(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】NASHリスク評価の方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20230818BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20230818BHJP
【FI】
G01N33/68
C07K14/47 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507471
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2021071548
(87)【国際公開番号】W WO2022029066
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506236163
【氏名又は名称】ジェンフィット
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゾウハー・マジド
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ショーメ
【テーマコード(参考)】
2G045
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA26
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA42
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、NASHの進行及びNASH線維症のステージを診断するための新しいアッセイに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NAFLDの患者が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の、NASHの進行の又は深刻な線維性のNASHのリスクがあるか又はリスクがないかどうかを診断するためのin vitroの方法、又はNASHの進行を決定するためのin vitroの方法であって、以下の工程:
- 前記患者由来の血液、血清又は血漿のサンプルにおけるCHI3L1レベルを測定する工程;及び
- サンプルにおいて測定されるCHI3L1レベルを参照レベルと比較する工程;
を含み、参照レベルと比較される、患者由来のサンプルにおけるCHI3L1レベルが、NASHの、NASHの進行の若しくはNASHの線維症のステージのリスク、又はNASHの進行を示す、方法。
【請求項2】
前記サンプルが血清のサンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 20,000 pg/mLよりも低い、測定されるCHI3L1レベルは、非NASHの患者を示す;
- 20,000から40,000 pg/mLまでの、測定されるCHI3L1レベルは、NASHを有するリスクがある患者を示す;
- 40,000から70,000 pg/mLまでの、測定されるCHI3L1レベルは、NASHの可能性が高い患者を示す;
- 70,000から100,000 pg/mLまでの、測定されるCHI3L1レベルは、有意な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
- 100,000から150,000 pg/mLまでの、測定されるCHI3L1レベルは、進行した線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
- 150,000から220,000 pg/mLまでの、測定されるCHI3L1レベルは、深刻な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;並びに
- 220,000 pg/mLよりも高い、測定されるCHI3L1レベルは、NASH及び深刻な線維症を経験している患者を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
15,000及び275,000 pg/mLの間に含まれる濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む少なくとも一つの容器を含む、キット。
【請求項5】
- 20,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 40,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 70,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 100,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 150,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 220,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
から成る群において選択される少なくとも一つの容器を含む、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
- 20,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 40,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 70,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 100,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 150,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 220,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
から成る群において選択される少なくとも二つの容器を含む、請求項4又は5に記載のキット。
【請求項7】
以下の容器:
- 20,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 40,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 70,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 100,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 150,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 220,000 pg/mLの濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
