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特表2023-536334シリアルバスシステム用の加入者局およびシリアルバスシステムでの通信方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】シリアルバスシステム用の加入者局およびシリアルバスシステムでの通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507582
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2021069742
(87)【国際公開番号】W WO2022028843
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】102020209917.0
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ムッター,アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ハートビヒ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ベイラー,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA05
5K033BA06
5K033CB15
5K033DA13
(57)【要約】
シリアルバスシステム(1)用の加入者局(10;30)、およびシリアルバスシステム(1)での通信方法が提供される。加入者局(10;30)は、バスシステム(1)の加入者局(10;20;30)と少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)との通信を制御するため、および送信信号(TXD)を生成するための通信制御デバイス(11;31)であって、バスシステム(1)の加入者局(10、20、30)間で交換されるメッセージ(45)に関して、第1の通信フェーズ(451)においてバス(40)に送信される信号のビット時間(t_bt1)が、第2の通信フェーズ(452)において送信される信号のビット時間(t_bt2)とは異なり得る、通信制御デバイス(11;31)を備え、通信制御デバイス(11;31)が、フレーム(450)に従って送信信号(TxD)を生成し、フレーム(450)で、第2の通信フェーズ(452)の後に、エッジを備えたフィールド(DAS)を挿入するように設計されており、フィールド(DAS)が、エッジの前に、第1の通信フェーズ(451)のビット時間(t_bt1)の期間よりも長い期間(T_RB)に対応する所定の長さを有し、エッジが、バス(40)での通信に同期するために、バスシステム(1)の少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)の通信制御デバイス(21;31;11)のために設けられており、少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)の送信/受信デバイス(22;32;12)が、所定の期間(T_RB)の前に、第1の通信フェーズ(451)でフレーム(450)を送信および受信するための動作モード(B_451)に切り替えられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアルバスシステム(1)用の加入者局(10;30)であって、
前記バスシステム(1)の加入者局(10;20;30)と少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)との通信を制御するため、および送信信号(TXD)を生成するための通信制御デバイス(11;31)であり、前記バスシステム(1)の加入者局(10、20、30)間で交換されるメッセージ(45)に関して、第1の通信フェーズ(451)においてバス(40)に送信される信号のビット時間(t_bt1)が、第2の通信フェーズ(452)において送信される信号のビット時間(t_bt2)とは異なり得る、通信制御デバイス(11;31)を備え、
前記通信制御デバイス(11;31)が、フレーム(450)に従って前記送信信号(TxD)を生成し、前記フレーム(450)で、前記第2の通信フェーズ(452)の後に、エッジを備えたフィールド(DAS)を挿入するように設計されており、
前記フィールド(DAS)が、前記エッジの前に、前記第1の通信フェーズ(451)のビット時間(t_bt1)の期間よりも長い期間(T_RB)に対応する所定の長さを有し、
前記エッジが、前記バス(40)での前記通信に同期するために、前記バスシステム(1)の前記少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)の通信制御デバイス(21;31;11)のために設けられており、前記少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)の送信/受信デバイス(22;32;12)が、前記所定の期間(T_RB)の前に、前記第1の通信フェーズ(451)で前記フレーム(450)を送信および受信するための動作モード(B_451)に切り替えられている、
加入者局(10;30)。
【請求項2】
前記フィールド(DAS)の前記所定の長さが、前記第1の通信フェーズ(451)の前記ビット時間(t_bt1)を備えたビットの少なくとも3ビット分を有する、請求項1に記載の加入者局(10;30)。
【請求項3】
前記エッジが、立ち下がりエッジである、請求項1または2に記載の加入者局(10;30)。
【請求項4】
前記通信制御デバイス(11)が、前記フィールド(DAS)で、前記エッジの前に、論理値11を備えたビットシーケンスを挿入するように設計されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項5】
前記通信制御デバイス(11)が、前記フィールド(DAS)を、論理値1101を備えたビットシーケンスとして挿入するように設計されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項6】
前記通信制御デバイス(11)が、前記送信信号(TXD)でのパルス幅変調によって、前記送信/受信デバイス(12;32)に、前記送信/受信デバイス(12;32)がその動作モードを切り替える必要があることを信号通知するように設計されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項7】
前記送信信号(TXD)を前記バスシステム(1)のバス(40)に送信するための送信/受信デバイス(12;32)をさらに備え、
前記送信/受信デバイス(12;32)が前記送信信号(TXD)においてエッジを受信しなかった所定の期間(T_TO)の経過後、前記送信/受信デバイス(12;32)が、その動作モードを、前記第2の通信フェーズ(452)の動作モード(B_452_TX)から前記第1の通信フェーズ(451)の異なる動作モード(B_451)に切り替えるように設計されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項8】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定の期間(T_TO)の開始前の前記送信信号(TxD、TXD)での最後のシンボルとして、論理値0を備えたPWMシンボル(SB_D0)を挿入するように設計されている、請求項7に記載の加入者局(10;30)。
【請求項9】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定の期間(T_TO)の開始前の前記送信信号(TxD、TXD)での最後のシンボルとして、論理値1を備えたPWMシンボル(SB_D1)を挿入するように設計されている、請求項7に記載の加入者局(10;30)。
【請求項10】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記所定の期間(T_TO)の開始前の前記送信信号(TxD、TXD)での最後から2つ目のシンボルとして、論理値0を備えたPWMシンボル(SB_D0)を挿入し、前記所定の期間(T_TO)の開始前の前記送信信号(TxD、TXD)での最後のシンボルとして、論理値0を有するが、立ち下がりエッジを有さないPWMシンボル(SB_D0)を前記送信信号(TxD、TXD)に挿入するように設計されている、請求項7に記載の加入者局(10;30)。
【請求項11】
前記通信制御デバイス(11;31)が、前記送信/受信デバイス(12;32)が受信信号(RxD)を前記通信制御デバイス(11;31)に送信するポート(RXD)での前記信号を、前記送信/受信デバイス(12;32)がその動作モードを前記第2の通信フェーズ(452)の前記動作モード(B_452_TX)から前記第1の通信フェーズ(451)の前記異なる動作モード(B_451)に切り替えたかどうかについてチェックするように設計されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項12】
前記送信信号(TXD)を前記バスシステム(1)のバス(40)に送信するための前記送信/受信デバイス(22)をさらに備え、
前記送信/受信デバイス(22)が、前記第1の通信フェーズ(451)で前記フレーム(450)を送信および受信するための前記動作モード(B_452_TX)で前記フレーム(450)全体を前記バス(40)に送信するように設計されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項13】
前記メッセージ(45)のために形成される前記フレーム(450)が、CAN FDと互換性があるように構成されており、
