってスクリーニング効率を高める。
【0030】
本開示の一実施態様によれば、培養チャンバーはマトリックス材料から形成されたマトリックス;及び培養チャンバーを画定するためにマトリックスの表面上に形成された培養チャンバーを含む生物学的培養チップ上に配置されている。生物学的培養チップをここでは簡単に説明し、以下で詳細に説明する。3D細胞培養チップに関する詳細な研究過程において、既存の3D培養チップを用いた細胞又は生体適合性材料の培養中に、細胞が生体内環境下で生物学的挙動及び生理学的作用を示すことは、通常困難であることが判明した。この目的のために、既存の3D培養チップのマトリックス材料は細胞培養の効果に影響を及ぼすこと、特に単細胞分泌因子(抗体を含む)の生物学的機能の実現に重大な悪影響を及ぼすことが、創造的研究を通じて判明した。さらに、既存の3D培養チップでは、細胞とマトリックスとの異なる接触位置は、著しく異なる周囲の培養環境にさらされており、異なる位置で得られる細胞の微小環境もまた、差異や不均質性を大きくすることが判明した。例えば、細胞とマトリックスとの接触位置では、細胞は細胞外マトリックスから十分な支持を受けることができない。さらに、既存の3D培養チップの多くは、ハードマトリックスを採用する。そのため、細胞培養の過程で、ハードマトリックスは培養細胞にある程度のストレスを与え、細胞の生物学的挙動に影響を及ぼす。これらの状況は単細胞の因子又は抗体分泌能及び機能検出に深刻な影響を及ぼす。
【0031】
本開示の一実施態様によれば、シグナル伝達分子は蛍光分子である。
【0032】
本開示の一実施態様によれば、蛍光分子はFITC又はAF488の少なくとも1つを含む。
【0033】
本開示の一実施態様によれば、方法は蛍光顕微鏡によって陽性細胞を位置決めすることをさらに含む。
【0034】
本開示の第2の態様によれば、本開示はヒドロゲル;シグナル伝達分子;及び生物学的培養チップを含む、キットを提供する。本キットを用いることにより、上記方法を効果的に実施することができ、これにより、上記効果を得ることができる。なお、本方法について上述した特徴はキットにも適しており、詳細は本明細書では説明しない。
【0035】
本開示の別の態様によれば、上記方法によって標的細胞をスクリーニングすること;及び該標的細胞を増殖して抗体を発現させることを含む、抗体の作製方法がさらに提供され
る。したがって、モノクローナル抗体を発現できる融合細胞を効率よく得ることができる。
【0036】
本開示の別の態様によれば、生物学的培養チップ上に複数のハイブリドーマ細胞を分注すること、ここで、各培養チャンバーは多くても1つのハイブリドーマ細胞を含む;上記方法によって陽性ハイブリドーマ細胞を選択すること;該陽性ハイブリドーマ細胞を単離すること;及び該陽性ハイブリドーマ細胞を培養して抗体を発現させて、モノクローナル抗体を得ることを含む、モノクローナル抗体のスクリーニング方法がさらに提供される。上記のように、本開示の方法により、モノクローナル抗体を発現する融合細胞を効率よく得ることができ、モノクローナル抗体をさらに得ることができる。
【0037】
本開示の別の態様によれば、上記方法により得られる、モノクローナル抗体がさらに提供される。
【0038】
本開示の別の態様によれば、抗体抗原複合体がさらに提供される。抗体は上記モノクローナル抗体であり、モノクローナル抗体はシグナル伝達分子と結合している。抗原抗体複合体を用いることにより、ペア抗体を効率よく得ることができ、その内の1つは既知のモノクローナル抗体とは異なる抗原決定基を有する抗体である。
【0039】
本開示の別の態様によれば、(1)培養チャンバー内に候補細胞を配置し、候補細胞が抗体を発現するのに適した条件下、所定時間培養すること;(2)シグナル伝達抗体抗原複合体を該培養チャンバーに添加すること、ここで、該シグナル伝達抗体はシグナル伝達分子と結合しており、該シグナル伝達抗体は上記モノクローナル抗体である;及び(3)該シグナル伝達分子のシグナルに基づいて該候補細胞が標的細胞であるか否かを決定すること、ここで、該標的細胞は該モノクローナル抗体とは異なる抗原決定基を有する抗体を分泌する、を含む、抗体のスクリーニング方法がさらに提供される。
【0040】
本開示の一実施態様によれば、従来の限界希釈法と比較して、本開示の方法は、スクリーニング効率及びスクリーニング費用の点で絶対優位を有する。モノクローナル抗体のスクリーニングを例にとってみると、全体の費用は約90%低下するのに、スクリーニング効率は少なくとも10倍上昇する。これは、総合的な審査を行わずに得られた結果に過ぎず、プロジェクトの緊急度に応じて人員や時間をより適切に配置することができる。これに基づいて、スクリーニング効率を効果的に30倍以上に高めることができると考えられる。
【0041】
したがって、標的細胞のスクリーニング方法が提供され、該標的細胞は標的分子を分泌するのに適しており、該方法は、該標的分子を分泌するのに適した条件下、培養チャンバーで候補単細胞を培養すること、ここで、該培養チャンバーは該候補単細胞を覆うためのシグナルスクリーニング層を含み、該シグナルスクリーニング層は該標的分子を特異的に認識するためのシグナル伝達分子を含む;及び該シグナルスクリーニング層のシグナル伝達分子のシグナルに基づいて該標的分子を分泌するのに適した標的細胞を選択することを含む。
【0042】
当業者は、培養チャンバーが本明細書に記載の生物学的培養チップにおける培養空間であってもよいことを理解することができる。したがって、上記生物学的培養チップの利点及び特徴は、本スクリーニング方法にも適しており、詳細は本明細書では説明しない。本開示の一実施態様によれば、シグナルスクリーニング層は、単細胞を覆うための液体培地若しくはゲル培地として使用されてもよく、又は固体の若しくは半固体のマトリックスとして使用されてもよいことが強調される。本開示の一実施態様によれば、単細胞を単離する必要性を考慮して、マトリックスよりも機械的強度が低いゲル材料を選択してもよい。
例えば、ゲル材料よりも濃度を低く調整した材料をシグナルスクリーニング層として使用する。
【0043】
シグナルスクリーニング層は少なくとも1種の標識抗体、標識タンパク質、標識ポリペプチド、又は標識プローブを含む。
【0044】
本開示の一実施態様によれば、シグナルスクリーニング層は第1のヒドロゲルから形成され、培養チャンバーは生物学的培養チップ上に設けられ、第1のヒドロゲルの濃度は第2のヒドロゲルの濃度よりも低い。
【0045】
したがって、本開示のさらに別の態様によれば、
ヒドロゲル;
シグナル伝達分子;及び
生物学的培養チップ
を含む、キットが提供される。
【0046】
本キットを使用することにより、上記の方法を効果的に実施することができる。本方法に関する特徴及び利点はキットにも適しており、詳細は本明細書では説明しない。
【0047】
さらに、本開示の別の態様によれば、
上記方法によって標的細胞をスクリーニングすること;及び
標的細胞を増殖させて抗体を発現させること
を含む、抗体のスクリーニング方法がさらに提供される。
【0048】
図5を参照すると、本開示は
生物学的培養チップ上に複数のハイブリドーマ細胞を分注して、配列を形成すること、ここで、該生物学的培養チップの各培養チャンバーは多くても1つのハイブリドーマ細胞を含む;
該ハイブリドーマ細胞の配列を含有する該生物学的培養チップを、標識した標的抗原(タンパク質又はポリペプチド)を含有する培地に入れて、抗原抗体反応を起こし、標的抗体を分泌する標識陽性ハイブリドーマ細胞を選択すること;
該陽性ハイブリドーマ細胞を単離すること;及び
該陽性ハイブリドーマ細胞を培養して抗体を発現させて、モノクローナル抗体を得ること
を含む、単細胞由来のモノクローナル抗体のスクリーニング方法をさらに提供する。
【0049】
これに基づいて、本開示の別の態様は、上記方法により得られる、単細胞からのモノクローナル抗体をさらに提供する。
【0050】
したがって、本開示の別の態様によれば、抗体抗原複合体がさらに提供され、抗体は上記のモノクローナル抗体であり、モノクローナル抗体はシグナル伝達分子と結合している。
【0051】
さらに、
