(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-28
(54)【発明の名称】改良された加熱装置を備えた車両コックピット部品
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20230821BHJP
B60N 2/80 20180101ALI20230821BHJP
B60N 2/75 20180101ALI20230821BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20230821BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20230821BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20230821BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20230821BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20230821BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20230821BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B60N2/56
B60N2/80
B60N2/75
B60N2/64
A47C27/14 A
A47C7/40
A47C7/38
A47C7/74 B
A47C7/02
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507347
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 IB2021057053
(87)【国際公開番号】W WO2022029602
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】102020000019798
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519234327
【氏名又は名称】マルトゥール・イタリー・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100210398
【氏名又は名称】横尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】イュストューンベルク,キャン
(72)【発明者】
【氏名】セラ,ティツィアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ウクサー,ギョクチェン
(72)【発明者】
【氏名】バシ,セルカン
(72)【発明者】
【氏名】ボッリ,マルコ
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
3D023
【Fターム(参考)】
3B084JF01
3B087DE05
3B096AC14
3D023BA01
3D023BB02
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD01
3D023BD03
3D023BD28
3D023BD32
3D023BD33
3D023BE04
3D023BE31
(57)【要約】
本発明は、加熱装置を備えた車両コックピット部品(10,12,14,16,18)に関する。本発明によれば、上記加熱装置は、ジュール効果によって熱を生成するための電位差をもたらすための手段(7a,7b;11a,11b;13a,13b)に直接接続される導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸されたポリウレタン系発泡体を備える。導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸された上記ポリウレタン系発泡体は、この車両コックピット部品(10,12,14,16,18)のパッド若しくは張り材、又は、上記パッド若しくは張り材の1つ若しくは複数の部分を製造するために使用される。本発明は、この車両コックピット部品に固有であり、更なる別個の部品を設ける必要がない加熱装置を得ることができるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持フレームと、前記支持フレームに取り付けられたパッド及び/又は張り材とを備える種類の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)であって、加熱装置が設けられている車両コックピット部品(10,12,14,16,18)において、
前記加熱装置は、導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸されたポリウレタン系発泡体を備え、
導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸された前述ポリウレタン系発泡体は、ジュール効果によって熱を生成するための電位差をもたらすための手段(7a,7b;11a,11b;13a,13b)に直接接続され、
前記加熱装置は、前記部品のパッド及び/又は張り材として使用される、
ことを特徴とする、
車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項2】
導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸された前記ポリウレタン系発泡体は、その少なくとも1つ又は複数の部分で、前記部品の前記パッドを形成する、
請求項1に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項3】
導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸された前記ポリウレタン系発泡体は、その少なくとも1つ又は複数の部分で、前記部品の前記張り材を形成する、
請求項1に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項4】
