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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】細胞培地自動充填システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230818BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230818BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M3/00 Z
C12N1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023505934
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 US2021043383
(87)【国際公開番号】W WO2022026503
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】63/058,796
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,スコット マシュー
(72)【発明者】
【氏名】クルーティエ,トーマス アルバート
(72)【発明者】
【氏名】レイシー,ウィリアム ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,グレゴリー ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】タナー,アリソン ジーン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB01
4B029BB11
4B029DA10
4B029DF09
4B029DG06
4B029GA03
4B029HA09
4B065AA90X
4B065CA44
(57)【要約】
細胞を培養するための細胞培養システムを提供する。本細胞培養システムは、細胞を培養するための細胞培養チャンバ、該細胞培養容器を充填するために液体が流れるように構成された入口、及び該細胞培養容器から流体が出るように構成された出口、を備える細胞培養容器を備える。本システムは、細胞培養容器の充填中に、細胞培養容器内の液体が細胞培養容器の所定の位置で充填水位に到達したことを検出するように配置された少なくとも1つの充填センサであって、細胞培養容器内の液体が充填水位に到達したときに検出信号を生成することができる少なくとも1つの充填センサをさらに備える。また、検出信号に応答して細胞培養容器の姿勢を変更するためのアクチュエータもさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養容器であって、細胞を培養するための細胞培養チャンバ、該細胞培養容器を充填するために液体が流れるように構成された入口、及び該細胞培養容器から流体が出るように構成された出口、を備える細胞培養容器と、
第1の充填センサを含む少なくとも1つの充填センサであって、該第1の充填センサが、前記細胞培養容器の充填中に、前記細胞培養容器内の液体が前記細胞培養容器の所定の位置で第1の充填水位に到達したことを検出するように配置されるとともに、前記細胞培養容器内の液体が前記第1の充填水位に到達したときに第1の検出信号を生成するように構成される、少なくとも1つの充填センサと、
前記細胞培養容器を支持するように構成されたマルチポジション支持体と、
前記マルチポジション支持体に取り付けられ、前記第1の検出信号に応答して前記細胞培養容器の姿勢を第1の姿勢から第2の姿勢に変更するように構成されたアクチュエータと、
を備える細胞培養システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの充填センサが、第2の充填センサをさらに含み、該第2の充填センサは、前記細胞培養容器内の液体が第2の充填水位に到達したことを検出するように配置されるとともに、前記細胞培養容器内の液体が前記第2の充填水位に到達したときに第2の検出信号を生成するように構成され、
前記細胞培養システムが、前記第2の検出信号に応答して前記細胞培養容器の充填を停止するように構成され、
前記第2の充填水位は、前記第1の充填水位とは異なる、請求項1に記載の細胞培養システム。
【請求項3】
前記細胞培養容器が、複数の細胞培養チャンバ、及び該複数の細胞培養チャンバを接続するマニホールドを備え、
前記少なくとも1つの充填センサが、前記マニホールドに取り付けられている、請求項1又は2に記載の細胞培養システム。
【請求項4】
前記第1の検出信号又は前記第2の検出信号を受信し、前記第1の検出信号又は前記第2の検出信号に応答して前記アクチュエータを制御するように構成された制御装置をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項5】
前記細胞培養容器の前記入口に流体接続されたポンプをさらに備え、
前記制御装置は、前記ポンプの流量を制御するように構成されている、請求項4に記載の細胞培養システム。
【請求項6】
前記細胞培養容器が、前記入口及び前記出口が配置されている充填側面、及び前記充填側面に隣接する支持体対向側面を備え、前記第1の姿勢にあるとき、前記支持体対向側面は、前記細胞培養容器の下の実質的に水平な支持部材の方を向いており、
前記第1の姿勢にあるとき、前記支持体対向側面は、前記支持部材に対して第1の角度をなし、前記出口は前記支持部材から第1の距離にあり、前記出口に比べて前記入口の方が前記支持部材に近くなり、
前記第2の姿勢にあるとき、前記支持体対向側面は、前記支持部材に対して複合角度をなし、該複合角度は、(i)前記支持体対向側面の長さと前記支持部材とがなす第2の角度、及び(ii)前記支持体対向側面の幅と前記支持部材とがなす第3の角度を含み、
前記第2の姿勢にあるとき、前記出口は前記支持部材から第2の距離にあり、該第2の距離は前記第1の距離より大きい、請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの充填センサが、前記細胞培養容器の外部に取り付けられ、前記細胞培養容器の壁越しに充填水位を検出する、請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項8】
前記細胞培養システムの配管内流体圧を検出するように配置された流量制御器をさらに備え、
前記流量制御器が、前記配管内流体圧が所定の圧力値以上であることに応答して、前記細胞培養システムの流量を減少させるように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項9】
前記細胞培養容器の出口にバルブをさらに備え、
前記バルブが、前記第1の検出信号、前記第2の検出信号、及び配管内流体圧のうちの少なくとも1つに応答して、前記細胞培養容器の前記出口又はその近傍の流体経路を閉鎖して、前記細胞培養容器の充填を停止するように構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの充填センサが、光学センサ、貫通ビームセンサ、又は光電センサのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項11】
前記アクチュエータが、第1の長さ及び第2の長さを含む調節可能な長さを有しており、
前記第1の長さが、前記第2の長さ以上であり、
前記第1の長さのときに、前記細胞培養容器が前記第1の姿勢とされ、前記第2の長さのときに、前記細胞培養容器は前記第2の姿勢とされる、請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項12】
前記アクチュエータが、ソレノイド、圧電材料、空気圧ピストン、及び油圧ピストンのうちの少なくとも1つを備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項13】
前記細胞培養容器内の液体が第3の充填水位に到達したことを検出するように配置されるとともに、前記細胞培養容器内の液体が前記第3の充填水位に到達したときに第3の検出信号を生成するように構成された第3の充填センサをさらに備え、
前記第3の充填水位は、前記第1の充填水位及び前記第2の充填水位とは異なっており、
前記制御装置は、前記第3の充填センサからの第3の検出信号に基づいて、前記細胞培養容器の充填速度を遅くするように構成されている、請求項2~12のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項14】
前記マルチポジション支持体が、
正立配置設定のときに前記支持部材に載置される主基部、
前記正立配置設定で前記主基部から鉛直方向にずれた位置に設けられる支持面であって、前記細胞培養容器が該支持面上にある状態で該細胞培養容器を支持する支持面、及び
前記主基部から前記支持面まで延びる中間面であって、前記主基部の側面に対して傾斜した角度で延びる境界部で前記主基部につながる中間面、を有しており、
前記マルチポジション支持体が、前記支持面上に前記細胞培養容器を支持したまま、前記マルチポジション支持体を前記境界部を中心に回動させて、前記正立配置設定のときよりも前記支持面を前記支持部材に近づけた状態である傾転配置設定を有している、請求項1~13のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項15】
前記マルチポジション支持体が、前記正立配置設定のときに前記支持部材に載置される副基部をさらに有し、
前記支持面が第1の支持面であり、
前記マルチポジション支持体が、前記主基部と前記副基部との間に位置する第2の支持面をさらに有し、
前記第2の支持面は、前記細胞培養容器が該第2の支持面上にある状態で該細胞培養容器を支持し、
前記第1の支持面及び前記第2の支持面は、実質的に同一の平面上にあり、該同一の平面は、前記主基部に対して傾斜している、請求項14に記載の細胞培養システム。
【請求項16】
流体マニホールド及びエアマニホールドによって互いに流体接続された複数の細胞培養モジュールを含む細胞培養容器を備える細胞培養装置の充填角度を変更する方法であって、
傾転配置設定及び正立配置設定を有するマルチポジション支持体に、前記細胞培養装置を接続するステップと、
前記正立配置設定又は前記傾転配置設定のいずれかとした前記マルチポジション支持体で前記細胞培養装置を支持した状態で、前記細胞培養装置を充填するステップと、
前記細胞培養装置を第1の充填水位まで充填したことを、前記細胞培養モジュールの外部に設けた第1の充填センサで検出するステップと、
前記第1の充填センサで検出するステップに基づいて、前記マルチポジション支持体を、前記傾転配置設定と前記正立配置設定のうちの一方から、前記傾転配置設定と前記正立配置設定のうちの他方に変更するステップと、
前記細胞培養装置を、前記第1の充填水位とは異なる第2の充填水位まで充填したことを、前記細胞培養モジュールの外部に設けた第2の充填センサで検出するステップと、
前記第2の充填センサで検出するステップに基づいて、充填を停止するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記複数の細胞培養モジュールの各々が、複数層の細胞培養チャンバを含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記マルチポジション支持体が、
