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特表2023-536530高強度長疲労寿命ケーブル用鋼、線材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(54)【発明の名称】高強度長疲労寿命ケーブル用鋼、線材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230818BHJP
   C22C 38/24 20060101ALI20230818BHJP
   C22C 38/32 20060101ALI20230818BHJP
   C21D 8/06 20060101ALI20230818BHJP
   C21C 7/10 20060101ALI20230818BHJP
   B21B 1/16 20060101ALI20230818BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20230818BHJP
   B21B 1/02 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C22C38/00 301Y
C22C38/24
C22C38/32
C21D8/06 A
C21C7/10 Z
B21B1/16 B
B22D11/00 A
B21B1/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023508563
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2021112730
(87)【国際公開番号】W WO2022037516
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】202010843374.5
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姚 贊
(72)【発明者】
【氏名】金 峰
(72)【発明者】
【氏名】余 子 權
(72)【発明者】
【氏名】黄 宗 澤
(72)【発明者】
【氏名】趙 四 新
(72)【発明者】
【氏名】趙 浩 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲ジャイ▼ 瑞 銀
【テーマコード(参考)】
4E002
4K013
4K032
【Fターム(参考)】
4E002BD07
4E002BD08
4E002BD09
4K013BA07
4K013CE08
4K032AA01
4K032AA02
4K032AA06
4K032AA08
4K032AA11
4K032AA14
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA21
4K032AA26
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032AA32
4K032AA35
4K032AA36
4K032BA02
4K032CA02
4K032CA03
4K032CC04
4K032CD00
4K032CF01
4K032CF03
(57)【要約】
本発明は、Fe以外に、質量百分率で以下の各化学元素:C:0.90~1.00%;Si:0.90~1.50%;Mn:0.25~0.58%;Cr:0.20~1.00%;V:0.03~0.12%;Ca:0.0008~0.0025%を含有する、高強度長疲労寿命ケーブル用鋼を公開した。さらに、本発明は上記高強度長疲労寿命ケーブル用鋼を用いて得られる線材、及び上記線材の製造方法を公開した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe以外に、質量百分率で以下の各化学元素:
C:0.90~1.00%;
Si:0.90~1.50%;
Mn:0.25~0.58%;
Cr:0.20~1.00%;
V:0.03~0.12%;
Ca:0.0008~0.0025%
を含有する、高強度長疲労寿命ケーブル用鋼。
【請求項2】
各化学元素の質量百分率が、
C:0.90~1.00%;
Si:0.90~1.50%;
Mn:0.25~0.58%;
Cr:0.20~1.00%;
V:0.03~0.12%;
Ca:0.0008~0.0025%であり、
残部がFe及びその他の不可避不純物である、請求項1に記載の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼。
【請求項3】
各化学元素の質量百分率がSi:1.0~1.4%、Cr:0.2~0.7%の少なくとも1つを満たす、請求項1又は2に記載の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼。
【請求項4】
その他の不可避的不純物の総含有量は0.10%以下であり、各不純物元素の含有量はそれぞれCu≦0.05%、Al≦0.004%、Ti≦0.003%、P≦0.015%、S≦0.010%、O≦0.0025%、N≦0.0045%の少なくとも1つを満たす、請求項2に記載の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼。
