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特表2023-536358PET-CT撮像方法、その撮像方法における使用のための造影剤および医薬組成物
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  • 特表-PET-CT撮像方法、その撮像方法における使用のための造影剤および医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】PET-CT撮像方法、その撮像方法における使用のための造影剤および医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/04 20060101AFI20230817BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20230817BHJP
   A61K 51/12 20060101ALI20230817BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230817BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230817BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230817BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230817BHJP
【FI】
A61K49/04 210
A61K51/04 320
A61K51/12 200
A61K9/10
A61K47/24
A61K47/26
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507860
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 EP2021072014
(87)【国際公開番号】W WO2022029294
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】20189928.3
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322003189
【氏名又は名称】アディポス エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ストランスキー-ハイルクロン,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】バビチ,アンドレイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB01
4C076CC50
4C076DD46
4C076DD63
4C076DD68
4C076EE23
4C076FF11
4C085HH03
4C085JJ03
4C085KA18
4C085KA20
4C085KA29
4C085KB38
4C085KB39
4C085LL18
4C085LL20
(57)【要約】
本発明は、PET-CTスキャンにおいて腫瘍組織を褐色脂肪組織から識別するための方法について記述する。特に、本発明は、ヒトがん患者において、PET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象およびとりわけヒトがん患者において、PET-CT撮像方法およびとりわけPET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法であって、
a)前記ヒト対象およびとりわけヒトがん患者に、一般式I:
【化1】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルアルキル、ヘテロアリール、非芳香族ヘテロ環またはアルキルカルボニルオキシアルキルであり、これらの基は、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基および非芳香族ヘテロ環からそれぞれ独立して選択される1つまたは複数、好ましくは1~5つ、より好ましくは1、2、3または4つの置換基で置換されていてもよく、これらのハロゲン置換基のそれぞれは、F、Cl、BrおよびIから独立して選択されてもよく、複数のヨウ素原子が存在する場合、ジェミナルまたはビシナル位のいずれにも2個のヨウ素原子があってはならない)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物から選択される作用物質を含むPET-CT造影剤を投与する工程と、
b)工程a)のPET-CT造影剤の投与の少なくとも3時間後に、18FDG PETトレーサーを投与する工程と、
c)前記ヒト対象およびとりわけヒトがん患者に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
がん患者において悪性でも転移性でもない組織を同定するため、および/または悪性もしくは転移性の組織を同定するための方法であって、請求項1の方法工程a)~c)を実施した後に以下の工程:
d)前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアを同定する工程と、
e)18FDGの陽性造影増強はあるが前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを同定する工程と、
f)工程d)において同定された共局在があるエリアを悪性腫瘍も転移もないエリアとして割り当て、工程e)において同定された共局在がないエリアを悪性腫瘍または転移がある可能性のあるエリアとして割り当てる工程と
が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がんの予後を評価するための方法であって、請求項1の方法工程a)~c)を実施した後に以下の工程:
d)PET-CTスキャンを健康な個体のものと比較する工程と、
e)前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアを高度に活性なBATとして決定する工程と、
f)前記PET-CT造影剤の陽性造影増強はあるが18FDGが存在しないエリアをBATとして決定する工程と、
g)工程d)、e)およびf)において取得された結果に基づいて、処置されるがんの予後を評価する工程と
が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
がん診断のための方法であって、請求項1の方法工程a)~c)を実施した後に以下の追加の工程:
d)18FDGの陽性造影増強はあるが前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを同定する工程と、
e)18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がないエリアを悪性腫瘍または転移がある可能性のあるエリアとして割り当てる工程と、
f)工程e)において同定されたエリアの局在を評価することによってがんを診断する工程と
が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
腫瘍の病期分類または再病期分類のための方法であって、請求項1の方法工程a)~c)を実施した後に以下の追加の工程:
d)18FDGの陽性造影増強はあるが前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを同定する工程と、
e)18FDGの陽性造影増強はあるが前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを悪性腫瘍または転移がある可能性のあるエリアとして割り当てる工程と、
f)工程e)において同定された可能性のあるエリアの局在および体積および/もしくは表面積、リンパ節の関与ならびに/または転移の存在を評価することによって、患者をTNMシステムの適切な病期に割り当てる工程と
が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
療法の効能を評価するまたはがんの進行を評価するための方法であって、請求項1の方法工程a)~c)を実施した後に以下の追加の工程:
d)18FDGの陽性造影増強はあるが前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを悪性腫瘍または転移がある可能性のあるエリアとして同定する工程と、
e)18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がない同定されたエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
f)任意選択により患者を抗がん療法に供する工程と、
g)工程a)~e)を繰り返す工程と、
h)工程g)に従って同定されたエリアの体積および/または表面積が工程e)に従って同定されたエリアの体積および/または表面積に等しいまたはそれよりも小さい場合には、実施されたならば有効な療法および/またはがんの進行の欠如を割り当て、ならびに工程g)に従って同定されたエリアの体積および/または表面積が工程e)に従って同定されたエリアの体積および/または表面積よりも大きい場合には、実施されたならば療法の有効性の欠如および/またはがんの進行を割り当てる工程と
が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
BAT活性を決定するための方法であって、請求項1の方法工程a)~c)を実施した後に以下の追加の工程:
d)前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリア、ならびに前記PET-CT造影剤のみの陽性造影増強があるエリアを同定する工程と、
e)工程d)において同定された通りの前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
f)工程d)において同定された通りの前記PET-CT造影剤のみの陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
g)工程e)において決定された体積および/または表面積を、工程f)において決定された体積および/または表面積で割った比を算出する工程と、
h)前記比を、がん患者の集団に対して工程a)~g)を実施することにより平均値として決定された基準比と比較する工程と、
i)決定された比が基準比よりも高い場合には増大したBAT活性を割り当て、決定された比が基準比とほぼ同じである場合には正常なまたは低減したBAT活性を割り当て、決定された比が基準比よりも低い場合には低減したBAT活性を割り当てる工程と
が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
がんの予後のための方法であって、請求項7の方法工程a)~i)を実施した後に以下の追加の工程:
j)ホルモン依存性がんに罹患している患者において低減したBAT活性が工程i)で割り当てられる場合には予後不良を割り当て、ホルモン非依存性がんに罹患している患者において増大したBAT活性が工程i)で割り当てられる場合には予後不良を割り当てる工程
が行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
がんの予後のための方法であって、請求項1の方法工程a)~c)を実施した後に以下の追加の工程:
d)前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がある陽性造影増強のエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
e)決定された体積および/または表面積を、がん患者の集団に対して工程a)~d)を実施することにより平均値として決定された基準値と比較する工程と、
f)ホルモン依存性がんに罹患している患者において定量化された体積および/または表面積が基準値よりも低い場合には予後不良を割り当て、ホルモン非依存性がんに罹患している患者において定量化された体積および/または表面積が基準値よりも高い場合には予後不良を割り当てる工程と
が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
がんの予後のための方法であって、請求項1の方法工程a)~c)を実施した後に以下の追加の工程:
d)PET-CT造影剤の陽性造影増強の体積および/または表面積を決定する工程と、
e)決定された体積および/または表面積を、健康な人物または健康な人物の群から導出された基準値と比較する工程と、
f)ホルモン依存性がんに罹患している患者において定量化された体積および/または表面積が基準値よりも低い場合には予後不良を割り当て、ホルモン非依存性がんに罹患している患者において定量化された体積および/または表面積が基準値よりも高い場合には予後不良を割り当てる工程と
が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ヒト対象における代謝性疾患を、前記ヒト対象において褐色および/またはベージュ脂肪組織をPET-CT撮像することによって同定するための方法であって、請求項1の工程a)~c)ならびに以下の追加の工程:
d)工程c)のPET-CTスキャンにおいてPET-CT造影剤の陽性造影増強の体積および/または表面積を定量化する工程と、
e)工程d)の定量化された体積および/または表面積を、1人または複数の健康な人物から導出された基準値と比較する工程と、
f)定量化された体積および/または表面積が基準値よりも低い場合には不十分な代謝状態を、定量化された体積および/または表面積が基準値に等しいまたはそれよりも高い場合には良好な代謝状態を割り当てる工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
肥満および/または2型糖尿病に対する処置の効能を評価するための方法であって、以下の工程:
1)請求項1において指定されたPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程10)の比較が工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法。
【請求項13】
肥満および/または2型糖尿病に対する処置の効能を評価するための方法であって、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者または患者の群に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程1)~10)を異なる患者または患者の群で実施するが、工程4において肥満および/または2型糖尿病処置の代わりにプラセボ処置が施される工程と、
12)肥満および/または2型糖尿病処置患者または患者群における工程10)の比較が、プラセボ患者または患者群における工程10)の比較で取得されたものよりも大きい工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法。
【請求項14】
肥満および/または2型糖尿病に対する処置の効能を評価するための方法であって、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程10)の比較が工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法。
【請求項15】
肥満および/または2型糖尿病に対する処置の効能を評価するための方法であって、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者または患者の群に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程1)~10)を異なる患者または患者の群で実施するが、工程4において肥満および/または2型糖尿病処置の代わりにプラセボ処置が施される工程と、
12)肥満および/または2型糖尿病処置患者または患者群における工程10)の比較が、プラセボ患者または患者群における工程10)の比較で取得されたものよりも大きい工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法。
【請求項16】
肥満および/または2型糖尿病に対する処置の効能を評価するための方法であって、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
11)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
12)工程8)において決定された体積および/または表面積を工程10)における体積および/または表面積で割ることにより第1の比を算出する工程と、
13)工程9)において決定された体積および/または表面積を工程11)における体積および/または表面積で割ることにより第2の比を算出する工程と、
14)工程12)において決定された比を、工程13)において決定された比と比較する工程と、
15)工程14)の比較が工程12)から工程13)への比の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法。
【請求項17】
肥満および/または2型糖尿病に対する処置の効能を評価するための方法であって、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者または患者の群に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
11)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
12)工程8)において決定された体積および/または表面積を工程10)における体積および/または表面積で割ることにより第1の比を算出する工程と、
13)工程9)において決定された体積および/または表面積を工程11)における体積および/または表面積で割ることにより第2の比を算出する工程と、
14)工程12)において決定された比を、工程13)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
15)工程1)~14)を異なる患者または患者の群で実施するが、工程4において肥満および/または2型糖尿病処置の代わりにプラセボ処置が施される工程と、
16)肥満および/または2型糖尿病処置患者または患者群における工程14)の比較が、プラセボ患者または患者群における工程14)の比較で取得されたものよりも大きい工程12)から工程13)への比の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法。
【請求項18】
抗がん処置の効能を評価するための方法であって、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、抗がん処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)抗がん処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、抗がん処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がないエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がないエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程10)の比較が工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示さない場合には、抗がん処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法。
【請求項19】
抗がん処置の効能を評価するための方法であって、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者または患者の群に、抗がん処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)抗がん処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者に、抗がん処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がないエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がないエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程1)~10)を異なる患者または患者の群で実施するが、工程4)において抗がん処置の代わりにプラセボ処置または基準処置が施される工程と、
12)抗がん処置患者または患者群における工程10)の比較が、プラセボ患者または患者群における工程10)の比較で取得されたものよりも小さい工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、抗がん処置の効能を割り当てる、あるいは、工程11)において基準処置を使用する場合、抗がん処置患者または患者群における工程10)の比較が、基準処置を受けている患者または患者群における工程10)の比較で取得されたものよりも小さいまたはそれに等しい工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、抗がん処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法。
【請求項20】
PET-CT造影剤が経口的に投与される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
経口的に投与されるPET-CT造影剤が、前記ヒトがん患者における褐色および/またはベージュ脂肪組織(BAT)の非侵襲的インビボ撮像、定量化および/またはその活性のモニタリングに適合される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
経口的に投与されるPET-CT造影剤が、生体適合性製剤の形態である、請求項20または21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
生体適合性製剤が乳剤である、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
乳剤が、レシチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ショ糖エステル、ソルビタンエステルおよび/またはそれらの混合物を含む群から選択される生体適合性乳化剤を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
乳剤中における前記生体適合性乳化剤の量が、全乳剤の3~50%(w/w)の間である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
乳剤中における前記生体適合性乳化剤の量が、全乳剤の5~25%(w/w)の間である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
経口的に投与されるPET-CT剤が、体重1グラム当たりヨウ素0.004~0.5mgの間に対応する用量で投与される、請求項20から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
経口的に投与されるPET-CT剤が、体重1グラム当たりヨウ素0.02~0.2mgの間に対応する用量で投与される、請求項20から26のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記がんが、肺、結腸直腸、乳房、婦人科関連、頭頸部、食道、胃、胆道、濾胞性および髄様性甲状腺、ならびに膵臓がん、白血病、黒色腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、褐色細胞腫、脂肪腫、脂肪肉腫および原発性脳腫瘍からなる群から選択される、請求項1から10および20から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
18歳未満のヒトがん患者における使用のために適合される、請求項1から10および20から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記ヒトがん患者における、がんの検出および/もしくはがんの病期分類および/もしくはがんの再病期分類に適合される、ならびに/または前記がんの処置実績を評価するためのものである、請求項1および20から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
ヒト対象における代謝性疾患を、前記ヒト対象において褐色および/またはベージュ脂肪組織をPET-CT撮像することによって同定するための方法であって、
a)前記ヒト対象に、一般式I:
【化2】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルアルキル、ヘテロアリール、非芳香族ヘテロ環またはアルキルカルボニルオキシアルキルであり、これらの基は、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基および非芳香族ヘテロ環からそれぞれ独立して選択される1つまたは複数、好ましくは1~5つ、より好ましくは1、2、3または4つの置換基で置換されていてもよく、これらのハロゲン置換基のそれぞれは、F、Cl、BrおよびIから独立して選択されてもよく、複数のヨウ素原子が存在する場合、ジェミナルまたはビシナル位のいずれにも2個のヨウ素原子があってはならない)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含むPET-CT造影剤を投与する工程と、
b)工程a)のPET-CT造影剤の投与の少なくとも3時間後に、18FDG PETトレーサーまたは別のPETトレーサーを投与する工程と、
c)18FDG PET-CTスキャンまたは前記他のPETトレーサーに適切なPET-CTスキャンを、前記ヒト対象に対して実施する工程と
を含む、方法。
【請求項33】
PET-CT造影剤が、経口的に投与される、請求項32に記載の代謝性疾患を同定するための方法。
【請求項34】
ヒト対象が、肥満、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に罹患している、請求項32または33のいずれかに記載の代謝性疾患を同定するための方法。
【請求項35】
ヒト対象が、がんを有さない、請求項32から34のいずれかに記載の代謝性疾患を同定するための方法。
【請求項36】
一般式I:
【化3】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルアルキル、ヘテロアリール、非芳香族ヘテロ環またはアルキルカルボニルオキシアルキルであり、これらの基は、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基および非芳香族ヘテロ環からそれぞれ独立して選択される1つまたは複数、好ましくは1~5つ、より好ましくは1、2、3または4つの置換基で置換されていてもよく、これらのハロゲン置換基のそれぞれは、F、Cl、BrおよびIから独立して選択されてもよく、複数のヨウ素原子が存在する場合、ジェミナルまたはビシナル位のいずれにも2個のヨウ素原子があってはならない)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含むPET-CT造影剤の、
ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するためのPET-CT撮像方法における使用であって、
a)前記ヒトがん患者に、前記経口PET-CT造影剤を経口的に投与する工程と、
b)工程a)のPET-CT造影剤の投与の少なくとも3時間後に、18FDG PETトレーサーを投与する工程と、
c)前記ヒトがん患者に対して、前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在について18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と
を含む方法における、使用。
【請求項37】
一般式I:
【化4】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルアルキル、ヘテロアリール、非芳香族ヘテロ環またはアルキルカルボニルオキシアルキルであり、これらの基は、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基および非芳香族ヘテロ環からそれぞれ独立して選択される1つまたは複数、好ましくは1~5つ、より好ましくは1、2、3または4つの置換基で置換されていてもよく、これらのハロゲン置換基のそれぞれは、F、Cl、BrおよびIから独立して選択されてもよく、複数のヨウ素原子が存在する場合、ジェミナルまたはビシナル位のいずれにも2個のヨウ素原子があってはならない)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む、医薬組成物であって、
がんの検出および/もしくはがんの病期分類および/もしくはがんの再病期分類における使用のための、ならびに/またはヒトがん患者におけるがん処置の実績を評価するための、ならびに/または代謝性疾患を同定するための、ならびに/または肥満、糖尿病2型もしくはがんに対する処置の開発のための、ならびに/または請求項1から36のいずれかにおいて指定された通りの方法における使用のための、医薬組成物。
【請求項38】
がんの検出および/もしくはがんの病期分類および/もしくはがんの再病期分類における使用のための、ならびに/またはヒトがん患者におけるがん処置の実績を評価するための、ならびに/または代謝性疾患を同定するための、ならびに/または肥満、糖尿病2型もしくはがんに対する処置の開発のための、ならびに/または請求項1から36のいずれかにおいて指定された通りの方法における使用のための、18FDGを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用撮像剤を用いるPET-CTスキャンにおいて腫瘍組織を褐色脂肪組織から識別するための方法について記述する。特に、本発明は、ヒトがん患者において、PET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法に関する。ヒトがん患者においてPET-CT撮像によって活性化した褐色および/またはベージュ組織の分量を評価することによるがん査定のための予後方法も記述される。
【背景技術】
【0002】
陽電子放射断層撮影(PET)は、放射性物質を使用して体内における代謝過程を可視化および測定する撮像技術である。PETは、代謝、血流、局所的化学組成および吸収のような生理的活動を検出するまたはそれらの変化を測定するための医用撮像の分野で主に使用される。
【0003】
PETスキャンは、スキャンを実施する前に患者への放射性トレーサーの投与を必要とする。最も一般的に使用されるPETトレーサーは、18FDG(2-[フッ素-18]フルオロ-2-デオキシ-D-グルコース)である。このトレーサーは、組織、とりわけ悪性細胞における解糖活性の増大を同定するために使用され、グルコースは、膜グルコース輸送体の増大ならびにグルコースのリン酸化を司るヘキソキナーゼ等の主要な酵素のいくつかの増大により、優先的に濃縮される。18FDGは、グルコースと同様に、GLUT輸送体として公知であるグルコース輸送体タンパク質を利用して腫瘍細胞に輸送され、その後、ヘキソキナーゼによってリン酸化されて18FDG 6-リン酸となる。18FDG 6-リン酸は、それ以上効率的に代謝されず、したがって、細胞内に堆積する。細胞におけるこの18FDGの「代謝捕捉」の過程は、18FDG PETを持つトレーサーのインビボ分布を撮像するための基礎を構成する。撮像された18FDGトレーサーの濃度は、局所的グルコース取り込みに対応することから、組織代謝活性を指し示す。18FDGは、がんが他の身体部位へ広がる可能性(がん転移)を探究するために使用される。原発性がんおよびがん転移を検出するためのこれらの18FDG PETスキャンは、標準医療において最も一般的である(現在のPETスキャンの90%に相当する)。単一セッションで全身を撮像して、予想外の疾患部位を見つける機会を増大させることが可能である。
【0004】
他方で、コンピュータ断層撮影(CT)は、異なる角度から撮影されたいくつかのX線測定のコンピュータ処理された組合せを使用して、スキャンされた被写体の特異的エリアの断面(断層撮影)X線画像を生成する、医用撮像手順である。
【0005】
PET-CTは、PETスキャナーおよびCTスキャナーを組み合わせて、同じ(単一)スキャニングセッションで両方のデバイスから画像を獲得し、これらの画像を組み合わせて単一画像とするものである。故に、PET-CTは、PETによって取得された機能的撮像の正確な解剖学的アライメント(alignement)を可能にする。
【0006】
18FDG PET-CTスキャンは、以下の悪性物:肺、結腸直腸、乳房、婦人科関連、頭頸部、食道、胃、胆道、濾胞性および髄様性甲状腺、ならびに膵臓がん、黒色腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、原発性脳腫瘍および他の腫瘍の、診断および/もしくは病期分類および/もしくは再病期分類、ならびに/または疾患の播種(転移)および/もしくは療法応答の評価に使用される
【0007】
褐色脂肪組織(BAT)は、寒冷および食物誘発性非ふるえ熱産生を司る。BATは、がんおよび慢性疾患を持つ患者におけるエネルギー消費の増大も司る。18FDGは、首(頸部)、肩(鎖骨上)、傍脊椎領域、縦隔、腎周囲および胃周囲領域の褐色脂肪組織に取り込まれ得る。他の非古典的なエリアの取り込みも観察されている。
【0008】
ベージュ脂肪組織は、白色脂肪蓄積において生理病理学的刺激に応答して生じる別の種類の発熱性脂肪組織である。これは、褐色脂肪組織と同様の機能を有する。
【0009】
悪性物の部位を同定することに対しては非常に感受性が高いが、18FDG PETはあまりがん組織特異的ではない。良性疾患で偽陽性の結果が観察されることがあり、13%の偽陽性率および9%の偽陰性率が報告されている。的確に認識されているのでない場合、これらの代謝活性の偽陽性エリアは有意な疾病率および死亡率の潜在性を有する18FDGの褐色脂肪組織取り込みは、患者の5~10%において観察されると報告されている4,5。これは、寒冷気象の数か月の間に、女性および小児においてとりわけ一般的に観察される。特に、Hongらは小児の褐色脂肪組織(BAT)における18FDGの頻繁な取り込みについて記述している。小児において、18FDG取り込みは、18FDG PETスキャンを取る小児の最大50%において報告されている。Hongらは、褐色脂質における18FDGの取り込みに影響を与えるパラメーター(例えば、年齢、ジェンダー、環境温度・・・)についても記述している。さらに、彼らは、BATにおける18FDG取り込みを低減させるための現在の方法:薬理学的アプローチ(アヘン剤およびベンゾジアゼピン)、食事(スキャニング手順前夜の高脂質低糖質食)および18FDGの注射前後の加温について記述している。
【0010】
Steinbergらも、一部の患者におけるPET-CTスキャンでのBATにおける18FDGの取り込みおよび前記取り込みに影響を与える要因について記述している。BATにおける18FDG取り込みがある18FDG PET-CTスキャンの割合は、リンパ腫を持つ患者の17%および乳房がんを持つ患者の17~80%に到達し得る。褐色脂肪組織におけるトレーサー取り込みがある18FDG PET-CTスキャンの15%において、核医学医師は、不確実性によりスキャンを評価することができない。著者らによれば、BATが一部の患者においては活性化され、他の患者ではそうではないのは何故か、またはBATにおける18FDG取り込みが患者によっても異なるのは何故かは不明である。著者らは、BATにおける18FDG取り込みが誤った結論(偽陽性または偽陰性)につながり得る交絡因子であることも説明している。彼らは、BATにおける18FDG取り込みを有する可能性を高める患者の特徴(性別、年齢、BMI)について記述している。最後に、彼らは、影響因子として戸外温度およびスキャニング手順の時間を挙げている。
【0011】
Cohadeらも、解決されなくてはならない問題(BATにおける18FDG取り込みおよびPET-CTによる検出)および年齢、性別、BMI等の影響パラメーターについて記述している。
【0012】
代謝亢進褐色脂肪組織における18FDG取り込みは、18FDG PET-CT撮像における偽陽性の潜在源としてよく認識されている3,9。実際に、Longらは、18FDG PET-CTスキャンにおける偽陽性および偽陰性のリスクについて記述している。彼らは、医師に、結論(腫瘍またはBAT取り込み)に到達するのを助けるためにCTスキャンを使用するように強く助言する。彼らは、BAT活性化および故にBATにおける18FDG堆積を防止するための解決策(プロプラノロールの投与または患者を暖かく保つこと)としていくつかの薬理学的アプローチを提案している。
【0013】
Wangら10も、解決されなくてはならない問題の1つ、すなわち、BATにおける18FDG取り込みと腫瘍組織におけるそれとを区別することについて記述している。この論文において記述されている経口CT造影剤は、消化管のみの輪郭を描き、この事例では経口造影剤の全身取り込みはない。この論文は、BATにおける18FDG取り込みを遮断するためにベンゾジアゼピン(ジアゼパム)が使用され得ることも記載している。
【0014】
薬理学的方法を使用して褐色脂肪組織における18FDGの取り込みを減少させることができるが、患者はその後、有害反応のリスクが高くなる。さらに、スキャン前の薬理学的処置は勧められておらず、小児科集団においては予防措置を講じて使用されなくてはならない。18FDG取り込みの低減は、通常、患者を暖かく保ち、取り込み段階中(18FDG注射とPETスキャンとの間)に患者に毛布を提供することによってのみ試行される。PETスキャンで転移を褐色脂肪組織から区別するための現在の方法は、PETスキャンの結果を、核医学医師および放射線技師によるCTスキャンの軸スライスの詳細で時間のかかる解析とそれぞれ比較することによるものである。18FDG取り込みのエリアがCTスキャンにおける脂質減衰に対応する場合、トレーサー取り込みは褐色脂肪組織活性化に起因する。
【0015】
WO2008/153928A211(KOLODNY GERALD [US]、WILLIAMS GETHIN [US])は、BATにおける18FDG取り込みを減少させるための方法について記述している。これは、BAT(および心筋)におけるFDG取り込みを低減させるために、18FDG PET-CTスキャン前の数時間、高脂質無糖質低タンパク質食に準拠することを伴う。
【0016】
WO2019/030024A112(UNIV GENEVE [CH])は、褐色およびベージュ脂肪組織の非侵襲的可視化および定量化のための脂肪酸誘導体で作製されたヨウ化CT造影剤について記述している。この造影剤の顕著な特色の1つは、褐色脂肪組織に造影を提供するために経口ルートを介して与えられることである。次いで、褐色脂肪組織はCTスキャンによって検出される。このCT造影剤は、褐色脂肪組織のみを検出するためのCTスキャンの文脈において使用される。
【0017】
18FDGの取り込みによって特徴付けられる高い褐色脂肪組織活性および/または体積および/または表面積を持つがん患者において、より悪い転帰が観察される13。これらの患者において、より代謝的に活性な褐色脂肪組織(18FDG取り込みによって特徴付けられる)は、より活性な新生物状態に関連していた。特に、Huangら13は、BAT活性化に対する戸外温度の影響が最小限である熱帯地方で生活している患者において、新生物状態はBAT活性の重大な決定要因であることを記載した。しかしながら、著者らは、1740人の患者のうちの30人が18FDG PET-CTスキャンを取っていた(1903のうちの37の18FDG PET-CTスキャンがBATについて陽性であった)という事実に基づいて結論を出した。BAT活性は18FDG PET-CTスキャンで定量化された。がんの病歴がある1171人の患者のうち、21人(1.8%)だけがBATにおける18FDG堆積を示した。これらの結果から、18FDG PET-CTスキャンは、BATを検出するための感度を明確に欠いていると結論付けることができる。標準的な18FDG PET-CTスキャンのBATに対する推定感度は現在、1.8~10%の間である。
【0018】
異常なBAT体積および/または表面積および/または活性は、腫瘍再発および/または腫瘍関連死亡率の可能性の増大に関連するとされてきた14。これは、腫瘍の進行および/または重症度(褐色脂肪組織の活性化および白色脂肪組織の褐色化を促進する炎症性および腫瘍因子)だけでなく、身体の消耗の発生-悪液質とも関係し得る。実際に、Chuら14は、BAT陽性18FDG PETスキャンをがんの進行およびがん関連死亡率と関係付けている。しかしながら、提示される結果は、BAT陽性18FDG PETスキャンを有した132人の患者に基づく。何人のがん患者がBAT陰性18FDG PETスキャンを有したかは不明であるが、著者ら自身は、BATの存在および/または活性を評価するための18FDG PETスキャンの感度の欠如を指摘する。
【0019】
Bosら15は、BAT陽性18FDG PETスキャンが、活性がんのない患者よりも活性がんを有する患者に有意に関連していることを見出した。しかしながら、ここでもサンプルサイズが非常に小さく(21262人のうち142人の患者、すなわち0.66%)、標準的なPETスキャン条件下でBATを検出するおよび定量化するための18FDG PETスキャンの感度の欠如を指摘した。
【0020】
異常なBAT体積および/または表面積および/または活性は、健康な対象におけるBAT体積および/または表面積と比較して増大または減少し得る。現在、腫瘍の病期分類およびがんの予後は、通常、TNM病期分類システムに基づく。これは、腫瘍の解剖学的範囲の分類システムである。
【0021】
TNMは、固形腫瘍を起源とするがんの病期を記述する表記法システムであり、以下の英数字コードを使用する:
- Tは、原発性腫瘍のサイズおよびそれが近隣の組織に浸潤しているか否かを記述し、
- Nは、関与する近隣の(局所的)リンパ節を記述し、
- Mは、遠位転移を記述する。
【0022】
この病期分類システムは、診断時におけるがんの転帰についての若干の指標を与えることができる(がんのグレードが高くなるほど、その予後は不良になる)が、がんの攻撃性についてはいかなる指標も与えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
残念なことに、一部の解剖学的エリアにおける18FDG取り込みが、代謝的に活性な褐色脂肪組織によるものであり腫瘍または転移によるものではないことを確かめるための検証済みの方法が現在はない。一部の事例では、核医学医師および放射線技師が有意義な結論に到達できない場合、18FDG PET-CTスキャンを繰り返さなくてはならず、患者の放射線への追加曝露、患者のための病院の設定に費やす時間の増大ならびにヘルスケアシステムおよび/または患者の追加費用をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上記で論じた先行技術の欠陥を克服するための手段および方法に関する。特に、本発明は、PET-CT造影剤および18FDG等のPETトレーサーの使用を伴う撮像方法に基づく決定の正確さを増大させる、種々の方法、使用のための造影剤および使用のための医薬組成物を提供する。本発明のこれらの方法、本発明に従う使用のための造影剤および本発明に従う使用のための医薬組成物は、添付の請求項および以下で記述される特別な実施形態の番号付き項目において指定される。
【0025】
本発明の手段および方法についてのさらなる情報は、以下の詳細な記述に記される。さらに詳細には、本発明は、とりわけ、18FDG PET-CTスキャンで転移および/または腫瘍における18FDG取り込みを褐色脂肪組織から区別するための方法を提供する。これは、18FDG PET-CTスキャン前に褐色脂肪組織において特異的に堆積するPET-CT造影剤を患者に与えることで構成される。PET-CT造影剤は、好ましくは、経口ルートを介して患者に与えられるが、他のルート(静脈内、くも膜下腔内、リンパ内、動脈内、腹腔内、皮下)によって投与されてもよい。一部の実施形態では、PETトレーサー(18FDG)およびPET-CT造影剤からの共局在シグナルは、褐色脂肪組織における18FDGの取り込みに起因し得る。
【0026】
Wangら10とは対照的に、本発明は、BATにおける18FDG取り込みを低減させることではなく、18FDG PET-CTスキャンで腫瘍組織における18FDG取り込みとBATにおけるそれとを区別するためのBAT特異的医用撮像剤を使用することを狙いとする。
【0027】
本発明の目的の1つは、ヒトがん患者においてPET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法を提供することである。方法は、
a)前記ヒトがん患者に、一般式I:
【0028】
【化1】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルアルキル、ヘテロアリール、非芳香族ヘテロ環またはアルキルカルボニルオキシアルキル(alkylcarbonyloxalkyl)から選択され、これらの基は、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基および非芳香族ヘテロ環からそれぞれ独立して選択される1つまたは複数、好ましくは1~5つ、より好ましくは1、2、3または4つの置換基で置換されていてもよい。これらのハロゲン置換基のそれぞれは、F、Cl、BrおよびIから独立して選択されてもよい。複数のヨウ素原子が存在する場合、R基について本明細書において定義されているものと同じただし書きが当てはまる、すなわち、ジェミナルまたはビシナル位のいずれにも2個のヨウ素原子があってはならない。以下で記述される通りの好ましいR基に依拠することも可能である。さらに別の選択肢は、以下で記述される通りの式A、BまたはCの化合物を使用することである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含むPET-CT造影剤を投与する工程と、
b)工程a)のPET-CT造影剤の投与の少なくとも3時間後に、18FDG PETトレーサーを投与する工程と、
c)前記ヒトがん患者に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と
を含む。
【0029】
上記で注記した通り、一部の実施形態では、工程c)の18FDG PET-CTスキャンは、前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在のために使用される。
【0030】
本発明の別の目的は、ヒトがん患者においてPET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法を提供することである。方法は、
a)前記ヒトがん患者に、一般式I:
【0031】
【化2】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルアルキル、ヘテロアリール、非芳香族ヘテロ環またはアルキルカルボニルオキシアルキルから選択され、これらの基は、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基および非芳香族ヘテロ環からそれぞれ独立して選択される1つまたは複数、好ましくは1~5つ、より好ましくは1、2、3または4つの置換基で置換されていてもよい。これらのハロゲン置換基のそれぞれは、F、Cl、BrおよびIから独立して選択されてもよい。複数のヨウ素原子が存在する場合、R基について本明細書において定義されているものと同じただし書きが当てはまる、すなわち、ジェミナルまたはビシナル位のいずれにも2個のヨウ素原子があってはならない。以下で記述される通りの好ましいR基に依拠することも可能である。さらに別の選択肢は、以下で記述される通りの式A、BまたはCの化合物を使用することである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含むPET-CT造影剤を投与する工程と、
b)工程a)のPET-CT造影剤の投与の少なくとも3時間後に、PETトレーサーを投与する工程と、
c)前記ヒトがん患者に対してPET-CTスキャンを実施する工程と
を含む。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、ヒト対象における代謝性疾患を、前記ヒト対象において褐色および/またはベージュ脂肪組織をPET-CT撮像することによって同定するための方法であって、
a)前記ヒト対象に、一般式I:
【0033】
【化3】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルアルキル、ヘテロアリール、非芳香族ヘテロ環またはアルキルカルボニルオキシアルキルから選択され、これらの基は、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基および非芳香族ヘテロ環からそれぞれ独立して選択される1つまたは複数、好ましくは1~5つ、より好ましくは1、2、3または4つの置換基で置換されていてもよい。これらのハロゲン置換基のそれぞれは、F、Cl、BrおよびIから独立して選択され。複数のヨウ素原子が存在する場合、R基について本明細書において定義されているものと同じただし書きが当てはまる、すなわち、ジェミナルまたはビシナル位のいずれにも2個のヨウ素原子があってはならない。以下で記述される通りの好ましいR基に依拠することも可能である。さらに別の選択肢は、以下で記述される通りの式A、BまたはCの化合物を使用することである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含むPET-CT造影剤を投与する工程と、
b)工程a)のPET-CT造影剤の投与の少なくとも3時間後に、18FDG PETトレーサーを投与する工程と、
c)前記ヒト対象に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と
を含む、方法を提供することである。
【0034】
この方法の一部の実施形態では、工程c)の18FDG PET-CTスキャンは、前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在のために使用される。
【0035】
上記の方法の変形形態において、18FDG以外のPETトレーサーを使用することが可能である。工程c)のPET-CTスキャンは、当然ながら、代替的なPETトレーサーに適合されなくてはならないが、それ以外の点では、方法は上記で概説した通りに実施され得る。
【0036】
当業者ならば、褐色脂肪組織の体積および/または表面積および/または活性は、PET-CTスキャンから評価される(assesed)ように低または中または高であり得ることが分かるであろう。例えば、低BAT体積は100mL以下であってもよく、中BAT体積は100~200mLの間であってもよく、高BAT体積は200mL超であってよい16
【0037】
次いで、当業者は、PET-CTスキャンで腫瘍の進行およびがんの予後を評価することができる。
【0038】
PET-CTスキャンで観察される褐色脂肪組織によるPET-CT造影剤の取り込みは、がん型に応じて、がん患者の予後と相関している。ほとんどのがんで、健康な人々よりも高い取り込みは予後不良を意味し、この患者には追加の医学的配慮が必要とされる。他の悪性物、とりわけホルモンに影響されるもの(一部の乳房がん等)では、より高い取り込みはより良好ながん転帰を意味する。
【0039】
本発明の両方の目的(悪性組織の検出およびがんの予後の評価)は、単一PET-CTスキャンによって同時に実施され得る。
【0040】
本発明の他の目的および利点は、以下の例証的な図面および付随する請求項を参照して進める、その後に続く詳細な記述の総説から当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明によって解決されるべき問題の1つの記述、すなわち、誤った解釈につながり得る褐色脂肪組織における18FDGの取り込みを示す図である。A:非小細胞肺がんを持つ56歳の女性の18FDG PETスキャン。黒色矢印:活性肺がん。白色矢印:褐色脂肪組織。Bosら、201915から。B:首および鎖骨上-腋窩、傍脊椎-肋間ならびに縦隔領域においてBATによる広範囲の18FDG取り込みがある13歳の少年の18FDG PETスキャン。矢印:腎臓の外側縁の周りの稀な連続する曲線的な取り込み。Hongら、2011から。C:首上部にBATにおける18FDGの非対称取り込みがある15歳の少女の18FDG PETスキャン(矢印)。
図2】a:PET-CT造影剤を用いたまたは用いない転移性黒色腫マウスの軸PET-CTスキャンを示す図である。上部:PET-CT造影剤を用いない18FDG PET-CTスキャン。底部:PET-CT造影剤を用いた18FDG PET-CTスキャン。左:18FDG PETスキャン。黒色矢印は18FDG陽性エリア(転移および/またはBAT)を指している。右:18FDG PET-CTスキャン。BATにおける18FDGシグナルは転移として除外され得(白色矢印)、これは剖検によって確認される(b:所定位置の臓器、矢印=転移;c:肺、転移は黒色に見える)。
