(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイス内の分析物を検出および定量する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230818BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20230818BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230818BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20230818BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20230818BHJP
G01N 33/53 20060101ALN20230818BHJP
【FI】
G01N33/543 525U
G01N33/553
G01N37/00 101
G01N35/10 A
G01N27/327 357
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507924
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021071738
(87)【国際公開番号】W WO2022029160
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523039042
【氏名又は名称】テヒニシュ ウニヴェルジテート ウィーン
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】アーテル,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】アリ,シド,ファヒーム
(72)【発明者】
【氏名】ショーベスベルガー,シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァインベルガー,セリーナ
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA09
2G058CC09
2G058DA07
(57)【要約】
少なくとも1つの入口(3)を備える少なくとも1つの流体チャネル(2)を備えるマイクロ流体デバイス(1)であって、上記少なくとも1つの流体チャネル(2)が、上記少なくとも1つの流体入口(3)の下流の第1のセンサ(4)に流体接続され、第1のセンサ(4)が、本質的に電気的に分離している基板(7)上に形成された少なくとも1つのセンサカソード(5)および少なくとも1つのセンサアノード(6)を備え、センサカソード(5)とセンサアノード(6)とが、電気的に分離している基板(7)上に形成された間隙(8)によって離隔され、少なくとも1つの分析物捕捉分子(9)が、基板(7)上の間隙(8)内に固定化され、少なくとも1つの捕捉分子(9)が、入口(3)に導入され、第1のセンサ(4)に輸送された流体試料の少なくとも1つの分析物(10)を捕捉するように適合されるマイクロ流体デバイス(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの入口(3)を備える少なくとも1つの流体チャネル(2)を備えるマイクロ流体デバイス(1)であって、
前記少なくとも1つの流体チャネル(2)が、前記少なくとも1つの流体入口(3)の下流の第1のセンサ(4)に流体接続され、
前記第1のセンサ(4)が、本質的に電気的に分離している基板(7)上に形成された少なくとも1つのセンサカソード(5)および少なくとも1つのセンサアノード(6)を備え、
前記センサカソード(5)と前記センサアノード(6)とが、前記電気的に分離している基板(7)上に形成された間隙(8)によって離隔され、
少なくとも1つの分析物捕捉分子(9)が、前記基板(7)上の前記間隙(8)内に固定化され、
前記少なくとも1つの捕捉分子(9)が、前記入口(3)に導入され、前記第1のセンサ(4)に輸送された流体試料の少なくとも1つの分析物(10)を捕捉するように適合され、
前記マイクロ流体デバイス(1)が、前記流体チャネル(2)または前記第1のセンサ(4)に流体接続された少なくとも1つの第2のセンサ(11)を備え、
前記少なくとも1つの第2のセンサ(11)が、本質的に電気的に分離している基板(7)上に形成された少なくとも1つのセンサカソード(5)および少なくとも1つのセンサアノード(6)を備え、
前記センサカソード(5)と前記センサアノード(6)とが、前記電気的に分離している基板(7)上に形成された間隙(8)によって離隔され、
少なくとも1つの捕捉分子(9)が、前記基板(7)上の前記間隙(8)内に固定化され、
少なくとも1つの捕捉分子(9)が、前記入口(3)に導入され、前記第2のセンサ(11)に輸送された試料の少なくとも1つの分析物(10)を捕捉するように適合され、
前記少なくとも1つの第2のセンサ(11)の前記センサカソード(5)と前記センサアノード(6)との間の前記間隙(8)のサイズが、前記第1のセンサ(4)の前記間隙(8)と比較して異なり、
前記少なくとも1つの第2のセンサ(11)が、前記第1のセンサ(4)の下流で前記流体チャネル(2)に接続されるマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項2】
流体チャネル(2)に流体試料を導入するための入口(3)を有する流体チャネル(2)を備える膜なし燃料電池であって、
前記燃料電池が、
燃料電池カソード(18)と、
前記燃料電池カソード(18)から燃料電池間隙(25)によって離隔された燃料電池アノード(19)とを備え、
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(1)が、前記燃料電池間隙(25)が、前記入口(3)から前記燃料電池間隙(25)まで前記流体チャネル(2)を介して輸送された前記流体試料によって充填され得るように配置され、
前記燃料電池カソード(18)の材料と、前記燃料電池アノード(1)の材料とが、前記燃料電池間隙(25)が体液によって充填されると、電圧を生成するように選択される膜なし燃料電池。
【請求項3】
前記デバイス(1)が、
緩衝液を収容する第1のリザーバ(12)と、
少なくとも1つの分析物結合分子(15)を収容する第2のリザーバ(13)と、
銀剤を収容する第3のリザーバ(14)とを備え、
前記第1のリザーバ(12)、前記第2のリザーバ(13)および前記第3のリザーバ(14)が、それらのそれぞれの内容物を、前記流体チャネル(2)、前記第1のセンサ(4)および/または前記第2のセンサ(11)に排出するように適合される、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項4】
前記第1のセンサ(4)の前記センサカソード(5)および前記センサアノード(6)が、櫛形構成で配置される、請求項1または3のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2のセンサ(11)の前記センサカソード(5)および前記センサアノード(6)が、櫛形構成で配置される、請求項1または3から4のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項6】
前記第1のセンサ(4)および/または前記少なくとも1つの第2のセンサ(11)に接続可能な、または接続された電源(17)を備える、請求項1または3から5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項7】
前記電源(17)が、誘導結合コイルを備える、請求項6に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項8】
前記第1のセンサ(4)および/または前記少なくとも1つの第2のセンサ(11)が、それぞれのセンサ読出しデバイス(20)に接続されるかまたは接続可能である、請求項1または3から7のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項9】
前記リザーバ(12、13、14)が、前記流体入口(3)と前記第1のセンサ(4)との間の前記流体チャネル(2)に流体接続され、
前記第1のリザーバ(12)が、前記第1のセンサ(4)の上流に接続され、
前記第2のリザーバ(13)が、前記第1のリザーバ(12)の上流に接続され、
前記第3のリザーバ(14)が、前記第2のリザーバ(13)の上流に接続され、
前記第1のリザーバ(12)、前記第2のリザーバ(13)および前記第3のリザーバ(14)が、好ましくは、前記それぞれのリザーバ(12、13、14)と前記流体チャネル(2)との間に位置する膜をそれぞれ備える、請求項3に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの分析物捕捉分子(9)および/または少なくとも1つの分析物結合分子(15)が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、Fab’断片およびF(ab’)2断片からなる群から好ましくは選択される抗体またはその断片である、請求項1または3から9のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの分析物結合分子(15)が、金属ナノ粒子、好ましくは不活性金属ナノ粒子、さらに好ましくは金ナノ粒子によって標識される、請求項3に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項12】
前記銀剤が、銀塩、好ましくは硝酸銀である、請求項3に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項13】
前記電源(17)が、燃料電池を備え、
燃料電池が、好ましくは、燃料電池カソード(18)と、前記燃料電池カソード(18)から燃料電池間隙(25)によって離隔された燃料電池アノード(19)とを備える膜なし燃料電池であり、
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)が、前記燃料電池間隙(25)が、前記入口(3)から前記燃料電池間隙(25)まで前記流体チャネル(2)を介して輸送された前記流体試料によって充填され得るように配置され、
