(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-28
(54)【発明の名称】治療装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022566478
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021029586
(87)【国際公開番号】W WO2021222372
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511015847
【氏名又は名称】キャンデラ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニー・ベルーベ
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー・グレゴリエフ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK04
4C160KK20
4C160KK24
4C160KK63
4C160KK70
4C160MM22
(57)【要約】
治療装置システムは、高周波エネルギーを供給するように構成された複数の針と、複数の針に対して高周波エネルギーを供給するための高周波エネルギー供給源と、複数の針をそれぞれ異なる真皮深さへ挿入するように構成された駆動ユニットとを備える。ユーザインターフェースは、針が挿入されることとなる複数の深さと、各深さにて印加されることとなるエネルギーレベルとをユーザが選択できるように構成される。コントローラサブシステムは、ユーザ選択による複数の深さとユーザ選択による各深さにおけるエネルギーレベルとに応答し、複数の針をユーザ選択による複数の深さに挿入するように駆動ユニットを制御し、各深さにてユーザ選択によるエネルギーレベルを印加するように高周波エネルギー供給源を制御するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療装置システムであって、
高周波エネルギーを供給するように構成された複数の針と、
前記複数の針に対して高周波エネルギーを供給するための高周波エネルギー供給源と、
前記複数の針をそれぞれ異なる真皮深さへ挿入するように構成された駆動ユニットと、
前記針が挿入されることとなる複数の深さと、各深さにて印加されることとなるエネルギーレベルとをユーザが選択できるように構成されたユーザインターフェースと、
ユーザ選択による複数の深さとユーザ選択による各深さにおけるエネルギーレベルとに応答して、
前記複数の針を前記ユーザ選択による複数の深さに挿入するように前記駆動ユニットを制御し、各深さにて前記ユーザ選択によるエネルギーレベルを印加するように前記高周波エネルギー供給源を制御するように構成された、コントローラサブシステムと、
ユーザ選択による深さが皮膚表面からの所定の最小深さ未満である場合に、ユーザ選択によるエネルギーレベルを限定するように構成されたコンピュータ安全ルーチンと、
を備える、治療装置システム。
【請求項2】
前記安全ルーチンは、ユーザ選択による深さが前記皮膚表面から1.5mm以下である場合に、ユーザ選択によるエネルギー/針レベルを0.0408ジュール/針以下へと限定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ユーザインターフェースは、皮下領域または真皮領域中に内部のコラーゲンを部分的に変性させる熱傷を最適に生成するために、0.0408ジュール/針に相当するまたは約0.0408ジュール/針の各深さにおける針ごとの印加エネルギーに相当する初期設定エネルギー/針レベルを表示および選択するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラサブシステムは、各ユーザ選択によるエネルギーレベルに固有のデューティサイクルにしたがって前記複数の針に対してRFエネルギーパルスを印加するように前記高周波エネルギー供給源を制御するように構成され、前記デューティサイクルは、正確なRFエネルギー送達を確保するために送達されるリアルタイムエネルギー積算量に基づき調節される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記針が挿入される深さを計測するように構成された針深さ計測サブシステムをさらに備え、前記コントローラサブシステムは、前記針深さ計測サブシステムに応答して、前記複数の針を前記ユーザ選択による複数の深さに挿入するように前記駆動ユニットを制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラサブシステムは、最初に前記複数の針をユーザ選択による最も深い深さへ自動的に挿入し、次いで前記針を任意のユーザ選択によるより浅い深さまで引き戻すことを