【請求項5】
以下の化学元素:
Mo:0.10~0.80%;
B:0.0008~0.0012%;
Re:0.0005~0.008%、
の少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼。
【請求項6】
ミクロ組織は主に微細化されたソルバイト組織であり、ソルバイトの相比率が≧95%であり、ミクロ組織に粒界ネットワークセメンタイトとマルテンサイト組織の相比率が≦0.5%であり;好ましくは、前記ソルバイト組織のラメラ間隔の平均値が40~260nmであり;好ましくは、前記ミクロ組織中にもサイズが5~50nmであるVの炭窒化物析出物を有し;好ましくは、前記ミクロ組織において介在物のサイズが<35μmであり、介在物のアスペクト比が>2である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼。
【請求項7】
芯部の炭素偏析が1.08未満である、ことを特徴とする請求項6に記載の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼。
【請求項8】
前記高強度長疲労寿命ケーブル用鋼の引張強度が≧1430MPaである、ことを特徴とする請求項1に記載の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼を用いて得られる線材であり、好ましくは、前記線材の性能は、引張強度≧1430MPa、減面率>30%、伸線と亜鉛めっき後の鋼線の引張強度≧2000MPa、ねじり値>8回、最大応力0.45σの条件での疲労寿命>240万回の少なくとも1項を満たす、線材。
【請求項10】
請求項9に記載の線材を伸線、亜鉛めっき、安定化処理して得られる鋼線であり、好ましくは、前記鋼線は引張強度が≧2000MPa、100Dゲージサンプルのねじり値が>8回、最大応力0.45σの条件での疲労寿命が>240万回であり、好ましくは、前記鋼線は引張強度が2020~2100MPa、100Dゲージサンプルのねじり値が12~24回であり、最大応力0.45σの条件での疲労寿命が249~420万回である、鋼線。
【請求項11】
以下の工程:
(1)製錬および鋳造;
(2)粗圧延;
(3)高速線材圧延;
(4)ステルモア制御冷却;
(5)等温処理:オーステナイト加熱温度が890~1050℃、保持時間が6~20分、等温処理温度が530~600℃である、
を含む、請求項9に記載の線材の製造方法。
【請求項12】
工程(1)において、製錬プロセス中に真空脱ガス時間>20分になるように制御し、鋳造プロセス中にビレット芯部における炭素偏析が1.08未満になるように制御する、ことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
工程(2)において、2回焼成成形プロセスを用い、連続鋳造ビレットを粗圧延し、1100~1250℃の温度で150~250mm角のビレットに分塊圧延し;その後に加熱炉に入れて加熱し、加熱温度を960~1150℃に制御し、保持時間を1.5~2.5時間に制御する、ことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
工程(3)において、圧延速度を20~60m/sに制御し;好ましくは、仕上圧延機の入口温度を920~990℃、絞り・サイジング機の入口温度を920~990℃、吐糸温度を880~950℃に制御する、ことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
工程(4)において、14個のステルモアファンの風量調整範囲は、F1~F8ファンの風量が80~100%、F9~F12ファンの風量が75~100%、F13~F14ファンの風量が0~45%である、ことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種の鋼種、線材及びその製造方法に関し、特にケーブル用鋼、線材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吊り橋と斜張橋は現在、海湾、峡谷、及び大きな川を横断する長大橋の設計の好ましい形式である。社会と技術の発展に伴い、吊り橋と斜張橋のスパンも絶えず増加しており、世界で建設された吊り橋のスパンは2000メートルに近く、斜張橋のスパンは1000メートルを超えている。これらの橋梁のスパンの増加に伴い、橋梁ケーブルの主要な原材料である亜鉛めっき鋼線に対してより高い性能要求を提起している。2000MPa以上の超高強度及び高ねじれ性能を有する橋梁ケーブル用亜鉛めっき鋼線の研究が注目されている。
【0003】
線材は高強度橋梁ケーブル用の鋼線を製造するための原料であり、大型の線材は伸線、亜鉛めっき、安定化などの工程を経てケーブル線に加工される。しかし、減面率の大きな鋼線の伸線加工を完成させるためには、まず線材に良好な伸線性が必要である。近年、橋梁ケーブル鋼線の強度レベルの継続的な改善に伴い、線材の強度も継続的に改善されており、その中で、合金強化とミクロ組織の微細化は、線材の強度を向上させるための2つの最も効果的な手段である。
