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特表2023-536418高密度ケーブル及び相互接続のための、薄型コーティングを備えたシングルモード光ファイバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】高密度ケーブル及び相互接続のための、薄型コーティングを備えたシングルモード光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/1065 20180101AFI20230818BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20230818BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20230818BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C03C25/1065
G02B6/036
G02B6/44 301A
G02B6/02 376A
G02B6/44 301B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504549
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 US2021042473
(87)【国際公開番号】W WO2022020416
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】63/054,563
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ビッカム,スコット ロバートソン
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク,マシュー ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ハート,シャンドン ディー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー,ジョゼフ エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ニウ,ウェイジュン
(72)【発明者】
【氏名】タンドン,プシュカル
【テーマコード(参考)】
2H250
4G060
【Fターム(参考)】
2H250AB04
2H250AB06
2H250AB10
2H250AB15
2H250AB70
2H250AD19
2H250AD32
2H250AD35
2H250AD45
2H250AE25
2H250AE26
2H250AE39
2H250AE47
2H250AE54
2H250AE63
2H250BA03
2H250BA32
2H250BB02
2H250BC02
2H250BD02
2H250BD11
2H250BD12
2H250BD14
2H250BD17
2H250BD18
4G060AA01
4G060AA03
4G060AA06
4G060AC02
4G060AD22
4G060AD42
4G060CB08
4G060CB22
4G060CB23
4G060CB24
4G060CB31
(57)【要約】
コア領域と;半径が約62.5マイクロメートル未満のクラッド領域と;高弾性率層及び低弾性率層を備えるポリマーコーティングであって、上記低弾性率内側コーティング層の厚さは4マイクロメートル~20マイクロメートルであり、上記低弾性率内側コーティング層の弾性率は約0.35MPa以下であり、上記高弾性率コーティング層の厚さは4マイクロメートル~20マイクロメートルであり、上記高弾性率コーティング層の弾性率は約1.6GPa以上である、ポリマーコーティングとを含む、光ファイバが提供され、上記光ファイバの耐穿刺性は20g超であり、上記光ファイバのマイクロベンド減衰ペナルティは0.03dB/km未満であり、コーティング済みの上記光ファイバの外径は175マイクロメートル以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア領域;
前記コア領域を取り囲むクラッド領域であって、前記クラッド領域は、前記コア領域に直接隣接する内側クラッド、及び前記内側クラッドを取り囲む外側クラッドを備える、クラッド領域;並びに
厚さが25μm以下のポリマーコーティングであって、前記ポリマーコーティングは:(i)前記クラッド領域を取り囲む高弾性率コーティング層であって、前記高弾性率コーティング層のヤング率は0.5GPa以上である、高弾性率コーティング層;又は(ii)前記クラッド領域を取り囲む低弾性率コーティング層であって、前記低弾性率コーティング層は、ヤング率が5MPa以下であり、前記クラッド領域と前記高弾性率コーティング層との間に配置される、低弾性率コーティング層のうちの一方を備える、ポリマーコーティング
を備える、光ファイバであって、
コーティング済みの前記光ファイバの外径は175マイクロメートル以下である、光ファイバ。
【請求項2】
前記ポリマーコーティングの厚さは2μm~20μmである、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記低弾性率コーティング層の厚さの、前記高弾性率コーティング層の厚さに対する比は、0.8~1.2である、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記光ファイバの前記クラッド領域は、チタニアドープ濃度が約5重量%~約25重量%のチタニアドープ層を備える、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記ポリマーコーティングは、前記ファイバのコア領域に関する同心度が70%超である、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記高弾性率コーティング層のヤング率は1GPa以上であり、前記低弾性率コーティング層のヤング率は4MPa以下である、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項7】
光ファイバをコーティングする方法であって:
線引き炉から第1の垂直経路に沿ってドロー成形するステップ;
ポリマーコーティングが前記光ファイバに適用されるコーティング系を通るように、前記光ファイバをルーティングするステップであって、前記コーティング系は、入口、前記入口に対向する直径129μm~203μmのサイジングダイ、及び前記入口と前記サイジングダイとの間に配置されたコーティングチャンバを備え、前記コーティングチャンバには液体形態のコーティング材料が充填されている、ステップ;並びに
コーティング済みの前記光ファイバを硬化させて、175マイクロメートル以下の前記コーティング済み光ファイバの外径を形成するステップ
を含む、方法。
【請求項8】
前記サイジングダイを通過する前記コーティングの厚さは25μm以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーコーティングの厚さは20μm以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーコーティングの同心度は70%超である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング材料の粘度は、50rpm及び25℃において20ポアズ超である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
コア領域;
前記コア領域を取り囲むクラッド領域であって、前記クラッド領域は:
前記コア領域に直接隣接する内側クラッド;
前記内側クラッドを取り囲む外側クラッド;並びに
半径方向において前記内側クラッドと前記外側クラッドとの間に配置されたトレンチ領域であって、前記トレンチ領域の容積は約30%Δ-マイクロメートル以上である、トレンチ領域
を備える、クラッド領域;並びに
前記クラッド領域を取り囲む高弾性率コーティングであって、前記高弾性率コーティングのその場弾性率Eは1500MPa以上であり、前記高弾性率コーティングの厚さthmは約25.0マイクロメートル以下である、高弾性率コーティング
を備える、光ファイバであって、
前記光ファイバの外径は175マイクロメートル以下である、光ファイバ。
【請求項13】
前記クラッド領域を取り囲む低弾性率コーティングを更に備え、前記低弾性率コーティングは前記クラッド領域と前記高弾性率コーティングとの間に配置され、前記低弾性率コーティングのヤング率は、約0.1MPa~約0.7MPaである、請求項12に記載の光ファイバ。
【請求項14】
前記低弾性率コーティング及び前記高弾性率コーティングの合計厚さは約10マイクロメートル~25マイクロメートルである、請求項13に記載の光ファイバ。
【請求項15】
前記高弾性率コーティングのその場弾性率は、約1600MPa~約3000MPaである、請求項12に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下で、2020年7月21日出願の米国仮特許出願第63/054,563号に対する優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は依拠され、参照によりその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示はシングルモード光ファイバに関する。より詳細には、本開示は小径シングルモード光ファイバに関する。より詳細には、本開示は、耐穿刺性が大幅に低減されることなくコーティングの厚さが削減された、小径シングルモード光ファイバに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバ技術は、高帯域幅、レイテンシの短縮、低消費電力、及びEMI/RFIに対する耐性を必要とするクラウドコンピューティング及びモノのインターネットにより、データセンターに浸透している。将来のハイパースケールデータセンターには、50万平方フィートに広がる10万台のサーバーといった特別な特徴が必要となるため、データセンター内の相互接続スキームの容量、柔軟性、及び効率に対する需要が発生している。従って、データセンター内で多数の相互接続が必要となる。リボンケーブルはファイバ数を増やすことができるが、このようにファイバの本数が多いと、リボンケーブルに適合させるために小径のファイバが必要となる。例えば、全体の直径が250μmの2層アクリレートコーティング済みファイバリボンケーブルの代わりに、全体の直径が125μmのベアファイバリボンケーブルを使用することにより、体積が少なくとも75%削減される。しかしながら、ベアファイバをリボンケーブルに加工すると、ファイバの破損が生じる可能性がある。
【0004】
更に、海底光ファイバケーブルは、陸及び海を横断して遠距離通信信号を搬送するように設計される。過去数十年にわたり、海底ケーブルを介した遠距離通信信号は劇的に増加しており、現在、大陸間通信信号の90%はこれらのケーブルを介して伝送される。従って、このような海底ケーブルの伝送容量に対する需要は、異なる大陸間のインターネットトラフィックの増加を原因として高まっている。このような容量の増加は従来、各ファイバの帯域幅容量を増大させることによって、例えばファイバ数を少なく、典型的には4~8ペアのファイバに保ったまま、単にビットレートを増大させるか、又は高密度波長分割多重化(DWDM)を用いることによって、促進されてきた。
【0005】
しかしながら、これらの高度な伝送技術を実装することにより、このシステム内の光中継器の電力消費は、端末から供給できるレベルを超えるものとなった。このような電力に関する制約により、海底システムの設計者はより多数のファイバを使用することを強いられ、
このようにファイバ数が多くなると、光中継器内部の限られたスペースに適合するために、直径がより小さなファイバを使用することが必要となる。これらのファイバのクラッド直径は、従来のシングルモードファイバへの融着接続を容易にするために、好ましくは125マイクロメートルに維持する必要があり、これは、保護コーティングの厚さを削減することによってこのような比較的小さな直径を達成することを意味する。この比較的薄いコーティングは、穿刺及び摩耗に対する高い耐性を確保するために、十分に大きな断面積と併せて高い弾性率を有する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の点に関する改善が望まれている。従って本発明者らは、十分に高い機械的信頼性を有する、改良された薄型コーティング済みシングルモード光ファイバを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の実施形態によると、本説明は、光ファイバであって:コア領域;上記コア領域を取り囲むクラッド領域であって、上記クラッド領域は、上記コア領域に直接隣接する内側クラッド、及び上記内側クラッドを取り囲む外側クラッドを備え、上記クラッド領域の半径は約62.5マイクロメートル未満である、クラッド領域;並びに上記クラッド領域を取り囲む高弾性率コーティング層と、上記クラッド領域と上記高弾性率コーティング層との間に配置された低弾性率コーティング層とを備える、ポリマーコーティングであって、上記低弾性率内側コーティング層の厚さは4マイクロメートル~20マイクロメートルであり、上記低弾性率内側コーティング層の弾性率は約0.35MPa以下であり、上記高弾性率コーティング層の厚さは4マイクロメートル~20マイクロメートルであり、上記高弾性率コーティング層の弾性率は約1.6GPa以上である、ポリマーコーティングを有する、光ファイバを包含し、上記光ファイバの耐穿刺性は20g超であり、上記光ファイバのマイクロベンド減衰ペナルティは0.03dB/km未満であり、コーティング済みの上記光ファイバの外径は175マイクロメートル以下であり、上記光ファイバの上記耐穿刺性は、式P=P+Cによって計算され、ここでAは上記高弾性率コーティングの断面積であり、Eは上記高弾性率コーティングの弾性率であり、Pは11.3gの値を有する係数であり、Cは2.1g/MPa/mmの値を有する係数であり、上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは、式:
【0008】
【数1】
【0009】
によって計算され、ここでfは上記高弾性率コーティングと接触する外側表面の平均側圧であり、σは上記高弾性率コーティングと接触する上記外側表面の粗度の標準偏差であり、
【0010】
【数2】
【0011】
であり、
【0012】
【数3】
【0013】
であり、
【0014】
【数4】
【0015】
であり、
【0016】
【数5】
【0017】
であり、Rはガラスの半径であり、Rは上記高弾性率外側コーティングの外半径であり、tは上記内側低弾性率コーティングの厚さであり、tは上記高弾性率外側コーティングの厚さであり、Eはガラスの弾性率であり、Eは上記低弾性率内側コーティングの弾性率であり、Eは上記高弾性率コーティングの上記弾性率である。
【0018】
本開示の第2の実施形態によると、第1の実施形態の光ファイバにおいて、上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.01dB/km以下である。
【0019】
本開示の第3の実施形態によると、第1の実施形態の光ファイバにおいて、上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.007dB/km以下である。
【0020】
本開示の第4の実施形態によると、第1の実施形態の光ファイバにおいて、上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.003dB/km以下である。
【0021】
本開示の第5の実施形態によると、第1の実施形態の光ファイバにおいて、上記光ファイバの上記耐穿刺性は25g以上である。
【0022】
本開示の第6の実施形態によると、第1の実施形態の光ファイバにおいて、上記光ファイバの上記耐穿刺性は30g以上である。
【0023】
本開示の第7の実施形態によると、第1の実施形態の光ファイバにおいて、上記クラッド領域の上記半径は52.5マイクロメートル未満であり、上記光ファイバの上記耐穿刺性は40g超である。
【0024】
本開示の第8の実施形態によると、第1の実施形態の光ファイバにおいて、上記高弾性率コーティング層の上記厚さは9マイクロメートル~18マイクロメートルである。
【0025】
本開示の第9の実施形態によると、第1の実施形態の光ファイバにおいて、上記光ファイバの減衰は0.20dB/km未満である。
【0026】
本開示の第10の実施形態によると、第1の実施形態の光ファイバにおいて、1310nmにおける上記光ファイバのモードフィールド径は8.6以上である。
【0027】
本開示の第11の実施形態によると、本説明は、光ファイバであって:コア領域;上記コア領域を取り囲むクラッド領域であって、上記クラッド領域は、上記コア領域に直接隣接する内側クラッド、及び上記内側クラッドを取り囲む外側クラッドを備え、上記クラッド領域の半径は約45マイクロメートル~55マイクロメートルである、クラッド領域;並びに上記クラッド領域を取り囲む高弾性率コーティング層と、上記クラッド領域と上記高弾性率コーティング層との間に配置された低弾性率コーティング層とを備える、ポリマーコーティングであって、上記低弾性率内側コーティング層の厚さは6マイクロメートル~20マイクロメートルであり、上記低弾性率内側コーティング層の弾性率は約0.35MPa以下であり、上記高弾性率コーティング層の厚さは12マイクロメートル~18マイクロメートルであり、上記高弾性率コーティング層の弾性率は約1.6GPa以上である、ポリマーコーティングを有する、光ファイバを包含し、上記光ファイバの耐穿刺性は30g超であり、上記光ファイバのマイクロベンド減衰ペナルティは0.03dB/km未満であり、コーティング済みの上記光ファイバの外径は175マイクロメートル以下であり、上記光ファイバの上記耐穿刺性は、式P=P+Cによって計算され、ここでAは上記高弾性率コーティングの断面積であり、Eは上記高弾性率コーティングの弾性率であり、Pは11.3gの値を有する係数であり、Cは2.1g/MPa/mmの値を有する係数であり、上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは、式:
【0028】
【数6】
【0029】
によって計算され、ここでfは上記高弾性率コーティングと接触する外側表面の平均側圧であり、σは上記高弾性率コーティングと接触する上記外側表面の粗度の標準偏差であり、
【0030】
【数7】
【0031】
であり、
【0032】
【数8】
【0033】
であり、
【0034】
【数9】
【0035】
であり、
【0036】
【数10】
【0037】
