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特表2023-536479耐熱添加剤を含む架橋性シリコーンエラストマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】耐熱添加剤を含む架橋性シリコーンエラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20230818BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20230818BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20230818BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20230818BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20230818BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K5/101
C08L83/05
C08L83/07
C08K3/011
H01B7/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506131
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 FR2021051416
(87)【国際公開番号】W WO2022023675
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】2008042
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール・ギシャール
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・マリベルニー
(72)【発明者】
【氏名】アルノー・ポンセ
【テーマコード(参考)】
4J002
5G309
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP14W
4J002DJ017
4J002EG046
4J002FD017
4J002FD066
4J002GQ01
5G309RA11
5G309RA12
(57)【要約】
本発明は、耐熱添加剤を含有する架橋性シリコーンエラストマー組成物に関する。特に、本発明は、ネオデカン酸セリウム(IV)である耐熱性添加剤を含有する架橋性シリコーンエラストマー組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xであって、
ネオデカン酸セリウム(IV)である、少なくとも1つの耐熱性添加剤Dを含み、50~3000ppmwのセリウム(IV)含有量を有する、前記シリコーン組成物X。
【請求項2】
以下をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物:
・1分子あたり2~6個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基を含む、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA;
・任意に、1分子あたり少なくとも2つのヒドロゲノシリル官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンB;
・少なくとも1つの架橋触媒C;及び
・少なくとも1つのフィラーE。
【請求項3】
50~350ppm、好ましくは60~300ppm、好ましくは70~250ppm、さらにより好ましくは90~200ppmのセリウム(IV)の含有量を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
15~35重量%のフィラーE、好ましくはシリカを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
架橋触媒Cが有機過酸化物であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
1分子あたり少なくとも2つのヒドロゲノシリル官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンBを含み、前記架橋触媒Cが重付加触媒から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の架橋性シリコーンエラストマー組成物Xを架橋すること、好ましくは80℃~250℃の温度に加熱することにより得られるシリコーンエラストマー。
【請求項8】
一次絶縁体2の少なくとも1つの層によって囲まれた少なくとも1つの導電性要素1を含む電線又は電気ケーブルであって、一次絶縁体2の前記層が請求項7に記載のシリコーンエラストマーを含むことを特徴とする電線又は電気ケーブル。
【請求項9】
電線又はケーブルの構成に含まれる単一導体の被覆又は一次絶縁体を製造するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の架橋性シリコーンエラストマー組成物Xの使用。
【請求項10】
自動車用ケーブル、特に電気自動車又はハイブリッド車用の自動車用ケーブルを製造するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の架橋性シリコーンエラストマー組成物Xの使用。
【請求項11】
以下のステップを含むことを特徴とする、請求項8に記載の電線又は電気ケーブルの製造方法:
i.導電体1の周囲に、請求項1~6のいずれか1項に記載のシリコーン組成物Xを、好ましくは80℃~250℃の温度に加熱することによって架橋することで得られる材料からなる一次絶縁体2の少なくとも1つの層を形成すること、
ii.任意に、ステップiで得られた少なくとも2つの絶縁された導電体を組み立てること、
iii.任意に、ステップi又はiiからの1つ又は複数の絶縁された導電体の周りに上記で定義されたような外側シースを押し出すこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱添加剤を含む架橋性シリコーンエラストマー組成物に関する。特に、本発明は、ネオデカン酸セリウム(IV)である耐熱性添加剤を含む架橋性シリコーンエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンエラストマーは、-50℃から200℃までの連続的な使用において、加熱及び冷却に対してかなりの惰性を示すことがよく知られている。化学的、機械的、及び誘電特性のほとんどすべてが、この温度範囲で維持される。
【0003】
しかしながら、シリコーンエラストマーが200℃を超える温度で長期間、例えば数日間使用されると、それらの特性が低下する傾向がある。したがって、それらの組成に適切な耐熱性添加剤を含めることが必要な場合がある。これは、シリコーンエラストマーが、高温に耐えなければならない、電線又はケーブルを火災から保護する構成に含まれる被覆又は一次絶縁体の製造に使用されることを意図している場合にはなおさらである。これは、シリコーンエラストマーが自動車ケーブルの製造に使用されることを意図している場合にも当てはまる。
【0004】
例えば、この熱劣化を止めるために抗酸化化合物を使用することが知られている。これらの抗酸化剤には、主に非金属(硫黄、リン、アミン系など)、又は無機金属若しくは有機金属の2種類がある。
【0005】
米国特許第8084529号は、0.001~10重量%の酸化セリウム粉末を含有するシリコーン組成物を開示している。酸化セリウムの添加は、架橋後に得られるエラストマーの熱安定性を改善することを可能にする。
【0006】
英国特許出願公開第1251305号は、少なくとも3重量%のヒュームド二酸化チタンをエラストマー系組成物に配合することを提案しており、232℃と315℃の温度でそれぞれ16時間と24時間保持されたエラストマーの挙動(圧縮と復元に対する抵抗)の改善を報告している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、使用される抗酸化剤は、容易に着色することができる透明なシリコーンエラストマーを常に得ることを可能にするわけではない。さらに、抗酸化剤を架橋シリコーンエラストマー組成物に添加できるように、溶媒中で抗酸化剤を配合する必要がある場合があり、これによりシリコーン組成物の配合が複雑になる。シリコーン組成物中の抗酸化剤の存在が架橋速度を遅くする可能性もある。
【0008】
