IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイトの特許一覧

特表2023-536393ホログラフィック記録材料およびそれを作製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】ホログラフィック記録材料およびそれを作製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230818BHJP
   C08G 75/02 20160101ALI20230818BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230818BHJP
   G03H 1/02 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C08L101/00
C08G75/02
C08L75/04
G03H1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575901
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 US2021036662
(87)【国際公開番号】W WO2021252665
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/037,296
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】バウマン クリストファー エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】マヴィラ サディーンドラン
(72)【発明者】
【氏名】シンハ ジャスミン
(72)【発明者】
【氏名】フー ユンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ポドゴルスキー マチェイ
【テーマコード(参考)】
2K008
4J002
4J030
【Fターム(参考)】
2K008DD13
2K008HH01
4J002AA00W
4J002CK05W
4J002CN01X
4J002GP03
4J002GS00
4J002GT00
4J030BA04
4J030BB07
4J030BB08
4J030BC02
4J030BC43
4J030BG01
4J030BG30
(57)【要約】
チオールおよび/またはチオエーテル官能基性を含有し、かつ追加のアリルおよび/またはプロパルギル官能基を任意で含む、ホログラムを記録するのに適した組成物が本明細書において提供される。これらのモノマーを用いて高いΔn値を有するホログラフィックポリマーを合成し得る。また、ホログラフィックポリマーを作製する方法およびこれらのポリマーを用いてホログラムを記録する方法も本明細書において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマー;
複数のアリル基を含むポリマーバインダー;ならびに
式(I):
の少なくとも1つのモノマー
および式(II):
の少なくとも1つのモノマー
を含む、組成物:
式中
Xは各出現時には独立してHまたは置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Yは独立して-S-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(SH)-、-CH[O-CH2-CH=CH2]-、または-CH[O-CH2-C≡CH]-であり;
各YTは独立してH、-SH、-CH=CH2、-C≡CH、または置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Zは独立して-S-、-CH2、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、または-CH(SH)-であり;
各ZTは独立してH、-SHまたは-CH2SHであり;
mは0~100の範囲の整数であり;かつ
nは0~100の範囲の整数である。
【請求項2】
前記ポリマーが線状ポリウレタンである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーバインダーがアリル基を約0~80mol%含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマーがポリカプロラクトン-ブロック-ポリテトラヒドロフラン-ブロック-ポリカプロラクトンを含む、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
式(I)のモノマーと式(II)のモノマーの比が約9:1~約1:9である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
(Z)n-ZTが少なくとも1つの-SH部分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
(Z)n-ZTが少なくとも2つの-SH部分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
式(II)のモノマーが
からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
Xがフェニルである、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
(Y)mが直鎖である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
(Y)mが-CH(O-CH2-CH=CH2)-または-CH(O-CH2-C≡CH)-の少なくとも一方を含む、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
(Y)mが-CH(O-CH2-CH=CH2)-および-CH(O-CH2-C≡CH)-より独立して選択される少なくとも2つの部分を含む、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
式(I)のモノマーが
からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
式(I)のモノマーおよび式(II)のモノマーが合計で組成物の約1~80%(w/w)を構成する、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
重合した請求項1記載の組成物。
【請求項16】
複数のアリル基と、式(I)および式(II)のモノマーとが架橋された、請求項15記載の重合組成物
【請求項17】
請求項1記載の組成物を含む、フィルム。
【請求項18】
請求項17記載の組成物を準備する工程、および
ホログラムを形成するために該組成物をレーザー照射に曝露する工程
を含む、ホログラムを記録する方法。
【請求項19】
前記準備する工程が不活性基材をフィルムでコーティングすることを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記曝露する工程がポリマーバインダーと式(I)および式(II)のモノマーとを架橋することを含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
ホログラムが約0.01~約0.06のインデックス変調度(Δn)を有する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
式(I-A):
の少なくとも1つのモノマー
および式(II):
の少なくとも1つのモノマー
を含む、組成物:
式中
Xは各出現時には独立してHまたは置換されていてもよいC6~14アリールであり;
Y1およびY2は各出現時には独立して-S-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(SH)-、-CH[O-CH2-CH=CH2]-、または-CH[O-CH2-C≡CH]-であり;
YT1およびYT2は各出現時には独立してH、-SH、-CH=CH2、-C≡CH、または置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Zは独立して-S-、-CH2、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、または-CH(SH)-であり;
各ZTは独立してH、-SHまたは-CH2SHであり;
各m1およびm2は独立して0~100の範囲の整数であり;かつ
nは0~100の範囲の整数である。
【請求項23】
重合した請求項22記載の組成物。
【請求項24】
約1.63~約1.69の屈折率を有する、請求項23記載の重合組成物。
【請求項25】
(Z)n-ZTが少なくとも1つの-SH部分を含む、請求項22記載の組成物。
【請求項26】
(Z)n-ZTが少なくとも2つの-SH部分を含む、請求項22記載の組成物。
【請求項27】
式(II)のモノマーが
からなる群より選択される、請求項22記載の組成物。
【請求項28】
m1が1であり、Y1が-S-であり、YT1がフェニルである、請求項22記載の組成物。
【請求項29】
(Y1)m1および(Y2)m2の少なくとも一方が直鎖である、請求項22記載の組成物。
【請求項30】
(Y1)m1および(Y2)m2の少なくとも一方が-CH(O-CH2-CH=CH2)-または-CH(O-CH2-C≡CH)-の少なくとも一方を含む、請求項28記載の組成物。
【請求項31】
(Y1)m1および(Y2)m2の少なくとも一方が-CH(O-CH2-CH=CH2)-および-CH(O-CH2-C≡CH)-より独立して選択される少なくとも2つの部分を含む、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
YT1およびYT2が-C≡CHである、請求項22記載の組成物。
【請求項33】
式(I-A)のモノマーが
からなる群より選択される、請求項22記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月10日に出願の「ホログラフィック記録材料およびそれを作製する方法」と題した米国仮特許出願第63/037,296号の優先権を主張し、その開示はその全体において参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
ホログラフィックフォトポリマーは、これらのポリマーの処理の容易さおよび単一工程で記録する能力により、ヘッドアップディスプレイ、データ保存、回折光学素子を含む用途向けの魅力的かつ多くの場合に必要とされる材料プラットフォームである。これらすべての用途について、デバイスの品質および性能に直接的に相関する重要な性能仕様は達成可能なインデックス変調度(Δn)である。インデックス変調度を向上させるための取り組みは、非相分離ポリマーにおける高い書き込みモノマー充填量を可能にする高モノマー溶解性を維持しつつ、書き込みモノマーとマトリクスとの間の屈折率コントラストを高めることに焦点を当ててきた。
【0003】
新規なホログラフィック記録材料およびそれを作製する方法が当技術分野で必要とされている。本発明はこの必要性に対処している。
【発明の概要】
【0004】
様々な態様では、組成物が提供される。特定の態様では、組成物は
少なくとも1つのポリマー;
複数のアリル基を含むポリマーバインダー;ならびに
式(I):
の少なくとも1つのモノマー
および式(II):
の少なくとも1つのモノマー
を含み、
式中
Xは各出現時には独立してHまたは置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Yは独立して-S-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(SH)-、-CH[O-CH2-CH=CH2]-、または-CH[O-CH2-C≡CH]-であり;
各YTは独立してH、-SH、-CH=CH2、-C≡CH、または置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Zは独立して-S-、-CH2、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、または-CH(SH)-であり;
各ZTは独立してH、-SHまたは-CH2SHであり;
mは0~100の範囲の整数であり;かつ
nは0~100の範囲の整数である。
【0005】
有利には、様々な態様では、組成物を用いてホログラフィック材料を形成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図面は概して本願の様々な態様を限定としてではなく例示として示している。
【0007】
図1図1A~1Dはホログラフィックフィルムの調製およびホログラム形成の概略図を示す。図1Aは書き込みモノマー、およびペンダントアリル側鎖を有する直鎖バインダーの配合物を示す。図1Bはホログラム形成およびフラッド硬化を示す。図1Cはアルコール-イソシアネート線形バインダーの配合物を示す。図1Dは右手前のPCモニターの照明下で撮影された典型的なホログラムの写真である。用いられる配合物はバインダー中に43w%チオール-エン書き込みモノマーと30mol%アリルとを含有する。
図2図2A~2Dはダイナミックレンジ(Δn)という観点でのホログラム性能を示す。図2Aは、コーゲルニク方程式への当てはめと良好な一致を示す、代表的なホログラムの角度再生スペクトルを示す。(ホログラフィックピッチはΛ=1μmであり;配合物は30mol%アリルおよび43w%チオール-エンを有する)。図2BはピッチΛ=0.5μmでの様々な充填量のチオール-エン書き込みモノマーのホログラムのダイナミックレンジを示す。図2Cは様々な配合物のダイナミックレンジに対する格子周期の効果を示す。図2Dはポリマーバインダー中に20w%チオール-エン書き込みモノマーと30mol%アリルとを含む試料の原子間力顕微鏡法(AFM)の画像を示す。
図3図3は記録された反射ホログラムのスペクトルを示す(ポリマーバインダー中の30mol%アリル、43w%チオール-エン書き込みモノマー)。
図4図4は経時的な回折効率(DE)対生成のグラフを示す(43w%チオール-エンモノマーおよび30mol%アリル)。
図5図5図4と同じホログラム記録フィルムのプロファイル特性を示す。
図6図6は反射ホログラムを記録するための厚いホログラムフィルムのプロファイル特性を示す。
図7図7A~7Bは1μmのピッチサイズで記録された透過ホログラムのダイナミックレンジを示す。図7Aは様々な充填量のチオール-エン書き込みモノマーのホログラムのダイナミックレンジを示す。図7Bは様々な配合物のダイナミックレンジに対するアリル含有量の効果を示す。
図8図8A~8Bは様々な配合物のダイナミックレンジに対する格子周期の効果を示す(Λは空間周期である)。図8Aは20w%チオール-エン書き込みモノマー充填量による効果を示す。図8Bは33w%チオール-エン書き込みモノマー充填量による効果を示す。
図9図9A~9Bは、0.5μm(図9A)または1μm(図9B)いずれかのピッチサイズでのチオール-エン系ホログラムのダイナミックレンジのチューニング性を示す。
図10図10は様々な量のアリル含有量を有する線形マトリクスのGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)曲線を示す。
図11図11は透過ホログラム露光および再生のための光学レイアウトを示す。コンポーネントラベル:L1、633nm He-Neレーザー;L2、405nmダイオードレーザー;M、鏡;D、パワー検出器;HW、半波長板;HF、ホログラフィックフィルム;PBS、偏光ビームスプリッター;S、回転ステージ。
図12図12は反射ホログラム露光のための光学レイアウトを示す。コンポーネントラベル:L1、633nm He-Neレーザー;M、鏡;D、パワー検出器;HW、半波長板;HF、ホログラフィックフィルム;PBS、偏光ビームスプリッター;S、回転ステージ。
図13図13A~13BはホログラムのAFM画像を示す。図13Aは30mol%のアリル含有量および30w%チオール-エン書き込みモノマーを有する。図13Bは43w%チオール-エン書き込みモノマーおよび30mol%のアリル含有量を有する。