であり、Rはガラスの半径であり、Rは上記高弾性率外側コーティングの外半径であり、tは上記内側低弾性率コーティングの厚さであり、tは上記高弾性率外側コーティングの厚さであり、Eはガラスの弾性率であり、Eは上記低弾性率内側コーティングの弾性率であり、Eは上記高弾性率コーティングの上記弾性率である。
【0038】
本開示の第12の実施形態によると、第11の実施形態の光ファイバにおいて、上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.01dB/km以下である。
【0039】
本開示の第13の実施形態によると、第11の実施形態の光ファイバにおいて、上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.007dB/km以下である。
【0040】
本開示の第14の実施形態によると、第11の実施形態の光ファイバにおいて、上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.003dB/km以下である。
【0041】
本開示の第15の実施形態によると、第11の実施形態の光ファイバにおいて、上記光ファイバの上記耐穿刺性は25g以上である。
【0042】
本開示の第16の実施形態によると、本説明は、光ファイバであって:コア領域;上記コア領域を取り囲むクラッド領域であって、上記クラッド領域は、上記コア領域に直接隣接する内側クラッド、及び上記内側クラッドを取り囲む外側クラッドを備える、クラッド領域;並びに厚さが25μm以下のポリマーコーティングであって、上記ポリマーコーティングは、上記クラッド領域を取り囲む高弾性率コーティング層を備え、上記高弾性率コーティング層のヤング率は1.5GPa以上である、ポリマーコーティングを有する、光ファイバを包含し、コーティング済みの上記光ファイバの外径は175マイクロメートル以下である。
【0043】
本開示の第17の実施形態によると、第16の実施形態の光ファイバは、上記クラッド領域を取り囲む低弾性率コーティング層を更に備え、上記低弾性率コーティング層は、ヤング率が0.5MPa以下であり、上記クラッド領域と上記高弾性率コーティング層との間に配置される。
【0044】
本開示の第18の実施形態によると、第16の実施形態の光ファイバにおいて、上記低弾性率コーティング層の厚さの、上記高弾性率コーティング層の厚さに対する比は、0.8~1.2である。
【0045】
本開示の第19の実施形態によると、本説明は、光ファイバをコーティングする方法を包含し、上記方法は:線引き炉から第1の垂直経路に沿ってドロー成形するステップ;ポリマーコーティングが上記光ファイバに適用されるコーティング系を通るように、上記光ファイバをルーティングするステップであって、上記コーティング系は、入口、上記入口に対向する直径129μm~203μmのサイジングダイ、及び上記入口と上記サイジングダイとの間に配置されたコーティングチャンバを備え、上記コーティングチャンバには液体形態のコーティング材料が充填されている、ステップ;並びにコーティング済みの上記光ファイバを硬化させて、175マイクロメートル以下の上記コーティング済み光ファイバの外径を形成するステップを含む。
【0046】
本開示の第20の実施形態によると、第19の実施形態の光ファイバにおいて、上記ポリマーコーティングの同心度は70%超である。
【0047】
更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、その一部は、当業者には本説明から容易に明らかとなるか、又は本説明及び特許請求の範囲、並びに添付の図面に記載されているように実施形態を実施することによって認識されるだろう。
【0048】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも単なる例であり、特許請求の範囲の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを目的としたものであることを理解されたい。
【0049】
添付の図面は更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本開示の選択された態様の例示であり、本記述と併せて、本開示に含まれる方法、製品、及び組成物の、原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本開示のいくつかの実施形態によるコーティング済み光ファイバの概略図
図2】本開示のいくつかの実施形態による代表的な光ファイバリボンの概略図
図3】本開示のいくつかの実施形態による代表的な光ファイバケーブルの概略図
図4】本開示のいくつかの実施形態によるシングルモード光ファイバの断面図
図5】本開示のいくつかの実施形態によるシングルモード光ファイバの相対屈折率プロファイル
図6】本開示の実施形態による光ファイバの相対屈折率プロファイル
図7】本開示の実施形態による光ファイバの相対屈折率プロファイル
図8】本開示による高弾性率コーティングの、断面積の関数としての穿刺荷重の強度の依存度
図9】本開示のいくつかの実施形態によるシングルモード光ファイバの相対屈折率プロファイル
図10】本開示のいくつかの実施形態による、厚いコーティングを備えた光ファイバに関するコアモード及びクラッドモードの分布の概略図
図11】本開示のいくつかの実施形態による、薄いコーティングを備えた光ファイバに関するコアモード及びクラッドモードの分布の概略図
図12】本開示のいくつかの実施形態による、コーティング材料の粘度及びダイのサイズの、コーティングの厚さに対する影響
図13】本開示のいくつかの実施形態による、目標の最終コーティング済み直径を形成するための例示的なパラメータウインドウ
図14】本開示のいくつかの実施形態による、ダイのサイズが異なる複数のシステムに関して、様々なコーティング材料の粘度から得られる、コーティングの厚さの標準偏差
図15】本開示のいくつかの実施形態による、コーティングの厚さに対するドロー速度の影響
図16】本開示のいくつかの実施形態による、一連のコーティング材料の粘度に関して潤滑圧力とダイのサイズとの間の相関をプロットしたグラフ
図17】本開示のいくつかの実施形態による、潤滑圧力とドロー速度との間の相関
図18】本開示のいくつかの実施形態によるシングルモード光ファイバの相対屈折率プロファイル
図19】本開示のいくつかの実施形態による、ステップインデックス型ファイバプロファイル及びトレンチ型ファイバプロファイルと、100マイクロメートルのクラッド直径とを有するファイバの、低弾性率コーティングの厚さに対するマイクロベンド減衰ペナルティ(MAP)
図20】本開示のいくつかの実施形態による、弾性率が異なる複数の高弾性率コーティングに関する、トレンチ型ファイバプロファイル及び100マイクロメートルのクラッド直径を有するファイバの、低弾性率コーティングの厚さに対するマイクロベンド減衰ペナルティ(MAP)
図21】本開示のいくつかの実施形態による、弾性率が異なる複数の高弾性率コーティングに関する、トレンチ型ファイバプロファイル及び100マイクロメートルのクラッド直径を有するファイバの、低弾性率コーティングの厚さに対する耐穿刺性
図22】本開示のいくつかの実施形態による、弾性率が異なる複数の低弾性率コーティングに関する、トレンチ型ファイバプロファイル及び100マイクロメートルのクラッド直径を有するファイバの、低弾性率コーティングの厚さに対するマイクロベンド減衰ペナルティ(MAP)
【発明を実施するための形態】
【0051】
本開示は、本発明を実現可能とする教示として提供されるものであり、以下の説明、図面、実施例及び特許請求の範囲を参照することにより、より容易に理解できる。この目的のために、関連技術分野の当業者は、本明細書に記載の実施形態の様々な態様に対して多くの変更を実施しても、その有益な結果を依然として得られることを認識及び理解するであろう。また、これらの実施形態の望ましい便益のうちの一部を、複数の特徴のうちの一部を選択し、他の特徴を利用しないことによっても得ることができることは、明らかであろう。従って当業者は、多くの修正及び適合が可能であり、また特定の状況においては望ましい場合さえあり、これらが本開示の一部であることを認識するだろう。従って、特段の記載がない限り、本開示は、開示されている具体的な組成物、物品、デバイス及び方法に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語法は、特定の態様を説明することのみを目的としたものであり、限定を意図したものではないことも理解されたい。
【0052】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲では、多数の用語が参照されることになるが、これらの用語は以下の意味を有するものとして定義されるものとする。
【0053】
「光ファイバ(optical fiber)」は、コーティングで取り囲まれたガラス部分を有する、導波路を指す。上記ガラス部分はコア及びクラッドを含み、本明細書中では「ガラスファイバ(glass fiber)」と呼ばれる。
【0054】
「半径方向位置(radial position)」、「半径(radius)」、又は半径方向座標「r」は、ファイバの中心線(r=0)に対する半径方向位置を指す。
【0055】
「屈折率(refractive index)」は、特段明記されていない限り、1550nmの波長における屈折率を指す。
【0056】
「屈折率プロファイル(refractive index profile)」は、屈折率又は相対屈折率と半径との間の関係である。本明細書において、隣接するコア及び/又はクラッド領域間に階段状境界を有するものとして示される相対屈折率プロファイルに関して、プロセス条件の通常のバリエーションは、隣接する領域の界面において急峻な階段状境界が得られることがないようにすることができる。屈折率プロファイルの境界は、本明細書では屈折率の階段状変化として示すことができるものの、実際の境界は滑らかであってよく、又はその他の様式で完全な階段関数特性から逸脱してよいことを理解されたい。更に、相対屈折率の値は、コア領域及び/又はいずれのクラッド領域内における半径方向位置と共に変動し得ることも理解されたい。相対屈折率が、ファイバのある特定の領域(例えばコア領域及び/又はいずれのクラッド領域)内における半径方向位置と共に変動する場合、相対屈折率は、実際の若しくは近似的な関数依存関係として、又は当該領域内のある特定の位置における値として、又は当該領域全体に適用可能な平均値として、表現される。特段明記されていない限り、ある領域(例えばコア領域及び/又はいずれのクラッド領域)の相対屈折率が、単一の値として又は該領域全体に適用可能な1つのパラメータ(例えばΔ若しくはΔ%)として、表現されている場合:当該領域の相対屈折率は一定若しくはおおよそ一定であり、上記単一の値に相当すること;又は上記単一の値若しくはパラメータは、当該領域内の半径方向位置に依存する、非定常相対屈折率の平均値を表すことが理解される。例えば、特段明記されていない限り、「i」がガラスファイバのある領域である場合、パラメータΔは、以下の式(1)によって定義される、該領域における相対屈折率の平均値を指す。設計によるものであれ、又は通常の製造のばらつきによるものであれ、半径方向位置に対する相対屈折率の依存性は、傾斜していても、曲線であっても、又はその他の様式で一定でないものであってもよい。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「相対屈折率(relative refractive index)」は、以下の式(1)において:
【0058】
【数11】
【0059】
として定義され、ここでnは、特段明記されていない限り、ガラスファイバの半径方向位置rにおける屈折率であり、nrefは、特段明記されていない限り純シリカガラスの屈折率である。従って本明細書中で使用される場合、相対屈折率パーセントは、1550nmの波長で1.444の値を有する純シリカガラスに対するものである。本明細書中で使用される場合、相対屈折率は、Δ(若しくは「デルタ(delta)」)又はΔ%(若しくは「デルタ%(delta %)」)で表され、その値は、特段明記されていない限り、「%」を単位として与えられる。相対屈折率はΔ(r)又はΔ(r)%として表される場合もある。
【0060】
ファイバのある領域の平均相対屈折率(Δave)は、式(2):
【0061】
【数12】
【0062】
から決定され、ここでrinnerは当該領域の内半径であり、routerは当該領域の外半径であり、Δ(r)は当該領域の相対屈折率である。
【0063】
光ファイバプロファイルの屈折率は、IFA‐100 Fiber Index Plofiler(Interfiber Analysis LLC、米国マサチューセッツ州シャロン)、又はS14 Refractive Index Profiler(Photon Kinetics, Inc.、米国オレゴン州ビーバートン)といった市販のデバイスを用いて測定できる。これらのデバイスは、測定基準屈折率に対する屈折率n(r)-nmeasを測定し、ここで測定基準屈折率nmeasは典型的には、オイル又は純シリカガラスに一致する較正済みの屈折率である。測定波長は、632.5nm、654nm、677.2nm、654nm、702.3nm、729.6nm、759.2nm、791.3nm、826.3nm、864.1nm、905.2nm、949.6nm、997.7nm、1050nm、又はこれらの間のいずれの屈折率であってよい。その後、絶対屈折率n(r)を用いて、式(1)によって定義されるように相対屈折率を計算する。
【0064】
用語「αプロファイル(α‐profile又はalpha profile)」は、式(3):
【0065】
【数13】
【0066】
で定義される関数の形式を有する相対屈折率プロファイルΔ(r)を指し、rはΔ(r)が最大となる半径方向位置であり、Δ(r)>0であり、r>rはΔ(r)がその最小値まで減少する半径方向位置であり、rはr≦r≦rfの範囲内であり、rはαプロファイルの初期半径方向位置であり、rはαプロファイルの最終半径方向位置であり、αは実数である。αプロファイルに関するΔ(r)は、本明細書ではΔmax、又はファイバの特定の領域iに関する場合はΔi,maxと呼ぶことができる。ファイバコア領域の相対屈折率プロファイルを、rが中心線(r=0)に生じ、rがコア領域の外半径rに対応するようなαプロファイルによって記述する場合、式(3)は式(4):
【0067】
【数14】
【0068】
に簡略化される。
【0069】
コア領域が式(4)で記述される屈折率を有する場合、外半径rは以下の手順によって、測定された相対屈折率プロファイルから決定できる。最大相対屈折率Δ1max、α、及び外半径r1estの推定値は、測定された相対屈折率プロファイルの精査によって得られ、これらを用いて、r=-r1estとr=r1estとの間の試験関数Δtrialが生成される。本開示の実施形態による、αプロファイルによって記述されるコアを有する代表的なガラスファイバの相対屈折率プロファイルが、図5及び6に示されている。
【0070】
「トレンチ容積(trench volume)」は:
【0071】
【数15】
【0072】
として定義され、ここでrTrench,innerは、屈折率プロファイルのトレンチ領域の内半径であり、rTrench,outerは、屈折率プロファイルのトレンチ領域の外半径であり、ΔTrench(r)は、屈折率プロファイルのトレンチ領域の相対屈折率であり、rはファイバの半径方向位置である。トレンチ容積は絶対値かつ正の量であり、本明細書では、%Δマイクロメートル、%Δ‐マイクロメートル、%Δ・μm、又は%Δμmを単位として表され、ここでこれらの単位は本明細書では相互交換可能なものとして使用できる。トレンチ領域は本明細書では屈折率抑制クラッド領域(depressed‐index cladding region)とも呼ばれ、トレンチ容積は本明細書ではVとも呼ばれる。
【0073】
光ファイバの「モードフィールド径(mode field diameter)」又は「MFD」は、式(6)において:
【0074】
【数16】
【0075】
のように定義され、ここでf(r)は、ガイドされている光信号の電場分布の横方向成分であり、rはファイバ内での半径方向位置である。「モードフィールド径」又は「MFD」は光信号の波長に依存し、本明細書では1310nm、1550nm、及び1625nmの波長に関して報告される。本明細書中でモードフィールド径に言及する際には、波長を具体的に示す。特段明記されていない限り、モードフィールド径は、指定されている波長におけるLP01モードを指す。
【0076】
光ファイバの「実効断面積(effective area)」は、式(7)において:
【0077】
【数17】
【0078】
として定義され、ここでf(r)は、ガイドされている光信号の電場分布の横方向成分であり、rはファイバ内での半径方向位置である。「実効断面積」又は「Aeff」は光信号の波長に依存し、本明細書では1550nmの波長を参照していると理解される。
【0079】
本明細書中で使用される場合、用語「減衰(attenuation)」は、信号が光ファイバに沿って移動する際の光パワーの損失である。減衰は、IEC‐60793‐1‐40規格「減衰測定方法」に指定されているように測定した。
【0080】
本明細書中では「曲げ損失(bend loss)」として表現される光ファイバの曲げ抵抗は、IEC‐60793‐1‐47規格「測定方法及び試験手順-マクロベンド損失」に指定されているような、規定された試験条件下での誘導減衰によって測定できる。例えば上記試験条件は、規定された直径のマンドレルの周りにファイバを1周以上展開する、即ち巻き付けるステップ、例えば直径15mm、20mm、又は30mm等のマンドレルの周りに1周巻き付ける(例えば「1×15mm径曲げ損失」又は「1×20mm径曲げ損失」又は「1×30mm径曲げ損失」)ステップと、1周あたりの減衰の増大を測定するステップとを含むことができる。
【0081】
本明細書中で使用される場合、「ケーブルカットオフ波長(cable cutoff wavelength)」又は「ケーブルカットオフ(cable cutoff)」は、IEC 60793‐1‐44規格「測定方法及び試験手順-カットオフ波長」に指定されているような、22mケーブルカットオフ試験を参照する。
【0082】
本明細書で開示される光ファイバは、コア領域、上記コア領域を取り囲むクラッド領域、及び上記クラッド領域を取り囲むコーティングを含む。コア領域及びクラッド領域はガラスである。クラッド領域は複数の領域を含む。複数のクラッド領域は、好ましくは同心の領域である。クラッド領域は、内側クラッド領域、屈折率抑制クラッド領域、及び外側クラッド領域を含む。内側クラッド領域は、コア領域を取り囲み、コア領域に直接隣接する。屈折率抑制クラッド領域は、内側クラッド領域を取り囲んで内側クラッド領域に直接隣接し、従って屈折率抑制クラッド領域は、半径方向において内側クラッドと外側クラッドとの間に配置される。外側クラッド領域は、屈折率抑制クラッド領域を取り囲み、屈折率抑制クラッド領域に直接隣接する。屈折率抑制クラッド領域は、内側クラッド領域及び外側クラッド領域より低い相対屈折率を有する。屈折率抑制クラッド領域は、本明細書ではトレンチ又はトレンチ領域と呼ばれる場合もある。内側クラッド領域の相対屈折率は、外側クラッド領域の相対屈折率未満であっても、外側クラッド領域の相対屈折率と等しくても、外側クラッド領域の相対屈折率より大きくてもよい。屈折率抑制クラッド領域は、曲げ損失及びマイクロベンドへの感受性の低減に寄与し得る。コア領域、内側クラッド領域、屈折率抑制クラッド領域、及び外側クラッド領域はそれぞれ、コア、クラッド、内側クラッド、屈折率抑制クラッド、及び外側クラッドとも呼ばれる。