の全てを含む、請求項4又は5に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者における非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行を診断するための新しいアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
NAFLDは、世界的に最も一般的な肝疾患である。それは、過剰の脂肪の蓄積がアルコールをほとんど飲まない又は全く飲まない対象の肝臓に存在する状態の群を指す。NAFLDの対象の群は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれる、より深刻な状態を有する。NASHにおいて、脂肪の蓄積は、肝臓の細胞の炎症と関連する。NASHは、深刻な肝臓の瘢痕及び硬変、肝細胞癌並びに肝臓関連死をもたらす可能性のある、深刻な状態である。硬変は、肝臓がかなりの損傷を持続する場合に発生し、肝臓細胞が瘢痕組織により次第に置き替えられ、肝臓が適切に働くことができなくなることをもたらす。硬変を発症する患者には、最終的に肝臓の移植を必要とする可能性のある者がいる。
【0003】
NAFLDは、超音波技術を使用して、肝臓への脂肪の蓄積の存在を発見することにより診断される。線維症を伴うNASHの評価及び経過観察は、肝臓の組織診により従来行われてきた。しかしながら、参照基準としての肝臓の組織診の立ち位置は、その使用に関する多数の欠点(侵襲性、サンプリングエラー、観察者間/内の変動性)の認識の増加により異議を唱えられている。NASHの進行のリスクがある患者の同定に用いられる、新たな非侵襲性の診断方法が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存のCHI3L1アッセイは、NAFLD患者におけるNASHの進行のリスクを診断する、層別化する及び/又は評価することができない。本発明は、血液、血清又は血漿のサンプルにおけるCHI3L1レベルの決定及び関連のある参照レベルとのそれらの比較に基づき、そのような非侵襲性の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の態様によると、本発明は、NAFLDの患者がNASH、NASHの進行又は深刻な線維性のNASHのリスクがあるか又はないかどうかを決定するためのin vitroの方法であって、以下の工程:
- 前記患者由来の血液、血清又は血漿のサンプルにおけるCHI3L1レベルを測定する工程;及び
- サンプルにおいて測定されるCHI3L1レベルを参照レベルと比較する工程;
を含み、参照レベルと比較される、患者由来のサンプルにおけるCHI3L1レベルが、前記患者におけるNASH、NASHの進行又は深刻な線維性のNASHのリスクを示す、方法に関する。
【0006】
本発明は更に、NASHの進行を決定するためのin vitroの方法であって、以下の工程:
- 第一の時点における患者由来の血液、血清又は血漿のサンプルにおけるCHI3L1レベルを測定する工程;
- より後の時点における前記患者由来の血液、血清又は血漿のサンプルにおけるCHI3L1レベルを測定する工程;及び
- サンプルにおいて測定されるCHI3L1レベルを参照レベルと比較する工程
を含み、参照レベルと比較される、患者由来のサンプルにおけるCHI3L1レベルは、NASHの進行を示す、方法に関する。
【0007】
特定の実施形態において、サンプルは血清サンプルである。
【0008】
血清のCHI3L1レベルが比較されることのできる代表的な参照レベルは、以下の値:
- 20,000 pg/mLよりも低いサンプルにおけるCHI3L1レベルは、非NASHの患者を示す;
- 20,000から40,000 pg/mLまでのCHI3L1レベルは、NASHを有するリスクがある患者を示す;
- 40,000から70,000 pg/mLまでのCHI3L1レベルは、NASHの可能性が高い患者を示す;
- 70,000から100,000 pg/mLまでのCHI3L1レベルは、有意(significant)な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
- 100,000から150,000 pg/mLまでのCHI3L1レベルは、進行した線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
- 150,000から220,000 pg/mLまでのCHI3L1レベルは、深刻な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;並びに
- 220,000 pg/mLよりも高いCHI3L1レベルは、NASH及び深刻な線維症を経験している患者を示す
を含む。
【0009】
特定の実施形態において、血清のCHI3L1レベルが比較されることのできる参照レベルは、以下の値:
- 25,000 pg/mLよりも低い、サンプルにおけるCHI3L1レベルは、非NASHの患者を示す;
- 25,000から33,000 pg/mLまでのCHI3L1レベルは、NASHを有するリスクがある患者を示す;
- 33,000から78,000 pg/mLまでのCHI3L1レベルは、NASHの可能性が高い患者を示す;
- 78,000から95,000 pg/mLまでのCHI3L1レベルは、有意な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
- 95,000から170,000 pg/mLまでのCHI3L1レベルは、進行した線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
- 170,000から215,000 pg/mLまでのCHI3L1レベルは、深刻な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;並びに
- 215,000 pg/mLよりも高いCHI3L1レベルは、NASH及び深刻な線維症を経験している患者を示す
を含む。
【0010】
さらに、本発明は、患者におけるNASHの重症度を決定するための方法であって、一つ又は複数の参照レベルを超える又は未満の決定されたCHI3L1レベルは、NASHの重症度を示す、方法に関する。
【0011】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の方法を実施するための手段を含むキットに関する。特定の実施形態において、キットは、血液、血清又は血漿サンプル、特には血清サンプル由来のCHI3L1 ELISAアッセイを実施するための手段を含む。例示的な手段は、CHI3L1に特異的な抗体を含む少なくとも一つの容器及び公知の濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む少なくとも一つの容器を含む。特定の実施形態において、公知の濃度でリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む少なくとも一つの容器は、本明細書において記載される少なくとも一つの参照レベルの濃度のCHI3L1を含む、少なくとも一つのコントロールのサンプルを調製するために使用されることができる。もう一つの実施形態において、少なくとも一つの容器は、本明細書において記載される少なくとも一つの参照レベルに相当する濃度のCHI3L1を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】スクリーニングビジット(SV)においてF0と診断される患者の、研究の終点(EOS)におけるCHI3L1レベルの測定。