前記第1の通信フェーズ(451)において、前記バスシステム(1)の前記加入者局(10、20、30)のどれが、後続の第2の通信フェーズ(452)で前記バス(40)への少なくとも一時的に排他的で衝突のないアクセスを得るかが交渉される、
請求項1から12のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)。
【請求項14】
バス(40)と、
前記バス(40)を介して相互にシリアル通信することができるように互いに接続されており、そのうちの少なくとも1つの加入者局(10;30)が、請求項1から13のいずれか一項に記載の加入者局(10;30)である少なくとも2つの加入者局(10;20;30)とを備えた、
バスシステム(1)。
【請求項15】
シリアルバスシステム(1)での通信方法であって、前記バスシステム(1)の加入者局(10;30)によって実施され、前記加入者局(10;30)が、通信制御デバイス(11;31)および送信/受信デバイス(12;22;32)を有し、
前記通信制御デバイス(11;31)によって、前記バスシステム(1)の前記加入者局(10;30)と少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)との通信を制御するステップであり、前記バスシステム(1)の加入者局(10、20、30)間で交換されるメッセージ(45)に関して、第1の通信フェーズ(451)において前記バス(40)に送信される信号のビット時間(t_bt1)が、第2の通信フェーズ(452)において送信される信号のビット時間(t_bt2)とは異なり得る、ステップと、
前記送信/受信デバイス(12;32)によって、前記送信信号(TXD)を前記バスシステム(1)のバス(40)に送信するステップとを有し、
前記通信制御デバイス(11;31)が、フレーム(450)に従って前記送信信号(TxD)を生成し、前記フレーム(450)で、前記第2の通信フェーズ(452)の後に、エッジを備えたフィールド(DAS)を挿入し、
前記フィールド(DAS)が、前記エッジの前に、前記第1の通信フェーズ(451)のビット時間(t_bt1)の期間よりも長い期間(T_RB)に対応する所定の長さを有し、
前記エッジが、前記バス(40)での前記通信に同期するために、前記バスシステム(1)の前記少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)の通信制御デバイス(21;31;11)のために設けられており、前記少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)の送信/受信デバイス(22;32;12)が、前記所定の期間(T_RB)の前に、前記第1の通信フェーズ(451)で前記フレーム(450)を送信および受信するための動作モード(B_451)に切り替えられている、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いデータレート、高い融通性、および高いエラーロバスト性で動作するシリアルバスシステム用の加入者局およびシリアルバスシステムでの通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両でのセンサと制御機器との間の通信用バスシステムは、技術的設備または車両の機能の数に応じて、大きいデータ量の伝送を可能にすべきである。ここで、多くの場合、データを送信側から受信側に従来よりも速く伝送することができ、必要に応じて大きなデータパケットも伝送可能であることが求められる。
【0003】
現在、車両ではバスシステムが導入段階であり、このバスシステムでは、CAN FDを使用したCANプロトコル仕様として、規格ISO11898-1:2015でのメッセージとしてデータが伝送される。メッセージは、センサ、制御機器、送信機などのバスシステムのバス加入者間で伝送される。このために、メッセージは、2つの通信フェーズ間で切り替えられるフレームでバスに送信される。第1の通信フェーズ(調停)では、バスシステムのどの加入者局が、後続の第2の通信フェーズ(データフェーズまたは使用データの送信)でフレームをバスに送信してよいかが交渉される。CAN FDは、多くの製造業者によって、車両において最初の段階では500kbit/sの調停ビットレートおよび2Mbit/sのデータビットレートで使用される。したがって、バスでの伝送中に、低速の動作モードと高速の動作モードとを切り替えなければならない。
【0004】
第2の通信フェーズでさらに高いデータレートを可能にするために、CAN FD用の後継バスシステムが現在開発されており、これは、CAN XLと呼ばれ、現在、組織CAN in Automation(CiA)において標準化されている。CAN XLは、CANバスを介する純粋なデータ輸送に加えて、機能的安全性(Safety)、データセキュリティ(Security)、サービス品質(QoS=Quality of Service)など他の機能もサポートすべきである。これらは、自律走行車で必要とされる基本的な特性である。
【0005】
チャネル(CANバス)を介するフレームでのデータの伝送において、エラーが生じ得る。特に、ビットは、外部の影響、特に照射によって変えられるおそれがある。CAN XLの通信プロトコルは、エラーを認識してそれに対応しなければならない。
【0006】
CAN XLでは、エラー信号通知があってもなくてもエラーを処理することができる。エラー信号通知のために、エラーを検出した加入者局は、エラーフレーム(エラーフラグ)をバスに送信して、エラーが認識されたことを他の加入者局に知らせる。エラー信号通知がない場合、エラーを検出した加入者局は、エラーフレーム(エラーフラグ)をバスに送信しない。したがって、送信を行う加入者局(送信ノード)は、フレームを正しく受信できなかった、受信のみを行う加入者局(受信ノード)からはフィードバックを受けない。このタイプの通信は、「ファイア・アンド・フォーゲット(Fire and forget)」とも呼ばれ、これは送信と忘却とも表すことができる。
【0007】
エラーフレームがバスに送信されない場合、エラーに関するフィードバックが生じないので、送信を行う加入者局(送信ノード)は、完全なフレームをバスに送信する。フレームを正しく受信することができなかった受信を行う加入者局(受信ノード)は、その送信/受信デバイス(トランシーバ)が事前に予め低速動作モードになっていない場合には、高速動作モード(FAST)から低速動作モード(SLOW)に切り替え、その後、バスでの現行の通信に再統合することを試みる。その結果、これらの加入者局は、フレームの最後にのみ生じ得る、連続した11個のレセシブビットからなるシーケンス、いわゆるバスアイドルシーケンスを待機する。新たにオンに切り替えられ、または非アクティブへの切替え後に再びアクティブに切り替えられ、その後、バスでの通信に参加することになる加入者局も、このシーケンスを待機する。
【0008】
通信に統合されているすべての加入者局が、フレームの最後にある11個のレセシブビットの認識をほぼ同時に完了することが重要である。後続のビット、すなわち11個のレセシブビットに続くビットで、すべての加入者局がフレームの送信または受信のために同時に準備されなければならないので、この同期性は必要である。
【0009】
加入者局のこの同期性が達成されるように、CAN XLフレームでのDASフィールドに、すべての受信ノードが同期すべき同期エッジがある。その後、再統合を同期して行うことができる。
【0010】
しかし、データフェーズ中にすべての受信ノードがエラーを確認したときは問題である。この場合、どの受信ノードも、フレームの正しい受信に関する確認としてドミナントACKビットを送信しない。それにより、DASフィールドでの同期エッジは、バスアイドルシーケンスの前の同期のための最後の可能なエッジである。ここで、現在のCAN XLフレームフォーマットでのDASフィールドでは、正しい同期がすべての状況下で可能でないことが判明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、前述した問題を解決するシリアルバスシステム用の加入者局およびシリアルバスシステムでの通信方法を提供することである。特に、エラー後またはオンへの切替え後に受信ノードの再統合を現行のバス通信において常に正しく行うことができ、高いデータレート時およびフレーム当たりの使用データ量の増加時にも通信の高いエラーロバスト性を実現する、シリアルバスシステム用の加入者局およびシリアルバスシステムでの通信方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1の特徴を備えるシリアルバスシステム用の加入者局によって解決される。加入者局は、バスシステムの加入者局と少なくとも1つの他の加入者局との通信を制御するための通信制御デバイスであって、バスシステムの加入者局間で交換されるメッセージに関して、第1の通信フェーズにおいてバスに送信される信号のビット時間が、第2の通信フェーズにおいて送信される信号のビット時間とは異なり得る、通信制御デバイスと、バスシステムのバスに送信信号を送信するための送信/受信デバイスとを備え、通信制御デバイスが、フレームに従って送信信号を生成し、フレームで、第2の通信フェーズの後に、エッジを備えたフィールドを挿入するように設計されており、フィールドが、エッジの前に、第1の通信フェーズのビット時間の期間よりも長い期間に対応する所定の長さを有し、エッジが、バスでの通信に同期するために、バスシステムの少なくとも1つの他の加入者局の通信制御デバイスのために設けられており、その送信/受信デバイスが、所定の期間の前に、第1の通信フェーズでフレームを送信および受信するための動作モードに切り替えられている。
【0013】
