(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(54)【発明の名称】タンパク質組成物を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/00 20060101AFI20230817BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230817BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230817BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230817BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20230817BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230817BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20230817BHJP
【FI】
A61K38/00
A61K47/14
A61K47/26
A61K39/395 K
A61K39/395 J
A61K39/395 B
C07K1/22
C07K16/28
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507884
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2021072039
(87)【国際公開番号】W WO2022029306
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ファルケンシュタイン ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーデキント フランク
(72)【発明者】
【氏名】レンプト マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ライス ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】エーデルマン フランツィスカ
(72)【発明者】
【氏名】グラフ トビアス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076DD44
4C076DD46F
4C076EE23
4C084AA03
4C084BA03
4C084NA20
4C085AA13
4C085AA14
4C085DD51
4C085DD81
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA20
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、概して、タンパク質組成物を調製するための手段及び方法の提供に関する。本発明は、(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、(ii)前記タンパク質を含む組成物を回収する工程、を含む方法を提供する。更に、本発明は、(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、(ii)タンパク質を含む組成物を回収する工程を含む、タンパク質製剤を調製するための方法に関し、タンパク質製剤を調製するための該方法は、タンパク質を含む組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを添加することを更に含む。更に、本発明は、本明細書に記載の方法によって得られるか若しくは得ることができるタンパク質組成物及び/又は本明細書に記載の方法によって得られるか若しくは得ることができるタンパク質製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)前記タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
タンパク質を含む組成物を調製するためのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質を含む前記組成物が、例えば、リパーゼ活性アッセイ(ポリソルベートのためのリパーゼ酵素アッセイ(LEAP)のアッセイ)及び/又は質量分析による脂肪酸(FAMS)アッセイによって決定される場合、前記出発組成物と比較して加水分解活性が低下している、及び/又は前記出発組成物と比較して加水分解酵素の含有量が低下している、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記出発組成物における加水分解活性を低下させるため、及び/又は前記出発組成物中の加水分解酵素の前記含有量を低下させるためのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記出発組成物が、加水分解酵素(複数可)を更に含む、及び/又は加水分解活性を更に有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質組成物が、前記出発組成物から加水分解酵素を除去することによって、及び/又は前記出発組成物中の加水分解酵素の前記含有量を低下させることによって調製される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(i)が、前記加水分解酵素を前記加水分解酵素阻害剤に吸着させる工程(a)を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
タンパク質を含む前記組成物が、タンパク質を含む溶液である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が水溶液である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液が緩衝溶液である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記加水分解酵素が、エステラーゼ(複数可)及び/又はアミダーゼ(複数可)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記エステラーゼ(複数可)が、カルボン酸エステル加水分解酵素(複数可)及び/又はチオエステラーゼ(複数可)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カルボン酸エステル加水分解酵素(複数可)がリパーゼ(複数可)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加水分解酵素(複数可)が、リポタンパク質リパーゼ、パルミトイルプロテインチオエステラーゼ、酸性セラミダーゼ、脂肪酸シンターゼのC末端ドメイン、推定ホスホリパーゼb様2、リソソーム酸リパーゼ、及びリソソームホスホリパーゼからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記固定化された阻害剤が、オルリスタット又はビス-エノール-エステルからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記固体担体が、セファロース、ポリスチレン、及びスマートポリマーからなる群から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記阻害剤が、アジド基とアルキン基との反応を介して固体担体上に固定化される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記阻害剤が、ビオチン基へのストレプトアビジン基の結合を介して固体担体上に固定化される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記阻害剤が、アミノ基とN-ヒドロキシスクシンイミド基との反応を介して固体担体上に固定化される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記阻害剤が、式(1)、(2)、(3)、若しくは(4):
、好ましくは式(1)、(2)、若しくは(4)を含むか又はそれからなる化合物をアジドと反応させることによって得ることができる基である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記工程が、以下の順序:工程(i)及びそれに続く工程(ii)で行われる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程(i)の前及び/若しくは後、並びに/又は工程(ii)の前及び/若しくは後に、タンパク質調製及び/又は精製の工程を更に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程(i)が、アフィニティークロマトグラフィーの後、好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィーの後に行われる、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記タンパク質が抗体である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体が、ヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質が、抗CD20抗体、抗CD40抗体、抗HER2抗体、抗IL6抗体、抗IgE抗体、抗IL13抗体、抗TIGIT抗体、抗PD-L1抗体、抗VEGF-A抗体、抗VEGF-A/ANG2抗体、抗CD79b抗体、抗ST2抗体、抗D因子抗体、抗IX因子抗体、抗X因子抗体、抗aベータ抗体、抗tau抗体、抗CEA抗体、抗CEA/CD3抗体、抗CD20/CD3抗体、抗FcRH5/CD3抗体、抗Her2/CD3抗体、抗FGFR1/KLB抗体、FAP-4-1 BBL融合タンパク質、FAP-IL2v融合タンパク質、オクレリズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トシリズマブ、ファリシマブ、ポラツズマブ、ガンテネルマブ、シビサタマブ、クレネズマブ、モスネツズマブ、チラゴルマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、アテゾリズマブ、オビヌツズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、オマリズマブ、ラニビズマブ、エミシズマブ、セリクレルマブ、プラシネズマブ、グロフィタマブ、シムルカフスプアルファ、及びRG7827である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
タンパク質製剤を調製するための方法であって、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法の工程を含み、前記組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを添加することを更に含む、方法。
【請求項29】
タンパク質製剤を調製するための方法であって、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法によって得られるか又は得ることができる前記組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを添加することを更に含む、方法。
【請求項30】
前記タンパク質製剤が可視粒子及び/又はサブビジブル粒子を(本質的に)含まない、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記タンパク質製剤が、推奨される貯蔵条件下で少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、又は少なくとも60ヶ月間安定である、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記脂肪酸エステルがポリオキシエチレンソルビタン又はイソソルビド脂肪酸モノ-、ジ-、若しくはトリ-エステルである、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記脂肪酸エステルがポリオキシエチレン(20)ソルビタンラウレートである、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記脂肪酸エステルが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85、若しくはポリソルベート120、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記脂肪酸エステルがポリソルベート20又はポリソルベート80である、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記界面活性剤が、モノアシルグリセロール若しくはジアシルグリセロール、糖類-脂肪酸エステル、又はα-トコフェリルポリエチレングリコール(PEG)スクシネートである、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記脂肪酸エステルの分解が24ヶ月以内に20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満である、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗体濃度が、少なくとも1mg/mlかつ最大250mg/mlである、請求項26~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
緩衝剤、添加物、希釈剤、安定剤、及び/又は担体を、前記組成物に添加することを更に含む、請求項28~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記タンパク質製剤が医薬組成物である、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質を含む前記組成物及び/又は前記タンパク質製剤が、加水分解酵素阻害剤を本質的に含まない、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
請求項1~27のいずれか一項に記載の方法によって得られるか又は得ることができる、タンパク質組成物。
【請求項43】
請求項28~41のいずれか一項に記載の方法によって得られるか又は得ることができる、タンパク質製剤。
【請求項44】
薬品として使用するための、又は医薬において使用するための、請求項43に記載のタンパク質製剤。
【請求項45】
タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤を調製するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用。
【請求項46】
タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤における加水分解活性を除去又は低減するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用。
【請求項47】
タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤中の不純物、特に宿主細胞タンパク質、好ましくは加水分解酵素(複数可)を、除去又は(その含有量を)低減するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用。
【請求項48】
タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤中の可視粒子及び/又はサブビジブル粒子(の形成)及び/又は界面活性剤分解物の発生/存在を阻害又は低減するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用。
【請求項49】
固体担体上に加水分解酵素阻害剤を固定化するための方法であって、
固体担体を提供する工程、
加水分解酵素阻害剤を提供する工程、
前記固体担体と、前記加水分解酵素阻害剤を含有する溶液とを接触させる工程、及び
前記加水分解酵素阻害剤を前記固体担体上に固定化することを可能にする工程
を含む、方法。
【請求項50】
前記固体担体が、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド、セルロース及びセルロース誘導体、例えば酢酸セルロース(CA)又は再生セルロース、架橋アガロースを含むアガロース、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、並びに前述のもののブレンド若しくはコポリマー、又は親水化ポリマーとの、好ましくはポリビニルピロリドン(PVP)若しくはポリエチレンオキシド(PEO)とのブレンド若しくはコポリマーから選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記固体担体を提供する前記工程が、前記固体担体を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
前記加水分解酵素阻害剤を提供する前記工程が、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するために、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成するために、前記加水分解酵素阻害剤を処理して前記固体担体の前記官能基と反応することができる官能基を導入する工程を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記加水分解酵素阻害剤を提供する前記工程が、前記加水分解酵素阻害剤を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、請求項49~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記固体担体を提供する前記工程が、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するために、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3-トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成するために、前記固体担体を処理して前記加水分解酵素阻害剤の前記官能基と反応することができる官能基を導入する工程を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
固体担体を提供する工程、
前記固体担体をリンカーを含有する溶液と接触させて担体-リンカーを形成する工程、
加水分解酵素阻害剤を提供する工程、
前記担体-リンカーを、前記加水分解酵素阻害剤を含有する溶液と接触させる工程、及び
前記加水分解酵素阻害剤を前記担体-リンカー上に固定化することを可能にする工程
を含む、請求項49~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記固体担体を提供する前記工程が、前記固体担体を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記リンカーが、
前記固体担体の前記官能基と反応して、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するか、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3-トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成することができる官能基
を含む、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
前記加水分解酵素阻害剤を提供する前記工程が、前記加水分解酵素阻害剤を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記リンカーが、
前記加水分解酵素阻害剤の前記官能基と反応して、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するか、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成することができる官能基
を更に含む、請求項55~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
固体担体を提供する工程、
加水分解酵素阻害剤を提供する工程、
前記加水分解酵素阻害剤をリンカーと接触させて加水分解酵素阻害剤-リンカーを形成する工程、
前記固体担体と、前記加水分解酵素阻害剤-リンカーを含有する溶液とを接触させる工程、及び
前記加水分解酵素阻害剤-リンカーを前記固体担体上に固定化することを可能にする工程
を含む、請求項49~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記固体担体を提供する前記工程が、前記固体担体を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記リンカーが、
前記固体担体の前記官能基と反応して、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するか、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3-トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成することができる官能基
を含む、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記加水分解酵素阻害剤を提供する前記工程が、前記加水分解酵素阻害剤を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記リンカーが、
前記加水分解酵素阻害剤の前記官能基と反応して、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するか、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成することができる官能基
を更に含む、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記固体担体上の前記官能基が、アミノ基、好ましくは第一級アミノ基を含む、請求項49~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記固体担体上の前記アミノ基が、反応性プラズマ、好ましくはアンモニアを含むガス混合物から生成されたプラズマによる処理によって導入される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記リンカーが、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される少なくとも2つの官能基を含有する化合物である、請求項55~66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
前記リンカーが、ポリオキシエチレン部分又はポリオキシプロピレン部分を更に含有し、好ましくは3~20個(より好ましくは3~10個、更に好ましくは3~5個)のオキシエチレン又はオキシプロピレン単位を含有し、前記少なくとも2つの官能基がそれに結合している、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記リンカーが、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される少なくとも2つの異なる官能基を含有する、請求項55~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記リンカーが、1分子あたり、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、ストレプトアビジン、及びビオチンから選択される第1の官能基と、更に少なくとも2つの第2の官能基とを含有し、前記少なくとも2つの第2の官能基が好ましくは同じ種類であり、前記第1の官能基とは異なるヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記固体担体が、架橋アガロース、好ましくはセファロース、より好ましくはMag-Sepharose-Streptavidin(ビーズ)又はStreptavidin Sepharose(登録商標)High Performance(ビーズ)である、請求項49~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記固体担体がストレプトアビジンを含む官能基を含有し、前記リンカーがビオチンを含む官能基を含有する、請求項49~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記リンカーがアジド基を更に含有し、前記加水分解酵素阻害剤がアルキン基を含有する、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記固体担体が、任意にNHS活性化されているカルボキシレートを含む官能基を含有し、前記リンカーが、アミンを含む官能基を含有する、請求項49~73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
前記リンカーがアジド基を更に含有し、前記加水分解酵素阻害剤がアルキン基を含有する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記リンカーが、ビオチン-PEG3-アジド(CAS875770-34-6)、ビオチン-PEG4-アジド(CAS1309649-57-7)、アゾ-ビオチン-アジド(CAS1339202-33-3)、及びアジド-PEG4-アミン(CAS951671-92-4)から選択される、請求項49~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記加水分解酵素阻害剤が、アルキン基を含有し、かつ以下:
から選択される構造を有する化合物から選択され、
式中、(HI-1)において、
R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖であってもよいC
2~24アルキルから選択され、R
1、R
2、又はR
3の少なくとも1つの末端-CH
2-CH
3基は、-C≡CH基で置き換えられ、
(HI-2)において、
R
11、R
12、及びR
13は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖であってもよいC
2~24アルキルから選択され、R
11、R
12、及びR
13の少なくとも1つの末端-CH
2-CH
3基は、-C≡CH基で置き換えられる、
請求項49~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
R
1、R
2、及びR
11の炭素原子の数が、独立して、2~15、好ましくは3~14、より好ましくは4~12、更により好ましくは5~11から選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
R
12及びR
13の炭素原子の数が、独立して、5~24、好ましくは8~18、より好ましくは10~16、更により好ましくは10~12から選択される、請求項77又は78に記載の方法。
【請求項80】
R
3の炭素原子の数が、2~10、好ましくは2~8、より好ましくは3~6、更により好ましくは3~5から選択される、請求項77~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
R
1及びR
2の前記アルキル基が直鎖である、請求項77~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
R
11、R
12、及びR
13の前記アルキル基が直鎖である、請求項77~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
R
3の前記アルキル基が分岐鎖である、請求項77~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
式(HI-1)が、以下の構造(HI-1a):
を有し、
式中、R
1、R
2、及びR
3は、請求項77、78、80、81、及び83のいずれか一項に定義される通りである、
請求項77~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記加水分解酵素阻害剤が、アルキン基を含有し、以下:
から選択される構造を有する化合物から選択される、請求項49~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
請求項49~85のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤。
【請求項87】
請求項86に記載の固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を含む、デバイス。
【請求項88】
少なくとも2つの開口部を有する管状デバイスである、請求項87に記載のデバイス。
【請求項89】
前記デバイスが、好ましくは金属、ポリマー、又はガラス製の容器で構成され、前記容器が、固体担体上に固定化された前記加水分解酵素阻害剤が収容される空洞を形成する、請求項87又は88に記載のデバイス。
【請求項90】
固体担体上に固定化された前記加水分解酵素阻害剤で少なくとも部分的に満たされたカラムである、請求項87~89のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、タンパク質組成物を調製するための手段及び方法の提供に関する。本発明は、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法を提供する。
【0002】
更に、本発明は、タンパク質製剤を調製するための方法であって、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含み、
タンパク質製剤を調製するための方法が、該タンパク質を含む組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを添加することを更に含む、方法に関する。
【0003】
更に、本発明は、本明細書に記載の方法によって得られるか若しくはそれによって得ることができるタンパク質組成物及び/又は本明細書に記載の方法によって得られるか若しくはそれによって得ることができるタンパク質製剤に関する。
【背景技術】
【0004】
組換え生物医薬タンパク質(例えば、モノクローナル抗体(mAb)、抗体断片(Fab)、複合体、抗体由来タンパク質及び融合タンパク質)は、通常、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞株において高い発現率で発現される(Durocher(2009)Curr.Opin.Biotech.20:700-707(非特許文献1))。これらのタンパク質の精製中、宿主細胞タンパク質(HCP)の量は、薬物の臨床的又は市販されている適用について患者の安全性を保証するために、排除又は少なくとも十分に低減される必要がある(Vanderlaan(2018)Biotechnol Prog.34:828-837(非特許文献2))。加水分解活性を有するHCPは、界面活性剤の分解をもたらし得る(Labrenz(2014)J.Pharm.Sci.103:2268-2277(非特許文献3))。酵素起源の界面活性剤分解は、バイオ医薬品産業内の複数のバイオ医薬品製剤で観察されており、タンパク質凝集の界面活性剤媒介防止の減少及び/又は界面活性剤分解生成物の蓄積に起因して可視粒子形成をもたらし得る(Labrenz(2014)J.Pharm.Sci.103:2268-2277(非特許文献3);Cao(2015)J.Pharm.Sci.104:433-446(非特許文献4);Larson(2020)J.Pharm.Sci.109:633-639(非特許文献5);Graf(2020)Eur.J.Pharm.Biopharm.152:318-326(非特許文献6))。粒子及び/又は凝集体の形成は、貯蔵寿命の制限をもたらす。
【0005】
最近の研究は、リポタンパク質リパーゼ(LPL)(Chiu(2017)Biotechnol.Bioeng.114:1006-1015(非特許文献7))、リソソームホスホリパーゼA2(LPLA2)(Hall(2016)J.Pharm.Sci.105:1633-1642(非特許文献8))及び推定ホスホリパーゼB様2(PLBL 2)(Dixit(2016)J.Pharm.Sci.105:1657-1666(非特許文献9))を含む、バイオ医薬製剤における界面活性剤分解の増加に起因するいくつかの加水分解酵素を明らかにした。最も注目すべきことに、下流プロセシングに沿ったこれらの酵素の持続性は、それらの除去困難及び/又はmAb会合特性を繰り返し強調して示されている(Valente(2014)Biotechnol.Bioeng.112:1232-1242(非特許文献10);Levy(2014)Biotechnol.Bioeng.111:904-912(非特許文献11);Tran(2016)J.Chromatogr.A 1438:31-38(非特許文献12))。
【0006】
リパーゼ等の加水分解酵素を含む個々のHCPの選択的除去は、あまり理解されていない。ポリソルベート20又は80等の界面活性剤の分解に由来する脂肪酸を含有する凝集体/可視粒子の大部分が、(長期)貯蔵中に増加していることが観察された(Labrenz(2014)J.Pharm.Sci.103:2268-2277(非特許文献3);Tomlinson(2015)Mol.Pharmaceutics 12:3805-3815(非特許文献13))。これは、ポリソルベート分解を開始する汚染を排除するための戦略の開発の引き金となった。安定性研究並びにリパーゼ活性アッセイに基づいて、精製中の洗浄及び/又はインキュベーション工程の性能をHCP除去について評価し、ポリソルベートを含有するタンパク質製剤の(長期)貯蔵試験中に粒子が生成されるという残留リスクが残っていることが分かった。例えば、国際公開第2016/057739号(特許文献1)は、リパーゼを減少させるために疎水性相互作用媒体を使用した。しかしながら、当該方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィーが分子特性(疎水性)の違いに依存するという欠点を伴う。このアプローチの適合性は、タンパク質の特性に応じて異なり得る。更に、タンパク質の疎水性及び適用される緩衝液条件に応じて、タンパク質はHIC樹脂に結合するか、又は生成物の潜在的な収率損失をもたらし得る。
【0007】
したがって、タンパク質組成物における加水分解活性を低下させるための手段及び方法が必要とされている。
【0008】
本発明の根底にある技術的課題は、タンパク質組成物の安定性を高めた/より高い安定性を有するタンパク質組成物を調製するため、及び/又はタンパク質組成物における加水分解活性を低下させるための手段及び方法を提供することである。技術的課題は解決され、上記の必要性は、特許請求の範囲において特徴付けられ、本明細書で以下に提供される実施形態の提供によって対処される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Durocher(2009)Curr.Opin.Biotech.20:700-707
【非特許文献2】Vanderlaan(2018)Biotechnol Prog.34:828-837
【非特許文献3】Labrenz(2014)J.Pharm.Sci.103:2268-2277
【非特許文献4】Cao(2015)J.Pharm.Sci.104:433-446
【非特許文献5】Larson(2020)J.Pharm.Sci.109:633-639
【非特許文献6】Graf(2020)Eur.J.Pharm.Biopharm.152:318-326
【非特許文献7】Chiu(2017)Biotechnol.Bioeng.114:1006-1015
【非特許文献8】Hall(2016)J.Pharm.Sci.105:1633-1642
【非特許文献9】Dixit(2016)J.Pharm.Sci.105:1657-1666
【非特許文献10】Valente(2014)Biotechnol.Bioeng.112:1232-1242
【非特許文献11】Levy(2014)Biotechnol.Bioeng.111:904-912
【非特許文献12】Tran(2016)J.Chromatogr.A 1438:31-38
【非特許文献13】Tomlinson(2015)Mol.Pharmaceutics 12:3805-3815
【発明の概要】
【0011】
本発明は、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法に関する。
【0012】
添付の実施例に示すように、驚くべきことに、予想外にも、加水分解酵素阻害剤は、官能性を失うことなく固体担体上に固定化され得ることが見出された(すなわち、固定化された阻害剤は、加水分解酵素への結合を保持する)。これにより、加水分解酵素をタンパク質組成物から確実に除去することができる。
【0013】
実施例1は、固定化加水分解酵素阻害剤オルリスタットBがリソソームリパーゼA2(LPLA2)と相互作用する能力を保持することを実証する。抗体溶液を組換えLPLA2でスパイクし、続いて磁気ビーズ上に固定化されたオルリスタットBと共にインキュベートした。インキュベーション後、ビーズをLC-MS/MS分析に供したところ、ビーズに対するLPLA2の高い親和性が示された(
図2B)。更に、ビーズ上に固定化されたオルリスタットBと共にインキュベートした抗体溶液は、オルリスタットBを含まない対照ビーズと共にインキュベートした抗体溶液と比較して、加水分解活性の顕著な減少を示すことが示された(
図2A)。この結果は、固定化されたオルリスタットBとのインキュベーションにより、LPLA2が抗体溶液から除去されることを更に確認する。したがって、必ずしも科学理論に束縛されるものではないが、ビーズに共有結合していてもLPLA2と共有結合を形成することができるオルリスタットBが想定される。
【0014】
実施例2は、より高い濃度の抗体溶液についてこの結果を確認する(
図3)。これは、加水分解酵素の除去及び加水分解活性の低下が、組成物中の広範囲のタンパク質濃度について達成され得ることを示す。
【0015】
実施例3は、抗体組成物(抗CD20/抗CD3二重特異性抗体(RG6026としても知られるグロフィタマブ))の混合モード陰イオン交換(MMAEX)負荷溶液について、実際に残存加水分解酵素活性があることを示す。固体担体上に固定化されたオルリスタットBが、出発タンパク質組成物と比較して、回収されたタンパク質組成物中の加水分解酵素活性を低下させることができることが実証されている(
図4)。それぞれの対照(リンカーを有するビーズ及び固定化されていないオルリスタットB/リンカーを有しないビーズ)と比較して加水分解酵素活性の低下もあり、加水分解酵素活性の低下に対する加水分解酵素阻害剤オルリスタットBの特異的効果を実証している。更に、実施例3は、2つの異なる連結方法、すなわちアミンとN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性化エステルとの間の反応を使用する方法、又はストレプトアビジンとビオチンの親和性を使用する方法のいずれかによって固定化された場合、オルリスタットBが加水分解酵素に特異的に結合する能力を保持することを示す。したがって、加水分解活性の低下は、特定の固定化方法及び/又は目的の様々なタンパク質とは無関係に達成することができる。
【0016】
実施例4は、トラスツズマブコンディショニング後プロテインA溶出プール中の固定化オルリスタットによる残留加水分解酵素活性の除去/減少を更に確認する(
図5)。更に、実施例4はまた、加水分解酵素阻害剤オルリスタットAを使用して抗体溶液から加水分解酵素を除去することができること、すなわち、加水分解酵素阻害剤自体を様々な固体担体(それぞれNHS活性化セファロースビーズ及びストレプトアビジンセファロースビーズ)上に固定化し、それらの結合活性を保持することができ、これを有利に使用して加水分解活性を低下させることができることを示す。
【0017】
実施例5は、更に別の加水分解酵素阻害剤(ビス-エノール-エステル)を用いて、加水分解酵素に対する特異的結合活性を保持しながら固体担体への固定化を達成できることを確認する(
図6)。実施例5は、加水分解酵素が実際に阻害剤に特異的に結合し、ビーズ材料に非特異的に結合しないことを更に確認する。
【0018】
要約すると、異なる固体担体上に固定化された異なる阻害剤を有するいくつかの異なる出発抗体組成物から加水分解酵素を除去することができることが本発明によって例示される。上記組成物はまた、様々な抗体濃度を有する。全体として、これは、本発明が多種多様な条件下で有利に実施され得ることを実証している。
【0019】
加水分解酵素は、それらのそれぞれの基質(例えば、医薬組成物のようなタンパク質製剤で日常的に使用される界面活性剤等の脂肪酸エステル/脂質)を分解し、それによって、界面活性剤が媒介するタンパク質凝集の防止の減少に起因して、及び/又は界面活性剤分解生成物の蓄積に起因して、(可視)粒子形成をもたらすことが知られている。したがって、本明細書では、本発明による加水分解活性の低下が、タンパク質製剤のより少ない粒子(複数可)(形成)及び/又は改善された安定性/溶解性をもたらすことが予想される。
【0020】
1つの既知の分子、いわゆるオルリスタットは、脂質の加水分解に関連する酵素の大部分を阻害することができ、その結果、同様の化学的特性を有する界面活性剤を阻害することができる(Jahn(2020),Pharm.Res.37:118)。この分子は、リパーゼの天然基質を模倣することができ、したがって活性部位での共有結合エステル結合の形成を介してリパーゼを捕捉することができる(Fako(2014)ACS Catal.4:3444-3453)。しかしながら、ほとんどのリパーゼ阻害剤は非極性化合物であり、有機溶媒中で添加しなければならないので、タンパク質組成物にオルリスタット又は他の阻害剤を単純に補充することは不可能である。特に、オルリスタットは水に非常に不溶性である。更に、これらの化学物質は、薬物の適用中に患者において有害事象を誘発する可能性があり、薬物の質に影響を及ぼす可能性がある。特にオルリスタットは、例えばタンパク質組成物と一緒に静脈内適用された場合に毒性であり得る。更に、オルリスタットと酵素との間のエステル結合は、タンパク質組成物の貯蔵中に加水分解され(酸触媒又は塩基触媒され)得て、活性酵素を再遊離させる。
【0021】
加水分解酵素阻害剤(例えばオルリスタット)が添加されたタンパク質組成物の貯蔵中(すなわち、阻害剤は固体担体上に固定化されていない)、加水分解酵素阻害剤(例えばオルリスタット)は、タンパク質組成物中のタンパク質の濃度が高いため、例えばタンパク質のセリン残基(例えば、抗体)と非特異的かつ共有結合的に反応し得る。当該非特異的反応は、標的(すなわち、製品の有効性の低下)に対するタンパク質(例えば、抗体)の結合親和性を低下させ得、及び/又はタンパク質(すなわち、製品品質の低下)の(増加した)凝集をもたらし得る。
【0022】
対照的に、タンパク質組成物を本発明による固定化加水分解酵素阻害剤と短時間だけ接触させる場合、当該非特異的反応は起こりにくい。固定化加水分解酵素阻害剤が工程(i)(「タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」)の間にタンパク質組成物中の目的のタンパク質と反応するまれな場合には、目的のタンパク質も固体担体に固定化され、回収されたタンパク質組成物中には存在しない。したがって、本明細書に記載の本発明の方法を使用することによって、加水分解酵素阻害剤(例えばオルリスタット)をタンパク質組成物に添加するときに生じる上述の欠点を回避又は最小化することができる(すなわち、標的に対する結合親和性が低下した(すなわち、製品の有効性が低下した)タンパク質(複数可)(例えば、抗体/抗体)、及び/又はタンパク質(複数可)(例えば、抗体/抗体)タンパク質の凝集(の増加)(すなわち、製品品質の低下)の存在)。
【0023】
本発明の更なる利点として、加水分解活性の低下を、タンパク質製剤中に加水分解酵素阻害剤自体の存在なしに、及び/又はそのような加水分解酵素阻害剤(すなわち、阻害剤が固体担体に固定化されずに組成物に添加された場合)を除去する必要なしに達成することができる。
【0024】
加水分解酵素阻害剤は、加水分解酵素に共有結合し得る。加水分解酵素阻害剤が固定化された固体担体は、本明細書に記載の方法、特にその工程(i)を実施するために数回/繰り返し使用され得る。これは、例えば、以下で更に説明するように、工程(i)が繰り返し実行される場合に有用であり得る。したがって、出発組成物は、例えば加水分解酵素の最大結合容量に達するまで、繰り返し/続いて同じ固体担体に供することができる。しかしながら、好ましい態様では、材料、すなわち加水分解酵素阻害剤が固定化された固体担体は、単回使用/利用のためのものである。当該材料の単回使用/利用は、例えばGMP(適正製造基準)認定及び/又は市販の精製プロセス/プラットフォームである精製プロセス/プラットフォームにおいて好ましい場合がある。しかしながら、基礎研究及び/又は学術研究のために、当該材料を2回又は複数回利用することができることが想定される。本明細書で使用される場合、2回又は複数回の当該材料の利用は、(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程が、固体担体上に固定化された同一の加水分解酵素阻害剤を用いて2回又は複数回行われることを意味する。当業者は、どのような状況下で、固定化された加水分解酵素阻害剤を有する固体担体を2回又は複数回利用することができるか、例えば、最初の利用(すなわち、タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程)後に加水分解酵素阻害剤分子が加水分解酵素と定量的に反応しなかった場合、すなわち、固体担体上に第2の又はその後の利用において加水分解酵素と反応することができる加水分解酵素阻害剤分子が依然として存在する場合を十分に認識している。言い換えれば、全ての加水分解酵素阻害剤分子が最初の利用(すなわち、タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程)後に加水分解酵素を吸着(結合)していない場合、材料、すなわち固定化された加水分解酵素阻害剤を有する固体担体は、2回又は複数回使用/利用され得る。これは、2回目以降の利用においても加水分解酵素が加水分解酵素阻害剤に吸着することができることを意味する。言い換えれば、第2の利用又はその後の利用において加水分解酵素分子を吸着することができる「遊離」(未結合)加水分解酵素阻害剤分子が依然として存在する。
【0025】
上述のように、疎水性相互作用クロマトグラフィーによるHCPの除去は、タンパク質製剤中のタンパク質の特性に依存し得る。対照的に、加水分解酵素阻害剤は、本加水分解酵素に対して直接標的化され、したがって一般に、タンパク質製剤中のタンパク質によって影響されないままである。したがって、本発明は、タンパク質製剤/組成物から特定の不純物を除去するために特定のリガンドを使用する。
【0026】
以下では、本発明をより詳細に説明する。
【0027】
更なる実施形態では、本発明は、以下の項目に関する:
1.