図3】a:PET-CT造影剤を用いたまたは用いない転移性黒色腫マウスの冠状18FDG PET-CTスキャンを示す図である。上部:PET-CT造影剤を用いない18FDG PET-CTスキャン。底部:PET-CT造影剤を用いた18FDG PET-CTスキャン。左:18FDG PETスキャン。黒色矢印は18FDG陽性エリア(転移および/またはBAT)を指している。右:18FDG PET-CTスキャン。BATにおける18FDGシグナルは転移として簡単に除外される(白色矢印)。剖検によって確認される(b:所定位置の臓器、矢印は転移を指している;c:肺、転移は黒色に見える)。
図4】PET-CT造影剤および本発明の方法を用いないおよび用いた腫瘍転移についての18FDG PET-CTスキャンの陽性予測値を示す図である。剖検(真実の標準)に基づき、6匹のマウスが合計で24の転移を提示した。18FDG PET-CTスキャンでは、4匹のマウスがBATにおいて陽性シグナルを有し、偽陽性転移として解釈することができた。PET-CT造影剤および本発明の方法を用いずに、転移についての18FDG PET-CTスキャンの陽性予測値PPVは85%であった。PET-CT造影剤を使用することにより、転移についての18FDG PET-CTスキャンのPPVは100%であった。故に、本発明のCT造影剤は、腫瘍転移についての18FDG PET-CTスキャンのPPVを15%だけ改善する。
図5】PET-CT造影剤および本発明の方法を用いないおよび用いた褐色脂肪組織についての18FDG PET-CTスキャンの感度を示す図である。12回のPET-CTスキャンのうち合計で9回においてBATにおける18FDG取り込みが存在していた。しかしながら、すべてのマウスがBATを有していた(剖検によって確認された)。PET-CT造影剤を用いないBATについての18FDG PET-CTスキャンの感度は、75%であった。PET-CT造影剤を使用して、BATについての感度は100%であった。故に、マウスにおけるBATについての18FDG PET-CTスキャンの感度は、PET-CT造影剤および本発明の方法を使用して25%だけ改善した。
【発明を実施するための形態】
【0042】
定義
本明細書において記述されるものと同様または同等の方法および材料を本発明の実践または試験において使用することができるが、好適な方法および材料を以下で記述する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書において論じられる刊行物および出願は、それらの開示のためだけに本出願の出願日前に提供される。本明細書のいかなる内容も、先行発明により本発明がそのような刊行物に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるものではない。加えて、材料、方法および例は、例証にすぎず、限定的であることを意図したものではない。
【0043】
矛盾する場合、定義を含めて、本明細書が優先する。
【0044】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本明細書における主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の定義は、本発明の理解を容易にするために供給される。
【0045】
別段の定めがない限りまたは文脈上別のことを指示するのでない限り、「PET-CT造影剤」への言及は、以下の対応する項で記述される通りのPET-CT造影剤への言及として理解されるべきである。
【0046】
用語「含む(comprise)」は、含む(include)、つまり1つまたは複数の特色または成分の存在を許可することの意味で、概して使用される。1つの具体的な実施形態として、用語「含む」は、用語「からなる」の意味も包括する。
【0047】
本明細書および請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明確に別のことを指示するのでない限り、複数の参照物を含む。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、当技術分野においてもよく認識されており、イヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、雌ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダおよび最も好ましくはヒトを含む哺乳動物を指すために本明細書において交換可能に使用される。一部の実施形態では、対象は、診断を必要とする対象または診断された疾患もしくは障害を持つ対象である。しかしながら、他の実施形態では、対象は健康な対象であることができる。該用語は、特定の年齢または性別を表示しない。故に、成人および新生児対象は、男性であるか女性であるかにかかわらず、網羅されることが意図される。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ヒトがん患者」は、あらゆる種類の固形がん、ならびに好ましくは肺、結腸直腸、乳房、婦人科関連、頭頸部、食道、胃、胆道、濾胞性および髄様性甲状腺、ならびに膵臓がん、白血病、黒色腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、褐色細胞腫(pheochromacytoma)および原発性脳腫瘍からなる群から選択されるがんに罹患しているおよび/または診断された患者である。一部の実施形態では、前記ヒトがん患者は、18FDG PETトレーサーの事前投与を受けていてもいなくてもよい。
【0050】
本明細書で使用される場合、かつ別段の指示がない限りまたは文脈上別のことを指示するのでない限り、用語「エリア」は、撮像方法において現れる身体の関連性のある部分を特徴付けることが意図され、用語「表面積」は、撮像方法の2D投影に現れる身体の関連性のある部分の表面エリアの、数値として表現される定量化を特徴付けることが意図され、用語「体積」は、3D撮像方法において現れる身体の関連性のある部分の体積の、数値として表現される定量化を特徴付けることが意図される。用語「体積および/または表面積」は、撮像方法のデータ解析が3Dデータで実施される事例では、上記で定義されている通りの体積を指すことが意図され、一方、撮像方法のデータ解析が2Dデータで実施される事例では、上記で定義されている通りの表面積を指すことが意図される。
【0051】
用語「製剤」または「医薬製剤」は、錠剤、腸溶コーティング錠剤、制御放出錠剤、持続放出錠剤、カプセル剤および自己乳化型医薬品形態等の固体製剤を包括する。これは、液剤、懸濁剤、乳剤、局所調製物、坐剤、かん腸剤、ならびに注射および注入用の非経口製剤等の液体および半固体製剤も包括する。
【0052】
用語「生体適合性」は、本明細書において、一般的に使用される意味で、特に毒性でないとして使用される。
【0053】
用語「エチオ化油」は、天然起源の油であり、有機合成手順によって変換されて、放射線不透過性造影剤として注射可能なものとして使用されるヨウ化脂肪酸のエチルエステルとなり、これは、放射線学的調査において構造を概説するために使用される。エチオ化油は、主としてモノヨードステアリン酸エチルおよびジヨードステアリン酸エチルとしての、ケシ種子油の脂肪酸のエチルエステルと組み合わせたヨウ素で構成される。正確な構造は不明であるにもかかわらず、これは式Iの定義内に含まれる。
【0054】
化学では、本明細書で使用される用語「ジェミナル」は、同じ原子に結合している2個の原子または官能基間の関係を指す。
【0055】
関連用語「ビシナル」は、隣接する原子に結合している2個の官能基間の関係を指す。現在は、隣接する炭素原子に結合しているヨウ素原子(すなわちビシナル)を有する安定なヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルを合成する(synthetize)ことはほぼ不可能である。立体障害を理由として、それらの分子は不安定であり、本発明の目的のために使用することができない。しかしながら、将来、当業者がこの問題の技術的解決策を見出すことが可能かもしれない。故に、ビシナル位にヨウ素原子を有する安定なヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルが提供される場合、それらの化合物も本発明の技術的問題を解決するのに好適であろうと考えられる。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「過ヨウ素化(periodinated)」は、可能な最大量のヨウ素置換基を含有し、一方、化合物はジェミナルまたはビシナル位のいずれにもいかなるヨウ素置換基も含有しないというただし書きを満たす、化合物を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、任意の長もしくは短鎖、直鎖、分枝鎖状もしくは環式脂肪族飽和もしくは不飽和炭化水素基またはこれらの基の組合せを含む基を含む。不飽和アルキル基は、一価または多価不飽和であってもよく、アルケニルおよびアルキニル基の両方を含む。アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、最大40個の炭素原子を含有し得る。しかしながら、最大10個、例えば8個、より好ましくは最大6個、とりわけ好ましくは最大4個の炭素原子を含有する、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基が好ましい。当然ながら、炭素の最小数は、サイクルおよび不飽和基の存在によって制限される。故に、飽和アルキル基は、それらが直鎖状または分枝鎖状である場合には、1~40個、1~10個、1~8個、1~6個または1~4個の炭素原子を、それらが環式であるかまたは環式アルキル部分を含有する場合には、3~40個、3~10個、3~8個、3~6個、5~6個または3~4個の炭素原子を有することができ、不飽和アルケニルまたはアルキニル基は、2~40個、2~10個、2~8個、2~6個または2~4個の炭素原子をそれぞれ有することができる。
【0058】
用語「アルコキシル」または「アルコキシ」は、-O-アルキルを表す。特に、アルキル基は、以上で定義されている通りのアルキル基である。アルコキシルの例はC1~C6アルコキシルであり、これは、酸素原子に結合している1から6個までの炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルキル鎖を表す。例示的なC1~C6アルコキシル基は、メトキシル、エトキシル、プロポキシル、イソプロポキシル、ブトキシル、sec-ブトキシル、t-ブトキシル、ペントキシル、ヘキソキシル等を含む。C1~C6アルコキシルは、その定義内にC1~C4アルコキシルを含む。当然ながら、アルコキシ基に含有されるアルキル基は、例えば2~6個の炭素原子を持つ不飽和アルケニルまたはアルキニル基である等、上記で指定された任意の他の意味を有してもよい。
【0059】
本発明の一部の実施形態では、用語「アルコキシアルキル」は、アルコキシ基で置換されているアルキル基を指し、アルキルおよびアルコキシ基は以上で定義されている通りである。一例は、C1~C6アルコキシ基を担持するC1~C6アルキル基である。アルコキシ基の炭素原子の数は、アルキル基中における炭素原子の数とは独立して選択され得る。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、用語「ヒドロキシアルコキシアルキル」は、アルコキシ部においてヒドロキシ基で置換されている上記で定義されている通りのアルコキシアルキル基を指す。この基は、以下の構造:-R-O-R’-OH(式中、Rは、上記で定義されている通りのアルキル基を表し、R’は、上記で定義されている通りのアルコキシ基-O-R’のアルキル部を表す)によって例証され得る。
【0061】
本発明の一部の実施形態では、用語「ポリヒドロキシアルキル」は、2つ以上のヒドロキシ基、例えば、2、3、4、5または6つのヒドロキシ基を担持する上記で定義されている通りのアルキル基を指す。
【0062】
本発明の一部の実施形態では、用語「ポリアルキレンオキシアルキル」は、ポリアルキレンオキシ基で置換されている上記で定義されている通りのアルキル基を指す。故に、ポリアルキレンオキシアルキルの典型的な構造は、以下の式:-R-(O-R”)-H(式中、Rは、上記で定義されている通りのアルキル基を表し、R”は、典型的には2、3または4個、好ましくは2個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、nは、2~20、好ましくは2~10の範囲内から選択される)によって表され得る。個々のアルキレン基中における炭素原子の数は、常に同じである必要はない、すなわち、上記の式において、炭素原子の数は、アルキレンオキシ部分-O-R”のそれぞれについて、2、3または4個から独立して選択され得る。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、用語「ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル」は、ヒドロキシ基で置換されているおよび/または終端されている上記で定義されている通りのポリアルキレンオキシアルキル基を指す。故に、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキルの典型的な構造は、以下の式:-R-(O-R”)-OH(式中、Rは、上記で定義されている通りのアルキル基を表し、R”は、典型的には2、3または4個、好ましくは2個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、nは、2~20、好ましくは2~10の範囲内から選択される)によって表され得る。個々のアルキレン基中における炭素原子の数は、常に同じである必要はない、すなわち、上記の式において、炭素原子の数は、アルキレンオキシ部分-O-R”のそれぞれについて、2、3または4個から独立して選択され得る。
【0064】
本発明の一部の実施形態では、用語「アルキルカルボニルオキシアルキル」は、アルキルエステル基によって置換されている上記で定義されている通りのアルキル基を表し、これは、典型的には、以下の構造:-R-C(=O)-O-R’’’(式中、Rは、典型的には1~6個の炭素原子を有する上記で定義されている通りのアルキル基を表し、R’’’は、R基の炭素原子の数から独立して選択される典型的には1~6個の炭素原子を有する上記で定義されている通りのアルキル基を表す)を有する。本発明の別の変形形態によれば、この種類の基を使用することも可能であるが、エステル基の配向は逆転される、すなわち、基は以下の構造:-R-O-C(=O)-R’’’(式中、Rは、典型的には1~6個の炭素原子を有する上記で定義されている通りのアルキル基を表し、R’’’は、R基の炭素原子の数から独立して選択される典型的には1~6個の炭素原子を有する上記で定義されている通りのアルキル基を表す)によって特徴付けられる。故に、この代替的な変形形態によれば、「アルキルカルボニルオキシアルキル」への言及は、エステル基の配向(orientration)が逆転したこの代替基への言及として理解されるべきである。この代替的な変形形態は、あまり好ましくない。特に、式-R-C(=O)-O-R’’’によって表される上記で言及した主な変形形態は、優れた造影増強特性を生み出し、故に好ましいと考えられる。
【0065】
用語「アリール」は、本明細書で使用される場合、炭素環式またはヘテロ環式、芳香族、5~14員単環式または多環式環を指す。例示的なアリールは、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フリル、イソチアゾリル、フラザニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3-b]チアントレニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチエニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキシアリニル、キンゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、テトラヒドロキノリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、ベータ-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル(perimidinyl)、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニルおよびフェノキサジニルを含む。
【0066】
本発明の一部の実施形態では、用語「ヘテロアリール」が使用され、これは、1個または複数、好ましくは1、2、3または4個、より好ましくは1または2個の環原子が、N、OおよびSから独立して選択されるヘテロ原子である、以上で定義されている通りのアリール基を指す。一部の実施形態では、上記で言及したヘテロ環式アリール基は、本明細書において定義されている通りのヘテロアリール基である。
【0067】
本発明の一部の実施形態では、用語「非芳香族ヘテロ環」が使用され、これは、非局在化π電子系に関わることができない少なくとも1個の環原子を有するヘテロ環式5~14員単環式または多環式環を指す。典型的には、それらは、N、OおよびSから個々に選択される1、2、3または4個のヘテロ原子を含有する。そのような非芳香族ヘテロ環は、テトラヒドロフランおよびピペリジン等の完全飽和ヘテロ環、ならびにオキサゾリン等の部分飽和、部分不飽和ヘテロ環を含む。
【0068】
有機化学では、「飽和」化合物は、単結合によって一緒に連結された炭素原子の鎖を有する化学化合物である。アルカンは飽和炭化水素である。「不飽和」化合物は、アルケンまたはアルキンにおいてそれぞれ見られるもの等の炭素-炭素二重結合または三重結合を含有する化学化合物である。飽和および不飽和化合物は、炭素原子鎖だけからなる必要はない。それらは、直鎖、分枝鎖または環配置を形成することができる。それらは官能基も有することができる。この意味では、脂肪酸は飽和または不飽和として分類される。脂肪酸の不飽和の量は、そのヨウ素価を見出すことによって決定され得る。
【0069】
不飽和化合物は、付加反応が取得され得るものである。脂肪酸等の炭素の鎖において、二重または三重結合は鎖におけるねじれを引き起こすことになる。これらのねじれは、マクロ構造的意味合いを有する。不飽和脂質は、室温では固体ではなく液体となる傾向にあり、何故なら、鎖におけるねじれが、分子が一緒に緊密に詰まって固体を形成することを防止するからであり、これらの脂質は油と呼ばれる。
【0070】
用語「ポリヒドロキシ」または「多価」は、分子当たり2つ以上のヒドロキシル基を含有する化学化合物を指す。
【0071】
陽電子放射断層撮影-コンピュータ断層撮影(PET-CTとして公知である)は、単一のガントリー内で陽電子放射断層撮影(PET)スキャナーおよびX線コンピュータ断層撮影(CT)スキャナーを組み合わせた、同じスキャニングセッションで両方のデバイスから画像を獲得するための核医学技術である。画像を組み合わせて単一の重なった(共同登録)画像にする。故に、体内における代謝または生化学的活性の空間分布を描写するPETによって取得された機能的撮像を、CTスキャニングによって取得された解剖学的撮像と正確に整列または相関させることができる。二および三次元の画像再構成は、共通ソフトウェアおよび制御システムの関数としてレンダリングされ得る。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「PET-CT造影剤」は、PET-CT測定のCTスキャンのシグナルまたは画像を増強する作用物質を特徴付ける。そのため、PET-CT造影剤は、CT測定を行うためにも好適であろう。結果として、典型的にはこれはCT造影剤と異ならない。
【0073】
CTは、解剖学的輪郭描出のために造影剤の使用を必要としない。しかしながら、CTスキャン前に造影剤を患者に投与してもよい。これは、そうでなければそれらの周囲のものから識別することが難しいであろう血管等の構造を強調表示するために有用である。造影剤を使用することは、組織についての機能情報を取得するのを助けることもできる。CT造影剤は通常、静脈内ルートによって投与される。いくつかの適応症においては動脈内またはくも膜下腔内注射を使用することもできる。水溶性CT造影剤は、血管構造および/または臓器を可視化するために使用される。それらを使用して、周囲組織とは異なる取り込みおよび流出動力学により腫瘍を診断することもできる。CT造影剤は、イオメプロール、イオベルソール、イオプロミド、イオヘキソール、イオジキサノール、ジアトリゾ酸メグルミン、メトリゾエート、イオタラム酸メグルミン、ヨージパミドメグルミン、イオパミドール(iopramidol)、イオキシラン、イオキサグレートおよびイオベルソールを含むがこれらに限定されない血管撮像が意図されている任意の分子であってよい。
【0074】
「過体重および肥満」は、健康へのリスクを提示する異常なまたは過剰な脂質堆積として定義される。25超のボディマス指数(BMI)は過体重とみなされ、30超は肥満である。肥満は、余分な体脂肪が健康への悪影響を有し得る程度まで堆積した医学的状態である。肥満は、世界中で回避可能な死亡原因の第1位であり、成人および小児において率が増大している。
【0075】
「糖尿病」は、血中グルコース(または血糖)のレベル上昇によって特徴付けられる慢性代謝性疾患であり、経時的に、心臓、血管、目、腎臓および神経への深刻な損傷につながる。最も一般的なのは2型糖尿病であり、通常成人において、身体がインスリンに対して抵抗性になった場合または十分なインスリンを産生するのを停止した場合に起こる。
【0076】
「非アルコール性脂肪性肝疾患」(NAFLD)は、単離された脂肪症からNASHまで脂肪性肝疾患の全スペクトルを包括する総称である。
【0077】
NASHは「非アルコール性脂肪性肝炎」を表す。これは、代謝障害の肝臓の兆候として定義されることができ、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の最も重篤な形態である。NASHは、肥満、前糖尿病および糖尿病のトリプルエピデミックに密接に関連するが、その症状は多くの場合無症候性であるかまたはNASHに非特異的であり、診断することを難しくしている。結果として、NASH患者は、疾患の後期まで自らの状態に気付かないままであることがある。NASHは患者の心血管代謝状態を悪化させ、心血管系事象によって引き起こされるより高い死亡リスクに関連する18
【0078】
「がん」は、身体の他の部分に浸潤するまたは広がる潜在性がある異常な細胞成長を伴うことによって特徴付けられる疾患である。本明細書において言及されるがんは、好ましくは、肺、結腸直腸、乳房、婦人科関連、頭頸部、食道、胃、胆道、濾胞性および髄様性甲状腺、ならびに膵臓がん、白血病、黒色腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、原発性脳腫瘍、褐色細胞腫、脂肪腫または筋脂肪腫を含むまたはそれらからなる群から選択される。
【0079】
一部の実施形態では、とりわけ代謝性疾患に冒されている患者の撮像を伴う本発明の方法との結び付きで、用語「健康な」は、人物または患者が、好ましくは肥満、糖尿病(diabetis)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される代謝性疾患に罹患していないことを意味する。一部の実施形態では、とりわけがんに冒されている患者の撮像を伴う本発明の方法との結び付きで、「健康な」は、人物または患者が、がんに罹患していないことを意味する。
【0080】
「機械学習」は、コンピュータにヒトがするように学習および行動させる科学であり、データおよび情報を観察および実世界インタラクションの形態でコンピュータにフィードすることにより、それらの学習を経時的に自律方式で改善する。機械学習アルゴリズムの基本的目標は、訓練サンプルを超えて一般化する、すなわち、これまでに「見たことがない」データをうまく解釈することである。
【0081】
「深層学習」は、本発明において使用される場合、機械学習において使用されるアルゴリズムの集合体であり、複数の非線形変換で構成されるモデルアーキテクチャの使用を通してデータにおける高レベルの抽象化をモデル化するために使用される。データの学習表現に基づく機械学習に使用される広範なファミリーの方法の一部である。深層学習は、ニューラルネットワークを構築するおよび訓練するために使用される具体的なアプローチであり、これらは高度に有望な意思決定ノードとみなされている。アルゴリズムは、入力データが出力になる前に一連の非線形性または非線形変換を通過する場合、深いとみなされる。対照的に、最も近代的な機械学習アルゴリズムは、入力が数レベルのサブルーチン呼び出ししか行えないことから、「浅い」とみなされる。
【0082】
深層学習は、データにおける特色の手動同定を除去し、代わりに、入力例における有用なパターンを発見しなくてはならない訓練プロセスがどのようなものであってもそれに依拠する。これは、ニューラルネットワークをより簡単にかつより速く訓練させ、bglを測定するのに適用される際により良好な結果を産出することができる。
【0083】
深層学習内で、本発明は、それだけではないが多くの深層学習方法:再帰型ニューラルネットワークおよび畳み込みニューラルネットワークを使用する。
【0084】
「再帰型ニューラルネットワーク」または「RNN」は、ノード間の接続がシーケンスに沿って有向グラフを形成する人工ニューラルネットワークのクラスである再帰型ニューラルネットワークである。これは、ある時間系列にわたって一時的な動的挙動を呈することを可能にする。これらは、転帰を予測するために文脈が重大である使用事例においてとりわけ強力であり、データのシーケンスともなり得る最終出力を伝えるデータのシーケンスを処理するためにフィードバックループを使用することから、他の種類の人工ニューラルネットワークとは異なっている。これらのフィードバックループは、情報を持続させる。
【0085】
一部の事例では、人工ニューラルネットワークは、入力から出力へ単一方向に情報を処理する。これらの「フィードフォワード」ニューラルネットワークは、画像認識システムを支える畳み込みニューラルネットワークを含む。他方で、RNNは、階層化されていて、情報を二方向に処理することができる。
【0086】
「畳み込みニューラルネットワーク」(CNN)は、ピクセルデータを処理するように特異的に設計されている画像認識および処理において主として使用される一種の人工ニューラルネットワークである。CNNは、推薦システムおよび自然言語処理とともに画像および映像認識を含むマシンビジョン(vison)を多くの場合に使用して、生成的および記述的タスクの両方を実施するために深層学習を使用する、強力な画像処理である。このニューラルネットワークは、伝統的なニューラルネットワークの断片的画像処理問題を回避しながら全視野を網羅するような手法で配置されたそれらの「ニューロン」を有する。
【0087】
