IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイケム株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社模範の特許一覧

特表2023-536481コアシェル型複合触媒及びその製造方法と用途
<>
  • 特表-コアシェル型複合触媒及びその製造方法と用途 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】コアシェル型複合触媒及びその製造方法と用途
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/48 20060101AFI20230818BHJP
   B01J 29/80 20060101ALI20230818BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20230818BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230818BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20230818BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20230818BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
B01J29/48 M
B01J29/80 M
B01J29/40 M
B01J37/08
B01J37/18
C07C1/04
C07C15/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023506135
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2021108678
(87)【国際公開番号】W WO2022022510
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】202010752882.2
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598152091
【氏名又は名称】ハイケム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520108855
【氏名又は名称】株式会社模範
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】高 潮
(72)【発明者】
【氏名】椿 范立
(72)【発明者】
【氏名】楊 国輝
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA02A
4G169BA02C
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA08B
4G169BA08C
4G169BA21A
4G169BA22C
4G169BA27C
4G169BB04C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC13A
4G169BC15A
4G169BC16A
4G169BC17A
4G169BC17B
4G169BC18A
4G169BC18B
4G169BC19A
4G169BC29A
4G169BC31A
4G169BC34A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC42A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC58A
4G169BC58B
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BE32A
4G169CC23
4G169DA06
4G169EC24
4G169EE01
4G169FB15
4G169FB30
4G169FB44
4G169FB78
4G169FC05
4G169FC08
4G169ZA06A
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA12A
4G169ZA12B
4G169ZA13A
4G169ZA36A
4G169ZA36B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07A
4G169ZF07B
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA07
4H006BA14
4H006BA30
4H006BA71
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC19
4H006BE20
4H006BE40
4H006DA12
(57)【要約】
本発明は、コアシェル型複合触媒に関し、コアは、スピネル構造のXY触媒であり、XとYが互いに異なり、周期律表の第2主族、遷移元素、第3主族から選択される金属元素であり、aが1~15、好ましくは1~5の間、bが各元素の原子価を満たすために必要な酸素原子の数で、シェルは、モレキュラーシーブ触媒で、好ましくはZSM-5、ZSM-11、ZSM-35及びMORの1種又は複数種、より好ましくはZSM-5及びZSM-11から選択される。コアシェル型複合触媒は、合成ガスからパラキシレンをワンショット法で直接的に製造するために用いられる場合、プロセスが簡単で、操作しやすく、キシレン生成物におけるパラキシレンの選択率が高く、合成ガスの転化率が高く、触媒の寿命が長い。更に本発明は、コアシェル型複合触媒の製造方法及び合成ガスからパラキシレンをワンショット法で製造することにおける触媒としての用途に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアは、スピネル構造のXY触媒であり、ここで、XとYが互いに異なり、かつ周期律表の第2主族、遷移元素及び第3主族から選択される金属元素であり、aが1~15の間の数であり、好ましくは1~5の間の数であり、bが各元素の原子価を満たすために必要な酸素原子の数であり、シェルは、モレキュラーシーブ触媒であり、好ましくはZSM-5、ZSM-11、ZSM-35及びMORから選択される1種又は複数種であり、より好ましくはZSM-5及びZSM-11から選択される、コアシェル型複合触媒。
【請求項2】
X及びYは、Al、Ga、In、Tl、Zn、Cu、Co、Fe、Mn、Cr、Ti、Mg、Ca及びBaから選択され、好ましくは、Xは、Ga、In又はZnであり、及び/又は、Yは、Cr、Ga又はTiである、請求項1に記載のコアシェル型複合触媒。
【請求項3】
前記モレキュラーシーブ触媒は、H形態又はHがMで部分的若しくは全て置換された変性モレキュラーシーブの形態であり、Mは、Zn、Ga、Cr、Mn、Fe、Ni、Zr、Cu、La、In及びCaから選択される1種又は複数種であり、好ましくはZnである、請求項1又は2に記載のコアシェル型複合触媒。