図14図14A~14Bは、1μmピッチ(図14A)または0.5μmピッチ(図14B)でのチオール-インフォトポリマーの重量%の関数としてのダイナミックレンジを示す。用いたアルキンは図に示しており、チオールは1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプトプロパンである。
図15図15A~15Bはチオール-インフォトポリマーの特性を示す。図15Aは、0.5μmピッチでのチオール-インフォトポリマーを用いた書き込みモノマー重量%の関数としてのダイナミックレンジを示す。用いたチオアルキンは図に示しており、チオールは1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプトプロパンである。図15Bは、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプトプロパンおよび示されたアルキンの光重合時の時間の関数としての変換を示す。
図16A図16A~16Cは配合物A1(図16A)、B1(図16B)およびC1(図16C)についてのFTIR変換対時間プロットを示す。混合物は2:1チオール対アルキン官能基濃度の初期化学量論比からなる。各試料を暗所で1分間安定化させ、次いで周囲温度で30mW/cm2の405nm波長の光を照射した。
図16B図16Aの説明を参照のこと。
図16C図16Aの説明を参照のこと。
図17A図17A~17Cはチオール-インフォトポリマーの熱化学特性を示す。段階成長ネットワークに特徴的な各チオール-インフォトポリマーフィルムごとの温度に対する、貯蔵弾性率とtanδのプロット。DMA実験は70℃で一晩後硬化した後の試料に実施した。
図17B図17Aの説明を参照のこと。
図17C図17Aの説明を参照のこと。
図18図18は、405nmの光で30mW/cm2照射した際の配合物B2について観察されたチオール変換の関数としての屈折率のプロットである。
図19図19A~19Bは、いくつかの態様に係るチオールインフォトポリマーに記録されたホログラムの特性を示す。図19Aは、結合波理論への良好な当てはめを示す書き込みモノマーとして2dを用いて記録されたホログラムの角度再生スペクトルを示す。図19Bは、様々なアルキン書き込みモノマーを用いたホログラムについて測定されたダイナミックレンジおよびヘイズをまとめた表である。
図20図20は、フォトマスクを介した照射によって二段階ポリ(ウレタン-チオウレタン)(段階1)/チオール-イン樹脂B2(段階2)マトリクス上に記録された二次元マイクロメートルスケール屈折率構造を示す。
図21A図21A~21Cは、405nmの光で30mW/cm2照射した際の配合物A(1~4)(図21A)、B(1~4)(図21B)およびC(1~4)(図21C)についてのビニルスルフィドの形成および変換を示すリアルタイムFTIRプロットである。混合物は2:1チオール対ビニル官能基濃度の初期化学量論比からなる。各試料を暗所で1分間安定化させ、次いで照射した。
図21B図21Aの説明を参照のこと。
図21C図21Aの説明を参照のこと。
図22図22は、モノアルキンに対する1°および2°チオールの反応性を決定するために用いられるモデルチオール-インモノマーの構造、ならびにチオールおよびアルキン反応性基のモル比が2:1であるそれらの樹脂配合物を示す。
図23A図23A~23Bは、チオール変換(図23A)およびイン/ビニル変換(図23B)の関数としての、モノアルキンに対する1°および2°チオールの反応性を示す配合物M1およびM2についてのリアルタイムFTIRデータを示す。混合物は2:1チオール対ビニル官能基濃度の初期化学量論比からなる。各試料を暗所で1分間安定化させ、次いで照射した。
図23B図23Aの説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
一局面では、著しく向上しかつ安定な平均屈折率コントラスト(Δn)を有するホログラフィック材料をもたらした、光開始チオール-エンクリックケミストリーとバインダーとして用いられる官能性線形ポリマーとの組み合わせに基づく高性能ホログラフィック記録媒体が本明細書において記載される。
【0009】
開示された主題の特定の態様を詳細に参照し、その例は添付の図面に部分的に示されている。開示された主題は列挙した請求項と併せて記載されることになるが、例示された主題は、開示された主題に請求項を限定することを意図していないと理解されたい。
【0010】
本文書全体を通じて、範囲の形式で表される値は、その範囲の限界値として明示的に記載された数値だけでなく、その範囲内に含まれるすべての個々の数値または部分範囲も、各数値および部分範囲が明示的に記載されているかのように、すべて含まれると柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約0.1%~約5%」または「約0.1%~5%」という範囲は約0.1%~約5%だけでなく、示された範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%、および4%)および部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈されるべきである。「約X~Y」という表現は、特に示されていない限り、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、「約X、Y、または約Z」という表現は、特に示されていない限り、「約X、約Y、または約Z」と同じ意味を有する。
【0011】
本書では、「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「その(the)」という用語は、文脈上そうでないことが明らかな場合を除いて、1つまたは複数を含むように用いられる。「または」という用語は、特に示されていない場合は、非排他的な「または」を指すように用いられる。「AおよびBの少なくとも一方」または「AまたはBの少なくとも一方」という表現は「A、B、またはAおよびB」と同じ意味を有する。加えて、本明細書において採用され、特に定義されていない表現または用語は限定ではなく説明のみを目的としていると理解されたい。項目の見出しのどのような使用も文書の読解を補助することを意図しており、限定として解釈されるものではなく;項目の見出しに関連する情報はその特定の項目の内外に見出されることがある。本書において言及されるすべての刊行物、特許、および特許文書は、個別に参照により組み入れられているかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0012】
本明細書において記載される方法では、時間的または操作上の順序が明示的に記されている場合を除いて、行為は任意の順序で実施し得る。さらに、特定された行為は、請求項の文言によりそれらが別々に実施されると明示的に記されていない限り、同時に実施し得る。例えば、Xを行うという請求項の行為およびYを行うという請求項の行為は単一の操作内で同時に実行され得、その結果としてのプロセスは請求項のプロセスの文言の範囲内に包含されるであろう。
【0013】
定義
本明細書において用いられる「約」という用語は値または範囲におけるある程度のバラツキ、例えば、記載の値または記載の範囲限界の10%以内、5%以内、または1%以内を許容し得、記載されたその値または範囲を含む。
【0014】
本明細書において用いられる「実質的に」という用語は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、または少なくとも約99.999%以上、または100%のように、~の大部分、またはほとんどを指す。本明細書において用いられる「実質的に含まない」という用語は、~を全く有さないこと、または存在する材料の量が該材料を含む組成物の材料特性に影響を与えないような、該材料が組成物の約0wt%~約5wt%、もしくは約0wt%~約1wt%、もしくは約5wt%以下、または約4.5wt%未満、これと等しい、もしくはこれより多い、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、もしくは約0.001wt%以下であるような、微細な量を有することを意味し得る。「実質的に含まない」という用語は、材料が組成物の約0wt%~約5wt%、もしくは約0wt%~約1wt%、もしくは約5wt%以下、または約4.5wt%未満、これと等しい、もしくはこれより多い、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、もしくは約0.001wt%以下、もしくは約0wt%であるような、微細な量を有することを意味し得る。
【0015】
本明細書において用いられる「有機基」という用語は任意の炭素含有官能基を指す。例は、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、オキソ(カルボニル)基などの酸素含有基;カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステルを含むカルボキシル基;アルキルおよびアリールスルフィド基などの硫黄含有基;ならびに他のヘテロ原子含有基を含み得る。有機基の非限定例は、OR、OOR、OC(O)N(R)2、CN、CF3、OCF3、R、C(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R)2、SR、SOR、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)CH2C(O)R、C(S)R、C(O)OR、OC(O)R、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)N(R)2、N(R)N(R)C(O)R、N(R)N(R)C(O)OR、N(R)N(R)CON(R)2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、N(R)C(O)OR、N(R)C(O)R、N(R)C(S)R、N(R)C(O)N(R)2、N(R)C(S)N(R)2、N(COR)COR、N(OR)R、C(=NH)N(R)2、C(O)N(OR)R、C(=NOR)R、および置換または非置換(C1~C100)ヒドロカルビルを含み、ここで、Rは水素(他の炭素原子を含む例では)または炭素系部分であり得、ここで、炭素系部分は置換または非置換であり得る。
【0016】
本明細書において定義される分子または有機基と併せて本明細書において用いられる「置換された」という用語は、それに含有される1つまたは複数の水素原子が1つまたは複数の非水素原子で置き換えられた状態を指す。本明細書において用いられる「官能基」または「置換基」という用語は分子に対してまたは有機基に対して置換し得るかまたは置換する基を指す。置換基または官能基の例は、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、およびI);水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、オキソ(カルボニル)基、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステルを含むカルボキシル基などの基における酸素原子;チオール基、アルキルおよびアリールスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、スルホニル基、およびスルホンアミド基などの基における硫黄原子;アミン、ヒドロキシアミン、ニトリル、ニトロ基、N-オキシド、ヒドラジド、アジド、およびエナミンなどの基における窒素原子;ならびに様々な他の基における他のヘテロ原子を非限定的に含む。置換される炭素(または他の)原子に結合し得る置換基の非限定例は、F、Cl、Br、I、OR、OC(O)N(R)2、CN、NO、NO2、ONO2、アジド、CF3、OCF3、R、O(オキソ)、S(チオノ)、C(O)、S(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R)2、SR、SOR、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)CH2C(O)R、C(S)R、C(O)OR、OC(O)R、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)N(R)2、N(R)N(R)C(O)R、N(R)N(R)C(O)OR、N(R)N(R)CON(R)2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、N(R)C(O)OR、N(R)C(O)R、N(R)C(S)R、N(R)C(O)N(R)2、N(R)C(S)N(R)2、N(COR)COR、N(OR)R、C(=NH)N(R)2、C(O)N(OR)R、およびC(=NOR)Rを含み、ここで、Rは水素または炭素系部分であり得;例えば、Rは水素、(C1~C100)ヒドロカルビル、アルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、もしくはヘテロアリールアルキルであり得るか;または、ここで、窒素原子または隣接する複数の窒素原子に結合した2つのR基は、該窒素原子または複数の窒素原子と一緒になって、ヘテロシクリルを形成し得る。
【0017】
本明細書において用いられる「アルキル」という用語は、炭素原子を1~40個、炭素原子を1~約20個、炭素を1~12個、またはいくつかの態様では、炭素原子を1~8個有する直鎖および分岐アルキル基ならびにシクロアルキル基を指す。直鎖アルキル基の例は炭素原子を1~8個有するもの、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチル基を含む。分岐アルキル基の例はイソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、イソペンチル、および2,2-ジメチルプロピル基を非限定的に含む。本明細書において用いられるように、「アルキル」という用語は、n-アルキル、イソアルキル、およびアンテイソアルキル基ならびにアルキルの他の分岐形態を包含する。代表的な置換アルキル基は、本明細書において列挙する基のうちのいずれか、例えば、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、ニトロ、チオ、アルコキシ、およびハロゲン基により、1回または複数回置換され得る。
【0018】
本明細書において用いられる「アルケニル」という用語は、2つの炭素原子間に少なくとも1つの二重結合が存在することを除いて、本明細書において定義される直鎖および分枝鎖ならびに環状アルキル基を指す。よって、アルケニル基は炭素原子を2~40個、または炭素原子を2~約20個、または炭素原子を2~12個、またはいくつかの態様では、炭素原子を2~8個有する。例は、とりわけビニル、-CH=C=CCH2、-CH=CH(CH3)、-CH=C(CH3)2、-C(CH3)=CH2、-C(CH3)=CH(CH3)、-C(CH2CH3)=CH2、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、およびヘキサジエニルなどを非限定的に含む。
【0019】
本明細書において用いられる「アルキニル」という用語は、2つの炭素原子間に少なくとも1つの三重結合が存在することを除いて、直鎖および分枝鎖アルキル基を指す。よって、アルキニル基は炭素原子を2~40個、炭素原子を2~約20個、または炭素を2~12個、またはいくつかの態様では、炭素原子を2~8個有する。例は、とりわけ-C≡CH、-C≡C(CH3)、-C≡C(CH2CH3)、-CH2C≡CH、-CH2C≡C(CH3)、および-CH2C≡C(CH2CH3)などを非限定的に含む。
【0020】