CNNの層は、入力層、出力層、ならびに、複数の畳み込み層、プーリング層、全結合層および正規化層を含む隠れ層からなる。制限事項の除去および画像処理のための効率の増大は、画像処理および自然言語処理に限定された訓練よりもはるかに有効でより単純なシステムをもたらす。
【0088】
本発明の第1の実施形態の方法
第1の実施形態として、本発明は、ヒトがん患者において、PET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別することを可能にする方法、特に撮像方法を提供する。方法は、
a)前記ヒトがん患者に、以下で記述される通りのPET-CT造影剤を投与する工程と、
b)工程a)のPET-CT造影剤の投与の少なくとも3時間後に、18FDG PETトレーサーを投与する工程と、
c)前記ヒト対象に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と
を含む。
【0089】
別段の定めがない限り、以下で記述される第1の実施形態のより具体的な方法は、上記の工程a)~c)、すなわち、第1の実施形態の主な態様を含む。
【0090】
この実施形態の一変形形態において、本発明は、ヒトがん患者においてPET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法であって、上記で指定された通りの工程a)~c)を含む方法を提供する。第1の実施形態のさらなる具体的な態様を以下で指定する。
【0091】
(i)がん患者における悪性でも転移性でもない組織の同定および悪性腫瘍組織または転移性の組織の同定
18FDG PET-CTスキャンは、前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在を検出するために使用され得る。そのような共局在は、関心領域が悪性腫瘍でも転移でもないことを意味する。この情報は、処置医師/腫瘍専門医による処置(化学療法、放射線療法、免疫療法、外科手術および/または他の抗がん療法)を続行するおよび/または適合させる決断に影響を与え得るため、価値がある。一部の事例では、これにより、PET-CT医用撮像スキャンを繰り返さなくてはいけないことを回避し、故に、ケア/処置のための時間および放射線曝露を低減させることを可能にする場合もある。
【0092】
転移を同定することは、本発明に従うPET-CT造影剤の使用のおかげでより簡単になる。腫瘍組織(原発性腫瘍および転移)は、18FDG取り込みのみを通して可視である。しかしながら、一部の事例では褐色脂肪組織(BAT)も18FDGを堆積することから、18FDG取り込みのみに基づいて腫瘍組織の存在を判断することは、偽陽性判定の恐れがある。しかしながら、BATはPET-CT造影剤も堆積することから、本発明は、この偽陽性判定のリスクを低減させることを可能にする。そこで、18FDGおよびPET-CT造影剤の両方がPET-CTスキャンで可視であるエリアは、転移として除外される。
【0093】
BATの全体積および/または表面積ならびに局在を決定することで、さらなる価値がある情報を処置医師に提供する。しかしながら、褐色脂肪組織は、18FDG PET-CTスキャンのように常に可視および/または同定可能とは限らない。加えて、BATは18FDG以外の放射性トレーサーを使用して検出することはできない。本発明では、褐色およびベージュ脂肪組織の造影は、PET-CT造影剤の存在により増強される(造影増強陽性エリア)。
【0094】
褐色および/またはベージュ脂肪組織の造影増強の確立は、好ましくはハウンスフィールド単位19に従って決定され、褐色および/またはベージュ脂肪組織ハウンスフィールド単位(HU)は、-70~100HUの範囲内、好ましくは-50~0HUの範囲内である。当業者には、最終HU値は対象に投与された用量によって決まることになることが公知である。上記で指定された範囲は、体重1kg当たり0.15gの用量に妥当である。
【0095】
故に、当業者ならば、すべてのPET-CTスキャンにおいて、PET-CT造影剤を使用して、造影増強陽性エリア(BATを指し示す)の局在ならびに体積および/または表面積を簡単に評価することができる。両方のパラメーターは、患者の代謝的健康および転帰を予測するものである。患者に存在するBATの全体積および/または表面積ならびに局在を合致する健康な志願者(例えば、年齢、性別、体重、民族性、BMIに関して合致する健康な人物)と比較することにより、がん患者の予後を確立することができる。BATのより高い体積および/または表面積は、より高いエネルギー消費と関係する。がん患者の事例では、BATによるより高いエネルギー消費は、より不良な転帰および腫瘍攻撃性の増大と相関している。前記より高いエネルギー消費は、合致する健康な志願者のBATにおける取り込み比と比較した18FDG対PET-CT造影剤の取り込みの増大比によって検出することもできる。これは、がん悪液質の発生とも関連する。がん悪液質は、がん患者の非常に不良な予後に関連する。BATの異常な体積および/または表面積ならびに局在がある患者は、特別な医学的配慮を受けるべきである。
【0096】
上記を考慮すると、以下の追加の工程は、好ましくは、がん患者において悪性でも転移性でもない組織を同定するため、および/または悪性もしくは転移性の組織を同定するための、上述した通りの第1の実施形態の主な態様の方法工程a)~c)を実施した後に行われる:
d)前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアを同定する工程と、
e)18FDGの陽性造影増強はあるが前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを同定する工程と、
f)工程d)において同定された共局在があるエリアを悪性腫瘍も転移もないエリアとして割り当て、工程e)において同定された共局在がないエリアを悪性腫瘍または転移がある可能性のあるエリアとして割り当てる工程。
【0097】
工程a)~c)およびf)が指定された順序で実施されることは、合理的であり、故に有利である。工程d)およびe)は逆の順序でまたは同時に実施されてもよい。さらに、悪性腫瘍も転移もないエリアについての情報のみが所望される場合、工程e)および工程f)の対応する部分は省略されてよい。同様に、悪性腫瘍または転移があるエリアについての情報のみが所望される場合、工程d)および工程f)の対応する部分は省略されてよい。
【0098】
脳、心筋、尿路(腎臓、膀胱)等の生理学的理由で18FDGを堆積することが公知である解剖学的エリアは腫瘍組織として割り当てられるべきではないことが、当業者には明白であろう。加えて、方法の正確さは、工程f)において悪性腫瘍または転移がある可能性のあるエリアとして割り当てられた組織に関して追加措置をとり、それにより、炎症に冒されている組織等の他の理由での18FDG堆積の可能性を排除することによって、任意選択によりさらに改善することができる。PET-CT造影剤は、GI管、心筋、肝臓、尿路等の臓器において、生理学的理由および/または正常な代謝により、投与後に検出され得るため、そのようなエリアも褐色および/またはベージュ脂肪組織として割り当てられるべきではないことも、当業者には明白であろう。
【0099】
前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在についてのPET-CTスキャンの評価は、前記ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するために行われる。
【0100】
第1の実施形態の上記の主な態様の工程a)~c)の代替として、以下の方法が提供される。この具体的な態様の方法は、18FDG PETトレーサーの事前投与を受けたヒトがん患者において、PET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法であって、
a’)前記ヒトがん患者に、上記で指定された通りの一般式Iに従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物(式中、nのならびに基RおよびRの意味は上記で指定された通りである)を含む経口CT造影剤を投与し、
前記経口CT造影剤の投与が、前記18FDG PETトレーサーの投与の少なくとも3時間前に実施される工程と、
b’)18FDGを前記ヒトがん患者に標準的な慣行に従って投与する工程と、
c’)前記ヒトがん患者に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
d’)前記ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ組織から区別するように、前記18FDGおよび前記CT造影剤の陽性造影増強の共局在を評価するためのPETおよびCTスキャンの両方を比較する工程と
を含む、方法である。
【0101】
別の態様では、PET-CTスキャン前のPET-CT造影剤の投与は、対象における褐色および/またはベージュ脂肪組織(BAT)の非侵襲的インビボ撮像、定量化、および/またはその活性のモニタリングに適合され、処置されるがんのより正確な予後を可能にし、より適合された処置をもたらす。第1の実施形態の上記の主な態様の工程a)~c)の代替として、この具体的な態様の手順は、
a)例えば、一般式Iに従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物の生体適合性製剤を含む以下で記述される通りのPET-CT造影剤を投与する工程と、
b)静脈内ルートによって、好ましくは標準的な慣行に従って(例えばEANM guidelines17に準拠して)、好ましくは工程a)のPET-CT造影剤の投与の少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
c)PET-CTスキャンを実施する工程と、
d)PET-CTスキャンを健康な個体のものと比較する工程と
に準拠する。
【0102】
工程a)~d)が指定された順序で実施されることは、合理的であり、故に有利である。
【0103】
取得されたスキャンを使用して、腫瘍および/または転移および/またはBATの存在(褐色脂肪組織の活性および/または体積および/または表面積を指し示す)を評価することができる。一部の実施形態では、取得されたスキャンを別個にまたは併せて使用して、腫瘍および/または転移(PET)の存在ならびに褐色脂肪組織における前記CT造影剤の取り込みの程度(褐色脂肪組織の活性および/または体積および/または表面積を指し示す)を評価することができる。
【0104】
別個にまたは一緒に取られた両方のパラメーターは、18FDGトレーサー単独を用いるPET-CTよりも正確ながんの予後を可能にする。
【0105】
故に、上記の具体的な態様の工程a)~d)を、以下のさらなる工程:
e)前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアを高度に活性なBATとして決定する工程と、
f)前記PET-CT造影剤の陽性造影増強はあるが18FDGが存在しないエリアをBATとして決定する工程と、
g)工程d)、e)およびf)において取得された結果に基づいて、処置されるがんの予後を評価する工程
と組み合わせることが、有利となり得る。
【0106】
例えば、実施例3では、本明細書において記述される通りのPET-CT造影剤による造影増強の存在以外の18FDG取り込みの非存在についてのPET-CTスキャンの評価は、褐色脂肪組織の簡単かつ強固な検出を可能にし、BATについてのPET-CTスキャンの感度および陽性予測値を増大させることが示された。
【0107】
同様に、実施例2では、偽陽性(転移)として解釈され得るBATに存在する18FDGシグナルは、正しくはBATに起因し、腫瘍転移についてのPET-CTスキャンの特異性および陽性予測値を改善した。これは剖検によって確認された(図2b、cおよび3b、cを参照)。
【0108】
例に示される通り、本発明の上述した方法は、腫瘍転移についてのPET-CTスキャンの特異性および陽性予測値を改善するのを驚くほど助ける。
【0109】
本発明のまたさらなる目的は、以下で記述される通りのPET-CT造影剤の、ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するためのPET-CT撮像方法における使用であって、
a’)前記ヒトがん患者に、好ましくは経口ルートによって、または任意選択により他のルート(静脈内、くも膜下腔内、リンパ内、動脈内、腹腔内または皮下)によって、前記経口PET-CT造影剤を投与する工程と、
b’)工程a)のPET-CT造影剤の投与の少なくとも3時間後に、18FDG PETトレーサーを投与する工程と、
c’)前記ヒトがん患者に対して、前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在について18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と
を含む方法における、使用に関する。
【0110】
工程a’)~c’)が指定された順序で実施されることは、合理的であり、故に有利である。
【0111】
前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在についてのPET-CTスキャンの評価は、前記ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するために実施される。原発性腫瘍および/または転移は、典型的には18FDG陽性エリアによって同定されるのに対し、褐色および/またはベージュ脂肪組織は、典型的には18FDGおよびPET-CT造影剤シグナルの共局在またはPET-CT造影剤の陽性造影増強によって同定される。
【0112】
(ii)診断もしくは病期分類もしくは再病期分類、療法の効能を評価するまたはがんの進行を評価する
前記PET-CTスキャンは、がんの診断もしくは病期分類のため、療法の効能を評価するため、がんの進行を評価するため、または処置腫瘍専門医もしくは医師に関係すると考えられるすべての理由のために処方され得る。18FDGおよびPET-CT造影剤が共局在している場合、これは18FDGが褐色脂肪組織によって取り込まれたことを意味する。他方で、18FDGシグナルが本発明において記述されるPET-CT造影剤と共局在していない場合、褐色またはベージュ脂肪組織による18FDG取り込みは簡単にかつ決定的に除外され得る。驚いたことに、これは、腫瘍および転移についての偽陽性を低減させることによって、18FDG PET-CTスキャンの特異性および陽性予測値を増大させる。他方で、褐色脂肪組織についての18FDG PET-CTスキャンの感度および陰性予測値は、偽陰性を低減させることによって増大する。
【0113】
当業者ならば、例えば、本発明に従う本明細書において記述されるPET-CT造影剤を使用する単一のPET-CTスキャンから、腫瘍の進行およびがんの予後の両方を評価することができる。先に言及した(menitoned)通り、患者は、好ましくは経口ルートによってPET-CT造影剤を最初に投与される。次いで、3~72時間の間、好ましくは10~48、より好ましくは16~30時間後、患者はPET-CTスキャン手順を開始する。18FDG等の放射性トレーサーを静脈内に注射する。約60分後、患者はPET-CTスキャンを受ける。当業者ならば、このPET-CTスキャンからいくつかの情報を得ることができる。第一に、腫瘍の進行。PETシグナルから、医師は、例えば、腫瘍の体積および/または表面積が改変されているか否か、ならびに転移の数および体積および/または表面積が早期のPET-CTスキャンからのPETシグナルと比較して変化したか否かを評価することができる。
【0114】
上記を考慮すると、以下の追加の工程は、好ましくは、がん診断のための上述した通りの第1の実施形態の主な態様の方法工程a)~c)を実施した後に行われる:
d)18FDGの陽性造影増強はあるが前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを同定する工程と、
e)18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がないエリアを悪性腫瘍または転移がある可能性のあるエリアとして割り当てる工程と、
f)工程e)において同定されたエリアの局在を評価することによってがんを診断する工程。
【0115】
工程a)~f)が指定された順序で実施されることは、合理的であり、故に有利である。
【0116】
上記で注記した通り、工程e)において同定された可能性のあるエリアについて、上記でさらに詳細に概説した通りの他の理由のための18FDG堆積の可能性を排除することを可能にする追加措置をとることにより、方法の正確さを増大させることが可能である。
【0117】
上記を考慮すると、以下の追加の工程は、好ましくは、腫瘍の病期分類または再病期分類のための上述した通りの第1の実施形態の主な態様の方法工程a)~c)を実施した後に行われる:
d)18FDGの陽性造影増強はあるが前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを同定する工程と、
e)18FDGの陽性造影増強はあるが前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを悪性腫瘍または転移がある可能性のあるエリアとして割り当てる工程と、
f)工程e)において同定された可能性のあるエリアの局在および体積および/もしくは表面積、リンパ節の関与ならびに/または転移の存在を評価することによって、患者をTNMシステムの適切な病期に割り当てる工程。
【0118】
工程a)~f)が指定された順序で実施されることは、合理的であり、故に有利である。
【0119】
がんの再病期分類のために、工程a)~f)を含む上記の方法は、がんの病期分類に早期に既に供された患者に対して、以上で記述した方法または代替的ながんの病期分類方法のいずれかを使用して行われる。
【0120】
上記で注記した通り、工程e)において同定された可能性のあるエリアについて、上記でさらに詳細に概説した通りの他の理由のための18FDG堆積の可能性を排除することを可能にする追加措置をとることにより、方法の正確さを増大させることが可能である。
【0121】
上記を考慮すると、以下の追加の工程は、好ましくは、療法の効能を評価するまたはがんの進行を評価するための、上述した通りの第1の実施形態の主な態様の方法工程a)~c)を実施した後に行われる:
d)18FDGの陽性造影増強はあるが前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを悪性腫瘍または転移がある可能性のあるエリアとして同定する工程と、
e)18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がない同定されたエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
f)任意選択により患者を抗がん療法に供する工程と、
g)工程a)~e)を繰り返す工程と、
h)工程g)に従って同定されたエリアの体積および/または表面積が工程e)に従って同定されたエリアの体積および/または表面積に等しいまたはそれよりも小さい場合には、実施されたならば有効な療法および/またはがんの進行の欠如を割り当て、工程g)に従って同定されたエリアの体積および/または表面積が工程e)に従って同定されたエリアの体積および/または表面積よりも大きい場合には、実施されたならば療法の有効性の欠如および/またはがんの進行を割り当てる工程。
【0122】
工程a)~e)が指定された順序で実施されることは、合理的であり、故に有利である。同様に、工程g)でまとめられている通りの繰り返される工程a)~e)も、指定された順序で有利に行われる。工程h)は最終工程として実施されるべきである。しかしながら、工程g)でまとめられている通りの繰り返される工程d)およびe)に関係する工程d)およびe)の相対的順序に関しては制限事項がない。
【0123】
上記で注記した通り、工程d)および項目g)での繰り返し工程において同定された可能性のあるエリアについて、上記でさらに詳細に概説した通りの他の理由のための18FDG堆積の可能性を排除することを可能にする追加措置をとることにより、方法の正確さを増大させることが可能である。
【0124】
(iii)BAT活性および/またはがんの予後の決定
18FDGの取り込みによって特徴付けられる高度に活性な褐色脂肪組織を持つがん患者において、より悪い転帰が通常観察される13。これらの患者において、より代謝的に活性な褐色脂肪組織(18FDG取り込みによって特徴付けられる)は、より活性な新生物状態に関連していた。より高いBAT体積および/または表面積は、腫瘍再発および/または腫瘍関連死亡率の可能性の増大に関連していた14。これは、腫瘍の重症度(褐色脂肪組織の活性化および白色脂肪組織の褐色化を促進する炎症性および腫瘍因子)だけでなく、がんおよび慢性疾患に関連する致命的な身体消耗症候群である悪液質の発生率とも関係し得る。
【0125】
先に言及した通り、褐色脂肪組織における18FDG取り込みは、18FDG PET-CTスキャンを受けている患者の約5%において観察される。褐色脂肪組織の体積および/または表面積ならびにその活性化のレベルについての情報は、がん患者の介護者に、がんの予後に関する貴重な情報を与えるであろう。これは、腫瘍専門医または別の医師によって処方された、計画された診断および/または病期分類PET-CTスキャン中に、本発明において記述されるPET-CT造影剤を使用することによって、実現することができる。
【0126】
上記を考慮すると、以下の追加の工程は、好ましくは、BAT活性を決定するための、上述した通りの第1の実施形態の主な態様の方法工程a)~c)を実施した後に行われる:
d)前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリア、ならびに前記PET-CT造影剤のみの陽性造影増強があるエリアを同定する工程と、
e)工程d)において同定された通りの前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
f)工程d)において同定された通りの前記PET-CT造影剤のみの陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
g)工程e)において決定された体積および/または表面積を、工程f)において決定された体積および/または表面積で割った比を算出する工程と、
h)前記比を、がん患者の集団に対して工程a)~g)を実施することにより平均値として決定された基準比と比較する工程と、
i)決定された比が基準比よりも高い場合には増大したBAT活性を割り当て、決定された比が基準比とほぼ同じである場合には正常なまたは低減したBAT活性を割り当て、決定された比が基準比よりも低い場合には低減したBAT活性を割り当てる工程。
【0127】
同時にまたは逆の順序で実施されてもよい工程e)およびf)を除いて、工程a)~i)が指定された順序で実施されることは、合理的であり、故に有利である。
【0128】
がんの予後を決定するために、BAT活性を決定するために上述したのと同じ工程a)~i)が行われ得る。その後(Substequently)、予後を取得するために以下の工程j)が追加され得る:
j)ホルモン依存性がんに罹患している患者において低減したBAT活性が工程i)において割り当てられる場合には予後不良を割り当て、ホルモン非依存性がんに罹患している患者において増大したBAT活性が工程i)において割り当てられる場合には予後不良を割り当てる工程。
【0129】
以下で記述されるPET-CT造影剤の追加は、褐色脂肪組織における造影取り込みの程度ならびに褐色脂肪組織の体積および/または表面積に応じて、がんの進行および転帰のより正確な予後を可能にする。ほとんどの悪性物では、褐色脂肪組織における18FDGの取り込み増大は、より不良ながんの予後を意味する。
【0130】
本発明のこの目的のさらに別の具体的な変形形態において、ヒトがん患者において、PET-CT撮像によって活性褐色および/またはベージュ脂肪組織の分量を評価することによるがん査定のための予後方法が提供される。方法は、上述した通りの第1の実施形態の主な態様の工程a)~c)、または代替として、
a)前記がん患者に、本明細書において記述される通りのPET-CT造影剤を投与し、前記PET-CT造影剤の投与が、18FDGの投与の少なくとも3時間前に実施される工程と、
b)静脈内ルートによって、好ましくは標準的な慣行に従って、例えば文献17において記述される通りに、18FDGを投与する工程と、
c)前記ヒトがん患者に対してPET-CTスキャンを実施する工程と
を含む。
【0131】
この方法では、褐色脂肪組織によるPET-CT造影剤の取り込みは、がんの予後を決定するための基礎として解され得る。本発明の一部の実施形態では、褐色脂肪組織によるPET-CT造影剤の取り込みを合致している関連性のある特徴を持つ健康な患者(例えば、年齢、性別、体重、民族性、BMIに関して合致する健康な人物)のための基準値と比較してよい。ほとんどのがん型において、予後不良は、基準値と比較して高い取り込み、すなわちより大きいエリアの陽性造影増強を有するヒトがん患者について同定され得る。他の悪性物(一部の乳房がん等のホルモンに影響されるがん)では、より高い取り込みはより良好ながん転帰を意味する。
【0132】
上記を考慮すると、以下の追加の工程は、好ましくは、上述した通りの第1の実施形態の主な態様の工程a)~c)を実施した後に行われる:
d)前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がある陽性造影増強のエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
e)決定された体積および/または表面積を、がん患者の集団に対して工程a)~d)を実施することにより平均値として決定された基準値と比較する工程と、
f)ホルモン依存性がんに罹患している患者において定量化された体積および/または表面積が基準値よりも低い場合には予後不良を割り当て、ホルモン非依存性がんに罹患している患者において定量化された体積および/または表面積が基準値よりも高い場合には予後不良を割り当てる工程。
【0133】
工程a)~f)が指定された順序で実施されることは、合理的であり、故に有利である。
【0134】
別の変形形態において、上記を考慮すると、すべてのBATは予後の基礎として使用され得る。この変形形態において、以下の追加の工程は、好ましくは、上述した通りの第1の実施形態の主な態様の工程a)~c)を実施した後に行われる:
d)PET-CT造影剤の陽性造影増強の体積および/または表面積を決定する工程と、
e)決定された体積および/または表面積を、健康な人物または健康な人物の群から導出された基準値と比較する工程と、
f)ホルモン依存性がんに罹患している患者において定量化された体積および/または表面積が基準値よりも低い場合には予後不良を割り当て、ホルモン非依存性がんに罹患している患者において定量化された体積および/または表面積が基準値よりも高い場合には予後不良を割り当てる工程。
【0135】
工程a)~f)が指定された順序で実施されることは、合理的であり、故に有利である。