【
図2】SVにおいてF1と診断される患者の研究の終点(EOS)におけるCHI3L1レベルの測定。
【
図3】SVにおいてF2と診断される患者の研究の終点(EOS)におけるCHI3L1レベルの測定。
【
図4】SVにおいてF3と診断される患者の研究の終点(EOS)におけるCHI3L1レベルの測定。
【発明を実施するための形態】
【0013】
NASH及び線維症のスコア化/ステージ分け
組織学的なスコア化/ステージ分けのシステムは、NAFLD活性レベル及び線維症のステージを評価するため並びに臨床的な肝臓の予後への発展のリスクを推定するために開発された。NALFD活性スコア(NALFD-Activity-Score(NAS))は、NAFLDの重症度を評価するために開発された。NASは、肝臓の組織診の切片から決定される3つの組織学的スコア:
- S: 脂肪症スコア(Steatosis score): 0: <5%; 1: 5~33%; 2: 34~66% 及び 3: >66%;
- LI: 小葉炎症スコア(Lobular Inflammation score)(20x視野当たりの病巣): 0: なし; 1: <2病巣; 2: 2~4病巣及び 3: >4病巣;並びに
- HB: 膨化変性スコア(Ballooning degeneration score): 0: なし; 1: わずかに; 2: 多数の細胞/突出した膨化
の合計である。
【0014】
このスコア化システムを使用して、「NASHの患者」はNAS≧3(脂肪症において少なくとも1ポイント、小葉炎症において少なくとも1ポイント及び膨化変性において少なくとも1ポイントで)を有する。「非NASHの」患者は、(i)NAS≧3(脂肪症、小葉炎症及び膨化変性の少なくとも一つが0に等しい)又は(ii)NAS<3のいずれかを有する患者である。加えて、本発明の文脈において、患者は、前記患者がウイルス性肝炎、アルコール関連肝疾患、自己免疫性肝疾患、薬誘発性肝疾患及び慢性肝疾患の先天的な原因、例えば、遺伝性ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、α1アンチトリプシン欠損症及び多嚢胞性卵巣症候群を有する場合、NASH患者であるとして除外される。
【0015】
組織学的な試験における線維症(F)の局在及び範囲は、NASHの重症度(進行度)を示す。NASH-CRN(非アルコール性脂肪性肝炎臨床研究ネットワーク(Nonalcoholic SteatoHepatitis Clinical Research Network))は、使用される、線維症のステージ分けシステムを開発する(Kleiner, D.Eら、Hepatology、2005 Jun; 41(6):1313-21)。
【0016】
【0017】
この線維症のステージ分けのシステムを使用して、線維症を有さない又は最小の線維症を有する患者(F=0~1)は、硬変、HCC(肝細胞癌)又は肝臓関連死のリスクがあるとは一般的に考えられない。有意な(F=2)及び中等度の線維症(F=3)の患者は、硬変、肝不全、HCC及び肝臓関連死を発症するリスクが増す。代償性肝硬変の患者は、深刻な線維症(F=4)を有し、肝不全(非代償性肝硬変)、HCC及び肝臓関連死の高いリスクがある。HCC、硬変の合併症及び肝臓関連死を発症するリスクがある患者を同定することは、肝臓の評価のための決定的な理由である。FDA及びEMAにより定義されるように、薬理学的に治療されるべき、肝臓の予後のリスクがある患者は、NAS≧4(脂肪症、小葉炎症及び膨化のそれぞれについてスコア≧1で)及びNASH-CRN線維症のスコア(F)≧2の患者である。
【0018】
従って、本発明の文脈において:
- 「非NASH」患者は、(i) NAS≧3(脂肪症、小葉炎症及び膨化変性のスコアの少なくとも一つが0に等しい)又は(ii) NAS<3のいずれかを有する患者である
- NAFLD患者は、少なくとも1以上のSスコアを有する患者である;
- 「NASHの進行のリスクにない患者」は、3以上のNAS、1以上のSスコア、1以上のLIスコア、1以上のHBスコア及び0又は1のFスコアを有する患者である;
- 「NASHの進行のリスクがある患者」は、4以上のNAS、1以上のSスコア、1以上のLIスコア、1以上のHBスコア及び2又は3のFスコアを有する患者である;
- 「NASH及び有意な線維症の患者」は、4以上のNAS、1以上のSスコア、1以上のLIスコア、1以上のHBスコア及び2のFスコアを有する患者である;
- 「NASH及び進行した線維症の患者」は、4以上のNAS、1以上のSスコア、1以上のLIスコア、1以上のHBスコア及び3のFスコアを有する患者である;
- 「NASH及び深刻な線維症の患者」は、4以上のNAS、1以上のSスコア、1以上のLIスコア、1以上のHBスコア及び4のFスコアを有する患者である。
【0019】
CHI3L1タンパク質及びその検出
「キチナーゼ3様タンパク質1」又は「CHI3L1」(YKL-40としてもまた知られる)は、およそ40kDaのサイズである、分泌される糖タンパク質である。ヒトにおいて、このタンパク質は、CHI3L1遺伝子によりコードされる。CHI3L1は、マクロファージ、軟骨細胞、線維芽細胞様滑膜細胞、血管平滑筋細胞及び肝星細胞を含む多様な細胞型により発現され分泌される。CHI3L1の生物学的な機能は不明であるが、その発現パターンは、炎症、細胞外の組織リモデリング、線維症及び固形癌及び喘息に関連する病原性のプロセスに関連する。
【0020】
ヒトCHI3L1のアミノ酸配列は、配列番号1において示される(UniProtKBアクセッション番号P36222)。
【0021】
本明細書において、NASH患者由来の血液由来サンプルから測定されるCHI3L1レベルは、NASHの進行又はNASHの重症度を決定するために有利に使用されることができる。
【0022】
CHI3L1レベルのレベルを測定するためのアッセイは、制限することなく、マススペクトロメトリー及びイムノアッセイを含む。CHI3L1レベルは、CHI3L1特異的結合剤、例えば抗CHI3L1抗体を使用して測定されることができる。特定の実施形態において、イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である。この関連において、CHI3L1レベルを決定するための市販のキットは、容易に利用可能であり、例えばQuantikine(登録商標) キチナーゼ3様 1 イムノアッセイ(R&D Systems, Inc.)である。
【0023】
NASHの診断、NASHの進行又はNASHの重症度のリスクの決定
本発明は、患者がNASHのリスクがあるか又はないかどうかを決定するためのin vitroの方法に関する。
【0024】
さらに、本発明は、NASHの患者がNASHの進行のリスクがあるか又はないかどうかを決定するためのin vitroの方法に関する。