本明細書において用いられる「アシル」という用語は、カルボニル部分を含有する基であって、カルボニル炭素原子を介して結合した基を指す。カルボニル炭素原子はホルミル基を形成する水素に結合するか、またはアルキル、アリール、アラルキル シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル基などの一部であり得る別の炭素原子に結合している。アシル基は、カルボニル基に結合した追加の炭素原子を0~約12、0~約20、または0~約40個含み得る。アシル基は本明細書における意味の範囲内では二重または三重結合を含み得る。アクリロイル基はアシル基の一例である。アシル基は本明細書における意味の範囲内ではヘテロ原子も含み得る。ニコチノイル基(ピリジル-3-カルボニル)は本明細書における意味の範囲内ではアシル基の一例である。他の例はアセチル、ベンゾイル、フェニルアセチル、ピリジルアセチル、シンナモイル、およびアクリロイル基などを含む。カルボニル炭素原子に結合した炭素原子を含有する基がハロゲンを含有する場合、基は「ハロアシル」基と呼ばれる。一例はトリフルオロアセチル基である。
【0021】
本明細書において用いられる「シクロアルキル」という用語は、非限定的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル基などの環状アルキル基を指す。いくつかの態様では、シクロアルキル基は環員を3個から約8~12個有し得るが、別の態様では、環炭素原子の数は3~4、5、6、または7個の範囲である。シクロアルキル基は、非限定的にはノルボルニル、アダマンチル、ボルニル、カンフェニル、イソカンフェニル、およびカレニル基などの多環式シクロアルキル基、ならびに、非限定的にはデカリニルなどの縮合環などをさらに含む。シクロアルキル基は本明細書において定義される直鎖または分枝鎖アルキル基で置換された環も含む。代表的な置換シクロアルキル基は一置換、または1回を超えて置換され得、非限定的には2,2-、2,3-、2,4-、2,5-もしくは2,6-二置換シクロヘキシル基または一、二もしくは三置換ノルボルニルまたはシクロヘプチル基であり得、これらは、例えば、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、ニトロ、チオ、アルコキシ、およびハロゲン基で置換され得る。「シクロアルケニル」という用語は、単独でまたは組み合わせて、環状アルケニル基を表す。
【0022】
本明細書において用いられる「アリール」という用語は環内にヘテロ原子を含有しない環状芳香族炭化水素基を指す。よって、アリール基はフェニル、アズレニル、ヘプタレニル、ビフェニル、インダセニル、フルオレニル、フェナントレニル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、クリセニル、ビフェニレニル、アントラセニル、およびナフチル基を非限定的に含む。いくつかの態様では、アリール基は基の環部分に炭素を約6~約14個含有する。アリール基は非置換または、本明細書において定義されるように置換され得る。代表的な置換アリール基は一置換、または1回を超えて置換され得、非限定的にはフェニル環の2、3、4、5もしくは6位のいずれか1つまたは複数が置換されたフェニル基、または2~8位のいずれか1つまたは複数が置換されたナフチル基などである。
【0023】
本明細書において用いられる「アラルキル」という用語は、アルキル基の水素または炭素結合が本明細書において定義されるアリール基への結合で置き換えられた、本明細書において定義されるアルキル基を指す。代表的なアラルキル基はベンジルおよびフェニルエチル基、ならびに4-エチル-インダニルなどの縮合(シクロアルキルアリール)アルキル基を含む。アラルケニル基は、アルキル基の水素または炭素結合が本明細書において定義されるアリール基への結合で置き換えられた、本明細書において定義されるアルケニル基である。
【0024】
本明細書において用いられる「ヘテロシクリル」という用語は、3個以上の環員を含有し、そのうちの1つまたは複数がヘテロ原子、非限定的にはN、O、およびSなどである、芳香および非芳香環化合物を指す。よって、ヘテロシクリルはシクロヘテロアルキルまたはヘテロアリール、多環式の場合は、それらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの態様では、ヘテロシクリル基は3~約20環員を含むが、別のヘテロシクリル基は3~約15環員を含む。C2-ヘテロシクリルと指定されるヘテロシクリル基は、炭素原子が2個およびヘテロ原子が3個の5員環、炭素原子が2個およびヘテロ原子が4個の6員環などであり得る。同様に、C4-ヘテロシクリルは、ヘテロ原子が1個の5員環、ヘテロ原子が2個の6員環などであり得る。炭素原子の数とヘテロ原子の数の和は環原子の総数に等しい。ヘテロシクリル環は1つまたは複数の二重結合も含み得る。ヘテロアリール環はヘテロシクリル基の一態様である。「ヘテロシクリル基」という表現は、縮合芳香族および非芳香族基を含むものを含む、縮合環種を含む。例えば、ジオキソラニル環およびベンゾジオキソラニル環系(メチレンジオキシフェニル環系)はいずれも本明細書における意味の範囲内ではヘテロシクリル基である。この表現はヘテロ原子を含有する多環系、非限定的にはキヌクリジルなども含む。ヘテロシクリル基は非置換であり得るか、または本明細書において定義されているように置換され得る。ヘテロシクリル基は、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピリジニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、 ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリル、ジヒドロインドリル、アザインドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、アザベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イミダゾピリジニル、イソオキサゾロピリジニル、チアナフタレニル、プリニル、キサンチニル、アデニニル、グアニニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、キノキサリニル、およびキナゾリニル基を非限定的に含む。代表的な置換ヘテロシクリル基は一置換、または1回を超えて置換され得、非限定的には、本明細書において列挙されるものなどの基で2、3、4、5、もしくは6-置換されたかまたは二置換された、ピペリジニルまたはキノリニル基であり得る。
【0025】
本明細書において用いられる「ヘテロアリール」という用語は、環員を5個以上含有し、そのうちの1つまたは複数がヘテロ原子、非限定的にはN、O、およびSなどである、芳香環化合物を指し;一例としては、ヘテロアリール環は5個から約8~12個の環員を有し得る。ヘテロアリール基は芳香族電子構造を有する様々なヘテロシクリル基である。C2-ヘテロアリールと指定されるヘテロアリール基は、炭素原子が2個およびヘテロ原子が3個の5員環、炭素原子が2個およびヘテロ原子が4個の6員環などであり得る。同様に、C4-ヘテロアリールは、ヘテロ原子が1個の5員環、ヘテロ原子が2個の6員環などであり得る。炭素原子数とヘテロ原子数の和は環原子の総数に等しい。ヘテロアリール基は、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピリジニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、インドリル、アザインドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、アザベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イミダゾピリジニル、イソオキサゾロピリジニル、チアナフタレニル、プリニル、キサンチニル、アデニニル、グアニニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、キノキサリニル、およびキナゾリニル基などの基を非限定的に含む。ヘテロアリール基は非置換であり得るか、または本明細書において検討される基で置換され得る。代表的な置換ヘテロアリール基は本明細書において列挙されるものなどの基で1回または複数回置換され得る。
【0026】
アリールおよびヘテロアリール基の追加の例は、フェニル、ビフェニル、インデニル、ナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、N-ヒドロキシテトラゾリル、N-ヒドロキシトリアゾリル、N-ヒドロキシイミダゾリル、アントラセニル(1-アントラセニル、2-アントラセニル、3-アントラセニル)、チオフェニル(2-チエニル、3-チエニル)、フリル(2-フリル、3-フリル)、インドリル、オキサジアゾリル、イソキサゾリル、キナゾリニル、フルオレニル、キサンテニル、イソインダニル、ベンズヒドリル、アクリジニル、チアゾリル、ピロリル(2-ピロリル)、ピラゾリル(3-ピラゾリル)、イミダゾリル(1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル)、トリアゾリル(1,2,3-トリアゾール-1-イル、1,2,3-トリアゾール-2-イル、1,2,3-トリアゾール-4-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル)、オキサゾリル(2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、 チアゾリル(2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、ピリジル(2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリミジニル(2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル)、ピラジニル、ピリダジニル(3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル)、キノリル(2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル)、イソキノリル(1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル)、ベンゾ[b]フラニル (2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル、4-ベンゾ[b]フラニル、5-ベンゾ[b]フラニル、6-ベンゾ[b]フラニル、7-ベンゾ[b]フラニル)、2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル(2-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、3-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、5-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、6-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、7-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、ベンゾ[b]チオフェニル(2-ベンゾ[b]チオフェニル、3-ベンゾ[b]チオフェニル、4-ベンゾ[b]チオフェニル、5-ベンゾ[b]チオフェニル、6-ベンゾ[b]チオフェニル、7-ベンゾ[b]チオフェニル)、2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル、(2-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、3-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、5-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、6-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、7-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、インドリル(1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル)、インダゾール(1-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル)、ベンゾイミダゾリル(1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル、6-ベンゾイミダゾリル、7-ベンゾイミダゾリル、8-ベンゾイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(1-ベンゾオキサゾリル、2-ベンゾオキサゾリル)、ベンゾチアゾリル(1-ベンゾチアゾリル、2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル)、カルバゾリル(1-カルバゾリル、2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、4-カルバゾリル)、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン(5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-1-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-2-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-3-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-4-イル、5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン(10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-1-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-2-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-3-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-4-イル、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)などを非限定的に含む。
【0027】
本明細書において用いられる「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、本明細書において定義されるアルキル基の水素または炭素結合が本明細書において定義されるヘテロシクリル基への結合で置き換えられた、本明細書において定義されるアルキル基を指す。代表的なヘテロシクリルアルキル基は、フラン-2-イルメチル、フラン-3-イルメチル、ピリジン-3-イルメチル、テトラヒドロフラン-2-イルエチル、およびインドール-2-イルプロピルを非限定的に含む。
【0028】
本明細書において用いられる「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アルキル基の水素または炭素結合が本明細書において定義されるヘテロアリール基への結合で置き換えられた、本明細書において定義されるアルキル基を指す。
【0029】
本明細書において用いられる「アルコキシ」という用語は、本明細書において定義されるシクロアルキル基を含むアルキル基に接続した酸素原子を指す。直鎖アルコキシ基の例はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどを非限定的に含む。分岐アルコキシの例はイソプロポキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソペンチルオキシ、イソヘキシルオキシなどを非限定的に含む。環状アルコキシの例はシクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどを非限定的に含む。アルコキシ基は酸素原子に結合した炭素原子を約1~約12個、約1~約20個、または約1~約40個含み得、二重または三重結合をさらに含み得、ヘテロ原子も含み得る。例えば、アリルオキシ基またはメトキシエトキシ基も本明細書における意味の範囲内ではアルコキシ基であり、メチレンジオキシ基も、ある構造のうちの隣接する2つの原子がそれによって置換されているという文脈では同様である。