図6を参照すると、本開示の別の態様は、以下の工程を含む、同じ抗原であるが異なる抗原決定基に対するペア抗体(略してペア抗体)のハイスループットスクリーニング法をさらに提供する。
(1)培養チャンバー内に候補細胞を配置し、候補細胞が抗体を発現するのに適した条件下、所定時間培養すること;
(2)シグナル伝達抗体抗原複合体を該培養チャンバーに添加すること、ここで、該シグナル伝達抗体はシグナル伝達分子と結合しており、該シグナル伝達抗体は単細胞由来の上
記モノクローナル抗体又はその誘導体であり、例えば、抗原結合フラグメント(Fab)、(Fab)
2などを含有する抗体フラグメントが、特定の抗原決定基と結合している;及び
非標識抗原を培養チャンバーに添加し、細胞が抗体を分泌する条件で、分泌された抗体と抗原とが抗体抗原複合体を形成し、該抗体抗原複合体は細胞の周囲に捕捉され、その後、シグナル伝達抗体を生物学的培養チップの培地に添加する、ここで、該シグナル伝達抗体はシグナル伝達分子と結合しており、該シグナル伝達抗体は単細胞由来の上記モノクローナル抗体又はその誘導体であり、例えば、抗原結合フラグメント(Fab)、(Fab)
2などを含有する抗体フラグメントが、特定の抗原決定基と結合している;
及び(3)該シグナル伝達分子のシグナルに基づいて該候補細胞が標的細胞であるか否かを決定すること、ここで、該標的細胞は該単細胞由来のモノクローナル抗体とは異なる抗原決定基を有する抗体を分泌する。
【0052】
抗体ペアのスクリーニング法
本開示の他の態様によれば、(1)候補細胞が抗体を発現するのに適した条件下、所定の時間、候補細胞を培養チャンバーに入れること;(2)該培養チャンバーで標的抗体抗原シグナル伝達抗体複合体を形成すること、ここで、該シグナル伝達抗体はシグナル伝達分子と結合している;及び(3)該シグナル伝達分子のシグナルに基づいて該候補細胞が標的細胞であるか否かを決定することを含む、細胞のスクリーニング方法が提供される。この方法により、スクリーニングにより抗体ペアを効率よく得ることができる。この方法により、候補細胞を単細胞培養の培養チャンバーに配置し、該単細胞から分泌される抗体は標的抗体抗原シグナル伝達抗体複合体を形成し、該抗原シグナル伝達抗体を一定の範囲に濃縮し、これにより、抗体ペアのスクリーニングを効果的に達成する。従来技術の限界希釈法と比較して、この方法は、迅速で、費用対効果が高く、効率的であり、ハイスループットなスクリーニングを実現することができる。
【0053】
本開示の一実施態様によれば、所定の時間は1乃至10時間、好ましくは2乃至5時間、より好ましくは3時間である。
【0054】
本開示の一実施態様によれば、培養チャンバーは生物学的培養チップ(以下で詳細に説明する)上に構成され、標的抗体抗原シグナル伝達抗体複合体は、該培養チャンバーに、抗原シグナル伝達抗体複合体を添加するか又は遊離抗原と遊離シグナル伝達抗体とを順次添加することにより形成される。
【0055】
本開示の一実施態様によれば、シグナル伝達分子は蛍光分子であり、好ましくは、該蛍光分子はFITC又はAF488の少なくとも1つを含む。
【0056】
本開示の一実施態様によれば、工程(3)において、方法は蛍光顕微鏡によってシグナル伝達分子のシグナルに基づいて陽性細胞を位置決めすることをさらに含む。
【0057】
本開示の一実施態様によれば、
シグナル伝達抗体;
抗原;及び
生物学的培養チップ
を含む、キットが提供される。
【0058】
本開示の一実施態様によれば、
上記方法によって標的細胞をスクリーニングすること;及び
該標的細胞を増殖して抗体を発現させて、シグナル伝達抗体とは異なる抗原決定基を有
する抗体を得ること
を含む、抗体の作製方法が提供される。
【0059】
本開示の一実施態様によれば、
生物学的培養チップ上に複数のハイブリドーマ細胞を分注すること、ここで、該生物学的培養チップの各培養チャンバーは多くても1つのハイブリドーマ細胞を含む;
上記方法によって陽性ハイブリドーマ細胞を選択すること;
該陽性ハイブリドーマ細胞を単離すること;及び
該陽性ハイブリドーマ細胞を培養して抗体を発現させて、シグナル伝達抗体とは異なる抗原決定基を有するモノクローナル抗体を得ること
を含む、モノクローナル抗体のスクリーニング方法が提供される。
【0060】
本開示の別の態様によれば、上記方法により得られる、モノクローナル抗体がさらに提供される。モノクローナル抗体及びシグナル伝達抗体は、異なる抗原決定基に相当する。
【0061】
抗体ペアのスクリーニングに使用されるシグナル伝達抗体は、以下の方法によって取得又は作製してもよい。
【0062】
当業者は、培養チャンバーが本明細書に記載の生物学的培養チップにおける培養空間であってもよいことを理解することができる。したがって、上記生物学的培養チップの利点及び特徴は、本スクリーニング方法にも適しており、詳細は本明細書では説明しない。本開示の一実施態様によれば、シグナルスクリーニング層は、単細胞を覆うための液体培地若しくはゲル培地として使用されてもよく、又は固体の若しくは半固体のマトリックスとして使用されてもよいことが強調される。本開示の一実施態様によれば、単細胞を単離する必要性を考慮して、マトリックスよりも機械的強度が低いゲル材料を選択してもよい。例えば、ゲル材料よりも濃度を低く調整した材料をシグナルスクリーニング層として使用する。
【0063】
シグナルスクリーニング層は少なくとも1種の標識抗体、標識タンパク質、標識ポリペプチド、又は標識プローブを含む。理解を容易にするために、以下に、本開示に適した生物学的培養チップを詳細に説明する。
【0064】
生物学的培養チップ
本開示の一実施態様による生物学的培養チップを、添付図面を参照して説明する。
【0065】
図1乃至
図3に示すように、本開示の一実施態様によれば、生物学的培養チップが提供される。生物学的培養チップは、マトリックス100及びマイクロウェル200を含む。マトリックス100はマトリックス材料によって形成される。マトリックスのマトリックス材料の平衡膨潤比は約1.25乃至1.75である。マイクロウェル200はマトリックス100の表面上に形成され、マイクロウェル200はマトリックス100の表面上に開口部を有する。マイクロウェル200は生体適合性材料を培養するための生物学的培養空間を画定する。
【0066】
従来技術において、チップマトリクスと細胞培地との界面適合性は低い。ハードマトリックス界面と細胞培地との不適合性は配列した細胞の3D培養微小環境の不均一性の原因となり、マトリックスと培地との界面は、2つの界面の間の液層に起因してスライドしようとし、これは細胞配列に損傷を与え、細胞生物機能の実現に影響を及ぼし、細胞検出シグナルの十分な捕捉や、分泌タンパク質の検出などの検出感度に影響を及ぼす。
【0067】
本開示のこの実施態様によれば、マトリックス材料は一定の平衡膨潤比を有するので、生物学的培養チップを用いて培養された生体適合性材料の表面全体、例えば、単細胞の表面全体を、液状の又はゲル状の細胞外マトリックス材料で囲み、生体適合性材料の培養に均一な微小環境を提供することができる。そのため、細胞培養中に、細胞の生物学的活性をさらに向上させて、細胞生物学的機能の実現を促進することができる。
【0068】
本開示のこの実施態様によれば、さらに、本開示で使用されるマトリックスは、生体適合性材料の培養中、細胞の成長に従って変形することができる。言い換えれば、例えば、ガラス、シリコンウエハー、及びプラスチックなどの従来のハードマトリックスと比較して、本開示で使用されるマトリックス材料はソフトマトリックスであるため、マトリックスと細胞との間の力及びマトリックスと細胞外マトリックス材料との間の力を低減でき、これにより、細胞とマトリックスとの界面適合性及びマトリックスと細胞外マトリックス材料との界面適合性をさらに向上させる。さらに、本開示のこの実施態様によれば、培養工程において、細胞増殖中に、マトリックスと細胞との接触域に凹が形成される。当業者は、マトリックスの表面に向かって細胞が成長して、マトリックスの変形が生じることにより、凹が形成されることを理解することができる。当業者は、顕微鏡でマトリックスの内面を観察し、凹があるか否かを判断することができる。本開示の一実施態様によれば、凹の深さは細胞の直径の5%以上、例えば、10%又は20%である。本明細書で使用される用語「凹の深さ」は、凹が形成されていない基板の界面顕微鏡写真と凹が形成された基板の界面顕微鏡写真とを比較することによって決定してもよい。本明細書における深さの値は、形成された凹に適合できる最大体積の球の直径として定義される。