前記部品の前記張り材は、内側ベース層(2)と外側装飾層(4)とを含む多層構造を有し、
導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸された前記ポリウレタン系発泡体は、前記内側ベース層(2)と前記外側装飾層(4)との間に挟まれる、
請求項3に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項5】
導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸された前記ポリウレタン系発泡体は、導電性接着剤又はペースト又は樹脂(9)によって前記発泡体に結合されるとともに制御・発電回路(15)に接続される一対の金属電極(7a,7b)間に配置されてこれらの金属電極に結合される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項6】
導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸された前記ポリウレタン系発泡体は、フレキシブルプリント回路基板(11a,11b)によって得られるとともに制御・発電回路(15)に接続される、一対の電極間に配置されてこれらの電極に結合される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項7】
導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸された前記ポリウレタン系発泡体は、印刷された導電性インクによって得られるとともに制御・発電回路(15)に接続される、一対の電極間に配置されてこれらの電極に結合される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項8】
導電性フィラー(1)が充填及び/又は含浸された前記ポリウレタン系発泡体には、前記発泡体に埋め込まれるとともに制御・発電回路(15)に接続される一対の金属電極(13a,13b)が設けられている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項9】
前記ポリウレタン系発泡体は、導電性フィラー(1)が充填されるとともに、ポリウレタンマトリックス(3)と、前記マトリックス中に分散された導電性粒子(5,5’,5’’)とを備え、
前記導電性粒子(5,5’,5’’)の濃度は、結果として得られる複合材料の浸透閾値と飽和閾値との間の範囲にあるように選択される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項10】
前記導電性粒子(5,5’,5’’)の前記濃度は、
前記結果として得られる複合材料の前記飽和閾値により近い、前記結果として得られる複合材料の前記浸透閾値と前記飽和閾値との間の前記範囲の50%にあるように、
好ましくは、前記結果として得られる複合材料の前記飽和閾値により近い、前記結果として得られる複合材料の前記浸透閾値と前記飽和閾値との間の前記範囲の20%にあるように、
選択される、
請求項9に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項11】
前記導電性粒子は、金属粒子、カーボンブラック粒子、グラファイト粒子、グラフェン粒子、グラフェン酸化物、グラフェンナノプレートレット、炭素繊維、及びカーボンナノチューブを含む群から選択される、
請求項9または10に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項12】
前記車両コックピット部品は、車両シート(10)、車両シートクッション(12)、車両シートバックレスト(14)、車両シートアームレスト(18)、又は車両シートヘッドレスト(16)である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項13】
前記車両コックピット部品が車両ドアの内側パネルである、
請求項1~12のいずれか一項に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項14】
前記車両コックピット部品がコックピットヘッドライナである、
請求項1~13のいずれか一項に記載の車両コックピット部品(10,12,14,16,18)。
【請求項15】
請求項1に記載の車両コックピット部品を製造するための方法であって、
少なくとも1つのイソシアネートを含有する第1の成分を用意することと、
少なくとも1つのポリオールを含有する第2の成分を用意することと、
少なくとも1つの導電性フィラーを前記第1の成分及び/又は前記第2の成分に添加することと、
前記第1の成分と前記第2の成分とを混合することと、
発泡体を得るために型に流し込むことと、
前記発泡体を前記車両コックピット部品のパッド又は張り材として使用することと
を含む、方法。
【請求項16】
1つ又は複数の発泡剤が前記第1の成分及び/又は前記第2の成分に添加される、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の車両コックピット部品を製造するための方法であって、
少なくとも1つのイソシアネートを含有する第1の成分を用意することと、
少なくとも1つのポリオールを含有する第2の成分を用意することと、
前記第1の成分と前記第2の成分とを混合することと、
発泡体を得るために型に流し込むことと、
少なくとも1つの導電性フィラーを含有する溶液に前記発泡体を浸漬することと、
前記発泡体を乾燥させることと、
前記発泡体を前記車両コックピット部品のパッド又は張り材として使用することと
を含む、方法。
【請求項18】
導電性フィラーを含有する溶液に前記発泡体を浸漬することと前記発泡体を乾燥させることとが数回繰り返される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1つ又は複数の発泡剤が前記第1の成分及び/又は前記第2の成分に添加される、
請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、改良された加熱装置を備えた車両コックピット部品に関する。
【0002】
[0002]より詳細には、排他的ではないが、本発明は、改良された加熱装置を備えた車両シートに関する。
【0003】