【請求項4】
スピネル構造のXY触媒とモレキュラーシーブ触媒の重量比は、150:1~1:50であり、好ましくは20:1~1:20であり、より好ましくは10:1~1:10である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコアシェル型複合触媒。
【請求項5】
前記モレキュラーシーブ触媒は、表面修飾材料で修飾され、前記表面修飾材料は、金属酸化物、グラフェン、活性炭、Silicalite-1、Silicalite-2、MOF、COF、シリカ、樹脂、バイオマス(例えば、昆布、グルコース、フルクトース)及びカーボンナノチューブから選択される1種又は複数種であり、より好ましくは活性炭、Silicalite-1及びSilicalite-2から選択される1種又は複数種である、請求項1~4のいずれか一項に記載のコアシェル型複合触媒。
【請求項6】
得られた表面修飾されたモレキュラーシーブ触媒において、モレキュラーシーブ触媒と表面修飾材料の重量比は、100:1~2:1であり、好ましくは50:1~2:1であり、より好ましくは10:1~2:1であり、特に好ましくは5:1~2:1である、請求項5に記載のコアシェル型複合触媒。
【請求項7】
コアとシェルとの間にある接着剤層を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のコアシェル型複合触媒。
【請求項8】
前記接着剤層は、ケイ素含有物質で製造され、前記ケイ素含有物質は、好ましくはシリカゾル、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランから選択され、より好ましくはシリカゾルである、請求項7に記載のコアシェル型複合触媒。
【請求項9】
前記スピネル構造のXY触媒は、ZnCr又はInGaである、請求項1~8のいずれか一項に記載のコアシェル型複合触媒。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のコアシェル型複合触媒を製造する方法であって、
1)粒子形態のコアを提供するステップと、
2)粒子形態のモレキュラーシーブ触媒を提供するステップと、
3)コアをモレキュラーシーブ触媒で被覆するステップとを含む、方法。
【請求項11】
コアをモレキュラーシーブ触媒で被覆する前に、コアを接着剤で塗布する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
接着剤は、シリカゾル、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランから選択されるケイ素含有物質であり、好ましくはシリカゾルである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
コアをモレキュラーシーブ触媒で被覆する前に、モレキュラーシーブ触媒を表面修飾材料で表面修飾する、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
表面修飾材料は、金属酸化物、グラフェン、活性炭、Silicalite-1、Silicalite-2、MOF、COF、シリカ、樹脂、バイオマス(例えば、昆布、グルコース、フルクトース)及びカーボンナノチューブから選択される1種又は複数種であり、より好ましくは活性炭、Silicalite-1及びSilicalite-2から選択される1種又は複数種である、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
コアをモレキュラーシーブ触媒で被覆した後、得られた生成物を焼成する、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載のコアシェル型複合触媒又は請求項10~15のいずれか一項に記載の方法で製造されたコアシェル型複合触媒の、合成ガスからパラキシレンをワンショット法で製造することにおける触媒としての用途。
【請求項17】
請求項1~9のいずれか一項に記載のコアシェル型複合触媒又は請求項10~15のいずれか一項に記載の方法で製造されたコアシェル型複合触媒を用いる、合成ガスからパラキシレンをワンショット法で製造する方法。
【請求項18】
合成ガスにおける水素ガスと一酸化炭素のモル比は、0.1~10であり、好ましくは2~5であり、反応圧力は、1~20MPaであり、好ましくは2~10MPaであり、反応温度は、100~700℃であり、好ましくは350~500℃であり、及び/又は、空間速度は、300~7500標準立方メートル/時間であり、好ましくは600~4500標準立方メートル/時間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
合成ガスを導入して反応を行う前に、前記触媒に対して還元前処理を行い、好ましくは還元前処理のプロセス条件について、
還元ガスは、純粋な水素ガスであり、
前処理の温度は、200~800℃であり、好ましくは300~500℃であり、
前処理の圧力は、0.1~1.5MPaであり、好ましくは0.1~0.7MPaであり、
前処理の水素ガスの体積空間速度は、300~7500標準立方メートル/時間であり、好ましくは600~4500標準立方メートル/時間であり、及び/又は、
前処理の還元時間は、2~24時間であり、好ましくは6~8時間である、請求項17又は18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型複合触媒及びその製造方法、並びにワンショット法を用いる合成ガスからのパラキシレンの製造における該触媒の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
キシレンは、重要な有機化学工業原料であり、包装、繊維などの分野に広く応用されている。パラキシレンは、主にテレフタル酸を製造するために用いられ、製薬業界に用いることができる。また、パラキシレンは、ポリエステル繊維及び工業用プラスチックを製造するための重要な中間体である。現在、パラキシレンの工業生産方法には、主にトルエン不均化、C芳香族炭化水素のトランスアルキル化、キシレン異性化、キシレン吸着分離などの技術を有する。該不均化及びトランスアルキル化ルートにおいて、熱力学が生成物におけるパラキシレンの含有量を制限するため、約24重量%の濃度のパラキシレンのみを収集することができる。ポリエステル繊維の生産において、パラキシレンの濃度が60重量%以上であることを求めるため、従来の手段で得られたパラキシレンの濃度は工業生産の要件を全く満たすことができない。パラキシレンの濃度及び収率を向上させるために、一連の後続きの処理を行う必要がある。キシレンの三種類の異性体の物理的性質、特に沸点の差が小さいという性質は、C芳香族炭化水素からのパラキシレンの分離に困難をもたらす。したがって、高価な吸着分離プロセスを用いなければならず、それに伴って原材料が損失され、コストが増加する。現在、90%以上の芳香族炭化水素は、石油工業に由来する。しかしながら、近年、石油エネルギーがますます不足になり、市場需要又は代替エネルギーの観点から、新規な芳香族炭化水素の合成プロセスルートを開発することはいずれも非常に高い価値を有する。