【0030】
本明細書において用いられる「アミン」という用語は、例えばN(基)3という式を有する、第一級、第二級、および第三級アミンを指し、ここで、各基は独立してHまたはH以外、例えば、アルキル、アリールなどであり得る。アミンはR-NH2、例えば、アルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン;各Rが独立して選択されるR2NH、例えば、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、アラルキルアミン、ヘテロシクリルアミンなど;および各Rが独立して選択されるR3N、例えば、トリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン、アルキルジアリールアミン、トリアリールアミンなどを非限定的に含む。「アミン」という用語は本明細書において用いられるアンモニウムイオンも含む。
【0031】
本明細書において用いられる「アミノ基」という用語は、各Rが独立して選択される-NH2、-NHR、-NR2、-NR3 +の形態の置換基、およびプロトン化できない-NR3 +を除くそれぞれのプロトン化形態を指す。したがって、アミノ基で置換された任意の化合物をアミンと見なし得る。本明細書における意味の範囲内での「アミノ基」は第一級、第二級、第三級、または第四級アミノ基であり得る。「アルキルアミノ」基はモノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、およびトリアルキルアミノ基を含む。
【0032】
本明細書において用いられる「ハロ」、「ハロゲン」、または「ハライド」基という用語は、それら自体で、または別の置換基の一部として、特に記載がある場合を除き、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。
【0033】
本明細書において用いられる「ハロアルキル」基という用語は、モノハロアルキル基と、すべてのハロ原子が同一または異なっていてもよいポリハロアルキル基と、すべての水素原子がフルオロなどのハロゲン原子で置き換えられたパーハロアルキル基とを含む。ハロアルキルの例は、トリフルオロメチル、1,1-ジクロロエチル、1,2-ジクロロエチル、1,3-ジブロモ-3,3-ジフルオロプロピル、パーフルオロブチルなどを含む。
【0034】
本明細書において用いられる「エポキシ官能性の」または「エポキシ置換された」という用語は、エポキシ置換基である酸素原子が炭素鎖または環系の2つの隣接する炭素原子に直接結合した官能基を指す。エポキシ置換された官能基の例は、2,3-エポキシプロピル、3,4-エポキシブチル、4,5-エポキシペンチル、2,3-エポキシプロポキシ、エポキシプロポキシプロピル、2-グリシドキシエチル、3-グリシドキシプロピル、4-グリシドキシブチル、2-(グリシドキシカルボニル)プロピル、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル、2-(2,3-エポキシシクロペンチル)エチル、2-(4-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル、2-(3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシル)-2-メチルエチル、および5,6-エポキシヘキシルを非限定的に含む。
【0035】
本明細書において用いられる「一価」という用語は、置換された分子に単結合を介して接続している置換基を指す。置換基が一価、例えば、FまたはClなどである場合、それはそれが単結合によって置換する原子に結合している。
【0036】
本明細書において用いられる「炭化水素」または「ヒドロカルビル」という用語は炭素および水素原子を含む分子または官能基を指す。該用語は、通常は炭素および水素原子の両方を含むが、すべての水素原子が他の官能基で置換された分子または官能基も指し得る。
【0037】
本明細書において用いられるように、「ヒドロカルビル」という用語は、直鎖、分岐、または環状炭化水素から誘導される官能基を指し、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、アシル、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。ヒドロカルビル基は(Ca~Cb)ヒドロカルビルとして示され得、ここで、aおよびbは整数であり、a~bのうちの任意の数の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C1~C4)ヒドロカルビルは、ヒドロカルビル基がメチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、またはブチル(C4)であり得ることを意味し、(C0~Cb)ヒドロカルビルは特定の態様ではヒドロカルビル基が存在しないことを意味する。
【0038】
本明細書において用いられる「溶媒」という用語は固体、液体、または気体を溶解し得る液体を指す。溶媒の非限定例はシリコーン、有機化合物、水、アルコール、イオン性液体、および超臨界流体である。
【0039】
本明細書において用いられる「~より独立して選択される」という用語は、文脈が明確に示している場合を除いて、言及された基が同じであるか、異なるか、またはそれらの組み合わせであることを指す。よって、この定義の下では、「X1、X2、およびX3は希ガスより独立して選択される」という表現は、例えば、X1、X2、およびX3がすべて同じであるか、X1、X2、およびX3がすべて異なるか、X1およびX2が同じであるがX3が異なるシナリオ、および他の類型を含むであろう。
【0040】
本明細書において用いられる「室温」という用語は約15℃~28℃の温度を指す。
【0041】
本明細書において用いられる「標準温度および圧力」という用語は20℃および101kPaを指す。
【0042】
ホログラフィック記録用モノマー
式(I)の化合物または本明細書において記載されるものは、当業者に公知の合成法を用いて、本明細書において記載される概略的スキームによって調製し得る。以下の例は本明細書において記載される化合物およびそれらの調製の非限定的な態様を例示している。
【0043】
特定の態様では、ホログラフィック記録に適したモノマーのための組成物は、
少なくとも1つのポリマー;
複数のアリル基を含むポリマーバインダー;ならびに
式(I):
の少なくとも1つのモノマー
および式(II):
の少なくとも1つのモノマー
を含み、
式中
Xは各出現時には独立してH、置換されていてもよいC1~12ヒドロカルビル、または置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Yは独立して-S-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(SH)-、-CH[O-CH2-CH=CH2]-、または-CH[O-CH2-C≡CH]-であり;
各YTは独立してH、-SH、-CH2SH、-CH=CH2、-C≡CH、または置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Zは独立して-S-、-CH2、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、または-CH(SH)-であり;
各ZTは独立してH、-SHまたは-CH2SHであり;
mは0~100の範囲の整数であり;かつ
nは0~100の範囲の整数である。
【0044】
式(I)のモノマーでは、(Y)m-YTは、末端YT部分を有する、互いに結合した一連の「m」個のY部分を意味する。よって、例えば、(Y)2-YTはY-Y-YTを意味し、ここで、各YおよびYTは本明細書において記載されるように独立して選択される。同様に、式(II)のモノマーにおいて、(Z)2-ZTはZ-Z-ZTを意味し、ここで、各ZTは本明細書において記載されるように独立して選択される。式(I)および式(II)のモノマーにおいて、末端YTまたはZT基は化学的に安定な化合物が形成されるように選択される。様々な態様では、末端YT基は置換されていてもよいC6~14アリールであり得る。様々な態様では、末端ZT基は-SHまたは-CH2SHである。
【0045】
1つの態様では、ポリマーは線状ポリウレタンである。他の好適なポリマーは、本明細書において記載されるホログラフィック記録用媒体として有用でありかつ当技術分野で公知のものを含み得る。いくつかの態様では、ポリマーはブロックコポリマーであり得る。好適なブロックコポリマーは、本明細書において記載されるように、ポリカプロラクトン-ブロック-ポリテトラヒドロフラン-ブロック-ポリカプロラクトン(Mn約2000)を含み得る。
【0046】
1つの態様では、ポリマーバインダーは約0~約80mol%のアリル基を含有する。1つの態様では、ポリマーバインダーは約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または約100mol%のアリル基を含有する。1つの態様では、ポリマーはポリカプロラクトン-ブロック-ポリテトラヒドロフラン-ブロック-ポリカプロラクトンを含む。アリル基のmol%は、様々な態様では、アリル含有モノマー/バインダーとブロックコポリマーとの総モル数に対するものである。
【0047】
様々な態様では、式(I)のモノマーと式(II)のモノマーとの比は約9:1~約1:9である。式(I):式(II)の比は9:1~1:9の間の任意の数値をとり得、様々な態様では、式(I):式(II)の比は約9:1、8.5:1.5、8:2、7.5:2.5、7:3、6.5:3.5、6:4、5.5:4.5、1:1、4.5:5.5、4:6、3.5:6、3:7、2.5:7.5、2:8、1.5:8.5、または約1:9であり得る。様々な態様では、式(I)のモノマーと式(II)のモノマーとの比は式(II)におけるチオール基と式(I)におけるエン(ene)またはイン(yne)基との間の化学量論比である。
【0048】
様々な態様では、(Z)nは少なくとも1つの-SH部分を含む。様々な態様では、(Z)nは少なくとも2つの-SH部分を含む。様々な態様では、(Z)nは少なくとも3つの-SH部分を含む。様々な態様では、式(II)のモノマーは
からなる群より選択される。
【0049】
様々な態様では、XはC6~10アリールであり得る。いくつかの態様では、Xはフェニルである。様々な態様では、(Y)mは直鎖である。1つの態様では、(Y)mは少なくとも1つの-CH(O-CH2-CH=CH2)-または-CH(O-CH2-C≡CH)-部分であり得る。別の態様では、(Y)mは-CH(O-CH2-CH=CH2)-およびCH(O-CH2-C≡CH)-より独立して選択される少なくとも2つの部位であり得る。
【0050】
特定の態様では、式(I)のモノマーは
からなる群より選択される。
【0051】
1つの態様では、式(I)のモノマーと式(II)のモノマーとの合計は組成物の約1~80%(w/w)であり得る。いくつかの態様では、モノマーは組成物の約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または約80%(w/w)であり得る。
【0052】
1つの態様では、本明細書において記載される組成物は重合されている。重合組成物は、いくつかの態様では、レーザー光などの光、光開始剤、ラジカル開始剤、遷移金属錯体などを用いて重合されていてもよい。
【0053】
様々な態様では、請求項の方法によって製造されたホログラムは約0.01~約0.06の屈折率変調度(Δn)を有する。1つの態様では、本明細書において記載されるホログラムは約0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、または約0.06の屈折率変調度(Δn)を有する。いくつかの態様では、式(I)および式(II)のモノマーはポリマーバインダーと一緒になって溶液を形成する。
【0054】
1つの態様では、重合組成物においては複数のアリル基とモノマーとが架橋されている。架橋は、例えば、ポリマーバインダーのアリル基と、モノマー中の1つまたは複数のチオール、アリル、またはプロパルギル基との間であり得る。いくつかの態様では、本明細書において記載される未重合組成物はフィルムとして成形し得る。
【0055】
ネットワークポリマーの屈折率は、チオエーテル結合の形成を介して、従来の高屈折率ポリマー系の屈折率と比較してさらに大きくし得る。この目標に向けて、チオール、エンおよびイン官能基を含有する一連の高屈折率書き込みモノマーが本明細書において記載されるように設計されかつ合成された。各モノマーはアリールおよび/またはチオエーテル基を含有する柔軟な高屈折率コアを含有する。酸素感受性が無視できること、収縮が少ないことなどの、段階成長チオール-エンおよびチオール-イン「クリック」反応の利点を利用して、屈折率、分散性、粘度、ガラス転移温度などの材料特性に対する優れた制御を達成し得る。
【0056】
いくつかの態様では、本明細書において記載されるモノマーは1.59~1.67の範囲内の高い屈折率を示した。TPO光開始剤を用いた未希釈のチオール-エンおよびチオール-イン樹脂の光重合により1.6~1.7の範囲のnD値が得られた。589nmの波長で測定された、合成されたモノマーおよびフォトポリマーのRI値の例示的なセットを下の表1に示す。
【0057】
(表1)合成された液体書き込みモノマーおよび硬化後のそれらのフォトポリマー混合物についての25℃および589nmの波長で測定された屈折率の表
【0058】
ここでは、チオール-エンクリック化学に基づく高ダイナミックレンジ(Δn)ホログラフィック媒体が考案され、図1A~1Dに示すように製造された。1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプトプロパン(BMEMP、トリチオール、図1A)および1,2-エタンジチオール系ジアリルエーテル(EDTDAE、ジエン、図1A)を、容易に入手可能な前駆体から、簡単な合成経路を介して高屈折率ポリマー(表2)を形成するそれらの能力に基づいて、書き込みモノマーとして選択した。
【0059】
(表2)書き込みモノマーの屈折率
a)アッベ数=(nd-1)/(nf-nc)
【0060】
ホログラフィック架橋バインダーを従来の二段階法で製造する方法に類似したアプローチで、ジオール(トリメチロールプロパンアリルエーテル(TMPAE)およびポリオールMw約2000)およびジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)の段階成長重合によって線状ポリウレタンバインダーを合成し、これは後に書き込みモノマーおよび光開始剤と共に揮発性有機溶媒に溶解することができた。従来の二段階戦略には直交マトリクス形成および書き込み化学が必要になるため、従来のように重合され架橋されたウレタンマトリクスと組み合わせてチオール-X反応を書き込み化学として用いることは、書き込みモノマーからのチオールとバインダーからのイソシアネートとの交差反応の可能性により、困難である。
【0061】
線形ポリマーとしてバインダーを有することにより2つのプロセスを切り離すことができるため、チオール書き込みモノマーの非存在下で低屈折率ウレタン系バインダーの形成が行われることが予想外にも発見された。これらのポリマーは、様々なレベルでのチオール-エン書き込みモノマーの結合およびマトリクスの架橋を容易にするために、様々なレベルのTMPAEと共に形成された。ブレードコーティングおよび熱アニーリング後、3~30ミクロンの範囲の制御可能な厚さを有するフィルムが調製され、ホログラフィック記録のために用いられた。試料を2つの干渉する405nmレーザービームに曝露することによって透過ホログラムを記録した(図11)。同時に、媒体が非感受性である633nmプローブビームを用いてホログラムの回折効率がリアルタイムでモニタリングされる。最も高い回折効率(DE)を達成するためには10秒未満での比較的低強度の露光が必要であり(図4)、その際に、チオールとエンモノマーとは互いに、および線形ポリマーのペンダントエン官能基と反応して、フィルムの露光領域内でのみ架橋マトリクスを形成する。露光後、同じ633nmプローブビームを用いて角度再生が実施され、角度離調の関数として回折効率がモニタリングされる。