[0003]本発明は、例えば車両シートの車両コックピット部品の構造に固有の加熱装置を備えた車両コックピット部品に関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]使用者の快適さを改善することを目的とした、加熱装置を備えた車両シートが知られており、広く使用されている。
【0005】
[0005]一般に、そのような加熱装置は、車両シートとは別個独立した電気/電子部品を含み、車両シートの組立工程中に車両シートに組み込まれる。
【0006】
[0006]例として、そのような加熱装置は、クッション領域及び/又はバックレスト領域で車両シートの張り材とパッドとの間に配置される電気プレートを含む場合がある。
【0007】
[0007]別法として、そのような加熱装置は、車両シートクッション及び/又はバックレストの加熱及び冷却の両方を選択的に実行するようになっている熱電部品を含む場合がある。
【0008】
[0008]そのような加熱装置は、車両シートクッション及び/又はバックレストを通る空気流を生成するための手段、並びに空気循環のための配管構成を任意選択的に含む場合がある。
【0009】
[0009]そのような既知の加熱装置には幾つかの欠点がある。
【0010】
[0010]まず第1に、それらの加熱装置は、所望の温度に達してその温度を維持するために、ユーザの快適さを確保するのに十分なかなりのエネルギー消費量を必要とする。
【0011】
[0011]第2に、それらの加熱装置は適切な熱慣性を有するため、所望の温度に達するのに非常に長い時間が必要である。
【0012】
[0012]更に、そのような加熱装置の更なる部品の存在は、製造コスト及び時間の増大、並びに車両シートにおけるそのような更なる部品の不適切な組立てに起因する故障及び誤動作のリスクの増大を伴う。
【0013】
[0013]重要なことを言い忘れたが、車両コックピットの要素、すなわち、車両シートの重量を減らすという絶え間ない要求があり、加熱装置の部品の存在が更なる重量を伴うことは明らかである。これは望ましくない。
【0014】
[0014]文献である米国特許出願公開第2005/0103773号明細書は、導電性プラスチックによる表面加熱、及び、そのような表面加熱を備えた車両コックピット部品を開示する。表面加熱は、キャリアと、導電性プラスチックを含む加熱層とを含み、この加熱層は可撓性フィルムによって形成され、キャリアは可撓性である。
【0015】
[0015]導電性プラスチックは、発泡性又は発泡プラスチック材料であることができ、導電性ポリウレタンをプラスチック材料として使用することができる。
【0016】
[0016]流動性又は液体状態の発泡性又は発泡プラスチック材料(例えば、導電性ポリウレタン)は、キャリア上にローリング、ブラッシング、又はスプレーによって適用され、そのようにして外側のフィルム又はスキンを形成し、別法として、加熱フィルムを別個に製造し、その後、加熱フィルムを例えば接着、又は縫製、又は溶接によってキャリアに接合することもできる。
【0017】
[0017]米国特許出願公開第2005/0103773号明細書の開示によれば、表面加熱を車両シートに適用することができ、この場合、加熱フィルム及びキャリアを、車両シートのパッド上にわたって、すなわち、パッドと張り材との間に、又は、車両シートの張り材上にわたって配置することができる。しかしながら、車両加熱は、車両シートへの適用に限定されず、インストルメントパネルや更にはウインドシールドなどの他のコックピット部品にも適用できる。
【0018】
[0018]この解決策は、加熱プレート又はパイプなどの別の要素を連続フィルムで置き換えるという利点を有するが、欠点がないわけではない。
【0019】
[0019]より詳細には、加熱フィルム及び取り付けられたキャリアは、車両コックピットの既存の部品に適用される別個の要素であり、これは製造時間及び製造コストの両方の増大を伴う。
【0020】
[0020]更に、別個の要素と、そのような要素を車両コックピット部品に固定するためのそれぞれの手段とを設けると、最終製品の信頼性が低下する。これは、そのような要素同士の接続及びそのような要素と車両コックピット部品との接続が、時間の経過と共に劣化し得、望ましくない相対変位のリスクを伴うからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
[0021]したがって、本発明の主な目的は、車両シート狭窄部に固有であり、更なる部品の導入を伴わない加熱装置が装備された車両シートを提供することによって、上記の欠点を克服することである。
【0022】
[0022]本発明の他の目的は、エネルギー消費量が低く、加えて熱慣性が低い加熱装置が装備された車両シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
[0023]本発明によれば、この車両コックピット部品には、少なくとも1つの導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたポリウレタン系発泡体を含む加熱装置が設けられており、この装置は、この車両コックピット部品のパッド及び/又は張り材を製造するために使用される。
【0024】
[0024]少なくとも1つの導電性フィラーは、炭素系フィラー若しくは金属系フィラー、又はその組合せであってもよい。
【0025】
[0025]ポリウレタンフォームを製造するために使用される成分のうちの1つに導電性粒子を混合することによって、ポリウレタンフォームに導電性フィラーを「充填」することができる。
【0026】
[0026]別法として、導電性粒子を含有する適切な溶液にポリウレタンフォーム(既に形成された)を浸漬することにより、ポリウレタンフォームに導電性フィラーを「含浸」させることができる。
【0027】
[0027]このように充填/含浸されたポリウレタンフォームは、良好な熱伝導特性を有する抵抗材料として作用する。
【0028】
[0028]ポリウレタンフォームは、車両シートのクッション及びバックレストのパッドを製造するために一般的に使用される。
【0029】
[0029]更に、ポリウレタンフォームは、車両シートのクッション及びバックレストの張り材を製造するためにも使用される。すなわち、ポリウレタンフォームは、積層によって外側の審美的カバー材料(これは例えば、ポリエステル、ポリアミド、及び皮革などから形成され得る)に結合して、使用者の快適性の改善を保証し、製造及び組立て工程中に張り材自体を車両シートに取り付けることを容易にする多層張り材を得ることができる。