連続して行うように、前記駆動ユニットを制御するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記針は、34ゲージの針である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラサブシステムは、ユーザ選択による第1の深さに応答して、前記複数の針を第1のユーザ選択による第1の深さよりも深い深さに挿入し、次いで前記ユーザ選択による第1の深さまで前記針を引き戻すように、前記駆動ユニットを制御するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラサブシステムは、エネルギーが前記針に対して印加される場合に任意の2つの針挿入深さが0.8mm以上相違のあるものになるように、前記針に対する高周波エネルギーの印加を限定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
ユーザインターフェースを介して、前記針が挿入されることとなる複数の深さと各深さにおける印加されることとなるエネルギーレベルとをユーザが選択できるようにするステップと、
ユーザ選択による複数の深さおよびユーザ選択による各深さにおけるエネルギーレベルに応答して、
前記複数の針を前記ユーザ選択による複数の深さに挿入するように駆動ユニットを制御し、各深さにて前記ユーザ選択によるエネルギーレベルを印加するように高周波エネルギー供給源を制御するステップと、
ユーザ選択による深さが皮膚表面からの所定の最小深さ未満である場合に、ユーザ選択によるエネルギーレベルを自動的に限定するステップと、
を含む、治療方法。
【請求項11】
ユーザ選択による深さが前記皮膚表面から1.5mm以下である場合に、ユーザ選択によるエネルギー/針レベルが、0.0408ジュール/針以下に限定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ユーザインターフェース上において、皮下領域または真皮領域中に内部のコラーゲンを部分的に変性させる熱傷を最適に生成するために、0.0408ジュール/針に相当するまたは約0.0408ジュール/針の各深さにおける針ごとの印加エネルギーに相当する初期設定エネルギー/針レベルを表示および選択するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
各ユーザ選択によるエネルギーレベルに固有のデューティサイクルにしたがって前記複数の針に対してRFエネルギーパルスを印加するように高周波エネルギー供給源を制御するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記針が挿入される深さを計測するステップと、前記計測された深さに基づき前記複数の針を前記ユーザ選択による複数の深さに挿入するステップとをさらに含み、デューティサイクルは、正確なRFエネルギー送達を確保するために送達されるリアルタイムエネルギー積算量に基づき調節される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
最初に前記複数の針をユーザ選択による最も深い深さへ自動的に挿入し、次いで前記針を任意のユーザ選択によるより浅い深さまで引き戻すことを連続して行うステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記針は34ゲージの針である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
ユーザ選択による第1の深さに応答して、前記複数の針を第1のユーザ選択による第1の深さよりも深い深さに挿入し、次いで前記ユーザ選択による第1の深さまで前記針を引き戻すように、前記駆動ユニットを制御するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
コントローラサブシステムは、エネルギーが前記針に対して印加される場合に任意の2つの針挿入深さが0.8mm以上相違のあるものになるように、前記針に対する高周波エネルギーの印加を限定するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法119条、120条、363条、365条、ならびに連邦規則法典第37巻1.55条および1.78条の下において、2021年4月26日出願の米国特許出願第17/240,356号に基づく利益および優先権を主張し、またこの米国特許出願および本願は、米国特許法119条、120条、363条、365条、ならびに連邦規則法典第37巻1.55条および1.78条の下において、2020年4月29日に出願された米国仮特許出願第63/017,112号に基づく利益および優先権を主張する。この米国仮特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、皮膚治療デバイスおよび皮膚治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
