IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポロ テクノロジーズ リミテッドの特許一覧

特表2023-536362LEDデバイス及びLEDデバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】LEDデバイス及びLEDデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/16 20100101AFI20230817BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20230817BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20230817BHJP
【FI】
H01L33/16
H01L33/08
H01L33/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507873
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 GB2021052023
(87)【国際公開番号】W WO2022029437
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】2012105.9
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2012098.6
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2012103.4
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2012108.3
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2012110.9
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2018016.2
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2021/050158
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2021/050152
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2021/050147
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2102012.8
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2102021.9
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2102017.7
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522287640
【氏名又は名称】ポロ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100208731
【弁理士】
【氏名又は名称】真々田 忠博
(72)【発明者】
【氏名】リュー,インジュン
(72)【発明者】
【氏名】ズー,トントン
(72)【発明者】
【氏名】アリー,ムハンマド
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241AA12
5F241AA40
5F241AA43
5F241CA05
5F241CA08
5F241CA21
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA66
5F241CA67
5F241CA74
5F241CA77
5F241CA88
5F241CB11
5F241CB27
(57)【要約】
LEDデバイスを製造する方法は、第1のLED構造の上に第2のLED構造を形成するステップを含み、第1又は第2のLED構造のうち少なくとも1つはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされる。LEDデバイスは、第1のLED構造の上に位置決めされた第2のLED構造を備え、第1又は第2のLED構造のうち少なくとも1つはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされている。LEDのアレイ、及び3色LEDデバイスも提供される。
【選択図】 図35
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDデバイスの製造方法であって、
第1のLED構造の上に第2のLED構造を形成するステップを含み、前記第1又は第2のLED構造のうち少なくとも1つはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされる、方法。
【請求項2】
前記多孔質領域の上に前記第1のLED構造を形成するステップと、前記第1のLED構造の上に前記第2のLED構造を形成するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のLED構造の上にIII族窒化物材料の前記多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の前記多孔質領域の上に前記第2のLED構造を形成するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のLED構造の第1のpドープ部の上に第1の電気絶縁マスク層を形成するステップと、
前記第1のマスク層の一部を除去して前記第1のpドープ部の露出領域を露出させるステップと、
前記第1のpドープ部の前記露出領域上にIII族窒化物材料の前記多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の前記多孔質領域の上に前記第2のLED構造を形成するステップと、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のLED構造は電気バイアスのもとで第1の発光波長で発光するように構成され、前記第2のLED構造は電気バイアスのもとで前記第1の発光波長とは異なる第2の発光波長で発光するように構成されている、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1のLED構造は、
第1のnドープ部と、
第1のpドープ部と、
前記第1のnドープ部と前記第1のpドープ部との間に配置された第1の発光領域と、を含み、好ましくは、前記第1のLED構造を形成するステップを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第2のLED構造を形成する前記ステップは、
第2のnドープ部と、
第2のpドープ部と、
前記第2のnドープ部と前記第2のpドープ部との間に配置された第2の発光領域と、
を形成することを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
III族窒化物材料の多孔質領域を形成する前記ステップは、nドープIII族窒化物材料の領域を堆積するステップと、nドープIII族窒化物材料の前記領域を電気化学的に多孔質化してIII族窒化物材料の前記多孔質領域を形成するステップと、を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
III族窒化物材料の非多孔質層を通した電気化学的多孔質化によってIII族窒化物材料の前記多孔質領域を形成するステップを含み、III族窒化物材料の前記非多孔質層は前記多孔質領域上の非多孔質中間層を形成し、前記非多孔質中間層の上に前記第2のLED構造が形成されることからなる、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記非多孔質中間層の厚さは1nm~3000nmであり、好ましくは5nm~2000nmである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
III族窒化物材料の前記多孔質領域は、III族窒化物材料の多孔質層を含むか又はIII族窒化物材料の多孔質層から成る、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
III族窒化物材料の前記多孔質領域は、III族窒化物材料の複数の多孔質層からなるスタックを含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
多孔質層の前記スタックは多孔質層と非多孔質層の交互層からなるスタックであり、好ましくは、前記スタックは多孔質層と非多孔質層の2~50のペアを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質領域の厚さは、10nm~4000nm、又は100nm~3000nm、又は200nm~1000nmである、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記多孔質領域又はそれぞれの多孔質層は10%~90%多孔質又は15%~70%多孔質を有する、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記第1のマスク層は、SiO、SiN、SiONのうち1つから形成される、請求項4から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第1のマスク層の厚さは、20nm~1000nm、好ましくは200nm~800nm、特に好ましくは400nm~600nmである、請求項4から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記第1のマスク層は、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)、スパッタリング、ALD、蒸着、又はインサイチュMOCVDによって堆積される、請求項4から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記第1のマスク層の一部を除去する前記ステップは、フォトリソグラフィ、湿式エッチング又は乾式エッチング、例えば誘導結合乾式エッチング(ICP-RIE)を含む、請求項4から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記接続層の前記第1の露出領域は、円形、方形、矩形、六角形、又は三角形の形状である、請求項4から18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記第1の露出領域の幅は、0.2μm~50μm、好ましくは0.5μm~30μm、又は1μm~20μm、特に好ましくは10μm未満、例えば1μm~10μmである、請求項4から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記第1のLED構造は、基板上のIII族窒化物材料のテンプレート層の上に配置されている、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
III族窒化物材料の前記テンプレート層は、III族窒化物材料の多孔質層である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1のLED構造の上に第3のLED構造を形成するステップを含み、前記第3のLED構造は好ましくは電気バイアスのもとで前記第1及び第2の発光波長とは異なる第3の発光波長で発光するように構成されている、請求項1から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記第1のLEDは青色LED構造であり、電気バイアスのもとで400~500nm、好ましくは430~470nmの発光波長で発光する、請求項1から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記第2のLED構造は緑色LED構造であり、電気バイアスのもとで500~600nm、好ましくは520~540nmの発光波長で発光するように構成されている、請求項1から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記第2のLED構造を形成する前に、前記第1のLED構造の上にIII族窒化物材料の非多孔質領域を形成するステップを含み、前記非多孔質領域は前記多孔質領域と同じ面内に配置されている、請求項1から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記第2のLED構造は前記多孔質領域と前記非多孔質領域の双方の上に形成される、請求項1から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記第2のLED構造を、前記多孔質領域の上に位置決めされた第2のLED構造と、前記非多孔質領域の上に位置決めされた第3のLED構造とに分割するステップを含む、請求項28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
LEDのアレイを製造する方法であって、
第1のLED構造の第1のアレイを形成するステップと、第1のLED構造の前記第1のアレイの上に第2のLED構造の第2のアレイを形成するステップと、を含み、LED構造の前記第1のアレイ又は第2のアレイのうち少なくとも1つはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされる、方法。
【請求項31】
前記多孔質領域の上にLED構造の前記第1のアレイを形成するステップと、前記第1のLED構造の上にLED構造の前記第2のアレイを形成するステップと、を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1のLED構造の上にIII族窒化物材料の前記多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の前記多孔質領域の上に前記第2のLED構造を形成するステップと、
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
第1のLED構造及び前記第1のLED構造の上の第2のLED構造を形成するステップと、前記LED構造を第1のLED構造の第1のアレイとLED構造の第2のアレイとに分割するステップと、を含む、請求項30、31、又は32に記載の方法。
【請求項34】
第1のLED構造の第1のpドープ部の上にIII族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の前記多孔質領域の上に第2のLED構造のアレイを形成するステップと、
を含む、請求項30から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記第1のLED構造の前記第1のpドープ部の上に第1の電気絶縁マスク層を形成するステップと、
前記第1のマスク層の複数の部分を除去して前記第1のpドープ部の露出領域のアレイを露出させるステップと、
前記第1のpドープ部の前記アレイの前記露出領域のそれぞれの上にIII族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の前記複数の多孔質領域のそれぞれの上に第2のLED構造を形成することによって第2のLED構造のアレイを形成するステップと、
を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