【0030】
[0030]ポリウレタンフォームは誘電ポリマー材料である、すなわち、ポリウレタンフォームは電気絶縁性である。ポリウレタンフォームに導電性粒子を充填及び/又は含浸させると、材料が抵抗性になる、すなわち、材料が印加電圧の存在下で導電性になる。
【0031】
[0031]本発明の第1の態様によれば、ポリウレタンフォームは、発泡体自体を製造するために使用される成分のうちの1つに導電性粒子を混合することによって、少なくとも1つの導電性フィラーで充填される。よく知られている統計的浸透理論によれば、導電性フィラーが充填された絶縁マトリックスから成る複合材料は、導電性フィラーの含有量が徐々に増大すると、絶縁体から導体への転移を起こす。浸透閾値は、連続的な導電性ネットワークの形成に起因して、複合材料の測定された電気伝導率が数桁の大きさまで急激に跳ね上がる臨界的なフィラー含有量を表わす。浸透閾値を下回ると、導電性ネットワークが確立されず、複合材料の電気的特性が絶縁マトリックス材料によって支配される。一方、導電性フィラーの濃度が浸透閾値を超える場合、複合材料内に導電性ネットワークが形成され、複合材料が導電体として振る舞う。
【0032】
[0032]浸透閾値は、絶縁マトリックス内で第1の浸透経路の形成が起こる導電性フィラーの粒子の濃度と見なすことができる。導電性粒子の濃度が増大すると、浸透経路の飽和に対応する最大値に達するまで、ポリウレタンフォームの導電率が増大する。
【0033】
[0033]浸透閾値は、飽和閾値と同様に、マトリックス及びフィラーの特定の特性に依存する。
【0034】
[0034]浸透閾値と飽和閾値との間の範囲では、導電性フィラーが充填されたポリウレタンフォームは、良好な熱伝導特性を有する抵抗材料として作用する。
【0035】
[0035]したがって、本発明によれば、この車両コックピット部品には、導電性粒子が充填されたポリウレタン系発泡体を含む加熱装置が設けられており、ここにおいて、上記導電性粒子の濃度は、浸透閾値よりも高く、好ましくは、浸透閾値と飽和閾値との間に含まれ、そのような加熱装置は、この車両コックピット部品のパッド及び/又は張り材を製造するために使用される。
【0036】
[0036]本発明の第2の態様によれば、既に形成されたポリウレタンフォームは、少なくとも1つの導電性フィラーを含有する溶液に浸漬することによって含浸される。
【0037】
[0037]したがって、本発明によれば、この車両コックピット部品には、導電性粒子が含浸されたポリウレタンフォームを備える加熱装置が装備されており、ここにおいて、上記導電性粒子の濃度は、ポリウレタンフォームの内壁/外壁上の第1の連続する導電経路を引き起こすのに必要な導電性粒子の最小濃度に対応する最小閾値よりも高く、好ましくは、ポリウレタンフォームの均一で均質な含浸及び内外表面結合の全ての飽和をもたらす導電性粒子の濃度に対応する、この上記最小閾値と最大閾値との間に含まれ、そのような加熱装置は、この車両コックピット部品のパッド及び/又は張り材を製造するために使用される。
【0038】
[0038]導電性フィラーが充填されたそのようなポリウレタンフォームの使用は、例えば米国特許出願第2019/184869号明細書及び米国特許出願第2019/126792号明細書から当該技術分野で知られている。
【0039】
[0039]しかしながら、従来技術では、導電性フィラーが充填されたポリウレタンフォームは、車両シートのパッド及び上記車両シートの外表面に埋め込まれた従来の加熱装置からの熱伝達を改善するためにのみ使用される。
【0040】
[0040]一方、本発明によれば、導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームは、熱を発生させるために使用される。すなわち、本発明の基本的な考えは、抵抗材料である導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたそのようなポリウレタンフォームが、電位差を受けると、電流がそれを通過することに起因して、ジュール効果により熱を発生させることになることである。
【0041】
[0041]この目的のために、本発明に係る車両シートにおいて、導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームは、電位差をもたらすための手段と直接接続される。
【0042】
[0042]本発明の好ましい実施形態によれば、導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームは、導電性接着剤又はペースト又は樹脂によって発泡体に結合される一対の金属電極間に配置されてこれらの金属電極に結合される。
【0043】
[0043]本発明の他の好ましい実施形態によれば、導電性フィラーが充填されたポリウレタンフォームは、フレキシブルプリント回路基板(FPCB)によって得られる一対の電極間に配置されてこれらの電極に結合される。
【0044】
[0044]本発明の更に他の好ましい実施形態によれば、導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームの表面には、一対の電極を形成するための導電性インクが印刷される。
【0045】
[0045]本発明の更に好ましい実施形態によれば、金属電極装置が、導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームに埋め込まれる。
【0046】
[0046]更に、熱を発生させるための導電性フィラーが充填されたポリウレタンフォームを効果的に使用するために、導電性粒子の濃度は、飽和閾値に近くなるように選択される。
【0047】
[0047]例えば、浸透閾値と飽和閾値との間の範囲を考慮すると、導電性粒子の濃度は、飽和閾値により近い上記範囲の50%、好ましくは飽和閾値により近い上記範囲の20%で選択されることになる。
【0048】
[0048]前述の技術の組合せ、及び当業者の理解できる範囲内の他の技術も、電極の製造にも使用できることは明らかである。
【0049】
[0049]そのような電極は、制御及び発電のための電子回路に適切に接続されることになる。より詳細には、そのような制御・発電回路は、車両バッテリからエネルギーを引き出すことによって得られる動作電位差を電極にもたらすことになる。