加入者局の設計により、変更されたDASフィールドがあり、これにより、バスでの通信に再統合されたすべての加入者局がDASフィールドで同期できることが保証されている。これは、照射によるエラー時でさえ、確実なエラー処理を可能にする。さらに、すべての加入者局(ノード)が同時に再び送信および受信できる状態になるので、公平性が保証されている。さらに、それにより、バスシステムでの通信における後続のエラーが回避され得る。
【0014】
したがって、加入者局によって、CAN XLを用いたロバストな通信が初めて可能にされる。
したがって、バスシステムでの加入者局によって、第1の通信フェーズで、CANから知られている調停を保持し、しかしCANまたはCAN FDに比べて伝送速度をさらに大幅に向上することができる。
【0015】
加入者局によって実施される方法は、CANプロトコルおよび/またはCAN FDプロトコルに従ってメッセージを送信する少なくとも1つのCAN加入者局および/または少なくとも1つのCAN FD加入者局もバスシステムに存在するときにも使用することができる。
【0016】
加入者局の有利なさらなる形態は、従属請求項に記載されている。
フィールドの所定の長さが、第1の通信フェーズのビット時間を備えたビットの少なくとも3ビット分を有することが可能である。
【0017】
エッジは、立ち下がりエッジであり得る。
通信制御デバイスは、フィールドで、エッジの前に、論理値11を備えたビットシーケンスを挿入するように設計されていてもよい。
【0018】
通信制御デバイスは、フィールドを、論理値1101を備えたビットシーケンスとして挿入するように設計されていてもよい。
1つの例示的実施形態によれば、通信制御デバイスは、送信信号でのパルス幅変調によって、送信/受信デバイスに、送信/受信デバイスがその動作モードを切り替える必要があることを信号通知するように設計されている。
【0019】
加入者局が、送信信号をバスシステムのバスに送信するための送信/受信デバイスをさらに有し、送信/受信デバイスが送信信号においてエッジを受信しなかった所定の期間の経過後、送信/受信デバイスは、その動作モードを、第2の通信フェーズの動作モードから第1の通信フェーズの異なる動作モードに切り替えるように設計されていることが考えられる。
【0020】
1つの例示的実施形態によれば、通信制御デバイスは、所定の期間の開始前の送信信号での最後のシンボルとして、論理値0を備えたPWMシンボルを挿入するように設計されている。
【0021】
1つの例示的実施形態によれば、通信制御デバイスは、所定の期間の開始前の送信信号での最後のシンボルとして、論理値1を備えたPWMシンボルを挿入するように設計されている。
【0022】
1つの例示的実施形態によれば、通信制御デバイスは、所定の期間の開始前の送信信号での最後から2つ目のシンボルとして、論理値0を備えたPWMシンボルを挿入し、所定の期間の開始前の送信信号での最後のシンボルとして、論理値0を有するが、立ち下がりエッジを有さないPWMシンボルを送信信号に挿入するように設計されている。
【0023】
通信制御デバイスは、送信/受信デバイスが受信信号を通信制御デバイスに送信するポートでの信号を、送信/受信デバイスがその動作モードを第2の通信フェーズの動作モードから第1の通信フェーズの異なる動作モードに切り替えたかどうかについてチェックするように設計されていることがある。
【0024】
別の例示的実施形態によれば、送信/受信デバイスが、第1の通信フェーズでフレームを送信および受信するための動作モードでフレーム全体をバスに送信するように設計されている。
【0025】
メッセージのために形成されるフレームは、CAN FDと互換性があるように構成されており、第1の通信フェーズにおいて、バスシステムの加入者局のどれが、後続の第2の通信フェーズでバスへの少なくとも一時的に排他的で衝突のないアクセスを得るかが交渉されることが可能である。
【0026】
上述した加入者局はバスシステムの一部でよく、バスシステムは、バスと、バスを介して相互にシリアル通信することができるように互いに接続されている少なくとも2つの加入者局とを含む。ここで、少なくとも2つの加入者局のうちの少なくとも1つは、上述した加入者局である。
【0027】
前述の課題は、請求項15に記載のシリアルバスシステムでの通信方法によっても達成される。この方法は、バスシステムの加入者局によって実施され、加入者局が、通信制御デバイスおよび送信/受信デバイスを有し、方法は、通信制御デバイスによって、バスシステムの加入者局と少なくとも1つの他の加入者局との通信を制御するステップであって、バスシステムの加入者局間で交換されるメッセージに関して、第1の通信フェーズにおいてバスに送信される信号のビット時間が、第2の通信フェーズにおいて送信される信号のビット時間とは異なり得る、ステップと、送信/受信デバイスによって、送信信号をバスシステムのバスに送信するステップとを有し、通信制御デバイスが、フレームに従って送信信号を生成し、フレームで、第2の通信フェーズの後に、エッジを備えたフィールドを挿入し、フィールドが、エッジの前に、第1の通信フェーズのビット時間の期間よりも長い期間に対応する所定の長さを有し、エッジが、バスでの通信に同期するために、バスシステムの少なくとも1つの他の加入者局の通信制御デバイスのために設けられており、その送信/受信デバイスが、所定の期間の前に、第1の通信フェーズでフレームを送信および受信するための動作モードに切り替えられている。
【0028】
方法は、加入者局に関して上述したものと同じ利点を提供する。
本発明のさらなる可能な実装形態は、例示的実施形態に関して上述もしくは後述する特徴または実施形態の明示的に言及していない組合せも含む。ここで、当業者は、本発明のそれぞれの基本形態への改良または補完として個別の態様を追加することもできる。
【0029】
以下、添付図面を参照し、例示的実施形態に基づいて、本発明をより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の例示的実施形態によるバスシステムの簡略ブロック図である。
図2】第1の例示的実施形態による、バスシステムの加入者局が送信することができるメッセージの構造を説明するための図である。
図3】第1の例示的実施形態によるバスシステムの加入者局の簡略的な概略ブロック図である。
図4】第1の例示的実施形態による、加入者局におけるバス信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lの時間プロファイルを示す図である。
図5】第1の例示的実施形態による、加入者局におけるバス信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lの差分電圧VDIFFの時間プロファイルを示す図である。
図6】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第1の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示す図である。
図7】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第1の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示す図である。
図8】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第1の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示す図である。
図9図6図8の信号から得られるバス信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lの差分電圧VDIFFの時間プロファイルを示す図である。
図10図9からの差分電圧VDIFFから得られる、受信ノードの受信ポートでの状態の時間プロファイルを示す図である。
図11】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第2の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示す図である。
図12】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第2の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示す図である。
図13】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第2の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示す図である。
図14図11図13の信号から得られるバス信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lの差分電圧VDIFFの時間プロファイルを示す図である。
図15図14からの差分電圧VDIFFから得られる、受信ノードの受信ポートでの状態の時間プロファイルを示す図である。
図16】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第3の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示す図である。
図17】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第3の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示す図である。
図18】加入者局がメッセージの送信側であるときの、第3の例示的実施形態による加入者局のポートへのフレームの送信時に生じる信号の時間プロファイルを示す図である。