皺を治療するためにおよび他の治療を施すために患者の真皮中に刺される高周波針のアレイが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,364,392号に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9,364,392号
【特許文献2】米国特許第8,540,705号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「Randomized, bylined, 3- arm clinical trial assessing optimal temperature and duration for treatment with minimally invasive fractional radiofrequency」(Dermatol Surg 2015;41:623-632.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ユーザが、手技の目的、所与患者の皮膚の特徴、および/またはユーザの経験および嗜好に基づき、針挿入深さとさらに各深さにおいて針により印加されるエネルギーレベルとを選択し得ることがしばしば望ましい。
【0007】
しかし、一部のユーザは、必要とされる経験が不足している、および/または針挿入深さおよび/またはエネルギーレベルを不適切に選択してしまう場合がある。
【0008】
例えば、針が皮膚表面から1.5mm以下の深さまで挿入され、2ジュール超のエネルギーレベルが印加された場合に、いくつかの状況では、皮膚表面に対して望ましくない熱傷が生じる結果となり得ることを本出願人らは発見した。他の状況では、炭化が、結果として針の活性部分に沿ってもたらされ、高周波エネルギー送達を阻害し得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本明細書における一実施形態では、安全ルーチンが、ユーザが皮膚表面からの所定の深さ(例えば1.5mm)未満の針深さを設定する場合に、ユーザによるエネルギーレベルの選択を限定する。
【0010】
さらに、いくつかの治療の場合に、強力な治癒反応を誘発し臨床成果を最大限にもたらすための最適な方法として、皮下領域または真皮領域中にコラーゲンを部分的に変性させる熱傷を生じさせることが望ましい。温熱量が過度に低い場合には、コラーゲンは影響を受けない。温熱量が過度に高い場合には、コラーゲンは完全に変性される。
【0011】
したがって、一実施形態では、内部のコラーゲンを部分的に変性させしたがって強力な治癒反応を誘発しその成果を最大限にもたらすために、各深さにて皮下領域または真皮領域に対して2ジュールの印加エネルギーに相当する初期設定エネルギーレベル設定をすることによって、部分的に変性されたコラーゲンがより良好に確保される。このようにすることにより、ユーザが経験不足である場合、および/または各針挿入深さにて印加されるべき最適なエネルギーレベルを知らない場合に、ユーザは、初期設定を変更する必要がなく、それでもなお最大有効エネルギーレベルが、システムにより常に印加される。
【0012】
治療装置システムを特徴とする。このシステムは、高周波エネルギーを供給するように構成された複数の針と、複数の針に対して高周波エネルギーを供給するための高周波エネルギー供給源と、複数の針をそれぞれ異なる真皮深さへ挿入するように構成された駆動ユニットとを備える。ユーザインターフェースが、針が挿入されることとなる複数の深さと、各深さにて印加されることとなるエネルギーレベルとをユーザが選択できるように構成される。コントローラサブシステムは、ユーザ選択による複数の深さとユーザ選択による各深さにおけるエネルギーレベルとに応答し、複数の針をユーザ選択による複数の深さに挿入するように駆動ユニットを制御し、各深さにてユーザ選択によるエネルギーレベルを印加するように高周波エネルギー供給源を制御するように構成される。コンピュータ安全ルーチンは、ユーザ選択による深さが皮膚表面からの所定の最小深さ未満である場合に、ユーザ選択によるエネルギーレベルを限定するように構成される。安全ルーチンは、ユーザ選択による深さが皮膚表面から1.5mm以下である場合に、ユーザ選択によるエネルギー/針レベルを0.0408ジュール/針以下へと限定するように構成され得る。
【0013】
ユーザインターフェースは、皮下領域または真皮領域中に内部のコラーゲンを部分的に変性させる熱傷を最適に生成するために、0.0408ジュール/針に相当するまたは約0.0408ジュール/針の各深さにおける針ごとの印加エネルギーに相当する初期設定エネルギー/針レベルを表示および選択するようにさらに構成され得る。