【0083】
本明細書中で使用される場合は常に、半径方向位置r及び相対屈折率Δ又はΔ(r)はコア領域を表し、半径方向位置r及び相対屈折率Δ又はΔ(r)は内側クラッド領域を表し、半径方向位置r及び相対屈折率Δ又はΔ(r)は屈折率抑制クラッド領域を表し、半径方向位置r及び相対屈折率Δ又はΔ(r)は外側クラッド領域を表し、半径方向位置rは任意の低弾性率内側コーティングを表し、半径方向位置rは高弾性率コーティングを表し、半径方向位置rは、任意の着色済み外側コーティングを表す。
【0084】
相対屈折率Δ(r)は、最大値Δ1max及び最小値Δ1minを有する。相対屈折率Δ(r)は、最大値Δ2max及び最小値Δ2minを有する。相対屈折率Δ(r)は、最大値Δ3max及び最小値Δ3minを有する。相対屈折率Δ(r)は、最大値Δ4max及び最小値Δ4minを有する。相対屈折率がある領域にわたって一定又は略一定である実施形態では、相対屈折率の最大値と最小値とは、等しいか又は略等しい。特段明記されていない限り、ある単一の値が、ある領域の相対屈折率に関して報告されている場合、この単一の値は、該領域に関する平均値に相当する。
【0085】
中央のコア領域は略円筒形であること、並びに周囲の内側クラッド領域、屈折率抑制クラッド領域、外側クラッド領域、低弾性率コーティング、及び高弾性率コーティングは略環状であることが理解される。環状領域は、内半径及び外半径に関して特性決定される。本明細書では、半径方向位置r、r、r、r、r、r、及びrはそれぞれ、コア、内側クラッド、屈折率抑制クラッド、外側クラッド、任意の低弾性率内側コーティング、高弾性率コーティング、及び任意の着色済み外側コーティングの最外半径を指す。着色済み外側コーティングを備えない実施形態では、半径rは、光ファイバの外半径にも相当する。着色済み外側コーティングは、高い弾性率を有していてよい。着色済み外側コーティングが存在する場合、半径rが、光ファイバの外半径に相当する。
【0086】
2つの領域が互いに直接隣接している場合、これら2つの領域のうちの内側の領域の外半径は、これら2つの領域のうちの外側の領域の内半径と一致する。例えば光ファイバは、外側クラッド領域に取り囲まれた、外側クラッドに直接隣接する屈折率抑制クラッド領域を含む。半径rは、屈折率抑制クラッド領域の外半径及び外側クラッド領域の内半径に相当する。相対屈折率プロファイルはまた、内側クラッド領域を取り囲んで内側クラッド領域に直接隣接する、屈折率抑制クラッド領域を含む。半径方向位置rは、内側クラッド領域の外半径及び屈折率抑制クラッド領域の内半径に相当する。同様に、半径方向位置rは、コア領域の外半径及び内側クラッド領域の内半径に相当する。
【0087】
半径方向位置rと半径方向位置rとの間の差は、本明細書では内側クラッド領域の厚さと呼ばれる。半径方向位置rと半径方向位置rとの間の差は、本明細書では屈折率抑制クラッド領域の厚さと呼ばれる。半径方向位置rと半径方向位置rとの差は、本明細書では外側クラッド領域の厚さと呼ばれる。半径方向位置rと半径方向位置rとの間の差は、本明細書では低弾性率コーティングの厚さと呼ばれる。半径方向位置rと半径方向位置rとの間の差は、本明細書では高弾性率コーティングの厚さと呼ばれる。
【0088】
これ以降で更に説明するように、コア領域、内側クラッド領域、屈折率抑制クラッド領域及び外側クラッド領域の相対屈折率は異なっていてよい。各領域は、ドープ又は非ドープシリカガラスから形成してよい。非ドープシリカガラスに関する屈折率の変動は、当業者に公知の技法を用いて、目標の屈折率又は屈折率プロファイルを提供するように設計されたレベルのアップドーパント又はダウンドーパントを組み込むことにより、達成できる。アップドーパントは、非ドープガラス組成物に比べてガラスの屈折率を上昇させるドーパントである。ダウンドーパントは、非ドープガラス組成物に比べてガラスの屈折率を低下させるドーパントである。一実施形態では、非ドープガラスはシリカガラスである。非ドープガラスがシリカガラスである場合、アップドーパントとしてはCl、Br、Ge、Al、P、Ti、Zr、Nb及びTaが挙げられ、ダウンドーパントとしてはフッ素及びホウ素が挙げられる。定常屈折率の領域は、ドープしないことによって、又は該領域の厚さ全体にわたって均一の濃度でドープすることによって、形成できる。可変屈折率の領域は、該領域の厚さ全体にわたるドーパントの不均一な空間的分散によって、及び/又は異なる領域に異なるドーパントを組み込むことによって、形成される。
【0089】
ヤング率、%伸び、及び引裂き強度の値は、本明細書に記載の手順による測定条件下で決定される値を指す。
【0090】
これより、本記載の例示的な実施形態を詳細に参照する。
【0091】
一実施形態は、光ファイバに関する。光ファイバは、コーティングに取り囲まれたガラスファイバを含む。光ファイバの一例が、図1に概略断面図で示されている。光ファイバ10は、任意の低弾性率内側コーティング16及び高弾性率コーティング18に取り囲まれたガラスファイバ11を含む。いくつかの実施形態では、高弾性率コーティング18は顔料を含んでよい。ガラスファイバ11、任意の低弾性率内側コーティング16、及び高弾性率コーティング18に関する更なる説明を以下で提供する。更に、1つ以上の着色済み外側コーティング層が高弾性率コーティング18を取り囲んでいてよい。
【0092】
図2は光ファイバリボン30を示し、これは、複数の光ファイバ20と、上記複数の光ファイバをカプセル化するマトリクス32とを含んでよい。光ファイバ20はそれぞれ、上述のように、コア領域、クラッド領域、任意の低弾性率内側コーティング、及び高弾性率コーティングを含む。光ファイバ20は上述のように、着色済み外側コーティングを含む場合もある。
【0093】
図2に示されているように、光ファイバ20は、互いに対して、略平面内かつ平行な関係に整列される。光ファイバリボン30内の光ファイバは、従来の光ファイバリボン作製方法によって、複数の公知の構成のうちのいずれ(例えば縁部結合リボン、薄膜カプセル化リボン、厚膜カプセル化リボン、又は多層リボン)でリボンマトリクス32によってカプセル化される。図2の実施形態の光ファイバリボン30は12本の光ファイバ20を内包している。しかしながら、ある特定の用途のための光ファイバリボン30を形成するために、いずれの本数の光ファイバ20(例えば2本以上、4本以上、6本以上、8本以上、12本以上、又は16本以上)を採用してよいことことが企図される。リボンマトリクス32は、高弾性率コーティングの引張特性と同様の引張特性を有し、高弾性率コーティングの調製に使用されるものと同一の、類似した、又は異なる組成物から形成できる。
【0094】
図3は光ファイバケーブル40を示し、これは、ジャケット42に取り囲まれた複数の光ファイバ20を含む。いくつかの実施形態では、光ファイバケーブル40は海底ケーブルである。いくつかの実施形態では、光ファイバケーブル40は、データセンター内の相互接続スキームのファイバリボンに使用される。光ファイバ20は、ジャケット42の内面44によって囲まれた導管内に、密に又は緩く詰め込まれていてよい。ジャケット42内に配置されるファイバの本数は、光ファイバケーブル40の「ファイバ数(fiber count)」と呼ばれる。以下で更に説明されるように、本開示の光ファイバは直径が削減されているため、高い「ファイバ数」を提供する。
【0095】
ジャケット42は、押出成形されたポリマー材料から形成され、ポリマー又は他の材料の複数の同心層を含んでよい。光ファイバケーブル40は、ジャケット42内に埋め込まれた、又は内面44によって画定される導管内に配置された、1つ以上の強化部材(図示せず)を含んでよい。強化部材は、ジャケット42より高い剛性を有するファイバ又はロッドを含む。強化部材は、金属、編組鋼、ガラス補強プラスチック、ファイバガラス、又は他の好適な材料から作製できる。光ファイバケーブル40は、例えば装甲層、防湿層、リップコードといった、ジャケット42に取り囲まれた他の層を含んでよい。更に光ファイバケーブル40は、撚り線状の緩いチューブのコア、又は他の光ファイバケーブル構成を有してよい。
【0096】
ガラスファイバ
図1に示されているように、ガラスファイバ11は、当業者には公知であるように、コア領域12及びクラッド領域14を含む。コア領域12はクラッド領域14より高い屈折率を有し、ガラスファイバ11は導波路として機能する。多くの用途において、コア領域12及びクラッド領域14は、識別可能なコア‐クラッド間の境界を有する。あるいはコア領域12及びクラッド領域14には明確な境界がなくてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、コア領域12は、ガラスファイバの中心からの距離と共に屈折率が変化する。例えばコア領域12は、2以上かつ100以下のα値、又は例えば2以上かつ10以下、若しくは2以上かつ6以下、若しくは2以上かつ4以下、若しくは4以上かつ20以下、若しくは6以上かつ20以下、若しくは8以上かつ20以下、若しくは10以上かつ20以下、若しくは10以上かつ40のα値の(上述の式(3)によって定義された)αプロファイルを有する相対屈折率プロファイルを有してよい。
【0098】
ある例示的な光ファイバの概略断面図が図4に示されている。いくつかの実施形態では、図4の光ファイバは、海底ケーブルに使用でき、又は海底中継器の部品を光学的に接続するために使用できる。いくつかの実施形態では、図4の光ファイバは、データセンターの相互接続に使用できる。図4では、光ファイバ46は、コア領域48、クラッド領域50、任意の低弾性率コーティング56、及び高弾性率コーティング58を含む。クラッド領域50は、内側クラッド領域51、屈折率抑制クラッド領域53、及び外側クラッド領域55を含む。任意に、着色済み外側コーティング層(例えばインク層)が高弾性率コーティングを取り囲むか、又は高弾性率コーティングに直接隣接する。
【0099】
上述のように、光ファイバ46のコーティングの直径を削減できる。このように削減された1つ以上の直径により、例えば海底ケーブル若しくは中継器、又はデータセンターの相互接続に使用する場合に、光ファイバ46のファイバ密度(例えば「ファイバ数」)を増大させることができる。比較的小さな直径の光ファイバ46を用いて、減衰を小さくし、実効断面積を大きくし、曲げ損失を小さくし、機械的信頼性を十分に高めるために、ファイバの特性を、以下で更に説明されるように特に調整する。
【0100】
本開示の実施形態によるガラスファイバの代表的な相対屈折率が、図5に示されている。図5の光ファイバ60のプロファイルは:外半径r及び相対屈折率Δ(最大相対屈折率Δ1max)を有するコア領域(1);半径方向位置rから半径方向位置rまで延在し、相対屈折率Δを有する、内側クラッド領域(2);半径方向位置rから半径方向位置rまで延在し、相対屈折率Δを有する、屈折率抑制クラッド領域(3);並びに半径方向位置rから半径方向位置rまで延在し、相対屈折率Δを有する、外側クラッド領域(4)を示す。図5のプロファイルのうち、屈折率抑制クラッド領域(3)は本明細書中ではトレンチと呼ばれる場合があり、内側クラッド領域(2)及び外側クラッド領域(4)の相対屈折率未満の定常又は平均相対屈折率を有する。コア領域(1)は、このプロファイルにおいて最高の平均及び最大相対屈折率を有する。いくつかの実施形態では、コア領域(1)は、中心線又はその付近に比較的低屈折率の領域を含んでよい(当該技術分野では「中心線ディップ(centerline dip)」として知られる)(図示せず)。いくつかの実施形態では、コア領域(1)は、中心線又はその付近に比較的高屈折率の領域を含んでよい(当該技術分野では「中心線スパイク(centerline spike)」と呼ばれる)(図示せず)。
【0101】
図5の相対屈折率プロファイルでは、ガラスファイバのコア領域(1)は、2以上かつ20以下のα値のαプロファイルを有する。上記αプロファイルの(Δ1maxに対応する)半径方向位置rは、ファイバの中心線(r=0)に対応し、上記αプロファイルの半径方向位置rは、コア半径rに対応する。中心線ディップを有する実施形態では、半径方向位置rはファイバの中心線からずれていてよい。いくつかの実施形態では、相対屈折率Δは、中心線から離れる半径方向に、連続的に減少する。他の実施形態では、相対屈折率Δは、中心線とrとの間のいくつかの半径方向位置にわたって変動し、また中心線とrとの間の他の半径方向位置にわたって一定又は略一定の値を含む。
【0102】
図5では、内側クラッド領域(2)から屈折率抑制クラッド領域(3)への遷移領域61、及び屈折率抑制クラッド領域(3)から外側クラッド領域(4)への遷移領域62が、階段状の変化として示されている。階段状の変化は理想化されたものであること、並びに遷移領域61及び/又は遷移領域62は実際には、図5に示されているように厳密に垂直でない場合があることを理解されたい。そうではなく、遷移領域61及び/又は遷移領域62は、傾斜又は湾曲を有する場合がある。遷移領域61及び/又は遷移領域62が垂直でない場合、屈折率抑制クラッド領域(3)の内半径r及び外半径rは、それぞれ遷移領域61及び遷移領域62の中点に対応する。これら中点は、屈折率抑制クラッド領域(3)の深さ63の半分に対応する。
【0103】
図5に示されている相対屈折率プロファイル中の相対屈折率Δ、Δ、Δ及びΔの相対的順序は、条件Δ1max>Δ>Δ及びΔ1max>Δ>Δを満たす。Δ及びΔの値は等しくてよく、又はいずれかが他方より大きくてよいが、Δ及びΔはいずれもΔ1maxとΔとの間である。
【0104】
相対屈折率Δ、Δ、Δ、及びΔは、コア領域、内側クラッド領域、屈折率抑制クラッド領域、及び外側クラッド領域に使用される材料に基づく。相対屈折率Δ、Δ、Δ、及びΔに関するこれらの材料の説明を以下に提供する。
【0105】
図5はある例示的な光ファイバの概略断面図を示しているが、本明細書に記載の実施形態に、他の好適な光ファイバを使用してもよい。例えば図9は、本明細書に記載の実施形態に使用できるシングルモードファイバの一般的なプロファイルの設計の概略断面図である。図9の光ファイバのプロファイルは:外半径r及び相対屈折率Δを有するコア領域;半径方向位置rから半径方向位置rまで延在し、相対屈折率Δを有する、内側クラッド領域;半径方向位置rから半径方向位置rまで延在し、相対屈折率Δを有する、屈折率抑制クラッド領域;並びに半径方向位置rから半径方向位置rまで延在し、相対屈折率Δを有する、外側クラッド領域を示す。以下の表1及び2は、本明細書に記載の実施形態に使用できる様々な例示的なファイバプロファイル設計を示し、表3は、本明細書に記載の実施形態に使用できる様々な例示的な光ファイバプロファイル設計の、様々な光学特性を示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2-1】
【0108】
【表2-2】
【0109】
【表3】
【0110】
コア領域
コア領域はシリカガラスを含む。コア領域のシリカガラスは、非ドープシリカガラス、アップドープシリカガラス、及び/又はダウンドープシリカガラスであってよい。アップドープシリカガラスは、アルカリ金属酸化物(例えばNaO、KO、LiO、CsO、又はRbO)がドープされたシリカガラスを含む。ダウンドープシリカガラスは、Fがドープされたシリカガラスを含む。一実施形態では、コア領域のシリカガラスは、Ge非含有及び/又はCl非含有であってよく、即ちコア領域は、Ge及び/又はClを含まないシリカガラスを含む。
【0111】
更に、又はあるいは、コア領域は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、及び/又はフランシウム(Fr)といった少なくとも1つのアルカリ金属がドープされたシリカガラスを含んでよい。いくつかの実施形態では、シリカガラスには、ナトリウム、カリウム、及びルビジウムの組み合わせがドープされている。シリカガラスのピークアルカリ濃度は、約10ppm~約500、又は約20ppm~約450ppm、又は約50ppm~約300ppm、又は約10ppm~約200ppm、又は約10ppm~約150ppmであってよい。本開示の範囲内でのアルカリ金属のドープは、レイリー散乱の低下をもたらし、従って光ファイバ減衰を提供する。
【0112】
いくつかの実施形態では、コア領域は、アルカリ金属がドープされ、またダウンドーパントとしてFがドープされた、シリカガラスを含む。ファイバのコア中のFの濃度は、約0.1重量%~約2.5重量%、又は約0.25重量%~約2.25重量%、又は約0.3重量%~約2.0重量%である。
【0113】
他の実施形態では、コア領域は、Ge及び/又はClがドープされたシリカガラスを含む。ファイバのコア中のGeOの濃度は、約2.0~約8.0重量%、又は約3.0~約7.0重量%、又は約4.0~約6.5重量%であってよい。ファイバのコア中のClの濃度は、1.0重量%~6.0重量%、又は1.2重量%~5.5重量%、又は1.5重量%~5.0重量%、又は2.0重量%~4.5重量%、又は1.5重量%以上(例えば2重量%以上、2.5重量%以上、3重量%以上、3.5重量%以上、4重量%以上、4.5重量%以上、5重量%以上等)であってよい。
【0114】
コアがGe又はClを実質的に含まない実施形態では、コア領域の相対屈折率Δ又はΔ1maxは、約-0.10%~約0.20%、又は約-0.05%~約0.15%、又は約0.0%~約0.10%である。コアの最小相対屈折率Δ1minは、約-0.20%~約-0.50%、又は約-0.30%~約-0.40%、又は約-0.32%~約-0.37%である。Δ1maxとΔ1minとの差は、0.05%超、又は0.10%超、又は0.15%超、又は0.20%超、又は0.05%~0.40%、又は0.10%~0.35%である。
【0115】
コアにGe及び/又はClがドープされている実施形態では、コア領域の相対屈折率Δ又はΔ1maxは、約0.20%~約0.45%、又は約0.25%~約0.40%、又は約0.30%~約0.38%である。コアの最小相対屈折率Δ1minは、約-0.05%~約-0.05%、又は約-0.03%~約0.03%、又は約-0.02%~約0.02%である。Δ1maxとΔ1minとの差は、0.20%超、又は0.25%超、又は0.30%超、又は0.25%~0.45%、又は0.30%~0.40%である。
【0116】