【0062】
図2Bは、(フリンジ間隔がΛ=0.5μmである透過ホログラムについての)様々な充填量の書き込みモノマーで達成された達成可能な最も高いホログラフィックインデックス変調度を示す。予想されたように、より高い書き込みモノマー充填量は、概して、より高い、場合によっては0.04という高さのインデックス変調度をもたらした。1つの例外はバインダーがアリル側基を含有しない対照配合物である。ここで、書き込みモノマーの充填量が40wt%もの高さまで増加すると、インデックス変調度は急激に低下する。この高充填量では、書き込みモノマー相が重合時にバインダーから分離して、光学的透明度および、これに対応して、回折効率が低下すると推測される。しかしながら、アリル反応部位が線形ポリマーバインダー上に存在する場合、バインダーと書き込みポリマーとが反応して露光領域に単一の架橋ネットワークを形成して、相分離を防止しかつ高モノマー充填量の使用を可能にする。アリル側鎖の効果を解明するために、アリル充填量を独立変数として同じデータを再プロットする(図7A~7B)。概して、至適なアリル含有量が存在しており;アリル含有量が少ないと固定が不十分になる一方で、過剰なアリルはチオール-エン光重合を妨げる場合がある。
【0063】
次に、バインダー上のアリル反応部位の存在下で拡散ボケ効果を評価した。この目的のために、2つの異なる空間周波数でのホログラフィック性能が比較される(ピッチΛ=0.5μm vs 1μmに対応する、図7A~7Bに示す)。アリル反応部位の非存在下では、インデックス変調度は、拡散ボケにより、より高い空間周波数では大幅に低下する。アリル反応部位が存在する場合、インデックス変調度は、図2Cに見られるように、空間周波数の関数としてほとんど変化しないままである。反応を通じて、書き込みポリマーはバインダー反応部位に効果的に固定され不動化されて、拡散ボケが大幅に減少する。図9A~9Bは対照群を除くすべての配合物の性能を示しており、ダイナミックレンジの点でチオール-エン系ホログラムの優れたチューニング性を示している。
【0064】
図2Dでは、原子間力顕微鏡法(AFM)で小さな表面起伏のバラツキを観察することにより、記録されたフリンジの直接的な視覚化が可能になる。測定されたフリンジ間隔は公称値と一致し、フリンジの均一性はすべての配合物で良好である(図13A~13B)。図13A~13Bにおける表面起伏のフィーチャーは10nm程であり、膜内では体積指数のバラツキと比較して光回折への寄与は無視できる程度であった。この所見は、ホログラフィック再生時に屈折率整合液およびカバースリップを適用し、同じ結果を達成することによって確認される。
【0065】
最後に、より高い空間周波数でのこのチオール-エン系記録媒体の性能をさらに実証するために、反射ホログラムを記録した。概して、インデックス変調度は、拡散ボケにより、これらのより小さなピッチで急激に低下することが多い。しかしながら、ポリマーバインダーと書き込みモノマーとの間の共有化学結合の導入により、この系では反射ホログラムの性能の向上が予想された。シングルビームデニシュウク構成を用いて、405nm付近の公称反射ノッチについてピッチΛ=140nmで記録した。1つの態様では、以前の透過実験からの配合物がここで用いられた(30mol%アリルおよび43w%チオールエン書き込みモノマー)。ブレードコーティングを繰り返して約25μmのより厚いフィルムが得られ、許容可能な表面プロファイルをもたらした(図6)。図4Bは典型的なホログラム透過スペクトル(10秒間露光後)を示す。比較のために、コーゲルニク結合波モデルの予想も示されている(以前の最小二乗法パラメータではなく、インデックス変調度およびフィルム厚が手作業で選択されたことに留意されたい)。この挙動は5×10-3を超えるインデックス変調度を示唆しており、より大きなピッチの透過の場合(4×10-2)からの大幅な低下を表しているが、これらの比較的薄いフィルムにおいて90%よりも良好な回折効率を達成するには依然として十分である。スペクトル的に広がった中央ノッチはコーゲルニク過変調の特徴であり、試料の厚さ全体にわたる良好な格子均一性を示している。
【0066】
要約すると、高ダイナミックレンジを達成できるホログラフィック材料を製造するために、線形の官能化ポリマーバインダーと組み合わせたチオール-エンクリックケミストリーが実施された。線形の低RIポリウレタンマトリクスの選択により、ロール・ツー・ロールブレードコーティング法を用いてホログラフィックフィルムを調製した。至適な反応性アリル側鎖を線状ポリウレタンポリマーバインダーに組み込むことによって0.04を超える高ダイナミックレンジが得られ、これは高い空間周波数で発生する拡散ボケの問題に対処した。顕著な過変調反射ホログラムが実証されて、極めて高い空間周波数および低下した拡散ボケにおけるフィルムの優れた性能が証明された。
【0067】
ホログラムを記録する方法
1つの態様では、ホログラムを記録する方法が提供される。方法は、本明細書において記載されるポリマーバインダー、式(I)のモノマーおよび式(II)のモノマーを含有する組成物を準備する工程、およびホログラムを形成するために組成物をレーザー照射に曝露する工程を含む。レーザー照射は図11に示されるような好適な供給源からの2つのレーザービームを用いることを含み得る。ホログラムはまた当技術分野で認識されている他の方法を用いて記録し得る。請求項の方法によって生成されるホログラムは車両および航空機におけるヘッドアップディスプレイ、ホログラフィックデータストレージ、およびホログラフィック光学素子などの用途に用い得る。
【0068】
前記準備する工程は、いくつかの態様では、不活性基材をフィルムでコーティングすることを含み得る。好適な不活性基材はガラス、プラスチック、金属、半導体材料、セラミック、ゴム、およびこれらの材料の組み合わせを含み得る。1つの態様では、前記曝露する工程は、ポリマーバインダーと式(I)および式(II)のモノマーとを架橋することを含み得る。
【0069】
高屈折率フォトポリマー
様々な態様では、式(I-A)および式(II)の化合物が架橋されて、高屈折率を有するフォトポリマーを形成し得る。高屈折率ポリマー(HRIP)は、それらの軽さ、加工の容易さ、低コスト、および材料特性に対する多様な制御性から、様々なオプトエレクトロニクス用途向けにシリコンおよびガラスの興味深い代替品として認識されている。内因性HRIPの開発は大幅に進歩してきたが、これらの戦略の大部分は光透過性、空間的および時間的制御の欠如が問題となる熱駆動重合技術に依存している。
【0070】
モノマーの分子量またはコア構造を変更することなく、ネットワークポリマーの屈折率および架橋密度を高めることは困難である。チオリン系フォトポリマーに関する最近の報告はいくつかあるが、高屈折率モノマーおよびフォトポリマーのスケーラブルな合成を指向した用途および研究ははるかに少ない。高屈折率チオール-インフォトポリマー向けに開発された一般的な合成プロトコルに基づいて、ここでは、多官能チオールと混和性樹脂を形成する一連の高屈折率の低粘度プロパルギルエーテルを報告している。緩やかな条件下でのこれらの樹脂混合物の光重合により、様々な態様では、屈折率値(nD)が1.60~1.75の範囲の光学的に透明なフィルムが得られる。
【0071】
様々な態様では、組成物が提供される。特定の態様では、組成物は
式(I-A):
の少なくとも1つのモノマー
および式(II):
の少なくとも1つのモノマー
を含み、
式中
Xは各出現時には独立してHまたは置換されていてもよいC6~14アリールであり;
Y1およびY2は各出現時には独立して-S-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(SH)-、-CH[O-CH2-CH=CH2]-、または-CH[O-CH2-C≡CH]-であり;
YT1およびYT2は各出現時には独立してH、-SH、-CH=CH2、-C≡CH、または置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Zは独立して-S-、-CH2、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、または-CH(SH)-であり;
各ZTは独立してH、-SHまたは-CH2SHであり;
各m1およびm2は独立して0~100の範囲の整数であり;かつ
nは0~100の範囲の整数である。
【0072】
式(I-A)および式(II)の少なくとも1つのモノマーを含有する組成物は本明細書において記載される条件のいずれかを用いて重合し得る。重合はモノマー組成物をUVおよび/または可視光に曝露することによって達成される光重合であり得る。
【0073】
様々な態様では、重合組成物は約1.63~約1.69の屈折率を有する。様々な態様では、重合組成物の屈折率は少なくとも約1.60、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.70、1.71、1.72、1.73、1.74、または約1.75であるか、これらと等しいか、これらより大きい。
【0074】
様々な態様では、(Z)n-ZTは少なくとも1つの-SH部分を含む。様々な態様では、(Z)n-ZTは少なくとも2つの-SH部分を含む。
【0075】
様々な態様では、式(II)のモノマーは
からなる群より選択される。
【0076】
様々な態様では、m1は1であり、Y1は-S-であり、YT1はフェニルである。
【0077】
様々な態様では、(Y1)m1および(Y2)m2の少なくとも一方は直鎖である。
【0078】
様々な態様では、(Y1)m1および(Y2)m2の少なくとも一方は-CH(O-CH2-CH=CH2)-または-CH(O-CH2-C≡CH)-の少なくとも一方を含む。
【0079】
様々な態様では、(Y1)m1および(Y2)m2の少なくとも一方は-CH(O-CH2-CH=CH2)-および-CH(O-CH2-C≡CH)-より独立して選択される少なくとも2つの部分を含む。様々な態様では、YT1およびYT2は-C≡CHである。
【0080】
様々な態様では、式(I-A)のモノマーは
からなる群より選択される。
【0081】
モノマー合成における様々なチオール-Xクリック反応をよく考えて利用すると、多数のスルフィド基の組み込みが可能になるだけでなく、最小限の副生成物で高収率の反応ももたらす。ここで検討されるモノマーは、安価かつ広く入手可能な原料から出発して合成され、チオールエポキシドおよびチオール-ハライドクリック反応を効率的に利用している(スキーム1)。
【0082】
スキーム1.本研究で用いた高屈折率多官能性チオール(a)、アルキンチオエーテル(b)、およびアルキンエーテル(c)の基本的な合成経路、ならびにそれらの測定された粘度および屈折率(nD/20℃)値。
【0083】
ここで開発された基本的な戦略は主鎖および重合可能なペンダント基の選択に対して高い自由度も提供する。スキーム2からわかるように、各モノマーの構造はそのコア構造ならびに反応性官能基の性質および位置が異なる。例えば、最も単純なインモノマー2aはアルキナール基が1つしかないため架橋密度の低いポリマーしか形成しないが、残りのアリール含有モノマー2cおよび2dと比較して粘度が低く(32cP)かつnが高い(1.611)。
【0084】
ジイン(diyne)モノマー2bはその主鎖に硫黄のみを有し、アリール基を有さない。屈折率は低い(1.591)が、モノマー2bは立体障害が最も少なく、第一級チオプロパルギル官能基性を有する。同様に、チオールモノマーにおいて1aから1cに進むにつれて、第二級チオール基の数が増加し、それに対応して屈折率が増加する。溶解性が向上した主鎖の柔軟性を維持しつつ、Tg、弾性率、および疎水性などの特定の材料特性が容易に調整される。例えば、モノマー設計全体にわたる柔軟なスルフィド結合は、初期樹脂粘度を実質的に増加させるかまたは所与のモノマー/樹脂の溶解度もしくは他の光学的に望ましい特性を犠牲にすることなく、屈折率の増加を促進する。
【0085】
スキーム2.この研究で用いられた高屈折率多官能性チオール(A)およびアルキン(B)の構造ならびにそれらの測定された粘度および屈折率(nD/20℃)値。
【0086】
チオール-インクリック反応を介して線形ポリマーを形成するために必要な最少のチオール官能基性は2個なので、屈折率(nD/20℃)が1.596の市販の2,2'-チオジエタンチオール(1a)を最も単純なジチオールとして用いた。トリチオール(1b)およびテトラチオール(1c)は穏やかな反応条件下での2-メルカプトエタノールによるエピクロロヒドリンの開環反応から開始する従来の手順に従って得られた。このようにして、触媒量のホウ砂の存在下、エピクロロヒドリンとの1当量の2-メルカプトエタノールの反応により一置換生成物である1-クロロ-3-(フェニルチオ)-2-プロパノール(CPTP)が定量的かつ選択的に得られ、これを半当量のエタンジチオールとさらに反応させて、対応するテトラヒドロキシ中間体(TetraOH)を得た。同様に、トリヒドロキシ中間体(TriOH)は、塩基としてのNaOHの存在下、エピクロロヒドリンとの2当量の2-メルカプトエタノールの反応によって得られた。チオ尿素とのTriOHおよびTetraOHの反応に続く、50%NaOH溶液を用いた対応するチオウロニウム塩の加水分解により、対応するTriSHおよびTetraSHがそれぞれ74%および66%の全収率で得られた。両モノマーはそれぞれ粘度が43および189cPならびに屈折率値(nD/20℃)が1.636および1.647の無色の液体として分離された。各アルキン官能基は二官能性である(つまり、2回反応することができる)ため、本研究で用いられる最も単純なアルキンモノマー2aはエピクロロヒドリンとチオフェノールとの反応から開始する2つの高収率工程で調製された。第2工程では、2°アルコールBPTPの脱プロトン化に続き、臭化プロパルギルによるアルキル化が行われ、屈折率値(nD/20℃)が1.611の低粘度(32cP)2aが91%の収率で得られた。対照的に、粘度が14cPであり屈折率値(nD/20℃)が1.591であるモノマー2dは、翻って、塩基としてのKOHの存在下での塩化プロパルギルとのジチオール1aのアルキル化を介して85%の収率で一工程で調製された。
【0087】
ジインモノマー2cおよび2dの合成の第一工程は、エピクロロヒドリンとチオフェノールとのホウ砂に触媒された選択的チオール-エポキシド開環反応を伴う。1当量のチオフェノールとのエピクロロヒドリンの反応により、クロロ中間体である1-クロロ-3-(フェニルチオ)-2-プロポナール(CPTP)が無色の液体として優れた収率(>90%)で得られた。クロロ中間体CPTPは、塩基としてのNaOHの存在下、1,2-エタンジチオール(EDT)および4,4'-チオビスベンゼンチオール(TBT)などの高屈折率ジチオール「コア」とさらに反応させて、対応するアルコールEDTOHおよびTBTOHが透明な粘性液体として90%超の収率でそれぞれ得られた。この戦略に従い、文献において過去に報告された任意の高屈折率多官能性チオールを用いて、調査する用途の要件に応じて最終的な材料特性を調整し得る。最後に、水素化ナトリウムによるジオールの脱プロトン化に続いて、2当量の臭化プロパルギルによるアルキル化により、ジプロパルギルエーテル2cおよび2dがそれぞれ66%および76%という高い全収率で得られた。2cおよび2dモノマーはいずれも、それぞれ1.603および1.668の屈折率値(nD/20℃)に加えて、それぞれ171cPおよび732cPの粘度値を有する液体として得られた。全般的には、多官能性チオールおよびジインモノマー両方のためのこれらの中間体の合成は、特別な注意事項なく、容易にスケールアップされかつ数か月間保存される。
【実施例
【0088】
例示として提供される以下の実施例を参照することによって本願の様々な態様を一層よく理解することができる。本願の範囲は本明細書において提供される実施例に限定されない。
【0089】