【0050】
[0050]本発明の好ましい実施形態によれば、導電性フィラーが充填されたポリウレタンフォームは、車両シートのクッション及び/又はバックレストのパッドとして使用される。
【0051】
[0051]本発明の別の好ましい実施形態によれば、導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームは、車両シートのクッション及び/又はバックレストのための張り材として使用される。
【0052】
[0052]この実施形態では、導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームを外側の装飾材料に積層して、車両シートのクッション及び/又はバックレストのための多層張り材を形成する。
【0053】
[0053]当業者に明らかなように、上記の両方の実施形態において、車両シートの既存の部品は-導電性フィラーの導入によって適切に修正された時点で-熱生成装置を得るために利用され、それにより、車両シート狭窄部の構造に固有の加熱装置が得られる。
【0054】
[0054]そのような構成は、キャリアと共にフィルムとして形成される加熱装置が別個に製造されて車両シートの既存の部品に適用される米国特許出願公開第2005/0103773号明細書に開示された解決策とは著しく異なる。
【0055】
[0055]そのような構成は明らかな利点を伴う。
【0056】
[0056]別個の加熱装置の必要性を排除することによって、車両シートの部品の総数が減少し、その結果、製造コスト及び時間が減少する。更に、車両シートを組み立てる際のエラーのリスクも大幅に減少される。
【0057】
[0057]別個の加熱装置の必要性を排除することによって、車両シートの総重量も減少し、これは車両製造業者にとって非常に望ましいことである。
【0058】
[0058]有利には、本発明の教示に従って得られる加熱装置は、センサ自体として使用できるため、温度制御のための適切なセンサを必要としない。つまり、発泡体の温度が変化するにつれて、発泡体の抵抗も変化し、それにより、制御回路は、抵抗変化を監視できるとともに、そこから温度に関する情報を導き出すことができる。
【0059】
[0059]温度感知装置の必要性を排除することによって、全体の部品の数を更に減らすことができ、それに応じて製造コスト、組立て時間及びエラーのリスク及び全体の重量が減少する。
【0060】
[0060]一方、そのような構成は、米国特許出願公開第2005/0103773号明細書に開示された解決策に関して解決されるべき更なる技術的課題を伴うため、それは、この文書の教示を考慮しても自明ではない。
【0061】
[0061]より詳細には、特許請求の範囲に記載される本発明では、同じ装置が2つの異なる機能を果たさなければならない。すなわち、加熱と同時に、ユーザに快適なサポートを提供しなければならない。
【0062】
[0062]これらの機能は、米国特許出願公開第2005/0103773号明細書に開示された構成の異なる要素によって果たされる。代わりに、本発明では、加熱装置自体が、この車両コックピット部品のパッド及び/又は張り材として使用される。
【0063】
[0063]このことは、結果として得られるポリウレタン系発泡体の機械的特徴がそのような発泡体の熱伝導挙動と同じくらい重要であることを意味する。
【0064】
[0064]したがって、導電性フィラーの粒子の量と、上記粒子を発泡体に添加(帯電/含浸)させる手順とが、機械的特性及び熱伝導特性の両方を考慮して選択される必要がある。
【0065】
[0065]より詳細には、導電性フィラーのこれらの粒子の添加に起因して発泡体構造が崩壊するリスクは回避されるべきである。
【0066】
[0066]開示された構成では、加熱フィルムの機械的特性は関係ないため、この問題は米国特許出願公開第2005/0103773号明細書では扱われておらず、言及さえされていない。
【0067】
[0067]本発明の好ましい実施形態では、導電性フィラーの粒子の添加に起因する発泡体構造の崩壊を防止するために、1つ又は複数の発泡剤もポリウレタン系発泡体に添加される。
【0068】
[0068]詳細には、発泡剤のタイプ及び量は、導電性フィラーの粒子の量に応じて選択される。
【0069】
[0069]本発明の主な用途は、一体型加熱装置を備えた車両シートの製造であるが、そのような用途は限定的な方法で意図されるべきではない。
【0070】
[0070]反対に、本発明は、パッド及び/又は張り材を備える又は備えることができる車両コックピットの任意の他の部品を製造するために有利に実施することができる。
【0071】
[0071]例えば、本発明は、車両ドアの内側パネル又はコックピットヘッドライナを製造するために実施することができる。
【0072】
[0072]このような用途は、コックピット内の空間を加熱するためにICエンジンによって生成される熱を利用することができない電気自動車にとって特に興味深くなり得る。
【0073】
[0073]本発明の更なる特徴及び利点は、添付図面に関連して、非限定的な例として与えられた、本発明の幾つかの好ましい実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】[0074]本発明の第1の好ましい実施形態に係る加熱装置を備えた車両シートを概略的に示す図である。
【
図2】[0075]本発明の第1の好ましい実施形態に係る加熱装置を備えた車両シートを概略的に示す図である。
【
図3】[0076]
図1及び
図2の車両シートの加熱装置を製造するために使用され得る導電性フィラーが充填された想定し得るポリウレタン系発泡体の構造を概略的に示す図である。
【
図4】[0077]
図1及び
図2の車両シートの加熱装置を製造するために使用され得る導電性フィラーが充填された他の想定し得るポリウレタン系発泡体の構造を概略的に示す図である。
【
図5】[0078]
図1及び
図2の車両シートの加熱装置を製造するために使用され得る導電性フィラーが充填された更なる想定し得るポリウレタン系発泡体の構造を概略的に示す図である。
【
図6】[0079]
図1又は
図2の車両シートで使用されるべき加熱装置の第1の想定し得る構造を概略的に示す図である。
【
図7】[0080]
図1又は