【0003】
合成ガスは、エネルギー転化のための架け橋として、天然ガス、石炭及びバイオマスなどの自然資源に由来し、また付加価値の高いクリーンな石油製品に転化することができ、最も潜在力のある石油代替品の1つとして考えられている。近年、金属触媒と適切なモレキュラーシーブを組み合わせて得られた複合触媒を始めとする様々な新規な触媒は、フィッシャー・トロプシュ反応の生成物の分布をうまく調整し、大きな進展を見せている。フィッシャー・トロプシュ合成を用いて異なる炭素数範囲の石油製品をうまく製造した後、ますます多くの研究者は、合成ガスを付加価値の高い化学物質に高選択率でワンショット法の転化するプロセスに着目している。上記付加価値の高い化学物質は、低炭素オレフィン、低炭素アルコールなどの重要な化学工業原料を含む。合成ガスからベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素をワンショット法で製造する方法の研究法が報告されているが、生成物におけるパラキシレンは、選択率が一般的に高くなく、かつ産業化からかなりの距離がある。生成物の選択率の調整は突破することが難しいことが主な問題であり、また、触媒が失活しやすく、触媒性能の安定性を維持することが難しいという問題もある。
【0004】
ワンショット法で合成ガスからパラキシレンの製造の選択率を向上させるには、高性能触媒の研究開発がポイントとなる。ここで、メタノール又はジメチルエーテル合成触媒とモレキュラーシーブからなる二機能複合触媒は、高い触媒性能を有することが発見された。該反応ルートにおいて、合成ガスの水素化によるメタノールの製造とメタノールの脱水によるジメチルエーテルの製造反応、芳香族化反応、キシレンアルキル基の異性化反応などの一連の直列反応が誘導される。該ルートは、合成ガス転化プロセスの発展に大きな意義を有し、関連するプロセスルートの空白を埋めるだけでなく、中国のエネルギー戦略の安全性を保証するとともに、世界的な石油エネルギーの枯渇という潜在的な脅威に対する解決手段を提供する。したがって、該ルートを深く発掘すること、例えば、パラキシレンの選択率を向上させ、プロセスの複雑さ及びコストを低減することは、ワンショット法を用いる合成ガスからのパラキシレンの製造において急務な技術的な難点である。
【0005】
Lasaらは、Cr-Zn/ZSM-5触媒を用いて合成ガスから製造された芳香族炭化水素の性能を早く報告し(Ind.Eng.Chem.Res.、1991、30、1448~1455)、炭化水素生成物において、芳香族炭化水素の選択率が70%以上に達することができるが、芳香族炭化水素の具体的な生成物の分布について言及していない。Lasaらは、その後に、Cr-Zn/ZSM-5複合触媒を用いて合成ガスから芳香族炭化水素を製造することを報告し(Appl.Catal.A、1995、125、81~98)、356~410℃、3.6~4.5MPaの反応条件下で、炭化水素生成物における芳香族炭化水素の選択率が75%に達するが、キシレンの選択率が20%を超えない。南開大学の関乃佳ら(Catal.Today、1996、30(1-3)、207~213)は、FeMnO-ZnZSM-5複合触媒を用い、270℃、1.1MPaの反応条件下で、CO転化率が98.1%に達し、かつ触媒活性が60時間連続的に安定し、炭化水素生成物における芳香族炭化水素の選択率が53.1%に達するが、キシレン及び炭素数が9以上のベンゼン類同族体の具体的な生成物の分布に関しない。最近では、馬丁及び樊衛斌らのチーム(Chem、2017、3、323~333)は、Na-Zn-Fe(FeZnNa)触媒と多層チャネル構造を有するメソ孔H-ZSM-5モレキュラーシーブとを結合して、合成ガスからオレフィンを中間体として芳香族炭化水素をワンショット法で製造するという転化をうまく実現する。340℃、2MPaの条件下で、CO転化率が85%以上であり、かつ触媒系が安定して不活性化になりにくく、炭化水素生成物において最大51重量%の芳香族炭化水素を得ることができ、軽質芳香族炭化水素BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)を主とするが、芳香族炭化水素におけるパラキシレンの選択率について言及していない。アモイ大学の王野研究チーム(Chem、2017、3、334~347)は、Zn変性ZrOとH-ZSM-5の混合触媒の開発に成功し、CO転化率が20%であり、芳香族炭化水素の選択率が80%に達する。軽質芳香族炭化水素の含有量を向上させるために、筆者は、化学堆積法に基づいてTEOS(オルトケイ酸エチル)でH-ZSM-5の外表面を処理することにより、最終生成物におけるBTXの選択率を顕著に向上させ、60重量%に達するが、キシレン及びパラキシレンの含有量について言及していない。2019年、日本の富山市の椿范立、楊国輝、高潮、柴剣宇らの関連特許出願(合成ガスからパラキシレンを直接製造する触媒及びその製造方法と使用、出願公開番号CN109590019A)には、合成ガスからパラキシレンを高選択率で製造し、最適な反応条件下で一酸化炭素の転化率が55%であり、パラキシレンの選択率が35.3%である。該特許出願におけるコアシェル型複合触媒がモレキュラーシーブ触媒の表面酸量を一定の程度で低下させるが、該モレキュラーシーブ触媒と金属酸化物触媒との混合方式が物理的研磨であるため、一部の中間生成物(メタノール)はモレキュラーシーブ触媒により直ちに次の反応を行うことができない。したがって、依然としてより効率的な触媒を開発する必要がある。
【0006】
上記触媒がいずれも合成ガスから芳香族炭化水素をワンショット法で得ることを実現できるが、常に生成物におけるパラキシレンの選択率が高くないか又は一酸化炭素の転化率が高くなく、かつキシレンの異性化反応を効果的に制御することができない。一方、触媒の空間位置をより効率的に利用することは依然として課題である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、新しいコアシェル型複合触媒及びその製造方法、並びに合成ガスからメタノールを介してパラキシレンを高選択率で製造することにおけるその用途を提供することを目的とする。係る触媒の製造方法が簡単であり、合成ガスの転化率が高く、キシレン生成物におけるパラキシレンの選択率が高く、寿命が長く、工業応用の見通しが優れる。
【0008】
本発明は、コアシェル型複合触媒を提供することを目的とする。該コアシェル型複合触媒は、ワンショット法で合成ガスを転化してパラキシレンを製造する場合、プロセスが簡単であり、操作しやすく、合成ガスの転化率が高く、キシレンにおけるパラキシレンの選択率も高いだけでなく、該コアシェル型複合触媒の寿命が長い。
【0009】
本発明は、本発明のコアシェル型複合触媒を製造する方法を提供することを別の目的とする。
【0010】
本発明は、本発明のコアシェル型複合触媒又は本発明の方法で得られたコアシェル型複合触媒の、合成ガスからパラキシレンをワンショット法で製造することにおける触媒としての用途を提供することを更に別の目的とする。
【0011】