前記正立配置設定のときに支持部材に載置される主基部、
前記正立配置設定で前記主基部から鉛直方向にずれた位置に設けられる支持面であって、前記細胞培養装置が該支持面上にある状態で該細胞培養装置を支持する支持面、及び
前記主基部から前記支持面まで延びる中間面であって、前記主基部の側面に対して傾斜した角度で延びる境界部で前記主基部につながる中間面、を有しており、
前記傾転配置設定では、前記マルチポジション支持体は、前記支持面上で前記細胞培養装置を支持したまま、前記境界部を中心に回動されて、前記正立配置設定のときよりも前記支持面を前記支持部材に近づけた状態とされる、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記境界部を中心に前記マルチポジション支持体を回動させることにより、前記マルチポジション支持体を用いて前記細胞培養装置を傾転させるステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年7月30日を出願日とする米国仮特許出願第63/058796号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものであり、この仮出願のすべての開示内容は、本明細書の依拠するところとし、参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、細胞培養装置用のマルチポジション支持体に関し、特に、正立配置設定と傾転配置設定という2つの配置設定を有するマルチポジション支持体に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの種類の細胞培養物品が、積み重ね細胞培養用ユニット又は積み重ねることが可能な細胞培養用ユニットとなるように構成されている。例えば、通常、Tフラスコは、上下面が平坦面となるように作られており、これにより、Tフラスコを積み重ねて、省スペースで使用することができる。また、充填(fill)及び排液(empty)に関わる時間と労力を削減するため、フラスコ内に複数の培養面を平行に配置した改良型Tフラスコもある。また、他の培養装置として、並列に又は積み重ねて配置した複数の培養面を有する多要素アセンブリもある。かかる積み重ね培養アセンブリの多くでは、培養層を互いに隔絶して、下層の培養層にかかる静水圧を軽減している。積層数が多くなると、静水圧の影響が大きくなる恐れがあるためである。
【0004】
細胞培養物品の一例として、コーニング(Corning)社のHYPERStack(登録商標)システムがある。「HYPERStack」システムは、複数の個別スタケット(stackette)層で形成された複数のモジュールを備えており、これら複数のモジュールは、チューブ接続部に接続された可撓性チューブで相互接続可能とされている。このモジュールの相互接続は、「HYPERStack」システムの充填及び排液を目的としたものである。そして、バルブなどのデバイスを使用して、「HYPERStack」システムへの流体流の出入りを制御することができる。しかし、このバルブなどのデバイスの使用は煩雑である上、漏れを生じる可能性のある箇所を作ってしまう恐れもあった。
【0005】
現在の「HYPERStack」システムの充填・排液プロセスは、一貫性のあるものではない。これは、現在の「HYPERStack」システムの充填・排液プロトコルでは、より良い結果を得るために、様々な段階で「HYPERStack」システムを傾転させることを必要としているためである。そして、このプロトコルの実行を支える付属品がないため、ユーザは、チューブクランプや、チューブ立て、ドアストッパなど、研究施設にある手近なものを使ってしのいでいた。したがって、充填・排液手順において、細胞培養装置を操作するため、及び細胞培養装置を複数の傾転角度に確実に配置するために使用することのできるマルチポジション支持体が必要とされている。
【0006】
また、改良型の付属品又はマルチポジション支持体を用いたとしても、充填・排液を手動で行う場合には、使用者に細心の注意を払う必要が生じることに変わりはない。例えば、ユニットへの充填速度が速すぎたり、充填する培地の量が多すぎたりすると、容器に過度のストレスがかかったり、排気フィルタを閉塞させてしまったりする恐れがある。これらの問題が生じると、使用時に容器に漏れや汚染が生じる可能性がある。また、ユーザが一度に複数の細胞培養デバイスを充填又は使用しようとすれば、この課題はさらに増幅してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の問題を回避するため、培地をユニットに充填しながらユニットを監視することが可能な半自動又は全自動の細胞培養システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の複数の実施形態によれば、細胞培養システムが提供される。細胞培養システムは、細胞を培養するための細胞培養チャンバ、細胞培養容器を充填するために液体が流れるように構成された入口、及び細胞培養容器から流体が出るように構成された出口、を備える細胞培養容器を備えている。また、本システムは、細胞培養容器の充填中に、細胞培養容器内の液体が細胞培養容器の所定の位置で充填水位に到達したことを検出するように配置された少なくとも1つの充填センサをさらに備えている。少なくとも1つの充填センサは、細胞培養容器内の液体が充填水位に到達したときに検出信号を生成することができる。さらに、本システムは、検出信号に応答して細胞培養容器の姿勢を変更するためのアクチュエータをさらに備えている。
【0009】
本開示の複数の実施形態のさらなる態様では、少なくとも1つの充填センサは、第1の充填センサを含み得る。第1の充填センサは、細胞培養容器内の液体が第1の充填水位に到達したことを検出するように配置されるとともに、細胞培養容器内の液体が第1の充填水位に到達したときに第1の検出信号を生成することができる。そして、アクチュエータは、第1の検出信号に応答して細胞培養容器の姿勢を第1の姿勢から第2の姿勢に変更することができる。
【0010】
少なくとも1つの充填センサは、第2の充填センサをさらに含み得る。第2の充填センサは、細胞培養容器内の液体が第2の充填水位に到達したことを検出するように配置されるとともに、細胞培養容器内の液体が第2の充填水位に到達したときに第2の検出信号を生成することができる。そして、本システムは、第2の検出信号に応答して細胞培養容器の充填を停止することができる。第2の充填水位は、第1の充填水位とは異なる、
いくつかの実施形態の一態様として、細胞培養容器は多層細胞培養容器である。
【0011】
追加的な態様として、本システムは、少なくとも1つのセンサの検出信号を受信し、検出信号に応答してアクチュエータを制御するための制御装置をさらに備えることができる。また、本システムは、細胞培養容器の入口に流体接続されたポンプをさらに備えることができる。制御装置は、ポンプの流量を制御することができる。
【0012】
いくつかの実施形態の複数の態様によれば、細胞培養容器は、充填側面及び支持体対向側面を備えている。充填側面には、入口及び出口が配置されている。支持体対向側面は、充填側面に隣接する側面であり、第1の姿勢にあるとき、支持体対向側面は、細胞培養容器の下にある実質的に水平な支持部材の方を向いている。第1の姿勢にあるとき、支持体対向側面は、支持部材に対して第1の角度をなし、出口は支持部材から第1の距離にあり、出口に比べて入口の方が支持部材に近くなる。第2の姿勢にあるとき、支持体対向側面は、支持部材に対して複合角度をなす。この複合角度は、(i)支持体対向側面の長さと支持部材とがなす第2の角度、及び(ii)支持体対向側面の幅と支持部材とがなす第3の角度を含むものである。また、第2の姿勢にあるとき、出口は支持部材から第2の距離にあり、第2の距離は第1の距離より大きい。
【0013】
いくつかの実施形態の複数の態様によれば、細胞培養容器は、スタック又は層とも呼ばれる複数の細胞培養チャンバを含むこともできる。細胞培養チャンバ同士は積み重ねられ、各細胞培養チャンバの底面は、細胞培養面を含んでいる。細胞培養容器は、最上面、最下面、及び最上面から最下面まで延びる4つの側面を有することができる。第1の側面は、入口アクセス柱(充填柱)の一部及び出口アクセス柱(排気柱)の一部を備えている。第3の側面は、第1の側面とは反対側の側面である。第2の側面は、第1の側面及び第3の側面に隣接する側面であり、第1の側面に隣接する端部に沿って入口アクセス柱(充填柱)の一部を備えている。第4の側面は、第1の側面及び第3の側面に隣接する、第2の側面とは反対側の側面であり、第1の側面に隣接する端部に沿って出口アクセス柱(排気柱)の一部を備えている。入口ポート(充填ポート)及び出口ポート(排気ポート)は、細胞培養容器の1つの側面に沿って細胞培養容器の最上面に配置することができる。入口ポート(充填ポート)と出口ポート(排気ポート)とは、細胞培養容器の当該側面の両角隅部(両端部)にそれぞれ配置することができる。細胞培養容器は、各細胞培養チャンバ及び入口ポート(充填ポート)と連通する入口アクセス柱(充填柱)をさらに備えることができる。細胞培養容器は、各細胞培養チャンバ及び出口ポート(排気ポート)と連通する出口アクセス柱(排気柱)をさらに備えることができる。入口アクセス柱(充填柱)は、細胞培養容器上部の入口ポート(充填ポート)から細胞培養容器の最下段のチャンバまで鉛直方向に延在し、細胞培養容器の角隅部に配置することができる。出口アクセス柱(排気柱)は、細胞培養容器上部の出口ポート(排気ポート)から細胞培養容器の最下段のチャンバまで鉛直方向に延在している。入口アクセス柱(充填柱)は、細胞培養容器の角隅部に配置することができ、出口アクセス柱(排気柱)は、入口アクセス柱(充填柱)が配置される側面と同一の容器側面上にある、入口アクセス柱(充填柱)とは反対側の容器角隅部に配置することができる。初期の姿勢では、細胞培養容器は、入口ポート及び出口ポートを備える面が最上面になるインキュベーション姿勢とされる。第1の充填姿勢では、細胞培養容器は、初期の姿勢から90度回動されて、出口ポートが入口ポートより鉛直方向上方に位置し、最上面が上方ではなく外側方に向けられる。第2の充填姿勢では、細胞培養容器は、第1の充填姿勢から90度回動されて、入口柱及び出口柱とは反対側にある側面が支持部材の表面と同一水平面上にある。出口ポートと入口ポートは支持部材の表面から離間した同一水平面上にあり、最上面が外側方に向けられる。
【0014】
いくつかの実施形態のさらなる態様では、少なくとも1つの充填センサが、細胞培養容器の外部に取り付けられ、細胞培養容器の壁越しに充填水位を検出する。細胞培養容器は、複数の細胞培養チャンバ、及び複数の細胞培養チャンバを接続するマニホールドを備えることができ、少なくとも1つの充填センサは、マニホールドに取り付けることができる。細胞培養容器は、複数の細胞培養チャンバ、及び複数の細胞培養チャンバを接続する入口アクセス柱(充填柱)を備えることができ、少なくとも1つの充填センサは、入口アクセス柱に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの充填センサは、細胞培養容器から取り外し可能且つ再利用可能である。少なくとも1つの充填センサは、光学センサ、貫通ビームセンサ、又は光電センサのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0015】