これに関連して、本発明は、以下の目的の少なくとも1つを満たすことを意図している。
【0009】
本発明の本質的な目的の1つは、熱的に安定なシリコーンエラストマーを得ることを可能にする架橋性シリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0010】
本発明の本質的な目的の1つは、優れた機械的特性と耐熱性を備え、例えば、数日間250℃以上に耐えることができるシリコーンエラストマーを得ることを可能にする架橋性シリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0011】
本発明の本質的な目的の1つは、繰り返し及び/又は長時間熱にさらされても、エラストマー特性を保持するシリコーンエラストマーを得ることを可能にする架橋性シリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0012】
本発明の本質的な目的の1つは、熱処理後の良好な伸び特性を維持する、例えば、熱処理後の破断点伸びを150%又は200%より大きく維持するシリコーンエラストマーを得ることを可能にする架橋性シリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0013】
本発明の本質的な目的の1つは、シリコーン組成物への溶解性の問題がなく、また溶剤を使用せずにシリコーン組成物に直接分散させることができる耐熱性添加剤を提供することである。
【0014】
本発明の別の本質的な目的の1つは、透明で、したがって顔料を加えて簡単に着色できるシリコーンエラストマーを得ることを可能にする架橋性シリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0015】
本発明の別の本質的な目的の1つは、シリコーン組成物が多量のフィラー、例えば15重量%を超えるフィラーを含む場合でも透明なシリコーンエラストマーを得ることを可能にする架橋性シリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0016】
本発明の別の本質的な目的の1つは、優れた機械的特性と耐熱性を持ち、架橋速度が遅くならないシリコーンエラストマーを得ることを可能にする架橋性シリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0017】
本発明の別の本質的な目的の1つは、電線又はケーブルの構成に含まれる被覆又は一次絶縁体の製造に使用できる架橋性シリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0018】
本発明の別の本質的な目的の1つは、自動車ケーブルの製造に使用できる架橋性シリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0019】
本発明の本質的な目的の1つは、配合が容易な架橋性シリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらの目的は、とりわけ、以下を含む架橋性シリコーンエラストマー組成物Xに関する本発明によって達成される:
・ネオデカン酸セリウム(IV)である、少なくとも1つの耐熱性添加剤D。
【0021】
ネオデカン酸セリウム(IV)である耐熱性添加剤Dを使用することにより、シリコーン組成物Xが15重量%を超えるフィラーEを含むとき、又はセリウム含有量が高いときであっても、シリコーンエラストマーの透明性を維持しながら、シリコーンエラストマーの熱安定性を向上させることができる。
【0022】
実際、非常に驚くべきことに、得られるエラストマーは熱的に安定している。それは、許容できるエラストマー特性を持ち、300℃で3日間、275℃で7日間、又は250℃で21日間処理しても脆くならない。硬度、弾性、破断強度、破断点伸び、及び100%での弾性率は、完全に許容範囲内、すなわちエラストマーの意図した使用を可能にする範囲内にとどまった。
【0023】
さらに、得られたエラストマーは、例えば200℃で3000時間の長時間の熱処理後でも熱的に安定している。この長期熱処理は、自動車用ケーブルで実施された試験に相当する(規格ISO6722を参照)。従って、自動車用ケーブル、特に電気自動車又はハイブリッド車用の自動車用ケーブルを製造するために、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xを使用することが可能である。
【0024】
さらに、ネオデカン酸セリウム(IV)は常温で液体なので、取り扱いや混合が容易である。無溶剤でそのままシリコーン組成物に添加することが可能である。したがって、シリコーン組成物の配合が容易である。
【0025】
さらに、シリコーン組成物Xは、良好な機械的特性を有するシリコーンエラストマーを得ることを可能にし、ネオデカン酸セリウム(IV)の使用は架橋動力学に影響を及ぼさない。
【0026】
本発明はまた、組成物Xの架橋により、好ましくは80℃~250℃の温度に加熱することにより得られるシリコーンエラストマーにも関する。
【0027】
本発明はまた、一次絶縁体2の少なくとも1つの層によって取り囲まれた少なくとも1つの導電性要素1を含む電線又は電気ケーブルに関し、一次絶縁体2の前記層は、組成物Xの架橋によって得られるシリコーンエラストマーを含むことを特徴とする。
【0028】
本発明はまた、電線又はケーブルの構成に含まれる単一導体の被覆又は一次絶縁体を製造するためのシリコーン組成物Xの使用に関する。
【0029】
本発明はまた、自動車用ケーブル、特に電気自動車又はハイブリッド車用の自動車用ケーブルを製造するためのシリコーン組成物Xの使用にも関する。
【0030】
本発明はまた、以下のステップを含む、電線又は電気ケーブルの製造方法に関する:
i.導電体1の周囲に、シリコーン組成物Xを、(好ましくは80℃~250℃の温度に加熱することによって)架橋することによって得られる材料からなる一次絶縁体2の少なくとも1つの層を形成すること、
ii.任意に、ステップiで得られた少なくとも2つの絶縁された導電体を組み立てること、
iii.任意に、ステップi又はiiからの1つ又は複数の絶縁された導電体の周りに上記で定義されたような外側シースを押し出すこと。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
「熱安定性シリコーンエラストマー」とは、特に、本発明の意味において、200℃以上、特に250℃~300℃の温度にさらされ、数日間、特に3日間維持される場合、エラストマー特性を維持し、硬くも脆くもならないシリコーンエラストマーを意味する。したがって、非常に好ましくは、250℃を超える温度、特に275℃~300℃の間の温度に3日以上維持されるエラストマーである。
【0032】
「電線」とは、エネルギー又は情報を伝達するために、電気を伝える役割を果たし、電気を伝導する材料(絶縁シースに囲まれた、単鎖又は多撚線である)からなる電気工学部品を意味する。電線の内部を電線の「導体」と呼ぶ。
【0033】
「コア」又は「シングルコア」は、導体及びその絶縁シースから構成される要素を意味する。
【0034】
「電気ケーブル」とは、エネルギー又は情報を伝達するために、電気を伝える役割を果たし、任意に外部スクリーニングを備えた、電気的に別個の機械的に固体の複数の導体で構成されている電気工学部品を意味する。
【0035】
電気ケーブルは、1つ又は複数の単一導体(一般に銅又はアルミニウム系)からなる。これらの単一導体のそれぞれは、絶縁体に基づく1つ又は複数の同心層からなる被覆又は一次絶縁体によって保護されている。この被覆又はこれらの被覆(複数の単一導体を有するケーブルの場合)の周りに、1つ又は複数の充填要素が設けられ、及び/又は、特にガラス繊維及び/又は鉱物繊維に基づく1つ以上の補強要素が設けられる。そして、1つ以上のシースを含み得る外側シースが一般に存在する。複数の単一導体を有する電気ケーブルの場合、単一導体(それぞれ一次絶縁体を備える)の周りに配置される充填要素及び/又は補強要素は、すべての単一導体の共通の被覆を構成する。
【0036】
本出願において、特に明記しない限り、すべての部数、百分率及びppmは重量を表す。
【0037】
本発明による架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、以下を含む:
・ネオデカン酸セリウム(IV)である、少なくとも1つの耐熱性添加剤D。
【0038】
耐熱性添加剤D
【0039】
耐熱添加剤Dはネオデカン酸セリウム(IV)である。セリウムの酸化度はIVである。ネオデカン酸セリウム(IV)の化学式は、CeC40768である。
【0040】
ネオデカン酸セリウム(IV)の可能な構造式の1つは、以下の通りである:
【0041】
【化1】