【0069】
したがって、本開示のこの実施態様によれば、より良好な生体適合性、細胞培養培地適合性、及び機械的張力を有するマイクロウェル内のソフトマトリックスは、細胞(単細胞及び調節した量の複数の凝集細胞を含む)の捕捉及び培養の効率を向上させることができる。本開示のこの実施態様によれば、ソフトマトリックスは様々な細胞外マトリックス環境と適合及び融合することが容易であり、細胞に対して均一で統合された3D培養空間を提供し、生存、増殖、移動、タンパク質の発現と分泌、及び幹細胞の分化を助長する微小環境、並びに2D配列した細胞の細胞生物学的機能の検出を助長する微小環境を作り出す。さらに、マトリックスがソフトマトリックスであることを考慮すると、従来のマトリックス材料と細胞との吸着力を弱らせることなく、培養空間から単細胞を単離することも容易である。
【0070】
本開示のこの実施態様によれば、マトリックス材料の固液相転移温度は40乃至45℃である。本開示のこの実施態様によれば、マトリックス材料は37℃で液体になることができる。なお、上記の温度の値は1気圧下で測定した値である。したがって、マトリックス材料は、室温よりも適度に高い温度で容易に液体となり、さらに冷却することによって所定の形状に容易に固化することができる。マトリックス材料は上記の特性を有するので、マトリックス材料が液体状態である場合、サイトカインを不活性化することなく、簡便に添加することができる。細胞培養用の液体培地への添加中に、生物学的培養チップは培地を吸収し、これらのサイトカインを培養空間にさらに放出することができる。これに基づいて、本開示のこの実施態様によれば、マトリックスは生体適合性材料に対応するサイトカインをさらに含む。本開示のこの実施態様によれば、マトリックスはウシ胎児血清(FBS)、プロテインA/G、コラーゲン、ゼラチン、又はウシ血清アルブミン(BSA)、及びそれらの少なくとも2つの異なる割合の混合物からなる群からさらに選択される。
【0071】
本開示のこの実施態様によれば、上記の性能要件を満たすことができる限り、使用できるマトリックス材料の具体的な種類は特に限定されないことに留意されたい。より良好な生体適合性及び性能調整を考慮すると、マトリックス材料はコラーゲンヒドロゲル、メチ
ルセルロース、アガロースゲル、及びポリアクリルアミドゲル、並びにそれらの少なくとも2つの異なる割合の混合物からなる群から選択される。当業者は、これら材料の濃度を調整して、固液相転移温度など、ソフトマトリックスの所望の特性が得られることを理解することができる。
【0072】
さらに、本開示のこの実施態様によれば、単細胞の培養又は成長及び増殖用の空間を提供できる限り、マイクロウェルの構造やサイズは特に限定されない。本開示のこの実施態様によれば、マイクロウェルは、例えば、直方体、立方体、又は円柱などの構造を有していてもよい。さらに、
図2を参照すると、本開示のこの実施態様によれば、マイクロウェル200の開口部の直径は該マイクロウェル200の底部の直径よりも小さい。そのため、培養中に細胞が漏れ出ることなく、培養のために単細胞を容易に捕捉することができる。より詳細には、本開示のこの実施態様によれば、マイクロウェルの開口部の直径は該マイクロウェルの底部の直径の80%以下、好ましくは50%である。本明細書で使用される用語「直径」は、開口部又は底部に適合できる最大面積の円の直径として定義される。本明細書で使用されるマイクロウェルの「深さ」という用語は、マイクロウェルの開口部の断面と該マイクロウェルの底部の断面との最短距離をいう。本開示のこの実施態様によれば、マイクロウェル200の開口部の直径は8乃至25μmであり、深さは15乃至35μmである。また、細胞ごとに異なる開口径を設定してもよいことがわかる。例えば、本開示のこの実施態様によれば、生体適合性材料はB細胞であり、開口部の直径は8乃至12μmである;又は生体適合性材料はハイブリドーマ細胞又は腫瘍細胞であり、開口部の直径は15乃至25μmである。
【0073】
さらに、本開示のこの実施態様によれば、生物学的培養チップは複数のマイクロウェルを含んでいてもよく、マイクロウェルは所定のパターンを形成し、隣接する2つのマイクロウェル間の距離は10乃至100μmである。そのため、複数の単細胞をバッチで培養することができる。本開示のこの実施態様によれば、マイクロウェル間の距離が10乃至100μmである場合、マイクロウェルで培養された細胞は互いに干渉しない。そのため、バッチでの培養の均一性を向上させることができ、細胞生物学的機能の検出の精度と効率とを高めることができ、細胞シグナルデータのハイスループット収集と分析とを容易にする。本開示のこの実施態様によれば、
図3を参照すると、生物学的培養チップ上のマイクロウェルは配列を形成していてもよい。例えば、チップ上に数万又は数十万以上のマイクロウェルの配列が存在する。
【0074】
本開示のこの実施態様によれば、生物学的培養チップはマトリックス上に形成された位置決めマーカーをさらに備えてもよい。したがって、これらの位置決めマーカーを介して、複数のマイクロウェルを位置決めすることができる。位置決めマーカーの形状は特に限定されない。本開示のこの実施態様によれば、蛍光物質の位置決めマーカーを設けて、顕微鏡下で自動的かつ正確な位置決めを行ってもよいし、又は座標線を設けてマイクロウェルごとに位置決めしてもよい。陽性細胞を観察した場合、各陽性マイクロウェルを迅速に位置決めして記録することができ、これにより、マイクロウェルの陽性細胞又は他の成分のその後の単離をさらに容易にする。
【0075】
さらに、本開示のこの実施態様によれば、生体適合性材料の培養に有用な試薬又は生物学的因子を、マイクロウェルの内面にさらに配置してもよい。本開示のこの実施態様によれば、生体適合性材料はハイブリドーマ細胞であり、該ハイブリドーマ細胞の培養因子はマイクロウェルの内面に配置される;生体適合性材料はMCF10A細胞であり、インスリンがマイクロウェルの内面に配置される;又は生体適合材料はB細胞であり、CD40L、IL2、若しくはIL10の少なくとも1つがマイクロウェルの内面に配置される又はそれらの少なくとも2つの異なる割合の混合物が配置される。
【0076】
本開示のこの実施態様によれば、細胞捕獲、フラックス制御細胞配列の形成、チップ材料の細胞適合性、チップ材料と細胞培地との適合性、配列した細胞の生物学的機能の実現と正確な検出などを含む、体外での細胞の2D配列及び3D培養における一連の問題を解決することができる、固化したヒドロゲルなどのソフトマトリックスを有する生物学的培養チップ(細胞配列チップとも呼ばれる)が提供される。様々な直径及び深さのマイクロウェルを有する配列を、ゲルソフトマトリックスを有するチップに設けて、様々なニーズを満たすことができる。マイクロウェルの機械的強度は、ゲルソフトマトリックスの濃度によって決定することができる。様々な細胞種類や生物学的機能の様々な検出目的に応じて機械的強度を調整し、マイクロウェルの最適な機械的強度を得る。さらに、マイクロウェルの直径及び深さは、様々な細胞の単細胞配列又はマイクロウェルで調節した量の多細胞の凝集を容易にするために調整可能である。マイクロウェル間の距離を調整して、チップ上の細胞配列の密度や単位面積当たりのチップ上の細胞配列のフラックスを決定することができる。ゲルソフトマトリックスは細胞外マトリックスと同様の特性を提供できる。ゲルソフトマトリックスは、良好な細胞適合性を有し、細胞に水、栄養、及び柔軟な空間を提供し、それによって、ハードマトリックスを有するチップで培養された様々な細胞に応じて調整できない不適切な機械的強度を避け、またハードマトリックスを有するチップに通常必要とされる化学修飾による化学分子の残留を避ける。ゲルソフトマトリックスは、細胞培地又は3D培養ヒドロゲル生体適合性材料との優れた適合性を有し、これは配列細胞の周囲に均一な微小環境を確保し、細胞機能の検出の完全性や精度を保証する。
【0077】
生物学的培養チップの作製