複数の実施形態のさらなる態様として、本システムは、本システムの配管内流体圧を検出するように配置された流量制御器をさらに備える。流量制御器は、配管内流体圧が所定の圧力値以上であることに応答して、本システムの流量を減少させることができる。
【0016】
追加的な態様では、本システムは、細胞培養容器の出口にバルブをさらに備える。バルブは、細胞培養容器の出口又はその近傍の流体経路を閉鎖して、細胞培養容器の充填を停止することができる。バルブは、出口に接続されたチューブの外部に設けられたピンチバルブとすることができる。バルブは、少なくとも1つの充填センサの1つからの検出信号及び配管内流体圧のうちの少なくとも一方に応答して、流体経路を閉鎖するように設計することができる。
【0017】
いくつかの実施形態のさらなる態様では、本システムは、細胞培養容器を支持するためのマルチポジション支持体をさらに備える。アクチュエータは、マルチポジション支持体に取り付けることができ、マルチポジション支持体を配置している水平な支持表面に対するマルチポジション支持体の姿勢を変更することができる。
【0018】
いくつかの実施形態の追加的な態様では、アクチュエータは、第1の長さ及び第2の長さを含む調節可能な長さを有している。第1の長さのときに、細胞培養容器が第1の姿勢とされ、第2の長さのときに、細胞培養容器は第2の姿勢とされる。第1の長さは、第2の長さよりも大きい長さとすることができる。アクチュエータは、ソレノイド、圧電材料、空気圧ピストン、及び油圧ピストンのうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0019】
いくつかの実施形態の追加的な態様では、本システムは、細胞培養容器内の液体が第3の充填水位に到達したことを検出するように配置される第3の充填センサを備え得る。第3の充填センサは、細胞培養容器内の液体が、第1の充填水位及び第2の充填水位とは異なる第3の充填水位に到達したときに第3の検出信号を生成することができる。制御装置は、第3の充填センサからの第3の検出信号に基づいて、細胞培養容器の充填速度を遅くするように構成することができる。
【0020】
いくつかの実施形態の一態様として、細胞培養容器に液体を充填する際、液体は第2の充填水位よりも先に第1の充填水位に到達する。いくつかの実施形態では、細胞培養容器に液体を充填する際、液体は、第1の充填水位よりも後且つ第2の充填水位よりも先に、第3の充填水位に到達する。
【0021】
複数の実施形態の一態様として、制御装置は、第2の充填センサからの第2の検出信号に基づいて、細胞培養容器の充填を停止することができる。
【0022】
いくつかの実施形態のさらなる態様では、マルチポジション支持体は、正立配置設定のときに支持部材に載置される主基部、正立配置設定で主基部から鉛直方向にずれた位置に設けられる支持面であって、細胞培養容器が支持面上にある状態で細胞培養容器を支持する支持面、及び主基部から支持面まで延びる中間面であって、主基部の側面に対して傾斜した角度で延びる境界部で主基部につながる中間面、を有している。マルチポジション支持体は、支持面上に細胞培養容器を支持したまま、マルチポジション支持体を境界部を中心に回動させて、正立配置設定のときよりも支持面を支持部材に近づけた状態である傾転配置設定を有している。
【0023】
マルチポジション支持体は、正立配置設定のときに支持部材に載置される副基部をさらに有することができる。いくつかの実施形態では、上述の支持面が第1の支持面であり、マルチポジション支持体は、主基部と副基部との間に位置する第2の支持面をさらに有し、第2の支持面は、細胞培養容器が第2の支持面上にある状態で細胞培養容器を支持する。第1の支持面及び第2の支持面は、主基部に対して傾斜した、実質的に同一の平面上にあることができる。マルチポジション支持体は、細胞培養容器の充填側面と係合して、細胞培養容器を第1の支持面及び第2の支持面上に拘束する支持フランジをさらに有することができる。マルチポジション支持体は、充填側面とは反対側の細胞培養容器の後側面に係合する第1の支持面から延出する他の支持フランジをさらに有することができる。第2の支持面は、支持部材から離間させることができる。いくつかの実施形態の複数の態様では、支持面は、主基部の側面に対して傾斜した角度とされる他の境界部で中間面につながっている。2つの境界部の主基部の側面に対する傾斜角度はほぼ同一とすることができる。
【0024】
追加的な実施形態によれば、流体マニホールド及びエアマニホールドによって互いに流体接続された複数の細胞培養モジュールを含む細胞培養容器を備える細胞培養装置の充填角度を変更する方法が提供される。本方法は、傾転配置設定及び正立配置設定を有するマルチポジション支持体に、細胞培養装置を接続するステップと、正立配置設定又は傾転配置設定のいずれかとしたマルチポジション支持体で細胞培養装置を支持した状態で、細胞培養装置を充填するステップと、細胞培養装置を第1の充填水位まで充填したことを、細胞培養モジュールの外部に設けた第1の充填センサで検出するステップと、当該第1の充填センサで検出するステップに基づいて、マルチポジション支持体を、傾転配置設定と正立配置設定のうちの一方から、傾転配置設定と正立配置設定のうちの他方に変更するステップと、細胞培養装置を、第1の充填水位とは異なる第2の充填水位まで充填したことを、細胞培養モジュールの外部に設けた第2の充填センサで検出するステップと、当該第2の充填センサで検出するステップに基づいて、充填を停止するステップと、を含む。
【0025】
本方法のいくつかの実施形態の複数の態様では、複数の細胞培養モジュールの各々が、複数層の細胞培養チャンバを含んでいる。
【0026】
本方法のいくつかの実施形態のさらなる態様では、マルチポジション支持体は、正立配置設定のときに支持部材に載置される主基部、正立配置設定で主基部から鉛直方向にずれた位置に設けられる支持面であって、細胞培養装置が支持面上にある状態で細胞培養装置を支持する支持面、及び主基部から支持面まで延びる中間面であって、主基部の側面に対して斜めの角度に延びる境界部で主基部につながる中間面、を有することができる。傾転配置設定では、マルチポジション支持体は、支持面上で細胞培養装置を支持したまま、境界部を中心に回動されて、正立配置設定のときよりも支持面を支持部材に近づけた状態とされる。
【0027】
本方法のいくつかの実施形態の複数の態様では、上述の充填するステップは、正立配置設定としたマルチポジション支持体に細胞培養装置を支持した状態で細胞培養装置を充填するステップを含む。本方法は、境界部を中心にマルチポジション支持体を回動させることにより、マルチポジション支持体を用いて細胞培養装置を傾転させるステップをさらに含むことができる。本方法のさらなる態様では、上述のマルチポジション支持体を傾転配置設定及び正立配置設定のうちの一方から他方に変更するステップは、マルチポジション支持体に取り付けられたアクチュエータを動かすステップを含む。
【発明の効果】
【0028】
本明細書は、細胞培養容器への液体培地の充填又は排液を行う際に、細胞培養容器の姿勢及び/又は流量を自動的に制御することにより、細胞培養システムの充填及び排液を半自動化又は全自動化する細胞培地充填システムであって、細胞培養容器の姿勢を正立配置設定と傾転配置設定との間で切り替えて、水平に対して異なる角度の姿勢に配置することができる細胞培地充填システムを記載するものである。細胞培養容器に異なる角度の姿勢を持たせることで、信頼性、一貫性、及び効率性を高めたやり方で、充填及び排液の成果を向上させることができる。さらに、傾転配置設定では、細胞培養容器の充填側面(前部)が、エアマニホールドを上下方向と前後方向の両方向で持ち上げる角度である複合角度で、高い位置に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、マニホールドを備える細胞培養装置の斜視図
図2】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図1に示す細胞培養装置で使用するための複数のスタケット層の概略図
図3】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、正立配置設定のマルチポジション支持体で図1に示す細胞培養装置を支持した状態を示す側面図
図4】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図3に示すマルチポジション支持体の斜視図
図5】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図4に示すマルチポジション支持体の平面図
図6】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図3に示すマルチポジション支持体を傾転配置設定とした状態を示す側面図
図7】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図6に示すマルチポジション支持体を傾転配置設定とした状態を示す端面図
図8】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、細胞培地自動充填システムを第1の姿勢とした状態を示す斜視図
図9図8に示す細胞培地自動充填システムを第2の姿勢とした状態を示す斜視図
図10】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、細胞培養装置の斜視図
図11】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図10に示す細胞培養装置を第1の充填姿勢とした状態を示す側面図
図12】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図10に示す細胞培養装置を第2の充填姿勢とした状態を示す側面図
図13】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図10に示す細胞培養装置をインキュベーション姿勢とした状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
なお、図面は必ずしも縮尺通りに図示されているわけではない。図面内で用いられる同様の番号は、同様の構成要素、工程などを示している。ただし、或る図面において或る構成要素を或る番号で示す場合に、これにより、当該構成要素を同一の番号を付した他の図面においても限定することを意図するものではないことが理解されよう。また、構成要素を異なる番号で示す場合に、これにより、これらの異なる番号を付した構成要素同士が同一又は同様ではありえないことを示すことを意図するものではない。
【0031】
以下の詳細な説明では、添付の図面を参照している。添付の図面は、本明細書の一部を構成し、デバイス、システム及び方法のいくつかの特定の実施形態を例示的に図示するものである。ただし、本開示の範囲又は趣旨から逸脱しない範囲で、他の実施形態も企図、実施し得るものであることを理解されたい。従って、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈するべきものではない。
