(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】MCI診断マーカー、MCI診断キット及びその検出方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6883 20180101AFI20230818BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230818BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20230818BHJP
【FI】
C12Q1/6883 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6851 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505451
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2021098317
(87)【国際公開番号】W WO2022022060
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】202010760263.8
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521235017
【氏名又は名称】シャンハイ メンタル ヘルス センター (シャンハイ サイコロジカル カウンセリング トレーニング センター)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI MENTAL HEALTH CENTER (SHANGHAI PSYCHOLOGICAL COUNSELLING TRAINING CENTER)
【住所又は居所原語表記】600 Wan Ping Nan Road, Xuhui District Shanghai 200030 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,シーフー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
【要約】
本発明は、アルツハイマー病の前駆期の軽度認知機能障害(MCI)診断マーカーに関する。マーカーは血漿の長鎖型ノンコーディングRNA (lncRNA)であり、血漿lncRNAはENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上を含む。本発明はマーカーの応用及びそのキットにも関する。本発明の有益な効果は、MCIに対して高い診断価値を備えるバイオマーカーを初めて発見し、末梢血漿を用いてMCIを低損傷可能に診断するように有効なマーカーを提供し、アルツハイマー病の早期診断と早期介入に有利である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MCI診断マーカーであって、前記マーカーは、血漿lncRNAであり、前記血漿lncRNAは、ENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上を含むことを特徴とするMCI診断マーカー。
【請求項2】
MCI診断キットを製造するためのMCI診断マーカーの応用。
【請求項3】
MCI診断キットであって、前記診断キットは血漿中のENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上の含有量を測定することを特徴とするMCI診断キット。
【請求項4】
前記診断キットはENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上のプライマーとプローブを含むことを特徴とする請求項3に記載のMCI診断キット。
【請求項5】
前記診断キットは参照18Sを含むことを特徴とする請求項3に記載のMCI診断キット。
【請求項6】
前記診断キットによって測定された血漿中のENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上の含有量が導入された計算式は、
(1)-4.749+7972.194×ENST00000549762+5609.072×NR_024049+5.073×T324988+961.747×ENST00000567919と、
(2)-4.628+8552.604×ENST00000549762+5885.819×NR_024049+6.017×T324988と、
(3)-4.549+9376.777×ENST00000549762+6908.534×NR_024049+2195.991×ENST00000567919と
(4)-4.220+6823.570×NR_024049+5.849×T324988+1213.731×ENST00000567919と、
(5)-4.129+6.122×T324988+1128.888×ENST00000567919+9678.308×ENST00000549762と、
(6)ENST00000549762と、
(7)NR_024049と、
(8)T324988と、
(9)ENST00000567919との内の一つである
ことを特徴とする請求項3に記載のMCI診断キット。
【請求項7】
請求項3~6のいずれかに記載の前記MCI診断キットに基づくMCI診断マーカーの検出方法であって、前記方法は
(1)検出しようとする全RNAに逆転写反応をlncRNA逆転写キットで行い、対応するcDNAを得ること;
(2)得られたcDNAにリアルタイム蛍光定量PCRを行い、18Sを参照とし、検出結果をCtlncRNA-Ct18Sと同じであるΔCtで表すこと;
(3)得られたΔCt結果を、