化学合成に関する基本情報:市販の試薬をさらに精製することなく用いた。チオフェノール、エピクロロヒドリン、2-メルカプトエタノールおよびエタンジチオールはAlfa Aesarから購入した。1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)はChem-Impex Internationalから購入した。ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)光開始剤はTCI Americaから購入した。チオ尿素はSigma-Aldrichから購入した。試薬グレードの水酸化ナトリウム(NaOH)はFisher Scientificから購入した。無水エタノール(200プルーフ)はDecon Labs Inc.から購入した。1Hおよび13C-NMRスペクトルはBruker400MHz分光計上のCDCl3(内部標準:7.26ppm、1H:77.0ppm、13C)で記録した。
【0090】
実施例1:1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプトプロパン(BMEMP、1b)の調製
1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプトプロパン(BMEMP\):磁気撹拌棒を備えた乾燥させた500gの丸底フラスコに17.8gの2-メルカプトエタノール(228mmol、2.08当量)を加え、69mL(1.58M)の無水エタノールで希釈し、均質化した。この溶液に9.13g(228mmol、2.09当量)の水酸化ナトリウムを加えた。室温で10分間撹拌した後、10.1g(109mmol、1当量)のエピクロロヒドリンをN2雰囲気下で反応混合物にゆっくりと加えた。混合物を50℃まで加熱し、1時間撹拌した。この期間後、反応混合物を室温まで冷却し、13.5gの36%塩酸(133mmol、1.22当量)を加えると、析出物が形成された。
【0091】
析出物をろ過し、減圧下で濃縮して、22.05g(95%)の1,3-ビス(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-プロパノール(BHETP)をわずかに黄色の粘性液体として得、これはさらに精製することなく次の工程に直接用いた。第2工程では、還流冷却器および磁気撹拌棒を備えた乾燥させた500gの丸底フラスコに22gのBHETP(104mmol、1当量)および28.9g(379mmol、3.66当量)のチオ尿素を加え、63.3g(1.58M)の36%塩酸水溶液に溶解し、均質化した。この溶液を110℃まで加熱し、1時間撹拌した。この期間後、反応を室温まで冷却し、61.5g(762mmol、7.35当量)の50%NaOH水溶液をN2雰囲気下で加えた。懸濁液を室温で24時間撹拌した。この期間後、200mLのトルエンを加え、混合物を吸引ろ過し、次いで分液ロートに移した。有機層を1M塩酸溶液、水、およびブラインで洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液をろ過し、減圧下で濃縮して、25.2g(93%)の表題化合物を無色の液体として得、これはさらに精製することなくそのまま用いた。
【0092】
実施例1a:1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプトプロパン(BMEMP、1b)の代替的調製
1-クロロ-3-(ヒドロキシエチルチオ)-2-プロパノール(CHTEP)2:磁気撹拌棒を備えた500mLの丸底フラスコに21.2mL(25.0g、0.27mol、1当量)のエピクロロヒドリンおよび10.3g(0.027mol、0.1当量)のホウ砂を加え、135mLの脱イオン水で希釈した。この懸濁液に、添加漏斗を用いて19mL(21.1g、0.27mol、1当量)の2-メルカプトエタノールを1時間かけて滴下した。反応を室温で4時間撹拌した。この期間後、混合物をCH2Cl2(3×100mL)で抽出した。合わせた有機物を水(約100mL、2X)、ブライン(約50mL、1X)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発させて43.0g(93%)の表題化合物CHTEPが無色の粘性液体として得られ、これはさらなる精製をせずに次の工程で直接用いた。
【0093】
1,3-ビス-(ヒドロキシエチルチオ)-2-プロパノール(BHETP):特許文献で報告されている手順を適合させてBHETPを合成した2。磁気撹拌棒を備えた1Lの丸底フラスコに33.6mL(37.2g、0.48mol、2.1当量)の2-メルカプトエタノールを加え、318mLの試薬グレードのエタノールで希釈した。この溶液に19.0g(0.48mmol、2.1当量)のNaOHを加えた。室温で10分間撹拌した後、21.0g(0.23mol、1.0当量)のエピクロロヒドリンをN2雰囲気下でゆっくりと加えた。得られた懸濁液を室温で16時間撹拌した。この期間後、27.5g(0.27mol、1.2当量)の36%塩酸を加えた。析出物をろ過し、減圧下で濃縮して46.7g(97%)の表題化合物BHETPを無色の粘性液体として得、これはさらに精製することなく次の工程に直接用いた。
【0094】
1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプトプロパン(1b):還流冷却器および撹拌棒を備えた1Lの丸底フラスコに46.7g(0.22mol、1当量)のBHETPを加え、133.7g(1.32mol、6当量)の36%塩酸水溶液に溶解した。この溶液に75.3g(0.99mol)のチオ尿素を加え、110℃まで1時間加熱した。この期間後、フラスコを室温まで冷却し、132.0g(1.65mol、7.5当量)の50%NaOH水溶液をN2雰囲気下で加えた。次いで懸濁液を室温で24時間撹拌した。この期間後、200mLのトルエンを加え、混合物を分液ロートに移し、1M塩酸溶液(150mL、1X)、水(約100mL、1X)、ブライン(50mL、1X)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発させて、表題化合物1bを無色の粘性液体として得、これはさらに精製することなく用いた。
【0095】
実施例1b:TetraOHの調製
TetraOH:磁気撹拌棒を備えた500mLの丸底フラスコに4.46mL(5.00g、0.053mol、1当量)の1,2-エタンジチオールを加え、106mLのエタノールで希釈した。この溶液に4.24g(0.106mol、2当量)のNaOHを加えた。室温で10分間撹拌した後、18.1g(0.106mol、2当量)のCHTEPをN2雰囲気下でゆっくりと加えた。得られた懸濁液を室温で16時間撹拌した。この期間後、12.9g 0.127mol、2.4当量)の36%塩酸を加え、析出した固体をろ別した。ろ液を減圧下で蒸発させて、18.1g(94%)の表題化合物を無色の粘性液体として得、これはさらに精製することなく次の工程に直接用いた。
【0096】
実施例1c:モノマー1cの調製
1c:還流冷却器および撹拌棒を備えた500mLの丸底フラスコに18g(0.049mol、1当量)のTetraOHを加え、40.2g(0.397mol、8当量)の36%塩酸水溶液に溶解した。この溶液に18.1g(0.238mol、4.8当量)のチオ尿素を加え、110℃まで1時間加熱した。この期間後、フラスコを室温まで冷却し、19.9g(0.496mol、10当量)の50%NaOH水溶液をN2雰囲気下で加えた。次いで懸濁液を室温で24時間撹拌した。この期間後、500mLのトルエンを加え、混合物を分液漏斗に移し、1M塩酸溶液(250mL、1X)、水(約150mL、1X)、ブライン(100mL、1X)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発させて、16.2g(76%)の表題化合物1cを無色の粘性液体として得、これはさらなる精製をせずに用いた。
【0097】
実施例1d:1,3-ビス-(フェニルチオ)-2-プロパノール(BPTP)の調製
1,3-ビス-(フェニルチオ)-2-プロパノール(BPTP):磁気撹拌棒を備えた250mLの丸底フラスコに16mL(157mmol、2.2当量)のチオフェノールを加え、次いで230mLのトルエン(0.3M、w.r.t.エピクロロヒドリン)で希釈した。この溶液に、23mLのDBU(154mmol、2.2当量)をN2雰囲気下で加え、室温で10分間撹拌した。この期間後、5.5mLのエピクロロヒドリン(70.3mmol、1.0当量)を滴下し、反応容器を室温で16時間撹拌した。この期間後、揮発物を減圧下で除去した。残渣を500mLのDCMで希釈し、1M HCl(100mL)、水(100mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物を薄黄色の液体として得た。ヘキサン中の50%EtOAcを溶離液として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製してBPTP(17.1g、収率88%)を無色の粘性液体として得た。
【0098】
実施例1e:1-クロロ-3-(フェニルチオ)-2-プロパノール(CPTP)の調製
1-クロロ-3-(フェニルチオ)-2-プロパノール(CPTP):磁気撹拌棒を備えた500mLの丸底フラスコに50.0mL(0.64mol、1当量)のエピクロロヒドリンおよび24.4g(0.064mol、0.1当量)のホウ砂を加え、320mLの脱イオン水で希釈した。この懸濁液に、添加漏斗を用いて65mL(0.64mol、1当量)のチオフェノールを1時間かけて滴下した。反応を室温で4時間撹拌した。この期間後、混合物をCH2Cl2(3×100mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を水(約100mL、2X)、ブライン(約50mL、1X)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発させて99.3g(96%)の表題化合物CPTPを無色の液体として得、これはさらなる精製をせずに次の工程に直接用いた。
【0099】
実施例1f:1,2-エタンジチオール系中間体ジオール(EDTOH)の代替的調製
1,2-エタンジチオール系中間体ジオール(EDTOH):磁気撹拌棒を備えた500mLの丸底フラスコに4.46mL(5.00g、53.08mmol、1当量)の1,2-エタンジチオールを加え、106mLのエタノールで希釈した。この溶液に4.25g(106.16mmol、2当量)のNaOHを加えた。室温で10分間撹拌した後、21.5g(106.16mmol、2当量)のCPTPをN2雰囲気下でゆっくりと加えた。得られた懸濁液を室温で24時間撹拌した。この期間後、エタノールを減圧下で除去して粗残渣を得、これをEtOAc(約500mL)で希釈し、1N HCl(約150mL、2X)、水(約150mL、1X)、およびブライン(約150mL、1X)で洗浄した。合わせた有機物をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して黄色の粘性液体を得、これを、60%EtOAc/Hexを溶離液として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。所望の物質を含有するフラクションを蒸発させて22.1g(97%)の表題化合物EDTOHを無色の粘性液体として得た。
【0100】
実施例1g:4,4'-チオビスベンゼンチオール系中間体ジオール(TBTOH)の調製
4,4'-チオビスベンゼンチオール系中間体ジオール(TBTOH):磁気撹拌棒を備えた500mLの丸底フラスコに5.00g(19.97mmol)の4,4'-チオベンゼンチオールを加え、200mLのトルエンで希釈した。この懸濁液に6.08g(39.93mmol、2当量)のDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)を加えた。室温で10分間撹拌した後、8.09g(39.93mmol、2当量)のCPTPをN2雰囲気下でゆっくりと加えた。得られた懸濁液を90℃まで16時間加熱した。この期間後、反応を室温まで冷却し、トルエンを減圧下で除去して粗残渣を得、これをEtOAc(約250mL)で希釈し、1N HCl(約100mL、2X)、水(約100mL、1X)、およびブライン(約50mL、1X)で洗浄した。合わせた有機物をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して黄色の粘性液体を得、これを、60%EtOAc/Hexを溶離液として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。所望の物質を含有するフラクションを蒸発させて、10.6g(91%)の表題化合物TBTOHを薄黄色の粘性液体として得た。
【0101】
実施例1h:1,3-ビス-(n-プロピルチオ)-2-プロパノール(BPrTP)の調製
1,3-ビス-(n-プロピルチオ)-2-プロパノール(BPrTP):磁気撹拌棒を備えた250mLの丸底フラスコに7.8mL(8.6g、113.5mmol、2.1当量)のn-プロピルチオを加え、75mLの試薬グレードのエタノールで希釈した。この溶液に4.54g(113.5mmol、2.1当量)のNaOHを加えた。室温で10分間撹拌した後、5.0g(54.0mmol、1.0当量)のエピクロロヒドリンをN2雰囲気下でゆっくりと加えた。得られた懸濁液を50℃まで1時間加熱した。この期間後、フラスコを室温まで冷却し、6.4g(64.8mmol、1.2当量)の36%塩酸を加えた。析出物をろ過し、減圧下で濃縮して10.2g(91%)の表題化合物を無色の液体として得、これはさらに精製せずに次の工程に直接用いた。
【0102】
実施例1i:1,3-ビス-(n-プロピルチオ)-2-プロパンチオール(3a)の調製
1,3-ビス-(n-プロピルチオ)-2-プロパンチオール(3a):還流冷却器および撹拌棒を備えた250mLの丸底フラスコに10.2g(48.95mmol、1当量)のBPrTPを加え、9.9g(97.9mmol、2当量)の36%塩酸水溶液に溶解した。この溶液に5.6g(73.42mmol、1.5当量)のチオ尿素を加え、110℃まで1時間加熱した。この期間後、フラスコを室温まで冷却し、9.8g(122.4mmol、2.5当量)の50%NaOH水溶液をN2雰囲気下で加えた。次いで懸濁液を室温で24時間撹拌した。この期間後、200mLのトルエンを加え、混合物を分液漏斗に移し、1M塩酸溶液(150mL、1X)、水(約100mL、1X)、ブライン(50mL、1X)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発させて粗生成物を得、これを、10%EtOAc/ヘキサンを溶離液として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して8.4g(77%)の表題化合物3aを無色の液体として得た。
【0103】
実施例2:1,2-エタンジチオール系ジアリルエーテル(EDTDAE)の調製
1,2-エタンジチオール系ジアリルエーテル(EDTDAE):EDTDAEはこれまでに報告された手順に従って調製した。簡単に説明すると、磁気撹拌棒を備えた乾燥させた500gの丸底フラスコに50mL(640mmol、1当量)のエピクロロヒドリンおよび24.4g(64mmol、0.1当量)のホウ砂を加え、320mL(2M)の脱イオン水に加えた。添加漏斗を用いて65mL(635mmol、1当量)のチオフェノールを1時間かけて撹拌溶液に滴下した。室温で4時間反応を行った。続いて混合物をCH2Cl2(3×100mL)で抽出し、次いで水(200mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。合わせた抽出物をNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮して99.3gの1-クロロ-3-(フェニルチオ)-2-プロパノール(CPTP)を得た(収率96%)。さらなる精製は実施せずに、化合物をそのまま用いた。第2工程では、磁気撹拌棒を備えた500mLの丸底フラスコに4.46mL(5.00g、53.08mmol、1当量)の1,2-エタンジチオールを加え、106mLのエタノールで希釈した。この溶液に4.25g(106.16mmol、2当量)のNaOHを加えた。室温で10分間撹拌した後、21.5g(106.16mmol、2当量)のCPTPをN2雰囲気下でゆっくりと加えた。
