(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】ウイルス感染を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230818BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20230818BHJP
C12N 9/50 20060101ALI20230818BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230818BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230818BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230818BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230818BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230818BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230818BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230818BHJP
C12N 15/50 20060101ALN20230818BHJP
C12N 15/57 20060101ALN20230818BHJP
【FI】
C12N15/113 100Z
C07K14/165 ZNA
C12N9/50
C07K19/00
A61P31/14
A61K9/72
A61K9/12
A61K38/16
A61K31/713
A61K47/64
C12N15/50
C12N15/57
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504816
(86)(22)【出願日】2021-07-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 US2021043077
(87)【国際公開番号】W WO2022020782
(87)【国際公開日】2022-01-27
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514289920
【氏名又は名称】アーディジェン, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デサイ, ニール ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ディビタ, ジル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC35
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4C084AA13
4C084BA08
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4C084ZB33
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA55
4C086MA59
4C086NA14
4C086ZB33
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、ウイルス(例えば、SARS-CoV-2)感染の治療に有用なペプチド及び核酸を提供する。例示的なペプチドは、キメラペプチドと、SPIKEとACE2との間の相互作用を遮断するブロッキングペプチドと、を含む。例示的な核酸には、SARS-CoV-2を特異的に標的とするsiRNAが含まれる。本出願は、ペプチド及び核酸の細胞内送達を促進する第2のペプチド(例えば、細胞透過性ペプチド)をさらに含む複合体及びナノ粒子も提供する。
【選択図】
図5C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドであって、前記ブロッキングペプチドが、SPIKEとACE2との相互作用を特異的に遮断し、前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドの二次構造または三次構造を安定化する、前記キメラペプチド。
【請求項2】
前記ブロッキングペプチドが、SPIKEの受容体結合ドメイン(RBD)内のループ配列を含む、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項3】
前記ループ配列が、アミノ酸約20個以下の長さを有する、請求項2に記載のキメラペプチド。
【請求項4】
前記ループ配列が、アミノ酸約7個~アミノ酸約18個の長さを有する、請求項3に記載のキメラペプチド。
【請求項5】
前記ブロッキングペプチドが、C末端にリシン(K)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項6】
前記ループ配列が、配列番号1~11及び42~46からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項7】
前記ループ配列が、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択される、請求項6に記載のキメラペプチド。
【請求項8】
前記ブロッキングペプチドが、ACE2の細胞外ドメイン内の配列に由来する配列を含む、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項9】
前記ブロッキングペプチドが、配列番号23~31及び47~52からなる群から選択される配列を含む、請求項8に記載のキメラペプチド。
【請求項10】
前記ブロッキングペプチドが、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む、請求項9に記載のキメラペプチド。
【請求項11】
前記ループ配列が環状である、請求項2~10に記載のキメラペプチド。
【請求項12】
前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドのC末端に連結されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項13】
前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドのN末端に連結されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項14】
前記安定化ペプチドが、アミノ酸約12個~アミノ酸約30個の長さを有する、請求項12または請求項13に記載のキメラペプチド。
【請求項15】
前記ブロッキングペプチド及び前記安定化ペプチドがそれぞれ、ACE2に由来する配列を含む、請求項8~14のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項16】
前記安定化ペプチドが、配列番号49または50に示される配列を含む、請求項15に記載のキメラペプチド。
【請求項17】
前記安定化ペプチドが、両親媒性ヘリックス構造を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項18】
前記安定化ペプチドが、ADGN-100ペプチドまたはVEPEP-6ペプチドを含む、請求項17に記載のキメラペプチド。
【請求項19】
前記安定化ペプチドが、配列番号53~107のいずれか1つに示される配列を含む、請求項18に記載のキメラペプチド。
【請求項20】
前記安定化ペプチドが、配列番号55または97に示される配列を含む、請求項19に記載のキメラペプチド。
【請求項21】
前記ブロッキングペプチドと前記安定化ペプチドとがリンカーによって連結されている、請求項1~20のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項22】
前記リンカーが、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される、請求項21に記載のキメラペプチド。
【請求項23】
前記PEG部分が、約2~約7個のエチレングリコール単位からなる、請求項19に記載のキメラペプチド。
【請求項24】
配列番号12~22、27、28、及び31~41のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項25】
配列番号12、17、19~22、27、28、31~33、35、及び38~40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項24に記載のキメラペプチド。
【請求項26】
配列番号12~22、24~41、及び151~160のいずれかのアミノ酸配列を含む非天然ペプチド。
【請求項27】
前記ペプチドが、配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の非天然ペプチド。
【請求項28】
前記ペプチドが、アミノ酸約100個以下の長さを有する、請求項26または27に記載の非天然ペプチド。
【請求項29】
配列番号161~180からなる群から選択される核酸配列を含む、siRNA。
【請求項30】
前記siRNAが、配列番号163、170、166、または168に示される核酸配列を含む、請求項29に記載のsiRNA。
【請求項31】
a)請求項1~25のいずれかに記載のキメラペプチド、請求項26もしくは27に記載のペプチド、または請求項28もしくは請求項29に記載のsiRNAを含むカーゴと、b)第2のペプチドと、を含む複合体であって、前記ペプチドまたは前記siRNAが前記第2のペプチドと複合体を形成している、前記複合体。
【請求項32】
前記第2のペプチドが、CADY、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される細胞透過性ペプチドである、請求項31に記載の複合体。
【請求項33】
前記第2のペプチドと前記ペプチドまたは前記siRNAとのモル比が、約1:1~約80:1である、請求項31または請求項32に記載の複合体。
【請求項34】
前記第2のペプチドと前記ペプチドとのモル比が、約2:1~約10:1である、請求項33に記載の複合体。
【請求項35】
前記第2のペプチドと前記siRNAとのモル比が、約5:1~約50:1である、請求項34に記載の複合体。
【請求項36】
a)請求項1~25のいずれかに記載のキメラペプチド、もしくは請求項26~28のいずれかに記載のペプチド、及び/またはb)請求項29もしくは請求項30に記載のsiRNAを含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項37】
前記siRNAが、配列番号166に示される核酸配列を含む、請求項36に記載の複合体。
【請求項38】
配列番号17または33に示されるアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含む、請求項37に記載の複合体。
【請求項39】
請求項30~38のいずれか1項に記載の複合体を含む、ナノ粒子。
【請求項40】
前記ナノ粒子が、約100nm以下の直径を有する、請求項39に記載のナノ粒子。
【請求項41】
前記ナノ粒子が、約40~約60nmの直径を有する、請求項40に記載のナノ粒子。
【請求項42】
a)請求項1~25のいずれかに記載のキメラペプチド、請求項26~28のいずれかに記載のペプチド、請求項29または請求項30に記載のsiRNA、請求項31~41のいずれかに記載の複合体またはナノ粒子と、b)薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項43】
前記組成物が、2つ以上の複合体またはナノ粒子を含み、前記2つ以上の複合体またはナノ粒子が異なるカーゴを含む、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記カーゴを前記第2のペプチドと組み合わせることを含む、請求項31~41のいずれか1項に記載の複合体またはナノ粒子を調製する方法。
【請求項45】
個体におけるSARS-CoV-2感染を治療する方法であって、前記個体に有効量の請求項42または請求項43の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項46】
前記医薬組成物が、噴霧または局所肺または経鼻送達により投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記個体が、ヒトである、請求項45または請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月24日に出願されたフランス国特許出願第FR2007849号に基づく優先権を主張し、あらゆる目的で本明細書に参照によりその全容を援用する。
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
【0002】
ASCIIテキストファイルでの次の提出物の全容を参照によって本明細書に援用する。すなわち、配列表のコンピュータ可読形態(CRF)(ファイル名:737372001341SEQLIST.TXT、記録日:2021年7月23日、サイズ:59KB)。
【0003】
本出願は、ウイルス(例えば、SARS-CoV-2)感染を治療するための阻害ペプチド、核酸(例えば、siRNA)、複合体、ナノ粒子、及び組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
中国の武漢での新しいヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の出現は、呼吸器疾患(COVID-19)の世界的な流行を引き起こした。この病気を治療するためのワクチン及び標的治療薬は現在不足している。
【0005】
本明細書で言及されるあらゆる刊行物、特許、特許出願、及び公開された特許出願の開示内容は、参照により本明細書にそれらの全容を援用するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、一態様において、安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドを提供し、ブロッキングペプチドは、スパイク糖タンパク質(「SPIKE」)とアンジオテンシン変換酵素2(「ACE2」)との相互作用を特異的に遮断し、安定化ペプチドは、ブロッキングペプチドの二次構造または三次構造を安定化する。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、SPIKEの受容体結合ドメイン(RBD)内のループ配列を含む。いくつかの実施形態では、ループ配列は、アミノ酸約20個以下の長さを有する。いくつかの実施形態では、ループ配列は、アミノ酸約7個~アミノ酸約18個の長さを有する。
【0007】
上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、C末端にリシン(K)を含む。
【0008】
上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、ループ配列は、配列番号1~11及び42~46からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ループ配列は、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択される。
【0009】
上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ACE2の細胞外ドメイン内の配列に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23~31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。
【0010】
上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、ループ配列は、環状である。
【0011】
上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、ブロッキングペプチドのC末端に連結されている。
【0012】
上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、ブロッキングペプチドのN末端に連結されている。
【0013】
上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、アミノ酸約12個~アミノ酸約30個の長さを有する。
【0014】
上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、ブロッキングペプチド及び安定化ペプチドがそれぞれ、ACE2に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、配列番号49または50に示される配列を含む。
【0015】
上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、両親媒性ヘリックス構造を含む。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、ADGN-100ペプチドまたはVEPEP-6ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、配列番号53~107のいずれか1つに示される配列を含む。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、配列番号55または97に示される配列を含む。
【0016】
上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとはリンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。上記に述べたキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、PEG部分は、約2~約7個のエチレングリコール単位で構成される。
【0017】
上記のキメラペプチドのいずれかによるいくつかの実施形態では、キメラペプチドは、配列番号12~22、27、28、及び31~41のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キメラペプチドは、配列番号12、17、19~22、27、28、31~33、35、及び38~40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
本出願は別の態様において、配列番号12~22、24~41、及び151~160のいずれかのアミノ酸配列を含む非天然ペプチドを提供する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含む。
【0019】
本出願は別の態様において、配列番号161~180からなる群から選択される核酸配列を含むsiRNAを提供する。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号163、166または168、または170に示される核酸配列を含む。
【0020】
本出願は別の態様において、a)上記に述べたペプチドまたはsiRNAのいずれかを含むカーゴと、b)第2のペプチドと、を含む複合体であって、ペプチドまたはsiRNAが第2のペプチドと複合体を形成している、複合体を提供する。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、CADY、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される細胞透過性ペプチドである。いくつかの実施形態では、第2のペプチドとペプチドまたはsiRNAとのモル比は、約1:1~約80:1である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドとペプチドとのモル比は、約2:1~約10:1である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドとsiRNAとのモル比は、約5:1~約50:1である。いくつかの実施形態では、複合体は、a)請求項1~25のいずれかに記載のキメラペプチド、または請求項26または27に記載のペプチド、b)請求項28または請求項29に記載のsiRNAを含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号166に示される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号17または33に示されるアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含む。
【0021】
本出願は別の態様において、上記に述べた複合体のいずれかを含むナノ粒子を提供する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約100nm以下の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約40~約60nmの直径を有する。
【0022】
本出願は別の態様において、上記に述べたペプチド、siRNA、複合体、またはナノ粒子のいずれかと、b)薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、2つ以上の複合体またはナノ粒子を含み、2つ以上の複合体またはナノ粒子は異なるカーゴを含む。
【0023】
本出願は別の態様において、カーゴを第2のペプチドと組み合わせることを含む、上記に述べた複合体またはナノ粒子のいずれかを調製する方法を提供する。
【0024】
本出願は別の態様において、有効量の上記に述べた医薬組成物のいずれかの個体に投与することを含む、個体におけるSARS-CoV-2感染を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、噴霧または局所肺または経鼻送達により投与される。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】A~Dは、ACE2に結合したSARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)の全体構造を示している。この構造は、Lan et al.(Nature volume 581,pages 215-220(2020))により報告されている、細胞受容体ACE2に結合したSARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBDの結晶構造に基づいている。A及びBにおいて、ACE2タンパク質のN末端ヘリックスと相互作用するSARS-CoV-2のRBMドメインの部分が薄い灰色で示されている。C及びDにおいて、SARS-CoV-2RBDドメインと相互作用するACE2ドメインが強調されている。SARS-CoV-2 RBDのRBMドメインに接触するα1及びα2ヘリックスは薄い灰色である。
【0026】
【
図2】A~Eは、選択されたペプチド阻害剤の構造編成を示す。Peplook-Zultimプログラムを使用して、各ヘリックス状ペプチドの構造の動的および安定性分析を決定した。ADGNペプチドは黒色で、阻害ペプチドは薄い灰色で示されている。主な相互作用を形成する残基は棒で示されている。
【0027】
【
図3】A及びBは、ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤のスクリーニングを示す。異なるペプチドを、遊離ペプチドとして(A)、または5/1のモル比でADGN-106と形成されたナノ粒子複合体内(B)で、一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。
【0028】
【
図4】A及びBは、SARS-CoV-2スパイク:ACE2阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤のスクリーニングを示す。異なるペプチドを、遊離ペプチドとして(A)、または5/1のモル比でADGN-106と形成されたナノ粒子複合体内(B)で、一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。
【0029】
【
図5A】SARS-CoV-2ウイルス感染に対するペプチド阻害剤の評価を示す。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。異なる希釈濃度を有するペプチドを、ウイルス感染の直前に単層Vero-E6細胞に直接加えるか(C)、またはSARS-CoV-2と30分間混合してから単層Vero-E6細胞に加えた(A)。ADGN-106、ヒドロキシクロロキン、及びバッファーをコントロールとして使用し、すべての処理を3重に行った。阻害率及び細胞変性効果を72時間後に測定した。異なるペプチドの細胞毒性を、CellTiter-Gloアッセイを用いてVero-6細胞で分析した(B及びD)。
【
図5B】SARS-CoV-2ウイルス感染に対するペプチド阻害剤の評価を示す。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。異なる希釈濃度を有するペプチドを、ウイルス感染の直前に単層Vero-E6細胞に直接加えるか(C)、またはSARS-CoV-2と30分間混合してから単層Vero-E6細胞に加えた(A)。ADGN-106、ヒドロキシクロロキン、及びバッファーをコントロールとして使用し、すべての処理を3重に行った。阻害率及び細胞変性効果を72時間後に測定した。異なるペプチドの細胞毒性を、CellTiter-Gloアッセイを用いてVero-6細胞で分析した(B及びD)。
【
図5C】SARS-CoV-2ウイルス感染に対するペプチド阻害剤の評価を示す。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。異なる希釈濃度を有するペプチドを、ウイルス感染の直前に単層Vero-E6細胞に直接加えるか(C)、またはSARS-CoV-2と30分間混合してから単層Vero-E6細胞に加えた(A)。ADGN-106、ヒドロキシクロロキン、及びバッファーをコントロールとして使用し、すべての処理を3重に行った。阻害率及び細胞変性効果を72時間後に測定した。異なるペプチドの細胞毒性を、CellTiter-Gloアッセイを用いてVero-6細胞で分析した(B及びD)。
【
図5D】SARS-CoV-2ウイルス感染に対するペプチド阻害剤の評価を示す。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。異なる希釈濃度を有するペプチドを、ウイルス感染の直前に単層Vero-E6細胞に直接加えるか(C)、またはSARS-CoV-2と30分間混合してから単層Vero-E6細胞に加えた(A)。ADGN-106、ヒドロキシクロロキン、及びバッファーをコントロールとして使用し、すべての処理を3重に行った。阻害率及び細胞変性効果を72時間後に測定した。異なるペプチドの細胞毒性を、CellTiter-Gloアッセイを用いてVero-6細胞で分析した(B及びD)。
【0030】
【
図6】A及びBは、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とするsiRNAの評価を示す。H1299肺上皮細胞に、eGFPでタグ付けされたSARS-COV-2ヌクレオカプシドをコードするpcDNA3.1(+)-N-eGFP-NPプラスミドをトランスフェクトした。次いで、細胞を、モル比1/20でADGN-100と複合体化したsiRNA(1nM~200nM)で処理した。eGFPを標的とするsiRNA及びscr-siRNAを、それぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして使用した。ヌクレオカプシド-eGFPタンパク質のレベルをトランスフェクションから48時間後に評価し(A)、GlowMaxでCellTiter Glowキットを使用して毒性を測定した(B)。
【0031】
【
図7】A及びBは、SARS-CoV-2のORF3a遺伝子を標的とするsiRNAの評価を示す。H1299肺上皮細胞に、eGFPでタグ付けされたSARS-COV-2 ORF3aをコードするpcDNA3.1(+)-N-eGFP-ORF3aプラスミドをトランスフェクトした。次いで、細胞を、モル比1/20でADGN-100と複合体化したsiRNA(1nM~200nM)で処理した。eGFPを標的とするsiRNA及びscr-siRNAを、それぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして使用した。ORF3A-eGFPタンパク質のレベルをトランスフェクションから48時間後に評価し(A)、GlowMaxでCellTiter Glowキットを使用して毒性を測定した(B)。
【0032】
【
図8】A及びBは、SARS-CoV-2のORF8遺伝子を標的とするsiRNAの評価を示す。H1299肺上皮細胞に、eGFPでタグ付けされたSARS-COV-2 ORF8をコードするpcDNA3.1(+)-N-eGFP-ORF8プラスミドをトランスフェクトした。次いで、細胞を、モル比1/20でADGN-100と複合体化したsiRNA(1nM~200nM)で処理した。eGFPを標的とするsiRNA及びscr-siRNAを、それぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして使用した。ORF8-eGFPタンパク質のレベルをトランスフェクションから48時間後に評価し(A)、GlowMaxでCellTiter Glowキットを使用して毒性を測定した(B)。
【0033】
【
図9】A及びBは、SARS-CoV-2ウイルス感染に対するsiRNAの評価を示す。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。siRNAを、モル比1/20でADGN-100と複合体を形成させた。異なる希釈濃度のsiRNA/ADGN-100を、ウイルス感染の直前に単層のVero-E6細胞に直接加えた(A)。ADGN-100、及びバッファーをコントロールとして使用し、すべての処理を3重に行った。阻害率及び細胞変性効果を72時間後に測定した。CellTiter-Gloアッセイを使用してVero-6細胞に対する異なるsiRNA/ADGN複合体の細胞毒性を分析した(B)。
【0034】
【
図10】SARS-CoV-2ウイルス感染に対するsiRNA/阻害剤ペプチドの評価を示す。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。siRNA溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。異なる希釈濃度のsiRNA/ADGN-100複合体及びLNCOV-15またはLNCOV-18を、ウイルス感染の前に単層のVero-E6細胞に直接加えた。ADGN-100、及びバッファーをコントロールとして使用し、すべての処理を3重に行った。阻害率及び細胞変性効果を72時間後に測定した。
【0035】
【
図11A】LNCOVペプチドと複合体を形成したSARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とするDIVC-6 siRNAの評価を示す。H1299肺上皮細胞に、eGFPでタグ付けされたSARS-COV-2ヌクレオカプシドをコードするpcDNA3.1(+)-N-eGFP-NPプラスミドをトランスフェクトした。次いで、細胞を、モル比1/20でADGN-100、LNCOV-15、及びLNCOV-18と複合体化したsiRNA(1nM~200nM)で処理した。scr-siRNAを、それぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして使用した。ヌクレオカプシド-eGFPタンパク質のレベルを、トランスフェクションの48時間後に評価した。
【0036】
【
図11B】示された二次構造を有するVEPEP-9ペプチドを示す。「H」は「ヘリックス」、「t」はターンを表す。
【0037】
【
図12A】ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤の影響を示す。異なるペプチドを一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。アルファ(A)、ベータ(B)、ガンマ(C)及びデルタ(D)バリアントモル比(
図3B)を含む4つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。A~Eは、ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤の影響を示す。異なるペプチドを一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。アルファ(A)、ベータ(B)、ガンマ(C)、デルタ(D)、及びイプシロン(E)バリアントを含む4つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。
【
図12B】ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤の影響を示す。異なるペプチドを一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。アルファ(A)、ベータ(B)、ガンマ(C)及びデルタ(D)バリアントモル比(
図3B)を含む4つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。A~Eは、ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤の影響を示す。異なるペプチドを一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。アルファ(A)、ベータ(B)、ガンマ(C)、デルタ(D)、及びイプシロン(E)バリアントを含む4つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。
【
図12C】ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤の影響を示す。異なるペプチドを一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。アルファ(A)、ベータ(B)、ガンマ(C)及びデルタ(D)バリアントモル比(
図3B)を含む4つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。A~Eは、ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤の影響を示す。異なるペプチドを一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。アルファ(A)、ベータ(B)、ガンマ(C)、デルタ(D)、及びイプシロン(E)バリアントを含む4つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。
【
図12D】ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤の影響を示す。異なるペプチドを一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。アルファ(A)、ベータ(B)、ガンマ(C)及びデルタ(D)バリアントモル比(
図3B)を含む4つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。A~Eは、ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤の影響を示す。異なるペプチドを一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。アルファ(A)、ベータ(B)、ガンマ(C)、デルタ(D)、及びイプシロン(E)バリアントを含む4つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。
【
図12E】ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤の影響を示す。異なるペプチドを一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。アルファ(A)、ベータ(B)、ガンマ(C)及びデルタ(D)バリアントモル比(
図3B)を含む4つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。A~Eは、ACE2:SARS-CoV-2スパイク阻害剤アッセイにおけるペプチド阻害剤の影響を示す。異なるペプチドを一定範囲の濃度(0.1nM~10μM)で評価した。アルファ(A)、ベータ(B)、ガンマ(C)、デルタ(D)、及びイプシロン(E)バリアントを含む4つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した。結果は、3つの別々の実験の平均に相当する。
【0038】
【
図13A】SARS-CoV-2変異体ウイルス感染に対するペプチド阻害剤の評価を示す。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。抗ウイルスアッセイをVero E6細胞で行った。細胞を、配列17、配列28、または配列33のペプチド(10nM~1μMの範囲の濃度)または6μMのレムデシビル(ポジティブコントロール、RMD)を含む培地、または抗ウイルス分子を含まない培地(ネガティブコントロール、「T-」)中で1時間インキュベートすることにより、SARS-CoV-2アルファ(A)またはベータ(B)またはデルタ(C)変異株にMOI0.001で3重に感染させた。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。上清を感染の24時間後に回収し、VeroE6細胞でTCID50法によってウイルス力価を測定し、Spearman & Kaerberアルゴリズムによって計算した。
【
