(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-28
(54)【発明の名称】EGFRを標的とする抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230821BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230821BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230821BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230821BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230821BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230821BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230821BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230821BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230821BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230821BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20230821BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230821BHJP
A61K 31/5365 20060101ALI20230821BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20230821BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20230821BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20230821BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20230821BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20230821BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230821BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230821BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230821BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230821BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230821BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C07K19/00
C12N15/62 Z
C07K16/46
C07K14/725
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K47/68
A61K38/05
A61K31/704
A61K31/5365
A61K31/551
A61K31/4745
A61K38/19
A61K38/20
A61K38/21
A61K39/395 U
A61K35/76
A61K35/17
A61P35/00
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507622
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 US2021044688
(87)【国際公開番号】W WO2022031935
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519288755
【氏名又は名称】ドラゴンフライ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グリンバーグ, アシャ
(72)【発明者】
【氏名】ジュオ, ゾン ショーン
(72)【発明者】
【氏名】リハースカ, カティア
(72)【発明者】
【氏名】モーガン, クリストファー ライアン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA14
4C084BA23
4C084BA44
4C084DA12
4C084DA14
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4C084DA25
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA16
4C085BB17
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB11
4C086CB22
4C086EA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
対合して細胞上にEGFRを標的とする抗原結合部位を形成することができる抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを有するタンパク質、かかるタンパク質を含む医薬組成物、ならびに、かかるタンパク質および医薬組成物を使用する癌の処置などの治療方法が開示される。癌は、この疾患の処置に関する文献に報告された多大な研究努力および科学的進歩にもかかわらず、重大な健康問題であり続けている。成人において最も頻繁に診断される癌としては、前立腺癌、乳癌、および肺癌が挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFRに結合する抗原結合部位であって、
(i)それぞれ配列番号2、23および4の相補性決定領域1(CDR1)配列、相補性決定領域2(CDR2)配列および相補性決定領域3(CDR3)配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、それぞれ配列番号6、7および17のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含むか、または、
(ii)それぞれ配列番号2、12および4のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含むVHと、それぞれ配列番号6、7および8のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含むVLとを含む、抗原結合部位。
【請求項2】
前記VHが、それぞれ配列番号2、23および4のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含み、前記VLが、それぞれ配列番号6、7および17のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項3】
前記VHが、それぞれ配列番号2、12および4のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含み、前記VLが、それぞれ配列番号6、7および17のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む、請求項2に記載の抗原結合部位。
【請求項4】
前記VHが、それぞれ配列番号2、3および4のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含み、前記VLが、それぞれ配列番号6、7および17のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む、請求項2に記載の抗原結合部位。
【請求項5】
前記VHが、それぞれ配列番号2、12および4のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含み、前記VLが、それぞれ配列番号6、7および8のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項6】
配列番号1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVLとを含む抗原結合部位であって、
前記VHが配列番号1に対してChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるS62R置換を含み、かつ/または前記VLが配列番号5に対してChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるD92R置換および/もしくはF87Y置換を含む、抗原結合部位。
【請求項7】
前記VHが、配列番号1に対して、ChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるS62R置換を含む、請求項6に記載の抗原結合部位。
【請求項8】
前記VLが、配列番号5に対して、ChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるD92R置換を含む、請求項6に記載の抗原結合部位。
【請求項9】
前記VHが、配列番号1に対して、ChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるS62R置換を含み、前記VLが、配列番号5に対して、ChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるD92R置換を含む、請求項6に記載の抗原結合部位。
【請求項10】
前記VLが、配列番号5に対して、ChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるF87Y置換を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項11】
前記VHが、配列番号11と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号16と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~3および6~10のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項12】
前記VHが、配列番号11のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLが、配列番号16のアミノ酸配列を含むか、または前記VHが、配列番号32のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLが、配列番号33のアミノ酸配列を含む、請求項1~3および6~11のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項13】
前記VHが、配列番号1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号16と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1、2、4、6、8および10のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項14】
前記VHが、配列番号1のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項1、2、4、6、8、10および13のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項15】
前記VHが、配列番号11と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号13と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1、5~7、および10のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項16】
前記VHが、配列番号11のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号13のアミノ酸配列を含む、請求項1、5~7、10および15のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項17】
前記抗原結合部位が、一本鎖可変フラグメント(scFv)として存在し、前記scFvが、配列番号14、18、20および24から選択される配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項18】
表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に5nM以下の解離定数(K
D)でヒトEGFRに結合する、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項19】
表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に6nM以下の解離定数(K
D)でアカゲザルEGFRに結合する、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の抗原結合部位を含むタンパク質。
【請求項21】
抗体重鎖定常領域をさらに含む、請求項20に記載のタンパク質。
【請求項22】
前記抗体重鎖定常領域がヒトIgG重鎖定常領域である、請求項21に記載のタンパク質。
【請求項23】
前記抗体重鎖定常領域がヒトIgG1重鎖定常領域である、請求項22に記載のタンパク質。
【請求項24】
前記抗体重鎖定常領域の各ポリペプチド鎖が、配列番号26と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項22または23に記載のタンパク質。
【請求項25】
前記抗体重鎖定常領域の少なくとも1つのポリペプチド鎖が、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411、およびK439から選択される1またはそれを超える位置に1またはそれを超える変異を含む、請求項22~24のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項26】
前記抗体重鎖定常領域の少なくとも1つのポリペプチド鎖が、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、Q347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、およびK439Eから選択される1またはそれを超える変異を含む、請求項22~25のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項27】
前記抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖が、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1またはそれを超える位置に1またはそれを超える変異を含み、前記抗体重鎖定常領域のもう一方のポリペプチド鎖が、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1またはそれを超える位置に1またはそれを超える変異を含む、請求項22~26のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項28】
前記抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖が、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、K360E置換およびK409W置換を含み、前記抗体重鎖定常領域のもう一方のポリペプチド鎖が、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、Q347R置換、D399V置換およびF405T置換を含む、請求項27に記載のタンパク質。
【請求項29】
前記抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖が、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされるY349C置換を含み、前記抗体重鎖定常領域のもう一方のポリペプチド鎖が、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされるS354C置換を含む、請求項27または28に記載のタンパク質。
【請求項30】
請求項20~29のいずれか一項に記載のタンパク質と、薬物部分とを含む、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項31】
前記薬物部分が、オーリスタチン、N-アセチル-γカリケアマイシン、メイタンシノイド、ピロロベンゾジアゼピン、およびSN-38からなる群から選択される、請求項30に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項32】
請求項1~19のいずれか一項に記載の抗原結合部位と、サイトカインとを含む、免疫サイトカイン。
【請求項33】
前記サイトカインが、IL-2、IL-4、IL-10、IL-12、IL-15、TNFおよびIFNαからなる群より選択される、請求項32に記載の免疫サイトカイン。
【請求項34】
請求項1~19のいずれか一項に記載の抗原結合部位と、CD3に結合する抗原結合部位とを含む、二重特異性T細胞エンゲージャー。
【請求項35】
キメラ抗原受容体(CAR)であって、
(a)請求項1~19のいずれか一項に記載の抗原結合部位と、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)細胞内シグナル伝達ドメインと、
を含む、CAR。
【請求項36】
前記膜貫通ドメインが、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、EGFR、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、およびCD154の膜貫通領域から選択される、請求項35に記載のCAR。
【請求項37】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10、およびDAP12の機能的シグナリングドメインを含む一次シグナリングドメインを含む、請求項35または36に記載のCAR。
【請求項38】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、共刺激受容体の機能的シグナリングドメインを含む共刺激シグナリングドメインをさらに含む、請求項35~37のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項39】
前記共刺激受容体が、OX40、CD27、CD28、CD30、CD40、PD-1、CD2、CD7、CD258、NKG2C、B7-H3、CD83、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOSおよび4-1BB(CD137)に結合するリガンド、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項38に記載のCAR。
【請求項40】
請求項35~39のいずれか一項に記載のCARをコードする、単離された核酸。
【請求項41】
請求項40に記載の単離された核酸を含む、発現ベクター。
【請求項42】
請求項40に記載の核酸または請求項41に記載の発現ベクターを含む、免疫エフェクター細胞。
【請求項43】
請求項35~39のいずれか一項に記載のCARを発現する、免疫エフェクター細胞。
【請求項44】
T細胞である、請求項42または43に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項45】
前記T細胞が、CD8
+T細胞、CD4
+T細胞、γδT細胞、またはNKT細胞である、請求項44に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項46】
NK細胞である、請求項42または43に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項47】
請求項20~29のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項30もしくは31に記載の抗体-薬物コンジュゲート、請求項32もしくは33に記載の免疫サイトカイン、請求項34に記載の二重特異性T細胞エンゲージャー、または請求項42~46のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞と、薬学的に許容され得る担体とを含む、医薬組成物。
【請求項48】
癌を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項20~29のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項30もしくは31に記載の抗体-薬物コンジュゲート、請求項32もしくは33に記載の免疫サイトカイン、請求項34に記載の二重特異性T細胞エンゲージャー、請求項42~46のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞、または請求項47に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項49】