【0104】
得られた懸濁液を室温で24時間撹拌した。この期間後、エタノールを減圧下で除去して粗残渣を得、これをEtOAc(約500mL)で希釈し、1N HCl(約150mL、2X)、水(約150mL、1X)、およびブライン(約150mL、1X)で洗浄した。合わせた有機物をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して黄色の粘性液体を得、これを、60%EtOAc/ヘキサンを溶離液として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。所望の物質を含有するフラクションを蒸発させて22.1g(97%)の1,2-エタンジチオール系ジオール(EDT-OH)を無色の粘性液体として得た。最終工程では、磁気撹拌棒を備えた500mLの丸底フラスコに10.0g(23.44mmol、1当量)のEDT-OHを加え、117mLの無水THFで希釈した。フラスコを0℃まで冷却し、1.69g(70.31mmol、3当量)のNaHを少しずつ加えた。室温で30分間撹拌した後、8.50g(70.31mmol、3当量)の臭化アリルに続いて0.39g(2.34mmol、0.1当量)のヨウ化カリウムを加えた。得られた溶液を室温で16時間撹拌した。この期間後、反応混合物をEtOAc(約300mL)で希釈し、1N HCl(約100mL、2X)、水(約100mL、1X)、およびブライン(約50mL、1X)で洗浄した。合わせた有機物をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して薄黄色の液体として粗物質を得、これを、(30%EtOAc/ヘキサン)で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。生成物を含有するフラクションを減圧下で蒸発させて、8.3g(71%)の表題化合物(EDTDAE)を薄黄色の粘性液体として得た。
【0105】
実施例3:ホログラム記録用フィルム
ホログラム記録用フィルムの調製:ポリカプロラクトン-ブロック-ポリテトラヒドロフラン-ブロック-ポリカプロラクトン(Mn約2000)、1,6-ジイソシアナトヘキサン、および2-(アリルオキシメチル)-2-エチル-1,3-プロパンジオールを表3に従ってバイアル内で混ぜ合わせて、アリル側鎖を様々な含有量で有する線状ポリウレタンを得た。
【0106】
(表3)線形マトリクスの組成表
a)アリル含有量=TMPAEのモル数/(TMPAEのモル数+ポリオール2000のモル数)。HDI=1,6-ヘキサンジイソシアネート。
【0107】
次いで、重合のためにバイアルを一晩70℃のオーブンに入れた。その後、アセトンを溶媒として用いて、濃度が20%w/w(ポリマーと溶媒との合計に対するポリマーバインダーの質量によって決定)に制御されたポリマー溶液を調製した一方で、チオール-エン書き込みモノマーも表4に見出し得る化学量論比を用いて溶液に溶解させた。
【0108】
(表4)書き込みモノマーの組成表a
a)チオール-エン含有量 = チオール-エンモノマーの質量 / (ポリマーマトリクスの質量 + チオール-エンの質量)
温度が45℃に維持されたときにZAA 2300 Automatic Film Applicatorを用いて1枚のスライドガラス(Fisherbrand 2.54cm×7.62cm)に100μLの溶液をブレードコーティングして各フィルムとした。最後に、フィルムをプラットフォーム上で45℃にて2分間保持した。
【0109】
様々な態様に係る様々なアリル含有量を有する線形マトリクスの屈折率を表5にまとめる。
【0110】
(表5)様々な量のアリル含有量を有する線形マトリクスの屈折率
a)すべての屈折率は3つの試料の平均である。b)アッベ数=(nd-1)/(nf-nc)
【0111】
いくつかの態様に係る線形ポリマーマトリクスの分子量を表6に列挙する。
【0112】
(表6)線形ポリマーマトリクスの分子量a
a)分子量を2回測定し、2回の試験の平均を用いた。PDIは平均分子量を用いて計算した。
【0113】
実施例4:記録されたホログラムの特性
ホログラフィック記録およびダイナミックレンジ(Δn)決定:透過ホログラムは図11に示す2ビーム干渉セットアップで記録した。空間的にフィルタリングされた波長安定化405nmレーザーダイオード(Ondax、40mW)を用いて、総強度が約16mW/cm2の光調節記録ビームを生成した。実験では、それぞれ23.9°および11.2°の外部記録半角で記録することによって実現した0.5μmおよび1μmという2つの格子周期を用いた。また、記録プロセス時のホログラム生成を、ほぼブラッグ再構成角度に位置合わせした633nm He-Neレーザー(Thorlabs)を介して、同時に調べた。書き込み後、0.2°/sの速度で-15°から15°まで試料を回転させて、記録されたホログラムの角度選択性を求め;この回転時に、全光(透過および回折)に対する回折光の商として定義される回折効率(DE)を時間と対比して記録した。モノマー充填量が33w%および43w%のグループには15秒の露光を用いた一方で、20w%のグループは45秒間露光され;したがって、すべての試料で最良の回折効率が達成された。最後に、コーゲルニク結合波理論を適用して角度選択性を当てはめて、屈折率変調度(Δn)および膜厚を求めた。
【0114】
フィルムプロファイルの決定:フィルムの表面粗さおよび厚さの測定はDektakからのXTモデルスタイラス粗面計を用いて実施した。厚さはガラス基材の何もない領域からポリマーフィルムで覆われた領域まで走査することによって得た。フィルム領域内を走査してフィルムの粗さを分析した。
【0115】
書き込みモノマーの保存期間評価:トリチオールおよびジエンモノマーをバイアル内で化学量論比で混合し;3w%光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)をモノマーの質量に応じて加え、ボルテックスミキサーを用いて均質化した。次いで、混合物をきれいなスライドガラス(Fisher Scientific)上に流し、厚さが250μmのポリエチレンテレフタレートスペーサーを備えたバインダークリップを用いて同じスライドで挟んだ。Thermo Scientific Nicolet iS50 FT-IR分光計を近IR範囲で用いて、二重結合ピークの面積(約6113cm-1)とすべてのピークの面積(5570cm-1~6180cm-1)との比を計算することによって、残存する二重結合を経時的にモニタリングした。残存する二重結合の割合は異なる時間後の比率を初期の比率と比較することによって求めた。
【0116】
ホログラムおよび未記録フィルムの安定性評価:この実験では3つの安定性を評価した。エンプティフィルム(EF)の安定性は、フィルム調製後の特定の時間に記録されたホログラムのダイナミックレンジとフィルム調製直後に記録されたホログラムのダイナミックレンジとの比を用いて決定した。さまざまな時間での同じホログラムの読み取り値から得られるダイナミックレンジを初期のダイナミックレンジと比較して、ホログラムが記録されたフィルム(HF)およびフラッド硬化ホログラムフィルム(FCHF)の安定性を明らかにした。フラッド硬化は試料を27W 405nm LEDランプに3分間露光して実施した。
【0117】
ホログラムおよびフィルムのヘイズ測定:透過ヘイズパーセンテージは、測定面積が18mm2であるBYKからのHaze-gard iという名称のヘイズメーターを用いて測定した。配合物ごとに3つの試料を調製した一方で、各試料の異なる箇所を3回測定した。したがって、標準偏差による平均が得られ、図にプロットされた。
【0118】
ホログラムにおける格子の顕微鏡的特性評価:Digital Instruments製のDimensional 3100 Atomic Force Microscope(AFM)を適用して、0.5003Hzの走査速度で10μmの走査サイズによりホログラム内の高さプロファイルを求めた。Hitachi SU3500走査型電子顕微鏡(SEM)のホログラムをHitachi SU3500 SEMで分析した。
【0119】
屈折率(RI)測定:Anton Paarからの屈折計を用いて、フラウンホーファーC、D、およびFスペクトル線(それぞれ656.3nm、589.3nm、および486.1nm)の波長での屈折率を決定した。次いで、定義に従ってアッベ数を計算することができた。書き込みモノマーおよび線形ポリマーマトリクスの屈折率を直接測定した。チオール-エン書き込みモノマーを化学量論で3%w/w%のTPOと混合し、405nm LEDランプに3分間露光してポリマーを形成した。その後、ポリマーのRIを測定して、記録時に明るいフリンジに形成された書込みポリマーのRIを示した。
【0120】
反射ホログラム記録:反射ホログラフィのために用いられたフィルムは25μm前後の厚いフィルムが得られるようにブレードコーティングを複数回用いて調製した。反射ホログラムは405nm LEDでの3分間のフラッド硬化処理に続く10°の入射角で131mW/cm2のレーザー強度によるシングルビームデニシュウク構成で記録され(図4A);次いで、高解像度分光計(Avantes AvaSpec-ULS4096CL-EVO)によって同じ記録位置で透過スペクトルを測定した。
【0121】
本明細書において利用される用語および表現は限定ではなく説明の用語として用いられており、そのような用語および表現の使用においては、示されかつ記載された特徴またはその一部分のあらゆる等価物を排除する意図はないが、本願の態様の範囲内で様々な変更が可能であると認識される。よって、本願は具体的な態様および任意の特徴を記載しているが、本明細書において開示された組成物、方法および概念の変更および変形が当業者によって行われてもよいこと、ならびにそのような変更および変形は本願の態様の範囲内であると見なされることが理解されるべきである。
【0122】
実施例5:チオール-インモノマーの光重合およびリアルタイムFTIR動態
理論に拘束されるものではないが、チオール-イン光重合の一般的に受け入れられているメカニズムをスキーム2に示す。機構的には、ラジカル媒介チオール-イン反応はラジカル媒介チオール-エン反応の機構と類似しているが、ここでは各アルキン基はチイルラジカルと2回反応する。追加の工程は、第1工程で形成されたビニルスルフィド中間体と第2チイルラジカルとの反応に続いてチオールへの連鎖移動を伴い、もう一つのスルフィド結合が形成される。動態解析では、各末端アルキン基は二官能性であると見なされ、したがってネットワークポリマーを生成するためには、チオールおよびアルキンモノマーの両方には少なくとも2つの官能基が必要である。
スキーム2:逐次的付加および水素抽出工程を示すラジカル媒介チオール-インクリック反応のメカニズム。
【0123】
(表7)チオール-イン系フォトポリマーネットワークの物理的および光学的特性
チオール-イン樹脂は、チオール:イン官能基のモル比が2:1であるチオールおよびアルキンモノマーを約1wt%の2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)と混合することによって生成し、405nmのLED光を30mW/cm2照射して光重合させた。a回転レオメトリーによって決定、b屈折率はフラウンホーファーD線(589nm)で表される、cDSCによって決定。
【0124】
光重合動態を調査するために、化学量論量のチオールおよびアルキン(Yne:SH=1:2)基を有する樹脂混合物を、合成したチオールおよびインモノマーから生成した(表7)。すべての配合物は低粘度(>473cP)の混和性樹脂混合物を形成し、変換はリアルタイムフーリエ変換赤外線(FTIR)分光法を用いてモニタリングした。30mW/cm2の強度にて405nmで照射すると、対応するチオール(2570cm-1)およびアルキン(2120cm-1)ピークの消失によって示されるようにチオールおよびアルキン基の両方が急速に反応した。しかしながら、チオールおよびアルキンの反応性はモノマーの立体的および電子的性質によって、ならびに樹脂の粘度によっても大きく変化し、重合動態に劇的な影響を与えることがわかった。例えば、配合物A1~A4では、1°チオールのみを含有するモノマー1aはアルキンモノマー2a~2d間で異なる反応性を示し、粘度の影響および立体的効果を示した。
【0125】
興味深いことに、柔軟性が高いジインモノマー2bおよびモノイン2aについてのチオールおよびアルキンの変換率は5分間で最大で80%まで達したが、それと比較して残りのジインモノマー2cおよび2dでは達成された変換率はわずか約70%であった(図16A)。2bの重合動態におけるこの大きな差異は、立体障害がより少ない骨格と、低粘度樹脂混合物を形成するその能力とによるものと推測される。しかしながら、アリール基を含有するジインモノマー2a、2c、2dにおけるπ-πスタッキングなどの二次的な相互作用の影響を排除することはできない。2bを含有する配合物はすべてチオールおよびインの高い変換率(約80%)を示したが、アリール基を有するインモノマーを含有する残りのすべての配合物では変換率が大幅に低いことがわかった。変換率におけるこの大きな差異は、理論に拘束されるものではないが、ネットワーク形成時に移動を制限し、アルキンと反応するチオールのアクセシビリティを阻害する立体障害および樹脂粘度の影響を示している(図16A~16C)。
【0126】
さらに、1aを含有する配合物では、A1およびA2よりもビニルスルフィド濃度が高いA3およびA4は、チオールが、対応するアルキンより数倍も反応性が高いことが多いビニルスルフィドとさえ反応できないことを明確に示している(図21A)。系内のビニルスルフィドのこの不活性はチオール1個の反応後に誘導される立体障害に起因する可能性がある。多官能性チオールの反応性はチオールの性質(すなわち1°または2°)および相対位置によって大きく影響される。予想されたとおり、2°チオールを含有するモノマー1bおよび1cを有する2bの配合物については、変換率は<80%まで減少した。動態速度プロットに見られるように、嵩高いコア構造を有する他のインモノマー2a、2cおよび2dで達成された変換率はすべての場合で60%以下であった(図16B~16C)。この不一致は、同じモノマーの第一級チオールが反応するとアクセスが困難になるより短い2°チオール基の限定的な移動度および潜在的な反応性の低さによるものと推論された。以前に指摘されたように、2°チオールの大きな立体障害は連鎖移動工程の活性化エネルギーを増加させて、反応速度の大幅な低下をもたらす。より低い開始条件下ではあるが、立体因子のためにチオール-エンフォトポリマー系において1°、2°および3°チオールの反応性に同様の傾向が観察された14。アルキンに対する2°チオールの反応性をよりよく理解するために、本明細書において記載される基本的な合成プロトコルに従ってモデル2°チオールを合成した(図22)。1°および2°チオールに対するアルキンの反応性の差異はモデル1°および2°チオールとしてそれぞれヘキサンチオール(HT)および3aを用いて分析した。2aと共に化学量論量の3aおよびHTを含有する配合物M1およびM2(すなわち、SH:Yne = 2:1)についてのリアルタイムFT-IR動態は2°チオールの反応速度が1°チオールの反応速度よりも遅いことを明確に示している(図23A~23B)。2°チオールは1bおよび1cとほとんどの構造的類似性を共有しているので、モデル2°チオールの変換率がより低いことは、立体的な嵩および位置がチオール-インの反応性に大きな影響を及ぼしていることを明確に実証している。
【0127】
また、場合によっては、所与の時点での官能基変換率はチオールよりもアルキンの方がわずかに高いことが分かった。この挙動は初期のチオール-イン反応によって形成されたビニルスルフィドの反応を反映しており、かつ、アルキンへのチオールの付加がビニルスルフィドの形成をもたらし、チオールとビニルスルフィドとの間の反応よりも著しく遅いという以前の所見と一致している。この差異はまた鎖成長付加メカニズム、すなわち単独重合または共重合、によるアルキンまたはビニルスルフィド官能基の消費にも起因し得る。光重合は60℃の高温および非化学量論的条件(Yne:SH=1:3)でも実施した。非化学量論的条件下ではイン変換率のわずかな向上が観察されたが、高温では変換に有意な変化は観察されず、これは樹脂粘度が変換にほとんど影響を与えないことを示しており、かつ2°チオールには高温であっても効率的に反応する参加する能力がないことを裏付けている。