【0014】
一実施形態では、コントローラサブシステムは、各ユーザ選択によるエネルギーレベルに固有のデューティサイクルにしたがって複数の針に対してRFエネルギーパルスを印加するように高周波エネルギー供給源を制御するように構成され、このデューティサイクルは、正確なRFエネルギー送達を確保するために送達されるリアルタイムエネルギー積算量に基づき調節される。このシステムは、針が挿入される深さを計測するように構成された針深さ計測サブシステムをさらに備えてもよく、この場合にコントローラサブシステムは、針深さ計測サブシステムに応答して、複数の針をユーザ選択による複数の深さに挿入するように駆動ユニットを制御する。コントローラサブシステムは、最初に複数の針をユーザ選択による最も深い深さへ自動的に挿入し、次いでこれらの針を任意のユーザ選択によるより浅い深さまで引き戻すことを連続して行うように、駆動ユニットを制御するように構成され得る。これらの針は、34ゲージの針であってもよい。一例では、コントローラサブシステムは、ユーザ選択による第1の深さに応答して、複数の針を第1のユーザ選択による第1の深さよりも深い深さに挿入し、次いでユーザ選択による第1の深さまでこれらの針を引き戻すように、駆動ユニットを制御するように構成される。コントローラサブシステムは、エネルギーが針に対して印加される場合に任意の2つの針挿入深さが0.8mm以上相違のあるものになるように、針に対する高周波エネルギーの印加を限定するようにさらに構成され得る。
【0015】
また、治療方法を特徴とする。この方法は、ユーザインターフェースを介して、針が挿入されることとなる複数の深さと各深さにおける印加されることとなるエネルギーレベルとをユーザが選択できるようにするステップを含む。ユーザ選択による複数の深さおよびユーザ選択による各深さにおけるエネルギーレベルに応答して、駆動ユニットが、複数の針をユーザ選択による複数の深さに挿入するように駆動ユニットを制御され、高周波エネルギー供給源が、各深さにてユーザ選択によるエネルギーレベルを印加するように制御される。この方法では、ユーザ選択による深さが皮膚表面からの所定の最小深さ未満である場合に、ユーザ選択によるエネルギーレベルは、自動的に限定される。
【0016】
しかし、他の実施形態では、本発明は、これらの目的のすべてを達成する必要はなく、本発明の特許請求の範囲は、これらの目的を達成し得る構造物または方法に限定されるべきではない。
【0017】
好ましい実施形態の以下の説明および添付の図面から、他の目的、特徴、および利点が当業者には想起されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】一例の治療装置に関わる主要構成要素を示すブロック図である。
【
図3】一例の治療方法に関わる主要ステップを示す、およびさらに
図2のコントローラサブシステムのプログラミングに関わる主要ステップを示す、流れ図である。
【
図4】初期設定針挿入深さレベルと各深さにおける初期設定エネルギーレベルとを示すユーザインターフェースの一例を示す図である。
【
図5】1つまたは複数の初期設定針挿入深さおよび/または1つまたは複数の初期設定エネルギーレベルをユーザが変更し得る方法を示すユーザインターフェースの別の図である。
【
図6】ユーザが所定最低値未満の針挿入深さを選択した場合に、
図3の安全ルーチンによりその深さにおけるエネルギーレベルが事前選択された最大値へと限定される方法を示す、ユーザインターフェースの別の図である。
【
図7】ユーザが所定最低値未満の針挿入深さを選択したが、その深さにて所定最大値未満のエネルギーレベルを選択することが可能となる、ユーザインターフェースの別の例を示す図である。
【
図9】
図8のアレイのための針の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以降で開示される好ましい実施形態に加えて、本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法による実施もしくは遂行が可能である。したがって、本発明は、以下の説明において示されまたは図面に示される構造の詳細および構成要素の配置にその用途を限定されるものではない点を理解されたい。本明細書において1つのみの実施形態が説明される場合でも、その特許請求の範囲は、その実施形態に限定されない。さらに、その特許請求の範囲は、ある特定の排除、限定、または権利放棄を明示する明確かつ説得力のある証拠が存在しない限りは、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0020】
一例の治療装置10(
図1)は、患者の真皮に対して高周波エネルギーを印加するように構成された、典型的にはアレイ状の複数の針14を有するハンドピース12を備える。好ましくは、コンソール16が、これらの複数の針に対して高周波エネルギーを供給するための高周波エネルギー供給源18(