-4.749+7972.194×ENST00000549762+5609.072×NR_024049+5.073×T324988+961.747×ENST00000567919に導入して算出値を-0.8392 と比較するか、
-4.628+8552.604×ENST00000549762+5885.819×NR_024049+6.017×T324988に導入して算出値を-0.6984と比較するか、
-4.549+9376.777×ENST00000549762+6908.534×NR_024049+2195.991×ENST00000567919に導入して算出値を-0.5859と比較するか、
-4.220+6823.570×NR_024049+5.849×T324988+1213.731×ENST00000567919に導入して算出値を-0.3367と比較するか、
-4.129+6.122×T324988+1128.888×ENST00000567919+9678.308×ENST00000549762に導入して算出値を-0.2550と比較するか、
ENST00000549762に導入して算出値を0.000160542039と比較するか、
NR_024049に導入して算出値を0.000235892192と比較するか、
T324988に導入して算出値を0.243255710000と比較するか、
ENST00000567919に導入して算出値を0.000502313314と比較することを含む
ことを特徴とする検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2020年7月31日に出願された中国特許仮出願第202010760263.8号の出願日の利益を主張するものであり、その開示はこの参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、アルツハイマー病の前駆期の技術的分野に関し、特に診断マーカーに関し、軽度認知機能障害診断マーカー及びその応用を目指す。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(Alzheimer's disease、AD)は、慢性神経変性疾患であり、認知症の最も一般的なタイプとなっていて、臨床において認知及び記憶機能の悪化や日常生活能力の進行性低下や様々な神経精神症状及び行動異常が現れ、主な病理学的特徴において神経細胞外のアミロイドタンパク質の堆積によって形成された老人斑並びに神経細胞内の微小管に関連するTauタンパク質の高度なリン酸化によって形成された神経原線維の絡み合いによる大脳皮質の神経細胞死が現れる。人口の高齢化に伴い、アルツハイマー病の発生率は年々増えており、世界のアルツハイマー病の年次報告書により、認知症の患者は3秒ごとに一人が新規追加して既に5000万人に達していて、2050年1億5200万人に達すると予測される。現在、アルツハイマー病は中国で患者の人数が800万人以上に達しており、予防又は逆転させられる有効的な治療法無しに、薬物だけで症状を改善し、医療や介護に重い負担をかけている。米国の例とすると、中・後期AD患者1人当たりの年間平均医療費は、5万ドルに挙がる。中国の高齢化が加速する間にADによる医療・経済負担の問題はますます深刻化している。これにより、ADの病因をさらに深く探究し、発症を早期に診断し介入し、有効的な治療法を見つけることを必要として医療負担を軽減することは、高齢化社会で解決されなければならない医療健康及び社会経済の課題である。
【0004】
軽度認知機能障害(mild cognitive impairment、MCI)は、認知機能が正常な老衰と認知症との間に介在する遷移状態である。MCI は、記憶喪失型 MCI と非記憶喪失型 MCI という2つの亜類型に分類される。その中で、記憶喪失型MCIはADの前駆期とますます見なされている。研究は、記憶喪失型MCIの患者がADを毎年約10~15%発症する可能性を示している。MCIは、介入を必要とするハイリスク症例である上、早期予防介入のための最適時点にあたる。AD及びMCI診断に関する研究は、過去20年間で大きな進歩を遂げている。現在、AD及びMCIの診断方法は、専門医師の問診による病歴及び基準表の評点に基づく判断に関し、主にモントリオール認知評価の基準表や神経心理の試験系列や精神状態の簡単な基準表や臨床認知症の基準表などを行うことであるが、基準表の評価は人員及び時間が沢山掛かり、且つあまり確かにしない。補助検査は、主に脳構造画像検査を含め、患者の脳構造の巨視的な変化が見えるが、特にMCIの特徴的な変化を早期に発見できない。老人斑画像検査は、現在AD診断の絶対的基準として病理学的変化が見えるが、コストが高く、国内で臨床応用がない。これにより、国内で臨床的に広まって実用的に適用されたバイオマーカーの臨床的な早期診断方法がないため、末梢血バイオマーカーで潜在的なMCI患者を検査するという探索は、ADの早期診断及び治療に役立つ。
【0005】
長鎖型ノンコーディングRNA (long non-coding RNA、lncRNA)は、ヌクレオチドの長さの200倍を超えるRNA分子であり、通常、RNAポリメラーゼIIを転写した副産物としてタンパク質をコード化できないため、転写の「ノイズ」と見なされる。最近の研究によると、lncRNAは、人体の異なる組織において特異性を有し、且つ様々な生物機能を果たし、特に神経系発育や神経細胞分化やシナプス可塑性などの過程で重要な役割を実行していることが明らかになる。lncRNAは、アルツハイマー病患者の脳において差次的に発現し、アルツハイマー病の発症過程でAβ産生を調節し、シナプスの損傷や神経栄養因子の消耗や炎症反応や粒質体の損傷や神経細胞のストレス反応において重要な役割を果たすと証明されていて、アルツハイマー病の発症過程に影響を与えている。LncRNAは、脳組織において富むだけでなく、脳脊髄液と血漿と血清とのサンプルに安定に存在する。末梢血液サンプルは、ヒト生物学的サンプルの中で最も易い入手と簡単な操作と最小の外傷を備え、患者に最も軽い恐れと痛みを与えるサンプルの1つである。