【0025】
本発明は、更に、患者におけるNASHの進行を決定するためのin vitroの方法に関する。
【0026】
本発明は、NASHの患者におけるNASHの重症度を決定するためのin vitroの方法にもまた関する。
【0027】
本発明は、NASHの患者において深刻な線維症の存在又はF=4を評価するためのin vitroの方法に関する。
【0028】
患者は、NAFLDを有するとして、又は医師に利用可能な方法のおかげで、潜在的にNASHを有するとして同定された任意の患者であることができる。
【0029】
本発明の方法は、NAFLDの患者の血液、血清又は血漿のサンプルにおける、特異的なバイオマーカーであるCHI3L1タンパク質のレベルの測定、及びこの測定されるレベルと本明細書において提供される参照レベルとの比較に基づく。
【0030】
特定の実施形態において、サンプルは血清のサンプルである。
【0031】
血清のCHI3L1レベルが比較されることのできる、参照レベルの第一のセットは、以下の値を含む。
【0032】
特定の実施形態によると、第一の参照レベルである20,000 pg/mLは、患者がNASHを有するか又はNASHを有さないかどうかを決定するために使用される。第一の参照レベルよりも低い、測定されたCHI3L1レベルは、NASHが存在しないことを示す。第一の参照レベルよりも高い、測定されたCHI3L1レベルは、NASHの診断を示す。
【0033】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、20,000から40,000 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、NASHを有するリスクがある患者を示す。
【0034】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、40,000から70,000 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、NASHの可能性が高い患者を示す。
【0035】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、70,000から100,000 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、有意な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
【0036】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、100,000から150,000 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、進行した線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
【0037】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、150,000から220,000 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、深刻な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す。
【0038】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、220,000 pg/mLの参照レベルが提供される。この参照レベルよりも高い、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、NASH及び深刻な線維症を経験している患者を示す。
【0039】
血清のCHI3L1レベルが比較されることのできる、参照レベルの第二のセットは、以下の値を含む。
【0040】
特定の実施形態によると、第一の参照レベルである25,000 pg/mLは、患者がNASHを有するか又はNASHを有さないかどうかを決定するために使用される。第一の参照レベルよりも低い、測定されたCHI3L1レベルは、NASHが存在しないことを示す。第一の参照レベルよりも高い、測定されたCHI3L1レベルは、NASHの診断を示すことができる。
【0041】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、25,000から33,000 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、NASHを有するリスクがある患者を示す。
【0042】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、33,000から78,000 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、NASHの可能性が高い患者を示す。
【0043】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、78,000から95,000 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、有意な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
【0044】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、95,000から170,000 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、進行した線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
【0045】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、170,000から215,000 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、深刻な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す。
【0046】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、215,000 pg/mLの参照レベルが提供される。この参照レベルよりも高い、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、NASH及び深刻な線維症を経験している患者を示す。
【0047】
血清のCHI3L1レベルが比較されることのできる、参照レベルの第三のセットは、以下の値を含む。
【0048】
特定の実施形態によると、第一の参照レベルである26,727 pg/mLは、患者がNASHを有するか又はNASHを有さないかどうかを決定するために使用される。第一の参照レベルよりも低い、測定されたCHI3L1レベルは、NASHが存在しないことを示す。第一の参照レベルよりも高い、測定されたCHI3L1レベルは、NASHの診断を示す。