図2)を備える。ハンドピース12(
図1)は、それぞれ異なる真皮深さへ複数の針を挿入するように構成された駆動ユニット20(
図2)を備える。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,364,392号を参照されたい。
【0021】
ユーザインターフェース22(
図1)(例えばタッチスクリーン)は、ユーザが、針が挿入されることとなる複数の深さと、各深さにおいて印加されることとなるエネルギーレベルとを選択することができるように構成される。また、コンソール16は、ユーザ選択による針挿入深さおよびユーザ選択による各深さにおけるエネルギーレベルに応答するコントローラサブシステム24(
図2)を収容し得る。このコントローラサブシステムは、1つまたは複数のプロセッサ、1つまたは複数のメモリ、1つまたは複数のメモリに格納され1つまたは複数のプロセッサにより実行される命令、特定用途向け集積回路、マイクロコントローラ、あるいはフィールドプログラマブルゲートアレイ等を備え得る。コントローラサブシステムおよびその関連ソフトウェアは、ユーザインターフェースを制御し、ユーザインターフェースに入力された数値を読み取ってもよく、および/またはユーザインターフェースとコンピュータユニットとの間として分散されてもよい。典型的には、コンピュータ命令は、メモリに格納され、1つまたは複数のプロセッサにより実行されて駆動ユニットを制御することによりユーザにより選択された複数の深さへと複数の針を挿入する。各深さにおいて、コンピュータ命令は、ユーザ選択によるエネルギーレベルを印加するように高周波エネルギー供給源を制御する。
【0022】
コンピュータ命令は、ユーザ選択による深さが皮膚表面からの所定最小深さ未満である場合に、ユーザ選択によるエネルギーレベルを限定するように構成されたコンピュータ安全ルーチンも備える。電極アレイが例えば7×7個の針アセンブリ(合計で49個の針)からなる一実施形態では、安全ルーチンは、ユーザ選択による深さが皮膚表面から1.5mm以下である場合に、ユーザ選択によるエネルギーレベルを2ジュール以下へと、または患者の真皮に対して印加される数値が2ジュールに相当するような数値へと限定するように構成される。また、好ましくは、コンピュータ命令は、ユーザインターフェースが、好ましくは2ジュールおよびより一般的には1.5~2.5Jの間に相当する、または内部のコラーゲンを部分的に変性させる皮下領域または真皮領域における熱傷を最適に生じさせるための各深さにおける約2ジュールの印加エネルギーに相当する初期設定エネルギーレベルを表示および選択するように構成される。ユーザインターフェースは、これらの初期設定エネルギーレベルを表示および選択するためにコントローラサブシステム24(
図2)により制御され得る。このコンセプトを一般化するためには、針ごとのエネルギーにより合計エネルギーを正規化することが有効であり、それによりこの原理は、他のアレイサイズまで拡張されることが可能となる。実際に、針ごとのエネルギーがこのコンセプトを一般化するために重要となることが当業者には理解されよう。上記の例では、針ごとのエネルギーは、合計エネルギーを針の総数で除算することによって次のように計算される。2J/49個の針=0.0408J/針。したがって、上述の同一のエネルギー/針数値、同一の結果、および同一の特徴を利用した場合に、49個の針アレイに対して2ジュールを利用することは、5×5個の針アレイに対して0.0408J/針*25針=1.02Jを利用することと同一となる。実際に、本文献中に示されるあらゆるエネルギーレベルは、49個の針アレイ(7×7)を利用する好ましい実施形態により実現された。したがって、本文献におけるあらゆるエネルギー値は、コンセプトを一般化するためには、対応するエネルギー/針を計算するように(上記に示したように)49で除算され得る。
【0023】
図3に示すように、コントローラサブシステム24(
図2)は、あらゆる深さに対する初期設定エネルギーレベルを表示するように構成される(ステップ30、
図3)。したがって、
図4に示すように、一例では、ユーザインターフェースは、各深さにおいて患者の真皮に対して印加されるエネルギーである2ジュールに相当する「2」という初期設定エネルギーレベルを、ならびに任意には、皮膚表面から3.5mm、2.8mm、および2.0mmの針挿入初期設定深さレベルを、システムの始動時に表示する。他の実施形態では、選択可能なエネルギーレベルは、例えば「高」(例えば患者の真皮に対する3~4ジュールの印加エネルギーのエネルギーレベルなどに相当)、「中」(例えば患者の真皮に対する2ジュールの印加エネルギーなどに相当)、および「低」(例えば患者の真皮に対する1ジュールの印加エネルギーなどに相当)などであってもよい。この例では、表示される各深さにおける初期設定エネルギーレベルは、「中」である。上述のように、これらの数値は、49個の針(7×7)の好ましい針アレイ実施形態により実現されたものであり、前述のようにエネルギー/針を計算することによって一般化することが可能である。また、「高」レベル、「中」レベル、および「低」レベルは、数値範囲として規定することも可能である。例えば、「高」は、3~4Jの間の範囲に相当し、「中」は、2~3Jの間の範囲に相当し、「低」は、1~2Jの間の範囲に相当する。