血液は、ADハイリスク症例の検査に最も適合し、ADの早期発見や診断や治療介入に対して最適な生物サンプルであると見なされる。LncRNAの構造的特徴は、内因性RNase酵素活性の影響を受けて検出せずに安定したMCI及びAD診断の血漿バイオマーカーとなる能力を自身に与える。我々の提供したlncRNAの研究結果によりMCIと対照群との間に末梢血の複数の遺伝子マーカーlncRNAを発現するという差異を示唆するため、血漿lncRNAの発現量の検出は、ADの早期診断の検査常法として利用され、ADの臨床的な診断策略を最適化する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の欠点を克服して、ADを早期診断し有効的に検査でき、ADの臨床的な診断策略を最適化できる軽度認知機能障害診断マーカー及びその応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、一方では本発明によって提供された軽度認知機能障害(MCI)診断マーカーであって、
前記マーカーは、血漿lncRNAであり、前記血漿lncRNAは、ENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上を含むことを特徴とするMCI診断マーカー。
【0008】
本発明によって更に提供された、軽度認知機能障害診断キットを製造するための軽度認知機能障害診断マーカーの応用。
【0009】
本発明によって更に提供された軽度認知機能障害診断キットであって、前記診断キットは血漿中のENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上の含有量を測定することを特徴とするMCI診断キット。
【0010】
好ましくは、前記MCI診断キットはENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上のプライマーとプローブを含む。
【0011】
好ましくは、前記MCI診断キットは参照18Sを含む。
【0012】
好ましくは、前記MCI診断キットによって測定された血漿中のENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上の含有量が導入された計算式は、
(1)-4.749+7972.194×ENST00000549762+5609.072×NR_024049+5.073×T324988+961.747×ENST00000567919と、
(2)-4.628+8552.604×ENST00000549762+5885.819×NR_024049+6.017×T324988と、
(3)-4.549+9376.777×ENST00000549762+6908.534×NR_024049+2195.991×ENST00000567919と
(4)-4.220+6823.570×NR_024049+5.849×T324988+1213.731×ENST00000567919と、
(5)-4.129+6.122×T324988+1128.888×ENST00000567919+9678.308×ENST00000549762と、
(6)ENST00000549762と、
(7)NR_024049と、
(8)T324988と、
(9)ENST00000567919との内の一つである。
【0013】
本発明によって更に提供された、前記軽度認知機能障害診断キットに基づくMCI診断マーカーの検出方法であって、前記方法は
(1)検出しようとする全RNAに逆転写反応をlncRNA逆転写キットで行い、対応するcDNAを得ること;
(2)得られたcDNAにリアルタイム蛍光定量PCRを行い、18Sを参照とし、検出結果をCtlncRNA-Ct18Sと同じであるΔCtで表すこと;
(3)得られたΔCt結果を、
-4.749+7972.194×ENST00000549762+5609.072×NR_024049+5.073×T324988+961.747×ENST00000567919に導入して算出値を-0.8392 と比較するか、
-4.628+8552.604×ENST00000549762+5885.819×NR_024049+6.017×T324988に導入して算出値を-0.6984と比較するか、
-4.549+9376.777×ENST00000549762+6908.534×NR_024049+2195.991×ENST00000567919に導入して算出値を-0.5859と比較するか、
-4.220+6823.570×NR_024049+5.849×T324988+1213.731×ENST00000567919に導入して算出値を-0.3367と比較するか、
-4.129+6.122×T324988+1128.888×ENST00000567919+9678.308×ENST00000549762に導入して算出値を-0.2550と比較するか、
ENST00000549762に導入して算出値を0.000160542039と比較するか、
NR_024049に導入して算出値を0.000235892192と比較するか、
T324988に導入して算出値を0.243255710000と比較するか、
ENST00000567919に導入して算出値を0.000502313314と比較することを含むことを特徴とする検出方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。我々は、厳格な実験と統計分析により、記憶喪失型軽度認知機能障害に対して高い診断価値を備えるバイオマーカーENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919という4つの核酸分子を初めて発見している。我々は、lncRNAマーカー及び診断キットの開発と応用により、記憶喪失型軽度認知機能障害に対して便利にする末梢血漿診断マーカーがないという窮境を突破しているため、それはアルツハイマー病の認知症の早期診断と早期介入に有利である上、潜在的な治療価値を有する新しい抗AD治療薬の標的を発見するように科学的根拠と臨床的な支持を提供するという極大な進歩を待ち望む可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明においてMCI患者の血漿標的を鑑定するためのlncRNA組み合わせチップの選別や培養や検証の実験設計のフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明においてMCI患者の血漿を診断するためのlncRNA組み合わせを確定する主な段階図である。