【0136】
予後の正確さは、上記の工程a)~f)を、さらなる工程:
g)前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在がないエリアを可能性のある腫瘍または転移として決定する工程と、
h)工程f)の転帰に基づいて、ならびに加えて、工程g)の決定に基づく腫瘍または転移の体積および/または表面積および/または局在に基づいて、予後を割り当てる工程
と組み合わせることによって改善され得る。
【0137】
例えば、前記工程h)において、予後不良に寄与する要因は、工程g)において同定された組織の遠位リンパ節への広がりおよび/または複数の転移の同定である。
【0138】
上記で注記した通り、工程g)において同定された可能性のあるエリアについて、上記でさらに詳細に概説した通りの他の理由のための18FDG堆積の可能性を排除することを可能にする追加措置をとることにより、方法の正確さを増大させることが可能である。
【0139】
前記PET-CTスキャンは、腫瘍の検出、診断もしくは病期分類のため、療法の効能を評価するため、がんの進行を評価するため、または処置腫瘍専門医もしくは医師に関係すると考えられるすべての理由のために処方され得る。
【0140】
第1の実施形態では、がんは、好ましくは、悪性腫瘍を伴うがんであり、より好ましくは、肺、結腸直腸、乳房、婦人科関連、頭頸部、食道、胃、胆道、濾胞性および髄様性甲状腺、ならびに膵臓がん、白血病、黒色腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、原発性脳腫瘍、褐色細胞腫、脂肪腫または脂肪肉腫を含むまたはそれらからなる群から選択される。
【0141】
本発明の第2の実施形態の方法
有利なことに、以下で記述されるPET-CT造影剤は、がんは有さないが肥満もしくは糖尿病等の代謝性疾患に罹患しているヒト対象において、または健康な志願者において使用することもできる。
【0142】
故に、本発明のさらなる目的は、ヒト対象における代謝性疾患を、前記ヒト対象において褐色および/またはベージュ脂肪組織をPET-CT撮像することによって同定するための方法であって、
a)前記ヒト対象に、以下で記述される通りのPET-CT造影剤を投与する工程と、
b)工程a)のPET-CT造影剤の投与の少なくとも3時間後に、18FDG PETトレーサーを投与する工程と、
c)前記ヒト対象に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と
を含む、方法を提供することである。
【0143】
代謝性疾患の存在は、例えば、陽性造影増強を定量化し、決定された値を健康な個体についての基準値と比較することによって同定されてもよく、定量化された陽性造影増強が健康な個体の基準値からの逸脱を示す場合には、これは代謝性疾患の存在の指標として解され得る。前記健康な個体の基準値は、工程a)~c)を用いる上記の手順を行い、適用可能ならば、合致している関連性のある特徴を持つ健康な個体または健康な個体のコホート(例えば、年齢、性別、民族性、体重、BMIに関して合致する健康な人物)から取得された値を平均することによって、導出され得る。
【0144】
例えば、PET-CT造影剤の取り込みは、対象において存在するBATの量を反映する。より高い分量のBATは、より低い血糖、コレステロール(LDL)、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸ならびにより良好なインスリン感度と結び付いている。対照的に、BATの非存在または低い体積および/もしくは表面積は、不十分な代謝状態、すなわち、高血糖、コレステロール(LDL)、トリグリセリドおよび遊離脂肪酸の高い血中レベルならびに低いインスリン感度と関係する。BATの適切な存在がある肥満患者は、BATが低いまたは存在しない肥満患者よりもはるかに良好な代謝状態である。患者の第2のカテゴリーは、彼らのカロリー摂取量を調整するための栄養介入およびパーソナライズされた運動プログラムを含む特別な医学的配慮およびケアを必要とする。彼らは、必要ならば、NAFLDおよび/またはNASHならびに適切な処置を有するか否かを評価するための追加の診断手順も得るべきである。
【0145】
上記を考慮すると、以下の追加の工程は、好ましくは、上述した方法を実施した後に行われる:
d)工程c)のPET-CTスキャンにおいてPET-CT造影剤の陽性造影増強の体積および/または表面積を定量化する工程と、
e)工程d)の定量化された体積および/または表面積を、1人または複数の健康な人物から導出された基準値と比較する工程と、
f)定量化された体積および/または表面積が基準値よりも低い場合には不十分な代謝状態を、定量化された体積および/または表面積が基準値に等しいまたはそれよりも高い場合には良好な代謝状態を割り当てる工程。
【0146】
この方法の工程a)~f)が指定された順序で実施されることは、合理的であり、故に有利である。
【0147】
当業者ならば、偏差の程度および測定誤差に基づいて、そのような決定の信頼性を判断することができる。
【0148】
一実施形態によれば、前記ヒト対象は、肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に罹患している。
【0149】
別の実施形態によれば、前記ヒト対象は、がんに罹患していない対象である。
【0150】
上記の方法において、基準値は、好ましくは、年齢範囲、性別、民族性、ボディマス範囲および/またはBMI範囲に関して患者と合致する健康な人物から導出される。
【0151】
本発明の第3の実施形態の方法
以下で記述されるPET-CT造影剤および本発明の方法は、代謝性疾患のための新たな療法を開発するのを助けるため、またはこれらの療法から利益を得ることができる患者を選択するため、またはヒトもしくは動物対象における前記療法の効能を評価するために、臨床または前臨床研究におけるコンパニオン診断として使用されることも想定される。
【0152】
例えば、一部の研究者は、BATを活性化させることおよび/またはWATからBATへの変換を誘発することによって、肥満に対する処置を開発することを狙いとしている。これらの研究者は、処置の効能を早期に評価するために以下で記述される造影剤を使用することから概して利益を得ることができた。他方で、抗がん療法を開発している人々は、悪液質を発病している患者を回避するためまたは患者をサブ群に分けて悪液質ありもしくはなしで処置効能を評価するために、潜在的な研究対象をスクリーニングしたい場合がある。スクリーニング中に各対象におけるBATの体積および/または表面積を評価するために造影剤を用いてPET-CTスキャンを実施することにより、そうすることができる。悪液質のための処置を開発している研究者らは、可能な限り早く、理想的には減量前に、処置を開始したい場合がある。同様に、患者のスクリーニングは、PET-CT造影剤を使用し、各がん患者におけるBATの体積および/または表面積を評価して、実施することができる。これらすべての例において、志願者および/または患者は、
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、好ましくは経口ルートによって投与され、
2)少なくとも3時間後に、18FDGまたは別のPETトレーサーを投与され、
3)18FDG PET-CTスキャンを、または別のPETトレーサーが使用される場合には前記他のPETトレーサーに適切なPET-CTスキャンを、好ましくは、例えば文献17において記述される通りの標準プロトコールに従って受ける
であろう。
【0153】
次いで、調査員は、BATの体積および/または表面積および/または局在を評価し、それを、合致している関連性のある特徴を持つ健康な個体(例えば、年齢、性別、体重、民族性、BMIに関して合致する健康な人物)のものと比較することができる。これらの特徴は、性別、年齢、体重、民族性、BMIを含むことができるがこれらに限定されない。志願者および/または患者は、処置の効能を評価するために自分自身の対照として使用されてもよい。
【0154】
故に、肥満および/または2型糖尿病に対する処置を開発する場合、処置の単回または複数回施行(adminstrations)後の患者のPET-CTスキャンを、処置の施行前の患者のPET-CTスキャンと比較してよい。処置の効能は、BATの体積および/または表面積が増大した場合に確認され得る。活性BATの体積および/または表面積の増大は、効能を指し示すこともでき、活性BAT対すべてのBATの比における増大も同様である。代替として、そのような処置の効能は、試験人物のプラセボアームを追加し、プラセボ群の人物に対して上記の工程1)~3)を実施し、BAT増大の上記で言及した効果がプラセボ群においては観察されないかまたはより少ない程度に観察されることを確立することによって評価され得る。
【0155】
上記を考慮すると、本発明は、肥満および/または2型糖尿病に対する処置の効能を評価するための方法であって、活性BATの量に焦点を当て、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程10)の比較が工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる(Assiging)工程と
を含む、方法の第1の変形形態を提供する。
【0156】
前記方法は、単一の患者または好ましくは患者の群で実施され得る。前記方法が患者の群で実施される事例では、個々の患者についての結果は、統計誤差を低減させるために一緒に評価され得る。
【0157】
上記の方法において、工程1)~7)が指定された順序で行われ、一方、工程8)および9)が逆の順序でまたは同時に実施されてもよいことは、合理的であり、故に有利である。
【0158】
プラセボ対照に依拠する変形形態では、方法は、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者または患者の群に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程1)~10)を異なる患者または患者の群で実施するが、工程4において肥満および/または2型糖尿病処置の代わりにプラセボ処置が施される工程と、
12)肥満および/または2型糖尿病処置患者または患者群における工程10)の比較が、プラセボ患者または患者群における工程10)の比較で取得されたものよりも大きい工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む。
【0159】
上記の方法において、工程1)~7)が指定された順序で行われ、一方、工程8)および9)が逆の順序でまたは同時に実施されてもよいことは、合理的であり、故に有利である。工程11)としてまとめられている対応する工程にも同じことが当てはまる。工程11)としてまとめられている工程は、工程1)~10)の前に、それと同時にまたはその後に実施されてよい。
【0160】
本発明は、肥満および/または2型糖尿病に対する処置の効能を評価するための方法であって、すべてのBATの量に焦点を当て、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程10)の比較が工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法の第2の変形形態をさらに提供する。
【0161】
上記の方法において、工程1)~7)が指定された順序で行われ、一方、工程8)および9)が逆の順序でまたは同時に実施されてもよいことは、合理的であり、故に有利である。
【0162】
すべてのBATに焦点を当て、プラセボ対照に依拠する変形形態では、方法は、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者または患者の群に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程1)~10)を異なる患者または患者の群で実施するが、工程4において肥満および/または2型糖尿病処置の代わりにプラセボ処置が施される工程と、
12)肥満および/または2型糖尿病処置患者または患者群における工程10)の比較が、プラセボ患者または患者群における工程10)の比較で取得されたものよりも大きい工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む。
【0163】
上記の方法において、工程1)~7)が指定された順序で行われ、一方、工程8)および9)が逆の順序でまたは同時に実施されてもよいことは、合理的であり、故に有利である。工程11)としてまとめられている対応する工程にも同じことが当てはまる。工程11)としてまとめられている工程は、工程1)~10)の前に、それと同時にまたはその後に実施されてよい。
【0164】
本発明は、肥満および/または2型糖尿病に対する処置の効能を評価するための方法であって、活性BATの量対すべてのBATの量の比に焦点を当て、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
11)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
12)工程8)において決定された体積および/または表面積を工程10)における体積および/または表面積で割ることにより第1の比を算出する工程と、
13)工程9)において決定された体積および/または表面積を工程11)における体積および/または表面積で割ることにより第2の比を算出する工程と、
14)工程12)において決定された比を、工程13)において決定された比と比較する工程と、
15)工程14)の比較が工程12)から工程13)への比の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法の第3の変形形態をさらに提供する。
【0165】
上記の方法において、工程1)~7)が指定された順序で行われ、一方、工程8)~11)ならびに同様に工程12)および13)が逆の順序でまたは同時に実施されてもよいことは、合理的であり、故に有利である。
【0166】
活性BAT対すべてのBATの比に焦点を当て、プラセボ対照に依拠する変形形態では、方法は、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者または患者の群に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)肥満および/または2型糖尿病処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者に、肥満および/または2型糖尿病処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記18FDGおよび前記PET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程3)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
11)工程7)のPET-CTスキャンにおいて前記PET-CT造影剤の陽性造影増強があるエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
12)工程8)において決定された体積および/または表面積を工程10)における体積および/または表面積で割ることにより第1の比を算出する工程と、
13)工程9)において決定された体積および/または表面積を工程11)における体積および/または表面積で割ることにより第2の比を算出する工程と、
14)工程12)において決定された比を、工程13)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
15)工程1)~14)を異なる患者または患者の群で実施するが、工程4において肥満および/または2型糖尿病処置の代わりにプラセボ処置が施される工程と、
16)肥満および/または2型糖尿病処置患者または患者群における工程14)の比較が、プラセボ患者または患者群における工程14)の比較で取得されたものよりも大きい工程12)から工程13)への比の増大を示す場合には、肥満および/または2型糖尿病処置の効能を割り当てる工程と
を含む。
【0167】
上記の方法において、工程1)~7)が指定された順序で行われ、一方、工程8)~11)ならびに同様に工程12)および13)が逆の順序でまたは同時に実施されてもよいことは、合理的であり、故に有利である。工程15)としてまとめられている対応する工程にも同じことが当てはまる。工程15)としてまとめられている工程は、工程1)~14)の前に、それと同時にまたはその後に実施されてよい。
【0168】
開発中の抗がん療法の効能を評価する場合、同様のアプローチをとることができる。すなわち、抗がん処置の単回または複数回施行後の患者のPET-CTスキャンを、処置の施行前の患者のPET-CTスキャンと比較してよい。処置の効能は、腫瘍サイズ、転移の数および/またはBATの活性のうちの1つまたは複数が、処置後に、処置前のそれぞれのパラメーターと比較して減少した場合に確認され得る。代替として、抗がん処置の単回または複数回施行後の1人または複数の患者のPET-CTスキャンを、プラセボまたは好ましくは基準処置を受けた1人または複数の患者のPET-CTスキャンと比較してよい。処置の効能は、腫瘍サイズ、転移の数および/またはBATの活性のうちの1つまたは複数が、試験群においてプラセボまたは参照群と比較して減少した場合に確認され得る。
【0169】
上記を考慮すると、本発明は、抗がん処置の効能を評価するための方法であって、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、抗がん処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)抗がん処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、抗がん処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がないエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がないエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程10)の比較が工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示さない場合には、抗がん処置の効能を割り当てる工程と
を含む、方法の第1の変形形態を提供する。
【0170】
前記方法は、単一の患者または好ましくは患者の群で実施され得る。この事例では、個々の患者についての結果は、統計誤差を低減させるために一緒に評価され得る。
【0171】
上記の方法において、工程1)~7)が指定された順序で行われ、一方、工程8)および9)が逆の順序でまたは同時に実施されてもよいことは、合理的であり、故に有利である。
【0172】
プラセボまたは好ましくは基準(refence)処置対照に依拠する変形形態では、方法は、以下の工程:
1)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者または患者の群に、抗がん処置の施行前に投与する工程と、
2)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
3)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
4)抗がん処置を1回または複数回施す工程と、
5)以下で記述される通りのPET-CT造影剤を、患者に、抗がん処置の施行後に投与する工程と、
6)少なくとも3時間後に、18FDGを投与する工程と、
7)18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
8)工程3)のPET-CTスキャンにおいて18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がないエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
9)工程7)のPET-CTスキャンにおいて18FDGの陽性造影増強はあるが陽性造影増強の共局在がないエリアの体積および/または表面積を決定する工程と、
10)工程8)において決定された体積および/または表面積を、工程9)において決定された体積および/または表面積と比較する工程と、
11)工程1)~10)を異なる患者または患者の群で実施するが、工程4において抗がん処置の代わりにプラセボ処置または基準処置が施される工程と、
12)抗がん処置患者または患者群における工程10)の比較が、プラセボ患者または患者群における工程10)の比較で取得されたものよりも小さい工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、抗がん処置の効能を割り当てる、あるいは、工程11)において基準処置を使用する場合、抗がん処置患者または患者群における工程10)の比較が、基準処置を受けている患者または患者群における工程10)の比較で取得されたものよりも小さいまたはそれに等しい工程8)から工程9)への体積および/または表面積の増大を示す場合には、抗がん処置の効能を割り当てる工程と
を含む。
【0173】
上記の方法において、工程1)~7)が指定された順序で行われ、一方、工程8)および9)が逆の順序でまたは同時に実施されてもよいことは、合理的であり、故に有利である。工程11)としてまとめられている対応する工程にも同じことが当てはまる。工程11)としてまとめられている工程は、工程1)~10)の前に、それと同時にまたはその後に実施されてよい。
【0174】
本発明のすべての方法に共通する手順の態様
工程c)における18FDG PET-CTスキャンまたは他のPET-CTスキャンは、工程a)のPET-CT造影剤の投与後、好ましくは6~72、より好ましくは8~48時間、さらにいっそう好ましくは16~30時間で実施される。工程c)における18FDG PET-CTスキャンまたは他のPET-CTスキャンは、工程b)の18FDGまたは他の放射性トレーサーの投与後、好ましくは30~120分、好ましくは45~75分、より好ましくは55~65分で実施される。
【0175】
ある実施形態によれば、PET-CT造影剤の投与は、計画されたPET-CTスキャンの前日に起こる。好ましくは、PET-CT造影剤の投与は、18FDGまたは他のPETトレーサーの投与前、少なくとも4時間または少なくとも6時間または少なくとも10時間、とりわけ3~72時間、より好ましくは10~48時間、さらにいっそう好ましくは16~30時間等、少なくとも3時間で実施される。
【0176】
好ましくは、PET-CT造影剤は経口的に投与される(すなわち経口的なルートを介して)。PET-CT造影剤は好ましくは経口ルートを介して患者に与えられるが、他のルート(静脈内、くも膜下腔内、リンパ内、動脈内、腹腔内、皮下)によって投与されてもよい。
【0177】
本発明の好ましい実施形態では、PET-CT画像は、矢状または冠状である。矢状または冠状ビューは、時間および資源を消費する放射線技師および/または核医学医師によるPET-CTスキャンの軸スライスの評価を回避することから、好ましい。
【0178】
本発明の別の実施形態では、PET-CTスキャンの評価は、ソフトウェアまたは既存ソフトウェアへのプラグインもしくはアドインもしくはアドオンによって実施される。
【0179】
好ましくは、ソフトウェア解析は、ANN、RNN、DLまたはCNN技術等の機械学習によって実施される。
【0180】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、ヒト患者、とりわけヒトがん患者における使用に適合され、前記ヒト患者/ヒトがん患者は、18歳未満である。
【0181】
本発明における使用のためのPET-CT造影剤の活性剤
本発明における使用のためのPET-CT造影剤は、活性撮像剤として、1つまたは複数のヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む。これは、好ましくは、一般式I:
【0182】
【化4】

(式中、n=14~16であり、
各Rは、HまたはIから独立して選択され、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ポリアルキレンオキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、アリールカルボニルアルキル、ヘテロアリール、非芳香族ヘテロ環またはアルキルカルボニルオキシアルキルから選択され、これらの基は、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基および非芳香族ヘテロ環からそれぞれ独立して選択される1つまたは複数、好ましくは1~5つ、より好ましくは1、2、3または4つの置換基で置換されていてもよい。これらのハロゲン置換基のそれぞれは、F、Cl、BrおよびIから独立して選択されてもよい。複数のヨウ素原子が存在する場合、R基について本明細書において定義されているものと同じただし書きが当てはまる、すなわち、ジェミナルまたはビシナル位のいずれにも2個のヨウ素原子があってはならない)
に従う化合物である。
【0183】
好ましくは、R基は、一置換または多置換であってよい。
【0184】
好ましいR基は、アルキル基、例を挙げると、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、シクロプロピルメチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-プロペニル、アリル、クロチル、1-ブテニル、2-ブテニル、ブタジエニル、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニルおよびプロパルギル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル;アリール基、例を挙げると、フェニル、ナフチル、アニシル、トルイル、キシレニル、アラルキル、アラルキルオキシ、ヘテロアリール基、例を挙げると、ピリミジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジンおよびチオフェン、1-シクロヘキシルプロピル、またはハロアルキル基、例を挙げると、フルオロメチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびペンタフルオロエチル、クロロジメチル、クロロメチル、2-クロロエチル、2,4-ジクロロフェニル、1,1,2,2-テトラクロロエチル、1-クロロブチルおよび4-クロロベンジルを含むがこれらに限定されない。
【0185】