コア領域の半径rは、約3.0マイクロメートル~約6.5マイクロメートル、又は約3.5マイクロメートル~約6.0マイクロメートル、又は約4.0マイクロメートル~約6.0マイクロメートル、又は約4.5マイクロメートル~約5.5マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、コア領域は、半径方向の幅が少なくとも1.0マイクロメートル、又は少なくとも2.0マイクロメートル、又は少なくとも3.0マイクロメートル、又は1.0マイクロメートル~3.0マイクロメートル、又は2.0マイクロメートル~3.0マイクロメートルである、相対屈折率が一定又は略一定の部分を含む。いくつかの実施形態では、コア領域の、相対屈折率が一定又は略一定の部分の相対屈折率は、Δ1minである。
【0117】
内側クラッド領域
コアがGe又はClを実質的に含まない実施形態では、内側クラッド領域は、Fがドープされたダウンドープシリカガラスで構成される。内側クラッド領域中のダウンドーパントの平均濃度は、コア領域中のダウンドーパントの平均濃度より高い。
【0118】
内側クラッド領域の相対屈折率Δ又はΔ2maxは、約-0.20%~約-0.50%、又は約-0.25%~約-0.45%、又は約-0.30%~約-0.40%、又は約-0.33%~約-0.37%である。相対屈折率Δは好ましくは一定又は略一定である。差Δ1max-Δ(又は差Δ1max-Δ2max)は、約0.25%超、又は約0.30%超、又は約0.35%超、又は約0.25%~約0.45%、又は約0.30%~約0.40%である。
【0119】
内側クラッド領域の半径rは、約7.0マイクロメートル~約15.0マイクロメートル、又は約7.5マイクロメートル~約13.0マイクロメートル、又は約8.0マイクロメートル~約12.0マイクロメートル、又は約8.5マイクロメートル~約11.5マイクロメートル、又は約9.0マイクロメートル~約11.0マイクロメートル、又は約9.5マイクロメートル~約10.5マイクロメートルである。内側クラッド領域の厚さr-rは、約3.0マイクロメートル~約10.0マイクロメートル、又は約4.0マイクロメートル~約9.0マイクロメートル、又は約4.5マイクロメートル~約7.0マイクロメートルである。
【0120】
コアにGe及び/又はClがドープされている実施形態では、内側クラッド領域は、Ge及び/又はClを実質的に含まないシリカを含む。内側クラッド領域の相対屈折率Δ又はΔ2maxは、約-0.05%~約-0.05%、又は約-0.03%~約0.03%、又は約-0.02%~約0.02%である。相対屈折率Δは好ましくは一定又は略一定である。差Δ1max-Δ(又は差Δ1max-Δ2max)は、約0.20%超、又は約0.25%超、又は約0.30%超、又は約0.25%~約0.40%、又は約0.30%~約0.38%である。
【0121】
内側クラッド領域の半径rは、約8.0マイクロメートル~約16.0マイクロメートル、又は約9.0マイクロメートル~約15.0マイクロメートル、又は約10.0マイクロメートル~約14.0マイクロメートル、又は約10.5マイクロメートル~約13.5マイクロメートル、又は約11.0マイクロメートル~約13.0マイクロメートルである。内側クラッド領域の厚さr-rは、約3.0マイクロメートル~約10.0マイクロメートル、又は約4.0マイクロメートル~約9.0マイクロメートル、又は約5.0マイクロメートル~約8.0マイクロメートルである。
【0122】
屈折率抑制クラッド領域
屈折率抑制クラッド領域はダウンドープシリカガラスを含む。上述のように、好ましいダウンドーパントはフッ素である。屈折率抑制クラッド領域中のフッ素の濃度は、約0.30重量%~約2.50重量%、又は約0.60重量%~約2.25重量%、又は約0.90重量%~約2.00重量%である。
【0123】
相対屈折率Δ又はΔ3minは、約-0.30%~約-0.80%、又は約-0.40%~約-0.70%、又は約-0.50%~約-0.65%である。相対屈折率Δは好ましくは一定又は略一定である。差Δ1max-Δ(又は差Δ1max-Δ3min、又は差Δ-Δ、又は差Δ-Δ3min)は、約0.50%超、又は約0.55%超、又は約0.6%超、又は約0.50%~約0.80%、又は約0.55%~約0.75%である。差Δ-Δ(又は差Δ-Δ3min、又は差Δ2max-Δ、又は差Δ2max-Δ3min)は、約0.10%超、又は約0.20%超、又は約0.30%超、又は約0.10%~約0.70%、又は約0.20%~約0.65%である。
【0124】
屈折率抑制クラッド領域の内半径はrであり、上で指定された値を有する。屈折率抑制クラッド領域の外半径rは、約10.0マイクロメートル~20.0マイクロメートル、又は約12.0マイクロメートル~約19.5マイクロメートル、又は約13.0マイクロメートル~約19.0マイクロメートル、又は約13.5マイクロメートル~約18.5マイクロメートル、又は約14.0マイクロメートル~約18.0マイクロメートル、又は約14.5マイクロメートル~約17.5マイクロメートルである。屈折率抑制クラッド領域の厚さr-rは、1.0マイクロメートル~12.0マイクロメートル、又は約2.0マイクロメートル~約10.0マイクロメートル、又は約2.5マイクロメートル~約9.0マイクロメートル、又は約3.0マイクロメートル~約8.0マイクロメートルである。
【0125】
屈折率抑制クラッド領域は、トレンチ容積が約30%Δ‐マイクロメートル以上、又は約50%Δ‐マイクロメートル以上、又は約75%Δ‐マイクロメートル以下、又は約30%Δ‐マイクロメートル以上かつ75%Δ‐マイクロメートル以下、又は約50%Δ‐マイクロメートル以上かつ約75%Δ‐マイクロメートル以下のオフセットトレンチ設計であってよい。本開示の範囲よりトレンチ容積が小さいと、曲げ性能が低下し、本開示の範囲よりトレンチ容積が大きいと、シングルモードファイバとして動作しなくなる。
【0126】
本明細書で開示されるオフセットトレンチ設計は、内側クラッド領域を含む。更に、本明細書で開示されるオフセットトレンチ設計は、コア領域に隣接する従来のトレンチの設計を上回る利点を提供する。より具体的には、本明細書で開示されるオフセットトレンチ設計は、基本モードの閉じ込めを低減し、また、目標の光ファイバモードフィールド径及びケーブルカットオフ特性について、大きな曲げ半径(例えば25mmを超える曲げ半径)において、曲げ損失の改善を提供する。更に、本明細書で開示されるトレンチの設計は、光ファイバを通して伝播する基本LP01モードの強度プロファイルを有利に閉じ込める、屈折率抑制トレンチ領域を有し、これによって光ファイバモードフィールド径が削減される。
【0127】
外側クラッド領域
コアがGe又はClを実質的に含まない実施形態では、外側クラッド領域はダウンドープシリカガラスを含む。好ましいダウンドーパントはフッ素である。外側クラッド領域中のフッ素の濃度は、約0.30重量%~約2.20重量%、又は約0.60重量%~約2.00重量%、又は約0.90重量%~約1.80重量%である。外側クラッド領域の相対屈折率Δ又はΔ4maxは、約-0.20%~約-0.50%、又は約-0.25%~約-0.45%、又は約-0.30%~約-0.40%、又は約-0.33%~約0.37%である。相対屈折率Δは好ましくは一定又は略一定である。図5に示されているように、相対屈折率Δは相対屈折率Δとおおよそ等しくてよい。
【0128】
ある実施形態では、外側クラッドは略純粋なシリカである。あるいは外側クラッドには、約0.01%~約0.1%、又は約0.02%~約0.08%、又は約0.03%~約0.06%の相対屈折率まで、Clをドープしてよい。外側クラッド中のClの濃度は、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.2重量%~約0.8重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%であってよい。あるいは、擦過傷等の欠陥がファイバを通って伝播するのを防止するために、外側クラッドにチタニアをドープすることによってクラッド表面を強化してよい。いくつかの実施形態では、外側クラッドに、約5重量%~約25重量%の濃度のチタニアをドープしてよい。
【0129】
外側クラッドの内半径はrであり、上で指定されている値を有する。いくつかの実施形態では、クラッド位置合わせスプライサーを用いた、クラッド直径が125マイクロメートルの従来のファイバへのスプライシングを容易にするために、外半径rは約62.5マイクロメートルである。外側クラッド領域の外半径rは、60.0マイクロメートル~65.0マイクロメートル、又は61.0マイクロメートル~64.0マイクロメートル、又は62.0マイクロメートル~63.0マイクロメートル、又は62.25マイクロメートル~62.75マイクロメートルである。よって例えば、クラッド領域の直径(即ち外半径rの2倍)は、120.0マイクロメートル~130.0マイクロメートル、又は122.0マイクロメートル~128.0マイクロメートル、又は124.0マイクロメートル~126.0マイクロメートル、又は124.5マイクロメートル~125.5マイクロメートルである。外側クラッド領域の厚さr-rは、約20.0マイクロメートル~約60.0マイクロメートル、又は約30.0マイクロメートル~約55.0マイクロメートル、又は約40.0マイクロメートル~約50.0マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、低弾性率コーティング及び高弾性率コーティングの厚さを増大させることができるように、外半径rは約50マイクロメートルである。外側クラッド領域の外半径rは、45.0マイクロメートル~55.0マイクロメートル、又は49.0マイクロメートル~51.0マイクロメートル、又は49.5マイクロメートル~50.5マイクロメートル、又は49.65マイクロメートル~50.35マイクロメートルである。よって例えば、クラッド領域の直径(即ち外半径rの2倍)は、90.0マイクロメートル~110.0マイクロメートル、又は98.0マイクロメートル~102.0マイクロメートル、又は99.0マイクロメートル~101.0マイクロメートル、又は99.3マイクロメートル~100.7マイクロメートルである。外側クラッド領域の厚さr-rは、約20.0マイクロメートル~約50.0マイクロメートル、又は約25.0マイクロメートル~約45.0マイクロメートル、又は約30.0マイクロメートル~約40.0マイクロメートルである。
【0130】
光ファイバの特性
本開示の実施形態による光ファイバは、1310nmにおいて約9.0マイクロメートル~約10.0マイクロメートル、及び1550nmにおいて約10.0マイクロメートル~約11.0マイクロメートルのモードフィールド径を、約1520nm未満のケーブルカットオフと共に有してよい。いくつかの実施形態では、22メートルケーブルカットオフ波長は、約1500nm未満、又は約1450nm未満、又は約1400nm未満、又は約1300nm未満、又は約1260nm未満である。いくつかの実施形態では、2メートルファイバカットオフ波長は、約1520nm未満、又は約1500nm未満、又は約1450nm未満、又は約1400nm未満、又は約1300nm未満、又は約1260nm未満である。
【0131】
更に、本開示の実施形態による光ファイバは、1550nmにおいて約75.0マイクロメートル超、約80マイクロメートル超、又は約85マイクロメートル超、又は約75マイクロメートル~約95マイクロメートル、又は約80マイクロメートル~約90マイクロメートル、又は約85マイクロメートル~約90マイクロメートルの実効断面積を有してよい。
【0132】
本明細書で開示される光ファイバの減衰は、1310nmの波長において、0.36dB/km以下、又は0.30dB/km以下、又は0.28dB/km以下、又は0.26dB/km以下である。本明細書で開示される光ファイバの減衰は、1550nmの波長において、0.24dB/km以下、又は0.22dB/km以下、又は0.20dB/km以下である。
【0133】
図5に示されているように、光ファイバ60は、アルカリドープコアを有し、コア領域の相対屈折率Δ(1)は約-0.3%~約-0.42%であり、コア半径(r)は約4マイクロメートル~約6.5マイクロメートルである、光ファイバの例示的実施形態を提供する。更に、光ファイバ60の内側クラッド領域の厚さは、約2マイクロメートル~約12マイクロメートルである。光ファイバ60は、トレンチ容積が54.5%Δ‐マイクロメートルのオフセットトレンチ設計を有する。光ファイバ60のクラッドにはフッ素がドープされ、屈折率抑制クラッド領域の半径(r)は約17.5マイクロメートルである。光ファイバ60の光学特性を以下の表4に示す。
【0134】
【表4】
【0135】
図6は、アルカリドープコアを有し、トレンチ容積が約50%Δ‐マイクロメートル超である、光ファイバの第2の実施形態64及び第3の実施形態65を示し、クラッドにはフッ素がドープされ、屈折率抑制クラッド領域の半径(r)は約17.5マイクロメートルである。以下の表5に示されているように、光ファイバ64の1310nmでのモードフィールド径は9.07マイクロメートルとなり、光ファイバ65の1310nmでのモードフィールド径は9.39マイクロメートルとなる。光ファイバ64及び65の光学特性を以下の表5に示す。
【0136】
【表5】
【0137】
図7は、Geドープコアを有し、トレンチ容積が50%Δ‐マイクロメートルである、光ファイバの実施形態66を示し、内側領域及びクラッド領域は略純粋なシリカであり、屈折率抑制クラッド領域の半径(r)は約16.8マイクロメートルである。以下の表6に示されているように、光ファイバ66の1550nmでのモードフィールド径は10.6マイクロメートルとなる。光ファイバ66の屈折率プロファイルパラメータ及び光学特性を以下の表6に示す。
【0138】
【表6】
【0139】
光ファイバ60、64、65及び66のオフセットトレンチ設計は、本明細書で開示される比較的小径のファイバに、改善された曲げ性能を提供する。より具体的には、本明細書で開示されるオフセットトレンチ設計は、クラッド直径が約125マイクロメートル、外側コーティング直径が175マイクロメートル未満のコンパクトな形態において、低い減衰、大きな実効断面積、及び低い曲げ損失を提供する。
【0140】
コーティング特性
光ファイバを通る光の透過率は、ガラスファイバに適用されるコーティングの特性に依存する。上述のように(また図4を参照すると)、コーティングは任意の低弾性率内側コーティング56と、高弾性率コーティング58とを含んでよく、上記高弾性率コーティングは上記任意の低弾性率内側コーティングを取り囲み、上記任意の低弾性率内側コーティングは(クラッド領域に取り囲まれた中心のコア領域を含む)ガラスファイバに接触する。任意の着色済み外側コーティング層(例えばインク層)は、上記高弾性率コーティングを取り囲み、また上記高弾性率コーティングに直接接触する。
【0141】
高弾性率コーティング58は、任意の低弾性率コーティング56よりも硬質の(ヤング率が高い)材料であり、光ファイバの加工、取り扱い、及び配備中に生じる摩擦又は外力によって引き起こされる損傷から、ガラスファイバを保護するように設計される。任意の低弾性率内側コーティング56は、高弾性率コーティング58よりも軟質の(ヤング率が低い)材料であり、高弾性率コーティングの外面に印加される力に起因する応力を緩衝する又は放散させるように設計される。任意の低弾性率コーティングは、光ファイバがケーブル内への配備時に受けるマイクロベンドによって生じる応力の放散を支援できるが、光学的相互接続等の長さが短い用途にとっては必須ではない。ガラスファイバに伝達されるマイクロベンド応力は、最小限に抑える必要がある。というのは、マイクロベンド応力はガラスファイバの屈折率プロファイルに局所的な混乱を生成するためである。局所的な屈折率の混乱は、ガラスファイバを通して伝送される光の強度損失につながる。応力を放散させることにより、任意の低弾性率コーティングは、マイクロベンドによって生じる強度損失を最小限に抑える。
【0142】
光ファイバ上のコーティングが薄いほど、外的摂動に対する保護の提供が小さくなるため、マイクロベンド損失が増大すると考えられる。これらの摂動により、コア内でガイドされる光(コアモード)から、クラッド内のより高次のモード(クラッドモード)へのパワー結合が生じる。図10に示されているように、クラッドモードは、高い吸収率を有するコーティング層とかなり重なる可能性がある。このような、コーティング材料による結合及び吸収のプロセスによって、光パワーの損失がもたらされる。
【0143】
光ファイバのマイクロベンド損失をコーティングの特性に関して定量化するためのアプローチは、IEICE Trans. Commun., Vol. E76‐B、No. 4, pp. 352‐357 (1993年4月)中の、J. Baldauf、N. Okada及びM. Miyamotoによる「Relationship of Mechanical Characteristics of Dual Coated Single Mode Fibers and Microbending Loss」という標題の記事で公開されている。上述の著者らは、二次(高弾性率)コーティングとガラスファイバとを結合させる力の実効ばね定数であるパラメータχを導入した。このばね定数のパラメータ化は、低弾性率の厚い一次(低弾性率)コーティングがより良好なマイクロベンド性能を提供することの定性的なガイダンスを提供するものの、ガラス及び高弾性率の寄与を完全には捉えていない。
【0144】
ガラスと、低弾性率内側コーティングと、高弾性率コーティングとの役割の組み合わせは、以下のマクロベンド減衰ペナルティ(MAP):
【0145】
【数18】
【0146】
をもたらし、ここでf及びσは、高弾性率コーティングに接触する外側表面の、それぞれ平均側圧及び粗度の標準偏差であり、
【0147】
【数19】
【0148】
である。fRIPは屈折率プロファイルの役割を説明するものであり、次数は1である。減衰データは、fRIPが、ステップインデックス型屈折率プロファイルを有するシングルモードファイバに関しておよそ1.0であり、クラッドに屈折率抑制トレンチを含む屈折率プロファイルを有する曲げ不感シングルモードファイバに関して約0.5であることを示している。式8の他の3つの項は、ガラス、低弾性率内側コーティング、並びに低弾性率内側及び高弾性率コーティングを含む系の、マイクロベンド応答への寄与であり:
【0149】
【数20】
【0150】
によって与えられ、ここでRはガラスの半径(即ち外側クラッド領域の外半径)であり、Rは高弾性率外側コーティングの外半径であり、tは内側低弾性率コーティングの厚さであり、tは高弾性率外側コーティングの厚さであり、E、E及びEはそれぞれ、ガラス、低弾性率内側コーティング、及び高弾性率コーティングの弾性率である。弾性率及び半径の単位がそれぞれGPa及びマイクロメートルである場合、MAPの単位はdB/kmである。低弾性率内側コーティング係数fは、ばね定数のパラメータ化によって予測されるように、単に1/tにではなく(1/tに依存する。fcsコーティング系係数は、高弾性率コーティングが比較的厚い(tが約20マイクロメートル超である)場合(これは低いMAPに対応する)に非常に大きくなるため、比較的薄いコーティングを有するファイバの場合に重要である。しかしながらこれは、高弾性率コーティングの厚さtが約10マイクロメートル未満である場合に極めて小さくなり、0.01dB/km超のMAP値をもたらす。これは外側コーティングの剛性が低下した結果である。マイクロベンド減衰ペナルティが存在しない場合のファイバ減衰はおよそ0.19dB/kmであると想定されるため、コーティング済み光ファイバ系の正味の減衰は、0.19dB/kmにマイクロベンド減衰ペナルティを加えたものとなる。