【0049】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、26,727から31,211 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、NASHを有するリスクがある患者を示す。
【0050】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、31,211から79,790 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれるサンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、NASHの可能性が高い患者を示す。
【0051】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、79,790から91,399 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、有意な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
【0052】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、91,399から182,880 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、進行した線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す;
【0053】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、182,880から209,604 pg/mLまでの参照範囲レベルが提供される。この範囲内に含まれる、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、深刻な線維症及びNASHの可能性が高い患者を示す。
【0054】
もう一つの実施形態によると、本明細書において、209,604 pg/mLの参照レベルが提供される。この参照レベルよりも高い、サンプルにおいて測定されたCHI3L1レベルは、NASH及び深刻な線維症を経験している患者を示す。
【0055】
当然のことながら、参照値の第一、第二又は第三のセットの選択は、診断を得るための広い又は狭い信頼区間を使用する当業者の選択に依存する。
【0056】
上記で言及される、本発明は、NASHの進行を決定するためのin vitroの方法にもまた関する。この実施形態において、CHI3L1レベルの第一の測定は、ある時点における患者由来のサンプルにおいて実施される。その時、より後の時点において、CHI3L1レベルのもう一つの測定が、同一の患者由来のもう一つのサンプルにおいて実行される。CHI3L1レベルは、それぞれの時点における参照レベルと比較され、疾患の進行は、これらの測定及び前記参照レベルとのそれらの比較に基づいて決定される。従って、本発明により、疾患の進行は、例えば:
- NASH無しから、NASHのリスクまでの、進行;
- NASH無しから、NASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASH無しから、有意な線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASH無しから、進行した線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASH無しから、深刻な線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASH無しから、NASH及び深刻な線維症までの、進行;
- NASHのリスクから、NASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASHのリスクから、有意な線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASHのリスクから、進行した線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASHのリスクから、深刻な線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASHのリスクから、NASH及び深刻な線維症までの、進行;
- NASHの可能性が高いから、有意な線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASHの可能性が高いから、進行した線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASHの可能性が高いから、深刻な線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- NASHの可能性が高いから、NASH及び深刻な線維症までの、進行;
- 有意な線維症を伴うNASHの可能性が高いから、進行した線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- 有意な線維症を伴うNASHの可能性が高いから、深刻な線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- 有意な線維症を伴うNASHの可能性が高いから、NASH及び深刻な線維症までの、進行;
- 進行した線維症を伴うNASHの可能性が高いから、深刻な線維症及びNASHの可能性が高いまでの、進行;
- 進行した線維症を伴うNASHの可能性が高いから、NASH及び深刻な線維症までの、進行;又は
- 深刻な線維症を伴うNASHの可能性が高いから、NASH及び深刻な線維症までの、進行
に対して決定されることができる。
【0057】
CHI3L1レベルに加えて、NASH、NASHの重症度又は肝臓の線維症の他のマーカーのレベルが測定されることができる。例示的な追加のマーカーは、制限することなく、hsa-miR-34a-5p、アルファ-2-マクログロブリン及びHbA1cを含む。
【0058】
特定の実施形態において、本発明により得られる情報は、他のアッセイにより更に確認されることができる。例えば、NASHの進行のリスクがあるとして又は深刻な線維症を伴うNASHを有するとして患者を検出した後で、肝臓の組織診は、この検出を確認するために実行されることができる。本発明の方法は、従って、NASHを有さない、又はNASHの進行のリスクにない患者において肝臓の組織診を実施することを避けるために有利に使用されることができる。
【0059】
本発明のキット
本発明は、更に、特異的にCHI3L1レベルを測定するために適した手段を含むキットに関する。本発明のキットは、更に、NASH、NASHの重症度又は肝臓の線維症に関連する他のマーカーを測定するために適した他の手段を含むことができる。特には、他のバイオマーカーは、hsa-miR-34a-5pである。
【0060】