【0042】
ネオデカノエートは、式(C10192-の構造異性体の混合物である。好ましくは、ネオデカノエートは、トリアルキルアセテートを含む構造異性体の混合物である(すなわち、カルボニルのα位の炭素は第四級炭素である)。ネオデカノエートの異性体の中では、2,2,3,5-テトラメチルヘキサノエート、2,4-ジメチル-2-イソプロピルペンタノエート、2,5-ジメチル-2-エチルヘキサノエート及び2,2-ジメチルオクタノエートを挙げることができる。
【0043】
ネオデカン酸セリウム(IV)は室温で液体であり、シリコーンに分散可能である。したがって、このものは単体で又は配合されて使用され得る。単体で使用する場合は、シリコーン組成物Xにそのまま添加する。配合する場合は、シリコーン組成物Xに添加する前に、シリコーンオイルやシリコーンゴムに添加してもよい。
【0044】
ネオデカン酸セリウム(IV)はシリコーンによく分散する。シリコーンと直接的に相容性がある。したがって、これをシリコーン組成物に取り入れるために溶媒を使用する必要はない。
【0045】
一実施形態によれば、シリコーン組成物Xは、50~3000ppmw、好ましくは50~1000ppm、好ましくは50~500ppmのセリウム(IV)含有量を有する。
【0046】
好ましくは、シリコーン組成物Xは、50~350ppm、好ましくは60~300ppm、好ましくは70~250ppm、さらに好ましくは90~200ppmのセリウム(IV)含有量を有する。
【0047】
セリウム含有量が50~350ppmであると、特に、275℃で7日間の熱処理後に200%を超える破断点伸びを維持するエラストマーを得ることができる。
【0048】
ネオデカン酸セリウム(IV)は、エラストマー特性を保持し、200℃を超える温度、特に250℃~300℃の温度に数日間、特に3日間維持されても、硬くも脆くもならない、熱的に安定したエラストマーを得ることを可能にする。特に、ネオデカン酸セリウム(IV)は、300℃で3日間、275℃で7日間、250℃で21日間、又は200℃で3000時間の熱処理後に熱的に安定なエラストマーを得ることを可能にする。
【0049】
さらに、得られるエラストマーは、シリコーン組成物Xが多量のフィラー及び/又は高いセリウム含有量を含む場合でも透明である。そのため、シリコーン組成物Xに顔料を添加することにより、容易に着色することができる。また、変色や透明性の変化がないため、鮮やかな色にすることも可能である。
【0050】
有利には、ネオデカン酸セリウム(IV)は、遊離酸のレベルが5%未満、好ましくは2.5%未満、好ましくは1.5%未満である。遊離酸のレベルは、遊離の非錯化ネオデカン酸のレベルに対応する。
【0051】
架橋性シリコーンエラストマー組成物X
【0052】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、単一のパッケージ又は複数のパッケージ(単一成分又は多成分)で提供され得る。このものは、耐熱性添加剤Dに加えて、1つ以上のポリオルガノシロキサン成分から形成される主成分、適切な触媒、並びに任意に1つ以上の化合物、好ましくはフィラー、架橋阻害剤、及び顔料から選択されるものを含む。
【0053】
シリコーン組成物Xは、金属触媒の存在下で、有機過酸化物(EVC又はHCR)の作用下において高温で又は室温で(任意に水分の存在下(重付加又は重縮合RTV)又は熱(EVC又は重付加LSR)で)架橋され得る。
【0054】
RTV、LSR、EVC又はHCRという表現は、当業者によく知られている。RTVは、「室温加硫」の略語である。LSRは「液状シリコーンゴム」の略である。HCRは「Heat Cured Rubber」の略で、EVCは「Elastomere Vulcanisable a Chaud」(Heat Vulcanizable Elastomer)の略である。
【0055】
本発明によるシリコーン組成物Xを調製するために、シリコーンエラストマー業界で周知の装置を用いて、様々な成分を密に混合することができる。これらは任意の順序で配合できる。
【0056】
第1の実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、
・有機過酸化物の作用下;又は
・重付加触媒の存在下、室温又は加熱下での重付加反応により
架橋する組成物である。
【0057】
この場合、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、さらに以下を含む:
・1分子あたり2~6個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基を含む、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA;
・任意に、1分子あたり少なくとも2つのヒドロゲノシリル官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンB;
・少なくとも1つの架橋触媒C;及び
・少なくとも1つのフィラーE。
【0058】
一実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、
・1分子あたり2~6個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基を含む、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA;
・任意に、1分子あたり少なくとも2つのヒドロゲノシリル官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンB;
・少なくとも1つの架橋触媒C;
・ネオデカン酸セリウム(IV)である少なくとも1つの耐熱性添加剤D;
・少なくとも1つのフィラーE
を含み、前記シリコーン組成物Xは50~3000ppmwのセリウム(IV)含有量を有する。
【0059】
ポリオルガノシロキサンA
【0060】
有利には、ポリオルガノシロキサンAは、式(I)の単位を含み、任意に式(II)の他の単位を含むポリオルガノシロキサン化合物から選択される:
abSiO(4-(a+b))/2 (I)
式中、
ラジカルZは、同一でも異なっていてもよく、2~6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルケニル基を表し、
ラジカルUは、同一でも異なっていてもよく、1~12個の炭素原子を有する一価のラジカルを表し、
a=1、2、又は3、b=0、1、又は2、a+b=1、2、又は3である;
cSiO(4-c)/2 (II)
式中、Uは上記と同じ意味を持ち、c=0、1、2、又は3である。
【0061】
好ましくは、ラジカルZはビニル基を表す。
【0062】
上記の式(I)及び式(II)において、いくつかの基Uが存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよいことが理解される。式(I)において、記号「a」は、好ましくは1に等しい。一実施形態によれば、式(I)において、a=1又は2、b=1又は2、a+b=2又は3である。一実施形態によれば、式(II)において、c=2又は3である。
【0063】
式(I)及び式(II)において、Uは、1~8個の炭素原子を有するアルキル基(任意に塩素又はフッ素などの少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている)、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択される一価のラジカルを表すことができる。Uは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルからなる群から有利に選択され得る。
【0064】
前記ポリオルガノシロキサンAは、25℃で10~1000000mPa・sのオーダー、一般に25℃で10~70000mPa・sのオーダーの動的粘度を有するオイルであってもよく、又は25℃で1000000mPa・sを超える動的粘度を有するゴムであってもよい。シリコーンオイルとシリコーンゴムは直鎖構造のポリマーである。
【0065】
本書に関連するすべての粘度は、「ニュートン」と呼ばれる25℃での動的粘度、すなわち、測定される粘度がせん断速度勾配とは無関係になるように十分に低いせん断速度勾配で、ブルックフィールド粘度計を用いて、それ自体既知の方法で測定される動的粘度に対応する。
【0066】
これらのポリオルガノシロキサンAは、直鎖状、分岐状又は環状構造を有し得る。それらの重合度は、好ましくは2~5000の間である。
【0067】