好ましくは前記第1のLED構造に溝をエッチングすることによって、前記第1のLED構造を複数の第1のLED構造に分割するステップを含む、請求項30から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
3色LEDデバイスを製造する方法であって、
III族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の前記多孔質領域の上に第1のLED構造を形成するステップと、
前記第1のLED構造の上に第2のLED構造を形成するステップと、
前記第2のLED構造の上に第3のLED構造を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項38】
3色LEDデバイスを製造する方法であって、
第1のLED構造の上にIII族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
前記第1のLED構造の上に、前記多孔質領域と同じ面内に配置されたIII族窒化物材料の非多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の前記多孔質領域の上に第2のLED構造を形成するステップと、
III族窒化物材料の前記非多孔質領域の上に第3のLED構造を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項39】
前記第1のLED構造は第1の発光波長で発光するように構成され、前記第2のLED構造は前記第1の発光波長とは異なる第2の発光波長で発光するように構成され、前記第3のLED構造は前記第1の発光波長及び前記第2の発光波長とは異なる第3の発光波長で発光するように構成されている、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記第2のLED構造は前記第3のLED構造と同一であり、前記第2及び第3のLED構造は同時に形成される、請求項37、38、又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記第2及び第3のLED構造は、電気バイアスのもとで500~600nm、好ましくは520~540nmの発光波長で発光するように構成され、前記第1のLED構造は、電気バイアスのもとで400~500nm、好ましくは430~470nmの発光波長で発光するように構成されている、請求項37から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
第1のLED構造の上に位置決めされた第2のLED構造を備え、前記第1又は第2のLED構造のうち少なくとも1つはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされている、LEDデバイス。
【請求項43】
前記第1のLED構造は前記多孔質領域の上に位置決めされ、前記第2のLED構造は前記第1のLED構造の上に位置決めされている、請求項42に記載のLEDデバイス。
【請求項44】
第1のLED構造と、
前記第1のLED構造の上のIII族窒化物材料の多孔質領域と、
III族窒化物材料の前記多孔質領域の上に位置決めされた第2のLED構造と、
を含む、請求項42に記載のLEDデバイス。
【請求項45】
前記第1のLED構造は第1の発光波長で発光するように構成され、前記第2のLED構造は前記第1の発光波長とは異なる第2の発光波長で発光するように構成されている、請求項42、43、又は44に記載のLEDデバイス。
【請求項46】
前記多孔質領域と前記多孔質領域の上に位置決めされた前記LED構造との間に位置決めされた、III族窒化物材料の非多孔質中間層を含む、請求項42から45のいずれかに記載のLEDデバイス。
【請求項47】
前記第1のLED構造は、
第1のnドープ部と、
前記第1のpドープ部と、
前記第1のnドープ部と前記第1のpドープ部との間に配置された第1の発光領域と、
を含み、前記第2のLED構造は、
第2のnドープ部と、
第2のpドープ部と、
前記第2のnドープ部と前記第2のpドープ部との間に配置された第2の発光領域と、
を含む、請求項42から46のいずれかに記載のLEDデバイス。
【請求項48】
前記第1及び/又は第2のnドープ部はnドープIII族窒化物層を含み、好ましくは前記nドープ部は、n-GaN、又はn-InGaN、又はn-GaN/n-InGaN層の交互層からなるスタック、又は異なる濃度のインジウムを含有するn-InGaN/n-InGaN層の交互層からなるスタックを含む、請求項47に記載のLEDデバイス。
【請求項49】
前記第1及び/又は第2の発光領域は1つ以上のIII族窒化物発光層を含み、前記発光層又はそれぞれの発光層は、量子井戸、又は、量子ドット、断片的な量子井戸、もしくは不連続的な量子井戸のような量子構造を含むナノ構造層を含む、請求項47又は48に記載のLEDデバイス。
【請求項50】
前記第1のLED構造における前記1つ以上の発光層は組成InGa1-xNを有し、0.10≦x≦0.30であり、好ましくは0.18≦x≦0.30であり、特に好ましくは0.20≦x≦0.30である、請求項49に記載のLEDデバイス。
【請求項51】
前記第2のLED構造における前記1つ以上の発光層は組成InGa1-yNを有し、0.20≦y≦0.40であり、好ましくは0.26≦y≦0.40であり、特に好ましくは0.30≦y≦0.40である、請求項49又は50に記載のLEDデバイス。
【請求項52】
前記第1のLED構造の前記pドープ部の上に位置決めされたIII族窒化物材料の非多孔質領域を追加的に含み、前記非多孔質領域は好ましくは前記多孔質領域と同じ面内に位置決めされている、請求項44から51のいずれかに記載のLEDデバイス。
【請求項53】
第3のLED構造を追加的に含み、前記第3のLED構造は、前記第1のLED構造又は前記第2のLED構造の上に位置決めされ、前記第1及び第2の発光波長とは異なる第3の発光波長で発光するように構成されている、請求項42から52のいずれかに記載のLEDデバイス。
【請求項54】
前記第3のLED構造は、III族窒化物材料の前記非多孔質領域の上に位置決めされている、請求項53に記載のLEDデバイス。
【請求項55】
前記第3のLED構造における1つ以上の発光層は組成InGa1-zNを有し、0.20≦z≦0.40であり、好ましくは0.26≦z≦0.40であり、特に好ましくは0.30≦z≦0.40である、請求項53又は54に記載のLEDデバイス。
【請求項56】
基板上に形成された、請求項42から55のいずれかに記載のLEDデバイスを複数備えるLEDのアレイ。
【請求項57】
第1のLED構造の第1のアレイと、
前記第1のLED構造の上に位置決めされた第2のLED構造の第2のアレイと、を備え、LED構造の前記第1のアレイ及び/又は前記第2のアレイはIII族窒化物材料の1つ以上の多孔質領域の上に位置決めされている、LEDのアレイ。
【請求項58】
第1の発光波長で発光するように構成された第1のLED構造と、
前記第1のLED構造の上に位置決めされ、前記第1の発光波長とは異なる第2の発光波長で発光するように構成された第2のLED構造と、
前記第1のLED構造の上に位置決めされ、前記第1及び第2の発光波長とは異なる第3の発光波長で発光するように構成された第3のLED構造と、
を備え、前記第1、第2、及び第3のLED構造のうち少なくとも1つはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされている、3色LEDデバイス。
【請求項59】
前記第1のLED構造はIII族窒化物材料の前記多孔質領域の上に位置決めされている、請求項58に記載の3色LEDデバイス。
【請求項60】
前記第2のLED構造は、前記第2のLED構造と前記第1のLED構造との間に位置決めされた、III族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされている、請求項58に記載の3色LEDデバイス。
【請求項61】
前記デバイスは赤緑青(RGB)LEDデバイスであり、前記第1、第2、及び第3のLED構造は、電気バイアス印加時に赤色光、緑色光、及び青色光を発光するように構成されている、請求項58、59、又は60に記載の3色LEDデバイス。
【請求項62】
前記第2のLED構造はIII族窒化物材料の前記多孔質領域の上に位置決めされ、前記第3のLED構造はIII族窒化物材料の前記多孔質領域の上に位置決めされない、請求項58から61のいずれかに記載の3色LEDデバイス。
【請求項63】
前記第3のLED構造は前記第2のLED構造と同一であり、前記第2及び第3のLED構造は、前記第2のLED構造の下方にある前記多孔質領域に起因して、異なる発光波長で発光する、請求項62に記載の3色LEDデバイス。
【請求項64】
前記第2のLED構造は515~540nmのピーク波長で発光するLED構造であり、前記第2のLED構造の下のIII族窒化物材料の前記多孔質領域は前記第2のLED構造の前記発光波長を600~650nmにシフトさせる、請求項62又は63に記載の3色LEDデバイス。
【請求項65】
前記第2のLED構造及び前記第3のLED構造における1つ以上の発光層は組成InGa1-xNを有し、0.10≦x≦0.40であり、好ましくは0.18≦x≦0.30であり、特に好ましくは0.22≦x≦0.30である、請求項63又は64に記載の3色LEDデバイス。
【請求項66】
前記第3のLED構造は、前記第1のLED構造の上方のIII族窒化物材料の非多孔質領域の上に位置決めされている、請求項58から65のいずれかに記載の3色LEDデバイス。
【請求項67】
前記第1のLED構造は、電気バイアスのもとで400~500nm、好ましくは430nm~470nmのピーク波長で発光するように構成されている、請求項58から66のいずれかに記載の3色LEDデバイス。
【請求項68】
前記第1のLED構造における1つ以上の発光層は組成InGa1-zNを有し、0.10≦z≦0.30であり、好ましくは0.12≦z≦0.25であり、特に好ましくは0.15≦z≦0.20である、請求項58から67のいずれかに記載の3色LEDデバイス。
【請求項69】
前記第1、第2、及び第3のLED構造は、
前記第1のLED構造が電気バイアスのもとで400~500nmのピーク波長で発光し、
前記第2のLED構造が電気バイアスのもとで600~650nmのピーク波長で発光し、
前記第3のLED構造が電気バイアスのもとで515~550nmのピーク波長で発光する、
ように構成されている、請求項58から68のいずれかに記載の3色LEDデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法に関し、特に、LEDデバイス、LEDデバイスのアレイ、及びLEDデバイスの改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光用の標準的な発光ダイオード(LED)は、通常、200μm×200μmよりも大きい。マイクロLEDは、横方向サイズが100μm×100μm未満に縮小した高密度の微小規模LEDのアレイである。このため、マイクロLEDは、横方向の寸法(長さと幅)が100μm×100μmよりも小さく、数十ナノメートル、更にはより小型になったLED構造として定義される。
【0003】
これまで、既知の技術を用いてマイクロLEDを製造する試みが行われてきた。例えば、従来の試みは、通常のLEDエピタキシ及びレーザリフトオフ、静電キャリー、及び転写用のエラストマスタンプを使用している。しかし、このアプローチをマイクロLEDくらい小さいデバイスに応用することには問題がある。
【0004】
これらの問題には以下が含まれる。
-3つの主要カラー(RGB:赤色、緑色、青色)の全てをマイクロLEDの同一チップ上に生成するには、通常のLEDエピタキシでは難しい。
-緑色及び赤色のマイクロLEDでは効率が低い。
-微小規模のLEDメサを画定するには、常に乾式エッチングが必要である。LEDサイズが小さくなると、LED構造の側壁に対するプラズマ損傷がデバイスの発光効率と寿命に影響を及ぼす。
-レーザリフトオフは歩留まりが低く、コストが高い。
-以前から存在するひずみ/反りの問題に起因した転写の低い歩留り。
【0005】
これらの問題のため、従来のLED製造技術は高品質のマイクロLEDを生産するには満足できるものではない。特に、従来のLED製造技術は、同一基板上に複数の異なる色のLEDを含む多色LEDデバイスを生産するには満足できないものである。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、LEDデバイスの改良された製造方法、及びこの方法を用いて作製されたLEDデバイスに関する。本発明は独立クレームにおいて規定され、独立クレームについてはここで言及するものとする。本発明の好適な又は有利な特徴は、従属するサブクレームに記載される。
【0007】
LEDデバイスは、好ましくはIII-V族半導体材料から形成され、III族窒化物半導体材料から形成されると特に好ましい。
【0008】
「III-V」族半導体は、Ga、Al、及びInのようなIII族元素とN、P、As、及びSb)のようなV族元素の二元合金、三元合金、及び四元合金を含み、オプトエレクトロニクスを含む多数の応用分野において重要である。
【0009】
特に重要なのは、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、及び窒化アルミニウム(AlN)を含む「III族窒化物」材料として知られる半導体材料クラスと、それらの三元合金及び四元合金である。III族窒化物材料は、半導体照明及びパワーエレクトロニクスで商業的成功を収めているだけでなく、量子光源及び光と物質の相互作用において特別な利点を有する。
【0010】
多様なIII族窒化物材料が商業的な面で興味深いが、窒化ガリウム(GaN)は最も重要な新しい半導体材料の1つとして広く認められ、多数の応用分野において特に興味深い。
【0011】
バルクGaNに気孔を導入すると、例えば屈折率のような材料特性に大きな影響を及ぼし得ることが知られている。したがって、GaNの多孔度を変えることによってGaNの光学特性を調整できる可能性があるので、多孔質GaNはオプトエレクトロニクスの応用分野において重要である。
【0012】
本発明はGaNを参照して記載されるが、代替的なIII族窒化物材料にも有利に応用され得る。
【0013】
III-V族半導体材料の多孔質化に関する従来の刊行物には、国際特許出願PCT/GB2017/052895号(WO2019/063957号として公開)及びPCT/GB2019/050213号(WO2019/145728号として公開)が含まれる。
【0014】
発明者らは、本発明を用いて多色LEDデバイス及び多色LEDデバイスのアレイを有利に提供できることを見出した。
【0015】
LEDデバイスの製造方法
本発明の第1の態様によれば、LEDデバイスを製造する方法が提供される。この方法は、
第1のLED構造の上に第2のLED構造を形成するステップを含み、第1又は第2のLED構造のうち少なくとも1つはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされる。
【0016】
第1の実施形態において、その方法は、多孔質領域の上に第1のLED構造を形成するステップと、第1のLED構造の上に第2のLED構造を形成するステップと、を含む。
【0017】
他の実施形態において、好ましくは、本発明はLEDデバイスを製造する方法を提供する。この方法は、
第1のLED構造の上にIII族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の多孔質領域の上に第2のLED構造を形成するステップと、
を含む。
【0018】
第2のLED構造及び/又は多孔質領域は、好ましくは第1のLED構造の第1のpドープ部の上に形成される。
【0019】
LEDデバイスの製造方法は、好ましくは、
第1のLED構造の第1のpドープ部の上に第1の電気絶縁マスク層を形成するステップと、