前記燃料電池カソード(18)の材料と、前記燃料電池アノード(19)の材料とが、前記燃料電池間隙(25)が体液によって充填されると、電圧を生成するように選択される、請求項7に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項14】
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)が、1つの平面内に配置され、
前記流体チャネル(2)が、前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)の上を通る、請求項13に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項15】
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)が、前記流体チャネル(2)の両側に配置される、請求項13に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項16】
前記膜なし燃料電池が、並列または直列電気回路に配置された複数の燃料電池カソード(18)および複数の燃料電池アノード(19)を備える、請求項13から15のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項17】
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)が、直角を有する三角形状を備え、
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(1)が、それらのそれぞれの斜辺を互いに対向させて配置される、請求項14に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項18】
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(1)が、直角を有する三角形状を備え、
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)が、それらのそれぞれの斜辺を互いに対向させて配置され、
前記流体チャネル(2)が、前記燃料電池アノード(18)および前記燃料電池カソード(19)の斜辺の間を通る、請求項13に記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項19】
1つ以上の流体試料中の少なくとも1つの分析物(10)の検出、および/または定量を行う方法であって、
a)請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスの少なくとも1つの流体チャネル(2)、または、前記第1のセンサ(4)、および、任意で前記少なくとも1つの第2のセンサ(11)に、少なくとも1つの流体試料を導入するステップと、
b)前記デバイスの少なくとも1つの流体チャネル(2)、または、前記第1のセンサ(4)、および、任意で前記少なくとも1つの第2のセンサ(11)に、少なくとも1つの分析物結合分子(15)を適用するステップと、
c)前記デバイスの少なくとも1つの流体チャネル(2)、または、前記第1のセンサ(4)、および、任意で前記少なくとも1つの第2のセンサ(11)に、銀剤を適用するステップと、
d)少なくとも1つのセンサカソード(5)および少なくとも1つのセンサアノード(6)に電流を印加するステップと、
e)前記少なくとも1つのセンサカソード(5)と前記少なくとも1つのセンサアノード(6)との間の電流の流れの検出、および/または決定を行うステップと、を含む方法。
【請求項20】
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(1)が、1つの平面内に配置され、
前記流体チャネル(2)が、前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)の上を通る、請求項2に記載の膜なし燃料電池。
【請求項21】
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)が、前記流体チャネル(2)の両側に配置される、請求項2に記載の膜なし燃料電池。
【請求項22】
並列または直列電気回路に配置された複数の燃料電池カソード(18)および複数の燃料電池アノード(19)を備える、請求項2、20または21に記載の膜なし燃料電池。
【請求項23】
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)が、直角を有する三角形状を備え、
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)が、それらのそれぞれの斜辺を互いに対向させて配置される、請求項20に記載の膜なし燃料電池。
【請求項24】
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)が、直角を有する三角形状を備え、
前記燃料電池カソード(18)および前記燃料電池アノード(19)が、それらのそれぞれの斜辺を互いに対向させて配置され、
前記流体チャネル(2)が、前記燃料電池アノード(19)および前記燃料電池カソード(18)の斜辺の間を通る、請求項2に記載の膜なし燃料電池。
【請求項25】
請求項2および20から24のいずれか一項に記載の膜なし燃料電池を使用して電圧を生成する方法において、
・体液を提供するステップ
・前記膜なし燃料電池の前記入口(3)に前記体液を導入するステップ、を特徴とする方法。
【請求項26】
請求項2および20から24のいずれか一項に記載の膜なし燃料電池を備えるマイクロ流体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、流体試料中の分析物の検出、および/または定量を行うためのマイクロ流体デバイスおよび方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]発展途上国は世界人口の84%を占めているが、世界の医療費の12%を支出するにとどまり、同時に世界の疾病負荷の90%を担っている。この不一致の結果として、発展途上国では、伝染性および非伝染性の疾患の発生は極めて高いままである。2013年だけでも、例えば、脳卒中、心疾患および糖尿病ならびにインフルエンザ、肝炎など多数の普通であれば治療可能な疾患により、800万人を超える人々が60歳に達する前に死亡した。この状況には、過去10年間にわたって大きな改善は見られず、第三世界諸国は、例えば、感染性疾患の正確な診断、および保健医療施設へのアクセスを含む多くの保健医療の課題に依然として取り組んでいる。保健医療施設へのアクセスが限られているため、外来患者の診断は、即時の注意を必要とし、場合によっては検疫措置を必要とする、軽度、中等度および重度の症例を識別する上で重要である。残念なことに、電気、冷蔵、および訓練された人員を有する完全に装備された機能的な実験施設は大都市でのみ利用可能であり、したがって、農村社会は大部分は脆弱で保護されていないままである。
【0003】
[0003]また、近年の経験から、感染性疾患の正確な診断における同様の課題が、パンデミックの大流行中には先進国でも存在することが示されている。これらの状況では潜在的感染者が多数存在するために、保健医療施設は急速に過負荷になり、高度な保健医療システムを有する国であっても、診断実験施設の能力は不十分であることが判明している。
【0004】
[0004]マイクロ流体デバイスを使用するラボオンチップ技術は、複雑な流体の取扱い、試料処理、信号増幅および検出を行う能力について知られており、ポイントオブケア状況で現場で診断アッセイを行うための1つの好適な代替案と考えられている。WHO ASSURED基準によれば、理想的なポイントオブケアデバイスは、手頃な価格で使いやすいものである必要があり、かさばる高価な機器がない場合に、信頼性が高く堅牢な情報をエンドユーザに迅速に提供する。実際、現在のポイントオブケア検査デバイスの高い感度、特異性および精度のために、例えば、感染症を初期段階で検出することによって、第三世界諸国では既に無数の命が守られている。例えば、分子診断アッセイ、ラテラルフローアッセイ、マイクロフルイディクス、プラズモンおよび紙ベースのデバイスに基づくいくつかのポイントオブケアデバイスが、例えば、HIV、ZIKA、エボラおよびデング熱などのウイルス感染症の検出について報告されている。ポイントオブケアデバイスの適用の成功はまた、2017年には201億5000万米ドルを占め、CAGRが12.4%であり、2026年までに578億5000万米ドルに達すると予測される世界市場価値にも反映されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]本発明の目的は、本格的な実験施設を必要とせずに、感染性疾患の安価で正確で迅速な診断を行う手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]したがって、本発明は、少なくとも1つの入口を備える少なくとも1つの流体チャネルを備えるマイクロ流体デバイスに関する。本発明によるマイクロ流体デバイスの上記少なくとも1つの流体チャネルは、上記少なくとも1つの流体入口の下流の第1のセンサに流体接続され、第1のセンサは、本質的に電気的に分離している基板上に形成された少なくとも1つのセンサカソードおよび少なくとも1つのセンサアノードを備える。センサカソードとセンサアノードとは、電気的に分離している基板上に形成された間隙によって離隔され、少なくとも1つの分析物捕捉分子は、基板上の間隙内に固定化される。少なくとも1つの捕捉分子は、入口に導入され、第1のセンサに輸送された流体試料の少なくとも1つの分析物を捕捉するように適合される。マイクロ流体デバイスは、流体チャネルまたは上記第1のセンサに流体接続された少なくとも1つの第2のセンサを備え、少なくとも1つの第2のセンサは、本質的に電気的に分離している基板上に形成された少なくとも1つのセンサカソードおよび少なくとも1つのセンサアノードを備える。第2のセンサのセンサカソードとセンサアノードとは、電気的に分離している基板上に形成された間隙によって離隔され、少なくとも1つの捕捉分子は、基板上の間隙内に固定化され、少なくとも1つの捕捉分子は、入口に導入され、第2のセンサに輸送された試料の少なくとも1つの分析物を捕捉するように適合される。少なくとも1つの第2のセンサのセンサカソードとセンサアノードとの間の間隙は、第1のセンサの間隙よりも大きいまたは小さいサイズであり、少なくとも1つの第2のセンサは、第1のセンサの下流の流体チャネルに接続される。それよりも大きいまたは小さいとは、少なくとも1つの第2のセンサのセンサカソードとセンサアノードとの間の間隙が、第1のセンサの間隙と比較してサイズが大きいまたは小さいことを意味する。第1のセンサおよび第2のセンサのセンサ間隙間のサイズの変動は、製造プロセス中に生じる変動の結果ではなく、様々な感度および測定結果を達成するために互いに異なるように意図的に選択される。好ましくは、第1のセンサと第2のセンサとの間のセンサ間隙は、約5%~10%異なる。また、50%以上のように、間隙のサイズにさらに大きな差を使用することも可能である。