ポリオルガノシロキサンAは直鎖構造を有することが好ましい。直鎖状ポリマーの場合、これらは本質的に、シロキシ単位Z2SiO2/2、ZUSiO2/2及びU2SiO2/2からなる群から選択されるシロキシ単位「D」、シロキシ単位ZU2SiO1/2、Z2USiO1/2及びZ3SiO1/2からなる群から選択されるシロキシ単位「M」からなる群から選択される。記号Z及びUは、上記の通りである。
【0068】
末端単位「M」の例として、トリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ又はジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
【0069】
単位「D」の例として、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ、ジフェニルシロキシ、又はメチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0070】
本発明による不飽和化合物Aであり得る直鎖状ポリオルガノシロキサンの例は以下である:
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルフェニルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-コ-ジフェニルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルビニルシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルビニルシロキサン);及び
・環状ポリ(メチルビニルシロキサン)。
【0071】
本発明による不飽和化合物Aであり得る環状ポリオルガノシロキサンは、例えば、以下の式のシロキシ単位「D」からなるものである:Z2SiO2/2、U2SiO2/2又はZUSiO2/2。これらは、ジアルキルシロキシ、アルキルアリールシロキシ、アルキルビニルシロキシ、アルキルシロキシタイプのものであり得る。前記環状ポリオルガノシロキサンは、25℃で10~5000mPa・s程度の粘度を有する。
【0072】
好ましくは、ポリオルガノシロキサン化合物Aは、0.001~30%、好ましくは0.01~10%のSi-ビニル単位の重量含有量を有する。
【0073】
不飽和化合物Aの他の例として、少なくとも1つのビニル基を含むシリコーン樹脂を挙げることができる。例えば、それらは以下のシリコーン樹脂からなる群から選択され得る:
・単位Dにビニル基が含まれるMDViQ、
・単位Dにビニル基が含まれるMDViTQ、
・単位Mの一部にビニル基を含むMMViQ、
・単位Mの一部にビニル基を含むMMViTQ、
・単位M、Dの一部にビニル基を含むMMViDDViQ、
・及びそれらの混合物、
ここで、
・MVi=式(R)2(ビニル)SiO1/2のシロキシ単位
・DVi=式(R)(ビニル)SiO2/2のシロキシ単位
・T=式(R)SiO3/2のシロキシ単位
・Q=式SiO4/2のシロキシ単位
・M=式(R)3SiO1/2のシロキシ単位
・D=式(R)2SiO2/2のシロキシ単位
基Rは、同一でも異なっていてもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の炭素数1~8のアルキル基、及びキシリル基、トリル基、フェニル基等のアリール基から選ばれる一価炭化水素基である。好ましくは、基Rはメチルである。
【0074】
もちろん、変形例によれば、ポリオルガノシロキサンAは、ポリオルガノシロキサンAの定義に対応するいくつかのオイル又は樹脂の混合物であってもよい。有利には、ポリオルガノシロキサンAは樹脂を含まない。
【0075】
一実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、シリコーン組成物Xの総重量に対して、55~85重量%、好ましくは60~80%のポリオルガノシロキサンAを含む。
【0076】
シリコーン組成物Xが室温での重付加反応により架橋する場合(重付加RTV)、アルケニル基を有するポリオルガノシロキサンAは、25℃で最大50000mPa・s、好ましくは200~10000mPa・sの粘度を有することが有利である。熱重付加(重付加LSR)の反応により架橋するシリコーン組成物Xの場合、アルケニル基を有するポリオルガノシロキサンAは、有利には、25℃で1000mPa・sを超える、好ましくは5000Pa・sを超え300000Pa・sまでの範囲の粘度を有する。熱重付加(重付加EVC)の反応により架橋する組成物Xの場合、有利には、アルケニル基を有するポリオルガノシロキサンAは、25℃で300000mPa・sを超える、好ましくは100万mPa・s~3000万mPa・s又はそれ以上の粘度を有する。
【0077】
ポリオルガノシロキサンB
【0078】
特定の場合において、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、1分子あたり少なくとも2つのヒドロゲノシリル官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンBを含む。一実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、1分子あたり少なくとも2つのヒドロゲノシリル官能基Si-Hを含むポリオルガノシロキサンBと、重付加触媒から選択される架橋触媒Cとを含む。
【0079】
化合物Bは、1分子当たり少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのヒドロゲノシリル官能基(Si-H)を含むオルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物である。
【0080】
オルガノヒドロゲノポリシロキサンBは、有利には、式(III)の少なくとも1つの単位を含み、任意に式(IV)の他の単位を含むポリオルガノシロキサンであり得る:
deSiO(4-(d+e))/2 (III)
式中、
ラジカルUは、同一でも異なっていてもよく、1~12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、d=1又は2、e=0、1又は2、d+e=1、2又は3である;
fSiO(4-f)/2 (IV)
式中、Uは上記と同じ意味を持ち、f=0、1、2、又は3である。
【0081】
上記の式(III)及び式(IV)において、いくつかの基Uが存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいことが理解される。式(III)において、記号dは、好ましくは1に等しい。さらに、式(III)及び式(IV)において、Uは、1~8個の炭素原子を有するアルキル基(任意に塩素又はフッ素などの少なくとも1つのハロゲン原子で置換されている)、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択される一価のラジカルを表すことができる。Uは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルからなる群から有利に選択され得る。
【0082】
これらのポリオルガノシロキサンBは、直鎖状、分岐状又は環状構造を有し得る。重合度は、好ましくは2以上である。一般に、それは5000未満である。
【0083】
直鎖状ポリマーの場合、これらは本質的に以下のものからなる:
・以下の式:U2SiO2/2又はUHSiO2/2の単位から選択されるシロキシ単位「D」;及び
・下の式:U3SiO1/2又はU2HSiO1/2の単位から選択されるシロキシ単位「M」。
【0084】
直鎖状ポリオルガノシロキサンは、25℃で1~100000mPa・s程度、より一般的には25℃で10~5000mPa・s程度の動的粘度を有する油であり得る。
【0085】
ケイ素原子に結合した少なくとも1個の水素原子を含む、本発明による化合物Bであり得るポリオルガノシロキサンの例は以下である:
・ヒドロゲノジメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルヒドロゲノシロキサン);
・ヒドロゲノジメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-コ-メチルヒドロゲノシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(メチルヒドロゲノシロキサン);及び
・環状ポリ(メチルヒドロゲノシロキサン)。
【0086】
環状ポリオルガノシロキサンの場合、これらは次の式:U2SiO2/2及びUHSiO2/2のシロキシ単位「D」からなり、これは、ジアルキルシロキシ又はアルカリルシロキシ型又は単位UHSiO2/2のみであり得る。それらは、1~5000mPa・s程度の粘度を有する。