【0004】
線材の合金強化方法については、世界の多くの先進的な鉄鋼企業が一連の研究を行っている。例えば、日本企業が開発したKKP線材は、従来のSWRS82Bをベースに少量のクロムを添加し、ステルモア冷却した後、性能の良い高強度ソルバイト線材が得られる。線材の炭素含有量をさらに0.87%まで高め、同時にマイクロ合金元素を微量添加することで、強度が高くバラツキの少ない線材を製造し、これをスーパーKKP線材と呼んでいる。もちろん、ヨーロッパでもこの方法で高強度橋梁ケーブル用の線材を製造している企業が多いのであるが、この線材で加工された鋼線の強度はまだまだ低いものである。それに対応して、国内の研究者は主に低シリコン合金組成設計を採用し、線材のC元素とMn元素を増やして材料強度を高め、炭素含有量が0.87%の鋼を開発し、線材と鋼の強度を改善できるが、1860MPa鋼線の加工要件を満たすことしかできず、鋼線の強度レベルは依然として低い。
【0005】
また、高炭素線材を高ソルバイト組織とすることで、組織の微細化を実現することも線材強度向上の重要な手段となる。現在、線材の高ソルバイトは主に圧延後の制御冷却によって実現されている。現在、中国の線材生産の95%はステルモア空冷プロセスを採用しており、即ち、最終圧延後の線材を水冷した後の空冷部でソルバイトの連続的な組織変態を実現することである。ステルモア冷却プロセスは大型の線材を製造する際に冷却能力が不足し、温度均一性が悪いという問題があり、材料特性のさらなる向上に影響を与える。日本の新日本製鐵株式会社は、線材のソルバイト変態の要件を満たすオンライン塩浴等温処理DLPプロセスを開発したが、依然として設備投資が大きく維持費が高いという問題がある。
【0006】
また、橋梁ケーブル用亜鉛めっき鋼線の開発には、鋼線の高強度化の要求のほか、高強度下での高延性及び高ねじり性能の維持が必要である。現在、主に採用される方法は、材料中のPとSの含有量を特定の範囲内に制御し、特に、合金中のPの含有量を0.02%以下に制御し、凝固過程中の偏析を防止して、鋼線のねじり性能に対するPの重大な損傷を低減することである。Zrを10~500ppm添加することで、ZrO微細粒を形成し、線材芯部の組成偏析を改善する。Bを9~60ppm添加することで、高炭素鋼線材の組織を改善し、高温オーステナイトに固溶したB元素が粒界に偏析し、冷却過程で初析フェライトの形成を防止し、同時にセメンタイトの析出を促進する。組織の最適化によりねじり性能を向上させるが、いずれも一定範囲の強度に制限される。
【0007】
注意すべきは、長大橋は建設期間が長く、巨額の投資が必要となるため、長寿命で高い安全性と信頼性が求められる。橋の耐用年数を延ばすために、橋ケーブルの亜鉛めっき鋼線の疲労寿命にも特別な注意が必要である。
【0008】
既存の技術では、現在の高炭素線材は1670MPa、1770MPaないし1860MPaの高強度及び高ねじり橋梁ケーブル用の亜鉛めっき鋼線の加工要件をよく満たすことができ、かつ一部の鋼線の強度は2000MPaまで達することができる。鋼線の強度は標準に達しているが、鋼線のねじり性能と疲労寿命はさらに改善する必要がある。
【0009】
これに基づき、本発明は、上記課題を解決するために、高強度長疲労寿命ケーブル用鋼、線材及びその製造方法を得ることを期待し、当該高強度長疲労寿命ケーブル用鋼は高強度を確保するだけでなく、良好な可塑性と疲労寿命を備えているため、線材の製造に使用できる。線材が引き抜かれ、亜鉛めっきされた鋼線は大スパンで長寿命の橋ケーブルの生産要件を効果的に満たすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的の一つは、高強度長疲労寿命ケーブル用鋼を提供することであり、当該高強度長疲労寿命ケーブル用鋼は、合理的な化学組成の設計により鋼板の性能を確保する。当該高強度長疲労寿命ケーブル用鋼の特性は非常に有益であり、高強度を確保しながら、良好な塑性と疲労寿命を有し、線材の製造に有効に使用でき、線材が引き抜かれ、亜鉛めっきされた鋼線は大スパンで長寿命の橋ケーブルの生産要件を効果的に満たすことができ、良い適用の見通し及び適用価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、Fe以外に、質量百分率で以下の各化学元素:
C:0.90~1.00%;
Si:0.90~1.50%;
Mn:0.25~0.58%;
Cr:0.20~1.00%;
V:0.03~0.12%;
Ca:0.0008~0.0025%
を含有する、高強度長疲労寿命ケーブル用鋼を提供する。
【0012】
さらに、本発明の前記高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、各化学元素の質量百分率は、
C:0.90~1.00%;
Si:0.90~1.50%;
Mn:0.25~0.58%;
Cr:0.20~1.00%;
V:0.03~0.12%;
Ca:0.0008~0.0025%であり、
残部はFe及びその他の不可避不純物である。
【0013】
本発明の前記技術方案において、各化学元素の設計原理は、具体的に以下の通りである。