本開示の別の態様によれば、上記の生物学的培養チップを作製するためのテンプレートが提供される。
図4を参照すると、本開示の一実施態様によれば、テンプレートは基板300;及び基板300の表面上に構成された、マイクロカラム400であって、該マイクロカラム400は型枠に適合させる方法でマイクロウェル200に適合される、マイクロカラムを含む。本開示のこの実施態様によれば、マトリックス材料をテンプレート上で固化させるので、上記の生物学的培養チップを効率よく作製することができる。
【0078】
本開示のこの実施態様によれば、マイクロカラムは疎水性表面を有する。そのため、形成された生物学的培養チップをテンプレートから効果的に剥離することができる。さらに、本開示のこの実施態様によれば、マイクロカラムの表面は疎水性効果により生物学的因子を結合するのに適している。その後、マトリックス材料を適用することにより、生物学的因子を、マイクロウェルの内面に結合する生物学的因子として、マトリックス材料に移すことができる。上述のように、様々な培養対象や目的に従って、様々な生物学的因子を提供することができる。
【0079】
本開示の別の態様によれば、(1)上記テンプレートに、マトリックス材料として液状の生体適合性材料を塗布し、該マトリックス材料を固化すること;及び(2)固化した生体適合性材料をテンプレートから分離して、生物学的培養チップを得ることを含む、上記の生物学的培養チップの作製方法が提供される。この方法により、上記の生物学的培養チップを効率よく作製できる。本開示のこの実施態様によれば、テンプレートの表面上に生物学的因子又は試薬が予め吸着されている。
【0080】
より詳細には、本開示のこの実施態様によれば、上記の生物学的培養チップの作製方法は以下の工程を含む。
工程1.テンプレートを修飾する。生物学的培養微小環境で必要とされるサイトカイン及びその他の物質を、疎水性効果によりテンプレートに結合させる。具体的には、修飾に使用される材料を、1μg/mLの濃度の変性溶液(PBS溶媒を含む)に調合する;テンプレートを変性溶液に浸して、室温で4時間反応させる;取り出した後、テンプレートを
新たなPBS及び脱イオン水で3回続けてすすぎ、窒素ガスでブロー乾燥し、乾燥場所に保存して使用する。
工程2.溶融マトリックス材料、例えば、ゲルマトリックスを、カラム配列を有するテンプレート上に置いて、テンプレートを覆い、マトリックス材料、例えば、ゲルマトリックスを、冷却固化した後、テンプレートを除去して、一定の厚さと硬さとを有する、マイクロウェル配列を有するソフトマトリックスベースのチップを形成する。具体的には、濃度が0.6%乃至1.2%であるアガロースゲル液体をテンプレートに流し込んで、室温で5分間放置し;液体を固化した後、テンプレートを除去して、生物学的培養チップを形成する。チップの各マイクロウェルは微小環境に必要な因子又は治療薬を含む。
【0081】
生物学的培養チップを用いた培養方法
本開示の別の態様によれば、マイクロウェル内に細胞を配置すること;及び生物学的培養チップを、所定の条件の環境にさらすことを含む、上記の生物学的培養チップを用いた細胞の培養方法が提供される。この方法を使用することにより、均一な細胞外マトリックスのような微小環境を培養細胞に提供することができ、これにより、細胞の生存率を効果的に維持し、細胞培養の効率を高めることができる。本開示のこの実施形態によれば、各マイクロウェル内に多くても1つの細胞を配置する。
【0082】
本開示のこの実施態様によれば、チップのソフトマトリックスと細胞培地とは良好な適合性があり、ハイスループットな配列細胞の3D培養に均一で適切な微小環境を提供するのに役立ち、配列した細胞の生物学的機能を実現するのに役立ち、細胞の生化学反応シグナル(例えば分泌タンパク質シグナルなど)の十分な捕捉と正確な分析に役立つ。
【0083】
さらに、本開示のこの実施態様によれば、ソフトマトリックスを有するチップは、細胞とチップとの間の細胞外マトリックスのような界面効果をより良好に生じさせることができ、3D培養細胞は生体内での生活環境により近い環境で成長し、細胞の生存や生物学的機能の実現に寄与する。
【0084】
本開示のこの実施態様によれば、ソフトマトリックスを有するチップの細胞配列は、チップの化学修飾の代わりに、細胞の重力と、細胞を誘引して安定化させるためにマイクロウェルに添加した細胞外マトリックスなどの生体適合性材料とに依存して形成される。
【0085】
本開示のこの実施態様によれば、ソフトマトリックスを有するチップは、ガラス針を用いて顕微鏡下で陽性細胞(単細胞又は多細胞スフェロイド)を採取するのに役立つ。しかし、ハードマトリックス界面はガラス針又は細胞に損傷を与えやすいので、ガラス針を用いて顕微鏡下でハードマトリックスを有するチップから細胞を採取することは難しい。
【実施例】
【0086】
実施例1 チップの作製
1.1 ソフトマトリックスを有するチップの作製
図4に示したカラム配列を有するテンプレートを選択し、細胞の種類の違いにより、以下の2種類に分類した。
A.高さ35μm、断面直径20μmのマイクロカラムを有し、隣接するマイクロカラム間の距離が30μmである、一般細胞(一般に直径15乃至20μm)に適したテンプレート;及び
B.高さ20μm、断面直径10μmのマイクロカラムを有し、隣接するマイクロカラム間の距離が30μmである小細胞(一般に直径8乃至10μm)に適したテンプレート。
【0087】
メチルセルロース又は低融点アガロースを含む変性溶液を、溶媒としてPBSを用いて調製した。
【0088】
室温で4時間、テンプレートを変性溶液に浸した後、取り出し、テンプレートを新たなPBS及び脱イオン水で3回続けてすすぎ、窒素ガスでブロー乾燥し、乾燥場所に保存して使用した。したがって、チップを作製するために使用したテンプレートを修飾して、微小環境で必要とされるサイトカイン及びその他の物質は、疎水性効果によりテンプレートと結合する。
【0089】
溶融ヒドロゲルマトリックスを修飾したテンプレート(カラム配列を有する)上に置いて、テンプレートを覆った。ヒドロゲルマトリックスを冷却固化した後、テンプレートを除去して、厚さが約300乃至500μmである、マイクロウェル配列を有するソフトマトリックスベースのチップを形成した。具体的には、濃度が0.6%乃至1.2%(膨潤比が約1.25乃至1.75)であるアガロースゲル液体をテンプレートに流し込んで、室温で5分間放置し;液体を固化した後、テンプレートを除去して、生物学的培養チップを形成した。チップの各マイクロウェルには、微小環境に必要な因子又は治療薬が含まれていた。
以下の表はソフトマトリックスを有するチップの組成を示す。
【0090】
【0091】
1.2 ハードマトリックスを有するチップの作製
CN108102913A「ソフトリソグラフィーに基づく3D細胞培養チップ、その作製方法及びその応用」に記載された方法により、ハードマトリックス材料ガラス及びシリコンウエハーをそれぞれ用いて、ハードマトリックスを有するチップ1とハードマトリックスを有するチップ2とを作製したが、詳細は本明細書に記載しない。
【0092】
実施例2 細胞培養におけるソフトマトリックスを有するチップとハードマトリックスを有するチップとの比較
2.1 配列形成効率の比較
以下の手順に従って、マウスハイブリドーマ細胞、ヒト腫瘍細胞(MCF7)、ヒト臍帯間葉系幹細胞、及びマウスB細胞を、ソフトマトリックスを有するチップ1、2、及び3を用いて培養し、また、上記細胞を、ハードマトリックス(ガラス基板)を有するチッ
プ1を用いて並行して培養した。これらの細胞を、従来の細胞培養方法(具体的にはCellular and Molecular Biology Experiment Guideを参照)で15分間培養し、配列効率を決定した。配列効率の決定は、以下のとおりであった。
単位面積(1mm×1mm)あたりの単細胞の量を観察して計数し、チャンバーの総量で割ることで、単細胞配列の取得効率を得た。
各チャンバーに細胞を1つだけ収容できるようにするために、チップの仕様を調整して、チップの空間を限定した。また、調整不能な要因によって生じたごく微量の二重細胞は、顕微鏡を用いて容易に識別し、統計範囲から除外した。