前記癌が固形腫瘍である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記癌が、肺癌、乳癌、腎臓癌、結腸直腸癌、胃癌、脳癌、神経膠腫、膀胱癌、頭頸部癌、膀胱癌、膵臓癌、および肝臓癌、子宮頸癌、卵巣癌または前立腺癌である、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記癌がEGFRを発現する、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記抗原結合部位、タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、免疫サイトカイン、または二重特異性T細胞エンゲージャーが、精製された抗原結合部位、タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、免疫サイトカイン、または二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗原結合部位、請求項20~29のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項30もしくは請求項31に記載の抗体-薬物コンジュゲート、請求項32もしくは請求項33に記載の免疫サイトカイン、または請求項34に記載の二重特異性T細胞エンゲージャー。
【請求項53】
前記抗原結合部位、タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、免疫サイトカイン、または二重特異性T細胞エンゲージャーが、遠心分離、深層濾過、細胞溶解、均質化、凍結融解、親和性精製、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィーからなる群から選択される方法によって精製される、請求項52に記載の抗原結合部位、タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、免疫サイトカイン、または二重特異性T細胞エンゲージャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月5日に出願された米国仮特許出願第63/061,507号に基づく利益および優先権を主張し、その開示はその全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年8月4日に作成された当該ASCIIコピーの名称はDFY-083WO_SL.txtであり、サイズは61,970バイトである。
【0003】
発明の分野
【背景技術】
【0004】
背景
癌は、この疾患の処置に関する文献に報告された多大な研究努力および科学的進歩にもかかわらず、重大な健康問題であり続けている。成人において最も頻繁に診断される癌としては、前立腺癌、乳癌、および肺癌が挙げられる。血液悪性腫瘍は、固形癌よりも頻度は低いが、生存率が低い。これらの癌の現在の処置選択肢は、すべての患者に有効ではなく、かつ/または相当に有害な副作用を有し得る。他の種類の癌もまた、既存の処置選択肢を使用して処置することは依然として困難である。
【0005】
上皮成長因子受容体(EGFR、ErbB-1、HER1)は、細胞外タンパク質リガンドの上皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーに対する受容体である膜貫通タンパク質である。上皮成長因子およびトランスフォーミング成長因子α(TGFα)などのその特異的リガンドが結合すると、EGFRは、不活性な単量体形態から、他のErbBファミリー受容体を有する活性なホモ二量体またはヘテロ二量体へ転移する。二量体化は、その固有の細胞内タンパク質-チロシンキナーゼ活性を刺激し、下流のシグナル伝達カスケードを誘発して、DNA合成および細胞増殖をもたらす。EGFRは、細胞遊走、接着、および増殖などの表現型の調節に関与している。
【0006】
EGFRの過剰発現または過剰活性をもたらす変異は、非小細胞肺癌、肛門癌、神経膠芽腫および頭頸部の上皮腫瘍などのいくつかの癌に関連している。EGFRを伴うこれらの体細胞変異は、その絶え間ない活性化をもたらし、無制御な細胞分裂を生じる。神経膠芽腫では、多かれ少なかれEGFRの特異的な変異(EGFRvIIIと呼ばれる)がしばしば観察される。EGFRまたはファミリーメンバーの変異、増幅または誤調節は、結腸直腸癌、腎細胞癌、膀胱癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵臓癌、および肝臓癌などの他の固形腫瘍に関与している。
【0007】
セツキシマブ、パニツムマブ、ネシツムマブ、およびザルツムマブなどの抗EGFRモノクローナル抗体が開発されている。しかしながら、癌の処置に使用するための大きな有効性を有し、有害作用の少ない新規かつ有用な抗体および関連する治療法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本出願は、ヒトEGFRに結合する抗原結合部位を提供する。これらの抗原結合部位は、EGFRの細胞外ドメイン中の様々なエピトープに結合する。そのような抗原結合部位を含むタンパク質およびタンパク質コンジュゲート、例えば、抗体、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)および免疫サイトカイン、ならびにそのような抗原結合部位(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))を含むタンパク質を発現する免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞)は、癌などのEGFR関連疾患を処置するのに有用である。
【0009】
したがって、本出願の一態様は、EGFRに結合する抗原結合部位であって、(i)それぞれ配列番号2、23および4の相補性決定領域1(CDR1)配列、相補性決定領域2(CDR2)配列および相補性決定領域3(CDR3)配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、それぞれ配列番号6、7および17のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含むか、または、(ii)それぞれ配列番号2、12および4のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含むVHと、それぞれ配列番号6、7および8のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含むVLとを含む、抗原結合部位、を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、VHは、それぞれ配列番号2、23および4のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含み、VLは、それぞれ配列番号6、7および17のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、それぞれ配列番号2、12および4のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含み、VLは、それぞれ配列番号6、7および17のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、それぞれ配列番号2、3および4のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含み、VLは、それぞれ配列番号6、7および17のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは、それぞれ配列番号2、12および4のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含み、VLは、それぞれ配列番号6、7および8のCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、VHは配列番号11と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号16と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは配列番号11のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは配列番号32のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号33のアミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、VHは配列番号1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号16と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは配列番号1のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、VHは配列番号11と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号13と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHは配列番号11のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号13のアミノ酸配列を含む。
【0014】
本出願の別の態様は、配列番号1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVLとを含む抗原結合部位であって、
VHは配列番号1に対してChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるS62R置換を含み、かつ/またはVLは配列番号5に対してChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるD92R置換および/またはF87Y置換を含む、抗原結合部位を提供する。
【0015】
上記の態様のいずれか1つのいくつかの実施形態では、VHは、配列番号1に対してChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるS62R置換を含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号5に対してChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるD92R置換を含む。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号1に対してChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるS62R置換を含み、VLは、配列番号5に対してChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるD92R置換を含む。いくつかの実施形態では、VLは、配列番号5に対してChothiaナンバリングスキームでナンバリングされるF87Y置換を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗原結合部位は、一本鎖可変フラグメント(scFv)として存在し、scFvは、配列番号14、18、20、および24から選択される配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗原結合部位は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に5nM以下の解離定数(KD)でヒトEGFRに結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合部位は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合に6nM以下の解離定数(KD)でアカゲザルEGFRに結合する。
【0018】
本出願の別の態様は、本明細書に開示される抗原結合部位を含むタンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本タンパク質は、抗体重鎖定常領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域はヒトIgG重鎖定常領域である。いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域はヒトIgG1重鎖定常領域である。いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域の各ポリペプチド鎖は、配列番号26と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域の少なくとも1つのポリペプチド鎖は、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411、およびK439から選択される1またはそれを超える位置に1またはそれを超える変異を含む。いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域の少なくとも1つのポリペプチド鎖は、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、Q347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、およびK439Eから選択される1またはそれを超える変異を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖は、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1またはそれを超える位置に1またはそれを超える変異を含み、抗体重鎖定常領域のもう一方のポリペプチド鎖は、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1またはそれを超える位置に1またはそれを超える変異を含む。いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖は、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、K360E置換およびK409W置換を含み、抗体重鎖定常領域のもう一方のポリペプチド鎖は、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされる、Q347R置換、D399V置換およびF405T置換を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖は、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされるY349C置換を含み、抗体重鎖定常領域のもう一方のポリペプチド鎖は、配列番号26に対して、EUナンバリングシステムに従ってナンバリングされるS354C置換を含む。
【0022】
本出願の別の態様は、本明細書に開示されるタンパク質と、薬物部分とを含む、抗体-薬物コンジュゲートを提供する。いくつかの実施形態では、薬物部分は、オーリスタチン、N-アセチル-γカリケアマイシン、メイタンシノイド、ピロロベンゾジアゼピン、およびSN-38からなる群から選択される。
【0023】
本出願の別の態様は、本明細書に開示される抗原結合部位と、サイトカインとを含む、免疫サイトカインを提供する。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-2、IL-4、IL-10、IL-12、IL-15、TNFおよびIFNαからなる群より選択される。
【0024】
本出願の別の態様は、本明細書に開示される抗原結合部位と、CD3に結合する抗原結合部位とを含む二重特異性T細胞エンゲージャーを提供する。
【0025】
本出願の別の態様は、(a)本明細書に開示される抗原結合部位と、(b)膜貫通ドメインと、(c)細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、EGFR、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152およびCD154の膜貫通領域から選択される。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10およびDAP12の機能的シグナリングドメインを含む一次シグナリングドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激受容体の機能的シグナリングドメインを含む共刺激シグナリングドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、共刺激受容体は、OX40、CD27、CD28、CD30、CD40、PD-1、CD2、CD7、CD258、NKG2C、B7-H3、CD83、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOSおよび4-1BB(CD137)に結合するリガンド、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0026】
本出願の別の態様は、本明細書に開示されるCARをコードする単離された核酸を提供する。本出願の別の態様は、本明細書に開示される単離された核酸を含む発現ベクターを提供する。本出願の別の態様は、核酸または発現ベクターを含む免疫エフェクター細胞を提供する。
【0027】
本出願の別の態様は、本明細書に開示されるCARを発現する免疫エフェクター細胞を提供する。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、γδT細胞、またはNKT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞はNK細胞である。
【0028】
本出願の別の態様は、本明細書に開示されるタンパク質、本明細書に開示される抗体-薬物コンジュゲート、本明細書に開示される免疫サイトカイン、本明細書に開示される二重特異性T細胞エンゲージャー、または本明細書に開示される免疫エフェクター細胞と、薬学的に許容され得る担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0029】
本出願の別の態様は、癌を処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書に開示されるタンパク質、本明細書に開示される抗体-薬物コンジュゲート、本明細書に開示される免疫サイトカイン、本明細書に開示される二重特異性T細胞エンゲージャー、本明細書に開示される免疫エフェクター細胞、または本明細書に開示される医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌は、肺癌、乳癌、腎臓癌、結腸直腸癌、胃癌、脳癌、神経膠腫、膀胱癌、頭頸部癌、膀胱癌、膵臓癌、および肝臓癌、子宮頸癌、卵巣癌または前立腺癌である。いくつかの実施形態では、癌はEGFRを発現する。
【0031】
別の態様では、本出願は、本明細書に開示される精製抗原結合部位、タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、免疫サイトカイン、または二重特異性T細胞エンゲージャーを提供する。いくつかの実施形態では、精製された抗原結合部位、タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、免疫サイトカイン、または二重特異性T細胞エンゲージャーは、遠心分離、深層ろ過、細胞溶解、ホモジナイズ、凍結融解、アフィニティー精製、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィーからなる群より選択される方法によって精製される。
【0032】
本出願に記載される抗原結合部位のこれらおよび他の態様ならびに利点は、以下の図、詳細な説明および特許請求の範囲によって示される。
【0033】
図面の説明
本出願は、以下の図面を参照してより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、VH中にS62R置換を有するパニツムマブの構造モデリングを示す図である(Chothiaナンバリングスキームによる、ここでは、このArgとVLの1位のAspとの間の水素結合がVH-VL界面の安定化に寄与し得る)。
【0035】
【
図2】
図2は、VL中にF87Y置換(Chothiaナンバリングスキームによる)を有するパニツムマブの構造モデリングを示す図であり、ここでは、このTyrとVHの位置39のGlnとの間の水素結合がVH-VL界面の安定化に寄与し得る。
【0036】
【
図3】
図3は、VL中にD92R置換を有するパニツムマブの構造モデリングを示す図であり、ここでは、(CDRL3中の)このArgと(CDRL1中の)VLの位置32のTyrとの間のファンデルワールス接触がパラトープの安定化に寄与し得る。
【0037】
【
図4】
図4は、EGFR-タンパク質-1のヒトEGFRへの結合の滴定のためのSPRセンサーグラムである。
【0038】
【
図5】
図5は、EGFR-タンパク質-2のヒトEGFRへの結合の滴定のためのSPRセンサーグラムである。
【0039】
【
図6】