【0087】
以下の化合物は、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bとして本発明に特に適している:
【0088】
【化2】
【0089】
式中、a、b、c、d、及びeは以下のように定義される:
・式S1のポリマーにおいて:
0≦a≦150、好ましくは0≦a≦100、より具体的には0≦a≦20、
1≦b≦90、好ましくは10≦b≦80、より具体的には30≦b≦70;
・式S2のポリマーにおいて:0≦c≦15
・式S3のポリマーにおいて:5≦d≦200、好ましくは20≦d≦100、2≦e≦90、好ましくは10≦e≦70。
【0090】
好ましくは、オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、0.2~91重量%のヒドロゲノシリル官能基Si-Hの含有量を有する。オルガノヒドロゲノポリシロキサン化合物Bは、重量で5%以上、好ましくは10%以上のヒドロゲノシリル官能基Si-H含有量を有することができる。例えば、ヒドロゲノシリル官能基Si-Hの重量含有量は、5~40%、又は10~30%である。
【0091】
一実施形態によれば、オルガノヒドロゲノポリシロキサンBは分岐構造を有する樹脂である。オルガノヒドロゲノポリシロキサンBは、以下のシリコーン樹脂からなる群から選択され得る:
・ケイ素原子に結合した水素原子が基Mに保持される、M’Q、
・ケイ素原子に結合した水素原子が単位Mの一部に保持される、MM’Q、
・ケイ素原子に結合した水素原子が基Dに保持される、MD’Q、
・ケイ素原子に結合した水素原子は基Dの一部によって保持される、MDD’Q、
・水素原子が単位Mの一部に含まれる、MM’TQ、
・単位M及びDの一部に水素原子が含まれる、MM’DD’Q、
・及びそれらの混合物;
ここで、
・M、D、T、及びQは上記で定義した通りである
・M’=式R2HSiO1/2のシロキシ単位
・D’=式RHSiO2/2のシロキシ単位、
基Rは、同一でも異なっていてもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の炭素数1~8のアルキル基から選ばれる一価炭化水素基である。好ましくは、基Rはメチルである。
【0092】
好ましくは、オルガノヒドロゲノポリシロキサン樹脂Bは、上記の樹脂M’Q又はMD’Qである。さらにより好ましくは、オルガノヒドロゲノポリシロキサン樹脂Bは樹脂M’Qである。
【0093】
もちろん、変形例によれば、オルガノヒドロゲノポリシロキサンBは、オルガノヒドロゲノポリシロキサンBの定義に対応するいくつかのオイル又は樹脂の混合物であってもよい。有利には、オルガノヒドロゲノポリシロキサンBは樹脂を含まない。
【0094】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、シリコーン組成物Xの総重量に対して、0~10重量%、好ましくは0.5~10重量%のオルガノヒドロゲノポリシロキサンBを含むことができる。
【0095】
有利には、化合物Aのアルケン官能基に対する化合物Bのヒドロゲノシリル官能基Si-Hのモル比は、0.02~5、好ましくは0.1~4、より好ましくは0.5~3である。
【0096】
架橋触媒C
【0097】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、架橋触媒Cを含む。
【0098】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、シリコーン組成物Xの総重量に対して、0.1~2重量%の架橋触媒Cを含むことができる。
【0099】
第1の実施形態によれば、架橋触媒Cは有機過酸化物である。
【0100】
有機過酸化物は、シリコーンエラストマーを形成する組成物に対して加硫剤として作用するもののうちの任意の1つであり得る。したがって、それはシリコーンエラストマーとの使用が知られている過酸化物又はペルエステルのいずれか、例えば、ジ-t-ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルアセテート、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジペルベンゾエート及びビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5ジメチル-2,5ヘキサン、過酸化モノクロロベンゾイル、過酸化2,4-ジクロロベンゾイル、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、過酢酸t-ブチル、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、過安息香酸t-ブチル、ペルオキシt-ブチルとイソプロピルのカーボネート、及びビス(t-ブチルペルオキシ)-1,1-トリメチル-3,3,5シクロヘキサンであり得る。
【0101】
一実施形態によれば、有機過酸化物は、過酸化ベンゾイル、過酸化2,4-ジクロロベンゾイル、過酢酸t-ブチル、過酸化ジクミル、及びそれらの混合物から選択される。
【0102】
好ましくは、有機過酸化物は、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0103】
一般に、有機過酸化物がシリコーン組成物X中に存在する場合、有機過酸化物の量は、シリコーン組成物X100重量部当たり、0.05~10重量部、好ましくは0.5~2重量部である。
【0104】
押出しによる電気ケーブル又はワイヤの製造では、過酸化物の選択は、実際にはエラストマーの硬化に使用される方法(加硫方法)に依存する。加硫方法が圧力なしで機能する場合(例えば、熱風及び/又は(赤外線)放射炉)、使用される過酸化物は好ましくは過酸化モノクロロベンゾイル及び/又は過酸化2,4-ジクロロベンゾイルである。加硫方法が圧力の存在下で機能する場合(例えば蒸気管)、使用される過酸化物は好ましくはビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンである。
【0105】
第2の実施形態によれば、触媒Cはヒドロシリル化反応触媒である。この場合、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、1分子あたり少なくとも2つのヒドロゲノシリル官能基Si-H、好ましくは少なくとも3つのヒドロゲノシリル官能基Si-Hを含む、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンBを含む。
【0106】
ヒドロシリル化反応触媒はよく知られている。白金及びロジウムの化合物が好ましく使用される。特に、白金錯体と有機生成物との錯体(米国特許第3,159,601号、米国特許第3,159,602号、米国特許第3,220,972号、及び欧州特許出願公開第0057459号、第0188978号、第0190530号に記載されている)、白金とビニルオルガノシロキサンとの錯体(米国特許第3,419,593号、米国特許第3,715,334号、米国特許第3,377,432号及び米国特許第3,814,730号に記載されている)を使用することが可能である。一般に好ましい触媒は白金である。この場合、白金金属の重量として計算される触媒Cの重量による量は、ポリオルガノシロキサンAの総重量に基づいて、一般に2~400ppm、好ましくは5~200ppmである。Cは白金触媒、例えばカルシュテット(Karstedt)触媒であってもよい。
【0107】
フィラーE
【0108】
架橋性シリコーン組成物Xは、フィラーEを含む。フィラーEは、良好なエラストマー特性を維持しながら、架橋の最後に得られるシリコーンエラストマー物品の機械的特性を改善することを可能にする。特に、フィラーEは、高い破断伸びを維持しながら、得られるシリコーンエラストマー物品の破断係数を改善することを可能にする。
【0109】
一実施形態によれば、シリコーン組成物Xは、15~35重量%のフィラーEを含む。有利には、シリコーン組成物Xは、20~30重量%のフィラーEを含む。
【0110】