【0014】
C:本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、元素Cは、鋼の高強度を確保するために必要な化学組成であり、鋼中の元素Cの含有量がケーブル用鋼のソルバイト組織におけるセメンタイトの体積分率を決定し、鋼中のC元素の含有量を増やすと、より多くのセメンタイトシートと微細なソルバイトシート組織の形成に役立ち、従って、鋼はより良い変形特性と加工硬化特性を得ることができ、これはその後の加工における鋼線の強度の向上に役立つ。従って、鋼の品質を確保するためには、本発明の鋼ではC元素の含有量を0.90%以上に制御する必要がある。ただし、鋼中のC元素含有量が高すぎてはならないことに注意する必要がある。鋼中のC元素含有量の増加に伴い、製錬及び連続鋳造プロセス中の偏析制御が困難になり、特に粒界に沿って析出した網状セメンタイトを形成し、材料の可塑性と靭性が大幅に低下する。このことから、本発明の高強度高疲労寿命ケーブル用鋼では、C元素の質量百分率を0.90~1.00%に制御している。
【0015】
Si:本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、Si元素は製錬工程で脱酸剤として鋼中に添加されることが多く、フェライト相に固溶するSi元素は鋼の強さを著しく向上させる。また、鋼の冷却相変態過程で、Si元素はフェライト相とセメンタイト相の界面にも富化される。大きな減面率で引き抜かれた鋼線は鉛浴による脱脂及び溶融亜鉛めっきのプロセスで、相界面でのSi元素の富化により、大きく変形したセメンタイトシートの分解を遅らせ、鋼の強度損失を効果的に減らすことができる。線材の高強度と伸線加工後の鋼線のより高い強度を確保するためには、鋼中のSi元素含有量を0.9%超えに制御する必要があるが、鋼中のSi元素含有量が高すぎると、鋼の可塑性が大幅に低下し、材料が脆くなる。このことから、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼では、Si元素の質量百分率を0.90~1.50%に制御している。
【0016】
もちろん、いくつかの好ましい実施方法では、より良い実施効果を得るために、Si元素の質量百分率を1.0~1.4%に制御することができる。
【0017】
Mn:本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、Mn元素は製鋼工程で脱酸剤として鋼中に添加されることも多い。同時に、Mn元素は鋼中の有害元素Sと結合してMnSを形成しやすく、その危害を減らすことができる。また、Mnは鋼の一般的な強化元素でもあり、主に固溶強化の役割を果たし、形成された合金セメンタイトがより高い強度を有するため、鋼中のMn元素の含有量を0.25%超えに制御する必要がある。ただし、鋼中のMn元素含有量が高すぎてはならないことに注意する必要がる。鋼中のMn元素含有量が高すぎると、加熱プロセス中に材料の結晶粒が粗大化する傾向が高まり、特に材料中のCやSiの含有量が多い場合、Mn元素も残留元素の偏析を促進しやすいため、鋼中のMn元素の含有量を0.58%未満に制御する必要がある。このことから、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼では、Mn元素の質量百分率を0.25~0.58%に制御している。
【0018】
Cr:本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、Cr元素の添加は、鋼のソルバイト層状組織を微細化するのに有益であるととに、セメンタイトの強度を高めることができ、これにより、材料の強度と可塑性を効果的に向上させる。Cr元素がその利点を効果的に発揮できるようにするには、鋼中のCr元素の含有量を0.20%より高くする必要がある。これに対応して、異常マルテンサイト組織の発生を防止し、組織制御の難しさを軽減するために、鋼中のCr含有量を1.00%未満に制御する必要がある。従って、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼では、Cr元素の質量百分率を0.20~1.00%に制御する。いくつかの実施形態では、Cr元素の質量百分率は0.30~1.00%に制御され、実施例10のCrは0.2%に調整される。
【0019】
もちろん、いくつかの好ましい実施形態では、より良い実施効果を得るために、Cr元素の質量百分率を0.2~0.7%に制御することができる。
【0020】
V:本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、V元素はマイクロ合金強化を行うことができ、V元素の5~50nmのナノスケールの炭窒化物の析出はケーブル用鋼の組織の微細化を助けることができ、転位のピン止めを助長し、材料の強度と可塑性を改善しながら、製品鋼のねじり特性に過度の影響を与えない。さらに、V元素の添加は、粒界ネットワークセメンタイトの形成を抑制するのにも役立つが、鋼中のV元素の含有量が高すぎると、炭窒化物の粗大化につながり、材料コストが増加する。このことから、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼では、V元素の質量百分率を0.03~0.12%に制御している。