【0007】
[0007]本発明によるマイクロ流体デバイスは、流体試料中に存在する分析物の存在および量を決定することを可能にするため、特に有利である。そのような分析の過程で、流体試料の分析物は、分析物捕捉分子によって第1のセンサと第2のセンサとの間隙内に捕捉される。その後、金属、好ましくは不活性金属、さらに好ましくは金を含む粒子によって標識された第2の分析物結合分子が、マイクロ流体デバイス、特にセンサに導入される。この第2の分子は、分析物に結合し、その結果、間隙内に存在する分析物が標識される。次のステップでは、銀を含む溶液がマイクロ流体デバイス、特にセンサに導入される。その後、アノードとカソードとの間の非導電性間隙を架橋するのに十分な金属粒子が存在する間隙内で銀デンドライトが形成され、それによって、普通であれば中断される電気回路が接続される。
【0008】
[0008]本発明の別の態様は、1つ以上の流体試料中の少なくとも1つの分析物の検出、および/または定量を行う方法であって、a)本発明によるデバイスの少なくとも1つの流体チャネルに、または第1のセンサに、および任意で少なくとも1つの第2のセンサに、少なくとも1つの流体試料を導入するステップと、b)上記デバイスの少なくとも1つの流体チャネルに、または第1のセンサに、および任意で少なくとも1つの第2のセンサに、少なくとも1つの分析物結合分子を適用するステップと、c)上記デバイスの少なくとも1つの流体チャネルに、または第1のセンサに、および任意で少なくとも1つの第2のセンサに、銀剤を適用するステップと、d)少なくとも1つのセンサカソードおよび少なくとも1つのセンサアノードに電流を印加するステップと、e)少なくとも1つのセンサカソードと少なくとも1つのセンサアノードとの間の電流の流れの検出、および/または決定を行うステップと、を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】マイクロフルイディクス、読出しデバイスに接続された親和性に基づくセンサ、および一体型燃料電池を組み合わせた、バイオマーカーの超低検出のための携帯型および自己動力供給式ラボオンチップシステム(本発明のマイクロ流体デバイス)の概要を示す。
【
図2】
図1によるマイクロ流体デバイスのセンサの断面図を示す。
図2aは、分析物を捕捉するための、親和性に基づく検出原理に基づくナノベースのイムノアッセイを概略的に示す。
図2bは、二次抗体によって修飾された金ナノ粒子(50nm)を使用した標識を示す。
図2cは、電極間の間隙を閉じ、燃料電池と読出しシステムとの電気接続をもたらすための銀デンドライト形成を使用した信号増幅を示す。
【
図3】(i)ヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼおよびラッカーゼに基づく酵素燃料電池の動作原理、ならびに(ii)等価回路モデルの概略図を示す。
【
図4】A)最適なリンカー化学を決定するための、親和性に基づくアッセイの光学分析を示す。様々な表面修飾技術の吸光度値をグラフ±SDで示す。B)ナノ結晶性表面タンパク質(S層SbpA/ZZ)のプロテインA領域に対する一次IgG抗体の部位特異的結合配向の概略図。C)櫛形電極構造間に導電性架橋を形成するのに必要な、ナノ金によって標識された銀デンドライト形成の電流-時間トレース。
【
図5】(A)リン酸緩衝生理食塩水(0.01Mのリン酸緩衝液濃度、および0.154Mの塩化ナトリウム濃度)に希釈した漸増ヒトIgG濃度の存在下で得られた電流値(n=3)、ならびに(B)漸減分析物(ヒトIgG)濃度を添加したヒト血漿の存在下で記録された電気信号を示す。
【
図6】本発明によるマイクロ流体デバイスの可能な実装形態を示す。
【
図7】本発明によるマイクロ流体デバイス内で使用可能な燃料電池の概略図を示す。
【
図8】
図7の燃料電池の代替実施形態の概略図を示す。
【
図9】固定化のための様々な方法を使用したガラス上の抗体の結合の比較を示す。
【
図10】実施例2によるバイオアッセイを使用した吸光度の濃度依存的増加を示す。
【
図11】SARS-COV 2スパイクタンパク質の存在下での本発明のセンサの電極の架橋を示す(実施例2を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[00020]本発明のマイクロ流体デバイスは、当技術分野で公知の方法を使用して製造され得る。該デバイスは、該デバイスの基部を形成する基板としてポリマーまたはガラスを使用して製造され得る。上記基板上に、チャネルが形成され、電極、アノードおよびカソードが配置される。基板と、チャネルを形成するために使用される材料とは、実質的に電気的に分離している。用語「実質的に電気的に分離している」は、「電気的に分離している」ことも含む。
【0011】
[00021]本発明のマイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの流体チャネルに流体接続された複数のセンサを備える。したがって、本発明によるマイクロ流体デバイスは、流体チャネルまたは上記第1のセンサに流体接続された少なくとも1つの第2のセンサを備え、少なくとも1つの第2のセンサは、本質的に電気的に分離している基板上に形成された少なくとも1つのセンサカソードおよび少なくとも1つのセンサアノードを備え、センサカソードとセンサアノードとは、電気的に分離している基板上に形成された間隙によって離隔され、少なくとも1つの捕捉分子は、基板上の間隙内に固定化され、少なくとも1つの捕捉分子は、入口に導入され、第2のセンサに輸送された試料の少なくとも1つの分析物を捕捉するように適合される。
【0012】
[00022]少なくとも1つの第2のセンサの存在は、少なくとも1つの第2のセンサの間隙内に固定化している分析物捕捉分子が第1のセンサとして別の分析物に結合し、別の分析物を捕捉することができる場合に、試料中の複数の分析物の存在を同時に決定することを可能にするため、特に有利である。さらに、第1のセンサの間隙の寸法とは異なる、少なくとも1つの第2のセンサの間隙の寸法を選択することによって、分析物のさらに広い構成の濃度を本発明によるマイクロ流体デバイスによって検出することができる。試料内の分析物の定量的または半定量的決定は、同じ間隙サイズを有する異なるセンサを使用することによっても達成することができる。
【0013】
[00023]本発明によるマイクロ流体デバイスの好ましい実施形態によれば、該デバイスは、緩衝液を収容する第1のリザーバと、少なくとも1つの分析物結合分子を収容する第2のリザーバと、銀剤を収容する第3のリザーバとを備え、第1のリザーバ、第2のリザーバおよび第3のリザーバは、それらのそれぞれの内容物を流体チャネルに、第1のセンサに、および/または第2のセンサに排出するように適合される。
【0014】
[00024]流体チャネル内の第1のリザーバ、第2のリザーバおよび第3のリザーバの内容物を排出することによって、第1のセンサおよび/または少なくとも1つの第2のセンサの銀架橋がセンサの間隙内に形成され、これにより、上述のようにセンサのカソードとアノードとの間の導電性が促進される。
【0015】
[00025]本発明の一部ではない例によれば、少なくとも1つの第2のセンサのセンサカソードとセンサアノードとの間の間隙は、第1のセンサの間隙と本質的に等しいサイズである。
【0016】
[00026]本発明によれば、少なくとも1つの第2のセンサのセンサカソードとセンサアノードとの間の間隙は、第1のセンサの間隙よりも大きいまたは小さいサイズであり、少なくとも1つの第2のセンサは、第1のセンサの下流の流体チャネルに接続される。この構成によって、第1のセンサの間隙が分析物によって飽和すると、第2のセンサを使用して、さらに広範囲の分析物濃度を検出することができる。
【0017】
[00027]好ましくは、第1のセンサのセンサカソードおよびセンサアノードは、櫛形構成で配置される。櫛形構成は、センサの感度を高める。
【0018】
[00028]好ましい実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、第1のセンサおよび/または少なくとも1つの第2のセンサに接続可能な、または接続された電源を備える。
【0019】
[00029]本発明のデバイスの電極に電流を印加するために、電極は、外部電源または内部電源に接続され得る。内部電源の使用は、さらなるデバイスを用いることなくマイクロ流体デバイスを使用することを可能にするため、特に好ましい。
【0020】
[00030]本発明の好ましい実施形態によれば、電源、好ましくは内部電源は、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードを備える燃料電池を備え、燃料電池カソードと燃料電池アノードとは、流体チャネルによって分離されている。この実施形態は、本発明によるマイクロ流体デバイスの動作に外部電源が必要ないという利点を提供する。
【0021】
[00031]代替実施形態によれば、電源は、誘導結合コイルを備える。これにより、非接触式電力伝達という利点が提供される。
【0022】
[00032]本発明によるマイクロ流体デバイスは、燃料電池を備える電源を備えてもよく、燃料電池は、好ましくは、燃料電池カソードと、燃料電池カソードから燃料電池間隙によって離隔された燃料電池アノードとを備える膜なし燃料電池であり、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、燃料電池間隙が、入口から燃料電池間隙まで流体チャネルを介して輸送された流体試料によって充填され得るように配置され、燃料電池カソードの材料と、燃料電池アノードの材料とは、燃料電池間隙が体液によって充填されると、電圧を生成するように選択される。この実施形態によれば、マイクロ流体デバイスの動作電圧は、分析される試料を使用することによって直接生成され得る。