【0032】
本明細書で使用するすべての科学技術用語は、特に断りのない限り、当技術分野で一般的に用いられる意味を有している。本明細書に示す定義は、本明細書において何度も使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0033】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、「a」、「an」、及び「the(その/前記)」で示す単数形は、文脈上明らかに複数形を含まないことが明らかな場合を除き、その複数形を有する実施形態も包摂するものとする。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、「又は(or)」という用語は、文脈上明らかに「及び/又は(and/or)」を含まないことが明らかな場合を除き、概ね、「及び/又は」を含む意味で用いるものとする。
【0034】
本明細書において、「備える」「含む」「有する」(have,having,include,including,comprise,comprisingなど)は、オープンエンドの意味で用いており、概ね「含むが、これ(これら)に限定されない(including, but not limited to)」ことを意味している。
【0035】
本開示は、細胞培養容器への液体培地の充填及び/又は排液を自動化することが可能な細胞培養システムを説明するものである。本システムの実施形態は、本明細書において説明する種々の構成要素を様々に組み合わせて備え得ることが企図されている。かかる構成要素としては、細胞培養容器、細胞培養容器の充填水位を検出するための充填センサ、充填時に細胞培養容器の姿勢を変更するためのアクチュエータ、細胞培養容器を支持するためのマルチポジション支持体、制御装置、圧力センサ、並びに、種々の接続部、継手、チューブ及びマニホールド、のうちの1つ以上を挙げることができる。本明細書に記載の実施形態は、容器の充填又は排液時に、充填センサを使用して液体培地の水位を監視し、充填水位に応じて細胞培養容器の姿勢変更又は充填速度調節を行うものである。本明細書に開示のシステム及び方法によれば、細胞培養容器の充填及び/又は排液を半自動又は全自動で行うことを可能にすることができる。その結果、細胞培養システムに漏れや汚染が生じるリスクや他のストレスが細胞培養システムに加わるリスクを低減するとともに、充填又は排液手順の際にユーザが行う必要のある監視や注意の程度が低減された細胞培養システム及び方法が提供される。
【0036】
上述のように、本開示は、多層細胞培養装置用のマルチポジション支持体に関するものである。マルチポジション支持体は、正立配置設定のときに支持部材に載置される主基部を設けるようにプレートを曲げることにより形成することができる。正立配置設定で主基部から鉛直方向にずれた位置に支持面が設けられ、この支持面により多層細胞培養装置を、支持部材の表面に対して角度をつけて、又は水平に対して角度をつけて支持する。マルチポジション支持体は、主基部から支持面まで延びる中間面をさらに有している。中間面は、主基部の側面に対して傾斜した角度で延びる境界部で主基部につながっている。また、マルチポジション支持体は傾転配置設定を有している。傾転配置設定とは、支持面上で多層細胞培養装置を支持したまま、マルチポジション支持体を支持面上の境界部を中心に回動させて、正立配置設定のときよりも支持面を支持部材に近づけた配置設定である。
【0037】
多層細胞培養装置は、細胞培養モジュールを備えている。細胞培養モジュールは、細胞培養チャンバ内に複数の増殖(培養)面を有しており、これらがマニホールドで互いに結合されて細胞培養デバイスを形成している。細胞培養モジュールは、マニホールドで他の細胞培養モジュールとさらに結合して、積み重ねた細胞培養デバイスを形成することもできる。複数の培養面を積み重ねて、多層構成とすることもできる。マニホールドは、マニホールドに対してモノリシックな部品として形成される一体型の柱構造体を備えることができる。柱構造体は入口ポートを備えており、柱構造体により、入口ポートから延びて、細胞培養モジュール内の個々の細胞培養チャンバと流体連通する流体流路の少なくとも一部が提供される。マニホールドとこれに付随する柱構造体によって、細胞培養装置の使用時に、柱構造体を可撓性チューブに接続して細胞培養チャンバを環境から隔絶することができる閉鎖系が得られる。
【0038】
本開示の複数の実施形態において、1つ以上のセンサを使用して、細胞培養容器又はマニホールド内の充填水位を測定することができる。細胞培養デバイス間で充填速度に若干のばらつきがある場合があるため、ユーザが一度に複数の容器を充填しようとする場合には、各細胞培養装置のセンサが、容器の姿勢を変更したり、流体の流れを変化させたりするのに適した時間を、特定の容器ごとに判断することができる。
【0039】
図1を参照すると、細胞培養装置10は、3つの細胞培養モジュール12、14、16を備え、各細胞培養モジュール12、14、16は、複数層の細胞培養チャンバ18を含んでおり、順に積み重なって、多層細胞培養装置10を形成している。各細胞培養モジュール12、14、16は、2つのマニホールド20、22を利用している。第1のマニホールド20を介して、細胞培養モジュール12、14、16に液体が出入りできる。よって、第1のマニホールド20を、流体マニホールドと呼ぶことができる。第2のマニホールド22を介して、細胞培養モジュール12、14、16に空気が出入りできる。よって、第2のマニホールド22を、エアマニホールドと呼ぶことができる。
【0040】
図2に示すように、各細胞培養モジュール12、14、16は、複数のスタケット層24を備えることができる。このスタケット層24を積み重ねることで、細胞培養チャンバ18間に気道スペース(エアスペース)25を有するように複数の細胞培養チャンバ18を形成することができる。図2は、複数のスタケット層24を積み重ねて、細胞培養チャンバ18と細胞培養面26とを積層した状態を形成した様子を示す模式図である。細胞培養面26は、例えば、ガス透過性と液体不透過性を備える膜28を備えている。スタケット層24は、気道スペース25を有しており、これにより、細胞培養チャンバ18と細胞培養装置10の外部との間のガスの移動を可能にしている。図1を再び参照すると、スペーサ31、33、35により、細胞培養モジュール12、14、16を互いから隔てることができる。スペーサ31、33、35は、個々の細胞培養モジュール12、14、16の構造的支持体となり得る。いくつかの実施形態では、スペーサ31、33のいずれか又は両方を、追加のスタケット層24に置き換えて、細胞培養チャンバ18の総数を増やすこともできる。さらに、空気を細胞培養チャンバ18に滞留させるのではなく、細胞培養モジュール12の上方にライザー容量(riser volume)を設けて残気を捕捉することもできる。
【0041】
本明細書に記載の細胞培養モジュール又はその一部は、任意の適切な材料で形成することができる。ただし、細胞又は培養培地と接触することが意図されている材料は、細胞及び培地との適合性がある材料とすることが好ましい。通常、細胞培養モジュールは高分子材料で形成される。適切な高分子材料の例としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスチレンコポリマー、フッ素ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンブタジエンコポリマー、完全水素化スチレンポリマー、ポリカーボネートPDMSコポリマー、並びに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンコポリマー、及び環状オレフィンコポリマーなどのポリオレフィンなどが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、培養モジュールは、ガス透過性と液体不透過性を備える膜28を含み、これにより、細胞培養チャンバ18と、最終的には細胞培養アセンブリの外部との間のガスの移動を可能にしている。かかる培養モジュールは、チャンバの外側で膜に隣接して配置されたスペーサ又はスペーサ層を備えることができ、これにより積み重ねたユニット間を空気が流れることができるようにしている。かかるスタック式ガス透過性培養ユニットを含む細胞培養装置の市販品の一例に、コーニング社の「HYPERStack」細胞培養装置がある。膜の形成に有用な適切なガス透過性の高分子材料の例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又は適合性のあるフッ素ポリマー、シリコーンゴム又はシリコーンコポリマー、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、又はこれらの材料の組み合わせが挙げられる。ただし、製造性及び細胞増殖との適合性から許容される範囲内で、様々な高分子材料を利用することができる。膜の厚さは、ガスが効率的に膜を通過移動することが可能な厚さが好ましい。例えば、ポリスチレン膜は、様々な厚さで細胞増殖を行うことができるが、例えば、約0.003インチ(約75マイクロメートル)の厚さとすることができる。このように、膜は、任意の厚さとすることができ、好ましくは、約25~250マイクロメートルの厚さ、又は約25~125マイクロメートルの厚さとすることができる。膜は、アセンブリのチャンバと外部環境との間での自由なガス交換を可能にするものであり、任意のサイズや形状をとることができる。好ましくは、膜は、装置の製造、取扱い、及び操作に対する耐久性を有している。
【0043】
上述したように、細胞培養モジュール12、14、16を、マニホールド20、22で互いに接続することができる。マニホールド20は、側壁基部構造体30と、柱構造体32とを備えている。柱構造体32は、側壁基部構造体30に対してモノリシックな部品として形成され、これにより、一体型のマニホールド20が得られる。柱構造体32は、かかり構造体34を備えており、柱構造体32により、かかり構造体34から延びて、細胞培養モジュール12、14、16内の個々の細胞培養チャンバ18と流体連通する流体流路の少なくとも一部が提供される。マニホールド20は、細胞培養チャンバ18の充填及び排液を可能にするように構成することができる。
【0044】
また、マニホールド22も、側壁基部構造体30’と、柱構造体32’とを備えている。柱構造体32’は、側壁基部構造体30’に対してモノリシックな部品として形成され、これにより、一体型のマニホールド22が得られる。柱構造体32’は、かかり構造体34’を備えており、柱構造体32’により、細胞培養モジュール12、14、16内の個々の細胞培養チャンバ18からかかり構造体34’に延びる流体流路の少なくとも一部が提供される。マニホールド22は、細胞培養装置10に空気を出入りさせることにより、細胞培養チャンバ18の充填及び排液を可能にするように構成することができる。いくつかの実施形態では、柱構造体32’は、柱構造体32’への培地流を制御するために、図示の位置からずらして配置することができる。
【0045】