場合により提供されるフィラーEは、好ましくは鉱物である。フィラーEは、平均粒径が0.1μm未満の非常に微細な製品であってもよい。フィラーEは、特にシリカ質であり得る。シリカ質材料の場合、それらは補強又は半補強フィラーの役割を果たすことができる。強化シリカ質フィラーは、コロイドシリカ、ヒュームド及び沈降シリカの粉末、又はそれらの混合物から選択される。これらの粉末は、一般に0.1μm(マイクロメートル)未満の平均粒径と、30m2/gを超える、好ましくは30~350m2/gのBET比表面積を有する。珪藻土又は粉砕された石英などの半強化珪質フィラーも使用することができる。これらのシリカは、そのまま配合してもよいし、通常この目的で使用される有機ケイ素化合物で処理して配合してもよい。これらの化合物は、メチルポリシロキサン(ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、メチルポリシラザン(ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、テトラメチルジビニルジシラザンなど)、クロロシラン(ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシランなど)、アルコキシシラン(ジメチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシランなど)、及びそれらの混合物である。非シリカ質鉱物材料に関しては、半補強又は充填鉱物フィラーとして使用することができる。単独で又は混合して使用できるこれらの非ケイ質フィラーの例は、炭酸カルシウム(任意に有機酸又は有機酸のエステルで表面処理される)、焼成粘土、ルチル型の二酸化チタン、鉄、亜鉛、クロム、ジルコニウム、又はマグネシウムの酸化物、さまざまな形態のアルミナ(水和又は非水和)、窒化ホウ素、リトポン、メタホウ酸バリウム、硫酸バリウム、ガラスマイクロビーズである。これらのフィラーはより粗く、一般に平均粒径が0.1μmを超え、比表面積が一般に30m2/g未満である。これらのフィラーは、この目的で通常使用されるさまざまな有機ケイ素化合物で処理することによって表面改質され得る。
【0111】
好ましくは、フィラーEはシリカであり、さらにより好ましくはヒュームドシリカである。有利には、シリカは75~410m2/gのBET比表面積を有する。
【0112】
一実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、
・1分子あたり2~6個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基を含む、55~85重量%、好ましくは60~80重量%の少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA;
・1分子あたり少なくとも2つのヒドロゲノシリル官能基Si-Hを含む、0~10重量%、好ましくは0.5~10%の少なくとも1つのポリオルガノシロキサンB;
・0.1~2重量%の少なくとも1つの架橋触媒C;
・ネオデカン酸セリウム(IV)である、少なくとも1つの耐熱性添加剤D;及び
・15~35重量%の少なくとも1つのフィラーE、
を含み、前記シリコーン組成物Xは50~3000ppmwのセリウム(IV)含有量を有する。
【0113】
その他の添加剤
【0114】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xはまた、架橋阻害剤Fを含むことができる。後者は、一般に、すぐに使用できる組成物に特定のポットライフを与えるために使用される。これらの架橋阻害剤は、特に、シリコーンコーティングの前駆体シリコーン組成物Xが重付加又は脱水素によって架橋可能なポリオルガノシロキサンであり、使用される触媒Cが白金系である場合に存在する。架橋阻害剤Fは、好ましくは、アセチレンアルコール(エチニルシクロヘキサノール:ECH)、マレイン酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、マレイン酸ジアルキル(マレイン酸ジエチル又はジアルキルアルキニルジカルボキシレート)(ジエチルアセチレンジカルボキシレート)、又はポリオルガノシロキサン(有利には環状であり、少なくとも1つのアルケニルで置換されており、テトラメチルビニルシクロテトラシロキサンが特に好ましい)、又はアルキル化マレエートから選択される。アセチレンアルコールは、本発明による有用な遅延剤である。例として以下が挙げられる:
1-エチニル-1-シクロヘキサノール;
メチル-3ドデシン-1-オール-3;
トリメチル-3,7,11-ドデシン-1オール-3;
ジフェニル-1,1-プロピン-2オール-1
エチル-3-エチル-6-ノニン-1-オール-3;
メチル-3-ペンタデシン-1オール-3。
【0115】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xはまた、顔料Gを含むことができる。顔料Gは、有機顔料又は無機顔料(鉱物顔料)であってもよい。
【0116】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xはまた、可塑剤Hを含むことができる。可塑剤Hは一般にオルガノケイ酸の性質を有し、ポリオルガノシロキサンAの100部当たり0~20部の割合でシリコーン組成物に添加される。それらは貯蔵中の組成物の硬化を防止することを可能にする。可塑剤の中では、加水分解性基を有するシラン、又は低分子量のヒドロキシル化又はアルコキシル化ジオルガノポリシロキサンオイルを挙げることができる。このような組成物は、例えば仏国特許第1111969号に記載されている。
【0117】
特定の実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、以下からなる:
・1分子あたり2~6個の炭素原子を有する少なくとも2つのアルケニル基を含む、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA;
・任意に、1分子あたり少なくとも2つのヒドロゲノシリル官能基Si-Hを含む少なくとも1つのポリオルガノシロキサンB;
・少なくとも1つの架橋触媒C;
・ネオデカン酸セリウム(IV)である少なくとも1つの耐熱性添加剤D;
・少なくとも1つのフィラーE;
・任意に、少なくとも1つの架橋阻害剤F、
・任意に、少なくとも1つの顔料G;及び
・任意に、少なくとも1つの可塑剤H。
【0118】
特定の実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、接着促進剤を含まない。
【0119】
特定の実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、シリコーン樹脂を含まず、特に、少なくとも1つのアルケニルラジカルを含むシリコーン樹脂を含まない。
【0120】
第2の実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、湿気の存在下、室温で金属触媒の存在下で架橋性である(重縮合RTV)。
【0121】
この第2の実施形態では、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xはさらに以下を含む:
・重縮合により架橋可能な少なくとも1つのポリオルガノシロキサンA’;
・少なくとも1つの架橋性有機ケイ素化合物B’;
・少なくとも1つの触媒C’;
・少なくとも1つのフィラーE;及び
・任意に、顔料G。
【0122】
ポリオルガノシロキサンA’は直鎖状でも分岐状でもよく、ヒドロキシル基、又は、アルコキシ、アルコキシ-アルキレン-オキシ、アミノ、アミド、アシルアミノ、アミノキシ、イミノキシ、ケチミノキシ、アシルオキシ及びエノキシ、好ましくはアルコキシからなる群から選択される加水分解性基を有し、湿気の作用下で、重縮合反応により室温で架橋する。
【0123】
アルコキシ型の加水分解性、縮合性基Zの例として、1~8個の炭素原子を有する基(メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、2-メトキシエトキシ、ヘキシルオキシ又はオクチルオキシ基など。)を挙げることができる。
【0124】
アルコキシ-アルキレン-オキシ型の加水分解性、縮合性基Zの例として、メトキシ-エチレン-オキシ基を挙げることができる。
【0125】
アミノ型の加水分解性、縮合性基Zの例として、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、n-ブチルアミノ、s-ブチルアミノ又はシクロヘキシルアミノ基を挙げることができる。
【0126】
アミド型の加水分解性、縮合性基Zの例として、N-メチル-アセトアミド基を挙げることができる。
【0127】
アシルアミノ型の加水分解性、縮合性基Zの例として、ベンゾイルアミノ基を挙げることができる。
【0128】
アミノキシ型の加水分解性、縮合性基Zの例として、ジメチルアミノキシ、ジエチルアミノキシ、ジオクチルアミノキシ又はジフェニルアミノキシ基を挙げることができる。
【0129】
イミノキシ、特にケチミノキシタイプの加水分解性、縮合性基Zの例として、以下のオキシムから誘導される基を挙げることができる:アセトフェノンオキシム、アセトンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジイソプロピル-ケトキシム又はメチルイソブチル-ケトキシム。