図6は、EGFR-タンパク質-3のヒトEGFRへの結合の滴定のためのSPRセンサーグラムである。
【0040】
【
図7】
図7は、EGFR-タンパク質-4のヒトEGFRへの結合の滴定のためのSPRセンサーグラムである。
【0041】
【
図8】
図8A、
図8B、
図8Cおよび
図8Dは、それぞれ、示差走査熱量測定(DSC)分析によって測定される、PBS(pH7.4)中のEGFR-タンパク質-1(
図8A)、EGFR-タンパク質-2(
図8B)、EGFR-タンパク質-3(
図8C)およびEGFR-タンパク質-4(
図8D)についてのサーモグラムを示すプロットである。
【0042】
【
図9】
図9Aおよび
図9Bは、DSC分析によって測定された、それぞれ20mMヒスチジン、250mMトレハロース、0.01%PS80(pH6.0)中のEGFR-タンパク質3(
図9A)およびEGFR-タンパク質4(
図9B)のサーモグラムを示すプロットである。
【0043】
【
図10】
図10は、EGFR陽性H2172癌細胞に対する一連の濃度のEGFR-タンパク質1(「EGFR1」)、EGFR-タンパク質2(「EGFR2」)、EGFR-タンパク質3(「EGFR3」)およびパニツムマブの結合親和性を示すプロットである。
【0044】
【
図11】
図11は、一連の濃度のEGFR-タンパク質1(「EGFR1」)、EGFR-タンパク質2(「EGFR2」)、EGFR-タンパク質3(「EGFR3」)、パニツムマブおよびセツキシマブの存在下で72時間にわたるEGFR陽性細胞株の増殖を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
本出願は、ヒトEGFRに結合する抗原結合部位を提供する。これらの抗原結合部位は、EGFRの細胞外ドメイン中の様々なエピトープに結合する。そのような抗原結合部位を含むタンパク質およびタンパク質コンジュゲート、例えば、抗体、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)および免疫サイトカイン、ならびにそのような抗原結合部位(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))を含むタンパク質を発現する免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞)は、癌などのEGFR関連疾患を処置するのに有用である。本出願はまた、そのようなタンパク質、タンパク質コンジュゲート、および免疫エフェクター細胞を含む医薬組成物、ならびにそのようなタンパク質、タンパク質コンジュゲート、免疫エフェクター細胞、および医薬組成物を使用する癌の処置などの処置方法を提供する。本出願に記載される抗原結合部位の様々な態様を以下のセクションに記載するが、1つの特定のセクションに記載される本出願に記載される抗原結合部位の態様は、いかなる特定のセクションにも限定されない。
【0046】
本出願の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「a」および「an」という用語は、「1またはそれを超える」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数を含む。
【0048】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の一部を指す。ヒト抗体では、抗原結合部位は、重鎖(「H」)および軽鎖(「L」)のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に分岐したストレッチは、「フレームワーク領域」または「FR」として知られる、より保存された隣接ストレッチの間に介在する「超可変領域」を指す。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリンの超可変領域の間に隣接して天然に見られるアミノ酸配列を指す。ヒト抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、三次元空間において互いに対して配置されて抗原結合表面を形成する。抗原結合表面は、結合した抗原の三次元表面に相補的であり、重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。ラクダおよび軟骨魚類などの特定の動物では、抗原結合部位は、「単一ドメイン抗体」を提供する単一の抗体鎖によって形成される。抗原結合部位は、インタクトな抗体中、抗原結合表面を保持する抗体の抗原結合フラグメント中、またはペプチドリンカーを使用して重鎖可変ドメインを単一ポリペプチド中の軽鎖可変ドメインに連結するscFvなどの組換えポリペプチド中に存在し得る。
【0049】
抗原結合部位のCDRは、Kabatら、J.Biol.Chem.252,6609-6616(1977)および、Kabatら、Sequences of protein of immunological interest.(1991)、Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901-917(1987)、および、MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732-745(1996)に記載された方法によって決定される。これらの定義の下で決定されるCDRは、典型的には、互いに比較した場合、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。特定の実施形態では、「CDR」という用語は、MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732-745(1996)and Martin A.,Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains,in Antibody Engineering,Kontermann and Dubel,eds.,Chapter 31,pp.422-439,Springer-Verlag,Berlin(2001)によって定義されるCDRである。特定の実施形態では、「CDR」という用語は、Kabatら、J.Biol.Chem.252,6609-6616(1977)、および、Kabatら、Sequences of protein of immunological interest.(1991)によって定義されるCDRである。特定の実施形態では、抗体の重鎖CDRおよび軽鎖CDRは、異なる慣習を用いて定義される。例えば、特定の実施形態では、重鎖CDRは、MacCallum(上掲)に従って定義され、軽鎖CDRは、Kabat(上掲)に従って定義される。CDRH1、CDRH2およびCDRH3は重鎖CDRを示し、CDRL1、CDRL2およびCDRL3は軽鎖CDRを示す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書に記載の方法および組成物によって処置される生物を指す。そのような生物としては、好ましくは哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な化合物(例えば、本出願に記載される化合物)の量を指す。有効量は、1またはそれを超える投与、適用または用量で投与することができ、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図しない。本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、症状、疾患、障害などの改善またはそれらの症状の改善をもたらす任意の効果、例えば、軽減、低減、調節、改善または根絶を含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、活性剤と、組成物をインビボまたはエクスビボでの診断または治療用途に特に適したものにする不活性または活性の担体との組み合わせを指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルジョン(例えば、油/水または水/油エマルジョンなど)、および様々な種類の湿潤剤などの標準的な薬学的担体のいずれかを指す。本組成物はまた、安定剤および保存剤を含むことができる。担体、安定剤およびアジュバントの例については、例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,PA[1975]を参照されたい。
【0054】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る塩」という用語は、対象に投与したときに、本出願に記載される化合物またはその活性代謝産物もしくは残基を提供することができる、本出願に記載される化合物の任意の薬学的に許容され得る塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者に知られているように、本出願に記載される化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基から誘導され得る。例示的な酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。シュウ酸などの他の酸は、それ自体は薬学的に許容され得るものではないが、本出願に記載の化合物およびそれらの薬学的に許容され得る酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に使用することができる。
【0055】
例示的な塩基としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NW4
+(式中、WがC1~4アルキルである)の化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
例示的な塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギネート、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクレート、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。塩の他の例としては、Na+、NH4
+、およびNW4
+(式中、WはC1~4アルキル基である)などの適切なカチオンと配合された本出願に記載の化合物のアニオンなどが挙げられる。
【0057】
治療的使用のために、本出願に記載される化合物の塩は、薬学的に許容され得ると考えられる。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩もまた、例えば、薬学的に許容され得る化合物の調製または精製において使用され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、EGFR(ヒトの上皮増殖因子受容体、ErbB-1、またはHER1としても知られている)は、Uniprotアクセッション番号P00533(ヒト)ならびに関連するアイソフォームおよびオルソログのタンパク質を指す。
【0059】
本明細書全体を通して、組成物が特定の成分を有する、または含む、または備えると記載されている場合、または、プロセスおよび方法が特定の工程を有する、または含む、または備えると記載されている場合、さらに、記載された成分から本質的になる、またはそれらからなる本出願に記載された組成物があり、記載された処理工程から本質的になる、またはそれらからなる本出願によるプロセスおよび方法があることが企図される。
【0060】
一般的な事項として、パーセンテージを特定する組成物は、特に明記しない限り重量基準である。さらに、変数が定義を伴わない場合、変数の以前の定義が優先する。
【0061】
本出願に記載される抗原結合部位の様々な特徴および態様は、以下により詳細に説明する。
I.抗原結合部位
【0062】
一態様では、本出願は、ヒトEGFRに結合する抗原結合部位であって、パニツムマブに由来し、VHおよび/またはVLに変異を有する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗原結合部位を提供する。本出願に記載されるVH配列およびVL配列中の単独または組み合わせとして想定される変異としては、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R、VL中のD92R、および/またはVL中のF87Yが挙げられる。これらの変異は、抗原結合部位の熱安定性を高め、EGFRに対する親和性を保持することが知られている。例示的な抗原結合部位のVH配列、VL配列、CDR配列、およびscFv配列を表1に列挙する。CDR配列は、Chothiaナンバリングスキームに従って同定される。太字の残基は変異した残基を示し、イタリック体の配列はポリペプチドリンカーを示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0063】
特定の実施形態では、抗原結合部位のアミノ酸配列が、VL(例えば、配列番号5、13または16)のC末端にさらなるアルギニン(R)残基を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、scFvは、VLアミノ酸配列のC末端にさらなるアルギニン(R)残基を含むVLアミノ酸配列を含む。
【0064】
特定の実施形態では、抗原結合部位のアミノ酸配列は、パニツムマブの配列に対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R、VL中のD92R、およびVL中のF87Yから選択される1またはそれを超える変異を含む。特定の実施形態では、EGFR(例えば、ヒトEGFR)に結合する抗原結合部位は、表1に開示されるEGFR-結合剤-1のVHと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメイン(VH)と、表1に開示されるEGFR-結合剤-1のVLと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。特定の実施形態では、EGFR(例えば、ヒトEGFR)に結合する抗原結合部位は、表1に開示されるEGFR-結合剤-2、EGFR-結合剤-3、またはEGFR-結合剤-4のVHと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメイン(VH)と、表1に開示されるEGFR-結合剤-2、EGFR-結合剤-3、またはEGFR-結合剤-4のVLと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、Kabat(Kabatら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH Publication No.91-3242,Bethesdaを参照されたい)、Chothia(例えば、Chothia C&Lesk A M,(1987),J.Mol.Biol.196:901-917を参照されたい)、MacCallum(MacCallum R Mら、(1996)J.Mol.Biol.262:732-745)、または当技術分野で公知の任意の他のCDR決定方法に基づいて決定される、表1に開示されるEGFR-結合剤-2、EGFR-結合剤-3、またはEGFR-結合剤-4のVHおよびVL配列の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、表1に開示されるEGFR-結合剤-2、EGFR-結合剤-3またはEGFR-結合剤-4の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0065】
特定の実施形態では、抗原結合部位のアミノ酸配列は、パニツムマブの配列に対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R変異およびVL中のF87Y変異を含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLとを含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号11と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号13と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、Kabat(Kabatら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH Publication No.91-3242,Bethesdaを参照されたい)、Chothia(例えば、Chothia C&Lesk A M,(1987),J.Mol.Biol.196:901-917を参照されたい)、MacCallum(MacCallum R Mら、(1996)J.Mol.Biol.262:732-745)、または当技術分野で公知の任意の他のCDR決定方法に基づいて決定される、表1に開示されるEGFR-結合剤-2のVHおよびVL配列の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。特定の実施形態では、VHは、それぞれ配列番号2、12および4のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。特定の実施形態では、VLは、それぞれ配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ配列番号2、12および4のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ配列番号6、7および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、scFvとして存在し、このscFvは、配列番号14または15と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、scFvは、配列番号14または15と同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、このscFvは、配列番号14と同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、このscFvは、配列番号15と同一のアミノ酸配列を含む。
【0066】
特定の実施形態では、抗原結合部位のアミノ酸配列は、パニツムマブの配列に対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R変異、VL中のF87Y変異、およびVL中のD92R変異を含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLとを含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号11と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号16と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、Kabat(Kabatら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH Publication No.91-3242,Bethesdaを参照されたい)、Chothia(例えば、Chothia C&Lesk A M,(1987),J.Mol.Biol.196:901-917を参照されたい)、MacCallum(MacCallum R Mら、(1996)J.Mol.Biol.262:732-745)、または当技術分野で公知の任意の他のCDR決定方法に基づいて決定される、表1に開示されるEGFR-結合剤-3のVHおよびVL配列の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。特定の実施形態では、VHは、それぞれ配列番号2、12および4のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。特定の実施形態では、VLは、それぞれ配列番号6、7、および17のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ配列番号2、12および4のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ配列番号6、7および17のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、scFvとして存在し、このscFvは、配列番号18または19と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、scFvは、配列番号18または19と同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、このscFvは、配列番号18と同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、このscFvは、配列番号19と同一のアミノ酸配列を含む。
【0067】