図13B】SARS-CoV-2変異体ウイルス感染に対するペプチド阻害剤の評価を示す。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。抗ウイルスアッセイをVero E6細胞で行った。細胞を、配列17、配列28、または配列33のペプチド(10nM~1μMの範囲の濃度)または6μMのレムデシビル(ポジティブコントロール、RMD)を含む培地、または抗ウイルス分子を含まない培地(ネガティブコントロール、「T-」)中で1時間インキュベートすることにより、SARS-CoV-2アルファ(A)またはベータ(B)またはデルタ(C)変異株にMOI0.001で3重に感染させた。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。上清を感染の24時間後に回収し、VeroE6細胞でTCID50法によってウイルス力価を測定し、Spearman & Kaerberアルゴリズムによって計算した。
【
図13C】SARS-CoV-2変異体ウイルス感染に対するペプチド阻害剤の評価を示す。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。抗ウイルスアッセイをVero E6細胞で行った。細胞を、配列17、配列28、または配列33のペプチド(10nM~1μMの範囲の濃度)または6μMのレムデシビル(ポジティブコントロール、RMD)を含む培地、または抗ウイルス分子を含まない培地(ネガティブコントロール、「T-」)中で1時間インキュベートすることにより、SARS-CoV-2アルファ(A)またはベータ(B)またはデルタ(C)変異株にMOI0.001で3重に感染させた。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。上清を感染の24時間後に回収し、VeroE6細胞でTCID50法によってウイルス力価を測定し、Spearman & Kaerberアルゴリズムによって計算した。
【0039】
【
図14】A~Cは、SARS-CoV-2ウイルス感染に対するsiRNA/阻害剤ペプチドの評価を示す。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。siRNA溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。異なる希釈濃度のsiRNA/ADGN-100複合体及びLNCOV-15、LNCOV-20またはLNCOV-18を、ウイルス感染の前に単層のVero-E6細胞に直接加えた。6μMのレムデシビル(ポジティブコントロール、RMD)、または抗ウイルス分子なし(ネガティブコントロール、「T-」)。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。上清を感染の24時間後に回収し、VeroE6細胞でTCID50法によってウイルス力価を測定し、Spearman & Kaerberアルゴリズムによって計算した。
【0040】
【
図15A】SARS-COV-2のペプチド阻害剤及びペプチド/siRNA阻害剤のインビボ肺生体内分布を示す。試験は健康な4週齢の雄C57BL/6Jマウスで実施した。各ペプチドまたは各ペプチド/siRNA複合体の単回用量を気管内注入(200μg)により投与した。非侵襲的なインビボ全身蛍光画像法により、蛍光を、T0、注入の1時間、2時間、6時間、24時間、48時間、及び72時間後に評価した(A)。注入から6時間、12時間、48時間、及び72時間後の臓器でエクスビボ蛍光シグナルが観察された。Living imageソフトウェアを使用して蛍光画像から半定量的データを取得した。
【
図15B】SARS-COV-2のペプチド阻害剤及びペプチド/siRNA阻害剤のインビボ肺生体内分布を示す。試験は健康な4週齢の雄C57BL/6Jマウスで実施した。各ペプチドまたは各ペプチド/siRNA複合体の単回用量を気管内注入(200μg)により投与した。非侵襲的なインビボ全身蛍光画像法により、蛍光を、T0、注入の1時間、2時間、6時間、24時間、48時間、及び72時間後に評価した(A)。注入から6時間、12時間、48時間、及び72時間後の臓器でエクスビボ蛍光シグナルが観察された。Living imageソフトウェアを使用して蛍光画像から半定量的データを取得した。
【
図15C】SARS-COV-2のペプチド阻害剤及びペプチド/siRNA阻害剤のインビボ肺生体内分布を示す。試験は健康な4週齢の雄C57BL/6Jマウスで実施した。各ペプチドまたは各ペプチド/siRNA複合体の単回用量を気管内注入(200μg)により投与した。非侵襲的なインビボ全身蛍光画像法により、蛍光を、T0、注入の1時間、2時間、6時間、24時間、48時間、及び72時間後に評価した(A)。注入から6時間、12時間、48時間、及び72時間後の臓器でエクスビボ蛍光シグナルが観察された。Living imageソフトウェアを使用して蛍光画像から半定量的データを取得した。
【
図15D】SARS-COV-2のペプチド阻害剤及びペプチド/siRNA阻害剤のインビボ肺生体内分布を示す。試験は健康な4週齢の雄C57BL/6Jマウスで実施した。各ペプチドまたは各ペプチド/siRNA複合体の単回用量を気管内注入(200μg)により投与した。非侵襲的なインビボ全身蛍光画像法により、蛍光を、T0、注入の1時間、2時間、6時間、24時間、48時間、及び72時間後に評価した(A)。注入から6時間、12時間、48時間、及び72時間後の臓器でエクスビボ蛍光シグナルが観察された。Living imageソフトウェアを使用して蛍光画像から半定量的データを取得した。
【
図15E】SARS-COV-2のペプチド阻害剤及びペプチド/siRNA阻害剤のインビボ肺生体内分布を示す。試験は健康な4週齢の雄C57BL/6Jマウスで実施した。各ペプチドまたは各ペプチド/siRNA複合体の単回用量を気管内注入(200μg)により投与した。非侵襲的なインビボ全身蛍光画像法により、蛍光を、T0、注入の1時間、2時間、6時間、24時間、48時間、及び72時間後に評価した(A)。注入から6時間、12時間、48時間、及び72時間後の臓器でエクスビボ蛍光シグナルが観察された。Living imageソフトウェアを使用して蛍光画像から半定量的データを取得した。
【0041】
【
図16】A及びBは、SARS-COV-2のペプチド阻害剤及びペプチド/siRNA阻害剤で処置した肺の共焦点顕微鏡分析を示す。試験は健康な4週齢の雄C57BL/6Jマウスで実施した。各ペプチドまたは各ペプチド/siRNA複合体の単回用量を気管内注入(200μg)により投与した。投与4時間、24時間および72時間後に肺を採取し、5%グルコース中の4%ホルムアルデヒドで固定した。組織をMito tracker redで染色し、核はHoeschで染色した。
【0042】
【
図17】SARS-COV-2のペプチド阻害剤及びペプチド/siRNA阻害剤で処置した肺の定量的共焦点顕微鏡分析を示す。試験は健康な4週齢の雄C57BL/6Jマウスで実施した。各ペプチドまたは各ペプチド/siRNA複合体の単回用量を気管内注入(200μg)により投与した。投与4時間、24時間および72時間後に肺を採取し、5%グルコース中の4%ホルムアルデヒドで固定した。組織をMito tracker redで染色し、核はHoeschで染色した。対数変換されたデータに対する複数の比較による一元配置分散分析。***P=0.0005、**P=0.001、*P=0.0011;NS、有意でない。
【0043】
【
図18A】インビボでのSARS-COV2阻害剤の特性評価、体重及び臓器重量分析を示す。気管内注入(0日目)の前、1日目、2日目、及び屠殺前(3日目)にマウスの体重を記録した。肺、肝臓、心臓、腎臓、及び脳を3日目に採取し、臓器指数を測定した。
【
図18B】インビボでのSARS-COV2阻害剤の特性評価、体重及び臓器重量分析を示す。気管内注入(0日目)の前、1日目、2日目、及び屠殺前(3日目)にマウスの体重を記録した。肺、肝臓、心臓、腎臓、及び脳を3日目に採取し、臓器指数を測定した。
【
図18C】インビボでのSARS-COV2阻害剤の特性評価、体重及び臓器重量分析を示す。気管内注入(0日目)の前、1日目、2日目、及び屠殺前(3日目)にマウスの体重を記録した。肺、肝臓、心臓、腎臓、及び脳を3日目に採取し、臓器指数を測定した。
【
図18D】インビボでのSARS-COV2阻害剤の特性評価、体重及び臓器重量分析を示す。気管内注入(0日目)の前、1日目、2日目、及び屠殺前(3日目)にマウスの体重を記録した。肺、肝臓、心臓、腎臓、及び脳を3日目に採取し、臓器指数を測定した。
【
図18E】インビボでのSARS-COV2阻害剤の特性評価、体重及び臓器重量分析を示す。気管内注入(0日目)の前、1日目、2日目、及び屠殺前(3日目)にマウスの体重を記録した。肺、肝臓、心臓、腎臓、及び脳を3日目に採取し、臓器指数を測定した。
【
図18F】インビボでのSARS-COV2阻害剤の特性評価、体重及び臓器重量分析を示す。気管内注入(0日目)の前、1日目、2日目、及び屠殺前(3日目)にマウスの体重を記録した。肺、肝臓、心臓、腎臓、及び脳を3日目に採取し、臓器指数を測定した。
【
図18G】インビボでのSARS-COV2阻害剤の特性評価、体重及び臓器重量分析を示す。気管内注入(0日目)の前、1日目、2日目、及び屠殺前(3日目)にマウスの体重を記録した。肺、肝臓、心臓、腎臓、及び脳を3日目に採取し、臓器指数を測定した。
【0044】
【
図19A】ペプチド及びペプチド/siRNA複合体による処置後の気管支肺胞洗浄分析を示す。注入から2日後にBALを行った。BAL中の細胞の割合、総タンパク質、及びLDHのレベルを分析した。結果を、ネガティブコントロールとして使用した生理食塩水緩衝液と比較した。
【
図19B】ペプチド及びペプチド/siRNA複合体による処置後の気管支肺胞洗浄分析を示す。注入から2日後にBALを行った。BAL中の細胞の割合、総タンパク質、及びLDHのレベルを分析した。結果を、ネガティブコントロールとして使用した生理食塩水緩衝液と比較した。
【
図19C】ペプチド及びペプチド/siRNA複合体による処置後の気管支肺胞洗浄分析を示す。注入から2日後にBALを行った。BAL中の細胞の割合、総タンパク質、及びLDHのレベルを分析した。結果を、ネガティブコントロールとして使用した生理食塩水緩衝液と比較した。
【0045】
【
図20】A及びBは、ペプチド及びペプチド/siRNA複合体による処置後のAST及びALT血液分析を示す。各ペプチドまたは各ペプチド/siRNA複合体の単回用量を気管内注入(200μg)により投与した。生理食塩水をネガティブコントロールとして用いた。血漿中のAST及びALTレベルを注入の2日後にアッセイした。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本出願は、一態様において、コロナウイルス(SARS-CoV-2など)のスパイク糖タンパク質(SPIKE)と、個体(人間など)の様々な細胞型(肺細胞など)で発現するACE2との相互作用を遮断する新規阻害ペプチド(すなわち、ブロッキングペプチド)を提供する。実施例のセクションに示されるように、例示的な阻害ペプチドは、インビトロ及び感染細胞の両方で、SPIKEとACE2との相互作用を効果的に遮断する。
【0047】
いくつかの実施形態では、阻害ペプチドは、安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドであり、安定化ペプチドはブロッキングペプチドの二次構造または三次構造を安定化する。理論に拘束されるものではないが、両親媒性ヘリックス構造を有するペプチドは、螺旋状のブロッキングペプチドを安定化することが観察されており、これにはヘリックスの同じ側に位置する主に芳香族残基(例えば、トリプトファン残基)及び静電相互作用が関与している。ループ配列を有するブロッキングペプチドの環化がブロッキングペプチドを安定化し、環化したブロッキングペプチドと安定化ペプチドとの融合によってブロッキングペプチドがさらに安定化することも観察されている。実施例で示されるように、例示的なペプチド(配列番号17、28、または33に示される配列を含むペプチドなど)は、強力な抗ウイルス効果及び肺に浸透する能力を示す。
【0048】
本出願は、別の態様において、SARS-CoV-2を標的とする新規核酸(siRNA)を提供する。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号163、166または170に示される核酸配列を含む。
【0049】
本出願は、別の実施形態において、本明細書に記載の阻害ペプチドまたは核酸のいずれかを含む複合体及びナノ粒子を提供する。いくつかの実施形態では、複合体またはナノ粒子は第2のペプチドを含み、第2のペプチドは、阻害ペプチド及び/または核酸(siRNAなど)のいずれか1つ以上と複合体を形成する。阻害ペプチド及び/またはサイレンシングRNAベースの複合体及びナノ粒子は、SARS-CoV-2の細胞侵入を中和し、サイレンシングRNAの送達によってウイルス産生を防止することが観察されている。要約すると、本明細書に記載の阻害ペプチド、核酸、複合体、ナノ粒子は、COVID-19疾患に対する簡単で効率的な治療法を提供するものでる。
【0050】
本出願はまた、本明細書に記載のキメラペプチド、ペプチド、siRNA、複合体、及び/またはナノ粒子を投与することによってCOVID-19を治療する方法も提供する。
【0051】
I.定義
「非天然の」、「合成」、または「操作された」という用語は、互換的に使用され、人の手が関与していることを示す。核酸分子またはポリペプチドについて言及する場合、これらの用語は、核酸分子またはポリペプチドが、それらが自然界で自然に付随し、自然界で見出される少なくとも1つの他の成分を少なくとも実質的に含まないことを意味する。
【0052】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」とは、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAもしくはRNAポリメラーゼによりポリマーに組み込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。本明細書で使用される「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖形態の少なくとも2個のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含むポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。DNAは、例えば、アンチセンス分子、プラスミドDNA、予め凝縮されたDNA、PCR産物、ベクター(PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、またはこれらの群の誘導体及び組み合わせの形態であり得る。RNAは、siRNA、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、tRNA、rRNA、RNA、ウイルスRNA(vRNA)、及びそれらの組み合わせの形態であり得る。核酸には、合成、天然、及び非天然であってよく、参照核酸と同様の結合特性を有する、ロック核酸(LNA)、アンロック核酸(UNA)、及びジップ核酸(ZNA)を含む、既知のヌクレオチド類似体または修飾骨格残基もしくは結合を含む核酸が含まれる。このような類似体の例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2’-O-メチルリボヌクレオチド、及びペプチド-核酸(PNA)が挙げられるが、これらに限定されない。特に限定されない限り、この用語には、参照核酸と同様の結合特性を有する天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸が含まれる。特に示されない限り、特定の核酸配列は、保存的に改変されたその変異体(例えば、縮重コドン置換物)、アレル、オーソログ、SNP、及び相補的配列、ならびに明示的に示される配列も暗黙的に含む。詳細には、縮重コドン置換物は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基及び/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することによって得ることができる(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,j.Biol. Chern.,260:2605-2608(1985);Rossolini et al., Mol. Cell.Probes, 8:91-98 (1994))。「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)またはリボース(RNA)、塩基、及びリン酸基を含む。ヌクレオチド同士は、リン酸基を介して結合される。「塩基」には、天然化合物のアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、及び天然類似体をさらに含むプリン及びピリミジン、ならびにこれらに限定されるものではないが、アミン、アルコール、チオール、カルボキシラーゼ、及びハロゲン化アルキルなどの新しい反応基を配置する修飾を含むがこれらに限定されないプリン及びピリミジンの合成誘導体が含まれる。本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」は、一般的に(ただし、必ずしもそうではない)ヌクレオチド約200個未満の長さである、短鎖の、一般的には合成ポリヌクレオチドを指す。用語「オリゴヌクレオチド」と「ポリヌクレオチド」とは、互いに相容れないものではない。ポリヌクレオチドに関する上記の説明は、等しく完全にオリゴヌクレオチドにも適用可能である。
【0053】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書では、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指して互換的に使用される。哺乳類としては、マウス、サル、ヒト、家畜、狩猟動物、及び愛玩動物が挙げられるが、これらに限定されない。インビトロで得られたまたはインビトロで培養された生物学的実体の組織、細胞、及びそれらの子孫も包含される。
【0054】
「治療剤」、「治療能力のある薬剤」または「治療薬」という用語は互換的に使用され、対象に投与される際に何らかの有益な効果を与える分子または化合物を指す。有益な効果には、診断判定を可能とすること;疾患、症状、障害、または病的状態の改善;疾患、症状、障害または状態の発症の軽減または予防;及び、疾患、症状、障害または病的状態に広く抗することが含まれる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」は、臨床結果を含む有益なまたは望ましい結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益なまたは望ましい臨床結果は、以下のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない:疾患に起因する1つ以上の症状を減少させること(例えば、やはりウイルスに感染した治療していない個人と比較してウイルス量を減少させるかまたはウイルス量の増加を遅くすること)、疾患の程度を軽減すること(例えば、感染の経過を減少させること、例えば、感染の発症を減少させること、個人が集中治療室(ICU)または換気装置内にいる日数を減らすことなど)、疾患を安定させること(例えば、疾患の悪化を予防または遅延させること)、疾患の広がりを予防または遅延させること、疾患の再発を予防または遅延させること、疾患の進行を遅延または減速させること、病状を改善すること、疾患の(部分的または全体的)寛解を提供すること、疾患の処置に必要な1つ以上の他の治療剤の投与量を減少させること、疾患の進行を遅延すること、生活の質を高めるまたは向上させること、体重増加を増大させること、及び/または生存期間を延長させること。疾患(例えば、コロナウイルス感染における呼吸器症状など)の病理学的結果の低減も「治療」に包含される。本発明の方法は、これらの治療の態様のうちの任意の1つ以上を企図する。
【0056】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、有益なまたは望ましい結果をもたらすのに十分な薬剤の量を指す。治療有効量は、治療される対象及び病状、対象の体重及び年齢、病状の重症度、当業者によって容易に決定できる投与方法などのうちの1つ以上に応じて異なり得る。この用語は、本明細書に記載の画像法のいずれか1つによる検出を行うための画像を与える線量にも適用される。特定の用量は、選択される特定の薬剤、従うべき投薬レジメン、他の化合物と併用して投与されるかどうか、投与のタイミング、画像化しようとする組織、及びそれが運ばれる物理的送達系のうちの1つ以上に応じて異なり得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」または「薬学的に適合する」とは、生物学的にまたは他の方法で望ましくない材料を意味し、例えば、材料は、任意の顕著な望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含有される組成物の他の成分のうちのいずれかと有害な形で相互作用することなく、患者に投与される薬学的組成物に組み込まれてもよい。薬学的に許容される担体または賦形剤は、好ましくは、毒性試験及び製造試験の必要な基準を満たし、及び/または米国食品医薬品局によって作成されたInactive Ingredient Guideに含まれている。
【0058】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」または「薬学的に適合する」とは、生物学的にまたは他の方法で望ましくない材料を意味し、例えば、材料は、任意の顕著な望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含有される組成物の他の成分のうちのいずれかと有害な方法で相互作用することなく、患者に投与される薬学的組成物に組み込まれてもよい。薬学的に許容される担体または賦形剤は、好ましくは、毒性試験及び製造試験の必要な基準を満たし、及び/または米国食品医薬品局によって作成されたInactive Ingredient Guideに含まれている。
【0059】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、実施形態「からなる」及び/または「から本質的になる」ことを含むと理解される。
【0060】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途指示されない限り、複数の対象を含む。
【0061】
本明細書で「約」の値またはパラメータを参照することは、その値またはパラメータをそれ自体で対象とする実施形態を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」と言う場合の記載は、「X」の記載を含む。
【0062】
本出願の組成物及び方法は、本明細書に記載された本出願の必須要素及び限定、ならびに本明細書に記載された、またはさもなくば有用な任意の追加的または任意の成分、構成要素、または限定を含むか、それらから構成されるか、またはそれらから本質的に構成されうる。
【0063】
特に断りのない限り、専門用語は従来の用法に従って使用される。
【0064】
キメラペプチド
本出願は、安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドを提供し、ここで、ブロッキングペプチドは、SPIKEとACE2との相互作用を特異的に遮断し、安定化ペプチドは、ブロッキングペプチドの二次構造または三次構造を安定化する。
【0065】
いくつかの実施形態では、キメラペプチドは、アミノ酸約5~約100個(アミノ酸約10~約80個、アミノ酸約10~約70個、アミノ酸約10~約60個、アミノ酸約10~約50個など)の長さを有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドが提供され、ブロッキングペプチドは、SPIKEとACE2との相互作用を特異的に遮断し、SPIKEの受容体結合ドメイン(RBD)内のループ配列を含み、安定化ペプチドは両親媒性ヘリックスを含む。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、CADY、VEPEP-106ペプチド、ADGN-100ペプチド、及びVEPEP-109ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、ブロッキングペプチドのC末端に連結される。いくつかの実施形態では、ループ配列は、アミノ酸約20個以下(例えばアミノ酸約7~18個)の長さを有する。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、C末端にリシン(K)を含む。いくつかの実施形態では、ループ配列は環状である。いくつかの実施形態では、ループ配列は、配列番号1~11及び42~46からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ループ配列は、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとはリンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。
【0067】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドが提供され、ブロッキングペプチドは、SPIKEとACE2との相互作用を特異的に遮断し、ACE2の細胞外ドメイン内の配列に由来する配列を含み、安定化ペプチドは両親媒性ヘリックスを含む。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、CADY、VEPEP-106ペプチド、ADGN-100ペプチド、及びVEPEP-109ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、ブロッキングペプチドのC末端に連結される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23~31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとはリンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。
【0068】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドが提供され、ブロッキングペプチドは、配列番号1、6、8~11、23、24、26~28、31、42、45及び47~52からなる群から選択される配列を含み、安定化ペプチドはADGN-100ペプチドまたはVEPEP-6ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとはリンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。
【0069】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドが提供され、ブロッキングペプチドは、配列番号1、6、及び8~11からなる群から選択される配列を含み、安定化ペプチドは配列番号55または97のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは環状である。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとはリンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。
【0070】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドが提供され、ブロッキングペプチドは、配列番号151、156、及び158~160からなる群から選択される環状ペプチドを含み、安定化ペプチドは配列番号55または97のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとはリンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。
【0071】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドが提供され、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含み、安定化ペプチドは配列番号55または97のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、及び31からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとはリンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、配列番号17、20、21、27、28、33、39、及び40に示されるアミノ酸配列を含むキメラペプチドが提供される。
【0073】
ブロッキングペプチド
本出願は、ブロッキングペプチド、及び本明細書に記載のブロッキングペプチドと安定化ペプチドとを含むキメラペプチドを提供する。
【0074】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、SPIKEの受容体結合ドメイン(RBD)内のループ配列、またはACE2(例えば、ヒトACE2)の細胞外ドメイン内の配列(例えば、ループ配列、αヘリックス、β鎖、またはこれらの組み合わせ)に由来する配列を含む。本明細書に記載のループ配列は、SPIKEまたはACEタンパク質の構造から選択され、β鎖またはαヘリックスであり得る2個の二次構造モチーフの間に位置する。ループ配列は環化されてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、ループ配列は、アミノ酸約50個以下(例えば、アミノ酸約40、35、30、25、または22個以下)の長さを有する。いくつかの実施形態では、ループ配列は、アミノ酸約20個以下(例えば、アミノ酸約18、15、12、または10個以下)の長さを有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、ループ配列は、アミノ酸約5~40個(例えば、アミノ酸約5~30個、アミノ酸5~25個、アミノ酸5~20個)の長さを有する。いくつかの実施形態では、ループ配列は、アミノ酸約7個~アミノ酸約18個の長さを有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、ループ配列は環状である。
【0078】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、C末端にリシン(K)を含む。リシンを用いることでリシン側鎖による連結を介してループの環化を促進することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、SPIKEの受容体結合ドメイン(RBD)内のループ配列を含む。いくつかの実施形態では、ループ配列は、SPIKEの受容体結合モチーフ(RBM)内にある。いくつかの実施形態では、ループ配列は、ループα4-β5、ループβ5-β6、及びループβ6-α5からなる群から選択されるRBM構造モチーフのいずれかのモチーフ内にある。
【0080】
いくつかの実施形態では、ループ配列は、配列番号1~11及び42~46からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ループ配列は、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号1、6及び8~11からなる群から選択される配列を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ACE2(例えば、ヒトACE2)の細胞外ドメイン内の配列(例えば、ループ配列、またはαヘリックスモチーフ)に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ヒトACE2のα1ヘリックス内の配列に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ヒトACE2のα1及びα2ヘリックス内の配列に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ヒトACE2のβ3とβ4鎖との間のループ配列に由来する配列を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、ACE2の細胞外ドメイン内の配列に由来する配列は、ACE2の細胞外ドメイン内の配列と配列のC末端の1個、2個または3個のアミノ酸が異なる。
【0083】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ACE2の細胞外ドメイン内の配列を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23~31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、及び31からなる群から選択される配列を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、遮断ペプチドは、配列番号151~160のいずれか1つから選択される環状ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号151、156及び158~160からなる群から選択される環状ペプチドを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号12~22及び24~41のいずれか1つから選択される非天然ペプチドを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ACE2(例えば、ヒトACE2)のα1及びα2ヘリックスに由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ACE2(例えば、ヒトACE2)のα1ヘリックスに由来する第1の配列と、ACE2(例えば、ヒトACE2)のα2ヘリックスに由来する第2の配列とを含む。いくつかの実施形態では、第1の配列は、配列番号47または48に示されるアミノ酸配列を含み、第2の配列は、配列番号49または50に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の配列は、配列番号51に示されるアミノ酸配列を含み、第2の配列は、配列番号52に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2の配列は、第1の配列のC末端に連結される。いくつかの実施形態では、第2の配列は、第1の配列のN末端に連結される。いくつかの実施形態では、第1の配列と第2の配列とは、リンカー(本明細書に記載のリンカーのいずれかなど)によって連結される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号27、38、39、40のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0088】
本明細書に記載のブロッキングペプチドは、ステープルされる。本明細書で使用される「ステープルされた」とは、ペプチド内の2個の残基間の化学結合を指す。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドはステープルされ、ペプチドの2個のアミノ酸間に化学結合を含む。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸は、3個または6個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸は、3個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2つのアミノ酸は、6個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはRまたはSである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはRである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはSである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸の一方はRであり、他方はSである。いくつかの実施形態では、化学結合は炭化水素結合である。
【0089】
いくつかの実施形態では、配列番号1~52及び151~160のいずれかのアミノ酸配列を含み、少なくとも1つ以上のアミノ酸がD-アミノ酸であるブロッキングペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドのアミノ酸の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%は、D-アミノ酸の形態である。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、D-アミノ酸で100%構成される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドの少なくとも一部は環状である。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドの少なくとも一部はαヘリックス構造を有する。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号12~22、24~41、及び151~160のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号151~160のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、配列番号1~22、42~46、及び151~160のいずれかのアミノ酸配列を含むブロッキングペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドの少なくとも一部は環状である。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドのアミノ酸の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%は、D-アミノ酸の形態である。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、D-アミノ酸で100%構成される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号151、156及び158~160からなる群から選択される環状ペプチドを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、配列番号23~41及び47~52のいずれかのアミノ酸配列を含むブロッキングペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドの少なくとも一部(例えば、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)はαヘリックス構造を有する。いくつかの実施形態では、非ヘリックス構造のアミノ酸の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%、または100%は、D-アミノ酸の形態である。いくつかの実施形態では、アミノ酸の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%、または95%、または100%は、レトロインベルソペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドの少なくとも一部(例えば、非ヘリックス構造の一部)はステープルされる。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドはステープルされ、ペプチドの2個のアミノ酸間に化学結合を含む。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸は、3個または6個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸は、3個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2つのアミノ酸は、6個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはRまたはSである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはRである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはSである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸の一方はRであり、他方はSである。いくつかの実施形態では、化学結合は炭化水素結合である。