【0023】
[00033]この実施形態によれば、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、1つの平面内に配置されてもよく、流体チャネルは、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードの上を通る。
【0024】
[00034]あるいは、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、流体チャネルの両側に配置されてもよい。
【0025】
[00035]膜なし燃料電池はまた、並列または直列電気回路に配置された複数の燃料電池カソードおよび複数の燃料電池アノードを備えてもよい。
【0026】
[00036]燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、直角を有する三角形状を備えてもよく、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、それらのそれぞれの斜辺を互いに対向させて配置されてもよい。
【0027】
[00037]燃料電池カソードおよび燃料電池アノードはまた、直角を有する三角形状を備えてもよく、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、それらのそれぞれの斜辺を互いに対向させて配置されてもよく、流体チャネルは、燃料電池アノードおよび燃料電池カソードの斜辺の間を通る。
【0028】
[00038]好ましい実施形態によれば、第1のセンサおよび/または少なくとも1つの第2のセンサは、それぞれのセンサ読出しデバイスに接続されるかまたは接続可能である。センサ読出しデバイスは、好ましくは、電源に接続されるかまたは接続可能である。有利には、センサ読出しデバイスは、LEDを備え、マイクロ流体デバイスの各センサは、少なくとも1つのLEDに接続されるかまたは接続可能である。
【0029】
[00039]代替実施形態によれば、センサ読出しデバイスは、アクティブ型RFID回路を備える。
【0030】
[00040]好ましくは、マイクロ流体デバイスは、流体入口の反対側に位置する、流体チャネルの端部で流体チャネルに接続された流体吸収領域を備える。流体吸収領域は、流体チャネルを通る流体輸送速度を改善する。流体吸収領域は、セルロースもしくはその誘導体、または試験ストリップ内の液体を吸収するために典型的に使用される任意の好適な材料を備え得る。
【0031】
[00041]好ましい実施形態によれば、リザーバは、流体入口と第1のセンサとの間の流体チャネルに流体接続され、第1のリザーバは、第1のセンサの上流に接続され、第2のリザーバは、第1のリザーバの上流に接続され、第3のリザーバは、第2のリザーバの上流に接続される。この構成により、第1のリザーバに収容された流体が、第2のリザーバに収容された流体よりも先に第1のセンサに到達し、第2のリザーバに収容された流体が、第3のリザーバに収容された流体よりも先に第1のセンサに到達することが確実になる。
【0032】
[00042]好ましくは、第1のリザーバ、第2のリザーバおよび第3のリザーバは、それぞれのリザーバと流体チャネルとの間に位置する膜をそれぞれ備える。膜はまた、流体チャネルへの流体の導入の順序を制御することを可能にする。
【0033】
[00043]本発明の一実施形態によれば、第1のリザーバの膜は、第2のリザーバの膜よりも薄く、第2のリザーバの膜は、第3のリザーバの膜よりも薄い。
【0034】
[00044]流体の流れを制御するために、膜は、好ましくは、流体試料と接触すると溶解するように適合され、第1のリザーバの膜は、第2のリザーバの膜よりも速く溶解するように適合され、第2のリザーバの膜は、第3のリザーバの膜よりも速く溶解するように適合される。
【0035】
[00045]膜は、好ましくは、セルロース(紙)、ポリマーもしくは鉱物などの水溶性材料を含むかまたはそれからなる。
【0036】
[00046]有利な実施形態によれば、少なくとも1つの分析物捕捉分子および/または少なくとも1つの分析物結合分子は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、Fab’断片およびF(ab’)2断片からなる群から好ましくは選択される抗体またはその断片である。その断片の抗体が、ウイルスタンパク質、好ましくはコロナウイルスタンパク質、さらに好ましくはSARS CoV 2ウイルスタンパク質に結合することができることが特に好ましい。ウイルスタンパク質は、好ましくはエンベロープタンパク質、さらに好ましくはスパイクタンパク質、さらに好ましくはコロナウイルススパイクタンパク質、さらに好ましくはSARS CoV 2スパイクタンパク質、さらに好ましくはSARS CoV 2スパイクS1タンパク質である。
【0037】
[00047]さらに、少なくとも1つの分析物結合分子は、金属ナノ粒子、好ましくは不活性金属ナノ粒子、さらに好ましくは金ナノ粒子によって標識され得る。
【0038】
[00048]本発明で使用される金属ナノ粒子は、10~100nm、好ましくは20~80nm、さらに好ましくは30~60nm、さらに好ましくは40~60nm、さらに好ましくは約50nmの直径を有し得る。
【0039】
[00049]銀剤は、銀塩、好ましくは硝酸銀、または市販の銀増強セットであり得る。
【0040】
[00050]本発明の別の態様は、1つ以上の流体試料中の少なくとも1つの分析物の検出、および/または定量を行う方法であって、
a)本発明によるデバイスの少なくとも1つの流体チャネルに、または第1のセンサに、および任意で少なくとも1つの第2のセンサに、少なくとも1つの流体試料を導入するステップと、
b)上記デバイスの少なくとも1つの流体チャネルに、または第1のセンサに、および任意で少なくとも1つの第2のセンサに、少なくとも1つの分析物結合分子を適用するステップと、
c)上記デバイスの少なくとも1つの流体チャネルに、または第1のセンサに、および任意で少なくとも1つの第2のセンサに、銀剤を適用するステップと、
d)少なくとも1つのセンサカソードおよび少なくとも1つのセンサアノードに電流を印加するステップと、e)少なくとも1つのセンサカソードと少なくとも1つのセンサアノードとの間の電流の流れの検出、および/または決定を行うステップと、を含む方法に関する。
【0041】
[00051]本発明はまた、流体チャネルに流体試料を導入するための入口を有する流体チャネルを備える膜なし燃料電池に関し、燃料電池は、燃料電池カソードと、燃料電池カソードから燃料電池間隙によって離隔された燃料電池アノードとを備え、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、燃料電池間隙が、入口から燃料電池間隙まで流体チャネルを介して輸送された流体試料によって充填され得るように配置され、燃料電池カソードの材料と、燃料電池アノードの材料とは、燃料電池間隙が体液によって充填されると、電圧を生成するように選択される。
【0042】
[00052]膜なし燃料電池の燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、1つの平面内に配置されてもよく、流体チャネルは、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードの上を通る。
【0043】
[00053]燃料電池カソードおよび燃料電池アノードはまた、流体チャネルの両側に配置されてもよい。
【0044】
[00054]膜なし燃料電池はまた、並列または直列電気回路に配置された複数の燃料電池カソードおよび複数の燃料電池アノードを備えてもよい。
【0045】
[00055]燃料電池カソードおよび燃料電池アノードはまた、直角を有する三角形状を備えてもよく、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、それらのそれぞれの斜辺を互いに対向させて配置されてもよい。
【0046】
[00056]燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、直角を有する三角形状を備えてもよく、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードは、それらのそれぞれの斜辺を互いに対向させて配置されてもよく、流体チャネルは、燃料電池アノードおよび燃料電池カソードの斜辺の間を通る。
【0047】
[00057]本発明はまた、上記の膜なし燃料電池を使用して電圧を生成する方法において、
・体液を提供するステップ
・膜なし燃料電池の入口に体液を導入するステップ、を特徴とする方法に関する。
本発明はまた、上記の膜なし燃料電池を備えるマイクロ流体デバイスに関する。
【0048】
[00058]別の代替例によれば、マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの入口を備える少なくとも1つの流体チャネルを備え、上記少なくとも1つの流体チャネルは、上記少なくとも1つの流体入口の下流の第1のセンサに流体接続され、第1のセンサは、本質的に電気的に分離している基板上に形成された少なくとも1つのセンサカソードおよび少なくとも1つのセンサアノードを備え、センサカソードとセンサアノードとは、電気的に分離している基板上に形成された間隙によって離隔され、少なくとも1つの分析物捕捉分子は、基板上の間隙内に固定化され、少なくとも1つの捕捉分子は、入口に導入され、第1のセンサに輸送された流体試料の少なくとも1つの分析物を捕捉するように適合される。この例によれば、マイクロ流体デバイスはまた、第1のセンサおよび/または少なくとも1つの第2のセンサに接続可能な、または接続された電源を備え、電源は、燃料電池カソードおよび燃料電池アノードを備える燃料電池を備え、燃料電池カソードと燃料電池アノードとは、流体チャネルによって分離されている。
【0049】