第1のマスク層の一部を除去して第1のpドープ部の露出領域を露出させるステップと、
第1のpドープ部の露出領域上にIII族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の多孔質領域の上に第2のLED構造を形成するステップと、
を含む。
【0020】
第1のLED構造は、好ましくは第1の発光波長で発光するように構成され、第2のLED構造は、第1の発光波長とは異なる第2の発光波長で発光するように構成されている。
【0021】
第1の発光波長で発光するように構成された第1のLED構造と、第1のLED構造の上に第2の発光波長で発光するように構成された第2のLED構造とを提供することにより、多色LEDデバイスが提供される。第1及び第2のLED構造は、同一の半導体構造の一部として提供されるにもかかわらず、異なる波長で発光する。
【0022】
第1のLED構造及び第2のLED構造は、多様な波長で発光するように構成される。例えば第1のLED構造は、緑色発光LED構造、又は青色発光LED構造、又は赤色発光LED構造とすることができる。また、第2のLED構造は、緑色発光LED構造、又は青色発光LED構造、又は赤色発光LED構造とすることができるが、第1のLED構造とは異なる色で発光するように構成されている。
【0023】
好適な実施形態において、LED構造に電気バイアスが印加された場合、第1のLED構造は、515nm~550nm、好ましくは530nm前後の第1の発光波長で発光するように構成され、第2のLED構造は、570nm~630nm、好ましくは575nm超の第2の発光波長で発光するように構成されている。
【0024】
他の好適な実施形態において、LED構造に電気バイアスが印加された場合、第1のLED構造は、400nm~500nm、好ましくは430nm~470nmの第1の発光波長で発光するように構成され、第2のLED構造は、500nm~600nm、好ましくは520nm~540nmの第2の発光波長で発光するように構成されている。
【0025】
特定の好適な実施形態において、多孔質領域は、第1のLED構造を覆うように第1のLED構造の上に拡がる連続的な領域であり、この後に第1のLED構造の上方に成長させる全てのLED構造は、多孔質領域の上に形成される。
【0026】
LEDデバイスは好ましくは、半導体材料の平坦な層のスタックから形成された積層構造である。構造体のそれぞれの層又は領域のエピタキシャル堆積中に、構造のそれぞれの層の厚さ、組成、及び電荷キャリア濃度を制御することができる。デバイスは層の連続的な堆積によって形成され、前の層の上に後の層が堆積されるので、生成された構造内では前の層の上方に後の層が位置決めされる。このようなデバイスは典型的に、平坦な基板上の極めて薄い層として堆積され、これらの層の横幅は高さよりも著しく大きい。層が堆積される順序を制御すると共に、それぞれの層の横方向サイズと下層に対する位置とを制御することにより、デバイスコンポーネントの相対的な位置を制御することができる。特段の指示がある場合を除いて、ここで記載される層又は領域が他の層の「上に(over)」又は「上方に(above)」形成されている又は位置決めされている場合、その層又は領域は、半導体構造内で他の層の垂直方向上方に位置し、かつ、構造内で下方にある他の層の少なくとも一部のエリアに対応するエリアの上で横方向に拡がっている。
【0027】
他の好適な実施形態において、III族窒化物材料の多孔質領域及びIII族窒化物材料の非多孔質領域は、第1のpドープ部の上に又は上方に形成される。多孔質領域及び非多孔質領域は好ましくは、構造内で同一面内に配置される。例えば、構造体の層は部分的に多孔質III族窒化物材料で構成され、部分的に非多孔質材料で構成される。このため、多孔質領域は第1のpドープ部の一部のみの上に位置決めすることができ、非多孔質領域は第1のpドープ部の別の横方向エリアの上に重なっている。この実施形態において、第2のLED構造は多孔質領域の上に又は上方に位置決めすることができ、別のLED構造(例えば第3のLED構造)は非多孔質領域の上に位置決めされる。
【0028】
本発明者らは、III族窒化物材料の電気化学的多孔質化が、III族窒化物格子内のひずみ及びウェーハ全体の反り又は湾曲を有利に低減させることを認識した。理論に束縛されることは望まないが、III族窒化物材料の多孔質領域を多孔質化するプロセスは、第1のIII族窒化物材料層上にこの層を成長させる間に形成された貫通転位のような構造的欠陥も、エッチング除去すると考えられる。
【0029】
多孔質化の間に多孔質領域の半導体材料から転位が除去されると、特に多孔質領域の格子寸法がその下層の材料の格子寸法と一致しない場合に発生する、多孔質領域内のひずみが大幅に低減する。このため、多孔質領域の上方にIII族窒化物材料層が堆積される場合、半導体構造のエピタキシャル成長中に、多孔質材料はその上層の非多孔質層の格子と整合しやすくなる。この結果、多孔質領域の上方の層では、多孔質領域が存在しない場合に比べ、ひずみが著しく小さくなる。
【0030】
組成引き込み効果:カワグチらは、インジウムの割合が成長の初期段階では小さいが成長厚の増大と共に大きくなる、いわゆるInGaN組成引き込み効果について報告した。この観察は、ある程度、下層のGaN又はAlGaNとは独立していた。著者らは、この効果が界面の格子不整合で生じるひずみによって発生することを示唆した。著者らは、InGaNと下部エピタキシャル層との格子不整合が大きくなると、In含有量の変化が大きくなることを見出した。
【0031】
イナトミらによる「Theoretical study of the composition pulling effect in InGaN metalorganic vapor-phase epitaxy growth」(Japanese Journal of Applied Physics, Volume 56, Number 7)によれば、圧縮ひずみがInNの取り込みを抑制することがわかった。他方で、引張ひずみは、緩和バルク成長の場合に比べてInNの取り込みを促進する。
【0032】
発明者らは、半導体構造中で多孔質領域を使用すると、半導体構造の層内のひずみを低減する「ひずみ緩和」が生じ、これが組成引き込み効果の観点からの改善につながる可能性があることを見出した。多孔質化はIII族窒化物層内のひずみを低減し、半導体構造のひずみが小さくなるので、より多くのInを取り込むための条件が利用可能となる。したがって本発明は、多孔質領域の上に成長させるLED構造の層内への多くのインジウム取り込みを支援することができ、これは長波長の発光にとって極めて望ましい。
【0033】
LEDにIII族窒化物材料の多孔質領域を設けることによって、多孔質領域が存在しない場合に可能であるよりも小さいひずみで、LED構造の1つ以上を多孔質領域の上に成長させることができる。したがって、このような積層半導体構造のひずみレベルの低減により、多孔質層の上方にあるLED構造の1又は複数の発光層内に多くのインジウムを取り込むことを支援できるので、インジウム含有量の多い高品質InGaN発光層を成長させることが可能となる。これにより、充分なインジウムをインジウムガリウム窒化物発光層内に取り込むことができるので、LEDに電気的バイアスが印加された場合に600~750nmのピーク波長で発光する。
【0034】
600~750nmで発光する赤色LEDには非常に大きな需要があるが、1又は複数の発光層内に充分なインジウムを取り込むことの技術的な難しさは、赤色InGaNのLEDの達成が困難であることを意味していた。しかし、より短い波長のLED、例えば緑色(500~550nm)及び黄色(550~600nm)LEDは、赤色発光に必要であるよりもインジウム含有量が少ないInGaN発光領域を用いて作製できるので、はるかに容易に製造される。
【0035】
発明者らは、III族窒化物材料の多孔質領域の上にLED構造を成長させると、非多孔質基板上に同じLED構造を成長させる場合に比べ、発光波長が長波長側へ大きくシフトすることを見出した。
【0036】
図面に示されているように、発明者らは、これを実証するため、非多孔質GaNウェーハ上に従来の緑色/黄色(500~550nm又は550nm~600nmの発光)InGaNのLED構造を成長させ、このLEDが予想通り緑色/黄色光を発光することを確認した。次いで、同じ「緑色/黄色」InGaNのLED構造を多孔質領域を含むテンプレート上に成長させ、このLEDに電気バイアスを印加すると、LEDは600~750nmの赤色範囲で発光した。
【0037】
好適な実施形態において、本発明は、多孔質領域の上の接続層上に形成した第2のLED構造の緑色/黄色(500~550nm又は550nm~600nmの発光)InGaNのLED構造と、第1のLED構造の上方の非多孔質領域の上に形成した第3のLED構造の緑色/黄色(500~550nm又は550nm~600nmの発光)InGaN LED構造と、を含む。第2のLED構造及び第3のLED構造は同一の構造と組成を有する。それにもかかわらず、多孔質領域上の第2のLED構造の位置によって第2のLED構造の発光波長はシフトするので、第2のLED構造は第3のLED構造とは異なる波長で発光する。第3のLED構造は予想通り緑色/黄色波長(500~550nm又は550nm~600nmの発光)で発光するが、第2のLED構造はより長い600~650nmの波長で発光する。したがって、同一の従来のLED構造を2度形成すること、すなわち一度は非多孔質領域の上に、一度は多孔質領域の上に形成することにより、複数の発光色を達成することができる。
【0038】
特に好ましくは、第1のLED構造の上方に上述した第2及び第3のLED構造を位置決めし、第1のLED構造は、電気バイアスを印加した場合に青色光を発光するように構成された青色LED構造とすることができる。
【0039】
第1のLED構造は、好ましくは、
第1のnドープ部と、
第1のpドープ部と、
第1のnドープ部と第1のpドープ部との間に配置された第1の発光領域と、を含む。pドープ部はpドープ層とすることができる。第1の態様の方法は好ましくは、第1のLED構造を形成する第1のステップを含む。
【0040】
第1の電気絶縁(誘電)マスク層を形成し、次いでマスクの一部を除去してpドープ接続層の露出領域を露出させることにより、LED構造を上に形成するテンプレート又は「フットプリント」を生成する。除去されるマスクの一部のサイズ及び形状を制御することによって、露出領域のサイズ及び形状を制御できる。次いで、露出領域上に以降の半導体材料層を堆積して第2のLED構造を形成することができる。露出領域のサイズ及び形状を制御することにより、以降に形成されるLED構造の横方向サイズ(長さと幅)及び形状を制御できる。このサイズ制御は、横方向の寸法が極めて小さいマイクロLED構造を成長させるうえでは特に有利である。
【0041】
従来技術では、大規模LED構造を成長させ、次いで溝をエッチングしてこの構造を所望の横方向サイズの微小規模プラットフォーム又は「メサ」に切断することにより、マイクロLEDに分割する。このような従来技術を用いて作製されたマイクロLEDでは、LED構造の側壁に対するエッチング損傷が、マイクロLEDにより形成される極めて小さい画素に著しい影響を及ぼす。これは、マイクロLEDの信頼性と輝度を害する可能性がある。
【0042】
本発明の方法は、あらかじめ画定された露出領域に第2のLED構造を形成できる利点があり、任意に、これらの露出領域はマイクロLEDを形成するに適したサイズと形状を有する。本発明では露出領域が各LED構造のフットプリントを制御するので、第2のLED構造は最初から適切なサイズに有利に形成される。このため、本発明では、LED構造をエッチングして横方向サイズを小さくする必要はない。したがって、これにより得られるLEDデバイスでは、従来技術の方法で生じる乾式エッチング損傷を回避する。
【0043】
LED構造のアクティブ層に対する乾式エッチング損傷を回避することで、従来技術を用いて調製されたマイクロLEDに比べて著しい利益が得られ、本方法を用いて作製されたLEDデバイスは信頼性が高く、かつ輝度が高いという利点がある。
【0044】
第1のLED構造及び第2のLED構造を形成するステップは、当技術分野における従来の方法に従ってLED構造を成長させることを含む。すなわち、LED構造は、既知の半導体堆積技術を用いて成長させることができ、従来の様々なLEDエピタキシャル層を有する。ここでは一例として典型的なLED構造を記載するが、当技術分野では多様なLED構造(層厚、材料、及びドーピングレベルの様々な組み合わせを含む)が既知であり、本発明と共に使用可能であることは当業者に理解されよう。
【0045】
第2のLED構造を形成するステップは、
第2のnドープ部と、
第2のpドープ部と、
第2のnドープ部と第2のpドープ部との間に配置された第2の発光領域と、
を形成することを含み得る。
【0046】
第2のLED構造を形成するステップは、多孔質領域の上に又は上方に第2のLED構造を形成することを含む。多孔質領域と第2のLED構造との間に、III族窒化物材料の追加の層を位置決めすることも可能である。
【0047】
特定の好適な実施形態において、多孔質領域の上に又は上方に複数の第2のLED構造を形成する。
【0048】
III族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップは、nドープIII族窒化物材料の領域を堆積するステップと、III族窒化物材料層を電気化学的に多孔質化してIII族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップとを含む。これは、国際特許出願PCT/GB2017/052895号(WO2019/063957号として公開)及びPCT/GB2019/050213号(WO2019/145728号として公開)に記載されている、ウェーハスケール多孔質化プロセスを用いて達成される。このステップは、多孔質領域の上にLED構造を形成する前に実行することで、上に成長させるLED構造を電気化学的に多孔質化しないようにしなければならない。
【0049】
その方法は好ましくは、III族窒化物材料の非多孔質層を通した電気化学的多孔質化によってIII族窒化物材料の多孔質領域を形成し、III族窒化物材料の非多孔質層が非多孔質中間層を形成するステップを含む。非多孔質中間層は、LED構造の成長のための平滑表面を有利に与え得る。この後、中間層は、多孔質領域と、上に成長させたLED構造のnドープ部との間に位置する。
【0050】
多孔質領域は、III族窒化物材料の1つ以上の層又は領域を多孔質化することによって形成される。III族窒化物材料が多孔質化されるためには、多孔質化される材料がn型ドープされていることと、1×1017~1×1020の範囲内のドーピング濃度を有することが必要である。
【0051】
多孔質領域は1つの多孔質層とすることができ、このため方法は、III族窒化物材料の多孔質層の上にLED構造を形成するステップを含む。好ましくは多孔質領域は、例えば多孔質III族窒化物材料の連続的な層から形成された、一様に多孔質である多孔質層である。
【0052】
多孔質領域は複数の多孔質層を含むことができ、任意に複数の非多孔質層を含む。本発明の好適な実施形態において、多孔質領域は多孔質層と非多孔質層の交互層からなるスタックであり、スタックの上面が多孔質領域の上部を画定し、スタックの下面が多孔質領域の下部を画定する。III族窒化物材料のnドープ接続層を、III族窒化物材料の多孔質層のスタックを含む多孔質領域の上に形成する。
【0053】
あるいは、多孔質領域は、1つ以上の多孔質領域を含むIII族窒化物材料層であり、例えば、III族窒化物材料の非多孔質層内に1つ以上の多孔質領域が含まれる。
【0054】
好ましくは、ドープ材料を多孔質化する前に、ドープ材料の上に非ドープIII族窒化物材料の中間層を堆積する。中間層の厚さは、好ましくは1nm~3000nmであり、好ましくは5nm~2000nm、又は1000nm~1500nmである。
【0055】