これは、置換アルキル基、例を挙げると、9-フルオレニルメチル、ポリアルキレンオキシアルキル、例を挙げると、メトキシエトキシメチル、非芳香族ヘテロ環、例を挙げると、テトラヒドロピラニル、任意選択により置換されているアルキルカルボニルオキシアルキル基、例を挙げると、ピバロイルオキシメチル(pivalyloxymethyl)およびフェニルアセトキシメチル、任意選択により置換されているアリールカルボニル基、例を挙げると、フェナシルおよび置換フェナシル、例を挙げると、p-ブロモフェナシル、p-メトキシフェナシル、ならびにまた置換および非置換アルキルまたはアルケニル基、例を挙げると、t-ブチル、3-メチル-3-ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル(cycohexyl)、アリル、3-ブテン-1-イル、シンナミル、ならびにヘテロアリール基、例を挙げると、オキサゾールおよび2-アルキル-1,3-オキサゾリンを含むことができる。
【0186】
これは、アルキルアリール、例を挙げると、ベンジル、置換ベンジル、例を挙げると、トリフェニルメチル、p-メトキシベンジル、4-ピコリル、ジフェニルメチル、フェニルエチル、置換フェニルエチルだけでなく、アルコキシアルキル、例を挙げると、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、ブトキシエチル、イソブトキシエチル、ヒドロキシアルコキシアルキル、例を挙げると、ヒドロキシメトキシメチル、2-ヒドロキシエトキシメチル、3-ヒドロキシプロポキシメチル、4-ヒドロキシブトキシメチル、ヒドロキシメトキシエチル、ヒドロキシメトキシプロピル、ヒドロキシメトキシブチル、ヒドロキシメトキシペンチル、ヒドロキシメトキシヘキシル、ポリヒドロキシアルキルおよびヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、ならびにまたカルボニルオキシアルキル、例を挙げると、アセトイルオキシメチル、プロパノイルオキシメチル、ブタノイルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、ヘキサノイルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、ならびに同様の基も含むことができる。
【0187】
一般式Iに従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物は、一部の実施形態では、以下のサブ式A、BおよびCのうちの1つによって特徴付けられる。
【0188】
【化5】

式中、nは1~6の整数であり、x、yは炭素原子であり、x=0~15かつy=0~15かつx+y≦15であり、ただし、式A、BまたはCの脂肪酸部分における炭素原子の総数は、それぞれ、14~20の間、好ましくは16~18の間であり、各Rは、HまたはIから独立して選択され、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、R基は、式Iについて上記で指定されたのと同じであり、一置換または多置換であってよい。
【0189】
故に、式A、BまたはCのための好適なR基は、例えば、非置換アルキル、例を挙げると、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチルおよび同様のものだけでなく、置換アルキル基、例を挙げると、9-フルオレニルメチル、メトキシエトキシメチル、テトラヒドロピラニル、ピバロイルオキシメチル、フェニルアセトキシメチル、フェナシルおよび置換フェナシル、例を挙げると、p-ブロモフェナシル、p-メトキシフェナシル、ならびにまたt-ブチル、3-メチル-3-ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリル、3-ブテン-1イル、シンナミル、オキサゾール、2-アルキル-1,3-オキサゾリンおよび同様のものも含む。これは、アルキルアリール、例を挙げると、ベンジル、置換ベンジル、例を挙げると、トリフェニルメチル、p-メトキシベンジル、4-ピコリル、ジフェニルメチルフェニルエチル、置換フェニルエチルだけでなく、アルコキシアルキル、例を挙げると、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、ブトキシエチル、イソブトキシエチル、ヒドロキシアルコキシアルキル、例を挙げると、ヒドロキシメトキシメチル、2-ヒドロキシエトキシメチル、3-ヒドロキシプロポキシメチル、4-ヒドロキシブトキシメチル、ヒドロキシメトキシエチル、ヒドロキシメトキシプロピルヒドロキシメトキシブチル、ヒドロキシメトキシペンチル、ヒドロキシメトキシヘキシル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、ならびにまたカルボニルオキシアルキル、例を挙げると、アセトイルオキシメチル、プロパノイルオキシメチル、ブタノイルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、ヘキサノイルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、ならびに同様の基も含む。
【0190】
本発明に従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは混合物は、異性体混合物としてまたは単一の異性体として存在し得る。指定がなければ、両方の異性形態が意図される。本発明の化合物が1つのキラル中心を含有する場合、ヨウ化化合物は、単一の異性体(RまたはS)としてまたは異性体の混合物、例えばラセミ混合物として提供され得る。本発明のヨウ化化合物が1つを超えるキラル中心を含有する場合、ヨウ化化合物は、鏡像異性的に純粋なジアステレオ異性体としてまたはジアステレオ異性体の混合物として提供され得る。
【0191】
本発明のある実施形態によれば、PET-CT造影剤は、4~24個の炭素原子の異なる炭素鎖を有する数個または少なくとも2個のヨウ化脂肪酸を含む混合物で使用され得る4~24個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルを含むことも想定される。本発明の好ましい実施形態では、PET-CT造影剤は、一般式Iに従う、好ましくは12~22個の炭素原子、より好ましくは14~20個、さらにいっそう好ましくは16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸を含む。
【0192】
さらにいっそう好ましい実施形態では、ヨウ化脂肪酸はヨウ化リノレン酸である。
【0193】
好ましくは、ヨウ化脂肪酸は過ヨウ素化されている。
【0194】
好ましい実施形態によれば、12~22個、例えば12~20個の炭素原子、好ましくは14~20個またはより好ましくは14~18個の炭素原子、さらにいっそう好ましくは16~18個の炭素原子を含むヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物が、本発明に従って使用され得る。
【0195】
別の実施形態では、本発明に従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは混合物は、少なくとも1つの不斉中心を有する。この不斉中心の結果として、本発明のヨウ化化合物は、可能な立体異性形態のいずれかで出現することができ、立体異性体の混合物で使用され得、光学的に活性もしくはラセミであることができるか、または本質的に純粋な立体異性体、すなわち少なくとも純度95%として単独で使用され得る。すべての不斉形態、個々の立体異性体およびそれらの組合せは、本発明の範囲内である。
【0196】
本発明のさらに別の実施形態によれば、PET-CT造影剤は、16~18個の炭素原子の数個または少なくとも2個のヨウ化脂肪酸を含む混合物で使用され得る16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルからなる。好ましくは、PET-CT造影剤は、一般式Iに従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸の生体適合性乳剤である。
【0197】
別の実施形態によれば、生体適合性製剤は、エチオ化油の製剤である。
【0198】
PET-CT造影剤の活性剤の調製
当業者に公知である式(I)の16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を調製するための任意の好適な方法は、本発明の範囲に包括され得ることが理解される。好適な調製方法は、例えば、WO2019/030024A1の22~23頁および実施例1~15においてならびにWO2020/165349A1の28~30頁および実施例1~10において記述されている。
【0199】
本発明における使用のためのPET-CT造影剤
前記PET-CT造影剤は経口(すなわち経口的な)ルートに適合される。
【0200】
本発明のある実施形態によれば、PET-CT造影剤は、ヒト対象における褐色および/またはベージュ脂肪組織(BAT)の非侵襲的インビボ撮像、定量化および/またはその活性のモニタリングに適合される。
【0201】
好ましくは、PET-CT造影剤は生体適合性製剤の形態である。より好ましくは、生体適合性製剤は乳剤である。
【0202】
本発明に従い、乳剤は、レシチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ショ糖エステル、ソルビタンエステルおよび/またはそれらの混合物を含む群から選択される生体適合性乳化剤を含む。
【0203】
前記実施形態によれば、乳剤中における前記生体適合性乳化剤の量は、全乳剤の5~50%(w/w)の間である。好ましくは、乳剤中における前記生体適合性乳化剤の量は、全乳剤の5~25%(w/w)の間である。
【0204】
式(I)のヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物の量は、乳剤の少なくとも10重量%および好ましくは少なくとも20重量%であるべきであり、30%の含有量が概して好ましいが、最大40%の造影剤を含有する乳剤が一部の事例では調製され得る。1つまたは複数の乳化剤が好ましくは組成物に含まれる。
【0205】
好ましくは、乳剤はマイクロ乳剤またはナノ乳剤である。
【0206】
他の実施形態では、賦形剤の重量は、例えば、単位用量の総重量の約0.1%~約75%の間、または単位用量の総重量の約2%~約50%の間、およびその中の導出可能な任意の範囲であってよい。
【0207】
PET-CT造影剤の活性剤、ならびに特に式(I)の16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を(有機溶媒に溶解してまたは未希釈で)、好ましくは乳化剤を含有するイオンフリー水または緩衝液に添加することができる。得られた混合物を、当業者に公知である任意の方法を使用し、脂肪酸の融点を上回る温度で乳化させて、微細分散した水中油乳剤を生成することができる。撹拌は、任意の公知の手段によって、例えば高せん断撹拌機の使用によってまたは超音波的に達成され得る。水相は、保存剤(抗菌剤および/または抗酸化剤等)、安定剤、質感改変剤、着色剤、味覚改変剤、薬学的に許容される塩および/または緩衝剤等の他の賦形剤を含有することができる。好適な乳剤およびそれらの調製方法は、例えば、WO2019/030024A1の25~27頁および実施例16ならびにWO2020/165349A1の32~35頁および実施例1~10において記述されている。これらの特許文書は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0208】
固体医薬品形態もPET-CT造影剤として想定される。これらの固体形態において、以上で記述した通りのPET-CT造影剤の活性剤は、ゼラチン、ポリ乳酸、ポリ乳酸-ポリグリコール酸、ポロキサマー、カプロラクトン、セルロース、糖、糖誘導体、塩、脂肪酸およびそれらの誘導体等の好適な賦形剤と混合される。
【0209】
本発明における使用のためのPET-CT造影剤の投薬量および投与
本発明の好ましい実施形態によれば、PET-CT造影剤は、体重1グラム当たりヨウ素0.004~0.5mgの間に対応する用量で投与される。
【0210】
しかしながら、ある特定の実施形態では、乳剤の単位用量は、例えば、体重1g当たりヨウ素少なくとも約0.004mgに対応するヨウ素の総量のPET-CT造影剤を含み得る。同様に、ある特定の実施形態では、乳剤の単位用量は、例えば、体重1g当たりヨウ素約0.5mg以下に対応するヨウ素の総量のPET-CT造影剤を含み得る。
【0211】
他の非限定的な例では、単位用量は、PET-CT造影剤を、投与1回につきヨウ素の含有量が、体重1kg当たり約1μg(以後、「μg/kg体重」)、約50μg/kg体重、約100μg/kg体重、約500μg/kg体重、約1mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約50mg/kg体重、約100mg/kg体重、約200mg/kg体重、約300mg/kg体重、約350mg/kg体重、約400mg/kg体重、約450mg/kg体重、約500mg/kg体重、約600mg/kg体重、約700mg/kg体重、約800mg/kg体重、約900mg/kg体重、約1000mg/kg体重、約2000mg/kg体重から約5000mg/kg体重またはそれ以上、およびその中の導出可能な任意の範囲であるような量で含んでもよい。本明細書で挙げられている数字から導出可能な範囲の非限定的な例では、約350mg/kg体重~約1000mg/kg体重、約50μg/kg体重~約500mg/kg体重等の範囲が投与され得る。
【0212】
いずれの事例でも、使用されるPET-CT造影剤の用量は、診断されている特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズおよび重量を含む個々の患者パラメーター、撮像の持続時間、併用療法の性質(もしあれば)、ならびに健康従事者の知識および専門知識内である他の同様の要因によって決まる。これらの要因は、当業者に公知であり、最小限のルーチン実験で対処され得る。したがって、最適投薬量は、任意の特定の患者を診断している従事者によって決定され得る。
【0213】
本発明における使用のためのPETトレーサー
PETスキャンは、放射性トレーサー(PETトレーサーまたは放射性トレーサーとも称される)の投与が実施されることを必要とする。がんの検出のための最も一般的に使用される放射性トレーサーは、18FDG(2-[フッ素-18]フルオロ-2-デオキシ-D-グルコース)であり、これは放射性グルコース類似体である。トレーサーは、PETスキャン前に、好ましくは、等張滅菌パイロジェンフリー透明無色クエン酸緩衝溶液として、静脈内に注射される。前記溶液は、好ましくは、1mL当たり、合成の終わりに2-デオキシ-2-[18F]フルオロ-Dグルコース0.37~3.7GBqの間(10.0~100mCi)、塩化ナトリウム4.5mgおよびクエン酸イオン7.2mgを含有する。溶液のpHは、好ましくは5.0~7.5の間である。成人のための通常の18FDG用量は、185~370MBqの間である。PET-CTスキャンを受けている患者は、18FDG投与(adminitration)前少なくとも4時間にわたって絶食すべきである。18FDGの静脈内(intraveneous)注射およびその後の取り込み段階中、患者は、筋肉への18FDG取り込みを最小化するために、座ってまたは横になって無言のままでいるべきである。患者は、褐色脂肪組織への18FDG堆積を最小化するために、18FDGの注射の30~60分前に暖かく保つことを開始し、その後の取り込み期間および検査全体を通して継続すべきである17。PET-CTスキャンは、18FDGの投与後55~75分で実施されるべきである。
【0214】
11C-アセテート、11C-メチオニン、11C-コリン、銅(64Cu)ドータテート、18F-EF5、18F-フルシクロビン、18F-フルオロコリン、18F-フルオロエチル-L-チロシン(18F-FET)、18F-フルオロミソニダゾール(18F-FMISO)、18F-フルオロチミジン、64Cu-Cu-ETS2、68Ga-DOTA-偽ペプチド、68Ga-DOTA-TATE、68Ga-PSMA、68Ga-CXCR等の他の放射性トレーサーを使用してもよい。そのような代替的なPETトレーサーにおける技術水準は、F.Giammarileら20によって総説されている。
【0215】
以上および以下で注記されている通り、本発明の方法の一部の変形形態によれば、18FDGの代わりに他のPETトレーサーを使用して、本発明の方法を行うことが可能である。故に、本発明の方法のこれらの変形形態は、上記で挙げられているおよび/またはその全体が本明細書に組み込まれる上記で引用した通りのGimmarileによる総説論文において論じられている、PETトレーサーに依拠し得るものである。
【0216】
すべての代替的なPETトレーサーが、すべての種類のがんに好適であるとは限らない。しかしながら、当業者ならば、例えばGiammarileらによる上記で言及した総説論文によって反映されるような普遍的な一般知識に依拠して、目的のがん型のための好適な代替的なPETトレーサーを同定することができる。別段の指示がない限りまたは文脈上別のことを指示するのでない限り、18FDGの代わりに別のPETトレーサーが使用される場合には、例えば、その投与の形態、投与のタイミング、方法工程のシーケンス等に関して、18FDGを使用するための本明細書において提供されるさらなる指標は、代替的なPETトレーサーに類似の方式で適用され得る。
【0217】
特別な実施形態
本出願は、以下の具体的な実施形態にも関する。この項の特別な実施形態について提供される以下の情報を、そのような組合せが技術的に合理的である場合およびそうである程度までこのテキストの他の項において提供される情報と組み合わせてよいこと、例えば、組み合わせられるそれぞれの情報が同じ種類の方法に関連することが企図されている。しかしながら、1つの異なった実施形態として、この項の特別な実施形態についての以下の情報が、このテキストの他の項において提供される情報とは独立して考慮されることも企図されている。
【0218】
本明細書において記述されるものと同様または同等の方法および材料を本発明の特別な実施形態の実践または試験において使用することができるが、好適な方法および材料を以下で記述する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書において論じられる刊行物および出願は、それらの開示のためだけに本出願の出願日前に提供される。本明細書のいかなる内容も、先行発明により本発明の特別な実施形態がそのような刊行物に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるものではない。加えて、材料、方法および例は、例証にすぎず、限定的であることを意図したものではない。
【0219】
矛盾する場合、定義を含めて、本明細書が優先する。
【0220】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本明細書における主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の定義は、本発明の特別な実施形態の理解を容易にするために供給される。
【0221】
用語「含む(comprise)」は、含む(include)、つまり1つまたは複数の特色または成分の存在を許可することの意味で、概して使用される。
【0222】
本明細書および請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明確に別のことを指示するのでない限り、複数の参照物を含む。
【0223】
本明細書で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、当技術分野においてもよく認識されており、イヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、雌ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダおよび最も好ましくはヒトを含む哺乳動物を指すために本明細書において交換可能に使用される。一部の実施形態では、対象は、診断を必要とする対象または診断された疾患もしくは障害を持つ対象である。しかしながら、他の実施形態では、対象は健康な対象であることができる。該用語は、特定の年齢または性別を表示しない。故に、成人および新生児対象は、男性であるか女性であるかにかかわらず、網羅されることが意図される。
【0224】
用語「製剤」または「医薬製剤」は、錠剤、腸溶コーティング錠剤、制御放出錠剤、持続放出錠剤、カプセル剤および自己乳化型医薬品形態等の固体製剤を包括する。これは、液剤、懸濁剤、乳剤、局所調製物、坐剤、かん腸剤、ならびに注射および注入用の非経口製剤等の液体および半固体製剤も包括する。
【0225】
用語「エチオ化油」は、天然起源の油であり、有機合成手順によって変換されて、放射線不透過性造影剤として注射可能なものとして使用されるヨウ化脂肪酸のエチルエステルとなり、これは、放射線学的調査において構造を概説するために使用される。エチオ化油は、主としてモノヨードステアリン酸エチルおよびジヨードステアリン酸エチルとしての、ケシ種子油の脂肪酸のエチルエステルと組み合わせたヨウ素で構成される。正確な構造は不明であるにもかかわらず、これは式Iの定義内に含まれる。
【0226】
化学では、本明細書で使用される用語「ジェミナル」は、同じ原子に結合している2個の原子または官能基間の関係を指す。
【0227】
関連用語「ビシナル」は、隣接する原子に結合している2個の官能基間の関係を指す。現在は、隣接する炭素原子に結合しているヨウ素原子(すなわちビシナル)を有する安定なヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルを合成することはほぼ不可能である。立体障害を理由として、それらの分子は不安定であり、本発明の特別な実施形態の目的のために使用することができない。しかしながら、将来、当業者がこの問題の技術的解決策を見出すことが可能かもしれない。故に、ビシナル位にヨウ素原子を有する安定なヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルが提供される場合、それらの化合物も本発明の特別な実施形態の技術的問題を解決するのに好適であろうと考えられる。
【0228】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、任意の長または短鎖、直鎖または分枝鎖状脂肪族飽和または不飽和炭化水素基を含む。不飽和アルキル基は、一価または多価不飽和であってもよく、アルケニルおよびアルキニル基の両方を含む。そのような基は、最大40個の炭素原子を含有し得る。しかしながら、最大10個、例えば8個、より好ましくは最大6個、とりわけ好ましくは最大4個の炭素原子を含有するアルキル基が好ましい。
【0229】
用語「アルコキシル」は、-O-アルキルを表す。アルコキシルの例はC1~C6アルコキシルであり、酸素原子に結合している1から6個までの炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルキル鎖を表す。例示的なC1~C6アルコキシル基は、メトキシル、エトキシル、プロポキシル、イソプロポキシル、ブトキシル、sec-ブトキシル、t-ブトキシル、ペントキシル、ヘキソキシル等を含む。C1~C6アルコキシルは、その定義内にC1~C4アルコキシルを含む。
【0230】
用語「アリール」は、本明細書で使用される場合、炭素環式またはヘテロ環式、芳香族、5~14員単環式または多環式環を指す。例示的なアリールは、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フリル、イソチアゾリル、フラザニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3-b]チアントレニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチエニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキシアリニル、キンゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、テトラヒドロキノリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、ベータ-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニルおよびフェノキサジニルを含む。
【0231】
有機化学では、「飽和」化合物は、単結合によって一緒に連結された炭素原子の鎖を有する化学化合物である。アルカンは飽和炭化水素である。「不飽和」化合物は、アルケンまたはアルキンにおいてそれぞれ見られるもの等の炭素-炭素二重結合または三重結合を含有する化学化合物である。飽和および不飽和化合物は、炭素原子鎖だけからなる必要はない。それらは、直鎖、分枝鎖または環配置を形成することができる。それらは官能基も有することができる。この意味では、脂肪酸は飽和または不飽和として分類される。脂肪酸の不飽和の量は、そのヨウ素価を見出すことによって決定され得る。
【0232】
不飽和化合物は、付加反応が取得され得るものである。脂肪酸等の炭素の鎖において、二重または三重結合は鎖におけるねじれを引き起こすことになる。これらのねじれは、マクロ構造的意味合いを有する。不飽和脂質は、室温では固体ではなく液体となる傾向にあり、何故なら、鎖におけるねじれが、分子が一緒に緊密に詰まって固体を形成することを防止するからであり、これらの脂質は油と呼ばれる。
【0233】
用語「ポリヒドロキシ」または多価は、分子当たり2つ以上のヒドロキシル基を含有する化学化合物を指す。
【0234】
陽電子放射断層撮影-コンピュータ断層撮影(PET-CTとして公知である)は、単一のガントリー内で陽電子放射断層撮影(PET)スキャナーおよびX線コンピュータ断層撮影(CT)スキャナーを組み合わせた、同じセッションで両方のデバイスから順次画像を獲得するための核医学技術である。画像を組み合わせて単一の重なった(共同登録)画像にする。故に、体内における代謝または生化学的活性の空間分布を描写するPETによって取得された機能的撮像を、CTスキャニングによって取得された解剖学的撮像とより正確に整列または相関させることができる。二および三次元の画像再構成は、共通ソフトウェアおよび制御システムの関数としてレンダリングされ得る。
【0235】
PETスキャンは、放射性トレーサー、通常18FDGの投与が実施されることを必要とする。トレーサーはPETスキャン前に注射される。CTは、解剖学的輪郭描出のために造影剤の使用を必要としない。しかしながら、CTスキャンの前に造影剤を患者に投与してもよい。これは、そうでなければそれらの周囲のものから識別することが難しいであろう血管等の構造を強調表示するために有用である。造影剤を使用することは、組織についての機能情報を取得するのを助けることもできる。CT造影剤は通常、静脈内ルートによって投与される。いくつかの適応症においては動脈内またはくも膜下腔内注射を使用することもできる。水溶性CT造影剤は、血管構造および/または臓器を可視化するために使用される。それらを使用して、周囲組織とは異なる取り込みおよび流出動力学により腫瘍を診断することもできる。CT造影剤は、イオメプロール、イオベルソール、イオプロミド、イオヘキソール、イオジキサノール、ジアトリゾ酸メグルミン、メトリゾエート、イオタラム酸メグルミン、ヨージパミドメグルミン、イオパミドール、イオキシラン、イオキサグレートおよびイオベルソールを含むがこれらに限定されない血管撮像が意図されている任意の分子であってよい。