特定の実施形態において、キットは、血液、血清又は血漿のサンプル、特には血清のサンプル由来のCHI3L1 ELISAアッセイを実施するための手段を含む。例示的な手段は、CHI3L1に特異的な抗体を含む少なくとも一つの容器及び公知の濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む少なくとも一つの容器を含む。特定の実施形態において、公知の濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む少なくとも一つの容器は、本明細書において記載される少なくとも一つの参照レベルの濃度においてCHI3L1を含む、少なくとも一つのコントロールのサンプルを調製するために使用されることができる。もう一つの実施形態において、本明細書において記載される少なくとも一つの参照レベルに相当する濃度においてCHI3L1を含む少なくとも一つの容器である。
【0061】
更にもう一つの実施形態において、本発明のキットは、本発明の方法に適切な範囲内のCHI3L1の検量線を作成するために適した、少なくとも一つの容器を含む。少なくとも一つの容器は、分析の可変性を補うために、前記容器におけるCHI3L1レベルが試験サンプル内のCHI3L1レベルに従って測定されることができるという点で有用である。
【0062】
特定の実施形態において、本発明のキットは、15,000及び275,000 pg/mLの間に含まれる濃度におけるリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む、少なくとも一つの容器を含む。更に特定の実施形態において、キットは、それぞれが15,000及び275,000 pg/mLの間に含まれる濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む、少なくとも二つの容器を含み、リコンビナントCHI3L1タンパク質の濃度はそれぞれの容器内で異なる。
【0063】
もう一つの特定の実施形態において、本発明のキットは、20,000及び220,000 pg/mLの間に含まれる濃度におけるリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む少なくとも一つの容器を含む。更に特定の実施形態において、キットは、それぞれが20,000及び220,000 pg/mLの間に含まれる濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む、少なくとも二つの容器を含み、リコンビナントCHI3L1タンパク質の濃度はそれぞれの容器内で異なる。
【0064】
特定の実施形態において、本発明のキットは、25,000及び215,000 pg/mLの間に含まれる濃度におけるリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む、少なくとも一つの容器を含む。更に特定の実施形態において、キットは、それぞれが25,000及び215,000 pg/mLの間に含まれる濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む、少なくとも二つの容器を含み、リコンビナントCHI3L1タンパク質の濃度はそれぞれの容器内で異なる。
【0065】
特定の実施形態において、本発明のキットは、26,727及び209,604 pg/mLの間に含まれる濃度におけるリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む、少なくとも一つの容器を含む。更に特定の実施形態において、キットは、それぞれが26,727及び209,604 pg/mLの間に含まれる濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む、少なくとも二つの容器を含み、リコンビナントCHI3L1タンパク質の濃度はそれぞれの容器内で異なる。
【0066】
特定の実施形態において、本発明のキットは、以下:
- 20,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 40,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 70,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 100,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 150,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 220,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
から成る群において選択される少なくとも一つの容器を含む。
【0067】
もう一つの実施形態において、本発明のキットは、以下:
- 20,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 40,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 70,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 100,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 150,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 220,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
から選択される少なくとも二つの容器を含む。
【0068】
もう一つの実施形態において、本発明のキットは、以下:
- 20,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 40,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 70,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 100,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 150,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 220,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
の全ての容器を含む。
【0069】
特定の実施形態において、本発明のキットは、以下:
- 25,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 33,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 78,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 95,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 170,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 215,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