【0151】
本発明者らは、コーティングが特定の厚さ未満である場合に、本明細書に記載されているようにマイクロベンド損失を低減できることを発見した。図11に示されているように、ポリマーコーティングの厚さを十分に削減すると、コーティング層内に反共振効果が生じ、光がコーティング層内でガイドされなくなる。この反共振効果はコーティング層による吸収を大幅に低減させるため、マイクロベンド損失が減少する。37マイクロメートルを超える従来のコーティングの厚さは、この反共振効果のためには大きすぎる。この反共振効果を生成するためには、ポリマーコーティングの合計厚さは、25マイクロメートル未満、より好ましくは20マイクロメートル未満、更に好ましくは10マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、ポリマーコーティングの合計厚さは、約2マイクロメートル~約25マイクロメートル、又は約2マイクロメートル~約20マイクロメートル、又は約2マイクロメートル~約15マイクロメートル、又は約2マイクロメートル~約10マイクロメートル、又は約2マイクロメートル~約5マイクロメートルである。
【0152】
本明細書中で使用される場合、用語「穿刺荷重(puncture load)」は、本明細書に記載のファイバのコーティングに衝突する力の量を指す。本明細書中で使用される場合、用語「耐穿刺性(puncture resistance)」は、穿刺荷重に対向するファイバコーティングからの力を指す。以下で更に説明されるように、穿刺荷重がコーティングの最大耐穿刺性を超えると、コーティングが裂けることになる。耐穿刺性に関しては、「Quantifying the Puncture Resistance of Optical Fiber Coatings」という記事(Proc. 52nd IWCS, pp. 237‐245 (1993))での、1つのタイプのコーティングを有するファイバに関するGlaesemann及びClarkによる分析によって、耐穿刺性が高弾性率コーティングの断面積Aに対する線形依存性を有することが示されている。この論文での分析は、耐穿刺性が高弾性率コーティングのフープ応力によるものであると仮定しており、著者らは高弾性率コーティングを、低弾性率内側コーティングからの内圧を受ける薄い円筒としてモデル化した。しかしながらほとんどの光ファイバでは、高弾性率コーティングの外半径rに対する高弾性率コーティングの厚さtの比率は10%のオーダーであるため、ファイバの低弾性率コーティングは、圧力Pが外側から作用して穿刺荷重を印加する、厚肉の円筒として近似できる。外圧が低弾性率内側コーティングからの内圧よりはるかに高い限界点において、最大フープ応力は:
【0153】
【数21】
【0154】
であり、ここでAは高弾性率コーティングの断面積である。このフープ応力はAに対して逆依存性を有することが観察され、耐穿刺性はP=P+Cであり、ここでEは高弾性率コーティングの弾性率であり、係数P及びCはそれぞれ約11.3g及び2.1g/MPa/mmの値を有する。
【0155】
コーティングの例‐調製及び測定技法
本明細書で開示される任意の低弾性率内側コーティング及び高弾性率コーティングの特性を、以下に記載の測定技法を用いて決定した。
【0156】
引張特性
硬化性高弾性率コーティング組成物を硬化させ、ヤング率、降伏時の引張強さ、降伏強さ、及び降伏時の伸びの測定のための硬化済みロッド試料の形状に構成した。上記硬化済みロッドは、硬化性高弾性率コーティング組成物を、内径約0.025インチ(0.635mm)のテフロン(登録商標)チューブに注入することによって調製した。ロッド試料を、線量約2.4J/cm(International Light製Light Bug model IL390によって、225~424nmの波長範囲にわたって測定)のFusion Dタイプバルブを用いて硬化させた。硬化後、テフロンチューブを剥ぎ取り、高弾性率コーティング組成物の硬化済みロッド試料を提供した。試験前に、硬化済みロッドを、23℃及び相対湿度50%の条件下に18~24時間置いた。ヤング率、破断時の引張強さ、降伏強さ、及び降伏時の伸びを、ゲージ長51mmの、欠陥のないロッド試料に対して、Sintech MTS Tensile Testerを用いて試験速度250mm/分で測定した。引張特性は、ASTM規格D882‐97に従って測定した。これらの特性は、少なくとも5つの試料の平均として決定され、欠陥を有する試料は平均から排除した。
【0157】
その場ガラス転移温度
その場T測定を、高弾性率コーティングに取り囲まれた低弾性率内側コーティングを有するファイバから得られたファイバチューブオフ試料に対して実施した。コーティング済みファイバは、直径125マイクロメートルのガラスファイバと、上記ガラスファイバを取り囲んで上記ガラスファイバと直接接触する厚さ32.5マイクロメートルの低弾性率内側コーティングと、上記ガラスファイバを取り囲んで上記ガラスファイバと直接接触する厚さ26.0マイクロメートルの高弾性率コーティングとを含んでいた。ガラスファイバ及び低弾性率内側コーティングは、測定した全ての試料について同一であった。低弾性率内側コーティングは、以下で説明する基準低弾性率内側コーティング組成物から形成された。比較例の高弾性率コーティング及び本開示による高弾性率コーティングを有する試料を測定した。
【0158】
ファイバチューブオフ試料を以下の手順を用いて得た:0.0055インチ(0.1397mm)Millerストリッパーを、コーティング済みファイバの端部からおよそ1インチ(2.54cm)下にクランプ留めした。このファイバの1インチ(2.54cm)の領域を液体窒素流中に落とし、液体窒素中で3秒間保持した。その後、コーティング済みファイバを液体窒素流から取り出し、迅速に剥離することでコーティングを除去した。ファイバの剥離済みの端部を、残留コーティングに関して検査した。残留コーティングがガラスファイバ上に残っている場合、試料を廃棄し、新たな試料を調製した。剥離プロセスの結果は、清浄なガラスファイバと、無傷の低弾性率内側コーティング及び高弾性率コーティングを含む、剥離されたコーティングの中空チューブとであった。上記中空チューブを、「チューブオフ試料(tube‐off sample)」と呼ぶ。ガラス、低弾性率内側コーティング、及び高弾性率コーティングの直径は、剥離されていないファイバの端面から測定した。
【0159】
チューブオフ試料のその場Tを、Rheometrics DMTA IV試験機器を試料ゲージ長9~10mmで使用することによって測定した。チューブオフ試料の幅、厚さ、及び長さを、試験機器の操作プログラムに入力した。チューブオフ試料を設置した後、およそ-85℃まで冷却した。安定した後、温度傾斜を、以下のパラメータを用いて実施した:
周波数:1Hz
歪み:0.3%
加熱速度:2℃/分
最終温度:150℃
初期静的力=20.0g
静的力は、動的力よりも10.0%だけ大きい
【0160】
コーティングのその場Tは、温度の関数としてのtanδのプロットにおけるtanδの最大値として定義され、ここでtanδは:
tanδ=E’’/E’
として定義され、E’’は損失弾性率であり、変形のサイクルにおける熱としてのエネルギの損失に比例し、またE’は貯蔵弾性率又は弾性率であり、変形のサイクルにおいて貯蔵されるエネルギに比例する。
【0161】
チューブオフ試料は、低弾性率内側コーティング及び高弾性率コーティングに関するtanδのプロットにおいて、明確な複数の最大値を示した。低温(約-50℃)における最大値は、低弾性率内側コーティングに関するその場Tに対応し、高温(50℃超)における最大値は、高弾性率コーティングに関するその場Tに対応する。
【0162】
低弾性率内側コーティングのその場弾性率
この任意のコーティング層を含む実施形態において、その場弾性率を、以下の手順を用いて測定した:6インチ(15.24cm)のファイバの試料を得て、このファイバの中央からの1インチ(2.54cm)のセクションをウィンドウストリッパで剥ぎ取り、イソプロピルアルコールで拭いた。ウィンドウストリッパで処理されたファイバを、ファイバの固定に使用される10mm×5mmの長方形アルミニウムタブを備えた試料ホルダ/整列用ステージ上に、設置した。2つのタブは水平に配向され、また5mmの短い方の片が互いに対面して、5mmの空隙によって隔てられるように、位置決めされた。ウィンドウストリッパで処理されたファイバを、試料ホルダ上に、両方のタブを横切って、タブを隔てる空隙にわたって水平に配置した。ファイバの、ウィンドウストリッパで処理された領域の片側のコーティング済み端部は、一方のタブ上に位置決めされ、タブの間の5mmの空隙内に半分ほど延在する。ウィンドウストリッパで処理された1インチ(2.54cm)の領域は、空隙の残りの半分にわたって、反対側のタブを横断して延在する。整列後、試料を除去し、各タブの、5mmの空隙に近い方の半分に、小さなドット状の接着剤を塗布した。その後、ファイバを所定の位置に戻し、接着剤がファイバに接触する瞬間まで、整列ステージを上昇させた。タブの間の5mmの空隙の大半が、ファイバの、ウィンドウストリッパで処理された領域によって占有されるように、コーティング済み端部を、接着剤を通過するように空隙から引き抜いた。ウィンドウストリッパで処理された領域の、反対側のタブ上に残っている一部分を、接着剤と接触させた。コーティング済みの端部のごく先端のみを、タブを越えてタブの間の空隙内へと延在したままとした。コーティング済みの端部のこの部分は、接着剤の中に埋め込まれず、その場弾性率の測定の対象となった。接着剤を、この構成のファイバ試料と共に乾燥させて、ファイバをタブに固定した。乾燥後、各タブに固定されたファイバの長さを5mmにトリミングした。接着剤中に埋め込まれたコーティング済みの長さ、埋め込まれていないコーティング済みの長さ(タブの間の空隙内へと延在している部分)、及び一次直径を測定した。
【0163】
その場弾性率の測定は、Rheometrics DMTA IV動的機械的試験装置上で、9e-6 1/sの定歪みで、45分にわたって室温(21℃)で実施した。ゲージ長は15mmであった。力及び長さの変化を記録し、これらを用いて、低弾性率コーティングのその場弾性率を計算した。クランプとファイバとが接触しないこと、及び試料がクランプにまっすぐに固定されることを保証するために、試験装置の15mmのクランプ留め長さと干渉するいずれのエポキシをタブから除去することによって、タブに設置された状態のファイバ試料を準備した。機器の力はゼロにした。ファイバのコーティングされていない端部が固定されたタブを、試験装置の下側のクランプ(測定プローブ)に設置し、ファイバのコーティング済み端部が固定された端部を、試験装置の上側の(固定された)クランプに設置する。続いて試験を実施し、分析が完了した後で試料を除去した。
【0164】
高弾性率コーティングのその場弾性率
高弾性率コーティングに関して、その場弾性率を、ファイバ試料から準備したファイバチューブオフ試料を用いて測定した。0.0055インチ(0.1397mm)Millerストリッパーを、ファイバ試料の端部からおよそ1インチ(2.54cm)下にクランプ留めした。このファイバ試料の1インチ(2.54cm)の領域を液体窒素流中に浸漬して3秒間保持した。続いてファイバ試料を取り出し、迅速に剥離した。次にファイバ試料の剥離済みの端部を検査した。コーティングがファイバ試料のガラス部分上に残っている場合、チューブオフ試料を、欠陥があるものとみなし、新たなチューブオフを調製した。適切なチューブオフ試料は、ガラスからきれいに剥ぎ取られた、低弾性率内側コーティング及び高弾性率コーティングを有する中空チューブからなるものである。ガラス、低弾性率内側コーティング、及び高弾性率コーティングの直径は、剥離されていないファイバ試料の端面から測定した。
【0165】
チューブオフ試料に対して、Rheometrics DMTA IV試験機器を試料ゲージ長11mmで使用して測定を実施し、高弾性率コーティングのその場弾性率を得た。幅、厚さ、及び長さを決定し、試験機器の操作ソフトウェアに入力として提供した。試料を設置し、以下のパラメータを用いて、周囲温度(21℃)において時間掃引プログラムを用いて測定を実施した:
周波数:1Rad/秒
歪み:0.3%
合計時間=120秒
測定あたりの時間=1秒
初期静的力=15.0g
静的力は、動的力よりも10.0%だけ大きい
完了後、最後の5つのE’(貯蔵弾性率)データ点を平均した。各試料に対して3回の測定を実施し(測定毎に新たな試料を使用)、合計15個のデータ点を得た。これら3回の測定の平均値を報告した。
【0166】
高弾性率コーティングの耐穿刺性
耐穿刺性の測定を、ガラスファイバ、及び高弾性率コーティングに取り囲まれた低弾性率内側コーティングを含む試料に対して実施した。ガラスファイバのクラッド直径は125マイクロメートルであった。低弾性率内側コーティングを、以下の表1に記載された基準低弾性率内側コーティング組成物から形成した。以下に記載されているように、様々な高弾性率コーティングを有する試料を調製した。低弾性率内側コーティング及び高弾性率コーティングの厚さを調整することによって、以下に記載されているように高弾性率コーティングの断面積を変化させた。低弾性率内側コーティングの厚さに対する高弾性率コーティングの厚さの比は、全ての試料について約0.8に維持した。
【0167】
耐穿刺性は、第52回International Wire & Cable Symposiumの会議録の237~245ページ(2003年)において公開された、G. Scott Glaesemann及びDonald A. Clarkによる文献「Quantifying the Puncture Resistance of Optical Fiber Coatings」(参照により本出願に援用される)に記載されている技法を用いて測定した。この方法の概要をここで提供する。この方法は、インデンテーション法である。長さ4cmの光ファイバを、厚さ3mmのガラススライド上に置いた。光ファイバの一方の端部を、光ファイバを制御下で回転させることができるデバイスに取り付けた。光ファイバを、透過について100倍の倍率で検査し、また光ファイバを、ガラススライドに対して平行な方向において高弾性率コーティングの厚さがガラスファイバの両側で等しくなるまで、回転させた。この位置では、高弾性率コーティングの厚さは、ガラススライドに対して平行な方向において、光ファイバの両側で等しかった。ガラススライドに対して垂直な方向における、ガラスファイバの上方又は下方の高弾性率コーティングの厚さは、ガラススライドに対して平行な方向における高弾性率コーティングの厚さとは異なっていた。ガラススライドに対して平行な方向における厚さに比べて、ガラススライドに対して垂直な方向における厚さのうちの一方は大きく、ガラススライドに対して垂直な方向における厚さのうちのもう一方は小さかった。光ファイバの両端をガラススライドにテープで貼り付けることによって、光ファイバのこの位置を固定した。この位置は、インデンテーション試験に使用される光ファイバの位置である。
【0168】
一般的な試験用機械(Instron model 5500R、又は同等のもの)を用いて、インデンテーションを実施した。倒立顕微鏡を、試験用機械のクロスヘッドの下に配置した。顕微鏡の対物レンズを、試験用機械内に設置されたビッカースダイヤモンドウェッジ圧子(夾角75°)の真下に位置決めした。ファイバがテープで貼り付けられたガラススライドを、顕微鏡のステージ上に置き、圧子のウェッジの幅が光ファイバの方向と直交するように、圧子の真下に位置決めした。光ファイバを所定の位置に置いたまま、ダイヤモンドウェッジを、高弾性率コーティングの表面に接触するまで下げた。次にダイヤモンドウェッジを、0.1mm/分の速度で高弾性率コーティングの中へと押し込み、高弾性率コーティングに対する荷重を測定した。高弾性率コーティングに対する荷重は、ダイヤモンドウェッジが高弾性率コーティングの中へと深く推押し込まれるにつれて、穿刺が発生するまで増大し、穿刺が発生した時点で、荷重の急激な低下が観察された。穿刺が観察されたインデンテーション荷重を記録した。これは本明細書では重量グラム(g)として報告され、また本明細書では「穿刺荷重(puncture load)」と呼ばれる。同一の配向の光ファイバを用いて実験を繰り返し、10個の測定点を得てこれらを平均し、この配向に関する穿刺荷重を決定した。10個の測定点の第2のセットを、光ファイバの配向を180°回転させて得た。
【0169】
マクロベンド損失
マクロベンド損失を、規格IEC 60793‐1‐47で指定されているマンドレルラップ試験を用いて決定した。マンドレルラップ試験では、ファイバを、指定された直径を有する円筒状のマンドレルの周りに1回以上巻き、曲げを原因とする、指定された波長における減衰の増大を決定する。マンドレルラップ試験での減衰は、dB/ターンを単位として表現され、1ターンは、マンドレルの周りでのファイバの1周を意味する。直径10mm、15mm、及び20mmのマンドレルを用いたマンドレルラップ試験で、以下に記載されている選択された実施例に関して、1310nm、1550nm、及び1625nmの波長におけるマクロベンド損失を決定した。
【0170】
高弾性率コーティングによって取り囲まれた低弾性率内側コーティングを有する光ファイバの例示的実施形態
任意の低弾性率内側コーティング56及び高弾性率コーティング58の具体的な特性を調整することにより、本明細書で開示される比較的小径のファイバに、十分な堅牢性及び良好なマイクロベンド性能を提供できる。例えば低弾性率内側コーティング56は、低いヤング率及び/又は低いその場弾性率を有してよい。低弾性率内側コーティングのヤング率は、約0.7MPa以下、又は約0.6MPa以下、又は約0.5MPa以下、又は約0.4MPa以下、又は約0.1MPa~約0.7MPa、又は約0.1MPa~約0.4MPaである。低弾性率内側コーティングのその場弾性率は、約0.50MPa以下、又は約0.30MPa以下、又は約0.25MPa以下、又は約0.20MPa以下、又は約0.15MPa以下、又は約0.10MPa以下、又は約0.05MPa~約0.25MPa、又は約0.10MPa~約0.20MPaである。
【0171】
低弾性率内側コーティング56は好ましくは、ガラスファイバのクラッド領域50より高い屈折率を有し、これにより低弾性率内側コーティング56はコア領域48から不規則な光信号を除去できる。低弾性率内側コーティング56は、熱及び加水分解による経年劣化の間、ガラスファイバへの十分な接着を維持する必要があるが、スプライシングのためにガラスファイバから剥離可能なものである必要もある。