[00059]この例の好ましい実施形態によれば、マイクロ流体デバイスは、流体チャネルまたは上記第1のセンサに流体接続された少なくとも1つの第2のセンサを備え、少なくとも1つの第2のセンサは、本質的に電気的に分離している基板上に形成された少なくとも1つのセンサカソードおよび少なくとも1つのセンサアノードを備え、センサカソードとセンサアノードとは、電気的に分離している基板上に形成された間隙によって離隔され、少なくとも1つの捕捉分子は、基板上の間隙内に固定化され、少なくとも1つの捕捉分子は、入口に導入され、第2のセンサに輸送された試料の少なくとも1つの分析物を捕捉するように適合される。
【0050】
[00060]さらに、この例によるマイクロ流体デバイスでは、少なくとも1つの第2のセンサのセンサカソードとセンサアノードとの間の間隙は、好ましくは第1のセンサの間隙に対してサイズが異なる(varies)か、または好ましくは第1のセンサの間隙よりも大きいもしくは小さいサイズであり、少なくとも1つの第2のセンサは、第1のセンサの下流の流体チャネルに接続される。あるいは、少なくとも1つの第2のセンサのセンサカソードとセンサアノードとの間の間隙は、第1のセンサの間隙と本質的に等しいサイズである。
【0051】
[00061]代替例のマイクロ流体デバイスは、好ましくは、緩衝液を収容する第1のリザーバと、少なくとも1つの分析物結合分子を収容する第2のリザーバと、銀剤を収容する第3のリザーバとを備え、第1のリザーバ、第2のリザーバおよび第3のリザーバは、それらのそれぞれの内容物を流体チャネルに、第1のセンサおよび/または第2のセンサに排出するように適合される。
【0052】
[00062]マイクロ流体デバイスの代替例では、第1のセンサのセンサカソードおよびセンサアノードは、櫛形構成で配置され得る。
【0053】
[00063]少なくとも1つの第2のセンサのセンサカソードおよびセンサアノードも、櫛形構成で配置され得る。
【0054】
[00064]マイクロ流体デバイスの代替例では、第1のセンサおよび/または少なくとも1つの第2のセンサは、それぞれのセンサ読出しデバイスに接続され得るかまたは接続可能であり得る。
【0055】
[00065]さらに、リザーバは、流体入口と第1のセンサとの間の流体チャネルに流体接続され得、第1のリザーバは、第1のセンサの上流に接続され、第2のリザーバは、第1のリザーバの上流に接続され、第3のリザーバは、第2のリザーバの上流に接続され、第1のリザーバ、第2のリザーバおよび第3のリザーバ(14)は、好ましくは、それぞれのリザーバと流体チャネルとの間に位置する膜をそれぞれ備える。
【0056】
[00066]少なくとも1つの分析物捕捉分子および/または少なくとも1つの分析物結合分子は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、Fab’断片およびF(ab’)2断片からなる群から好ましくは選択される抗体またはその断片であり得る。
【0057】
[00067]少なくとも1つの分析物結合分子は、金属ナノ粒子、好ましくは不活性金属ナノ粒子、さらに好ましくは金ナノ粒子によって標識され得る。
【0058】
[00068]銀剤は、銀塩、好ましくは硝酸銀であり得る。
【0059】
[00069]1つ以上の流体試料中の少なくとも1つの分析物の検出、および/または定量を行う方法はまた、上記の代替例によるマイクロ流体デバイスを用いて行われてもよく、
a)マイクロ流体デバイスの少なくとも1つの流体チャネルに、または第1のセンサに、および任意で少なくとも1つの第2のセンサに、少なくとも1つの流体試料を導入するステップと、
b)上記デバイスの少なくとも1つの流体チャネルに、または第1のセンサに、および任意で少なくとも1つの第2のセンサに、少なくとも1つの分析物結合分子を適用するステップと、
c)上記デバイスの少なくとも1つの流体チャネルに、または第1のセンサに、および任意で少なくとも1つの第2のセンサに、銀剤を適用するステップと、
d)少なくとも1つのセンサカソードおよび少なくとも1つのセンサアノードに電流を印加するステップと、
e)少なくとも1つのセンサカソードと少なくとも1つのセンサアノードとの間の電流の流れの検出、および/または決定を行うステップと、を含む。
本発明の範囲内で、バイオ燃料電池および燃料電池という表現は、区別なく使用され得る。さらに、燃料電池は、燃料電池またはバッテリとして本発明の範囲内で定義され、ここで、電解質は、流体チャネルによって供給される。
【0060】
[00070]図面を参照して、本発明によるマイクロ流体デバイスおよび方法の好ましい代替実施形態を以下に説明する。
【0061】
[00071]図面の詳細な説明
図1は、好ましい実施形態における本発明によるマイクロ流体デバイス1を示す。マイクロ流体デバイス1は、少なくとも1つの入口3を備える少なくとも1つの流体チャネル2を備える。
図1に示すマイクロ流体デバイスは、1つの流体チャネル2と1つの入口3とを備える。流体チャネル2は、上記少なくとも1つの流体入口3の下流の第1のセンサ4に流体接続されている。第1のセンサ4は、本質的に電気的に分離している基板7上に形成された少なくとも1つのセンサカソード5および少なくとも1つのセンサアノード6を備える。第1のセンサ4の断面は、
図2a
図2bおよび
図2cに示されている。センサカソード4とセンサアノード5とは、電気的に分離している基板7上に形成された間隙8によって離隔されている。少なくとも1つの分析物捕捉分子9は、基板7上の間隙8内に固定化され、少なくとも1つの捕捉分子9は、入口3に導入され、第1の4センサに輸送された流体試料の少なくとも1つの分析物10を捕捉するように適合される。
【0062】
[00072]本発明によるマイクロ流体デバイス1は、流体チャネル2または上記第1のセンサ4に流体接続された少なくとも1つの第2のセンサ11を備える。
図1では、2つの第2のセンサ11が設けられている。少なくとも1つの第2のセンサ11は、本質的に電気的に分離している基板7上に形成された少なくとも1つのセンサカソード5および少なくとも1つのセンサアノード6を備える。したがって、第2のセンサ11は、第1のセンサと同じ基本構造を備える。第2の11のセンサカソード5とセンサアノード6とは、電気的に分離している基板7上に形成された間隙8によって離隔され、少なくとも1つの捕捉分子9は、基板7上の間隙8内に固定化され、少なくとも1つの捕捉分子9は、入口3に導入され、第2のセンサ11に輸送された試料の少なくとも1つの分析物10を捕捉するように適合される。第2のセンサ11を設けることによって、第1のセンサ4の結果の検証を実現することができる。また、第2のセンサ11を実装することによって、第1のセンサ4と比較して第2のセンサ11内に異なる捕捉分子9を選択することによって、同じ試料内で異なる分析物10を検出してもよい。
図2a
図2bおよび
図2cは、第2のセンサ11を示す役割も果たす。
【0063】
[00073]
図1に示すように、マイクロ流体デバイス1は、好ましい実施形態によれば、緩衝液を収容する第1のリザーバ12と、少なくとも1つの分析物結合分子15を収容する第2のリザーバ13と、銀剤を収容する第3のリザーバ14とを備え、第1のリザーバ12、第2のリザーバ13および第3のリザーバ14は、それらのそれぞれの内容物を流体チャネル2に、第1のセンサ4に、および/または第2のセンサ11に排出するように適合される。第1のセンサ4および/または第2のセンサ11への排出とは、内容物が第1のセンサ4および/または第2のセンサ11の間隙8に直接的または間接的に排出されるという意味で解釈されるべきである。リザーバ12、13および14は、
図1に示すように、流体チャネル2への固定接続を備え得るか、または流体チャネル2とは別個のリザーバ12、13、14として提供され得、それらのそれぞれの内容物を流体チャネル2、第1のセンサ4および/または第2のセンサ11に導入するために流体チャネル2に接続され得る。この実施形態によれば、リザーバ12、13、14は、例えば、シリンジなどとして設けられてもよい。
図2a~
図2cでは、リザーバ12、13、14は、シリンジとして示されている。流体チャネル2に緩衝液を導入し、続いて分析物結合分子15を導入し、最後に銀剤を導入することによって、
図2cに示す第1のセンサ4および/または第2のセンサ11の銀架橋16が、分析物捕捉分子9によってセンサ間隙8内に捕捉された分析物10の量に応じて、第1のセンサ4および/または第2のセンサ11のカソード5とアノード6との間に形成される。これらの銀架橋16は、センサカソード5とセンサアノード6との間の導電性に影響を及ぼす。導電性を測定することによって、流体試料に含有される分析物10の量を導出することができる。本発明の一部ではない例によれば、少なくとも1つの第2のセンサ11のセンサアノード5とセンサカソード6との間のセンサ間隙8は、第1のセンサ4の間隙8と本質的に等しいサイズであるように選択されてもよい。これにより、第1のセンサ4によって得られた結果の検証が提供される。
【0064】
[00074]本発明によるマイクロ流体デバイス1によれば、少なくとも1つの第2のセンサ11のセンサカソード5とセンサアノード6との間の間隙8は、第1のセンサ4の間隙8よりも大きいまたは小さいサイズであり、少なくとも1つの第2のセンサ11は、第1のセンサ4の下流の流体チャネル2に接続される。第1のセンサ4および第2のセンサ11の異なる間隙8を設けることによって、第1のセンサ4および第2のセンサ11は、異なる検出限界を示すように設計され得る。
【0065】
[00075]好ましくは、第1のセンサ4および/または第2のセンサ11のセンサカソード5およびセンサアノード6は、櫛形構成で配置される。櫛形構成を
図1に示す。櫛形構成は、間隙8に開口するセンサカソード5およびセンサアノード6の表面積を増加させ、それによって、センサカソード5とセンサアノード6との間に銀架橋16を形成することによって間隙8を架橋する可能性を高める。
【0066】
[00076]本発明によるマイクロ流体デバイス1の好ましい実施形態によれば、マイクロ流体デバイス1は、第1のセンサ4および/または少なくとも1つの第2のセンサ11に接続可能な、または接続された電源17を備える。
図1に示す実施形態では、電源17は、燃料電池カソード18および燃料電池アノード19を備えるバイオ燃料電池を備え、燃料電池カソード18および燃料電池アノード19は、流体チャネル2によって分離されている。