【0021】
Ca:本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、Ca元素は、鋼中の介在物の可塑性を向上させるのに有益であり、それにより製品ケーブル用鋼中の介在物のアスペクト比を増加させ、さらに鋼の性能を向上させる。このことから、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼では、Ca元素の質量百分率を0.0008~0.0025%に制御している。
【0022】
また、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、各元素の質量含有率はSi:1.0~1.4%、Cr:0.2~0.7%の少なくとも1つを満たす。
【0023】
また、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、その他の不可避的不純物の総含有量は0.1%以下、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.05%以下であり、各不純物元素の含有量はそれぞれCu≦0.05%、Al≦0.004%、Ti≦0.003%、P≦0.015%、S≦0.010%、O≦0.0025%、N≦0.0045%の少なくとも1つを満たす。
【0024】
上記技術案では、Cu、Al、Ti、P、S、O及びN元素はすべて鋼中の不純物元素であり、技術的条件が許せば、より優れた性能と品質を備えた鋼を得るために、鋼中の不純物元素の含有量を可能な限り減らす必要がある。
【0025】
ここで、鋼中のP、S元素の含有量が高すぎると、特に偏析が生じると、鋼の脆性が増大するので、本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼では、P及びS元素の含有量を、P≦0.015%、S≦0.010%に制御する必要がある。
【0026】
また、鋼中のAl含有量が高すぎると、介在物の可塑性が低下し、鋼線の性能と疲労寿命が低下することに注意する必要があり、このため、高強度長疲労ケーブル用鋼では、不純物元素のAl含有量をAl≦0.004%に制御する。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、Cuの質量百分率での含有量は0.005~0.05%であり、Alの質量百分率での含有量は0.0001~0.004%であり、Tiの質量百分率での含有量は0.0005~0.003%である。
【0028】
さらに、本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼には、以下の化学元素の少なくとも1つも含まれる。
【0029】
Mo:0.10~0.80%;
B:0.0008~0.0012%;
Re:0.0005~0.008%。
【0030】
本発明の技術案において、より良い実施効果を得て、より良い品質と性能を備えた鋼を得るために、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼には、Mo、B及びReの元素を添加することもできる。
【0031】
ここで、鋼へのMo及びB元素の添加は、材料の焼入れ性をさらに改善し、鋼のソルバイト組織を改善するのに役立ち、材料の強度を高めながら可塑性、靭性、及びねじり性能を改善するのに役立つ。鋼にRe元素を添加すると、鋼の純度が効果的に向上し、介在物の数とサイズが減少し、鋼線の疲労寿命とねじり性能に対する介在物の影響が減少する。
【0032】
また、上記元素の添加は材料のコストを増加させるので、性能とコスト管理を考慮して、本発明の技術案では、上記元素の少なくとも1つを添加することが好ましい。
【0033】
また、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、そのミクロ組織は主に微細化されたソルバイト組織であり、ソルバイトの相比率(体積比率)が≧95%であり、ミクロ組織に明らかな粒界ネットワークセメンタイトとマルテンサイト組織が存在しなく、即ち、粒界ネットワークセメンタイトとマルテンサイト組織の相比率が≦0.5%である。
【0034】
また、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、前記ソルバイト組織のラメラ間隔の平均値が40~260nmである。
【0035】
また、本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、芯部の炭素偏析が1.08未満である。
【0036】
また、本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、前記ミクロ組織中にもサイズが5~50nmであるVの炭窒化物析出物を有する。
【0037】
また、本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、介在物のサイズが<35μmであり、介在物のアスペクト比が>2である。
【0038】