【0024】
図5に示すように、好都合には、上矢印32および下矢印34を押すことにより、ユーザは、初期設定深さ選択および初期設定エネルギーレベルを変更することが可能である。したがって、
図5では、ユーザは、3.6mmの第1の深さと、3つの深さのすべてに対して3のエネルギーレベル(例えば患者の真皮に対する3ジュールの印加エネルギーなどに相当)とを選択している。中間深さおよび浅い深さに対する初期設定深さは、ユーザによって変更されていない。
【0025】
しかし、
図6に示すように、ユーザが、第3の深さについて1.5mm(またはそれ未満)(または皮膚表面からの何らかの他の所定最小深さ)の深さを選択し、次いで初期設定エネルギーである「2」をさらに高いレベルへと変更しようと試みると、安全ルーチンは、ユーザが上矢印32を使用して2を超えるエネルギーレベルへ上昇させることを許可しない。また、安全ルーチンは、ディスプレイを点滅させるか、1.5mm以下の針挿入深さの場合により高いエネルギーレベルが利用できないというメッセージをディスプレイに表示させるか、または音声警告を鳴らし得る。
【0026】
また、
図6は、より深い針挿入深さ(例えば3.5mmおよび2.5mm)の場合に、ユーザが、上矢印32を使用して印加エネルギーレベルを2~3ジュールおよび4ジュールの初期設定レベルをそれぞれ超えるように上昇させることができることを示す。
【0027】
図7に示すように、ユーザは、第3の針挿入深さについて、10mmの数値と、この深さにてコンピュータ制御される安全ルーチンにより許可される1ジュールのエネルギーレベルとを選択している。しかし、この同ルーチンは、ユーザが1.0mmの針挿入深さに対して2ジュールを超えるエネルギーレベルを選択することを許可しない。したがって、コンピュータ制御される安全ルーチンにより、浅い針挿入深さの場合にまたは針に沿った絶縁層喪失の場合に望ましくない熱傷が皮膚表面上に生じないことが確保される。
【0028】
したがって、コントローラサブシステム24(
図2)は、各選択された針挿入深さを読み取り(ステップ40、
図3)、各深さにおける選択されたエネルギーレベルを読み取る(ステップ42)。選択された深さが所定の最小値(例えば1.5mm)以下であり(ステップ44)、選択されたエネルギーレベルが事前選択された最大エネルギーレベル(例えば2ジュール)超である場合には(ステップ46)、安全ルーチンは、このエネルギーレベルを所定のエネルギーレベル(例えば2ジュール)へと限定する(ステップ48)。次いで、コントローラサブシステムは、駆動ユニット20(
図2)を調節することにより、選択された挿入深さへと針14を駆動し(ステップ50、
図3)、各深さにて供給源18(
図2)を制御して各深さにて選択されたエネルギーレベルを印加する(ステップ52)。
【0029】
好ましくは、コントローラサブシステムは、ユーザにより選択されたエネルギー量を送達するためにデューティサイクル技術を利用することによって高周波エネルギー供給源を制御するように構成される。このシステムは、針が挿入される深さを計測するように構成された針深さ測定サブシステム26(
図2)をさらに備えてもよく、コントローラサブシステム24は、針深さ計測サブシステムに応答して、ユーザ選択による複数の深さまで複数の針を挿入するように駆動ユニットを制御する。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,364,392号を参照されたい。好ましくは、コントローラサブシステムは、最初に複数の針をユーザ選択による最も深い深さまで自動的に挿入し、次いでこれらの針を任意のユーザ選択によるより浅い深さまで引き戻すことを連続して行うように、駆動ユニットを制御するように構成される。
【0030】
好ましくは、RF針は、短パルスのRFエネルギーを印加することにより針先端部にてわずかな熱傷の小ゾーンを生じさせる。短パルスを利用する利点の中の1つは、ペインマネジメントであり、なぜならば、時として、患者の不快さを適切に管理するためには局所麻酔が十分なものになるからである。真皮中にはるかにより広いわずかな熱傷ゾーンを生じさせるように設計された他のRF針ベースプラットフォーム(例えば米国特許第8,540,705号などに記載のシステムなど)と比較した場合に、麻酔手技は、実施がはるかにより容易になり、看護師、エステティシャン、または他の医師以外のスタッフに容易に任せることができる。もう1つの利点は、手技が容易であることである。なぜならば、これらの針のアレイは、適切な針刺入を確保するために皮膚を操作する必要性をほとんど伴うことなく皮膚中に真っすぐに進入するからである。