当技術分野において既知のように、電気化学的多孔質化によってIII族窒化物材料のn型ドープ領域から材料を除去し、半導体材料中に空の気孔を生成する。
【0056】
好適な実施形態において、多孔質化の前のドープ領域は、高度ドープ層/低度ドープ層の順序で層が交互に配置されたスタックから成る。スタックは、高度/低度ドーピング層のペアで構成し、好ましくは2~50ペアの層を含む。それぞれの各高度ドープ層の厚さは、2nm~200nm、又は10nm~150nm、又は50nm~100nmの間で変動する。低度ドープ層は、2nm~180nm、又は10nm~150nm、又は50nm~100nmの厚さを有する。
【0057】
多孔質層のスタックは好ましくは、多孔質層と非多孔質層の交互層からなるスタックである。好ましくは、スタックは、相互に積層された多孔質層と非多孔質層の2~50のペアを含む。多孔質層は好ましくは、2nm~200nm、又は10nm~150nm、又は50nm~100nmの厚さを有する。非多孔質層は好ましくは、2nm~180nm、又は10nm~150nm、又は50nm~100nmの厚さを有する。
【0058】
好適な実施形態において、III族窒化物材料のnドープ接続層は、III族窒化物材料の複数の多孔質層のスタックの上に形成される。このため多孔質領域は、III族窒化物材料の単一の多孔質層でなく、少なくともいくつかの層が多孔質であるIII族窒化物材料の複数の層のスタックである。
【0059】
多孔質領域又は多孔質領域内のそれぞれの多孔質層は、1%~99%多孔質の多孔度を有する。好ましくは、多孔質領域又はスタック内のそれぞれの多孔質層は、10%~90%多孔度、又は10%~70%多孔度を有する。
【0060】
好適な実施形態では、好ましくは非多孔質中間層上に第2のLED構造を堆積することによって、第2のLED構造を多孔質領域の上に成長させる。
【0061】
第1のLED構造は基板の上に又は上方に形成される。基板は、シリコン、サファイア、SiC、β-Gaである。基板の結晶方位は、極性、半極性、又は非極性方位である。基板の厚さは、典型的に100μm~1500μmの間で変動する。
【0062】
第1のLED構造は好ましくは、基板上のIII族窒化物材料の1つ以上のテンプレート層の上に形成される。III族窒化物材料の1又は複数のテンプレート層は非多孔質とすることができ、又は、特定の実施形態におけるテンプレート層はIII族窒化物材料の多孔質層とすることができる。
【0063】
好適な実施形態において、テンプレート層は、このテンプレート層又は領域を上に成長させる基板と同等の横方向寸法(幅又は長さ)を有する。例えば、従来の基板ウェーハサイズは種々のサイズを有することができ、例えば1cm、又は直径2インチ、4インチ、6インチ、8インチ、12インチ、又は16インチである。
【0064】
テンプレート層は、基板上に成長させた非ドープ又はnドープIII族窒化物半導体材料の1つの層又は複数の層のスタックを含む。テンプレート層は、元素Al、Ga、Inのうち1つ又はいくつかの組み合わせを含み得る(四元層、三元層)。1又は複数のテンプレート層の厚さは、好ましくは10~4000nmである。テンプレート層は、1×1017cm-3~5×1020cm-3のドーピング濃度を有する。
【0065】
好適な実施形態では、多孔質領域を形成する前に、第1のpドープ部の上に第1のマスク層を堆積する。第1のマスク層を第1のパッシベーション層と呼ぶ。第1のマスク層は好ましくは、pドープ部の上に誘電材料層を堆積することによって形成され、pドープ部は第1のLED構造のpドープ層である。好ましくは、第1のpドープ領域の全表面上に第1のマスク層を堆積して、第1のpドープ部が完全に誘電材料で覆われるようにする。マスク層は、SiO、SiN、SiON、AlO、又は他の任意の適切な誘電材料から形成する。
【0066】
第1のマスク層の厚さは、20nm~1000nm、好ましくは100nm~800nm、特に好ましくは200nm~600nmである。
【0067】
第1のマスク層の堆積は、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)、スパッタリング、原子層堆積(ALD)、蒸着、又はインサイチュ(in-situ)有機金属化学気相堆積(MOCVD)のような従来の堆積技術によって実行される。
【0068】
標準的なリソグラフィ技術を用いて第1のマスク層の一部を除去し、非導電性マスク層に1つ以上の開口を生成して、下方の第1のpドープ部の第1の領域を露出する。第1のマスク層の一部を除去するステップは、フォトリソグラフィ、湿式エッチング又は乾式エッチング、例えば誘導結合乾式エッチング(ICP-RIE)を含む。
【0069】
1又は複数の露出領域の横方向サイズ(マスク層の開口の長さと幅)及び形状によって、露出領域内に成長させる第2のLED構造の横方向サイズ及び形状を制御する。
【0070】
第1のpドープ部の1又は複数の露出領域は、任意の所望の形状に形成することができ、第1のマスク層の一部をパターニングしてリソグラフィで除去することによって制御される。例えば露出領域は、円形、方形、矩形、六角形、又は三角形の形状とする。
【0071】
露出領域のサイズは、0.2μm~100μm、好ましくは1μm~30μm、特に好ましくは2μm~10μmである。
【0072】
好適な実施形態において、その方法は、第1のマスク層の複数の部分を除去して第1のpドープ部の複数の露出領域を露出させ、次いで、複数の多孔質領域及び第2のLED構造をそれぞれの露出領域の上に1つずつ形成することと、を含む。
【0073】
特に好ましくは、露出領域のサイズはマイクロLEDのサイズである。例えば、1又は複数の露出領域の幅及び/又は長さ(又は、露出領域が円形である場合は直径)は、0.05μm~100μm、好ましくは0.05μm~30μm、特に好ましくは10μm未満、例えば0.1μm~10μm又は0.5μm~10μmである。好適な実施形態において、露出領域の長さ、幅、又は直径は、50μm未満、又は40μm未満、又は30μm未満、又は20μm未満、又は10μm未満である。特に好ましくは、露出領域は10μm未満の幅又は直径を有するので、露出領域内に成長させたLED構造は10μm未満のサイズのマイクロLED画素を形成する。
【0074】
一旦第1のpドープ部の第1の露出領域を誘電マスク層に形成したら、この露出領域に多孔質領域を形成し、次いでこの多孔質領域上に第2のLED構造を成長させる。
【0075】
多孔質領域の横方向寸法と、第2のnドープ部、第2の発光領域、及び第2のpドープ部を含む第2のLED構造の横方向寸法とは、好ましくは露出領域と同じである。これは、第2のLED構造が露出領域内に成長して露出領域の横方向サイズを受け継ぐからである。これはつまり、LED構造の横方向寸法を小さくするためのエッチングステップを必要とすることなく、第2のLEDを適切なサイズで成長させることが可能であることを意味する。
【0076】
一旦第2のLED構造を形成したら、第1のLED構造及び第2のLED構造の双方の上に第2の電気絶縁マスク層を形成する。第2の電気絶縁マスク層を第2のパッシベーション層と呼ぶ。第2のマスク層は、SiO、SiN、SiON、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、又はそれらの組み合わせで形成される。第2のマスク層は、PECVD、スパッタリング、ALD、蒸着、インサイチュMOCVD、又は他の任意の従来技術によって堆積される。
【0077】
第2のマスク層は、第1のLED構造の表面及び側壁、並びに接続層を覆う。
【0078】
第2のマスク層の厚さは20~2000nmとすることができる。第2のマスク層の厚さは、20nm~1800nm、好ましくは200nm~1500nm、特に好ましくは500nm~1000nmである。
【0079】
第2のマスク層を堆積する前に第1のマスク層を除去する。第1のマスク層は、緩衝酸化物エッチング化学物質を用いた湿式エッチングによって除去する。
【0080】
一旦第1のLED構造及び第2のLED構造を第2のマスク層で覆うと、その方法は、半導体構造の一部を除去し、それぞれの半導体構造との電気的接続を形成するステップと、を含む。
【0081】
その方法は、第1のLED構造の第1のpドープ部及び第2のLED構造の第2のpドープ部を露出させ、pドープ部の露出領域に電気接点を形成するステップを含む。例えばフォトリソグラフィ、湿式エッチング又は乾式エッチング、例えば誘導結合乾式エッチング(ICP-RIE)によって、第2のマスク層に開口を生成することにより、pドープ部を露出させる。
【0082】
その方法は、第1のLED構造の第1のnドープ部及び第2のLED構造の第2のnドープ部を露出させ、nドープ部の露出領域に電気接点を形成するステップを含む。第2のマスク層に開口を生成することにより、また、任意に第1及び/又は第2のLED構造の重なった層に開口を生成することにより、nドープ部を露出させることができ、例えば、フォトリソグラフィの後に、誘導結合乾式エッチング(ICP-RIE)、反応性イオンエッチングプロセス、又は中性ビームエッチングプロセス等の乾式エッチングプロセスを用いて行う。
【0083】
その方法は、第1のLED構造をエッチングして複数のメサにするステップを含む。第1のLED構造をエッチングするステップは、第1のLED構造の第1のnドープ部へのアクセスを形成し、電気的n接点の形成を可能とする。
【0084】
本発明の利益を享受しながら、様々な第1及び第2のLED構造を用いることができる。全てのそのようなLED構造は通常、nドープ部、発光領域、及びpドープ部を含み、任意にLEDエピタキシにおいて典型的である更なる半導体材料層も含む。
【0085】
以下で、本発明の第1又は第2のLED構造として用いるのに適した例示的なLED構造について記載する。以下の記載は、第1のLED構造と第2のLED構造の双方に当てはまる。
【0086】
好適な実施形態では、それぞれのLED構造のnドープ部を接続層の露出領域上に成長させ、nドープ部をnドープ接続層と直接接触させる。
【0087】
nドープ部はIII族窒化物材料のnドープ層を含む。nドープ層は、インジウムを含有するIII族窒化物層、又は、インジウムを含有するか含有しない薄いIII族窒化物層のスタック、又は、層内もしくはスタック内でインジウムの原子百分率が変動するIII族窒化物バルク層もしくはIII族窒化物層のスタックを含む。例えばnドープ領域は、n-GaN層、又はn-InGaN層、又は、n-GaN/n-InGaN層の交互層からなるスタック、又は、異なる量のインジウムを有するn-InGaN/n-InGaN層の交互層からなるスタックである。
【0088】
nドープ部のインジウム原子百分率は0.5~25%の間で変動する。nドープ部の合計厚は2nm~200nmの間で変動することができ、例えば10nm~150nm、又は20nm~100nmである。nドープ部が層のスタックを含む場合、スタック内の個々の層の厚さは、好ましくは1nm~40nm又は5nm~30nmの間で変動する。
【0089】
nドープ部は、1×1017cm-3~5×1020cm-3のn型ドーピング濃度を有する。
【0090】
露出領域にLED構造のn型部を成長させた後、n型部の上にLEDの発光領域を成長させる。
【0091】
第1及び/又は第2のLED構造の発光領域は、好ましくはインジウムガリウム窒化物(InGaN)発光層であるところの、1つ以上のIII族窒化物発光層を含む。単一の発光層又はそれぞれの発光層は好ましくは、量子井戸、又は、量子ドット、断片的な量子井戸、もしくは不連続的な量子井戸のような量子構造を含むナノ構造層を含む。
【0092】
量子井戸及びバリアは、既知技術に従って、好ましくは600~800℃の温度範囲内で成長させる。
【0093】
単一の発光層又はそれぞれの発光層は好ましくは、原子インジウム含有量が10~40%であるIII族窒化物材料を含む。発光層のインジウム含有量は、第1及び第2のLED構造に望まれる発光波長に応じて異なるレベルのものが選択される。好適な実施形態において、発光層のインジウム含有量は12~18%とすることができ、好ましくは13%超であり、又は20~30%とすることができ、好ましくは22%超であり、又は30~40%とすることができ、好ましくは33%超である。
【0094】
第1のLED構造の第1の発光領域は、好ましくは、第2のLED構造の第2の発光領域とは異なる原子インジウム含有量を含み、その結果、第1及び第2のLED構造は異なる波長で発光する。
【0095】
1つの好適な実施形態において、第1のLED構造における1つ以上の発光層は組成InGa1-xNを有し、0.10≦x≦0.30であり、好ましくは0.18≦x≦0.30であり、特に好ましくは0.20≦x≦0.30である。
【0096】
好適な実施形態において、第1のLED構造のターゲットのエレクトロルミネッセンス(EL)発光波長は515nm~550nmであり、好ましくは530nmである。
【0097】
いくつかの好適な実施形態において、第1のLED構造及び第2のLED構造は、第1の発光波長が第2の発光波長よりも短いように選択される。
【0098】
好適な実施形態において、第2のLED構造における1つ以上の発光層は組成InGa1-yNを有することができ、0.20≦y≦0.40であり、好ましくは0.26≦y≦0.40であり、特に好ましくは0.30≦y≦0.40である。
【0099】
いくつかの好適な実施形態において、第2のLED構造のターゲットEL発光波長は570nm~630nmであり、好ましくは575nm超とすることができる。
【0100】
別の好適な実施形態において、第1のLED構造における1つ以上の発光層は組成InGa1-xNを有することができ、0.10≦x≦0.30であり、好ましくは0.12≦x≦0.25であり、特に好ましくは0.15≦x≦0.20である。特に好ましい実施形態において、第1のLED構造は、電気バイアスのもとで415~500nm、好ましくは430~470nmのピーク波長で発光するように構成される。
【0101】
好適な実施形態において、それぞれの発光領域は、1つ以上のInGaN量子井戸、好ましくは1~7の量子井戸を含む。各量子井戸層の厚さは1.5~8nmの間で変動する。
【0102】
量子井戸は、薄い(0.5~3nm)III族窒化物層で覆ってもよく、又は覆わなくてもよい。
【0103】
III族窒化物バリア層は、元素Al、Ga、Inのうち1つ又はいくつかの組み合わせを含み得る(三元層又は四元層)。
【0104】
LED構造は、量子井戸とpドープ部との間にIII族窒化物材料のキャップ層を含む。好ましくは、キャップ層はドープされておらず、5nm~30nmの厚さを有する。
【0105】
第1及び第2のLED構造のpドープ部を発光領域の上方に成長させる。pドープ部は、pドープIII族窒化物層と、このpドープIII族窒化物層と発光領域との間に位置決めされたpドープアルミニウムガリウム窒化物層と、を含む。pドープアルミニウムガリウム窒化物層は、キャップ層とp型層との間の電子ブロック層(EBL)である。電子ブロック層は5~25at%のアルミニウムを含有し、好ましくは、電子ブロック層の厚さは10nm~100nm又は20nm~50nmである。
【0106】
pドープIII族窒化物層は、好ましくは5×1018cm-3~8×1020cm-3のp型ドーピング濃度を有する。pドープIII族窒化物層はIn及びGaを含むことができ、厚さは20~200nmであり、好ましくは50~100nmである。ドーピング濃度はこの層内で変動する可能性があり、層の最後の10~30nmの部分にドーピングレベルのスパイクを有し得る。Mgアクセプタを活性化するため、MOCVD反応器内又はアニーリングオーブンにおいて構造をアニーリングすることができる。アニーリング温度は、N又はN/O雰囲気で700~850℃の範囲とすればよい。
【0107】
EBL及びpドープ層は双方ともp型ドープされているので、これらの層をpドープ部と呼ぶ。
【0108】