図2の車両シートで使用されるべき加熱装置の第2の想定し得る構造を概略的に示す図である。
【
図8】[0081]
図1又は
図2の車両シートで使用されるべき加熱装置の第3の想定し得る構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
[0082]本発明の好ましい実施形態の以下の説明では、加熱装置を備えた車両シートについて言及する。より具体的には、クッション領域及び/又はバックレスト領域に加熱装置を備えた車両シートについて言及する。
【0076】
[0083]そのような用途は、特に有利ではあるが、限定することを意図するものではなく、本発明は、車両コックピットの他の幾つかの部品を製造するために実施することもできる。
【0077】
[0084]まず第一に、車両シートが1つ又は複数のアームレスト及び/又はヘッドレストを備える場合、本発明をそのようなアームレスト及び/又はヘッドレストの製造に適用することを想定することが可能である。
【0078】
[0085]第2に、本発明は、車両シート以外のコックピットの部品の製造に応用できる。一般に、本発明は、車両ドアの内側パネル及びコックピットヘッドライナを含む、パッド及び/又は張り材を備えるコックピットの任意の部品を製造するために使用することができる。
【0079】
[0086]本発明は、本質的に、導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたポリウレタン系発泡体を含む加熱装置を備えた車両シートなどのコックピット部品に関連し、そのような装置は、コックピット部品のパッド及び/又は張り材を製造するために使用される。
【0080】
[0087]非限定的な例として、好ましい実施形態の発明に係る車両シート10が
図1に概略的に示される。
【0081】
[0088]車両シート10は、シートクッション12及びシートバックレスト14を含む。図示の例では、車両シート10がアームレスト18及びヘッドレスト16を更に備える。
【0082】
[0089]本質的に現在の態様で、車両シート10の各部品は、硬質支持フレーム(
図1では見えない)、硬質フレームを覆ってユーザに十分な快適さを保証するパッド、及び、パッドに取り付けられて対応する部品に望ましい表面特性並びに望ましい美的外観を与えることを意図した張り材を含む。
【0083】
[0090]
図1の実施形態では、シートクッション12及びシートバックレスト14のパッドを製造するために、導電性フィラー1が充填されたポリウレタン系発泡体が使用される。
【0084】
[0091]一般に、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたそのようなポリウレタン系発泡体は、シートクッション12若しくはその1つ若しくは複数の部分のパッドを製造するため及び/又はシートバックレスト14若しくはその1つ若しくは複数の部分のパッドを製造するために使用することができる。
【0085】
[0092]加えて、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたそのようなポリウレタン系発泡体は、アームレスト18若しくはその1つ若しくは複数の部分のパッドを製造するため及び/又はヘッドレスト16若しくはその1つ若しくは複数の部分のパッドを製造するために使用することができる。
【0086】
[0093]
図2は、シートクッション12及びシートバックレスト14の張り材を製造するために導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたポリウレタン系発泡体が使用される、本発明の別の実施形態を示す。
【0087】
[0094]一般に、導電性フィラー1が充填されたそのようなポリウレタン系発泡体は、シートクッション12若しくはその1つ若しくは複数の部分の張り材を製造するため及び/又はシートバックレスト14若しくはその1つ若しくは複数の部分の張り材を製造するために使用することができる。
【0088】
[0095]更に、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたそのようなポリウレタン系発泡体は、アームレスト18若しくはその1つ若しくは複数の部分の張り材を製造するため及び/又はヘッドレスト16若しくはその1つ若しくは複数の部分の張り材を製造するために使用することができる。
【0089】
[0096]
図2に示されるように、本発明のこの実施形態によれば、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたポリウレタン系発泡体は、内側ベース層2と外側装飾層4との間に挟まれ、したがって、多層構造を伴う張り材の中間層を形成することになる。
【0090】
[0097]
図3~
図5により良く示されるように、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたポリウレタン系発泡体は、導電性粒子5,5’,5’’が充填及び/又は含浸されたポリウレタンマトリックス3を備える。
【0091】
[0098]導電性粒子は、炭素系粒子及び/又は金属系粒子となることができ、この金属系粒子は、導電性である金属及び合金の両方を含むことを意味する。
【0092】
[0099]そのような導電性粒子は、金属粒子及び/又はカーボンブラック粒子などの三次元粒子5(
図3参照)、グラファイト又はグラフェン粒子又は酸化グラフェン又はグラフェンナノプレートレットなどの実質的に二次元の粒子5’(
図4参照)、炭素繊維又はカーボンナノチューブなどの実質的に一次元の粒子5’’(
図5参照)、又はこれらの任意の組合せとなり得る。
【0093】
[0100]マトリックス3及びフィラー粒子5,5’,5’’の特性に応じて、そのようなフィラー粒子の濃度は、結果として得られる複合材料の浸透閾値と飽和閾値との間の範囲にあるように選択されることになる。
【0094】
[0101]好ましくは、熱を生成するために導電性フィラーが充填されたポリウレタンフォームを効果的に使用するために、導電性粒子の濃度は飽和閾値に近くなるように、例えば、飽和閾値により近い、浸透閾値と飽和閾値との間の範囲の50%、好ましくは飽和閾値により近い、上記範囲の20%にあるように選択されることになる。
【0095】