【0130】
アシルオキシ型の加水分解性、縮合性基Zの例として、アセトキシ基を挙げることができる。
【0131】
エノキシ型の加水分解性、縮合性基Zの例として、2-プロペンオキシ基を挙げることができる。
【0132】
ポリオルガノシロキサンA’は、1分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基又はアルコキシ基を有し、25℃での動的粘度が50mPa・s~50×106mPa・s、シリコーンオイルの場合は好ましくは50mPa・s~106mPa・s、シリコーンゴムの場合は好ましくは106mPa・s超である直鎖状ポリジオルガノシロキサンであり得る。
【0133】
ポリオルガノシロキサンA’の構造中に一般に存在する同一又は異なる有機基は、メチル、エチル、フェニル又はトリフルオロプロピル基である。好ましくは、前記有機基の数で少なくとも80%が、ケイ素原子に直接結合したメチル基である。本発明の文脈において、α,ω-ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ポリジメチルシロキサン及びα,ω-ビス(ジメチルアルコキシシリル)ポリジメチルシロキサンがより特に好ましい。
【0134】
一実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、シリコーン組成物Xの総重量に対して、40~90重量%、好ましくは50~80%のポリオルガノシロキサンA’を含む。
【0135】
触媒C’は、重縮合反応の触媒である。重縮合触媒は、当業者によく知られている。限定することを意図しないが、触媒C’は、とりわけ、当業者によく知られているような、スズ又はチタンに基づく化合物から、又は欧州特許出願公開第2268743号及び第2367867号に記載されているグアニジンなどの有機触媒から、又は、欧州特許出願公開第2222626号、第2222756号、第2222773号、第2935489号、第2935490号及び国際公開第2015/082837号に記載されている、例えばZn、Mo、Mgなどに基づく金属錯体から選択することができる。
【0136】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、シリコーン組成物Xの総重量に対して、0.1~2重量%の触媒C’を含むことができる。
【0137】
架橋剤B’は、好ましくは、1分子当たり、ケイ素原子に結合した2つより多くの加水分解性基を有する有機ケイ素化合物である。この種の架橋剤は当業者によく知られており、市販されている。
【0138】
架橋剤B’は、好ましくはケイ素化合物であり、その各分子は、以下からなる群から選択される少なくとも3つの加水分解性、縮合性基を含む:アルコキシ、アルコキシ-アルキレン-オキシ、アミノ、アミド、アシルアミノ、アミノキシ、イミノキシ、ケチミノキシ、アシルオキシ及びエノキシ、好ましくはアルコキシ。これらの基は、上記で定義された通りである。
【0139】
架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、シリコーン組成物Xの総重量に対して、1~20重量%、好ましくは2~15%の架橋性有機ケイ素化合物B’を含むことができる。
【0140】
フィラーE及び顔料Gは、上記で定義した通りである。
【0141】
一実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、シリコーン組成物Xの総重量に対して、10~40重量%、好ましくは15~35重量%のフィラーEを含む。
【0142】
一実施形態によれば、架橋性シリコーンエラストマー組成物Xは、
・40~90重量%、好ましくは50~80重量%、重縮合によって架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA’、
・1~20重量%、好ましくは2~15重量%の、少なくとも1つの架橋性有機ケイ素化合物B’、
・0.1~2重量%の少なくとも1つの触媒C’;
・ネオデカン酸セリウム(IV)である、少なくとも1つの耐熱性添加剤D;及び
・10~40重量%、好ましくは15~35重量%の少なくとも1つのフィラーE、
を含み、前記シリコーン組成物Xは50~3000ppmwのセリウム(IV)含有量を有する。
【0143】
シリコーンエラストマー
【0144】
本発明はまた、室温で、任意に水分の存在下で、又は加熱することにより、組成物Xを架橋することによって得られるシリコーンエラストマーにも関する。加熱は、好ましくは80℃~250℃の間の温度で実施される。加熱時間は、温度によって異なるが、任意に加えられる圧力によっても異なる。一実施形態によれば、加熱は以下のように行われる:
・100~120℃で数秒から数分間、
・180~200℃で数秒間。
【0145】
シリコーン組成物Xは、300℃で3日間、275℃で7日間、又は250℃で21日間の熱処理後に熱的に安定なエラストマーを得ることを可能にする。したがって、得られたエラストマーは非常に良好な熱安定性を有し、電線又はケーブルの構成に含まれる単一導体の被覆又は一次絶縁体の作製に使用することができる。
【0146】
したがって、本発明はまた、一次絶縁体2の少なくとも1つの層によって取り囲まれた少なくとも1つの導電性要素1を含む電線又は電気ケーブルであって、一次絶縁体2の前記層が、シリコーン組成物Xを架橋することによって得られるシリコーンエラストマーを含むことを特徴とする電線又は電気ケーブルに関する。
【0147】
本発明はまた、自動車用ケーブル、特に電気自動車又はハイブリッド車用の自動車用ケーブルを製造するためのシリコーン組成物Xの使用にも関する。
【0148】
本発明はまた、電線又はケーブルの構成に含まれる単一導体の被覆又は一次絶縁体を製造するためのシリコーン組成物Xの使用に関する。
【0149】
本発明はまた、以下のステップを含む、電線又は電気ケーブルの製造方法に関する:
i.導電体1の周囲に、シリコーン組成物Xを、好ましくは80℃~250℃の温度に加熱することによって架橋することで得られる材料からなる一次絶縁体2の少なくとも1つの層を形成すること、
ii.任意に、ステップiで得られた少なくとも2つの絶縁された導電体を組み立てること、
iii.任意に、ステップi又はiiからの1つ又は複数の絶縁された導電体の周りに上記で定義されたような外側シースを押し出すこと。
【0150】
この方法に関連して、導電体1の周囲の一次絶縁体2の少なくとも1つの層の形成は、通常の方法、特に押出法によって、導電体1の周囲にシリコーン組成物Xを堆積させることによって実行され得る。このようにして得られた堆積物は、好ましくは加熱によって架橋され、シリコーンエラストマーの一次絶縁体が形成される。加熱時間は、もちろん、材料の温度と任意選択の作業圧力によって異なる。通常、100~120℃では数秒~数分程度、180~200℃では数秒程度である。例えばクロスヘッドを備えたタンデム押出を使用して、又は共押出によって、いくつかの層を一緒に堆積させることが可能である。
【0151】
本発明による電線又はケーブルは、絶縁された導電体又は複数の導電体を取り囲む外側シースをさらに含むことができる。この外側シースは、当業者によく知られている。これは、局所的に完全に燃焼し、火災の高温の影響下で残留灰に変化する可能性があるが、火が広がることはない。外側シースを構成する材料は、例えば、ポリオレフィン系のポリマーマトリックス、及び例えば二水酸化マグネシウム又は三水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物から特に選択される少なくとも1つの水和耐火鉱物フィラーであり得る。外側シースは、従来通り押出しによって得られる。
【0152】
好ましい実施形態によれば、本発明による電線又は電気ケーブルは、一次絶縁体2の層が、前記シリコーン組成物Xが硬化するまで、80℃~250℃の範囲の材料温度が得られるように、押出技術及び加熱手段によって、導電性要素1の周りに前記シリコーン組成物Xを堆積させることによって形成されることを特徴とする。
【0153】
以下の実施例は、説明の目的で与えられ、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【実施例
【0154】
耐熱添加剤
【0155】
ネオデカン酸セリウム
【0156】
欧州特許出願公開第0575189号に記載の手順に従って、ネオデカン酸セリウム(IV)を合成した。
ネオデカン酸セリウム(IV)は液体である。これは、単体の状態(添加剤1)又は配合された状態(添加剤2及び3)で使用できる。
【0157】