【0092】
いくつかの実施形態では、配列番号12~22、24~41、及び151~160のいずれかのアミノ酸配列を含むブロッキングペプチド(または非天然ペプチド)が提供される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチド(または非天然ペプチド)は、アミノ酸約5~約100個(アミノ酸約10~約80個、アミノ酸約10~約70個、アミノ酸約10~約60個、アミノ酸約10~約50個など)の長さを有する。
【0093】
本出願はまた、第2の部分に連結された、本明細書に記載のブロッキングペプチドのいずれかを提供する。第2の部分は、ブロッキングペプチドの構造(二次構造、例えばループまたはヘリックス構造など)を安定化する。いくつかの実施形態では、第2の部分はPEG部分である。いくつかの実施形態では、第2の部分は脂質である。いくつかの実施形態では、第2の部分はナノ粒子である。いくつかの実施形態では、第2の部分は抗体である。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドの少なくとも一部は環状である。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号151~160(例えば、配列番号151、156、及び158~160)からなる群から選択される環状ペプチドを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、第2の部分はPEG部分(本明細書に記載のPEG部分のいずれかなど)である。ペプチドのPEG化は、αヘリックスの二次構造の促進、薬物送達の促進、結合体のインビボ循環時間など、様々な利点を与える。例えば、Hamed et al.(Biomacromolecules 2013,14,4053-4060)、Hamley(Biomacromolecules 2014,15,1543-1559)、及びLawrence et al.,(Curr Opin Chem Biol. 2016 October;34:88-94)を参照されたい。PEG部分をペプチドに連結する方法は、例えば、Hamed及びHamleyに記載の方法など、当該技術分野では周知のものである。いくつかの実施形態では、PEG部分は、約7、6、5、4、3、または2個以下の単位で構成される。いくつかの実施形態では、PEG部分は、2個または4個の単位で構成される。
【0095】
いくつかの実施形態では、第2の部分は、ウイルス(例えばコロナウイルス、例えばSARS-CoV-2)を標的とする、または中和する抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はナノボディーである。例示的な抗体は、例えば、Wang et al.(Nature Communications, volume 11,Article number:2251(2020))、及びPinto et al.,(Nature volume 583,pages 290-295(2020))に見ることができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、第2の部分はナノ粒子である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は金ナノ粒子(例えば、Auナノ粒子)である。ペプチドをナノ粒子に連結する一般的な原理及び方法は、例えば、Brancolini et al.(Current Opinion in Colloid & Interface Science 2019,41:86-94)に記載されるように当該技術分野では周知かつ認識されているものである。
【0097】
いくつかの実施形態では、第2の部分は脂質である。ペプチドの脂質化は、ペプチドベースの薬物の薬物動態及び薬力学プロファイルを促進する。例えば、Kowalczyk et al.(Adv Exp Med Biol. 2017;1030:185-227)及びWard et al.(Molecular Metabolism 2(2013)468-479)を参照されたい。脂質をペプチドに連結する方法は、例えば、Kowalcyzk及びWardに記載の方法など、当該技術分野では周知のものである。いくつかの実施形態では、脂質はアシル化剤である。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドはアシル化される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドはC8またはC16脂肪酸によりアシル化される。いくつかの実施形態では、C8またはC16脂肪酸は、直鎖炭化水素鎖にある。
【0098】
いくつかの実施形態では、第2の部分はペプチドのN末端に連結される。いくつかの実施形態では、第2の部分はペプチドのC末端に連結される。いくつかの実施形態では、第2の部分は、ペプチド内の1つ以上のアミノ酸に付加される(システイン、セリン、スレオニン、またはリシンに付加された脂質など)。
【0099】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドと第2の部分とは、リンカー(本明細書に記載のリンカーのいずれかなど)によって連結される。
【0100】
安定化ペプチド
いくつかの実施形態における安定化ペプチドは、両親媒性αヘリックス(または両親媒性ヘリックス)構造を含む。両親媒性ヘリックスは、極性/非極性界面と接触するとαヘリックス構造に折り畳まれるペプチド配列である。多くのタンパク質に見られる二次構造である両親媒性ヘリックスは、その構造と、ヘリックスの2つの面間での疎水性残基と極性残基との分離によって定義される。この分離のため両親媒性ヘリックス(AH)は極性-非極性界面に吸着することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはブロッキングペプチドのC末端に連結される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはブロッキングペプチドのN末端に連結される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはリンカー(本明細書に記載されるリンカーのいずれかなど)によってブロッキングペプチドに連結される。
【0102】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、アミノ酸約8個~アミノ酸約50個(例えば、アミノ酸約10個~約40個、例えば、アミノ酸約12個~約30個)の長さを有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、単一コアのヘリックスモチーフを含む。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは2個以上のヘリックスモチーフを含む。例示的な安定化ペプチドは、CADY(例えば、配列番号150)、VEPEP-106ペプチド、ADGN-100ペプチド、及びVEPEP-109ペプチドを含む。4つのペプチドはいずれも、膜を模倣した環境内で二次両親媒性ヘリックス構造をとり、一方の側にTrp基、もう一方の側に荷電残基、さらに別の側に疎水性残基を露出させる。CADYとVEPEP-6は同じ二次構造を有し、ペプチドのコア、C及びN末端にヘリックスモチーフがある(表1)。これに対し、ADGN-100及びVEPEP-9ペプチドは単一コアのヘリックスモチーフを有し、これはVEPEP-9でより長く、Konate et al 2010(Biochemistry),Crowlet et al 2014(BBA)と一致している。
【表1】
【0104】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、ADGN-100ペプチドまたはVEPEP-6ペプチドを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、本明細書に記載の安定化ペプチドのいずれかのレトロインベルソペプチド(例えば、逆配列のD-アミノ酸で構成され、伸長されると、その親分子のものと同様であるがアミドペプチド結合が反転した側鎖トポロジーをとるペプチド)である。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の安定化ペプチド(例えば、CADY、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、またはADGN-100ペプチド)はステープルされる。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはステープルされ、ペプチドの2個のアミノ酸間に化学結合を含む。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸は、3個または6個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸は、3個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2つのアミノ酸は、6個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはRまたはSである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはRである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはSである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸の一方はRであり、他方はSである。いくつかの実施形態では、化学結合は炭化水素結合である。
【0107】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、ACE2(例えば、ヒトACE2)に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチド及び安定化ペプチドはそれぞれ、ACE2(例えば、ヒトACE2)に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、配列番号49または50に示される配列を含む。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはブロッキングペプチドのN末端に連結される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはブロッキングペプチドのC末端に連結される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはリンカー(本明細書に記載されるリンカーのいずれかなど)によってブロッキングペプチドに連結される。
【0108】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号49、50、及び53~150のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0109】
ADGN-100ペプチド
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のADGN-100ペプチドはコアモチーフを含み、コアモチーフはアミノ酸配列RWRLWRX1X2X3X4SR(配列番号53)であり、ただし、X1はVまたはSであり、X2はR、V、またはAであり、X3はSまたはLであり、X4はWまたはYである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、その長さの約50%を超える範囲(例えば、約55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、及び95%のいずれかを超える範囲)にわたってαヘリックス構造の形をとる。例示的なADGN-100ペプチドは、例えば、本明細書に参照によりそれらの全容を援用するところのUS20190002499A1、EP3237436、及びWO2016/102687に記載されている。
【0110】
いくつかの実施形態では、ヘリックス構造は、S及びR残基の少なくとも2個(例えば、少なくとも3、4、5、6、7、または8個のいずれか)がヘリックス構造の一方の側にあり、W残基の少なくとも1個(例えば、少なくとも2、3、4、または5個のいずれか)がヘリックス構造の反対側にあるように構成される。いくつかの実施形態では、S及びR残基の大部分がヘリックス構造の一方の側にあり、W残基の大部分がヘリックス構造の反対側にある。いくつかの実施形態では、S及びR残基の全部がヘリックス構造の一方の側にあり、W残基の全部がヘリックス構造の反対側にある。いくつかの実施形態では、ヘリックス構造は、静電接触のパッチがヘリックス構造の一方の側に形成され、疎水性接触のパッチがヘリックス構造の他方の側に形成されるように構成される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、カーゴ分子の存在下で単一のヘリックスの形をとる。
【0111】
いくつかの実施形態では、ADGN-100ペプチドは、配列番号53~79のいずれか1つに示される配列を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、ADGN-100細胞透過性ペプチドは、アミノ酸配列RSX1X2X3RWRLWRX4X5X6X7SR(配列番号54)(ただし、X1はAまたはVであり、X2はGまたはLであり、X3はWまたはYであり、X4はVまたはSであり、X5はR、VまたはAであり、X6はSまたはLであり、X7はWまたはYである)を含む。いくつかの実施形態では、ADGN-100ペプチドは、アミノ酸配列RSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号55)、RSALYRWRLWRVRSWSR(配列番号56)、RSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号57)、またはRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号58)を含む。いくつかの実施形態では、ADGN-100ペプチドは、アミノ酸配列RSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号55)を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、ADGN-100細胞透過性ペプチドは、X1KWRSX2X3X4RWRLWRX5X6X7X8SR(配列番号59)(ただし、X1は任意のアミノ酸またはアミノ酸なしであり、X2~X8は任意のアミノ酸である)を含む。いくつかの実施形態では、ADGN-100細胞透過性ペプチドは、X1KWRSX2X3X4RWRLWRX5X6X7X8SR(ただし、X1はβA、S、またはアミノ酸なしであり、X2はAまたはVであり、X3はGまたはLであり、X4はWまたはYであり、X5はVまたはSであり、X6はR、V、またはAであり、X7はSまたはLであり、X8はWまたはYである)を含む。いくつかの実施形態では、ADGN-100細胞透過性ペプチドは、配列番号61~64のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のADGN-100ペプチドはコアモチーフを含み、コアモチーフはアミノ酸配列RWRLWRWSR(配列番号65)である。
【0115】
いくつかの実施形態では、ADGN-100ペプチドは、レトロインベルソペプチド(例えば、逆配列のD-アミノ酸で構成され、伸長されると、その親分子のものと同様であるがアミドペプチド結合が反転した側鎖トポロジーをとるペプチド)である。いくつかの実施形態では、レトロインベルソペプチドは、配列番号66または67の配列を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、ADGN-100ペプチドは、炭化水素結合によって連結された3個または6個の残基によって分離された2個の残基を含む。いくつかの実施形態では、この結合はキメラペプチドの安定性を高める。いくつかの実施形態では、ADGN-100ペプチドは、アミノ酸配列RSSAGWRSWRLWRVRSWSR (アミノ酸配列68)、RSSAGWRWRSLWRVRSWSR(アミノ酸配列69)、RSAGWRSWRLWRVRSSWSR(アミノ酸配列70)、RSSALYRSWRLWRSRSWSR(アミノ酸配列71)、RSSALYRWRSLWRSRSWSR(アミノ酸配列72)、RSALYRSWRLWRSRSSWSR(アミノ酸配列73)、RSALYRWRSLWRSSRSWSR(アミノ酸配列74)、RSALYRWRLWRSSRSWSSR(アミノ酸配列75)、RSSALYRWRSLWRSALYSR(アミノ酸配列76)、RSSALYRSWRLWRSALYSR(アミノ酸配列77)、RSALYRWRSLWRSSALYSR(アミノ酸配列78)、またはRSALYRWRLWRSSALYSSR(アミノ酸配列79)(ただし、下付き文字「S」で示された残基は、炭化水素結合によって連結されている)を含む。
【0117】
VEPEP-6ペプチド
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、VEPEP-6ペプチド(ADGN-106ペプチドまたはVEPEP-106ペプチドとも呼ばれる)を含む。本明細書に記載のVEPEP-6ペプチドは二次両親媒性ペプチドである。これらは非常に汎用性が高く、強い構造多型を示す。VEPEP-6は溶液中で遊離型としてアンフォールドし、脂質または人工細胞膜の存在下、及びカーゴ(siRNA/一本鎖及び二本鎖オリゴヌクレオチドなど)の存在下でαヘリックス構造の形をとる。例示的なVEPEP-6ペプチドについては、本明細書に参照によりその全容を援用するところのUS20140227344及びEP2694529を参照されたい。
【0118】
いくつかの実施形態では、VEPEP-6ペプチドは、LX1RALWX8LX2X8X3LWX8LX4X5X6X7(配列番号80)、LX1LARWX8LX2X8X3LWX8LX4X5X6X7(配列番号81)、LX1ARLWX8LX2X8X3LWX8LX4X5X6X7(配列番号82)、LX1RALWRLX2RX3LWRLX4X5X6X7(配列番号83)(ただし、X1はFまたはWであり、X2はL、W、CまたはIであり、X3はS、A、NまたはTであり、X4はLまたはWであり、X5はWまたはRであり、X6はKまたはRであり、X7はAまたはアミノ酸なしであり、X8はRまたはSである)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-6は、LX1RALWRLX2RX3LWRLX4X5KX6(配列番号84)(ただし、X1はFまたはWであり、X2はLまたはWであり、X3はS、AまたはNであり、X4はLまたはWであり、X5はWまたはRであり、X6はAまたはアミノ酸なしである)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-6ペプチドは、配列番号85~90のいずれか1つに示される配列を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-6ペプチドは、配列番号91~97のいずれか1つに示される配列を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-6ペプチドは、アミノ酸配列LWRALWRLWRSLWRLLWK(配列番号97)を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、VEPEP-6ペプチドはレトロインベルソペプチドである。いくつかの実施形態では、レトロインベルソペプチドは配列番号98の配列を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、VEPEP-6ペプチドは、炭化水素結合によって連結された3個または6個の残基によって分離された2個の残基を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-6ペプチドは、7位と11位の2個の残基の間に炭化水素結合を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-6ペプチドは、10位と14位の2個の残基の間に炭化水素結合を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-6ペプチドは、4位と11位の2個の残基の間に炭化水素結合を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-6ペプチドは、配列番号99~107のいずれか1つに示される配列を含む。
【0121】
VEPEP-9ペプチド
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、VEPEP-9ペプチド(またはVEPEP-109ペプチドとも呼ばれる)を含む。VEPEP-9c及びVEPEP-9eを除くVEPEP-9ペプチドは、二次両親媒性ペプチドであり、非常に汎用性が高く、強い構造多型を示す。
図11Bを参照されたい。VEPEP-9は溶液中で遊離型としてアンフォールドし、脂質または人工細胞膜の存在下、ならびにペプチド、SMH、及び低分子オリゴヌクレオチドなどのカーゴの存在下でαヘリックス構造の形をとる。これに対して、VEPEP-9c及びVEPEP-9eは、配列中のプロリン残基の存在により、コイル/ターン編成の形をとる。VEPEP-9cのN末端ドメインは、脂質または人工細胞膜の存在下、及びカーゴの存在下で、αヘリックス構造の形をとる。VEPEP-9c及びVEPEP-9eも安定化ペプチドとして機能することが予想される。本明細書に参照によりその全容を援用するところのWO2014/053624、US20160060296A1、及びEP2928908に記載される例示的なVEPEP-9ペプチドを参照されたい。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の複合体またはナノ粒子は、アミノ酸配列X1X2X3WWX4X5WAX6X3X7X8X9X10X11X12WX13R(配列番号108)(ただし、X1はβA、Sまたはアミノ酸なしであり、X2はLまたはアミノ酸なしであり、X3はRまたはアミノ酸なしであり、X4はL、RまたはGであり、X5はR、WまたはSであり、X6はS、PまたはTであり、X7はWまたはPであり、X8はF、AまたはRであり、X9はS、L、PまたはRであり、X10はRまたはSであり、X11はWまたはアミノ酸なしであり、X12はA、Rまたはアミノ酸なしであり、X13はWまたはFであり、X3がアミノ酸なしである場合、X2、X11及びX12もアミノ酸なしである)を含むVEPEP-9細胞浸透性ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-9ペプチドは、アミノ酸配列X1X2RWWLRWAX6RWX8X9X10WX12WX13R(配列番号109)(ただし、X1はβA、S、またはアミノ酸なしであり、X2はLまたはアミノ酸なし、X6はSまたはPであり、X8はFまたはAであり、X9はS、LまたはPであり、X10はRまたはSであり、X12はAまたはRであり、X13はWである)を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-9ペプチドは、X1LRWWLRWASRWFSRWAWWR(配列番号110)、X1LRWWLRWASRWASRWAWFR(配列番号111)、X1RWWLRWASRWALSWRWWR(配列番号112)、X1RWWLRWASRWFLSWRWWR(配列番号113)、X1RWWLRWAPRWFPSWRWWR(配列番号114)、及びX1RWWLRWASRWAPSWRWWR(配列番号115)(ただし、X1はβA、Sまたはアミノ酸なしである)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-9ペプチドは、X1WWX4X5WAX6X7X8RX10WWR(配列番号116)(ただし、X1はβA、Sまたはアミノ酸なしであり、X4はRまたはGであり、X5はWまたはSであり、X6はS、TまたはPであり、X7はWまたはPであり、X8はAまたはRであり、X10はSまたはRである)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-9ペプチドは、X1WWRWWASWARSWWR(配列番号117)、X1WWGSWATPRRRWWR(配列番号118)、及びX1WWRWWAPWARSWWR(配列番号119)(ただし、X1はβA、S、またはアミノ酸なしである)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-9ペプチドは、配列番号120または121に示される配列を含む。
【0123】
VEPEP-3ペプチド
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはVEPEP-3ペプチドを含む。VEPEP-3ペプチドは、一次両親媒性ペプチドであり、非常に汎用性が高く、強い構造多型を示す。VEPEP-3ペプチドは溶液中で遊離型としてアンフォールドし、脂質または人工細胞膜の存在下、ならびにペプチドまたはタンパク質などのカーゴの存在下でN末端部分がαヘリックス構造の形をとる。例示的なVEPEP-3ペプチドは、例えば、本明細書に参照によりそれらの全容を援用するところのWO2014/053622、US20160089447、及びEP2951196に記載されている。
【0124】
いくつかの実施形態では、VEPEP-3ペプチドは、アミノ酸配列X1X2X3X4X5X2X3X4X6X7X3X8X9X10X11X12X13(配列番号122)(ただし、X1はβA、Sまたはアミノ酸なしであり、X2はK、RまたはLであり(互いに独立して)、X3はFまたはWであり(互いに独立して)、X4はF、WまたはYであり(互いに独立して)、X5はE、RまたはSであり、X6はR、TまたはSであり、X7はE、R、またはSであり、X8はアミノ酸なし、FまたはWであり、X9はPまたはRであり、X10はRまたはLであり、X11はK、WまたはRであり、X12はRまたはFであり、X13はRまたはKである)を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-3ペプチドは、アミノ酸配列X1X2WX4EX2WX4X6X7X3PRX11RX13(配列番号123)(ただし、X1はβA、Sまたはアミノ酸なしであり、X2はK、RまたはLであり、X3はFまたはWであり、X4はF、WまたはYであり、X5はE、RまたはSであり、X6はR、TまたはSであり、X7はE、R、またはSであり、X8はアミノ酸なし、FまたはWであり、X9はPまたはRであり、X10はRまたはLであり、X11はK、WまたはRであり、X12はRまたはFであり、X13はRまたはKである)を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-3ペプチドは、アミノ酸配列X1KWFERWFREWPRKRR(配列番号124)、X1KWWERWWREWPRKRR(配列番号125)、X1KWWERWWREWPRKRK(配列番号126)、X1RWWEKWWTRWPRKRK(配列番号127)、またはX1RWYEKWYTEFPRRRR(配列番号128)(ただし、X1はβA、Sまたはアミノ酸なしである)を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-3ペプチドは、アミノ酸配列X1KX14WWREWWRX14WPRKRK(配列番号129)(ただし、X1はβA、S、またはアミノ酸なしであり、X14は非天然アミノであり、2個の非天然アミノ酸間に炭化水素結合がある)を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-3ペプチドは、アミノ酸配列X1X2X3WX5X10X3WX6X7WX8X9X10WX12R(配列番号130)(ただし、X1はβA、Sまたはアミノ酸なしであり、X2はK、RまたはLであり、X3はFまたはWであり、X5はRまたはSであり、X6はRまたはSであり、X7はRまたはSであり、X8はFまたはWであり、X9はRまたはPであり、X10はLまたはRであり、X12はRまたはFである)を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-3ペプチドは、アミノ酸配列X1RWWRLWWRSWFRLWRR(配列番号131)、X1LWWRRWWSRWWPRWRR(配列番号132)、X1LWWSRWWRSWFRLWFR(配列番号133)、またはX1KFWSRFWRSWFRLWRR(配列番号134))(ただし、X1はβA、Sまたはアミノ酸なしである)を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-3ペプチドは、配列番号122~134のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、細胞透過性ペプチドは、非天然アミノ酸による5位及び12位のアミノ酸の置換、及び2個の非天然アミノ酸間の炭化水素結合の付加によって改変されている。いくつかの実施形態では、VEPEP-3ペプチドは、アミノ酸配列X1RWWX14LWWRSWX14RLWRR(配列番号135)(ただし、X1はベータアラニン、セリン、またはアミノ酸なしであり、X14は非天然アミノ酸であり、2個の非天然アミノ酸間に炭化水素結合がある)を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-3ペプチドは、配列番号136または137に示される配列を含む。
【0125】
VEPEP-4ペプチド
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはVEPEP-4ペプチドを含む。VEPEP-4ペプチドは、両親媒性ペプチドであり、非常に汎用性が高く、強い構造多型を示す。VEPEP-4ペプチドは溶液中、ならびに脂質または人工細胞膜の存在下、またはペプチドもしくは小分子などのカーゴの存在下で遊離型としてアンフォールドする。例示的なVEPEP-4ペプチドは、例えば、本明細書に参照によりそれらの全容を援用するところのUS20160115199A1、WO2014/053628、及びEP2928906に記載されている。
【0126】
いくつかの実施形態では、VEPEP-4ペプチドは、アミノ酸配列XWXRLXXXXXXX(配列番号138)(ただし、1位のXはβA、S、またはアミノ酸なしであり、3、9及び10位のXは互いに独立してWまたはFであり、8位のXがSである場合、6位のXはRであり、8位のXがRの場合、6位のXはSであり、7位のXはLまたはアミノ酸なしであり、11位のXはRまたはアミノ酸なしであり、11位のXがアミノ酸なしである場合、7位のXはLである)を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-4ペプチドは、配列番号138~142のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
VEPEP-5ペプチド
【0127】
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはVEPEP-5ペプチドを含む。VEPEP-5は短い一次ペプチドであり、場合によっては二次両親媒性ペプチドであり、ペプチド、ペプチド類似体、PNA、及び疎水性小分子(small hydrophobic molecules;以下、「SHM」として示す)などの分子と安定したナノ粒子を形成する。例示的なVEPEP-5ペプチドは、例えば、本明細書に参照によりそれらの全容を援用するところのUS20160145299A1、WO2014/053629、及びEP2928907に記載されている。
【0128】
いくつかの実施形態では、VEPEP-5ペプチドは、アミノ酸配列RXWXRLWXRLR(配列番号143)(ただし、2位のXはRまたはSであり、4及び8位のXは互いに独立してWまたはFである)を含む。いくつかの実施形態では、VEPEP-5ペプチドは、配列番号144~149のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0129】
リンカー
いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、リンカーによりブロッキングペプチドに連結される。
【0130】
いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリグリシンリンカーを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、β-アラニンを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも約2個、3個、または4個のグリシン、場合により連続したグリシンを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、セリンを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGS(配列番号186)またはSGGGG(配列番号187)配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-β-アラニンモチーフを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、1つ以上の部分は、ポリマー(例えば、PEG、ポリリシン、PET)を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、CPPのN末端に結合される。いくつかの実施形態では、ポリマーは、CPPのC末端に結合される。いくつかの実施形態では、第1のポリマーはCPPのN末端に結合され、第2のポリマーはCPPのC末端に結合される。いくつかの実施形態では、ポリマーは、PEGである。いくつかの実施形態において、PEGは、直鎖状PEGである。いくつかの実施形態において、PEGは、分枝状PEGである。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、約5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、30kDa、または40kDa以下である。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、少なくとも約5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、30kDa、または40kDaである。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、約5kDa~約10kDa、約10kDa~約15kDa、約15kDa~約20kDa、約20kDa~約30kDa、または約30kDa~約40kDaである。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、約5kDa、10kDa、20kDa、または40kDaである。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、5kDa、10kDa、20kDaまたは40kDaから選択される。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、約5kDaである。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、約10kDaである。いくつかの実施形態では、PEGは、少なくとも約1、2、または3個のエチレングリコール単位を含む。いくつかの実施形態では、PEGは、約10、9、8、または7個のエチレングリコール単位で構成される。いくつかの実施形態では、PEGは、約1、2、または3個のエチレングリコール単位で構成される。いくつかの実施形態では、PEG部分は、約1~8個、または約2~約7個のエチレングリコール単位で構成される。
【0132】
いくつかの実施形態では、リンカーは、ベータアラニン、システイン、システアミド架橋、ポリグリシン(G2またはG4など)、Aun(11-アミノ-ウンデカン酸)、Ava(5-アミノペンタン酸)、及びAhx(アミノカプロン酸)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、Aun(11-アミノ-ウンデカン酸)を含む。いくつかの実施形態では、リンカー部分はAva(5-アミノペンタン酸)を含む。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、Ahx(アミノカプロン酸)を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリンを含む。プロリンは、ブロックドメインと安定化ドメインの間の二次構造にキンクを形成する。