上記の決定結果は以下のとおりである。
【0093】
【0094】
※単細胞培養をチップ(20μm/30μm、10μm/30μm)で培養した。最初の数字はチャンバーの直径を表し、2番目の数字は隣接するチャンバー間の距離を表す。上記表において、10μm/30μm仕様のチップを使用して培養したマウスB細胞を除き、他の種類の細胞は20μm/30μm仕様のチップを使用して培養した。
【0095】
上記のデータから、ハードマトリクスを有するチップの配列効率は約32乃至50%であることがわかり、ハードマトリクスを有するチップは細胞配列の形成に寄与していないことを示している。ソフトマトリックスを有するチップの配列効率は非常に高く、約91乃至98%であり、ソフトマトリックスを有するチップは細胞配列の形成に非常に効果的であることを示している。
【0096】
本発明者は、上記の違いは主に、チップのハードマトリックス、例えばガラス又はシリコンウエハーなど、に起因すると考えている。ハードマトリックスの材料には空隙や透水性がないので、小さなチャンバー中のガスを完全に排出することができない。結果的に、その後に接種された細胞は、重力沈降により適切な位置を占めることができない。しかし、チップのソフトマトリックス、例えばヒドロゲル又は他の生体適合性材料には一定の細孔径と透水性があるので、細胞を接種すると、培地がチップの周囲から浸透して、小さなチャンバーからガスを完全に排出することができ、細胞沈降を促して、配列を形成する。上記のことに基づいて、同量のチャンバーを有する、ハードマトリックスを有するチップとソフトマトリックスを有するチップとは、細胞配列を効率的に形成するのに用いられるチャンバーの割合に大きな差がある。そのため、細胞スクリーニングにおけるハードマトリックスを有するチップの効率は、ソフトマトリックスを有するチップの効率よりもはる
かに低くなる。
【0097】
2.2 チップ上の細胞生存率の比較
2.1の方法によって、ハードマトリックスを有するチップとソフトマトリックスを有するチップとをそれぞれ用いて細胞を培養し、以下の方法に従って細胞生存率を検出した。チップ上の細胞生存率は、live/deadアッセイ(Thermo,L34951)によって判定した。死細胞は赤色蛍光を示し、生細胞は緑色蛍光を示す。
結果は以下のとおりである。
【0098】
【0099】
上記のデータから、ハードマトリックスを有するチップは、細胞の培養と生存とに寄与せず、細胞のアポトーシスと壊死とを容易に引き起こし、細胞の増殖に有用でないことがわかる。この主な理由は、ハードマトリックス材料には物理的な弾力性がなく、細胞の3D培養に必要な、均一な細胞外マトリックスのような微小環境(生体内の生活空間と同様の特性を有する)を全方向に提供することができず、細胞の生存、増殖、老化、及びアポトーシスの経路が変化し、細胞の老化、アポトーシス、又は壊死につながる。しかし、ソフトマトリックスはより良好な可塑性を有し、十分な水及び支持空間を有し、細胞の生存空間の要求の変化に合わせて調整でき、また、3D細胞培養用のECM培地と適合及び融合して、細胞に均一かつ適切な微小環境を提供することができ、これにより、細胞の生存と生物学的機能(例えば因子や抗体分泌など)の実現を助ける。また、ソフトマトリックスを有するチップの作製中に、様々な細胞の培養に必要な様々な因子又は材料を適切に添加して、細胞の培養及び生存のための微小環境を構築することができ、細胞の生存や増殖を大幅に改善する。しかし、ハードマトリックス材料がこれを実現することは困難である。通常、様々な因子又は材料を培地に添加したり、ハードマトリックス材料の表面を化学修飾したりするので、細胞の周囲に因子又は材料を十分に分散させることが困難であったり、残留した化学物質が細胞に対して毒性を持つことがある。
【0100】
2.2 チップ上の単細胞の採取力の比較
単細胞チップは、一般に、特別な意義を有する単細胞情報を取得して分析するために使用される。したがって、その後の操作のために、標的細胞を単離する必要がある。これに基づいて、本発明者は、キャピラリ針を用いて、ソフトマトリックスを有するチップ及びハードマトリックスを有するチップそれぞれの単細胞を採取することを試みた。
比較結果は以下のとおりである。
【0101】
【0102】
本発明者は、ハードマトリックスを有するチップの単細胞を採取する成功率が低い理由
は、主に、全ての細胞が何ら制約なく懸濁培養されているので、針を用いて標的細胞を採取する際、標的細胞の近くにある非標的細胞が採取されやすく;さらに、針を標的細胞に近づけた際、標的細胞はほんのわずかな力(液体中の針の移動により生じる力)の影響を受けて、チップから離れたり押しのけられたりする可能性があり、採取の失敗につながると考える。しかし、チップのソフトマトリックスの材料はヒドロゲルであり、細胞との適度な接着効果を生じやすく、細胞を完全に懸濁培養しないため、ハードマトリックスに起因する問題を解決し、採取の成功率を高める。
【0103】
さらに、汚染、変形、又は他の問題がある場合、効率を上げるために、消耗品である針を、細胞接種中にいつでも交換できる。しかし、不適切な操作による針の破損又は他の問題は、採取効率に大きく影響する。これは針の交換や正確な位置調整に時間がかかるためである。ハードマトリックスには弾力性がない。顕微鏡下での操作中に、針とチップとの間の距離を非常に近づけるか、チップの表面に触れることさえして、採取を成功させるために弱い吸引力を標的細胞に可能な限り解放できるようにする必要がある。しかし、手動又は半自動の操作を毎回正確に完了することは難しいので、チップに触れたとき、針が変形又は破損することは一般的である。良好な物理的な弾力性のため、ソフトマトリックスは針の過剰な接触に対する耐性が高く、オペレーターは時間内に検出及び調整することができる。
【0104】
実施例3 モノクローナル抗体のスクリーニング
この実施例では、新規コロナウイルスS1タンパク質に対する単細胞由来のモノクローナル抗体をスクリーニングするために、実施例1の方法によってソフトマトリックスを有するチップを作製した。
3.1 マウスの免疫
Shanghai Silaike Experiment Animal Co.,Ltd.から購入した、5週齢のBALB/c雌マウスを使用した。マウスを1週間、動物飼育室で飼育して、環境に順応させた。その後、免疫のために6週齢のマウスを準備した。Novoprotein Technology Co., Ltd.から購入した、新型コロナウイルスS1タンパク質をPBSに溶解し、免疫前に濃度を1mg/mLに調整した。注射前に、注射器を用いて混合して、抗原を乳化した。
具体的な免疫スケジュール及び条件は以下のとおりである。
【0105】
【0106】
2回目及び3回目の免疫操作後、マウスの眼窩から採血し、血清中の抗体価を測定した。抗原に対するマウスの免疫応答が最適な状態に達するまで、抗体力価に応じて3回目又は追加の免疫操作の抗原投与量を調整した。
【0107】
3.2 細胞融合
追加の免疫操作から3日後の血清中の力価の結果に従って、その後の融合のために最も力価の高いマウスを選択した。融合前に、マウスの血液をすべて採取し、使用する血清を得た。
【0108】
SP2/0細胞を予め準備した(3乃至5日、予め解凍)。50mLのブランク1640培地及び500mLの滅菌水を、翌日の融合のために予め一晩、培養器で予熱した。融合に使用したPEGを脾摘前に培養器で予熱した。
【0109】
免疫したマウスを頸椎脱臼し、滅菌のために、3乃至5分間、75%エタノールに浸した。脾摘をバイオセーフティキャビネットで行った。滅菌したマウスを取り出し、放置してエタノールを切り、その後、腹部を上にしてペーパータオルの上に置いた。はさみを使用して左上腹部に小さな切り込み(1cm)を入れ、ピンセットを使用して脾臓(肝左葉の後下側)を摘出した。摘出中、脾臓に穴を開けたり、余分な結合組織を除去したりしないように注意する。
【0110】