特定の実施形態では、抗原結合部位のアミノ酸配列は、パニツムマブの配列に対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VL中のF87Y変異およびVL中のD92R変異を含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLとを含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号16と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、Kabat(Kabatら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH Publication No.91-3242,Bethesdaを参照されたい)、Chothia(例えば、Chothia C&Lesk A M,(1987),J.Mol.Biol.196:901-917を参照されたい)、MacCallum(MacCallum R Mら、(1996)J.Mol.Biol.262:732-745)、または当技術分野で公知の任意の他のCDR決定方法に基づいて決定される、表1に開示されるEGFR-結合剤-4のVHおよびVL配列の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。特定の実施形態では、VHは、それぞれ配列番号2、3および4のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。特定の実施形態では、VLは、それぞれ配列番号6、7、および17のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ配列番号2、3および4のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ配列番号6、7および17のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、scFvとして存在し、このscFvは、配列番号20または21と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、scFvは、配列番号20または21と同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、このscFvは、配列番号20と同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、このscFvは、配列番号21と同一のアミノ酸配列を含む。
【0068】
特定の実施形態では、抗原結合部位のアミノ酸配列は、パニツムマブの配列に対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VL中のF87Y変異およびVL中のD92R変異、ならびに必要に応じてVH中のS62R変異を含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLとを含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号22と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号16と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、Kabat(Kabatら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH Publication No.91-3242,Bethesdaを参照されたい)、Chothia(例えば、Chothia C&Lesk A M,(1987),J.Mol.Biol.196:901-917を参照されたい)、MacCallum(MacCallum R Mら、(1996)J.Mol.Biol.262:732-745)、または当技術分野で公知の任意の他のCDR決定方法に基づいて決定される、表1に開示されるコンセンサスVHおよびVL配列の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。特定の実施形態では、VHは、それぞれ配列番号2、23および4のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。特定の実施形態では、VLは、それぞれ配列番号6、7、および17のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ配列番号2、23および4のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ配列番号6、7および17のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、scFvとして存在し、このscFvは、配列番号24または25と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、scFvは、配列番号24または25と同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、このscFvは、配列番号24と同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、このscFvは、配列番号25と同一のアミノ酸配列を含む。
【0069】
あるいは、EGFRに結合することができる新規な抗原結合部位は、EGFRのアミノ酸配列、そのアイソフォーム、その変異体、その成熟細胞外断片またはEGFRのドメインを含む断片への結合についてスクリーニングすることによって同定することができる。
【表2-1】
【表2-2】
【0070】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することができる新規な抗原結合部位は、配列番号27~30によって定義されるアミノ酸配列、その変異体、その成熟細胞外断片、またはEGFRのドメインを含む断片への結合についてスクリーニングすることによって同定することができる。
【0071】
特定の実施形態では、抗原結合部位は、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nMまたは4nM以下のKD値(10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nMまたは4nM以上の親和性)でヒトEGFRまたはその細胞外領域に結合する。特定の実施形態では、本出願の抗原結合部位は、ヒトEGFRまたはその細胞外領域に、4nM以下のKD値(4nM以上の親和性)で結合する。特定の実施形態では、本出願の抗原結合部位は、ヒトEGFRまたはその細胞外領域に、約2.0nM、2.1nM、2.2nM、2.3nM、2.4nM、2.5nM、2.6nM、2.7nM、2.8nM、2.9nM、3.0nM、3.1nM、3.2nM、3.3nM、3.4nM、3.5nM、3.6nM、3.7nM、3.8nM、3.9nM、4.0nM、4.1nM、4.2nM、4.3nM、4.4nM、4.5nM、4.6nM、4.7nM、4.8nM、4.9nMまたは5.0nM以下のKD値(約2.0nM、2.1nM、2.2nM、2.3nM、2.4nM、2.5nM、2.6nM、2.7nM、2.8nM、2.9nM、3.0nM、3.1nM、3.2nM、3.3nM、3.4nM、3.5nM、3.6nM、3.7nM、3.8nM、3.9nM、4.0nM、4.1nM、4.2nM、4.3nM、4.4nM、4.5nM、4.6nM、4.7nM、4.8nM、4.9nMまたは5.0nM以上の親和性)で結合する。特定の実施形態では、本出願の抗原結合部位は、ヒトEGFRまたはその細胞外領域に、約1.0~3.5nM、1.0~4.0nM、1.0~4.5nM、1.0~5.0nM、1.5~3.5nM、1.5~4.0nM、1.5~4.5nM、1.5~5.0nM、2.0~3.5nM、2.0~4.0nM、2.0~4.5nM、2.0~5.0nM、2.5~3.5nM、2.5~4.0nM、2.5~4.5nM、2.5~5.0nM、3.0~3.5nM、3.0~4.0nM、3.0~4.5nMまたは3.0~5.0nMの範囲のKD値で結合する。これらのKD値は、標準的な結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴またはバイオレイヤー干渉法を用いて測定したものである。特定の実施形態では、抗体は、対象の体液、組織および/または細胞由来のEGFRに結合する。
【0072】
特定の実施形態では、抗原結合部位は、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nMまたは4nM以下のKD値(10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nMまたは4nM以上の親和性)で、アカゲザルEGFRまたはその細胞外領域に結合する。特定の実施形態では、本出願の抗原結合部位は、アカゲザルEGFRまたはその細胞外領域に、約1~10nM、1~6nM、2~10nM、2~6nM、3~10nM、3~6nM、4~10nM、4~6nM、5~10nMまたは5~6nMの範囲のKD値で結合する。これらのKD値は、標準的な結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴またはバイオレイヤー干渉法を用いて測定したものである。特定の実施形態では、抗体は、対象の体液、組織および/または細胞由来のEGFRに結合する。
【0073】
特定の実施形態では、抗原結合部位は、それぞれ配列番号1および5のVH配列およびVL配列を有する対応する抗原結合部位よりも高い熱安定性を有し、抗原結合部位は、VH中にG44C変異およびVL中にG100C変異を含まない。特定の実施形態では、本明細書に開示される抗原結合は、配列番号9または10のアミノ酸配列を有する対応する抗原結合部位よりも高い熱安定性を有し、抗原結合部位は、それぞれVL-VHまたはVH-VL配向のscFvフォーマットをとる。熱安定性を測定する方法としては、例えば、以下の実施例3に開示されるような示差走査熱量測定(DSC)が挙げられるが、これに限定されない。抗原結合部位がVL-VH配向のscFvフォーマットをとる特定の実施形態では、抗原結合部位の融解温度(例えば、DSCによって測定される、TonsetまたはTm1)は、配列番号9のアミノ酸配列を有するscFvの対応する融解温度より少なくとも1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、または6℃高い。抗原結合部位がVH-VL配向のscFvフォーマットをとる特定の実施形態では、抗原結合部位の融解温度(例えば、DSCによって測定される、TonsetまたはTm1)は、配列番号10のアミノ酸配列を有するscFvの対応する融解温度より少なくとも1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、または6℃高い。
抗原結合部位を有するタンパク質
【0074】
本明細書に開示される抗原結合部位は、抗体またはその抗原結合フラグメント中に存在し得る。抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、Fabフラグメント、Fab’フラグメントまたはF(ab’)2フラグメント、Fv、二重特異性抗体、二重特異性Fab2、二重特異性(mab)2、ヒト化抗体、人工的に作製されたヒト抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー、二重特異性NK細胞エンゲージャー、一本鎖抗体(例えば、一本鎖FvフラグメントまたはscFv)、トリオーマブ、共通軽鎖を有するノブイントゥホール(kih)IgG、crossmab、ortho-Fab IgG、DVD-Ig、2 in 1-IgG、IgG-scFv、bi-scFv2-Fc、ナノボディ、tandAb、二重親和性再標的化抗体(DART)、DART-Fc、scFv-HSA-scFv(ただし、HSA=ヒト血清)、またはドックアンドロック(DNL)-Fab3であり得る。
【0075】
特定の実施形態では、本明細書に開示される抗原結合部位は、抗体定常領域、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEの重鎖定常領域、特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の(例えば、ヒト)重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域と、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一のアミノ酸配列に連結される。別の実施形態では、本明細書に開示される抗原結合部位は、例えばカッパまたはラムダの軽鎖定常領域から選択される(例えば、ヒト)軽鎖定常領域に連結され得る。定常領域は、抗体の特性を改変するために(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、および/または補体機能のうちの1またはそれを超えるものを増加または減少させるために)変更、例えば変異させることができる。一実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。他の実施形態では、抗体はエフェクター細胞を動員せず、または補体を固定しない。別の実施形態では、抗体は、Fc受容体に結合する能力が低下しているか、またはFc受容体に結合する能力を有していない。例えば、それは、アイソタイプまたはサブタイプ、フラグメントまたは他の変異体であり、Fc受容体への結合を助けず、例えば、変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0076】
特定の実施形態では、抗原結合部位は、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含み、CH1ドメインを含むまたは含まないIgG定常領域に連結される。いくつかの実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ヒトIgG1定常領域、ヒトIgG2定常領域、ヒトIgG3定常領域またはヒトIgG4定常領域などのヒト抗体定常領域と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一である。一実施形態では、CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインまたはその一部は、野生型ヒトIgG1Fc配列と、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列:
【化1】
を含む。いくつかの他の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、またはウマなどの別の哺乳動物由来の抗体定常領域と、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一である。例えば、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411および/またはK439において、ヒトIgG1定常領域と比較して、1またはそれを超える変異を定常領域に組み込むことができる。例示的な置換としては、例えば、Q347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、T350V、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、T394W、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、およびK439Eが挙げられる。
【0077】
特定の実施形態では、抗原結合部位は、CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインの一部に連結されている。Fcドメイン内で、CD16結合はヒンジ領域およびCH2ドメインによって媒介される。例えば、ヒトIgG1内では、CD16との相互作用は、主に、CH2ドメイン中のアミノ酸残基Asp265-Glu269、Asn297-Thr299、Ala327-Ile332、Leu234-Ser239、および炭水化物残基N-アセチル-D-グルコサミンに集中している(Sondermannら、Nature,406(6793):267-273を参照のこと)。既知のドメインに基づいて、変異を、ファージディスプレイライブラリーまたは酵母表面ディスプレイcDNAライブラリーを使用するなどして、CD16に対する結合親和性を増強または低減するように選択することができ、または相互作用の既知の三次元構造に基づいて設計することができる。
【0078】
特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCH1に組み込まれ得る変異は、アミノ酸V125、F126、P127、T135、T139、A140、F170、P171および/またはV173に存在し得る。特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCκに組み込まれ得る変異は、アミノ酸E123、F116、S176、V163、S174および/またはT164に存在し得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗体定常ドメインは、IgG抗体、例えばヒトIgG1抗体のCH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、別の抗体定常ドメインとのヘテロ二量体化を可能にするように変異が抗体定常ドメインに導入される。例えば、抗体定常ドメインがヒトIgG1の定常ドメインに由来する場合、抗体定常ドメインは、ヒトIgG1抗体のアミノ酸234~332と、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含み得、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411、およびK439からなる群より選択される1またはそれを超える位置において異なる。本明細書に開示されるFcドメインまたはヒンジ領域におけるすべてのアミノ酸位置は、EUナンバリングに従ってナンバリングされる。
【0080】
非対称タンパク質の形成を促進するために、Fcドメインヘテロ二量体化が企図される。ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン中の変異(例えば、アミノ酸置換)は、例えば、国際公開第2019157366号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれない。
【0081】
上記のタンパク質は、当業者に周知の組換えDNA技術を使用して作製することができる。例えば、第1の免疫グロブリン重鎖をコードする第1の核酸配列を第1の発現ベクターにクローニングすることができ、第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸配列を第2の発現ベクターにクローニングすることができ、第1の免疫グロブリン軽鎖をコードする第3の核酸配列を第3の発現ベクターにクローニングすることができ、第2の免疫グロブリン軽鎖をコードする第4の核酸配列を第4の発現ベクターにクローニングすることができ、第1、第2、第3および第4の発現ベクターを一緒に宿主細胞に安定にトランスフェクトして、多量体タンパク質を産生することができる。
【0082】
タンパク質の最高収率を達成するために、第1、第2、第3および第4の発現ベクターの異なる比率を調べて、宿主細胞へのトランスフェクションのための最適な比率を決定することができる。トランスフェクション後、限定希釈、ELISA、FACS、顕微鏡法またはClonepixなどの当技術分野で公知の方法を使用して、細胞バンク生成のために単一クローンを単離することができる。
【0083】
クローンは、バイオリアクターのスケールアップに適した条件下で培養することができ、本明細書に開示される抗原結合部位を含むタンパク質の発現を維持することができる。タンパク質は、遠心分離、深層濾過、細胞溶解、ホモジナイズ、凍結融解、親和性精製、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィーなどの当技術分野で公知の方法を使用して単離および精製することができる。
【0084】
したがって、別の態様では、本出願は、前述の抗体のいずれか1つの免疫グロブリン重鎖可変領域および/または免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードする配列を含む1またはそれを超える単離された核酸を提供する。本出願は、前述の抗体のいずれか1つの免疫グロブリン重鎖可変領域および/または免疫グロブリン軽鎖可変領域を発現する1またはそれを超える発現ベクターを提供する。同様に、本出願は、前述の発現ベクターおよび/または単離された核酸のうちの1またはそれを超えるものを含む宿主細胞を提供する。
【0085】
抗体が開示された抗体と同じエピトープに結合するか、または開示された抗体との結合について競合するかどうかを決定するための競合アッセイは、当技術分野で公知である。例示的な競合アッセイとしては、イムノアッセイ(例えば、ELISAアッセイ、RIAアッセイ)、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore分析)、バイオレイヤー干渉法およびフローサイトメトリーが挙げられる。
【0086】
典型的には、競合アッセイは、固体表面に結合した、または細胞表面上に発現した抗原(例えば、ヒトEGFRタンパク質またはその断片)、試験EGFR結合抗体および参照抗体の使用を含む。参照抗体は標識され、試験抗体は標識されない。競合的阻害は、試験抗体の存在下で固体表面または細胞に結合した標識参照抗体の量を求めることによって測定される。通常、試験抗体は過剰に存在する(例えば、1倍、5倍、10倍、20倍または100倍)。競合アッセイによって同定される抗体(例えば、競合抗体)としては、参照抗体と同じエピトープまたは類似の(例えば、重複する)エピトープに結合する抗体、および参照抗体が結合したエピトープに対して立体障害を生じさせるのに十分な近位の隣接エピトープに結合する抗体が挙げられる。
【0087】