【0236】
本発明の特別な実施形態の目的は、18FDG PETトレーサーの事前投与を受けたヒトがん患者において、PET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法であって、
a)前記ヒトがん患者に、一般式I:
【0237】
【化6】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキルまたはアルキルカルボニルオキシアルキルである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む経口CT造影剤を投与し、
前記経口CT造影剤の投与が、前記18FDG PETトレーサーの投与の少なくとも3時間前に実施される工程と、
b)前記ヒトがん患者に対してPET-CTスキャンを実施する工程と、
c)前記ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ組織から区別するように、前記18FDGおよび前記CT造影剤の陽性造影増強の共局在を評価するためのPETおよびCTスキャンの両方を比較する工程と
を含む、方法を提供することである。
【0238】
前記CT造影剤は経口(すなわち経口的な)ルートに適合される。
【0239】
前記PET-CTスキャンは、腫瘍の診断もしくは病期分類のため、療法の効能を評価するため、がんの進行を評価するため、または処置腫瘍専門医もしくは医師に関係すると考えられるすべての理由のために処方され得る。PETトレーサーおよびCT造影剤の両方が重ね合わせられている(PETおよびCTスキャン上の同じ位置に位置付けられている)場合、PETトレーサーが褐色脂肪組織によって取り込まれたことを意味する。他方で、PETトレーサーが本発明の特別な実施形態において記述されるCT造影剤とオーバーレイしていない場合、褐色またはベージュ脂肪組織によるPETトレーサー取り込みを除外することができる。
【0240】
特別な実施形態の好ましい実施形態では、PETおよびCTスキャンのオーバーレイは、矢状ビューに基づく。矢状ビューは、時間のかかる放射線技師および/または核医学医師によるPETおよびCTスキャンの両方の軸スライスの評価を回避することから、好ましい。
【0241】
本発明の特別な実施形態の別の実施形態では、PETトレーサーおよびCT造影剤のスキャン重複のオーバーレイおよび評価は、ソフトウェアまたは既存ソフトウェアへのプラグインもしくはアドインもしくはアドオンによって実施される。
【0242】
好ましくは、ソフトウェア解析は、ANN、RNN、DLまたはCNN技術等の機械学習によって実施される。
【0243】
「機械学習」は、コンピュータにヒトがするように学習および行動させる科学であり、データおよび情報を観察および実世界インタラクションの形態でコンピュータにフィードすることにより、それらの学習を経時的に自律方式で改善する。機械学習アルゴリズムの基本的目標は、訓練サンプルを超えて一般化する、すなわち、これまでに「見たことがない」データをうまく解釈することである。
【0244】
「深層学習」は、本発明の特別な実施形態において使用される場合、機械学習において使用されるアルゴリズムの集合体であり、複数の非線形変換で構成されるモデルアーキテクチャの使用を通してデータにおける高レベルの抽象化をモデル化するために使用される。データの学習表現に基づく機械学習に使用される広範なファミリーの方法の一部である。深層学習は、ニューラルネットワークを構築するおよび訓練するために使用される具体的なアプローチであり、これらは高度に有望な意思決定ノードとみなされている。アルゴリズムは、入力データが出力になる前に一連の非線形性または非線形変換を通過する場合、深いとみなされる。対照的に、最も近代的な機械学習アルゴリズムは、入力が数レベルのサブルーチン呼び出ししか行えないことから、「浅い」とみなされる。
【0245】
深層学習は、データにおける特色の手動同定を除去し、代わりに、入力例における有用なパターンを発見しなくてはならない訓練プロセスがどのようなものであってもそれに依拠する。これは、ニューラルネットワークをより簡単にかつより速く訓練させ、bglを測定するのに適用される際により良好な結果を産出することができる。
【0246】
深層学習内で、この特別な実施形態は、それだけではないが多くの深層学習方法:再帰型ニューラルネットワークおよび畳み込みニューラルネットワークを使用する。
【0247】
「再帰型ニューラルネットワーク」または「RNN」は、ノード間の接続がシーケンスに沿って有向グラフを形成する人工ニューラルネットワークのクラスである再帰型ニューラルネットワークである。これは、ある時間系列にわたって一時的な動的挙動を呈することを可能にする。bglを取得する際における方法論としての再帰型ニューラルネットワークの使用は、図17において例証される。これらは、転帰を予測するために文脈が重大である使用事例においてとりわけ強力であり、データのシーケンスともなり得る最終出力を伝えるデータのシーケンスを処理するためにフィードバックループを使用することから、他の種類の人工ニューラルネットワークとは異なっている。これらのフィードバックループは、情報を持続させる。
【0248】
一部の事例では、人工ニューラルネットワークは、入力から出力へ単一方向に情報を処理する。これらの「フィードフォワード」ニューラルネットワークは、画像認識システムを支える畳み込みニューラルネットワークを含む。他方で、RNNは、階層化されていて、情報を二方向に処理することができる。
【0249】
「畳み込みニューラルネットワーク」(CNN)は、ピクセルデータを処理するように特異的に設計されている画像認識および処理において主として使用される一種の人工ニューラルネットワークである。CNNは、推薦システムおよび自然言語処理とともに画像および映像認識を含むマシンビジョンを多くの場合に使用して、生成的および記述的タスクの両方を実施するために深層学習を使用する、強力な画像処理である。このニューラルネットワークは、伝統的なニューラルネットワークの断片的画像処理問題を回避しながら全視野を網羅するような手法で配置されたそれらの「ニューロン」を有する。
【0250】
CNNの層は、入力層、出力層、ならびに、複数の畳み込み層、プーリング層、全結合層および正規化層を含む隠れ層からなる。制限事項の除去および画像処理のための効率の増大は、画像処理および自然言語処理に限定された訓練よりもはるかに有効でより単純なシステムをもたらす。
【0251】
好ましくは、R基は、一置換または多置換であってよい。好適なR基は、アルキル置換基、例を挙げると、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、シクロプロピルメチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル(heptly)、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-プロペニル、アリル、クロチル、1-ブテニル、2-ブテニル、ブタジエニル、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニルおよびプロパルギル(propagyl)、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル(admantyl);アリール置換基、例を挙げると、フェニル、ナフチル、アニシル、トルイル、キシレニル、アリールオキシ、アラルキル、アラルキルオキシ、ヘテロアリール基(ピリミジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、チオフェン)、1-シクロヘキシルプロピル、またはハロアルキル置換基、例を挙げると、フルオロメチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびペンタフルオロエチル、クロロジメチル、クロロメチル、2-クロロエチル、2,4-ジクロロフェニル、1,1,2,2-テトラクロロエチル、1-クロロブチルならびに4-クロロベンジルのセットを含むことができるがこれらに限定されない。
【0252】
これは、置換アルキル基、例を挙げると、9-フルオレニルメチル、メトキシエトキシメチル、テトラヒドロピラニル、ピバロイルオキシメチル、フェニルアセトキシメチル、フェナシルおよび置換フェナシル、例を挙げると、p-ブロモフェナシル、p-メトキシフェナシル、ならびにまたt-ブチル、3-メチル-3-ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリル、3-ブテン-1-イル、シンナミル、オキサゾールおよび2-アルキル-1,3-オキサゾリンも含むことができる。
【0253】
これは、アルキルアリール、例を挙げると、ベンジル、置換ベンジル、例を挙げると、トリフェニルメチル、p-メトキシベンジル、4-ピコリル、ジフェニルメチルフェニルエチル、置換フェニルエチルだけでなく、アルコキシアルキル、例を挙げると、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、ブトキシエチル、イソブトキシエチル、ヒドロキシアルコキシアルキル、例を挙げると、ヒドロキシメトキシメチル、2-ヒドロキシエトキシメチル、3-ヒドロキシプロポキシメチル、4-ヒドロキシブトキシメチル、ヒドロキシメトキシエチル、ヒドロキシメトキシプロピルヒドロキシメトキシブチル、ヒドロキシメトキシペンチル、ヒドロキシメトキシヘキシル、ポリヒドロキシアルキルおよびヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、ならびにまたカルボニルオキシアルキル、例を挙げると、アセトイルオキシメチル、プロパノイルオキシメチル、ブタノイルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、ヘキサノイルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、ならびに同様の基も含むことができる。
【0254】
一般式Iに従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物は、使用される出発材料に応じて、以下のサブ式A、BおよびCを含む。
【0255】
【化7】

式中、nは1~6の整数であり、x、yは炭素原子であり、x=0~15かつy=0~15かつx+y≦15であり、ただし、式A、BまたはCにおける炭素原子の総数は、それぞれ20以下であり、Rは、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、R基は、一置換または多置換であってよい。
【0256】
故に、好適なR基は、例えば、非置換アルキル、例を挙げると、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチルおよび同様のものだけでなく、置換アルキル基、例を挙げると、9-フルオレニルメチル、メトキシエトキシメチル、テトラヒドロピラニル、ピバロイルオキシメチル、フェニルアセトキシメチル、フェナシルおよび置換フェナシル、例を挙げると、p-ブロモフェナシル、p-メトキシフェナシル、ならびにまたt-ブチル、3-メチル-3-ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリル、3-ブテン-1イル、シンナミル、オキサゾール、2-アルキル-1,3-オキサゾリンおよび同様のものも含む。これは、アルキルアリール、例を挙げると、ベンジル、置換ベンジル、例を挙げると、トリフェニルメチル、p-メトキシベンジル、4-ピコリル、ジフェニルメチルフェニルエチル、置換フェニルエチルだけでなく、アルコキシアルキル、例を挙げると、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、ブトキシエチル、イソブトキシエチル、ヒドロキシアルコキシアルキル、例を挙げると、ヒドロキシメトキシメチル、2-ヒドロキシエトキシメチル、3-ヒドロキシプロポキシメチル、4-ヒドロキシブトキシメチル、ヒドロキシメトキシエチル、ヒドロキシメトキシプロピルヒドロキシメトキシブチル、ヒドロキシメトキシペンチル、ヒドロキシメトキシヘキシル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル、ならびにまたカルボニルオキシアルキル、例を挙げると、アセトイルオキシメチル、プロパノイルオキシメチル、ブタノイルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、ヘキサノイルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、ならびに同様の基も含む。
【0257】
特別な実施形態に従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは混合物は、異性体混合物または単一の異性体として存在し得る。指定がなければ、両方の異性形態が意図される。特別な実施形態の化合物が1つのキラル中心を含有する場合、ヨウ化化合物は、単一の異性体(RまたはS)としてまたは異性体の混合物、例えばラセミ混合物として提供され得る。特別な実施形態のヨウ化化合物が1つを超えるキラル中心を含有する場合、ヨウ化化合物は、鏡像異性的に純粋なジアステレオ異性体としてまたはジアステレオ異性体の混合物として提供され得る。
【0258】
特別な実施形態のある実施形態によれば、経口的な造影剤は、4~24個の炭素原子の異なる炭素鎖を有する数個または少なくとも2個のヨウ化脂肪酸を含む混合物で使用され得る4~24個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルを含むことも想定される。特別な実施形態の好ましい実施形態では、造影剤は、一般式Iに従う、好ましくは10~20個の炭素原子、より好ましくは16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸を含む。いっそう好ましい実施形態では、ヨウ化脂肪酸はヨウ化リノレン酸である。
【0259】
好ましくは、ヨウ化(iodiodinated)脂肪酸は過ヨウ素化されている。
【0260】
好ましい実施形態によれば、12~20個の炭素原子、好ましくは14~18個、さらにいっそう好ましくは16~18個の炭素原子を含むヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物が、本発明の特別な実施形態に従って使用され得る。
【0261】
別の実施形態では、本発明の特別な実施形態に従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは混合物は、少なくとも1つの不斉中心を有する。この不斉中心の結果として、本発明の特別な実施形態のヨウ化化合物は、可能な立体異性形態のいずれかで出現することができ、立体異性体の混合物で使用され得、光学的に活性もしくはラセミであることができるか、または本質的に純粋な立体異性体、すなわち少なくとも純度95%として単独で使用され得る。すべての不斉形態、個々の立体異性体およびそれらの組合せは、本発明の特別な実施形態の範囲内である。
【0262】
特別な実施形態のさらに別の実施形態によれば、造影剤は、16~18個の炭素原子の数個または少なくとも2個のヨウ化脂肪酸を含む混合物で使用され得る16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルからなる。好ましくは、造影剤は、一般式Iに従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸の生体適合性乳剤である。
【0263】
別の実施形態によれば、生体適合性製剤は、エチオ化油の製剤である。
【0264】
特別な実施形態のさらなる実施形態によれば、造影剤の生体適合性製剤は乳剤である。好ましくは、乳剤はナノ乳剤である。
【0265】
特別な実施形態のさらに別の実施形態によれば、16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルの生体適合性乳剤で構成される経口的な造影剤は、数個または少なくとも2個のヨウ化脂肪酸を含む混合物で使用され得る。
【0266】
特別な実施形態の好ましい実施形態では、造影剤は、一般式Iに従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸の生体適合性乳剤で構成される。
【0267】
いっそう好ましい実施形態では、ヨウ化脂肪酸はヨウ化リノレン酸である。
【0268】
好ましくは、ヨウ化脂肪酸は過ヨウ素化されている。
【0269】
特別な実施形態のさらに別の実施形態によれば、造影剤は、16~18個の炭素原子の異なる炭素鎖を有する数個または少なくとも2個のヨウ化脂肪酸を含む混合物で使用され得る16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルの生体適合性ナノ乳剤で構成される。好ましくは、造影剤は、一般式Iに従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸の生体適合性乳剤である。
【0270】
ゼラチン、ポリ乳酸、ポリ乳酸-ポリグリコール酸、ポロキサマー、カプロラクトン、セルロース、糖、糖誘導体、塩、脂肪酸およびそれらの誘導体等の好適な賦形剤と混合されたコンピュータ断層撮影造影剤を含む固体医薬品形態も想定される。
【0271】
18FDGの取り込みによって特徴付けられる高度に活性な褐色脂肪組織を持つがん患者において、より悪い転帰が通常観察される。これらの患者において、より代謝的に活性な褐色脂肪組織(18FDG取り込みによって特徴付けられる)は、より活性な新生物状態に関連していた。より高いBAT体積は、腫瘍再発および/または腫瘍関連死亡率の可能性の増大に関連していた。これは、腫瘍の重症度(褐色脂肪組織の活性化および白色脂肪組織の褐色化を促進する炎症性および腫瘍因子)だけでなく、がんおよび慢性疾患に関連する致命的な身体消耗症候群である悪液質の発生率とも関係し得る。
【0272】
PETおよび/またはCTスキャンで可視であるBATにおける18FDGおよび/または造影剤の取り込みは、それぞれ、BAT体積および/または活性の結果である。
【0273】
特別な実施形態のある実施形態によれば、経口造影剤は、前記ヒトがん患者における褐色および/またはベージュ脂肪組織(BAT)の非侵襲的インビボ撮像、定量化および/またはその活性のモニタリングに適合される。
【0274】
好ましくは、経口造影剤は生体適合性製剤の形態である。より好ましくは、生体適合性製剤は乳剤である。
【0275】
特別な実施形態に従い、乳剤は、レシチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ショ糖エステル、ソルビタンエステルおよび/またはそれらの混合物を含む群から選択される生体適合性乳化剤を含む。
【0276】
前記実施形態によれば、乳剤中における前記生体適合性乳化剤の量は、全乳剤の5~50%(w/w)の間である。好ましくは、乳剤中における前記生体適合性乳化剤の量は、全乳剤の5~25%(w/w)の間である。
【0277】
特別な実施形態の別の実施形態によれば、経口CT造影剤は、体重1グラム当たりヨウ素0.004~0.5mgの間に対応する用量で投与される。
【0278】
該方法によって診断されるがんは、好ましくは、肺、結腸直腸、乳房、婦人科関連、頭頸部、食道、胃、胆道、濾胞性および髄様性甲状腺、ならびに膵臓がん、白血病、黒色腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、原発性脳腫瘍、褐色細胞腫、脂肪腫、筋脂肪腫または冬眠腺腫を含むまたはそれらからなる群から選択される。
【0279】
別の実施形態によれば、本発明の特別な実施形態の方法は、前記ヒトがん患者における、がんの検出もしくは診断および/またはがんの病期分類および/またはがんの再病期分類に適合される、ならびに/あるいは前記がんの処置実績を評価するためのものである。
【0280】
好ましい実施形態では、本発明の特別な実施形態の方法は、18歳未満のヒト患者における使用のために適合される。
【0281】
先に言及した通り、褐色脂肪組織における18FDG取り込みは、18FDG PET-CTスキャンを受けている患者の約5%において観察される。褐色脂肪組織の体積およびその活性化のレベルについての情報は、がん患者の介護者に、がんの予後に関する貴重な情報を与えるであろう。これは、腫瘍専門医または別の医師によって処方された、計画された診断および/または病期分類PET-CTスキャン中に、本発明の特別な実施形態において記述されるCT造影剤を使用することによって、実現することができる。
【0282】
ある実施形態では、PET-CTスキャン前のCT造影剤の投与は、対象における褐色および/またはベージュ脂肪組織(BAT)の非侵襲的インビボ撮像、定量化および/またはその活性のモニタリングに適合され、処置されるがんのより正確な予後を可能にし、より適合された処置をもたらす。手順は、
a)一般式Iに従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物の生体適合性製剤を含むCT造影剤(上述したもの)を投与する工程と、
b)静脈内ルートによって、標準プロトコールに従ってPETトレーサー(18FDG)を投与する工程と、
c)PET-CTスキャンを実施する工程と、
d)PET-CTスキャンを健康な個体のものと比較する工程と
に準拠する。
【0283】
取得されたスキャンを別個にまたは併せて使用して、腫瘍および/または転移(PET)の存在ならびに褐色脂肪組織における前記CT造影剤の取り込みの程度(褐色脂肪組織の活性および/または表面積および/または体積を指し示す)を評価することができる。
【0284】
別個にまたは一緒に取られた両方のパラメーターは、18FDGトレーサー単独を用いるPET-CTよりも正確ながんの予後を可能にする。この特定のCT造影剤の追加は、褐色脂肪組織におけるCT造影取り込みの程度および褐色脂肪組織の体積に応じて、がんの進行および転帰のより正確な予後を可能にする。ほとんどの悪性物では、褐色脂肪組織における取り込み増大は、より不良ながんの予後を意味する。
【0285】
前記CT造影剤は経口(すなわち経口的な)ルートに適合される。
【0286】
前記PET-CTスキャンは、腫瘍の検出、診断もしくは病期分類のため、療法の効能を評価するため、がんの進行を評価するため、または処置腫瘍専門医もしくは医師に関係すると考えられるすべての理由のために処方され得る。
【0287】
ある実施形態によれば、経口CT造影剤の投与は、計画されたPET-CTスキャンの前日に起こる。好ましくは、経口CT造影剤の投与は、前記18FDG PETトレーサーの投与前、少なくとも10時間、より好ましくは、前記18FDG PETトレーサーの投与前、少なくとも6時間、4時間、さらにいっそう好ましくは少なくとも3時間で実施される。
【0288】
好ましい実施形態によれば、特別な実施形態に従う方法の経口的なCT造影剤は、体重1グラム当たりヨウ素0.004~0.5mgの間に対応する用量で投与される。
【0289】
しかしながら、ある特定の実施形態では、ナノ乳剤は、例えば、体重1g当たりヨウ素少なくとも約0.004mgの特別な実施形態の経口的なCT造影剤を含み得る。他の実施形態では、賦形剤は、例えば、単位重量の約0.1%~約75%の間、または約2%~約30%の間、およびその中の導出可能な任意の範囲を構成し得る。
【0290】
他の非限定的な例では、用量は、投与1回につき約1μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約300mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約400mg/kg/体重、約450mg/kg/体重、約500mg/kg/体重、約600mg/kg/体重、約700mg/kg/体重、約800mg/kg/体重、約900mg/kg/体重、約1000mg/kg/体重、約2000mg/kg/体重から約5000mg/kg/体重またはそれ以上、およびその中の導出可能な任意の範囲を含んでもよい。本明細書で挙げられている数字から導出可能な範囲の非限定的な例では、約350mg/kg/体重~約1000mg/kg/体重、約50μg/kg/体重~約500mg/kg/体重等の範囲が投与され得る。
【0291】
いずれの事例でも、使用される経口CT造影剤の用量は、診断されている特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズおよび重量を含む個々の患者パラメーター、撮像の持続時間、併用療法の性質(もしあれば)、ならびに健康従事者の知識および専門知識内である他の同様の要因によって決まる。これらの要因は、当業者に公知であり、最小限のルーチン実験で対処され得る。したがって、最適投薬量は、任意の特定の患者を診断している従事者によって決定され得る。
【0292】
褐色またはベージュ脂肪細胞の主な基質は、グルコースよりもむしろ脂肪酸である。18FDG-PET等の褐色またはベージュ脂肪組織のための他の撮像方法は、褐色脂肪組織の活性化を必要とするが、出願人らは、褐色およびベージュ脂肪組織が、本発明の特別な実施形態で記述される経口CT造影剤の使用により、これらの組織の事前活性化なしに撮像され得ることを観察した。これは、オフターゲット組織(非悪性以外の褐色脂肪組織を含む代謝的に活性な)による18FDGの取り込みが可能な限り回避されるべきである、組み合わせた18FDG PET-CTスキャンの事例において特に有利である。
【0293】
調製:
当業者に公知である式(I)の16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸および/またはそのエステルを調製するための任意の好適な方法は、本発明の特別な実施形態の範囲によって包括され得ることが理解される。
【0294】
乳剤:
製剤最適化は実験的設計によって為された。活性CT原料、賦形剤の種類および分量、それらの適合性、ならびに調製方法を含むいくつかのパラメーターが評価されてきた。最適な製剤の選択は、物理化学的特性、安定性および生体適合性に基づくものであった。
【0295】
乳剤は、それらの腸内吸収を改善するであろうヨウ化脂肪酸を水に溶解するために調製された。乳剤製剤は、造影剤の最速かつ最も完全な吸収に到達するために改善された。この最終工程の狙いは、より低い可能な用量で最高の増強に到達することである。次いで、造影剤を、褐色脂質代謝の査定におけるその潜在性を示すために、褐色脂質活性化の異なる条件で試験した。