また、本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、引張強度が≧1430MPaである。いくつかの実施形態では、前記高強度長疲労寿命ケーブル用鋼の引張強度は、1445~1560MPaである。
【0039】
それに応じて、本発明の別の目的は、優れた性能と良好な強塑性整合能力を備え、高強度鋼線の伸線、亜鉛めっきの加工要件を満たすことができ、引張強度が≧1430MPa、減面率が>30%である線材を提供することである。好ましい実施形態では、本発明の線材の引張強度は1445~1560MPaであり、減面率は32~40%である。
【0040】
線材が伸線と亜鉛めっきと安定化処理した後に得られる鋼線は、引張強度が≧2000MPaであり、100Dゲージサンプルのねじり値が>8回であり、最大応力0.45σの条件での疲労寿命が>240万回であり、これは長スパンで長寿命の橋梁ケーブルの生産要件を効果的に満たすことができる。好ましい実施形態において、線材が伸線と亜鉛めっきと安定化処理した後に得られる鋼線は、引張強度が2020~2100MPaであり、100Dゲージサンプルのねじり値が12~24回であり、最大応力0.45σの条件での疲労寿命が249~420万回である。前記鋼線の化学元素及び各元素の質量百分率は、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼の化学元素及び各元素の質量百分率と同じである。
【0041】
上記目的を達成するために、本発明は、上記高強度長疲労寿命ケーブル用鋼を用いて得られる線材を提供する。線材の化学元素及び各元素の質量百分率は、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼の化学元素及び各元素の質量百分率と同じである。
【0042】
また、本発明の線材は、その性能が引張強度≧1430MPa、減面率>30%、伸線と亜鉛めっき後の鋼線の引張強度≧2000MPa、ねじり値>8回、最大応力0.45σの条件での疲労寿命>240万回の少なくとも1項を満たすものである。好ましい実施形態では、前記線材の性能は、引張強度≧1430MPa、減面率>30%、伸線及び亜鉛めっき後の鋼線強度≧2000MPa、ねじり値>8回、疲労寿命>240万回を満たす。さらに好ましい実施形態では、前記線材の性能は、引張強度が1445~1560MPaであり、減面率が32~40%であり、伸線及び亜鉛めっき後の鋼線の引張強度が2020~2100MPaであり、100Dゲージサンプルのねじり値が12~24回であり、最大応力0.45σの条件での疲労寿命が249~420万回である。
【0043】
さらに、本発明は、ここに記載の線材を伸線、亜鉛めっき、安定化処理して得られる鋼線も提供する。前記伸線、亜鉛めっき及び安定化処理は、すべて当技術分野における従来の技術である。鋼線の直径は4~8mmである。本発明の鋼線は引張強度が≧2000MPa以上、ねじり値が>8回、疲労寿命が>240万回であり、好ましくは、引張強度が2020~2100MPa、100Dゲージサンプルのねじり値が12~24回であり、最大応力0.45σの条件での疲労寿命が249~420万回である。
【0044】
また、本発明の別の目的は、上記線材の製造方法を提供することであり、当該製造方法は生産が簡便であり、得られる線材が優れた性能を有し、強塑性整合能力が良好であり、高強度鋼線の伸線、亜鉛メッキ加工の要件を満たすことができる。
【0045】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の工程を含む前記線材の製造方法を提供する。
【0046】
(1)製錬および鋳造;
(2)粗圧延;
(3)高速線材圧延;
(4)ステルモア制御冷却;
(5)等温処理:オーステナイト加熱温度が890~1050℃、保持時間が6~20分、等温処理温度が530~600℃である。
【0047】
本発明による技術案において、工程(1)において、電気炉又は転炉によって製錬を行い、次いで炉外で精錬することができる。なお、炉外精錬の場合、LF炉+VDまたはRH脱ガス処理プロセスを使用することができ、製錬工程で合成スラグの組成や添加量を調整し、鋼中の不純物元素の含有量を制御し、真空脱気時間>20分に制御する。
【0048】
また、本発明による製造方法において、工程(1)において、製錬プロセス中に真空脱ガス時間>20分になるように制御し、鋳造プロセス中にビレット芯部における炭素偏析が1.08未満になるように制御する。
【0049】
上記の技術案において、工程(1)において、鋳造プロセス中に、ブルーム連続鋳造機を使用してビレットを鋳造することができ、ビレットの品質と性能を保証するために、ビレット芯部における炭素偏析を1.08未満に制御することが好ましい。
【0050】
上記工程(2)において、2回焼成成形プロセスを用いることができ、連続鋳造ビレットを粗圧延し、1100~1250℃の温度で150~250mm角のビレットに分塊圧延する。ビレットは、超音波探傷、磁粉探傷、砥石金型修正、補助磁粉探傷及び金型修正を行った後、加熱炉に入れて加熱し、加熱温度を960~1150℃に制御し、保持時間を1.5~2.5時間に制御する。