図19図16図18の信号から得られるバス信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lの差分電圧VDIFFの時間プロファイルを示す図である。
図20図19からの差分電圧VDIFFから得られる、受信ノードの受信ポートでの状態の時間プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面中、特に指示のない限り、同一の要素または機能的に同一の要素には同じ参照符号が付されている。
図1は、例としてバスシステム1を示し、バスシステム1は、特に基本的には、以下に述べるように、CANバスシステム、CAN FDバスシステム、CAN XLバスシステム、および/またはそれらの変形システムのために設計されている。バスシステム1は、特に自動車や航空機などの車両、または病院などで使用することができる。
【0032】
図1では、バスシステム1は、多数の加入者局10、20、30を有し、多数の加入者局10、20、30は、それぞれが、第1のバスワイヤ41および第2のバスワイヤ42を備えたバス40に接続されている。バスワイヤ41、42は、CAN_HおよびCAN_LまたはCAN-XL_HおよびCAN-XL_Lと呼ばれてもよく、送信状態での信号に関して、ドミナントレベルのカップリング後またはレセシブレベルもしくは他のレベルの生成後に電気信号伝送に使用される。バス40を介して、信号の形式でのメッセージ45、46を個々の加入者局10、20、30間でシリアル伝送可能である。図1のギザギザの黒いブロック矢印によって示されるように、バス40での通信中にエラーが発生した場合、任意選択でエラーフレーム47(エラーフラグ)が送信されてもよい。加入者局10、20、30は、例えば自動車の制御機器、センサ、表示装置などである。
【0033】
図1に示されるように、加入者局10は、通信制御デバイス11、送信/受信デバイス12、およびエラー処理モジュール15を有する。加入者局20は、通信制御デバイス21、送信/受信デバイス22、および任意選択でエラー処理モジュール25を有する。加入者局30は、通信制御デバイス31、送信/受信デバイス32、およびエラー処理モジュール35を有する。加入者局10、20、30の送信/受信デバイス12、22、32は、図1には図示されていないが、それぞれバス40に直接接続されている。
【0034】
通信制御デバイス11、21、31は、それぞれの加入者局10、20、30と、バス40に接続されている加入者局10、20、30のうちの少なくとも1つの他の加入者局とのバス40を介した通信をそれぞれ制御する働きをする。
【0035】
通信制御デバイス11、31は、例えば修正されたCANメッセージ45である第1のメッセージ45の作成および読取りを行う。ここで、修正されたCANメッセージ45は、図2を参照してより詳細に述べるCAN XLフォーマットに基づいて構成されており、CAN XLフォーマットでは、それぞれのエラー処理モジュール15、35が使用される。さらに、通信制御デバイス11、31は、必要に応じて、CAN XLメッセージ45またはCAN FDメッセージ46を送信/受信デバイス32に対して提供する、または送信/受信デバイス32から受信するように実装されていてもよい。この場合にも、それぞれのエラー処理モジュール15、35が使用される。したがって、通信制御デバイス11、31は、第1のメッセージ45または第2のメッセージ46の作成および読取りを行い、ここで、第1および第2のメッセージ45、46は、それらのデータ伝送規格が異なり、すなわちこの場合にはCAN XLまたはCAN FDである。
【0036】
通信制御デバイス21は、ISO11898-1:2015に準拠した従来のCANコントローラのように、すなわちCAN FD許容の従来型CANコントローラまたはCAN FDコントローラのように実装されていてもよい。さらに、任意選択でエラー処理モジュール25があり、エラー処理モジュール15、35と同じ機能を有する。通信制御デバイス21は、第2のメッセージ46、例えばCAN FDメッセージ46の作成および読取りを行う。CAN FDメッセージ46には、0~64データバイトが含まれていることがあり、これらはさらに、従来型CANメッセージよりも明らかに速いデータレートで伝送される。特に、通信制御デバイス21は、従来のCAN FDコントローラのように実装されている。
【0037】
送信/受信デバイス22は、ISO11898-1:2015に準拠した従来のCANトランシーバ、またはCAN FDトランシーバのように実装されていてもよい。送信/受信デバイス12、32は、必要に応じて、関連する通信制御デバイス11、31に対してCAN XLフォーマットに従ってメッセージ45を提供する、もしくは現在のCAN FDフォーマットに従ってメッセージ46を提供するように、または関連する通信制御デバイス11、31からメッセージを受信するように実装されていてもよい。
【0038】
2つの加入者局10、30を用いて、CAN XLフォーマットでのメッセージ45の作成および伝送、ならびにそのようなメッセージ45の受信を実現可能である。
図2は、メッセージ45に関してCAN XLフレーム450を示し、CAN XLフレーム450は、通信制御デバイス11によって送信/受信デバイス12のために、バス40への送信用に提供される。この場合、通信制御デバイス11は、図2にも示されているように、この例示的実施形態ではCAN FDと互換性があるものとしてフレーム450を作成する。同じことが、加入者局30の通信制御デバイス31および送信/受信デバイス32にも同様に当てはまる。
【0039】
図2によれば、バス40でのCAN通信のためのCAN XLフレーム450は、異なる通信フェーズ451、452、すなわち調停フェーズ451およびデータフェーズ452に分割されている。フレーム450は、調停フィールド453、通信フェーズ451、452間の切替えのためのADSフィールドを有する制御フィールド454、データフィールド455、チェックサムフィールド456、ならびに通信フェーズ452、451間の切替えのためのDASフィールドを有するフレーム終端フィールド457を有する。その後、フレーム終了フィールドEOFが続く。
【0040】
調停フェーズ451において、調停フィールド453での例えばビットID28~ID18を有する識別子(ID)を用いて、どの加入者局10、20、30がメッセージ45、46を最高の優先順位で送信したいか、したがって後続の時間に関して後続のデータフェーズ452で送信するためにバスシステム1のバス40への排他的なアクセスを得るかが、ビット毎に加入者局10、20、30間で交渉される。調停フェーズ451では、CANおよびCAN-FDと同様に物理層が使用される。物理層は、既知のOSIモデル(オープンシステム相互接続モデル)のビット伝送層または層1に対応する。
【0041】
フェーズ451中の重要な点は、既知のCSMA/CR法が使用されることであり、CSMA/CR法は、より優先順位の高いメッセージ45、46が破壊されることなく、加入者局10、20、30がバス40に同時にアクセスすることを許可する。これにより、さらなるバス加入者局10、20、30がバスシステム1に比較的容易に追加され得、これは非常に有利である。
【0042】
CSMA/CR法により、バス40にいわゆるレセシブ状態が存在することになり、このレセシブ状態は、バス40で他の加入者局10、20、30がドミナント状態で上書きされ得る。レセシブ状態では、個々の加入者局10、20、30で高抵抗挙動が生じており、これは、バス回路の寄生と組み合わさって、より長い時定数をもたらす。これは、今日のCAN-FD物理層の最大ビットレート、実際の車両での使用において現在約2メガビット/秒の制限を導く。
【0043】
データフェーズ452では、制御フィールド454の一部に加えて、データフィールド455からのCAN-XLフレームの使用データまたはメッセージ45、ならびにチェックサムフィールド456が送信される。その後、DASフィールドが続き、DASフィールドは、データフェーズ452からデータフェーズ451に切り替えて戻すために使用される。
【0044】
加入者局10が送信側として調停に勝ち、したがって加入者局10が送信側として送信のためにバスシステム1のバス40への排他的アクセスを有したときに初めて、メッセージ45の送信側は、バス40へのデータフェーズ452のビットの送信を開始する。
【0045】
ごく一般に、CANまたはCAN FDと比較して、CAN XLを用いるバスシステムでは以下:
a)CANおよびCAN FDのロバスト性および使いやすさに寄与する実証済みの特性、特に識別子を用いたフレーム構造およびCSMA/CR法による調停の採用および場合によっては適応。
b)特に毎秒約10メガビットへの正味データ伝送レートの増加。
c)特に約2キロバイトまたは任意の他の値への、フレーム当たりの使用データのサイズの増加。
の異なる特性が実現され得る。
【0046】
図2に示されるように、加入者局10は、第1の通信フェーズとしての調停フェーズ451において、部分的に、特にFDFビット(これを含む)まで、ISO11898-1:2015に従ってCAN/CAN-FDから知られているフォーマットを使用する。それに対し、加入者局10は、FDFビット以降、第1の通信フェーズと、第2の通信フェーズであるデータフェーズ452とにおいて、以下で述べるCAN XLフォーマットを使用する。
【0047】
この例示的実施形態では、CAN XLとCAN FDとに互換性がある。ここで、CAN FDから知られている、以下でXLFビットと呼ばれるresビットが、CAN FDフォーマットからCAN XLフォーマットに切り替えるために使用される。したがって、CAN FDとCAN XLとのフレームフォーマットは、resビットまたはXLFビットまで同じである。受信側は、resビットにおいて初めて、どのフォーマットでフレーム450が送信されるかを認識する。CAN XL加入者局、すなわちここでは加入者局10、30は、CAN FDもサポートする。