から成る群において選択される少なくとも一つの容器を含む。
【0070】
もう一つの実施形態において、本発明のキットは、以下:
- 25,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 33,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 78,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 95,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 170,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 215,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
から選択される少なくとも二つの容器を含む。
【0071】
もう一つの実施形態において、本発明のキットは、以下:
- 25,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 33,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 78,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 95,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 170,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 215,000 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
の全ての容器を含む。
【0072】
特定の実施形態において、本発明のキットは、以下:
- 26,727 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 31,211 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 79,790 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 91,399 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 182,880 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 209,604 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
から成る群において選択される少なくとも一つの容器を含む。
【0073】
もう一つの実施形態において、本発明のキットは、以下:
- 26,727 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 31,211 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 79,790 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 91,399 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 182,880 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 209,604 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
から選択される少なくとも二つの容器を含む。
【0074】
もう一つの実施形態において、本発明のキットは、以下:
- 26,727 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 31,211 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 79,790 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 91,399 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;
- 182,880 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器;及び
- 209,604 pg/mLの濃度においてリコンビナントCHI3L1タンパク質を含む容器
の全ての容器を含む。
【実施例】
【0075】
実施例1 進行のリスクがある又はリスクにないNASH患者を分類するためのELISAアッセイ
1. 患者の特徴
GOLDEN-505コホート(ゴールデン-505 コホート) (NCT01694849)
患者は、アメリカ合衆国(US)及びヨーロッパの国々において募集された。組織学的な算入基準によると、患者は、スクリーニング時に回収された肝臓の組織診が、線維症と共に又は線維症無しで、[NAS]≧3、脂肪症、小葉炎症及び肝細胞の膨化スコアのそれぞれにおいて≧1ポイントの、NASHの存在を示す場合に、介入試験に参加するのに適格であった。血液のサンプルは、標準的な血液学的及び生化学的な解析のための介入の前に回収された。
【0076】
RESOLVE-IT-DIAGコホート(リゾルブ-イット-ダイアグ コホート) (NCT02704403)
患者は、グローバルセンター(US、ラテンアメリカ、中央アメリカ及びヨーロッパ)において募集された。肝臓の組織診は、全ての患者について回収され、全ての細胞診のサンプルが専門家の病理学者により一元的に測定された。血液のサンプルは、標準的な血液学的及び生化学的な解析のための介入の前に回収された。
【0077】
血液学的及び生化学的な解析は、絶食条件下で、GOLDEN-505及びRESOLVE-ITTM試験の中央研究室(BARC-ヨーロッパ、ヘント、ベルギー)により実施された。
【0078】
コホートの人口統計の及びベースラインの特性は、Table 1において記載される。線維症のステージの分布は、コホートを通して類似していた。線維症無し(F0)の又は初期の線維症(F1)の患者は、コホートを通して41%~51%の患者に相当した。
【0079】
【0080】
2. ロー、ミディアム及びハイポジティブコントロールの調製
ヒトCHI3L1の凍結乾燥された標準物質は、R&Dシステムから得られ、健康なヒトの血清のプールは、Bio-Rad(マトリックス#1 Bio-Rad)から得られた。ローポジティブコントロール(非NASHの対象において計算された平均値に相当する)は、Bio-Radマトリックス#1及びCHI3L1を用いて調製された。ミディアムポジティブコントロール(NASH、NAS=4及びF=2の対象における平均値に相当する)は、NIS4TMのためのおよその医療判断のカットオフ値により設定された。ハイポジティブコントロールは、NASH及び深刻な線維症の患者において観察された平均値により設定された(すなわち、NASH及び深刻な線維症を有する患者において測定された平均値に相当する)。希釈は、Bio-Radマトリックス#1において実施された。3つのポジティブコントロール(ロー、ミディアム及びハイ)は、等分され使用まで-80℃で保存された。