その方法は、第2のLED構造を形成した後、第2のマスクの一部を除去して第1のLED構造の領域を露出させ、第1のLED構造の露出領域に電気接点を形成するステップを含み、好ましくは第1のLED構造のpドープ部との電気的接続を形成する。また、第2のLED構造のpドープ部との電気的接続も形成する。
【0109】
第1及び第2のマスク層の一部は、湿式エッチング、乾式エッチング、又はそれら双方の組み合わせによって除去される。湿式エッチングでは、緩衝酸化物エッチング、希釈フッ化水素酸、リン酸、又はこれらの混合物を使用することができる。
【0110】
pドープ部電気的接続の形成は、第1及び第2のLED構造のp型領域上に、透明導電性酸化物(例えば、ITO、ZnO、他の互換性のある酸化物)又は金属層を堆積するステップを含む。このように覆うことは、単一のステップ又は複数のステップによって実行できる。金属は、p型領域を完全に又は部分的に覆うことができる。金属は、Ti、Pt、Pd、Rh、Ni、Au、Ag等を含む。完全な金属スタックの厚さは、200nm~2000nm又は500nm~1000nmである。
【0111】
この構造化は、レジストコート、フォトリソグラフィ、及びリフトオフを含む標準的な半導体処理方法を用いて実行することができる。これを乾式又は湿式構造化と組み合わせることで、導電性金属層がpドープ領域の上面を完全に又は単に部分的に覆うことを可能とする。
【0112】
nドープ部電気的接続の形成は、好ましくは第2のマスク層に生成した開口内に金属を堆積することによって、n型接続層の露出領域上に金属接点を堆積するステップを含む。このように覆うことは、単一のステップ又は複数のステップによって実行できる。金属は、Ti、Pt、Pd、Rh、Ni、Au、Ag等を含む。金属スタック接点の厚さは、例えば200nm~2000nm、又は500nm~1000nmである。
【0113】
第3のLED構造
特に好適な実施形態において、その方法は、第1のLED構造の上に第3のLED構造を形成するステップを含む。第3のLED構造は好ましくは、電気バイアスのもとで第1及び第2の発光波長とは異なる第3の発光波長で発光するように構成されている。第3のLED構造は、第1のLED構造の第1のpドープ部の上に形成される。
【0114】
特に好ましくは、第1のLEDは、電気バイアスのもとで400~500nm、好ましくは430~470nmの発光波長で発光する青色LED構造である。
【0115】
第2のLED構造は好ましくは、電気バイアスのもとで500~600nm、好ましくは520~540nmの発光波長で発光するように構成された緑色LED構造である。しかし、第2のLED構造を多孔質領域の上に成長させるので、第2のLEDの実際の発光波長は、通常の場合よりも長い波長にシフトする。
【0116】
その方法は、第2のLED構造を形成する前に、第1のLED構造の第1のpドープ部の上に、多孔質領域と同じ面内に配置されたIII族窒化物材料の非多孔質領域を形成するステップを含む。
【0117】
第3のLED構造は、好ましくは非多孔質領域の上に形成する。このため、第3のLED構造が第2のLED構造と同じ構造と組成を有する場合であっても、第2のLED構造においてのみ多孔質領域による波長シフトがもたらされるので、これら2つは異なる波長で発光する。
【0118】
好適な実施形態において、第2のLED構造は、多孔質領域と非多孔質領域の双方の上に形成される。このため方法は、第2のLED構造を、第1のLED構造の上に位置決めされた2つの別個のLED構造又は「メサ」に分割するステップを含む。この分割ステップは、半導体構造に溝をエッチングするための従来のプロセスによって実行すればよい。第2のLED構造は、多孔質領域の上に位置決めされた第2のLED構造と、非多孔質領域の上に位置決めされた第3のLED構造とに分割される。
【0119】
したがって、本発明の方法を有利に用いて、第3のLED構造を多孔質領域の上でなく第1のLED構造の上に形成することにより、3つの異なる発光波長を有するLEDデバイスを提供することができる。
【0120】
別の可能な実施形態では、多孔質領域の上に第2のLED構造を形成した後、第2のLED構造を誘電材料の第2のマスク層で覆うことによって不動態化する。次いで、第2のマスク層及びその下の第1のマスク層の一部を除去して、nドープ接続層の第3の露出領域を露出させる。次いで、第3の露出領域上に、第1及び第2の波長とは異なる第3の波長で発光するように構成された第3のLED構造を形成する。
【0121】
次いで、3つ全てのLED構造に対する電気接点を作製するステップを上述したように実行する。
【0122】
第3のLED構造は上述したLED構造であり、第1及び第2のLED構造とは異なる波長で発光するように構成される。特に好適な実施形態において、LEDデバイスは、1つの赤色発光LED構造、1つの緑色発光LED構造、及び1つの青色発光LED構造を含む。
【0123】
好適な実施形態
好適な実施形態において、LEDを製造する本方法は以下のステップを含む。
【0124】
ステップ1 基板上にGaNの層を堆積することによって、基板上にIII族窒化物材料の非多孔質テンプレート層を形成する。
【0125】
ステップ2 テンプレート層上に、n-(Al,In)GaNのnドープ領域を堆積し、次いでn-(Al,In)GaNの露出部分に量子井戸(QW)アクティブ発光領域(複数の量子井戸を含み得る)を成長させることによって、第1のLED構造を形成する。量子井戸は、InGaN、AlGaN、InN、InAlN、AlInGaNであり、量子井戸層を取り囲む量子バリアは、GaN、AlN、AlGaN、AlInGaN、InAlNとすることができる。量子井戸、それらの構造、及びそれらの機能は、当技術分野では周知である。QWの横方向寸法はテンプレート層と同じとすればよい。
【0126】
ステップ3 量子井戸領域の上に、p-(Al,In)GaN層(高度にドープされたp型(Al,In)GaN)を堆積する。p-GaN層の横方向寸法はQW領域と同じである。したがって、p-GaN、QW領域、及びnドープ領域が、基板上に第1のLED構造を形成する。
【0127】
ステップ4 第1のLED構造の上に、例えばSiOである誘電材料の第1のマスク層を堆積して、マスク層がp-GaN層を覆う。この誘電材料の第2の層は、第1のLED構造のためのパッシベーション層である。
【0128】
ステップ5 リソグラフィ、又はナノインプリント、又は他の適切な技術によって第1のマスク層をパターニングし、次いで第1のマスク層の一部を湿式化学エッチング又は乾式エッチングプロセスによって除去する。第1のマスク層の一部を除去すると、不動態化した第1のLED構造を損傷することなく、下方のp-GaN層の露出領域が露出する。誘電体の除去エリアは、好ましくはマイクロLEDの形状及びサイズであり、例えば100μm×100μm以下である。
【0129】
ステップ6 p-GaN層上の露出領域に、例えばn-GaNのnドープIII族窒化物材料の領域を堆積し、既知の多孔質化技術を用いてnドープ材料を電気化学的に多孔質化することにより、多孔質領域を形成する。
【0130】
ステップ7 n-GaNの多孔質領域上に第2のLED構造を形成する。第2のLED構造は、第1のLED構造について上述したものと類似の積層構造を有するが、第1のLED構造の発光波長とは異なる波長で発光するように構成されている。
【0131】
ステップ8 一旦第2のLED構造が形成されたら、第1及び第2のLED構造の側壁と表面を覆うように第2の誘電マスク層を堆積することによって、これらのLED構造の双方を不動態化する。
【0132】
ステップ9 湿式化学エッチング又は乾式エッチングプロセスによって第2のマスク層の一部を除去し、第1及び第2のLED構造のp-(Al,In)GaN層を露出させる。
【0133】
ステップ10 第1のLED構造と第2のLED構造の双方のp-(Al,In)GaNの露出部分上に電気的p接点を堆積し、p接点をこれらのLED構造のp-(Al,In)GaN層と電気的に接触させる。
【0134】
ステップ11 nドープ接続層との電気的n接点を作製するため、第2のマスク層の1つ以上の領域を除去して、第1及び第2のLED構造のnドープ部の領域を露出させる。次いで、既知の技術に従って金属接点を堆積することにより、nドープ部との電気的n接点を作製する。
【0135】
この方法は、2つの異なる波長で発光するLED構造が同一基板上に提供されることを意味する。
【0136】
所望の場合、国際特許出願PCT/GB2017/052895号(WO2019/063957号として公開)及びPCT/GB2019/050213号(WO2019/145728号として公開)に記載されている、電気化学エッチングによって半導体構造層を多孔質化することができる。
【0137】
上述の方法は、p側光射出LED構成に関する。
【0138】
n側光射出マイクロLEDは、「フリップチップ」ステップを組み込み、マイクロLEDをシリコンCMOSバックプレーンに接合することにより、同様の方法を用いて製造することが可能である。
【0139】
SiOはマスキング及びパッシベーションに適した誘電体の単なる一例であり、これらの代わりに他の誘電体を用いてもよい。
【0140】
半導体材料層は、エピタキシャル成長によって堆積させる。上述した層は、分子線エピタキシ(MBE)、有機金属化学気相堆積(MOCVD)(有機金属気相エピタキシ(MOVPE)としても知られる)、水素化物気相エピタキシ(HVPE)、アモノサーマルプロセス、又は、III族窒化物材料の成長に適した他の従来のプロセスによって形成される。
【0141】
LEDのアレイの製造
本発明の第2の態様によれば、第1のLED構造の第1のアレイを形成することと、第1のLED構造の第1のアレイの上に第2のLED構造の第2のアレイを形成することと、が提供され、LED構造の第1のアレイ又は第2のアレイのうち少なくとも1つは、III族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされる。
【0142】
その方法は、多孔質領域の上にLED構造の第1のアレイを形成するステップと、第1のLED構造の上にLED構造の第2のアレイを形成するステップと、を含む。
【0143】
あるいは、その方法は、
第1のLED構造の上にIII族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の多孔質領域の上に第2のLED構造を形成するステップと、
を含む。
【0144】
その方法は、第1のLED構造及びこの第1のLED構造の上の第2のLED構造を形成するステップと、これらのLED構造を第1のLED構造の第1のアレイとLED構造の第2のアレイとに分割するステップと、を含む。
【0145】
本発明は、LEDのアレイを製造する方法を提供する。この方法は、
第1のLED構造の上に(好ましくは、第1のLED構造の第1のpドープ部の上に)III族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の多孔質領域の上に第2のLED構造のアレイを形成するステップと、を含む。
【0146】
好ましくは、その方法は、
第1のLED構造の第1のpドープ部の上に第1の電気絶縁マスク層を形成するステップと、
第1のマスク層の複数の部分を除去して第1のpドープ部の露出領域のアレイを露出させるステップと、
第1のpドープ部のアレイのそれぞれの露出領域上にIII族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の複数の多孔質領域のそれぞれの上に第2のLED構造を形成することによって第2のLED構造のアレイを形成するステップと、を含む。
【0147】
その方法は、好ましくは第1のLED構造に溝をエッチングすることによって、第1のLED構造を複数の第1のLED構造に分割するステップを含む。
【0148】
LEDのアレイを製造する方法は、好ましくは第1の態様の方法を含み、第1のpドープ部の複数の露出領域を形成し、これらの露出領域に複数の多孔質領域及び第2のLED構造を形成する。マスク層の一部を除去して露出領域のアレイを露出させることにより、第2のLED構造のアレイのレイアウトは、LEDによって所望の寸法と密度の画素が形成されるように設計することができる。
【0149】
好ましくは、LED構造はマイクロLED構造とすることができる。
【0150】
露出領域のアレイは好ましくは、同一の露出領域の均一な配列又はパターンである。例えばアレイは、規則的に間隔をあけた露出領域の複数の行と列を含む。
【0151】
その方法は、露出領域のアレイそれぞれの露出領域上に、多孔質領域、次いで第2のLED構造を形成することを含むので、これは、複数の多孔質領域及び複数のLED構造を形成することを含む。
【0152】
露出領域のアレイを露出させる場合、隣接する露出領域間の距離は、好ましくは500nm~30000nm、又は750nm~20000nm、又は1000nm~15000nmである。
【0153】
LEDのアレイは、単一の基板上に有利に形成される。それぞれの多孔質領域上に半導体材料層を同時に堆積する堆積ステップを用いて、複数の第2のLED構造を同時に形成することができる。
【0154】
その方法は、任意に、第1及び第2のLED構造並びにnドープ接続層の上に第3の電気絶縁マスク層を形成し、第3のマスク層の一部を除去してnドープ接続層の露出領域の第3のアレイを露出させ、nドープ接続層上の第3のアレイのそれぞれの露出領域上に、第1及び第2の発光波長とは異なる第3の発光波長で発光するように構成された第3のLED構造を形成するステップを含む。
【0155】
この方法を用いると、異なる色のLED又はマイクロLEDのアレイを同一のウェーハ上に形成することができる。
【0156】
LEDのアレイを製造する方法は、第1のLED構造に溝を形成して構造を複数の別個の領域に分割することにより、第1のLED構造をエッチングして複数のメサにするステップ、又は第1のLED構造をエッチングして第1のマイクロLED構造のアレイにするステップを含む。
【0157】
第2の態様の方法は、本発明の第1の態様に関連して上述した特徴の全てを有利に含み得る。
【0158】
3色LEDデバイスの製造
本発明の第3の態様によれば、3色LEDデバイスを製造する方法が提供される。この方法は、
III族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の多孔質領域の上に第1のLED構造を形成するステップと、
第1のLED構造の上に第2のLED構造を形成するステップと、
第2のLED構造の上に第3のLED構造を形成するステップと、
を含む。
【0159】
本発明の他の態様によれば、3色LEDデバイスの製造方法が提供される。この方法は、
第1のLED構造の上にIII族窒化物材料の多孔質領域を形成するステップと、
第1のLED構造の上に、多孔質領域と同じ面内に配置されたIII族窒化物材料の非多孔質領域を形成するステップと、
III族窒化物材料の多孔質領域の上に第2のLED構造を形成するステップと、
III族窒化物材料の非多孔質領域の上に第3のLED構造を形成するステップと、
を含む。
【0160】
好ましくは、第1のLED構造は第1の発光波長で発光するように構成され、第2のLED構造は第1の発光波長とは異なる第2の発光波長で発光するように構成され、第3のLED構造は第1の発光波長及び第2の発光波長とは異なる第3の発光波長で発光するように構成されている。
【0161】
好適な実施形態において、第2のLED構造は第3のLED構造と同一であり、第2及び第3のLED構造は同時に形成される。
【0162】
好ましくは、第2及び第3のLED構造は、電気バイアスのもとで500~600nm、好ましくは520~540nmの発光波長で発光するように構成され、第1のLED構造は、電気バイアスのもとで400~500nm、好ましくは430~470nmの発光波長で発光するように構成されている。
【0163】
LEDデバイス
本発明の他の態様は、上述した方法によって作製されたLEDデバイス又はマイクロLEDデバイスであるLEDデバイスに関する。
【0164】