本発明のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、以下の内容を参照して考えた後、当業者に理解されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例4に基づいて製造されたコアシェル型複合触媒の簡略化された構造概略図であり、コアがスピネル構造の触媒であり、シェルがモレキュラーシーブ触媒であり、コアとシェルとの間に接着剤層がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1態様に係るコアシェル型複合触媒において、コアは、スピネル構造のXY触媒であり、ここで、XとYが互いに異なり、かつ周期律表の第2主族、遷移元素及び第3主族から選択される金属元素であり、aが1~15の間の数であり、好ましくは1~5の間の数であり、bが各元素の原子価を満たすために必要な酸素原子の数であり、シェルは、モレキュラーシーブ触媒であり、好ましくはZSM-5、ZSM-11、ZSM-35及びMORから選択される1種又は複数種であり、より好ましくはZSM-5及びZSM-11から選択される。
【0014】
本発明のコアシェル型複合触媒において、スピネル構造のXY触媒とモレキュラーシーブ触媒の重量比は、150:1~1:50であり、好ましくは20:1~1:20であり、より好ましくは10:1~1:10である。
【0015】
本発明のコアシェル型複合触媒において、コアは、スピネル構造のXY触媒であり、ここで、Xが周期律表の第2主族、遷移元素及び第3主族から選択される金属元素であり、好ましくはAl、Ga、In、Tl、Zn、Cu、Co、Fe、Mn、Cr、Ti、Mg、Ca及びBaから選択され、より好ましくはGa、In及びZnから選択され、Yが周期律表の第2主族、遷移元素及び第3主族から選択される金属元素であり、好ましくはAl、Ga、In、Tl、Zn、Cu、Co、Fe、Mn、Cr、Ti、Mg、Ca及びBaから選択され、より好ましくはCr、Ga及びTiから選択される。好ましくは、スピネル構造のXY触媒は、ZnCr又はInGaである。
【0016】
本発明のスピネル構造のXY触媒は、本分野の任意の一般的な方法、例えば、逐次含浸法、共含浸法及び共沈法、好ましくは共沈法で製造することができる。第1金属成分X及び第2金属成分Yを含むスピネル構造の触媒については、前述の方法で該触媒を製造する場合、いずれも第1金属成分X及び第2金属成分Yを含む金属塩水溶液を混合することに関する。触媒を製造した後、それを乾燥させ、かつ焼成する。焼成雰囲気は、空気であり、焼成温度は、500~600℃であり、好ましくは550~600℃であり、焼成時間は、5~9時間であり、好ましくは5~6時間である。
【0017】
例えば、スピネル構造のXY触媒を共沈法で製造する場合、一般的にX及びYの可溶性金属塩の水溶液を混合し、次に乾燥させ焼成する。混合プロセスにおいて、沈殿剤を添加することにより、pH値を常に8~9の間に制御することができる。上記可溶性塩は、例えば、硝酸塩、塩化物などである。上記沈殿剤は、例えば、NaOH、NaCO、NaHCO、(NHCO、NHOH又はアンモニア水などのアルカリ性物質である。加熱し撹拌しながら混合する。加熱温度は、50~100℃であり、好ましくは60~90℃であり、より好ましくは70~80℃である。反応時間は、0.5~5時間であり、好ましくは1~4時間である。反応後に、反応混合物を反応温度で熟成する。熟成時間は、0.5~10時間であり、好ましくは1~5時間である。
【0018】
好ましくは、共沈法において、ポンプを用いて、X及びYを含む混合溶液aと沈殿剤を含む溶液bとをそれぞれ反応器に添加し、両者の添加速度は、既に添加された溶液aと既に添加された溶液bとでリアルタイムに形成された混合物のpH値が8~9であることを保証すべきである。
【0019】
スピネル構造のXY触媒としてのZnCrを共沈法で製造することを例として、該触媒を製造するために、一般的にクロム、亜鉛のそれぞれの硝酸塩を脱イオン水で必要なクロム/亜鉛比率で混合硝酸塩水溶液に調製し、該溶液と炭酸アンモニウム水溶液(炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどの他の沈殿剤を使用してもよい)をポンプでビーカーに同時に滴下して共沈を行う。共沈プロセスにおいて連続的に撹拌し、沈殿温度を50~100℃に保持し、またこの2種類の溶液の相対的な添加速度によりpH値を常に8~9の間に制御し、滴下が完了した後、撹拌を停止し、かつ反応温度で3~5時間保持して熟成を行い、熟成後の沈殿物を濾過し、かつ脱イオン水で洗浄し、洗浄された生成物を乾燥させ、更に焼成して、ZnCr触媒を得る。
【0020】
本発明のコアシェル型複合触媒におけるシェルは、モレキュラーシーブ触媒であり、好ましくはZSM-5、ZSM-11、ZSM-35及びMORから選択される1種又は複数種であり、より好ましくはZSM-5及びZSM-11から選択される。
【0021】
本発明のモレキュラーシーブ触媒は、商業的に購入されてもよく、本分野の任意の一般的な方法、例えば、水熱合成法、含浸法、イオン交換法、気相堆積法、液相堆積法などで製造されてもよい。一般的に、モレキュラーシーブ触媒は、水熱合成法で製造されてもよい。
【0022】
HZSM-5ゼオライトモレキュラーシーブの水熱合成法を例として、ケイ素源(例えば、TEOS)、アルミニウム源(例えば、Al(NO・9HO)、有機テンプレート剤(例えば、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH))、エタノール及び脱イオン水を混合物に調製し、室温で2~10時間撹拌してゾルを得て、次に撹拌済みのゾルを水熱合成釜に移した後に、密封し、160~200℃の温度で2~5rpmの回転速度で12~72時間結晶化する。結晶化が終了した後に室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpH=7~8になるまで洗浄し、一晩乾燥させ、次にマッフル炉に入れて0.1~3℃/minの昇温速度で400~650℃まで昇温させ、4~8時間焼成した後に、HZSM-5であるZSM-5モレキュラーシーブを得る。上記ZSM-5モレキュラーシーブにおけるSiO/Alは、10~1000である。
【0023】
本発明のモレキュラーシーブ触媒は、H形態又はHがMで部分的若しくは全て置換された変性モレキュラーシーブの形態であり、Mは、Zn、Ga、Cr、Mn、Fe、Ni、Zr、Cu、La、In及びCaから選択される1種又は複数種であり、好ましくはZnである。
【0024】
Mで変性された形態のモレキュラーシーブ触媒は、H形態のモレキュラーシーブを原料とし、イオン交換法、含浸法、気相堆積法又は液相堆積法などで製造することができる。
【0025】
Mで変性された形態のモレキュラーシーブ触媒を含浸法で製造する場合、H形態のモレキュラーシーブ触媒に対して金属Mの可溶性塩水溶液で含浸処理を行い、更に乾燥させ焼成することにより、Mをモレキュラーシーブ触媒に担持することができる。上記可溶性塩は、例えば、硝酸塩、塩化物塩などである。
【0026】
Mで変性された形態のモレキュラーシーブ触媒をイオン交換法で製造する場合、H形態のモレキュラーシーブ触媒に対して金属Mの可溶性塩水溶液でイオン交換処理を行い、次に乾燥させ焼成することができる。