添加剤1:添加剤1中のセリウムの割合は16.6重量%である。
【0158】
添加剤2:ニーダーで配合されたネオデカン酸セリウム(IV)
ニーダー内に、ビニル基を720ppm有し、25℃における粘度が2000万mPa・sのポリ(ジメチル)(メチルビニル)シロキサンゴム56.6重量%を、235m2/gのBET比表面積を有するオクタメチルシクロテトラシロキサンで処理されたヒュームドシリカ5.6重量%と混合し、次に、ネオデカン酸セリウム(IV)を37.8重量%添加した。混合物を室温で10分間混合した。
【0159】
添加剤3:ロール上で配合されたネオデカン酸セリウム(IV)
2本のロールを使用した装置で、ビニル基を720ppm有し、25℃における粘度が2000万mPa・sのポリ(ジメチル)(メチルビニル)シロキサンゴム56.6重量%を、235m2/gのBET比表面積を有するオクタメチルシクロテトラシロキサンで処理されたヒュームドシリカ5.6重量%と混合し、次に、ネオデカン酸セリウム(IV)を37.8重量%添加した。混合物を室温で10分間混合した。
【0160】
添加剤2及び3は、添加剤の総重量に対して0.063重量%のセリウムの割合を有する。
【0161】
添加剤4
【0162】
添加剤4は、シリコーンゴム中のTiO2及びFe23に基づく添加剤である。鉄含有量は0.7~2.1重量%である。TiO2含有量は94重量%を超える。
【0163】
添加剤5
【0164】
添加剤5は、Sigma Aldrichから購入した酸化セリウムである。
【0165】
添加剤6
【0166】
添加剤6は、Sigma Aldrichから購入したオクタン酸セリウム(III)である。
【0167】
添加剤7
【0168】
添加剤7は、シリコーンゴム中の鉄(III)エチル-2-ヘキサノエートに基づく酸化防止剤である。鉄含有量は0.78重量%である。
【0169】
組成物HCR1:
【0170】
ベースA:
・25℃で2000万mPa・sの粘度及び100~800ppmのビニル割合を有するビニル化ポリオルガノシロキサンの混合物67.8重量%、
・2つのヒドロキシル単位を有するポリジメチルシロキサンオイル1.8重量%、及び
・235m2/gのBET比表面積を有する、オクタメチルシクロテトラシロキサンで処理されたヒュームドシリカ30.4重量%。
次に、Akzo NobelからのPERKADOX PD-50S-PSの参照名で販売されている過酸化2,4-ジクロロベンゾイル1.25%と耐熱性添加剤を、このベースAの100部に添加した。
【0171】
組成物HCR2:
ベースA:
・25℃で2000万mPa・sの粘度及び100~800ppmのビニル割合を有するビニル化ポリオルガノシロキサンの混合物68.0重量%、
・2つのヒドロキシル単位を有するポリジメチルシロキサンオイル1.70重量%、及び
・235m2/gのBET比表面積を有する、オクタメチルシクロテトラシロキサンで処理されたヒュームドシリカ30.30重量%。
次に、Akzo NobelからのPERKADOX PD-50S-PSの参照名で販売されている過酸化2,4-ジクロロベンゾイル1.25重量%と耐熱性添加剤を、このベースAの100部に添加した。
組成物LSR:
ミキサーに以下を投入した:
・各末端がMe2ViSiO1/2単位でブロックされた、粘度60000mPa・sのジメチルポリシロキサンオイル29部、
・各末端がMe2ViSiO1/2単位でブロックされた、粘度が100000mPa・sのジメチルポリシロキサンオイル29部、
・300m2/gのBET比表面積を有するヒュームドシリカ26部及びヘキサメチルジシラザン7部。
混合物を攪拌しながら70℃で1時間加熱し、揮発分を除去し、冷却し、ベース1として保存した。
次に、高速ミキサーで、このベース1の45部に次のものを添加した:
・白金は、10重量%の白金金属の有機金属錯体(カルシュテット触媒という名前で知られる)の形で導入され、ビニル化油で希釈される、
・鎖中及び鎖末端にビニル基を有し、粘度が1000mPa・sのジメチルポリシロキサンオイル3部、
・鎖中及び鎖末端にビニル基を有し、粘度が400mPa・sのジメチルポリシロキサン油2部。
この組成物LSRのパートAを、高速ミキサーで毎分1000回転で1分間混合した。Ptの割合は10ppmである。
次に、高速ミキサーで、このベース1の45部に次のものを添加した:
・Si-H基を含むオルガノヒドロゲノポリシロキサン樹脂M’Q1.3部、
・鎖中及び鎖末端にSi-H基を含み、約20重量%のSi-H基を含む直鎖オルガノヒドロゲノポリシロキサン0.5部、
・鎖中及び鎖末端にビニル基を含み、粘度が400mPa・sのジメチルポリシロキサンオイル1.5部、
・鎖中及び鎖末端にビニル基を有し、粘度が1000mPa・sのジメチルポリシロキサンオイル1.6部、
・反応抑制剤として0.08部のエチニル-1-シクロヘキサノール-1。
この組成物LSRのパートBを、高速ミキサーで毎分1000回転で1分間混合した。
次に、高速ミキサーを使用して、同量の耐熱性添加剤をパートAとBに添加した。次に、パートAとBを1:1の比率で混合した。
【0172】
シリコーン組成物の架橋後に得られるエラストマーの機械的特性
【0173】
試験プレート(150mm×150mm×2mm)は、4個取り金型内で、加圧下、115℃で8分間作製された。
【0174】
換気ストーブ内で200℃で4時間の後硬化工程の後、プレートは、換気ストーブ内で時間と温度の異なる条件で熱酸化エージングを受けた。以下に示す例で詳述する。
【0175】
機械的特性は、この場合では硬度ショアA(ISO868、DIN53505)、破断強度(ISO37、DIN53504-51)、破断点伸び(ISO37、DIN53504-51)、及び引裂抵抗(ASTMD624A)を、この方法でエージングされたすべてのプレートについて測定し、200℃で4時間硬化後の最初のプレートで測定した機械的特性と比較した。
【0176】
種々の耐熱性添加剤を試験した。結果を表1に示す。
【0177】
【表1】
【0178】
これらの結果は、ネオデカン酸セリウム(IV)(例1)が、酸化セリウム(添加剤5)、オクタン酸セリウム(III)(添加剤6)及び鉄(III)エチル-2-ヘキサノエート(添加剤7)(比較例2~4)よりも良好な機械的特性及び良好な熱安定性を得ることを可能にすることを示している。さらに、ネオデカン酸セリウム(IV)で得られた機械的特性は、TiO2(添加剤4、比較例1)で得られたものに匹敵する。しかし、ネオデカン酸セリウム(IV)を用いて得られたプレートは透明であり、TiO2を用いて得られたプレート(添加物4、比較例1)とは対照的である。
【0179】
したがって、本発明による組成物は、良好な機械的特性及び良好な熱安定性を有する透明なシリコーンエラストマーを得ることを可能にする。
【0180】
様々な濃度のネオデカン酸セリウム(IV)を試験した。結果を表2に示す。
【0181】
【表2】
【0182】
これらの結果は、ネオデカン酸セリウム(IV)の広範囲の濃度にわたって良好な機械的特性及び良好な熱安定性が得られることを示している。
【0183】
単体、及び配合されたネオデカン酸セリウム(IV)を試験した。結果を表3に示す。
【0184】
【表3】
【0185】
得られた結果が同程度であるので、結果は単体又は配合されたネオデカン酸セリウム(IV)を使用することが可能であることを示している。
【0186】
これらの結果はまた、得られたエラストマーが、250℃で21日間の熱エージングの後でも、その良好な機械的特性、特にエラストマー特性を保持していることを示している。
【0187】
組成物LSRでもネオデカン酸セリウム(IV)を試験した。結果を表4に示す。
【0188】
【表4】
【0189】
これらの結果は、ネオデカン酸セリウム(IV)を使用して、重付加により架橋可能な組成物LSRの熱安定性を高めることも可能であることを示している。さらに、ネオデカン酸セリウム(IV)で得られる機械的特性は良好である。実際、250℃又は275℃で3日間エージングさせた後、ネオデカン酸セリウム(IV)の場合の破断点伸び(例10~12)が、耐熱添加剤なし又は鉄(III)エチル-2-ヘキサン酸(添加剤7)を使用した場合(比較例5~6)よりも大きくなる。試験はまた、300ppmを超えると、組成物LSRの架橋動力学が影響を受け、架橋速度が低下することを示した。
【0190】
自動車ケーブルが試験される条件においても、ネオデカン酸セリウム(IV)を試験した。結果を表5に示す。
【0191】
【表5】
【0192】
これらの結果は、得られたエラストマーが、200℃で3000時間の熱エージング後(これは、自動車用ケーブルの試験に関する規格に対応している(ISO6722-1を参照))でも、良好な機械的特性、特にエラストマー特性を保持していることを示している。
【国際調査報告】