【0031】
例えばLutronicにより市販されているInfini systemなどの市販のプラットフォームもまた、標的となる種々の真皮層に対して針刺入深さを調節することが可能である。典型的な手技は、種々の真皮深さにて、しかし1回に1つの深さにて、治療領域全体に対応する複数回のパス(通常は3回)を実施することからなる。2つ以上の深さにて熱傷を生じさせるために、一般的にはユーザは、治療された領域へ戻り、別の深さを設定し、同一領域を再治療することが必要であり、これは手技の全期間を増大させる。本明細書において説明されるシステムは、各針挿入ごとにそれぞれ異なる深さにてわずかな熱傷の複数のゾーンを生じさせて、手技の全期間を短縮させることができ、また同一の治療領域を複数回にわたり再治療することを回避させることができる。理想的には、すべての所望の熱傷深さが、1度の針挿入で実施され、それにより手技全体が、治療領域全体に対応する単一のパスで完了する。
【0032】
一実施形態では、針アレイ60(
図8)は、1cm
2の面積に対応する7×7構成で配置された34Ga(0.16mm)の直径を有する49個の針からなる。好ましくは、これらの針63の電気的活性部分62(
図9)は、遠位端部に位置し、0.6mmの金属が露出されて、RFエネルギーの蓄積を可能にする(針の遠位端部に位置する金属部分、in。これらの針の最近位部分64は、テフロン(登録商標)の薄層で覆われる。一実施形態では、ユーザは、このシステムを使用して最大で3つの面に熱傷ゾーンを生じさせることが可能であり、最も深い面は、皮膚表面下の最大で3.5mmの最大深さに位置する。
【0033】
ユーザが、皮膚中への針挿入を可能にするトリガーを作動させた後に、制御ソフトウェアおよびハンドピースは、針アレイを作動させて、最初に最深ポイントを若干超えるように針先端部を挿入し、次いで所望の位置へと戻す。通常は、これは、針アレイが挿入された場合の皮膚のテンティング効果を補償し、針先端部は位置精度を向上させる。最深ポイントに達した後に、システムは、その特定の深度に対してユーザにより選択されたエネルギー量のRF供給源による送達を許可して、一連の熱傷を針先端部にて生成する。次いで、針アレイは隣接するより浅い深さへと引戻され(必要に応じて)、プロセスが繰り返される。
【0034】
一般的には、治癒プロセスを最適化し治癒時間を最小限に抑えるために、熱傷アレイをわずかなものに留めることが望ましい。そうするためには、健康な組織のゾーンが各熱傷を囲む状態を保つように、システムを構成することが好ましい。したがって、針の刺入ラインに沿って長い熱傷列を生じさせることは望ましくない。したがって、2つの同一線上に位置する隣接し合う熱傷の最も近い箇所同士の間の最短距離は、わずかであることを確保するように維持されるべきである。あるシステムでは、この最短距離は、針の活性長さの3分の1(1/3)に設定される。例えば、活性長さが0.6mmである場合には、この最短距離は0.2mmとなる。したがって、2つの隣接し合う熱傷間の最短距離は、その中心間においては0.8mmとなる。また、活性針長さの3分の1の最短距離は、皮膚表面と最も表面に位置する熱傷の近位部分との間において、皮膚表面上の熱傷リスクを最小限に抑えるように維持される。
【0035】
有限要素解析(FEA)を利用して、システムにより許可されるエネルギーレベルを選択した。7×7アレイの0.6mmの長さの活性針を使用するデバイスの場合には、組織中に吸収されるRFエネルギーは、1ジュール、2ジュール、3ジュール、または4ジュールとなる。安全性を最大限に高め、針挿入が浅い深さにて不完全となる場合または針に沿った絶縁層喪失が生じた場合に望ましくない熱傷が皮膚表面上に生じることが確実にないようにするために、針深さが皮膚表面下の1.5mmの範囲内に位置する場合に、最大許容エネルギーは2Jに限定される。
【0036】
組織中に正確なRFエネルギー量を送達するための一例のアルゴリズムにおいては、第1のステップは、低エネルギーRFプリパルスを使用することにより、針アレイによって計測される組織インピーダンスを計測する。次いで、RFパルスのデューティサイクル値が、50ms毎に0.5Jを厳密に送達するための10Wの平均出力を実現するように調節される。電極アレイに対してRF電力を供給するために使用されるRF供給源が、10W超の最低出力を有する場合には、デューティサイクルは必須となる。所望の10Wへと平均出力を低下させるために、デューティサイクルが利用されてもよい。特定のエネルギー量が特定の時間量で送達されることにより、合計RFパルス長さは、送達されることとなるユーザ選択によるエネルギーによって変化する。可能なRFパルス期間は、1J、2J、3J、または4Jのそれぞれに対して100ms、200ms、300ms、または400msである。他の例では、最大出力エネルギーは、1Jの段階的上昇によって4Jまでに限定された。最大出力時ピーク出力は、50W±20%であり、最小出力時ピーク出力は、20W±20%である。デューティサイクルは、50%以下である。オンタイム最小パルスは10msであり、オンタイム最大パルスは25msである。最小パルス数は2であり、最大パルス数は8である。平均出力は、インピーダンス条件にかかわらず常に10Wであってもよい。好ましくは、パルスサイクル期間は50msである。この場合に、最短パルス(パルスが停止される場合)は<3msである。1J、2J、3J、または4Jが±20%の精度で送達される。