【0048】
11ビットの識別子ID28~ID18が使用される図2に示されるフレーム450の代替として、任意選択で、29ビットの識別子が使用されるCAN XL拡張フレームフォーマットも可能である。CAN XL拡張フレームフォーマットは、FDFビットまでは、ISO11898-1:2015からの既知のCAN FD拡張フレームフォーマットと同一である。
【0049】
図2によれば、フレーム450は、SOFビットからFDFビット(これを含む)まで、ISO11898-1:2015に準拠したCAN FDベースフレームフォーマットと同一である。したがって、既知の構造は、本明細書でさらには説明しない。図2において下側の線が太い線分で示されているビットは、フレーム450でドミナントまたは「0」として送信される。図2において上側の線が太い線分で示されているビットは、フレーム450でレセシブまたは「1」として送信される。CAN XLデータフェーズ452では、レセシブレベルとドミナントレベルの代わりに対称的な「1」と「0」のレベルが使用される。
【0050】
一般に、フレーム450の生成には2つの異なるスタッフィング規則が使用される。調停フィールド453でのFDFビットの前まではCAN FDの動的ビットスタッフィング規則が適用され、したがって、連続する5つの同一のビットの後に反転スタッフビットが挿入されている。データフェーズ452で、FCPフィールドの前までは固定スタッフィング規則が適用され、したがって、固定数のビットの後に固定スタッフビットが挿入されている。代替として、ただ1つのスタッフビットの代わりに、2つ以上のビットが固定スタッフビットとして挿入されてもよい。
【0051】
フレーム450では、FDFビットの直後にXLFビットが続き、XLFビットは、その位置から、前述したようにCAN FDベースフレームフォーマットでの「resビット」に対応する。XLFビットは、1、すなわちレセシブとして送信されるとき、それによりフレーム450をCAN XLフレームとして識別する。CAN FDフレームの場合、通信制御デバイス11は、XLFビットを0、すなわちドミナントとして設定する。
【0052】
XLFビットの後、フレーム450でresXLビットが続き、resXLビットは、将来の使用のためのドミナントビットである。resXLは、フレーム450に関して、0、すなわちドミナントとして送信されなければならない。しかし、加入者局10がresXLビットを1、すなわちレセシブとして受信した場合、受信を行う加入者局10は、CAN FDメッセージ46でres=1に関して行われるのと同様に、例えばプロトコル例外状態になる。代替として、resXLビットは正反対に定義されていてもよく、すなわち、1、すなわちレセシブとして送信されることになる。この場合、受信を行う加入者局は、ドミナントresXLビットでプロトコル例外状態になる。
【0053】
resXLビットの後、フレーム450で、所定のビットシーケンスが符号化されるシーケンスADS(調停データスイッチ)が続く。このビットシーケンスは、調停フェーズ451のビットレート(調停ビットレート)からデータフェーズ452のビットレート(データビットレート)への単純で確実な切替えを可能にする。例えば、ADSシーケンスのビットシーケンスは、少なくとも最後の部分で論理1として送信されるAL1ビットからなる。AL1ビットは、調停フェーズ451の最後のビットである。AL1ビットにおいて、送信/受信デバイス12、22、32での物理層が切り替えられる。したがって、ADSシーケンス中に送信/受信デバイス12、32の動作モードも切り替えられる。次のビットDH1、DH2、およびDL1は、すでにデータビットレートで送信される。したがって、CAN XLでのビットDH1、DH2、およびDL1は、データフェーズ452の時間的に短いビットである。ADSフィールドは、第1の通信フェーズ451から第2の通信フェーズ452に遷移するために使用される。
【0054】
シーケンスADSの後に、フレーム450で、データフィールド455の内容を特徴付けるSDTフィールドが続く。SDTフィールドの内容は、データフィールド455に含まれている情報のタイプを提示する。例えば、SDTフィールドは、データフィールド455に「インターネットプロトコル」(IP)フレーム、またはトンネルされたイーサネットフレームもしくは他のフレームがあるかどうかを提示する。
【0055】
SDTフィールドにSECフィールドが続き、SECフィールドは、フレーム450がCANセキュリティプロトコルで保護されているか否かを提示する。SECフィールドは1ビット幅であり、SDTフィールドと同様に、データフィールド455に含まれている情報のタイプを提示する機能を有する。
【0056】
SECフィールドの後にDLCフィールドが続き、DLCフィールドにはデータ長コード(DLC=Data Length Code)が挿入され、データ長コードは、フレーム450のデータフィールド455内のバイト数を提示する。データ長コード(DLC)は、1からデータフィールド455の最大バイト数またはデータフィールド長までの任意の値を取ることができる。最大データフィールド長が特に2048ビットである場合、DLC=0が1バイトのデータフィールド長を意味し、DLC=2047が2048バイトのデータフィールド長を意味すると仮定して、データ長コード(DLC)は11ビットを必要とする。代替として、例えばCANの場合のように、長さ0のデータフィールド455が許可されていてもよい。この場合、DLC=0は、例えば、0バイトを有するデータフィールド長を符号化する。符号化可能な最大データフィールド長は、例えば11ビットでは、(211)-1=2047である。
【0057】
DLCフィールドの後、フレーム450でSBCビットカウントフィールド(Stuff-Bit-Count)が続く。このフィールドでは、調停フィールド453で送信された動的スタッフビットの数が提示されている。受信ノードは、SBCビットカウントフィールドの情報を使用して、受信ノードが正しい数の動的スタッフビットを受信したかどうかをチェックする。
【0058】
SBCビットカウンタフィールドの後には、プリフェイスCRCとも呼ばれるプリアンブルチェックサムPCRCが続く。プリアンブルチェックサムPCRCは、フレーム450のフレームフォーマット、すなわち、プリアンブルチェックサムPCRCの開始までのすべての動的スタッフビットおよび任意選択で固定スタッフビットを含む、SOFビットを備えたフレーム450の開始からプリアンブルチェックサムPCRCの開始までのすべての可変ビットを保護するためのチェックサムである。プリアンブルチェックサムPCRCの長さ、したがって巡回冗長検査(CRC)に従ったチェックサム多項式の長さは、所望のハミング距離に対応して選択することができる。
【0059】
プリアンブルチェックサムPCRCの後に、フレーム450で、フィールドVCID(Virtual CAN BusID)が続く。VCIDフィールドは、1バイトの長さを有する。VCIDフィールドには、仮想CANバスの番号が含まれている。
【0060】
フィールドVCIDの後、フレーム450で、フィールドAF(Acceptance Field)が続く。AFフィールドは、32ビットの長さを有する。AFフィールドには、アクセプタンスフィルタリング用のアドレスまたは他の値が含まれる。
【0061】
フィールドAFの後に、フレーム450で、データフィールド455(Data Field)が続く。データフィールド455はPバイトBからなり、ここで、Pは、前述したようにDLCフィールドに符号化されている。Pは、1以上の自然数である。
【0062】
データフィールド455の後に、フレーム450で、フレームチェックサムFCRCおよびFCPフィールドを備えたチェックサムフィールド456が続く。フレームチェックサムFCRCは、フレームチェックサムFCRCのビットからなる。フレームチェックサムFCRC、したがってCRC多項式の長さは、所望のハミング距離に対応して選択することができる。フレームチェックサムFCRCは、フレーム450全体を保護する。代替として、任意選択で、データフィールド455のみがフレームチェックサムFCRCによって保護されている。
【0063】
フレームチェックサムFCRCの後に、フレーム450でFCPフィールドが続き、ここで、FCP=フレームチェックパターンである。FCPフィールドは、特にビットシーケンス1100を備えた4ビットからなる。受信ノードは、FCPフィールドを用いて、受信ノードが送信データストリームとビット同期しているかどうかをチェックする。さらに、受信ノードは、FCPフィールドの立ち下がりエッジに同期する。
【0064】
FCPフィールドの後に、フレーム終端フィールド457が続く。フレーム終端フィールド457は、2つのフィールド、すなわち、DASフィールドと、少なくとも1つのビットACKおよびビットACK-Dlmを備えた確認フィールドまたはACKフィールドとからなる。
【0065】
DASフィールドは、シーケンスDAS(Data Arbitration Switch;データ調停スイッチ)を含み、シーケンスDASに所定のビットシーケンスが符号化される。所定のビットシーケンスは、図2では、ビットDAH、AH1、AL2を有する。さらに、任意選択で、DASフィールドの最後にビットAH2が設けられており、このビットAH2は、確認フィールド(ACK)に対するスペースホルダとして働く。DASフィールドは、少なくとも3ビットを有する。ビットシーケンスDAH、AH1、AL2は、データフェーズ452のデータビットレートから調停フェーズ451の調停ビットレートへの簡単で安全な切替えを可能にする。さらに、DASフィールド中、送信/受信デバイス12、32の動作モードは、任意選択で動作モードFASTから動作モードSLOWに切り替えられる。例えば、シーケンスDASのビットシーケンスは、調停ビットDAHおよび調停ビットAH1を有し、それぞれ論理値1を有する。したがって、ビットDAHまたはビットAH1内で、物理層は、送信/受信デバイス12、32の動作モードをFAST_TXまたはFAST_RXからSLOWに切り替える。ビットAH1には、ビットAL2(論理0)およびビットAH2(論理1)が続く。3つのビットDAH、AH1、AL2は、フレームの最後でバスシステムの加入者局の同期を保証する機能を有する。これにより、受信中にエラーを認識した受信ノードの同期も保証される。