図1に示す電源は、それぞれマイクロ流体デバイス1の第1のセンサ4に、または第2のセンサ11のうちの1つにそれぞれ接続された3つのバイオ燃料電池を特徴とする。したがって、
図1の実施形態によれば、各センサ4、11は、別個のバイオ燃料電池に接続される。この実施形態は、本発明によるマイクロ流体デバイス1の動作に外部電源が必要ないという利点を提供する。あるいは、従来技術で公知の電源17、例えば、バッテリ、蓄電池、電力グリッドおよびソーラーパネルを電源として使用してもよい。
【0067】
[00077]代替実施形態によれば、電源17は、誘導結合コイルを備える。これにより、非接触式電力伝達という利点が提供される。
【0068】
[00078]
図1は、センサ読出しデバイス20を示し、第1のセンサ4および/または少なくとも1つの第2のセンサ11は、それぞれのセンサ読出しデバイス20に接続されるかまたは接続可能である。センサ読出しデバイス20は、電源17にさらに接続され、センサ読出しデバイス20はLEDを備え、マイクロ流体デバイスの各センサは、少なくとも1つのLEDに接続されるかまたは接続可能である。
図1では、LEDの各々は、異なる色を有する。第1のセンサ4には緑色LEDが接続され、第1のセンサ4の下流の第2のセンサ11には青色LEDが接続され、青色LEDに接続された第2のセンサ11の下流の第2のセンサ11には赤色LEDが接続されている。流体チャネル2の下流方向に徐々に増加するように第1のセンサ4および2つの第2のセンサ11の間隙8を選択することによって、流体試料中の検出された分析物10の量の簡単な視覚的読出し。
【0069】
[00079]本発明によるマイクロ流体デバイス1の技術的にさらに洗練された実施形態では、センサ読出しデバイス20は、例えば、PCのようなコンピュータユニット、またはスマートフォン、タブレット、ラップトップなどのようなポータブルデバイスにセンサ読出しを無線送信するために、アクティブ型RFID回路を備える。
図1に示すように、本発明の好ましい実施形態によるマイクロ流体デバイス1は、流体入口3の反対側に位置する、流体チャネル2の端部で流体チャネル2に接続された流体吸収領域21を備える。流体吸収領域21は、スポンジまたは綿毛のような流体吸収媒体を備えてもよい。流体吸収領域21は、マイクロ流体デバイス1を通る流体輸送の速度を増加させる。
【0070】
[00080]好ましい実施形態によれば、リザーバ12、13、14は、流体入口3と第1のセンサ4との間の流体チャネル2に流体接続され、第1のリザーバ12は、第1のセンサ2の上流に接続され、第2のリザーバ13は、第1のリザーバ12の上流に接続され、第3のリザーバ14は、第2のリザーバ13の上流に接続される。この構成の1つの可能な適合を
図1に示す。あるいは、リザーバ12、13、14は、例えば、直線状に配置され、流体入口3と第1のセンサ4との間でマイクロ流体デバイス1の流体チャネル2に合流する第2の流体チャネルによって接続され得る。
【0071】
[00081]好ましくは、第1のリザーバ12、第2のリザーバ13および第3のリザーバ14は、それぞれのリザーバと流体チャネル2との間に位置する膜をそれぞれ備える。膜は図には示されていない。このような膜を含むことによって、本発明によるデバイス1に、ユーザの介入、または電源を必要としない自動化された直列排出機構を実装することができる。この変形例の好ましい実施形態では、第1のリザーバ12の膜は、第2のリザーバ13の膜よりも薄く、第2のリザーバ13の膜は、第3のリザーバ14の膜よりも薄い。この実施形態によれば、膜は、流体試料と接触すると溶解するように適合され、第1のリザーバ12の膜は、第2のリザーバ13の膜よりも速く溶解するように適合され、第2のリザーバ13の膜は、第3のリザーバ14の膜よりも速く溶解するように適合される。膜は、好ましくは、セルロース(紙)、ポリマーもしくは鉱物としての水溶性材料を含むかまたはそれからなる。
【0072】
[00082]好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの分析物捕捉分子9および/または少なくとも1つの分析物結合分子15は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、Fab’断片およびF(ab’)2断片からなる群から好ましくは選択される抗体またはその断片である。
【0073】
[00083]さらに、少なくとも1つの分析物結合分子15は、好ましい実施形態によれば、金属ナノ粒子、好ましくは不活性金属ナノ粒子、さらに好ましくは金ナノ粒子によって標識される。
【0074】
[00084]好ましくは、銀剤は、銀塩、好ましくは硝酸銀、または市販の銀増強セットである。
【0075】
[00085]
図6は、本発明によるマイクロ流体デバイス1の代替実施形態を示し、流体チャネル2は、入口3の下流に第1のチャネル22および第2のチャネル23を備える。
図3では、入口3は、流体チャネルに導入される試料流体の液滴とともに示されている。第1のチャネル22は、入口3をリザーバ12および13に接続しており、リザーバ12および13は、流体入口3と第1のセンサ4との間で流体チャネル2の第1のチャネル22に流体接続されている。
図1に示すリザーバ14のように、本質的にリザーバ12および13の位置に1つ以上の追加のリザーバを設けてもよい。本質的に、センサ4の位置および下流に、
図1の実施形態に関して開示したように、1つ以上の第2のセンサ11を設けてもよい。センサ4および11の下流には、流体吸収領域21が設けられ、流体吸収領域21は、スポンジまたは綿毛のような流体吸収媒体を備えてもよい。
【0076】
[00086]第2のチャネル23は、入口3を、センサ4および11のための電源17として機能する上述の燃料電池、好ましくは膜なし燃料電池と接続する。燃料電池は、直列接続で配置された複数の燃料電池カソード18および複数の燃料電池アノード19を備える。あるいは、燃料電池カソード18および燃料電池アノード19はまた、並列接続で配置されてもよい。
図6に示すように、流体チャネル2は、試料を燃料電池間隙25に導入し、それによって、電解質を供給して電気を生成する。燃料電池は、電気を供給するためにセンサ4および11に接続される。上述のセンサ読出しデバイス20もまた、燃料電池とセンサ4および11との間で電気接続して設けられる。コンジュゲートパッド24も、入口3の下流および燃料電池の上流で流体チャネル2と流体接続して設けられてもよい。コンジュゲートパッド24は、燃料電池に追加の電解質を供給する役割を果たす。
【0077】
[00087]
図7および
図8は、本発明による燃料電池の異なる実施形態を概略図で示す。燃料電池の形態の電源17は、上述のように設計され、燃料電池カソード18と燃料電池アノード19との間の燃料電池間隙25は、流体チャネル2を介して入口3に接続される。燃料電池カソード18および燃料電池アノード19は、センサ読出しデバイス20に電気的に接続される。
図8に示す実施形態では、燃料電池は、追加のパッド26を備える。
【実施例】
【0078】
[00088]
【実施例1】
【0079】
[00089]材料および方法
【0080】
[00090]迅速プロトタイピングを使用したマイクロ流体バイオチップの製作
【0081】
[00091]AutoCADを使用して、バイオセンサアレイおよびバイオ燃料電池用の電気リードおよび電極を作成するための金属堆積に必要なマイクロ流体チャネルレイアウトおよびシャドーマスクを設計した。全体として、
図1に示すマイクロデバイスは、(1)マイクロ電極、マイクロセンサアレイおよびLEDを収容するガラス底部基板と、(2)PDMSマイクロ流体層と、(3)穿孔された入口ポートおよび出口ポートを収容するガラス上部カバーとからなっていた。Roland Cutter(CAMM-1、GS-24)を使用して、厚さ250μmのPDMS(ポリジメチルシロキサン)箔(MVQ Silicones、SIP40HT6240GK0,25)を切断することによって、マイクロ流体チャネル網およびシャドーマスクを製作した。洗浄したガラス基板(2%helminex(Hellme analytics)溶液の存在下で超音波処理し、続いて、イソプロパノール洗浄、および脱イオン水(DI)中での最終すすぎステップを行ったの上にPDMSシャドーマスクを最初に置き、Von Ardenne LSxxxスパッタシステムを使用して50nmのチタン接着層および80nmの金層を堆積させることによって電極を製作し、Harrick Plasma(PDC-002-CE)を使用して2分間洗浄した後、接合した。1mm幅のマイクロ流体チャネルによって分離された各円形ヒドロゲルチャンバ(r=3mm)の中央に、2つのバイオ燃料電池電極(2.5mm×5mm)を配置した。
【0082】
[00092]サイクリックボルタンメトリーを使用したレドックス媒介酵素反応の特性評価
【0083】
[00093]ヘキサシアノ鉄(III/II)酸カリウムレドックス対(Alfa Aesar,033357;Fluka,60279)をCV試験で使用して、酵素から電極への電子移動反応を特性評価した。Potentiostat VMP3(Bio-logic SA)を使用して、レドックス対と酵素グルコースオキシダーゼおよびラッカーゼとの間の最大電子移動に必要な電位を決定した。1:2の比のヘキサシアノ鉄(III/II)酸カリウムと0.5mg/mLのグルコースオキシダーゼ(Sigma Aldrich、G7141)とからなるストック溶液から得られた40μLのアリコートを、500μLおよび100mMのD-Glucose(Sigma Aldrich、G5400)と混合し、金電極の上にすぐに置いた。電気化学電池を含む3つの電極(Au WE、Pt-CEおよびAg/AgCl Ref)に対して、Potentiostat VMP3から100mV/sの走査速度を適用し、得られたピーク値をEC-lab V9.98を使用して記録した。
【0084】
[00094]ヒドロゲルへの酵素およびメディエータの捕捉、ならびにバイオ燃料電池の特性評価
【0085】