標識の存在が結合を妨害しないか、さもなければ阻害しないことを確実にするために、競合アッセイを両方向で行うことができる。例えば、第1の方向では、参照抗体を標識し、試験抗体は標識せず、第2の方向では、試験抗体を標識し、参照抗体は標識しない。
【0088】
試験抗体は、過剰の一方の抗体(例えば、1倍、5倍、10倍、20倍または100倍)が他方の抗体の結合を、例えば、競合結合アッセイで測定した場合に、少なくとも50%、75%、90%、95%または99%阻害する場合、抗原への特異的結合について参照抗体と競合する。
【0089】
2つの抗体は、一方の抗体の結合を低減または排除する抗原中の本質的にすべてのアミノ酸変異がもう一方の結合を低減または排除する場合、同じエピトープに結合すると判定することができる。2つの抗体は、一方の抗体の結合を低減または排除するアミノ酸変異のサブセットのみが他方の結合を低減または排除する場合、重複するエピトープに結合すると判定することができる。
【0090】
本明細書に開示される抗体は、親和性および/または特異性などの生化学的特徴を改善するために、凝集、安定性、沈殿および/または非特異的相互作用などの生物物理学的特性を改善するために、ならびに/あるいは免疫原性を低下させるためにさらに最適化(例えば、親和性成熟)され得る。親和性成熟の手順は当業者の範囲内である。例えば、DNAシャッフリング、鎖シャッフリング、CDRシャッフリング、ランダム変異誘発および/または部位特異的変異誘発によって、免疫グロブリン重鎖および/または免疫グロブリン軽鎖に多様性を導入することができる。
【0091】
特定の実施形態では、単離されたヒト抗体は、1またはそれを超える体細胞変異を含有する。これらの場合、抗体をヒト生殖系列配列に改変して、抗体を最適化することができる(例えば、生殖細胞系列化(germlining)と呼ばれるプロセスによって)。
【0092】
一般に、最適化抗体は、それが由来する非最適化(または親)抗体と少なくとも同じまたは実質的に同じ抗原に対する親和性を有する。例えば、特定の実施形態では、最適化された抗体は、親抗体と比較した場合、抗原に対してより高い親和性を有する。
【0093】
抗体が治療薬として使用するためのものである場合、標準的なインビトロ結合化学を使用して、小分子毒素または放射性核種などのエフェクター剤にコンジュゲートすることができる。エフェクター剤がポリペプチドである場合、抗体は、エフェクターに化学的にコンジュゲートすることができ、または融合タンパク質としてエフェクターに結合することができる。融合タンパク質の構築は、当技術分野の通常の技術の範囲内である。
【0094】
抗体は、標準的なインビトロ結合化学を使用して、小分子毒素または放射性核種などのエフェクター部分にコンジュゲートすることができる。エフェクター部分がポリペプチドである場合、抗体は、エフェクターに化学的にコンジュゲートすることができ、または融合タンパク質としてエフェクターに結合することができる。融合タンパク質の構築は、当技術分野の通常の技術の範囲内である。
CAR T細胞、EGFR/CD3指向二重特異性T細胞エンゲージャー、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲートおよび免疫毒素
【0095】
本出願の別の態様は、本明細書に開示されるEGFRに結合する抗原結合部位を含む分子または複合体を提供する。例示的な分子または複合体としては、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞エンゲージャー(例えば、EGFR/CD3指向二重特異性T細胞エンゲージャー)、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲートおよび免疫毒素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
本明細書に開示されるEGFRに結合する任意の抗原結合部位を使用することができる。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位のVH配列、VL配列、および/またはCDR配列を表1に示す。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、scFvである。特定の実施形態では、scFvは、配列番号14、15、18、19、20、21、24および25からなる群より選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、scFvは、配列番号14、15、18、19、20、21、24および25からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0097】
特定の実施形態では、分子または複合体(例えば、CAR、T細胞エンゲージャー、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲートまたは免疫毒素)中のEGFRに結合する抗原結合部位は、パニツムマブに対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R変異、VL中のF87Y変異、およびVL中のD92R変異を含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLとを含む。特定の実施形態では、分子または複合体(例えば、CAR、T細胞エンゲージャー、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲートまたは免疫毒素)中のEGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号2、12、および4のアミノ酸配列によってそれぞれ表されるCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号6、7および17のアミノ酸配列によってそれぞれ表されるCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号32を含むアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号33を含むアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号18または配列番号19と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号18と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号18または19と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号18と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号19と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。
【0098】
特定の実施形態では、分子または複合体(例えば、CAR、T細胞エンゲージャー、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲートまたは免疫毒素)中のEGFRに結合する抗原結合部位は、パニツムマブに対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VL中のF87Y変異およびD92R変異を含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLとを含む。特定の実施形態では、分子または複合体(例えば、CAR、T細胞エンゲージャー、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲートまたは免疫毒素)中のEGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号2、3および4のアミノ酸配列によってそれぞれ表されるCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号6、7および17のアミノ酸配列によってそれぞれ表されるCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号20または配列番号21と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号20と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号20または21と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号20と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号21と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。
【0099】
特定の実施形態では、分子または複合体(例えば、CAR、T細胞エンゲージャー、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲートまたは免疫毒素)中のEGFRに結合する抗原結合部位は、パニツムマブに対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R変異、およびVL中のF87Y変異を含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLとを含む。特定の実施形態では、分子または複合体(例えば、CAR、T細胞エンゲージャー、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲートまたは免疫毒素)中のEGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号2、12および4のアミノ酸配列によってそれぞれ表されるCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号6、7および8のアミノ酸配列によってそれぞれ表されるCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号14または配列番号15と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号14と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号14または15と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号14と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号15と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。
【0100】
特定の実施形態では、分子または複合体(例えば、CAR、T細胞エンゲージャー、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲートまたは免疫毒素)中のEGFRに結合する抗原結合部位は、パニツムマブに対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VL中のF87Y変異、VL中のD92R変異、および必要に応じてVH中のS62R変異を含む。特定の実施形態では、EGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLとを含む。特定の実施形態では、分子または複合体(例えば、CAR、T細胞エンゲージャー、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲートまたは免疫毒素)中のEGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号2、23および4のアミノ酸配列によってそれぞれ表されるCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号6、7および17のアミノ酸配列によってそれぞれ表されるCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号24または配列番号25と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号24と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号24または25と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号24と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号25と同一のアミノ酸配列を含むscFvを含む。
キメラ抗原受容体(CAR)
【0101】
特定の実施形態では、本出願は、本明細書に開示されるようなEGFRに結合する抗原結合部位を含むEGFR標的化CARを提供する(例えば、表1を参照されたい)。EGFR標的化CARは、FabフラグメントまたはscFvを含み得る。特定の実施形態では、CAR中のEGFRに結合する抗原結合部位は、パニツムマブに対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R、VL中のF87Y、およびVL中のD92Rから選択される1またはそれを超える変異を含む。特定の実施形態では、CAR中のEGFRに結合する抗原結合部位は、配列番号14、15、18、19、20、21、24および25からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む。
【0102】
「キメラ抗原受容体」または代替的に「CAR」という用語は、少なくとも細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメイン(本明細書では「一次シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む組換えポリペプチド構築物を指す。
【0103】
したがって、特定の実施形態では、CARは、本明細書に開示されるEGFRに結合する細胞外抗原結合部位、膜貫通ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態では、CARは、少なくとも1つの共刺激分子に由来する1またはそれを超える機能的シグナル伝達ドメイン(「共刺激シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)をさらに含む。
【0104】
特定の実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメインとしての本明細書に開示されるEGFRに結合する抗原結合部位(例えば、EGFR結合scFv)、膜貫通ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメインとして本明細書に開示されるEGFRに結合する抗原結合部位(例えば、EGFR結合scFv)、膜貫通ドメイン、ならびに共刺激シグナリングドメインおよび一次シグナリングドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメインとして本明細書に開示されるEGFRに結合する抗原結合部位(例えば、EGFR結合scFv)、膜貫通ドメイン、ならびに2つの共刺激シグナル伝達ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメインとして本明細書に開示されるEGFRに結合する抗原結合部位(例えば、EGFR結合scFv)、膜貫通ドメイン、ならびに少なくとも2つの共刺激シグナル伝達ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。
【0105】
膜貫通ドメインに関して、様々な実施形態では、CARは、CARの細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含むように設計される。一実施形態では、膜貫通ドメインは、CAR中のドメインの1つと天然に会合するものである。場合によって、膜貫通ドメインは、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、アミノ酸置換によって選択または改変され得る。別の実施形態では、膜貫通ドメインは、CAR T細胞表面上の別のCARとホモ二量体化することができる。別の実施形態では、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は、同じCAR T細胞中に存在する天然の結合パートナーの結合ドメインとの相互作用を最小限に抑えるように改変または置換され得る。
【0106】
膜貫通ドメインは、任意の天然に存在する膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来し得る。一実施形態では、膜貫通領域は、CARが標的に結合したときはいつでも細胞内ドメインにシグナル伝達することができる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、EGFR、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154からなる群より選択される1またはそれを超えるタンパク質の膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、およびNKG2Cからなる群より選択される1またはそれを超えるタンパク質の膜貫通領域を含む。
【0107】
細胞外EGFR結合ドメイン(例えば、EGFR結合scFvドメイン)ドメインは、ヒンジ領域によって膜貫通ドメインに連結され得る。限定するものではないが、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジ(例えば、IgG4ヒンジ、IgDヒンジ)、Gly-Serリンカー、(G4S)4リンカー(配列番号31)、KIR2DS2ヒンジ、およびCD8αヒンジなどの様々なヒンジを使用することができる。
【0108】
本出願に記載されるCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが配置されている免疫細胞(例えば、T細胞の細胞溶解活性またはヘルパー活性(サイトカインの分泌を含む))の特殊な機能の少なくとも1つの活性化を担う。したがって、本明細書で使用される場合、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、特殊な機能を果たすように細胞に指示するタンパク質の部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される限り、そのような切断部分は、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、インタクトな鎖の代わりに使用され得る。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことを意味する。
【0109】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン(すなわち、刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメイン)および1またはそれを超える共刺激シグナル伝達ドメイン(すなわち、少なくとも1つの共刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメイン)を含む。
【0110】
本明細書で使用される場合、「刺激分子」という用語は、免疫細胞シグナル伝達経路の少なくともいくつかの態様の刺激方法で免疫細胞の活性化を調節する細胞質シグナル伝達配列を提供する、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、またはB細胞によって発現される分子を指す。一実施形態では、シグナルは、例えば、ペプチドを負荷したMHC分子とTCR/CD3複合体の結合によって開始され、限定するものではないが、増殖、活性化、分化などのT細胞応答の媒介をもたらす一次シグナルである。
【0111】
刺激的に作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含み得る。本出願において特に有用なITAM含有細胞質シグナル伝達配列の例としては、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10およびDAP12に由来するものが挙げられる。一実施形態では、本出願に記載される1またはそれを超えるCARのいずれかにおける一次シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータに由来する細胞質シグナル伝達配列を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、4-1BBおよび/またはCD3-ゼータの機能的シグナル伝達ドメインである。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、コモンFcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10、および/またはDAP12の機能的シグナリングドメインを含む。特定の実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体複合体に関連するゼータ鎖の機能的シグナル伝達ドメインである。
【0113】