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法。
2.タンパク質を含む組成物を調製するためのものである、項目1に記載の方法。
3.前記タンパク質を含む前記組成物が、例えば、リパーゼ活性アッセイ(ポリソルベートのためのリパーゼ酵素アッセイ(LEAP)のアッセイ)及び/又は質量分析による脂肪酸(FAMS)アッセイによって決定される場合、前記出発組成物と比較して加水分解活性が低下している、及び/又は前記出発組成物と比較して加水分解酵素の含有量が低下している、項目1又は2に記載の方法。
4.前記出発組成物における加水分解活性を低下させるため、及び/又は前記出発組成物中の加水分解酵素の含有量を低下させるためのものである、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
5.前記出発組成物が、加水分解酵素(複数可)を更に含む、及び/又は加水分解活性を更に有する、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.前記タンパク質組成物が、前記出発組成物から加水分解酵素を除去することによって、及び/又は前記出発組成物中の加水分解酵素の含有量を低下させることによって調製される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.前記工程(i)が、前記加水分解酵素を前記加水分解酵素阻害剤に吸着させる工程(a)を更に含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
8.タンパク質を含む前記組成物が、タンパク質を含む溶液である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.前記溶液が水溶液である、項目8に記載の方法。
10.前記溶液が緩衝溶液である、項目8又は9に記載の方法。
11.前記加水分解酵素が、エステラーゼ(複数可)及び/又はアミダーゼ(複数可)である、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
12.前記エステラーゼ(複数可)が、カルボン酸エステル加水分解酵素(複数可)及び/又はチオエステラーゼ(複数可)である、項目11に記載の方法。
13.前記カルボン酸エステル加水分解酵素(複数可)がリパーゼ(複数可)である、項目12に記載の方法。
14.前記加水分解酵素(複数可)が、リポタンパク質リパーゼ、パルミトイルプロテインチオエステラーゼ、酸性セラミダーゼ、脂肪酸シンターゼのC末端ドメイン、推定ホスホリパーゼb様2、リソソーム酸リパーゼ、及びリソソームホスホリパーゼからなる群から選択される、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
15.前記固定化された阻害剤が、オルリスタット又はビス-エノール-エステルからなる群から選択される、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
16.前記固体担体が、セファロース、ポリスチレン、及びスマートポリマーからなる群から選択される、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
17.前記阻害剤が、アジド基とアルキン基との反応を介して固体担体上に固定化される、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
18.前記阻害剤が、ビオチン基へのストレプトアビジン基の結合を介して固体担体上に固定化される、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
19.前記阻害剤が、アミノ基とN-ヒドロキシスクシンイミド基との反応を介して固体担体上に固定化される、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
20.前記阻害剤が、式(1)、(2)、(3)、若しくは(4):
、好ましくは式(1)、(2)、若しくは(4)を含むか又はそれからなる化合物をアジドと反応させることによって得ることができる基である、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
21.前記工程が、以下の順序:工程(i)及びそれに続く工程(ii)で行われる、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
22.工程(i)の前及び/若しくは後、並びに/又は工程(ii)の前及び/若しくは後に、タンパク質調製及び/又は精製の工程を更に含む、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
23.工程(i)が、アフィニティークロマトグラフィーの後、好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィーの後に行われる、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
24.前記タンパク質が抗体である、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
25.前記抗体がモノクローナル抗体である、項目24に記載の方法。
26.前記抗体が、ヒト抗体又はヒト化抗体である、項目24又は25に記載の方法。
27.前記タンパク質が、抗CD20抗体、抗CD40抗体、抗HER2抗体、抗IL6抗体、抗IgE抗体、抗IL13抗体、抗TIGIT抗体、抗PD-L1抗体、抗VEGF-A抗体、抗VEGF-A/ANG2抗体、抗CD79b抗体、抗ST2抗体、抗D因子抗体、抗IX因子抗体、抗X因子抗体、抗aベータ抗体、抗tau抗体、抗CEA抗体、抗CEA/CD3抗体、抗CD20/CD3抗体、抗FcRH5/CD3抗体、抗Her2/CD3抗体、抗FGFR1/KLB抗体、FAP-4-1 BBL融合タンパク質、FAP-IL2v融合タンパク質、オクレリズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トシリズマブ、ファリシマブ、ポラツズマブ、ガンテネルマブ、シビサタマブ、クレネズマブ、モスネツズマブ、チラゴルマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、アテゾリズマブ、オビヌツズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、オマリズマブ、ラニビズマブ、エミシズマブ、セリクレルマブ、プラシネズマブ、グロフィタマブ、シムルカフスプアルファ、及びRG7827である、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
28.タンパク質製剤を調製するための方法であって、項目1~27のいずれか一項に記載の方法の工程を含み、前記組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを添加することを更に含む、方法。
29.タンパク質製剤を調製するための方法であって、項目1~27のいずれか一項に記載の方法によって得られるか又は得ることができる前記組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを添加することを更に含む、方法。
30.前記タンパク質製剤が、可視粒子及び/又はサブビジブル粒子を(本質的に)含まない、項目28又は29に記載の方法。
31.前記タンパク質製剤が、推奨される貯蔵条件下で少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、又は少なくとも60ヶ月間安定である、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
32.前記脂肪酸エステルが、ポリオキシエチレンソルビタン又はイソソルビド脂肪酸モノ-、ジ-若しくはトリ-エステルである、項目28~30のいずれか一項に記載の方法。
33.前記脂肪酸エステルがポリオキシエチレン(20)ソルビタンラウレートである、項目28~32のいずれか一項に記載の方法。
34.前記脂肪酸エステルが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85、若しくはポリソルベート120、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目28~32のいずれか一項に記載の方法。
35.前記脂肪酸エステルが、ポリソルベート20又はポリソルベート80である、項目28~32のいずれか一項に記載の方法。
36.前記界面活性剤が、モノアシルグリセロール若しくはジアシルグリセロール、糖類-脂肪酸エステル、又はα-トコフェリルポリエチレングリコール(PEG)スクシネートである、項目28~31のいずれか一項に記載の方法。
37.前記脂肪酸エステルの分解が24ヶ月以内に20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満である、項目28~36のいずれか一項に記載の方法。
38.抗体濃度が、少なくとも1mg/mlかつ最大250mg/mlである、項目26~37のいずれか一項に記載の方法。
39.緩衝剤、添加物、希釈剤、安定剤、及び/又は担体を、前記組成物に添加することを更に含む、項目28~38のいずれか一項に記載の方法。
40.前記タンパク質製剤が医薬組成物である、項目28~39のいずれか一項に記載の方法。
41.前記タンパク質を含む前記組成物及び/又は前記タンパク質製剤が、加水分解酵素阻害剤を本質的に含まない、項目1~40のいずれか一項に記載の方法。
42.項目1~27のいずれか一項に記載の方法によって得られるか又は得ることができる、タンパク質組成物。
43.項目28~41のいずれか一項に記載の方法によって得られるか又は得ることができる、タンパク質製剤。
44.薬品として使用するための、又は医薬において使用するための、項目43に記載のタンパク質製剤。
45.タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤を調製するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用。
46.タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤における加水分解活性を除去又は低減するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用。
47.タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤中の不純物、特に宿主細胞タンパク質、好ましくは加水分解酵素(複数可)を、除去又は(その含有量を)低減するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用。
48.タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤中の可視粒子及び/若しくはサブビジブル粒子(の形成)並びに/又は界面活性剤分解物の発生/存在を阻害又は低減するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用。
【0028】
更に、本発明は以下の態様に関する:
1.方法であって、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法。
2.タンパク質を含む前記組成物が、前記出発組成物と比較して減少した加水分解活性を有する、項目1に記載の方法。
3.前記タンパク質組成物が、前記出発組成物から加水分解酵素を除去することによって調製される、項目1又は2に記載の方法。
4.前記加水分解酵素が、エステラーゼ(複数可)及び/又はアミダーゼ(複数可)であり、好ましくは、前記エステラーゼが、カルボン酸エステル加水分解酵素(複数可)及び/又はチオエステラーゼ(複数可)である、項目3に記載の方法。
5.前記エステラーゼがリパーゼ(複数可)である、項目4に記載の方法。
6.前記加水分解酵素(複数可)が、リポタンパク質リパーゼ、パルミトイルプロテインチオエステラーゼ、酸性セラミダーゼ、脂肪酸シンターゼ、推定ホスホリパーゼb様2、リソソーム酸リパーゼ、及びリソソームホスホリパーゼからなる群から選択される、項目3のいずれか一項に記載の方法。
7.前記固定化された阻害剤が、オルリスタット又はビス-エノール-エステルからなる群から選択される、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
8.前記阻害剤が、式(1)、(2)、(3)、若しくは(4):
、好ましくは式(1)、(2)、若しくは(4)を含むか又はそれからなる化合物をアジドと反応させることによって得ることができる、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.工程(i)の前及び/又は後に、タンパク質調製及び/又は精製の工程を更に含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
10.工程(i)が、アフィニティークロマトグラフィーの後、好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィーの後に行われる、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
11.前記タンパク質が抗体である、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
12.タンパク質製剤を調製するための方法であって、項目1~11のいずれか一項に記載の方法の工程を含み、前記組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを添加することを更に含む、方法。
13.前記タンパク質製剤が、可視粒子及び/又はサブビジブル粒子を(本質的に)含まない、項目12に記載の方法。
14.前記脂肪酸エステルが、ポリオキシエチレンソルビタン又はイソソルビド脂肪酸モノ-、ジ-若しくはトリ-エステルである、項目12又は13に記載の方法。
15.項目1~11のいずれか一項に記載の方法によって得られるか又は得ることができる、タンパク質組成物。
【0029】
上述のように、本発明は、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法に関する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「タンパク質を含む出発組成物」という用語は、一般に、「目的のタンパク質」を含む組成物を指す。これに関連して、「タンパク質」という用語は「目的のタンパク質」を指す。「目的のタンパク質」は、典型的には、細胞培養/培養細胞から得られ、細胞培養/培養細胞から単離及び/又は精製されるタンパク質であり、例えば、商業、医薬、診断及び/又は治療目的及び/又は科学的研究のためのものである。「目的のタンパク質」という用語は、典型的には、目的の1つの特異的タンパク質、例えば抗原Aに結合する特異的抗体を指す。しかしながら、「目的のタンパク質」という用語はまた、1つ以上の異なる「目的のタンパク質」、例えば2つ以上の異なる目的のタンパク質(例えば、抗原Aに結合する1つの抗体及び抗原Bに結合する第2の抗体)を指すことができる。更に、以下で更に説明するように、「出発組成物」は、「目的のタンパク質」に加えて、1つ以上の宿主細胞タンパク質(HCP)を含み得る。
【0031】
「タンパク質」という用語の意味は当技術分野で周知であり、したがって本発明に関連して使用される。特に、本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、本発明によれば、所与の長さのアミノ酸鎖を包含し、アミノ酸残基が共有結合性ペプチド結合によって連結されているタンパク質又はポリペプチドを意味する。典型的には、「タンパク質」は、少なくとも20個の連続したアミノ酸、及び最大3500個の連続したアミノ酸の長さを有する。タンパク質はモノマーであり得る。「タンパク質」という用語には、二量体、三量体、四量体等の多量体を形成するタンパク質も含まれ、このような多量体はホモ又はヘテロ多量体であり得る。したがって、本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、単量体タンパク質で構成されるそのような多量体(多量体タンパク質)であり得る。目的の例示的なタンパク質/タンパク質は、本明細書において以下に更に記載される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「タンパク質を含む出発組成物」(又は同様に、「タンパク質を含む初期組成物」)という用語は、具体的には、細胞培養物又は培養細胞からの抽出物であって、タンパク質(目的のタンパク質)を産生する当該細胞培養物若しくは培養細胞、又はタンパク質(目的のタンパク質)を産生するために使用される当該細胞培養物若しくは培養細胞を指すことを意味する。抽出物は、粗抽出物であってもよく、又は精製された抽出物であってもよい(精製された抽出物は、1つ以上の精製工程に供されている)。したがって、「タンパク質を含む出発組成物」は、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィー)、限外濾過/ダイアフィルトレーション、ウイルス濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー/マルチモーダルクロマトグラフィー(例えば、混合モードイオン交換クロマトグラフィー)、並びにそれらの任意の組み合わせ等の1つ以上の従来の精製工程に既に供されていてもよい。
【0033】
本明細書で提供される方法は、実質的に任意の「タンパク質を含む組成物」(いかなる不純物も全く又は微量しか含まない高度に精製された組成物であっても)に使用することができるが、本明細書で使用される場合、「タンパク質を含む出発組成物」は、通常、当該タンパク質/目的のタンパク質を産生するために使用される細胞培養物/培養細胞からの少なくとも1つの不純物、すなわちタンパク質/目的のタンパク質が得られる/調製される細胞培養物/培養細胞からの少なくとも1つの不純物を含むことが理解される。不純物は、1つ以上の宿主細胞タンパク質、具体的には加水分解活性を有するタンパク質(加水分解酵素)であり得る。
【0034】
例えば、タンパク質を含む出発組成物は、細胞培養物中で増殖して当該目的のタンパク質を産生する細胞をホモジナイズ溶液中でホモジナイズすることによって調製され得る。タンパク質を含む出発組成物は、細胞培養中にタンパク質が直接分泌される場合、細胞培養上清であってもよい。したがって、タンパク質を含む出発組成物は、回収細胞培養液(HCCF)であり得る。HCCFは、細胞、細胞残屑及び/又は凝集体から(濾過によって)分離された組成物であり、例えば、HCCFは、コンディショニング及び/又は濾過(例えば、細胞培養物から調製された組成物又は細胞培養上清の濾過によって)後に得られる。本明細書の出発組成物は、好ましくは、回収細胞培養液(HCCF)である。濾過後にHCCFとなる組成物は、プレ回収細胞培養液(PHCCF)と称され得る。言い換えれば、コンディショニング及び/又は濾過の前の組成物(例えば、細胞培養物又は細胞培養上清から調製される)は、回収細胞培養液(PHCCF)と称される。
【0035】
タンパク質を含む出発組成物は、細胞培養物中で増殖して目的のタンパク質を産生する当該細胞をホモジナイズした直後に、加水分解酵素阻害剤と接触され得る。しかしながら、タンパク質を含む出発組成物が、タンパク質を含む当該組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる前に、1つ以上の精製工程に供されることも本明細書で想定される。そのような精製工程の非限定的な例を本明細書で以下に記載する。
【0036】
本発明によれば、「タンパク質を含む出発組成物」は、「タンパク質を含む出発組成物」を加水分解酵素阻害剤と接触させることを含む(更なる)精製に供され、加水分解酵素阻害剤は固体担体上に固定化される(本方法の工程(i))。
【0037】
その工程の後、更なる工程が実施され(方法の工程(ii))、すなわち「タンパク質を含む組成物を回収する」、すなわち「タンパク質を含む組成物」が回収される。より簡単に言えば、更なる工程は「タンパク質の回収」である。これに関連して、「タンパク質」という用語は、上で定義した「目的のタンパク質」を指す。言い換えれば、出発組成物に含まれる目的のタンパク質はまた、回収された組成物中の目的のタンパク質であるか、又は回収された目的のタンパク質である。また、本明細書では、その組成物を「回収された組成物」と呼び、そのタンパク質を「回収されたタンパク質」と呼ぶ。
【0038】
「タンパク質を含む出発組成物」を、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤と接触させることが理解される。言い換えれば、「タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該当該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」という用語は、「出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、当該組成物がタンパク質を含み、当該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」を意味する。
【0039】
加水分解酵素阻害剤は、接触工程の前に、すなわち本方法の工程(i)の前に固体担体上に固定化され得ることが想定される。言い換えれば、加水分解酵素阻害剤は、タンパク質を含む出発組成物と接触させる前に、固体担体上に固定化され得る(固体担体に付着され得る)。本明細書において、加水分解酵素阻害剤は、接触工程の前に固体担体上に固定化されることが理解される。言い換えれば、加水分解酵素阻害剤は、タンパク質を含む出発組成物と接触させる前に、固体担体上に固定化される(固体担体に付着され得る)。
【0040】
したがって、本発明は、好ましい態様では、
(i)タンパク質を含む出発組成物を、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤と接触させる工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法に関する。
【0041】
言い換えれば、本発明は、好ましい態様では、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤は、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤である、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法に関する。
【0042】
「タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる」ことによって、上記の不純物、例えば1つ以上の宿主細胞タンパク質(複数可)、具体的には、出発組成物中に存在する場合、加水分解活性を有するタンパク質(加水分解酵素)(複数可)が除去されるか、又は「タンパク質を含む出発組成物」と比較して「回収された組成物」中で少なくともその含有量が減少することが理解される。本明細書では、宿主細胞タンパク質、具体的には加水分解活性を有するタンパク質(加水分解酵素)(複数可)が出発組成物中に存在することが好ましい。
【0043】
上述のように、「タンパク質を含む組成物を回収すること」という用語は、「タンパク質を回収すること」と同義に使用され得る。したがって、この方法は、タンパク質を含む組成物を調製すること(又は同様に得ること)を目的とする。これに関連して、「タンパク質を含む組成物」は、通常、本方法の工程(ii)に従って回収された組成物である。
【0044】
したがって、本発明は、タンパク質を含む組成物を調製するための、又は得るための方法であって、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法を提供する。
【0045】
したがって、「タンパク質を含む組成物」は、通常、工程(i)及び(ii)(また任意に、上記で説明したように、工程(i)及び(ii)の繰り返し)が実施される場合に調製又は得られる。しかしながら、この方法はまた、「タンパク質を含む組成物」を調製又は得るために、工程(i)の前及び/又は工程(ii)の後及び/又は工程(i)と(ii)の間に追加の工程(例えば、従来の精製)を含み得る。上記で説明したように、工程(i)及び(ii)が繰り返される場合、同じ説明及び定義が適用される。
【0046】
また、本明細書において上で論じられているように、本発明の方法の目的は、出発組成物における加水分解活性(存在する場合)を除去若しくは低減すること、及び/又は不純物(存在する場合)、特に宿主細胞タンパク質、好ましくは出発組成物中の加水分解酵素(複数可)の含有量を除去若しくは低減することである。したがって、一態様では、「タンパク質を含む組成物」は、出発組成物と比較して加水分解活性が低下しており、及び/又は出発組成物と比較して、不純物(存在する場合)、特に宿主細胞タンパク質、好ましくは加水分解酵素(複数可)の含有量が低下している。本明細書で説明されるように、工程(i)及び(ii)が繰り返される場合、同じ説明及び定義が適用される。本明細書では、加水分解活性が出発組成物中に存在すること、及び/又は不純物が出発組成物中に存在すること、特に宿主細胞タンパク質、好ましくは加水分解酵素(複数可)が出発組成物中に存在することが好ましい。
【0047】
したがって、一態様では、本発明は、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む方法を提供し、
タンパク質を含む組成物(回収された組成物)は、出発組成物と比較して減少した加水分解活性を有し、
及び/又は、タンパク質を含む組成物(回収された組成物)は、出発組成物と比較して、不純物、特に宿主細胞タンパク質、好ましくは加水分解酵素(複数可)の含有量が減少している。
【0048】
これに関連して、出発組成物が加水分解活性を有すること、及び/又は出発組成物が不純物、特に宿主細胞タンパク質、好ましくは(1又は複数の)加水分解酵素を有する/含むことが理解される。言い換えれば、上で定義した加水分解活性及び/又は不純物が、好ましくは出発組成物中に存在する。出発組成物中の上記で定義したような加水分解活性及び/又は不純物の存在は、当技術分野で公知のアッセイ及び/又は本明細書に開示及び提供されるアッセイによって決定することができる。加水分解活性を測定、決定又は定量するための非限定的な例は、リパーゼ活性を検出するアッセイ、又は言い換えれば、本明細書ではLEAP(多塩基のためのリパーゼ酵素アッセイ)アッセイ(Jahn(2020)Pharm.Res.37:118)と呼ばれるリパーゼ活性アッセイ(例えば、Jahn et al.によって記載される)、及び/又は質量分析による脂肪酸(FAMS)アッセイ(Honemann(2019)J.Chromatogr.B 1116:1-8;Cheng(2019)J.Pharm.Sci.108:2880-2886)である。このようなアッセイを使用して、加水分解活性の低下を決定することもできる。
【0049】
タンパク質の存在又は量を決定するために、免疫凝集、免疫沈降(例えば、免疫拡散、免疫電気泳動、免疫固定)、ウェスタンブロッティング技術(例えば、(in situ)免疫組織化学、(in situ)免疫細胞化学、アフィニティークロマトグラフィー、酵素イムノアッセイ)等の日常的な方法を本明細書で使用することができる。タンパク質を接触させるこれら及び他の適切な方法は当技術分野で周知であり、例えば、Sambrook and Russell(2001.)Molecular cloning:a laboratory manual.Vol.2,3rd edn.Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkにも記載されている。定量は、上記の技術、特にウェスタンブロッティング技術を利用することによって行うことができる。一般に、当業者は、タンパク質の定量方法を知っている。溶液中の精製タンパク質の量は、物理的方法、例えば測光法によって決定することができる。混合物中の特定のタンパク質を定量する方法は、特異的結合、例えば抗体に依存する。抗体の特異性を利用する特異的検出及び定量方法は、例えば免疫組織化学(in situ)を含む。ウェスタンブロッティングは、電気泳動によるタンパク質の混合物の分離と、抗体による特異的検出とを組み合わせる。電気泳動は、2D電気泳動等の多次元であってもよい。通常、ポリペプチドは、二次元電気泳動において、一次元に沿った見かけの分子量及び他の方向に沿った等電点によって分離される。
【0050】
以下で更に説明するように、所与の組成物、例えば出発組成物が、上で定義したように加水分解活性を有し、及び/又は不純物を有し/含むことを決定するための間接的なパラメータは、(例えば、界面活性剤分解物の不溶分に起因する)可視粒子及び/若しくはサブビジブル粒子の発生/存在並びに/又はそれ自体の界面活性剤分解物の発生/存在である。同様に、(例えば、界面活性剤分解物の不溶分に起因する)可視粒子及び/若しくはサブビジブル粒子並びに/又は界面活性剤分解物自体の発生/存在の減少は、所与の組成(好ましくはタンパク質を含む組成物(回収された組成物))が出発組成物と比較して加水分解活性が低下している、及び/又は本明細書で定義される不純物の含有量が低下していることを決定するための間接的なパラメータである。
【0051】
(例えば、(例えば、界面活性剤分解物の不溶分に起因する)可視粒子及び/若しくはサブビジブル粒子の発生/存在、並びに/又はそれ自体の界面活性剤分解物の発生/存在の)決定は、所与の組成物(例えば、出発組成物及び/又はタンパク質を含む組成物(回収された組成物))の貯蔵、例えば以下で更に説明されるような長期条件下での貯蔵を含み得る。例えば、所与の組成物が、開始時に(例えば、界面活性剤分解物の不溶分に起因する)可視粒子及び/若しくはサブビジブル粒子の発生/存在並びに/又は界面活性剤分解物等の発生/存在を示さないが、貯蔵後にそれを示す場合、開始時の所与の組成物が加水分解活性を有し、及び/又は上で定義した不純物を有する/含むことが示される。
【0052】
これは、例えば、その組成物が阻害剤と接触していない場合、基準点として本明細書で使用される「出発組成物」における加水分解活性及び/又は不純物の存在を決定するために使用することができる。阻害剤(すなわち、タンパク質を含む組成物(回収された組成物))と接触させた「出発組成物」と比較することによって、接触させた組成物(すなわち、タンパク質を含む組成物(回収された組成物))が、基準出発組成物(したがって、「出発組成物」)と比較して、加水分解活性が低下しているかどうか、及び/又は本明細書で定義される不純物の含有量が低下しているかどうかを評価することができる。
【0053】
「加水分解活性」という用語の意味は当技術分野で周知であり、それに応じて本発明の文脈で使用され、以下で更に詳細に説明される。
【0054】
「加水分解酵素阻害剤」は、本明細書では最も広い意味で使用され、加水分解活性を有する別の分子を阻害する分子を指し得る。加水分解活性及び加水分解酵素の定義は、本明細書において以下に提供される。加水分解酵素の非限定的な例も本明細書において以下に提供される。加水分解酵素阻害剤は、酵素に結合することによって酵素を阻害し得る。加水分解酵素阻害剤は、酵素の活性部位に結合し得る。加水分解酵素阻害剤は、酵素と共有結合を形成し得る。対応する酵素と共有結合を形成し、本発明との関連で使用される加水分解酵素阻害剤の非限定的な例は、オルリスタット及びビス-エノール-エステルである。
【0055】
以下は、本発明に従って提供され、使用される「加水分解酵素阻害剤」に関する。「加水分解酵素阻害剤」及び「加水分解酵素阻害剤」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0056】