【0051】
上記工程(3)において、圧延速度は20~60m/sに制御される。また、仕上圧延機の入口温度は920~990℃、絞り・サイジング機の入口温度は920~990℃、吐糸温度は880~950℃に制御される。
【0052】
なお、工程(4)において、ステルモアラインファンの風量を調整することにより、線材組織の変態を制御し、線材組織を最適化して、より性能の良い線材を得ることができることに留意されたい。好ましくは、線材の寸法規格はφ10-15mmに圧延される。好ましくは、14個のステルモアファンの風量調整範囲は、F1~F8ファンの風量が80~100%、F9~F12ファンの風量が75~100%、F13~F14ファンの風量が0~45%である。
【0053】
なお、工程(5)において、線材に対する等温処理は、鉛浴または塩浴などの方式により行うことができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼、線材、及びその製造方法は、従来技術と比較して、次の利点と有益な効果がある:
本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼は、合理的な化学組成の設計により鋼板の性能を確保する。当該高強度長疲労寿命ケーブル用鋼の特性は高強度を確保しながら、良好な塑性と疲労寿命を有し、線材の製造に使用でき、線材が引き抜かれ、亜鉛めっきされた後の鋼線は大スパンで長寿命の橋ケーブルの生産要件を効果的に満たすことができ、良い適用の見通し及び適用価値がある。
【0055】
本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼を用いた線材も優れた性能と良好な強塑性整合能力を備え、高強度鋼線の伸線、亜鉛めっきの加工要件を満たすことができ、引張強度が≧1430MPa、減面率が>30%である。当該線材が伸線と亜鉛めっきと安定化処理した後に得られる鋼線は引張強度が≧2000MPaであり、100Dゲージサンプルのねじり値が>8回であり、最大応力0.45σの条件での疲労寿命が>240万回であり、これは長スパンで長寿命の橋梁ケーブルの生産要件を効果的に満たすことができる。
【0056】
それに応じて、本発明の製造方法は生産が簡便であり、得られる線材が優れた性能を有し、強塑性整合能力が良好であり、高強度鋼線の伸線、亜鉛メッキ加工の要件を満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼、線材及びその製造方法について、具体的な実施例を使用してさらに解釈・説明するが、これらの解釈・説明は、本発明の技術案を不当に限定するものではない。
【0058】
実施例1~11及び比較例1~3
実施例1~11の線材はすべて、以下の工程を採用して製造する:
(1)表1に示す化学組成による製錬及び鋳造:電気炉または転炉で製錬した後、炉外精錬を行う。炉外精錬は、LF炉+VDまたはRH脱ガス処理プロセスを採用する。製錬中合成スラグの組成と添加量を調整し、ここで製錬中の真空脱ガス時間が>20分となるように制御する。ブルーム連続鋳造機を使用して角ビレットを鋳造し、鋳造プロセスでは、連続鋳造プロセスでの鋳造速度、冷却、及び終末減量のパラメータを調整することにより、ビレット芯部の炭素偏析が1.08未満になるように制御する。
【0059】
(2)粗圧延:2回焼成成形プロセスを用い、連続鋳造ビレットを1100~1250℃の温度で粗圧延し、150~250mm角のビレットに分塊圧延する。ビレットは、超音波探傷、磁粉探傷、砥石金型修正、補助磁粉探傷及び金型修正を行った後、加熱炉に入れて加熱し、加熱温度を960~1150℃に制御し、保持時間を1.5~2.5時間に制御する。
【0060】
(3)高速線材圧延:圧延速度は20~60m/sに制御され、仕上圧延機の入口温度は920~990℃、絞り・サイジング機の入口温度は920~990℃、吐糸温度は880~950℃に制御される。
【0061】
(4)ステルモア制御冷却:線材の寸法規格はφ10-15mmに圧延され、線材は圧延された後、ステルモアラインファンの風量を調整することにより、線材組織の変態を制御し、線材組織を最適化する。14個のステルモアファンの風量調整範囲は、F1~F8ファンの風量が80~100%、F9~F12ファンの風量が75~100%、F13~F14ファンの風量が0~45%である。
【0062】
(5)等温処理:等温処理は、線材に対して鉛浴または塩浴を行い、ここで、オーステナイト加熱温度が890~1050℃、保持時間が6~20分、等温処理温度が530~600℃である。
【0063】
注意されたいことは、本発明による実施例1~11の線材はすべて上記の工程によって製造され、それらの化学組成及び関連するプロセスパラメータはすべて本発明の設計仕様の制御要件を満たす。一方、比較例1~3の比較線材は、製錬および鋳造、粗圧延、高速線材圧延、ステルモア制御冷却および等温処理という同じプロセスを採用しているが、その化学組成および関連するプロセスパラメータには本発明の設計要件を満たさないパラメータが存在する。
【0064】