通常の充填手順では、細胞培養装置10の左側面を支持面又はトレイ側に向けて、左側面を下にして細胞培養装置10を置くことができる。この姿勢にあるとき、マニホールド20、22が設けられている細胞培養装置10の前面は下に傾けられ、充填開始時の第1の充填姿勢とされる(図3の側面図参照)。そして、細胞培養容器への液体培地の流入が開始される。例えば、蠕動ポンプで、かかり構造体34を介して下側の柱構造体32に培地を圧送してもよく、又は、重力を利用した培地流で容器を充填してもよい。そして、細胞培養装置10内の液体培地の水位が、所定の位置にある第1の充填水位まで上昇すると、細胞培養装置10(充填トレイを使用している場合は、これに加えて充填トレイ)の姿勢を変更して、第2の充填ポジションとする。この第2の充填姿勢で、細胞培養装置10の最終充填水位に液体培地が到達するまで充填を継続することができる。最終充填水位に到達すると、培地流を止め、マニホールド20、22からの入口及び出口を閉鎖又は締め付けにより閉じて、閉鎖系とすることができる。これで、細胞培養装置10は、細胞培養に使用する準備のできた状態となる。
【0046】
本開示の複数の実施形態は、上述したように、充填トレイの一種、すなわち、マルチポジション支持体を備えている。以下に、マルチポジション支持体の詳細を示す。これにより、細胞培養装置10の第1の充填姿勢及び第2の充填姿勢がどのようなものであるか、そして細胞培養装置10をどのように動かして姿勢を変更するかを含め、細胞培養装置10の充填及び/又は排液プロセスがいかなるものであるかをより良く理解できるであろう。
【0047】
図3を参照すると、マルチポジション支持体50を使用することにより、図3に示すように側面40を下にして細胞培養装置を傾けて横にした状態で、細胞培養装置10の充填及び排液を行うことができる。マルチポジション支持体50を使用することにより、細胞培養装置10を、支持部材42又は水平に対して所定の傾斜角度θ(例えば、約10度~約12度)で、側面40を下にして確実に配置することができる。流体マニホールド20に最も近い側面40が、マルチポジション支持体50上に置かれ、流体マニホールド20がエアマニホールド22よりも低い位置とされる。以下でさらに詳述するように、マルチポジション支持体50を傾転させて、正立配置設定(図3に図示)と傾転配置設定との間を切り替えることにより、細胞培養装置10を水平に対して異なる角度で配置することができる。
【0048】
図4及び図5を参照すると、取り外した状態のマルチポジション支持体50を示している。マルチポジション支持体50は、底部52と、上部54と、両端部56、58と、両側面60、62とを有するモノリシックな屈曲板として形成されている。マルチポジション支持体50は、側面62に位置タブ64、66を備えている。位置タブ64、66は、マルチポジション支持体50を真っすぐに起立させたポジションとした状態で細胞培養装置10の底縁68(図3)と係合し、マルチポジション支持体50を下にして細胞培養装置10を所定の位置に保持することを支援するものである。いくつかの実施形態では、細胞培養装置10の底縁68に、位置タブ64、66が入るサイズと位置の凹部71、73を設けることができる。位置タブ64、66は、屈曲部75を有してもよい。屈曲部75を使って底縁68を把持することにより、細胞培養装置10が横方向に動いてマルチポジション支持体50から外れてしまうことを抑制することができる。
【0049】
マルチポジション支持体50は、マルチポジション支持体50が図示のような正立配置設定にあるときに支持部材(例えば、テーブル又は実験台)に載置される主基部70を有している。また、正立配置設定で主基部70から鉛直方向にずれた位置に、細胞培養装置10を支持する主支持面72が設けられている。また、マルチポジション支持体50は、主基部70から主支持面72まで延びる中間面74をさらに有している。中間面74は、マルチポジション支持体50の側面60、62に対して傾斜した角度で延びる屈曲部として形成される境界部76で、主基部70につながっている。また、中間面74は、側面60、62に対して傾斜した角度で延びる屈曲部として形成される境界部77で、主支持面72にもつながっている。いくつかの実施形態において、境界部76の傾斜角度と境界部77の傾斜角度は、側面60、62に対してほぼ同一の角度(例えば、5度以内の差)としてもよく、又は異なる角度としてもよい。
【0050】
また、マルチポジション支持体50は、マルチポジション支持体50が正立配置設定にあるときに支持部材に載置される副基部79をさらに有している。また、正立配置設定で副基部79から鉛直方向にずれた位置に、細胞培養装置10を支持する副支持面78が設けられている。副支持面78及び主支持面72は、水平に対して角度がついており且つ主基部70及び副基部79に対しても傾斜した同一平面上にある。また、マルチポジション支持体50は、副基部79から副支持面78まで延びる他の中間面80をさらに有している。中間面80は、マルチポジション支持体50の側面60、62に対して垂直に延びる屈曲部として形成される境界部82で、副基部79につながっている。また、他の中間面84が、主基部70から副支持面78まで延びている。中間面84は、側面60、62に対してやはり垂直に延びる屈曲部として形成される境界部86で、主基部70につながっている。端部56には、持ち手部88が設けられている。持ち手部88は、正立配置設定で副基部79から鉛直方向にずれた位置に設けられて細胞培養装置10を支持する支持フランジ90を備えることもできる。端部58には、主支持面72から鉛直方向に延出する支持フランジ94が設けられる。支持フランジ94は、主支持面72上に細胞培養装置10を保持するために用いられる。
【0051】
図3は、細胞培養装置10を正立配置設定のマルチポジション支持体50の上に支持した状態を示している。正立配置設定では、細胞培養装置10は、水平に対してθ(例えば、約10度~約12度)の角度とされ、前部102よりも後部100が高くなる。ただし、上下の角度は、水平と平行(0度)とされる。この正立配置設定では、細胞培養装置10を、細胞培養装置10への充填を開始するための充填開始ポジションとすることができる。充填開始ポジションは、前部102を後部100よりも低くすることにより緩やかな充填角度が得られるポジションであり、この充填角度により、流体における気泡の発生を低減し、細胞培養装置10に接続されたエアマニホールド及びフィルタを介した空気の排出を促進することができる。
【0052】
マルチポジション支持体50を正立配置設定とした状態で細胞培養装置10への充填を行う際、細胞培養装置10内の液面は、エアマニホールド22に向かって、ひいては、エアマニホールドに接続されているフィルタに向かって上昇する。フィルタが濡れると、細胞培養装置10からの空気の流出速度が低下し、これにより細胞培養装置10の内圧が上昇して、細胞培養装置10内の環境が好ましくないものになる恐れがある。そこで、流体がフィルタに到達する可能性を下げるため、マルチポジション支持体50には、マルチポジション支持体50を細胞培養装置10とともに回動した配置設定である傾転配置設定が設けられている。傾転配置設定への回動は、マルチポジション支持体50も細胞培養装置10も持ち上げることなく行うことができる。細胞培養装置10の後角隅部110に力Fを加えて、マルチポジション支持体50と細胞培養装置10を、境界部76を中心に回動させることにより、マルチポジション支持体50を細胞培養装置10とともに手動で簡単に傾転させることができる。境界部76は、マルチポジション支持体50の側面60、62に対して傾斜した角度で延びているため、傾転させることで前後の角度と上下の角度の両方が変化し、フィルタが接続されているエアマニホールド上部の位置が高くなる。後述の実施形態によれば、この傾転操作を、力Fを手動で加えることなく、自動細胞培養システムによって行うこともできる。ただし、図示、説明するマルチポジション支持体50と同一のものを、手動傾転操作と自動傾転操作のいずれにも用いることができる。
【0053】
図6を参照すると、マルチポジション支持体50及び細胞培養装置10を傾転配置設定とした状態を示している。傾転配置設定では、後部100よりも前部102が高くなっており、水平に対してθ(例えば、11度~13度)の角度とされる。図示の通り、傾転配置設定では、細胞培養装置10の側面40と後部100との間の角隅部112が、支持部材に載置される。図7を参照すると、底部114よりも上部116が高くなっており、水平に対してθ(7度~9度)の角度とされる。したがって、傾転配置設定では、マルチポジション支持体50及び細胞培養装置10を、θ(前後)とθ(上下)との複合角度で配置するが、これを、充填終了ポジションと呼ぶことができる。細胞培養装置10を充填し終えると、細胞培養装置10の上部116に最も近いマルチポジション支持体50の側面60を上に回動させて、細胞培養装置10を真っすぐに起立させたポジションとすることができる。したがって、充填プロセスにおける細胞培養装置10の操作をすべて、マルチポジション支持体50を用いた操作のみで行うことができ、操作の際、細胞培養装置10をマルチポジション支持体50から持ち上げる必要がない。なお、細胞培養装置10からの排液は、逆の順序で行うことができる。
【0054】
上記のマルチポジション支持体を使用することにより、充填動作又は排液動作の際に、細胞培養装置をマルチポジション支持体とは別に取り扱う必要なしに、細胞培養装置を操作することが可能となる。したがって、充填や排液の速度を上げたり、簡便で迅速な手順で角度を変更したりできるようになるため、マルチポジション支持体により、処理効率の向上とユーザの時間節約が実現する。さらに、マルチポジション支持体により、制御プロトコルを明確で簡潔なものとすることができるため、ミスの低減や産生物の不良及び/又は損傷の可能性の低減が可能となるほか、マルチポジション支持体を用いて固定傾転角度を採用した方法で揺動動作を行うため、角度のばらつきを低減することができる。また、マルチポジション支持体に複合傾転角度を設けることにより、エアマニホールドに装着したフィルタを濡らす可能性を低減している。いくつかの実施形態では、マルチポジションデバイスを、ステンレス鋼で形成することもでき、これにより、耐久性の向上と、製造管理及び品質管理に関する基準(good manufacturing practice:GMP)を満たすことが可能となる。マルチポジション装置を、金属製ブレーキにシート材を重ねたもので形成することにより、製造コストを削減することもできる。その場合、多大なコストをかけて設備を再編成することなく、装置の改造を行うことが可能となる。
【0055】
図8及び図9を参照すると、細胞培養装置210の自動充填を可能にする細胞培養システム200が示されている。なお、図8及び図9では詳細に示していないが、細胞培養装置210の構造及び特徴は、本開示の他の箇所で説明した細胞培養装置と同一とすることができる。同様に、図8及び図9に示すマルチポジション支持体250も、本開示の他の箇所で説明したマルチポジション支持体と同様のものである。したがって、以下の説明では、図8及び図9に示す追加の、したがって細胞培地自動充填システム200に関連する構成要素及び特徴に焦点を当てている。
【0056】