【0066】
フレーム終端フィールド457では、DASフィールドのシーケンス後に確認フィールド(ACK)が続く。確認フィールドで、フレーム450の正しい受信の肯定応答または否定応答のためのビットが設けられている。図2の例では、ACKビットおよびACK-dlmビットが設けられている。任意選択で、さらに、NACKビットおよびNACK-dlmビットもあり得る。受信を行う加入者局10、30は、フレーム450を正しく受信した場合、ACKビットをドミナントとして送信する。送信を行う加入者局は、ACKビットをレセシブとして送信する。したがって、フレーム450でバス40に元々送信されたビットが、受信を行う加入者局10、30によって上書きされ得る。ACK-dlmビットは、他のフィールドから分離するために使用されるレセシブビットとして送信される。NACKビットおよびNACK-dlmビットは、受信を行う加入者局がフレーム450の正しくない受信をバス40で信号通知できるようにするために使用される。これらのビットの機能は、ACKビットおよびACK-dlmビットの機能と同様である。
【0067】
フレーム終端フィールド457の後に、フレーム450で、終了フィールド(EOF=End of Frame)が続く。終了フィールド(EOF)のビットシーケンスは、フレーム450の最後を特徴付けるために使用される。終了フィールド(EOF)は、フレーム450の最後に8つのレセシブビットが送信されるようにする。これは、フレーム450内で生じ得ないビットシーケンスである。それにより、加入者局10、20、30によってフレーム450の終了が確実に認識され得る。
【0068】
終了フィールド(EOF)は、ACKビットでドミナントビットが見られたか、それともレセシブビットが見られたかに応じて異なる長さを有する。送信を行う加入者局がACKビットをドミナントとして受信したとき、終了フィールド(EOF)は7つのレセシブビットを有する。そうでない場合には、終了フィールド(EOF)は、5つだけのレセシブビットの長さである。
【0069】
終了フィールド(EOF)の後、フレーム450で、図2には図示されていないフレーム間スペース(IFS-Inter Frame Space)が続く。このフレーム間スペース(IFS)は、ISO11898-1:2015に対応したCAN FDの場合と同様に設計されている。
【0070】
図3は、通信制御デバイス11、送信/受信デバイス12、および通信制御デバイス11の一部であるエラー処理モジュール15を備えた加入者局10の基本構造を示す。加入者局30は、図3に示されるのと同様に構成されているが、図1によるエラー処理モジュール35は、通信制御デバイス31および送信/受信デバイス32から独立して配置されている。したがって、加入者局30について個別には述べない。
【0071】
図3によれば、加入者局10は、通信制御デバイス11および送信/受信デバイス12に加えて、通信制御デバイス11が割り当てられているマイクロコントローラ13と、システムASIC16(ASIC=特定用途向け集積回路)とを有する。システムASIC16は、代替として、加入者局10の電子回路アセンブリに必要な複数の機能が組み合わされたシステムベースチップ(SBC)であってもよい。システムASIC16には、送信/受信デバイス12に加えて、送信/受信デバイス12に電気エネルギーを供給するエネルギー供給デバイス17が設置される。通常、エネルギー供給デバイス17は、5Vの電圧CAN_Supplyを送達する。しかし、要件に応じて、エネルギー供給デバイス17は、異なる値を有する異なる電圧を送達することができる。追加または代替として、エネルギー供給デバイス17は、電源として設計されていてもよい。
【0072】
エラー処理モジュール15は、所定のDASフィールド1511をフレーム450に挿入する挿入ブロック151と、シグナリングブロック152とを有する。ブロック151、152については以下でより詳細に述べる。
【0073】
送信/受信デバイス12は、送信モジュール121および受信モジュール122をさらに有する。以下では常に送信/受信デバイス12に言及するが、代替として、送信モジュール121の外部の別個のデバイスに受信モジュール122を設けることも可能である。送信モジュール121および受信モジュール122は、従来の送信/受信デバイス22と同様に構成されていてもよい。送信モジュール121は、特に、少なくとも1つの演算増幅器および/または少なくとも1つのトランジスタを有することができる。受信モジュール122は、特に、少なくとも1つの演算増幅器および/または少なくとも1つのトランジスタを有することができる。
【0074】
送信/受信デバイス12は、バス40、より正確に言うとCAN_HまたはCAN-XL_H用のバス40の第1のバスワイヤ41、およびCAN_LまたはCAN-XL_L用のバス40の第2のバスワイヤ42に接続されている。第1および第2のバスワイヤ41、42に電気エネルギー、特に電圧CAN-Supplyを供給するためのエネルギー供給デバイス17用の電圧供給が、少なくとも1つのポート43を介して行われる。接地またはCAN_GNDとの接続は、ポート44を介して実現されている。第1および第2のバスワイヤ41、42は、終端抵抗49で終端されている。
【0075】
第1および第2のバスワイヤ41、42は、見やすくするために図3にはこの接続を示していないが、送信/受信デバイス12において、送信機とも呼ばれる送信モジュール121だけでなく、受信機とも呼ばれる受信モジュール122にも接続されている。
【0076】
バスシステム1の動作時、送信モジュール121は、通信制御デバイス11の送信信号TXDまたはTxDを、バスワイヤ41、42に関する対応する信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lに変換し、これらの信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lを、バス40でCAN_HおよびCAN_L用のポートに送信する。
【0077】
受信モジュール122は、図4によるバス40から受信された信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lから、受信信号RXDまたはRxDを生成し、図3に示されるように、これを通信制御デバイス11に転送する。アイドルまたはスタンバイ状態(IdleまたはStandby)を除いて、受信モジュール122を備えた送信/受信デバイス12は、通常動作では、送信/受信デバイス12がメッセージ45の送信側であるか否かに関係なく、バス40でのデータまたはメッセージ45、46の伝送を常にリッスンする。
【0078】
図4の例によれば、信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lは、少なくとも調停フェーズ451において、CANから知られているようにドミナントおよびレセシブバスレベル401、402を有する。バス40に差分信号VDIFF=CAN-XL_H-CAN-XL_Lが生じ、これは、調停フェーズ451に関して図5に示されている。ビット時間t_bt1を有する信号VDIFFの個々のビットは、調停フェーズ451では例えば0.7Vの受信閾値T_aで認識され得る。データフェーズ452では、信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lのビットは、調停フェーズ451よりも速く、すなわち短いビット時間t_bt2で送信される。これは、図6図10に基づいてより詳細に説明されている。したがって、データフェーズ452における信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lは、少なくともそれらのビットレートがより速いという点において、従来の信号CAN_HおよびCAN_Lとは異なる。
【0079】
図4での信号CAN-XL_H、CAN-XL_Lに関する状態401、402のシーケンス、およびそこから得られる図5の電圧VDIFFのプロファイルは、加入者局10の機能を説明する目的のものにすぎない。バス状態401、402に関するデータ状態のシーケンスは、必要に応じて選択可能である。
【0080】
言い換えると、送信モジュール121は、第1の動作モードB_451(SLOW)に切り替えられているとき、図4に従って、バス40のバスラインの2つのバスワイヤ41、42に関して異なるバスレベルを備えたバス状態402として第1のデータ状態を生成し、バス40のバスラインの2つのバスワイヤ41、42に関して同じバスレベルを備えたバス状態401として第2のデータ状態を生成する。
【0081】
さらに、送信モジュール121は、データフェーズ452を含む第2の動作モードB_452_TX(FAST_TX)における信号CAN-XL_H、CAN-XL_Lの時間プロファイルのために、より高いビットレートでビットをバス40に送信する。CAN-XL_HおよびCAN-XL_L信号は、データフェーズ452でさらに、CAN FDの場合とは異なる物理層を用いて生成され得る。それにより、データフェーズ452でのビットレートは、CAN FDの場合よりもさらに増加させることができる。データフェーズ452でフレーム450の送信側ではない加入者局は、その送信/受信デバイスで第3の動作モードB_452_RX(FAST_RX)を設定する。