「加水分解酵素阻害剤」及び「加水分解酵素の阻害剤」という用語は、本発明との関連で、特に、加水分解酵素の生理学的活性を完全に又は部分的に防止又は低減することができる化合物を意味する。「アンタゴニスト」又は「阻害剤」という用語は、本明細書では互換的に使用される。本明細書では、「加水分解酵素阻害剤」が加水分解酵素の選択的阻害剤であることが想定される。
【0057】
したがって、本発明との関連において、当該阻害剤は、例えば当該化合物/物質(すなわち、アンタゴニスト/阻害剤)が当該加水分解酵素に結合すると、該加水分解酵素の生理学的活性を防止、低減、阻害又は不活性化し得る。本明細書で使用される場合、「アンタゴニスト」という用語はまた、とりわけMutschler,’’Arzneimittelwirkungen’’(1986),Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH,Stuttgart,Germanyに記載されているように、競合アンタゴニスト、(可逆的)非競合アンタゴニスト又は不可逆的アンタゴニストを包含する。そのような阻害は、基質ターンオーバーを決定することによって測定することができる。
【0058】
要約すると、本明細書に記載の加水分解酵素アンタゴニスト/阻害剤は、したがって、加水分解酵素活性の減少又は低下をもたらす。
【0059】
本明細書では、加水分解酵素の拮抗薬は加水分解酵素を標的とし、具体的には加水分解酵素の活性部位(例えば触媒三残基)を標的とすることが想定され、好ましい。「標的化」という用語は、これに関連して、加水分解酵素(及びここでは特に加水分解酵素の活性部位)への(特異的)結合、及び/又は加水分解酵素の活性の阻害、特に加水分解活性の阻害を指す。
【0060】
アンタゴニストは、小分子薬物(複数可)、又は(小)結合分子であり得る。
【0061】
本明細書で使用される阻害剤は、小分子薬物(複数可)であり得る。「小分子薬物」及び「小分子化合物」という用語は、本明細書では互換的に使用される。(A)本明細書で加水分解酵素の阻害剤として使用される小分子薬物は、(有機)低分子量(<900ダルトン)化合物を指すことができる。小分子は、生物学的プロセスを調節するのを助けることができ、通常、10-9m程度のサイズを有する。本明細書で使用されるアンタゴニストは、小分子(薬物)と同様に、例えば、化合物ライブラリー、例えばEnamine、Chembridge又はPrestwick化学ライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。
【0062】
阻害剤は、好ましくは加水分解酵素の選択的阻害剤である。
【0063】
選択性は、所与の化合物濃度で酵素(又はタンパク質)が異なる程度に影響を受けるという生物学的事実を表す。酵素の場合、選択的阻害は、所与の濃度の化合物による好ましい阻害として定義することができる。言い換えれば、濃度がある場合、酵素(又はタンパク質)は別の酵素(又はタンパク質)よりも選択的に阻害され、その結果、第1の酵素(又はタンパク質)の阻害がもたらされるが、第2の酵素(又はタンパク質)は影響を受けないか、又は実質的に影響を受けない。異なる酵素に対する化合物の効果を比較するために、蛍光エネルギー移動(FRET)アッセイ、Plusアッセイ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)アッセイ、サーモシフトアッセイ、生物学的読み出し(Cxcl1/CXCL8等のレポータータンパク質/酵素)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又は化学プロテオミクス等の同様のアッセイ形式を使用することが重要である。例えば、ELISAキットスキャンのような市販の検査キットが使用される。
【0064】
本明細書で使用される阻害剤は、好ましくは加水分解酵素に対して選択的であり、すなわち化合物は加水分解酵素を選択的に阻害する。言い換えれば、加水分解酵素阻害剤/拮抗アンタゴニスト剤は、好ましくは選択的加水分解酵素阻害剤/アンタゴニストである。
【0065】
本明細書で使用される場合、「選択的加水分解酵素阻害剤」という用語は、別のタンパク質又は酵素、特に別の酵素(すなわち、特に、加水分解酵素ではない別のタンパク質又は酵素)に対する実質的な阻害又は拮抗作用を示すことなく、加水分解酵素を阻害又はそれに対して拮抗作用を示す、本明細書で定義される加水分解酵素阻害剤(特に小分子薬物)を指す。
【0066】
したがって、加水分解酵素に選択的な加水分解酵素阻害剤は、別のタンパク質又は酵素(すなわち、特に、加水分解酵素ではない別のタンパク質又は酵素)の阻害又は拮抗作用に関して、約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍超又は約100倍超の加水分解酵素選択性を示す。加水分解酵素に選択的な加水分解酵素阻害剤は、タンパク質を含む組成物中の目的のタンパク質に対して約10.000倍を超える加水分解酵素選択性を示し得る。
【0067】
例えば、汎加水分解酵素阻害剤(pan-hydrolase inhibitors)(すなわち、実質的に任意の加水分解酵素を広く阻害する化合物)(例えばオルリスタット)を本発明との関連で使用することができる。汎加水分解酵素阻害剤は、本明細書で定義される選択的加水分解酵素阻害剤であり得る。例えば、オルリスタットは、他のタンパク質(すなわち、特に非加水分解酵素、特に非リパーゼと比較して、)と比較して、加水分解酵素、特にリパーゼに非常に優先的に結合するが、オルリスタットは異なるリパーゼと反応/阻害することができる。
【0068】
「選択的加水分解酵素阻害剤」という用語は、異なる加水分解酵素(例えば、異なるリパーゼ)と反応/阻害することができるので、阻害剤が非常に特異的であることを必ずしも意味しない。非常に特異的な阻害剤は、他の全てのタンパク質を区別しながら、単一の酵素(単一の加水分解酵素)とのみ反応する。(高度に)特異的な加水分解酵素阻害剤(すなわち、阻害剤は、他の全てのタンパク質を区別しながら、単一の酵素(単一の加水分解酵素)とのみ反応/阻害する)の使用も本明細書で想定される。本明細書で定義される(高度に)特異的な加水分解酵素阻害剤は、本明細書で定義される選択的な加水分解酵素阻害剤であり得、逆もまた同様であることが本明細書で想定される。
【0069】
更に、加水分解酵素阻害剤/アンタゴニストは、好ましくは強力な加水分解酵素阻害剤/アンタゴニストである。
【0070】
「加水分解酵素に対する効力」は、IC50値によって決定又は定義することもできる。例えば、加水分解酵素に対する加水分解酵素阻害剤のIC50値は低く、好ましくは0.2μM未満、より好ましくは0.15μM、0.14μM、0.13μM、0.12μM未満、又は更に低い。より好ましくは、IC50値は、0.1μM、0.095μM、0.090μM、0.085μM、0.080μM、0.075μM、0.070μM、0.065μM、0.060μM、0.055μM、0.050μM、0.045μM、0.040μM、0.035μM、0.030μM未満、又は0.025μM未満であり、より低い値がより高い値よりも好ましい。更により好ましくは、IC50値は、0.024μM、0.023μM、0.022μM、0.021μM、0.020μM、0.019μM、0.018μM、0.017μM、0.016μM、0.015μM、0.014μM、0.013μM、0.012μM又は0.011μM未満である。IC50値は更に低くてもよく、例えば、0.010μM、0.009μM、0.008μM、0.007μM、0.006μM又は0.005μM未満であってもよい。一般に、本明細書では、より低い値がより高い値よりも好ましい。
【0071】
本発明による強力な加水分解酵素阻害剤は、加水分解酵素に関するIC50値の代わりに、又はそれに加えて、別のタンパク質又は酵素に関するIC50値によって定義することができる。
【0072】
例えば、別のタンパク質又は酵素に関連する強力な加水分解酵素阻害剤のIC50値は高く、好ましくは0.001μM、0.002μM、0.003μM、0.004μM、0.005μM、0.006μM、0.007μM、0.008μM、0.009μM又は0.010μMより高い。より好ましくは、IC50値は、0.011μM、0.012μM、0.013μM、0.014μM、0.015μM、0.016μM、0.017μM、0.018μM、0.019μM、0.020μM、0.021μM、0.022μM、0.023μM、又は0.024μMよりも高い。更により好ましくは、IC50値は、0.025μM、0.030μM、0.035μM、0.040μM、0.045μM、0.050μM、0.055μM、0.060μM、0.065μM、0.070μM、0.075μM、0.080μM、0.085μM、0.090μM、0.095μM、0.1μMよりも高いか、又は更に高く、より高い値がより低い値よりも好ましい。更により好ましくは、IC50値は、0.12μM、0.13μM、0.14μM、0.15μM、0.2μMよりも高いか、又は更に高い。
【0073】
本明細書では、好ましくは同じアッセイに従って決定される、加水分解酵素に対する別のタンパク質又は酵素のIC50値に対する、加水分解酵素に対する強力な加水分解酵素阻害剤のIC50値の比は、約1:10以下であることが好ましい。1:10以下の比は、加水分解酵素に対する阻害剤の効力も示す。より好ましいのは、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90又は1:100又は更に低い比である。
【0074】
「加水分解酵素」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、加水分解活性を有する分子/化合物を指す。したがって、一般に、「加水分解酵素」は、化学結合を加水分解する酵素である。例えば、「加水分解酵素」は、誘導された遊離酸を最終生成物として有するカルボン酸由来エステル切断酵素である。あるいは、加水分解酵素は、加水分解酵素活性、すなわち、水分子を使用することによって共有結合を切断する酵素である。「加水分解酵素」の非限定的な例は、リパーゼ、エステラーゼ、チオエステラーゼ、ホスホリパーゼ又はセラミダーゼである。
【0075】
「加水分解活性」は、当技術分野で知られているように本明細書で使用される場合、化学結合を加水分解する能力を指す。加水分解は、水分子が求核剤として作用する化学結合の切断を指す。好ましくは、加水分解活性を有する分子/化合物は、加水分解活性を有するタンパク質又はポリペプチドである。したがって、加水分解活性を有するタンパク質又はポリペプチドは、加水分解活性を有する酵素である。したがって、加水分解酵素は、好ましくは加水分解活性を有する酵素である。加水分解酵素は、エステラーゼ又はアミダーゼであり得る。
【0076】
「エステラーゼ」という用語は当技術分野で周知であり、本発明と関連して、エステル結合の加水分解を触媒して酸及びアルコールを生成する酵素を指す。言い換えると、エステラーゼはエステル結合に作用し得る。エステラーゼは、アセチルエステラーゼ、ホスファターゼ、ヌクレアーゼ、チオエステラーゼ、及びカルボン酸エステル加水分解酵素を含む酵素の多様なカテゴリーである。好ましくは、本発明と関連して、加水分解酵素は、チオエステラーゼ又はカルボン酸エステル加水分解酵素である。チオエステラーゼは、チオエステルを加水分解してチオールと酸とにするために水分子を使用する。カルボン酸エステル加水分解酵素は、水分子を用いてカルボン酸エステルをアルコールとカルボン酸塩に加水分解する。最も好ましくは、加水分解酵素/エステラーゼ(カルボン酸エステル加水分解酵素等)はリパーゼである。リパーゼは、トリグリセリド、脂肪及び油を含む脂肪酸エステル/脂質の脂肪酸及びアルコール頭部基への加水分解を触媒する。
【0077】
「アミダーゼ」という用語は当技術分野で周知であり、本発明と関連して、アミド結合の加水分解を触媒する酵素を指す。すなわち、アミド結合には、アミダーゼが作用し得る。
【0078】
好ましくは、本発明による加水分解酵素(複数可)は、リポタンパク質リパーゼ(受託番号:G3H6V7)、パルミトイルプロテインチオエステラーゼ1(受託番号:G3HN89)、酸性セラミダーゼ(受託番号:G3GZB2)、脂肪酸シンターゼのC末端ドメイン(受託番号:G3GXD7)、推定ホスホリパーゼb様2(受託番号:G3I6T1)、リソソーム酸リパーゼ(受託番号:G3HQY6)及び/又はリソソームホスホリパーゼである。より好ましくは、本発明による(1つ以上の)加水分解酵素は、リポタンパク質リパーゼ、推定ホスホリパーゼb様2、及び/又はリソソームホスホリパーゼである。これは、組成物中の(可視)粒子の形成及び/又は組成物の安定性の低下に起因する、ポリソルベート等の界面活性剤に対するそれらの記述された加水分解活性のためである。最も好ましくは、本発明による加水分解酵素は、リソソームホスホリパーゼ、具体的にはリソソームホスホリパーゼA2(LPLA2)(受託番号:G3HKV9)である。
【0079】
これは、タンパク質を含む出発組成物から除去される(又はその含有量が減少する)加水分解酵素(複数可)が、リポタンパク質リパーゼ、パルミトイルプロテインチオエステラーゼ、酸性セラミダーゼ、脂肪酸シンターゼ(特にそのC末端ドメイン)、推定ホスホリパーゼb様2、リソソーム酸リパーゼ、及びリソソームホスホリパーゼからなる群から選択され得ることを意味する。したがって、加水分解酵素阻害剤に結合している加水分解酵素(複数可)は、リポタンパク質リパーゼ、パルミトイルプロテインチオエステラーゼ、酸性セラミダーゼ、脂肪酸シンターゼ、推定ホスホリパーゼb様2、リソソーム酸リパーゼ、及びリソソームホスホリパーゼからなる群から選択され得る。
【0080】
「固体担体上に固定化された」という用語は、加水分解酵素阻害剤が固体担体に結合していることを意味する(「固体担体」及び「固相」という用語は本明細書では互換的に使用される)。言い換えると、加水分解酵素阻害剤は固体担体に結合している。固体担体の非限定的な例を以下に提供する。加水分解酵素阻害剤と固体担体との間の結合は、共有結合及び/又は非共有結合であり得る。好ましくは、結合は共有結合である。加水分解酵素阻害剤が固体担体上にどのように固定化され得るかの非限定的な例は、本明細書において以下及び添付の実施例に記載される。
【0081】
「タンパク質を含む組成物を回収する」とは、タンパク質を含む組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させた後に回収することを意味する。したがって、「タンパク質を含む出発組成物」は、その組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる前のタンパク質を含む組成物である。「タンパク質を含む組成物」は、その組成物(ここでは「出発組成物」)を加水分解酵素阻害剤と接触させた後のタンパク質を含む組成物である(そして「タンパク質を含む組成物」は、タンパク質を含む回収された組成物である)。
【0082】
例えば、工程(i)及び(ii)を、以下のように実施することができる:
この方法は、固体担体(又は固相)を提供する工程であって、担体がそれに固定化された加水分解酵素阻害剤を含む工程と、出発組成物を加水分解酵素阻害剤と(又は阻害剤が固定化された固体担体と)接触させる工程とを含む第1の工程(ス工程(i))を含むことができる。次いで、加水分解酵素は加水分解酵素阻害剤に結合するが、残りのタンパク質(又はその少なくとも大部分)、特に目的のタンパク質は阻害剤に結合せず、(例えばフロースルーから)収集することができる(又は加水分解酵素よりも低い程度に結合する)。
【0083】
この方法は、-タンパク質を含む組成物を回収するために(工程(ii))-いくつかの洗浄工程を実施することを更に含むことができ、少なくとも1つの洗浄工程は、固体担体及び/又は阻害剤に結合した不純物(宿主細胞タンパク質、例えば加水分解酵素)を保持しながら、阻害剤/担体に結合した可能性がある目的のタンパク質の少なくとも一部を固体担体及び/又は阻害剤から分離することができる洗浄緩衝液を使用して実施される。任意に、本方法は、タンパク質が阻害剤/担体に結合した可能性がある場合に、固体担体及び/又は阻害剤に結合した不純物(宿主細胞タンパク質、例えば加水分解酵素)を保持しながら、固体担体及び/又は阻害剤から当該タンパク質(の少なくとも一部)を分離することができる溶出緩衝液を使用して目的のタンパク質を得ることを含み得る。
【0084】
上で論じられるように、タンパク質を含む組成物は、タンパク質を含む出発組成物と比較して加水分解活性が低下していることが本明細書で想定される。
【0085】
したがって、一態様では、本発明は、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む方法に関し、タンパク質を含む組成物は、出発組成物と比較して減少した加水分解活性を有する。
【0086】
したがって、本発明は、一態様では、タンパク質を含む組成物を調製するための、又は得るための方法であって、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む方法に関し、タンパク質を含む組成物は、出発組成物と比較して減少した加水分解活性を有する。
【0087】
タンパク質を含む組成物(回収された組成物)は、タンパク質を含む出発組成物と比較して加水分解活性が低下している可能性があり、その理由は、加水分解酵素(複数可)が、タンパク質を含む出発組成物から除去されている、及び/又は加水分解酵素(複数可)の含有量が、出発組成物において減少しているためである。
【0088】
タンパク質を含む出発組成物と比較した加水分解活性の低下は、もちろん、出発組成物が加水分解活性を有することを意味する。同様に、タンパク質を含む出発組成物と比較した加水分解酵素(複数可)の含有量の減少は、もちろん、出発組成物が加水分解酵素(複数可)を含むことを意味する。
【0089】
したがって、本明細書に記載の方法では、タンパク質を含む出発組成物は、加水分解活性を有し得、及び/又は1つ以上の加水分解酵素を含み得る。
【0090】
したがって、本発明の方法は、タンパク質を含む出発組成物の加水分解活性を決定する工程及び/又はタンパク質を含む組成物(回収された組成物)の加水分解活性を決定する工程を含むことができる。両方の工程が実施される場合(すなわち、タンパク質を含む出発組成物及びタンパク質を含む組成物(回収された組成物)の両方の加水分解活性が決定される場合)、タンパク質を含む組成物(回収された組成物)が出発組成物と比較して減少した加水分解活性を有するかどうかを容易に決定することができる。
【0091】
一態様では、タンパク質を含む出発組成物の加水分解活性を決定する工程(のみ)が実施される場合、及び出発組成物が加水分解活性を有しないと決定される場合、特許請求の範囲の工程(i)(及び工程(ii))は実施されない。
【0092】
一態様では、タンパク質を含む出発組成物の加水分解活性を決定する工程(のみ)が実施される場合、及び出発組成物が加水分解活性を有すると決定される場合、特許請求の範囲の工程(i)(及び工程(ii))が実施される。
【0093】
同じ説明が、タンパク質を含む出発組成物が1つ以上の加水分解酵素を含むという上記の態様に準用される。
【0094】
加水分解酵素の存在の指標は、特に、加水分解酵素を含まないことが確認されている組成物/製剤と比較した場合、基質(例えばインタクト脂肪酸エステル、例えばポリソルベート)の(増加した)分解及び/又はタンパク質組成物/製剤中の遊離脂肪酸含有量の(同時の)増加である。そのような分解が判定された場合、この方法を実行する必要性が最初に示される。しかしながら、この方法は、一般に取り外し困難なHCPに対する追加のクリアランス工程として使用することができる。
【0095】
当業者は、加水分解活性をどのように測定、決定又は定量することができるかをよく知っている。
【0096】
加水分解活性を測定、決定又は定量するための非限定的な例は、リパーゼ活性を検出するアッセイ、又は言い換えれば、本明細書ではLEAP(多塩基のためのリパーゼ酵素アッセイ)アッセイ(Jahn(2020)Pharm.Res.37:118)とも呼ばれるリパーゼ活性アッセイ(例えば、Jahn et al.によって記載される)、及び/又は質量分析による脂肪酸(FAMS)アッセイ(Honemann(2019)J.Chromatogr.B 1116:1-8;Cheng(2019)J.Pharm.Sci.108:2880-2886)である。加水分解活性の測定、決定又は定量を可能にするアッセイの非限定的な例は、4-メチルウンベリフェロンカプリル酸(4-MUCA)の4-メチルウンベリフェロン(4-MU)への変換を測定するリパーゼ活性アッセイ(又は言い換えれば脂肪分解活性を検出するアッセイ)である。基質として4-MUCAを使用するアッセイは、以下に記載されるように実施され得る。
【0097】
加水分解活性を決定するタンパク質を含む10μLの組成物を、80μLの反応緩衝液(150mM Tris-HCl pH8.0、0.25%(w/v)Triton X-100及び0.125%(w/v)アラビアガム)及び10μLの4-MUCA基質(DMSO中1mM)と混合することができる。反応は、96ウェルハーフエリアのポリスチレンプレート(蓋付き黒色透明平底、Corning Incorporated)にセットアップされ得、蛍光シグナル(355 nmで励起、460 nmで発光)の増加は、4-MU産生速度を導出するために、例えばInfinite 200 Proプレートリーダー(Tecan Life Sciences)において37℃で2時間反応プレートをインキュベートすることによって10分毎にモニターされ得る。タンパク質を含む組成物の4-MU産生速度は、タンパク質を含む出発組成物と比較され得る。
【0098】
以下の段落は、FAMSアッセイを実施するための例示的な試料調製及び分析手順を記載する。FAMSアッセイは、ポリソルベート20の加水分解による遊離脂肪酸の蓄積を定量することによってリパーゼ活性を測定する。
【0099】
全ての試料(抗体溶液及び緩衝液対照)に、1%(w/v)超精製ポリソルベート20(Croda Health Care)及び0.25ML-メチオニン(Sigma Aldrich、Art.No.M5308)のストック溶液を補充して、試料当たり0.04%(w/v)超精製ポリソルベート20及び0.01ML-メチオニンの最終濃度を得ることができる。各スパイク試料について、190μLのアリコートを、試料のインキュベーションに使用することができる5つのキャップ付きガラスバイアル(t0、t1、t2、t3、t4と呼ばれる)に移すことができる。ガラスバイアルt0は、分析までそれらの調製後直ちに-70℃で凍結され得る。ガラスバイアルt1、t2、t3及びt4を25℃で直立状態でインキュベートし、インキュベータ内で光から保護することができる。ガラスバイアルのインキュベーションは、次の5日から14日間にわたって一度に1つずつ停止してもよく、その後、分析までガラスバイアルを-70℃で凍結してもよい。
【0100】
分析のために、凍結試料を1時間周囲温度にすることができる。安定同位体標識脂肪酸のストック溶液は、50 mgのそれぞれの脂肪酸、ラウリン酸2d23(Sigma Aldrich、カタログ番号第451401号)及びミリスチン酸13C14(Sigma Aldrich、カタログ番号第605689号)を50mLの80%アセトン/20%メタノールメタノールに溶解して、各調査脂肪酸について1μg/mLの最終濃度を有する沈殿試薬を得ることによって調製することができる。試料溶液50μLを反応管中の沈殿試薬200μLに添加し、ボルテックスによって混合し、室温で1時間保持してタンパク質を沈殿させることができる。沈殿物を、20℃、15,000×gで15分間の遠心分離によってスピンダウンすることができる。100μLの上清を新しい反応管に移し、100μLの移動相A(20mM酢酸アンモニウム)と混合することができる。15,000×gを用いて20℃で15分間スピンダウンした後、50~100μLの溶液をLC-MSバイアル(300μlの固定インサートバイアル(透明、ねじ蓋式)、Thermo Scientific、カタログ番号03-FISV)に移してもよい。
【0101】
遊離脂肪酸(FFA)の分離は、Jupiter(登録商標)C4 RPカラム(300Å、2×50mm、5μm)(Phenomenex、カタログ番号00B-4167-B0)を使用することにより、温度制御可能なオートサンプラー及びカラム区画を備えたACQUITY UPLC H-Classシステム(Waters Corporation、米国マサチューセッツ州ミルフォード)で達成することができる。移動相Aは20mM酢酸アンモニウム(Sigma Aldrich、カタログ番号第73594号)であり得、移動相Bは100%メタノール(メルク、カタログ番号1.06007.2500)であり得、これを以下の勾配を適用することによって0.4mL/分の流量で4分間実行し得る。初期条件:70%移動相B、0.5分~3.4分:勾配は70%から85%移動相Bまで直線的に変化し得る;3.5~4.0分:70%移動相B。オートサンプラーを20℃に維持し、カラムコンパートメントを60℃に維持することができる。注入量は8μLに設定することができる。検出を、負イオンモードの外部バッキングポンプを備えた接続されたQDa Performance質量分析計(Waters)で行うことができる。MS設定は、コーン電圧15V、ソース温度120℃、キャピラリー電圧800V、プローブ温度600℃、質量範囲50~1000m/z及びサンプリング周波数2Hzであり得る。全ての試料を三重反復で分析することができる。
【0102】
データ評価は、MassLynxソフトウェアバージョン4.1(SCN781)(Waters Corporation、米国マサチューセッツ州ミルフォード)の一部としてTargetLynxを用いて実行することができる。ラウリン及びミリスチンの含有量は、以下の式:
を使用して、脂肪酸のピーク面積をそれぞれの内部標識標準と比較することによって決定することができ、式中、FFAのΣピーク面積及び内部標準のΣピーク面積は、それぞれ+1/+2又は-1/-2における単同位体ピーク及び同位体ピークの合計を指す。
【0103】
脂肪酸放出速度を決定するために、各試料の遊離脂肪酸濃度をインキュベーション時間に対してプロットすることができ、分解速度を線形回帰の勾配から抽出することができる。
【0104】
タンパク質を含む組成物の加水分解活性は、タンパク質を含む出発組成物と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%、例えば20から最大80%、好ましくは50から最大80%低下し得る。逆に、タンパク質を含む組成物の加水分解活性は、タンパク質を含む出発組成物と比較して、最大5%、最大10%、最大20%、最大30%、最大40%、最大50%、最大60%、最大70%、最大80%、最大90%、最大95%又は最大99%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大50%、更により好ましくは最大80%低下し得る。組成物が本明細書で提供される方法による1つ以上の精製に供される場合、以下で更に説明するように、本明細書で定義される減少%は、好ましくは基準点としての(初期、最初)出発組成物、すなわち本明細書に記載の加水分解酵素阻害剤と接触していない出発組成物を指す。
【0105】
もちろん、タンパク質を含む組成物における加水分解活性は、使用されるアッセイ(後者の場合、加水分解活性及び/又は加水分解酵素(複数可)は、本明細書の出発組成物から「除去された」、又はより正確には「完全に除去された」とみなされる)の検出限界未満のレベルまで低下することも想定される。
【0106】
本発明はまた、タンパク質を含む組成物が出発組成物と比較して減少した加水分解活性を有し、加水分解活性が、例えば(例えば、Jahn et al.によって記載されるように)本明細書に記載のアッセイ(例えば、本明細書ではLEAPアッセイ(Jahn(2020)Pharm.Res.37:118)と呼ばれるリパーゼ活性アッセイ及び/又は質量分析による脂肪酸(FAMS)アッセイ)の1つによって決定され得る、タンパク質を含む組成物を調製又は得るための方法に関する。
【0107】
同様に、組成物は、出発組成物と比較して減少した含量の宿主細胞タンパク質(HCP)、例えば加水分解酵素を含み得る。例えば、HCP含有量は、出発組成物と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%減少し得る。例えば、組成物は、好ましくは100ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは1ppm未満、より好ましくは0.1ppm未満、最も好ましくは0.01ppm未満のHCPを含む。
【0108】
本明細書に記載の方法は、タンパク質を含む出発組成物が、加水分解活性を測定又は定量するために使用されるアッセイにおいて検出可能な加水分解活性を示さない場合にも使用できることが理解されよう。科学理論に必ずしも束縛されるものではないが、タンパク質を含む組成物において使用されるアッセイの検出限界未満である加水分解活性も、タンパク質を含む組成物に悪影響を及ぼし得ることが想定される。当該悪影響は、タンパク質を含む組成物の長期保存中にのみ明らかになり得る。当該悪影響は、界面活性剤、例えば脂肪酸エステル、エステル又はチオエステルの分解であり得、本明細書でより詳細に説明される。
【0109】
タンパク質を含む生成/回収された組成物は、加水分解活性を本質的に含まないことも本明細書で想定される。
【0110】
したがって、本発明は、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む方法に関し、該タンパク質を含む組成物は加水分解活性を本質的に含まない。
【0111】
更に、本発明は、タンパク質を含む組成物を調製するための又は得るための方法であって、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む方法に関し、該タンパク質を含む組成物は加水分解活性を本質的に含まない。
【0112】
本明細書で使用される場合、「加水分解活性を本質的に含まない」とは、タンパク質を含む組成物における加水分解活性が、加水分解活性を測定又は定量するために使用されるアッセイの検出限界付近又はそれ未満であることを意味し得る。本明細書で使用される場合、「加水分解活性を本質的に含まない」はまた、タンパク質を含む組成物の加水分解活性が、タンパク質を含む出発組成物と比較して80%、90%、95%又は99%低下することを意味し得る。
【0113】
本明細書で使用される場合、「本質的に加水分解活性を有しない」はまた、タンパク質を含む組成物が、例えば4℃~8℃で24ヶ月間、例えば少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、又は少なくとも60ヶ月間、好ましくは本明細書に記載の標準的な長期条件下で保存された場合に、タンパク質を含む組成物中のエステル(複数可)の10%未満が分解されることを意味し得る。組成物は、0.01%(w/v)~2%(w/v)の範囲の本明細書に記載のタンパク質濃度、本明細書に記載の緩衝系、本明細書に記載の添加剤及び本明細書に記載の界面活性剤(例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80)を含み得る。
【0114】
分解は、ELSD/CAD検出(Lippold(2017)J.Pharm.Biomed.Anal.132:24-34)又はいわゆる蛍光ミセルアッセイ(FMA(Lippold(2017)J.Pharm.Biomed.Anal.132:24-34)に連結した混合モードHPLCによって残りの界面活性剤含有量を決定することによって監視することができる。また、FAMSアッセイを使用して、主な分解産物(例えば、PS20の場合はラウリン酸及びミリスチン酸、PS80の場合はオレイン酸)を直接モニタリングすることができる(Honemann(2019)J.Chromatogr.B 1116:1-8;Cheng(2019)J.Pharm.Sci.108:2880-2886)。
【0115】
上記のアッセイの使用及び適合は、十分に当業者の技能の範囲内である。