図10Aおよび
図10Bには、例示のパルスサイクルを示す。
【0037】
第1のサイクルの第1計測点について計測されたインピーダンスは、任意の不良針カプリングを認識するために使用され得る。インピーダンスは、エネルギー蓄積のためのパルスの最中に約2ms毎に計測される。
【0038】
【0039】
このパルスは、不良カプリングが認識された場合に停止される。
【0040】
一般的に、2つの状況が利用可能となる。すなわち、1)蓄積されたエネルギーが90%に達し、さらなるエネルギーが必要とされ、この場合にこのパルスは停止され、パルス発振が次のサイクルまで継続する。および/または、2)蓄積されたエネルギーが最終パルスにて所要エネルギーの90%以上に達し、次いでこのステップのために他の治療のようにパルスが停止される。これらのステップはいずれもNパルス回だけ反復され得る。
【0041】
好ましくは、単一のパルスが、GUI上で選択されたエネルギーに依拠してサブパルスへと分割される。各サブパルスは0.5Jを送達し、したがって4Jは8個のサブパルスを必要とする。実質的に、RFパルスは、より不均一な加熱とより小さな損傷ゾーンとを引き起こす過度に急速な加熱を回避するために平均RF出力が10Wになるように伸張される。
【0042】
真皮中にコラーゲンを部分的に変性させるような熱傷を生じさせることは、通常、強力な治癒反応を誘発し臨床成果を最大限にもたらすために最適な方法である。「Randomized, bylined, 3- arm clinical trial assessing optimal temperature and duration for treatment with minimally invasive fractional radiofrequency」(Dermatol Surg 2015;41:623-632.)と題するAlexiadesらによる文献の
図5において説明されるように、合計RFパルスが0.4秒以内のものである場合には、コラーゲンを部分的に変性させるために必要な望ましい真皮温度レベルは、約66°~約73°の間となる。
【0043】
FEA解析を利用して、真皮内にかかる状況をもたらすために必要なエネルギーレベルを判定した。2Jの送達エネルギーがが、模擬真皮ボリュームを最大化させるために好ましい初期設定として規定されることが判明した。この場合の温度レベルは66~73℃の間である。
【0044】
本発明の特定の特徴がいくつかの図面に示され、他の図面においては示されないが、これは、便宜上の理由のみによるものであり、各特徴は、本発明によるすべての他の特徴と組み合わされ得る。本明細書において、「含む」、「備える」、「有する」、および「有した」という語は、広義に包括的に解釈されるべきであり、いかなる物理的な相互連結にも限定されない。さらに、本願において開示されるあらゆる実施形態は、唯一可能な実施形態として解釈されるべきではない。
【0045】
さらに、本特許のための特許出願の手続きの最中に提出される補正はいずれも、出願された本願中に示されるいかなる請求項要素の権利放棄でもない、当業者は、あらゆる可能な均等物を文言通りに包含する請求項を起草することを適切には予見できない、多くの均等物は、補正の時点では予測不能であり、放棄されるべきものの(仮にそのようなものが存在する場合)公正な解釈が不可能なものである、補正の基礎となる論理的根拠は、多数の均等物に対してあまり本質的な関係を有さない場合がある、および/または、補正されるあらゆる請求項要素についてのいくつかの非実質的な代替を記述することを本出願人が予見できない多数の他の理由が存在する。
【0046】
他の実施形態が、当業者には想起されよう。これらの実施形態は、添付の特許請求の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0047】
10 治療装置
12 ハンドピース
14 針
16 コンソール
18 供給源
20 駆動ユニット
22 ユーザインターフェース
24 コントローラサブシステム
26 針深さ測定サブシステム
32 上矢印
34 下矢印
60 針アレイ
62 電気的活性部分
63 針
64 最近位部分
【国際調査報告】