細胞培養装置210は、3つの細胞培養モジュール212、214、216を備え、各細胞培養モジュール212、214、216は、複数層の細胞培養チャンバ(図2参照)を含んでおり、順に積み重なって、多層細胞培養装置210を形成している。各細胞培養モジュール212、214、216は、2つのマニホールド220、222を搭載している。第1のマニホールド220を介して、細胞培養モジュール212、214、216に液体が出入りできる。よって、第1のマニホールド220を、流体マニホールドと呼ぶことができる。第2のマニホールド222を介して、細胞培養モジュール212、214、216に空気が出入りできる。よって、第2のマニホールド222を、エアマニホールドと呼ぶことができる。
【0057】
システム200は、細胞培養装置210内の第1の充填水位303に液体培地が存在することを検出するように配置された第1の充填センサ302を備えている。また、細胞培養装置210内の第2の充填水位305に液体培地が存在することを検出するように、第2の充填センサ304をさらに設けることもできる。任意選択的に、第3又はそれ以上の充填センサ(図示せず)設けて追加機能を得ることもできる。例えば、第3の充填センサを、細胞培養装置210内の第3の充填水位307に液体培地が存在することを検出するように設けることができる。この第3の充填水位307は、例えば、細胞培養装置210に液体培地を充填する速度を変更(例えば、遅くする)ために使用することができる。図8及び図9に示すように、第1の充填水位303、第2の充填水位305、及び第3の充填水位307の位置は、第2のマニホールド222上とされる。このように第2のマニホールド222上に配置することにより、充填水位303、305、307は、充填時に細胞培養装置210の上部に位置し、よって細胞培養装置210の最終充填水位に徐々に近づく充填水位を示すことになる。したがって、かかる充填水位303、305、307の位置は、細胞培養装置210の充填水位を測定するのに有用且つアクセス可能な位置となっている。さらに、マニホールド222上では、遮るもののないクリアな視界で液体培地水位を捉えることができるため、液体培地水位を様々な種類のセンサで容易に検出することが可能となる。いくつかの実施形態では、第2の充填水位305が、細胞培養装置210の最終充填水位を示す。充填センサ302、304は、液体培地が細胞培養装置210内の特定の位置に到達したことを検出することが可能な、当技術分野において公知の任意の種類のセンサとすることができる。いくつかの実施形態では、センサは、光学センサ、貫通ビームセンサ、又は光電センサのうちの少なくとも1つを含む。
【0058】
また、細胞培養システム200は、充填時に細胞培養装置210を第1の姿勢(例えば、図8)から第2の姿勢(例えば、図9)に動かすように配置されたアクチュエータ300をさらに備えている。図8及び図9の平面(plane)400は、支持部材(例えば、台、実験台、又はシステム200を支持する他の概ね水平な表面)の平面を表している。いくつかの好ましい実施形態では、液体培地が第1の充填水位303に到達したことを第1の充填センサ302が検出すると、アクチュエータ300が細胞培養装置210を動かして、図8に示す第1の姿勢(アクチュエータ300のピストン301を伸長させた状態)から図9に示す第2の姿勢(アクチュエータのピストン301を収縮させた状態)とする。いくつかの実施形態のさらなる態様では、液体培地が所定の充填水位にあることを他の充填センサが検出すると、アクチュエータ300が、細胞培養装置210をさらに別の姿勢に動かすことも可能である。必要に応じて、アクチュエータ300は、アクチュエータ300を伸長(例えば、図8)及び収縮(例えば、図9)させて、所望の姿勢を実現するためのソレノイド又は他の機構(例えば、圧電、空気圧又は油圧ピストン、又はモータ)を備えることができる。アクチュエータ300は、マルチポジション支持体250と一体としてもよく、又はマルチポジション支持体250に取り付け可能に構成してもよい。
【0059】
充填センサ302、304及びアクチュエータ300は、制御装置(図示せず)に接続することができる。特定的には、充填センサ302、304は、液体培地が所定の充填水位(例えば、303、305)に到達したことを検出すると、制御装置に検出信号を送信することができる。そして、制御装置は、アクチュエータ300を制御して細胞培養装置210の姿勢を変更したり、システムの他の構成要素(ポンプやバルブなど)を制御して、細胞培養装置210への液体培地流を制御して充填速度を制御したりすることができる。また、充填センサをタイマーと接続することにより、充填センサからの信号で始動するタイマーにより遅延を持たせて細胞培養システム200の機能を発揮させることもできる。
【0060】
いくつかの実施形態では、第1の充填センサ302による検出信号により、一時的に充填を停止し、細胞培養装置が所望の姿勢である第2の姿勢になってから充填を再開することもできる。
【0061】
また、細胞培養システム200は、第1のマニホールド220の入口に接続された充填ポート310(例えば、チューブなどの流体導管)をさらに備えることができる。充填ポート310は、細胞培養装置210内に送液を行うポンプなどの手段に接続することができる。また、第2のマニホールド222には、充填時に第2のマニホールド222の出口から流体(例えば、空気)を排出するための排気ポート312が接続されている。
【0062】
さらに、細胞培養システム200は、充填プロセスの監視及び制御を支援するための様々な他のバルブ及びセンサを備えることができる。例えば、1つ以上の入口バルブ314を充填ポート310の表面又は内部に設け、1つ以上の出口バルブ316を排気ポート312の表面又は内部に設けることができる。入口バルブ314は、充填ポート310を閉鎖又は制限して、細胞培養装置210への液体の流れを制御することができる。出口バルブ316は、細胞培養装置から空気などの流体が漏れ出ないように排気ポート312を閉鎖し、充填プロセスを効果的に停止させることができる。いくつかの実施形態では、入口バルブ314及び出口バルブ316は、それぞれ入口及び出口を挟み込んで閉鎖するためのピンチバルブである。例えば、入口バルブ314及び出口バルブ316は、ソレノイドピンチバルブとすることができる。ピンチバルブはチューブの外側で使用することができるため、再利用が容易である。さらに、本システムを操作する作業者が、使い捨てクランプで配管を締め付けて接続を絶つという簡単な事前処理のみで、ピンチバルブを緩めることができるよう、かかるピンチバルブは、この使い捨てクランプの邪魔にならない程度まで小型化することができる。
【0063】
さらに、細胞培養システム200には、様々な流量センサや圧力センサを用いることができる。図8及び図9に示すように、流量制御センサ318を充填ポート310に設けることができる。いくつかの実施形態では、流量制御センサ318は、充填時の液体培地の圧力を監視するための配管内圧力センサである。流量制御センサ318は、ポンプの制御を行う制御装置に接続されて、流量制御センサ318からのフィードバックに基づいて液体培地の流量を調節することができる。例えば、圧力が高すぎる場合に、自動的にポンプの回転数を下げることができる。かかる圧力センサは、使用後の洗浄が可能なステンレス箔面などの表面を備えることができ、これにより、圧力センサを再利用可能とすることができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の自動充填システム、装置、及び方法は、複数の層又はスタックを備える細胞培養容器と共に使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、コーニング社(Corning Incorporated、ニューヨーク州コーニング)から入手可能なCellSTACK(登録商標)培養容器とすることができる。かかる細胞培養容器1000を、図10図13に示す。図10は、本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、細胞培養装置(又は細胞培養容器)1000の斜視図である。図11は、本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図10に示す細胞培養装置1000を第1の充填姿勢1060とした状態を示す側面図である。図12は、本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図10に示す細胞培養装置1000を第2の充填姿勢1070とした状態を示す側面図である。図13は、本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、図10に示す細胞培養装置1000をインキュベーション姿勢1080とした状態を示す側面図である。
【0065】
図10図13に示すように、「CellSTACK」培養容器などの細胞培養容器1000は、平坦な底面1010と、底面1010とは反対側の平坦な上面1020と、底面1010から上面1020まで鉛直方向に延在する4つの側壁1011、1013、1015、1017とを有している。底面1010と上面1020との間に、複数の層(細胞培養チャンバ又はスタック)1030を配置することができる。各層(細胞培養チャンバ)1030は培養底面1035を有しており、各細胞培養チャンバ1030の一側面1011は充填柱1040及び排気柱1050と連通している。細胞培養容器は、任意の適切な数の細胞培養チャンバ1030を備えることができる。限定を意図するものではないが、例えば、細胞培養容器は、1個のスタック(培養チャンバ)、2個のスタック(培養チャンバ)、5個のスタック(培養チャンバ)、10個のスタック(培養チャンバ)、又は40個のスタック(培養チャンバ)を備えることができる。
【0066】
充填柱1040及び充填ポート1045と、排気柱1050及び排気ポート1055とにより、チャンバ底部1035への直接的なアクセスが可能となっているため、完全に密閉された系に対して、注入、ピペット操作、又はチューブにより、非常に柔軟に無菌で充填及び排液を行うことが可能となっている。充填柱1040及び排気柱1050は、細胞培養容器1000の上面1020にアクセスポート1045、1055を有してよく、アクセスポートは、キャップ又はチューブと係合できるようにねじ切りされていてよい。いくつかの実施形態では、充填ポート1045及び排気ポート1055は、ねじ切りなどの適切な接続などによって、キャップと係合するように構成されている。いくつかの実施形態では、キャップは、汚染のリスクを最小限に抑えながらガス交換できるように、多孔質及び/又は疎水性膜を備えることができる。いくつかの実施形態では、ポンプ圧送又は重力により、培地及び細胞を直接無菌移送できるように、キャップに、チューブと一体に密閉された充填キャップを含むことができる。充填柱1040と排気柱1050は、細胞培養容器1000の同一側面1011の両端部にそれぞれ配置することができる。充填柱1040は、細胞培養容器の底面1010から細胞培養容器の上面1020まで鉛直方向に延在し、細胞培養容器内の各層(培養チャンバ)1030と連通している。充填柱1040は、細胞培養容器1000の上面1020に充填ポート1045を備え、所望のキャップ及び/又は所望のチューブを充填ポート1045に取り付けることができる。排気柱1050は、細胞培養容器の底面1010から細胞培養容器の上面1020まで鉛直方向に延在し、細胞培養容器内の各層(培養チャンバ)1030と連通している。排気柱1050は、細胞培養容器1000の上面1020に排気ポート1055を備え、所望のキャップ及び/又は所望のチューブを排気ポート1055に取り付けることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器1000のチャンバ1030は、本明細書に開示の複数の実施形態に記載の自動充填システムにより充填することができる。他の実施形態では、細胞培養容器の各チャンバを、重力、蠕動ポンプ、又は注入などの任意の適切な手段により充填することができる。いくつかの実施形態では、細胞培養容器1000は、充填センサを備え得るシステムなど、本明細書に開示の自動充填システム及び構成要素に取り付けることができ、最小限のユーザ介入で細胞培養容器1000の細胞培養チャンバ1030を自動充填することができる。層流フード又はクリーンルーム環境下で、無菌接続を行うこともできる。重力やポンプ圧送による充填システムなどの閉鎖系の充填システムを使用する場合には、細胞培養容器を非無菌環境に移動させることもできる。