【0134】
いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分(例えば、約2~7個のエチレングリコール単位で構成される)、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。
【0135】
本明細書に記載のキメラペプチド、ブロッキングペプチド、または安定化ペプチドのいずれかをコードする核酸も想到される。
【0136】
siRNA
本出願は、SARS-CoV-2ウイルスを標的とする新規siRNAを提供する。
【0137】
いくつかの実施形態では、siRNAは、SARS-CoV-2のヌクレオカプシドを標的とする。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号161~170のいずれか1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号163、166、168、及び170からなる群から選択される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは配列番号166の核酸配列を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、siRNAは、SARS-CoV-2のORF3A遺伝子を標的とする。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号171~175のいずれか1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号171、173、及び174からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、siRNAは、SARS-CoV-2のORF8遺伝子を標的とする。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号176~179のいずれか1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号177、178、及び180からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、siRNAを修飾することができる(例えば、化学的に修飾する)。修飾の例としては、3’末端デオキシチミン、2’-O-メチル、2’-デオキシ修飾、2’-アミノ修飾、2’-アルキル修飾、モルホリノ修飾、ホスホルアミデート修飾、5’-ホスホロチオエート基修飾、5’リン酸または5’リン酸模倣体修飾、コレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基修飾が挙げられるが、これらに限定されない。修飾ヌクレオチドは、ロックヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、またはヌクレオチドを含む非天然塩基のいずれであってもよい。
【0141】
本明細書ではまた、以下に記載されるような複合体、ナノ粒子、組成物を含むがこれらに限定されない、上記に述べたようなキメラペプチド、ブロッキングペプチド、またはsiRNAのいずれかを含む複合体、ナノ粒子、組成物も提供される。
【0142】
ウイルス、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、及びコンジュゲーションを含む(ただし、これらに限定されない)本出願に記載のキメラペプチド、ブロッキングペプチド、またはsiRNA、複合体、ナノ粒子、及び組成物のいずれかを送達するための多くの送達システムを使用して、キメラペプチド(複数可)、ブロッキングペプチド(複数可)及び/またはsiRNAを宿主細胞に導入することができる。従来のウイルス及び非ウイルスベースの遺伝子導入方法を用いて哺乳類細胞または標的組織に核酸を導入することができる。このような方法を使用して、本発明のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドをコードする核酸を、培養細胞または宿主生物に投与することができる。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書に記載のコンストラクトの転写産物)、ネイキッド核酸、及びリポソームなどの送達ビヒクルと複合体を形成させた核酸が挙げられる。
【0143】
核酸の非ウイルス送達の方法としては、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティックス、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、エレクトロポレーション、ナノ粒子、エクソソーム、マイクロベシクル、または遺伝子銃、ネイキッドDNA、及び人工ビリオンが挙げられる。
【0144】
核酸を送達するためのRNAまたはDNAウイルスベースの系の使用は、ウイルスを体内の特定の細胞に標的化し、及び/またはウイルスペイロードを細胞核に輸送するうえで高い効率を有する。
【0145】
複合体及びナノ粒子
本出願は、a)本明細書に記載されるもののいずれかのようなキメラペプチド、ブロッキングペプチド、またはsiRNAを含むカーゴと、b)第2のペプチドと、を含む複合体であって、キメラペプチド、ブロッキングペプチド、またはsiRNAが第2のペプチドと複合体を形成している、複合体を提供する。本明細書に記載の複合体のいずれかを含むナノ粒子も提供される。いくつかの実施形態では、a)本明細書に記載されるもののいずれかのようなキメラペプチド、ブロッキングペプチド、またはsiRNAを含むカーゴと、b)第2のペプチドと、を含むナノ粒子が提供される。
【0146】
いくつかの実施形態では、a)ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとを含むキメラペプチドを含むカーゴであって、ブロッキングペプチドがSPIKEとACE2との相互作用を特異的にブロックし、SPIKEの受容体結合ドメイン(RBD)内のループ配列を含み、安定化ペプチドが両親媒性ヘリックスを含む、カーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、CADY、VEPEP-6ペプチド、ADGN-100ペプチド、およびVEPEP-9ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはブロッキングペプチドのC末端に連結される。いくつかの実施形態では、ループ配列は、アミノ酸約20個以下(例えばアミノ酸約7~18個)の長さを有する。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、C末端にリシン(K)を含む。いくつかの実施形態では、ループ配列は環状である。いくつかの実施形態では、ループ配列は、配列番号1~11及び42~46からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ループ配列は、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとはリンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとキメラペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはキメラペプチドと複合体を形成する。
【0147】
いくつかの実施形態では、a)ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとを含むキメラペプチドを含むカーゴであって、ブロッキングペプチドがSPIKEとACE2との相互作用を特異的にブロックし、ACE2の細胞外ドメイン内の配列に由来する配列を含み、安定化ペプチドが両親媒性ヘリックスを含む、カーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、CADY、VEPEP-106ペプチド、ADGN-100ペプチド、及びVEPEP-109ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドはブロッキングペプチドのC末端に連結される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23~31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドと安定化ペプチドとはリンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとキメラペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはキメラペプチドと複合体を形成する。
【0148】
いくつかの実施形態では、a)安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドを含むカーゴであって、ブロッキングペプチドが配列番号1、6、8~11、23、24、26~28、31、42、45及び47~52からなる群から選択される配列を含み、安定化ペプチドが、リンカーによってブロッキングペプチドのC末端に連結されたADGN-100ペプチドまたはVEPEP-6ペプチドを含む、カーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、CADY、VEPEP-106ペプチド、ADGN-100ペプチド、及びVEPEP-109ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとキメラペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはキメラペプチドと複合体を形成する。
【0149】
いくつかの実施形態では、a)リンカーによって安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチド(例えば、ブロッキングペプチドのC末端に連結される)を含むキメラペプチドを含むカーゴであって、ブロッキングペプチドが、配列番号1、6、及び8~11からなる群から選択される配列を含み、安定化ペプチドが、配列番号55または97のアミノ酸配列を含む、カーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、CADY、VEPEP-106ペプチド、ADGN-100ペプチド、及びVEPEP-109ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとキメラペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはキメラペプチドと複合体を形成する。
【0150】
いくつかの実施形態では、a)リンカーによって安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチド(例えば、ブロッキングペプチドのC末端に連結される)を含むキメラペプチドを含むカーゴであって、ブロッキングペプチドが、配列番号151、156、及び158~160からなる群から選択される環状ペプチドを含み、安定化ペプチドが、配列番号55または97のアミノ酸配列を含む、カーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体が提供される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、CADY、VEPEP-106ペプチド、ADGN-100ペプチド、及びVEPEP-109ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとキメラペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはキメラペプチドと複合体を形成する。
【0151】
いくつかの実施形態では、a)リンカーによって安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチド(例えば、ブロッキングペプチドのC末端に連結される)を含むキメラペプチドを含むカーゴであって、ブロッキングペプチドが、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含み、安定化ペプチドが、配列番号55または97のアミノ酸配列を含む、カーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、CADY、VEPEP-106ペプチド、ADGN-100ペプチド、及びVEPEP-109ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとキメラペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはキメラペプチドと複合体を形成する。
【0152】
いくつかの実施形態では、a)配列番号17、20、21、27、28、33、39、及び40に示されるアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含むカーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、安定化ペプチドは、CADY、VEPEP-106ペプチド、ADGN-100ペプチド、及びVEPEP-109ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとキメラペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはキメラペプチドと複合体を形成する。
【0153】
いくつかの実施形態では、a)配列番号27、38、39、40のいずれか1つのアミノ酸配列を含むブロッキングペプチドを含むカーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体が提供される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとブロッキングペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはブロッキングペプチドと複合体を形成する。
【0154】
いくつかの実施形態では、a)配列番号12~22、24~41、及び151~160のいずれかのアミノ酸配列を含むブロッキングペプチドを含むカーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとブロッキングペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはブロッキングペプチドと複合体を形成する。
【0155】
いくつかの実施形態では、a)配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含むブロッキングペプチドを含むカーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとブロッキングペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはブロッキングペプチドと複合体を形成する。
【0156】
いくつかの実施形態では、a)SARS-CoV-2のヌクレオカプシドを標的とするsiRNAを含むカーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとsiRNAとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約5:1~約50:1、約20:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはブロッキングペプチドと複合体を形成する。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号161~170のいずれか1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号163、166、168、及び170からなる群から選択される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは配列番号166の核酸配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、a)配列番号163、166、168、及び170(例えば、配列番号66)からなる群から選択される核酸配列を含むsiRNAを含むカーゴと、b)ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)からなる群から選択される第2のペプチドとを含み、siRNAが第2のペプチドと複合体を形成している、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとsiRNAとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約5:1~約50:1、約20:1)である。
【0158】
いくつかの実施形態では、a)i)配列番号17、20、21、27、28、33、39、及び40に示されるアミノ酸配列を含むキメラペプチドと、ii)配列番号163、166、168、及び170(例えば、配列番号166)からなる群から選択される核酸配列を含むsiRNAと、を含むカーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとsiRNAとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約5:1~約50:1、約20:1)である。いくつかの実施形態において、第2のペプチドとキメラペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。
【0159】
いくつかの実施形態では、a)i)配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含むブロッキングペプチドと、ii)配列番号163、166、168、及び170(例えば、配列番号166)からなる群から選択される核酸配列を含むsiRNAと、を含むカーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む、複合体またはナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号53~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号80~107からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、配列番号108~121からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドとsiRNAとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約5:1~約50:1、約20:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドとブロッキングペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。
【0160】
カーゴ分子
いくつかの実施形態では、上記に述べた複合体またはナノ粒子のカーゴ分子は、核酸(例えば、本明細書に記載のsiRNAのいずれか)、ペプチド(例えば、本明細書に記載のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドのいずれか)、及びペプチド/核酸複合体からなる群から選択される。
【0161】
核酸
いくつかの実施形態では、上記に述べた複合体またはナノ粒子のカーゴ分子は、核酸を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、一本鎖または二本鎖のオリゴ及びポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、様々な形態のRNAi(例えばsiRNA、shRNAなど)、マイクロRNA(miRNA)、アンタゴマー、リボザイム、アプタマー、プラスミドDNAなど、及びそれらの1つ以上の適当な組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、核酸は、siRNA、miRNA、shRNA、gRNA、mRNA、DNA、DNAプラスミド、オリゴヌクレオチド及びそれらの類似体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、核酸はmRNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸はRNAiを含む。いくつかの実施形態では、核酸はmRNA及びRNAiを含み、mRNAは疾患または状態を治療するための治療用タンパク質をコードし、RNAiはRNAを標的とし、RNAの発現はSARS-CoV-2、またはSARS-CoV-2に関連する疾患もしくは状態に関連する。いくつかの態様では、細胞透過性ペプチドと核酸とのモル比は、約1:1~約100:1である。
【0162】
いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、核酸は二本鎖オリゴヌクレオチドである。本明細書に記載の核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、siRNA、shRNA、iRNA、アンタゴマーの場合には必ずしもではないが最大200ヌクレオチドまで、またはプラスミドDNAの場合には最大1000キロ塩基までの範囲の長さのいずれであってもよい。
【0163】
いくつかの実施形態では、核酸は、siRNA(例えば、本明細書に記載のsiRNAのいずれか)またはshRNAのような干渉RNAである。「干渉RNA」または「RNAi」または「干渉RNA配列」という用語は、干渉RNAが標的遺伝子または配列と同じ細胞内にある場合に、標的遺伝子または配列の発現を低減または阻害することができる(例えば、干渉RNA配列に相補的なmRNAの分解を媒介するかまたはその翻訳を阻害することにより)一本鎖RNA(例えば、成熟miRNA)または二本鎖RNA(すなわち、siRNA、aiRNA、またはpre-miRNAなどの二重鎖RNA)のことを指し、したがって、干渉RNAとは、標的mRNA配列に相補的な一本鎖RNA、または2本の相補鎖若しくは単一の自己相補鎖によって形成される二本鎖RNAのことを指す。干渉RNAは、標的遺伝子または配列に対して実質的または完全な同一性を有してもよく、またはミスマッチ領域(すなわち、ミスマッチモチーフ)を含んでもよい。干渉RNAの配列は、全長標的遺伝子またはその部分配列に対応することができる。干渉RNAには、「低分子干渉RNA」または「siRNA」が含まれ、例えば、約15~60、15~50、または5~40(二重鎖)ヌクレオチドの長さ、より典型的には約15~30、15~25、または19~25(二重鎖)ヌクレオチドの長さ、好ましくは約20~24、21~22、または21~23(二重鎖)ヌクレオチドの長さの干渉RNAが含まれる(例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は、15~60、15~50、15~40、15~30、15~25、または19~25ヌクレオチドの長さ、好ましくは約20~24、21~22、または21~23ヌクレオチドの長さであり、二本鎖siRNAは約15~60、15~50、15~40、5~30、5~25、または19~25塩基対の長さ、好ましくは約8~22、9~20、または19~21塩基対の長さである)。
【0164】
いくつかの実施形態では、核酸は二本鎖アンチセンスRNAである。干渉RNAの適当な長さは、約5~約200ヌクレオチド、または10~50ヌクレオチドもしくは塩基対、または15~30ヌクレオチドもしくは塩基対である。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、対応する標的遺伝子と実質的に相補的(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上同一)である。いくつかの実施形態では、アンチセンスRNAは、例えば、非天然ヌクレオチドを組み込むことによって改変される。
【0165】
いくつかの実施形態では、核酸は、SARS-COV-2またはSARS-COV-2に関連する疾患に関与するタンパク質をコードするmRNAなどのRNA分子を特異的に標的とするsiRNAなどの干渉RNAである。
【0166】
いくつかの実施形態では、siRNAは、SARS-CoV-2のヌクレオカプシドを標的とする。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号161~170のいずれか1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号163、166、168、及び170からなる群から選択される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは配列番号166の核酸配列を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、siRNAは、SARS-CoV-2のORF3A遺伝子を標的とする。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号171~175のいずれか1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号171、173、及び174からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、siRNAは、SARS-CoV-2のORF8遺伝子を標的とする。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号176~179のいずれか1つの核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号177、178、及び180からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0169】
いくつかの実施形態において、核酸はmiRNAである。マイクロRNA(miRNAと略される)は、真核細胞に見られる短いリボ核酸(RNA)分子である。マイクロRNA分子は、他のRNAと比較して非常に少ない数のヌクレオチド(平均22個)を有する。miRNAは、標的のメッセンジャーRNA転写産物(mRNA)上の相補配列に結合する転写後制御因子であり、通常は翻訳抑制または標的の分解及び遺伝子サイレンシングをもたらす。ヒトゲノムは、1000種以上のmiRNAをコードしていると考えられるが、これは哺乳類遺伝子の約60%を標的にできると考えられ、多くのヒト細胞型に豊富に存在している。miRNAの適当な長さは、約5~約200ヌクレオチド、または0~50ヌクレオチドもしくは塩基対、または15~30ヌクレオチドもしくは塩基対である。いくつかの実施形態では、miRNAは、対応する標的遺伝子と実質的に相補的(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上同一)である。いくつかの実施形態では、アンチセンスRNAは、例えば、非天然ヌクレオチドを組み込むことによって改変される。
【0170】
いくつかの実施形態では、核酸は、プラスミドDNAまたはDNAフラグメント(例えば、約1000bp以下の長さのDNAフラグメント)である。さらに、プラスミドDNAまたはDNAフラグメントは、高メチル化または低メチル化されてもよい。いくつかの実施形態では、プラスミドDNAまたはDNAフラグメントは1つ以上の遺伝子をコードし、前記1つ以上の遺伝子の発現に必要な調節エレメントを含み得る。いくつかの実施形態では、プラスミドDNAまたはDNAフラグメントは、適当な宿主細胞中でのプラスミドDNAまたはDNAフラグメントの維持を可能とする選択マーカーをコードする1つ以上の遺伝子を含んでもよい。
【0171】
ペプチド
いくつかの実施形態では、カーゴ分子は、ACE2とSPIKEとの相互作用を阻害するブロッキングペプチド(例えば、本明細書に記載のブロッキングペプチドのいずれか)を含む。いくつかの実施形態では、カーゴ分子は、本明細書に記載のキメラペプチドのいずれかなどのキメラペプチドを含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、カーゴ分子は、ACE2(例えば、ヒトACE2)を特異的に標的とするブロッキングペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、スパイクタンパク質(例えば、ヒトACE2)に由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、SPIKEの受容体結合ドメイン(RBD)内のループ配列を含む。いくつかの実施形態では、ループ配列は、SPIKEの受容体結合モチーフ(RBM)内にある。いくつかの実施形態では、ループ配列は、ループα4-β5、ループβ5-β6、及びループβ6-α5からなる群から選択されるRBM構造モチーフのいずれかのモチーフ内にある。
【0173】
いくつかの実施形態では、ループ配列は、配列番号1~11及び42~46からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ループ配列は、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号1、6及び8~11からなる群から選択される配列を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、カーゴ分子は、スパイクタンパク質を特異的に標的とする阻害ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、阻害ペプチドは、ACE2(例えば、ヒトACE2)に由来するアミノ酸配列を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ACE2(例えば、ヒトACE2)の細胞外ドメイン内の配列(例えば、ループ配列、またはαヘリックスモチーフ)に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ヒトACE2のα1ヘリックス内の配列に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ヒトACE2のα1及びα2ヘリックス内の配列に由来する配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ヒトACE2のβ3とβ4鎖との間のループ配列に由来する配列を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、ACE2の細胞外ドメイン内の配列に由来する配列は、ACE2の細胞外ドメイン内の配列と配列のC末端の1個、2個または3個のアミノ酸が異なる。
【0177】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、ACE2の細胞外ドメイン内の配列を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23~31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、及び31からなる群から選択される配列を含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、遮断ペプチドは、配列番号151~160のいずれか1つから選択される環状ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号151、156及び158~160からなる群から選択される環状ペプチドを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号12~22及び24~41のいずれか1つから選択される非天然ペプチドを含む。
【0181】
ペプチド/核酸複合体
いくつかの実施形態では、カーゴは、a)核酸(例えば、SARS-COV-2またはそれに関連する疾患に関与するタンパク質をコードする、mRNAなどのRNA分子を特異的に標的とするsiRNA)と、b)ACE2とSPIKEとの相互作用を阻害するブロッキングペプチドと、を含む2つ以上のカーゴ分子を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、SARS-CoV-2のヌクレオカプシドを標的とするsiRNAでる。
【0182】
いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドとsiRNAとのモル比は、約1:5~約50:1(例えば、約1:1~約20:1、約2:1~約10:1、約4:1)である。
【0183】
例示的な核酸には、本明細書に記載のsiRNAのいずれも含まれる。いくつかの実施形態では、核酸は、配列番号163、166、168、及び170からなる群から選択される核酸配列を含むsiRNAを含む。いくつかの実施形態では、siRNAは配列番号166の核酸配列を含む。
【0184】
例示的なブロッキングペプチドには、本明細書に記載のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドのいずれも含まれる。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、a)配列番号151、156、及び158~160からなる群から選択される環状ペプチド、またはb)配列番号1、6、8~11、12、17、19~24、26~28、31~33、35、38~40、45、47、48、50、及び52からなる群から選択される配列を含むペプチドを含む。
【0185】
第2のペプチド
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第2のペプチドは、カーゴと複合体を形成した後、ナノ構造(例えば、直径200nm以下の)に自己集合することができる。
【0186】
第2のペプチドは、上記に述べた安定化ペプチドのいずれであってもよい。
【0187】
細胞透過性ペプチド
いくつかの実施形態では、第2のペプチドは細胞透過性ペプチドである。細胞透過性ペプチド(CPP)は、有望な非ウイルス手法の1つである。CPPの定義は常に変化してきているが、一般に、タンパク質またはキメラ配列のいずれかに由来するアミノ酸30個未満の短いペプチドとして説明されている。CPPは通常、両親媒性であり、正味の正電荷を持っている(Langel U(2007)Handbook of Cell-Penetrating Peptides(CRC Taylor & Francis, Boca Raton);Heitz et al.(2009)Br J Pharmacol 157,195-206)。CPPは生体膜を透過し、細胞質中へと細胞膜を通過するへの様々な生体分子の移動を誘発し、それらの細胞内経路を改善することで、標的との相互作用を促進することができる。CPPは2つの主要なクラスに分類され、1つ目はカーゴとの化学結合を必要とするもので、2つ目は安定した非共有結合複合体の形成を伴うものである。いずれの手法のCPPも、広範な細胞型及びインビボモデルへの様々なカーゴ(プラスミドDNA、オリゴヌクレオチド、siRNA、PNA、タンパク質、ペプチド、リポソーム、ナノ粒子など)の送達を助けることが報告されている(Langel U(2007)Handbook of Cell-Penetrating Peptides(CRC Taylor & Francis,Boca Raton);Heitz et al.(2009)Br J Pharmacol 157,195-206;Mickan et al.(2014)Curr Pharm Biotechnol 15,200-209;Shukla et al.(2014)Mol Pharm 11,3395-3408)。
【0188】
タンパク質伝達ドメイン(PTD)の概念は、ある種のタンパク質(主に転写因子)が細胞内及び細胞間を往来できるという観察に基づいて最初に提案された(レビューについては、Langel U(2007)Handbook of Cell-Penetrating Peptides(CRC Taylor & Francis,Boca Raton);Heitz et al.(2009)Br J Pharmacol 157,195-206を参照)。最初の観察は、1988年にFrankelとPaboによって行われた。彼らは、HIV-1の転写トランス活性化(Tat)タンパク質が細胞内に入り、核内に移行できることを示した。1991年、Prochiantzのグループは、ショウジョウバエのアンテナペディアホメオドメインについて同じ結論に達し、このドメインが神経細胞に内在化されることを実証した。これらの研究は、1994年の最初のタンパク質伝達ドメイン(ペネトラチンと名付けられたアンテナペディアのホメオドメインの3番目のヘリックスに由来する16量体ペプチド)の発見の起源となった。1997年、Lebleuのグループは、細胞取り込みに必要なTatの最小配列を特定し、インビボでのPTDの応用の最初の概念実証が、低分子ペプチド及び高分子タンパク質の送達についてDowdyのグループによって報告された(Gump JM, and Dowdy SF(2007)Trends Mol Med 13,443-448.)。歴史的には、細胞透過性ペプチド(CPP)の概念は、1998年にLangelのグループによって導入され、スズメバチ毒ペプチドであるマストパランに連結された神経ペプチドガラニンのN末端フラグメントに由来する最初のキメラペプチドキャリアとしてトランスポータンが設計された。トランスポータンは、培養細胞とインビボの両方でPNA(ペプチド核酸)の送達を改善することが最初に報告されている(Langel U(2007)Handbook of Cell-Penetrating Peptides(CRC Taylor & Francis,Boca Raton))。1997年に、HeitzとDivitaのグループは、CPPがカーゴとの安定した非共有複合体の形成に関与する新しい手法を提案した(Morris et al.(1997)Nucleic Acids Res 25,2730-2736)。この手法は、最初、親水性(極性)ドメインと疎水性(無極性)ドメインの2つのドメインからなる短いペプチドキャリア(MPG)に基づいたものであった。MPGは核酸の送達用に設計されたものである。その後、一次両親媒性ペプチドPep-1が、タンパク質及びペプチドの非共有結合的送達について提案された(Morris et al.(2001)Nat Biotechnol 19,1173-1176)。その後、WenderとFutakiのグループにより、ポリアルギニン配列(Arg8)が低分子及び高分子を細胞内にインビボで誘導するのに十分であることが示された(Nakase et al.(2004) Mol Ther 10,1011-1022;Rothbard et al. (2004))J Am Chem Soc 126, 9506-9507)。それ以来、天然または非天然の配列に由来する多くのCPPが同定され、そのリストは常に増え続けている。単純ヘルペスウイルスのVP22タンパク質、カルシトニン、抗菌ペプチドまたは毒素ペプチド、細胞周期の調節に関与するタンパク質、及びポリプロリンリッチペプチドに由来するペプチドが得られている(Heitz et al.(2009)Br J Pharmacol 157,195-206)。最近では、二次両親媒性CPPに基づいた新しい非共有結合的手法が記載されている。上記に述べたCADY及びVEPEPファミリーのようなこれらのペプチドは、分子の異なる側に親水性及び疎水性残基を有するヘリックス形状(すなわち、両親媒性ヘリックス)に自己集合することができる。WO2014/053879は、VEPEP-3ペプチドを開示し、WO2014/053881は、VEPEP-4ペプチドを開示し、WO2014/053882は、VEPEP-5ペプチドを開示し、WO2012/137150は、VEPEP-6ペプチドを開示し、WO2014/053880は、VEPEP-9ペプチドを開示し、WO2016/102687は、ADGN-100ペプチドを開示し、US2010/0099626は、CADYペプチドを開示し、米国特許第7,514,530号は、MPGペプチドを開示しており、これらの開示内容の全体を参照により本明細書に援用するものである。