【0116】
本明細書に記載の方法は、加水分解活性を低下させるために、及び/又はタンパク質を含む出発組成物中の加水分解酵素の含有量を低下させるために使用され得ることが理解されよう。
【0117】
したがって、本発明はまた、一態様では、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む方法に関し、該方法は、出発組成物における加水分解活性を低下させるためのものである。
【0118】
更に、本発明は、一態様では、タンパク質を含む組成物を調製するための、又は得るための方法であって、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む方法に関し、該方法は、出発組成物における加水分解活性を低下させるためのものである。
【0119】
加水分解活性及び/又は加水分解酵素の含有量をどのように減少させることができるか、及び対応する減少をどのように決定することができるかは、上記で詳細に記載されている。
【0120】
したがって、本発明はまた、一態様では、タンパク質組成物から加水分解酵素を除去する及び/又はタンパク質組成物中の加水分解酵素の含有量を減少させる方法を提供する。
【0121】
一般に、「タンパク質組成物」及び「タンパク質を含む組成物」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0122】
言い換えれば、本発明は、一態様では、タンパク質を含む組成物が、タンパク質を含む出発組成物から加水分解酵素を除去することによって、及び/又は出発組成物中の加水分解酵素(複数可)の含有量を減少させることによって調製される方法に関する。したがって、本発明は、一態様では、タンパク質を含む組成物が、タンパク質を含む出発組成物から加水分解酵素を除去することによって調製される方法であって、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法。
【0123】
したがって、本明細書に記載の方法では、タンパク質を含む出発組成物は、1つ以上の加水分解酵素を含み得る。
【0124】
本明細書に記載の方法は、加水分解酵素を加水分解酵素阻害剤に吸着させる工程を更に含み得る。したがって、本発明は、一態様では、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む方法に関し、当該工程(i)は、加水分解酵素を加水分解酵素阻害剤に吸着させる工程(a)を更に含む。「吸着」は、本明細書では最も広い意味で使用され、加水分解酵素が加水分解酵素阻害剤と会合することを意味する。言い換えれば、加水分解酵素は、加水分解酵素阻害剤に結合する。加水分解酵素と加水分解酵素阻害剤とは、非共有結合を介して会合してもよいし、共有結合を介して会合してもよい。非共有結合の例は、水素架橋、イオン相互作用及び疎水性相互作用である。好ましくは、加水分解酵素と加水分解酵素阻害剤は共有結合を介して会合する。共有結合は、エステル、チオエステル又はホスホエステルであってもよい。
【0125】
オルリスタットのβ-ラクトン部分は、加水分解酵素のセリンとエステル結合を形成することが想定される。
【0126】
タンパク質を含む組成物(回収された組成物)は、タンパク質を含む溶液であり得ることが更に想定される。また、タンパク質を含む出発組成物は、タンパク質を含む溶液であり得る。
【0127】
タンパク質を含む当該溶液は水溶液であり得る。
【0128】
タンパク質を含む当該溶液は緩衝溶液であり得る。したがって、タンパク質を含む当該水溶液も緩衝溶液であり得る。
【0129】
溶液を緩衝するための緩衝剤としてどの薬剤を使用できるかは、当技術分野で周知である。「緩衝液」という用語は、当技術分野で知られているように本明細書で使用され、溶液のpHを安定化する薬剤を指す。緩衝剤は、一般に、弱酸及びそのコンジュゲート塩基、又は弱塩基及びそのコンジュゲート酸を含む。当業者は、例えば特定のタンパク質の最適pHをどのように決定することができるか、及び当該最適pHを安定化するためにどの緩衝液を使用することができるかを知っている。緩衝剤として使用することができる薬剤の非限定的な例は、Tris、Hepes、Pipes、Mops、アセテート及びホスフェートである。
【0130】
上記のように、方法は、タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させることを含み得る。加水分解酵素阻害剤並びに加水分解酵素阻害剤の非限定的な例を本明細書に記載する。更に、加水分解酵素阻害剤は、オルリスタット又はビス-エノール-エステル、ホスホネート、例えばα-アミノアルキルホスホネート又はパラ-ニトロフェニルホスホネート(例えば、メチル4-ニトロフェニルウンデカ-10-エニルホスホネート)(Delorme(2014)Biochimie 107:124-134)からなる群から選択され得る。
【0131】
既に上述したように、加水分解酵素阻害剤は、固体担体に固定化/結合され得る。「固体担体」及び「固相」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
固体担体は樹脂であってもよく、カラムの形態、例えば市販の樹脂/カラムであってもよい。固相は、例えば樹脂であってもよく、典型的にはカラムの形態であり、それ自体市販されている。本発明による方法におけるカラムの使用は、容易にアップスケーラブルであるため好ましい。加水分解酵素阻害剤は加水分解酵素に共有結合するので、そのようなカラムは単回使用であり得る。したがって、カラムを再生する必要がない。固体担体に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むそのようなカラムは、例えば、同等のプロセス工程で使用される疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)用のカラムよりも小さい体積を有することが想定される(HICカラムは、典型的には約20Lの体積を有する)。固体担体に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むカラムの体積は、約250ml~最大約5lの間であってもよく、例えば、約250ml~約5L、約250ml~約4L、約250ml~約3L、約250ml~約2L、約250ml~約1.5L、約250ml~約1Lであってもよく、又は約500ml~約5L、約500ml~約4L、約500ml~約3L、約500ml~約2L、約500ml~約1.5L、約500ml~約1L、例えば、約500ml、約1L、約1.5L、約2L、約3L、約4L又は約5Lであってもよい。好ましくは、固体担体に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むカラムの体積は、約500ml~約1.5L、より好ましくは約500ml~約1Lである。最も好ましくは、固体担体に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むカラムの体積は、約500ml、約600ml、約700ml、約800ml、約900ml、約1L、約1.1L、約1.2L、約1.3L、約1.4L又は約1.5Lである。約500ml又は約1Lの固体担体に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むカラムの体積が特に好ましい。
【0132】
しかしながら、固体担体がビーズの形態又は膜の形態であることも可能である。例えば、固体担体が当該阻害剤を含むビーズの形態である場合、この方法は、接触及び遠心分離、デカント及び溶解による回収の工程を実施することを含み得る。回収工程(洗浄工程を含み得る)中に磁気ビーズ及び磁気分離を使用することも可能である。当業者は、親和性精製のための異なるプロセスに精通しており、本発明による方法における使用のためにそのようなプロセスを容易に適合させることができる。
【0133】
固体担体は、セファロース、ポリスチレン、無機金属及び/又は金属-ヘテロ原子粒子(例えば、Fe3O4、SiO2又はFeS粒子)、金粒子、銀粒子、及びスマートポリマーからなる群から選択され得る。固体担体が磁気ビーズの形態であり、この方法を実施するときに磁気分離を使用することも可能である。当業者は、親和性精製と関連して一般的に使用される異なるプロセスに精通しており、本発明による方法で使用するためにそのようなプロセスを容易に適合させることができる。
【0134】
当業者は、どのようにして加水分解酵素阻害剤を固体担体上に固定化することができるかをよく知っているが、非限定的な例を以下に提供する。一般に、加水分解酵素阻害剤は、官能基の結合及び/又は生体分子/リガンド結合を介して固体担体上に固定化することができる。
【0135】
以下の説明、並びに加水分解酵素阻害剤に関する本明細書の上記の説明は、必要な変更を加えて、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を調製するための方法、例えば、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むデバイス(カラム等)を調製するための方法にも適用される。固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を調製するための(又は固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むデバイス(カラム等)を調製するための)そのような方法は、本発明の一態様と明確に考えられる。固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤(複数可)及び/又は固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むデバイス(カラム等)も本発明の一態様である。逆に、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むデバイス(カラム等)の調製に関する本明細書の説明及び定義、並びにそのようなデバイスは、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤及び/又はそれを調製するための方法にも準用される。加水分解酵素阻害剤が本発明による固体担体上に固定化されるべきである場合、本明細書で説明される加水分解酵素阻害剤の誘導体が使用されるべきであることが理解される。
【0136】
加水分解酵素阻害剤は、アジド基とアルキン基との反応を介して固体担体上に固定化され得る。当該反応は、アジド-アルキンヒュスゲン環化付加反応であり得る。アルキン基は加水分解酵素阻害剤に結合していてもよく、アジド基は固体担体に結合していてもよい。しかしながら、アルキン基を固体担体に結合させ、アジド基を加水分解酵素阻害剤に結合させることも可能である。
【0137】
したがって、アジド修飾磁性粒子(ポリスチレン系アジドビーズ;CLK-1036-1、Jena-Bioscience)に加水分解酵素阻害剤を固定化してもよい。アジド基及びアジド基という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0138】
更に、加水分解酵素阻害剤は、ストレプトアビジン基とビオチン基との結合を介して固体担体上に固定化されてもよい。ストレプトアビジン基は加水分解酵素阻害剤に結合していてもよく、ビオチン基は固体担体に結合していてもよい。好ましくは、ストレプトアビジン基は固体担体に結合し、ビオチン基は加水分解酵素阻害剤に結合していてもよい。
【0139】
更に、加水分解酵素阻害剤は、アミノ基とN-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルとの反応を介して固体担体上に固定化され得る。アミノ基は加水分解酵素阻害剤に結合していてもよく、N-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルは固体担体に結合している。しかしながら、アミノ基を固体担体に結合させ、N-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルを加水分解酵素阻害剤に結合させることも可能である。当業者には明らかであるが、加水分解酵素阻害剤又は固体担体は、リンカーを介して上記の反応性基から分離され得ることに留意されたい。リンカーは、本明細書において以下に記載される。
【0140】
当業者には明らかであるが、上記の固体担体上に加水分解酵素阻害剤を固定化する手段及び方法を組み合わせることができることに留意されたい。例えば、リンカーによって分離されたアジド基及びビオチン基を含む薬剤が、最初にクリックケミストリーを介してアルキン基を含む加水分解酵素阻害剤にカップリングされることが想定される。続いて、当該薬剤に連結された加水分解酵素阻害剤を、ストレプトアビジン基を含む固体担体上に固定化する。当業者は、どのリンカーが適切であり得るかを十分に認識している。そのようなリンカーは、複合体形成を促進し、及び/又は加水分解酵素阻害剤と固体担体との間に規定の距離を確立し得る。リンカーは、原則として、固体担体上の加水分解酵素阻害剤を所望の距離で共有結合させるのに適した任意の化学結合であり得る。当業者は、環境に対する結合の耐性及び意図される使用の条件に関して必要に応じてリンカーを選択することができる。リンカーは、例えば、PEG又はバイオポリマー、例えばDNA/LNA、ポリスガー(例えば、キトサン又は誘導体)、マレイミドアルカンリンカー、化学的に切断可能なリンカー(例えば、ヒドラジン/ジスルフィドリンカー)又は酵素的に切断可能なリンカー(例えばVal-Cit-PABCリンカー)を含み得る。PEGリンカーは、PEG3又はPEG4であり得る。好ましい実施形態では、PEGリンカーによって分離されたアジド基及びビオチン基を含む薬剤/リンカーは、アゾビオチン-PEG3-アジド(Sigma-Aldrich;注文番号:900891;CAS 1339202-33-3)であり、アゾビオチン-アジドという名称で流通しているため、本明細書ではアゾビオチン-アジドとも呼ばれる。好ましい実施形態では、当該薬剤にカップリングされた加水分解酵素阻害剤は、ストレプトアビジンMagセファロースビーズ(GE Healthcare;注文番号:11791456)に固定化される。別の好ましい実施形態では、PEGリンカーによって分離されたアジド基及びビオチン基を含む薬剤は、ビオチン-PEG4-アジド(BroadPharm;カタログ番号:BP-22119;CAS 1309649-57-7)である。好ましい実施形態では、当該薬剤にカップリングされた加水分解酵素阻害剤は、ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ(GE Healthcare;注文番号:17511301)に固定化される。
【0141】
更に、本明細書では、リンカーによって分離されたアジド基及びアミノ基を含む薬剤を、NHS活性化エステルを含む固体担体に最初にカップリングさせることが想定される。続いて、アルキン基を含む加水分解酵素阻害剤を、固体担体上に固定化された当該薬剤にカップリングさせる。リンカーについての説明は上記で記載されている。好ましい実施形態では、リンカーによって分離されたアジド基及びアミノ基を含む薬剤は、アジド-PEG4-アミン(Broadpharm、BP-21615;CAS 951671-92-4)である。好ましい実施形態では、上記薬剤にカップリングされた加水分解酵素阻害剤は、NHS活性化セファロース(登録商標)4高速フロービーズ(GE Healthcare;注文番号:17090601)に固定化される。
【0142】
以下は、本発明に従って使用することができる阻害剤に関する。
【0143】
好ましくは、加水分解酵素阻害剤(固相に結合する前の形態)は、以下:
から選択される(例えば、構造を有する)を含むか又はそれからなる化合物から選択され、
式中、(HI-1)において、
R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖であってもよいC
2~24アルキルから選択され、任意に、R
1、R
2、又はR
3の少なくとも1つの末端-CH
2-CH
3基は、-C≡CH基で置き換えられ、
(HI-2)において、
R
11、R
12、及びR
13は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖であってもよいC
2~24アルキルから選択され、任意に、R
11、R
12、及びR
13の少なくとも1つの末端-CH
2-CH
3基は、-C≡CH基で置き換えられる。
【0144】
加水分解酵素阻害剤は、固体担体上に存在する場合、好ましくは、以下:
から選択される構造を含むか又はそれからなる化合物から選択され、
式中、(HIB-1)において
R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖であってもよいC
2~24アルキルから選択され、R
1、R
2、又はR
3(好ましくはR
2)の一方の末端-CH
3基は、-CH
2-*基で置き換えられ、-*は、加水分解酵素阻害剤が固体担体に連結される位置を示し、
(HIB-2)において、
R
11、R
12、及びR
13は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖であってもよいC
2~24アルキルから選択され、R
11、R
12、又はR
13(好ましくはR
11)の一方の末端-CH3基は、-CH
2-*基で置き換えられ、-*は、加水分解酵素阻害剤が固体担体に連結される位置を示す。
【0145】
R1、R2、及びR11の炭素原子数は、独立して、2~15、好ましくは3~14、より好ましくは4~12、更により好ましくは5~11から選択することができる。
【0146】
R12及びR13の炭素原子の数は、独立して、5~24、好ましくは8~18、より好ましくは10~16、更により好ましくは10~12から選択され得る。
【0147】
R3の炭素数は、2~10、好ましくは2~8、より好ましくは3~6、更に好ましくは3~5から選択することができる。
【0148】
R1及びR2のアルキル基は、好ましくは直鎖である。
【0149】
R11、R12、及びR13のアルキル基は好ましくは直鎖である。
【0150】
R3のアルキル基は、分岐状であることが好ましい。
【0151】
好ましくは、式(HIB-1)は以下の構造(HIB-1a):
を有し、式中、R
1、R
2、及びR
3は、上で定義された通りである。
【0152】
(固相に結合する前の阻害剤の形態の)(HI-1)及び(HI-2)の上記の例、並びにそれらの任意のより具体的な例において、-C≡CH基以外の官能基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、他のアルキン、アジド又はバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)が含まれてもよい。固体担体上に存在する加水分解酵素阻害剤は、例えば、阻害剤(固相に結合する前の形態)がアルキニル基を有し、加水分解酵素阻害剤が固相に結合する前に固体担体及び加水分解酵素阻害剤上に存在するアジドとの反応によって固相に(直接的又は間接的に)結合された場合、1,2,3-トリアゾールを介して、官能基から生じるリンカー基を介して固体担体に結合することを理解されたい。
【0153】
好ましくは、加水分解酵素阻害剤(固相に結合する前の阻害剤の形態)は、アルキン基を含有し、以下:
から選択される構造を有する化合物から選択される。
【0154】
本明細書で提供される加水分解酵素阻害剤は、通常、加水分解酵素阻害剤自体に関連するが、固定化のためには、例えば阻害剤がアルキン基を含有するという点で、加水分解酵素阻害剤を修飾/適合させる必要があることが理解される。このように修飾/適合された加水分解酵素阻害剤は、本明細書では「加水分解酵素阻害剤の誘導体」とも呼ばれる。
【0155】
修飾/適合された加水分解酵素阻害剤(加水分解酵素阻害剤誘導体)(固相に結合する前の阻害剤の形態)は、好ましくは、アルキン基を含有する加水分解酵素阻害剤であり、以下:
から選択される構造を有する化合物から選択され、
式中、(HI-1)において、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖であってもよいC
2~24-アルキルから選択され、R
1、R
2、又はR
3の少なくとも1つの末端-CH
2-CH
3基は、-C≡CH基で置き換えられ、
(HI-2)において、R
11、R
12、及びR
13は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖であってもよいC
2~24アルキルから選択され、R
11、R
12、及びR
13の少なくとも1つの末端-CH
2-CH
3基は、-C≡CH基で置き換えられる。
【0156】
そのような修飾/適合された加水分解酵素阻害剤(加水分解酵素阻害剤誘導体)もまた、本明細書において以下で更に説明及び定義される。
【0157】
以下では、本発明と関連して使用され得る加水分解酵素阻害剤を示すマーカッシュ構造が提供される。
【0158】
マーカッシュ:オルリスタット:
活性構造要素名:(エチルオキセタン-2-オン):
市販物質としてのオルリスタット:
これは、本明細書では式(4)とも呼ばれる。
R1=アルキル-アルキン;R2=アルキル(オルリスタット誘導体1;オルリスタットA)):
R1=アルキル;R2=アルキル-アルキン(オルリスタット誘導体2;オルリスタットB)):
【0159】
好ましい実施形態では、加水分解酵素阻害剤はオルリスタットである。好ましくは、オルリスタットは、アジド基とアルキン基との反応を介して固体担体上に固定化される。オルリスタットが固体担体上に固定化されるべきであるとき、オルリスタット誘導体が使用されるべきであることが理解される。好ましくは、オルリスタット誘導体はアルキン基を含む。オルリスタットは、Yang et al.,(2010),J.Am.Chem.Soci 132,656-666にも開示されている。好ましくは、アルキン基を含むオルリスタット誘導体は、本明細書ではオルリスタットAと命名される式(1)、及び本明細書ではオルリスタットBと命名される式(2)からなる群から選択される。化合物(A)、式(1)、オルリスタットA及びオルリスタット誘導体1という用語は、本明細書では互換的に使用される。化合物(B)、式(2)、オルリスタットB及びオルリスタット誘導体2という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0160】
別の好ましい実施形態では、加水分解酵素阻害剤はビス-エノール-エステルである。ビス-エノール-エステルは周知であり、とりわけ’’Functionalized Bis-enol Acetates as Specific Molecular Probes for Esterases’’(Richter(2013)ChemBioChem 18:2435-2438)に記載されている。
【0161】
天然化合物を起源とするこの構造要素(ビス-エノール-エステル)は、以下の構造:
を有する。(https://roempp.thieme.de/lexicon/RD-03-00698、又は https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Caulerpenyneを参照されたい)。この化合物は、CAS番号70000-22-5でCaulerpenyneとして知られており、そのPubChem CIDは5311436である。
【0162】
以下は、ビスエノールエステルに関する。
マーカッシュ:ビス-エノール-エステル:
活性構造要素名:(1,3)-ブタ-1,3-ジエン-1,4-ジイルジ脂肪酸 R1=H又はカップリング基[CH
2-(CH
2)
n-アルキン又はDiG/<Dig>/ビオチン-ストレプトアビジン、NHS、SH、LNA[n=1~10]
R2=-(CH2)x-CH3[x=1-20]
R3=-(CH2)y-CH3[y=1-20]
【0163】
好ましくは、ビス-エノール-エステルは、リンカー、例えばアルキン基を介して、例えばアジド基とアルキン基との反応を介して固体担体上に固定化される。ビス-エノール-エステルが固体担体上に固定化されるべきである場合、ビス-エノール-エステルの誘導体が使用されるべきであることが理解される。好ましくは、ビス-エノール-エステル誘導体はアルキン基を含む。好ましくは、アルキン基を含むビスエノールエステル誘導体は、式(3):
を含むか又はそれからなる。化合物(C)及び式(3)という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0164】
当業者が理解するように、「固定化された阻害剤がオルリスタット又はビス-エノール-エステルからなる群から選択される」等の表現は、オルリスタット又はビス-エノール-エステルが適切なカップリング基を介して固体担体に連結されていることを示す。例えば、オルリスタット又はビス-エノール-エステルは、アルキン基を含有する修飾オルリスタット又はビス-エノール-エステルを、1つ以上のアジド基を有する固体担体と反応させることによって固定化され得る。この場合、固体担体上に存在するオルリスタット又はビス-エノール-エステルは、それによってオルリスタット又はビス-エノール-エステルが固体担体に連結されているそのアルキル基の1つに修飾を有することを理解されたい。例えば、固体担体のアジド基との「クリック」反応によって固体担体との結合を可能にするために、オルリスタットのCH2-CH3基が-C≡CH基に修飾されている場合、オルリスタットのこの部分もまた、オルリスタットが固体担体に連結されている形態で修飾される(特に、-C≡CH基を表した部分は、-C≡CH基とアジド基との反応によって形成されるトリアゾールの一部になる)。
【0165】
既に上で述べたように、本発明は更に、一態様では、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を調製又は得るための方法、及び/又は固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むデバイス(カラム等)を調製又は得るための方法に関する。したがって、そのような方法は、加水分解酵素阻害剤を固体担体上に固定化する工程を含む。本発明はまた、一態様では、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤及び/又は固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を含むデバイス(カラム等)に関する。固体担体上に固定化された当該加水分解酵素阻害剤及び/又は当該デバイスは、その方法によって調製又は得ることができる。更に、本明細書中に開示される方法によって調製されるか、得られるか、若しくは得ることができる固定化された阻害剤及び/又は本明細書中に開示される方法によって調製されるか、得られるか、若しくは得ることができる固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤は、本発明に従って、例えば、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む、方法において使用することができる。
【0166】
好ましい態様では、阻害剤は、式(1)、(2)、(3)、若しくは(4)、好ましくは式(1)、(2)、若しくは(4)を含むか又はそれからなる化合物をアジドと反応させることによって得ることができる基である。
【0167】
言い換えれば、本発明は、以下の項目1~42に表される方法及び製品にも関する。
【0168】
項目1.固体担体上に加水分解酵素阻害剤を固定化するための方法であって、
固体担体を提供する工程、
加水分解酵素阻害剤を提供する工程、
前記固体担体と、前記加水分解酵素阻害剤を含有する溶液とを接触させる工程、及び
前記加水分解酵素阻害剤を前記固体担体上に固定化することを可能にする工程
を含む、方法。
【0169】
項目2.前記固体担体が、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド、セルロース及びセルロース誘導体、例えば酢酸セルロース(CA)又は再生セルロース、架橋アガロースを含むアガロース、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び前述のもののブレンド若しくはコポリマー、又は親水化ポリマーとの、好ましくはポリビニルピロリドン(PVP)若しくはポリエチレンオキシド(PEO)とのブレンド若しくはコポリマーから選択される、項目1に記載の方法。
【0170】
項目3.前記固体担体を提供する前記工程が、前記固体担体を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、項目1又は2に記載の方法。
【0171】
項目4.前記加水分解酵素阻害剤を提供する前記工程が、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するために、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成するために、前記加水分解酵素阻害剤を処理して前記固体担体の前記官能基と反応することができる官能基を導入する工程を含む、項目3に記載の方法。
【0172】
項目5.前記加水分解酵素阻害剤を提供する前記工程が、前記加水分解酵素阻害剤を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0173】
項目6.前記固体担体を提供する前記工程が、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するために、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3-トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成するために、前記固体担体を処理して前記加水分解酵素阻害剤の前記官能基と反応することができる官能基を導入する工程を含む、項目5に記載の方法。
【0174】
項目7.
固体担体を提供する工程、
前記固体担体をリンカーを含有する溶液と接触させて担体-リンカーを形成する工程、
加水分解酵素阻害剤を提供する工程、
前記担体-リンカーを、前記加水分解酵素阻害剤を含有する溶液と接触させる工程、及び
前記加水分解酵素阻害剤を前記担体-リンカー上に固定化することを可能にする工程
を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
【0175】
項目8.前記固体担体を提供する前記工程が、前記固体担体を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、項目7に記載の方法。
【0176】
項目9.前記リンカーが、
前記固体担体の前記官能基と反応して、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するか、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3-トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成することができる官能基
を含む、項目7又は8に記載の方法。
【0177】
項目10.前記加水分解酵素阻害剤を提供する前記工程が、前記加水分解酵素阻害剤を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、項目7~9のいずれか一項に記載の方法。
【0178】
項目11.前記リンカーが、
前記加水分解酵素阻害剤の前記官能基と反応して、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するか、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成することができる官能基
を更に含む、項目7~10のいずれか一項に記載の方法。
【0179】
項目12.