摘出した脾臓を40μmの篩に入れ、次いでその篩を、ブランク1640培地を満たした50mL遠心分離管に入れた。脾臓の粉砕中に、培地が溢れないようにするために、液体を入れ過ぎないように注意する。粉砕中に、脾臓を培地に完全にさらす必要がある。粉砕による脾細胞の単離を容易にするために、粉砕前に注射針を使用して脾臓に小さな穴を開けるか、又ははさみを使用して脾臓にいくつかの小さな切り込みを入れた。脾臓を粉砕して、脾臓内容物を篩に完全に通し、残りの結合組織などを捨てた。粉砕した脾臓を、室温、1300rpm、8分間の遠心分離を2回して、脾臓胞を採取した。上清を除去した後、10mLのPBSを添加して、脾細胞を再懸濁した。30mLの赤血球溶解緩衝液を添加して、4℃で15分間溶解し、溶解時に2回均一に混合した。得られた混合物を、室温、1300rpm、8分間遠心分離して、脾細胞を採取した。脾細胞をPBSで再懸濁して、溶解緩衝液が完全に除去されるまで、2回遠心分離した。
【0111】
脾細胞と腫瘍細胞とを別々に数えた。脾細胞と腫瘍細胞との比率を5:1に調整した。脾細胞と腫瘍細胞とを上記の比率で50mLの遠心分離管に混合し、室温、1300rpm、8分間遠心分離して、混合細胞を採取した。上清を完全に除去した(残留の上清は融合効率に影響するため)。遠心分離管の底を手で軽くたたくか、又はバイオセーフティキャビネットのメッシュ通気メッシュプレート上で遠心分離管を前後に動かして、沈殿した細胞を分散させ、最終的に細胞ホモジネートを得た。細胞融合を、37℃の水浴で37℃に予熱したPEGを用いて行い、ブランク1640培地で終了させた。融合の具体的な手順は以下のとおりである。
【0112】
ピペットの出口先端をできるだけ細胞に近づけて、ピペットを使用して管壁に沿ってPEGを1分以内に1mL滴下した。PEGを滴下する間、遠心分離管を回転させて、わずかに振盪し、細胞ホモジネートが完全かつ均等にPEGにさらされるようした。
細胞ホモジネートを室温で1分間静置した。
予熱したブランク1640培地を、1分以内に1mL滴下した。培地を滴下する間、遠心分離管を回転させて、わずかに振盪し、細胞が完全かつ均等に培地にさらされるようした。
予熱したブランク1640培地を、1分以内に2mL滴下した。培地を滴下する間、遠心分離管を回転させて、わずかに振盪し、細胞が完全かつ均等に培地にさらされるようした。
予熱したブランク1640培地を、1分以内に5mL滴下した。培地を滴下する間、遠心分離管を回転させて、わずかに振盪し、細胞が完全かつ均等に培地にさらされるようした。
予熱したブランク1640培地を、約21mL滴下した。培地を滴下する間、遠心分離管を回転させて、わずかに振盪し、細胞が完全かつ均等に培地にさらされるようした。融合が完了した後、得られた混合物を、室温、1300rpmで、8分間遠心分離をして、融合細胞を採取した。
【0113】
融合細胞を、1×106脾細胞/mLの量を添加した完全培地(20% FBS、1%
P/S、1×HAT、1×ハイブリドーマ成長因子(HGF))で(穏やかにパージしながら)再懸濁した。再懸濁した細胞を培養皿に接種して、3乃至5日間培養し、その間に培地を1回交換した。
【0114】
3.3 チップの作製
テンプレートを準備して、(ハイブリドーマ細胞の生存及び増殖に有益な変性溶液としてHGF含有PBS溶液を使用して)HGF層で修飾した。(無菌操作によって)チップを作製するための、約500μLのゲルを取り出し、テンプレート(スタンプと呼ばれることもある)の中央に滴下し、(過度の乾燥を効果的に防止するために)室温で10分間静置した。ゲルが固化した後、テンプレートとチップとを互いにそっと分離した。その際、変位を避けるようにしないと、構造の完全性を損なう。作製したチップを、使用するために直径10cmの培養皿に保存した。
【0115】
4.4 細胞配列の形成
4.3で得られた融合細胞を収集し、PBS又は培地で1乃至2回洗浄して、余分な培養成分(培養上清の抗体は検出のバックグラウンドを高くする原因となる)を除去した。細胞の濃度を8×105乃至1×106/mLに調整することが奨励される。細胞懸濁液をチップの表面に約500μL/チップで滴下した。チップを培養器に入れて、10分間静置した。余分な細胞懸濁液を、ピペットを使用して回収し、その後、約300乃至500μLの培地を取り出して、上から約30乃至45°傾けたチップに滴下し、(チップから培地が流出しないように)余分な細胞を洗い流し、その後、余分な培地を、真空ポンプを使用して取り除いた。細胞配列の形成を顕微鏡で観察し、その後の操作を進めるかどうかを決定した。
【0116】
4.5 抗原標識と陽性ハイブリドーマ細胞のスクリーニング
サーモ社のタンパク質標識キット(A30006)を使用し、基本的な操作手順は説明書に従った。
つまり、細胞配列の形成を待ってから10分以内に、冷凍容器を取り出し、標識抗原と自作の3D培養ヒドロゲルを使用するために冷凍容器に並べた。50μLの完全培地を1.5mLの滅菌した遠心分離管に加え、使用するために冷凍容器に入れた。細胞配列を形成した後、50μLのヒドロゲルを各遠心分離管に加えて、均一に混合した。70乃至80μLのよく混合されたヒドロゲルを取り出し、チップの片隅から滴下して加えた。その間、チップをそっと振盪して、ヒドロゲルが構造物を完全に覆うようにした。次にチップを培養器に入れて5分間静置し、その間、チップを水平に保った。チップを、注射針及びピンセットを使用して直径3.5cmの培養皿に移し、培養器に入れ、それから、スクリーニング溶液(蛍光標識抗原:完全培地=1:(200乃至1000)の比率で2mLの体積)を添加した。チップを少なくとも3時間静置した。
【0117】
4.6 単細胞選抜
3乃至5時間スクリーニングした後、まず蛍光顕微鏡でシグナルの状態を観察し、陽性
シグナルが現れて要件を満たす割合になるまで観察した後、細胞を選抜する準備をした。
【0118】
4.7 モノクローナル培養と同定
陽性シグナルを有する細胞を選抜し、96-ウェルプレートに放し、次いで、1乃至2時間以内に顕微鏡検査を行って、各ウェル中に単細胞が存在するかどうかを判断した。7乃至14日間培養した後、各ウエルで安定に増殖している細胞の上清をELISAで試験し、細胞が抗原特異抗体を分泌しているかどうか、すなわち、細胞が陽性クローンであるかどうかを判断した。陽性クローンを継続的に培養して増殖させ、凍結保存前に抗体の分泌を再度同定した。
【0119】
4.8 スクリーニング結果
スクリーニングにより、特異抗体を分泌できる15の細胞株が得られ、その中には14のモノクローナル細胞株が含まれていた。得られたすべてのクローンは、異なるマウス又は同じマウスの異なるハイブリドーマ細胞に由来し、クローンの多様性を十分に確保することができる。
従来の方法(限界希釈法)と比較して、本開示の方法は非常に大きな利点を有しており、具体的には以下のとおりである。
【0120】
【0121】
したがって、従来の限界希釈法と比較して、本開示の方法は、スクリーニング効率及びスクリーニング費用の点で絶対優位を有し、全体の費用は約90%低下するのに、スクリーニング効率は少なくとも10倍上昇する。これは、総合的な審査を行わずに得られた結果に過ぎず、プロジェクトの緊急度に応じて人員や時間をより適切に配置することができる。これに基づいて、スクリーニング効率を効果的に30倍以上に高めることができると考えられる。
【0122】
実施例5:ペア抗体のスクリーニング
5.1 標識抗体の取得と蛍光標識
高抗体価を有するモノクローナル細胞株を、実施例4におけるスクリーニング結果に従って選択した。腹水を以下の手順で発現させた。
(i)各群に8乃至10週齢の雌B/Cマウスを2匹用意した。感作のために、フロイント不完全アジュバントを500μL/マウスでマウスに腹腔内注射した。5×105個の細胞を腹腔内に接種した。
注:注入された細胞が少ないと、腹水産生は遅くなるが、力価は高くなる;注入するハイブリドーマ細胞は抗体価を検出する必要がある。接種前に、マウスごとに約0.2乃至1mLの無血清培地で、細胞を2乃至3回洗浄する必要がある。
【0123】
(ii)接種後2日目にマウスの腹水及び生存を詳細に観察した。約7日後、マウスは活
動的であり、腹部に明らかな濁音界の変動がある場合、腹水を2回排出してもよい;マウスが不活発であることが判明したら、マウスを屠殺し、腹水を排出しなければならない。
【0124】