【
図3】
図3は、MCI患者を4種類のlncRNA組み合わせで診断するROC曲線である。
【
図4】
図4は、MCI患者を3種類のlncRNA組み合わせで診断するROC曲線である。
【
図5】
図5は、MCI患者を1種類のlncRNA組み合わせで診断するROC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の技術的内容をより明確に説明できるように、次に具体的な実施例と相まって更なる説明を行う。
【0017】
図1~5と併せて、本発明によって提供されたMCI診断マーカーの選別や検証等について具体的な説明を行う。
【0018】
一、研究対象
被験群には上海市徐匯区地域で収集されたMCI症例とする50人の高齢者らがいるが、対照群には年齢や性別や教育年齢において被験群と一致している健康な高齢者らがいる。
【0019】
二、研究方法
1、チップの選別
(1) RNAをTRIzol法で抽出し、RNasey Mini Kit(GIAGEN)で純化する。純化後のRNA濃度をアレクジェントND-1000で測定し、RNA完全性を電気泳動法で検出する。
【0020】
(2)抽出されたRNAが品質検査に合格した後、lncRNAにArraystar RNA Flash Labeling Kitでマークを付ける。マークを付けた後、サンプルとArrayヒトlncRNAチップ(v4.0)との雑種をAgilent SureHybで作り、反応全体積を50μlとする。
【0021】
(3)チップを洗浄した後、Agilent DNA Microarray Scannerで走査する。チップ信号値をAgilent Feature Extractionソフトウェアで収集する。チップをAgilent GeneSpring GX v12.1ソフトウェアで標準化し、差次的に発現されたlncRNA を選別する。
【0022】
2、リアルタイム定量PCRの検証
チップを選別した後、対照群で明らかに上昇したlncRNAを選定してリアルタイム定量PCRの検証を行う。具体的な実施方法は次のとおりである。
【0023】
(1) RNAをTRIzol法で抽出し、RNasey Mini Kit(GIAGEN)で純化し、純化後のRNA濃度をNanoDrop ND-1000で測定する。
【0024】
抽出されたRNAが品質検査に合格した後、逆転写反応を行う。反応全体積を20μlとし(全RNAを300ngとし、逆転写特異的プライマーを1μlとし、dNTPを1.6μlとし、ヌクレアーゼ無しの水を13.5μlに加え、さらに0.5μl のRNA阻害酵素を添加し、逆転写酵素を1μlとし、緩衝液を4μlとし、0.1M DTTを1μlとする)、様々な温度(50℃、70℃)で異なる時長(60分間、15分間)の反応を行う。
【0025】
(2)リアルタイム定量PCRは、増幅全体系を10μlとし、95℃で10分間行われ、さらにPCRは40回の循環にわたって反応する(95℃、10秒間;60℃、60秒間)。18Sを参照とし、検出結果を参照物の量と比べて2-ΔΔCtで表し、2-ΔΔCtが小さいほど発現量は低くなる。PCRで用いられたプライマー情報を下記表1に示す。
【0026】
【0027】
三、研究結果
チップの選別段階では、MCI被験群におけるENST00000567919とT264003とT286616とT324988とENST00000549762とNR_024049とNR_040772の発現量が通常な対照群より明らかに低くなる。具体的なデータを次の表3に示す。
【0028】
【0029】
リアルタイム定量PCRの検証段階では、MCI被験群におけるENST00000567919とENST00000549762とNR_024049とT324988の発現量が通常な対照群より明らかに低くなる。具体的なデータを次の表4に示す。
【0030】
【0031】
ROC曲線の解析結果は、NST00000567919とENST00000549762とNR_024049とT324988という4つのlncRNAがバイオマーカーとしてMCIに対して高い診断価値を有することを示す。
【0032】
上記の4つのlncRNAを独立変数とし、それらの単独又は複合の予測値を従属変数としてLogistic二項回帰フィッティングを行い、予測確率値を算出する。これらの計算モデル(計算モデル1、計算モデル2、計算モデル3、計算モデル4、計算モデル5、計算モデル6、計算モデル7、計算モデル8、計算モデル9)で得られた数値にはROC曲線解析を再度行った後、これらの解析結果は計算モデルで得られた数値が依然として高い診断値を備えることを示す。
【0033】
計算モデル1では、
COMPUTE複合診断=-4.749 + 7972.194×ENST00000549762 + 5609.072 × NR_024049+5.073×T324988+961.747×ENST00000567919、
AUCは0.941、限界値は-0.8392、感受性は92%、特異性は84%。
【0034】
計算モデル2では、
COMPUTE複合診断123=-4.628+8552.604×ENST00000549762+5885.819× NR_024049+6.017×T324988、
AUCは0.935、限界値は-0.6984、感受性は88%、特異性は84%。
【0035】