【0172】
光ファイバの直径をより小さくするのを容易にするために、低弾性率内側コーティングは存在しなくてもよく、又は従来の光ファイバで使用される低弾性率内側コーティングよりも厚さが小さくてよい。高弾性率コーティング58は、従来の光ファイバに比べて小さな厚さ及び小さな断面積を有してよい。しかしながら、高弾性率コーティング58は、海底ケーブル及び中継器の高い信頼性のために必要な、要求される堅牢性及び耐穿刺性を、依然として維持している必要がある。高弾性率コーティングの厚さが減少するほど、高弾性率コーティングの保護機能は低下する。耐穿刺性は、高弾性率コーティング及び任意の着色済み外側コーティングを含む、外側コーティングの断面積の保護機能の尺度である。耐穿刺性が高い高弾性率コーティングほど、破損せずに高い摩耗圧力に耐え、より良好な保護をガラスファイバに提供する。
【0173】
要求される堅牢性及び耐穿刺性を提供するためには、高弾性率コーティング58のその場弾性率は、約1500MPa超、又は約1600MPa超、又は約1800MPa超、又は約2200MPa超、又は約2500MPa超、又は約2600MPa超、又は約2700MPa超、又は約1500MPa~約3000MPa、又は約1800MPa~約2800MPa、又は約2000MPa~約2800MPa、又は約2400MPa~約2800MPaであってよい。
【0174】
要求される堅牢性及び耐穿刺性を更に提供するためには、高弾性率コーティング58の断面積とその場弾性率との積は、約10N超、約12.5N超、約15N超、約20N超、約25N超、約30N超、又は約10N~30N、又は約15N~約30N、又は約20N~約30N、又は約25N~約30Nであってよい。
【0175】
低く良好なマイクロベンド性能と耐穿刺性との、要求される組み合わせを提供するためには、低弾性率コーティング56のその場弾性率に対する高弾性率コーティング58のその場弾性率の比率は、約4000超、又は約5000超、又は約6000超、又は約7000超、又は約8000超、又は約9000超、又は約10,000超、又は約4000~約10,000、又は約4000~約10,000、又は約5000~約10,000、又は約6000~約10,000、又は約7000~約10,000、又は約8000~約10,000であってよい。
【0176】
低弾性率及び高弾性率コーティングは典型的には、ガラスファイバに硬化性コーティング組成物を粘性液体として塗布し、硬化させることによって形成される。光ファイバは、高弾性率コーティングを取り囲む着色済み外側コーティングを含んでもよい。着色済み外側コーティングは、識別を目的として光ファイバをマーキングするための着色剤を含んでよく、典型的には高弾性率コーティングのヤング率と同等のヤング率を有する。
【0177】
高弾性率コーティング58は、三官能性モノマーで構成されていてよい。高弾性率コーティング58のガラス転移温度(Tg)は、約50℃超、又は約60℃超、又は約70℃超、又は約80℃超、又は約90℃超、又は約100℃超であってよい。
【0178】
好適な低弾性率内側コーティング56及び高弾性率コーティング58を使用することにより、高弾性率コーティングの断面積が約10,000マイクロメートル未満である場合に、光ファイバ46の耐穿刺性を約28g以上、又は約30g以上、又は約32g以上、又は約34g以上、又は約36g以上、又は約38g以上、又は約40g以上とすることができる。
【0179】
好適な低弾性率内側コーティング56及び高弾性率コーティング58を使用することにより、高弾性率コーティングの断面積が約8,000マイクロメートル未満である場合に、光ファイバ46の耐穿刺性を約22g以上、又は約24g以上、又は約26g以上、又は約28g以上、又は約30g以上とすることができる。
【0180】
図19は、ステップインデックス型プロファイル及びトレンチ型プロファイル、100マイクロメートルのクラッド直径、弾性率1200MPa及び外半径82.5マイクロメートルの高弾性率コーティング、並びに弾性率0.5MPaの低弾性率内側コーティングを有するファイバの、低弾性率内側コーティングの厚さに対するマイクロベンド減衰ペナルティ(MAP)を示す。図19及び表7aに示されているように、0.1dB/km未満のMAPは、ファイバがトレンチ型プロファイルを有し、クラッド直径が約100マイクロメートルであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約10マイクロメートル~約26マイクロメートルである場合に達成できる。ステップインデックス型及びトレンチ型プロファイル、125マイクロメートルのクラッド直径、弾性率1200MPa及び外半径82.5マイクロメートルの高弾性率コーティング、並びに弾性率0.5MPaの低弾性率内側コーティングを有するファイバに対しても、計算を実施した。表7bに示されているように、0.1dB/km未満のMAPは、ファイバがトレンチ型プロファイルを有し、クラッド直径が約125マイクロメートルであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約8マイクロメートル~約17マイクロメートルである場合に達成できる。
【0181】
【表7a】
【0182】
【表7b】
【0183】
図20は、(例えば上の表2に示されているような)トレンチ型ファイバプロファイル、100マイクロメートルのクラッド直径、弾性率0.5MPaの低弾性率内側コーティング、並びに弾性率1.2、1.6及び2.0GPaの高弾性率コーティングを有するファイバの、低弾性率内側コーティングの厚さに対するMAPを示す。図20及び表8aに示されているように、0.1dB/km未満のMAPは、高弾性率コーティングの弾性率が1.6GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約8~約29マイクロメートルである場合に達成できる。0.05dB/km未満のMAPは、高弾性率コーティングの弾性率が1.6GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約13~約24マイクロメートルである場合に達成できる。0.1dB/km未満のMAPは、高弾性率コーティングの弾性率が2.0GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約7~約30マイクロメートルである場合に達成できる。0.05dB/km未満のMAPは、高弾性率コーティングの弾性率が2.0GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約11~約26マイクロメートルである場合に達成できる。トレンチ型プロファイル、125マイクロメートルのクラッド直径、弾性率0.5MPaの低弾性率内側コーティング、並びに弾性率1.2、1.6及び2.0GPaの高弾性率コーティングを有するファイバに対しても、計算を実施した。表8bに示されているように、0.1dB/km未満のMAPは、高弾性率コーティングの弾性率が1.6GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約6~約18マイクロメートルである場合に達成できる。0.06dB/km未満のMAPは、高弾性率コーティングの弾性率が1.6GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約10~約14マイクロメートルである場合に達成できる。0.1dB/km未満のMAPは、高弾性率コーティングの弾性率が2.0GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約6~約18マイクロメートルである場合に達成できる。0.05dB/km未満のMAPは、高弾性率コーティングの弾性率が2.0GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約10~約14マイクロメートルである場合に達成できる。
【0184】
【表8a】
【0185】
【表8b】
【0186】
図21は、(例えば上の表2に示されているような)トレンチ型プロファイル、100マイクロメートルのクラッド直径、弾性率0.5MPaの低弾性率内側コーティング、並びに弾性率1.2、1.6及び2.0GPaの高弾性率コーティングを有するファイバの、低弾性率内側コーティングの厚さに対する耐穿刺性を示す。図21及び表9aに示されているように、30g超の耐穿刺性は、高弾性率コーティングの弾性率が1.6GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約14マイクロメートル未満である場合に達成できる。35g超の耐穿刺性は、高弾性率コーティングの弾性率が1.6GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約8マイクロメートル未満である場合に達成できる。30g超の耐穿刺性は、高弾性率コーティングの弾性率が2.0GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約18マイクロメートル未満である場合に達成できる。35g超の耐穿刺性は、高弾性率コーティングの弾性率が2.0GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約14マイクロメートル未満である場合に達成できる。40g超の耐穿刺性は、高弾性率コーティングの弾性率が2.0GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約9マイクロメートル未満である場合に達成できる。トレンチ型プロファイル、125マイクロメートルのクラッド直径、弾性率0.5MPaの低弾性率内側コーティング、並びに弾性率1.2、1.6及び2.0GPaの高弾性率コーティングを有するファイバに対しても、計算を実施した。表9bに示されているように、20g超の耐穿刺性は、高弾性率コーティングの弾性率が1.6GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約12マイクロメートル未満である場合に達成できる。25g超の耐穿刺性は、高弾性率コーティングの弾性率が1.6GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約7マイクロメートル未満である場合に達成できる。20g超の耐穿刺性は、高弾性率コーティングの弾性率が2.0GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約13マイクロメートル未満である場合に達成できる。25g超の耐穿刺性は、高弾性率コーティングの弾性率が2.0GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約9マイクロメートル未満である場合に達成できる。30g超の耐穿刺性は、高弾性率コーティングの弾性率が2.0GPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約6マイクロメートル以下である場合に達成できる。
【0187】
【表9a】
【0188】
【表9b】
【0189】
図22は、(例えば上の表2に示されているような)トレンチ型ファイバプロファイル、100マイクロメートルのクラッド直径、弾性率1.6GPaの高弾性率コーティング、並びに弾性率0.5、0.35及び0.2MPaの低弾性率内側コーティングを有するファイバの、低弾性率コーティングの厚さに対するMAPを示す。図22及び表10aに示されているように、0.05dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.35MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約8~約29マイクロメートルである場合に達成できる。0.02dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.35MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約16~約21マイクロメートルである場合に達成できる。0.05dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約4~約31マイクロメートルである場合に達成できる。0.02dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約7~約29マイクロメートルである場合に達成できる。0.01dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約11~約25マイクロメートルである場合に達成できる。0.007dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約16~約21マイクロメートルである場合に達成できる。トレンチ型ファイバプロファイル、125マイクロメートルのクラッド直径、弾性率1.6GPaの高弾性率コーティング、並びに弾性率0.5、0.35及び0.2MPaの低弾性率内側コーティングを有するファイバに対しても、計算を実施した。表10bに示されているように、0.05dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.35MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約6~約18マイクロメートルである場合に達成できる。0.03dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.35MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約10~約14マイクロメートルである場合に達成できる。0.03dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約4~約19マイクロメートルである場合に達成できる。0.02dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約6~約17マイクロメートルである場合に達成できる。0.01dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約10~約13マイクロメートルである場合に達成できる。
【0190】
【表10a】
【0191】
【表10b】
【0192】
表11aは、(例えば上の表2に示されているような)トレンチ型ファイバプロファイル、100マイクロメートルのクラッド直径、弾性率2.0GPaの高弾性率コーティング、並びに弾性率0.35、0.2及び0.1MPaの低弾性率内側コーティングを有するファイバの、低弾性率内側コーティングの厚さに対するMAPを示す。表11aに示されているように、0.02dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.35MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約6~約30マイクロメートルである場合に達成できる。0.02dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.35MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約13~約23マイクロメートルである場合に達成できる。0.02dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約6~約30マイクロメートルである場合に達成できる。0.01dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約9~約27マイクロメートルである場合に達成できる。0.005dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約14~約22マイクロメートルである場合に達成できる。0.005dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.1MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約6~約29マイクロメートルである場合に達成できる。0.002dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.1MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約13~約23マイクロメートルである場合に達成できる。トレンチ型ファイバプロファイル、125マイクロメートルのクラッド直径、弾性率2.0GPaの高弾性率コーティング、並びに弾性率0.35、0.2及び0.1MPaの低弾性率内側コーティングを有するファイバに対しても、計算を実施した。表11bに示されているように、0.03dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.35MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約5~約12マイクロメートルである場合に達成できる。0.02dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約5~約18マイクロメートルである場合に達成できる。0.01dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.2MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約8~約14マイクロメートルである場合に達成できる。0.005dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.1MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約5~約18マイクロメートルである場合に達成できる。0.01dB/km未満のMAPは、低弾性率内側コーティングの弾性率が0.1MPaであり、低弾性率内側コーティングの厚さが約8~約14マイクロメートルである場合に達成できる。
【0193】
【表11a】
【0194】
【表11b】
【0195】
図19~23及び表7~11で与えられている計算されたMAP及び耐穿刺性の結果を併せることにより、低弾性率一次コーティングの最大弾性率(Ep)、高弾性率コーティングの最小弾性率(Es)、ガラス半径(Rg)、及び高弾性率コーティングの半径(R)の入力値に対して最大のMAP及び最小の耐穿刺性をもたらす、低弾性率内側コーティング及び高弾性率コーティングの最小厚さを提供できる。表12aは、クラッド直径が100マイクロメートルであり、Es=1.6GPaである実施例1~4のコーティング特性をまとめたものである。表12b及び12cは、クラッド直径が100マイクロメートルであり、Es=2.0GPaである実施例5~14のコーティング特性をまとめたものである。表12d及び12eは、クラッド直径が100マイクロメートルである実施例15~21のコーティング特性をまとめたものである。