本発明の第4の態様によれば、LEDデバイスが提供される。このLEDデバイスは、第1のLED構造の上に位置決めされた第2のLED構造を備え、第1又は第2のLED構造のうち少なくとも1つはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされている。
【0165】
1つの可能な実施形態において、第1のLED構造は多孔質領域の上に位置決めされ、第2のLED構造は第1のLED構造の上に位置決めされている。
【0166】
他の実施形態において、LEDデバイスは、
第1のLED構造と、
第1のLED構造の上のIII族窒化物材料の多孔質領域と、
III族窒化物材料の多孔質領域の上の第2のLED構造と、
を含む。
【0167】
第1のLED構造は好ましくは第1のpドープ部を有し、III族窒化物材料の多孔質領域は好ましくは第1のLED構造の第1のpドープ部の上又は上方に位置決めされている。
【0168】
LEDデバイスは好ましくは、本発明の第1の態様に関連して上述した方法を用いて作製されたLEDデバイスである。LEDデバイスは、異なる波長で発光する2つのLED構造を含むので、多色LED、多色LEDデバイス、又は多波長LEDデバイスと呼ぶことができる。
【0169】
多孔質領域は1つの多孔質層であり、このためその方法は、III族窒化物材料の多孔質層の上に第2のLED構造を形成するステップを含む。いくつかの実施形態において、多孔質領域は複数の多孔質層を含み、任意に複数の非多孔質層も含む。本発明の好適な実施形態において、多孔質領域は多孔質層と非多孔質層の交互層からなるスタックであり、スタックの上面が多孔質領域の上部を画定し、スタックの下面が多孔質領域の下部を画定する。第2のLED構造は、III族窒化物材料の多孔質層のスタックを含む多孔質領域の上に形成する。
【0170】
好適な実施形態において、第2のLED構造は、III族窒化物材料の複数の多孔質層のスタックの上に位置決めされる。このため、多孔質領域は、III族窒化物材料の単一の多孔質層でなく、少なくともいくつかの層が多孔質であるIII族窒化物材料の複数の層のスタックである。
【0171】
多孔質層のスタックは好ましくは、多孔質層と非多孔質層の交互層からなるスタックである。好ましくは、スタックは、相互に積層された多孔質層と非多孔質層の2~50のペアを含む。多孔質層は好ましくは2nm~200nmの厚さを有し、非多孔質層は好ましくは2nm~180nmの厚さを有する。
【0172】
好ましくは、多孔質領域又はスタック内のそれぞれの多孔質層は、10%~90%多孔度、又は20%~70%多孔度を有する。
【0173】
LEDデバイスは好ましくは、多孔質領域とnドープIII族窒化物接続層との間にIII族窒化物材料多孔質領域の非多孔質中間層を含む。多孔質領域はIII族窒化物材料の非多孔質層を通した電気化学的多孔質化によって形成され、その方法は、PCT/GB2017/052895号(WO2019/063957号として公開)及びPCT/GB2019/050213号(WO2019/145728号として公開)に記載されている。このため、III族窒化物材料の非多孔質層は通常、多孔質領域の上に維持される非多孔質中間層を形成する。非多孔質中間層は、製造中に接続層の成長のための平滑表面を有利に提供する。
【0174】
LEDデバイスは、多孔質領域と接続層との間に位置決めされた非多孔質III族窒化物材料の中間層を含む。中間層の厚さは、好ましくは1nm~3000nmであり、好ましくは20nm~2000nm、又は50nm~1000nmである。
【0175】
III族窒化物材料のnドープ接続層は、好ましくは100nm~2000nm又は200nm~1000nmの厚さを有する。III族窒化物材料のnドープ接続層は、1×1017cm-3~5×1020cm-3のドーピング濃度を有し、好ましくは、少なくとも1×1018cm-3のn型電荷キャリア濃度を有する。
【0176】
マスク層の一部をパターニングしてリソグラフィで除去することにより、製造中にLED構造のフットプリントを制御できるので、LED構造は任意の所望の形状を有する。例えば、LED構造のフットプリント(平面視)は、円形、方形、矩形、六角形、又は三角形の形状とすることができる。
【0177】
LED構造は、「マイクロLED」に分類される横方向寸法を有する。例えば、LED構造の幅及び/又は長さ(又は、LEDが円形である場合は直径)は、0.05μm~100μm、好ましくは0.05μm~30μm、特に好ましくは10μm未満、例えば0.1μm~10μm又は0.5μm~10μmである。好適な実施形態において、LED構造の長さ、幅、又は直径は、50μm未満、又は40μm未満、又は30μm未満、又は20μm未満、又は10μm未満である。特に好ましくは、LED構造は10μm未満の幅又は直径を有するので、LED構造は10μm未満のサイズのマイクロLED画素を形成する。
【0178】
第1のLED構造は、
第1のnドープ部と、
第1のpドープ部と、
前第1のnドープ部と第1のpドープ部との間に配置された第1の発光領域と、
を含む。
【0179】
第2のLED構造は、
第2のnドープ部と、
第2のpドープ部と、
第2のnドープ部と第2のpドープ部との間に配置された第2の発光領域と、
を含む。
【0180】
多孔質領域が第1のLED構造の上に位置決めされている場合、第2のLED構造の第2のnドープ部は、好ましくはIII族窒化物材料の多孔質領域と接触している。
【0181】
LEDデバイスは、第1のLED構造のpドープ部の上に位置決めされたIII族窒化物材料の非多孔質領域を更に含む。非多孔質領域は、好ましくは多孔質領域と同じ面内又は同じ層内に位置決めされている。
【0182】
LEDデバイスは、第1のLED構造の上に、好ましくは第1のLED構造の第1のpドープ部の上に位置決めされた、第3のLED構造を更に含み得る。第3のLED構造は、第1及び第2の発光波長とは異なる第3の発光波長で発光するように構成されている。特に好ましくは、第3のLED構造は、第1のLED構造の上のIII族窒化物材料の非多孔質領域上に位置決めされる。上述したように、多孔質領域の上に第2のLED構造を位置決めすると、第2のLED構造のエレクトロルミネッセンス発光波長の波長シフトが生じる。これにより、第2のLED構造は、他の場合に可能であるよりも長い波長で発光できるという利点がある。
【0183】
あるいは、LEDデバイスは、第1のLED構造のpドープ部の上に位置決めされたIII族窒化物材料の第2の多孔質領域を更に含む。第2の多孔質領域は、好ましくは多孔質領域と同じ面内又は同じ層内に位置決めされている。第2の多孔質領域は、好ましくは多孔質領域の多孔度とは異なる多孔度を有するので、上方に成長させた半導体構造に与えるひずみ緩和効果は、第2の多孔質領域の上に成長させた第3のLED構造では異なる。第3のLED構造は、任意に、第1のLED構造の第1のpドープ部の上方で、III族窒化物材料の第2の多孔質領域の上に位置決めされる。
【0184】
第3のLED構造が提供される場合、第3のLED構造は第3の波長で有利に発光するので、LEDデバイスは3つの異なる波長で発光する。
【0185】
本発明の第1の態様に関連付けて上述したように、LED構造は、厚さ、組成、及び電荷キャリア濃度が異なる複数の層を有する多様な形態をとることができる。
【0186】
本発明の第1の態様に関連付けて上述したLED構造の特徴は、第3の態様のLEDデバイスにも等しく適用される。
【0187】
第1及び/又は第2のLED構造は、量子井戸又は量子層(例えば、複数の3D量子構造を含む多孔質化された量子井戸)であるアクティブ層を含む。量子井戸は、InGaN、AlGaN、InN、InAlN、AlInGaNであり、量子井戸層を取り囲む量子バリアは、GaN、AlN、AlGaN、AlInGaN、InAlNである。
【0188】
LED構造は、横方向の寸法(長さと幅)が100μm×100μmよりも小さく、数十ナノメートル、更にはより小さい。この文脈において、LEDの「高さ」は、意図された発光方向における寸法である。
【0189】
第1の発光領域は、組成InGa1-xNを有する1つ以上の発光層を含むことができ、0.10≦x≦0.30であり、好ましくは0.18≦x≦0.30であり、特に好ましくは0.20≦x≦0.30である。
【0190】
他の好適な実施形態において、第1のLED構造における1つ以上の発光層は組成InGa1-xNを有し、0.10≦x≦0.30であり、好ましくは0.12≦x≦0.25であり、特に好ましくは0.15≦x≦0.20である。特に好適な実施形態において、第1のLED構造は、電気バイアスのもとで415~500nm、好ましくは430~470nmのピーク波長で発光するように構成される。
【0191】
第2の発光領域は好ましくは、組成InGa1-yNを有する1つ以上の発光層を含み、0.20≦y≦0.40であり、好ましくは0.26≦y≦0.40であり、特に好ましくは0.30≦y≦0.40である。
【0192】
第1及び第2の発光領域は、好ましくは異なる原子インジウム含有量を含み、したがって異なる発光波長を有する。
【0193】
第1及び発光領域は、好ましくは1つ以上のInGaN量子井戸、特に好ましくは1~7の量子井戸を含む。
【0194】
LEDデバイスは任意に、第1及び第2の波長とは異なる波長で発光するように構成された他のLED構造を含む。例えばLEDデバイスは、第1のLED構造の上方に位置決めされた第3のLED構造を更に含む。特に好ましくは、第3のLED構造は多孔質領域の上に位置決めされず、あるいは、第3のLED構造は、第1の多孔質領域とは異なる多孔度を有する第3の多孔質領域の上に位置決めされる。
【0195】
好適な実施形態において、第3のLED構造における1つ以上の発光層は組成InGa1-zNを有し、0.20≦z≦0.40であり、好ましくは0.26≦z≦0.40であり、特に好ましくは0.30≦z≦0.40である。特に好ましくは、第3のLED構造は電気バイアス印加時に緑色光を発する。
【0196】
LEDのアレイ
本発明の第5の態様によれば、LEDのアレイが提供される。LEDのアレイは、単一の半導体ウェーハのような共有基板上に形成された、本発明の第3の態様に従ったLEDデバイスを複数含む。
【0197】
本発明はLEDのアレイを提供することができる。このLEDのアレイは、
第1のLED構造の第1のアレイと、
第1のLED構造の上に位置決めされた第2のLED構造の第2のアレイと、を備え、LED構造の第1のアレイ及び/又は第2のアレイはIII族窒化物材料の1つ以上の多孔質領域の上に位置決めされている。
【0198】
本発明はLEDのアレイを提供することができる。このLEDのアレイは、第1のLED構造のアレイと、第1のLED構造のうち少なくともいくつかの上のIII族窒化物材料の多孔質領域と、III族窒化物材料の多孔質領域の上の複数の第2のLED構造と、を含む。
【0199】
LEDのアレイは、規則正しく連続した又は配列されたLEDであり、例えば、それぞれが複数のLEDを含む多数の行と列が規則的に形成されたものである。
【0200】
LEDのアレイは、本発明の第2の態様の方法を用いて製造されたLEDのアレイである。
【0201】
好ましくは、アレイは、第1及び第2のLED構造のそれぞれのアレイによって、少なくとも2つの異なる色で発光するマイクロLEDのアレイである。
【0202】
LEDのアレイは追加的に、第1及び第2の発光波長とは異なる第3の発光波長で発光するように構成された、複数の第3のLED構造を含む。
【0203】
3色LEDデバイス
本発明の第6の態様によれば、3色LEDデバイスが提供される。この3色LEDデバイスは、
第1の発光波長で発光するように構成された第1のLED構造と、
第1のLED構造の上に位置決めされ、第1の発光波長とは異なる第2の発光波長で発光するように構成された第2のLED構造と、
第1のLED構造の上に位置決めされ、第1及び第2の発光波長とは異なる第3の発光波長で発光するように構成された第3のLED構造と、
を備え、第1、第2、及び第3のLED構造のうち少なくとも1つはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされている。
【0204】
1つの好適な実施形態において、第1のLED構造はIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされている。
【0205】
他の好適な実施形態において、第2のLED構造は、第2のLED構造と第1のLED構造との間に位置決めされた、III族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされている。
【0206】
他の可能な実施形態において、第1のLED構造はIII族窒化物材料の第1の多孔質領域の上に位置決めされ、第2のLED構造は、第2のLED構造と第1のLED構造との間に位置決めされた、III族窒化物材料の第2の多孔質領域の上に位置決めされる。第2の多孔質領域は第1の多孔質領域とは異なる多孔度を有する。特に好ましくは、デバイスは赤緑青(RGB)LEDデバイスであり、第1、第2、及び第3のLED構造は、電気バイアス印加時に赤色光、緑色光、及び青色光を発光するように構成されている。
【0207】
第2のLED構造は、好ましくはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされ、第3のLED構造は、好ましくはIII族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされない。したがって、第2及び第3のLED構造では、多孔質領域上に成長させたLED構造に生じる、同一の発光波長シフトが生じるわけではない。
【0208】
第3のLED構造は第2のLED構造と同一とすることができ、第2及び第3のLED構造は、第2のLED構造の下方にある多孔質領域に起因して、異なる発光波長で発光する。
【0209】
好適な実施形態において、第2のLED構造は、LED構造に電気バイアスを印加した時に515~540nmのピーク波長で発光するLED構造である。第2のLED構造の下のIII族窒化物材料の多孔質領域は、LED構造の第1の発光領域の発光波長を600~650nmにシフトさせる。このため、第2のLED構造は赤色光を発する。
【0210】
好適な実施形態では、第3のLED構造も、LED構造に電気バイアスを印加した時に515~540nmのピーク波長で発光するLED構造である。好ましくは、第3のLED構造は多孔質領域の上に位置決めされないので、第3のLED構造は電気バイアスのもとで515~540nmの予想ピーク波長で発光する。このため、第3のLED構造は緑色光を発する。
【0211】
第2のLED構造及び/又は第3のLED構造における1つ以上の発光層は、組成InGa1-yNを有し、0.10≦y≦0.40であり、好ましくは0.18≦y≦0.30であり、特に好ましくは0.22≦y≦0.30である。
【0212】
好ましくは、第3のLED構造は、第1のLED構造の第1のpドープ部の上方で、III族窒化物材料の非多孔質領域の上に位置決めされている。
【0213】
第1のLED構造は、電気バイアスのもとで400~500nm、好ましくは430nm~470nmのピーク波長で発光するように構成される。特に好ましくは、第1のLED構造は青色光を発光する青色LED構造とすることができる。
【0214】
第1のLED構造における1つ以上の発光層は、例えば組成InGa1-xNを有することができ、0.10≦x≦0.30であり、好ましくは0.12≦x≦0.25であり、特に好ましくは0.15≦x≦0.20である。
【0215】
特に好適な実施形態において、第1、第2、及び第3のLED構造は、
第1のLED構造が電気バイアスのもとで400~500nmのピーク波長で発光し、
第2のLED構造が電気バイアスのもとで600~650nmのピーク波長で発光し、
第3のLED構造が電気バイアスのもとで515~550nmのピーク波長で発光する、ように構成されている。
【0216】