【0027】
Zn-ZSM-5モレキュラーシーブをイオン交換方法で製造することを例として、HZSM-5モレキュラーシーブを硝酸亜鉛水溶液に添加し、60~100℃で10~20時間連続的に撹拌して、イオン交換を行う。イオン交換が終了した後に室温まで冷却し、得られた生成物を濾液pH=7~8になるまで洗浄し、一晩乾燥させ、次に400~600℃のマッフル炉に入れて4~6時間焼成して、Zn-ZSM-5モレキュラーシーブを得る。
【0028】
元素Mで変性されたモレキュラーシーブにおいて、元素Mは、モレキュラーシーブの総重量の0.1~15重量%を占め、好ましくは0.5~10重量%を占め、より好ましくは0.7~5重量%を占め、更に好ましくは0.7~2重量%を占める。
【0029】
上記モレキュラーシーブ触媒の粒径は、一般的に0.01~20μmであり、好ましくは0.1~15μmである。
【0030】
本発明の一実施形態において、モレキュラーシーブ触媒を表面修飾することができる。用いられるモレキュラーシーブがMで変性されたモレキュラーシーブである場合、表面修飾は、Mで変性された後に行われる。表面修飾は、表面修飾材料で行われる。好ましくは、本発明に用いられる表面修飾材料は、金属酸化物、グラフェン、活性炭、Silicalite-1、Silicalite-2、MOF、COF、シリカ、樹脂、バイオマス(例えば、昆布、グルコース、フルクトース)及びカーボンナノチューブから選択される1種又は複数種であり、より好ましくは活性炭、Silicalite-1及びSilicalite-2から選択される1種又は複数種である。
【0031】
表面修飾により、モレキュラーシーブ触媒の表面に露出する酸点を被覆するか又は除去することにより、副反応の発生を減少させて、目標生成物のパラキシレンの選択率を向上させる。
【0032】
表面修飾は本分野の任意の一般的な方法で行うことができる。修飾方法として、水熱合成法、気相堆積法、塗布法、含浸法、スパッタリング法、ストーバー法(Stоber法)などを挙げることができ、表面修飾材料の性質に応じて一般的な選択を行うことができる。例えば、Silicalite-1及びSilicalite-2で表面修飾する場合、水熱合成法を用いることができ、活性炭、グラフェン又はカーボンナノチューブで修飾する場合、気相堆積法を用いることができ、金属酸化物で修飾する場合、含浸法及びスパッタリング法を用いることができ、シリカで修飾する場合、Stоber法を用いることができ、樹脂又はバイオマスで修飾する場合、塗布法又は含浸法を用いることができ、次に得られた表面修飾されたモレキュラーシーブを窒素ガスなどの不活性ガスで焼成して、炭素表面修飾されたモレキュラーシーブ触媒を得る。
【0033】
Silicalite-1を用いて水熱合成法でH-ZSM-5を修飾してH-ZSM-5@Silicalite-1を得ることを例として、ケイ素源(例えば、TEOS)、有機テンプレート剤(例えば、TPAOH)、エタノール及び脱イオン水を割合で混合物に調製し、室温で2~6時間撹拌して、Silicalite-1モレキュラーシーブ前駆体溶液を得る。H-ZSM-5モレキュラーシーブと得られたSilicalite-1モレキュラーシーブ前駆体溶液とを共に水熱釜に移し、次に密封し、100~200℃の温度で2~5rmpの回転速度で12~72時間結晶化する。結晶化が終了した後に室温まで冷却し、得られた生成物を濾液pH=7~8になるまで脱イオン水で洗浄し、室温で一晩乾燥させ、次にマッフル炉に入れて0.1~3℃/minの昇温速度で500~650℃まで昇温させ、2~8時間焼成した後に、H-ZSM-5@Silicalite-1を得る。
【0034】
得られた表面修飾されたモレキュラーシーブ触媒において、モレキュラーシーブ触媒と表面修飾材料の重量比は、100:1~2:1であり、好ましくは50:1~2:1であり、より好ましくは10:1~2:1であり、特に好ましくは5:1~2:1である。
【0035】
本発明の一実施形態において、本発明のコアシェル型複合触媒は、コアとシェルとの間にある接着剤層を更に含む。上記接着剤層は、ケイ素含有物質で製造され、上記ケイ素含有物質は、好ましくはシリカゾル、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランから選択され、より好ましくはシリカゾルである。
【0036】
本発明の第2態様に係る、本発明のコアシェル型複合触媒を製造する方法は、
1)粒子形態のコアを提供するステップと、
2)粒子形態のモレキュラーシーブ触媒を提供するステップと、
3)コアをモレキュラーシーブ触媒で被覆するステップとを含む。
【0037】
ステップ3)の被覆の前に、コアを接着剤で塗布し、次にコアをモレキュラーシーブ触媒で被覆してもよい。上記接着剤はシリカゾル、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランから選択されるケイ素含有物質であり、好ましくはシリカゾルである。コアを接着剤に含浸することにより、コアに接着剤を均一に付着させ、次に接着剤で含浸されたコアをモレキュラーシーブ触媒の粉末に加えて被覆してもよい。含浸及び被覆プロセスは、2~10回繰り返してもよい。
【0038】
被覆後に、得られた生成物を乾燥させ焼成する。乾燥は、室温を120℃まで、好ましくは室温を60℃まで、最も好ましくは室温で行われ、乾燥時間は、3~30時間であり、好ましくは6~20時間である。焼成は、マッフル炉内に空気雰囲気で行うことができる。焼成温度は、350~750℃であり、好ましくは400~600℃であり、焼成時間は、1~6時間であり、好ましくは2~4時間である。
【0039】
驚くべきことに、接着剤を用いて本発明のコアシェル型複合触媒を製造する場合、転化率及びパラキシレンの選択率が顕著に向上することが見出される。
【0040】
本発明の方法で製造された触媒は、コアシェル型複合触媒であり、該コアシェル型複合触媒は、合成ガスからパラキシレンをワンショット法で製造するために用いることができる。合成ガスからパラキシレンをワンショット法で製造することは、合成ガスをメタノールに転化する第一部分と、メタノールをパラキシレンに転化する部分との2つの部分に大体分けることができる。本発明のコアシェル型複合触媒におけるスピネル構造の触媒により、合成ガスを高転化率及び高選択率でメタノールに転化することができ、モレキュラーシーブ触媒により、合成ガスから転化されたメタノールをパラキシレンに更に触媒し転化することができる。本発明のコアシェル型複合触媒により、キシレン生成物におけるパラキシレンの選択率を大幅に向上させる。本発明者らは、本発明のコアシェル型複合触媒を用いる場合、一酸化炭素の転化率が顕著に向上し、パラキシレンのキシレン生成物における選択率も大幅に向上することを見出した。また、本発明のコアシェル型複合触媒は、寿命が長く、製造しやすく、かつ繰り返しやすいという利点を有し、応用の見通しが優れる。
【0041】
本発明の第3態様において、本発明のコアシェル型複合触媒の、合成ガスからパラキシレンをワンショット法で製造することにおける触媒としての用途を提供する。
【0042】