固体担体を提供する工程、
加水分解酵素阻害剤を提供する工程、
前記加水分解酵素阻害剤をリンカーと接触させて加水分解酵素阻害剤-リンカーを形成する工程、
前記固体担体と、前記加水分解酵素阻害剤-リンカーを含有する溶液とを接触させる工程、及び
前記加水分解酵素阻害剤-リンカーを前記固体担体上に固定化することを可能にする工程
を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
【0180】
項目13.前記固体担体を提供する前記工程が、前記固体担体を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、項目12に記載の方法。
【0181】
項目14.前記リンカーが、
前記固体担体の前記官能基と反応して、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するか、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3-トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成することができる官能基
を含む、項目12又は13に記載の方法。
【0182】
項目15.前記加水分解酵素阻害剤を提供する前記工程が、前記加水分解酵素阻害剤を処理して、好ましくはヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される官能基を導入する工程を含む、項目12~14のいずれか一項に記載の方法。
【0183】
項目16.前記リンカーが、
前記加水分解酵素阻害剤の前記官能基と反応して、好ましくはストレプトアビジン-ビオチン相互作用を形成するか、又はエステル、アミド、イミン、ウレタン、尿素、β-アミノアルコール、及び1,2,3トリアゾールから選択される1つ以上の基を形成することができる官能基
を更に含む、項目12~15のいずれか一項に記載の方法。
【0184】
項目17.前記固体担体上の前記官能基がアミノ基、好ましくは第一級アミノ基を含む、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0185】
項目18.前記固体担体上の前記アミノ基が、反応性プラズマ、好ましくはアンモニアを含むガス混合物から生成されたプラズマによる処理によって導入される、項目17に記載の方法。
【0186】
項目19.前記リンカーが、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される少なくとも2つの官能基を含有する化合物である、項目7~18のいずれかに記載の方法。
【0187】
項目20.前記リンカーが、ポリオキシエチレン部分又はポリオキシプロピレン部分を更に含有し、好ましくは3~20個(より好ましくは3~10個、更に好ましくは3~5個)のオキシエチレン又はオキシプロピレン単位を含有し、前記少なくとも2つの官能基がそれに結合している、項目19に記載の方法。
【0188】
項目21.前記リンカーが、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される少なくとも2つの異なる官能基を含有する、項目7~20のいずれかに記載の方法。
【0189】
項目22.前記リンカーが、1分子あたり、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、ストレプトアビジン及びビオチンから選択される第1の官能基と、更に少なくとも2つの第2の官能基とを含有し、前記少なくとも2つの第2の官能基が好ましくは同じ種類であり、前記第1の官能基とは異なるヒドロキシル基、カルボキシレート基、ケトン、アルデヒド、イソシアネート、エポキシド、ヒドロキシル基、カルボキシレート基、アミン、アルキン、アジド、並びにバイオポリマー(例えばストレプトアビジン及び/又はビオチン)から選択される、項目21に記載の方法。
【0190】
項目23.前記固体担体が、架橋アガロース、好ましくはセファロース、より好ましくはMag-Sepharose-Streptavidinビーズ又はStreptavidin Sepharose(登録商標)High Performanceビーズである、項目1~22のいずれか記載の方法。
【0191】
項目24.前記固体担体がストレプトアビジンを含む官能基を含有し、前記リンカーがビオチンを含む官能基を含有する、項目1~23のいずれかに記載の方法。
【0192】
項目25.前記リンカーがアジド基を更に含有し、前記加水分解酵素阻害剤がアルキン基を含有する、項目24に記載の方法。
【0193】
項目26.前記固体担体が、任意にNHS活性化されているカルボキシレートを含む官能基を含有し、前記リンカーが、アミンを含む官能基を含有する、項目1~25のいずれかに記載の方法。
【0194】
項目27.前記リンカーがアジド基を更に含有し、前記加水分解酵素阻害剤がアルキン基を含有する、項目26に記載の方法。
【0195】
項目28.前記リンカーが、ビオチン-PEG3-アジド(CAS875770-34-6)、ビオチン-PEG4-アジド(CAS1309649-57-7)、アゾ-ビオチン-アジド(CAS1339202-33-3)及びアジド-PEG4-アミン(CAS951671-92-4)から選択される、項目1~27のいずれかに記載の方法。
【0196】
項目29.前記加水分解酵素阻害剤が、アルキン基を含有し、かつ以下:
から選択される構造を有する化合物から選択され、
式中、(HI-1)において、
R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖であってもよいC
2~24アルキルから選択され、R
1、R
2、又はR
3の少なくとも1つの末端-CH
2-CH
3基は、-C≡CH基で置き換えられ、
(HI-2)において、
R
11、R
12、及びR
13は、それぞれ独立して、直鎖又は分岐鎖であってもよいC
2~24アルキルから選択され、R
11、R
12、及びR
13の少なくとも1つの末端-CH
2-CH
3基は、-C≡CH基で置き換えられる、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
【0197】
項目30.R1、R2、及びR11の炭素原子の数が、独立して、2~15、好ましくは3~14、より好ましくは4~12、更により好ましくは5~11から選択される、項目29に記載の方法。
【0198】
項目31.R12及びR13の炭素原子の数が、独立して、5~24、好ましくは8~18、より好ましくは10~16、更により好ましくは10~12から選択される、項目29又は30に記載の方法。
【0199】
項目32.R3の炭素原子の数が、2~10、好ましくは2~8、より好ましくは3~6、更により好ましくは3~5から選択される、項目29~31のいずれか一項に記載の方法。
【0200】
項目33.R1及びR2の前記アルキル基が直鎖である、項目29~32のいずれか一項に記載の方法。
【0201】
項目34.R11、R12、及びR13の前記アルキル基が直鎖である、項目29~33のいずれか一項に記載の方法。
【0202】
項目35.R3の前記アルキル基が分岐鎖である、項目29~34のいずれか一項に記載の方法。
【0203】
項目36.式(HI-1)が、以下の構造(HI-1a):
を有し、式中、R
1、R
2、及びR
3は、先行する項目に定義される通りである、項目29~35のいずれか一項に記載の方法。
【0204】
項目37.前記加水分解酵素阻害剤が、アルキン基を含有し、以下:
から選択される構造を有する化合物から選択される、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
【0205】
項目38.項目1~37のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、固体担体上に固定化された、加水分解酵素阻害剤。
【0206】
項目39.項目38に記載の固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤を含む、デバイス。
【0207】
項目40.少なくとも2つの開口部を有する管状デバイスである、項目39に記載のデバイス。
【0208】
項目41.前記デバイスが、好ましくは金属、ポリマー、又はガラス製の容器で構成され、前記容器が、固体担体上に固定化された前記加水分解酵素阻害剤が収容される空洞を形成する、項目39又は40に記載のデバイス。
【0209】
項目42.固体担体上に固定化された前記加水分解酵素阻害剤で少なくとも部分的に満たされたカラムである、項目39~41のいずれか一項に記載のデバイス。
【0210】
タンパク質を含む組成物を回収する前に、タンパク質を含む出発組成物を、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤と接触させることが好ましい。言い換えれば、タンパク質を含む組成物は、タンパク質を含む出発組成物を固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤と接触させた後に回収される。したがって、本明細書に記載の方法は、以下の順序で実行することができる:
工程(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
続いて、
工程(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程。
【0211】
本明細書中に記載される方法の工程(i)及び(ii)は、典型的には、その順序で行われるべきであり、すなわち、工程(i)の後に工程(ii)が続く。工程(i)と工程(ii)との間に更なる工程(更なる精製工程等)が存在し得るが、本明細書では、工程(i)の直後に工程(ii)が続くこと、すなわち工程(i)と工程(ii)との間に更なる工程が存在しないことが好ましい。
【0212】
更に、本明細書では、工程(i)及び(ii)(好ましくは、(i)の後に(ii)が続く順序)を1回行うことができ、例えば、粗抽出物又は従来の方法(プロテインAアフィニティークロマトグラフィー等)によって精製された抽出物のようなタンパク質を含む出発組成物を、本方法の工程(i)に供し、続いて工程(ii)によるタンパク質を含む組成物を回収することが想定され、好ましい。言い換えれば、本明細書では、工程(i)は、本明細書に記載の方法で1回(単独で)/本方法を実施するときに実施されることが好ましい。本明細書で言及及び記載されるように、方法は、工程(i)の前及び/又は工程(i)と(ii)との間に精製及び/又は調製の追加の工程、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー及び/又は混合モードクロマトグラフィーを含み得る。
【0213】
しかしながら、工程(i)及び(ii)(好ましくは、(i)の後に(ii)が続く順序)を1回又は複数回、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10回繰り返すことができることも想定される。例えば、工程(i)及び(ii)が最初に行われた後、例えば、加水分解活性の特定の閾値を達成するために、及び/又は宿主細胞タンパク質(複数可)、特に加水分解酵素等の不純物を(更に)除去又は低減するために、タンパク質を含む回収された組成物における加水分解活性を(更に)低減することが望ましい場合がある。
【0214】
これに関連して、本方法の工程(ii)で回収されたタンパク質を含む組成物を、加水分解酵素阻害剤と接触させ、加水分解酵素阻害剤を固体担体上に固定化する。
【0215】
例えば、本方法は、それに応じて以下のように実行することができる(好ましくは順序(i)、続いて(ii)、続いて(iii)、続いて(iv)(短順序(i)~(iv):
以下の工程を含む方法:
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程;
(iii)(前の)工程(ii)で回収されたタンパク質を含む組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程;
(iv)該タンパク質を含む組成物を回収する工程。
【0216】
次いで、これを、上記のように、例えば以下のように、所望に応じて繰り返すことができる。
以下の工程を含む方法
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程;
(iii)(前の)工程(ii)で回収されたタンパク質を含む組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程;
(iv)該タンパク質を含む組成物を回収する工程;
(v)(前の)工程(iv)で回収されたタンパク質を含む組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程;
(vi)該タンパク質を含む組成物を回収する工程;
等。
【0217】
工程を更に繰り返すため、本方法では、任意の所望の数の以下の工程を更に実行することができる:
(vii)前の工程で回収されたタンパク質を含む組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程;
(viii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程;
等。
【0218】
当業者には明らかであるが、本明細書に記載の方法は、(従来の)タンパク質調製及び/又は精製の手段及び方法と組み合わせることができることが指摘される。
【0219】
言い換えれば、タンパク質を含む出発組成物を固定化加水分解酵素阻害剤と接触させる工程及び組成物を回収する工程は、(従来の)タンパク質調製及び/又は精製の更なる工程と組み合わせることができる。したがって、好ましい態様では、本方法は、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」の前に、(従来の)タンパク質調製及び/又は精製の1つ以上の工程を更に含み得る。
【0220】
本方法は、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」の後に、(従来の)タンパク質調製及び/又は精製の1つ以上工程を更に含み得る。
【0221】
本方法は、工程(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程の前及び後に、(従来の)タンパク質調製及び/又は精製の1つ以上工程を更に含み得る。
【0222】
(従来の)タンパク質調製及び/又は精製工程の非限定的な例は、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、好ましくは陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)及び(超)濾過、又は混合モードクロマトグラフィー(例えば、混合モードイオン交換クロマトグラフィー、好ましくは混合モード陰イオン交換クロマトグラフィー(MMAEX))等のそれらの組み合わせである。アフィニティークロマトグラフィーは、好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィーである。
【0223】
これらの用語の意味並びにアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー(陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)等)及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)クロマトグラフィーを含むタンパク質調製及び/又は精製工程は、当技術分野で周知である。
【0224】
混合モードクロマトグラフィーの利点は、溶質が2つ以上の相互作用モード又は機構を介して固定相と相互作用し、より高い選択性及び分離能(2016)J.Pharm.Biomed.Anal.128:73-88)をもたらすことである。混合モードクロマトグラフィー(又はマルチモーダルクロマトグラフィー)は、例えば以下の方法を含むことができる。
IEC/HIC
IEC及びHIC条件は、生物学的活性を維持するのに適した生理学的条件に最も近いものであるため、それらの組み合わせは生物学的産物の分離に広く使用されている。IEC/HIC MMCは、溶質が静電相互作用及び疎水性相互作用の両方を介して固定相と相互作用するという理由で、分離能及び選択性が改善されている。
IEC/RPLC
IEC/RP MMCは、RPLCとIECの利点を併せ持っている。例えば、WAX/RPは、単一のWAX又はRPLCと比較して、分離能が向上し、分離選択性の調整の自由度が向上している。
HILIC/RPLC
Liu et al.は、移動相の有機相を調整することによってRPLC又はHILIC保持を示すことができるHILIC/RP固定相を合成した(Liu and Pohl(2008)J.Chrom.A 1191:83-89.)。
HILIC/IEC
Mant et al.は、HELIC/CEXが、ペプチド分離のためのRPLCと比較して、独自の選択性、より強い分離能及びより広い範囲の用途を提供したことを報告した。(Mant et al.(1998)J.Chrom.A.816(1):79-88)
SEC/IEC
タンパク質SECにおける疎水性相互作用は低いイオン強度では比較的弱く、静電効果は保持に大きく寄与する可能性があり、これによりSECカラムを弱いイオン交換体として使用することが可能になる。
【0225】
好ましくは、タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させることは、タンパク質を含む出発組成物が(単独で)プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、及び任意に濾過に供された後に行われる。濾過を行う場合、好ましくは、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、続いて濾過(すなわち、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーとそれに続く濾過)の順序である。「(単独で)供された」とは、出発組成物が、所与の(従来の)タンパク質調製及び/又は精製工程、例えば、これに関連して、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、及び任意に濾過にのみ供されたことを意味し、すなわちこの方法は、工程(i)の前に所与の(1つ又は複数の)精製方法以外の任意の他の精製方法を含まない。
【0226】
本明細書では、タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させることは、タンパク質を含む出発組成物が(単独で)プロテインAアフィニティークロマトグラフィーに供され、任意に濾過に供された後、及び/又はタンパク質を含む出発組成物がイオン交換クロマトグラフィー又は混合モードイオン交換クロマトグラフィー、好ましくは陽イオン交換クロマトグラフィー又は混合モード陰イオン交換クロマトグラフィーに供された後に行われることが想定される。
【0227】
したがって、好ましい態様では、本方法は、タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程(i)の前に、アフィニティークロマトグラフィー(好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィー)及び任意に濾過を更に含み得、加水分解酵素阻害剤は固体担体上に固定化される。
【0228】
本明細書で使用される場合、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、好ましくは、組成物のpH値の減少及びその後の(初期pH値への)pH値の増加を含む。これは、ウイルス(組成物中に(潜在的に)存在する場合)を不活性化するのに役立つ。このようなプロテインAアフィニティークロマトグラフィーに供した組成物は、本明細書では「コンディショニング後プロテインA溶液プール」、「コンディショニング後プロテインA溶出プール」、「コンディショニング後プロテインA溶出液」、プロテインA溶出プール又はプロテインA溶出液とも呼ばれる。
【0229】
更に、本明細書で使用される場合、濾過は、深層フィルターの使用を含むことができる。したがって、本明細書では深層濾過が好ましい。そのようなプロテインAアフィニティークロマトグラフィーに供し、続いて濾過した組成物を、本明細書では「混合モード陰イオン交換負荷溶液」とも呼ぶ(これは、溶液が、工程(i)を実施した後、混合モードイオン交換クロマトグラフィー、特に混合モード陰イオン交換クロマトグラフィーに供されることを示す)。
【0230】
上述のように、本方法は、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」の後に、(従来の)タンパク質調製及び/又は精製の1つ以上工程を更に含み得る。好ましい態様では、本方法は、工程(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させた後、(少なくとも)イオン交換クロマトグラフィー及び/又は混合モードクロマトグラフィー(混合モードイオン交換クロマトグラフィー等)及び/又は好ましくは陽イオン交換クロマトグラフィーの疎水性相互作用クロマトグラフィー及び/又は混合モードクロマトグラフィー(混合モード陰イオン交換クロマトグラフィー等)及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)の工程を更に含み得、加水分解酵素阻害剤は、固体担体上に(及び組成物の回収の前に)固定化される。
【0231】
混合モードイオン交換クロマトグラフィーは、好ましくは、本明細書では混合モード陰イオン交換クロマトグラフィー(MMAEX)である。
【0232】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、目的のタンパク質を培養細胞から産生、精製、及び/又は分離するために使用される工程は、回収物清澄化プロセス(又は細胞培養物からインタクト細胞及び細胞残屑を除去する同様のプロセス)、限外濾過(UF)プロセス(又は産生されたタンパク質を濃縮する同様のプロセス)、ダイアフィルトレーション(DF)プロセス(又は前のプロセスから産生されたタンパク質を含む緩衝液を変更若しくは希釈する同様のプロセス)、ウイルス不活化工程(又はウイルス粒子を不活化若しくは除去する同様のプロセス)、アフィニティー捕捉プロセス(又は、産生されたタンパク質を捕捉し、それを残りの緩衝液/溶液成分から分離するクロマトグラフィー方法のいずれか)、製剤化プロセス、及びバルク充填プロセスからなる群から選択される工程の少なくとも1つを更に含む。一態様では、本明細書に開示されているように、タンパク質を培養細胞から製造、精製、及び/又は分離する工程は、少なくとも回収物清澄プロセス(又は細胞培養物から無傷の細胞及び細胞残屑を除去する同様のプロセス)、回収後の限外濾過(UF)プロセス(又は生産されたタンパク質を濃縮する同様のプロセス)、回収後の透析濾過(DF)プロセス(又は前のプロセスから生産されたタンパク質を含む緩衝液を変更若しくは希釈する同様のプロセス)、溶媒/界面活性剤のウイルス不活化プロセス(又はウイルス粒子を化学的に不活化する同様のプロセス)、中間体精製プロセス(例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)又は産生されたタンパク質を捕捉し、それを残りの緩衝液/溶液成分から分離するクロマトグラフィー法のいずれか1つ)、HIC後のUF/DFプロセス(又は産生されたタンパク質を濃縮及び/又は緩衝交換する同様のプロセス)、ウイルス還元濾過プロセス(又はウイルス粒子その他の不純物若しくは汚染物を更に除去するための同様のプロセス)、混合モードクロマトグラフィー、(例えば、CAPTO(登録商標)アガロースクロマトグラフィー、又は生成されたタンパク質を更に精製及び/又は濃縮する同様の方法)、製剤化プロセス及びバルク充填プロセスを含む。一態様では、本明細書で提供される方法の分離工程は、回収清澄化、限外濾過、ダイアフィルトレーション、ウイルス不活性化、親和性捕捉、HICクロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを更に含む。
【0233】
いくつかの態様では、本明細書に開示される培養細胞からタンパク質を精製するために使用される工程は、クロマトグラフィープロセスを含む。一実施形態では、クロマトグラフィープロセスは親和性捕捉プロセスである。クロマトグラフィープロセスは、少なくとも、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、プロテインAクロマトグラフィー、又はCAPTO(登録商標)Adhere混合モードクロマトグラフィーを含み得る。
【0234】
好ましい態様で上述したように、本明細書に記載の方法は、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」の前及び/又は後に、(従来の)タンパク質調製及び/又は精製の1つ以上の工程を更に含み得る。したがって、本明細書に記載の方法は、プラットフォームプロセス(すなわち、抗体等の目的のタンパク質を精製するための方法/プロセス)とすることができる。
【0235】
そのような方法/プロセスは、異なる精製原理(すなわち、異なるタンパク質調製及び/又は精製工程)を有するいくつかのカラムの使用を含み得る。
【0236】
本明細書に記載の(タンパク質を含む組成物を調製するための)典型的なプロセス又は方法は、目的のタンパク質の(従来の)調製及び/又は精製、すなわち細胞培養物からタンパク質組成物を調製する少なくとも4つのその後の工程、続いて典型的には(少なくとも)3つの(従来の)クロマトグラフィー工程、任意に4つの(従来の)クロマトグラフィー工程を含む。
【0237】
したがって:タンパク質組成物が細胞培養又は培養上清から調製された後(工程1)、方法/プロセスは、典型的には、3つの後続の(従来の)クロマトグラフィー工程(任意に4つの後続の工程)、例えば、通常、それぞれが異なる精製原理を採用する3つのカラム(任意に4つのカラム)を使用する(工程2~4、又は任意の工程5(カラム4)が含まれる場合、工程2~5)。
【0238】
好ましくは、(タンパク質を含む組成物を調製するための)本明細書に記載の方法/プロセスは、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」に加えて、3つ(任意に4つ)の異なる精製原理を有する(少なくとも)3つのカラム(任意に4つのカラム)の使用を含む。
【0239】
図7は、目的のタンパク質の組成物の調製/目的のタンパク質の精製のための従来の概略的な方法/プロセスを示す。
図7はまた、本発明の方法において工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」を使用することができる場所を示す。
【0240】
最初に、細胞培養物(目的のタンパク質/タンパク質を産生する細胞)からの組成物を、例えば細胞をホモジナイズすることによって調製する。組成物は、細胞培養上清であってもよい。好ましくは、上記組成物は続いて精製され、例えば、組成物は次いで、細胞、細胞残屑及び/又は凝集体から(例えば濾過によって)分離された組成物である。したがって、(続いて精製される)組成物は、細胞、細胞残屑及び/又は凝集体から(濾過によって)分離された組成物であり、例えば、回収細胞培養液(Harvest Cell Culture Fluid)(HCCF)である。
【0241】
第2に、上記組成物を、例えばタンパク質調製及び/又は精製の更なる工程(工程2)によって更に精製する。タンパク質調製及び/又は精製の更なる工程は、好ましくはアフィニティークロマトグラフィー(好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィー)である。したがって、アフィニティークロマトグラフィー(好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィー)が好ましくは第1のクロマトグラフィー工程である。例えば、上記組成物(例えば、回収細胞培養液(HCCF))をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーに供する。言い換えれば、プロセスは、アフィニティークロマトグラフィーカラム(プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム)の使用を含む。
【0242】
第3に、次いで溶出液を第2のカラム(カラム2)/工程3)に供する。
【0243】
第4に、次いで、第2のカラムの溶出液を第3のカラムに供する(カラム3/工程4)。
【0244】
第5に、品質(例えば、目的のタンパク質の純度)が達成されないか、又は第4の工程の後(すなわち、3つのカラムの後(好ましくはそれぞれ異なる精製原理を使用する)、任意に第5の工程(例えば、第4の精製原理を有する第4のカラム)を使用することができる(カラム4/工程5)。当業者は、例えばコスト及び/又は複雑さの増加と品質の改善とのバランスをとる場合に、第5の工程が必要であるかどうか及び/又は有益であるかどうかを事例ごとに決定することができる。
【0245】
したがって、工程3~5は、任意の順序で、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))、混合モードクロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)であり得る。言い換えれば、カラム2~4は、任意の順序のイオン交換クロマトグラフィーカラム(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)カラム又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)カラム)、混合モードクロマトグラフィーカラム及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラムであり得る、すなわち、プロセスは、任意の順序の上記のカラムのいずれかの使用を含む。
【0246】
プラットフォームプロセス/精製プロセスの開発中、当業者は、使用されるカラムの工程/順序を決定することができる。
【0247】
第6に、カラム3又は任意のカラム4(工程4及び任意に工程5)の後、溶出液をウイルス濾過に供し、次いで、第7に、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UFDF)に供する。第7の工程(UFDF)の後、タンパク質を含む組成物を回収することができる。
【0248】
図7のスキームでは、回収細胞培養液(HCCF)をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーに供する。次いで、溶出液を第2のカラム(カラム2)に供する。次いで、第2カラムの溶出液を第3カラム(カラム3)に供する。品質(例えば、目的のタンパク質の純度)が第3の工程の後(すなわち、3つの異なる精製原理を有する3つのカラムの後)に達成されない場合、例えば、実際の必要性がある場合、第5の工程(例えば、第4の精製原理を有する第4のカラム)を使用することができる(
図7のカラム4)。そうでなければ、第5の工程/第4のカラムは、通常、コスト、材料損失、及び複雑さの増加を回避するために使用されない。当業者は、第4の工程が必要であるか及び/又は有益であるかを事例ごとに決定することができる。
【0249】
図7に示すカラム2、3及び4については、開発中に定義された配列がある。評価される精製原理は本明細書に記載されており、イオン交換クロマトグラフィー(例えばアニオン-カチオン交換クロマトグラフィー)、混合モードクロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィーであり得る。言い換えれば、プラットフォームプロセス/精製プロセスの開発中に、当業者は、使用されるカラムの順序を決定するであろう。互いに対する異なる精製原理(タンパク質調製及び/又は精製工程)の順序のいくつかの非限定的な例を本明細書で上に提供する。
【0250】
カラム3又は任意のカラム4の後、溶出液をウイルス濾過に供し、次いで限外濾過/ダイアフィルトレーション(UFDF)に供する。
【0251】
更に、当業者は、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」をいつ実施するかを決定することができる(
図7において、組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させることと呼ばれる)。
【0252】
(タンパク質を含む組成物を調製するための)本発明の方法/プロセスは、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤(オルリスタット等)と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」を含む(例えば、この工程は、加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー(加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー工程)である)。言い換えれば、この方法/プロセスは、加水分解酵素阻害剤(例えば、オルリスタット)カラムの使用を含む。
【0253】
好ましくは、加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー/クロマトグラフィー工程は、アフィニティークロマトグラフィー(好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィー)の工程/工程2に続く。言い換えれば、このプロセスは、プロテインAカラムに(直接)続く加水分解酵素阻害剤(例えば、オルリスタット)カラムの使用を含み得る。したがって、好ましくは、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」は、アフィニティークロマトグラフィー(好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィー)の後に行われる。これは、以下の精製工程がタンパク質組成物からの阻害剤(オルリスタット等)の除去を確実にすることを確実にするためである。阻害剤は、例えば、マトリックス(すなわち、阻害剤が固定化された固体担体からの出血)の潜在的な出血のために、当該工程(i)を実施した後に組成物中に存在し得る。
【0254】
しかしながら、本明細書の他の箇所でも論じられているように、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」は、カラム2又はカラム3の後に実行することができる(第5の工程が所定の位置にある場合)。
【0255】
したがって、加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー/クロマトグラフィー工程は、工程3~5(工程3~5は、任意の順序のイオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))、混合モードクロマトグラフィー、並びに疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)であり得る)のいずれか1つに続くことができる。言い換えれば、このプロセスは、イオン交換クロマトグラフィーカラム(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)カラム又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)カラム)、混合モードクロマトグラフィーカラム及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラムを任意の順序で使用した(直)後の加水分解酵素阻害剤(例えば、オルリスタット)カラムの使用を含む。
【0256】
一態様では、方法/プロセスは、混合モードクロマトグラフィーを含まない。
【0257】
加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー/クロマトグラフィー工程は、通常、細胞培養物からタンパク質組成物を調製する最初の工程(例えば、HCCFに従わない)の(直)後に続かない。言い換えれば、加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー/クロマトグラフィー工程は、通常、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー)/工程1の前に行われない。これは、そのような初期タンパク質組成物(例えば、細胞培養物/細胞培養物の上清からのタンパク質組成物、好ましくはHCCF)が、典型的には依然として高度の不純物、例えば細胞、細胞残屑及び/又は凝集体を含むためである。したがって、このプロセスは通常、細胞培養物からタンパク質組成物を調製する最初の工程の後に(直接)加水分解酵素阻害剤(例えばオルリスタット)カラムを使用することを含まず、及び/又は通常、アフィニティークロマトグラフィーカラム(例えばプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム)を使用する前に加水分解酵素阻害剤(例えばオルリスタット)カラムを使用することを含まない。
【0258】
本明細書中に記載される方法において使用される工程の順序とは無関係に、精製された原薬(回収されたタンパク質を含む組成物)は、阻害剤(例えばオルリスタット)を含有してはならないか、又は、例えば、FDA若しくはEMA等の当局によって承認された製剤の形態で、最小量(好ましくは検出不能な量)若しくは対象/患者への組成物(又は本明細書に記載のタンパク質製剤、例えば組成物を含む製剤)の投与を妨げない量のみを含有すべきであることは明らかである。言い換えれば、本方法は、回収されたタンパク質組成物及び/又は本明細書に記載のタンパク質製剤中に阻害剤が存在しないこと(又は上記の最小量のみ)を確実にする方法で使用される。
【0259】
本明細書に記載の(タンパク質を含む組成物を調製するための)方法は、以下の順序の工程を含むことができる。
(1)細胞培養物(タンパク質/目的のタンパク質を産生する細胞)から組成物を調製する工程、又は細胞培養物から細胞培養上清を得る工程であって、好ましくは、調製された組成物又は上清の後続の精製、例えば、細胞、細胞残屑及び/又は凝集体からの(例えば濾過による)分離/除去(好ましくは、調製及び/又は精製された組成物は回収細胞培養液(HCCF)である)が続く工程;
(2)アフィニティークロマトグラフィー(好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィー)(工程(1)を行うことによって得られた(精製された)組成物に適用される)工程であって、