本発明の第1、第2、第3、第4、第5、又は第6の態様のいずれかに関連して上述した特徴は全て、本発明の態様に等しく適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0217】
これより図面を参照して本発明の特定の実施形態を記載する。
【0218】
図1―22は、本発明の好適な実施形態に従って、多色マイクロLEDのアレイを製造するステップを示す概略側断面図である。
図23―30は、本発明の好適な実施形態に従って、3色LEDデバイスを製造するステップを示す概略側断面図である。
図31―37は、本発明の好適な実施形態に従って、3色LEDデバイスを製造する代替的な方法のステップを示す概略側断面図である。
図38は、非多孔質基板上のInGaNのLEDについて、様々な電流注入における正規化エレクトロルミネッセンス(EL)強度対波長を示すグラフである。
図39は、本発明の好適な実施形態に従って、多孔質領域上に成長させた図45と同じInGaNのLEDについて、様々な電流注入における正規化エレクトロルミネセンス(EL)強度対波長を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0219】
図1 基板
エピタキシャル成長の開始表面として、互換性のある基板を用いる。基板は、シリコン、サファイア、SiC、β-Ga、GaN、ガラス、又は金属である。基板の結晶方位は、極性、半極性、又は無極性方位とすることができる。基板サイズは、1cmから、直径2インチ、4インチ、6インチ、8インチ、12インチ、16インチ、及びそれ以上まで変動する。基板の厚さは1μmより大きく、例えば1μm~15000μmである。好ましくは、基板は半導体ウェーハである。本発明の利点は、フルサイズの半導体ウェーハ上にマイクロLEDのアレイを同時に製造できることである。図示した方法を用いて、多数のマイクロLEDのアレイを同時に同一ウェーハ上に製造することができる。
【0220】
図2 テンプレート層
基板上に、III族窒化物材料のテンプレート層1又は複数のテンプレート層のスタックをエピタキシャルに成長させる。III族窒化物層は、元素Al、Ga、Inのうち1つ又はいくつかの組み合わせを含む(二元層、三元層、又は四元層)。
【0221】
III族窒化物テンプレート層の厚さは、好ましくは、少なくとも10nm、又は少なくとも50nm、又は少なくとも100nm、例えば10~10000nm、好ましくは10nm~4000nmである。
【0222】
いくつかの好適な実施形態において、III族窒化物層は、1×1017cm-3~5×1020cm-3のn型ドーピング濃度を有するドープ領域を含む。また、III族窒化物層は、ドープ領域上にIII族窒化物材料の非ドープ層(図示せず)も含む。
【0223】
ドープ領域はIII族窒化物層の露出上面で終端し、その場合、この層の表面は電気化学エッチングの間に多孔質化される。
【0224】
好ましくは、III族窒化物材料のドープ領域はIII族窒化物材料の非ドープ中間(又は「キャップ」)層で覆われており、そのためドープ領域は半導体構造の表面下にある。ドープ領域の表面下開始深さ(d)は、例えば1nm~3000nm又は5nm~2000nmである。
【0225】
図1から図22に示す例では、テンプレート層1は非多孔質であるが、本発明の範囲内の特定の実施形態では、既知の電気化学的多孔質化技術によってテンプレート層を多孔質化してIII族窒化物材料の多孔質層を形成する。
【0226】
図3 第1のnドープ部
図3で示されているように、テンプレート層1の上に第1のnドープ部2を成長させる。第1のnドープ部2は、2~200nmの厚さを有するnドープIII族窒化物層である。
【0227】
第1のnドープ部2は、III族窒化物材料で形成され、元素Al、Ga、Inのうち1つ又はいくつかの組み合わせを含む(二元層、三元層、又は四元層)。第1のnドープ部2は、0~30%のアルミニウム、0.5~25%のインジウムと共に、Ga原子を含む。第1のnドープ部2は、例えばSi、Ge、C、O等の適切なn型ドーパント材料でドーピングされ、n型電荷キャリア濃度は1×1017cm-3~5×1020cm-3であり、好ましくは1×1018cm-3より高い。
【0228】
図4 第1の発光領域
第1のn型層2の成長後、第1の発光領域3を成長させる。
【0229】
第1の発光領域3は少なくとも1つの発光層を含む。それぞれの発光層は量子井戸(QW)であり、好ましくはInGaN量子井戸(QW)である。好ましくは、発光領域は1~7の量子井戸を含む。隣接する量子井戸は、量子井戸とは異なる組成を有するIII族窒化物材料のバリア層で分離される。
【0230】
1又は複数の発光層は、本文書全体を通して「量子井戸」と呼ぶが、種々の形態をとる。例えば発光層は、InGaNの連続的な層であるか、又は、連続的な層、断片的な層、断続的な層とするか、ギャップを含むか、もしくは、量子井戸が量子ドットとして振る舞う複数の3Dナノ構造を実質的に含むようにナノ構造化することができる。
【0231】
量子井戸及びバリアは、600~800℃の温度範囲で成長させる。
【0232】
それぞれの量子井戸は好ましくは、10~30%、好ましくは20%超、好ましくは30%未満の原子インジウム百分率を有するInGaN層から成る。
【0233】
それぞれの量子井戸層の厚さは1.5~8nmであり、好ましくは1.5nm~6nm又は1.5nm~4nmである。
【0234】
量子井戸は、薄い(0.5~3nm)III族窒化物QWキャッピング層で覆ってもよく、又は覆わなくてもよい。このキャッピング層は、元素Al、Ga、Inのうち1つ又はいくつかの組み合わせを含む(四元層、三元層)。
【0235】
QWキャッピング層(存在する場合)は、QW成長の直後に追加される層であり、AlN、Al%が0.01~99.9%のAlGaN、GaN、In%が0.01~30%のInGaNとすることができる。
【0236】
発光層(量子井戸)を分離するIII族窒化物QWバリアは、元素Al、Ga、Inのうち1つ又はいくつかの組み合わせを含み得る(四元層、三元層)。
【0237】
1又は複数のQWキャッピング層及びQWバリアは、発光領域4の一部を形成するので、これらの層は図面において個別の参照番号で示されていない。
【0238】
第1のLED構造の発光波長は所望のように調整され得るが、好適な例示の実施形態では、電気バイアスのもとでの発光領域4のターゲット発光波長は515nm~550nmであり、好ましくは530nmである。
【0239】
図5 キャップ層及びEBL
量子井戸の成長後、非ドープキャップ層4を成長させる。非ドープキャップ層4は、完全な発光領域の成長後に、例えば、QW、QWキャップ層、及びQWバリア層のスタックの成長後に形成されるので、発光領域キャップ層と呼ぶことができる。
【0240】
キャップ層(発光領域キャップ層)4は、III族窒化物LEDの成長スキームでは極めて良く知られている標準的な層である。
【0241】
キャップ層の厚さは5~30nmであり、好ましくは5~25nm又は5~20nmである。
【0242】
電子ブロック層(EBL)
キャップ層4の後、アルミニウムを含有する電子ブロックIII族窒化物層5(EBL)を成長させる。EBLの厚さは典型的に10~50nmである。Al%は例えば5~25%であるが、より多いAl含有量も可能である。
【0243】
EBLには適切なp型ドーピング材料がドープされている。ドーピング濃度は5×1018cm-3~8×1020cm-3とすることができる。
【0244】
図6 第1のpドープ層
電子ブロック層(EBL)5の上方に第1のpドープ層6を成長させる。
【0245】
p型領域は、好ましくはMgがドープされており、p型層のp型ドーピング濃度は、好ましくは5×1018cm-3~8×1020cm-3である。
【0246】
pドープIII族窒化物層はIn及びGaを含む。
【0247】
ドーピング層は、好ましくは20~200nmの厚さであり、特に好ましくは50~100nmの厚さである。ドーピング濃度はp型層内で変動する可能性があり、より良好なp接点を可能とするため、この層のLED表面に近い方の最後の10~30nmの部分にドーピングレベルのスパイクを有し得る。
【0248】
pドープ層内のMgアクセプタを活性化するため、MOCVD反応器内又はアニーリングオーブンで構造をアニーリングすることができる。アニーリング温度は、N又はN/O雰囲気で700~850℃の範囲である。
【0249】
EBL及びpドープ層の双方がp型ドープされているので、これらの層を第1のpドープ部と呼ぶ。
【0250】
層2~6は第1のLED構造を形成する。
【0251】
図7 第1のマスク層
次いで、第1のドープ層6を覆うように、ウェーハ表面上に電気絶縁第1マスク層7を堆積する。マスク層7の目的は、次のステップでマスクとして第1のLED構造の特定領域を保護することと、このテンプレートの上で選択的エリアのエピタキシを可能とすることである。
【0252】
このマスク層7は、SiO、SiN、又はSiONである。この層の厚さは20nm~1000nmとすることができ、好ましくは100nm~700nmである。
【0253】
この層を堆積するために用いられる方法は、例えばPECVD又はスパッタリングである。
【0254】
図8 第1のpドープ層の露出領域
標準的なリソグラフィ又はフォトリソグラフィ技術を用いて、非導電性第1マスク層7に開口を生成して、第1のpドープ層6の表面上の第1の露出領域を露呈させる。開口は、湿式エッチング又は乾式エッチング法のいずれかを用いて生成することができる。
【0255】
図面の概略図では、第1のマスク層7を通して2つの第1の露出領域が形成される。好適な実施形態では、マスキングされた半導体ウェーハに、複数の露出領域の規則的なアレイが形成される。
【0256】
特に好適な例では、フォトリソグラフィを用いて2つのエリアからSiOを除去し、これによって、第1のpドープ層6の表面上に、第1のマスク層7で覆われていない2つの露出領域を生成する。
【0257】
第1の露出領域のサイズは、200nm~50000nmであり、好ましくは500nm~10000nm、又は1000nm~8000nmである。
【0258】
第1の露出領域間の距離は、500nm~30000nmであり、例えば1000nm~10000nm又は5000nm~8000nmである。
【0259】
露出領域の形状は、円形、方形、矩形、六角形、三角形等とすることができる。開口の幅又は直径は100μm未満であることが好ましく、これにより、露出エリア上に形成されるLED構造がマイクロLEDに分類される。露出領域は、好ましくは0.05μm~30μm、特に好ましくは10μm以下の幅を有し得る。
【0260】
この後、多孔質領域及び第2のLED構造を、第1のpドープ層6の第1の露出領域の全てに成長させるので、これらの露出領域はμLED画素になる。
【0261】
図9 nドープ領域
第1のpドープ層6の第1の露出領域を形成した後、III族窒化物材料のnドープ領域8を第1の露出領域にのみ堆積する。
【0262】
nドープIII族窒化物層は、元素Al、Ga、Inのうち1つ又はいくつかの組み合わせを含み得る(四元層、三元層)。nドープ領域の厚さは10~4000nmである。nドープ領域8は、1×1017cm-3~5×1020cm-3のドーピング濃度を有する。ドープ領域はnドープ領域の表面で終端するか、又は、表面下ドープ領域の上に厚さ1~2000nmの非ドープ領域(図示せず)が配置される場合がある。
【0263】
図10 多孔質領域を形成するための多孔質化
nドープIII族窒化物領域8は、基板上に堆積された後、ウェーハスケール多孔質化プロセスによって多孔質化される。これは、国際特許出願PCT/GB2017/052895号(WO2019/063957号として公開)及びPCT/GB2019/050213号(WO2019/145728号として公開)に記載されている。このプロセス中に、nドープIII族窒化物材料は多孔質になり、一方、III族窒化物材料の非ドープ領域は多孔質にならない。多孔質層の多孔度は、電気化学エッチングプロセスによって制御され、好ましくは10%~90%、好ましくは20%~70%である。
【0264】
多孔質化ステップの後、nドープ領域8は、好ましくはIII族窒化物材料の非多孔質中間層(図示せず)で覆われた多孔質領域9に変換される。
【0265】
図11 第2のnドープ部
一旦それぞれの露光領域に多孔質領域9が形成されると、多孔質領域9の上にnドープ層10を成長させる。nドープ層10は、0~30%のアルミニウム、0.5~25%のインジウムと共に、Ga原子を含む。
【0266】
それぞれのnドープ層10は、インジウムを含有するバルクIII族窒化物層、又は、インジウムを含有するか含有しない薄いIII族窒化物層のスタック、又は、バルク層内もしくはスタック内でインジウムの原子百分率が変動するバルクIII族窒化物層もしくはIII族窒化物層のスタックを含む。インジウム原子百分率は0.5~25%の間で変動する。n型層3の合計厚は2nm~200nmの間で変動し、例えば50nm~100nmである。スタックが用いられる場合、スタック内の個々の層の厚さは1~40nmの間で変動する。nドープ層3は、1×1017cm-3~5×1020cm-3のnドーピング濃度を有する。
【0267】
図12 第2の発光領域
多孔質領域9上に第2のn型層10を成長させた後、それぞれの多孔質領域10の上に第2の発光領域11を成長させる。
【0268】
第2の発光領域11は少なくとも1つの発光層を含む。それぞれの発光層は量子井戸(QW)であり、好ましくはInGaN量子井戸(QW)である。好ましくは、発光領域は1~7の量子井戸を含む。隣接する量子井戸は、量子井戸とは異なる組成を有するIII族窒化物材料のバリア層で分離される。
【0269】
1又は複数の発光層は、本文書全体を通して「量子井戸」と呼ぶが、種々の形態をとり得る。例えば、発光層はInGaNの連続的な層であるか、又は、連続的な層、断片的な層、断続的な層であるか、ギャップを含むか、もしくは、量子井戸が量子ドットとして振る舞う複数の3Dナノ構造を実質的に含むようにナノ構造化することができる。
【0270】
量子井戸及びバリアは、600~800℃の温度範囲で成長させる。
【0271】
それぞれの量子井戸は、20~40%、好ましくは26%超、好ましくは30%超の原子インジウム百分率を有するInGaN層から成る。
【0272】
それぞれの量子井戸層の厚さは、1.5~8nm、好ましくは1.5nm~6nm、又は1.5nm~4nmである。
【0273】
量子井戸は、薄い(0.5~3nm)III族窒化物QWキャッピング層で覆ってもよく、又は覆わなくてもよい。このキャッピング層は、元素Al、Ga、Inのうち1つ又はいくつかの組み合わせを含み得る(四元層、三元層)。
【0274】
QW成長の直後に追加される層であるQWキャッピング層(存在する場合)は、AlN、Al%が0.01~99.9%のAlGaN、GaN、In%が0.01~30%のInGaNである。
【0275】
発光層(量子井戸)を分離するIII族窒化物QWバリアは、元素Al、Ga、Inのうち1つ又はいくつかの組み合わせを含む(四元層、三元層)。
【0276】
1又は複数のQWキャッピング層及びQWバリアは、第2の発光領域11の一部を形成するので、図面において個別の参照番号で示されていない。
【0277】
第2の発光領域11のターゲットPL発光波長は570nm~630nmであり、好ましくは575nm超である。このため、第2の発光領域11は第1の発光領域3とは異なる発光波長を有する。
【0278】
図13 キャップ層及びEBL
量子井戸の成長後、非ドープキャップ層12及び電子ブロックIII族窒化物層13(EBL)を成長させる。これらの層は、上述したキャップ層4及びEBL5と類似又は同一である。
【0279】
図14 第2のpドープ層
電子ブロック層(EBL)13の上方に第2のpドープ層14を成長させる。第2のpドープ層14は、上述したpドープ層6と類似又は同一である。
【0280】
層10~14で構成されて完成した第2のLED構造は、好ましくは、570~630nmのPL発光波長及び600~665nmのEL発光波長を有する。このため、第2のLED構造は、電気バイアスが印加された場合に赤色光を発光する赤色LEDである。