本明細書で使用される場合、「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによってT細胞による共刺激応答、例えば、限定するものではないが、増殖を媒介するT細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要な抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。そのような分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD11a/CD18)、CD2、CD7、CD258(LIGHT)、NKG2C、B7-H3、およびリガンドであってCD83と特異的に結合するものなどが挙げられる。そのような共刺激分子のさらなる例としては、CD5、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、およびリガンドであってCD83と特異的に結合するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、CARの共刺激シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載の共刺激分子の機能的シグナル伝達ドメイン、例えば、OX40、CD27、CD28、CD30、CD40、PD-1、CD2、CD7、CD258、NKG2C、B7-H3、リガンドであってCD83に結合するもの、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOSおよび4-1BB(CD137)、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0114】
本明細書で使用される場合、「シグナル伝達ドメイン」という用語は、細胞内で情報を伝達することによって作用し、二次メッセンジャーを生成することによって、またはそのようなメッセンジャーに応答することによってエフェクターとして機能することによって、定義されたシグナル伝達経路を介して細胞活性を調節するタンパク質の機能的部分を指す。
【0115】
本出願に記載されるCARの細胞質シグナル伝達部分内の細胞質シグナル伝達配列は、ランダムにまたは指定された順序で互いに連結され得る。必要に応じて、短い(例えば、2~10アミノ酸長の)オリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーが連結を形成し得る。
【0116】
本出願の別の態様は、本明細書に開示されるEGFR標的化CARをコードする核酸を提供する。本核酸は、当該核酸をエフェクター細胞(例えば、T細胞)に導入することにより当該細胞にCARを発現させるのに有用である。
【0117】
例えば、コドン縮重表に従って1またはそれを超えるコドンを変更することによって配列に改変を行って、同等のまたは改善された変異体を作製することができる。DNAコドン縮重表を表3に示す。
【表3】
【0118】
特定の実施形態では、核酸はDNA分子(例えば、cDNA分子)である。特定の実施形態では、核酸は、CARコード配列に作動可能に連結された発現制御配列(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)をさらに含む。特定の実施形態では、本出願は、核酸を含むベクターを提供する。ベクターは、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノウイルスベクター)または非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)であり得る。
【0119】
特定の実施形態では、核酸はRNA分子(例えば、mRNA分子)である。トランスフェクションに使用するためのmRNAを作製するための方法は、特別に設計されたプライマーを用いて鋳型をインビトロ転写し、続いてポリAを付加して、3’および5’非翻訳配列、5’キャップおよび/または配列内リボソーム進入部位(IRES)、発現させる核酸、ならびにポリAテール(典型的には50~2000塩基長)を含有するRNA構築物を作製することを含み得る。RNA分子は、例えば、米国特許第8,278,036号、同第8,883,506号、および同第8,716,465号に開示されているように、翻訳効率および/または安定性を増加させるようにさらに修飾することができる。このようにして産生されたRNA分子は、様々な種類の細胞を効率的にトランスフェクトすることができる。
【0120】
一実施形態では、核酸は、CARのアミノ末端にシグナルペプチドを含むアミノ酸配列をコードする。そのようなシグナルペプチドは、CARがエフェクター細胞で発現される際にCARの細胞表面局在化を促進することができ、細胞プロセシング中にCARから切断される。一実施形態では、核酸は、細胞外EGFR結合ドメイン(例えば、EGFR結合scFvドメイン)のN末端にシグナルペプチドを含むアミノ酸配列をコードする。
【0121】
RNAまたはDNAは、いくつかの様々な方法のいずれかを使用して、例えば、限定するものではないが、エレクトロポレーション、リポフェクションを使用したカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、ポリマーカプセル化、ペプチド媒介トランスフェクション、または「遺伝子銃」(例えば、Nishikawaら、Hum Gene Ther.,12(8):861-70(2001)を参照されたい)などの生物学的粒子送達系などの商業的に利用可能な方法を使用して標的細胞に導入することができる。
【0122】
別の態様では、本出願は、EGFR標的化CARを発現する免疫エフェクター細胞を提供する。EGFR標的化CARをコードする核酸を含む免疫エフェクター細胞も提供される。免疫エフェクター細胞としては、T細胞およびNK細胞が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、γδT細胞、およびNKT細胞から選択される。T細胞またはNK細胞は、初代細胞または細胞株であり得る。
【0123】
免疫エフェクター細胞は、当技術分野で公知の方法によって、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍などの多数の供給源から得ることができる。免疫エフェクター細胞は、多能性または多分化能細胞(例えば、造血幹細胞)からインビトロで分化させることもできる。いくつかの実施形態では、本出願は、EGFR標的化CARを発現する(例えば、CARを原形質膜上に発現する)か、または本明細書に開示される核酸を含む多能性または多分化能細胞(例えば、造血幹細胞)を提供する。
【0124】
特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞を単離および/または精製する。例えば、制御性T細胞は、CD25結合リガンドを使用してT細胞集団から取り出すことができる。チェックポイントタンパク質(例えば、PD-1、LAG-3またはTIM-3)を発現するエフェクター細胞は、同様の方法によって取り出すことができる。特定の実施形態では、エフェクター細胞は、正の選択工程によって単離される。例えば、T細胞の集団は、抗CD3/抗CD28コンジュゲートビーズとのインキュベーションによって単離することができる。IFN-7、TNF-α、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムBおよびパーフォリンなどの他の細胞表面マーカーも正の選択に使用することができる。
【0125】
免疫エフェクター細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、同第7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6,905,874号、同第6,797,514号、同第6,867,041号、および米国特許出願公開第2006/0121005号および同第2016/0340406号に記載されているように、当技術分野で公知の方法を一般的に使用して活性化および増殖させることができる。例えば、特定の実施形態では、T細胞は、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触することによって増殖および/または活性化することができる。これらの細胞は、数時間(例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、18、21時間)から約14日間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日間)にわたって培養液中で増殖させることができる。一実施形態では、細胞を4から9日間にわたって増殖させる。長時間の細胞培養(例えば、60日間またはそれを超える培養)のためには、複数サイクルの刺激が望ましい場合がある。特定の実施形態では、細胞培養物は、血清(例えば、ウシ胎児血清またはヒト胎児血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ、TNF-α、またはそれらの組み合わせを含む。当業者に公知の細胞増殖のための他の添加剤、例えば、界面活性剤、プラスマネート、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤も細胞培養物に含めることができる。特定の実施形態では、本出願の免疫エフェクター細胞は、インビトロ増殖から得られる細胞である。
【0126】
EGFR(例えば、調節可能なCAR)に結合する抗原結合部位、CARをコードする核酸、およびCARを発現するまたは核酸を含むエフェクター細胞を含み得るCAR構築物のさらなる設計は、米国特許第7,446,190号および同第9,181,527号、米国特許出願公開第2016/0340406号および同第2017/0049819号、ならびに国際公開第2018/140725号に示されている。
EGFR/CD3指向二重特異性T細胞エンゲージャー
【0127】
特定の実施形態では、本出願は、本明細書に開示されるEGFRに結合する抗原結合部位を含むEGFR/CD3指向二重特異性T細胞エンゲージャーを提供する。特定の実施形態では、EGFR/CD3指向二重特異性T細胞エンゲージャー中のEGFRに結合する抗原結合部位は、パニツムマブに対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R、VL中のF87Y、およびVL中のD92Rから選択される1またはそれを超える変異を含む。特定の実施形態では、EGFR/CD3指向二重特異性T細胞エンゲージャーは、配列番号14、15、18、19、20、21、24および25からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、サイトカインは、Fcドメインに直接またはリンカーを介して連結されている。
【0128】
特定の実施形態では、EGFR/CD3指向二重特異性T細胞エンゲージャーは、CD3に結合する抗原結合部位をさらに含む。CD3に結合する例示的な抗原結合部位は、国際公開第2014/051433号および国際公開第2017/097723号に開示されている。
【0129】
本出願の別の態様は、EGFR/CD3指向二重特異性T細胞エンゲージャーの少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸であって、当該ポリペプチドがEGFRに結合する抗原結合部位を含む、核酸を提供する。特定の実施形態では、この核酸は、発現されると、EGFR/CD3指向二重特異性T細胞エンゲージャーのポリペプチドの1またはそれを超えるN末端にあるシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。核酸を含むベクター(例えば、ウイルスベクター)、核酸またはベクターを含むプロデューサー細胞、およびEGFR/CD3指向二重特異性T細胞エンゲージャーを発現するプロデューサー細胞も提供される。
免疫サイトカイン
【0130】
特定の実施形態では、本出願は、本明細書に開示されるEGFRに結合する抗原結合部位およびサイトカインを含む免疫サイトカインを提供する。限定するものではないが、IL-2、IL-4、IL-10、IL-12、IL-15、TNFα、IFNα、IFNγおよびGM-CSFなどの、当技術分野で公知の任意のサイトカイン(例えば、炎症促進性または抗炎症性サイトカイン)を使用することができる。より例示的なサイトカインは、米国特許第9,567,399号に開示されている。特定の実施形態では、抗原結合部位は、化学的コンジュゲーション(例えば、共有結合性または非共有結合性の化学的コンジュゲーション)によってサイトカインに接続される。特定の実施形態では、抗原結合部位は、ポリペプチド鎖の融合によってサイトカインに連結される(すなわち、ペプチド結合)。免疫サイトカインは、EGFRに結合する抗原結合部位に結合したFcドメインをさらに含み得る。特定の実施形態では、免疫サイトカイン中のEGFRに結合する抗原結合部位は、パニツムマブに対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R、VL中のF87Y、およびVL中のD92Rから選択される1またはそれを超える変異を含む。特定の実施形態では、免疫サイトカインは、配列番号14、15、18、19、20、21、24および25からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、サイトカインは、Fcドメインに直接またはリンカーを介して連結されている。
【0131】
別の態様では、本出願は、免疫サイトカインの少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸であって、当該ポリペプチドがEGFRに結合する抗原結合部位を含む、核酸を提供する。特定の実施形態では、この核酸は、発現されると、免疫サイトカインのポリペプチドの1またはそれを超えるN末端にあるシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。核酸を含むベクター(例えば、ウイルスベクター)、核酸またはベクターを含むプロデューサー細胞、および免疫サイトカインを発現するプロデューサー細胞も提供される。
抗体-薬物コンジュゲート
【0132】
特定の実施形態では、本出願は、本明細書に開示されるEGFRと結合する抗原結合部位および細胞傷害性薬物部分を含む抗体-薬物コンジュゲートを提供する。例示的な細胞傷害性薬物部分は、国際公開第2014/160160号および国際公開第2015/143382号に開示されている。特定の実施形態では、細胞傷害性薬物部分は、オーリスタチン、N-アセチル-γカリケアマイシン、メイタンシノイド、ピロロベンゾジアゼピン、およびSN-38から選択される。抗原結合部位は、化学的コンジュゲーション(例えば、共有結合性または非共有結合性の化学的コンジュゲーション)によって細胞傷害性薬物部分に接続することができる。特定の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、EGFRに結合する抗原結合部位に結合したFcドメインをさらに含む。特定の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲート中のEGFRに結合する抗原結合部位は、パニツムマブに対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R、VL中のF87Y、およびVL中のD92Rから選択される1またはそれを超える変異を含む。特定の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、配列番号14、15、18、19、20、21、24および25からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、細胞傷害性薬物部分は、Fcドメインに直接またはリンカーを介して結合している。
免疫毒素
【0133】
特定の実施形態では、本出願は、本明細書に開示されるEGFRに結合する抗原結合部位および細胞傷害性ペプチド部分を含む免疫毒素を提供する。限定するものではないが、リシン、ジフテリア毒素およびシュードモナス外毒素Aなどの当該分野で公知の任意の細胞傷害性ペプチド部分を使用することができる。より例示的な細胞傷害性ペプチドは、国際公開第2012/154530号および国際公開第2014/164680号に開示されている。特定の実施形態では、細胞傷害性ペプチド部分は、化学的コンジュゲーション(例えば、共有結合性または非共有結合性の化学的コンジュゲーション)によってタンパク質に連結される。特定の実施形態では、細胞傷害性ペプチド部分は、ポリペプチドの融合によってタンパク質に連結される。免疫毒素は、EGFRに結合する抗原結合部位に連結されたFcドメインをさらに含み得る。特定の実施形態では、免疫毒素中のEGFRに結合する抗原結合部位は、パニツムマブに対して、Chothiaナンバリングスキームに基づく、VH中のS62R、VL中のF87Y、およびVL中のD92Rから選択される1またはそれを超える変異を含む。特定の実施形態では、免疫毒素は、配列番号14、15、18、19、20、21、24および25からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、細胞傷害性ペプチド部分は、直接またはリンカーを介してFcドメインに接続される。
【0134】
別の態様では、本出願は、免疫毒素の少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸であって、当該ポリペプチドがEGFRに結合する抗原結合部位を含む、核酸を提供する。特定の実施形態では、この核酸は、発現されると、免疫毒素のポリペプチドの1またはそれを超えるN末端にあるシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。核酸を含むベクター(例えば、ウイルスベクター)、核酸またはベクターを含むプロデューサー細胞、および免疫毒素を発現するプロデューサー細胞も提供される。
II.治療用組成物およびその使用
【0135】
本出願は、本明細書に開示される抗原結合部位を含むタンパク質、コンジュゲート、または細胞および/または本明細書に記載される医薬組成物を使用して癌を処置する方法を提供する。本方法は、本明細書に開示される抗原結合部位を含むタンパク質、コンジュゲートまたは細胞の治療有効量をそれを必要とする患者に投与することによって、EGFRを発現する様々な癌を処置するために使用され得る。
【0136】
本治療方法は、処置される癌によって特徴付けることができる。処置される癌は、癌細胞の表面上に発現される特定の抗原の存在によって特徴付けることができる。
【0137】
EGFRの発現を特徴とする癌としては、固形腫瘍癌が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、特定の実施形態では、癌は、頭頸部癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、腎細胞癌、膀胱癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵臓癌、または肝臓癌である。特定の実施形態では、癌は、肺癌(限定するものではないが、小細胞肺癌または肺腺癌など)、乳癌、乳癌浸潤性乳管癌、腎臓癌、従来の多形性膠芽腫、結腸癌、結腸腺癌、胃癌、脳癌、神経膠芽腫、膀胱癌、頭頸部癌、卵巣癌または前立腺癌である。
【0138】
本明細書に記載のタンパク質、コンジュゲート、細胞および/または医薬組成物は、様々な癌を、限定するものではないが、癌細胞または癌微小環境中の細胞がEGFRを発現する癌を処置するために使用することができると考えられる。
【0139】
特定の実施形態では、癌は固形腫瘍である。特定の他の実施形態では、癌は、脳癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、白血病、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、精巣癌、または子宮癌である。さらに他の実施形態では、癌は、血管新生腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽腫、肉腫(例えば、血管肉腫または軟骨肉腫)、喉頭癌、耳下腺癌、胆道癌、甲状腺癌、先端黒子型黒色腫、光線性角化症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、肛門管癌、肛門癌、肛門直腸癌、星状膠細胞性腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆管癌、骨癌、骨髄癌、気管支癌、気管支腺癌、カルチノイド、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/癌腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織癌、嚢胞腺腫、消化器系癌、十二指腸癌、内分泌系癌、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、内皮細胞癌、上衣癌、上皮細胞癌、ユーイング肉腫、眼および眼窩癌、女性生殖器癌、限局性結節性過形成、胆嚢癌、胃前庭癌、胃底癌、ガストリノーマ、神経膠芽腫、グルカゴノマ、心臓癌、血管芽腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝腺腫症、肝胆道癌、肝細胞癌、ホジキン病、回腸癌、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮内扁平上皮細胞新生物、肝内胆管癌、浸潤性扁平上皮癌、空腸癌、関節癌、カポジ肉腫、骨盤癌、大細胞癌、大腸癌、平滑筋癌、悪性黒子黒色腫、リンパ腫、男性生殖器癌、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜癌、中皮癌、転移性癌腫、口腔癌、粘膜表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉癌、鼻道癌、神経系癌、神経上皮腺癌、結節性黒色腫、非上皮性皮膚癌、非ホジキンリンパ腫、オーツ細胞癌、乏突起膠癌、口腔癌、骨肉腫、乳頭状漿液腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸癌、腎細胞癌、呼吸器系癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌腫、洞癌、皮膚癌、小細胞癌、小腸癌、平滑筋癌、軟部組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎癌、扁平上皮癌、横紋筋癌、中皮下癌、表在型黒色腫、T細胞白血病、舌癌、未分化癌、尿管癌、尿道癌、膀胱癌、泌尿器系癌、子宮頸癌、子宮体癌、ブドウ膜黒色腫、膣癌、疣贅癌、ビポーマ、外陰癌、高分化癌、またはウィルムス腫瘍である。