【0068】
細胞培養容器1000への充填を行う際には、充填ポート1045に被せている通常の排気キャップなどのキャップを、充填キャップに交換することができる。そして、細胞培養容器1000を動かして、第1の充填姿勢1060とすることができる。第1の充填姿勢1060では、細胞培養容器1000は、側面1011を下にして、作業面1090上に載置(支持)して置かれ、充填ポート1045が細胞培養容器1000の一番下近くにある状態となる。いくつかの実施形態では、排気ポート1055に被せている通常の排気キャップを、排気フィルタを備えた排気充填キャップに交換して背圧を低減することもできる。そして充填キャップのチューブを、細胞懸濁液を入れた無菌分注容器のチューブに接続することができる。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液をポンプで分注容器から細胞培養容器内に圧送して、細胞培養チャンバを充填することができる。チャンバへの培地の充填は、最初は均一には行われない場合もあるが、その後、細胞培養容器の各チャンバ(スタック)内で培地の水位は均一となる。
【0069】
充填が完了すると、細胞培養容器を動かして、第2の充填姿勢1070とすることができる。第1の充填姿勢1060では、細胞培養容器は、その側面1011を下に、充填ポート1045が一番下近くにある状態で置かれる。第2の充填姿勢1070では、細胞培養容器を90度動かして、充填ポート1045及び排気ポート1055を有する側面1011が容器の一番上の位置となる状態とする。第2の充填姿勢1070では、側面1011の反対側の側面1015が、支持部材の表面(作業面)1090上に載置(支持)されている。そして、充填ポート1045に被せている充填キャップを、排気キャップ又は中実のキャップなどに交換することができる。
【0070】
その後、細胞培養容器を、インキュベーションポジション1080で置くことができる。インキュベーションポジション1080では、細胞培養容器1000の底面1010及び上面1020と、培養チャンバ1030の培養底面1035とが水平状態となる。例えば、細胞培養容器1000を、上面1020及び底面1010が、細胞培養容器が載置される作業面1090に平行な、平坦水平状態にあるポジションとすることができる。したがって、細胞培養容器1000を動かしてインキュベーションポジション1080とすると、重力の作用により、細胞培養容器内の各チャンバ(スタック)の表面を細胞培養培地で覆った状態とすることができる。いくつかの実施形態では、ユーザ又はマニピュレータによって、培地が各細胞培養チャンバの縁を越えてアクセス柱に流れ込んでしまうことのないように慎重に細胞培養容器1000を傾転させることにより、各細胞培養チャンバの表面を培地で覆った状態とする手助けをすることもできる。いくつかの実施形態では、ユーザが手動で細胞培養チャンバを操作(配置)して、第1の充填姿勢1060、第2の充填姿勢1070、及びインキュベーション姿勢1080などの様々なポジションとする。いくつかの実施形態では、充填のための細胞培養容器の配置を行う各ステップを自動化し、マニピュレータにより実施する。複数の実施形態において、マニピュレータは、1つ以上の細胞培養容器を収容する大きさ及び構成を有し、充填のための細胞培養容器の操作(配置)を、自動的に又は最小限のユーザによる手動関与で行うことができる。いくつかの実施形態では、マニピュレータは、四国工業株式会社(徳島市、日本)から市販されているマニピュレータとすることができる。
【0071】
その後、細胞培養容器は、インキュベータ又は温室内の細胞培養容器の質量を支える水平な平坦面上に置くことができる。適切なインキュベーションの後、細胞培養容器は、完全に排液する場合もあれば、培地交換が必要となる場合もある。細胞培養容器を完全に排液する場合には、充填ポートキャップを充填キャップに交換することができる。そして、細胞培養容器を無菌回収容器に接続することができ、重力又はポンプ圧送などにより培地を細胞培養容器から回収容器に移送することができる。
【0072】
以上、細胞培地自動充填システム及びこれに関連する方法の実施形態を開示してきた。しかしながら、当業者であれば、本明細書に記載の細胞培地自動充填システム及び方法が、開示した実施形態以外の実施形態でも実施することができることを理解するであろう。開示した実施形態は、説明のために提示したものであり、限定のために提示したものではない。
【0073】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0074】
実施形態1
細胞培養容器であって、細胞を培養するための細胞培養チャンバ、該細胞培養容器を充填するために液体が流れるように構成された入口、及び該細胞培養容器から流体が出るように構成された出口、を備える細胞培養容器と、
前記細胞培養容器の充填中に、前記細胞培養容器内の液体が前記細胞培養容器の所定の位置で充填水位に到達したことを検出するように配置された少なくとも1つの充填センサであって、前記細胞培養容器内の液体が前記充填水位に到達したときに検出信号を生成するように構成された少なくとも1つの充填センサと、
前記検出信号に応答して前記細胞培養容器の姿勢を変更するように構成されたアクチュエータと、
を備える細胞培養システム。
【0075】
実施形態2
前記少なくとも1つの充填センサが、第1の充填センサを含み、該第1の充填センサは、前記細胞培養容器内の液体が第1の充填水位に到達したことを検出するように配置されるとともに、前記細胞培養容器内の液体が前記第1の充填水位に到達したときに第1の検出信号を生成するように構成され、
前記アクチュエータが、前記第1の検出信号に応答して前記細胞培養容器の前記姿勢を第1の姿勢から第2の姿勢に変更するように構成されている、実施形態1に記載の細胞培養システム。
【0076】
実施形態3
前記少なくとも1つの充填センサが、第2の充填センサを含み、該第2の充填センサは、前記細胞培養容器内の液体が第2の充填水位に到達したことを検出するように配置されるとともに、前記細胞培養容器内の液体が前記第2の充填水位に到達したときに第2の検出信号を生成するように構成され、
前記細胞培養システムが、前記第2の検出信号に応答して前記細胞培養容器の充填を停止するように構成され、
前記第2の充填水位は、前記第1の充填水位とは異なる、実施形態1又は2に記載の細胞培養システム。
【0077】
実施形態4
前記細胞培養容器が多層細胞培養容器である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0078】
実施形態5
前記少なくとも1つのセンサの前記検出信号を受信し、該検出信号に応答して前記アクチュエータを制御するように構成された制御装置をさらに備える、実施形態1~4のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0079】
実施形態6
前記細胞培養容器の前記入口に流体接続されたポンプをさらに備える、実施形態1~5のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0080】
実施形態7
前記制御装置は、前記ポンプの流量を制御するように構成されている、実施形態6に記載の細胞培養システム。
【0081】
実施形態8
前記細胞培養容器が、前記入口及び前記出口が配置されている充填側面、及び前記充填側面に隣接する支持体対向側面を備え、前記第1の姿勢にあるとき、前記支持体対向側面は、前記細胞培養容器の下の実質的に水平な支持部材の方を向いており、
前記第1の姿勢にあるとき、前記支持体対向側面は、前記支持部材に対して第1の角度をなし、前記出口は前記支持部材から第1の距離にあり、前記出口に比べて前記入口の方が前記支持部材に近くなり、
前記第2の姿勢にあるとき、前記支持体対向側面は、前記支持部材に対して複合角度をなし、該複合角度は、(i)前記支持体対向側面の長さと前記支持部材とがなす第2の角度、及び(ii)前記支持体対向側面の幅と前記支持部材とがなす第3の角度を含み、
前記第2の姿勢にあるとき、前記出口は前記支持部材から第2の距離にあり、該第2の距離は前記第1の距離より大きい、実施形態2~7のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0082】
実施形態9
前記少なくとも1つの充填センサが、前記細胞培養容器の外部に取り付けられ、前記細胞培養容器の壁越しに充填水位を検出する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0083】
実施形態10
前記細胞培養容器が、複数の細胞培養チャンバ、及び該複数の細胞培養チャンバを接続するマニホールドを備え、
前記少なくとも1つの充填センサが、前記マニホールドに取り付けられている、実施形態9に記載の細胞培養システム。
【0084】
実施形態11
前記少なくとも1つの充填センサが、前記細胞培養容器から取り外し可能且つ再利用可能である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0085】
実施形態12
前記細胞培養システムの配管内流体圧を検出するように配置された流量制御器をさらに備え、
前記流量制御器が、前記配管内流体圧が所定の圧力値以上であることに応答して、前記細胞培養システムの流量を減少させるように構成されている、実施形態1~11のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0086】
実施形態13
前記細胞培養容器の出口にバルブをさらに備え、
前記バルブが、前記細胞培養容器の前記出口又はその近傍の流体経路を閉鎖して、前記細胞培養容器の充填を停止するように構成されている、実施形態1~12のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0087】
実施形態14
前記バルブが、前記出口に接続されたチューブの外部に設けられたピンチバルブである、実施形態13に記載の細胞培養システム。
【0088】
実施形態15
前記バルブが、前記少なくとも1つの充填センサの1つからの前記検出信号及び配管内流体圧のうちの少なくとも一方に応答して、前記流体経路を閉鎖するように構成されている、実施形態13又は14に記載の細胞培養システム。
【0089】
実施形態16
前記少なくとも1つの充填センサが、光学センサ、貫通ビームセンサ、又は光電センサのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0090】