【0196】
【表12a】
【0197】
【表12b】
【0198】
【表12c】
【0199】
【表12d】
【0200】
【表12e】
【0201】
直径が削減された例示的実施形態
上述のように、本明細書で開示される実施形態の光ファイバのガラス直径は約125マイクロメートルであってよく、削減されたコーティングの外径は、約175マイクロメートル以下、又は約170マイクロメートル以下、又は約165マイクロメートル以下、又は約160マイクロメートル以下、又は約145マイクロメートル以下であってよい。クラッド領域50の外径は光ファイバ46のガラス直径であること、高弾性率コーティング58の外径は(着色済み外側コーティング層が適用されていない場合)光ファイバ46全体の外径であることに留意されたい。
【0202】
いくつかの例では、クラッド領域50の外径が約125マイクロメートルであるか、高弾性率コーティング58の外径が約155~175マイクロメートルであるか、又はクラッド領域50の外径が約125マイクロメートルであり、かつ高弾性率コーティング58の外径が約160~170マイクロメートルである。
【0203】
上述のように、本明細書で開示される実施形態の光ファイバのガラス直径は約100マイクロメートルであってもよく、削減されたコーティングの外径は、約175マイクロメートル以下、又は約170マイクロメートル以下、又は約165マイクロメートル以下、又は約160マイクロメートル以下、又は約145マイクロメートル以下であってよい。クラッド領域50の外径は光ファイバ46のガラス直径であること、高弾性率コーティング58の外径は(着色済み外側コーティング層が適用されていない場合)光ファイバ46全体の外径であることに留意されたい。
【0204】
いくつかの例では、クラッド領域50の外径が約100マイクロメートルであるか、高弾性率コーティング58の外径が約155~175マイクロメートルであるか、又はクラッド領域50の外径が約100マイクロメートルであり、かつ高弾性率コーティング58の外径 が約160~170マイクロメートルである。
【0205】
上述のように、本開示の、直径が削減された光ファイバプロファイル設計は、例えば海底ケーブル及び中継器のファイバ数の増大といった、特定の利点を提供する。しかしながら、光ファイバのクラッド直径を削減すると、クラッドのプロファイルが削減されるため、一部の光がクラッドから漏れる場合がある。よって本開示のオフセットトレンチ設計は、直径が削減されたクラッドを通した光の漏れによって引き起こされる「トンネリング(tunneling)」又は「放射(radiation)」損失を有利に低減するために、約30%Δ‐マイクロメートル以上のトレンチ容積を有する。
【0206】
光ファイバの直径の減少を促進するために、低弾性率内側コーティングの厚さr-rを最小限に抑えること、又はこれを完全に除去することが好ましい。低弾性率コーティングの厚さr-rは、約8.0マイクロメートル以下、又は約7.0マイクロメートル以下、又は約6.0マイクロメートル以下、又は約5.0マイクロメートル以下、又は約4.0マイクロメートル~約8.0マイクロメートル、又は約5.0マイクロメートル~約7.0マイクロメートルである。しかしながら、光ファイバの低弾性率内側コーティングの除去又は厚さの削減は、マイクロベンドへの感受性を上昇させる。このように上昇した感受性は、本開示の設計では、約30%Δ‐マイクロメートル超の容積を有するオフセットトレンチの追加によって軽減される。
【0207】
高弾性率コーティングの半径rは、約87.5マイクロメートル以下、又は約85.0マイクロメートル以下、又は約82.5マイクロメートル以下、又は約80.0マイクロメートル以下である。また、ファイバの直径の削減と、高い耐穿刺性のために十分に大きな断面積を有することとのバランスを取るために、高弾性率コーティングの厚さr-rを最適化することが好ましい。高弾性率コーティングの厚さr-rは、約25.0マイクロメートル以下、又は約20.0マイクロメートル以下、又は約15.0マイクロメートル以下、又は約15.0マイクロメートル~約25.0マイクロメートル、又は約17.5マイクロメートル~約22.5マイクロメートル、又は約18.0マイクロメートル~約22.0マイクロメートルである。低弾性率コーティング及び高弾性率コーティングの合計厚さは、約25マイクロメートル以下、好ましくは約20マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態では、低弾性率コーティング及び高弾性率コーティングの合計厚さは、約10マイクロメートル~約25マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、高弾性率コーティング層の厚さに対する低弾性率コーティング層の厚さの比率は、0.8~1.2である。
【0208】
従って、本開示の実施形態による光ファイバは、従来の光ファイバに比べてコーティング直径が削減されている。このようなサイズの削減は、例えば海底中継器又はケーブル内の「ファイバ数」及びファイバ密度を増大させるのに役立つ。
【0209】
以下の表10は、5つの高弾性率コーティング試料に関する平均コーティング厚さを示す。実施例3、4、及び5と比較される実施例1及び2は、8.0マイクロメートル~20.0マイクロメートルの平均高弾性率コーティング厚さが、この範囲未満の平均厚さよりも高い引張強度を生成したことを示す。実施例1及び2が示した比較的高い引張強度により、海底ケーブル及び中継器に使用される光ファイバ等の光ファイバに、より薄い高弾性率コーティングを使用できる。
【0210】
【表13】
【0211】
例示的な低弾性率及び高弾性率コーティング
例示的な低弾性率及び高弾性率コーティングについて、上記コーティングの強度及び耐穿刺性の測定値と併せて以下に説明する。
【0212】
低弾性率コーティング‐組成物
低弾性率コーティング組成物は、以下の表11に記載の配合を有し、また市販の低弾性率コーティング組成物の典型である。
【0213】
【表14】
【0214】
ここで:オリゴマー材料は、モル比n:m:p=3.5:3.0:2.0を用いて、H12MDI、HEA、及びPPG4000から、本明細書に記載されているように調製され;SR504は、エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート(Sartomer製)であり;NVCは、N‐ビニルカプロラクタム(Aldrich製)であり;TPO(光開始剤)は、(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐ジフェニルホスフィンオキシド(BASF製)であり;Irganox 1035(抗酸化剤)は、ベンゼンプロパン酸、3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシチオジ‐2,1‐エタンジイルエステル(BASF製)であり;3‐アクリロキシプロピルトリメトキシシランは、接着促進剤(Gelest製)であり;ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトプロピオネート)(テトラチオールとしても公知、Aldrich製)は、連鎖移動剤である。濃度の単位「pph」は、モノマー、オリゴマー、及び光開始剤の全てを含むベース組成物に対する量を表す。例えば、Irganox 1035に関する1.0pphの濃度は、オリゴマー材料、SR504、NVC、及びTPOの組み合わせ100gに対する、1gのIrganox 1035に相当する。
【0215】
H12MDI(4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート))、ジブチルスズジラウレート、及び2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4メチルフェノールを、500mLフラスコ内で室温で混合することによって、オリゴマー材料を調製した。500mLフラスコは、温度計、CaCl乾燥管、及び撹拌装置を備えていた。フラスコの内容物を連続的に撹拌しながら、添加用ろうとを用いて、PPG4000を30~40分の期間にわたって添加した。PPG4000を添加する際に、反応混合物の内部温度を監視し、PPG4000の導入を制御して、(この反応の発熱性に起因する)過剰な発熱を防止した。PPG4000の添加後、反応混合物を、約70℃~75℃の油浴中で、約1~1.5時間加熱した。未反応のイソシアネート基の濃度を決定することによって反応の進行を監視するための、赤外線分光分析(infrared spectroscopy:FTIR)による分析のために、反応混合物の試料を様々な間隔で採取した。未反応のイソシアネート基の濃度は、2265cm-1付近の特徴的なイソシアネート伸縮モードの強度に基づいて評価した。フラスコを油浴から取り出し、その内容物を65℃未満まで冷却した。イソシアネート基の完全なクエンチを保証するために、補助的なHEAを添加した。補助的なHEAは、添加用漏斗を用いて2~5分間にわたって滴下された。補助的なHEAの添加後、フラスコを油浴に戻し、その内容物を、約70℃~75℃まで、約1~1.5時間再び加熱した。FTIR分析を反応混合物に対して実施して、イソシアネート基の存在を評価し、未反応のイソシアネート基を完全に反応させるために十分な、補助的なHEAが添加されるまで、このプロセスを繰り返した。評価可能なイソシアネート伸縮強度がFTIR測定において検出されない場合に、この反応は完了したとみなした。
【0216】
高弾性率コーティング‐組成物
4つの高弾性率コーティング組成物(A、SB、SC、及びSD)を、表12に記載する。
【0217】
【表15】
【0218】
PE210はビスフェノール‐Aエポキシジアクリレート(Miwon Specialty Chemical(韓国)製)であり;M240はエトキシ化(4)ビスフェノール‐Aジアクリレート(Miwon Specialty Chemical(韓国)製)であり;M2300はエトキシ化(30)ビスフェノール‐Aジアクリレート(Miwon Specialty Chemical(韓国)製)であり;M3130はエトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(Miwon Specialty Chemical(韓国)製)であり;TPO(光開始剤)は(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(BASF製)であり;Irgacure 184(光開始剤)は1‐ヒドロキシシクロヘキシル‐フェニルケトン(BASF製)であり;Irganox 1035(抗酸化剤)はベンゼンプロパン酸、3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシチオジ‐2,1‐エタンジイルエステル(BASF製)である。DC190(スリップ剤)は、シリコーン‐エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー(Dow Chemical製)である。濃度の単位「pph」は、モノマー、オリゴマー、及び光開始剤の全てを含むベース組成物に対する量を表す。例えば高弾性率コーティング組成物Aについて、DC‐190に関する1.0pphの濃度は、PE210、M240、M2300、TPO、及びIrgacure 184の組み合わせ100gに対する、1gのDC‐190に相当する。
【0219】
高弾性率コーティング‐引張特性
高弾性率コーティング組成物A、SB、SC、及びSDから作製された高弾性率コーティングの、ヤング率、降伏時の引張強さ、降伏強さ、及び降伏時の伸びを、上述の技法を用いて測定した。結果を表13にまとめる。
【0220】
【表16】
【0221】
結果は、組成物SB、SC、及びSDから調製された高弾性率コーティングが、比較例の組成物Aから調製された高弾性率コーティングに比べて、高いヤング率及び高い降伏強さを示したことを示している。更に、組成物SB、SC、及びSDから調製された高弾性率コーティングは、組成物Aから調製された高弾性率コーティングに比べて、高い破壊靭性を示した。組成物SB、SC、及びSDが示したこれらの高い値により、性能を犠牲にすることなく、より薄い高弾性率コーティングを光ファイバに使用できる。上述のように、高弾性率コーティングが薄くなると、光ファイバの全体的な直径が削減され、(海底中継器内等の)ある所与の断面積内のファイバの数が増大する。
【0222】
例示的な光ファイバの実施形態
本明細書で開示される実験例及び原理は、光ファイバの屈折率プロファイル及びコーティング特性を調整することによって、直径が削減された光ファイバにおいて十分に低い減衰特性及び十分に高い耐穿刺特性を達成できることを示している。より具体的には、高弾性率コーティングは、断面積が小さいにもかかわらず、直径が削減されたファイバに十分な耐穿刺性を提供する。
【0223】
図8は、高弾性率コーティングの断面積に対する穿刺荷重(g)の依存度のプロットである。破線は0.00263g/マイクロメートルの勾配を有し、その場弾性率が約1500GPaの高弾性率コーティングを有する比較例のファイバに対応する。実線は、その場弾性率が約1850GPaの高弾性率コーティングを有する5つのファイバに関する測定データへの直線当てはめである。勾配は0.00328g/マイクロメートルであり、これは、基準ファイバの勾配にその場弾性率の比率1850/1500を乗算したものに略等しい。点線は、その場弾性率が2200GPaの高弾性率コーティングの断面積に対する穿刺荷重(g)のモデル化された依存度を表す。これらの結果は、高弾性率コーティングのその場弾性率を上昇させることにより、比較的小径のファイバの耐穿刺性を大幅に低下させることなく、断面積及び厚さを削減できることを示している。
【0224】
ファイバドロープロセス
本明細書で開示される光ファイバは、連続光ファイバ製造プロセスで形成でき、上記プロセス中には、加熱されたプリフォームからガラスファイバをドロー加工して、目標の直径へとサイズ調整する。低弾性率内側コーティングを備えるファイバでは、これに続いてガラスファイバを冷却して、液体の低弾性率コーティング組成物をガラスファイバに塗布するコーティングシステムへと向かわせる。液体の低弾性率コーティング組成物をガラスファイバに塗布した後、2つのプロセス選択肢が実行可能である。第1のプロセス選択肢(ウェット・オン・ドライプロセス)では、液体の低弾性率コーティング組成物を硬化させて固化済み低弾性率コーティングを形成し、硬化した低弾性率コーティングに液体の高弾性率コーティング組成物を塗布し、液体の高弾性率コーティング組成物を硬化させて、固化済み高弾性率コーティングを形成する。第2のプロセス選択肢(ウェット・オン・ウェットプロセス)では、液体の高弾性率コーティング組成物を液体の低弾性率コーティング組成物に塗布し、両方の液体コーティング組成物を同時に硬化させて、固化済み低弾性率コーティング及び固化済み高弾性率コーティングを提供する。ファイバがコーティングシステムを出た後、ファイバを回収し、室温で保管する。ファイバの回収は典型的には、ファイバをスプールに巻き付けて、このスプールを保管することを伴う。
【0225】
一部のプロセスでは、コーティングは更に、着色済み外側コーティング組成物を高弾性率コーティングに塗布し、着色済み外側コーティング組成物を硬化させて、固化済み着色済み外側コーティングを形成する。典型的には、着色済み外側コーティングは、識別を目的としてファイバにマーキングするために使用されるインク層であり、顔料を含むがそれ以外は高弾性率コーティングと同様の組成を有する。着色済み外側コーティングを高弾性率コーティングに塗布して硬化させる。高弾性率コーティングは典型的には、着色済み外側コーティングの塗布の時点で硬化している。低弾性率、高弾性率、及び着色済み外側コーティング組成物は、共通の連続製造プロセスで塗布して硬化させることができる。あるいは、低弾性率及び高弾性率コーティング組成物を、共通の連続製造プロセスで塗布して硬化させ、コーティング済みのファイバを回収し、別個のオフラインプロセスで着色済み外側コーティング組成物を塗布して硬化させることにより、着色済み外側コーティングを形成する。
【0226】
コーティングの塗布、コーティング材料の粘度、及びコーティングダイのサイズ
いくつかの実施形態では、線引き炉内でプリフォームからドロー加工された光ファイバをコーティング系に通し、このコーティング系において、ポリマーコーティングが上記光ファイバに適用される。上記コーティング系は、入口及びサイジングダイを備えてよい。入口とサイジングダイとの間にはコーティングチャンバが配置される。コーティングチャンバには液体形態のポリマーコーティング材料が充填される。光ファイバは入口を通ってコーティング系に入り、コーティングチャンバを通過し、このコーティングチャンバにおいて、ポリマーコーティング材料が光ファイバの表面に塗布される。続いて光ファイバはサイジングダイを通過し、このサイジングダイでは、光ファイバがコーティング系を出る際にいずれの余剰のコーティング材料が除去され、これにより、本明細書に記載のいくつかの実施形態による、指定された直径のコーティング済み光ファイバが得られる。
【0227】
図12は、所与の一定のドロー速度(この場合60m/分)での、コーティング厚さに対するコーティング材料の粘度及びダイのサイズの影響を示す。図12に示されているように、コーティングの厚さは主にサイジングダイの直径に影響されるが、コーティング材料の粘度はわずかな影響しか及ぼさない。例えば、コーティング済みファイバの直径は、サイジングダイが5.1ミル(129.54μm)から8.0ミル(203.2μm)に変化すると127μmから169μmに変動するが、コーティングの厚さは、ある特定のダイのサイズを仮定した場合に、幅広い粘度のコーティング材料によってわずかしか変動しない。いくつかの実施形態では、コーティング材料の粘度は、50rpm及び25℃において20ポアズ超、又は50rpm及び25℃において40ポアズ超である。
【0228】
図13は、ガラスの直径が125マイクロメートルの光ファイバ上に132±1μmという目標最終コーティング済み直径を形成するための、例示的なパラメータウインドウを示す。図13に示されているように、サイジングダイは5.35ミル(135.89μm)~5.51ミル(140μm)の範囲内で特定されるが、コーティング材料の粘度はこのパラメータウインドウ内で広い範囲にわたることができる。従って、コーティング材料の粘度は最終的なコーティングの厚さにわずかな影響しか及ぼさないものの、有効な大きさは、ダイのサイズが異なる複数のシステムについて異なる。図14は、ダイのサイズが異なる複数のシステムで様々なコーティング材料の粘度から得られた、コーティングの厚さの標準偏差である。図14は、上記標準偏差がダイのサイズの増大と共にわずかに上昇し、ダイのサイズが7ミルより大きい場合に劇的に上昇することを示している。図15は、本開示のいくつかの実施形態による、コーティングの厚さに対するドロー速度の影響を示す。図15に見られるように、ファイバのドロー速度は、コーティングの厚さに対して限定的な影響しか及ぼさない。