【0082】
動作モードB_451から動作モードB_452_TX(FAST_TX)または動作モードB_452_RX(FAST_RX)への切替えを信号通知するために、通信制御デバイス11は、送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)を行う。この目的のために、通信制御デバイス11は、CAN XLフレーム450の論理ビット毎に1つ以上のPWMシンボルを使用する。基本的に、PWMシンボルは2つのフェーズ、すなわち0フェーズと1フェーズとからなる。さらに、PWMシンボルは2つの等しいエッジ(例えば、2つの立ち上がりエッジ)によって区切られる。
【0083】
図3のエラー処理モジュール15、特にその挿入ブロック151は、加入者局10がフレーム450の送信側として動作するときに、DASフィールド1511をフレーム450に挿入するために使用される。さらに、エラー処理モジュール15、特にそのシグナリングブロック152は、動作モードB_452_TX(FAST_TX)、B_451(SLOW)間の切替えに関して後述するように、パルス幅変調(PWM)を実行することができる。
【0084】
図6は、時間tにわたって、フレーム450のデータフェーズ452の最後の領域における、最終的に得られるデジタル送信信号TxDを示す。フレーム450では、ビットFCP3~FCP0の後、DASフィールド1511が挿入されている。送信信号TxDは、以下でより詳細に述べるように、フレーム450の送信側としての通信制御デバイス11によって、送信/受信デバイス12にシリアルに送信される。ビットDAHまで、フレーム450のビットはビット持続時間t_bt2を有する。ビットDAHから、フレーム450のビットはビット持続時間t_bt1を有する。図6の例では、ビット持続時間t_bt2はビット持続時間t_bt1より短い。
【0085】
図7は、時間tにわたって、通信制御デバイス11と送信/受信デバイス12との間のポートTXDでシリアルに生じる、送信信号TxDから得られる状態を示す。このために、通信制御デバイス11、例えばエラー処理モジュール15、特にシグナリングブロック152は、データフェーズ452で、図6の送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)を実行する。図7の例では、PWMシンボルSB_D0において、0フェーズが1フェーズよりも長く、これは、送信信号TxDでの論理値0を有するビットに対応する。一方、PWMシンボルSB_D1では、1フェーズが0フェーズよりも長く、これは、論理1を有するビットに対応する。当然、PWMシンボルSB_D0、SB_D1は、異なる形で定義することもでき、特に上述したものとは正反対にすることもできる。データフェーズ452の後、図6に示されるように、送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)が終了する。調停フェーズ451では、送信信号TxDのパルス幅変調(PWM)は行われない。動作モードB_452_TX(FAST_TX)または動作モードB_452_RX(FAST_RX)FAST_RXから動作モードB_451(SLOW)への切替えは、PWM符号化をオフにすることによって、したがって多くのエッジの未発生によって信号通知される。
【0086】
調停フェーズ451の最後に、送信/受信デバイス12は、送信信号TxDのエッジの高い頻度により、調停フェーズの動作モードB_451から高速動作モードB_452_TX(FAST_TX)、B_452_RX(FAST_RX)の1つに切り替えるべきである、またはそこに留まるべきであることを認識する。最初のPWMシンボルまたは最初のM個のシンボルの値で、送信/受信デバイス12は、動作モードB_452_TX(FAST_TX)または動作モードB_452_RX(FAST_RX)に切り替えるべきかどうかを認識する。Mは、1以上の自然数である。
【0087】
図8は、図7のポートTXDでの状態から送信/受信デバイス12によって復号化された信号TxD_TCの時間プロファイルを示す。さらに、図8は、送信/受信デバイス12の動作状態を示す。送信/受信デバイス12は、ビットDAHにおいて、フレーム450がビット持続時間t_bt2のビットを有するその動作モードB_452_TXを、フレーム450がビット持続時間t_bt1のビットを有する動作モードB_451に切り替える。さらに、フレーム450のビットは、動作モードB_451で、前述したように動作モードB_452_TXとは異なる物理層でバス40に送信され得る。送信/受信デバイス12は、所定の期間T_TO(TimeOut)の経過後、特にRC要素によって、所定の時間T_TOにわたってエッジが到着しなかったことを認識することができる。送信/受信デバイス12は、所定の期間T_TO(TimeOut)の経過を認識した場合、その動作モードB_451(SLOW)に切り替わる。
【0088】
したがって、送信/受信デバイス12は、図7のポートTXDでの状態を、図8による信号TxD_TCに復号化する。ポートTXDでのPWMシンボルSB_D0、SB_D1のそれぞれは、PWMシンボルSB_D0、SB_D1の最後に復号化され得る。したがって、送信/受信デバイス12での復号化は、バス40にシリアルに送信され得る信号TxD_TCに遅延期間T_VZを挿入する。遅延期間T_VZは、図8に示されているように、PWMシンボルSB_D0、SB_D1のうちの1つのシンボル長の期間に等しい。
【0089】
送信/受信デバイス12は、図7のポートTXDでの状態を、図8による信号TxD_TCに復号化した後、信号TxD_TCを、図9に示される差分電圧VDIFFとしてバス40に送信する。
【0090】
図10は、時間tにわたって、送信/受信デバイス12のRXDポートでの信号のプロファイルを示す。送信/受信デバイス12は、送信/受信デバイス12が動作モードB_452_TXにある限り、RXDポートを介して受信信号RxDを1として送信する。送信/受信デバイス12が動作モードB_452_TXにあるこの期間は、期間T_Sに対応し、その最後は、図10に概略的に示されている。動作モードB_452_TX(FAST_TX)では、RXD=1が適用される。動作モードB_452では、送信/受信デバイス12は、バス40から受信された差分電圧VDIFFから送信/受信デバイス12が生成したデジタル受信信号RxDの状態に対応する状態を、ポートRXDを介して送信する。
【0091】
したがって、図6図10に示すように、図3のエラー処理モジュール15は、この例示的実施形態では、DASフィールドが、値1の2つのビット(DAH、AH1)と、それに続く値0(ドミナント)の1つのビット(AL2)とを有するように設計されている。
【0092】
DAHビットは、DASフィールド1151で、遷移ビットである。DAHビットは、送信ノードまたは送信/受信デバイス12によって、少なくとも最後の部分でレセシブレベルで送信される。送信ノードは、現行のデータフェーズ452においてフレーム450の送信側であり、したがってフレーム450をバス40に送信する加入者局である。以下では、加入者局10がフレーム450に関する送信ノードであり、加入者局30が受信ノードであると仮定されている。
【0093】
フレーム450に関する送信ノードとしての加入者局10において、通信制御デバイス11は、DAHビットの先頭で、送信/受信デバイス12がその動作モードを動作モードB_452_TX(FAST_TX)からB_451(SLOW)に切り替える必要があることを信号通知する。例えば、DAHビットの先頭は、DAHビットの最大50%に相当する。送信/受信デバイス12は、DAHビットでのこの信号通知に基づいて、図7および図8に示されているように、所定の時間T_TOの経過後、動作モードB_452_TX(FAST_TX)からB_451(SLOW)へのその動作モードの切替えを実行する。期間T_TO中、図9によるバスレベル、すなわちVDIFFの値は、確実にはレセシブではない。
【0094】
図6および図7によれば、送信ノードとしての加入者局10、より正確には送信/受信デバイス12は、フレーム450に関して、最後の部分でDAHビットをレセシブレベルで送信する。この最後の部分も同様に例えば50%に対応する。その後、加入者局10は、AH1ビットを完全にレセシブレベルで送信する。その後、加入者局10は、AL2ビットを完全にドミナントレベルで送信する。したがって、バス40で、所定の期間T_RBにわたってレセシブバス状態が生じる。所定の期間T_RBは、図6図9の例では、ビット持続時間t_bt1を有するビットの1.5ビット分に対応する。
【0095】
したがって、図6図10によれば、FCP0ビットは、PWMシンボルを用いて符号化されて送信/受信デバイス12に伝送される最後のビットである。DAHビット中、通信制御デバイス11、特にエラー処理モジュール15は、TxD信号を1として送信する。FCP0ビットは値として論理0を有するので、論理0が、デバイス12によって+1Vの値を有する差分電圧としてバス40上にドライブされる。送信/受信デバイス12は、例えば500nsまたは別の値の期間T_TO(TimeOut)の後、ポートTXDにエッジが生じないことを認識する。したがって、送信/受信デバイス12は、図8に示されているように、その動作モードを動作モードB_451(SLOW)に切り替える。TxD信号に1が存在するので、送信/受信デバイス12はここで、バス40上にレセシブレベルをドライブする。次のAH1ビットも同様に、バス40上にレセシブレベルでドライブされる。したがって、送信ノードは、AL2ビットの直前に調停ビット時間t_bt1よりもかなり長い持続時間T_RBでレセシブレベルを生成する。
【0096】