[0102]それ自体既知の態様で、発泡体のポリウレタンマトリックス3は、少なくとも1つのイソシアネートを含有する第1の成分及び少なくとも1つのポリオールを含有する第2の成分から得られる。
【0096】
[0103]第1及び第2の成分を混合して金型に流し込み、それにより、発泡体の膨張及び成形を可能にする。膨張は、イソシアネートと水との間の反応によって生成される二酸化炭素に起因するが、ゲル化(これは発泡体の柔らかさと可撓性に関与)は、イソシアネートとポリオールの-OH基との間の反応によって得られる。
【0097】
[0104]導電性フィラーが充填された発泡体の使用が想定される場合には、本発明の発泡体を得るために、導電性粒子5,5’,5’’が第1の成分又は第2の成分に添加される。次いで、部品は、部品内に、続いて、結果として得られる発泡体マトリックス中に導電性粒子の均一な分布を得ることを意図した混合ステップに晒される。そのような混合ステップは、例えば、機械的攪拌によって、磁気攪拌によって、又は超音波振動の適用によって行なうことができる。
【0098】
[0105]上記混合ステップの後に、任意選択的に、結果として得られる発泡体マトリックスを固めることができるようにする熱処理のステップが続くことができる。前述のように、導電性粒子の濃度は、結果として得られる複合材料が浸透閾値と飽和閾値との間の範囲にあるように選択されることになる。より詳細には、そのような濃度は、生成された熱が車両シートの外面に最適に伝達されるように、結果として得られる発泡体の良好な熱伝導率を確保するのに十分に高いことが好ましいことになり、他方で、そのような濃度は、ポリウレタンマトリックス中のフィラーの過剰な存在に関連する重力の影響に起因して、発泡体が不安定になる又は崩壊するのを防止するのに十分に低いことが好ましいことになる。
【0099】
[0106]導電性粒子が存在するおかげで、導電性フィラー1が充填された発泡体をジュール効果による発熱のために使用することができる。
【0100】
[0107]しかしながら、出願人は、導電性粒子の添加、すなわち、結果として得られる発泡体の良好な熱伝導率/電気伝導率を確保するのに適した濃度での添加が、そのような発泡体の機械的特性の低下、及び更には、発泡体のセル構造が崩壊するリスクをもたらし得ることに気付いた。
【0101】
[0108]本発明によれば、発泡体が車両コックピット部品のパッド及び/又は張り材として使用されるため、その機械的特性のそのような低下は想定されない。
【0102】
[0109]したがって、導電性粒子の添加に起因する発泡体の機械的特性の低下を補償するための措置が取られる。
【0103】
[0110]本発明の好ましい実施形態において、そのような手段は、発泡体の製造に使用される第1の成分及び/又は第2の成分への1つ又は複数の発泡剤の添加を含む。
【0104】
[0111]より詳細には、発泡剤のタイプ及び量は、導電性粒子の濃度に応じて選択されることになる。
【0105】
[0112]更に、触媒、界面活性剤、導電性フィラー、及び他の適切な化学試薬を含む他の任意選択的な原材料を、結果として得られるポリウレタンマトリックスの所望の機械的特性に従って発泡体を製造するために使用される第1の成分及び/又は第2の成分に添加することができる。
【0106】
[0113]導電性フィラーが含浸された発泡体の使用が想定される場合には、本発明の発泡体を得るために、ポリウレタンフォームが、少なくとも1つの結合剤及び少なくとも1つの導電性フィラーを含有する溶液に少なくとも1回浸漬され、結合剤及び導電性フィラーはいずれも、機械的攪拌によって、磁気攪拌によって、又は超音波振動の適用によって溶液中に均一に分散される。
【0107】
[0114]この場合も、ポリウレタンフォームの製造中に、導電性フィラーのその後の含浸に起因する発泡体の機械的特性の低下を補償するために、1つ又は複数の発泡剤を組成物に添加することができる。
【0108】
[0115]この場合も、発泡体マトリックスを固めることができるようにする熱処理の最終ステップを想定することができる。
【0109】
[0116]当業者に明らかなように、上記の2つの技術の組合せを提供することも可能となり、ポリウレタンフォームは、その製造中に最初に導電性フィラーが充填され、次に導電性フィラーが含浸され得る。
【0110】
[0117]この場合、ポリウレタンフォームを充填するために使用される導電性フィラーは、発泡体を含浸するために使用されるものと同じタイプ又は異なるタイプのいずれであってもよい。
【0111】
[0118]導電性フィラーが充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームは、ジュール効果による発熱のために使用することができる。
【0112】
[0119]この目的のため、本発明によれば、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸された上記の発泡体は、加熱(すなわち発熱)装置を得るために電位差をもたらすための手段に直接に接続される。
【0113】
[0120]
図6~
図8は、そのような加熱装置の想定し得る構造を概略的に示す。
【0114】
[0121]
図6の例では、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームが、一対の金属電極7a,7b間に配置されてこれらに結合され、上記電極7a,7bは、好ましくは発泡体の両側に配置されて、導電性接着剤又はペースト又は樹脂9によって上記発泡体に結合される。
【0115】
[0122]
図7における例では、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームが、一対の電極11a,11b間に配置されてこれらに結合され、上記電極11a,11bはフレキシブルプリント回路基板(FPCB)から得られる。
【0116】
[0123]そのようなフレキシブルプリント回路基板は、一対の電極を形成するために発泡体上に印刷され得る電気的金属系導電性インクに置き換えることができる。
【0117】
[0124]
図8の例では、一対の金属電極13a,13bが、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームに埋め込まれる。この形態では、金属電極13a,13bが好ましくはフレーム要素として成形される。
【0118】
[0125]上記の全ての形態において、電極7a,7b,11a,11b,13a,13bは、制御ユニット17を備える制御・発電回路15に接続されることになる。