【0281】
図15 第1のマスク層の除去
次いで、ウェーハを処理して第1のマスク層7を除去する。これは、緩衝酸化物エッチング化学物質を用いた湿式エッチングによって実行できる。好ましい方法は湿式ウェット化学エッチングである。
【0282】
図16 第2のマスク層
図16で示されているように、ウェーハ表面上に第2のマスク層15を堆積する。第2のマスク層15は新しいパッシベーション層であり、第1及び第2のLED構造の双方の表面と側壁を覆う。第2のマスク層15は、SiO、SiN、SiON、アルミニウム、ハフニウム含有酸化物のタンタル、又はこれらの層の組み合わせである。この層は、プラズマ励起化学気相堆積、スパッタリング、又は他の適切な技術(例えば原子層堆積)によって堆積される。パッシベーション層の厚さは20~2000nmの間で変動する。
【0283】
図17 pドープ層の露出
次のステップでは、デバイス処理を開始する。第1のステップは、第2のマスク層15に開口を生成して、第1のpドープ層6及び第2のpドープ層14に到達し、これにより、第1及び第2のLED構造のpドープ部に対する電気接点を作製可能とする。
【0284】
標準的なフォトリソグラフィ技術を用いて、第2のマスク層15に開口を生成する。開口のサイズは200nm~50000nmの間で変動する。開口間の距離は500nm~30000nmである。双方のダイオード構造のpドープ層6、14が露出されるように、開口は特定の領域にのみ生成される。
【0285】
緩衝酸化物エッチング又は他の適切な湿式化学物質を用いて開口を生成することができる。
【0286】
図18 透明導電層
次いで、露出した第1及び第2のp型層6、14を、透明導電性酸化物(例えば、ITO、ZnO、他の互換性のある酸化物)等の透明導電層16又は金属層で覆って、電気的p接点を形成する。このように覆うことは、単一のステップ又は複数のステップによって実行できる。金属は、画素を完全に又は部分的に覆うことができる。金属は、Ti、Pt、Pd、Rh、Ni、Au、Ag等を含む。完全な金属スタックの厚さは、200~2000nmとすることができる。
【0287】
透明導電層は当技術分野では周知であり、任意の適切な材料及び厚さを用いられる。
【0288】
図19 n接点の開口
標準的なフォトリソグラフィ技術は、第1及び第2のLED構造のn型層2、10に到達するプロセスを開始する。第1のn型層2は、その上に成長させた複数の半導体層で覆われているので、第1のn型層2との電気的n接続を形成するためには、第2のマスク層15を介して、更に、第1のLED構造の全ての重なった層を介して、到達経路をエッチングする。
【0289】
この後、乾式エッチングプロセスを行う。乾式エッチングプロセスは、誘導結合プラズマ反応イオンプロセス、反応性イオンエッチプロセスのみ、又は中性ビームエッチングプロセスによって実行できる。
【0290】
図20 第3のマスク層
nドープ層2、10のための到達経路を生成した後、ウェーハ表面上に新しい第3のマスク層17を堆積する。第3のマスク層17は新しいパッシベーション層で、第1及び第2のLED構造の側壁を覆う。第3のマスク層17は、SiO、SiN、SiON、アルミニウム、ハフニウム含有酸化物のタンタル、又はこれらの層の組み合わせとすることができる。層17は、プラズマ励起化学気相堆積、スパッタリング、又は他の適切な技術(例えば原子層堆積)によって堆積される。第3のマスク層17の厚さは20~2000nmの間で変動する。
【0291】
湿式又は乾式エッチングプロセスを用いて、第1及び第2のLED構造のn型層2、10を再露出させるための第3のマスク層17の開口を生成することができる。この特定の例では、乾式エッチングプロセスが用いられる。
【0292】
図21 電気的n接点
デバイス製造における次のステップは、LED構造のnドープ層2、10に到達するように、第3のマスク層17の開口を金属層で覆うことである。このように覆うことは、単一のステップ又は複数のステップで実行できる。金属は、画素を完全に又は部分的に覆うことができる。この例では、詳細を簡略化するため単一のステップを用いる。
【0293】
金属は、Ti、Pt、Pd、Rh、Ni、Auを含む。完全な金属スタックの厚さは200~2000nmである。
【0294】
図22 p接点の露出
最終ステップは、第3のマスク層17の他の湿式又は乾式エッチングステップを実行して、pドープ接点16を再露出させることである。
【0295】
第3のマスク層17の開口は、湿式又は乾式エッチングプロセスによって生成することができる。この特定の例では、乾式エッチングプロセスが用いられる。
【0296】
図2から図22に示されているマイクロLEDアレイは、電気バイアスが印加された場合に、2つの異なる発光波長、すなわち515~550nm及び600~665nmで発光する2つのLEDセットを有するように設計される。図示されているデバイスは、デバイスのp側(図示されているマイクロLEDアレイの上側)から光を発するように構成されている。第1及び第2の発光領域の双方の発光波長は、望まれる色の組み合わせのLEDを得るように調整することができる。また、第3のLED構造の第3のアレイをウェーハに追加して、3つの別々の波長で発光するLEDのアレイを提供することも可能である。
【0297】
図23から図30 3色LED
図23から図30は、本発明の好適な実施形態に従って3色LEDデバイスを製造するステップを示す概略側断面図である。
【0298】
図23は、図6に示されているような第1のLED構造を示し、基板上のIII族窒化物材料のバッファ層1の上に、層2~6で構成された第1のLED構造が形成されている。
【0299】
発光領域の発光波長以外、図23から図30で示されているデバイスの番号を付けた領域(又は層)の詳細は、図1から図22に関して上述したものと一致している。
【0300】
基板の上に、層2~6(図1から図22に関して上述した)で構成された第1のLED構造を成長させる。第1のLEDは好ましくは青色LEDで、電気バイアスのもとで400~500nm、好ましくは430~470nmの発光波長を有する。
【0301】
第1のpドープ層6の上に、III族窒化物材料のいくつかの層を堆積する。これらの層は、単一層内の隣接した横方向部分を占めるIII族窒化物材料のnドープ領域と非ドープ領域を含む。次いで、上述したようにnドープ領域を電気化学的に多孔質化して、第1のpドープ層6の一部の上に位置決めされたIII族窒化物材料の多孔質領域を形成する。図示されている実施形態では、構造の横方向幅の約半分が多孔質領域で覆われ、他の半分がIII族窒化物材料の非多孔質領域で覆われる。この非多孔質領域は非ドープであり、したがってエッチングステップ中に多孔質化されない。多孔質化は、上述のように、III族窒化物材料の非多孔質中間層を通して実行される。
【0302】
III族窒化物材料の非多孔質中間層は、構造の幅全体に拡がり、多孔質領域と非多孔質領域の双方を覆っている。
【0303】
非多孔質中間層の上に第2のLED構造を成長させる。第2のLED構造は、図1から図22に関して上述したように、層10~14で構成される。第2のLED構造は好ましくは従来の緑色LED構造で、電気バイアスのもとで500~600nm、好ましくは520~540nmのピーク発光波長で発光するように構成されている。
【0304】
第2のLED構造は構造の幅全体にわたって成長させるので、第2のLED構造の一部は多孔質領域の真上に位置決めされ、第2のLED構造の他の部分は非多孔質領域の真上に位置決めされる。
【0305】
次いで、図27で示されているように、標準的な半導体処理ステップを用いて、第2のLED構造(10~14)を2つの別個のメサに分割し、第1のLED構造の領域を露出させる。第2のLED構造のこの分割によって、多孔質領域の上方に位置決めされた第2のLED構造の1つの「ピラー」又は「メサ」と、非多孔質領域の上方に位置決めされた第2のLED構造の別の「ピラー」又は「メサ」を生成する。非多孔質領域の上方に位置決めされたLED構造のピラーは、第3のLED構造、すなわちLED3とすることができ、多孔質領域の上方のピラーは、引き続き第2のLED構造、すなわちLED2とする。
【0306】
上述のようにデバイス処理ステップを実行し、LED構造をマスク層15で不動態化し、LED構造の導電性領域を露出させ、p接点16及びn接点18を堆積する。
【0307】
図30で示されているように、基板は除去するか又は保持することができる。ある例では、基板を除去し、別の基板へ移送するか又は取り付ける。次いで、上部電極を、別のキャリアウェーハ/基板21又はマイクロドライバ回路基板又はバックプレーンに接合して、画素のアレイを形成する。
【0308】
好適な実施形態において、第2のLED構造は好ましくは従来の緑色LED構造で、電気バイアスのもとで500~600nm、好ましくは520~540nmのピーク発光波長で発光するように構成される。しかし、上述したように、第2のLED構造は、III族窒化物材料の多孔質領域の上に位置決めされているので、多孔質領域の上に形成さていない同一の第3のLED構造に対して、第2のLED構造の発光波長のレッドシフトが生じる。この結果、第3のLED構造の発光領域は、約515nm~540nmのピークEL波長で発光し、一方、波長シフトした第2のLED構造の発光領域は約580nm~650nmのピークEL波長で発光する。
【0309】
したがって、LEDデバイスは赤緑青(RGB)LEDデバイスであり、青色光を発光する第1のLED構造、赤色光を発光する第2のLED構造、緑色光を発光する第3のLED構造を含む。
【0310】
これら3つのLED構造の全てを同一基板上に製造された一体化デバイスで提供することによって、赤緑青LEDデバイスが有利に提供され、この赤緑青LEDデバイスは、赤色、緑色、及び青色LED構造が発光のため色付き画素を形成し、特に、赤色、緑色、及び青色の画素は、従来技術の製造方法を用いて可能であるよりも近接して形成される。
【0311】
当業者であれば、LED構造の組成及び層構造を変更することで、LED構築の既知の原理に従って個々のLED構造の発光波長を制御できることは理解される。このため、本発明を用いて多様な多色LEDデバイスを提供することができ、当然ながら、赤色、緑色、及び青色以外の色の組み合わせを提供することも可能である。
【0312】
図31から図37
図31は、本発明に従ったLEDデバイスに適した多孔質テンプレートを示す。
【0313】
多孔質テンプレートは基板上にIII族窒化物材料の多孔質領域を含み、多孔質領域の上面上にIII族窒化物材料の非多孔質層が配置されている。任意に、基板と多孔質領域との間にIII族窒化物材料の他の層が存在してもよい。
【0314】
上記で詳述したように、III族窒化物材料のnドープ領域を、次いでIII族窒化物材料の非ドープ層をエピタキシャルに成長させ、多孔質化プロセスを用いてnドープ領域を多孔質化することによって、多孔質領域を提供することができる。多孔質化プロセスについては、国際特許出願PCT/GB2017/052895号(WO2019/063957号として公開)及びPCT/GB2019/050213号(WO2019/145728号として公開)に記載されている。
【0315】
多孔質領域は、1つ以上のIII族窒化物材料の1つ以上の層を含むことができ、ある範囲の厚さを有する。好適な実施形態において、多孔質領域は例えばGaN及び/又はInGaN及び/又はAlGaNを含む。
【0316】
図32で示されているように、図31の多孔質テンプレートの上に、3つのLED構造を積み重ねて成長させることができる。
【0317】
発光領域の発光波長以外、図23から図30で示されているデバイスの番号を付けた領域(又は層)の詳細は、図1から図22に関して上述したものと一致している。
【0318】
図22から図30に示されている製造ステップは、図1から図22に関して上述したものと同様である。
【0319】
基板の上に、層2~6(図1から図22に関して上述した)で構成された第1のLED構造(LED1)を成長させる。第1のLEDは好ましくは青色LEDで、電気バイアスのもとで400~500nm、好ましくは430~470nmの発光波長を有する。
【0320】
第1のLED構造の上に、層10~14(図1から図22に関して上述した)で構成された第2のLED構造(LED2)を成長させる。第2のLED構造は好ましくは緑色LEDで、電気バイアスのもとで500~600nm、好ましくは520~540nmの発光波長を有する。
【0321】
第2のLED構造の上に、層10A~14A(図1から図22に関して上述した領域10~14と同等)で構成された第3のLED構造(LED3)を成長させる。第2のLED構造は好ましくは赤色LEDで、電気バイアスのもとで600~750nm、好ましくは600~650nmの発光波長を有する。
【0322】
図示されている実施形態における領域は以下のものである。
18 n接点
17 nドープ層を露出させた後のパッシベーション層
16 p接点
15 マスク層
14A pドープ層(LED3)
13A EBL(LED3)
12A キャップ層(LED3)
11A 発光領域(LED3)
10A nドープ層(LED3)
14 pドープ層(LED2)
13 EBL(LED2)
12 キャップ層(LED2)
11 発光領域(LED2)
10 nドープ層(LED2)
7 マスク層
6 pドープ層(LED1)
5 EBL(LED1)
4 キャップ層(LED1)
3 発光領域(LED1)
2 nドープ層(LED1)
1 テンプレート層(非ドープ又はnドープIII族窒化物材料)
基板
【0323】
第3のLED構造の第3のpドープ層14Aの上面に、マスク7を提供する。次いで、マスク層7に開口を形成し、従来の半導体エッチング技術を用いて層10A~14A及び層10~14の一部を除去する。
【0324】
エッチング後、図35で示されているように、第1、第2、及び第3のLED構造のpドープ層6、14、及び14Aを露出させる。層10A~14Aによって形成された第3のLED構造のピラー又はメサと、層10~14によって形成された、上に半導体層が重なっていない第2のLED構造の一部と、層2~6によって形成された、上に半導体層が重なっていない第1のLED構造の一部と、が残される。
【0325】
LED構造をマスク層15で不動態化し、LED構造の導電性領域を露出させ、p接点16及びn接点18を堆積するデバイス処理ステップを、上述のように実行する。
【0326】
図37で示されているように、基板は除去するか又はLEDデバイスの一部として保持することができる。ある例では、基板を除去し、別の基板へ移送するか又は取り付ける。次いで、上部電極を、他のキャリアウェーハ/基板21又はマイクロドライバ回路基板又はバックプレーンに接合して、画素のアレイを形成する。
【0327】
したがって、図23から図30において記載した実施形態と同様、LEDデバイスは、青色光を発光する第1のLED構造と、赤色光を発光する第2のLED構造と、緑色光を発光する第3のLED構造と、を含む赤緑青(RGB)LEDデバイスである。この実施形態では、3つ全てのLED構造が多孔質領域の上に形成されるので、これら3つ全てが、上述したひずみ緩和効果による利益を享受する。
【0328】
レッドシフト
図38及び図39は、非多孔質基板上のInGaNのLEDの発光特性(図38)と、III族窒化物材料の多孔質層を含むテンプレート上に成長させた同じInGaNのLEDの発光特性(図39)を比較している。これら2つのグラフを比較すると、多孔質の下層によって長い発光波長へのシフトが生じたことが実証され、多孔質テンプレート上のLEDの発光は、非多孔質テンプレート上の同じLEDよりも一貫して21nm~45nm長くなっている。したがって、第1のLED構造を多孔質領域上で成長させ、同一の第2のLED構造を非多孔質領域上で成長させた場合、第1のLED構造は第2のLED構造よりも長い波長で発光する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
【国際調査報告】