【0140】
特定の他の実施形態では、癌は、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、または原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫などのB細胞リンパ腫である。特定の他の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外ナチュラルキラー細胞/T細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、皮下脂腺炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、または末梢T細胞リンパ腫などのT細胞リンパ腫である。
【0141】
処置される癌は、癌細胞の表面上に発現される特定の抗原の存在によって特徴付けることができる。特定の実施形態では、癌細胞は、EGFRに加えて、CD2、CD19、CD38、CD40、CD52、CD30、CD70、IGF1R、HER3/ERBB3、HER4/ERBB4、MUC1、TROP2、cMET、SLAMF7、PSCA、MICA、MICB、TRAILR1、TRAILR2、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4およびPD1のうちの1またはそれを超えるものを発現し得る。
III.併用療法
【0142】
別の態様では、本出願は併用療法を提供する。本明細書に記載の抗原結合部位を含むタンパク質、コンジュゲート、および細胞は、癌を処置するためのさらなる治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0143】
癌の処置において併用療法の一部として使用され得る例示的な治療剤としては、例えば、放射線、マイトマイシン、トレチノイン、リボムスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エトポシド、クラドリビン、ミトブロニトール、メトトレキサート、ドキソルビシン、カルボコン、ペントスタチン、ニトラクリン、ジノスタチン、セトロレリクス、レトロゾール、ラルチトレキセド、ダウノルビシン、ファドロゾール、フォテムスチン、チマルファシン、ソブゾキサン、ネダプラチン、シタラビン、ビカルタミド、ビノレルビン、ベスナリノン、アミノグルテチミド、アムサクリン、プログルミド、酢酸エリプテニウム、ケタンセリン、ドキシフルリジン、エトレチネート、イソチノイン、ストレプトゾシン、ニムスチン、ビンデシン、フルタミド、ドロゲニル、ブトシン、カルモフル、ラゾキサン、シゾフィラン、カルボプラチン、ミトラクトール、テガフール、イホスファミド、プレドニムスチン、ピシバニル、レバミソール、テニポシド、イプロスルファン、エノシタビン、リスリド、オキシメトロン、タモキシフェン、プロゲステロン、メピチオスタン、エピチオスタノール、ホルメスタン、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-2アルファ、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ、コロニー刺激因子-1、コロニー刺激因子-2、デニロイキンジフチトックス、インターロイキン-2、ルテイン化ホルモン放出因子、ならびに、その同族受容体への示差的結合および血中半減期の増加または減少を示し得る上述の薬剤のバリエーションが挙げられる。
【0144】
癌の処置において併用療法の一部として使用され得るさらなるクラスの薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、(i)細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、(iii)PDL1、(iv)LAG3、(v)B7-H3、(vi)B7-H4、および(vii)TIM3のうちの1またはそれを超えるものを阻害する薬剤が挙げられる。CTLA4阻害剤イピリムマブは、黒色腫の処置に関して米国食品医薬品局によって承認されている。
【0145】
癌の処置において併用療法の一部として使用され得るさらに他の薬剤は、非チェックポイント標的(例えば、ハーセプチン)および非細胞傷害性薬剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)を標的とするモノクローナル抗体薬剤である。
【0146】
抗癌剤のさらに他のカテゴリーとしては、例えば、(i)ALK阻害剤、ATR阻害剤、A2Aアンタゴニスト、塩基除去修復阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤、CDC7阻害剤、CHK1阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、DNA-PK阻害剤、DNA-PKおよびmTORの両方の阻害剤、DNMT1阻害剤、DNMT1阻害剤+2-クロロ-デオキシアデノシン、HDAC阻害剤、ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、IDO阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害剤、MEK阻害剤、MELK阻害剤、MTH1阻害剤、PARP阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、PARP1およびDHODHの両方の阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ-II阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤、およびWEE1阻害剤、(ii)OX40、CD137、CD40、GITR、CD27、HVEM、TNFRSF25またはICOSのアゴニスト、ならびに、(iii)IL-12、IL-15、GM-CSFおよびG-CSFから選択されるサイトカインが挙げられる。
【0147】
本出願に記載されるタンパク質はまた、原発病変の外科的除去の補助として使用することができる。
【0148】
本明細書に開示されるタンパク質、コンジュゲートまたは細胞およびさらなる治療薬の量および投与の相対的なタイミングは、所望の併用治療効果を達成するように選択され得る。例えば、併用療法をそのような投与を必要とする患者に投与する場合、併用する治療薬、またはその治療薬を含む医薬組成物もしくは組成物群は、任意の順序で、例えば、連続的に、並行して、一緒に、同時に、といった具合に投与され得る。さらに、例えば、本明細書に開示されるタンパク質、コンジュゲートまたは細胞は、さらなる治療剤がその予防効果または治療効果を発揮する期間中に投与されてもよく、またはその逆もしかりである。
IV.医薬組成物
【0149】
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載のタンパク質、タンパク質コンジュゲート、または免疫エフェクター細胞を含有する医薬組成物を特徴とする。本組成物は、様々な薬物送達系での使用のために製剤化することができる。適切な製剤化のために、1またはそれを超える生理学的に許容され得る賦形剤または担体を本組成物に含めることもできる。本明細書に開示される組成物に使用するのに適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.,1985に見られる。薬物送達のための方法の簡潔な説明については、例えば、Langer(Science 249:1527-1533,1990)を参照されたい。
【0150】
一態様では、本開示は、本明細書に記載のEGFR結合部位を含有するタンパク質と、薬学的に許容され得る担体との製剤を提供する。
【0151】
本組成物は、様々な薬物送達系での使用のために製剤化することができる。適切な製剤化のために、1またはそれを超える生理学的に許容され得る賦形剤または担体を本組成物に含めることができる。本明細書に開示される組成物に使用するのに適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.,1985に見られる。薬物送達のための方法の簡潔な説明については、例えば、Langer(Science 249:1527-1533,1990)を参照されたい。
【0152】
特定の実施形態では、本組成物は薬物送達製剤であり得る。本明細書に記載の静脈内薬物送達製剤は、バッグ、ペン、またはシリンジに収容され得る。特定の実施形態では、バッグは、チューブおよび/または針を含むチャネルに接続されてもよい。特定の実施形態では、本製剤は、凍結乾燥製剤または液体製剤であり得る。特定の実施形態では、本製剤を凍結乾燥し、約12~60バイアルに入れることができる。特定の実施形態では、本製剤は凍結乾燥してもよく、1つのバイアルに45mgの凍結乾燥製剤を入れてもよい。特定の実施形態では、1つのバイアルに約40mgから約100mgの凍結乾燥製剤を入れてもよい。特定の実施形態では、12、27または45バイアルからの凍結乾燥製剤を組み合わせて、静脈内製剤中のタンパク質の治療用量を得る。特定の実施形態では、本製剤は液体製剤であり得、約250mg/バイアルから約1000mg/バイアルで保存され得る。特定の実施形態では、本製剤は液体製剤であり得、約600mg/バイアルで保存され得る。特定の実施形態では、本製剤は液体製剤であり得、約250mg/バイアルで保存され得る。
【0153】
これらの組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌してもよく、または滅菌濾過してもよい。得られた水溶液は、そのまま使用するために包装してもよく、または凍結乾燥してもよく、凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌水性担体と組み合わされる。この調製物のpHは、典型的には3~11、例えば5~9または6~8、特定の実施形態では7~8、例えば7~7.5である。得られた固体形態の組成物は、各々が固定量の1またはそれを超える上述の薬剤を含有する複数の単回用量単位で包装することができる。固体形態の本組成物は、量の融通がきく容器に包装することもできる。
【0154】
特定の実施形態では、本開示は、マンニトール、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、水および水酸化ナトリウムと組み合わせた、本開示に記載のタンパク質を含む長い貯蔵寿命を有する製剤を提供する。
【0155】
特定の実施形態では、pH緩衝溶液中に本開示に記載のタンパク質を含む水性製剤が調製される。本出願の緩衝液は、約4から約8、例えば約4.5から約6.0、または約4.8から約5.5の範囲のpHを有し得るか、または約5.0から約5.2のpHを有し得る。上に記載されたpHの中間の範囲も、本開示の一部であることが意図されている。例えば、上に記載された値のいずれかの組み合わせを上限および/または下限として使用する値の範囲が含まれることが意図される。pHをこの範囲内に制御する緩衝液の例としては、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えば、コハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩および他の有機酸緩衝液が挙げられる。
【0156】
特定の実施形態では、製剤は、pHを約4から約8の範囲に維持するためにクエン酸塩およびリン酸塩を含有する緩衝系を含む。特定の実施形態では、pH範囲は、約4.5から約6.0、または約pH4.8から約5.5、または約5.0から約5.2のpH範囲であり得る。特定の実施形態では、緩衝系は、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物および/またはリン酸二水素ナトリウム二水和物を含む。特定の実施形態では、緩衝系は、約1.3mg/mLのクエン酸(例えば、1.305mg/mL)、約0.3mg/mLのクエン酸ナトリウム(例えば、0.305mg/mL)、約1.5mg/mLのリン酸二ナトリウム二水和物(例えば、1.53mg/mL)、約0.9mg/mLのリン酸二水素ナトリウム二水和物(例えば、0.86mg/mL)、および約6.2mg/mLの塩化ナトリウム(例えば、6.165mg/mL)を含む。特定の実施形態では、緩衝系は、約1から約1.5mg/mLのクエン酸、約0.25から約0.5mg/mLのクエン酸ナトリウム、約1.25から約1.75mg/mLのリン酸二ナトリウム二水和物、約0.7から約1.1mg/mLのリン酸二水素ナトリウム二水和物および約6.0から約6.4mg/mLの塩化ナトリウムを含む。特定の実施形態では、製剤のpHを水酸化ナトリウムで調整する。
【0157】
等張化剤として作用し、抗体を安定化し得るポリオールも製剤に含まれ得る。ポリオールは、製剤の所望の等張性に関して変化し得る量で製剤に添加される。特定の実施形態では、水性製剤は等張性であり得る。添加されるポリオールの量はまた、ポリオールの分子量に関して変更され得る。例えば、二糖(トレハロースなど)と比較して、より少量の単糖(例えば、マンニトール)を添加することができる。特定の実施形態では、等張剤として製剤に使用され得るポリオールはマンニトールである。特定の実施形態では、マンニトールの濃度は、約5から約20mg/mLであり得る。特定の実施形態では、マンニトールの濃度は、約7.5から約15mg/mLであり得る。特定の実施形態では、マンニトールの濃度は、約10から約14mg/mLであり得る。特定の実施形態では、マンニトールの濃度は、約12mg/mLであり得る。特定の実施形態では、ポリオールソルビトールは製剤に含まれ得る。
【0158】
洗剤または界面活性剤を製剤に加えてもよい。例示的な洗剤としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80など。)またはポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)などの非イオン性洗剤が挙げられる。添加される界面活性剤の量は、製剤化された抗体の凝集を減少させ、かつ/または製剤中の微粒子の形成を最小にし、かつ/または吸着を減少させるような量である。特定の実施形態では、本製剤は、ポリソルベートである界面活性剤を含み得る。特定の実施形態では、本製剤は、洗剤ポリソルベート80またはTween(登録商標)80を含有し得る。Tween80は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを表すために使用される用語である(Fiedler,Lexikon der Hifsstoffe,Editio Cantor Verlag Aulendorf,4th ed.,1996を参照されたい)。特定の実施形態では、本製剤は、約0.1mg/mL~約10mg/mL、または約0.5mg/mL~約5mg/mLのポリソルベート80を含有し得る。特定の実施形態では、約0.1%のポリソルベート80が製剤に添加され得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のタンパク質産物は、液体製剤として製剤化される。液体製剤は、ゴム栓で閉鎖され、アルミニウムクリンプシールクロージャで密封されたUSP/Ph EurタイプI 50Rバイアルのいずれかの中に10mg/mLの濃度で提供され得る。ストッパは、USPおよびPh Eurに準拠するエラストマー製のものであり得る。特定の実施形態では、60mLの抽出可能な体積を可能にするために、バイアルに61.2mLのタンパク質産物溶液を充填することができる。特定の実施形態では、液体製剤は、0.9%生理食塩水で希釈され得る。
【0160】
特定の実施形態では、本明細書に開示される液体製剤は、安定化レベルの糖と組み合わせて10mg/mL濃度の溶液として調製され得る。特定の実施形態では、液体製剤は、水性担体中で調製され得る。特定の実施形態では、安定剤は、静脈内投与に望ましくないまたは不適切な粘度をもたらし得る量以下の量で添加され得る。特定の実施形態では、糖は二糖、例えば、スクロースであり得る。特定の実施形態では、液体製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、および防腐剤のうちの1またはそれを超えるものを含み得る。
【0161】
特定の実施形態では、液体製剤のpHは、薬学的に許容され得る酸および/または塩基の添加によって設定され得る。特定の実施形態では、薬学的に許容され得る酸は塩酸であり得る。特定の実施形態では、塩基は水酸化ナトリウムであり得る。
【0162】
凝集に加えて、脱アミド化は、発酵中、収穫/細胞の清澄化中、精製中、原薬/製剤の保管中および試料分析中に起こり得るペプチドおよびタンパク質の一般的な生成物変異体である。脱アミドは、加水分解を受けることができるスクシンイミド中間体を形成するタンパク質からのNH3の損失である。スクシンイミド中間体は、親ペプチドの17ダルトンの質量減少をもたらす。その後の加水分解は、18ダルトンの質量増加をもたらす。スクシンイミド中間体の単離は、水性条件下での不安定性のために困難である。したがって、脱アミド化は、典型的には、1ダルトンの質量増加として検出可能である。アスパラギンの脱アミドは、アスパラギン酸またはイソアスパラギン酸のいずれかをもたらす。脱アミド速度に影響を及ぼすパラメータとしては、pH、温度、溶媒誘電率、イオン強度、一次配列、局所的ポリペプチド配座および三次構造が挙げられる。ペプチド鎖中のAsnに隣接するアミノ酸残基は、脱アミド速度に影響を及ぼす。タンパク質配列中のAsnに続くGlyおよびSerは、脱アミドに対するより高い感受性をもたらす。
【0163】
特定の実施形態では、本明細書に記載の液体製剤は、タンパク質産物の脱アミノ化を防ぐpHおよび湿度の条件下で保存され得る。
【0164】
本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され得るもの(ヒトへの投与に安全かつ非毒性)であり、液体製剤の調製に有用なものである。例示的な担体としては、滅菌注射用水(SWFI)、静菌注射用水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が挙げられる。
【0165】
細菌作用を低減するために、本明細書の製剤に必要に応じて防腐剤を添加してもよい。防腐剤の添加は、例えば、多目的(複数回投与)製剤の製造を促進し得る。
【0166】
静脈内(IV)送達は、患者が移植後に病院でIV経路を介してすべての薬物を投与されるときなどの特定の例における投与経路であり得る。特定の実施形態では、液体製剤は、投与前に0.9%塩化ナトリウム溶液で希釈される。特定の実施形態では、注射用希釈製剤は等張性であり、静脈内注入による投与に適している。
【0167】
特定の実施形態では、塩または緩衝液成分は、10mM~200mMの量で添加され得る。塩および/または緩衝液は薬学的に許容され得るものであり、「塩基形成」金属またはアミンを有する様々な既知の酸(無機および有機)から誘導される。特定の実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝液であり得る。特定の実施形態では、緩衝液は、グリシネート、カーボネート、シトレート緩衝液であってもよく、その場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして機能し得る。
【0168】
細菌作用を低減するために、本明細書の製剤に必要に応じて防腐剤を添加してもよい。防腐剤の添加は、例えば、多目的(複数回投与)製剤の製造を促進し得る。
【0169】
本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され得るもの(ヒトへの投与に安全かつ非毒性)であり、液体製剤の調製に有用なものである。例示的な担体としては、滅菌注射用水(SWFI)、静菌注射用水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が挙げられる。
【0170】
本明細書に記載のタンパク質は、本タンパク質および凍結保護剤を含む凍結乾燥製剤の形で存在し得る。凍結保護剤は、糖、例えば二糖であり得る。特定の実施形態では、凍結保護剤はスクロースまたはマルトースであり得る。凍結乾燥製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、増量剤および/または保存剤のうちの1またはそれを超えるものを含み得る。
【0171】
凍結乾燥製剤の安定化に有用なスクロースまたはマルトースの量は、スクロースまたはマルトースに対するタンパク質の重量比が少なくとも1:2であり得る。特定の実施形態では、スクロースまたはマルトースに対するタンパク質の重量比は、1:2から1:5であり得る。
【0172】
特定の実施形態では、本製剤のpHは、凍結乾燥前に、薬学的に許容され得る酸および/または塩基の添加によって設定され得る。特定の実施形態では、薬学的に許容され得る酸は塩酸であり得る。特定の実施形態では、薬学的に許容され得る塩基は、水酸化ナトリウムであり得る。
【0173】
凍結乾燥の前に、本明細書に記載のタンパク質を含有する溶液のpHを6~8に調整することができる。特定の実施形態では、凍結乾燥製剤のpH範囲は、7から8であり得る。