[00095]酵素およびメディエータの両方をフィブリンヒドロゲル中で混合し、重合させて1KPaの剛性を得た。ここで、CaCl2に希釈した15μLのフィブリンおよび50μL 2U/mLのトロンビンを、(a)アノード側のための15μLのグルコースオキシダーゼ(Sigma Aldrich、G7141;PBS中2.5mg/mL)または(b)カソード側のためのPBS(Roche)中2.5mg/mlの濃度の15μLのラッカーゼ(Sigma Aldrich、40452)を含む20μLのヘキサシアノ鉄(III/II)酸カリウム溶液(PBS(Roche)中60mMと混合した。各酵素-メディエータ-フィブリンヒドロゲル混合物をそれぞれのチャンバに充填し、PCRホイルによって密封し、RGで30分間放置して、ヒドロゲル重合を完了させた。10mV/sの走査速度(Potentiostat VMP3)でサイクリックボルタンメトリーを使用して、漸増グルコース溶液の存在下で、マイクロ流体酵素バイオ燃料電池の性能評価を行った。
【0086】
[00096]EDC、アスコルビン酸およびS層を使用した抗体による捕捉領域の生体官能化
【0087】
[00097]A)抗ヒトIgG(Sigma Aldrich、I9135-2ML)抗体を反応緩衝液PBS(pH7.5)で1mg/mLの濃度に希釈し、Amicon Ultra-0.5遠心機を使用して遠心分離し、緩衝液交換のために濾過した。標準的なEDC/sulfo-NHSリンカー化学を使用して、ガラス表面への架橋Abを達成した。要約すると、1.1mgのsulfo-NHS(Thermo Scientific、24510)を1mLの抗体溶液に加え、RTで1時間インキュベートし、遠心分離して過剰のSulfo-NHSを除去した。次に、1mLのMES緩衝液(pH6.0)をAb溶液に加え、緩衝液交換のために遠心分離し、続いて、0.4mgのEDC(Thermo Scientific、22980)および1.1mgのSulfo-NHSを順次加えた。反応混合物をRTで15分間インキュベートし、遠心分離して過剰のEDCおよびSulfo-NHSを除去し、PBS中で再構成して、1μg/mLの最終Ab濃度を得た。ガラス底部基板(VWR、631-1577)の生体官能化の前に、ガラスをイソプロパノールおよびDI水によってすすぎ、Harrick Plasma(PDC-002-CE)を使用して2分間プラズマ処理し、無水エタノール中3%APTES(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)(Sigma Aldrich、440140-100ML)を使用して30分間インキュベートした。最終ステップでは、Ab溶液を加え、2時間インキュベートした後、DI水によって徹底的にすすいだ。
【0088】
[00098]B)アスコルビン酸リンカープロトコルは当技術分野で公知である。要約すると、洗浄し、APTES修飾したガラス基板(上記のプロトコルを参照)を0.5Mアスコルビン酸(sigma Aldrich、A7506-100G)溶液(メタノール)とRTで30分間インキュベートし、DIによって広範囲にすすいだ。次に、修飾ガラス基板を抗ヒトIgG溶液(上記を参照)によって被覆し、RTで16時間インキュベートした。
【0089】
[00099]C)(Rothbauer,M.,et al.(2017)ACS applied materials&interfaces,9(39),34423-34434)から、操作された表面タンパク質層rSbpA31-1068/ZZを使用したナノバイオインターフェースの確立を適合する。ここで、2mgの凍結乾燥rSbpA31-1068/ZZタンパク質を1mlの5M GHCL(塩酸グアニジン)pH7.2にRTで20分間溶解し、直径6mmの透析管(Biomol、08390.30)に移し、水を満たしたフラスコの中に入れ、4℃で30分間撹拌し、13000rpmで15分間遠心分離した。280nmでのUV測定によって最終タンパク質濃度を決定し、100μLのアリコートを4℃で保存した。適用前に、rSbpA31-1068/ZZタンパク質溶液をTRIS緩衝液(0.5mMトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン中10mm CaCl2、pH-9)で1:10に希釈し、プラズマ処理ガラス基板の上にピペットで移し、40Cで一晩インキュベートして、rSbpA31-1068/ZZの再結晶化を可能にした。DI水による複数のすすぎステップの後、抗ヒトIgG溶液(上記を参照)を加え、RT(室温)で2~4時間かけてS層のプロテインA領域(ZZ)にAbを結合させた。S層への抗体(ab)の共有結合を確実にするために、最終ステップでは、10倍過剰のDMPリンカー(thermo scientific、21666)のTRIS緩衝液溶液を室温で30~60分間かけて加えた。
【0090】
[000100]吸光度分光法を使用して、Enspireプレートリーダーを使用して選択された生体官能化戦略の質を比較した。吸収分光法は、320~700nmの波長を使用して1nmのステップサイズで行った。
【0091】
[000101]銀増強化学を使用してヒトIgGを検出するための親和性に基づくナノ金標識サンドイッチイムノアッセイ
【0092】
[000102]サンドイッチバイオアッセイは、最初にRTで10分間、抗ヒトIgG Abを含有する生体官能化表面にヒトIgG(Sigma Aldrich、I4506)を結合させ、続いて、RTでさらに10分間かけて、二次抗ヒトIgGコンジュゲート金ナノ粒子(BBI solutions、BA.GAH40/X)溶液(DI水で1:2希釈)を使用して標識することを伴う。未結合の二次ナノ金標識Abを除去するためのすすぎステップ後、銀増強混合物による信号増強を表面結合金ナノ粒子に付加して、中断されたセンサリードを電気的に接続する銀デンドライトを形成した。市販の銀エンハンサーキット(Sigma Aldrich、SE100)からの2つの試薬AおよびBを1:2混合することによって、金表面での銀還元を達成する。元素銀への硝酸銀の還元をRTで5~10分以内に行い、続いて、DIまたはPBSを使用してアクセス銀溶液(access silver solution)を除去した。
【0093】
[000103]従来の電流検出型原子間力顕微鏡法を使用した銀デンドライト形成の特性評価
【0094】
[000104]中断された電極リード間の導電性架橋の形成を視覚化および検証するために、Nanoscope(viii)マルチモード走査型プローブ顕微鏡(Brucker、California)を使用して、タッピングモードで時間分解AFMを行った。タッピングモードには、単結晶シリコーンカンチレバー(NCH、Nanosensors)を使用し、cAFMには、ホウ素ドープダイヤモンド被覆シリコーンカンチレバー(Piontprobe CONT、NanoWorld、Switzerland)を使用した。
【0095】
[000105]結果および考察
【0096】
[000106]自己動力供給式ラボオンチップシステムの設計概念および特性評価
【0097】
[000107]現在の自己動力供給式ラボオンチップ設計は、共通のマイクロ流体プラットフォーム上にバイオ燃料電池、マイクロセンサおよび表示ユニットを組み合わせて、遠隔地で試料の取扱い、感知および読出しを行う。
図1は、試料入口ポートと、銀試薬、ナノ金標識二次抗体および緩衝液を含む3つのリザーバと、センサおよび一方向コネクタスイッチおよび酵素バイオ燃料電池として作用する櫛形電極構造とを特徴とするバイオチップの図面を示す。マイクロ流体バイオ燃料電池の基本原理と、基礎となる回路等価性とを
図3に示し、
図2は、実装されたバイオアッセイ戦略を明らかにする。自己動力供給式ラボオンチップの重要な設計基準は、超低検出限界でバイオマーカーおよび病原体を同定する能力である。この目的を達成するために、(1)抗体-抗原結合事象を増加させるための表面生体官能化の最適化(
図2a)および(2)銀増強化学を使用した信号増幅(
図2c)を含む2つの戦略が調査されている。
【0098】
[000108]任意の親和性に基づく検出方法における重要なステップは、分析物を捕捉、保持および検出するために必要なバイオインターフェースの最適化である。合計3つの抗体では、吸光度分光法を使用して、2つの架橋剤化学とS層技術とを含む固定化戦略を最初に評価した。
図4Aは、EDC-NHSおよびアスコルビン酸(ASA)リンカー化学ならびに操作されたS層SbpA/ZZを使用して抗IgG抗体を9つのカバーガラス(n=3)上に固定化した比較試験の結果を示す。S層のIgGに対する特異的プロテインA結合シーケンスは、0.07という最も高い吸光度値をもたらし、0.06のEDC-NHS、およびASA 0.05(例えば、対照0.01)が続いた。3つの固定化プロトコルはいずれも同様の結果をもたらしたが、結合部位での抗体の好ましい配向(
図4Bも参照)、再結晶化rSbpA/ZZタンパク質層の固有の防汚特性および高い多孔性のために電極表面での効率的な電子移動を可能にすることから、組換えS層系rSbpA/ZZをその後の実験のために選択した。これはまた、単一の固定化手順が、金電極および分離ガラス基板などの2つの異なる表面材料上へのAbの同時付着を可能にすることを意味する。金表面での効果的なS層堆積と、ZZ領域内のAb結合とを検証するために、AFMおよび蛍光アッセイをその後の実験で行う。
図4Cに示す結果から、金表面でのタンパク質再結晶化の成功と、電極領域全体にわたる完全な被覆とが明らかにされた。最終ステップでは、サイクリックボルタンメトリーを使用して、rSbpA/ZZ-抗ヒトIgGなどの二重タンパク質表面層の存在下で機能的に電極を確認した。
【0099】
[000109]捕捉抗体の固定化最適化に続いて、5μm幅の間隙にわたって導電性架橋を形成する銀増強化学の能力を詳細に調査する。特に、その後の実験では、櫛形電極構造の2つの個々のフィンガを電気的に接続するのに必要な銀濃度および時間を評価した。S層によって感知領域(5μm×5μm)を被覆し、S層を1μg/mLの抗ヒトIgGとともに一晩インキュベートし、続いて、1μg/mLのヒトIgGをRTで30分間かけて加えた後、抗ヒトIgGコンジュゲート金ナノ粒子を加えた。各ステップ間にPBSを用いてPDMSマイクロウェルを十分にすすいだ。最終ステップとして、銀試薬の10μLアリコートをセンサの上部にピペットで移し、0.3Vに設定したPotentiostatを使用して0、1、3、5、7および10分で電流読取り値を得た。ヒトIgGの非存在下では(陰性対照)、銀デンドライトの形成と電流の流れとは観察されなかった。金ナノ粒子の存在下で反応時間とともに顕著に増加する測定可能な電流を得るためには、最低3分が必要であることが判明した。DI水によってセンサ領域を広範囲にすすぐことによって銀試薬を除去すると、各時点で銀デンドライトの形成が停止した。10分後に撮影された顕微鏡画像では、感知領域の上部に厚い銀層の形成が明確に示され、30分を超える反応時間では、元素銀凝集体の非特異的で自発的な形成がもたらされた。10分の反応時間内の銀凝集体の望ましくない形成を排除するために、銀試薬をDIで希釈して、反応性硝酸銀の濃度を低下させた。