その結果、DASフィールドは、データフェーズ452から調停フェーズ451への切替え前に確実な同期エッジを提供するビットシーケンス110を含む。これにより、各受信ノード、すなわち現行のデータフェーズ452でフレーム450の送信側ではなく、したがってフレーム450の受信側にすぎない加入者局が、DASフィールドでのAL2ビット(ドミナント)の立ち下がりエッジの直前に、少なくとも1つの調停ビットの持続時間t_bt1にわたるレセシブレベルを確認したことが保証され得る。これは、ビットが短縮されて受信側に到着する場合にも適用される。ビットの短縮は、ビットの非対称性の影響により生じ得る。ビット非対称性は、送信/受信デバイス12、22、32(トランシーバ)、終端抵抗、スタブなどの理想的でないコンポーネントによってもたらされる。したがって、各受信ノードは、AH1とAL1との間のエッジの前に少なくとも1つのレセシブビットを確認し、これは、同期に必要な前提条件である。
【0097】
これにより、受信ノードがエラーフレーム47を送信するのではなく、受信ノードがエラーを確認した場合に以下のように対処するエラー処理が可能になる。エラーが確認された場合、受信ノード、例えば加入者局30は、その送信/受信デバイス32が調停フェーズ451の動作モード(SLOW動作モード)にまだなっていなかった場合には送信/受信デバイス32をその動作モードに切り替え、前述したように、調停フェーズ451の11個のレセシブビットからなるバスアイドルシーケンスを待機する。次いで、ビットシーケンス110を有するDASフィールドは、バスアイドルシーケンスの開始前に必要な確実な同期エッジを提供する。
【0098】
この例示的実施形態の変形形態によれば、通信制御デバイス11、例えばエラー処理モジュール15、特にシグナリングブロック152は、送信/受信デバイス12が動作モードB_452_TX(FAST_TX)に切り替えるべきであることを送信/受信デバイス12に信号通知しない。代替として、加入者局10に、通信制御デバイス11に関して、動作モードB_452_TX(FAST_TX)またはB_452_RX(FAST_RX)を有さない送信/受信デバイス、特に送信/受信デバイス22が存在し得る。これらのどちらの代替形態でも、送信ノードは、DAHビットが論理「1」であるので、DAHビットをレセシブビットとして送信する。
【0099】
この変形形態およびその代替形態に関しても、各受信ノードが、DASフィールドで、AL2ビット(ドミナント)の立ち下がりエッジの直前に、少なくとも調停ビットの期間である持続時間t_bt1にわたってレセシブレベルを確認したことが保証されている。
【0100】
図11図15は、第2の例示的実施形態による時間プロファイルであり、この時間プロファイルは、以下の態様では、図6図10の時間プロファイルとは異なる。
図12に示されているように、DAHビットの先頭で、論理値1に対応する少なくとも1つのPWMシンボルが送信される。図12の例では、PWMシンボルSB_D1が送信される。このために、通信制御デバイス11、例えばエラー処理モジュール15、特にシグナリングブロック152は、DAHビットの対応するパルス幅変調(PWM)を実行する。続いて、通信制御デバイス11、例えばエラー処理モジュール15、特にシグナリングブロック152は、DAHビット中にTxD信号を1として送信する。
【0101】
論理1に関するPWMシンボルが最後に送信されたので、図13の信号TxD_TCも、DAHビットの先頭ですでに論理1である。したがって、差分電圧VDIFFは、図14に示されるように、DAHビットの期間T_TO(TimeOut)(図12)にわたって、-1Vの値を有する。
【0102】
送信/受信デバイス12は、例えば500nsまたは別の値の期間T_TO(TimeOut)(図12)の後、ポートTXDにエッジが生じないことを認識する。したがって、送信/受信デバイス12は、図13に示されるように、その動作モードを動作モードB_451(SLOW)に切り替える。TxD信号に1が存在するので、送信/受信デバイス12はここで、バス40にレセシブレベルをドライブする。次のAH1ビットも同様に、バス40にレセシブレベルでドライブされる。
【0103】
したがって、この例示的実施形態でも、送信ノードは、AL2ビットの直前に、調停ビット時間t_bt1よりもかなり長いレセシブレベルを生成する。
それ以外は、2つの例示的な実施形態のバスシステム1の機能動作は同じである。
【0104】
図16図20は、第3の例示的実施形態による時間プロファイルを示し、この時間プロファイルは、以下の態様では、図6図10の時間プロファイルとは異なる。
図17に示されているように、通信制御デバイス11、例えばエラー処理モジュール15、特にシグナリングブロック152は、DAHビットの先頭で、論理値0に対応するが立ち下がりエッジを有さないPWMシンボルを送信する。ここで、図17の例では、PWMシンボルSB_D0は、立ち下がりエッジなしで送信される。次いで、通信制御デバイス11、例えばエラー処理モジュール15、特にシグナリングブロック152は、図18に示されているように、DAHビット中に送信/受信デバイス12がその動作モードを動作モードB_451(SLOW)に切り替えられている、または変更され終わるまで、TxD信号を0として送信する。
【0105】
送信/受信デバイス12は、例えば500nsまたは別の値の期間T_TO(TimeOut)(図17)の後、ポートTXDにエッジが生じないことを認識する。したがって、送信/受信デバイス12は、図18に示されているように、その動作モードを動作モードB_451(SLOW)に切り替える。図17によるポートTXDでの信号は、この時点でまだ値0を有しているので、送信/受信デバイス12は、バス40上にドミナントレベルをドライブする。したがって、差分電圧VDIFFは、図19に示されているように+2Vの値を有する。
【0106】
図20に示されているように、通信制御デバイス11、例えばエラー処理モジュール15、特にシグナリングブロック152は、動作モードB_451(SLOW)を、RXDポートでの値に基づいて認識する。動作モードB_452_TX(FAST_TX)では、図20での期間T_Sによって示されているように、RXD=1が適用される。動作モードB_451(SLOW)では、RXDポートの値は、図19および図20に示されているように、バス40の差分電圧VDIFFの論理値である。
【0107】
通信制御デバイス11、例えばエラー処理モジュール15、特にシグナリングブロック152は、送信/受信デバイス12が動作モードB_451(SLOW)に切り替えられていることをRXDの値(RXD=0)で認識するとすぐに、図17によるポートTXDで、図16によるTxD信号を、DAHビットの残りに関して1として送信する。次のAH1ビットも同様に、バス40上にレセシブレベルでドライブされる。
【0108】
したがって、この例示的実施形態でも、送信ノードは、AL2ビットの直前に、調停ビット時間t_bt1よりもかなり長いレセシブレベルを生成する。
それ以外は、バスシステム1の機能動作は他の例示的実施形態と同じである。
【0109】
3つの例示的実施形態は、とりわけ、レセシブレベルに関する差分電圧VDIFF=0への遷移が行われる差分電圧VDIFFに関して異なる。ここで、差分電圧VDIFF=0のレセシブレベルに加えてさらに3つのレベル、すなわちドミナントに関するVDIFF=+2V、データフェーズでの論理0に関するVDIFF=+1V、データフェーズ452での論理1に関するVDIFF=-1Vが存在するので、送信/受信デバイスの動作モード切替えが使用される場合に関して3つの可能性が存在する。
【0110】
加入者局10、20、30、バスシステム1、およびそこで実施される方法の前述したすべての構成は、個別に、またはすべての可能な組合せで使用することができる。特に、上述した例示的実施形態のすべての特徴および/またはそれらの変形形態は、任意に組み合わせられ得る。追加または代替として、特に以下の変形形態が考えられる。
【0111】
CANバスシステムの例で本発明を前述してきているが、本発明は、異なる通信フェーズのために生成されるバス状態が異なる、2つの異なる通信フェーズが使用される各通信ネットワークおよび/または通信方法で使用されてもよい。特に、本発明は、イーサネットおよび/または100Base-T1イーサネット、フィールドバスシステムなどの他のシリアル通信ネットワークの開発に使用可能である。
【0112】
特に、例示的実施形態によるバスシステム1は、データを2つの異なるビットレートでシリアル伝送可能である通信ネットワークでであってもよい。バスシステム1において、共通のチャネルへの加入者局10、20、30の排他的で衝突のないアクセスが少なくとも特定の期間にわたって保証されていることは、有利であるが、必須の前提条件ではない。
【0113】
当然、DASフィールドは、3つの例示的実施形態で述べた3つのビットよりも多くのビットを有することもできる。ここでは、エッジの前のフィールド(DAS)が、調停フェーズ451(第1の通信フェーズ)のビット時間t_bt1の期間よりも長い期間T_RBを有する所定の長さを有することだけが必要とされる。好ましくは、期間T_RBは、前述したように、調停フェーズ451の1.5ビットの期間以上である。
【0114】
例示的実施形態のバスシステム1における加入者局10、20、30の数および配置は任意である。特に、バスシステム1での加入者局20は省略することができる。加入者局10または30のうちの1つまたは複数がバスシステム1に存在することが可能である。バスシステム1内のすべての加入者局が同一に設計されている、すなわち加入者局10のみまたは加入者局30のみが存在することも考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-10】
図11-15】
図16-20】
【国際調査報告】