【0189】
いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、CADY、MPG、PEP-1ペプチド(例えば、配列番号181)、PEP-2ペプチド(例えば、配列番号182)、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはADGN-100ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはVEPEP-6ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはVEPEP-9ペプチドを含む。
【0190】
LNCOVペプチド
いくつかの実施形態では、第2のペプチドはLNCOVペプチドを含む。実施例13に示されるように、例示的なLNCOVペプチド(LNCOV-15及びLNCOV-18)は、細胞内のカーゴ(例えば、siRNA)の送達を促進する。いくつかの実施形態では、LNCOVペプチドは、配列番号12~22、27、28、及び31~41のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、LNCOVペプチドは、配列番号17または33のアミノ酸配列を含む。
【0191】
第2のペプチドの修飾
いくつかの実施形態において、第2のペプチド(例えば、本明細書に記載のCPP、例えば、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、またはADGN-100ペプチド)は、第2のペプチドのN末端に連結された(例えば、共有結合により連結された)1つ以上の部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の部分は第2のペプチドのN末端に共有結合により連結される。いくつかの実施形態では、1つ以上の部分は、アセチル基、ステアリル基、脂肪酸、コレステロール、ポリエチレングリコール、核局在化シグナル、核搬出シグナル、抗体またはその抗体フラグメント、ペプチド、多糖類、リンカー部分、及び標的化部分からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の部分は第2のペプチドのN末端に共有結合により連結されたアセチル基を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第2のペプチド(例えば、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、またはADGN-100ペプチド)は、第2のペプチドのC末端に連結された(例えば、共有結合により連結された)1つ以上の部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の部分は、システアミド基、システイン、チオール、アミド、ニトリロ三酢酸、カルボキシル基、直鎖状または分枝状のC1~C6アルキル基、第一級または第二級アミン、配糖体誘導体、脂質、リン脂質、脂肪酸、コレステロール、ポリエチレングリコール、核局在化シグナル、核搬出シグナル、抗体またはその抗体フラグメント、ペプチド、多糖類、リンカー部分、及び標的化部分からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の部分はシステアミド基を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第2のペプチド(例えば、PEP-1、PEP-2、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、またはADGN-100ペプチド)はステープルされる。本明細書で使用される「ステープルされた」とは、ペプチド内の2個の残基間の化学結合を指す。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはステープルされ、ペプチドの2個のアミノ酸間に化学結合を含む。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸は、3個または6個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸は、3個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2つのアミノ酸は、6個のアミノ酸によって分離される。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはRまたはSである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはRである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸のそれぞれはSである。いくつかの実施形態では、化学結合によって連結された2個のアミノ酸の一方はRであり、他方はSである。いくつかの実施形態では、化学結合は炭化水素結合である。
【0194】
いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、Lアミノ酸を含むLペプチドである。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは、レトロインベルソペプチド(例えば、逆配列のD-アミノ酸で構成され、伸長されると、その親分子のものと同様であるがアミドペプチド結合が反転した側鎖トポロジーをとるペプチド)である。いくつかの実施形態では、レトロインベルソペプチドは、配列番号66、67または98の配列を含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、CPPは、N末端から、アセチル基、標的化部分、及び細胞透過性ペプチドのN末端に共有結合により連結されたリンカー部分を含む。
【0196】
標的化部分
一部の実施形態において、第2のペプチドは、標的化部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、標的化部分は、複合体またはナノ粒子の特定の臓器または組織への送達を促進する。いくつかの実施形態では、標的化部分は第2のペプチドのN末端に結合される。いくつかの実施形態では、標的化部分は第2のペプチドのC末端に結合される。いくつかの実施形態では、第1の標的化部分が第2のペプチドのN末端に結合され、第2の標的化部分が第2のペプチドのC末端に結合される。
【0197】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、1つ以上の臓器を標的とする標的化ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の臓器は、筋肉、心臓、脳、脾臓、リンパ節、肝臓、肺、及び腎臓からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、標的化ペプチドは肺を標的とする。いくつかの実施形態では、標的化ペプチドは、YIGSR(配列番号185)のアミノ酸配列を含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、標的化部分はリンカー(本明細書に記載されるリンカーのいずれかなど)によって第2のペプチドに連結される。
【0199】
ナノ粒子
本出願は一態様において、上記に述べた複合体のいずれか1つ以上を含むコアを含むナノ粒子を提供する。
【0200】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の複合体を含むコアを含むナノ粒子であって、複合体中の第2のペプチド(細胞透過性ペプチドなど)がカーゴと結合している、ナノ粒子が提供される。いくつかの実施形態では、結合は、共有結合によらない。いくつかの実施形態では、結合は、共有結合による。
【0201】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、外周細胞透過性ペプチド(すなわち、CPP)を含む表面層(例えば、シェル)をさらに含み、コアはシェルによって被覆される。いくつかの実施形態では、外周CPPは、コア内の第2のペプチドと同じである。いくつかの実施形態では、外周CPPは、コア内の第2のペプチドと異なる。いくつかの実施形態では、外周CPPは、PTDベースのペプチド、両親媒性ペプチド、ポリアルギニンベースのペプチド、MPGペプチド、CADYペプチド、VEPEPペプチド(VEPEP-3、VEPEP-4、VEPEP-5、VEPEP-6、またはVEPEP-9ペプチドなど)、ADGN-100ペプチド、Pep-1ペプチド、及びPep-2ペプチドを含む(ただし、これらに限定されない)。いくつかの実施形態では、外周CPPは、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、またはADGN-100ペプチドである。いくつかの実施形態では、外周細胞透過性ペプチドは、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、表面層中の外周細胞透過性ペプチドの少なくとも一部は、標的化部分に連結される。いくつかの実施形態では、連結は、共有結合による。いくつかの実施形態では、共有結合による連結は、化学結合による。いくつかの実施形態では、共有結合による連結は、遺伝子的手法による。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ナノ粒子のコアと表面層との間に中間層をさらに含む。いくつかの実施形態では、中間層は中間CPPを含む。いくつかの実施形態では、中間CPPは、コア内の第2のペプチドと同じである。いくつかの実施形態では、中間CPPは、コア内の第2のペプチドと異なる。いくつかの実施形態では、中間CPPは、PTDベースのペプチド、両親媒性ペプチド、ポリアルギニンベースのペプチド、MPGペプチド、CADYペプチド、VEPEPペプチド(VEPEP-3、VEPEP-6、またはVEPEP-9ペプチドなど)、ADGN-100ペプチド、Pep-1ペプチド、及びPep-2ペプチドを含む(ただし、これらに限定されない)。いくつかの実施形態では、中間CPPは、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、またはADGN-100ペプチドである。
【0202】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、複数の複合体を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、所定の比率で存在する複数の複合体を含む。いくつかの実施形態において、所定の比率は、下記により詳細に記載される方法のいずれかにおけるナノ粒子の最も効果的な使用を可能にするように選択される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子コアは、1つ以上のさらなるsiRNA、1つ以上の本明細書に記載のさらなるキメラまたはブロッキングペプチド、及び/または1つ以上の第2のペプチド(例えば、細胞透過性ペプチド)をさらに含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、a)第2のペプチド(例えば、本明細書に記載の第2のペプチドのいずれか)と複合体を形成した第1のキメラペプチドまたはブロッキングペプチド(例えば、本明細書に記載のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドのいずれか)を含む第1の複合体と、b)第3のペプチド(例えば、「第2のペプチド」セクションに記載のペプチドのいずれか)と複合体を形成した第2のキメラペプチドまたはブロッキングペプチド(例えば、本明細書に記載のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドのいずれか)を含む第2の複合体と、を含み、第1のキメラまたはブロッキングペプチドはACE2を標的とし、第2のキメラまたはブロッキングペプチドはSPIKEを標的とする。いくつかの実施形態では、第1のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドは、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択されるループ配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、a)第2のペプチド(例えば、本明細書に記載の第2のペプチドのいずれか)と複合体を形成したキメラペプチドまたはブロッキングペプチド(例えば、本明細書に記載のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドのいずれか)を含む第1の複合体と、b)第3のペプチド(例えば、「第2のペプチド」のセクションに記載されるペプチドのいずれか)と複合体を形成したsiRNA(例えば、本明細書に記載のsiRNAのいずれか)を含む第2の複合体と、を含み、キメラペプチドまたはブロッキングペプチドはACE2とSPIKEとの相互作用を阻害し、siRNAはSPIKEのヌクレオカプシドを標的とする。いくつかの実施形態では、キメラペプチドまたはブロッキングペプチドは、配列番号17、20、21、27、28、33、39、及び40に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号163、166、168、及び170(例えば、配列番号166)からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、a)第2のペプチド(例えば、本明細書に記載の第2のペプチドのいずれか)と複合体を形成した第1のキメラペプチドまたはブロッキングペプチド(例えば、本明細書に記載のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドのいずれか)を含む第1の複合体と、b)第3のペプチド(例えば、「第2のペプチド」セクションに記載のペプチドのいずれか)と複合体を形成した第2のキメラペプチドまたはブロッキングペプチド(例えば、本明細書に記載のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドのいずれか)を含む第2の複合体と、c)第4のペプチド(例えば、「第2のペプチド」のセクションに記載されるペプチドのいずれか)と複合体を形成したsiRNA(例えば、本明細書に記載のsiRNAのいずれか)を含む第3の複合体と、を含み、第1のキメラまたはブロッキングペプチドはACE2を標的とし、第2のキメラまたはブロッキングペプチドはSPIKEを標的とし、siRNAはSPIKEのヌクレオカプシドを標的とする。いくつかの実施形態では、第1のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドは、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択されるループ配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号163、166、168、及び170(例えば、配列番号166)からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、上記に述べた第2、第3、及び第4のペプチドのうちの1つ以上は、PTDベースのペプチド、両親媒性ペプチド、ポリアルギニンベースのペプチド、MPGペプチド、CADYペプチド、VEPEPペプチド(VEPEP-3、VEPEP-6、またはVEPEP-9ペプチドなど)、ADGN-100ペプチド、Pep-1ペプチド、及びPep-2ペプチドを含む(ただし、これらに限定されない)細胞透過性ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、第2、第3、及び第4のペプチドのうちの1つ以上の少なくとも一部は、標的化部分に連結される。いくつかの実施形態では、連結は、共有結合による。
【0207】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のナノ粒子のいずれかによれば、ナノ粒子の平均サイズ(直径)は、約20nm~約1000nmであり、例えば、約20nm~約800nm、約20nm~約600nm、約20nm~約600nm、及び約20nm~約400nmを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均サイズ(直径)は、約1000ナノメートル(nm)以下、例えば、約900、800、700、600、500、400、300、200、100、90、80、70または60nmのいずれか以下である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約100nm以下である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約60nm以下である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約20nm~約100nmである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約20nm~約80nmである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約30nm~約60nmである。
【0208】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約150nm以下である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約100nm以下である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約20nm~約400nmである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約30nm~約400nmである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約40nm~約300nmである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約50nm~約200nmである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約60nm~約150nmである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の平均または中間直径は、約70nm~約100nmである。
【0209】
平均粒径を決定する方法は当該技術分野では周知のものであり、例えば動的光散乱(DLS)は、サブマイクロメートルサイズの粒子のサイズを決定するために一般的に使用されてきた。国際規格ISO22412 粒径分析-動的光散乱、国際標準化機構(ISO)2008及び動的光散乱一般的用語の定義(Malvern Instruments Limited,2011)。いくつかの実施形態では、粒径は、組成物中のナノ粒子の体積重み付け平均粒径(Dv50)として測定される。
【0210】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は滅菌濾過可能である。
【0211】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子のゼータ電位は、約-30mV~約60mV(例えば、約-30、-25、-20、-15、-10、-5、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、及び60mV(これらの値の間の任意の範囲を含む))である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子のゼータ電位は、約-30mV~約30mVであり、例えば、約-25mV~約25mV、約-20mV~約20mV、約-15mV~約15mV、約-10mV~約10mV、及び約-5mV~約10mVを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の多分散指数(PI)は、約0.05~約0.6(例えば、約0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、及び0.6のいずれか)(これらの値の間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の多分散指数(PI)は、約0.1~約0.4、または約0.15~約0.3である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は実質的に無毒性である。ゼータ電位は、Zetasizer 4装置(Malvern Ltd)を使用して測定することができる。
【0212】
組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラペプチド、ブロッキングペプチド、siRNA、複合体、またはナノ粒子のいずれかを含む組成物(例えば、薬学的組成物)が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載のキメラペプチド、ブロッキングペプチド、siRNA、複合体、またはナノ粒子のいずれかと、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体と、を含む医薬組成物である。
【0213】
いくつかの実施形態では、組成物は、異なるカーゴを含む2つ以上のナノ粒子の混合物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、a)ACE2またはSPIKEを特異的に標的とするキメラペプチドまたはブロッキングペプチドを含む上記の第1のナノ粒子と、b)SARS-CoV-2のヌクレオカプシドを特異的に標的とするsiRNAを含む第2のナノ粒子と、を含む。いくつかの実施形態では、キメラペプチドまたはブロッキングペプチドは、配列番号17、20、21、27、28、33、39、及び40に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号163、166、168、及び170(例えば、配列番号166)からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、組成物中の複合体またはナノ粒子の濃度は、約1nM~約100mMであり、例えば、約10nM~約50mM、約25nM~約25mM、約50nM~約10mM、約100nM~約1mM、約500nM~約750μM、約750nM~約500μM、約1μM~約250μM、約10μM~約200μM、及び約50μM~約150μMを含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、凍結乾燥される。
【0215】
本明細書で使用される「薬学的に許容される希釈剤、賦形剤及び/または担体」という用語には、ヒトまたは他の脊椎動物宿主への投与に適合した、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれるものとする。一般的には、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体とは、連邦、州政府の規制機関、もしくは他の規制機関によって承認されているか、または米国薬局方もしくはヒト及び非ヒト哺乳動物を含む動物における使用について他の広く認識される薬局方に記載されている希釈剤、賦形剤、及び/または担体である。希釈剤、賦形剤、及び/または「担体」という用語は、医薬組成物とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または溶媒を指す。かかる医薬希釈剤、賦形剤、及び/または担体は、滅菌液、例えば、水及び、石油、動物、植物または合成起源のものを含めた油であり得る。水、生理食塩水ならびにデキストロース及びグリセロール水溶液を液体希釈剤、賦形剤及び/または担体として、特に注射液に使用することできる。好適な医薬希釈剤及び/または賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられ、凍結乾燥補助剤も含まれる。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤、増量剤、乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、徐放製剤などの形態をとることができる。適切な医薬希釈剤、賦形剤、及び/または担体の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。製剤は、投与方法に適合する必要がある。適切な希釈剤、賦形剤、及び/または担体は当業者には明らかであり、投与経路に大きく依存する。
【0216】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラペプチド、ブロッキングペプチド、siRNA、複合体またはナノ粒子を含む組成物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体は、組成物中の複合体またはナノ粒子の凝集レベル、及び/または組成物中の複合体またはナノ粒子によって媒介される細胞内送達の効率に影響を与える。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体によって媒介される凝集及び/または送達効率に対する効果の程度及び/または方向は、組成物中の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体の相対量に依存する。
【0217】
例えば、いくつかの実施形態では、組成物中の1つ以上の濃度での薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体(塩、糖、化学緩衝剤、緩衝液、細胞培地、または担体タンパク質など)の存在は、複合体またはナノ粒子の凝集を促進しない及び/またはこれに寄与しないか、あるいは複合体またはナノ粒子のサイズよりも約200%(例えば、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進及び/またはこれに寄与する。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体を、複合体またはナノ粒子の凝集を促進しない及び/またはこれに寄与しないか、あるいは複合体またはナノ粒子のサイズよりも約200%(例えば、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約150%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約100%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約50%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約20%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約15%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約10%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体は、NaCl(ただしこれに限定されない)を含む塩である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体は、スクロース、グルコース、及びマンニトール(ただしこれらに限定されない)を含む糖である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体は、HEPES(ただしこれに限定されない)を含む化学緩衝剤である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体は、PBS(ただしこれに限定されない)を含む緩衝液である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/または担体は、DMEM(ただしこれに限定されない)を含む細胞培地である。粒径は、動的光散乱(DLS)など、粒径を測定するための当該技術分野では周知の任意の手段を使用して決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、複合体またはナノ粒子のDLSによって測定されるZ平均よりも10%大きい、DLSによって測定されるZ平均を有する凝集体は、複合体またはナノ粒子よりも10%大きい。
【0218】
いくつかの実施形態では、組成物は、塩(例えば、NaCl)を、複合体またはナノ粒子の凝集を促進しない及び/またはこれに寄与しないか、あるいは複合体またはナノ粒子のサイズよりも約100%(例えば、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、塩(例えば、NaCl)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約75%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、塩(例えば、NaCl)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約50%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、塩(例えば、NaCl)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約20%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、塩(例えば、NaCl)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約15%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、塩(例えば、NaCl)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約10%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物中の塩の濃度は、約100mM以下(例えば、約90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1mM以下(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))である。いくつかの実施形態では、塩は、NaClである。
【0219】
いくつかの実施形態では、組成物は、糖(例えば、スクロース、グルコース、またはマンニトール)を、複合体またはナノ粒子の凝集を促進しない及び/またはこれに寄与しないか、あるいは複合体またはナノ粒子のサイズよりも約25%(例えば、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、糖(例えば、スクロース、グルコース、またはマンニトール)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約75%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、糖(例えば、スクロース、グルコース、またはマンニトール)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約50%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、糖(例えば、スクロース、グルコース、またはマンニトール)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約20%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、糖(例えば、スクロース、グルコース、またはマンニトール)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約15%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、糖(例えば、スクロース、グルコース、またはマンニトール)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約10%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物中の糖の濃度は、約20%以下(例えば、約18、16、14、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%以下(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))である。いくつかの実施形態では、糖はスクロースである。いくつかの実施形態では、糖はグルコースである。いくつかの実施形態では、糖はマンニトールである。
【0220】
いくつかの実施形態では、組成物は、化学緩衝剤(例えば、HEPESまたはリン酸塩)を、複合体またはナノ粒子の凝集を促進しない及び/またはこれに寄与しないか、あるいは複合体またはナノ粒子のサイズよりも約10%(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、化学緩衝剤(例えば、HEPESまたはリン酸塩)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約7.5%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、化学緩衝剤(例えば、HEPESまたはリン酸塩)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約5%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、化学緩衝剤(例えば、HEPESまたはリン酸塩)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約3%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、化学緩衝剤(例えば、HEPESまたはリン酸塩)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約1%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、化学緩衝剤(例えば、HEPESまたはリン酸塩)を、複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進しない及び/またはこれに寄与しない濃度で含む。いくつかの実施形態では、化学緩衝剤はHEPESである。いくつかの実施形態では、HEPESは、HEPESを含む緩衝液の形態で組成物に添加される。いくつかの実施形態では、HEPESを含む溶液のpHは、約5~約9(例えば、約5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、及び9のいずれか(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))である。いくつかの実施形態では、組成物は、約75mM以下(例えば、約70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10mM以下(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))の濃度のHEPESを含む。いくつかの実施形態では、化学緩衝剤はリン酸塩である。いくつかの実施形態では、リン酸塩は、リン酸塩を含む緩衝液の形態で組成物に添加される。いくつかの実施形態では、組成物はPBSを含まない。
【0221】