【0128】
実施例6:高nチオール-インフォトポリマーの熱機械的特性
類似のチオール-エンクリック反応と比べたチオール-イン反応の重要な特徴の1つは1個のアルキンが2個のチオール部分と反応して、対応するチオール-エン配合物よりも架橋密度の高いポリマーを生じることである。前述のように、すべての配合物が低粘度(>473cP)の完全に混和性の樹脂混合物を形成し、30mW/cm2で405nmの光を照射するとスライドガラス間に光学的に透明なフィルムを形成した。マルチチオール1bおよび1cと共にジイン2cおよび2dを含有する樹脂配合物については変換率が特に低かったが、これらはすべてゲル化点変換率をはるかに上回り、機械的に堅牢なフィルムを形成した。さらに、以前に指摘されたように、初期の付加速度がその後の付加速度よりも遅い(すなわち、kP,2/kP,1 > 1)化学量論的にバランスの取れた段階成長重合系はフローリー-ストックマイヤー予想よりもゲル化点変換率が低い。段階成長チオール-エンおよびチオール-インネットワークの重要な特徴の1つは均一なネットワーク形成に起因するそれらのやや狭いガラス転移領域である。
【0129】
ここで形成されたチオール-インネットワークでも同様の傾向が観察され、比較的均一なネットワーク形成を示している。しかしながら、ジチオールおよびジイン配合物から形成されたネットワークについて得られたtanδ曲線は、以前に報告されたジチオール-ジインネットワークと比較してややブロードであることが分かった(図17A~17C)。この不一致の理由は、化学環境が異なる2つの異なるチオール官能基の存在による不均一なネットワーク形成であると考えられる。ネットワークポリマーについてのすべてのガラス転移温度は、大量のサンプル調製が困難なためDSC分析によって測定された配合物A1、B1、およびC1を除いてDMAによって測定された。様々なチオール-イン配合物について得られたガラス転移点を表7に列挙する。予想されたように、配合物A2、B2およびC2から得られたフォトポリマーは、より高い変換率にあわせて、0℃~19℃間のより高いTg値を示した。一方、配合物A1、B1およびC1はこれらの配合物によるほぼ線形のポリマーの形成により-30℃未満のTgを示した。
【0130】
しかしながら、ジイン2cおよび2dを含有する残りのすべての配合物についてはTg値の増加が観察された。予想されたように、剛性チオベンゼンチオール(TBT)コアを備えたポリマーA4、B4およびC4は、-18~-6℃の範囲のTg値を有するエタンジチオール(EDT)コアを備えたA3、B3およびC3よりも高いTg値(-3.8~2.9℃)を示した。これらの配合物におけるチオールおよびアルキンの変換率はゲル化点をはるかに超えていたが、全変換率の低さが、予想される架橋密度およびTg値を制限する。よって、ジインおよび多官能性チオールから形成されたTg値が-18~19℃の範囲のこれらのフォトポリマー系ごとに広範な熱機械特性が取得可能であった。このような屈折率が高くTgが低い材料は光学および眼科インプラントにおける用途に好適である。さらに、各試料は、弾性係数が1GPaを超えるガラス状の領域から、弾性係数が大幅に低いゴム状の領域への同様の転移を示す。
【0131】
実施例7:チオール-インフォトポリマーの屈折率:
高固有原子屈折の結果として、硫黄含有ポリマーは高い屈折率を示すと予想される。したがって、チオール-x重合から形成されるフォトポリマーの屈折率の増加はネットワーク内のスルフィド部分の組み込みの直接的な結果である。チオール-イン光重合の1つの重要な特徴は、対応するチオール-エン配合物と比較して多くのスルフィド結合の導入が可能なことである。チオール-イン反応のこの特徴は1個のアルキンが2個のチオール基と反応する能力に起因し、これはチオール-エン系については不可能であり、系内の硫黄数の増加をもたらす。このアプローチを用いると、モノマー官能基性をビニルから対応するアルキン反応基に切り替えるだけで、屈折率が大きく変化したフォトポリマーが容易に達成された。
【0132】
表7からわかるように、合成されたチオールおよびインモノマーの各組み合わせは屈折率nD(20℃)が約1.65から1.69までの0.04範囲にわたるフォトポリマーをもたらした。低変換率(約60%)でのこれらのRI値は類似のチオール-エン系についてこれまでに報告されたものよりもすでに高い。これらのネットワークポリマーによって示される高屈折率値は、高モル屈折の置換基を組み込んだモノマーコア設計の直接的な結果である。よって、2dにおける芳香族ジチオールコアはアルキル対照物2cと比較して屈折率を0.03も増加させる。樹脂配合物において過剰なチオール、すなわち、非化学量論量を用いることは、拡散上の制約を低減することによってポリマー屈折率および制限試薬(すなわち、インモノマー)の変換を向上させ得る。しかしながら、2dとの1bおよび1cの非化学量論的な組み合わせ(チオール-イン、3:1)によってポリマーの屈折率を向上させる試みは屈折率を0.02減少させるマイナスの効果を生じた。
【0133】
この不一致の妥当な説明としては、チオール-インクリック反応から生じるチオエーテル部分と比較して遊離チオールは屈折率の向上への寄与がより少ないということである。この挙動は、重合時に配合物B2(ジチオール1bおよびインモノマー2b)について観察される屈折率の劇的な変化(0.08)から明らかである。30mW/cm2の強度で405nmの光に曝露すると、樹脂の屈折率は5分間で1.60から1.68まで変化し、これは高変換率により形成される多数のチオエーテル結合を示している。この樹脂系にはアリール基が存在しないため、スルフィド結合の濃度がポリマー屈折率の直接的な尺度を与える。興味深いことに、測定されたポリマー屈折率は図18に示されるようにチオール変換と線形の関係を示した。
【0134】
実施例8:二段階フォトポリマー系における高RIチオール-インモノマーの用途
露光時にマトリクスと書き込みモノマーとの間で高屈折率コントラストを達成するフォトポリマー系の能力は新規なホログラフィック材料開発のための重要な仕様の1つである。しかしながら、低粘度の適切な高RIモノマーのアベイラビリティが限定的であるため、そのような高屈折率コントラストを達成することは困難であることが多い。この目的のために、チオール-エン書き込み化学が最近になって考案され、線状ポリウレタンバインダーアプローチを介した高忠実度ホログラム記録向けに行われた。同様のアプローチに従って、これらの合成高RIアルキンモノマーを用いて薄膜において比較的高Δnのホログラムを記録した。図18から分かるように、書き込みモノマーとして2dおよび市販のトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート(TMPTMP)を用いた場合、高い空間周波数で80%のピーク回折効率が達成された。記録されたホログラムの角度再生スペクトルは結合波理論への当てはめとよく一致した。他のアルキン書き込みモノマー2aおよび2cを用いたホログラムのダイナミックレンジ(Δn)および厚さも図19A~19Bにまとめている。2dで記録されたホログラムは、おそらくはこの書き込みモノマー配合物の屈折率が2aおよび2cよりも高いために、0.018という最も高いΔnを示す。しかしながら、これらの書き込みモノマーの不完全な変換によって引き起こされる拡散ボケは全体の屈折率コントラストを低下させ、依然として高インデックス変調度を達成する際の制約となる。興味深いことに、すべてのこれらのホログラムについて測定されたヘイズ値は1.5%より低いことがわかった。モノマー2dについて観察されたわずかに高いヘイズは、この剛性コアモノマーとここで導入されたウレタンバインダーとの混和性が低いことに起因している。
【0135】
高屈折率光硬化性チオール-イン樹脂の別の用途は、ポリ(ウレタン-チオウレタン)ステージ1マトリクス上に2次元のマイクロメートルスケールの高忠実度屈折率構造を記録することによって実証される。ここで実証されたモデル系は高屈折率B2樹脂を組み込んだポリ(ウレタン-チオウレタン)マトリクスからなっていた。第1ステージのポリ(ウレタン-チオウレタン)マトリクスは周囲温度で硬化され、2つのガラススライドの間でこの材料の厚さが250μmのフィルムとして成形された。第2ステージでは、図20の光学顕微鏡画像によって示されるように、フォトマスクを通して405nmのLED源を用いてフィルムを照射して、屈折率構造の二次元アレイ(100μm平方)を記録した。
【0136】
付番した態様
以下の例示的な態様を提供するが、それらの付番は重要度を示しているとは解釈されない。
【0137】
態様1は、以下を提供する:
少なくとも1つのポリマー;
複数のアリル基を含むポリマーバインダー;ならびに
式(I):
の少なくとも1つのモノマー
および式(II):
の少なくとも1つのモノマー
を含む組成物:
式中
Xは各出現時には独立してHまたは置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Yは独立して-S-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(SH)-、-CH[O-CH2-CH=CH2]-、または-CH[O-CH2-C≡CH]-であり;
各YTは独立してH、-SH、-CH=CH2、-C≡CH、または置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Zは独立して-S-、-CH2、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、または-CH(SH)-であり;
各ZTは独立してH、-SHまたは-CH2SHであり;
mは0~100の範囲の整数であり;かつ
nは0~100の範囲の整数である。
【0138】
態様2は、以下を提供する:
前記ポリマーが線状ポリウレタンである、態様1記載の組成物。
【0139】
態様3は、以下を提供する:
前記ポリマーバインダーがアリル基を約0~80mol%含む、態様1~2のいずれか一つに記載の組成物。
【0140】
態様4は、以下を提供する:
前記ポリマーがポリカプロラクトン-ブロック-ポリテトラヒドロフラン-ブロック-ポリカプロラクトンを含む、態様1~3のいずれか一つに記載の組成物。
【0141】
態様5は、以下を提供する:
式(I)のモノマーと式(II)のモノマーの比が約9:1~約1:9である、態様1~4のいずれか一つに記載の組成物。
【0142】
態様6は、以下を提供する:
(Z)n-ZTが少なくとも1つの-SH部分を含む、態様1~5のいずれか一つに記載の組成物。
【0143】
態様7は、以下を提供する:
(Z)n-ZTが少なくとも2つの-SH部分を含む、態様1~6のいずれか一つに記載の組成物。
【0144】
態様8は、以下を提供する:
式(II)のモノマーが
からなる群より選択される、態様1~7のいずれか一つに記載の組成物。
【0145】
態様9は、以下を提供する:
Xがフェニルである、態様1~8のいずれか一つに記載の組成物。
【0146】
態様10は、以下を提供する:
(Y)mが直鎖である、態様1~9のいずれか一つに記載の組成物。
【0147】
態様11は、以下を提供する:
(Y)mが-CH(O-CH2-CH=CH2)-または-CH(O-CH2-C≡CH)-の少なくとも一方を含む、態様1~10のいずれか一つに記載の組成物。
【0148】
態様12は、以下を提供する:
(Y)mが-CH(O-CH2-CH=CH2)-および-CH(O-CH2-C≡CH)-より独立して選択される少なくとも2つの部分を含む、態様1~11のいずれか一つに記載の組成物。
【0149】
態様13は、以下を提供する:
式(I)のモノマーが
からなる群より選択される、態様1~12のいずれか一つに記載の組成物。
【0150】
態様14は、以下を提供する:
式(I)のモノマーおよび式(II)のモノマーが合計で組成物の約1~80%(w/w)を構成する、態様1~13のいずれか一つに記載の組成物。
【0151】
態様15は、以下を提供する:
重合した態様1~14のいずれか一つに記載の組成物。
【0152】
態様16は、以下を提供する:
複数のアリル基と、式(I)および式(II)のモノマーとが架橋された、態様1~15のいずれか一つに記載の重合組成物。
【0153】
態様17は、以下を提供する:
態様1~14のいずれか一つに記載の組成物を含む、フィルム。
【0154】
態様18は、以下を提供する:
態様1~14のいずれか一つに記載の組成物を準備する工程、および
ホログラムを形成するために該組成物をレーザー照射に曝露する工程
を含む、ホログラムを記録する方法。
【0155】
態様19は、以下を提供する:
前記準備する工程が不活性基材をフィルムでコーティングすることを含む、態様18記載の方法。
【0156】
態様20は、以下を提供する:
前記曝露する工程がポリマーバインダーと式(I)および式(II)のモノマーとを架橋することを含む、態様18~19のいずれか一つに記載の方法。
【0157】
態様21は、以下を提供する:
ホログラムが約0.01~約0.06のインデックス変調度(Δn)を有する、態様18~20のいずれか一つに記載の方法。
【0158】
態様22は、以下を提供する:
式(I-A):
の少なくとも1つのモノマー
および式(II):
の少なくとも1つのモノマー
を含む組成物:
式中
Xは各出現時には独立してHまたは置換されていてもよいC6~14アリールであり;
Y1およびY2は各出現時には独立して-S-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(SH)-、-CH[O-CH2-CH=CH2]-、または-CH[O-CH2-C≡CH]-であり;
YT1およびYT2は各出現時には独立してH、-SH、-CH=CH2、-C≡CH、または置換されていてもよいC6~14アリールであり;
各Zは独立して-S-、-CH2、-CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、または-CH(SH)-であり;
各ZTは独立してH、-SHまたは-CH2SHであり;
各m1およびm2は独立して0~100の範囲の整数であり;かつ
nは0~100の範囲の整数である。
【0159】
態様23は、以下を提供する:
重合した態様22記載の組成物。
【0160】
態様24は、以下を提供する:
約1.63~約1.69の屈折率を有する、態様23記載の重合組成物。
【0161】
態様25は、以下を提供する:
(Z)n-ZTが少なくとも1つの-SH部分を含む、態様22~24のいずれか一つに記載の組成物。
【0162】
態様26は、以下を提供する:
(Z)n-ZTが少なくとも2つの-SH部分を含む、態様22~25のいずれか一つに記載の組成物。
【0163】
態様27は、以下を提供する:
式(II)のモノマーが
からなる群より選択される、態様22~26のいずれか一つに記載の組成物。
【0164】
態様28は、以下を提供する:
m1が1であり、Y1が-S-であり、YT1がフェニルである、態様22~27のいずれか一つに記載の組成物。
【0165】
態様29は、以下を提供する:
(Y1)m1および(Y2)m2の少なくとも一方が直鎖である、態様22~28のいずれか一つに記載の組成物。
【0166】
態様30は、以下を提供する:
(Y1)m1および(Y2)m2の少なくとも一方が-CH(O-CH2-CH=CH2)-または-CH(O-CH2-C≡CH)-の少なくとも一方を含む、態様28のいずれか一つに記載の組成物。
【0167】
態様31は、以下を提供する:
(Y1)m1および(Y2)m2の少なくとも一方が-CH(O-CH2-CH=CH2)-および-CH(O-CH2-C≡CH)-より独立して選択される少なくとも2つの部分を含む、態様30のいずれか一つに記載の組成物。
【0168】
態様32は、以下を提供する:
YT1およびYT2が-C≡CHである、態様22~31のいずれか一つに記載の組成物。
【0169】
態様33は、以下を提供する:
式(I-A)のモノマーが
からなる群より選択される、態様22~32のいずれか一つに記載の組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図22
図23A
図23B
【国際調査報告】