本発明の第4態様において、本発明のコアシェル型複合触媒又は本発明の方法で製造されたコアシェル型複合触媒を用いる、合成ガスからパラキシレンをワンショット法で製造する方法を提供する。
【0043】
本発明の複合触媒を合成ガスからのパラキシレンの製造に用いる前に、それに対して還元前処理を行うことができる。有利には、還元前処理のプロセス条件について、還元ガスは、純粋な水素ガスであり、前処理の温度は、200~800℃であり、好ましくは300~500℃であり、前処理の圧力は、0.1~1.5MPaであり、好ましくは0.1~0.7MPaであり、前処理の水素ガスの体積空間速度は、300~7500標準立方メートル/時間であり、好ましくは600~4500標準立方メートル/時間であり、及び/又は、前処理の還元時間は、2~24時間であり、好ましくは6~8時間である。還元前処理の後に、合成ガスを導入して反応を行って、パラキシレンを製造する。このために用いられる合成ガスにおける水素ガスと一酸化炭素のモル比は、0.1~10であり、好ましくは2~5であり、反応圧力は、1~20MPaであり、好ましくは2~10MPaであり、反応温度は、100~700℃であり、好ましくは350~500℃であり、及び/又は、空間速度は、300~7500標準立方メートル/時間であり、好ましくは600~4500標準立方メートル/時間である。
【0044】
本発明のコアシェル型複合触媒を用いて合成ガスの転化を行うと、合成ガスの転化率が65%以上に達することができ、パラキシレンのキシレン生成物における選択率が80%以上に達することができ、パラキシレンの選択率が明らかに向上する。本発明のコアシェル型複合触媒により、合成ガスをパラキシレンにワンショット法で転化することができ、複数種の異なるタイプの触媒を含む多段反応器を使用する必要がなく、反応プロセスがより簡単であり、操作しやすい。また、本発明のコアシェル型複合触媒は、合成ガスをパラキシレンにワンショット法で転化するために用いられる場合、少なくとも2000時間内に高転化率及び高選択率を維持することができるため、長い寿命を有する。
【実施例
【0045】
[実施例1]
a、ZnCr触媒の製造
24.0gのCr(NO・9HO及び8.9gのZn(NO・6HOを90mlの脱イオン水に溶解し、得られた混合硝酸塩水溶液と1mol/Lの(NHCO水溶液(19.2gの(NHCOを200mlの脱イオン水に溶解して調製されたもの)とを、同時に2Lの脱イオン水を入れたビーカーに滴下し、共沈を行った。共沈プロセスにおいて連続的に撹拌し、75℃で3時間恒温した。pH値を8前後に維持し、2種類の溶液の相対流速により制御した。共沈が終了した後に、75℃で3時間静置熟成した。沈殿物を濾過し、次に脱イオン水で3回洗浄した。洗浄した沈殿物をオーブン内に120℃で12時間乾燥させ、更にマッフル炉内に500℃で5時間焼成した。メタノール合成触媒を得て、ZnCr触媒として示した。
【0046】
b、H-ZSM-5モレキュラーシーブの製造
ケイ素源(TEOS)、アルミニウム源(Al(NO・9HO)、有機テンプレート剤(TPAOH)、エタノール及び脱イオン水をモル比(2TEOS:0.02Al:0.68TPAOH:8EtOH:120HO)で混合物に調製し、室温で6時間撹拌して、ゾルを得た。次に撹拌済みのゾルを水熱合成釜に移した後に、密封し、180℃の温度で2rmpの速度で24時間回転し結晶化した。結晶化が終了した後に室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpH=7になるまで脱イオン水で洗浄し、室温で一晩乾燥させ、次にマッフル炉に入れて1℃/minの昇温速度で550℃まで昇温させ、6時間焼成した後に、ZSM-5モレキュラーシーブを得て、H-ZSM-5であった。上記H-ZSM-5モレキュラーシーブにおけるSi/Alモル比は、46であった。
【0047】
c、ZnCr@H-ZSM-5触媒の製造
10gのシリカゾル(ALDRICH、30wt.%suspensioninHO)で3gの粒子状のZnCr触媒の表面を含浸し、その後に余分なシリカゾルをデカントし、次に表面が湿潤状態であるZnCrを、1gの粉末状のH-ZSM-5を入れた丸底フラスコに入れ、丸底フラスコを迅速に勢いよく回転させて、ZnCrの表面全体がH-ZSM-5で被覆されることを保証した。更に該被覆プロセスを2回繰り返し、毎回の被覆を、1gの粉末状のH-ZSM-5を入れた丸底フラスコにおいて行った。最後に、触媒を室温で一晩乾燥させ、マッフル炉内に550℃で3時間焼成して、ZnCr@H-ZSM-5触媒を得て、ZnCrがコアであり、H-ZSM-5がシェルであり、ZnCr触媒とH-ZSM-5モレキュラーシーブの質量比が1:1である。ZnCr@H-ZSM-5触媒として示した。
【0048】
d、触媒実験
0.5gのZnCr@H-ZSM-5触媒を固定床の形態で固定床高圧反応器に充填し、HとCOのモル比が2.1の合成ガスを連続的に導入し、反応圧力を4MPaに制御し、合成ガスの空間速度を1200標準立方メートル/時間とし、反応温度を400℃とした。4時間反応させた後に、反応生成物及び原料ガスをガスクロマトグラフィーでオンライン分析し、反応その結果を表1に示した。
【0049】
[実施例2]
a、ZnCr触媒の製造
実施例1における「ZnCr触媒の製造」を繰り返して、ZnCr触媒を得た。
【0050】
b、H-ZSM-5触媒の製造
実施例1における「H-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返して、H-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0051】
c、H-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造
ケイ素源(TEOS)、有機テンプレート剤(TPAOH)、エタノール及び脱イオン水をモル比(1.0TEOS:0.06TPAOH:16.0EtOH:240HO)で混合物に調製し、室温で4時間撹拌して、Silicalite-1モレキュラーシーブ前駆体溶液を得た。bにおいて製造されたH-ZSM-5触媒と得られたSilicalite-1モレキュラーシーブ前駆体溶液とを共にポリテトラフルオロエチレン水熱釜に移し、次に密封し、180℃の温度で2rmp回転速度で24時間結晶化した。結晶化が終了した後に室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpH=7になるまで脱イオン水で洗浄し、室温で一晩乾燥させ、次にマッフル炉に入れて1℃/minの昇温速度で550℃まで昇温させ、4時間焼成した後に、H-ZSM-5とSilicalite-1モレキュラーシーブの重量比が3:1であるH-ZSM-5@Silicalite-1を得た。
【0052】
d、ZnCr@H-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造
実施例1における「ZnCr@H-ZSM-5触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにH-ZSM-5@Silicalite-1を用いて、ZnCr@H-ZSM-5@Silicalite-1触媒を得た。