いくつかの実施形態では、組成物は、細胞培地(例えば、DMEMまたはOpti-MEM)を、複合体またはナノ粒子の凝集を促進しない及び/またはこれに寄与しないか、あるいは複合体またはナノ粒子のサイズよりも約200%(例えば、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞培地(例えば、DMEMまたはOpti-MEM)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約150%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞培地(例えば、DMEMまたはOpti-MEM)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約100%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞培地(例えば、DMEMまたはOpti-MEM)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約50%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞培地(例えば、DMEMまたはOpti-MEM)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約25%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞培地(例えば、DMEMまたはOpti-MEM)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約10%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、細胞培地は、DMEMである。いくつかの実施形態では、組成物は、約70%以下(例えば、約65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10%以下(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))の濃度のDMEMを含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、組成物は、担体タンパク質(例えば、アルブミン)を、複合体またはナノ粒子の凝集を促進しない及び/またはこれに寄与しないか、あるいは複合体またはナノ粒子のサイズよりも約200%(例えば、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1%(これらの値のいずれかの間の任意の範囲を含む))大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、担体タンパク質(例えば、アルブミン)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約150%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、担体タンパク質(例えば、アルブミン)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約100%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、担体タンパク質(例えば、アルブミン)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約50%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、担体タンパク質(例えば、アルブミン)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約25%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、担体タンパク質(例えば、アルブミン)を、複合体またはナノ粒子のサイズよりも約10%大きいサイズ以下のサイズを有する複合体またはナノ粒子の凝集体の形成を促進する及び/またはこれに寄与する濃度で含む。いくつかの実施形態では、担体タンパク質はアルブミンである。いくつかの実施形態では、アルブミンはヒト血清アルブミンである。
【0223】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内、腫瘍内、動脈内、局所、眼球内、眼内、門脈内、頭蓋内、脳内、脳室内、くも膜下腔内、小胞内、皮内、皮下、筋肉内、鼻腔内、気管内(気管内注入など)、肺、腔内、経鼻または経口投与、または噴霧(NB)用に製剤化される。
【0224】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、噴霧用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経鼻投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、気管内投与(気管内注入など)用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、吸入用に製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化される。
【0225】
調製方法
本明細書に記載のキメラペプチド、ブロッキングペプチド、及び非天然ペプチドのいずれかのような、本明細書に記載されるペプチドは、当該技術分野では周知の任意の方法によって合成することができる。例えば、ペプチドは、Pioneer Peptide Synthesizer(Pioneer(商標),Applied Biosystems,Foster City,CA)で(フルオレニルメトキシ)-カルボニル(Fmoc)を含むAEDI-expensin樹脂を使用した固相ペプチド合成法によって合成することができる。例えば、本明細書に参照によりその全容を援用するところのWO2014/053628、US20160115199A1またはEP2928906を参照されたい。
【0226】
本明細書に記載のペプチドを調製する方法については、実施例(例えば、実施例1)も参照されたい。環状ペプチドの調製については、例えば、Rashad et al.(Methods Mol Biol. 2019;2001:133-145) 及び Alsina J. et al.(Tetrahedron Letters,Volume 35,Issue 51,19 December 1994,Pages 9633-9636)に記載されている。
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の複合体またはナノ粒子を調製する方法が提供される。
【0228】
いくつかの実施形態では、第2のペプチドをカーゴ分子と結合させ、それによって複合体を形成することを含む、第2のペプチドとカーゴ分子とを含む上記に述べた複合体を調製する方法が提供される。
【0229】
いくつかの実施形態では、ペプチドとカーゴ分子とは、それぞれ、約1:1~約100:1(約1:1~約50:1、または約5:1~約20:1)のモル比で組み合わされる。
【0230】
いくつかの実施形態では、方法は、カーゴ分子を含む第1の溶液を第2のペプチドを含む第2の溶液と混合して第3の溶液を形成することを含み、第3の溶液は、i)約0~5%のスクロース、ii)約0~5%のグルコース、iii)約0~50%のDMEM、iv)約0~80mMのNaCl、またはv)約0~20%のPBSを含むかまたは含むように調整され、第3の溶液は複合体が形成されるようにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、第1の溶液は滅菌水中にカーゴを含み、及び/または第2の溶液は滅菌水中にペプチドを含む。いくつかの実施形態では、第3の溶液は、複合体が形成されるようにインキュベートした後に、i)約0~5%のスクロース、ii)約0~5%のグルコース、iii)約0~50%のDMEM、iv)約0~80mMのNaCl、またはv)約0~20%のPBSを含むように調整される。
【0231】
いくつかの実施形態では、方法は、複合体を細孔サイズの膜を通して濾過する濾過プロセスをさらに含む。いくつかの実施形態では、細孔は、少なくとも約0.1μm(少なくとも約0.1μm、0.15μm、0.2μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1.0μm、1.1μmまたは1.2μmなど)の直径を有する。いくつかの実施形態では、細孔は、約1.2μm、1.0μm、0.8μm、0.6μm、0.5μm、0.45μm、0.4μm、0.35μm、0.3μm、または0.25μm以下の直径を有する。いくつかの実施形態では、最高は、約0.1μm~約1.2μm(例えば、約0.1~約0.8μm、約0.2~約0.5μm)の直径を有する。
【0232】
いくつかの実施形態では、本出願のカーゴ分子送達複合体またはナノ粒子を含む安定な組成物では、複合体またはナノ粒子の平均直径は約10%よりも大きく変化せず、多分散指数は約10%よりも大きく変化しない。
【0233】
本明細書に記載のペプチドのいずれかを調製する方法も提供される。
【0234】
使用方法
本出願は、一態様において、個体におけるウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)またはウイルス感染に関連する疾患もしくは状態を治療する方法であって、キメラペプチド、ブロッキングペプチド、siRNA、複合体、ナノ粒子、上記に述べたものなどの組成物を含む組成物(例えば、医薬組成物)を個体に投与することを含む、方法を提供する。本出願はまた、個体におけるウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)またはウイルス感染に関連する疾患もしくは状態を予防する方法であって、キメラペプチド、ブロッキングペプチド、siRNA、複合体、ナノ粒子、上記に述べたものなどの組成物を含む組成物(例えば、医薬組成物)を個体に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。
【0235】
いくつかの実施形態では、個体におけるウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)またはウイルス感染に関連する疾患もしくは状態を治療する方法であって、個体に、リンカーによって安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドを含む組成物を投与することを含み、ブロッキングペプチドが、配列番号1、6、8~11、23、24、26~28、31、42、45及び47~52からなる群から選択される配列を含み、安定化ペプチドが、ADGN-100ペプチドまたはVEPEP-6ペプチドを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号55または97のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号151、156及び158~160からなる群から選択される環状ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号23、24、26~28、及び31からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、キメラペプチドは、配列番号17、20、21、27、28、33、39、及び40に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、経鼻または気管内に、あるいは吸入または噴霧によって投与される。
【0236】
いくつかの実施形態では、個体におけるウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)またはウイルス感染に関連する疾患もしくは状態を治療する方法であって、個体に、配列番号12~22、24~41、及び151~160のいずれか1つから選択される非天然ペプチドを含むブロッキングペプチドを含む組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ブロッキングペプチドは、配列番号27、38、39、40のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、経鼻または気管内に、あるいは吸入または噴霧によって投与される。
【0237】
いくつかの実施形態では、個体におけるウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)またはウイルス感染に関連する疾患もしくは状態を治療または予防する方法であって、個体に、配列番号161~170のいずれか1つの核酸配列を含むsiRNAを含む組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号163、166、168、及び170からなる群から選択される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは配列番号166の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、経鼻または気管内に、あるいは吸入または噴霧によって投与される。
【0238】
いくつかの実施形態では、個体におけるウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)またはウイルス感染に関連する疾患もしくは状態を治療または予防する方法であって、個体に、a)配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160(例えば、配列番号17、20、21、27、28、33、39、及び40)に示されるアミノ酸配列を含む第1のペプチドを含むカーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む複合体を含む組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドと第1のペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドは第1のペプチドと複合体を形成する。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、経鼻または気管内に、あるいは吸入または噴霧によって投与される。
【0239】
いくつかの実施形態では、個体に、a)配列番号27、38、39、40のいずれか1つのアミノ酸配列を含むブロッキングペプチドを含むカーゴと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む複合体を含む組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドとブロッキングペプチドとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約2:1~約10:1、約5:1)である。いくつかの実施形態では、第2のペプチドはブロッキングペプチドと複合体を形成する。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、経鼻または気管内に、あるいは吸入または噴霧によって投与される。
【0240】
いくつかの実施形態では、個体におけるウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)またはウイルス感染に関連する疾患もしくは状態を治療または予防する方法であって、個体に、a)配列番号163、166、168、及び170(例えば、配列番号166)からなる群から選択される核酸配列を含むsiRNAを含むカーゴと、b)ADGN-100ペプチド(例えば、配列番号55)、VEPEP-6ペプチド(例えば、配列番号97)またはVEPEP-9ペプチド(例えば、配列番号120または121)からなる群から選択される第2のペプチドとを含む複合体であって、siRNAが第2のペプチドと複合体を形成している、複合体を含む組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、第2のペプチドとsiRNAとのモル比は、約1:1~約80:1(例えば、約5:1~約50:1、約20:1)である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、経鼻または気管内に、あるいは吸入または噴霧によって投与される。
【0241】
いくつかの実施形態では、個体におけるウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)またはウイルス感染に関連する疾患もしくは状態を治療または予防する方法であって、個体に、i)配列番号17、20、21、27、28、33、39、及び40に示されるアミノ酸配列を含むキメラペプチドと、ii)配列番号163、166、168、及び170(例えば、配列番号166)からなる群から選択される核酸配列を含むsiRNAと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む複合体を含む組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、経鼻または気管内に、あるいは吸入または噴霧によって投与される。
【0242】
いくつかの実施形態では、個体におけるウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)またはウイルス感染に関連する疾患もしくは状態を治療または予防する方法であって、個人に、i)配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含むブロッキングペプチドと、ii)配列番号163、166、168、及び170(例えば、配列番号166)からなる群から選択される核酸配列を含むsiRNAと、b)CADY、MPG、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド(例えば、配列番号183)、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-4ペプチド、VEPEP-5ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される第2のペプチドと、を含む複合体を含む組成物を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、経鼻または気管内に、あるいは吸入または噴霧によって投与される。
【0243】
いくつかの実施形態では、個体におけるウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)またはウイルス感染に関連する疾患もしくは状態を治療または予防する方法であって、個人に、a)第2のペプチド(例えば、本明細書に記載の第2のペプチドのいずれか)と複合体を形成したキメラペプチドまたはブロッキングペプチド(例えば、本明細書に記載のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドのいずれか)を含む第1の複合体と、b)第3のペプチド(例えば、「第2のペプチド」のセクションに記載されるペプチドのいずれか)と複合体を形成したsiRNA(例えば、本明細書に記載のsiRNAのいずれか)を含む第2の複合体と、を含む組成物を投与することを含み、キメラペプチドまたはブロッキングペプチドがACE2とSPIKEとの相互作用を阻害し、siRNAがSPIKEのヌクレオカプシドを標的とする、方法が提供される。いくつかの実施形態では、キメラペプチドまたはブロッキングペプチドは、配列番号17、20、21、27、28、33、39、及び40に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、siRNAは、配列番号163、166、168、及び170(例えば、配列番号166)からなる群から選択される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内、経鼻または気管内に、あるいは吸入または噴霧によって投与される。
【0244】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、個体は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、男性である。いくつかの実施形態では、個体は、女性である。いくつかの実施形態では、個体は、免疫系が損なわれている。
【0245】
いくつかの実施形態では、個体はウイルス(例えば、SARS-CoV-2)に曝露されている。いくつかの実施形態では、個体は、ウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)の初期症状(例えば、発熱、例えば、空咳、例えば、息切れ)を示している。いくつかの実施形態では、個体は、胸痛もしくは胸の圧迫感、息切れ、及び/または唇もしくは顔面の蒼白を有する。いくつかの実施形態では、個体は、急性呼吸窮迫症候群(ARD)を有する。いくつかの実施形態では、個体は病院に入院している。いくつかの実施形態では、個体は集中治療室(ICU)に入れられる。
【0246】
いくつかの実施形態では、組成物は、ウイルス(例えば、SARS-CoV-2)への曝露から約1、3、5、または7日以内に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、ウイルスに曝露される前に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、ウイルスへの潜在的曝露の約1、2、3、4、5、6、または7日前に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、ウイルスへの潜在的曝露の約1、2、または3週間前に投与される。
【0247】
いくつかの実施形態では、組成物は、ウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)の初期症状(例えば、発熱、例えば、空咳、例えば、息切れ)の出現から約1、3、5、または7以内に投与される。
【0248】
いくつかの実施形態では、組成物は、個体が胸痛もしくは胸の圧迫感、息切れ、及び/または唇もしくは顔面の蒼白を有してから約1、2、3、4、5、6、または7日以内に投与される。
【0249】
いくつかの実施形態では、組成物は、個体が急性呼吸窮迫症候群(ARD)を有してから約3、6、12、または24時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、個体が急性呼吸窮迫症候群(ARD)を有してから約1、2、3、4、または5以内に投与される。
【0250】
いくつかの実施形態では、組成物は、1日3回、1日2回、毎日、2、3、4、5、または6日に1回、週1回、隔週1回、または月1回投与される。
【0251】
ウイルス
いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルス科(例えば、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、デルタコロナウイルス、もしくはガンマコロナウイルス)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、フラビウイルス科(例えば、フラビウイルスもしくはヘパシウイルス)、またはカリシウイルス科(例えば、ノロウイルス)のメンバーであるウイルスによって引き起こされる。
【0252】
いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルス科のメンバーであるウイルスによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、ウイルスは、アルファコロナウイルス(例えば、HCoV-229EまたはHCoV-NL63)、ベータコロナウイルス(例えば、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、またはSARS-CoV-2)、デルタコロナウイルス、またはガンマコロナウイルスである。
【0253】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、アルファコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HCoV-229EまたはHCoV-NL63である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HCoV-229Eである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HCoV-NL63である。
【0254】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、ベータコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、またはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、MERS-CoV、SARS-CoV、またはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HCoV-OC43である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HCoV-HKU1である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HMERS-CoVである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoVである。
【0255】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV-2である。
【0256】
併用療法
いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の第2の薬剤または療法を投与することをさらに含む。本明細書に記載の第2の薬剤または療法は、ウイルス感染を治療するうえで有用な任意の薬剤または療法であってよい。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/またはコルチコステロイドを含む。いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量のミコフェノール酸モフェチル(MMF)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量のコルチコステロイドを投与することを含む。
【0257】
いくつかの実施形態では、方法はまた、治療有効量のさらなる抗ウイルス剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、さらなる抗ウイルス剤は、レムデシビル、ロピナビル/リトナビル、IFN-α、ロピナビル、リトナビル、ペンシクロビル、ガリデシビル、ジスルフィラム、ダルナビル、コビシスタット、ASC09F、ジスルフィラム、ナファモスタット、グリフィスシン、アリスポリビル、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ニタゾキサニド、バロキサビルマルボキシル、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、アマンタジン、リマンタジン、ファビピラビル、ラニナミビル、リバビリン、ウミフェノビル、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、抗ウイルス剤は、クロロキンである。いくつかの実施形態では、抗ウイルス剤は、ヒドロキシクロロキンである。いくつかの実施形態では、抗ウイルス剤は、レムデシビルである。
【0258】
いくつかの実施形態では、組成物と第2の薬剤とは同時に(simultaneously)投与される。いくつかの実施形態では、組成物と第2の薬剤とは同時に(concurrently)投与される。いくつかの実施形態では、組成物と第2の薬剤とは順次投与される。
【0259】
投与量及び投与方法
組成物及び/または第2の薬剤/療法の投与頻度は、投与する医師の判断に基づいて、治療過程で調節することができる。別々に投与される場合、組成物及び/または第2の薬剤/療法は、異なる投与頻度または間隔で投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物及び/または第2の薬剤/療法の徐放製剤を使用することができる。徐放を行うための各種の製剤及び装置が、当該技術分野において周知である。本明細書に記載の投与形態の組み合わせも使用することができる。
【0260】
いくつかの実施形態では、ヒトまたは哺乳動物対象を治療するための本明細書に記載のキメラペプチド、ブロッキングペプチド、またはsiRNAの投与量は、各投与で約0.001mg/kg~約100mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態では、投与後の感染部位における本明細書に記載のキメラまたはブロッキングペプチドの濃度は、約0.01μM~10μM(例えば、約0.1μM~約1μM、例えば約0.5μM)である。いくつかの実施形態では、投与後の感染部位における本明細書に記載のsiRNAの濃度は、約0.1nM~約10μM(例えば、約1nM~1μM、例えば約1nM~約200nM)である。
【0261】
いくつかの実施形態では、組成物は、ウイルス(例えば、SARS-CoV-2)への曝露から約1、2、3、4、5、6、7、10、12、14、16、18、20、25、または30日以内に投与される。
【0262】
いくつかの実施形態では、組成物は、ウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)の最初の症状(例えば、発熱、例えば、空咳、例えば、息切れ)の出現から約1、2、3、4、5、6、7、10、12、14、16、18、または20以内に投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、症状(例えば、発熱、例えば、空咳、例えば、息切れ)が少なくとも2、3、4、5、6、または7日間続く場合に投与される。
【0263】
いくつかの実施形態では、組成物は、個体が胸痛もしくは胸の圧迫感、息切れ、及び/または唇もしくは顔面の蒼白を有してから約1、2、3、4、5、6、または7日以内に投与される。
【0264】
いくつかの実施形態では、組成物は、個体が急性呼吸窮迫症候群(ARD)を有してから約3、6、12、または24時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、個体が急性呼吸窮迫症候群(ARD)を有してから約1、2、3、4、または5以内に投与される。
【0265】
いくつかの実施形態では、組成物は、1日3回、1日2回、毎日、2、3、4、5、または6日に1回、週1回、隔週1回、または月1回投与される。
【0266】
組成物及び/または第2の薬剤/療法は、同じ投与経路または異なる投与経路を使用して投与することができる。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、組成物または第2の薬剤/療法は、静脈内、腫瘍内、動脈内、局所、眼球内、眼内、門脈内、頭蓋内、脳内、脳室内、くも膜下腔内、小胞内、皮内、皮下、筋肉内、鼻腔内、気管内、肺、腔内、経鼻、または経口投与、または噴霧(NB)または気管内注入のいずれかによって個体に投与される。
【0267】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び/または第2の薬剤/療法は、全身または局所投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び/または第2の薬剤/療法は、静脈内、局所、眼球内、眼内、門脈内、頭蓋内、脳内、脳室内、くも膜下腔内、小胞内、皮内、皮下、筋肉内、鼻腔内、気管内、肺、腔内、または経口投与、または噴霧(NB)、吸入、または気管内注入用に製剤化される。
【0268】
いくつかの実施形態では、組成物及び/または第2の薬剤/療法は、噴霧用に製剤化されるかまたは噴霧により個体に投与される。いくつかの実施形態では、組成物及び/または第2の薬剤/療法は、経鼻投与用に製剤化されるかまたは経鼻投与により個体に投与される。いくつかの実施形態では、組成物及び/または第2の薬剤/療法は、気管内投与(例えば、気管内注入)用に製剤化されるかまたは気管内投与により個体に投与される。いくつかの実施形態では、組成物及び/または第2の薬剤/療法は、吸入用に製剤化されるかまたは吸入により個体に投与される。いくつかの実施形態では、組成物及び/または第2の薬剤/療法は、静脈内投与用に製剤化されるかまたは静脈内投与により個体に投与される。
【0269】
患者集団
いくつかの実施形態では、個体は、免疫系が損なわれている。
【0270】
いくつかの実施形態では、個体は、男性である。いくつかの実施形態では、個体は、女性である。
【0271】
いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85または90歳の年齢である。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約18、15、12、10、8、6、4、2、または1歳以下の年齢である。いくつかの実施形態では、個体は約20歳~約40歳の年齢である。
【0272】
いくつかの実施形態では、個体はウイルス(例えば、SARS-CoV-2)に曝露されている。
【0273】
いくつかの実施形態では、個体は、ウイルス感染(例えば、SARS-CoV-2感染)の最初の症状(例えば、発熱、例えば空咳、例えば息切れ)を示している。
【0274】
いくつかの実施形態では、個体は、胸痛もしくは胸の圧迫感、息切れ、及び/または唇もしくは顔面の蒼白を示している。いくつかの実施形態では、個体は、急性呼吸窮迫症候群(ARD)を有する。いくつかの実施形態では、個体は病院に入院している。いくつかの実施形態では、個体は集中治療室(ICU)に入れられる。
【0275】
いくつかの実施形態では、個体は、参照ACE2発現よりも高いACE2発現(例えば肺細胞上でのACE2発現)(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、100%、150%または200%高い)を有する。いくつかの実施形態では、参照ACE2発現は、個体と同じ性別及び/または民族性を有する個体群の平均ACE2発現である。
【0276】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される個体は、自己免疫疾患を有する。いくつかの実施形態では、個体は、移植片拒絶反応に関連する疾患または状態を有する。
【0277】
いくつかの実施形態では、個体は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)による治療を受けたことがあるかまたは治療に失敗したことがある。いくつかの実施形態では、個体は、コルチコステロイドによる治療を受けたことがあるかまたは治療に失敗したことがある。いくつかの実施形態では、個体は、レムデシビル、ロピナビル/リトナビル、IFN-α、ロピナビル、リトナビル、ペンシクロビル、ガリデシビル、ジスルフィラム、ダルナビル、コビシスタット、ASC09F、ジスルフィラム、ナファモスタット、グリフィスシン、アリスポリビル、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ニタゾキサニド、バロキサビルマルボキシル、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、アマンタジン、リマンタジン、ファビピラビル、ラニナミビル、リバビリン、ウミフェノビル、またはそれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つ以上による治療を受けたことがあるかまたは治療に失敗したことがある。いくつかの実施形態では、個体は、クロロキンによる治療を受けたことがあるかまたは治療に失敗したことがある。いくつかの実施形態では、個体は、ヒドロキシクロロキンによる治療を受けたことがあるかまたは治療に失敗したことがある。いくつかの実施形態では、個体は、レムデシビルによる治療を受けたことがあるかまたは治療に失敗したことがある。
【0278】
キット
本明細書では、本明細書に記載の方法において有用なキット、試薬、及び製品も提供される。いくつかの実施形態では、キットは、キメラペプチド、ブロッキングペプチド、siRNA、第2のペプチド(例えば、細胞透過性ペプチド)のいずれかなどの本明細書に記載のペプチド及びsiRNAのいずれかを含むバイアルを、場合により他の分子とともに、1つのバイアルに組み合わせて、または異なるバイアルで別々に含む。いくつかの実施形態では、第2のペプチド(例えば、細胞透過性ペプチドのいずれか)は、適切な1つ以上のキメラペプチド/ブロッキングペプチド及び/またはsiRNAと組み合わせることで、効果的な治療を行うために患者に投与できる複合体またはナノ粒子を与える。したがって、いくつかの実施形態では、1)本明細書に記載のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドと、2)第2のペプチドと、を含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、1)本明細書に記載のsiRNAと、2)第2のペプチドと、を含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、1)本明細書に記載のsiRNAと、2)本明細書に記載のキメラペプチドまたはブロッキングペプチドと、場合により3)本明細書に記載の第2のペプチドと、を含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0279】
本明細書に記載のキットは、本発明の方法を実施するためにキットの構成要素を使用するための説明書(例えば、本明細書に記載の医薬組成物を調製するための説明書及び/または医薬組成物を使用するための説明書)をさらに含むことができる。本発明の方法を実施するための説明書は、適当な記録媒体に記録することができる。例えば、説明書は、紙またはプラスチックなどの基材に印刷することができる。したがって、説明書は、添付文書としてキット内、キットまたはその構成要素の容器のラベル内(すなわち、パッケージまたはサブパッケージに付属する)などに存在してもよい。いくつかの実施形態では、説明書は、例えば、CD-ROM、ディスクなどの適当なコンピュータ可読記憶媒体上に存在する電子記憶データファイルとして存在してもよい。さらに他の実施形態では、実際の説明書はキットの中には存在せず、例えば、インターネット経由でリモートソースから説明書を得る手段が提供される。この実施例の一例としては、説明書を見ることができる、及び/またはダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットがある。説明書と同様、説明書を得るためのこうした手段は適当な媒体に記録される。
【0280】
キットの様々な構成要素は別々の容器に入れることができ、これらの容器を単一のハウジング、例えば箱の中に入れることができる。
【0281】
例示的な実施形態
実施形態1.安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドであって、前記ブロッキングペプチドが、SPIKEとACE2との相互作用を特異的に遮断し、前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドの二次構造または三次構造を安定化する、前記キメラペプチド。
【0282】
実施形態2.前記ブロッキングペプチドが、SPIKEの受容体結合ドメイン(RBD)内のループ配列を含む、請求項1に記載のキメラペプチド。