「(i)タンパク質を含む出発組成物(例えば、ここで、アフィニティークロマトグラフィーを行うことによって得られる(精製された)組成物)を加水分解酵素阻害剤(オルリスタット等)と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」(例えば、この工程は加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー(加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー工程)である)が続く工程;
(3)イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))(工程(2)を行って得られた(精製された)組成物に適用される)工程;
(4)混合モードクロマトグラフィー(工程(3)を実施することによって得られる(精製された)組成物に適用される)工程;
任意に(5)疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(工程(4)を行うことによって得られる(精製された)組成物に適用される)工程;
(6)ウイルス濾過(工程(4)(又は該当する場合は(5))を行うことによって得られた(精製された)組成物に適用される)工程;
(7)濾過(例えば、UFDF)工程((6)を実施することによって得られた(精製された)組成物に適用される);続いて(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程。
【0260】
論じられるように、任意の順序で、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))、混合モードクロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を使用することができる。
【0261】
したがって、代替的には、上記の方法は、例えば、以下の順序の工程を含むことができる:
(3)混合モードクロマトグラフィー(工程(2)を実施することによって得られる(精製された)組成物に適用される)工程;
(4)イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))(工程(3)を行って得られた(精製された)組成物に適用される);
任意に(5)疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(工程(4)を行うことによって得られる(精製された)組成物に適用される)工程。
【0262】
更なる代替形態では、上記の方法は、例えば、以下の順序の工程を含むことができる:
(3)疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(工程(2)を行うことによって得られる(精製された)組成物に適用される);
(4)イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))(工程(3)を行って得られた(精製された)組成物に適用される);
任意に(5)混合モードクロマトグラフィー(工程(4)を実施することによって得られる(精製された)組成物に適用される)。
【0263】
更なる代替形態では、上記の方法は、例えば、以下の順序の工程を含むことができる:
(3)イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))(工程(2)を行って得られた(精製された)組成物に適用される);
(4)疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(工程(3)を行うことによって得られる(精製された)組成物に適用される);
任意に(5)混合モードクロマトグラフィー(工程(4)を実施することによって得られる(精製された)組成物に適用される)。
【0264】
本明細書の他の箇所で議論されるように、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」は、好ましくはアフィニティークロマトグラフィーの後に行われる(上記工程(2)を参照されたい)。
【0265】
同じく上記で論じられるように、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」は、本明細書に記載される方法において、例えば上記工程(3)、(4)及び/又は(5)において、以下のアフィニティークロマトグラフィー(上記工程(2)を参照されたい)の代わりに(又は、更に以下のアフィニティークロマトグラフィーに加えて)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))の後/それに続いて、又は更なる代わりとして、混合モードクロマトグラフィーの後/それに続いて、又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)の後/それに続いて行うことができる。
【0266】
本明細書で使用及び定義される場合、「出発組成物」という用語によれば、加水分解酵素阻害剤と接触させる上記(精製)組成物(複数可)のいずれかであって、加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される(工程(i))組成物は、「出発組成物」であるか、又は「出発組成物」であり得る。例えば、アフィニティークロマトグラフィーを行うことによって得られる(精製された)組成物(上記工程(2)を参照されたい)は、「タンパク質を含む出発組成物」である。
【0267】
同じ説明が、加水分解酵素阻害剤と接触させるための本明細書に記載の(精製された)組成物に準用され、該加水分解酵素阻害剤は、固体担体上に固定化される(工程(i))。例えば、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))を行うことによって得られる(精製された)組成物である。混合モードクロマトグラフィー及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、「タンパク質を含む出発組成物」である。
【0268】
一般に、「タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる」という用語は、「出発組成物がタンパク質を含む」こと、及びこの組成物を加水分解酵素阻害剤(加水分解酵素阻害剤は固体担体上に固定化される)と接触させることを意味することが理解される。したがって、出発組成物はタンパク質を含み、加水分解酵素阻害剤を含まない。
【0269】
以下は、目的のタンパク質を調製/産生するために使用することができる培養細胞/細胞培養物に関する。目的のタンパク質をコードする核酸は、外因性遺伝子として、好ましくは調節エレメントと共に、活性な内因性遺伝子として宿主細胞中に既に存在するか、又は内因性の非活性遺伝子として活性化されるように、そのような宿主細胞に導入することができる。対応する培養細胞は、目的のタンパク質をコードするベクター又は核酸分子で形質転換された又はベクター又は核酸分子を含む宿主細胞又は非ヒト宿主(細胞)であり得る。本発明による「本発明のベクターで形質転換された宿主細胞又は非ヒト宿主」という用語は、典型的には、ベクター又はタンパク質をコードする核酸分子を含む宿主細胞又は非ヒト宿主に関することが理解されよう。ポリペプチドの発現のための宿主細胞は当技術分野で周知であり、原核細胞並びに真核細胞を含む。したがって、宿主は、細菌、哺乳動物細胞、藻類細胞、繊毛虫、酵母及び植物細胞からなる群から選択することができる。典型的な細菌としては、エシェリヒア(Escherichia)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)(グルタミクム(glutamicum))、シュードモナス(Pseudomonas)(フルオレセンス(fluorescens))、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、サルモネラバチルス(Salmonella Bacillus)(バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)又はバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)等)、又はコリネバクテリウム(Corynebacterium glutamicum)等が挙げられる。本明細書において最も好ましい細菌宿主は大腸菌(Escherichia coli)(E.coli)である。本明細書で使用される例示的な繊毛虫は、テトラヒメナ、例えばテトラヒメナ・サーモフィラ(Tetrahymena thermophila)である。
【0270】
典型的な哺乳動物細胞としては、Hela、HEK293、HEK293T、H9、Per.C6細胞及びJurkat細胞、マウスNIH3T3細胞、NS0細胞及びC127細胞、COS1細胞、COS7細胞及びCV1細胞、ウズラQC1-3細胞、マウスL細胞、マウス肉腫細胞、ボーズメラノーマ細胞及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。本発明による最も好ましい哺乳動物宿主細胞はCHO細胞である。また、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞が好ましい。
【0271】
他の適切な真核生物宿主細胞は、例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)、クリベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、又は例えばDT40細胞等のニワトリ細胞である。発現に適した昆虫細胞は、例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)S2、ショウジョウバエ(Drosophila)Kc、スポドプテラ(Spodoptera)Sf9及びSf21又はトリコプルシア(Trichoplusia)Hi5細胞である。好ましい藻類細胞は、クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)又はシネココッカス・エロンガツス(Synechococcus elongatus)細胞等である。例示的な植物は、フィスコミトレラ(Physcomitrella)、例えば、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)である。
【0272】
初代哺乳動物細胞又は細胞株も本発明の範囲内である。初代細胞は、生物から直接得られる細胞である。適切な初代細胞は、例えば、マウス胚性線維芽細胞(MEF)、マウス初代肝細胞、心筋細胞及び神経細胞、並びにマウス筋幹細胞(衛星細胞)、ヒト皮膚及び肺線維芽細胞、ヒト上皮細胞(鼻、気管、腎臓、胎盤、腸、気管支上皮細胞)、ヒト分泌細胞(唾液腺、皮脂腺及び汗腺から)、ヒト内分泌細胞(甲状腺細胞)、ヒト脂肪細胞、ヒト平滑筋細胞、ヒト骨格筋細胞、ヒト白血球(B細胞、T細胞、NK細胞又は樹状細胞等)、及びそれらに由来する安定な不死化細胞株(例えば、hTERT又は癌遺伝子不死化細胞)である。上記の宿主細胞について適切な培養培地及び条件は、当技術分野で公知である。
【0273】
宿主細胞は、例えば、結合分子等の目的のタンパク質を大量に産生するために使用され得る。
【0274】
本発明に関連して有用な例示的な結合タンパク質/結合分子としては、抗体、抗体断片、例えばFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、一本鎖可変断片(scFv)、(単一)ドメイン抗体、特にラクダ科動物、ラマ又はサメに由来するもの、抗体の単離された可変領域(VL及び/又はVH領域)、特にヒト又は霊長類由来のもの、CDR、免疫グロブリンドメイン、CDR由来ペプチド模倣物、レクチン、フィブロネクチンドメイン、テネイシンドメイン、プロテインAドメイン、SH3ドメイン、アンキリンリピートドメイン、及びリポカリン又は記載されるような様々な種類の足場由来結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0275】
以下は、出発組成物中に存在してもよく、存在する場合、目的のタンパク質を含む組成物から除去される(又は含有量が減少する)宿主細胞タンパク質(HCP)に関する。
【0276】
HCPは、産生プロセスで使用される細胞又は生物によって産生又はコードされるタンパク質であり、意図された生成物とは無関係である。いくつかは成長、生存及び正常な細胞プロセシングに必要であるが、他のものは必須ではない場合がある。意図された生成物と同様に、HCPもまた、いくつかの翻訳後修飾によって宿主によって修飾され得る。有用性又はその欠如にかかわらず、HCPは一般に、最終原薬において望ましくない。少量(意図されるタンパク質1ミリグラム当たりのナノグラムとして表される百万分率)で一般的に存在するが、それらを除去するために多くの労力及びコストが産業によって費やされる。治療的使用のための生物学的産物の承認の前に、産物中の残留HCPのレベルを定量的に測定すべきである。したがって、HCPは、典型的には排除又は低減されなければならず、排除又は低減が実証されなければならない。組換え生物学的産物中の混入HCPの存在についてアッセイするための現在の分析方法としては、SDS-PAGE、免疫ブロット法及びELISAが挙げられる。例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィー(Shukla et al,Biotechnol.Prog.2002,18,556-564)、プロテインAクロマトグラフィー(Shukla et al,Biotechnol.Prog.2008,24,11151121)、又は塩耐性陰イオン交換リガンド(Riordan et al,Biotechnol.Prog.2009,Vol.25,No.6)を使用したHCP汚染の除去及び除去に関する多くの刊行物がある。
【0277】
しかしながら、本明細書に示すように、HCP含有量は、従来の精製方法では十分に除去されない。わずかな残留量であっても、長期間の貯蔵安定性の低下をもたらし得る。組成物中のHCPの存在は、界面活性剤分解物の不溶物に起因する可視粒子及び/又はサブビジブル粒子の発生をもたらし得ることが想定される。当該粒子は、非経口調製物(EP2.9.19、EP2.9.20、USP<787>、USP<788>、USP<789>)の要件に反する可能性がある。更に、これらの粒子は、可溶性タンパク質よりも免疫原性が高い不溶性タンパク質凝集体を含み得る。したがって、目的のタンパク質を含む本明細書で提供される組成物/製剤は、低含有量のHCPを含む組成物/製剤であり、及び/又は好ましくは、特に例えば2~8℃で少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、又は少なくとも60ヶ月間の貯蔵中に目に可視粒子形成を示さない。
【0278】
可視粒子形成では、粒子(複数可)が、拡大ガラス等の拡大手段を任意に使用して、当業者によって肉眼で観察され得ることを意味する。規制の世界では、可視粒子状物質と目に不可視粒子状物質との間に違いがある。可視微粒子は、肉眼で検出することができる任意の微粒子として大まかに定義される。典型的には、可視物体は、0.05mm以上の物体として定義される。本発明で使用される場合、「可視粒子」という用語は、0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.5mm以上、最も好ましくは1mm以上の粒子を意味する。このような可視粒子を検出するように設計された機器を用いて可視粒子形成を検出することも可能である。本発明による組成物(方法によって得られる)と同様に、透明溶液中の微粒子の検査を自動化するための最も一般的なアプローチは、溶液を撹拌し、溶液を経時的に画像化することである。撮像システムは、一般に、マシンビジョンカメラ、照明(この場合はバックライト)、及び画像を分析するための視覚プロセッサからなる。画像が取得されると、画像間の差異について順次分析される。違いは、気泡及び微粒子等の溶液内を移動する物体として解釈することができる。より大きく、より高密度の微粒子の場合、微粒子が沈む間に上昇するため、分析から気泡を濾別することによって検出が達成される。
【0279】
直径が約1mm未満の微粒子を見つけることが目標である場合、視野から気泡を除去するために、撹拌に対するより慎重なアプローチを使用しなければならない。これは、加速速度及び減速速度に注意しながら、紡糸によって溶液を撹拌することによって行うことができる。しかしながら、本発明の目的のため、粒子が上記で定義されたような直径を有する限り、「可視粒子」を定義するために検出方法は重要ではない。
【0280】
本発明による方法は、好ましくは、目的のタンパク質含有量に対して100ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは1ppm未満、より好ましくは0.1ppm未満、最も好ましくは0.01ppm未満のHCPを含む組成物/製剤をもたらす。例えば、組成物/製剤は、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、より好ましくは2ppm未満、最も好ましくは1ppm未満又はそれ未満の宿主細胞タンパク質(複数可)を含む。
【0281】
本明細書に記載の方法は、目的の特定のタンパク質/タンパク質に限定されない。出発組成物中の目的のタンパク質/タンパク質は、任意の供給源に由来する任意のタンパク質であり得る。
【0282】
具体的には、任意の治療用、診断用及び/又は医薬用タンパク質/目的のタンパク質、並びに科学研究において目的の任意のタンパク質が企図される。以下は、目的のタンパク質の非限定的な例である:
インターロイキン受容体アンタゴニスト、EBI-005又はアナキンラのようなインターロイキン-1受容体アンタゴニスト、レプチン、アセチルコリンエステラーゼ、活性化プロテインC(ドロトレコギン)、アクチビン受容体IIBアンタゴニスト、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼアルファ、エントリモド(entolimod)のようなトール様受容体5のアゴニスト、アルファ-1アンチトリプシン、アルファ-1プロティナーゼ阻害剤、アルファ-ガラクトシダーゼ、アルファ-ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド、アルファ-N-アセチルグルコサミニダーゼ、アルテプラーゼ、アメジプラーゼ、アミリン、アミリン類縁体、ANF-Rho、アンギオテンシン(1~7)、アンギオテンシンII、アンギオテンシン転換酵素2、抗上皮細胞接着分子単鎖抗体断片、抗トロンビンアルファ、抗トロンビンIII、アポトーシス誘導性酵素mi-APO、アルギニンデイミナーゼ、カラスパルガーゼ(calaspargase)、ペグアスパルガーゼ、クリサンタスパーゼのようなアスパラギナーゼ、ベロクトコグ(beroctocog)アルファ又はオクトファクター(octofactor)のようなBドメイン欠損第VIII因子、ベクツモマブ(bectumomab)(Lymphoscan)、ブセリパーゼ(bucelipase)アルファのような胆汁酸塩刺激性リパーゼ、パブリズマブ(pavlizumab)のような呼吸器多核体ウイルスに対する結合タンパク質、BMP-2(ジボテルミンアルファ)又はBMP-6のような骨形態形成タンパク質、ブーガニン、ウシカルボキシヘモグロビン、ウシ成長ホルモン、C1-エステラーゼ阻害剤、C3細胞外酵素タンパク質、カルボキシヘモグロビン、CD19アンタゴニスト、リツキサンのようなCD20アンタゴニスト、CD3受容体アンタゴニスト、CD40アンタゴニスト、ダピロリズマブ(dapirolizumab)又はAntovaのようなCD40Lアンタゴニスト、セレブロシドスルファターゼ、VGX-210のようなセトリン、コンドロイチンリアーゼ、ノナコグガンマ、コナコグベータ、アルブトレペノナコグアルファのような凝固第IX因子、エプタコグアルファ、マルゼプタコグアルファ(marzeptacog alfa)、バトレプタコグアルファ、オレプタコグアルファ(oreptacog alfa)のような凝固第VIIa因子、スソクトコグアルファ(susoctocog alfa)、ダモクトコグアルファ、ツロクトコグアルファ、ルリオクトコグアルファ、エフモロクトコグアルファ、エフラロクトコグアルファ、シモクトコグアルファ(simoctocog alfa)のような凝固第VIII因子、凝固第X因子、カトリデカコグのような凝固第XIII因子、クロストリジウム・ヒストリチクム(clostridium histolyticum)のコラゲナーゼ、補体因子C3阻害剤、補体受容体5aアンタゴニスト、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、FPA008のようなCSF1受容体アンタゴニスト、CSF1Rアンタゴニスト、イピリムマブのようなCTLA-4アンタゴニスト、シアノビリン-N、ドルナーゼアルファのようなデオキシリボヌクレアーゼI、EGFR受容体アンタゴニスト、ボナパニターゼのようなヒトI型膵臓エラスターゼのようなエラスターゼ、エンドスタチン、エンカスチム(enkastim)、上皮成長因子、エリスロポエチンアルファ、エリスロポエチンゼータ、FcγIIB受容体アンタゴニスト、フィブリノゲナーゼ、ブリナーゼのような線維素溶解酵素、線維芽細胞成長因子1(ヒト酸性線維芽細胞成長因子)、線維芽細胞成長因子18、線維芽細胞成長因子2(ヒト塩基性線維芽細胞成長因子)、線維芽細胞成長因子21、FPA144のような線維芽細胞成長因子受容体2アンタゴニスト、Fms様チロシンキナーゼ3リガンド、フォリトロピンアルファ又はフォリトロピンベータのような卵胞刺激ホルモン、ヒト殺菌性/透過性増強タンパク質21(オペバカン/rBPI21)の断片、ゲロニン、グルカゴン受容体アゴニスト、アブシキシマブのような糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト、コンドリアーゼのようなグリコサミノグリカン分解酵素、gp120/gp160、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、転写因子E7(ベルパセプカルテスペン(verpasep caltespen))と融合されているミコバクテリウムBCGに由来する熱ショックタンパク質hsp65、肝細胞成長因子、肝細胞成長因子受容体(HGFR)アンタゴニスト、ヘプシジンアンタゴニスト、ハーセプチンのようなHer2/neu受容体アンタゴニスト、ヘテロ二量体15:IL-15Ra(hetIL-15)、ヒルジン、hsp70アンタゴニスト、ヒト酸性スフィンゴミエリナーゼ、コリオゴナドトロピンアルファのようなヒト絨毛性ゴナドトロピン、レベグルコシダーゼアルファ(reveglucosidase alfa)又はアルグルコシダーゼアルファのようなヒト酵素酸性α-グルコシダーゼ、ヒト成長ホルモン、ヒトケラチノサイト成長因子(KGF)、ヒトマトリックスメタロプロテイナーゼ、ヒトミエリン塩基性タンパク質断片、ヒト骨形成タンパク質1、ヒト骨形成タンパク質-1、ヒト副甲状腺ホルモン、ヒトトロンボモジュリンアルファ、rHuPH20のようなヒアルロニダーゼ、ヒトヒアルロニダーゼPH-20(ボルヒアルロニダーゼアルファ(vorhyaluronidase alfa))、ヒアロシダーゼ、又はボブヒアルロニダーゼ(bovhyaluronidase)のようなヒアルロニダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、ベラグルセラーゼアルファ、又はタリグルセラーゼアルファのような加水分解性リソソームグルコセレブロシド特異的酵素、イズロネート-2-スルファターゼ、オマリズマブのようなIgEアンタゴニスト、イロコイ(iIroquois)ホメオボックスタンパク質2(IRX-2)、インスリン、インスリン類縁体、インテグリンα4β1アンタゴニスト、インターフェロンタウ、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-アルファアンタゴニスト、インターフェロン-アルファスーパーアゴニスト、インターフェロン-アルファ-n3(Alferon N注射剤)、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ、インターフェロン-ラムダ、DAB(389)IL-2のようなインターロイキン2融合タンパク質、オプレレブキン(oprelevkin)のようなインターロイキン-11、インターロイキン-12、インターロイキン-17受容体アンタゴニスト、インターロイキン-18結合タンパク質、インターロイキン-2、インターロイキン-22、ピトラキンラのようなインターロイキン-4、インターロイキン-4ムテイン、インターロイキン-6受容体アンタゴニスト、インターロイキン-7、インターロイキン-22受容体サブユニットアルファ(IL-22ra)アンタゴニスト、イリシン、島ネオゲネシス関連タンパク質、カリジノゲナーゼ、ラクトフェリン、ラクトフェリン断片、ラノテプラーゼ、ブルルリパーゼ(burlulipase)、リゾリパーゼ(rizolipase)、エパフィパーゼ(epafipase)、又はセベリパーゼアルファのようなリパーゼ酵素、黄体形成ホルモン、ルトロピンアルファ、リンパ球膨張分子(lymphocyte expansion molecule)、リソスタフィン、哺乳動物胃リパーゼ酵素(メリスペース(merispace))、ベルマナーゼアルファ(velmanase alfa)のようなマンノシダーゼ、メラノコルチン-4受容体アゴニスト、MEPE由来23アミノ酸ペプチド、メチオニルヒト幹細胞因子(アンセスチム)、マイクロプラスミン、エロスルファーゼアルファのようなN-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ナサルプラーゼベータ、神経成長因子、ニューレグリン-1、神経毒(例えば、クロストリジウム・ボツリヌス神経毒のようなクロストリジウム神経毒(例えば、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)神経毒セロタイプA、B、C、D、E、F、又はG、特にクロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)神経毒セロタイプA等)のようなクロストリジウム神経毒)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、オクリプラスミン、オルニトドロス・モウバタ(Ornithodoros moubata)補体阻害剤(OmCI/Coversin)、オステオプロテゲリン、P128(StaphTAME)、パミテプラーゼ、パラトルモン(PTH)、PD-1アンタゴニスト、PDGFアンタゴニスト、ペントラキシン-2タンパク質、HY133のようなファージリシン、バリアーゼ(valiase)のようなフェニルアラニンアンモニアリアーゼ、組織非特異性アルカリホスファターゼ又はアスホターゼアルファのようなホスファターゼ、プラスミノーゲン、V10153のようなプラスミノーゲン変異体、血小板由来成長因子-BB、ブタ成長ホルモン、プロヒビチン標的指向性ペプチド1、プロインスリン、プロテインA、ドロトレコグニン(drotrecognin)のようなプロテインC、FP-1039のようなタンパク結合線維芽細胞成長因子受容体リガンド、組換え組織因子経路阻害剤(チファコギン)、リラキシン、セレラキシンのようなリラキシン類縁体、レテプラーゼ、rhPDGF-BB、オンコナーゼ又はアンフィナーゼのようなリボヌクレアーゼ、センレボターゼ、コネスタットアルファのようなセリンプロテアーゼ阻害剤、スフェリカーゼ、シアリダーゼ、可溶性補体受容体1型、可溶性DCC(結腸直腸癌において欠失)受容体、可溶性TACI受容体(アタシセプト)、可溶性腫瘍壊死因子I受容体(sTNF-RI)、可溶性腫瘍壊死因子II受容体(sTNF-RII)、可溶性VEGF受容体Flt-1、可溶性ヒトFcγIIB受容体、スタフィロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、スルファミダーゼ、T細胞受容体リガンド、テネクテプラーゼ、血小板新生刺激タンパク質(AMG-531)、トロンボポエチン、トロンボスポンジン-1、甲状腺ホルモン、タルチレリンのような甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)類縁体、組織プラスミノーゲン活性化因子、パミテプラーゼのような組織型プラスミノーゲン活性化因子、トリペプチジルペプチダーゼI、腫瘍壊死因子(TNFアルファ)、腫瘍壊死因子αアンタゴニスト、ラスブリカーゼ又はペガドリカーゼ(pegadricase)のようなウリカーゼ、ウロジラチン、ウロフォリトロピン、ウロキナーゼ、ウテログロビン、ランビズマブ(ranbizumab)又はベバシズマブのようなVEGFアンタゴニスト、VEGF/PDGFアンタゴニスト、マルチVEGF/PDGF DARPin又は融合タンパク質のようなVEGF/PDGFアンタゴニスト、ビスキュミン、ボニコグアルファ(vonicog alfa)のようなフォンビルブラント因子。インターロイキン受容体アンタゴニスト、特にEBI-005又はアナキンラのようなインターロイキン-1受容体アンタゴニスト、及びレプチン、特にヒトレプチン、又は変異ヒトレプチン(成熟ポリペプチド鎖の位置100でトリプトファンからグルタミンへの置換を有するヒトレプチン変異体であるhuLeptin(W100Q))、
【0283】
好ましくは、目的のタンパク質/タンパク質は抗体である。したがって、本発明は、一態様では、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含む方法に関し、該タンパク質は抗体である。
【0284】
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、様々な抗体構造を包含し、標的タンパク質に特異的又は選択的に結合することができる任意の分子であり得る。抗体は、抗体又はそのドメイン/断片を含み得るか、又はそれらであり得、ドメイン/断片は、全長抗体と実質的に同じ結合活性を示す。非限定的な例は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、又は多重特異性抗体(例えば、好ましくは二重特異性抗体)である。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体又は二重特異性抗体である。本発明内の抗体はまた、キメラ抗体、組換え抗体、ヒト化抗体又は(完全)ヒト抗体であり得る。好ましくは、抗体はヒト化抗体又はヒト抗体である。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0285】
抗体はまた、多価分子、多重特異性分子(例えば、ダイアボディ)、融合分子、アプマー、アビマー、又は他の天然に存在する分子若しくは組換えにより作製された分子を含み得る。本発明において有用な例示的抗体は、抗体様分子を含む。抗体様分子は、標的分子(例えば、Gill(2006)Curr Opin Biotechnol 17:653-658;Nygren(1997)Curr Opin Struct Biol 7:463-469;Hosse(2006)Protein Sci 15:14-27を参照されたい)に結合することで機能を発揮し得る分子であり、例えば、DARPin(国際公開第2002/020565号)、アフィボディ(国際公開第1995/001937号)、アビマー(国際公開第2004/044011号;国際公開第2005/040229号)、アドネクチン(国際公開第2002/032925号)、フィノマー(国際公開第2013/135588号)等が挙げられる。
【0286】
本発明内の抗体の非限定的な例は、抗CD20抗体、抗CD40抗体、抗HER2抗体、抗IL6抗体、抗IgE抗体、抗IL13抗体、抗TIGIT抗体、抗PD-L1抗体、抗VEGF-A抗体、抗VEGF-A/ANG2抗体、抗CD79b抗体、抗ST2抗体、抗D因子抗体、抗IX因子抗体、抗X因子抗体、抗aベータ抗体、抗tau抗体、抗CEA抗体、抗CEA/CD3抗体、抗CD20/CD3抗体、抗FcRH5/CD3抗体、抗Her2/CD3抗体、抗FGFR1/KLB抗体、FAP-4-1 BBL融合タンパク質、FAP-IL2v融合タンパク質、オクレリズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トシリズマブ、ファリシマブ、ポラツズマブ、ガンテネルマブ、シビサタマブ、クレネズマブ、モスネツズマブ、チラゴルマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、アテゾリズマブ、オビヌツズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、オマリズマブ、ラニビズマブ、エミシズマブ、セリクレルマブ、プラシネズマブ、グロフィタマブ、シムルカフスプアルファ、及びRG7827である。
【0287】
本明細書において好ましいのは、抗CD20/抗CD3抗体(特に抗CD20/抗CD3二重特異性抗体、特にグロフィタマブ)、抗Her2抗体(特にトラスツズマブ)、及び/又は抗IL6受容体抗体(特にトシリズマブ)である。
【0288】
本明細書に記載の本発明の方法をトラスツズマブの精製に使用する場合、トラスツズマブ溶液をプロテインAクロマトグラフィーに供した後に工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」を行うことが想定される。
【0289】
グロフィタマブは、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体であり、RG6026としても知られている。グロフィタマブのアミノ酸配列は、PCT/EP2015/067776(国際公開第2016/020309号)に開示されている。本明細書に記載の本発明の方法をグロフィタマブの精製に使用する場合、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」は、グロフィタマブ溶液を混合モード陰イオン交換クロマトグラフィー(MMAEX)、すなわちコンディショニング後プロテインA溶出液に供する前に行うことが想定される。グロフィタマブ精製に関連して、MMAEX負荷溶液という用語は、MMAEXクロマトグラフィーに供する前の抗体溶液を指す。
【0290】
好ましい一態様では、目的のタンパク質はトシリズマブであり、阻害剤はオルリスタットBであり、固体担体にカップリングするためのリンカーによって分離されたアジド基及びビオチン基を含む薬剤(リンカー)はアゾビオチンアジドであり、固体担体はストレプトアビジンMagセファロース(ビーズ)(実施例1及び2を参照)である。
【0291】
好ましい一態様では、目的のタンパク質はグロフィチマブであり、阻害剤はオルリスタットBであり、固体担体にカップリングするためのアジド基及びビオチン基を含む薬剤(リンカー)はビオチン-PEG4-アジドであり、固体担体はストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ(実施例3を参照)である。
【0292】
好ましい一態様では、目的のタンパク質はグロフィチマブであり、阻害剤はオルリスタットBであり、固体担体にカップリングするためのアジド基及びアミノ基を含む薬剤(リンカー)はアジド-PEG4-アミンであり、固体担体はNHS活性化セファロース(登録商標)4高速フロービーズ(実施例3を参照)である。
【0293】
好ましい一態様では、目的のタンパク質はトラスツズマブであり、阻害剤はオルリスタットA又はオルリスタットBであり、固体担体にカップリングするためのアジド基及びビオチン基を含む薬剤(リンカー)はビオチン-PEG4-アジドであり、固体担体はストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ(実施例4を参照)である。
【0294】
好ましい一態様では、目的のタンパク質はトラスツズマブであり、阻害剤はオルリスタットA又はオルリスタットBであり、固体担体にカップリングするためのアジド基及びアミノ基を含む薬剤(リンカー)はアジド-PEG4-アミンであり、固体担体はNHS活性化セファロース(登録商標)4高速フロービーズ(実施例4を参照)である。
【0295】
上記の薬剤/リンカーは、ビオチン-PEG4-アジド(CAS1309649-57-7)、アゾ-ビオチン-アジド(CAS1339202-33-3)(アゾ-ビオチン-PEG3-アジドとしても知られる)及びアジド-PEG4-アミン(CAS951671-92-4)として知られている。
【0296】
トシリズマブは抗IL6受容体抗体である。トシリズマブのCAS登録番号は375823-41-9である。INNトシリズマブは、WHO Drug Information,Vol.18,No.3,2004に開示されている。
【0297】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」(目的のタンパク質)及び特に「抗体」という用語は、そのバイオシミラーを含む及び/又はそれに関する。したがって、本明細書で使用される場合、「タンパク質」(目的のタンパク質)及び特に「抗体」という用語は、それぞれ「タンパク質及び/又はそのバイオシミラー」(又は同様に「目的のタンパク質及び/又はそのバイオシミラー」)、「抗体及び/又はそのバイオシミラー」等を指すと理解することができる。
【0298】
バイオシミラーは、既に承認されている別の生物学的薬品(「基準薬品」)に非常に類似した生物学的医薬製品(生物製剤としても知られている)である。本明細書で使用される場合、「基準薬品」はまた、特にその「基準タンパク質/基準目的タンパク質」が承認されている場合(EMA、FDA等の当局によって)、本明細書で定義される「基準タンパク質/基準目的タンパク質」を指す。
【0299】
バイオシミラーは、全ての生物学的医薬品に適用される医薬品の品質、安全性及び有効性の同じ基準に従って承認されている。本明細書で使用される場合、「バイオシミラー」という用語は、一般に、本明細書で定義される基準タンパク質/目的タンパク質と同じ、すなわち同一の(又は実質的に同じ)アミノ酸配列を有するタンパク質/目的タンパク質を指す。「バイオシミラー」は、基準タンパク質/目的のタンパク質とは異なるグリコシル化又は他の特徴を有し得ることが理解される。
【0300】
例示的な基準タンパク質/目的のタンパク質は本明細書に記載され、例えば、オクレリズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、トシリズマブ、ファリシマブ、ポラツズマブ、ガンテネルマブ、シビサタマブ、クレネズマブ、モスネツズマブ、チラゴルマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、アテゾリズマブ、オビヌツズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、オマリズマブラニビズマブ、エミシズマブ、セリクレルマブ、プラシネズマブ、グロフィタマブ、シムルカフスプアルファ、及びRG7827である。本明細書において好ましいのは、トラスツズマブ、トシリズマブ及びグロフィタマブである。
【0301】
基準タンパク質/目的のタンパク質のアミノ酸配列は、INN及び関連する刊行物を介して容易に同定可能である。
【0302】