【0053】
e、触媒実験
実施例1における「触媒実験」を繰り返したが、ZnCr@H-ZSM-5触媒の代わりにZnCr@H-ZSM-5@Silicalite-1触媒を用いた。反応その結果を表1に示した。
【0054】
[実施例3]
a、ZnCr触媒の製造
実施例1における「ZnCr触媒の製造」を繰り返して、ZnCr触媒を得た。
【0055】
b、H-ZSM-5触媒の製造
実施例1における「H-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返して、H-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0056】
c、Zn-ZSM-5モレキュラーシーブの製造
1.5gのH-ZSM-5モレキュラーシーブを1mol/Lの硝酸亜鉛水溶液に添加し、80℃で15時間連続的に撹拌して、イオン交換を行った。イオン交換が終了した後に室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpH=7になるまで洗浄し、室温で一晩乾燥させ、次に550℃のマッフル炉に入れて焼成し、5時間焼成した後に、Zn-ZSM-5を得た。Zn-ZSM-5モレキュラーシーブの総重量に基づいて、Znの含有量は1%であった。Zn-ZSM-5モレキュラーシーブとして示した。
【0057】
d、ZnCr@Zn-ZSM-5触媒の製造
実施例1における「ZnCr@H-ZSM-5触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにZn-ZSM-5を用いて、ZnCr@Zn-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0058】
e、触媒実験
実施例1における「触媒実験」を繰り返したが、ZnCr@H-ZSM-5触媒の代わりにZnCr@Zn-ZSM-5触媒を用いた。反応その結果を表1に示した。
【0059】
[実施例4]
a、ZnCr触媒の製造
実施例1における「ZnCr触媒の製造」を繰り返して、ZnCr触媒を得た。
【0060】
b、H-ZSM-5触媒の製造
実施例1における「H-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返して、H-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0061】
c、Zn-ZSM-5モレキュラーシーブの製造
実施例3における「Zn-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返して、Zn-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0062】
d、Zn-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造
実施例2における「H-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにZn-ZSM-5を用いて、Zn-ZSM-5@Silicalite-1モレキュラーシーブを得た。
【0063】
e、ZnCr@Zn-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造
実施例1における「ZnCr@H-ZSM-5触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにZn-ZSM-5@Silicalite-1を用いて、ZnCr@Zn-ZSM-5@Silicalite-1モレキュラーシーブを得た。
【0064】
f、触媒実験
実施例1における「触媒実験」を繰り返したが、ZnCr@H-ZSM-5触媒の代わりにZnCr@Zn-ZSM-5@Silicalite-1触媒を用いた。反応その結果を表1に示した。
【0065】
[実施例5]
a、InGa触媒の製造
10.6gのIn(NO・3HO及び23.9gのGa(NO・8HOを90mlの脱イオン水に溶解し、得られた混合硝酸塩水溶液と1mol/Lの(NHCO水溶液(19.2gの(NHCOを200mlの脱イオン水に溶解して調製されたもの)とを、同時に2Lの脱イオン水を入れたビーカーに滴下し、共沈を行った。共沈プロセスにおいて連続的に撹拌し、75℃で3時間恒温した。pH値を8前後に維持し、2種類の溶液の相対流速により制御した。共沈が終了した後に、75℃で3時間静置熟成した。沈殿物を濾過し、次に脱イオン水で3回洗浄した。洗浄した沈殿物をオーブン内に120℃で12時間乾燥させ、更にマッフル炉内に500℃で5時間焼成した。メタノール合成触媒を得て、InGa触媒として示した。
【0066】
b、H-ZSM-5触媒の製造
実施例1における「H-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返して、H-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0067】
c、Zn-ZSM-5触媒の製造
実施例3における「Zn-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返して、Zn-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0068】
d、Zn-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造
実施例2における「H-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにZn-ZSM-5を用いて、Zn-ZSM-5@Silicalite-1モレキュラーシーブを得た。
【0069】
e、InGa@Zn-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造
実施例1における「ZnCr@H-ZSM-5触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにZn-ZSM-5@Silicalite-1を用い、かつZnCrの代わりにInGaを用いて、InGa@Zn-ZSM-5@Silicalite-1触媒を得た。
【0070】
f、触媒実験
実施例1における「触媒実験」を繰り返したが、ZnCr@H-ZSM-5触媒の代わりにInGa@Zn-ZSM-5@Silicalite-1触媒を用いた。反応その結果を表1に示した。
【0071】
[実施例6]
a、ZnCr触媒の製造
実施例1における「ZnCr触媒の製造」を繰り返して、ZnCr触媒を得た。
【0072】
b、H-ZSM-11モレキュラーシーブの製造