生体からの腹水の排出:注射針を注入する位置(腹部正中線の右側付近)を、アルコールをしませた綿球で拭き、空気が残っている注射器を挿入し、その後プランジャーをゆっくりと引き抜くと、腹部に生じた圧力により腹水がゆっくりと流れ出る。針の挿入中、閉塞を感じなくなるまで、注射器をわずかに持ち上げてもよい。
【0125】
屠殺後の腹水の排出:はさみ及びピンセットを使用して腹部の外皮に小さな切り込みをそっと入れ、止血鉗子2本を使用して外皮の両側をそっと引き離して、腹腔を露出させ、別のはさみ及び別のピンセットを使用して真皮を小さな範囲で切り取り、ピペット又はガラス直管を使用して腹水を排出する。
通常は、各マウスから1回につき2乃至3mLの腹水を採取することができる。マウスの状態が良好であれば、1日おきに腹水を採取することができる。抗体の濃度は0.5乃至5mg/mLであった。
【0126】
(iii)腹水を15mLの遠心分離管に集め、800rpmで30分間(又は2000rpmで5分間)遠心分離して、細胞及び脂肪を除去した。採取したばかりの腹水は、脂肪、マクロファージ、ハイブリドーマ細胞、腹腔内の上皮細胞、血液の細胞成分、特に細胞成分などの不純物を多量に含む。これらを除去しない状態では、腹水中に長時間存在する細胞成分がゆっくりと破裂して、タンパク質が腹水中に放出され、腹水中の不純物を増加させて、精製が困難になることがある。したがって、採取した腹水は、長期保存用であれ即時精製用であれ、まず遠心分離して、細胞成分及び脂肪(脂肪は密度が低く、一般に腹水面に浮いているため、ピペットを使用して吸い出すことができる)を除去する必要がある。
抗体の精製及び蛍光標識抗体の作製は、サーモ社のキット(89953 A30006)の説明書に従って、具体的な操作手順で行った。
【0127】
5.2:ペア抗体のスクリーニング
具体的な手順は実施例4に記載したものと同じであるが、蛍光標識抗体を抗原-蛍光標識した一次抗体複合体に2:1の比率で置き換えた。
この手順において、実施例4に記載したものと同様の具体的な手順を有する以下のような別の方法も、同様のスクリーニング目的及び効果を達成することができる。抗原を含有する3D培地を、2D配列したハイブリドーマ細胞を含有するチップに添加して、2時間培養し、抗原をハイブリドーマ細胞によって分泌された抗体に完全に結合させ、それから3D液体培地を除去し、蛍光標識した一次抗体を含有する3D培地を添加して、2乃至3時間培養した。
【0128】
5.4 スクリーニング結果
実施例4で得られた新規コロナウイルスS1タンパク質に対する抗体の2つ高力価クローン、すなわちS1-6S及びRBD-10Sそれぞれを一次抗体として選択した。
上記のスクリーニング後、結果は以下のとおりである。
【0129】
【0130】
S1タンパク質に対する抗体ペアは4組、RBDタンパク質に対する抗体ペアは3組あった。ペアになった抗体は、異なるマウス又は同じマウスの異なるハイブリドーマ細胞に由来し、抗体ペアの多様性を確保することができる。
【0131】
実施例6:ソフトマトリックスを有するチップを用いた、特定因子を分泌する単細胞のスクリーニング
実施例4及び5を参照して、VEGFAを安定的に発現するCHO細胞を、スクリーニングにより得た。具体的には、チップ作製、単細胞の2D配列、単細胞の抗原抗体反応、陽性単細胞の同定及び採取などは、実施例4又は5に記載されたものと同様であった。相違点は、本実施例では、免疫蛍光のための蛍光標識抗原を、VEGFA分泌のための蛍光標識特異抗体に置き換えたことである。スクリーニングの結果は以下の通りである。
【0132】
【0133】
異なる供給源に由来する2つのVEGFA抗体を試験に使用した。薬物選択後、58個及び49個の(因子を分泌できる)陽性細胞を別々に採取した。その後の培養及び検証により、VEGFAを安定に発現及び分泌できる、52個及び42個のCHO細胞株を、それぞれ89.6%及び85.7%の陽性率で得た。安定に導入されたCHO細胞株の従来のスクリーニング及び単離は、今もなお、上記のように限界希釈法によって行われている。我々の技術は、時間、材料及び人件費の点で大きな利点を示す。
【0134】
さらに、実施例4及び5をして、その他の因子を分泌できる単細胞もスクリーニングにより得た。分泌タンパク質を発現できる様々な細胞には、HEK293、CHO、Hela、MCF10A、HFFなどが含まれる。因子には、細胞外に分泌される様々な増殖因子やサイトカイン、例えば、VEGF、SDF-1a、PEDF、及びFGFなどが含まれる。細胞から分泌されるタンパク質に特異的に結合する標識タンパク質には、分泌タンパク質及び受容体結合ドメインに特異的な抗体が含まれる。詳細は本明細書では説明しない。
【0135】
実施例7:マウス神経幹細胞の球形成
神経幹細胞は神経系に存在する細胞集団であり、ニューロン、星状膠細胞、及び乏突起膠細胞に分化して多数の脳細胞を生み出す多能性を有し、自己複製して多数の細胞を脳組織に提供する。したがって、神経幹細胞を体外でより上手く培養する方法は、科学研究の
基礎及び土台である。
【0136】
(1)胎児マウスの神経幹細胞の抽出。
娠期間14日のC57BL/6マウスを頸椎脱臼させて、75%のエタノールに浸し、腹部を切開し、一連の胎児マウス(臍帯を切断)を取り出し、予冷したPBSを含有する培養皿に入れた。ピンセットを使用して胎盤を胎児マウスから剥がし、胎児マウスを予冷したPBSを含有する新しい培養皿に入れた(一般に、妊娠中のマウスには8乃至11匹の胎児マウスがいて、少なくとも6匹、多くても13匹である)。胎児マウスの頭部をねじりきって、PBSを含有する新しい培養皿(各皿に2匹の胎児マウスを置く)に入れた。実体顕微鏡下で大脳皮質を取り出し、大脳皮質につながっている脳組織、例えば嗅球や髄膜などを除去した。大脳皮質を15mLの遠心分離管に入れ、組織片が見えなくなるまで、パスツールピペットでパージし、800rpmで2分間遠心分離した。使用するために上清を取り出した。新しいPBS緩衝液を沈殿物に添加して、懸濁液にパージした。懸濁液を800rpmで2分間遠心分離した。上清を取り出して、1回目の遠心分離で得られた上清と混合し、その後、1200rpmで2分間遠心分離した。上清を除去した。沈殿物を増殖培地でパージして、NPC懸濁液を得た。NPC懸濁液を40μmフィルター膜で濾過し、未分散の塊を除去した。NPC懸濁液を、懸濁培養用のT25フラスコに吸引した。培養開始後2日間は、フラスコを振盪しない。一般に、細胞スフェロイドの大きさによって、細胞は6日目又は7日目に継代を開始する。細胞を回収し、800rpmで2分間遠心分離した。上清を除去した。PBS緩衝液を添加して、沈殿物をパージし、800rpmで2分間遠心分離して、残りの培地を除去した。上清を除去した。1乃至2mLのアキュターゼ又はTryplE細胞解離溶液を、沈殿物を含有する管に添加して、細胞を解離し、管を37℃の培養器に5乃至10分間入れた。その間、管を指ではじいてもよい。Ca/Mg2+を含まないPBSを、上記の溶液の5倍量加えて(又は再懸濁のために、4乃至5mLの予熱した培地を添加して)、解離を停止し、複数回パージし、1200rpmで2分間遠心分離した。上清を除去した。1mLの増殖培地を添加して(又は次の濾過において、より多くの損失を避けるために増殖培地をより多く添加してもよく)、沈殿物を懸濁液にパージした。懸濁液を40μmフィルター膜で濾過して、完全に解離しなかった細胞スフェロイドを除去し、NPC懸濁を得た。NPC懸濁液の細胞を、血球計を使用して計数し、細胞の濃度を計算した。10×106個の細胞を培養用の新しいT25フラスコに接種した。
【0137】
(2)チップ上への接種。
具体的な手順は、実施例4又は5を参照して実施した。本実施例では、チップの仕様は12μm/30μmであり、ソフトマトリックスに添加した因子はEGF及びbFGFで、最終濃度はそれぞれ20ng/mL及び10ng/mLである。
【0138】
(3)結果及び分析。
以下に示す具体的な試験データを用いて、本開示の方法と従来の培養方法とを比較する。このことから、ソフトマトリックスを有するチップは、細胞の生存率を高め、細胞の幹細胞性を良好に維持するのに役立つことがわかる。
【0139】
実施例8:腫瘍細胞(MCF7)の球形成