【0174】
特定の実施形態では、塩または緩衝成分は、10mM~200mMの量で添加され得る。塩および/または緩衝液は薬学的に許容され得るものであり、「塩基形成」金属またはアミンを有する様々な既知の酸(無機および有機)から誘導される。特定の実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝液であり得る。特定の実施形態では、緩衝液は、グリシネート、カーボネート、シトレート緩衝液であってもよく、その場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして機能し得る。
【0175】
特定の実施形態では、「増量剤」を添加することができる。「増量剤」は、凍結乾燥混合物に質量を加え、凍結乾燥ケーキの物理的構造に寄与する(例えば、開放細孔構造を維持する本質的に均一な凍結乾燥ケーキの製造を容易にする)化合物である。例示的な増量剤としては、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびソルビトールが挙げられる。本出願の凍結乾燥製剤は、そのような増量剤を含有し得る。
【0176】
細菌作用を低減するために、本明細書の製剤に必要に応じて防腐剤を添加してもよい。防腐剤の添加は、例えば、多目的(複数回投与)製剤の製造を促進し得る。
【0177】
特定の実施形態では、凍結乾燥製剤を水性担体で再構成することができる。本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され得るもの(例えば、ヒトへの投与に安全かつ非毒性)であり、凍結乾燥後の液体製剤の調製に有用なものである。例示的な水性担体としては、滅菌注射用水(SWFI)、静菌注射用水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が挙げられる。
【0178】
特定の実施形態では、本明細書に開示される凍結乾燥製剤は、滅菌注射用水、USP(SWFI)または0.9%塩化ナトリウム注射液、USPのいずれかで再構成される。再構成中、凍結乾燥粉末は溶液に溶解する。
【0179】
特定の実施形態では、本明細書に開示される凍結乾燥タンパク質製品は、注射用水約4.5mLに再構成され、0.9%生理食塩水(塩化ナトリウム溶液)で希釈される。
【0180】
本明細書に記載される医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効であり、患者に毒性がない活性成分の量を得るように変動し得る。
【0181】
特定の用量は、各患者に対して均一な用量、例えば、50~5000mgのタンパク質であり得る。あるいは、患者の用量は、患者のおおよその体重または表面積に合わせて調整することができる。適切な投与量を決定する際の他の要因としては、処置または予防される疾患または状態、疾患の重症度、投与経路、ならびに患者の年齢、性別および医学的状態が挙げられる。処置のための適切な投与量を決定するために必要な計算のさらなる改良は、当業者によって、特に本明細書に開示される投与量情報およびアッセイに照らして、日常的に行われる。投与量は、適切な用量反応データと併せて使用される投与量を決定するための公知のアッセイの使用によって決定することもできる。個々の患者の投薬量は、疾患の進行をモニターしながら調節することができる。患者における標的化可能な構築物または複合体の血中レベルを測定して、有効濃度に達するかまたは有効濃度を維持するために投与量を調整する必要があるかどうかを調べることができる。薬理ゲノミクスを使用して、どの標的化可能な構築物および/または複合体、ならびにその投与量が所与の個体に最も有効である可能性が高いかを調べることができる(Schmitzら、Clinica Chimica Acta、308:43~53、2001、Steimerら、Clinica Chimica Acta 308:33-41,2001)。
【0182】
一般に、体重に基づく投与量は、約0.01μgから約100mg/kg体重、例えば、約0.01μgから約100mg/kg体重、約0.01μgから約50mg/kg体重、約0.01μgから約10mg/kg体重、約0.01μgから約1mg/kg体重、約0.01μgから約100μg/kg体重、約0.01μgから約50μg/kg体重、約0.01μgから約10μg/kg体重、約0.01μgから約1μg/kg体重、約0.01μgから約0.1μg/kg体重、約0.1μgから約100mg/kg体重、約0.1μgから約50mg/kg体重、約0.1μgから約10mg/kg体重、約0.1μgから約1mg/kg体重、約0.1μgから約100μg/kg体重、約0.1μgから約10μg/kg体重、約0.1μgから約1μg/kg体重、約1μgから約100mg/kg体重、約1μgから約50mg/kg体重、約1μgから約10mg/kg体重、約1μgから約1mg/kg体重、約1μgから約100μg/kg体重、約1μgから約50μg/kg体重、約1μgから約10μg/kg体重、約10μgから約100mg/kg体重、約10μgから約50mg/kg体重、約10μgから約10mg/kg体重、約10μgから約1mg/kg体重、約10μgから約100μg/kg体重、約10μgから約50μg/kg体重、約50μgから約100mg/kg体重、約50μgから約50mg/kg体重、約50μgから約10mg/kg体重、約50μgから約1mg/kg体重、約50μgから約100μg/kg体重、約100μgから約100mg/kg体重、約100μgから約50mg/kg体重、約100μgから約10mg/kg体重、約100μgから約1mg/kg体重、約1mgから約100mg/kg体重、約1mgから約50mg/kg体重、約1mgから約10mg/kg体重、約10mgから約100mg/kg体重、約10mgから約50mg/kg体重、約50mgから約100mg/kg体重である。
【0183】
用量は、1日に1回またはそれを超える回数、週に1回、月に1回もしくは年に1回、またはさらに2から20年に1回で与えられ得る。当業者は、測定された滞留時間および体液または組織中の標的化可能な構築物または複合体の濃度に基づいて、投与の繰り返し率を容易に推定することができる。本明細書に記載の組成物の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内、腔内、カテーテルによる灌流または直接病巣内注射によるものであり得る。これは、1日1回またはそれを超える回数、週1回またはそれを超える回数、月1回またはそれを超える回数、毎年1回またはそれを超える回数投与してもよい。
【0184】
上記の説明は、本出願に記載される抗原結合部位を含むタンパク質の複数の態様および実施形態を説明している。本特許出願は、これらの態様および実施形態のすべての組み合わせおよび置換を特に企図している。
【0185】
本明細書全体を通して、組成物が特定の成分を有する、または含む、または備えると記載されている場合、または、プロセスおよび方法が特定の工程を有する、または含む、または備えると記載されている場合、さらに、記載された成分から本質的になる、またはそれらからなる本出願に記載の抗原結合部位を含むタンパク質の組成物があり、記載された処理工程から本質的になる、またはそれらからなる本出願によるプロセスおよび方法があることが企図される。
【0186】
本出願では、要素もしくは成分が記載された要素もしくは成分のリストに含まれ、かつ/または記載された要素もしくは成分のリストから選択されると言われ、要素もしくは成分は記載された要素もしくは成分のいずれか1つであり得、または要素もしくは成分は記載された要素もしくは成分の2つ以上からなる群から選択され得ることを理解されたい。
【0187】
さらに、本明細書に記載の組成物または方法の要素および/または特徴は、本出願の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な方法で組み合わせることが、本明細書においてそのことが明示的であるか暗示的であるかにかかわらず、可能であることを理解されたい。例えば、特定の化合物に言及する場合、その化合物は、文脈からそうでないことが理解されない限り、本出願に記載の抗原結合部位を含むタンパク質の組成物の様々な実施形態および/または本出願に記載の抗原結合部位を含むタンパク質の方法で使用することができる。換言すれば、本出願では、出願書類が明確かつ簡潔に記述および描画される方法で実施形態を説明および図示してきたが、本教示から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分離したりできることを意図しており、そのことは理解されるであろう。例えば、本明細書に記載および図示されるすべての特徴は、本明細書に記載および図示される抗原結合部位を含むタンパク質のすべての態様に適用可能であり得ることが理解されよう。
【0188】
「~のうちの少なくとも1つ」という表現は、文脈および使用からそうでないことが理解されない限り、表現後の記載された対象のそれぞれ、および記載された対象のうちの2またはそれを超えるものからなる様々な組み合わせを個別に含むことを理解されたい。3またはそれを超えるもの記載された対象に関連する「および/または」という表現は、文脈からそうでないことが理解されない限り、同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0189】
「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、または「含有する(containing)」という用語、であって、その文法上の等価語を含む用語の使用は、一般に、制限のない非限定的なものとして理解されるべきであり、例えば、そうでないことが特に明記されない限り、または文脈から理解されない限り、記載されていないさらなる要素または工程を排除するものではない。
【0190】
「約」という用語の使用が定量的値の前にある場合、そうでないことが特に明記されない限り、本出願はその特定の定量的値それ自体も含む。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、そうでないことが指示または推論されない限り、公称値から±10%の変動を指す。
【0191】
本出願に記載される抗原結合部位を含むタンパク質が使用可能である限りにおいて、工程の順序または特定の動作を実行する順序は重要ではないことを理解されたい。さらに、2またはそれを超える工程または動作が同時に行われてもよい。
【0192】
本明細書におけるありとあらゆる例または例示的な文言、例えば「など(such as)」または「含む(including)」の使用は、単に本出願に記載の抗原結合部位を含むタンパク質をよりよく説明することを意図しており、そのように主張しない限り、本出願に記載の抗原結合部位を含むタンパク質の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる言語も、特許請求されていない要素が本出願の実施に不可欠であると示しているかのように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0193】
以下の実施例は単なる例示であり、いかなる形であれ、本出願の範囲または内容を限定することを意図するものではない。
実施例1.SPR分析およびDSC分析を用いたEGFR結合界面の選択
【0194】
この実施例は、パニツムマブよりも改善された熱安定性を有するパニツムマブ由来のEGFR結合部位を発現させるように設計された。簡潔に説明すると、それぞれがEGFR(PDB ID:5SX4)のD3ドメインと複合体を形成したパニツムマブFabの結晶構造に基づいて選択された単一の点変異を含む25個の構築物を設計した。うまく発現しなかった3つの構築物を除き、EGFR結合部位が産生され、結合親和性および熱安定性に対する変異の影響を評価した。各scFv構築物はまた、VH中のG44C置換およびVL中のG100C置換を含んでいた。ヒトEGFRおよびアカゲザルEGFRに対する動態および親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて評価した。結果を表4に示す。各変異の影響が微小であることを考慮して、親和性の著しい低下を引き起こしたものを検討から外した。8つの構築物の熱安定性を、実施例3に記載の方法を使用して示差走査蛍光測定(DSF)によってさらに評価した。結果を表5に示す。
【表4】
【表5】
【0195】
これらの結果に基づいて、以下の変異が親和性および熱安定性を最も効果的に改善/保持することが確認された。
・重鎖:S62R(Chothiaナンバリングスキームに基づく)
・軽鎖:F87Y、D92R(Chothiaナンバリングスキームに基づく)
【0196】
これらの変異の構造モデリングを
図1~
図3に示す。
図1に示すように、パニツムマブのVH鎖のS62R変異は、VLのD1とのさらなる水素結合を導入し、モデル化によるVH/VL界面の安定性に寄与することが分かった。
図2に示すように、パニツムマブのVL鎖のF87Y変異は、VHのQ39とのさらなる水素結合を導入し、モデル化によるVH/VL界面の安定性に寄与することが分かった。
図3に示すように、元々(EGFRのN449への結合について)親和性を改善するように設計されたパニツムマブのVL鎖のCDR3におけるD92R変異は、予想外にも、モデル化に従って、CDRL1のY32とさらなるファンデルワールス接触を形成し、パラトープを安定化することが見出された。
【0197】
その後、親和性および熱安定性に対する変異の組み合わせの影響を、それぞれSPRおよび示差走査熱量測定(DSC)を使用して評価した。各構築物はまた、VH中にG44C置換およびVL中にG100C置換を含有していた。SPR分析の結果を表6に、DSC分析の結果を表7に示す。
【表6-1】
【表6-2】
【表7】
【0198】
表6および表7のPANI-H_S62R-L_F87Y-L_D92R(以下、「EGFR-scFv-3」)およびPANI-H_S62R-L_F87Y(以下、「EGFR-scFv-2」)は、最良の親和性および熱安定性を示した。L:G100C変異およびH:G44C変異は、ジスルフィド結合を促進してVL鎖およびVH鎖の対合を増強する。
実施例2.多重特異性結合タンパク質の表面プラズモン共鳴分析
【0199】
この実施例は、EGFRに対する特定のパニツムマブ由来EGFR結合部位の結合親和性を評価するように設計された。4つの多重特異性結合タンパク質、すなわち、EGFR-タンパク質-1、EGFR-タンパク質-2、EGFR-タンパク質-3およびEGFR-タンパク質-4を構築した。これらのタンパク質は、表1に開示されるように、それぞれEGFR-scFv-1、EGFR-scFv-2、EGFR-scFv-3、およびEGFR-scFv-4のアミノ酸配列を有するscFvを含む。それぞれの多重特異性結合タンパク質は、EGFRとは無関係の抗原に結合するFabフラグメントと、抗体Fc領域とをさらに含む。組換えヒトおよびアカゲザルEGFRに対するEGFR結合構築物の動態および親和性を、Biacore 8K機器を使用してSPRによって測定した。試料を抗hFc IgGチップ上に捕捉し、捕捉した試験物上に様々な濃度のヒトまたはアカゲザル組換えEGFR-Hisを注入した。実験は、37℃の生理学的温度で行った。Biacore 8K Insight Evaluationソフトウェア(GE Healthcare)を使用してデータを分析した。
【0200】
SPR分析からの結合センサーグラムを
図4~
図7に示し、解析から算出したパラメータを表8に示す。
図4は、EGFR-タンパク質1のSPR分析を示し、
図5は、EGFR-タンパク質2のSPR分析を示し、
図6は、EGFR-タンパク質3のSPR分析を示し、
図7は、EGFR-タンパク質1のSPR分析を示す。これらの結果は、目的の変異がEGFRに対する多重特異性結合タンパク質の親和性に実質的な影響を及ぼさないことを示した。
【表8】
実施例3.多重特異性結合タンパク質の示差走査熱量測定(DSC)分析
【0201】
この実施例は、DSC分析を使用して、実施例2に記載された多重特異性結合タンパク質構築物の熱安定性を評価するように設計された。簡潔に説明すると、Thermo Scientific Zeba Spin Desalting Columnsを使用して、試験品を選択した緩衝液に緩衝液交換した。次いで、溶出液を同じ緩衝液で0.5mg/mLに希釈した。325μLの試料を、対応する緩衝ブランクと共に96ウェル深ウェルプレートに入れ、Microcal PEAQ-DSC装置(Malvern Panalytical)を用いて分析した。温度を60℃/時間の速度で20~25℃から100℃まで上昇させた。分析物の前に緩衝液バックグラウンドを3回実行した。分析前に、最も代表的な緩衝液ブランクを各分析物のスキャンから差し引いた。非2状態モデルを有するDSC分析ソフトウェアを使用してデータを当てはめ、TonsetおよびTmを報告した。
【0202】
EGFR-タンパク質-1を使用して、ベースラインとして融解曲線を得て、変曲点、特にT-onset(分子が融解を開始する温度)ならびにscFvの安定性に関連するTm1を同定した。その後、同様の方法で、EGFR-タンパク質-2、EGFR-タンパク質-3、EGFR-タンパク質-4を分析した。
【0203】
表9および
図8A~
図8Dは、PBS緩衝液(pH7.4)中で試験したDSC分析結果を示す。
図8Aは、PBS緩衝液(pH7.4)中のEGFR-タンパク質-1のDSC分析を示す。
図8Bは、PBS緩衝液(pH7.4)中のEGFR-タンパク質-2のDSC分析を示す。
図8Cは、PBS緩衝液(pH7.4)中のEGFR-タンパク質-3のDSC分析を示す。
図8Dは、PBS緩衝液(pH7.4)中のEGFR-タンパク質-4のDSC分析を示す。表10および
図9Aおよび
図9Bは、20mMのヒスチジン、250mMのトレハロース、0.01%PS80(pH6.0)で試験したDSC分析結果を示す。
図9Aは、20mMのヒスチジン、250mMのトレハロース、0.01%PS80緩衝液(pH6.0)中のEGFR-タンパク質-3についてのDSC分析を示す。
図9Bは、20mMのヒスチジン、250mMのトレハロース、0.01%PS80緩衝液(pH6.0)中のEGFR-タンパク質-3についてのDSC分析を示す。DSC分析により、EGFR-タンパク質-3(
図8C)が、EGFR-タンパク質-2(
図8B)と比較して改善された熱安定性を有し、同様に、EGFR-タンパク質-1(
図8A)と比較して改善された熱安定性を有することが明らかになった。これらの結果はまた、EGFR-タンパク質-3(
図9A)およびEGFR-タンパク質-4(
図9B)の同様の熱安定性を示した。しかしながら、EGFR-タンパク質-4は、加速熱安定性実験(40℃で4週間、データは示さず)の下ではより分解しやすく、このことは安定性に関するS62R重鎖変異の利点を強調している。
【表9】
【表10】
実施例4.EGFR陽性細胞への多重特異性結合タンパク質結合の評価
【0204】
この実施例は、細胞表面上に発現されたEGFRに対する実施例2に記載のEGFR標的化多重特異性結合タンパク質の結合親和性を評価するように設計された。非小細胞肺癌に由来するH2172ヒト癌細胞株を使用した。簡潔に説明すると、H2172細胞を、EGFR-タンパク質1、EGFR-タンパク質2、EGFR-タンパク質3またはパニツムマブと共に4℃で0.5時間インキュベートした。インキュベーション後、多重特異性結合タンパク質およびパニツムマブのEGFR+細胞への結合パターンを、フルオロフォア結合抗ヒトIgG二次抗体を使用して検出した。細胞への多重特異性結合タンパク質の結合レベルをフローサイトメトリーによって分析した。
【0205】
図10は、EGFR-タンパク質1、EGFR-タンパク質2、EGFR-タンパク質3、またはパニツムマブとのインキュベーション後のEGFR陽性細胞への結合を示す。これらのEGFR標的化多重特異性結合タンパク質は、nM未満の濃度かつパニツムマブと同様またはより高い最大結合で細胞に結合した。
実施例5.EGFR細胞増殖アッセイ
【0206】
この実施例は、EGFR発現ヒト癌細胞株H292の増殖に対するEGFR多重特異性結合タンパク質の影響を評価するために設計された。簡潔に説明すると、EGFR-多重特異性結合タンパク質ならびに抗EGFR mAbであるセツキシマブおよびパニツムマブを希釈し、H292細胞と72時間インキュベートした。インキュベーション後、製造者の説明書に従ってCell-titer Gloを使用して細胞増殖を測定した。
【0207】
図11は、EGFR-多重特異性結合タンパク質または抗EGFR mAbの存在下でのH292細胞増殖を示す。抗EGFR mAbで処理した細胞は、EGFR多重特異性結合タンパク質で処理した細胞よりも増殖が少なかった。これは、多重特異性結合タンパク質およびmAbの結合価の差に起因し(多重特異性結合タンパク質は一価であるが、mAbは二価である)、mAbで観察された皮膚関連毒性とEGFR標的化との関連を考えると、より低い結合価を有するEGFR標的化タンパク質を使用する利点が示された。
参照による組み込み
【0208】
特段の記載がない限り、本明細書で言及される特許文献および科学論文のそれぞれの開示全体が、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
均等物
【0209】
本出願に記載される抗原結合部位は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化され得る。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載の抗原結合部位を限定するものではなく、あらゆる点で例示的なものと見なされるべきである。したがって、本出願の範囲は、上記の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲に入るあらゆる変更が含まれることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】