【0283】
実施形態3.前記ループ配列が、アミノ酸約20個以下の長さを有する、請求項2に記載のキメラペプチド。
【0284】
実施形態4.前記ループ配列が、アミノ酸約7個~アミノ酸約18個の長さを有する、請求項3に記載のキメラペプチド。
【0285】
実施形態5.前記ブロッキングペプチドが、C末端にKを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【0286】
実施形態6.前記ループ配列が、配列番号1~11及び42~46からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【0287】
実施形態7.前記ループ配列が、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択される、請求項6に記載のキメラペプチド。
【0288】
実施形態8.前記ブロッキングペプチドが、ACE2の細胞外ドメイン内の配列に由来する配列を含む、請求項1に記載のキメラペプチド。
【0289】
実施形態9.前記ブロッキングペプチドが、配列番号23~31及び47~52からなる群から選択される配列を含む、請求項8に記載のキメラペプチド。
【0290】
実施形態10.前記ブロッキングペプチドが、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む、請求項9に記載のキメラペプチド。
【0291】
実施形態11.前記ループ配列が、環状である、請求項2~10に記載のキメラペプチド。
【0292】
実施形態12.前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドのC末端に連結されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【0293】
実施形態13.前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドのN末端に連結されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【0294】
実施形態14.前記安定化ペプチドが、アミノ酸約12個~アミノ酸約30個の長さを有する、請求項12または請求項13に記載のキメラペプチド。
【0295】
実施形態15.前記ブロッキングペプチド及び前記安定化ペプチドがそれぞれ、ACE2に由来する配列を含む、請求項8~14のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【0296】
実施形態16.前記安定化ペプチドが、配列番号49または50に示される配列を含む、請求項15に記載のキメラペプチド。
【0297】
実施形態17.前記安定化ペプチドが、両親媒性ヘリックス構造を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【0298】
実施形態18.前記安定化ペプチドが、ADGN-100ペプチドまたはVEPEP-6ペプチドを含む、請求項17に記載のキメラペプチド。
【0299】
実施形態19.前記安定化ペプチドが、配列番号53~107のいずれか1つに示される配列を含む、請求項18に記載のキメラペプチド。
【0300】
実施形態20.前記安定化ペプチドが、配列番号55または97に示される配列を含む、請求項19に記載のキメラペプチド。
【0301】
実施形態21.前記ブロッキングペプチドと前記安定化ペプチドとがリンカーによって連結されている、請求項1~20のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【0302】
実施形態22.前記リンカーが、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される、請求項21に記載のキメラペプチド。
【0303】
実施形態23.前記PEG部分が、約2~約7個のエチレングリコール単位で構成される、請求項19に記載のキメラペプチド。
【0304】
実施形態24.配列番号12~22、27、28、及び31~41のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【0305】
実施形態25.配列番号12、17、19~22、27、28、31~33、35、及び38~40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項24に記載のキメラペプチド。
【0306】
実施形態26.配列番号12~22、24~41、及び151~160のいずれかのアミノ酸配列を含む非天然ペプチド。
【0307】
実施形態27.前記ペプチドが、配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の非天然ペプチド。
【0308】
実施形態28.前記ペプチドが、アミノ酸約100個以下の長さを有する、実施形態26または27に記載の非天然ペプチド。
【0309】
実施形態29.配列番号161~180からなる群から選択される核酸配列を含む、siRNA。
【0310】
実施形態30.前記siRNAが、配列番号163、170、166、または168に示される核酸配列を含む、実施形態29に記載のsiRNA。
【0311】
実施形態31.a)実施形態1~25のいずれかのキメラペプチド、実施形態26もしくは27のペプチド、または実施形態28もしくは実施形態29のsiRNAを含むカーゴと、b)第2のペプチドと、を含む複合体であって、前記ペプチドまたはsiRNAが前記第2のペプチドと複合体を形成している、前記複合体。
【0312】
実施形態32.前記第2のペプチドが、CADY、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される細胞透過性ペプチドである、実施形態31に記載の複合体。
【0313】
実施形態33.前記第2のペプチドと前記ペプチドまたはsiRNAとのモル比が、約1:1~約80:1である、実施形態31または実施形態32に記載の複合体。
【0314】
実施形態34.前記第2のペプチドと前記ペプチドとのモル比が、約2:1~約10:1である、実施形態33に記載の複合体。
【0315】
実施形態35.前記第2のペプチドと前記siRNAとのモル比が、約5:1~約50:1である、実施形態34に記載の複合体。
【0316】
実施形態36.a)実施形態1~25のいずれかのキメラペプチド、もしくは実施形態26~28のいずれかのペプチド、及び/またはb)実施形態29もしくは実施形態30のsiRNAを含む、実施形態31~35のいずれか1つに記載の複合体。
【0317】
実施形態37.前記siRNAが、配列番号166に示される核酸配列を含む、実施形態36に記載の複合体。
【0318】
実施形態38.配列番号17または33に示されるアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含む、実施形態37に記載の複合体。
【0319】
実施形態39.実施形態30~38のいずれか1つの複合体を含む、ナノ粒子。
【0320】
実施形態40.前記ナノ粒子が、約100nm以下の直径を有する、実施形態39に記載のナノ粒子。
【0321】
実施形態41.前記ナノ粒子が、約40~約60nmの直径を有する、実施形態40に記載のナノ粒子。
【0322】
実施形態42.a)実施形態1~25のいずれかのキメラペプチド、実施形態26~28のいずれかのペプチド、実施形態29または実施形態30のsiRNA、実施形態31~41のいずれかの複合体またはナノ粒子と、b)薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0323】
実施形態43.2つ以上の複合体またはナノ粒子を含み、前記2つ以上の複合体またはナノ粒子が異なるカーゴを含む、実施形態42に記載の医薬組成物。
【0324】
実施形態44.前記カーゴを前記第2のペプチドと組み合わせることを含む、実施形態31~41のいずれか1つに記載の複合体またはナノ粒子を調製する方法。
【0325】
実施形態45.個体におけるSARS-CoV-2感染を治療する方法であって、前記個体に有効量の実施形態42または実施形態43の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0326】
実施形態46.前記医薬組成物が、噴霧または局所肺または経鼻送達により投与される、実施形態45に記載の方法。
【0327】
実施形態47.前記個体が、ヒトである、実施形態45または実施形態46に記載の方法。
【実施例】
【0328】
以下の実施例は、本出願の純粋な例示であることが意図されており、したがって、あらゆる意味において本出願を限定するものとしてみなされるべきではない。以下の実施例及び詳細な説明は、例示の目的で示されるものであって、限定することを目的とするものではない。
【0329】
実施例1.ACE2/SARS-CoV RBDの相互作用を標的とするペプチド及びペプチドベースのナノ粒子の設計
ACE2またはSpikeタンパク質結合ドメインのいずれかを標的とするペプチド阻害剤を、ACE2:Spikeタンパク質複合体の公開された結晶(PDBコード:6M17)構造及び電子顕微鏡(PDBコード:6LZG)構造の両方に基づいて設計した。阻害剤は、環化、ステープル化学、レトロインベルソ、またはDアミノ酸の使用のいずれかによってさらに安定化できる安定した構造体が得られるように設計した。
【0330】
A.スパイクタンパク質由来の阻害剤の選択
SARS-CoV-2 RBD構造には、5本鎖の逆平行βシート(β1、β2、β3、β4、及びβ7)の短い連結ヘリックスとループを有するコアドメインが含まれていた。ACE2受容体に結合するSARS-CoV-2 RBDの接触残基の多くは、コアドメインのβ4鎖とβ7鎖の間に位置している(
図1A)。受容体結合モチーフ(RBM)ドメインには、短いβ5及びβ6鎖、α4及びα5ヘリックス及びループが含まれる。主な接触には、α4とβ5の間のループ、β6とα5の間のループ、及びβ5とβ6の間のループの一部が関与していた。RBMドメインの遠位端のループを連結するシステインペアCys480-Cys488も、界面の安定化に主要な役割を果たしている(
図1B)。SARS-CoV2 RBD構造内のRBMドメインから、以下の配列を有する11個の阻害配列が得られている。下記表2を参照。
【0331】
【0332】
各ペプチド配列を、クリックケミストリーを使用して直鎖状または環状のいずれかとしてADGN-106またはADGN-100ペプチドに連結した(Rashad et al.,Methods Mol Biol.2019;2001:133-145を参照)。場合によっては、ブロッキングペプチドのC末端にある1個または2個のアミノ酸をリシンに置き換えることでリシン側鎖による連結を介した環状ペプチドが得られる(Alsina J.et al.,Tetrahedron Letters,Volume 35,Issue 51,19 December 1994,Pages 9633-9636を参照)。各配列は、ADGNペプチドのN末端にアミノ結合により直接連結するか、またはリンカーモチーフを介して連結した。Ava(4ペンチン酸)、Ahx(アミノヘキサン酸)、ポリGまたはPEG(PEG-2)をリンカーとして使用した。表3を参照。
【0333】
【0334】
B.ACE2ドメイン由来の阻害剤の選択
SARS-CoV-2 RBDの拡張されたRBMは、ACE2の小葉部分の下面と接触し、RBMの凹状の外面がACE2のN末端ヘリックスを収容する。SARS-CoV-2 RBDとACE2受容体ドメインとの主要な接触には主としてα1ヘリックスが関与し、α2ヘリックス及びβ3鎖とβ4鎖との間のループもある程度関与している(
図1C及び1D)。
【0335】
以下の配列を有する、ACE2構造に基づいた9個の阻害配列が選択されている。α1ヘリックスに由来するLNCOV-19/33/34、α1ヘリックスとα2ヘリックスの両方に由来するLNCOV20/27、ならびにβ3鎖とβ4鎖の一部及びそれに続くαヘリックスを含むβ3鎖とβ4鎖の間のループに由来するLNCOV-35/36/37。表4を参照。
【0336】
【0337】
各ペプチド配列を、クリックケミストリーを使用して直鎖状としてADGNペプチドに連結した。各配列は、ADGNペプチドのN末端にアミノ結合で直接連結するか、またはリンカーモチーフを介して連結した。Ava(4ペンチン酸)、Ahx(アミノヘキサン酸)、ポリGまたはPEG(PEG-2)をリンカーとして使用した。表5を参照。
【0338】
【0339】
実施例2.選択された阻害配列の構造解析
ADGNペプチドに連結された、またはされていないACE2のα1及びα2ヘリックスに由来する阻害配列の二次構造を、分子モデリングpeplook-Zultim及びPEPFOLDプログラムを使用して決定した(Thomas A and Brasseur R.,2006,Prediction of peptide structure: how far are we?,Proteins.65,889-97及びLamiable A,Thevenet P,Rey J,Vavrusa M,Derreumaux P,Tuffery P.Nucleic Acids Res.2016 Jul 8;44(W1):W449-54)。
【0340】
以下の表6に示されているように、α1ヘリックス(配列23~26)及びα1及びα2ヘリックス(配列27/28)に由来するペプチドは、溶液中で二次ヘリックス構造をとる。
【表6】
【0341】
Peplook-Zultimプログラムを使用して、各ヘリックス状ペプチドの構造の動的および安定性分析を決定した。各ペプチドのアミノ酸及びペプチド配列全体の平均二乗偏差(RMSD)、及びファンデルワールス力(vdW)と静電エネルギーの両方の相互作用エネルギーを計算した。結果は、阻害ドメインのヘリックス構造は、ADGNペプチドに連結されると、ADGNペプチドの芳香族残基との直接的な相互作用によって、強力に安定化されることを示した。
【0342】
ADGNを介した二次構造の安定化は、主に配列32/33/34/35及び配列41で観察される。ADGN-106残基とADGN-100残基は、阻害ドメインのヘリックス構造を安定化させた。ADGNペプチドのアルギニン残基がペプチドの表面でアクセス可能な状態に保たれていることで、他のADGNペプチドとのさらなる相互作用が可能となった。RBDドメインと接触するペプチドの残基は、ペプチドの表面でアクセス可能な状態に保たれている(
図2A~2E)。
【0343】
実施例3.ACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用のペプチド阻害剤のスクリーニング
ACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用を遮断する様々なペプチドの効力を、ACE2:SARS-CoV-2スパイク Inhibitor Screening Assay Kit(DBS Bioscience)を使用してインビトロで評価した。スクリーニングは、ACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用の阻害剤をスクリーニング及びプロファイリングするように設計した。評価は96ウェルフォーマットで行った。ACE2タンパク質をニッケル被覆96ウェルプレートに付着させ、次いでゆっくりと振盪しながらペプチド阻害剤溶液と室温で30分間、インキュベートした。最後に、SARS-CoV-2スパイク-Fcを、ペプチド阻害剤溶液の存在下でプレート上のACE2に加え、ゆっくりと振盪しながら室温で1時間、インキュベートした。各プレートを抗Fc-HRPで処理した後、HRP基質を加えて化学発光を発生させ、化学発光リーダーを使用して分析した。Zhang et alにより記載されるSBP-1 ペプチド(SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するファースト・イン・クラスのペプチドバインダー、G.Zhang,S.Pomplun,A.R.Loftis,A.Loas,B.L.Pentelute bioRxiv 2020.03.19.999318;doi:https://doi.org/10.1101/2020.03.19.999318 2020)をポジティブコントロールとして使用した。結果は、3回の別々の実験の平均に相当し、
図3A~3B及び表7に示す。
【0344】
ACE2のα1ヘリックスに由来するSBP-1コントロール配列は、IC50=785±25nMでACE2:スパイク阻害を妨げる。SBP-1をADGN-106(配列32)と共有結合させた場合、IC50=325.2±17nMであり、効力は2.4倍増加し、ADGN-106の存在がSBP-1ドメインのヘリックス構造を安定化させたことが確認された。ADGN-100(配列41)と共有結合させた場合、IC50=432.5±21nMであり、SBP-1の効力はやはり1.8倍増加した。
【0345】
A.スパイクタンパク質由来のペプチド:
直鎖状配列(配列1~11)のいずれも、10μM未満の濃度では阻害を示さなかった。
【0346】
これに対して、ADGN-106と共有結合させた環状ペプチドに相当する配列12/17/19/20/21のペプチドは、ACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用を遮断した。これらの結果は、ペプチド構造を安定化させるための環化の存在が、ACE2タンパク質表面との相互作用に必要であることを示唆している。
【0347】
ADGN-106(配列19)と共有結合させた場合、配列8のみがIC50=90.6±8nMでACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用を阻害することは、ADGNペプチドとの共有結合が阻害ドメインの構造を安定化させることを裏付けるものである。
【0348】
システインペアCys480-Cys488によって安定化されたループβ5-β6由来の配列17のペプチドは、IC50=57.5±11nMで相互作用を遮断し、これは遊離SBP-1またはADGN-106と連結されたSBP-1と比較して15倍及び6倍高い効力である。
【0349】
IC50=17.2±5nM及び22.6±7nMの最も強い阻害がβ6-α5間のループに由来する配列20及び配列21のペプチドで得られ、これは遊離SBP-1またはADGN-106と連結されたSBP-1と比較して40倍及び16倍高い効力である。
【0350】
B.ACE2タンパク質由来のペプチド:
ACE2のα1ヘリックスに由来するペプチドである配列23~26は、IC50=785<x<2μMでACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用を遮断した。これらのペプチドをADGN-106と共有結合させると(配列32~35)、効果が3~6倍向上する。ADGN-106に連結された配列24に相当する配列33は、配列24で得られたIC50=1.3μMと比較して、ICC50=178±14nMを示している。これらの結果は、ADGN-106の存在が阻害ドメインのヘリックス構造を安定化させたことを裏付けるものである。
【0351】
最も強い阻害がACE2のα1ヘリックス及びα2ヘリックスに由来するペプチドで得られた。すなわち、配列27及び配列28は、IC50=約50nMでACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用を遮断し、これは遊離SBP-1またはADGN-106と連結されたSBP-1と比較して15倍及び6倍高い効力である。これらのペプチドをADGN-106と共有結合させると(配列39及び40)、効果が1.4倍向上する。
【0352】
ACE2タンパク質のβ3及びβ4ループに由来するペプチドである配列29/30/31は、10μM未満の濃度では阻害を示さなかった。これらのペプチドをADGN-106と共有結合させると(配列36~38)、効果が10~100倍向上する。ADGN-106に連結された配列31に相当する配列38は、配列31で得られたIC50=25μMと比較して、IC50=214.2±21nMを示している。スパイク由来の阻害剤に関して、これらの結果は、ADGNペプチドとの共有結合がこれらの阻害ペプチドの構造を安定化させるうえで不可欠であることを示した。
【0353】
結論として、ACE2:SARS-CoV-2スパイクの相互作用を遮断する最良の候補は以下に相当する。
ADGN-106と共有結合させたSPIKEのβ6-α5ループに相当する環状ペプチド(例えば、配列20及び配列21)、
ADGN-106と共有結合させたSPIKEのβ5-β6ループに相当する環状ペプチド(例えば、配列17)、
ADGN-106と結合された、または結合されていないACE2のα1及びα2ヘリックスに由来するペプチド(例えば、配列27、28、39、40)。
【0354】
実施例4SARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用のペプチド阻害剤のスクリーニング
SARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用を遮断する異なるペプチドの効力を、SARS-CoV-2スパイク:ACE2 Inhibitor Screening Assay Kit(DBS Bioscience)を使用してインビトロで評価した。スクリーニングは、SARS-CoV-2スパイク:ACE2の阻害剤をスクリーニング及びプロファイリングするように設計した。評価は96ウェルフォーマットで行った。SARS-CoV-2スパイクタンパク質をニッケル被覆96ウェルプレートに付着させ、次いでゆっくりと振盪しながらペプチド阻害剤溶液と室温で30分間、インキュベートする。最後に、ACE2-Fcを、ペプチド阻害剤溶液の存在下でプレート上のSARS-CoV-2スパイク-Fcに加え、ゆっくりと振盪しながら室温で1時間、インキュベートする。各プレートを抗Fc-HRPで処理した後、HRP基質を加えて化学発光を発生させ、化学発光リーダーを使用して分析した。Zhang et al.により記載されるSBP-1ペプチドをポジティブコントロールとして使用した。結果は、3回の別々の実験の平均に相当し、
図4A~4B及び表7に示す。
【0355】
SBP-1コントロール配列は、IC50=267±12nMでACE2:スパイク阻害を妨げる。SBP-1がADGN-106(配列32)またはADGN-100(配列41)と共有結合された場合、IC50=134.2±14nM及び219.7±9nMであり、効力は2.0倍及び1.4倍増加する。
【0356】
A.スパイクタンパク質由来のペプチド:
対応する直鎖状配列またはADGN-106と連結されない(配列1~11)のいずれも、10μM未満の濃度では阻害を示さなかった。ADGN-106と連結されたα4-β5間のループに相当するペプチド(配列1~11)のいずれも、10μM未満の濃度では阻害を示さなかった。
【0357】
ADGN-106と共有結合させた環状ペプチドに相当する配列17/19/20/21/22のペプチドは、SARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用を遮断し、このことは環化の存在及びADGNペプチドとの共有結合の両方が、ACE2タンパク質表面との相互作用の主要な要件として、阻害ドメインの構造を安定化させることを示唆した。
【0358】
IC50=44.2±7nM及び38.5±11nMの最良の阻害がβ6-α5間のループに由来する配列20及び配列21のペプチドで得られ、これは遊離SBP-1またはADGN-106と連結されたSBP-1と比較して6.6倍及び3.3倍高い効力である。β6-α5間のループとα5ヘリックスに相当する配列22は、配列20/配列21よりも3.6倍効力が低く、β6-α5間のループがSARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用を遮断するのに十分であることを示唆している。
【0359】
ループβ5-β6由来の配列17のペプチドは、IC50=78.2±9nMで相互作用を遮断し、これは遊離SBP-1またはADGN-106と連結されたSBP-1と比較して3.4倍及び1.7倍高い効力である。
【0360】
B.ACE2タンパク質由来のペプチド:
ACE2のα1ヘリックスに由来するペプチドである配列23~26は、IC50=300<x<1μMでSARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用を遮断した。これらのペプチドをADGN-106と共有結合させると(配列32~35)、効果が2~10倍向上する。
【0361】
最良の阻害が、ADGN-106と連結されたACE2のα1ヘリックスの一部に相当する配列33で得られ、配列24で得られたIC50=570±30nMと比較して、IC50=18.4±3nMでSARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用を遮断した。これらの結果は、ADGN-106の存在が阻害ドメインのヘリックス構造を安定化したことを裏付けている。配列33は、遊離SBP-1及びADGN-106と連結されたSBP-1と比較して14倍及び8倍高い効力である。
【0362】
ACE2のα1及びα2ヘリックスに由来するペプチドである配列27及び配列28は、IC50=37.4nM±8nm及び38.5nM±7nmでSARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用を遮断し、これは遊離SBP-1及びADGN-106と連結されたSBP-1と比較して7倍及び3.5倍高い効力である。
【0363】
ACE2タンパク質のβ3及びβ4ループに由来するペプチドである配列29/30/31は、10μM未満の濃度では阻害を示さなかった。これらのペプチドをADGN-106と共有結合させると(配列36~38)、効果が10~100倍向上する。ADGN-106に連結された配列31に相当する配列38は、配列31で得られたIC50=25μMと比較して、IC50=102.8±17nMを示している。スパイク由来の阻害剤に関して、これらの結果は、ADGNペプチドとの共有結合が阻害ペプチドの構造を安定化させるうえで不可欠であることを示した。
【0364】
結論として、SARS-CoV-2スパイク:ACE2の相互作用を遮断する最良の候補は以下に相当する。
ADGN-106と共有結合させたβ6-α5ループに相当する環状ペプチド(例えば、配列20及び配列21)、
ADGN-106と共有結合させたACE2のα1ヘリックスに由来するペプチド(例えば、配列33)、
ADGN-106と結合された、または結合されていないACE2のα1-α2ヘリックスに由来するペプチド(例えば、配列27、28、39、40)。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【0365】
実施例5.阻害剤ペプチドを用いたADGNペプチドベースのナノ粒子の形成
次に、異なるペプチドがADGN-106またはADGN-100ペプチドの存在下でナノ粒子組織を形成する能力を試験した。1μM未満のIC
50でACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用を阻害するペプチドを、1/5のペプチド/ADGNモル比でADGN-106ペプチドとの複合体としてさらに評価した。各ペプチドで、5または10モル過剰のADGN-106と複合体を形成させた。ペプチド/ADGN-106複合体の平均サイズと多分散性を、測定ごとに25℃で3分間測定し、ゼータ電位をZetasizer 4装置(Malvern Ltd)を使用して測定した。3回の別々の実験の平均のデータを表8に示す。
【表8】
【0366】
表8に示されるように、ADGN-106は、配列23/配列39/配列40を除いて、約35~50nmの平均直径及び0.2~0.25の多分散指数(PI)を有する安定した複合体を異なるペプチドと形成する。これに対して、配列1~11及び配列24~26に対応するペプチドでは、ADGN-106またはADGN-100の存在下で複合体は検出されず、阻害ペプチドの構造的編成及びサイズが複合体形成に重要であることを示唆した。
【0367】
実施例6.ACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用のペプチドベースナノ粒子による阻害
ACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用を遮断する異なるペプチド阻害剤/ADGN-106複合体の効力を、SARS-CoV-2スパイク:ACE2及びACE2:SARS-CoV-2スパイクInhibitor Screening Assay Kit(DBS Bioscience)の両方を使用してインビトロで評価した。結果は、3回の別々の実験の平均に相当し、
図3B、
図4B及び表7に示す。
【0368】
図3A~3B、
図4A~4B及び表7に示されるように、ADGN-106ナノ粒子内の異なるペプチドの結合は、SARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用を遮断する効力を有意に改善している。
【0369】
A.ACE2:SARS-CoV-2スパイク相互作用
SBP-1コントロール配列はADGN-106とナノ粒子の形で複合体を形成させた場合、IC50=163.4±29nMでACE2:スパイク阻害を妨げ、SBP-1はIC50=24.5±2nMでADGN-106に共有結合した(配列32)。
【0370】
ペプチド配列17、19、20、21、27、28、39、40は、ナノ粒子の形でADGN-106と複合体を形成させた場合、SARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用をIC50<10nMで阻害した。最高の阻害は、IC50値が3.4±0.2、3.7±0.5、5.2±0.4、1.8±0.8、及び2.7±0.7nMである配列17、20、27、28で得られ、SBP-1ペプチド/ADGN-106複合体及びSBP-1-ADGN-106/ADGN-106複合体よりも40~6倍高い効力である。
【0371】
B.SARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用
SBP-1コントロール配列はADGN-106とナノ粒子の形で複合体を形成させた場合、IC50=87.5±15nMでACE2:スパイク阻害を妨げ、SBP-1はIC50=7.2±4nMでADGN-106に共有結合した(配列32)。
【0372】
ペプチド配列17/27/28/33/39/40は、ナノ粒子の形でADGN-106と複合体を形成させた場合、SARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用をIC
50<5nMで阻害した。最高の阻害は、IC
50値が2.7±0.1、1.1±0.5、2.1±0.4、及び1.2±0.4nMである配列17/27/28/33で得られ、SBP-1ペプチド/ADGN-106複合体及びSBP-1-ADGN-106/ADGN-106複合体よりも35~4倍高い効力である。
【表9】
【0373】
驚くべきことに、これらの結果はナノ粒子としての異なるペプチドのADGN-106との結合は、SARS-CoV-2スパイク:ACE2相互作用を遮断するそれらの効力を有意に向上させることを示唆している。表9を参照されたい。ADGN-106と異なるペプチドとの安定したナノ粒子の形成により、阻害ドメインの濃度が局所的に増加し、効果が高まるものと考えられる。
【0374】
結論として、ACE2:SARS-CoV-2スパイクの相互作用を遮断する最良の候補は以下に相当する。
ADGN-106と共有結合させたβ6-α5ループに相当する環状ペプチド(配列20及び配列21)、
ADGN-106と共有結合させたβ5-β6ループに相当する環状ペプチド(配列17)、
ADGN-106と結合された、または結合されていないACE2のα1及びα2ヘリックスに由来するペプチド(配列27、28、39、40)、
ADGN-106と共有結合させたACE2のα1ヘリックスに由来するペプチド(配列33)。
【0375】
実施例7.SARS-CoV-2ウイルス感染のペプチド阻害剤のスクリーニング
SARS-CoV-2ウイルス感染に対する異なるペプチド(ナノ粒子形態ではない)の影響をVero E6細胞で評価した。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。0.5μMの単一濃度のペプチドを使用してスクリーニングを行った。ペプチドをSARS-CoV-2(MOI0.01)と30分間混合した後、単層Vero-E6細胞に加えた。感染から72時間後、プレートを固定、染色し、分析した。これと並行して、非感染細胞を使用し、CellTiter-Gloアッセイ(Promega)を使用して、異なるペプチドのみの細胞毒性をモニタリングした。
【0376】
【0377】
表10に示されるように、0.5μMの濃度でペプチド配列17、20、22、28、及び33はウイルス感染の阻害を示す。配列17、28、及び33はウイルス感染を80%以上、配列22は60%減少させ、細胞毒性は極めて低い。そこで、感染の阻害に関する完全なIC50情報を得るためにペプチド配列17、22、28、及び33を、SARS-CoV-2ウイルスの感染力及び複製についてさらに評価した。
【0378】
感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。異なる希釈濃度を有するペプチドを、ウイルス感染の直前に単層Vero-E6細胞に直接加えるか、またはSARS-CoV-2と30分間混合してから単層Vero-E6細胞に加えた。ADGN-106、ヒドロキシクロロキン、及びバッファーをコントロールとして使用し、すべての処理を3重に行った。CellTiter-Gloアッセイ(Promega)を使用してVero-6、H1299及びHEPG2細胞に対する異なるペプチドの細胞毒性を分析した。
【0379】
【0380】
図5A、5C及び表11に示されるように、4つのペプチドはいずれも、ナノモル範囲のIC
50でSARS-CoV2ウイルス感染に対して強力な阻害活性を示した。配列17及び配列22は、それぞれ21.5±12nM及び124.5±14nMのIC
50を示した。配列28及び配列33は、それぞれ34.5±11nM及び21.7±8nMのIC
50を示した。感染前にSARS CoV-2とプレインキュベートすることにより、配列28及び配列33の効力が2倍増加したが、このことは、これらのペプチドがスパイクタンパク質と相互作用し、したがってウイルスと直接相互作用するという事実と一致している。これに対して、プレインキュベーションは配列22の効力には影響せず、配列17の抗ウイルス活性を2倍減少させた。ADGN-106単独では、IC
50=5.5~6.8μMと弱い抗ウイルス活性を示した。
【0381】
すべてのペプチドが、非感染細胞に対して比較的低い細胞毒性を示し、300~500μMの範囲のTD
50値を示した。
図5B及び5Dを参照されたい。
【0382】
配列17/28/33は、SARS-CoV-2感染の極めて強力な阻害剤を構成し、硫酸ヒドロキシクロロキン(IC50=4.4±0.215μM)よりも250倍強い抗SARS-CoV-2活性を示している。
【0383】
実施例8.SARS-CoV-2のヌクレオカプシドを標的とするsiRNAの選択
SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とする10種類のsiRNAを選択した(表12)。
【表12】
【0384】
これらのsiRNAを、eGFP-SARS-CoV-2のヌクレオカプシドを発現するH1299肺上皮細胞で評価した。H1299肺上皮細胞に、eGFPでタグ付けされたSARS-COV-2ヌクレオカプシドをコードするpcDNA3.1(+)-N-eGFP-NPプラスミド(Genscript参照番号MC-0101137)をトランスフェクトした。次いで、細胞を、モル比1/20でADGN-100と複合体化したsiRNA(1nM~200nM)で処理した。eGFPを標的とするsiRNA及びscr-siRNAを、それぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして使用した。ヌクレオカプシド-eGFPタンパク質のレベルをトランスフェクションから48時間後にElisa(Abcam)により評価し、GlowMax(Promega)でCellTiter Glowキットを使用して毒性を測定した。結果を
図6A~6B、及び表12に示す。
【0385】
図6Aに示されるように、eGFPを標的とするsiRNAは、IC
50=4.5±2nMでeGFPサイレンシングを誘導した。4つのsiRNA(DIVC-6/DIVC-3/DIVC-8/DIVC-10)は、低ナノモル濃度でNCサイレンシングを誘導した。最良のサイレンシング応答は、DIVC-6及びDIVC-3でそれぞれIC
50=8.7±2nM及び11.4±5nMで得られた。siRNAに関連する顕著な毒性は観察されなかった。
図6Bを参照されたい。
【0386】
実施例9.SARS-CoV-2のORF3A遺伝子を標的とするsiRNAの選択
SARS-CoV-2のORF3A遺伝子を標的とする5種類の異なるsiRNAを選択した(表13)。
【表13】
【0387】
これらのsiRNAを、eGFP-SARS-CoV-2のORF3A遺伝子を発現するH1299肺上皮細胞で評価した。H1299肺上皮細胞に、eGFPでタグ付けされたSARS-COV-2 ORF3AをコードするpcDNA3.1(+)-N-eGFP-ORF3aプラスミド(Genscript参照番号MC-0101137)をトランスフェクトした。次いで、細胞を、モル比1/20でADGN-100と複合体化したsiRNA(1nM~200nM)で処理した。eGFPを標的とするsiRNA及びscr-siRNAを、それぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして使用した。ORF3a-eGFPタンパク質のレベルをトランスフェクションから48時間後にElisa(Abcam)により評価し、GlowMax(Promega)でCellTiter Glowキットを使用して毒性を測定した。結果を
図7A及び7B、ならびに表13に示す。
【0388】
図7Aに示されるように、eGFPを標的とするsiRNAは、4.5±2nMのIC
50でeGFPサイレンシングを誘導した。
【0389】
DIVC-31及びDIVC-34 siRNAは、それぞれIC50=18.4±2nM及び12.3±1nMの低ナノモル濃度でORF3aタンパク質のサイレンシングを誘導した。siRNAに関連する顕著な毒性は観察されなかった。
【0390】
実施例10.SARS-CoV-2のORF8遺伝子を標的とするsiRNAの選択
SARS-CoV-2のORF8遺伝子を標的とする5種類のsiRNAを選択した(表14)。
【表14】
【0391】