【0100】
[000110]標準的な電流検出型原子間力顕微鏡法(AFM)を使用した一方向スイッチ感知戦略の検証
【0101】
[000111]上記で得られた結果が実際に金ナノ粒子での銀デンドライトの形成によって引き起こされる信号生成に基づいていることを検証するために、時間分解AFM、XPSおよび導電性AFM試験を行って、(a)導電性架橋を形成するのに必要な金ナノ粒子の数、(b)材料、および層の厚さ、ならびに(c)サブミクロン厚の銀架橋を流れる電流の流れを同定する。最初のAFM画像では、電極表面、およびフィンガ電極間の間隙領域に位置するナノ金標識二次Abの存在が明らかにされた。次に、1μg/mLのヒトIgGおよび1μg/mLのナノ金標識を使用して、完全に飽和したナノ金表面の存在下で電極上の層厚が100μmに達した、銀堆積(5分)後に得られたAFM画像。追加のXPS分析により、上部銀層、続いて金およびガラス基板の存在が明らかにされたため、RTで5分間という短い反応時間後の元素銀の選択的堆積が確認された。次に、時間分解タッピングモードAFMを行って、2つの電極フィンガ間に固体架橋を作成するための個々の金ナノ粒子からの銀デンドライトの初期形成および成長を追跡した。
図5は、銀架橋の開始、成長および形成を捕捉する一連のAFM画像を示す。この最初のAFM試験の結果から、5分間の反応期間中に2つの電極フィンガ間の5μmの間隙を架橋するのに十分な硝酸銀を還元するために、少なくとも2~3個の金ナノ粒子が必要であることが明らかにされた。言い換えれば、5分間の反応時間内で、銀デンドライトの形成は、金ナノ粒子のサイズを30~50倍顕著に増加させる。個々の銀架橋の形成が実際に電気を伝導するかどうかをさらに検証するために、電流検出型AFMを使用して、先端と材料の表面との間の電流の流れを測定した。銀架橋の非存在下および存在下でのcAFM画像から、銀増強化学が、2つの分離された電極リードを電気的に接続し、したがって、本発明のラボオンチップ構成では一方向スイッチとして作用する能力が確認された。
【0102】
[000112]自己動力供給式ラボオンチップシステムの性能評価
【0103】
[000113]銀増強化学の適用の主な前提は、超低検出限界を得ることであった。マイクロ流体一方向感知スイッチの検出限界を最初に推定するために、緩衝液およびヒト血漿試料中のIgGの濃度を15pg/mLから2pg/mLに低下させることを調査した。例えば、
図5Aは、外部読出し部に接続された長さ6mmおよび400μmのマイクロ流体チャネルを有して配置された30個の櫛形電極構造から得られた電流読取り値を示す。4分間の測定期間にわたる平均電流値は、2pg/mLのIgG濃度の存在下で既に172±0.9μAをもたらしたが、漸増IgG濃度の存在下では、非線形信号挙動が見出された。これは、本発明者らの現在のバイオアッセイのLODが、約100μg/mLの市販のELISAキットによって一般的に達成されるものの48分の1であることを意味する。さらに広い範囲のIgG濃度にわたってバイオアッセイ性能をさらに評価するために、ヒト血漿試料にIgGを添加した。
図5Bは、それぞれ11.9±0.2、79±12、168±2、220±5、326±1.6、433±0.7μAをもたらす2、5、10、50および100pg/mLのIgGの存在下での電流読取り値を示す。興味深いことに、ヒト血漿の存在下での172μAから12μAまでの14分の1の電流減少にもかかわらず、2pg/mLのIgGはラボオンチップによって容易に検出された。興味深いことに、20pg/mLまでの線形信号増加、続いて、100pg/mLのIgG後の電流プラトーの確立が得られ、十分な導電性架橋の存在下での飽和が示された。最終実験では、一方向感知スイッチおよび外部読出し部(Ohmmeter)に接続されたマイクロ流体バイオ燃料電池からなる一体型自己動力供給式ラボオンチップを、IgGを添加した血漿、および全血試料に対して検証した。全血試料は測定可能な電流を生成することができなかったが、10、20および30pg/mLの添加ヒト血漿試料の10μLアリコートは、12.5μA、18.3μAおよび29.4μAをもたらした。
【0104】
[000114]
【実施例2】
【0105】
[000115]材料および方法
【0106】
[000116]製作ウェルアレイ
【0107】
[000117]顕微鏡スライドを2%Hellmanex(登録商標)III溶液に浸し、超音波浴に5分間入れることによって最初に洗浄した。次いで、溶液を廃棄し、超音波浴内でそれぞれ5分間かけて、イソプロパノールおよびその後の水と交換した。スライドを加圧空気によって最初に乾燥させ、次いで、80℃のオーブン内で1時間乾燥させた。
【0108】
[000118]ウェルアレイのために、ガラス上に3つのポリジメチルシロキサン(PDMS)層を接合した。そのため、Roland DG製のカッティングプロッターCAMM-1 GS-24を使用して、PDMSシートにおいて直径3mmのウェルを切断した。ピンセットを使用して切欠きを取り除き、Harrick Plasma製のPlasma Cleaner PDC-002-CEを使用して層を互いに重ねて接合した。第1のPDMS層を清浄な顕微鏡スライド上に接合し、以下の層をPDMS上に接合した。チップをオーブン内に15分間置くことによって接合を強化した。
【0109】
[000119]固定化方法
【0110】
[000120]吸着
【0111】
[000121]抗体の固定化方法として吸着を使用して、洗浄した顕微鏡スライドをさらに表面修飾しなかった。Alexa Fluor 488ヤギ抗ラットIgG抗体をPBSで希釈して、3つの異なる濃度(1、10、100μg/ml)を得、各ウェルに5μlを加えた。抗体を1時間インキュベートし、その後廃棄した。ウェルを洗浄緩衝液(PBS中0.05%Tween(商標)20)を用いて洗浄した後、撮像した。
【0112】
[000122]共有結合
【0113】
[000123]ガラス表面への抗体の共有結合のために、(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシ-シラン(3-MPS)を無水エタノールで希釈して、0.56mg/mlの最終濃度を得た。ウェルとともに、洗浄した顕微鏡スライド(1に記載のように調製)をプラズマ処理によって活性化した。次いで、10μlの3-MPS溶液を各ウェルに加え、30分間インキュベートした。一方、N-γ-マレイミドブチリル-オキシスクシンイミドエステル(GMBS)をDMSOに溶解して100mg/mlのストック溶液を得、これをエタノールでさらに希釈して、0.56mg/mlの最終濃度にした。
【0114】
[000124]3-MPSインキュベーション後、エタノールを用いてウェルを洗浄した。調製した10μlのGMBS溶液を加え、さらに35分間インキュベートした。その後、エタノールおよびPBSを用いてウェルを洗浄し、最後に、吸収の下で上述したように抗体溶液をインキュベートすることができた。
【0115】
[000125]プロテインG
【0116】
[000126]ウェルの調製は上記(共有結合)と同じであるが、抗体を共有結合的に固定化する代わりに、プロテインGを1mg/mlの濃度で1.5時間かけて加えた。その後、洗浄緩衝液(PBS中0.05%Tween(商標)20)を用いてウェルを洗浄し、上記(吸収)の異なる抗体濃度を加えた。
【0117】
[000127]ガラス基板を用いたサンドイッチELISA
【0118】
[000128]上記(共有結合)の方法を使用して、SARS CoV 2のスパイクS1タンパク質に対する捕捉抗体を固定化した。固定化後、5μlのスパイクS1タンパク質を30分間インキュベートし、その後ウェルを洗浄した。サンドイッチを完了させるために、スパイクS1タンパク質に対するビオチン化検出抗体5μlを30分間インキュベートした。洗浄緩衝液を用いてウェルを洗浄し、ストレプトアビジンとコンジュゲートした西洋ワサビペルオキシド(HRP)10μlを加えた。最後に、30分間のインキュベーション、およびウェルの洗浄後、10μlの3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を加え、さらに15分間インキュベートした。0.18M H2SO4を用いて酵素反応を停止させ、プレートリーダーを使用してウェルを分析した。
【0119】
[000129]電極を用いたサンドイッチELISA
【0120】
[000130]検出抗体インキュベーションまでの最初のステップは、上記(ガラス基板を用いたサンドイッチELISA)と同じであるが、電極を用いて、15分という短いインキュベーション時間を使用して行う。次いで、HRP/ストレプトアビジンの代わりに、ストレプトアビジン標識金ナノ粒子を使用した。最終ステップでは、銀増強溶液を10分間かけて加えて、金ナノ粒子のサイズを増強した。
【0121】
[000131]5μmの間隙を有する市販の電極を使用した。
【0122】
[000132]結果および考察
【0123】
[000133]この実施例で使用した市販の電極は、基板としてガラスを使用するため、ガラス基板のための異なる抗体固定化方法を試験した。結果(
図9)は、プロテインGを使用した配向固定化が最良の結果を示したことを示す。ただし、共有結合も、さらに高い抗体濃度で信号の増加を示す。結果として、これらの方法は、抗体をガラス上に固定化するのに適しているはずである。
【0124】
[000134]このラボオンチッププラットフォームにおけるバイオアッセイは、サンドイッチELISAに類似している。ただし、酵素的読出しの代わりに、検出抗体を金ナノ粒子によって標識する。サンドイッチアセンブリがガラス基板上で機能することを示すために、ウェルアレイを使用してサンドイッチELISAを行った。
図10は、吸光度の濃度依存的増加を示す。したがって、サンドイッチアッセイは機能し、電極を用いたアッセイに使用され得る。
【0125】
[000135]酵素的読出しの代わりに、ストレプトアビジン標識金ナノ粒子を使用した。これらの金ナノ粒子を増強するために、市販の銀増強を加えた。増強後、顕微鏡でスポットが見え、これは、スパイクタンパク質の存在下での電極の架橋を示している(
図11)。
【国際調査報告】