【0081】
3. 血清のサンプル及び標準的なポジティブコントロールにおけるCHI3L1レベルの定量化
ポジティブコントロールは、血清サンプルと同様に処理され、製造業者の手順(Quantikine(登録商標) ELISAヒトキチナーゼ3様 1 イムノアッセイキット(RUO)、DC3L10、R&Dシステム、ミネアポリス、USA)を使用して及び自動で、二連で解析された。洗浄工程は、Tecan HydroSpeedTMプレートウォッシャー(Tecan、メンネドルフ、ref. 30054550 スイス)を用いて実施され、測定値は、450nmに設定された、Thermo ScientificTM MultiskanTM GOマイクロプレートスペクトロフォトメーター(ThermoFisher、ref. 51119200 マサチューセッツ、USA)を使用して求めた。
【0082】
データ解析は、それぞれの標準物質、コントロール及びサンプルに対する2連の測定値の平均値を計算し、平均のゼロ基準密度を差し引かれることにより実施された。
【0083】
ポジティブコントロールのそれぞれのロットの範囲の限界は、それぞれのCHI3L1アッセイのランの信頼性のために確立された。範囲の限界は、それぞれ5ランで6回の反復に分けた30回の反復で、新しいロットのそれぞれのコントロールを解析することにより決定された。それぞれのポジティブコントロールの標的濃度は、全てのランを通した平均値として決定された。上限及び下限の濃度は、測定された全ての点において計算される2標準偏差により決定された。それぞれのコントロールは、許容できる範囲(±2 SD)を評価するために34の分離したアッセイ(2連)において試験された。
【0084】
4. 結果
CHI3L1レベルは、GOLDEN-505及びRESOLVE-ITTMの薬の試験からの714人の患者について測定された。
【0085】
【0086】
NASH患者におけるCHI3L1の評価は、線維症無しのNASH患者が42,386 pg/mLプラス又はマイナス2,858 pg/mLのCHI3L1平均レベルを有することを示した。線維症ステージ1のNASH患者は、58,244 pg/mLプラス又はマイナス2,825 pg/mLのCHI3L1平均レベルを有していた。F=0又はF=1の両方のカテゴリーは、NASHの合併症を発症するリスクのないNASH患者を示した。リスクがあるNASH患者は、F=2で、80,802 pg/mLプラス又はマイナス4,750 pg/mL、F=3で、136,598 pg/mLプラス又はマイナス13,042 pg/mL、及びF=4で、144,712 pg/mLプラス又はマイナス59,272 pg/mLのCHI3L1平均レベルを有していた(Table 2)。
【0087】
【0088】
ポジティブ標準コントロールは、約30,000から最大約200,000 pg/mLまでの範囲にあり、任意の活性の薬の治療の前の、Golden-Diag及びResolve-it-Diagコホート由来のNASH患者におけるCHI3L1レベルの全体の範囲をカバーする。ローポジティブコントロールは、26,727から31,211 pg/mlまでの許容範囲で、28,969 pg/mlに決定された。このレベルは、健康な個体の間のNASH患者を診断するために使用される。ミディアムポジティブコントロールは、79,790から91,399 pg/mlまでの許容範囲で、85,594 pg/mlに決定された。このレベルは、進行のリスクがあるNASH患者を診断するために使用される。ハイポジティブコントロールは、182,880から209,604 pg/mlまでの許容範囲で、196,242 pg/mlに決定された。このレベルは、深刻な線維性のNASH疾患を診断するために使用される。
【0089】
変動係数(coefficient of variability)は、セットの平均値によって測定のセットの標準偏差(SD)を割ることにより計算され、それは、その後、平均値への変動の割合として表現される。サンプルの反復間の低い変動係数(CV% < 5%)は、アッセイのランが成功し、結果のデータが正確であり的確であることを証明した。
【0090】
このアッセイによるCHI3L1定量化の結果は、確固としたもので安定しており、より深刻な形態のNASHに向かう進行のリスクがあるNASH患者又は治療すべき患者の診断、モニタリング及び層別化を可能性にする。
【0091】
実施例2 異なる時間における患者のサンプルにおけるCHI3L1タンパク質レベル
本発明の方法は、線維症のスコアを推定するための、NAFLDの患者のサンプルにおける、CHI3L1タンパク質レベルの測定、及びこの測定されたレベルの参照レベルとの比較に基づく。
【0092】
CHI3L1タンパク質レベルは、患者の最初のビジット(SVビジット-スクリーニングビジット)における、及びSV後72週間である研究の終点(EOS)における、ビジットにおける、RESOLVE-IT(リゾルブ-イット)研究由来の異なる集団(431人の患者)において評価された。
【0093】
患者のいくつかのグループは、本発明による方法により決定される、SVにおける彼らの線維症の状態により定義された。彼らの線維症の状態は、その後、本発明による方法により、及び肝臓の組織診を用いて、EOSビジットにおいて確認された。両方の方法は、相関した。
【0094】
【0095】
図1において、SVにおいてF0と診断された患者の大部分は、EOSビジットにおいて安定したままであり(57.6%);線維症の最も高いステージであるF3及びF4へと進行する者はおらず、30%はF1へと、及び12%はF2へと進行した。
【0096】
図2において、SVにおけるF1患者の43%がEOSにおいて安定したままであり、25%は彼らの組織診断をF0へと改善し、及び26.8%はF2へと悪化した。5.4%のみがF3へと悪化し、F4ステージへ移行した患者はいなかった。
【0097】
図3において、SVにおけるF2患者の41%がEOSにおいて安定したままであり、6%及び26%は彼らの肝線維症を、EOSにおいてそれぞれF0及びF1ステージへと改善させた。23.8%及び2.6%は、EOSビジットにおいてそれぞれF3及びF4へと悪化した。
【0098】
図4は、SVにおいてF3と診断された患者の大部分は、EOSビジットにおいて、この肝線維症のステージで安定したままであった(約64%)ことを示す。肝線維症を改善させた患者の数は、少なく(1.5% F0、2.2% F1及び17.8% F2)、SVにおけるF3患者の約15%がF4ステージへと悪化した。
【0099】
まとめると、これらの結果は、異なる線維症のステージ間の患者の進行を示す。実際、これらの結果は、本発明の診断方法が、NASHの患者がNASHの進行のリスクがある又はリスクにないかどうかを決定することができることを示す。
【配列表】
【国際調査報告】