これらのsiRNAを、eGFP-SARS-CoV-2のORF8遺伝子を発現するH1299肺上皮細胞で評価した。H1299肺上皮細胞に、eGFPでタグ付けされたSARS-COV-2 ORF8をコードするpcDNA3.1(+)-N-eGFP-ORF8プラスミド(Genscript参照番号MC-0101137)をトランスフェクトした。次いで、細胞を、モル比1/20でADGN-100と複合体化したsiRNA(1nM~200nM)で処理した。eGFPを標的とするsiRNA及びscr-siRNAを、それぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして使用した。ORF8-eGFPタンパク質のレベルをトランスフェクションから48時間後にElisa(Abcam)により評価し、GlowMax(Promega)でCellTiter Glowキットを使用して毒性を測定した。結果を
図8A~8B、及び表14に示す。
【0392】
図8Aに示されるように、DIVC-82、DIVC-83及びDIVC-85 siRNAは、それぞれIC
50=21.7±7nM、15.4±3nM、及び10.8±2nMでORF8aタンパク質のサイレンシングを誘導した。siRNAに関連する顕著な毒性は観察されなかった。
【0393】
実施例11.SARS-CoV-2ウイルス感染のsiRNAのスクリーニング
SARS-CoV-2ウイルス感染に対するsiRNAの影響をVero E6細胞で評価した。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。siRNA(DIVC-3、DIVC-6、DIVC-8、DIVC-34及び/またはDIVC-85)を、モル比1/20でADGN-100と複合体を形成させた。異なる希釈濃度のsiRNA/ADGN-100複合体を、ウイルス感染の直前に単層のVero-E6細胞に直接加えた。ADGN-100、及びバッファーをコントロールとして使用し、すべての処理を3重に行った。CellTiter-Gloアッセイ(Promega)を使用してVero-6細胞に対する異なるsiRNA/ADGN-100複合体の細胞毒性を分析した。
【0394】
【0395】
【0396】
図9及び表15に示されるように、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とするsiRNA(DIVC-3、DIVC-6及びDIVC-8)は、ナノモル範囲のIC
50でSARS-CoV2ウイルス感染に対して強力な阻害活性を示した。DIVC-3及びDIVC-6は、それぞれIC
50=84.±14nM及び68±12nMを示している。これに対してSARS-CoV-2のORF8(DIVC-85)またはORF3A(DIVC-34)を標的とするsiRNAは、IC
50=約1μMで中程度の抗ウイルス活性を示した。ADGN-100単独では、IC
50=7.5μMと弱い抗ウイルス活性を示した。これらのデータは、ORF3A及びORF8タンパク質とは対照的に、ヌクレオカプシドがウイルス産生に不可欠であることを示唆するものである。
【0397】
すべてのsiRNA/ADGN-100複合体が、非感染細胞に対して比較的低い細胞毒性を示し、300~600μMの範囲のTD50値を示した。
【0398】
SARS-CoV-2のヌクレオカプシド遺伝子を標的とするDIVC-6 siRNAは、SARS-CoV-2感染の極めて強力な阻害剤を構成し、硫酸ヒドロキシクロロキン(IC504.4±0.215μM)よりも64倍強い抗SARS-CoV-2活性を示している。
【0399】
実施例12.SARS-CoV2ウイルス感染に対するsiRNAとペプチド阻害剤の組み合わせの影響
本発明者らは、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とするDIVC-6 siRNAである配列17(LNCOV-15)及び33(LNCOV-18)が、SARS-CoV-2感染の極めて強力な阻害剤を構成することを実証した。次に、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とするsiRNAと、SARS-Cov2:ACE2受容体のペプチド阻害剤を組み合わせることによるウイルス複製への影響を評価した。
【0400】
SARS-CoV-2ウイルス感染に対するsiRNA/ペプチド阻害剤の組み合わせの影響をVero E6細胞で評価した。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。DIVC-6 siRNAを、モル比1/20でADGN-100と複合体を形成させた。異なる希釈濃度のsiRNA/ADGN-100複合体及び配列17または配列33を、ウイルス感染の直前に単層のVero-E6細胞に直接加えた。ADGN-100、及びバッファーをコントロールとして使用し、すべての処理を3重に行った。
【0401】
【0402】
【0403】
図10及び表16に示されるように、LNCOV-15またはLNCOV-18ペプチドを、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とするDIVC-3 siRNAと組み合わせることで、遊離ペプチドの効力が2~3倍、DIVC-6 siRNAペプチドの効力が6倍向上し、DIVC-6/LNCOV-15及びDIVC-6/LNCOV-18の組み合わせで、それぞれIC
50=8.4±8nM及び11.2±4nMであった。これらの結果は、siRNAを阻害剤ペプチドと組み合わせることで、細胞への侵入と複製を含むウイルス複製における2つの異なる段階を標的化できることを実証するものである。
【0404】
実施例13.LNCOV-15及びLNCOV-18は、培養細胞におけるsiRNAの送達を促進する。
LNCOV-15及びLNCOV-18が培養細胞におけるsiRNA送達を促進する効力は、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドを標的とするsiRNAを使用して評価されている。
【0405】
siRNA DIVC-6を、eGFP-SARS-CoV-2のヌクレオカプシドを発現するH1299肺上皮細胞で評価した。H1299肺上皮細胞に、eGFPでタグ付けされたSARS-COV-2ヌクレオカプシドをコードするpcDNA3.1(+)-N-eGFP-NPプラスミド(Genscript参照番号MC-0101137)をトランスフェクトした。次いで、細胞を、モル比1/20でADGN-100、LNCOV-15、及びLNCOV-18と複合体化したsiRNA(1nM~200nM)で処理した。scr-siRNAを、それぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして使用した。ヌクレオカプシド-eGFPタンパク質のレベルをトランスフェクションから48時間後にElisa(Abcam)により評価し、GlowMax(Promega)でCellTiter Glowキットを使用して毒性を測定した。結果を表11Aに示す。
【0406】
図11Aに示されるように、LNCOV-15及びLNCOV-18は、培養細胞におけるsiRNA送達を促進し、低ナノモル濃度でNCサイレンシングのサイレンシングをもたらしている。LNCOV-15及びLNCOV-18と複合体を形成させた場合、それぞれIC
50=11±4nM及び8.7±2nMで、DIVC-6 siRNAに関連するサイレンシング応答が得られた。これらの結果はADGN-100で得られたものと同様であり、LNCOVペプチドが強力なsiRNA送達ベクターであり、siRNAの送達とウイルスの細胞への侵入の阻止の両方の目的で使用できることを示唆するものである。
【0407】
実施例14:ペプチド阻害剤を使用したACE2:SARS-CoV-2スパイクバリアント相互作用の阻害。
ここ数カ月で、SARS-CoV-2ウイルスのいくつかの新たな変異株が出現した。英国変異株B.1.1.7、ブラジル変異株P.1、南アフリカ変異株B.1.351、及び最新のインド変異株B.1.617は、感染率が高いため特に懸念されている。スパイクタンパク質のRBDドメインで特定された変異のサブセットが複数の株で生じており、伝染性、感染力を高め、免疫回避能力を高める可能性があることが報告されている。
【0408】
ACE2とSARS-CoV-2スパイクバリアントとの相互作用を遮断するリードペプチド配列17(LN-COV-15)、配列28(LN-COV-20)及び配列33(LN-COV-18)の効力を、Inhibitor Screening Assay Kit(DBS Bioscience)を使用してインビトロで評価した。アルファ(B1.1.7/英国)、ベータ(B1.351/南アフリカ)、ガンマ(P1/ブラジル)、デルタ(B16172/インド)及びイプシロン(B1429)変異株を含む、主要な変異を有する5つの異なるSARS-CoV-2スパイクタンパク質バリアントでペプチド阻害を評価した(表17)。RBD及びスパイクタンパク質バリアントは、Sino Biological(米国)より入手した。
【0409】
【0410】
ペプチドの評価は96ウェルフォーマットで行った。ACE2タンパク質をニッケル被覆96ウェルプレートに付着させ、次いでゆっくりと振盪しながらペプチド阻害剤溶液と室温で30分間、インキュベートした。最後に、異なるSARS-CoV-2スパイク-Fcを、ペプチド阻害剤溶液の存在下でプレート上のACE2に加え、ゆっくりと振盪しながら室温で1時間、インキュベートした。各プレートを抗Fc-HRPで処理した後、HRP基質を加えて化学発光を発生させ、化学発光リーダーを使用して分析した。結果は、3回の別々の実験の平均に相当し、
図12A~12E及び表18に示す。
【0411】
【0412】
図12A~12Eに示されるように、各リードペプチドは、ACE2と異なるSARS-CoV-2スパイクバリアントとの相互作用を遮断している。いずれの場合も、IC50値は、SARS-COV2の原株で得られたものと同様である。
【0413】
配列28及び配列33ペプチドは、使用したスパイクバリアントに関係なくIC50=50nM未満であり、最も効率的である。配列28及び配列33ペプチドはスパイクタンパク質を直接標的とし、ACE2との界面について競合した。このACE2/スパイク界面には、残基N501、E484、L452、及びK417が含まれており、ACE2に対する親和性が高い異なるバリアントで変異している。
【0414】
変異L452R(デルタ及びイプシロン変異株)は、免疫回避及び高い伝染性との関連が示されている。この変異は、配列28及び配列33の直接の標的となる。
【0415】
E484残基の変異は、ウイルスの感染力を高め、ACE2との相互作用を強化することが報告されている。このE484K(Pガンマ及びベータ変異株)及びE484Q(デルタ変異株)変異は、同じスパイク/ACE2界面について競合する配列17の直接の標的となる。
【0416】
実施例15:SARS-CoV-2変異株ウイルス感染に対するペプチド阻害剤の評価
SARS-CoV-2変異株ウイルスの感染力及び複製を遮断するリードペプチド配列17(LN-COV-15)、配列28(LN-COV-20)、及び配列33(LN-COV-18)の効力をさらに評価した。
【0417】
抗ウイルスアッセイを、2%FBS(Eurobio-Scientific)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(P0781;Sigma Aldrich)を添加したDMEM高グルコース培地(D6429;Sigma Aldrich)中のVeroE6細胞で行った。配列17、配列28、または配列33のペプチド(10nM~1μMの範囲の濃度)または6μMのレムデシビル(ポジティブコントロール、RMD)を含む培地、または抗ウイルス分子を含まない培地(ネガティブコントロール、「T-」)中で1時間インキュベートすることにより、SARS-CoV-2変異株(アルファ/ベータ/デルタ)にMOI0.001で3重に感染させた。ペプチド溶液をDMSO/水(2%)中で調製し、5mMのストック液から希釈した。感染の1時間後に接種材料を除去し、細胞をPBSで1回洗浄した後、前に示した濃度の新しい培地を加えた。上清を感染の24時間後に回収し、VeroE6細胞でTCID50法によってウイルス力価を測定し、Spearman & Kaerberアルゴリズムによって計算した。結果を
図13A~13C、及び表19に示す。
【0418】
【0419】
図13A~13C及び表19に示されるように、3つのペプチドはいずれも、すべてのSARS-CoV2変異株ウイルスに対して強力な阻害活性を示し、試験した最大濃度(500nM)で99.99%を上回るウイルス阻害率を実現した。アルファ/ベータ及びデルタ変異株では、配列28及び配列33で得られたIC50値は、SARS-COV2の原株で得られた値と同様である。配列17は、アルファ及びベータ変異株に対する効果がそれぞれ3~4倍低くなっている。
【0420】
配列28及び配列33は、すべてのSARS-CoV-2変異株感染の極めて強力な阻害剤を構成し、レムデシビルよりも200倍強い抗SARS-CoV-2活性を示している。
【0421】
実施例16.SARS-CoV2ウイルス変異株の感染に対するsiRNAとペプチド阻害剤の組み合わせの影響
本発明者らは、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とするDIVC-6 siRNAである配列17(LNCOV-15)、配列28(LNCOV-20)及び33(LNCOV-18)が、SARS-CoV-2感染の極めて強力な阻害剤を構成することを実証した。本発明者らは、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とするsiRNAと、SARS-Cov2:ACE2受容体のペプチド阻害剤を組み合わせることによるSARS-CoV-2アルファ、ベータ、及びデルタ変異株の複製への影響を評価した。
【0422】
SARS-CoV-2ウイルス感染に対するsiRNA/ペプチド阻害剤の組み合わせの影響をVero E6細胞で評価した。感染の1日前に細胞を96ウェルに播種した。DIVC-6 siRNAを、ADGN-100、配列17、配列28、または配列33とモル比1/20で複合体化した。異なる希釈濃度のsiRNA/ペプチド複合体及び配列17、配列28、及び配列33を、ウイルス感染の直前に単層のVero-E6細胞に直接加えた。6μMのレムデシビル(ポジティブコントロール、RMD)、または抗ウイルス分子なし(ネガティブコントロール、「T-」)をコントロールとして使用し、すべての処置を3重で行った。
【0423】
【0424】
【0425】
図14A~14Cに示されるように、DIVC-6 siRNAは、すべてのSARS-CoV2変異株ウイルスに対して強力な阻害活性を示した。DIVC-6が標的とする配列は、変異率が低く、試験した異なる変異株では影響を受けていないヌクレオカプシドのCTDドメインのN末端部分に位置していることから、このことは驚くには値しない。
【0426】
SARS-COV-2の原株について報告されているように、配列17、配列28、及び配列33のペプチドを、SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とするDIVC-6 siRNAと組み合わせることで、遊離ペプチドの効力が2~3倍、DIVC-6 siRNAの効力が6~10倍向上した。
【0427】
これらの結果は、siRNAを阻害剤ペプチドと組み合わせることで、細胞への侵入と複製を含むウイルス複製における2つの異なる段階を標的化できることを実証するものである。
【0428】
実施例17.SARS-CoV2のペプチド阻害剤及びペプチド/siRNA複合体阻害剤の肺投与。
SARS-CoV-2ヌクレオカプシド遺伝子を標的とするDIVC-6 siRNAである配列17(LNCOV-15)及び配列33(LNCOV-18)は、SARS-CoV-2感染の極めて強力な阻害剤を構成する。SARS-CoV-2は呼吸を介して肺組織に感染するため、本発明者らは、同じ経路を用いてペプチド阻害剤とペプチド/siRNA複合体を送達することを試みた。
【0429】
肺の治療では、高い組織浸透性を得ることと、肺の深部に到達させることが重要である点を考慮して、本発明者らは、配列17(LNCOV-15)、配列33(LNCOV-18)、配列17/DIVC-6及び配列33/DIVC-6複合体の気管内注入を用いて肺への送達と分布を評価した。配列33及び配列17の体内分布をモニターするために、ペプチドのN末端をCy5.5色素で標識した。DIVC-6 siRNAの体内分布をモニターするために、siRNAをCy-5.5で標識した。
【0430】
インビボでの肺の体内分布試験を、健康な4週齢の雄C57BL/6Jマウスで実施した。各ペプチドまたは各ペプチド/siRNA複合体の単回用量を気管内注入(200μg)により投与した(表20)。非侵襲的なインビボ全身蛍光画像法により、蛍光を、T0、注入の1時間、2時間、6時間、24時間、48時間、及び72時間後に評価した。IVISキネティックシステム(PerkinElmer)で蛍光画像を取得し(ex:640±17nm、em:680±10nm)、Living imageソフトウェア(Caliper 2D)を使用して蛍光画像から半定量的データを取得した。
【0431】
【0432】
図15A~15Eに示されるように、マウスの気管内注入後、すべての化合物が肺で非常に強いシグナルを示し、投与後72時間まで高く維持されている。これに対して、遊離Cy5.5色素では、シグナルは4時間後に検出されなかった。すべての化合物は、注射後24時間及び48時間で膀胱及び肝臓から速やかに排出されている。72時間後、肺のみがインビボで検出可能なシグナルを示している。
【0433】
共焦点顕微鏡により、異なる化合物の肺分布のさらなる分析を行った。投与4時間、24時間および72時間後に肺を採取し、5%グルコース中の4%ホルムアルデヒドで固定した。組織をMito tracker redで染色し、核はHoeschで染色した。共焦点顕微鏡分析を
図16A~16Bに示す。
【0434】
4時間後、ペプチド及びペプチド/siRNA複合体のいずれもが主に細胞表面に蓄積した。蛍光シグナルがマクロファージ及び実質でもみられるが、いずれの化合物も核では検出されなかった。
【0435】
24時間後、ペプチド及びペプチド/siRNA複合体は同様の明るいシグナルを発し、マクロファージ及び細胞型1及び2に蓄積がみられた。これに対して、遊離Cy5.5色素ではシグナルは検出されず、異なる化合物の肺送達の特異性が確認された。
【0436】
72時間後、ペプチド及びペプチド/siRNA複合体はいずれも、主に1/2型上皮細胞及びマクロファージの細胞質に位置している。
【0437】
これらの結果は、配列17及び配列33ペプチドが気管内投与された場合、1型及び2型肺上皮細胞を標的として肺組織に顕著に浸透できることを示唆している。
図17に示されるように、すべての化合物が肺で72時間検出可能であるのに対して、遊離色素は24時間後にはほとんど検出されない。
【0438】
ペプチド及びペプチド/siRNAの両方が気管内注入後に細胞表面に蓄積したことは、これらがSARS-COV-2の初期感染を防ぐための優れた候補となることを実証するものである。
【0439】
実施例18.SARS-CoV-2のペプチド阻害剤及びペプチド/siRNA複合体阻害剤の肺及び肝臓毒性試験
配列17(LNCOV-15)、配列33(LNCOV-18)、配列17/DIVC-6及び配列33/DIVC-6複合体の肺及び肝臓毒性試験を、健康な4週齢の雄C57BL/6Jマウスで実施した。各ペプチドまたは各ペプチド/siRNA複合体の単回用量を気管内注入(200μg)により投与した(表20)。生理食塩水をネガティブコントロールとして用いた。投与12、24、48及び72時間後に試料を採取した。
【0440】
気管内注入(0日目)の前、1日目、2日目、及び屠殺前(3日目)にマウスの体重を記録した。肺、肝臓、心臓、腎臓、及び脳を3日目に採取し、臓器指数を測定した。
図18A~18Gに示されるように、統計的データ分析によって、異なる群間で有意な体重変化及び臓器指数の変化がないことが示された。
【0441】
注入から2日後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。BAL中の細胞の割合、総タンパク質、及びLDHのレベルを分析した。結果を、ネガティブコントロールとして使用した生理食塩水緩衝液と比較した。
図19Aに示されるように、候補化合物とネガティブコントロールとの間に明らかな差は認められなかった。配列17及び配列33/DIVC6で処置したマウスでは、マクロファージのわずかな増加のみが検出された。統計的データ分析に基づくと、5つの群間でLDH及び総タンパク質アッセイに有意差は認められない(
図19B~19C)。
【0442】
これらのデータは、ペプチド阻害剤による処置もペプチド/siRNA複合体による処置も肺炎症を誘発せず、どちらの処置も十分に忍容されることを示すものである。
【0443】
血漿中のAST及びALTレベルを注入の2日後にアッセイした。統計的データ分析に基づくと、5つの群間でALTまたはASTアッセイに有意差は認められない(
図20A~20B)。これらのデータは、ペプチド阻害剤もペプチド/siRNA複合体も、肺への注入時に肝臓毒性を誘発しなかったことを示すものである。
【0444】
リードSARS-COV-2阻害剤である配列17、配列33、配列17/DIVC-6、及び配列33/DIVC6は、気管内投与時に忍容性が高く、処置に伴う肺及び肝臓への毒性はみられなかった。
【表22-1】
【表22-2】
【表22-3】
【表22-4】
【表22-5】
【表22-6】
【表22-7】
【表22-8】
【表22-9】
【表22-10】
【表22-11】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドであって、前記ブロッキングペプチドが、SPIKEとACE2との相互作用を特異的に遮断し、前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドの二次構造または三次構造を安定化する、前記キメラペプチド。
【請求項2】
前記ブロッキングペプチドが、SPIKEの受容体結合ドメイン(RBD)内のループ配列を含む、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項3】
前記ループ配列が、アミノ酸約20個以下の長さを有する、請求項2に記載のキメラペプチド。
【請求項4】
前記ループ配列が、アミノ酸約7個~アミノ酸約18個の長さを有する、請求項3に記載のキメラペプチド。
【請求項5】
前記ブロッキングペプチドが、C末端にリシン(K)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項6】
前記ループ配列が、配列番号1~11及び42~46からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項7】
前記ループ配列が、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択される、請求項6に記載のキメラペプチド。
【請求項8】
前記ブロッキングペプチドが、ACE2の細胞外ドメイン内の配列に由来する配列を含む、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項9】
前記ブロッキングペプチドが、配列番号23~31及び47~52からなる群から選択される配列を含む、請求項8に記載のキメラペプチド。
【請求項10】
前記ブロッキングペプチドが、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む、請求項9に記載のキメラペプチド。
【請求項11】
前記ループ配列が環状である、請求項2~10に記載のキメラペプチド。
【請求項12】
前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドのC末端に連結されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項13】
前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドのN末端に連結されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項14】
前記安定化ペプチドが、アミノ酸約12個~アミノ酸約30個の長さを有する、請求項12または請求項13に記載のキメラペプチド。
【請求項15】
前記ブロッキングペプチド及び前記安定化ペプチドがそれぞれ、ACE2に由来する配列を含む、請求項8~14のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項16】
前記安定化ペプチドが、配列番号49または50に示される配列を含む、請求項15に記載のキメラペプチド。
【請求項17】
前記安定化ペプチドが、両親媒性ヘリックス構造を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項18】
前記安定化ペプチドが、ADGN-100ペプチドまたはVEPEP-6ペプチドを含む、請求項17に記載のキメラペプチド。
【請求項19】
前記安定化ペプチドが、配列番号53~107のいずれか1つに示される配列を含む、請求項18に記載のキメラペプチド。
【請求項20】
前記安定化ペプチドが、配列番号55または97に示される配列を含む、請求項19に記載のキメラペプチド。
【請求項21】
前記ブロッキングペプチドと前記安定化ペプチドとがリンカーによって連結されている、請求項1~20のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項22】
前記リンカーが、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される、請求項21に記載のキメラペプチド。
【請求項23】
前記PEG部分が、約2~約7個のエチレングリコール単位からなる、請求項19に記載のキメラペプチド。
【請求項24】
配列番号12~22、27、28、及び31~41のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
【請求項25】
配列番号12、17、19~22、27、28、31~33、35、及び38~40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項24に記載のキメラペプチド。
【請求項26】
配列番号12~22、24~41、及び151~160のいずれかのアミノ酸配列を含む非天然ペプチド。
【請求項27】
前記ペプチドが、配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の非天然ペプチド。
【請求項28】
前記ペプチドが、アミノ酸約100個以下の長さを有する、請求項26または27に記載の非天然ペプチド。
【請求項29】
配列番号161~180からなる群から選択される核酸配列を含む、siRNA。
【請求項30】
前記siRNAが、配列番号163、170、166、または168に示される核酸配列を含む、請求項29に記載のsiRNA。
【請求項31】
a)請求項1~25のいずれかに記載のキメラペプチド、請求項26もしくは27に記載のペプチド、または請求項28もしくは請求項29に記載のsiRNAを含むカーゴと、b)第2のペプチドと、を含む複合体であって、前記ペプチドまたは前記siRNAが前記第2のペプチドと複合体を形成している、前記複合体。
【請求項32】
前記第2のペプチドが、CADY、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される細胞透過性ペプチドである、請求項31に記載の複合体。
【請求項33】
前記第2のペプチドと前記ペプチドまたは前記siRNAとのモル比が、約1:1~約80:1である、請求項31または請求項32に記載の複合体。
【請求項34】
前記第2のペプチドと前記ペプチドとのモル比が、約2:1~約10:1である、請求項33に記載の複合体。
【請求項35】
前記第2のペプチドと前記siRNAとのモル比が、約5:1~約50:1である、請求項34に記載の複合体。
【請求項36】
a)請求項1~25のいずれかに記載のキメラペプチド、もしくは請求項26~28のいずれかに記載のペプチド、及び/またはb)請求項29もしくは請求項30に記載のsiRNAを含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項37】
前記siRNAが、配列番号166に示される核酸配列を含む、請求項36に記載の複合体。
【請求項38】
配列番号17または33に示されるアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含む、請求項37に記載の複合体。
【請求項39】
請求項30~38のいずれか1項に記載の複合体を含む、ナノ粒子。
【請求項40】
前記ナノ粒子が、約100nm以下の直径を有する、請求項39に記載のナノ粒子。
【請求項41】
前記ナノ粒子が、約40~約60nmの直径を有する、請求項40に記載のナノ粒子。
【請求項42】
a)請求項1~25のいずれかに記載のキメラペプチド、請求項26~28のいずれかに記載のペプチド、請求項29または請求項30に記載のsiRNA、請求項31~41のいずれかに記載の複合体またはナノ粒子と、b)薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項43】
前記組成物が、2つ以上の複合体またはナノ粒子を含み、前記2つ以上の複合体またはナノ粒子が異なるカーゴを含む、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記カーゴを前記第2のペプチドと組み合わせることを含む、請求項31~41のいずれか1項に記載の複合体またはナノ粒子を調製する方法。
【請求項45】
個体におけるSARS-CoV-2感染を治療する
ための、請求項42または請求項43の医薬組成
物。
【請求項46】
前記医薬組成物が、噴霧または局所肺または経鼻送達により投与される
ものである、請求項45に記載の
医薬組成物。
【請求項47】
前記個体が、ヒトである、請求項45または請求項46に記載の
医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
本出願は別の態様において、有効量の上記に述べた医薬組成物のいずれかの個体に投与することを含む、個体におけるSARS-CoV-2感染を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、噴霧または局所肺または経鼻送達により投与される。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
安定化ペプチドに連結されたブロッキングペプチドを含むキメラペプチドであって、前記ブロッキングペプチドが、SPIKEとACE2との相互作用を特異的に遮断し、前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドの二次構造または三次構造を安定化する、前記キメラペプチド。
(項目2)
前記ブロッキングペプチドが、SPIKEの受容体結合ドメイン(RBD)内のループ配列を含む、項目1に記載のキメラペプチド。
(項目3)
前記ループ配列が、アミノ酸約20個以下の長さを有する、項目2に記載のキメラペプチド。
(項目4)
前記ループ配列が、アミノ酸約7個~アミノ酸約18個の長さを有する、項目3に記載のキメラペプチド。
(項目5)
前記ブロッキングペプチドが、C末端にリシン(K)を含む、項目1~4のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
(項目6)
前記ループ配列が、配列番号1~11及び42~46からなる群から選択される、項目1~5のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
(項目7)
前記ループ配列が、配列番号1、6、8~11、42及び45からなる群から選択される、項目6に記載のキメラペプチド。
(項目8)
前記ブロッキングペプチドが、ACE2の細胞外ドメイン内の配列に由来する配列を含む、項目1に記載のキメラペプチド。
(項目9)
前記ブロッキングペプチドが、配列番号23~31及び47~52からなる群から選択される配列を含む、項目8に記載のキメラペプチド。
(項目10)
前記ブロッキングペプチドが、配列番号23、24、26~28、31及び47~52からなる群から選択される配列を含む、項目9に記載のキメラペプチド。
(項目11)
前記ループ配列が環状である、項目2~10に記載のキメラペプチド。
(項目12)
前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドのC末端に連結されている、項目1~11のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
(項目13)
前記安定化ペプチドが、前記ブロッキングペプチドのN末端に連結されている、項目1~11のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
(項目14)
前記安定化ペプチドが、アミノ酸約12個~アミノ酸約30個の長さを有する、項目12または項目13に記載のキメラペプチド。
(項目15)
前記ブロッキングペプチド及び前記安定化ペプチドがそれぞれ、ACE2に由来する配列を含む、項目8~14のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
(項目16)
前記安定化ペプチドが、配列番号49または50に示される配列を含む、項目15に記載のキメラペプチド。
(項目17)
前記安定化ペプチドが、両親媒性ヘリックス構造を含む、項目1~14のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
(項目18)
前記安定化ペプチドが、ADGN-100ペプチドまたはVEPEP-6ペプチドを含む、項目17に記載のキメラペプチド。
(項目19)
前記安定化ペプチドが、配列番号53~107のいずれか1つに示される配列を含む、項目18に記載のキメラペプチド。
(項目20)
前記安定化ペプチドが、配列番号55または97に示される配列を含む、項目19に記載のキメラペプチド。
(項目21)
前記ブロッキングペプチドと前記安定化ペプチドとがリンカーによって連結されている、項目1~20のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
(項目22)
前記リンカーが、プロリン、ポリグリシンリンカー部分、PEG部分、Aun、Ava、及びAhxからなる群から選択される、項目21に記載のキメラペプチド。
(項目23)
前記PEG部分が、約2~約7個のエチレングリコール単位からなる、項目19に記載のキメラペプチド。
(項目24)
配列番号12~22、27、28、及び31~41のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、項目1~23のいずれか1項に記載のキメラペプチド。
(項目25)
配列番号12、17、19~22、27、28、31~33、35、及び38~40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目24に記載のキメラペプチド。
(項目26)
配列番号12~22、24~41、及び151~160のいずれかのアミノ酸配列を含む非天然ペプチド。
(項目27)
前記ペプチドが、配列番号12、17、19~22、24、26~28、31~33、35、38~40、151、156、及び158~160のいずれかのアミノ酸配列を含む、項目26に記載の非天然ペプチド。
(項目28)
前記ペプチドが、アミノ酸約100個以下の長さを有する、項目26または27に記載の非天然ペプチド。
(項目29)
配列番号161~180からなる群から選択される核酸配列を含む、siRNA。
(項目30)
前記siRNAが、配列番号163、170、166、または168に示される核酸配列を含む、項目29に記載のsiRNA。
(項目31)
a)項目1~25のいずれかに記載のキメラペプチド、項目26もしくは27に記載のペプチド、または項目28もしくは項目29に記載のsiRNAを含むカーゴと、b)第2のペプチドと、を含む複合体であって、前記ペプチドまたは前記siRNAが前記第2のペプチドと複合体を形成している、前記複合体。
(項目32)
前記第2のペプチドが、CADY、PEP-1ペプチド、PEP-2ペプチド、PEP-3ペプチド、LNCOVペプチド、VEPEP-3ペプチド、VEPEP-6ペプチド、VEPEP-9ペプチド、及びADGN-100ペプチドからなる群から選択される細胞透過性ペプチドである、項目31に記載の複合体。
(項目33)
前記第2のペプチドと前記ペプチドまたは前記siRNAとのモル比が、約1:1~約80:1である、項目31または項目32に記載の複合体。
(項目34)
前記第2のペプチドと前記ペプチドとのモル比が、約2:1~約10:1である、項目33に記載の複合体。
(項目35)
前記第2のペプチドと前記siRNAとのモル比が、約5:1~約50:1である、項目34に記載の複合体。
(項目36)
a)項目1~25のいずれかに記載のキメラペプチド、もしくは項目26~28のいずれかに記載のペプチド、及び/またはb)項目29もしくは項目30に記載のsiRNAを含む、項目31~35のいずれか1項に記載の複合体。
(項目37)
前記siRNAが、配列番号166に示される核酸配列を含む、項目36に記載の複合体。
(項目38)
配列番号17または33に示されるアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含む、項目37に記載の複合体。
(項目39)
項目30~38のいずれか1項に記載の複合体を含む、ナノ粒子。
(項目40)
前記ナノ粒子が、約100nm以下の直径を有する、項目39に記載のナノ粒子。
(項目41)
前記ナノ粒子が、約40~約60nmの直径を有する、項目40に記載のナノ粒子。
(項目42)
a)項目1~25のいずれかに記載のキメラペプチド、項目26~28のいずれかに記載のペプチド、項目29または項目30に記載のsiRNA、項目31~41のいずれかに記載の複合体またはナノ粒子と、b)薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
(項目43)
前記組成物が、2つ以上の複合体またはナノ粒子を含み、前記2つ以上の複合体またはナノ粒子が異なるカーゴを含む、項目42に記載の医薬組成物。
(項目44)
前記カーゴを前記第2のペプチドと組み合わせることを含む、項目31~41のいずれか1項に記載の複合体またはナノ粒子を調製する方法。
(項目45)
個体におけるSARS-CoV-2感染を治療する方法であって、前記個体に有効量の項目42または項目43の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
(項目46)
前記医薬組成物が、噴霧または局所肺または経鼻送達により投与される、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記個体が、ヒトである、項目45または項目46に記載の方法。
【国際調査報告】