【0296】
以下の特徴が実現されるべきである:
・ 最小量の乳化剤
・ 低粘度
・ 生体適合性(必要とされる用量で非毒性かつ非刺激性)
・ 4℃での長期貯蔵または25℃でのより短期の貯蔵時における乳剤の長時間の安定性
・ 材料および処理費用有効性
【0297】
レシチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ショ糖エステルおよびソルビタンエステル界面活性剤は、化粧品、食料品および医薬製剤(経口、非経口および局所)において長く文書化された安全な使用を有することから、乳剤を調製するために使用される好ましい賦形剤である。
【0298】
脂肪酸またはその誘導体を(有機溶媒に溶解してまたは未希釈で)、好ましくは乳化剤を含有するイオンフリー水または緩衝液に脂肪酸の融点を上回る温度で激しく撹拌しながら添加して、微細分散した水中油乳剤を生成することができる。撹拌は、任意の公知の手段によって、例えば高せん断撹拌機の使用によってまたは超音波的に達成され得る。水相は、保存剤(抗菌剤および/または抗酸化剤等)、安定剤、質感改変剤、着色剤、味覚改変剤、薬学的に許容される塩および/または緩衝剤等の他の賦形剤を含有することができる。
【0299】
ヨウ化脂肪酸またはその誘導体の量は、濃縮乳剤の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%となるべきであり、30%の含有量が概して好ましいが、40%ほどの濃度の乳剤が一部の事例で調製され得る。少量の乳化剤が好ましくは組成物に含まれる。
【0300】
乳化剤が使用される場合、乳剤の粘度は、水/油相比に伴って変動することになり、通常、水/脂肪酸比が増大すると最大値を通過する。微細乳剤を取得するために、最大粘度のために必要とされるものに近いかまたはわずかに過剰の水/脂肪酸比で一定の時間にわたって撹拌し、次いで、撹拌を継続しながらさらなるイオンフリー水を添加して、所望のヨウ化脂肪酸濃度を得ることが好ましい。次いで、乳剤を室温に冷却させる。
【0301】
本発明の特別な実施形態の別の目的は、18FDG PETトレーサーの事前投与を受けたヒトがん患者において、PET-CT撮像によって活性褐色および/またはベージュ組織の分量を評価することによるがん査定のための予後方法であって、
a)前記がん患者に、一般式I:
【0302】
【化8】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシメチル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキルである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む経口CT造影剤を投与し、
前記経口CT造影剤の投与が、前記18FDG PETトレーサー投与の少なくとも3時間前に実施される工程と、
b)前記ヒトがん患者に対してPET-CTスキャンを実施する工程と、
c)がんの進行をPETスキャンでおよびがんの予後をCTスキャンで評価する工程と
を含み、
CTスキャンで観察された褐色脂肪組織による経口CT造影剤の取り込みが、がん患者の予後と相関しており、健康な個体と比較して高い取り込みは予後不良をもたらすのに対し、より低い取り込みは前記ヒトがん患者のより良好ながん転帰をもたらす、方法を提供することである。
【0303】
好ましい実施形態によれば、診断されるがんは、褐色細胞腫、脂肪腫、筋脂肪腫、冬眠腺腫、肺、結腸直腸、乳房、婦人科関連、頭頸部、食道、胃、胆道、濾胞性および髄様性甲状腺、ならびに膵臓がん、白血病、黒色腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫および原発性脳腫瘍を含むまたはそれらからなる群から選択される。
【0304】
特別な実施形態に従い、経口CT造影剤は、好ましくは、一般式Iに従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸の生体適合性乳剤である。
【0305】
ヒトがん患者において、PET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法であって、
a)前記ヒトがん患者に、一般式I:
【0306】
【化9】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキルまたはアルキルカルボニルオキシアルキルである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む経口CT造影剤を投与し、
前記経口CT造影剤の投与が、前記18FDG PETトレーサーの投与の少なくとも3時間前に実施される工程と、
b)静脈内注射によって18FDGを前記ヒトがん患者に投与する工程と、
c)前記ヒトがん患者に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
d)前記ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ組織から区別するように、前記18FDGおよび前記CT造影剤の陽性造影増強の共局在を評価するためのPETおよびCTスキャンの両方を比較する工程と
を含む方法も、本発明の特別な実施形態によって包括される。
【0307】
特別な実施形態のまたさらなる目的は、一般式I:
【0308】
【化10】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキルまたはアルキルカルボニルオキシアルキルである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む経口CT造影剤の、
18FDG PETトレーサーの事前投与を受けたヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するためのPET-CT撮像方法における使用であって、
a)前記ヒトがん患者に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
b)前記ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ組織から区別するように、前記18FDGおよび前記CT造影剤の陽性造影増強の共局在を評価するためのPETおよびCTスキャンの両方を比較する工程と
を含み、
ただし、使用のための前記CT経口造影剤は、前記18FDG PETトレーサーの投与の少なくとも3時間前に投与される、
方法における、使用である。
【0309】
本発明の特別な実施形態の別の目的は、1つの単一CTまたは二重エネルギーCT(DECT)スキャンからのさらなる情報を追加することにより、患者においてがんを検出するおよび/または評価するための予後方法であって、がんを発病していると疑われる患者に非経口ルートによって投与される本明細書において記述される経口CT造影剤(式I)と水溶性CT造影剤との組合せ投与を含む、方法を提供することである。CTまたはDECTは、次の通りに実施される:
1)式Iに従うCT造影剤の経口投与、
2)水溶性放射線造影剤の非経口投与、
3)前記患者に対してCTまたはDECTスキャンを実施すること。
【0310】
褐色脂肪組織による経口CT造影剤の取り込みは、がん型に応じて、がん患者の予後と相関している。ほとんどのがんで、正常よりも高い取り込みは予後不良を意味し、この患者には追加の医学的配慮が必要とされる。
【0311】
この特定の実施形態の両方の目的(悪性組織の検出およびがんの予後の評価)は、同じCTまたはDECTスキャンで同時に実施され得る。
【0312】
スペクトルCTとしても公知の二重エネルギーCT(DECT)は、2つの別個のx線光子エネルギースペクトルを使用して、異なるエネルギーで異なる減衰特性を有する材料の照合を可能にする、コンピュータ断層撮影技術である。従来の単一エネルギーCTは単一の画像セットを生成するのに対し、二重エネルギーデータ(2つのエネルギースペクトルでの減衰値)は多数の画像型を再構築するために使用され得る。
【0313】
使用され得る水溶性CT放射線造影剤は、以下の網羅的ではないリストから選択される:
1.高浸透圧造影媒体-ジアトリゾ酸ナトリウム/メグルミン(ガストログラフィン、MD-ガストロビュー、シストグラフィン)、メトリゾエート(イソパーク)およびヨータラム酸ナトリウム/メグルミン(コンレイ、シスト-コンレイ)
2.低浸透圧造影媒体-イオパミドール(イソブエ)、イオヘキソール(オムニパーク)、イオメプロール(イオメロン)、イオプロミド(ウルトラビスト)、イオベルソール(オプチレイ)、イオキシラン(オキシラン)、イオジキサノール(ビジパーク)、イオキサグレート(ヘキサブリックス)、イオジキサノール(ビジパーク)およびその他。
【0314】
故に、本発明の特別な実施形態の目的は、腫瘍を診断するおよび/もしくは病期分類するため、ならびに/または処置の効能を評価するため、ならびに/またはがんの進行を評価するため、ならびに/またはがんの予後を評価するため、ならびに/または処置腫瘍専門医もしくは医師に関係すると考えられるすべての理由のために、本明細書において記述される経口CT造影剤の投与を非経口水溶性CT放射線造影剤の投与と組み合わせることである。撮像モダリティはCTまたはDECTである。この撮像モダリティを、上述した通りの18FDG PETスキャンとさらに組み合わせることもできる。本発明の特別な実施形態において記述される経口CT造影剤の追加は、患者における悪液質の発生を予測するのを助けることができる。これは、上述した通り、がんの進行の予後として役立つこともできる。
【0315】
本発明の特別な実施形態の別の目的は、18FDG PETトレーサーの事前投与を受けたヒトがん患者において、PET-DECT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法であって、
a)前記ヒトがん患者に、一般式I:
【0316】
【化11】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキルまたはアルキルカルボニルオキシアルキルである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む経口CT造影剤を投与し、
前記経口CT造影剤の投与が、前記18FDG PETトレーサーの投与の少なくとも3時間前に実施される工程と、
b)前記ヒトがん患者に対して18FDG PET-DECTスキャンを実施する工程と、
c)前記ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ組織から区別するように、前記18FDGおよび前記経口CT造影剤の陽性造影増強の共局在を評価するためのPETおよびDECTスキャンの両方を比較する工程と
を含む、方法を提供することである。
【0317】
当業者ならば、本明細書において記述される特別な実施形態は、具体的に記述されているもの以外の変形形態および修正形態を受け入れる余地があることが分かるであろう。特別な実施形態は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、すべてのそのような変形形態および修正形態を含むことを理解されたい。特別な実施形態は、本明細書において個々にまたは集合的に言及されているまたは指し示されている工程、特色、組成物および化合物のすべてならびに前記工程または特色のありとあらゆる組合せまたは任意の2つ以上も含む。したがって、本開示は、例証的であり制限的ではないすべての態様において、添付の請求項によって指し示されている特別な実施形態の範囲、ならびに同等性の意味および範囲内に収まるすべての変化は、その中に内包されることが意図されるとみなされるべきである。
【0318】
前述の記述は以下の実施例を参照してより完全に理解されるであろう。しかしながら、そのような実施例は、本発明の特別な実施形態を実践する方法の例示であり、特別な実施形態の範囲を限定することを意図したものではない。
【0319】
本発明の特別な実施形態は、以下の番号付き項目にさらに関する。
【0320】
1.18FDG PETトレーサーの事前投与を受けたヒトがん患者において、PET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法であって、
a)前記ヒトがん患者に、一般式I:
【0321】
【化12】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
R2は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキルまたはアルキルカルボニルオキシアルキルである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む経口CT造影剤を投与し、
前記経口CT造影剤の投与が、前記18FDG PETトレーサーの投与の少なくとも3時間前に実施される工程と、
b)前記ヒトがん患者に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
c)前記ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するように、前記18FDGおよび前記CT造影剤の陽性造影増強の共局在を評価するためのPETおよびCTスキャンの両方を比較する工程と
を含む、方法。
【0322】
2.経口CT造影剤が、前記ヒトがん患者における褐色および/またはベージュ脂肪組織(BAT)の非侵襲的インビボ撮像、定量化および/またはその活性のモニタリングに適合される、項目1に従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0323】
3.経口CT造影剤が、生体適合性製剤の形態である、項目1または2のいずれかに従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0324】
4.生体適合性製剤が乳剤である、項目1~3のいずれかに従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0325】
5.乳剤が、レシチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ショ糖エステル、ソルビタンエステルおよび/またはそれらの混合物を含む群から選択される生体適合性乳化剤を含む、項目4に従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0326】
6.乳剤中における前記生体適合性乳化剤の量が、全乳剤の3~50%(w/w)の間である、項目5に従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0327】
7.乳剤中における前記生体適合性乳化剤の量が、全乳剤の5~25%(w/w)の間である、項目5に従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0328】
8.経口CT造影剤が、体重1グラム当たりヨウ素0.004~0.5mgの間に対応する用量で投与される、項目1~7のいずれかに従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0329】
9.経口CT造影剤が、体重1グラム当たりヨウ素0.02~0.2mgの間に対応する用量で投与される、項目1~7のいずれかに従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0330】
10.前記がんが、肺、結腸直腸、乳房、婦人科関連、頭頸部、食道、胃、胆道、濾胞性および髄様性甲状腺、ならびに膵臓がん、白血病、黒色腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、褐色細胞腫および原発性脳腫瘍からなる群から選択される、項目1~9のいずれかに従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0331】
11.18歳未満のヒト対象における使用のために適合される、項目1~10のいずれかに従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0332】
12.前記ヒトがん患者における、がんの検出および/もしくはがんの病期分類および/もしくはがんの再病期分類に適合される、ならびに/または前記がんの処置実績を評価するためのものである、項目1~11のいずれかに従う原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法。
【0333】
13.18FDG PETトレーサーの事前投与を受けたヒトがん患者において、PET-CT撮像によって褐色および/またはベージュ脂肪組織の分量および/または体積および/または活性を評価することによるがん査定のための予後方法であって、
a)前記がん患者に、一般式I:
【0334】
【化13】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
R2は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシメチル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキルである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む経口CT造影剤を投与し、
前記経口CT造影剤の投与が、前記18FDG PETトレーサーの投与の少なくとも3時間前に実施される工程と、
b)前記ヒトがん患者に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
c)がんの進行をPETスキャンでおよびがんの予後をCTスキャンで評価する工程と
を含み、
CTスキャンで観察された褐色脂肪組織による経口CT造影剤の取り込みが、がん患者の予後と相関しており、健康な個体と比較して高い取り込みは予後不良をもたらすのに対し、より低い取り込みは前記ヒトがん患者のより良好ながん転帰をもたらすことを特徴とする、方法。
【0335】
14.がんが、褐色細胞腫、肺、結腸直腸、乳房、婦人科関連、頭頸部、食道、胃、胆道、濾胞性および髄様性甲状腺、ならびに膵臓がん、白血病、黒色腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫および原発性脳腫瘍からなる群から選択される、項目12に従う活性褐色および/またはベージュ脂肪組織の分量を評価することによるがん査定のための予後方法。
【0336】
15.経口CT造影剤が、一般式Iに従う16~18個の炭素原子を有するヨウ化脂肪酸の生体適合性乳剤である、項目12~14のいずれかに従うがん査定のための予後方法。
【0337】
16.ヒトがん患者において、PET-CT撮像によって原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するための方法であって、
a)前記ヒトがん患者に、一般式I:
【0338】
【化14】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキルまたはアルキルカルボニルオキシアルキルである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む経口CT造影剤を投与し、
前記経口CT造影剤の投与が、前記18FDG PETトレーサーの投与の少なくとも3時間前に実施される工程と、
b)静脈内注射によって18FDGを前記ヒトがん患者に投与する工程と、
c)前記ヒトがん患者に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
d)前記ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ組織から区別するように、前記18FDGおよび前記CT造影剤の陽性造影増強の共局在を評価するためのPETおよびCTスキャンの両方を比較する工程と
を含む、方法。
【0339】
17.一般式I:
【0340】
【化15】

(式中、n=14~16であり、
は、HまたはIであり、ただし、ヨウ素原子の数は1~6個であり、かつヨウ素原子はジェミナルでもビシナルでもなく、
は、H、不飽和または飽和、直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルコキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル、ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキルまたはアルキルカルボニルオキシアルキルである)
に従うヨウ化脂肪酸ならびに/またはそのエステルおよび/もしくは塩および/もしくは混合物を含む経口CT造影剤の、
18FDG PETトレーサーの事前投与を受けたヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ脂肪組織から区別するためのPET-CT撮像方法における使用であって、
a)前記ヒトがん患者に対して18FDG PET-CTスキャンを実施する工程と、
b)前記ヒトがん患者において原発性腫瘍および/または転移を褐色および/またはベージュ組織から区別するように、前記18FDGおよび前記CT造影剤の陽性造影増強の共局在を評価するためのPETおよびCTスキャンの両方を比較する工程と
を含み、
ただし、使用のための前記CT経口造影剤は、前記18FDG PETトレーサーの投与の少なくとも3時間前に投与される、
方法における、使用。
【0341】
概論
当業者ならば、本明細書において記述される発明は、具体的に記述されているもの以外の変形形態および修正形態を受け入れる余地があることが分かるであろう。本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、すべてのそのような変形形態および修正形態を含むことを理解されたい。本発明は、本明細書において個々にまたは集合的に言及されているまたは指し示されている工程、特色、組成物および化合物のすべてならびに前記工程または特色のありとあらゆる組合せまたは任意の2つ以上も含む。したがって、本開示は、例証的であり制限的ではないすべての態様において、添付の請求項によって指し示されている本発明の範囲、ならびに同等性の意味および範囲内に収まるすべての変化は、その中に内包されることが意図されるとみなされるべきである。
【0342】
前述の記述は以下の実施例を参照してより完全に理解されるであろう。しかしながら、そのような実施例は、本発明を実践する方法の例示であり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例
【0343】
実施例1:褐色脂肪組織における18FDGの取り込みはPET-CTスキャンの潜在的に誤った結果につながる
PETスキャンを受けている患者に18FDGを注射して、腫瘍および/または転移を撮像する。18FDG取り込みは褐色脂肪組織において起こり得、PET-CT医用スキャンの誤った結果(偽陽性および偽陰性)につながり、かつ/または医用スキャンを繰り返さなくてはならない。図1は、ヒトがん患者の褐色脂肪組織における18FDG取り込みの例を示す。図1Aでは、BATにおける18FDG取り込みは原発性腫瘍よりも高く、肺がん患者についてPETスキャンの偽陰性結果につながり得る。図1Bでは、非常に高いBAT体積および/または活性を持つ小児科がん患者が提示される。そのような高いBAT体積および/または活性は、偽陽性および/または偽陰性PET-CTスキャン結果につながり得る。そのような事例では、患者は通常、医用撮像手順を繰り返すことが必要とされる。図1Cは、BATにおける非対称18FDG取り込みの事例を提示する。この事例では、スキャンは首における腫瘍および/または転移の偽陽性結果につながり得る。
【0344】
実施例2:がん転移についての18FDG PET-CTスキャンの特異性および陽性予測値の改善
同系マウス黒色腫モデル(肺への腫瘍転移の播種あり)を、C57Bl/6マウスにおけるB16F10ネズミ黒色腫がん細胞の静脈内注射によって誘発した。細胞注射の19日後、動物に18FDGを投与し、PET-CTスキャンを各動物に対して実施した。1日後、PET-CT造影剤を同じ動物に経口ルートを介して投与した。次いで、第2の18FDG PET-CTスキャンを実施した。次いで、動物を安楽死させ、剖検を各動物に対して実施した。
【0345】
18FDGおよびPET-CT造影剤の陽性造影増強の共局在についてのPET-CTスキャンの評価は、転移を褐色脂肪組織から区別することを可能にした(図2aおよび3a)。偽陽性(転移)として解釈され得るBATに存在する18FDGシグナルは、正しくはBATに起因し、腫瘍転移についてのPET-CTスキャンの特異性および陽性予測値を改善した。これは剖検によって確認された(図2b、cおよび3b、c)。
【0346】
剖検(真実の標準)に基づき、6匹のマウスが合計で24の転移(マウス1匹当たり平均4つ)を提示した。18FDG PET-CTスキャンでは、4匹のマウスがBATにおいて陽性シグナルを有し、転移(偽陽性)として解釈することができた。PET-CT造影剤を用いずに、転移についての18FDG PET-CTスキャンの陽性予測値PPVは85%であった(図4)。PET-CT造影剤を使用することにより、PPVは100%であった。故に、CT造影剤は、18FDG PET-CTスキャンのPPVを15%だけ改善する。
【0347】
実施例3:褐色脂肪組織についての18FDG PET-CTスキャンの感度および陰性予測値の改善
同系マウス黒色腫モデル(肺への腫瘍転移の播種あり)を、C57Bl/6マウスにおけるB16F10ネズミ黒色腫がん細胞の静脈内注射によって誘発した。細胞注射の19日後、動物に18FDGを投与し、PET-CTスキャンを各動物に対して実施した。1日後、PET-CT造影剤を同じ動物に経口ルートを介して投与した。次いで、第2の18FDG PET-CTスキャンを実施した。合計で12回の18FDG PET-CTスキャンを実施した(PET-CT造影剤を用いて6回および用いずに6回)。次いで、動物を安楽死させ、剖検を実施した。
【0348】
PET-CT造影剤による造影増強の存在以外の18FDG取り込みの非存在についてのPET-CTスキャンの評価は、褐色脂肪組織の簡単かつ強固な検出を可能にし、PET-CTスキャンまたはBATの感度および陽性予測値を増大させた。
【0349】
BATにおける18FDG取り込みは、12回のPET-CTスキャンのうち合計で9回において存在した。しかしながら、すべてのマウスがBATを有していた。18FDG取り込みに基づき、BATについてのPET-CTスキャンの感度は75%であった(図5)。PET-CT造影剤の取り込みに基づき、BATについての感度は100%であった。故に、PET-CT造影剤を使用して、マウスにおけるBATについてのPET-CTスキャンの感度は25%だけ改善した。
【0350】
参考文献
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【国際調査報告】