【0229】
コーティングの同心度に関して、コーティングダイ内の潤滑圧力は、光ファイバをコーティング塗布器内で確実にセンタリングするためのセンタリング力として作用すると想定される。潤滑圧力が高いほどセンタリング力が強く、より良好なコーティングの同心度が得られることになる。図16は、一連のコーティング材料の粘度について、潤滑圧力とダイのサイズとの間の相関をプロットしたグラフを示す。図16は、潤滑圧力が、ダイのサイズの増大と共に低下し、コーティング材料の粘度の上昇と共に上昇することを示す。更に図17は、潤滑圧力とドロー速度との間の相関を示す。図17に示されているように、潤滑圧力は最初に劇的に上昇し、その後、ドロー速度の上昇と共にゆっくりとしたペースで上昇する。従って、上述のコーティングの厚さに対する粘度の影響と併せると、所与のダイのサイズで、ドロー速度を上昇させ、より高い粘度の材料を使用することにより、コーティングの厚さの品質を劣化させることなく、コーティングの同心度を改善できる。
【0230】
薄いコーティングを有する光ファイバに関する性能データ
薄いコーティングを有するこれらの光ファイバの重要な性能測定基準としては、これら全体の外径、ポリマーコーティングの厚さ、50kpsiの強度スクリーニングにおける単位長あたりの破断数、及び50kpsiのスクリーニング後に保持された最長の長さが挙げられる。高弾性率コーティング層を、コーティングの合計厚さが約7μmの125μmシングルモードファイバ(SMF)ファイバに適用した(表15のリールID121‐6599‐3及びリールID122‐6645‐4を参照)。スクリーニングの力が小さいほど、破損していないファイバのセグメントが長くなる。高弾性率コーティング済みファイバ(リールID121‐6599‐3)は、新しい高弾性率コーティング済みファイバ(リールID122‐6645‐4)のファイバ強度と同等のファイバ強度を有する。本発明者らは、新しい高弾性率コーティング済みファイバを用いた、薄型のアクリレート硬質ファイバコーティングの同心度が、約70%超、いくつかの実施形態では約80%超、又は約85%超、又は約90%超、又は約95%であることを発見した。
【0231】
【表17】
【0232】
コーティングの合計厚さが約7μmとなるようにエージング済み125μmSMFファイバに適用した薄型のアクリレートコーティング(表16のリールID121‐6602‐10及びリールID121‐6602‐12を参照)に比べて、リールID121‐6599‐3に示されている新しい高弾性率コーティング済みファイバは、保持された最長の長さ(m)、及び薄型コーティング済みファイバを50kpsiの力においてスクリーニングした場合にスクリーニングされた薄型コーティング済みファイバのメートル数/(破断数+1)の比の両方について、はるかに高い数字を示した。これら3つのファイバの破断は、ファイバのスクリーニング長さ全体にわたってかなり均一に分布している。これは、古い高弾性率コーティング済みファイバが保管中に部分的に劣化した可能性が極めて高いことを示している。それでもなお、これら3つの薄型アクリレートコーティング済みファイバは全て、良好な同心度(即ち70%超)を有している。
【0233】
【表18】
【0234】
新しい高弾性率コーティング層の薄型アクリレートコーティングを、コーティングの合計厚さが15μmの125μmSMFファイバに適用した(表15のリールID121‐6599‐4及びリールID122‐6645‐3を参照)。新しい高弾性率コーティング層を用いて、コーティングの厚さを、リールID121‐6599‐3の7μmからリールID121‐6599‐4の15μmに増大させることにより、薄型コーティング済みファイバは、保持された最長の長さ(m)、及び薄型コーティング済みファイバを50kpsiにおいてスクリーニングした場合にスクリーニングされた薄型コーティング済みファイバのメートル数/(破断数+1)の比の両方の大幅な増大によって示されるように、大幅に強化される。新しい高弾性率コーティング層を用いて、コーティングの厚さを、リールID122‐6645‐4の7μmからリールID122‐6645‐3の15μmに増大させることにより、薄型コーティング済みファイバは、保持された最長の長さ(m)、及び薄型コーティング済みファイバを50kpsiの力においてスクリーニングした場合にスクリーニングされた薄型コーティング済みファイバのメートル数/(破断数+1)の比の両方の大幅な増大によって示されるように、大幅に強化される。更に、薄型アクリレート硬質ファイバコーティングは、良好な同心度(即ち70%超)を有している。コーティングの合計厚さが15μmの、これらの薄型アクリレートコーティング済みファイバ(表15のリールID121‐6599‐4及びリールID122‐6645‐3)は、リボンケーブルプロセスに耐えるために十分な強度を有する。
【0235】
新しい低弾性率コーティング層及び新しい高弾性率コーティング層の、薄型2層アクリレートファイバコーティングのドロー加工も実施した(表16のリールID121‐6599‐5を参照)。低弾性率コーティング層の厚さは9μmであり、高弾性率コーティング層の厚さは8μmである。低弾性率コーティング層の厚さと高弾性率コーティング層の厚さとを足した合計厚さは、17μmである。薄型アクリレートコーティングの実行はなめらかであり、ファイバ上のコーティングには欠陥がない。この薄型コーティング済みファイバを50kpsiにおいてスクリーニングした。スクリーニングの結果は、コーティングの合計厚さが15μmの125μmSMFファイバ上の新しい高弾性率コーティング層(表15のリールID121‐6599‐4を参照)と同等である。薄型アクリレート硬質ファイバコーティングは、良好な同心度(即ち70%超)を有している。この薄型アクリレートコーティング済みファイバも、リボンケーブルプロセスに耐えるために十分な強度を有する。軟質の薄い低弾性率コーティング層が存在することにより、この2層薄型コーティング済みファイバは、単層薄型硬質コーティングファイバを上回る、改善されたマイクロベンド性能を有する。
【0236】
【表19】
【0237】
新しい低弾性率コーティング層及び新しい高弾性率コーティング層の、薄型2層アクリレートファイバコーティングのドロー加工を、図18に示されているような相対屈折率プロファイルを有するシリカ内側クラッド及び非ドープ外側クラッドを有するグレーデッドインデックスコア上の標準的なシングルモードファイバに対して実施した。ファイバコーティングパラメータ、及び測定される光学的パラメータは、以下の表18に示されている。以下の表は、低弾性率コーティングの直径/高弾性率コーティングの直径が145μm/175μm、140μm/160μm、及び0μm/140μmである、3つの薄型コーティング構成を示す。低弾性率コーティングの直径/高弾性率コーティングの直径が190μm/250μmであるファイバは、対照として使用される標準的なコーティングである。上記薄型コーティング済みファイバに関して、測定されたケーブルカットオフ波長、MFDは、対照ファイバと同等であり、これは、これらの薄型コーティングがこれらのパラメータに影響を及ぼさなかったことを示している。低弾性率内側コーティングの直径/高弾性率コーティングの直径が145μm/175μm及び140μm/160μmであるファイバに関して、1310及び1550nmにおける減衰は対照ファイバと同一であり、これは、これらの薄型コーティング構成がいずれの減衰ペナルティももたらさなかったことを示している。低弾性率コーティングの直径/高弾性率コーティングの直径が0μm/140μmであるファイバの減衰は、単一のコーティング層であることにより、他のファイバよりわずかに高いが、データセンター等の短いファイバを使用する多くの用途において許容可能である。
【0238】
【表20】
【0239】
本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を実施できることは、当業者には明らかであろう。本発明の精神及び実質が組み込まれた、本開示の実施形態の修正、組み合わせ、部分的組み合わせ及び変形は、当業者に想起され得るため、本発明は、添付の請求項及びその均等物の範囲内の全てを含むものとして解釈されるものとする。
【0240】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0241】
実施形態1
コア領域;
上記コア領域を取り囲むクラッド領域であって、上記クラッド領域は、上記コア領域に直接隣接する内側クラッド、及び上記内側クラッドを取り囲む外側クラッドを備え、上記クラッド領域の半径は約62.5マイクロメートル未満である、クラッド領域;並びに
上記クラッド領域を取り囲む高弾性率コーティング層と、上記クラッド領域と上記高弾性率コーティング層との間に配置された低弾性率コーティング層とを備える、ポリマーコーティングであって、上記低弾性率内側コーティング層の厚さは4マイクロメートル~20マイクロメートルであり、上記低弾性率内側コーティング層の弾性率は約0.35MPa以下であり、上記高弾性率コーティング層の厚さは4マイクロメートル~20マイクロメートルであり、上記高弾性率コーティング層の弾性率は約1.6GPa以上である、ポリマーコーティング
を備える、光ファイバであって、
上記光ファイバの耐穿刺性は20g超であり、上記光ファイバのマイクロベンド減衰ペナルティは0.03dB/km未満であり、コーティング済みの上記光ファイバの外径は175マイクロメートル以下であり、
上記光ファイバの上記耐穿刺性は、式P=P+Cによって計算され、ここでAは上記高弾性率コーティングの断面積であり、Eは上記高弾性率コーティングの弾性率であり、Pは11.3gの値を有する係数であり、Cは2.1g/MPa/mmの値を有する係数であり、
上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは、式:
【0242】
【数22】
【0243】
によって計算され、ここでfは上記高弾性率コーティングと接触する外側表面の平均側圧であり、σは上記高弾性率コーティングと接触する上記外側表面の粗度の標準偏差であり、
【0244】
【数23】
【0245】
であり、
【0246】
【数24】
【0247】
であり、
【0248】
【数25】
【0249】
であり、
【0250】
【数26】
【0251】
であり、Rはガラスの半径であり、Rは上記高弾性率外側コーティングの外半径であり、tは上記内側低弾性率コーティングの厚さであり、tは上記高弾性率外側コーティングの厚さであり、Eはガラスの弾性率であり、Eは上記低弾性率内側コーティングの弾性率であり、Eは上記高弾性率コーティングの上記弾性率である、光ファイバ。
【0252】
実施形態2
上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.01dB/km以下である、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0253】
実施形態3
上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.007dB/km以下である、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0254】
実施形態4
上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.003dB/km以下である、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0255】
実施形態5
上記光ファイバの上記耐穿刺性は25g以上である、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0256】
実施形態6
上記光ファイバの上記耐穿刺性は30g以上である、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0257】
実施形態7
上記クラッド領域の上記半径は52.5マイクロメートル未満であり、上記光ファイバの上記耐穿刺性は40g超である、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0258】
実施形態8
上記高弾性率コーティング層の上記厚さは9マイクロメートル~18マイクロメートルである、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0259】
実施形態9
上記光ファイバの減衰は0.20dB/km未満である、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0260】
実施形態10
1310nmにおける上記光ファイバのモードフィールド径は8.6以上である、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0261】
実施形態11
コア領域;
上記コア領域を取り囲むクラッド領域であって、上記クラッド領域は、上記コア領域に直接隣接する内側クラッド、及び上記内側クラッドを取り囲む外側クラッドを備え、上記クラッド領域の半径は約45マイクロメートル~55マイクロメートルである、クラッド領域;並びに
上記クラッド領域を取り囲む高弾性率コーティング層と、上記クラッド領域と上記高弾性率コーティング層との間に配置された低弾性率コーティング層とを備える、ポリマーコーティングであって、上記低弾性率内側コーティング層の厚さは6マイクロメートル~20マイクロメートルであり、上記低弾性率内側コーティング層の弾性率は約0.35MPa以下であり、上記高弾性率コーティング層の厚さは12マイクロメートル~18マイクロメートルであり、上記高弾性率コーティング層の弾性率は約1.6GPa以上である、ポリマーコーティング
を備える、光ファイバであって、
上記光ファイバの耐穿刺性は30g超であり、上記光ファイバのマイクロベンド減衰ペナルティは0.03dB/km未満であり、コーティング済みの上記光ファイバの外径は175マイクロメートル以下であり、
上記光ファイバの上記耐穿刺性は、式P=P+Cによって計算され、ここでAは上記高弾性率コーティングの断面積であり、Eは上記高弾性率コーティングの弾性率であり、Pは11.3gの値を有する係数であり、Cは2.1g/MPa/mmの値を有する係数であり、上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは、式:
【0262】
【数27】
【0263】
によって計算され、ここでfは上記高弾性率コーティングと接触する外側表面の平均側圧であり、σは上記高弾性率コーティングと接触する上記外側表面の粗度の標準偏差であり、
【0264】
【数28】
【0265】
であり、
【0266】
【数29】
【0267】
であり、
【0268】
【数30】
【0269】
であり、
【0270】
【数31】
【0271】
であり、Rはガラスの半径であり、Rは上記高弾性率外側コーティングの外半径であり、tは上記内側低弾性率コーティングの厚さであり、tは上記高弾性率外側コーティングの厚さであり、Eはガラスの弾性率であり、Eは上記低弾性率内側コーティングの弾性率であり、Eは上記高弾性率コーティングの上記弾性率である、光ファイバ。
【0272】
実施形態12
上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.01dB/km以下である、実施形態11に記載の光ファイバ。
【0273】
実施形態13
上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.007dB/km以下である、実施形態11に記載の光ファイバ。
【0274】
実施形態14
上記光ファイバの上記マイクロベンド減衰ペナルティは0.003dB/km以下である、実施形態11に記載の光ファイバ。
【0275】
実施形態15
上記光ファイバの上記耐穿刺性は25g以上である、実施形態1に記載の光ファイバ。
【0276】
実施形態16
コア領域;
上記コア領域を取り囲むクラッド領域であって、上記クラッド領域は、上記コア領域に直接隣接する内側クラッド、及び上記内側クラッドを取り囲む外側クラッドを備える、クラッド領域;並びに
厚さが25μm以下のポリマーコーティングであって、上記ポリマーコーティングは、上記クラッド領域を取り囲む高弾性率コーティング層を備え、上記高弾性率コーティング層のヤング率は1.5GPa以上である、ポリマーコーティング
を備える、光ファイバであって、コーティング済みの上記光ファイバの外径は175マイクロメートル以下である、光ファイバ。
【0277】
実施形態17
上記クラッド領域を取り囲む低弾性率コーティング層を更に備え、上記低弾性率コーティング層は、ヤング率が0.5MPa以下であり、上記クラッド領域と上記高弾性率コーティング層との間に配置される、実施形態16に記載の光ファイバ。
【0278】
実施形態18
上記低弾性率コーティング層の厚さの、上記高弾性率コーティング層の厚さに対する比は、0.8~1.2である、実施形態17に記載の光ファイバ。
【0279】
実施形態19
光ファイバをコーティングする方法であって:
線引き炉から第1の垂直経路に沿ってドロー成形するステップ;
ポリマーコーティングが上記光ファイバに適用されるコーティング系を通るように、上記光ファイバをルーティングするステップであって、上記コーティング系は、入口、上記入口に対向する直径129μm~203μmのサイジングダイ、及び上記入口と上記サイジングダイとの間に配置されたコーティングチャンバを備え、上記コーティングチャンバには液体形態のコーティング材料が充填されている、ステップ;並びに
コーティング済みの上記光ファイバを硬化させて、175マイクロメートル以下の上記コーティング済み光ファイバの外径を形成するステップ
を含む、方法。
【0280】
実施形態20
上記ポリマーコーティングの同心度は70%超である、実施形態19に記載の方法。
【符号の説明】
【0281】
10、20、46、60 光ファイバ
11 ガラスファイバ
12、48 コア領域
14、50 クラッド領域
16、56 低弾性率内側コーティング、低弾性率コーティング
18、58 高弾性率コーティング
30 光ファイバリボン
32 マトリクス、リボンマトリクス
40 光ファイバケーブル
42 ジャケット
44 ジャケット42の内面
51 内側クラッド領域
53 屈折率抑制クラッド領域
55 外側クラッド領域
61、62 遷移領域
63 屈折率抑制クラッド領域の深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【国際調査報告】