ケイ素源(TEOS)、アルミニウム源(Al(NO・9HO)、有機テンプレート剤(テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAOH))、エタノール及び脱イオン水をモル比(2TEOS:0.02Al:0.68TBAOH:8EtOH:120HO)で混合物に調製し、室温で6時間撹拌して、ゾルを得た。次に撹拌済みのゾルを水熱合成釜に移した後に、密封し、180℃の温度で2rmpの速度で24時間回転し結晶化した。結晶化が終了した後に室温まで冷却し、得られた生成物を濾液のpH=7になるまで脱イオン水で洗浄し、室温で一晩乾燥させ、次にマッフル炉に入れて1℃/minの昇温速度で550℃まで昇温させ、6時間焼成した後に、H-ZSM-11モレキュラーシーブを得て、H-ZSM-11であった。上記H-ZSM-11モレキュラーシーブにおけるSi/Alモル比は、46であった。
【0073】
c、Zn-ZSM-11触媒の製造
実施例3における「Zn-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにH-ZSM-11を用いて、Zn-ZSM-11モレキュラーシーブを得た。
【0074】
d、Zn-ZSM-11@Silicalite-1触媒の製造
実施例2における「H-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにZn-ZSM-11を用いて、Zn-ZSM-11@Silicalite-1モレキュラーシーブを得た。
【0075】
e、ZnCr@Zn-ZSM-11@Silicalite-1触媒の製造
実施例1における「ZnCr@H-ZSM-5触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにZn-ZSM-11@Silicalite-1を用いて、ZnCr@Zn-ZSM-11@Silicalite-1触媒を得た。
【0076】
f、触媒実験
実施例1における「触媒実験」を繰り返したが、ZnCr@H-ZSM-5触媒の代わりにZnCr@Zn-ZSM-11@Silicalite-1触媒を用いた。反応その結果を表1に示した。
【0077】
[実施例7]
a、ZnCr触媒の製造
実施例1における「ZnCr触媒の製造」を繰り返して、ZnCr触媒を得た。
【0078】
b、H-ZSM-5触媒の製造
実施例1における「H-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返して、H-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0079】
c、Zn-ZSM-5触媒の製造
実施例3における「Zn-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返して、Zn-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0080】
d、Zn-ZSM-5@C触媒の製造
1.5gの濃度が1mol/Lであるグルコース水溶液に1.0gのZn-ZSM-5を含浸し、室温で一晩乾燥させ、次に600℃の管状炉に入れ、窒素ガスの保護下で焼成し、5時間焼成した後に、Zn-ZSM-5@C触媒を得た。Zn-ZSM-5@Cとして示した。
【0081】
e、ZnCr@Zn-ZSM-5@C触媒の製造
実施例1における「ZnCr@H-ZSM-5触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにZn-ZSM-5@Cを用いて、ZnCr@Zn-ZSM-5@C触媒を得た。
【0082】
f、触媒実験
実施例1における「触媒実験」を繰り返したが、ZnCr@H-ZSM-5触媒の代わりにZnCr@Zn-ZSM-5@C触媒を用いた。反応その結果を表1に示した。
【0083】
[比較例1]
触媒の製造方法は、実施例1とほぼ同じであるが、物理的混合法を用いてコア触媒とシェル触媒とを直接に物理的に混合し、かつ得られるコアシェル型複合触媒におけるZnCr触媒とH-ZSM-5モレキュラーシーブの重量比を1:1とするようにコアとシェルの重量の比率を変更した。
【0084】
実施例1に記載のように、得られた触媒を合成ガスからパラキシレンを直接的に製造することに用い、その結果を表1に示した。
【0085】
[比較例2]
触媒の製造方法は、実施例2とほぼ同じであるが、H-ZSM-5とSilicalite-1モレキュラーシーブの重量比を1:1に変更した。
【0086】
実施例2に記載のように、得られた触媒を合成ガスからパラキシレンを直接的に製造することに用い、その結果を表1に示した。
【0087】
[比較例3]
触媒の製造方法は、実施例2とほぼ同じであるが、H-ZSM-5とSilicalite-1モレキュラーシーブの重量比を1:3に変更した。
【0088】
実施例2に記載のように、得られた触媒を合成ガスからパラキシレンを直接的に製造することに用い、その結果を表1に示した。
【0089】
[比較例4]
触媒の製造方法は、実施例4とほぼ同じであるが、ZnCrとH-ZSM-5@Silicalite-1の混合方式を物理的研磨法に変更した。
【0090】
実施例4に記載のように、得られた触媒を合成ガスからパラキシレンを直接的に製造することに用い、その結果を表1に示した。
【0091】
[比較例5]
触媒の製造方法は、「合成ガスからパラキシレンを直接的に製造する触媒及びその製造と使用」(出願公開番号CN109590019A)における実施例2と同じである。
本発明の触媒の寿命試験
【0092】
a、ZnCr触媒の製造
実施例1における「ZnCr触媒の製造」を繰り返して、ZnCr触媒を得た。
【0093】
b、H-ZSM-5触媒の製造
実施例1における「H-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返して、H-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0094】
c、Zn-ZSM-5モレキュラーシーブの製造
実施例3における「Zn-ZSM-5モレキュラーシーブの製造」を繰り返して、Zn-ZSM-5モレキュラーシーブを得た。
【0095】
d、Zn-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造
実施例2における「H-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにZn-ZSM-5を用いて、Zn-ZSM-5@Silicalite-1モレキュラーシーブを得た。
【0096】
e、ZnCr@Zn-ZSM-5@Silicalite-1触媒の製造
実施例1における「ZnCr@H-ZSM-5触媒の製造」を繰り返したが、H-ZSM-5の代わりにZn-ZSM-5@Silicalite-1を用いて、ZnCr@Zn-ZSM-5@Silicalite-1モレキュラーシーブを得た。
【0097】
f、寿命試験
0.5gのZnCr@Zn-ZSM-5@Silicalite-1触媒を固定床の形態で固定床高圧反応器に充填し、HとCOの体積比が2.1の合成ガスを連続的に導入し、反応圧力を4MPaに制御し、合成ガスの空間速度を1200標準立方メートル/時間とし、反応温度を400℃とした。2000時間反応した後の反応生成物及び原料ガスの成分をガスクロマトグラフィーでオンラインで分析し、その反応結果を表2に示した。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
図1
【国際調査報告】