上記に従って、特定の基準タンパク質(基準目的タンパク質)が本明細書で言及される場合、特定の基準タンパク質(基準目的タンパク質)は、そのバイオシミラー(好ましくは、バイオシミラーは、基準目的タンパク質と同じアミノ酸配列を有するタンパク質である)を含み、それに関する。
【0303】
例えば、「抗CD20/抗CD3抗体」という用語は、「抗CD20/抗CD3抗体及び/又はそのバイオシミラー」を指すことができる(好ましくは、バイオシミラーは、基準抗CD20/抗CD3抗体と同じアミノ酸配列を有する抗CD20/抗CD3抗体である)。
【0304】
例えば、「抗CD20/抗CD3二重特異性抗体」という用語は、「抗CD20/抗CD3二重特異性抗体及び/又はそのバイオシミラー」を指すことができる(好ましくは、バイオシミラーは、基準抗CD20/抗CD3二重特異性抗体と同じアミノ酸配列を有する抗CD20/抗CD3二重特異性抗体である)。
【0305】
例えば、「グロフィタマブ」という用語は、「グロフィタマブ及び/又はそのバイオシミラー」を指すことができる(好ましくは、バイオシミラーは、基準抗体グロフィタマブと同じアミノ酸配列を有する抗体である)。
【0306】
例えば、「抗Her2抗体」という用語は、「抗Her2抗体及び/又はそのバイオシミラー」を指すことができる(好ましくは、バイオシミラーは、基準抗Her2抗体と同じアミノ酸配列を有する抗Her2抗体である)。
【0307】
例えば、「トラスツズマブ」という用語は、「トラスツズマブ及び/又はそのバイオシミラー」(好ましくは、バイオシミラーは基準抗体トラスツズマブと同じアミノ酸配列を有する抗体である)を指すことができる。
【0308】
例えば、「抗IL6受容体抗体」という用語は、「抗IL6受容体抗体及び/又はそのバイオシミラー」を指すことができる(好ましくは、バイオシミラーは、基準抗IL6受容体抗体と同じアミノ酸配列を有する抗IL6受容体抗体である)。
【0309】
例えば、「トシリズマブ」という用語は、「トシリズマブ及び/又はそのバイオシミラー」(好ましくは、バイオシミラーは基準抗体トシリズマブと同じアミノ酸配列を有する抗体である)を指すことができる。
【0310】
上記の説明は、必要な変更を加えて、本明細書中に開示される全ての目的のタンパク質/タンパク質、具体的には抗体に適用される。
【0311】
本発明は更に、タンパク質製剤を調製するための方法に関する。タンパク質製剤を調製するための上記方法は、本明細書中上で記載されるような方法、及び更に、タンパク質を含む組成物への界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルの添加を含み得る。言い換えれば、タンパク質製剤を調製するための方法は、本明細書に記載の方法によって調製されたタンパク質を含む組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを補充することを含み得る。
【0312】
本明細書で上記に示すように、提供される方法は、宿主細胞タンパク質、特に加水分解酵素等の不純物の含有量が低減された、及び/又は加水分解活性が低減されたタンパク質組成物を調製するために使用することができる。したがって、本発明に従って調製されたタンパク質組成物は、タンパク質製剤を調製するために有利に使用することができ、後者は、例えば、界面活性剤のような、そのような宿主細胞タンパク質の基質がタンパク質製剤中に存在する場合でも、改善された(物理的)安定性を示す。好ましくは、粒子形成の減少、好ましくは目に可視粒子形成が結果的に長期貯蔵中に起こらない。
【0313】
したがって、本発明は、一態様では、タンパク質製剤を調製するための方法であって、本明細書に上記の方法の工程を含み、タンパク質製剤を調製するための方法が、タンパク質を含む組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを添加することを更に含む、方法に関する。
【0314】
一実施形態では、タンパク質製剤を調製するための方法は、
(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤と接触させる工程であって、前記加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程、
(ii)該タンパク質を含む組成物を回収する工程
を含み、
該タンパク質を含む組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを更に添加する工程を含む。
【0315】
本発明は更に、一態様では、タンパク質製剤を調製するための方法に関し、タンパク質製剤を調製する方法は、本明細書に上記の方法によって得られるか又はそれによって得ることができるタンパク質を含む組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを添加することを更に含む。
【0316】
界面活性剤は、共溶媒及び安定剤として有用である。それらは、親水性表面及び親油性表面の両方と会合して、タンパク質のような成分の分散及び構造安定性を維持することによって機能する。界面活性剤は、主に、気液界面及び固液界面の剪断等の機械応力に対するタンパク質安定性を高めるために、タンパク質製剤に添加される。本明細書で使用される場合、「界面活性剤」という用語は、特に本明細書で説明及び定義される「脂肪酸エステル」を指す。
【0317】
界面活性剤が分解されると、界面活性剤分解生成物は可視粒子又はサブビジブル粒子を形成し得る。また、タンパク質製剤中の界面活性剤濃度が低下すると、タンパク質は、場合によっては溶液中で構造的に不安定になり、最終的に可視粒子又はサブビジブル粒子になる多量体凝集体を形成し得ることも想定される。
【0318】
「脂肪酸エステル」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、エステル結合を介して頭部基に連結された脂肪酸鎖を含有する任意の有機化合物を指す。エステル結合は、ヒドロキシル基(例えば、アルコール又はカルボン酸)がアルコキシ基に置き換えられた場合に形成される。通常、エステルはカルボン酸及びアルコールから誘導される。アルコール基は、一般に頭部基と呼ばれる。アルコールは、グリセロール、ソルビトール、ソルビタン、イソソルビド等であってもよい。ポリソルベートの場合、エステル化は、カルボン酸と、例えばソルビトールに結合したポリオキシエチレン繰り返し単位の末端ヒドロキシル基との間で起こる。
【0319】
「脂肪酸」又は「脂肪酸鎖」という用語は、脂肪族尾部を有するカルボン酸を意味する。脂肪族尾部は、単に、炭素及び水素、場合によっては酸素、硫黄、窒素及び/又は塩素置換を含む炭化水素鎖である。
【0320】
脂肪族尾部は、(飽和脂肪酸の場合のように)飽和していてもよく、これは、全ての炭素-炭素結合が単結合(すなわち、アルカン)であることを意味する。脂肪族尾部は、(不飽和脂肪酸の場合のように)不飽和であってもよく、1つ以上の炭素-炭素結合が二重結合(アルケン)又は三重結合(アルキン)である。
【0321】
脂肪酸は、一般に、脂肪族尾部に6個未満の炭素を有する短鎖脂肪酸、6~12個の炭素を有する中鎖脂肪酸、13~21個の炭素を有する長鎖脂肪酸、及び22個以上の炭素の脂肪族尾部を有する超長鎖脂肪酸と呼ばれる。上述のように、脂肪酸はまた、剛性及び融点と相関する飽和度に従って分類される。一般的な脂肪酸としては、カプリル酸(8個の炭素:0個の二重結合;8:0)、カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、ミリストレイン酸(14:1)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1)、サピエン酸(16:1)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、エライジン酸(18:1)、バクセン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リネラジック酸(18:2)、アルファ-リノレン酸(18:3)、アラキジン酸(20:0)、アラキドン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5)、ベヘン酸(22:0)、エルカ酸(22:1)、ドコサヘキサエン酸(22:6)、リグノセリン酸(24:0)、及びセロチン酸(26:0)が挙げられる。
【0322】
好ましくは、脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレンソルビタン又はイソソルビド脂肪酸モノ-、ジ-又はトリエステルである。好ましい実施形態では、本発明内の脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンのモノエステル、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンのモノエステル又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノエステルである。
【0323】
ポリオキシエチレン(4)ソルビタン、ポリオキシエチレン(5)ソルビタン又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノエステルは、好ましくは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート120及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。ポリソルベート20は、大部分がポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノラウレートエステルを含む。ポリソルベート40は、大部分がポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノパルミチン酸エステルを含む。ポリソルベート60は、大部分がポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノステアリン酸エステルを含む。ポリソルベート61は、大部分がポリオキシエチレン(4)ソルビタンのモノステアリン酸エステルを含む。ポリソルベート80は、大部分がポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノオレイン酸エステルを含む。ポリソルベート81は、大部分がポリオキシエチレン(5)ソルビタンのモノオレイン酸エステルを含む。ポリソルベート120は、大部分がポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノステアリン酸エステルを含む。
【0324】
別の好ましい実施形態では、脂肪酸エステルがポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノエステルである。好ましくは、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノエステルは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリソルベート120及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノエステルは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。最も好ましくは、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノエステルは、ポリソルベート20、ポリソルベート80及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0325】
別の好ましい実施形態では、本発明内の脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのトリエステルである。好ましくは、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのトリエステルは、ポリソルベート65、ポリソルベート85及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。ポリソルベート65は、大部分がポリオキシエチレン(20)ソルビタンのリステアリン酸エステルを含む。ポリソルベート85は、大部分がポリオキシエチレン(20)ソルビタンのトリオレイン酸エステルを含む。
【0326】
別の好ましい実施形態では、本発明内の脂肪酸エステルはモノ-又はジアシルグリセロール、サッカライド-脂肪酸エステル、又はα-トコフェリルPEGスクシネート(TPGS)である。本明細書で言及される全ての界面活性剤を組み合わせることができることは明らかである。
【0327】
上述のように、界面活性剤の分解は、脂肪酸エステルの加水分解であり得る。加水分解による界面活性剤の損失は、タンパク質の凝集をもたらすことができ、可視粒子の形成及び/又はサブビジブル粒子形成をもたらし得る。また、界面活性剤自体の分解生成物は、可視粒子及び/又はサブビジブル粒子の形成をもたらし得る。本明細書で想定され、上に記載されるように、本発明の方法は、タンパク質を含む組成物における加水分解活性を低下させ得る。したがって、タンパク質を含む組成物から調製された製剤は、加水分解活性が低下している可能性があるか、又は加水分解活性を本質的に含まないことも想定される。当業者は、調製された製剤における加水分解活性の低下又は加水分解活性がないことにより、調製された製剤中の可視粒子及び/又はサブビジブル粒子の量が減少することを認識するであろう。調製された製剤は、可視粒子及び/又はサブビジブル粒子を含まないか、又は本質的に含まないことも可能である。調製された製剤は、貯蔵時に可視粒子及び/又はサブビジブル粒子を含まないか、又は本質的に含まないことが特に重要である。対応する定義は、上記で既に提供されている。これらの定義及び説明は、ここでは必要な変更を加えて適用される。
【0328】
したがって、本発明は、一態様では、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法に関し、タンパク質製剤は、特に貯蔵時に、可視粒子及び/又はサブビジブル粒子を(本質的に)含まない。
【0329】
可視粒子及びサブビジブル粒子は、分析方法によって特徴付けられ(方法のリストについては表Aを参照されたい)、対応する規制(EP2.9.19、EP2.9.20、USP<787>、USP<788>、USP<789>)内の要件に従って分類される。粒子の定量化及び化学的同定は、粒子リスク評価を知らせるために使用される。目視検査による可視粒子の検出は確率的であり、粒径、形態、色、密度、反射率、周囲の配合物の特性、測定条件、及び人間の性能に依存する。公開された研究は、150μmが、USP<1790>(2011)AAPS PharmSciTech.12:215-221)で論じられているように、人間の検査員によって70%を超える確率で検出される(方法を較正するために使用される)球形ポリスチレン粒子標準のサイズであることを示している。
【0330】
サブビジブル粒子はまた、10μm以上及び25μm以上の粒子(及び眼科用溶液については50μm以上)について薬局方及び製品仕様の限界に従って評価される。2μm以上及び5μm以上の粒子集団も通常、特に製品開発中に監視される。現在利用可能な技術(例えば、HIAC)に基づくサブビジブル粒子の検出の上限は100μmである。
【0331】
米国薬局方(USP)(USP<788>)と一致して、「可視グレーゾーン」は、可視検査による粒子検出の確率が150μmでの70%未満からサブビジブル粒子検出能力の上端である50μm付近で0まで低下する、可視検査の下端のサイズ範囲を指す。
粒子の許容量は、10個の容器あたり7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、2個未満、又は1個未満であってもよい。
【0332】
当業者は、粒子に関する追加情報(例えば、欧州薬局方(EP)2.9.19、EP2.9.20、USP<787>、USP<788>、USP<789>、Mathonet(2016)PDA J Pharm Sci Technol.70:392-408,Rech(2020)J.Pharm.Sci.109:1725-1735)を受け取る方法をよく知っている。
【0333】
【0334】
既に上述したように、当局は、医薬製剤の可視粒子及び/又はサブビジブル粒子の数に制限を与える。その結果、医薬製剤は、可視粒子及び/又はサブビジブル粒子の形成のために、一定時間後にはもはや使用することができない。
【0335】
可視粒子及び/又はサブビジブル粒子の形成が減少したタンパク質製剤は、安定性が増加しているか、又はより安定であることが本明細書で想定される。言い換えれば、可視粒子及び/又はサブビジブル粒子の形成が減少したタンパク質製剤は、貯蔵寿命が増加する。
【0336】
したがって、加水分解活性が低下したタンパク質製剤は、安定性の増加、貯蔵寿命の増加、又はより長い安定性を有し得る。
【0337】
したがって、本発明は、一態様では、タンパク質製剤を調製するための方法であって、本明細書に記載の方法の工程を含み、タンパク質製剤を調製するための方法が、タンパク質を含む組成物に、界面活性剤、好ましくは脂肪酸エステルを添加することを更に含む、方法に関し、該タンパク質製剤は、安定性の増加、貯蔵寿命の増加、及び/又は(より長い)安定性、特に貯蔵安定性を有する。
【0338】
医薬品(例えば、本明細書で定義されるタンパク質製剤)の長期安定性データは、貯蔵寿命を通して適切な安定性を確認するために生成されなければならない。バイオテクノロジー医薬品については、典型的には3つの標準的な長期条件が考慮される。長期条件は推奨保存条件とも名付けられる。これは、提案されたラベル保存条件を表す。
【0339】
標準的な長期条件は、以下を含むことができる:
(i)最低6ヶ月の期間(ICH Q5Cによる)、冷凍庫(-20℃)(ICH Q1Aによる)での貯蔵、
(ii)最低6ヶ月の期間(ICH Q5Cによる)、冷蔵庫(5℃(ICH Q1Aによる)、すなわち医薬品の推奨保存条件)での貯蔵、
(iii)最低6ヶ月の期間(ICH Q5Cによる)、室温(25℃)(ICH Q1Aによる)での貯蔵。
【0340】
標準的な長期条件(「標準的な長期保存条件」又は「推奨保存条件」とも呼ばれる)は、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、又は少なくとも60ヶ月間の保存を含み得る。
【0341】
したがって、医薬品(例えば、本明細書で定義されるタンパク質製剤)の安定性は、そのような「標準的な長期条件下」で試験及び/又は確認することができる。
【0342】
実際には、市販品の承認には少なくとも18ヶ月の貯蔵寿命(すなわち、安定性)が必要であることが理解される。したがって、本明細書で使用される標準的な長期条件(「標準的な長期保存条件」又は「推奨保存条件」とも呼ばれる)は、好ましくは少なくとも18ヶ月間の保存を含む。しかしながら、実際の目的では、データをより長い保存時間に外挿することができるため、少なくとも6ヶ月間の長期安定性試験で十分であり得る。
【0343】
「少なくともXヶ月」という用語は、特定の期間、すなわち「Xヶ月」を指すことができることが理解される。例えば、「少なくとも6ヶ月間(の貯蔵)」という用語は、「6ヶ月間(の貯蔵)」等を指すことができる。
【0344】
重要な品質属性は、適切な分析方法論を適用して定期的に評価されるべきである。
【0345】
本明細書中上に記載されるように、本発明の方法の工程(i)は、タンパク質を含む組成物における加水分解活性を低下させることが想定される。
【0346】
したがって、本発明は、一態様では、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法に関し、タンパク質製剤は、該方法の工程(i)に供されないタンパク質製剤と比較して、安定性の増加、貯蔵寿命の増加、又はより長い安定性を有する。
【0347】
本発明は更に、タンパク質製剤を4℃で最大18ヶ月間、最大24ヶ月間、最大36ヶ月間又は最大60ヶ月間貯蔵することができ、特に製剤が(より)安定であり、特に(より)貯蔵安定性である、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法に関する。
【0348】
例えば、製剤は、安定性試験中、好ましくは本明細書に記載の標準的な長期条件下、例えば2~8℃、好ましくは約5℃で、少なくとも2ヶ月間、より好ましくは少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、又は少なくとも60ヶ月間、実質的な可視粒子形成を示さない。
【0349】
実質的な可視粒子形成がないとは、20個未満の可視粒子が1mLの製剤中で形成されることを意味する。好ましくは、製剤の貯蔵について指定された条件での安定性試験中に、製剤1mL当たり15個以下、より好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、最も好ましくは1個未満の粒子が形成される。
【0350】
上述のように、本明細書で使用される場合、「可視粒子」とは、直径50μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは500μm以上、最も好ましくは1mm以上の粒子を意味する。粒子は、任意に拡大手段を使用して肉眼で観察するか、又は前述のように、例えばフィルムカメラ及びフィルム材料を分析するための適切な手段等の自動化されたプロセスによって観察することができる。
【0351】
上記のように、調製されたタンパク質製剤における加水分解活性が低下することが想定される。その結果、脂肪酸エステルの分解も、調製されたタンパク質製剤において低減され得る。
【0352】
したがって、本発明は、脂肪酸エステルの分解が、例えば、初期製剤(貯蔵開始前の製剤)と比較して、好ましくは24ヶ月以内に20%未満、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満である、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法に関する。これは、安定性試験中(好ましくは本明細書に記載の標準的な長期条件下)に決定することができる。
【0353】
好ましくは、脂肪酸エステルの分解は、例えば、初期製剤(貯蔵開始前の製剤)と比較して、24ヶ月以内に10%未満である。これは、安定性試験中(好ましくは本明細書に記載の標準的な長期条件下)に決定することができる。
【0354】
上述のように、タンパク質を含む組成物中のタンパク質は、好ましくは抗体である。したがって、本明細書では、本発明内のタンパク質製剤中のタンパク質が抗体であることも想定される。製剤中の抗体の濃度は、1mg/ml未満又は250mg/ml超であり得る。通常、抗体の濃度は1mg/ml~250mg/mlである。
【0355】
したがって、本発明は、タンパク質が抗体であり、抗体濃度が少なくとも1mg/ml~最大250mg/ml、好ましくは少なくとも5mg/ml~最大200mg/mlである、タンパク質製剤を調製するための方法に関する。
【0356】
例えば、抗体濃度は、5mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、100mg/ml、110mg/ml、120mg/ml、130mg/ml、140mg/ml、150mg/ml、160mg/ml、170mg/ml、180mg/ml、190mg/ml又は200mg/mlであり得る。
【0357】
当業者には明らかであるが、界面活性剤に加えて、タンパク質を含む組成物に追加の物質を添加してもよいことに留意されたい。そのような物質は、緩衝剤、添加物、希釈剤、安定剤、担体及びそれらの組み合わせであり得る。
【0358】
したがって、本発明は、タンパク質を含む組成物に、緩衝剤、添加物、希釈剤、安定剤、及び/又は担体を添加することを更に含む、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法に関する。
【0359】
適切な緩衝剤、添加物、希釈剤、安定剤、及び担体の例は、当技術分野で周知である。適切な緩衝液、添加物、希釈剤、安定剤、及び担体は、タンパク質製剤中のタンパク質が当該緩衝液、賦形剤、希釈剤、安定剤、及び担体と接触してその生物学的活性を保持する限り、任意の材料を含み得る。
【0360】
緩衝剤の非限定的な例は、本明細書において上に提供されている。他の物質の非限定的な例は、トレハロース、スクロース、ソルビトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウム、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール、ヒト血清アルブミン、レシチン、デキストラン、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール、N-アセチルシステイン、N-アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロール、酢酸トコフェロール、L-アスコルビン酸及びその塩、L-パルミチン酸アスコルビル、L-ステアリン酸アスコルビル、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル及び没食子酸プロピル、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム及びメタリン酸ナトリウムである。
【0361】
調製されたタンパク質製剤は、医薬組成物(又は言い換えれば医薬製剤)であり得ることは明らかである。
【0362】
したがって、本発明は、タンパク質製剤が医薬組成物である、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法に関する。
【0363】
本明細書に記載の医薬組成物の投与は、種々の方法、例えば、非経口、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、局所、気管支内、肺内及び鼻腔内投与、並びに局所処置のために所望される場合、病巣内投与によって行われ得る。本明細書中に記載される医薬組成物はまた、例えば、具体的に影響を受ける器官のような外部又は内部の標的部位への生物学的送達によって、標的部位に直接投与され得る。
【0364】
タンパク質製剤は、例えばin vivo又はin vitro/ex vivo診断方法のための診断組成物であり得ることも本明細書で想定される。
【0365】
本発明の利点は、加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化され、タンパク質及びそれに由来するタンパク質製剤を含む組成物を汚染しないことである。
【0366】
したがって、本発明は、タンパク質を含む組成物及び/又はタンパク質製剤に関し、タンパク質を含む組成物及び/又はタンパク質製剤は、加水分解酵素阻害剤を本質的に含まない(例えば、加水分解酵素阻害剤は、タンパク質及び/又はタンパク質製剤を含む組成物中に存在せず(又はそれらの存在は検出できない)、又は加水分解酵素阻害剤は、微量でのみ存在する)。
【0367】
本発明は更に、本明細書に記載の方法によって得られるか又はそれによって得ることができるタンパク質を含む組成物に関する。
【0368】
したがって、本発明はまた、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法によって得られるか又はそれによって得ることができるタンパク質製剤に関する。
【0369】
本明細書では、本発明のタンパク質製剤が医薬として使用されることも想定される。換言すれば、本発明のタンパク質製剤は、医薬として使用されるか、又は薬品に使用されることが想定される。
【0370】
したがって、本発明は更に、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法によって得られるか又はそれによって得ることができるタンパク質製剤であって、医薬として使用するためのタンパク質製剤に関する。したがって、本発明は更に、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法によって得られるか又はそれによって得ることができるタンパク質製剤であって、薬品に使用するためのタンパク質製剤に関する。加えて、本発明は更に、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法によって得られるか又はそれによって得ることができるタンパク質製剤であって、疾患の処置において使用するためのタンパク質製剤に関する。本発明はまた、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法によって得られるか又はそれによって得ることができるタンパク質製剤であって、疾患を処置するための医薬の調製に使用するためのものであるか、又は診断組成物の調製に使用するためのものであるタンパク質製剤に関する。
【0371】
更に、本発明は、本明細書に記載のタンパク質製剤を調製するための方法によって得られるか又はそれによって得ることができるタンパク質製剤を、それを必要とする対象に投与することを含む、疾患の処置方法に関する。
【0372】
固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤は、タンパク質及び/又はタンパク質製剤を含む組成物を調製するために使用できることは明らかである。
【0373】
したがって、一態様では、本発明は、タンパク質を含む組成物を調製するための固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用に関する。したがって、一態様では、本発明はまた、タンパク質製剤を調製するための固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用に関する。一態様では、本発明はまた、タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤を調製するための固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用に関する。一態様では、本発明はまた、タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤における加水分解活性を除去又は低減するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用に関する。一態様では、本発明はまた、タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤中の不純物、特に宿主細胞タンパク質、好ましくは加水分解酵素(複数可)を、除去又は(その含有量を)低減するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用に関する。一態様では、本発明はまた、タンパク質組成物及び/又はタンパク質製剤中の可視粒子及び/若しくはサブビジブル粒子(の形成)並びに/又は界面活性剤分解物の発生/存在を阻害又は低減するための、固体担体上に固定化された加水分解酵素阻害剤の使用に関する。
【0374】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語又はそれらの文法上の変形は、記載された特徴、整数、工程又は構成要素を特定するものとして解釈されるべきであるが、1つ以上の追加の特徴、整数、工程、構成要素又はそれらの群の追加を排除するものではない。「含む(comprising)」/「含む(including)」/「有する(having)」という用語は、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語を包含する。したがって、「含む(comprising)」/「含む(including)」/「有する(having)」という用語が本明細書で使用される場合はいつでも、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は好ましくは「からなる(consisting of)」に置き換えることができる。
【0375】
「含む(comprising)」/「含む(including)」/「有する(having)」という用語は、任意の更なる成分(又は同様に、特徴、整数、工程等)が存在し得ることを意味する。
【0376】
「からなる」という用語は、更なる成分(又は同様に、特徴、整数、工程等)が存在し得ないことを意味する。
【0377】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語又はその文法上の変形は、記載された特徴、整数、工程又は構成要素を特定するものと解釈されるべきであるが、1つ以上の追加の特徴、整数、工程、構成要素又はそれらの群の追加を排除するものではなく、追加の特徴、整数、工程、構成要素又はそれらの群が、特許請求される製品、組成物、デバイス又は方法等の基本的で新規な特徴を実質的に変更しない場合に限られる。
【0378】
したがって、「から本質的になる」という用語は、特定の更なる成分(又は同様に、特徴、整数、工程等)、すなわち製品、組成物、デバイス又は方法の本質的な特性に実質的に影響を及ぼさない成分が存在し得ることを意味する。換言すれば、「から本質的になる(consisting essentially)」という用語(これは、「実質的に含む(comprising substantially)」という用語と本明細書では交換可能に使用され得る)は、製品、組成物、デバイス又は方法の本質的な特徴が他の成分の存在によって実質的に影響されない限り、必須成分(又は同様に、特徴、整数、工程等)に加えて、製品、組成物、デバイス又は方法中の他の成分の存在を可能にする。
【0379】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は±10%を指す。
【0380】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ以上を意味し得る。
【0381】
本発明は、添付の非限定的な図面及び実施例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0382】
【
図1A】固定化に使用される加水分解酵素阻害剤の化学構造。(A)実施例4で使用されるアルキン置換オルリスタット変異体1「オルリスタットA」(式(1)又は同様に化合物A)。
【
図1B】固定化に使用される加水分解酵素阻害剤の化学構造。(B)実施例1~4で使用されるアルキン置換オルリスタット変異体2「オルリスタットB」(式(2)又は同様に化合物B)。
【
図1C】固定化に使用される加水分解酵素阻害剤の化学構造。(C)実施例5で使用される「ビス-エノール-エステル」試薬(式(3)又は同様に化合物C)。
【
図2】ストレプトアビジンMagセファロースビーズ上に固定化されたオルリスタットBを使用した、トシリズマブ溶液からの組換えLPLA2の除去。オルリスタットB:Mag-セファロース-ストレプトアビジン+アゾ-ビオチン-アジド(アゾ-ビオチン-PEG3-アジド)+アルキン-オルリスタットB;ビーズ対照:Mag-セファロース-ストレプトアビジン+アゾ-ビオチン-アジド;5mg/mLトシリズマブ+50ppm rec.LPLA2(=250ng/mL LPLA2)におけるフィッシング。(A)コンジュゲートビーズとのインキュベーション後のLPLA2スパイクトシリズマブ上清のリパーゼ活性アッセイ。5ng/mLの等価LPLA2について活性を示す。(B)オンビーズ消化した試料からのLPLA2 LC MS/MS分析のスペクトルカウント。
【
図3】100mg/mLトシリズマブ+50ppm rec.LPLA2(=5μg/mL LPLA2)におけるコンジュゲートビーズによるフィッシング後のトシリズマブ溶液のリパーゼ活性アッセイ。5ng/mLの等価LPLA2について活性を示す。オルリスタットB:Mag-セファロース-ストレプトアビジン+アゾ-ビオチン-アジド+アルキン-オルリスタットB;リンカー対照:Mag-セファロース-ストレプトアビジン+アゾ-ビオチン-アジド;mAb+LPLA2:100g/lトシリズマブ+50ppm rec.LPLA2(=5μg/mL LPLA2);mAb100g/Lトシリズマブ。
【
図4】グロフィタマブMMAEX負荷溶液のリパーゼ活性アッセイ。所与の活性を100μgのタンパク質に対して正規化する。各バーは、1つの技術的なフィッシング複製物を表す。グロフィタマブMMAEX負荷溶液におけるフィッシング実験のためのビーズ組成物は以下の通りであった:NHS活性化セファロース。「オルリスタットBを含むNHS」:NHS活性化セファロースビーズ+アジド-PEG4-アミン+アルキン-オルリスタットB;「オルリスタットBを含まないNHS」:NHS活性化セファロースビーズ+アジド-PEG4-アミン+ビオチン-PEG4-アルキン;「NHS」:NHS活性化セファロースビーズ。ストレプトアビジンセファロースビーズ。「オルリスタットBを含まないSeph-SA」:ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ+ビオチン-PEG4-アジド+アルキン-オルリスタットB;「オルリスタットBを含まないSeph-SA」:ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ+ビオチン-PEG4-アジド+ビオチン-PEG4-アルキン;「Seph-SA」:ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ。「グロフィタマブ対照」は、出発タンパク質組成物の活性を指す。利用可能なビーズ材料は、「NHS」、「オルリスタットBを含むSA」及び「SA」について2回のフィッシング実験を行うのに十分であったため、3回の測定は欠けている。
【
図5】トラスツズマブのコンディショニング後プロテインA溶出プール試料のリパーゼ活性アッセイ。ロードのみ、ビーズなし。所与の活性を100μgのタンパク質に対して正規化する。トラスツズマブのコンディショニング後プロテインA溶出プールにおける実験のためのビーズ組成物は以下の通りであった:オルリスタットAを含むSeph-NHS:NHS活性化セファロースビーズ+アジド-PEG4-アミン+アルキン-オルリスタットA;オルリスタットBを含むSeph-NHS:NHS活性化セファロースビーズ+アジド-PEG4-アミン+アルキン-オルリスタットB;オルリスタットを含まないSeph-NHS::NHS活性化セファロースビーズ+アジド-PEG4-アミン+ビオチン-PEG4-アルキン;オルリスタットAを含むSeph-SA:ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ+ビオチン-PEG4-アジド+アルキン-オルリスタットA;オルリスタットBを含むSeph-SA:ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ+ビオチン-PEG4-アジド+アルキン-オルリスタットB;オルリスタットを含まないSeph-SA:ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ+ビオチン-PEG4-アジド+ビオチン-PEG4-アルキン;トラスツズマブ対照は、出発タンパク質組成物の活性を指す。