また、注意されたいことは、実施例1~11の線材はいずれも本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼を用いており、これに対応して、比較例1~3の比較線材も、それらの対応する比較鋼から製造された。
【0065】
表1は、実施例1~11の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼及び比較例1~3の比較鋼における各化学元素の質量百分率の配合を列挙している。
【0066】
【表1】
【0067】
表2は、上述の工程における実施例1~11の線材および比較例1~3の比較線材の具体的なプロセスパラメータを列挙している。
【0068】
【表2】
【0069】
得られた実施例1~11の線材と比較例1~3の比較線材をサンプリングして観察、分析し、それぞれの性能試験を行い、得られた観察結果と性能試験結果をそれぞれ表3と表4に示す。
【0070】
実施例1~11の線材と比較例1~3の比較線材の観察結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
留意すべきことは、表3に示すように、本発明による線材は、いずれも本発明による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼を用いて得られたものである。これに対応して、実施例1~11において、実施例1~11の線材を製造する高強度長疲労寿命ケーブル用鋼のミクロ組織は、主に微細化されたソルバイト組織であり、ソルバイトの相比率はすべて≧95%であり、ミクロ組織に明らかな粒界ネットワークのセメンタイトとマルテンサイト組織がない。さらに、本発明の実施例1~11では、ソルバイト組織のラメラ間隔はすべて40~260nmであり、芯部の炭素偏析はすべて1.08未満である。
【0073】
また、留意すべきことは、本発明による実施例1~11による高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、ミクロ組織もサイズが5~50μmであるVの炭窒化物析出物を有する。
【0074】
なお、本発明による実施例1~11の高強度長疲労寿命ケーブル用鋼において、鋼中の介在物のサイズは<35μmであり、介在物のアスペクト比は>2である。
【0075】
表4は、実施例1~11の線材と比較例1~3の比較線材の性能試験結果を列挙しており、ここで、引張強度、減面率の試験方法は、GB/T 228.1-2010金属材料の常温引張試験方法である。
【0076】
【表4】
【0077】
留意されたいことは、上記サンプリングされた実施例1~11の線材と比較例1~3の比較線材は、6~9パスの伸線、鋼線亜鉛メッキおよび安定化処理後に、より優れた性能および品質を有する鋼線を得ることができる。得られた実施例1~11の鋼線と比較例1~3の比較鋼線について関連する各種性能試験を行い、得られた性能試験結果を表5に示す。
【0078】
表5は、実施例1~11の鋼線と比較例1~3の比較鋼線の性能試験結果を列挙している。ここで、引張強度の試験方法はGB/T 228.1-2010金属材料の室温引張試験方法であり;ねじり値の試験方法はGB/T 239.1-2012金属材料線材第一部:単方向ねじり試験方法であり;疲労試験方法はGB/T 3075-200金属材料 疲労試験 軸力制御方法である。
【0079】
【表5】
【0080】
表4及び表5から、比較例1~3の比較線材及びそれから製造した鋼線は、実施例1~11に比べて明らかに性能が劣ることが分かる。本発明では、実施例1~11の線材はすべて良好な特性を有し、それらの引張強度がすべて≧1430MPaであり、減面率がすべて>30%である。
【0081】
上記の線材から伸線、亜鉛メッキ後に得られた鋼線は、引張強度がすべて≧2000MPaであり、100Dゲージサンプルのねじり値が全て>8回であり、最大応力0.45σの条件での疲労寿命が全て>240万回であり、これは長スパンで長寿命の橋梁ケーブルの生産要件を効果的に満たすことができる。
【0082】
従って、本発明による線材は、伸線及び亜鉛めっき後に強度が2000MPa以上である橋梁ケーブル鋼線の製造に使用されることが分かる。現在、斜張橋のスパンは1000メートルを超え、吊り橋のスパンも2000メートルに近いており、橋のスパンの増加に伴い、建設コストを削減し、材料を節約するために、高強度レベルの亜鉛メッキ鋼線ケーブルを使用して橋の耐用年数を向上させる必要がある。本発明による線材の市場の見通しは非常に広く、普及と応用価値が高く、莫大な経済的利益をもたらすことができる。
【0083】
また、本開示における各技術的特徴の組み合わせは、本開示の特許請求の範囲に記載の組み合わせ又は具体的な実施例に記載の組み合わせに限定されるものではなく、本開示に記載された全ての技術的特徴は、互いに衝突しない限り、自由に組み合わせ又は任意に組み合わせることができる。
【0084】
以上に列挙された実施例は本発明の特定の実施例にすぎないことにも留意されたい。明らかに、本発明は上記の実施例に限定されず、それに加えられた類似している変更または変形は、本発明の開示内容から当業者によって直接得られるか、または容易に想起され得るものであり、すべてが本発明の保護範囲に属するべきである。
【国際調査報告】