腫瘍増殖と薬剤感受性の研究は、体外の単層腫瘍モデル(2D細胞培養)に大きく依存してきた。このモデルは、低酸素症、細胞間接触の変化、及び代謝の変化など、疾患の多くの特徴を欠いている。長年の研究を通じて、3D腫瘍モデルの表現型は実際のがん細胞により近く、薬剤スクリーニングのためのより正確なモデルやデータを提供できると考えられている。
【0140】
(1)MCF7細胞培養及びチップ上への接種。
MCF7細胞を、10%のFBS及び1%のP/Sを含有するDMEM培地で培養した。培養面積が培養皿の表面積の80%に達したとき、MCF7細胞を解離して、チップ上に接種した。チップ上への接種の具体的な手順は、実施例4又は5を参照して実施した。
【0141】
(2)連続培養。
細胞を含有するチップを培養器に入れて、3乃至5日間連続培養し、その間、細胞の特異的増殖を常に観察した。培養により、単一のMCF7細胞に由来する細胞スフェロイドの配列をチップ上に形成した。
【0142】
この腫瘍細胞の3D培養(又は「細胞塊」の培養)は、元の腫瘍の多くの重要な特性を忠実に再現することができる。さらに、配列培養は、大規模な薬剤スクリーニングに適しており、遺伝的変化に関連する薬剤感受性を検出し、個別化医療の実験的基礎を確立し、がん患者の臨床転帰を最適にすることができる。
【0143】
本開示の説明において、「中心」、「縦」、「横」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「最上部」、「底部」、「内側」、「外側」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「半径方向」、及び「円周方向」などの用語によって示される方向又は位置関係は、添付図面に示された方向又は位置関係に基づいており、言及された装置又は構成要素が特定の方向を有する必要があること又は特定の方向で構築及び操作される必要があることを示したり暗示したりするのではなく、本開示の図及び説明を容易かつ簡潔にするためにのみ使用されることを理解されたい。したがって、このような用語は、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、「第1」及び「第2」で定義される特徴は、明示的又は黙示的に1つまたは複数のそのような特徴を含んでもよい。本開示の説明において、特に明記しない限り、「複数」は、2つ以上を意味する。本開示の説明において、第2の特徴の「上」又は「下」にある第1の特徴は、第1の特徴と第2の特徴とが直接接触していることを含んでもよいし、又は第1の特徴と第2の特徴とが直接接触していないが、それらの間に他の特徴を使用することによって接触していることを含んでもよい。
【0144】
本開示の説明において、第1の特徴が第2の特徴の「上」、「上」、又は「上」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の真上及び斜め上にあることを含むか又は単に第1の特徴が第2の特徴よりも高いことを示す。
【0145】
本開示の説明において、特に明示的に規定又は定義されない限り、「取り付ける」、「接続する」、及び「接続」などの用語は、広い意味で理解されるべきであることに留意されたい。例えば、接続は、固定接続、着脱式接続、若しくは一体型接続であってもよく;又は接続は、機械的接続若しくは電気的接続であってもよく;又は接続は、直接接続、中間を介した間接接続、若しくは2つの構成要素間の内部連通であってもよい。当業者は、特定の状況に従って、本開示における前述の用語の特定の意味を理解することができる。
【0146】
本開示の説明において、「一実施態様」、「いくつかの実施態様」、「例示的な実施態様」、「実施例」、「特定の例」、又は「いくつかの例」という用語を使用した説明は、実施態様又は実施例を参照して説明された、特定の特性、構造、材料、又は特徴が、本開示の少なくとも1つの実施態様又は実施例に含まれることを意味する。本明細書において、前述の用語の例示的な説明は、必ずしも同一の実施態様又は実施例を指すものではない。さらに、説明した特定の特性、構造、材料、又は特徴は、任意の1つ又は複数の実施態様又は実施例において、適切な方法で組み合わせてもよい。
【0147】
本開示の実施態様を示し説明したが、当業者は、本開示の原理及び精神から逸脱するこ
となく、実施態様に対して様々な変更、修正、置換、及び変形を行ってもよく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって定義されることを理解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞のスクリーニング方法であって、
該標的細胞は標的分子を分泌するのに適しており、
該方法は、
該標的分子を分泌するのに適した条件下、培養チャンバーで候補単細胞を培養すること、ここで、該培養チャンバーは該候補単細胞を覆うためのシグナルスクリーニング層を含み、該シグナルスクリーニング層は該標的分子を特異的に認識するためのシグナル伝達分子を含む;及び
該シグナルスクリーニング層のシグナル伝達分子のシグナルに基づいて該標的分子を分泌するのに適した標的細胞を選択すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記シグナルスクリーニング層は前記培養チャンバーのマトリックス材料に配置される;
前記シグナルスクリーニング層は培地に配置される;
前記シグナルスクリーニング層は少なくとも1種の抗体又はプローブを含む;
前記シグナルスクリーニング層はヒドロゲルから形成される;又は
前記シグナルスクリーニング層の機械的強度はマトリックス材料の機械的強度よりも低い、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前
記マトリックス材料の平衡膨潤比
が1.25乃至1.75である、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記シグナル伝達分子は蛍光分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
マトリックス材料から形成されたマトリックス;及び
培養チャンバーを画定するためにマトリックスの表面上に形成された培養チャンバー
を含
み、
前記マトリックスのマトリックス材料の平衡膨潤比が1.25乃至1.75であり;
前記培養チャンバーは該マトリックスの表面上に構成された開口部上に形成されて該培養チャンバーを画定する、
生物学的培養チップ。
【請求項6】
前記マトリックス材料の固液相転移温度が40乃至45℃である、請求項
5に記載の生物学的培養チップ。
【請求項7】
細胞増殖中に、前記マトリックスと細胞との接触域に凹が形成される、請求項
5に記載の生物学的培養チップ。
【請求項8】
前記凹の深さは細胞の直径の5%以上である、請求項
7に記載の生物学的培養チップ。
【請求項9】
前記マトリックス材料はコラーゲンヒドロゲル、メチルセルロース、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル及びそれらの少なくとも2つの異なる割合の混合物からなる群から選択される、請求項
5に記載の生物学的培養チップ。
【請求項10】
前記マトリックスは生体適合性材料に対応するサイトカインをさらに含む、請求項
5に記載の生物学的培養チップ。
【請求項11】
前記マトリックスはウシ胎児血清、プロテインA/G、コラーゲン、ゼラチン、ウシ血清アルブミン及びそれらの少なくとも2つの混合物からなる群からさらに選択される、請求項
5に記載の生物学的培養チップ。
【請求項12】
前記培養チャンバーの開口部の直径が該培養チャンバーの底部の直径よりも小さい、請求項
5に記載の生物学的培養チップ。
【請求項13】
前
記開口部の直径が8乃至25μmであり、深さが15乃至35μmである、請求項
5に記載の生物学的培養チップ。
【請求項14】
前記培養チャンバーは複数のマイクロウェルで構成され、該マイクロウェルは所定のパターンを形成し、隣接する2つのマイクロウェル間の距離は10乃至100μ
mである、請求項
5に記載の生物学的培養チップ。
【請求項15】
前記マトリックス上に形成された位置決めマーカーをさらに含む、請求項
14に記載の生物学的培養チップ。
【国際調査報告】