【
図6】ビス-エノールエステル官能化ビーズに結合したリパーゼCalB2のペプチドピーク強度。共有結合したリパーゼCalB2(ビーズ表面露出アルキン基とのクリック反応後のビス-エノール-エステル部分(化合物C(又は同様に式(3))によって支持された洗浄工程後の官能化ビーズ上の2つのペプチド(ペプチドCalB2リパーゼ1:LMAFAPDYK及びCalB2リパーゼ2:PFAVGK)に基づく))のピーク強度(右)正規化レベルでのLC-MSベースの読み出しを示す。mAb吸着、消化及びLC-MS実験(左右)のための対照ペプチドとして非共有結合的に吸着されたmAb(ペプチドMab:FNWYVDGVEVHNAK)。
図6左は、
図6右に示す官能化ビーズと同じ試料処理工程を使用した非官能化ビーズを示す。非官能化ビーズは、ビス-エノール-エステル部分を欠いており、したがって、その表面に残留アルキン部分のみを有する。非共有結合的に吸着されたmAbペプチドは、ワークフロー全体における信頼性を提供する。欠損したリパーゼペプチドは、非共有結合したリパーゼを除去する洗浄プロトコルの能力を示す。
【
図7】タンパク質を含む組成物を調製するための概略的なプロセス。
図7は、本発明によるタンパク質(目的のタンパク質)を含む組成物を調製するための例示的なプロセス又は方法を示す。典型的なプロセス又は方法は、目的のタンパク質の(従来の)調製及び/又は精製、すなわち細胞培養物からタンパク質組成物を調製する少なくとも4つのその後の工程、続いて典型的には(少なくとも)3つの(従来の)クロマトグラフィー工程、任意に4つの(従来の)クロマトグラフィー工程を含む。したがって:タンパク質組成物が細胞培養又は培養上清から調製された後(工程1)、プロセスは、典型的には3つの後続の(従来の)クロマトグラフィー工程を含み、例えば通常、それぞれが異なる精製原理を採用する3つのカラム(任意に4つのカラム)を使用する(工程2~4、又は任意の工程5(カラム4)が含まれる場合、工程2~5)。最初に、細胞培養物(目的のタンパク質/タンパク質を産生する細胞)からの組成物を、例えば細胞をホモジナイズすることによって調製する。組成物は、細胞培養上清であってもよい。好ましくは、上記組成物は続いて精製され、例えば、組成物は次いで、細胞、細胞残屑及び/又は凝集体から(例えば濾過によって)分離された組成物である。したがって、(続いて精製される)組成物は、細胞、細胞残屑及び/又は凝集体から(濾過によって)分離された組成物であり、例えば、回収細胞培養液(Harvest Cell Culture Fluid)(HCCF)である。第2に、上記組成物を、例えばタンパク質調製及び/又は精製の更なる工程(工程2)によって更に精製する。タンパク質調製及び/又は精製の更なる工程は、好ましくはアフィニティークロマトグラフィー(好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィー)である。したがって、アフィニティークロマトグラフィー(好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィー)が好ましくは第1のクロマトグラフィー工程である。例えば、上記組成物(例えば、回収細胞培養液(HCCF))をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーに供する。言い換えれば、プロセスは、アフィニティークロマトグラフィーカラム(プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム)の使用を含む。第3に、次いで溶出液を第2のカラム(カラム2)/工程3)に供する。第4に、次いで、第2のカラムの溶出液を第3のカラムに供する(カラム3/工程4)。第5に、品質(例えば、目的のタンパク質の純度)が達成されないか、又は第4の工程の後(すなわち、3つのカラムの後(好ましくはそれぞれ異なる精製原理を使用する)、任意に第5の工程(例えば、第4の精製原理を有する第4のカラム)を使用することができる(カラム4/工程5)。当業者は、例えばコスト及び/又は複雑さの増加と品質の改善とのバランスをとる場合に、第5の工程が必要であるかどうか及び/又は有益であるかどうかを事例ごとに決定することができる。したがって、工程3~5は、任意の順序で、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))、混合モードクロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)であり得る。言い換えれば、カラム2~4は、任意の順序のイオン交換クロマトグラフィーカラム(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)カラム又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)カラム)、混合モードクロマトグラフィーカラム及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラムであり得る、すなわち、プロセスは、任意の順序の上記のカラムのいずれかの使用を含む。精製プロセスの開発中、当業者は、使用されるカラムの工程/順序を決定することができる。第6に、カラム3又は任意のカラム4(工程4及び任意に工程5)の後、溶出液をウイルス濾過に供し、次いで、第7に、限外濾過/ダイアフィルトレーション(UFDF)に供する。このプロセスは、工程「(i)タンパク質を含む出発組成物を加水分解酵素阻害剤(オルリスタット等)と接触させる工程であって、該加水分解酵素阻害剤が固体担体上に固定化される、工程」を含む(例えば、この工程は、加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー(加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー工程)である)。言い換えれば、このプロセスは、加水分解酵素阻害剤(例えば、オルリスタット)カラムの使用を含む。好ましくは、加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー/クロマトグラフィー工程は、アフィニティークロマトグラフィー(好ましくはプロテインAアフィニティークロマトグラフィー)の工程/工程2に続く。言い換えれば、このプロセスは、プロテインAカラムに(直接)続く加水分解酵素阻害剤(例えば、オルリスタット)カラムの使用を含む。あるいは、加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー/クロマトグラフィー工程は、工程3~5(工程3~5は、任意の順序のイオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX))、混合モードクロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)であり得る)のいずれか1つに続く。言い換えれば、このプロセスは、イオン交換クロマトグラフィーカラム(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)カラム又は陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)カラム)、混合モードクロマトグラフィーカラム及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラムを任意の順序で使用した(直)後の加水分解酵素阻害剤(例えば、オルリスタット)カラムの使用を含む。加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー/クロマトグラフィー工程は、通常、細胞培養物からタンパク質組成物を調製する最初の工程(例えば、HCCFに従わない)の(直)後に続かない。言い換えれば、加水分解酵素阻害剤クロマトグラフィー/クロマトグラフィー工程は、通常、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー)/工程2の前に行われない。これは、そのような初期タンパク質組成物(例えば、細胞培養物/細胞培養物の上清からのタンパク質組成物、好ましくはHCCF)が、典型的には依然として高度の不純物、例えば細胞、細胞残屑及び/又は凝集体を含むためである。したがって、このプロセスは通常、細胞培養物からタンパク質組成物を調製する最初の工程の後に(直接)加水分解酵素阻害剤(例えばオルリスタット)カラムを使用することを含まず、及び/又は通常、アフィニティークロマトグラフィーカラム(例えばプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム)を使用する前に加水分解酵素阻害剤(例えばオルリスタット)カラムを使用することを含まない。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0383】
実施例は、本発明を例示する。
【0384】
実施例1:ストレプトアビジンMag Sepharoseビーズに固定化したオルリスタットBを用いた加水分解活性の低下及びrec.LPLA2スパイクトシリズマブ溶液(5mg/mL)からのLPLA2の除去
以下の実験は、ストレプトアビジン磁気セファロースビーズ上に固定化されたオルリスタットB(式(2)又は化合物(B))(
図1Bを参照されたい)を使用したトシリズマブ溶液からの組換えリソソームホスホリパーゼA2(LPLA2)の除去を実証する。
【0385】
官能化ビーズを、クリックケミストリーあたりのオルリスタットB(ASM Research Chemicals GmbH)とアゾビオチン-アジド(アゾビオチン-PEG3-アジド)(Sigma-Aldrich;注文番号:900891;CAS 1339202-33-3)とのコンジュゲーション、及びストレプトアビジンに結合したビオチン基のストレプトアビジンに対する高い親和性を活用するストレプトアビジンMagセファロースビーズ(GE Healthcare)を使用したその後のカップリング工程を含む2段階手順によって調製した。
【0386】
クリック反応(試料/対照)を、表1に示す順序に従って反応管内で試薬を混合することによって行った。
【0387】
【表1】
表1:実施例1の銅触媒クリック反応組成物
【0388】
オルリスタット又は対照ビーズ用のDMSOのみのいずれかを含む両方の反応混合物を、ローラーミキサー上で室温で2時間インキュベートし、溶媒を真空遠心機(45℃、2時間)を使用して蒸発させた。ペレットを200μLのDMSOに溶解し、更なる使用まで4℃で保存した。
【0389】
ストレプトアビジンMagセファロースビーズとのコンジュゲーションのため、1mLの10%培地スラリーを1mLの1×PBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、pH7.4)で3回洗浄した。洗浄後、1mLの10%培地スラリーを、上記の100μLのクリック反応生成物(試料/対照、それぞれ2連)と混合し、ローラーミキサーで1時間インキュベートした。コンジュゲートビーズを1mLの1×PBSで5回洗浄し、更なる使用まで4℃で保存した。
【0390】
トシリズマブを、最終抗体濃度5mg/mL及びLPLA2濃度50ppm(250ng/mL)を得るため、rec.LPLA2でスパイクした(表2)。
【0391】
【表2】
表2:50ppmのLPLA2を5mg/mlのトシリズマブ溶液においてスパイクした
【0392】
フィッシング反応ごとに、500μLのLPLA2スパイクトシリズマブを、900rpmでEppendorf ThermoMixer(登録商標)において37℃で4時間、200μLのコンジュゲートビーズ(試料/対照)とインキュベートした。インキュベーション後、上清(試料/対照)をリパーゼ活性アッセイ(下記の「リパーゼ活性アッセイ」を参照されたい)によって評価し、オンビーズ消化及びLC-MS/MS分析のために処理したコンジュゲートビーズ(試料/対照)を評価した(下記の「オンビーズ消化及びLC-MS/MS」を参照されたい)。
【0393】
リパーゼ活性アッセイ
この段落は、実施例1、2、3及び4で行われたリパーゼ活性アッセイを記載する。リパーゼ活性アッセイは、基質エステル結合の切断による非蛍光基質(4-MUCA、Chem Impex Int’l Inc)の蛍光生成物(4-MU、Sigma-Aldrich)への変換をモニターすることによってリパーゼ活性を測定した。アッセイ反応混合物は、80μLの反応緩衝液(150mM Tris-HCl pH8.0、0.25%(w/v)Triton X-100及び0.125%(w/v)アラビアガム)、10μLの4-MUCA基質(DMSO中1mM)、及び10μLのタンパク質試料を含んでいた。対応する実施例で使用した試料濃度及び対応する緩衝液を表3に列挙する。
【0394】
【表3】
表3:リパーゼ活性アッセイで使用される抗体溶液の試料濃度及び対応する緩衝液の要約
*トラスツズマブコンディショニング後プロテインA溶出プールを、Amicon Ultra-0.5ml遠心フィルターユニット(10,000Daカットオフ、Merck Millipore)を使用することによって150mM Tris-HCl pH8.0に再緩衝化した。
**タンパク質溶液をビーズと共にインキュベートした後、各試料の試料濃度を再度測定した。これを、Thermo Scientific(商標)NanoDrop(商標)One Microvolume UV-Vis分光光度計を使用して2連で行った。
【0395】
各反応を96ウェル半面積ポリスチレンプレート(蓋付き黒色透明平底、Corning Incorporated)に技術的三連でセットアップし、Infinite 200Proプレートリーダー(Tecan Life Sciences)において反応プレートを37℃で2時間インキュベートすることによって蛍光シグナル(355nmで励起、460nmで発光)の増加を10分ごとにモニターした。MU生成速度を、蛍光時間経過(0.5時間~2時間)の傾きから求め、反応の生の速度(kraw[RFU/h])を表す。
【0396】
酵素ブランク反応を更に設定して、緩衝マトリックスによって引き起こされる基質の非酵素的切断を測定した。10μLのタンパク質試料を、反応混合物中の10μLの試料緩衝液(表3)に置き換えた。自己開裂速度(k自己開裂[RFU/h])を、蛍光の時間経過(0.5時間~2時間)の傾きから求めた。蛍光シグナル(RFU)をμMのMUに変換するために、標準的なMU 3連をプレートごとに添加した。10μLのMU(DMSO中100μM)に、10μLの試料緩衝液(表3)及び80μLの反応緩衝液を補充した。変換係数a[RFU/μM]は、蛍光シグナル(0.5時間~2時間)を平均し、ウェル中に存在するMUの最終濃度で割ることによって計算した。
【0397】
試料の反応速度(kraw[RFU/h])から酵素ブランクの反応速度(k自己開裂[RFU/h])を差し引き、項を変換係数a[RFU/μM]で割ることによって蛍光シグナルをμM MU/hに変換することにより、[μM MU/h]で示される試料のリパーゼ活性を決定した。活性は、ウェルあたりに適用したリパーゼ濃度(表3の行1及び2)又は100μgの抗体に対して正規化した活性(表3の行3及び4)のいずれかを報告した(
図2Aの説明も参照されたい)。
【0398】
オンビーズ消化及びLC-MS/MS
オンビーズ消化のため、コンジュゲートビーズ(試料、対照)を1mLの1×PBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4)で3回、1mLの1%(w/v)SDSで3回、1mLの変性緩衝液(400mM Tris/HCl、8M GdmCl、pH8.5)で3回、1mLの1×PBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4)で5回連続して洗浄した。上清を捨て、ビーズを300μLの変性緩衝液(400mM Tris/HCl、8M GdmCl、pH8.5)及び10μLのDTT溶液(PWA中0.1g DTT/mL)中、Eppendorf ThermoMixer(登録商標)内、50℃、900rpmで60分間インキュベートした。インキュベーション後、ヨード酢酸溶液10μL(PWA中0.33g/mL)を添加し、室温で暗所で30分間インキュベートした。ビーズを1mLの消化緩衝液(0.1M Tris/HCl、pH7.0)で洗浄し、上清を除去した。250μLの消化緩衝液(0.1M Tris/HCl、pH7.0)及び5μLの0.25mg/mLトリプシン溶液(100μlの10mM HCl中の25μgの凍結乾燥トリプシン)を添加した後、Eppendorf ThermoMixer(登録商標)において900rpmで50℃で18時間、オンビーズ消化を行った。上清を新しい反応管に移し、トリプシンを25μLのギ酸溶液(PWA中10%)を添加することによって不活性化し、試料を分析まで4℃で保存した。
【0399】
ペプチドを、Thermo Fisher Scientific Vanquish-H UHPLCシステムを使用してCSH130 C18(1.7μm、2.1mm×150mm)カラム(Waters)で60℃で分離した。100μLの試料を300μL/分の流速で注入した。移動相Aは水中0.1%ギ酸からなり、移動相Bはアセトニトリル中0.1%ギ酸からなった。65分間の勾配は、45分間で0%~40%Bの線形増加で開始し、続いて95%Bで5分間カラム洗浄し、1%Bで10分間カラムを再平衡化した。更に、結果のキャリーオーバ及び歪みを防止するために、各試料の前の溶離液Aラン(65分勾配)及び10%メタノールによる30分洗浄勾配を実施した。UHPLCシステムを、DuoSpray Ion Sourceを備えたTripleTOF 6600質量分析計(Sciex)と連結した。タンデム質量分析を、以下の設定でデータ依存型取得(DDA)を使用して行った:上位20個の最も豊富なイオンを、200~2000m/zの質量範囲にわたって全てのMSサーベイスキャン(250ms)から選択した。MS/MSスキャン(69ms)を、+2~+5の電荷状態を含む100~1600m/z(高感度モード)の質量範囲内で取得した。MS/MS選択のため、動的排除を6秒間、前駆イオン閾値を150カウント/秒に設定した。
【0400】
MS/MSデータを、ProteinPilotソフトウェア(Sciex、バージョン5.0)を使用して、Uniprot.orgからの全てのCHOタンパク質を含有する35,862個のタンパク質配列(Swiss-Prot及びTrEMBL注釈が含まれる)、医薬品配列及びヒトケラチン不純物を含むカスタマイズされたCHOデータベースに対して検索した。陽性タンパク質同定のための許容基準は、1%未満の偽発見率で設定され、少なくとも2つの特有なペプチドは95%の信頼度であった。
【0401】
結論
50ppmのrec.LPLA2でスパイクした5g/lのトシリズマブ溶液を固定化されたオルリスタットBとインキュベートすると、リパーゼ活性アッセイ(
図2A)によって示されるように、オルリスタットBを含まないそれぞれの対照(ストレプトアビジンMagセファロースビーズにカップリングされたアゾ-ビオチン-アジド)と比較して、上清における加水分解活性を有意に低下させた。これらの結果と一致して、rec.LPLA2は、単独でオルリスタットB官能化ビーズ上でのオンビーズ消化及びLC-MS/MS分析によって同定することができたが、対照ビーズについては同定することができず、LPLA2上でのオルリスタットBの共有結合、したがって抗体溶液からのその除去を示している(
図2B)。
【0402】
実施例2:ストレプトアビジンMag Sepharoseビーズに固定化したオルリスタットB(式(2)又は化合物B)を用いた加水分解活性の低下及びrec.LPLA2スパイクトシリズマブ溶液(100mg/mL)からのLPLA2の除去
この実験は、実施例1に記載のアプローチが、同じ比率のスパイクされたrec.LPLA2(すなわち、50ppm、5μg/mL)で高タンパク質濃度(すなわち、100mg/mLのトシリズマブ)を含有する抗体溶液にも適用可能であることを実証する。
【0403】
この目的のため、実施例1に記載のように官能化ビーズを調製した。
【0404】
トシリズマブを最終抗体濃度100mg/mL及びLPLA2濃度50ppm(5μg/mL)を得るためのrec.LPLA2でスパイクした(表4)。
【0405】
【表4】
表4:100mg/mlトシリズマブ溶液中の50ppmのLPLA2スパイク。
【0406】
250μLのLPLA2スパイクトシリズマブを、900rpmでEppendorf ThermoMixer(登録商標)において37℃で4時間、100μLのコンジュゲートビーズ(試料/対照)とインキュベートした。インキュベーション後、上清(試料/対照)をリパーゼ活性アッセイによって評価した(実施例1を参照されたい)。
【0407】
結論:
実験1の結果と一致して、50ppmのrec.LPLA2でスパイクした100g/lのトシリズマブ溶液を固定化されたオルリスタットBとインキュベートすると、リパーゼ活性アッセイ(
図3A)によって示されるように、オルリスタットBを含まないそれぞれの対照(ストレプトアビジンMagセファロースビーズにカップリングされたアゾ-ビオチン-アジド)と比較して、上清における加水分解活性を有意に低下させた。対照試料(ストレプトアビジンMagセファロースビーズにカップリングされたアゾ-ビオチン-アジド)は、rec.LPLA2でスパイクした抗体溶液(ストレプトアビジンMag Sepharoseビーズとのインキュベーション工程を含まない)と同等の加水分解活性を示すことから、この効果はオルリスタットBの固定化に起因し得る。
【0408】
実施例3:ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ又はNHS活性化セファロースビーズ上に固定化されたオルリスタットBを使用したグロフィタマブのインプロセスプールからの加水分解活性の低下
この実験は、グロフィタマブのインプロセスプール(すなわち、MMAEX負荷溶液)における加水分解活性が、NHS活性化セファロース(登録商標)4高速フロービーズ(GE Healthcare)又はストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ(GE Healthcare)のいずれかに固定化されたオルリスタットB(式(2)又は化合物B)とインキュベートした場合に低下したことを示す。
【0409】
NHS活性化セファロース(登録商標)4高速フロービーズ上に固定化されたオルリスタットBの調製)
官能化セファロース(登録商標)4高速フロービーズを、アミン反応性NHS活性化ビーズ上へのリンカーアジド-PEG4-アミン(BroadPharm、BP-21615;CAS 951671-92-4)のカップリング、続いて、クリックケミストリーごとにそのアルキン基をビーズ結合リンカーのアジド基とコンジュゲートさせることによるオルリスタットBの固定化を含む2段階手順によって調製した。
【0410】
リンカーアジド-PEG4-アミンをNHS活性化ビーズにカップリングさせるために、以下の工程を行った:100μLのアジド-PEG4-アミンを1900μLのカップリング緩衝液(0.2M NaHCO3、0.5M NaCl、pH8.3)で希釈して、2000μLの総体積を得た。NHS活性化セファロース(登録商標)4高速フロービーズ600μLをPoly-Prepクロマトグラフィーカラム(BioRad)に充填し、使用直前に氷冷1mM HCl(PWA中)溶液10CVで洗浄した。調製したアジド-PEG4-アミン溶液300μLを洗浄したビーズに添加し、ローラーミキサー上で室温で4時間インキュベートした。未反応NHSエステルのブロッキング及び洗浄のため、カップリング緩衝液(0.2M NaHCO3、0.5M NaCl、pH8.3)、洗浄緩衝液A(0.1M酢酸Na、0.5M NaCl、pH4.0)、洗浄緩衝液B(0.1M Tris-Cl、pH8.0)及び1×PBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、pH7.4)を指定の順序及び体積で添加した:
(a) 3×2CVブロッキング緩衝液
(b) 3×2CV洗浄緩衝液A
(c) 3×2CVブロッキング緩衝液
(d) ブロッキング緩衝液中に30分間放置
(e) 3×2CV洗浄緩衝液A
(f) 3×2CV洗浄緩衝液B
(g) 3×2CV洗浄緩衝液A
(h) 3×2CV洗浄緩衝液B
(i) 3×2CV洗浄緩衝液A
(j) 3×2CV洗浄緩衝液B
(k) 5x2CV 1xPBS
【0411】
クリックケミストリーによってリンカーのビーズ結合アジド基上にオルリスタットBをコンジュゲート化するために、以下の工程を行った:
上記のようにして得られた500μLの排出されたアジド官能化ビーズを500μLの1×PBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、pH7.4)と混合し、均質化した。得られたビーズスラリー400μLを新しいPoly-Prepクロマトグラフィーカラム(BioRad)に充填した。ビーズ床を沈降させた後、上清を廃棄した。オルリスタットB(オルリスタットBを含むNHSセファロースと呼ばれる)又はビオチン-PEG4-アルキン(オルリスタットBを含まないNHSセファロースと呼ばれる)(Sigma-Aldrich)をコンジュゲートするため、以下の試薬を、示された順序及び体積で充填されたPoly-Prepクロマトグラフィーカラムに添加した(表5):
【0412】
【表5】
表5:実施例3におけるアジド官能化ビーズの官能化のための銅触媒クリック反応組成物
【0413】
両方の反応混合物(試料/対照)をローラーミキサー上で室温で2時間インキュベートし、10CVの1×PBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、pH7.4)で洗浄した。調製した樹脂を含有するカラムを、更に使用するまで4℃で保存した。
【0414】
ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズに固定化されたオルリスタットB
オルリスタットBで官能化されたストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズの調製のため、オルリスタットBとビオチン-PEG4-アジド(BroadPharm;CAS 1309649-57-7)との間のクリック反応を、指定の順序及び体積に従って反応管内で以下の試薬を混合することによって行った(表6):
【0415】
【表6】
表6:実施例3のストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズの官能化のための銅触媒クリック反応組成
【0416】
両方の反応混合物をローラーミキサー上で室温で2時間インキュベートし、揮発性溶媒を真空遠心分離機(45℃、2時間)を使用して蒸発させ、更に使用するまで4℃で保存した。
【0417】
ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズでのコンジュゲーションのため、1mLの培地スラリーを結合緩衝液(20mM NaPO4、0.15M NaCl、pH7.5)で10回洗浄し、Poly-Prepクロマトグラフィーカラム(BioRad)に充填し、5CVの結合緩衝液(20mM NaPO4、0.15M NaCl、pH7.5)で平衡化した。500μLの結合緩衝液(20mM NaPO4、0.15M NaCl、pH7.5)を200μLのコンジュゲート化ビオチン-オルリスタット(オルリスタットBを含むSeph-SAと呼ばれる)/ビオチン-ビオチン(オルリスタットBを含まないSeph-SAと呼ばれる)と混合し、全混合物を平衡化ビーズに添加した。ローリングミキサー上でRTで30分間インキュベートした後、ビーズを10CVの結合緩衝液(20mM NaPO4、0.15M NaCl、pH7.5)及び10CVの1×PBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、pH7.4)で連続的に洗浄した。コンジュゲートビーズ(オルリスタットBを含むSeph-SA及びオルリスタットBを含まないSeph-SA)を更なる使用まで4℃で保存した。
【0418】
抗体グロフィタマブのMMAEX負荷溶液とのコンジュゲートビーズのインキュベーション
100μLの官能化ビーズスラリー(オルリスタットBを含むNHSセガサターン、オルリスタットBを含まないNHSセファロース、オルリスタットBを含むSeph-SA及びオルリスタットBを含まないSeph-SA)、並びにプレーンビーズスラリー(NHS活性化セファロースビーズ及びストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能)を反応管に移し、50μLの上清を廃棄した。450μLのグロフィタマブ(c=7、3mg/ml)のMMAEX負荷溶液を添加し、混合物をEppendorf Thermomixer中850rpmで25℃でインキュベートした。試料を1000rpmで30秒間遠心分離し、実施例1に記載のように上清をリパーゼ活性について評価した。
【0419】
結論:
図4のそれぞれの対照ビーズ(すなわち、オルリスタットB及び非コンジュゲートビーズを含まないコンジュゲートビーズ)及び出発タンパク質組成物と比較して、これらのビーズの平均変換率の低下によってわかるように、グロフィタマブ(MMAEX負荷溶液)とオルリスタットB官能化ビーズとのインキュベーションは、加水分解活性の有意な低下をもたらした。これらのデータは、かなりのレベルの加水分解活性を特徴とする抗体溶液のインプロセスプールから加水分解活性酵素を除去する固定化オルリスタットBの能力を示している。更に、固定化されたオルリスタットBの有益な効果は、NHS活性化セファロース(登録商標)高速フロービーズ(上記のNHS及びクリックケミストリーによるカップリング)及びストレプトアビジンセファロース(登録商標)4高性能ビーズ(GE Healthcare)(クリックケミストリーによるカップリング及び上記のビオチンとストレプトアビジンとの間の高い親和性を活用)の両方について実証することができたが、これは、
図4の平均変換率によって示されるように、両方のアプローチがそれぞれの対照(すなわち、オルリスタットBを含まないコンジュゲートビーズ、非コンジュゲートビーズ及び出発タンパク質組成物)と比較して加水分解活性の有意な減少をもたらしたためである。
【0420】
実施例4:ストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ又はNHS活性化セファロースビーズ上に固定化されたオルリスタットA又はオルリスタットBを使用したトラスツズマブのインプロセスプールからの加水分解活性の低下
この実験は、NHS活性化セファロース(登録商標)4高速フロービーズ又はストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ(GE Healthcare)のビーズのいずれかに固定化されたオルリスタットA(式(1)又は化合物A)又はオルリスタットB(式(2)又は化合物B)のいずれかを使用することによって、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)インプロセスプール(すなわち、プロテインA溶出プール)における加水分解活性が低下したことを実証している。
【0421】
官能化ビーズ(NHS活性化セファロース(登録商標)4高速フロー及びストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズ(GE Healthcare))を、実施例3に記載のように(オルリスタットBをオルリスタットAで置換することによって)オルリスタットB及びオルリスタットAの両方について調製した。
【0422】
100μLのオルリスタットA/B官能化ビーズ/対応する対照ビーズ(NHS活性化セファロース(登録商標)4高速フロービーズ及びストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズの両方について、上記のように処理した)を反応管に移し、50μLの上清を廃棄した。450μLのハーセプチンのプロテインA溶出プール(7g/l)を添加し、混合物をサーモミキサー850rpmで25℃でインキュベートした。試料を1000rpmで30秒間遠心分離し、実施例1に記載されているように、上清並びに出発タンパク質組成をリパーゼ活性アッセイによって評価した。
【0423】
結論:
NHS活性化セファロース4高速フロービーズ又はストレプトアビジンセファロース(登録商標)高性能ビーズのいずれかに固定化されたオルリスタットA及びオルリスタットBの両方とのインキュベーション後のハーセプチンのプロテインA溶出プールでは、
図5の平均変換率によって示されるように、それぞれの対照及び出発タンパク質組成物(官能化ビーズとのインキュベーション工程を含まない)と比較して、加水分解活性の有意な減少を達成することができ、固定化加水分解酵素阻害剤(すなわち、オルリスタットA及びB)が既に精製された抗体溶液(すなわち、トラスツズマブのインプロセスプール)から加水分解活性酵素を除去する能力を示している。
【0424】
実施例5:固体支持体に結合したリパーゼのビス-エノール-エステルコンストラクトのプロテオミクス評価
この実験は、アジド修飾磁性粒子に共有結合により連結されたビス-エノール-エステル(式(3)又は化合物C)が(クリック反応化学を介して)、リパーゼ(モデルリパーゼ:CalB2)に共有結合的に及び選択的に結合し、抗体溶液からそれぞれのリパーゼを除去する能力を実証する。官能化ビーズがリパーゼに結合する能力を、対照としての非官能化ビーズと比較した。
【0425】
試験試料:LC-MSベースのプロテオミクスワークフローのための対照タンパク質としてのハーセプチン(mAb;リン酸Na緩衝液中0.2μg/μl)を、標的としてのリパーゼCalB2(CalB2;約1:1(mol/mol)の比でリン酸Na緩衝液中0.2μg/μl)と混合した。上記の試料を、クリック反応及び精製によって作製した60μgのアジド修飾磁性粒子(60μlの1μg/μl水溶液を調製した)(ポリスチレン系アジドビーズ;CLK-1036-1、Jena-Bioscience)に共有結合により連結された化合物C(ビス-エノール-エステル)で対処した(プロトコル実験例1及びJena-Bioscienceクリックプロトコルについて記載された一般的手順を参照されたい)。対照として、非官能化アジド修飾ビーズ(ポリスチレン系アジドビーズ;CLK-1036-1、Jena-Bioscience)は、カップリング工程が化合物Cの溶媒のみで行われたことを除いて、化合物Cカップリングビーズと同じ方法で処理されている。
【0426】
CalB2及びmAb混合物のインキュベーションは、60μg(60μlの1μg/μl溶液)のそれぞれの官能化又は非官能化ビーズを50μlのCalB2(0.2μg/μl)及び50μlのmAb(0.2μg/μl)と混合することによって行った。試料を40℃で一晩、1000rpmでボルテックスした。インキュベーション後、官能化ビーズ並びに非官能化ビーズを、磁気分離及び低結合ディスポーザブルを使用して以下のプロトコルに従って洗浄した:
1回目の洗浄:60μgのビーズを200μlのPBS緩衝液で2回洗浄し、続いて乾燥工程を行った。
2回目の洗浄:1回目の工程からの乾燥したビーズを、Triton-X 100を含有するPBS緩衝液(9990μlのPBSで希釈した10μlのTriton-X 100)で3回洗浄し、続いて室温で風乾した。
3回目の洗浄:工程2からのビーズを200μlの水で2回洗浄し、続いて室温工程で風乾させる。
4回目の洗浄:工程3からのビーズを200μl(70%アセトニトリル/30%水及び0.1%ギ酸(v/v/v)で洗浄する。
5回目の洗浄:工程4からのビーズを最終的に200μlの水で洗浄した。
【0427】
標的LC-MS分析のため、洗浄したビーズを5μlのIAM溶液(55mM:98.3μlのMilliQ-水中1mg/ml)でカルバミドメチル化し、5μlのDTT(水中10mM)溶液で30分間還元した。
【0428】
上記の工程の後、50μlの変性緩衝液/消化緩衝液(トリプシン希釈液(50mM AcOH)、10μl氷AcOH(3470μLのMilliQ-水で希釈、4℃)を添加し、続いて20μgのトリプシンを元の管において40μlのトリプシン希釈液(50mM AcOH)に溶解することによって、それぞれのビーズ上のタンパク質の変性を行った。5μlのトリプシン溶液、1μlのRapid PNGase F及び1μlの(N/O-)脱グリコシル化MIX IIを試料ミックスに添加し、引き続いて混合及びインキュベーションした:(1000rpm、37℃の熱シェーカー内、37℃で16~20時間)。ビーズ上清分離を、短時間の遠心分離とそれに続く磁気分離によって行った。
【0429】
2μlのFA溶液を試料消化物に添加することによって消化を停止させ、続いてインキュベーション工程(800rpmの熱シェーカー内、37℃で1.5~2時間(PPSの加水分解のため))を行った。分析までの(元の試料で)-80℃での消化試料の保存
【0430】
標的LC-MS分析は、緩衝液としてTFA(0.05%v(v))を用いて水/アセトニトリル勾配を使用して行った。分離カラムは、PepSwift Monolithic キャピラリカラム、200μm×5cm、P/N:161409であった。質量分析計として、Thermo LTQ FTシステムを用いた。定量分析のための更なる実験計画は、一般的な実験的標的LC-MS手順に従った。1μlの消化した試料を分析カラムに注入することによって、ビーズに結合したタンパク質をLC-MSシステムに適用した。
【0431】
以下のペプチド及びそれぞれの質量を、標的化質量分析読み出しから生じる絶対ピーク強度(正規化レベル(NL)としてのピーク強度)の評価に使用した:
ペプチドCalB2リパーゼ1:LMAFAPDYK、電荷z=2;質量/電荷:528.27Da
ペプチドCalB2リパーゼ2:PFAVGK、電荷z=2;質量/電荷:309.68Da
ペプチドmAb:FNWYVDGVEVHNAK、電荷z=3;質量/電荷:559.94Da
mAbペプチド及びリパーゼペプチドのそれぞれの標的LC-MSシグナルをそれぞれのシグナル強度で使用して、
図6を生成した。
【0432】
質量分析結果の分析は、強いシグナルカウントで消化後にリパーゼCalB2の両方の選択的ペプチドを見出すことができることを示した。
【0433】
したがって、この実験は、モデルリパーゼCalB2が、広範な洗浄工程に供した場合でも、ビス-エノールエステルで官能化されたビーズに結合することを明確に実証している(
図6)。非官能化対照ビーズ上にリパーゼが検出されなかったため、この相互作用は明らかに特異的であった。
【0434】
mAbは非常に沈殿しやすく、非共有結合的にビーズに吸着される。mAbペプチドは、官能化ビーズ及び対照ビーズの両方についての機能的LC-MSベースのプロテオミクスワークフローを検証する官能化ビーズ及び対照ビーズで検出された。
【0435】
本明細書に引用される全ての参考文献は、参照により完全に組み込まれる。ここで本発明を十分に説明してきたが、本発明又はその任意の実施形態の趣旨又は範囲に影響を及ぼすことなく、条件、パラメータ等の広範かつ同等の範囲内で本発明を実施することができることが当業者には理解されよう。
【国際調査報告】