【0119】
[0126]制御ユニット17は、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームに電流が流れてジュール効果により発熱するように、電極間に適切な電位差を印加するべく構成される。
【0120】
[0127]制御ユニット17は、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームによって与えられる電気抵抗を検出し、発泡体の温度と電気抵抗率との間の関係のおかげで、そのような発泡体の温度を検出された抵抗から導き出すように更に構成される。
【0121】
[0128]上記の観点から、温度センサを有利に省くことができる。
【0122】
[0129]ポリウレタンフォーム中の導電性粒子の濃度を、結果として得られる複合材料の温度の自己調整機構を引き起こすように選択できることに留意すべきである。すなわち、一定の電位差を印加することにより、導電性フィラー1が充填及び/又は含浸されたポリウレタンフォームは、所望の温度に達してそれを維持する。したがって、ポリウレタンフォームを温度センサの存在を必要としない自己調整加熱装置と見なすことができる。
【0123】
[0130]非限定的な例として、本発明に係る導電性フィラーが充填された発泡体は、以下のようにして得ることができる。
【0124】
[0131]例1:ポリオール成分とイソシアネート成分との間の反応により発泡体が得られ、それらのうちの少なくとも1つが金属系導電性フィラーとしてニッケルを含んでいる。最初に、ポリオール成分が、少なくとも1つのポリオールを1つ又は複数の発泡剤と混合及び混和することによって調製される。ポリオールは、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドを含有するポリエーテル系セグメントである。発泡剤は水である。1つ又は複数の界面活性剤及び1つ又は複数の触媒も添加することができる。例えば、シリコーンベースの界面活性剤を使用することができ、触媒は第一級、第二級、第三級アミンとすることができる。この例では、ニッケル粒子は、成分中の粒子の均一な分布を達成するために、機械的攪拌を使用することによってポリオール成分中に混合される。ニッケル粒子の濃度は、飽和動作領域に近い50重量%である。次いで、トルエンジイソシアネート(TDI)又はメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)となり得るイソシアネート成分がポリオール成分に添加される。加熱装置としての発泡体を得るために、混合成分が型に流し込まれる。得られる発泡体は、45重量%に等しい浸透閾値、及び70重量%に等しい飽和閾値によって特徴付けられる。
【0125】
[0132]例2:ポリオール成分とイソシアネート成分との間の反応により発泡体が得られ、それらのうちの少なくとも1つが炭素系導電性フィラーとしてカーボンナノチューブを含んでいる。最初に、ポリオール成分が、少なくとも1つのポリオールを1つ又は複数の発泡剤と混合及び混和することによって調製される。ポリオールは、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドを含有するポリエーテル系セグメントである。発泡剤は水である。1つ又は複数の界面活性剤及び1つ又は複数の触媒も添加することができる。例えば、シリコーンベースの界面活性剤を使用することができ、触媒は第一級、第二級、第三級アミンとすることができる。この例では、カーボンナノチューブ粒子は、成分中の粒子の均一な分布を達成するために、超音波を使用することによってポリオール成分中で混合される。カーボンナノチューブ粒子の濃度は、飽和動作領域に近い5重量%である。次いで、トルエンジイソシアネート(TDI)又はメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)となり得るイソシアネート成分がポリオール成分に添加される。加熱装置としての発泡体を得るために、混合成分が型に流し込まれる。得られる発泡体は、1重量%に等しい浸透閾値、及び6重量%に等しい飽和閾値によって特徴付けられる。
【0126】
[0133]両方の例において、フィラー濃度は、良好な加熱効率を伴う装置を得るために選択される。これらの例から、フィラーのタイプ及びサイズが、車両シートに固有の高性能加熱装置を得るために必要なフィラー濃度に影響を与えることが理解できる。
【0127】
[0134]他方で、発泡剤は、フィラーの添加にもかかわらず、良好な機械的特性を伴う装置を得るために選択される。
【0128】
[0135]非限定的な例として、本発明に係る導電性フィラーが含浸された発泡体は、以下のようにして得ることができる。
【0129】
[0136]例3:グラフェンナノプレートがテトラヒドロフラン系溶液中に分散される。少なくとも1つのポリオールが溶液に導入され、このポリオールは、グラフェンナノプレートとポリウレタンフォームとの間の結合剤として機能することになる。グラフェンナノプレート及び結合剤は、磁気攪拌によって溶液中に均一に分散される。テトラヒドロフラン溶液中のグラフェンナノプレートの重量濃度は5%である。ポリウレタンフォーム(成形済み)を溶液に浸し、それにより、グラフェンナノプレートを含浸させる。続いて、残留溶液を除去するために、ポリウレタンフォームを炉内において60℃の温度で乾燥させる。含浸とその後の乾燥を3回繰り返す。
【0130】
[0137]上記の詳細な説明は例として与えられたものであり、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の保護範囲から逸脱することなく、幾つかの修正及び変更が可能であることは明らかである。
【0131】
[0138]詳細には、ポリウレタンマトリックスを製造するために使用される材料、フィラーとして使用される導電性粒子の性質及び濃度、結果として得られる発泡体の形状及びサイズ、並びに電極及び電極に接続される回路の特定の構造的特徴は、特定の用途及び所望の性能に応じて、当業者自身の知識に従って当業者により選択され得る。
【0132】
[0139]更に、本発明は、車両シート、車両ドアの内側パネル、及びコックピットヘッドライナを含む、車両コックピットの多種多様な部品に適用することができる。
【国際調査報告】