実施形態17
前記細胞培養容器を支持するように構成されたマルチポジション支持体をさらに備える、実施形態1~16のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0091】
実施形態18
前記アクチュエータが、前記マルチポジション支持体に取り付けられ、前記マルチポジション支持体を配置している水平な支持表面に対する前記マルチポジション支持体の姿勢を変更するように構成されている、実施形態17に記載の細胞培養システム。
【0092】
実施形態19
前記アクチュエータが、第1の長さ及び第2の長さを含む調節可能な長さを有しており、
前記第1の長さのときに、前記細胞培養容器が前記第1の姿勢とされ、前記第2の長さのときに、前記細胞培養容器は前記第2の姿勢とされる、実施形態2~18のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0093】
実施形態20
前記第1の長さが前記第2の長さよりも大きい、実施形態19に記載の細胞培養システム。
【0094】
実施形態21
前記アクチュエータが、ソレノイド、圧電材料、空気圧ピストン、及び油圧ピストンのうちの少なくとも1つを備える、実施形態1~20のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0095】
実施形態22
前記細胞培養容器内の液体が第3の充填水位に到達したことを検出するように配置されるとともに、前記細胞培養容器内の液体が前記第3の充填水位に到達したときに第3の検出信号を生成するように構成された第3の充填センサをさらに備え、
前記第3の充填水位は、前記第1の充填水位及び前記第2の充填水位とは異なる、実施形態3~21のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0096】
実施形態23
前記制御装置は、前記第3の充填センサからの第3の検出信号に基づいて、前記細胞培養容器の充填速度を遅くするように構成されている、実施形態22に記載の細胞培養システム。
【0097】
実施形態24
前記細胞培養容器に液体を充填する際、前記液体は前記第2の充填水位よりも先に前記第1の充填水位に到達する、実施形態1~23のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0098】
実施形態25
前記細胞培養容器に液体を充填する際、前記液体は、前記第1の充填水位よりも後且つ前記第2の充填水位よりも先に、前記第3の充填水位に到達する、実施形態22~24のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0099】
実施形態26
前記制御装置は、前記第2の充填センサからの前記第2の検出信号に基づいて、前記細胞培養容器の充填を停止するように構成されている、実施形態1~25のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0100】
実施形態27
前記マルチポジション支持体が、
正立配置設定のときに前記支持部材に載置される主基部、
前記正立配置設定で前記主基部から鉛直方向にずれた位置に設けられる支持面であって、前記細胞培養容器が該支持面上にある状態で該細胞培養容器を支持する支持面、及び
前記主基部から前記支持面まで延びる中間面であって、前記主基部の側面に対して傾斜した角度で延びる境界部で前記主基部につながる中間面、を有しており、
前記マルチポジション支持体が、前記支持面上に前記細胞培養容器を支持したまま、前記マルチポジション支持体を前記境界部を中心に回動させて、前記正立配置設定のときよりも前記支持面を前記支持部材に近づけた状態である傾転配置設定を有している、実施形態17~26のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0101】
実施形態28
前記マルチポジション支持体が、前記正立配置設定のときに前記支持部材に載置される副基部をさらに有している、実施形態27に記載の細胞培養システム。
【0102】
実施形態29
前記支持面が第1の支持面であり、
前記マルチポジション支持体が、前記主基部と前記副基部との間に位置する第2の支持面をさらに有し、
前記第2の支持面は、前記細胞培養容器が該第2の支持面上にある状態で該細胞培養容器を支持する、実施形態28に記載の細胞培養システム。
【0103】
実施形態30
前記第1の支持面及び前記第2の支持面は、実質的に同一の平面上にあり、該同一の平面は、前記主基部に対して傾斜している、実施形態29に記載の細胞培養システム。
【0104】
実施形態31
前記マルチポジション支持体が、前記細胞培養容器の充填側面と係合して、前記細胞培養容器を前記第1の支持面及び前記第2の支持面上に拘束する支持フランジをさらに有する、実施形態29又は30に記載の細胞培養システム。
【0105】
実施形態32
前記マルチポジション支持体が、前記充填側面とは反対側の前記細胞培養容器の後側面に係合する前記第1の支持面から延出する他の支持フランジをさらに有する、実施形態29~31のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0106】
実施形態33
前記第2の支持面が、前記支持部材から離間している、実施形態29~32のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0107】
実施形態34
前記支持面が、前記主基部の側面に対して傾斜した角度とされる他の境界部で前記中間面につながっている、実施形態27~33のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0108】
実施形態35
前記2つの境界部の前記主基部の前記側面に対して傾斜した角度が、ほぼ同一である、実施形態34に記載の細胞培養システム。
【0109】
実施形態36
流体マニホールド及びエアマニホールドによって互いに流体接続された複数の細胞培養モジュールを含む細胞培養容器を備える細胞培養装置の充填角度を変更する方法であって、
傾転配置設定及び正立配置設定を有するマルチポジション支持体に、前記細胞培養装置を接続するステップと、
前記正立配置設定又は前記傾転配置設定のいずれかとした前記マルチポジション支持体で前記細胞培養装置を支持した状態で、前記細胞培養装置を充填するステップと、
前記細胞培養装置を第1の充填水位まで充填したことを、前記細胞培養モジュールの外部に設けた第1の充填センサで検出するステップと、
前記第1の充填センサで検出するステップに基づいて、前記マルチポジション支持体を、前記傾転配置設定と前記正立配置設定のうちの一方から、前記傾転配置設定と前記正立配置設定のうちの他方に変更するステップと、
前記細胞培養装置を、前記第1の充填水位とは異なる第2の充填水位まで充填したことを、前記細胞培養モジュールの外部に設けた第2の充填センサで検出するステップと、
前記第2の充填センサで検出するステップに基づいて、充填を停止するステップと、
を含む方法。
【0110】
実施形態37
前記複数の細胞培養モジュールの各々が、複数層の細胞培養チャンバを含んでいる、実施形態36に記載の方法。
【0111】
実施形態38
前記マルチポジション支持体が、
前記正立配置設定のときに支持部材に載置される主基部、
前記正立配置設定で前記主基部から鉛直方向にずれた位置に設けられる支持面であって、前記細胞培養装置が該支持面上にある状態で該細胞培養装置を支持する支持面、及び
前記主基部から前記支持面まで延びる中間面であって、前記主基部の側面に対して傾斜した角度で延びる境界部で前記主基部につながる中間面、を有しており、
前記傾転配置設定では、前記マルチポジション支持体は、前記支持面上で前記細胞培養装置を支持したまま、前記境界部を中心に回動されて、前記正立配置設定のときよりも前記支持面を前記支持部材に近づけた状態とされる、実施形態36又は37に記載の方法。
【0112】
実施形態39
前記充填するステップが、前記正立配置設定とした前記マルチポジション支持体で前記細胞培養装置を支持した状態で前記細胞培養装置を充填するステップを含む、実施形態36に記載の方法。
【0113】
実施形態40
前記境界部を中心に前記マルチポジション支持体を回動させることにより、前記マルチポジション支持体を用いて前記細胞培養装置を傾転させるステップをさらに含む、実施形態37に記載の方法。
【0114】
実施形態41
前記マルチポジション支持体を前記傾転配置設定及び前記正立配置設定のうちの一方から他方に変更するステップが、前記マルチポジション支持体に取り付けられたアクチュエータを動かすステップを含む、実施形態36~40のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0115】
10、210 細胞培養装置
12、14、16、212、214、216 細胞培養モジュール
18、1030 細胞培養チャンバ
20、220 第1のマニホールド(流体マニホールド)
22、222 第2のマニホールド(エアマニホールド)
24 スタケット層
25 気道スペース
26 細胞培養面
28 膜
30、30’ 側壁基部構造体
31、33、35 スペーサ
32、32’ 柱構造体
34、34’ かかり構造体
40 (細胞培養装置の)側面
42 支持部材
50、250 マルチポジション支持体
52 (マルチポジション支持体の)底部
54 (マルチポジション支持体の)上部
56、58 (マルチポジション支持体の)端部
60、62 (マルチポジション支持体の)側面
64、66 位置タブ
68 (細胞培養装置の)底縁
70 主基部
71、73 凹部
72 主支持面
74、80、84 (マルチポジション支持体の)中間面
75 屈曲部
76、77、82、86 (マルチポジション支持体の)境界部
78 副支持面
79 副基部
88 持ち手部
90、94 支持フランジ
100 (細胞培養装置の)後部
102 (細胞培養装置の)前部
110 (細胞培養装置の)後角隅部
112 (細胞培養装置の)角隅部
114 (細胞培養装置の)底部
116 (細胞培養装置の)上部
200 細胞培養システム
300 アクチュエータ
301 ピストン
302 第1の充填センサ
303 第1の充填水位
304 第2の充填センサ
305 第2の充填水位
307 第3の充填水位
310 (細胞培養システムの)充填ポート
312 (細胞培養システムの)排気ポート
314 入口バルブ
316 出口バルブ
318 流量制御センサ
400 平面
1000 細胞培養容器(細胞培養装置)
1010 (細胞培養容器の)底面
1011、1013、1015、1017 (細胞培養容器の)側壁(側面)
1020 (細胞培養容器の)上面
1035 培養底面(チャンバ底部)
1040 充填柱
1045 (細胞培養容器の)充填ポート(アクセスポート)
1050 排気柱
1055 (細胞培養容器の)排気ポート(アクセスポート)
1060 第1の充填姿勢
1070 第2の充填姿勢
1080 インキュベーション姿勢(インキュベーションポジション)
1090 作業面
図1
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図3
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【国際調査報告】