計算モデル3では、
COMPUTE複合診断124=-4.549+9376.777×ENST00000549762+6908.534× NR_024049+2195.991×ENST00000567919、
AUCは0.926、限界値は-0.5859、感受性は90%、特異性は84%。
【0036】
計算モデル4では、
COMPUTE複合診断234=-4.220+6823.570×NR_024049+5.849×T324988+ 1213.731×ENST00000567919、
AUCは0.920、限界値は-0.3367、感受性は88%、特異性は84%。
【0037】
計算モデル5では、
COMPUTE複合診断134=-4.129+6.122×T324988+1128.888× ENST00000567919+9678.308×ENST00000549762、
AUCは0.930、限界値は-0.2550、感受性は90%、特異性は90%。
【0038】
計算モデル6では、
COMPUTE単独診断=ENST00000549762、
AUCは0.846、限界値は0.000160542039、感受性は80%、特異性は80%。
【0039】
計算モデル7では、
COMPUTE単独診断=NR_024049、
AUCは0.877、限界値は0.000235892192、感受性は82%、特異性は86%。
【0040】
計算モデル8では、
COMPUTE単独診断=T324988、
AUCは0.900、限界値は0.243255710000、感受性は92%、特異性は82%。
【0041】
計算モデル9では、
COMPUTE単独診断=ENST00000567919、
AUCは0.856、限界値は0.000502313314、感受性は82%、特異性は80%。
【0042】
分析方法の説明: SPSS 24.0ソフトウェアパッケージでデータ解析を行って2つの群に対してデータを比較すると、まず等分散性の検定を行い、次に等分散性を備えた2つの群のデータに比較分析をT検定で行った後、P値<0.05があれば、統計的有意性が備わると見なされる。統計的差異を有する数値には二元Logistic回帰を行って予測確率値を得、その予測確率値は次のROC曲線解析に用いられる。ROC曲線は、MCI診断におけるlncRNAの価値を評価するために用いられるように、曲線下面積が1に近いほど指標の診断値が高くなることを示す。
【0043】
現在、MCIの生物学的診断は、便利な且つ侵襲の少ない末梢血漿検査の早期診断技術無しに、脳老人斑のための高価なPET-CT検査並びに創傷的なかつ普及し難い腰椎穿刺検査に依存している。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。我々は、厳格な実験と統計分析により、記憶喪失型軽度認知機能障害に対して高い診断価値を備えるバイオマーカーENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919という4つの核酸分子を初めて発見している。我々は、lncRNAマーカー及び診断キットの開発と応用により、記憶喪失型軽度認知機能障害に対して便利にする末梢血漿診断マーカーがないという窮境を突破しているため、それはアルツハイマー病の認知症の早期診断と早期介入に有利である上、潜在的な治療価値を有する新しい抗AD治療薬の標的を発見するように科学的根拠と臨床的な支持を提供するという極大な進歩を待ち望む可能性がある。
【0045】
本明細書において、本発明は、その特定の実施形態を参照して説明されるが、様々な変更及び変換が本発明の趣旨と範囲から逸脱せずに行われることは明らかである。更に、明細書及び図面は、例示的なものであるが制限的なものではないと見なされるべきである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MCI診断マーカーであって、前記マーカーは、血漿lncRNAであり、前記血漿lncRNAは、ENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上を含むことを特徴とするMCI診断マーカー。
【請求項2】
MCI診断キットを製造するためのMCI診断マーカーの応用。
【請求項3】
MCI診断キットであって、前記診断キットは血漿中のENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上の含有量を測定することを特徴とするMCI診断キット。
【請求項4】
前記診断キットはENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上のプライマーとプローブを含むことを特徴とする請求項3に記載のMCI診断キット。
【請求項5】
前記診断キットは参照
遺伝子18Sを含むことを特徴とする請求項3に記載のMCI診断キット。
【請求項6】
前記診断キットによって測定された血漿中のENST00000549762とNR_024049とT324988とENST00000567919との内の1つ以上の含有量が導入された計算式は、
(1)-4.749+7972.194×ENST00000549762+5609.072×NR_024049+5.073×T324988+961.747×ENST00000567919と、
(2)-4.628+8552.604×ENST00000549762+5885.819×NR_024049+6.017×T324988と、
(3)-4.549+9376.777×ENST00000549762+6908.534×NR_024049+2195.991×ENST00000567919と
(4)-4.220+6823.570×NR_024049+5.849×T324988+1213.731×ENST00000567919と、
(5)-4.129+6.122×T324988+1128.888×ENST00000567919+9678.308×ENST00000549762と、
(6)ENST00000549762と、
(7)NR_024049と、
(8)T324988と、
(9)ENST00000567919との内の一つである
ことを特徴とする請求項3に記載のMCI診断キット。
【請求項7】
請求項3~6のいずれかに記載の前記MCI診断キットに基づくMCI診断マーカーの検出方法であって、前記方法は
(1)検出しようとする全RNAに逆転写反応をlncRNA逆転写キットで行い、対応するcDNAを得ること;
(2)得られたcDNAにリアルタイム蛍光定量PCRを行い、18Sを参照
遺伝子とし、検出結果をCtlncRNA-Ct18Sと同じであるΔCtで表すこと;
(3)得られたΔCt結果を、
-4.749+7972.194×ENST00000549762+5609.072×NR_024049+5.073×T324988+961.747×ENST00000567919に導入して算出値を-0.8392 と比較するか、
-4.628+8552.604×ENST00000549762+5885.819×NR_024049+6.017×T324988に導入して算出値を-0.6984と比較するか、
-4.549+9376.777×ENST00000549762+6908.534×NR_024049+2195.991×ENST00000567919に導入して算出値を-0.5859と比較するか、
-4.220+6823.570×NR_024049+5.849×T324988+1213.731×ENST00000567919に導入して算出値を-0.3367と比較するか、
-4.129+6.122×T324988+1128.888×ENST00000567919+9678.308×ENST00000549762に導入して算出値を-0.2550と比較するか、
ENST00000549762に導入して算出値を0.000160542039と比較するか、
NR_024049に導入して算出値を0.000235892192と比較するか、
T324988に導入して算出値を0.243255710000と比較するか、
ENST00000567919に導入して算出値を0.000502313314と比較することを含む
ことを特徴とする検出方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
好ましくは、前記MCI診断キットは参照遺伝子18Sを含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明によって更に提供された、前記軽度認知機能障害診断キットに基づくMCI診断マーカーの検出方法であって、前記方法は
(1)検出しようとする全RNAに逆転写反応をlncRNA逆転写キットで行い、対応するcDNAを得ること;
(2)得られたcDNAにリアルタイム蛍光定量PCRを行い、18Sを参照遺伝子とし、検出結果をCtlncRNA-Ct18Sと同じであるΔCtで表すこと;
(3)得られたΔCt結果を、
-4.749+7972.194×ENST00000549762+5609.072×NR_024049+5.073×T324988+961.747×ENST00000567919に導入して算出値を-0.8392 と比較するか、
-4.628+8552.604×ENST00000549762+5885.819×NR_024049+6.017×T324988に導入して算出値を-0.6984と比較するか、
-4.549+9376.777×ENST00000549762+6908.534×NR_024049+2195.991×ENST00000567919に導入して算出値を-0.5859と比較するか、
-4.220+6823.570×NR_024049+5.849×T324988+1213.731×ENST00000567919に導入して算出値を-0.3367と比較するか、
-4.129+6.122×T324988+1128.888×ENST00000567919+9678.308×ENST00000549762に導入して算出値を-0.2550と比較するか、
ENST00000549762に導入して算出値を0.000160542039と比較するか、
NR_024049に導入して算出値を0.000235892192と比較するか、
T324988に導入して算出値を0.243255710000と比較するか、
ENST00000567919に導入して算出値を0.000502313314と比較することを含むことを特徴とする検出方法である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
(2)リアルタイム定量PCRは、増幅全体系を10μlとし、95℃で10分間行われ、さらにPCRは40回の循環にわたって反応する(95℃、10秒間;60℃、60秒間)。18Sを参照遺伝子とし、検出結果を参照物の量と比べて2-ΔΔCtで表し、2-ΔΔCtが小さいほど発現量は低くなる。PCRで用いられたプライマー情報を下記表1に示す。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
三、研究結果
チップの選別段階では、MCI被験群におけるENST00000567919とT264003とT286616とT324988とENST00000549762とNR_024049とNR_040772の発現量が健康な対照群より明らかに低くなる。具体的なデータを次の表2に示す。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
リアルタイム定量PCRの検証段階では、MCI被験群におけるENST00000567919とENST00000549762とNR_024049とT324988の発現量が健康な対照群より明らかに低くなる。具体的なデータを次の表3に示す。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
【国際調査報告】